(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】WFDC2の発現を調節するアンチセンス化合物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240925BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240925BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240925BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240925BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240925BHJP
A61K 47/56 20170101ALI20240925BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240925BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240925BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
C12N15/113 Z
A61P35/00
A61K47/64
A61K47/54
A61K47/26
A61K47/56
A61K31/7088
A61K48/00
C12N5/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517063
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 KR2022013783
(87)【国際公開番号】W WO2023043220
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0124349
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0116229
(32)【優先日】2022-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524101984
【氏名又は名称】キューマイン・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ウン・キム
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065CA43
4B065CA44
4C076AA94
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
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4C076FF31
4C084AA13
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4C084ZB26
4C086AA01
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4C086MA04
4C086NA12
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、WFDC2の発現を調節するアンチセンス化合物に関する。本発明によるWFDC2の発現を調節するアンチセンス化合物は、多様な癌腫において抗癌効果を示すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
WFDC2(WAP Four-Disulfide Core Domain2)を暗号化する遺伝子の転写体内の核酸塩基配列に相補的に結合し、10個~30個の連続的に連結されたヌクレオシドからなる変形されたオリゴヌクレオチドを含むアンチセンス化合物。
【請求項2】
前記WFDC2を暗号化する遺伝子の転写体内の核酸塩基配列は、配列番号1または配列番号2である、請求項1に記載のアンチセンス化合物。
【請求項3】
前記アンチセンス化合物は、16個~20個の連続的に連結されたヌクレオシドからなる変形されたオリゴヌクレオチドを含むものである、請求項1に記載のアンチセンス化合物。
【請求項4】
前記変形されたオリゴヌクレオチドは、1つ以上の変形されたヌクレオシド間の連結基、変形された糖モイエティ(moiety)を含む1つ以上の変形されたヌクレオシドおよび変形された核塩基を含む1つ以上の変形されたヌクレオシドから選択される1つ以上の変形を含むものである、請求項1に記載のアンチセンス化合物。
【請求項5】
前記変形されたヌクレオシドは、2’-O-メチル(methyl)、2’-O-メトキシエチル(methoxyethyl)、2’-アミノ(amino)、2’-フルオロ(fluoro)、2’-アラビノ(arabino)-フルオロ(fluoro)、2’-O-ベンジル(benzyl)又はび2’-O-メチル(methyl)-4-ピリジン(pyridine)で置換された糖モイエティからなる群より選択される1つ以上の変形された糖モイエティを含む変形されたヌクレオシドである、請求項4に記載のアンチセンス化合物。
【請求項6】
前記変形されたヌクレオシドは、ロック核酸(locked nucleic acid、LNA)、コンストレインドエチルビサイクリック核酸(constrained ethyl bicyclic nucleic acid、cEt)、2’-O,4’-C-エチレン-架橋型核酸(2’-O,4’-C-ethylene-bridged nucleic acid、ENA)およびトリシクロ(tricyclo)-DNAからなる群より選択される1つ以上の変形されたヌクレオシドである、請求項4に記載のアンチセンス化合物。
【請求項7】
前記変形されたヌクレオシドは、6員環または非環モイエティを有する糖代用物を含む変形されたヌクレオシドである、請求項4に記載のアンチセンス化合物。
【請求項8】
前記変形されたヌクレオシドは、シュードウリジン(psudouridine)、2’-チオウリジン(thiouridine)、N6’-メチルアデノシン(methyladenosine)、5’-メチルシチジン(methylcytidine)、5’-フルオロ(fluoro)-2-デオキシウリジン(deoxyuridine)、N-エチルピペリジン7’-EAAトリアゾール変形アデニン(N-ethylpiperidine 7’-EAA triazol modified adenine)、N-エチルピペリジン6’-トリアゾール変形アデニン(N-ethylpiperidine 6’-triazol modified adenine)、6’-フェニルピロロシトシン(6’-phenylpyrrolocytosine)、2’,4’-ジフルオロトルイルリボヌクレオシド(2’,4’-difluorotoluylribonuleoside)および5’-ニトロインドール(5’-nitroindole)からなる群より選択される1つ以上の変形された核塩基(nucleobase)を含む変形されたヌクレオシドである、請求項4に記載のアンチセンス化合物。
【請求項9】
前記変形されたヌクレオシド間の連結基は、ホスホトリエステル(phosphotriester)、ホスホルアミデート(phosphoramidate)、メシルホスホルアミデート(mesyl phosphoramidate)、ホスホロチオエート(phosphorothioate)、ホスホロジチオエート(phosphorodithioate)、メチルホスホネート(methylphosphonate)およびメトキシプロピル-ホスホネート(methoxypropyl-phosphonate)からなる群より選択される1つ以上の変形されたヌクレオシド間の連結基である、請求項4に記載のアンチセンス化合物。
【請求項10】
前記変形されたオリゴヌクレオチドは、連結されたデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント、連結されたヌクレオシドからなる5’ウィングセグメント、および連結されたヌクレオシドからなる3’ウィングセグメントを含むものであり、前記ギャップセグメントは、5’ウィングセグメントおよび3’ウィングセグメントの間に位置し、それぞれのウィングセグメントのヌクレオシドは、変形された糖モイエティまたは糖代用物を含むものである、請求項1に記載のアンチセンス化合物。
【請求項11】
前記変形されたオリゴヌクレオチドは、8個~10個の連結されたデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
3個~5個の連結されたヌクレオシドからなる5’ウィングセグメント;および
3個~5個の連結されたヌクレオシドからなる3’ウィングセグメントを含み、前記ギャップセグメントは、5’ウィングセグメントと3’ウィングセグメントとの間に位置し、それぞれのウィングセグメントのそれぞれのヌクレオシドは、変形された糖モイエティを含むものである、請求項1に記載のアンチセンス化合物。
【請求項12】
前記アンチセンス化合物は、配列番号1または配列番号2と相補的に結合する変形されたオリゴヌクレオチドであって、前記アンチセンス化合物は、配列番号1の塩基配列の開始部位25から中段部位46、開始部位284から中段部位305、開始部位520から中段部位545、開始部位2222から中段部位2344、開始部位7334から中段部位9301、開始部位9506から中段部位9551、開始部位9733から中段部位10143、開始部位10271から中段部位10302、開始部位10360から中段部位10905、開始部位10977から中段部位11292、開始部位11448から中段部位11563および開始部位11633から中段部位11773からなる群より選択されるオリゴヌクレオチド塩基配列のうち任意の配列と完全に相補的な8個以上の連続的な隣接核塩基を含む塩基配列を有する変形されたオリゴヌクレオチドを含み、前記変形されたオリゴヌクレオチドは、WFDCのmRNAレベルおよびタンパク質レベルからなるいずれか1つ以上を減少させるものである、請求項1に記載のアンチセンス化合物。
【請求項13】
前記アンチセンス化合物は、配列番号1または配列番号2と相補的に結合する変形されたオリゴヌクレオチドであって、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号20、配列番号38、配列番号39、配列番号42、配列番号43、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号65、配列番号83、配列番号86、配列番号89、配列番号109、配列番号113、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号129、配列番号131、配列番号135、配列番号136、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号148、配列番号154、配列番号155、配列番号156、配列番号157、配列番号165、配列番号169、配列番号176、配列番号191、配列番号205、配列番号210、配列番号213、配列番号214、配列番号215、配列番号218、配列番号228、配列番号229、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、配列番号243、配列番号244、配列番号245、配列番号247、配列番号248、配列番号249、配列番号250、配列番号251、配列番号252、配列番号253、配列番号254、配列番号255、配列番号256、配列番号257、配列番号258、配列番号259、配列番号264、配列番号282、配列番号284、配列番号285、配列番号286、配列番号287、配列番号289、配列番号290、配列番号291、配列番号291、配列番号292、配列番号293、配列番号295、配列番号300、配列番号310、配列番号313、配列番号314、配列番号316、配列番号317、配列番号320、配列番号330、配列番号331、配列番号336、配列番号343、配列番号376、配列番号377、配列番号378、配列番号379、配列番号380、配列番号381、配列番号382および配列番号383からなる群より選択されるいずれか1つのオリゴヌクレオチド塩基配列と完全に一致する8個以上の連続的な隣接核塩基を含む塩基配列を有する変形されたオリゴヌクレオチドを含み、前記変形されたオリゴヌクレオチドは、WFDCのmRNAレベルおよびタンパク質レベルからなるいずれか1つ以上を減少させるものである、請求項1に記載のアンチセンス化合物。
【請求項14】
前記アンチセンス化合物は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号20、配列番号38、配列番号39、配列番号42、配列番号43、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号65、配列番号83、配列番号86、配列番号89、配列番号109、配列番号113、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号129、配列番号131、配列番号135、配列番号136、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号148、配列番号154、配列番号155、配列番号156、配列番号157、配列番号165、配列番号169、配列番号176、配列番号191、配列番号205、配列番号210、配列番号213、配列番号214、配列番号215、配列番号218、配列番号228、配列番号229、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、配列番号243、配列番号244、配列番号245、配列番号247、配列番号248、配列番号249、配列番号250、配列番号251、配列番号252、配列番号253、配列番号254、配列番号255、配列番号256、配列番号257、配列番号258、配列番号259、配列番号264、配列番号282、配列番号284、配列番号285、配列番号286、配列番号287、配列番号289、配列番号290、配列番号291、配列番号291、配列番号292、配列番号293、配列番号295、配列番号300、配列番号310、配列番号313、配列番号314、配列番号316、配列番号317、配列番号320、配列番号330、配列番号331、配列番号336、配列番号343、配列番号376、配列番号377、配列番号378、配列番号379、配列番号380、配列番号381、配列番号382および配列番号383からなる群より選択されるいずれか1つの塩基配列を有する変形されたオリゴヌクレオチドである、請求項1に記載のアンチセンス化合物。
【請求項15】
1つ以上の非-ヌクレオチドモイエティに、請求項1~請求項14のいずれか1項に記載のアンチセンス化合物が共有結合した接合体。
【請求項16】
前記非-ヌクレオチドモイエティは、タンパク質、脂肪酸鎖、糖残基、糖タンパク質、重合体、またはこれらの組み合わせを含むものである、請求項15に記載の接合体。
【請求項17】
請求項1~請求項14のいずれか1項に記載のアンチセンス化合物、または請求項15~請求項16のいずれか1項に記載の接合体を有効成分として含む癌の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項18】
前記癌は、胃癌、食道癌、胆管癌、卵巣癌、子宮頸癌、頭頸部癌、脳腫瘍、肺癌、肝臓癌、甲状腺癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、胆嚢癌、大腸癌および膵臓癌からなる群より選択されるものである、請求項17に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、WFDC2の発現を調節するアンチセンス化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
WFDC2は、ヒト精巣上体組織で最初に観察された糖化されたタンパク質であって、卵巣癌を含む多様な癌で過発現することが報告されている。WFDC2遺伝子産物は、安定した4-ジスルフィドコアタンパク質のファミリーメンバーであって、WFDC2タンパク質およびこれを暗号化する遺伝子に関する研究としては、ヒト精巣上体-特異cDNAは細胞外タンパク質分解酵素阻害剤と配列相同性を有するタンパク質をエンコードし、卵巣癌腫で過発現した遺伝子の発見のために卵巣cDNAアレイの比較混成化を行い、精巣上体タンパク質の分子的特性を分析し、ヒト精巣上体で特異的に発現したmRNAのクローニングおよび分析などが行われてきており、このような研究により、WFDC2の過発現は前記タンパク質が癌、特に、卵巣癌に対するバイオマーカーとして活用できることを提示している。
【0003】
米国登録特許第7,811,778号は、胃腸関連癌を診断する方法に関するものであって、前記文献では、酸化性萎縮後、主細胞がSPEMに転換分化する間に発現が有意に増加し、上方調節された遺伝子の一部がWFDC2であることを開示している。
【0004】
また、韓国登録特許第10-2055305号は、胃食道境界部腺癌の診断および標的治療のためのマーカーに関するものであって、発現量が増加する多様な遺伝子の一つであるWFDC2の発現量がBCCP(Bayesian Compound Covariate Predictor)点数を測定する遺伝子で、胃癌または食道癌を診断するバイオマーカーとして可能性があることを開示している。
【0005】
このように、WFDC2が癌発生時に発現が増加する多様な遺伝子の一つであって、卵巣癌、胃癌などのバイオマーカーとして活用できるという可能性を示す先行文献は存在するが、その発現を抑制または阻害するアンチセンス化合物により癌の治療効果を確認した研究はほとんどなされていないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様は、WFDC2(WAP Four-Disulfide Core Domain2)を暗号化する遺伝子の転写体内の核酸塩基配列に相補的に結合し、10個~30個の連続的に連結されたヌクレオシドからなる変形されたオリゴヌクレオチドを含むアンチセンス化合物を提供する。
【0007】
本発明の他の態様は、1つ以上の非-ヌクレオチドモイエティに、前記アンチセンス化合物が共有結合した接合体を提供する。
【0008】
本発明のさらに他の態様は、前記アンチセンス化合物、または前記接合体を有効成分として含む癌の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、WFDC2(WAP Four-Disulfide Core Domain2)を暗号化する遺伝子の転写体内の核酸塩基配列に相補的に結合し、10個~30個の連続的に連結されたヌクレオシドからなる変形されたオリゴヌクレオチドを含むアンチセンス化合物を提供する。
【0010】
一具体例によれば、前記WFDC2を暗号化する遺伝子の転写体の核酸塩基配列は、配列番号1または配列番号2であってもよい。
【0011】
一具体例によれば、前記アンチセンス化合物は、16個~20個の連続的に連結されたヌクレオシドからなる変形されたオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0012】
一具体例によれば、前記変形されたオリゴヌクレオチドは、1つ以上の変形されたヌクレオシド間の連結基、変形された糖モイエティ(moiety)を含む1つ以上の変形されたヌクレオシドおよび変形された核塩基を含む1つ以上の変形されたヌクレオシドから選択される1つ以上の変形を含むことができる。
【0013】
一具体例によれば、前記変形されたヌクレオシドは、2’-O-メチル(methyl)、2’-O-メトキシエチル(methoxyethyl)、2’-アミノ(amino)、2’-フルオロ(fluoro)、2’-アラビノ(arabino)-フルオロ(fluoro)、2’-O-ベンジル(benzyl)又は2’-O-メチル(methyl)-4-ピリジン(pyridine)で置換された糖モイエティからなる群より選択される1つ以上の変形された糖モイエティを含むことができる。
【0014】
一具体例によれば、前記変形されたヌクレオシドは、ロック核酸(locked nucleic acid、LNA)、コンストレインドエチルビサイクリック核酸(constrained ethyl bicyclic nucleic acid、cEt)、2’-O,4’-C-エチレン-架橋型核酸(2’-O,4’-C-ethylene-bridged nucleic acid、ENA)およびトリシクロ(tricyclo)-DNAからなる群より選択される1つ以上の変形されたヌクレオシドであってもよい。
【0015】
一具体例によれば、前記変形されたヌクレオシドは、6員環または非環モイエティを有する糖代用物を含む変形されたヌクレオシドであってもよい。
【0016】
一具体例によれば、前記変形されたヌクレオシドは、シュードウリジン(psudouridine)、2’-チオウリジン(thiouridine)、N6’-メチルアデノシン(methyladenosine)、5’-メチルシチジン(methylcytidine)、5’-フルオロ(fluoro)-2-デオキシウリジン(deoxyuridine)、N-エチルピペリジン7’-EAAトリアゾール変形アデニン(N-ethylpiperidine 7’-EAA triazol modified adenine)、N-エチルピペリジン6’-トリアゾール変形アデニン(N-ethylpiperidine 6’-triazol modified adenine)、6’-フェニルピロロシトシン(6’-phenylpyrrolocytosine)、2’,4’-ジフルオロトルイルリボヌクレオシド(2’,4’-difluorotoluylribonuleoside)および5’-ニトロインドール(5’-nitroindole)からなる群より選択される1つ以上の変形された核塩基(nucleobase)を含む変形されたヌクレオシドであってもよい。
【0017】
一具体例によれば、前記変形されたヌクレオシド間の連結基は、ホスホトリエステル(phosphotriester)、ホスホルアミデート(phosphoramidate)、メシルホスホルアミデート(mesyl phosphoramidate)、ホスホロチオエート(phosphorothioate)、ホスホロジチオエート(phosphorodithioate)、メチルホスホネート(methylphosphonate)およびメトキシプロピル-ホスホネート(methoxypropyl-phosphonate)からなる群より選択される1つ以上の変形されたヌクレオシド間の連結基であってもよい。
【0018】
一具体例によれば、前記変形されたオリゴヌクレオチドは、連結されたデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント、連結されたヌクレオシドからなる5’ウィングセグメント、および連結されたヌクレオシドからなる3’ウィングセグメントを含むものであり、前記ギャップセグメントは、5’ウィングセグメントおよび3’ウィングセグメントの間に位置し、それぞれのウィングセグメントのヌクレオシドは、変形された糖モイエティまたは糖代用物を含むことができる。
【0019】
一具体例によれば、前記変形されたオリゴヌクレオチドは、8個~10個の連結されたデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
3個~5個の連結されたヌクレオシドからなる5’ウィングセグメント;および
3個~5個の連結されたヌクレオシドからなる3’ウィングセグメントを含み、前記ギャップセグメントは、5’ウィングセグメントと3’ウィングセグメントとの間に位置し、それぞれのウィングセグメントのそれぞれのヌクレオシドは、変形された糖モイエティを含むことができる。
【0020】
一具体例によれば、前記アンチセンス化合物は、配列番号1または配列番号2の任意の配列に少なくとも70%以上、少なくとも80%以上、少なくとも90%以上または完全に相補的な塩基配列を有し、前記アンチセンス化合物は、配列番号1の塩基配列の開始部位25から中段部位46、開始部位284から中段部位305、開始部位520から中段部位545、開始部位2222から中段部位2344、開始部位7334から中段部位9301、開始部位9506から中段部位9551、開始部位9733から中段部位10143、開始部位10271から中段部位10302、開始部位10360から中段部位10905、開始部位10977から中段部位11292、開始部位11448から中段部位11563および開始部位11633から中段部位11773からなる群より選択されるオリゴヌクレオチド塩基配列のうち任意の配列と完全に相補的な少なくとも8個以上の連続的な隣接核塩基を含む塩基配列を有する変形されたオリゴヌクレオチドを含み、前記変形されたオリゴヌクレオチドは、WFDCのmRNAレベルおよびタンパク質レベルからなるいずれか1つ以上を減少させるものであってもよい。
【0021】
一具体例によれば、前記アンチセンス化合物は、配列番号1または配列番号2と相補的に結合する変形されたオリゴヌクレオチドであって、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号20、配列番号38、配列番号39、配列番号42、配列番号43、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号65、配列番号83、配列番号86、配列番号89、配列番号109、配列番号113、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号129、配列番号131、配列番号135、配列番号136、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号148、配列番号154、配列番号155、配列番号156、配列番号157、配列番号165、配列番号169、配列番号176、配列番号191、配列番号205、配列番号210、配列番号213、配列番号214、配列番号215、配列番号218、配列番号228、配列番号229、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、配列番号243、配列番号244、配列番号245、配列番号247、配列番号248、配列番号249、配列番号250、配列番号251、配列番号252、配列番号253、配列番号254、配列番号255、配列番号256、配列番号257、配列番号258、配列番号259、配列番号264、配列番号282、配列番号284、配列番号285、配列番号286、配列番号287、配列番号289、配列番号290、配列番号291、配列番号291、配列番号292、配列番号293、配列番号295、配列番号300、配列番号310、配列番号313、配列番号314、配列番号316、配列番号317、配列番号320、配列番号330、配列番号331、配列番号336、配列番号343、配列番号376、配列番号377、配列番号378、配列番号379、配列番号380、配列番号381、配列番号382および配列番号383からなる群より選択されるいずれか1つのオリゴヌクレオチド塩基配列と完全に一致する少なくとも8個以上の連続的な隣接核塩基を含む塩基配列を有する変形されたオリゴヌクレオチドを含み、前記変形されたオリゴヌクレオチドは、WFDCのmRNAレベルおよびタンパク質レベルからなるいずれか1つ以上を減少させるものであってもよい。
【0022】
一具体例によれば、前記アンチセンス化合物は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号20、配列番号38、配列番号39、配列番号42、配列番号43、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号65、配列番号83、配列番号86、配列番号89、配列番号109、配列番号113、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号129、配列番号131、配列番号135、配列番号136、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号148、配列番号154、配列番号155、配列番号156、配列番号157、配列番号165、配列番号169、配列番号176、配列番号191、配列番号205、配列番号210、配列番号213、配列番号214、配列番号215、配列番号218、配列番号228、配列番号229、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、配列番号243、配列番号244、配列番号245、配列番号247、配列番号248、配列番号249、配列番号250、配列番号251、配列番号252、配列番号253、配列番号254、配列番号255、配列番号256、配列番号257、配列番号258、配列番号259、配列番号264、配列番号282、配列番号284、配列番号285、配列番号286、配列番号287、配列番号289、配列番号290、配列番号291、配列番号291、配列番号292、配列番号293、配列番号295、配列番号300、配列番号310、配列番号313、配列番号314、配列番号316、配列番号317、配列番号320、配列番号330、配列番号331、配列番号336、配列番号343、配列番号376、配列番号377、配列番号378、配列番号379、配列番号380、配列番号381、配列番号382および配列番号383からなる群より選択されるいずれか1つの塩基配列を有する変形されたオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0023】
本発明の他の態様は、1つ以上の非-ヌクレオチドモイエティに、前記アンチセンス化合物が共有結合した接合体を提供する。
【0024】
一具体例によれば、前記非-ヌクレオチドモイエティは、タンパク質、脂肪酸鎖、糖残基、糖タンパク質、重合体、またはこれらの組み合わせを含むものであってもよい。
【0025】
本発明のさらに他の態様は、前記アンチセンス化合物、または前記接合体を有効成分として含む癌の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0026】
一具体例によれば、前記癌は、胃癌、食道癌、胆管癌、卵巣癌、子宮頸癌、頭頸部癌、脳腫瘍、肺癌、肝臓癌、甲状腺癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、胆嚢癌、大腸癌および膵臓癌からなる群より選択されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によるWFDC2の発現を調節するアンチセンス化合物は、多様な癌腫において抗癌効果を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】SNU638細胞株Xenograftマウスモデルにおいて一具体例によるアンチセンス化合物の皮下投与に対する癌増殖抑制効果(癌細胞サイズ)を示すグラフである。
【
図2】SNU638細胞株Xenograftマウスモデルにおいて一具体例によるアンチセンス化合物の静脈投与に対する癌増殖抑制効果(癌細胞サイズ)を示すグラフである。
【
図3】SNU638細胞株Xenograftマウスモデルにおいて一具体例によるアンチセンス化合物の皮下または静脈投与に対する癌増殖抑制効果(癌細胞重量)を示すグラフである。
【
図4】SNU638細胞株Xenograftマウスモデルにおいて一具体例によるアンチセンス化合物の皮下または静脈投与に対する癌増殖抑制効果を示す写真である。
【
図5】SF268細胞株Xenograftマウスモデルにおいて一具体例によるアンチセンス化合物の静脈投与に対する癌増殖抑制効果(癌細胞サイズ)を示すグラフである。
【
図6】SF268細胞株Xenograftマウスモデルにおいて一具体例によるアンチセンス化合物の静脈投与に対する癌増殖抑制効果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の一態様は、WFDC2(WAP Four-Disulfide Core Domain2)を暗号化する遺伝子の転写体内の核酸塩基配列に相補的に結合し、10個~30個の連続的に連結されたヌクレオシドからなる変形されたオリゴヌクレオチドを含むアンチセンス化合物を提供する。
【0030】
WFDC2(WAP Four-Disulfide Core Domain2)
WFDC2遺伝子産物は、WAP4-ジスルフィドコアタンパク質のファミリーメンバー(family member)であって、WFDC2は、ヒト精巣上体組織で最初に観察された分泌および糖化されたタンパク質であり、卵巣癌を含む一部の癌腫で過発現することが知られている。癌細胞におけるWFDC2の過発現は、本タンパク質およびその多様なイソ型(isoform)が癌を検出したり、癌の発病の可能性が高い患者を診断するためのバイオマーカーになり得ることを提示する。
【0031】
アンチセンス化合物
本明細書において、「ヌクレオチド(nucleotide)」は、核塩基(nucleobase)、糖モイエティ(sugar moiety)およびリン酸グループ(phosphate group)の結合からなる核酸を構成する単位体分子を意味するものであり、前記ヌクレオチドは、ヌクレオチド類似体、変形されたヌクレオチド、非-天然ヌクレオチド、非-標準ヌクレオチドなどのような核塩基、糖モイエティおよび/またはリン酸グループの非変形または変形をすべて含む概念と解釈できる。
【0032】
本明細書において、「ヌクレオシド(nucleoside)」は、ヌクレオチドにおいてリン酸グループを除いた部分と見なされるグリコシルアミン(glycosylamine)であり、核塩基および糖モイエティで構成された単位体分子を意味し、前記ヌクレオシドは、ヌクレオチドと同じく、核塩基G/または糖モイエティが変形されたり、変形されていないヌクレオシドをすべて含む概念と解釈できる。
【0033】
本明細書において、「オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)」は、リボ核酸(ribonucleic acid、RNA)またはデオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid、DNA)、またはこれらの類似体の低重合体や重合体を意味するものであり、前記オリゴヌクレオチドは、一般的に生体内に存在する核塩基、糖およびヌクレオシド(骨格)間の共有結合で構成されるオリゴヌクレオチドだけでなく、これと類似して作用するヌクレオチド類似体、変形されたヌクレオチド、非-天然ヌクレオチド、非-標準ヌクレオチドからなる変形または置換されたオリゴヌクレオチドを含む。このような変形または置換されたオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼの存在下、変形または置換されていないオリゴヌクレオチドより細胞吸収増進、核酸標的親和性増進および安定性増加などの特性を有する。
【0034】
本明細書において、「アンチセンス化合物(antisense compound)」は、水素結合によって標的核酸配列と混成化(hybridization)できるオリゴヌクレオチドを含むと解釈される。アンチセンス化合物は、標的核酸配列と混成化してその発現を調節するオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド類似体、オリゴヌクレオチド擬似体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、一本鎖siRNA(ss siRNA)、小ヘアピンRNA(short hairpin RNA、shRNA)、マイクロRNA模倣体、リボザイム(ribozyme)、外部ガイド配列(external guide sequence)オリゴヌクレオチドおよびその他のオリゴヌクレオチドを含むが、これに限定されず、前記アンチセンス化合物は、一本鎖および二本鎖オリゴヌクレオチドを含む概念と解釈される。
【0035】
一具体例によれば、前記アンチセンス化合物は、5’から3’方向で記載されている場合、標的化される標的核酸配列の標的部分の逆相補を含む核酸塩基配列を有する。好ましくは、前記アンチセンス化合物は、WFDC2を暗号化する遺伝子の転写体内の核酸塩基配列に相補的に結合できる。前記WFDC2を暗号化する遺伝子の転写体は、前記アンチセンス化合物の標的になる核酸であって、mRNAおよびイントロン、エクソンおよび非翻訳領域を含むプレ(pre)-mRNAから選択されてもよい。
【0036】
一具体例によれば、前記WFDC2を暗号化する遺伝子の転写体の塩基配列は、配列番号1または配列番号2であり、配列番号1の塩基配列は、ヒトWFDC2ゲノム配列(GenBank受託番号NC_000020.11(ヌクレオチド45469753~45481532)の相補物、pre-mRNA配列)であり、配列番号2は、ヒトWFDC2 mRNA配列(RefSeqまたはGenBank受託番号NM_006103.4)である。
【0037】
一具体例によれば、前記アンチセンス化合物は、WFDC2を暗号化する遺伝子の転写体内の核酸塩基配列である配列番号1または配列番号2の任意の配列に少なくとも70%以上、少なくとも80%以上、少なくとも90%以上または完全に相補的であり、配列番号1または配列番号2の任意の配列に完全に相補的な少なくとも8個以上の隣接した核塩基を含むものであって、10個~30個、好ましくは12個~25個、さらに好ましくは14個~23個、最も好ましくは16個~20個の連続的に連結されたヌクレオシドからなる変形されたオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0038】
一具体例によれば、前記アンチセンス化合物は、WFDC2を暗号化する遺伝子の転写体内の核酸塩基配列である配列番号1または配列番号2の任意の配列に少なくとも70%以上、少なくとも80%以上、少なくとも90%以上または完全に相補的な塩基配列を有し、配列番号7~386のいずれか1つの核酸塩基配列の一部を含むものであって、10個~30個の連続的に連結されたヌクレオシドからなる変形されたオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0039】
一具体例によれば、前記アンチセンス化合物は、配列番号1または配列番号2の任意の配列に少なくとも70%以上、少なくとも80%以上、少なくとも90%以上または完全に相補的な塩基配列を有し、前記アンチセンス化合物は、配列番号1の塩基配列の開始部位25から中段部位46、開始部位284から中段部位305、開始部位520から中段部位545、開始部位2222から中段部位2344、開始部位7334から中段部位9301、開始部位9506から中段部位9551、開始部位9733から中段部位10143、開始部位10271から中段部位10302、開始部位10360から中段部位10905、開始部位10977から中段部位11292、開始部位11448から中段部位11563および開始部位11633から中段部位11773からなる群より選択されるオリゴヌクレオチド塩基配列のうち任意の配列と完全に相補的な少なくとも8個以上の連続的な隣接核塩基を含む塩基配列を有する変形されたオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0040】
一具体例によれば、前記アンチセンス化合物は、WFDC2を暗号化する遺伝子の転写体内の核酸塩基配列のうち任意の配列に完全に相補的な塩基配列を有するものであって、前記アンチセンス化合物は、配列番号7~386のいずれか1つの核酸塩基配列内の任意の配列と完全に相補的な少なくとも8個以上の隣接した核塩基を含み、10個~30個の連続的に連結されたヌクレオシドからなる変形されたオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0041】
一具体例によれば、前記アンチセンス化合物は、配列番号1または配列番号2の任意の配列に少なくとも70%以上、少なくとも80%以上、少なくとも90%以上または完全に相補的な塩基配列を有し、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号20、配列番号38、配列番号39、配列番号42、配列番号43、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号65、配列番号83、配列番号86、配列番号89、配列番号109、配列番号113、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号129、配列番号131、配列番号135、配列番号136、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号148、配列番号154、配列番号155、配列番号156、配列番号157、配列番号165、配列番号169、配列番号176、配列番号191、配列番号205、配列番号210、配列番号213、配列番号214、配列番号215、配列番号218、配列番号228、配列番号229、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、配列番号243、配列番号244、配列番号245、配列番号247、配列番号248、配列番号249、配列番号250、配列番号251、配列番号252、配列番号253、配列番号254、配列番号255、配列番号256、配列番号257、配列番号258、配列番号259、配列番号264、配列番号282、配列番号284、配列番号285、配列番号286、配列番号287、配列番号289、配列番号290、配列番号291、配列番号291、配列番号292、配列番号293、配列番号295、配列番号300、配列番号310、配列番号313、配列番号314、配列番号316、配列番号317、配列番号320、配列番号330、配列番号331、配列番号336、配列番号343、配列番号376、配列番号377、配列番号378、配列番号379、配列番号380、配列番号381、配列番号382および配列番号383からなる群より選択されるいずれか1つのオリゴヌクレオチド塩基配列と完全に一致する少なくとも8個以上の連続的な隣接核塩基を含む塩基配列を有する変形されたオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0042】
一具体例によれば、前記アンチセンス化合物は、配列番号7~386のいずれか1つの塩基配列からなる変形されたオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0043】
一具体例によれば、前記アンチセンス化合物は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号20、配列番号38、配列番号39、配列番号42、配列番号43、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号65、配列番号83、配列番号86、配列番号89、配列番号109、配列番号113、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号129、配列番号131、配列番号135、配列番号136、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号148、配列番号154、配列番号155、配列番号156、配列番号157、配列番号165、配列番号169、配列番号176、配列番号191、配列番号205、配列番号210、配列番号213、配列番号214、配列番号215、配列番号218、配列番号228、配列番号229、配列番号237、配列番号238、配列番号239、配列番号240、配列番号243、配列番号244、配列番号245、配列番号247、配列番号248、配列番号249、配列番号250、配列番号251、配列番号252、配列番号253、配列番号254、配列番号255、配列番号256、配列番号257、配列番号258、配列番号259、配列番号264、配列番号282、配列番号284、配列番号285、配列番号286、配列番号287、配列番号289、配列番号290、配列番号291、配列番号291、配列番号292、配列番号293、配列番号295、配列番号300、配列番号310、配列番号313、配列番号314、配列番号316、配列番号317、配列番号320、配列番号330、配列番号331、配列番号336、配列番号343、配列番号376、配列番号377、配列番号378、配列番号379、配列番号380、配列番号381、配列番号382および配列番号383からなる群より選択されるいずれか1つの塩基配列を有する変形されたオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0044】
一具体例によれば、WFDC2を暗号化する遺伝子の転写体内の核酸塩基配列に相補的に結合できるアンチセンス化合物の長さは、10個~30個の連続的に連結されたヌクレオシドからなる変形されたオリゴヌクレオチドを含むことができる。好ましくは、前記アンチセンス化合物は、12個~28個、15個~25個、18個~24個、19個~22個または20個の長さの連続連結されたヌクレオシドからなる変形されたオリゴヌクレオチドで構成されてもよいし、好ましくは、前記アンチセンス化合物は、その長さが10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個の長さの連続連結されたヌクレオシドからなる変形されたオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0045】
一具体例によれば、前記アンチセンス化合物は、一本鎖または二本鎖であってもよい。前記アンチセンス化合物が二本鎖の場合、前記二本鎖は、標的核酸と相補的な領域を有する第1の変形されたオリゴヌクレオチドおよび、前記第1の変形されたオリゴヌクレオチドと相補的な領域を有する第2の変形されたオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0046】
混成化(hybridization)
前記アンチセンス化合物は、WFDC2を暗号化する遺伝子の転写体内の核酸塩基配列から1つ以上の標的部位を選択し、前記標的と十分に相補的なオリゴヌクレオチドを選択して、標的部位と十分に特異的に混成化されることにより、WFDC2の発現調節に対する所期の効果を得ることができる。
【0047】
本明細書において、「混成化(hybridization)」は、相補的ヌクレオシドやヌクレオチド塩基間のワトソン・クリック(Watson-Crick)、フーグスティーン(Hoogsteen)または逆フーグスティーン(Hoogsteen)水素結合であり得る水素結合を意味する。例えば、アデニンとチミンは、水素結合を形成して対をなす相補的な核酸塩基である。
【0048】
本発明において、「混成化可能な」または「相補的」または「実質的に相補的」の意味は、温度および溶液のイオン強度の適切なインビトロおよび/またはインビボの条件下、核酸(例えば、RNA、DNA)が他の核酸に配列-特異的、逆平行(antiparallel)方式(すなわち、核酸が相補的核酸に特異的に結合)で非-共有的に結合する、すなわちアデニン(A)とチミジン(T)のペアリング、アデニン(A)とウラシル(U)のペアリング、およびグアニン(G)とシトシン(C)のペアリングを形成したり、「アニーリング(anneal)」したり、または「混成化(hybridization)」することが可能なヌクレオチドの塩基配列を含むことを意味する。
【0049】
一具体例によれば、前記混成化は、本明細書に開示されたアンチセンス化合物と、WFDC2を暗号化する遺伝子の転写体内の核酸塩基配列との間で起こる。混成化の最も通常のメカニズムは、核酸分子の相補的な核酸塩基間の水素結合を伴う。
【0050】
混成化は多様な条件で発生できる。苛酷な条件(stringent condition)は配列に依存し、混成化される核酸分子の性質と組成によって決定される。配列が標的核酸と特異的に混成化できるかを確認する方法は当業界で公知である。
【0051】
相補性(complementarity)
本明細書において、「相補的(complementary)」という用語は、2つのヌクレオチド間で精巧に対をなし得る特性をいう。例えば、2つの互いに異なる核酸またはオリゴヌクレオチドの塩基配列が5’から3’方向で記載されている場合、1つの核酸またはオリゴヌクレオチドの一定部分の塩基配列を反対方向に整列した時、残りの1つの核酸またはオリゴヌクレオチドの一定部分と非-共有的に結合する、すなわち、アデニン(A)とチミジン(T)のペアリング、アデニン(A)とウラシル(U)のペアリング、およびグアニン(G)とシトシン(C)のペアリングを形成する場合、2つの核酸またはオリゴヌクレオチドは相補的であるという。
【0052】
したがって、「特異的に混成化できる(specifically hybridizable)」と「相補的(complementary)」は、オリゴヌクレオチドとDNAまたはRNA標的との間で安定した特異結合を発生可能にする相補性または精巧な対形成の十分な程度を示すのに用いられる用語で解釈できる。当業界においてアンチセンス化合物の配列は特異的に混成化される標的核酸の配列と100%相補的である必要はないことが知られている。
【0053】
前記アンチセンス化合物は、標的DNAまたはRNAとの結合が特異的に混成化されて標的DNAまたはRNAの正常な機能を阻害し、特異的結合が好ましい条件で、すなわち、インビボ分析または治療の場合に生理的条件下、インビトロ分析の場合に分析実施条件下、アンチセンス化合物の非-標的配列との非特異結合を防止するのに十分な程度の相補性があると解釈される。
【0054】
すなわち、前記アンチセンス化合物は、標的核酸と特異的に混成化できれば、アンチセンス化合物と標的核酸との間の非相補的な核酸塩基は容認できる。しかも、アンチセンス化合物は、介在または隣接部分が混成化に関与しないように1つ以上の核酸部分と混成化される(例えば、ループ構造、ミスマッチまたはヘアピン構造)。
【0055】
一具体例によれば、本発明のアンチセンス化合物または前記アンチセンス化合物をなしている変形されたオリゴヌクレオチドは、WFDC2を暗号化する遺伝子の転写体(例えば、配列番号1または配列番号2)内の核酸塩基配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%相補的であってもよい。アンチセンス化合物の標的核酸との相補性パーセントは、当業界で知られた通常の方法で決定可能である。例えば、アンチセンス化合物の20個の核酸塩基のうち18個が標的領域と相補的なアンチセンス化合物は特異的に混成化可能であり、90%の相補性を有する。前記例において、残りの非相補的な核酸塩基は、相補的核酸塩基と群をなしたりその内部に配置され、互いにまたは相補的核酸塩基に隣接する必要がない。これによって、標的核酸と完全に相補的な2つの領域の両側面に配置される4つの非相補的核酸塩基を有する18個の核酸塩基の長さのアンチセンス化合物は、標的核酸と77.8%の全体相補性を有するので、本発明の範疇に含まれると解釈される。標的核酸領域とのアンチセンス化合物の相補性パーセントは、当業界で知られたBLASTプログラムとPowerBLASTプログラムを用いて通常決定可能である(Altschul et al.,J.MoI.Biol.,1990,215,403 410;Zhang and Madden,Genome Res.,1997,7,649 656)。一方、相同性パーセント、配列同一性または相補性は、スミス・ウォーターマンアルゴリズム(Adv.Appl.Math.,1981,2,482 489)を用いた基本設定を利用するGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version8 for Unix,Genetics Computer Group,University Research Park,Madison Wis.)などによって決定可能である。
【0056】
一具体例によれば、本発明のアンチセンス化合物または前記アンチセンス化合物をなしている変形されたオリゴヌクレオチドは、WFDC2を暗号化する遺伝子の転写体(例えば、配列番号1または配列番号2)内の核酸塩基配列に80%以上相補的であってもよいし、好ましくは90%以上、最も好ましくは完全に相補的(100%相補的)であってもよい。本明細書において、「完全に相補的(fully complementary)」は、アンチセンス化合物の各核酸塩基が標的核酸の対応核酸塩基と精巧な塩基対をなし得ることを意味する。
【0057】
一具体例によれば、非相補的な核酸塩基の位置は、前記アンチセンス化合物の5’末端または3’末端に位置することができる。あるいは、非相補的核酸塩基や核酸塩基は、前記アンチセンス化合物の内部に位置することができる。2以上の非相補的核酸塩基が存在する場合、これらは隣接(すなわち、結合)したり、隣接しなくてもよい。一具体例によれば、前記非相補的核酸塩基は、ギャップマー(gapmer)アンチセンスオリゴヌクレオチドのウィング(wing)部分に位置することができる。
【0058】
一具体例によれば、本発明のアンチセンス化合物は、WFDC2を暗号化する遺伝子の転写体内の核酸塩基配列部分に相補的なものを含むことができる。本明細書において、「部分(portion)」は、標的核酸の領域や部分内に隣接(すなわち、結合)する所定の核酸塩基数を意味する。前記部分は、アンチセンス化合物の隣接する核酸塩基の一定数を意味したりする。一具体例によれば、アンチセンス化合物は、標的部分の少なくとも8個の核酸塩基部分と相補的であり、少なくとも12個の核酸塩基部分と相補的であってもよいし、少なくとも15個の核酸塩基部分と相補的であってもよい。標的部分の少なくとも9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれ以上やそれら値のうち2つの値で定義される範囲の核酸塩基部分に相補的なアンチセンス化合物も、前記範囲に含まれると解釈される。
【0059】
変形(modification)されたオリゴヌクレオチド
本発明の一具体例によれば、前記アンチセンス化合物は、変形されたオリゴヌクレオチドを含むことができ、前記変形されたオリゴヌクレオチドは、1つ以上の変形されたヌクレオシド間の連結基、変形された糖モイエティを含む1つ以上の変形されたヌクレオシドおよび変形された核塩基を含む1つ以上の変形されたヌクレオシドから選択される1つ以上の変形を含むことができる。
【0060】
糖モイエティ(sugar moiety)の変形
一具体例によれば、前記変形されたヌクレオシドは、非-ビサイクリック変形糖モイエティおよび/または、ビサイクリックまたはトリサイクリック糖モイエティ、および/または糖代用物または糖擬似体などで変形された糖モイエティを含む変形されたヌクレオシドであってもよい。
【0061】
一具体例によれば、前記変形されたヌクレオシドは、例えば、2’-O-メチル(methyl)のような2’-O-アルキル(alkyl)、例えば、2’-O-メトキシエチル(methoxyethyl)のような2’-O-アルコキシアルキル(alkoxyalkyl)、2’-アミノ(amino)、2’-アリル(allyl)、2’-フルオロ(fluoro)、2’-アラビノ(arabino)-フルオロ(fluoro)、例えば、2’-OCH2C(=O)-NHCH3(NMA)のような2’-O-N-置換アセトアミド、2’-O-ベンジル(benzyl)および2’-O-メチル(methyl)-4-ピリジン(pyridine)、4’-O-メチル(methyl)、5’-メチル(methyl)、5’-ビニル(vinyl)および5’-メトキシ(methoxy)からなる群より選択される1つ以上の置換体が導入された糖モイエティを含むものであってもよいが、これに限定しない。
【0062】
本発明の一具体例によるアンチセンス化合物は、選択的に置換または変形された糖モイエティを有する1つ以上の変形されたヌクレオシドを含むことができる。糖モイエティの変形は、前記アンチセンス化合物にヌクレアーゼ安定性、結合親和性やその他の有利な生物学的特性を付与する。前記天然ヌクレオシドの(ペント)フラノシル((pento)furanosyl)糖環は、置換基の付加(特に、2’位);ビサイクリック核酸(BNA)を形成する2つの他のサイトの環原子の架橋;および4’-位の環酸素に-S-、-N(R)-または-C(R1)(R2)などの原子や基の置換を含む多様な方法で変形できるが、これに限定しない。変形された糖モイエティは、置換糖、特に、2’-F、2’-OCH2(2’-OMe)または2’-O(CH2)2-OCH3(2’-O-メトキシエチルまたは2’-MOE)置換基を有する2’-置換糖;および4’-(CH2)n-O-2’(n=1またはn=2)架橋を有するビサイクリック変形糖(BNA)を含むが、これに限定しない。このような変形された糖の製造方法は当業界で公知である。変形された糖モイエティを含むヌクレオシドにおける塩基部分は、標的核酸と混成化するように維持できる。
【0063】
一具体例によれば、前記変形されたヌクレオシドは、2’位において、F;O-、S-、またはN-アルキル;O-、S-、またはN-アルケニル;O-、S-、またはN-アルキニル;O-アルキル-O-アルキル;O-アルキル-O-アルキル-N(ジアルキル);またはO-アルキル-カルボキシルアミドのうちの1つを含む(ここで、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは置換もしくは非置換のC1~C10アルキルまたはC2~C10アルケニルおよびアルキニルである)。O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、O(CH2)nO(CH2)nN[(CH2)mCH3]2、O(CH2)nC(=O)-NHCH3およびO(CH2)nON[(CH2)mCH3]2が特に好ましい(ここで、nとmは0~約10である)。その他の好ましい変形されたオリゴヌクレオチドは、2’位にC1~C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリルまたはO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノまたはポリアルキルアミノ置換基のうちの1つを含むことができる。好ましくは、前記変形は、2’-メトキシエトキシ(2’-O-(2-メトキシエチル)または2’-MOEとしても知られている2’-O-CH2CH2OCH3(Martin et al.,HeIv.Chim.Acta,1995,78,486-504)、すなわち、アルコキシアルコキシ基を含むことができ、前記変形は、2’-ジメチルアミノオキシエトキシ(すなわち、2’-DMAOEとしても知られている(CH2)2ON(CH3)2基)、および2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ[すなわち、2’-O-ジメチルアミノエトキシエチルまたは2’-DMAEOEとしても知られている2’-O(CH2)2O(CH2)2-N(CH3)2基]を含むことができる。
【0064】
さらに他の好ましい変形は、2’-メトキシ(2’-O-CH3)、2’-アミノプロポキシ(2’-OCH2CH2CH2NH2)、2’-アリル(2’-CH2-CH=CH2)、2’-O-アリル(2’-O-CH2-CH=CH2)および2’-フルオロ(2’-F)を含むことができる。2’-変形は、アラビノ(上部)位やリボ(下部)位であってもよい。好ましい2’-アラビノ変形は2’-Fであり、ヌクレオシドの他の位置(特に、3’末端ヌクレオシドの糖の3’位または5’末端ヌクレオシドの5’位)も類似して変形可能である。
【0065】
前記ビサイクリックまたはトリサイクリック糖モイエティは、例えば、ロック核酸(locked nucleic acid、LNA)、コンストレインドエチルビサイクリック核酸(constrained ethyl bicyclic nucleic acid、cEt)、2’-O,4’-C-エチレン-架橋型核酸(2’-O,4’-C-ethylene-bridged nucleic acid、ENA)およびトリシクロ(tricyclo)-DNAからなる群より選択されてもよいが、これに限定しない。
【0066】
一具体例によれば、前記変形されたヌクレオシドは、6員環または非環モイエティを有する糖代用物を含むことができる。前記糖代用物は、例えば、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(phodphorodiamidate morpholino oligomer、PMO)のようなモルホリノ環、シクロヘキセニル環、シクロヘキシル環および、例えば、ヘキシトール、アニトール、マンニトール、フルオルヘキシトールのようなテトラヒドロピラニル環からなる群より選択されてもよいが、これに限定しない。本発明によるアンチセンス化合物に導入されるヌクレオシドを変形するのに用いられるその他の多様な二環および三環糖置換環系は当業界で公知である。このような環系は多様な置換過程により活性が増進できる。
【0067】
また、前記糖代用物は、例えば、アンロック核酸(unlocked nucleic acid、UNA)またはペプチド核酸(peptide nucleic acid、PNA)のような非環モイエティであってもよいが、これに限定しない。
ペプチド核酸(Peptide nucleic acid、PNA)は、核塩基がリン酸結合ではないペプチド結合で連結された核酸類似体の一種で、ホスホジエステル結合がペプチド結合(peptide bond)に代替されており、アデニン、チミン、グアニン、シトシンのような核塩基を有していて、特異的に核酸と混成化反応を起こすことができる。PNAは、自然界では発見されず、人工的に化学的な方法で合成され、相補的な塩基配列の核酸と混成化反応により二本鎖を形成することができる。また、PNAは、電気的に中性であるため、化学的に安定しているだけでなく、核酸分解酵素(nuclease)やタンパク質分解酵素(protease)によって分解されず生物学的にも安定しているという特徴を有している。PNAは、N-アミノエチルグリシン骨格が最も広く使用されるが、当業界において公知により、変形された骨格を有するPNAも使用可能である(P.E.Nielsen and M.Egholm“An Introduction to PNA”in P.E.Nielsen(Ed.)“Peptide Nucleic Acids:Protocols and Applications”2nd Ed.Page9(Horizon Bioscience,2004))。
【0068】
アンロック核酸(unlocked nucleic acid、UNA)は、リボース(ribose)のC2’-C3’結合を有しない変形されたヌクレオシドであって、開放鎖構造によって立体的配置が拘束されず、オリゴヌクレオチドの柔軟性を調整することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチド内にUNAが含まれる場合、Tm値を5℃~10℃程度低下させることができ、オフターゲットを減少させることができることが知られている。
【0069】
核塩基(nucleobase)の変形
一具体例によれば、前記変形されたヌクレオシドは、シュードウリジン(psudouridine)、2’-チオウリジン(thiouridine)、N6’-メチルアデノシン(methyladenosine)、5’-メチルシチジン(methylcytidine)、5’-フルオロ(fluoro)-2-デオキシウリジン(deoxyuridine)、N-エチルピペリジン7’-EAAトリアゾール変形アデニン(N-ethylpiperidine 7’-EAA triazol modified adenine)、N-エチルピペリジン6’-トリアゾール変形アデニン(N-ethylpiperidine 6’-triazol modified adenine)、6’-フェニルピロロシトシン(6’-phenylpyrrolocytosine)、2’,4’-ジフルオロトルイルリボヌクレオシド(2’,4’-difluorotoluylribonuleoside)および5’-ニトロインドール(5’-nitroindole)からなる群より選択される1つ以上の変形された核塩基(nucleobase)を含む変形されたヌクレオシドであってもよい。
【0070】
変形されていない、または自然核酸塩基は、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、およびピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を意味する。
【0071】
前記変形されたヌクレオシドは、核塩基変形または置換も含むことができる。核塩基変形または置換は、構造的に区別される形態であるが、自然発生的または合成変形されていない核塩基と機能的に互いに交換可能である。自然発生核塩基と変形された核塩基は、水素結合に参加できる。このような核塩基変形は、前記アンチセンス化合物にヌクレアーゼ安定性、結合親和性またはその他の有利な生物学的特性を付与する。例えば、5-メチルシトシン置換のような特定の核塩基置換は、0.6-1.2℃まで核酸デュプレックス安定性を高めることが知られていて、標的核酸に対するアンチセンス化合物の結合親和性を増進するのに特に有用である。
【0072】
例えば、前記変形された核塩基は、5’-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2’-アミノアデニン、アデニンとグアニンの6’-メチルおよびその他のアルキル誘導体、アデニンとグアニンの2’-プロピルおよびその他のアルキル誘導体、2’-チオウラシル、2’-チオチミンおよび2’-チオシトシン、5’-ハロウラシルおよびシトシン、5’-プロピニル(-C≡C-CH3)ウラシルおよびシトシンおよびピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6’-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5’-ウラシル(類似ウラシル)、4’-チオウラシル、8’-ハロ、8’-アミノ、8’-チオール、8’-チオアルキル、8’-ヒドロキシおよびその他の8’-置換されたアデニンおよびグアニン、5’-ハロ(特に、5’-ブロモ)、5’-トリフルオロメチルおよびその他の5’-置換されたウラシルおよびシトシン、7’-メチルグアニンおよび7’-メチルアデニン、2’-F-アデニン、2’-アミノアデニン、8’-アザグアニンおよび8’-アザアデニン、7’-デアザグアニンおよび7’-デアザアデニンおよび3’-デアザグアニンおよび3-デアザアデニン、フェノキサジンシチジン(lH-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾオキサジン-2(3H)-オン)、フェノチアジンシチジン(IH-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾチアジン-2(3H)-オン)などの三環ピリミジン、9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾオキサジン-2(3H)-オン)、カルバゾールシチジン(2H-ピリミド[4,5-b]インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(H-ピリド[3’,2’:4,5]ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-オン)のような置換フェノキサジンシチジンなどのG-クランプを含むが、これに限定しない。
【0073】
また、異種環塩基基は、プリンやピリミジン塩基が他の異種環で置換される7’-デアザ-アデニン、7’-デアザグアノシン、2’-アミノピリジンおよび2’-ピリドンなどの異種環塩基基も含むことができる。前記アンチセンス化合物の結合親和性を高めるのに特に有用な核酸塩基は、例えば、5’-置換ピリミジン、6’-アザピリミジンおよび2’-アミノプロピルアデニン、5’-プロピニルウラシルおよび5’-プロピニルシトシンを含み、N-2、N-6およびO-6置換プリンを含むが、これに限定しない。これとともに、前記変形された核塩基は、米国特許第3,687,808号、文献[The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering,pages858-859,Kroschwitz,J.I.,ed.John Wiley&Sons,1990,Englisch et al.,Angewandte Chemie,International Edition,1991,30,613]、および文献[Sanghvi,Y.S.,Chapter15,Antisense Research and Applications,pages289-302,Crooke,S.T.and Lebleu,B.ed.,CRC Press,1993]に開示されている核塩基を含む。
【0074】
変形されたヌクレオシド間の連結基
一具体例によれば、前記アンチセンス化合物において、変形されたヌクレオシド間の連結基は、ホスホトリエステル(phosphotriester)、ホスホルアミデート(phosphoramidate)、メシルホスホルアミデート(mesyl phosphoramidate)、ホスホロチオエート(phosphorothioate)、ホスホロジチオエート(phosphorodithioate)、メチルホスホネート(methylphosphonate)およびメトキシプロピル-ホスホネート(methoxypropyl-phosphonate)からなる群より選択される1つ以上の変形されたヌクレオシド間の連結基であってもよい。
【0075】
当業界において公知のように、ヌクレオシドは、核塩基と糖モイエティとの組み合わせである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖モイエティと共有結合するリン酸基をさらに含む。ペントフラシノル糖を含むヌクレオチドにおいて、リン酸基は、結合糖の2’、3’または5’ヒドロキシ基と結合できる。オリゴヌクレオチドの形成において、リン酸基は、互いに隣接するヌクレオシドと共有結合して線状重合体化合物を形成する。順次に、線状重合体構造の各末端も結合して円形構造を形成するが、開放型線状構造が一般的に好ましい。オリゴヌクレオチド構造において、リン酸基は、通常、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間の骨格を形成し、RNAとDNAの自然発生的な結合や骨格は3’~5’ホスホジエステル(phosphodiester)結合である。一具体例によるアンチセンス化合物は、自然発生的ヌクレオシド間結合以外に1つ以上の変形されたヌクレオシド間結合を含むことができるが、これは、細胞吸収増進、標的核酸親和性増進、ヌクレアーゼ存在下の安定性増加などの特性によって、自然発生的ヌクレオシド間結合を含むアンチセンス化合物よりよく選択される。
【0076】
本発明において用いられる好ましいアンチセンス化合物の一具体例としては、変形された骨格や非自然的ヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドである。前記定義のように、変形された骨格を有するオリゴヌクレオチドは、骨格にリン原子を含むヌクレオチドと骨格にリン原子を含まないヌクレオチドを含む。これとともに、当業界で援用されるように、本明細書では、ヌクレオシド間の骨格にリン原子を含まない変形されたオリゴヌクレオチドもオリゴヌクレオチドであると解釈される。
【0077】
一具体例によるアンチセンス化合物においてヌクレオシド間の変形された結合は、リン酸を保有するヌクレオシド間結合だけでなく、リン酸を含まないヌクレオシド間結合を含むことができる。代表的なリン酸含有ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネート、5’-アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含むメチルおよびその他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、それらの正常な3’-5’結合、2’-5’結合類似体を有する3’-アミノホスホルアミデートおよびアミノアルキルホスホルアミデート、メシルホスホルアミデート、チオノホスホアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホルトリエステル、セレノホスフェートおよびボラノホスフェートを含むホスホアミデートおよび1つ以上のヌクレオチド間結合が3’-3’、5’-5’または2’-2’結合である反対の極性を有する化合物であってもよいが、これに限定しない。また、反対の極性を有するオリゴヌクレオチドは、3’-大部分のヌクレオチド間結合において単一の3’-3’結合、すなわち塩基消失部分であり得る1つの逆転されたヌクレオシド残部(核酸塩基が欠落し、その代わりにヒドロキシ基を有する)を含む。多様な塩、塩混合物遊離酸形態も含まれる。
【0078】
リンを含まない好ましい変形されたオリゴヌクレオチドの骨格は、単鎖アルキルやシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合異種原子とアルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間結合や、1つ以上の単鎖異種原子または異種環ヌクレオシド間結合によって形成される骨格であってもよい。これらは、モルホリン結合(ヌクレオシドの糖部分から一部形成)を有する骨格;シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;リボアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;N、O、SおよびCH2混合成分要素を有する骨格を含むが、これに限定しない。このようなリン酸含有ヌクレオシド間結合とリン酸非含有ヌクレオシド間結合の製造方法は当業界で公知である。
【0079】
他の具体例において、前記アンチセンス化合物は、5’末端のヒドロキシ基を5’-(E)-ビニルホスホネート(vinylphosphonate)、5’-メチルホスホネート(methylphosphonate)、(S)-5’-C-メチルウィズホスフェート(methyl with phosphate)および5’-ホスホロチオエート(phosphorothioate)からなる群より選択される1つで置換することができる。このように変形されたアンチセンス化合物は、RNA-誘導サイレンシング複合体(RISC)によくロードされて一本鎖の短い干渉RNA(ss siRNA)または二本鎖の短い干渉RNA(ds siRNA)として作動することが知られている。
【0080】
アンチセンス化合物モチーフ
一具体例によれば、前記アンチセンス化合物は、Lx-Dy-Lzの形態のキメリック(chimeric)形態を有するもので、Lは変形されたヌクレオシドであってもよい。ここで、DはDNAであり、xおよびzは1~7の任意の整数であって、同一でも異なっていてもよく、yは5~25の任意の整数である。好ましくは、前記xおよびzは1~5の任意の整数であり、yは7~24の任意の整数であってもよいし、さらに好ましくは、前記xおよびzは3~5の任意の整数であり、yは8~23の任意の整数であってもよい。少なくともD領域と最も隣接したL領域の糖モイエティは変形されたもので、L領域とD領域との境界が定義される。また、前記すべての領域(L領域およびD領域)において各ヌクレオシド間の連結基は、ホスホジエステルまたは前述の変形されたヌクレオシド間の連結基(例えば、ホスホロチオエート)が1つ以上含まれ、前記ヌクレオシド内の核塩基も、天然核塩基または前述の変形された核塩基を1つ以上含むことができる。
【0081】
一具体例によれば、前記変形されたオリゴヌクレオチドは、連結されたデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント、連結されたヌクレオシドからなる5’ウィングセグメント、および連結されたヌクレオシドからなる3’ウィングセグメントを含むものであり、前記ギャップセグメントは、5’ウィングセグメントおよび3’ウィングセグメントの間に位置し、それぞれのウィングセグメントのヌクレオシドは、変形された糖モイエティまたは糖代用物を含むことができる。
【0082】
キメラアンチセンス化合物は、典型的にヌクレアーゼ耐分解性増加、細胞吸収増加、標的核酸に対する結合親和性増加および/または阻害活性増加を付与するように変形された少なくとも1つの領域を含むことができる。キメラアンチセンス化合物は、2以上のオリゴヌクレオチドまたは変形されたオリゴヌクレオチドの混成構造に形成される。このような化合物はまた、当業界においてハイブリッド(hybrid)またはギャップマー(gapmer)と称され、ギャップマー構造の製造については、米国特許第5,013,830号;第5,149,797号;第5,220,007号;第5,256,775号;第5,366,878号;第5,403,711号;第5,491,133号;第5,565,350号;第5,623,065号;第5,652,355号;第5,652,356号;および第5,700,922号に開示されている。
【0083】
ギャップマーにおいて、RNaseH切断を支援する多数のヌクレオチドを有する内部領域は、内部領域のヌクレオシドと化学的に異なる多数のヌクレオシドを有する外部領域との間に位置する。ギャップマーモチーフを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの場合、ギャップ(gap)セグメント(本明細書のアンチセンス化合物においてD領域)は、標的核酸の分割を支援するのに対し、ウィング(wing)セグメント(本明細書のアンチセンス化合物においてL領域)は、安定性、親和性およびエキソヌクレアーゼ耐性を向上させるための変形されたヌクレオシドを含む変形されたオリゴヌクレオチドを含むことができる。必要によっては、前記ギャップセグメントも、変形されたオリゴヌクレオチドを含むことができる。前記変形されたオリゴヌクレオチドは、1つ以上の変形されたヌクレオシド間の連結基、変形された糖モイエティを含む1つ以上の変形されたヌクレオシドおよび変形された核塩基を含む1つ以上の変形されたヌクレオシドから選択される1つ以上の変形を含むことができ、それぞれの変形については前述した通りである。
【0084】
好ましくは、ギャップマーにおいて異なる各領域は、均一な糖モイエティを含むことができる。また、異なる各領域は、互いに異なる糖モイエティでその境界が区分されるが、各領域内の糖モイエティは、非-変形ヌクレオチドおよび変形ヌクレオチドから自由に選択されるミックスマー(mixmer)形態になってもよい。本発明の一具体例によれば、このようなウィングセグメント-ギャップセグメント-ウィングセグメントモチーフは、Lx-Dy-Lzのような形態で表現される(ここで、xは5’ウィングセグメントの長さを示し、yはギャップセグメントの長さを示し、zは3’ウィングセグメントの長さを示す)。一具体例によるアンチセンス化合物は、ギャップマーモチーフを有することができる。一具体例によるアンチセンス化合物において、x、y、zは、例えば、5-10-5、3-10-3、1-12-1、2-10-3、3-9-4、3-8-3、1-9-2、2-13-5、4-8-4、4-12-3、4-12-4、3-14-3、2-16-2、1-18-1、2-10-2、1-10-1または2-8-2を含むが、これに限定しない。他の具体例によれば、前記アンチセンス化合物は、ウィングセグメント-ギャップセグメントまたはギャップセグメント-ウィングセグメント構造、すなわち、前記xまたはzが0の場合、「ウィングマー」(wingmer)モチーフを有することができる。前記ウィングマー構造は、例えば、10-10、8-10、5-10、8-4、4-12、12-4、3-14、16-2、18-1、10-3、2-10、1-10または8-2を含むが、これに限定しない。
【0085】
一具体例において、前記アンチセンス化合物の3’ウィングセグメントの特徴および5’ウィングセグメントの特徴は独立して選択可能である。また、前記具体例において、5’ウィングセグメントのモノマーの数字(前記Lxにおいてx)および3’ウィングセグメントのモノマー(前記Lzにおいてz)の数字は同一でも異なっていてもよい。また、5’ウィングセグメントの変形(存在すれば)は3’ウィングセグメントの変形(存在すれば)と同一であるか、前記変形(存在すれば)は異なっていてもよく、5’ウィングセグメントのモノメリック連結および3’ウィングセグメントのモノメリック連結は同一でも異なっていてもよい。すなわち、全領域が均一に変形されるべきではなく、前記変形の1つ以上がアンチセンスオリゴヌクレオチド内部の1つ以上のヌクレオチドに導入される。
【0086】
接合体
本発明の一態様は、1つ以上の非-ヌクレオチドモイエティに、前記アンチセンス化合物が共有結合した接合体を提供し、一具体例によれば、前記非-ヌクレオチドモイエティは、タンパク質、脂肪酸鎖、糖残基、糖タンパク質、重合体、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0087】
本明細書において、「接合体(conjugate)」は、非-ヌクレオチドモイエティ(接合体モイエティまたは領域Cまたは第3領域)に共有連結されたアンチセンス化合物またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを意味する。このような接合は、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、細胞吸収または安定性に影響を及ぼしてアンチセンスオリゴヌクレオチドの薬理学を改善させることができる。一具体例によれば、前記非-ヌクレオチドモイエティは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞分布、生体利用率、代謝、排泄、透過性、および/または細胞吸収を改善させてアンチセンスオリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を変形させるたり向上させることができる。また、前記非-ヌクレオチドモイエティは、アンチセンスオリゴヌクレオチドを特異的器官、組織または細胞類型に標的化し、それによってその器官、組織または細胞類型においてアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効性を向上させることができる。これとともに、前記非-ヌクレオチドモイエティは、非-標的細胞類型、組織または器官でのアンチセンスオリゴヌクレオチドの活性、例えば、オフターゲット活性または非-標的細胞類型、組織または器官での活性を減少させることができる。国際特許公報WO93/07883およびWO2013/033230は、好適な非-ヌクレオチドモイエティを開示する。
【0088】
一具体例によれば、前記非-ヌクレオチドモイエティは、インターカレーター、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、ビタミンモイエティ、ポリエチレングリコール、チオエーテル、ポリエーテル、コレステロール、コール酸モイエティ、フォレート、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、フェナントリジン、アントラキノン、アダマンタン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、蛍光団および染料を含むが、これに限定されない。
【0089】
一具体例によれば、前記非-ヌクレオチドモイエティは、活性薬物物質、例えば、アスピリン、ワルファリン、ケトプロフェン、カルプロフェン、ジアゼピン、抗菌剤、抗生剤を含むことができる。
【0090】
一具体例によれば、前記非-ヌクレオチドモイエティは、抗体(antibody)をさらに含むことができる。
【0091】
一具体例によれば、前記非-ヌクレオチドモイエティは、前記アンチセンス化合物またはアンチセンスオリゴヌクレオチドの5’末端または3’末端に連結される。
【0092】
一具体例によれば、前記非-ヌクレオチドモイエティは、少なくとも1個~3個のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を含むことができる。
【0093】
剤形
オリゴヌクレオチドの使用を容易にするために、例えば、分解を最小化したり、伝達および/または吸収を容易にしたり、または剤形においてオリゴヌクレオチドに対して他の有益な性質を提供する剤形を用いてオリゴヌクレオチドを対象体または細胞環境に伝達できる多様な剤形が開発された。
【0094】
一具体例において、WFDC2の発現を減少させるためのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的細胞の直面した環境でまたは全身で対象に投与される時、オリゴヌクレオチドの十分な部分が細胞に入ってWFDC2の発現を減少させるように好適に剤形化される。一具体例によれば、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、緩衝剤溶液、例えば、リン酸塩緩衝食塩水溶液、リポソーム、ミセル構造体またはカプシドの形態に剤形化される。また、ネイキッド(naked)オリゴヌクレオチドまたはその接合体は、水または水性溶液(例えば、pHが調整された水)または塩基性緩衝水性溶液(例えば、PBS)内で剤形化される。
【0095】
一具体例によれば、陽イオン性脂質を有するオリゴヌクレオチドの剤形を用いてオリゴヌクレオチドが細胞に導入されることを容易にできる。例えば、陽イオン性脂質、例えば、リポフェクション、陽イオン性グリセロール誘導体、および多価陽イオン性分子(例えば、ポリリジン)を用いることができ、好適な脂質には、オリゴフェクタミン、リポフェクタミン(Life Technologies)、NC388(Ribozyme Pharmaceuticals,Inc.)、またはフュージェン((FuGene)6(Roche))が含まれ、これはすべて製造業者のプロトコルによって使用可能である。このような剤形には脂質ナノ粒子を含むことができる。
【0096】
また、前記剤形は、賦形剤を含むことができる。賦形剤は、リポソーム、脂質、脂質複合体、微細球、微細粒子、ナノ球、またはナノ粒子を含むか、またはそれを必要とする対象体の細胞、組織、器官または身体に投与するために異なって剤形化されてもよい(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd edition,Pharmaceutical Press,2013参照)。賦形剤は、組成物に活性成分の改善された安定性、改善された吸収、改善された可溶性および/または治療的増強を付与する。また、賦形剤は、緩衝剤(例えば、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、トリス塩基、または水酸化ナトリウム)またはビヒクル(例えば、緩衝溶液、ワセリン、ジメチルスルホキシド、または鉱油)であってもよい。
【0097】
一部の実施態様において、オリゴヌクレオチドは、その保管寿命を延ばすために、凍結乾燥した後、使用する前に溶液に作ることができる。したがって、本発明によるアンチセンス化合物をなしているオリゴヌクレオチドを含む組成物中の賦形剤は、凍結乾燥保護剤(例えば、マンニトール、ラクトース、ポリエチレングリコール、またはポリビニルピロリドン)、または崩壊温度調整剤(例えば、デキストラン、ピコールまたはゼラチン)が使用できる。
【0098】
注射用途に適した薬学的組成物は、滅菌注射溶液または分散液のその場製造のために滅菌水性溶液(水溶性の場合)または分散液および滅菌粉末を含むことができる。静脈内または皮下投与の場合、好適な担体には、生理食塩水、静菌水、クレモフォール(Cremophor)EL.TM.(BASF)またはリン酸塩緩衝食塩水(PBS)が含まれる。また、担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの好適な混合物を含む溶媒または分散媒質であってもよい。様々な場合に、組成物中に等張化剤、例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)および塩化ナトリウムを含むことが好ましい。滅菌性注射溶液は、選択された溶媒中に必要な量のオリゴヌクレオチドを、必要に応じて前記列挙された成分のうちの1つまたはそれらの組み合わせとともに導入させた後に、滅菌濾過させることによって製造される。前記薬学的組成物は、少なくとも約0.1%の治療剤(例えば、WFDC2の発現を減少させるためのアンチセンスオリゴヌクレオチド)またはそれ以上の用量を含むことができるが、活性成分の百分率は、組成物の総重量または体積の約1%~約80%であることが好ましい。これは、可溶性、生体利用率、生物学的半減期、投与経路、製品保管寿命だけでなく、他の薬理学的考慮事項のような因子が剤形の製造に考慮されるであろう。
【0099】
治療疾患および方法
本発明によるアンチセンス化合物またはこれを含む接合体は、癌の予防または治療用薬学的組成物であって、癌治療剤として使用可能である。「癌(cancer)」とは、正常なアポトーシスの均衡が崩れる場合、細胞が過剰増殖し、周辺組織に浸潤しうる特徴を有する疾病群を意味する。「治療(treatment)」は、本発明による薬学的組成物の投与によって癌に対する症状が好転、改善されたり、有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0100】
一具体例によれば、前記癌は、胃癌、食道癌、卵巣癌、頭頸部癌、脳腫瘍、甲状腺癌、肺癌、喉頭癌、大腸/直腸癌、肝臓癌、胆嚢癌、胆管癌、膀胱癌、膵臓癌、乳癌、子宮癌、子宮頸癌、前立腺癌、腎臓癌、皮膚癌などの上皮細胞などに由来する癌腫(carcinoma)、骨癌、筋肉癌、脂肪癌、線維細胞癌などの結合組織細胞に由来する肉腫(sarcoma)、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫などの造血細胞に由来する血液癌、神経組織に発生する腫瘍からなる群より選択された1種以上であってもよい。好ましくは、前記癌は、固形癌であってもよい。
【0101】
本発明による薬学的組成物を用いた治療方法は、対象に組成物の有効量、すなわち、好ましい治療結果を生成できる量を投与することを伴う。治療的に許容可能な量は、疾患を治療できる適切な用量であることが好ましく、これは、対象の大きさ、身体表面積、年齢、投与される特定の組成物、組成物中の活性成分、投与時間および経路、全般的な健康、および同時に投与される他の薬物を含めた特定の因子によって左右できる。本発明による組成物の投与は、例えば、経口(例えば、胃供給管、十二指腸供給管、胃瘻形成術または直腸)または非経口(例えば、皮下注射、静脈内注射または注入、動脈内注射または注入、筋肉内注射)、局所(例えば、表皮、吸入、点眼または粘膜)、または標的器官(例えば、対象体の肝)に直接注射によって投与可能である。好ましくは、本発明によるアンチセンス化合物は、静脈内にまたは皮下に投与することができ、0.1mg/kg~50mg/kg、0.1mg/kg~30mg/kg、0.1mg/kg~20mg/kg、0.1mg/kg~5mg/kgの範囲、または0.5mg/kg~5mg/kgの範囲の用量で投与可能である。一部の具体例において、治療対象は、ヒトまたは非-ヒト霊長類または他の哺乳類対象体であることが好ましいが、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、マウス、ラット、モルモットまたはハムスターが含まれてもよい。
【0102】
併用治療
本発明の一具体例によれば、前記薬学的組成物は、1つ以上の他の薬剤とともに投与可能である。一具体例によれば、前記1つ以上の他の薬剤は、本発明の治療対象と同一の疾患や病態を治療するように設計可能である。あるいは、前記1つ以上の他の薬剤は、1つ以上の本発明の薬学的組成物の望まない効果を治療するように設計されたり、他の治療剤の望まない効果を治療する他の薬剤とともに投与可能である。
【0103】
一具体例によれば、本発明の薬学的組成物は、1つ以上の他の薬剤と同時に投与されたり、異なる時点で投与されてもよい。これとともに、本発明の薬学的組成物と1つ以上の他の薬剤は、1つの剤形に一緒に製造されたり、別に製造されてもよい。
【0104】
一具体例によれば、本発明の薬学的組成物とともに投与される薬剤は、治療効果を増進して、優れた治療効果、すなわち、シナジー効果をもたらすことができる。言い換えれば、本発明は、アンチセンス化合物および非-アンチセンスメカニズムによって作用する1つ以上の薬剤を含む薬学的組成物を提供することができる。前記薬剤は、化学治療剤であってもよいし、前記化学治療剤は、例えば、ダウノルビシン、ダウノマイシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、エソルビシン、ブレオマイシン、マホスファミド、イホスファミド、シトシンアラビノサイド、ビス-クロロエチルニトロソウレア、ブスルファン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、プレドニゾン、ヒドロキシプロゲステロン、テストステロン、タモキシフェン、ダカルバジン、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ペンタメチルメラミン、ミトキサントロン、アムサクリン、クロラムブシル、メチルシクロヘキシルニトロソウレア、窒素マスタード、メルファラン、シクロホスファミド、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-アザシチジン、ヒドロキシウレア、デオキシコホルマイシン、4-ヒドロキシフェノキシシクロホスホル-アミド、5-フルオロウラシル(5-FU)、5-フルオロデオキシウリジン(5-FUdR)、メトトレキサート(MTX)、コルヒチン、タキソール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド(VP-16)、トリメトレキサート、イリノテカン、トポテカン、ゲムシタビン、テニポシド、シスプラチンまたはジエチルスチルベストロール(DES)であってもよいが、これに限定しない。前記化学治療剤を本発明のアンチセンス化合物とともに用いる場合、これらは個別的に(例えば、5-FUおよびオリゴヌクレオチド)、順次に(例えば、一定期間5-FUおよびオリゴヌクレオチドの使用後、MTXおよびオリゴヌクレオチド)、または1つ以上の他の化学治療剤(例えば、5-FU、MTXおよびオリゴヌクレオチド、または5-FU、放射線治療およびオリゴヌクレオチド)と併用して使用可能である。抗炎剤(非ステロイド抗炎剤およびコルチコステロイドを含むが、これに限定しない)、抗ウイルス剤(リバビリン、ビダラビン、アシクロビルおよびガンシクロビルを含むが、これに限定しない)も、本発明の組成物に混合できる。
【実施例】
【0105】
以下、1つ以上の具体例を実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は1つ以上の具体例を例として説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0106】
実験方法
1.細胞培養
ヒト由来の胃癌細胞株SNU638、膠芽腫細胞株SF268を10%(v/v)FBS(#SH30084.03HI、Hyclone)、1%(v/v)抗生剤(Penicillin-Streptomycin、#LS202-02、Welgene)溶液が含まれているRPM1-1640(#Sh30027.01、Hyclone)を培地として二酸化炭素濃度5%(v/v)、37℃の培養器内で培養した。
【0107】
膵臓癌上皮性組織に由来するPANC-1細胞株は10%FBS、1%抗生剤(Penicillin-Streptomycin、#LS202-02、Welgene)を含むDulbecco’s modified Eagle’s Medium(DMEM)培地に37℃の二酸化炭素濃度5%(v/v)の条件で培養した。継代培養は4日ごとに進行させ、形質転換実験に使用される細胞は5~10回以内の継代培養を経た細胞のみを使用した。
【0108】
2.アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の作製
本実施例で使用されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、WFDC2のpre-mRNA(配列番号1)またはmRNA(配列番号2)での多様な領域を標的化するようにデザインし、Integrated DNA technologyで注文作製したり、自動化されたDNA合成器(BioAutomation model MerMade12)または自動化されたペプチド合成器(Biotage model Syro1)でControlled-pore glass(CPG)固体状支持体に結合しているユニバーザルリンカー(universal linker)に、下記表1のように標準化されたphosphoramidite chemistry cycleを繰り返し適用して合成した。
【0109】
【0110】
ホスホロチオエートリンカーのためには、前記表1のOxidation段階の代わりに、3-[(Dimethylamino-methylidene)amino]-3H-1,2,4-dithiazole-3-thione(DDTT)の0.1Mピリジン(pyridine)溶液または0.05Mピリジン-アセトニトリル(Acetonitrile)1:1の溶液を使用した。
【0111】
オリゴヌクレオチド合成が終結すれば、濃縮されたアンモニア溶液を入れて、60℃で12~18時間反応させて、CPGFで切断させ、同時に保護グループ(protection group)をすべて除去した。以後、CPGを濾過して除去し、アンモニアを適切に濃縮させた後、残留物をセファデックス(SephdexモデルG-25)レジンに濾過して脱塩させ、凍結乾燥してすぐに使用したり、分取高性能液体クロマトグラフィー(prep-HPLC)を用いて精製した後、0.3M塩化ナトリウム(NaCl)または酢酸ナトリウム(NaOAc)溶液から2-3倍の容量の冷却されたエタノール(ethanol)に沈殿させて使用した。
【0112】
合成-精製されたオリゴヌクレオチドは分析用高性能液体クロマトグラフィー(Analytical HPLC)で分析して純度が80%以上であることを確認し、紫外線-可視光線分光器(UV-VIS spectrometer)で260nmの波長での吸光度を測定して定量した後、MALDI-TOFまたはQ-TOF質量分析器によりオリゴヌクレオチドの分子量を確認した後、使用した。
【0113】
3.定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)によるASOを投与した細胞のWFDC2 mRNAの発現量の分析
形質転換1日前に5~10回以内の継代培養を経た細胞を9cm2(6well)の培養皿(#3006、SPL)に0.25×106cellだけ細胞を培養した。翌日、9cm2(6well)の培養皿の面積の約80%程度細胞が増殖したことを確認した後、形質転換実験を進行させた。形質転換試薬としてはlipofectamine3000(#L3000008、Thermofisher)を使用した。培養溶液をOpti-MEM(#A3635101、Gipco)に入れ替え、lipofectamine3000を用いて、製造会社に提供するプロトコルに基づいて0nM(control)~100nMのASOをそれぞれ24時間処理後、細胞を分析した。
【0114】
形質転換後、培養皿から培地を除去した後、PBS(#ML008-01、Welgene)で2回洗浄した。その後、TRIzol(#15596018、Ambion)を用いて、製造会社のプロトコルによって細胞からtotal RNAを抽出した。抽出されたRNAを鋳型としてImProm-IITM Reverse Transcription System(#A3800、Promega)を用いて、製造会社のプロトコルによってcDNAを合成した。以後、合成されたcDNAと表2のプライマーおよびTB Green○R Fast qPCR Mix(#RR430、Takara)を用いて、製造会社のプロトコルによってqRT-PCRを進行させた。分析用機械はStepOneTM Real-Time PCR System(#4376357、Applied biosystems)qRT-PCRの結果に基づいて、0nM(control)対比、ASO処理群のWFDC2の発現量をパーセントに換算した。
【0115】
【0116】
4.Enzyme-Linked Immunosorbent Assay(ELISA)によるASOを投与した細胞のWFDC2タンパク質の発現量の分析
形質転換1日前に5~10回以内の継代培養を経た細胞を1.9cm2(24well)の培養皿(#30024、SPL)に5.0×104cellだけ細胞を培養した。翌日、1.9cm2(24well)の培養皿の面積の約80%程度細胞が増殖したことを確認した後、形質転換実験を進行させた。形質転換試薬としてはlipofectamine3000(#L3000008、Invitrogen)を使用した。培養溶液をOpti-MEM(#A3635101、Gipco)に入れ替え、lipofectamine3000を用いて、製造会社に提供するプロトコルに基づいて0nM(control)~400nMのASOをそれぞれ48時間処理した。48時間後、細胞培養液を1.5mlマイクロチューブ(MCT-150-C、AXYGEN)に収集して、4℃の状態の遠心分離機で20分間1,000rpmの速度で細胞培養液中に含まれている残留物を沈めた後、上層液のみ1.5mlマイクロチューブに収集して-80℃の超低温冷凍庫にサンプルを保管した。
【0117】
WFDC2に対するDuoset ELISA kit(DY6274-05、R&D system、Minneapolis、MN、USA)を用いて、製造会社に提供する次のようなプロトコルによってWFDC2の濃度を測定した。Human WFDC2 capture Antibody(#844347、R&D system)をPBSで希釈させた後、96well micro-plate(#DY990、R&D system)に分注して、常温で30分間反応させた後、4℃の冷蔵庫に1日間保管した。以後、96well micro-plateにReagent diluent(#DY995、R&D system)で2倍希釈された前記細胞培養液100μlまたはWFDC2組換えタンパク質標準溶液100μlを分注して、常温で2時間反応させた。そして、それぞれの96well micro-plateにReagent diluentで希釈したビオチン化されたHuman WFDC2 detection antibody(#844348、R&D system)を分注して、常温で2時間反応させた後、Streptavidin-peroxidase溶液(Streptavidin-HRP、#893975、R&D system)100μlを分注後、常温で20分間反応させた。以後、それぞれの96well micro-plateにTetramethylbenzidine溶液(Substrate solution、#DY999、R&D system)100μlを分注して7分間反応させた後、2N濃度の硫酸溶液50μlを分注して反応を抑制させ、microplate readerを用いて450nmの波長での吸光度を測定した。各試料内のWFDC2の濃度は、知られた濃度のWFDC2組換えタンパク質標準溶液の吸光度から作った標準曲線に測定された各試料の吸光度を代入して計算した。陰性対照群に比べてWFDC2生成抑制率を次の式のように計算した。
【0118】
【0119】
5.SNU638 Xenograftマウスモデルを用いたASOの癌増殖抑制効果の確認
前記実施例で述べた細胞培養条件で育ったSNU638細胞をMatrigel(#354230、Corning)/PBS(#ML008-01、Welgene)1:1溶液に浮遊させた後、呼吸麻酔させた8週齢Male NOD.SCIDマウス(NOD.CB17-Prkdcsscid/NCrKoat)に3×106cellだけ注入した。以後、癌細胞定着、増殖のために、注入後3週間モニタリングした。癌細胞移植3週後、尾静脈注射(tail vein injection)経路(IV群)と皮下注射(subcutaneous injection)経路(SC群)を通して7.5mpk、30mpk濃度の化合物3を週2回4週間注射(計8回)した。IV7.5mpk群、IV30mpk群、SC7.5mpk群、SC30mpk群のN数は各8匹であり、対照群(control)は5匹であった。28日間バーニアキャリパーを用いて癌細胞のサイズ(mm3)を測定して、ASOによる癌増殖抑制効果を確認した。
【0120】
6.SF268 Xenograftマウスモデルを用いたASOの癌増殖抑制効果の確認
前記実施例で述べた細胞培養条件で育ったSF268細胞をMatrigel(#354230、Corning)/PBS(#ML008-01、Welgene)1:1溶液に浮遊させた後、呼吸麻酔させた8週齢Male NOD.SCIDマウス(NOD.CB17-Prkdcsscid/NCrKoat)に5×106cellだけ注入した。以後、癌細胞定着、増殖のために、注入後3週間モニタリングした。癌細胞移植3週後、尾静脈注射経路(IV群)を通して20mpkの化合物3を週3回4週間注射(計12回)した。IV20mpk群のN数は8匹であり、対照群は4匹であった。24日間バーニアキャリパーを用いて癌細胞のサイズ(mm3)を測定して、ASOによる癌増殖抑制効果を確認した。
【0121】
7.統計的分析
すべての統計的分析はGraphPad prism9.0.0により行われ、有意性の検証はTwo-way ANOVA Multiple Comparisons testで進行させ、統計的有意性を示す値は*、**、***で記載した。*はP≦0.05、**はP≦0.01、***はP≦0.001を示す。
【0122】
実験結果
1.ASOの製造結果
前記実験方法のアンチセンスオリゴヌクレオチドの作製方法により、5’および3’ウィングは5個の連続的な2’-MOEで変形されたヌクレオシドであり、ギャップは8個~10個の連続的な天然DNAヌクレオシドで構成され、ヌクレオシド間の連結基はすべてホスホロチオエートで変形された5-8-5または5-10-5MOEギャップマーアンチセンスオリゴヌクレオチド、または5’および3’ウィングは3個の連続的な2’-LNAで変形されたヌクレオシドであり、ギャップは10個の連続的な天然DNAヌクレオシドで構成され、ヌクレオシド間の連結基はすべてホスホロチオエートで変形された3-10-3LNAギャップマーアンチセンスオリゴヌクレオチドを含めて計380種を合成し、WFDC2のpre-mRNA(配列番号1)またはmRNA(配列番号2)の開始部位および中段部位を含む塩基配列およびギャップマーモチーフを下記表3に示した。
【0123】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【表3-10】
【0124】
2.mRNAレベルで及ぼすASOの効果の確認
ヒト由来の膠芽腫細胞株SF268において前記製造されたASOがWFDC2 mRNAの発現を減少させるか否かを確認した。0nM(control)対比、100nMのASO処理によりWFDC2の発現量をパーセントに換算した結果を表4に示した。
【0125】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【0126】
また、SNU638およびSF268細胞株において濃度依存的にmRNAの生成抑制効果を示した化合物は表5および表6に示した。
【0127】
【0128】
【0129】
3.タンパク質レベルで及ぼすASOの効果の確認
ヒト由来の胃癌細胞株SNU638および膵臓癌細胞株PANC1において前記製造されたASOがWFDC2タンパク質の発現を減少させるか否かをELISAにより確認した。
【0130】
胃癌細胞株SNU638および膵臓癌細胞株PANC1に対するASOのWFDC2タンパク質発現の減少程度をELISAにより確認した結果、表7および表8に示すように、化合物2、化合物3、化合物32、化合物43、化合物59、化合物80、化合物103、化合物113、化合物114、化合物115、化合物116、化合物117、化合物125、化合物130、化合物136、化合物142、化合物148、化合物149、化合物151、化合物159、化合物163、化合物199、化合物204、化合物208、化合物209、化合物223、化合物232、化合物233、化合物234、化合物237、化合物239、化合物244、化合物245、化合物246、化合物247、化合物248、化合物249、化合物279、化合物285、化合物286、化合物294、化合物304、化合物307、化合物308、化合物310、化合物311、化合物314、化合物324、化合物325、化合物330、化合物337、化合物370、化合物373、化合物374、化合物375、化合物376、および化合物377がSNU638細胞株およびPANC1細胞株でそれぞれ発現を著しく減少させることを確認した。
【0131】
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【表7-6】
【表7-7】
【表7-8】
【表7-9】
【表7-10】
【0132】
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【表8-5】
【表8-6】
【表8-7】
【表8-8】
【表8-9】
【0133】
また、表9および表10に示すように、化合物1、化合物3、化合物57、化合物58、化合物76、化合物77、化合物79、化合物80、化合物88、化合物113、化合物114、化合物115、化合物116、化合物117、化合物125、化合物136がSNU638細胞株において、化合物2、化合物14、化合物24、化合物30、化合物32、化合物36、化合物37、化合物40、化合物41、化合物42、および化合物43がPANC1細胞株において濃度依存的にWFDC2の発現を減少させることを確認した。
【0134】
【0135】
【0136】
4.WFDC2の発現阻害による癌増殖抑制効果
胃癌細胞株SNU638 Xenograftマウスモデルに化合物3を投与した結果、投与経路に関係なく濃度依存的に統計的有意性を有する癌増殖抑制効果を確認することができ、特に、長期間投与することによってその効果がさらに大きくなることを確認することができた(
図1~
図4)。
【0137】
また、膠芽腫細胞株SF638 Xenograftマウスモデルに化合物3を尾静脈注射で投与した結果、20mpk濃度で統計的有意性を有する癌増殖抑制効果を確認することができ、特に、長期間投与することによってその効果がさらに大きくなることを確認することができた(
図5および
図6)。
【0138】
以上、本発明についてその好ましい実施例を中心に説明した。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明が本発明の本質的な特性を逸脱しない範囲で変形された形態で実現できることを理解するであろう。そのため、開示された実施例は限定的な観点ではなく説明的な観点で考慮されなければならない。本発明の範囲は上述した説明ではなく特許請求の範囲に示されており、それと同等範囲内にあるすべての差異は本発明に含まれていると解釈されなければならない。
【配列表】
【国際調査報告】