IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウーシー バイオロジクス アイルランド リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-D3結合分子及びその使用 図1
  • 特表-D3結合分子及びその使用 図2
  • 特表-D3結合分子及びその使用 図3
  • 特表-D3結合分子及びその使用 図4a
  • 特表-D3結合分子及びその使用 図4b
  • 特表-D3結合分子及びその使用 図5
  • 特表-D3結合分子及びその使用 図6a
  • 特表-D3結合分子及びその使用 図6b
  • 特表-D3結合分子及びその使用 図6c
  • 特表-D3結合分子及びその使用 図6d
  • 特表-D3結合分子及びその使用 図7a
  • 特表-D3結合分子及びその使用 図7b
  • 特表-D3結合分子及びその使用 図7c
  • 特表-D3結合分子及びその使用 図8
  • 特表-D3結合分子及びその使用 図9
  • 特表-D3結合分子及びその使用 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】D3結合分子及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20240925BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240925BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240925BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240925BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240925BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240925BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240925BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240925BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240925BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240925BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240925BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240925BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240925BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
C12N15/13
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61P11/00
A61P25/00
A61K39/395 T
A61K39/395 W
A61K39/395 Y
A61K47/68
A61P37/02
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516855
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 CN2022119334
(87)【国際公開番号】W WO2023041041
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/119011
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518330176
【氏名又は名称】ウーシー バイオロジクス アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ユンイン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ヨンチン
(72)【発明者】
【氏名】ワン, シア
(72)【発明者】
【氏名】グ, ジージエ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA05
4B064DA14
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BC01
4B065BD14
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA94
4C076CC01
4C076CC07
4C076CC15
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59M
4C076EE59Q
4C076FF31
4C076FF63
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB01
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC03
4C085CC07
4C085CC31
4C085DD62
4C085DD88
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本開示では、抗D3抗体を含むD3結合分子、及びそれらの使用が提供される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫グロブリンの単一可変ドメインを含むD3結合分子であって、前記単一可変ドメインが、配列番号12、13、14、15、16、17、55、または18に記載のVHHのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む、前記D3結合分子。
【請求項2】
CDR1、CDR2、及びCDR3が、Kabat、Chothia、AbM、Contact、IMGT、またはそれらの任意の組み合わせに従う、請求項1に記載のD3結合分子。
【請求項3】
前記CDR1が、配列番号1、4、7または10に記載のアミノ酸配列を含み、(ii)前記CDR2が、配列番号2、5、8または11に記載のアミノ酸配列を含み、(iii)前記CDR3が、配列番号3、6または9に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のD3結合分子。
【請求項4】
(A)配列番号1に記載のCDR1、配列番号2に記載のCDR2、及び配列番号3に記載のCDR3、
(B)配列番号4に記載のCDR1、配列番号5に記載のCDR2、及び配列番号6に記載のCDR3、
(C)配列番号7に記載のCDR1、配列番号8に記載のCDR2、及び配列番号9に記載のCDR3、または
(D)配列番号10に記載のCDR1、配列番号11に記載のCDR2、及び配列番号6に記載のCDR3を含む、請求項1に記載のD3結合分子。
【請求項5】
前記単一可変ドメインが、
(A)配列番号12~18及び55のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、
(B)配列番号12~18及び55のいずれか1つに記載のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、もしくは95%同一でありながら、D3に対する特異的結合親和性を保持しているアミノ酸配列、または
(C)配列番号12~18及び55のいずれか1つに記載のアミノ酸配列と比較して、1個以上(例えば、1、2または3個)のアミノ酸の付加、欠失及び/または置換を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれかに記載のD3結合分子。
【請求項6】
前記単一可変ドメインのフレームワーク領域、例えばFRW1、FRW2、FRW3、及び/またはFRW4内にアミノ酸の1つ以上の置換、付加及び/または欠失を含む、請求項1~5のいずれかに記載のD3結合分子。
【請求項7】
前記単一可変ドメインが、配列番号12~18及び55のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれかに記載のD3結合分子。
【請求項8】
ヒトIgG定常ドメインをさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載のD3結合分子。
【請求項9】
前記ヒトIgG定常ドメインが、ヒトIgG1定常ドメインまたはそのバリアントなどのヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4定常ドメインである、請求項8に記載のD3結合分子。
【請求項10】
以下の特性、すなわち、
(a)ELISAまたはFACSで測定した場合に、ヒトD3、カニクイザルD3、及び/またはマウスD3にnMグレードのEC50で結合し、
(b)ヒトD3を発現する細胞で用量依存的な内在化能を示し、
(c)SPRで測定した場合に、ヒトD3に0.1nM以下のKDで結合する、のうちの1つ以上を有する、請求項1~9のいずれかに記載のD3結合分子。
【請求項11】
キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体である、請求項1~10のいずれかに記載のD3結合分子。
【請求項12】
配列番号12~18及び55のいずれか1つに記載の単一可変ドメインと、配列番号19に記載のIgG定常ドメインとを含む、請求項1~11のいずれかに記載のD3結合分子。
【請求項13】
二量体である、請求項1~12のいずれかに記載のD3結合分子。
【請求項14】
異なる抗原を標的とする抗原結合ドメインなどの異種ペプチドと融合された、請求項1~13のいずれかに定義されるD3結合分子を含む融合タンパク質。
【請求項15】
請求項1~13のいずれかに定義されるD3結合分子の単一可変ドメインをコードする核酸配列を含む核酸分子。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項17】
請求項16に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項18】
請求項1~13のいずれかに定義される少なくとも1つのD3結合分子と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物。
【請求項19】
請求項1~13のいずれかに定義されるD3結合分子を生成するための方法であって、
-請求項15に記載の宿主細胞で前記D3結合分子を発現させる工程と、
-前記宿主細胞から前記D3結合分子を単離する工程と、を含む、前記方法。
【請求項20】
対象のD3関連免疫応答を調節する方法であって、前記対象に請求項1~13のいずれかに定義されるD3結合分子または請求項18に記載の医薬組成物を投与することで、前記対象の免疫応答を調節することを含む、前記方法。
【請求項21】
対象のがんを治療または予防する方法であって、前記対象に有効量の請求項1~13のいずれかに定義されるD3結合分子または請求項18に記載の医薬組成物を投与することを含み、前記がんが、D3陽性またはD3を過剰発現している、前記方法。
【請求項22】
前記がんが、肺癌及び神経内分泌癌から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記がんが、SCLCまたはLCNECである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
D3陽性癌を診断、予防、または治療するための薬剤の製造における、請求項1~13のいずれかに定義されるD3結合分子の使用。
【請求項25】
D3陽性癌の治療または予防に使用するための、請求項1~13のいずれかに定義されるD3結合分子。
【請求項26】
請求項1~13のいずれかに定義されるD3結合分子を含む容器を含む、がんを治療または診断するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、本明細書にその開示内容の全容を参照により援用するところの2021年9月17日出願の国際特許出願第PCT/CN2021/119011号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
配列表
本出願は、本出願とともに提出された配列表を参照により援用する。
【0003】
本出願は、一般に、抗D3抗体をはじめとする、Delta様カノニカルNotchリガンド3(D3)結合分子、及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
Delta様カノニカルNotchリガンド3(D3またはDLL3)は、NotchリガンドのDSLファミリーに属するI型膜貫通タンパク質である。D3は、通常、細胞内膜のみ、特にゴルジ体で発現される。さらなるNotchファミリーリガンドとしては、Delta様カノニカルNotchリガンド1(D1)、Delta様カノニカルNotchリガンド4(D4)、JaggedカノニカルNotchリガンド1(J1)、及びJaggedカノニカルNotchリガンド2(J2)が挙げられる。D3を除く他のリガンドはNotchシグナル伝達を活性化することができる。D3は、Notchとそのリガンドとの結合を妨げることにより、Notchシグナル伝達の阻害剤として機能する。D3は、小細胞肺癌(SCLC)や大細胞神経内分泌癌(LCNEC)などの肺腫瘍細胞の表面で高度に発現している。通常、D3は細胞内膜のみに発現するが、SCLCやLCNECをはじめとする、D3を発現するあらゆる腫瘍に対する潜在的な治療上の腫瘍標的となっている。
【0005】
肺癌はがんによる死亡の最も一般的な原因であり、世界中で毎年約200万人が肺癌と診断されている。全肺癌症例の約15%がSCLCである。SCLCは最も悪性度の高い肺癌であり、治療の選択肢は非常に限られている(手術、化学療法、放射線療法)。2019年、FDAはSCLCの第一選択治療薬としてアテゾリズマブ(抗PD-L1)を承認したが、効果が2か月に限定されていることからさらなる治療法の開発の必要性が高まっている。
【0006】
ADCなどの抗体複合体として、または二重特異性抗体としての用途やCAR-T療法の開発などに使用されるモノクローナル抗体など、D3結合分子を含む新たなD3標的化薬剤を見つける必要性が依然、存在している。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、有効性が改善されたD3結合分子を提供する、化合物、方法、組成物及び製品に関連するものである。本開示によって提供される利点は、抗体治療及び診断の分野に広く適用可能であり、さまざまな標的と反応する抗体などの他の治療薬と組み合わせて使用することができる。
【0008】
本開示は、ヒトD3に特異的に結合することができ、カニクイザル及び/またはマウスD3との交差反応性を有するモノクローナル抗体などのD3結合分子を提供する。こうしたD3結合分子は、現在使用されている及び/または当該技術分野では周知の薬剤、組成物及び/または方法と比較して、特定の利点を与えるものである。これらの利点としては、内在化の可能性、改善された治療特性及び薬理学的特性、改善された特異性、改善された安全性プロファイル、免疫原性の低下、及び調製の容易さの改善または製品コストの削減、特にすでに当該技術分野で知られている候補薬と比較した場合のより高い安定性などのその他の有利な特性が挙げられる。
【0009】
本開示では、D3を過剰発現する腫瘍を治療するために使用することができる、D3に対するモノクローナル抗体などのD3結合分子を開発した。
【0010】
本開示は、D3結合分子、それをコードする核酸分子、D3結合分子の発現に使用される発現ベクター及び宿主細胞、ならびにD3結合分子を使用するための方法を提供するものである。本開示のD3結合分子は、ヒト免疫機能の調節を介して複数のがん(肺癌を含む)を治療するための強力な薬剤を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示は、ヒトD3、カニクイザルD3及び/またはマウスDLL-3などのD3に特異的に結合する少なくとも1つの免疫グロブリンの単一可変ドメイン(例えば、VHHドメイン)を含むD3結合分子を提供する。いくつかの実施形態では、単一可変ドメインは、CDR1、CDR2、及びCDR3を含み、ただし:
CDR1は、配列番号1、4、7または10に記載のアミノ酸配列を含み、
CDR2は、配列番号2、5、8または11に記載のアミノ酸配列を含み、
CDR3は、配列番号3、6または9に記載のアミノ酸配列を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される単一可変ドメインは、
(A)配列番号1に記載のCDR1、配列番号2に記載のCDR2、及び配列番号3に記載のCDR3、
(B)配列番号4に記載のCDR1、配列番号5に記載のCDR2、及び配列番号6に記載のCDR3、
(C)配列番号7に記載のCDR1、配列番号8に記載のCDR2、及び配列番号9に記載のCDR3、または
(D)配列番号10に記載のCDR1、配列番号11に記載のCDR2、及び配列番号6に記載のCDR3を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される単一可変ドメインは、
(A)配列番号27に記載のCDR1、配列番号28または56に記載のCDR2、及び配列番号29に記載のCDR3、
(B)配列番号38に記載のCDR1、配列番号39に記載のCDR2、及び配列番号40に記載のCDR3、または
(C)配列番号49に記載のCDR1、配列番号50に記載のCDR2、及び配列番号51に記載のCDR3を含み、
ただし、CDRの番号付けはContact番号付けシステムに従っている。
【0014】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される単一可変ドメインは、
(A)配列番号12~18及び55のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、
(B)配列番号12~18及び55のいずれか1つに記載のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、または95%同一でありながら、D3に対する特異的結合親和性が維持されている(例えば、実質的に、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%維持されている)アミノ酸配列、または
(C)配列番号12~18及び55のいずれか1つに記載のアミノ酸配列と比較して、1個以上(例えば、1、2または3個)のアミノ酸の付加、欠失及び/または置換を有しながら、D3に対する特異的結合親和性が維持されている(例えば、実質的に、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%維持されている)アミノ酸配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるD3結合分子は、単一可変ドメイン(例えば、VHH)のフレームワーク領域、例えばFRW1、FRW2、FRW3、及び/またはFRW4内にアミノ酸の1つ以上の置換、付加及び/または欠失を含む。いくつかの実施形態では、単一可変ドメインのN末端のFRW1及び/またはC末端のFRW4は切断され、例えば、5、4、3、2、または1個以下のアミノ酸だけ切断される。
【0016】
いくつかの実施形態では、単一可変ドメイン(例えば、VHH)は、配列番号12~18及び55のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるD3結合分子は、1つ以上のヒトIgG定常ドメイン、例えば1つ以上のヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4定常ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、IgG定常ドメインは、ヒトIgG1定常ドメインまたはそのバリアントである。IgG1定常ドメインのアミノ酸配列の例は、配列番号19に記載される通りである。いくつかの実施形態では、D3結合分子は、1つ以上のヒトIgG1定常ドメインのバリアント、例えば、EU番号付けに従ってL234A/L235A置換を有するIgG1 Fcを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるD3結合分子は、以下の特性のうちの1つ以上を有する:
(a)ELISAまたはFACSで測定した場合に、ヒトD3、カニクイザルD3、及び/またはマウスD3にnMグレードのEC50で結合し、
(b)ヒトD3を発現する細胞で用量依存的な内在化能を示し、
(c)SPRで測定した場合に、ヒトD3に0.1nM以下のKDで結合する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるD3結合分子は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体である。いくつかの実施形態では、D3結合分子は二量体である。
【0020】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるD3結合分子は、配列番号12~18及び55のいずれか1つに示される単一可変ドメインと、配列番号19に示されるIgG定常ドメインとを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示されるD3結合分子、例えば、単一可変ドメイン(例えば、VHH)を含むD3結合分子をコードする核酸配列を含む核酸分子を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示される核酸分子を含むベクターを提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示される発現ベクターまたは核酸分子を含む宿主細胞を提供する。
【0024】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示されるD3結合分子と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0025】
いくつかの実施形態では、本開示は、D3結合分子を調製するための方法であって、本明細書に開示される宿主細胞でD3結合分子を発現させることと、宿主細胞からD3結合分子を単離することと、を含む、方法を提供する。
【0026】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象のD3関連免疫応答を調節する方法であって、対象に本明細書に開示されるD3結合分子を投与することで、対象のD3関連免疫応答を調節することを含む、方法を提供する。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象のD3陽性またはD3過剰発現癌を治療または予防するための方法であって、対象に有効量の本明細書に開示されるD3結合分子または医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、がんは、例えばSCLC及びLCNECを含む肺癌である。
【0028】
いくつかの実施形態では、本開示は、D3陽性癌を診断、治療または予防するための薬剤の製造における、本明細書に開示されるD3結合分子の使用を提供する。
【0029】
いくつかの実施形態では、本開示は、D3陽性癌の診断、治療または予防に使用される本明細書に開示されるD3結合分子を提供する。
【0030】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に開示されるD3結合分子、または本明細書に開示される医薬組成物を使用するキットまたは装置及び関連する方法に関連する。
【0031】
上記は概要であり、したがって必然的に簡略化、一般化、及び詳細の省略が含まれている。したがって、当業者であれば、この要約はあくまで例示のためのものであって、いかなる意味でも限定を意図するものではない点は認識されよう。本明細書に記載される結合分子、方法、組成物及び/または装置及び/または他の主題の他の態様、特徴、及び利点は、本明細書に記載の教示において明らかとなろう。概要は、以下の「発明を実施するための形態」でさらに説明する一連の概念を単純化された形で紹介するために示されるものである。この概要は、特許請求される発明の主題の主要な特徴または重要な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される発明の主題の範囲を決定する際の助けとして用いられることも意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】ELISAによって測定された、各抗体と固定化されたWT115-hPro1.ECD.hisとの例示的な結合の結果を示す。
図2】a及びbは、FACSによって測定された、各抗体とWT115-293F.hPro1.2E5細胞との例示的な結合の結果を示す。
図3】a及びbは、FACSによって測定された、各抗体とWT115-Flpin293.cPro1.pool細胞との例示的な結合の結果を示す。
図4a】ELISAによって測定された、各抗体と固定化されたWT115-MBP-mPro1.ECD.hFcとの例示的な結合の結果を示す。
図4b】ELISAによって測定された、各抗体と固定化されたWT115-MBP-mPro1.ECD.hFcとの例示的な結合の結果を示す。
図5】a及びbは、FACSによって測定された、WT115-293F.hPro1.2E5細胞による各抗体の内在化の例示的な結果を示す。
図6a】ELISAによって測定された、固定化されたWT115-hPro1.ECD.hisに対する各抗体の例示的なエピトープビニングの結果を示す。WT1156-P3R2-1C2-uIgG1によるビニング。
図6b】ELISAによって測定された、固定化されたWT115-hPro1.ECD.hisに対する各抗体の例示的なエピトープビニングの結果を示す。WT1156-P3R2-1H6-uIgG1によるビニング。
図6c】ELISAによって測定された、固定化されたWT115-hPro1.ECD.hisに対する各抗体の例示的なエピトープビニングの結果を示す。WT1156-P8R2-1H1-uIgG1によるビニング。
図6d】ELISAによって測定された、固定化されたWT115-hPro1.ECD.hisに対する各抗体の例示的なエピトープビニングの結果を示す。WT115-BMK1によるビニング。
図7a】ELISAによる可溶化WT115-hPro1.ECD.hisまたは切断型タンパク質に対する各抗体の例示的なELISAの結合の結果を示す。
図7b】ELISAによる固定化WT115-hPro1.ECD.hisまたは切断型タンパク質に対する各抗体のELISAの結合の結果を示す。
図7c】切断型タンパク質の図を示す。
図8】ELISAによって測定された、各抗体とヒトD1及びヒトD4との例示的なファミリー間結合の結果を示す。
図9】WT1156-P3R2-1C2-z109-uIgG1の例示的な血清安定性試験の結果を示す。
図10】例示的な免疫グロブリンの単一可変ドメインWT1156-P3R2-1C2(1C2)、WT1156-P3R2-1C2-z102(1C2-z102)、WT1156-P3R2-1C2-z109(1C2-z109)、WT1156-P3R2-1C9(1C9)、WT1156-P3R2-1H6(1H6)、WT1156-P3R2-1H6-z100(1H6-z100)、及びWT1156-P8R2-1H1(1H1)のアラインメントを示す。各CDRの境界を、Kabat、AbM、Chothia、Contact、及びIMGTの番号付けによって示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本開示は多くの異なる形態で実施可能であるが、本明細書では、本開示の原理を例示する本開示の特定の例示的な実施形態を開示する。本開示は、示される特定の実施形態に限定されない点は強調しておかなければならない。本明細書で使用される各セクションのいずれの見出しも、あくまで構成上の目的のものであって、記載される発明の主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0034】
本明細書において別途定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別途必要とされない限り、単数形の用語は、複数の対象物を含むものとし、複数形の用語は単数の対象物を含むものとする。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈によってそうでない旨が明確に示されない限り、複数形の指示対象を含む。したがって、例えば、「a protein(タンパク質)」と言う場合、複数のタンパク質を含み、「a cell(細胞)」と言う場合、細胞の混合物を含む、といった具合である。本出願において、「または」の使用は、別途記載のない限り、「及び/または」を意味する。さらに、「含む」という用語、ならびに「含む」及び「含まれる」などの他の形の使用は限定的なものではない。さらに、明細書及び添付の特許請求の範囲で提供される範囲には、両端点と端点間のすべての点が含まれる。
【0035】
一般に、本明細書に記載される細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、タンパク質及び核酸の化学及びハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法及びこれらの手法は、当該技術分野では周知のものであり、一般的に使用されているものである。本開示の方法及び技術は、別途指示されない限り、当該技術分野において周知の従来の方法に従って、また本明細書の全体を通して引用され、論じられる種々の一般的な及びより具体的な参考文献に記載されるように、一般的に行われる。例えば、Abbas et al.,Cellular and Molecular Immunology,6th ed.,W.B.Saunders Company (2010);Sambrook J.& Russell D.Molecular Cloning: A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2000);Ausubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,John & Sons,Inc.(2002);Harlow and Lane Using Antibodies: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1998);及びColigan et al.,Short Protocols in Protein Science,Wiley,John & Sons,Inc.(2003)を参照されたい。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、ならびに医薬品化学及び製薬化学に関連して用いられる命名法、ならびにその実験手順及び技術は、当該技術分野において周知のものであり、一般的に使用されているものである。
【0036】
定義
本開示のより深い理解のために、関連する用語の定義と説明を以下に示す。
【0037】
「抗体」(例、抗D3抗体)及び「抗原結合分子」(例、D3結合分子)という用語は、最も広い意味で互換的に使用され、所望の生物学的または結合活性を示すあらゆる形態の抗体を包含する。この用語には、これらに限定されるものではないが、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、キメラ抗体、及びシングルドメイン抗体(通常は重鎖に類似した1本の鎖のみを含むsdAb)、及びそれらが所望の抗原結合活性を示す限り、上記のいずれかのフラグメント、例えば、少なくとも1つのVHHドメインを含む抗体が含まれる。従来の抗体は重鎖と軽鎖を含んでいる。重鎖は、μ、δ、γ、α、及びεに分類することができ、それぞれ抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgA、IgEとして規定する。重鎖は、重鎖可変領域(V)及び重鎖定常領域(C)からなる。重鎖は、1つ以上の定常領域、例えば、3つの定常領域(C1、C2、及びC3)を含むことができる。軽鎖は、軽鎖可変領域(V)と軽鎖定常領域(C)からなる。V及びV領域は、比較的保存された領域(フレームワーク領域(FRW)と呼ばれる)が間に挟まれた超可変領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)にさらに分割することができる。V及びVは、3つのCDR(相補性決定領域)と4つのFR(フレームワーク領域)を以下の順序で含むことができる:N末端からC末端にかけて、FRW1、CDR1、FRW2、CDR2、FRW3、CDR3、FRW4。異なる抗体アイソタイプ、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgEまたはIgM抗体であってもよい。
【0038】
本明細書における「Fc領域」という用語は、例えば、天然配列Fc領域、組み換えFc領域、及びバリアントFc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界はさまざまに異なり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域はしばしば、Cys226位(EU番号付けシステムによる)、またはPro230(EU番号付けシステムによる)のアミノ酸残基からそのカルボキシル末端まで延びると定義される。Fc領域のC末端リシン(EU番号付けシステムによる残基447)は、例えば、抗体の産生もしくは精製時に、または抗体の重鎖をコードする核酸を組み換え操作することによって、除去することができる。
【0039】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的な「エフェクター機能」としては、C1q結合、補体依存性細胞傷害、Fc受容体結合、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体:BCR)のダウンレギュレーションなどが挙げられる。これらのようなエフェクター機能は、Fc領域が結合領域または結合ドメイン(例えば、VHHドメインを含む抗体可変領域またはドメイン)と組み合わされることを一般的に必要とし、本明細書に開示されるようなさまざまなアッセイを使用して評価することが可能である。
【0040】
「天然配列Fc領域」は、自然界に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一であり、人為的な操作、修飾及び/または変更(例えば、単離、精製、選択、可変領域配列などの他の配列を含めるかまたはこれと組み合わせること)が行われていないアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域には、天然配列ヒトIgG1のFc領域(非A及びAアロタイプ)、天然配列ヒトIgG2のFc領域、天然配列ヒトIgG3のFc領域、及び天然配列ヒトIgG4のFc領域、ならびにそれらの天然のバリアントが含まれる。
【0041】
「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸改変(例えば、置換、付加、または欠失)、好ましくは1つ以上のアミノ酸置換(複数可)によって天然配列Fc領域のものとは異なるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、バリアントFc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域中または親ポリペプチドのFc領域中に約1~約10個のアミノ酸置換、好ましくは約1~約5個のアミノ酸置換を有する。バリアントFc領域は、天然配列Fc領域及び/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、または少なくとも約90%の相同性、例えば、少なくとも約95%の相同性を有し得る。本明細書に記載のバリアントFc領域は、エフェクター機能の喪失を有し得る(例えば、サイレントFc)。
【0042】
本明細書に記載される抗体としては、これらに限定されるものではないが、合成抗体、モノクローナル抗体、組換えにより作製された抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、イントラボディ、単鎖Fv(scFv)(例えば、単一特異性、二重特異性などを含む)、ラクダ化抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、及び上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントが挙げられる。
【0043】
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」または「単一可変ドメイン」または「VHHドメイン」または「VHH」または「重鎖のみ抗体可変ドメイン」という用語は、本明細書では互換的に使用することができ、異なる可変ドメインと独立して抗原またはエピトープに結合することができる単鎖抗原結合ドメインを指す。VHHドメイン(例えば、重鎖抗体の可変ドメイン)は、適応免疫応答によって生成される既知の最小の抗原結合単位を表す(Koch-Nolte F.et al.,FASEB J.Nov;21(13):3490-8.Epub 2007 Jun 15(2007))。VHHドメインはヒトのドメインであってもよいが、げっ歯類、コモリザメ、ラクダ科のVHHドメインなどの他の種に由来するシングルドメインも含まれる。ラクダ科動物のVHHは、天然で軽鎖を欠く重鎖抗体を産生するラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダ、及びグアナコなどの種に由来する免疫グロブリンの単一可変ドメインポリペプチドである。かかるVHHドメインは、当該技術分野で利用可能な標準的技術に従ってヒト化することができ、「シングルドメイン抗体」とみなされる。本明細書で使用する場合、VHHには、ラクダ科動物のVHHドメイン及びヒト化VHHドメインが含まれる。
【0044】
「ヒト化抗体」という用語は、マウス、ラマまたはアルパカなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に導入されている抗体を指すものとする。さらなるフレームワーク領域の改変がヒトフレームワーク配列内に行われてもよい。
【0045】
本明細書で使用する場合、「Ka」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度を指すものとし、本明細書で使用する場合、「Kd」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すものとする。抗体のKd値は、当該技術分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる。本明細書で使用する場合、「KD」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離定数を指すものとし、KdとKaとの比(例えば、Kd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される。抗体のKdを決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を使用することによるものであり、好ましくはBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用する。
【0046】
本明細書で使用する場合、「特異的結合」または「特異的に結合する」という用語は、例えば抗体と抗原の間など、2つの分子間の非ランダムな結合反応を指す。
【0047】
本明細書で使用する場合、「高親和性」という用語は、標的抗原に対して1×10-7M以下、より好ましくは5×10-8M以下、さらにより好ましくは1×10-8M以下、さらにより好ましくは5×10-9M以下、さらにより好ましくは1×10-9M以下のKDを有する抗体などのD3結合分子を指す。
【0048】
本明細書で使用する場合、「EC50」という用語は、「半数効果濃度」とも称され、特定の曝露時間後にベースラインと最大値との間の中間の反応を誘発する薬物、抗体、または毒物の濃度を指す。本開示との関連において、EC50は「nM」の単位で表される。
【0049】
本明細書で使用する場合、「エピトープ」または「抗原決定基」という用語は、免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する抗原の部分を指す。「エピトープ」は「抗原決定基」とも呼ばれる。エピトープまたは抗原決定基は一般に、アミノ酸、炭水化物または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基を含み、一般に特定の3次元構造及び特定の電荷特性を有している。例えば、エピトープは一般に、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個の連続または非連続アミノ酸を、「線状」または「立体構造」であってよい固有の立体コンフォメーションで含む。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66,G.E.Morris,Ed.(1996)を参照されたい。線状エピトープでは、タンパク質と相互作用分子(例えば、抗体)間のすべての相互作用部位はタンパク質の一次アミノ酸配列に沿って直線的に存在する。立体構造エピトープでは、相互作用部位はタンパク質内で互いに離れているアミノ酸残基にまたがって存在する。抗体は、当業者には周知の従来の技術により、同じエピトープに対する結合の競合性に応じてスクリーニングすることができる。例えば、競合または交差競合に関する実験を行って抗原への結合に関して互いに競合または交差競合する抗体を得ることができる。同じエピトープに結合する抗体を得るための、それらの交差競合に基づく高スループットの方法が、国際特許出願WO03/48731に記載されている。
【0050】
本明細書で使用する場合、「単離抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すものとする(例えば、D3タンパク質に特異的に結合する単離抗体は、D3タンパク質以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、ヒトD3タンパク質に特異的に結合する単離抗体は、他の種由来のD3タンパク質などの他の抗原に対して交差反応性を有し得る。さらに、単離抗体は、他の細胞物質及び/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0051】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、ポリヌクレオチドを挿入することができる核酸ビヒクルを指す。ベクターが、その中に挿入されたポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の発現を可能にする場合、そのベクターは発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、宿主細胞への形質転換、形質導入、またはトランスフェクションによって宿主細胞内で発現される遺伝物質要素を保有することができる。ベクターは当業者には周知のものであり、これらに限定されるものではないが、プラスミド、ファージ、コスミド;酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)またはP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体、λファージまたはM13ファージなどのファージ及び動物ウイルスを含む。ベクターとして使用できる動物ウイルスとしては、これらに限定されるものではないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルスなど)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス(SV40など)が挙げられる。ベクターは、これらに限定されるものではないが、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメント及びレポーター遺伝子を含む、発現を制御するための複数のエレメントを含み得る。さらに、ベクターは複製起点を含んでもよい。
【0052】
本明細書で使用する場合、「宿主細胞」という用語は、これらに限定されるものではないが、大腸菌または枯草菌などの原核細胞、酵母細胞またはアスペルギルスなどの真菌細胞、ショウジョウバエS2細胞またはSf9などの昆虫細胞、及び線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞またはヒト細胞などの動物細胞を含む、ベクターを導入することができる細胞を指す。
【0053】
本明細書で使用する場合、「同一性」という用語は、配列同士をアラインして比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド分子または2つ以上の核酸分子の配列間の関係を指す。「同一率(%)」とは、比較される分子内のアミノ酸またはヌクレオチド間の同一残基のパーセントを意味し、比較される分子の最小のもののサイズに基づいて計算される。これらの計算では、アラインメント内のギャップ(存在する場合)が、特定の数学的モデルまたはコンピュータプログラム(例えば、「アルゴリズム」)によって好ましくは解消される。アラインされた核酸同士またはポリペプチド同士の同一性を計算するために使用することができる方法としては、Computational Molecular Biology,(Lesk,A.M.,ed.),1988,New York: Oxford University Press;Biocomputing Informatics and Genome Projects,(Smith,D.W.,ed.),1993,New York: Academic Press;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.),1994,New Jersey: Humana Press;von Heinje,G.,1987,Sequence Analysis in Molecular Biology,New York: Academic Press;Sequence Analysis Primer,(Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.),1991,New York: M.Stockton Press;及びCarillo et al,1988,SIAMJ.Applied Math.48:1073に記載されるものが挙げられる。
【0054】
本明細書で使用する場合、「免疫原性」という用語は、生物体内での特定の抗体または感作リンパ球の生成を刺激する能力を指す。免疫原性は、特定の免疫細胞を刺激して活性化、増殖、分化させ、最終的に抗体や感作リンパ球などの免疫エフェクター物質を生成する抗原の性質を指すだけでなく、生物を抗原で刺激した後に生物の免疫系において抗体または感作Tリンパ球が生成され得る特異的な免疫応答を指す。免疫原性は抗原の重要な特性の1つである。抗原が宿主内で免疫応答の生成をうまく誘導できるかどうかは、抗原の特性、宿主の反応性、及び免疫化手段などのいくつかの要因によって決まる。
【0055】
本明細書で使用する場合、「トランスフェクション」または「トランスフェクトする」という用語は、核酸が真核細胞、特に哺乳動物細胞に導入されるプロセスを指す。トランスフェクションのプロトコール及び手法としては、これらに限定されるものではないが、脂質トランスフェクション、ならびにエレクトロポレーションなどの化学的及び物理的方法が挙げられる。多くのトランスフェクション法が当該技術分野で周知であり、本明細書に開示される。例えば、Graham et al.,1973,Virology 52:456;Sambrook et al.,2001,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,supra;Davis et al.,1986,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier;Chu et al,1981,Gene 13:197を参照されたい。
【0056】
本明細書で使用する場合、「SPR」または「表面プラズモン共鳴」という用語は、例えば、BIAcore system (Pharmacia Biosensor AB, Uppsala, Sweden及びPiscataway, N.J.)を使用してバイオセンサーマトリクス内のタンパク質濃度の変化を検出することによってリアルタイムの生体特異的相互作用の分析を可能とする光学的現象を指し、これを含む。さらなる説明については、実施例及びJonsson,U.,et al.(1993)Ann.Biol.Clin.51:19-26;Jonsson,U.,et al.(1991)Biotechniques11:620-627;Johnsson,B.,et al.(1995)J.Mol.Recognit.8:125-131;and Johnnson,B.,et al.(1991)Anal.Biochem.198:268-277を参照されたい。
【0057】
本明細書で使用される「蛍光活性化細胞選別法」または「FACS」という用語は、特殊なタイプのフローサイトメトリーを指す。これは、各細胞の特定の光散乱及び蛍光特性に基づいて、生体細胞の不均一混合物を2つ以上の容器に一度に細胞1個ずつ分別する方法を提供する(FlowMetric.“Sorting Out Fluorescence Activated Cell Sorting”.Retrieved 2017-11-09.)。FACSを実施するための機器は当業者には周知のものであり、一般に市販されている。かかる機器の例としては、Becton Dickinson(Foster City, Calif.)より販売されるFACS Star Plus,FACScan及びFACSort機器、Coulter Epics Division(Hialeah, Fla.)より販売されるEpics C及びCytomation(Colorado Springs,Colo.)より販売されるMoFloが挙げられる。
【0058】
「対象」という用語には、あらゆるヒトまたは非ヒト動物、好ましくはヒトが含まれる。
【0059】
本明細書で使用する場合、「D3に伴う状態」または「D3に関連する状態」という用語は、D3(例えば、ヒトD3)の発現または活性の増加または減少(一般には増加)によって引き起こされるか、悪化するか、または他の形で相関するあらゆる状態を指す。
【0060】
本明細書で使用する場合、「がん」という用語は、固形腫瘍及び白血病などの非固形腫瘍を含む、原発性または転移により媒介されるあらゆる腫瘍またはあらゆる悪性細胞の成長または増殖を指す。
【0061】
本明細書で状態の治療に関連して使用される場合、「治療」、「治療する」または「治療された」という用語は、一般に、例えば、状態の進行の阻害などの何らかの所望の治療効果が達成される、ヒトであるか動物であるかによらない治療または療法に関し、進行速度の低下、進行速度の停止、状態の退縮、状態の改善、及び状態の治癒が含まれる。予防措置としての治療(例えば、予防、防止)も含まれる。がんの場合、「治療する」とは、腫瘍または悪性細胞の成長、増殖、または転移、またはそれらの組み合わせを弱めるかまたは遅らせることを指すことができる。腫瘍の場合、「治療」には、腫瘍の全体または一部の除去、腫瘍の増殖及び転移の阻害または遅延、腫瘍の発生の予防または遅延、またはそれらの特定の組み合わせが含まれる。
【0062】
本明細書で使用する場合、「治療有効量」という用語は、所望の治療レジメンに従って投与された場合に、妥当なベネフィット/リスク比に見合った何らかの所望の治療効果を生じるうえで有効な、活性化合物、または活性化合物を含む材料、組成物もしくは剤形の量に関する。例えば、D3結合分子の「治療有効量」とは、ヒトのD3関連疾患または状態を治療するうえで有効な量または濃度を指す。
【0063】
本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、外因性ポリヌクレオチドが導入された細胞を指す。
【0064】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」という用語は、ビヒクル、希釈剤、賦形剤及び/またはそれらの塩が、製剤中の他の成分と化学的及び/または物理的に適合し、レシピエントと生理学的に適合することを意味する。
【0065】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体及び/または賦形剤」という用語は、当該技術分野では周知のものである、対象及び活性薬剤と薬理学的及び/または生理学的に適合する担体、安定剤、及び/または賦形剤を指し(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences.Edited by Gennaro AR, 19th ed. Pennsylvania:Mack Publishing Company,1995)、これらに限定されるものではないが、pH調整剤、界面活性剤、アジュバント、またはイオン強度増強剤が含まれる。例えば、pH調整剤としてはリン酸緩衝液が挙げられ(ただし、これらに限定されない)、界面活性剤としてはカチオン性、アニオン性、または非イオン性界面活性剤、例えばTween(登録商標)-80が挙げられ(ただし、これらに限定されない)、イオン強度増強剤としては、塩化ナトリウムが挙げられる(ただし、これらに限定されない)。担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる投与量及び濃度でこれらに曝露される細胞または哺乳動物に非毒性である。多くの場合、担体は、pH緩衝水溶液である。担体の例としては、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(例えば、約10アミノ酸残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖、二糖、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/またはTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(登録商標)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。「担体」という用語は、それらとともに治療薬が投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全または不完全))、賦形剤、またはビヒクルも指し得る。かかる担体は、滅菌された水及び油などの液体であてよく、石油、動物、植物、または合成由来のもの、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などを含む。水は、組成物(例えば、医薬組成物)が静脈内投与される場合の例示的な賦形剤である。生理食塩水ならびに水性デキストロース及びグリセロール溶液はまた、液体担体として、特に注射可能な溶液に使用することができる。適当な賦形剤(例えば、薬学的賦形剤)としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物はまた、必要に応じて、微量の湿潤剤または乳化剤、またはpH緩衝剤を含有し得る。組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの形態を有することができる。製剤を含む経口組成物は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含むことができる。適当な担体の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (1990) Mack Publishing Co.,Easton,PA.に記載されている。医薬化合物を含む組成物は、例えば、単離または精製された形態の予防的または治療的有効量のD3結合剤(例えば、抗D3抗体)を、対象(例えば、患者)に適切に投与するための形態を与えるのに適当な量の担体とともに含むことができる。製剤は、投与様式に適したものである必要がある。
【0066】
本明細書で使用される場合、「アジュバント」という用語は、抗原と一緒に生物に投与されるか、または先に生物に投与される際、抗原に対する免疫応答を増強するか、または生物内の免疫応答の種類を変化させることができる、非特異的免疫増強剤を指す。これらに限定されるものではないが、アルミニウムアジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、フロイントアジュバント(例えば、フロイント完全アジュバント及びフロイント不完全アジュバント)、コリネバクテリウムパルバム、リポ多糖、サイトカインなどを含むさまざまなアジュバントがある。フロイントアジュバントは、動物実験で最も一般的に使用されるアジュバントである。水酸化アルミニウムアジュバントは臨床試験でより一般的に使用されている。
【0067】
D3結合分子
いくつかの態様では、本開示は、D3結合分子を提供する。D3結合分子は、広義では、D3に特異的に結合する任意の分子を含み得る。状況によっては、「D3結合分子」は、「D3アンタゴニスト」及び「抗D3抗体」を含み得る。「D3アンタゴニスト」とは、D3活性を遮断する任意の化合物または生体分子を指す。「抗D3抗体」としては、これらに限定されるものではないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体またはシングルドメイン抗体が含まれるが、これらに限定されない。D3結合分子は、ポリペプチドまたはタンパク質に限定されず、ヌクレオチド、ハイブリッド、グルカン及びそれらの組み合わせなどの他の成分を含み得る。本明細書に例示されるように、D3結合分子は、抗D3抗体または抗D3融合タンパク質であってよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるD3結合分子は、D3に特異的に結合する少なくとも1つのVHHを含む。さらに、D3結合分子は1個のVHHを含むシングルドメイン抗体であってよい。例えば、シングルドメイン抗体は、特定の抗原(例えば、D3)に選択的に結合することができる。いくつかの実施形態では、D3結合分子は、免疫グロブリンFc領域、例えば、IgG(例えば、IgG4またはIgG1)のFc領域に融合されたVHHを含む。いくつかの実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG1のFc領域である。VHHをFc領域に融合することにより、エフェクター機能をより効率的に動員できる可能性がある。また、VHHのFc領域への融合は、D3結合分子の二量体の形成を助けると考えられ、インビボでのD3結合分子の半減期を延ばす助けになると考えられる。
【0069】
当該技術分野では周知のように、ラクダ科抗体に由来するVHH分子は、既知のインタクトな抗原結合ドメインの中で最小のものの1つであり(約15kDa、すなわち従来のIgGの10倍小さい)、したがって、密な組織への送達及びマクロ分子間の限られた空間へのアクセスによく適している。
【0070】
本明細書に開示されるVHHは、当該技術分野では周知の方法または任意の将来的な方法に従って、当業者が作製することができる。例えば、VHHは、例えば、ラクダを免疫化し、それからハイブリドーマを得ることによって、または当該技術分野では周知の分子生物学の手法を用いてVHHのライブラリーをクローニングし、その後、ファージディスプレイを使用して選択することによって得ることができる。
【0071】
例えば、VHHは、所望の抗原によるラマまたはアルパカの免疫化、及びその後の重鎖抗体をコードするmRNAの単離によって得ることができる。逆転写とポリメラーゼ連鎖反応により、数百万のクローンを含むシングルドメイン抗体の遺伝子ライブラリーが作製される。ファージディスプレイ及びリボソームディスプレイなどのスクリーニング技術は、抗原に結合するクローンを同定するうえで役立つ。1つの技術として、ファージディスプレイがあり、(例えば、ヒト)抗体のライブラリーをファージ上で合成し、そのライブラリーを目的の抗原またはその抗体結合部分を用いてスクリーニングし、抗原に結合するファージを単離し、そこから免疫反応性フラグメントを得ることができる。かかるライブラリーを調製及びスクリーニングする方法は当該技術分野では周知のものであり、ファージディスプレイライブラリーを作製するためのキットが市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27-9400-01、及びStratagene SurfZAP(商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。抗体ディスプレイライブラリーの作製及びスクリーニングに使用できる他の方法及び試薬もある(例えば、Barbas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7978-7982(1991)を参照)。
【0072】
有望なクローンが同定された場合、それらのDNA配列を例えば親和性成熟またはヒト化によって最適化する。ヒト化によって、抗体に対するヒトの免疫学的反応を防止することができる。
【0073】
したがって、VHHは、(1)天然に存在する重鎖抗体のVHHドメインを単離することによって、(2)天然に存在するVHHドメインをコードするヌクレオチド配列の発現によって、(3)天然に存在するVHHドメインの「ヒト化」(下記に記載する)によって、またはそのようなヒト化VHHドメインをコードする核酸の発現によって、(4)任意の動物種、特にヒトなどの哺乳動物種に由来する天然のVHドメインの「ラクダ化」によって、またはそのようなラクダ化VHドメインをコードする核酸の発現によって、(5)Wardら(前出)により記載される「ドメイン抗体」すなわち「Dab」の「ラクダ化」、またはそのようなラクダ化VHドメインをコードする核酸の発現によって、(6)タンパク質、ポリペプチド、または他のアミノ酸配列を調製するための合成または半合成技術を使用して、(7)核酸合成技術を使用してVHHをコードする核酸を調製した後、そのようにして得られた核酸を発現させることによって、(8)重鎖抗体またはVHHを親和性成熟、突然変異誘発(例えば、ランダム突然変異誘発または部位特異的突然変異誘発)及び/またはVHHの親和性及び/または特異性を高めるための任意の他の技術に供することによって、及び/または(9)上記の任意の組み合わせによって得ることができる。上記を行うための適当な方法及び技術は、本明細書の開示に基づけば当業者には明らかであり、例えば、本明細書でより詳細に説明される方法及び技術が含まれる。
【0074】
シングルドメイン抗体は通常、免疫動物から得られた血液、リンパ節、または脾臓のcDNAからの可変ドメインのレパートリーをファージディスプレイベクターにPCRクローニングすることによって作製される。抗原特異的シングルドメイン抗体は、一般に、固定化抗原(例えば、試験管のプラスチック表面にコーティングされた抗原、ストレプトアビジンビーズに固定化されたビオチン化抗原、または細胞表面に発現された膜タンパク質など)上のファージライブラリーをパニングすることによって選択される。sdAbの親和性は、インビトロでこの戦略を模倣することにより、例えば、CDR領域の部位特異的突然変異誘発、及びストリンジェンシーを高めた条件(より高い温、高いまたは低い塩濃度、高いまたは低いpH、及び低い抗原濃度)下で固定化抗原のさらなるパニングのラウンドを行うことによって高めることができる(Wesolowski et al.,Single domain antibodies: promising experimental and therapeutic tools in infection and immunity.Med Microbiol Immunol(2009)198:157-174)。
【0075】
抗原またはエピトープに特異的に結合するVHHを調製するための方法は、例えば、R.van der Linden et al.,Journal of Immunological Methods,240(2000) 185-195;Li et al.,J Biol Chem.,287(2012)13713-13721;Deffar et al.,African Journal of Biotechnology Vol.8(12),pp.2645,17 June,2009 及びWO94/04678などの参考文献に記載されている。
【0076】
いくつかの実施形態では、VHHが抗原結合性及び特異性を実質的に維持する限り(例えば、実質的に維持、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、VHHは、部分的なFRW1及び/またはFRW4のみを含むか、またはこれらのフレームワーク領域の一方または両方を欠くように、N末端またはC末端で切断されていてもよい。
【0077】
本開示はまた、D3結合分子のD3結合ドメインのうちの1つ以上がマスクされ(例えば、マスキング部分により)、及び/または活性化可能(例えば、切断可能な部分により)である、マスキング部分及び/または切断可能部分を有するD3結合分子も提供する。D3結合分子(例えば、抗体)をマスキングするための技術は当該技術分野では周知のものであり、SAFEボディマスキング技術(例えば、US2019/0241886を参照)及びProbodyマスキング技術(例えば、US2015/0079088を参照)が挙げられる。かかる技術を使用して、マスクされた及び/または活性化可能なD3結合分子(例えば、抗体)を作製することができる。かかるマスクされた及び/または活性化可能なD3結合分子(例えば、抗体)は、薬物などの別の物質に直接的または間接的に結合されたものを含む、本開示のD3結合分子(例えば、抗体)のいずれか1つを含む、免疫複合体、抗体薬物複合体(ADC)、マスクされたADC及び活性化可能な抗体薬物複合体(AADC)をはじめとする複合体の調製に有用である。例えば、本開示のD3結合分子は、合成リンカーによって薬物などの1つ以上の薬剤に共有結合を介して結合させることができる。
【0078】
必要に応じて、D3結合分子は、細胞傷害活性(例えば、化学療法部分または放射性同位元素)または免疫動員活性などのエフェクター機能を有する部分と(直接的または間接的に)連結または結合される。(直接的または間接的に)連結または結合される部分としては、細胞傷害性の薬物(例、オーリスタチンなどの毒素)または非細胞傷害性の薬物(例、キナーゼなどのシグナル伝達調節因子、またはD3結合分子の1つ以上の結合ドメインをマスクするマスキング部分、または切断可能部分を切断することでマスクされた複合体の形態の、腫瘍微小環境中のD3結合分子の1つ以上の結合ドメインのマスクを除去することによりD3結合分子を活性化することを可能にする切断可能部分)が挙げられる。免疫動員を促進する部分は、自然免疫系の細胞に選択的に結合するウイルスタンパク質などの他の抗原結合剤を含み得る。あるいは、またはさらに、D3結合分子は、場合により、混合物からの単離を容易にする部分(例えば、タグ)またはレポーター活性を有する部分(例えば、検出標識またはレポータータンパク質)と(直接的または間接的に)連結または結合される。本明細書に記載されるD3結合分子の特徴は、D3結合分子フラグメントを含むポリペプチドにも及ぶ点は理解されよう。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のD3結合分子は、ポリペプチドと(直接的または間接的に)連結または結合されてもよく、その結果、活性化可能な抗体が生成され得る。いくつかの実施形態では、D3結合分子は、物質と(直接的または間接的に)連結または結合される。いくつかの実施形態では、物質は薬物であり、ADCの抗体がマスキング部分及び切断可能部分を含む場合、ADCまたはAADCを与える。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のD3結合分子は、治療薬(例えば、細胞傷害剤)または診断薬もしくは検出可能な薬剤と(直接的または間接的に)結合または組換えにより連結される。マスクされた、または活性化可能な複合体を含む、複合体化または組換えにより連結された抗体は、例えば、がんまたは腫瘍などの疾患、障害または状態の治療または予防に有用であり得る。
【0081】
診断及び検出は、例えば、D3結合分子を、検出可能な物質、例えば、これらに限定されるものではないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含む(ただし、これらに限定されない)酵素;ストレプトアビジン/ビオチンまたはアビジン/ビオチンを含む(ただし、これらに限定されない)補欠分子族;ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、またはフィコエリトリンを含む(ただし、これらに限定されない)蛍光物質;ルミノールを含む(ただし、これらに限定されない)発光物質;ルシフェラーゼ、ルシフェリン、またはエクオリンを含む(ただし、これらに限定されない)生物発光物質;アクリジニウムベースの化合物またはHALOTAGを含む(ただし、これらに限定されない)化学発光材料;ヨウ素(131I、125I、123I、及び121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115In、113In、112In、及び111In)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga及び67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、または117Snを含む(ただし、これらに限定されない)放射性物質;さまざまな陽電子放出断層撮影法を使用した陽電子放出金属;及び非放射性常磁性金属イオンと結合することによって行うことができる。
【0082】
抗体と物質との複合体(物質がADCまたはAADCの調製のための薬物である場合を含む)は、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、sulfo-EMCS、sulfo-GMBS、sulfo-KMUS、sulfo-MBS、sulfo-SIAB、sulfo-SMCC、sulfo-SMPB、及びSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)などのさまざまな二官能性タンパク質結合剤を用いて調製することができる。本開示ではさらに、抗体と物質との複合体(物質がADCまたはAADCの調製のための薬物である場合を含む)を当該技術分野で開示される任意の適当な方法を使用して調製できることを企図している(例えば、Bioconjugate Techniques(Hermanson ed., 2d ed. 2008))。
【0083】
抗体と物質との従来の結合戦略(物質がADCまたはAADCを調製するための薬物である場合を含む)は、Lys残基のε-アミノ基またはCys残基のチオール基が関与するランダム結合化学に基づいており、異種複合体を与えるものである。近年開発された技術により、抗体への部位特異的結合が可能になり、均一なローディングが得られ、抗原結合性または薬物動態が変化した複合体の亜集団が回避される。これらの技術には、反応性チオール基を与え、かつ免疫グロブリンのフォールディング及びアセンブリを破壊したり、抗原結合性を変化させない重鎖及び軽鎖上の位置にシステイン置換を含む「チオマブ」の操作が含まれる(例えば、Junutula et al., 2008, J. Immunol.Meth. 332: 41-52;及びJunutula et al., 2008, Nature Biotechnol.26:925-32を参照)。別の方法では、終止コドンUGAを終止からセレノシステインの挿入に再コードすることにより、セレノシステインを抗体配列に翻訳と同時に挿入することで、他の天然アミノ酸の存在下でセレノシステインの求核性セレノール基における部位特異的な共有結合が可能となる(例えば、Hoferetal.,2008,Proc.Natl.Acad.Sci.USA105:12451-56;及びHoferetal.,2009,Biochemistry48(50):12047-57)。
【0084】
本明細書に記載されるD3結合分子は、単一特異性、二重特異性、三重特異性、またはより高次の多重特異性であってもよい。このような物質には抗体が含まれ得る。二重特異性抗体のような多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる標的(例えば、抗原)または同じ標的上の2つの異なるエピトープ(例えば、D3の第1のエピトープに対する第1の結合ドメインと、D3の第2のエピトープに対する第2の結合ドメインとを有する、D3に対する二重特異性抗体)に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば、二重特異性)抗体は、本明細書に記載の抗体の配列に基づいて構築することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、マウス、キメラ、ヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の結合特異性のうちの一方はD3に対するものであり、他方は任意の他の標的(例えば、抗原)に対するものである。いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば、二重特異性)抗体は、複数の標的(例えば、抗原)結合ドメインを含むことができ、異なる結合ドメインは異なる標的に対して特異的である(例えば、D3に結合する第1の結合ドメインと、免疫チェックポイント制御因子(例えば、ネガティブチェックポイント制御因子)などの別の標的(例えば、抗原)に結合する第2の結合ドメイン)。いくつかの実施形態では、多重特異性(例えば、二重特異性)抗体分子は、同じ標的(例えば、抗原)上の複数(例えば、2つ以上)のエピトープに結合することができる。いくつかの実施形態では、結合特異性の一方はD3に対するものであり、他方は、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)、CD80、CD86、プログラム細胞死1(PD-1)、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、プログラム細胞死リガンド2(PD-L2)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3、CD223としても知られる)、ガレクチン3、B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、T細胞膜タンパク質3(TIM3)、ガレクチン9(GAL9)、B7-H1、B7-H3、B7-H4、Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT/Vstm3/WUCAM/VSIG9)、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)、グルココルチコイド誘発性腫瘍壊死因子受容体関連(GITR)タンパク質、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)、OX40、CD27、CD28、CD137、CGEN-15001T、CGEN-15022、CGEN-15027、CGEN-15049、CGEN-15052、及びCGEN-15092のうちの1つ以上に対するものである。
【0085】
多重特異性抗体を作製するための方法は当該技術分野では周知のものであり、例えば、2本の重鎖が異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖のペアの同時発現によるものがある(例えば、Milstein and Cuello,1983,Nature 305:537-40を参照)。多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)の作製のさらなる詳細については、例えば、Bispecific Antibodies (Kontermann ed., 2011)を参照されたい。
【0086】
本開示は、D3に結合するヒト化抗体を提供する。非ヒト抗体をヒト化するための方法は、さまざまなものが当該技術分野において知られている。例えば、ヒト化抗体は、非ヒト由来源から導入される1つ以上のアミノ酸残基を有し得る。これらの非ヒトアミノ酸残基はしばしば「インポート」残基と呼ばれ、通常は「インポート」可変ドメインに由来する。D3に結合するヒト化抗体は、当業者には周知の技術を使用して作製することができる(例えば、Zhang et al.,Molecular Immunology,42(12): 1445-1451,2005;Hwang et al.,Methods,36(1): 35-42,2005;Dall’Acqua et al.,Methods,36(1): 43-60,2005;Clark,Immunology Today,21(8): 397-402,2000、及び米国特許第6,180,370号、同第6,054,927号、同第5,869,619号、同第5,861,155号、同第5,712,120号、及び同第4,816,567号)。
【0087】
D3結合分子は、以下のセクションでは抗D3抗体と記載される場合がある。
【0088】
機能的特性を備えた抗D3抗体
例えば、少なくとも1つのVHHドメインを含む抗体を含む本開示の抗体は、抗体の特定の機能的特徴または特性によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、RLRアゴニストは、以下の特性を有する。すなわち、
(a)ELISAまたはFACSで測定した場合に、ヒトD3、カニクイザルD3、及びマウスD3にnMグレードのEC50で結合し、
(b)D3を発現するように操作されたヒト細胞で用量依存的な内在化能を示し、
(c)SPRで測定した場合に、ヒトD3のECDに0.1nM以下のKDで結合する。
【0089】
本開示の抗体は、細胞表面D3に高い親和性で結合する。本開示の抗体のD3への結合は、当該技術分野で十分に確立されている1つ以上の技術、例えばELISAを使用して評価することができる。本開示の抗体の結合特異性は、例えばフローサイトメトリーによって、D3タンパク質を発現する細胞への抗体の結合をモニタリングすることによって決定することもできる。例えば、抗体は、細胞表面上でD3を発現するようにトランスフェクトされたCHO細胞及び293細胞などの、ヒトD3を発現する細胞株と抗体を反応させるフローサイトメトリーアッセイ(例えば、FACS)によって試験することができるさらに、またはあるいは、結合反応速度論(例えば、Kd値)を含む抗体の結合性をBIAcore結合アッセイで試験することができる。さらに他の適当な結合アッセイとしては、例えば組換えD3タンパク質を使用するELISAアッセイが挙げられる。例えば、本開示の抗体は、細胞表面のD3(例えば、ヒトD3のECD)タンパク質に、1×10-7M以下、5×10-8M以下、2×10-8M以下、5×10-9M以下、4×10-9M以下、3×10-9M以下、2×10-9M以下、1×10-9M以下、5×10-10M以下、または1×10-10M以下のKで結合する。
【0090】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、FACSによって測定した場合に、カニクイザルまたはマウスD3に約10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nM、または0.01nM以下のEC50で結合する。
【0091】
VHH CDRを含む抗D3抗体
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗D3抗体は、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、VHH)を含み、VHHは、CDR1、CDR2、及びCDR3を含み、CDR1は、配列番号1、4、7または10に記載のアミノ酸配列を含み、CDR2は、配列番号2、5、8または11に記載のアミノ酸配列を含み、CDR3は、配列番号3、6または9に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR番号付けは、Kabat番号付けとAbM番号付けの組み合わせに従う。
【0092】
フレームワーク領域及び各CDRの範囲は、例えば、Kabat定義、Chothia定義、AbM定義、Contact定義、IMGT定義(これらはいずれも当該技術分野では周知のものである)、及びそれらの任意の組み合わせなどの当該技術分野では周知の方法を使用して正確に同定することができる。例えば、Kabat,E.A.,et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S. Department of Health and Human Services,NIH Publication No. 91-3242,Chothia et al.,(1989) Nature 342:877;Chothia,C. et al. (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917,Al-lazikani et al (1997) J. Molec.Biol. 273:927-948;Edelman et al.,Proc Natl Acad Sci U S A. 1969 May,63(1):78-85;及びMartin and Allen,in “Handbook of Therapeutic Antibodies”,chapter 5,2007を参照。hgmp.mrc.ac.uk及びbioinf.org.uk/absも参照されたい。異なる定義による番号付け間の対応またはアラインメントは、例えばwww.imgt.org/に見ることができる(Giudicelli V et al. IMGT(国際ImMunoGeneTicsデータベース)Nucleic Acids Res. (1997) 25:206-11;及びLefranc MP et al.,IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains.Dev Comp Immunol.(2003) 27:55-77も参照)。
【0093】
当業者には認識されるように、相補性決定領域(CDR)の正確な番号付け及び配置は、番号付けシステムによって異なり得る。しかしながら、可変重鎖、可変軽鎖、及び/またはVHH配列の開示は、関連する(固有の)CDRの開示を含む点を理解されたい。したがって、各可変領域の開示は、各CDR(例えば、CDR1、CDR2、及びCDR3)の開示である。同じVH、VL、またはVHHのCDRを有する2つの抗体は、同じアプローチ(例えば、当該技術分野では周知のKabat、AbM、Chothia、Contact、及びIMGT番号付けアプローチ)によって決定した場合にそれらのCDRが同じであることを意味する。
【0094】
抗体配列中の可変領域及びCDRは、当該技術分野で開発された一般的規則(例えば、Kabat、AbM、Chothia、Contact、及びIMGT番号付けシステム)に従って、または既知の可変領域のデータベースに対して配列をアラインすることによって同定することができる。これらの領域を特定する方法は、Kontermann and Dubel,eds.,Antibody Engineering,Springer,New York,NY,2001及びDinarello et al.,Current Protocols in Immunology,John Wiley and Sons Inc.,Hoboken,NJ,2000に記載されている。抗体配列の例示的なデータベースは、Retter et al.,Nucl. Acids Res.,33(Database issue): D671-D674(2005)に記載されるように、「Abysis」ウェブサイト(www.bioinf.org.uk/abs)(A.C.Martin in the Department of Biochemistry & Molecular Biology University College London,London,Englandによって管理されている)及びVBASE2ウェブサイト(www.vbase2.org)に記載されており、そこからアクセスできる。好ましくは、配列は、Kabat、IMGT、及びProtein Data Bank(PDB)からの配列データと、PDBからの構造データを統合するAbysisデータベースを使用して分析される。Dr.Andrew C.R.Martin’s book chapterProtein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domainsを参照されたい。Antibody Engineering Lab Manual(Ed.:Duebel,S.and Kontermann,R.,Springer-Verlag, Heidelberg,ISBN-13:978-3540413547,ウェブサイトbioinforg.uk/absでも利用可能)。Abysisデータベースウェブサイトには、本明細書の教示に従って使用できるCDRを特定するために開発された一般規則がさらに含まれている。図10は、例示的な免疫グロブリン単一可変ドメインのアラインメントを示し、各CDRの境界を、Kabat、AbM、Chothia、Contact、及びIMGTの番号付けによって示している。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるD3結合分子は、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、VHH)を含み、VHHは、FRW1-CDR1-FRW2-CDR2-FRW3-CDR3-FRW4を含み、ただし、CDR1は、配列番号1、4、7または10に記載のアミノ酸配列を有し、CDR2は、配列番号2、5、8または11に記載のアミノ酸配列を有し、CDR3は、配列番号3、6または9に記載のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、D3結合分子に含まれるVHHのN末端及びC末端のFRW1及びFRW4は、VHHが抗原結合性及び特異性を実質的に維持する限り、部分的なFRW1及び/またはFRW4のみを含むか、またはVHHがこれらのフレームワーク領域の一方または両方を欠くように切断されてもよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書において、配列番号12に記載のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つすべてのCDRを含む抗D3抗体(抗D3シングルドメイン抗体など)が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号13に記載のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つすべてのCDRを含む抗D3抗体(抗D3シングルドメイン抗体など)が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号14に記載のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つすべてのCDRを含む抗D3抗体(抗D3シングルドメイン抗体など)が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号15に記載のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つすべてのCDRを含む抗D3抗体(抗D3シングルドメイン抗体など)が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号16に記載のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つすべてのCDRを含む抗D3抗体(抗D3シングルドメイン抗体など)が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号17に記載のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つすべてのCDRを含む抗D3抗体(抗D3シングルドメイン抗体など)が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号18に記載のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つすべてのCDRを含む抗D3抗体(抗D3シングルドメイン抗体など)が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号55に記載のアミノ酸配列の1つ、2つ、または3つすべてのCDRを含む抗D3抗体(抗D3シングルドメイン抗体など)が提供される。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗D3抗体(抗D3シングルドメイン抗体など)は、ヒト化されている。いくつかの実施形態では、抗D3抗体(抗D3シングルドメイン抗体など)は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗D3抗体(シングルドメイン抗体など)は、配列番号12に記載のCDR1のアミノ酸配列を有するCDR1を含む。いくつかの実施形態では、抗D3抗体(シングルドメイン抗体など)は、配列番号12に記載のCDR2のアミノ酸配列を有するCDR2を含む。いくつかの実施形態では、抗D3抗体(シングルドメイン抗体など)は、配列番号12に記載のCDR3のアミノ酸配列を有するCDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗D3抗体(シングルドメイン抗体など)は、配列番号12に記載のCDR1及びCDR2のアミノ酸配列を有するCDR1及びCDR2を有する。いくつかの実施形態では、抗D3抗体(シングルドメイン抗体など)は、配列番号12に記載のCDR1及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR1及びCDR3を有する。いくつかの実施形態では、抗D3抗体(シングルドメイン抗体など)は、配列番号12に記載のCDR2及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR2及びCDR3を有する。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体(シングルドメイン抗体など)は、配列番号12に記載のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR1、CDR2、及びCDR3を有する。CDR配列は、周知の番号付けシステムによって決定することができる。いくつかの実施形態では、CDRは、IMGT番号付けに従う。いくつかの実施形態では、CDRは、Kabat番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Chothia番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Contact番号付けに従う。いくつかの実施形態では、CDRは、AbM番号付けに従う。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗D3抗体(抗D3シングルドメイン抗体など)は、ヒト化されている。いくつかの実施形態では、抗D3抗体(抗D3シングルドメイン抗体など)は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号13に記載のCDR1のアミノ酸配列を有するCDR1を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号13に記載のCDR2のアミノ酸配列を有するCDR2を有する。他の実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号13に記載のCDR3のアミノ酸配列を有するCDR3を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号13に記載のCDR1及びCDR2のアミノ酸配列を有するCDR1及びCDR2を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号13に記載のCDR1及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR1及びCDR3を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号13に記載のCDR2及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR2及びCDR3を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号13に記載のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR1、CDR2、及びCDR3を有する。CDR配列は、周知の番号付けシステムによって決定することができる。いくつかの実施形態では、CDRは、IMGT番号付けに従う。いくつかの実施形態では、CDRは、Kabat番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Chothia番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Contact番号付けに従う。いくつかの実施形態では、CDRは、AbM番号付けに従う。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ヒト化される。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号14に記載のCDR1のアミノ酸配列を有するCDR1を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号14に記載のCDR2のアミノ酸配列を有するCDR2を有する。他の実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号14に記載のCDR3のアミノ酸配列を有するCDR3を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号14に記載のCDR1及びCDR2のアミノ酸配列を有するCDR1及びCDR2を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号14に記載のCDR1及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR1及びCDR3を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号14に記載のCDR2及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR2及びCDR3を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号14に記載のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR1、CDR2、及びCDR3を有する。CDR配列は、周知の番号付けシステムによって決定することができる。いくつかの実施形態では、CDRは、IMGT番号付けに従う。いくつかの実施形態では、CDRは、Kabat番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Chothia番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Contact番号付けに従う。いくつかの実施形態では、CDRは、AbM番号付けに従う。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ヒト化される。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号15に記載のCDR1のアミノ酸配列を有するCDR1を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号15に記載のCDR2のアミノ酸配列を有するCDR2を有する。他の実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号15に記載のCDR3のアミノ酸配列を有するCDR3を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号15に記載のCDR1及びCDR2のアミノ酸配列を有するCDR1及びCDR2を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号15に記載のCDR1及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR1及びCDR3を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号15に記載のCDR2及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR2及びCDR3を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号15に記載のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR1、CDR2、及びCDR3を有する。CDR配列は、周知の番号付けシステムによって決定することができる。いくつかの実施形態では、CDRは、IMGT番号付けに従う。いくつかの実施形態では、CDRは、Kabat番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Chothia番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Contact番号付けに従う。いくつかの実施形態では、CDRは、AbM番号付けに従う。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ヒト化される。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号16に記載のCDR1のアミノ酸配列を有するCDR1を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号16に記載のCDR2のアミノ酸配列を有するCDR2を有する。他の実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号16に記載のCDR3のアミノ酸配列を有するCDR3を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号16に記載のCDR1及びCDR2のアミノ酸配列を有するCDR1及びCDR2を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号16に記載のCDR1及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR1及びCDR3を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号16に記載のCDR2及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR2及びCDR3を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号16に記載のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR1、CDR2、及びCDR3を有する。CDR配列は、周知の番号付けシステムによって決定することができる。いくつかの実施形態では、CDRは、IMGT番号付けに従う。いくつかの実施形態では、CDRは、Kabat番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Chothia番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Contact番号付けに従う。いくつかの実施形態では、CDRは、AbM番号付けに従う。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ヒト化される。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号17に記載のCDR1のアミノ酸配列を有するCDR1を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号17に記載のCDR2のアミノ酸配列を有するCDR2を有する。他の実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号17に記載のCDR3のアミノ酸配列を有するCDR3を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号17に記載のCDR1及びCDR2のアミノ酸配列を有するCDR1及びCDR2を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号17に記載のCDR1及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR1及びCDR3を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号17に記載のCDR2及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR2及びCDR3を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号17に記載のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR1、CDR2、及びCDR3を有する。CDR配列は、周知の番号付けシステムによって決定することができる。いくつかの実施形態では、CDRは、IMGT番号付けに従う。いくつかの実施形態では、CDRは、Kabat番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Chothia番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Contact番号付けに従う。いくつかの実施形態では、CDRは、AbM番号付けに従う。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ヒト化される。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号18に記載のCDR1のアミノ酸配列を有するCDR1を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号18に記載のCDR2のアミノ酸配列を有するCDR2を有する。他の実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号18に記載のCDR3のアミノ酸配列を有するCDR3を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号18に記載のCDR1及びCDR2のアミノ酸配列を有するCDR1及びCDR2を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号18に記載のCDR1及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR1及びCDR3を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号18に記載のCDR2及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR2及びCDR3を有する。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号18に記載のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を有するCDR1、CDR2、及びCDR3を有する。CDR配列は、周知の番号付けシステムによって決定することができる。いくつかの実施形態では、CDRは、IMGT番号付けに従う。いくつかの実施形態では、CDRは、Kabat番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Chothia番号付けに従う。他の実施形態において、CDRは、Contact番号付けに従う。いくつかの実施形態では、CDRは、AbM番号付けに従う。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ヒト化される。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、本明細書において、下記構造:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を含む、D3に結合するシングルドメイン抗体であって、(i)CDR1が、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10、配列番号20、配列番号23、配列番号24、配列番号27、配列番号31、配列番号34、配列番号35、配列番号38、配列番号42、配列番号45、配列番号46、配列番号49、配列番号53、または配列番号54に記載のアミノ酸配列を含み、(ii)CDR2が、配列番号2、配列番号5、配列番号8、配列番号11、配列番号21、配列番号25、配列番号28、配列番号56、配列番号30、配列番号32、配列番号36、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号47、配列番号50、または配列番号52に記載のアミノ酸配列を含み、及び/または(iii)CDR3が、配列番号3、配列番号6、配列番号9、配列番号22、配列番号26、配列番号29、配列番号33、配列番号37、配列番号40、配列番号44、配列番号48、または配列番号51に記載のアミノ酸配列を含む、シングルドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ヒト化される。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、CDR1は、配列番号1に記載の例示的なアミノ酸配列を含み、CDR2は、配列番号2に記載の例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、配列番号3に記載の例示的なアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、IMGT番号付けに従い、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、IMGT番号付けに従い、配列番号21に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、IMGT番号付けに従い、配列番号22に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、Kabat番号付けに従い、配列番号23に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、Kabat番号付けに従い、配列番号2に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、Kabat番号付けに従い、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、Chothia番号付けに従い、配列番号24に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、Chothia番号付けに従い、配列番号25に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、Chothia番号付けに従い、配列番号26に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、Contact番号付けに従い、配列番号27に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、Contact番号付けに従い、配列番号28または56に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、Contact番号付けに従い、配列番号29に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、AbM番号付けに従い、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、AbM番号付けに従い、配列番号30に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、AbM番号付けに従い、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ヒト化される。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、CDR1は、配列番号4に記載の例示的なアミノ酸配列を含み、CDR2は、配列番号5に記載の例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、配列番号6に記載の例示的なアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、IMGT番号付けに従い、配列番号31に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、IMGT番号付けに従い、配列番号32に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、IMGT番号付けに従い、配列番号33に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、Kabat番号付けに従い、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、Kabat番号付けに従い、配列番号5に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、Kabat番号付けに従い、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、Chothia番号付けに従い、配列番号35に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、Chothia番号付けに従い、配列番号36に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、Chothia番号付けに従い、配列番号37に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、Contact番号付けに従い、配列番号38に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、Contact番号付けに従い、配列番号39に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、Contact番号付けに従い、配列番号40に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、AbM番号付けに従い、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、AbM番号付けに従い、配列番号41に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、AbM番号付けに従い、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ヒト化される。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、CDR1は、配列番号7に記載の例示的なアミノ酸配列を含み、CDR2は、配列番号8に記載の例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、配列番号9に記載の例示的なアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、IMGT番号付けに従い、配列番号42に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、IMGT番号付けに従い、配列番号43に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、IMGT番号付けに従い、配列番号44に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、Kabat番号付けに従い、配列番号45に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、Kabat番号付けに従い、配列番号8に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、Kabat番号付けに従い、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、Chothia番号付けに従い、配列番号46に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、Chothia番号付けに従い、配列番号47に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、Chothia番号付けに従い、配列番号48に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、Contact番号付けに従い、配列番号49に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、Contact番号付けに従い、配列番号50に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、Contact番号付けに従い、配列番号51に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、AbM番号付けに従い、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、AbM番号付けに従い、配列番号52に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、AbM番号付けに従い、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ヒト化される。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、CDR1は、配列番号10に記載の例示的なアミノ酸配列を含み、CDR2は、配列番号11に記載の例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、配列番号6に記載の例示的なアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、IMGT番号付けに従い、配列番号53に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、IMGT番号付けに従い、配列番号32に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、IMGT番号付けに従い、配列番号33に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、Kabat番号付けに従い、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、Kabat番号付けに従い、配列番号11に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、Kabat番号付けに従い、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、Chothia番号付けに従い、配列番号54に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、Chothia番号付けに従い、配列番号36に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、Chothia番号付けに従い、配列番号37に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、Contact番号付けに従い、配列番号38に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、Contact番号付けに従い、配列番号39に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、Contact番号付けに従い、配列番号40に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR1は、AbM番号付けに従い、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含み、CDR2は、AbM番号付けに従い、配列番号41に示される例示的なアミノ酸配列を含み、CDR3は、AbM番号付けに従い、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ラクダ科である。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、ヒト化される。いくつかの実施形態では、抗D3シングルドメイン抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、WT1156-P3R2-1C2、WT1156-P3R2-1C9、WT1156-P8R2-1H1、WT1156-P3R2-1H6、WT1156-P3R2-1C2-z102、WT1156-P3R2-1C2-z109、及び/またはWT1156-P3R2-1H6-z100の1つ以上のフレームワーク領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号12に記載の配列を含むVHHドメインに由来する1つ以上のフレームワークを含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号13に記載の配列を含むVHHドメインに由来する1つ以上のフレームワークを含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号14に記載の配列を含むVHHドメインに由来する1つ以上のフレームワークを含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号15に記載の配列を含むVHHドメインに由来する1つ以上のフレームワークを含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号16に記載の配列を含むVHHドメインに由来する1つ以上のフレームワークを含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号17に記載の配列を含むVHHドメインに由来する1つ以上のフレームワークを含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号18に記載の配列を含むVHHドメインに由来する1つ以上のフレームワークを含む。いくつかの実施形態では、シングルドメイン抗体は、配列番号55に記載の配列を含むVHHドメインに由来する1つ以上のフレームワークを含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される単一ドメイン抗体は、ヒト化されたシングルドメイン抗体である。
【0111】
本明細書に記載されるフレームワーク領域は、CDR番号付けシステムの境界に基づいて決定される。言い換えれば、CDRが、例えば、IMGT、Kabat、Cothia、Contact、またはAbMによって決定される場合、フレームワーク領域は、可変領域内のCDRを、N末端からC末端にかけてFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4のフォーマットで取り囲むアミノ酸残基である。例えば、FR1は、例えば、IMGT番号付けシステム、Kabat番号付けシステム、Chotia番号付けシステム、Contact番号付けシステム、またはAbM番号付けシステムによって定義されるCDR1のアミノ酸残基に対してN末端側にあるアミノ酸残基として定義され、FR2は、例えば、IMGT番号付けシステム、Kabat番号付けシステム、Chotia番号付けシステム、Contact番号付けシステム、またはAbM番号付けシステムによって定義されるCDR1とCDR2のアミノ酸残基の間のアミノ酸残基として定義され、FR3は、例えば、IMGT番号付けシステム、Kabat番号付けシステム、Chotia番号付けシステム、Contact番号付けシステム、またはAbM番号付けシステムによって定義されるCDR2とCDR3のアミノ酸残基の間のアミノ酸残基として定義され、FR4は、例えば、IMGT番号付けシステム、Kabat番号付けシステム、Chotia番号付けシステム、Contact番号付けシステム、またはAbM番号付けシステムによって定義されるCDR3のアミノ酸残基に対してC末端側にあるアミノ酸残基として定義される。
【0112】
いくつかの実施形態では、配列番号12に記載のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む、単離された抗D3シングルドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態において、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号13に記載のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む、単離された抗D3シングルドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態において、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号14に記載のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む、単離された抗D3シングルドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態において、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号15に記載のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む、単離された抗D3シングルドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態において、配列番号15に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号16に記載のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む、単離された抗D3シングルドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態において、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号17に記載のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む、単離された抗D3シングルドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態において、配列番号17に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号18に記載のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む、単離された抗D3シングルドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態において、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、配列番号55に記載のアミノ酸配列を有するVHHドメインを含む、単離された抗D3シングルドメイン抗体が提供される。いくつかの実施形態において、配列番号55に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。
【0113】
VHH配列を含む抗D3抗体
いくつかの実施形態では、抗D3抗体は、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、VHH)を含み、VHHは、
(A)配列番号12~18及び55のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、
(B)配列番号12~18及び55のいずれか1つと少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列、または
(C)配列番号12~18及び55のいずれか1つと比較して、1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個)のアミノ酸の付加、欠失及び/または置換を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれらからなる。
【0114】
2個のアミノ酸またはヌクレオチド配列間の同一率(%)は、PAM120重み付け残基表、ギャップ長ペナルティ=12、ギャップペナルティ=4を用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている、E.Meyers及びW.Miller(Comput.Appl.Biosci., 4:11-17(1988))のアルゴリズムを使用して求めることができる。さらに、2個のアミノ酸配列間の同一率(%)は、GCGソフトウエアパッケージ(http://www.gcg.comより入手可能)のGAPプログラムに組み込まれたNeedleman及びWunschのアルゴリズム(J. Mol. Biol 48:444-453 (1970))により、Blossum62マトリクスまたはPAM250マトリクスのいずれか、及びギャップ重み=16、14、12、10、8、6または4、及び長さ重み=1、2、3、4、5または6を用いて求めることができる。
【0115】
さらに、またはあるいは、本開示のタンパク質(抗体)配列をさらに「クエリー配列」として用いて公開データベースに対する検索を行って例えば関連する配列を同定することができる。そのような検索は、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-10のXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて実施することができる。BLASTタンパク質検索をXBLASTプログラムを用い、スコア=50、ワード長さ=3として行うことで本開示の抗体分子に対して相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のギャップを含むアラインメントを得るには、Gapped BLASTを、Altschul et al,(1997)Nucleic Acids Res.25(17): 3389-3402の記載にしたがって用いることができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えば、XBLAST及びNBLAST)を使用してもよい。www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0116】
いくつかの実施形態では、VHHのアミノ酸配列は、配列番号12~18、及び55のいずれか1つと少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であってよい。
【0117】
いくつかのさらなる実施形態では、抗D3抗体は、可変領域及び/または定常領域におけるアミノ酸の保存的置換または修飾を含み得る。抗原結合を除去しない特定の保存的配列改変を行うことができることは、当該技術分野において理解されている。例えば、Brummell et al.(1993) Biochem 32:1180-8;de Wildt et al.(1997) Prot.Eng.10:835-41;Komissarov et al.(1997) J.Biol.Chem.272:26864- 26870;Hall et al.(1992) J.Immunol.149:1605-12;Kelley and O’ Connell (1993) Biochem.32:6862-35;Adib-Conquy et al.(1998) Int.Immunol.10:341-6 and Beers et al.(2000) Clin.Can.Res.6:2835-43を参照されたい。
【0118】
上記に述べたように、本明細書で使用する「保存的置換」という用語は、そのアミノ酸配列を含むタンパク質/ポリペプチドの本質的な特性に不利な影響を与えたり、変化させたりしないアミノ酸置換を指す。例えば、保存的置換は、部位特異的突然変異誘発及びPCR媒介突然変異誘発などの当該技術分野では周知の標準的な技術によって導入することができる。保存的アミノ酸置換には、アミノ酸残基が、対応するアミノ酸残基と類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基、例えば、物理的または機能的に類似した残基(例えば、類似のサイズ、形状、電荷、共有結合または水素結合を形成する能力を含む化学的性質を有する)に置換される置換が含まれる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、及びヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、対応するアミノ酸残基は、好ましくは同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基で置換される。アミノ酸の保存的置換を特定する方法は当該技術分野では周知のものである(例えば、参照によって援用するBrummell et al.,Biochem.32:1180-1187 (1993);Kobayashi et al.,Protein Eng.12(10): 879-884(1999);及びBurks et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:412-417(1997)を参照)。
【0119】
いくつかの実施形態では、抗D3抗体は少なくとも1つのVHHを含み、VHHは配列番号12~18のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗D3抗体は、配列番号12~18のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有するVHHを含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、抗D3抗体は、ヒトIgG1またはIgG4のFc領域に融合されたVHHを含むキメラ抗体であり、VHHは、配列番号12~18及び55のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗D3抗体は、VHHとヒトIgG1のFc領域とを含むキメラ抗体である。かかる抗体は、本明細書では、「WT1156-P3R2-1C2-uIgG1」、「WT1156-P3R2-1H6-uIgG1」、「WT1156-P8R2-1H1-uIgG1」、及び「WT1156-P3R2-1C9-uIgG1」として例示される。いくつかのさらなる実施形態では、抗D3抗体は、VHHとヒトIgG1のFc領域とを含むヒト化抗体である。かかる抗体は、本明細書では「WT1156-P3R2-1C2-z102-uIgG1」、「WT1156-P3R2-1C2-z109-uIgG1」及び「WT1156-P3R2-1H6-z100-uIgG1」として例示される。
【0121】
いくつかの実施形態では、VHH領域のアミノ酸の少なくとも1つの付加、欠失、及び/または置換は、CDR配列のいずれにも存在せず、フレームワーク(FRW)配列に存在する。例えば、上記に述べた抗体またはその抗原結合部分は、VHH領域のフレームワーク配列、例えばFRW1、FRW2、FRW3、及び/またはFRW4内のアミノ酸の1つ以上の置換を含み得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合部分は、抗原結合ドメインがD3に特異的に結合できる限り、任意の適当なフレームワーク領域(FRW)配列を含む。
【0123】
上記に述べたように、抗体またはその抗原結合部分は、重鎖及び/または軽鎖の可変領域に1つ以上のアミノ酸の改変を含むことができ、改変が保存的置換である場合を含む。抗原結合を除去しない特定の保存的配列改変を行うことができることは、当該技術分野において理解されている。例えば、Brummell et al.(1993) Biochem 32:1180-8;de Wildt et al.(1997) Prot.Eng.10:835-41;Komissarov et al.(1997) J.Biol.Chem.272:26864- 26870;Hall et al.(1992) J.Immunol.149:1605-12;Kelley and O’ Connell (1993) Biochem.32:6862-35;Adib-Conquy et al.(1998) Int.Immunol.10:341-6 and Beers et al.(2000) Clin.Can.Res.6:2835-43を参照されたい。
【0124】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、配列番号12~18及び55のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含むVHHドメインと、配列番号19に記載のアミノ酸配列を含むFc領域とを含む。
【0125】
D3結合分子の抗原結合ドメインは、VHH形態に限定されず、例えば、これらに限定されるものではないが、Fab、Fab’、F(ab’)、Fvフラグメント、一本鎖抗体分子(scFv)などのさまざまな他の形態をとることができる。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、密な非共有結合性相互作用によって互いに保持された別個の鎖中にVH領域及びVL領域を有するFvフラグメントである。
【0126】
IgG定常ドメインを含むFc領域
本明細書で提供される抗D3抗体及び抗原結合フラグメントは、1つ以上のヒトIgG定常ドメインを含むFc領域をさらに含む。ヒトIgG定常ドメインは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4定常ドメイン、好ましくはヒトIgG1定常ドメインであってよい。ヒトIgG1定常領域を含むFc領域のアミノ酸配列の例は、配列番号19に記載されている。いくつかの実施形態では、Fc領域は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)またはその他のエフェクター機能を変化させる1つ以上のアミノ酸改変(例えば、Leu234Ala/Leu235AlaすなわちLALA)を含む野生型Fc領域またはFcバリアントなどのヒトIgG1 Fc領域である。
【0127】
いくつかの実施形態では、Fc修飾は、Kabatらと同様のEU番号付けに従って、LALA変異、例えばL234A及びL235Aの変異を含む。Kabat番号付けシステムは、可変ドメイン内の残基(おおよそ、軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)を指す場合にしばしば用いられる(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EU番号付けシステム」または「EUインデックス」は、一般的に免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基を指す場合に用いられる(例えば、Kabat et al.(前出)に報告されているEUインデックス)。「Kabatと同様のEU番号付け」または「Kabatと同様のEUインデックス」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。本明細書で特に断らない限り、抗体の定常ドメイン内の残基番号の指定は、EU番号付けシステムによる残基の番号付けを意味する。
【0128】
本開示の抗体をコードする核酸分子
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に開示されるD3結合分子をコードする、例えば、本明細書に開示されるD3結合分子の単一可変ドメインをコードする核酸配列を含む核酸分子を提供する。本開示の核酸は、標準的な分子生物学の手法を使用して得ることができる。
【0129】
VHH領域をコードする核酸は、VHHをコードする核酸を1つ以上の重鎖定常領域(例えば、CH1、CH2及びCH3)をコードする別の核酸に機能的に連結することによって完全長の重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当該技術分野では周知のものであり(例えば、Kabat et al. (1991)、前出を参照)、これらの領域を含むDNAフラグメントは標準的なPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域、例えばIgG1定常領域であってよい。
【0130】
VHHセグメントをコードする核酸が得られた後、これらの核酸を標準的な組換えDNA技術によってさらに操作して、例えば可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子に変換することができる。これらの操作では、VHHをコードする核酸は、抗体定常領域または柔軟なリンカーなどの別のタンパク質をコードする別の核酸に機能的に連結される。この関連で使用される用語「機能的に連結された」とは、2つ以上の核酸によってコードされるアミノ酸配列がインフレームに保たれるようにして2つ以上の核酸が連結されることを意味するものとする。
【0131】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示されるD3結合分子の単一可変ドメイン(例えば、VHH)をコードする核酸配列を含む核酸分子に関する。
【0132】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、
(A)配列番号12~18及び55のいずれか1つに記載のVHH領域をコードする核酸配列、
(B)(A)の核酸配列と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%)の配列同一性を有する核酸配列、及び
(C)高ストリンジェンシー条件下で(A)の核酸配列の相補鎖にハイブリダイズする核酸配列からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、本明細書において、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含む抗D3シングルドメイン抗体をコードする核酸配列を含む核酸分子が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書において、配列番号13に記載のアミノ酸配列を含む抗D3シングルドメイン抗体をコードする核酸配列を含む核酸分子が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書において、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む抗D3シングルドメイン抗体をコードする核酸配列を含む核酸分子が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書において、配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む抗D3シングルドメイン抗体をコードする核酸配列を含む核酸分子が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書において、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含む抗D3シングルドメイン抗体をコードする核酸配列を含む核酸分子が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書において、配列番号17に記載のアミノ酸配列を含む抗D3シングルドメイン抗体をコードする核酸配列を含む核酸分子が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書において、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含む抗D3シングルドメイン抗体をコードする核酸配列を含む核酸分子が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書において、配列番号55に記載のアミノ酸配列を含む抗D3シングルドメイン抗体をコードする核酸配列を含む核酸分子が提供される。
【0134】
いくつかの実施形態では、同一率(%)は遺伝暗号の縮重に由来し、コードされたタンパク質配列は変化しない。
【0135】
例示的な高ストリンジェンシー条件には、5×SSPE及び45%ホルムアミド中、45℃でのハイブリダイゼーション、及び0.1×SSC中65℃での最終洗浄が含まれる。同等のストリンジェンシーの条件は、Ausubel,et al.(Eds.),Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1994),pp.6.0.3-6.4.10.に記載されるように、温度及び緩衝液、または塩濃度を変化させることによって得ることができることが当該技術分野では理解されている。ハイブリダイゼーション条件の変更は、プローブの長さとグアノシン/シトシン(GC)塩基対合の割合に基づいて経験的に決定するかまたは正確に計算することができる。ハイブリダイゼーション条件は、Sambrook,et al,(Eds.),Molecular Cloning: A laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor,New York (1989),pp. 9.47-9.51の記載に従って計算することができる。
【0136】
宿主細胞
本開示で開示される宿主細胞は、例えば、酵母、細菌、植物及び哺乳動物の細胞など、本開示の抗体を発現させるのに適したいずれの細胞であってもよい。本開示の抗体を発現させるための哺乳類宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)(Urlaub and Chasin,(1980)Proc.Natl.Acad.ScL USA 77:4216-4220に記載されるdhfr CHO細胞を例えば、R.J.Kaufman and P.A.Sharp(1982) J.Mol.Biol.159:601-621に記載されるDHFR選択マーカーとともに使用)、293F細胞、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞が挙げられる。詳細には、NSO骨髄腫細胞とともに使用するための別の発現システムは、WO87/04462、WO89/01036及びEP338,841に開示されるGS遺伝子発現システムである。また、SV40によって形質転換されたサル腎由来細胞CV1株(SCO-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胎児腎細胞株(293細胞、または増殖のために懸濁培養でサブクローニングした293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977))、ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞/DHFR(CHO,Urlaub et al.,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216);マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,1980,Biol.Reprod.23:243-251)、サル腎由来細胞(CV1 ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587)、ヒト子宮頚部癌細胞(HELA、ATCC CCL 2)、イヌ腎由来細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065)、マウス乳癌(MMT 060562、ATCC CCL51)、TRI細胞(Mather et al.,1982,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68)、MRC5細胞、FS4細胞;NOS(例えば、RCB0213, 1992, Bio/Technology 10:169)及びSP2/0細胞(例えば、SP2/0-Ag14細胞、ATCC CRL 1581)などのマウス骨髄腫細胞;YB2/0細胞(例えば、YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞、ATCC CRL 1662)などのラット骨髄腫細胞;PER.C6細胞;及びヒト肝癌株(Hep G2)も挙げられる。CHO細胞は、本明細書で使用できる細胞株の1つであり、CHO-K1、DUK-B11、CHO-DP12、CHO-DG44(Somatic Cell and Molecular Genetics 12:555(1986))、及びLec13が例示的な宿主細胞株である。CHO-K1、DUK-B11、DG44またはCHO-DP12宿主細胞の場合、これらを発現されるタンパク質をフコシル化する能力を欠損させるように改変することができる。いくつかの実施形態では、本明細書の宿主細胞は、CHO、CHO-S、HEK、HEK293、HEK-293F、Expi293F、PER.C6もしくはNSO細胞またはリンパ球細胞から選択される。
【0137】
この目的に適した原核生物としては、グラム陰性またはグラム陽性生物等の真正細菌、例えば、腸内細菌科、例えば、エスケリキア属(例えば大腸菌)、エンテロバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、例えばSalmonella typhimurium、セラチア属、例えばSerratia marcescans、及び赤痢菌、ならびにバシラス属、例えばB.subtilis及びB.licheniformis、シュードモナス属、例えばP.aeruginosa、及びストレプトマイセス属が挙げられる。
【0138】
原核生物以外に、糸状真菌または酵母などの真核微生物も、抗体コードベクターに適したクローニングまたは発現宿主である。出芽酵母すなわち一般的なパン酵母は、下等真核生物宿主微生物のうちで最も一般的に用いられる。しかしながら、Schizosaccharomyces pombe;Kluyveromyces宿主、例えば、K.lactis、K.fragilis(ATCC 12,424)、K.bulgaricus(ATCC 16,045)、K.wickeramii(ATCC 24,178)、K.waltii(ATCC 56,500)、K.drosophilarum(ATCC 36,906)、K.thermotolerans、及びK.marxianusなど;yarrowia(EP 402,226);Pichia pastoris(EP 183,070);Candida;Trichoderma reesia(EP 244,234);Neurospora crassa;Schwanniomyces、例えば、Schwanniomyces occidentalis;ならびに糸状真菌、例えば、Neurospora、Penicillium、Tolypocladium、及びAspergillus宿主、例えば、A.nidulans及びA.nigerなどのいくつかの他の属、種、及び菌株が本明細書において一般的に利用可能であり、有用である。
【0139】
抗体をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入される場合、抗体は、宿主細胞内で抗体が発現されるのに十分な時間、または宿主細胞が増殖される培地中に抗体が分泌されるのに十分な時間にわたって宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は標準的なタンパク質精製方法を使用して培地から回収することができる。
【0140】
医薬組成物
いくつかの態様では、本開示は、例えば、本明細書に開示されるD3結合分子の単一可変ドメイン(例えば、VHH)を含む、本明細書に開示されるD3結合分子と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物を提供する。いくつかの態様では、本開示は、例えば、本明細書に開示されるD3結合分子の単一可変ドメイン(例えば、VHH)を含む、本明細書に開示されるD3結合分子をコードする核酸と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物を提供する。いくつかの態様では、本開示は、例えば、本明細書に開示されるD3結合分子の単一可変ドメイン(例えば、VHH)を含む、本明細書に開示されるD3結合分子を発現する細胞と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物を提供する。
【0141】
組成物の成分
医薬組成物は、場合により、別の抗体または薬物などの1つ以上の薬学的活性成分を含む、1つ以上のさらなる成分を含有してもよい。本開示の医薬組成物は、抗D3抗体が免疫応答を増強する場合を含めて、例えば、別の免疫刺激剤、抗がん剤、抗ウイルス剤、またはワクチンとの併用療法で投与することもできる。薬学的に許容される担体としては、例えば、薬学的に許容される液体、ゲルまたは固体担体、水性媒体、非水性媒体、抗微生物剤、等張剤、緩衝剤、酸化防止剤、麻酔剤、懸濁剤/分散剤、キレート剤、希釈剤、アジュバント、賦形剤または非毒性補助物質、当該技術分野で知られているその他の成分のさまざまな組み合わせなどが挙げられる。
【0142】
医薬組成物の適当な成分としては、例えば、酸化防止剤、フィラー、結合剤、崩壊剤、緩衝剤、保存剤、滑沢剤、香料、増粘剤、着色剤、乳化剤または安定剤、例えば糖及びシクロデキストリンを挙げることができる。適当な抗酸化剤としては、例えば、メチオニン、アスコルビン酸、EDTA、チオ硫酸ナトリウム、白金、カタラーゼ、クエン酸、システイン、メルカプトグリセロール、チオグリコール酸、メルカプトソルビトール、ブチルメチルアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン及び/または没食子酸プロピルを挙げることができる。本開示で開示されるように、組成物は、本開示の抗体または抗原結合フラグメントを含み、結合親和性の低下を防止または低減するためにメチオニンなどの1つ以上の酸化防止剤をさらに含むことができ、それにより抗体の安定性を高め保存寿命を延ばすことができる。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、1つ以上の抗体またはその抗原結合フラグメントと、メチオニンなどの1つ以上の酸化防止剤と、を含む組成物を提供する。本開示はさらに、抗体またはその抗原結合フラグメントをメチオニンなどの1つ以上の酸化防止剤と混合して、抗体またはその抗原結合フラグメントの酸化を防止し、その保存寿命及び/または活性を増加させる、さまざまな方法を提供する。
【0143】
さらに説明すると、薬学的に許容される担体としては、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張デキストロース注射液、滅菌水注射液、またはデキストロース及び乳酸リンゲル注射液などの水性ビヒクル、植物由来の固定油、綿実油、コーン油、ゴマ油、またはピーナッツ油などの非水性ビヒクル、静細菌または静真菌濃度の抗微生物剤、塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張剤、リン酸緩衝液またはクエン酸緩衝液などの緩衝液、重硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤、塩酸プロカインなどの局所麻酔薬、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはポリビニルピロリドンなどの懸濁剤及び分散剤、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)-80)などの乳化剤、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはEGTA(エチレングリコール四酢酸)などの金属イオン封鎖剤またはキレート剤、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、または乳酸を挙げることができる。担体として使用される抗微生物剤は、フェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチル及びプロピルp-ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムを含む複数用量容器中の医薬組成物に加えることができる。適当な賦形剤としては、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、またはエタノールを挙げることができる。適当な非毒性補助物質としては、例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解促進剤、または酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミンもしくはシクロデキストリンなどの薬剤が挙げられる。
【0144】
投与、製剤及び投与量
本開示の医薬組成物は、これらに限定されるものではないが、経口、静脈内、動脈内、皮下、非経口、鼻腔内、筋肉内、頭蓋内、心臓内、心室内、気管内、頬側、直腸、腹腔内、皮内、局所、経皮、及びくも膜下腔内、またはそうでなければ埋め込みまたは吸入を含むさまざまな経路によって投与を必要とする対象に投与することができる。本組成物は、これらに限定されるものではないが、錠剤、カプセル剤、散剤、粒剤、軟膏、液剤、坐剤、浣腸剤、注射剤、吸入剤、及びエアロゾルを含む、固体、半固体、液体、または気体の形態の製剤として製剤化することができる。適切な製剤及び投与経路は、意図される用途及び治療レジメンに従って選択することができる。
【0145】
経腸投与に適した製剤としては、硬質または軟質ゼラチンカプセル、丸剤、被覆錠剤を含む錠剤、エリキシル剤、懸濁液、シロップ剤または吸入剤及びそれらの制御放出形態が挙げられる。
【0146】
非経口投与(例えば、注射による)に適した製剤としては、有効成分が溶解、懸濁、またはその他の形(例えば、リポソームまたは他の微粒子内)で与えられる、水性または非水性の等張性パイロジェンフリー滅菌液(例えば、溶液、懸濁液)が挙げられる。かかる液体には、抗酸化剤、緩衝剤、保存剤、安定剤、静菌剤、懸濁剤、増粘剤、及び製剤を想定されるレシピエントの血液(または他の関連のある体液)と等張にする溶質などの他の薬学的に許容される成分がさらに含まれていてもよい。賦形剤の例としては、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油などが挙げられる。かかる製剤での使用に適した等張性担体の例としては、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液、または乳酸リンゲル注射液が挙げられる。同様に、用量、タイミング、及び反復を含む特定の投与レジメンは、特定の個人及びその個人の病歴、ならびに薬物動態(例えば、半減期、クリアランス速度など)などの経験的考慮事項に応じて決められる。
【0147】
投与頻度は、治療期間中に決定及び調整することができ、増殖性細胞または腫瘍原性細胞の数の減少、かかる腫瘍細胞の減少の維持、腫瘍細胞の増殖の減少、または転移の進行の遅延に基づく。いくつかの実施形態では、潜在的な副作用及び/または毒性を管理するために、投与量を調整または減量することができる。あるいは、主題の治療用組成物の徐放性製剤が適切である場合もある。
【0148】
適切な用量が患者ごとに異なり得る点は、当業者には認識されよう。最適な投与量の決定には、一般に、リスクまたは有害な副作用に対する治療ベネフィットのレベルのバランスを取ることが含まれる。特に、選択される投薬量レベルは、これらに限定されるものではないが、特定の化合物の活性、投与経路、投与時間、化合物の排泄速度、治療の持続期間、併用される他の薬物、化合物及び/または物質、患者の種、性別、年齢、体重、状態、全身の健康状態、及び以前の病歴を含むさまざまな要因によって決められる。化合物の量と投与経路は、最終的には医師、獣医師、または臨床医の裁量に委ねられるが、一般的に投与量は、大きな有害性または有害な副作用を引き起こすことなく望ましい効果が得られる作用部位での局所濃度が得られるように選択される。
【0149】
一般に、本開示のD3結合分子は、さまざまな範囲で投与することができる。これらの範囲には、1用量当たり約5μg/kg体重~約100mg/kg体重、1用量当たり約50μg/kg体重~約5mg/kg体重、1用量当たり約100μg/kg体重~約10mg/kg体重、及びこれらの範囲内の任意の値が含まれる。他の範囲には、1用量当たり約100μg/kg体重~約20mg/kg体重、及び1用量当たり約0.5mg/体重kg~約20mg/体重kgが含まれる。いくつかの実施形態では、投与量は、少なくとも約100μg/kg体重、少なくとも約250μg/kg体重、少なくとも約750μg/kg体重、少なくとも約3mg/kg体重、少なくとも約5mg/kg体重、少なくとも約10mg/kg体重である。
【0150】
いずれにしても、本開示の抗体またはその抗原結合部分は、投与を必要とする対象に必要に応じて投与されることが好ましい。投与頻度の決定は、治療される状態、治療される対象の年齢、治療される状態の重症度、治療される対象の一般的な健康状態などの考慮に基づいて、主治医などの当業者によって行うことができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、本開示のD3結合分子が関与する治療過程は、数週間または数ヶ月にわたる選択された医薬品の複数回の投与を含む。例えば、本開示のD3結合分子は、毎日、2日ごと、4日ごと、毎週、10日ごと、2週間ごと、3週間ごと、毎月、6週間ごと、2か月ごと、10週間ごと、または3か月ごとに1回投与することができる。これに関して、患者の反応及び臨床診療に基づいて投与量を変更したり、間隔を調整したりできる点は認識されよう。
【0152】
用量及びレジメンは、1回以上の投与を受けた個体における開示された治療組成物について経験的に決定することもできる。例えば、本明細書に記載のように製造された治療組成物の漸増用量を個体に投与することができる。いくつかの実施形態では、用量は、経験的に決定された、または観察された副作用または毒性にそれぞれ基づいて徐々に増加または減少または減弱させることができる。選択した組成物の有効性を評価するために、前述したように、特定の疾患、障害、または状態のマーカーを追跡することができる。がんの場合、これには、触診または視覚的観察による腫瘍サイズの直接測定、X線またはその他の画像技術による腫瘍サイズの間接測定、直接的な腫瘍生検及び腫瘍試料の顕微鏡検査によって評価される改善、間接的な腫瘍マーカー(例えば、前立腺癌のPSA)または腫瘍原性抗原の測定、痛みまたは麻痺の軽減;会話、視力、呼吸、または腫瘍に関連する他の障害の改善、食欲の増進、または、受け入れられた検査または生存期間の延長によって測定される生活の質の向上が含まれる。投与量は、個体、腫瘍状態の種類、腫瘍状態のステージ、腫瘍性状態が個体の他の部位に転移し始めているかどうか、過去及び現在行われている治療に応じて異なる点は当業者には明らかであろう。
【0153】
非経口投与(例えば、静脈内注射)に適合する製剤は、本明細書に開示されるD3結合分子を約10μg/ml~約100mg/mlの濃度で含むことができる。いくつかの実施形態では、D3結合分子(例えば、抗体またはその抗原結合部分)の濃度は、20μg/ml、40μg/ml、60μg/ml、80μg/ml、100μg/ml、200μg/ml、300μg/ml、400μg/ml、500μg/ml、600μg/ml、700μg/ml、800μg/ml、900μg/mlまたは1mg/mlを含む。いくつかの実施形態では、D3結合分子(例えば、抗体またはその抗原結合部分)の濃度は、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、8mg/ml、10mg/ml、12mg/ml、14mg/ml、16mg/ml、18mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、40mg/ml、45mg/ml、50mg/ml、60mg/ml、70mg/ml、80mg/ml、90mg/mlまたは100mg/mlを含む。
【0154】
本開示の用途
本開示の抗体、抗体組成物及び方法は、例えば、D3の検出または免疫応答の増強を含む、多くのインビトロ及びインビボでの有用性及び用途を有する。例えば、これらの分子は、さまざまな状況で免疫を強化するために、インビトロもしくはエクスビボで培養中の細胞に、または例えばインビボでヒト対象に投与することができる。免疫応答は、例えば増強、刺激、または上方制御など、調節することができる。
【0155】
例えば、対象には、免疫応答の増強を必要とするヒト患者が含まれる。本方法は、免疫応答(例えば、T細胞媒介免疫応答)を増強することによって治療できる疾患を有するヒト患者の治療に特に適している。いくつかの実施形態では、本方法は、インビボでのがんの治療に特に適している。抗原特異的な免疫増強を実現するには、抗D3抗体を目的の抗原と一緒に投与してもよく、または治療される対象(例えば、腫瘍を有する対象またはウイルスを有する対象)に抗原がすでに存在する場合もある。D3に対する抗体を別の薬剤と一緒に投与する場合、2つをいずれかの順序で、または同時に投与することができる。
【0156】
本開示はさらに、試料中のヒトD3抗原の存在を検出する方法、またはヒトD3抗原の量を測定するための方法であって、試料及びコントロール試料を、例えば、抗体またはその部分とヒトD3との複合体の形成を可能とする条件下で、ヒトD3に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分と接触させることを含む、方法を提供する。次いで、複合体の形成を検出するが、ここでコントロール試料と比較した試料の複合体形成における差異が、試料中のPCSK3の存在を示す。さらに、本開示の抗D3抗体は、免疫親和性精製によりヒトD3を精製するために使用することができる。
【0157】
がんを含む疾患の治療
いくつかの態様では、本開示は、哺乳動物における障害または疾患を治療する方法であって、治療を必要とする対象(例えば、ヒト)に治療有効量の本明細書に開示される抗D3抗体またはその抗原結合部分を投与することを含む、方法を提供する。いくつかの態様では、本開示は、疾患または障害の治療に使用するための、本明細書に開示される抗D3抗体またはその抗原結合部分を提供する。いくつかの態様では、本明細書において、疾患または障害を治療するための薬剤の製造における本明細書に開示される抗D3抗体またはその抗原結合部分の使用が提供される。障害または疾患はがんであってよい。
【0158】
D3が関係するさまざまながんは、悪性か良性か、原発性か二次性かを問わず、本開示によって提供される方法で治療または予防することができる。がんとしては、これらに限定されるものではないが、肺癌(小細胞肺癌及び非小細胞肺癌などのさまざまなサブタイプを含む)、副腎癌、肝臓癌、腎臓癌、膀胱癌、乳癌、胃癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮癌、食道癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、甲状腺癌、癌腫、肉腫、神経膠芽腫、及びさまざまな頭頸部腫瘍を挙げることができる。がんの例としては、例えば、小細胞肺癌、大細胞神経内分泌癌、神経膠芽腫、ユーイング肉腫、及び神経内分泌表現型を有する癌が挙げられる。
【0159】
本明細書に開示される抗D3抗体は、気管支原性癌、非小細胞肺癌、扁平上皮癌、小細胞癌、大細胞癌、及び腺癌、例えば肺腺癌などの肺癌を治療するために使用することができる。肺癌は、白金系薬剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、トポテカン)及び/またはタキサン(例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセルまたはカバジタキセル)に対して難治性、再発性、または抵抗性であり得る。
【0160】
本明細書に開示される抗D3抗体によって治療されるがんは、大細胞神経内分泌癌(LCNEC)、甲状腺髄様癌、膠芽腫、神経内分泌前立腺癌(NEPC)、高悪性度胃腸膵臓癌(GEP)及び悪性黒色腫であってもよい。本明細書に開示される抗D3抗体は、腎臓、泌尿生殖管(膀胱、前立腺、卵巣、子宮頸部、及び子宮内膜)、消化管(結腸、胃)、甲状腺(甲状腺髄様癌)、及び肺(小細胞肺癌及び大細胞神経内分泌癌)に生じる神経内分泌腫瘍(NET及びpNETの両方)を治療するために使用することができる。
【0161】
上記に述べたように、抗D3抗体は、以下のサブタイプ、すなわち、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌(例えば、扁平上皮非小細胞肺癌または扁平上皮小細胞肺癌)及び大細胞神経内分泌癌を含む肺癌の治療に特に効果的である。
【0162】
免疫反応の刺激
いくつかの態様では、本開示はまた、対象の免疫応答を増強する(例えば刺激する)方法であって、対象にD3結合分子、例えば本開示の抗D3抗体またはその抗原結合部分を投与することによって、対象の免疫応答を増強する、方法も提供する。いくつかの態様では、本開示は、対象の免疫応答を増強する(例えば刺激する)のに使用される、本明細書に開示される抗D3抗体またはその抗原結合部分を提供する。いくつかの態様では、本明細書において、対象の免疫応答を増強する(例えば刺激する)ための薬剤の製造における本明細書に開示される抗D3抗体またはその抗原結合部分の使用が提供される。例えば、いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0163】
「免疫応答を増強する」という用語またはその文法的変化形は、哺乳動物の免疫系のあらゆる応答を刺激、誘発、増加、改善、または増強することを意味する。免疫応答は、細胞応答(例えば、細胞傷害性Tリンパ球媒介性など細胞媒介性)であっても体液性応答(例えば、抗体媒介性応答)であってもよく、また、一次免疫応答であっても二次免疫応答であってもよい。免疫応答の強化の例としては、CD4ヘルパーT細胞活性の増大及び細胞溶解T細胞の生成が挙げられる。免疫応答の強化は、細胞傷害性Tリンパ球アッセイ、サイトカインの放出(例えば、IL-2産生またはIFN-γ産生)、腫瘍の退縮、腫瘍保有動物の生存、抗体産生、免疫細胞増殖、細胞表面マーカーの発現、及び細胞傷害活性を含むが、これらに限定されない、当業者に既知のいくつかのインビトロまたはインビボ測定を用いて評価することができる。例えば、本開示の方法は、未治療の哺乳動物または本明細書に開示される方法を用いて治療されていない動物による免疫応答と比較した場合に哺乳動物による免疫応答を増強するのに有用である。
【0164】
D3結合分子は、単剤療法として単独で使用することも、化学療法、放射線療法、標的療法、細胞免疫療法などと併用することもできる。
【0165】
化学療法との併用
D3結合分子(例えば、抗D3抗体)は、例えば、抗がん剤、細胞傷害剤または化学療法剤を含む化学療法と併用することができる。
【0166】
「抗がん剤」または「抗増殖剤」という用語は、がんなどの細胞増殖性疾患を治療するために使用できる任意の薬剤を意味し、細胞傷害剤、細胞増殖抑制剤、抗血管新生剤、減量剤、化学療法剤、放射線療法及び放射線療法剤、標的抗がん剤、BRM、治療用抗体、がんワクチン、サイトカイン、ホルモン療法、放射線療法及び抗転移剤及び免疫療法剤を含む(ただし、これらに限定されない)。上述したようにいくつかの実施形態では、かかる抗がん剤は複合体を含んでもよく、投与前に開示される抗D3抗体と結合させてもよいことが理解されよう。例えば、いくつかの実施形態では、選択された抗がん剤は、操作された抗体の不対システインに結合されて、本明細書に記載の操作された複合体(例えば、抗体薬物複合体)を提供する。したがって、かかる操作された複合体は、本開示の範囲内にあることが明示的に企図される。いくつかの実施形態では、開示される抗がん剤は、上記に記載の異なる治療薬を含む抗D3複合体と組み合わせて投与される。
【0167】
本明細書で使用する場合、「細胞傷害剤」という用語は、細胞に対して毒性であり、細胞の機能を低下もしくは阻害する物質、及び/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。いくつかの実施形態では、物質は、生体に由来する天然に存在する分子である。細胞傷害剤の例としては、これらに限定されるものではないが、細菌の小分子毒素または酵素活性毒素(例えば、ジフテリア毒素、緑膿菌の内毒素及び外毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンA)、真菌(例えば、α-サルシン、レストリクトシン)、植物(例えば、アブリン、リシン、モデクシン、ビスクミン、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、サポリン、ゲロニン、モモリジン、トリコサンチン、オオムギ毒素、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca mericana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、ニガウリ(Momordica charantia)阻害因子、クルシン、クロチン、サボンソウ(Saponaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミテゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、ネオマイシン、及びトリコテセン)または動物(例えば、細胞外膵臓RNaseなどの細胞傷害性RNase、そのフラグメント及び/またはバリアントを含むDNaseI)が挙げられる。
【0168】
本開示の目的において、「化学療法剤」は、がん細胞の成長、増殖、及び/または生存を非特異的に減少または阻害する化合物(例えば、細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤)を含む。かかる化学物質は、多くの場合、細胞の増殖または分裂に必要な細胞内プロセスを標的としており、したがって、一般に急速に増殖及び分裂するがん性細胞に対して特に効果的である。例えば、ビンクリスチンは微小管を解重合し、細胞が有糸分裂に入るのを阻害する。一般に、化学療法剤には、がん性細胞、またはがん性となるか腫瘍原性の子孫(例えば、TIC)を生じる可能性のある細胞を阻害する、または阻害するように設計された任意の化学物質が含まれ得る。かかる薬剤は、例えばCHOPまたはFOLFIRIなどのレジメンと組み合わせてしばしば投与され、かつしばしば最も効果的である。
【0169】
本開示のD3結合分子(例えば、抗D3抗体)と併用することが可能な(部位特異的複合体の成分として、または複合体化されない状態で)抗がん剤の例としては、これらに限定されるものではないが、アルキル化剤、スルホン酸アルキル、アジリジン、エチレンイミン及びメチルアメラミン(methylamelamine)、アセトゲニン、カンプトテシン、ブリオスタチン、カリスタチン、CC-1065、クリプトフィシン、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エリュテロビン(eleutherobin)、パンクラチスタチン、サルコジクチイン(sarcodictyin)、スポンジスタチン、ナイトロジェンマスタード、抗生物質、エンジイン抗生物質、ダイネミシン、ビスホスホネート、エスペラミシン、色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、アドリアマイシン(登録商標)ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、エルロチニブ、ベムラフェニブ、クリゾチニブ,ソラフェニブ、イブルチニブ、エンザルタミド、葉酸類似体、プリン類似体、アンドロゲン、抗副腎薬、葉酸補充剤、例えばフォリン酸(frolinic acid)、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン、エダトラキサート、デフォファミン(defofamine)、デメコルシン、ジアジコン、エルフォルニチン(elfornithine)、酢酸エリプチニウム、エポチロン、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、レンチナン、ロニダイニン(lonidainine)、マイタンシノイド、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダンモール(mopidanmol)、ニトラエリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ロソキサントロン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR)、ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、クロランブシル(chloranbucil);GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(Camptosar、CPT-11)、トポイソメラーゼ阻害薬RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(difluorometlhylornithine);レチノイド;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン;オキサリプラチン;細胞増殖を低減するPKC-α、Raf、H-Ras、EGFR及びVEGF-Aの阻害薬ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が挙げられる。また、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター、酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害薬(これは副腎におけるエストロゲン産生を調節する)、及び抗アンドロゲン;並びにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、例えばVEGF発現阻害薬及びHER2発現阻害薬;ワクチン、PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害薬;ABARELIX(登録商標)rmRH;ビノレルビン及びエスペラミシン並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体などの、腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害する働きをする抗ホルモン剤もこの定義に含まれる。
【0170】
放射線療法との併用
本開示はまた、D3結合分子と放射線療法(例えば、ガンマ線照射、X線、紫外線照射、マイクロ波、電子放射などの、腫瘍細胞内で限局的にDNA損傷を誘導する任意の機構)との併用も提供する。腫瘍細胞への放射性同位体の指向性送達を用いた併用療法も想到され、開示されるD3結合分子を標的化抗がん剤または他の標的化手段と組み合わせて使用することができる。一般的には、放射線療法は、約1~約2週間の期間にわたってパルス投与される。放射線療法は、約6~7週間にわたり頭頸部癌を有する対象に投与されてもよい。場合により、放射線療法は、単一用量として、または複数回の逐次用量として投与されてもよい。
【0171】
診断
本開示は、増殖性疾患を検出、診断、またはモニタリングするためのインビトロ及びインビボの方法、ならびに腫瘍原性細胞を含む腫瘍細胞を特定するために患者からの細胞をスクリーニングする方法を提供する。かかる方法は、患者または患者から得られた(インビボまたはインビトロのいずれか)試料を本明細書に記載の抗D3抗体と接触させることと、試料中の結合したまたは遊離の標的分子に対する抗体の存在または非存在、または会合のレベルを検出することと、を含む、がんの治療またはがんの進行をモニタリングするためにがんを有する個体を特定することを含む。いくつかの実施形態では、抗D3抗体は、本明細書に記載の検出可能な標識またはレポーター分子を含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、抗D3抗体と試料中の特定の細胞との会合は、試料が腫瘍原性細胞を含み得ることを示し、それによってがんを有する個体が本明細書に記載される抗D3抗体で効果的に治療され得ることを示すことができる。
【0173】
試料は、例えば、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(例えば、ELISA)、競合結合アッセイ、蛍光イムノアッセイ、イムノブロットアッセイ、ウエスタンブロット分析及びフローサイトメトリーアッセイなどの多くのアッセイによって分析することができる。当業者には周知であるように、適合性のあるインビボのセラグノスティックまたは診断アッセイは、当該技術分野で認知されているイメージングまたはモニタリング技術、例えば、磁気共鳴画像法、コンピュータ断層撮影法(例えば、CATスキャン)、陽電子断層撮影法(例えば、PETスキャン)、放射線撮影、超音波などを含むことができる。
【0174】
医薬パック及びキット
1回以上の用量のD3結合分子を含む、1つ以上の容器を含む医薬パック及びキットも提供される。いくつかの実施形態では、例えば、D3結合分子を、1つ以上のさらなる薬剤とともに、またはなしで含む所定量の組成物を含む単位用量が提供される。いくつかの実施形態では、かかる単位用量は、注射用の単回使用のプレフィルドシリンジで供給される。いくつかの実施形態では、単位用量に含まれる組成物は、生理食塩水、スクロースなど、リン酸塩などの緩衝剤などを含み、及び/または安定かつ有効なpH範囲内で配合することができる。あるいは、いくつかの実施形態では、組成物は、適切な液体、例えば滅菌水または生理食塩水を加えて戻すことができる凍結乾燥粉末として提供することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、スクロース及びアルギニンを含む(ただし、これらに限定されない)、タンパク質の凝集を阻害する1つ以上の物質を含む。容器(複数可)上の、または容器に付属するラベルは、封入された組成物が、選択される腫瘍性疾患の病態を治療するために使用されることを示す。
【0175】
本開示はまた、D3結合分子、及び場合により1つ以上の抗がん剤の単回用量または複数用量の投与単位を調製するためのキットを提供する。キットは、容器と、容器上の、または容器に付属するラベルまたは添付文書とを含む。適当な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、注射器などが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどのさまざまな材料から形成することができ、薬学的に有効な量の開示されるD3結合分子を、複合体としてまたは非複合形態で含むことができる。いくつかの実施形態では、容器(複数可)は、滅菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈用溶液バッグまたはバイアルであってよい)。かかるキットは、一般に適当な容器中に、複合体としてまたは非複合形態としてのD3結合分子の薬学的に許容される製剤と、場合により、同じまたは異なる容器中に1つ以上の抗がん剤とを含む。キットは、診断または併用療法のいずれかのための他の薬学的に許容される製剤を含んでもよい。例えば、かかるキットは、本開示のD3結合分子以外に、化学療法薬または放射線療法薬;抗血管新生剤;抗転移剤;標的化抗がん剤;細胞傷害剤;及び/または他の抗がん剤などの広範な抗がん剤のうちのいずれか1つ以上のものを含んでもよい。
【0176】
例えば、キットは、D3結合分子を、さらなる成分とともに、またはさらなる成分なしで含む単一の容器を有してもよく、または所望の薬剤ごとに別個の容器を有してもよい。併用される治療薬が複合体化のために提供される場合、単一の溶液を、モル等量の組み合わせで、または一方の成分が他方よりも多くなるように、予め混合することができる。あるいは、キットの複合体及び任意の抗がん剤は、患者への投与前に別個の容器内で別々に維持されてもよい。キットは、注入用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、リンゲル液、及びデキストロース溶液などの無菌の薬学的に許容される緩衝剤または他の希釈剤を入れるための第2/第3の容器手段を含んでもよい。
【0177】
キットの各構成成分が1つ以上の溶液中で提供される場合、溶液は、好ましくは水溶液、例えば滅菌水溶液または生理食塩水である。ただし、キットの構成成分は乾燥粉末(複数可)として提供される場合もある。試薬または構成成分が乾燥粉末として提供される場合、粉末は適当な溶媒を加えることで戻すことができる。溶媒は別の容器中で提供されてもよいことが想定される。
【0178】
上記に簡単に示したように、キットには、D3結合分子及び任意の成分を患者に投与するための手段、例えば、1つ以上の針、IVバッグまたは注射器、さらには点眼器、ピペット、もしくはそこから製剤を動物に注射または導入したり、身体の患部に塗布したりすることができる他の同様の装置も含めることができる。本開示のキットは、バイアルまたはこれに類するもの及び他の構成成分を市販用に厳重に密閉して収容するための手段、例えば、所望のバイアル及びその他の装置がその中に配置及び保持される射出成形またはブロー成形されたプラスチック容器なども一般的に含む。
【0179】
配列表の概要
本出願には、多数のアミノ酸配列を含む配列表が添付される。以下の表A~Fは、含まれる配列の概要を与えるものである。例示的な抗体は、本開示ではまとめて「WBPT1156抗体」と呼ぶ。
【0180】
【表A】

【表B】

【表C】

【表D】

【表E】

【表F】
【実施例
【0181】
上記に一般的に記載した本開示は、以下の実施例を参照することでより容易に理解されるが、実施例はあくまで例示のためのものであって、本開示を限定することを意図していない。実施例は、以下の実験が、実施されるすべての実験または唯一の実験であることを表すためのものではない。
【0182】
実施例1
抗原、ベンチマーク抗体及び細胞株の調製
1.1 抗原の作製
カニクイザルD3(Uniprot番号A0A2K5WSR4)及びマウスD3(Uniprot番号O88516)の細胞外ドメイン(ECD)配列をコードするDNA配列をSangon Biotech(上海、中国)で合成し、N末端にMBPタグ、C末端にAVI-HisタグまたはヒトFcタグを有する改変pcDNA3.3発現ベクターにサブクローニングした。ヒトD3(Uniprot番号Q9NYJ7)をAcroBiosystems(カタログDL3-H52H4)より購入した。
【0183】
ヒトD3の切断型アイソフォームをコードするDNA配列(WO2017/021349に開示)をSangon Biotech(中国、上海)で合成し、C末端にMBPタグとAVI-Hisタグを含む改変pcDNA3.3発現ベクターにサブクローニングした。
【0184】
精製した発現ベクターをExpi293細胞(Invitrogen-A14527)にトランスフェクトした。細胞を5日間培養し、Ni-NTAカラム(GE Healthcare、カタログ番号175248)またはプロテインAカラム(GE Healthcare、カタログ番号175438)を使用してタンパク質精製用に上清を収集した。得られたマウスD3、カニクイザルD3、及び切断型ヒトD3をSDS-PAGE及びSECで分析し、-80℃で保存した。
【0185】
ヒトD3(ACRO DL3-H52H4)はWT115-hPro1.ECD.Hisと命名した。得られたマウスD3はWT115-MBP-mPro1.ECD.hFcと命名した。ヒトD3タンパク質は、Delta/Serrate/LAG-2(DSL)ドメイン、6つの上皮成長因子(EGF)様リピート(EGFドメイン)、及び膜貫通ドメインを特徴とする。ヒトD3の切断型アイソフォームは、WT115-hPro1.V1.ECD.MBP.AVI.His(DSLドメイン+EGF1~6ドメイン+膜近位)、WT115-hPro1.V2.ECD.MBP.AVI.His(EGF1~6ドメイン+膜近位)、WT115-hPro1.V3.ECD.MBP.AVI.His(EGF2~6ドメイン+膜近位)、WT115-hPro1.V4.ECD.MBP.AVI.His(EGF3~6ドメイン+膜近位))、WT115-hPro1.V5.ECD.MBP.AVI.His(EGF4~6ドメイン+膜近位)、WT115-hPro1.V6.ECD.MBP.AVI.His(EGF5~6ドメイン+膜近位)、WT115-hPro1.V7.ECD.MBP.AVI.His(EGF6ドメイン+膜近位)と命名した。切断型タンパク質の図を図7cに示す。
【0186】
1.2 BMK抗体の発現ベクターの構築
2つの抗D3抗体をベンチマーク抗体として使用し、本明細書ではWT115-BMK1及びWT115-BMK2と呼ぶ。WT115-BMK1(US2019/0046656の配列番号212及び配列番号213)及びWT115-BMK2(WO2017/021349の配列番号37及び配列番号38)の可変領域をコードするDNA配列をSangon Biotech(中国、上海)で合成し、ヒトIgG1のFc領域をコードする修飾pcDNA3.3発現ベクターにサブクローニングした。
【0187】
VH及びVL遺伝子を含むプラスミドをExpi293細胞に同時トランスフェクトした。細胞を5日間培養し、プロテインAカラム(GE Healthcare、175438)を使用してタンパク質を精製するために上清を回収した。得られた抗体をSDS-PAGE及びSECで分析し、-80℃で保存した。
【0188】
1.3 安定した細胞株/細胞プールの確立
リポフェクタミン2000を使用して、完全長のヒトD3(UniProt、Q9NYJ7-1)をコードする遺伝子を含む発現ベクターを293F細胞にトランスフェクトした。Flpin293細胞に完全長のカニクイザルD3をコードする遺伝子を含む発現ベクターをトランスフェクトした。細胞を適切な選択マーカーを含む培地中で培養した。ヒトD3を高発現する安定細胞株(WT115-293F.hPro1.2E5)を限界希釈後に選択し、カニクイザルD3を高発現する安定な細胞プール(WT115.Flpin293.cPro1.pool)を適切な選択抗生物質で選択した。
【0189】
1.4 抗体のビオチン化
NHS-PEO4-ビオチン化を行うため、1~10mg/mLの抗体(IgG)を20倍モル過剰のNHS-PEO4-ビオチン試薬と金属槽中で25℃で75分間、または氷上で2時間インキュベートした。次に、脱塩スピンカラムを使用して過剰なビオチンを除去し、精製タンパク質試料をフロースルー溶液から回収した。タンパク質へのビオチン取り込みのレベルを、HABAアッセイによって測定した。ビオチン化試料をHABA/アビジン溶液で10倍に希釈し、混合溶液のA500での吸光度を測定した。タンパク質1モル当たりのビオチンのモル数を、A500値に基づいて計算した。
【0190】
実施例2
VHHを含むWBPT1156抗体の生成
2.1 抗D3VHHの作製
ラクダ科動物の免疫化とファージディスプレイ技術によって抗D3VHHを作製した。簡単に説明すると、アルパカ(Vicugnapacos)を、hFcタグ付きヒトD3 ECDタンパク質(ACRO、DL3-H5255)で皮下免疫した。免疫後、VHHフラグメントを提示するファージライブラリーを構築するために末梢血を採取した。対応する標的ECDタンパク質を使用したバイオパニングの後、D3に結合する陽性VHHクローンが選択された。
【0191】
2.2 VHHのシークエンシング
大腸菌上清を用いた標的特異的結合ELISA及びFACSによって選択された陽性大腸菌クローンを、Biosune(Shanghai, China)に送付してVHH遺伝子をヌクレオチドシークエンシングした。シークエンシングの結果を、CLC Main Workbench(Qiagen, Hilden, Germany)を使用して分析した。4つの固有の陽性VHHクローンの配列は、表A及び表Bに示されるWT1156-P3R2-1C2、WT1156-P3R2-1C9、WT1156-P3R2-1H6、及びWT1156-P8R2-1H1であった。
【0192】
2.3 VHHを含むヒトFc融合抗体の作製
4つの固有の陽性VHHクローンをVHH-Fc(hIgG1)融合抗体に変換した。簡単に説明すると、適切な制限部位を含むVHH特異的クローニングプライマーを使用して、VHH遺伝子をpET-bacベクターからPCR増幅し、改変ヒトhIgG1発現pcDNA3.3ベクターに融合することによりクローニングして、VHH-Fc(hIgG1)キメラ抗体の対応するクローンを作製した。ベクターを293FまたはExpi293細胞に一過性にトランスフェクトして抗体を発現させた。抗体を含む細胞培養上清を回収し、プロテインAクロマトグラフィーを使用して精製した。生成された抗体をそれぞれ「WT1156-P3R2-1C2-uIgG1」、「WT1156-P3R2-1C9-uIgG1」、「WT1156-P3R2-1H6-uIgG1」及び「WT1156-P8R2-1H1-uIgG1」と命名した。得られた抗体をSDS-PAGE及びHPLC-SECで分析し、-80℃で保存した。
【0193】
2.4 ヒト化
VHHのヒト化を「ベストフィット」アプローチによって行った。簡単に説明すると、ヒト生殖系列V遺伝子データベースでVHHフレームワーク領域のアミノ酸配列に対してブラスト検索し、最上位のヒットのヒトCDR配列をKabatのCDR定義を用いてVHHのCDR配列に置き換えることによってヒト化VHH配列を生成した。次に、抗体の親和性または開発性に重要な役割を果たすフレームワーク内の重要な残基を単独でまたは組み合わせて親残基に復帰変異させた。各バリアントを哺乳動物での発現用にコドン最適化し、GENEWIZ(SuZhou, China)によって合成した。設計したVHHバリアントと親VHHタンパク質をヒトIgG1発現ベクターにクローニングして、ヒトIgG1コンストラクトを作製した。抗体をHEK293細胞で産生させ、プロテインAクロマトグラフィーを使用して精製した。望ましい親和性を持つバリアントを最終的にヒト化リードとして選択した。
【0194】
WT1156-P3R2-1C2-z102-uIgG1、WT1156-P3R2-1C2-z109-uIgG1、及びWT1156-P3R2-1H6-z100-uIgG1の3つの固有のヒト化D3抗体の配列も表A及び表Bに示す。
【0195】
実施例3
D3結合抗体の特性評価
3.1 ELISAによるヒトD3結合
プレートを、1μg/mL、ウェル当たり100μLのWT115-hPro1.ECD.Hisで4℃で一晩プレコーティングした。抗原をストック溶液からコーティング緩衝液(0.02M NaCO及び0.18M NaHCO、pH9.2)で希釈した。翌日、プレートを1×PBST(0.05%tween(登録商標)-20を含むPBS)で1回洗浄し、200μLの1×PBS/2%BSAを加えてブロッキングを行った。抗体をブロッキングバッファーで段階希釈した(20nM~0.00128nMまで5倍段階希釈した)。1時間のブロッキング後、1×PBSTを使用してプレートを3回洗浄し、次いで抗体をプレートに加え、周囲温度で1時間インキュベートした。固定化されたヒトD3への抗体の結合を、1×PBS/2%BSAで1:10000の濃度に希釈したHRP標識二次抗体(Bethyl、A80-304P)によって検出した。インキュベーション後、1×PBSTを使用してプレートを6回洗浄した。100μLのTMB基質を分注することにより発色させ、100μLの2M HClを加えて反応を停止させた。吸光度を、マイクロプレート分光光度計を使用して450nm及び540nmで読み取った。抗ヒトD3抗体WT115-BMK1及びWT115-BMK2をポジティブコントロールとして使用した。ヒトIgG1アイソタイプ抗体をネガティブコントロールとして使用した。すべての試料を二連で試験した。
【0196】
図1及び表1に示されるように、WT1156-P3R2-1C2-uIgG1、WT1156-P3R2-1C9-uIgG1、WT1156-P3R2-1H6-uIgG1、及びWT1156-P8R2-1H1-uIgG1は、WT115-BMK1及びWT115-BMK2と比較して同等に固定化ヒトD3に強く結合することができる。WT1156抗体のEC50は、0.013nM~0.026nMの範囲である。WT115-BMK1及びWT115-BMK2のEC50は、それぞれ0.0094nM及び0.011nMである。
【0197】
【表1】
【0198】
3.2 FACSによるヒトD3結合
WT115-293F.hPro1.2E5細胞(1×10細胞/ウェル)をさまざまな濃度の抗体(200nM~0.0128nMまで5倍段階希釈)と4℃で1時間インキュベートした。1×PBS/1%BSAで洗浄した後、二次抗体としてR-PE標識ヤギ抗ヒトIgG(1:150、Jackson ImmunoResearch、109-115-098)を加え、細胞と4℃で暗所で1時間インキュベートした。抗ヒトD3抗体WT115-BMK1及びWT115-BMK2をポジティブコントロールとして使用した。ヒトIgG1アイソタイプ抗体をネガティブコントロールとして使用した。細胞を洗浄し、4%パラホルムアルデヒドに再懸濁した。細胞のMFIをフローサイトメーターで測定し、FlowJoで分析した。
【0199】
図2a及び表1に示されるように、WT1156-P3R2-1C2-uIgG1、WT1156-P3R2-1C9-uIgG1、WT1156-P3R2-1H6-uIgG1、及びWT1156-P8R2-1H1-uIgG1は、WT115-BMK2と同等にヒトD3発現細胞に結合することができる。WT1156抗体のEC50は、0.15nM~0.52nMの範囲である。WT115-BMK1及びWT115-BMK2のEC50は、それぞれ0.019nM及び0.54nMである。
【0200】
図2bに示されるように、WT1156-P3R2-1C2-z102-uIgG1及びWT1156-P3R2-1C2-z109-uIgG1は、それぞれEC50=0.088nM及び0.14nMでヒトD3発現細胞に強くすることが結合できる。WT115-BMK1及びWT115-BMK2のEC50は、それぞれ0.03nM及び0.52nMである。WT1156-P3R2-1C2-z109-uIgG及び2つのBMK抗体のデータも表2にまとめている。
【0201】
【表2】

3.3 FACSによるカニクイザルD3結合
WT115-Flpin293.cPro1.プール細胞(1×10細胞/ウェル)をさまざまな濃度の抗体(10nM~0.00061nMまで4倍段階希釈)と4℃で1時間インキュベートした。1×PBS/1%BSAで洗浄した後、二次抗体としてAlexa Fluor 647標識ヤギ抗ヒトIgG(1:150、Jackson ImmunoResearch、109-605-098)を加え、細胞と4℃で暗所で1時間インキュベートした。抗ヒトD3抗体WT115-BMK1及びWT115-BMK2をポジティブコントロールとして使用した。ヒトIgG1アイソタイプ抗体をネガティブコントロールとして使用した。細胞を1×PBS/1%BSAで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドに再懸濁し、細胞と4℃で暗所で0.5時間インキュベートした。次に、バッファーを1×PBS/1%BSAに交換し、細胞を濾過した。細胞のMFIをフローサイトメーターで測定し、FlowJoで分析した。
【0202】
図3a及び表1に示されるように、WT1156-P3R2-1C2-uIgG1、WT1156-P3R2-1C9-uIgG1、WT1156-P3R2-1H6-uIgG1、及びWT1156-P8R2-1H1-uIgG1は、WT115-BMK1及びWT115-BMK2と同等にカニクイザルD3発現細胞に結合することができる。WT1156抗体のEC50は、0.12nM~0.44nMの範囲である。WT115-BMK1及びWT115-BMK2のEC50は、それぞれ0.019nM及び0.20nMである。
【0203】
図3bに示されるように、WT1156-P3R2-1C2-z102-uIgG1、WT1156-P3R2-1C2-z109-uIgG1及びWT1156-P3R2-1H6-z100-uIgG1は、それぞれEC50=0.083nM、0.096nM及び0.42nMでヒトD3発現細胞に強くすることが結合できる。WT115-BMK1及びWT115-BMK2のEC50は、それぞれ0.019nM及び0.20nMである。WT1156-P3R2-1C2-z109-uIgG及び2つのBMKのデータも表2にまとめている。
【0204】
3.4 ELISAによるマウスD3結合
プレートを、1μg/mL、ウェル当たり100μLのWT115-MBP-mPro1.ECD.hFcで4℃で一晩プレコーティングした。抗原をストック溶液からコーティングバッファーで希釈した。翌日、プレートを1×PBSTで1回洗浄し、200μLの1×PBS/2%BSAを加えてブロッキングを行った。抗体をブロッキングバッファーで段階希釈した(20nM~0.000256nMまで5倍段階希釈した)。1時間のブロッキング後、1×PBSTを使用してプレートを3回洗浄し、次いで抗体をプレートに加え、周囲温度で1時間インキュベートした。抗ヒトD3抗体WT115-BMK1-ビオチン及びWT115-BMK2-ビオチンをポジティブコントロールとして使用した。WT114-BMK1-ビオチン抗体をネガティブコントロールとして使用した。固定化されたマウスD3への抗体の結合を、1×PBS/2%BSAで1:30000の濃度に希釈したHRP標識二次抗体(Invitrogen,SNN1004)によって検出した。インキュベーション後、1×PBSTを使用してプレートを6回洗浄した。100μLのTMB基質を分注することにより発色させ、100μLの2M HClを加えて反応を停止させた。吸光度を、マイクロプレート分光光度計を使用して450nm及び540nmで読み取った。すべての試料を二連で試験した。
【0205】
図4aに示されるように、WT1156-P3R2-1C2-uIgG1は、WT115-BMK1と同等にマウスD3に強く結合することができる。WT1156-P3R2-1C2-uIgG1のEC50は0.0092nMである。WT115-BMK1及びWT115-BMK2のEC50は、それぞれ0.0039nM及び0.014nMである。
【0206】
図4bに示されるように、WT1156-P3R2-1C2-z102-uIgG1及びWT1156-P3R2-1C2-z109-uIgG1は、それぞれEC50=0.0067nM及び0.0075nMでマウスD3タンパク質に強くすることが結合できる。WT115-BMK1及びWT115-BMK2のEC50は、それぞれ0.0039nM及び0.014nMである。WT1156-P3R2-1C2-z109-uIgG及び2つのBMKのデータも表2にまとめている。
【0207】
3.5 内在化
WT115-293F.hPro1.2E5細胞(4×10細胞/ウェル)を96ウェルプレートに播種し、遠心分離後に培地をプレートから除去した。1×最終最大濃度の一次抗体(40nM~0.00256nMまで5倍段階希釈、または200nM~0.0128nMまで5倍段階希釈)を調製し、pHrodo(アミン反応性、Thermo Fisher、P36011)標識した二次抗体(Affinipure F(ab’)2フラグメントヤギ抗ヒトIgG、Jackson ImmunoResearch、109-006-098、比=分子1:1)希釈物を細胞培養培地とともにプレートに加え、37℃で5時間インキュベートした。抗ヒトD3抗体WT115-BMK1及びWT115-BMK2をポジティブコントロールとして使用した。ヒトIgG1アイソタイプ抗体をネガティブコントロールとして使用した。インキュベーション後、細胞を試薬(細胞核-Hoechst33342、1000ng/ml、細胞質-カルセインAM、DPBSで1:2000希釈)で染色し、プレートを37°Cで15分間インキュベートした。最後に、細胞をOperatta CLSで撮影し、抗体のエンドサイトーシスを「細胞当たりのスポット数」のパラメーターによって分析した。
【0208】
図5a及び表1に示されるように、WT1156-P3R2-1C2-uIgG1、WT1156-P3R2-1C9-uIgG1、WT1156-P3R2-1H6-uIgG1、及びWT1156-P8R2-1H1-uIgG1は、ヒトD3発現細胞においてWT115-BMK1及びWT115-BMK2と同等の用量依存的内在化能を示した。WT1156抗体のEC50は、0.46nM~0.95nMの範囲である。WT115-BMK1及びWT115-BMK2のEC50は、それぞれ0.19nM及び0.58nMである。
【0209】
図5b及び表2に示されるように、WT1156-P3R2-1C2-z109-uIgG1は、ヒトD3発現細胞において用量依存的な内在化能を示し、EC50=12.2nMであった。WT115-BMK1及びWT115-BMK2のEC50は、それぞれ3.47nM及び14.4nMである。
【0210】
3.6 抗D3抗体の速度論的結合親和性
ヒトD3のECDタンパク質に対する抗D3抗体の結合親和性を、Biacore T200を使用したSPRアッセイによって検出された。試験した各抗体を、抗ヒトIgGFc抗体固定化CM5センサーチップ(GE)上に捕捉した。異なる濃度のWT115-hPro1.ECD.Hisを、180秒の結合段階にわたって30μl/分の流速でセンサーチップ上に注入し、続いて3600秒の解離段階を行った。チップを各結合サイクル後に10mMグリシン(pH1.5)によって再生した。
【0211】
表3に示されるように、ヒトD3に対する実験データを定常状態の親和性モデルによって当てはめを行った。ヒトD3に対するWT-115-BMK1の実験データを、異種リガンドモデルによって当てはめを行った。他の実験データは、ラングミュア分析を使用して1:1モデルによって当てはめを行った。ブランク表面とバッファーチャネルのセンサーグラムを試験センサーグラムから差し引いた。34KDaの分子量を用いて分析物のモル濃度を計算した。ヒトD3に対する試験抗体の親和性を表3に示す。
【0212】
【表3】

3.7 競合ELISAによるエピトープビニング
プレートを、1μg/mL、ウェル当たり100μLのWT115-hPro1.ECD.Hisで4℃で一晩プレコーティングした。抗原をストック溶液からコーティング緩衝液(0.02M Na2CO3及び0.18M NaHCO3、pH9.2)で希釈した。翌日、プレートを1×PBSTで1回洗浄し、200μLの1×PBS/2%BSAを使用してブロッキングを行った。VHH抗体をブロッキングバッファーで段階希釈し(10nM~0.00013nMまで5倍段階希釈)、一定濃度の全IgG抗体(0.02nM)と予め混合した。1時間のブロッキング後、1×PBSTを使用してプレートを3回洗浄し、次いでVHH抗体/全IgG抗体混合物をプレートに加え、周囲温度で1時間インキュベートした。固定化されたヒトD3への全IgG抗体の結合を、1×PBS/2%BSAで1:10000の濃度に希釈したHRP標識二次抗体(Bethyl、A80-304P)によって検出した。インキュベーション後、1×PBSTを使用してプレートを6回洗浄した。100μLのTMB基質を分注することにより発色させ、100μLの2M HClを加えて反応を停止させた。吸光度を、マイクロプレート分光光度計を使用して450nM及び540nMで読み取った。すべての試料を二連で試験した。
【0213】
図6aに示されるように、ELISAで試験した場合に、WT1156-P3R2-1C2.uIgG1は、ヒトD3-ECDタンパク質との結合について他の3つのWBPT1156抗体と競合しない。また、図6bに示されるように、WT1156-P3R2-1H6-uIgG1は、ヒトD3-ECDタンパク質への結合についてWT1156-P8R2-1H1-uIgG1及びWT1156-P3R2-1C9-uIgG1と競合することができる。図6cは、WT1156-P8R2-1H1-uIgG1がWT1156-P3R2-1C9-uIgG1と競合できることを示している。図6dに示されるように、WBPT1156 4抗体はWT115-BMK1と競合しない。
【0214】
3.8 切断型D3タンパク質を用いたELISAによる結合
WT1156抗体の結合エピトープを、1.1及び図7cに記載されるように、切断型D3タンパク質を使用したELISAによって試験した。プレートを抗体または抗原でプレコーティングすることによってELISA試験を行った。結果を、図7a及び7bにそれぞれ示す。
【0215】
プレコート抗体を用いたELISAを行うため、ELISAプレートを2μg/mL、ウェル当たり100μLの抗体で4℃で一晩プレコートした。抗体をストック溶液からコーティング緩衝液(0.02M Na2CO3及び0.18M NaHCO3、pH9.2)で希釈した。翌日、プレートを1×PBSTで1回洗浄し、200μLの1×PBS/2%BSAを使用してブロックした。次に、ブロッキングバッファーで希釈した一定濃度の完全長DLLのECDタンパク質(WT115-hPro1.ECD.His)(3μg/mL)または切断型D3タンパク質(3μg/mLまたは6μg/mL)を添加した。1時間のブロッキング後、1×PBSTを使用してプレートを3回洗浄し、次いで抗原をプレートに加え、周囲温度で1時間インキュベートした。固定化されたWBPT1156への抗体の結合を、1×PBS/2%BSAで1:2000の濃度に希釈したHRP標識二次抗体(GenScript、A00612)によって検出した。インキュベーション後、1×PBSTを使用してプレートを6回洗浄した。100μLのTMB基質を分注することで発色した。発色反応を2M HClにより停止させ、吸光度を、マイクロプレート分光光度計を使用して450nM及び540nMで読み取った。すべての試料を二連で試験した。結果を図7aに示す。
【0216】
プレコート抗原を用いたELISAを行うため、ELISAプレートをウェル当たり100μLのWT115-hPro1.ECD.His(2μg/mL)または切断型D3タンパク質(2μg/mLまたは5μg/mL)で4℃で一晩でプレコートした。抗原をストック溶液からコーティング緩衝液(0.02M Na2CO3及び0.18M NaHCO3、pH9.2)で希釈した。翌日、プレートを1×PBSTで1回洗浄し、200μLの1×PBS/2%BSAを使用してブロッキングを行った。一定濃度の抗体(2μg/mL)をブロッキングバッファーで希釈した。1時間のブロッキング後、1×PBSTを使用してプレートを3回洗浄し、次いで抗体をプレートに加え、周囲温度で1時間インキュベートした。固定化されたヒトD3への抗体の結合を、1×PBS/2%BSAで1:10000の濃度に希釈したHRP標識二次抗体(Bethyl、A80-304P)によって検出した。インキュベーション後、1×PBSTを使用してプレートを6回洗浄した。100μLのTMB基質を分注することにより発色させ、100μLの2M HClを加えて反応を停止させた。吸光度を、マイクロプレート分光光度計を使用して450nM及び540nMで読み取った。すべての試料を二連で試験した。結果を図7bに示す。
【0217】
図7a及び7bに示されるように、WT1156-P3R2-1C2-uIgG1は、WT115-hPro1.V1.ECD.MBP.AVI.His、WT115-hPro1.V2.ECD.MBP.AVI.Hisに結合し、部分的にWT115-hPro1.V3.ECD.MBP.AVI.Hisに結合するが、他のアイソフォームには結合せず、その結合エピトープがEGF1-2に位置することを示している。WT1156-P3R2-1C9-uIgG1及びWT1156-P3R2-1H6-uIgG1は、WT115-hPro1.ECD.Hisに結合するが、切断型D3アイソフォームには結合せず、これら2つの抗体の結合エピトープがN末端に位置していることを示している。WT1156-P8R2-1H1-uIgG1については、プレコーティングされた抗体を用いたELISAで試験した場合、WT115-hPro1.ECD.Hisへの結合は示すが、短縮型D3アイソフォームには結合しない(図7a)。プレコーティングされた抗原を用いたELISAで試験した場合、図7bに示されるように、WT1156-P8R2-1H1-uIgG1は、WT115-hPro1.V1.ECD.MBP.AVI.His及びWT115-hPro1.V2.ECD.MBP.AVI.Hisへの結合は示すが、他のアイソフォームには結合せず、その結合エピトープがおそらくN末端-DSL-EGF-1に位置することを示している。ELISA結合の結果は、WT115-BMK1がDSLドメインに結合し、WT115-BMK2がEGF-3ドメインに結合することを示しており、このことは、US2019/0046656及びWO2017/021349にそれぞれ示される結果と一致している。
【0218】
3.9 抗ヒトD3抗体のファミリー間結合
プレートを、1μg/mL、ウェル当たり100μLのWT115-hPro1.ECD.His、WT115-hPro2.ECD.His(ヒトD1、SinoBiological、カタログ番号:11635-H08H)またはWT115-hPro3.ECD.His(ヒトD4、SinoBiological、カタログ番号:10171-H08H)で4℃で一晩プレコーティングした。抗原をストック溶液からコーティング緩衝液(0.02M Na2CO3及び0.18M NaHCO3、pH9.2)で希釈した。翌日、プレートを1×PBST(0.05%tween(登録商標)-20を含むPBS)で1回洗浄し、ウェル当たり200μLの1×PBS/2%BSAを加えてブロッキングを行った。ブロッキングの際、BMK及びWT1156抗体をブロッキングバッファーで10nMに希釈し、WT115-cAb(WT115-cAb1はSinoBiologicalより購入した抗D1抗体、カタログ番号:11635-MM07、WT115-cAb2はSinoBiologicalより購入した抗D4抗体、カタログ番号:10171-MM15)を1000倍に希釈した。1時間のブロッキング後、1×PBSTを使用してプレートを3回洗浄し、次いで希釈した各抗体をプレートに加え、周囲温度で1時間インキュベートした。固定化したヒトD3への各抗体の結合を、1×PBS/2%BSAで1:10000に希釈したヤギ抗ヒトIgG-Fcフラグメント交差吸収抗体HRP(Bethyl、A80-304P)及びマウスIgG-Fcフラグメント交差吸着抗体HRP(Bethyl、A90-231P)によって検出した。インキュベーション後、1×PBSTを使用してプレートを6回洗浄した。100μLのTMB基質を分注することにより発色させ、100μLの2M HClを加えて反応を停止させた。吸光度を、マイクロプレート分光光度計を使用して450nM及び540nMで読み取った。WT115-cAb1及びcAb2を、それぞれ抗ヒトD1及びD4のポジティブコントロールとして使用した。ヒトIgG1アイソタイプ抗体をネガティブコントロールとして使用した。すべての試料を二連で試験した。
【0219】
図8に示されるように、WBPT1156抗体はヒトD1にもヒトD4にも結合しない。
【0220】
3.10 ヒト血清の安定性
ヒト血清を、遠心分離によって健康なドナーから新たに単離した。試料を血清で希釈し、血清体積を総体積の90%超とする。試料の5つのアリコートを37℃でインキュベートした。次に、試料をそれぞれ0日目、1日目、4日目、7日目、及び14日目に回収し、分析するまで一緒に急速冷凍した。
【0221】
試料の安定性を、ELISAを使用してヒトD3に結合させることによってテストされた。簡単に述べると、プレートを100μL/ウェルの1μg/mLWT115-hPro1.ECD.Hisで4℃で一晩プレコーティングした。翌日、プレートを1×PBST(0.05%tween(登録商標)-20を含むPBS)で1回洗浄し、ウェル当たり200μLの1×PBS/2%BSAを加えてブロッキングを行った。ブロッキング中に、試験抗体をさまざまな濃度(3nM~0.00018nMまで4倍段階希釈)でプレートに添加した。これらのプレートを室温で1時間インキュベートした。固定化したヒトD3への各抗体の結合を、1×PBS/2%BSAで1:5000に希釈したヤギ抗ヒトIgG-Fcフラグメント交差吸収抗体HRP(Bethyl、A80-304P)及びマウスIgG-Fcフラグメント交差吸着抗体HRP(Bethyl、A90-231P)によって検出した。インキュベーション後、1×PBSTを使用してプレートを6回洗浄した。100μLのTMB基質を分注することにより発色させ、100μLの2M HClを加えて反応を停止させた。吸光度を、マイクロプレート分光光度計を使用して450nM及び540nMで読み取った。ヒトIgG1アイソタイプ抗体をネガティブコントロールとして使用した。すべての試料を二連で試験した。
【0222】
図9に示されるように、ヒト血清中で37℃で最大14日間インキュベートした後でも、ヒトD3タンパク質に対するWT1156-P3R2-1C2-z109-uIgG1の結合プロファイルは変化しなかった。
【0223】
当業者であれば、本開示がその趣旨または中心的属性から逸脱することなく他の具体的形態で実施され得る点はさらに認識されるところであろう。本開示の上記の説明は、あくまでその例示的な実施形態のみを開示しているという点で、他の変形例も本開示の範囲内であるものとして想到されることを理解されたい。したがって、本開示は、本明細書で詳細に説明した特定の実施形態に限定されない。むしろ、本開示の範囲及び内容を示すものとして、添付の特許請求の範囲を参照すべきである。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図7a
図7b
図7c
図8
図9
図10
【配列表】
2024535851000001.xml
【国際調査報告】