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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】新規なスルホナート化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 309/24 20060101AFI20240925BHJP
   C07C 303/32 20060101ALI20240925BHJP
   C07C 303/20 20060101ALI20240925BHJP
   C07C 211/63 20060101ALI20240925BHJP
   C09K 23/12 20220101ALI20240925BHJP
   C07C 45/74 20060101ALN20240925BHJP
   C07C 49/255 20060101ALN20240925BHJP
   C07C 45/64 20060101ALN20240925BHJP
   C07C 47/575 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
C07C309/24 CSP
C07C303/32
C07C303/20
C07C211/63
C09K23/12
C07C45/74
C07C49/255 B
C07C45/64
C07C47/575
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518095
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2022076252
(87)【国際公開番号】W WO2023046766
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】21198127.9
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】522039957
【氏名又は名称】カール-フランツェンス-ウニベルシテート グラーツ
(71)【出願人】
【識別番号】522422001
【氏名又は名称】レイクスユニバーシテイト フローニンゲン
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】バルタ ヴァイサート、カタリン
(72)【発明者】
【氏名】ホーヘガー、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】バーリント、フリードリッヒ
【テーマコード(参考)】
4D077
4H006
【Fターム(参考)】
4D077AA05
4D077AB20
4D077CA03
4D077CA13
4D077DC10Z
4D077DC13Z
4D077DC19X
4D077DC19Z
4D077DC48Z
4D077DC59X
4D077DC59Z
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB68
4H006AC25
4H006AC61
4H006AD17
4H006BA03
4H006BA29
4H006BA51
4H006BB14
4H006BB21
4H006BB31
4H006BE03
(57)【要約】
本発明は、式(I)または(II):

[式中、
各Rは、4ないし26のC原子と、場合により少なくとも1個のOまたはS原子を有する炭化水素ラジカルから選ばれ;
ないしRは、それぞれ独立して、水素、および1ないし26のC原子と、場合により少なくとも1個のOまたはS原子を有する炭化水素ラジカルから選ばれ;
各Rは、独立して、水素、および1ないし6の炭素原子を有する炭化水素ラジカルから選ばれ、ここで場合により、2つのラジカルRは、破線で示されるように接続して、カルボニル炭素原子を含む5または6員の環を形成してもよく;および
各Xは、独立して、Hを含む1価または多価カチオンXn+(式中、nは≧1)から選ばれ、ここで、式(I)では、場合により、両方のXは一緒になって、多価カチオンを表してもよい。]
による新規なスルホナート化合物、ならびに
それらを製造するための方法、およびそれらの界面活性剤としての使用、
に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)または(II):
【化1】

[式中、
各Rは、4ないし26の炭素原子を有する、直鎖、分枝または環状の炭化水素ラジカルから選ばれ、ここで場合により、少なくとも1個の炭素原子は、酸素または硫黄原子で置き換わっていてもよく;
ないしRは、それぞれ独立して、水素、および1ないし26の炭素原子を有する、直鎖、分枝または環状の炭化水素ラジカルから選ばれ、ここで場合により、少なくとも1個の炭素原子は、酸素または硫黄原子で置き換わっていてもよく;
各Rは、独立して、水素、および1ないし6の炭素原子を有する飽和の炭化水素ラジカルから選ばれ、ここで場合により、2つのラジカルRは、破線で示されるように接続して、カルボニル炭素原子を含む5または6員の環を形成してもよく;および
各Xは、独立して、Hを含む1価または多価カチオンXn+(式中、nは≧1)から選ばれ、ここで、式(I)では、場合により、両方のXは一緒になって、多価カチオンを表してもよい。]
によるスルホナート化合物。
【請求項2】
各Rが、C-C22アルキルを表し;および/または
およびRが、それぞれ独立して、水素、C-C22アルキルおよびC-C22アルコキシから選ばれ;および/または
およびRが、水素、メチルおよびメトキシから選ばれ;および/または
各Rが、水素、メチルおよびエチルから選ばれ;および/または
各Xが、H、Na、K、NH または有機アンモニウムイオンを表す、
ことにより特徴づけられる、請求項1に記載のスルホナート化合物。
【請求項3】
が、C-C18アルキルを表し;および/または
およびRが、それぞれ独立して、水素、C-CアルキルおよびC-Cアルコキシから選ばれ;および/または
およびRが、それぞれ、水素である、
ことにより特徴づけられる、請求項1または2に記載のスルホナート化合物。
【請求項4】
両方のRが、同一のC-C18アルキルラジカルを表し;
およびRの一方が水素、かつ他方がメトキシであるか、またはそれらの両方がメトキシであり;
およびRが、それぞれ、水素であり;
両方のラジカルRが、水素またはメチルであるか、あるいはそれらが接続して、エチレンまたはプロピレンラジカルを形成し、従って、カルボニル炭素原子を含む5または6員の環を形成し;および
各Xが、H、Na、NH または有機アンモニウムイオンを表し、ここで場合により、(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム(コリン)またはトリエタノールアンモニウムであってもよい、
ことにより特徴づけられる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスルホナート化合物。
【請求項5】
以下の化合物:
1,5-ビス(3-メトキシ-4-オクチルオキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジアンモニウム塩 (1)
【化2】

1,5-ビス(4-ドデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジアンモニウム塩 (2)
【化3】

1,5-ビス(3-メトキシ-4-テトラデシルオキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジアンモニウム塩 (3)
【化4】

1,5-ビス(4-ヘキサデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジアンモニウム塩 (4)
【化5】

1,5-ビス(3-メトキシ-4-オクタデシルオキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジアンモニウム塩 (5)
【化6】

1,5-ビス(4-ドデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジナトリウム塩 (6)
【化7】

1,5-ビス(3-メトキシ-4-テトラデシルオキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジナトリウム塩 (7)
【化8】

1,5-ビス(4-ヘキサデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジナトリウム塩 (8)
【化9】

1,5-ビス(3-メトキシ-4-オクタデシルオキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジナトリウム塩 (9)
【化10】

1,5-ビス(4-ヘキサデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジカリウム塩 (10)
【化11】

1,5-ビス(4-ドデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジコリン塩 (11)
【化12】

1,5-ビス(4-ドデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ビス(トリエタノール-アンモニウム)塩 (12)
【化13】

1,1’-(2-オキソシクロペンタン-1,3-ジイル)-ビス[(3-メトキシ-4-オクチルオキシフェニル)メタンスルホン酸 アンモニウム塩] (13)
【化14】

から選ばれる、
ことにより特徴づけられる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のスルホナート化合物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のスルホナート化合物を製造するための方法であって、以下の工程:
1)有機溶媒中、塩基の存在下、ウィリアムソンによるエーテル化反応により、下記式(III):
【化15】

[式中、
ないしRは、それぞれ独立して、水素、および1ないし26の炭素原子を有する、直鎖、分枝または環状の炭化水素ラジカルから選ばれ、ここで場合により、少なくとも1個の炭素原子は、酸素または硫黄原子で置き換わっていてもよい。]
による4-ヒドロキシベンズアルデヒド誘導体を、式R-Y(式中、Rは、4ないし26の炭素原子を有する、直鎖、分枝または環状の炭化水素ラジカルから選ばれ、ここで場合により、少なくとも1個の炭素原子は、酸素または硫黄原子で置き換わっていてもよく、およびYは、ハライドおよびスルホナートから選ばれる脱離基を表す。)の化合物と反応させて、式(IV):
【化16】

による対応するエーテルを得ること;
2)有機溶媒中、酸性または塩基性触媒を用いて、クライゼン-シュミットによるダブル交差アルドール縮合反応により、式(IV)のエーテルを、半当量のアセトンまたは式(V)
【化17】

[式中、各Rは、独立して、水素、および1ないし6の炭素原子を有する飽和の炭化水素ラジカルから選ばれ、ここで場合により、2つのラジカルRは、破線で示されるように接続して、カルボニル炭素原子を含む5または6員の環を形成してもよい。]
によるアセトン誘導体と反応させて、式(VI):
【化18】

による対応する不飽和のケトンを得ること;
3)1または2当量の亜硫酸水素塩を式(VI)のケトンの二重結合に付加させるために、アルコール溶媒中、式(VI)のケトンをスルホン化剤と反応させて、場合により次いで、このようにして得られたモノ-またはジスルホナートのイオン交換、および所定の対イオンXn+(式中、nは≧1)の導入を行って、式(I)または(II)によるスルホナート化合物を得ること、
を含む、方法。
【請求項7】
工程1)において、
クロリドまたはブロミドが、該脱離基Yとして使用され;および/または
COが、該塩基として使用され;および/または
アセトニトリルが、該有機溶媒として使用される、
ことにより特徴づけられる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程1)において、
ブロミドが、該脱離基Yとして使用され、
2当量のKCOが、該塩基として使用され、および
反応が、還流アセトニトリル中で行われる、
ことにより特徴づけられる請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程2)において、
水酸化リチウム一水和物LiOH.HOが該塩基性触媒として使用され;および/または
低級アルコール、エーテル、またはそれらの混合物が、該有機溶媒として使用される、
ことにより特徴づけられる請求項6ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程2)において、
1-10mol%の量の水酸化リチウム一水和物LiOH.HOが、該塩基性触媒として使用され、
イソプロパノールが、該有機溶媒として使用され、および
反応が、40-50℃で行われる、
ことにより特徴づけられる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程3)において、
亜硫酸水素塩または二亜硫酸塩が、該スルホン化剤として使用され;および/または
低級アルコールと水の混合物が、該アルコール溶媒として使用され;および/または
アミンが、触媒として使用される、
ことにより特徴づけられる請求項6ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程3)において、
二亜硫酸ナトリウムNa、亜硫酸水素カルシウムCa(HSO、亜硫酸水素塩アンモニウムNHHSOまたは亜硫酸トリメチルアンモニウム[(CHN]SOが、該スルホン化剤として使用され、
トリエチルアミン、トリエタノールアミンまたはコリン水酸化物が、該触媒として使用され、および
含水メタノールまたはイソプロパノールが、該アルコール溶媒として使用される、
ことにより特徴づけられる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程3)において、
それぞれ式(VI)のケトンに基づいて、亜硫酸水素塩または二亜硫酸塩が3当量の亜硫酸水素塩量で使用され、アミン触媒が少なくとも20mol%の量で使用されて、式(I)によるジスルホナート化合物を得、および
還流含水イソプロパノールが、該アルコール溶媒として使用される、
ことにより特徴づけられる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
a)工程3)において、スルホナート基を遊離のスルホン酸基に変換するために、まず、得られたスルホナート付加体を、酸性のイオン交換樹脂および水溶出を用いるイオン交換に供し、ここで場合により、所定の対イオンXn+の水酸化物の水溶液を用いて中和してもよく、式(I)または(II)によるスルホナート化合物を得る;および/または
b)工程2)および3)が、ワンポット合成として行われる、
ことにより特徴づけられる請求項6ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の、または請求項6ないし14のいずれか1項に従って製造された、式(I)または(II)のジスルホナート化合物の界面活性剤としての使用であって、ここで、ラジカルRないしRの炭素原子の総数が、少なくとも9個である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なスルホナート化合物、それらを製造するための方法、およびそれらの界面活性剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
リグニンは、豊富な芳香族生体高分子であり、その構造は、主に、3つの置換フェノール類、いわゆるモノリグノール類(p-クマリル、コニフェリルおよびシナピルアルコール)に基づいており、非晶質3次元構造を形成する、種々の異なるC-OおよびC-C結合によって特徴付けられる。工業的に使用可能な単分子フェノールおよび/またはベンズアルデヒド誘導体を得るために、解重合によってリグニンの接触分解を可能にする様々な方法が開発されている。モノマーに加えて、これらの解重合プロセスの生成物には、フェノールのジ-、トリ-およびオリゴマーも含まれる場合がある。
【0003】
ごく最近、還元的または酸化的反応戦略を主に含む、リグニンの選択的解重合が可能になる様々な方法が開発された。前者は通常、長さが通常1ないし3個の炭素原子で、アルコール、アルデヒド、エステルおよび/またはケトン官能性を有する脂肪族ラジカルを有するフェノール、グアヤコールまたはシリンゴール誘導体を生成する。一方、後者は通常、バニリンやシリンガアルデヒドのような芳香族アルデヒド、または同様に官能化されたグアヤコールおよびシリンゴール誘導体を与える。このような解重合プロセスの主生成物には、それぞれ、グアヤコールとシリンゴール、またはバニリンとシリンガアルデヒドが含まれ、それらはそれぞれ、芳香環上に1つまたはそれ以上のアルキルおよび/またはアルコキシ置換基を有することが多い。
【0004】
言及したリグニン分解生成物はすべて、生物学に基づく貴重な資源であり、そこから近年、多くの様々な製品が生産されている。本発明者らの研究によると、界面活性剤はほとんど存在しないが、この分野でも、非食用で再生可能な原料に基づいて合成できる製品が必要である。
【0005】
このような背景に対し、本発明の目的は、リグニン分解のこれらの生成物および類似の化合物を官能化することによる、好ましくは環境に優しい方法で、界面活性剤としての使用に特に適した新規な化学化合物の合成である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、第一の態様において、式(I)または(II):
【0007】
【化1】
【0008】
[式中、
各Rは、4ないし26の炭素原子を有する、直鎖、分枝または環状の炭化水素ラジカルから選ばれ、ここで場合により、少なくとも1個の炭素原子は、酸素または硫黄原子で置き換わっていてもよく;
ないしRは、それぞれ独立して、水素、および1ないし26の炭素原子を有する、直鎖、分枝または環状の炭化水素ラジカルから選ばれ、ここで場合により、少なくとも1個の炭素原子は、酸素または硫黄原子で置き換わっていてもよく;
各Rは、独立して、水素、および1ないし6の炭素原子を有する飽和の炭化水素ラジカルから選ばれ、ここで場合により、2つのラジカルRは、破線で示されるように接続して、カルボニル炭素原子を含む5または6員の環を形成してもよく;および
各Xは、独立して、Hを含む1価または多価カチオンXn+(式中、nは≧1)から選ばれ、ここで、式(I)では、場合により、両方のXは一緒になって、多価カチオンを表してもよい。]
による新規なスルホナート化合物を提供することによって、この目的を達成する。
【0009】
本発明者らは、そのような、式(I)によるジスルホナート化合物または式(II)による対応するモノスルホナートが、比較的簡単でかつ環境にやさしい方法で、容易に入手可能なリグニン分解生成物から製造でき、界面活性剤として非常に適していることを見出した。スルホナート基の高い親水性および芳香族の疎水性により、ラジカルRないしRにおける炭素原子数が一桁であっても、必要な両親媒性を化合物に付与するのに十分である。
【0010】
しかし、ラジカルRないしRにおける炭素原子数は、好ましくは、少なくとも9個である。このことは、式(I)による化合物において、2つのスルホナート基-SOXが、中心のペンタノンに結合している場合、疎水性に関して特に好ましい。しかし、リグニンの解重合の主生成物には、冒頭で述べたように、1または2つの追加の低級アルキルおよび/または低級アルコキシ置換基を有することが多い、バニリンおよびシリンガアルデヒドの誘導体が含まれるという事実は、RないしRがすでにいくつかの炭素原子を含んでいるので、ラジカルRないしRにおいて少なくとも9個の炭素原子を有する本発明のスルホナート化合物の合成を単純化する。その結果、本発明による製造方法では、そのようなバニリンやシリンガアルデヒド誘導体の遊離フェノール性OH基を、容易に入手可能で生分解性の脂肪アルキルラジカルでエーテル化するだけでよい。
【0011】
一方では、脂肪アルコールは天然には、飽和の形態および不飽和の形態、すなわち1つまたはそれ以上のC=C二重結合を有する形態の両方で存在し、他方では、冒頭で述べたように、リグニン分解生成物は、置換基として、1つより多い芳香環だけでなく、非芳香環(例、ジオキソラン)も有することができるため、本発明によるRないしRの定義には、飽和および不飽和の両方ならびに環状のラジカルが含まれる。
【0012】
式(I)によるジスルホナート化合物に加えて、式(II)によるモノスルホナートもまた、本発明に含まれるという事実は、本発明の方法の工程3)で亜硫酸水素塩の付加によるスルホン化によるものであり、これは、本発明の第二の態様に関連してより詳細に説明され、後の実施例によって証明される。
【0013】
一般に、本明細書において「スルホナート」は、文脈上別段必要とされない限り、スルホン酸基の塩としてだけでなく、それぞれの遊離酸としても理解されることに留意すべきである。このことは、上記の対イオンXの定義が、明示的にHも含んでいることからも明らかである。これは、新規化合物が本発明の第三の態様に従って界面活性剤として使用される場合、それぞれの遊離酸もまた水性環境中でイオン化し、それによってその場でスルホン酸基を形成するからである。
【0014】
ラジカルRないしRの炭素原子数の下限と上限は、出発生成物中の遊離フェノール性OH基のエーテル化には、脂肪アルキルラジカルの使用が好ましいことを指しており、その鎖長については、文献では、下限として4から6、上限として22から26と特定している。本発明によれば、エーテル化によって合成方法で導入される脂肪アルキルラジカルについては、最大長18個の炭素原子が好ましく、出発物質において芳香族にすでに結合している、アルキルもしくはアルコキシラジカル、または場合によりアルキルチオラジカルについては、最大長4個の炭素原子が好ましく、フェノール性OH基に対してオルト位のラジカルRおよびRに特に当てはまる。
【0015】
一部の炭素原子が酸素または硫黄で置き換わっていてもよいというオプションも、主に、好ましくはリグニン解重合によって得られる出発化合物の置換パターンを指しており、冒頭で述べたように、これは、種々の酸素含有官能性、時にはその硫黄類似体も含んでいてもよい。ハロゲンや窒素のような他のヘテロ原子は、そのような化合物にはほとんど存在しない。従って、本発明の目的のためには、酸素および硫黄以外のヘテロ原子を考慮する必要はない。
【0016】
従って、本発明のいくつかの好ましい実施態様では、Rは、C-C22アルキル、より好ましくはC-C18アルキルである。代替的または付加的に、いくつかの好ましい実施態様では、RおよびRは、水素、C-C22アルキル、およびC-C22アルコキシから、より好ましくは水素、C-Cアルキル、およびC-Cアルコキシから選ばれる;例えば、RおよびRの一方は水素であり、かつ他方はメトキシであるか、または両方のラジカルはメトキシである。代替的または付加的に、いくつかの好ましい実施態様では、RおよびRは、水素、メチル、およびメトキシから選ばれる。代替的または付加的に、いくつかの好ましい実施態様では、ラジカルRは、水素、メチル、およびエチルから選ばれるか、または互いに接続して、カルボニル炭素を含む5または6員の環を形成する。代替的または付加的に、いくつかの好ましい実施態様では、各Xは、H、Na、K、NH 、または有機アンモニウムイオンを表す。
【0017】
特に好ましい実施態様では、合成方法に関して、RないしRの両方のラジカルは、同じラジカルを表し、即ち、両方のラジカルRは、同じC-C18アルキルラジカルを表し、両方のラジカルRおよび両方のラジカルRは、水素または同じC-Cアルキルまたは同じC-Cアルコキシラジカルを表し、そして、両方のラジカルRおよび両方のラジカルRは、水素、メチルまたはメトキシのいずれかを表す。さらに、式(I)によるジスルホナート化合物において、両方のラジカルXも、同じ対イオンを表す、すなわち、両方が同じ一価カチオンXを表すか、または両方のXが一緒になって、同じ多価カチオンXn+の一部になるかのいずれかであり、このような場合、最も好ましくCa2+またはMg2+のような二価カチオンX2+である。これらの実施態様では、式(I)による新規ジスルホナート化合物は、中心のケト基を通る軸(すなわち、式の図における垂直軸)に関して鏡面対称である。
【0018】
従って、いくつかの特に好ましい実施態様では、以下が適用される:
両方のラジカルRが、同じC-C18アルキルラジカルを表し;
両方のラジカルRおよび両方のラジカルRが、それぞれ、水素またはメトキシであり;
両方のラジカルRおよび両方のラジカルRが、それぞれ、水素であり;
両方のラジカルRが、それぞれ、水素またはメチルであるか、または互いに接続して、エチレンまたはプロピレンラジカルを形成し、すなわち、カルボニル炭素を含む5または6員の環を形成し;および
ラジカルXが、それぞれ、H、Na、NH4、または有機アンモニウムイオン、最も好ましくは(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム(コリン)またはトリエタノールアンモニウム、を表す。
【0019】
最も好ましくは、本発明の第一の態様によるスルホナート化合物は、以下の化合物から選ばれる:
【0020】
1,5-ビス(3-メトキシ-4-オクチルオキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジアンモニウム塩 (1)
【0021】
【化2】
【0022】
1,5-ビス(4-ドデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジアンモニウム塩 (2)
【0023】
【化3】
【0024】
1,5-ビス(3-メトキシ-4-テトラデシルオキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジアンモニウム塩 (3)
【0025】
【化4】
【0026】
1,5-ビス(4-ヘキサデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジアンモニウム塩 (4)
【0027】
【化5】
【0028】
1,5-ビス(3-メトキシ-4-オクタデシルオキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジアンモニウム塩 (5)
【0029】
【化6】
【0030】
1,5-ビス(4-ドデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジナトリウム塩 (6)
【0031】
【化7】
【0032】
1,5-ビス(3-メトキシ-4-テトラデシルオキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジナトリウム塩 (7)
【0033】
【化8】
【0034】
1,5-ビス(4-ヘキサデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジナトリウム塩 (8)
【0035】
【化9】
【0036】
1,5-ビス(3-メトキシ-4-オクタデシルオキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジナトリウム塩 (9)
【0037】
【化10】
【0038】
1,5-ビス(4-ヘキサデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジカリウム塩 (10)
【0039】
【化11】
【0040】
1,5-ビス(4-ドデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジコリン塩 (11)
【0041】
【化12】
【0042】
1,5-ビス(4-ドデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ビス(トリエタノールアンモニウム)塩 (12)
【0043】
【化13】
【0044】
1,1’-(2-オキソシクロペンタン-1,3-ジイル)-ビス[(3-メトキシ-4-オクチルオキシフェニル)メタンスルホン酸 アンモニウム塩] (13)
【0045】
【化14】
【0046】
第二の態様において、本発明は、第一の態様によるスルホナート化合物を製造するための方法に関し、以下の工程:
1)有機溶媒中、塩基の存在下で、ウィリアムソンによるエーテル化反応により、下記式(III):
【0047】
【化15】
【0048】
[式中、
ないしRは、それぞれ独立して、水素、および1ないし26の炭素原子を有する、直鎖、分枝または環状の炭化水素ラジカルから選ばれ、ここで場合により、少なくとも1個の炭素原子は、酸素または硫黄原子で置き換わっていてもよい。]
による4-ヒドロキシベンズアルデヒド誘導体を、式R-Y(式中、Rは、4ないし26の炭素原子を有する、直鎖、分枝または環状の炭化水素ラジカルから選ばれ、ここで場合により、少なくとも1個の炭素原子は、酸素または硫黄原子で置き換わっていてもよく、およびYは、ハライドおよびスルホナートから選ばれる脱離基を表す。)の化合物と反応させて、式(IV):
【0049】
【化16】
【0050】
による対応するエーテルを得ること;
【0051】
2)有機溶媒中、酸性または塩基性触媒を用いて、クライゼン-シュミットによるダブル交差アルドール縮合反応により、式(IV)のエーテルを、半当量のアセトンまたは式(V)
【0052】
【化17】
【0053】
[式中、各Rは、独立して、水素、および1ないし6の炭素原子を有する飽和の炭化水素ラジカルから選ばれ、ここで場合により、2つのラジカルRは、破線で示されるように接続して、カルボニル炭素原子を含む5または6員の環を形成してもよい。]
によるアセトン誘導体と反応させて、式(VI):
【0054】
【化18】
【0055】
による対応する不飽和のケトンを得ること;
3)1または2当量の亜硫酸水素塩を式(VI)のケトンの二重結合に付加させるために、アルコール溶媒中、式(VI)のケトンをスルホン化剤と反応させて、場合により次いで、このようにして得られたモノ-またはジスルホナートのイオン交換、および所定の対イオンXn+(式中、nは≧1)の導入を行って、式(I)の化合物または(II)のスルホナート化合物を得ること、
を含む。
【0056】
このように、本発明によれば、一連の公知の個別の反応を含む、比較的簡単でかつ安価な方法により、式(III)によるヒドロキシベンズアルデヒド誘導体から新規なスルホナート化合物を合成することが可能である。好ましい実施態様では、出発化合物は、置換されていてもよいバニリンやシリンガアルデヒドのような、容易に入手可能なリグニン解重合の生成物であり、方法は、可能な限り最も環境にやさしい方法で実施される。
【0057】
本発明の方法のいくつかの好ましい実施態様では、工程1)において、クロリドまたはブロミド、最も好ましくはブロミドが、該脱離基Yとして使用され;および/またはKCOが、該塩基として、最も好ましくは2当量のKCOが使用され;および/またはアセトニトリルが、該有機溶媒として、最も好ましくは還流温度で、使用される。
【0058】
脱離基Yとして、メシラートやトシラートのようなスルホナートが使用できる;しかし、長鎖脂肪アルコールスルホナートは既に界面活性剤であるため、これらの使用は不経済的であり、このことが、クロリドまたはブロミド、特にブロミドが好ましい理由である。アセトン、ジエチルエーテルおよびDMFのような他の極性非プロトン性溶媒を用いた一連の試験の結果、アセトニトリルは最良の変換率をもたらし、続く生成物の精製を簡素化するため、特に還流下で、非常に適した溶媒であることが証明された。後者の理由により、式(III)によるヒドロキシベンズアルデヒド誘導体は、式R-Yの化合物と比較して、わずかに過剰、例えば10-15モル%過剰で使用することが好ましい。塩基としてKCOの使用と組み合わせると、このことは、副生成物として形成されたKBrを収集して準リサイクルできる、つまり、式R-Brの他の所望の化合物を合成するのに使用できる、という追加の利点を与える。これらは脂肪アルキルブロミドが好ましいので、このKBrを使用して脂肪アルコールから容易に製造することができる。
【0059】
本発明の方法のいくつかの好ましい実施態様では、工程2)において、該塩基性触媒として、水酸化リチウム一水和物LiOH.HOが、最も好ましくは、1-10mol%の量で使用され;および/または該有機溶媒として、低級アルコール、エーテル、またはそれらの混合物、最も好ましくはイソプロパノールが、最も好ましくは、十分に試験した反応温度40-50℃で使用される。
【0060】
塩基性触媒として、NaOHやKOHのような他の塩基も使用でき、あるいは、相間移動触媒を使用して、例えば、触媒としてテトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)を使用して、反応を行うことができる。しかし、本発明者らは、水酸化リチウム一水和物LiOH.HOを使用することにより、変換および反応時間に関して、最も良い結果を達成した。同様に、好ましい溶媒であるイソプロパノールの代わりに、エーテル類、MeOHやEtOHのような他のアルコール類、またはアルコールと水またはジエチルエーテルとの混合物もまた、使用できる。しかし、イソプロパノールを使用するとき、短時間で高い変換を達成するために、反応混合物をその還流温度(82.5℃)まで加熱する必要がない。
【0061】
本発明の方法のいくつかの好ましい実施態様では、工程3)において、
亜硫酸水素塩または二亜硫酸塩、より好ましくは二亜硫酸ナトリウムNa、亜硫酸水素カルシウムCa(HSO、亜硫酸水素アンモニウムNHHSOまたは亜硫酸トリメチルアンモニウム[(CHN]SOが、該スルホン化剤として使用され;および/または
低級アルコールと水の混合物、より好ましくは含水メタノールまたはイソプロパノールが、該アルコール溶媒として使用され;および/または
アミン、より好ましくはトリエチルアミン、トリエタノールアミンまたはコリン水酸化物が、触媒として使用される。
【0062】
特に好ましい実施態様では、それぞれ式(VI)のケトンに基づいて、亜硫酸水素塩または二亜硫酸塩は3当量の亜硫酸水素塩量で使用され、アミン触媒は少なくとも20mol%の量で使用され、および含水イソプロパノールが還流下の溶媒として使用されて、式(I)によるジスルホナート化合物が得られる。式(II)によるモノスルホナート化合物の合成には、式(VI)によるケトンの2つの二重結合の一方に、1個のスルホン酸基のみを付加させるために、亜硫酸水素塩または二亜硫酸塩は、一当量のみの亜硫酸水素塩量で使用される。また、亜硫酸水素塩当量を変えることにより、式(I)によるジスルホナートと式(II)によるモノスルホナートの混合物を製造することも可能であり、そこから単離して得られた2つの生成物かあるいは混合物自体を、場合によりイオン交換を行った後、界面活性剤として使用できる。
【0063】
スルホン化の過程で、例えば、工程3)で対応するアミンを触媒として使用することによって、所望の対イオンがすでに式(I)または(II)によるスルホナート化合物に導入されていない限り、スルホナート基を遊離スルホン酸基に変換するために、得られるスルホナート付加物は、好ましくは、まず、酸性イオン交換樹脂および水溶出を用いるイオン交換に供し、場合により、所定の対イオンXn+の水酸化物の水溶液を用いて中和して、式(I)または(II)によるそれぞれの所望のスルホナート化合物を得る。
【0064】
本発明の方法の特に好ましい実施態様では、工程2)および3)は、溶媒として同一の低級アルコール中で両方の反応を行うことにより、式(VI)のケトンを単離することなくワンポット合成として行われ、ここで、例えば、アルコール溶媒、特にイソプロパノール中、45℃で12hの反応時間、塩基性触媒として10mol%LiOH.HOを使用することによるダブル交差アルドール縮合反応の完了後、水溶液の形態のスルホン化剤、例えばNaHSO、塩基性触媒、例えばトリエチルアミンのようなアミンまたはすでに対イオンとして所望のアミン、場合により、追加量の同一のアルコール溶媒を、単に追加する。ここで、混合物は、最も好ましくは12-14hの反応時間還流される。反応の進行は、例えば、反応混合物の着色、例えば、式(VI)のケトンの共役芳香族構造によって生じる強烈な黄色が徐々に消えることによって監視することができる。
【0065】
好ましい実施態様では、式(I)または(IIによる本発明のスルホナート化合物を含む反応混合物は、まず、過剰な亜硫酸塩を硫酸塩に酸化するために、室温でOを導入し、次いで、n-ペンタンを添加し、そして、例えば40-60℃の平均温度で、好ましくはディーン・スターク水分離器を用いて、水、低級アルコール、特にイソプロパノール、およびペンタンの3成分の共沸混合物を留去することにより、大部分の水と低級アルコールを除去する。次いで、これを、真空下ロータリーエバポレーターで乾燥して、わずかに黄色がかった固体残渣を得る。次いで、これを、好ましくは、例えば、ソックスレー抽出器を用い、アセトン、CHCl、CHClまたはEtOのような有機溶媒で抽出することにより、脱色するまで精製する。
【0066】
そして、第三の態様において、本発明は、ラジカルRないしRの炭素原子の総数が少なくとも9個である、式(I)または(II)による新規なスルホナート化合物の界面活性剤としての使用に関する。
【実施例
【0067】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、これらは保護範囲を限定するものと解釈されるべきではない。説明の目的で、本発明による方法における出発物質として好ましい、一般的なリグニン解重合生成物の代表的なモデル化合物として、バニリンを使用し、本発明によるスルホナート化合物に変換した。そのメトキシ誘導体であるシリンガアルデヒド、これはリグニンの分解生成物としての別の典型的な芳香族アルデヒドであるが、これを使用するさらなる実施例は、現在、本発明者らによって行われるさらなる実験の対象である。
【0068】
【化19】
【0069】
以下の反応スキームAによれば、最初に、バニリン(III)を一連の様々な脂肪アルキルハライドR-Yでエーテル化し、その後、このようにして得られた式(IV)のエーテルを、それぞれ半当量のアセトンまたはシクロペンタノン(破線の結合で示されるように)を用いたダブル交差アルドール縮合反応に供して、式(VI)のダブルの不飽和のケトンを得、最後に、本発明による対応するスルホナート化合物を得るために、亜硫酸水素塩を付加する。最後の工程で、今までは、式(I)によるジスルホナートを得るために、2当量のみの亜硫酸水素塩をケトンの両方の二重結合に付加した。しかし、既に上記で述べているように、より少ない量のスルホン化剤のみの使用で、式(II)による対応するモノスルホナートまたは両方の混合物もまた、類似の方法で得られることは、当業者には明白である。
【0070】
反応スキームA
【0071】
【化20】
【0072】
実施例1
1,5-ビス(3-メトキシ-4-オクチルオキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジアンモニウム塩 (1)の製造
【0073】
【化21】
【0074】
工程1:
バニリン(6.39g,42mmol)を、1-ブロモオクタン(6.76g,35mmol)およびオーブン乾燥したKCOと共に、100mLアセトニトリル中、窒素雰囲気下で48h還流した。次いで、溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、得られた残渣を、ジエチルエーテル(EtO)および石油エーテル(bp:40-60℃)の1:1混合物200mLに再溶解し、50mLの0.5MのNaOHと混合し、次いで、50mLの水で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、その後、溶媒を真空下で留去し、残渣を真空デシケーターで完全に乾燥して、アルキル化バニリンである3-メトキシ-4-オクチルオキシベンズアルデヒドを白色粉末(収率:9.13g;理論の98.7%)として得た。
【0075】
工程2:
4-オクチルオキシ-3-メトキシベンズアルデヒド(1.85g,7mmol)を、14mLイソプロパノール中、触媒としての水酸化リチウム一水和物LiOH.HO(14.7g,0.35mmol)の存在下で、45℃で12h、アセトン(0.20g,3.5mmol)と反応させた。次いで固体の析出物を遠心分離し、6mLのMeOHで3回洗浄し、真空下で乾燥し、ダブル付加体である1,5-ビス(3-メトキシ-4-オクチルオキシフェニル)ペンタ-1,4-ジエン-3-オンを黄色粉末(収率:1.65g;理論の85.4%)として得た。
【0076】
工程3:
バリアント3.1
1,5-ビス(3-メトキシ-4-オクチルオキシフェニル)ペンタ-1,4-ジエン-3-オン(1.1g,2mmol)を、22mLのイソプロパノール中、トリエチルアミン(0.04g,0.4mmol)の存在下で、還流下14h、6mLの亜硫酸水素ナトリウムNaHSOの1M水溶液と反応させた。次いで、固体の析出物を遠心分離し、MeOHで洗浄した。合わせた有機相を0.2μmシリンジフィルターでろ過し、減圧下濃縮し、次いで、新たに活性化した酸イオン交換樹脂(DOWEX(登録商標)50WX8-100)のベッドに通過させ、50mLの水で3回洗浄し、その後、濃NHOH溶液をわずかな過剰に添加してアンモニウム塩を生成させ、これをろ去し、真空デシケーターで完全に乾燥して、標題化合物(1)を白色固体(収率:1.34g;89.2%d.Th.)として得た。
【0077】
バリアント3.2
1,5-ビス(3-メトキシ-4-オクチルオキシフェニル)ペンタ-1,4-ジエン-3-オン(28mg,0.05mmol)を、マイクロウェーブチューブ中、テフロンコートの撹拌棒を用いて、0.1mLの亜硫酸水素ナトリウムNaHSOの1.5M水溶液およびトリエチルアミン(1mg,0.01mmol)と混合し、しっかりと密閉し、マイクロウェーブリアクター中、140℃で45min加熱した。次いで、反応混合物を真空下で乾燥し、粗試料をNMR分光法による分析用にMeODに溶解した。
【0078】
1H-NMR: δ H (700 MHz, MeOD) 6.97 (d, 1H, (C6,C12)), 6.89 (s, 1H, (C6m, C12m)), 6.78 (m, 2H (C3, C4, C8, C9)), 6.70 (m, 2H, (C3m, C4m, C8m, C9m)), 4.33 (m, 1H, (C13, C18)), 4.26 (m, 1H, , (C13m, C18m)), 3.96 (m, 4H, (C33, C41)), 3.81 (s, 3H, (C20, C22)), 3.76 (s, 3H, (C20m, C22m)), 3.34-3.25 (m, 4H, (C14, C16)), 1.78 (m, 4H, (C34, C42)), 1.48 (m, 4H, (C35, C43)), 1.35 (m, 17H (C36, C37, C38, C39, C44, C45, C46, C47)), 0.92 (t, 6H (C40, C48)). 13C-NMR: δ C(176 MHz, MeOD) 207.4 (C15m), 206.8 (C15), 150.3 (C1, C11), 150.1 (C1m, C11m), 149.4 (C2, C10), 149.3 (C2m, C10m), 130.5 (C5, C7), 130.3 (C5m, C7m), 123.0 (C4, C8), 122.5 (C4m, C8m), 114.8 (C6, C12), 114.1 (C3, C9), 113.9 (C3m, C9m), 70.2 (C33, C41), 70.1 (C33m, C41m), 62.6 (C13m, C18m), 62.3 (C13, C18), 56.4 (C20, C22), 56.3 (C20m, C22m), 46.6 (C14m, C16m), 46.0 (C14, C16), 33.1 (C34m, C42m), 33.0 (C34, C42), 30.6 (C35m, C43m), 30.5 (C35, C43), 30.5 (C36, C44), 30.5 (C36m, C44m), 30.5 (C37m, C45m), 30.4 (C37, C45), 27.2 (C38m, C46m), 27.2 (C38, C46), 23.8 (C39m, C47m), 23.7 (C39, C47), 14.5 (C40, C48). 元素分析: 予想値: C, 56.13; H, 8.07; N, 3.74; S, 8.56; 測定値: C, 55.13; H, 8.33; N, 3.63; S, 8.36 HRMS: (ESI+, m/z) C35H61N2O11S2[M+H]+の計算値: 749.37168; 測定値: 749.370948.
【0079】
実施例2
1,5-ビス(4-ドデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジアンモニウム塩 (2)の製造
【0080】
【化22】
【0081】
工程1:
1-ブロモオクタンの代わりに1-ブロモドデカンを使用したことを除いて、実施例1と類似の方法で反応を実施して、4-ドデシルオキシ-3-メトキシベンズアルデヒドをクリーム色の粉末(収率:10.85g;理論の96.8%)として得た。
【0082】
工程2:
実施例1と類似の方法で反応を実施して、1,5-ビス(4-ドデシルオキシ-3-メトキシフェニル)ペンタ-1,4-ジエン-3-オンを黄色粉末(収率:20.0g;理論の86.0%)として得た。
【0083】
工程3:
1mmolのみの1,5-ビス(4-ドデシルオキシ-3-メトキシフェニル)ペンタ-1,4-ジエン-3-オンを使用したことを除いて、実施例1と類似の方法で反応を実施して、標題化合物(2)をクリーム色の粉末(収率:0.75g;理論の87.0%)として得た。
【0084】
1H-NMR: δ H (300 MHz, MeOD) 6.94 (1 H, s, (C6, C12)), 6.85 (1 H, s, (C6m, C12m)), 6.73 (2 H, d, J 1.1, (C3, C4, C8, C9)), 6.69-6.63 (2 H, m, (C3m, C4m, C8m, C9m)), 4.34-4.27 (1 H, m, (C13, C18)), 4.26-4.17 (1 H, m, (C13m, C18m)), 3.99-3.87 (4 H, m, (C14, C16)), 3.78 (2 H, s, (C20, C22)), 3.73 (4 H, s (C20m, C22m)), 3.36-3.12 (4 H, m (C14, C16)), 1.84-1.67 (4 H, m (C34, C46)), 1.52-1.41 (4 H, m (C35, C47)), 1.41-1.24 (33 H, m), 0.89 (6 H, t, J 6.8 (C44, C56)). 13C-NMR: δ C (75 MHz, MeOD) 207.4 (C15m), 206.8 (C15), 150.2 (C1, C11), 150.1 (C1m, C11m), 149.4 (C2, C10), 149.3 (C2m, C10m), 130.4 (C5, C7), 130.3 (C5m, C7m), 123.0 (C4, C8), 122.4 (C4m, C8m)), 114.8 (C6, C12), 114.0 (C3, C9), 113.9 (C3m, C9m), 70.2 (C33, C45), 70.1 (C33m, C45m), 62.6 (C13m, C18m), 62.3 (C13, C18), 56.4 (C20, C22), 56.3 (C20m, C22m), 46.6 (C14m, C16m), 46.0 (C14, C16), 33.1 (C34, C42), 30.8 (C35, C36, C47, C48), 30.7 (C37, C38, C49, C50), 30.6 (C39, C51), 30.5 (C40, C52), 27.3 (C41, C53), 27.2 (C42, C54), 23.8 (C43, C55), 14.5 (C44, C56). 元素分析: 予想値: C, 59.97; H, 8.90; N, 3.25; S, 7.45 測定値: C, 59.15; H, 8.92; N, 3.22; S, 7.13 HRMS: (ESI+, m/z) C43H77N2O11S2[M+H]+の計算値: 861.495738; 測定値: 861.495738.
【0085】
実施例3
1,5-ビス(3-メトキシ-4-テトラデシルオキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジアンモニウム塩 (3)の製造
【0086】
【化23】
【0087】
工程1:
1-ブロモオクタンの代わりに1-ブロモテトラデカンを使用したことを除いて、実施例1と類似の方法で反応を実施して、3-メトキシ-4-テトラデシルオキシベンズアルデヒドをクリーム色の粉末(収率:12.1g;理論の99.2%)として得た。
【0088】
工程2:
粗生成物をMeOHで洗浄した後、沸騰したヘプタンから再結晶したことを除いて、実施例1と類似の方法で反応を実施して、1,5-ビス(3-メトキシ-4-テトラデシルオキシフェニル)ペンタ-1,4-ジエン-3-オンを黄色粉末(収率:1.17g;理論の46.4%)として得た。
【0089】
工程3:
実施例2と類似の方法で反応を実施して、標題化合物(3)をクリーム色の粉末(収率:0.72g;理論の78.3%)として得た。
【0090】
1H-NMR: δ H (300 MHz, MeOD) 6.97 (1 H, s (C6, C12)), 6.88 (1 H, s (C6m, C12m)), 6.79-6.74 (2 H, m (C3, C4, C8, C9)), 6.74-6.62 (2 H, m (C3m, C4m, C8m, C9m)), 4.39-4.29 (1 H, m (C13, C18)), 4.28-4.20 (1 H, m (C13m, C18m)), 4.02-3.89 (4 H, m, (C33, C47)), 3.81 (3 H, s (C20, C22)), 3.76 (3 H, s (C20m, C22m)), 3.36-3.16 (4 H, m (C14, C16)), 1.87-1.72 (4 H, m (C34, C48)), 1.55-1.46 (4 H, m (C35, C49)), 1.42-1.25 (42 H, m (C36-C45, C50-C59)), 0.92 (6 H, t, J 6.9 (C46, C60)). 13C-NMR: δ C (75 MHz, MeOD) 207.4 (C15m), 206.9 (C15), 150.2 (C1, C11), 150.1 (C1m, C11m), 149.4 (C2, C10), 149.3 (C2m, C10m)), 130.4 (C5, C7), 130.3 (C5m, C7m), 123.0 (C4, C8), 122.4 (C4m, C8m), 114.8 (C6, C12), 114.0 (C3, C9), 113.8 (C3m, C9m)), 70.2 (C33, C47), 70.1 (C33m, C47m), 62.6 (C13m, C18m), 62.3 (C13, C18), 56.4 (C20, C22), 56.3 (C20m, C22m), 46.6 (C14m, C16m), 46.0 (C14, C16), 33.1 (C34, C48), 31.0-30.3 (m) (C35-C42, C49-C56), 27.3 (C43, C57), 27.2 (C44, C58), 23.8 (C45, C59), 14.5 (C46, C60). 元素分析: 予想値: C, 61.54; H, 9.23; N, 3.05; S, 6.99 測定値: C, 59.58; H, 9.32; N, 2.93; S, 6.22 HRMS: (ESI-, m/z) C47H85N2O11S2[M+H]+の計算値: 917.558929; 測定値: 917.557029.
【0091】
実施例4
1,5-ビス(4-ヘキサデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジアンモニウム塩 (4)の製造
【0092】
【化24】
【0093】
工程1:
1-ブロモオクタンの代わりに1-ブロモヘキサデカンを使用したことを除いて、実施例1と類似の方法で反応を実施して、4-ヘキサデシルオキシ-3-メトキシベンズアルデヒドをクリーム色の粉末(収率:13.0g;理論の98.7%)として得た。
【0094】
工程2&3(ワンポット合成):
4-ヘキサデシルオキシ-3-メトキシベンズアルデヒド(2.63g,7mmol)を、14mLイソプロパノール中、触媒としての水酸化リチウム一水和物LiOH.HO,(14.7g,0.35mmol)の存在下で、45℃で12h、アセトン(0.20g,3.5mmol)と反応させた。次いで、トリエチルアミン(0.07g,0.7mmol)、10.5mLの亜硫酸水素アンモニウムNHHSOの1M水溶液、および追加の38.5mLのイソプロパノールを添加し、その後、反応混合物を14h勢いよく攪拌しながら還流した。次いで未反応の亜硫酸塩を硫酸塩に酸化させるために、酸素ガスで満たした風船を用いて、反応混合物をO雰囲気下に置いた。次いで、50mLのペンタンを添加し、ディーン-スターク装置を用いて50℃で、共沸混合物として水を留去した。その後、液体残渣をロータリーエバポレーターで減圧下濃縮した。アセトンを得られた残渣に添加し、ソックスレー抽出器を用いて抽出した。MeOHで洗浄することにより無機塩を除去し、その後、残りの残渣からロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、残渣を真空デシケーターで完全に乾燥して、標題化合物(4)をクリーム色の粉末(収率:2.17g;理論の63.8%)として得た。
【0095】
1H-NMR: δ H (300 MHz, MeOD) 6.94 (s, 1H, C6, C12), 6.85 (d, J = 1.7 Hz, 1H, (C6m, C12m)), 6.73 (d, J = 1.1 Hz, 1H, (C3, C4, C8, C9)), 6.65 (d, J = 2.3 Hz, 3H, (C3m, C4m, C8m, C9m)), 4.31 (dd, J = 9.3, 5.2 Hz, 1H, (C13, C18)), 4.22 (dd, J = 10.4, 4.0 Hz, 1H, (C13m, C18m)), 3.94 (t, J = 6.6, 6.6 Hz, 4H (C33, C49)), 3.78 (s, 2H (C20, C22), 3.74 (s, 4H (C20m, C22m)), 1.76 (s, 4H (C34, C50)), 1.29 (s, 44H(C35-C47, C51-C63), 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 7H (C48, C64) 元素分析: 予想値: C, 62.93; H, 9.53; N, 2.88; S, 6.59 測定値: C, 58.93; H, 9.50; N, 2.77; S, 6.19.
【0096】
実施例5
1,5-ビス(3-メトキシ-4-オクタデシルオキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジアンモニウム塩 (5)の製造
【0097】
【化25】
【0098】
工程1:
1-ブロモオクタンの代わりに1-ブロモオクタデカンを使用し、かつ10倍容量の溶液を使用したことを除いて、実施例1と類似の方法で反応を実施して、3-メトキシ-4-オクタデシルオキシベンズアルデヒドをクリーム色の粉末(収率:1.38g;理論の97.6%)として得た。
【0099】
工程2&3(ワンポット合成):
4-ヘキサデシルオキシ-3-メトキシベンズアルデヒドの代わりに3-メトキシ-4-オクタデシルオキシベンズアルデヒドを使用して、実施例4と類似の方法で反応を実施して、標題化合物(5)をクリーム色の粉末(収率:11.9g;理論の33.0%)として得た。
【0100】
1H-NMR (300 MHz, MeOD) δ 6.94 (s, 1H), 6.85 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 6.75-6.70 (m, 2H), 6.65 (d, J = 2.5 Hz, 2H), 4.32 (dd, J = 9.3, 5.2 Hz, 1H), 4.22 (dd, J = 10.3, 4.1 Hz, 1H), 3.94 (t, J = 6.6, 6.6 Hz, 4H), 3.79 (s, 3H), 3.74 (s, 3H), 1.82-1.72 (m, 5H), 1.54-1.22 (m, 62H), 0.88 (t, J = 7.0 Hz, 6H).
【0101】
実施例6
1,5-ビス(4-ドデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジナトリウム塩 (6)の製造
【0102】
【化26】
【0103】
工程1:
合成および生成物は実施例2と同一であった。
【0104】
工程2&3(ワンポット合成):
4-ヘキサデシルオキシ-3-メトキシベンズアルデヒドの代わりに4-ドデシルオキシ-3-メトキシベンズアルデヒドを使用し、かつスルホン化剤として、亜硫酸水素アンモニウムNHHSOの代わりに亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3を使用したことを除いて、実施例4と類似の方法で反応を実施して、標題化合物(6)をクリーム色の粉末(収率:1.70g;理論の55.7%)として得た。
【0105】
1H-NMR (300 MHz, MeOD) 6.95 (s, 1H), 6.85 (s, 1H), 6.77-6.71 (m, 2H), 6.65 (d, J = 2.0 Hz, 2H), 4.31 (dd, J = 8.6, 5.8 Hz, 1H), 4.22 (dd, J = 10.3, 4.1 Hz, 1H), 3.99-3.85 (m, 4H), 3.79 (s, 3H), 3.74 (s, 3H), 1.84-1.69 (m, 4H), 1.55-1.41 (m, 4H), 1.41-1.21 (m, 42H), 0.88 (t, J = 7.0 Hz, 6H).
【0106】
実施例7
1,5-ビス(3-メトキシ-4-テトラデシルオキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジナトリウム塩 (7)の製造
【0107】
【化27】
【0108】
工程1:
合成および生成物は実施例3と同一であった。
【0109】
工程2&3(ワンポット合成):
4-ヘキサデシルオキシ-3-メトキシベンズアルデヒドの代わりに3-メトキシ-4-テトラデシルオキシベンズアルデヒドを使用し、かつスルホン化剤として、亜硫酸水素アンモニウムNHHSOの代わりに亜硫酸水素ナトリウムNaHSOを使用したことを除いて、実施例4と類似の方法で反応を実施して、標題化合物(6)をクリーム色の粉末(収率:1.70g;理論の55.7%)として得た。
【0110】
1H NMR (300 MHz, MeOD) δ 6.95 (s, 1H), 6.86 (d, J = 1.5 Hz, 2H), 6.74 (s, 2H), 6.66 (d, J = 1.8 Hz, 3H), 4.32 (dd, J = 9.6, 4.8 Hz, 1H), 4.24 (dd, J = 10.4, 3.9 Hz, 2H), 3.94 (d, J = 7.0 Hz, 4H), 3.79 (s, 3H), 3.74 (s, 4H), 3.39-3.33 (m, 1H), 3.28-3.14 (m, 2H), 1.84-1.69 (m, 4H), 1.56-1.42 (m, 4H), 1.41-1.20 (m, 44H), 0.91 (t, J = 6.3, 6.3 Hz, 6H). HRMS: (ESI-, m/z) C47H77N2O11S2 [M+H]+の計算値: 927.469721; 測定値: 927.469727.
【0111】
実施例8
1,5-ビス(4-ヘキサデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジナトリウム塩 (8)の製造
【0112】
【化28】
【0113】
工程1:
合成および生成物は実施例4と同一であった。
【0114】
工程2&3(ワンポット合成):
スルホン化剤として、亜硫酸水素アンモニウムNHHSOの代わりに亜硫酸水素ナトリウムNaHSOを使用したことを除いて、実施例4と類似の方法で反応を実施して、標題化合物(8)をクリーム色の粉末(収率:2.66g;理論の77.3%)として得た。
【0115】
1H-NMR: δ H (700 MHz, MeOD) δ 6.96 (s, 1H), 6.88 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 6.75 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 6.70-6.65 (m, 3H), 4.34 (dd, J = 10.3, 4.2 Hz, 1H), 4.25 (dd, J = 10.8, 3.7 Hz, 1H), 3.96 (t, J = 6.5 Hz, 4H), 3.80 (s, 2H), 3.76 (s, 4H), 3.36-3.33 (m, 1H), 3.31-3.20 (m, 2H), 1.78 (dt, J = 8.7, 6.7 Hz, 4H), 1.49 (td, J = 8.0, 7.6, 4.2 Hz, 4H), 1.42-1.36 (m, 5H), 1.35-1.28 (m, 49H), 0.91 (t, J = 7.0 Hz, 5H).13C-NMR: δ C (75 MHz, MeOD) (176 MHz, MeOD) δ 207.5, 207.0, 150.2, 150.1, 149.4, 149.3, 130.4, 130.3, 123.1, 122.4, 114.8, 114.0, 113.9, 70.2, 70.1, 62.6, 62.3, 46.6, 46.0, 33.1 (d, J = 2.1 Hz), 30.9, 30.8, 30.8, 30.8, 30.8, 30.7, 30.6, 30.6, 30.5-30.4 (m), 27.3, 27.2, 23.8, 14.5. 元素分析: 予想値: C, 62.30; H, 8.61; Na, 4.68; S, 6.52 測定値: C, 60.68; H, 9.07; S, 5.49 HRMS: (ESI+, m/z) C51H85Na2O11S2[M+H]+の計算値: 983.532321 測定値: 983.531847.
【0116】
実施例9
1,5-ビス(3-メトキシ-4-オクタデシルオキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジナトリウム塩 (9)の製造
【0117】
【化29】
【0118】
工程1:
合成および生成物は実施例5と同一であった。
【0119】
工程2&3(ワンポット合成):
4-ヘキサデシルオキシ-3-メトキシベンズアルデヒドの代わりに3-メトキシ-4-オクタデシルオキシベンズアルデヒドを使用したことを除いて、実施例8と類似の方法で反応を実施して、標題化合物(9)をクリーム色の粉末(収率:1.05g;理論の28.9%)として得た。
【0120】
1H-NMR: δ H (300 MHz, MeOD) δ 6.96 (s, 1H), 6.87 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 6.78-6.71 (m, 2H), 6.70-6.61 (m, 2H), 4.40-4.26 (m, 1H), 3.96 (dd, J = 7.6, 5.5 Hz, 4H), 3.80 (s, 2H), 3.76 (s, 3H), 1.84-1.70 (m, 5H), 1.30 (d, J = 3.2 Hz, 56H), 0.96-0.87 (m, 6H). 元素分析: 予想値: C, 63.55; H, 8.92; S, 6.17 測定値: C, 59.72; H, 9.06; S, 6.78 HRMS: (ESI+, m/z) C55H93Na2O11S2[M+H]+の計算値 1039.594921 測定値: 1039.595834.
【0121】
実施例10
1,5-ビス(4-ヘキサデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジカリウム塩 (10)の製造
【0122】
【化30】
【0123】
工程1:
合成および生成物は実施例4と同一であった。
【0124】
工程2&3(ワンポット合成):
スルホン化剤として、亜硫酸水素アンモニウムNHHSOの代わりに亜硫酸水素カリウムKHSOを使用したことを除いて、実施例4と類似の方法で反応を実施して、標題化合物(10)をクリーム色の粉末(収率:1.16g;理論の32.8%)として得た。
【0125】
1H-NMR: δ H (300 MHz, MeOD) 6.94 (s, 1H, C6, C12), 6.85 (d, J = 1.7 Hz, 1H, (C6m, C12m)), 6.73 (d, J = 1.1 Hz, 1H, (C3, C4, C8, C9)), 6.65 (d, J = 2.3 Hz, 3H, (C3m, C4m, C8m, C9m)), 4.31 (dd, J = 9.3, 5.2 Hz, 1H, (C13, C18)), 4.22 (dd, J = 10.4, 4.0 Hz, 1H, (C13m, C18m)), 3.94 (t, J = 6.6, 6.6 Hz, 4H (C33, C49)), 3.78 (s, 2H (C20, C22), 3.74 (s, 4H (C20m, C22m)), 1.76 (s, 4H (C34, C50)), 1.29 (s, 44H(C35-C47, C51-C63), 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 7H (C48, C64) 元素分析: 予想値: C, 60.32; H, 8.34; K, 7.70; S, 6.31 測定値: C, 56.57; H, 8.62; S, 8.00 HRMS: (ESI+, m/z) C51H85K2O11S2[M+H]+の計算値: 1015.480195 測定値: 1015.480682.
【0126】
実施例11
1,5-ビス(4-ドデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ジコリン塩 (11)の製造
【0127】
【化31】
【0128】
工程1:
合成および生成物は実施例2と同一であった。
【0129】
工程2:
合成および生成物は実施例2と同一であった。
【0130】
工程3:
0.5mmolのみの1,5-ビス(4-ドデシルオキシ-3-メトキシフェニル)ペンタ-1,4-ジエン-3-オンを使用し、かつイオン交換樹脂に通した後、NHOH溶液の代わりにコリン水酸化物水溶液をわずかな過剰に添加したことを除いて、実施例1、バリアント3.1と類似の方法で反応を実施して、標題化合物(11)をクリーム色の粉末(収率:0.52g;理論の100.7%)として得た。
【0131】
1H-NMR: δ H (300 MHz, MeOD) 6.95 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 6.86 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 6.75 (d, J = 1.1 Hz, 2H), 6.66 (d, J = 2.4 Hz, 2H), 4.31 (dd, J = 9.2, 5.1 Hz, 1H), 4.22 (dd, J = 10.3, 4.1 Hz, 1H), 4.01-3.89 (m, 8H), 3.79 (s, 3H), 3.74 (s, 3H), 3.48-3.39 (m, 4H), 3.16 (s, 20H), 1.82-1.69 (m, 4H), 1.29 (q, J = 5.2, 5.2, 4.2 Hz, 35H), 0.89 (d, J = 6.9 Hz, 6H). 13C-NMR: δ C (75 MHz, MeOD) 207.4, 206.9, 150.2, 150.1, 149.4, 149.3, 130.6, 130.4, 123.1, 122.5, 114.8, 114.1, 113.9, 70.2, 70.1, 69.1-68.9 (m), 62.3, 57.1, 56.5, 56.4, 54.8-54.5 (m), 46.6, 46.0, 33.1, 31.0-30.4 (m), 27.3, 27.2, 23.8, 14.5. 元素分析: 予想値: C, 61.48; H, 9.54; N, 2.71; S, 6.19 測定値: C, 58.31; H, 9.56; N, 3.34; S, 6.02.
【0132】
実施例12
1,5-ビス(4-ドデシルオキシ-3-メトキシフェニル)-3-オキソ-1,5-ペンタンジスルホン酸 ビス(トリエタノールアンモニウム)塩 (12)の製造
【0133】
【化32】
【0134】
工程1:
合成および生成物は実施例2と同一であった。
【0135】
工程2:
合成および生成物は実施例2と同一であった。
【0136】
工程3:
0.5mmolのみの1,5-ビス(4-ドデシルオキシ-3-メトキシフェニル)ペンタ-1,4-ジエン-3-オンを使用し、かつイオン交換樹脂に通した後、NHOH溶液の代わりにトリエタノールアミン水溶液をわずかな過剰に添加したことを除いて、実施例1、バリアント3.1と類似の方法で反応を実施して、標題化合物(12)をクリーム色の粉末(収率:0.55g;理論の98.5%)として得た。
【0137】
1H-NMR: δ H (300 MHz, MeOD) 7.0 (s, 1H), 6.9 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 6.7 (d, J = 1.1 Hz, 2H), 6.7 (d, J = 2.1 Hz, 2H), 4.4-4.3 (m, 1H), 4.3-4.2 (m, 1H), 3.9 (t, J = 6.6, 6.6, 1.6 Hz, 4H), 3.9-3.8 (m, 14H), 3.8 (s, 3H), 3.7 (s, 3H), 3.4 (q, J = 5.2, 5.2, 5.0 Hz, 12H), 1.8-1.7 (m, 4H), 1.5-1.4 (m, 4H), 1.4-1.2 (m, 34H), 0.9-0.9 (m, 6H). 13C-NMR: δ C (75 MHz, MeOD) 207.4, 206.9, 150.2, 150.1, 149.3, 130.5, 130.3, 123.1, 122.4, 114.8, 114.0, 113.8, 70.2, 70.1, 62.6, 56.9, 56.7, 56.4, 56.3, 46.6, 33.1, 30.8, 30.8, 30.7, 30.5, 27.3, 27.2, 23.8, 14.5. 元素分析: 予想値: C, 58.80; H, 8.79; N, 2.49; S, 5.71 測定値: C, 57.01; H, 9.21; N, 2.71; S, 5.29.
【0138】
実施例13
1,1’-(2-オキソシクロペンタン-1,3-ジイル)-ビス[(3-メトキシ-4-オクチルオキシフェニル)メタンスルホン酸 アンモニウム塩] (13)の製造
【0139】
【化33】
【0140】
工程1:
合成および生成物は実施例1と同一であった。
【0141】
工程2:
4-オクチルオキシ-3-メトキシベンズアルデヒドを、アセトンの代わりにシクロペンタノン(0.29g,3.5mmol)と反応させ、かつ粗生成物の析出物を、遠心分離後、MeOHの代わりにヘキサンで洗浄したことを除いて、実施例1と類似の方法で反応を実施して、2,5-ビス(3-メトキシ-4-オクチルオキシベンジリデン)シクロペンタン-1-オンを黄色粉末(収率:1 78g;理論の87.9%)として得た。
【0142】
工程3:
2,5-ビス(3-メトキシ-4-オクチルオキシベンジリデン)シクロペンタン-1-オン(0.29g,0.5mmol)を、トリエチルアミン(0.59g,10mmol)の存在下で、6.2mLの亜硫酸HSOの0.8M水溶液と反応させたことを除いて、実施例1、バリアント3.1と類似の方法で反応を実施して、標題化合物(13)を黄色がかった結晶(収率:0.37g;理論の96.1%)の形態で得た。
【0143】
1H-NMR: δ H (300 MHz, MeOD) 7.19-7.03 (m, 2H), 6.98-6.74 (m, 3H), 6.48-6.32 (m, 1H), 4.63-4.37 (m, 2H), 4.07-3.84 (m, 5H), 3.83-3.67 (m, 6H), 3.39-3.31 (m, 2H), 3.23 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 2.61 (d, J = 30.9 Hz, 1H), 2.53 (s, 1H), 2.35 (q, J = 11.3, 9.5 Hz, 1H), 1.91 (ddd, J = 11.7, 8.2, 3.7 Hz, 1H), 1.86-1.70 (m, 4H), 1.60-1.39 (m, 6H), 1.37-1.23 (m, 16H), 0.94-0.86 (m, 6H). 13C-NMR: δ C(75 MHz, MeOD) 215.8, 148.8, 148.6, 147.9, 130.5, 127.3, 126.5, 122.9, 122.0, 114.4, 113.6, 113.3, 112.5, 111.8, 68.8, 68.7, 68.4, 64.7, 64.3, 63.9, 55.0, 54.8, 53.4, 51.4, 49.6, 47.3, 47.0, 46.7, 31.7, 31.6, 31.6, 29.3, 29.1, 29.0, 29.0, 29.0, 28.9, 25.9, 25.7, 23.3, 22.4, 22.3, 13.0. 元素分析: 予想値: C, 57.34; H, 8.06; N, 3.61; S, 8.27; 測定値: C, 57.34; H, 8.50; N, 4.50; S, 6.85 HRMS: (ESI+, m/z) C37H63N2O11S2[M+H]+の計算値: 775.386779; 測定値: 775.385622.
【0144】
この化合物は4つの立体中心を含み、生成物はジアステレオマー混合物を示すため、NMRスペクトルにおけるピークの正確な帰属は不可能であった。
【0145】
実施例14
式(I)および(II)による単離されたスルホナート化合物の界面活性剤としての適合性に関する試験
【0146】
通常通り、臨界ミセル濃度(CMC)、すなわちミセルを形成できる濃度を、新規なスルホナート化合物の界面活性特性のパラメーターとして、Kruss Scientific社製のK100Cフォーステンシオメーターを使用し、ウィルヘルミープレート法に従って、25℃、自然pHで測定した。比較のために、ドデシルジメチルアミンスルホナート(「比較品」)を同じ条件下で測定した。比較のために、ドデシルジメチルアミンN-オキシド(「C1」)を同じ条件下で測定した。結果を以下の表1に示す。値が低いほど、それぞれの物質の界面活性剤効果が強いことを示す。
【0147】
【表1】
【0148】
本発明による3つの試験した実施例は、多数の市販品に使用されている比較物質よりも低い、そして大多数においては有意に低いCMC値を示していることが分かる。しかし、オクチルラジカルRにより、本発明による3つの化合物の中でも、ラジカルRないしRにおいて最も少ない数の炭素原子を有する実施例1からのジスルホナート(1)のCMC値0.32g/lでも、比較例の市販の界面活性剤のまだ半分未満である。
【0149】
まだ試験していない本発明による他の化合物の置換パターンにおける類推(analogies)または高い類似(similarities)により、これらの化合物についても強力な界面活性剤効果が一貫して検出可能であると、当業者は予想し得る。これは、バニリンに基づいて本明細書で合成される物質(1)-(13)、ならびに同様のリグニン分解生成物を出発材料として使用して本発明に従って製造できる他のどんな化合物にも、同様に当てはまる。特に、それらの大部分は、バニリンと比較してラジカルRとして追加のメトキシ置換基を含むシリンガアルデヒドなどの、ラジカルRないしRにより多くの炭素原子を有しているためである。
【0150】
このように、本発明は、比較的簡単な合成工程により、経済的かつ環境に優しい方法で得ることができ、その大部分が界面活性剤としての使用に適している、一群の新規なスルホナート化合物を提供する。
【国際調査報告】