(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】メタン分子の切断から水素を生成するためのプラントおよびプロセス
(51)【国際特許分類】
C01B 3/30 20060101AFI20240925BHJP
F27B 1/09 20060101ALI20240925BHJP
F27D 11/06 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C01B3/30
F27B1/09
F27D11/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516775
(86)(22)【出願日】2022-09-12
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 IB2022058560
(87)【国際公開番号】W WO2023042053
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】102021000023708
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524097919
【氏名又は名称】イドロジェーナ ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タリアサッキ、ルカ
(72)【発明者】
【氏名】メローニ、フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】ツッカ、トゥッリア
(72)【発明者】
【氏名】ボケッティ、ドナート
【テーマコード(参考)】
4G140
4K045
4K063
【Fターム(参考)】
4G140DA03
4G140DB02
4K045AA01
4K045BA00
4K045CA02
4K045GB05
4K045GD11
4K063AA01
4K063AA12
4K063BA09
4K063CA02
4K063FA31
(57)【要約】
カーボンダストの生成を伴って、メタン分子の切断から水素を生成するためのプラント(1)は、保持壁(8)により区画された内部チャンバ(3)を有する反応器(2)であって、上記反応器(2)が:メタン(CH4)を供給するための入口開口(4)と、ガス状の水素(H2)が流出することを可能にするための出口開口(5)と、封止回転バルブ(7)を介して上記内部チャンバ(3)からカーボンダスト(C)を排出するための排出開口(6)と、耐火ライニング(20)と、上記反応器(2)の内部チャンバ(3)を加熱するための電磁誘導加熱手段(9)とを備える、反応器(2)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンダスト(C)の生成を伴って、メタン分子(CH
4)の切断から水素(H
2)を生成するためのプラント(1)であって、下方端(2a)と上方端(2b)との間で、主要な長手方向(X-X)に延在し、第1の保持壁(8)により区画される内部チャンバ(3)を有する反応器(2)であって、前記反応器(2)が、
前記内部チャンバ(3)にメタン(CH
4)を供給するための入口開口(4)と、
前記内部チャンバ(3)から水素(H
2)がガス状で流出することを可能にするための出口開口(5)と、
前記内部チャンバ(3)からカーボンダスト(C)を排出するための排出開口(6)と
前記反応器の前記内部チャンバ(3)の気密性を確保しながら、前記排出開口(6)からのカーボンダスト(C)のみを排出するように、前記排出開口(6)に適用された封止バルブ手段(7)と、
外部から前記内部チャンバ(3)を断熱するための、前記第1の保持壁(8)に適用された耐火ライニング(20)と
を備え、
前記プラント(1)が、約600℃~1700℃の範囲の温度に前記反応器(2)の前記内部チャンバ(3)を加熱するための加熱手段(9)を備え、前記加熱手段(9)は前記反応器(2)の外部に配置され、
前記第1の保持壁(8)が、約600℃~1800℃の範囲の動作温度で動作するのに適した金属材料、たとえばタングステンまたはタングステン合金でできており、
前記反応器(2)の前記内部チャンバ(3)を加熱するための前記加熱手段(9)が、前記内部チャンバ(3)を加熱するために、前記反応器(2)の前記内部チャンバ(3)の長手方向軸(X-X)に沿って交流電磁界を発生させるのに適した電磁誘導加熱手段(9)であり、
前記第1の保持壁(8)が、電磁誘導により加熱され得るように、前記電磁界に感応する金属材料でできている、
プラント(1)。
【請求項2】
水素流出を可能にするための前記出口開口(5)は、前記反応器(2)の前記上方端(2b)または前記上方端(2b)の近傍に配置され、
カーボンダストを排出するための前記排出開口(6)は、前記反応器(2)の前記下方端(2a)または前記下方端(2a)の近傍に配置され、
前記内部チャンバ(3)にメタンを供給するための前記入口開口(4)は、水素流出を可能にするための前記出口開口(5)と、カーボンダストを排出するための前記排出開口(6)との間に配置されている、請求項1に記載のプラント(1)。
【請求項3】
前記排出開口(6)に適用される前記封止バルブ手段(7)は、回転バルブ、スラインディングゲート排出器、またはダブルピボット排出器を含み、前記バルブ手段には、前記内部チャンバ(3)内でメタン分子が炭素および水素に分解することによって生じるカーボンダストが重力により供給される、請求項1または2に記載のプラント(1)。
【請求項4】
前記電磁誘導加熱手段(9)が、
前記反応器(2)にらせん状に巻き付けられた複数のターンを有する、導電材料製のコイル(9)と、
前記反応器(2)の前記内部チャンバ(3)内に、好ましくは前記反応器(2)の軸に沿った、交流電磁界の形成を誘導して、前記内部チャンバ(3)の内部を加熱するように、前記電気コイルの巻線内に所定のアンペア数の交流電流を循環させるための電気手段と
を備える、請求項1に記載のプラント(1)。
【請求項5】
前記第1の保持壁(8)に適用される前記耐火ライニング(20)が、電磁界透過性耐火材でできており、
前記電磁誘導加熱手段(9)が前記耐火ライニング(20)の外部に配置されている、請求項1または4に記載のプラント(1)。
【請求項6】
前記プラントは、前記第1の保持壁(8)とともに、封止保持間隙(12)を画定する第2の保持壁(11)を備え、前記電磁誘導加熱手段(9)は封止間隙(12)内に収容され、
前記封止間隙(12)には不活性ガスが充填され、
前記封止間隙(12)は、封止バルブ手段により閉鎖されるガス入口ノズル(13)を備え、
前記ガス入口ノズル(13)は好ましくは、前記内部チャンバ(3)の一方端(2)に配置され、前記間隙は、前記内部チャンバ(3)の他方端(2a)の近傍に位置し、対応する封止バルブ手段により閉鎖されるさらなる通気開口(14)を備える、請求項5に記載のプラント(1)。
【請求項7】
前記反応器(2)が、前記内部チャンバ(3)の前記長手方向軸に沿って支持され、約600℃~1800℃の範囲の動作温度で動作するのに適した金属材料、たとえば、タングステンまたはタングステン合金でできている金属エレメント(19)を備え、前記金属エレメントは前記チャンバ内の温度を均一にするために加熱されることが意図されており、
前記金属エレメント(19)は、前記第1の保持壁(8)と接触し、それにより、前記第1の保持壁(8)に向かう熱伝導を促進するため、および、前記内部チャンバ(3)内の温度勾配を減少させるための熱ブリッジを形成し、
前記金属エレメント(19)は、電磁誘導によって加熱され得るように、電磁界に感応する金属材料でできている、請求項1~6のいずれか1項に記載のプラント(1)。
【請求項8】
前記内部チャンバ(3)にメタンを供給するための前記入口開口(4)は、メタンが前記内部チャンバ(3)に接線方向に導入されるように方向付けられている、請求項1~7のいずれか1項に記載のプラント(1)。
【請求項9】
請求項1に記載の反応器を備えるプラント内でカーボンダスト(C)の生成を伴って、メタン分子(CH
4)の切断から水素(H
2)を生成するためのプロセスであって、前記プロセスが、
耐火材により、外部から断熱された第1の金属保持壁(8)により区画される内部チャンバ(3)を有し、メタンが供給される入口開口(4)と、ガス状の水素が流出し得る出口開口(5)と、カーボンダストのみが前記内部チャンバ(3)から排出され得る排出開口(6)とを備える反応器(2)を提供するステップと、
約600℃~1700℃の範囲の温度に前記反応器(2)の前記内部チャンバを加熱するステップと、
メタン分子の切断から水素生成を得るために、メタンガスの流れを前記内部チャンバ(3)に導入するステップであって、水素が前記出口開口(5)を介して前記反応器(2)の上方端から排出され、前記内部チャンバ(3)の下方端に向けて沈降したカーボンダストが前記排出開口(6)を介して排出される、メタンガスの流れを前記内部チャンバ(3)に導入するステップと
を含む、プロセス。
【請求項10】
前記内部チャンバ(3)は、メタン分子の、水素およびカーボンダストへの直接切断を得るために、少なくとも1500℃の温度に、好ましくは少なくとも1600℃の温度に、より好ましくは約1700℃の温度に加熱される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
メタン分子の切断からの水素生成が、前記反応器内で、前記反応器の外部の圧力に対して、少なくとも6%の過圧で、好ましくは、少なくとも10%の過圧で行われる、請求項9または10に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンダストCの生成を伴って、メタン分子CH4の直接切断(direct scission)から水素H2を生成するためのプラントに関する。
【0002】
そのさらなる態様によれば、本発明は、カーボンダストCの生成を伴って、メタン分子CH4の直接切断から水素H2を生成するためのプロセスにも関する。
【背景技術】
【0003】
今日、水素に対する需要が、化合物の生成、自動車の燃料としての使用、または熱および電気エネルギの生成などの、いくつかの用途で増加し続けている。
【0004】
満たされるべき要件は、特に、二酸化炭素CO2を生成せず、後に適切に処理される必要がある汚染副産物を必要とし、または生成する、化学プロセスや他のプロセスを用いない、環境への影響が少ないプラントおよびプロセスを用いて水素の生成を行う能力である。
【0005】
さらに、油田からの石油採掘の産業では、多くの場合、炭化水素ガス、特に、大気中に放出されてはならないメタンガスの存在および処分という問題に直面する必要があり、それが坑口で燃やされることが多いことも考慮しなければならない。このようなメタンガスは、油田に存在する量が非常に少ないため、メタンパイプラインに輸送することはできないが、それでも利用可能な資源であり、当然、環境を汚染することなく利用すべきことは明らかである。
【0006】
以上に照らして、「グリーン」水素生成に対する、すなわち、環境を汚染することなく、他の方法では失われてしまう、適切に処分されるべき天然資源を使用して生成される水素に対する需要が増加していることは明らかである。
【発明の概要】
【0007】
本発明の根底にある課題は、水素生成のためのプラントであって、その構造的、および機能的特性が上記要件を満たすようなものであると同時に、従来技術が被る上述の課題を解決する、プラントを思いつくことである。
【0008】
この課題は、請求項1に記載の、カーボンダストCの生成を伴って、メタン分子CH4の切断から水素H2を生成するためのプラントによって解決される。
【0009】
さらなる態様によれば、そうした課題は、請求項9に記載の、カーボンダストCの生成を伴って、メタン分子CH4の切断から水素H2を生成するためのプロセスによっても解決される。
【0010】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面を参照しながら、限定的でない例により、記載しているに過ぎない、カーボンダストCの生成を伴ってメタン分子CH4の直接切断から水素H2を生成するためのプラントの以下の説明に照らして明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明によるプラントの単純化された、概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照すれば、1は、カーボンダストCの生成を伴って、メタン分子の切断から水素を生成するためのプラントを全体として表している。
【0013】
特に、これは、カーボンダストCの生成を伴って、メタン分子CH4の直接切断から、ガス状の水素H2を生成することができるプラントである。
【0014】
本発明によるプラント1は、メタンが1600~1700℃の範囲内の温度に加熱された際に生じる、メタンの化学切断反応を利用する。
【0015】
この目的で、プラント1は、内部チャンバ3を有する反応器2を備える。
【0016】
このような内部チャンバ3は、下方端2aと上方端2bとの間で、主要な長手方向X-Xに沿って延在し、第1の保持壁8により区画されている。
【0017】
反応器2は:
内部チャンバ3にメタンCH4を供給するための入口開口4;
内部チャンバ3から水素H2がガス状で流出することを可能にするための出口開口5;
内部チャンバ3からカーボンダストCを排出するための排出開口6;および
反応器の内部チャンバ3の気密性を確保しながら、排出開口6からのカーボンダストのみを排出するように、排出開口6に適用された封止バルブ手段7
を備える。
【0018】
封止バルブ手段7は、メタン分子の切断反応により生成されたカーボンダストCのみが内部チャンバ3から排出されることを可能にし、カーボンダストを排出させながらも排出開口6の気密性を確保することを指摘しなければならない。
【0019】
本明細書に示された実施形態によれば、排出開口6に適用される封止バルブ手段は、封止回転バルブ7からなる。あるいは、たとえばスラインディングゲート排出器またはダブルピボット排出器等などの他の構造的および/または機能的に同等の手段が使用され得る。
【0020】
好ましくは、
図2に示されるように、排出開口6に適用される封止バルブ手段7は、チャンバ内の炭素および水素へのメタン分子の分解によって生じるカーボンダストを重力により供給できるように、内部チャンバ3の下方端2aに位置し、よって、たとえば、換気によってカーボンダストCを排出開口6に向けて搬送するためのシステムの使用を回避することができる。
【0021】
反応器2は:
上記第1の保持壁8に適用され、好ましくは上記第1の保持壁8の外側に適用される、外部環境から内部チャンバ3を断熱するための耐火ライニング20、および
約600℃~1700℃、または約600℃~1800℃の範囲の温度に反応器2の内部チャンバ3を加熱するための加熱手段9
をさらに備えている。
【0022】
600℃~1800℃の範囲内の動作温度に耐えるために、第1の保持壁8は、たとえば、タングステン(またはタングステン系合金)など、最高2500℃以上の温度でも安全に動作し得る、このような動作温度で動作するのに適した金属材料で製造される。
【0023】
好ましくは、上記開口は反応器2内に、以下のように配置される:
水素の流出を可能にするための出口開口5は、上記反応器2の上方端2bまたは上方端の近傍に配置され、内部チャンバ3内に生成されたガス状の水素の自然な上方への流出を可能にし;
カーボンダストを排出するための排出開口6は、上記反応器2の下方端2aまたは下方端の近傍に配置され;
内部チャンバ3にメタンを供給するための入口開口4は、水素流出を可能にするための出口開口5と、カーボンダストを排出するための排出開口6との間に配置される。
【0024】
考えられる一実施形態では、内部チャンバ3にメタンを供給するための入口開口4は、排出開口6の近傍近く、そのすぐ上に位置し、または、内部チャンバ3にメタンを供給するための入口開口4は、出口開口5の近傍、そのすぐ下に位置する。
【0025】
好ましくは、内部チャンバ3にメタンを供給するための入口開口4は、メタンが内部チャンバ3内に接線方向に導入され、その結果、内部チャンバ3内でメタンの周辺サイクロン旋回が生じるように、方向付けられている。
【0026】
反応器2の内部チャンバ3を加熱するための加熱手段9は、反応器2の外側に配置され、よって、プラント1の通常運転中の内部チャンバ3の高い動作温度により引き起こされる熱応力を受けない。
【0027】
さらに、内部チャンバ3を加熱するための加熱手段は、内部チャンバ3を加熱するために、反応器2の内部チャンバ3の長手方向軸X-Xに沿って交流電磁界を生成するのに適した電磁誘導加熱手段9である。
【0028】
上記第1の保持壁8は、電磁界に感応する金属材料でできており、それは電磁誘導によっても加熱され得る。
【0029】
好ましくは、上記電磁誘導加熱手段は:
反応器2の内部チャンバ3にらせん状に巻き付けられた複数のターンを有する、導電材料製の(
図2に概略的に示す)コイル9、および
内部チャンバ3内での交流電磁界の、好ましくは反応器2の長手方向軸X-Xを通過する交流電磁界の形成を誘導して、内部チャンバ3の内部を加熱するように
電気コイルの複数のターン内に所定のアンペア数の交流電流を循環させるための電気手段(図示せず)
を備える。
【0030】
好ましくは、電磁誘導加熱手段9は、耐火ライニング20の外側に配置され、任意の干渉または遮蔽を防止するために、耐火ライニング20は、電磁界透過性(electromagnetic field-transparent/permeable refractory material)の耐火材、たとえば、強磁性金属不純物を含まない耐火材でできている。
【0031】
好ましくは、プラント1は、第1の保持壁8とともに、有利には、電磁誘導加熱手段9が収容された封止保持間隙12を画定する第2の保持壁11を備える。
【0032】
第2の保持壁11も、たとえば、最大2500℃の温度で安全に動作するのに適した材料でできている。
【0033】
好ましくは、封止間隙12は、不活性ガス、好ましくはアルゴンで充填されている。
【0034】
好ましくは、封止間隙12は、封止バルブ手段により、閉鎖されたガス入口ノズル13を備えている。
【0035】
好ましくは、上記ガス入口ノズル13は、内部チャンバ3の特定の端2bに配置され、封止間隙12は、対応する封止バルブ手段(図示せず)により、閉鎖された内部チャンバ3の他方端2aの近傍に位置するさらなる通気開口14を備える。
【0036】
本明細書中に示された例示的な、限定されない実施形態(
図2)によれば、反応器2は、第2の保持壁11に適用された外側クラッドを備え、外側クラッドは、内側から外側に向かって:
第2の耐火材層15;
約1250℃での動作温度で動作するのに適した金属材料、好ましくは鋼でできた保護ジャケット16;
断熱層18;および
好ましくは、鋼板製ケーシング21
を備える。
【0037】
好ましくは、反応器2は、内部チャンバ3の長手方向軸X-Xに沿って支持され、約600℃~1800℃の範囲の動作温度で動作するのに適した金属材料でできている複数の金属エレメント19を備え、金属エレメントはチャンバ内の温度を均一にするために加熱されることが意図され、それにより、望ましくない熱勾配の形成を減少させる。
【0038】
好ましくは、金属エレメント19は、第1の保持壁8と接触し、それにより、チャンバ3の長手方向軸から第1の保持壁8に向かう熱伝導を促進するための熱ブリッジを形成する。
【0039】
金属エレメント19は、電磁誘導により加熱され得るように、電磁界に感応する金属材料でできている。
【0040】
好ましくは、金属エレメント19は、グリッドバスケット、好ましくは、下方端2aに向けて円錐度が減少する、軸方向X-Xに沿って延在する円錐形状を有するグリッドバスケットを画定する。
【0041】
このようなバスケットは、たとえば600℃から始まる、1500℃未満の温度でもメタン分子を水素およびカーボンダストに分解することを可能にするために使用され得る促進剤および/または触媒物質を内部チャンバ3内で支持することを可能にする。
【0042】
バスケット19により、支持される促進剤および/または触媒物質は、メタンおよび水素が通過する浮遊流動床を画定する。
【0043】
金属エレメント19の材料はまた、電磁界に感応し、600℃~1800℃の範囲の動作温度で動作するのに好適である金属材料、たとえばタングステンである。
【0044】
好ましくは、プラント1において、ガス状の水素の流出を可能にする出口開口5は、フィルタリング手段および/またはデミスタ10の介在により、内部チャンバ3と流体連通している。
【0045】
さらなる態様によれば、本発明による反応器を備えるプラント内のカーボンダストの生成を伴って、メタン分子の切断から水素を生成するためのプロセスであって、
耐火材により、外部から断熱された第1の金属保持壁8により区画された内部チャンバ3を有し、メタンが供給される入口開口4と、ガス状の水素が流出し得る出口開口5と、カーボンダストのみが内部チャンバ3から排出され得る排出開口6とを備える、円筒状の反応器2を提供するステップ;
約600℃~1700℃の範囲の温度に反応器2の内部チャンバを加熱するステップ;および
メタン分子の切断から水素生成を得るために、メタンガスの流れを内部チャンバ3に導入するステップであって、水素が出口開口5を介して反応器2の上方端から排出され、内部チャンバ3の下方端に向けて沈降したカーボンダストが排出開口6を介して排出される、メタンガスの流れを内部チャンバ3に導入するステップ
を含む、プロセスが提供される。
【0046】
本発明のプロセスによれば、反応器2の内部チャンバを加熱するステップは、内部チャンバ3に外部から電磁誘導を与えることにより行われ、反応器2の内部チャンバ3を断熱する耐火材は電磁界に対して透明/透過性である。
【0047】
好ましくは、本発明のプロセスによれば、外部からの電磁誘導による、内部チャンバ3の加熱は、反応器2の外側にらせん状に巻き付けられた複数のターンを有する、好ましくは、反応器2の内部チャンバ3を断熱する耐火材の外側にらせん状に巻き付けられた複数のターンを有する、導電材料のコイル内に交流電流を循環させることにより行われる。
【0048】
好ましくは、本発明のプロセスによれば、導電材料でできたコイルは、第1の保持壁8と第2の保持金属壁11との間に画定された封止間隙12に収容され、封止間隔12は不活性ガス、好ましくはアルゴンで充填される。
【0049】
好ましくは、本発明のプロセスによれば、内部チャンバ3は、少なくとも1500℃の温度に、好ましくは少なくとも1600℃の温度に、より好ましくは約1700℃の温度に加熱され、メタン分子の、水素およびカーボンダストへの直接切断を得る。
【0050】
本発明の上記プロセスによれば、その考えられる一実現形態では:
内部チャンバ3は約600℃~1500℃の範囲の温度に加熱され、および、
促進剤および/または触媒物質が内部チャンバ3内に設けられ、600℃から始まる温度でもメタン分子を水素およびカーボンダストに分解することを可能にする。
【0051】
好ましくは、本発明のプロセスによれば、メタン分子の切断からの水素生成は反応器内で、反応器2の外側の圧力に対して、少なくとも6%の過圧で、好ましくは、少なくとも10%の過圧で行われる。
【0052】
本発明による上述されたプロセスは、上述されたプラント1により、行われる。
【0053】
上記説明から分かり得るように、本発明によるプラントおよび本発明によるプロセスは、従来技術が被り、および本明細書の導入部分で要約された欠点を解消すると同時に、上述された要件を満たすことを可能にする。
【0054】
実際には、本発明による反応器は、廃棄されるべき汚染副産物も生成することなく、簡単かつ効果的な方法で、カーボンダストの生成を伴って、メタン分子の切断から水素が生成されることを確実にすることができる、簡単かつ安全な構造を有する。
【0055】
水素生成が1500℃を超える反応器動作温度で、たとえば1600~1700℃の範囲内で行われる場合、メタン分子の直接切断を実現するために促進剤および/または触媒物質を使用することが必要でない一方、このような温度未満では、600℃の温度から開始するメタン分子の正しい分解を確実にするために、このような促進剤および/または触媒物質を使用することが有利であることを指摘しなければならない。
【0056】
1600~1700℃の温度により、高純度の水素、たとえば、既に自動車に適した水素、および、フィルタ等を製造するために製薬業界において使用され得る高純度のカーボンダストが得られることも強調されるべきである。
【0057】
さらに、カーボンダストは、高純度の一酸化炭素を得るために少ない酸素で燃やされ得る。
【0058】
反応器の外側からの誘導による内部チャンバの加熱は、電磁界透過性耐火材を介して外部から断熱された、内部チャンバ内に閉じ込められるため、非常に効果的であることも強調されなければならない。
【0059】
さらに、アルゴンを含む封止間隙は、特に、故障表示が安全センサにより、トリガされる前でも、反応器内の亀裂または漏れの場合に、水素の存在下でもプラントの安全性が著しく向上する。
【0060】
当然、当業者は、偶発的な、および具体的な要求を満たすために、上述された発明を多くの変更および変形に供する場合があるが、それらはすべて、しかし、以下の請求項に記載されたような、本発明の保護範囲内になお収まる。
【国際調査報告】