(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】腫瘍関連抗原に由来するペプチド及びリポペプチド及び免疫活性物質からなるアジュバントを含む抗がんワクチン組成物、並びにその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20240925BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240925BHJP
C07K 9/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A61K39/00 H ZNA
A61P35/00
C07K9/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024518284
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 KR2022014368
(87)【国際公開番号】W WO2023048530
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0126044
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520053843
【氏名又は名称】チャ ワクチン リサーチ インスティテュート カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CHA VACCINE RESEARCH INSTITUTE CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】560,Dunchon-daero,Jungwon-gu,Seongnam-si,Gyeonggi-do 13230 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨム,ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】アン,ビョンチョル
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ウニョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ウンジョン
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ユンギ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヘギョン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA02
4C085AA03
4C085AA38
4C085BB01
4C085BB11
4C085CC32
4C085DD86
4C085EE01
4C085EE03
4C085EE06
4C085FF14
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045CA41
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、[腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチド]及び[リポペプチド及び免疫活性物質からなるアジュバント]を含む抗がんワクチン組成物;並びにその使用に関する。具体的には、腫瘍関連抗原に由来するペプチドは、ヒト白血球抗原(HLA)に特異的に結合し、上記の特徴を有するペプチドの組合せは、ワクチン組成物を調製するために最適な比でアジュバントと混合され、ワクチン組成物は、がんを予防又は処置するために使用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
[腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチド]を含む抗がんワクチン組成物。
【請求項2】
[腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチド]並びに[リポペプチド及び免疫活性物質からなるアジュバント]を含む抗がんワクチン組成物。
【請求項3】
腫瘍関連抗原が、hTERT、MAGE-A3、MUC-1、サバイビン、及びWT-1からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項4】
[腫瘍関連抗原に由来するペプチド]が、以下のペプチド:
i)hTERTに由来し、HLA-A02型(MHCクラスI)である配列番号1のペプチド(配列番号1:ILAKFLHWL)、
ii)hTERTに由来し、HLA-A24型(MHCクラスI)である配列番号2のペプチド(配列番号2:VYAETKHFL)、
iii)hTERTに由来し、HLA-DRB1型(MHCクラスII)である配列番号3のペプチド(配列番号3:EARPALLTSRLRFIPK)、
iv)hTERTに由来し、HLA-DRB1型(MHCクラスII)である配列番号4のペプチド(配列番号4:RPGLLGASVLGLDDI)、
v)サバイビンに由来し、HLA-A02型(MHCクラスI)である配列番号5のペプチド(配列番号5:ELTLGEFLKL)、
vi)Mage-A3に由来し、HLA-A02型(MHCクラスI)である配列番号8のペプチド(配列番号8:KVAELVHFL)、
vii)Mage-A3に由来し、HLA-A24型(MHCクラスI)である配列番号9のペプチド(配列番号9:IMPKAGLLI)、
viii)MUC-1に由来し、HLA-A02型(MHCクラスI)である配列番号12のペプチド(配列番号12:TAPPVHNV)、
ix)WT-1に由来し、HLA-A02型(MHCクラスI)である配列番号15のペプチド(配列番号15:RMFPNAPYL)、及び
x)WT-1に由来し、HLA-DRB1型(MHCクラスII)である配列番号16のペプチド(配列番号16:KRYFKLSHLQMHSRKH)
のうちの1種以上を含む、請求項1又は2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項5】
[腫瘍関連抗原に由来するペプチド]が、MHCクラスI、MHCクラスII、又はその両方を認識する、請求項1又は2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項6】
アジュバントが、リポペプチド及び免疫活性物質を混合することによって調製される、請求項2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項7】
アジュバントが、前記リポソームの表面に挿入されたリポペプチドを有するリポソームを含む、請求項2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項8】
リポペプチドが、Pam3Cys-SKKKK、Pam3-CSKKKK、PHC-SKKKK、Ole2PamCys-Pam3Cys-SKKKK、Pam3-CSKKKK、PHC-SKKKK、Ole2PamCys-SKKKK、Pam2Cys-SKKKK、PamCys(Pam)-SKKKK、Ole2Cys-SKKKK、Myr2Cys-SKKKK、PamDhc-SKKKK、Pam-CSKKKK、Dhc-SKKKK及びFSL-1(Pam2CGDPKHPKSF)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項9】
リポソームが脂質で構成される、請求項7に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項10】
脂質が、DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)、DOPE(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウム)、DC-chol(3β-[N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール)、DOPG(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DPPC(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、及びコレステロールからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項9に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項11】
アジュバントが、正電荷を有するリポペプチドが前記リポソームの脂質二重層に挿入される正電荷を有するリポソーム、及び負電荷を有する免疫活性物質で構成される、請求項2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項12】
免疫活性物質が、ポリ(I:C)、QS21、MPLA(モノホスホリルリピドA)、CpG、及びフラジェリンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項13】
ポリ(I:C)が50~5,000bpの長さを有する、請求項12に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項14】
リポペプチドとポリ(I:C)が1.25:1~2:1の組成比で混合され、リポペプチドが0.01重量%~0.1重量%であり、ポリ(I:C)が0.01重量%~0.08重量%である、請求項6に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項15】
体液性免疫応答及び細胞性免疫応答を誘導する、請求項1又は2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項16】
Th1免疫応答を増強する、請求項1又は2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項17】
体液性免疫応答が、T濾胞ヘルパー細胞(Tfh)を増加させ、サイトカインを分泌する、請求項15に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項18】
細胞性免疫応答が、IFN-γ、TNF-α、及びグランザイムBの分泌を増強する、請求項15に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項19】
組成物が水性液剤製剤である、請求項1又は2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項20】
活性成分として請求項1又は2に記載の抗がんワクチン組成物を含む、がんを予防又は処置するための医薬組成物。
【請求項21】
がんが、卵巣がん、良性星状細胞腫、悪性星状細胞腫、下垂体腺腫、髄膜腫、脳リンパ腫、希突起神経膠腫、頭蓋内腫瘍、上衣腫、脳幹腫瘍、喉頭がん、中咽頭がん、鼻腔/副鼻腔がん、上咽頭がん、唾液腺がん、下咽頭がん、甲状腺がん、口腔がん、胸部腫瘍、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胸腺がん、縦隔腫瘍、食道がん、乳がん、腹部腫瘍、胃がん、肝臓がん、胆嚢がん、胆道がん、膵臓がん、小腸がん、結腸がん、肛門がん、膀胱がん、腎臓がん、陰茎がん、前立腺がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、膣がん、女性外生殖器がん、並びに皮膚がんからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項19に記載のがんを予防又は処置するための医薬組成物。
【請求項22】
抗がんワクチン組成物が、化学療法、標的療法、免疫チェックポイント阻害剤、及び放射線療法からなる群から選択される1種以上の処置と組み合わせて使用される、請求項19に記載のがんを予防又は処置するための医薬組成物。
【請求項23】
[腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチド]を対象に投与するステップを含む、がんを予防、改善又は処置するための方法。
【請求項24】
[腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチド]並びに[リポペプチド及び免疫活性物質からなるアジュバント]を投与するステップを含む、がんを予防、改善又は処置するための方法。
【請求項25】
がんの予防、改善又は処置のための医薬品の調製における使用のための[腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチド]の使用。
【請求項26】
がんの予防、改善又は処置のための医薬品の調製における使用のための[腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチド]並びに[リポペプチド及び免疫活性物質からなるアジュバント]の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 発明の分野
本発明は、腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチド及びリポペプチド及び免疫活性物質からなるアジュバントを含む抗がんワクチン組成物、並びにその使用に関する。具体的には、本発明は、ヒト白血球抗原(HLA)に特異的に結合するペプチド、ペプチド、リポペプチド及びポリ(I:C)アジュバントからなる抗がんワクチン、並びにがんに対する予防剤又は治療剤としての活性成分として抗がんワクチンを含む医薬組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2. 関連技術の説明
がんは、正常細胞と比較して制御されていない細胞増殖、近傍組織に浸潤する能力、及び他の遠方の組織に転移する能力によって特徴付けられる。近代においては、科学及び医療技術の発展に伴い、多くの疾患が処置可能となり、治癒不能な疾患はほとんど姿を消した。しかしながら、他の疾患とは異なり、がんには非常に複雑で厳しい処置が必要であり、処置が完全には効果的ではない。
【0003】
抗がん処置は、がん組織を物理的に除去し、がん細胞の生存に必要な遺伝子、例えば、抗アポトーシス分子、テロメラーゼ、増殖因子受容体遺伝子、及びシグナル伝達分子の発現を抑制し、又は照射若しくは抗がん剤の投与を介してアポトーシスを誘導することによって行われる(Knudson AG、Nature reviews. Cancer 1(2): 157~162、2001)。
【0004】
しかしながら、この処置の問題点は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼし、副作用を引き起こすことである。したがって、がんを処置する代替方法としての抗がんワクチンの必要性が浮上している。
【0005】
抗がんワクチンは、ヒト免疫系においてがん細胞に固有の抗原を記憶することによりがん細胞を攻撃するために作製されたワクチンであり、抗原の種々のタイプ及び抗原送達方法(例えば、ペプチド、DNA、RNA、樹状細胞)がある。外部のウイルス又は細菌感染を予防する従来の予防ワクチンとは異なり、がん処置のためのワクチンは非自己抗原よりも自己抗原に対する免疫応答を誘導する必要がある。さらに、ワクチンは、がん形成後に投与され、がんを抑制する免疫効果を発揮する場合には有効であるべきであり、同じのがんタイプの患者においてさえ各がん抗原の発現率が異なるため、できるだけ多くの異なるタイプのがん抗原を提示するべきである。
【0006】
実際に、多くのタイプの腫瘍関連抗原は免疫自己抗原であり、免疫寛容原であるため、特異的な免疫応答を誘導することは困難である。これらの限定は、種々のがんタイプにおいて一般的に発現される抗原、又は1種のがんタイプにおいて高度に発現される抗原に対する免疫応答を誘導することによって克服することができる。近年、種々のがんタイプに共通し得る抗原、及び1種のタイプのがんに高度に発現する抗原が報告されている。
【0007】
抗がんワクチンの標的である腫瘍関連抗原(TAA)は、以下のように分類される。A)がん-精巣抗原:このグループに属する抗原は、精巣精母細胞/精原細胞以外の正常組織において発現しないが、がん組織において高度に発現し、そのため、当初はがん-精巣(CT)抗原と呼ばれた。精巣細胞はクラスI又はIIのHLA分子を発現しないため、これらの抗原は正常細胞上のT細胞によって認識されず、したがって免疫学的に腫瘍特異的であるとみなすことができる。CT抗原の周知な例には、MAGEメンバー及びNY-ESO-1が含まれる。B)分化抗原:これらのTAAは、特定の組織の細胞の分化中に発現するタンパク質であり、腫瘍と腫瘍が起源する正常細胞との間で共有される抗原である。分化抗原の代表的な例は、メラノーマ及び正常メラニン細胞に見られるメラン-A/MART-1である。このメラニン細胞系列関連タンパク質はメラニンの生合成に関与し、腫瘍特異的ではないが、がん免疫療法において広く使用されている。他の例としては、メラノーマに対するチロシナーゼ又は前立腺がんに対する前立腺特異抗原(PSA)が挙げられる。C)過剰発現されたTAA:これらは、一般的に正常組織において低い発現レベルを示し、異なるタイプの腫瘍において広く発現されるTAAである。正常組織内の抗原提示細胞(APC)によってプロセシングされ、提示される可能性のある多くのペプチドエピトープは、T細胞認識の閾値レベルを下回る可能性があり、したがって、正常細胞において免疫応答を誘導しないが、腫瘍細胞におけるそれらの過剰発現は、以前に確立された耐性を破壊することによって、抗がん応答を開始することができる。このグループにおけるTAAの代表的な例には、Her-2/neu、サバイビン、テロメラーゼ、又はWT-1(ウィルムス腫瘍1)が含まれる。D)腫瘍特異的抗原:これらの固有のTAAは正常遺伝子(β-カテニン、CDK4、EGFRvIIIなど)における突然変異によって引き起こされる。これらの分子改変の一部は、腫瘍の形質転換及び/又は進行と関連している。腫瘍特異的抗原は、一般的に、正常組織に対する自己免疫応答のリスクなしに、強い免疫応答を誘導することができる。他方、ほとんどの場合、腫瘍特異的抗原は、一般的に、多くの個々のがんにおいて共有されず、特定のがんにおいてのみ発現される。E)異常な翻訳後修飾によって引き起こされるTAA:これらのTAAは、特異的でも過剰発現もしないが、主に活性な翻訳後プロセスによって腫瘍と関連しているタンパク質において起こり得る。このクラスの例は、事象、例えば、腫瘍特異的であり得るか若しくはあり得ない分解中のタンパク質スプライシングから、又はMUC-1(ムチン1)の場合には、腫瘍における新たなエピトープをもたらす改変されたグリコシル化パターンから生じる。
【0008】
腫瘍細胞溶解物、タンパク質、DNA/RNA、プラスミド、及びT細胞エピトープであるペプチドを、抗がんワクチンの抗原形態として使用する方法がある。それらの中でも、ペプチドエピトープは、抗原特異的T細胞を活性化して、がん細胞を死滅させるか、又はがん細胞の増殖を阻害する最も効果的な物質である。さらに、ペプチド自体は、非常に安全であり、安価であり、製造が容易であり、種々の抗原を合わせることができるという利点を有する。
【0009】
抗がんワクチンは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の分子によって提示される腫瘍関連抗原に由来するペプチドエピトープを標的とする。ヒトにおいて、MHC分子はHLA(ヒト白血球抗原)と呼ばれる。MHC分子には、MHCクラスIとMHCクラスIIの2つのクラスがある。MHCクラスI分子はα鎖とβ2ミクログロブリン鎖からなり、一方、MHCクラスII分子はα鎖とβ鎖からなる。それらの三次元形状は、ペプチドへの非共有結合のために使用される結合溝を形成する。
【0010】
MHCクラスI分子は、ほとんどの有核細胞に見出され、内因性タンパク質、欠陥リボソーム産物(DRIP)、及び大きなペプチドのタンパク質分解による切断に起因するペプチドを提示する。しかしながら、エンドソーム区画又は外因性供給源に由来するペプチドもまた、MHCクラスI分子上に見出される。この非古典的なクラスIの提示は、文献において交差提示と呼ばれている(Brossart及びBevan、Blood、1997)。
【0011】
MHCクラスII分子は、主に抗原提示細胞によって取り込まれた外来又は膜貫通タンパク質のペプチドを提示するプロ抗原提示細胞(APC)に見出される。ペプチドとMHCクラスI分子の複合体は、適切なT細胞受容体(TCR)を有するCD8+ T細胞によって認識されるが、ペプチドとMHCクラスII分子の複合体は、適切なTCRを有するCD4+ヘルパーT細胞によって認識される。CD4+ヘルパーT細胞は、CD8+細胞傷害性T細胞の応答を効果的に誘導し、維持する上で重要な役割を果たす。したがって、腫瘍関連抗原によって誘導されるCD4+ T細胞エピトープは、抗腫瘍免疫応答を誘発する薬物の開発に極めて重要である(Gnjaticら、PNAS、2003)。
【0012】
ヘルパーT細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に優しいサイトカインを介して腫瘍部位の環境を支持し、エフェクター細胞、例えば、CTL、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、及び顆粒球を誘引する(Tayら、Cancer Gene Therapy、2020)。MHCクラスIIによって活性化されたヘルパーT細胞は、抗腫瘍免疫におけるCTLエフェクター機能の調節において重要な役割を果たす。TH1型のヘルパーT細胞応答を引き起こすヘルパーT細胞エピトープは、細胞表面に腫瘍関連ペプチド/MHC複合体を提示する腫瘍細胞に対する細胞傷害機能を含む、CD8+キラーT細胞のエフェクター機能を支持する。このようにして、腫瘍関連ヘルパーT細胞ペプチドエピトープは、単独で又は他の腫瘍関連ペプチドと組み合わせて、抗腫瘍免疫応答を刺激するためのワクチン組成物中の活性な医薬成分として使用することができる。例えば、哺乳動物モデル、例えばマウスにおいて、CD8+ Tリンパ球の非存在でさえ、CD4+ T細胞は、インターフェロンガンマ(IFN-g)の分泌による血管新生の阻害を介して腫瘍を抑制することが公知である(Beatty及びPaterson、Immunologic Research、2001;Mumbergら、PNAS、1999)。
【0013】
CD8+ T細胞(リガンド:MHCクラスI分子+ペプチドエピトープ)又はCD4+ヘルパーT細胞(リガンド:MHCクラスII分子+ペプチドエピトープ)によって認識され、CD8-及びCD4-依存性応答の両タイプによる抗腫瘍効果に相乗的に寄与する腫瘍関連抗原の同定及び特徴付けは、腫瘍ワクチンの開発に重要である。したがって、本発明では、MHCクラスI分子を認識するペプチドエピトープとMHCクラスII分子を認識するペプチドエピトープを一緒に使用した。
【0014】
基本的には、MHC分子に結合することができるペプチドはどれもT細胞エピトープとして機能し得る。インビトロ又はインビボでT細胞応答を誘導するための前提条件は、対応するTCRを有するT細胞の存在及びこの特異的エピトープに対する免疫寛容の非存在である。
【0015】
腫瘍組織又はヒト腫瘍細胞株において過剰発現されるか又は選択的に発現される遺伝子の同定は、免疫療法におけるこれらの遺伝子から転写される抗原の使用に関する正確な情報を提供しない。これは、これらの抗原のエピトープの個々の部分集団のみがこのような応答に適切であり、これは、対応するTCRを有するT細胞が存在しなければならず、この特異的エピトープに対する免疫寛容が存在しないか又は最小でなければならないためである。したがって、T細胞の免疫寛容を最小限に抑え、機能と増殖を最大限にしながら、MHC分子に関連して現れる過剰発現するか又は選択的に発現するペプチドのみを選択することが重要である。
【0016】
しかしながら、MHCは非常に多くの対立遺伝子を有しているため、全ての対立遺伝子について候補ペプチドを作製し、強く安定に結合するものを選択するためにそれらを直接試験することは現実的ではない。代わりに、インシリコのアルゴリズムプログラム又はデータベースを使用して、どのペプチドが種々のMHC分子上に存在する三次元結合溝に強く結合することができるかを効果的に予測することができる。
【0017】
これらのデータベースに含有されるペプチドへのMHCの結合に関与するペプチドモチーフに関する情報、及び質量分析計を用いて各MHC分子に結合したペプチドを溶出させることによって得られたデータベースを使用して、種々のペプチドエピトープを予測し、所定のタンパク質配列中に見出すことができる。
【0018】
代表的なデータベースは、SYFPEITHI、MHCPEP、NetMHCpan-4.1EL、及びNetMHCIIpan-4.0ELを含む。しかしながら、結合能力によって予測される全てのペプチドがインビトロ又はインビボのT細胞応答を効果的に誘導するわけではない。コンピュータプログラムにおいて予測された結合親和性は高かったが、実際にはインビトロ又はインビボで十分な免疫原性を誘導することができず、免疫寛容を誘導することさえできた。
【0019】
したがって、これらの予測されたペプチドが抗がんワクチンとして使用されるためには、実際の実験を通して最も効果的であり、安全なペプチドを選択し、それらがインビトロ又はインビボで有効な免疫原性を引き起こすかどうか、及びそれらが免疫寛容を誘導しないかどうかを決定する必要がある。しかしながら、これらの実験を行うには、経済的、物質的、及び時間的に多くの努力が必要である。したがって、本発明では、種々のがん抗原中のMHCクラスI及びII分子と会合することが公知であり、T細胞の機能及び増殖を最大化することができ、種々の以前の臨床試験において安全であることが既に示されているペプチドを、優先的に選択した。
【0020】
TCRとペプチドの結合は、主に腫瘍関連抗原に対するT細胞の活性化及び機能を増加させるために重要であるが、ワクチンとして実際のペプチドを使用した以前の臨床試験の結果は、期待される効果を示さなかった。主な理由は、ペプチド単独では十分な免疫原性を誘発しなかったことである。効果的な免疫原性には、抗原提示細胞による共刺激シグナル伝達と適切なサイトカインの助けが必要である。そうでなければ、T細胞はアネルギー状態になり、免疫寛容が誘導される可能性がある。したがって、アジュバントは、適切で、十分なT細胞活性化を誘導し、それによって抗がん免疫応答を誘導するために不可欠である。
【0021】
本発明では、リポペプチド及び免疫活性物質からなるアジュバントが抗がんワクチン組成物として使用される。このアジュバントは、体液性及び細胞性免疫応答の優れた誘導物質であり、抗がん応答に特に重要なTh1型免疫応答を増加させる。したがって、本発明者らは、リポペプチド及び免疫活性物質で構成されるアジュバントが、ペプチドによるがん抗原特異的なT細胞活性化を助け、より効果的な腫瘍関連抗原特異的な免疫応答を誘導することを確認することによって、本発明を完了した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、[腫瘍関連抗原に由来するペプチド]を含む抗がんワクチン組成物を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、[腫瘍関連抗原に由来するペプチド]並びに[リポペプチド及び免疫活性物質からなるアジュバント]を含む抗がんワクチン組成物を提供することである。
【0024】
本発明の別の目的は、活性成分として上記の抗がんワクチン組成物を含むがんを予防又は処置するための医薬組成物を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、上記の抗がんワクチン組成物を、化学療法、標的療法、免疫チェックポイント阻害剤、及び放射線療法からなる群から選択される1種以上の処置と組み合わせて含む、がんを予防又は処置するための医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するために、本発明は、[hTERT、MAGE-A3、MUC-1、サバイビン、及びWT-1からなる群から選択される1種以上の腫瘍関連抗原に由来するペプチド]を含む抗がんワクチン組成物を提供する。
【0027】
本発明はまた、[hTERT、MAGE-A3、MUC-1、サバイビン、及びWT-1からなる群から選択される1種以上の腫瘍関連抗原に由来するペプチド]並びに[リポペプチド及び免疫活性物質からなるアジュバント]を含む抗がんワクチン組成物を提供する。
【0028】
[腫瘍関連抗原に由来するペプチド]は、以下のペプチドのうちの1種以上を含む。
i)hTERTに由来し、HLA-A02型(MHCクラスI)である配列番号1のペプチド(配列番号1:ILAKFLHWL)、
ii)hTERTに由来し、HLA-A24型(MHCクラスI)である配列番号2のペプチド(配列番号2:VYAETKHFL)、
iii)hTERTに由来し、HLA-DRB1型(MHCクラスII)である配列番号3のペプチド(配列番号3:EARPALLTSRLRFIPK)、
iv)hTERTに由来し、HLA-DRB1型(MHCクラスII)である配列番号4のペプチド(配列番号4:RPGLLGASVLGLDDI)、
v)サバイビンに由来し、HLA-A02型(MHCクラスI)である配列番号5のペプチド(配列番号5:ELTLGEFLKL)、
vi)Mage-A3に由来し、HLA-A02型(MHCクラスI)である配列番号8のペプチド(配列番号8:KVAELVHFL)、
vii)Mage-A3に由来し、HLA-A24型(MHCクラスI)である配列番号9のペプチド(配列番号9:IMPKAGLLI)、
viii)MUC-1に由来し、HLA-A02型(MHCクラスI)である配列番号12のペプチド(配列番号12:TAPPVHNV)、
ix)WT-1に由来し、HLA-A02型(MHCクラスI)である配列番号15のペプチド(配列番号15:RMFPNAPYL)、及び
x)WT-1に由来し、HLA-DRB1型(MHCクラスII)である配列番号16のペプチド(配列番号16:KRYFKLSHLQMHSRKH)。
【0029】
アジュバントは、リポペプチド及び免疫活性物質を混合することによって調製される。
【0030】
アジュバントは、その表面に挿入されたリポペプチド及び免疫活性物質を有するリポソームを含む。
【0031】
リポソームは脂質で構成される。
【0032】
免疫活性物質は、ポリ(I:C)、QS21、MPLA、CpG、及びフラジェリンからなる群から選択される1種以上である。
【0033】
本発明はまた、活性成分として上記の抗がんワクチン組成物を含むがんを予防又は処置するための医薬組成物を提供する。
【0034】
さらに、本発明は、上記の抗がんワクチン組成物を、化学療法、標的療法、免疫チェックポイント阻害剤、及び放射線療法からなる群から選択される1種以上の処置と組み合わせて含む、がんを予防又は処置するための医薬組成物を提供する。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一態様において提供される腫瘍関連抗原由来ペプチドは、抗がん免疫を効果的に誘導することができ、腫瘍関連抗原由来ペプチドとリポペプチド及び免疫活性物質を含むアジュバントとを含む抗がんワクチン組成物は、種々のがんに対する抗がん免疫を効果的に誘導することができ、抗がんワクチン組成物は、従来の抗がん処置、例えば、異なる機構を有する化学抗がん剤、免疫チェックポイント阻害剤、及び放射線療法と組み合わせて使用して、抗がん効果を有意に増強させることができ、それによって、がんを予防及び処置するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】ELISPOTアッセイを使用して、本発明において提供される腫瘍関連抗原由来の単一ペプチドの免疫原性を確認した結果を示すグラフである。
【
図2】ELISPOTアッセイを使用して各抗原について組み合わせた場合に、本発明において提供される腫瘍関連抗原由来ペプチドの免疫原性を確認した結果を示すグラフである。
【
図3】ELISPOTアッセイを使用してペプチドの数に従って組み合わせた場合に、本発明において提供される腫瘍関連抗原由来ペプチドの免疫原性を確認した結果を示すグラフである。
【
図4a】四量体結合アッセイを使用して、CHA-2(IL-2 20U/ml)ペプチド単独(5μg/ml又は50μg/ml)、10種のペプチドの組合せ(50μg/ml)、並びにペプチド併用(50μg/ml)、リポペプチド及びポリ(I:C)アジュバントの組合せで処理された群におけるペプチド特異的な四量体+CD8+ T細胞の頻度(%)を比較した結果を示すグラフである。
【
図4b】
図4aの四量体結合アッセイを通して、CHA-2ペプチド特異的な四量体+CD8+ T細胞の数を比較した結果を示すグラフである。
【
図4c】四量体結合アッセイを使用して、CHA-8(IL-2 20U/ml)ペプチド単独(5μg/ml又は50μg/ml)、10種のペプチドの組合せ(50μg/ml)、並びにペプチド併用(50μg/ml)、リポペプチド及びポリ(I:C)アジュバントの組合せで処理された群におけるペプチド特異的な四量体+CD8+ T細胞の頻度(%)を比較した結果を示すグラフである。
【
図4d】
図4cの四量体結合アッセイを通して、CHA-8ペプチド特異的な四量体+CD8+ T細胞の数を比較した結果を示すグラフである。
【
図4e】四量体結合アッセイを使用して、CHA-9(IL-2 20U/ml)ペプチド単独(5μg/ml又は50μg/ml)、10種のペプチドの組合せ(50μg/ml)、並びにペプチド併用(50μg/ml)、リポペプチド及びポリ(I:C)アジュバントの組合せで処理された群におけるペプチド特異的な四量体+CD8+ T細胞の頻度(%)を比較した結果を示すグラフである。
【
図4f】
図4fの四量体結合アッセイを通して、CHA-9ペプチド特異的な四量体+CD8+ T細胞の数を比較した結果を示すグラフである。
【
図4g】四量体結合アッセイを使用して、CHA-15(IL-2 20U/ml)ペプチド単独(5μg/ml又は50μg/ml)、10種のペプチドの組合せ(50μg/ml)、並びにペプチド併用(50μg/ml)、リポペプチド及びポリ(I:C)アジュバントの組合せで処理された群におけるペプチド特異的な四量体+CD8+ T細胞の頻度(%)を比較した結果を示すグラフである。
【
図4h】
図4gの四量体結合アッセイを通して、CHA-15ペプチド特異的な四量体+CD8+ T細胞の数を比較した結果を示すグラフである。
【
図5a】結腸直腸がん細胞株SW620において本発明において提供される腫瘍関連抗原由来ペプチドの組合せの細胞毒性効果を確認した結果を示すグラフである。
【
図5b】3人の健常個体(ドナー8、9、及び10)のPBMCによる
図5aの結果を示すグラフである。
【
図5c】前立腺がん細胞株PC-3において本発明において提供される腫瘍関連抗原由来ペプチドの組合せの細胞毒性効果を確認した結果を示すグラフである。
【
図5d】3人の健常個体(ドナー8、9、及び10)のPBMCによる
図5cの結果を示すグラフである。
【
図5e】乳がん細胞株MCF-7において本発明において提供される腫瘍関連抗原由来ペプチドの組合せの細胞毒性効果を確認した結果を示すグラフである。
【
図5f】3人の健常個体(ドナー8、9、及び10)のPBMCによる
図5eの結果を示すグラフである。
【
図5g】卵巣がん細胞株OVCAR-3において本発明で提供される腫瘍関連抗原由来ペプチドの組合せの細胞毒性効果(CTL活性)を確認した結果を示すグラフである。
【
図5h】3人の健常個体(ドナー8、9、及び10)のPBMCによる
図5gの結果を示すグラフである。
【
図6】SW620、PC-3、MCF-7、及びOVCAR-3細胞株において本発明で提供される腫瘍関連抗原由来ペプチドの組合せによるグランザイムB分泌のレベルを比較した結果を示すグラフである。
【
図7a】ドナー8における大腸細胞株SW620上のサバイビン+MAGE-A3ペプチド(S+Mペプチド)、hTERT+WT-1ペプチド(H+Wペプチド)、及び10種のペプチド併用の細胞毒性効果(CTL活性)を比較した結果を示すグラフである(
#P<0.05 10種のペプチド併用群対非刺激群、
$P<0.05 10種のペプチド併用群対H+W群、
&P<0.05 10種のペプチド併用群対S+M群)。
【
図7b】ドナー9における大腸細胞株SW620上のサバイビン+MAGE-A3ペプチド(S+Mペプチド)、hTERT+WT-1ペプチド(H+Wペプチド)、及び10種のペプチドの組合せの細胞毒性効果(CTL活性)を比較した結果を示すグラフである(
#P<0.05 10種のペプチド併用群対非刺激群、
$P<0.05 10ペプチド併用群対H+W群、
&P<0.05 10ペプチド併用群対S+M群)。
【
図7c】ドナー10における大腸細胞株SW620上のサバイビン+MAGE-A3ペプチド(S+Mペプチド)、hTERT+WT-1ペプチド(H+Wペプチド)、及び10種のペプチドの組合せの細胞毒性効果(CTL活性)を比較した結果を示すグラフである(
#P<0.05 10種のペプチド併用群対非刺激群、
$P<0.05 10種のペプチド併用群対H+W群、
&P<0.05 10種のペプチド併用群対S+M群)。
【
図7d】大腸がん細胞株SW620におけるサバイビン+MAGE-A3ペプチド(S+Mペプチド)、hTERT+WT-1ペプチド(H+Wペプチド)、及び10種のペプチドの組合せによるグランザイムB分泌のレベルを比較した結果を示すグラフである(nはペプチド数であり、ドナー8~10)。
【
図8a】マウスモデルにおける、本発明において提供される腫瘍関連抗原由来ペプチド、リポペプチド、及びポリ(I:C)アジュバント又は別のTLRアジュバントの組合せを用いて調製された試験ワクチンのIFN-γ産生細胞の数を比較した結果を示すグラフである。[左から、PBS陰性対照群、ペプチド処理群、ペプチド+TLR2リガンド処理群、ペプチド+TLR3リガンド処理群、ペプチド+TLR7/8(イミキモド)リガンド処理群、ペプチド+TLR9リガンド処理(CpG)群、ペプチド+L-pampo処理群]。
【
図8b】
図8aにおけるペプチド特異的なIFN-γ分泌レベルを比較した結果を示すグラフである。
【
図9】マウスモデルにおける、本発明において提供される10種のペプチド、10種のペプチド及びL-pampo、並びに10種のペプチド及びLipo-pamの組合せを用いて調製された試験ワクチンのIFN-γ産生細胞の数を比較した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0038】
本発明は、[腫瘍関連抗原に由来するペプチド]を含む抗がんワクチン組成物を提供する。
【0039】
腫瘍関連抗原(TAA)は、がん又は腫瘍細胞において発現されるタンパク質である。TAAの例には、新規抗原(腫瘍形成中に発現し、正常細胞又は健常細胞の類似タンパク質から改変した新生抗原)、がん遺伝子及び腫瘍抑制遺伝子の産物、過剰発現又は異常発現した細胞タンパク質(例えば、HER2、MUC-1)、発がん性ウイルスによって産生される抗原(例えば、EBV、HPV、HCV、HBV、HTLV)、精巣がん抗原(CTA、例えば、MAGEファミリー、NY-ESO)、及び細胞型特異的分化抗原(例えば、MART-1)が含まれる。TAA配列は、実験的に、又は出版された科学論文若しくは公的に利用可能なデータベース、例えば、Ludwig Institute for Cancer Researchデータベース(www.cta.lncc.br/)、Cancer Immunityデータベース(cancerimmunity.org/peptide)、及びTANTIGEN腫瘍T細胞抗原データベース(cvc.dfci.harvard.edu/tadb/)を通じて検索することができる。
【0040】
一方、腫瘍特異的抗原(TSA)は、腫瘍が発生した組織の正常細胞に現れない特定のタイプの腫瘍によって産生される抗原である。TSAには、大衆抗原、新生抗原、及び内因性抗原が含まれる。腫瘍特異的ペプチドは、正常な健常細胞又は組織において発現されていないか、又はごくわずかに発現されているが、特定の疾患又は状態、例えば、特定のタイプのがんを有する対象(細胞又は組織)において高率(高頻度)に発現される。あるいは、腫瘍特異的ペプチドは、正常な健常細胞において低レベルで発現され得るが、疾患(例えば、がん)に罹患した細胞において、又は疾患若しくは状態を有する対象において、高レベルで発現され得る。
【0041】
[腫瘍関連抗原に由来するペプチド]は、hTERTに由来し、HLA-A02型(MHCクラスI)である配列番号1のペプチド(配列番号1:ILAKFLHWL)、hTERTに由来し、HLA-A24型(MHCクラスI)である配列番号2のペプチド(配列番号2:VYAETKHFL)、hTERTに由来し、HLA-DRB1型(MHCクラスII)である配列番号3のペプチド(配列番号3:EARPALLTSRLRFIPK)、hTERTに由来し、HLA-DRB1型(MHCクラスII)である配列番号4のペプチド(配列番号4:RPGLLGASVLGLDDI)、サバイビンに由来し、HLA-A02型(MHCクラスI)である配列番号5のペプチド(配列番号5:ELTLGEFLKL)、Mage-A3に由来し、HLA-A02型(MHCクラスI)である配列番号8のペプチド(配列番号8:KVAELVHFL)、Mage-A3に由来し、HLA-A24型(MHCクラスI)である配列番号9のペプチド(配列番号9:IMPKAGLLI)、MUC-1に由来し、HLA-A02型(MHCクラスI)である配列番号12のペプチド(配列番号12:STAPPVHNV)、WT-1に由来し、HLA-A02型(MHCクラスI)である配列番号15のペプチド(配列番号15:RMFPNAPYL)、及びWT-1に由来し、HLA-DRB1型(MHCクラスII)である配列番号16のペプチド(配列番号16:KRYFKLSHLQMHSRKH)からなる群から選択される少なくとも1種であり得る。
【0042】
健常人から得られたPBMCに処理した場合、各ペプチドの免疫原性は未処理対照よりも高かったが、その程度は異なっていた(
図1)。これらの結果に基づいて、一貫して最低の免疫原性を示したCHA-6、CHA-10、及びCHA-11は除外した。低い免疫原性を示すペプチドを除去した理由は、これらのペプチドを一緒に加えると免疫寛容が誘導されるためである。したがって、13種のペプチドのうち10種のペプチド(配列番号1~5、8、9、12、15及び16)は、免疫原性の結果に基づいて最終的に確認された(表1)。
【0043】
10種の確認されたペプチドの中から種々の腫瘍関連抗原に対する免疫応答を誘導するために最も効果的なペプチド併用を選択するために、5種の抗原の各々に対応するペプチドを最初に混合し、6人の健康人から得られたPBMCに投与し、次に免疫原性の増加又は低下をELISPOTアッセイを使用して分析した。結果として、hTERT及びWT-1に対応するペプチドの組合せ、及びMAGE-A3とサバイビンに対応するペプチドの組合せの免疫原性は、5種の抗原の各々を混合した場合、効果的に増強されたことが確認された(
図2)。
【0044】
ペプチド数の組合せにより免疫原性が増加するかどうかを調べるために、種々の条件下でペプチドを組み合わせ、3人の健常人のPBMCに投与し、ペプチド数に応じたELISPOT結果を図に示した(
図3)。実験の結果として、10種のペプチドの組合せで処理された群は、他の組合せで処理された群よりも高い免疫原性を示し、特に、免疫原性はhTERT+WT-1及びサバイビン+MAGE-A3の組合せよりも増強されることが確認された(
図3)。
【0045】
10種のペプチド(CHA-1、CHA-2、CHA-3、CHA-4、CHA-5、CHA-8、CHA-9、CHA-12、CHA-15、及びCHA-16)の組合せは、種々のがん抗原(hTERT、サバイビン、MAGE-A3、MUC1、及びWT-1)に由来するペプチドからなる。この組合せは、種々のがん抗原に対する抗がん免疫応答を誘導することができ、抗がん免疫応答に重要なCD8及びCD4 T細胞を一緒に活性化することができ、最も高い免疫原性を提供するMHCクラスI及びIIに対するペプチドを含有した。したがって、上記組合せは、種々のがんに対する治療及び予防ワクチンのための最も効果的なペプチドエピトープの組合せであることが確認された。
【0046】
[腫瘍関連抗原に由来するペプチド]及びそれらの組合せは、MHCクラスI、MHCクラスII、又はその両方を認識する。
【0047】
本発明はまた、[腫瘍関連抗原に由来するペプチド]並びに[リポペプチド及び免疫活性物質からなるアジュバント]を含む抗がんワクチン組成物を提供する。
【0048】
リポペプチドは、脂肪酸及びグリセロール分子に結合した数個のアミノ酸で構成され得る。グリセロール分子中の脂肪酸又はリポペプチドを構成するアミノ酸の数は1以上であり得る。この場合、脂肪酸及びアミノ酸は化学的に修飾され得る。リポペプチドは、分子の一部の形態、あるいはグラム陽性若しくはグラム陰性細菌又はマイコプラズマに由来する全体の分子の形態のリポタンパク質であり得る。
【0049】
リポペプチドは、Pam3Cys-SKKKK、Pam3-CSKKKK、PHC-SKKKK、Ole2PamCys-Pam3Cys-SKKKK、Pam3-CSKKKK、PHC-SKKKK、Ole2PamCys-SKKKK、Pam2Cys-SKKKK、PamCys(Pam)-SKKKK、Ole2Cys-SKKKK、Myr2Cys-SKKKK、PamDhc-SKKKK、Pam-CSKKKK、Dhc-SKKKK及びFSL-1(Pam2CGDPKHPKSF)からなる群から選択される少なくとも1種であるが、必ずしもそれらに限定されない。
【0050】
免疫活性物質は、ポリ(I:C)、QS21、モノホスホリルリピドA(MPLA)、CpG、及びフラジェリンからなる群から選択される任意の1種以上であり得る。ポリ(I:C)は、インビトロ及びインビボ研究において1型インターフェロンの強力な誘導物質として使用されている。さらに、ポリ(I:C)は、哺乳動物において最も強力な抗原提示細胞である樹状細胞を安定であり、成熟して形成することが公知である(Rous, R.ら、International Immunol、2004)。これらの既存の報告によれば、ポリ(I:C)は強力なIL-12誘導物質であり、IL-12は細胞性免疫応答を誘導し、Th1免疫応答の発現を促進することによりIgG2a又はIgG2bの形成を誘導する重要な免疫活性物質である。
【0051】
ポリ(I:C)は50~5,000bpの長さを有する。ポリ(I:C)は、10~150、10~90、10~50、10~30、30~60、30~90、30~150、30~50、10~1500、10~900、10~500、10~300、30~600、30~900、30~1500、又は30~500μg/用量の濃度でアジュバントに含まれ得るが、必ずしもそれらに限定されない。
【0052】
QS21は、南米のクイラジャ・サポナリア・モリナの樹皮から抽出された分子量1990.14Daのトリテルペングルコシドと呼ばれるサポニン物質の画分である。QS21は、脂質、例えば、MPLA(モノホスホリルリピドA)又はコレステロールとともに使用した場合、抗原提示細胞、例えば、マクロファージ及び樹状細胞からTh1型サイトカインを分泌することにより、体液性及び細胞性免疫応答を誘導することが公知である。
【0053】
QS21は、1~150、1~90、1~50、1~30、3~60、3~90、3~150、3~50、1~1500、1~900、1~500、1~300、3~600、3~900、3~1500、又は3~500μg/用量の濃度でアジュバントに含まれ得るが、必ずしもそれらに限定されない。
【0054】
四量体結合アッセイを行って、CD8+ T細胞の増殖を確認した。四量体化可能なCHA-2、CHA-8及びCHA-9、並びにCHA-15ペプチドについて実験を行った場合、各ペプチド単独と比較して10種のペプチドの組合せで処理された群では、各ペプチドに特異的なCD8+ T細胞の数及び頻度(%)が増加し、各ペプチドに特異的なCD8+ T細胞の数及び頻度は、リポペプチド及びポリ(I:C)アジュバントによって増加した(
図4)。
【0055】
これらの結果は、10種の選択されたペプチドの組合せが、CD8+ T細胞を活性化することができる単一ペプチドよりも効果的にCD8+ T細胞を増加させることができ、10種のペプチドの組合せがアジュバントとともに投与された場合、より大きな相乗効果があることを示す。これは、CD4+ T細胞が10種のペプチドの組合せでMHCクラスII(CHA-3、CHA-4、及びCHA-16)に結合することができるペプチドによって活性化され、活性化されたCD4+ T細胞が順にペプチド特異的なCD8+ T細胞の増殖を可能にするためである。さらに、CD8+ T細胞のこの増殖における相乗効果は、公知のリポペプチド及びポリ(I:C)アジュバントによって誘導されたTh1応答のために最大化されたことが認められ得る(
図4a~4h)。
【0056】
種々の腫瘍関連抗原に由来するペプチドの組合せによって増殖し、機能的に活性化されたT細胞が、がん細胞を細胞傷害性T細胞として認識し、死滅させることができるかどうかを確認するために、CTL、エフェクター細胞、及びがん細胞を一緒に培養し、次に、CTLによって死滅されたがん細胞の頻度をフローサイトメトリーにより分析した。
【0057】
実験の結果として、3人の健常人のPBMCをペプチド併用で処理することにより活性化されたエフェクター細胞が、結腸直腸がん細胞株SW620、前立腺がん細胞株PC-3、乳がん細胞株MCF-7、又は卵巣がん細胞株OVCAR-3において、ペプチドなしで培養されたエフェクター細胞よりも多くのがん細胞を死滅させたことが確認された。また、これらの結果は、それが細胞特異的な細胞毒性効果であることを示し、エフェクター細胞の数が多いほど、より多くのがん細胞が死滅されることを示した(
図5a~5h)。
【0058】
さらに、種々のがん細胞に対する種々の腫瘍関連抗原に由来するペプチドの組合せによって増殖し、機能的に活性化されたT細胞の活性を確認するために、エフェクター細胞とがん細胞を一緒に培養した培養培地におけるグランザイムB分泌をELISAにより調べた。グランザイムBは、CD8 T細胞、特にCTLにおいて分泌される酵素であり、がん細胞を直接死滅させる上で重要な役割を果たす。
【0059】
実験の結果として、ペプチドなしで培養したエフェクター細胞とがん細胞を一緒に培養した培養培地よりも、6人の健常人のPBMCをペプチド併用で処理して活性化したエフェクター細胞と、大腸がん細胞株SW620、前立腺がん細胞株PC-3、乳がん細胞株MCF-7、又は卵巣がん細胞株OVCAR-3を一緒に培養した培養培地において、グランザイムB含量が有意に高いことが確認された。これは、CTLががん細胞を認識し、がん細胞の死を誘導するグランザイムBを分泌することを示した(
図6)。
【0060】
以上の結果より、ペプチド併用により増殖及び機能的に活性化された腫瘍抗原特異的T細胞ががん細胞を認識し、グランザイムBを分泌して、細胞傷害性T細胞としてがん細胞を直接死滅させることができたことが確認された。
【0061】
次に、本発明者らは、
図3、
図4、及び
図5において優れた免疫原性を示すことが確認された10種のペプチドの組合せが、
図2において優れた免疫原性を示すことが確認されたサバイビン+MAGE-A3又はhTERT+WT-1ペプチド併用よりも高いCTL活性を示すかどうかを比較した。
【0062】
大腸がん細胞株SW620において、グランザイムBの細胞毒性及び分泌を分析した。結果は、3人の健常人のPBMCを10種のペプチドの組合せで処理することによって活性化されたエフェクター細胞が、有意に高いグランザイムBを分泌し、サバイビン+MAGE-A3又はhTERT+WT-1ペプチド併用でそれらを処理することによって活性化されたエフェクター細胞よりも多くのがん細胞を死滅させることができることを示した(
図7a~7d)。
【0063】
この10種の選択されたペプチドの組合せは、種々の腫瘍関連抗原(hTERT、サバイビン、MAGE-A3、MUC-1、及びWT-1)に由来するペプチドからなり、そのため、それは種々のがん抗原に対する抗がん免疫応答を誘導することができる。また、この組合せは、抗がん免疫応答に重要なCD8とCD4 T細胞の両方を活性化することができ、そのため、がん細胞に対する高い免疫応答を誘導し、活性化CTLによりより多くのがん細胞を死滅させることができる。
【0064】
最後に、本発明者らは、10種のペプチド及びリポペプチド及びポリ(I:C)アジュバントの組合せを用いて調製された試験ワクチン、並びに10種のペプチド及び他のTLRアジュバントの組合せを用いて調製された試験ワクチンによって誘導された細胞性免疫応答を比較した。PBS陰性対照、10種のペプチド、10種のペプチドとTLR2リガンドの組合せ、10種のペプチドとTLR3リガンド、10種のペプチドとTLR7/8リガンド(イミキモド)、10種のペプチドとTLR9リガンド(CpG)、及び10ペプチドとL-pampo(リポペプチド及びポリ(I:C)アジュバント)の合計7つの実験群がある(
図8a~8b)。実験の結果として、リポペプチド及びポリ(I:C)アジュバント、すなわちL-pampoを使用した試験ワクチンは、TLR2、TLR3、TLR7/8又はTLR9アジュバントを使用した試験ワクチンと比較して、IFN-γを産生する細胞数を有意に増加させることが確認された。さらに、各ペプチド特異的IFN-γ分泌はまた、TLR2、TLR3、TLR7/8又はTLR9アジュバントを使用した試験ワクチンと比較して、L-pampoを使用した試験ワクチンによって増加したことが確認された(
図8a~8b)。
【0065】
さらに、
図8に示されるマウスモデルにおいて、10種のペプチドと、リポペプチドを表面に挿入したリポソーム及び免疫活性物質からなるLipo-pamアジュバントとの組合せを用いて調製された試験ワクチンが、L-pampoに類似した細胞性免疫応答を誘導し得るかどうかを決定した。結果として、Lipo-pamを使用した試験ワクチンは、L-pampoを使用したワクチンと同様に、対照群と比較してIFN-γを産生する細胞数を有意に増加させたことが確認された(
図9)。
【0066】
上記の結果から、本発明の一態様において提供される抗がんワクチン組成物は、他のアジュバント、例えば、TLR2、TLR3、TLR7/8、又はTLR9アジュバントを含有するワクチン組成物と比較して、がん細胞を死滅させることができる細胞性免疫応答を強く誘導し得る抗がんワクチン組成物であることが確認された。
【0067】
一方、本発明の一実施形態では、抗がんワクチン組成物は、アジュバントとして、リポペプチドと免疫活性物質を一定の比で混合することによって調製される。
【0068】
抗がんワクチン組成物は、油乳剤又は水性液剤製剤であり得る。
【0069】
抗がんワクチン組成物は、緩衝液、等張剤、保存剤、安定化剤、及び可溶化剤をさらに含み得る。緩衝液には、リン酸塩、酢酸塩、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、クエン酸塩などが含まれる。
【0070】
上記組成物を含むワクチン組成物全体の組成比において、リポペプチドは、好ましくは0.01~0.5重量%の重量比でリポペプチド及びポリ(I:C)アジュバントに含まれ、最も好ましくは0.01~0.1重量%の重量比で含まれ、ポリ(I:C)は好ましくは0.01~0.4重量の重量比で含まれ、最も好ましくは0.01~0.08重量%の重量比で含まれるが、必ずしもそれらに限定されない。
【0071】
さらに、等張剤として、塩化ナトリウムは、好ましくは0.1~0.8重量%の重量比、より好ましくは0.2~0.6重量%の重量比で含まれる。本発明の好ましい実施形態によれば、最も好ましくは0.44重量%の重量比で含まれる。
【0072】
さらに、緩衝剤として、リン酸塩、酢酸塩、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、クエン酸塩などを使用することが好ましく、本発明の好ましい実施形態によれば、リン酸塩及び酢酸塩を使用することがより好ましいが、必ずしもそれらに限定されない。リン酸塩は、好ましくは0.01~0.4重量%の重量比、より好ましくは0.01~0.2重量%の重量比で含まれる。本発明の好ましい実施形態によれば、最も好ましくは、0.13重量%の重量比で含まれる。さらに、酢酸塩は、好ましくは0.01~0.3重量%の重量比、より好ましくは0.01~0.2重量%の重量比で含まれる。本発明の好ましい実施形態によれば、最も好ましくは、0.08重量%の重量比で含まれる。したがって、本発明のワクチン組成物は、好ましくは、0.02~0.6重量%の重量比で、本発明の好ましい実施形態によれば、最も好ましくは、0.15~0.25重量%の重量比で緩衝剤を含有する。
【0073】
一方、本発明の別の実施形態では、アジュバントは、リポペプチドを表面に挿入したリポソーム及び免疫活性物質を混合することによって調製される。
【0074】
リポペプチドは、20~250、20~50、50~250、150~250、50~150、20~2500、20~500、50~2500、150~2500、又は50~1500μg/用量の濃度でリポソームに挿入することができる。
【0075】
リポソームは脂質で構成される。
【0076】
脂質は、カチオン性、アニオン性、又は中性の脂質であり得る。例えば、脂質は、DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)、DOPE(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウム)、DC-chol(3β-[N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール)、DOPG(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DPPC(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、及びコレステロールからなる群から選択される少なくとも1種であるが、必ずしもそれらに限定されない。
【0077】
脂質は、15~300、15~150、15~90、15~50、15~40、20~30、15~3000、15~1500、15~900、15~500、15~400、又は20~300μg/用量の濃度でリポソームに挿入することができる。
【0078】
アジュバントは、正電荷を有するリポペプチドが脂質二重層に挿入されている正電荷を有するリポソームと、負電荷を有する免疫活性物質とからなる。
【0079】
抗がんワクチン組成物は、体液性免疫応答と細胞性免疫応答の両方を誘導することができる。
【0080】
抗がんワクチン組成物は、Th1免疫応答を増強することができる。IgG2a又はIgG2bは、抗ウイルス及び抗がん免疫応答に有効なTh1免疫応答を促進し、ヘルパーT細胞1(Th1)によって分泌されるサイトカインによって産生される。したがって、本発明の抗がんワクチン組成物は、ウイルス感染から進行するがんの予防剤又は治療剤としても使用することができる。
【0081】
体液性免疫応答は、T濾胞ヘルパー(Tfh)細胞を増加させ、本発明のアジュバントによりサイトカインを分泌することによって誘導することができる。
【0082】
細胞性免疫応答は、IFN-γ、TNF-α、及びグランザイムBの分泌を増加させることによって誘導することができる。
【0083】
本発明はまた、活性成分として抗がんワクチン組成物を含むがんを予防又は処置するための医薬組成物を提供する。
【0084】
抗がんワクチン組成物は、上述の特徴を有し得る。
【0085】
本発明の一実施形態では、抗がんワクチン組成物は、アジュバント及び抗原を含み得る。アジュバントは、リポペプチドが挿入されるリポソームを含み得、さらに免疫活性物質を含み得る。
【0086】
本発明の予防剤又は治療剤は、薬学的に許容される担体を含有することができ、ヒト又は獣医学的使用のために製剤化され得、種々の経路を介して投与され得る。投与経路は、経口、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、経皮、及び鼻腔内などであり得る。好ましくは、それは製剤化され、注射として投与される。注射剤は、水性溶媒、例えば生理食塩水及びリンゲル液、並びに非水性溶媒、例えば植物油、高脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)及びアルコール(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)を使用して調製することができ、医薬担体、例えば、劣化を防止する安定剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、BHA、トコフェロール、EDTAなど)、乳化剤、pHを調整する緩衝剤、及び微生物増殖を阻害する保存剤(例えば、硝酸フェニル水銀、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、ベンジルアルコールなど)を含有することができる。
【0087】
本発明のがんを予防又は処置するための医薬組成物は、薬学的に有効な量で投与することができる。用語「薬学的に有効な量」とは、副作用又は重度若しくは過剰な免疫応答を引き起こさずにワクチン効果を示すのに十分な量を指し、正確な投与濃度は、ワクチンに含まれる抗原に依存して変化し得る。さらに、予防剤又は治療剤は、医療分野において周知である因子、例えば、患者の年齢、体重、健康、性別、並びに薬物に対する感受性、投与経路、及び投与方法に従って、当業者によって容易に決定することができる。本発明の医薬組成物は、1回から数回投与することができる。
【0088】
がんは、卵巣がん、良性星状細胞腫、悪性星状細胞腫、下垂体腺腫、髄膜腫、脳リンパ腫、希突起神経膠腫、頭蓋内腫瘍、上衣腫、脳幹腫瘍、喉頭がん、中咽頭がん、鼻腔/副鼻腔がん、上咽頭がん、唾液腺がん、下咽頭がん、甲状腺がん、口腔がん、胸部腫瘍、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胸腺がん、縦隔腫瘍、食道がん、乳がん、腹部腫瘍、胃がん、肝臓がん、胆嚢がん、胆道がん、膵臓がん、小腸がん、結腸がん、肛門がん、膀胱がん、腎臓がん、陰茎がん、前立腺がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、膣がん、女性外生殖器がん、並びに皮膚がんからなる群から選択される少なくとも1種であるが、必ずしもそれらに限定されない。
【0089】
抗がんワクチン組成物は、化学療法、標的療法、免疫チェックポイント阻害剤、及び放射線療法からなる群から選択される1種以上の処置と組み合わせて使用することができ、既存の処置と比較して相乗的な抗がん効果を示す。
【0090】
以降、本発明を以下の実施例及び実験例により詳細に説明する。
【0091】
しかしながら、以下の実施例及び実験例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の内容はそれに限定されない。
【0092】
[実施例1]
腫瘍関連抗原に由来するMHCクラスI及びMHCクラスII抗原ペプチドエピトープの発見
<1-1>免疫原性を誘導するペプチド候補の選択
免疫原性を誘導するためのペプチド候補を選択するために、種々のがんについて臨床試験中の公知の腫瘍関連抗原に由来するペプチドを候補として選択した。選択された腫瘍関連抗原は、hTERT、サバイビン、MAGE-A3、MUC-1、EGFRvIII、NY-ESO-1、及びWT-1抗原であり、並びにそれらに由来する16種のペプチドを選択した(表1)。
【0093】
【0094】
これら16種のペプチドのうち、3種のペプチド(CHA-7、CHA-13及びCHA-14)は全て、ジスルフィド結合を形成し、MHC分子への結合を妨げる可能性のある、それらのアミノ酸残基中にシステインを有していたため、除外した。インシリコのアルゴリズムを使用して、このようにして選択された13種のペプチドがMHCクラスI又はMHCクラスIIに対する高い結合親和性を有するペプチドであるかどうかを確認した。
【0095】
結果として、選択された13種のペプチドが種々の腫瘍関連抗原に由来し、HLA-A02/A24及びHLA-DRB1に特異的に結合することを確認することにより、13種のペプチドが免疫原性を誘導するためのペプチド候補として決定した。13種の確認されたペプチド配列は、ペプチド合成会社(Anygen、Korea)に依頼することによりペプチドに合成した。
【0096】
<1-2>選択されたペプチドの免疫原性の確認と最終ペプチドの選択
実施例1において選択された13種のペプチドの免疫原性を確認するために、インターフェロンガンマ(IFNg)-酵素結合免疫-SPOTアッセイ(ELISPOT)を行った。
【0097】
この実験は、単一細胞から分泌されたサイトカインを検出することができる高感度のイムノアッセイである。細胞が捕捉抗体に活性化された場合に分泌されるサイトカインを付着させることによって、分泌されたサイトカインは、細胞表面に発現されるタンパク質又はタンパク質分解酵素の影響を受けることなく測定することができる。サイトカインを捕捉抗体に付着させた後、細胞を除去し、付着した捕捉抗体を認識し得る酵素にコンジュゲートした検出抗体を添加し、酵素の発色基質を添加し、サイトカインを分泌する細胞の位置に発色スポットを形成し、スポット数を用いて刺激抗原に応答した細胞数を決定することができる。
【0098】
実験に必要な末梢血単核細胞(PBMC)を、以下のようにヒト静脈血から単離した。静脈血を1×PBSで希釈し、SepMate-50チューブに入れ、20分間、室温にて800gで遠心分離した。遠心分離後、血漿及び分離したPBMCを洗浄し、6ウェル組織培養プレートの各ウェルに1×106細胞/mLの濃度で入れ、インキュベーター(37℃、5%CO2)中で一晩培養した。翌日、PBMC培養液を回収し、2000rpmで15分間、室温で遠心分離した。遠心分離後、PBMCを6ウェル細胞培養プレートに播種し、ペプチドをそれに添加し、培養して細胞を刺激した。
【0099】
この時点で、実施例1で選択された13種のペプチドを単独で又は種々のペプチド併用で処理し、未処理群及びConA群もまた比較分析のために調製した。6ウェル細胞培養プレートにおいて培養後、200μLのPBMC培養液をELISPOTプレートの各ウェルに分注し、24時間、37℃及び5%CO2条件下で培養した。培養後、プレートを1×PBSで5回洗浄して、ELISPOTアッセイ用に調製した。検出抗体(R4-642-ビオチン)をPBS(0.5%FBS)中で希釈し、100μL/ウェルでプレートに添加し、続いて室温で2時間反応させた。次に、プレートを1×PBSで5回洗浄し、PBS(0.5%FBS)で希釈したストレプトアビジン-HRPを100μL/ウェルでプレートに添加し、続いて室温で1時間反応させた。次に、プレートを1×PBSで洗浄し、TMB基質溶液をプレートに100μL/ウェルで添加した。スポット色が明瞭に発色した場合、プレートをDWで6回洗浄して反応を停止した。水を除去した後、プレートを箔で包み、日陰で1日乾燥させた。乾燥させたELISPOTプレートにELI-FOILを付着させ、膜にスタンプを付けた後、ELISPOTリーダーを使用して各ウェル中のスポット数を読み取った。未処置群のスポット数から験群のスポット数を減算して、グラフを作製した。
【0100】
結果として、
図1に示されるように、全13種のペプチドで処理された群では、ペプチドで処理されなかった対照群と比較して、免疫原性が増加したことが確認された。これらの中で、一貫して最も低い免疫原性を示したCHA-6、CHA-10、及びCHA-11は除外した。これは、低い免疫原性を示すペプチドを添加すると、ペプチドが免疫寛容を誘導する可能性があるためである。したがって、13種のペプチドのうち、10種のペプチド(CHA-1~CHA-5、CHA-8、CHA-9、CHA-12、CHA-15及びCHA-16)を免疫原性の結果に基づいて最終的に確認した(表1)。
【0101】
10種の確認されたペプチドのうち、種々のがん抗原に対して最も効果的な免疫応答を誘導し得るペプチド併用を選択するために、5種の抗原の各々に対応するペプチドを最初に混合し、6人の健常人のPBMCに処理し、次にELISPOTアッセイを使用して免疫原性の増加及び低下を分析した。
【0102】
結果として、
図2に示されるように、hTERT及びWT-1に対応するペプチドの組合せ、並びにMAGE-A3とサバイビンに対応するペプチドの組合せは、個別に5種の抗原に対応するペプチドの組合せよりも、より効果的に免疫原性を増強したことが確認された。さらに、この組合せに他の抗原の組合せを添加した場合、又はこれら2つの組合せ以外の抗原を組み合わせた場合、免疫原性は低下又は増加したが、これら2つの組合せの値以上にはさらに増加しなかったことが確認された。
【0103】
上述の実験では、MAGE-A3とサバイビンの組合せにおいて、hTERTとWT-1及び3種のペプチド(MAGE-A3から2つ及びサバイビンから1つ)との組合せにおいて、6つのペプチド(hTERTから4つ及びWT-1から2つ)が存在したため、本発明者らは、ペプチドの数の組合せに伴って免疫原性が増加するかどうかを決定するための実験を行った。
【0104】
この目的のために、ペプチドを
図3に示されるような種々の条件下で組み合わせ、3人の健常人のPBMCに処理し、ペプチドの数に従ったELISPOT結果を確認した。
【0105】
結果として、
図3に示されるように、10種のペプチドで処置された群は、他の組合せで処置された群よりも免疫原性が高く、特に、hTERT+WT-1の組合せ及びサバイビン+MAGE-A3の組合せで処置された群よりも高かった。
【0106】
10種のペプチド(CHA-1、CHA-2、CHA-3、CHA-4、CHA-5、CHA-8、CHA-9、CHA-12、CHA-15、及びCHA-16)の組合せは、種々のがん抗原(hTERT、サバイビン、MAGE-A3、MUC1、及びWT-1)に由来するペプチドから構成されているため、組合せは種々のがん抗原に対する抗がん免疫応答を誘導し、これは、抗がん免疫応答に重要であるCD8及びCD4 T細胞を一緒に活性化することができるMHCクラスI及びIIに対するペプチドを含有し、最も増強した免疫原性を提供した。したがって、10種のペプチドの上記組合せは、種々のがんに対する処置的及び予防的ワクチンのための最も効果的なペプチドエピトープの組合せであることが確認された。
【0107】
[実施例2]
腫瘍関連抗原に由来するペプチドを含む抗がんワクチンの調製
全てのペプチドは、C末端からN末端までの適切なレジンを利用したFmoc化学を使用した標準的で、十分に確立された固相ペプチド合成法により合成された(Anygen、Korea)。各ペプチドの精製及び純度は、質量分析及びHPLC分析によって確認された。ペプチドは白色の凍結乾燥された化合物であり、95%以上の純度で得られた。全てのペプチドを10mg/mlの濃度で使用した。
【0108】
[実施例3]
[腫瘍関連抗原に由来するペプチド]及び[リポペプチド及び免疫活性物質からなるアジュバント]を含む抗がんワクチンの調製
<3-1>L-pampo
抗がんワクチンは、実施例<1-2>において選択されたペプチド併用を、Pam3Cys-SKKKKと本発明のポリ(I:C)アジュバントと混合することによって調製された。
【0109】
最初に、Pam3Cys-SKKKKとポリ(I:C)とを含む試験ワクチンを調製して、Pam3Cys-SKKKKとポリ(I:C)を同時に使用して調製した場合のアジュバント効果を観察した。ペプチドを含むワクチン混合物を調製する場合、150mMのNaCl及び10mMのリン酸ナトリウムを含有する10X緩衝液(pH7.0)を使用した。
【0110】
<3-2>Lipo-pam
最初に、DOTAP:DPPCリポソームを調製した。この目的のために、DOTAPとDPPCを各々クロロホルムに溶解し、DOTAPとDPPCの混合物をガラス容器の壁に均一に分布するまで回転させながら有機溶媒を窒素で蒸発させた。この際、壁面に薄膜が形成され、形成した膜中に残った有機溶媒を真空デシケータに保存することにより除去した。完全に乾燥した脂質膜は、蒸留水を添加して再水和させた。多層ベシクル(MLV)懸濁液溶液を作製した場合、20mMリン酸ナトリウム中に300mMのNaClを含有する2X緩衝液(pH7.0)を蒸留水と同量でそれに添加した。生成したMLVを3秒/3秒の5サイクル(パルスオン/オフ)で5分間超音波処理して、小さな単層ベシクル(SUV)の形態のDOTAP:DPPCリポソームを調製した。
【0111】
次に、DOTAP、DPPC、及びPam3-CSKKKKを各々有機溶媒を使用して溶解し、次にDOTAP及びDPPCを混合し、Pam3-CSKKKKをそれに添加したことを除いて、DOTAP:DPPCリポソームの調製と同様にしてLipo-pamを調製した。免疫活性物質アジュバント(ポリ(I:C))及びペプチドをLipo-pamに添加することによってワクチン混合物を調製した。この場合、150mMのNaClと10mMのリン酸ナトリウムを含有する10×緩衝液(pH7.0)を使用した。
【0112】
実験例1:ペプチド併用により誘導されたCD8 T細胞特異的免疫原性の検証
CD8+ T細胞は、抗がん免疫における最も重要な免疫細胞であり、がん細胞を直接死滅させ、それらの増殖を防止する。したがって、腫瘍関連抗原に特異的なCD8+ T細胞が多数存在する場合、より効果的な抗がん免疫を誘導することができる。この実施例1において、四量体結合アッセイを行って、実施例1単独で、ペプチドの組合せで、及びアジュバント(リポペプチド及びポリ(I:C))と組み合わせて提示されたペプチドを投与することによって、CD8+ T細胞の増殖を確認した。
【0113】
四量体結合アッセイは、MHC四量体が結合するCD8+ T細胞の数又は頻度(%)を測定することにより、抗原特異的なCD8 T細胞応答、特にCTL(細胞傷害性Tリンパ球)応答を高感度に検証することができる実験方法である。この実験は、4つのMHC/ペプチド複合体である「MHC四量体」を使用して、1種の複合体を作製し、次に、フルオロフォアで標識したストレプトアビジンに付着させる。
【0114】
したがって、この実験において、以下の4つの四量体は、CD8 T細胞(CHA-2/HLA-A24四量体、CHA-8/HLA-A02四量体、CHA-9/HLA-A24四量体、及びCHA-15/HLA-A02四量体)を認識することができるMHCクラスI型に対するペプチド、すなわちHLA-A02及びHLA-24を使用して調製された。
【0115】
ELISPOTアッセイと同様に、PBMCをヒト静脈血から単離し、96ウェル細胞培養プレート(200mL/ウェル)に分注した。アリコートにしたPBMCをペプチドで処理することによって刺激した。この場合、各ペプチドを5mg/mL又は50mg/mLで処理し、実施例<1-2>において確認された10種のペプチドの組合せについて同じ濃度を使用した。この時点で、ペプチドを処理しなかった(未処理)か又は無関係なペプチド(非特異的な四量体)で処理した対照群もまたアッセイのために調製した。
【0116】
96ウェル細胞培養プレートをインキュベーターに入れ、37℃及び5%CO2で24時間培養した。培養終了時、96ウェルプレートを取り出し、培養細胞をFACS(蛍光活性化細胞ソーター)チューブ中で回収し、室温にて2000rpmで15分間遠心分離した。遠心分離が完了した場合、上清を除去し、FVS(固定可能な生存性染色)を処理し、細胞を再懸濁した。再懸濁後、FACSチューブを箔で覆い、15分間、室温で反応させた。各チューブを2mLのPBSで洗浄し、次に室温にて2000rpmで5分間遠心分離した。遠心分離が完了した場合、FACSチューブを取り出し、上清を除去し、各チューブを1mLのFACS緩衝液で洗浄し、遠心分離機に入れ、室温にて2000rpmで5分間遠心分離した。遠心分離が完了した場合、FACSチューブを取り出し、上清を除去し、100μLのFACS緩衝液を各チューブに添加し、再懸濁した。再懸濁後、ヒトFcRブロッキング溶液及びMHC四量体をFACSチューブに添加し、十分に混合した。FACSチューブを箔で包み、室温で20分間反応させた。20分後、抗ヒトCD3、CD45、及びCD8抗体をそこに添加し、十分に混合した。FACSチューブを箔で包み、冷蔵庫で反応させ、次にFACSチューブを冷蔵庫から取り出し、FACS緩衝液を添加し、室温で遠心分離した。遠心分離の完了後、FACSチューブを取り出し、上清を除去し、細胞をFACS緩衝液中に再懸濁した。次に、フローサイトメーターを使用して、総CD8+ T細胞におけるMHC四量体+CD8+ T細胞の数及びMHC四量体+CD8+ T細胞の頻度(%)を分析した。
【0117】
結果として、
図4a~4hに示されるように、10種のペプチドの組合せで処理した群における各ペプチドに特異的な四量体+CD8+ T細胞の頻度(%)及び総数は、CHA-2、CHA-8、CHA-9、及びCHA-15ペプチド単独で処理した群よりも有意に高かった(実線の枠)。リポペプチドとポリ(I:C)アジュバントを10種のペプチドの組合せと混合し、処理した場合、各ペプチドの四量体+CD8+ T細胞の頻度及び数は、10種のペプチドの組合せのみを添加した場合よりも増加したことが確認された(破線の枠)。
【0118】
上記の結果は、10種の選択されたペプチドの組合せが、CD8+ T細胞を活性化することができる単一ペプチドよりも効果的にCD8+ T細胞を増加させることができ、特に、10種のペプチドとアジュバントの組合せを一緒に投与した場合、より大きな相乗効果があったことを示す。これは、CD4+ T細胞がMHCクラスII(CHA-3、CHA-4、及びCHA-16)に結合することができるペプチドによって活性化され、特に10種のペプチドの組合せにおいて活性化され、続いて、よりペプチド特異的なCD8+ T細胞が、活性化されたCD4+ T細胞の助けを借りて増殖することができるためである。さらに、CD8+ T細胞の増殖における相乗効果は、公知のリポペプチド及びポリ(I:C)アジュバントによって誘導されるTh1応答のために最大化されていることが認められる。
【0119】
実験例2:ペプチド併用によって誘導されたCD8+ T細胞の細胞傷害性の検証
種々の腫瘍関連抗原に由来するペプチドの組合せによって増殖し、機能的に活性化されたT細胞が、がん細胞をCTL(細胞傷害性Tリンパ球)として認識し、死滅させることができるかどうかを確認するために、エフェクター細胞とがん細胞を共培養し、CTLによって死滅させたがん細胞の頻度をフローサイトメーターを使用して分析した。
【0120】
最初に、エフェクター細胞、すなわち、ペプチドによって増殖及び活性化されたCTLを調製するために、PBMCをヒト静脈血から単離し、次に、実施例<1-2>において選択された10種のペプチドの各々10mg/mL及び5ng/mLのhIL-2を添加し、続いて、培養した。対照として、ペプチドを含まない5ng/mLのhIL-2とともに培養した細胞を使用した。
【0121】
ペプチドによって増加したエフェクター細胞が標的がん細胞MHCを、特異的に認識し、死滅させることができるかどうかを決定するために、それらを、HLA-A02又はHLA-A24を単独で、又はHLA-A02及びHLA-A24の両方を発現するがん細胞と共培養した。ペプチド併用のあり又はなしで培養したエフェクター細胞及び標的細胞(がん細胞)を、それぞれ2.5:1、5:1、及び10:1の比で16時間共に培養した。次に、エフェクター細胞によるがん細胞死滅の程度を、CFSE/7-AAD(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル/7-アミノアクチノマイシンD)染色を使用して測定した。
【0122】
CFSE/7-AAD染色では、標的がん細胞をCFSEと呼ばれる物質で染色し、がん細胞を緑色に変えた。CFSEで染色した標的がん細胞をエフェクター細胞とともに16時間培養し、次に7-AADと呼ばれる物質で再び染色した。7-AADは死細胞のみを染色し、赤色となるため、CFSEと7-AADの両方を発現する標的がん細胞は、エフェクター細胞による死細胞として決定され得る。染色後、CFSE+7-AAD+がん細胞の頻度をフローサイトメーターを使用して測定し、結果をグラフに表示した。
【0123】
実験は、HLA-A02とHLA-A24の両方を発現する結腸がん細胞株であるSW620、HLA-24のみを発現する前立腺がん細胞株であるPC-3、並びに乳がん細胞株であるMCF-7、並びにHLA-02のみを発現する卵巣がん細胞株であるOVCAR-3を標的として行った。結果として、ペプチド併用により活性化されたエフェクター細胞は、ペプチドなしで培養されたエフェクター細胞よりも多くのがん細胞を死滅させたことが確認され、3人のドナーにおいても同様の傾向が観察された。さらに、エフェクター細胞数が増加するにつれて、より多くのがん細胞が死滅し、細胞特異的な細胞毒性効果が確認された(
図5a~5h)。
【0124】
実験例3:ペプチド併用によるグランザイムB分泌の誘導の確認
種々の腫瘍関連抗原に由来するペプチドの組合せによって増殖し、機能的に活性化されたT細胞が、CTLとしてがん細胞を直接死滅させることができるグランザイムBを分泌し得るかどうかを確認するために、エフェクター細胞とがん細胞を共培養した培地中のグランザイムBのレベルを、ELISAを使用して分析した。
【0125】
上記<実施例2>と同様の方法を使用して、ペプチド併用のあり又はなしで培養されたエフェクター細胞及び標的細胞(がん細胞)を、それぞれ2.5:1、5:1及び10:1の比で添加し、一緒に16時間培養して、培養培地を得た。得られた培養培地を2000rpmで5分間遠心分離し、上清を得、グランザイムBアッセイに使用した。
【0126】
MABTECHのヒトグランザイムB(HRP)(カタログ番号3486-1H-6)キットを使用して、対応するプロトコールを用いてグランザイムB ELISAを行った。2μg/mLの捕捉mAb MT34B6を96ウェル免疫プレート(100μL/ウェル)に添加し、一晩、4℃で反応させた。反応終了後、上清を除去し、0.1%BSAを含有するPBST(PBS+0.05%Tween20)をプレートに200μL/ウェルで添加し、次に1時間、室温で反応させた。プレートをPBST(PBS + 0.05% Tween 20)で5回洗浄し、次に得られた各上清又はインキット標準の0~2000pg/mLをプレートに100μL/ウェルで添加し、室温で2時間反応させた。プレートをPBST(PBS+0.05%Tween 20)で5回洗浄し、次に1μg/mLのMT28-ビオチンを100μL/ウェルでプレートに添加し、次に室温で1時間反応させた。プレートをPBST(PBS+0.05%Tween20)で5回洗浄し、次にストレプトアビジン-HRPを100μL/ウェルでプレートに添加し、次に室温で1時間反応させた。プレートをPBST(PBS+0.05%Tween 20)で5回洗浄した。TMB基質を100μL/ウェルでプレートに添加し、室温で15分間反応させ、次に50μL/ウェルで0.2M硫酸をプレートに添加して、TMB基質反応を停止させた。ELISAリーダーを使用してOD450を測定し、上清中のグランザイムBの量を標準物質と比較して分析した。
【0127】
結果として、
図6に示されるように、6人の健常人に由来するPBMCをペプチド併用で処理することによって活性化されたエフェクター細胞と、結腸がん細胞株SW620、前立腺がん細胞株PC-3、乳がん細胞株MCF-7、又は卵巣がん細胞株OVCAR-3とを共培養した培養培地において、ペプチドなしのエフェクター細胞とがん細胞とを共培養した培養培地よりも、有意に高いレベルのグランザイムBが測定されたことが確認された。これにより、CTLはがん細胞を認識し、グランザイムBを分泌し、それによってがん細胞の死を誘導することが判明した。
【0128】
実験例4:がん抗原又はペプチド数の組合せによる細胞傷害性T細胞のがん細胞死滅能の検証
図3において優れた免疫原性を示すことが確認された10種のペプチドの組合せ、及び
図2において高い免疫原性を示したサバイビン+MAGE-A3又はhTERT+WT-1ペプチド併用のCTL活性効果を比較した。
【0129】
実験は、<実験例2及び3>と同様の方法で行われ、結腸がん細胞株であるSW620をがん細胞として使用した。
【0130】
結果として、
図7a~7dに示されるように、3人の健常人に由来するPBMCを10種のペプチドの組合せで処理することによって活性化されたエフェクター細胞は、はるかに高いレベルのグランザイムBを分泌し、サバイビン+MAGE-A3又はhTERT+WT-1ペプチド併用で処理することによって活性化されたエフェクター細胞よりも多くのがん細胞を死滅させることができたことが確認された。
【0131】
以上の結果は、10種のペプチドの組合せが、種々のがん抗原に由来するペプチド(hTERT、サバイビン、MAGE-A3、MUC-1及びWT-1)からなるため、種々のがん抗原に対する抗がん免疫応答を誘導でき、抗がん免疫応答に重要であるCD8とCD4 T細胞を一緒に活性化することができ、がん細胞に対する免疫応答の高誘導をもたらし、誘導免疫応答を介して活性化されたCTLによってより多くのがん細胞を死滅させ得ることが示唆された。
【0132】
実験例5:マウスモデルにおけるペプチ併用及びリポペプチド+免疫活性物質アジュバント又は他のTLRアジュバントを用いて調製された試験ワクチンの細胞性免疫応答を誘導する有効性の評価
10種のペプチドとリポペプチド+免疫活性物質アジュバント(L-pampo)との組合せを用いて調製された試験ワクチン、及び10種のペプチドと他のTLRアジュバントとの組合せを用いて調製された試験ワクチンの細胞性免疫応答誘導のレベルをマウスモデルにおいて比較した。
【0133】
試験ワクチンは、各10種のペプチド50μgを混合し、次に、混合物中のリポペプチド(Pam3Cys-SKKKK)+免疫活性物質(ポリ(I:C))アジュバント又は他のTLRアジュバント(TLR2リガンドリポペプチド、TLR3リガンドポリ(I:C)、TLR7/8リガンドイミキモド、TLR9リガンドCpG)を含むことによって調製した。各試験ワクチンをC57BL/6マウス(100μL/マウス)に1週間の間隔で3回皮下注射した。3回の免疫投与から1週間後、マウスから脾臓を取り出し、全脾細胞を単離し、ELISPOT法を用いて免疫原性を分析した。
【0134】
結果として、
図8a及び8bに示されるように、Pam3Cys-SKKKK及びポリ(I:C)アジュバントを用いて調製された試験ワクチン(L-pampo)を投与する場合、TLR2、TLR3、TLR7/8又はTLR9アジュバントを用いて調製された試験ワクチンの投与と比較して、IFN-γを産生する細胞数が有意に増加し、IFN-γの各ペプチド特異的な分泌もまた増加したことが確認された。
【0135】
上記の結果は、本発明の一態様において提供される抗がんワクチン組成物が、TLR2、TLR3、TLR7/8、又はTLR9アジュバントを含むワクチン組成物と比較して、がん細胞を死滅させることができるより強力な細胞性免疫応答を誘導し得ることを示す。
【0136】
実験例6:本発明において提供される腫瘍関連抗原に由来するペプチドとリポペプチド+免疫活性物質アジュバントとの組合せ、又はリポペプチドをその上に挿入したリポソーム及び免疫活性基質からなるLipo-pamアジュバントを用いて調製された試験ワクチンの細胞性免疫応答を誘導する有効性の評価
10種のペプチドとリポペプチド+免疫活性物質アジュバントとの組合せを用いて調製された試験ワクチン(Lipo-pam)、及び10種のペプチドとリポペプチドを表面に挿入したリポソーム及び免疫活性基質からなるLipo-pamアジュバントとの組合せを用いて調製された試験ワクチンの細胞性免疫応答誘導のレベルをマウスモデルにおいて比較した。
【0137】
試験ワクチンは、各50μgの10種のペプチドを混合し、次に混合物に、リポペプチド(Pam3Cys-SKKKK)+免疫活性物質(ポリ(I:C))アジュバント、又はリポペプチドを表面に挿入したリポソーム及び免疫活性物質(ポリ(I:C))からなるLipo-pamアジュバントを含めることによって調製した。各試験ワクチンをC57BL/6マウス(100μL/マウス)に1週間の間隔で3回皮下注射した。3回の免疫投与から1週間後、マウスから脾臓を取り出し、全脾細胞を単離し、ELISPOT法を用いて免疫原性を分析した。
【0138】
結果として、
図9に示されるように、リポペプチド(Pam3Cys-SKKKK)を表面に挿入したリポソーム及び免疫活性物質(ポリ(I:C))からなるLipo-pamアジュバントを用いて調製された試験ワクチンを投与した場合、Pam3Cys-SKKKK及びポリ(I:C)アジュバント(Lipo-pam)を用いて調製された試験ワクチンの投与と比較して、IFN-γを産生する細胞数が有意に増加したことが確認された。
【0139】
上記の結果は、リポペプチド及び免疫活性物質アジュバント、又はリポペプチドを表面に挿入したリポソーム及び免疫活性物質からなるLipo-pam、本発明の一態様において提供される抗がんワクチン組成物が、がん細胞を死滅させることができる細胞性免疫応答を強く誘導し得る抗がんワクチン組成物であることを示す。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
[腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチド]を含む抗がんワクチン組成物
であって、
腫瘍関連抗原に由来するペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号15、及び配列番号16に記載のペプチドである、抗がんワクチン組成物。
【請求項2】
[腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチド]並びに[リポペプチド及び免疫活性物質からなるアジュバント]を含む抗がんワクチン組成物
であって、
腫瘍関連抗原に由来するペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号15、及び配列番号16に記載のペプチドである、抗がんワクチン組成物。
【請求項3】
腫瘍関連抗原が、hTERT、MAGE-A3、MUC-1、サバイビン、及びWT-1からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項4】
[腫瘍関連抗原に由来するペプチド]が、MHCクラスI、MHCクラスII、又はその両方を認識する、請求項1又は2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項5】
アジュバントが、リポペプチド及び免疫活性物質を混合することによって調製される、請求項2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項6】
アジュバントが、前記リポソームの表面に挿入されたリポペプチドを有するリポソームを含む、請求項2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項7】
リポペプチドが、Pam3Cys-SKKKK、Pam3-CSKKKK、PHC-SKKKK、Ole2PamCys-Pam3Cys-SKKKK、Pam3-CSKKKK、PHC-SKKKK、Ole2PamCys-SKKKK、Pam2Cys-SKKKK、PamCys(Pam)-SKKKK、Ole2Cys-SKKKK、Myr2Cys-SKKKK、PamDhc-SKKKK、Pam-CSKKKK、Dhc-SKKKK及びFSL-1(Pam2CGDPKHPKSF)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項8】
リポソームが脂質で構成される、請求項
6に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項9】
脂質が、DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)、DOPE(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウム)、DC-chol(3β-[N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール)、DOPG(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DPPC(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、及びコレステロールからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項
8に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項10】
アジュバントが、正電荷を有するリポペプチドが前記リポソームの脂質二重層に挿入される正電荷を有するリポソーム、及び負電荷を有する免疫活性物質で構成される、請求項2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項11】
免疫活性物質が、ポリ(I:C)、QS21、MPLA(モノホスホリルリピドA)、CpG、及びフラジェリンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項12】
ポリ(I:C)が50~5,000bpの長さを有する、請求項
11に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項13】
リポペプチドとポリ(I:C)が1.25:1~2:1の組成比で混合され、リポペプチドが0.01重量%~0.1重量%であり、ポリ(I:C)が0.01重量%~0.08重量%である、請求項
5に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項14】
体液性免疫応答及び細胞性免疫応答を誘導する、請求項1又は2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項15】
Th1免疫応答を増強する、請求項1又は2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項16】
体液性免疫応答が、T濾胞ヘルパー細胞(Tfh)を増加させ、サイトカインを分泌する、請求項
14に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項17】
細胞性免疫応答が、IFN-γ、TNF-α、及びグランザイムBの分泌を増強する、請求項
14に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項18】
組成物が水性液剤製剤である、請求項1又は2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項19】
活性成分として請求項1又は2に記載の抗がんワクチン組成物を含む、がんを予防又は処置するための医薬組成物。
【請求項20】
がんが、卵巣がん、良性星状細胞腫、悪性星状細胞腫、下垂体腺腫、髄膜腫、脳リンパ腫、希突起神経膠腫、頭蓋内腫瘍、上衣腫、脳幹腫瘍、喉頭がん、中咽頭がん、鼻腔/副鼻腔がん、上咽頭がん、唾液腺がん、下咽頭がん、甲状腺がん、口腔がん、胸部腫瘍、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胸腺がん、縦隔腫瘍、食道がん、乳がん、腹部腫瘍、胃がん、肝臓がん、胆嚢がん、胆道がん、膵臓がん、小腸がん、結腸がん、肛門がん、膀胱がん、腎臓がん、陰茎がん、前立腺がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、膣がん、女性外生殖器がん、並びに皮膚がんからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項
18に記載のがんを予防又は処置するための医薬組成物。
【請求項21】
抗がんワクチン組成物が、化学療法、標的療法、免疫チェックポイント阻害剤、及び放射線療法からなる群から選択される1種以上の処置と組み合わせて使用される、請求項
18に記載のがんを予防又は処置するための医薬組成物。
【請求項22】
[腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチド]を対象に投与するステップを含む、がんを予防、改善又は処置するための方法
であって、
腫瘍関連抗原に由来するペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号15、及び配列番号16に記載のペプチドである、方法。
【請求項23】
[腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチド]並びに[リポペプチド及び免疫活性物質からなるアジュバント]を投与するステップを含む、がんを予防、改善又は処置するための方法
であって、
腫瘍関連抗原に由来するペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号15、及び配列番号16に記載のペプチドである、方法。
【請求項24】
がんの予防、改善又は処置のための医薬品の調製における使用のための[腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチド]の使用
であって、
腫瘍関連抗原に由来するペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号15、及び配列番号16に記載のペプチドである、使用。
【請求項25】
がんの予防、改善又は処置のための医薬品の調製における使用のための[腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチド]並びに[リポペプチド及び免疫活性物質からなるアジュバント]の使用
であって、
腫瘍関連抗原に由来するペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号15、及び配列番号16に記載のペプチドである、使用。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチドを含む抗がんワクチン組成物であって、
腫瘍関連抗原に由来するペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号15、及び配列番号16に記載のペプチドである、抗がんワクチン組成物。
【請求項2】
腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチド、並びにリポペプチド及び免疫活性物質からなるアジュバントを含む、抗がんワクチン組成物であって、
腫瘍関連抗原に由来するペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号15、及び配列番号16に記載のペプチドである、抗がんワクチン組成物。
【請求項3】
腫瘍関連抗原が、hTERT、MAGE-A3、MUC-1、サバイビン、及びWT-1からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項4】
アジュバントが、リポソームの表面に挿入されたリポペプチドを有する前記リポソームを含む、請求項2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項5】
リポペプチドが、Pam3Cys-SKKKK、Pam3-CSKKKK、PHC-SKKKK、Ole2PamCys-Pam3Cys-SKKKK、Pam3-CSKKKK、PHC-SKKKK、Ole2PamCys-SKKKK、Pam2Cys-SKKKK、PamCys(Pam)-SKKKK、Ole2Cys-SKKKK、Myr2Cys-SKKKK、PamDhc-SKKKK、Pam-CSKKKK、Dhc-SKKKK及びFSL-1(Pam2CGDPKHPKSF)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項6】
リポソームが脂質で構成される、請求項4に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項7】
脂質が、DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)、DOPE(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)、DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウム)、DC-chol(3β-[N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール)、DOPG(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DPPC(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、及びコレステロールからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項8】
アジュバントが、正電荷を有するリポペプチドが前記リポソームの脂質二重層に挿入される正電荷を有するリポソーム、及び負電荷を有する免疫活性物質で構成される、請求項2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項9】
免疫活性物質が、ポリ(I:C)、QS21、MPLA(モノホスホリルリピドA)、CpG、及びフラジェリンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項10】
ポリ(I:C)が50~5,000bpの長さを有する、請求項9に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項11】
リポペプチドとポリ(I:C)が1.25:1~2:1の組成比で混合され、リポペプチドが0.01重量%~0.1重量%であり、ポリ(I:C)が0.01重量%~0.08重量%である、請求項9に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項12】
組成物が水性液剤製剤である、請求項1又は2に記載の抗がんワクチン組成物。
【請求項13】
活性成分として請求項1又は2に記載の抗がんワクチン組成物を含む、がんを予防又は処置するための医薬組成物。
【請求項14】
がんが、卵巣がん、良性星状細胞腫、悪性星状細胞腫、下垂体腺腫、髄膜腫、脳リンパ腫、希突起神経膠腫、頭蓋内腫瘍、上衣腫、脳幹腫瘍、喉頭がん、中咽頭がん、鼻腔/副鼻腔がん、上咽頭がん、唾液腺がん、下咽頭がん、甲状腺がん、口腔がん、胸部腫瘍、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胸腺がん、縦隔腫瘍、食道がん、乳がん、腹部腫瘍、胃がん、肝臓がん、胆嚢がん、胆道がん、膵臓がん、小腸がん、結腸がん、肛門がん、膀胱がん、腎臓がん、陰茎がん、前立腺がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、子宮肉腫、膣がん、女性外生殖器がん、並びに皮膚がんからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項13に記載のがんを予防又は処置するための医薬組成物。
【請求項15】
抗がんワクチン組成物が、化学療法、標的療法、免疫チェックポイント阻害剤、及び放射線療法からなる群から選択される1種以上の処置と組み合わせて使用される、請求項13に記載のがんを予防又は処置するための医薬組成物。
【請求項16】
がんの予防、改善又は処置のための医薬品の調製における使用のための腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチドの使用であって、
腫瘍関連抗原に由来するペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号15、及び配列番号16に記載のペプチドである、使用。
【請求項17】
がんの予防、改善又は処置のための医薬品の調製における使用のための腫瘍関連抗原(TAA)に由来するペプチド並びにリポペプチド及び免疫活性物質からなるアジュバントの使用であって、
腫瘍関連抗原に由来するペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号15、及び配列番号16に記載のペプチドである、使用。
【国際調査報告】