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特表2024-535879ナフタレンチオールエーテル構造を有する低分子化合物とその使用
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  • 特表-ナフタレンチオールエーテル構造を有する低分子化合物とその使用 図1
  • 特表-ナフタレンチオールエーテル構造を有する低分子化合物とその使用 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】ナフタレンチオールエーテル構造を有する低分子化合物とその使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 323/52 20060101AFI20240925BHJP
   C07D 257/04 20060101ALI20240925BHJP
   C07D 249/08 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 31/4196 20060101ALI20240925BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20240925BHJP
   C07D 305/08 20060101ALI20240925BHJP
   C07D 285/10 20060101ALI20240925BHJP
   C07D 285/16 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 31/433 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 31/549 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 31/277 20060101ALI20240925BHJP
   C07C 381/10 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C07C323/52
C07D257/04 B CSP
C07D249/08 535
A61K31/337
A61K31/4196
A61P43/00 105
A61K31/196
C07D305/08
C07D285/10
C07D285/16
A61K31/433
A61K31/549
A61K31/277
C07C381/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517404
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 CN2022119826
(87)【国際公開番号】W WO2023045910
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】202111106864.8
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524097229
【氏名又は名称】ハンチョウ フェクダメッド シーオー.エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】夏宏光
(72)【発明者】
【氏名】樊夢陽
(72)【発明者】
【氏名】岑旭峰
(72)【発明者】
【氏名】徐暁燕
(72)【発明者】
【氏名】呉栄海
(72)【発明者】
【氏名】劉棟
(72)【発明者】
【氏名】田珍
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA02
4C086BC60
4C086BC62
4C086BC85
4C086BC87
4C086GA13
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA05
4C086NA14
4C086NA15
4C086ZB21
4C086ZC52
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206JA13
4C206JA76
4C206KA11
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA03
4C206NA05
4C206NA14
4C206NA15
4C206ZB21
4C206ZC52
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB21
4H006AC46
4H006BB12
4H006BE56
4H006TA04
4H006TB54
4H006TN10
4H006TN30
4H006TN50
4H006TN60
4H006TN90
(57)【要約】
本出願は、ナフタレンチオールエーテル構造を有する低分子化合物及びその使用を開示する。本出願は、一般式(I)で表される構造を有する化合物及びその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ、これを含む医薬組成物、及びマイトファジー誘導剤医薬品の製造におけるその使用を開示する。本出願では、一般式(I)で表される構造を有する化合物の構造は以下の通りである。本出願により提供される化合物及びその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ、或いは、本出願により提供される医薬組成物はマイトファジーを誘導する能力を向上させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される構造を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグであって、
ここで、Xは酸素又は窒素であり;
は水素、
であり、ここで、R31及びR32はそれぞれ独立してC1~6アルキル又はC1~6シクロアルキルであり、nは1~4であり;
の数は0~5個であり、かつRは、その数が0でない場合、それぞれ独立して、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、-N(R4-1、C1~6ハロアルキル、-C(O)OR4-1、-C(O)R4-1、-C(O)N(R4-14-1a)、-S(O)4-1、-S(O)R4-1、-N=C(R4-14-1a)であり、ここで、R4-1及びR4-1aはそれぞれ独立して水素、C1~6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルケニル又は少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルキニルであり;
はフェニル、ナフチル、5員若しくは6員の単環式ヘテロアリール、8~10員の縮合二環式ヘテロアリール、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換されたフェニル、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換されたナフチル、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換された5員若しくは6員の単環式ヘテロアリール、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換された8~10員の縮合二環式ヘテロアリールであり、ここで、R5-1は水素、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、ヒドロキシル、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6アルコキシ、-N(R5-1a5-1b)、フェニル、C1~6ハロアルキル、C1~6ハロアルコキシ、-C(O)OR5-11、-C(O)R5-11、-C(O)N(R5-1a5-1b)、-S(O)5-11、-S(O)R5-11、-OC(O)R5-11、-OC(O)OR5-11又は
であり、ここで、R5-11、R5-1a及びR5-1bはそれぞれ独立して水素、C1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルケニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC3~6シクロアルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルキニルであり;
は-C(O)OR6-1、5員若しくは6員の単環式ヘテロアリールであり、ここでR6-1は水素、C1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルケニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC3~6シクロアルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルキニルであり;
mは1~6であり;かつ
Xが酸素である場合、点線が存在しなく、Rが存在しなくなり、RはC1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、3~6員のエポキシアルキル、フェニル、少なくとも1つの水素原子がR1-1で置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がR1-1で置換されたフェニルであり、ここで、R1-1はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ又はC1~6アルコキシであり;
Xが窒素である場合、点線が単結合になり、
は水素、C1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、3~6員のエポキシアルキル、フェニル、少なくとも1つの水素原子がR1-1で置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がR1-2で置換されたフェニルであり、ここで、R1-2はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ又はC1~6アルコキシであり、
はC1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、3~6員のエポキシアルキル、少なくとも1つの水素原子がR2-1で置換されたC1~6アルキルであり、ここで、R2-1はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ又はC1~6アルコキシであり;
Xが窒素であり、R及びRが独立してC1~6アルキルである場合、RとRが結合して4~8員の環を形成することができる、ことを特徴とする化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項2】
Xは酸素又は窒素であり;
は水素、
であり、ここで、R31及びR32はそれぞれ独立してC1~4アルキル又はC1~4シクロアルキルであり、nは1又は2であり;
は、その数が0でない場合、それぞれ独立して、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、-N(R4-1、C1~4ハロアルキル、-C(O)OR4-1、-C(O)R4-1、-C(O)N(R4-14-1a)、-S(O)4-1、-S(O)R4-1和-N=C(R4-14-1a)であり、ここで、R4-1及びR4-1aはそれぞれ独立して水素、C1~4アルキル、C2-4アルケニル又はC2-4アルキニルであり;
はフェニル、ナフチル、5員若しくは6員の単環式ヘテロアリール、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換されたフェニル、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換されたナフチル、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換された5員若しくは6員の単環式ヘテロアリールであり、ここで、R5-1は水素、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、ヒドロキシル、C1~4アルキル、3~6員のシクロアルキル、C1~4アルコキシ、-N(R5-1a5-1b)、フェニル、C1~4ハロアルキル、C1~4ハロアルコキシ、-C(O)OR5-11、-C(O)R5-11、-C(O)N(R5-1a5-1b)、-S(O)5-11、-S(O)R5-11、-OC(O)R5-11、-OC(O)OR5-11又は
であり、ここで、R5-11、R5-1a及びR5-1bはそれぞれ独立して水素、C1~4アルキル、3~6員のシクロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~4アルキルであり;
は-C(O)OR6-1、5員若しくは6員の単環式ヘテロアリールであり、ここで、R6-1は水素、C1~4アルキル、3~6員のシクロアルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~4アルキルであり;
mは1~4であり;かつ
Xが酸素である場合、点線が存在しなく、Rが存在しなくなり、RはC1~4アルキル、3~6員のシクロアルキル、3~6員のエポキシアルキル、フェニル、少なくとも1つの水素原子がR1-1で置換されたC1~4アルキル、少なくとも1つの水素原子がR1-1で置換されたフェニルであり、ここで、R1-1はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ又はC1~4アルコキシであり;
Xが窒素である場合、点線が単結合になり、
は水素、C1~4アルキル、3~6員のシクロアルキル、3~6員のエポキシアルキル、フェニル、少なくとも1つの水素原子がR1-1で置換されたC1~4アルキル、少なくとも1つの水素原子がR1-2で置換されたフェニルであり、ここで、R1-2はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ又はC1~4アルコキシであり、
はC1~4アルキル、3~6員のシクロアルキル、3~6員のエポキシアルキル、少なくとも1つの水素原子がR2-1で置換されたC1~4アルキルであり、ここで、R2-1はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ又はC1~4アルコキシであり;
Xが窒素であり、R及びRが独立してC1~4アルキルである場合、RとRが結合して4~8員の環を形成することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項3】
Xは酸素又は窒素であり;
は水素、
であり、ここで、R31及びR32はそれぞれ独立してメチル、エチル、n-プロピル又はイソプロピルであり、nは1であり;
は、その数が0でない場合、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、ニトリル、フルオロメチル、フルオロエチル、フルオロ-n-プロピル、フルオロイソプロピル、クロロメチル、クロロエチル、クロロ-n-プロピル、クロロイソプロピル、ブロモメチル、ブロモエチル、ブロモ-n-プロピル、ブロモイソプロピル、ヨードメチル、ヨードエチル、ヨード-n-プロピル、又はヨードイソプロピルから選択され;
はフェニル、ナフチル、5員の単環式ヘテロアリール、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換されたフェニルであり、ここで、R5-1はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブチルオキシ、sec-ブトキシ又はイソブトキシ、フェニル、フルオロメチル、フルオロエチル、フルオロ-n-プロピル、フルオロイソプロピル、クロロメチル、クロロエチル、クロロ-n-プロピル、クロロイソプロピル、ブロモメチル、ブロモエチル、ブロモ-n-プロピル、ブロモイソプロピル、ヨードメチル、ヨードエチル、ヨード-n-プロピル、ヨードイソプロピル、フルオロメトキシ、フルオロエトキシ、フルオロ-n-プロポキシ、フルオロイソプロポキシ、クロロメトキシ、クロロエトキシ、クロロ-nプロポキ、クロロイソプロポキシ、ブロモメトキシ、ブロモエトキシ、ブロモ-n-プロポキシ、ブロモイソプロポキシ、ヨードオキシメチル、ヨードエトキシ、ヨード-n-プロポキシ、ヨードイソプロポキシ又は
は-C(O)OR6-1、5員の窒素含有単環式ヘテロアリールであり、ここで、R6-1は水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、
mは1であり、かつ
Xが酸素である場合、点線が存在しなく、Rが存在しなくなり、RはC1~4アルキル、3~6員のシクロアルキル、3~6員のエポキシアルキル、フェニル、少なくとも1つの水素原子がR1-1で置換されたC1~4アルキル、少なくとも1つの水素原子がR1-1で置換されたフェニルであり、ここで、R1-1はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ又はC1~4アルコキシであり;
Xが酸素である場合、点線が存在しなく、Rが存在しなくなり、Rはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、
フェニル、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシルで置換されたメチル、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシルで置換されたエチル、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシルで置換されたn-プロピル、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシルで置換されたイソプロピルであり;
Xが窒素である場合、点線が単結合になり、
は水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、
又はフェニルであり、
はメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、
少なくとも1つの水素原子がヒドロキシルで置換されたメチル、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシルで置換されたエチル、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシルで置換されたn-プロピル又は少なくとも1つの水素原子がヒドロキシルで置換されたイソプロピルであり;
Xが窒素であり、R及びRが独立してメチル、エチル、n-プロピル又はイソプロピルのいずれかである場合、RとRが結合して4~8員の環を形成することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項4】
は水素、
であり、ここで、R31及びR32はそれぞれ独立してメチル、 n-プロピル又はイソプロピルであり、nは1であり;
及び/又は、Rは、その数が0でない場合、それぞれ独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、ニトリルから選択され;
及び/又は、Rはフェニル、ナフチル、チエニル又は少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換されたフェニルであり、ここで、R5-1はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、フェニル、フルオロメチル又は
であり;
及び/又は、Rは-C(O)OH、トリアゾリル又はテトラゾリルである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項5】
Xは窒素である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項6】
は水素、メチル、エチル、シクロプロピル又はシクロブタニルであり;
及び/又は、Rは水素、メチル、エチル、フェニル、シクロプロピル、シクロブタニル又は2-ヒドロキシエチルであり;
及び/又は、Rがメチル又はエチルであり、かつRがメチル又はエチルである場合、RとRが結合して5~6員の環を形成することができる、ことを特徴とする請求項5に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項7】
は臭素、ニトロ、ニトリルであり;
及び/又は、Rはフェニル又は少なくとも1つの水素原子が臭素で置換されたフェニルである、ことを特徴とする請求項6に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項8】
前記一般式(I)で表される構造を有する化合物は、以下の化合物のいずれか1種から選択されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
マイトファジー誘導剤の製造における請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ、或いは請求項9に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許出願は、2021年9月22日に提出された出願番号が2021111068648、発明の名称が「ナフタレンチオールエーテル構造を有する低分子化合物及びその使用」である中国特許出願の優先権を主張し、上記出願の全文を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、化学薬品の分野に関し、特にナフタレンチオールエーテル構造を有する低分子化合物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
マイトファジーは、細胞標的特異的オートファジーの一種であって、その主な目的は機能不全に陥ったミトコンドリアを特定して除去することである。ミトコンドリアは酸化的リン酸化によりエネルギー供給の中心的な役割を果たし、エネルギー代謝、アミノ酸生成、脂質合成、イオン恒常性などの重要な機能を担っているため、神経細胞、筋細胞及び肝細胞などの好気性代謝に依存する細胞種の機能の維持に非常に重要である。ミトコンドリアの生成とオートファジーの恒常性の制御は、細胞機能を維持するための重要なステップである。マイトファジーの機能不全は、損傷ミトコンドリアの蓄積、ATP+合成能力の低下、及び大量の過酸化物の生成につながり、細胞の中間代謝産物の変化を引き起こし、一連の病理学的結果を引き起こす。マイトファジーを強化することによって老化又は機能不全のミトコンドリアを除去する場合、マイトファジーは細胞を保護する役割を果たす。
【0004】
従来の技術では、出願番号201910386493.Xの中国特許出願には、マイトファジー誘導剤として化合物UMI-77が記載されている。しかし、本発明者らの研究により、化合物UMI-77はマイトファジー誘導剤として、マイトファジー誘導効果が不安定であること、マイトファジー誘導能力が不十分であること、代謝安定性が低いことなどの問題があることが判明した。従って、効率的で安定したマイトファジー誘導剤の開発は、マイトファジーの機能不全に起因する様々な急性及び慢性疾患に対する抑制又は緩和にとって極めて重要である。
【発明の概要】
【0005】
上記問題を解決するために、本発明の実施形態は、マイトファジー誘導剤としてマイトファジーを誘導する強力な能力を有する、ナフタレンチオールエーテル構造を有する低分子化合物を提供する。
【0006】
本発明の第1の側面は、一般式(I)で表される構造を有する化合物及びその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。
ここで、Xは酸素又は窒素であり;
は水素、
であり、ここで、R31及びR32はそれぞれ独立してC1~6アルキル又はC1~6シクロアルキルであり、nは1~4であり;
本明細書の各一般式及び文脈において、特に明記しない限り、Rは存在しなくてもよく(すなわち、0個である)、或いは、原子価結合規則が許容する場合には1つ以上が同時に存在してもよいので、Rの数は、例えば0~5個、好ましくは0~4個、より好ましくは0~2個又は0~1である。Rは、その数が0でない場合、それぞれ独立してハロゲン、ニトロ、ニトリル、-N(R4-1、C1~6ハロアルキル、-C(O)OR4-1、-C(O)R4-1、-C(O)N(R4-14-1a)、-S(O)4-1、-S(O)R4-1、-N=C(R4-14-1a)から選択され、ここで、R4-1及びR4-1aはそれぞれ独立して水素、C1~6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルケニル又は少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルキニルから選択される。
【0007】
はフェニル、ナフチル、5員若しくは6員の単環式ヘテロアリール、8~10員の縮合二環式ヘテロアリール、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換されたフェニル、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換されたナフチル、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換された5員若しくは6員の単環式ヘテロアリール、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換された8~10員の縮合二環式ヘテロアリールであり、ここで、R5-1は水素、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、ヒドロキシル、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6アルコキシ、-N(R5-1a5-1b)、フェニル、C1~6ハロアルキル、C1~6ハロアルコキシ、-C(O)OR5-11、-C(O)R5-11、-C(O)N(R5-1a5-1b)、-S(O)5-11、-S(O)R5-11、-OC(O)R5-11、-OC(O)OR5-11又は
であり、ここで、R5-11、R5-1a及びR5-1bはそれぞれ独立して水素、C1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルケニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC3~6シクロアルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルキニルから選択され;
は-C(O)OR6-1、5員若しくは6員の単環式ヘテロアリールであり、ここでR6-1は水素、C1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルケニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC3~6シクロアルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルキニルであり;
mは1~6であり;かつ
Xが酸素である場合、点線が存在しなく、Rが存在しなくなり、RはC1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、3~6員のエポキシアルキル、フェニル、少なくとも1つの水素原子がR1-1で置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がR1-1で置換されたフェニルであり、ここで、R1-1はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ又はC1~6アルコキシであり;
Xが窒素である場合、点線が単結合になり、
は水素、C1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、3~6員のエポキシアルキル、フェニル、少なくとも1つの水素原子がR1-1で置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がR1-2で置換されたフェニルであり、ここで、R1-2はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ又はC1~6アルコキシであり、
はC1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、3~6員のエポキシアルキル、少なくとも1つの水素原子がR2-1で置換されたC1~6アルキルであり、ここで、R2-1はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ又はC1~6アルコキシであり;
Xが窒素であり、R及びRが独立してC1~6アルキルである場合、RとRが結合して4~8員の環を形成することができる。
【0008】
いくつかの好ましい様態において、前記一般式(I)で表される構造を有する化合物において、
Xは酸素又は窒素であり;
は水素、
であり、ここで、R31及びR32はそれぞれ独立してC1~4アルキル又はC1~4シクロアルキルであり、nは1又は2であり;
は、その数が0でない場合、それぞれ独立して、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、-N(R4-1、C1~4ハロアルキル、-C(O)OR4-1、-C(O)R4-1、-C(O)N(R4-14-1a)、-S(O)4-1、-S(O)R4-1、-N=C(R4-14-1a)であり、ここで、R4-1及びR4-1aはそれぞれ独立して水素、C1~4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニルであり;
はフェニル、ナフチル、5員若しくは6員の単環式ヘテロアリール、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換されたフェニル、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換されたナフチル、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換された5員若しくは6員の単環式ヘテロアリールであり、ここで、R5-1は水素、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、ヒドロキシル、C1~4アルキル、3~6員のシクロアルキル、C1~4アルコキシ、-N(R5-1a5-1b)、フェニル、C1~4ハロアルキル、C1~4ハロアルコキシ、-C(O)OR5-11、-C(O)R5-11、-C(O)N(R5-1a5-1b)、-S(O)5-11、-S(O)R5-11、-OC(O)R5-11、-OC(O)OR5-11又は
であり、ここで、R5-11、R5-1a及びR5-1bはそれぞれ独立して水素、C1~4アルキル、3~6員のシクロアルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~4アルキルであり;
は-C(O)OR6-1、5員若しくは6員の単環式ヘテロアリールであり、ここでR6-1は水素、C1~4アルキル、3~6員のシクロアルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~4アルキルであり;
mは1~4であり;かつ
Xが酸素である場合、点線が存在しなく、Rが存在しなくなり、RはC1~4アルキル、3~6員のシクロアルキル、3~6員のエポキシアルキル、フェニル、少なくとも1つの水素原子がR1-1で置換されたC1~4アルキル、少なくとも1つの水素原子がR1-1で置換されたフェニルであり、ここで、R1-1はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ又はC1~4アルコキシであり;
Xが窒素である場合、点線が単結合になり、
は水素、C1~4アルキル、3~6員のシクロアルキル、3~6員のエポキシアルキル、フェニル、少なくとも1つの水素原子がR1-1で置換されたC1~4アルキル、少なくとも1つの水素原子がR1-2で置換されたフェニルであり、ここで、R1-2はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ又はC1~4アルコキシであり、
はC1~4アルキル、3~6員のシクロアルキル、3~6員のエポキシアルキル、少なくとも1つの水素原子がR2-1で置換されたC1~4アルキルであり、ここで、R2-1はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ又はC1~4アルコキシであり;
Xが窒素であり、R及びRが独立してC1~4アルキルである場合、RとRが結合して4~8員の環を形成することができる。
【0009】
いくつかの好ましい様態において、前記一般式(I)で表される構造を有する化合物において、
Xは酸素又は窒素であり;
は水素、
であり、ここで、R31及びR32はそれぞれ独立してメチル、エチル、n-プロピル又はイソプロピルであり、nは1であり;
は、その数が0でない場合、それぞれ独立してフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、ニトリル、フルオロメチル、フルオロエチル、フルオロ-n-プロピル、フルオロイソプロピル、クロロメチル、クロロエチル、クロロ-n-プロピル、クロロイソプロピル、ブロモメチル、ブロモエチル、ブロモ-n-プロピル、ブロモイソプロピル、ヨードメチル、ヨードエチル、ヨード-n-プロピル、又はヨードイソプロピルであり;
はフェニル、ナフチル、5員の単環式ヘテロアリール、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換されたフェニルであり、ここで、R5-1はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブチルオキシ、sec-ブトキシ又はイソブトキシ、フェニル、フルオロメチル、フルオロエチル、フルオロ-n-プロピル、フルオロイソプロピル、クロロメチル、クロロエチル、クロロ-n-プロピル、クロロイソプロピル、ブロモメチル、ブロモエチル、ブロモ-n-プロピル、ブロモイソプロピル、ヨードメチル、ヨードエチル、ヨード-n-プロピル、ヨードイソプロピル、フルオロメトキシ、フルオロエトキシ、フルオロ-n-プロポキシ、フルオロイソプロポキシ、クロロメトキシ、クロロエトキシ、クロロ-nプロポキ、クロロイソプロポキシ、ブロモメトキシ、ブロモエトキシ、ブロモ-n-プロポキシ、ブロモイソプロポキシ、ヨードオキシメチル、ヨードエトキシ、ヨード-n-プロポキシ、ヨードイソプロポキシ又は
であり;
は-C(O)OR6-1、5員の窒素含有単環式ヘテロアリールであり、好ましくはピリジル、ジアゾゾリル、トリアゾリル又はテトラゾリルであり、より好ましくはトリアゾリル又はテトラゾリルであり、さらに好ましくは
ここでR6-1は水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、
mは1であり;かつ
Xが酸素である場合、点線が存在しなく、Rが存在しなくなり、Rはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、
フェニル、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシルで置換されたメチル、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシルで置換されたエチル、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシルで置換されたn-プロピル、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシルで置換されたイソプロピルであり;
Xが窒素である場合、点線が単結合になり、
は水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、
又はフェニルであり、
はメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、
少なくとも1つの水素原子がヒドロキシルで置換されたメチル、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシルで置換されたエチル、少なくとも1つの水素原子がヒドロキシルで置換されたn-プロピル又は少なくとも1つの水素原子がヒドロキシルで置換されたイソプロピルであり;
Xが窒素であり、R及びRが独立してメチル、エチル、n-プロピル又はイソプロピルのいずれかである場合、RとRが結合して4~8員の環を形成することができる。
【0010】
いくつかの好ましい様態において、前記C1~6アルキルはC1~4アルキルであり、前記C1~4アルキルは好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、例えば:メチル又はエチルである。
【0011】
いくつかの好ましい様態において、前記C3~6シクロアルキルは好ましくはC3~5シクロアルキルであり、前記C3~5シクロアルキルは好ましくは
【0012】
いくつかの好ましい様態において、前記3~6員のエポキシアルキルは好ましくは
【0013】
いくつかの好ましい様態において、前記C1~6アルキルで置換されたフェニルは好ましくはC1~4アルキルで置換されたフェニルであり、より好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル及びtert-ブチルのいずれかで置換されたフェニルである。
【0014】
いくつかの好ましい様態において、前記C1~6アルコキシは好ましくはC1~4アルコキシであり、より好ましくはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブチルオキシ、sec-ブトキシ又はイソブトキシである。
【0015】
いくつかの好ましい様態において、前記-N(R3-23-2a)、-N(R3-3a3-3b)、-N(R4-1a4-1b)、-N(R5-15-1a)は好ましくは
【0016】
いくつかの好ましい様態において、前記5員若しくは6員の単環式ヘテロアリールは好ましくは
であり、ここで、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Y、Yはそれぞれ独立してC、N、O又はSから選択され、かつY、Y、Y、YはすべてCではなく、Y、Y、Y、Y、YはすべてCではなく;前記5員若しくは6員の単環式ヘテロアリールはより好ましくはピロリル、フリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピラニル、チオフェンピリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピペラジニル、トリアゾリル、テトラゾリルであり;前記5員若しくは6員の単環式ヘテロアリールはより好ましくは
であり;より好ましくは、前記5員若しくは6員の単環式ヘテロアリールは5員若しくは6員の窒素含有単環式ヘテロアリールであり、例えば:
であり;最も好ましくは、前記5員若しくは6員の単環式ヘテロアリールは5員の窒素含有単環式ヘテロアリールであり、例えば:
【0017】
いくつかの好ましい様態において、前記8~10員の縮合二環式ヘテロアリールは
であり;ここで、Y11、Y12、Y13、Y14、Y15、Y16、Y17、Y18及びY19はそれぞれ独立してC、N、O又はSから選択され、かつY11、Y12、Y13、Y14、Y15、Y16、Y17、Y18及びY19はすべてCではなく;Y21、Y22、Y23、Y24、Y25及びY26はそれぞれ独立してC、N、O又はSから選択され、かつY21、Y22、Y23、Y24、Y25及びY26はすべてCではなく;Y31、Y32、Y33、Y34、Y35、Y36及びY37はそれぞれ独立してC、N、O又はSから選択され、かつY31、Y32、Y33、Y34、Y35、Y36及びY37はすべてCではなく;前記8~10員の縮合二環式ヘテロアリールはより好ましくはインドリル、ベンズインドリル、カルバゾリル、キノリル、プテリジニル、プリニルであり;前記8~10員の縮合二環式ヘテロアリールは最も好ましくは
【0018】
いくつかの好ましい様態において、前記ハロゲンは好ましくはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0019】
いくつかの好ましい様態において、前記C1~6ハロアルキルは好ましくはC1~3ハロアルキルであり;より好ましくはフルオロメチル、フルオロエチル、フルオロ-n-プロピル、フルオロイソプロピル、クロロメチル、クロロエチル、クロロ-n-プロピル、クロロイソプロピル、ブロモメチル、ブロモエチル、ブロモ-n-プロピル、ブロモイソプロピル、ヨードメチル、ヨードエチル、ヨード-n-プロピル、ヨードイソプロピルであり;最も好ましくはトリフルオロメチルである。
【0020】
いくつかの好ましい様態において、前記C1~6ハロアルコキシは好ましくはC1~3ハロアルコキシであり;より好ましくはフルオロメトキシ、フルオロエトキシ、フルオロ-n-プロポキシ、フルオロイソプロポキシ、クロロメトキシ、クロロエトキシ、クロロ-nプロポキ、クロロイソプロポキシ、ブロモメトキシ、ブロモエトキシ、ブロモ-n-プロポキシ、ブロモイソプロポキシ、ヨードオキシメチル、ヨードエトキシ、ヨード-n-プロポキシ、ヨードイソプロポキシであり;最も好ましくはトリフルオロメトキシである。
【0021】
いくつかの好ましい様態において、前記C2-6アルケニルは好ましくはC2-4アルケニルであり、より好ましくは-CH=CH、-CH=CH-CH、-CH-CH=CH、-CH=CH-CH-CH、-CH=CH-CH=CHである。
【0022】
いくつかの好ましい様態において、前記C2-6アルキニルは好ましくはC2-6アルキニルであり、より好ましくは-C≡CH、-CH-C≡CH、-CH-CH-C≡CH、-CH-C≡C-CHである。
【0023】
いくつかのより好ましい様態において、Rは水素、C1~6アルキル(好ましくはメチル)、3~6員のシクロアルキル(好ましくはシクロプロピル)、3~6員のエポキシアルキル(好ましくはオキセタン)、フェニル、少なくとも1つの水素原子がR1-1(本明細書の文脈において定義されるとおり、好ましくはヒドロキシル)で置換されたC1~6アルキルから選択される。
【0024】
いくつかのより好ましい様態において、Rは、その数が0でない場合、それぞれ独立して、ニトリル、アミノ、ニトロ、ハロゲン、C1~6ハロアルキルである。
【0025】
いくつかのより好ましい様態において、Rはフェニル、ナフチル、5員若しくは6員の単環式ヘテロアリール(例えばチエニル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル)、8~10員の縮合二環式ヘテロアリール(例えばベンゾチエニル)から選択され、好ましくはフェニル又はナフチルであり;ハロゲン、フェニル、ニトリル、ヒドロキシル、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、
から選択される基で任意に置換される。
【0026】
いくつかのより好ましい様態において、mは1である。
【0027】
いくつかのより好ましい様態において、Rは-C(O)OR6-1(R6-1は本明細書の文脈において定義されるとおり、好ましくは水素である)及び5員若しくは6員の単環式ヘテロアリール(好ましくはトリアゾリル及びテトラゾリル)から選択される。
【0028】
いくつかのより好ましい様態において、Xは窒素であり、RはC1~6アルキル(好ましくはメチル)、3~6員のシクロアルキル(好ましくはシクロプロピル)、3~6員のエポキシアルキル(好ましくはオキセタン)、フェニル、少なくとも1つの水素原子がR1-1(本明細書の文脈において定義されるとおり、好ましくはヒドロキシル)で置換されたC1~6アルキルから選択される。特に、いくつかの好ましい実施形態において、R及びRは両方ともC1~6アルキルから選択され、かつRとRが結合して4~8員(好ましくは5員又は6員)の環を形成する。
【0029】
いくつかの好ましい様態において、Rは水素、
であり、ここで、R31及びR32はそれぞれ独立してメチル、 n-プロピル又はイソプロピルであり、nは1である。
【0030】
いくつかの好ましい様態において、Rの数は0~2個(特に0~1個)であり、かつRは、その数が0でない場合、それぞれ独立してフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ、ニトリルである。
【0031】
いくつかの好ましい様態において、Rはフェニル、ナフチル、チエニル又は少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換されたフェニルであり、ここで、R5-1はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、フェニル、フルオロメチル又は
である。
【0032】
いくつかの好ましい様態において、Rは-C(O)OH、トリアゾリル又はテトラゾリルである。
【0033】
いくつかの好ましい様態において、前記一般式(I)で表される構造を有する化合物は以下の化合物のいずれか1つから選択される:
さらに、本発明者らは、UMI-77が損傷ミトコンドリアにおいて選択的にオートファジーを誘導できないことも見出し、化合物が損傷ミトコンドリアにおいて選択的にオートファジーを誘導する能力を向上させることが有益であるという事実に基づき、いくつかの好ましい様態において、前記化合物は、式(II)で表される構造を有する。
ここで、Rは水素、
であり、ここで、R31及びR32はそれぞれ独立してC1~6アルキル又はC1~6シクロアルキルであり、nは1~4であり;
は、その数が0でない場合、それぞれ独立して、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、-N(R4-1、C1~6ハロアルキル、-C(O)OR4-1、-C(O)R4-1、-C(O)N(R4-14-1a)、-S(O)4-1、-S(O)R4-1、-N=C(R4-14-1a)であり、ここで、R4-1及びR4-1aはそれぞれ独立して水素、C1~6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルケニル又は少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルキニルであり;
はフェニル、ナフチル、5員若しくは6員の単環式ヘテロアリール、8~10員の縮合二環式ヘテロアリール、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換されたフェニル、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換されたナフチル、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換された5員若しくは6員の単環式ヘテロアリール、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換された8~10員の縮合二環式ヘテロアリールであり、ここで、R5-1は水素、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、ヒドロキシル、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6アルコキシ、-N(R5-1a5-1b)、フェニル、C1~6ハロアルキル、C1~6ハロアルコキシ、-C(O)OR5-11、-C(O)R5-11、-C(O)N(R5-1a5-1b)、-S(O)5-11、-S(O)R5-11、-OC(O)R5-11、-OC(O)OR5-11又は
であり、ここで、R5-11、R5-1a及びR5-1bはそれぞれ独立して水素、C1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルケニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC3~6シクロアルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルキニルであり;
は-C(O)OR6-1、5員若しくは6員の単環式ヘテロアリールであり、ここでR6-1は水素、C1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルケニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC3~6シクロアルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルキニルであり;
mは1~6であり;
はC1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、3~6員のエポキシアルキル、フェニル、少なくとも1つの水素原子がR1-1で置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がR1-1で置換されたフェニルであり、ここで、R1-1はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ又はC1~6アルコキシである。
【0034】
化合物が損傷ミトコンドリアにおいて選択的にオートファジーを誘導する能力を向上させることが有益であるという事実に基づき、いくつかのより好ましい様態において、前記化合物は式(II)で表される構造を有し、
ここで、Rは水素、
であり、ここで、R31及びR32はそれぞれ独立してC1~6アルキル又はC1~6シクロアルキルであり、nは1~4であり;
は、その数が0でない場合、それぞれ独立して、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、-N(R4-1、C1~6ハロアルキル、-C(O)OR4-1、-C(O)R4-1、-C(O)N(R4-14-1a)、-S(O)4-1、-S(O)R4-1、-N=C(R4-14-1a)であり、ここで、R4-1及びR4-1aはそれぞれ独立して水素、C1~6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルケニル又は少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルキニルであり;
はフェニル、ナフチル、5員若しくは6員の単環式ヘテロアリール、8~10員の縮合二環式ヘテロアリール、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換されたフェニル、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換されたナフチル、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換された5員若しくは6員の単環式ヘテロアリール、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換された8~10員の縮合二環式ヘテロアリールであり、ここで、R5-1は水素、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、ヒドロキシル、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6アルコキシ、-N(R5-1a5-1b)、フェニル、C1~6ハロアルキル、C1~6ハロアルコキシ、-C(O)OR5-11、-C(O)R5-11、-C(O)N(R5-1a5-1b)、-S(O)5-11、-S(O)R5-11、-OC(O)R5-11、-OC(O)OR5-11又は
であり、ここで、R5-11、R5-1a及びR5-1bはそれぞれ独立して水素、C1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルケニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC3~6シクロアルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルキニルであり;
は-C(O)OR6-1、5員若しくは6員の単環式ヘテロアリールであり、ここでR6-1は水素、C1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルケニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC3~6シクロアルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルキニルであり;
mは1~6である。
【0035】
化合物が損傷ミトコンドリアにおいて選択的にオートファジーを誘導する能力を向上させることが有益であるという事実に基づき、いくつかのより好ましい様態において、前記化合物は以下である:
【0036】
さらに、化合物が損傷ミトコンドリアにおいて選択的にオートファジーを誘導する能力をさらに向上させることが有益であるという事実に基づき、いくつかの好ましい様態において、化合物は式(III)で表される構造を有し;
ここで、Rは水素、
であり、ここで、R31及びR32はそれぞれ独立してC1~6アルキル又はC1~6シクロアルキルであり、nは1~4であり;
は、その数が0でない場合、それぞれ独立して、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、-N(R4-1、C1~6ハロアルキル、-C(O)OR4-1、-C(O)R4-1、-C(O)N(R4-14-1a)、-S(O)4-1、-S(O)R4-1、-N=C(R4-14-1a)であり、ここで、R4-1及びR4-1aはそれぞれ独立して水素、C1~6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルケニル又は少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルキニルであり;
はフェニル、ナフチル、5員若しくは6員の単環式ヘテロアリール、8~10員の縮合二環式ヘテロアリール、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換されたフェニル、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換されたナフチル、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換された5員若しくは6員の単環式ヘテロアリール、少なくとも1つの水素原子がR5-1で置換された8~10員の縮合二環式ヘテロアリールであり、ここで、R5-1は水素、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、ヒドロキシル、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6アルコキシ、-N(R5-1a5-1b)、フェニル、C1~6ハロアルキル、C1~6ハロアルコキシ、-C(O)OR5-11、-C(O)R5-11、-C(O)N(R5-1a5-1b)、-S(O)5-11、-S(O)R5-11、-OC(O)R5-11、-OC(O)OR5-11又は
であり、ここで、R5-11、R5-1a及びR5-1bはそれぞれ独立して水素、C1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルケニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC3~6シクロアルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルキニルであり;
は-C(O)OR6-1、5員若しくは6員の単環式ヘテロアリールであり、ここでR6-1は水素、C1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルケニル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC3~6シクロアルキル、少なくとも1つの水素原子がハロゲンで置換されたC2-6アルキニルであり;
mは1~6であり;
は水素、C1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、3~6員のエポキシアルキル、フェニル、少なくとも1つの水素原子がR1-1で置換されたC1~6アルキル、少なくとも1つの水素原子がR1-2で置換されたフェニルであり、ここで、R1-2はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ又はC1~6アルコキシであり、
はC1~6アルキル、3~6員のシクロアルキル、3~6員のエポキシアルキル、少なくとも1つの水素原子がR2-1で置換されたC1~6アルキルであり、ここで、R2-1はヒドロキシル、ハロゲン、アミノ又はC1~6アルコキシであり;
及びRが独立してC1~6アルキルである場合、RとRが結合して4~8員の環を形成することができる。
【0037】
いくつかの好ましい様態において、式(III)において、Rは水素、メチル、エチル、シクロプロピル又はシクロブタニルである。
【0038】
いくつかの好ましい様態において、式(III)において、Rは水素、メチル、エチル、フェニル、シクロプロピル、シクロブタニル又は2-ヒドロキシエチルである。
【0039】
いくつかの好ましい様態において、式(III)において、Rがメチル又はエチルであり、かつRがメチル又はエチルである場合、RとRが結合して5~6員の環を形成することができる。
【0040】
いくつかの好ましい様態において、式(III)において、Rは、その数が0でない場合、それぞれ独立して、臭素、ニトロ、ニトリルである。
【0041】
いくつかの好ましい様態において、式(III)において、Rはフェニル又は少なくとも1つの水素原子が臭素で置換されたフェニルである。
【0042】
本発明の第2の側面は、本発明の第1の側面に記載の化合物、及びその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を提供する。
【0043】
本発明の第3の側面は、マイトファジー誘導剤(特に選択的マイトファジー誘導剤)の製造における本発明の第1の側面に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ、或いは本発明の第2の側面に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0044】
従来技術と比較して、本発明は少なくとも以下の利点を有する。
【0045】
(1)本発明の第1の側面で提供される化合物及びその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ、或いは本発明の第2の側面で提供される医薬組成物は、UMI-77と比較して、マイトファジー誘導能力を向上させる。
【0046】
(2)本発明の第1の側面で提供される化合物及びその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ、或いは本発明の第2の側面で提供される医薬組成物は、UMI-77と比較して優れた代謝安定性と薬物動態学的特性を有する。
【0047】
(3)本発明の第1の側面で提供される化合物及びその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ、或いは本発明の第2の側面で提供される医薬組成物は、UMI-77と比較して毒性が低く、創薬可能性がより良い。
【0048】
(4)本発明の第1の側面で提供される化合物及びその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ、或いは本発明の第2の側面で提供される医薬組成物。
【0049】
従って、本発明の化合物は、損傷ミトコンドリアのオートファジーを誘導したり、代謝安定性を向上させたりする効果を有する。本発明の好ましい化合物は、損傷ミトコンドリアのオートファジーを誘導し、同時に代謝安定性を向上させる効果を有する。
【0050】
より好ましくは、本発明の好ましい化合物は、損傷ミトコンドリアのオートファジーを選択的に誘導したり、代謝安定性を向上させたりする効果を有する。本発明の特に好ましい化合物は、損傷ミトコンドリアのオートファジーを誘導し、同時に代謝安定性を向上させる効果を有する。
【0051】
本発明の範囲内で、本発明の上述の各技術的特徴と、以下(例えば実施例)に具体的に説明される各技術的特徴とを互いに組み合わせて、新しい又は好ましい技術的方案を形成することができることを理解されたい。紙面の都合上、ここでは一つ一つ説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
1つ以上の実施例は、対応する図面における図によって例示的に説明されており、これらの例示的な説明は、実施例に対する限定を構成するものではない。
図1図1は、本発明の試験例1において、 UMI-77又は化合物I- 4で直接処理したヒト胚性腎臓形質転換細胞HEK293Tmtkeima系におけるマイトファジーの誘導結果を示すグラフである。
図2図2は、本発明の試験例1においてマイトファジーを選択的に誘導するUMI-77又は化合物I-1の試験結果を示すグラフである。
図3図3は、本発明の試験例2において化合物UMI-77、I-4のインビトロ肝ミクロソーム安定性試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明者らは、UMI-77がマイトファジーを誘導する能力が比較的弱く、代謝が不安定であり、創薬可能性が良くないことを研究で発見した。この問題を解決するために、本発明者らは多数の実験研究を行った結果、 UMI-77の構造の一部を修飾して本発明の第1の側面に記載の化合物を製造することにより、マイトファジー誘導能力を著しく向上させ、同時に創薬可能性を高めることを発見した。
【0054】
好ましくは、本発明者らは、UMI-77に基づいて、ナフタレン環に直接接続された
における水素を修飾し、例えば、本発明の実施形態の一部に記載されているアルキル化を行い(「H」がC1~6アルキル又は3~6員のシクロアルキルに置換される)、或いは、「H」が本発明の実施形態の一部に記載されているR基に置換された場合(例えば、3~6員のエポキシアルキル、フェニルで置換された場合)、化合物は、損傷ミトコンドリアのオートファジーを選択的に誘導する能力を部分的に示すことができると発見した。
【0055】
好ましくは、本発明者らは、UMI-77に基づいて、
における任意の1つの酸素を「NH」に修飾し、或いは、本発明の実施形態の一部に記載されている「N-R」に修飾することで、マイトファジーを誘導する化合物の能力をさらに向上させることを発見した。
【0056】
好ましくは、本発明者らは、ナフタレン環上のフェノール性ヒドロキシル基を、本発明の実施形態の一部に記載されているように修飾する(例えば、エステル化修飾)ことで、イオン化可能な部位を遮蔽し、透過膜の吸収を高めるのに有益であることを発見した。
【0057】
用語
本明細書で使用される用語「マイトファジー」は、ミトコンドリアの質と量を制御するための重要な機構であるオートファジーによるミトコンドリアの選択的分解プロセスを指す。
【0058】
本明細書で使用される用語「マイトファジー誘導剤」は、マイトファジー機能を誘導できる化合物を指す。
【0059】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、直鎖または分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素基を指す。用語「C1-6アルキル」は、1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を指し、非限定的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、n-ヘキシル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2,3-ジメチルブチル、及びそれらの各種分岐異性体などがある。用語「C1-4アルキル」は、1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を指し、C1-4アルキルが分子の末端にある場合、非限定的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルがあり、或いは、分子の2つの部分がアルキルを介して接続されている場合、非限定的な例としては、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-CH-CH-CH-、-CH(C)-、-C(CH-があり、C1-4アルキル炭素における各水素は、本明細書でさらに挙げられる置換基で置換されていてもよい。
【0060】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を指す。アルケニル炭素における各水素は、本明細書でさらに挙げられる置換基で置換されていてもよい。用語「C2-6アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む1~6個の炭素原子の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を指す。それが分子の末端に現れる場合、非限定的な例としては、-CH=CH、-CH=CH-CH、-CH-CH=CH、-CH=CH-CH-CH、-CH=CH-CH=CHがあり、或いは、分子の2つの部分が当該アルケニルを介して接続されている場合、非限定的な例としては、-CH=CH-がある。C2-6アルケニル炭素における各水素は、本明細書でさらに挙げられる置換基で置換されていてもよい。
【0061】
本明細書で使用される用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を指す。アルキニル炭素における各水素は、本明細書でさらに挙げられる置換基で置換されていてもよい。用語「C2-6アルキニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む1~6個の炭素原子の直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を指す。それが分子の末端に現れる場合、非限定的な例としては、-C≡CH、-CH-C≡CH、-CH-CH-C≡CH、-CH-C≡C-CHがあり、或いは、分子の2つの部分が当該アルキニルを介して接続されている場合、非限定的な例としては、-C≡C-がある。C2-6アルキニル炭素における各水素は、本明細書でさらに挙げられる置換基で置換されていてもよい。
【0062】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」は、「-O-アルキル」の構造を有する基を指し、ここで、アルキルは上記で定義した通りである。用語「C1-6アルコキシ」は、1~6個の炭素原子を有するアルコキシを指し、非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、イソブトキシ、n-ペンチルオキシなどがある。
【0063】
本明細書で使用される用語「アミン基」は、アミノ基の少なくとも1つの水素原子がアルキルで置換されて形成される基を意味し、例えば、
において、R3-11及びR3-12のいずれか1つがアルキルであり、もう一つが水素であり;或いは、R3-11及びR3-12のすべてがアルキル基であり;R3-11及びR3-12のすべてがアルキルである場合、R3-11とR3-12が結合して環を形成してもよい。
【0064】
本明細書で使用される用語「ハロアルキル」は、1つ以上(例えば、1、2、3、4又は5個)の水素原子がハロゲンで置換されたアルキルを指し、ここでアルキルは上記で定義した通りである。
【0065】
本明細書で使用される場合、「(O)」は
を指す。一実施例において、-CHC(O)R3-2は、
を指す。
【0066】
本明細書で使用される用語「ハロアルコキシ」は、1つ以上の水素原子がハロゲンで置換されたアルコキシを指し、ここでアルコキシは上記で定義した通りである。
【0067】
本明細書で使用される用語「アリール」、「アリール環」及び「芳香環」は互換的に使用され、全炭素単環式環、全炭素非縮合多環式環(環と環が共有結合によって接続されており、縮合されていない)、又は全炭素縮合多環式環(即ち、隣接する炭素原子のペアを共有する環)基であって、少なくとも1つの環が芳香族であり、即ち、環形成共役π電子系を持つ基を指す。
【0068】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリール」は、アリールを構成する環炭素原子の少なくとも1つが、S、N、又はOなどの非炭素原子であるヘテロ原子によって置換されているアリールを指す。
【0069】
本明細書で使用される用語「単環式ヘテロアリール」は、芳香環を1つだけ有するヘテロアリールを指し、ここでヘテロアリールは上記で定義した通りである。用語「5員もしくは6員の単環式ヘテロアリール」は、5又は6個の環原子を有し、そのうち1、2又は3個の環原子が窒素、酸素又はS(=O)m’(ここで、m’は0~2の整数である)から選択されるヘテロ原子である単環式ヘテロアリールを指し、非限定的な例としては、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピロール、ピラゾール、トリアゾール(例えば1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,2,5-トリアゾール、1,3,4-トリアゾールなど)、テトラゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンなどがある。
【0070】
本明細書で使用される用語「縮合環ヘテロアリール」は、2つの環原子が互いに隣接している少なくとも2つの芳香環を指し、ここで、ヘテロアリールは上記で定義した通りである。用語「縮合二環式ヘテロアリール」は、2つの芳香環を有する縮合環ヘテロアリールを指し、ここで縮合環ヘテロアリールは上記で定義した通りである。用語「8~10員の縮合二環式ヘテロアリール」は、8~10個の環原子を有し、そのうち1、2、3、4又は5個の環原子が窒素、酸素又はS(=O)m’(ここで、m’は0~2の整数である)から選択されるヘテロ原子である縮合二環式ヘテロアリールを指し、非限定的な例としては、ベンゾ[d]イソオキサゾール、1H-インドール、イソインドール、1H-ベンゾ[d]イミダゾール、ベンゾ[d]イソチアゾール、1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール、ベンゾ[d]オキサゾール、ベンゾ[d]チアゾール、インダゾール、ベンゾフラン、ベンゾ[b]チオフェン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、シンノリン、ピリド[3,2-d]ピリミジン、ピリド[2,3-d]ピリミジン、ピリド[3,4-d]ピリミジン、ピリド[4,3-d]ピリミジン、1,8-ナフチリジン、1,7-ナフチリジン、1,6-ナフチリジン、1,5-ナフチリジン、ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン、イミダゾ[1,2-b]ピリダジンなどが含まれる。
【0071】
本明細書で使用される用語「有効量」又は「治療有効量」は、化学的実体(例えば、NLRP1/3のモジュレーターとしての活性を示す化合物、またはその薬学的に許容される塩及び/又は水和物、及び/又は共結晶)が投与されたときに、治療される疾患又は状態の症状の1つ又は複数をある程度軽減するのに十分な量を指す。結果には、疾患の徴候、症状もしくは原因の軽減及び/又は緩和、或いは、生体系における任意の他の所望の変化が含まれる。任意の個体の状況における適切な「有効」量は、用量漸増試験などの適切な技術を使用して決定される。
【0072】
本明細書で使用される用語「賦形剤」又は「薬学的に許容される賦形剤」は、液体又は固体の充填剤、希釈剤、担体、溶媒、又はカプセル化材料などの薬学的に許容される材料、組成物又は媒体を指す。一実施例において、各成分は、医薬製剤の他の成分と適合性があり、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性又は他の問題や合併症を引き起こすことなく、ヒト及び動物の組織又は器官との接触に適しており、妥当な利益とリスクの比率に比例しているという意味で、「薬学的に許容される」。
【0073】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容される非毒性の酸(無機酸及び有機酸を含む)から調製される薬学的に許容される付加塩を指す。場合によっては、薬学的に許容される塩は、本明細書に記載の化合物を酸と反応させることによって得られる。用語「薬学的に許容される塩」は、酸性基を有する化合物を塩基と反応させて塩を形成することによって、又は以前に特定された他の方法によって調製される薬学的に許容される付加塩を指す場合もある。薬理学的に許容される塩としては、医薬品に使用できるものであれば特に限定されない。本明細書に記載の化合物の塩基との塩の例としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムなどの無機塩基との塩;メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミンなどの有機塩基との塩;又はジシクロヘキシルアミン、N-メチル-D-グルコサミン又はトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンとの反応により形成される塩;リジン、オルニチンなどの塩基性アミノ酸との塩;及びアンモニウム塩が含まれる。前記塩は酸付加塩であってもよく、その具体例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸との付加塩、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などの有機酸との付加塩;アスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸との付加塩がある。
【0074】
本明細書で使用される用語「賦形剤」又は「薬学的に許容される賦形剤」は、液体又は固体の充填剤、希釈剤、担体、溶媒、又はカプセル化材料などの薬学的に許容される材料、組成物又は媒体を指す。一実施例において、各成分は、医薬製剤の他の成分と適合性があり、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性又は他の問題や合併症を引き起こすことなく、ヒト及び動物の組織又は器官との接触に適しており、妥当な利益とリスクの比率に比例しているという意味で、「薬学的に許容される」。
【0075】
本明細書で使用される用語「医薬組成物」は、本明細書に記載の化合物と、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤及び/又は増粘剤などの「賦形剤」との混合物を指す。医薬組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。当技術分野では、化合物を投与するための様々な技術が存在し、直腸、経口、静脈内、エアロゾル、非経口、眼、肺、及び局所投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
本明細書で使用される用語「対象」は、動物を指し、霊長類(例えば、ヒト)、サル、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、猫、ウサギ、ラット、又はマウスを含むが、これらに限定されない。用語「対象」及び「患者」は、本明細書では、例えば哺乳動物対象(例えば、ヒト)に関して互換的に使用される。
【0077】
本明細書で使用される場合、疾患又は障害の治療の文脈における用語「治療(treat、treating及びtreatment)」は、障害、疾患又は状態の緩和又は除去;或いは、障害又は状態もしくはその1つ又は複数の症状の進行、広がり、又は悪化を遅らせることを含むことを指し、ここで、本明細書で使用される用語「障害」は、「障害、疾患又は状態」、又は障害に関連する1つ又は複数の症状であると常に理解されるものとする。
【0078】
特に明記しない限り、本明細書で使用される
は、ナフタレン環(左右の2つのベンゼン環を含む)が0、1、2、3、4又は5個のRで置換されており、かつナフタレン環が1個を超えるRで置換されている場合、Rは出現するたびに同一であっても異なっていてもよいことを指す。
【0079】
特に明記しない限り、本明細書に記載の「選択性」は、正常なミトコンドリアに影響を与えることなく、あるいは弱い影響しか与えずに、損傷ミトコンドリアのオートファジーを有意に誘導する特性を指す。本明細書に記載の「代謝安定性」には、肝臓ミクロソーム安定性及び血漿安定性が含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
本発明の実施例の目的、技術的方案、及び利点をより明確にするために、以下では、具体的な実施例に基づいて本発明をさらに説明する。これらの実施例は本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例において特定の実験条件を指定しない実験方法は、通常、従来の条件又は製造業者が推奨する条件に従う。特に明記しない限り、パーセンテージ及び部は重量パーセンテージ及び重量部である。以下の実施例で使用される実験材料及び試薬は、特に明記しない限り、商業的供給源から入手することができる。
【0081】
特に指定しない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本出願が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語は、具体的な実施態様を説明することのみを意図しており、本願の例示的な実施態様を限定することを意図していないことに留意されたい。
【0082】
実施例1:化合物I-1の合成と特性評価
UMI-77(45mg,0.096mmol)を窒素雰囲気保護下でDMF(0.5mL)に溶解し、氷水浴中で撹拌し、KCO(39mg,0.28mmol)及びMeI(30μL,0.48mmol)を順番に加え、氷水浴中で10min攪拌し続け、その後に室温に戻して一晩撹拌を続ける。LC-MSによりトリメチル化生成物1の生成を検出した。反応系をDCMで希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(30%v/v 酢酸エチル/石油エーテル系)を行って、化合物1(42mg)を得た。
【0083】
化合物1(42mg,0.081mmol)を乾燥DCM(0.5mL)に溶解し、ドライアイス-エタノール浴中で撹拌し、1M BBrのDCM溶液(0.24mL,0.24mmol)を滴下し、その後にゆっくりと室温に戻して2時間攪拌を続けた。LC-MSにより生成物Iを検出した。希塩酸を加えて反応をクエンチさせ、DCMで抽出し、有機相を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機相を濃縮し、得られた粗生成物を分取HPLC(MeCN/HO/TFA)によって精製して、生成物I-1(23mg)を得た。
【0084】
精製生成物I-1を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 480, 482 [M-H]-. 1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ (ppm): 12.90 (s, 1H), 10.08 (s, 1H), 8.22 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 8.05 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.88 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.76 -7.53 (m, 4H), 6.85 (s, 1H), 3.54 (s, 2H), 3.19 (s, 3H).
実施例2:化合物I-2の合成と特性評価
化合物I-1の合成方法に従って、既知の中間体2(J. Med. Chem. 2014,57,4111-4133)を原料として使用し、化合物I-2を調製することができる。
【0085】
精製生成物I-2を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 510, 512 [M-H]-.
実施例3:化合物I-3の合成と特性評価
既知の化合物4(J. Med. Chem. 2014, 57, 4111-4133)(1.0mmol)及び2,2’-ビピリジル(0.8mmol)を乾燥DCE(8mL)に溶解し、フェニルボロン酸(2.0mmol)、酢酸銅(1.0mmol)及び炭酸ナトリウム(2.0mmol)を順番に加え、80℃に加熱して24時間攪拌した。LC-MSにより生成物5を検出した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して中間体5(98mg)を得た。中間体5(0.28mmol)をDCM(0.4mL)及びピリジン(0.3mL)に溶解し、氷水浴中で撹拌し、p-ブロモベンゼンスルホニルクロリド(0.3mmol)を加え、その後にゆっくりと室温に戻した。LC-MSにより中間体6の生成を検出した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して中間体6(79mg)を得た。
【0086】
中間体6(0.14mmol)を原料として使用し、化合物I-2の合成法の最終ステップに従って、化合物I-3(23mg)を調製した。
【0087】
精製生成物I-3を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 542, 544 [M-H]-.
実施例4:化合物I-4の合成と特性評価
NaSO(3.8g,30mmol)を30mL脱イオン水に溶解し、撹拌しながらp-ブロモベンゼンスルホニルクロリド(2.6g,10mmol)を数回に分けて加えた。油浴75Cで5時間加熱し、冷却後、濃塩酸を滴下して、白色固体が析出した。吸引ろ過後、得られた固体を水中で再結晶して中間体7(1.3g)を得た。中間体7を80mLのDCMに懸濁し、塩化チオニル(4eq)を滴下し、滴下完了後、油浴で加熱還流し、5時間後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残留する塩化チオニルをトルエンで除去して、中間体8(626mg)を得た。
中間体8(48mg,0.2mmol)を1mLのDCMに懸濁し、氷水浴中で冷却しながらメチルアミン(1.5eq)のアルコール溶液を加え、次にトリエチルアミン(2eq)を加え、自然に室温に戻し、2時間撹拌した。LC-MSは、中間体9の生成を示した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して(EA in hexane=65%v/v)、中間体9を淡黄色固体(30mg)として得た。
中間体9(30mg,0.13mmol)を0.5mLの四塩化炭素に懸濁し、氷水浴中で撹拌し、tert-ブチルオキシクロリド(1.5eq)を添加して、固体が直ちに溶解した。1時間撹拌を続け、低沸点物質をロータリーエバポレーターで蒸発させ除去し、中間体10を得た。次いで、中間体10を0.5mLのDCMに溶解し、氷水浴中で撹拌した。中間体4(1eq,J. Med. Chem. 2014, 57, 4111-4133を参照して調製)を0.3mLピリジンに溶解し、このピリジン溶液を中間体10のDCM溶液に滴下し、自然に室温に戻して一晩撹拌した。LC-MSは中間体11の生成を示した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(EA in hexane=40%v/v)によって精製して、中間体11を油状物(51mg)として得た。
中間体11(51mg、0.1mmol)を0.5mLのDCMに溶解し、ドライアイス-エタノール浴で冷却しながら、BBrのDCM溶液(0.2mL,1M in DCM)を滴下した。ゆっくりと室温に戻し、3時間撹拌した。LC-MSは、中間体11が完全に消費され、化合物I-4が生成したことを示した。脱イオン水を滴下して反応をクエンチさせ、DCMで3回抽出した。有機相を合わせ、有機溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させ除去し、分取HPLC(MeCN/HO/TFA)によって精製して、生成物I-4(13mg)を得た。
【0088】
精製生成物I-4を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 479, 481 [M-H]-. 1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ (ppm): 9.13 (s, 1H), 8.36 - 8.28 (m, 1H), 8.14 - 8.06 (m, 1H), 7.93 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.83 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.55 - 7.39 (m, 3H), 7.22 (s, 1H), 3.61 (s, 2H), 2.41 (s, 3H).
実施例5:化合物I-5の合成と特性評価
化合物I-4の合成経路に従い、そのうちのメチルアミンをシクロプロピルアミンに置き換えて、化合物I-5を調製することができる。
【0089】
精製生成物I-5を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 505, 507 [M-H]-. 1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ (ppm): 12.01 (s, 1H), 8.38 - 8.30 (m, 1H), 8.16 - 8.07 (m, 1H), 7.97 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.84 (d, J = 8.6 Hz, 3H), 7.48 (qd, J = 6.8, 3.4 Hz, 2H), 7.23 (s, 1H), 3.52 (s, 2H), 2.17 - 2.09 (m, 1H), 0.47 - 0.38 (m, 1H), 0.38 - 0.23 (m, 2H), 0.21 - 0.11 (m, 1H).
実施例6:化合物I-6の合成と特性評価
化合物I-4の合成経路に従い、そのうちのメチルアミンを
に置き換えて、化合物I-6を調製することができる。
【0090】
精製生成物I-6を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 521, 523 [M-H]-.
実施例7:化合物I-7の合成と特性評価
化合物I-4の合成経路に従い、そのうちのメチルアミンを
に置き換えて、化合物I-7を調製することができる。
【0091】
精製生成物I-7を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 509, 511 [M-H]-.
実施例8:化合物I-8の合成と特性評価
化合物I-4の合成経路に従い、そのうちのメチルアミンをアニリンに置き換えて、化合物I-8を調製することができる。
【0092】
精製生成物I-8を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 541, 543 [M-H]-.
実施例9:化合物I-9の合成と特性評価
化合物I-2の合成方法に従って、前記中間体11を原料として使用し、化合物I-9を調製することができる。
【0093】
精製生成物I-9を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 493, 495 [M-H]-.
実施例10:化合物I-10の合成と特性評価
中間体12(1.9mmol)をTHFに溶解し、室温で撹拌しながら1M TBAFのTHF溶液を加え、TBSが完全に除去されるまで1時間撹拌を続けた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによってTBS除去生成物(1.8mmol)を得た。このTBS除去生成物(1.8mmol)及びトリフェニルホスフィン(1.2eq)を無水THFに溶解し、室温で撹拌しながらDIAD(1.2eq)を滴下し、室温で一晩撹拌を続けた。LC-MSは、環化生成物の生成を示した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって環化生成物(0.8mmol)を得た。
【0094】
環化生成物を原料として使用し、化合物I-2の合成法の最終ステップに従って、三臭化ホウ素で脱メチル化することによって、化合物I-10を調製した。精製生成物I-10を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 491, 493 [M-H]-.
実施例11:化合物I-11の合成と特性評価
化合物I-7及びI-10の合成方法に従い、そのうちの
に置き換えて、化合物I-11を調製することができる。
【0095】
精製生成物I-11を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 505, 507 [M-H]-.
実施例12:化合物I-12の合成と特性評価
前記中間体11を原料として使用し、上記図の合成経路に従って、化合物I-12を調製することができる。
【0096】
精製生成物I-12を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 505, 507 [M+H]+.
実施例13:化合物I-13の合成と特性評価
前記中間体13を原料として使用し、上記図の合成経路に従って、化合物I-13を調製することができる。
【0097】
精製生成物I-13を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 504, 506 [M+H]+.
実施例14:化合物I-14の合成と特性評価
化合物I-4を原料として使用し、フェノール性水酸基を塩化アセチルでアシル化することによって、化合物I-14を調製することができる。
【0098】
精製生成物I-14を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 523, 525 [M+H]+.
実施例15:化合物I-15の合成と特性評価
化合物I-4を原料として使用し、化合物I-14の合成方法に従い、そのうちの塩化アセチルを
に置き換えて、化合物I-15を調製することができる。
【0099】
精製生成物I-15を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 551, 553 [M+H]+.
実施例16:化合物I-16の合成と特性評価
化合物I-4を原料として使用し、一ステップのアルキル化反応によって、化合物I-16を調製することができる。
【0100】
精製生成物I-16を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 597, 599 [M+H]+.
実施例17:化合物I-17の合成と特性評価
前記中間体11を原料として使用し、上記図の合成経路に従って、化合物I-17を調製することができる。
【0101】
精製生成物I-17を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 493 [M-H]-.
実施例18:化合物I-18の合成と特性評価
前記中間体11を原料として使用し、上記図の合成経路に従って、化合物I-18を調製することができる。
【0102】
精製生成物I-18を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 477 [M-H]-.
実施例19~22:化合物I-19~I-22の合成と特性評価
化合物I-4の合成経路に従い、そのうちの
のそれぞれに置き換えて、化合物I-19~I-22を調製した。
【0103】
精製生成物I-19を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 469 [M-H]-.
精製生成物I-20を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 451 [M-H]-.
精製生成物I-21を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 407 [M-H]-.
精製生成物I-22を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 477 [M-H]-.
実施例23:化合物I-23の合成と特性評価
中間体4(1.5mmol)及び2,2’-ビピリジル(1.5mmol)を乾燥DCE(7mL)に溶解し、シクロプロピルボロン酸(3.0mmol)、酢酸銅(1.5mmol)及び炭酸ナトリウム(3.3mmol)を順番に加え、80℃に加熱して24時間攪拌した。LC-MSにより生成物16を検出した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して中間体16(153mg)を得た。中間体16(0.48mmol)をDCM(0.4mL)及びピリジン(0.2mL)に溶解して、氷水浴中で撹拌し、中間体10(0.50mmol)を加え、その後にゆっくりと室温に戻した。LC-MSにより中間体17の生成を検出した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して中間体17(170mg)を得た。
中間体17(0.31mmol)を原料として使用し、化合物I-2の合成方法に従って、三臭化ホウ素で脱メチル化することによって、化合物I-23(37mg)を調製した。
【0104】
精製生成物I-23を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 519, 521 [M-H]-
【0105】
実施例24:化合物I-24の合成と特性評価
化合物I-23の合成方法に従い、
に置き換えて、化合物I-24を調製した。
【0106】
精製生成物I-23を採取して構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 535, 537 [M-H]-
【0107】
実施例25:化合物I-25の合成と特性評価
既知の化合物18(CAS:88437-16-5)(5.0mmol)を原料として使用し、文献(J. Med. Chem. 2012,55,1978-1998)の合成方法に従って化合物I-25を調製することができる。
【0108】
精製生成物I-25について構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 504, 506 [M-H]-.
実施例26:化合物I-26の合成と特性評価
既知の化合物19(CAS:58200-82-1)(5.0mmol)を原料として使用し、文献(J. Med. Chem. 2012,55,1978-1998)の合成方法に従って化合物I-26を調製することができる。
【0109】
精製生成物I-26について構造特性評価を行った。LC-MS (ESI) m/z: 524, 526 [M-H]-.
試験例1:マイトファジー誘導剤の機能試験
ヒト胎児腎臓形質転換細胞のHEK293Tmtkeima細胞を96ウェル黒色酵素プレートに1.5*10個/ml、100μL/ウェルで播種し;25時間後、UMI-77及び化合物I-1~I-26をそれぞれ添加し、3つの複製を設定し;37℃、5%COのインキュベート条件下で、数時間ごとにbiotek cytation 5を使用して撮影し、合計20時間撮影した。明視野をフォーカスチャンネルとして使用し、各ウェルにつき9枚の写真を撮影し、機器ソフトウェアを使用して画像を処理し、マイトファジーの強度に変換し、UMI-77及び化合物I-4を例として、それらの結果を図1に示す。
【0110】
ヒト胎児腎臓形質転換細胞のHEK293Tmtkeima細胞を、96ウェル黒色酵素プレートに1.5*10個/ml、100μL/ウェルで播種し;24時間後、5uM又は10uMのCCCP(カルボニルシアニド 3-クロロフェニルヒドラゾン:Carbonyl cyanide 3-chlorophenylhydrazone)を添加し、1時間後、UMI-77及び化合物I-1~ I-26をそれぞれ添加し、3つの複製を設定し;37℃、5%COのインキュベート条件下で、数時間ごとにbiotek cytation 5を使用して撮影し、合計20時間撮影した。明視野をフォーカスチャンネルとして使用し、各ウェルにつき9枚の写真を撮影し、機器ソフトウェアを使用して画像を処理し、UMI-77及び化合物I-1,I-4,I-5を例として、それらの結果を図2図3及び図4に示す(ブロックの色の濃淡はマイトファジーの強度を表す)。
【0111】
図1に示すように、CCCPで処理されない細胞では、化合物I-4は、UMI-77よりも強いマイトファジー誘導能力を有する。
【0112】
図2に示すように、ヒト胎児腎臓形質転換細胞HEK293Tmtkeimaシステムを、5uM又は10uMのCCCPで処理して、ミトコンドリア損傷を誘発した後に、化合物I-1を添加したものは、CCCPで処理せず、試験化合物のみを添加したものと比較して、ブロックの色がより暗くなり、化合物I-1が損傷ミトコンドリアのオートファジーを誘導しやすいことを表明している。UMI-77に関しては、同じ条件下で、損傷したミトコンドリアと損傷していないミトコンドリアのカラーブロックは両方とも暗くなっており、UMI-77が損傷ミトコンドリアのオートファジーを選択的に誘導できないことを表明している。
【0113】
マイトファジーを誘導する他の化合物の能力の試験結果は以下の表1のとおりである。
【0114】
表1
「+++」は、化合物がマイトファジーを誘導する強力な能力(マイトファジーが発生した細胞の数/総細胞数>0.30)を持っていることを示し、「++」は、化合物がマイトファジーを誘導する中程度の能力(マイトファジーが発生した細胞の数/総細胞数が0.2~0.3の範囲にある)を持っていることを示し、「+」は、化合物がマイトファジーを誘導する弱い能力(マイトファジーが発生した細胞の数/総細胞数が0.1~0.2の範囲にある)を持っていることを示し、「NA」は、化合物がマイトファジーを誘導する能力を持つことが検出されなかったことを示す。
注:実験で使用したHEK293Tmtkeima細胞は、文献[Cen, X. et al. Nat Commun 11, 5731 (2020).]に記載の方法に従い、レンチウイルスパッケージング技術を使用して、HEK293T細胞内でmtkeimaタンパク質を安定に発現させて得られたHEK293Tmtkeima細胞である。実験で使用したCCCPは陶術生物(Topscience Co. Ltd.)から購入したものである(商品番号T7081)。
【0115】
試験例2.インビトロ肝ミクロソーム安定性試験
参照化合物としてKetanserinを使用した。具体的方法は以下の通りである。
【0116】
0.1M KPO(pH7.4)緩衝液及び3×NADPH貯蔵溶液(6mM,5mg/mL)を調製し、37℃の水浴で予熱した。試験化合物及び対照化合物のspiking solutionの調製:5μLの化合物貯蔵溶液(10nM)を95μLのアセトニトリルに添加した。1.5μMのspiking solution in microsomes(0.75mg/mL)の調製:1.5μLのspiking solution及び18.75μLの肝ミクロソーム溶液(20mg/mL)を479.75μLのKPO緩衝液に添加した。30μLのspiking solution in microsomesをマルチウェルプレートに添加し、37℃で5分間インキュベートした。NADPH貯蔵溶液15μLを各ウェルに加えて反応を開始し、時間を計った。それぞれ0min、5min、15min、30min及び45minで、ISを含むアセトニトリル溶液150μLを加えて反応を停止させた。10分間振とうした後に、6000rpmで15分間遠心分離した。各ウェルから80μLの上清を採取してLC/MS検出を行い、T1/2を計算した。一部の試験効果を図5に示す。
【0117】
図3に示すように、UMI-77のインビトロ肝ミクロソーム安定性実験では、UMI-77はマウス及びヒトの肝ミクロソーム環境において不安定で、急速に除去され;化合物I-1及びI-4は比較的優れた安定性を示した。
【0118】
注:実験で使用したマウス及びヒトの肝ミクロソームはXenotechから購入したものである。
【0119】
上述の各実施形態は本発明を実施するための具体的な実施例であり、実際の応用においては、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく形態及び詳細に様々な変更を加えることができることは、当業者には理解されよう。
図1
図2
図3
【国際調査報告】