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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】バイオポリマー粒子及びその製造
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/16 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
C08J3/16 CEP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519063
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 GB2022052411
(87)【国際公開番号】W WO2023052744
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】2113850.8
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.iPhone
(71)【出願人】
【識別番号】522384374
【氏名又は名称】ネイチャービーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Naturbeads Ltd
【住所又は居所原語表記】2 The Old Orchard,Tetbury Hill,Malmesbury,Wiltshire SN16 9JW United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,エイミー アール
(72)【発明者】
【氏名】マッティア,ダビデ
(72)【発明者】
【氏名】ナーイカル,ロラン
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA02
4F070AC12
4F070AC45
4F070AC50
4F070AC66
4F070AE28
4F070DA35
4F070DC07
4F070DC09
4F070DC13
4F070DC16
(57)【要約】
本開示は、バイオポリマー粒子の製造方法を提供する。1つの態様は、分散相が貧溶媒中に押し出されてバイオポリマーの粒子が形成されることを含み、前記分散相が溶媒中に前記バイオポリマーを含む方法を提供する。別の態様は、分散相が溶媒中に前記バイオポリマーを含み、該分散相が膜を通過して連続相中に前記バイオポリマーのエマルジョンを形成することにより、分散相を連続相中で膜乳化すること、及び貧溶媒で相転換させて前記バイオポリマーの粒子を形成することを含む方法を提供する。両方の態様において、溶媒及び貧溶媒のそれぞれが水を含む。その方法によって得られるバイオポリマー粒子も提供される。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散相が貧溶媒中に押し出されてバイオポリマーの粒子が形成されることを含むバイオポリマー粒子の製造方法であって、前記分散相が溶媒中に前記バイオポリマーを含み、前記溶媒及び貧溶媒のそれぞれが水を含む、方法。
【請求項2】
バイオポリマー粒子の製造方法であって、
a.分散相が溶媒中に前記バイオポリマーを含み、該分散相が膜を通過して連続相中に前記バイオポリマーのエマルジョンを形成することにより、分散相を連続相中で膜乳化すること、及び
b.貧溶媒で相転換させて前記バイオポリマーの粒子を形成すること
を含み;
前記溶媒及び貧溶媒のそれぞれが水を含む、方法。
【請求項3】
前記分散相が貧溶媒中に押し出されることによる前記バイオポリマー粒子の形成が、キャピラリー押出によって前記分散相が流体媒体を通過して押し出されることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記分散相が貧溶媒中に押し出されることによる前記バイオポリマー粒子の形成が、前記分散相が流体媒体を通過して型の中に押し出されること、及びそれに続く、前記押し出された分散相を前記貧溶媒と接触させることを含む、請求項1又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記押し出された分散相が前記貧溶媒の表面から約1cm~約80cmの高さから、好ましくは約5cm~約70cmの高さから、より好ましくは約10cm~約60cmの高さから滴下される、請求項1又は請求項3に記載の方法。
【請求項6】
(b)の前に、前記エマルジョンを冷却して温度Tとし、Tは前記連続相の流動点(Tcont)より高く、前記分散相の転移温度(Tdisp)以下であり、すなわちTcont<T≦Tdispであり;前記転移温度は、凝固点、ガラス転移温度及び流動点からなる群から選択され;Tdisp>Tcontである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
相転換(b)のために、前記貧溶媒を温度Tまで冷却し、TがTdispより低い、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
がTに等しい、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記バイオポリマーが多糖類であり、好ましくは前記バイオポリマーがセルロースである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記バイオポリマーがセルロースであり、バージンセルロース、リサイクルセルロース、パルプセルロース及び微結晶セルロース並びにそれらの組み合わせからなる群から選択することができ、好ましくは前記バイオポリマーが微結晶セルロースである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記バイオポリマーが、前記分散相中に、当該分散相の総重量基準で約2重量%~約12重量%、好ましくは約4重量%~約10重量%の量で存在する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記分散相が、前記バイオポリマーを前記溶媒に添加することによって調製され、該溶媒がバイオポリマーの添加前に水を含む、又は前記溶媒がバイオポリマーの添加後にのみ水を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記分散相の前記溶媒が、約2重量%~約12重量%の水、好ましくは約4重量%~約10重量%の水を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記分散相の前記溶媒がさらにイオン液体を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記貧溶媒が有機溶媒を実質的に含まない、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記貧溶媒がイオン液体をさらに含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記イオン液体が、前記貧溶媒中に、当該貧溶媒の総重量基準で、最大約50重量%、好ましくは最大約30重量%の濃度で存在する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記貧溶媒が水からなる、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記イオン液体が酢酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウムを含む、請求項14又は16に記載の方法。
【請求項20】
押出時又は膜乳化時の前記分散相の温度が、約5℃~約100℃未満、好ましくは約20℃~約80℃である、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記貧溶媒の温度が約5℃~約80℃、好ましくは約15℃~約60℃である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の方法によって製造されるバイオポリマー粒子。
【請求項23】
前記粒子の直径が約1μm~約500μmである、請求項22に記載のバイオポリマー粒子。
【請求項24】
前記粒子の直径が約0.2mm~約3mmである、請求項22に記載のバイオポリマー粒子。
【請求項25】
前記粒子の直径が約1mm~約10mmである、請求項22に記載のバイオポリマー粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、バイオポリマー粒子の製造方法に関し、詳細には、化粧品、パーソナルケア、塗料及びコーティング、包装、建設、石油及びガス、食品、生物医学及び医薬での用途に適し(これらに限定されない)、及び/又は改善された環境特性を有するバイオポリマー粒子の製造方法に関する。本発明はまた、本発明の方法によって得られるバイオポリマー粒子を提供する。
【背景技術】
【0002】
バイオポリマーの開発は、消費者製品の環境負荷を低減する上で重要である。高分子からなる材料は、その適応性、耐久性及び価格から広く使用されており、高分子材料を含まない消費者製品を特定することが困難であるほどである。しかしながら、開発された合成高分子の多くは、主に石油及びガス由来のものを原料としており、それは環境との適合性が悪く、持続不可能な資源に依存していることを意味する。ポリマー微粒子は特に、消費者が製品を廃棄した後も生態系に残留することが多いことから、深刻な環境問題を引き起こしている。従って、バイオポリマー及びバイオポリマー粒子は、再生可能で持続可能な原材料由来であるだけでなく、生分解性であることが多いことから、これらの問題に対処する上で大きな役割を果たす。しかしながら、バイオポリマー粒子の製造は相変わらず容易ではなく、その製造において代表的に用いられる試薬の一部は、現在もなお環境上及び/又は安全上の懸念に関連している。
【0003】
バイオポリマー粒子の製造に用いられてきた一つの方法は、膜乳化とそれに続く相転換である。膜乳化プロセスでは、バイオポリマーの分散相を微多孔膜の孔に強制的に通して直接連続相に押し出すことでエマルジョンを形成して、そこから粒子を抽出することができる。次に、エマルジョン中の粒子が、例えばエマルジョンを貧溶媒に浸漬させることによってエマルジョンを貧溶媒にさらすことを含む、相転換を受ける。しかしながら、そのようなプロセスで使用される溶媒及び貧溶媒は、代表的には、例えば安全性の懸念のため、特定の用途の粒子の製造には不適切である可能性のある化合物を含む。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、セルロースを直接溶解するために、酢酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EmimOAc)との共溶媒として使用できるが、DMSOは、化粧品に関する規則(EC)第1223/2009号の添付書類II(https://echa.europa.eu/cosmetics-prohibited-substancesで入手可能)に挙げられている。このような化合物の使用は環境上の懸念を引き起こす可能性があり、例えば溶媒のリサイクルがより困難で高コストとなるため、バイオポリマー粒子の環境上の利点が十分に実現できない可能性がある。
【0004】
全体として、当技術分野においては、現在もなお上記の問題を抱えないバイオポリマー粒子の製造方法が必要とされている。特に、特定の用途での使用が望ましくない、適さない、又は禁止されている溶媒及び/又は貧溶媒、及び/又はバイオポリマー粒子の全体的な環境上の利点に悪影響を与える溶媒及び/又は貧溶媒の使用を回避する方法である。本開示の方法は、この満たされていないニーズを満足させるものである。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様において、本開示は、分散相が貧溶媒中に押し出されてバイオポリマーの粒子が形成されることを含むバイオポリマー粒子の製造方法であって、前記分散相が溶媒中に前記バイオポリマーを含み、前記溶媒及び貧溶媒のそれぞれが水を含む、方法を提供する。
【0006】
第2の態様において、本開示は、バイオポリマー粒子の製造方法であって、(a)分散相が溶媒中に前記バイオポリマーを含み、該分散相が膜を通過して連続相中に前記バイオポリマーのエマルジョンを形成することにより、分散相を連続相中で膜乳化すること、及び(b)貧溶媒で相転換させて前記バイオポリマーの粒子を形成することを含み;前記溶媒及び貧溶媒のそれぞれが水を含む、方法を提供する。
【0007】
本明細書では、第1の態様の方法と第2の態様の方法との間で重複する特徴を一方の方法を参照して説明する場合があるが、そのような説明は他方の方法にも同様に適用できることが当業者には理解されよう。例えば、分散相の溶媒や貧溶媒に関する説明は、各態様に適用され、バイオポリマーについても同様である。
【0008】
第3の態様において、本開示は、本明細書に記載の各方法によって得られるバイオポリマー粒子を提供する。従って、それらの方法に関連して本明細書に記載される特徴は、その方法によって得られるバイオポリマー粒子にも適用できる。本明細書に記載の方法によって得られるバイオポリマー粒子は、その製造時に溶媒及び貧溶媒中に水を使用することにより、粒子中に望ましくない化合物及び/又は禁止された化合物(例えば、DMSO)が存在することを回避することができる。それによってそのような粒子が、例えば化粧品において好適なものとなり、そして粒子を製造するプロセスの環境への影響も軽減することから、従来技術と区別することができる。さらに、溶媒中に水を使用すると、本開示の方法の収率及び/又は得られる粒子の大きさ及び形状の規則性が改善され得る。
【0009】
第1の態様の各種実施形態において、分散相が貧溶媒中に押し出されることによるバイオポリマー粒子の形成は、キャピラリー押出によって前記分散相が流体媒体を通過して押し出されることを含む。流体媒体を通過する押し出しが、分散相が型の中に押し出されること、及びそれに続く、押し出された分散相を貧溶媒と接触させることを含んでもよい。型はキャピラリー押出と併用することができる。
【0010】
第1の態様の各種実施形態において、押し出された分散相は、貧溶媒の表面から約1cm~約80cmの高さから、好ましくは貧溶媒の表面から約5cm~約70cmの高さから、より好ましくは貧溶媒の表面から約10cm~約60cmの高さから滴下される。
【0011】
第2の態様の各種実施形態において、(b)の前に、エマルジョンを冷却して温度Tとし、Tは連続相の流動点(Tcont)より高く、分散相の転移温度(Tdisp)以下であり、すなわちTcont<T≦Tdispであり;前記転移温度は、凝固点、ガラス転移温度及び流動点からなる群から選択され;Tdisp>Tcontである。相転換(b)のために、前記貧溶媒を温度Tまでさらに冷却することができ、TはTdispより低く、好ましくは、TはTに等しい。
【0012】
本開示のいずれかの態様の各種実施形態において、バイオポリマーは多糖類であり、好ましくは、バイオポリマーはセルロースである。バイオポリマーがセルロースである場合、そのセルロースは、バージンセルロース、リサイクルセルロース、パルプセルロース及び微結晶セルロース並びにそれらの組み合わせからなる群から選択することができ、好ましくは、バイオポリマーは微結晶セルロースとすることができる。
【0013】
本開示のいずれかの態様の各種実施形態において、バイオポリマーは、分散相中に約2重量%~約12重量%、好ましくは約4重量%~約10重量%の量で存在する。
【0014】
本開示のいずれかの態様の各種実施形態において、分散相は、バイオポリマーを溶媒に添加することによって調製され、その溶媒は、バイオポリマーの添加前に水を含む。或いは、本開示のいずれかの態様の各種実施形態において、分散相は、バイオポリマーを溶媒に添加することによって調製され、その溶媒はバイオポリマーの添加後にのみ水を含む。
【0015】
本開示のいずれかの態様の各種実施形態において、分散相の溶媒は、約2重量%~約12重量%の水、好ましくは約4重量%~約10重量%の水を含む。本開示のいずれかの態様の各種実施形態において、分散相の溶媒はさらに、イオン液体を含む。イオン液体は、酢酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウムを含んでもよい。
【0016】
本開示のいずれかの態様の各種実施形態において、貧溶媒は有機溶媒を実質的に含まない。「実質的に含まない」という用語は、本明細書でさらに定義される。本開示のいずれかの態様の各種実施形態において、貧溶媒はさらにイオン液体を含む。イオン液体は、酢酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウムを含んでもよい。
【0017】
本開示のいずれかの態様の各種実施形態において、イオン液体は、貧溶媒中に最大約50重量%、好ましくは最大約30重量%の濃度で存在する。例えば、イオン液体は、約0.001重量%~約50重量%、好ましくは約0.001重量%~約30重量%の濃度で貧溶媒中に存在し得る。さらなる濃度については本明細書で説明する。或いは、本開示のいずれかの態様の各種実施形態において、貧溶媒は水からなる。
【0018】
本開示のいずれかの態様の各種実施形態において、分散相の温度は、約5℃~約100℃未満、好ましくは約20℃~約80℃、より好ましくは約25℃~約70℃である。
【0019】
本開示のいずれかの態様の各種実施形態において、貧溶媒の温度は約5℃~約80℃、好ましくは約15℃~約60℃である。
【0020】
本開示のいずれかの態様の各種実施形態において、バイオポリマー粒子の直径は約1μm~約500μmである。或いは、バイオポリマー粒子の直径は、約0.2mm~約3mmであってもよい。さらに別の実施形態では、バイオポリマー粒子の直径は、約1mm~約10mmであってもよい。
【0021】
これらの態様及び実施形態は、添付の独立請求項及び従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は互いに組み合わせることができ、請求項に明示的に記載されている以外の組み合わせで独立請求項の特徴と組み合わせることができることが理解されよう。さらに、本明細書に記載のアプローチは、以下に示されるような特定の実施形態に限定されるものではなく、本明細書で提供される特徴の任意の組み合わせを含み、かつ、企図するものである。
【0022】
本開示の上記及び他の目的、特徴及び利点は、添付の図面と共に下記の詳細な説明を考慮することで、以下においてより完全に明らかになるであろう。しかしながら、明らかに理解されるべきものとして、図面は説明を目的としたものであり、本開示の範囲を定義するものと解釈されるべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の分散相が貧溶媒中に押し出される、第1の態様の一実施形態の模式図である。
図2】膜乳化の模式図である。
図3】所望の形状(球形)を有する粒子の一例(図3(a))と、従来の膜乳化法で発生する可能性のある変形及び凝結の問題の例(図3(b)~3(d))を示す粒子の写真4枚を含む図である。
図4】従来の膜乳化プロセスの模式図(図3(a))、及び本開示の第2の態様によるエマルジョン冷却の一実施形態の図(図4(b))を含む図である。
図5】任意に8重量%の水が存在していてもよい、微結晶セルロース(MCC)のEmimOAc溶液の光学顕微鏡写真である。ラベル(a)~(g)は、以下のMCC溶液を指す:a)4重量%のMCC、b)6重量%のMCC;c)8重量%のMCC;d)4重量%のMCC、8重量%の水;e)6重量%のMCC、8重量%の水;f)8重量%のMCC、8重量%の水;g)比較基準(DMSO:EmimOAcが70:30の混合物中に8重量%のMCC)。これらのセルロース溶液及び比較基準の調製は、本明細書の実施例に記載されている。
図6】水を用いずに形成した場合と比較した、本開示の第1の態様の例示的な実施形態による、8重量%の水を用いてで形成した後の湿潤状態での微結晶セルロース(MCC)ビーズ/粒子の画像を示す図である。その写真にはさらに、MCCの重量%(図5に示した溶液に対応)及び分散相の温度がラベル付けされており、RTは室温を意味する。湿潤状態でのビーズ/粒子の製造は、本明細書の実施例2に記載されている。
図7】8重量%の水を用いずに得られたビーズ/粒子と比較した、本開示の第1の態様の例示的な実施形態による、8重量%の水を用いて得られた乾燥微結晶セルロース(MCC)ビーズ/粒子の光学顕微鏡写真を示す図である。その光学顕微鏡写真にはさらに、MCCの重量%(図5に示した溶液に対応)及び分散相の温度がラベル付けされており、RTは室温を意味する。乾燥ビーズ/粒子の製造は、本明細書の実施例2に記載されている。
図8】本開示の第1の態様の例示的な実施形態において、8重量%のMCC及び8重量%の水を含むEmimOAc溶液及び加熱したシリンジを使用して製造された湿潤微結晶セルロースビーズ/粒子の画像を示す図である。この実施形態は、本明細書の実施例3で説明される。MCCビーズ/粒子は、落下高さ(13cm、26cm、又は39cm)及び押出時の注射針の温度によってさらに特徴付けられる。
図9】本開示の第1の態様の例示的な実施形態において、8重量%のMCC及び8重量%の水を含むEmimOAc溶液及び加熱したシリンジを使用して製造された乾燥微結晶セルロースビーズ/粒子の光学顕微鏡写真を示す図である。この実施形態は、本明細書の実施例3で説明される。図8にあるように、MCCビーズ/粒子は、落下高さ及び押出時の注射針の温度によって特徴付けられる。
図10】本開示の第1の態様の例示的な実施形態において、6重量%のMCC及び8重量%の水を含むEmimOAc溶液及び加熱したシリンジを使用して製造された湿潤微結晶セルロースビーズ/粒子の画像を示す図である。この実施形態は、本明細書の実施例3で説明される。MCCビーズ/粒子は、落下高さ及び押出時の注射針の温度によってさらに特徴付けられる。
図11】本開示の第1の態様の例示的な実施形態において、6重量%のMCC及び8重量%の水を含むEmimOAc溶液及び加熱したシリンジを使用して製造された乾燥微結晶セルロースビーズ/粒子の光学顕微鏡写真を示す図である。この実施形態は、本明細書の実施例3で説明される。MCCビーズ/粒子は、落下高さ及び押出時の注射針の温度によってさらに特徴付けられる。
図12】実施例で調製したセルロース溶液(8重量%の水を含むもの又は含まないもの)の温度(℃)に対する粘度(Pa・s)のグラフである。粘度は、本明細書に記載のように、1s-1の剪断速度で測定される。1.89Pa・sでの横破線は、対照溶液(室温/環境温度におけるDMSO:EmimOAcが70:30の混合物中の8重量%のMCC)の粘度を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書では様々な例示的な実施形態が記載又は提案されているが、本明細書に記載又は提案されているものと類似又は等価な各種方法及び材料を利用する他の例示的な実施形態が、一般的な発明概念によって包含される。従来から実施されている実施形態の態様及び特徴については、簡潔さの観点から、詳細に議論又は説明しない場合がある。従って、詳細には記載されていない本明細書に記載の装置及び方法の態様及び特徴は、そのような態様及び特徴を実施するための任意の従来技術に従って実施され得ることが理解されるであろう。
【0025】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈において別段の指示が明瞭になされていない限り、複数の指示対象を含む。
【0026】
本明細書では、別断の断りがない限り、成分の量を修飾する「約」という用語は、例えば、実世界で濃縮物、混合物又は溶液を製造するために使用される代表的な測定及び取り扱い手順を通じて;これらの手順における不注意な誤りを通じて;使用される材料の製造、供給源若しくは純度、又は方法の実施の違いを通じて、起こり得る数値量の変動を指す。「約」という用語は、特定の初期混合物から得られる組成物について異なる平衡条件に起因して異なる量も包含する。「約」という用語によって修飾されているか否かにかかわらず、特許請求の範囲は、その量に相当するものを含む。
【0027】
本明細書で提供される範囲は、各成分の例示的な量を提供する。これらの範囲のそれぞれは、単独で取ることもでき、1以上の他の成分範囲と組み合わせることもできる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「少なくとも」という用語は、指定された範囲の端点値を含む。例えば、「少なくとも10cm」には10cmという値が含まれる。
【0029】
本明細書で使用される場合、重量%は、百分率を計算するための基礎としての「重量パーセント」を意味する。別断の断りがない限り、%値はすべて重量基準で計算され、その物質が存在する製品の総重量を基準として提供される。例えば、分散相の溶媒中の水の%は、その溶媒の総重量基準の水の重量%を指す。同様に、分散相中のバイオポリマーの%は、分散相の総重量基準のバイオポリマーの重量%を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」とは、微量以下を意味する、すなわち、関係する物質の量が無視できることを意味する。各種実施形態において、「実質的に含まない」とは、関係する物質が1000ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは10ppm以下、さらにより好ましくは1ppm以下であることを意味する。
【0031】
一般的発明概念は、バイオポリマー粒子の製造方法を提供することを中心としており、そのバイオポリマー粒子は、化粧品、パーソナルケア、塗料及びコーティング、包装、建設、石油及びガス、食品、生物医学及び医薬における用途での使用に適し(これらに限定されない)、改善された環境的利益を有する。上記の用途に適しているだけでなく、この方法が商業的に実現可能となるように、粒子はまた、妥当な収率で製造されなければならない。本開示における収率とは、規定の粒径分布内の球状粒子又はビーズの質量を指す。球状粒子が特に望ましいが、バイオポリマー粒子の製造プロセス、特に膜乳化プロセスでは、製造される粒子の合体又は凝結、さらには変形の問題が生じることが多い。そのような機構は収率を低下させ、従ってプロセスの商業的実現可能性を低下させる危険性がある。押出プロセスでは、主に押し出される溶液の粘度が原因で、合体や凝結の問題が発生する可能性がある。
【0032】
第1の態様において、本開示は、バイオポリマー粒子の製造方法を提供し、当該方法は、分散相が貧溶媒中に押し出されてバイオポリマーの粒子が形成されることを含む。分散相は、以下でさらに説明するように、溶媒中にバイオポリマーを含み、そのような分散相の押出は当技術分野で知られている。それは、分散相が、例えば隙間や開口部を通して押し込まれ、加圧され、又は押し出されるプロセスである。開口部は、図1に示すようなシリンジにあっても、又は当技術分野で知られているいずれか他の好適な押出装置にあってもよい。
【0033】
本開示の押出プロセスの例示的な実施形態の模式図が図1に示されている。図1の例示的な実施形態では、溶媒中にバイオポリマーを含む分散相(1)が、シリンジ(3)の針(2)を通して押し出される。押出は具体的には貧溶媒(4)中に行われて、バイオポリマー粒子(5)を形成する。図1の例示的な実施形態では、押し出された分散相は、貧溶媒の表面の上の高さdから滴下される。
【0034】
第2の態様において、本開示は、膜乳化工程及び相転換工程を含むバイオポリマー粒子の製造方法を提供する。膜乳化は当技術分野で知られており、分散相が微多孔膜の孔に通されて連続相に直接押し込まれる技術であり、そこで乳化液滴は一滴ずつのメカニズムで孔の端で形成され、離脱する。膜乳化プロセスの模式図を図2に示すが、矢印は流れの方向を示している。
【0035】
分散相は一般に、溶媒中に溶解したバイオポリマーを含む第1の液体を含み、連続相は第1の液体と非混和性の第2の液体を含む。分散相が膜を通して押されるなどして輸送される際の2つの液体の相互作用を分散プロセスと呼び、それらの不均一な混合物をエマルジョンと呼び、すなわち連続相に取り囲まれた分散相の液滴である。
【0036】
従来の乳化と比較した膜乳化の利点は当技術分野で認識されており、それには制御された液滴径及び狭い液滴径分布を有する非常に微細なエマルジョンを得る能力などがある。さらに、エネルギーの消費をかなり少なくして乳化を成功させることができる。そして、せん断応力の影響が低下するため、膜乳化により、デンプンやタンパク質などのせん断の影響を受けやすい原料を使用することができるようになる。
【0037】
バイオポリマー製造に関しては、連続相中の分散相の液滴を相転換させることで分離することに成功している。セルロースに関しては、これは「ACS Sustainable Chem. Eng. 2017, 5, 7, 5931-5939」に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。相転換は、人工膜の作製に利用される化学現象であり、液体-高分子溶液から溶媒を除去することによって行われる。ポリマー溶液を貧溶媒と呼ばれる第3の液体に浸漬するなどの各種の相転換方法がある。貧溶媒に基づく相転換の使用が、分散相/連続相のエマルジョンからバイオポリマーの液滴を粒子状に析出させるのに特に有効であることが実証されている。
【0038】
本開示の両方の態様に共通するのは、分散相を形成するためにバイオポリマーを溶解させる溶媒の使用、及びバイオポリマー粒子を形成するための貧溶媒の使用である。
【0039】
特に膜乳化又は押出によるバイオポリマー粒子の製造で使用される溶媒は公知であり、イオン液体は、扱い難いバイオポリマーを可溶化できるため、一般に好まれている。イオン液体は、環境温度~100℃の温度で液体形態である塩であり、例えば酢酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EmimOAc)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド(BmimOAc)などのイミダゾリウム系イオン液体である。さらに、イオン液体は本質的に不揮発性(一時的放出(fugitive emissions)を回避する)であり、他の溶媒に比べて環境上の利点があると考えられている。イオン液体は、例えば蒸留によって貧溶媒を除去することで容易にリサイクルできる。
【0040】
しかしながら、イオン液体は、通常は純粋な状態では使用されない。セルロースなどのバイオポリマーを溶解する場合、規定量の共溶媒をイオン液体に添加することが多い。共溶媒の使用は、バイオポリマーの溶解を助けることができ、必要とされる高価なイオン液体の量を減らすことができる。バイオポリマー粒子の形成方法では、共溶媒を含めることで分散相の粘度を変更することにより、プロセスの効率と収率を向上させることができ、それにより、変形粒子の量を減らすことができる。
【0041】
図3(a)~3(d)に膜乳化プロセスによって得られた4つのバイオポリマー粒子の形状を示す。図3(a)は、特定の用途で望ましい粒子の形状とサイズの例を示しており、個々の球状ビーズは直径が50μm未満である。図3(b)は、望ましくない形状変形を示しており、個々の涙滴形状の粒子である。図3(c)は、直径が200μmを超える複数の球状粒子の望ましくない合体を示している。図3(d)は、複数のビーズの望ましくない非対称凝結を示している。変形、凝結、及び凝集は、バイオポリマー粒子のサイズと形状の分布の両方に影響を与え、これはバイオポリマー粒子の収率に悪影響を及ぼす。
【0042】
「凝集体(agglomerate)」という用語は、代表的には再分散させることができる一次粒子からなる構造体を指す。また、「凝結体(aggregate)」という用語は、再び分散させることができない一次粒子で構成された構造を指す。「テーリング」という用語は、完全に球形ではなく、1以上(通常は1つ)の突起を示す粒子、例えば図3(b)に示す涙滴型の粒子を指す。
【0043】
形成中の粒子をin-situで調べることは困難であるため、変形した形状、合体構造、凝結構造などが、どこでどのように形成されるかについて、理論的に説明することができるのみである。いずれか一つの理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、分散相液滴が、膜乳化に通常用いられる装置内又はその後のプロセス配管、継手及び装置内で流れる際に、互いに望ましくない相互作用をする可能性があると考えている。これらの液滴は、例えば、層流から乱流への移行点、再循環ゾーン、流れ方向の変化等の流体輸送流動様式に変化があるときに合体する可能性がある。別の理論は、分散相液滴が、例えば、相転換プロセス中に(例えば、エマルジョンが貧溶媒中を流れる際に)せん断力によって変形し、これらの変形形状(例えば、涙滴)が貧溶媒によって保存される可能性があるというものである。分散相の液滴はまた、貧溶媒と接触する前又は接触する際に相転換プロセス時に相互作用する可能性があり、合体してより大きな液滴を作ったり、一緒にグループ化してより大きな構造を作り、それが貧溶媒によって保存されたりする可能性がある。また、相転換プロセス中に、相対的に大きい液滴によって相対的に小さい相転換粒子が取り込まれ、その後、貧溶媒によってこれらの構造が保存されるなどの他の機構も存在し得る。本明細書に開示されているような押出プロセスでは、得られる粒子の球形度は、以下でより詳細に説明するように、落下高さ、温度及び分散相の組成などのパラメータによって決まり得る。
【0044】
イオン液体と組み合わせて使用される代表的な共溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの双極性非プロトン性溶媒である。しかしながら、そのような溶媒は一般に環境に優しいとは考えられていないことから、その使用はイオン液体を使用する「グリーン」プロセスの全体的な環境上の利点に悪影響を与える可能性がある。特に、DMSOは、化粧品に関する規制(EC)第1223/2009号の添付書類II(https://echa.europa.eu/cosmetics-prohibited-substancesで入手可能)に挙げられており、DMFは毒性作用と関連している。従って、このような共溶媒は、化粧品及びパーソナルケア、並びに他の用途で使用されるバイオポリマー粒子の製造プロセスには使用できない。双極性非プロトン性溶媒の使用はまた、イオン液体のリサイクルを複雑にし、コストを増加させる可能性がある。例えば、リサイクル時にDMSOがある程度蒸留されることが予想され、非プロトン性溶媒の存在は酢酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EmimOAc)の熱安定性を低下させることが報告されている[例えば、Williams et al., Thermochimica Acta (2018), 669:126-139参照]。
【0045】
次に、バイオポリマー粒子を製造する際に使用される貧溶媒について説明すると、エタノールなどの有機溶媒が代表的である。しかしながら、やはり、これらの物質はプロセスの全体的な環境上の利点を低下させる可能性があり、安全上の懸念に関連する可能性があり、イオン液体のリサイクルを複雑にしてコストを増加させる可能性がある。
【0046】
本開示は、驚くべきことに、水性溶媒及び水性貧溶媒を使用することにより、上記で論じた問題を回避するものである。一般に、水はセルロースなどのバイオポリマーに対する貧溶媒であると考えられている。しかしながら、本発明者らは、分散相の溶媒に水を含めることで、セルロースなどのバイオポリマーを効率的に溶解/分散させることができ、また本明細書で開示の方法にそれらが利用できる分散相組成物を提供することができ、良好な収率でバイオポリマー粒子を製造することを可能とすることを見出した。
【0047】
水性溶媒及び貧溶媒を使用することで、環境上及び安全上の懸念に関連する試薬の使用、特に化粧品やパーソナルケア製品、その他の用途での使用が禁止されている試薬の使用が不要になる。水性溶媒及び貧溶媒により、溶媒のリサイクルが簡素化され、そのコストが削減される可能性もある。特に、そのような溶媒及び貧溶媒を使用すると、温度による劣化に対するイオン液体の安定性が高まる可能性があり[Williams et al., Thermochimica Acta(2018), 669:126-139]、それにより、例えば、実行されるリサイクリングサイクルの数を増やすことが可能になり得る。最後に、分散相に水を含めることにより、テーリングを低減することでビーズが球形になる可能性が高まり、それによって本明細書に開示の方法の収率を向上させることができる。
【0048】
参照を容易にするために、本発明のこれら及びさらなる特徴を、適切な項目見出しの下で説明する。しかしながら、各項目下の内容は、それらが記載されている項目に限定されるものではない。別断の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。
【0049】
バイオポリマー粒子
本開示の全ての態様がバイオポリマー粒子に関係するものである。「バイオポリマー」という用語は、生物によって産生される高分子を意味する。言い換えれば、高分子生体分子である。バイオポリマーには、使用されるモノマー単位と形成されるバイオポリマーの構造に従って分類される3つの主要なクラスがあり、13以上のヌクレオチドモノマーからなるポリマーであるポリヌクレオチド(RNA及びDNA);アミノ酸のポリマーであるポリペプチド;及び代表的には高分子炭水化物構造である多糖類である。バイオポリマーの他の例としては、ゴム、スベリン、メラニン、キチン及びリグニンなどがある。
【0050】
本発明の各種実施形態において、バイオポリマーは、ポリヌクレオチド、ポリペプチド及び多糖類からなる群から選択される。好ましくは、バイオポリマーは、ポリペプチド及び多糖類からなる群から選択される。より好ましくは、バイオポリマーは、多糖類、例えば、デンプン、セルロース、キチン、キトサン又はグリコーゲンである。さらにより好ましくは、バイオポリマーはデンプン又はセルロースである。最も好ましくは、バイオポリマーはセルロースである。
【0051】
セルロースは、1→4グリコシド結合で共有結合したβ-D-グルコピラノース単位で構成される直鎖ポリマーである。セルロースは多くの異なる供給源から得ることができ、本開示はセルロースの由来、形態その他の特徴に関して必ずしも限定されない。セルロースは代表的には、植物源から、例えばバージンパルプ又はリサイクル木材パルプから得られる。パルプは、木材、繊維作物、古紙又はぼろ布からセルロース繊維を化学的又は機械的に分離することによって製造されるリグノセルロース繊維材料である。セルロースは、バージン供給源から、又は有利にはリサイクル供給源から得ることができる。
【0052】
一部の実施形態において、バイオポリマーは、バージンセルロース、リサイクルセルロース、パルプセルロース及び微結晶セルロース、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態において、バイオポリマーはバージンセルロースである。一部の実施形態において、バイオポリマーはリサイクルセルロースである。一部の実施形態において、バイオポリマーはパルプセルロースである。好ましくは、バイオポリマーは微結晶セルロースである。
【0053】
微結晶セルロース(MCC)は代表的には、高品位の精製木材セルロースから作られる。加水分解を用いて、微結晶形態が残るまで非晶質セルロースを除去する。非晶質セルロース部分が除去されると、それは不活性な白色の自由流動性粉末となる。それは、例えば反応押出、蒸気爆発及び酸加水分解などの多くの方法で処理できる。市販のMCCの1例は、デュポン(DuPont)によって製造されるAvicel(登録商標)である。
【0054】
「粒子」という用語は、本明細書では「ビーズ」と互換的に使用され、分散相液滴の相転換後又は分散相の貧溶媒への押出後に形成される固体を指す。
【0055】
本開示のバイオポリマー粒子の大きさは制限されない。各種実施形態において、粒子又はビーズは、微粒子又はマイクロビーズである。当業者には理解されるであろうが、微粒子又はマイクロビーズは、1~1000ミクロン(μm)の直径を有する粒子/ビーズである。このような粒子は、例えば、光学顕微鏡画像及び適切な検出アルゴリズムを有する画像分析ソフトウェア(例えば、エッジ検出アルゴリズムを用いるImageJ)、マルバーン・パナリティカル(Malvern Panalytical)製のマスターサイザー(Mastersizer)(例えば、マスターサイザー3000(Mastersizer 3000))などの市販の装置によるレーザー回折、又は適切なサイズの篩を用いて当業者が容易に確認することができる。他の実施形態において、粒子又はビーズは、1000μmを超える直径を有することができる。このような粒子は、上記で論じた装置を使用するか、ノギスを使用することによって当業者が容易に確認することもできる。
【0056】
本開示の方法において粒径を制御及び/又は変化させることができる各種手段がある。非限定的な例には、第1の態様の押出プロセスにおける流量及び/又は隙間/開口部の大きさを変えること、又は第2の態様の膜乳化プロセスにおいて膜の孔径及び/又は連続相の流量を変えることなどがあり得る。このように変動させることは当業者には理解されている。特に、当業者であれば、そのような変動は、分散相のウェーバー数(We)及び/又は連続相のキャピラリー数(Ca)を変えることによって実施され、及び/又はそれらによって表現され得ることを理解するであろう。ウェーバー数は次のように定義される。
【0057】
【数1】
【0058】
式中、ρは密度(単位:kgm-3)であり、vは分散相の速度(単位ms-1)であり、lは代表長さ(液滴直径又は膜孔直径)(単位:m)、σは界面張力(単位:Nm-1)である。キャピラリー数は次のように定義される。
【0059】
【数2】
【0060】
式中、μは動的粘度(単位:Nsm-2)であり、Vは連続相の代表速度(単位:ms-1)であり、σは間の界面張力(単位:Nm-1)である。
【0061】
一部の実施形態において、バイオポリマー粒子の直径は約1μm~約500μmである。一部の実施形態において、バイオポリマー粒子の直径は、約1μm~約400μmであってもよい。一部の実施形態において、バイオポリマー粒子の直径は約1μm~約300μmである。一部の実施形態において、バイオポリマー粒子の直径は約1μm~約200μmである。
【0062】
一部の実施形態において、バイオポリマー粒子の直径は、約0.2mm~約3.0mmであってもよい。一部の実施形態において、バイオポリマー粒子の直径は、約0.2mm~約2.0mmであってもよい。一部の実施形態において、バイオポリマー粒子の直径は、約0.2mm~約1.0mmであってもよい。
【0063】
一部の実施形態において、バイオポリマー粒子の直径は、約1mm~約10mmであってもよい。一部の実施形態において、バイオポリマー粒子の直径は、約1mm~約8mmであってもよい。一部の実施形態において、バイオポリマー粒子の直径は、約1mm~約5mmであってもよい。
【0064】
以下でさらに説明するように、本開示の方法は、溶媒/貧溶媒混合物又は貧溶媒/連続相混合物からバイオポリマー粒子を除去することを含んでもよい。従って、本開示の方法から得られる粒子は、前記粒子が水などの溶媒に湿潤した又は浸漬された形態で得ることができる。このような粒子は「湿潤」ビーズと呼ばれることがあり、この形態でさらなる使用に提供され得る。或いは、粒子をその後乾燥させて「乾燥ビーズ」を提供してもよい。どちらの形態も工業用途に使用することができ、本開示はこの点に限定されない。湿潤ビーズ及び乾燥ビーズの例を図6~11に示している。
【0065】
分散相
本開示の両方の態様には、バイオポリマーが分散又は溶解される溶媒を含む分散相を含み、この溶媒は水を含む。従って、「溶媒」という用語は、バイオポリマーを分散又は溶解する任意の物質(例えば、液体)を意味する。「溶媒」という用語には、溶媒混合物も含まれる。
【0066】
分散相の溶媒は水を含み、イオン液体、有機溶媒、無機非水溶媒、又はそれらの組み合わせを含み得る。本開示の各種実施形態において、分散相の溶媒は、水及びイオン液体、有機溶媒、無機非水溶媒、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも一つを含む。本開示の各種実施形態において、分散相の溶媒は、水及び1以上のイオン液体を含む。
【0067】
分散相の溶媒のうち、水以外の溶媒の非限定的な例としては、メタノール、エタノール、アンモニア、アセトン、酢酸、n-プロパノール、n-ブタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、塩化スルフリル、塩化リン、二硫化炭素、モルホリン、N-メチルモルホリン、尿素及びチオ尿素の会合がない及び会合があるNaOH、五フッ化臭素、フッ化水素、フッ化塩化スルフリル、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、炭化水素系油及びその混合物、トルエン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、ヘキサン、ペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、1,4-ジオキサン、ジクロロメタン、ニトロメタン、炭酸プロピレン、ギ酸、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、リン酸、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-メトキシメチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド、N-エチルピリジニウムクロライド、N-メチルモルホリン-N-オキサイド、1-メチルイミダゾール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルイミダゾリジン-2-オン、N,N-ジメチルアセトアミド、スルホラン、γ-バレロラクトン、γ-ブチロラクトン、N,N,N’,N’-テトラメチル尿素、N-メチルピロリジノン及び塩化メチレンなどがある。当業者は、例示的な溶媒が、イオン液体、有機溶媒、及び/又は無機非水系溶媒のいずれであるかを容易に認識するであろう。
【0068】
当業者には理解されるように、分散相は、使用されるバイオポリマーによって決まる。特に、本開示の分散相に適した溶媒を特定することは、当業者の一般知識の範囲内である。しかしながら、本開示のすべての態様において、分散相の溶媒は水を含む。当業者であれば、水が単独で又は他の溶媒との混合物で、特定のバイオポリマー、例えばセルロースに対して有効な貧溶媒であると考えることができる。しかしながら、本開示の分散相の溶媒に含まれる水は、本開示の目的に関しては、本開示の態様で使用される貧溶媒とは異なるものとみなされる。
【0069】
各種実施形態において、分散相の溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含む。各種実施形態において、分散相の溶媒は少なくとも約1重量%の水を含む。各種実施形態において、分散相の溶媒は少なくとも約1.5重量%の水を含む。各種実施形態において、分散相の溶媒は少なくとも約2重量%の水を含む。各種実施形態において、分散相の溶媒は少なくとも約2.5重量%の水を含む。各種実施形態において、分散相の溶媒は少なくとも約3重量%の水を含む。各種実施形態において、分散相の溶媒は少なくとも約3.5重量%の水を含む。各種実施形態において、分散相の溶媒は少なくとも約4重量%の水を含む。各種実施形態において、分散相の溶媒は少なくとも約4.5重量%の水を含む。各種実施形態において、分散相の溶媒は少なくとも約5重量%の水を含む。各種実施形態において、分散相の溶媒は少なくとも約5.5重量%の水を含む。各種実施形態において、分散相の溶媒は少なくとも約6重量%の水を含む。各種実施形態において、分散相の溶媒は少なくとも約6.5重量%の水を含む。各種実施形態において、分散相の溶媒は少なくとも約7重量%の水を含む。各種実施形態において、分散相の溶媒は少なくとも約7.5重量%の水を含む。各種実施形態において、分散相の溶媒は少なくとも約8重量%の水を含む。
【0070】
本開示の各種実施形態において、分散相の溶媒は、前の段落で定義した最小量の水(例えば、少なくとも約0.5重量%)を含み、最大含水量は、その分散相が第1の態様で押し出されるか第2の態様で膜を通過するかのいずれかの温度における分散相の最大粘度によって決まる。分散相の最大粘度は所定の温度及びせん断速度での対照溶液の粘度によって定義される。
【0071】
粘度は、レオメーター、例えば、40mmステンレス製平行プレートを備えたDiscovery HR-3ハイブリッドレオメーター(TA Instruments)を使用して測定される。ギャップは500μmに設定され、水分の移動を防ぐためにサンプルは鉱物油で密封されている。対数せん断速度掃引を、測定前に粘度測定温度に10秒間浸漬して、0.1~100s-1(10ポイント/ディケード)で実行する。粘度を1s-1でのニュートン領域から記録する。
【0072】
各種実施形態において、最大含水量は、分散相が第1の態様で押出される温度、又は第2の態様で膜を通過する温度における分散相の粘度が、上記の測定方法を用いた室温でのDMSO:非水性溶媒が70:30の混合物中のx重量%バイオポリマーの対照溶液の粘度以下になる含水量である。xは、本発明の分散相中のバイオポリマー濃度以上であり、バイオポリマーは、対照溶液及び本発明の分散相の両方において同じである。非水性溶媒は、水以外の分散相の溶媒である(後述する任意の成分を含む)。
【0073】
例えば、水及びイオン液体の溶媒中のバイオポリマー濃度が低いと、バイオポリマー濃度が高い場合と比較して、所定の温度及びせん断速度での粘度が低くなり、それによって分散相溶媒中のより高い含水量に耐えることが期待できる。従って、水濃度は下限値又は最小含有量のみによって上記に開示されている。当業者であれば、本明細書の開示から最大含水量を容易に決定することができ、最大含水量を絶対値に限定することは、本開示の範囲を不当に制限することになるものと考えられる。
【0074】
バイオポリマーの重合度も分散相の粘度に影響を与えることが予想される。重合度はバイオポリマーにおけるモノマー単位の数であり、バイオポリマーの数平均分子量と繰り返し単位の分子量の比として計算できる。重合度が高くなるほど、溶液中の鎖の絡み合いが多くなり、粘度が高くなる。微結晶セルロースの重合度は代表的には、約200~約400である。Avicel(登録商標)の重合度は350未満と特定されている。
【0075】
本開示の各種実施形態において、バイオポリマーは、約400未満の重合度を有する。本開示の各種実施形態において、バイオポリマーは、約350未満の重合度を有する。本開示の各種実施形態において、バイオポリマーは、約50~約400の重合度を有する。本開示の各種実施形態において、バイオポリマーは、約100~約400の重合度を有する。本開示の各種実施形態において、バイオポリマーは、約150~約400の重合度を有する。本開示の各種実施形態において、バイオポリマーは、約200~約400、例えば約200~約350の重合度を有する。
【0076】
DMSO:EmimOAcが70:30の混合物中の8重量%微結晶セルロースの対照溶液が、James Coombs OBrien et al., Continuous Production of Cellulose Microbeads via Membrane Emulsification. ACS Sustainable Chemistry & Engineering 2017 5 (7), 5931-5939(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。これは、下記の実施例で使用される対照溶液である。それは、上述の方法で測定した場合に、室温及びせん断速度1s-1において粘度1.89Pa・sを有し、この粘度を用いて、押出プロセスにおいて30℃~60℃の温度で使用されるEmimOAc中に4、6又は8重量%MCCを含む分散相の最大含水量を求める。以下でより詳細に説明するように、落下高さを変化させてビーズの球形度を制御することもできる。
【0077】
含水量の上限は本開示の範囲を不当に制限することになるものではあるが、各種実施形態において、分散相の溶媒は約0.5重量%~約12重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約1重量%~約12重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約1.5重量%~約12重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約2重量%~約12重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約2.5重量%~約12重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約3重量%~約12重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約3.5重量%~約12重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約4重量%~約12重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約4.5重量%~約12重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約5重量%~約12重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約5.5重量%~約12重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約6重量%~約12重量%の水を含む。
【0078】
各種実施形態において、前記溶媒は、約0.5重量%~約10重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約1重量%~約10重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約1.5重量%~約10重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約2重量%~約10重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約2.5重量%~約10重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約3重量%~約10重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約3.5重量%~約10重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約4重量%~約10重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約4.5重量%~約10重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約5重量%~約10重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約5.5重量%~約10重量%の水を含む。各種実施形態において、前記溶媒は、約6重量%~約10重量%の水を含む。
【0079】
各種実施形態において、分散相の溶媒は水及びイオン液体を含む。イオン液体は、酢酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EmimOAc)、塩化1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(BmimOAc)、及びそれらの組み合わせから選択され得る。一部の実施形態において、分散相の溶媒は、水及び1以上の有機溶媒を含む。他の実施形態において、分散相の溶媒は有機溶媒を実質的に含まない。「実質的に含まない」という用語は上記で定義されている。当業者であれば、分散相の溶媒が水及びイオン液体からなる場合、分散相溶媒中の水及びイオン液体の合計重量%が100重量%になることを理解するであろう。水が例えば少なくとも0.5重量%の量で存在する場合、水とイオン液体の合計が100重量%であるという条件で、イオン液体は少なくとも99.5重量%の量で存在し得る。換言すれば、イオン液体は溶媒の残部として存在してもよい。
【0080】
好ましくは、分散相に使用される溶媒は、環境に優しいものである。「環境に優しい」という用語は、溶媒が専門的な装置又はプロセスを必要とせずに廃棄できるような、環境に有害でないこと、すなわち無毒であることを意味する。多糖類は、一般的な溶媒の大部分に、ほとんど溶解しないことが当技術分野で知られている。また、多糖類を溶解する溶媒はしばしば毒性がある、及び/又は選択性が高いことも当技術分野では知られている。従って、バイオポリマーがセルロース、デンプン、キチン、グリコーゲン及び/又はキトサンなどの多糖類である場合、分散相の溶媒は、水に加えてイオン液体を含むことができる。イオン液体である1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドによるセルロースの溶解については、例えば、「Richard et al., J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 4974-4975」に記載されている。「Verma et al, Sustainable Chemistry and Pharmacy 13(2019), 100162」には、同様に、イオン液体及び共溶媒とイオン液体中のセルロースの溶解度について記載されている。これらの開示の各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
分散相中のバイオポリマーの濃度は制限されず、本開示の方法に好適なあらゆる濃度とすることができる。各種実施形態において、バイオポリマーは、約0.1重量%~約15重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約0.5重量%~約15重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約1重量%~約15重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約1.5重量%~約15重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約2重量%~約15重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約2.5重量%~約15重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約3重量%~約15重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約3.5重量%~約15重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約4重量%~約15重量%の量で分散相中に存在する。
【0082】
各種実施形態において、バイオポリマーは、約0.1重量%~約12重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約0.5重量%~約12重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約1重量%~約12重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約1.5重量%~約12重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約2重量%~約12重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約2.5重量%~約12重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約3重量%~約12重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約3.5重量%~約12重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約4重量%~約12重量%の量で分散相中に存在する。
【0083】
各種実施形態において、バイオポリマーは、約0.1重量%~約10重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約0.5重量%~約10重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約1重量%~約10重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約1.5重量%~約10重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約2重量%~約10重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約2.5重量%~約10重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約3重量%~約10重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約3.5重量%~約10重量%の量で分散相中に存在する。各種実施形態において、バイオポリマーは、約4重量%~約10重量%の量で分散相中に存在する。
【0084】
分散相は、任意の成分をさらに含んでもよい。これらの任意成分には、界面活性剤、ポロゲン、有効成分、空気ポケット、複合エマルジョン、顔料及び色素などがあるが、これらに限定されるものではない。任意成分のレベルは、本開示において重要ではない。各種実施形態において、分散相は共溶媒を含む。
【0085】
界面活性剤は、当技術分野で知られている任意の適切な界面活性剤、例えば、イオン性又は非イオン性界面活性剤とすることができる。イオン性界面活性剤には、アルキル硫酸塩、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸塩、ラウレス硫酸ナトリウム及びミレス硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、パーフルオロオクタンスルホン酸塩、パーフルオロブタンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、及びアルキルカルボン酸塩などの、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩及びカルボン酸塩がある。非イオン性界面活性剤には、ポリエーテル、ヘキシトールのポリオキシアルキレン誘導体、ソルビタンオレートなどの部分長鎖脂肪酸エステル、長鎖アルコールのエチレンオキサイド誘導体、エトキシ化植物油、ポリジメチルシルオキサン、及びエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体などがあり得る。
【0086】
分散相の温度は制限されないが、各種実施形態において、その温度を制御して、分散相の粘度が確実に上述した最大値以下となるようにすることができる。例えば、その温度を制御して、特定の濃度のバイオポリマー及び特定の濃度の水を含む分散相が、上述の最大粘度(すなわち、特定の温度及びせん断速度(例えば、環境温度及び1s-1せん断)での対照溶液の最大粘度)を有するようにすることができる。これらの特徴間の関係は、以下の実施例を含めて本明細書で論じられる。
【0087】
「分散相の温度」又は「分散相は~の温度である」などの表現は、押出又は膜乳化前(例えば、そのような押出又は乳化のための装置内に分散相を置くとき)の分散相の温度、及び/又は分散相の押出又は乳化時の装置の温度を意味する。以下により詳細に説明するように、押出又は乳化手段を加熱して、分散相がin situで高温のままとなるようにすることができる。好ましくは、押出手段は、1以上の加熱手段によって直接加熱される。これについては以下でさらに説明する。
【0088】
一部の実施形態において、分散相は環境温度又は室温、すなわち約20℃~約25℃である。各種実施形態において、分散相は環境温度より高く加熱される。分散相は、任意の好適な手段を使用して加熱することができる。分散相は、好ましくは、例えば分散相を含む容器及び/又は押出又は乳化手段を加熱することによって、押出又は膜乳化の前に温度損失がないようにin situで加熱する。押出プロセスでは、例えば、加熱されたシリンジ及び/又は針を使用することができる。好適な加熱装置は、例えばペルチェ素子などの加熱素子、並びに熱電対及びコントローラなどの温度を調節する手段を含むことができる。
【0089】
従って、各種実施形態において、分散相の温度は、約5℃~約100℃未満、約10℃~約100℃未満、約15℃~約100℃未満、約20℃~約100℃未満、約25℃~約100℃未満、又は約30℃~約100℃未満である。最高温度は、分散相からの水の蒸発が不可能になる、及び/又はイオン液体の分解が起こり始める点によって設定される。これは当業者によって容易に決定される。
【0090】
各種実施形態において、分散相の温度は約5℃~約90℃、約10℃~約90℃、約15℃~約90℃、約20℃~約90℃、約25℃~約90℃、又は約30℃~約90℃である。各種実施形態において、分散相の温度は約5℃~約80℃、約10℃~約80℃、約15℃~約80℃、約20℃~約80℃、約25℃~約80℃、約30℃~約80℃、又は約40℃~約80℃である。
【0091】
本開示の目的は、球形度が良好なバイオポリマー粒子を製造することである。これに関して、本発明者らは、分散相の温度及び分散相中のバイオポリマーの量が優位性をもたらす可能性があることを見出した。従って、バイオポリマー濃度の上記の開示は、含水量の開示及び任意に分散相温度の開示と組み合わせることができる。
【0092】
一部の実施形態において、バイオポリマーは、約0.5重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含む。上記で記載のように、最大含水量は、分散相の最大粘度に基づいて求められるべきである。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約1重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含む。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約1.5重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含む。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約2重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含む。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約2.5重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含む。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約3重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含む。これらのバイオポリマー濃度範囲のそれぞれを、上記の含水量範囲、例えば約0.5重量%~約12重量%と組み合わせることができる。
【0093】
一部の実施形態において、バイオポリマーは、約2重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約1重量%の水を含む。上記のように、最大含水量は、分散相の最大粘度に基づいて求められるべきである。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約3重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約1重量%の水を含む。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約4重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約1重量%の水を含む。これらのバイオポリマー濃度範囲のそれぞれを、上記の含水量範囲、例えば約1重量%~約12重量%と組み合わせることができる。
【0094】
一部の実施形態において、バイオポリマーは、約0.5重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも0.5重量%の水を含み、分散相の温度は約5℃~約80℃である(環境温度~80℃を含む)。上記のように、最大含水量は分散相の最大粘度に基づいて決定されるべきである。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約1重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも0.5重量%の水を含み、分散相の温度は約5℃~約80℃である(環境温度~80℃を含む)。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約1.5重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも0.5重量%の水を含み、分散相の温度は約5℃~約80℃である(環境温度~80℃を含む)。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約2重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも0.5重量%の水を含み、分散相の温度は約5℃~約80℃である(環境温度~80℃を含む)。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約2.5重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも0.5重量%の水を含み、分散相の温度は約5℃~約80℃である(環境温度~80℃を含む)。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約3重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも0.5重量%の水を含み、分散相の温度は約5℃~約80℃である(環境温度~80℃を含む)。これらのバイオポリマー濃度及び分散相温度範囲のそれぞれを上記含水量範囲、例えば約0.5重量%~約12重量%と組み合わせることができる。同様に、これらのバイオポリマー濃度範囲及び含水量範囲のそれぞれを上記分散相温度範囲、例えば約30℃~約70℃などと組み合わせることができる。
【0095】
一部の実施形態において、バイオポリマーは、約2重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約1重量%の水を含み、分散相の温度は約5℃~約80℃である(環境温度~80℃を含む)。上記のように、最大含水量は分散相の最大粘度に基づいて決定されるべきである。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約3重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約1重量%の水を含み、分散相の温度は約5℃~約80℃である(環境温度~80℃を含む)。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約4重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約1重量%の水を含み、分散相の温度は約5℃~約80℃である(環境温度~80℃を含む)。これらのバイオポリマー濃度範囲のそれぞれを上記含水量範囲、例えば約1重量%~約12重量%と組み合わせることができる。同様に、これらのバイオポリマー濃度範囲及び含水量範囲のそれぞれを上記分散相温度範囲、例えば約30℃~約70℃などと組み合わせることができる。
【0096】
一部の実施形態において、バイオポリマーは、2重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は約2重量%~約12重量%の水を含み、分散相の温度は約5℃~約80℃である(環境温度~80℃を含む)。一部の実施形態において、バイオポリマーは、2重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は約4重量%~約10重量%の水を含み、分散相の温度は約5℃~約80℃である(環境温度~80℃を含む)。
【0097】
一部の実施形態において、バイオポリマーは、4重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は約2重量%~約12重量%の水を含み、分散相の温度は約5℃~約80℃である(環境温度~80℃を含む)。一部の実施形態において、バイオポリマーは、4重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は約4重量%~約10重量%の水を含み、分散相の温度は約5℃~約80℃である(環境温度~80℃を含む)。
貧溶媒
【0098】
本開示のすべての態様において、貧溶媒は水を含む、すなわち、それは水性である。各種実施形態において、貧溶媒は、水と、アルコール若しくはアセトンなどの有機溶媒、或いは当技術分野で知られている他の有機溶媒を含むことができる。好適なアルコールには、エタノール及び/又はメタノールなどがある。好ましくは、本開示の貧溶媒は環境に優しい。より好ましくは、本開示の溶媒及び貧溶媒は両方とも環境に優しい。従って、各種実施形態において、貧溶媒は有機溶媒を実質的に含まない。各種実施形態において、貧溶媒は水であるか、又は水からなる。
【0099】
各種実施形態において、貧溶媒はさらにイオン液体を含む。一部の実施形態において、貧溶媒は、相転換又は分散相の押出の前に、水及びイオン液体を含んでもよい。他の実施形態において、相転換又は押出時にイオン液体を貧溶媒に導入することができる。分散相がイオン液体を含む一部の実施形態において、相転換プロセス又は押出プロセス時に、イオン液体を分散相から貧溶媒に導入することができる。
【0100】
各種実施形態において、貧溶媒中のイオン液体の濃度は最大約50重量%であり、「最大~」という用語はゼロより大きいことを意味すると理解される。各種実施形態において、貧溶媒中のイオン液体の濃度は最大約40重量%である。各種実施形態において、貧溶媒中のイオン液体の濃度は最大約30重量%である。各種実施形態において、貧溶媒中のイオン液体の濃度は最大約20重量%である。各種実施形態において、貧溶媒中のイオン液体の濃度は最大約10重量%である。
【0101】
貧溶媒が水及びイオン液体を含む場合、イオン液体は、酢酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EmimOAc)、塩化1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(BmimOAc)、又はそれらの混合物であることができる。各種実施形態において、イオン液体は酢酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EmimOAc)である。
【0102】
貧溶媒の温度は、特に本開示の押出プロセスでは制限されない。各種実施形態において、貧溶媒の温度は約5℃~約80℃である。各種実施形態において、貧溶媒の温度は約10℃~約70℃である。各種実施形態において、貧溶媒の温度は約15℃~約60℃である。
【0103】
本開示の膜乳化プロセスの各種実施形態において、貧溶媒の温度は環境温度であることで、相転換が環境温度、すなわち約20~約25℃で行われるようにする。このような実施形態において、貧溶媒は約20℃~約25℃の温度を有する。或いは、好ましくは、貧溶媒は環境温度以下の温度、すなわち約20℃以下の温度まで冷却される。例えば、第2の態様の一部の実施形態において、貧溶媒は、相転換(b)のために温度Tまで冷却することができ、TはTdisp未満である。好ましくは、Tは実質的にTに等しく、より好ましくは、TはTに等しく、Tは上記で定義されている。
【0104】
そのような実施形態で貧溶媒(T)の温度を制御する利点は、凍結液滴の早すぎる解凍を防止することである。いなかる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、貧溶媒を冷却してTとすることによって、液滴が凍結状態(従って、球形で凝集していない状態)に留まり、一方でその周囲の連続相が相転換によって除去されると考えている。貧溶媒は液滴の表面に接触することができ、それによってバイオポリマーの析出と析出物表面の硬化を引き起こす。さらに、凍結した分散相液滴が解凍すると、貧溶媒は、その溶媒系を貧溶媒に浸出させながら、溶解したバイオポリマーの液滴をそれのビーズ/粒子に変換する。
【0105】
押出
本開示の第1の態様において、分散相を貧溶媒中に押し出して、バイオポリマーの粒子を形成する。各種実施形態において、分散相は、キャピラリー押出によって流体媒体を通して押し出される。流体媒体は、例えば空気であってもよい。分散相を押し出すことができるキャピラリーの例としては、ガラスキャピラリー、マイクロ流体チャネル、及び(皮下)注射針がある。このようなキャピラリーを製造する材料は限定されず、当業者であれば、分散相と適合する好適なキャピラリーを選択することができるであろう。
【0106】
キャピラリーの表面を改質することもできる。キャピラリーは、例えば、処理、コーティング、又は裏打ちして、その湿潤特性を変えることができる。キャピラリー材料のそのような改質は、例えば、キャピラリー材料の親水性/疎水性を変え、それによってキャピラリー表面の濡れ性を変えることができる。例えば、キャピラリーをシランなどの反応性疎水性化合物で処理して疎水性表面層を形成したり、化学蒸着などの方法によって疎水性化合物をキャピラリー表面に堆積させることができる。別の例では、金属針はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で裏打ちされていてもよい。好適な表面改質の特定は、具体的には当業者の一般知識の範囲内である。このような表面改質は、本明細書に開示される方法によって得られるバイオポリマー粒子の大きさを変えることができ、及び/又は前記粒子の大きさ及び形状の規則性を改善することができる。
【0107】
隙間又は開口部の大きさ、例えばキャピラリーの直径又は針のゲージは制限されない。しかしながら、隙間又は開口部の大きさが、そこから押し出される分散相の液滴の大きさに影響を与えることは、当業者には直ちに明らかになろう。一般に、より大きい隙間又は開口部は、より大きい分散相液滴を生成すると予想され、逆に、より小さい隙間又は開口部は、より小さい分散相液滴を生成すると予想される。当業者であれば、適切な大きさの隙間/開口部を選択することができるであろう。
【0108】
分散相が押し出される隙間又は開口部の直径は、約3mm未満、約2.5mm未満、約2mm未満、約1.5mm未満、約1mm未満、約0.75mm未満、約0.5mm未満、約0.4mm未満、約0.3mm未満、又は約0.2mm未満であることができる。各種実施形態において、分散相が押し出される隙間又は開口部の直径は、約0.1mmより大きいものであることができる。各種実施形態において、分散相が押し出される隙間又は開口部の直径は、約0.1mmより大きく約3mm未満であり、約0.1mmより大きく約2.5mm未満であり、約0.1mmより大きく約2mm未満であり、約0.1mmより大きく約1.5mm未満であり、約0.1mmより大きく約1mm未満であり、約0.1mmより大きく約0.75mm未満であり、約0.1mmより大きく約0.5mm未満であり、約0.1mmより大きく約0.4mm未満であり、又は約0.1mmより大きく約0.3mm未満であることができる。他の実施形態において、分散相が押し出される隙間又は開口部の直径は、約0.1mm~約1mm、約1mm~約2mm、又は約2mm~約3mmであることができる。
【0109】
各種実施形態において、分散相は針を通して押し出される。針は先端が鈍くてもよいが、本開示はこの点について限定されない。各種実施形態において、針ゲージサイズは、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、又は10ゲージである。
【0110】
押出速度には制限はなく、標準的な実験室装置、例えばシリンジポンプを使用して制御することができる。各種実施形態において、押出速度は、約1mL/分未満、約100μL/分未満、約10μL/分未満、約1μL/分未満、又は約100nL/分未満である。他の実施形態において、押出速度は、約1μL/分~約1mL/分、又は約10μL/分~約100μL/分である。
【0111】
第1の態様の一部の実施形態において、分散相は、まず流体媒体を通して型内に押し出され、次いで、押し出された分散相が貧溶媒と接触させられる。各種実施形態において、型は、押し出された分散相と貧溶媒が接触して形成されるバイオポリマー粒子に形状を与えることができる。バイオポリマー粒子の形状には限定はなく、この場合は型の形状によって決まる。型は、分散相及び貧溶媒と適合する任意の好適な材料で形成することができ、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコーンポリマーであることができる。型は、型材料を成形することによって製造してもよく、又は型材料を3Dプリントすることによって製造してもよい。押し出した分散相を含む型を貧溶媒に浸漬することで、押し出した分散相を貧溶媒と接触させることができる。型は、バイオポリマー粒子を形成した後に除去しても良く、又はバイオポリマー粒子の洗浄及び濾過/抽出などのさらなる処理段階時に保持されていてもよい。
【0112】
型を使用しない場合、貧溶媒内で押し出しが発生する可能性がある。すなわち、分散相が、押出直後に貧溶媒に曝露され得る(例えば、隙間又は開口部が貧溶媒に浸漬されている場合)。或いは、そして好ましくは、各種実施形態において、押し出された分散相は、貧溶媒の表面より上の高さから滴下される。これは図1で見ることができ、押し出された分散相が貧溶媒の表面上の高さdから滴下される。
【0113】
落下高さは、押出プロセスによって得られる粒子の球形度に影響を与える可能性がある。いかなる理論にも拘束されるものではないが、落下高さを高くすると、落下する液滴に凝集力が作用する時間をより長くできることで、テーリングを低減することができる(すなわち、球形度が向上する)と考えられる。従って、各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から少なくとも10cmの高さから滴下される。各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から少なくとも20cmの高さから滴下される。各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から少なくとも30cmの高さから滴下される。各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から少なくとも40cmの高さから滴下される。各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から少なくとも50cmの高さから滴下される。各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から少なくとも60cmの高さから滴下される。各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から少なくとも70cm又は貧溶媒の表面から少なくとも80cmの高さから滴下される。
【0114】
最大落下高さは、非球形粒子が形成される距離によって決まる。これは当技術分野で知られており、当業者には容易に理解される。例えば、それは目視で決定することができる。しかしながら、各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から80cm未満の高さから滴下される。各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から70cm未満の高さから滴下される。各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から60cm未満の高さから滴下される。各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から50cm未満の高さから滴下される。
【0115】
各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から約1cm~約80cmの高さから、好ましくは約5cm~約70cmの高さから、より好ましくは約10cm~約60cmの高さから滴下される。
【0116】
各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から約10cm~約80cmの高さから滴下される。各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から約10cm~約70cmの高さから滴下される。各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から約10cm~約60cmの高さから滴下される。各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から約10cm~約50cmの高さから滴下される。
【0117】
各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から約20cm~約80cmの高さから滴下される。各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から約20cm~約70cmの高さから滴下される。各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から約20cm~約60cmの高さから滴下される。各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から約20cm~約50cmの高さから滴下される。各種実施形態において、押し出された相は、貧溶媒の表面から約20cm~約40cmの高さから滴下される。
【0118】
すでに上で論じたように、バイオポリマー粒子の球形度は、分散相の温度及び分散相中のバイオポリマーの量によっても影響を受ける可能性がある。従って、第1の態様の方法では、バイオポリマー粒子の球形度は、落下高さ、分散相の温度;及び分散相中の溶媒中に所定の含水量を有する場合における、分散相中のバイオポリマーの量のうちの1以上によって影響される可能性がある。
【0119】
一部の実施形態において、バイオポリマーは、約0.5重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含み、押し出された分散相は約10cm~約70cmの高さから滴下される。上記のように、最大含水量は分散相の最大粘度に基づいて決定されるべきである。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約1重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含み、押し出された分散相は約10cm~約70cmの高さから滴下される。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約1.5重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含み、押し出された分散相は約10cm~約70cmの高さから滴下される。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約2重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含み、押し出された分散相は約10cm~約70cmの高さから滴下される。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約2.5重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含み、押し出された分散相は約10cm~約70cmの高さから滴下される。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約3重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含み、押し出された分散相は約10cm~約70cmの高さから滴下される。これらのバイオポリマー濃度範囲のそれぞれを上記含水量範囲、例えば約0.5重量%~約12重量%及び/又は上記落下高さ範囲、例えば約10cm~約60cm又は約20cm~約50cmと組み合わせることができる。
【0120】
一部の実施形態において、バイオポリマーは、約2重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約1重量%の水を含み、押し出された分散相は約10cm~約70cmの高さから滴下される。上記のように、最大含水量は分散相の最大粘度に基づいて決定されるべきである。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約3重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約1重量%の水を含み、押し出された分散相は約10cm~約70cmの高さから滴下される。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約4重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約1重量%の水を含み、押し出された分散相は約10cm~約70cmの高さから滴下される。これらのバイオポリマー濃度範囲のそれぞれを上記含水量範囲、例えば約1重量%~約12重量%、及び/又は上記落下高さ範囲、例えば約10cm~約60cm又は約20cm~約50cmと組み合わせることができる。
【0121】
一部の実施形態において、バイオポリマーは、約0.5重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含み、分散相の温度は約30℃~約80℃であり、押し出された分散相は約10cm~約70cmの高さから滴下される。上記のように、最大含水量は分散相の最大粘度に基づいて決定されるべきである。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約1重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含み、分散相の温度は約30℃~約80℃であり、押し出された分散相は約10cm~約70cmの高さから滴下される。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約1.5重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含み、分散相の温度は約30℃~約80℃であり、押し出された分散相は約10cm~約70cmの高さから滴下される。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約2重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含み、分散相の温度は約30℃~約80℃であり、押し出された分散相は約10cm~約70cmの高さから滴下される。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約2.5重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含み、分散相の温度は約30℃~約80℃であり、押し出された分散相は約10cm~約70cmの高さから滴下される。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約3重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約0.5重量%の水を含み、分散相の温度は約30℃~約80℃であり、押し出された分散相は約10cm~約70cmの高さから滴下される。これらのバイオポリマー濃度及び分散相温度範囲のそれぞれを上記含水量範囲、例えば約0.5重量%~約12重量%、及び/又は上記落下高さ範囲、例えば約10cm~約60cm又は約20cm~約50cmと組み合わせることができる。同様に、これらのバイオポリマー濃度及び含水量範囲のそれぞれを上記分散相温度範囲、例えば約30℃~約70℃及び/又は上記落下高さ範囲、例えば約10cm~約60cm又は約20cm~約50cmと組み合わせることができる。
【0122】
一部の実施形態において、バイオポリマーは、約2重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は約2重量%~約12重量%の水を含み、分散相の温度は約20℃~約80℃であり、押し出された分散相は貧溶媒の表面から約10cm~約70cmの高さから滴下される。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約2重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は約2重量%~約12重量%の水を含み、分散相の温度は約20℃~約80℃であり、押し出された分散相は貧溶媒の表面から約10cm~約60cm上の高さから滴下される。
【0123】
一部の実施形態において、バイオポリマーは、約2重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約1重量%の水を含み、分散相の温度は約30℃~約80℃であり、押し出された分散相は約10cm~約70cmの高さから滴下される。上記のように、最大含水量は分散相の最大粘度に基づいて決定されるべきである。
【0124】
一部の実施形態において、バイオポリマーは、約3重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約1重量%の水を含み、分散相の温度は約30℃~約80℃であり、押し出された分散相は約10cm~約70cmの高さから滴下される。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約4重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は少なくとも約1重量%の水を含み、分散相の温度は約30℃~約80℃であり、押し出された分散相は約10cm~約70cmの高さから滴下される。これらのバイオポリマー濃度範囲のそれぞれを上記含水量範囲、例えば約1重量%~約12重量%及び/又は上記落下高さ範囲、例えば約10cm~約60cm又は約20cm~約50cmと組み合わせることができる。同様に、これらのバイオポリマー濃度及び含水量範囲のそれぞれを上記分散相温度範囲、例えば約30℃~約70℃及び/又は上記落下高さ範囲、例えば約10cm~約60cm又は約20cm~約50cmと組み合わせることができる。
【0125】
一部の実施形態において、バイオポリマーは、約2重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は約2重量%~約12重量%の水を含み、分散相の温度は約20℃~約100℃であり、押し出された分散相は貧溶媒の表面から約10cm~約70cmの高さから滴下される。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約2重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は約2重量%~約12重量%の水を含み、分散相の温度は約20℃~約80℃であり、押し出された分散相は貧溶媒の表面から約10cm~約60cmの高さから滴下される。
【0126】
一部の実施形態において、バイオポリマーは、約2重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は約2重量%~約12重量%の水を含み、分散相の温度は約30℃~約80℃であり、押し出された分散相は貧溶媒の表面から約10cm~約70cmの高さから滴下される。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約2重量%~約12重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は約2重量%~約12重量%の水を含み、分散相の温度は約30℃~約80℃であり、押し出された分散相は貧溶媒の表面から約20cm~約60cmの高さから滴下される。
【0127】
一部の実施形態において、バイオポリマーは、約4重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は約2重量%~約12重量%の水を含み、分散相の温度は約20℃~約80℃であり、押し出された分散相は貧溶媒の表面から約10cm~約70cmの高さから滴下される。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約4重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は約2重量%~約12重量%の水を含み、分散相の温度は約20℃~約80℃であり、押し出された分散相は貧溶媒の表面から約10cm~約60cmの高さから滴下される。
【0128】
一部の実施形態において、バイオポリマーは、約4重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は約2重量%~約12重量%の水を含み、分散相の温度は約30℃~約80℃であり、押し出された分散相は貧溶媒の表面から約10cm~約70cmの高さから滴下される。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約4重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は約2重量%~約12重量%の水を含み、分散相の温度は約30℃~約80℃であり、押し出された分散相は貧溶媒の表面から約20cm~約60cmの高さから滴下される。
【0129】
一部の実施形態において、バイオポリマーは、約4重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は約2重量%~約12重量%の水を含み、分散相の温度は約30℃~約70℃であり、押し出された分散相は貧溶媒の表面から約20cm~約70cmの高さから滴下される。一部の実施形態において、バイオポリマーは、約4重量%~約10重量%の量で分散相中に存在し、溶媒は約2重量%~約12重量%の水を含み、分散相の温度は約30℃~約70℃であり、押し出された分散相は貧溶媒の表面から約30cm~約60cmの高さから滴下される。
【0130】
第1の態様の方法は、貧溶媒からバイオポリマー粒子を分離する段階をさらに含んでもよい。バイオポリマー粒子を貧溶媒から分離する手段は限定されず、当業者には公知である。例えば、各種実施形態において、バイオポリマー粒子は、濾過プロセスによって貧溶媒から分離することができる。濾過プロセスは限定されず、機械的濾過又は他のタイプの濾過(例えば、液体遠心分離器などの当技術分野で知られている装置を使用)を含むことができる。各種実施形態において、濾過媒体(例えば、フィルター)を使用して、貧溶媒からバイオポリマー粒子を濾過し、それによってバイオポリマー粒子を収集することができる。
【0131】
各種実施形態において、バイオポリマー粒子を容器内で沈降させ、貧溶媒を除去又は傾斜法分離して、残留貧溶媒で濡れたバイオポリマー粒子を残すようにすることができる。或いは、バイオポリマー粒子は、遠心分離機又はディスクスタック分離機によって分離してもよい。
【0132】
各種実施形態において、バイオポリマー粒子は、例えば水を含む水性溶媒で1回以上洗浄することができる。このような洗浄段階を行って、存在する可能性のある残留イオン液体を除去することができる。各種実施形態において、バイオポリマー粒子が浸漬される溶媒は、代替溶媒と交換され得る。各種実施形態において、バイオポリマー粒子を乾燥させる。その乾燥プロセスは限定されず、例えば、乾燥機で及び/又は減圧下でのビーズの乾燥を含むことができる。
【0133】
膜乳化
第2の態様の膜乳化工程は、分散相を、膜を介して連続相に通し、エマルジョンを形成させることを含む。膜には限定はなく、膜乳化プロセスに適した任意の多孔質構造とすることができる。例えば、膜は、細孔(例えば、ミクロンサイズの孔)として機能する孔を有するプレート、有孔金属管、又は焼結多孔質ガラスとすることができる。
【0134】
「エマルジョン」という用語は、両方の相が液体である物質の2相系のクラスを意味する。エマルジョンはコロイドの一種であり、一般に2つの混和しない液体からなる。本発明の各種実施形態において、エマルジョンはマクロエマルジョンであってもよい。これは、分散相の粒子が約1~1000ミクロンの直径を有するエマルジョンである。「ゾル」という用語は、連続相が液体であり、分散相が固体である物質の2相系の一般的なクラスを指す。
【0135】
また、膜乳化も限定されず、当技術分野で知られている任意の膜乳化プロセスであってよい。例えば、膜乳化プロセスは、クロスフロー膜乳化、回転膜乳化、振動膜乳化、又はそれらの組み合わせとすることができる。当技術分野において理解されるように、「クロスフロー」、「回転」及び「振動」という用語は、膜表面上にせん断を発生させるために使用される方法を指す。連続相は、例えば、せん断を生じさせるために固定膜に対して相対的に移動することができると考えられるか、膜が固定相に対して移動することができると考えられる。或いは、分散相を固定された連続相に注入することも可能である。膜の種類、平均孔径及び孔隙率、クロスフロー速度、膜貫通圧及び乳化剤などの既知のプロセスパラメータも使用することができる。本発明の各種実施形態において、膜乳化には、クロスフローシステム、攪拌セルチューブ膜、攪拌セル平膜、回転平膜、振動/回転チューブ膜、及び/又は予混合膜乳化が含まれていてもよい。
【0136】
国際特許出願第WO01/45830号には、回転膜乳化の一例が記載されている。国際特許出願第WO2012/094595号には、クロスフロー膜乳化の一例が記載されている。「Pedro S. Silva et al. “Azimuthally Oscillating Membrane Emulsification for Controlled Droplet Production”, AIChE Journal 2015 Vol. 00, No. 00」には、振動膜乳化:具体的には、穏やかに交差流動する連続相中で周期的に方位的振動する管状金属膜を含む膜乳化システムが記載されている。WO2019/092461には、クロスフロー膜乳化が記載されている。これらの方法の記載はそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0137】
本開示の各種実施形態において、膜乳化はクロスフロー膜乳化である。好ましくは、連続相が固定膜に対して移動する乳化プロセスである。
【0138】
当業者には理解されるように、分散相及び連続相は、使用されるバイオポリマーによって決まる。分散相用の溶媒の各種特徴についてはすでに上記で論じられており、前記特徴は個別に又はそれらの任意の組み合わせで、本明細書に開示の実施形態と組み合わせることができる。連続相は、分散相が多孔質膜を強制的に通過するときにエマルジョンが形成されるように、分散相と混和しない溶媒を含む。「溶媒」という用語は、すでに上記で定義した通りの意味を有する。
【0139】
2つの相、即ち分散相と連続相は、互いに混和しないものでなければならない。従って、各相の溶媒は互いに非混和性でなければならないということになる。第2の態様の分散相及び連続相に適した溶媒を特定することは、具体的には当業者の一般常識の範囲内である。
【0140】
連続相の溶媒は、それが分散相と非混和性でなければならないこと以外は制限されない。連続相の溶媒は、非極性溶媒であってもよい。各種実施形態において、連続相の溶媒は、炭化水素系油及びそのブレンドから選択され得る。このような炭化水素系油は、鉱油、植物油、又は合成油であることができる。連続相の溶媒はさらに、残留量で存在し得る水及び/又は1以上のイオン液体を含んでもよい。このような水及び/又はイオン液体の残留物は、溶媒のリサイクルプロセスの結果として生じる可能性がある。
【0141】
好ましくは、連続相に使用される溶媒は環境に優しいものである。より好ましくは、分散相と連続相の両方に使用される溶媒が環境に優しいものである。「環境に優しい」という用語は、すでに上記で定義の意味を有する。
【0142】
連続相は、任意の成分をさらに含んでもよい。これらの任意成分には、共溶媒、界面活性剤、顔料及び色素などがあるが、これらに限定されるものではない。任意成分のレベルは、本開示においては重要ではない。各種実施形態において、連続相は共溶媒を含む。
【0143】
共溶媒は限定されず、当技術分野で知られているいずれの溶媒であっても良い。各種実施形態において、共溶媒は、炭化水素系油及びそれの混合物から選択され得る。このような炭化水素系油は、鉱油、植物油、又は合成油であることができる。共溶媒はさらに、共溶媒混合物であることができる。
【0144】
界面活性剤は上記で定義の通りである。
【0145】
第2の態様の各種実施形態において、エマルジョンは温度Tまで冷却され、Tは、連続相の流動点(Tcont)より高く、分散相の凝固点、ガラス転移温度及び流動点からなる群から選択される転移温度(Tdisp)以下であり、Tdisp>Tcontである。しかしながら、Tの絶対値は本開示にとって重要ではなく、むしろ重要なのは分散相と連続相のそれぞれの温度に対するTの関係である。
【0146】
「流動点」という用語は、物質(例えば液体)がそれ以下の温度で流動特性を失う温度を指す。それは代表的には、液体(例えば油)がビーカーから流れ落ちることができる最低温度と定義される。流動点は、当技術分野で知られる標準的な方法で測定することができる。例えば、ASTM D7346「石油製品及び液体燃料の無流動点及び流動点の標準試験方法」が使用され得る。市販の材料の場合、流動点は販売業者又は製造者から提供されることが多い。
【0147】
「凝固点」という用語は、標準大気圧(1気圧)下で、物質が液体から固体に状態変化する温度を指す。凝固点は、当技術分野で知られる標準的な方法で測定することができる。例えば、ASTM E794「熱分析溶融及び結晶化温度のための標準試験方法」を使用することができる。市販の材料の場合、凝固点は、販売業者又は製造者から提供されることがある。
【0148】
「ガラス転移点」又は「ガラス転移温度」という用語は、ポリマー構造が硬い材料又はガラス状の材料から柔らかいゴム状の材料に転移する温度を指す。この温度は、標準的な試験法:ASTM E1356「示差走査熱量測定によるガラス転移温度の割当てのための標準試験方法」に従って示差走査熱量計によって測定することができる。市販の材料の場合、ガラス転移温度は供給元又は製造元から提供されることがある。
【0149】
分散相の液滴が液体状態にあるときに変形及び凝結が起こると考えられているので、エマルジョンを分散相の流動点以下に冷却することで、エマルジョンの「コロイドクラス」をエマルジョン(すなわち液中液)からゾル(液中固体)に一時的に(少なくとも部分的に)変え、それによって分散相が下流工程で扱いやすくなると考えられている。
【0150】
さらに、分散相が、連続相の流動点よりも高い転移温度(転移温度は凝固点、ガラス転移温度及び流動点からなる群から選択される)を有するということは、固化した分散相を取り巻く連続相が依然として輸送媒体として機能し得ることを意味する。冷却コイル熱交換器内で冷却され、一時的にゾルに変換されるエマルジョンの模式図を図4(b)に示す。
【0151】
図4(a)は、エマルジョンを冷却しないプロセスを示す図であり、連続相は分散相液滴(この例では微小液滴)とエマルジョンを形成し、流れの停滞と乱流により望ましくない合体が発生し、収率が低下する。次に、図4(b)は、エマルジョンがコイル熱交換器内で、分散相転移温度より低いが連続相流動点より高い温度まで冷却され、それによって連続相が移動性を維持し、転移した液滴を輸送できるようにする例である。図4(b)の例示的な実施形態は、図4(a)に描いたようなプロセスで遭遇する粒子の合体、変形、凝結、及びその結果として生じる収率の低下を回避するものである。
【0152】
また、冷却の方法も限定されない。エマルジョンは、系から熱(エネルギー)を除去するために当技術分野で知られている任意の手段によって冷却されてもよい。エマルジョンはさらに、相転換の前の任意の時点で冷却されてもよい。各種実施形態において、これは、エマルジョンが膜乳化プロセスと同時に、又は膜乳化プロセスとは別に冷却されることを意味する。エマルジョンは、例えば、形成される際に冷却されてもよい(例えば、膜の出口に配置された冷却手段によって)。或いは、エマルジョンは、膜乳化後の工程で、例えば膜乳化装置とは別の冷却装置で冷却されてもよい。有利には、冷却は、液体状態の分散相液滴が合体及び/又は凝結する可能性を低減するために、乳化が行われた後できるだけ早く行われるべきである。
【0153】
各種実施形態において、エマルジョンは、エマルジョンが形成される容器を少なくとも部分的に取り囲む冷却媒体(例えば、水、氷など)によって冷却されてもよい。好ましい実施形態において、エマルジョンが形成される容器(例えば、パイプ)は、冷却媒体を含む冷却ジャケットを有することができる。冷却媒体は、特に限定されず、エマルジョンよりも低い温度を有する任意の媒体を含む。
【0154】
各種実施形態において、エマルジョンは、膜乳化装置に接続された冷却装置によって冷却されてもよい。冷却装置は、浸漬型熱交換器などの熱交換器とすることができる。例示的な実施形態では、コイル熱交換器を冷却媒体(例えば、冷水浴)に浸漬するが、本開示はこの点で限定されるものではない。例えば、チューブアンドシェル熱交換器、プレートアンドフレーム熱交換器、又はジャケット管など、任意のタイプの熱交換器を使用することができると考えられる。さらに、エマルジョンを冷却してTとするために、凍結防止剤、ドライアイスなどの別の冷却媒体と共に浸漬型熱交換器を使用することもできると考えられる。
【0155】
相転換時の貧溶媒の温度は上述の通りである。
【0156】
本開示の各種実施形態において、相転換はせん断下で行われる。当業者は、相転換のための好適なせん断条件を知っているであろう。せん断は、例えば、撹拌容器(例えば、機械的撹拌容器)又は沈降容器(例えば、重力沈降容器)の使用により達成することができる。「せん断」という用語は、本明細書では、物体又は表面に対し、その物体又は表面が存在する斜面又は平面に平行に作用する外力であって、応力が歪みを生じさせる傾向のあるものを指すのに使用される。
【0157】
せん断は、連続相が分散相液滴から除去される速度を向上させ、ひいては全体として相転換の速度を向上させることから有利である。相転換プロセスは拡散速度により制限され(フィックの拡散)、せん断は分散相液滴を取り囲む連続相層の厚さを減少させ、分散相液滴の表面への貧溶媒分子の移動距離が短縮され、それによって相転換プロセスが加速される。しかしながら、せん断は粒子形状や粒子径に悪影響を及ぼすため、現在の相転換プロセスでは通常使用されない。現在では、エマルジョンを(室温で)流動しない貧溶媒で沈降させることができる、穏やかな相転換段階が用いられる。驚くべきことに、凍結状態の分散相液滴は、連続相から分離する他の方法に対して比較的耐性が高く、この向上した耐性により、そのような分離の効率が高くなる。
【0158】
本開示の各種実施形態において、相転換は、濾過工程を含む。濾過工程は、限定されず、機械的又は他の任意のタイプの濾過(例えば、ハイドロサイクロンのような当技術分野で公知の装置を使用する)を含むものとすることができる。濾過工程はまた、相転換を上記のせん断下で実施する場合にも行われ得る。各種実施形態において、濾過媒体(例えば、フィルター)を使用して、貧溶媒を通してエマルジョンを濾過し、それによってバイオポリマー粒子を回収することができる。そのような実施形態において、エマルジョンは、連続相がフィルターを通過する(濾液)一方で、貧溶媒を通ってフィルターに重力沈降(せん断)し得る。次に、凍結した液滴を、フィルターで濾過ケーキとして回収することができる。
【0159】
相転換の一部として回収されない場合(例えば、濾過などを介して)、バイオポリマー粒子を、貧溶媒/連続相混合物から分離してもよく、又は貧溶媒/連続相混合物を粒子から除去してもよい。除去の方法は限定されない。しかしながら、各種実施形態において、除去の方法は、本発明の方法がバッチモードで操作されているか、又は連続モードで操作されているかによって決まる。
【0160】
第2の態様の方法をバッチモードで行う場合、相転換プロセスをまず閉鎖容器中で行い、得られた混合物を次にデカンター容器に移し、沈降段階に到達させることができる。沈降したら、層を容器の底部から順次取り出すことができる。代表的には、層の順序は、(1)連続相、(2)湿潤バイオポリマー粒子を含む界面層、及び(3)残りの貧溶媒とすることができる。しかしながら、本発明はこの点で限定されず、当業者は、層の順序がそれらのそれぞれの密度によって決まるものであることを理解するであろう。
【0161】
第2の態様の各種実施形態において、当該方法は連続的であり、連続モードで動作し、相転換プロセスは、エマルジョン及び貧溶媒の連続投入及びデカンターへの多相混合物の連続排出下で実施されてもよい。デカンター内では、混合物の定常状態の仕切りが存在してもよく、各相からの連続的及び好ましくは同時の除去があり得る。例えば、(1)連続相、(2)貧溶媒、及び(3)湿潤バイオポリマー粒子からの連続的かつ好ましくは同時の除去があり得る。当然のことながら、これらの層の順序は変わるものであり、本発明はいずれか特定の順序に限定されるものではない。
【0162】
或いは、多相(例えば3相)混合物は、ディスクスタック分離器(例えばアンドリッツ(Andritz)製の遠心分離器など)のような当技術分野で公知の技術を用いて分離することができる。
【0163】
連続相転換と共に連続冷却を提供するために、冷却媒体(例えば、エマルジョンを含む容器を囲む媒体又は膜乳化ユニットに接続された熱交換器と共に用いられる媒体)は、好適な装置でリサイクル又は再循環する必要がある場合がある。例えば、再循環冷却装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック(ThermoFisher Scientific)から入手可能なThermoFlex)のような装置を、冷却媒体を所望の温度に維持するために使用することができる。
【0164】
第2の態様による方法の別の利点は、事象の順序に柔軟性があることである。分散相の液滴をエマルジョン内で凍結させることができることから、この柔軟性が生じる。従って、本開示の各種実施形態において、相転換の後に、上記のようなバイオポリマー粒子を取り出すか、相転換の際にバイオポリマー粒子を取り出す。相転換を行ってからデカンテーションを行い、次に混合物からバイオポリマー粒子を取り出すことができ、及び/又は相転換の際に、貧溶媒/連続相/粒子混合物から湿潤粒子を機械的に濾過することができる。
【0165】
或いは、バイオポリマー粒子は、相転換の前に連続相から除去することができる。そのような実施形態では、濡れた凍結液滴をゾルから除去し(例えば、濾過を使用して)、次に相転換を実施してバイオポリマーを析出させ、そのビーズ/粒子を形成することができる。
【0166】
以上、本開示について一般的に説明したが、以下に例示する特定の具体例を参照することにより、さらなる理解を得ることができる。これら具体例は例示の目的でのみ提供され、別断の断りがない限り、包括的であったり限定的であったりすることを意図するものではない。
【実施例
【0167】
材料及び方法
セルロース溶液の調製
微結晶セルロース(MCC、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)(登録商標)製)とEmimOAcを真空乾燥機中80℃で1時間乾燥して、微量の水を除去した。セルロース溶液は、8重量%の脱イオン水を含む場合と含まない場合の両方で、EmimOAc中4、6又は8重量%のMCCの濃度で調製した。最初に、撹拌しながらEmimOAcに水を添加し、続いてMCCを添加した。混合物を手で1分間振盪し、次にローラーに移して24時間放置した。サンプルを70℃の乾燥機に24時間置き、スパーテルで撹拌し、乾燥機内にさらに24時間放置し、最後にもう一度ローラーに移して24時間放置した。
【0168】
Coombs Obrien et alの製剤に従って、「対照」セルロース溶液を調製した(DMSO:EmimOAcが70:30の混合物中に8重量%のMCC)。これも、他のサンプルと同じ時間にわたり乾燥機に入れて、全てが同じ熱曝露を受けたようにした。
【0169】
実施例1:セルロース溶液の特性決定
上記で詳述した方法に従って調製したセルロース溶液の写真をiPhoneカメラで撮影し、SP400顕微鏡及びデジタルカメラ(オリンパス(Olympus))を用いて光学顕微鏡写真を撮った。光学顕微鏡写真を図5で提供している。
【0170】
これらの写真は、互いに、及び共溶媒としてDMSOを含む比較基準と比較した、セルロースのEmimOAc溶液の外観を示していた。全て透明であり、それはセルロースが完全に溶解していることを示しており、それはさらに、光学顕微鏡で粒子が認められなかったことによって確認された(図5)。従って、これらの溶液は、さらなる特性決定及びビーズ製造に適していると思われた。
【0171】
粘度測定によってさらなる特性決定を行った。粘度測定は、40mmのステンレス製平行プレートを取り付けたDiscovery HR-3ハイブリッドレオメーター(TA Instruments)を用いて行った。ギャップを500μmに設定し、水分の移動を防ぐためにサンプルを鉱物油で密封した。対数せん断速度掃引を、測定前に10秒の温度浸漬を行いながら0.1~100s-1(10ポイント/ディケード)で実行し、粘度を1s-1でのニュートン領域から記録した。これは上記で説明した方法である。
【0172】
図12は、記載された温度における、1s-1での各試験サンプルの粘度を示す。すべてのサンプルが、温度の上昇とセルロース濃度の低下に伴って、予想どおり粘度の低下を示している。8重量%の水を含むサンプルは、すべてのセルロース濃度で粘度が大幅に低下することが認められた。上記で述べたように、8重量%より低いMCC濃度は、さらに低い粘度をもたらす可能性がある沈殿を生じることなく、より高い含水量に耐えることができる可能性がある。従って、本開示は、8重量%の含水量に限定されない。
【0173】
溶液曲線が横破線と交差する値は、室温でDMSO含有比較基準と同じ粘度を達成するのに必要な温度、従って押出温度の推定値として使用することができる。この温度を以下の表に示す。
【0174】
【表1】
【0175】
分散相に水が存在すると、セルロース溶液が沈殿を生じることなく粘度がどのように低下するかがわかり、それは、より低い温度で、室温でのDMSO含有の比較基準の粘度と類似の粘度を得ることができることを意味する。これは、総合的な環境上の利益の提供に寄与できるという本開示のさらなる利点である。
【0176】
実施例2:セルロースビーズの製造
上記で詳述した方法に従って調製した各セルロース溶液を3つのサンプルに分けた。第1のサンプルは室温又は環境温度(図6におけるRT)で使用し、第2のサンプルは40℃に加熱し、第3のサンプルは60℃に加熱した。必要な温度になったら、サンプルをそれぞれ10mLプラスチック注射器に入れ、23ゲージの先端を丸めたステンレス鋼針を取り付けた。溶液を直ちに針からシリンジポンプを通して0.1mL/分で滴下して水(貧溶媒)中に押し出した。滴下時の室温(環境温度)は約15℃であった。至適な球形度のための適切な落下高さを、最大60cmで各サンプルについて目視で選択した。圧力蓄積の影響を避けるために、少数のビーズのみを製造した。ビーズを3日間にわたって水で3回洗浄し、80℃で終夜乾燥させた。
【0177】
水中で凝固した後の湿状態のビーズの写真を、市販のマクロレンズクリップを取り付けたiPhoneカメラで撮影した。これらを図6に示す。乾燥ビーズの光学顕微鏡写真をEVOS M5000顕微鏡で撮影した。これらを図7に示す。
【0178】
実施例2では、球状ビーズの作製にどの溶液を使用できるかを評価するために、室温、40℃、及び60℃での針滴下法によってビーズを製造した。好ましくない場合では、得られたビーズにテールがあったり、又は溶液が途切れない流れとなって押し出されて、糸状の塊が生じたりすることがある。図6及び7は、分散相に水が存在することで、水のない分散相と比較してビーズの球形度が向上することを示している。この改善は、特に高濃度のセルロースで見られる。
【0179】
実施例3:加熱されたシリンジ及び針を使用したセルロースビーズの製造
上述のMCC8重量%及び水8重量%を含むEmimOAc溶液並びにMCC6重量%及び水8重量%を含むEmimOAc溶液について、実施例3でさらなる試験を行った。これらの試験は、実施例2でなされた観察を補足することを意図したものである。
【0180】
溶液をそれぞれ50mLガラスシリンジに装填し、23ゲージの先端を丸めたステンレス製針を取り付けた。加熱マットを注射器と針の周囲に固定し、熱電対を金属針のねじ部に取り付けた。ヒーターを70℃に設定して、放冷し、表示された針温度を使用して10℃間隔でビーズを収集した。その溶液を、シリンジポンプを用いて0.05mL/分で針から水(貧溶媒)中に落下高さ13、26又は39cmで滴下して押し出した。滴下時の室温は約20℃であった。ビーズを3日間にわたって水で3回洗浄し、80℃で終夜乾燥させた。
【0181】
水中で凝固した後の湿潤状態のビーズの写真を、市販のマクロレンズクリップを取り付けたiPhoneカメラで撮影した。これらを図8及び10に示している。乾燥ビーズの光学顕微鏡写真をEVOS M5000顕微鏡で撮影した。これらを図9及び11に示す。
【0182】
結果(図8~11)は、EmimOAc中に8重量%の水を含有する6重量%及び8重量%のMCC溶液のそれぞれを使用して球状ビーズが得られたことを示している。これらの結果はまた、いかにより高い温度と落下高さがどのように球形化に有利に働くかを示しており、それは特に8重量%溶液の場合に表れている。
【0183】
結論
MCC8重量%の純粋なEmimOAc溶液は、実際DMSO:EmimOAcが70:30である混合物中の8重量%のMCCよりもはるかに粘度が高いが、8重量%の水を含めることで粘度を大幅に低下させることができ、その溶液を、球状セルロースビーズを製造するためのビーズ滴下プロセスに使用できることを、実施例1~3は示している。セルロース溶液に水が含まれると、粘度が低下することでビーズが球形になる可能性が高くなり、テーリングが低減された。水を貧溶媒として使用する場合、溶媒回収プロセスからのEmimOAc中の残留水が避けられないため、これは重要な発見である。8重量%の水を含む6重量%及び8重量%の溶液では、制御された実験により、至適なビーズ球形度を得るために好適なパラメータ範囲(温度及び落下高さ)を決定することができた。
【0184】
実施例4:膜乳化
酢酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム中に8重量%の微結晶セルロース及び8重量%の水を含む分散相を、当技術分野で知られている常法に従って調製した。この分散相は約-5℃の転移温度(例えば凝固点)を有していた。水性連続相もまた、当技術分野で知られている常法に従って調製した。連続相の流動点は-15℃であった。
【0185】
分散相及び連続相を膜乳化ユニットに供給し、それによりエマルジョンを形成した。次いで、エマルジョンを0℃~11℃の温度に冷却した後、水性貧溶媒で相転換ユニットに移して、セルロース粒子を形成した。
【0186】
エマルジョンの冷却は、浸漬コイル熱交換器を使用して実行した。浸漬コイル熱交換器は、層流を維持し、エマルジョンが冷却される際の流れの乱れを最小限に抑えるために選択した。コイル熱交換器には、0℃の冷水浴内に直径D及びピッチPの長さ(L)のコイル状チューブが含まれており、0.5L/分のエマルジョンを11℃未満に冷却するのに十分であった。エマルジョンの温度を、コイル熱交換器の出口で温度計によってモニタリングした。これにより、球形のバイオポリマー粒子が得られた。
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図3
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【国際調査報告】