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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】機械式勾配磁場発生器
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
A61B5/055 340
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515827
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2022074808
(87)【国際公開番号】W WO2023036799
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】21196248.5
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】グライヒ ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ダンシング ジョージ ランダル
(72)【発明者】
【氏名】オーフェルベーク ヨハネス アドリアヌス
(72)【発明者】
【氏名】ボルネート ペーター ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ケアップ ヨヘン
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB42
4C096AD09
4C096CB01
4C096CB20
(57)【要約】
本明細書において開示されたのは、少なくとも1つの発生器層104を含む磁場発生要素102を備える機械式勾配磁場発生器100、500、1600、1700、2000、2112である。少なくとも1つの発生器層のそれぞれは、静止デバイダ106と、1つ(110)又は2つ(1602)の変位方向に移動するように構成された可動デバイダ108と、可動デバイダの、1つ又は2つの変位方向への移動を、初期位置508に向けて機械的にアシストするように構成された機械要素112と、可動デバイダと静止デバイダとの間に配置された回転式磁石のセット114とを含む。回転式磁石のセットは、可動デバイダ及び静止デバイダに機械的に結合されている。回転式磁石のセットの機械式結合は、可動デバイダの1つ又は2つの変位方向への移動により、回転式磁石のセットのそれぞれの個々の回転が生じるような結合である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの発生器層を含む磁場発生要素を備える機械式勾配磁場発生器であって、前記少なくとも1つの発生器層のそれぞれは、
静止デバイダと、
前記静止デバイダに対して相対的に1つ又は2つの変位方向に移動する可動デバイダであって、初期位置を有する可動デバイダと、
前記可動デバイダの、前記1つ又は2つの変位方向への移動を、前記初期位置に向かう機械要素の弾力性によって発生する復元力により、機械的にアシストする機械要素と、
前記可動デバイダと前記静止デバイダとの間に配置された回転式磁石のセットであって、前記回転式磁石のセットは前記可動デバイダ及び前記静止デバイダに機械的に結合されており、前記回転式磁石のセットの前記機械式結合は、前記可動デバイダの前記1つ又は2つの変位方向への移動により、前記回転式磁石のセットの各磁石の個々の回転が生じるような結合である、回転式磁石のセットとを含む、機械式勾配磁場発生器。
【請求項2】
前記磁場発生要素がさらに、前記静止デバイダ及び前記可動デバイダに取り付けられた弾性層を含み、前記回転式磁石のセットが、少なくとも部分的に前記弾性層内に埋め込まれており、前記弾性層が、前記回転式磁石のセットの前記機械式結合をもたらし、前記可動デバイダの前記移動による弾性材料の変形により、前記回転式磁石のセットのそれぞれの個々の回転が生じる、請求項1に記載の機械式勾配磁場発生器。
【請求項3】
前記機械式結合が、
前記回転式磁石のセット上のギア歯と、
前記可動デバイダ上及び/又は前記回転式磁石のセット上の高摩擦層と、
前記可動デバイダ上及び/又は前記回転式磁石のセット上の粘着層と、
前記可動デバイダ上及び/又は前記回転式磁石のセット上の弾性層と、
前記回転式磁石のセットと前記可動デバイダとの間の接触部と、
これらの組み合わせとのうちのいずれか1つを介してもたらされる、請求項1に記載の機械式勾配磁場発生器。
【請求項4】
前記機械式勾配磁場発生器が、
平坦形状と、
円筒形状と、
多角形管の形状であって、前記機械式勾配磁場発生器が、複数の前記磁場発生要素を含み、前記多角形管が前記複数の磁場発生要素から形成される、当該多角形管の形状と
のうちのいずれか1つを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の機械式勾配磁場発生器。
【請求項5】
前記1つ又は2つの変位方向が2つの変位方向であり、前記少なくとも1つの発生器が、平坦形状、球体セクション形状、及び円筒セクション形状のうちのいずれか1つを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の機械式勾配磁場発生器。
【請求項6】
前記少なくとも1つの発生器層のそれぞれがさらに、
前記静止デバイダに対して相対的に静止している追加デバイダであって、前記可動デバイダが前記追加デバイダと前記静止デバイダとの間にある、追加デバイダと、
前記可動デバイダと前記追加デバイダとの間に配置された磁石の追加セットであって、前記磁石の追加セットが、前記可動デバイダ及び前記追加デバイダに機械的に結合されており、前記磁石の追加セットの前記機械式結合は、前記可動デバイダの、前記1つ又は2つの変位方向への移動が、前記磁石の追加セットのそれぞれの個々の回転を生じさせるような結合である、磁石の追加セットとを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の機械式勾配磁場発生器。
【請求項7】
前記回転式磁石のセット及び前記磁石の追加セットのそれぞれが双極子モーメントを有し、前記初期位置では、前記回転式磁石のセット及び前記磁石の追加セットの前記双極子モーメントのベクトル和が、前記回転式磁石のセット及び前記磁石の追加セットの前記双極子モーメントの大きさの和の10%未満であり、前記初期位置では、前記ベクトル和が、好ましくは、前記大きさの和の1%未満である、請求項6に記載の機械式勾配磁場発生器。
【請求項8】
前記機械式勾配磁場発生器がさらに、前記初期位置に前記磁場発生要素を保持するためのロッキング機構を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の機械式勾配磁場発生器。
【請求項9】
前記機械式勾配磁場発生器がさらに、前記少なくとも1つの発生器層のそれぞれの前記可動デバイダを前記1つ又は2つの変位方向に同時に移動させるアクチュエータを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の機械式勾配磁場発生器。
【請求項10】
前記アクチュエータが、機械式アクチュエータ、圧電型アクチュエータ、電磁アクチュエータ、熱電アクチュエータ、及び磁場コイルシステムのうちのいずれか1つである、請求項8に記載の機械式勾配磁場発生器。
【請求項11】
少なくとも部分的に撮像ゾーン内の対象者からk空間データを取得する磁気共鳴撮像システムであって、前記磁気共鳴撮像システムが、
請求項9又は10に記載の機械式勾配磁場発生器であって、少なくとも部分的に前記撮像ゾーン内に前記勾配磁場を発生させる機械式勾配磁場発生器と、
機械実行形式命令及びパルスシーケンスコマンドを記憶するメモリと、
前記磁気共鳴撮像システムを制御するコンピュータ計算システムとを備え、前記機械実行形式命令の実行により、前記コンピュータ計算システムが、前記パルスシーケンスコマンドを用いて前記磁気共鳴撮像システムを制御することによって、前記k空間データを取得し、前記パルスシーケンスコマンドが、前記アクチュエータを制御することによって前記勾配磁場を発生させる、磁気共鳴撮像システム。
【請求項12】
前記磁気共鳴撮像システムがさらに、主磁場を発生させるための磁石を備え、機械式勾配磁場発生器は、前記勾配磁場の発生が、勾配磁場コイルシステムよりも少ないエネルギーしか必要としないように構成される、請求項11に記載の磁気共鳴撮像システム。
【請求項13】
前記機械要素は、前記機械式勾配磁場発生器が前記主磁場内にあるとき、前記回転式磁石のセットによって、前記可動デバイダに対する力を、あらかじめ定められた力しきい値内でバランスさせる、請求項11又は12に記載の磁気共鳴撮像システム。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか一項に記載の機械式勾配磁場発生器を含む、磁気共鳴撮像コイル。
【請求項15】
前記磁気共鳴撮像コイルがヘッドコイル又はボディコイルである、請求項14に記載の磁気共鳴撮像コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴撮像法に関し、より詳細には、勾配磁場の発生に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の身体内の画像を生成するための手順の一部として、原子の核スピンを整列させるために、大規模静磁場が磁気共鳴撮像(MRI)スキャナによって使用される。この大規模静磁場は、B場又は主磁場と称される。対象者のさまざまな量又は特性が、MRIを用いて空間的に測定され得る。磁気共鳴撮像における空間的なエンコーディングは、MRIスキャナの送信コイルを制御するために使用される無線周波数(RF)波形(又はRFパルス)と、B場の上端に所望の空間エンコーディング磁場を重ねるために、対応する勾配コイル構成を駆動している複数の空間選択勾配パルス波形(勾配パルス)との組み合わせを用いて行われる。
【0003】
米国特許出願第2008/054902A1号は、パッシブシミングによって、磁気共鳴デバイスにおける磁場を調整するためのシムシートを提供する方法を開示しており、本方法は、磁場不均質性を含む非補正磁場分布を獲得するために、MRデバイスにおける関心領域を磁場マッピングするステップと、磁場不均質性を1次及び2次球体高調波関数に分解するステップと、2次球体高調波関数から導出される主シム項を決定するステップであって、主シム項が、目標にされるシム磁場に適合されるパッシブシム磁場をもたらす、主シム項を決定するステップと、目標にされるシム磁場を含むパッシブシム磁場の類似度を増大させるために最適化されたシム項をスケーリングするステップと、最適化されたシム項に基づいて、モジュール式シムシートを構築するステップと、磁気共鳴デバイスのシムシートキャリア上に、モジュール式シムシートを搭載するステップとを含む。
【0004】
国際出願WO2020/096855は、例えば、磁気デバイス(ロボット)を生体組織の中を通して推進させるため、磁場の作成のための装置を開示している。この知られている装置は、棒磁石のインターリーブアレイとして構成された、複数の棒形状磁石のハルバッハアレイを含む。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、独立請求項において、機械式勾配磁場発生器、磁気共鳴撮像システム、及び磁気共鳴撮像コイルを提供する。実施形態は、従属請求項において与えられる。
【0006】
通常、勾配システムは、磁気共鳴撮像システムの製造における主なコスト因子である。短い持続時間の間に大きくて量が変化する電流を供給することができる電源がしばしば必要とされる。代替の例は、機械式勾配磁場発生器を設けることによって、勾配コイル及びそれに関連する電源に対するニーズを不要にする又は低減する手段を提供し得る。個々に回転可能な回転式磁石のセットを使用して、磁気共鳴撮像に適した勾配磁場を発生させる。
【0007】
回転式磁石のセットの回転は、勾配磁場をオン、オフするか又は調整するために使用される。回転式磁石のそれぞれは、例えば、回転式磁石の本体を通り抜ける軸の周りに回転可能であり、特に、個々の回転式磁石の回転の軸がその幾何学的中心を通り抜ける。回転式磁石のセットは、静止デバイダ及び可動デバイダによって保持されるか、又は拘束される。回転式磁石のセットは、可動デバイダが1つ又は2つの変位方向に沿って動かされると、回転式磁石のセットの磁石が個々に回転させられるように、静止デバイダ及び可動デバイダに機械的に結合される。これにより、可動デバイダの作動により、機械式勾配磁場発生器によって発生する勾配磁場の制御が可能になる。可動デバイダを作動させるために必要な機械的エネルギーの量は、可動デバイダが初期位置に戻るのを機械的にアシストするように構成された機械要素を使用することによって低減される。
【0008】
1つの態様では、本発明は、少なくとも1つの発生器層を含む磁場発生要素を有する機械式勾配磁場発生器を提供する。少なくとも1つの発生器層のそれぞれは静止デバイダを有する。少なくとも1つの発生器層のそれぞれは、静止デバイダに対して相対的に1つ又は2つの変位方向に移動するように構成された可動デバイダを有する。可動デバイダは初期位置を有する。
【0009】
本明細書で使用される静止デバイダ及び可動デバイダという用語はまた、壁又は構造体を指している。静止デバイダ及び可動デバイダはまた硬質である。
【0010】
少なくとも1つの発生器層のそれぞれはさらに、1つ又は2つの変位方向の移動を、初期位置に向けて機械的にアシストするように構成された機械要素を有する。機械要素は、異なる形態において異なる実施形態をとる。例えば、ばね又は他の弾性要素は、可動デバイダが1つ又は2つの変位方向に動かされたとき、可動デバイダを初期位置に戻すのをアシストする復元力が存在するように、構成される。可動デバイダに働かせる復元力は、機械要素の弾力性によって発生させる。機械要素の使用は、機械式勾配磁場発生器を動作させるために必要とされるエネルギーの量を低減するので、有益である。
【0011】
少なくとも1つの発生器層のそれぞれはさらに、可動デバイダと静止デバイダとの間に配置された回転式磁石のセットを有する。可動デバイダ及び静止デバイダは、例えば回転式磁石のセットの動きを制限する。回転式磁石のセットは、可動デバイダ及び静止デバイダに機械的に結合される。回転式磁石のセットの機械式結合は、可動デバイダの、1つ又は2つの変位方向への移動が、回転式磁石のセットのそれぞれの個々の回転を生じさせるような結合である。回転式磁石のセットの回転は、個々に、磁気共鳴撮像に、又は、MR分光法若しくは空間分解能を含まないMR拡散エンコーディングなどの他のMR用途に有用である勾配磁場の発生を可能にする。
【0012】
機械要素は、回転式磁石のセットの個々の回転を生じさせるために必要なエネルギーの量をオフセットさせるために使用することができる。これは、例えば、磁気共鳴撮像システムの主磁場における勾配磁場発生器の動作を、使用されるエネルギーの量を低減した状態で可能にする。これは、例えば、磁気共鳴撮像システムにおける従来の勾配コイルに対して、磁気共鳴撮像のための勾配磁場を生成するために必要なエネルギーが少ないという点で、有益である。
【0013】
本発明による勾配磁場の発生に関する基礎となる物理的現象を以下に説明する。
【0014】
本発明は、磁気共鳴信号の空間的エンコーディングのため、及びスピンを操作する(収束し直す、反転させる、位相をずらす)空間領域(スライス又はボリューム)の選択のために、磁気共鳴撮像において利用される磁気勾配場の発生を改善することに関する。勾配磁場は、電流波形によって励起される。
【0015】
本発明は、球体の表面に沿った短い行程経路の回転に伴う大きな角度偏向を有する回転式磁性素子(球体)のメタ材料を提供する。したがって、ほんの低量にすぎない運動エネルギーが高い角度偏向(例えば、π、又はπ/2)による回転に関与する。回転素子は、アクチュエータ((電気、熱)機械式アクチュエータ圧電素子、電磁気コイル)によって変位させる可動デバイダによって駆動される。回転式磁性素子は、個々に回転軸の周りに回転させられる。回転軸の周りの回転は、磁性素子によって発生させる磁場の方向の変化を生じさせる。回転式磁性素子は、それぞれ、磁性素子を通り抜けるそれらの個々の回転の軸の周りに回転させるか、又は磁性素子は、共通の外部の回転の軸、若しくは個々の外部の回転の軸の周りに回転させる。
【0016】
さらに磁気共鳴検査システムの主磁場において回転させた磁性球体を配向し直すために、磁場による力を補正するようにバランシングオフセット力を働かせるために、機械要素(例えば、ばね、又は弾性材料)が設けられる。これにより、メタ材料(球体の層)と球体の異なる回転状態のためのアクチュエータとの組み合わせの低いエネルギー差がもたらされる。これにより、印加された磁場における適切な位置にメタ材料が維持されつつ、さらに、アクチュエータ(勾配コイル)によって磁性球体を回転させることができる。したがって、ばねは、(主に、)主磁場(B)の固有のばね運動をバランスさせる。ばねは何らかの機械ばね(必ずしもコイルではなく、構築物におけるいくらかの弾性)であってもよいが、ばねはまた、視野内に磁場を生成しないが、メタ材料の残りに対して「対抗弾力性」のみを提供するやり方で配置された何らかの類似メタ材料であってもよい。
【0017】
本発明の機械式勾配磁場発生器は、従来型電気駆動式勾配コイルを置き換える。回転する磁性球体が、しかも磁性球体を回転させるために、磁気勾配場を発生させる。回転は、電気勾配波形に基づいて駆動される。1つ又はいくつかの機械式勾配磁場発生器は、磁気共鳴検査システムの検査ゾーンに隣接して配置される。
【0018】
メタ材料及び(機械式磁場発生器を形成する)アクチュエータの代替の技術効果は、勾配コイルに印加されるのが比較的弱い電流であるように、(従来型)勾配コイルによって生成された磁気勾配場を増強することである。そのため、機械式磁場発生器は、従来型シールド勾配コイルの内側コイルと外側コイルとの間に配置されるか、又は、機械式勾配磁場発生器は、非シールド勾配コイルの半径方向に外側に配置され得る。磁性球体の層によって形成されたメタ材料によって伝達された増強された磁束により、磁気勾配場強度は、勾配コイル自体によって生成された勾配磁場に対して相対的に増強される。
【0019】
すなわち、メタ材料はきわめて高い磁気感受性を有すると同時に、容易なアクチュエータ動作、及び磁気双極子の迅速な再配向が可能である。挿入勾配増強器としての機械式勾配磁場発生器のこの実装形態により、磁束の効率的な伝達及び変化が可能となり、印加される電流を所与とした勾配磁場強度が増強される。この実装形態では、磁性球体の回転は、勾配コイルの勾配磁場によって駆動され、すなわち、実際の勾配波形によって制御され、デバイダに対する力はばね運動によってバランスされる。さらに、機械式勾配磁場発生器は比較的製造するのが容易である。何故なら、球体のサイズは小さいものの、明らかに肉眼で見えるので、磁性球体は取り扱うのが容易であり安価であるからである。さらに、ばね部品、デバイダ、及び磁性球体の構成要素は、簡単な機械式構成からのものである。
【0020】
実際、機械式勾配磁場発生器は、40mTm-1から200mTm-1の範囲の勾配振幅と、勾配スイッチングのための約200Tm-1-1の典型的なスルーレートとを発生させ得る。
【0021】
さまざまなタイプの磁石が使用され得る。例えば、磁石は、ネオジウム鉄ボロン磁石であり、サマリウムコバルト磁石、又は鉄プラチナ磁石はすべて十分に機能することになる。
【0022】
静止デバイダ及び可動デバイダは、回転式磁石のセットの動きを制限するために硬質であってもよい。硬質デバイダの使用は、より再現できる勾配磁場を提供するので、有益である。
【0023】
発生器層は、異なるやり方で構築され得る。いくつかの例では、発生器層が有するのは、回転式磁石の単一のセットだけである。このケースでは、勾配磁場は、視野内の勾配磁場が主磁場と整合される(又は主磁場に対して直角になる)ように、回転式磁石のセットを回転させることによって制御することができる。例えば、勾配磁場は、主磁場に対して直角であると、磁場全体の大きさに及ぼす作用は無視できるほどとなる。勾配磁場が主磁場と整合された場合、空間的に解像される磁気共鳴撮像を実行するためには、磁場の大きさの勾配は十分な大きさである。
【0024】
別の実施形態では、回転式磁石のセットは、それぞれ、1つ又は2つの変位方向のうちの1つの周りの回転式磁石のセットの回転に対して好ましくは直角である磁極を有し得る。これは、機械式勾配磁場発生器が生成することができる勾配磁場のサイズを最大化するので、有益である。
【0025】
別の実施形態では、機械要素は弾性要素又はばねであり得る。これは、例えば、回転式磁石のセット上の主磁場の力に対抗するために使用される。他の実施形態では、機械要素は、初期位置における磁場線とその磁極が整合されている追加の磁石であり、回転式磁石のセットから離れて配置され、例えば、勾配磁場に大きな影響を与えないような位置に配置される。この実施形態は、ばねなどの追加の機械式構成要素に対するニーズを不要にするので有益である。
【0026】
別の実施形態では、磁場発生要素はさらに、静止デバイダ及び可動デバイダに取り付けられた弾性層を含み得る。回転式磁石のセットは、弾性層内に埋め込まれる。弾性層は、回転式磁石のセットの機械式結合を提供する。可動デバイダの移動による弾性材料の変形は、回転式磁石のセットのそれぞれの個々の回転を生じさせる。この実施形態は、回転式磁石のセットの初期配向を制御するだけでなく、それらを1つ又は2つの変位方向に回転させることを可能にする効果的な手段を提供するので、有益である。例えば、可動デバイダ及び静止デバイダを設けることができ、したがって、次いで、回転式磁石のセットが所望の配向にあるまま、エラストマを据え付けることができる。養生プロセスが終了した時点で、回転式磁石のセットの回転を個々に生じさせることになるさまざまな異なる方向への移動を、可動デバイダにさせることができる。
【0027】
この実施形態のさらなる利益は、弾性層が、可動デバイダを初期位置に戻すのをアシストするために、機械要素として働くことである。
【0028】
別の実施形態では、機械式結合は、回転式磁石のセット上のギア歯によって実現され得る。例えば、静止デバイダ及び/又は可動デバイダの表面上には適合するギア歯がある。ギア歯は、回転式磁石のセットの配向及び回転を制御するきわめて効果的な手段を提供する。
【0029】
別の実施形態では、機械式結合は、可動デバイダ上の、及び/又は回転式磁石のセット上の高摩擦層によって実現され得る。例えば、ゴム又はそれ以外などの高摩擦エラストマ層、追加の粘着するコンタクト接着剤などもまた有用である。
【0030】
別の実施形態では、機械式結合は、可動デバイダ及び/又は回転式磁石のセット上の粘着層によって実現され得る。これは、回転式磁石のセットの望まれない回転を防止するので、有益である。
【0031】
別の実施形態では、機械式結合は、可動デバイダ上の、及び/又は回転式磁石のセット上の弾性層又は摩擦強化層を介して実現され得る。例えば、ゴム層は、回転式磁石のセットの回転を効果的に制御するのに十分な摩擦を提供するために使用される。
【0032】
別の実施形態では、機械式結合は、回転式磁石のセットと可動デバイダとの間の接触によって実現され得る。例えば、カップ又は固定具などの、回転式磁石のセットと静止デバイダ及び/又は可動デバイダとの間の位置を固定するために使用される追加の構造体がある。
【0033】
別の実施形態では、回転式磁石のセットのそれぞれは、球体形状であり得る。球体形状の磁石を有していると、例えば、2つの異なる方向への移動が可能になる。いくつかの例では、回転式磁石は、球体形状であるが、しかし、追加のホルダ内に置かれる。例えば、球体形状磁石は、ギアをその上に有する円筒状ホルダ内に置かれる。球体形状磁石を有することの技術的利益は、このことにより、ある特定のサイズ未満の最大の磁石ボリュームが可能になることである。例えば、磁場発生器に、磁気共鳴撮像磁石の外側から内側まで占めさせたとき、入口に、例えば、円筒状磁石のボアへの入口において、きわめて高い勾配磁場が存在する。磁石の全体寸法を制限することにより、例えば、直径力球を有することにより、磁石に対するこれらの磁場勾配の力を制限することになる磁石の選択が可能になる。
【0034】
別の実施形態では、回転式磁石のセットのそれぞれは円筒形状であり得る。この実施形態は、特に運動方向が単一の運動方向であるとき、高度の機械的安定性をもたらすので、有益である。
【0035】
別の実施形態では、回転式磁石のセットのそれぞれは、回転軸の周りに回転対称であり得る。例えば、磁石自体に配置又は形成されたギア又はスポークが存在する。これにより、静止デバイダ及び可動デバイダに対して高度の回転安定性を有する磁石がもたらされる。
【0036】
別の実施形態では、機械式勾配磁場発生器は平坦形状を有し得る。この例では、静止デバイダ及び可動デバイダは、例えばプレートから形成され得る。これは、機械的に非常に安定し、機械式勾配磁場発生器にとって搭載が容易な形態である。
【0037】
別の実施形態では、機械式勾配磁場発生器は円筒形状を有し得る。これは、例えば、同心円状の管から可動デバイダ及び静止デバイダを作ることによって形成される。これは、例えば、ボリューム内に勾配磁場を作成する非常に効率的な手段を提供する。別の利点は、円筒形状を有する可動デバイダが、回転軸の周りに回転させられるのみならず、例えば、回転軸の方向に沿って動かされ得ることである。これは、1つ又は2つの変位方向をもたらす。
【0038】
別の実施形態では、機械式勾配磁場発生器は多角形の管であり得る。機械式勾配磁場発生器は、複数の磁場発生要素を含む。多角形管は、複数の磁場発生要素から形成される。この実施形態では、例えば、磁場発生要素は、平坦形状又は矩形形状に形成され得る。次いで、これらは、複数のユニットを用いて結合されて多角形管が作られ得る。これは、勾配磁場の制御において特に効率的である。例えば、複数の磁場発生要素のそれぞれは、別個に制御され得る。これは、機械式勾配磁場発生器によって生成される磁気勾配場の非常に高度の制御をもたらす。
【0039】
別の実施形態では、1つ又は2つの変位方向は単一の変位方向であり得る。この実施形態は、より簡素な機械式勾配磁場発生器のみならず非常に機械的に安定した機械式勾配磁場発生器も実現するので、有益である。
【0040】
別の実施形態では、1つ又は2つの変位方向は2つの変位方向であり得る。少なくとも1つの発生器は、以下の、平坦形状、球体セクション形状、及び円筒セクション形状のうちのいずれか1つの形状を有する。平坦、球体セクション、及び円筒セクションの両方は、それぞれ、デバイダ同士が互いに対して移動する2つの自由度を有する。
【0041】
別の実施形態では、回転式磁石のセット及び磁石の追加セット(ある場合)の少なくとも一部分は、0.1mmと1.2mmの間の最大寸法を有し得る。この実施形態は、磁石が効果的な勾配磁場を生成するには十分大きいが、しかしまた、特に、動作中に、磁石がある位置から別の位置に動かされるとき、磁石に対する力が制限されるほど磁石が十分小さいので、有益である。このことは、可動デバイダがある位置から別の位置に動かされるときに貯蔵されるポテンシャルエネルギーが制限されることを意味している。
【0042】
別の実施形態では、回転式磁石のセット及び磁石の追加セット(ある場合)の少なくとも一部分は、好ましくは、0.2mmと1.0mmとの間の最大寸法を有し得る。この実施形態では、回転式磁石のセット及び磁石の追加セットに対する力はさらに一層制限される。
【0043】
別の実施形態では、少なくとも1つの発生器層のそれぞれはさらに、追加のデバイダを有し得る。追加デバイダは、静止デバイダに対して静止している。可動デバイダは、追加デバイダと静止デバイダとの間にある。少なくとも1つの発生器層のそれぞれはさらに、可動デバイダと追加デバイダとの間に配置された磁石の追加セットを含む。磁石の追加セットは、可動デバイダ及び追加デバイダに機械的に結合される。
【0044】
磁石の追加セットの機械式結合は、1つ又は2つの変位方向に可動デバイダが移動することにより、磁石の追加セットのそれぞれの個々の回転が生じるような結合である。この実施形態は、可動デバイダの単一の移動により、回転式磁石のセット並びに磁石の追加セットの両方の回転が生じるので、有益である。これにより、磁石の追加セット及び磁石の回転式セットが協働して動作することができる。例えば、それらは、ある位置において、磁石からの磁場がほとんど相殺されるように配設され得る。これは、機械式勾配磁場発生器を、今磁場を発生させているのみならず機械式勾配磁場発生器が生成する磁気勾配場に対するより大きい度合いの制御も行う磁石に装着するのに助けとなる。
【0045】
別の実施形態では、磁石の追加セット及び回転式磁石のセットは反対方向に回転し得る。例えば、磁石の2つのセットは、互いに平行である回転の軸を有する。
【0046】
別の実施形態では、少なくとも1つの発生器層は複数の発生器層であり、1つの層の静止デバイダのうちのいくつかは、別の層における追加デバイダであり得る。同様に、1つの層における追加デバイダは、発生器層の別の層における静止デバイダである。
【0047】
別の実施形態では、回転式磁石のセット及び磁石の追加セットのそれぞれは双極子モーメントを有し得る。初期位置では、回転式磁石のセットと磁石の追加セットとの双極子モーメントのベクトル和は、回転式磁石のセットと磁石の追加セットとの双極子モーメントの大きさの和の10%未満である。初期位置では、ベクトル和は、好ましくは、大きさの和の1%未満である。言い換えれば、大きさの和は、回転式磁石のセットと追加磁石のセットとのそれぞれの双極子モーメントの、そのベクトル性質を無視した単なる足し算である。初期位置では、さまざまな磁石、並びに回転式磁石のセット及び追加磁石のセットは、すべての双極子モーメントのベクトル和が、この大きさの和の10%未満又は1%未満となるように位置合わせされる。
【0048】
これは、初期位置では、磁石は互いの磁場の非常に大きな度合いまで相殺していることを意味する。これにより、機械式勾配磁場発生器によって生成された磁気勾配場を本質的に遮断する、又はほとんど排除することができる。これには勾配磁場を、使用していないときに低減するのみならず、磁気共鳴撮像システムの動作中の磁石又は主磁石を引き入れること及び引き出すことを容易にするという利益がある。
【0049】
別の実施形態では、可動デバイダは初期位置を有し得る。回転式磁石のセット並びに追加磁石のセット(ある場合)は、可動デバイダの初期位置から離れる運動によって回転させられたとき、磁場発生要素に隣接する勾配磁場を発生させるように構成される。
【0050】
別の実施形態では、機械式勾配磁場発生器はさらに、磁場発生要素を初期位置に保持するためのロッキング機構を有し得る。これは、例えば、磁気勾配場発生器を磁気共鳴撮像システムの動作中の主磁石の中に置くときに特に有用である。例えば、機械式勾配磁場発生器は、主磁石の中に置かれた別個の構成要素であるか、又は、さらに磁気共鳴撮像コイル若しくはアンテナに一体化される。ロッキング機構の使用は、機械式勾配磁場発生器の主磁石の中への移動を容易にする。
【0051】
別の実施形態では、少なくとも1つの発生器層は、少なくとも8つの発生器層であり得る。より大きな数の発生器層を使用すると、例えば、より小さい磁石の使用が可能になる。前に言及されたように、より小さい磁石を使用すると、特に、きわめて大きい磁場勾配の領域の中を通って進むとき、個々の磁石に対する力が低減される。
【0052】
別の実施形態では、少なくとも1つの発生器層は、少なくとも15個の発生器層であり得る。15個の発生器層を使用すると、より大きな勾配磁場を生成することができる。
【0053】
別の実施形態では、少なくとも1つの発生器層は、好ましくは、20よりも大きい個数の発生器層であり得る。これにより、例えば、さらに小さな磁石を使用して、同じサイズの勾配磁場を生成することができる。
【0054】
別の実施形態では、機械式勾配磁場発生器はさらに、少なくとも1つの発生器層のそれぞれの可動デバイダを1つ又は2つの変位方向に同時に移動させるように構成されたアクチュエータを有し得る。これは、例えば、それにより機械式勾配磁場発生器のオートメーション化された制御が可能になるので、有利である。
【0055】
アクチュエータは実際、2つ以上のアクチュエータである。例えば、各変位方向向けにアクチュエータがある。
【0056】
別の実施形態では、アクチュエータは機械式アクチュエータであり得る。
【0057】
別の実施形態では、アクチュエータは圧電型アクチュエータであり得る。
【0058】
別の実施形態では、アクチュエータは電磁アクチュエータであり得る。例えば、コイルは機械式勾配磁場発生器の周りに巻き付けることができ、この磁場は、回転式磁石のセットの回転及び移動を生じさせることができる。これを可能にする1つのことは、1つ又は2つの変位方向への移動を初期位置に向けて機械的にアシストする機械要素の使用である。機械要素は、力がほぼバランスされ、ほんの小さな力だけが必要となるように選択され得る。同様に、アクチュエータはまた、磁場コイルシステムとすることができる。例えば、アクチュエータは、標準の磁気共鳴撮像システムにおけるコイルベースの磁気勾配コイルシステムである。実際に勾配磁場を生成する代わりに、勾配コイルを代わりに使用して、機械式勾配磁場発生器を作動させることができる。これはもちろん、磁気共鳴撮像システムに対する修正がなされる必要がなく、しかも追加のワイヤ又は機械式アクチュエータも必要ないという利点を有する。
【0059】
別の態様では、本発明は、少なくとも部分的に撮像ゾーン内の対象者からk空間データを取得するように構成された磁気共鳴撮像システムを提供し得る。磁気共鳴撮像システムは、アクチュエータを含む機械式勾配磁場発生器を有する。機械式勾配磁場発生器は、少なくとも部分的に撮像ゾーン内に勾配磁場を発生させるように構成される。磁気共鳴撮像システムはさらに、機械実行形式命令とパルスシーケンスコマンドとを記憶するメモリを含む。パルスシーケンスコマンドは、個々の命令を含むコマンドに変換されるコマンド又はデータであり、個々の命令を使用して、k空間データを取得するように磁気共鳴撮像システムを制御する。例えば、パルスシーケンスコマンドは、典型的には、磁気共鳴撮像システムのさまざまな構成要素の制御シーケンスを示しているタイミング図として表示される。
【0060】
磁気共鳴撮像システムはさらに、磁気共鳴撮像システムを制御するように構成されたコンピュータ計算システムを含み得る。機械実行形式命令の実行はさらに、パルスシーケンスコマンドを用いて磁気共鳴撮像システムを制御することによって、コンピュータ計算システムにk空間データを取得させる。パルスシーケンスコマンドは、アクチュエータを制御することによって、勾配磁場を発生させるように構成される。これは、例えば、実際のアクチュエータの制御であり、又は場合によっては、機械式勾配磁場発生器を作動させるためにこれをいかに使用することができるのかについて上記で説明したように、勾配磁場を発生させるための既存のコイルのセットの制御である。
【0061】
別の実施形態では、機械実行形式命令の実行はさらに、コンピュータ計算システムに、k空間データから画像又は磁気共鳴画像を再構築させ得る。
【0062】
別の実施形態では、磁気共鳴撮像システムはさらに、主磁場を発生させるための磁石を有し得る。機械式勾配磁場発生器は、勾配磁場の発生に必要となるエネルギーが、勾配磁場コイルシステムより少ないように構成される。これは、例えば、回転式磁石のセットに対して主磁石の磁場の力を部分的にバランスさせる機械要素を有することによって達成される。
【0063】
別の実施形態では、機械要素は、機械式勾配磁場発生器が主磁場内にあるとき、あらかじめ定められた力しきい値内で、回転式磁石のセットによる可動デバイダに対する力をバランスさせるように構成され得る。これはさらに、機械式勾配磁場発生器が、追加デバイダ及び磁石の追加セットを有するときにあてはまる。機械要素は、可動デバイダを移動させるために必要な力が、あらかじめ定められた力しきい値未満であるように選択することができる。これは、最小量の力を伴う勾配磁場の発生が、したがって、エネルギーに関して大きな節約が可能になるので、有益である。
【0064】
別の実施形態では、磁気共鳴撮像システムはさらに主磁石を有し得る。磁気共鳴撮像システムはさらに、機械式勾配磁場発生器から主磁石をシールドするように構成された磁気シールドを有する。これは、機械式勾配磁場発生器の主磁石に対する作用を低減するので、有益である。
【0065】
別の実施形態では、磁気シールドは、アクティブな磁気シールドであり得る。
【0066】
別の実施形態では、磁気シールドは、磁場発生要素のうちの1つ又は複数から形成された機械式磁気シールドであり得る。例えば、複数の層がある場合、主磁石に向く層のうちのいくつかは、磁気シールドとして機能するように設計される。
【0067】
別の実施形態では、磁気共鳴撮像システムは、撮像ゾーン内の対象者の少なくとも一部分をサポートするように構成された対象者サポートを有し得る。機械式勾配磁場発生器は少なくとも部分的に対象者サポートに一体化される。これは、例えば、機械式勾配磁場発生器が平坦であるとき、特に有益である。これを対象者サポートに一体化することによって、コイルを排除することができる場合に、磁石のボア内にさらなるスペースを設ける手段がもたらされる。
【0068】
別の実施形態では、可動デバイダは、温度センサのアレイ及び加熱要素のアレイを有し得る。機械実行形式命令は、温度センサのアレイ及び加熱要素のアレイを用いて隣接する磁石の複数のペアの温度を調節するためにコンピュータ計算システムを制御するように構成される。これは、発生する勾配磁場のより優れた制御の手段をもたらすので、有益である。
【0069】
別の実施形態では、コンピュータ計算システムはさらに、温度センサのアレイ及び加熱要素のアレイを用いて隣接する磁石の複数のペアの温度を修正することによって、撮像ゾーンを磁気的にシミングするように構成され得る。これにより、主磁場の精密なチューニングの手段が、及び、磁気共鳴撮像を実行したときに、改善された画像品質がもたらされる。
【0070】
別の実施形態では、可動デバイダは、システム動作中に、対応する磁石の温度を感知する温度センサのアレイを含み得る。さらに、又は代替的に、可動デバイダは、少なくとも1つの位置センサを含み、少なくとも1つの位置センサは、k空間データの取得中にリアルタイムで個々の磁石又は可動デバイダの今の位置をモニタするように構成される。いくつかの例では、温度センサのアレイ及び/又は1つ又は複数の位置センサからのデータは、適切なモデルベースのMR再構築のために使用されて対応するランタイム作用を補正するために、k空間データと一緒に記憶される。これは、k空間データから磁気共鳴画像のより正確な再構築がもたらされるという利益を有する。
【0071】
別の実施形態では、機械実行形式命令は、1つ又は複数のテスト磁気共鳴画像から機械式アクチュエータの較正を決定するためにコンピュータ計算システムを制御するように構成され得る。例えば、これは、機械式勾配磁場発生器のより正確な制御の手段をもたらす。
【0072】
別の実施形態では、機械式アクチュエータの較正の決定は、ファントムなどのあらかじめ定められた物体のテストk空間データを取得する所望の勾配磁場を決定するために、アクチュエータを動作させることを含み得る。磁気アクチュエータの較正を決定することはさらに、そのとき所望の勾配磁場を有していると予想される理想画像からの画像の逸脱をチェックすることを含む。したがって、ステップは、画像のこの逸脱を使用して、逸脱を補正するためにアクチュエータを計算し、それによって較正を提供する。
【0073】
別の実施形態では、1つ又は複数のテスト磁気共鳴画像は、ファントム磁気共鳴画像であり得る。磁気アクチュエータの較正を決定することは、1つ又は複数のテスト磁気共鳴画像の、訓練されたニューラルネットワークへの入力に対する較正応答を受信することを含む。例えば、ニューラルネットワークは、所望の磁場を利用するように訓練され、次いでテスト画像を入力し、次いで較正を出力し得る。訓練されたニューラルネットワークは、例えば、既知の勾配磁場を利用し、訓練データを生成することによって訓練され得る。
【0074】
別の態様では、本発明は、実施形態による磁気勾配場発生器を含む磁気共鳴撮像コイルを提供し得る。この実施形態は、機械式勾配磁場発生器が非常にコンパクトであり、容易に磁気共鳴撮像コイルに一体化されるので、有益である。これにより、磁気共鳴撮像システムによるさらなる柔軟性がもたらされる。
【0075】
別の実施形態では、磁気共鳴撮像コイルはヘッドコイルであり得る。
【0076】
別の実施形態では、磁気共鳴撮像コイルはボディコイルであり得る。
【0077】
本発明の先述の実施形態のうちの1つ又は複数が、組み合わされる実施形態同士が互いに排他的でない限り組み合わされることが理解される。
【0078】
当業者には理解されるように、本発明の態様は、装置、方法、又はコンピュータプログラム製品として具現化される。したがって、本発明の態様は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、又は、ソフトウェアの態様と、本明細書ではすべて概して「回路」、「モジュール」、若しくは「システム」と称されるハードウェアの態様とを組み合わせた実施形態の形態をとる。さらに、本発明の態様は、コンピュータ実行形式コードがその上に実装された1つ又は複数のコンピュータ可読媒体内に実装されたコンピュータプログラム製品の形態をとる。
【0079】
1つ又は複数のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせが利用される。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体又はコンピュータ可読ストレージ媒体である。本明細書で使用される「コンピュータ可読ストレージ媒体」は、コンピューティングデバイスのプロセッサ又はコンピュータ計算システムによって実行可能である命令を記憶する任意の有形ストレージ媒体を包含する。コンピュータ可読ストレージ媒体は、コンピュータ可読非一時的ストレージ媒体と称される。コンピュータ可読ストレージ媒体はさらに、有形コンピュータ可読媒体と称される。いくつかの実施形態では、コンピュータ可読ストレージ媒体はまた、コンピューティングデバイスのコンピュータ計算システムによってアクセスされることが可能なデータを記憶することができる。コンピュータ可読ストレージ媒体の例には、限定するものではないが、フロッピーディスク、磁気ハードディスクドライブ、ソリッドステートハードディスク、フラッシュメモリ、USBサムドライブ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、光ディスク、光磁気ディスク、及びコンピュータ計算システムのレジスタファイルがある。光ディスクの例には、コンパクトディスク(CD)及びデジタルバーサタイルディスク(DVD)、例えばCD-ROM、CD-RW、CD-R、DVD-ROM、DVD-RW、又はDVR-Rディスクがある。コンピュータ可読ストレージ媒体という用語はまた、ネットワーク又は通信リンクを介してコンピュータデバイスによってアクセスされることが可能なさまざまなタイプの記録媒体を指している。例えば、データは、モデムを介して、インターネットを介して、又はローカルエリアネットワークを介して取り出される。コンピュータ可読媒体上に実装されたコンピュータ実行形式コードは、限定されるものではないが、無線、有線、光ファイバケーブル、RFなど、又は任意の好適な先述の組み合わせを含む任意の適切な媒体を用いて送信される。
【0080】
コンピュータ可読信号媒体は、その中にコンピュータ実行形式コードが実装された、例えばベースバンドにおいて又は搬送波の一部として、伝播されたデータ信号を含む。そのような伝播信号は、限定されるものではないが、電磁気、光、又は任意のそれらの好適な組み合わせを含む、任意のさまざまな形態をとる。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読ストレージ媒体ではない、命令実行システム、装置、又はデバイスとの接続による、又は接続状態での使用のために、プログラムを伝達、伝播、又は運搬することができる、任意のコンピュータ可読媒体である。
【0081】
「コンピュータメモリ」又は「メモリ」は、コンピュータ可読ストレージ媒体の例である。コンピュータメモリは、コンピュータ計算システムが直接アクセスすることができる任意のメモリである。「コンピュータストレージ」又は「ストレージ」は、コンピュータ可読ストレージ媒体のさらなる例である。コンピュータストレージは、任意の不揮発性のコンピュータ可読ストレージ媒体である。いくつかの実施形態では、コンピュータストレージはまた、コンピュータメモリであり、又は、逆もまた同様である。
【0082】
本明細書で使用される「コンピュータ計算システム」は、プログラム又は機械実行形式命令若しくはコンピュータ実行形式コードを実行することができる電子部品を包含する。「コンピュータ計算システム」の例を含むコンピュータ計算システムへの言及は、場合によっては、2つ以上のコンピュータ計算システム又は処理コアを含むと解釈されるべきである。コンピュータ計算システムは、例えば、マルチコアプロセッサである。コンピュータ計算システムはまた、単一のコンピュータシステム内の、又は複数のコンピュータシステム間で分散された、コンピュータ計算システムの集合を指す。コンピュータ計算システムという用語はまた、場合によっては、それぞれがプロセッサ又はコンピュータ計算システムを含むコンピューティングデバイスの集合又はネットワークを指すと解釈されるべきである。機械実行形式コード又は命令は、同じコンピューティングデバイス内にある、又はさらに複数のコンピューティングデバイスにわたって分散された、複数のコンピュータ計算システム又はプロセッサによって実行される。
【0083】
機械実行形式命令又はコンピュータ実行形式コードは、プロセッサ又は他のコンピュータ計算システムに本発明の態様を実行させる命令又はプログラムを含む。本発明の態様に関する動作を実行するためのコンピュータ実行形式コードは、Java、Smalltalk、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、及び、「C」プログラミング言語又は類似のプログラミング言語などの従来の手順型プログラミング言語を含む1つ又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述され、機械実行形式命令にコンパイルされる。いくつかの事例では、コンピュータ実行形式コードは、高水準言語の形態であるか、又はあらかじめコンパイルされた形態であり、その場で機械実行形式命令を発生させるインタプリタと併せて使用される。他の事例では、機械実行形式命令又はコンピュータ実行形式コードは、プログラマブル論理ゲートアレイ向けのプログラミングの形態である。
【0084】
コンピュータ実行形式コードは、スタンドアロンのソフトウェアパッケージとして、完全にユーザのコンピュータ上で、部分的にユーザのコンピュータ上で、部分的にユーザのコンピュータ上且つ部分的にリモートコンピュータ上で、又は完全にリモートコンピュータ若しくはサーバ上で実行される。後者のシナリオでは、リモートコンピュータが、ローカルエリアネットワーク(LAN)又はワイドエリアネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを介してユーザのコンピュータに接続されるか、又は接続が外部コンピュータになされる(例えば、インターネットサービスプロバイダを用いてインターネットを通じて)。
【0085】
本発明の態様は、本発明の実施形態による方法、装置(システム)、及びコンピュータプログラム製品のフローチャート図及び/又はブロック図を参照しながら説明される。フローチャート、図解、及び/又はブロック図の各ブロック又はブロックの一部分が、適用できるときにコンピュータ実行形式コードの形態のコンピュータプログラム命令によって実施され得ることが理解される。互いに排他的でないとき、異なるフローチャート、図解、及び/又はブロック図におけるブロックの組み合わせが組み合わされることがさらに理解される。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は他のプログラマブルデータ処理装置のコンピュータ計算システムに提供されて、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置のコンピュータ計算システムを介して実行される命令が、フローチャート及び/又はブロック図の1つのブロック若しくは複数のブロックにおいて明記された機能/行為を実施するための手段を作成するような機械を生成する。
【0086】
これらの機械実行形式命令又はコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ可読媒体内に記憶された命令が、フローチャート及び/又はブロック図の1つのブロック若しくは複数のブロックにおいて明記された機能/行為を実施する命令を含む製品を生成するように、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、又は他のデバイスを特定の方式で機能するように指導することができるコンピュータ可読媒体内に記憶される。
【0087】
機械実行形式命令又はコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、又は他のデバイス上にロードされて、一連の動作ステップをコンピュータ、他のプログラマブル装置、又は他のデバイス上で実行させ、コンピュータ、又は他のプログラマブル装置上で実行される命令が、フローチャート及び/又はブロック図の1つのブロック若しくは複数のブロックにおいて明記された機能/行為を実施するためのプロセスをもたらすように、コンピュータ実施プロセスを生成する。
【0088】
本明細書で使用される「ユーザインターフェース」は、ユーザ又はオペレータがコンピュータ又はコンピュータシステムとインタラクトすることができるようにするインターフェースである。「ユーザインターフェース」はまた、「人インターフェースデバイス」と称される。ユーザインターフェースは、情報若しくはデータをオペレータに提供し、及び/又は、オペレータから情報若しくはデータを受信する。ユーザインターフェースは、コンピュータによってオペレータからの入力を受け取ることができるようにし、コンピュータからユーザに出力を提供する。言い換えれば、ユーザインターフェースは、オペレータがコンピュータを制御する又は操作することをできるようにし、インターフェースは、コンピュータがオペレータの制御又は操作の作用を示すことをできるようにする。データ又は情報のディスプレイ上への又はグラフィカルユーザインターフェース上への表示は、情報をオペレータに提供する一例である。キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、ポインティングスティック、グラフィクスタブレット、ジョイスティック、ゲームパッド、ウェブカム、ヘッドセット、ペダル、有線グローブ、リモート制御、及び加速度計を介してデータを受け取ることはすべて、オペレータから情報又はデータを受け取ることをできるようにするユーザインターフェースコンポーネントの例である。
【0089】
本明細書で使用される「ハードウェアインターフェース」は、コンピュータシステムのコンピュータ計算システムが、外部コンピューティングデバイス及び/若しくは装置とインタラクトすること、並びに/又は、外部コンピューティングデバイス及び/若しくは装置を制御することをできるようにするインターフェースを包含している。ハードウェアインターフェースは、コンピュータ計算システムが、制御信号又は命令を外部コンピューティングデバイス及び/又は装置に送ることをできるようにする。ハードウェアインターフェースはまた、コンピュータ計算システムが、データを外部コンピューティングデバイス及び/又は装置と交換することをできるようにする。ハードウェアインターフェースの例には、限定するものではないが、ユニバーサルシリアルバスIEEE1394ポート、パラレルポートIEEE1284ポート、シリアルポートRS-232ポート、IEEE-488ポート、Bluetooth接続、無線ローカルエリアネットワーク接続、TCP/IP接続、Ethernet接続、制御電圧インターフェース、MIDIインターフェース、アナログ入力インターフェース、及びデジタル入力インターフェースがある。
【0090】
本明細書で使用される「ディスプレイ」又は「ディスプレイデバイス」は、画像又はデータを表示するように適合された出力デバイス又はユーザインターフェースを包含する。ディスプレイは、視覚データ、可聴周波数データ、及び/又は触覚データを出力する。ディスプレイの例には、限定されるものではないが、コンピュータモニタ、テレビスクリーン、タッチスクリーン、触覚電子ディスプレイ、点字スクリーン、陰極線管(CRT)、蓄積管、バイステイブルディスプレイ、電子ペーパ、ベクトルディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、真空蛍光ディスプレイ(VF)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、電界発光ディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、プロジェクタ、及びヘッドマウントディスプレイがある。
【0091】
k空間データは本明細書では、磁気共鳴撮像スキャン中に磁気共鳴装置のアンテナを用いて、原子スピンによって放出された無線周波数信号を記録した測定値として定義される。
【0092】
磁気共鳴撮像(MRI)画像又はMR画像は本明細書では、k空間データ内に含まれる解剖学上データの再構築された2次元又は3次元可視化として定義される。この可視化は、コンピュータを用いて行うことができる。
【0093】
以下では、本発明の好ましい実施形態を例としてのみ、図面を参照して説明することとする。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1】機械式勾配磁場発生器の例を示す図である。
図2】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図3】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図4】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図5】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図6】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図7】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図8】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図9】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図10】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図11】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図12】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図13】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図14】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図15】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図16】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図17】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図18】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図19】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図20】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図21】磁気共鳴撮像システムの一例を示す図である。
図22】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
図23】磁気共鳴撮像システムのさらなる例を示す図である。
図24図21又は23の磁気共鳴撮像システムを用いた方法を説明するフローチャートを示す図である。
図25】機械式勾配磁場発生器を組み込んだヘッドコイルの例を示す図である。
図26】機械式勾配磁場発生器のさらなる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0095】
これらの図面において同様に番号が付けられた要素は、同等の要素であるか、又は同じ機能を実行するかのどちらか一方である。これまで論じられた要素は、機能が同等であれば、後の図面では必ずしも論じないこととする。
【0096】
MRI空間エンコーディングは、典型的には、ほとんど、MRシステムの壁の中に組み込まれた磁場勾配コイルであるように行われる。これらが占めるかなりのボアスペースは高価であり、高価な増幅器を必要とする。必要とされる重量及び電力故に、例えば脳向けのローカル勾配システムは決して製品化されなかった。
【0097】
多数のごく小さな磁石(回転式磁石のセット)の使用は、一括して勾配なしから強い勾配まで移動するように調整することができる。恒久的な磁性球体又は円筒が、例えば、デバイダ間又はプレート間に保持される。可動プレートを機械的に移動させると、回転式磁石のセットが回転して、外部磁場の変化を発生させる。(デバイダ向けに)ごく小さな球体及び軽量且つ堅い材料を用いると、磁性が変化する間の運動エネルギーが最小化される。ばね系(機械要素)が、可動プレートの異なる位置同士間のエネルギー差を最小化する。磁場を変化させ保持するのに必要となる電力は合計で比較的小さく、それにより高周波数動作、及び低コストの駆動システムが可能になり、しかも冷却システムに対するニーズが回避又は低減される。
【0098】
図1は、機械式勾配磁場発生器100の例を示している。機械式勾配磁場発生器100は、磁場発生要素102を含むように示されている。この例では、磁場発生要素102は単一の発生器層104を含む。複数の層104は相互の上面に積み重ねられ得る。静止したまま又は固定されたまま維持される静止デバイダ106、及び変位方向110に移動することができる可動デバイダ108がある。機械式勾配磁場発生器の動作のため、静止デバイダ106と可動デバイダ108の相対位置は、機械式勾配磁場発生器100によって発生する磁場を決定する。静止デバイダ106も移動する場合があり得るが、静止デバイダ106と可動デバイダ108との間の相対運動が問題となるので、デバイダのうちの一方(静止デバイダ106)が静止すると想定する。
【0099】
可動デバイダ108の初期位置に戻る動きをアシストする機械要素112がある。静止デバイダ106と可動デバイダ108との間には、磁気双極子118の方向をそれぞれが有する回転式磁石116からなっている回転式磁石のセット114がある。
【0100】
可動デバイダ108に取り付けられている圧電型アクチュエータ120がある。圧電型アクチュエータ120が可動デバイダ108を移動させると、機械要素112すなわちこのケースではばねが、可動デバイダ108を初期位置に引き戻すのに役立つことになる。可動デバイダ108が移動すると、それにより、個々の磁石116が回転して磁気双極子118の方向が配向し直される。
【0101】
図2は、機械式勾配磁場発生器100のさらなる例を示している。図2の例は、ここではアクチュエータが機械式アクチュエータ200であることを除いて、図1で示される例に非常によく似ている。例えば、可動デバイダ108に対してリモート位置に配置されているのは、モータ若しくはステッパモータ又は、空気圧若しくは油圧モータ若しくはアクチュエータなどの他の機械式アクチュエータであり得る。可動デバイダ108はケーブル202によって機械式アクチュエータ200に接続される。
【0102】
図3は、機械式勾配磁場発生器100のさらなる例を示している。図3に示される例は、このケースでは、アクチュエータが熱機械式アクチュエータ300であることを除いて、図1及び図2で示されるものに似ている。熱機械式アクチュエータ300を制御し、可動デバイダ108の位置を変位方向110において調整するために使用される電圧源がある。熱機械式アクチュエータ300は、いくつかの異なる様式で実装され得る。熱機械式アクチュエータ300は、加熱するための加熱要素を有し、加熱及び/若しくは冷却するための熱電素子若しくはペルティエ素子を有し、且つ/又は、空気若しくは流体冷却システムなどの冷却システムを有し得る。
【0103】
図4は、機械式勾配磁場発生器100のさらなる例を示している。図4に示される例は、図1図2、及び図3に示される例に非常によく似ている。このケースでは、アクチュエータは、電気機械式アクチュエータ400である。可動デバイダ108は、どちらの側においても機械要素112又はばねに接続されており、電気機械式アクチュエータ400によって発生した磁場は、磁石116を回転させ、それによって、可動デバイダ108を移動させる。電気機械式アクチュエータ400は、磁場発生要素102の周りに巻き付けられた実際のコイルを表し得るか、又は、電気機械式アクチュエータ400はまた、磁気共鳴撮像システムにおける勾配コイルシステムであり得る。
【0104】
図5は、機械式勾配磁場発生器500のさらなる例を示している。この例では、アクチュエータ及び機械要素は描かれていない。この例では、静止デバイダ106及び回転式磁石のセット114に加えて、ここには、追加デバイダ502がある。可動デバイダ108は静止デバイダ106と追加デバイダ502との間にある。追加デバイダ502は、静止デバイダ106に対して相対的に静止している。可動デバイダ108と追加デバイダ502との間には、磁気双極子118の方向を有する個々の回転式磁石116をさらに含む磁石の追加セット504がある。可動デバイダ108が移動方向110に動かされると、それにより、回転式磁石のセット114及び磁石の追加セット504が個々に回転する。この例では、2つの層内の磁石116が、反対方向のその双極子モーメント118を有することを理解することができる。このケースでは、機械式勾配磁場発生器500からの距離により、磁場は相殺することとなる。可動デバイダ108が移動方向110に動かされるにつれ、双極子118はもはや整合されなくなり、正味磁場がもたらされることとなる。磁石の直径は0.2mmと1mmとの間であることを理解することができる。これは、特に磁石が主磁気内に及び主磁気から動かされているとき、磁石116上の大きな磁場の作用を低減するのに助けとなる。
【0105】
図5では、可動デバイダ108は初期位置508にある。機械式勾配磁場発生器500はまた、ピンの形態である任意選択のロッキング機構506を含むように示されており、ロッキング機構506は、静止デバイダ106、可動デバイダ108、及び追加デバイダ502に挿通されている。これにより、可動デバイダ108の位置が静止デバイダ106及び追加デバイダ502に対して静止したまま保持される。これは、例えば、機械式勾配磁場発生器500を主磁石内に/から移動させるとき、有用である。
【0106】
図5の構成では、正味磁場は、磁石球体の規模と比較して距離においてほぼゼロの大きさである。上記の例では、球体の位置及び/又は配向を調整することにより、中央プレート(可動デバイダ108)を移動させることによって、双極子配列を同じ方向にさせることにより、正味磁場を生成することができる。
【0107】
図6は、可動デバイダ108が方向110に動かされた後の機械式勾配磁場発生器500のさらなる図を示している。これにより、磁石116が回転し、磁気双極子118の方向もまた回転していることを理解することができる。双極子118はもはや効果的に相殺せず、勾配磁場の発生がもたらされる。
【0108】
そのような機械式勾配磁場発生器100、500のアレイは、磁場を発生させるために従来使用された強電流の代替として勾配磁場を生成することができる。磁場成形は、双極子に関する開始角度のばらつき、複数の層、双極子間の不均整な間隔、及びさまざまな他の類似手法を用いて行われ得る。このケースでは、機械要素112によってもたらされるなどのキャンセル力が使用されて、切り替えのための力要件及び電力要件を最小化することができる。ローカルなシミングもまたそのような手法を用いて実現することができる。
【0109】
図7は、機械式勾配磁場発生器500のさらなる図を示している。図7の例は、再び初期位置508にあり、図5に示される例の修正形態である。図5では、回転式磁石のセット114の双極子と磁石の追加セット504の双極子とは磁場をできるだけ打ち消すように、互いに対向するように置かれている。図7に示される例では、磁気双極子のうちのいくつかは、互いに対して相対的に回転させられている。これにより、主磁場のローカルなシミングが可能になる。可動デバイダ108が変位方向110に移動するにつれ、磁石116は、さらに回転するものの、もはや図5において整合されたようには整合されない。個々の磁石116の回転位置は、所望の勾配磁場を仕立てるように、及び/又はシミングの機能を実行するように選択することができる。
【0110】
質量の例として、ヘッド勾配システムは、2kg程度の重さの磁石を含んだ状態で、重さがわずか5kgであろう。正味の力及びトルクは、設計において注意深く検討される。磁性材料の量はさらに故障事象において安全性に影響する。ユニットが小さければ小さいほどリスクは低くなり、例えば、胸部の拡散のための単一次元の勾配システムは低質量であり得る。
【0111】
デバイスの作動は、任意の知られているアクチュエータ112、例えば圧電型アクチュエータによって実現することができる。しかしながら、デバイスを単に導体コイル(勾配コイルなど)に組み込んで、磁力によってデバイスを作動させることもできる。このため、適切なばね力によって、中間プレート上の高B0場における磁力を補正することができる。力は非線形であり、場合によっては、非線形ばねが使用され得る。力を補償するための洗練されたやり方は、さらに同じ非線形の磁力を使用することである。これは、磁石システムにおいて、「アクティブシールディング」のために、すなわち、挿入勾配アセンブリの外側の磁場を補正するために使用されるデバイスの部分と組み合わせることができる。機械式結合はさらに、デバイスに対する力及びトルクの合計が常に十分低くなることを保証する。それにもかかわらず、自己磁場エネルギーを補正するため、すなわち、減磁率を低減するため、何らか機械ばねを含むことが有益である。したがって、デバイスを動作させるための要求電力を低くすることができる。
【0112】
B0の磁場均質性を維持するのは有益であるので、硬質の磁性球体(回転式磁石のセット)における熱ドリフトを補正するために加熱要素を含むのが有利である。これらの加熱要素は、中間プレートに対する正味の力を補正し、デバイスを低電力で動作させるという第2の目的を有し得る。
【0113】
機械式勾配磁場発生器100、500は、精密な調整から利益を得るので、その効果は測定されなければならない。このため、(中間プレート向けに)変位センサ、例えば光センサが使用される。しかしながら、適切なセンサによってローカルな磁場を測定するのは便利である。そのようなフィードバックシステムを用いて、勾配アセンブリを、作動のためにそれ自体のコイルを含む多数のサブユニットにそれぞれ分割することができる。これにより、勾配アセンブリの設計がより簡素になり、機械式勾配磁場発生器100、500において遭遇するドリフト及び非線形性を補正するために、より多くの自由度が許容される。
【0114】
図8図9図10、及び図11は、可動デバイダ108、静止デバイダ106、及び/又は追加デバイダ502を含む、回転式磁石のセット114の回転式磁石116間の及び/又は磁石の追加セット504の回転式磁石116間の機械式結合を実現するためのいくつかの手段を示すために使用される。図8から図11における例は、回転式磁石のセット114、静止デバイダ106、及び可動デバイダ108に関して説明されており、しかしそれらはまた、追加デバイダ502及び可動デバイダ108を含む、磁石の追加セット504間の機械式結合にも適用することができる。
【0115】
図8は、機械式勾配磁場発生器100のさらなる図を示している。アクチュエータ及び機械要素に関する詳細は、図8から図11には描かれていない。図8に示される例は図1に示される例と類似している。可動デバイダ108が移動方向110に動かされるとき、磁石116が確実に回転するように、可動デバイダ108及び静止デバイダ106の、磁石のセット114に面する表面上に搭載されたさらに追加の摩擦層800がある。これにより、さらなる摩擦がもたらされ、可動デバイダ108が動かされたとき、磁石は、そうすべきであるように、確実に滑らずに回転する。この摩擦層800は、例えば、粘着する接着剤のような材料であり得る、又は、摩擦層800はさらに、摩擦を増大させるゴムなどの追加層である。この摩擦層800は、代替的に、回転式磁石116の表面上に搭載され得る。さらに別の例では、摩擦層800は、磁石116と、図8に描かれているように可動デバイダ108及び静止デバイダ106との両方の上に搭載される。
【0116】
図9は、回転式磁石116を静止デバイダ106及び可動デバイダ108に結合するための代替方法を示している。この例には、静止デバイダ106と可動デバイダ108との間の空間を満たすプラスチック材料900がある。磁石116は、この弾性材料900内に埋め込まれている。可動デバイダ108が移動方向110に動かされるにつれ、弾性材料900は変形し、回転式磁石116は回転させられる。この実施形態の1つの利点は、弾性材料900が、生来、機械要素112として、又は他の実施形態において示されているばねとして機能することである。ばね又は他の弾性要素がさらに含まれるが、弾性材料900は、生来、この機能を実行する。弾性材料900を用いる別の利点は、回転式磁石116の形状が任意になることである。しかしながら、磁石116は、さらに、この画像では円形116であるように描かれているが、立方体又は矩形形状であり得、実際、磁石116は、丸くされなければ、磁気共鳴撮像システムの主磁場によって不用意に回転させられる機会を低減する助けとなるので、有利である。
【0117】
図10は、磁石116を機械的に静止デバイダ106及び可動デバイダ108に結合するさらなる方法を示している。この例では、ここでは、磁石116はその上にギア歯110を有する。可動デバイダ108及び静止デバイダ106上には対応するギア歯1002がある。これは、非常に効果的な機械式結合をもたらし、たとえ大きな主磁場内であっても、磁石116の不用意な回転を防止する。これはいくつかの異なる様式で構築される。いくつかの例では、回転式磁石116は、その上に直接形成されたギア歯を有する。ギア歯は、磁性材料から形成される。他の例では、磁石116は、プラスチック又は何らかの他の材料から形成されたギア内に埋め込むことができる。
【0118】
図11は、磁石116を機械的に可動デバイダ108及び静止デバイダ106に結合するさらなる方法を示している。勾配磁場を発生させるために、磁石116はあまり大きく回転させられる必要はない。いくつかの例では、15°、30°の回転、又は45°未満の回転であっても十分である。図11に示される実施形態は、このケースでは、静止デバイダ106及び可動デバイダ108のノッチ1102と噛み合う隆起部1100があることを除いて図10と同様である。可動デバイダ108が運動方向110に動かされるにつれ、磁石116は傾動によって回転する。可動デバイダ108と静止デバイダ106との間の間隔は変化することになるが、しかし、例えば、ばね系を使用して、2つの間の適正な張力を維持することができる。
【0119】
図12図13図14、及び図15は、可動デバイダ108を初期位置508に戻すために、どのように機械要素112を構築するかについての代替例を示している。図12から図15に示される例は、回転式磁石116の単一セットがあるときのみならず回転式磁石116のセット並びに磁石の追加セット504があるときの両方にあてはまる。図9では、材料900は少なくとも部分的に機械要素112として機能した。図12及び13は図9に示される例の修正を示している。図12では、可動デバイダ108と静止デバイダ106との間の全ボリュームは満たされていない。弾性材料900は、可動デバイダ108の表面及び磁石116の一部分をカバーしている。弾性材料900には、静止デバイダ106の表面及び磁石116の別の部分をカバーする別のセクションがある。機械要素112がどの程度の弾力性となるか調整するため、オープン空間1200を残して役立てる。
【0120】
図13は、さらなる代案を示している。この例では、弾性材料900は磁石116同士を接続するバンドを形成している。このとき、可動デバイダ108及び固定デバイダ106に隣接したオープン空間1200がある。弾性材料900のこのバンドはまた、機械要素112として機能する。
【0121】
図14は、機械式勾配磁場発生器500のさらなる例を示している。この例では、可動デバイダ108は、回転式磁石のセット114と磁石の追加セット504との両方を同時に回転させるために使用される。復元力を提供して、可動デバイダ108をその初期位置508に戻した状態にするために、磁石116は丸くなく、卵形形状の外形を有する。機械要素112は、静止デバイダ106を可動デバイダ108に向けて押し、追加デバイダ502を可動デバイダ108に向けて押す、弾性材料又はばねなどの弾性要素によって形成されている。磁石116の卵形形状により、機械要素112は、磁石116が回転すると、圧縮する。これにより、初期位置508に戻る復元力が生じる。
【0122】
図15は、復元力を提供して、可動デバイダ108を初期位置に戻す代替方法を示している。矢印1500は、主磁場線の方向を表す。復元力を提供するため、いくつかの磁石が機械要素112として機能する。可動デバイダ108が変位方向110に動かされるにつれ、機械要素112の一部である磁石116の双極子モーメント118は、主磁場方向1500の反対の方向に向かって回転する。これは復元力を生じさせる。1502とラベル付けされた2つの磁石があり、これらは回転しないように設計されている磁石である。これらは、例えば、磁場をシミングするため、又は機械要素112の磁石116によって生じた磁場における乱れを補正するために使用される。
【0123】
図16は、機械式勾配磁場発生器1600のさらなる例を示している。この例では、可動デバイダ108は2つの偏位方向1602に移動することができる。回転式磁石116の2次元アレイは、可動デバイダ108と静止デバイダ106との間に分散させる。この例では、磁石116は、弾性材料900によって適所に保持される。弾性材料900はさらに、場合によっては、機械要素112として機能する。可動デバイダ108が動かされるにつれ、弾性材料900は変形し、以て、回転式磁石116の回転が生じる。双極子モーメントの配向はこの例には示されていない。
【0124】
図17は、機械式勾配磁場発生器1700のさらなる例を示している。この例は、可動デバイダ108と追加デバイダ502との間に分散させた磁石の追加セット504を含む追加層をさらに有することを除いて、図16と同様である。図の理解を容易にするため、回転式磁石のセット114及び追加磁石のセット504のただ1つの行及び1つの列が示されているにすぎない。回転式磁石のセット114の双極子モーメント118と追加磁石のセット504の双極子モーメント118が互いに対向していることを理解することができる。次いで、可動デバイダ108が任意の方向に動かされる場合、これにより制御可能な勾配磁場が生じることとなる。回転式磁石のセット114と追加磁石のセット504との両方は、少なくとも部分的に機械要素112として機能する弾性材料900内に埋め込まれる。
【0125】
図18は、図17に描かれた機械式勾配磁場発生器1700の修正形態を示している。図17では、デバイダ106、108、502は平坦である。これらのデバイダはまた、異なる形状に形成することができる。図18では、円筒セクション1800が示されている。デバイダ106、108、502は円筒に形成することもできる。それらはまた、球体セクションに形成することができる。図18では、可動デバイダ108は、2つの変位方向1602に動かすことができる。
【0126】
図19は、2つの変位方向1602に動かすことができる機械式勾配磁場発生器1600を製造するさらなる方法が示されている。この例では、磁石116は、ノッチ又は穴1902と噛み合う突出部1900を有する。可動デバイダ108が任意の変位方向1602に動かされるにつれ、磁石は傾き、事実上回転したことになる。難点は、磁石116が主磁場内でスピンすることができることである。これを防止するため、各磁石116とその最も近い近隣磁石116との間には弾性接続1904がある。弾性材料1900はこの機能を実現する可能性がある。他の例では、最も近い近隣磁石間には実際の機械接続又はばねがある。
【0127】
図20は、複数の発生器層104を含む機械式勾配磁場発生器2000のさらなる例を示している。各層の可動デバイダ108はアクチュエータ120に接続されている。発生器層104のすべてを一緒に保持するために追加の圧縮要素2002がある。この例では、静止デバイダ106のうちのいくつかもまた、隣接層の追加デバイダ502として機能する。初期位置に対する復元力を提供するために使用される機械要素112は、図20には示されていない。磁石116を機械的に結合する方法もまた示されていない。以前に示された例はいずれも使用される。
【0128】
図21は、磁気共鳴撮像システム2100の例を示している。磁気共鳴撮像システム2100は磁石2104を含む。磁石2104は、ボア2106をその中に有する超伝導円筒タイプの磁石である。異なるタイプの磁石を使用することもでき、例えば、分割型円筒状磁石と、いわゆる開放型磁石との両方を使用することもできる。分割型円筒状磁石は、低温保持装置が2つのセクションに分割されていて磁石の同一平面へのアクセスができるようになっていることを除いて、標準の円筒状磁石と類似しており、そのような磁石は、例えば、荷電粒子ビーム療法と併せて使用される。開放型磁石は2つの磁石セクションを有し、一方が他方より上にあり、その間には、対象者を受け入れるには十分に大きい空間があり、2つのセクションの構成はヘルムホルツコイルの構成と類似している。開放型磁石は、対象者が限定されないため、普及している。円筒状磁石の低温保持装置の内部には、超伝導コイルの一団がある。
【0129】
円筒状磁石2104のボア2106内には、磁気共鳴撮像を行うのに磁場が十分強力で均一である撮像ゾーン2108がある。あらかじめ定められた関心領域2110は、撮像ゾーン2108内に示されている。k空間データが典型的には関心領域のために取得される。対象者2118は、対象者2118の少なくとも一部分が撮像ゾーン2108及びあらかじめ定められた関心領域2110内にあるように、対象者サポート2120によってサポートされているように示されている。
【0130】
従来型勾配コイル及び電源の代わりに、磁気共鳴撮像システム2100は、機械式勾配磁場発生器2112を含む。この例では、機械式勾配磁場発生器2112は2つのセクション内に設けられる。各セクションは、例えば、多角形管2113として形成される。機械式勾配磁場発生器は、複数の磁場発生要素を含む。多角形管は、複数の、例えば、平坦な磁場発生要素を構成することによって形成される。多角形管2113のそれぞれに対して、アクチュエータ120への接続が示されている。しかしながら、磁場発生要素のそれぞれは、個別に制御される。これにより、勾配磁場を作るとき、より大きな自由度がもたらされる。
【0131】
撮像ゾーン2108に隣接して、撮像ゾーン2108内の磁気スピンの配向を操作するための、及び、やはり撮像ゾーン2108内のスピンから無線送信を受信するための無線周波数コイル2114がある。無線周波数アンテナは複数のコイル要素を含む。無線周波数アンテナはまた、チャンネル又はアンテナとも称される。無線周波数コイル2114は、無線周波数トランシーバ2116に接続される。無線周波数コイル2114及び無線周波数トランシーバ2116は、別個の送信コイル及び受信コイル並びに別個の送信器及び受信器によって置き換えられる。無線周波数コイル2114及び無線周波数トランシーバ2116は代表であることが理解される。無線周波数コイル2114はまた、専用送信アンテナ及び専用受信アンテナを表すことを意図している。同様に、トランシーバ2116はまた、別個の送信器及び受信器を表す。無線周波数コイル2114はまた、複数の受信/送信要素を有し、無線周波数トランシーバ2116は、複数の受信/送信チャンネルを有する。例えば、SENSEなどのパラレル撮像技法が行われる場合、無線周波数コイル2114は複数のコイル要素を有することになる。
【0132】
磁気共鳴撮像システム2100はさらに、コンピュータ2130を含むように示されている。コンピュータ2130は、1つ又は複数のロケーションに配置された1つ又は複数のコンピューティングデバイス又はコンピュータ計算デバイスを表すことを意図している。コンピュータ2130は、コンピュータ計算システム2132を含むように示されている。コンピュータ計算システム2132は、例えば、1つ又は複数のロケーションに配置された1つ又は複数の処理コアであり得る1つ又は複数のコンピュータ計算システムを表すことを意図している。コンピュータ計算システム2132及び/又はコンピュータ2130のさまざまな組み合わせがネットワークを用いて接続され、一緒に連携して働き得る。コンピュータ計算システム2132は、ハードウェアインターフェース2134、ユーザインターフェース2136、及びメモリ2138と通信しているように示されている。ハードウェアインターフェース2134は、コンピュータ計算システム2132が、トランシーバ2116及び機械式勾配磁場発生器2112などの磁気共鳴撮像システム2100の、他のコンポーネントと通信すること及び/又は他のコンポーネントを制御することをできるようにするインターフェースである。
【0133】
ユーザインターフェース2136は、オペレータが、磁気共鳴撮像システム100を制御し動作させることをできるようにするユーザインターフェースである。メモリ2138は、コンピュータ計算システム2132と通信するさまざまなタイプのメモリを表すことを意図している。
【0134】
メモリ2138は、機械実行形式命令2140を含むように示されている。機械実行形式命令2140は、コンピュータ計算システム2132が、画像処理、数値計算、及び磁気共鳴撮像システム2100の制御などのさまざまなプロセス及びタスクを実行することができるようにする命令である。メモリ2138はさらに、パルスシーケンスコマンド2142を含むように示されている。本明細書において使用されるパルスシーケンスコマンドは、コンピュータ計算システム2132が、磁気共鳴撮像システム2100を制御してk空間データ2144の線などのk空間データを取得することができるようにする、コマンドに変換されるコマンド又はデータである。
【0135】
図22は、機械式勾配磁場発生器2112のうちの1つの例示的な端部図を示している。機械式勾配磁場発生器2112は、図17に描かれているように複数の層104から形成されている。図17は、単一の平坦な機械式勾配磁場発生器1700を描写している。機械式勾配磁場発生器2112は、図17に描かれている機械式勾配磁場発生器1700を複数使用することによって形成される。例えば、すべてのデバイダをz方向(図面の平面に対して垂直)に沿ってシフトさせることによって、z方向に沿った勾配磁場構成要素を発生させる。デバイダ同士を、x方向及びy方向それぞれに沿って異なるロケーションで互いに対してシフトさせることにより、x方向及びy方向それぞれに沿った勾配構成要素が発生する。それぞれのデバイダの異なるシフトのさまざまな他の組み合わせにより、他の方向に勾配磁場が生じる。
【0136】
図23は、磁気共鳴撮像システム2300のさらなる例を示している。図23で示される例は、図21で示された例と類似している。しかしながら、この例では、対象者サポート2120内に配置された機械式勾配磁場発生器1700がある。この例では、無線周波数コイルは、対象者2118の表面上に置かれているように示された表面コイル2302である。平坦な機械式勾配磁場発生器1700は便利であり、非常に小さな空間を使用する。図23に示される例は、より大きな利用可能ボアサイズ2106を含む磁気共鳴撮像システムを提供する。これは、例えば、磁石をより小さくすることにより、より大きなボア2106のサイズがもたらされるので、より安価な磁気共鳴撮像システムの構築を可能にする。図21及び23における両方の例の別の利点は、磁場勾配コイル向けに高価な電源がいらなくなったことである。
【0137】
図24は、図21の磁気共鳴撮像システム2100又は図23の磁気共鳴撮像システム2300を用いた方法を示すフローチャートを示している。最初に、ステップ2400では、磁気共鳴撮像システムはパルスシーケンスコマンド2142によって制御され、それによって、k空間データ2114を取得する。k空間データ2114は、k空間データ2114の取得中に勾配磁場を発生させるように機械式勾配磁場発生器2112又は機械式勾配磁場発生器1700を制御するために使用されるコマンドを含む。次いで、ステップ2402では、k空間データ2144は任意選択で磁気共鳴画像2146に再構築される。
【0138】
図25は、ヘッドコイル2502をその中に含む磁気共鳴撮像システム2500の例を示している。ヘッドコイルは、例えば鳥かごコイルでありいくつかの機械式勾配磁場発生器1700を一体化する、無線周波数コイル2504を含む。この例では、4つのユニットが使用される。しかしながら、これまでに描かれた多角形管2113のような他の形状もまた使用される。機械式勾配磁場発生器1700のそれぞれは個別に動作させる。
【0139】
図26は、対象者2118を計測するために磁場勾配を生成する、単一行又はセットの回転式磁石114を有する機械式勾配磁場発生器100の使用を示している。双極子モーメントは、主磁場1500と整合されていないとき、主磁場1500に対して、容易に感知できるほどの作用を及ぼさない(例えば、5ppmひずみ未満)。図26に描かれているように、勾配磁場はオフされる。各機械式勾配磁場発生器100ごとに可動デバイダ108が、その特定の機械式勾配磁場発生器100について示された方向110に動かされると、対象者2118に対して勾配磁場が発生することになる。
【0140】
本発明は図面と前の記述において詳細に図解され、説明されてきたが、そのような図解及び説明は、説明的又は例示的であり、限定的であると考えられるべきではなく、本発明は開示された実施形態に限定されるものではない。
【0141】
開示された実施形態に対する他の変形形態は、図面、本開示、及び従属請求項の調査から、特許請求された発明を実践する際に当業者によって理解され、成し遂げられ得る。請求項において、単語「備える」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形の要素は複数を排除しない。単一のプロセッサ又は他のユニットは、請求項の範囲に記載された、いくつかの項目の機能を満たす。互いに異なる従属請求項に、ある特定の方法が記載されているというだけで、これらの方法の組み合わせが利益を得るために使用することができないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に、又は他のハードウェアの一部として供給された光ストレージ媒体又はソリッドステート媒体などの好適な媒体上に記憶/分配されるが、さらに、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介してなど、他の形態において分配される。請求項の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0142】
100 機械式勾配磁場発生器
102 磁場発生要素
104 発生器層
106 静止デバイダ
108 可動デバイダ
110 変位方向
112 機械要素(ばね)
114 回転式磁石のセット
116 回転式磁石
118 磁気双極子の方向
120 圧電型アクチュエータ
200 機械式アクチュエータ
202 ケーブル
300 熱機械式アクチュエータ
400 電気機械式アクチュエータ
500 機械式勾配磁場発生器
502 追加デバイダ
504 磁石の追加セット
506 ロッキング機構
508 初期位置
800 摩擦層
900 弾性層
1000 ギア歯
1002 表面上のギア歯
1100 隆起部
1102 ノッチ
1200 オープン空間
1500 主磁場方向
1502 任意選択の非回転式磁石
1600 機械式勾配磁場発生器
1602 2つの変位方向
1700 機械式勾配磁場発生器
1800 円筒セクション
1900 突出部
1902 ノッチ
1904 弾性接続
1602 2つの変位方向
2000 機械式勾配磁場発生器
2002 圧縮要素
2100 磁気共鳴撮像システム
2104 磁石
2106 磁石のボア
2108 撮像ゾーン
2110 関心領域
2112 機械式勾配磁場発生器
2113 多角形管
2114 無線周波数コイル
2116 トランシーバ
2118 対象者
2120 対象者サポート
2130 コンピュータ
2132 コンピュータ計算システム
2134 ハードウェアインターフェース
2136 ユーザインターフェース
2138 メモリ
2140 機械実行形式命令
2142 パルスシーケンスコマンド
2144 k空間データ
2146 磁気共鳴画像
2200 多角形管の端部図
2300 磁気共鳴撮像システム
2400 パルスシーケンスコマンドを用いて磁気共鳴撮像システムを制御することによってk空間データを取得する
2402 k空間データから磁気共鳴画像を再構築する
2500 磁気共鳴撮像システム
2502 ヘッドコイル
2504 無線周波数コイル(鳥かごコイル)
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【国際調査報告】