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特表2024-535857縮合二環系誘導体の薬学的に許容される塩、結晶及びそれらの調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】縮合二環系誘導体の薬学的に許容される塩、結晶及びそれらの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 519/00 20060101AFI20240925BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C07D519/00 311
C07D519/00 CSP
A61P35/00
A61K31/519
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516905
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 CN2022119402
(87)【国際公開番号】W WO2023041061
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111089990.7
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519352757
【氏名又は名称】江▲蘇▼恒瑞医▲薬▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI PHARMACEUTICALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.7 KUNLUNSHAN ROAD, ECONOMIC AND TECHNOLOGICAL DEVELOPMENT ZONE, LIANYUNGANG, JIANGSU 222047, CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】516174208
【氏名又は名称】上海恒瑞医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】NO. 279 WENJING ROAD, MINHANG DISTRICT, SHANGHAI 200245, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】尚 ▲ティン▼▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 苗苗
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 俊然
(72)【発明者】
【氏名】杜 振▲興▼
(72)【発明者】
【氏名】王 林
(72)【発明者】
【氏名】邵 ▲啓▼云
(72)【発明者】
【氏名】▲馮▼ 君
(72)【発明者】
【氏名】▲賀▼ 峰
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB05
4C086GA13
4C086GA14
4C086GA15
4C086GA16
4C086NA03
4C086NA11
4C086ZB26
(57)【要約】
縮合二環系誘導体の薬学的に許容される塩、結晶及びそれらの調製方法を提供する。具体的には、式Iの化合物の塩酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、及びそれらの調製方法、並びに結晶を提供する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容される塩は、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩又は酒石酸塩から選択される、式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩。
【化1】
【請求項2】
式Iで表される化合物と酸根との物質量の比は、1:2~3:1から選択され、好ましくは1:1又は2:1である、請求項1に記載の式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項3】
粉末X線回折パターンは、2θ角10.6、11.4、13.6、17.6、18.2、18.8において特徴的なピークを有する、式Iで表される化合物の塩酸塩のA型結晶。
【請求項4】
粉末X線回折パターンは、2θ角10.6、11.4、13.6、15.0、17.1、17.6、18.2、18.8、20.5、22.0、27.5において特徴的なピークを有する、請求項3に記載の式Iで表される化合物の塩酸塩のA型結晶。
【請求項5】
粉末X線回折パターンは、2θ角10.6、11.0、11.4、12.3、13.6、14.3、15.0、17.1、17.6、18.2、18.8、20.2、20.5、21.3、22.0、23.0、23.7、24.4、25.0、25.4、26.1、26.6、27.5、28.3、28.7、29.4、30.4、31.4、31.9、32.2、33.3、34.9、38.1、39.9、41.0において特徴的なピークを有する、請求項3に記載の式Iで表される化合物の塩酸塩のA型結晶。
【請求項6】
粉末X線回折パターンは、図2に示された通りである、請求項3に記載の式Iで表される化合物の塩酸塩のA型結晶。
【請求項7】
粉末X線回折パターンは、2θ角9.1、11.0、14.9、16.2、17.0において特徴的なピークを有する、式Iで表される化合物のメタンスルホン酸塩のA型結晶。
【請求項8】
粉末X線回折パターンは、2θ角9.1、11.0、14.9、16.2、17.0、20.1、20.9、21.2、24.3、27.4において特徴的なピークを有する、請求項7に記載の式Iで表される化合物のメタンスルホン酸塩のA型結晶。
【請求項9】
粉末X線回折パターンは、2θ角9.1、10.1、11.0、12.2、13.6、14.9、15.4、15.8、16.2、17.0、18.0、18.6、19.3、20.1、20.9、21.2、22.2、23.1、23.6、24.3、24.5、24.9、25.0、25.2、26.0、27.4、27.7、28.8、29.4、29.8、30.2、30.8、31.3、32.1、32.8、33.8において特徴的なピークを有する、請求項7に記載の式Iで表される化合物のメタンスルホン酸塩のA型結晶。
【請求項10】
粉末X線回折パターンは、図3に示された通りである、請求項7に記載の式Iで表される化合物のメタンスルホン酸塩のA型結晶。
【請求項11】
粉末X線回折パターンは、2θ角8.9、11.0、14.9、15.7、17.0、19.7において特徴的なピークを有する、式Iで表される化合物の酢酸塩のα型結晶。
【請求項12】
粉末X線回折パターンは、2θ角8.9、11.0、14.9、15.7、17.0、19.1、19.7、20.4、23.6、23.9、27.2において特徴的なピークを有する、請求項11に記載の式Iで表される化合物の酢酸塩のα型結晶。
【請求項13】
粉末X線回折パターンは、2θ角8.9、10.3、11.0、13.6、14.9、15.7、17.0、18.1、18.6、19.1、19.7、20.4、20.8、21.3、22.2、23.6、23.9、24.9、26.0、27.2、28.3、28.7、29.0、30.8、32.4、33.6、33.9、34.5、35.3、36.4、38.4において特徴的なピークを有する、請求項11に記載の式Iで表される化合物の酢酸塩のα型結晶。
【請求項14】
粉末X線回折パターンは、図4に示された通りである、請求項11に記載の式Iで表される化合物の酢酸塩のα型結晶。
【請求項15】
粉末X線回折パターンは、7.9、8.6、10.0、10.9、11.7、13.9、14.2、14.4、15.3、16.4、17.4、17.8、19.0、20.1、21.2、21.5、22.3、23.7、24.0、24.6、25.1、26.3、27.7、28.7、29.3、30.6、30.9において特徴的なピークを有する、式Iで表される化合物の酒石酸塩のI型結晶。
【請求項16】
粉末X線回折パターンは、図5に示された通りである、請求項15に記載の式Iで表される化合物の酒石酸塩のI型結晶。
【請求項17】
前記2θ角の誤差範囲は±0.2である、請求項3~16のいずれか一項に記載の式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩の結晶。
【請求項18】
式Iで表される化合物を適量の溶媒、塩酸と混合し、撹拌して結晶化させるステップを含み、前記溶媒は、イソプロパノール、アセトニトリル、水/エタノール、酢酸イソプロピルのうちの一つ又は複数である、請求項3~6のいずれか一項に記載の式Iで表される化合物の塩酸塩のA型結晶を調製する方法。
【請求項19】
式Iで表される化合物を適量の溶媒、メタンスルホン酸と混合し、撹拌して結晶化させるステップを含み、前記溶媒は、イソプロパノール、アセトニトリル、エタノール、水/エタノール、酢酸イソプロピルのうちの一つ又は複数である、請求項7~10のいずれか一項に記載の式Iで表される化合物のメタンスルホン酸塩のA型結晶を調製する方法。
【請求項20】
式Iで表される化合物を適量の溶媒、酢酸と混合し、撹拌して結晶化させるステップを含み、前記溶媒は、イソプロパノール、アセトニトリル、水/エタノールのうちの一つ又は複数である、請求項11~14のいずれか一項に記載の式Iで表される化合物の酢酸塩のα型結晶を調製する方法。
【請求項21】
式Iで表される化合物を適量の溶媒、酒石酸と混合し、撹拌して結晶化させるステップを含み、前記溶媒は、イソプロパノール、水/エタノールのうちの一つ又は複数である、請求項15~16のいずれか一項に記載の式Iで表される化合物の酒石酸塩のI型結晶を調製する方法。
【請求項22】
(a)請求項1~2のいずれか一項に記載の式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩、又は請求項3~17のいずれか一項に記載の式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩の結晶、及び
(b)任意選択の薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤、
の成分を含む、医薬組成物。
【請求項23】
(a)請求項1~2のいずれか一項に記載の式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩、又は請求項3~17のいずれか一項に記載の式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩の結晶、及び
(b)任意選択の薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤、
を混合するステップを含む、医薬組成物の調製方法。
【請求項24】
がんを治療及び/又は予防するための医薬の調製における、請求項1又は2に記載の式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩、又は請求項3~17のいずれか一項に記載の式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩の結晶、又は請求項22に記載の組成物の使用であって、ここで、がんは、好ましくは、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、神経膠腫、膠芽腫、胃がん、卵管がん、肺がん、腹膜腫瘍、黒色腫、脳がん、食道がん、肝臓がん、膵臓がん、結腸直腸がん、肺がん、腎臓がん、子宮頸がん、皮膚がん、神経芽細胞腫、肉腫、骨がん、子宮がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、多発性骨髄腫、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、真性赤血球増加症、白血病、甲状腺腫瘍、膀胱がん及び胆嚢がんから選択される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は出願日が2021年9月17日である中国特許出願2021110899907の優先権を主張する。本出願は上記の中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
(技術分野)
本開示は、医療の技術分野に属し、縮合二環系誘導体の薬学的に許容される塩、結晶及びそれらの調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
プロテインキナーゼB(PKB、別名:AKT)は、細胞におけるPI3K/AKT/mTORシグナル伝達の中心にあり、その機能は細胞の成長、生存、分化及び代謝において重要な役割を果たしている。PI3Kシグナル伝達経路は、複数のがん遺伝子や抗がん遺伝子の発現に関与・制御しており、PI3K/AKTシグナル伝達経路の過剰活性化は、様々ながんの発生に関連していることが確認された。
【0004】
細胞内では、AKTは成長因子を含む一連のシグナルによって活性化される。細胞膜上の受容体チロシンキナーゼ(receptor tyrosine kinase)が成長因子によって活性化されると、下流のPI3Kが活性化され、ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸(phosphatidylinositol-4,5-biphosphate、PIP2)がリン酸化されて、ホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸(phosphatidylinositol-3,4,5-triphosphate、PIP3)が形成される。最後に、ホスファチジルイノシトール依存性キナーゼ1(hosphatidylinositol-dependent kinase 1、PDK1)とAKTが細胞膜に動員され、PDK1によってAKTが活性化される。PI3Kの変異及びPTENの欠失と変異は、AKTタンパク質を持続的に活性化させ、この経路が持続的に活性化される。細胞におけるAKTの主な役割は、細胞増殖を促進し、細胞を良性から悪性に転換させ、細胞の移動と浸潤を促進し、それによって腫瘍細胞の転移と播種を引き起こすことである。さらに、高活性のリン酸化AKTは、細胞のアポトーシスも阻害し、化学療法抵抗性の機序に関与し、臨床治療の効果に影響を与える。臨床統計では、活性の高いAKTを有する腫瘍が様々な腫瘍の40%以上を占めることもできる。
【0005】
AKT酵素には3つのサブタイプ(AKT1、AKT2、AKT3)があり、それらの各々は、生体内で異なる機能を持つことが様々な研究で示されている。AKT1によって活性化されたシグナル伝達経路は、主に細胞の増殖と生存を制御し、AKT2は、細胞の浸潤と遊走、さらにはインスリン調節血糖代謝経路などの機能に関与する。AKT3の遺伝子ノックアウトマウスは、胎児の脳の発達に関連する機能のみを示すが、臨床研究では、乳がんなどの様々な腫瘍でAKT3の発現量が有意に上昇することが示された。さらに、前臨床in vitro研究では、AKT1/2選択的阻害剤MK2206による長期治療において、乳がん細胞は薬剤耐性を獲得し、この薬剤耐性細胞ではAKT3の発現が有意に上昇することが示されている。
【0006】
AKTを標的とする阻害剤は、長年にわたって臨床で研究されてきた。AKT阻害剤に関する公開特許出願には、WO2006/071819、US8377937、WO2008/075109、US2010120801及びWO2009006040が含まれる。AKT1/2の選択的阻害剤であるMK2206(Merck)及びBAY1125976(Bayer)は、治療効果や毒性などの理由により、臨床的には成功していない。しかし、近年、AKT1/2/3(AKTpan)阻害剤AZD5363(AZ)及びGDC0068(Roche)が第2相臨床で画期的な結果を達成し、他の抗がん剤との併用により、トリプルネガティブ乳がん、ER+乳がん、前立腺がんの治療に有意な有効性を示している。現在、これら2つのAKT1/2/3(AKTpan)阻害剤AZD5363及びGDC0068は、第3相臨床段階に順調に進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2006/071819号
【特許文献2】米国特許第8377937号
【特許文献3】国際公開第2008/075109号
【特許文献4】米国特許公開第2010120801号
【特許文献5】国際公開第2009006040号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
出願PCT/CN2021/081033は、式Iで表される化合物を開示しており、医薬品開発のニーズを満たすためには、その薬学的に許容される塩及び対応する結晶を研究する必要がある。
【化1】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩を提供し、ここで、前記薬学的に許容される塩は、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩又は酒石酸塩から選択される。
【化2】
【0010】
選択可能な実施形態において、式Iで表される化合物と酸根との物質量の比は、1:2~3:1から選択され、好ましくは1:1及び2:1である。
【0011】
本開示は、式Iで表される化合物と酸により塩を形成する工程を含む、式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩を調製する方法をさらに提供する。選択可能な実施形態において、前記塩形成反応に使用される溶媒は、イソプロパノール、アセトニトリル、エタノール、水、酢酸イソプロピルのうちの少なくとも1つから選択される。選択可能な実施形態において、上記の薬学的に許容される塩を調製する方法は、溶媒を蒸発させるか、又は撹拌して結晶化させる工程、濾過、乾燥などの工程をさらに含む。
【0012】
本開示は、その粉末X線回折パターンが2θ角10.6、11.4、13.6、17.6、18.2、18.8において特徴的なピークを有する、式Iで表される化合物の塩酸塩のA型結晶を提供する。
【0013】
選択可能な実施形態において、前記式Iで表される化合物の塩酸塩のA型結晶の粉末X線回折パターンは、2θ角10.6、11.4、13.6、15.0、17.1、17.6、18.2、18.8、20.5、22.0、27.5において特徴的なピークを有する。
【0014】
選択可能な実施形態において、前記式Iで表される化合物の塩酸塩のA型結晶の粉末X線回折パターンは、2θ角10.6、11.0、11.4、12.3、13.6、14.3、15.0、17.1、17.6、18.2、18.8、20.2、20.5、21.3、22.0、23.0、23.7、24.4、25.0、25.4、26.1、26.6、27.5、28.3、28.7、29.4、30.4、31.4、31.9、32.2、33.3、34.9、38.1、39.9、41.0において特徴的なピークを有する。
【0015】
選択可能な実施形態において、前記式Iで表される化合物の塩酸塩のA型結晶の粉末X線回折パターンは、図2に示された通りである。
【0016】
本開示は、式Iで表される化合物を適量の溶媒、塩酸と混合し、撹拌して結晶化させるステップを含み、前記溶媒は、イソプロパノール、アセトニトリル、水/エタノール、酢酸イソプロピルのうちの一つ又は複数である、式Iで表される化合物の塩酸塩のA型結晶を調製する方法をさらに提供する。
【0017】
本開示は、その粉末X線回折パターンが2θ角9.1、11.0、14.9、16.2、17.0において特徴的なピークを有する、式Iで表される化合物のメタンスルホン酸塩のA型結晶をさらに提供する。
【0018】
選択可能な実施形態において、前記式Iで表される化合物のメタンスルホン酸塩のA型結晶の粉末X線回折パターンは、2θ角9.1、11.0、14.9、16.2、17.0、20.1、20.9、21.2、24.3、27.4において特徴的なピークを有する。
【0019】
選択可能な実施形態において、前記式Iで表される化合物の塩酸塩のA型結晶の粉末X線回折パターンは、2θ角9.1、10.1、11.0、12.2、13.6、14.9、15.4、15.8、16.2、17.0、18.0、18.6、19.3、20.1、20.9、21.2、22.2、23.1、23.6、24.3、24.5、24.9、25.0、25.2、26.0、27.4、27.7、28.8、29.4、29.8、30.2、30.8、31.3、32.1、32.8、33.8において特徴的なピークを有する。
【0020】
選択可能な実施形態において、前記式Iで表される化合物のメタンスルホン酸塩のA型結晶の粉末X線回折パターンは、図3に示された通りである。
【0021】
本開示は、式Iで表される化合物を適量の溶媒、メタンスルホン酸と混合し、撹拌して結晶化させるステップを含み、前記溶媒は、イソプロパノール、アセトニトリル、エタノール、水/エタノール、酢酸イソプロピルのうちの一つ又は複数である、式Iで表される化合物のメタンスルホン酸塩のA型結晶を調製する方法をさらに提供する。
【0022】
本開示は、その粉末X線回折パターンが2θ角8.9、11.0、14.9、15.7、17.0、19.7において特徴的なピークを有する、式Iで表される化合物の酢酸塩のα型結晶をさらに提供する。
【0023】
選択可能な実施形態において、式Iで表される化合物の酢酸塩のα型結晶の粉末X線回折パターンは、2θ角8.9、11.0、14.9、15.7、17.0、19.1、19.7、20.4、23.6、23.9、27.2において特徴的なピークを有する。
【0024】
選択可能な実施形態において、式Iで表される化合物の酢酸塩のα型結晶の粉末X線回折パターンは、2θ角8.9、10.3、11.0、13.6、14.9、15.7、17.0、18.1、18.6、19.1、19.7、20.4、20.8、21.3、22.2、23.6、23.9、24.9、26.0、27.2、28.3、28.7、29.0、30.8、32.4、33.6、33.9、34.5、35.3、36.4、37.0、37.4、38.4において特徴的なピークを有する。
【0025】
選択可能な実施形態において、前記式Iで表される化合物の酢酸塩のα型結晶の粉末X線回折パターンは、図4に示された通りである。
【0026】
本開示は、式Iで表される化合物を適量の溶媒、酢酸と混合し、撹拌して結晶化させるステップを含み、前記溶媒は、イソプロパノール、アセトニトリル、水/エタノールのうちの一つ又は複数である、式Iで表される化合物の酢酸塩のα型結晶を調製する方法をさらに提供する。
【0027】
本開示は、その粉末X線回折パターンが7.9、8.6、10.0、10.9、11.7、13.9、14.2、14.4、15.3、16.4、17.4、17.8、19.0、20.1、21.2、21.5、22.3、23.7、24.0、24.6、25.1、26.3、27.7、28.7、29.3、30.6、30.9において特徴的なピークを有する、式Iで表される化合物の酒石酸塩のI型結晶をさらに提供する。
【0028】
選択可能な実施形態において、前記式Iで表される化合物の酒石酸塩のI型結晶の粉末X線回折パターンは、図5に示された通りである。
【0029】
本開示は、式Iで表される化合物を適量の溶媒、酒石酸と混合し、撹拌して結晶化させるステップを含み、前記溶媒は、イソプロパノール、水/エタノールのうちの一つ又は複数である、式Iで表される化合物の酒石酸塩のI型結晶を調製する方法をさらに提供する。
【0030】
本開示から得られた結晶の構造決定及び結晶の研究は、粉末X線回折パターン(XRPD)及び示差走査熱量分析(DSC)によって実行される。
【0031】
本開示における結晶の結晶化方法は、例えば、揮発結晶化、冷却結晶化、又は室温結晶化などの通常の方法である。
【0032】
本開示の塩又は結晶の調製方法で使用される出発原料は、式Iで表される化合物の任意の形態であってもよく、具体的な形態としては、非晶質、任意の結晶、水和物、溶媒和物などが含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
本開示は、(a)式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩、又は式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩の結晶、及び(b)任意選択の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤の成分を含む、医薬組成物をさらに提供する。
【0034】
本開示は、(a)式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩、又は式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩の結晶、及び(b)任意選択の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を混合するステップを含む、医薬組成物の調製方法をさらに提供する。
【0035】
本開示は、がんを治療及び/又は予防するための医薬の調製における、上記の式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩、又は式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩の結晶、又は上記の組成物の使用をさらに提供し、ここで、がんは、好ましくは、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、神経膠腫、膠芽腫、胃がん、卵管がん、肺がん、腹膜腫瘍、黒色腫、脳がん、食道がん、肝臓がん、膵臓がん、結腸直腸がん、肺がん、腎臓がん、子宮頸がん、皮膚がん、神経芽細胞腫、肉腫、骨がん、子宮がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、多発性骨髄腫、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、真性赤血球増加症、白血病、甲状腺腫瘍、膀胱がん及び胆嚢がんから選択される。
【0036】
本出願の明細書及び特許請求の範囲において、特に明記しない限り、本明細書で使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有する。しかし、本開示をよりよく理解するために、以下でいくつかの関連用語の定義及び説明を提供する。さらに、本出願において提供される用語の定義及び説明が当業者によって一般に理解される意味と矛盾する場合には、本出願において提供される用語の定義及び説明が優先されるものとする。
【0037】
本開示に記載の「粉末X線回折パターン又はXRPD」は、ブラッグの式2d sinθ=nλ(式中、λはX線の波長であり、回折次数nは任意の正の整数であり、一般的には1次の回折ピーク、n=1をとる)に従って、X線が視射角θ(入射角の補角、ブラッグ角とも呼ばれる)で結晶又は部分結晶試料のある格子面の間隔dを有する原子面に入射した場合、ブラッグ式を満たすことにより測定される粉末X線回折パターン群を指す。
【0038】
本開示に記載の「粉末X線回折パターン又はXRPD」は、粉末X線回折計においてCu-Kα放射線を使用することによって得られるパターンである。
【0039】
本開示に記載の「示差走査熱量分析又はDSC」は、熱効果に関連するすべての物理的及び化学的変化を特徴付け、試料の相変化情報を得るために、試料の昇温又は恒温のプロセスで試料と参照物質との間の温度差及び熱流差を測定することを指す。
【0040】
本開示に記載の「熱重量分析又はTGA」は、プログラムされた温度制御下で、温度又は時間による試料の質量変化を連続的に測定することを指す。
【0041】
本開示に記載の「2θ又は2θ角度」は回折角を指し、θはブラッグ角であり、単位は°又は度であり、2θの誤差範囲は±0.3又は±0.2又は±0.1である。
【0042】
本開示に記載の「格子面間隔又は格子面間隔(d値)」は、隣接する2つの格子点を結ぶ3つの非平行な単位ベクトルa、b、cを選択する空間格子を指し、それらは格子を並置された平行六面体単位に分割し、格子面間隔と呼ばれる。空間格子は、直方体ユニットを結ぶ決定された線に従って分割され、空間格子又は結晶格子と呼ばれる一連の直線グリッドが得られる。格子と結晶格子は、それぞれ幾何学的な点と線を使用して結晶構造の周期性を反映し、異なる結晶面は、異なる面間間隔(即ち、2つの隣接する平行な結晶面間の距離)を有する。単位はÅ又はオングストロームである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】式Iで表される化合物の非晶質のXRPDパターンである。
図2】実施例2の式Iで表される化合物の塩酸塩のA型結晶のXRPDパターンである。
図3】実施例6の式Iで表される化合物のメタンスルホン酸塩のA型結晶のXRPDパターンである。
図4】実施例10の式Iで表される化合物の酢酸塩のα型結晶のXRPDパターンである。
図5】実施例13の式Iで表される化合物の酒石酸塩のI型結晶のXRPDパターンである。
図6】実施例2の式Iで表される化合物の塩酸塩のA型結晶のDSCパターンである。
図7】実施例6の式Iで表される化合物のメタンスルホン酸塩のA型結晶のDSCパターンである。
図8】実施例10の式Iで表される化合物の酢酸塩のα型結晶のDSCパターンである。
図9】実施例13の式Iで表される化合物の酒石酸塩のI型結晶のDSCパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、実施例により本開示をより詳細に説明するが、本開示の実施例は、本開示の技術的解決策を説明するためにのみ使用され、本開示の実質と範囲を限定するものではない。
【0045】
実験で使用される機器の試験条件:
【0046】
化合物の構造は、核磁気共鳴(NMR)又は/及び質量分析(MS)によって決定される。
【0047】
NMRシフト(δ)は10-6(ppm)の単位で示される。NMRの測定は、Bruker AVANCE-400核磁気計又はBruker AVANCE NEO 500Mを使用し、測定溶媒は重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d)、重水素化クロロホルム(CDCl)、重水素化メタノール(CDOD)であり、内部標準はテトラメチルシラン(TMS)である。
【0048】
MSの測定は、Agilent 1200/1290 DAD-6110/6120 Quadrupole MS液体クロマトグラフィー質量分析計(メーカー:Agilent、MSモデル:6110/6120 Quadrupole MS)、waters ACQuity UPLC-QD/SQD(メーカー:waters、MSモデル:waters ACQuity Qda Detector/waters SQ Detector)、THERMO Ultimate 3000-Q Exactive(メーカー:THERMO、MSモデル:THERMO Q Exactive)を使用する。
【0049】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析は、Agilent HPLC 1200DAD、Agilent HPLC 1200VWD及びWaters HPLC e2695-2489高速液体クロマトグラフを使用する。
【0050】
キラルHPLC分析測定は、Agilent 1260 DAD高速液体クロマトグラフを使用する。
【0051】
分取高速液体クロマトグラフィー調製は、Waters 2767、Waters 2767-SQ Detecor2、Shimadzu LC-20AP及びGilson-281分取クロマトグラフを使用する。
【0052】
キラル分取は、Shimadzu LC-20AP分取クロマトグラフを使用する。
【0053】
CombiFlashフラッシュクロマトグラフィーは、Combiflash Rf200(TELEDYNE ISCO)を使用する。
【0054】
XRPDは粉末X線回折検出であり、測定はBRUKER D8 X線回折計を使用して実行され、具体的な収集情報は単色Cu-Kα線(λ=1.5406)、電圧:40kV、電流:40mAである。スキャンモード:θ/2θ、スキャン範囲(2θ範囲):3~45°。
【0055】
DSCは示差走査熱量測定であり、測定はMETTLER TOLEDO DSC 3+示差走査熱量計を採用し、昇温速度は10℃/minであり、具体的な温度範囲は対応するパターン(多くは25~200又は25~300℃)を参照し、窒素パージ速度は50mL/minである。
【0056】
TGAは熱重量分析であり、測定はMETTLER TOLEDO TGA 2熱重量分析装置を使用し、昇温速度は10℃/minであり、具体的な温度範囲は対応するパターン(多くは25~350℃)を参照し、窒素パージ速度は50mL/minである。
【0057】
DVSは動的水分吸着測定であり、測定はSMS DVS Advantageを使用し、25℃で、湿度変化は50%~95%~0%~95%~50%であり、ステップは10%(最後のステップは5%)(具体的な湿度範囲は対応するパターンを基準とし、ここではほとんどの使用方法を記載)であり、判断基準はdm/dtが0.002%以下である。
【0058】
イオンクロマトグラフィー検出:機器:米国DIONEX INTERGRIONイオンクロマトグラフ、検出方法:導電率、分離カラム:IonPac AS27、溶離液:30mMのKOH、流速:1.5mL/min。
【0059】
薄層クロマトグラフィーシリカゲルプレートは煙台黄海HSGF254又は青島GF254シリカゲルプレートを使用し、薄層クロマトグラフィー(TLC)は0.15mm~0.2mmの仕様のシリカゲルプレートを使用し、製品の薄層クロマトグラフィー分離精製は0.4mm~0.5mmの仕様を使用する。
【0060】
シリカゲルカラムクロマトグラフィーでは、一般的に煙台黄海シリカゲル200~300メッシュのシリカゲルを担体として使用する。
【0061】
平均キナーゼ阻害率及びIC50値の測定は、NovoStarマイクロプレートリーダー(BMG社、ドイツ)を使用する。
【0062】
本開示の既知の出発原料は、当技術分野で既知の方法によって合成することができ、又はABCR GmbH & Co. KG、Acros Organics、Aldrich Chemical Company、Accela ChemBio Inc、Shanghai Darui Fine Chemicals Co., Ltd.などの企業から購入することができる。
【0063】
実施例で特に明記しない限り、反応はすべてアルゴンガス雰囲気下又は窒素ガス雰囲気下で実行することができる。
【0064】
アルゴンガス雰囲気又は窒素ガス雰囲気は、反応フラスコを容積約1Lのアルゴンガス又は窒素ガスのバルーンに接続することを指す。
【0065】
水素ガス雰囲気は、反応フラスコを容積約1Lの水素ガスのバルーンに接続することを指す。
【0066】
加圧水素化反応は、Parr 3916EKX水素化装置及びClear Blue QL-500水素発生装置又はHC2-SS水素化装置を使用する。
【0067】
水素化反応は通常、真空にし、水素ガスを充填し、3回繰り返す。
【0068】
マイクロ波反応は、CEM Discover-S 908860マイクロ波反応器を使用する。
【0069】
実施例で特に明記しない限り、溶液は水溶液を指す。
【0070】
実施例で特に明記しない限り、反応温度は室温であり、20℃~30℃である。
【0071】
実施例における反応プロセスのモニタリングは薄層クロマトグラフィー(TLC)を使用し、反応に使用される展開剤、化合物の精製に使用されるカラムクロマトグラフィーの溶離剤の系と薄層クロマトグラフィーの展開剤の系は、C:石油エーテル/酢酸エチル系を含み、溶媒の体積比は化合物の極性によって調節され、トリエチルアミンや酢酸などの塩基性又は酸性の試薬を少量加えて調節されてもよい。
【0072】
実施例1:式Iの化合物の調製
【0073】
4-((1R,5S)-8-(S)-2-(4-クロロフェニル)-3-(イソプロピルアミノ)プロパノイル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)-5,5-ジメチル-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン I
【化3】
【化4】
【0074】
ステップ1
tert-ブチル(1R,5S)-3-(5,5-ジメチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキシレート 1c
tert-ブチル(1R,5S)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキシレート 1b(250mg、1.18mmol、Bide Pharmatech CO., Ltd.)、4-クロロ-5,5-ジメチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン1a(233mg、1.18mmol、Bide Pharmatech CO., Ltd.)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(457mg、3.53mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(5mL)に溶解させ、120℃で一晩撹拌した。室温まで冷却させ、減圧濃縮し、展開剤の系Cを使用してカラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物1c(220mg)を得、収率は50.0%であった。
MS m/z (ESI): 374.1 [M+1]。
【0075】
ステップ2
4-((1R,5S)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)-5,5-ジメチル-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン 1d
化合物1cを塩化水素のジオキサン溶液(4M、5mL)に溶解させ、室温で1時間撹拌し、反応溶液を減圧濃縮して、粗生成物の標題化合物1dを得、次のステップの反応に直接に使用した。
MS m/z (ESI): 274.1 [M+1]。
【0076】
ステップ3
tert-ブチル((S)-2-(4-クロロフェニル)-3-((1R,5S)-3-(5,5-ジメチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル)-3-オキソプロピル)(イソプロピル)カルバメート 1f
化合物1d(160mg、585μmol)、(S)-3-((tert-ブトキシカルボニル)(イソプロピル)アミノ)-2-(4-クロロフェニル)プロパン酸 1e(200mg、585μmol、「J. Med. Chem. 2012, 55, 8110-8127」に開示された方法により調製)を5mLのジクロロメタンに溶解させ、2-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N´,N´-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(334mg、878μmol)、トリエチルアミン(237mg、2.34mmol)を加え、反応系を一晩撹拌した。反応溶液を酢酸エチル(20mL)で希釈し、水で洗浄し、減圧濃縮して、粗生成物の標題化合物1f(130mg)を得、次のステップの反応に直接に使用した。
MS m/z (ESI): 597.1 [M+1]。
【0077】
ステップ4
4-((1R,5S)-8-(S)-2-(4-クロロフェニル)-3-(イソプロピルアミノ)プロパノイル)-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル)-5,5-ジメチル-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-オン I
粗生成物の化合物1fを酢酸エチル(2mL)に溶解させ、室温で攪拌しながら塩化水素のジオキサン溶液(4M、5mL)を加え、室温で1時間攪拌し、反応溶液を減圧濃縮し、分取・精製して、標題化合物I(30mg)を得、収率は27.7%であった。
MS m/z (ESI): 497.2 [M+1]。
H NMR (600 MHz, CDOD): δ 8.21 (d, 1H), 7.41-7.35 (m, 4H), 4.83-4.82 (m, 1H), 4.56-4.43 (m, 2H), 4.34-4.27 (m, 2H), 4.17-4.09 (m, 1H), 3.90-3.87 (m, 1H), 2.99-2.97 (m, 1H), 2.91-2.87 (m, 1H), 2.82-2.77 (m, 1H), 2.11-2.07 (m, 1H), 2.01-1.99 (m, 1H), 1.96-1.90 (m, 1H), 1.86-1.80 (m, 1H), 1.74-1.66 (m, 2H), 1.51-1.50 (m, 2H), 1.41 (s, 2H), 1.32 (s, 2H), 1.13-1.09 (m, 6H)。
【0078】
粉末X線回折検出により、当該生成物は非晶質であり、そのXRPDパターンは図1に示された通りである。
【0079】
試験例1:生物学的評価
下記の方法は、in vitroにおけるAKT1/AKT2/AKT3キナーゼ活性に対する式Iの化合物の阻害効果を測定するために使用される。実験方法を以下に簡単に説明する:
【0080】
AKT1(Invitrogen、P2999)、AKT2(Invitrogen、PV3184)、及びAKT3(Invitrogen、PV3185)の酵素活性は、KinEASE-STKS3キット(Cisbio、62ST3PEC)を使用して測定された。まず、DMSOを使用して、試験化合物を500μMから3倍勾配希釈し、合計11の濃度ポイントであった。キット内の5×緩衝液を1×緩衝液に希釈し、DTT(Sigma、43816-10ML)とMgClを加えて、1mMのDTTと5mMのMgClを含む緩衝液にした。後で使用するために化合物を1×緩衝液で20倍に希釈した。AKT1/AKT2/AKT3キナーゼを1×緩衝液で希釈して酵素溶液を得た。ATP(Invitrogen、PV3227)とキット内のS3-biotinを1×緩衝液で希釈して、後で使用する基質ATP混合溶液を得た。384ウェルプレート(Corning、4513)の各ウェルに2μLの酵素溶液と4μLの化合物溶液を加え、室温で30分間培養した後、4μLのATPとS3-biotinとの混合溶液を加え、室温で90分間培養した。AKT1酵素反応の条件は、酵素の最終濃度が2nMであり、ATPの最終濃度が10μMであり、S3-biotinの最終濃度が2μMであった。AKT2酵素反応の条件は、酵素の最終濃度が5nMであり、ATPの最終濃度が10μMであり、S3-biotinの最終濃度が2μMであった。AKT3酵素反応の条件は、酵素の最終濃度が0.4nMであり、ATPの最終濃度が45μMであり、S3-biotinの最終濃度が2μMであった。キット内の検出緩衝液(detection buffer)を使用してS3-cryptate及びStreptavidin-XL665を希釈し、検出溶液を調製した。培養した後、各ウェルに10μLの検出溶液を加え、S3-cryptateの最終濃度はstock希釈の200倍であり、Streptavidin-XL665の最終濃度は125nMであった。室温で60分間培養し、多機能マイクロプレート検出器(BMG Labtech、PHERAstar FS)のHTRFモジュールを使用して、337nm励起、650nm及び620nm発光のシグナル値を読み取り、読み取り値の比に10000を乗じてratio値を得、Graphpad Prismソフトウェアを使用して、化合物の濃度とratio値に基づいて用量効果曲線を描き、化合物の阻害活性のIC50値を計算した。
【0081】
実験データ
AKT1/AKT2/AKT3酵素に対する式Iの化合物の阻害活性は、上記の試験によって測定することができ、測定されたIC50値は表1に示された通りである。
【0082】
【表1】
【0083】
結論:式Iの化合物は、AKT1/AKT2/AKT3酵素に対していずれも良好な阻害効果を有する。
【0084】
式Iの化合物の薬物動態試験
【0085】
1.要約
Balb/cヌードマウスを試験動物として使用し、LC/MS/MS法を使用して、試験化合物を胃内投与(i.g.)した後の異なる時点におけるヌードマウスの血漿中の薬物濃度を測定した。ヌードマウスにおける式Iの化合物の薬物動態学的挙動を研究し、その薬物動態学的特徴を評価した。
【0086】
2.試験スキーム
【0087】
2.1 試験薬
式Iの化合物。
【0088】
2.2 試験動物
18匹のメスのBalb/cヌードマウス、2群に分け、Vital River Laboratory Animal Technology Co., Ltd.から購入した。
【0089】
2.3 薬物の調製
所定量の薬物を秤量し、化合物に99.8%の(0.5%のメチルセルロース)を加え、次に0.2%のTweenを加え、超音波で処理して、懸濁液を調製し、撹拌して投与した。
【0090】
2.4 投与
ヌードマウスにそれぞれ50mg/kg又は100mg/kgの投与量、0.2mL/10gの投与体積で胃内投与した。
【0091】
3.操作
ヌードマウスに試験化合物を胃内投与し、投与前及び投与後0.25、0.5、1.0、2.0、4.0、6.0、8.0、11.0、24.0時間後に0.1mLの血液を採取し、EDTA-K2抗凝固チューブに入れ、10000rpmで1分間(4℃)遠心分離し、1時間以内に血漿を分離し、試験するまで-20℃で保存した。採血から遠心分離までのプロセスは氷浴条件下で実行された。
【0092】
異なる濃度の薬物を胃内投与した後のヌードマウスの血漿中の試験化合物の含有量を測定した:投与後の各時点のヌードマウスの血漿20μlを採取し、50μLの内部標準溶液(カンプトテシン100ng/ml)、200μLのアセトニトリルを加え、5分間ボルテックス混合し、10分間遠心分離し(3700rpm)、血漿試料から1μLの上清液を採取してLC/MS/MS分析を実行した。
【0093】
4.薬物動態パラメータの結果
結果は表2に示された通りである。
【0094】
【表2】
【0095】
結論:式Iの化合物は良好な薬物動態学的吸収を有し、用量が増加するにつれて、それに応じて薬物動態学的吸収も増加する。
【0096】
ラットにおける式Iの化合物の薬物動態試験
【0097】
1.要約
SDラットを試験動物として使用し、LC/MS/MS法を使用して、試験化合物を注射(i.v.)した後の異なる時点におけるラットの血漿中の薬物濃度を測定した。ラットにおける式Iの化合物の薬物動態学的挙動を研究し、その薬物動態学的特徴を評価した。
【0098】
2.試験スキーム
【0099】
2.1 試験薬
式Iの化合物。
【0100】
2.2 試験動物
8匹のSDラット(半分がオス、半分がメス)を2群に分け、Vital River Laboratory Animal Technology Co., Ltd.から購入した。
【0101】
2.3 薬物の調製
所定量の薬物を秤量し、5%のDMSO、5%のTween 80及び90%の生理食塩水を加えて透明な溶液を調製した。
【0102】
2.4 投与
ラットにそれぞれ1mg/kgの投与量、5mL/kgの投与体積で注射投与した。
【0103】
3.操作
ラットに試験化合物を注射投与し、投与前及び投与後5分、0.25、0.5、1.0、2.0、4.0、8.0、11.0、24.0時間後に眼窩から0.2mLの血液を採取し、EDTA-K2抗凝固チューブに入れ、10000rpmで1分間(4℃)遠心分離し、1時間以内に血漿を分離し、試験するまでに-20℃で保存した。採血から遠心分離までのプロセスは氷浴条件下で実行された。
【0104】
異なる濃度の薬物を注射により投与した後のラットの血漿における試験化合物の含有量を測定した:投与後の各時点のラットの血漿25μlを採取し、50μLの内部標準溶液(カンプトテシン100ng/ml)、200μLのアセトニトリルを加え、5分間ボルテックス混合し、10分間遠心分離し(3700rpm)、血漿試料から3μLの上清液を採取してLC/MS/MS分析を実行した。
【0105】
4.薬物動態パラメータ
結果は表3に示された通りである。
【0106】
【表3】
【0107】
結論:式Iの化合物は良好な薬物動態学的特性を有する。
【0108】
実施例2 式Iの化合物の塩酸塩の調製
約10mgの式Iで表される化合物を秤量し、100μLのイソプロパノールを加え、撹拌して透明に溶解させ、2Mの塩酸溶液11μLを加え、撹拌して結晶化させ、遠心分離し、真空乾燥させて、生成物を得た。粉末X線回折検出により、当該生成物をA型結晶と定義し、XRPDパターンは図2に示された通りであり、その特徴的なピーク位置は表4に示された通りである。イオンクロマトグラフィー測定により、塩化物イオンの含有量が6.22%であった。DSCパターンは図6に示された通りである。
【0109】
【表4】
【0110】
実施例3 式Iの化合物の塩酸塩の調製
約10mgの式Iで表される化合物を秤量し、100μLのアセトニトリルを加え、撹拌して透明に溶解させ、2Mの塩酸溶液11μLを加え、撹拌して結晶化させ、遠心分離し、真空乾燥させて、生成物を得た。粉末X線回折検出により、当該生成物はA型結晶であった。
【0111】
実施例4 式Iの化合物の塩酸塩の調製
約10mgの式Iで表される化合物を秤量し、7%の水/エタノール100μLを加え、撹拌して透明に溶解させ、2Mの塩酸溶液11μLを加え、撹拌して結晶化させ、遠心分離し、真空乾燥させて、生成物を得た。粉末X線回折検出により、当該生成物はA型結晶であった。
【0112】
実施例5 式Iの化合物の塩酸塩の調製
約300mgの式Iで表される化合物を秤量し、3mlのイソプロパノールを加え、撹拌して透明に溶解させ、2Mの塩酸溶液330μLを加え、10mlの酢酸イソプロピルを加え、撹拌して結晶化させ、遠心分離し、真空乾燥させて、生成物を得た。粉末X線回折検出により、当該生成物はA型結晶であった。
【0113】
実施例6 式Iの化合物のメタンスルホン酸塩の調製
約10mgの式Iで表される化合物を秤量し、100μLのイソプロパノールを加え、撹拌して透明に溶解させ、2Mのメタンスルホン酸溶液11μLを加え、600μLの酢酸イソプロピルを加え、撹拌して結晶化させ、遠心分離し、真空乾燥させて、生成物を得た。粉末X線回折検出により、当該生成物をA型結晶と定義し、XRPDパターンは図3に示された通りであり、その特徴的なピーク位置は表5に示された通りである。イオンクロマトグラフィー測定により、メタンスルホン酸の含有量が15.47%であった。DSCパターンは図7に示された通りである。
【表5】
【0114】
実施例7 式Iの化合物のメタンスルホン酸塩の調製
約10mgの式Iで表される化合物を秤量し、100μLのアセトニトリルを加え、撹拌して透明に溶解させ、2Mのメタンスルホン酸溶液11μLを加え、600μLの酢酸イソプロピルを加え、撹拌して結晶化させ、遠心分離し、真空乾燥させて、生成物を得た。粉末X線回折検出により、当該生成物はA型結晶であった。
【0115】
実施例8 式Iの化合物のメタンスルホン酸塩の調製
約10mgの式Iで表される化合物を秤量し、7%の水/エタノール100μLを加え、撹拌して透明に溶解させ、2Mのメタンスルホン酸溶液11μLを加え、600μLの酢酸イソプロピルを加え、撹拌して結晶化させ、遠心分離し、真空乾燥させて、生成物を得た。粉末X線回折検出により、当該生成物はA型結晶であった。
【0116】
実施例9 式Iの化合物のメタンスルホン酸塩の調製
約4gの式Iで表される化合物を秤量し、16mlのエタノールを加え、撹拌して透明に溶解させ、2Mのメタンスルホン酸溶液4.4mlを加え、120mlの酢酸イソプロピルを加え、室温で撹拌して結晶化させ、遠心分離し、真空乾燥させて、生成物を得た。粉末X線回折検出により、当該生成物はA型結晶であった。
【0117】
実施例10 式Iの化合物の酢酸塩の調製
約10mgの式Iで表される化合物を秤量し、100μLのイソプロパノールを加え、撹拌して透明に溶解させ、2Mの酢酸溶液11μLを加え、50℃で1時間撹拌し、5℃までゆっくりと冷却させて固体を析出させ、遠心分離し、真空乾燥させて、生成物を得た。粉末X線回折検出により、当該生成物をα型結晶と定義し、XRPDパターンは図4に示された通りであり、その特徴的なピーク位置は表6に示された通りである。イオンクロマトグラフィー測定により、酢酸の含有量が10.26%であった。DSCパターンは図8に示された通りである。
【0118】
【表6】
【0119】
実施例11 式Iの化合物の酢酸塩の調製
約10mgの式Iで表される化合物を秤量し、100μLのアセトニトリルを加え、撹拌して透明に溶解させ、2Mの酢酸溶液11μLを加え、50℃で1時間撹拌し、5℃までゆっくりと冷却させて固体を析出させ、遠心分離し、真空乾燥させて、生成物を得た。粉末X線回折検出により、当該生成物はα型結晶であった。
【0120】
実施例12 式Iの化合物の酢酸塩の調製
約10mgの式Iで表される化合物を秤量し、7%の水/エタノール100μLを加え、撹拌して透明に溶解させ、2Mの酢酸溶液11μLを加え、50℃で1時間撹拌し、5℃までゆっくりと冷却させて固体を析出させ、遠心分離し、真空乾燥させて、生成物を得た。粉末X線回折検出により、当該生成物はα型結晶であった。
【0121】
実施例13 式Iの化合物の酒石酸塩の調製
約10mgの式Iで表される化合物を秤量し、100μLのイソプロパノールを加え、撹拌して透明に溶解させ、2Mの酒石酸溶液11μLを加え、50℃で1時間撹拌し、5℃までゆっくりと冷却させて固体を析出させ、遠心分離し、真空乾燥させて、生成物を得た。粉末X線回折検出により、当該生成物をI型結晶と定義し、XRPDパターンは図5に示された通りであり、その特徴的なピーク位置は表7に示された通りである。DSCパターンは図9に示された通りである。
【0122】
【表7】
【0123】
実施例14 式Iの化合物の酒石酸塩の調製
約10mgの式Iで表される化合物を秤量し、7%の水/エタノール100μLを加え、撹拌して透明に溶解させ、2Mの酒石酸溶液11μLを加え、50℃で1時間撹拌し、5℃までゆっくりと冷却させて固体を析出させ、遠心分離し、真空乾燥させて、生成物を得た。粉末X線回折検出により、当該生成物はI型結晶であった。
【0124】
実施例15 塩酸塩のA型結晶、メタンスルホン酸塩のA型結晶、酢酸塩のα型結晶及び酒石酸塩のI型結晶の吸湿性に関する研究
Surface Measurement Systems advantage 2を使用し、25℃で、湿度は50%から開始し、考察の湿度範囲は0%~95%であり、ステップは10%であり、判定基準は各勾配の質量変化dM/dT0.002%未満であり、各湿度勾配の実行時間TMAXは360minであり、サイクルは2回であり、具体的な結果は表8に示めされた通りである。
【0125】
【表8】
【0126】
実施例16 結晶の安定性に関する研究
塩酸塩のA型結晶、メタンスルホン酸塩のA型結晶及び酢酸塩のα型結晶を開口で広げて置き、それぞれ光照射(4500Lux)、高温(40℃、60℃)、高湿度(RH75%、RH92.5%)条件下での試料の安定性を考察し、サンプリング期間は30日間であり、結果は表9に示された通りである。
【0127】
【表9】
【0128】
結論:影響因子に関する実験により、光照射、40℃と60℃の高温、75%と92.5%の高湿度の条件下で30日間置いた場合に、塩酸塩のA型結晶とメタンスルホン酸塩のA型結晶の物理的及び化学的安定性が良好であり、酢酸塩のα型結晶の物理的安定性が良好であり、且つ高湿度及び光照射条件下での化学的安定性が良好であることが示されている。
【0129】
実施例17 長期/加速安定性に関する研究
塩酸塩のA型結晶、メタンスルホン酸塩のA型結晶及び酢酸塩のα型結晶をそれぞれ25℃/60%RH及び40℃/75%RHの条件下に置いて安定性を考察し、結果は下記の表10、表11及び表12に示された通りである。
【0130】
【表10】
【0131】
【表11】
【0132】
【表12】
【0133】
結論:長期/加速実験により、25℃/60RH及び40℃/75RHの条件下で6ヶ月間置いた場合に、塩酸塩のA型結晶、メタンスルホン酸塩のA型結晶及び酢酸塩のα型結晶の物理的及び化学的安定性が良好であることが示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】