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特表2024-535881神経細胞、星状細胞、及び乏突起膠細胞のin vitro細胞共培養物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】神経細胞、星状細胞、及び乏突起膠細胞のin vitro細胞共培養物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240925BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240925BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240925BHJP
   C12N 5/0793 20100101ALI20240925BHJP
【FI】
C12N5/10
C12M1/34 B
C12Q1/02
C12N5/0793
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517410
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2022076103
(87)【国際公開番号】W WO2023041802
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】21197737.6
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512320560
【氏名又は名称】カトリック ユニヴェルシテット ルーヴェン
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 彩夏
(74)【代理人】
【識別番号】100231647
【弁理士】
【氏名又は名称】千種 美也子
(72)【発明者】
【氏名】アフジャ,カラン
(72)【発明者】
【氏名】フルタド マデイロ ダ コスタ,ロドリゴ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルファイリー,キャセリーヌ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA21
4B029BB11
4B029CC02
4B029FA12
4B029FA15
4B029GB03
4B029GB09
4B029HA05
4B063QA01
4B063QA05
4B063QQ08
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4B063QS36
4B063QX04
4B065AA90X
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4B065BC41
4B065BD50
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
本発明は、iPSC由来の神経細胞(任意に、NGN2導入遺伝子を有する)、iPSC由来の星状細胞(SOX9導入遺伝子を有する)、及びiPSC由来の乏突起膠細胞(SOX10導入遺伝子を有する)を含むin vitro細胞培養に関する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
in vitro細胞培養物であって、
任意にNGN2導入遺伝子を有する、iPSC由来の神経細胞と、
SOX9導入遺伝子を有する、iPSC由来の星状細胞と、
SOX10導入遺伝子を有するiPSC由来の乏突起膠細胞と、
を含む、in vitro細胞培養物。
【請求項2】
NGN2導入遺伝子を有するiPSC由来の神経細胞を含む、請求項1に記載のin vitro細胞培養物。
【請求項3】
前記神経細胞が、NESTIN、TUJ1、TBR2、CTIP2、NGN2及びMAP2のうちの1つ以上を発現する、請求項1又は2に記載のinvitro細胞培養物。
【請求項4】
前記神経細胞が、NESTIN、TUJ1、TBR2、CTIP2、NGN2及びMAP2のうちの1つ以上を発現する、請求項1~3のいずれか一項に記載のinvitro細胞培養物。
【請求項5】
前記神経細胞が、OCT4、NESTIN、TUJ1、TBR2、CTIP2、GABA、グルタミン酸、AcH、NGN2及びMAP2のうちの1つ以上を発現する、請求項1~4のいずれか一項に記載のin vitro細胞培養物。
【請求項6】
前記星状細胞が、SOX9、S100β、ALDH1L1、EAAT1、ALDH1L1及びGFAPのうちの1つ以上を発現する、請求項1に記載のinvitro細胞培養物。
【請求項7】
前記星状細胞が、OCT4、NESTIN、SOX9、S100β、ALDH1L1、EAAT1、ALDH1L1及びGFAPのうちの1つ以上を発現する、請求項1又は6に記載のin vitro細胞培養物。
【請求項8】
前記乏突起膠細胞が、MBP、OLIG1、OLIG2、NKX2.2、SOX10、O4及びMBPのうちの1つ以上を発現する、請求項1に記載のinvitro細胞培養物。
【請求項9】
前記乏突起膠細胞が、MBP、OLIG1、OLIG2、NKX2.2、SOX10、O4、PLP4及びMBPのうちの1つ以上を発現する、請求項1又は8に記載のinvitro細胞培養物。
【請求項10】
前記乏突起膠細胞が、OCT4、NESTIN、MBP、OLIG1、OLIG2、NKX2.2、SOX10、O4及びMBPのうちの1つ以上を発現する、請求項1、8又は9に記載のin vitro細胞培養物。
【請求項11】
CTIP2及びSATB2を発現する、請求項1~10のいずれか一項に記載のin vitro細胞培養物。
【請求項12】
ニューロン活動を示す、請求項1~11のいずれか一項に記載のin vitro細胞培養物。
【請求項13】
3次元細胞培養物である、請求項1~12のいずれか一項に記載のin vitro細胞培養物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のin vitro培養物を含む、多電極アレイ(MEA)システム。
【請求項15】
薬学的化合物の試験における、請求項1~13のいずれか一項に記載のin vitro細胞培養、又は請求項14に記載のMEAシステムの使用。
【請求項16】
iPSC由来神経細胞、iPSC由来星状細胞及びiPSC由来乏突起膠細胞のin vitro培養物を調製する方法であって、
a)任意に、誘導可能なNGN2導入遺伝子でトランスフェクションしたiPSCを神経細胞に誘導する工程と、
b)誘導可能なSOX9導入遺伝子でトランスフェクトしたiPSCを星状細胞に誘導する工程、
c)誘導可能なSOX10導入遺伝子でトランスフェクトしたiPSCを乏突起膠細胞に誘導する工程、
d)31日間~45日間にわたり前記神経細胞を培養する工程、
e)20日間~46日間にわたり前記星状細胞を培養する工程、
f)17日間~31日間にわたり前記乏突起膠細胞を培養する工程、
g)工程d、工程e、及び工程fでそれぞれ得られた前記神経細胞、前記星状細胞及び前記乏突起膠細胞を合わせ、更に、前記合わせた細胞を少なくとも2週間及び最大5週間培養する工程、
を含む、in vitro培養物を調製する方法。
【請求項17】
前記合わせた細胞を、三次元細胞培養物として成長させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1週間後に工程g)の前記合わせた培養物において、TUJ1、S100ベータ、MBP及びO4の発現を検出する工程を更に含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
工程g)において、全ての神経細胞、星状細胞及び乏突起膠細胞を同時に合わせる、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
工程g)において、神経細胞と乏突起膠細胞を同時に合わせ、5日後~8日後に星状細胞を添加する、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
工程g)において、5000個~15000個の神経細胞、5000個~15000個の乏突起膠細胞、及び1500個~7500個の星状細胞を合わせる、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
工程g)において培養された合わせた細胞をCTIP2及びSATB2の発現についてアッセイする、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
工程g)において培養された合わせた細胞を、多電極アレイを用いてニューロンネットワークの電気的活動を測定することにより、神経細胞の活動について試験する、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳細胞の共培養物に関する。
【背景技術】
【0002】
神経疾患の進行を理解し、利用可能な動物ベースのモデルシステム及び死後の脳組織を使用して新薬の役割を調査することは、神経科学者にとって依然として大きな課題である。幹細胞生物学とゲノム工学との組み合わせは、程度の差はあれ複雑な環境での神経発達及び疾患の病因を理解するためのツールを科学者に提供することで、疾患モデリングの分野に革命をもたらした。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、複雑な環境での細胞の分化及び共成熟を研究するために、ヒト人工多能性幹細胞由来のニューロン及びグリア細胞からなる2次元又は3次元の三種培養系を開示する。ニューロン(皮質ニューロン及び誘導性ニューロン)及びグリア細胞(星状細胞及び乏突起膠細胞)を分化させ、それらの単独培養を特徴付け、培地組成、細胞型の比、細胞密度、及び細胞播種戦略のようなパラメータを最適化するために、成長因子ベース及び転写因子過剰発現ベースのプロトコルを使用した。確立されたヒト三種培養系は、単独培養のものと比較して、ニューロン、星状細胞、及び乏突起膠細胞の異なる細胞形態を持つ複雑な細胞配置を示す。本発明は更に、ニューロン単独培養系と比較して、三種培養系における深層ニューロンマーカーの発現、並びにニューロン活動(例えば、ニューロンスパイク及びニューロンバースト)に関して、効率的なニューロン成熟を実証する。本発明は、疾患モデリング、神経科学における創薬のための全ヒトiPSC由来神経モデルを提供し、生物医学研究における動物ベースのモデルの必要性を低減する。
【0004】
星状細胞及び乏突起膠細胞等のグリア細胞は、ニューロンの保護及びサポートを提供するというよく知られた特徴に加えて、脳の発達だけでなく、脳の恒常性及び幾つかの神経障害の疾患進行にも重要な役割を果たしている。したがって、ニューロンとグリアの相互作用を再現するin vitroモデルにより、これらの細胞間のクロストークを理解し、神経障害におけるそれらの役割についてより多くの洞察を得ることができる。ゲノム工学とiPSC技術の融合を用いて、より優れたin vitroモデルを開発することができる。成長因子媒介の運命特定化に基づく分化プロトコルは、成熟したニューロンとグリア細胞を生成したが、それらは時間がかかり、子孫細胞の純度が低くなる[Shiet al. Nat. Protoc. 7, 1836-1846(2012)]。転写因子に基づく細胞分化の最近の改善により、ニューロンとグリア細胞の産生が加速する可能性がある。例えば、SOX9、SOX10、及びNGN2転写因子の過剰発現は、それぞれ機能的な星状細胞、乏突起膠細胞、及びニューロンを生成することが示された[Neyrincket al. Stem Cell Rev. Reports 1-19 (2021)、上記で引用されるGarcia-Leon et al. (2020)]。
【0005】
本発明では、成長因子ベースの分化法及び転写因子ベースの分化法の組み合わせを使用して、ニューロン、星状細胞、及び乏突起膠細胞を生成し、共培養条件は、ヒトのニューロン、星状細胞、及び乏突起膠細胞の三種培養系を作製するように最適化されている。
【0006】
本発明は、特異的転写因子の過剰発現及び/又は低分子ベースの分化プロトコルを用いて、iPSC由来のニューロン、星状細胞、及び乏突起膠細胞を生成し、特徴付ける。
【0007】
誘導転写因子を持つiPSC株及びこれを持たないiPSC株を、ニューロン(皮質及び誘導性)、星状細胞、及び乏突起膠細胞を生成するために使用する。新たに分化した細胞を、RT-qPCR、フローサイトメトリー、及び免疫蛍光顕微鏡法によって特性評価した。
【0008】
本発明は、単独培養及び共培養におけるiPSC由来のニューロン、星状細胞及び乏突起膠細胞の生存率を維持する共培養培地を定義する。
【0009】
分化した細胞は、2つの異なる培地で1週間別々に増殖させる。分化した子孫の細胞生存率をRT-qPCR及び免疫蛍光顕微鏡法で評価し、両方の培地の効率を決定する。
【0010】
本発明は、播種密度及び戦略、細胞型比を試験することにより三種培養を開発し、選択された共培養培地組成物を用いて三種培養における細胞を追跡するために用いることができる抗体を同定する。
【0011】
選択された培地は、ニューロン、星状細胞、及び乏突起膠細胞を含む個々の細胞培養及び三種培養を確立するためのものである。
【0012】
本発明は、それぞれの成熟表現型に向けた細胞間相互作用及び細胞の共分化を特徴づける。
【0013】
ヒト三種培養系における細胞の成熟は、免疫蛍光顕微鏡法及び多電極アレイシステムを用いて評価される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】皮質ニューロンの分化及び成熟の概要を示す図である。A.ニューロン分化のプロトコルのタイムライン。神経誘導培地(NIM)、神経維持培地(NMM)、線維芽細胞増殖因子2(FGF)。B.異なる時点での細胞培養から撮影された明視野顕微鏡写真。左から右へ:-2日目=SIGi001-AiPSCコロニー、14日目=神経拡大期の神経ロゼット(白矢印)、27日目=神経前駆細胞。下のパネルにおいて、60日目、80日目、及び100日目の2D培養におけるiPSCの子孫の光学顕微鏡画像。
図2】誘導ニューロンの分化及び成熟の概要を示す図である。BIONi010-C+NGN2-I7-26 iPSC株(iNGN2細胞株)の誘導ニューロン分化プロトコルのタイムライン。神経基礎培地(NBM)、神経維持培地(NMM)。B.異なる時点で培養から撮影した明視野顕微鏡写真。左から右へ:-2日目=BIONi010-C+NGN2-I7-26iPSC、4日目及び6日目=ドキシサイクリン誘導性iNGN2発現、18日目=神経前駆細胞;34日目及び41日目=ニューロンの成熟。
図3】iSOX9-iPSCの星状細胞の分化及び成熟の概要を示す図である。A.星状細胞の分化プロトコルのタイムライン。神経誘導培地(NIM)。B.異なる時点で培養から撮影した明視野顕微鏡写真。左から右へ:-1日目=iSOX9iPSC、0~12日目=神経誘導期、21日目=未熟な星状細胞;27日目及び38日目=培養中の星状細胞の成熟。
図4】iSOX10iPSCからの乏突起膠細胞の分化及び成熟の概要を示す図である。A.乏突起膠細胞の分化プロトコルのタイムライン。B.異なる時点で培養物から撮影した明視野顕微鏡写真。左から右へ:-2日目=iSOX10iPSC、0日目=神経誘導期開始、21日目=OPC(白矢印)
図5】A.3細胞集団全ての同時播種のプロトコルである。B.2つの時点でのニューロン、星状細胞、及び乏突起膠細胞の逐次播種のプロトコルである。
図6】SIGi001-A iPSC及びBIONi010-C iNGN2 iPSCからのニューロン子孫の特性評価を示す図である。SIGi001-A iPSCを、二重SMAD阻害を用いて皮質ニューロン(パネルA~パネルE)に分化させ、神経維持培地中で100日目まで維持した。BIONi010-CiNGN2 iPSC(パネルF~パネルJ)を、0日目から6日目までドキシサイクリンを添加したNGN2転写因子の過剰発現によって分化した。その後、細胞を6週目まで神経維持培地及び神経基礎培地で維持した。指定の日に細胞をqRT-PCRで解析し、皮質ニューロン前駆体細胞については40日目及び60日目に、iNGN2神経前駆細胞については21日目に蛍光免疫顕微鏡検査を行った。(A):-2日目のiPSC及び分化開始から20日目、30日目、60日目、80日目及び100日目のニューロン分化子孫のqRT-PCR解析、並びにハウスキーピング遺伝子GAPDHと比較した転写レベル(データをデルタCTとして示す)。3つの技術的複製を伴うN=2の生物学的複製。データを平均±SDとして示す。一元配置分散分析、ボンフェローニ補正による多重比較*:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001。(B~C)40日目のSIGi001-A NPCをTUJ1及びMAP2に対する抗体で染色した。(D~E)60日目の神経前駆細胞をTUJ1及びCTIP2、並びに核を同定するためのヘキストで染色した。スケールバー:100μM。分化ごとに及び2つの生物学的複製で撮影された、3つのウェルについてそれぞれ33枚の画像の代表的な画像。
図6-1】(F)-1日目のBIONi010-C iNGN2iPSC、並びに分化開始7日目及び6週間後のニューロン分化子孫のRT-qPCR解析、並びにハウスキーピング遺伝子GAPDHと比較した転写レベル(データをデルタCTとして示す)。N=2の生物学的複製及び3つの技術的複製。データを平均±SDとして示す。一元配置分散分析、ボンフェローニ補正による多重比較:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001。(G~J)21日目のBIONi010-C iNGN2ニューロン子孫を、TUJ1、MAP2、NESTIN及びSOX2に対する抗体、並びに核を同定するためのヘキストで染色した。スケールバー:100μM。分化ごとに及び2つの生物学的複製で撮影された、3つのウェルについてそれぞれ33枚の画像の代表的な画像。
図7】iSOX9及びiSOX10iPSCからの星状細胞子孫及びOPCの特性評価を示す図である。iSOX9 iPSCを、11日目から18日目までドキシサイクリン添加によるSOX9転写因子の過剰発現により星状細胞(パネルA~パネルE)に分化させ、星状細胞成熟培地中で27日目まで維持した。iSOX10iPSC(パネルF~パネルI)を、そこに14日目から24日目までドキシサイクリンを添加し、SOX10転写因子の過剰発現によって分化させて、乏突起膠細胞成熟培地中で40日目まで維持した。指定の日に細胞をRT-qPCRで分析し、iSOX9星状細胞の子孫については31日目に、iSOX10OPCについては25日目に蛍光免疫顕微鏡検査を行った。(A):-2日目のiSOX9 iPSC、並びに分化開始後18日目及び27日目の星状細胞の分化子孫のRT-qPCR解析、並びにハウスキーピング遺伝子GAPDHと比較した転写レベル(データをデルタCTとして示す)。3つの技術的複製を伴うN=2の生物学的複製。データを平均±SDとして示す。一元配置分散分析、ボンフェローニ補正による多重比較:*:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001。(B~E)27日目のiSOX9星状細胞子孫を、S100β、EAAT1、ALDH1L1、及びGFAPに対する抗体、並びに核を同定するためのヘキストで染色した。スケールバー:100μM。分化ごとに及び2つの生物学的複製で撮影された、3つのウェルについてそれぞれ33枚の画像の代表的な画像。
図7-1】(F)-1日目のiSOX10 iPSC、並びに分化開始後12日目及び24日目の乏突起膠細胞分化した子孫のRT-qPCR解析、並びにハウスキーピング遺伝子GAPDHと比較した転写レベル(データをデルタCTとして示す)。N=2の生物学的複製及び3つの技術的複製。データを平均±SDとして示す。一元配置分散分析、ボンフェローニ補正による多重比較:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001。
図7-2】(G~H)31日目のiSOX10乏突起膠細胞子孫をO4及びMBPに対する抗体で染色し、ヘキストで核を同定した。スケールバー:100μM。分化ごとに及び2つの生物学的複製で撮影された、3つのウェルについてそれぞれ33枚の画像の代表的な画像。(I)24日目のiSOX10 OPCを染色するためのコンジュゲート化抗O4-APC抗体を用いたフローサイトメトリー解析、及び陰性対照としての未染色の24日目のiSOX10OPC。
図8】iPSC、iSOX9星状細胞子孫、及びiSOX10OPCからのニューロン子孫の生存を可能にするマスター培地組成の特性評価を示す図である。SIGi001-A、iSOX9、iSOX10 iPSC株を、二重SMAD阻害又は転写因子の過剰発現のいずれかを用いて、皮質ニューロン前駆細胞、iSOX9星状細胞子孫、iSOX10-OPCに分化させた。分化した38日目のSIGi001-ANPC、27日目のiSOX9星状細胞前駆細胞、及び24日目のiSOX10 OPCをM1培地及びM2培地で別々に1週間培養した。1週間後に指定される培地中でRT-qPCRにより細胞を解析し、45日目のSIGi001-ANPC、34日目のiSOX9星状細胞及び31日目のiSOX10乏突起膠細胞で蛍光顕微鏡検査を行った。(A)ニューロン分化子孫45日目、(B)iSOX10乏突起膠細胞子孫31日目、(C)iSOX9星状細胞子孫34日目のqRT-PCR解析;M1及びM2の2つの異なる培地におけるハウスキーピング遺伝子GAPDHと比較した転写レベル(データはデルタCTとして示される)。3つの技術的複製を伴うN=2の生物学的複製。データを平均±SDとして示す。一元配置分散分析、ボンフェローニ補正による多重比較:*:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001。
図8-1】(D~E)M1培地及びM2培地中において、45日目のiPSCニューロン子孫をTUJ1に対する抗体、及び核を同定するためのヘキストで染色した。(F)M1培地及びM2培地中のTUJ1+細胞の割合の定量。(G~H)M1培地及びM2培地中で31日目のiSOX10乏突起膠細胞子孫をMBP及びO4に対する抗体で染色し、核を同定するためのヘキストで染色した。(I)M1培地及びM2培地中のMBP+細胞の割合の定量。(J~K)M1培地及びM2培地中で34日目のiSOX9星状細胞子孫をS100βに対する抗体で染色し、核を同定するためのヘキストで染色した。(I)M1培地及びM2培地中のS100β+細胞の割合の定量。データを平均値±SDで示す。スケールバー:100μM。分化ごとに及び2つの生物学的複製で撮影された、3つのウェルについてそれぞれ33枚の画像の代表的な画像。
図9】異なる細胞密度及び培養期間での同時播種された三種培養系におけるSIGi001-ANPC、iSOX9星状細胞子孫、及びiSOX10 OPCの細胞形態の特性評価を示す図である。分化した38日目のSIGi001-A NPC、27日目又は37日目のiSOX9星状細胞前駆細胞、及び24日目のiSOX10-OPCを、異なる細胞密度で同じ細胞比でM1培地に同時播種した。明視野画像を毎週撮影し、細胞をM1培地で3週間共培養した。(A~D)(A)2500細胞/タイプ、(B)5000細胞/タイプ、(C)10000細胞/タイプ、(D)30000細胞/タイプの異なる細胞密度の1週間後の三種培養系の明視野画像を40倍の倍率で撮影。画像中の白い矢印は乏突起膠細胞に類似した細胞形態を示し、黒矢印はニューロンの形態を示し、灰色の矢印は星状細胞様の形態を持つ細胞を表す。(E~H)40倍及び20倍の倍率で播種から(E~F)2週間後及び(G~H)3週間後に撮影された、等比で10000細胞/タイプを含む三種培養系の明視野画像。N=2の生物学的複製及び3つの技術的複製。3ウェルについてそれぞれ33枚の画像の代表画像。
図10】SIGi001-ANPC、iSOX9星状細胞前駆細胞、iSOX10 OPCの同時播種によるヒト三種培養系の構築を示す図である。三種培養系は、3 μgのドキシサイクリンを含むM1培地において、分化した38日目のSIGi001-ANPC、27日目又は37日目のiSOX9-星状細胞前駆細胞、及び24日目のiSOX10-OPCを異なる細胞比で1週間同時播種することによって構築した。細胞を、1週間の共培養後に蛍光免疫顕微鏡法で解析した。(A)10000細胞/タイプを等比で、
図10-1】(B)5000細胞/タイプを等比で、(C)10000個のニューロン、5000個の乏突起膠細胞及び5000個の星状細胞。
図10-2】(D)10000個のニューロン、10000個の乏突起膠細胞及び5000個の星状細胞、(E)10000個のニューロン、5000個の乏突起膠細胞及び2500個の星状細胞としてプレーティングされた、38日目のSIGi001-ANPC、27日目又は37日目のiSOX9星状細胞の子孫及び24日目のiSOX10 OPCを、ニューロンについてはTUJ1、星状細胞についてはS100β、乏突起膠細胞についてはMBP及びO4、並びに核を同定するためにヘキストで染色した。黒丸は27日目のiSOX9星状細胞子孫との細胞の組み合わせを表し、黒丸は37日目のiSOX9星状細胞前駆体を示す。データを平均値で示す。スケールバー:100μM。N=2の生物学的複製及び3つの技術的複製。3ウェルについてそれぞれ33枚の画像の代表画像。
図11】iSOX10OPCを播種し、続いて7日目にSIGi001-A NPC及びiSOX9星状細胞前駆細胞を添加することによる、ヒト三種培養系の構築を示す図である。三種培養系を、最初に3μgのドキシサイクリンを含むM1培地に24日目のiSOX10 OPCを逐次播種し、続いて7日後に27日目又は37日目のiSOX9星状細胞前駆細胞と38日目のSIGi001-ANPCを異なる細胞比及び密度で添加することによって構築した。細胞を等比で異なる細胞密度で播種し、残りの細胞を添加した1日後に蛍光免疫顕微鏡法で解析した。(A~B)(A)10000細胞/タイプを等比で、(B)5000細胞/タイプを等比でプレーティングした、38日目の神経前駆細胞、27日目又は37日目のiSOX9星状細胞子孫、及び24日目のiSOX10乏突起膠細胞子孫を、8日目に、ニューロンについてはTUJ1、星状細胞についてはS100β、乏突起膠細胞についてはMBP及びO4、並びに核を同定するためのヘキストで染色した。黒丸は27日目のiSOX9星状細胞子孫との細胞の組み合わせを表し、黒丸は37日目のiSOX9星状細胞前駆体を示す。データを平均値で示す。スケールバー:100μM。N=2の生物学的複製及び3つの技術的複製。3ウェルについてそれぞれ33枚の画像の代表画像。
図12】iSOX10OPC及びSIGi001-A NPCを播種し、続いて7日目にiSOX9星状細胞前駆細胞を添加することによるヒト三種培養系の構築を示す図である。三種培養系を、最初に3μgのドキシサイクリンを含むM1培地に24日目のiSOX10OPC及び38日目のNPCに逐次播種し、続いて7日後に27日目又は37日目のiSOX9星状細胞前駆細胞を添加することによって構築した。異なる細胞密度及び比率で播種した細胞を、残りの細胞の添加1日後に蛍光免疫顕微鏡法で解析した。(A~E)(A)10000細胞/タイプを等比で。
図12-1】(B)5000細胞/タイプを等比で、(C)10000個のニューロン、10000個の星状細胞及び5000個の乏突起膠細胞。
図12-2】(D)10000個のニューロン、5000個の星状細胞及び5000個の乏突起膠細胞、(E)10000個のニューロン、5000個の乏突起膠細胞及び2500個の星状細胞としてプレーティングされた、38日目の神経前駆細胞、27日目又は37日目のiSOX9星状細胞子孫及び24日目のiSOX10乏突起膠細胞子孫を、ニューロンについてはTUJ1、星状細胞についてはS100β、乏突起膠細胞についてはMBP及びO4、並びに核を同定するためのヘキストで染色した。黒丸は27日目のiSOX9星状細胞子孫との細胞の組み合わせを表し、黒丸は37日目のiSOX9星状細胞前駆体を示す。データを平均値で示す。スケールバー:100μM。N=2の生物学的複製及び3つの技術的複製。3ウェルについてそれぞれ33枚の画像の代表画像。
図13】iSOX10OPC及びiSOX9の星状細胞前駆細胞を播種し、7日目にSIGi001-A NPCを添加することによるヒト三種培養系の構築を示す図である。三種培養系を、最初に3μgのドキシサイクリンを含むM1培地に24日目のiSOX10 OPC及び27日目又は37日目のiSOX9星状細胞前駆細胞を逐次播種し、続いて7日後に38日目のSIGi001-ANPCを添加することによって構築した。異なる細胞密度及び比率で播種した細胞を、残りの細胞の添加1日後に蛍光免疫顕微鏡法で解析した。(A~E)(A)10000細胞/タイプを等比で。
図13-1】(B)5000細胞/タイプを等比で、(C)10000個のニューロン、5000個の乏突起膠細胞及び2500個の星状細胞。
図13-2】(D)10000個のニューロン、5000個の乏突起膠細胞及び5000個の星状細胞、(E)10000個のニューロン、10000個の乏突起膠細胞及び5000個の星状細胞としてプレーティングされた、38日目のSIGi001-ANPC、27日目又は37日目のiSOX9星状細胞の子孫及び24日目のiSOX10 OPCを、ニューロンについてはTUJ1、星状細胞についてはS100β、乏突起膠細胞についてはMBP及びO4、並びに核を同定するためのヘキストで染色した。黒丸は27日目のiSOX9星状細胞子孫との細胞の組み合わせを表し、黒丸は37日目のiSOX9星状細胞前駆体を示す。データを平均値で示す。スケールバー:100μM。N=2の生物学的複製及び3つの技術的複製。3ウェルについてそれぞれ33枚の画像の代表画像。
図14】同時播種及び逐次細胞播種による、BIONi010-CiNGN2 NPC、iSOX10 OPC、及びiSOX9星状細胞前駆細胞を含むヒト三種培養系を示す図である。三種培養系を、3 μgのドキシサイクリンを含むM1培地中の14日目のBIONi010-CiNGN2ニューロン子孫、24日目のiSOX10 OPC、及び27日目又は37日目のiSOX9星状細胞前駆細胞の同時播種(パネルA及びB)及び逐次播種(パネルC)の両方によって構築した。(A~B)14日目のBIONi010-CiNGN2 NPC、27日目又は37日目のiSOX9星状細胞子孫及び24日目のiSOX10 OPCを、(A)10000個のBIONi010-C iNGN2NPC、5000個のiSOX10 OPC及び5000個のiSOX9星状細胞子孫。
図14-1】(B)10000個のBIONi10-C iNGN2 NPC、10000個のiSOX10OPC及び5000個のiSOX9星状細胞子孫として同時播種し、ニューロンについてはTUJ1、星状細胞についてはS100β、乏突起膠細胞についてはMBP及びO4、並びに核を同定するためのヘキストで染色した。(C)10000個のBIONi010-C14日目iNGN2 NPC、10000個の24日目のiSOX10 OPCを3 μgのドキシサイクリンを含むM1培地に播種し、続いて1週間後に5000個の37日目のiSOX9星状細胞前駆体を添加した。黒丸は27日目のiSOX9星状細胞子孫との細胞の組み合わせを表し、黒丸は37日目のiSOX9星状細胞前駆体を示す。データを平均値で示す。スケールバー:100μM。N=2の生物学的複製及び3つの技術的複製。3ウェルについてそれぞれ33枚の画像の代表画像。
図15】ヒト三種培養系における皮質ニューロンの成熟を示す図である。SIGi001-ANPCを使用して、3 μgのドキシサイクリンを含むM1培地で1週間、分化した38日目のニューロン子孫、27日目又は37日目のiSOX9-星状細胞前駆細胞、及び24日目のiSOX10-OPCを同じ細胞比で同時播種し、続いて3週目までM1培地のみで培地交換を行って、単独培養及び三種培養系を構築した。7日後に細胞を蛍光免疫顕微鏡法で3週間解析した。(A~D)三種培養の2週間後(A及びC)及び3週間(B及びD)後に、神経前駆細胞をSATB2及びCTIP2で染色し、星状細胞をS100βで染色し、乏突起膠細胞をMBPで染色した。スケールバー:100μM。N=2の生物学的複製及び3つの技術的複製。分化ごとに及び2つの生物学的複製で撮影された、3つのウェルについてそれぞれ33枚の画像の代表的な画像。
図15-1】(E)三種培養の2週間及び3週間後のCTIP2+及びSATB2+細胞の割合の定量。(F)三種培養及び単独培養の3週目の細胞あたりのCTIP2及びSATB2陽性の定量。(G)3週間の三種培養後にTUJ1で染色された神経前駆細胞、及びMBPで染色された乏突起膠細胞。スケールバー:20μM。データを平均値±SDで示す。N=1の生物学的複製及び3つの技術的複製。
図16】三種培養系におけるBIONi010-C iNGN2ニューロンスパイクに関する成熟を示す図である。BIONi010-C iNGN2 iPSC由来の神経前駆細胞を用いて、最初の1週間は3 μgのドキシサイクリンを補充したM1培地、続く4週間はM1培地のみにおいて、分化した4日目のiNGN2ニューロン前駆体、46日目のiSOX9星状細胞及び24日目のiSOX10 OPC(ニューロン:2と星状細胞及び乏突起膠細胞:1の比)を同時播種及び逐次播種(ニューロン-乏突起膠細胞プレーティング、続いて1週間後に星状細胞を添加)を行うことにより、MEAシステムで5週間、三種培養系を構築した。30000個のニューロン及びグリア、50000個のニューロン及びグリア、並びに75000個のニューロン及びグリアの3つの細胞密度を使用した。MEAの記録を、合計5週間、毎週行った。(A)5週間の同時播種、逐次播種された三種培養及びニューロン単独培養のウェルあたりの平均スパイク率。
図16-1】(B)5週間の同時播種及び逐次播種された三種培養及びニューロン単独培養のウェルあたりの活動性スパイクチャネルの割合。
図16-2】(C~D)5週間の同時播種及び逐次播種された三種培養及び単独培養におけるスパイク率及び活動性スパイクチャネルの時間経過解析。データを中央値で示す。三種培養ではN=1の生物学的複製及び3つの技術的複製、並びにニューロン単独培養では2つの技術的複製。
図17】三種培養系におけるBIONi010-C iNGN2ニューロンのニューロンバースト活動に関する成熟を示す図である。BIONi010-C iNGN2 iPSC由来の神経前駆細胞を用いて、最初の1週間は3 μgのドキシサイクリンを補充したM1培地、続く4週間はM1培地のみにおいて、分化した4日目のBIONi010-C iNGN2ニューロン前駆体、46日目のiSOX9星状細胞及び24日目のiSOX10 OPC(ニューロン:2、星状細胞及び乏突起膠細胞各:1)を、同時播種及び逐次播種(ニューロン-乏突起膠細胞プレーティング、続いて1週間後に星状細胞を添加)することにより、MEAシステムで5週間、三種培養系を構築した。30000個のニューロン及びグリア、50000個のニューロン及びグリア、並びに75000個のニューロン及びグリアの3つの細胞密度を使用し、単独培養ではニューロンの数が同数であった。MEAの記録を毎週、合計5週間行った。(A)5週間の同時播種、逐次播種された三種培養及びニューロン単独培養のウェルあたりの平均バースト率。
図17-1】(B)5週間の同時播種及び逐次播種された三種培養及びニューロン単独培養のウェルあたりの活動性バーストチャネルの割合。
図17-2】(C~D)5週間の同時播種及び逐次播種された三種培養及び単独培養におけるバースト率及び活動性のバーストチャネルの時間経過解析。データを中央値で示す。三種培養ではN=1の生物学的複製及び3つの技術的複製、並びにニューロン単独培養では2つの技術的複製。
図18】ヒト三種培養におけるBIONi010-C iNGN2及び皮質ニューロン、iSOX9星状細胞前駆体、並びにiSOX10 OPCの特性評価及び定量のための抗体組み合わせの最適化を示す図である。三種培養系を、分化した38日目のSIGi001-A NPC、27日目又は37日目のiSOX9星状細胞前駆細胞、及び24日目のiSOX10-OPCを、等しい細胞比で、30000細胞/タイプの細胞密度で1週間、3 μgのドキシサイクリン含むM1培地に同時播種することによって構築した。細胞を、1週間の共培養後に異なる抗体の組み合わせで蛍光顕微鏡法にて解析した。ニューロン子孫をTUJ1及びMAP2で染色し、星状細胞前駆細胞をS100β、EAAT1、及びALDH1L1で染色し、乏突起膠細胞前駆体をMBP及びO4で染色し、ヘキストで核を同定した。スケールバー:100 μM。N=2の生物学的複製及び3つの技術的複製。分化ごとに及び2つの生物学的複製で撮影された、3つのウェルについてそれぞれ33枚の画像の代表的な画像。
図19】皮質ニューロン、iSOX9星状細胞、及びiSOX10乏突起膠細胞を含む2週目及び3週目の三種培養系の抗体の組み合わせを示す図である。SIGi001-A iPSC由来の神経前駆細胞を使用して、分化した38日目のニューロン子孫、27日目又は37日目のiSOX9-星状細胞前駆細胞、及び24日目のiSOX10-OPCを同じ細胞比で同時播種することにより、3 μgのドキシサイクリンを含むM1培地で1週間、続いて3週目までM1培地のみで培地交換を行って、単独培養及び三種培養系を構築した。7日後に細胞を蛍光顕微鏡法で3週間解析した。(A~F)三種培養の2週間後(A~C)及び3週間後(D~F)、ニューロンをTUJ1で染色し、乏突起膠細胞をMBP及びO4で染色し、星状細胞をS100β及びGFAPで染色した。スケールバー:100 μM。3つの技術的複製を伴うN=1の生物学的複製。3ウェルについてそれぞれ33枚の画像の代表画像。
図20】異なる細胞密度のMEAでの同時播種、逐次播種された三種培養及び単独培養系におけるBIONi010-C iNGN2 NPC、iSOX9星状細胞子孫、及びiSOX10 OPCの細胞形態の特性評価を示す図である。BIONi010-C iNGN2 iPSC由来の神経前駆細胞を用いて、最初の1週間は3 μgのドキシサイクリンを補充したM1培地、続く4週間はM1培地のみにおいて、星状細胞及び乏突起膠細胞の2倍の数のニューロンで、分化した4日目のBIONi010-C iNGN2ニューロン前駆体、46日目のiSOX9星状細胞及び24日目のiSOX10 OPCを同時播種及び逐次播種(ニューロン-乏突起膠細胞のプレーティング、続いて1週間後に星状細胞を添加)することによって、MEAシステムで5週間、三種培養系を構築した。30000個のニューロン及びグリア、50000個のニューロン及びグリア、並びに75000個のニューロン及びグリアの3つの細胞密度を使用し、単独培養ではニューロンの数が同数であった。MEAの記録を毎週、合計5週間行った。(A~D)10倍の倍率で、同時播種、逐次播種された三種培養、及びニューロン単独培養について4週間にわたって撮影された明視野画像。三種培養では3つの技術的複製を伴うN=1の生物学的複製、及びニューロン単独培養では2つの技術的複製。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ニューロンは、その機能、神経伝達物質の分泌、局在、及び形態に基づいてサブカテゴリーに分類される。ニューロンは、情報の受け取りに関与する感覚ニューロン、脳から標的部位にシグナルを伝達する運動ニューロン、及び運動ニューロンと感覚ニューロンの接合部として機能する介在ニューロンに分類され得る。放出される神経伝達物質に関して、ニューロンは次のように分類することもできる。
1.アセチルコリン、グルタミン酸、エピネフリン、ノルエピネフリン及びヒスタミンのような興奮性神経伝達物質を放出する興奮性ニューロン
2.セロトニン及びγ-アミノ酪酸(GABA)のような抑制性神経伝達物質を放出する抑制性ニューロン
3.ヒトの脳で興奮性と抑制性の両方の機能を持つドーパミン作動性ニューロン。
【0016】
ニューロンの主な役割は、他のニューロン、筋肉、又は腺細胞にインパルスを伝達することである。ニューロンは、星状細胞及び乏突起膠細胞も生成することができる複能性神経前駆細胞によって生成される。神経前駆細胞の分化は、神経前駆細胞の発生シグネチャーとも考えられている円柱細胞の放射状配列である神経ロゼット段階で構成されている。また、全ニューロン集団の半分は、哺乳類の脳の最大の構成要素である大脳皮質に見られる。この皮質ニューロン集団は、ニューロン細胞体の異なる種類と密度を持つ6つの異なる皮質層に組織化されている。これらの層は、神経細胞体の形状に基づいて分類された錐体ニューロンと非錐体ニューロンの2種類のニューロンで構成されている。錐体ニューロンは、皮質及び脳の他の領域にある遠くの標的を接続し、皮質ニューロン全体の75%を占めている。錐体ニューロンは、グルタミン酸神経伝達物質を利用する特性のために興奮性皮質ニューロンとも呼ばれる。
【0017】
それとは対照的に、非錐体細胞はより短い軸索を持ち、局所的な標的をつなぐ介在ニューロンとして機能する。これらの細胞は抑制性皮質ニューロンであり、神経伝達物質GABAを分泌し、大脳皮質の発達中に接線方向の移動に関与する。
【0018】
ニューロンは、発生段階、細胞成分、及び神経伝達物質の放出に基づいて様々なマーカーを発現する。ニューロンの高度に区画化された構造は、CNSにおいて他の細胞型とニューロンを区別するための幾つかのマーカー発現を提供する。例えば、TUJ1はニューロン特異的クラスIII βチューブリンマーカーであり、微小管関連タンパク質2(MAP-2)は細胞骨格タンパク質マーカーであり、ニューロン核抗原(NeuN)又はFOX-3はニューロン特異的標識に役立つ核タンパク質マーカーである[Kole et al. Cell death & disease 4, e689-e689 (2013)]。
【0019】
グリア細胞は、CNSにおける第2の細胞群であり、支持及び保護を提供することによってニューロン機能を調節する。グリア細胞は恒常性を維持し、効率的な神経インパルス伝導のために軸索の周りにミエリン鞘を形成する。さらに、グリア細胞は、ニューロンの成長の支持、血液脳関門の形成と制御、脳代謝、及びホメオスタシスの調節を担う。CNS(神経外胚葉由来)には、2つの主要なグリア細胞型、すなわち星状細胞と乏突起膠細胞が存在する。
【0020】
星状細胞は、成長因子、神経伝達物質、及び代謝メディエーターを分泌する分子調節因子として知られており、したがって、シナプス形成、シナプス結合、及びニューロンの成長を支持する。
【0021】
一方、乏突起膠細胞は、軸索をミエリン鞘で絶縁することにより、物理的に保護し、導電率を高める。乏突起膠細胞はまた、乳酸又はピルビン酸のような代謝産物を軸索エネルギー産生に燃料として移動させることにより、軸索に代謝サポートを提供する。
【0022】
他のグリア細胞型としては、ミクログリア(ただし中胚葉)、上衣細胞(CNSにおいて)、サテライト細胞(周囲細胞とも呼ばれる)、及びシュワン細胞(PNSにおいて)が挙げられる。これらの細胞は、脳脊髄液の産生、ミエリン鞘の形成に重要な役割を果たし、ニューロンに栄養及びサポートを提供する。
【0023】
星状細胞は、形態、機能、場所、及び発生の起源が不均一な脳内の星形の細胞である。これらの細胞は、原形質、層間、極性化及び線維性の星状細胞に分類することができる。原形質星状細胞は灰白質に見られ、線維性星状細胞は白質に見られる。シングルセルRNAシーケンシング及び空間トランスクリプトミクスのような技術は、星状細胞の領域間及び領域内の不均一性を実証し、ヒトの脳皮質における星状細胞の異なる形態と生理学を理解するために使用されている。これらの細胞は多様性に富んでいるため、これらの細胞の特性評価は依然として困難である。星状細胞の同定に使用される最も一般的なマーカーの1つは、中間フィラメントタンパク質であるグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)である。重要なことは、星状細胞の成熟は複雑なプロセスであり、完全には明らかにされておらず、タンパク質発現が重複していることが知られている。Roybonらは、ラット及びヒトの脊髄星状細胞に基づく既知の星状細胞マーカーの出現と消失のタイムラインを構築した。しかし、異なる星状細胞クラスの時間依存的な発達は、種々の脳領域によって異なる[Roybon et al. Cell Rep. 4, 1035-1048 (2013)]。それにもかかわらず、ビメンチン、S100カルシウム結合タンパク質ベータ(S100β)、細胞表面糖タンパク質CD44のようなタンパク質の発現は、星状細胞前駆細胞の同定に使用される。興奮性アミノ酸1及び2(EAAT1及びEAAT2)、アクアポリン4(AQP4)、グルタミン合成酵素(GS)、及びアルデヒドデヒドロゲナーゼ1ファミリーメンバー(ALDH1L1)の発現は、成熟星状細胞のマーカーである[Zhang et al. Biomed Res. Int. 2019, (2019) 9605265]。
【0024】
星状細胞は、健全なCNSの機能に重要である。星状細胞は、ニューロンの代謝、血液脳関門機能、シナプス形成、及び神経伝達物質とイオンの取り込みと排泄をサポートすることにより、重要なCNSの構成要素として作用する。幾つかの受容体は、星状細胞とニューロンの両方に共通しており、したがって、星状細胞はニューロン由来の神経伝達物質によっても影響を受ける可能性がある。Haselらは、星状細胞の発達及び成熟に及ぼすニューロンの役割を実証し、星状細胞の成熟及び神経伝達物質の取り込み活性におけるNOTCHシグナル伝達のようなニューロンと星状細胞との相互作用の関与を示した[Hasel et al. Nat. Commun. 8, 1-18 (2017)]。また、星状細胞は、グルタミン酸トランスポーターEAAT1及びEAAT2を介して排泄を制御することにより、グルタミン酸のようなニューロン支持分子のレベルを維持する。星状細胞は、シナプス前/シナプス後ニューロンと星状細胞との間の方向性のある細胞クロストークを含む三者間シナプスに大きく寄与している[Farhy-Tselnicker & Allen Neural Development 13, 1-12 (2018)]。さらに、星状細胞はシナプス形成を促進し、ニューロンの興奮性に影響を与える可能性のあるグリア伝達物質及びタンパク質の放出を調節する。星状細胞は、シナプス活動を調節するだけでなく、イオンモジュレーターとしても機能する。星状細胞は、Na+/H+交換体、重炭酸塩トランスポーター、モノカルボン酸トランスポーター等のような幾つかのタイプのチャネルによってイオンをインポート及びエクスポートする様々なメカニズムを持っている。星状細胞のその他の機能としては、ニューロンの機能と生存率を維持するためのグルコースと酸素の調節、及び脳損傷後の組織修復が挙げられる。
【0025】
乏突起膠細胞又はオリゴデンドログリアは、脳組織の3%を占める。これらは、神経発達中に胚の神経管内の複能性神経幹細胞から産生される大きなグリア細胞である。乏突起膠細胞は、緻密なクロマチンを含む顆粒と核で満たされた微細な細胞質拡張を持つ小さなサイズの細胞である。乏突起膠細胞の主な役割はニューロンの髄鞘形成であり、その結果ニューロンは神経インパルス伝導を調節する。髄鞘形成プロセスの特徴に基づいて、乏突起膠細胞は4つの主要なタイプに分類される:(1)1型乏突起膠細胞は、異なる向きの多数のミエリンセグメントを持つ小径の軸索を鞘で覆い、(2)2型は、平行なミエリンセグメントと同じ特性を持ち、(3)3型は、少数の直径が大きい軸索を有髄化し、(4)4型細胞は、PNSにおけるシュワン細胞に似た単一の非常に大きな軸索に対抗して存在する。乏突起膠細胞前駆体は、環状ヌクレオチド3'-ホスホジエステラーゼ(CNPase)、並びに細胞表面マーカーO4及びO1の3つのマーカーの発現を特徴とする。CNPase酵素には、大小の2つのアイソフォームがあり、それぞれ乏突起膠細胞前駆体及び髄鞘形成乏突起膠細胞に発現している。細胞表面マーカーO1は、主に髄鞘形成前乏突起膠細胞に、O4は後期乏突起膠細胞前駆体に見られる。成熟髄鞘形成乏突起膠細胞は、細胞系統特異的ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、膜貫通タンパク質PLP、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、膜マーカーガラクトセレブロシド(GalC)、及び表面マーカーミエリン-乏突起膠細胞糖タンパク質(MOG)を発現する。OLIG1及びOLIG2は、乏突起膠細胞系統全体で発現する転写因子である。これらは、乏突起膠細胞の前駆体の分化と髄鞘形成に重要である。
【0026】
CNSにおける乏突起膠細胞の主な機能は、神経発達中の軸索髄鞘形成、成人期の適応髄鞘形成、及びCNS損傷における再髄鞘形成である。ミエリン鞘は、直径の大きい軸索を同心円状に包み込み、迅速な神経伝導を可能にする。これは、ランヴィエ絞輪と呼ばれるミエリン鞘の断続的な中断時にナトリウムチャネルの助けを借りて膜電位伝導を支援する電気絶縁体である。ミエリンを介した神経インパルス伝導のプロセスは跳躍伝導として知られており、ミエリン鞘の静電容量が低いため必要なエネルギーが少なく、したがって、無髄軸索よりも速い神経インパルス伝導を可能にする。髄鞘形成自体は、乏突起膠細胞におけるカルシウム活性及びニューロン活動のような多くの要因によって支配される調節されたプロセスである。乏突起膠細胞は、乳酸を生成することでニューロンを代謝的にサポートし、乳酸は軸索に伝達されてATP産生を可能にする。乳酸は、脳内の乳酸トランスポーターMCT1、MCT2及びMCT4の助けを借りて循環し、MCT1発現は乏突起膠細胞で検出される。ニューロン代謝の調節における乏突起膠細胞の役割は、乏突起膠細胞におけるコハク酸デヒドロゲナーゼ及びフマラーゼのような幾つかの解糖系酵素及びクレブス回路酵素の存在によっても支持されており、グルコース及びATP産生を促進し、したがってニューロンの成長、生存及びシナプス形成をサポートする。髄鞘形成に加えて、乏突起膠細胞も免疫調節に関与している。乏突起膠細胞前駆体はサイトカイン受容体を発現し、微細な糸状仮足の伸長を介して微小環境を評価する。乏突起膠細胞前駆体はまた、インターフェロンガンマと相互作用した場合、in vitro及びin vivoで損傷部位への遊走及びCD8+T細胞への抗原の交差提示という点でも、ミクログリアと同様に挙動する。
【0027】
上衣細胞は、脳室と脊髄の中心管の周囲に上皮層を形成する別のタイプのニューロン支持細胞である。これらの細胞の構造は粘膜上皮細胞に似ており、基底表面に触手のような伸展があり、頂端表面に繊毛及び微絨毛がある。上衣細胞は、CD24、SOX2、NESTIN、FOXJ1、及びCD133のようなマーカーによって識別され、それらは放射状グリア細胞にも由来する[Shah et al. Cell Function. Cell 173, 1045-1057 (2018)]。これらの細胞は脈絡叢を生成し、神経再生の貯蔵庫として知られている。
【0028】
シュワン細胞はPNSの主なグリアである。シュワン細胞は、機能的には乏突起膠細胞に似ており、その機能に基づいて髄鞘形成及び非髄鞘形成シュワン細胞に分けることができる。髄鞘形成シュワン細胞は、PNSのニューロン軸索の周囲に、ランヴィエ絞輪として知られる幾つかのギャップを伴って、不規則なミエリン鞘を産生する。乏突起膠細胞によって媒介される跳躍経路を介した神経インパルス伝導は、CNSに類似している。非髄鞘形成軸索は、髄鞘形成中の軸索の維持と、ニューロンの生存と成長の支持に重要な役割を果たす。髄鞘形成に加えて、これらの細胞は細胞外マトリックスの産生にも関与し、Tリンパ球への抗原提示によって神経筋シナプス活動及び神経炎症を調節する。
【0029】
サテライトグリア細胞は、周囲細胞とも呼ばれ、PNSにおいてニューロン細胞体を覆い、保護、緩衝(cushioning)及びニューロンのへの細胞成長を提供する。これらの細胞は、交感神経節の微小環境を調節し、ニューロンへの栄養輸送をサポートする。サテライトグリア細胞は、電気的特性の点で星状細胞に似ている。
【0030】
全ての脊椎動物においてCNSの発達は、脊髄と脳の起源である、いわゆる胚性前駆体を持つ神経管の形成によって推進される。神経管の神経上皮細胞は分裂して、対称分裂によって神経前駆細胞プールを拡大し、CNS形成の細胞源として働く。その後、それらはアストログリアに似た特徴、空間的及び形態学的配置を持つ細胞(いわゆる「放射状グリア」細胞(RGC))に分裂する。脳室帯(VZ)及び脳室下帯(SVZ)内のRGCは非対称に分裂して2つの細胞集団を生成し、1つの細胞は元の放射状グリア細胞(母細胞)に相当し、もう1つは分化に関与する。この細胞は、中間神経前駆細胞として知られている。中間神経前駆細胞は、増殖帯で分裂を続け、有糸分裂後ニューロンは発達中の新皮質に移動して神経新生を脳室表面から軟膜表面に伸ばす。大脳皮質では、移動する未熟なニューロンが、6つの異なる層からなる時間依存性の複雑な層状大脳新皮質を形成する。初期の移動ニューロンはより深い層を形成し、後の移動ニューロンは表層を形成する。RGCは、星状細胞又は乏突起膠細胞の中間前駆細胞を生成することにより、グリア細胞の前駆細胞としても作用する。この前駆細胞樣ニューロンの集団は、上にある白質と皮質、線条体と海馬へと外側に移動し、そこで最終的に星状細胞及び乏突起膠細胞を生成し、新皮質を厚くし、介在ニューロンネットワークを支持する。ニューロンとは異なり、グリア前駆細胞は標的位置への移動中に分裂を続ける。細胞の増殖及び所定の脳領域への遊走に加えて、ヒトの脳におけるニューロン及びグリアの総数を安定させるために、類似した細胞型の凝集、シナプス形成及び神経回路の形成、細胞間競合による細胞の選択的排除のような他の幾つかの事象が発生する。
【0031】
健康な脳及び疾患脳における細胞間相互作用
ヒトの脳の複雑さ及びニューロン密度は、複雑な神経学的機能を実行し、外部環境に応答する能力を提供する。齧歯類と比較してヒトの脳により多くの枝を持つより大きな星状細胞の存在等、ヒトと他の霊長類の脳における違いに関する現在の知識は、並外れたヒトの能力の手がかりを提供する。ヒトの脳におけるこの複雑さ及び複雑な細胞のクロストークを再現する更なる研究は、ヒトの脳が非霊長類とどのように異なるかについて、より多くの洞察を提供することができる。マウスの脳にヒト星状細胞を移植したマウスでは、記憶力と認知力の向上が観察されていることは注目に値する。これは、ヒトの星状細胞とマウスの脳細胞の間の細胞クロストークが、マウスにおいてよりヒトに似た脳機能を支持することができることを示している。ニューロンとグリア細胞との間の相互作用は、イオンチャネルを介した直接接触シグナル伝達、又は神経伝達物質、細胞接着因子のような分泌分子による長距離シグナル伝達、及びニューロンのシナプス領域から放出される特殊なシグナル伝達分子のいずれかによって発生する。この細胞のクロストークは、生物の行動及び認知を調節することも観察されている。細胞のクロストークに関する初期の研究のほとんどは、ニューロンのシグナル伝達について行われてきたが、神経科学の最新の進歩は、ニューロンからグリアへのシグナル伝達経路の重要性を指摘しており、これに対する変化は、神経障害を引き起こすことが確認されている。例えば、ニューロン-星状細胞のシグナル伝達の変異は、記憶及び行動に悪影響を及ぼす。
【0032】
全能性幹細胞(一例として受精卵が作用する)は、胚組織及び胚外組織を含むあらゆる細胞型を生成することができる。全能性幹細胞は初期胚組織にのみ存在し、一般に受精後の最初の数回の細胞分裂に由来し、8細胞期に達するまで存在し続ける。これらの細胞は、初期胚の初代胚葉の母細胞であり、胎盤のような胚外構造である。全能性幹細胞及び多能性幹細胞の高い増殖傾向は、全胚の生産に加えて、催奇形癌のリスクももたらす。
【0033】
多能性幹細胞は、全ての胚細胞型に分化できるが、胚外組織には分化することができない。これらの細胞は、胚発生中に接合子によって形成された胚盤胞の内部細胞塊に存在する。これらの細胞は、C-MYCのような癌原遺伝子、並びにオクタマー結合転写因子4(OCT4)、クルッペル様因子4(KLF4)、NANOG及び性決定領域Yボックス2(SOX2)等の幹細胞特異的転写因子の発現を特徴とし得る。多能性細胞の運命を、胚性幹細胞(ESC)でin vitroで捕捉することができる。ESCは、胚盤胞の内部細胞塊から得られる。
【0034】
複能性幹細胞は、より限られた数の特定の系統細胞を生じさせることができる細胞である。複能性幹細胞は、原始的なストリーク形成後にESCから産生され、成体幹細胞集団として存続する。複能性幹細胞は、成体の生物における傷害後の組織治癒に関与している。複能性幹細胞の最良の例は造血幹細胞である。
【0035】
単能性幹細胞は、成体生物の1つの特定の系統にのみ分化できる細胞であるため、最も厳密な分化能を持っている。単能性幹細胞の例は、内皮幹細胞、角膜幹細胞又は精原幹細胞である。
【0036】
人工多能性幹細胞(iPSC)
山中らは、線維芽細胞を幹細胞に変換するのに十分な4つの遺伝子、すなわちOCT3/4、SOX2、C-MYC、KLF4を特定した。
【0037】
ゲノム工学とは、生物の遺伝暗号におけるDNAの挿入、欠失、修飾、又は置換を含む変化を指す。遺伝子編集技術は、プラスミドベクターのトランスフェクション、ウイルス由来ベクターによる形質導入、及びCRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeat)-Cas(CRISPR associated)9システムを含むより最近の部位特異的ヌクレアーゼアプローチで構成されている。これらのアプローチにより、同遺伝子細胞株及び変異細胞株を作製し、特定の細胞表現型をin vitroで研究することが可能になる。ウイルスベクターは、導入遺伝子を簡単かつ効率的に導入する。しかし、このアプローチには、ランダムインテグレーション、遺伝子サイレンシング、及び導入遺伝子のコピー数の制御の難しさといった幾つかの制限がある。研究者が開発した代替戦略は、セーフハーバー遺伝子座と呼ばれる事前定義された染色体位置に目的の遺伝子を組み込むことである。セーフハーバー遺伝子座での変化は、細胞の重要な機能及び表現型に影響を与えないため、これらの遺伝子座は、有害な影響を最小限に抑えながら、安定した導入遺伝子発現のためのプラットフォームを提供する。また、セーフハーバー遺伝子座に存在するインスレーター要素は、導入遺伝子のサイレンシングを(或る程度まで)阻害する。しかし、一部の報告では、DNAメチル化による導入遺伝子サイレンシングが未分化hESC及び肝細胞にコミットした(hepatocyte-committed)hESCの両方で検出されたため、AAVS1遺伝子座は当初考えられていたほど安全ではないことが示されている。ヒトiPSC(hiPSC)で最も一般的に使用されるセーフハーバー遺伝子座は、19番染色体上にあるAAV2型ウイルスの自然統合部位であるアデノ随伴ウイルス統合部位1(AAVS1)遺伝子座である。科学者らは、目的遺伝子のコード配列を含むプラスミドでiPSCをヌクレオフェクションすることにより、AAVS1遺伝子座に目的の遺伝子を挿入した。したがって、AAVS1のようなセーフハーバー遺伝子座にDNA物質を挿入することは、研究者が特定の転写因子及び遺伝子を過剰発現させ、幹細胞ベースの疾患モデリングと治療を更に進めるために、ニューロン及びグリアのような異なるタイプの細胞を分化するための興味深いツールを提供する[上記で言及されるNeyrinck et al. (2021)]。
【0038】
疾患モデリング及び幹細胞治療
iPSCベースの疾患モデリングは、その比類のない利点により、人気が高まっている。その重要な要素の1つが、分化した子孫における遺伝子構造の保持であり、これは疾患モデリングにおけるiPSC由来細胞の使用の基礎を形成する。このように、患者由来の細胞に由来する神経モデルを用いて、新薬を探索することができ、臨床試験への道を切り開き、個別化医療のアプローチを促進することができる。これらの細胞は、罹患した及び遺伝子修正された同質遺伝子系統の間の細胞挙動とそのクロストークを比較するのに役立つ可能性がある。
【0039】
ヒト多能性幹細胞由来神経細胞
神経幹細胞は、胚性神経新生を理解するのに、また疾患の病態及び薬物スクリーニングプラットフォームを再現するモデルシステムの作成の優れた候補である。神経幹細胞の最もアクセスしやすく受け入れられる供給源は、多能性幹細胞、ESC、及びiPSCである。ESC及びiPSCから神経子孫を得るための継続的なプロトコル最適化により、PSC由来の神経幹細胞を異なる神経細胞型に分化するための幅広いプロトコルがもたらされた。
【0040】
in vitro皮質ニューロン分化
神経幹細胞/神経前駆細胞は、iPSCに由来し得る。これは、in vivoで見られるのと同様の発生軌跡をたどる3つの胚葉層からの細胞を含む胚様体(EB)構造の形成によって達成され得る。EBベースの皮質ニューロン分化プロトコルは多数あるが、時間がかかり、1つのバッチからのEB間及びバッチ間の変動性が大きいといった、幾つかの制限がある。幹細胞を神経幹細胞に分化させる別の方法は、マウス間質フィーダー細胞株に基づくものである。PA6及びMS5等のこれらの細胞株は、幹細胞の運命をニューロンに向ける幾つかの因子を分泌する。しかし、シグナル伝達経路が理解されるにつれて、初期の神経関与プロセスの調節は時間の経過と共に改善された。2つの小分子(Noggin及びSB431542、<900 Da)を使用して、EB/オルガノイド形成も間質フィーダー株も使用せずに幹細胞を神経前駆体細胞に直接変換して、SMADシグナル伝達経路を阻害することができ、PAX6陰性神経堤細胞に接するPAX6陽性神経幹細胞を含む神経ロゼットの形成を観察した。これにより、EB又は間質細胞株ベースのプロトコルを使用せずに、PAX6陽性神経前駆体細胞が19日間で効率的に生成される。二重SMADシグナル伝達阻害(BMP及びTGF-β/NODALシグナル伝達経路)を使用して完全に成熟した皮質ニューロンを生成すると、多能性が抑制され、神経細胞の分化が促進される。これは、層特異的なニューロンマーカー(CUX1-上層マーカー、CTIP2-深層マーカー)と小胞性グルタミン酸トランスポーター1(VGLUT1)を発現するニューロンを生成する。これらの細胞は、成熟したニューロン特異的な電気生理学的特性も示した。したがって、この方法は、共培養のin vitroモデルを確立するために使用することができる成熟皮質グルタミン酸作動性ニューロンを生成するのに適している。
【0041】
in vitroでの星状細胞分化
iPSCからin vitroで星状細胞を作製する取り組みが幾つか行われてきた。成熟した星状細胞は、星状細胞のin vivo系統の発達に基づいて、3段階で生成され得る[Krencik et al. Nat. Biotechnol. 29, 528-534 (2011)]。第1段階は、成長因子非存在下で10日間iPSCを神経上皮細胞(NE)に変換し、続いて更に10日間FGF8、RA、又はSHHを添加してアストログリアに移行することで構成された。15日目に、ロゼット型前駆体を単離し、懸濁培養で培養した。最終段階は、更なる成熟のためにFGF及び上皮成長因子の存在下で解離した神経前駆体集団を培養することで構成された。180日後、GFAP、S100β、及びNFI-A陽性の未熟星状細胞を観察することができ、in vitro実験に使用できるようになった。このプロトコルに基づいて、多くの同様の実験計画が開発されている。しかし、分化のタイムラインが長いこと及び星状細胞集団のばらつきといった問題により、星状細胞の広範な普及及び応用が制限されていた。より最近では、SOX9、NFI-A及び/又はNFIκBのような幾つかの重要な転写因子が、神経前駆細胞から星状細胞へのスイッチを調節し、過剰発現すると4週間~7週間で均質で機能的な星状細胞を生成することが多くの報告で確認されている。さらに、本発明者らは、PSCから12日間にわたって導出された神経前駆細胞におけるSOX9の過剰発現が、in vitroで±20日以内にアストログリア分化を誘導するのに十分であることを以前に実証した。より短い期間で機能的な星状細胞を生成することができるプロトコルは、神経学的状態のモデルとしてより効率的な星状細胞培養系をもたらし、グリア細胞生物学の研究を改善するために適用することができる。
【0042】
in vitroでの乏突起膠細胞の分化
iPSCは、in vitroで乏突起膠細胞を生成するためにも使用されている。in vivoの発生軌跡に焦点を当てた幾つかのプロトコルが確立されている。乏突起膠細胞前駆体細胞(OPC)は、in vivo乏突起膠細胞の発達を綿密に再現する幹細胞のシグナル伝達分子ベースの仕様から直接生成することができる。例えば、Huら及びWangらは、まず幹細胞をEBとして培養してPAX6陽性神経前駆体細胞を生成し、次にソニックヘッジホッグ(SHH)及びレチノイン酸(RA)をシグナル伝達の手がかりとして乏突起膠細胞系統への細胞運命を特定することにより、x in vitroでの乏突起膠細胞の分化を示した[Hu et al. Nat. Protoc. 4, 1614-1622 (2009)、Wang et al. Cell Stem Cell 12, 252-264 (2013)]。これらのシグナル伝達分子は、神経前駆体細胞をグリア前駆細胞に変換し、次いでグリア前駆細胞に線維芽細胞増殖因子2を補充して、運動ニューロンへの更なる分化を防いだ。35日目に、グリア前駆細胞はOLIG2及びNKX2.2を発現したが、in vivoの乏突起膠細胞との機能的及び形態学的類似性は認められなかった。したがって、前駆細胞を、神経栄養因子3(NT3)、血小板由来成長因子(PDGF)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、インスリン様成長因子1(IGF-1)、ビオチン及びトリヨードチロニン(T3)等の成長因子を補充した培地で更に8週間成長させた。その結果、SOX10及びPDGFRα陽性のOPCが生成された。このプロトコルは、有糸分裂的に有能なOPCの安定した集団を生成したが、乏突起膠細胞の収量が低く、分化タイムラインが長いため、その適用が制限された。2015年、Douvarasらは、それぞれトランスフォーミング成長因子β(TGF-β)及び骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達を阻害する低分子である、SB431542及びLDN193189の使用を組み合わせて、この分化プロトコルを修正し、初期段階で神経前駆体細胞の生成を加速し、その結果、わずか55日~75日でOPCの生成した[Douvaras et al. Stem Cell Reports 3, 250-259 (2014)]。しかし、乏突起膠細胞の分化は、転写因子ベースの分化が適用されるまで、非効率的で時間がかかり、変動が大きかったままであった。最近では、レンチウイルスの形質導入又はセーフハーバー(AAVS1)における組み込みと組み合わせた転写因子の過剰発現が、幹細胞から乏突起膠細胞を産生するために使用されている。SOX10及びOLIG2等の転写因子は、乏突起膠細胞の分化におけるマスター遺伝子調節因子であり、iPSCで過剰発現した場合、56日でO4+及びMBP+乏突起膠細胞を誘導できることが説明されている。NKX6.2転写因子と組み合わせると、分化時間は3週間~4週間に短縮された。さらに、本発明は、PSCから12日間にわたって誘導された神経前駆細胞におけるSOX10の過剰発現が、in vitroで乏突起膠細胞の分化を誘導するのに十分であり、22日以内にO4+及びMBP+細胞の効果的な産生を可能にすることを実証する。
【0043】
ニューロン-グリア共培養のin vitroモデル
前述したように、ニューロングリアのクロストークは、神経発達及び脳の恒常性の維持に重要な役割を果たす。ニューロン又はグリア細胞のいずれかにおける変異は、この細胞間相互作用の機能不全に寄与し、神経疾患及び機能障害の一因となる。グリア細胞は、神経炎症と神経変性の両方に二重の役割を果たしており、その反応性表現型の活性化は、或る状態では負の要因として機能し、他の状況下では神経保護を促進する可能性がある。例えば、星状細胞の活性化は神経保護をもたらす可能性があり、ニューロンの損傷を悪化させる可能性もある。したがって、機能的なニューロンとグリアの相互作用は、CNSの損傷に対する回復力を維持し、効率的なニューロンネットワークを維持するために不可欠である。幹細胞を用いてin vitroでこれらの相互作用をモデル化することで、これらの相互作用を研究し、新規薬物化合物を試験するためのプラットフォームを科学者に提供する。この方向では、iPSC又は動物起源のニューロンとグリアを一緒に培養するか、又は或る細胞型で順化された培地を使用して他の細胞型(複数の場合もある)の成長を支持するかのいずれかで、幾つかの取り組みが行われてきた。
【0044】
現在のニューロン-グリア共培養研究の概要
【0045】
【表1】
【0046】
Jones et al. Methods Mol. Biol. 814, 341-352 (2012)
Aebersold et al. Front. Neurosci. 12, 94 (2018)
Zhang et al. Mol. Med. Rep. 19, 1521-1528 (2019)
Jacobs & Doering (2009) in Protocols for Neural Cell Culture, 269-283
Kidambi et al. Adv Funct Mater. (2008) 18, 294-301
Krencik et al. Stem Cell Reports 9, 1745-1753 (2017)
Soscia et al. Lab Chip 20, 901-911 (2020)
Swire & Ffrench-Constant Methods in Mol. Biol. 1936, 111-128
Pang et al. Methods in Mol. Biol.. 1791, 131-144 (2018)
Ristola et al. J. Micromechanics Microengineering 29, 13 (2019)
Mazuir et al. J. Vis. Exp. 2020, e60912 (2020)
Garcia-Leon et al. Nat. Protoc. 15, 3716-3744 (2020)
Nadadhur et al. Stem Cell Reports (2019) 12, 42-56
Enright et al. Scientific Reports volume 10, Article number: 11007 (2020)
【0047】
共培養系におけるニューロン及びグリアの成熟
これらのin vitro系におけるニューロンの成熟を研究するための最も決定的なアプローチは、パッチクランプ又は多電極アレイシステム(MEA)を使用した電気生理学的研究によってニューロンの機能的品質を決定することである。パッチクランプ技術は、単一のニューロンをプローブしてその細胞内の電気的活動を決定するが、電極によるニューロンへの機械的損傷と、ニューロンネットワーク形成に関する情報の少なさという犠牲を伴う。一方、MEAは、機械的損傷を与えることなく、ニューロンネットワークの形成を含む、より長い期間のニューロン活動の検出を容易にする。
【0048】
MEAシステムは、機能的なニューロンを電子回路上で培養する電気生理学細胞イメージングプラットフォームである。これらのシステムは、その上で成長した集団全体からニューロンの活動を捉え、疾患の病態を含む脳の活動とニューロンの髄鞘形成のような神経発達イベントとを結びつける重要な情報を提供する。このプロジェクトでは、グリア細胞の有無でニューロン活動がどのように変化するか判断するため、ニューロンを星状細胞及び乏突起膠細胞と共培養するMEAシステムを使用している。ニューロン活動は、その結果、単独培養及び共培養系におけるニューロンの成熟に関する情報を提供することができる。
【0049】
微小電極アレイは、細胞内及び細胞の近くで進行中のイオンプロセスに起因する細胞電流の変動を検出する。これは、電流の量及びサイン、微小電極間の分離、及び記録場所のような幾つかのパラメータに依存する。一般に活動電位として知られているこれらの電流は、シナプスフラックスのために、膜貫通電位が特定の閾値を超えるとニューロンスパイクを作成する。活動電位中の内向きのナトリウムイオンの流れは、カリウムイオンフラックスによって生成される小さな正のピークとは対照的に、細胞外活動電位の記録において高い負のスパイクを生成する。また、ニューロンバーストは、後に活動のない静かな期間が続く長時間の活動電位で発生する可能性がある。これらのバーストは、検出及び記録できる環境又は表現型要因のために刺激される可能性がある。
【0050】
他のパラメータとしては、興奮性又は抑制性ニューロンのクラスターの活性化によって引き起こされる集団全体の同期バーストが挙げられ、このシグナル同期及び機能的ネットワーク形成は、ニューロンの成熟度を特徴付けるためのパラメータと見なすことができる。したがって、高いシグナル品質と時空間分解能を備えた高密度MEAシステムにより、研究者はニューロン培養における活動電位の伝播及び軸索輸送を追跡することができ[Bakkum et al. PLoS One 3, e2088 (2008)]、また、複雑な2D共培養[Shih et al. Stem Cell Res. 102386 (2021)、Fukushima et al. J. Biomol. Screen. 21, 54-64 (2016)]及び3D系[Trujillo et al. bioRxiv 358622、Trujillo et al. Cell Stem Cell 25, 558-569. e7 (2019)]におけるニューロン活動に対するグリア細胞の効果を判断することができる。
【0051】
本発明は、hiPSC由来のニューロン、星状細胞、及び乏突起膠細胞を含むヒト三種培養系を開発し、脳のin vivoでの生理学及び機能をスケーラブルなフォーマットでよりよく再現することにより、ヒトiPSC由来のin vitro系の細胞の複雑性を高めることを目的としている。本発明は、ヒトiPSCベースの三種培養系を提供し、ニューロンネットワークの機能、成熟、及び細胞組成のためにMEAを用いてニューロンを成熟させることを特徴とする。本出願は、以下を開示する:
(1)hiPSC由来ニューロン(皮質ニューロン及び誘導性ニューロン)及びグリアサブタイプ(星状細胞及び乏突起膠細胞)の単独培養における分化及び特性評価、
(2)培地1(神経維持培地)は、最初に単独培養で、次いで複合三種培養で3つの細胞型全ての維持を可能にするのに十分である、
(3)三種培養におけるニューロン及びグリア集団の特性評価及び定量のための細胞比、密度、播種戦略、及び抗体の組み合わせの最適化、
(4)三種培養において、ニューロンの単独培養と比較して、異なる皮質層のニューロンマーカーの発現がより高い、
(5)より多くのスパイク活動及びニューロンバースト活動によって表される、ニューロンのみの単独培養と比較して、三種培養系におけるニューロンの電気生理学的活動の有意な増加。
【0052】
本発明は、iPSCニューロンとグリア細胞の共培養により、ネットワーク形成が促進され、同期性が向上し、全体としてニューロンの活動が増加し、ニューロンの成熟が速くなることを実証する。
【0053】
ヒトベースの三種培養系を開発するために、皮質ニューロン、iNGN2-iPSC由来ニューロン、iSOX9-iPSC星状細胞、及びiSOX10-iPSC乏突起膠細胞を分化させ、特性評価した。転写因子に基づく運命の特定化は、誘導性ニューロン、星状細胞、及び乏突起膠細胞の分化に使用され、より迅速かつ効率的な生成を可能にした。皮質ニューロンの分化のための他のプロトコルと同様に[Espuny-Camacho et al. Cell Rep. 23, 2732-2743 (2018)、Muratore et al. PLoS One 9, 105807 (2014)]、多能性マーカーOCT4の発現低下、NESTIN及びTUJ1のような神経前駆体マーカー、並びにTBR2のアップレギュレーションが観察された(後者がiPSCよりも有意に高くなかった場合でも)(図6A)。TUJ1、MAP2、及びCTIP2タンパク質の存在により、皮質ニューロン系統への関与が成功したことが確認された(図6B図6E)。以前の研究は、NGN2転写因子の強制発現により、前脳興奮性ニューロンの生成が非常に速いことを示した[Zhang et al. Neuron 78, 785-798 (2013)]。しかし、分化の促進が確認されたものの、最近の研究は、誘導されたニューロンが不均一であることを示唆している[Lin et al. bioRxiv 2020.11.19.389445 (2020)、Carter et al. Front. Genome Ed. 2, 7 (2020)]。
【0054】
NGN2転写因子レベルのドキシサイクリン誘導性発現に続いて、ニューロン前駆細胞及びニューロン特異的転写産物発現のアップレギュレーションが観察された(図6F)。14日目に生成されたニューロンは、免疫蛍光染色によりSOX2、NESTIN、TUJ1、及びMAP2に陽性であった(図6G図6J)。したがって、より未熟な細胞及び多能性遺伝子を発現する細胞の持続と共に、ニューロン特異的な運命の獲得が速いことが確認された。
【0055】
星状細胞については、以前の研究で、NFI-A、NFI-B、及びSOX9転写因子の誘導により、マウス線維芽細胞からの星状細胞の分化が可能になることが示された[Caiazzo et al. Stem Cell Reports 4, 25-36 (2015)]。幹細胞由来のNPCにおいて、これらの転写因子の異なる組み合わせを過剰発現させることにより、他の研究が続いた [Canals et al. Nat. Methods 15, 693-696 (2018)、Li et al. 11, 998-1008 (2018)、Tchieu et al. Nat. Biotechnol. 37, 267-275 (2019)]。本発明では、SOX9転写因子がNPC期のAAVS1遺伝子座で過剰発現し、ヒト初代星状細胞により類似した星状細胞を形成した[上記に引用されるNeyrinck et al. (2021)]。S100β及びALDH1L1についてのiSOX9星状細胞における転写レベルは、ヒト初代星状細胞に匹敵するものであり[上記に引用されるNeyrinck et al. (2021)]、星状細胞特異的な同一性を示した(図7A)。ALDH1L1及びGFAPのRNA発現レベルは、タンパク質レベルでEAAT1及びS100β陽性細胞が同定され得たとしても、分化タイムライン中に変化しなかった(図7B図7E)。さらに、OCT4発現レベルの低下とSOX9発現の増加(ドキシサイクリンによって誘導されるが、ドキシサイクリンの除去後も持続する)は、星状細胞特異的な系統の関与を示した(図7A)。
【0056】
乏突起膠細胞については、Ehrlichらは、3つの転写因子SOX10、OLIG2、NKX6.2の誘導により、乏突起膠細胞の分化が促進されることを示した[Ehrlich et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 114, E2243-E2252 (2017)]。NESTIN、OLIG1、OLIG2、NKX2.2、及びMBPの転写レベルの増加が観察され、細胞は分化開始から24日以内にOPCに分化することが示された。ドキシサイクリンによるSOX10発現の増加は、RNAレベル(ドキシサイクリン添加終了時)でも実証された(図12F)。これは、MBP及びO4免疫蛍光及びフローサイトメトリー分析によって更に支持されている(図12G図12I)。
【0057】
全ての細胞型を特性評価した後、ニューロン、星状細胞、及び乏突起膠細胞の維持を可能にするマスター培地を選択した。本発明者らによる先行研究は、ニューロン-星状細胞を共培養するための培地(マスター培地1)[上記で引用されるNeyrinck et al. (2021)]及びニューロン-乏突起膠細胞を共培養するための培地(マスター培地2)[Garcia-Leon et al. Nat. Protoc. 15, 3716-3744 (2020)]の2つの培地を用いており、これらは、それぞれ電気的に機能的なプラットフォーム又は髄鞘形成プラットフォームの生成を可能とする。他の発表されている齧歯類ベースのニューロン-星状細胞-乏突起膠細胞の三種培養系も、三種培養における乏突起膠細胞の成長及び機能をサポートするために、マスター培地にトリヨードチロニン(T3)を使用した。T3を補充したマスター培地1及びマスター培地2を使用して、単独培養における3つの細胞型の維持を試験した。2つのマスター培地のいずれかで増殖した細胞について、皮質ニューロンについてのTUJ1、NESTIN及びTBR2;星状細胞についてのS100β、SOX9、ALDH1L1、及びGFAP;並びに乏突起膠細胞についてのNESTIN、OLIG1、OLIG2、NKX2.2、SOX10及びMBPの転写レベルに有意差は認められなかった(図8A図8C)。また、タンパク質レベルでは、ニューロン子孫におけるTUJ1+細胞の割合;星状細胞におけるS100β+細胞及び乏突起膠細胞におけるMBP+細胞は、M1培地とM2培地の両方で類似していた(図8D図8L)。これは、3つの細胞型の全てが両方の培地で生存し、mRNAレベルとタンパク質レベルの両方で評定された特異的細胞マーカー発現に変化がないことを示した。
【0058】
次に、同時播種された三種培養を開発し、単独培養と三種培養系の間で3つの細胞型全ての形態を比較した(図9)。三種培養系では、ニューロンが小さなクラスターを形成し、ニューロン束と星状細胞の間の中央に収容された乏突起膠細胞が神経突起束と細胞体クラスターを取り囲むことが観察された(図9A図9C)。また、三種培養系における細胞の配置は、細胞型の比率、細胞密度、及び培養期間に依存する(図9D図9H)。これらのパラメータを増加させることで、時間の経過と共に細胞クラスターの形成が支持され、細胞間相互作用が明らかに増加した。長期培養(図9E図9H図19)では、MBPとTUJ1の共局在染色(図15G)に見られるように、乏突起膠細胞は神経突起に沿うように枝を伸ばしているように見えた。これは、三種培養におけるニューロンの髄鞘形成の開始を示している。
【0059】
また、3つの細胞型の特性評価と定量のために、様々な抗体の組み合わせを試験することによって、三種培養系を評定するために培養条件を最適化した。3つの細胞型を、ニューロンはTUJ1、星状細胞はS100β、乏突起膠細胞はO4又はMBPといずれも正しく特性評価することができる(図18)。S100β染色は、星状細胞の細胞質以外の乏突起膠細胞核にもはっきりと見られた(図10図14)。これは、S100βの核発現を示すことが知られている三種培養系における未熟なOPCSの持続によって引き起こされる可能性がある。これは、GFAPのような星状細胞の追加の特異的マーカーに対する抗体を評価することで対処された。GFAPの発現はiSOX9星状細胞の単独培養でかすかに見られ [上記で引用されるNeyrinck et al. (2021)]、その発現は三種培養系では予想されていなかった。しかし、異なる供給源からの星状細胞を使用する他の研究グループは、3細胞共培養における星状細胞を特徴付けるための顕著な特徴としてGFAP染色を実証した。したがって、全ての細胞をプレーティングしてから2週間後及び3週間後の三種培養で、ニューロンに対するTUJ1及び乏突起膠細胞に対するMBPを組み合わせてGFAP染色を行った。それぞれの細胞型で特異的な染色が観察された(図19)。さらに、細胞密度、比率、播種戦略等の細胞培養パラメータを最適化した(図10図19)。細胞を低密度(例えば、細胞型あたり2500個及び5000個)でプレーティングすると、細胞、特にニューロンが神経突起を成長させ、ネットワークを形成するのに苦労する培養結果をもたらした(図9A図9B図10図13B)。細胞密度が高い場合、すなわち、タイプあたり30000個の細胞では、各細胞型がクラスター化し、画像定量には適していなかった(図9D図18)。したがって、細胞密度が低い細胞比は、より均質で定量化可能であった。2つの異なる実験で2つの異なる星状細胞集団(27日目と37日目)を使用して、三種培養におけるニューロン及び乏突起膠細胞の生存に対する星状細胞の高増殖の影響を制御した(図10図14)。予想通り、27日目の星状細胞を含む三種培養は、更に増殖性が高く、37日目の星状細胞を含む三種培養よりもS100β+細胞の割合が高かった。
【0060】
これまでの研究は、iNGN2駆動性のニューロン子孫は、in vivoのニューロンの電気生理学的測定に迫るニューロンの電気生理学的測定のモデルとなり、細胞培養期間が短縮される可能性が高いことを強調した[Nehme et al. Cell Rep. 23, 2509-2523 (2018)、Cheng et al. Curr. Protoc. Hum. Genet. 2017, 1-21 (2017)、Ho, et al. Methods 101, 113-124 (2016)、Liu et al. Nat. Commun. 4, (2013)]。また、iNGN2の子孫を、iPSCの皮質ニューロン子孫から最適化された培養条件を使用して、星状細胞、及び乏突起膠細胞を含むヒトの三種培養系内で使用した(図14)。ニューロンの形態に関しては、三種培養における皮質ニューロンよりもクラスター化が多く、iNGN2ニューロンの割合が少ないことが観察された。三種培養におけるニューロンの割合が低いのは、細胞クラスター内のニューロン定量が非効率的であることが原因である可能性がある。皮質ニューロンの三種培養と同様に、星状細胞の数が少ない共培養では、おそらく乏突起膠細胞に利用できるスペースが広いため、より多くの乏突起膠細胞が見つかった。
【0061】
ニューロン子孫とグリアの子孫の共培養がニューロンの成熟に及ぼす効果を調べた。これまでの研究は、グリア細胞の存在が、異なる層のニューロンマーカーの発現及び同期したニューロン活動の観点から、ニューロンの成熟の促進を誘導し得ることを実証した。星状細胞と乏突起膠細胞の両方の存在がニューロンの成熟にプラスの影響を与えるかどうかを評価するために、2つの皮質ニューロンマーカー(CTIP2及びSATB2)の存在を、3週間後の皮質ニューロン単独培養と比較して三種培養で評定した(図15A図15D)。ここでは、3週間にわたる皮質ニューロンの三種培養においてCTIP2+細胞及びSATB2+細胞の割合が増加した(図15E)。CTIP2及びSATB2の強度も、単独培養と比較して、3週目の終わりにこれらの細胞で高く(図15F)、ニューロンの成熟におけるグリア細胞の重要性を支持する。
【0062】
iNGN2ニューロンの三種培養では、iNGN2の単独培養と比較して、三種培養で成熟したグリア細胞と共培養した場合、電気的活動の観点からニューロンの成熟を調べるために、パイロットMEA実験を設計した。細胞と電極の界面がニューロンとグリアの形態に及ぼす影響を評価するために、同時播種した三種培養及び逐次播種した三種培養、並びにニューロンの単独培養で細胞形態を比較し(図20)、MEA記録によって5週間のニューロン活動を評定した。本発明は、iPSCの段階から14~21日後には既に成熟星状細胞及び乏突起膠細胞の存在下で分化が行われた場合のみ、iNGN2ニューロンにおける電気的活動を初めて示し、iPSC段階の後最大5週間はiNGN2単独培養で電気的活動が観察されなかった(後者は、公表された報告[上記で引用されるNeyrinck et al. (2021)]と一致する)。
【0063】
この実施例は以下を示す:1.ニューロンの単独培養は、三種培養系と比較して、ニューロンスパイク、活動性スパイク電極の割合、ニューロンバースト、及び活動性バースト電極の割合に関して、電気的活動が低い/全く示さない、2.高密度培養は、三種培養及び3D構造を形成するニューロンクラスターにおけるニューロン活動の低下により、長期MEA記録に適していない(三種培養系よりも単独培養でより顕著)、3.ニューロンの活動は、逐次播種された三種培養と同時播種された三種培養で異なる。4週目及び5週目には、低細胞密度の逐次播種で同時播種よりもニューロンの活動が多く起こり、このことから、ニューロンと乏突起膠細胞の共培養に星状細胞を播種すると、ニューロンの成熟が良好に誘導されることが示される(図15図21)。この観察の考えられる説明の1つは、逐次播種された三種培養において、ニューロンネットワークの形成が良好になり、星状細胞数がより適切に制御されたこと(より古く、より成熟した星状細胞の追加による)である可能性がある。同様の研究が行われており、iNGN2ニューロン-iSOX9星状細胞のみの共培養がMEAによって分析された。ニューロン活動は共培養の40日後に観察されたが、本発明の三種培養は共培養後2週間~3週間という早い時期にニューロン活動を示す。
【0064】
これまで、電気生理学的研究は、主に星状細胞がニューロンに及ぼす影響を評定することを含んでいたが、このプロセスにおける乏突起膠細胞の役割を評定した研究はあったとしても少数であった。
【0065】
本発明は、ニューロン、星状細胞、及び乏突起膠細胞を含むヒトiPSC由来の三種培養モデルシステムの開発を開示する。この三種培養系は、様々な皮質層ニューロンマーカーの発現を評価することによるニューロンの成熟を特徴としており、最も興味深いことに、MEAによって評定される電気生理学的活動の改善を特徴としている。このモデルは、神経発達、神経疾患の研究から、学界と産業界の両方での創薬研究に至るまで、無数の用途に使用することができる。
【0066】
この三種培養モデルシステムを、幾つかの神経障害をin vitroでモデル化し、疾患の進行及び疾患細胞型と非疾患細胞型の相互作用を研究するために使用することができる。脳オルガノイド及びニューロンスフェロイドのような現在利用可能な3Dモデルは、ヒトの神経発達の特定の重要な側面を再現しているが、グリア細胞は培養の後半(数週間/数か月)にのみ発生し、結果として、一般的に血管新生の欠如及び壊死のような他の問題を伴う。これに対し、ここで提示するヒトの三種培養のような複雑な共培養モデルは、分化前のニューロン及びグリアの子孫を同時に共培養できるという利点があり、3D環境におけるニューロンとグリアの相互作用を理解する上で高い可能性を秘めている。3D三種培養は、2D三種培養系よりも3Dの方がはるかに複雑であるため、in vivo環境をよりよく再現し、より信頼性の高い情報を提供する可能性がある。
【0067】
3D三種培養系を構築するために、ニューロン、星状細胞、及び乏突起膠細胞をヒトマトリゲル又は他のハイドロゲル内に封入し、更に培養物中で成熟させることができる。また、マイクロ流体デバイスに組み込んで微小環境を制御し、効率的な細胞成熟を更に支持することもできる。あるいは、3D三種培養をハンギングドロップ法(hanging drop method)で成長させることもできる。かかる3D三種培養系は、空間トランスクリプトミクス及びシングルセルRNAシーケンシング等の高度な技術を使用して、ヒトの発達中の脳及び成熟した脳からの同様のデータと比較して、より広範囲に特性評価することができ、より良く細胞系統の発達を理解することができる。このアプローチは、内皮細胞及びミクログリアのような他の重要な細胞型を追加して、より複雑な培養を開発することで更に補完することができ、神経科学研究における幅広い機会を開くことができる。
【0068】
また、開発されたMEA統合ヒト三種培養系を、ニューロン-乏突起膠細胞及びニューロン-星状細胞の相互作用を解明し、ニューロンの機能/活動に対するグリア細胞の変異の影響を研究するためにも使用することができる。さらに、MEA統合三種培養系は、ニューロン、星状細胞、及び/又は乏突起膠細胞の問題に関連する神経障害に対する新規分子を試験するための薬理学的薬物スクリーニングにも拡張することができる。
【実施例
【0069】
実施例1.方法及び材料
ヒトiPSC培養
全てのhiPSC株(SIGi001-A、Sigma)(SIGi001-A株のAAVS1遺伝子座にTET-ON-SOX9カセットを挿入して作製したiSOX9-iPSC[上記で引用されるNeyrinck et al. (2021)];SIGi001-A株のAAVS1遺伝子座にTET-ON-SOX10カセットを挿入して作製したiSOX10-iPSC[上記で引用されるGarcia-Leon et al. (2020)];及びBIONi010-C + NGN2 #I7-26、BIONi010-C株のAAVS1遺伝子座にTET-ON-NGN2カセットを含む;Bioneer)を、Penstrep(Gibco)及びE8サプリメント(Gibco)を補充したE8培地(Gibco)中、37℃、5%CO2及び5%O2で維持した。iPSCが80%コンフルエントになると、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(Gibco)を用いて細胞を採取し、新しいマトリゲル(Life Technology)コーティングプレートに再度プレーティングした。
【0070】
単独培養
皮質ニューロン、誘導ニューロン、星状細胞、及び乏突起膠細胞は、親iPSC株から分化させた。各プロトコルの間、細胞を摂氏37度、5%CO2、加湿95%のインキュベーターに置き、培地の交換を1日おきに行った。細胞分化プロトコルに用いた培地組成を表1に要約した。
【0071】
皮質ニューロンの分化
皮質ニューロンを、Shi et al. Nat. Protoc. 7, 1836-1846 (2012)からのプロトコルに従ってhiPSC(SIGi001-A、Sigma)から分化させた。皮質ニューロンの分化のタイムラインを、分化の様々な段階を表す明視野画像で図1に説明する。iPSCを、アキュターゼ(Sigma)を用いて継代し、マトリゲルコーティングプレート上にRevitaCell(Gibco)をスパイクしたmTESR(StemCell)中25万細胞/cm2の密度でプレーティングした。11日間、低分子-1 μM LDN193189(Milteny)及び10 μM SB431542(Tocris)と神経維持培地(NMM)(神経誘導培地、表1)の組み合わせを用いて神経誘導を行った。11日目から15日目にかけて、bFGF2(PeproTech、20 ng/ml)をNMM培地に添加し、ニューロン前駆細胞の増殖を誘導した。培養物を、3回連続のディスパーゼ(Roche)処理によって精製し、神経ロゼットを形成させた。27日目に、5000個~10000個の細胞/cm2神経前駆細胞をアキュターゼを使用して、RevitaCellで補充したNMM中の新しいマトリゲルプレーティング細胞に播種し、100日目まで維持した。また、一部の細胞を、将来の使用のために10%DMSO(Sigma)で凍結保存した。40日目と60日目の神経前駆体細胞に免疫染色を行い、ニューロン特異的マーカー(TUJ1及びMAP2(40日目)、TUJ1及びCTIP2(60日目))を特性評価した。
【0072】
誘導ニューロン(iNGN2)の分化
BIONi010-C+NGN2 #I7-26 iPSC株(略称iNGN2)を使用して、ドキシサイクリン処理[上記で引用されるNeyrinck et al. (2021)]によって誘導されるNGN2の過剰発現により神経前駆細胞集団を作製した。分化の様々な段階を表す明視野画像を含むiNGN2の分化のタイムラインを図2に説明する。細胞を拡大増殖させ、80%~90%のコンフルエントになるまで成長させた。-1日目に、マトリゲルコーティングプレート上にRevitaCellを添加したmTESR培地中100000細胞/cm2で細胞をプレーティングした。細胞をNBM培地中のドキシサイクリン(3 mg/ml)で6日間処理し、NGN2転写因子の過剰発現を誘導した。4日目に、アキュターゼを用いて細胞を解離し、異なる密度(75000個~300000細胞/cm2)でマトリゲルコーティングプレート上に再度プレーティングした。ドキシサイクリンを6日間添加した後、ニューロン子孫を含むウェルを将来の使用のために10%DMSOで凍結保存した。残りの細胞は、NMMで3週間、NBMで更に3週間培養中に維持した。14日目のiNGN2子孫を、マトリゲルでコーティングした96ウェルプレートに20000細胞/ウェルで再度プレーティングし、1週間後に免疫蛍光顕微鏡法により特性評価した。
【0073】
星状細胞の分化
TET-ON-SOX9カセットをSIGi001-A株のAAVS1遺伝子座に挿入して作製したiSOX9-iPSCを使用して、ドキシサイクリン処理[上記で引用されるNeyrinck et al. (2021)]によって誘導されるSOX9の過剰発現により星状細胞前駆細胞集団を作製した。星状細胞の分化のタイムラインを、分化の様々な段階を表す明視野画像で図3に示す。iSOX9 iPSCをマトリゲルコーティングプレート上に100000細胞/cm2でプレーティングし、80%~90%のコンフルエントになるまで成長させた。-1日目に、アキュターゼを用いて細胞を継代し、150000細胞/cm2の細胞を1×RevitaCellを補充したmTESR培地に再度プレーティングした。12日間の神経誘導は、1 μMのLDN193189及び10 μMのSB431542を含む神経誘導培地を添加して行った。12日目に、アキュターゼを用いて細胞を剥離し、1×RevitaCell及び20 ng/mlのbFGFを補充したNMM中、マトリゲルコーティングプレートに65000細胞/cm2で再度プレーティングした。翌日、3 μg/mlのドキシサイクリンを補充した星状細胞成熟培地を6日間与え、SOX9転写因子を誘導した。細胞のコンフルエント度が90%に達すると、アキュターゼを用いて20000細胞/cm2の密度で最終プレーティングを行った。18日目に一部の細胞を、20%DMSOを補充した成熟培地で凍結保存した。残りの細胞を、500 μM N-アセチル-L-システイン(Sigma)、0.1 mM cAMP(Sigma)、10 ng/ml CNTF(Peprotech)、10 ng/ml BMP4(Peprotech)、5 ng/ml HB-EGF(Peprotech)を含む星状細胞成熟培地中で培養中に維持し、星状細胞成熟のために更に3週間維持した。星状細胞を、18日目にマトリゲルでコーティングされた96ウェルプレートに5000細胞/ウェルでプレーティングし、1週間後にEAAT1、ALDH1L1、S100β及びGFAPについて免疫蛍光顕微鏡法で特性評価した。
【0074】
乏突起膠細胞の分化
TET-ON-SOX10カセットをSIGi001-A株のAAVS1遺伝子座に挿入して作製したiSOX10 iPSC細胞株を用いて、ドキシサイクリン処理により誘導されたSOX10過剰発現により乏突起膠細胞前駆体細胞(OPC)を作製した。iSOX10 iPSCをマトリゲルコーティングプレートに100000細胞/cm2でプレーティングし、80~90%のコンフルエントになるまで成長させた。-2日目に、iSOX10 iPSCを、アキュターゼを用いて、マトリゲルコーティングプレートに1×RevitaCellを補充したmTESR培地中25000細胞/cm2の密度で再度プレーティングした。0日目から、0.1 μMのRA(Sigma)、10 μMのSB431542、1 μMのLDN-193189を含む乏突起膠細胞誘導培地を添加することで6日間神経誘導を行い、EB形成を必要とせずに神経ロゼット形成を生じた。8日目に、0.1 μM RA、1 μM SAG(Milllipore)を含む培地を3日間添加し、in vivo乏突起膠細胞の発生を模倣した。細胞を、12日目に、アキュターゼを使用して、RevitaCellを含む8日目培地中50細胞/cm2~75000細胞/cm2でPLO-ラミニンコーティングプレートに再度プレーティングし、細胞を3 mg/mlのドキシサイクリンで22日目まで処理した。14日目に、培地に10 ng/mlのPDGFaa(Peprotech)、10 ng/mlのIGF1、5 ng/mlのHGF(Peprotech)、10 ng/mlのNT3(Peprotech)、60 ng/mlのT3(Sigma)、100 ng/mlのビオチン(Sigma)、1 μMのcAMP(Sigma)、2 μg/mlのドキシサイクリン(Sigma)も補充し、24日目まで乏突起膠細胞の運命転換を支持した。24日目の乏突起膠細胞前駆体細胞(OPC)を15%DMSOで凍結保存し、FACS分析を用いてO4陽性細胞の割合を特定するために使用した。24日目の24日目OPCも、PLO-ラミニンでコーティングされた96ウェルプレートに5000細胞/ウェルでプレーティングし、1週間後に乏突起膠細胞特異的マーカーであるO4及びMBPについて免疫蛍光顕微鏡法により特性評価を行った。
【0075】
定量的リアルタイムPCR
RNeasy(Qiagen)キットを用いてRNAを抽出し、nanodrop(Isogen Life Sciences)を用いてRNAの品質を分析した。cDNAを、SuperScript III第一鎖合成システム(Life Technologies)を用いて逆転写によりRNAサンプルから作製した。定量的リアルタイムPCR(RT-qPCR)を、Platinum SYBR Green qPCR Supermix-UDG(Invitrogen)を備えるViia7 Real-Time PCRシステム(Thermo fisher Scientific)を用いて行い、ハウスキーピング内在性参照遺伝子であるグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)で発現値を正規化した。PCRサイクルは、95℃で2分、続いて95℃で15分及び60℃で45分を40サイクルで構成されていた。
【0076】
フローサイトメトリーと細胞ソーティング
iSOX10 iPSC由来のOPCをDPBSで洗浄し、アキュターゼにより単一細胞懸濁液に解離し、NMM添加後、0.3 RCFで5分間遠心分離した。細胞ペレットを200 mlのPBSに再懸濁し、2つの異なるファルコンチューブに分割した。抗O4-APC抗体(Miltenyi;PBSで1/100希釈)及びIgM-APC抗体(Miltenyi;PBSで1/100希釈)を2つの別々のチューブに添加し、4度で15分間インキュベートした。PBSで洗浄した後、FACSCanto HTSフローサイトメーター(BD Biosciences)を用いてフローサイトメトリーを行い、得られたデータをFACSDiva(バージョン6.1.2)ソフトウェアを用いて分析した。
【0077】
免疫細胞化学
96ウェルプレート(Greiner-Bio)にプレーティングした細胞をPBS(Thermo Fisher)で3回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド(PFA)(Thermo Fisher)を用いて室温(RT)で20分間固定した。固定細胞をPBSで3回洗浄し、その間に5分間の間隔を空けた。次いで、細胞を透過処理し、0.1% Triton X-100(Sigma;PBSで希釈)及び5%ヤギ血清(Dako;PBSで希釈)を含むPBSを使用して、暗所で1時間ブロッキングした。5%ヤギ血清を含むPBSで調製した一次抗体(表2に要約)を添加し、細胞を4度で一晩インキュベートした。細胞をPBSで3回洗浄し、Dako抗体希釈液で調製した二次抗体(表2)とRTで1時間インキュベートした。核染色を、細胞をヘキスト(PBSで5000分の1希釈)と共に暗所にてRTで20分間インキュベートすることによって行った。細胞をPBSで5分間隔で2回洗浄し、イメージングまで暗所で4度のPBS中で保存した。
【0078】
蛍光画像をOperetta、PerkinElmerを用いて撮影し、Columbus画像データ保存及び解析ソフトウェアバージョン2.9(PerkinElmer)を用いて解析した。このソフトウェアは、強度、形態、並びにテクスチャー及び真円度のような他のパラメータに基づいて、様々な細胞型を識別した。細胞を、最初に核染色の存在に基づいて選択し、続いて細胞パラメータの特性評価を行った。次に、GraphPad Prismソフトウェアバージョン5.04を使用して定量データをプロットした。
【0079】
実施例2.共培養
培地組成
38日目の神経前駆体細胞(NPC)、27日目のiSOX9-星状細胞、及び24日目のiSOX10-OPCの単独培養を、それぞれM1培地及びM2培地中(組成については表3を参照されたい)、マトリゲルでコーティングした96ウェルプレート及び6ウェルプレートにおいて1週間培養し、1日おきに培地を交換した。8日目に、細胞をRT-qPCR及び免疫蛍光顕微鏡法で特異的マーカーの特性評価を行った。分子マーカーの適切な発現、及び共培養系における全ての3細胞集団の細胞生存を可能にする培地を、その後の全ての三種培養のマスター培地として定義した。
【0080】
三種培養系
三種培養系を、3つの細胞型の細胞の生存、分化、及び共成熟を共に最適化するために、1回及び2回の時点での同時播種及び逐次播種の2つの異なる細胞播種戦略によって構築した。
【0081】
3細胞集団全ての同時播種:
38日目のSIGi001-AのNPC、27日目-37日目のiSOX9星状細胞、及び24日目のiSOX10-OPCを、PLO-ラミニンコーティングされた96ウェルプレートにおいて、RevitaCell(1/100)を補充したM1培地中、異なる細胞密度及び細胞比で一緒に播種した(表3)。3 mg/mlのドキシサイクリンを補充したM1培地を三種培養に1週間添加し、その後2週間はM1培地のみに置き換えた(図5のプロトコル)。同時播種された三種培養物を3週間成熟させ、細胞特異的抗体の組み合わせ(表4)を用いた免疫蛍光イメージングを毎週実施した。
【0082】
2つの時点でのニューロン、星状細胞、及び乏突起膠細胞の逐次播種
38日目のSIGi001-A NPC、27日目/37日目のiSOX9-星状細胞、及び24日目のiSOX10-OPCを、図5に示すプロトコルを使用して逐次播種された三種培養に使用した。3つの細胞の組み合わせ:iSOX10-OPCのみ(逐次播種II)、SIGi001-A NPC-iSO10-OPC-(逐次播種II.b)、iSOX9-星状細胞-iSOX10-OPC(逐次播種II.c)を、最初に、PLO-ラミニンでコーティングした96ウェルプレートに異なる細胞密度及び比率で播種し(表4)、続いて、1週間後に残りの細胞型(iSOX9-星状細胞、SIGi001-A NPC、及びSIGi001-A NPC-iSOX9-星状細胞)を添加した。細胞を3 μg/mlのドキシサイクリンを含む培地1に1週間維持した。8日目に、細胞を固定し、細胞特異的抗体の組み合わせ(表2)を用いた免疫蛍光イメージングを実施した。
【0083】
BIONi010-C iNGN2 NPC、iSOX9-星状細胞、及びiSOX10-OPCを含む三種培養
BIONi010-C iNGN2ニューロンを用いた三種培養を、皮質NPC三種培養系用に最適化されたプロトコルでiSOX9-星状細胞及びiSOX10-OPCを用いて構築した。14日目のBIONi010-C iNGN2 NPC、37日目のiSOX9-星状細胞、及び24日目のiSOX10-OPCを、細胞密度及び比率が異なる同時播種及び逐次播種として播種した(表4)。3 μgのドキシサイクリンを補充したM1培地を、両方の播種戦略で1週間使用した。免疫蛍光法を、適切な抗体の組み合わせ(表2)を用いて8日後に実施した。
【0084】
三種培養系の成熟
三種培養系におけるSIGi001-A NPCの成熟を、免疫蛍光顕微鏡法を用いて皮質ニューロンマーカーCTIP2(第V層)及びSATB2(第IV層)の発現を同定することによって評価した。BIONi010-C iNGN2ニューロンの成熟を特性評価するために、MEAプレート上に三種培養を構築し、共培養条件及び単独培養条件でのニューロンの活動を評価した。
【0085】
皮質三種培養系における深層ニューロンマーカー
細胞比及び密度が異なるSIGi001-A NPC、27日目のiSOX9-星状細胞、及び24日目のiSOX9-OPCを含む三種培養(表4)を、PLO-ラミニン96ウェルプレートで3週間培養した。さらに、SIGi001-A NPC単独培養を使用して、三種培養における成熟を比較した。免疫蛍光イメージングを、ニューロンについてCTIP2及びSATB2、星状細胞についてS100β、及び乏突起膠細胞についてMBPに対する抗体を用いて毎週実施した。
【0086】
iNGN2三種培養系の多電極アレイ分析
4日目のBIONi010-C iNGN2ニューロン前駆体細胞、46日目のiSOX9-星状細胞、及び24日目のiSOX10-OPCを、ウェルあたり12個の微小電極を含む24ウェルMEAプレート(マルチチャネルシステム)にプレーティングした。同時播種及び逐次播種法を用いて、細胞を3つの異なる密度と1つの細胞比で(表4)プレーティングした。3つの細胞型の同時播種では、細胞を同じ日に播種し、逐次播種では、iNGN2子孫とiSOX10-OPCを最初に-1日目にプレーティングし、1週間後にiSOX9-星状細胞を添加した。培地を、最初の1週間は3 mg/mlのドキシサイクリンを補充したマスター培地1、その後4週間はマスター培地1のみで1日おきに交換した。MEA記録を、マルチウェルシステムMEAインターフェースボードのマルチブートレコーダー(マルチチャネルシステム)で週に1回行った。電気生理学的データを、Multiwell-analyserソフトウェアバージョン1.8.7(マルチチャネルシステム)で分析した。
【0087】
統計学的分析
一元配置分散分析(多重比較)を使用して、免疫蛍光強度及びRT-qPCRデータについて異なる群の平均を比較した。SIGi001-A NPC、iNGN2 NPC、iSOX9-星状細胞、及びiSO10-OPCの単独培養分化中の遺伝子発現を解析するために、3つの技術的複製及び2つの生物学的複製を採取した(図5図9)。統計的差は、Windows用GraphPad Prismバージョン5.04ソフトウェア(GraphPad Software、米国カリフォルニア州サンディエゴ)で多重比較のためにBonferroni補正を使用して実行し、p値<0.05で有意であると見なされた。データは平均±標準偏差として示され、p値<0.05、<0.01、又は<0.001の有意差はそれぞれ*、**、***とマークされる。単独培養及び三種培養の免疫染色については、ウェルの少なくとも70%をカバーする複数のフィールドを持つ3つの技術的複製及び2つの生物学的複製を解析のために検討した。免疫蛍光顕微鏡画像の解析を、Columbus画像データ保存及び解析ソフトウェアを使用して行った。1回のMEAベースの実験のみを、共培養条件ごとに3つの技術的複製、及びニューロンの単独培養に2つの技術的複製で実施した。MEA分析をマルチウェルシステムアナライザーで行い、データを各条件の中間として示す。
【0088】
実施例3.iPSC由来のニューロン、星状細胞、及び乏突起膠細胞の特性評価
ニューロン(野生型iPSC及びiNGN2 iPSC由来)、星状細胞(iSOX9 iPSC)、乏突起膠細胞(iSOX10 iPSC由来)を、それぞれのiPSC細胞株から成長因子ベース及び転写因子ベースの分化プロトコルによって分化した。分化した細胞を特性評価するために、多能性(OCT4)、神経前駆細胞(NESTIN)、及び各細胞型の特異的マーカーのRNA発現レベルを、RT-qPCRを介する分化中の様々な時点で評価した。Ct値をハウスキーピング遺伝子GAPDHの発現値と比較し、ΔCt値を図6A図6F図7A及び図7Fに示すようにプロットした。
【0089】
皮質ニューロン
皮質ニューロンを、Shi et al. [Shi, Y., Kirwan, P. & Livesey, F. J.Directed differentiation of human pluripotent stem cells to cerebral cortex neurons and neural networks. Nat. Protoc. 7, 1836-1846 (2012)]から適合されたプロトコルを用いて、SIGi001-A野生型hiPSCから分化させた。多能性マーカーOCT4の発現は、-2日目(ΔCt=1.259±1.158)と比較して、分化タイムライン(100日目:ΔCt=-5.341±0.9567)に沿ってダウンレギュレーションされた(p<0.05)。NESTINの転写レベルは、-2日目(ΔCt=-3.851±0.5735)と比較して、20日目(ΔCt=-2.010±0.8491)におよそ2倍アップレギュレーションし、100日目(ΔCt=-4.280±0.8252)まで徐々に低下した。TUJ1の発現は、80日目(ΔCt=-2.153±0.7884)まで分化の過程で有意に増加し、-2日目(ΔCt=-6.166±0.3954)と比較して3倍の値に達した(p<0.05)。別のニューロンマーカーであるTBR2の転写レベルは、分化に沿って変化し、-2日目(ΔCt=-21.37±1.797)と比較して60日目(ΔCt=-15.75±0.3055)の発現が最も高かった(図6A)。
【0090】
ニューロンは微視的な視野全体に広がり、広範囲の分岐を示した。細胞は、TUJ1及びMAP2タンパク質マーカーの両方について陽性に染色された(図6B図6C)。また、個々の細胞と共にニューロンの小さなクラスターも観察された。TUJ1の発現はニューロン細胞体と神経突起の両方で観察されたが、MAP2は樹状突起でのみ観察された。また、60日目のニューロンをTUJ1及びCTIP2で染色し、単独培養での成熟を評価した(図6D図6E)。これは、細胞クラスターをつなぐ厚い軸索束の存在、及び深層ニューロンマーカーCTIP2の核発現を実証した。
【0091】
NGN2誘導ニューロン(iNGN2)
BIONi010-C iNGN2 iPSCは、図2に記載のプロトコルに従ってニューロンに分化させた[上記で引用されるNeyrinck et al. (2021)]。OCT4の発現は、-1日目(ΔCt=-1.849±0.6230)と比較して、7日目(ΔCt=-10.67±2.570)及び6週目(ΔCt=-10.47±5.302)におよそ10分の1にダウンレギュレーションされた。NESTIN発現は7日目に2倍増加し(ΔCt=-2.764±0.9504)、次いで分化終了まで減少し(ΔCt=-3.150±2.167)、6週目までに神経前駆細胞が成熟したことを示している。TUJ1の発現は、7日目(ΔCt=-1.334±0.1761)及び6週目(ΔCt=-2.826±0.7163)で、-1日目(ΔCt=-6.560±0.1633)と比較しておよそ6倍に増加し、ニューロンの運命が特定されていることを実証する。NGN2の発現は、7日目(ΔCt=-12.10±0.2751)に-1日目(ΔCt=-18.50±0.01273)から66%増加し、6週目まで変化しなかった(ΔCt=-11.73±0.2135)(図6F)。
【0092】
SOX2、NESTIN、TUJ1及びMAP2陽性に染色された細胞の存在を、免疫蛍光顕微鏡法を用いて観察した(図6G図6J)。21日目のiNGN2子孫は、4つのマーカー全てで陽性であった。細胞はニューロンのロゼットとして配置され、細胞培養全体に分布する小さな細胞クラスターは、21日目に未熟なニューロンの存在を示した。TUJ1及びMAP2の発現は、全ての神経突起で観察された(図6G図6H)。NESTIN及びSOX2の発現は、それぞれ細胞体及び神経21日目のiNGN2子孫の核で観察された(図6I図6J)。
【0093】
星状細胞
iSOX9 iPSCは、図3に示すプロトコルを用いて星状細胞に分化させた[上記で引用されるNeyrinck et al. (2021)]。OCT4の発現は、-1日目(ΔCt=-1.392±0.3486)と比較して、18日目に6.5倍低く(ΔCt=-8.941±0.9157)、27日目に11倍低かった(ΔCt=-10.00±0.3005)。NESTIN発現は、-1日目(ΔCt=-4.242±0.4059)と比較して18日目に倍増し(ΔCt=-2.011±0.1322)、次いで27日目に減少し(ΔCt=-3.039±0.6314)、NPCから星状細胞への成熟を示した。SOX9発現は、-1日目(ΔCt=-8.870±0.3125)と比較して、ドキシサイクリン処理後の18日目に4倍高く(ΔCt=-2.907±4.309)、ドキシサイクリンが駆動転写因子のアップレギュレーションを誘発したことを実証し、27日目でも高いままであり(ΔCt=-7.059±0.5226)、星状細胞における内因性SOX9発現を実証した。S100β発現のおよそ4倍の有意な増加は、-1日目(ΔCt=-13.08±0.7913)と比較して、18日目(ΔCt=-4.816±1.039)に観察され、27日目におよそ60%の増加が観察され(ΔCt=-8.005±0.7121)、グリア細胞の運命の特定(p<0.01)を示した。GFAP及びALDH1L1発現について、分化タイムラインに沿って有意差は検出されなかった(図7A)。
【0094】
星状細胞は、細長い形態と、S100β、EAAT1、ALDH1L1、及びGFAPの陽性発現を示した(図7B図7E)。S100βの発現は、細胞質(高)と核(程度が低い)の両方で観察されたが(図7B)、EAAT1、ALDH1L1、及びGFAPの発現は細胞質のみであった(図7C図7E)。
【0095】
乏突起膠細胞
SIGi001-A iSOX10-iPSCを使用し、図4に示すプロトコルを用いて乏突起膠細胞を作製した[上記で引用されるGarcia-Leon et al. (2020)]。OCT4の転写レベルは12日目まで変化しなかったが(12日目のΔCt=-3.518±0.5657対-2日目のΔCt=-3.837±0.1810)、24日目(ΔCt=-4.228±1.829)には10%の減少を示した。NESTIN発現は、-2日目(ΔCt=-4.265±0.2659)から12日目(ΔCt=-2.896±1.202)まで倍増し、24日目まで安定していた(ΔCt=-2.019±0.1047)。MBPの発現レベルは18日目まで低く変化しなかったが(ΔCt=-15.36±1.830)、-2日目(ΔCt=-15.11±0.4780)と比較して24日目に8倍誘導された(ΔCt=-2.440±1.275)(p<0.01)。OLIG1発現も、-2日目(ΔCt=-15.18±0.2263)と比較して、18日目に80%増加し(ΔCt=-12.14±2.567)、24日目に2倍増加した(ΔCt=-7.483±0.7022)(p<0.05)。さらに、OLIG2の発現は-2日目(ΔCt=-15.06±1.388)から18日目に30%増加し(ΔCt=-10.77±2.945)、24日目には倍増し(ΔCt=-5.960±1.498)、乏突起膠細胞前駆細胞の存在を示した。NKX2.2の発現も18日目に20%増加し(ΔCt=-12.74±5.827)、24日目に3倍増加した(ΔCt=-5.960±1.498)。最後に、SOX10転写レベルは-2日目(ΔCt=-8.040±0.3910)から18日目(ΔCt=-6.545±1.942)まで上昇し、24日目は-2日目よりも8倍高く(0.6250±0.4992)、ドキシサイクリン誘発性過剰発現(p<0.05)を示した(図7F)。
【0096】
乏突起膠細胞は、入り組んだ複雑なパターンを持つ典型的な丸い形態を示した。細胞は、O4及びMBPの両方について陽性に染色された(図7G図7H)。MBP染色及びO4染色は、乏突起膠細胞の細胞質で観察された。さらに、コンジュゲート化抗O4-APC抗体を用いたフローサイトメトリーは、未染色の陰性対照乏突起膠細胞における1%のO4発現と比較して、24日目に乏突起膠細胞の96.9%がO4陽性であったことを示した(図7I)。
【0097】
本実施例は、親iPSC株に由来するニューロン及びグリア細胞が、遺伝子発現パターンだけでなく、期待される形態も提示することを示す。
【0098】
実施例4.M1培地とM2培地はいずれも三種培養系における3つ細胞型全ての生存を支持する
細胞培養培地の組成は、細胞生物学、遺伝子発現、及び生存において重要な役割を果たす。脳を模倣した三種培養を作るには、脳生理学の基本原理を再現し、細胞を成熟させ、時間依存的に機能させる必要がある。NPC子孫、星状細胞、及び乏突起膠細胞における特定の細胞マーカーのRNAレベルを、RT-qPCRを介してM1培地及びM2培地で7日間培養した後に評価した。ΔCt値を、ハウスキーピング遺伝子としてのGAPDHに関して計算した。
【0099】
TUJ1、NESTIN、及びTBR2の転写レベルは、M1培地及びM2培地のいずれかにて維持されたNPCについて有意差を示さなかった(図13A)。乏突起膠細胞の場合、SOX10、MBP、OLIG1、OLIG2及びNKX2.2の発現も、M1培地とM2培地の間で有意差はなかった(図13B)。同様に、iSOX9-星状細胞を7日間培養した場合、星状細胞マーカー遺伝子S100β、SOX9、ALDH1L1、及びGFAPの発現は、M1培地とM2培地の間で有意差はなかった(図13C)。
【0100】
TUJ1(ΔCt=-4.980±0.3185(M1);ΔCt=-4.530±0.1155(M2))、NESTIN(ΔCt=-4.550±0.1310(M1);ΔCt=-4.914±0.001500(M2))及びTBR2(ΔCt=-17.38±1.313(M1);ΔCt=-15.92±0.2290(M2))の転写レベルは、NPCについてM1培地とM2培地の間に有意差を示さなかった(図13A)。
【0101】
乏突起膠細胞では、SOX10の発現(ΔCt=0.1450±0.06930(M1);ΔCt=0.3100±0.1853(M2))、MBP(ΔCt=-1.992±1.684(M1);ΔCt=-2.522±1.025(M2))、OLIG1(ΔCt=-8.227±1.276(M1)、ΔCt=-8.319±0.6569(M2))、OLIG2(ΔCt=-7.046±2.542(M1);ΔCt=-7.302±1.952(M2))及びNKX2.2(ΔCt=-4.748±0.07425(M1);ΔCt=-4.634±0.5310(M2))も、M1培地とM2培地の間で有意差は認めらなかった(図13B)。
【0102】
同様に、星状細胞マーカーS100β(ΔCt=-7.582±0.06750(M1);ΔCt=-8.543±0.08103(M2))、SOX9(ΔCt=-6.763±0.04400(M1);ΔCt=-6.881±0.04989(M2))、ALDH1L1(ΔCt=-19.25±0.1035(M1);ΔCt=-19.00±0.3008(M2))及びGFAP(ΔCt=-15.51±0.1360(M1);ΔCt=-16.15±0.1025(M2))の発現は、34日目の星状細胞についてM1培地とM2培地の間で有意差はなかった(図13C)。
【0103】
免疫染色も、M1(66.81±1.955 TUJ1+%細胞)及びM2培地(63.15±6.760 TUJ1+%細胞)のニューロン単独培養におけるTUJ1陽性細胞の割合に有意差を示さなかった(図13D図13F)。乏突起膠細胞の単独培養では、MBP陽性細胞の割合も、M1培地(51.63±2.620 MBP+%細胞)及びM2培地(53.12±1.815 MBP+%細胞)の両方で類似していた(図13G図13I)。同様に、S100β陽性細胞の割合は、M1培地(65.52±3.910 S100β+%細胞)及びM2培地(67.34±2.068 S100β+%細胞)において有意差はなかった(図13J図13L)。
【0104】
この実施例は、M1培地及びM2培地が、生存率が高く、転写物及びタンパク質発現が類似している3つの細胞型全ての維持に適していることを示している。
【0105】
実施例5.iPSC由来皮質ニューロン及びグリアを含むヒト三種培養系
ここで提示されるアプローチは、ゲノム工学に加えてiPSC技術を組み合わせ、ヒトの脳の発生及び疾患を探索するためのツールとして、3細胞共培養/三種培養を作成する。
【0106】
ヒト三種培養系は、M1培地を使用して開発された。複数の時点、異なる細胞密度及び比率を用いた同時細胞播種及び逐次細胞播種を行い、異なる抗体の組み合わせを試験して、共培養における細胞型及び細胞集団比を正しく特性評価した。
【0107】
実施例6.神経細胞の形態は単独培養と比較して三種培養系で異なる
SIGi001-A NPC、iSOX9-星状細胞、及びiSOX10-OPCの同時播種及び逐次播種の両方を使用して、三種培養系において3つの細胞型全てに類似した形態学的特徴を持つ細胞が観察された。NPCに似た形態を持つ細胞は、単独培養系(図13D図13E)では、細胞クラスター間にスペースがなく、ウェル全体にニューロンが散在配置されているのに比べて、星状細胞と乏突起膠細胞のニューロンクラスターの間に分散した微視的な視野全体にクラスターの形で存在していた(図9A図9D)。神経突起は、三種培養系において星状細胞と乏突起膠細胞の両方に近接して観察された。星状細胞の形態は、単独培養系と三種培養系の両方で大きく異なるように見えた。幾つかの細胞は二股に分かれた星状の円形の神経細胞体であり、他の細胞は細長い棒状の神経細胞体であった。しかし、それらは、単独培養系(図13J図13K)の分離された配置と比較して、三種培養(図9A図9D)では神経突起束の近くで見られた。全体として、星状細胞は、ニューロンが絡み合ったプレートの底を覆う細長い平らな細胞として観察された。対照的に、乏突起膠細胞は、単独培養で見られる分離された細胞(図13G図13H)と比較して、三種培養ではニューロン及び星状細胞のクラスターに囲まれたグループに存在していた(図9A図9D)。乏突起膠細胞は円形で、三種培養系の神経突起及び星状細胞と密接に接触していた(図9A図9D)。さらに、三種培養系は、単独培養系の平面単層と比較して、星状細胞及び乏突起膠細胞の複数の層を持っているように見えた。ニューロンは、単独培養と三種培養の両方で複数の層に存在していた。
【0108】
また、三種培養における細胞形態は、細胞の比率及び密度に依存することがわかった。より高密度の細胞培養(図9C図9D)では、乏突起膠細胞は、後の免疫蛍光画像(図10図14)でも観察されるように、おそらく残されたスペースが限られているために、ニューロン-星状細胞クラスター内に蓄積した。対照的に、ニューロンは、細胞密度が低いほど神経突起が短い別々の細胞として存在していた(図9A図9B)。したがって、作用する細胞密度及び比率は、三種培養系の細胞形態に影響を与える。
【0109】
細胞の形態に影響を与えるもう1つの要因は、三種培養系の培養期間であった。ニューロンは、長期間の単独培養(図6D図6E)と同様に、より長い期間の三種培養(図9E図9H)でより大きなクラスターを形成する傾向があり、より厚い神経突起の束がクラスターに加わる。大きく細長い星状細胞はニューロンクラスターの近くに定着し、神経突起と混ざり合って密な束を形成した(図4E図4H)。乏突起膠細胞は、ニューロン-星状細胞クラスターの中心に見られ、三種培養が成熟するにつれて、神経突起の隣に大きな突起が見られた(図9E)。細胞死はまた、三種培養システムの期間に関連して、大きなクラスターの中心で増加した(図9H)。
【0110】
この実施例は、SIGi001-A NPC、SIGi001-A iSoX9星状細胞、及びSIGi001-A iSOX10 OPCが、三種培養系としてM1培地で生存したことを示している。
【0111】
この実施例は、ニューロン及びグリアサブタイプの形態が三種培養系と単独培養系で異なり、細胞密度と比率、及び培養期間に依存していることを示す。
【0112】
実施例7.三種培養系におけるSIGi001-A NPC、iSoX9星状細胞、及びiSOX10 OPCの特性評価及び定量のための抗体の組み合わせ
SIGi001-A NPC、iSoX9星状細胞、及びiSOX10 OPCを組み合わせて播種(同時播種)又は2つの時点で播種(逐次播種)し、1週間共に培養した後、特異的細胞マーカー(ニューロンに対するTUJ1、MAP2、TAU、SATB2及びCTIP2;星状細胞に対するEAAT1、ALDH1L1、及びS100β;並びに乏突起膠細胞に対するO4及びMBP)について免疫蛍光顕微鏡法による三種培養系の特性評価を行った(図18)。異なる抗体の組み合わせ(表2)を三種培養系で試験した。ニューロンに対するTUJ1、星状細胞に対するS100β、並びに乏突起膠細胞に対するO4及びMBPが、三種培養系での可視化に適したマーカーであることが観察された。TUJ1+S100β+MBP及びTUJ1+S100β+O4の組み合わせは、ニューロンの神経突起及び細胞体におけるTUJ1の明確な発現を示し、S100βは星状細胞の細胞質と核を染色し、乏突起膠細胞の細胞質におけるO4とMBPの細胞質発現が観察された(図23)。TUJ1+S100β+MBP抗体の組み合わせは、自動スクリーニングプラットフォームでの画像定量をサポートすることから、三種培養における各細胞集団の割合を定量するために選択された。S100β染色もまた、乏突起膠細胞の核及び分枝で発生し、定量を困難にした。そこで、別の星状細胞マーカーであるGFAPに対する抗体を、ニューロンに対するTUJ1、及び乏突起膠細胞に対するMBPと共に使用し、長期培養で星状細胞を標識した。これにより、星状細胞の細胞質でのみ明瞭な発現が示され、乏突起膠細胞では発現せず、したがって抗体のオーバーラップの問題が解決された(図19A図19D)。
【0113】
この実施例は、SIGi001-A NPC、iSoX9星状細胞、及びiSOX10 OPCの三種培養が、免疫蛍光顕微鏡法を用いて特異的マーカー発現に基づいて特性評価され得ることを示す。
【0114】
実施例8 ヒト三種培養系における細胞播種戦略、細胞密度、及び比率の最適化
38日目のSIGi001-A NPC、27日目又は37日目のiSOX9星状細胞、及び24日目のiSOX10 OPCを含む三種培養を、異なる細胞比及び細胞密度で同時播種及び逐次播種の両方によって構築した(表4)。星状細胞は、同時播種及び逐次播種された三種培養の両方で全細胞の60%超を占めていた(図10図14)。
【0115】
細胞を等比で同時播種した場合、全体の細胞密度が最も高い培養物で最大数のニューロンが観察された(タイプあたり10000細胞:30.41±0.0% TUJ1+細胞、図10A)。最も数が多い乏突起膠細胞は、全体の細胞数が最も少ない培養物で観察された(2500細胞/タイプ:5.432±2.646% MBP+細胞、続いて5000細胞/タイプ:2.549±1.608% MBP+細胞、図10B)。NPC/星状細胞/OPCの比率が等しくなく、in vivoヒトの脳ニューロン/グリア比(1:0.5:0.5)(19.64±0.0% TUJ+細胞、図10C)、続いて1:1:0.5(16.05±10.21% TUJ1+細胞、図10D)及び1:0.5:0.25(13.36±9.238% TUJ1+細胞、図10E)と類似している場合、より多くのニューロンが観察されたが、ほとんどの乏突起膠細胞は、星状細胞の比率が最も低い培養物:1:0.5:0.25(5.737±0.502% MBP+細胞、図10E)で見つかった。星状細胞の比率が高い(1:1:1)条件(図10A)と比較して、星状細胞の数を低く(1:0.5:0.25図10E)プレーティングすると、より均一な細胞分布が観察された。
【0116】
逐次播種II.aでは、iSOX10 OPCを最初にプレーティングし、続いてSIGi001-A NPC及びiSOX9星状細胞を添加し、乏突起膠細胞の数は、細胞密度の低い培養物(2500細胞/タイプで13.37±0.0% MBP+細胞)と比較して、細胞密度の高い培養物(10000細胞/タイプで20.83±0.0% MBP+細胞、図11A及び5000細胞/タイプで21.8±10.02% MBP+細胞、図11B)で高かった。細胞比が等しい3つ全ての細胞密度について、TUJ1+ニューロン集団は全細胞の4%未満を含み、この培養条件ではNPC/ニューロンの生存又は増殖が支持されないことを示す(図11A図11B)。
【0117】
逐次播種II.bでは、iSOX10 OPC及びSIGi001-A NPCを最初にプレーティングし、続いてiSOX9星状細胞を添加した。細胞を等比でプレーティングした場合、細胞密度が低い培養物(5.551±4.486% TUJ1+細胞、5000細胞/タイプで14.31±9.515% MBP+細胞、図12B)と比較して、全体的に高い細胞数で開始した培養物(6.408±0.0% TUJ1+細胞、10000細胞/タイプで15.77±0.0% MBP+細胞、図12A)において、ニューロン及び乏突起膠細胞数が最も高かったことが観察された。異なる比率でプレーティングした場合、細胞密度が高いほどニューロン数が多く(9.472±2.852% TUJ1+細胞、1:1:0.5、図12C)、星状細胞数が少ない培養物ではより多い乏突起膠細胞数が観察された(1:0.5:0.5では29.92±0.0% MBP+細胞、図12D、及び1:0.5:0.25では26.21±0.0、図12E)。
【0118】
逐次播種II.cでは、iSOX10 OPC及びiSOX9星状細胞を最初にプレーティングし、続いてSIGi001-A NPCを添加した。細胞を等比で播種した場合、細胞密度が低い培養物(4.926±6.608%+TUJ1+細胞及び7.024±7.606% MBP+細胞、図13B)と比較して、細胞密度が高い培養物(6.867±0.0% TUJ1+細胞及び10.41±0.0% MBP+細胞、図13A)にニューロン及び乏突起膠細胞が最も多く存在した。逐次播種II.a及び逐次播種II.bと同じパターンに従って、1:0.25:0.5(22.49±0.0% MBP+細胞 図13C)で少数の星状細胞をプレーティングした場合、乏突起膠細胞の数が最も多く検出され、細胞比1:0.5:0.5(5.095±0.0% TUJ1+細胞、図13D)で最も多いニューロン数が観察された
【0119】
全体として、細胞密度が高く、細胞比が等しい同時播種培養ではより多くのニューロンが観察され、星状細胞の数が少ない培養では乏突起膠細胞数が多くなった。また、星状細胞数が少ない細胞密度のII.b及びII.cを逐次播種し、より多くの乏突起膠細胞及びニューロンが観察された。
【0120】
この実施例は、同時播種された三種培養は比較的多くのニューロンを含み、逐次播種されたII.b三種培養はより多くの乏突起膠細胞を含むことを実証する。
【0121】
この実施例は、ニューロン、星状細胞、及び乏突起膠細胞を含むヒト三種培養系が、最適化された細胞比、密度、及び播種戦略で開発されたことを実証する。
【0122】
実施例9.BIONi010-C iNGN2ニューロンを含むヒト三種培養系
14日目のBIONi010-C iNGN2ニューロン、27日目のiSOX9星状細胞、及び24日目のiSOX10 OPCを使用して、異なる細胞比及び密度で三種培養系を構築した(表4)。同時播種では、最大数のニューロンと乏突起膠細胞が1:0.5:0.25の比率で観察された(10.964±0.0%のTUJ1+細胞及び1.865±0.0%のMBP+細胞、図14A)。比率が1:1:0.5の場合、逐次II.b播種プロトコルでより多くのニューロンが観察され(16.936±0.0% TUJ1+細胞、図14B)、同時播種でより多くの乏突起膠細胞が観察された(1.865±0.0% MBP+細胞、図14C)。重要なことに、TUJ1+細胞とMBP+細胞の割合は、皮質ニューロンを含む三種培養よりもiNGN2ニューロンを含む三種培養の方が低かった。
【0123】
要約すると、誘導ニューロン、星状細胞、及び乏突起膠細胞を含むヒト三種培養系が、最適化された培養条件を使用して構築された。
【0124】
実施例10.成熟した機能的なニューロンがヒトの三種培養系に存在する
三種培養系におけるニューロンの成熟を評価するために、異なる皮質層ニューロンマーカーの発現を免疫染色によって評定し、MEA解析により三種培養及びニューロン単独培養における機能的ニューロン活動を特性評価した。
【0125】
CTIP2及びSATB2の陽性細胞は、皮質ニューロンの単独培養と比較して、皮質ニューロンの三種培養でより急速に増加する。
【0126】
38日目のSIGi001-A NPC、37日目のiSoX9星状細胞、及び24日目のiSOX10 OPCを1:1:1の比率(タイプあたり10000細胞)で同時播種し、3週間維持し、異なる皮質層ニューロンマーカーとしてCTIP2及びSATB2について、星状細胞の場合はS100βについて、乏突起膠細胞の場合はMBPについて免疫蛍光イメージングを実施した。SATB2(図15A図15B)及びCTIP2(図15C図15D)の発現は、三種培養系において経時的に増加した。1週間後には、0.8205±0.1553%のCTIP2+細胞と0.6893±0.3604%のSATB2+細胞が観察され、2週間後には0.9680±0.04895%のCTIP2+細胞と3.986±1.054%のSATB2+細胞に増加した(図15E)。CTIP2+細胞及びSATB2+細胞の割合は、3週間後には19.94±3.209%及び5.094±1.596%に更に増加し、三種培養系におけるニューロンの成熟を示した(図15E)。CTIP2+細胞の平均強度は、三種培養(0.6067±0.05547)と比較して単独培養(0.222±0.00)で低く、単独培養よりも三種培養の方が、CTIP2発現が高いことを示した(図15F)。同様に、細胞あたりのSATB2の平均強度は、三種培養(2.519±0.5521)よりも単独培養(0.438796±0.00)の方が低く、NPCが星状細胞及び乏突起膠細胞と共培養される場合、ニューロンの成熟が改善されることを示唆した(図15F)。
【0127】
ニューロン軸索と乏突起膠細胞アームの交差領域におけるTUJ1とMBPの共局在が観察され、ミエリン形成(myelin wrapping)の開始を示した(図15G)。
【0128】
この実施例は、皮質ニューロンの三種培養系において、CTIP2+細胞及びSATB2+細胞の数が時間と共に増加したことを示す。
【0129】
この実施例は、CTIP2+及びSATB2+細胞染色の強度が、3週間後の単独培養と比較して、皮質ニューロンの三種培養で高いことを示している。
【0130】
実施例11.BIONi010-C iNGN2ニューロンは、単独培養系ではなく、三種培養系で電気的に活動性である
BIONi010-C iNGN2細胞を含む三種培養では、MEAシステムを使用して、単独培養並びに星状細胞及び乏突起膠細胞との共培養のいずれかでニューロンの電気生理機能を検出した。4日目のiNGN2子孫単独で及び46日目のiSOX9星状細胞と組み合わせて、並びに24日目のiSOX10 OPCをMEAプレートに播種し、単独培養と三種培養の細胞形態の違いを評価した(図20)。
【0131】
1週目以降、三種培養における細胞の形態及び配置は、皮質三種培養で観察されたものと同様であった(図10図13)。例えば、ニューロン及び星状細胞は、乏突起膠細胞を中心として束状に配置されている。同様の形態は、ニューロンと乏突起膠細胞の共培養でも観察され、おそらく星状細胞が存在しないためニューロン束が小さい。対照的に、ニューロンの単独培養では、ニューロン細胞が散在しており、ニューロン細胞体の束がウェル全体に散在していた(図20A)。2週間後、乏突起膠細胞に囲まれた厚い神経突起束が、同時播種及び逐次播種II.b三種培養の両方で見られた(図20B)。ニューロンは一緒に組織化し始め、3週目にはっきりと観察される大きなクラスターを形成した。対照的に、逐次播種された三種培養では、細胞がウェル全体を覆い、同時播種された三種培養は多層を形成し始めた。4週目及び5週目には、同時播種及び逐次播種された三種培養において、細胞配置の点で差は観察されなかった(図20C図20D)。
【0132】
三種培養の電気的活動を、5週間にわたって毎週同じ細胞密度でニューロンの単独培養と比較した。一般に、スパイク速度及び活動性スパイクチャネルの割合の両方の増加は、同時播種及び逐次播種された三種培養の両方で5週間観察されたが、ニューロン単独培養ではスパイクが最小であった/全く観察されなかった(図16図17C図17D)。
【0133】
1週間後、スパイク活動は、逐次播種された三種培養及びニューロン単独培養では活動が認められなかったのに対し、同時播種された三種培養(0.21 Hz)では検出された(図16A図16D)。スパイク活動は、同時播種した三種培養(0.1485 Hz)及びニューロン単独培養(0.063 Hz)と比較して2週目以降に逐次播種した三種培養で増加した(0.2375 Hz)。3週間後及び4週間後、逐次播種された三種培養(1.328 Hz-3週目及び1.185 Hz-4週目)及びニューロン単独培養(0.32 Hz-3週目及び0 Hz-4週目)と比較して、同時播種された三種培養は、より多くのスパイク活動を示した(1.542 Hz-3週目及び1.443-4週目)。また、スパイク活動は、三種培養系及び単独培養系の細胞密度に依存していた。例えば、4週間後、スパイク活動は、75000個のニューロン及びグリアを含む逐次三種培養(0.1947 Hz、58.33%の活動性スパイク電極)及び単独培養(0.37 Hz、4.167%の活動性スパイク電極)よりも、同時播種された三種培養での高いスパイク活動性(0.58 Hz、58.33%の活動性スパイク電極)と比較して、50000個のニューロン及びグリアを含む同時播種された三種培養(0.2327 Hz、41.67%の活動性スパイク電極)及び単独培養(0.37 Hz、4.167%の活動性スパイク電極)よりも、逐次播種された三種培養で高かった(0.3711 Hz、75%の活動性スパイク電極)(図16A図16D)。
【0134】
ニューロン単独培養ではバースト活動は観察されなかった(図17A図17D)。最も高いバーストスパイク率は、低い細胞密度での4週目の逐次共培養で観察された(39.4のバースト活動及び41.67%の活動性バーストチャネル)。これは、低密度の同時播種された三種培養よりも高かった(27.58のバースト活動及び25%の活動性バーストチャネル)。30000個のニューロン及びグリアを含む逐次播種された三種培養では、バーストは5週目まで増加し続けた(図17C図17D)。また、4週目及び5週目の間、逐次播種された三種培養で、同期の初期点を示す幾つかのネットワークバーストが観察された(データは示していない)。
【0135】
この実施例は、iNGN2子孫のみを含む単独培養と比較して、4日目のiNGN2子孫、46日目のiSOX9星状細胞、及び24日目のiSOX10 OPCで開始された三種培養で、ニューロン活動(ニューロンスパイクとニューロンバーストの両方)の増加が見られることを示す。
【0136】
【表2】
表1:培地組成
【0137】
【表3】
表2:抗体
【0138】
【表4】
表3:マスター培地の組成
【0139】
【表5】
表4 皮質NPC、iSOX9-星状細胞、iSOX10-OPCによる三種培養系の構築に用いた細胞比及び密度
【0140】
図面訳
図1
Neural induction 神経誘導
Neural rosetteexpansion 神経ロゼットの拡大
Neural progenitorexpansion 神経前駆細胞の拡大
Neural maturation 神経成熟
iPSC plating iPSCプレーティング
Daily medium change 毎日の培地交換
Dispase splitII ディスパーゼスプリットII
Accutase split アキュターゼスプリット
Final plating 最終プレーティング
mTESRMATRIGEL mTESRマトリゲル
NIM MATRIGLE NIMマトリゲル
NMM MATRIGEL NMMマトリゲル
Neural progenitors 神経前駆細胞
Neural Rosettes 神経ロゼット
Tuj1-Neurons Tuj1-ニューロン
Day 日目

図2
NGN2 transcriptionfactor induction NGN2転写因子の誘導
Maturation ofimmature neurons 未熟なニューロンの成熟
iPSC plating iPSCプレーティング
Daily medium change 毎日の培地交換
Accutase split アキュターゼスプリット
Alternate day mediachange 隔日の培地交換
Final plating 最終プレーティング
mTESR MATRIGEL mTESRマトリゲル
NBM MATRIGEL NBMマトリゲル
3ug/ml doxycycline 3μg/mlドキシサイクリン
NMM MATRIGEL NMMマトリゲル
Neuronal Rosettes 神経ロゼット
Neural progenitors 神経前駆細胞
Tuj1+Neurons Tuj1+ニューロン
Day 日目

図3
Neural induction 神経誘導
SOX9 transcriptionfactor induction SOX9転写因子誘導
Astrocyte maturation 星状細胞の成熟
iPSC plating iPSCプレーティング
Daily medium change 毎日の培地交換
Astrocyte fatespecification 星状細胞運命の特定
Final plating 最終プレーティング
mTESRMATRIGEL mTESRマトリゲル
NIM MATRIGEL NIMマトリゲル
Astrocytematuration medium 星状細胞成熟培地
MATRIGEL マトリゲル
3ug/ml Doxycycline 3μg/mlドキシサイクリン
10ng/ml FGF2 (Day11 only) 10 ng/ml FGF2(11日目のみ)
Neural progenitors 神経前駆細胞
ALDH1L1+ astrocytes ALDH1L1+星状細胞
Day 日目

図4
Neural induction 神経誘導
SOX10 transcriptionfactor induction SOX10転写因子誘導
Oligodendrocytematuration 乏突起膠細胞の成熟
iPSC plating iPSCプレーティング
Daily medium change 毎日の培地交換
Oligodendrocytefate specification 乏突起膠細胞運命の特定
Final plating 最終プレーティング
mTESRMATRIGEL mTESRマトリゲル
Oligodendrocyteinduction media 乏突起膠細胞誘導培地
MATRIGEL マトリゲル
Day 8 medium 8日目培地
PLO-laminin PLO-ラミニン
Day 14 Medium 14日目培地
3ug/ml Doxycycline 3μg/mlドキシサイクリン
Neural progenitors 神経前駆細胞
O4+ Oligodendrocyteprogenitor cells (OPCs) O4+乏突起膠細胞前駆細胞(OPC)
Day 日目

図5
Day 38 NPCs 38日目のNPC
Day 27-37iSOX9-astrocytes 27日目-37日目のiSOX9-星状細胞
Day 24 iSOX10-OPCs 24日目のiSOX10-OPC
Differentiation andco-maturation of cell types 細胞型の分化及び共成熟
NMM+3um/mldoxycycline NMM+3 μm/mlドキシサイクリン
Further maturationof cells 細胞の更なる成熟
Day 日目
Week 週目
Day 24 iSOX10 OPCs 24日目のiSOX10 OPC
Day 38 NPCs &Day 24 iSOX10-OPCs 38日目のNPC及び24日目のiSOX10-OPC
Day 27/37 iSOX9astrocytes & Day 24 iSOX10 OPCs 27日目/37日目のiSOX9星状細胞及び24日目のiSOX10OPC
Day 44 NPCs and Day34/44 iSOX9 astrocytes 44日目のNPC及び34日目/44日目のiSOX9星状細胞
Day 34/44 iSOX9astrocytes 34日目/44日目のiSOX9星状細胞
Day 44 NPCs 44日目のNPC

図6
Delta Ct value (ΔCt) デルタCt値(ΔCt)
Day 日目
HOECHST ヘキスト
Week 週目

図7
Delta Ct value (ΔCt) デルタCt値(ΔCt)
Day 日目
HOECHST ヘキスト

図8
Delta Ct value (ΔCt) デルタCt値(ΔCt)
HOECHST ヘキスト
Master medium マスター培地
Percentage ofTUJ1+cells TUJ1+細胞の割合
Percentage of MBP+cells MBP+細胞の割合
Percentage ofS100β+cells S100β+細胞の割合

図10
Day 38 NPCs 38日目のNPC
Day 24 iSOX10 OPCs,Day 27-37 iSOX9-astrocytes 24日目のiSOX10OPC、27日目-37日目のiSOX9-星状細胞
Differentiation andco-maturation of cell types 細胞型の分化及び共成熟
Further maturationof cells 細胞の更なる成熟
Day 日目
NMM+3ug/mldoxycycline NMM+3 μg/mlドキシサイクリン
Week 週目
HOECHST ヘキスト
Neurons: Oligodendrocytes:Astrocytes ニューロン:乏突起膠細胞:星状細胞
Coseeding10K:10K:10K 同時播種10K:10K:10K
Percentage of cells 細胞の割合
TUJ1+ cells TUJ1+細胞
S100β+ cells S100β+細胞
MBP+ cells MBP+細胞
Coseeding5K:5K:5K 同時播種5K:5K:5K
Coseeding10K:5K:5K 同時播種10K:5K:5K
Coseeding10K:10K:5K 同時播種10K:10K:5K
Coseeding10K:5K:2.5K 同時播種10K:5K:2.5K

図11
Day 24 iSOX10 OPCs 24日目のiSOX10 OPC
Differentiation andco-maturation of cell types 細胞型の分化及び共成熟
Day 44 NPCs and Day34/44 iSOX9 astrocytes 44日目のNPC及び34日目/44日目のiSOX9星状細胞
Day 日目
NMM+3ug/mldoxycycline NMM+3 μg/mlドキシサイクリン
HOECHST ヘキスト
Neurons: Oligodendrocytes:Astrocytes ニューロン:乏突起膠細胞:星状細胞
Sequential seeding II.a 10K/type 逐次播種II.a 10K/タイプ
Percentage of cells 細胞の割合
TUJ1+ cells TUJ1+細胞
S100β+ cells S100β+細胞
MBP+ cells MBP+細胞
Sequential seeding II.a 5K/type 逐次播種II.a 5K/タイプ

図12
Day 38 NPCs &Day 24 iSOX10-OPCs 38日目のNPC及び24日目のiSOX10-OPC
Differentiation andco-maturation of cell types 細胞型の分化及び共成熟
Day 34/44 iSOX9 astrocytes 34日目/44日目のiSOX9星状細胞
Day 日目
NMM+3ug/mldoxycycline NMM+3 μg/mlドキシサイクリン
HOECHST ヘキスト
Neurons: Oligodendrocytes:Astrocytes ニューロン:乏突起膠細胞:星状細胞
Sequential seeding II.b 10K/type 逐次播種II.b 10K/タイプ
Percentage of cells 細胞の割合
TUJ1+ cells TUJ1+細胞
S100β+ cells S100β+細胞
MBP+ cells MBP+細胞
Sequential seeding II.b 5K/type 逐次播種II.b 5K/タイプ
Sequential seeding II.b 10K:10K:5K 逐次播種II.b 10K:10K:5K
Sequential seeding II.b 10K:5K:5K 逐次播種II.b 10K:5K:5K
Sequential seeding II.b 10K:5K:2.5K 逐次播種II.b 10K:5K:2.5K

図13
Day 27/37 iSOX9astrocytes & Day 24 iSOX10 OPCs 27日目/37日目のiSOX9星状細胞及び24日目のiSOX10OPC
Differentiation andco-maturation of cell types 細胞型の分化及び共成熟
Day 44 NPCs 44日目のNPC
Day 日目
NMM+3ug/mldoxycycline NMM+3 μg/mlドキシサイクリン
HOECHST ヘキスト
Neurons: Oligodendrocytes:Astrocytes ニューロン:乏突起膠細胞:星状細胞
Sequential seeding II.c 10K/type 逐次播種II.c 10K/タイプ
Percentage of cells 細胞の割合
TUJ1+ cells TUJ1+細胞
S100β+ cells S100β+細胞
MBP+ cells MBP+細胞
Sequential seeding II.c 5K/type 逐次播種II.c 5K/タイプ
Sequential seeding II.c 10K:5K:2.5K 逐次播種II.c 10K:5K:2.5K
Sequential seeding II.c 10K:5K:5K 逐次播種II.c 10K:5K:5K
Sequential seeding II.c 10K:10K:5K 逐次播種II.c 10K:10K:5K

図14
Day 14 iNGN2 NPCs& Day 24 iSOX10-OPCs & Day 37 iSOX9 astrocytes 14日目のiNGN2 NPC及び24日目のiSOX10-OPC及び37日目のiSOX9星状細胞
Day 14 iNGN2 NPCs& Day 24 iSOX10-OPCs 14日目のiNGN2NPC及び24日目のiSOX10-OPC
Differentiation andco-maturation of cell types 細胞型の分化及び共成熟
Further maturation 更なる熟成
Day 34/44 iSOX9astrocytes 34日目/44日目のiSOX9星状細胞
NMM+3ug/mldoxycycline NMM+3 μg/mlドキシサイクリン
Day 日目
HOECHST ヘキスト
Neurons: Oligodendrocytes:Astrocytes ニューロン:乏突起膠細胞:星状細胞
iNGN2 Coseeding 10K:5K:2.5K iNGN2同時播種10K:5K:2.5K
Percentage of cells 細胞の割合
TUJ1+ cells TUJ1+細胞
S100β+ cells S100β+細胞
MBP+ cells MBP+細胞
iNGN2 Coseeding 10K:10K:5K iNGN2同時播種10K:10K:5K
iNGN2 Sequentialseeding II.b 10K:10K:5K INGN2逐次播種II.b 10K:10K:5K

図15
HOECHST ヘキスト
MERGED マージ
Coseeding CTIP2positivity 同時播種CTIP2陽性
Coseeding SATB2positivity 同時播種SATB2陽性
Percentage of cells 細胞の割合
Week 週目
Average CTIP2intensity per CTIP2+ cell CTIP2+細胞あたりの平均CTIP2強度
Average SATB2intensity per SATB2+ cells SATB2+細胞あたりの平均SATB2強度
Week 3 Triculture 3週目三種培養
Week 3 Monoculture 3週目単独培養
HOECHST ヘキスト

図16
week 1_spike rate_mean/w 1週目_スパイク率_平均/w
Mean spikerate/well(Hz) 平均スパイク率/ウェル(Hz)
coseeding 同時播種
seqseeding 逐次播種
monoculture 単独培養
week 2_spike rate_mean/w 2週目_スパイク率_平均/w
week 3_spike rate_mean/w 3週目_スパイク率_平均/w
week 4_spike rate_mean/w 4週目_スパイク率_平均/w
week 5_spike rate_mean/w 5週目_スパイク率_平均/w
week 1_%spikingchannels 1週目_%スパイクチャネル
% spiking channels %スパイクチャネル
coseeding 同時播種
seqseeding 逐次播種
monoculture 単独培養
week 2_%spikingchannels 2週目_%スパイクチャネル
week 4_%spikingchannels 4週目_%スパイクチャネル
week 5_%spikingchannels 5週目_%スパイクチャネル
week 3_%spiking channels 3週目_%スパイクチャネル
Time course_spike rate_mean/well 時間経過_スパイク率_平均/ウェル
Time (weeks) 時間(週)
coseeding 同時播種
seqseeding 逐次播種
monoculture 単独培養
Time course_%spiking channels/well 時間経過_%スパイクチャネル/ウェル

図17
week 2_burst spike rate_mean/well 2週目_バーストスパイク率_平均/ウェル
Mean burst spikerate/well(Hz) 平均バーストスパイク率/ウェル(Hz)
coseeding 同時播種
seqseeding 逐次播種
monoculture 単独培養
week 3_burst spike rate_mean/well 3週目_バーストスパイク率_平均/ウェル
week 4_burst spike rate_mean/well 4週目_バーストスパイク率_平均/ウェル
week 5_burst spike rate_mean/well 5週目_バーストスパイク率_平均/ウェル
week 2_% burstingchannels 2週目_%バーストチャネル
% burstingchannels/well %バーストチャネル/ウェル
week 3_% burstingchannels 3週目_%バーストチャネル
week 4_% burstingchannels 4週目_%バーストチャネル
week 5_% burstingchannels 5週目_%バーストチャネル
Time course_burst rate_mean/well 時間経過_バースト率_平均/ウェル
Time (weeks) 時間(週)
Time course_%bursting channels 時間経過_%バーストチャネル

図18
HOECHST ヘキスト

図19
HOECHST ヘキスト

図20
Co-seeding 同時播種
Sequential Seeding 逐次播種
Neurons ニューロン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図6-1】
図7
図7-1】
図7-2】
図8
図8-1】
図9
図10
図10-1】
図10-2】
図11
図12
図12-1】
図12-2】
図13
図13-1】
図13-2】
図14
図14-1】
図15
図15-1】
図16
図16-1】
図16-2】
図17
図17-1】
図17-2】
図18
図19
図20
【国際調査報告】