(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】結腸直腸がんに対する新規の腫瘍特異的抗原及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07K 7/00 20060101AFI20240925BHJP
C07K 14/74 20060101ALI20240925BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20240925BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240925BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240925BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240925BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20240925BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240925BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240925BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240925BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240925BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240925BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240925BHJP
C12N 15/86 20060101ALN20240925BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
C07K7/00 ZNA
C07K14/74
C07K14/725
C07K16/18
C07K16/46
C12N15/12
C12N15/88 Z
C12N5/10
A61K39/00 H
A61K39/00 G
A61K39/39
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K35/17
A61K39/395 E
A61K39/395 T
C12N15/86 Z
C12N15/63 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516885
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 CA2022051377
(87)【国際公開番号】W WO2023039673
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】303055165
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ ド モントリオール
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230891
【氏名又は名称】里見 紗弥子
(72)【発明者】
【氏名】クラウデ ペロー
(72)【発明者】
【氏名】ピエール ティボー
(72)【発明者】
【氏名】ジェナ クライル
(72)【発明者】
【氏名】マリー-ピエール ハーディ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
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4B065CA45
4C084AA19
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4C084ZC75
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4C085BB01
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4C085EE01
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4C085EE06
4C085FF24
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA50
4H045DA76
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
4H045GA21
(57)【要約】
結腸直腸がん(CRC)は、主に作用可能な免疫標的がないため、革新的な免疫療法から恩恵を受けていない。CRC細胞によって発現される新規の腫瘍特異的抗原(TSA)及び腫瘍関連抗原(TAA)が本明細書に記載される。本明細書に記載されるTSAのほとんどは、正常な組織では発現されないイントロン配列及び遺伝子間配列などの異常に発現される非変異ゲノム配列に由来する。これらのTSAに由来する核酸、組成物、細胞、抗体、及びワクチンが記載される。CRCの治療のためのTSA、核酸、組成物、抗体、細胞及びワクチンの使用もまた記載される。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のアミノ酸配列:
【表1】
のうちの1つを含むか、若しくはそれらからなる、腫瘍抗原ペプチド(TAP)、又は前記TAPをコードする核酸。
【請求項2】
前記TAPが、配列番号6、1~5及び6~17に定義される配列のうちの1つを含む、請求項1に記載のTAP又は核酸。
【請求項3】
HLA-A*02:01分子に結合し、配列番号6の配列を含む、請求項1又は2に記載のTAP又は核酸。
【請求項4】
HLA-A*03:01分子に結合し、配列番号1、11、又は14の配列を含む、請求項1又は2に記載のTAP又は核酸。
【請求項5】
HLA-A*03:02分子に結合し、配列番号3、5、7、16、又は23の配列を含む、請求項1又は2に記載のTAP又は核酸。
【請求項6】
HLA-A*11:01分子に結合し、配列番号9又は18の配列を含む、請求項1又は2に記載のTAP又は核酸。
【請求項7】
HLA-A*30:01分子に結合し、配列番号19、20又は23の配列を含む、請求項1又は2に記載のTAP又は核酸。
【請求項8】
HLA-A*32:01分子に結合し、配列番号8の配列を含む、請求項1又は2に記載のTAP又は核酸。
【請求項9】
HLA-B*07:02分子に結合し、配列番号2又は21の配列を含む、請求項1又は2に記載のTAP又は核酸。
【請求項10】
HLA-B*13:02分子に結合し、配列番号13の配列を含む、請求項1又は2に記載のTAP又は核酸。
【請求項11】
HLA-B*27:05分子に結合し、配列番号4の配列を含む、請求項1又は2に記載のTAP又は核酸。
【請求項12】
HLA-B*52:01分子に結合し、配列番号10、12又は15の配列を含む、請求項1又は2に記載のTAP又は核酸。
【請求項13】
HLA-C*06:02分子に結合し、配列番号17の配列を含む、請求項1又は2に記載のTAP又は核酸。
【請求項14】
前記TAPが、ゲノムの非タンパク質コード領域に位置する配列によってコードされる、請求項1~13のいずれか一項に記載のTAP又は核酸。
【請求項15】
前記ゲノムの前記非タンパク質コード領域が、非翻訳転写領域(UTR)である、請求項14に記載のTAP又は核酸。
【請求項16】
前記ゲノムの前記非タンパク質コード領域が、イントロンである、請求項14に記載のTAP又は核酸。
【請求項17】
前記ゲノムの前記非タンパク質コード領域が、遺伝子間領域である、請求項14に記載のTAP又は核酸。
【請求項18】
前記ゲノムの前記非タンパク質コード領域が、長い非コードRNAである、請求項14に記載のTAP又は核酸。
【請求項19】
前記核酸が、mRNAである、請求項1~18のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項20】
前記核酸が、DNAである、請求項1~18のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項21】
前記核酸が、ウイルスベクターの成分である、請求項1~20のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に定義されるTAP又は核酸のうちの少なくとも2つを含む、組み合わせ。
【請求項23】
請求項1に定義されるアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含む、合成の長いペプチド(SLP)。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載のTAP、核酸、組み合わせ、若しくはSLPを含む、小胞又は粒子。
【請求項25】
前記小胞が、脂質ナノ粒子(LNP)である、請求項24に記載の小胞又は粒子。
【請求項26】
カチオン性脂質を含む、請求項24又は25に記載の小胞又は粒子。
【請求項27】
請求項1~23のいずれか一項に記載のTAP、核酸、組み合わせ若しくはSLP、又は請求項24~26のいずれか一項に記載の小胞若しくは粒子と、薬学的に許容される担体と、を含む、組成物。
【請求項28】
請求項1~23のいずれか一項に記載のTAP、核酸、組み合わせ若しくはSLP、請求項24~26のいずれか一項に記載の小胞若しくは粒子、又は請求項27に記載の組成物と、アジュバントと、を含む、ワクチン。
【請求項29】
単離された主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子であって、そのペプチド結合溝内に、請求項1~18のいずれか一項に記載のTAPを含む、単離されたMHCクラスI分子。
【請求項30】
多量体の形態である、請求項29に記載の単離されたMHCクラスI分子。
【請求項31】
前記多量体が、四量体である、請求項30に記載の単離されたMHCクラスI分子。
【請求項32】
(i)請求項1~18のいずれか一項に記載のTAP、(ii)請求項19に記載の組み合わせ、(iii)請求項23に記載のSLP、又は(iv)請求項1~18のいずれか一項に記載のTAP、請求項19に記載の組み合わせ、若しくは請求項23に記載のSLPをコードするヌクレオチド配列を含むベクターを含む、単離された細胞。
【請求項33】
単離された細胞であって、その表面において、主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子を発現し、前記MHCクラスI分子が、それらのペプチド結合溝内に、請求項1~18のいずれか一項に記載のTAP又は請求項19に記載の組み合わせを含む、単離された細胞。
【請求項34】
抗原提示細胞(APC)である、請求項33に記載の細胞。
【請求項35】
前記APCが、樹状細胞である、請求項34に記載の細胞。
【請求項36】
請求項29~31のいずれか一項に記載の単離されたMHCクラスI分子、及び/又は請求項32~35のいずれか一項に記載の細胞の表面において発現されたMHCクラスI分子を特異的に認識する、T細胞受容体(TCR)。
【請求項37】
請求項29~31のいずれか一項に記載の単離されたMHCクラスI分子、及び/又は請求項33~35のいずれか一項に記載の細胞の表面において発現されたMHCクラスI分子に特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項38】
二重特異性抗体又はその抗原結合断片である、請求項37に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項39】
前記二重特異性抗体又はその抗原結合断片が、一本鎖ダイアボディ(scDb)である、請求項38に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項40】
前記二重特異性抗体又はその抗原結合断片が、T細胞シグナル伝達分子にも特異的に結合する、請求項38又は39に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項41】
前記T細胞シグナル伝達分子が、CD3鎖である、請求項40に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項42】
単離された細胞であって、その細胞表面において、請求項36に記載のTCRを発現する、単離された細胞。
【請求項43】
CD8
+Tリンパ球である、請求項42に記載の単離された細胞。
【請求項44】
請求項42又は43に定義される単離された細胞を少なくとも0.5%含む、細胞集団。
【請求項45】
対象において結腸直腸がんを治療する方法であって、前記対象に、有効量の:
(a)配列番号1~23及び25~50に定義されるアミノ酸配列のうちの1つ、若しくは配列番号1~23及び25~50に示される配列のうちの少なくとも1つを含む合成の長いペプチド(SLP)を含むか、又はそれらからなるTAP、
(b)(a)に定義される前記TAP、その組み合わせ、又はSLPをコードする、少なくとも1つの核酸、
(c)(a)に定義される前記TAP、それらの組み合わせ、若しくはSLP、又は(b)に定義される前記少なくとも1つの核酸を含む、小胞又は粒子、
(d)(a)に定義される前記TAP、それらの組み合わせ、若しくはSLP、(b)に定義される前記少なくとも1つの核酸、又は(c)に定義される前記小胞若しくは粒子と、薬学的に許容される担体と、を含む、組成物、
(e)(a)に定義される前記TAP、それらの組み合わせ、若しくはSLP、(b)に定義される前記少なくとも1つの核酸、(c)に定義される前記小胞若しくは粒子、又は(d)に定義される前記組成物と、アジュバントと、を含む、ワクチン、
(f)細胞であって、その細胞表面において、(a)に定義される前記TAP又はそれらの組み合わせをそれらのペプチド結合溝内に含む主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子を発現する、細胞、
(g)細胞であって、その細胞表面において、(f)に定義される前記細胞の表面において発現されたMHCクラスI分子を特異的に認識するT細胞受容体(TCR)を発現する、細胞、あるいは
(h)(f)に定義される前記細胞の表面で発現されたMHCクラスI分子に特異的に結合する、可溶性TCR、抗体、又はその抗原結合断片を投与することを含む、方法。
【請求項46】
前記TAP若しくは核酸が、請求項1~21のいずれか一項に定義されるとおりであり、前記組み合わせが、請求項22に定義されるとおりであり、前記SLPが、請求項23に定義されるとおりであり、前記小胞が、請求項24~26のいずれか一項に定義されるとおりであり、前記組成物が、請求項27に定義されるとおりであり、前記ワクチンが、請求項28に定義されるとおりであり、前記細胞が、請求項32~35、42、及び43のいずれか一項に定義されるとおりであり、前記細胞集団が、請求項44に定義されるとおりであり、かつ/又は前記抗体若しくは抗原結合断片が、請求項37~41のいずれか一項に定義されるとおりである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記CRCが、結腸がんである、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
前記CRCが、直腸がんである、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項49】
少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤又は療法を、前記対象に投与することを更に含む、請求項45~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤又は療法が、化学療法剤、免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法、又は手術である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
対象において結腸直腸がんを治療するための、又は対象において結腸直腸がんを治療するための医薬を製造するための:
(a)配列番号1~23及び25~50に定義されるアミノ酸配列のうちの1つ、若しくは配列番号1~23及び25~50に示される配列のうちの少なくとも1つを含む合成の長いペプチド(SLP)を含むか、又はそれらからなるTAP、
(b)(a)に定義される前記TAP、その組み合わせ、又はSLPをコードする、少なくとも1つの核酸、
(c)(a)に定義される前記TAP、それらの組み合わせ、若しくはSLP、又は(b)に定義される前記少なくとも1つの核酸を含む、小胞又は粒子、
(d)(a)に定義される前記TAP、それらの組み合わせ、若しくはSLP、(b)に定義される前記少なくとも1つの核酸、又は(c)に定義される前記小胞若しくは粒子と、薬学的に許容される担体と、を含む、組成物、
(e)(a)に定義される前記TAP、それらの組み合わせ、若しくはSLP、(b)に定義される前記少なくとも1つの核酸、(c)に定義される前記小胞若しくは粒子、又は(d)に定義される前記組成物と、アジュバントと、を含む、ワクチン、
(f)細胞であって、その細胞表面において、(a)に定義される前記TAP又はそれらの組み合わせをそれらのペプチド結合溝内に含む主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子を発現する、細胞、
(g)細胞であって、その細胞表面において、(f)に定義される前記細胞の表面において発現されたMHCクラスI分子を特異的に認識するT細胞受容体(TCR)を発現する、細胞、あるいは
(h)(f)に定義される前記細胞の表面で発現されたMHCクラスI分子に特異的に結合する、可溶性TCR、抗体、又はその抗原結合断片、の使用。
【請求項52】
前記TAP若しくは核酸が、請求項1~21のいずれか一項に定義されるとおりであり、前記組み合わせが、請求項22に定義されるとおりであり、前記SLPが、請求項23に定義されるとおりであり、前記小胞が、請求項24~26のいずれか一項に定義されるとおりであり、前記組成物が、請求項27に定義されるとおりであり、前記ワクチンが、請求項28に定義されるとおりであり、前記細胞が、請求項32~35、42、及び43のいずれか一項に定義されるとおりであり、前記細胞集団が、請求項44に定義されるとおりであり、かつ/又は前記抗体若しくは抗原結合断片が、請求項37~41のいずれか一項に定義されるとおりである、請求項55に記載の使用。
【請求項53】
前記CRCが、結腸がんである、請求項51又は52に記載の使用。
【請求項54】
前記CRCが、直腸がんである、請求項51又は52に記載の使用。
【請求項55】
少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤又は療法の前記対象への前記使用を更に含む、請求項51~54のいずれか一項に記載の使用。
【請求項56】
前記少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤又は療法が、化学療法剤、免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法、又は手術である、請求項55に記載の使用。
【請求項57】
対象において結腸直腸がんを治療する際に使用するための薬剤であって、前記薬剤が:
(a)配列番号1~23及び25~50に定義されるアミノ酸配列のうちの1つ、若しくは配列番号1~23及び25~50に示される配列のうちの少なくとも1つを含む合成の長いペプチド(SLP)を含むか、又はそれらからなるTAP、
(b)(a)に定義される前記TAP、その組み合わせ、又はSLPをコードする、少なくとも1つの核酸、
(c)(a)に定義される前記TAP、それらの組み合わせ、若しくはSLP、又は(b)に定義される前記少なくとも1つの核酸を含む、小胞又は粒子、
(d)(a)に定義される前記TAP、それらの組み合わせ、若しくはSLP、(b)に定義される前記少なくとも1つの核酸、又は(c)に定義される前記小胞若しくは粒子と、薬学的に許容される担体と、を含む、組成物、
(e)(a)に定義される前記TAP、それらの組み合わせ、若しくはSLP、(b)に定義される前記少なくとも1つの核酸、(c)に定義される前記小胞若しくは粒子、又は(d)に定義される前記組成物と、アジュバントと、を含む、ワクチン、
(f)細胞であって、その細胞表面において、(a)に定義される前記TAP又はそれらの組み合わせをそれらのペプチド結合溝内に含む主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子を発現する、細胞、
(g)細胞であって、その細胞表面において、(f)に定義される前記細胞の表面において発現されたMHCクラスI分子を特異的に認識するT細胞受容体(TCR)を発現する、細胞、あるいは
(h)(f)に定義される前記細胞の表面で発現されたMHCクラスI分子に特異的に結合する、可溶性TCR、抗体、又はその抗原結合断片である、薬剤。
【請求項58】
前記TAP若しくは核酸が、請求項1~21のいずれか一項に定義されるとおりであり、前記組み合わせが、請求項22に定義されるとおりであり、前記SLPが、請求項23に定義されるとおりであり、前記小胞が、請求項24~26のいずれか一項に定義されるとおりであり、前記組成物が、請求項27に定義されるとおりであり、前記ワクチンが、請求項28に定義されるとおりであり、前記細胞が、請求項32~35、42、及び43のいずれか一項に定義されるとおりであり、前記細胞集団が、請求項44に定義されるとおりであり、かつ/又は前記抗体若しくは抗原結合断片が、請求項37~41のいずれか一項に定義されるとおりである、請求項61に記載の使用するための薬剤。
【請求項59】
前記CRCが、結腸がんである、請求項57又は58に記載の使用するための薬剤。
【請求項60】
前記CRCが、直腸がんである、請求項57又は58に記載の使用するための薬剤。
【請求項61】
少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤又は療法の前記対象への前記使用を更に含む、請求項57~60のいずれか一項に記載の使用するための薬剤。
【請求項62】
前記少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤又は療法が、化学療法剤、免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法、又は手術である、請求項61に記載の使用するための薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2021年9月17日に出願された米国仮特許出願第63/261,315号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、概して、腫瘍学の分野に関し、より具体的には、結腸直腸がんなどのがんの治療に関する。
【背景技術】
【0003】
結腸直腸がん(CRC)は、世界で3番目に多く一般的に診断されているがんであり、がんによる死亡の2番目に多い原因であり、2018年だけで180万人を超える症例があり、881,000人の死亡が推定されている(1)。CRCの発生率は、世界的な社会経済的変化が起こるにつれて増加すると予想され、2030年までに年間220万人の症例が予測され、110万人の死亡が発生する(1、2)。この重大な疾患負荷は、この疾患に対する新規かつ効果的な治療法を開発する必要性を強調するものである。
【0004】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の存在量と、結腸がん及び直腸がんの両方における全生存期間の増加との間の正の相関関係は、T細胞が、これらの腫瘍において生物学的に関連する腫瘍抗原を認識することができることを示唆する(3、4)。これらの抗原の潜在的な免疫原性は、免疫チェックポイント阻害(ICI)を、がん患者のための有望な治療にした。しかしながら、CRCにおけるそれらの有効性を評価する初期の臨床試験は、混合された結果が得られた。マイクロサテライト不安定性(MSI)として知られる反復DNA配列(マイクロサテライト)の蓄積を引き起こすミスマッチ修復タンパク質の欠損を特徴とする結腸直腸腫瘍は、抗PD1治療を用いた第II相臨床試験において相対的な成功を示している(5)。対照的に、そのような治療は、CRC症例のおよそ80%を構成する、高い変異負荷を有さないマイクロサテライト安定性(MSS)腫瘍に対する臨床試験において、ほとんど有効性がなかった(5、6)。
【0005】
CRCにおける免疫応答の重要性及びICI単独の限定的な成功を考慮すると、近年の研究のための有望な道筋は、ICIの有無にかかわらず使用することができ、理想的には、MSI腫瘍及びMSS腫瘍にわたる治療有効性のギャップを埋めることができる、ネオ抗原ベースのワクチン又はT細胞受容体ベースの療法である。例えば、正常細胞と比較してがん細胞で過剰発現される抗原である腫瘍関連抗原(TAA)は、CRCにおいて以前に特定されている(7、8)。いくつかのTAAは、ワクチン及びCRCに対する第I相試験で試験されているが、ほとんどは、おそらく、胸腺によるそのような抗原の陰性選択に起因して、「限定的な成功」を満たすに過ぎなかった(9)。1つの研究では、遺伝子操作された抗CEA T細胞による転移性CRCの治療は、1名の患者では腫瘍退縮をもたらしたが、全ての患者において「重度の炎症性大腸炎」を引き起こし、有害な自己免疫応答が、TAAを使用することの別のあり得る負の結果であることを示している(10)。
【0006】
TAAに対する混合された応答に起因して、効果的なネオ抗原ベースの療法は、単一ヌクレオチドバリアント、異常に発現された転写産物、又は新規のスプライシングイベントを含むがこれらに限定されない遺伝的変動、エピジェネティック変動及び翻訳後変動によって生成されてもよく、腫瘍によって排他的に発現される、腫瘍特異的抗原(TSA)を利用する可能性が更に高い(11)。CRCにおける単一ヌクレオチドバリアント、スプライスバリアント、及びINDEL変異の高い発生率は、腫瘍の主要組織適合複合体(MHC)によって固有の抗原が提示される可能性が高く、その結果、腫瘍特異的な免疫応答を誘発することが可能であり得ることを示唆している(12)。TSAは、近年、CRCにおいて特定されており、第I相及び第II相のワクチン治験でいくつかの成功を示している。MSI-高腫瘍に由来するフレームシフト抗原を使用した2015年のワクチン治験では、全ての患者で有意かつ特異的な免疫応答が示された(13)。しかしながら、本研究では、マイクロサテライト不安定性フレームシフトに由来する抗原を用いたため、これらの知見は、大多数のCRC患者には適用することができない。今日までのCRCにおけるTSAを特定する他の研究は、ゲノムのコード領域に由来する変異体TSA(mTSA)にのみ焦点を当ててきた(13、14)。MSS CRCオルガノイドの調査は、非サイレント変異の0.5%のみがmTSAとして特定されたことを明らかにした。これは、HLA結合予測ソフトウェアによって予測されたものよりも有意に低い割合であった(15)。加えて、以前の研究は、腫瘍細胞上のそれらのTSAの発現を定量化するために質量分析(MS)技術を用いず、これは、所与のTSAを標的とする治療可能性に影響を及ぼし得る情報である(13、14)。
【0007】
このことを考慮すると、CRCに対する治療的免疫応答を誘発させることができる腫瘍特異的抗原を特定することが急務である。かかる抗原は、ワクチン(±免疫チェックポイント阻害剤)として、又はT細胞受容体ベースのアプローチ(細胞療法、二重特異性生物製剤)の標的として使用され得る。
【0008】
本記載には、いくつかの文献を参照し、それらの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0009】
様々な態様及び実施形態では、本開示は、以下の項目1~62を提供する:
【0010】
1.以下のアミノ酸配列:
【表1】
のうちの1つを含むか、若しくはそれらからなる、腫瘍抗原ペプチド(TAP)、又は当該TAPをコードする核酸。
【0011】
2.TAPが、配列番号6、1~5及び6~17に定義される配列のうちの1つを含む、項目1に記載のTAP又は核酸。
【0012】
3.HLA-A*02:01分子に結合し、配列番号6の配列を含む、項目1又は2に記載のTAP又は核酸。
【0013】
4.HLA-A*03:01分子に結合し、配列番号1、11、又は14の配列を含む、項目1又は2に記載のTAP又は核酸。
【0014】
5.HLA-A*03:02分子に結合し、配列番号3、5、7、16、又は23の配列を含む、項目1又は2に記載のTAP又は核酸。
【0015】
6.HLA-A*11:01分子に結合し、配列番号9又は18の配列を含む、項目1又は2に記載のTAP又は核酸。
【0016】
7.HLA-A*30:01分子に結合し、配列番号19、20又は23の配列を含む、項目1又は2に記載のTAP又は核酸。
【0017】
8.HLA-A*32:01分子に結合し、配列番号8の配列を含む、項目1又は2に記載のTAP又は核酸。
【0018】
9.HLA-B*07:02分子に結合し、配列番号2又は21の配列を含む、項目1又は2に記載のTAP又は核酸。
【0019】
10.HLA-B*13:02分子に結合し、配列番号13の配列を含む、項目1又は2に記載のTAP又は核酸。
【0020】
11.HLA-B*27:05分子に結合し、配列番号4の配列を含む、項目1又は2に記載のTAP又は核酸。
【0021】
12.HLA-B*52:01分子に結合し、配列番号10、12又は15の配列を含む、項目1又は2に記載のTAP又は核酸。
【0022】
13.HLA-C*06:02分子に結合し、配列番号17の配列を含む、項目1又は2に記載のTAP又は核酸。
【0023】
14.TAPが、ゲノムの非タンパク質コード領域に位置する配列によってコードされる、項目1~13のいずれか1つに記載のTAP又は核酸。
【0024】
15.ゲノムの当該非タンパク質コード領域が、非翻訳転写領域(UTR)である、項目14に記載のTAP又は核酸。
【0025】
16.ゲノムの当該非タンパク質コード領域が、イントロンである、項目14に記載のTAP又は核酸。
【0026】
17.ゲノムの当該非タンパク質コード領域が、遺伝子間領域である、項目14に記載のTAP又は核酸。
【0027】
18.ゲノムの当該非タンパク質コード領域が、長い非コードRNAである、項目14に記載のTAP又は核酸。
【0028】
19.核酸が、mRNAである、項目1~18のいずれか1つに記載の核酸。
【0029】
20.核酸が、DNAである、項目1~18のいずれか1つに記載の核酸。
【0030】
21.核酸が、ウイルスベクターの成分である、項目1~20のいずれか1つに記載の核酸。
【0031】
22.項目1~21のいずれか1つに定義されるTAP又は核酸のうちの少なくとも2つを含む、組み合わせ。
【0032】
23.項目1に定義されるアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含む、合成の長いペプチド(SLP)。
【0033】
24.項目1~23のいずれか1つに記載のTAP、核酸、組み合わせ、若しくはSLPを含む、小胞又は粒子。
【0034】
25.小胞が、脂質ナノ粒子(LNP)である、項目24に記載の小胞又は粒子。
【0035】
26.カチオン性脂質を含む、項目24又は25に記載の小胞又は粒子。
【0036】
27.項目1~23のいずれか1つに記載のTAP、核酸、組み合わせ若しくはSLP、又は項目24~26のいずれか1つに記載の小胞若しくは粒子と、薬学的に許容される担体と、を含む、組成物。
【0037】
28.項目1~23のいずれか1つに記載のTAP、核酸、組み合わせ若しくはSLP、項目24~26のいずれか1つに記載の小胞若しくは粒子、又は項目27に記載の組成物と、アジュバントと、を含む、ワクチン。
【0038】
29.単離された主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子であって、そのペプチド結合溝内に、項目1~18のいずれか1つに記載のTAPを含む、単離されたMHCクラスI分子。
【0039】
30。多量体の形態である、項目29に記載の単離されたMHCクラスI分子。
【0040】
31.当該多量体が、四量体である、項目30に記載の単離されたMHCクラスI分子。
【0041】
32.(i)項目1~18のいずれか1つに記載のTAP、(ii)項目19に記載の組み合わせ、(iii)項目23に記載のSLP、又は(iv)項目1~18のいずれか1つに記載のTAP、項目19に記載の組み合わせ、若しくは項目23に記載のSLPをコードするヌクレオチド配列を含むベクターを含む、単離された細胞。
【0042】
33.単離された細胞であって、その表面において、主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子を発現し、MHCクラスI分子が、それらのペプチド結合溝内に、項目1~18のいずれか1つに記載のTAP又は項目19に記載の組み合わせを含む、単離された細胞。
【0043】
34.抗原提示細胞(APC)である、項目33に記載の細胞。
【0044】
35.当該APCが、樹状細胞である、項目34に記載の細胞。
【0045】
36.項目29~31のいずれか1つに記載の単離されたMHCクラスI分子及び/又は項目32~35のいずれか1つに記載の細胞の表面において発現されたMHCクラスI分子を特異的に認識する、T細胞受容体(TCR)。
【0046】
37.項目29~31のいずれか1つに記載の単離されたMHCクラスI分子、及び/又は項目33~35のいずれか1つに記載の細胞の表面において発現されたMHCクラスI分子に特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片。
【0047】
38.二重特異性抗体又はその抗原結合断片である、項目37に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【0048】
39.二重特異性抗体又はその抗原結合断片が、一本鎖ダイアボディ(scDb)である、項目38に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【0049】
40.二重特異性抗体又はその抗原結合断片が、T細胞シグナル伝達分子にも特異的に結合する、項目38又は39に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【0050】
41.T細胞シグナル伝達分子が、CD3鎖である、項目40に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【0051】
42.単離された細胞であって、その細胞表面において、項目36に記載のTCRを発現する、単離された細胞。
【0052】
43.CD8+Tリンパ球である、項目42に記載の単離された細胞。
【0053】
44.項目42又は43に定義される単離された細胞を少なくとも0.5%含む、細胞集団。
【0054】
45.対象においてがん(例えば、結腸直腸がん)を治療する方法であって、対象に、有効量の:
(a)配列番号1~23及び25~50に定義されるアミノ酸配列のうちの1つ、若しくは配列番号1~23及び25~50に示される配列のうちの少なくとも1つを含む合成の長いペプチド(SLP)を含むか、又はそれらからなるTAP、
(b)(a)に定義されるTAP、その組み合わせ、又はSLPをコードする、少なくとも1つの核酸、
(c)(a)に定義されるTAP、それらの組み合わせ、若しくはSLP、又は(b)に定義される少なくとも1つの核酸を含む、小胞又は粒子、
(d)(a)に定義されるTAP、それらの組み合わせ、若しくはSLP、(b)に定義される少なくとも1つの核酸、又は(c)に定義される小胞若しくは粒子と、薬学的に許容される担体と、を含む、組成物、
(e)(a)に定義されるTAP、それらの組み合わせ、若しくはSLP、(b)に定義される少なくとも1つの核酸、(c)に定義される小胞若しくは粒子、又は(d)に定義される組成物と、アジュバントと、を含む、ワクチン、
(f)細胞であって、その細胞表面において、(a)に定義されるTAP又はそれらの組み合わせをそれらのペプチド結合溝内に含む主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子を発現する、細胞、
(g)細胞であって、その細胞表面において、(f)に定義される細胞の表面において発現されたMHCクラスI分子を特異的に認識するT細胞受容体(TCR)を発現する、細胞、あるいは
(h)(f)に定義される細胞の表面で発現されたMHCクラスI分子に特異的に結合する、可溶性TCR、抗体、又はその抗原結合断片を投与することを含む、方法。
【0055】
46.TAP若しくは核酸が、項目1~21のいずれか1つに定義されるとおりであり、組み合わせが、項目22に定義されるとおりであり、SLPが、項目23に定義されるとおりであり、小胞が、項目24~26のいずれか1つに定義されるとおりであり、組成物が、項目27に定義されるとおりであり、ワクチンが、項目28に定義されるとおりであり、細胞が、項目32~35、42、及び43のいずれか1つに定義されるとおりであり、細胞集団が、項目44に定義されるとおりであり、かつ/又は抗体若しくは抗原結合断片が、項目37~41のいずれか1つに定義されるとおりである、項目45に記載の方法。
【0056】
47.CRCが、結腸がんである、項目45又は46に記載の方法。
【0057】
48.CRCが、直腸がんである、項目45又は46に記載の方法。
【0058】
49.対象に、少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤又は療法を投与することを更に含む、項目45~48のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
50.当該少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤又は療法が、化学療法剤、免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法、又は手術である、項目49に記載の方法。
【0060】
51.対象においてがん(例えば、結腸直腸がん)を治療するための、又は対象においてがん(例えば、結腸直腸がん)を治療するための医薬を製造するための:
(a)配列番号1~23及び25~50に定義されるアミノ酸配列のうちの1つ、若しくは配列番号1~23及び25~50に示される配列のうちの少なくとも1つを含む合成の長いペプチド(SLP)を含むか、又はそれらからなるTAP、
(b)(a)に定義されるTAP、その組み合わせ、又はSLPをコードする、少なくとも1つの核酸、
(c)(a)に定義されるTAP、それらの組み合わせ、若しくはSLP、又は(b)に定義される少なくとも1つの核酸を含む、小胞又は粒子、
(d)(a)に定義されるTAP、それらの組み合わせ、若しくはSLP、(b)に定義される少なくとも1つの核酸、又は(c)に定義される小胞若しくは粒子と、薬学的に許容される担体と、を含む、組成物、
(e)(a)に定義されるTAP、それらの組み合わせ、若しくはSLP、(b)に定義される少なくとも1つの核酸、(c)に定義される小胞若しくは粒子、又は(d)に定義される組成物と、アジュバントと、を含む、ワクチン、
(f)細胞であって、その細胞表面において、(a)に定義されるTAP又はそれらの組み合わせをそれらのペプチド結合溝内に含む主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子を発現する、細胞、
(g)細胞であって、その細胞表面において、(f)に定義される細胞の表面において発現されたMHCクラスI分子を特異的に認識するT細胞受容体(TCR)を発現する、細胞、あるいは
(h)(f)に定義される前記細胞の表面で発現されたMHCクラスI分子に特異的に結合する、可溶性TCR、抗体、又はその抗原結合断片、の使用。
【0061】
52.TAP若しくは核酸が、項目1~21のいずれか1つに定義されるとおりであり、組み合わせが、項目22に定義されるとおりであり、SLPが、項目23に定義されるとおりであり、小胞が、項目24~26のいずれか1つに定義されるとおりであり、組成物が、項目27に定義されるとおりであり、ワクチンが、項目28に定義されるとおりであり、細胞が、項目32~35、42、及び43のいずれか1つに定義されるとおりであり、細胞集団が、項目44に定義されるとおりであり、かつ/又は抗体若しくは抗原結合断片が、項目37~41のいずれか1つに定義されるとおりである、項目55に記載の使用。
【0062】
53.CRCが、結腸がんである、項目51又は52に記載の使用。
【0063】
54.CRCが、直腸がんである、項目51又は52に記載の使用。
【0064】
55.少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤又は療法の対象への使用を更に含む、項目51~54のいずれか1つに記載の使用。
【0065】
56.当該少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤又は療法が、化学療法剤、免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法、又は手術である、項目55に記載の使用。
【0066】
57.対象においてがん(例えば、結腸直腸がん)を治療する際に使用するための薬剤であって、薬剤が:
(a)配列番号1~23及び25~50に定義されるアミノ酸配列のうちの1つ、若しくは配列番号1~23及び25~50に示される配列のうちの少なくとも1つを含む合成の長いペプチド(SLP)を含むか、又はそれらからなるTAP、
(b)(a)に定義されるTAP、その組み合わせ、又はSLPをコードする、少なくとも1つの核酸、
(c)(a)に定義されるTAP、それらの組み合わせ、若しくはSLP、又は(b)に定義される少なくとも1つの核酸を含む、小胞又は粒子、
(d)(a)に定義されるTAP、それらの組み合わせ、若しくはSLP、(b)に定義される少なくとも1つの核酸、又は(c)に定義される小胞若しくは粒子と、薬学的に許容される担体と、を含む、組成物、
(e)(a)に定義されるTAP、それらの組み合わせ、若しくはSLP、(b)に定義される少なくとも1つの核酸、(c)に定義される小胞若しくは粒子、又は(d)に定義される組成物と、アジュバントと、を含む、ワクチン、
(f)細胞であって、その細胞表面において、(a)に定義されるTAP又はそれらの組み合わせをそれらのペプチド結合溝内に含む主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子を発現する、細胞、
(g)細胞であって、その細胞表面において、(f)に定義される細胞の表面において発現されたMHCクラスI分子を特異的に認識するT細胞受容体(TCR)を発現する、細胞、あるいは
(h)(f)に定義される細胞の表面で発現されたMHCクラスI分子に特異的に結合する、可溶性TCR、抗体、又はその抗原結合断片である、薬剤。
【0067】
58.TAP若しくは核酸が、項目1~21のいずれか1つに定義されるとおりであり、組み合わせが、項目22に定義されるとおりであり、SLPが、項目23に定義されるとおりであり、小胞が、項目24~26のいずれか1つに定義されるとおりであり、組成物が、項目27に定義されるとおりであり、ワクチンが、項目28に定義されるとおりであり、細胞が、項目32~35、42、及び43のいずれか1つに定義されるとおりであり、細胞集団が、項目44に定義されるとおりであり、かつ/又は抗体若しくは抗原結合断片が、項目37~41のいずれか1つに定義されるとおりである、項目61に記載の使用するための薬剤。
【0068】
59.CRCが、結腸がんである、項目57又は58に記載の使用するための薬剤。
【0069】
60.CRCが、直腸がんである、項目57又は58に記載の使用するための薬剤。
【0070】
61.少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤又は療法の対象への使用を更に含む、項目57~60のいずれか1つに記載の使用するための薬剤。
【0071】
62.当該少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤又は療法が、化学療法剤、免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法、又は手術である、項目61に記載の使用するための薬剤。
【0072】
本開示の他の目的、利点、及び特徴は、添付の図面を参照して例としてのみ与えられる、それらの特定の実施形態の以下の非制限的な説明を読むと、より明らかになるだろう。
【0073】
添付図面において:
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】結腸直腸がん(CRC)由来細胞株及び一次腫瘍試料の両方における腫瘍特異的抗原(TSA)の発見のためのプロテオゲノミクスワークフローを示す。CRC及び正常な腸に由来する細胞株から生成された試料、並びに6名の個体から得られた一致する一次腫瘍/正常な隣接組織(NAT)の生検を全て、RNA配列決定及び主要組織適合複合体クラスI(MHC-I)免疫沈降(IP)の両方のために処理した。RNA配列決定データを、試料のトランスクリプトーム特性決定及びカスタマイズされた全般的ながんプロテオームデータベースの生成の両方のために使用した。各試料について、IPによって単離されたMHC-I関連ペプチド(MAP)を、それぞれのデータベースを使用して、LC-MS/MSによって特定した。TSA候補の特定及び腫瘍特異性の両方を検証した後、それらの免疫原性及び腫瘍間分布の両方の予測によって、それらの治療可能性を評価した。BioRender.com.により作成された図。
【
図2】A~Eは、一次腫瘍/正常な隣接組織のCRC生検のトランスクリプトームプロファイルを示す。
図2A:ペアエンドRNA seq及びDESeq2による遺伝子リードカウント正規化の後の各腫瘍/NAT試料の上位500個の様々な遺伝子の主成分分析(PCA)。(MSISensorによって決定される)MSI組織を丸で囲んでいる。
図2B:隣接するNATと比較した、CRC組織における上方/下方調節された遺伝子のGO term分析。GO term分析に提出された遺伝子は、|log2FC|>1を有するものであり、かつTPM正規化された値を使用して全ての試料において差次的に制御されることが判明したものであった。
図2C:MSS NAT、MSI NAT、MSS CRC、及びMSI CRCの平均ESTIMATE免疫スコアを示す棒グラフであり、標準偏差が示されている。
図2D:CRC試料に対する、NATにおける5個の別個の転写産物バイオタイプに帰属可能なトランスクリプトームの平均割合を示す積み重ね棒グラフであり、非コード転写産物の割合の差は、NATとCRCとの間で統計的に有意である(p=0.0156)。
図2E:平均及び標準誤差の棒グラフを用いて、SNPEffゲノムアノテーションによって決定されるMSS及びMSI CRC組織の非コードRNA転写産物の発現(左)、SNVカウント(中央)及びINDELカウント(右)を示す散布図。
【
図3】A~Eは、CRC由来細胞株及び組織の免疫ペプチドーム分析の結果を示す。
図3A:上パネル:CRC細胞株において特定された固有のペプチドの数を示す積み上げ棒グラフ、及び細胞株当たりのMAPの平均数を示す水平線。下パネル:各細胞株において特定された固有のMAPの数と細胞表面におけるMHC Iの提示との間の相関を示す散布図(ピアソンのr=0.96)。
図3B:一次組織試料において特定された固有のペプチドの数を示す積み上げ棒グラフ、及び組織試料当たりのMAPの平均数を示す水平線。
図3A及び3Bの「全てのペプチド」は、5%FDRにより特定されたペプチドの数を示し、一方、「MHC Iペプチド」は、netpanMHC4.1b予測を使用して、対応するペプチドスコア、8~11アミノ酸長、及びランク溶出リガンド閾値≦2%で特定されたペプチドの数を示す。
図3C:溶出ランク予測を使用して、各試料中の所与のHLAアレルに結合することが予測される固有のMAPの割合を示す棒グラフ。
図3D:CRC由来細胞株及び一次組織についてのMAP源遺伝子のGO term分析。この分析において、組織について、4種類以上の組織によって共有される供給源遺伝子のみが含まれた。
図3E、左パネル:タンパク質コード、超可変遺伝子(免疫グロブリン若しくはTCR)、又は非コード転写産物、又はアノテーションされていない転写産物に由来する各組織試料中のMAPの割合を示す積み重ね棒グラフ。右パネル:プロセシングされた転写産物、保持されたイントロン、ノンストップ分解産物、ナンセンス媒介性分解産物、lncRNA、又はアノテーションされていない転写産物を有するものに由来する非コードMAPの割合を示す積み重ねた棒グラフ。
【
図4】A~Eは、CRCにおいて特定された新規のTSAが、主に非コード領域に由来し、一方、TAAの大部分が、エキソンに由来することを示す。
図4A:試料ごとに特定されたTSAの数を示す棒グラフ、組織試料ごとのTSAの平均数を水平線で示す。
図4B:内側の円にTSAのゲノム起源を特定し、TSAのどの割合が変異である(mTSA)か、又は異常に発現している(aeTSA)かを特定する、積み重ね円グラフ。外側の円は、TSAのどの割合がコード配列又は非コード配列に由来するかを示す。
図4C:試料ごとに特定されたTAAの数を示す棒グラフ。
図4D:内側の円にTAAのゲノム起源を特定し、TAAのどの割合がカノニカルであるか、又は非カノニカルであるかを特定する、積み重ね円グラフ。外側の円は、TAAのどの割合がコード配列又は非コード配列に由来するかを示す。
図4E:CRCの免疫ペプチドミクスに関する2つの以前の刊行物(8、15)、並びにIEDB及びHLA Ligand Atlas(全ての組織、及び結腸組織のみ)において、推定TSA及びTAAの存在又は不存在を示すヒートマップ。
【
図5】A~Bは、推定TSA及びTAAのRNA発現プロファイルを示す。
図5A:y軸上の一致したNAT、並びに所与の組織試料における平均(mean average)発現(CRC及びNATの平均)と比較した、TPM、CRCにおける転写産物のlog2FCを示すMAプロット。強調表示された点は、推定TAA及びTSAの供給源転写産物を示す。S4及びS5プロットは両方とも、別のカノニカルTAA源転写産物と重なるため、見ることができないカノニカルTAA点を有する。
図5B:Genotype Tissue Expression(GTEx)Portalからの正常組織、及びプールされたTEC試料における、aeTSAコード配列及びTAAコード配列(カノニカルTAA(canTAA)及び非カノニカルTAA(非canTAA)として分けられる)のlog(rphm+1)における平均RNA発現のヒートマップ。MHC低組織には、脳、神経、及び精巣からのものが含まれ、これらはMHC Iを低く発現することが示されている。黒色の輪郭は、平均RNA発現が8.55rphmを超えることを示す。
【
図6】A~Cは、TSA及びTAA候補の検証を示す。
図6A:151個のTCGA COAD試料における、TSA及びTAAのlog(rphm+1)における平均RNA発現を示すヒートマップ。プールされたGTEx及びmTEC試料のlog変換された(log(rphm+1))平均発現よりも少なくとも10倍高いTSA及びTAA配列を発現するTCGA COAD試料の割合を左に示す。
図6B:Adamopoulou et al.2013に報告された推定非免疫原性胸腺ペプチドと比較した、検証されたTSA及びTAAの様々なグループ分けのrEpitope免疫原性スコア。rEpitopeは、MHC Iペプチドの免疫原性の閾値(0.36)を示唆し、これは破線によって示されている。
図6C:米国集団(IEDB)における腫瘍抗原結合性MHCクラスIアレルの予測発生率。
【
図7】試料、具体的には、所与の試料に固有であるか、又は2つの試料によって固有に共有されるMAPの所与の交差に固有のHLAアレルの数を示すアップセットプロットを示す。
【
図8】A~Dは、CRC由来細胞株のトランスクリプトームプロファイル、CRC組織における免疫浸潤のssGSEA分析、及び全ての試料の変異プロファイルを示す。
図8A:ペアエンドRNA seq及びDESeq2による遺伝子リードカウント正規化の後のCRC由来細胞株の上位500個の様々な遺伝子及び1つの正常な腸細胞株(HIEC-6)の主成分分析(PCA)。既知のMSI細胞株を丸で囲んでいる。
図8B:Danaher et al.2017に記載の遺伝子及びGSVA Rプログラム(https://github.com/rcastelo/GSVA)を使用した、腫瘍及び一致したNATにおける免疫浸潤のssGSEA分析。
図8C:平均及び標準誤差の棒グラフを用いて、SNPEffゲノムアノテーションによって決定されるMSS及びMSI CRC由来細胞株のSNVカウント及びINDELカウントを示す散布図。
図8D:平均及び標準誤差の棒グラフを用いて、SNPEffゲノムアノテーションによって決定される全てのMSS及びMSI試料(細胞株及び組織)のSNVカウント及びINDELカウントを示す散布図。MSS試料とMSI試料との間のINDEL変異の数の差は、統計的に有意である(p=0.00235)。
【
図9】A及びBは、MSI及びMSS一次組織試料のGO term分析の結果を示す。
図9A:隣接するNATと比較した、MSI腫瘍における上方/下方調節された遺伝子のGO term分析。GO term分析に使用された遺伝子は、TPM正規化された値を使用したそれぞれのNATと比較して、|log2FC|>1を有するものであり、MSI腫瘍試料の両方において固有に差次的に発現されることが見出されたものであった(すなわち、MSI腫瘍の両方においてのみ上方/下方調節されたが、MSS腫瘍のいずれかにおいて上方/下方調節されなかった遺伝子)。
図9B:それらのNATと比較した、MSS腫瘍における上方/下方調節された遺伝子のGO term分析。GO term分析に使用された遺伝子は、TPM正規化された値を使用したそれぞれのNATと比較して、|log2FC|>1を有するものであり、MSI腫瘍試料の3種類以上において固有に差次的に発現されることが見出されたものであった(すなわち、少なくとも3種類のMSS腫瘍において上方/下方調節されたが、MSI腫瘍において上方/下方調節されなかった遺伝子)。
【
図10】A~Dは、CRC由来細胞株及びCRC/NAT組織試料における固有のMAP及び共有されたMAPの概要を提供する。
図10A:4種類のCRC由来細胞株のMHC I免疫ペプチドームにおけるMAPの重複を示すベン図。
図10B:6種類の一次組織試料のMHC I免疫ペプチドームにおけるMAPの重複を示すベン図。
図10C:試料、具体的には、所与の試料に固有であるか、又は2つの試料によって固有に共有されるMAPの所与の交差に固有のMAPの数を示すUpsetRプロット。
図10D:任意の2種類の細胞株又は組織試料間のMAPの共有数を示すヒートマップ。
【
図11】A~Eは、CRC由来細胞株及びCRC/NAT組織試料における固有のMAP源遺伝子及び共有されたMAP源遺伝子の概要を提供する。
図11A:上パネル:試料ごとに特定された固有の供給源遺伝子の数を示す棒グラフ。下パネル:各試料において特定された固有のMAPの数と、対応する固有の供給源遺伝子の数との間の相関を示す散布図(ピアソンのr=0.99)。コード配列からのペプチドについて供給源遺伝子を特定し、1つより多い供給源遺伝子にマッピングされた任意のペプチドを除外した。
図11B:所与の試料又は交差、具体的には、所与の試料に固有であるか、又は2つの試料によって固有に共有される供給源遺伝子の数を示すUpsetRプロット。
図11C:4種類のCRC由来細胞株のMHC I免疫ペプチドームにおける供給源遺伝子の重複を示すベン図。
図11D:6種類の一次組織試料のMHC I免疫ペプチドームにおける供給源遺伝子の重複を示すベン図。
図11E:任意の2種類の細胞株又は組織試料間の供給源遺伝子の共有数を示すヒートマップ。
【
図12】各試料において特定された固有のMAPの数と、特定及び検証されたTSAの数との間の相関を示す散布図である(ピアソンのr=0.76)。
【
図13】本明細書に記載のTSA及びTAAの免疫原性スコアを示すグラフである。Adamopoulou et al.2013に報告された推定非免疫原性胸腺ペプチドと比較した、検証されたTSA及び全てのTAAの様々なグループ分けのrEpitope免疫原性スコア。rEpitopeは、MHC Iペプチドの免疫原性の閾値(0.36)を示唆し、これは破線によって示されている。この図は、検証のために選択された9種類だけでなく、この研究で報告された全てのTAAを含むという点で、
図6Aとは異なる。
【発明を実施するための形態】
【0075】
技術を説明する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、「a」及び「an」及び「the」という用語、並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を網羅するように解釈されるものである。
【0076】
「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、及び「含有する」という用語は、別段注釈が付かない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むが、それに限定されない」を意味する)として解釈されるものである。
【0077】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書中で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。
【0078】
本明細書に提供される任意の及び全ての実施例、又は例示的な言語(「例えば」、「など」)の使用は、単に特許請求される技術の実施形態をより良好に例示することを意図しており、別段特許請求されない限り、範囲の限定を提起するものではない。
【0079】
本明細書におけるいかなる言語も、任意の特許請求されていない要素を特許請求される技術の実施形態の実施に不可欠であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0080】
本明細書では、「約」という用語は、その通常の意味を有する。「約」という用語は、ある値が、その値を決定するために用いられるデバイス若しくは方法の誤差についての固有の変動を含むか、又は列挙された値に近似する値、例えば、列挙された値(若しくは値の範囲)の10%以内の値を包含することを示すために使用される。
【0081】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段示されない限り、単に、範囲内に含まれる各個別の値を個々に参照する簡略方法として機能することを意図しており、各個別の値は、本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。範囲内の値の全てのサブセットもまた、本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0082】
本開示の特徴又は態様が、マーカッシュ群又は代替物の一覧の観点から説明される場合、当業者は、本開示がまた、それによってマーカッシュ群又は代替物の一覧の任意の個々の構成要素又は構成要素の部分群の観点からも説明されることを認識するであろう。
【0083】
別段具体的に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味(例えば、幹細胞生物学、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学における)と同じ意味を有すると解釈されるべきである。
【0084】
別段示されない限り、本開示において利用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学的技術は、当業者に周知の標準的な手順である。そのような技術は、J.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley and Sons(1984),J.Sambrook et al.,Molecular Cloning、A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989),T.A.Brown(編集者),Essential Molecular Biology:A Practical Approach,Volumes 1 and 2,IRL Press(1991)、D.M.Glover and B.D.Hames(編集者),DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes 1-4,IRL Press(1995及び1996)、及びF.M.Ausubel et al.(編集者),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在に至るまでの全ての改訂版を含む)、Ed Harlow and David Lane(編集者)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory,(1988)、及びJ.E.Coligan et al.(編集者)Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons(現在に至るまでの全ての改訂版を含む)などの情報源における文献全体を通じて記載及び説明されている。
【0085】
本明細書に記載の研究において、本発明者らは、プロテオゲノミクスベースのアプローチを使用して、CRC細胞株及びCRC検体からのTSA及びTAA候補を特定した。これらのTSAの大部分は、非エキソン配列(例えば、イントロン配列及び遺伝子間配列)などの正常な組織では発現されない、異常に発現される非変異ゲノム配列に由来した。本明細書で特定された新規のCRC TSA及びTAA候補は、例えば、例えば、CRC T細胞ベースの免疫療法及びワクチンに有用であり得る。
【0086】
したがって、一態様では、本開示は、腫瘍抗原ペプチド(TAP)(又は腫瘍特異的ペプチド)、より具体的には、以下のアミノ酸配列のうちの1つを含むか、又はそれらからなる、CRC TAPなどの単離されたTAPに関する。
【表2】
【0087】
別の態様では、本開示は更に、がん、より具体的にはCRCの治療のための、以下のアミノ酸配列のうちの1つを含むか、又はそれらからなるTAP(例えば、単離されたTAP)の使用に関する。
【表3】
【0088】
一実施形態では、TAPは、以下のアミノ酸配列:配列番号1~23のうちの1つを含むか、又はそれらからなる。一実施形態では、TAPは、以下のアミノ酸配列:配列番号1~17、22、25、27、29、31、33、38、40、41及び46のうちの1つを含むか、又はそれらからなる。更なる実施形態では、TAPは、以下のアミノ酸配列:配列番号1~17、22、及び25のうちの1つを含むか、又はそれらからなる。更なる実施形態では、TAPは、以下のアミノ酸配列:配列番号1~17及び22のうちの1つを含むか、又はそれらからなる。
【0089】
一般に、HLAクラスIに関連して提示される腫瘍抗原ペプチド(TAP)などのペプチドは、長さが約7若しくは8~約15個、又は好ましくは8~14個のアミノ酸残基である。本開示の方法のいくつかの実施形態では、本明細書に定義されるTAP配列を含む、より長いペプチドは、細胞によってプロセシングされる抗原提示細胞(APC)などの細胞に人工的に負荷され、TAPは、APCの表面においてMHCクラスI分子によって提示される。この方法では、15個のアミノ酸残基よりも長いペプチド/ポリペプチドをAPCに負荷することができ、提示のために本明細書に定義される対応するTAPを提供するAPC細胞質中のプロテアーゼによってプロセシングされる。いくつかの実施形態では、本明細書に定義されるTAPを生成するために使用される前駆体ペプチド/ポリペプチドは、例えば、1000、500、400、300、200、150、100、75、50、45、40、35、30、25、20、又は15個以下のアミノ酸である。したがって、本明細書に記載のTAPを使用する全ての方法及びプロセスは、細胞(APC)によるプロセシング後の「最終的な」8~14個のTAPの提示を誘導するための、より長いペプチド又はポリペプチド(天然タンパク質を含む)、すなわち、腫瘍抗原前駆体ペプチド/ポリペプチドの使用を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のTAPは、約8~14、8~13、又は8~12アミノ酸長(例えば、8、9、10、11、12、又は13アミノ酸長)であり、HLAクラスI分子に直接適合するのに十分小さい。一実施形態では、TAPは、20個以下のアミノ酸、好ましくは15個以下のアミノ酸、より好ましくは14個以下のアミノ酸を含む。一実施形態では、TAPは、少なくとも7個のアミノ酸、好ましくは少なくとも8個又はそれ以下のアミノ酸、より好ましくは少なくとも9個のアミノ酸を含む。
【0090】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、TAPの合成類似体を調製するためのペプチド化学において使用される天然に存在するアミノ酸並びに他のアミノ酸(例えば、天然に存在するアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、核酸配列によってコードされていないアミノ酸など)のL異性体及びD異性体の両方を含む。天然に存在するアミノ酸の例は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニンなどである。他のアミノ酸としては、例えば、非遺伝子コード形態のアミノ酸、並びにL-アミノ酸の保存的置換が挙げられる。天然に存在する非遺伝子コードアミノ酸としては、例えば、ベータ-アラニン、3-アミノプロピオン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、アルファ-アミノイソ酪酸(Aib)、4-アミノ-酪酸、N-メチルグリシン(サルコシン)、ヒドロキシプロリン、オルニチン(例えば、L-オルニチン)、シトルリン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、N-メチルイソロイシン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン、2-ナフチルアラニン、ピリジルアラニン、3-ベンゾチエニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、2-フルオロフェニルアラニン、3-フルオロフェニルアラニン、4-フルオロフェニルアラニン、ペニシラミン、1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-カルボン酸、ベータ-2-チエニルアラニン、メチオニンスルホキシド、L-ホモアルギニン(Hoarg)、N-アセチルリジン、2-アミノ酪酸、2-アミノ酪酸、2,4-ジアミノ酪酸(D-若しくはL-)、p-アミノフェニルアラニン、N-メチルバリン、ホモシステイン、ホモセリン(HoSer)、システイン酸、イプシロン-アミノヘキサン酸、デルタ-アミノ吉草酸、又は2,3-ジアミノ酪酸(D-若しくはL-)などが挙げられる。これらのアミノ酸は、生化学/ペプチド化学の分野において周知である。一実施形態では、TAPは、天然に存在するアミノ酸のみ含む。
【0091】
実施形態では、本明細書に記載されるTAPは、本明細書に記載の配列と比較して、機能的に同等のアミノ酸残基の置換を含有する変化した配列を有するペプチドを含む。例えば、配列内の1つ以上のアミノ酸残基は、機能的等価物として作用する類似の極性(類似の物理化学的特性を有する)の別のアミノ酸と置換することができ、サイレント変更をもたらす。配列内のアミノ酸の置換は、アミノ酸が所属するクラスの他のメンバーから選択され得る。例えば、正電荷(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン、及びヒスチジン(並びにホモアルギニン及びオルニチン)が含まれる。無極性(疎水性)アミノ酸には、ロイシン、イソロイシン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、プロリン、トリプトファン、及びメチオニンが含まれる。非電荷極性アミノ酸には、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンが含まれる。負電荷(酸性)アミノ酸には、グルタミン酸及びアスパラギン酸が含まれる。アミノ酸グリシンは、無極性アミノ酸ファミリー又は非電荷(中性)極性アミノ酸ファミリーのいずれかに含まれ得る。アミノ酸のファミリー内で行われた置換は、保存的置換であると一般に理解されている。本明細書に記載のTAPは、あらゆるL-アミノ酸、あらゆるD-アミノ酸、又はL-アミノ酸とD-アミノ酸との混合物を含み得る。一実施形態では、本明細書に記載のTAPは、全てのL-アミノ酸を含む。
【0092】
一実施形態では、配列番号1~23及び25~50の配列のうちの1つを含むか、又はそれらからなるTAPの配列において、T細胞受容体との相互作用に実質的に寄与しないアミノ酸残基は、T細胞の反応性に実質的に影響を与えず、かつ関連するMHCへの結合を排除しない他のアミノ酸で置き換えることによって修飾することができる。
【0093】
TAPはまた、分解を防ぎ、安定性、親和性、及び/又は取り込みを増加させるために、N末端及び/若しくはC末端キャップされてもよく、又は修飾されてもよい。したがって、別の態様では、本開示は、式Z1-X-Z2の修飾されたTAPを提供し、式中、Xは、配列番号1~23及び25~50のアミノ酸配列のうちの1つを含むか、又はそれからなるTAPである。
【0094】
一実施形態では、TAPのアミノ末端残基(すなわち、N末端の遊離アミノ基)は、例えば、部分/化学基(Z1)の共有結合によって、修飾される(例えば、分解に対する保護のために)。Z1は、1~8個の炭素の直鎖又は分枝鎖アルキル基、又はアシル基(R-CO-)であってもよく、式中、Rは、疎水性部分(例えば、アセチル、プロピオニル、ブタニル、イソプロピオニル、若しくはイソ-ブタニル)、又はアロイル基(Ar-CO-)であり、式中、Arは、アリール基である。一実施形態では、アシル基は、C1~C16又はC3~C16アシル基(直鎖又は分枝鎖、飽和又は不飽和)であり、更なる一実施形態では、飽和C1~C6アシル基(直鎖又は分枝鎖)又は不飽和C3~C6アシル基(直鎖又は分枝鎖)、例えば、アセチル基(CH3-CO-、Ac)である。一実施形態では、Z1は存在しない。TAPのカルボキシ末端残基(すなわち、TAPのC末端の遊離カルボキシ基)は、例えば、アミド化(NH2基によるOH基の置き換え)によって修飾されてもよく(例えば、分解に対する保護のために)、したがって、そのような場合、Z2はNH2基である。一実施形態では、Z2は、ヒドロキサメート基、ニトリル基、アミド(一級、二級、又は三級)基、メチルアミン、イソ-ブチルアミン、イソ-バレリルアミン、若しくはシクロヘキシルアミンなどの1~10個の炭素の脂肪族アミン、アニリン、ナフチルアミン、ベンジルアミン、シンナミルアミン、若しくはフェニルエチルアミンなどの芳香族若しくはアリールアルキルアミン、アルコール、又はCH2OHであり得る。一実施形態では、Z2は存在しない。一実施形態では、TAPは、配列番号1~24及び26~50のアミノ酸配列のうちの1つを含む。一実施形態では、TAPは、配列番号1~24及び26~50のアミノ酸配列のうちの1つからなり、すなわち、Z1及びZ2は存在しない。
【0095】
別の態様では、本開示は、配列番号6の配列を含むか、又はそれらからなる、HLA-A*02:01分子に結合する、TAPを提供する。HLAアレルが乱雑性(promiscuity)を示すため(特定のHLAアレルが類似のエピトープを提示する)、上の特定されたTAPは、HLA-A*02:05、HLA-A*02:06及び/又はHLA-A*02:07分子に更に結合し得る。
【0096】
別の態様では、本開示は、配列番号1、11、14、38、45若しくは46、好ましくは配列番号1、11、若しくは14の配列を含むか、又はそれらからなる、HLA-A*03:01分子に結合する、TAPを提供する。HLAアレルが乱雑性を示すため(特定のHLAアレルが類似のエピトープを提示する)、上の特定されたTAPは、HLA-A*03:02、HLA-A*11:01又はHLA-A*30:01分子に更に結合し得る。
【0097】
別の態様では、本開示は、配列番号3、5、7、16、23、31、32、33若しくは34、好ましくは配列番号3、5、7、16、若しくは23の配列を含むか、又はそれらからなる、HLA-A*03:02分子に結合する、TAPを提供する。HLAアレルが乱雑性を示すため(特定のHLAアレルが類似のエピトープを提示する)、上の特定されたTAPは、HLA-A*03:01、HLA-A*11:01又はHLA-A*30:01分子に更に結合し得る。
【0098】
別の態様では、本開示は、配列番号9、18、33若しくは34、好ましくは配列番号9若しくは18の配列を含むか、又はそれらからなる、HLA-A*11:01分子に結合する、TAPを提供する。HLAアレルが乱雑性を示すため(特定のHLAアレルが類似のエピトープを提示する)、上の特定されたTAPは、HLA-A*03:01、HLA-A*03:02、HLA-A*31:01及び/又はHLA-A*68:01分子に更に結合し得る。
【0099】
別の態様では、本開示は、配列番号29の配列を含むか、又はそれらからなる、HLA-A*23:01分子に結合する、TAPを提供する。HLAアレルが乱雑性を示すため(特定のHLAアレルが類似のエピトープを提示する)、上の特定されたTAPは、HLA-A*24:02分子に更に結合し得る。
【0100】
別の態様では、本開示は、配列番号26、27若しくは29の配列を含むか、又はそれらからなる、HLA-A*24:02分子に結合する、TAPを提供する。HLAアレルが乱雑性を示すため(特定のHLAアレルが類似のエピトープを提示する)、上の特定されたTAPは、HLA-A*23:01分子に更に結合し得る。
【0101】
別の態様では、本開示は、配列番号19、20若しくは23の配列を含むか、又はそれらからなる、HLA-A*30:01分子に結合する、TAPを提供する。HLAアレルが乱雑性を示すため(特定のHLAアレルが類似のエピトープを提示する)、上の特定されたTAPは、HLA-A*30:02及び/又はHLA-B*15:02分子に更に結合し得る。
【0102】
別の態様では、本開示は、配列番号8、37若しくは39、好ましくは配列番号8の配列を含むか、又はそれらからなる、HLA-A*32:01分子に結合する、TAPを提供する。HLAアレルが乱雑性を示すため(特定のHLAアレルが類似のエピトープを提示する)、上の特定されたTAPは、HLA-B*57:01及び/又はHLA-B*58:01分子に更に結合し得る。
【0103】
別の態様では、本開示は、配列番号2、21、24若しくは50、好ましくは配列番号2若しくは21の配列を含むか、又はそれらからなる、HLA-B*07:02分子に結合する、TAPを提供する。HLAアレルが乱雑性を示すため(特定のHLAアレルが類似のエピトープを提示する)、上の特定されたTAPは、HLA-B*35:02、HLA-B*35:03、HLA-B*55:01及び/又はHLA-B*56:01分子に更に結合し得る。
【0104】
別の態様では、本開示は、配列番号13若しくは48、好ましくは配列番号13の配列を含むか、又はそれらからなる、HLA-B*13:02分子に結合する、TAPを提供する。
【0105】
別の態様では、本開示は、配列番号25の配列を含むか、又はそれらからなる、HLA-B*18:01分子に結合する、TAPを提供する。HLAアレルが乱雑性を示すため(特定のHLAアレルが類似のエピトープを提示する)、上の特定されたTAPは、HLA-B*40:01、HLA-B*44:02、HLA-B*44:03及び/又はHLA-B*45:01分子に更に結合し得る。
【0106】
別の態様では、本開示は、配列番号4の配列を含むか、又はそれらからなる、HLA-B*27:05分子に結合する、TAPを提供する。HLAアレルが乱雑性を示すため(特定のHLAアレルが類似のエピトープを提示する)、上の特定されたTAPは、HLA-B*27:02に更に結合し得る。
【0107】
別の態様では、本開示は、配列番号10、12、15、若しくは43、好ましくは配列番号10、12、若しくは15の配列を含むか、又はそれらからなる、HLA-B*52:01分子に結合する、TAPを提供する。HLAアレルが乱雑性を示すため(特定のHLAアレルが類似のエピトープを提示する)、上の特定されたTAPは、HLA-B*51:01に更に結合し得る。
【0108】
別の態様では、本開示は、配列番号17若しくは44、好ましくは配列番号17の配列を含むか、又はそれらからなる、HLA-C*06:02分子に結合する、TAPを提供する。HLAアレルが乱雑性を示すため(特定のHLAアレルが類似のエピトープを提示する)、上の特定されたTAPは、HLA-B*27:02、HLA-C*07:01及び/又はHLA-C*07:02分子に更に結合し得る。
【0109】
別の態様では、本開示は、配列番号47若しくは49の配列を含むか、又はそれらからなる、HLA-C*12:02分子に結合する、TAPを提供する。HLAアレルが乱雑性を示すため(特定のHLAアレルが類似のエピトープを提示する)、上の特定されたTAPは、HLA-B*46:01、HLA-C*03:02、HLA-C*03:03、HLA-C*03:04、HLA-C*08:01、HLA-C*12:03、HLA-C*15:02、及び/又はHLA-C*16:01分子に更に結合し得る。
【0110】
一実施形態では、TAPは、ゲノムの非タンパク質コード領域に位置する配列によってコードされる。一実施形態では、TAPは、非翻訳転写領域(UTR)、すなわち、3’-UTR又は5’-UTR領域に位置する配列によってコードされる。別の実施形態では、TAPは、イントロンに位置する配列によってコードされる。別の実施形態では、TAPは、遺伝子間領域に位置する配列によってコードされる。別の実施形態では、TAPは、エキソンに位置する配列によってコードされ、フレームシフトから生じる。
【0111】
本開示のTAPは、TAP(組換え発現)をコードする核酸を含む宿主細胞における発現によって、又は化学合成(例えば、固相ペプチド合成)によって生成され得る。ペプチドは、当該技術分野で周知の手動及び/又は自動化固相手順によって容易に合成することができる。好適な合成は、例えば、「T-boc」又は「Fmoc」手順を利用することによって行うことができる。固相合成のための技術及び手順は、例えば、Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach,E.Atherton and R.C.Sheppard,IRL,Oxford University Press,1989に記載されている。代替的に、MiHAペプチドは、例えば、Liu et al.,Tetrahedron Lett.37:933-936,1996、Baca et al.,J.Am.Chem.Soc.117:1881-1887,1995、Tam et al.,Int.J.Peptide Protein Res.45:209-216,1995、Schnolzer and Kent,Science 256:221-225,1992、Liu and Tam,J.Am.Chem.Soc.116:4149-4153,1994、Liu and Tam,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:6584-6588,1994、及びYamashiro and Li,Int.J.Peptide Protein Res.31:322-334,1988)に記載されるように、セグメント凝縮によって調製されてもよい。TAPの合成に有用な他の方法は、Nakagawa et al.,J.Am.Chem.Soc.107:7087-7092,1985に記載されている。一実施形態では、TAPは、化学的に合成される(合成ペプチド)。本開示の別の実施形態は、天然に存在しないペプチドに関するものであり、当該ペプチドは、本明細書に定義されるアミノ酸配列からなるか、又は本質的になり、薬学的に許容される塩として合成的に生成されている(例えば、合成されている)。本開示によるTAPの塩は、インビボで生成されるペプチドが塩を有しないので、インビボでのそれらの状態(複数可)においてペプチドとは実質的に異なる。非天然塩形態のペプチドは、具体的には、ペプチド、例えば、本明細書に開示されるペプチドワクチンを含む薬学的組成物の文脈において、ペプチドの溶解性を調節することができる。好ましくは、塩は、ペプチドの薬学的に許容される塩である。
【0112】
一実施形態では、本明細書に記載のTAPは、単離されているか、又は実質的に純粋である。ペプチド又は核酸などの化合物は、分子の天然環境に存在する成分又は天然に存在する供給源の高分子(例えば、他の核酸、タンパク質、脂質、糖などを含む)から分離されるとき、「単離される」か、又は「実質的に純粋で」ある。典型的に、化合物は、試料中の総材料の重量当たり、少なくとも60%、より一般には、75%、80%、又は85%、好ましくは90%より多く、及びより好ましくは95%より多くであるときに、実質的に純粋である。したがって、例えば、組換え技術によって化学的に合成されるか又は産生されるポリペプチドは、一般に、その天然に関連する成分、例えば、その供給源の高分子の成分を実質的に含まないであろう。核酸分子は、核酸が由来する有機体の天然に存在するゲノムにおいて正常に連続しているコード配列と直後に連続しない(すなわち、共有結合されていない)ときに、実質的に純粋である。実質的に純粋な化合物は、例えば、天然源からの抽出によるか、ペプチド化合物をコードする組換え核酸分子の発現によるか、又は化学合成によって得られ得る。純度は、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、HPLCなどの任意の適切な方法を用いて測定することができる。一実施形態では、TAPは、溶液中にある。別の実施形態では、TAPは、固形形態であり、例えば、凍結乾燥されている。
【0113】
一実施形態では、TAPは、ゲノムの非タンパク質コード領域に位置する配列によってコードされる。一実施形態では、TAPは、遺伝子間領域に位置する配列によってコードされる。別の実施形態では、TAPは、非コードRNA(ncRNA)によってコードされる。
【0114】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるTAPのうちの少なくとも1つを含む合成の長いペプチド(SLP)を更に提供する。一実施形態では、SLPは、少なくとも2個のTAPを含み、TAPのうちの少なくとも1個は、本明細書に記載のTAPである。一実施形態では、SLPは、本明細書に記載されるTAPのうちの少なくとも2、3、4、又は5個を含む。一実施形態では、SLPは、SLPを安定化し、かつ/又はMHC分子によるプロセシング及び提示を改善する配列又はドメイン、例えば、カテプシンなどの細胞プロテアーゼによって切断可能なモチーフを含む配列など、SLPに所望の特性を付与する1つ以上のアミノ酸配列又はドメインに連結された、本明細書に記載のTAPのうちの少なくとも1つを含む。別の実施形態では、SLPは、本明細書に記載のTAPのうちの少なくとも1つと、MHCクラスII分子に結合するTAPと、を含む。TAPは、互いに直接的に接続し得るか、又は短いアミノ酸リンカーなどのリンカーを介して間接的に接続し得る。実施形態では、リンカーは、約4~約20個のアミノ酸、又は約4~約15個のアミノ酸、例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15個のアミノ酸を含む。一実施形態では、リンカーは、グリシン残基、セリン残基、プロリン残基、スレオニン残基、又はそれらの混合物を含む。一実施形態では、SLPは、200、150、100、90、80、70、60、又は50個以下のアミノ酸の長さを有する。更なる実施形態では、SLPは、20~50個、45個又は40個のアミノ酸、例えば、20個又は25個のアミノ酸~30個、35個又は40個のアミノ酸の長さを有する。本明細書で使用される場合、「合成」とは、例えば、組換え技術によって、又は化学合成を使用して生成される、その天然源から単離されていないペプチド又は核分子を指す。
【0115】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載のTAP又は腫瘍抗原前駆体ペプチド又はSLPをコードする(例えば、単離された)核酸を更に提供する。一実施形態では、核酸は、約21ヌクレオチド~約45ヌクレオチド、約24~約45ヌクレオチド、例えば、24、27、30、33、36、39、42又は45ヌクレオチドを含む。
【0116】
一実施形態では、本開示のTAPをコードする核酸(DNA、RNA)は、配列番号51~73及び75~100、又は配列番号51~67、72、75、77、79、81、83、88、90、91及び96、又は配列番号51~67、72及び75(例えば、配列番号51~67及び72)に定義される配列、又は対応するRNA配列(すなわち、チミン核酸塩基(T)がウラシル核酸塩基(U)によって置き換えられている)のうちのいずれか1つを含む。一実施形態では、TAPをコードする核酸は、mRNA分子である。一実施形態では、核酸は、溶液中にある。別の実施形態では、核酸は、固形形態であり、例えば、凍結乾燥されている。
【0117】
本開示の核酸は、本開示のTAP又はSLPの組換え発現のために使用することができ、宿主細胞にトランスフェクトされ得るベクター又はプラスミド、例えば、クローニングベクター又は発現ベクター内に含まれ得る。一実施形態では、本開示は、本開示のTAPをコードする核酸配列を含むクローニングベクター、発現ベクター、若しくはウイルスベクター、又はプラスミドを提供する。代替的に、本開示のTAPをコードする核酸は、宿主細胞のゲノムに組み込まれ得る。いずれにしても、宿主細胞は、核酸によってコードされるTAP又はタンパク質を発現する。本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、特定の対象細胞のみならず、そのような細胞の子孫又は潜在的子孫を指す。宿主細胞は、本明細書に記載されるTAPを発現することができる任意の原核細胞(例えば、E.coli)又は真核細胞(例えば、昆虫細胞、酵母細胞、植物細胞、又は哺乳動物細胞)であり得る。ベクター又はプラスミドは、挿入されたコード配列の転写及び翻訳に必要な要素を含有し、耐性遺伝子、クローニング部位などの他の構成要素を含有し得る。当業者に周知の方法を使用して、ペプチド又はポリペプチドをコードする配列、及びそれに作動可能に連結された適切な転写及び翻訳制御/調節要素を含む発現ベクターを構築してもよい。これらの方法には、インビトロでの組換えDNA技術、合成技術、及びインビボでの遺伝子組換えが含まれる。そのような技術は、Sambrook.et al.(1989)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Plainview,N.Y.、及びAusubel,F.M.et al.(1989)Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,N.Y.に記載されている。「作動可能に連結されている」とは、成分、特にヌクレオチド配列の正常な機能を行うことができるようにする成分の並列配置を指す。したがって、調節配列に作動可能に連結されたコード配列は、コード配列が調節配列の調節制御、すなわち、転写及び/又は翻訳制御下で発現され得る、ヌクレオチド配列の構成を指す。本明細書で使用される場合、「調節/制御領域」又は「調節/制御配列」とは、コード核酸の発現の調整にかかわる非コードヌクレオチド配列を指す。したがって、調節領域という用語は、プロモーター配列、調節タンパク質結合部位、上流活性化因子配列などを含む。ベクター(例えば、発現ベクター)は、それぞれの宿主細胞における効率的な遺伝子転写及び翻訳のための、プロモーター配列(例えば、CMV、PGK、及びEF-1αプロモーター)、リボソーム認識及び結合TATAボックス、並びに3’UTR AAUAAA転写終結配列などの必要な5’上流及び3’下流の調節要素を有し得る。他の好適なプロモーターとしては、シミアンビムス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーター、HIV LTRプロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、EBV最初期プロモーター、及びRous肉腫ビムスプロモーターの構成的プロモーターが挙げられる。ヒト遺伝子プロモーターも使用され得、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、及びクレアチンキナーゼプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、誘導性プロモーターは、TAPを発現するベクターの一部としても企図される。これは、目的のポリヌクレオチド配列の発現をオンにする、又は発現をオフにすることができる分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例としては、メタロチオニンプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、又はテトラサイクリンプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。ベクターの例としては、プラスミド、自律複製配列、及び転位要素である。追加の例示的なベクターとしては、プラスミド、ファージミド、コスミド、人工染色体(例えば、酵母人工染色体(YAC))、細菌人工染色体(BAC)、又はPl由来人工染色体(PAC)、バクテリオファージ(例えば、ラムダファージ又はM13ファージ)、及び動物ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。ベクターとして有用な動物ウイルスのカテゴリーの例としては、限定されないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、及びパポーバウイルス(例えば、SV40)が挙げられる。発現ベクターの例は、哺乳動物細胞における発現のためのLenti-X(商標)Bicistronic Expression System(Neo)ベクター(Contech)、pClneoベクター(Promega);哺乳動物細胞におけるレンチウイルス媒介性遺伝子導入及び発現のためのpLenti4/V5-DEST(商標)、pLenti6/V5-DEST(商標)、及びpLenti6.2N5-GW/lacZ(Invitrogen)である。本明細書に開示されるTAPのコード配列は、哺乳動物細胞におけるTAPの発現のためのそのような発現ベクターにライゲーションすることができる。
【0118】
特定の実施形態では、本開示のTAPをコードする核酸は、ウイルスベクターにおいて提供される。ウイルスベクターは、アデノウイルス、ワクチニアウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、又はフォーミーウイルスに由来するものであり得る。本明細書で使用される場合、「ウイルスベクター」という用語は、ウイルス起源の少なくとも1つの要素を含み、ウイルスベクター粒子にパッケージングされる能力を有する核酸ベクター構築物を指す。ウイルスベクターは、非必須ウイルス遺伝子の代わりに、本明細書に記載の様々なタンパク質のコード配列を含有することができる。別の実施形態では、本開示のTAPをコードする核酸は、自己増幅又は自己複製RNA(srRNA)ベクターにおいて提供される。srRNAは、構造タンパク質が除去され、目的の異種遺伝子で置き換えられたプラス鎖RNAウイルスに由来する。srRNAは、単一サイクルのウイルスレプリコン粒子(VRP)を作製するために、トランスで構造タンパク質を提供する治療態様の技術を有するフラビウイルス、ノダムラウイルス、ニドウイルス、及びアルファウイルスに由来することに成功している(例えば、Aliahmad et al.Next generation self-replicating RNA vectors for vaccines and immunotherapies.Cancer Gene Ther(2022).https://doi.org/10.1038/s41417-022-00435-8を参照されたい)。ベクター及び/又は粒子は、インビトロ又はインビボのいずれかで、DNA、RNA、又は他の核酸を細胞内に移動する目的で利用することができる。多数の形態のウイルスベクターが当該技術分野で既知である。
【0119】
実施形態では、本開示のTAPをコードする核酸(DNA、RNA)は、脂質小胞(例えば、リポソーム)又は脂質ナノ粒子(LNP)などの小胞若しくはナノ粒子、又は任意の他の好適なビヒクル内に含まれる。したがって、別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるTAPのうちの1つ以上をコードする、mRNAなどの核酸を含む、脂質小胞又はナノ粒子などの小胞又はナノ粒子を提供する。
【0120】
本明細書で使用されるリポソームという用語は、その通常の意味に従って、内部水性媒体を封入するリン脂質の二重層又は任意の同様の両親媒性脂質(例えば、スフィンゴ脂質)から構成される微細な脂質小胞を指す。
【0121】
「脂質ナノ粒子」という用語は、リポソームと同様の内部水性媒体を取り囲む1つ以上の脂質二重層環、又は非水性コア内の分子(例えば、核酸)を封入するミセル様構造を含み得るリポソーム様構造を指す。脂質ナノ粒子は、典型的には、イオン化可能なカチオン性脂質などのカチオン性脂質を含有する。LNPに使用され得るカチオン性脂質の例としては、DOTMA、DOSPA、DOTAP、ePC、DLin-MC3-DMA、C12-200、ALC-0315、cKK-E12、脂質H(SM-102)、OF-Deg-Lin、A2-Iso5-2DC18、306Oi10、BAME-O16B、TT3、9A1P9、FTT5、COATSOME(登録商標)SS-E、COATSOME(登録商標)SS-EC、COATSOME(登録商標)SS-OC、及びCOATSOME(登録商標)SS-OPが挙げられる(例えば、Hou et al.,Nature Reviews Materials,volume 6,pages 1078-1094(2021)、Tenchov et al.,ACS Nano,15,16982-17015(2021)を参照されたい。
【0122】
リポソーム及び脂質ナノ粒子は、典型的には、脂質、脂質様材料、並びに安定性、送達有効性、耐容性、及び生体内分布などのリポソーム又はナノ粒子の特性を改善することができるポリマーなどの他の脂質成分を含む。これらには、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)などのリン脂質(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、及びホスファチジルグリセロール)並びにDOPE、ステロール(コレステロール及びコレステロール誘導体など)、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(PEG2000-DMG)及び1,2-ジステアロイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(PEG2000-DSG)などのPEG化脂質(PEG脂質)が含まれる。
【0123】
一実施形態では、本開示による脂質ナノ粒子は、イオン化可能なカチオン性脂質などの1つ以上のカチオン性脂質を含む。イオン化可能なカチオン性脂質の例としては、COATSOME(登録商標)SS-E、COATSOME(登録商標)SS-EC、COATSOME(登録商標)SS-OC、及びCOATSOME(登録商標)SS-OPの商標名で市販されているイオン化可能なカチオン性脂質を包含する、PCT公開第2017/061150号及び同第2019/188867号に列挙されているものが挙げられる。
【0124】
TAPのうちの1つ以上をコードする核酸(例えば、mRNA)は、例えば、安定性を増加させ、かつ/又は免疫原性を低減するように修飾され得る。例えば、5’末端は、(例えば、米国特許第10519189号及びUS10494399に記載されるように)分子を安定化させ、免疫原性を低下させるためにキャップされ得る。mRNAの1つ以上のヌクレオシドは、分子の安定性を増加させるか、又は先天性免疫系による分子の認識を低減するかのいずれかのために、1-メチル偽ウリジンで修飾又は置換されてもよい。修飾ヌクレオシドの形態は、US9371511に記載されている。mRNAに対して行われ得る他のタイプの修飾としては、抗リバースキャップ類似体(ARCA)、5′-メチル-シチジン三リン酸塩(m5CTP)、N6-メチル-アデノシン-5′-三リン酸塩(m6ATP)、2-チオ-ウリジン三リン酸塩(s2UTP)、プソイドウリジン三リン酸塩、N1メチルプソイドウリジン三リン酸塩、又は5-メトキシウリジン三リン酸塩(5moUTP)の組み込みが挙げられる。mRNAはまた、5’及び/又は3’非翻訳領域(UTR)並びにポリアデニル化(ポリA)尾部への追加の修飾を含み得る(例えば、Kim et al.,Molecular & cellular toxicology vol.18,1(2022):1-8を参照されたい。)TAPをコードする核酸(例えば、mRNA)に対するこれらの修飾及び他の修飾は全て本開示に包含される。
【0125】
別の態様では、本開示は、配列番号配列番号1~23及び25~50、好ましくは配列番号1~23、例えば、配列番号1~17及び22のTAPのうちの1つ以上を含む(すなわち、提示するか、又は結合される)MHCクラスI分子を提供する。
【0126】
一実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A2分子であり、更なる実施形態では、HLA-A*02:01分子である。一実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A3分子であり、更なる実施形態では、HLA-A*03:01又はHLA-A*03:02分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A11分子であり、更なる実施形態では、HLA-A*11:01分子である。一実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A23分子であり、更なる実施形態では、HLA-A*23:01分子である。一実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A24分子であり、更なる実施形態では、HLA-A*24:02分子である。一実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A30分子であり、更なる実施形態では、HLA-A*30:01分子である。一実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A32分子であり、更なる実施形態では、HLA-A*32:01分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-B07分子であり、更なる実施形態では、HLA-B*07:02分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-B13分子であり、更なる実施形態では、HLA-B*13:02分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-B18分子であり、更なる実施形態では、HLA-B*18:01分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-B27分子であり、更なる実施形態では、HLA-B*27:05分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-B52分子であり、更なる実施形態では、HLA-B*52:01分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-C06分子であり、更なる実施形態では、HLA-C*06:02分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-C04分子であり、更なる実施形態では、HLA-C*04:01分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-C12分子であり、更なる実施形態では、HLA-C*12:02分子である。
【0127】
一実施形態では、TAP(例えば、配列番号配列番号1~23及び25~50、好ましくは、配列番号1~23)は、MHCクラスI分子に非共有結合される(すなわち、TAPは、MHCクラスI分子のペプチド結合溝/ポケットに負荷されるか、又は非共有結合される)。別の実施形態では、TAPは、MHCクラスI分子(アルファ鎖)に共有結合/結合される。そのような構築物において、TAP及びMHCクラスI分子(アルファ鎖)は、典型的には短い(例えば、5~20個の残基、好ましくは約8~12個、例えば、10個)可撓性リンカー又はスペーサー(例えば、ポリグリシンリンカー)を有する、合成融合タンパク質として産生される。別の態様では、本開示は、MHCクラスI分子(アルファ鎖)に融合された本明細書に定義されるTAPを含む融合タンパク質をコードする核酸を提供する。一実施形態では、MHCクラスI分子(アルファ鎖)-ペプチド複合体は、多量体化される。したがって、別の態様では、本開示は、本明細書に記載のTAPで負荷された(共有的に又は非共有的に)MHCクラスI分子の多量体を提供する。そのような多量体は、多量体の検出を可能にするタグ、例えば蛍光タグに付着され得る。MHC二量体、四量体、五量体、八量体などを含む、MHC多量体の産生のための多数の戦略が開発されている(Bakker and Schumacher,Current Opinion in Immunology 2005,17:428-433に概説されている)。MHC多量体は、例えば、抗原特異的T細胞の検出及び精製に有用である。したがって、別の態様では、本開示は、本明細書に定義されるTAPに特異的なCD8+Tリンパ球を検出又は精製(単離、濃縮)するための方法を提供し、TAPで負荷された(共有的に又は非共有的に)MHCクラスI分子の多量体と細胞集団を接触させることと、MHCクラスI多量体によって結合されたCD8+Tリンパ球を検出又は単離することと、を含む。MHCクラスI多量体によって結合されたCD8+Tリンパ球は、既知の方法、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)又は磁気活性化細胞選別(MACS)を使用して単離され得る。
【0128】
また別の態様では、本開示は、細胞(例えば、宿主細胞)を提供し、一実施形態では、本明細書に記載の核酸、ベクター、又は本開示のプラスミド(すなわち、1つ以上のTAPをコードする核酸又はベクター)を含む単離された細胞を提供する。別の態様では、本開示は、細胞であって、その細胞表面において、本開示によるTAPに結合した又はそれを提示するMHCクラスI分子(例えば、上に開示されたアレルのうちの1つのMHCクラスI分子)を発現する、細胞を提供する。一実施形態では、宿主細胞は、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞、細胞株又は不死化細胞である。別の実施形態では、細胞は、抗原提示細胞(APC)である。一実施形態では、宿主細胞は、初代細胞、細胞株又は不死化細胞である。別の実施形態では、細胞は、抗原提示細胞(APC)である。核酸及びベクターは、従来の形質転換又はトランスフェクション技術を介して細胞に導入することができる。「形質転換」及び「トランスフェクション」という用語は、リン酸カルシウム又は塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔、マイクロ注入、及びウイルス媒介性トランスフェクションを含む、外来核酸を宿主細胞に導入するための技術を指す。宿主細胞を形質転換又はトランスフェクションするための好適な方法は、例えば、Sambrook et al.(上記)、及び他の実験室マニュアルに見出すことができる。インビボで哺乳動物細胞に核酸を導入する方法も既知であり、遺伝子治療のために本開示のベクター又はプラスミドを対象に送達するために使用され得る。
【0129】
APCなどの細胞は、当該技術分野で既知の様々な方法を使用して、1つ以上のTAPで負荷され得る。本明細書で使用される場合、TAPで「細胞を負荷する」とは、TAPをコードするRNA若しくはDNA又はTAPが細胞にトランスフェクトされること、あるいは代替的に、APCがTAPをコードする核酸で形質転換されること、を意味する。また、細胞を、細胞表面(例えば、ペプチドでパルスされた細胞)に存在するMHCクラスI分子に直接結合することができる外因性TAPと接触させることによって、細胞が負荷され得る。TAPはまた、MHCクラスI分子によってその提示を促進するドメイン又はモチーフ(例えば、小胞体(ER)回収シグナル、C末端Lys-Asp-Glu-Leu配列(Wang et al.,Eur J Immunol.2004 Dec;34(12):3582-94を参照されたい)に融合され得る。
【0130】
別の態様では、本開示は、本明細書に定義されるTAP(又は当該ペプチド(複数可)をコードする核酸)のうちのいずれか1つ又は任意の組み合わせを含む、組成物又はペプチドの組み合わせ/プールを提供する。一実施形態では、組成物は、本明細書に定義されるTAPの任意の組み合わせ(2、3、4、5、6、7、8、9、10個、若しくはそれ以上のTAPの任意の組み合わせ)、又は当該TAPをコードする核酸の任意の組み合わせを含む。本明細書に定義されるTAPの任意の組み合わせ/部分的組み合わせを含む組成物が本開示に包含される。別の実施形態では、組み合わせ又はプールは、1つ以上の既知の腫瘍抗原を含んでもよい。
【0131】
したがって、別の態様では、本開示は、本明細書に定義されるTAP又はSLP(複数可)(例えば、配列番号1~23及び25~50、好ましくは配列番号1~23、例えば、配列番号1~17、及び22の配列を含むか、又はそれらからなる)のうちのいずれか1つ又は任意の組み合わせと、MHCクラスI分子(例えば、上に開示されたアレルのうちの1つのMHCクラスI分子)を発現する細胞と、を含む、組成物を提供する。本開示において使用するためのAPCは、特定の型の細胞に限定されるものではなく、CD8+Tリンパ球によって認識されるように、それらの細胞表面上にタンパク質性抗原を提示することが知られている、樹状細胞(DC)、ランゲルハンス細胞、マクロファージ、及びB細胞などのプロフェッショナルAPCを含む。例えば、APCは、末梢血単球からDCを誘導し、次いで、インビトロ、エクスビボ、又はインビボのいずれかで、TAPに接触させる(刺激する)ことによって得ることができる。APCはまた、インビボでTAPを提示するように活性化され得(本開示のTAPのうちの1つ以上が対象に投与される)、TAPを提示するAPCは、対象の体内で誘導される。「APCを誘導する」又は「APCを刺激する」という語句は、細胞を、1つ以上のTAP又はTAPをコードする核酸と接触させるか又はそれらを負荷し、その結果、MHCクラスI分子によって細胞の表面においてTAPが提示されることを含む。本明細書に記載されるように、本開示によると、TAPは、例えば、TAPの配列を含むより長いペプチド/ポリペプチド(天然タンパク質を含む)を使用して間接的に負荷され得、次いで、APCの内部でプロセシングされて(例えば、プロテアーゼによって)、細胞の表面にTAP/MHCクラスI複合体を生成する。APCをTAPで負荷し、APCにTAPを提示させた後、APCをワクチンとして対象に投与することができる。例えば、エクスビボ投与は、(a)第1の対象からAPCを採取するステップと、(b)ステップ(a)のAPCをTAPと接触させて/を負荷して、APCの表面においてMHCクラスI/TAP複合体を形成するステップと、(c)治療を必要とする第2の対象に、ペプチド負荷APCを投与するステップと、を含むことができる。
【0132】
第1の対象及び第2の対象は、同じ対象(例えば、自己ワクチン)であってもよく、又は異なる対象(例えば、同種ワクチン)であってもよい。代替的に、本開示によると、抗原提示細胞を誘導するための組成物(例えば、薬学的組成物)を製造するための本明細書に記載のTAP(又はその組み合わせ)の使用が提供される。加えて、本開示は、抗原提示細胞を誘導するための薬学的組成物を製造するための方法又はプロセスを提供し、本方法又はプロセスが、TAP、又はその組み合わせを薬学的に許容可能な担体と混合又は配合するステップを含む。本明細書に定義されるTAPのうちのいずれか1つ又は任意の組み合わせで負荷されたMHCクラスI分子(例えば、上記のHLA分子のうちのいずれか)を発現するAPCなどの細胞は、CD8+Tリンパ球、例えば、自己CD8+Tリンパ球を刺激/増殖するために使用され得る。したがって、別の態様では、本開示は、本明細書に定義されるTAP(又はそれをコードする核酸若しくはベクター)、MHCクラスI分子を発現する細胞、及びTリンパ球、より具体的にはCD8+Tリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球を含む細胞集団)、のうちのいずれか1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む組成物を提供する。
【0133】
一実施形態では、組成物は、緩衝液、賦形剤、担体、希釈剤、及び/又は培地(例えば、培養培地)を更に含む。更なる実施形態では、緩衝液、賦形剤、担体、希釈剤、及び/又は培地は、薬学的に許容される緩衝液(複数可)、賦形剤(複数可)、担体(複数可)、希釈剤(複数可)及び/又は培地(複数可)である。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される緩衝液、賦形剤、担体、希釈剤、及び/又は培地」は、生理学的に適合性であり、有効成分(複数可)の生物活性の有効性を妨げず、かつ対象に毒性でない、任意及び全ての溶媒、緩衝液、結合剤、潤滑剤、充填剤、増粘剤、崩壊剤、可塑剤、コーティング、バリア層製剤、潤滑剤、安定化剤、放出遅延剤、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤などが含まれる。医薬活性物質のためのそのような培地及び薬剤の使用は、当該技術分野で周知である(Rowe et al.,Handbook of pharmaceutical excipients,2003,4th edition,Pharmaceutical Press,London UK)。任意の従来の培地又は薬剤が活性化合物(ペプチド、細胞)と不適合である限りを除いて、本開示の組成物におけるそれらの使用が企図される。一実施形態では、緩衝液、賦形剤、担体、及び/又は培地は、天然に存在しない緩衝液、賦形剤、担体、及び/又は培地である。一実施形態では、本明細書に定義されるTAP、又は当該1つ以上のTAPをコードする核酸(例えば、mRNA)のうちの1つ以上は、脂質小胞若しくはリポソーム、例えば、カチオン性脂質小胞若しくはリポソームなどの小胞内(例えば、Vitor MT et al.,Recent Pat Drug Deliv Formul.2013 Aug;7(2):99-110を参照されたい)又は他の好適な担体に含まれるか、又はそれらと複合体化される。
【0134】
別の態様では、本開示は、本明細書に定義されるTAP又はSLP(複数可)(例えば、配列番号1~23及び25~50、好ましくは配列番号1~23、例えば、配列番号1~17及び22の配列を含むか、又はそれらからなる)(又は当該ペプチド(複数可)若しくはSLP(複数可)をコードする核酸(複数可))のうちのいずれか1つのうちの多くのうちの1つ、又は任意の組み合わせと、緩衝液、賦形剤、担体、希釈剤、及び/又は培地と、を含む組成物を提供する。細胞(例えば、APC、Tリンパ球)を含む組成物について、組成物は、生細胞の維持を可能にする好適な培地を含む。そのような培地の代表的な例としては、生理食塩水、Earlの緩衝塩類溶液(Life Technologies(登録商標))、又はPlasmaLyte(登録商標)(Baxter International(登録商標))が挙げられる。一実施形態では、組成物(例えば、薬学的組成物)は、「免疫原性組成物」、「ワクチン組成物」又は「ワクチン」である。本明細書で使用される場合、「免疫原性組成物」、「ワクチン組成物」、又は「ワクチン」という用語は、1つ以上のTAP又はワクチンベクターを含み、対象に投与された場合、その中に存在する1つ以上のTAPに対して免疫応答を誘発することができる組成物又は配合物を指す。哺乳動物における免疫応答を誘導するためのワクチン又はワクチンベクターの使用は、ワクチン分野で既知の任意の従来の経路によって、例えば、粘膜(例えば、眼、鼻腔内、肺、経口、胃、腸、直腸、膣、又は尿路)表面を介して、非経口(例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、又は腹腔内)経路を介して、又は局所投与(例えば、パッチなどの経皮送達システムを介して)によって投与されるワクチン又はワクチンベクターを含む。一実施形態では、TAP(又はその組み合わせ)は、TAP(複数可)の免疫原性を増加させるために担体タンパク質にコンジュゲートされる(コンジュゲートワクチン)。したがって、本開示は、TAP(若しくはその組み合わせ)又はTAPをコードする核酸(若しくはその組み合わせ)と、担体タンパク質と、を含む組成物(コンジュゲート)を提供する。例えば、TAP(複数可)又は核酸(複数可)は、Toll様受容体(TLR)リガンド(例えば、Zom et al.,Adv Immunol.2012,114:177-201を参照されたい)又はポリマー/デンドリマー(例えば、Liu et al.,Biomacromolecules.2013 Aug 12;14(8):2798-806を参照されたい)にコンジュゲート又は複合体化されてもよい。一実施形態では、免疫原性組成物又はワクチンは、アジュバントを更に含む。「アジュバント」とは、抗原(本開示によるTAP、核酸、及び/又は細胞)などの免疫原性剤に添加された場合、混合物への曝露時に、宿主において薬剤に対する免疫応答を非特異的に増強又は強化する物質を指す。現在ワクチンの分野で使用されているアジュバントの例としては、(1)鉱物塩(リン酸アルミニウム及び水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩、リン酸カルシウムゲル)、スクアレン、(2)油ベースのアジュバント(油エマルション及び界面活性剤ベースの配合物など)、例えば、MF59(マイクロ流動化洗剤安定化水中油型エマルション)、QS21(精製サポニン)、AS02[SBAS2](水中油型エマルション+MPL+QS-21)、(3)粒子状アジュバント、例えば、ビロソーム(インフルエンザヘマグルチニンを組み込んだ単層リポソームビヒクル)、AS04(MPLを含む[SBAS4]アルミニウム塩)、ISCOMS(サポニン及び脂質の構造複合体)、ポリラクチドコグリコリド(PLG)、(4)微生物誘導体(天然及び合成)、例えば、モノホスホリルリピドA(MPL)、Detox(MPL+M.Phlei細胞壁骨格)、AGP[RC-529](合成アシル化単糖類)、DC_Chol(リポソームへと自己構築することができるリポイド免疫促進物質)、OM-174(リピドA誘導体)、CpGモチーフ(免疫促進性CpGモチーフを含有する合成オリゴヌクレオチド)、改変LT及びCT(非毒性アジュバント効果を提供するために遺伝子修飾した細菌毒素免疫組織化体)、(5)内因性ヒト免疫調節剤、例えば、hGM-CSF若しくはhIL-12(タンパク質若しくはコードされるプラスミドのいずれかとして投与され得るサイトカイン)、Immudaptin(C3dタンデムアレイ)、並びに/又は(6)金粒子などの不活性ビヒクルなどが挙げられる。
【0135】
一実施形態では、TAP(複数可)又はSLP(複数可)(例えば、配列番号1~23及び25~50、好ましくは配列番号1~23の配列を含むか、若しくはそれらからなる)(又は当該ペプチド(複数可)をコードするmRNAなどの核酸)、又はそれを含む組成物は、凍結乾燥された形態である。別の実施形態では、TAP(複数可)、SLP(複数可)、核酸(複数可)、又はそれらを含む組成物は、液体組成物である。更なる実施形態では、TAP(複数可)、SLP(複数可)、又は核酸(複数可)は、組成物中で約0.01μg/mL~約100μg/mLの濃度である。更なる実施形態では、TAP(複数可)、SLP(複数可)、又は核酸(複数可)は、組成物中で約0.2μg/mL~約50μg/mL、約0.5μg/mL~約10、20、30、40、又は50μg/mL、約1μg/mL~約10μg/mL、又は約2μg/mLの濃度である。
【0136】
本明細書に記載されるように、本明細書に定義されるTAPのうちのいずれか1つ、又はそれらの任意の組み合わせで負荷された又はそれらに結合されたMHCクラスI分子を発現するAPCなどの細胞は、インビボ又はエクスビボでCD8+Tリンパ球を刺激/増殖するために使用され得る。したがって、別の態様では、本開示は、本明細書に記載のMHCクラスI分子/TAP複合体と相互作用又は結合することができるT細胞受容体(TCR)分子、及びそのようなTCR分子をコードする核酸分子、及びそのような核酸分子を含むベクターを提供する。本開示によるTCRは、MHCクラスI分子に負荷される又はそれによって提示されるTAPと、好ましくはインビトロ又はインビボで生細胞の表面において、特異的に相互作用又は結合することができる。
【0137】
本明細書で使用されるTCRという用語は、可変結合ドメイン、定常ドメイン、膜貫通領域、及び短い細胞質尾部を有する免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーを指し(例えば、Janeway et al,Immunobiology:The Immune System in Health and Disease,3rd Ed.,Current Biology Publications,p.4:33,1997を参照)、MHC受容体に結合した抗原ペプチドに特異的に結合することができる。TCRは、細胞の表面に見出され得、一般に、α鎖及びβ鎖(それぞれTCRα及びTCRβとしても知られる)を有するヘテロ二量体からなる。免疫グロブリンと同様に、TCR鎖(例えば、α鎖、β鎖)の細胞外部分は、2つの免疫グロブリン領域、可変領域(例えば、TCR可変α領域又はVα、及びTCR可変β領域又はVβ;典型的には、N末端におけるRabat番号付けに基づくアミノ酸1~116)と、細胞膜に隣接する1つの定常領域(例えば、TCR定常ドメインα又はCα、及び典型的には、Rabatに基づくアミノ酸117~259、TCR定常ドメインβ又はCβ、典型的には、Rabatに基づくアミノ酸117~295)と、を含有する。また、免疫グロブリンと同様に、可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)によって分離された相補性決定領域(各鎖におけるCDR3)を含む。特定の実施形態では、TCRは、T細胞(又はTリンパ球)の表面に見出され、CD3複合体と会合する。
【0138】
TCR及び具体的には本開示のTCRをコードする核酸を適用して、例えば、Tリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)又はMHCクラスI/TAP複合体を特異的に認識する新規のTリンパ球クローンを生成する他のタイプのリンパ球を、遺伝子的に形質転換/修飾することができる。特定の実施形態では、患者から得られたTリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)は、TAPを認識する1つ以上のTCRを発現するように形質転換され、形質転換された細胞が、患者に投与される(自己細胞輸血)。特定の実施形態では、ドナーから得られたTリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)は、TAPを認識する1つ以上のTCRを発現するように形質転換され、形質転換された細胞が、レシピエントに投与される(同種細胞輸血)。別の実施形態では、本開示は、TAP特異的TCRをコードするベクター又はプラスミドによって形質転換/トランスフェクトされたTリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)を提供する。更なる実施形態では、本開示は、TAP特異的TCRで形質転換された自己細胞又は同種細胞で患者を治療する方法を提供する。特定の実施形態では、TCRは、例えば、CRISPR、TALEN、ジンクフィンガー、又は他の標的化破壊システムを使用して、内因性遺伝子座(例えば、内因性TRAC及び/又はTRBC遺伝子座)を置き換えることによって、初代T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)において発現される。
【0139】
別の実施形態では、本開示は、上述のTCRをコードする核酸を提供する。更なる実施形態では、核酸は、上記のベクターなどのベクターに存在する。更なる実施形態では、核酸は、mRNA分子である。
【0140】
なお更なる実施形態では、がん(例えば、結腸直腸がん)の治療のための自己細胞又は同種細胞の製造における腫瘍抗原特異的TCRの使用が提供される。
【0141】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物(例えば、薬学的組成物)で治療される患者は、抗腫瘍剤及び/又は免疫療法(例えば、CAR療法)での治療の前又は後に治療される。本開示の組成物には、TAPに対してエクスビボで活性化された同種Tリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)、TAPで負荷された同種若しくは自己APCワクチン、TAPワクチン、及び同種若しくは自己Tリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)、又は腫瘍抗原特異的TCRで形質転換されたリンパ球が含まれる。本開示によるTAPを認識することができるTリンパ球クローンを提供するための方法は、対象(例えば、移植片レシピエント)、例えば、ASCT及び/又はドナーリンパ球輸注(DLI)レシピエントにおいて、TAPを発現する腫瘍細胞のために生成され得、それを特異的に標的化し得る。したがって、本開示は、TAP/MHCクラスI分子複合体を特異的に認識するか、又はそれに結合することができるT細胞受容体をコード及び発現するCD8+Tリンパ球を提供する。当該Tリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)は、組換え(操作された)又は自然選択されたTリンパ球であり得る。したがって、本明細書は、本開示のCD8+Tリンパ球を産生するための少なくとも2つの方法を提供し、T細胞活性化及びT細胞増殖の誘発に資する条件下で、未分化リンパ球を(典型的には、APCなどの細胞の表面において発現される)TAP/MHCクラスI分子複合体と接触させるステップを含み、これは、インビトロ又はインビボで(すなわち、APCがTAPで負荷されるAPCワクチンを投与された患者において、又はTAPワクチンで治療された患者において)行うことができる。MHCクラスI分子に結合したTAPの組み合わせ又はプールを使用して、複数のTAPを認識することができるCD8+Tリンパ球の集団を生成することが可能である。代替的に、腫瘍抗原特異的Tリンパ球又は標的Tリンパ球は、MHCクラスI分子/TAP複合体(すなわち、操作又は組換えCD8+Tリンパ球)に特異的に結合するTCR(より具体的には、アルファ鎖及びベータ鎖)をコードする1つ以上の核酸(遺伝子)をクローニングすることによって、インビトロで、又はエクスビボで産生/生成することができる。本開示のTAP特異的TCRをコードする核酸は、当該技術分野で既知の方法を使用して、エクスビボでTAPに対して活性化されたTリンパ球から(例えば、TAPで負荷されたAPCにより)、又はペプチド/MHC分子複合体に対して免疫応答を示す個体から、得ることができる。本開示のTAP特異的TCRは、移植片レシピエント又は移植片ドナーから得られた宿主細胞及び/又は宿主リンパ球において組換え発現され、任意選択的に、インビトロで分化させて、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を提供することができる。TCRアルファ鎖及びベータ鎖をコードする核酸(複数可)(導入遺伝子(複数可))は、トランスフェクション(例えば、電気穿孔)又は形質導入(例えば、ウイルスベクターを使用する)などの任意の好適な方法を使用して、T細胞(例えば、治療される対象又は別の個体由来の)に導入され得る。TAPに特異的なTCRを発現する操作されたCD8+Tリンパ球は、周知の培養方法を使用して、インビトロで増殖させることができる。
【0142】
本開示は、本明細書に記載されるTCRを発現する免疫エフェクター細胞を作製するための方法を提供する。一実施形態では、本方法は、免疫エフェクター細胞が本明細書に記載される1つ以上のTCRを発現するように、免疫エフェクター細胞、例えば、結腸直腸がん(例えば、結腸がん、直腸がん)を有する対象などの対象から単離された免疫エフェクター細胞をトランスフェクト又は形質導入することを含む。特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、個体から単離され、更にインビトロで操作することなく遺伝子修飾される。そのような細胞は、次いで、個体に直接再投与することができる。更なる実施形態では、免疫エフェクター細胞は、最初に活性化され、インビトロで増殖するように刺激した後、TCRを発現するように遺伝子修飾される。これに関して、免疫エフェクター細胞は、遺伝子修飾される前又は遺伝子修飾された後に培養され得る(すなわち、本明細書に記載されるTCRを発現するように形質導入又はトランスフェクトされる)。
【0143】
本明細書に記載の免疫エフェクター細胞のインビトロ操作又は遺伝子修飾の前に、細胞源を、対象から得ることができる。特に、本明細書に記載されるTCRとともに使用するための免疫エフェクター細胞は、T細胞を含む。T細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺問題、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含む、いくつかの供給源から得ることができる。特定の実施形態では、T細胞は、FICOLL(商標)分離などの当業者に既知の任意の数の技術を使用して、対象から採取された血液の単位から得ることができる。一実施形態では、個体の循環血液由来の細胞は、アフェレーシスによって得ることができる。アフェレーシス生成物は、典型的には、リンパ球を含有し、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、及び血小板が含まれる。一実施形態では、アフェレーシスによって採取された細胞は、洗浄して血漿画分を除去し、その後のプロセシングのために細胞を適切な緩衝液又は培地中に入れることができる。本発明の一実施形態では、細胞は、PBSで洗浄される。代替の実施形態では、洗浄液は、カルシウムを欠き、マグネシウムを欠いてもよく、又は全てではないが多くの二価カチオンを欠いてもよい。当業者によって理解されるであろうが、洗浄ステップは、例えば、半自動フロースルー遠心分離を使用することによって、当業者に既知の方法によって達成され得る。洗浄後、細胞は、様々な生体適合性の緩衝液又は緩衝液を含む若しくは含まない他の生理食塩水に再懸濁され得る。特定の実施形態では、アフェレーシス試料の望ましくない成分は、培地に直接再懸濁された細胞において除去され得る。特定の実施形態では、T細胞は、赤血球を溶解し、単球を枯渇させることによって(例えば、PERCOLL(商標)勾配を介した遠心分離によって)、末梢血単核細胞(PBMC)から単離される。CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+、及びCD45RO+T細胞などのT細胞の特定の亜集団は、ポジティブ又はネガティブ選択技術によって更に単離され得る。例えば、ネガティブ選択によるT細胞集団の濃縮は、ネガティブ選択された細胞に固有の表面マーカーを対象とする抗体の組み合わせによって達成することができる。本明細書で使用するための1つの方法は、負の磁気免疫付着又はフローサイトメトリーによる細胞選別及び/又は選択であり、これは、ネガティブ選択された細胞上に存在する細胞表面マーカーを対象とするモノクローナル抗体のカクテルを使用する。例えば、ネガティブ選択によってCD8+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、及びCD4に対する抗体を含む。フローサイトメトリー及び細胞選別を使用して、本開示で使用するための目的の細胞集団を単離することもできる。PBMCは、本明細書に記載される方法を使用して、TCRによる遺伝子修飾のために直接使用することができる。特定の実施形態では、PBMCの単離後、Tリンパ球は更に単離され、特定の実施形態では、遺伝子修飾及び/又は増殖の前又は後のいずれかで、細胞傷害性Tリンパ球及びヘルパーTリンパ球の両方を、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、及びエフェクターT細胞の亜集団に選別することができる。
【0144】
本開示は、TAP(すなわち、細胞の表面において発現されたMHCクラスI分子に結合したTAP)、又はTAPの組み合わせによって、特異的に誘導、活性化、及び/又は増幅(増殖)される単離された免疫細胞(例えば、CD8+Tリンパ球)を提供する。本開示はまた、本開示によるTAP又はその組み合わせ(すなわち、MHCクラスI分子に結合した1つ以上のTAP)及び当該TAP(複数可)を認識することができるCD8+Tリンパ球を含む組成物を提供する。別の態様では、本開示は、本明細書に記載される1つ以上のMHCクラスI分子/TAP複合体を特異的に認識するCD8+Tリンパ球において濃縮された細胞集団又は細胞培養(例えば、CD8+Tリンパ球集団)を提供する。そのような濃縮された集団は、本明細書に開示されるTAPのうちの1つ以上で負荷された(例えば、これらを提示する)MHCクラスI分子を発現するAPCなどの細胞を使用して、特異的Tリンパ球のエクスビボ増殖を行うことによって得ることができる。本明細書で使用される「濃縮」とは、集団中の腫瘍抗原特異的CD8+Tリンパ球の割合が、天然細胞集団、すなわち、特定のTリンパ球のエクスビボ増殖のステップに供されていない集団と比較して有意に高いことを意味する。更なる実施形態では、細胞集団におけるTAP特異的CD8+Tリンパ球の割合は、少なくとも約0.5%、例えば、少なくとも約1%、1.5%、2%、又は3%である。いくつかの実施形態では、細胞集団におけるTAP特異的CD8+Tリンパ球の割合は、約0.5~約10%、約0.5~約8%、約0.5~約5%、約0.5~約4%、約0.5~約3%、約1%~約5%、約1%~約4%、約1%~約3%、約2%~約5%、約2%~約4%、約2%~約3%、約3%~約5%、又は約3%~約4%である。目的の1つ以上のMHCクラスI分子/ペプチド(TAP)複合体を特異的に認識するCD8+Tリンパ球で濃縮されそのような細胞集団又は培養物(例えば、CD8+Tリンパ球集団)は、以下に詳細に記載されるように、腫瘍抗原ベースのがん免疫療法において使用され得る。いくつかの実施形態では、TAP特異的CD8+Tリンパ球の集団は、例えば、本明細書に定義されるTAP(複数可)で負荷された(共有的に又は非共有的に)MHCクラスI分子の多量体などの親和性に基づくシステムを使用して、更に濃縮される。したがって、本開示は、TAP特異的CD8+Tリンパ球の精製又は単離された集団を提供し、例えば、TAP特異的CD8+Tリンパ球の割合は、少なくとも約50%、60%,70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。
【0145】
別の態様では、本開示は、本明細書に定義されるHLA分子などのHLA分子に結合した本明細書に記載のTAPを含む複合体に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合断片、又は可溶性TCRを提供する。そのような抗体は、一般的に、TCR様抗体と称される。本明細書で使用する用語「抗体又はその抗原結合断片」は、所望の抗原特異性/結合活性を示す限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト化抗体、CDR-グラフト抗体、キメラ抗体、及び抗体断片を含むあらゆる種類の抗体/抗体断片を指す。抗体断片は、全長抗体の一部、一般には抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、ダイアボディ、線形抗体、一本鎖抗体分子(例えば、一本鎖Fv、scFv)、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ科由来)、サメNAR単一ドメイン抗体、並びに抗体断片、一本鎖ダイアボディ(scDb)、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、二重親和性リターゲティング分子(DART)、二価scFv-Fc、及び三価scFv-Fcから形成された多重特異性抗体が挙げられる。抗体断片は、VH領域(VH、VH-VH)、アンチカリン、ペプボディ、抗体-T細胞エピトープ融合体(トロイボディ)、又はペプチボディなど、CDRや抗原結合ドメインを含む結合部位を指す場合もあるが、これらに限定されない。一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、一本鎖抗体、好ましくは一本鎖Fv(scFv)である。一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメイン、例えば、軽鎖及び/若しくは重鎖の定常ドメイン、又はその断片を含む。更なる実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、抗体の定常重鎖の断片結晶化可能な(Fc)断片を含む。一実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、Fc断片(scFV-Fc)を含むscFvである。一実施形態では、scFv成分は、リンカー、例えば、ヒンジによってFc断片に接続される。Fc領域の存在は、腫瘍細胞に対する補体依存性細胞傷害性(CDC)又は抗体依存性細胞傷害性(ADCC)応答を誘導するのに有用である。
【0146】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、二重特異性抗体又はその抗原結合断片などの多重特異性抗体又はその抗原結合断片であり、多重特異性抗体又は抗体断片の抗原結合ドメインのうちの少なくとも1つが、HLA分子に結合した本明細書に記載のTAPを含む複合体を認識する。一実施形態では、多重特異性抗体又は抗体断片の抗原結合ドメインのうちの少なくとも1つは、免疫細胞エフェクター分子を認識する。「免疫細胞エフェクター分子」という用語は、免疫細胞によって発現され、その多重特異性抗体又は抗体断片による係合が免疫細胞の活性化をもたらす分子(例えば、タンパク質)を指す。免疫細胞エフェクター分子の例としては、CD8 T細胞などのT細胞におけるCD3シグナル伝達複合体、及びNK細胞上の様々な活性化受容体(NKG2D、KIR2DS、NKp44など)が挙げられる。更なる実施形態では、多重特異性抗体又は抗体断片の抗原結合ドメインのうちの少なくとも1つは、T細胞(例えば、抗CD3)中のCD3シグナル伝達複合体を認識し、係合する。更なる実施形態では、多重特異性抗体又は抗体断片は、一本鎖ダイアボディ(scDb)である。更なる実施形態では、scDbは、HLA分子に結合した本明細書に記載されるTAPを含む複合体に結合する第1の抗体断片(例えば、scFv)と、T細胞内のCD3シグナル伝達複合体(例えば、抗CD3 scFv)などの免疫細胞エフェクター分子に結合し、係合する第2の抗体断片(例えば、scFv)と、を含む。そのような構築物は、例えば、多重特異性抗体又は抗体断片によって認識される腫瘍抗原/MHC複合体を発現する腫瘍細胞の細胞傷害性T細胞媒介性殺傷を誘導するために使用され得る。抗体又はその抗原結合断片は、CAR T細胞、CAR NK細胞などを産生するためのキメラ抗原受容体(CAR)としても使用され得る。CARは、所望の抗原(例えば、MHC/TAP複合体)に対して特異性を提供するリガンド結合ドメイン(例えば、抗体又は抗体断片)を、T細胞又はNK細胞活性化ドメインなどの活性化細胞内ドメイン(又はシグナル伝達ドメイン)部分と組み合わせ、一次活性化シグナルを提供する。腫瘍細胞によって発現される分子に結合することができる抗体、より具体的にはscFvの抗原結合断片は、CARにおけるリガンド結合ドメインとして一般的に使用される。したがって、別の態様では、本開示は、本明細書に記載される抗体又は抗体断片(例えば、scFv)を発現する、宿主細胞、好ましくはT細胞又はNK細胞などの免疫細胞を提供する。
【0147】
一実施形態では、可溶性TCRは、可溶性治療二重特異的TCRである(例えば、Robinson et al.,FEBS J.2021 Nov;288(21):6159-6173、Dilchert et al.,Antibodies(Basel).2022 May 10;11(2):34を参照されたい)。
【0148】
本開示は、上記の免疫細胞(CD8+Tリンパ球、CAR T細胞)又はTAP特異的CD8+Tリンパ球の集団を含む薬学的組成物又はワクチンに更に関する。そのような薬学的組成物又はワクチンは、上記のように、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤及び/又はアジュバントを含み得る。
【0149】
本開示は、本開示による任意のTAP又はSLP(例えば、配列番号1~23及び25~50、好ましくは配列番号1~23、例えば、配列番号1~17及び22の配列のうちのいずれかを含むか、又はそれらからなる)、核酸、発現ベクター、T細胞受容体、抗体/抗体断片、細胞(例えば、Tリンパ球、APC CAR T細胞)、及び/若しくは組成物、又はそれらの任意の組み合わせの、医薬としての使用又は医薬の製造における使用に更に関する。一実施形態では、医薬は、がんの治療のためのものであり、例えば、がんワクチンである。本開示は、がんの治療における、例えば、がんワクチンとして使用するための、本開示による任意のTAP、SLP、核酸、発現ベクター、T細胞受容体、抗体/抗体断片、細胞(例えば、Tリンパ球、APC)、及び/若しくは組成物(例えば、ワクチン組成物)、又はそれらの任意の組み合わせに関する。本明細書で特定されるTAP配列は、i)腫瘍患者に注射される腫瘍抗原特異的T細胞のインビトロ刺激及び増殖のために使用される、及び/又はii)がん患者(例えば、CRC患者)における抗腫瘍T細胞応答を誘導若しくは増強するためのワクチンとして使用される、合成ペプチドの産生のために使用され得る。一実施形態では、がん(例えば、CRC)は、本明細書に記載されるTAPのうちの1つ以上を発現する。
【0150】
別の態様では、本開示は、対象において、CRCなどのがんを治療するためのワクチンとして、本明細書に記載のTAP(例えば、配列番号1~23及び25~50、好ましくは配列番号1~23、例えば、配列番号1~17及び22)、又はそれらの組み合わせ(例えば、ペプチドプール)、又はTAP(複数可)をコードする1つ以上の核酸の使用を提供する。本開示はまた、対象において、CRCなどのがんを治療するためのワクチンとして使用するための、本明細書に記載のTAP、又はその組み合わせ(例えば、ペプチドプール)、又はTAP(複数可)をコードする1つ以上の核酸のものを提供する。一実施形態では、対象は、TAP特異的Tリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)のレシピエントである。したがって、別の態様では、本開示は、CRCなどのがんを治療する(例えば、腫瘍細胞の数を低減する、腫瘍細胞を殺傷する)方法を提供し、当該方法は、それを必要とする対象に、有効量の、(APCなどの細胞の表面に発現される)1つ以上のMHCクラスI分子/TAP複合体を認識する(すなわち、それらに結合するTCRを発現する)Tリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)を投与(注入)することを含む。一実施形態では、本方法は、当該CD8+Tリンパ球の投与/注入後、当該対象に、有効量のTAP若しくはその組み合わせ、又はTAP(複数可)をコードする1つ以上の核酸のもの、及び/又はTAP(複数可)で負荷されたMHCクラスI分子(複数可)を発現する細胞(例えば、樹状細胞などのAPC)を投与することを更に含む。なお更なる実施形態では、本方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の1つ以上のTAPで負荷された樹状細胞を投与することを含む。なお更なる実施形態では、本方法は、それを必要とする患者に、治療有効量の、MHCクラスI分子によって提示されるTAPに結合する組換えTCRを発現する同種又は自己細胞を投与することを含む。
【0151】
別の態様では、本開示は、対象においてCRCなどのがんを治療する(例えば、腫瘍細胞の数を低減する、腫瘍細胞を殺傷する)ための、TAPで負荷された(これを提示する)1つ以上のMHCクラスI分子を認識するTリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)、又はその組み合わせの使用を提供する。別の態様では、本開示は、対象においてCRCなどのがんを治療する(例えば、腫瘍細胞の数を低減する、腫瘍細胞を殺傷する)ための医薬の調製/製造のための、TAPで負荷された(これを提示する)1つ以上のMHCクラスI分子を認識するTリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)、又はその組み合わせの使用を提供する。別の態様では、本開示は、対象においてCRCなどのがんの治療(例えば、腫瘍細胞の数を低減する、腫瘍細胞を殺傷する)に使用するための、TAPで負荷された(これを提示する)1つ以上のMHCクラスI分子を認識するTリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)、又はその組み合わせを提供する。更なる実施形態では、本使用は、当該TAP特異的CD8+Tリンパ球の使用後、有効量のTAP(若しくはその組み合わせ)、及び/又はTAPで負荷された(これを提示する)1つ以上のMHCクラスI分子を発現する細胞(例えば、APC)の使用を更に含む。
【0152】
本開示はまた、対象において本明細書に開示されるTAP(例えば、配列番号1~23及び25~50、好ましくは配列番号1~23、例えば、配列番号1~17及び22)のうちのいずれか、又はその組み合わせで負荷されたヒトクラスI MHC分子を発現する腫瘍細胞(例えば、結腸直腸がん細胞)に対する免疫反応を作成する方法を提供し、この方法は、TAP又はTAPの組み合わせで負荷されたクラスI MHC分子を特異的に認識する細胞傷害性Tリンパ球を投与することを含む。本開示はまた、TAP又はその組み合わせで負荷されたヒトクラスI MHC分子を発現する腫瘍細胞に対する免疫応答を生成するための、本明細書に開示されるTAPのうちのいずれか又はTAPの組み合わせで負荷されたクラスI MHC分子を特異的に認識する細胞傷害性Tリンパ球の使用を提供する。
【0153】
一実施形態では、がんは、結腸直腸がんである。更なる実施形態では、がんは、結腸がんである。別の実施形態では、がんは、直腸がんである。一実施形態では、結腸直腸がんは、マイクロサテライト不安定性(MSI)を特徴とする。一実施形態では、結腸直腸がんは、マイクロサテライト安定性(MSS)を特徴とする。一実施形態では、結腸直腸がんは、RAS(例えば、KRAS)及び/又はRAF変異を特徴とする。別の実施形態では、結腸直腸がんは、化学療法に対して耐性/難治性である。別の実施形態では、結腸直腸がんは、EGFR阻害剤に対して耐性/難治性である。
【0154】
一実施形態では、本明細書に記載の方法又は使用は、治療/使用の前に、患者によって発現されるHLAクラスIアレルを決定することと、患者によって発現されるHLAクラスIアレルのうちの1つ以上に結合するTAPを投与又は使用することと、を更に含む。例えば、患者がHLA-A2*01及びHLA-B07*02を発現すると決定された場合、配列番号6のTAP(HLA-A2*01に結合するもの)及び/又は配列番号2、21、24、及び/若しくは50のTAP(HLA-B07*02に結合するもの)の組み合わせが、患者に投与又は使用され得る。
【0155】
一実施形態では、本開示によるTAP、SLP、核酸、発現ベクター、T細胞受容体、抗体/抗体断片、細胞(例えば、Tリンパ球、CAR T若しくはNK細胞、APC)、及び/若しくは組成物、又はそれらの任意の組み合わせは、がん(例えば、CRC)を治療するための1つ以上の追加の活性剤又は療法、例えば、化学療法(例えば、ビンカアルカロイド、微小管形成を妨げる薬剤(例えば、コルヒチン及びその誘導体)、抗血管新生剤、治療用抗体、EGFR標的化剤、チロシンキナーゼ標的化剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、遷移金属錯体、プロテアソーム阻害剤、代謝拮抗剤(例えば、ヌクレオシド類似体)、アルキル化剤、白金系薬剤、アントラサイクリン抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、マクロライド、レチノイド(例えば、オールトランスレチノイン酸又はその誘導体)、ゲルダナマイシン又はその誘導体(例えば、17-AAG)、手術、免疫チェックポイント阻害剤若しくは免疫療法剤(例えば、抗PD-1/PD-L1抗体などのPD-1/PD-L1阻害剤、抗CTLA-4抗体などのCTLA-4阻害剤、抗B7-1/B7-2抗体などのB7-1/B7-2阻害剤、抗TIM3抗体などのTIM3阻害剤、抗BTLA抗体などのBTLA阻害剤、抗CD47抗体などのCD47阻害剤、抗GITR抗体などのGITR阻害剤)、腫瘍抗原に対する抗体(例えば、抗CD19、抗CD22抗体)、細胞ベースの療法(例えば、CAR T細胞、CAR NK細胞)、並びにサイトカイン(例えば、IL-2、IL-7、IL-21、IL-15)と組み合わせて使用することができる。一実施形態では、本開示によるTAP、核酸、発現ベクター、T細胞受容体、細胞(例えば、Tリンパ球、APC)、及び/又は組成物は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与/使用される。一実施形態では、本開示によるTAP、核酸、発現ベクター、T細胞受容体、細胞(例えば、Tリンパ球、APC)、及び/又は組成物は、CRCの治療に使用される1つ以上の療法(例えば、手術、化学療法(例えば、5-フルオロウラシル、カペシタビン、オキサリプラチン、イリノテカン、ラルチトレキセド、トリフルリジン、チピラシルを使用)、放射線療法、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、レゴラフェニブを組み合わせて投与/使用される。
【0156】
追加の療法は、本開示による、TAP、SLP、核酸、発現ベクター、T細胞受容体、抗体/抗体断片、細胞(例えば、Tリンパ球、CAR T若しくはNK細胞、APC)、及び/又は組成物の投与前、投与と同時、又は投与後に投与され得る。
【実施例】
【0157】
本開示は、以下の非限定的な例によって更に詳細に例示される。
【0158】
実施例1:実験手順
細胞株。4種類の結腸直腸がん細胞株細胞株[COLO 205(ATCC(登録商標)CCL-222(商標))、HCT 116(ATCC(登録商標)CCL-247(商標))、RKO(ATCC(登録商標)CRL-2577(商標))、SW620[SW-620](ATCC(登録商標)CCL-227(商標))]及び1種類の正常な胎児小腸細胞株[HIEC6(ATCC(登録商標)CRL3266(商標))]を、American Type Culture Collection(ATCC)から得た。COLO205、HCT116、及びSW620を、10%のウシ胎児血清(FBS)を補充したRPMI-1640(Gibco)中で成長させ、RKOを、10%のFBSを補充したイーグル最小必須培地(EMEM)(ATCC(登録商標))中で成長させ、HIEC-6を、20mMのHEPES(Gibco)、10mMのGlutaMAX(登録商標)(Gibco)、10ng/mLの上皮成長因子(EGF)(Gibco)、及び最終濃度4%になるまでのFBSを補充したOptiMEM(登録商標)1 Reduced Serum Medium(Gibco)中で成長させた。全ての細胞を37℃、5%CO2で維持した。収集のために、細胞を、温かいPBSですすいだ後、37℃、5%CO2で5~15分間かけてTrypLE(商標)Express Enzyme(1X)(Gibco)によりトリプシン処理した。次に、収穫した材料を1000rpmで5分間回転させ、暖かいPBSで1回すすぎ、次に氷冷PBSに再懸濁させた。細胞カウントの後、2×108個のCRC細胞の複製物をペレット化し、更なる使用まで-80℃で凍結させた。CRC細胞株のMHCクラスI表面密度は、製造業者の指示に従って、W6/32抗HLAクラスI抗体(BioXCell)を使用してQifikit(商標)(Agilent)によって決定した。
【0159】
一次組織。一致した結腸腺がん腫瘍及び正常な隣接組織(NAT)からなる6対の一次ヒト試料をTissue Solutionsから購入した。組織試料を、治療のファーストラインとして手術を受けた患者から採取し、液体窒素中で急速凍結させた。一次組織試料に関する更に多くの情報は、表2中に見出すことができる。
【0160】
RNA抽出。細胞株のRNA抽出のために、100万~200万個の細胞を収集し、氷冷PBSで1回洗浄した。次に、細胞をTrizol(商標)(Invitrogen)に再懸濁させた。細胞株及び一次組織試料について、製造業者によって推奨されるようにAllPrep(商標)DNA/RNA/miRNA Universalキット(Qiagen)又はRNeasy(商標)Miniキット(Qiagen)を使用して、全RNAを単離した。
【0161】
RNA配列決定。500ngの全RNAをライブラリー調製に使用した。RNA品質制御を、2100 Bioanalyzer(商標)システム(Agilent Technologies)上のBioanalyzer(商標)RNA 6000 Nanoアッセイにより評価し、全ての試料が8を超えるRINを有していた。KAPA mRNAseq Hyperprep(商標)キット(Roche)により、ライブラリーを調製した。ライゲーションを、IlluminaデュアルインデックスUMI(IDT)により行った。BioAnalyzer(商標)DNA1000チップ上で検証され、QuBit及びqPCRによって定量化された後、ライブラリーを等モル濃度までプールし、Nextseq(商標)High Output 150(2×75bp)サイクルキットを使用して、Illumina Nextseq500により配列決定した。細胞株及び組織試料について、それぞれ平均で1億2900万回及び9500万回のペアエンドPFリードを生成した。ライブラリー調製及び配列決定は、Institute for Research in Immunology and Cancer(IRIC)のGenomic Platformで行った。
【0162】
バイオインフォマティクス分析。配列を、Trimmomaticバージョン0.35を使用してトリミングし(17)、STARバージョン2.7.1aを使用して、参照ヒトゲノムバージョンGRCh38(Ensembl 99に基づく、Gencode version 33からの遺伝子アノテーション)にアラインメントした(18)。遺伝子発現は、これらの鎖状RNAライブラリーについて、TPM値において、正規化された遺伝子及び転写産物レベル発現を得るために、STARから直接的にリードカウントとして得られ、及びRSEMを使用して計算された(19)。
【0163】
HLA遺伝子型決定。OptiType(https://github.com/FRED-2/OptiType)を使用して、細胞株及び組織のHLA遺伝子型決定を行った(20)。
【0164】
マイクロサテライト不安定性予測。一次腫瘍試料のMSIステータスは、対になった腫瘍及びNATを使用して、MSIsensorプログラムを使用して予測された(https://github.com/ding-lab/msisensor)(21)。
【0165】
差次的発現分析。DESeq2バージョン1.22.2(22)を使用して、遺伝子リードカウントを正規化し、腫瘍試料と正常試料との間の差次的発現を計算した。主成分分析(PCA)を、最初の2つの最も重要な成分について正規化されたlogリードカウントを使用して生成した。細胞株の差次的発現分析のために、正常細胞株(HIEC-6)と比較した、4種類のCRC細胞株の平均発現間の倍率変化を計算した。有意に差次的に発現された遺伝子(DEG)は、(0.05未満のpadjを有するもの)であり、Metascapeツールを使用して、GO termについて│log2倍率変化│>1であるとみなされるものであった(23)。組織の対応あり差次的発現分析のために、TPM正規化された値を使用して、腫瘍/NAT対を比較した。調整されたp値によってフィルタリングするのではなく、組織の単回複製のみを配列決定したため、│log2倍率変化│>1を有するGO term分析について6名全ての対象において有意に差次的に発現された遺伝子のみを選択した。MSS組織とMSI組織との間で差次的に発現した遺伝子を調べるとき、同じ倍率変化閾値を適用した。MSI DEGのGO term分析のために、両方のMSI組織において排他的に差異的に発現された(すなわち、任意のMSS組織におけるDEGとはみなされなかった)遺伝子を選択した。MSS DEGのGO term分析については、遺伝子が3つ以上のMSS組織において差異的に発現された場合に、その遺伝子が考慮された。
【0166】
組織試料のトランスクリプトーム分析。組織試料のトランスクリプトームにおける様々なバイオタイプの割合を、以前に記載されているように決定した(24)。簡潔に述べると、Kallisto(19)によるEnsemblアノテーション付き転写産物の定量化及びアラインメントの後、転写産物及び反復要素を、USCS Table Browser GRCh38リピートマスカーデータベースからの遺伝子リピート特定を追加したEnsemblアノテーション付き転写産物を含むKallistoインデックスを使用してアノテーションした(25)。
【0167】
変異プロファイル/「遺伝子バリアントアノテーション」。SNPEff(https://pcingola.github.io/SnpEff/#snpeff)を使用して、細胞株及び一次生検の両方について、遺伝子バリアントコーリングを実施した(26)。
【0168】
データベース生成。全般的ながんデータベースを、以前に記載されているように構築した(16)。簡潔に述べると、RNA-seqリードを、Trimmomaticバージョン0.35を使用してトリミングし(17)、STARバージョン2.7.1aを使用して、参照ヒトゲノムバージョンGRCh38(Ensembl 99に基づく、Gencode version 33からの遺伝子アノテーション)にアラインメントした(18)。Kallisto(https://pachterlab.github.io/kallisto)を使用して、TPMにおける転写産物発現を定量化した(19)。試料特異的エキソームは、Freebayes(https://github.com/ekg/freebayes)で特定された単一ヌクレオチドバリアント(品質>20)をPyGenoに組み込むことによって構築された(27)。次いで、TPM>0を有するアノテーション付きオープンリーディングフレームを、インシリコで翻訳し、fastaフォーマットでカノニカルプロテオームに追加した。がん特異的プロテオームを生成するために、RNA-seqリードを、kmerとして知られる33個のヌクレオチド配列に切断し、mTECにおいて2未満で存在するkmerのみ、又は細胞株及び組織について一致したNATをそれぞれ保存した。重複するkmerをコンティグに組み立て、次いで3フレームをインシリコで翻訳した。注目すべきことに、kmerアプローチによって生成された短いペプチド配列を、次いで、およそ1万個のアミノ酸のより長い配列に連結した。これらのペプチドを、セパレータとして「JJ」配列を使用して連結し、これをPeaksX+ソフトウェアによって内部的に認識し、この配列の出現時に配列を分割した。次いで、カノニカルプロテオーム及びがん特異的プロテオームを連結して、全般的ながんデータベースを作成した。細胞株データベースは、平均で3.38×106個の配列からなっていた。
【0169】
MAPの単離。CRC細胞株ペレット試料(複製物当たり2×108個の細胞、細胞株当たり4個の複製物)を最大2mLのPBSで再懸濁させ、次いで、2mLの氷冷2倍溶解緩衝液(1%w/vのCHAPS)を添加することによって可溶化した。腫瘍及び正常な隣接組織試料(455mg~693mg)を小片(立方体、サイズ約3mm)に切断し、タンパク質阻害剤カクテル(Sigma、カタログ番号P8340-5ml)を含有する氷冷PBS 5mlを添加した。最初に、速度20000rpmに設定したUltra Turrax T25ホモジナイザ(IKA-Labortechnik)を使用して20秒間、次いで、速度25000rpmに設定したUltra Turrax T8ホモジナイザ(IKA-Labortechnik)を使用して20秒間、2回均質化した。次いで、550μlの氷冷10倍溶解緩衝液(5%w/vのCHAPS)を各試料に添加した。4℃でタンブリングしながら60分間インキュベーションした後、組織試料及びCRC細胞株試料を10000gで、4℃にて30分間遠心分離した。上清を、1mgのW6/32抗体共有結合架橋タンパク質A磁気ビーズを含有する新しいチューブに移し、MAPを前述のように免疫沈降させた(28)。次いで、MAP抽出物を、Speed-Vacを使用して乾燥させ、MS分析の前に凍結したままにした。
【0170】
TMT標識。MAP抽出物を200mMのHepes緩衝液(pH8.1)に再懸濁させた。無水アセトニトリル中の50μgのTMT試薬(Thermo Fisher Scientific)を、以下のように試料に添加した。CRC細胞株複製物を、TMT6plex(ロット番号UG287166)チャネルTMT6-126-129で標識し、組織試料を、TMT10plex(ロット番号UH285228)-126(NAT)及び-127N(腫瘍)で標識した。試料を穏やかにボルテックスし、室温で1.5時間反応させた。次いで、試料を、50%ヒドロキシルアミンを用いて室温で30分間クエンチし、次いで、4%FA/H2Oで希釈した。CRC細胞株複製物及び個々のNAT腫瘍対を組み合わせた。次いで、試料を自家製のC18膜(Empore)カラム上で脱塩し、注入まで-20℃で保存した。一次組織試料中の目的のMAPを定量化するために、0.75~192fmoleの濃度の合成ペプチドを、TMT 10plexチャネル-128N、-128C、-129N、-129C、-130N、-130C、-131で標識し、一方、NAT組織及びCRC組織を、それぞれ-126及び127Nで標識した。チャネル間の汚染を評価するために、チャネル-127Cを空のままにしたことに留意されたい。
【0171】
液体クロマトグラフィー-タンデムMS分析。乾燥ペプチド抽出物を、4%のFAに再懸濁させ、EASY-nLC IIシステム上で、0%~30%のACN(0.2%FA)からの106分間の勾配及び流速600nL/分を用いて、自家製のC18分析カラム(C18 Jupiter Phenomenexを充填した20cm×内径150μm)にロードした。試料を、Orbitrap Exploris 480分光計(Thermo Fisher Scientific)により、2.8kVのNanoflex源を有する陽イオンモードで分析した。240,000分解能で取得された各々の完全MSスペクトルの後に、20個のMS/MSスペクトルが続き、30,000の分解能、100%の自動ゲイン制御ターゲット、700msの注入時間、及び40%の衝突エネルギーを用いたMS/MS配列決定のために、最も豊富な多重荷電イオンを選択した。
【0172】
MAP特定。PeaksX+ソフトウェア(Bioinformatics Solutions Inc.)を使用して、データベース検索を行った(29)。前駆体質量及び断片イオンのエラー耐性を、それぞれ10.0ppm及び0.01Daに設定した。非特異的ダイジェストモードを使用した。TMT6plex又は10plexを、固定PTMとして設定し、可変修飾には、リン酸化(STY)、酸化(M)、脱アミド化(NQ)、及びTMT6plex又は10plex STYが含まれていた。次いで、ピーク検索をMAPDPにロードし(30)、これを使用して、以下のフィルタを適用した。5%FDRを使用して、NetMHCpan-4.1b予測に基づいてランク溶出リガンド閾値≦2%を有する、8~11アミノ酸長のペプチドを選択する。
【0173】
RNA-SeqデータにおけるMAPコード配列の定量化。MAPコード配列(MCS)を、以前に記載されているようにRNA-seqデータで定量化した(31)。簡潔に述べると、MCSを、当施設のpythonスクリプトを用いて全ての可能なヌクレオチド配列に逆翻訳した(ZenodoにDOI:3739257で寄託)。次いで、ヌクレオチド配列を、GSNAPを用いてゲノム上にマッピングして(32)、所与のMAPをコードすることができる全ての可能なゲノム位置を決定した。MCSはまた、MAPが重複するスプライス部位を説明するためにトランスクリプトーム上にマッピングされ、次いで、これらのMAPに対応するトランスクリプトームの部分もまた、GSNAPを用いて参照ゲノム上にマッピングされた。目的のMAPについて、MCSを含む全てのリードのゲノムアラインメントを行った。GSNAPの出力をフィルタリングして、配列と参照との間の完全な一致のみを保持して、所与のMAPをコードすることができる全ての可能なゲノム領域を含有するファイルを得た。STARにより参照ゲノム上にアラインメントされた、各々の所望のRNA-Seq試料(CRC及びNAT、GTEx、又はTCGA試料など)におけるそれぞれのゲノム位置でMCSを含有するリードの数を合計した。最後に、所与のMAPの全てのリードカウントを合計し、目的の各試料において配列決定されたリードの総数に対して正規化し、1億当たりのリード(RPHM)カウントを得た。
【0174】
MAP源転写産物の決定。どの割合の組織試料MAPが特定の転写産物バイオタイプに由来するかを調べるために、1億当たりのkmer(KPHM)定量化に基づく最も豊富な推定供給源転写産物を決定した。がん特異的(kmer)データベースからのペプチドについては、MCSを全ての可能なヌクレオチド配列に逆翻訳し、所与のMAPをコードすることができる全ての可能なゲノム領域を特定した(上の「RNA-SeqデータにおけるMAPコード配列の定量化」を参照されたい)。最後に、Kallistoを使用して、その位置で最も多く発現された転写産物を決定し、次いで、これを、所与のペプチドについての最も可能性の高い転写産物として割り当てた。1つより多い推定供給源転写産物を有するペプチドは、分析から除外した。
【0175】
TSA候補の特定。TSA候補は、厳格なTSA特定パイプラインによって特定した。まず、MAPは、タンパク質データベースからペプチド配列アクセッションを検索し、これを使用して各ペプチドのヌクレオチド配列を抽出する、ペプチド分類を受けた。各々のがん組織及び正常組織からのRNA-Seqデータを、Jellyfish 2.2.3(-Cオプションを使用する)によって24ヌクレオチド長k-merデータベースに変換し、これを使用して、各TSA候補コード配列の24ヌクレオチド長k-merセットを照会した。所与のペプチドコード配列と完全に重複するリードの数を、k-merセットの最小出現数(kmin)を使用して推定した。一般に、1つのk-merは、常に単一のRNA-Seqリードに由来する。次いで、このkmin値を、以下の式kphm=(kmin×108)rtot(式中、rtotは、所与のRNA-Seq実験で配列決定されたリードの総数を表している)を使用して、配列決定された108個のリード当たり検出されたいくつかのk-mer(kphm)に変換した。ペプチドのRNAコード配列が、正常(細胞株についてはプールされたmTEC試料、組織については一致したNAT)よりも、がんにおいて少なくとも10倍高く発現し、正常において2KPHM未満を発現した場合にのみ、ペプチドを保持した。その後のフィルタリングにより、区別することができないイソロイシン/ロイシンバリアントを有するペプチドを除去した。ILバリアントを有するペプチドは、最も多く発現したバリアントが上述の基準を満たす場合にのみ、保持された。上述のように、残りのペプチドのMCSをRNA-seqデータで定量化し、それらの発現がmTEC及び他の正常組織(GTEx)において8.55RPHM未満である場合にのみ保持した。各ペプチドのゲノム局在化は、BLAT(https://genome.ucsc.edu/cgi-bin/hgBlat,Kent WJ.BLAT - the BLAST-like alignment tool.Genome Res.2002 Apr;12(4):656-64.PMID:11932250)を使用して、各MCSを含有するリードを、参照ゲノム(GRCh38.99)にマッピングすることによって割り当てられた。ゲノム位置が不明な場合、又はそれらが超可変領域(HLA、Ig、又はT細胞受容体(TCR)遺伝子)にマッピングされた場合、ペプチドを除外した。最後に、残りの候補のMS/MSスペクトルを手動で検証した。ペプチドは、それらのアミノ酸配列が参照と異なる場合、及び変異が既知の生殖細胞多型でない場合、mTSAとして分類された。ペプチドは、腫瘍中で正常と比較して10倍以上過剰発現され、mTEC(及び組織の場合はNAT)中で0.2KPHM以下であった場合、aeTSAとして分類され、がんにおいて10倍以上過剰発現されたが、mTEC及び/又はNATにおける発現が0.2KPHMより大きかった場合、TAAとして分類された。最終的に、各TSA/TAAの起源転写産物は、kallisto定量化ファイルからの最も多く発現したペプチド重複転写産物を選択することによって帰属された(データベース生成のセクションを参照されたい)。
【0176】
腫瘍間共有。他のCRC腫瘍におけるTSA及びTAA配列の腫瘍間分布を調べるために、TCGAからの151個の結腸腺がん(COAD)試料におけるペプチドコード配列のlog(RPHM+1)発現を決定した(「RNA-SeqデータにおけるMAPコード配列の定量化」を参照されたい)。
【0177】
免疫原性予測。目的のMAPの予測免疫原性は、R package Repitope v3.0.1(https://github.com/masato-ogishi/Repitope)により決定された(34)。
【0178】
TSAペプチド候補の検証。TSA及び選択されたTAA配列の合成ペプチドは、Genscriptから得た。合成ペプチドをDMSO中で1nmol/μLの濃度まで可溶化し、全ての合成ペプチドを10pmol/μLの濃度でストック溶液中で組み合わせた。ストック溶液を、自家製C18膜(Empore)カラム上で150pmolのアリコートで脱塩し、Speed-Vacを使用して乾燥させた。乾燥したペプチド抽出物を、記載されているようにTMT10plexチャネルで標識し(「TMT標識」のセクションを参照されたい)、脱塩し、Speed-Vacで乾燥させた。標識した合成ペプチドを、4%のFAに再懸濁させ、1pmolの各合成ペプチドを、EASY-nLC IIシステム上で、0%~30%のACN(0.2%FA)からの76分間の勾配及び流速600nL/分を用いて、自家製のC18分析カラム(C18 Jupiter Phenomenexを充填した20cm×内径150μm)にロードした。試料を、Orbitrap Exploris 480分光計(Thermo Fisher Scientific)により、2.8kVのNanoflex源を有する陽イオンモードで分析した。各々の完全MSスペクトルは、120000分解能で取得され、包含リストを使用して、40%の衝突エネルギー及び1m/zの単離ウィンドウによる断片化のためのイオンを選択した。30000の分解能でMS/MSを取得した。MS/MS相関を、以前に記載されているように計算した(17)。簡潔に述べると、予想されるペプチド断片をpyteomics v4.0.1(https://bitbucket.org/levitsky/pyteomics)により計算し、再現可能に検出されたペプチド断片を特定した。これらの断片のルートスケールの強度は、内因性ペプチドスキャン対と合成ペプチドスキャン対との間で相関し、SciPy v1.2.1(https://www.scipy.org/)を使用して、ピアソン相関係数、p値、及び信頼区間を計算した。最も低いp値を有するスキャン対のミラープロットを、spectrum_utils v0.2.1(https://github.com/bittremieux/spectrum_utils)を使用して、各ペプチドについて生成した。
【0179】
相対定量化。一次組織試料中の目的のMAPを相対的に定量化するために、それぞれTMT 10plex-129N、130N、及び131Nで標識された10、100、又は1000fmolの濃度の合成ペプチドを、それぞれTMT10plex-126及び127Nで標識されたNAT及びCRC組織試料からの残りの精製MAPにスパイクした。汚染を評価するために、チャネルTMT 10plex-127Cを空のままにしたことに留意されたい。試料を、Orbitrap Fusion Tribrid分光計(Thermo Fisher Scientific)により、2.4kVのNanoflex源を有する陽イオンモードで分析した。同期前駆体選択MS3(SPS-MS3)について、目的のペプチドの包含リストを使用して、300~1000m/zの範囲、120000のOrbitrap分解能、5.0e5の自動ゲイン制御(AGC)、及び50msの最大注入時間で、完全MSスキャンを取得した。MS2のための3s最高速度アプローチを、0.4m/zの単離ウィンドウ、35%の衝突誘導性解離、「正常な」イオントラップスキャンレートモード、2.0e4のAGCターゲット、及び50msの最大注入時間で、イオントラップで使用した。これに続いて、MS3取得のための8つの同期前駆イオンの選択が行われ、これは、110~500m/zのスキャン範囲、50000のOrbitrap分解能、1.0e5のAGC、300msの最大注入時間、2.0m/zの分離ウィンドウ、及び65%のHCD衝突エネルギーにより行われた。LC-MS機器は、Xcaliburバージョン4.4(Thermo Fisher Scientific,Inc)を使用して制御された。前駆体質量及び断片イオンのエラー耐性を、それぞれ10.0ppm及び0.5Daに設定した。非特異的ダイジェストモードを使用した。TMT10plexを、固定PTMとして設定し、可変修飾には、リン酸化(STY)、酸化(M)、脱アミド化(NQ)、及びTMT10plex STYが含まれていた。定量化のために、PSMをフィルタリングして、TMT10plex-127Cチャネル内に汚染を有するものを除外して、70番目の強度パーセンタイル内のものを選択した。全ての関連チャネルのMS2前駆体プロファイル及び強度プロファイルを手動で精査して、定量化のためのペプチドを選択した。各ペプチドの強度比は、良好な品質のPSMの平均TMT10plex-127N及びTMT10plex-126強度を使用して計算された。
【0180】
データ分析及び視覚化。
図1は、BioRender.com.により生成した。他の図の大部分は、Python v3.7.6、R v3.6.3、又はOrigin(Pro)2019bで作成された。R packageには、Repitope v3.0.1(https://github.com/masato-ogishi/Repitope)(34)、UpsetR v1.4.0(https://github.com/hms-dbmi/UpSetR)(35)、GSVA v1.38.2(https://github.com/rcastelo/GSVA)(36)、ESTIMATE v1.0.13(https://bioinformatics.mdanderson.org/estimate/)(37)が含まれる。
【0181】
実験設計及び統計的根拠。結腸直腸がんのMHC I免疫ペプチドームを効果的に解明するために、4種類のCRC細胞株を選択し、一致した腫瘍及び正常な隣接組織(NAT)の両方からなるヒト対象からの6個の試料を取得した。NATは、各々のそれぞれの腫瘍について最も効果的な対照であるため、健康な組織の近似として使用した。細胞株については、一致した試料を利用することができなかったため、6個のmTEC試料のプールを全般的ながんデータベースの作成に使用して、おおよその正常なRNA発現の幅広い余地を得た。全ての場合のp値は、免疫原性スコアの有意性の決定を除き、2つの試料のt検定を使用して決定される。免疫原性スコアの有意性の決定の場合には、シャピロ検定によって決定されるように、データが正規分布を有していなかったため、マン・ホイットニ検定が使用された。t検定の場合、f検定を実施して、データセットが有意な変動を有していたかどうかを決定した。有意な変動を有していた場合、変動を想定したt検定が使用され、そうでない場合には、変動がないと仮定したt検定が使用された。CRC由来細胞株について、2×108個の細胞の4個の技術的複製物を調製し、これらをTMT標識し、注入前に多重化した。組織材料が限られていることに起因して、一次試料からの精製MAPの半分を注入して、全体的な免疫ペプチドミクスデータを取得し、全般的な免疫ペプチドームデータを得て、残りの試料を合成ペプチドを用いた標的分析に使用して、推定TSA及び選択されたTAAの配列及び存在量を確認した。定量化のために高品質のPSMを選択するために、空のTMTチャネル内の低強度のもの又は汚染を伴うものを除外した。更に、好ましいMS2前駆体及び強度プロファイルを有するペプチドのみを定量化した。
【0182】
実施例2:プロテオゲノミクスアプローチを使用した免疫ペプチドーム分析
結腸直腸がんの免疫ペプチドームの組成を決定するために、一致した腫瘍及び正常な隣接組織からなる、4種類の結腸直腸がん由来細胞株及び6セットの一次腺がん試料から構成される試料の集合を分析した(表1及び2)。ペアエンドRNA配列決定(RNA-seq)は、任意のゲノム起源からの非カノニカル配列を包含するために3つのリーディングフレームに翻訳されるがん特異的kmerの生成によって作成される、カノニカルがんプロテオーム、及び各試料についてのがん特異的プロテオームからなる全般的ながんデータベースの作成を可能にした(
図1)。髄質胸腺上皮細胞(mTEC)は、胸腺内に末梢抗原を提示し、自己反応性T細胞の陰性選択を媒介する(38)。CRC由来細胞株の場合、健康な組織におけるこれらの配列の発現に近似するmTEC由来配列を減算した後、がん特異的kmerを得た。一次組織試料については、一致したNATからの配列を減算した後、がん特異的kmerを生成した。このアプローチは、腫瘍において発現され、同じ個体の健康な結腸組織において観察されない配列の決定を可能にした。データベース構築に加えて、GO term分析、免疫浸潤の調査、変異プロファイリング、及び転写産物存在量の決定を含む、トランスクリプトーム分析にもRNA-seqデータを使用した(
図1)。
【表4】
【表5】
【表6】
【0183】
MHC I:ペプチド複合体を免疫沈降によって単離し、溶出したMHC I関連ペプチド(MAP)をタンデム質量タグ(TMT)等圧標識試薬で標識した。TMT標識は、近年、それらの電荷状態及び疎水性を増加させることによって、MAPの検出を強化することが示されたからである(37)。次いで、MAPを配列決定し、RNA-seqによって生成された個別化されたがんデータベースを使用して、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)によって分析した。次いで、特定したMAPは、推定TSA及びTAAを特定するために、一連の厳格な分類及び検証を受けた。次いで、CRC組織において特定された腫瘍抗原を検証し、合成ペプチドで定量して、それらが腫瘍の細胞表面でどの程度過剰発現されたかを決定し、それらの予測された免疫原性及び腫瘍間分布も調べ、それらの臨床的可能性の感覚を得た(
図1)。
【0184】
本研究では、表1にまとめられるように、異なるアレル及び特徴を有する4種類のCRC由来細胞株を使用した。HCT116及びRKOは、一次腫瘍に由来し、マイクロサテライト不安定性(MSI)を特徴とするが、一方、Colo205及びSW620は、それぞれ、腹水及びリンパ節の転移に由来し、両方ともマイクロサテライト安定性(MSS)である。これらの細胞株は、1.44×105~5.07×105個のMHC I分子/細胞及びHLAアレルの多様性の範囲の幅広いMHC I表面発現を有する。4種類の細胞株の中には、BRAF、RAS、SMAD4、TP53、及びPI3CAなどのいくつかの重要な遺伝子の変異がある。これらの細胞株は、Qifikitによって決定されるように、1.44×105~5.07×105個のMHC I分子/細胞の範囲の様々なMHC I表面発現、試料のHLAアレルを予測するためのRNA-Seqデータを使用するHLA遺伝子型決定ツールであるOptiTypeを使用して特定されたHLAアレルの多様性を、文献に示されたこれらの細胞株についてのHLAアレルと組み合わせて有する(表1)(22)。
【0185】
一次腫瘍試料の全ては、腫瘍グレード及びTNM(腫瘍結節転移)分類においてわずかに変化する、ステージIIの腺がんに由来する(表2)。一次試料は、95~100%の腫瘍含有量を有しており、0.6625グラムの平均質量を有していた。腫瘍は、S1(盲腸)及びS5(上行結腸)を除き、全てS字結腸に由来する。S2を除く全ての患者が女性であり、患者の年齢は43~85歳の範囲であり、平均年齢は62歳である。細胞株と同様に、組織試料も様々なHLAアレルを有する。細胞株及び組織試料に固有の、又はそれらに共有されるHLAアレルの数の視覚化は、
図7で利用可能である。それぞれ、細胞株及び組織当たり平均で1.3及び3.2の固有のアレルが存在する。
【0186】
実施例3:CRC試料のトランスクリプトーム特性決定
所与の疾患ステージ内のCRC患者の転帰は、腫瘍の分子特徴に基づいて大きく異なるため(40、41)、RNA配列決定データを使用して、試料の分子不均一性を特性決定した。診療所で治療上の決定及び予後を導くために一般的に使用される主要なバイオマーカー(KRAS、NRAS、又はBRAFなど)の変異ステータスを最初に調べた後(40、41)(表1)、細胞株及び一次試料のマイクロサテライトステータスを、それぞれ文献から決定し(42、43)、MSIsensorパッケージ(46)を使用して、これらの試料の分子特徴の知識を広げた。MSIは、CRC腫瘍の限られたサブセット(すなわち、散発性CRCの15%及び非ポリポーシス結腸直腸がんの90%)に見出されるが(47)、本研究では、腫瘍発生性細胞株の50%及び一次生検の33%が、この表現型を示す(表3)。文献のいくつかの要素は、MSI腫瘍及びMSS腫瘍が免疫学的に異なることを示唆しているが(5、11、48、49)、本研究は、免疫ペプチドームレベルでのMSI及びMSS結腸直腸腫瘍の比較を提供する。
【表7】
【0187】
正常生検試料と腫瘍生検試料との間の上位500個の様々な遺伝子の主成分分析(
図2A)又は細胞株
図9A)は、それらの異なるトランスクリプトームプロファイルを確認する。したがって、CRC由来細胞株及び生検試料の両方の経路及びプロセス濃縮分析は、それらの腫瘍発生ステータスに関連する観点から濃縮されたトランスクリプトームプロファイルを明らかにした。最も有意に上方調節されたGO term及び下方調節されたGO termは、それぞれ、細胞増殖(
図2Bの上パネル)並びに筋肉表現型及び収縮性(
図2Bの下パネル)に関連する。増殖及び細胞周期に関連するGO termの濃縮は、がんの一般的な特徴であるが(50、51)、筋肉関連経路の下方調節は、CRCに固有であり、低分化腫瘍領域と高収縮性NATとの間の機能的二項対立から生じる。本明細書で使用されるデータセットの腫瘍試料の中で、腫瘍間トランスクリプトームの差を説明するように思われるのは、MSI/MSSステータスである(
図2A及び9A)。MSI試料は、まとまってしっかりとクラスター化する傾向があるが、MSS腫瘍は、より分散しているように見え、したがって、トランスクリプトーム的に、より不均一である。機能的には、別々に分析すると、MSS及びMSI CRC試料は、非常に異なる遺伝子セットで濃縮される。対応するNATと比較すると、MSI腫瘍は、様々な免疫関連GO termの有意な上方調節を特徴とし(
図9A)、一方、MSS腫瘍は、Wnt及びPI3K-Aktシグナル伝達の両方に関連する遺伝子の発現の増加の方に、より関連する(
図9B)。これら2つのシグナル伝達経路とCRCとの関連は既知であるが(52)、CRCにおけるそれらの寄与がMSS腫瘍とMSI腫瘍の間で異なる可能性があることを裏付ける参考文献は見つからなかった。
【0188】
次に、各試料の免疫浸潤の程度を、ESTIMATEパッケージ(37)からの免疫浸潤スコアを使用して(
図2C)、また、単一試料のGene Set Enrichment Analysis(ssGSEA)(54)に基づく既知の腫瘍浸潤性白血球(TIL)マーカー(53)の濃縮スコアを用いた、2つのアプローチによって推定した(
図8B)。全てのNAT試料は、同様のレベルの免疫浸潤を示したが、MSI腫瘍及びMSS腫瘍は、それぞれ、増加した免疫浸潤スコア及び減少した免疫浸潤スコアを特徴としていた(
図2C及び
図8B)。そのような差は、MSI腫瘍がそれらのMSS相同体よりも免疫原性が高い可能性があることを示唆している(48、55~58)。
【0189】
TSAは、広範囲のがん特異的イベント/調節不全から生じる可能性があり(11、12)、各々の抗原供給源の免疫ペプチドーム寄与は、悪性腫瘍間で有意に異なる(11)ため、RNA配列決定データも使用して、試料においてどのTSAクラスが濃縮され得るかを知らせた。転写産物のゲノム起源を見ることによって、非コードポリアデニル化RNAの割合及び絶対的存在量の両方が、NATと比較して、腫瘍において有意に増加していることが観察された(
図2D)。平均して、絶対的存在量の増加は25%に制限されるが、データは、非コード転写産物の腫瘍特異的増加が、MSI腫瘍においてMSSよりも高い可能性があることを示唆する。この比較は、MSI試料の数が少ない(n=2)ことに起因して、制限されたままであるが、MSI試料中の非コード転写産物に由来するaeTSAの数は、MSSよりも多く特定されることが予想され得る。同様に、全てのCRC試料は、同等の単一ヌクレオチドバリアント(SNV)負荷を示し、したがって、同様の数のmTSAを有することが予想されるが(
図2E)、挿入/欠失(インデル)負荷は、MSSと比較してMSI試料で顕著に増加し、この観察は、細胞株についても注目される(
図8C)。実際に、細胞株及び組織試料の両方を一緒に考慮すると、MSS試料とMSI試料との間のINDEL変異の数に統計的有意差が生じた(p=0.00235)(
図8D)。MSI及びINDEL蓄積の両方が、DNAミスマッチ修復(MMR)経路の欠陥から生じる(59)ため、試料中で特定されたINDEL由来TSA(最も可能性が高いフレームシフト由来抗原)の数は、そのMSIレベルに比例するという仮説を立てることができる。
【0190】
実施例4:免疫ペプチドーム分析は、CRC抗原の多様性を強調する
CRC由来細胞株のMHC I免疫ペプチドームを解明するために、2×10
8個の細胞の4つの複製物からのMAPを各株について免疫沈降させ、各複製物を、細胞株については別個のTMT6plexチャネル(126、127、128、129)、又は一次NAT及び組織試料についてはそれぞれTMT10plex-126及び-127Nにより誘導体化した。各細胞株の4つの複製物、及び各対象からのそれぞれのNAT及び腫瘍MAPの半分を多重化し、LC-MS/MSによって分析した。細胞株及び組織試料の標識効率の中央値は、それぞれ72.4%又は87.8%であった。細胞株における標識の効率の低さは、わずかなMAP収量に起因していた。5281個及び27583個の固有のMAPを、それぞれ、細胞株及び組織データセットにおいて特定し、平均で、細胞株当たり1433個、及び組織当たり5855個の固有のMAPを有していた(
図3A、上パネル、及び
図3B)。特定は、各株間で様々であるが、特定されたMAPの数は、細胞当たりのMHC I分子の存在量と強く相関する(
図3A、下パネル、ピアソンのr=0.96)。
【0191】
細胞株と組織試料を一緒に採取した場合、合計30485個の固有のMAPが特定された。各試料のMAPレパートリー内では、ペプチドの32~68%が試料特異的であり、細胞株又は一次試料のみを比較する場合であっても、共有されるMAPは非常に少ない(
図10A~B)。この固有のMAPの大部分は、どのペプチドが細胞表面に提示され得るかに影響を及ぼす主要な要因である、試料間のHLAアレルの多様性に起因し得る(
図3C、
図7)。平均して、任意の2種類の細胞株又は任意の2種類の組織試料によって共有されるMAPの数は、それぞれ、59個又は640個のMAPである。注目すべき外れ値が存在する。組織試料S1及びS6は、2079個のMAPを共有し(そのうちの1673個は、これらの試料に固有である(
図10C))、それらのそれぞれのMHC I免疫ペプチドームの3分の1より多くを表している(
図10D)。2種類の組織間のMAPレパートリーにおける次に近い類似性は、それらのレパートリーの21%に対応する、2種類のMSI組織(S5及びS6)によって共有される1328個のMAPである。細胞株におけるMAP特定の減少は、これらの比較を、より顕著ではないものにする。例えば、HCT116及びRKOは、ほとんどのMAPを共有するが、これらのペプチドは、それらのMAPの10%未満を表し、それらのより大きなペプチドレパートリーの特徴である可能性が高い(
図10C)。対照的に、COLO205及びSW620は、それらの免疫ペプチドームのほぼ5分の1である152個のMAPを共有する。
【0192】
これらの比較を文脈に当てはめるために、試料のHLAアレルを再び考慮することができる。S1及びS6によって共有される2079個のMAPのうち、1542個のMAPは、両方の試料において同じアレルに結合すると予測され、これらの症例の93%より多くにおいて、そのアレルは、HLA-B*07:02である。同様に、COLO205及びSW620によって共有される152個のMAPのうち136個は、同じアレルによって結合されており、そのアレルは、これらの症例のうちの113症例において、HLA-A*02:01である。したがって、試料のMHC I免疫ペプチドームは、主にHLAレパートリーによって影響を受ける。
【0193】
遺伝子レベルでは、8000個を超える固有の供給源遺伝子に由来するペプチドが特定され、それぞれ、細胞株及び組織試料当たり平均1014個及び3168個の供給源遺伝子を有していた(
図11A、上のパネル)。各試料において特定された供給源遺伝子の数は、特定されたMAPの数と高度に相関する(
図11A、下パネル)。所与の免疫ペプチドームにおける供給源遺伝子のおよそ6~14%は、試料特異的であり(
図11B)、これは、試料特異的な生物学的特徴に起因し得るか、又は免疫ペプチドームの不完全なサンプリングを反映し得る(
図11E)。細胞表面に提示される全てのMAPを特定することは期待されておらず、各試料における供給源遺伝子の大部分は、単一のMAPにのみ帰属可能であるため、追加の供給源遺伝子がMAPレパートリーに寄与し、単に検出されないことは、ほぼ確実である。任意の2種類の組織試料を比較する場合、それらは平均して48%の供給源遺伝子を共通しているが、任意の2種類の細胞株を比較すると、平均して24%の遺伝子が共有される(
図11C~E)。したがって、異なる細胞株は、供給源遺伝子レベルでは、あまり均質ではないようである。これは、組織試料がNAT、間質、浸潤細胞などに由来する供給源遺伝子を有し、一方、細胞株が単一の細胞型のみからなるため、試料組成の差を反映している可能性が高い。加えて、細胞株のMHC Iの提示が低下し、結果としてMAPの特定が減少したことは、より少ない供給源遺伝子が試料であったことを意味し、重複の可能性が低下する。それにもかかわらず、全ての試料は、免疫ペプチドームレベルと比較して、供給源遺伝子レベルの方がより類似しており、試料特異的MAPは、共有された供給源遺伝子に由来している。
【0194】
MHC I免疫ペプチドームのゲノム起源の概要を取得し、供給源遺伝子の共有性質を調査するために、細胞株において特定された全ての供給源遺伝子、及び4種類以上の組織で特定されたものに対してGO term分析を行った。細胞株と組織との間のいくつかの共通の特徴は、RNA代謝、リボ核タンパク質複合体バイオジェネシス、翻訳、及びストレスに対する細胞応答に関与する遺伝子の有意な濃縮を含め、免疫ペプチドームレベルで検出可能である(
図3D)。したがって、ペプチドレパートリーに大きな影響を与えるHLAアレルの大きな多様性、及び細胞株における低いMAP特定を含む、細胞株と組織試料との間の両方の不均一性にもかかわらず、どの遺伝子がMHC I免疫ペプチドームに寄与しているかという点で著しい類似性がある。
【0195】
組織試料由来のMAPのどの割合が非コード転写産物由来であったかを調べるために、まず、各ペプチドについて、最も豊富な推定供給源転写産物を決定した(Ensembl Annotation 99)。がん特異的データベースからのペプチドについて、MCSをゲノム上にマッピングし、その位置で最も多く発現された転写産物を決定した(方法セクションの「RNA-SeqデータにおけるMAPコード配列の定量化」を参照されたい)。したがって、平均して、組織試料由来のMAPの95.3%がタンパク質コード転写産物(すなわち、UTR又はCDR)由来であることが判定された(
図3E、左パネル)。これらのペプチドは、遺伝子間配列に由来する可能性が高いため、アノテーションされていないRNA転写産物に由来するペプチドの2.8%が含まれる場合、ペプチドのおよそ4.2%は、非コード領域に由来する。全ての非コードMAPのおよそ3分の1(アノテーションされていない転写産物からのものを含む)は、ナンセンス媒介性分解転写産物に由来し、それらの1%未満は、lncRNA、ノンストップ分解産物、保持されたイントロン、又はプロセシングされた転写産物(オープンリーディングフレームを含まない転写産物)に由来する(
図3E、右パネル)。
【0196】
実施例5:CRCにおける腫瘍特異的抗原及び腫瘍関連抗原の特定
30,000個を超える固有のMAPの特定の後に、ペプチドコード配列をフィルタリングして、それぞれ細胞株及び一次試料について、がんにおいて少なくとも10倍過剰発現され、プールされたmTEC試料又は一致したNATにおいて2rphm未満発現されたものを選択した。急性骨髄性白血病(AML)における最近の免疫ペプチドーム研究は、RPHM<8.55のMCSが、MAPを生成する確率が5%未満であることを示した(18)。次いで、RNAデータにおけるMAPコード配列を定量化し、mTEC及び他の正常組織(GTEx)において8.55rphm未満で発現したもののみを保持した。残りのペプチドの手動の検証に続いて、ペプチドは、腫瘍において少なくとも10倍過剰発現され、mTEC(及び組織の場合にはNAT)において0.2kphm未満発現された場合、異常に発現したTSA(aeTSA)として分類された。MAPもまた、がんにおいて少なくとも10倍過剰発現されたが、mTEC及び/又はNATにおけるそれらの発現が0.2kphmを超えていた場合、TAAとして分類された。
【0197】
CRC由来細胞株におけるTSA特定は、おそらく部分的には低いMAP特定に起因して、相対的に不十分であったが、一次組織試料当たり平均して3個のTSAが特定された(
図4A)。全体として、CRC由来細胞株で1個の推定TSAが特定され、一次組織で18個の推定TSAが特定され、各試料からのTSA収量は、特定されたMAPの数と相関した(ピアソンのr=0.76)(
図12)。これらのうち、およそ3分の1は、コード領域に由来したが、特定された推定TSAの大部分は、非コード領域に由来した(
図4B)。コード領域由来のTSAのうち、2つは、エキソンフレームシフト配列に由来する非カノニカルリーディングフレーム由来であり、別の2つは、MSS組織S2及びS3において特定された変異TSAであった(
図4A及び4B)。非コードTSAのうち、全てが異常に発現し、大部分は、イントロン又は遺伝子間領域に由来し、より少ない数が、5’UTR、3’UTR、又はlncRNAに由来する(
図4B)。9個のaeTSA(5個のイントロン、3個の遺伝子間、1個のlncRNA)の配列は、ERE配列と重複する(表4)。EREのユビキタスな性質に起因して、異常なERE発現に由来するTSAは、腫瘍によって潜在的に共有され、免疫原性であることが示されている(61、62)。注目すべきことに、推定TSAのいずれも、共有されるMAPの割合が高い試料であっても、複数の試料間で共有されなかった。しかしながら、COL11A1の同じ転写産物(1つのエキソンフレームシフト及び1つの5’UTR)に由来する異なる組織で2つの固有のTSAが特定され、これは最近、CRCの発症及び予後に役割を果たすことが示された(63)。他のTSA源遺伝子の大部分は、CRCにおいて生物学的に関連することも示されている(表5)。
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表10-1】
【表10-2】
【0198】
主な目的は、CRCにおける推定TSAを特定することであったが、CRC組織試料において平均で6.33個のTAAも特定されたが、CRC由来細胞株においては特定されなかった(
図4C)。主に非コード推定TSAとは対照的に、特定されたTAAの大部分は、カノニカルコードエキソン配列に由来し、少数のみが、イントロン、遺伝子間配列、又はlncRNAに由来していた(
図4D)。2つの非カノニカルTAAを、ERE配列によって重複させた(表4)。注目すべきことに、4つの別個のTAAが、1つより多い試料において特定され、1つのTAAが、3つの組織において特定された。これらの繰り返されたTAAは全て、カノニカルエキソンに由来し、供給源転写産物は、ASPM、MKI67、DIAPH3、MMP12、NOS2、及びSPC25に由来し、これらの全てが、がんとの関連性を示されている(表6)。
【表11-1】
【表11-2】
【0199】
MSI組織において、TSA及びTAAの両方の平均を上回る数を特定することが当初期待された。このことはS5では当てはまったが、他のMSI組織では当てはまらなかった(
図4A及び4C)。このことは、MSIsensorの結果に反映されるように、S6が、より低い「程度」の不安定性を有することに起因する可能性がある(表3)。更に、特定されたTSAの最多数を有する試料は、S2(MSS組織)であった。したがって、試料当たりのTSA及びTAAの収量は、MSIステータスに関係なく、本研究の範囲外の腫瘍の他の固有の生物学的特徴に起因する可能性があるようである。
【0200】
推定TSA又はTAAのうちのいずれかが以前に特定されているかどうかを決定するために、ペプチド配列が、Immune Epitope Database(IEDB)、HLA Ligand Atlas(64)、及びLoeffler et al.2018(8)及びNewey et al.2019(15)からCRCにおける腫瘍抗原を特定しようと試みた2つの以前の刊行物で報告されたかどうかを検証した。注目すべきことに、推定aeTSA、mTSA、又は非カノニカルTAAのいずれも、これらの資料のいずれにおいても以前に報告されていない。特定された26個の推定カノニカルTAAのうち、24個が、IEDB、Loeffler et al 2018(PXD009602)、Newey et al 2019(PXD014017)、又はこれら3つのいくつかの組み合わせで報告されていた(
図4E)。これらのうちの8個は、HLA Ligand Atlasでも報告されており、そのうちの1個は、健康な結腸組織において具体的に示されている。興味深いことに、これらの以前の刊行物で以前に特定されたTAAはいずれも腫瘍抗原として報告されておらず、逆に、Loffler et al.で報告された目的の12この腫瘍抗原のうちの6個は、本研究の免疫ペプチドームでも特定されたが、それらは、ほとんどの場合、NATにおける高い発現に起因して、TSA又はTAAとみなされるための特定パイプラインで確立された閾値を超えるものではなかった(表7A)。したがって、主に非コード領域に由来する新規の結腸直腸がんTSA、及び主にコードTAAの選択(そのうちのいくつかは、MAPとして以前に報告されているが、TAAとしてのそれらの生物学的関連性の文脈では報告されていない)が、本研究で特定されている。表7B及び7Cは、本研究でそれぞれ特定されたTSA及びTAAを示す。
【表12】
【表13】
【表14-1】
【表14-2】
【表14-3】
【0201】
実施例6:推定腫瘍特異的抗原及び腫瘍関連抗原の検証
推定TSA及びTAAの特定に続いて、全てのTSA及び11個のTAAのサブセットの検証が行われ、これらは、合成ペプチドによる検証の前に、マッチしたNATに対する、がんにおける良好な初期TMT強度比及び前駆体イオン割合に基づいて選択された。まず、TPMにおいて、一致したNATと比較した、それらのそれぞれの腫瘍試料における供給源転写産物の発現、及びCRC/NAT試料におけるその転写産物の平均(mean average)を研究した(
図5A)。この分析は、当然、遺伝子間領域に由来するペプチドを含まない。それらが特定された試料中の推定TSA及びTAAの供給源転写産物の平均log2FCは、それぞれ3.6及び3.2であった。aeTSAの供給源転写産物が腫瘍よりもNATにおいてより豊富であるいくつかの場合(S2、S6)が存在するが、これは、転写産物全体の全体的な豊富さのみを反映しており、ペプチドコード配列は、実際には、がんの方がより豊富である。これは、ペプチドコード領域が完全に不存在であるか、又はNATにおいて低い発現であるが、がん組織においてより高度に発現される、aeTSAについても当てはまった。
【0202】
推定腫瘍抗原の特異性を評価するために、Genotype-Tissue Expressionプロジェクト(GTEx)によって提供される健康な組織の大規模なデータセットにおけるペプチドコード配列の平均発現を決定した(
図5B)。TSA配列は、精巣において閾値を上回って発現されるS2で特定されるaeTSAであるRIGGVGVEKを除いて、任意の健康な組織において8.55rphmを上回って発現されない(
図5B)。このことは、このTSAが、雄性生殖細胞で発現されるが、がんでも異常に発現され得るaeTSAの一種であるがん精巣抗原(CTA)としても分類され得ることを示唆する。精巣にMHC Iが存在しないことに起因して、これらの抗原も、がん免疫療法の有望な候補である(65)。この推定TSAは、LY6G6F-LY6G6Dエキソンフレームシフトである。これらの遺伝子は、以前にCTAとして報告されていないが、同じ遺伝子ファミリーの別のメンバーであるLY6Kは、肺がん及び食道がんにおけるCTAとして報告されている(66)。TAA発現は、健康な組織において閾値未満であったが、食道及び横行結腸においてより高くなる傾向があった。これらのペプチドのうちの7つはまた、精巣において閾値を上回って発現した。
【0203】
実施例7:TSA及びTAAのがん特異性及び免疫原性
推定TSA及びTAAを、それらに対応する合成ペプチドを用いてMSによって検証した。これらのTAAを、一致したNATに対する、がんにおける望ましい初期TMT強度比及び前駆体イオン割合に基づいて選択した。これらの候補は全て、合成ペプチドのMS/MSと十分に相関したMS/MSを有し、ピアソン相関スコアは0.6以上であった。合成ペプチドを、それぞれ10、100、及び1000fmolの濃度でTMT10plex-129N、130N、及び131で標識し、TMT126(NAT)及び127N(CRC)で標識した組織試料からの残りの精製MAPにスパイクした。次いで、SPS-MS3を使用して、これらの試料において目的のペプチドを定量化した。SPS-MS3の感受性の低下にもかかわらず、7個のTSA及び7個のTAAを定量化することが可能であった。良好な品質のPSMを定量化のために選択し、全てが、NATと比較して、それぞれのCRCにおいて、より豊富であった(表8)。TMT126ペプチドと比較したTMT127Nペプチドの強度の比を決定すると、TSAは、NATと比較して、CRCにおいて16.96の中央値強度の倍率変化を有し、TAAは、6.93の倍率変化を有することが明らかになった。加えて、配列RYLEKFYGLを有するTSAは、S1腫瘍においても過剰発現したが、S6についてだけ、トランスクリプトーム閾値を超えた。したがって、本研究で使用されたTSA特定方法が、NATのものよりもがん細胞の表面においてより高度に存在するTSA及びTAA配列を成功裏に特定したことを示すことが可能であった。合成ペプチドで検証されたTSA及びTAA候補は、表9A~9Bに列挙されている。
【表15-1】
【表15-2】
【0204】
表9A及び9Bは、合成ペプチドで検証されたTSA及びTAA候補を示す。
【表16】
【表17】
【0205】
他のCRC腫瘍におけるこれらのTSA及びTAAの腫瘍間分布を調べるために、The Cancer Genome Atlas(TCGA)からの151個の結腸腺がん試料におけるペプチドコード配列のlog(RPHM+1)発現をプロットした(
図6A)。抗原の共有可能性を評価するために、目的の各ペプチドについて、プールされたGTEx(n=2442)及びmTEC(n=8)試料のlog変換された(log(rphm+1))値の平均を最初に計算した。全体として、9個のTSA(53%)及び9個のTAA(100%)は、TCGA COAD腫瘍の少なくとも5%において、対応する平均したGTEx/mTEC値より10倍以上高い発現を有していた。このことは、TAAが、それらのTSA対応物よりもCOAD TCGA腫瘍の間でより頻繁に共有されることを示す。しかし、このことはまた、ほとんどのTSAが、これらの試料で高度に共有されていることを意味する。
【0206】
腫瘍抗原の特定における別の重要な考慮事項は、これらのペプチドが有効な抗腫瘍免疫応答を誘発することができるかどうかである。免疫原性のレピトープ予測は、aeTSAが、非免疫原性であると推定される1セットの胸腺ペプチドよりも有意に高い免疫原性であると予測されることを明らかにした(67)(
図6B)。加えて、aeTSAは、カノニカルTAA及びコードTA全体(コード領域に由来するTSA及びTAA)と比較して、有意により高い免疫原性スコアを有していた。実際に、これらの予測によれば、カノニカル領域由来のTAAは、胸腺ペプチドよりも有意に免疫原性が低かった(p<0.01)。これは、検証されたTAAの数が少ないことに部分的に起因する可能性がある。これらの予測を31個のTAAのセット全体で考慮した場合、このことはもはや当てはまらない(
図13)。31個のTAA全てを考慮すると、MSI TAは、胸腺ペプチドよりも免疫原性が高いと予測される一方で、MSSと比較して、MSI組織に由来するTAの予測される免疫原性の統計学的に有意な増加も存在する。
【0207】
最後に、腫瘍抗原に結合し、提示すると予測されるアレルを有する個体の割合の近似を求めた(
図6C)。試料中の抗原の多くはかなり存在量が多く、IEDB集団カバレッジツールを用いた推定は、米国の人口の80.64%が、本研究で特定されたTAに関連するアレルの少なくとも1つを発現すると予測した。
【0208】
本発明は、本明細書に上述の特定の実施形態によって説明されてきたが、添付の特許請求の範囲に定義される主題発明の趣旨及び性質から逸脱することなく、変更され得る。特許請求の範囲では、「含む」という単語は、「含むが、それに限定されない」という語句と実質的に等価である、オープンエンド用語として使用される。「a」、「an」、及び「the」という単数形は、別段文脈が明らかに指示しない限り、対応する複数の対象物を含む。
【0209】
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【配列表】
【国際調査報告】