(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】冷却水処理用の固体の無リン系スケール及び腐食防止剤組成物
(51)【国際特許分類】
C23F 11/173 20060101AFI20240925BHJP
C23F 11/18 20060101ALI20240925BHJP
C23F 11/14 20060101ALI20240925BHJP
C02F 5/00 20230101ALI20240925BHJP
C02F 5/10 20230101ALI20240925BHJP
【FI】
C23F11/173
C23F11/18
C23F11/14
C02F5/00 620B
C02F5/00 620D
C02F5/10 620B
C02F5/10 620F
C02F5/00 620C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516385
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 US2022043468
(87)【国際公開番号】W WO2023043798
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510250467
【氏名又は名称】エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】チャン シアオ
(72)【発明者】
【氏名】ピンチー チェン
(72)【発明者】
【氏名】チン ニン
【テーマコード(参考)】
4K062
【Fターム(参考)】
4K062AA03
4K062BA05
4K062BA10
4K062BB18
4K062BC09
4K062BC30
4K062FA05
4K062GA08
(57)【要約】
【課題】冷却水処理用途に使用することができる固体の無リン系水処理組成物の提供。
【解決手段】組成物は、ポリカルボン酸と、ポリマー分散剤と、可溶性腐食防止剤と、蛍光トレーサーとを含み得る。組成物は、リンを含まず、且つ組成物を2重量パーセントの濃度で水に溶解させて溶液を形成したときに、溶液が1~5の範囲内のpHを有するように有効なpHを有する固体の性質を示し得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水処理用の固体の無リン系水処理組成物であって、前記組成物は、
(a)前記組成物の30重量パーセント~60重量パーセントの範囲のポリカルボン酸と、
(b)前記組成物の15重量パーセント~30重量パーセントの範囲のポリマー分散剤と、
(c)前記組成物の2重量パーセント~25重量パーセントの範囲の可溶性腐食防止剤と、
(d)蛍光トレーサーと
を含み、
前記組成物は、
(i)固体の性質を示し、
(ii)リンを含まず、
(iii)前記組成物が2重量パーセントの濃度で水に溶解して溶液を形成したときに、前記溶液が1~5の範囲内のpHを有するように有効なpHを有する、冷却水処理用の固体の無リン系水処理組成物。
【請求項2】
前記組成物が、水中で約100%の溶解度を示し、50℃の温度及び70%の相対湿度で少なくとも1ヶ月の期間にわたって寸法安定性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリカルボン酸、前記ポリマー分散剤、前記可溶性腐食防止剤、及び前記蛍光トレーサーが各々、前記固体の断面全体にわたって実質的に均一に分散されている、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
無水pH調整剤を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記無水pH調整剤が、前記組成物の5重量%~30重量%を構成する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記無水pH調整剤がアルカリ金属塩を含む、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、前記組成物を2重量パーセントの濃度で水に溶解させて前記溶液を形成したときに、前記溶液が2.5~4の範囲内のpHを有するように有効なpHを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記可溶性腐食防止剤が、亜鉛含有化合物、モリブデン酸塩含有化合物、及びトリアゾールのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記可溶性腐食防止剤が、前記組成物の2重量パーセント~15重量パーセントの範囲のトリアゾールと、前記組成物の2重量%~15重量%の範囲の亜鉛含有化合物及びモリブデン酸塩含有化合物のうちの少なくとも1つとを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記固体がプレス固体を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリカルボン酸が、ポリアスパラギン酸(PASP)、マレイン酸とアクリル酸とのコポリマー(MA/AA)、ブタンテトラカルボン酸、加水分解ポリ無水マレイン酸(HPMA)、ポリアクリル酸(PAA)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
冷却水処理用の固体の無リン系水処理組成物であって、前記組成物は、
(a)前記組成物の30重量パーセント~60重量パーセントの範囲のポリカルボン酸と、
(b)前記組成物の15重量パーセント~30重量パーセントの範囲のポリマー分散剤と、
(c)前記組成物の2重量%~25重量%の範囲の可溶性腐食防止剤と、
(d)蛍光トレーサーと、
(e)pH調整剤と
を含み、
前記組成物は、
(i)プレス固体の性質を示し、
(ii)リンを含まず、
(iii)前記組成物が2重量パーセントの濃度で水に溶解して溶液を形成したときに、前記溶液が2.5~4の範囲内のpHを有するように有効なpHを有し、
(iv)前記組成物の全体にわたって構成成分の実質的に均一な分布を有する、冷却水処理用の固体の無リン系水処理組成物。
【請求項13】
前記pH剤が無水pH調整剤である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記pH調整剤が、前記組成物の5重量パーセント~30重量パーセントを構成する、請求項12又は13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、水中で約100%の溶解度を示し、50℃の温度及び70%の相対湿度で少なくとも1ヶ月の期間にわたって寸法安定性である、請求項12~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリカルボン酸が、ポリアスパラギン酸(PASP)、マレイン酸とアクリル酸とのコポリマー(MA/AA)、ブタンテトラカルボン酸、加水分解ポリ無水マレイン酸(HPMA)、ポリアクリル酸(PAA)、及びそれらの組合せからなる群から選択され、
前記ポリマー分散剤が、アクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AA-AMPS)ナトリウム塩とのコポリマー;ポリエポキシコハク酸ナトリウム;及びマレイン酸とアクリル酸とのコポリマー(MA/AA)からなる群から選択され、
前記可溶性腐食防止剤が、亜鉛含有化合物、モリブデン酸塩含有化合物、及びトリアゾールのうちの少なくとも1つを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
冷却水システムを処理する方法であって、前記方法は、
固体の無リン系水処理組成物を水源に添加して溶液を形成することであって、前記固体の無リン系水処理組成物が、前記組成物の30重量パーセント~60重量パーセントの範囲のポリカルボン酸と、前記組成物の15重量パーセント~30重量パーセントの範囲のポリマー分散剤と、前記組成物の2重量パーセント~25重量パーセントの範囲の可溶性腐食防止剤と、蛍光トレーサーとを含み、前記溶液を形成することが、1~5の範囲内のpHを有する溶液を形成することを含む、固体の無リン系水処理組成物を水源に添加して溶液を形成することと、
水含有システム内で前記溶液を適用することと
を含む、冷却水システムを処理する方法。
【請求項18】
前記固体の無リン系水処理組成物を前記水源に添加して前記溶液を形成することが、水だめ中で前記溶液を形成することを含み、前記水含有システム内で前記溶液を適用することが、前記水だめから前記水含有システムに前記溶液を分配することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記水含有システムが、冷却塔、ラジエータ、一つ又は複数のパイプ、ウォータージャケット、脱塩膜、凝縮器、蒸発器、ポンプ、又は貯蔵容器のうちの一つ又は複数を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記水含有システム内で前記溶液を適用することが、前記水含有システムに水を再循環させることを含む、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が無水pH調整剤を更に含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記無水pH調整剤が、前記組成物の5重量%~30重量%を構成する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリカルボン酸が、ポリアスパラギン酸(PASP)、マレイン酸とアクリル酸とのコポリマー(MA/AA)、ブタンテトラカルボン酸、加水分解ポリ無水マレイン酸(HPMA)、ポリアクリル酸(PAA)、及びそれらの組合せからなる群から選択され、
前記ポリマー分散剤が、アクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AA-AMPS)ナトリウム塩とのコポリマー;ポリエポキシコハク酸ナトリウム;及びマレイン酸とアクリル酸とのコポリマー(MA/AA)からなる群から選択され、
前記可溶性腐食防止剤が、亜鉛含有化合物、モリブデン酸塩含有化合物、及びトリアゾールのうちの少なくとも1つを含む、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本出願は、2021年9月14日に出願された米国特許仮出願第63/243,927号の利益を主張するものであり、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、水システム用の処理組成物、より詳細には、冷却水システム用のリン不含の処理組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
冷却水システムは、様々なプラントにおいて熱交換器熱又は凝縮器を通してプロセス流体を冷却するために使用される。熱交換器又は凝縮器は、水管理が不十分なことに起因して腐食したり、スケール又はバイオフィルムが成長したりする可能性がある。熱交換器上での腐食、スケール、及びバイオフィルムの成長は、熱交換器の効率及び動作寿命の著しい低下につながる可能性がある。これら及び他の理由により、冷却水システムのオペレータは、化学処理プログラムを利用して、スケール形成、微生物形成、スラッジ、及び/又は腐食を防止するのを助けることができる。
【0004】
冷却水処理プログラムでは、安価な無機リン酸塩が使用されることが多い。これには、アニオン性腐食防止剤としてのオルトリン酸塩の使用及びカソード防止剤としての複合リン酸塩の使用が含まれる。オルトリン酸塩は、使用される場合、リン酸又はそのナトリウム塩若しくはカリウム塩の1つの形態で供給されることが多い。
【0005】
リン酸塩含有処理は、水含有システムを効果的に管理するのを助けることができるが、リン酸塩は、藍色細菌及び藻類などの微生物にとって重要な栄養素である。リンは、湖及び川を含む地表水域において、藻類に対する主要な成長制限栄養素として認識されている。湖及び川におけるリン栄養素に起因する過剰なバイオマス成長は、光透過の減少、有機物成長低下、及びその後の水中での酸素の枯渇を引き起こし得る。これらの問題に対処するのを助けるために、地方及び国の政府は、ますます厳格なリン排出規制を公布してきた。
【発明の概要】
【0006】
一般に、本開示は、固体の無リン系水処理組成物、及び例えば再循環水システムにおいて水を処理するためにそのような組成物を使用するための関連技術に関する。水処理組成物は、処理された水源が接触する表面上のスケール及び腐食堆積物の形成を阻害することができる。水処理組成物は、リン不含の構成成分から配合され、原水のリン濃度を増加させることなく、水処理組成物を原水に添加することを可能にする。これは、処理された水源が、その後、例えば、川又は湖などの地表水域に排出されるときに、リン排出規制の遵守を維持するのに有益である。
【0007】
本開示のリン不含の水処理組成物は、固体処理組成物の形成を促進するように特に配合される。換言すれば、水処理組成物は、固相組成物として提供される。固体水処理組成物は、ディスペンサーを使用して、現場で原水に導入することができる。ディスペンサーは、処理されることを意図した原水に処理組成物を導入する前に、希釈剤で固体処理組成物をサイズ低減及び/又は溶解してもしなくてもよい。リン不含の水処理組成物を固体として構成することは、液体配合物を利用することと比較して組成物の体積を減少させることができ、固体処理組成物の輸送及び貯蔵を、同等の液体配合物よりも容易且つ経済的にする。
【0008】
固体のリン不含の水処理組成物は、予想される貯蔵期間の間、比較的高い温度及び湿度条件を含む貯蔵条件の範囲にわたって優れた寸法安定性を示すことができる。更に、固体のリン不含の水処理組成物は、水への実質的に完全な溶解性を示すことができ、固体のリン不含の水処理組成物は、組成物が添加される原水に実質的に完全に可溶化されることを確実にする。
【0009】
固体の無リン系水処理組成物は、カソード腐食防止剤、アノード腐食防止剤、皮膜形成腐食防止剤、スケール防止剤、分散剤、活性試剤の濃度を制御するための蛍光試剤、全ての成分が分配溶液中で可溶性のままであることを確実にするためのpH調整剤、分配溶液中での微生物成長を防止するための保持剤、及び/又は固体ブロック形成を助けるための充填剤試剤のうちの一つ又は複数を含んでもよい。ある構成成分は、前述の機能の複数を果たし得る。
【0010】
例えば、固体の無リン系水処理組成物は、ポリカルボン酸、ポリマー分散剤、可溶性腐食防止剤、及び蛍光トレーサーを含むように配合されてもよい。水処理組成物は、任意選択で、pH調整剤、充填剤/結合剤、及び/又は殺生物剤などの一つ又は複数の追加の構成成分を有し得る。いくつかの実施形態では、構成成分は、pH調整剤及び充填剤など、組成物内で複数の機能を果たし得る。固体の無リン系水処理組成物は、例えば、閾値pHを有する水処理組成物の溶解時に得られる溶液を提供するようにpH制御することができる。固体の無リン系水処理組成物のpHは、様々な方法で、例えば、配合された水処理組成物中の一つ又は複数の酸性化構成成分の選択及び組込みによって、及び/又は固体組成物から形成された得られる溶液のpHを改変するように機能する組成物中の一つ又は複数のpH調整成分の組込みによって、pH制御することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、固体の無リン系水処理組成物は、固体組成物が2重量パーセントの濃度で溶解されるとき、約1~約5の範囲内のpHを有する得られる溶液を生成するようにpH制御される。例えば、固体の無リン系水処理組成物は、約2~約4の範囲内のpHを有する得られる溶液を生成するようにpH制御されてもよい。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、無リン系水処理組成物のpHを目標の酸性化範囲に制御することは、有効な固体の無リン系水処理組成物を提供するのに役立ち得ると考えられる。組成物のpHを制御することは、固体組成物が使用前に構造及び寸法安定性を維持し、固体の早期崩壊を防止するのを助けることができ、また、使用中の水への組成物の実質的に完全な溶解性を促進することができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、固体の無リン系水処理組成物は、水への組成物の実質的に完全な溶解を確実にするのに十分に低いpHを有する得られる溶液を提供するように配合される。得られる溶液のpHが上限閾値を超える場合、溶液は、処理組成物の不完全な溶解を示す濁りを示し得る。処理される水に十分に溶解しない固体水処理組成物の部分は、水に処理機能を付与するために利用できない可能性があり、水の処理不足及び/又は処理組成物の浪費が生じる。いくつかの実施形態では、固体の無リン系水処理組成物は、低pH腐食形成などのpH関連堆積物の形成を防止するのを助けるのに十分に高いpHを有する得られる溶液を提供するように、及び/又は水処理施設の人員にとって十分に安全な得られる溶液を提供するように配合される。
【0013】
一例では、冷却水処理での使用に適した固体の無リン系水処理組成物が記載される。組成物は、組成物の30重量パーセント~60重量パーセントの範囲のポリカルボン酸、組成物の15重量パーセント~30重量パーセントの範囲のポリマー分散剤、組成物の2重量パーセント~25重量パーセントの範囲の可溶性腐食防止剤、及び蛍光トレーサーを含む。この例は、組成物が固体の性質を示し、リンを含まず、組成物が2重量パーセントの濃度で水に溶解して溶液を形成したときに、溶液が1~5の範囲内のpHを有するように有効なpHを有することを特定する。
【0014】
別の例では、冷却水処理のための固体の無リン系水処理組成物が記載される。組成物は、組成物の30重量パーセント~60重量パーセントの範囲のポリカルボン酸、組成物の15重量パーセント~30重量パーセントの範囲のポリマー分散剤、組成物の2重量パーセント~25重量パーセントの範囲の可溶性腐食防止剤、蛍光トレーサー、及びpH調整剤を含む。この例は、組成物がプレス固体の性質を示し、リンを含まず、組成物を2重量パーセントの濃度で水に溶解させて溶液を形成したときに、溶液が2.5~4の範囲内のpHを有するように有効なpHを有し、組成物全体にわたって構成成分の実質的に均一な分布を有することを特定する。
【0015】
別の例では、冷却水システムを処理する方法が記載される。本方法は、固体の無リン系水処理組成物を水源に添加して溶液を形成することを含む。固体の無リン系水処理組成物は、組成物の30重量%~60重量%の範囲のポリカルボン酸、組成物の15重量%~30重量%の範囲のポリマー分散剤、組成物の2重量%~25重量%の範囲の可溶性腐食防止剤、及び蛍光トレーサーを含む。この例は、溶液を形成することが、1~5の範囲内のpHを有する溶液を形成することを含むことを特定する。例示的な方法はまた、水含有システム内で溶液を適用することを含む。
【0016】
1つ以上の例の詳細が、以下の説明に記載される。他の特徴、目的、及び利点は、説明、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用される場合、本発明による処理のための「水」という用語は、淡水、池水、海水、塩水又はブライン源、再利用水などの様々な源を含む。水という用語はまた、新鮮な水源及び再利用水源の両方、並びに本開示の組成物による処理のための水の任意の組合せを任意選択で含むと理解される。いくつかの実施形態では、再利用水は、以前の使用(例えば、熱伝達媒体としての熱交換の以前のサイクル)から再利用された水と、以前に使用された際に(例えば、熱伝達媒体としての熱交換のサイクルにおいて)使用されなかった水、例えば、淡水、池水、海水などとの両方を含む水の混合物を指す。
【0018】
「無リン」、「リン不含の」、及びそれらの様々な用語は、本明細書で使用される場合、微量以下のリン、特に0.1重量%未満、例えば0.05重量%未満、0.01重量%未満、又は0.001重量%未満が組成物中に存在することを意味する。
【0019】
「重量パーセント」、「重量%(wt-%)」、「重量パーセント(percent by weight)」、「重量%(% by weight)」という用語、及びそれらの変形は、本明細書で使用される場合、その物質の重量を組成物の総重量で割って100を掛けたときの物質の濃度を指す。本明細書で使用される場合、「パーセント」、「%」、及び同様のものは、「重量パーセント」、「重量%」などと同義であることが意図されることが理解される。
【0020】
本明細書で使用される場合、例えば、本開示の実施形態を説明する際に用いられる、組成物中の配合成分の量、濃度、及び同様の値、並びにそれらの範囲を修飾する「約」という用語は、例えば、化合物、組成物、濃縮物又は使用配合物を作製するために使用される典型的な測定及び取り扱い手順により;これらの手順における偶発的な誤りにより;方法を実行するために使用される出発物質若しくは配合成分の製造、供給源、又は純度の違いにより、及び同様の近似考慮事項により生じる可能性がある数値量の変動を指す。「約」という用語はまた、特定の初期濃度又は混合物を有する配合物の劣化に起因して異なる量、及び特定の初期濃度又は混合物を有する配合物を混合又は加工することに起因して異なる量を包含する。
【0021】
本開示は、概して、固相で提供され、水性システムを処理して水性システムにおけるスケール及び腐食堆積物の形成を阻害するために使用される無リン系水処理組成物に関する。処理組成物で処理される水性システムは、典型的には、比較的高温のプロセス流からの熱エネルギーが分割された熱交換表面を介して比較的低温の水流に伝達される一つ又は複数のプロセスに水を供給する冷却水システムであってもよい。いくつかの実施形態では、本開示による水処理組成物は、開放循環冷却水システム、例えば、蒸発冷却を介して水を冷却する一つ又は複数の冷却塔を含む開放循環冷却水システムにおいて使用することができる。
【0022】
固体の無リン系水処理組成物は、概して、ポリカルボン酸、ポリマー分散剤、及び可溶性腐食防止剤を含んでもよい。ポリカルボン酸は、スケール防止剤として機能し得る。可溶性腐食防止剤は、カソード腐食防止剤、アノード腐食防止剤、組み合わされたカソード及びアノード腐食防止剤(例えば、バイポーラ膜)、及び/又は皮膜形成防止剤であってもよく、いずれの場合も水に可溶性である。組成物はまた、処理される水システム中の処理化学物質の量を追跡及び制御するための蛍光トレーサーを含んでもよい。pH調整剤及び/又は充填剤、殺生物剤、及び同様のものなどの様々な追加の構成成分を水処理組成物に含めることができる。水処理組成物に含まれる成分の各々は、リンを含まなくてもよい。結果として、固体水処理組成物の全体がリン不含であってもよい。
【0023】
水処理組成物の構成成分の各々は、固体形態で提供され、一緒に混合され得る。得られる固体の無リン系水処理組成物の混合及び形成後、組成物は固体全体にわたって化学的に均質であり得る。換言すれば、固体水処理組成物の各部分は、固体水処理組成物の他の各部分と実質的に同じ相対重量パーセンテージで同じ構成成分を有してもよい。
【0024】
本開示による固体水処理組成物は、スケール防止剤として少なくとも1つの固体の無リンポリカルボン酸を含む。異なる実施形態では、水処理組成物は、単一の固体の無リンポリカルボン酸を含んでもよく、又は2つ以上の固体の無リンポリカルボン酸の混合物を含んでもよい。水処理組成物のポリカルボン酸成分は、水処理組成物の総重量に基づいて、水処理組成物の約25重量%~約70重量%、例えば約30重量%~約60重量%、約30重量%~約40重量%、約40重量%~約50重量%、又は約50重量%~約60重量%を構成し得る。
【0025】
ポリカルボン酸成分は、カルボン酸、又は少なくとも2つのカルボキシル部分を有する分子の残基、例えば、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸であってもよい。いくつかの例では、ポリカルボン酸成分はコポリマーである。コポリマーは、2つ以上のモノマーの重合残基を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなってもよい。2つ以上のモノマーは、カルボン酸又はその残基を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる第1のモノマーと、第1のモノマーとは異なる第2のモノマーとを含んでもよい。第1のモノマーは、カルボン酸、又は少なくとも1つのカルボキシル部分を有する分子の残基、その塩、又はその共役塩基を含んでもよい。カルボン酸は、単一のカルボキシル部分又は複数のカルボキシル部分(例えば、マレイン酸などのジカルボン酸)を含んでもよい。
【0026】
本明細書で用いられる場合、「コポリマー」という用語は、2つ、3つ又はそれを超えるモノマーから形成されるポリマー、及びそれらのポリマー骨格中に2つ、3つ又はそれを超える異なるサブユニットを有するポリマーを指す。本組成物は、(メタ)アクリルポリマー、例えば、アクリル酸ホモポリマー、メタクリル酸ホモポリマー、及び/又はこれらの2つのモノマーを含む混合物から形成されるコポリマーを含んでもよい。
【0027】
水処理組成物のカルボン酸成分として使用するのに適したカルボン酸は、例として、ジカルボン酸、例えばマレイン酸又は無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸;グルタコン酸、ムコン酸、コハク酸、又は任意の他の不飽和ジカルボン酸若しくはそれらの無水物;トリカルボン酸以上、例えばクエン酸、アコニット酸、又は3つ以上のカルボン酸部分を有する任意の他のカルボン酸;又は少なくとも2つのカルボン酸部分を有する任意の他のモノマーを含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなってもよい。
【0028】
いくつかの例において、カルボン酸成分は、2つ以上のモノマーの重合残基を含んでもよいか、本質的にそれからなってもよいか、又はそれからなってもよいコポリマーである。2つ以上のモノマーは、カルボン酸又はその残基を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる少なくとも1つのモノマーと、第1のモノマーとは異なる第2のモノマーとを含んでもよい。第1のモノマーとして使用するのに適したカルボン酸は、例として、アルキルアクリル酸、例えばメタクリル酸、ブテン酸(例えば、クロトン酸)、ペンテン酸、プロペン酸、又は重合することができる任意の他の不飽和モノカルボン酸;ジカルボン酸、例えばマレイン酸又は無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸;グルタコン酸、ムコン酸、コハク酸、又は重合することができる任意の他の不飽和ジカルボン酸若しくはその無水物;トリカルボン酸以上、例えばクエン酸、アコニット酸、又は3つ以上のカルボン酸部分を有する任意の他のカルボン酸;又は少なくとも1つのカルボキシル部分を有する任意の他のモノマー;前述のいずれかの塩、又は前述のいずれかの共役塩基を含んでもよいか、本質的にそれからなってもよいか、又はそれからなってもよい。いくつかの実施形態では、第1のモノマーは、前述のカルボン酸、その塩、又はその共役塩基のいずれか1つから形成される。例えば、第1のモノマーは、前述のカルボン酸のいずれかのカルボキシレート(例えば、ジカルボキシレート)を含んでもよい。
【0029】
固体水処理組成物のポリカルボン酸として一般的に使用され得るポリカルボン酸の具体例としては、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリルアミド、アクリルアミドメチルプロパンスルホネート/アクリル酸コポリマー(AMPS/AA)、ポリマレイン酸/アクリル酸コポリマー(MA/AA)、ポリマレイン酸/アクリル酸/アクリルアミドメチルプロパンスルホネートターポリマー(PMA/AA/AMPS)、加水分解ポリ無水マレイン酸、マレイン酸-アクリル酸コポリマー、アクリル酸-ヒドロキシプロピルアクリレートコポリマー、ブタンテトラカルボン酸、アクリルアミドスルホン酸(AMPS)、スチレンスルホン酸ナトリウム(SSS)、及び/又はスルホフェニルメタリルエーテル(SPME)が挙げられる。
【0030】
いくつかの実施形態において、ポリアスパラギン酸(PASP)化合物は、固体水処理組成物中のポリカルボン酸成分として使用される。「ポリアスパラギン酸」という用語は、アスパラギン酸残基のモルパーセントが、ポリマー中のサブユニットの総数の少なくとも約20%、例えばポリアスパラギン酸化合物中のサブユニットの総数の少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%であるコポリマーを指す。いくつかの例では、ポリアスパラギン酸のサブユニットの少なくとも約80%は、アルファ及び/又はベータアスパラギン酸サブユニットである。例えば、ベータ型のアスパラギン酸サブユニットの割合は、約50%超、例えば70%超であり得る。
【0031】
ポリアスパラギン酸単位を有することに加えて、ポリアスパラギン酸はまた、他の反復単位、例えば、リンゴ酸サブユニット、マレイン酸サブユニット、及び/又はフマル酸サブユニットを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリアスパラギン酸は、一つ又は複数のコモノマー、例えばグルタミン酸、多塩基性カルボン酸、脂肪酸、多塩基性ヒドロキシカルボン酸、一塩基性ポリヒドロキシカルボン酸、及び糖カルボン酸に基づくポリマーのサブユニットを少量(典型的には、サブユニットの約20%以下、一般的には約10%以下)含んでもよい。
【0032】
ポリアスパラギン酸化合物の他の例としては、マレイン酸、ポリカルボン酸、アンモニア及びポリアミンを反応させ、得られるポリマーを加水分解し、アルカリ金属水酸化物で塩に変換することによって製造されるポリアスパラギン酸のコポリマーが挙げられる。このようなプロセスで使用するのに適したポリカルボン酸としては、アジピン酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、シュウ酸、ピメリン酸、イタコン酸、ノナン二酸、ドデカン二酸、オクタン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びフタル酸が挙げられる。適切なポリアミンとしては、典型的には、少なくとも1つの第一級アミノ基、例えば、ジエチレントリアミン、ポリオキシアルキレンアミンジアミン及びトリアミン、メラミン、アルキルジアミン(例えば、エチレンジアミン及びヘキサンジアミン)及びアルキルトリアミンなどのポリアミンが挙げられる。
【0033】
本開示による固体水処理組成物は、少なくとも1つの固体の無リンポリマー分散剤を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー分散剤はまた、カルボン酸部分を含み、固体水処理組成物のポリマー分散剤成分は、組成物の別個のカルボン酸成分とは異なる。水処理組成物のポリマー分散剤成分は、水処理組成物の総重量に基づいて、水処理組成物の約10重量%~約40重量%、例えば、約15重量%~約30重量%、約15重量%~約20重量%、又は約20重量%~約30重量%を構成し得る。
【0034】
一般に、ポリマー分散剤は、小さな粒子が凝集してより大きな塊になるのを防止するのを助ける高度に荷電したポリマーであり、これは、より容易に表面上に沈降する。分散のメカニズムは、電荷強化又は立体安定化によるものであり得る。電荷強化による分散は、溶液中の全ての粒子が有する負電荷を増加させる。例えば、低分子量アニオン性ポリマーは、水中で粒子の表面上に吸着し、粒子の負電荷を増加させる。表面電荷の増加は、固体の凝集及び沈降を防止するのを助ける。粒子の表面上に吸着されたポリマーはまた、他の粒子に対する物理的障壁を作り出すことによって凝集を防止するのを助ける。この障壁は、粒子が互いに付着するのを防止するのを助ける弾性クッションのように作用し、立体効果であり、吸着されたポリマーの構造及び分子重量に依存する。
【0035】
無リンポリマー分散剤は、静電反発及び立体安定化の両方を通して機能し得る。いくつかのポリマー分散剤は、有意なスケール抑制を提供することなく懸濁物質の堆積を防止する分散剤として機能し得る。ポリマー分散剤として機能する他のポリマーは、スケール抑制及び分散剤機能の両方を提供し得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、ポリマー分散剤は、2つ以上のモノマーの重合残基であるコポリマーであり、そのうちの1つはカルボン酸又はその残基であり、第2のモノマーはスルホン化酸又はその残基である。第1のモノマーは、カルボン酸、又は少なくとも1つのカルボキシル部分を有する分子の残基、その塩、又はその共役塩基を含んでもよい。カルボン酸は、単一のカルボキシル部分又は複数のカルボキシル部分(例えば、マレイン酸などのジカルボン酸)を含んでもよい。第1のモノマーとして使用するのに適したカルボン酸は、例として、アルキルアクリル酸、例えばメタクリル酸、ブテン酸(例えば、クロトン酸)、ペンテン酸、プロペン酸、又は重合することができる任意の他の不飽和モノカルボン酸;ジカルボン酸、例えばマレイン酸又は無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸;グルタコン酸、ムコン酸、コハク酸、又は重合することができる任意の他の不飽和ジカルボン酸若しくはその無水物;トリカルボン酸以上、例えばクエン酸、アコニット酸、又は3つ以上のカルボン酸部分を有する任意の他のカルボン酸;又は少なくとも1つのカルボキシル部分を有する任意の他のモノマー;前述のいずれかの塩、又は前述のいずれかの共役塩基を含んでもよいか、本質的にそれからなってもよいか、又はそれからなってもよい。
【0037】
第1のモノマーは、コポリマーの約55モル%以上、例えば、コポリマーの約55モル%~約99モル%、約60モル%~約98モル%、約70モル%~約95モル%、約80モル%~約99モル%、約90モル%~約97モル%、約93モル%~約99モル%、約96モル%~約99モル%、約92モル%~約94モル%、約83モル%~約87モル%、約88モル%~約92モル%、約93モル%~約96モル%、約95モル%~約98.5モル%、約60モル%、約70モル%、約80モル%、約85モル%、約90モル%、約92.9モル%、約93.3モル%、約95モル%、約96モル%、約96.4モル%、約98.4モル%、又は約98.5モル%以下を構成し得る。
【0038】
コポリマーの第2のモノマーは、スルホン化酸又はその残基を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる。スルホン化酸は、スルホン化酸部分、その塩、又はその共役塩基を含んでもよい。適切なスルホン化酸には、ATBS、スルホスチレン、ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸、前述のものの塩(例えば、メタリルスルホン酸ナトリウム若しくはATBSナトリウム塩)、又は前述のものの共役塩基(例えば、メタリルスルホネート)が含まれ得る。
【0039】
第2のモノマーは、コポリマーの約45モル%以下、例えば、コポリマーの約0.01モル%~約45モル%、約1モル%~約40モル%、約20モル%~約30モル%、約0.01モル%~約15モル%、約0.01モル%~約10モル%、約0.01モル%~約5モル%、約2モル%~約4モル%、約1モル%~約5モル%、約5モル%~約15モル%、約10モル%~約15モル%、約5モル%~約10モル%、約18モル%~約22モル%、約13モル%~約17モル%、約8モル%~約12モル%、約3モル%~約7モル%、約2モル%、約3モル%、約3.6モル%、約3.7モル%、約4モル%、約5モル%、約10モル%、約15モル%、約20モル%、約20モル%以下、又は約10モル%以下を構成し得る。
【0040】
1つの具体例として、固体の無リンポリマー分散剤は、アクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AA-AMPS)とのコポリマーであってもよい。使用することができる他の例示的な固体の無リンポリマー分散剤には、ポリエポキシコハク酸及び/又はマレイン酸とアクリル酸とのコポリマー(MA/AA)が含まれる。様々な例では、固体の無リンポリマー分散剤は、ターポリマー及び/又はテトラポリマーを含んでもよい。
【0041】
本開示による固体水処理組成物はまた、少なくとも1つの固体の無リン系可水溶性腐食防止剤を含み得る。一般に、腐食抑制剤は金属表面上に不動態化層を形成することにより金属を保護する。この不動態化層は金属表面を濡らし、それが今度は流体の腐食性からの金属の接触を防止する。典型的には、腐食抑制剤配合物は、アミン、四級アミン、イミダゾリン、アミド、カルボン酸、又はそれらの組合せを含む様々な脂肪族有機界面活性剤分子を含有し得る。
【0042】
固体の無リン系水処理組成物中で使用され得る例示的な腐食防止剤としては、アゾール(例えば、トリアゾール)、亜鉛塩、モリブデン酸塩、及びそれらの組合せが挙げられる。アゾールの具体例としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、及びメルカプトベンゾチアゾールが挙げられる。亜鉛塩の具体例としては、塩化亜鉛、硫酸亜鉛及び硝酸亜鉛が挙げられる。モリブデン酸塩の具体例としては、モリブデン酸ナトリウムなどのアルカリ土類金属モリブデン酸塩が挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、腐食防止剤は、置換及び/又は水素化ベンゾトリアゾール及びトリルトリアゾールであるか、又はそれらを含む。例えば、腐食抑制剤は、アルキルベンゾトリアゾール、アルキルトリルトリアゾール、アルコキシベンゾトリアゾール、アルコキシトリルトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、ニトロトリルトリアゾール、ハロベンゾトリアゾール、ハロトリルトリアゾール、水素化ベンゾトリアゾール、水素化トリトリアゾール、それらの酸若しくは塩、又はそれらの組合せを含み得る。腐食防止剤はリンを含有しない。
【0044】
アルキル又はアルコキシベンゾトリアゾールは、アゾールの窒素原子又は芳香環の炭素原子に結合した1~6個のアルキル置換基を有することができ、このアルキル置換基はC1~C12アルキル基であり得る。例えば、アルキルベンゾトリアゾールは、ブチルベンゾトリアゾール、ペンチルベンゾトリアゾール、ヘキシルベンゾトリアゾール、ヘプチルベンゾトリアゾール、オクチルベンゾトリアゾール、又はそれらの組合せを含み得る。
【0045】
アルキルトリルトリアゾールは、アゾールの窒素原子又は芳香環の炭素原子に結合した1~5個のアルキル置換基を有することができ、このアルキル置換基はC1~C12アルキル基であり得る。例えば、アルキルトリルトリアゾールは、ブチルトリルトリアゾール、ペンチルトリルトリアゾール、ヘキシルトリルトリアゾール、ヘプチルトリルトリアゾール、オクチルトリルトリアゾール、又はそれらの組合せを含み得る。
【0046】
固体水処理組成物は、前述のものに加えて又はその代わりに、イミダゾリン化合物、四級アンモニウム化合物、ピリジニウム化合物、又はそれらの組合せなどの他の腐食防止剤を利用してもよい。イミダゾリンは、例えば、エチレンジアミン(EDA)などのジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)等、及びトール油脂肪酸(TOFA)などの長鎖脂肪酸から誘導されるイミダゾリンであり得る。適切な四級アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩、テトラオクチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、フェニルトリメチルアンモニウム塩、フェニルトリエチルアンモニウム塩、セチルベンジルジメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、ジメチルアルキルベンジル四級アンモニウム塩、モノメチルジアルキルベンジル四級アンモニウム塩、又はトリアルキルベンジル四級アンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されず、アルキル基は、約6~約24個の炭素原子、約10~約18個の炭素原子、又は約12~約16個の炭素原子を有する。四級アンモニウム塩は、ベンジルトリアルキル四級アンモニウム塩、ベンジルトリエタノールアミン四級アンモニウム塩、又はベンジルジメチルアミノエタノールアミン四級アンモニウム塩であり得る。
【0047】
水処理組成物の腐食防止剤成分は、水処理組成物の総重量に基づいて、水処理組成物の約2重量%~約25重量%、例えば約8重量%~約25重量%、約10重量%~約20重量%、約10重量%~約15重量%、約12.5重量%~約17.5重量%、又は約15重量%~約20重量%を構成し得る。一例では、固体水処理組成物は、亜鉛含有化合物(例えば、亜鉛塩)、モリブデン酸塩含有化合物(例えば、モリブデン酸塩)、及びトリアゾール(例えば、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール)の群から選択される単一の腐食防止剤のみを含む。他の例では、固体水処理組成物は、亜鉛含有化合物(例えば、亜鉛塩)及びモリブデン酸塩含有化合物(例えば、モリブデン酸塩)のうちの少なくとも1つと、少なくとも1つのトリアゾール(例えば、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール)とを含む複数の腐食防止剤の組合せを含む。
【0048】
例えば、固体水処理組成物は、組成物の2重量%~15重量%、例えば、約4重量%~約6重量%、約5重量%~約8重量%、又は約10重量%~約12重量%の範囲の少なくとも1つのトリアゾールと、組成物の2重量%~15重量%、例えば、約4重量%~約6重量%、約5重量%~約8重量%、約8.5重量%~約11.5重量%、又は約10重量%~約12重量%の範囲の亜鉛含有化合物及びモリブデン酸塩含有化合物のうちの少なくとも1つとを含んでもよい。
【0049】
本開示による固体水処理組成物はまた、蛍光トレーサーを含んでもよい。蛍光トレーサーを含めることにより、処理される水中の組成物の量を決定及び/又は監視することが可能になる。これは、どの程度の量の処理組成物が水源に送達されているか、及び/又はどの程度の量の処理組成物が使用中に使い尽くされているかをオペレータが決定するのを助けることができる。蛍光光度計、UV分光計、又は他の蛍光物質検出装置を使用して、水源中の蛍光トレーサーの量、ひいては、その中の水処理組成物の比例量を決定することができる。そのような機器は、システム内の蛍光トレーサーの濃度を絶えず監視するために使用することができ、又は要求に応じて(例えば、ランダムに又は選択された間隔で)前述の濃度を監視するために使用することができる。
【0050】
蛍光トレーサーは、組成物に添加される別個の固体成分として、及び/又は上述のポリマーの1つに蛍光標識付け剤を添加することによって、組成物中に提供されてもよい。別個の成分として提供される場合、蛍光トレーサーは、水処理組成物の総重量に基づいて、水処理組成物の5重量%未満、例えば1重量%未満、又は0.5重量%未満、例えば約0.1重量%~約1重量%、又は約0.2重量%~約0.8重量%を構成することができる。蛍光トレーサーが別個の官能性ポリマー成分を標識付けすることによって提供される場合、蛍光トレーサーの重量は、組成物中の別個の官能性ポリマー成分の重量の一部として含めることができる。
【0051】
使用され得る例示的な固体蛍光トレーサーとしては、1,3,6.8-ピレンテトラスルホン酸ナトリウム塩、フルオレセイン、及びナフタレンジスルホン酸ナトリウム塩が挙げられる。具体例において、固体水処理組成物中で使用される蛍光トレーサーは、1,3,6.8-ピレンテトラスルホン酸ナトリウム塩である。
【0052】
標識付け剤が使用される場合、ポリマー化合物は、標識付け剤で標識付けされる(例えば、重合される)。標識付け剤は、本明細書に開示されるポリマーのいずれかに重合され得る。適切な標識付け剤としては、ナフタレン含有、アントラセン含有、キノリン含有、イソキノリン含有、インドール含有、ピレン含有、ベンズイミダゾール含有、クマリン含有、フルオレセイン含有、キノキサリン含有、キサンチリウム含有、ホウ素-ジピロメテン含有、ビマン含有、ローダミン含有、又はナフタルイミド含有である一つ又は複数のモノマーを挙げることができる。ポリマーを蛍光標識付けするために使用され得る具体的なモノマーとしては、4-メトキシ-N-(3-N’,N’-ジメチルアミノプロピル)ナフタルイミド(四級塩)、N-アリル-4-(2-N’,N’-ジメチルアミノエトキシ)ナフタルイミド(硫酸メチル四級塩)、4-メトキシ-N-(3-N’,N’-ジメチルアミノプロピル)ナフタルイミド(塩化アリル四級塩)、5-アリルオキシ-4’-カルボキシ-1,8-ナフトイレン、2’-ベンズイミダゾール、6-ビニルベンジルオキシ-4’-カルボキシ1,8-ナフトイレン、1’,2’-ベンズイミダゾール、4-メトキシ-N-(3-N’,N’-ジメチルアミノプロピル)ナフタルイミド(2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピルクワット)、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド及び2-(クロロメチル)キノリンの四級アンモニウム塩、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド及び9-(クロロメチル)アントラセンの四級アンモニウム塩、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド及び2-(クロロメチル)ベンズイミダゾールの四級アンモニウム塩、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド及び4-(ブロモメチル)ピレンの四級アンモニウム塩、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド及び1-(クロロメチル)ナフタレンの四級アンモニウム塩、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド及び先に列挙した蛍光発色団のハロ-アルキル誘導体の任意の追加の四級アンモニウム塩、又はポリマーのいずれかと重合することができる任意の他の蛍光分子が挙げられるが、これらに限定されず、標識付け剤は、ポリマーの約10mol%未満、例えば、ポリマーの約1mol%未満、約0.1mol%未満、又は約0.01mol%未満を構成し得る。
【0053】
本開示による固体の無リン系水処理組成物は、例えば、閾値pHを有する水処理組成物の溶解時に得られる溶液を提供するようにpH制御することができる。固体の無リン系水処理組成物のpHは、様々な方法で、例えば、配合された水処理組成物中の一つ又は複数の酸性化及び/又はアルカリ性構成成分の選択及び組込みによって、及び/又は固体組成物から形成された得られる溶液のpHを改変するように機能する組成物中の一つ又は複数の固体の無リンpH調整成分の組込みによって、pH制御することができる。使用される場合、一つ又は複数の固体の無リンpH調整成分はまた、組成物中の充填剤として機能してもよく、例えば、活性構成成分が分散される水処理組成物の体積を増加させ得る。
【0054】
異なる配合物において、固体水処理組成物に含まれるpH調整成分は、酸、塩基、及び/又は中性塩であってもよい。組成物中で使用される一つ又は複数のpH調整成分の選択及び相対量は、組成物中に含まれる他の具体的な構成成分及びそれらの他の構成成分によって提供される溶液pHに応じて変動し得る。使用され得る例示的なpH調整成分としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属重炭酸塩、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ土類金属硫酸塩、アルカリ金属重硫酸塩、アルカリ土類金属重硫酸塩、アルカリ金属及び/若しくはアルカリ土類金属ケイ酸塩、鉱酸、スルファミン酸、並びに/又は有機酸(例えば、乳酸、酢酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、尿酸、リンゴ酸、酒石酸)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、組成物中で使用される一つ又は複数のpH調整成分は、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ土類金属硫酸塩、アルカリ金属重硫酸塩、アルカリ土類金属重硫酸塩、スルファミン酸、アルカリ土類金属炭酸塩、クエン酸、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0055】
一つ又は複数のpH調整成分は、固体形態で提供することができ、固体水処理組成物に含まれる他の構成成分に組み込むことができる。一つ又は複数のpH調整成分は、含水形態又は無水形態であってもよい。無水pH調整成分の使用は、得られる固体水処理組成物の吸水性を低下させるのに役立つ場合があり、これは、固体水処理組成物の安定性(例えば、輸送及び貯蔵中)を助けることができる。
【0056】
固体の無リン系水処理組成物の構成成分(一つ又は複数のpH調整成分の添加あり又はなし)は、標的pH閾値を達成する、及び/又は標的pH範囲内にある、得られる溶液を形成するために有効であり得る。例えば、固体組成物が2重量%(溶液中の固体組成物の重量を、固体組成物と溶液を形成する水とを合わせた重量で割った値)の濃度で溶解される場合、得られる溶液のpHは、少なくとも0.5、例えば、少なくとも1.0、少なくとも1.5、少なくとも2.0、少なくとも2.5、少なくとも3.0、少なくとも3.5、少なくとも4.0、又は少なくとも4.5であり得る。追加的又は代替的に、得られる溶液のpHは、6.0未満、例えば5.0未満、4.5未満、4.0未満、3.5未満、3.0未満、又は2.5未満であり得る。いくつかの例では、得られる溶液のpHは、約1.0~約5.0、例えば約1.5~約4.5、約2.0~約4.0、約2.0~約3.0、又は約3.0~約4.0の範囲内である。前述のpH値は、2重量%の具体的な例の濃度で論じられているが、固体水処理組成物は、本開示の範囲から逸脱することなく、実際には他の濃度レベルで使用することができる。
【0057】
固体水処理組成物に含まれる一つ又は複数のpH調整成分(使用される場合)の量は、組成物の他の構成成分によって生成されるpH、並びに標的pH閾値及び/又は標的pH範囲に応じて変動し得る。いくつかの例では、組成物のpH調整成分は、水処理組成物の総重量に基づいて、水処理組成物の約5重量%~約30重量%、例えば約5重量%~約15重量%、約8重量%~約12重量%、約12.5重量%~約17.5重量%、又は約20重量%~約30重量%の範囲の量で存在する。
【0058】
固体の無リン系水処理組成物は、様々な他の任意選択の添加剤を含み得る。一例として、組成物は殺生物剤を含んでもよい。水処理組成物は、水処理組成物の総重量に基づいて、水処理組成物の1重量%未満、例えば約0.5重量%未満、又は約0.2重量%未満、例えば約0.01重量%~約0.2重量%の殺生物剤を有することができる。適切な殺生物剤としては、酸化及び非酸化殺生物剤が挙げられるが、これらに限定されない。適切な非酸化殺生物剤としては、例えば、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、及びアクロレイン)、アミン型化合物(例えば、四級アミン化合物及びココジアミン)、ハロゲン化化合物(例えば、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-3-ジオール)(ブロノポール)及び2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、硫黄化合物(例えば、イソチアゾロン、カルバメート、及びメトロニダゾール)が挙げられる。適切な酸化殺生物剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸リチウム、塩素化ヒダントイン、安定化次亜臭素酸ナトリウム、活性臭化ナトリウム、臭素化ヒダントイン、二酸化塩素、オゾン、及び過酸化物が挙げられる。
【0059】
別の例として、固体の無リン系水処理組成物は、界面活性剤を含んでもよい。組成物は、組成物の総重量に基づいて、約0.1~10重量%、約0.5~5重量%、又は約0.5~4重量%の界面活性剤を含み得る。適切な界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。アニオン性界面活性剤としては、アルキルアリールスルホネート、オレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、アルコールサルフェート、アルコールエーテルサルフェート、アルキルカルボキシレート及びアルキルエーテルカルボキシレート、並びにアルキル及びエトキシル化アルキルリン酸エステル、並びにモノ及びジアルキルスルホサクシネート及びスルホサクシネートが挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、アルコールアルコキシレート、アルキルフェノールアルコキシレート、エチレン、プロピレン及びブチレンオキシドのブロックコポリマー、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキル-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシド、アルキルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、アルキルアミドプロピル-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシド、アルキルポリグルコシド、ポリアルコキシル化グリセリド、ソルビタンエステル及びポリアルコキシル化ソルビタンエステル、並びにアルキルポリエチレングリコールエステル及びジエステルが挙げられる。他の例では、組成物は界面活性剤を含まない。
【0060】
別の例として、固体の無リン系水処理組成物は、充填剤及び/又は結合剤を含んでもよい。使用され得る例示的な充填剤及び/又は結合剤としては、アルカリ金属炭酸塩と共に、水和アミノカルボキシレート、水和ポリカルボキシレート又は水和アニオン性ポリマー、水和クエン酸塩又は水和酒石酸塩などの水和キレート剤が挙げられる。例えば、使用され得る例示的な充填剤としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ケイ酸塩、デンプン、糖、プロピレングリコールなどのC1~C10アルキレングリコール、及び同様のものなどが挙げられる。使用され得る例示的な結合剤としては、炭酸塩、アミノカルボキシレート、及び同様のものなどの有機アセテートが挙げられる。他の例では、組成物は、別個の充填剤及び/又は結合剤を含まない。
【0061】
以下の表1は、本開示による例示的な固体の無リン系水処理組成物を配合するために使用され得る例示的な構成成分を提供する。表は、組成物中の各成分についての例示的な重量範囲と共に、各組成物成分に一つ又は複数を使用することができる例示的な分子を含む。組成物は、表中の成分及び/又は化学物質を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれらからなってもよい。
【表1】
【0062】
本開示による固体の無リン系水処理組成物の個々の構成成分を組み合わせて、固体ブロックなどの固体構造体に形成することができる。固体は、プレス、キャスティング、及び/又は押出成形などの様々な技術によって形成することができる。構成成分は、液体形態で得られてもよく、及び/又は液体形態で得られ、乾燥されてもよい(例えば、噴霧乾燥、ドラム乾燥、オーブン乾燥、又は液体成分を固体に変換して粉末にする他の乾燥方法を介して)。
【0063】
固体の無リン系水処理組成物は、乾燥構成成分を適切な比でブレンドするか、又は材料を適切な凝集システムで凝集させることによって作製され得る。ペレット化された材料は、固体顆粒又は凝集した材料を適切なペレット化機器で圧縮して、適切にサイズ決めされたペレット化された材料を生じることによって製造され得る。固体ブロック及びキャスト固体ブロック材料は、予備硬化された材料のブロック又は容器内で固体ブロックに硬化するキャスト可能な液体のいずれかを容器に導入することによって作製され得る。容器の例としては、使い捨てプラスチック容器又は水溶性フィルム容器が挙げられる。組成物のための他の好適な包装には、可撓性バッグ、小包、収縮ラップ、及びポリビニルアルコールなどの水溶性フィルムが挙げられる。
【0064】
固体の無リン系水処理組成物は、バッチ又は連続混合システムを使用して形成され得る。一例では、一軸又は二軸スクリュー押出機を使用して、高剪断で一つ又は複数の成分を組み合わせて混合し、均一な混合物を形成する。いくつかの実施形態では、加工温度は、構成成分の融解温度以下である。加工された混合物は、形成、キャスティング、又は他の好適な手段によって、混合器から分注され得、そこで、組成物が固体形態に硬化する。マトリックスの構造は、その硬度、融点、材料分布、結晶構造、及び当該技術分野において既知の方法による他の同様の特性に従って、特徴評価され得る。概して、本開示に従って処理される固体組成物は、その質量全体にわたる成分の分布に関して実質的に均一であり、寸法的に安定である。
【0065】
押出プロセスでは、一つ又は複数の液体及び/又は固体成分が最終混合システムに導入され、成分がその質量全体にわたって分布する実質的に均一な半固体混合物を形成するまで連続的に混合される。混合物は、次いで、混合システムからダイ若しくは他の成形手段の中へ、又はそれを通して排出される。生成物は、次いで、包装される。
【0066】
キャスティングプロセスでは、一つ又は複数の液体及び/又は固体成分が最終混合システムに導入され、成分がその質量全体にわたって分布する実質的に均一な液体混合物を形成するまで連続的に混合される。混合が完了すると、生成物は、包装容器に移され、そこで固化が起こる。
【0067】
プレス固体プロセスでは、顆粒固体又は他の粒子固体などの流動性固体は、圧力下で合わせられ得る。プレス固体プロセスでは、組成物の流動性固体は、型枠(例えば、型又は容器)内に配置される。本方法は、流動性固体を型枠内で穏やかにプレスして、無リン系水処理組成物を生成することを含み得る。圧力は、ブロック機械又は回転式プレスなどによって加えられ得る。圧力は、約1~約2000psi、約1~約300psi、約5psi~約200psi、又は約10psi~約100psiで適用され得る。ある実施形態では、本方法は、約1psi以上、約2以上、約5psi以上、又は約10psi以上程度の低い圧力を用い得る。本明細書で使用される場合、「psi」又は「平方インチ当たりのポンド」という用語は、プレスされている流動性固体に加えられる実際の圧力を指し、プレスしている装置のある点で測定されるゲージ又は水圧を指さない。本方法は、固体の無リン系水処理組成物を製造するための硬化ステップを含み得る。本明細書で言及される場合、流動性固体を含む未硬化組成物は、流動性固体を構成する粒子間に、未硬化組成物が固化して安定した固体組成物になるのに十分な表面接触を提供するように圧縮される。十分な量の互いに接触している粒子(例えば、顆粒)は、安定した固体組成物を作製するために効果的な粒子の互いへの結合を提供する。硬化ステップの包含は、プレス固体を、ある期間、例えば数時間、又は約1日間(又はそれよりも長い)にわたって固化させることを含み得る。更なる態様では、本方法は、型枠又は型内の流動性固体を振動させることを含み得る。
【0068】
「固体」という用語は、硬化した組成物が流動せず、適度な応力若しくは圧力又は単なる重力の下でその形状を実質的に保持することを意味する。固体は、粉末、フレーク、顆粒、ペレット、錠剤、ロゼンジ、円盤、ブリケット、レンガ、固体ブロック、単位用量、又は当業者に既知である別の固体形態などの様々な形態であり得る。固体キャスト組成物及び/又はプレス固体組成物の硬度の程度は、例えば、コンクリートのように比較的密で硬い融合固体生成物の硬度から、硬化ペーストであるとして特徴評価される密度までの範囲であり得る。
【0069】
加えて、「固体」という用語は、固体組成物の予想される貯蔵及び使用条件下での組成物の状態を指す。本開示による固体組成物は、高温及び高湿の貯蔵条件下で寸法安定性を維持し得る。例えば、固体組成物は、50℃の温度及び70%の相対湿度で、少なくとも1ヶ月の期間、例えば少なくとも2ヶ月、少なくとも6ヶ月、又は少なくとも1年(例えば、1ヶ月~1年の期間)にわたって寸法安定性を維持し得る。「寸法安定性」という用語は、固体組成物が、対象期間にわたって包装保護外の記載された環境条件に曝露された場合に、いずれの測定寸法においても1%を超えてサイズが変化しないことを意味する。
【0070】
得られる固体の無リン系水処理組成物は、以下のものに限定されないが、キャスト固体生成物;押出、成形、若しくは形成された固体ペレット、ブロック、錠剤、粉末、顆粒、フレーク;プレスされた固体を含む形態を取り得るか、又は形成された固体は、その後、粉砕され得るか、若しくは粉末、顆粒、若しくはフレークへと形成され得る。いくつかの例では、水処理組成物は、少なくとも10グラム、例えば少なくとも100グラム、少なくとも1kg、又は少なくとも10kgの重量を有する固体に形成される。例えば、組成物は、1~100キログラム、例えば1~25kgの質量を有する固体に形成され得る。
【0071】
固体組成物は、機能性材料の安定化された供給源を提供する。いくつかの実施形態では、固体組成物は、例えば、水性媒体に溶解されて、濃縮溶液を生じ得る。溶液は、後の使用及び/若しくは希釈のために貯水槽へと向けられ得るか、又は使用点に対して直接適用され得る。例えば、冷却水用途では、固体の無リン処理組成物を溶解して濃縮溶液を形成することができる。水に溶解した固体組成物の量は、水と処理組成物とを合わせた重量に基づいて、0.1重量%~5重量%から約1重量%~約3重量%の範囲の処理組成物の濃度を有する濃縮溶液を生成するのに有効であり得る。多くの用途では、水だめ(sump)の実際のサイズは、数リットル(例えば、2~4リットル)~約20リットルの範囲であり得るが、他のサイズの用途もまた可能である。
【0072】
固体の無リン系水処理組成物は、組成物が添加される水に実質的に完全に溶解し得る。例示的な組成物は、それが添加される水において約100%の溶解度を示し得る。この組成物は、1時間以下、例えば30分以下、15分以下、10分以下、5分以下、2分以下、1分以下、30秒以下、20秒以下、10秒以下、又は5秒以下の期間にわたって固体組成物が添加される水に溶解し得る。固体組成物が添加される水は、溶解を補助及び加速するために任意選択で混合されてもよい。組成物が添加される水の温度は変化してもよく、いくつかの例では、20℃~80℃、例えば20℃~30℃、30℃~40℃、40℃~50℃、50℃~60℃、60℃~70℃、又は70℃~80℃の範囲であってもよい。
【0073】
本明細書に開示される固体の無リン系水処理組成物は、脱塩システム、冷却システム(例えば、冷却塔、ラジエータ、ヒートパイプなど)、パイプ、掘削機器(例えば、ドリルストリング、掘削泥水など)、トラッキング及びフラッキング機器、製紙又はパルプ加工システム、廃水処理システム、浄水システム、食器洗浄、蒸発器、凝縮器、濾過、採鉱、軟水化、ポンプ、貯蔵容器、又は水源を使用するか、若しくはその中の一つ又は複数の表面と接触する任意の他のシステムなどの水含有システムにおいて使用することができる。使用中、水源のスケール及び/又は形成及び/又は腐食促進成分が(例えば、蒸発によって)濃縮し、及び/又は熱衝撃が起こると、腐食条件が強まり、腐食が開始し、水含有システムの表面上にそれと接触している水源からスケールが堆積する。そのような表面は、パイプ、貯蔵容器、ラジエータ、ヒートパイプ、フィルタ、ダイジェスタ、凝縮器の内部、冷却塔の外部、又は水源に接触する任意の他の表面を含み得る。水含有システムの表面は、金属、プラスチック、ガラス、ゴム若しくはラテックス、ガラス繊維、コンクリート若しくは石、又は水を保持、輸送、若しくは濾過するのに適した任意の他の材料を含み得る。
【0074】
本明細書に開示される固体の無リン系水処理組成物で処理される水含有システムの表面は、金属、例えば、鉄、鋼(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼、又は亜鉛めっき鋼)、銅、鉛、亜鉛(例えば、陽極酸化パイプ)、アルミニウム、又は水含有システムでの使用に適した任意の他の金属;プラスチック、例えば、ポリエチレン(例えば、PEX)、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリルブタジエンスチレンなど;ガラス(例えば、ガラス貯蔵容器)、ゴム若しくはラテックス(ゴムホース若しくはゴムチューブ);ガラス繊維;コンクリート若しくは石;又は水を保持、輸送、若しくは濾過するのに適した任意の他の材料を含み得る。「炭素鋼」という用語は、鉄との主要な合金成分が炭素である鋼を意味し、炭素鋼は、約0.1%~約2.1重量%の炭素を含む。
【0075】
本明細書に開示される組成物を使用して処理される水源は、その中に一つ又は複数の腐食物/スケール形成剤を含んでもよく、一つ又は複数の腐食物/スケール形成剤は、二酸化炭素、硫化水素、有機硫黄化合物、金属カチオン、金属錯体、例えば水性金属カチオン、金属キレート及び/又は有機金属錯体、アルミニウムイオン、アンモニウムイオン、バリウムイオン、クロムイオン、コバルトイオン、第一銅イオン、第二銅イオン、カルシウムイオン、第一鉄イオン、第二鉄イオン、水素イオン、鉛イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、モリブデンイオン、ニッケルイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、ストロンチウムイオン、チタンイオン、ウランイオン、バナジウムイオン、亜鉛イオン、臭化物イオン、炭酸イオン、塩素酸イオン、塩化物イオン、亜塩素酸イオン、亜ジチオン酸イオン、フッ化物イオン、次亜塩素酸イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、酸化物イオン、過塩素酸イオン、過酸化物イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、硫酸イオン、硫化物イオン、亜硫酸イオン、炭酸水素イオン、リン酸水素イオン、亜リン酸水素イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸水素イオン、炭酸、塩酸、硝酸、硫酸、亜硝酸、亜硫酸、ペルオキシ酸、リン酸、アンモニア、臭素、二酸化炭素、塩素、二酸化塩素、フッ素、塩化水素、硫化水素、ヨウ素、二酸化窒素、一酸化窒素、酸素、オゾン、二酸化硫黄、過酸化水素、多糖類、又はそれらの組合せを含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなる。水源中の各腐食物/スケール形成剤又は一つ又は複数の腐食物/スケール形成剤の総量は、少なくとも約10ppm、例えば少なくとも約50ppm、少なくとも約100ppm、少なくとも約300ppm、少なくとも約500ppm、少なくとも約1000ppm、少なくとも約2000ppm、少なくとも約5000ppm、少なくとも約10,000ppm、少なくとも約20000ppm、又は約100,000ppm未満の濃度で存在し得る。
【0076】
本明細書に開示される固体の無リン系水処理組成物は、腐食、例えば、腐食物又は腐食を引き起こし得る腐食条件を含む水源と表面との接触によって引き起こされる腐食を阻害し得る。本明細書に開示される固体の無リン系水処理組成物はまた、スケール、例えば炭酸カルシウム;炭酸マグネシウム;硫酸カルシウム;硫酸バリウム;炭酸バリウム;フッ化カルシウム;カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、又は鉄のケイ酸塩;などから形成されるスケール;又は水性システムにおいて形成することが知られている任意の他のスケールの形成を阻害し得る。先に開示した固体の無リン系水処理組成物は、リン又はリン含有化合物(例えばリン酸塩)を使用することなく、これらの機能を果たす。
【0077】
いくつかの用途では、水源のpHは、7~14、例えば、約7~約10、約10~14、約9~約11、約7~約9、又は約7~約8である。いくつかの他の用途では、水源のpHは、0~7、例えば、約1~約6、5~6、4~5、3~4、2~3、又は1~2である。
【0078】
いくつかの実施形態では、固体の無リン系水処理組成物が使用される原水は、ウォータージャケット、ラジエータ、パイプ、ヒートパイプ、ポンプ、冷却塔などのうちの一つ又は複数を含む冷却システムである。水源が水含有システムを通って循環し、その一つ又は複数の部分で蒸発するにつれて、全溶解固形分は、システムを通る各サイクルで徐々に濃縮される。その中の腐食性/スケーリング物質は、未処理のままである場合、それらが接触している表面を腐食及び/又はスケーリングし始める濃度に達する可能性がある。水源の構成(例えば、pH及び/又は溶解固体)によって引き起こされる腐食(例えば、孔食若しくは酸化)及び/又はスケーリングを抑制又は防止するために、固体の無リン系水処理組成物を原水に添加してもよい。
【0079】
水源及びそこに添加される無リン系水処理組成物は、閉鎖系又は開放系で維持されてもよく、系の外部からの追加の水(例えば、補給水)で増強されてもよく、及び/又は系から循環されて(例えば、ブローダウン水)、系の外部からの追加の水及び/又は無リン系水処理組成物で置き換えられてもよい。水源及び/又は水処理組成物のそのような維持、増強、及び除去により、使用者が水源中の組成物の濃度及び/又は水含有システム中の腐食又はスケーリングの量又は速度を選択的に制御することが可能になる。
【0080】
一用途では、腐食及びスケールを抑制する方法は、本明細書に開示されるもののいずれかなどの固体の無リン系水処理組成物を分配することを含む。本方法は、本明細書に開示される任意の水源などの水源を提供するステップを含んでもよい。本方法は、固体の無リン系水処理組成物を水源に分配することを含む。いくつかの例では、固体の無リン系水処理組成物は、粉砕機又は他の機械デバイスを使用して、より大きな固体ブロックを粉末又は小さな固体ブロックに縮小することによってサイズ縮小され、溶解のための固体の表面積を増加させる。いずれの場合も、固体組成物は、例えば、固体を原水中に置くこと、及び/又は原水を固体上に噴霧することによって、原水と混合することができる。組成物と原水との組合せを混合してもよい。混合は、バッチ式、連続的、又は漸増的(例えば、補足的、オンデマンド、又は監視された)添加のうちの一つ又は複数を含んでもよい。
【0081】
固体の無リン系水処理組成物は、水源中で様々な濃度レベルで、例えば、水処理組成物の約0.05ppm~約1000ppm(例えば、0.05ppm~約50ppm)、例えば、約0.05ppm~約10ppm、約0.05ppm~約3ppm、約0.05ppm~約5ppm、約1ppm~約5ppm、約2ppm~約10ppm、約5ppm~約20ppm、約15ppm~約30ppm、約20ppm~約40ppm、約30ppm~約50ppm、約50ppm~約100ppm、約1ppm~約30ppm、約10ppm~約100ppm、約50ppm~約500ppm、約100ppm~約1000ppm、約1000ppm未満、約500ppm未満、約100ppm未満、約30ppm未満、約10ppm未満、又は約5ppm未満の濃度で使用され得る。
【0082】
本方法は、本明細書に開示される任意の水含有システム又はその構成要素などの水含有システムを通して、処理組成物及び水を循環させることを含んでもよい。例えば、混合物は、ウォータージャケット又は配管を通して循環されてもよい。一実施形態では、本方法は、水含有システムを通して混合物を再循環させることと、システム内の処理組成物含有量及び/又は水を選択的に増強させて、処理組成物の濃度を維持、減少、又は増加させることとを含む。処理組成物の濃度は、使用中に、水源中の濃度を決定するための蛍光剤及び機器(例えば、蛍光光度計)の使用によって監視されてもよい。
【0083】
以下の実施例は、本開示による組成物及び技術に関する更なる詳細を提供し得る。
【実施例】
【0084】
N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、Nalco Water社、Ecolab社から市販されている標識付き高応力ポリマー(tHSP2)、ベンゾトリアゾール、及び塩化亜鉛を含む一連の固体の無リン系水処理組成物を作製した。組成物を3重量%の濃度で水に溶解した。組成物を高pHで水に溶解した。pHをpH10からpH2まで徐々に調節した。試験したパラメーターpHの結果は、pHが約6を超える場合に混濁した溶液を示し、組成物の成分間の不相溶性及び/又は不完全な溶解を示した。約6以下のpHで開始すると、溶液は透明になり、良好な腐食/スケール制御性能のための成分の完全な溶解を示した。
【国際調査報告】