(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】EUVリソグラフィ用の強化された超薄型・超低密度フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/62 20120101AFI20240925BHJP
【FI】
G03F1/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516720
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 US2022044908
(87)【国際公開番号】W WO2023055739
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516124627
【氏名又は名称】リンテック オブ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】LINTEC OF AMERICA, INC.
【住所又は居所原語表記】15930 S. 48th Street, Suite 110, Phoenix, Arizona 85048, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】リマ マルシオ ディー
(72)【発明者】
【氏名】植田 貴洋
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA10
2H195BC33
2H195BC34
(57)【要約】
濾過形成されたナノ構造ペリクルフィルムが開示されている。濾過形成されたナノ構造ペリクルフィルムは、プラズマ処理によって特性が向上した相互接続されたネットワーク構造を平面配向で形成するようにランダムに交差する複数のカーボンナノファイバを含む。相互接続された構造は、3nmの下限から100nmの上限の厚さにより、少なくとも92%の高い最小EUV透過率を可能にし、効果的なEUVリソグラフィ処理を可能にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極端紫外線(EUV)フォトリソグラフィナノチューブフィルムであって、
ランダムに交差されて、相互接続されたネットワーク構造を平面配向で形成する複数のナノチューブであって、前記相互接続されたネットワーク構造が、
a)少なくとも3nmの下限から最大で100nmの上限までの厚さと、92%の最小EUV透過率とを有し、
b)活性ガス、処理電力、及び処理時間間隔を用いてプラズマ処理される、前記複数のナノチューブ、
を備える、前記EUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項2】
前記厚さが、3nmの前記下限から40nmの前記上限までの範囲である、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項3】
前記厚さが、3nmの前記下限から20nmの前記上限までの範囲である、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項4】
前記相互接続されたネットワーク構造の平均厚さが、10.7nm~11.9nmである、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項5】
EUV透過率が95%以上に達する、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項6】
前記複数のナノチューブは、さらに、単一壁カーボンナノチューブ、二重壁カーボンナノチューブ、及び多壁カーボンナノチューブを含み、
前記単一壁カーボンナノチューブの壁の数は1であり、前記二重壁カーボンナノチューブの壁の数は2であり、前記多壁カーボンナノチューブの壁の数は3以上である、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項7】
前記単一壁カーボンナノチューブは、全てのナノチューブの20~40%の割合を占め、前記二重壁カーボンナノチューブは、全てのナノチューブの50%以上の割合を占め、残りのナノチューブは前記多壁カーボンナノチューブである、請求項6に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項8】
前記フィルムが、10mm×10mm以上の面積サイズの自立部を有する、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項9】
前記フィルムが、110mm×140mmmm以上の面積サイズの自立部を有する、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項10】
極端紫外線(EUV)フォトリソグラフィナノチューブフィルムを改善する方法であって、
相互接続ネットワーク構造を平面配向で形成するようにランダムに交差させた複数のカーボンナノチューブを有するフィルムを取得することであって、前記相互接続ネットワーク構造が、少なくとも3nmの下限から最大で100nmの上限までの厚さと、88%の最小EUV透過率とを有し、開口を備えた境界上に取り付けられ、前記境界の前記開口全体を覆う、前記取得することと、
前記フィルムに、活性ガス、35ワット以下の処理電力、及び30秒以下の処理時間間隔を用いたプラズマ処理を施すことと、
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記フィルムが、3nmの前記下限から40nmの前記上限までの厚さを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記フィルムが、10nmの前記下限から20nmの前記上限までの厚さを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記フィルムの平均厚さが、10.7nm~11.9nmである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記活性ガスが、酸素、水素、または大気である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記ナノチューブフィルムが、少なくとも10mm×10mmの面積側面の自立部を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記プラズマ処理電力が、30秒以下の処理時間間隔で35ワットを超えない、請求項1に記載のEUVフォトリソグラフィナノチューブフィルム。
【請求項17】
前記ナノチューブフィルムが、少なくとも110mm×140mmの面積サイズの自立部を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記プラズマ処理電力が、10秒以下の前記処理時間間隔で18ワットを超えない、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記プラズマ処理電力が、10秒以下の前記処理時間間隔で16ワットを超えない、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記活性ガスが酸素ガスであり、前記処理電力が15ワットであり、前記処理時間間隔が8秒以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記ナノチューブは、さらに、単一壁カーボンナノチューブ、二重壁カーボンナノチューブ、及び多壁カーボンナノチューブを含み、
前記単一壁カーボンナノチューブのそれぞれに含まれる壁の数が1であり、前記二重壁カーボンナノチューブのそれぞれに含まれる壁の数が2であり、前記多壁カーボンナノチューブのそれぞれに含まれる壁の数が3以上である、請求項10に記載の方法。
【請求項22】
前記単一壁カーボンナノチューブは、全てのカーボンナノチューブの20~40%の割合を占め、前記二重壁カーボンナノチューブは、全てのカーボンナノチューブの50%以上の割合を占め、残りのカーボンナノチューブは前記多壁カーボンナノチューブである、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月28日に出願された米国仮特許出願第63/249,113号に対する優先権を主張するものである。明細書、図面、及び特許請求の範囲を含むこれらの文書のそれぞれの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、半導体マイクロチップ製造に用いられる薄膜及び薄膜デバイスに関し、より詳細には、極端紫外線(EUV)リソグラフィ用に機械的特性が強化された超薄型、超低密度、ナノ構造の自立式ペリクルフィルム、ならびにそのようなペリクル及びペリクルフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ペリクルは保護装置である。ペリクルは、フォトマスクを覆い、半導体マイクロチップ製造において用いられる。フォトマスクは、画定されたパターンに光が差し込まれるようにする孔または透明度を伴う不透明なプレートのことを指し得る。このようなフォトマスクは、フォトリソグラフィ及び集積回路の製造において広く用いられ得る。マスターテンプレートとして、フォトマスクを用いて基板(通常は、半導体チップ製造の場合にウェハーとして知られるシリコンの薄いスライス)上にパターンを生成する。
【0004】
半導体製造では、粒子汚染は重大な問題となる可能性がある。フォトマスクは、ペリクル(フォトマスクのパターニングされた側を覆って取り付けられたフレーム上で広げられる薄い透明フィルム)によって粒子から保護される。ペリクルはマスクに近いが十分に離れているため、ペリクル上に付着する中~小サイズの粒子は、焦点が外れすぎて印刷されない。近年、マイクロチップ製造業界は、ペリクルが、粒子及び汚染物質以外の原因から生ずる損傷からフォトマスクを保護し得ることに気付いた。
【0005】
極端紫外線リソグラフィは、EUV波長の範囲(より具体的には、13.5nm波長)を用いる高度な光リソグラフィ技術である。これにより、半導体マイクロチップ製造業者は、7nm以下の解像度でほとんどの精巧な特徴部をパターニングして、必要なスペースのサイズを増加させることなくさらに多くのトランジスタを配置することができる。EUVフォトマスクは光を反射させることによって機能する。光の反射は、モリブデン及びシリコンの複数の交互層を用いることによって実現される。EUV光源に電源が投入されると、EUV光は最初にペリクルフィルムに当たり、ペリクルフィルムを通過してから、次にフォトマスクの真下から反射して戻り、もう一度ペリクルフィルムに当たった後に、マイクロチップを印刷するその経路を進む。このプロセスの間にエネルギーの一部が吸収され、その結果、熱が生成され、吸収され、蓄積され得る。ペリクルの温度は、600~1000℃以上にまで上がる場合がある。
【0006】
耐熱性は重要ではあるが、ペリクルはまた、フォトマスクからの反射光及び光パターンの通過を確実にするために、EUV光に対して非常に透明でなくてはならない。
【0007】
2016年に、ポリシリコンベースのEUVペリクルが数10年の研究及び取り組みの後に開発されたが、シミュレートした比較的低出力の175ワットEUV源に対してEUV透過率はわずか78%であった。トランジスタ密度増加の要望により、より高い透過率、より低い透過率変動、より高い温度許容度、及び強い機械的強度のための厳しい要件が、EUVペリクル開発者に、さらなる技術的課題を提起している。
【0008】
カーボンナノチューブ(CNT)をペリクルフィルムの形成に導入することによって、より高いEUV透過率(例えば、90%、95%、またはさらには98%)を目標とする試みが行われている。しかしながら、EUVリソグラフィスキャナチャンバ内でより高いEUV透過率を有する薄膜を生成し利用するためには、製品のパッケージング、輸送、及びスキャナポンプダウン及び通気の間に、何らかの圧力障害または機械的振動がフィルムの修復不可能な破損を引き起こし得るので、フィルムの機械的強度のさらなる向上が必要とされる。したがって、既存の技術では、EUVリソグラフィスキャナに用いるのに十分な機械的強度を有する高いEUV透過率を有するペリクルフィルムを製造して提供することができない。
【0009】
さらに、EUVスキャナ向けの著しく大きなフィルムサイズ、例えば、110mm×140mmまたはそれ以上のフルサイズのペリクルフィルムに対する要求は、超薄型高EVU透過状態を維持しながら、機械的強度の要件に関するさらなる課題を提起する。
【0010】
したがって、従来技術では、EUV光の高い透過率、ペリクルフィルムの超薄膜化、及び強い機械的強度の3つの要因を一実施形態において特徴付けることは、多くの場合、それ自体で相反することとなり、EUVペリクルの開発を著しく抑制する。
【0011】
膜フィルム強度を増加させる既存の方法は、このような薄膜を製造する際に有効ではない。
【発明の概要】
【0012】
本開示の態様により、特異的に構造化されたナノチューブフィルムが開示される。本ナノチューブフィルムは、相互接続ネットワーク構造を平面配向で形成するようにランダムに交差させた複数のカーボンナノチューブを含み、相互接続ネットワーク構造は、少なくとも3nmの下限から最大で100nmの上限までの厚さと、92%以上の最小EUV透過率とを有する。
【0013】
本開示の別の態様によれば、いくつかの実施形態では、厚さは、3nmの下限から40nmの上限までの間である。
【0014】
本開示の別の態様によれば、いくつかの実施形態では、厚さは、3nmの下限から20nmの上限までの間である。
【0015】
本開示のさらに別の態様によれば、いくつかの実施形態では、相互接続ネットワーク構造の平均厚さは、10.7nm~11.9nmである。
【0016】
本開示のさらなる態様によれば、いくつかの実施形態では、EUV透過率は、95%超に達する。
【0017】
本開示のさらに別の態様によれば、いくつかの実施形態では、EUV透過率は、98%超に達する。
【0018】
本開示のさらなる態様によれば、複数のカーボンナノファイバは、さらに、単一壁カーボンナノチューブ及び多壁カーボンナノチューブを含む。単一壁カーボンナノチューブの壁の数は1であり、二重壁カーボンナノチューブの壁の数は2であり、多壁カーボンナノチューブの壁の数は3以上である。
【0019】
本開示の別の態様によれば、単一壁カーボンナノチューブは、全てのカーボンナノチューブの20~40%の割合を占め、二重壁カーボンナノチューブは、全てのカーボンナノチューブの50%以上の割合を占め、残りのカーボンナノチューブは多壁カーボンナノチューブである。
【0020】
本開示のさらなる態様によれば、ナノチューブフィルムは、プラズマ処理によって、さらに処理される。
【0021】
本開示のさらなる態様によれば、ナノ構造フィルムのプラズマ処理は、水素または酸素からガスを選択する。
【0022】
本開示の別の態様によれば、ペリクルは、プラズマ処理を受ける。
【0023】
本開示の別の態様によれば、ペリクルのプラズマ処理は、酸素、水素、または大気から選択される活性ガスを適用する。
【0024】
本開示の別の態様によれば、プラズマ処理は、処理時間間隔、処理電力、及びガスの種類によって規定されて軽度である。
【0025】
本開示のさらなる態様によれば、処理時間間隔は、1~60秒であり、好ましい処理時間間隔は、5~20秒である。
【0026】
本開示の一態様によれば、プラズマ処理は、15ワット~35ワットの電力を印加する。
【0027】
本開示のさらなる態様によれば、プラズマ処理電力は、15ワット~20ワットの間である。
【0028】
本開示の一態様によれば、小サイズの10mm×10mmペリクルフィルムのプラズマ処理は、15ワット~35ワットの範囲内であってもよく、処理時間間隔は50秒を超えない。
【0029】
本開示の別の態様によれば、小サイズの10mm×10mmペリクルフィルムのプラズマ処理は、好ましくは15ワット~20ワットの範囲内であってもよく、処理時間間隔は5~20秒である。
【0030】
本開示の一態様によれば、プラズマ処理は、フルサイズ以上のペリクルフィルムに対して、15~25ワットの電力を印加する。
【0031】
本開示の別の態様によれば、プラズマ処理は、フルサイズ以上のペリクルフィルムに対して、22ワット以下の電力を印加する。
【0032】
本開示の別の態様によれば、プラズマ処理は、550nmの光透過率が89%を超えるフルサイズ以上の超薄型ペリクルフィルムに対して、10~20ワットの電力を印加する。
【0033】
本開示の別の態様によれば、プラズマ処理は、550nmの光透過率が89%を超えるフルサイズ以上の超薄型ペリクルフィルムに対して、15~16ワットの電力を印加する。
【0034】
本開示の一態様によれば、プラズマ処理時間間隔は、フルサイズのペリクルフィルムに対して、25秒以下である。
【0035】
本開示の別の態様によれば、プラズマ処理時間間隔は、フルサイズのペリクルフィルムに対して、22秒以下である。
【0036】
本開示の別のさらなる態様によれば、550nmの光透過率が89%を超えるフルサイズ以上の超薄型ペリクルフィルムに対して、プラズマ処理時間間隔は6~15秒である。
【0037】
本開示のさらに別のさらなる態様によれば、550nmの光透過率が89%を超えるフルサイズ以上の超薄型ペリクルフィルムに対して、プラズマ処理時間間隔は6~15秒である。
【0038】
本開示のさらなる一態様によれば、550nmの光透過率が89%を超えるフルサイズ以上の超薄型ペリクルフィルムに対して、プラズマ処理時間間隔は6秒または10秒である。
【0039】
本開示を、以下の詳細な説明において、本開示の好ましい実施形態の非限定的な例として言及した複数の図面を参照して、さらに説明する。図面の複数の図の全体にわたって同様の文字は同様の構成要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】例示的な実施形態による、プラズマ処理されたナノチューブペリクルフィルムを製造するフローチャートを示す。
【
図2】例示的な実施形態による、未処理CNTフィルムのミクロ構造の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。
【
図3】例示的な実施形態による、酸素プラズマ処理した10mm×10mmフィルムについて、550nmの波長で測定した、プラズマ処理対平均光透過率の経時的研究結果、及び光透過率の平均変化率を示す。
【
図4】例示的な実施形態による、水素処理した10mm×10mmフィルムについて、550nmの波長で測定した、プラズマ処理対平均光透過率の経時的研究結果、及び光透過率の平均変化率を示す。
【
図5】例示的な実施形態による、酸素プラズマ処理した10mm×10mmフィルムについて、2パスカル定圧で測定した、プラズマ処理対フィルム撓みの経時的研究結果を示す。
【
図6】例示的な実施形態による、水素プラズマ処理した10mm×10mmフィルムについて、2パスカル定圧で測定した、プラズマ処理対フィルム撓みの経時的研究結果を示す。
【
図7】例示的な実施形態による、酸素プラズマ処理したフィルムについての、プラズマ処理対測定されたフィルム破断圧力の経時的研究結果を示す。
【
図8】例示的な実施形態による、水素プラズマ処理したサンプルについての、プラズマ処理対測定されたフィルム破断圧力の経時的研究結果を示す。
【
図9】例示的な実施形態による、酸素プラズマ処理したナノチューブフィルムについての、プラズマ処理対フィルム破断流量の経時的研究を示す。
【
図10】例示的な実施形態による、水素プラズマ処理したナノチューブフィルムについての、プラズマ処理対フィルム破断流量の経時的研究を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
その種々の態様のうちの1つ以上を通して、本開示の実施形態及び/または具体的な特徴、サブコンポーネント、またはプロセスは、具体的に前述して以下に言及する利点のうちの1つ以上を明らかにすることが意図されている。
【0042】
ペリクルとは、半導体マイクロチップ製造の間にフォトマスクを保護する薄い透明なフィルムを指し得る。ペリクルは、境界フレーム及び中央開口を有する保護デバイスを企図する。境界及び開口の両方は、境界の少なくとも一部と開口全体との上が連続薄膜によって覆われている。このような薄膜の開口上の中央部は自立している。ペリクルは、製造中に粒子及び汚染物質がフォトマスク上に落ちないようにするダストカバーとして機能し得る。しかし、ペリクルは、リソグラフィを行うためにEUV光が透過できるように十分に透明でなければならない。より効果的なリソグラフィを行うためには、より高レベルの光透過が要求される。
【0043】
さらに、EUVリソグラフィ用のペリクルは、極端で固有の特性をともなう大きな(例えば、110×140mmを上回る)自立型薄膜材料を必要とする。フルサイズEUVペリクルは、110mm×140mm以上の開口を覆う自立式のフィルムを有するペリクル装置を指すことができる。
【0044】
ペリクルは、EUV照射に対する高い透明度に加えて、600℃を超える温度に対して耐性があり、機械的に頑強で、フォトリソグラフィプロセスの間の取り扱い、輸送、ポンピングダウン、及びベンティング動作に耐える必要がある。ガス透過性を有するが、マイクロメートルサイズ粒子を保持する能力を有することも望まれる。要求される高レベルの特性の数を考えると、効果的なEUVペリクルは従来、製造が難しかった。
【0045】
この態様では、このEUVペリクル用途に対するペリクルを形成するための可能な出発材料として、カーボンナノチューブを、その優れた熱及び機械的特性と多孔質フィルムを形成する能力とにより提案している。
【0046】
カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブフィルム
カーボンナノチューブ(CNT)には通常、複数の異なる種類がある。例えば、限定することなく、単一壁CNT(SWCNT)、二重壁CNT(DWCNT)、多壁CNT(MWCNT)、及び同軸ナノチューブである。それらは、1つの種類で実質的に純粋に存在する場合もあるし、他の種類と組み合わせて存在する場合も多い。個々のCNTはいくつかの他と交差する場合がある。全体として、多くのCNTがメッシュ状の自立型ミクロ構造薄膜を形成することができる。名前が示唆するように、SWCNTは1つまたは単一の壁を有し、DWCNTは2つの壁を有し、MWCNTは3つ以上の壁を有する。
【0047】
さらに、自立型フィルムを製造するいくつかの可能な方法の中で、濾過ベースのアプローチを利用して、小サイズのフィルムから、EUVリソグラフィ用の十分に大きくて均一なフィルム、またはフルサイズのペリクルよりもさらに大きなフィルムまでのフィルムを製造した。この濾過ベースの方法によって、CNTのフィルムだけでなく、他の高アスペクト比のナノ粒子及びナノファイバ(例えば、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)または銀ナノワイヤ(AgNW))のフィルムの迅速な製造が可能になる。このアプローチでは、ナノ粒子合成方法とフィルム製造方法とを分けているため、実質的に任意の方法によって作成される異なる種類のナノチューブを用いてもよい。異なるタイプのナノチューブは、SWCNT、DWCNT、及びMWCNTから選択される2つ以上のCNTSの混合物など、任意の所望の比で混合することができる。濾過は、濾過プロセス中のフィルム厚の不均一性が局所的な透過度の変動によって自己補正されるという意味でセルフレベリングプロセスであり、したがって、非常に望ましいフィルム形成プロセスであり、また非常に均一なフィルムの製造に対する有望な候補でもある。
【0048】
フィルム形成後、ペリクルの境界または搬送フレーム上にあるペリクルフィルムに対して、選択されたガスとプラズマ処理の時間間隔とでプラズマ処理を施して、フィルムの機械的特性を強化し、フィルムの撓みを低減させ、フィルムが破断する際のフィルム破断圧力及び流量を増加させる。
【0049】
プラズマ処理は、様々な目的のために、様々な技術分野において、材料表面の洗浄、活性化、エッチング、及び被覆を行うのに広く使用されている。異なる目的としては、表面接着、濡れ性、及び親水性を促進することが挙げられる。CNTフォレストから引き出されたポリビニルアルコール高密度化100層CNTシートのスタックに対する、10秒間で100ワット程度の低出力プラズマ処理は、Surfx Atomflo(商標)400プラズマシステムによって試験したところ、dヤング率及び引張強度の改善を示したが、30秒間で140ワットのような、より高出力での処理は、実際にはシートのヤング率及び引張強度を低減させた。
【0050】
図1は、例示的な実施形態による、プラズマ処理されたナノチューブペリクルフィルムを製造するフローチャートを示す。
【0051】
図1に例示するように、自立型カーボンナノチューブベースのペリクルフィルムを、濾過ベースの方法によって作成してもよい。動作101において、水性懸濁液を形成するために用いるべきカーボンナノチューブ(CNT)から触媒を取り除く。例では、懸濁液内に分散させる前に、CNTを化学的に精製して、触媒粒子の濃度を、熱重量分析によって測定して、1重量%未満、または好ましくは0.5重量%未満に下げてもよい。触媒の除去は何らかの特定のプロセスまたは手順に限定されず、所望の結果を実現するために任意の好適なプロセスを用いてもよい。
【0052】
動作102において、精製したCNTが水中に均一に分散されるように、精製したCNTを用いて水性懸濁液を調製する。1つ以上のCNT懸濁液を調製するときに、カーボンナノチューブ材料を選択した溶媒と混合して、懸濁液としての最終溶液内にナノチューブを均一に分散させることができる。混合としては、機械的混合(例えば、電磁攪拌棒及び攪拌プレートを用いる)、超音波撹拌(例えば、浸漬超音波プローブを用いる)、または他の方法を挙げることができる。いくつかの例では、溶媒は、プロトン性または非プロトン性極性溶媒、例えば、水、イソプロピルアルコール(IPA)及び水性アルコール混合物、例えば、60、70、80、90、95%IPA、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチル硫化物(DMS)、及びそれらの組み合わせとすることができる。例では、溶媒内でのカーボンナノファイバの均一分散を助けるために、界面活性剤を含めることもできる。界面活性剤の例としては、アニオン性界面活性剤が挙げられるが、これに限定されない。
【0053】
カーボンナノファイバフィルムは通常、MWCNT、DWCNT、またはSWCNTのうちの1つから形成される。カーボンナノファイバフィルムはまた、2種類以上のCNT(すなわち、SWCNT、DWCNT、及び/またはMWCNT)の混合物を、異なる種類のCNT間の比率を変えて含んでいてもよい。
【0054】
これらの3つの異なる種類のカーボンナノチューブ(MWCNT、DWCNT及びSWCNT)はそれぞれ、特性が異なる。一例では、単一壁カーボンナノチューブは、ランダム配向されたカーボンナノチューブのシートへの以後の形成に対して、水中または溶媒を含む水中に、より好都合に分散させることができる(すなわち、ナノチューブの大部分が別個に懸濁されて、他のナノチューブ上に吸着されない)。このように個々のナノチューブを水中または溶媒を含む水中に均一に分散できる結果、ナノファイバ懸濁液から水と溶媒とを取り除くことによって形成される、より平面的に均一なナノチューブフィルムを製造することができる。この物理的均一性によって、フィルムにわたる特性(例えば、フィルムへの均一な照射透過)の均一性を改善することもできる。
【0055】
本明細書で用いる場合、用語「ナノファイバ」は直径が1μm未満のファイバを意味する。本明細書で用いる場合、用語「ナノファイバ」及び「ナノチューブ」は交換可能に使用され、両方とも、単一壁カーボンナノチューブ、二重壁カーボンナノチューブ、及び/または多壁カーボンナノチューブ(炭素原子が互いにリンクされて円筒形構造を形成する)を包含する。
【0056】
例では、動作102において最初に形成した水性CNT懸濁液は、少なくとも85%を超える純度のSWCNTを有していてもよい。残りは、DWCNT、MWCNT、及び/または触媒の混合物であり得る。他の例では、異なる種類のCNTを種々の比率で伴う分散されたCNT懸濁液を調製してもよい。例えば、約20%/75%DWCNT/SWCNT、約50%/45%DWCNT/SWCNT、約70%/20%DWCNT/SWCNT(残りはMWCNTが占める)である。例では、アニオン性界面活性剤を懸濁液内での触媒として用いてもよい。
【0057】
動作103において、CNT懸濁液を次に、さらに精製して、最初の混合物から凝集または膠着したCNTを取り除く。例では、異なる形態のCNT(非分散または凝集対十分に分散)を、遠心分離によって懸濁液から分離してもよい。次の濾過ステップに進む前に、界面活性剤懸濁されたカーボンナノチューブの遠心分離が、懸濁液溶液の濁度を減らして、最終的な懸濁液溶液内でのカーボンナノチューブの全分散を確実にすることを助けてもよい。しかし、本開示の態様はこれに限定されず、他の分離方法またはプロセスを用いてもよい。
【0058】
動作104において、動作103からのCNT上澄みを次に、濾過膜を通して濾過して、CNTウェブ(交差するCNTのフィルムの連続シート)を形成する。
【0059】
例では、CNTフィルムを作るための1つの手法は、水または他の流体を用いて、濾過器上にナノチューブをランダムパターンで堆積させる。均一に分散したCNT含有混合物を、濾過器に通過させて、または強制的に通過させて、ナノチューブ構造またはフィルムを形成するために、濾過器の表面にナノチューブを残す。結果として生じるフィルムのサイズ及び形状は、濾過器の所望の濾過面積のサイズ及び形状によって決定され、一方で、フィルムの厚さ及び密度は、プロセス中に用いるナノチューブ材料の数量と投入CNT材料の成分に対する濾過膜の透過度とによって決定される。なぜならば、不透過成分は濾過器の表面上に捕捉されるからである。流体中に分散したナノチューブの濃度が分かっている場合、濾過器上に堆積されるナノチューブの質量は、濾過器を通過する流体の量から決定することができ、フィルムの平均面密度は、ナノチューブ質量を総濾過面積で割って決定することができる。選択した濾過器は通常、どんなCNTに対しても透過性ではない。
【0060】
濾過形成されたCNTフィルムは、SWCNT、DWCNT、及び/またはMWCNTを異なる組成で組み合わせたものであり得る。
【0061】
動作105において、CNTフィルムを次に、濾過膜から取り外す。より具体的には、カーボンナノファイバはランダムに交差されて、相互接続されたネットワーク構造を平面配向で形成し、薄いCNTフィルムを形成し得る。
【0062】
動作106において、持ち上げたCNTフィルムを次に、回収器フレームを用いて回収し、そして、実質的に任意の固体基板(例えば、開口部が規定されたペリクル境界)上に直接移して取り付ける。CNTフィルムをペリクル境界に取り付け、開口部を覆ってペリクルを形成する。移したフィルムを、1×1cmほどの小さい開口部を伴う金属フレームまたはシリコンフレーム上に取り付けたものが、有用であり得る。実際のEUVスキャナに対しては、はるかに大きいサイズのフィルムの需要が高い。
図2には、例示的な実施形態による、
図1に従って調製されたCNTフィルムの走査型電子顕微鏡(SEM)像が示されている。EUVリソグラフィスキャニング用のフルサイズのペリクルは、現在の業界標準に基づいて、一般に110×140mm、またはそれよりも大きいサイズの超薄型自立フィルムを必要とし得る。
【0063】
動作107において、CNTフィルムは、プラズマによってさらに処理される。プラズマ処理では、選択された活性ガスまたはガス前駆体を、所定の処理電力及び処理時間間隔で使用する。プラズマを生成するために、多くのガスが考慮され、適用され得る。プラズマ処理電力及び処理時間間隔は、実際の用途に応じて異なる。動作107が完了すると、動作108で、プラズマ処理されたナノチューブペリクル膜の製造方法が完了する。
【0064】
プラズマ処理の有無にかかわらず、CNTフィルムの特性評価(例えば、その機械的強度、歪み試験、透過性試験、定圧におけるまたはポンピングダウン状態中の歪み)を、行ってもよい。
【0065】
本開示の典型的な実施形態は、EUVリソグラフィ要件の特定の態様を満足するかまたは超える特性を示す、既知の先行技術とは異なる構造を有する濾過されたCNTペリクルフィルムを提供する。EUVリソグラフィ要件としては、限定することなく、EUV透過率(EUVT)、EUVT均一性、低歪み、及び機械的強度(圧力変化下で)が挙げられる。
【0066】
このペリクルフィルムの例示的な構造によって、極薄ペリクルフィルムが得られる。これは、非常に高いEUVT(例えば、92%、95%、または98%でさえも上回る)を可能にする一方で、極めて温度耐性があり(例えば、600℃を超える温度に対して耐性がある)、また機械的に頑強である。例では、最小EUVTは92%以上の値であり得る。
【0067】
前述した開示内容はCNT及び水溶液に対して示したが、本開示の態様はこれに限定されず、異なるナノチューブ(例えば、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT))を同じ原理によって用いてもよい。
【0068】
前述の薄膜は種々の方法によってコンフォーマルにコーティングしてもよい。例えば、限定することなく、電子ビーム、化学気相成長法、原子層堆積、スピンコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティング、スパッタリング、DCスパッタリング、及びRFスパッタリングである。材料は、以下のうちのいずれか1つを含む金属元素であってもよい。すなわち、シリコン、SiO2、SiON、ホウ素、ルテニウム、ホウ素、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、ルビジウム、イットリウム、YN、Y2O3、ストロンチウム、及び/またはロジウム、である。材料は金属、金属酸化物、または窒化物のうちのいずれか1つであってもよい。しかし、本開示の態様はこれに限定されず、コーティングにおいて材料の組み合わせを用いてもよい。
【0069】
プラズマ処理
プラズマ処理は、様々な科学及び技術の分野ならびに製造プロセスで使用される公知の技術である。これは、一般に、活性ガス、ガス前駆体、ガス混合物、処理エネルギー、及び処理時間間隔の様々な組み合わせで、表面洗浄、活性化、親水性変更、エッチング、または後続の他の材料の結合のための調製に使用される。1つ以上の不適切なパラメータを用いたプラズマ処理は、最適条件下でも最適条件を超える条件下でも、ターゲット表面に不満足な結果を生じさせるか、あるいはターゲットまたはターゲット表面の破壊を含む不可逆的な損傷をターゲットまたはターゲット表面に引き起こす可能性がある。また、どの表面に対しても効果的な処理を指定し、または具体的に調整することもできる。
【0070】
本開示の例示的な実施形態では、ペリクルは、25cm×25cmのエンクロージャまたはチャンバ内に配置される。次いで、チャンバを閉じ、超薄型ナノチューブフィルムの高い圧力とガス流の高感度とのため、25sccm(立法センチメートル毎秒)の低速度で、酸素、水素、窒素ガス、または大気を用いてパージする。一例では、プラズマ処理は、0.2~0.3パスカルなどの低圧環境で行うことができ、処理温度は、室温または周囲温度とすることができる。さらに、1~100ワットの範囲の高周波電力を1~600秒間印加する。その後、チャンバは、5分から一晩まで、ゆっくりと換気され、サンプルを除去し得る。
【0071】
各試験群について複数のサンプルを調製し、同じサンプルの複数の測定を行った。
【0072】
薄膜厚さ
本開示の典型的な実施形態をさらに、高いEUVTを決定して確実にするのに重要なその厚さに対して分析する。より具体的には、ディメンションアイコンAFMインスルメントを最初に、米国標準技術局(NIST)追跡可能標準に対して較正した。面積がほぼ90μm×90μmのCNTペリクルフィルムを、AFM2D及び3D高さイメージングに対して選択した。ステップ高さ分析を行ってフィルム厚を測定した。3つのカーボンナノチューブフィルムサンプルから3回の測定を行って、読み取り値はそれぞれ11.8nm、10.6nm、及び11.4nmであった。試験対象物の平均厚さは約11.3±0.6nm(10.7nm~11.9nm)であった。
【0073】
さらに、さらなる測定セットに基づいて、厚さ値として3nm~100nm、3nm~40nm、及び3nm~20nmが得られた。
【0074】
加えて、他のサンプルでは、厚さ値は3nm~100nm、3nm~40nm、及び3nm~20nmでもあり得る。しかし、本出願の態様はこれに限定されず、範囲は下端値が3nm~5nm、上端値が20nm~100nmであってもよい。
【0075】
DWCNT優勢なCNTペリクルフィルムが示すはるかに高い機械的強度を考慮すると、DWCNT優勢なCNTペリクルフィルムは、EUVスキャナにおいて用いるために機械的強度または完全性を犠牲にすることなく、より高いEUVT値を可能にするために、極めて薄い構造にすることができる。
【0076】
可視光線及びEUV透過率
サンプルのEUV透過率を現在の業界標準の13.5nm波長を用いて測定した。EUVTマップをEUVスキャニング結果に基づいて形成して、透過率の変動及び/または均一性を実証及び測定した。
【0077】
濾過形成されたCNTペリクルフィルムは、全般的に92%を超える高いEUV透過率を示し、場合によっては95%を超え、または98%を超える結果であった。例えば、フルサイズのペリクルフィルム(約110mm×144mm)のサンプル全体にわたるスキャンによって、平均96.69±0.15%の透過率が示され、1.5mm×1.5mm中心領域のスキャンによって、平均96.75±0.03%の透過率が得られる。
【0078】
プラズマ処理したペリクルフィルム(フィルムサイズ:10mm×10mm)を、550nmでの光透過率について測定し、未処理の陰性対照と比較する。酸素処理フィルム及び水素処理フィルムの両方とも、透過率が向上している。
図3及び
図4に示すように、改善率は約0.8%から最大約3%までの範囲である。この改善は、5秒から60秒の範囲の処理時間に、良く相関している(例えば、
図3及び4参照)。
【0079】
110cm×140mm以上のサイズを有するポストプラズマ処理されたペリクルフィルムの可視光透過率及びEUV透過率を、同じ方法によって測定することができる。15ワット酸素プラズマ処理したフルサイズのペリクルフィルムは、6秒及び8秒の処理時間間隔において、可視光透過率が、それぞれ1.4%及び1.7%改善する。
【0080】
EUVリソグラフィ用のCNTペリクルの機械的特性
本出願の典型的な実施形態によって、製品輸送及び取り扱いに対する十分で満足のいく機械的強度を伴うCNTペリクルが提供される。ペリクルは、その適用環境(例えば、限定することなく、EUVリソグラフィスキャナ環境)を囲む任意の所望の圧力変化に耐え得る。
【0081】
一般的に適用される機械的特性評価は、流れ圧力に対するフィルムの撓みを測定するバルジ試験であった。例えば、試験用のフィルムを境界の平坦な表面上に取り付けることができ(ペリクル境界に取り付けられたペリクルフィルム)、フィルムに空気またはガスの流れの衝撃を全く与えずに、フィルムのベースラインを確立することができる。そして、ガス、好ましくは不活性ガスの最初の流れを、低い安定した圧力で、フィルムの中心領域に垂直に向けて加えて、局所的な表面を隆起させることができる。ガス圧力は徐々に増え続けてフィルムをさらに変形させ、これを圧力が所定の値(2Pa歪み試験の場合には2パスカル)に達するまで続ける。この値はまた、約10sccm未満の流量、3.5mbar/秒未満、または任意のスキャナポンプダウン条件もしくは通気条件でもあり得る。変形したフィルムの最も高い先端とそのベースラインとの間の距離を測定してもよい。結果を2Paにおける歪みとして記録してもよい。歪み試験を2Pa以外の種々の圧力で行ってもよい。
【0082】
適用されるガス流圧力を増加させると、最終的にフィルムが破裂し得る。この圧力を破断圧力として記録してもよく、その破断直前のフィルムの撓みを破断撓みと呼ぶことがある。フィルムの破断時のガス流量を取得することができ、破断流量と呼ぶことがある。さらに、薄膜の撓みを、方法(例えば、物理的手段または化学的手段による張力調整が挙げられるが、これに限定されない)によって意図的に調整してもよい。
【0083】
プラズマ表面処理及び強化された機械的特性
本開示の1つ以上の例示的な実施形態を以下に詳細に説明し、
図5~
図10に提示する。
【0084】
図5~
図10は、例示的な実施形態による、20ワットの高周波(RF)電力を用いて、5秒から60秒までの様々な処理時間で、酸素または水素のいずれかを用いたプラズマ処理の後の10mm×10mmナノチューブフィルムの機械的特性の変化を例示的に示す。例示的な態様によれば、10mm×10mmフィルムは、2Paの一定流動で、短い処理時間間隔で負荷をかけた場合に、撓みが減少したことを示す。10mm×10mmフィルムは、より高い流れ圧力、及びより大きい流量で破断する。さらに、
図5及び
図6に示すように、10mm×10mmフィルムの酸素処理及び水素処理の両方とも、10秒間の処理でフィルムの撓みが平均して100%を超えて減少し、
図7~
図10に示すように、5秒間の処理で破断圧力及び破断流量が平均して60%を超えて増加する。例示的に示されるように、破断圧力に関するプラズマ処理の利点は、30秒の処理時間間隔を超えると減少する。
【0085】
RF電力を小さくした場合、または大きくした場合の研究を、以下の表1にまとめる。
【表1】
【0086】
10mm×10mmのナノチューブフィルムのセットに、様々なRF電力レベルで8秒の一定時間の酸素プラズマ処理を施した。20ワットの処理結果は、550nmでのフィルム密度または透過率のパーセンテージに関する以前の研究と比較した場合、同様のフィルム撓みの減少と、550nmで測定された破断圧力及び光透過率の増加とを示す。表1に例示されるように、25ワット以上のより高い電力処理は、フィルムの撓みの減少を示したが、フィルムの破断圧力の劇的な反転により、フィルムはより脆くなった。フィルムは40ワット以上のRF電力で処理した場合に、非常に脆くなり、プラズマ処理に耐えられなくなった。
【0087】
フルサイズの超薄型ペリクルフィルムの場合、様々な活性ガス、様々なプラズマ出力、及び様々な処理時間間隔を使用した一連のプラズマ処理の詳細を、以下と表2とに示す。
【表2】
【0088】
10mm×10mmフィルムの研究結果に導かれて、フルサイズ超薄型ペリクルは、酸素プラズマ処理に関して2つの異なる経路を取る。表2から、それらは、プラズマ処理出力及び処理時間間隔がさらに減少しても、良好に残存しなかった。それらは、18ワットまたは20ワットの印加電力の下で6秒間の処理を受けると、簡単に壊れた。15ワットの電力を用いた10秒間の酸素プラズマ処理は、処理プロセスの完了前に超薄膜をその破損から防ぐことができなかった。しかしながら、15ワットの電力で6秒間及び8秒間の酸素プラズマ処理を行うと、フィルムは無傷のまま維持され、波長550nmでの光透過率は、それぞれ約1.4%及び1.7%増加し、一方、フィルムの撓みは、それぞれ約20%及び23%減少した。
【0089】
酸素を大気と置き換えると、15ワット及び6秒の同じ処理計画では、表2に示すとおり、ほぼ同じ結果を有する。
【0090】
上に提供した表2の行8に例示的に概説したような非常に軽度の水素プラズマ処理は、撓みは3.3%減少し、フィルムの撓みを有意に改善しなかった。
【0091】
フルサイズの極薄ペリクルを、活性ガスとして窒素を用いた同じプラズマ処理チャンバにさらした。550nmでの光透過率は増加し、未処理と比較した場合にEUVTを減少させる反対方向に向かった。
【0092】
本明細書で説明した実施形態の例示は、種々の実施形態の一般的な理解を与えることを意図している。例示は、本明細書に記載の生成物または方法を構成する生成物及び方法の要素及び特徴部の全てを完全に説明するものとして機能することは意図していない。本開示を検討すれば、他の多くの実施形態が当業者には明らかとなり得る。他の実施形態が本開示から利用及び導出され得るため、本開示の範囲から逸脱することなく構造的及び論理的な置換及び変更が行われ得る。さらに、例示は単に代表であり、一定の比率で描かれてはいない場合がある。例示内でのある割合は誇張されている場合があり、一方で他の割合は最小限にされている場合がある。したがって、本開示及び図は限定ではなくて例示的であると考えるべきである。
【0093】
本明細書では、本開示の1つ以上の実施形態に、単に便宜上及び本出願の範囲を何らかの特定の発明または発明概念に自発的に限定することを意図することなく、用語「発明」によって個別に及び/または一括して言及している場合がある。また、本明細書では特定の実施形態について例示及び説明してきたが、当然のことながら、同じまたは類似の目的を実現するようにデザインされた任意の後続の配置を、示した特定の実施形態の代わりに用いてもよい。本開示は、種々の実施形態のありとあらゆる後続の適応または変化に及ぶことを意図している。本説明を検討すれば、前述の実施形態の組み合わせ及び本明細書では具体的に記載していない他の実施形態が当業者には明らかである。
【0094】
本開示の要約は、特許請求の範囲の範囲または意味を解釈または限定するために使用されないことを理解して提出される。加えて、前述の詳細な説明では、本開示を簡素化する目的で、単一の実施形態において種々の特徴部を一緒にグループにするかまたは説明している場合がある。本開示は、特許請求に係る実施形態が、各特許請求項において明確に説明したものよりも多い特徴部を必要とするという意図を反映していると解釈してはならない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、本発明の主題は、開示した実施形態のうちのいずれかの特徴部の全部未満に向けられている場合がある。したがって、以下の特許請求の範囲は詳細な説明に組み込まれており、各特許請求項は、個別に特許請求された主題を規定するものとして独立している。
【0095】
前述で開示した主題は例示的であって限定ではないと考えるべきであり、添付の特許請求の範囲は、全てのこのような変更、拡張、及び他の実施形態であって本開示の真の趣旨及び範囲に含まれるものを対象として含むことが意図されている。したがって、法律によって許容される最大程度まで、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物の最も広い許容される解釈によって決定されるべきであり、前述の詳細な説明によって制限も限定もされないものとする。
【国際調査報告】