(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】膠芽腫の治療における使用のための併用療法におけるイブジラスト
(51)【国際特許分類】
A61K 31/437 20060101AFI20240925BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240925BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240925BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A61K31/437
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 U
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517408
(86)(22)【出願日】2022-09-19
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 US2022044003
(87)【国際公開番号】W WO2023049075
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516020271
【氏名又は名称】メディシノバ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MediciNova, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】松田 和子
(72)【発明者】
【氏名】フォーゲルバウム,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ラシア,ジャスティン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB01
4C085CC23
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
イブジラスト(3-イソブチリル-2-イソプロピルピラゾロ[1,5-a]ピリジン)またはその薬学的に許容される塩および免疫チェックポイント阻害剤の投与によって、膠芽腫の治療を必要とする患者において膠芽腫を治療するための組成物および方法が本明細書中に開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膠芽腫の治療を必要とする患者において膠芽腫を治療する方法であって、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容される塩および治療有効量の免疫チェックポイント阻害剤を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1剤、抗PD-L1剤、または抗CTLA-4剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗PD-1剤が、抗PD-1抗体である、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗PD-1剤が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カンレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、AMP-514、AMP-224、JTX-4014、ドスタルリマブ、レチファンリマブ、およびAUNP-12からなる群から選択される、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-L1剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記抗PD-L1剤が、抗PD-L1抗体である、請求項2または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗PD-L1剤が、アテゾリズマブ、アベルマブ、エンバフォリマブ、デュルバルマブ、コシベリマブ、CA-170およびBMS-986189からなる群から選択される、請求項2または請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗CTLA-4剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記抗CTLA-4剤が、抗CTLA-4抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
抗CTLA-4剤が、イピリムマブおよびトレメリムマブからなる群から選択される、請求項2、9または10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容される塩が、少なくとも3ヶ月間投与される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容される塩が、少なくとも6ヶ月間投与される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容される塩が、少なくとも1年間投与される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容される塩が、少なくとも2年間投与される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容される塩が、1日に少なくとも1回投与される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容される塩が、経口投与される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の前記治療有効量が、少なくとも30mg/日である、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の前記治療有効量が、1日当たり0.1mg~720mgである、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の前記治療有効量が、1日当たり30mg~200mgである、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の前記治療有効量が、毎日30mg~720mgである、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の前記治療有効量が、毎日60mg~600mgである、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の前記治療有効量が、毎日100mg~480mgである、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の前記治療有効量が、30mg/日、40mg/日、50mg/日、60mg/日、90mg/日、100mg/日、110mg/日、120mg/日、150mg/日、180mg/日、190mg/日、200mg/日、210mg/日、240mg/日、270mg/日、300mg/日、360mg/日、400mg/日、440mg/日、480mg/日、520mg/日、580mg/日、600mg/日、620mg/日、640mg/日、680mg/日および720mg/日からなる群から選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の前記治療有効量が、単回用量として投与されるか、または2、3、もしくは4回の用量に分割される、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容される塩および前記免疫チェックポイント阻害剤がいずれも連続的に投与される、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記イブジラストまたはその薬学的に許容される塩が連続的に投与され、前記免疫チェックポイント阻害剤が周期的に投与される、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2021年9月21日に出願された米国仮特許出願第63/246,755号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本開示は、一般に、膠芽腫としても知られる多形膠芽腫(GBM)を治療するための方法であって、治療有効量のイブジラスト(3-イソブチリル-2-イソプロピルピラゾロ[1,5-a]ピリジン)および治療有効量の免疫チェックポイント阻害剤、例えば抗PD-1剤または抗PD-L1剤を投与することを含む、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
低分子イブジラスト(3-イソブチリル-2-イソプロピルピラゾロ[1,5-a]ピリジン)は、マクロファージ阻害因子(MIF)の阻害剤であり(Cho et al PNAS-USA 2010 June 107:11313-8)、環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)の選択的阻害剤である3A、4、10A1および11A1(Gibson et al.,Eur J Pharmacol 538:39-42,2006)である。イブジラストは、CNSに(Sanftnerら、Xenobiotica 2009 39:964-977)、臨床的に関連する血漿またはCNS濃度で充分に分布し、イブジラストは、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)を選択的に阻害し、次いでPDE 3、4、10および11を選択的に阻害する。イブジラストは、ロイコトリエンD4アンタゴニスト、抗炎症剤、PAFアンタゴニストおよび血管拡張剤としても作用する(Thompson Current Drug Reports)。イブジラストは、おそらく、グリア細胞の活性化の抑制によって、哺乳動物の中枢神経系において神経保護的役割を果たすと考えられている(Mizuno et al.,Neuropharmacology 46:404-411,2004)。
【0004】
イブジラストは、虚血性脳卒中または気管支喘息に関連する症状を緩和するために日本で広く使用されている。最近の臨床試験では、中枢神経系の炎症性疾患である多発性硬化症(MS)の治療におけるその使用が検討されている(News.Medical.Net;Pharmaceutical News,2 Aug.2005)。この刊行物に開示されているように、この臨床試験は「再発寛解型MS」を治療すると予想されたが、進行性多発性硬化症については言及されていない。米国特許第6,395,747号では、イブジラストが多発性硬化症の治療として開示されており、これは一般に、進行性多発性硬化症ではなく、再発性および寛解性多発性硬化症を意味すると理解されている。米国特許出願公開第20060160843号は、断続的および短期的な疼痛の治療のためのイブジラストを開示しているが、これは進行性神経変性疾患に関連する疼痛ではない。しかしながら、米国特許第9,314,452号は、進行性神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症の治療としてイブジラストを開示している。同様に、米国特許第8,138,201号は、原発性進行性多発性硬化症および/または続発性進行性多発性硬化症の治療としてのイブジラストを開示している。
【0005】
いくつかの様々な適応症のためのイブジラストの使用がこれまでに報告されているが、本出願人の知る限りでは、多形膠芽腫(GBM)またはその再発性形態もしくはその難治性形態を治療するための免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせたイブジラストの使用は、これまでほとんど未検討のままであった。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、膠芽腫の治療を必要とする患者において膠芽腫を治療する方法であって、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容される塩および治療有効量の免疫チェックポイント阻害剤を患者に投与することを含む方法が本明細書において提供される。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1剤、抗PD-L1剤、または抗CTLA-4剤である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1剤である。一部の実施形態では、抗PD-1剤は、抗PD-1抗体である。一部の実施形態では、抗PD-1剤は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カンレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、AMP-514、AMP-224、JTX-4014、ドスタルリマブ、レチファンリマブ、およびAUNP-12からなる群から選択される。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-L1剤である。一部の実施形態では、抗PD-L1剤は、抗PD-L1抗体である。一部の実施形態では、抗PD-L1剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、コシベリマブ、CA-170およびBMS-986189からなる群から選択される。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4剤である。一部の実施形態では、抗CTLA-4剤は、抗抗CTLA-4抗体である。一部の実施形態では、抗CTLA-4剤は、イピリムマブおよびトレメリムマブからなる群から選択される。
【0007】
一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、少なくとも3ヶ月間投与される。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、少なくとも6ヶ月間投与される。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、少なくとも1年間投与される。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、少なくとも2年間投与される。
【0008】
一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、1日に少なくとも1回投与される。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、経口投与される。
【0009】
一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、少なくとも30mg/日である。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、1日当たり0.1mg~720mgである。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、1日当たり30mg~200mgである。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、毎日30mg~720mgである。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、毎日60mg~600mgである。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、毎日100mg~480mgである。
【0010】
一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、30mg/日、40mg/日、50mg/日、60mg/日、90mg/日、100mg/日、110mg/日、120mg/日、150mg/日、180mg/日、190mg/日、200mg/日、210mg/日、240mg/日、270mg/日、300mg/日、360mg/日、400mg/日、440mg/日、480mg/日、520mg/日、580mg/日、600mg/日、620mg/日、640mg/日、680mg/日および720mg/日からなる群から選択される。
【0011】
一部の実施形態では、治療有効量は、単回用量として投与されるか、または2、3、もしくは4回の用量に分割される。
【0012】
一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩および少なくとも1つの追加の治療はいずれも連続的に投与される。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は連続的に投与され、免疫チェックポイント阻害剤は周期的に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】マウスをイブジラスト、抗PD-1抗体、またはイブジラストと抗PD-1抗体との組合せで処置したマウス膠芽腫モデル(抗PD1と相乗作用させた同種異系マウスモデル(2万個のSB28細胞)におけるイブジラスト処置)の結果を示す図である。アイソタイプは抗PD-1抗体の陰性対照として働き、ビヒクルはイブジラストの陰性対照として働く。生着後7日目に処置を開始し、3日間隔で3回の腹腔内注射を行った;n=10マウス/群(雄);各群について得られた生存期間中央値、ログランクによって評価した場合、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001(色付きの星印は各対照群との比較を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実践には、別段の指示がない限り、当業者の技術の範囲内で、化学、生化学、および薬理学の従来の方法を使用する。このような技術は、文献で十分に説明されている。例えば、A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition);Morrison and Boyd,Organic Chemistry(Allyn and Bacon,Inc.,current addition);J.March,Advanced Organic Chemistry(McGraw Hill,current addition);Remington:The Science and Practice of Pharmacy,A.Gennaro,Ed.,20th Ed.;FDA’s Orange Book,Goodman&Gilman The Pharmacological Basis of Therapeutics,J.Griffith Hardman,L.L.Limbird,A.Gilman,11th Ed.,2005,The Merck Manual,18th edition,2007、およびThe Merck Manual of Medical Information 2003.を参照されたい。
【0015】
インターネット記事、FDA Orange Book(FDAのウェブサイトで入手可能)、書籍、ハンドブック、雑誌記事、特許および特許出願を含む本明細書で引用されるすべての刊行物は、上記または下記にかかわらず、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0016】
定義
本開示を詳細に説明する前に、本開示は特定の投与方式、患者集団などに限定されず、したがって、付随する明細書および図面から明らかになるように変更可能であることを理解されたい。
【0017】
本明細書および意図される特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上別段に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。よって、例えば、「薬物」への言及は、単一の薬物および2つ以上の同じまたは異なる薬物を含み、「任意選択の賦形剤」への言及は、単一の任意選択の賦形剤および2つ以上の同じまたは異なる任意選択の賦形剤などを指す。
【0018】
本開示の説明および特許請求において、以下の用語は、以下に記載される定義に従って使用される。
【0019】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、組成物および方法が列挙された要素を含むが、他の要素を除外しないことを意味することを意図している。「から本質的になる」は、組成物および方法を定義するために使用される場合、記載された目的のために組合せにとって本質的に重要な他の要素を除外することを意味するものとする。よって、本明細書で定義される元素から本質的になる組成物は、特許請求される発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない他の材料またはステップを排除しない。「からなる(consisting of)」は、他の成分および実質的な方法ステップの微量元素を超える元素を除外することを意味するものとする。これらの移行用語のそれぞれによって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0020】
「薬学的に許容される塩賦形剤または担体」は、任意選択的に、本開示の組成物に含まれてもよく、患者に有意な有害な毒性作用を引き起こさない賦形剤を指す。
【0021】
「薬学的に許容される塩」には、以下に限定されないが、アミノ酸塩、無機酸で調製された塩、例えば塩化物、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化物および硝酸塩、または前述のいずれかの対応する無機酸形態、例えば塩酸塩などから調製された塩、または有機酸で調製された塩、例えばリンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、パラ-トルエンスルホン酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、サリチル酸塩およびステアリン酸塩、ならびにエストール酸塩(estolate)、グルセプチン酸塩およびラクトビオン酸塩が含まれる。同様に、薬学的に許容されるカチオンを含有する塩には、以下に限定されないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウムおよびアンモニウム(置換アンモニウムを含む)が含まれる。
【0022】
本明細書に記載されている「活性分子」または「活性剤」は、in vivoまたはin vitroで実証することができるいくつかの薬理学的、しばしば有益な効果を与える任意の薬剤、薬物、化合物、組成物または混合物を含む。これには、食品、栄養補助食品、栄養剤、栄養補給食品、薬物、ワクチン、抗体、ビタミン、および他の有益な薬剤が含まれる。本明細書で使用される場合、この用語は、患者において局所的または全身的な効果をもたらす任意の生理学的または薬理学的に活性な物質をさらに含む。具体的な実施形態では、活性分子または活性剤は、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩を含む。
【0023】
「実質的に」または「本質的に」は、ほぼ完全にまたは完全に、例えば、ある所与の量の95%以上を意味する。
【0024】
「任意選択の」または「任意選択的に」は、続いて記載される状況が生じてもよいし、また生じなくてもよいことを意味し、その結果、その記載は、その状況が起こる場合と、それが起こらない場合とを含む。
【0025】
「グリア細胞」は、ミクログリア、星状膠細胞および乏突起膠細胞としても公知の中枢神経系の様々な細胞を指す。
【0026】
「対象」、「個体」または「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳動物を指す。哺乳動物には、以下に限定されないが、マウス、げっ歯類、ラット、サル、ヒト、家畜、イヌ、ネコ、スポーツ動物およびペットが含まれる。
【0027】
本明細書で提供される組成物または薬剤の「薬理学的に有効な量」または「治療的に有効な量」という用語は、膠芽腫の臨床症状の低減または退行などの所望の応答を提供するための非毒性であるが十分な量の組成物または薬剤を指す。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢および全身状態、治療される状態の重症度、用いられる特定の薬物(複数可)、投与方式などに応じて、対象ごとに異なる。任意の個々の場合における適切な「有効」量は、本明細書で提供される情報に基づいて、日常的な実験を使用して当業者によって決定され得る。
【0028】
「約」という用語は、特に所与の量に関して、プラスマイナス5パーセントの偏差を包含することを意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「正常膠細胞」という用語は、特定の細胞型を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「多形膠芽腫」または「膠芽腫」または「悪性神経膠腫」という用語は、本明細書では互換的に使用され、星状膠細胞から生じる脳腫瘍を指す。本明細書で使用される場合、膠芽腫には再発性膠芽腫が含まれる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「治療」または「治療すること」という用語は、患者における疾患もしくは状態または関連障害の任意の治療を意味し、以下を含む:
・疾患または状態を阻害すること、すなわち、がんにおける悪液質などの臨床症状の発生を停止または抑制すること;
・疾患または状態を緩和すること、すなわち、臨床症状の退行を引き起こすこと、例えば、全生存を増加させること、または腫瘍量を低減すること;
・膠芽腫に罹患している患者の臨床転帰を改善すること;
・またはこれらの任意の組合せ。
【0032】
「臨床転帰」という用語は、治療に対する患者の反応に関する任意の臨床的観察または測定を指す。臨床転帰の改善の非限定的な例には、より長い生存期間、腫瘍サイズの低減、腫瘍サイズの非成長、および/または神経学的症状の悪化の欠如が含まれる。神経学的症状の非限定的な例としては、複視、嘔吐、食欲不振、気分および性格の変化、思考および学習能力の変化、発作、発話困難、および認知障害が挙げられる。さらに、臨床転帰の非限定的な例としては、腫瘍応答(TR)、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、無病生存期間、腫瘍再発までの期間(TTR)、腫瘍進行までの期間(TTP)、相対リスク(RR)、毒性または副作用が挙げられる。「全生存」(OS)は、ナイーブまたは未治療の個体または患者と比較した平均余命の延長を意図する。「無増悪生存期間」(PFS)または「腫瘍進行までの時間」(TTP)は、がんが成長しない治療中および治療後の時間の長さを示す。無増悪生存期間には、患者が完全奏効または部分奏効を経験した期間、および患者が安定な疾患を経験した期間が含まれる。本明細書で使用され、国立がん研究所によって定義される場合、「腫瘍再発」は、通常、がんを検出できなかった期間後に再発した(戻ってきた)がんである。がんは、元の(原発性)腫瘍と同じ場所または体内の別の場所に戻ることがある。再発性がんとも呼ばれる。「腫瘍再発までの時間」(TTR)は、がんの診断日から最初の再発、死亡、または患者が最後の接触時に腫瘍再発がなかった場合は最後の接触までの時間として定義される。患者が再発しなかった場合、TTRを死亡時または最後のフォローアップ時に打ち切りした。統計学および数学的疫学における「相対リスク」(RR)は、曝露に対する事象(または疾患発生)のリスクを指す。相対リスクは、曝露グループ対非曝露グループで事象が発生する確率の比である。
【0033】
本開示の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本開示の趣旨および範囲内の様々な変更および修正がこの詳細な説明から当業者に明らかになるため、詳細な説明および具体的な例は、本開示の具体的な実施形態を示すが、例示としてのみ与えられることを理解されたい。
【0034】
イブジラスト
膠芽腫の治療のための本開示の方法は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせたイブジラストの投与に基づく。イブジラストは、以下に示す構造を有する低分子薬物(分子量230.3)である。
【化1】
【0035】
イブジラストは、ChemBank ID 3227,CAS # 50847-11-5、およびBeilstein Handbook Reference No.5-24-03-00396にも見出される。その分子式は、C14H18N2Oに対応する。イブジラストは、2-メチル-1-(2-(1-メチルエチル)ピラゾロ(1,5-a)ピリジン-3-イル)1-プロパノン、3-イソブチリル-2-イソプロピルピラゾロ(1,5-a)ピリジン];および1-(2-イソプロピル-ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イル)-2-メチル-プロパン-1-オンを含む様々な化学名でも知られている。イブジラストの他の同義語としては、イブジラスタム(ラテン語)、BRN 0656579、KC-404およびMN-166が挙げられる。商品名は、Ketas(登録商標)である。本明細書で言及される場合、イブジラストは、投与のための意図された製剤での使用に適切な、そのありとあらゆる薬学的に許容される塩形態、プロドラッグ形態(例えば、対応するケタール)、溶媒和物などを含むことを意味する。
【0036】
イブジラストはマクロファージ阻害因子(MIF)の阻害剤である。イブジラストは、環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)3A、4、10A1および11A1の選択的阻害剤でもあり(Gibson et al.,Eur J Pharmacol 538:39-42,2006)、ロイコトリエンD4およびPAF拮抗活性を有することも報告されている。そのプロファイルは、他のPDE阻害剤および抗炎症剤と比較して効果的に抗炎症性であり、独特であると思われる。PDEは、3’-炭素上のホスホエステル結合の加水分解を触媒して、対応する5’-ヌクレオチド一リン酸を生成する。したがって、それらは環状ヌクレオチドの細胞濃度を調節する。多くのホルモンおよび神経伝達物質の細胞外受容体は環状ヌクレオチドをセカンドメッセンジャーとして利用するので、PDEはこれらの細胞外シグナルに対する細胞応答も調節する。PDEには少なくとも8つのクラスがある:Ca2+/カルモジュリン依存性PDE(PDE1);cGMP刺激PDE(PDE2);cGMP阻害PDE(PDE3);cAMP特異的PDE(PDE4);cGMP結合PDE(PDE5);感光体PDE(PDE6);高親和性cAMP特異的PDE(PDE7);および高親和性cGMP特異的PDE(PDE9)。イブジラストは、炎症細胞(例えば、グリア細胞)に対する作用を介して炎症を抑制するように作用し、炎症促進性メディエーターと神経活性メディエーター放出の両方の抑制をもたらす。イブジラストはまた、炎症促進性サイトカイン(IL-1β、TNF-α)の産生を抑制し得、抗炎症性サイトカイン(IL-4、IL-10)の産生を増強し得る。前述に関連する参考文献には、以下が含まれる:Obernolte,R.,et al.(1993)「The cDNA of a human lymphocyte cyclic-AMP phosphodiesterase(PDE IV)reveals a multigene family」 Gene 129:239-247;Rile,G.,et al.(2001)「Potentiation of ibudilast inhibition of platelet aggregation in the presence of endothelial cells」 Thromb.Res.102:239-246;Souness,J.E.,et al.(1994)「Possible role of cyclic AMP phosphodiesterases in the actions of ibudilast on eosinophil thromboxane generation and airways smooth muscle tone」 Br.J.Pharmacol.111:1081-1088;Suzumura,A.,et al.(1999)「Ibudilast suppresses TNF.alpha.production by glial cells functioning mainly as type III phosphodiesterase inhibitor in CNS」 Brain Res.837:203-212;Takuma,K.,et al.(2001)「Ibudilast attenuates astrocyte apoptosis via cyclic GMP signaling pathway in an in vitro reperfusion model」 Br.J.Pharmacol.133:841-848。
【0037】
膠芽腫を治療するためのロリプラム(PDE4阻害剤)の使用が示唆されている。Chen et al.,Cancer Biol.Ther.2002,1(3):268-276を参照されたい。ロリプラムは、細胞アッセイ研究および動物モデル研究において陽性結果を示したが、ロリプラムは、中枢神経系(CNS)への浸透が不十分であるため、ヒトにおける膠芽腫治療の有力な候補ではない。一方、イブジラストは、良好なCNS浸透性を示す。(Sanftner et al Xenobiotica 2009 39:964-977)
【0038】
本明細書に記載される薬物のいずれか1つまたは複数、特にイブジラストへの言及は、適用可能な場合、ありとあらゆるエナンチオマー、ラセミ混合物、プロドラッグ、薬学的に許容される塩形態、水和物(例えば、一水和物、二水和物など)、溶媒和物、異なる物理的形態(例えば、結晶性固体、非晶質固体)、代謝産物などを含むエナンチオマーの混合物などを包含することを意味する。
【0039】
免疫チェックポイント阻害剤
本開示の方法で使用される免疫チェックポイント阻害剤には、抗PD-1剤、抗PD-L1剤、および/または抗CTLA-4剤が含まれる。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1剤である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-L1剤である。一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4剤である。
【0040】
一部の実施形態では、抗PD-1剤は、抗PD-1抗体である。抗PD-1剤の非限定的な例としては、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カンレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、AMP-514、AMP-224、JTX-4014、ドスタルリマブ、レチファンリマブ、およびAUNP-12が挙げられる。一部の実施形態では、抗PD-1剤はペンブロリズマブである。
【0041】
一部の実施形態では、抗PD-L1剤は、抗PD-L1抗体である。抗PD-L1剤の非限定的な例としては、アテゾリズマブ、アベルマブ、エンバフォリマブ、デュルバルマブ、コシベリマブ、CA-170およびBMS-986189が挙げられる。
【0042】
一部の実施形態では、抗CTLA-4剤は、抗抗CTLA-4抗体である。抗CTLA-4剤の非限定的な例としては、イピリムマブおよびトレメリムマブが挙げられる。
【0043】
治療方法
上記のように、本開示は、膠芽腫の治療を必要とする、ヒト患者を含む患者において膠芽腫を治療する方法であって、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容される塩および治療有効量の免疫チェックポイント阻害剤を患者に投与することを含む方法を対象とする。一部の実施形態では、本方法は、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容される塩および治療有効量の抗PD-1剤を患者に投与することを含む。一部の実施形態では、本方法は、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容される塩および治療有効量の抗PD-L1剤を患者に投与することを含む。一部の実施形態では、本方法は、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容される塩および治療有効量の抗CTLA-4剤を患者に投与することを含む。このような投与は、患者が経験する膠芽腫の量を減少させるために、すなわち、付随する実施例で実証されるように、膠芽腫の有意な減弱または逆転さえももたらすために有効である。イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、好ましくは、毎日約0.1mg~720mg、毎日約30mg~720mg、毎日約60mg~600mgまたは毎日約100mg~480mgの範囲の1日投与量で投与される。
【0044】
本開示の方法は、ある特定の事例では、イブジラストと免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1剤、抗PD-L1剤または抗CTLA-4剤)との組合せをそれに投与する前に、膠芽腫を経験している患者を選択するステップを含み得る。
【0045】
一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩および免疫チェックポイント阻害剤はいずれも連続的に投与される。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は連続的に投与され、免疫チェックポイント阻害剤は周期的に投与される。
【0046】
膠芽腫の治療のためのイブジラストベースの治療用製剤の好ましい送達方法には、全身送達および局所送達が含まれる。このような投与経路には、以下に限定されないが、経口、動脈内、髄腔内、脊髄内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内および吸入経路が含まれる。
【0047】
より詳細には、本開示のイブジラストベースの製剤は、経口、直腸、鼻、局所(経皮、エアロゾル、頬側および舌下を含む)、膣、非経口(皮下、静脈内、筋肉内、および皮内を含む)、髄腔内および肺を含むがこれらに限定されない任意の適切な経路によって治療のために投与され得る。一部の実施形態では、イブジラストベースの製剤は、経口投与される。一部の実施形態では、イブジラストベースの製剤は、注射によって投与される。好ましい経路は、当然のことながら、レシピエントの状態および年齢、治療されている特定の症候群、ならびに用いられる薬物の特定の組合せによって変化する。
【0048】
一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、経口投与される。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、注射によって投与される。
【0049】
本明細書に記載の組合せは、別個の剤形として投与され得る。本開示の治療的組合せを含む薬物が別個の剤形として投与され、同時投与が必要とされる場合、イブジラストおよび免疫チェックポイント阻害剤は、同時に、任意の順序で連続して、または別々に投与され得る。
【0050】
投与量:イブジラスト
治療量は経験的に決定することができ、治療される特定の状態、対象、ならびに組成物に含有される各活性剤の有効性および毒性によって変化する。投与される実際の用量は、対象の年齢、体重および全身状態ならびに治療される状態の重症度、医療専門家の判断、ならびに投与される特定の組合せに応じて変化する。
【0051】
イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、約0.1mg/日~720mg/日、約60~600mg/日もしくは約100~480mg/日、またはより好ましくは、約1~240mg/日、約30~240mg/日、約30~200mg/日、約30~120mg/日、約1~120mg/日、約50~150mg/日、約60~150mg/日、約60~120mg/日もしくは約60~100mg/日の量の総1日投与量の範囲であり得、単回投与または複数回投与のいずれかとして投与される。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、約30~200mg/日であり、単回投与または複数回投与のいずれかとして投与される。一部の実施形態では、複数回投与は、1日当たり2回、3回または4回投与を含む。
【0052】
イブジラストの好ましい投与量には、BIDまたはTID 約20mgを超える投与量が含まれる。すなわち、好ましい投与量は、約30mg/日より多く、40mg/日、50mg/日、60mg/日、70mg/日、80mg/日、90mg/日、100mg/日、110mg/日、120mg/日、130mg/日、140mg/日、150mg/日、160mg/日、170mg/日、180mg/日、190mg/日、200mg/日、210mg/日、240mg/日、270mg/日、300mg/日、360mg/日、400mg/日、440mg/日、480mg/日、520mg/日、580mg/日、600mg/日、620mg/日、640mg/日、680mg/日および720mg/日以上またはそれらの間の任意の値である。
【0053】
一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、少なくとも30mg/日、少なくとも40mg/日、少なくとも50mg/日、少なくとも60mg/日、少なくとも70mg/日、少なくとも80mg/日、少なくとも90mg/日、少なくとも100mg/日、少なくとも110mg/日、少なくとも120mg/日、少なくとも130mg/日、少なくとも140mg/日、少なくとも150mg/日、少なくとも160mg/日、少なくとも170mg/日、少なくとも180mg/日、少なくとも190mg/日、少なくとも200mg/日、少なくとも225mg/日、少なくとも250mg/日、少なくとも275mg/日、少なくとも300mg/日、少なくとも325mg/日、少なくとも350mg/日、少なくとも375mg/日、少なくとも400mg/日、少なくとも425mg/日、少なくとも450mg/日、少なくとも475mg/日、少なくとも500mg/日、少なくとも525mg/日、少なくとも550mg/日、少なくとも575mg/日、少なくとも600mg/日、少なくとも625mg/日、少なくとも650mg/日、少なくとも675mg/日、少なくとも700mg/日、または少なくとも720mg/日。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、少なくとも60mg/日である。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、少なくとも100mg/日である。
【0054】
一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、約30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、もしくは720mg/日、またはそれらの間の任意の値である。
【0055】
投与量および治療される正確な状態に依存して、イブジラストの投与は、1日~数日、数週間、数ヶ月、さらには数年の時間経過にわたって1日に1回、2回、3回、または4回であり得、さらには患者の生涯にわたるものであり得る。例示的な投与レジメンは、少なくとも約1週間、約1~4週間、1~3ヶ月、1~6ヶ月、1~52週間、1~24ヶ月、またはそれより長い期間続く。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、3ヶ月またはそれ未満にわたって投与される。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、少なくとも3ヶ月間投与される。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、少なくとも6ヶ月間投与される。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、少なくとも1年間投与される。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、少なくとも2年間投与される。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、少なくとも3年間投与される。
【0056】
一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、1日当たり単回投与で投与される。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、1日当たり2回投与で投与される。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、1日当たり3回投与で投与される。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、1日当たり4回投与で投与される。
【0057】
一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、1日に少なくとも1回投与される。一部の実施形態では、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、1日に少なくとも2回投与される。
【0058】
実際に言えば、本開示の任意の所与の組成物または活性剤の単位用量は、臨床医の判断、患者の必要性などに応じて、種々の投与スケジュールで投与することができる。具体的な投与スケジュールは、当業者に公知であるか、または日常的な方法を使用して実験的に決定することができる。例示的な投与スケジュールとしては、限定されないが、1日5回、1日4回、1日3回、1日2回、1日1回、1日おき、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回などの投与が挙げられる。
【0059】
投与:抗PD-1剤
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はニボルマブである。ニボルマブは、600mg/用量までの2mg/kg/用量の最小用量で、約2~約12週間にわたって毎日投与され得る。
【0060】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はペンブロリズマブである。ペンブロリズマブは、600mg/用量までの2mg/kg/用量の最小用量で、約2~約12週間にわたって毎日投与され得る。
【0061】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はセミプリマブである。セミプリマブは、600mg/用量までの2mg/kg/用量の最小用量で、約2~約12週間にわたって毎日投与され得る。
【0062】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はスパルタリズマブである。スパルタリズマブは、600mg/用量までの2mg/kg/用量の最小用量で、約2~約12週間にわたって毎日投与され得る。
【0063】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はカンレリズマブである。カンレリズマブは、600mg/用量までの2mg/kg/用量の最小用量で、約2~約12週間にわたって毎日投与され得る。
【0064】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はシンチリマブである。シンチリマブは、600mg/用量までの2mg/kg/用量の最小用量で、約2~約12週間にわたって毎日投与され得る。
【0065】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はチセレリズマブである。チセレリズマブは、600mg/用量までの2mg/kg/用量の最小用量で、約2~約12週間にわたって毎日投与され得る。
【0066】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はトリパリマブである。トリパリマブは、600mg/用量までの2mg/kg/用量の最小用量で、約2~約12週間にわたって毎日投与され得る。
【0067】
投与:抗PD-L1剤
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はアテゾリズマブである。アテゾリズマブは、2000mg/用量までの5mg/kg/用量の最小用量で、約2~約12週間にわたって毎日投与され得る。
【0068】
いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤はアベルマブである。アベルマブは、2000mg/用量までの5mg/kg/用量の最小用量で、約2~約12週間にわたって毎日投与され得る。
【0069】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はエンバフォリマブである。エンバフォリマブは、2000mg/用量までの5mg/kg/用量の最小用量で、約2~約12週間にわたって毎日投与され得る。
【0070】
いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤はデュルバルマブである。デュルバルマブは、2000mg/用量までの5mg/kg/用量の最小用量で、約2~約6週間にわたって毎日投与され得る。
【0071】
投与:抗CTLA-4剤
いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤はイピリマブである。イピリマブは、2mg/kg/用量~15mg/kg/用量の用量で、約2~約12週間にわたって毎日投与され得る。
【0072】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はトレメリムマブである。セミプリマブは、2mg/kg/用量~15mg/kg/用量の用量で、約2~約12週間にわたって毎日投与され得る。
【0073】
製剤
イブジラストまたはその薬学的に許容される塩を含むことに加えて、本開示の治療用製剤は、任意選択的に、以下に記載されている1つまたは複数の賦形剤/担体を含有し得る。
【0074】
賦形剤/担体
イブジラストまたはその薬学的に許容される塩に加えて、膠芽腫を治療するための本開示の組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含み得る。例示的な賦形剤としては、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、硬化ヒマシ油(HCO)、クレモフォール、炭水化物、デンプン(例えば、コーンスターチ)、無機塩、抗微生物剤、酸化防止剤、結合剤/充填剤、界面活性剤、潤滑剤(例えば、ステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸マグネシウム)、滑剤、例えばタルク、崩壊剤、希釈剤、緩衝剤、酸、塩基、フィルムコート、これらの組合せなどが挙げられる。
【0075】
本開示の組成物は、1つまたは複数の炭水化物、例えば糖、誘導体化糖、例えばアルジトール、アルドン酸、エステル化糖、および/または糖ポリマーを含み得る。具体的な炭水化物賦形剤としては、例えば、単糖類、例えばフルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなどが;二糖類、例えばラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなど;多糖類、例えばラフィノース、メレチトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなど;およびアルジトール、例えばマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトールなどが挙げられる。
【0076】
本開示の組成物における使用にも好適なのは、ジャガイモおよびトウモロコシベースのデンプン、例えばデンプングリコール酸ナトリウムおよび直接圧縮性修飾デンプンである。
【0077】
さらなる代表的な賦形剤としては、無機塩または緩衝剤、例えばクエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウムおよび組合せが挙げられる。
【0078】
本開示の組成物はまた、1つまたは複数の酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤は、酸化を防止するために使用され、それにより、薬物または調製物の他の成分の劣化を防止する。本開示での使用に好適な酸化防止剤としては、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0079】
さらなる例示的な賦形剤には、界面活性剤、例えばポリソルベート、例えば「Tween 20」および「Tween 80」、ならびにプルロニクス、例えばF68およびF88(いずれもBASF,Mount Olive,N.J.から入手可能である)、ソルビタンエステル、脂質(例えば、リン脂質、例えばレシチンおよび他のホスファチジルコリン、ならびにホスファチジルエタノールアミン)、脂肪酸および脂肪酸エステル、ステロイド、例えばコレステロール、ならびにキレート剤、例えばEDTA、亜鉛および他のこのような好適なカチオンが含まれる。
【0080】
さらに、本開示の組成物は、任意選択的に1つまたは複数の酸または塩基を含んでもよい。使用することができる酸の非限定的な例としては、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびこれらの組合せからなる群から選択される酸が挙げられる。好適な塩基の非限定的な例としては、限定されないが、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウムおよびこれらの組合せからなる群から選択される塩基が挙げられる。
【0081】
組成物中の任意の個々の賦形剤の量は、賦形剤の役割、活性剤構成成分の投与量要件、および組成物の特定の必要性に応じて変化する。典型的には、任意の個々の賦形剤の最適量は、日常的な実験によって、すなわち、様々な量の賦形剤(低~高の範囲)を含有する組成物を調製し、安定性および他のパラメータを調べ、次いで、重大な有害作用なしに最適な性能が達成される範囲を決定することによって決定される。
【0082】
しかしながら、一般に、賦形剤は、賦形剤の約1重量%~約99重量%、好ましくは約5重量%~約98重量%、より好ましくは約15~約95重量%の量で組成物中に存在する。一般に、本開示のイブジラスト組成物中に存在する賦形剤の量は、少なくとも約2重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、またはさらには95重量%から選択される。
【0083】
これらの前述の医薬賦形剤は、他の賦形剤と共に、「Remington:The Science&Practice of Pharmacy」,19th ed.,Williams&Williams,(1995),the 「Physician’s Desk Reference」,52.sup.nd ed.,Medical Economics,Montvale,N.J.(1998),and Kibbe,A.H.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3.sup.rd Edition,American Pharmaceutical Association,Washington,D.C.,2000に記載されている。
【0084】
持続送達製剤
好ましくは、組成物は、安定性を改善し、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の半減期を延長するために製剤化される。例えば、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、制御放出製剤または持続放出製剤で送達され得る。制御放出製剤または持続放出製剤は、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩を担体またはビヒクル、例えばリポソーム、非再吸収性の不透過性ポリマー、例えばエチレンビニルアセテートコポリマーおよびHytrel(登録商標)コポリマー、膨潤性ポリマー、例えばヒドロゲル、または再吸収性ポリマー、例えばコラーゲンおよびある特定のポリ酸またはポリエステル、例えば再吸収性縫合糸を作製するために使用されるものに組み込むことによって調製される。さらに、イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、粒子状担体にカプセル化され得るか、吸着され得るか、または会合され得る。粒子状担体の例としては、ポリメチルメタクリレートポリマーから誘導されるもの、ならびにPLGとして知られるポリ(ラクチド)およびポリ(ラクチド-コ-グリコリド)から誘導される微粒子が挙げられる。例えば、Jeffery et al.,Pharm.Res.(1993)10:362-368;and McGee et al.,J.Microencap.(1996)を参照されたい。
【0085】
この目的に好適な持続放出ポリマーは当技術分野で公知であり、セルロースエーテルなどの疎水性ポリマーを含む。好適なセルロースエーテルの非限定的な例としては、エチルセルロース、酢酸セルロースなど;ポリビニルエステル、例えばポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、メタクリルおよびアクリレートポリマー(pH非依存型);高分子量ポリビニルアルコールおよびワックス、例えば脂肪酸およびグリセリド、メタクリル酸エステル中性ポリマー、ポリビニルアルコール-無水マレイン酸コポリマーなど;エチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー;アミノアルキルメタクリレートコポリマー;およびこれらの混合物が挙げられる。
【0086】
送達形態
本明細書に記載のイブジラストまたはその薬学的に許容される塩の組成物は、すべてのタイプの製剤、特に、全身投与または髄腔内投与に適した製剤を包含する。経口剤形としては、錠剤、ロゼンジ剤、カプセル剤、シロップ剤、経口懸濁剤、乳剤、顆粒剤およびペレット剤が挙げられる。一部の実施形態では、経口剤形は錠剤である。一部の実施形態では、錠剤は持続放出錠剤である。一部の実施形態では、経口剤形はカプセル剤である。一部の実施形態では、カプセル剤は持続放出錠剤である。
【0087】
代替的な製剤には、エアロゾル剤、経皮パッチ、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、坐剤、再構成することができる散剤または凍結乾燥剤、ならびに液剤が含まれる。例えば注射前に固体組成物を再構成するのに好適な希釈剤の例としては、注射用静菌水、水中5%のデキストロース、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水、およびこれらの組合せが挙げられる。液体医薬組成物に関して、溶液剤および懸濁剤が想定される。好ましくは、本開示のイブジラストまたはその薬学的に許容される塩の組成物は、経口投与に適したものである。
【0088】
ここで経口送達製剤に転じると、錠剤は、任意選択的に1つまたは複数の補助成分または添加剤と共に、圧縮または成形によって作製することができる。圧縮錠剤は、例えば、結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)および/または界面活性剤もしくは分散剤と任意選択的に混合された散剤または顆粒剤などの自由流動形態の活性成分を、好適な打錠機で圧縮することによって調製される。
【0089】
成形錠剤は、例えば、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を好適な打錠機で成形することによって作製される。錠剤は、任意選択的にコーティングされるかまたは刻み目が付けられてもよく、例えば、所望の放出プロファイルを提供するために様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用して、活性成分の徐放または制御放出をもたらすように製剤化されてもよい。錠剤は、胃以外の腸の部分に放出されるように、薄膜、糖コーティング、または腸溶性コーティングなどのコーティングを任意選択的に備えていてもよい。錠剤およびカプセル剤の製造のためのプロセス、機器、および委託製造業者は、当技術分野で周知である。
【0090】
口中での局所投与のための製剤には、一般にスクロースおよびアカシアまたはトラガカントなどの風味付けされた基剤中に活性成分を含むロゼンジ剤、ならびにゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤中に活性成分を含むトローチ剤が含まれる。
【0091】
局所投与のための医薬組成物はまた、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、散剤、溶液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアロゾル剤または油剤として製剤化され得る。
【0092】
あるいは、製剤は、活性成分および任意選択的に1つまたは複数の賦形剤または希釈剤を含浸させたパッチ(例えば、経皮パッチ)または包帯もしくは絆創膏などの手当て用品の形態であり得る。局所製剤は、いくつか例を挙げると、ジメチルスルホキシドムビサボロール(dimethylsulfoxidem bisabolol)、オレイン酸、ミリスチン酸イソプロピルおよびD-リモネンなどの、皮膚または他の患部を通る成分の吸収または浸透を増強する化合物をさらに含み得る。
【0093】
エマルジョンでは、油性相は既知の成分から既知の方法で構成される。この相は、単に乳化剤(乳化剤(emulgent)としても知られる)を含んでもよいが、望ましくは、少なくとも1つの乳化剤と脂肪および/または油との混合物を含む。好ましくは、親水性乳化剤は、安定剤として作用する親油性乳化剤と一緒に含まれる。合わせて、安定剤を含むまたは含まない乳化剤は、いわゆる乳化ワックスを構成し、ワックスは、油および/または脂肪と共に、クリーム製剤の油性分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤を構成する。例示的な乳化剤および乳剤安定剤としては、Tween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリルおよびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0094】
直腸投与のための製剤は、典型的には、例えばカカオバターまたはサリチレートを含む好適な基剤を含む坐剤の形態である。
【0095】
膣投与に好適な製剤は、一般に、坐剤、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤またはスプレー剤の形態をとる。
【0096】
担体が固体である経鼻投与に好適な製剤は、例えば約20~約500ミクロンの範囲の粒径を有する粗粉末を含む。このような製剤は、典型的には、例えば、鼻に近接して保持された粉末の容器から、鼻腔通路を介した迅速な吸入によって投与される。あるいは、経鼻送達のための製剤は、液体、例えば、鼻腔スプレーまたは点鼻薬の形態であり得る。
【0097】
吸入用のエアロゾル化可能な製剤は、乾燥粉末形態(例えば、乾燥粉末吸入器による投与に好適な)であってもよく、あるいは、例えばネブライザーで使用するための液体形態であってもよい。エアロゾル化溶液を送達するためのネブライザーには、AERx(登録商標)(Aradigm)、Ultravent(登録商標)(Mallinkrodt)、およびAcorn II(登録商標)(Marquest Medical Products)が含まれる。本開示の組成物はまた、薬学的に不活性な液体噴射剤、例えばクロロフルオロカーボンまたはフルオロカーボン中に本明細書に記載されている薬物の組合せの溶液または懸濁液を含有する加圧定量吸入器(MDI)、例えばベントリン(登録商標)定量吸入器を使用して送達され得る。
【0098】
非経口投与に好適な製剤には、注射に好適な水性および非水性の等張滅菌溶液剤、ならびに水性および非水性の滅菌懸濁剤が含まれる。
【0099】
本開示の非経口製剤は、単位用量または複数用量の密封容器、例えばアンプルおよびバイアルに任意選択的に含有され、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得る。即時注射溶液剤および懸濁剤は、前述のタイプの滅菌散剤、顆粒剤、および錠剤から調製することができる。
【0100】
本開示の製剤はまた、非持続放出製剤と比較した場合に、各薬物構成成分が経時的にゆっくり放出または吸収されるような持続放出製剤であり得る。持続放出製剤は、活性剤のプロドラッグ形態、遅延放出薬物送達系、例えばリポソームもしくはポリマーマトリックス、ヒドロゲル、またはポリマー、例えばポリエチレングリコールの活性剤への共有結合を用い得る。
【0101】
上記で特に言及された成分に加えて、本開示の製剤は、医薬分野で従来の他の薬剤、および例えば経口投与形態のために用いられる特定の種類の製剤を任意選択的に含んでもよく、経口投与のための組成物は、甘味料、増粘剤または香味剤として追加の薬剤を含んでもよい。
【0102】
キット
本開示の少なくとも1つの組合せを含有し、使用説明書を伴うキットも本明細書で提供される。
【0103】
例えば、各薬物自体が個別のまたは別個の剤形として投与される事例では、キットは、使用説明書と共に、本開示の組合せを構成する免疫チェックポイント阻害剤に加えてイブジラストを含む。薬物構成成分は、包装が、投与のための説明書と一緒に考慮される場合に、各薬物構成成分が投与されるべき様式を明確に示す限り、投与に好適な任意の様式で包装され得る。
【0104】
例えば、イブジラストおよび免疫チェックポイント阻害剤を含む例示的なキットでは、キットは、任意の適切な期間、例えば1日ごとに編成され得る。一例として、1日目には、代表的なキットは、イブジラストおよび免疫チェックポイント阻害剤のそれぞれの単位投与量を含み得る。各薬物を1日2回投与する場合、1日目に対応して、イブジラストおよび免疫チェックポイント阻害剤のそれぞれの2列の単位剤形を、投与タイミングについての説明書と共にキットに含有させてもよい。あるいは、1つまたは複数の薬物が、組合せの他の薬物メンバーと比較して投与される単位剤形のタイミングまたは量が異なる場合、このようなことが包装および説明書に反映されるであろう。上記による様々な実施形態を容易に想定することができ、これらはもちろん、治療のために用いられるイブジラストに加えて、薬物の特定の組合せ、それらの対応する剤形、推奨される投与量、意図される患者集団などに依存するであろう。包装は、医薬品の包装に一般的に用いられる任意の形態であってもよく、異なる色、ラッピング、不正開封防止包装、ブリスターパック、乾燥剤などのいくつかの特徴のいずれかを利用してもよい。
【0105】
動物モデル
イブジラストと免疫チェックポイント阻害剤との組合せが膠芽腫を治療する能力は、当技術分野で公知の標準的な膠芽腫モデルのいずれかによって評価され得る。このようなモデルの例は、Animal Models of Neurological Disease:Neurodegenerative Diseases(Neuromethods)by Alan A.Boulton,Glen B.Baker,and Roger F.Butterworth(1992);Handbook of Laboratory Animal Science,Second Edition:Volumes I-III(Handbook of Laboratory Animal Science)by Jann Hau(Editor),Jr.,Gerald L.Van Hoosier(Editor).(2004);Animal Models of Movement Disorders by Mark LeDoux(Editor),(2005);およびAnimal Models of Cognitive Impairment(Frontiers in Neuroscience)(2006)by Edward D.Levin(Editor),Jerry J.Buccafusco(Editor)に記載されている。
【0106】
本開示は好ましい具体的な実施形態と併せて説明されているが、前述の説明および以下の例は、本開示の範囲を限定するものではなく例示することを意図していることを理解されたい。本開示の範囲内の他の態様、利点および修正は、本開示が関係する当業者には明らかであろう。
【0107】
任意の特許、公開された特許出願、書籍、ハンドブック、雑誌出版物、またはFDA Orange Bookを含む、本出願で言及されたすべての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0108】
以下の実施例は、本開示の様々な実施形態を例示する目的で与えられており、決して本開示を限定することを意味するものではない。当業者は、本開示が目的を実行し、言及された目標および利点、ならびに本明細書に固有の目的、目標および利点を得るようによく適合されていることを容易に理解するであろう。本実施例は、本明細書に記載の方法と共に、現在実施形態を代表するものであり、例示的なものであり、本開示の範囲に対する限定として意図されるものではない。特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨の範囲内に包含されるその中の変更および他の使用が当業者に想起されるであろう。
【実施例】
【0109】
実施例1:マウスGBMモデル
GBM同所性腫瘍を有するマウスを、イブジラストの存在下または非存在下で(またはイブジラスト単独で)PD-1抗体による処置に供し、処置開始後の生存について評価した。より詳細には、イブジラスト処置(50mg/kg)を、抗PD1(25μg/用量)と相乗作用させた同系マウスモデル(2万個のSB28細胞)において行った。生着後7日目に処置を開始し、3日間隔で3回の腹腔内注射を行った。n=10匹のマウス/群(雄)。
【0110】
抗PD-1抗体単独による処置は、対照ビヒクルまたは非特異的抗体処置と比較して、このモデルにおいて生存期間中央値を17~28日に延長した。しかしながら、イブジラストを抗PD1抗体処置に加えると、生存期間がさらに延長され、生存期間の中央値が66日になった(
図1)。イブジラスト処置単独は生存期間中央値に影響を及ぼさなかった。
【0111】
実施例2:ヒト臨床試験
この研究は、再発性膠芽腫における非盲検外科的「治療機会」および新たに診断された膠芽腫における第1b相研究である。
【0112】
パート1
パート1では、再発性膠芽腫の6名の患者に対して安全性ランインを実施して、経口的にイブジラスト100mgを毎日、および静脈内にペンブロリズマブ200mgを3週間ごとの組合せの毒性および忍容性を評価する。毎日60mgの初期イブジラスト用量が忍容されない場合、毎日40mgおよび毎日30mgのより低用量を調べることになる。
【0113】
併用が忍容される場合、腫瘍免疫応答に対する併用の効果を評価するために外科的治療機会試験が実施される。再手術を必要とする再発性膠芽腫を有する40名の評価可能な患者を無作為化して、手術の2~3週間前に、グループ1:イブジラスト単独(毎日100mg)(10名の患者);第2群:ペンブロリズマブ単独200mgを静脈内に(10名の患者);第3群:イブジラスト(毎日100mg)とペンブロリズマブ(200mg)との組合せ(10名の患者);または第4群:治療なし(対照)(10名の患者)に無作為化する。手術時に、免疫応答の分析のために腫瘍を除去する。
【0114】
腫瘍組織は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)密度およびT細胞受容体(TCR)レパートリーを定量するために次世代シーケンシングを使用し、免疫組織化学によって分析される。全身性免疫細胞サブセット、MDSCの免疫表現型検査、および可溶性免疫サイトカインの測定のために進行するまで、ベースライン時、手術時、および術後期間中の各予定されたフォローアップ訪問時に血液を採取する。
【0115】
手術からの回復後、すべての患者は、腫瘍の進行、許容できない副作用の発生、または最大で2年まで、イブジラスト100mgを毎日経口的に、ペンブロリズマブ200mgを3週間ごと受容する。
【0116】
患者は6週間ごとにMRIを受ける。RANO18および修正RANO19基準を使用することになる。
【0117】
最終的に、この組合せの有効性は、免疫系が再発性疾患の時点よりも頑強であり得る場合に、減量手術後に新たに診断された膠芽腫患者において、および標準的な放射線化学療法と組み合わせてより大きくなり得る。この組合せの安全性および忍容性を、パート2で新たに診断された膠芽腫において調べることになる。
【0118】
パート2
パート2では、イブジラストおよびペンブロリズマブと標準的な放射線化学療法との組合せの安全性および有効性ならびに推奨される第II相用量が、新たに診断された膠芽腫を有する患者において決定される。
【0119】
適格患者は、テモゾロミド(75mg/m2を42日間)を併用して6週間の放射線療法(60Gy)、その後4週間の休薬、およびテモゾロミドを150~200mg/m2/日×5で28日ごとに6サイクル受ける。イブジラスト60mg/日を経口投与し、ペンブロリズマブ200mgを3週間ごとに静脈内投与し、放射線化学療法を開始して、疾患の進行、許容できない毒性の発生まで、または最長2年間続ける。3+3の設計が使用される。用量制限毒性(DLT)を治療の最初の10週間の間に決定する。イブジラスト60mgで毎日、0/3または1/6のDLTがある場合、イブジラスト用量は、次の3~6名の患者について毎日100mgに増加されるであろう。この増加した用量が忍容される場合、忍容性を確認するために、この用量でさらに18人の患者が登録される。毎日60mgの初期イブジラスト用量が忍容されない場合、毎日40mgおよび毎日30mgのより低用量を調べることになる。
【0120】
実施形態1.膠芽腫の治療を必要とする患者において膠芽腫を治療する方法であって、治療有効量のイブジラストまたはその薬学的に許容される塩および治療有効量の免疫チェックポイント阻害剤を患者に投与することを含む、方法。
【0121】
実施形態2.免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1剤、抗PD-L1剤、または抗CTLA-4剤である、実施形態1に記載の方法。
【0122】
実施形態3.免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1剤である、実施形態2に記載の方法。
【0123】
実施形態4.抗PD-1剤が、抗PD-1抗体である、実施形態2または実施形態3に記載の方法。
【0124】
実施形態5.抗PD-1剤が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カンレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、AMP-514、AMP-224、JTX-4014、ドスタルリマブ、レチファンリマブ、およびAUNP-12からなる群から選択される、実施形態2または実施形態3に記載の方法。
【0125】
実施形態6.免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-L1剤である、実施形態2に記載の方法。
【0126】
実施形態7.抗PD-L1剤が、抗PD-L1抗体である、実施形態2または実施形態6に記載の方法。
【0127】
実施形態8.抗PD-L1剤が、アテゾリズマブ、アベルマブ、エンバフォリマブ、デュルバルマブ、コシベリマブ、CA-170およびBMS-986189からなる群から選択される、実施形態2または実施形態6に記載の方法。
【0128】
実施形態9.免疫チェックポイント阻害剤が、抗CTLA-4剤である、実施形態2に記載の方法。
【0129】
実施形態10.抗CTLA-4剤が、抗CTLA-4抗体である、実施形態2または実施形態9に記載の方法。
【0130】
実施形態11.抗CTLA-4剤が、イピリムマブおよびトレメリムマブからなる群から選択される、実施形態2、9または10のいずれか1つに記載の方法。
【0131】
実施形態12.イブジラストまたはその薬学的に許容される塩が、少なくとも3ヶ月間投与される、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
実施形態13.イブジラストまたはその薬学的に許容される塩は、少なくとも6ヶ月間投与される、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0133】
実施形態14.イブジラストまたはその薬学的に許容される塩が、少なくとも1年間間投与される、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0134】
実施形態15.イブジラストまたはその薬学的に許容される塩が、少なくとも2年間投与される、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0135】
実施形態16.イブジラストまたはその薬学的に許容される塩が、1日に少なくとも1回投与される、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
実施形態17.イブジラストまたはその薬学的に許容される塩が、経口投与される、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0137】
実施形態18.イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量が、少なくとも30mg/日である、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0138】
実施形態19.イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量が、1日当たり0.1mg~720mgである、実施形態1から17のいずれか1つに記載の方法。
【0139】
実施形態20.イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量が、1日当たり30mg~200mgである、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0140】
実施形態21.イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量が、毎日30mg~720mgである、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0141】
実施形態22.イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量が、毎日60mg~600mgである、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0142】
実施形態23.イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量が、毎日100mg~480mgである、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0143】
実施形態24.イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量が、30mg/日、40mg/日、50mg/日、60mg/日、90mg/日、100mg/日、110mg/日、120mg/日、150mg/日、180mg/日、190mg/日、200mg/日、210mg/日、240mg/日、270mg/日、300mg/日、360mg/日、400mg/日、440mg/日、480mg/日、520mg/日、580mg/日、600mg/日、620mg/日、640mg/日、680mg/日および720mg/日からなる群から選択される、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0144】
実施形態25.イブジラストまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量が、単回用量として投与されるか、または2、3、もしくは4回の用量に分割される、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
実施形態26.イブジラストまたはその薬学的に許容される塩および免疫チェックポイント阻害剤がいずれも連続的に投与される、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
実施形態27.イブジラストまたはその薬学的に許容される塩が連続的に投与され、免疫チェックポイント阻害剤が周期的に投与される、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
均等物
本開示はある特定の実施形態および任意選択の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書の開示で具体化された本開示の修正、改善、および変形が当業者によって行われてもよく、このような修正、改善、および変形は本開示の範囲内にあると考えられることを理解されたい。本明細書で提供される材料、方法、および例は、ある特定の実施形態を代表するものであり、例示的なものであり、本開示の範囲に対する限定として意図されるものではない。
【0148】
本開示は、本明細書において広く一般的に説明されている。一般的な開示に含まれるより狭い種および亜属の群のそれぞれも、本開示の一部を形成する。これは、切除された材料が本明細書に具体的に記載されているか否かにかかわらず、属から任意の主題を除去するという条件または否定的限定を伴う本開示の一般的な説明を含む。
【0149】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュ群に関して記載されている場合、当業者は、本開示がそれによってマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関しても記載されていることを認識するであろう。
【0150】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すように明示的に示されない限り、または代替物が相互に排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみおよび「および/または」を指す定義を支持する。
【0151】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
【国際調査報告】