(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】心室補助装置
(51)【国際特許分類】
A61M 60/178 20210101AFI20240925BHJP
A61M 60/216 20210101ALI20240925BHJP
A61M 60/414 20210101ALI20240925BHJP
A61M 60/808 20210101ALI20240925BHJP
A61M 60/531 20210101ALI20240925BHJP
【FI】
A61M60/178
A61M60/216
A61M60/414
A61M60/808
A61M60/531
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519263
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 IB2022058101
(87)【国際公開番号】W WO2023062453
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515250945
【氏名又は名称】マジェンタ・メディカル・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】トゥヴァル,ヨシ
(72)【発明者】
【氏名】ルビンスキー,ガッド
(72)【発明者】
【氏名】トローシン,ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】ゼマー ハレル,ハジット
(72)【発明者】
【氏名】フリードランド,オリ
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンブルム,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンフェルド,アヴィ
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077DD10
4C077KK07
4C077KK21
(57)【要約】
心室補助装置(20)を含む装置及び方法が記載される。インペラ(50)は、対象の左心室内に配置され、内部に管腔(62)を規定する。フレーム(34)はインペラの周りに配置され、フレームの近位端に近位軸受部(116)が配置されると共に、フレームの遠位端に遠位軸受部(118)が配置される。軸方向シャフト(92)は、近位軸受部(116)、インペラによって規定された管腔(62)、及び遠位軸受部(118)を貫通する。運動緩衝ばね(68)は、インペラ(50)の遠位端と遠位軸受部(118)との間で軸方向シャフト(92)の周りに配置され、インペラ(50)に生じる軸方向運動を緩衝するように構成されている。他の用途も記載される。
【選択図】
図6C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心室補助装置であって、
対象の左心室内に配置されるように構成され、内部に管腔を規定するインペラと、
前記インペラの周りに配置されるように構成されたフレームと、
前記フレームの近位端に配置された近位軸受部及び前記フレームの遠位端に配置された遠位軸受部と、
前記近位軸受部、前記インペラによって規定された前記管腔、及び前記遠位軸受部を貫通する軸方向シャフトと、
前記インペラの遠位端と前記遠位軸受部との間で前記軸方向シャフトの周りに配置された運動緩衝ばねであって、前記インペラに生じる軸方向運動を緩衝するように構成された運動緩衝ばねと、
を含む心室補助装置を備える装置。
【請求項2】
前記インペラは回転している間に軸方向に前後運動するよう構成され、前記運動緩衝ばねは前記軸方向の前後運動に対する緩衝を与えるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記インペラは軸方向に伸びることによって半径方向に拘束されるように構成され、前記運動緩衝ばねは前記インペラの前記軸方向の伸びに対応するように圧縮するよう構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記運動緩衝ばねは前記インペラの遠位端に結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記心室補助装置は更に、前記インペラの近位端と前記近位軸受部との間で前記軸方向シャフトの周りに配置された近位運動緩衝ばねを備え、前記運動緩衝ばねは前記インペラに生じる軸方向運動を近位方向で緩衝するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記運動緩衝ばねは前記遠位軸受部に結合されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記遠位軸受部の周りに配置された遠位軸受部筐体を更に備え、前記運動緩衝ばねは前記遠位軸受部筐体を介して前記遠位軸受部に結合されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記運動緩衝ばねに結合されたエラストマー材料を更に備え、前記インペラの遠位端と前記遠位軸受部との間の前記軸方向シャフトの少なくとも一部が前記運動緩衝ばねと前記エラストマー材料との組み合わせによって覆われるようになっている、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記運動緩衝ばねは前記エラストマー材料でコーティングされている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記運動緩衝ばねは前記エラストマー材料内に埋め込まれている、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記エラストマー材料はシリコーン及びポリウレタンのうち少なくとも1つを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記心室補助装置は、前記軸方向シャフトによって規定された管腔内にパージ流体を送り込むように構成されたパージシステムを備え、前記パージ流体の少なくとも一部が、前記軸方向シャフトと前記運動緩衝ばね及び前記エラストマー材料の前記組み合わせとの間の界面を通って近位に流れるようになっている、請求項8に記載の装置。
【請求項13】
前記エラストマー材料は、前記運動緩衝ばねに生じる形状変化と一致するよう形状を変化させるように前記運動緩衝ばねに結合されている、請求項8に記載の装置。
【請求項14】
前記エラストマー材料は、壊れたり崩壊したりすることなく前記形状の変化を生じるように構成されている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記エラストマー材料は、前記運動緩衝ばねが圧縮された結果としてしわにならないように構成されている、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記心室補助装置は更に、前記対象の大動脈弁を横断するように構成されたポンプ出口管を備え、前記ポンプ出口管の近位部が前記対象の大動脈内に配置されると共に前記ポンプ出口管の遠位部が前記対象の左心室内に配置されるようになっており、前記ポンプ出口管の前記遠位部は、前記フレームの前記遠位端まで延出すると共に、前記対象の左心室から前記ポンプ出口管内への血流を可能とするように構成された1つ以上の横方向血液流入口を規定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記血液流入口を規定する前記ポンプ出口管の前記遠位部の多孔度は、前記ポンプ出口管の前記遠位部の近位領域内では、前記近位領域に対して遠位の前記ポンプ出口管の前記遠位部の遠位領域内よりも低い、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記ポンプ出口管の前記遠位部は40パーセント超の多孔度を有する、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記ポンプ出口管の前記遠位部は、(a)前記対象の左心室から前記管内への血流を可能とするような、かつ、(b)前記対象の左心室からの構造が前記フレーム内へ進入するのを阻止するような大きさの、10超の血液流入口を規定する、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記ポンプ出口管の前記遠位部は、(a)前記対象の左心室から前記管内への血流を可能とするような、かつ、(b)前記対象の左心室からの構造が前記フレーム内へ進入するのを阻止するような大きさの、50超の血液流入口を規定する、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
対象の大動脈弁を横断するように構成されたポンプ出口管であって、前記ポンプ出口管の近位端が前記対象の大動脈内に配置されると共に前記ポンプ出口管の遠位端が前記対象の左心室内に配置されるようになっている、ポンプ出口管と、
前記左心室内で前記ポンプ出口管内に配置され、前記ポンプ出口管を通して血液を送り出すように構成されたインペラと、
前記インペラの周りに配置され、円筒部と前記円筒部に対して近位に配置された近位円錐部とを規定するフレームであって、前記近位円錐部は前記フレームの近位端から前記フレームの前記円筒部まで幅が広がっている、フレームと、
少なくとも1つの光ファイバであって、前記光ファイバの近位端は前記対象の体外に配置されるように構成され、前記光ファイバの遠位部は前記フレームの前記近位円錐部に結合されて、前記光ファイバの遠位端が前記ポンプ出口管の外側に延出すると共に、前記ポンプ出口管の外側で前記対象の左心室血流と直接流体連通して配置されるように構成されている、少なくとも1つの光ファイバと、
を備える装置。
【請求項22】
前記光ファイバの近位端に配置された光源及び光検出器を更に備え、前記光ファイバを介して光を誘導すると共に反射光を検出することによって、前記光ファイバの前記遠位端における血圧を検出するように構成されている、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記光ファイバの前記遠位端で検出された前記血圧を受信するように、また、前記光ファイバの前記遠位端で検出された前記血圧に応じて前記インペラによる血液の送り出しを制御するように構成されたコンピュータプロセッサを更に備える、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記光ファイバの前記遠位端で検出された前記血圧を受信するように構成されたコンピュータプロセッサを更に備え、前記コンピュータプロセッサは、前記光ファイバの前記遠位端で検出された前記血圧に少なくとも部分的に基づいて前記対象の少なくとも1つの生理学的パラメータを導出するように構成され、前記対象の前記少なくとも1つの生理学的パラメータは、本来の心拍出量、総心拍出量、動脈コンプライアンス、及び末梢抵抗から成る群から選択される、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記ポンプ出口管は、前記ポンプ出口管内へ血液が送り込まれる1つ以上の血液流入口を規定し、前記光ファイバの前記遠位端は、前記1つ以上の血液流入口の最も近位の部分に対して近位の位置で、前記対象の左心室血流と直接流体連通するように構成されている、請求項21に記載の装置。
【請求項26】
前記ファイバの前記遠位端は、前記左心室自体の前記血圧を反映した、前記1つ以上の血液流入口で発生する流体流動力学の結果として前記1つ以上の血液流入口の近くで発生した圧力変動による影響を受けない圧力を有する血液に露呈される、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記光ファイバの前記遠位端は、前記1つ以上の血液流入口の前記最も近位の部分に対して少なくとも1cm近位の位置で、前記対象の左心室血流と直接流体連通するように構成されている、請求項25に記載の装置。
【請求項28】
前記少なくとも1つの光ファイバは2つ以上の光ファイバを含み、前記装置は、前記光ファイバの各々の前記遠位端で検出された前記血圧を受信するように、また、これによって前記光ファイバのうち1つの前記遠位端が前記左心室血流に露呈されていないか否かを判定するように構成されたコンピュータプロセッサを更に備える、請求項21に記載の装置。
【請求項29】
前記光ファイバのうち1つの前記遠位端が前記左心室血流に露呈されていないという判定に応じて、前記コンピュータプロセッサは、前記2つ以上の光ファイバのうち異なるものを用いて測定された血圧に基づいて前記対象の左心室圧を決定する、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
経皮左心室補助装置による治療を受けている対象の本来の心拍出量を決定するための方法であって、
前記経皮左心室補助装置を用いて前記対象の左心室から前記対象の大動脈へ血液を送り出すことと、
前記経皮左心室補助装置を用いて1つ以上の圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータを検出することと、
1つ以上の血管パラメータ決定期間中に、前記経皮左心室補助装置によって血液を送り出す速度を変動させることと、
前記経皮心室補助装置が各速度で血液を送り出している場合に対して、前記対象の動的血管系を表す数学モデルを適用することと、
前記経皮心室補助装置が前記各速度で血液を送り出している場合に適用された前記数学モデル間の差、並びに前記圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータに基づいて、前記対象の血管パラメータを推定することと、
前記圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータ、並びに前記対象の前記推定された血管パラメータに基づいて、前記対象の本来の心拍出量を推定することと、
を含む方法。
【請求項31】
前記対象の動的血管系を表す前記数学モデルを適用することは前記大動脈の前記ウィンドケッセルモデルを適用することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記対象の血管パラメータを推定することは、前記対象の大動脈コンプライアンス、特性インピーダンス、及び末梢抵抗のうち1つ以上を推定することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
1つ以上の圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータを検出することは前記対象の大動脈圧を検出することを含む、請求項30から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
1つ以上の圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータを検出することは、前記経皮左心室補助装置を介した流れを検出することによって前記対象の大動脈流を検出することを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記経皮左心室補助装置を介した流れを検出することは、前記経皮左心室補助装置のポンプ出口管の既知の断面積及び前記経皮左心室補助装置のポンプによって発生される圧力差に基づいて前記ポンプ出口管を介した流れを計算することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記経皮左心室補助装置の前記ポンプは、モータによって回転させることにより血液を送り出すように構成されたインペラであり、前記経皮左心室補助装置のポンプによって発生される前記圧力差は、前記モータが前記インペラを所与の回転速度で回転させる際の前記モータによる電力消費を測定することによって、前記インペラを前記回転速度で回転させるために必要な前記モータによる前記電力消費と前記インペラにより発生される前記圧力差との間の所定の関係を用いて決定される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記経皮左心室補助装置のポンプによって発生される前記圧力差は、前記対象の左心室圧及び大動脈圧を測定することにより決定される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
対象の本来の心拍出量を決定するための装置であって、
前記対象の左心室から前記対象の大動脈へ血液を送り出すように構成された経皮左心室補助装置と、
少なくとも1つのコンピュータプロセッサであって、
前記経皮左心室補助装置を用いて1つ以上の圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータを検出し、
1つ以上の血管パラメータ決定期間中に、前記経皮左心室補助装置によって血液を送り出す速度を変動させ、
前記経皮左心室補助装置が各速度で血液を送り出している場合に対して、前記対象の動的血管系を表す数学モデルを適用し、
前記経皮左心室補助装置が前記各速度で血液を送り出している場合に適用された前記数学モデル間の差、並びに前記圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータに基づいて、前記対象の血管パラメータを推定し、
前記圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータ、並びに前記対象の前記推定された血管パラメータに基づいて、前記対象の本来の心拍出量を推定する、
ように構成された少なくとも1つのコンピュータプロセッサと、
を備える装置。
【請求項39】
前記コンピュータプロセッサは、前記対象の本来の心拍出量を示す出力を発生するように構成されている、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記コンピュータプロセッサは、前記大動脈の前記ウィンドケッセルモデルを適用することによって前記対象の動的血管系を表す前記数学モデルを適用するように構成されている、請求項38に記載の装置。
【請求項41】
前記コンピュータプロセッサは、前記対象の大動脈コンプライアンス、特性インピーダンス、及び末梢抵抗のうち1つ以上を推定することによって、前記対象の血管パラメータを推定するように構成されている、請求項38に記載の装置。
【請求項42】
前記コンピュータプロセッサは、前記対象の大動脈圧を検出することによって前記1つ以上の圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータを検出するように構成されている、請求項38から41のいずれか一項に記載の装置。
【請求項43】
前記コンピュータプロセッサは更に、前記経皮左心室補助装置を介した流れを検出することによって前記対象の大動脈流を検出することにより、1つ以上の圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータを検出するように構成されている、請求項42に記載の装置。
【請求項44】
前記経皮左心室補助装置は、既知の断面積を有するポンプ出口管とポンプとを備え、前記コンピュータプロセッサは、前記経皮左心室補助装置の前記ポンプ出口管の前記既知の断面積及び前記経皮左心室補助装置の前記ポンプによって発生される圧力差に基づいて前記ポンプ出口管を介した流れを計算することにより、前記経皮左心室補助装置を介した流れを検出するように構成されている、請求項43に記載の装置。
【請求項45】
前記経皮左心室補助装置はモータを備え、
前記経皮左心室補助装置の前記ポンプは、前記モータによって回転させることにより血液を送り出すように構成されたインペラを備え、
前記コンピュータプロセッサは、前記モータが前記インペラを所与の回転速度で回転させる際の前記モータによる電力消費を測定することによって、前記インペラを前記回転速度で回転させるために必要な前記モータによる前記電力消費と前記インペラにより発生される前記圧力差との間の所定の関係を用いて、前記経皮左心室補助装置の前記ポンプにより発生される前記圧力差を決定するように構成されている、請求項44に記載の装置。
【請求項46】
前記コンピュータプロセッサは、前記対象の左心室圧及び大動脈圧を測定することによって前記経皮左心室補助装置のポンプにより発生される前記圧力差を決定するように構成されている、請求項44に記載の装置。
【請求項47】
心室補助装置であって、
軸方向シャフトと、
前記軸方向シャフト上に配置され、血液を送り出すように構成されたインペラと、
前記インペラの周りに配置されたフレームと、
前記フレーム内に配置された遠位スラスト軸受部であって、前記軸方向シャフトの前記遠位端は前記遠位スラスト軸受部と係合して、前記インペラが血液を送り出す前記圧力勾配の変動に応じて前記軸方向シャフトの軸方向運動が生じるのを防止するように構成されている、遠位スラスト軸受部と、
前記フレームから前記スラスト軸受部へ半径方向内側に延出し、前記スラスト軸受部を前記フレームに結合する複数の接続ストラットであって、前記フレーム及び前記接続ストラットは単一の一体的な要素として形成されている、複数の接続ストラットと、
を含む心室補助装置を備える装置。
【請求項48】
前記フレーム、前記接続ストラット、及び前記スラスト軸受部は全て、単一の一体的な要素として形成されている、請求項47に記載の装置。
【請求項49】
前記心室補助装置は更に、前記インペラの遠位端と前記スラスト軸受部との間で前記軸方向シャフトの周りに配置されたインペラ安定化ばねを備え、前記インペラ安定化ばねは前記インペラの前記遠位端を安定化するように構成されている、請求項47又は48に記載の装置。
【請求項50】
前記インペラは軸方向に伸びることによって半径方向に制約されるように構成され、前記インペラ安定化ばねは圧縮して前記インペラの前記軸方向の伸びに対応するように構成されている、請求項49に記載の装置。
【請求項51】
前記インペラ安定化ばねは前記インペラの遠位端に結合されている、請求項49に記載の装置。
【請求項52】
前記心室補助装置は更に、近位軸受部、及び、前記インペラの近位端と前記近位軸受部との間で前記軸方向シャフトの周りに配置された近位インペラ安定化ばねを備える、請求項49に記載の装置。
【請求項53】
前記インペラ安定化ばねは前記スラスト軸受部に結合されている、請求項49に記載の装置。
【請求項54】
前記インペラ安定化ばねに結合されたエラストマー材料を更に備え、前記インペラの遠位端と前記スラスト軸受部との間の前記軸方向シャフトの少なくとも一部が前記インペラ安定化ばねと前記エラストマー材料の組み合わせによって覆われるようになっている、請求項49に記載の装置。
【請求項55】
前記インペラ安定化ばねは前記エラストマー材料でコーティングされている、請求項54に記載の装置。
【請求項56】
前記インペラ安定化ばねは前記エラストマー材料内に埋め込まれている、請求項54に記載の装置。
【請求項57】
前記エラストマー材料はシリコーン及びポリウレタンのうち少なくとも1つを含む、請求項54に記載の装置。
【請求項58】
前記心室補助装置は、前記軸方向シャフトによって規定された管腔内にパージ流体を送り込むように構成されたパージシステムを備え、前記パージ流体の少なくとも一部が、前記軸方向シャフトと前記インペラ安定化ばね及び前記エラストマー材料の前記組み合わせとの間の界面を通って近位に流れるようになっている、請求項54に記載の装置。
【請求項59】
前記エラストマー材料は、前記インペラ安定化ばねに生じる形状変化と一致するよう形状を変化させるように前記インペラ安定化ばねに結合されている、請求項54に記載の装置。
【請求項60】
前記エラストマー材料は、壊れたり崩壊したりすることなく前記形状の変化を生じるように構成されている、請求項59に記載の装置。
【請求項61】
前記エラストマー材料は、前記インペラ安定化ばねが圧縮された結果としてしわにならないように構成されている、請求項59に記載の装置。
【請求項62】
前記心室補助装置は更に、前記対象の大動脈弁を横断するように構成されたポンプ出口管を備え、前記ポンプ出口管の近位部が前記対象の大動脈内に配置されると共に前記ポンプ出口管の遠位部が前記対象の左心室内に配置されるようになっており、前記ポンプ出口管の前記遠位部は、前記フレームの前記遠位端まで延出すると共に、前記対象の左心室から前記ポンプ出口管内への血流を可能とするように構成された1つ以上の横方向血液流入口を規定する、請求項47又は48に記載の装置。
【請求項63】
前記血液流入口を規定する前記ポンプ出口管の前記遠位部の多孔度は、前記ポンプ出口管の前記遠位部の近位領域内では、前記近位領域に対して遠位の前記ポンプ出口管の前記遠位部の遠位領域内よりも低い、請求項62に記載の装置。
【請求項64】
前記ポンプ出口管の前記遠位部は40パーセント超の多孔度を有する、請求項62に記載の装置。
【請求項65】
前記ポンプ出口管の前記遠位部は、(a)前記対象の左心室から前記管内への血流を可能とするような、かつ、(b)前記対象の左心室からの構造が前記フレーム内へ進入するのを阻止するような大きさの、10超の血液流入口を規定する、請求項62に記載の装置。
【請求項66】
前記ポンプ出口管の前記遠位部は、(a)前記対象の左心室から前記管内への血流を可能とするような、かつ、(b)前記対象の左心室からの構造が前記フレーム内へ進入するのを阻止するような大きさの、50超の血液流入口を規定する、請求項65に記載の装置。
【請求項67】
心室補助装置であって、
軸方向シャフトと、
前記軸方向シャフト上に配置され、血液を送り出すように構成されたインペラと、
前記インペラの周りに配置されたフレームと、
遠位スラスト軸受部であって、前記軸方向シャフトの前記遠位端は前記遠位スラスト軸受部と係合して、前記インペラが血液を送り出す前記圧力勾配の変動に応じて前記軸方向シャフトの軸方向運動が生じるのを防止するように構成されている、遠位スラスト軸受部と、
前記インペラの遠位端と前記スラスト軸受部との間で前記軸方向シャフトの周りに配置されたインペラ安定化ばねであって、前記インペラの前記遠位端を安定化するように構成されたインペラ安定化ばねと、
を含む心室補助装置を備える装置。
【請求項68】
前記インペラは軸方向に伸びることによって半径方向に制約されるように構成され、前記インペラ安定化ばねは圧縮して前記インペラの前記軸方向の伸びに対応するように構成されている、請求項67に記載の装置。
【請求項69】
前記インペラ安定化ばねは前記インペラの遠位端に結合されている、請求項67に記載の装置。
【請求項70】
前記心室補助装置は更に、近位軸受部、及び、前記インペラの近位端と前記近位軸受部との間で前記軸方向シャフトの周りに配置された近位インペラ安定化ばねを備える、請求項67に記載の装置。
【請求項71】
前記インペラ安定化ばねは前記スラスト軸受部に結合されている、請求項67に記載の装置。
【請求項72】
前記インペラ安定化ばねに結合されたエラストマー材料を更に備え、前記インペラの遠位端と前記スラスト軸受部との間の前記軸方向シャフトの少なくとも一部が前記インペラ安定化ばねと前記エラストマー材料の組み合わせによって覆われるようになっている、請求項67から71のいずれか一項に記載の装置。
【請求項73】
前記インペラ安定化ばねは前記エラストマー材料でコーティングされている、請求項72に記載の装置。
【請求項74】
前記インペラ安定化ばねは前記エラストマー材料内に埋め込まれている、請求項72に記載の装置。
【請求項75】
前記エラストマー材料はシリコーン及びポリウレタンのうち少なくとも1つを含む、請求項72に記載の装置。
【請求項76】
前記心室補助装置は、前記軸方向シャフトによって規定された管腔内にパージ流体を送り込むように構成されたパージシステムを備え、前記パージ流体の少なくとも一部が、前記軸方向シャフトと前記インペラ安定化ばね及び前記エラストマー材料の前記組み合わせとの間の界面を通って近位に流れるようになっている、請求項72に記載の装置。
【請求項77】
前記エラストマー材料は、前記インペラ安定化ばねに生じる形状変化と一致するよう形状を変化させるように前記インペラ安定化ばねに結合されている、請求項72に記載の装置。
【請求項78】
前記エラストマー材料は、壊れたり崩壊したりすることなく前記形状の変化を生じるように構成されている、請求項77に記載の装置。
【請求項79】
前記エラストマー材料は、前記インペラ安定化ばねが圧縮された結果としてしわにならないように構成されている、請求項77に記載の装置。
【請求項80】
自己拡張型ポンプヘッドを備える経皮心室補助装置であって、前記ポンプヘッドが送達カテーテル内で半径方向に拘束された構成に配置されている間に、前記送達カテーテルを用いて対象の左心室へ送達されるように構成された経皮心室補助装置と共に使用される装置であって、前記装置は、
前記心室補助装置のためのパッケージであって、
前記ポンプヘッドが半径方向に拘束されない構成で内部に梱包されるポンプヘッドチャンバを規定するような形状を有するパッケージと、
前記パッケージに可逆的に結合され、孔を規定するような形状を有するカテーテル固定具であって、前記送達カテーテルの遠位端を前記孔内に配置した状態で、前記パッケージに結合されることにより、前記送達カテーテルの前記遠位端を前記孔内に固定するように構成されている、カテーテル固定具と、
を備え、前記パッケージは、前記送達カテーテルの前記遠位端が前記孔内に固定されている間に、前記ポンプヘッドが前記送達カテーテルの前記遠位端内へ引っ込められることによって半径方向に拘束されるよう構成されるように構成されている、装置。
【請求項81】
前記ポンプヘッドチャンバは、前記ポンプヘッドが前記送達カテーテルの前記遠位端内へ引っ込められる前に、溶液が充填されるように構成されている、請求項80に記載の装置。
【請求項82】
前記カテーテル固定具は、前記カテーテルの前記遠位端が下向きに傾斜した向きになるように、下向きに傾斜した表面に前記送達カテーテルの前記遠位端を固定するように構成されている、請求項81に記載の装置。
【請求項83】
前記表面の傾斜は、前記カテーテルの前記遠位端が水平表面に固定されている場合に比べ、前記ポンプヘッドを送達カテーテルの前記遠位端内へ引っ込める際に前記送達カテーテルの前記遠位端に気泡が進入する可能性を低減するように構成されている、請求項82に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、
2021年10月11日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第63/254,321号、及び
2022年3月7日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第63/317,199号に優先権を主張する。
【0002】
上記で参照した米国仮出願のそれぞれは、援用により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明のいくつかの用途は、一般に、医療機器に関する。具体的には、本発明のいくつかの用途は、心室補助装置及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
心室補助装置は、心拍出量を維持又は増強するため心室を補助及び除荷するように設計された循環補助機械装置である。これらの装置は、心不全に苦しむ患者、及び経皮的冠動脈形成術の際に心臓機能の低下のリスクがある患者に使用される。最も一般的に、左心室補助装置は、左心室機能を補助するために欠陥のある心臓に適用される。場合によっては、右心室機能を補助するために右心室補助装置が使用される。このような心室補助装置は、カテーテルに恒久的に埋め込まれるか、又は一時的に配置するため取り付けられるように設計される。
【発明の概要】
【0005】
本発明のいくつかの用途によれば、心室補助装置は運動緩衝ばねを含む。以下で更に詳述するように、通常、心室補助装置の動作中、すなわち心室補助装置のインペラが回転している時、心室補助装置のインペラは軸方向に前後運動する。いくつかの用途では、インペラが軸方向に前後運動する際、運動緩衝ばねは、運動に対する緩衝を与えるためショックアブソーバとして作用するように構成されている。インペラが収縮期位置から拡張期位置へ遠位方向に移動する際、運動緩衝ばねは更に圧縮される。いくつかの用途では、インペラは軸方向に伸びることによって半径方向に拘束される(すなわち圧着される(crimp))ように構成され、運動緩衝ばねは、インペラの軸方向の伸びに対応するように圧縮するよう構成されている。
【0006】
いくつかの用途では、運動緩衝ばねはエラストマー材料(ポリウレタン及び/又はシリコーン等)に結合されて、インペラの遠位端と遠位半径方向軸受部との間にある心室補助装置の軸方向シャフトの少なくとも一部がエラストマー材料で覆われるようになっている。いくつかの用途では、エラストマー材料をばねに結合すると、ばねがエラストマー材料に結合されていない場合に比べ、ばねによる血栓及び/又は溶血の発生のリスクが低減する。なお、本開示の範囲はエラストマー材料が存在しない場合に運動緩衝ばねを提供することを含み、これは場合によっては望ましいことがある。いくつかの用途において、ばねはエラストマー材料でコーティングされ、エラストマー材料はばねの隣接した巻線の間に延出している。あるいは、ばねはエラストマー材料内に埋め込まれる。典型的に、エラストマー材料は、(例えば運動緩衝ばねが伸びたり圧縮したりする場合に)運動緩衝ばねに生じる形状変化と一致するように(例えば伸長と圧縮によって)形状を変化させるように、運動緩衝ばねに結合されている。更に典型的には、エラストマー材料は、壊れたり崩壊したりすることなく、また、ばねの圧縮時にしわになることなく、上述した形状変化を生じるよう構成されている。
【0007】
いくつかの用途では、インペラの近位側に近位運動緩衝ばねが配置されている。いくつかのそのような用途において、近位運動緩衝ばねは、インペラの近位端と近位軸受部との間で軸方向シャフトの周りに配置される。いくつかの用途において、ポンプヘッドは、(インペラの近位側に配置された)近位運動緩衝ばね及びインペラの遠位側に配置された遠位運動緩衝ばねの双方を含み、遠位又は近位方向のインペラの軸方向運動がこれらの運動緩衝ばねによって緩衝されるようになっている。
【0008】
いくつかの用途において、心室補助装置は、インペラがポンピング(pumping)を行っている圧力勾配の変動に応じて装置の軸方向シャフトの軸方向運動が生じるのを防止する(また、通常、これにより、インペラがポンピングを行っている圧力勾配の変動に応じてインペラの軸方向運動が生じるのを防止する)ように構成された遠位スラスト軸受部を含む。いくつかの用途において、スラスト軸受部はデバイスのフレーム内に配置されている。通常、スラスト軸受部は、フレームからスラスト軸受部へ半径方向内側に延出する接続ストラットを介してフレームに結合されている。通常、フレームを製造するため、フレームはニチノール等の形状記憶合金の管から切断される。いくつかの用途では、フレームが切断された管から接続ストラットを切断して、フレームと接続ストラットが単一の一体的な要素を形成するようになっているので、これらを相互に(例えば接着剤や溶接等によって)結合する必要はない。いくつかの用途では、フレーム及び接続ストラットは単一の材料片から切断されて、単一の一体的な要素を形成するようになっている。いくつかの用途において、接続ストラット及びスラスト軸受部自体は、フレームが切断された管から切断されるので、フレーム、接続ストラット、及びスラスト軸受部が単一の一体的な要素を形成するようになっており、これらを相互に(例えば接着剤や溶接等によって)結合する必要はない。一般に、いくつかの用途において、フレーム、接続ストラット、及びスラスト軸受部自体は、単一の材料片から切断されて、単一の一体的な要素を形成するようになっている。
【0009】
いくつかの用途では、スラスト軸受部(又は、インペラの遠位に配置されている異なる設計のスラスト軸受部)と組み合わせて、上述した運動緩衝ばねと概ね同様のばねが用いられる。いくつかの用途において、ばねは、インペラが半径方向に拡張した後、スラスト軸受部に対してインペラを(例えばインペラの遠位端を)安定化させるのに役立つ。このため、ばねはインペラ安定化ばねとして機能する。いくつかの用途において、インペラは軸方向に伸びることによって半径方向に制約される(すなわち圧着される)ように構成され、ばねは圧縮してインペラの軸方向の伸びに対応するように構成されている。通常、ポンプヘッドを左心室へ挿入する際にインペラが半径方向に拘束された構成である場合、インペラは軸方向に伸びて、インペラの遠位端がフレーム内で遠位に配置されると共に、インペラの遠位端の動きに対応するためインペラ安定化ばねが圧縮されるようになっている。通常、インペラ安定化ばねは、インペラの遠位端とスラスト軸受部との間で軸方向シャフトの周りに配置される。
【0010】
従って、本発明のいくつかの用途によれば、装置が提供される。この装置は、
心室補助装置であって、
対象の左心室内に配置されるように構成され、内部に管腔を規定するインペラと、
インペラの周りに配置されるように構成されたフレームと、
フレームの近位端に配置された近位軸受部及びフレームの遠位端に配置された遠位軸受部と、
近位軸受部、インペラによって規定された管腔、及び遠位軸受部を貫通する軸方向シャフトと、
インペラの遠位端と遠位軸受部との間で軸方向シャフトの周りに配置された運動緩衝ばねであって、インペラに生じる軸方向運動を緩衝するように構成された運動緩衝ばねと、
を含む心室補助装置を含む。
【0011】
いくつかの用途において、インペラは回転している間に軸方向に前後運動するよう構成され、運動緩衝ばねは軸方向の前後運動に対する緩衝を与えるように構成されている。
【0012】
いくつかの用途において、インペラは軸方向に伸びることによって半径方向に拘束されるように構成され、運動緩衝ばねはインペラの軸方向の伸びに対応するように圧縮するよう構成されている。
【0013】
いくつかの用途において、運動緩衝ばねはインペラの遠位端に結合されている。
【0014】
いくつかの用途において、心室補助装置は更に、インペラの近位端と近位軸受部との間で軸方向シャフトの周りに配置された近位運動緩衝ばねを含み、運動緩衝ばねはインペラの近位方向の軸方向運動を緩衝するように構成されている。
【0015】
いくつかの用途において、運動緩衝ばねは遠位軸受部に結合されている。いくつかの用途において、装置は、遠位軸受部の周りに配置された遠位軸受部筐体を更に含み、運動緩衝ばねは遠位軸受部筐体を介して遠位軸受部に結合されている。
【0016】
いくつかの用途において、装置は、運動緩衝ばねに結合されたエラストマー材料を更に含み、インペラの遠位端と遠位軸受部との間の軸方向シャフトの少なくとも一部がエラストマー材料で覆われるようになっている。いくつかの用途において、運動緩衝ばねはエラストマー材料でコーティングされている。いくつかの用途において、運動緩衝ばねはエラストマー材料内に埋め込まれている。いくつかの用途において、エラストマー材料はシリコーン及びポリウレタンのうち少なくとも1つを含む。
【0017】
いくつかの用途において、心室補助装置は、軸方向シャフトによって規定された管腔内にパージ流体を送り込むように構成されたパージシステムを含み、パージ流体の少なくとも一部が、軸方向シャフトとエラストマー材料との間の界面を通って近位に流れるようになっている。
【0018】
いくつかの用途において、エラストマー材料は、運動緩衝ばねに生じる形状変化と一致するよう形状を変化させるように運動緩衝ばねに結合されている。いくつかの用途において、エラストマー材料は、壊れたり崩壊したりすることなく形状変化を生じるように構成されている。いくつかの用途において、エラストマー材料は、運動緩衝ばねが圧縮された結果としてしわにならないように構成されている。
【0019】
いくつかの用途において、心室補助装置は更に、対象の大動脈弁を横断するように構成されたポンプ出口管を含み、ポンプ出口管の近位部が対象の大動脈内に配置されると共にポンプ出口管の遠位部が対象の左心室内に配置されるようになっており、ポンプ出口管の遠位部は、フレームの遠位端まで延出すると共に、対象の左心室からポンプ出口管内への血流を可能とするように構成された1つ以上の横方向血液流入口を規定する。
【0020】
いくつかの用途において、血液流入口を規定するポンプ出口管の遠位部の多孔度は、ポンプ出口管の遠位部の近位領域内では、近位領域に対して遠位のポンプ出口管の遠位部の遠位領域内よりも低い。いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部は40パーセント超の多孔度を有する。いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部は、(a)対象の左心室から管内への血流を可能とするような、かつ、(b)対象の左心室からの構造がフレーム内へ進入するのを阻止するような大きさの、10超の血液流入口を規定する。いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部は、(a)対象の左心室から管内への血流を可能とするような、かつ、(b)対象の左心室からの構造がフレーム内へ進入するのを阻止するような大きさの、50超の血液流入口を規定する。
【0021】
更に、本発明のいくつかの用途によれば、装置が提供される。この装置は、
対象の大動脈弁を横断するように構成されたポンプ出口管であって、ポンプ出口管の近位端が対象の大動脈内に配置されると共にポンプ出口管の遠位端が対象の左心室内に配置されるようになっている、ポンプ出口管と、
左心室内でポンプ出口管内に配置され、ポンプ出口管を通して血液を送り出すように構成されたインペラと、
インペラの周りに配置され、円筒部と円筒部に対して近位に配置された近位円錐部とを規定するフレームであって、近位円錐部はフレームの近位端からフレームの円筒部まで幅が広がっている、フレームと、
少なくとも1つの光ファイバであって、光ファイバの近位端は対象の体外に配置されるように構成され、光ファイバの遠位部はフレームの近位円錐部に結合されて、光ファイバの遠位端がポンプ出口管の外側に延出すると共に、ポンプ出口管の外側で対象の左心室血流と直接流体連通して配置されるように構成されている、少なくとも1つの光ファイバと、
を含む。
【0022】
いくつかの用途において、装置は、光ファイバの近位端に配置された光源及び光検出器を更に含み、光ファイバを介して光を誘導すると共に反射光を検出することによって、光ファイバの遠位端における血圧を検出するように構成されている。
【0023】
いくつかの用途において、装置は、光ファイバの遠位端で検出された血圧を受信するように、また、光ファイバの遠位端で検出された血圧に応じてインペラによる血液の送り出しを制御するように構成されたコンピュータプロセッサを更に含む。
【0024】
いくつかの用途において、装置は、光ファイバの遠位端で検出された血圧を受信するように構成されたコンピュータプロセッサを更に含み、コンピュータプロセッサは、光ファイバの遠位端で検出された血圧に少なくとも部分的に基づいて対象の少なくとも1つの生理学的パラメータを導出するように構成され、対象の少なくとも1つの生理学的パラメータは、本来の心拍出量、総心拍出量、動脈コンプライアンス、及び末梢抵抗から成る群から選択される。
【0025】
いくつかの用途において、ポンプ出口管は、ポンプ出口管内へ血液が送り込まれる1つ以上の血液流入口を規定し、光ファイバの遠位端は、1つ以上の血液流入口の最も近位の部分に対して近位の位置で、対象の左心室血流と直接流体連通するように構成されている。
【0026】
いくつかの用途において、ファイバの遠位端は、左心室自体の血圧を反映した、1つ以上の血液流入口で発生する流体流動力学の結果として1つ以上の血液流入口の近くで発生した圧力変動による影響を受けない圧力を有する血液に露呈される。
【0027】
いくつかの用途において、光ファイバの遠位端は、1つ以上の血液流入口の最も近位の部分に対して少なくとも1cm近位の位置で、対象の左心室血流と直接流体連通するように構成されている。
【0028】
いくつかの用途において、少なくとも1つの光ファイバは2つ以上の光ファイバを含み、装置は、光ファイバの各々の遠位端で検出された血圧を受信するように、また、これによって光ファイバのうち1つの遠位端が左心室血流に露呈されていないか否かを判定するように構成されたコンピュータプロセッサを更に含む。いくつかの用途では、光ファイバのうち1つの遠位端が左心室血流に露呈されていないという判定に応じて、コンピュータプロセッサは、2つ以上の光ファイバのうち異なるものを用いて測定された血圧に基づいて対象の左心室圧を決定する。
【0029】
更に、本発明のいくつかの用途によれば、経皮左心室補助装置による治療を受けている対象の本来の心拍出量を決定するための方法が提供される。この方法は、
経皮左心室補助装置を用いて対象の左心室から対象の大動脈へ血液を送り出すことと、
経皮左心室補助装置を用いて1つ以上の圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータを検出することと、
1つ以上の血管パラメータ決定期間中に、経皮左心室補助装置によって血液を送り出す速度を変動させることと、
経皮心室補助装置が各速度で血液を送り出している場合に対して、対象の動的血管系を表す数学モデルを適用することと、
経皮心室補助装置が各速度で血液を送り出している場合に適用された数学モデル間の差、並びに圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータに基づいて、対象の血管パラメータを推定することと、
圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータ、並びに対象の推定された血管パラメータに基づいて、対象の本来の心拍出量を推定することと、
を含む。
【0030】
更に、本発明のいくつかの用途によれば、対象の本来の心拍出量を決定するための装置が提供される。この装置は、
対象の左心室から対象の大動脈へ血液を送り出すように構成された経皮左心室補助装置と、
少なくとも1つのコンピュータプロセッサであって、
経皮左心室補助装置を用いて1つ以上の圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータを検出し、
1つ以上の血管パラメータ決定期間中に、経皮左心室補助装置によって血液を送り出す速度を変動させ、
経皮左心室補助装置が各速度で血液を送り出している場合に対して、対象の動的血管系を表す数学モデルを適用し、
経皮左心室補助装置が各速度で血液を送り出している場合に適用された数学モデル間の差、並びに圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータに基づいて、対象の血管パラメータを推定し、
圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータ、並びに対象の推定された血管パラメータに基づいて、対象の本来の心拍出量を推定する、
ように構成された少なくとも1つのコンピュータプロセッサと、
を含む。
【0031】
いくつかの用途において、コンピュータプロセッサは、対象の本来の心拍出量を示す出力を発生するように構成されている。
【0032】
いくつかの用途において、コンピュータプロセッサは、大動脈のウィンドケッセルモデルを適用することによって対象の動的血管系を表す数学モデルを適用するように構成されている。
【0033】
いくつかの用途において、コンピュータプロセッサは、対象の大動脈コンプライアンス、特性インピーダンス、及び末梢抵抗のうち1つ以上を推定することによって対象の血管パラメータを推定するように構成されている。
【0034】
いくつかの用途において、コンピュータプロセッサは、対象の大動脈圧を検出することによって1つ以上の圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータを検出するように構成されている。いくつかの用途において、コンピュータプロセッサは更に、経皮左心室補助装置を介した流れを検出することによって対象の大動脈流を検出することにより、1つ以上の圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータを検出するように構成されている。
【0035】
いくつかの用途において、経皮左心室補助装置は、既知の断面積を有するポンプ出口管とポンプとを含み、コンピュータプロセッサは、経皮左心室補助装置のポンプ出口管の既知の断面積及び経皮左心室補助装置のポンプによって発生される圧力差に基づいてポンプ出口管を介した流れを計算することにより、経皮左心室補助装置を介した流れを検出するように構成されている。
【0036】
いくつかの用途において、
経皮左心室補助装置はモータを含み、
経皮左心室補助装置のポンプは、モータによって回転させることにより血液を送り出すように構成されたインペラを含み、
コンピュータプロセッサは、モータがインペラを所与の回転速度で回転させる際のモータによる電力消費を測定することによって、インペラを回転速度で回転させるために必要なモータによる電力消費とインペラにより発生される圧力差との間の所定の関係を用いて、経皮左心室補助装置のポンプにより発生される圧力差を決定するように構成されている。
【0037】
いくつかの用途によれば、コンピュータプロセッサは、対象の左心室圧及び大動脈圧を測定することによって、経皮左心室補助装置のポンプにより発生される圧力差を決定するように構成されている。
【0038】
更に、本発明のいくつかの用途によれば、装置が提供される。この装置は、
心室補助装置であって、
軸方向シャフトと、
軸方向シャフト上に配置され、血液を送り出すように構成されたインペラと、
インペラの周りに配置されたフレームと、
フレーム内に配置された遠位スラスト軸受部であって、軸方向シャフトの遠位端は遠位スラスト軸受部と係合して、インペラが血液を送り出す圧力勾配の変動に応じて軸方向シャフトの軸方向運動が生じるのを防止するように構成されている、遠位スラスト軸受部と、
フレームからスラスト軸受部へ半径方向内側に延出し、スラスト軸受部をフレームに結合する複数の接続ストラットであって、フレーム及び接続ストラットは単一の一体的な要素として形成されている、複数の接続ストラットと、
を含む心室補助装置を含む。
【0039】
いくつかの用途において、フレーム、接続ストラット、及びスラスト軸受部は全て、単一の一体的な要素として形成されている。
【0040】
いくつかの用途において、心室補助装置は更に、インペラの遠位端とスラスト軸受部との間で軸方向シャフトの周りに配置されたインペラ安定化ばねを含み、インペラ安定化ばねはインペラの遠位端を安定化するように構成されている。いくつかの用途において、インペラは軸方向に伸びることによって半径方向に制約されるように構成され、インペラ安定化ばねは圧縮してインペラの軸方向の伸びに対応するように構成されている。いくつかの用途において、インペラ安定化ばねはインペラの遠位端に結合されている。
【0041】
いくつかの用途において、心室補助装置は更に、近位軸受部、及び、インペラの近位端と近位軸受部との間で軸方向シャフトの周りに配置された近位インペラ安定化ばねを含む。
【0042】
いくつかの用途において、インペラ安定化ばねはスラスト軸受部に結合されている。
【0043】
いくつかの用途において、装置は、インペラ安定化ばねに結合されたエラストマー材料を更に含み、インペラの遠位端とスラスト軸受部との間の軸方向シャフトの少なくとも一部がエラストマー材料によって覆われるようになっている。いくつかの用途において、インペラ安定化ばねはエラストマー材料でコーティングされている。いくつかの用途において、インペラ安定化ばねはエラストマー材料内に埋め込まれている。いくつかの用途において、エラストマー材料はシリコーン及びポリウレタンのうち少なくとも1つを含む。いくつかの用途において、心室補助装置は、軸方向シャフトによって規定された管腔内にパージ流体を送り込むように構成されたパージシステムを含み、パージ流体の少なくとも一部が、軸方向シャフトとエラストマー材料との間の界面を通って近位に流れるようになっている。
【0044】
いくつかの用途において、エラストマー材料は、インペラ安定化ばねに生じる形状変化と一致するよう形状を変化させるようにインペラ安定化ばねに結合されている。いくつかの用途において、エラストマー材料は、壊れたり崩壊したりすることなく形状変化を生じるように構成されている。いくつかの用途において、エラストマー材料は、インペラ安定化ばねが圧縮された結果としてしわにならないように構成されている。
【0045】
いくつかの用途において、心室補助装置は更に、対象の大動脈弁を横断するように構成されたポンプ出口管を含み、ポンプ出口管の近位部が対象の大動脈内に配置されると共にポンプ出口管の遠位部が対象の左心室内に配置されるようになっており、ポンプ出口管の遠位部は、フレームの遠位端まで延出すると共に、対象の左心室からポンプ出口管内への血流を可能とするように構成された1つ以上の横方向血液流入口を規定する。
【0046】
いくつかの用途において、血液流入口を規定するポンプ出口管の遠位部の多孔度は、ポンプ出口管の遠位部の近位領域内では、近位領域に対して遠位のポンプ出口管の遠位部の遠位領域内よりも低い。
【0047】
いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部は40パーセント超の多孔度を有する。いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部は、(a)対象の左心室から管内への血流を可能とするような、かつ、(b)対象の左心室からの構造がフレーム内へ進入するのを阻止するような大きさの、10超の血液流入口を規定する。いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部は、(a)対象の左心室から管内への血流を可能とするような、かつ、(b)対象の左心室からの構造がフレーム内へ進入するのを阻止するような大きさの、50超の血液流入口を規定する。
【0048】
更に、本発明のいくつかの用途によれば、装置が提供される。この装置は、
心室補助装置であって、
軸方向シャフトと、
軸方向シャフト上に配置され、血液を送り出すように構成されたインペラと、
インペラの周りに配置されたフレームと、
遠位スラスト軸受部であって、軸方向シャフトの遠位端は遠位スラスト軸受部と係合して、インペラが血液を送り出す圧力勾配の変動に応じて軸方向シャフトの軸方向運動が生じるのを防止するように構成されている、遠位スラスト軸受部と、
インペラの遠位端とスラスト軸受部との間で軸方向シャフトの周りに配置されたインペラ安定化ばねであって、インペラの遠位端を安定化するように構成されたインペラ安定化ばねと、
を含む心室補助装置を含む。
【0049】
いくつかの用途において、インペラは軸方向に伸びることによって半径方向に制約されるように構成され、インペラ安定化ばねは圧縮してインペラの軸方向の伸びに対応するように構成されている。
【0050】
いくつかの用途において、インペラ安定化ばねはインペラの遠位端に結合されている。
【0051】
いくつかの用途において、心室補助装置は更に、近位軸受部、及び、インペラの近位端と近位軸受部との間で軸方向シャフトの周りに配置された近位インペラ安定化ばねを含む。
【0052】
いくつかの用途において、インペラ安定化ばねはスラスト軸受部に結合されている。
【0053】
いくつかの用途において、装置は、インペラ安定化ばねに結合されたエラストマー材料を更に含み、インペラの遠位端とスラスト軸受部との間の軸方向シャフトの少なくとも一部がエラストマー材料によって覆われるようになっている。いくつかの用途において、インペラ安定化ばねはエラストマー材料でコーティングされている。いくつかの用途において、インペラ安定化ばねはエラストマー材料内に埋め込まれている。いくつかの用途において、エラストマー材料はシリコーン及びポリウレタンのうち少なくとも1つを含む。
【0054】
いくつかの用途において、心室補助装置は、軸方向シャフトによって規定された管腔内にパージ流体を送り込むように構成されたパージシステムを含み、パージ流体の少なくとも一部が、軸方向シャフトとエラストマー材料との間の界面を通って近位に流れるようになっている。
【0055】
いくつかの用途において、エラストマー材料は、インペラ安定化ばねに生じる形状変化と一致するよう形状を変化させるようにインペラ安定化ばねに結合されている。いくつかの用途において、エラストマー材料は、壊れたり崩壊したりすることなく形状変化を生じるように構成されている。いくつかの用途において、エラストマー材料は、インペラ安定化ばねが圧縮された結果としてしわにならないように構成されている。
【0056】
更に、本発明のいくつかの用途によれば、自己拡張型ポンプヘッドを含む経皮心室補助装置であって、ポンプヘッドが送達カテーテル内で半径方向に拘束された構成に配置されている間に、送達カテーテルを用いて対象の左心室へ送達されるように構成された経皮心室補助装置と共に使用される装置が提供される。この装置は、
心室補助装置のためのパッケージであって、
ポンプヘッドが半径方向に拘束されない構成で内部に梱包されるポンプヘッドチャンバを規定するような形状を有するパッケージと、
パッケージに可逆的に結合され、孔を規定するような形状を有するカテーテル固定具であって、送達カテーテルの遠位端を孔内に配置した状態で、パッケージに結合されることにより、送達カテーテルの遠位端を孔内に固定するように構成されている、カテーテル固定具と、
を含み、パッケージは、送達カテーテルの遠位端が孔内に固定されている間に、ポンプヘッドが送達カテーテルの遠位端内へ引っ込められることによって半径方向に拘束されるよう構成されるように構成されている。
【0057】
いくつかの用途において、ポンプヘッドチャンバは、ポンプヘッドが送達カテーテルの遠位端内へ引っ込められる前に、溶液が充填されるように構成されている。いくつかの用途において、カテーテル固定具は、カテーテルの遠位端が下向きに傾斜した向きになるように、下向きに傾斜した表面に送達カテーテルの遠位端を固定するように構成されている。いくつかの用途において、表面の傾斜は、カテーテルの遠位端が水平表面に固定されている場合に比べ、ポンプヘッドを送達カテーテルの遠位端内へ引っ込める際に送達カテーテルの遠位端に気泡が進入する可能性を低減するように構成されている。
【0058】
一般に、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「近位」及びそれに関連する用語は、装置又はその一部に関して使用される場合、装置又はその一部の端部であって、通常、対象体に装置が挿入されたときの対象体に挿入される位置に近い端部を意味すると解釈される。「遠位」及びそれに関連する用語は、装置又はその一部に関して使用される場合、装置又はその一部の端部であって、通常、対象体に装置が挿入されたときの対象体に挿入される位置から遠い端部を意味すると解釈される。
【0059】
本発明は、その実施形態の以下の詳細な説明と共に図面を参照して、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1A】本発明のいくつかの用途による、遠位端が対象の左心室に配置されるように構成された心室補助装置の概略図である。
【
図1B】本発明のいくつかの用途による、遠位端が対象の左心室に配置されるように構成された心室補助装置の概略図である。
【
図1C】本発明のいくつかの用途による、遠位端が対象の左心室に配置されるように構成された心室補助装置の概略図である。
【
図2】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のインペラを収容するフレームの概略図である。
【
図3A】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のインペラ又はその一部の概略図である。
【
図3B】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のインペラ又はその一部の概略図である。
【
図3C】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のインペラ又はその一部の概略図である。
【
図3D】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のインペラ又はその一部の概略図である。
【
図3E】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のインペラ又はその一部の概略図である。
【
図4】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のフレーム内に配置されたインペラの概略図である。
【
図5A】本発明のいくつかの用途による、半径方向に拘束されない状態における心室補助装置のインペラ及びフレームの概略図である。
【
図5B】本発明のいくつかの用途による、半径方向に拘束される状態における心室補助装置のインペラ及びフレームの概略図である。
【
図5C】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のフレームの近位端の拡大概略図である。
【
図6A】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のフレームに対する心室補助装置のインペラの運動周期の各段階における心室補助装置の概略図である。
【
図6B】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のフレームに対する心室補助装置のインペラの運動周期の各段階における心室補助装置の概略図である。
【
図6C】本発明のいくつかの用途による、運動緩衝ばねを含む心室補助装置の概略図である。
【
図6D】本発明のいくつかの用途による、運動緩衝ばねを含む心室補助装置の概略図である。
【
図7A】本発明のいくつかの用途による心室補助装置のモータユニットの概略図である。
【
図7B】本発明のいくつかの用途による心室補助装置のモータユニットの概略図である。
【
図7C】本発明のいくつかの用途による心室補助装置のモータユニットの概略図である。
【
図8A】本発明のいくつかの用途に従って行われた実験で測定された、血液ポンプのインペラが変動する圧力勾配として、心室補助装置の駆動ケーブルの長さの変動を示すグラフである。
【
図8B】本発明のいくつかの用途に従って行われた実験で測定された、血液ポンプのインペラが変動する圧力勾配として、血液ポンプに行われた磁気位相測定の変動を示すグラフである。
【
図8C】本発明のいくつかの用途に従って行われた実験で測定された、血液ポンプのインペラが変動する圧力勾配として、血液ポンプに行われた磁気位相測定の変動を示すグラフである。
【
図9A】本発明のいくつかの用途による、1つ以上の血圧測定管及び/又はファイバを含む心室補助装置の概略図である。
【
図9B】本発明のいくつかの用途による、1つ以上の血圧測定管及び/又はファイバを含む心室補助装置の概略図である。
【
図10A】本発明のいくつかの用途による、インペラを収容するフレームの内側に内張りを含む心室補助装置の概略図である。
【
図10B】本発明のいくつかの用途による、インペラを収容するフレームの内側に内張りを含む心室補助装置の概略図である。
【
図11A】本発明のいくつかの用途による、遠位端に血液流入口を規定するポンプ出口管の概略図である。
【
図11B】本発明のいくつかの用途による、遠位端に血液流入口を規定するポンプ出口管の概略図である。
【
図11C】本発明のいくつかの用途による、遠位端に血液流入口を規定するポンプ出口管の概略図である。
【
図11D】本発明のいくつかの用途による、遠位端に血液流入口を規定するポンプ出口管の概略図である。
【
図11E】本発明のいくつかの用途による、遠位端に血液流入口を規定するポンプ出口管の概略図である。
【
図12A】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置の駆動ケーブルの概略図である。
【
図12B】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置の駆動ケーブルの概略図である。
【
図12C】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置の駆動ケーブルの概略図である。
【
図12D】本発明のいくつかの用途による、駆動ケーブル軸受管の概略図である。
【
図13】本発明のいくつかの用途による、ガイドワイヤがガイドワイヤ管腔内に配置されている心室補助装置の概略図である。
【
図14A】本発明のいくつかの用途による、2状態ガイドワイヤの概略図である。
【
図14B】本発明のいくつかの用途による、2状態ガイドワイヤの概略図である。
【
図15】本発明のいくつかの用途による、遠位スラスト軸受部を備えた心室補助装置の概略図である。
【
図16A】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置を梱包するためのパッケージの概略図である。
【
図16B】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置を梱包するためのパッケージの概略図である。
【
図16C】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置を梱包するためのパッケージの概略図である。
【
図16D】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置を梱包するためのパッケージの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1A、
図1B、及び
図1Cに示される、本発明のいくつかの用途による、遠位端が対象の左心室22に配置されるように構成された心室補助装置20の概略図をここで参照する。
図1Aは、制御コンソール21及びモータユニット23を含む心室補助装置システムの概要を示す。
図1Bは、対象の左心室に挿入される心室補助装置を示し、
図1Cは、心室補助装置のポンプヘッド部27をより詳細に示す。心室補助装置は、対象の大動脈弁26を横断するポンプ出口管24を含み、ポンプ出口管の近位端28が対象の大動脈30に配置されると共に、ポンプ出口管の遠位端32が左心室22内に配置されるようになっている。通常、ポンプ出口管24(本明細書では「血液ポンプ管」と呼ぶこともある)は細長い管であり、ポンプ出口管の軸方向長さは直径に比べて相当長い。本発明の範囲は、左心室及び大動脈以外の解剖学的位置で本明細書に記載の装置及び方法を使用することを含む。従って、心室補助装置及び/又はその一部は、本明細書において(明細書及び特許請求の範囲において)、血液ポンプと呼ばれることがある。
【0062】
いくつかの用途において、心室補助装置は、経皮的冠動脈形成術中に対象の左心室の機能を補助するために使用される。このような場合、心室補助装置は、通常、血流力学的不安定性を発症するリスクがある期間(例えば、経皮的冠動脈形成術中又はその直後)に、最大6時間(例えば最大10時間)使用される。代替的に又は追加的に、心室補助装置は、心原性ショックに苦しんでいる患者に対して、より長期間(例えば2~20日、例えば4~14日)、対象の左心室の機能を補助するために使用され、低心拍出量状態(例えば、急性心筋梗塞、心筋炎、心筋症、分娩後等)において使用される場合もある。いくつかの用途において、心室補助装置は、例えば「自己心機能回復までの橋渡し(bridge to recovery)」治療において、更に長期間(例えば、数週間又は数ヶ月)にわたって対象の左心室の機能を補助するために使用される。そのようないくつかの用途において、心室補助装置は、永久的又は半永久的に埋め込まれ、心室補助装置のインペラには、例えば、このインペラに磁気的に結合される外部アンテナを使用して経皮的に電力を供給する。
【0063】
左心室内での心室補助装置の展開のステップを示す
図1Bに示されているように、通常、心室補助装置の遠位端は、ガイドワイヤ10を通して左心室にガイドされる。装置の遠位端を左心室に挿入する際に、送達カテーテル143が装置の遠位端の上に配置される。装置の遠位端が左心室に配置されると、通常、送達カテーテルは大動脈に引っ込められ、ガイドワイヤは対象体から引っ込められる。送達カテーテルを引き込むことによって、通常、以下で更に詳細に説明するように、装置の遠位端の自己拡張可能な構成要素が、半径方向に拘束されない構成をとる。通常、心室補助装置は、対象に急性治療を提供するために対象体内に挿入される。いくつかの用途では、治療が終わると、対象体から左心室装置を引き抜くために、送達カテーテルを装置の遠位端上へ前進させることにより、装置の遠位端の自己拡張可能な構成要素は半径方向に拘束される構成をとる。代替的に又は追加的に、装置の遠位端が送達カテーテル内に引っ込められることにより、装置の遠位端の自己拡張可能な構成要素は半径方向に拘束される構成をとる。
【0064】
いくつかの用途(図示せず)において、心室補助装置及び/又は送達カテーテル143は、その遠位端に超音波変換器を含み、心室補助装置は、超音波ガイダンスに基づいて対象の心室に向かって前進する。
【0065】
ここで、本発明のいくつかの用途による心室補助装置20のポンプヘッド部27をより詳細に示す
図1Cを参照する。通常、インペラ50は、ポンプ出口管24の遠位部102内に配置され、回転して左心室から大動脈に血液を送り込むように構成される。通常、ポンプ出口管は、ポンプ出口管の遠位端に1つ以上の血液流入口108を規定し、これを介して、インペラの動作中に、血液が左心室からポンプ出口管へ流入する。
図1Cで示されているように、いくつかの用途において、ポンプ出口管は軸方向に向かう単一の血液流入口を規定する。あるいはポンプ出口管は、以下で更に詳細に説明するように、複数の横方向血液流入口(例えば
図1Bに示されている)を規定する。いくつかの用途において、ポンプ出口管の近位部106は、1つ以上の血液流出口109を規定し、これを介して、インペラの動作中に、血液がポンプ出口管から上行大動脈内へ流れる。
【0066】
いくつかの用途において、通常、コンピュータプロセッサ25を含む制御コンソール21(
図1Aに示される)は、インペラを回転するように駆動する。例えば、コンピュータプロセッサは、モータユニット23(
図1Aに示されている)内に配置され、駆動ケーブル130(
図12Aに示されている)を通してインペラを回転するように駆動するモータ74(
図7Aに示されている)を制御することができる。いくつかの用途において、コンピュータプロセッサは、以下で更に詳細に説明するように、対象の生理学的パラメータ(左心室圧、心後負荷、左心室圧の変化率等)を検出し、それに応じてインペラの回転を制御するように構成される。通常、ここで説明される、コンピュータプロセッサによって行われる動作は、コンピュータプロセッサと通信する実際の物理的物品であるメモリの物理的状態を、使用するメモリの技術に応じて異なる磁気極性や電荷等を有するように変換する。コンピュータプロセッサ25は、通常、特殊目的のコンピュータを生成するためコンピュータプログラム命令でプログラムされたハードウェア装置である。例えば、ここで説明する技法を実行するようにプログラムされた場合、コンピュータプロセッサ25は、通常、特殊目的の心室補助コンピュータプロセッサ及び/又は特殊目的の血液ポンプコンピュータプロセッサとして機能する。
【0067】
いくつかの用途において、パージシステム29(
図1Aに示されている)は、例えば、装置の一部を冷却するため、回転部分と固定の軸受との界面の潤滑のため、及び/又は装置の一部から破片を洗い流すために、流体(例えばグルコース溶液)が心室補助装置20の一部を通過するように駆動する。
【0068】
通常、ポンプ出口管24の遠位部102に沿って、ポンプ出口管内のインペラ50の周りにフレーム34が配置されている。フレームは典型的に、ニチノール等の形状記憶合金で作製される。いくつかの用途において、フレームの形状記憶合金は、管24の遠位部102にいかなる力も加えられていない状態で、フレーム(従って管24の遠位部102)の少なくとも一部が、略円形、楕円形、又は多角形の断面形状を有するように設定された形状を有する。略円形、楕円形、又は多角形の断面形状を有することにより、フレームは、ポンプ出口管の遠位部を開いた状態に保持するように構成される。通常、心室補助装置の動作中、ポンプ出口管の遠位部は、少なくとも部分的に左心室内に配置されるように、対象体内に配置されるよう構成されている。
【0069】
いくつかの用途において、フレームは、ポンプ出口管24の近位部106に沿って、ポンプ出口管内に配置されておらず、従って、ポンプ出口管はフレーム34によって開いた状態に支持されていない。ポンプ出口管24は、通常、血液不透過性の圧潰可能な材料で作製される。例えばポンプ出口管24は、ポリウレタン、ポリエステル、及び/又はシリコーンを含み得る。代替的に又は追加的に、ポンプ出口管は、ポリエチレンテレフタレート(PET)及び/又はポリエーテルブロックアミド(例えばPEBAX(登録商標))で作製される。いくつかの用途(図示せず)において、ポンプ出口管は、補強構造、例えば、編組ニチノール管等の編組補強構造で補強される。通常、ポンプ出口管の近位部は、その少なくとも一部が対象の上行大動脈内に置かれるように配置される構成を有する。いくつかの用途では、
図1Bに示すように、ポンプ出口管の近位部は対象の大動脈弁を横断し、対象の左心室から対象の上行大動脈に到達する。
【0070】
上述の通り、ポンプ出口管は、通常、ポンプ出口管の遠位端に1つ以上の血液流入口108を規定し、これを介して、インペラの動作中に、血液が左心室からポンプ出口管へ流入する。いくつかの用途において、ポンプ出口管の近位部は、1つ以上の血液流出口109を規定し、これを介して、インペラの動作中に、血液がポンプ出口管から上行大動脈内へ流れる。通常、ポンプ出口管は、複数の血液流出口109、例えば、2つ~8つの血液流出口(例えば、2つ~4つの血液流出口)を規定する。インペラの動作中、ポンプ出口管を通る血流の圧力によって、通常、ポンプ出口管の近位部は開いた状態に維持される。いくつかの用途では、例えばインペラが誤動作した場合、ポンプ出口管の近位部の外側の圧力がポンプ出口管の近位部の内側の圧力を超えたことに応じて、ポンプ出口管の近位部は内側に潰れるように構成されている。このように、ポンプ出口管の近位部は安全弁として機能し、大動脈から左心室への逆行性血流を防止する。
【0071】
図1Cを再び参照すると、いくつかの用途において、フレーム34は、近位円錐部36、中央円筒部38、及び遠位円錐部40を規定するような形状を有する。典型的に、近位円錐部は近位に面している、すなわち、円錐の狭端が円錐の広端に対して近位に位置するような向きである。更に典型的には、遠位円錐部は遠位に面している、すなわち、円錐の狭端が円錐の広端に対して遠位に位置するような向きである。いくつかの用途では、フレーム34の少なくとも一部内で(例えば、フレームの中央円筒部の全体又は一部に沿って)、内張り39がフレームを裏打ちする。
図1Cは内張り39を含まないポンプヘッド部の実施形態を示すが、いくつかの図は、内張り39を含むポンプヘッド部の実施形態を示す。それぞれの用途によると、内張りは、内張りが裏打ちするフレームの一部において、ポンプ出口管24と部分的に重なるか又は完全に重なる。これについては以下で
図10Aから
図10Bを参照して更に詳しく説明する。
【0072】
通常、ポンプ出口管24は、円錐近位部42及び円筒中央部44を含む。典型的に、近位円錐部は近位に面している、すなわち、円錐の狭端が円錐の広端に対して近位に位置するような向きである。典型的に、血液流出口109は、少なくとも部分的に管24の近位円錐セクションに沿って延出するように、ポンプ出口管24によって規定される。そのようないくつかの用途では、
図1Cに示すように、血液流出口は涙滴形である。通常、血液流出口の涙滴形の特徴と、この血液流出口が少なくとも部分的に管24の近位円錐セクションに沿って延出することが組み合わされることで、血液は、血液流出口の位置で管24の縦方向軸に実質的に平行な流線に沿って血液流出口から流出する。
【0073】
いくつかの用途(図示せず)において、ポンプ出口管24の直径は、ポンプ出口管の中央部が円錐台形状を有するように、ポンプ出口管の中央部の長さに沿って変化する。例えば、ポンプ出口管の中央部は、その近位端から遠位端まで広がってもよく、又はその近位端からその遠位端まで狭くなってもよい。いくつかの用途において、ポンプ出口管の中央部は、近位端で5~7mmの直径を有し、遠位端で8~12mmの直径を有する。
【0074】
図1Cを再度参照すると、心室補助装置は、通常、フレーム34に対して遠位に配置され、軸方向シャフト受容管126及び遠位先端部120を含む遠位先端要素107を含む。典型的に、軸方向シャフト受容管は、(以下で更に詳しく説明するように)ポンプヘッド部の軸方向シャフト92の前後運動中に、及び/又は心室補助装置の送達の際に、この軸方向シャフトの遠位部を受容するように構成されている。(通常、心室補助装置の送達の際、フレームは半径方向に拘束された構成に維持されるので、フレームに対する軸方向シャフトの配置は、心室補助装置の動作中のフレームに対する配置とは異なる位置にある。)通常、例えば
図1Cで示されているように、遠位先端部120は、対象の左心室内に展開される際に湾曲形状をとるように構成されている。いくつかの用途において、遠位先端部の曲率は、心室補助装置20に非外傷性先端を提供するように構成される。代替的に又は追加的に、遠位先端要素は、左心室の壁から心室補助装置の血液流入口108を離隔するように構成される。
【0075】
図1Bの拡大部に示されているように、いくつかの用途において、ポンプ出口管24はフレームの遠位円錐部40の端部まで延出し、ポンプ出口管は複数の横方向血液流入口108を規定する。これについては以下で更に詳しく説明する。このような用途において、ポンプ出口管は典型的に、遠位に面している遠位円錐部、すなわち、円錐の狭端が円錐の広端に対して遠位に位置するような向きの遠位円錐部を規定する。いくつかのこのような用途(図示せず)では、ポンプ出口管は2つ~4つの横方向血液流入口を規定する(例えば、図示されているように4つの横方向血液流入口)。典型的に、このような用途では、血液流入口の各々は、20平方ミリメートル超(例えば30平方ミリメートル超)、及び/又は60平方ミリメートル未満(例えば50平方ミリメートル未満)の面積、例えば、20~60平方ミリメートル又は30~50平方ミリメートルの面積を規定する。代替的に又は追加的に、出口管は、より多くの、より小さい血液流入口を規定する。例えば、10超の血液流入口、50超の血液流入口、200超の血液流入口、又は400超の血液流入口、例えば、50~100の血液流入口、100~400の血液流入口、又は400~600の血液流入口を規定する。いくつかのこのような用途において、血液流入口の各々は、0.05平方ミリメートル超(例えば0.1ミリメートル超)及び/又は3平方ミリメートル未満(例えば1平方ミリメートル未満)の面積、例えば、0.05~3平方ミリメートル、又は0.1~1平方ミリメートルの面積を規定する。あるいは、血液流入口の各々は、0.1平方ミリメートル超(例えば0.3ミリメートル超)及び/又は5平方ミリメートル未満(例えば1平方ミリメートル未満)の面積、例えば、0.1~5平方ミリメートル、又は0.3~1平方ミリメートルの面積を規定する。このような用途は、例えば
図11Aから
図11Eを参照して、以下で更に説明されている。一般に、本開示の範囲は、必要な変更を加えた上で、本明細書で説明されている心室補助装置の他の特徴と組み合わせて、
図1C(並びに、
図9Aから
図9B、
図10Aから
図10B、及び
図16Aから
図16C)で示されているような単一の軸方向血液流入口108を規定するポンプ出口管と、
図1B(並びに、
図4、
図5Aから
図5B、
図6Aから
図6D、
図11Aから
図11E、及び
図13)で示されているような複数の横方向血液流入口108を規定するポンプ出口管とを組み合わせることを含む。
【0076】
ここで、本発明のいくつかの用途による、心室補助装置20のインペラを収容するフレーム34の概略図である
図2を参照する。フレーム34は典型的に、ニチノール等の形状記憶合金で作製され、フレームの形状記憶合金は、ポンプ出口管24にいかなる力も加えられていない状態で、フレーム(従って管24)の中央部が略円形、楕円形、又は多角形の断面形状を有するように設定された形状を有する。略円形、楕円形、又は多角形の断面形状を有することにより、フレームは、管の遠位部を開いた状態に保持するように構成される。
【0077】
典型的に、フレームはストラットを含むステント状のフレームであり、これらのストラットがセルを規定する。更に典型的には、フレームはポンプ出口管24で覆われ、及び/又は
図10Aから
図10Bを参照して以下に説明する内張り39で覆われる。以下に説明するように、いくつかの用途において、インペラ50は、フレーム34に対して軸方向に前後運動する。通常、フレームに対するインペラの運動の過程で、インペラの最大スパンを規定するインペラの一部の位置は、フレーム34の中央円筒部38内に配置される。場合によっては、フレーム34の中央円筒部38のセルが大きすぎる場合、ポンプ出口管24及び/又は内張り39がセルの縁の間で引き伸ばされることにより、ポンプ出口管24及び/又は内張り39は円形断面を規定しなくなる。いくつかの用途において、これが、インペラの最大スパンを規定するインペラの一部が配置される領域で発生する場合、その結果として、インペラの回転周期の過程で、インペラブレードの縁と管24(及び/又は内張り)との間に実質的に一定でない間隙が上記の位置で生じる。いくつかの用途において、これは、インペラの回転周期の過程でインペラブレードの縁と管24(及び/又は内張り)との間に実質的に一定の間隙が上記の位置で生じた場合に比べ、溶血の増加につながる可能性がある。
【0078】
図2を参照すると、上の段落で説明した問題を少なくとも部分的に考慮して、フレーム34の中央円筒部38内で、フレームは多数の比較的小さなセルを規定する。通常、フレームが半径方向に拘束されない構成に配置されている場合、フレームの円筒部内の各セルの最大セル幅CW(すなわち、セルの一方側の中央接合部におけるストラットの内側の縁からセルの他方側の中央接合部におけるストラットの内側の縁までの、円筒部38の円周に沿って測定された距離)は、2mm未満、例えば1.4mm~1.6mm又は1.6~1.8mmである。セルは比較的小さいので、内張り39は、フレームの円筒部内で実質的に円形の断面を規定する。
【0079】
引き続き
図2を参照し、フレームの遠位端(図の右側にある)から始めると、通常、フレームは、(a)フレームが心室補助装置の遠位軸受部筐体118H(
図5Aに示されている)に結合される結合部31、(b)遠位円錐部40、(c)中央円筒部38、(d)近位円錐部36、及び(e)近位ストラット接合部33を規定する。図示のように、フレームがフレームの近位端からフレームの中心に向かって変遷する際(例えば、フレームが近位ストラット接合部33から近位円錐部36を経て中央円筒部38に変遷する際)、フレームのストラット37は、単一のストラットが2本のストラットにY字型に分岐する接合部35を通る。以下で更に詳細に説明するように、通常、フレーム34は、軸方向に伸びることによって、送達カテーテル143内で半径方向に拘束される(すなわち圧着される)構成で配置される。更に、通常、フレームが半径方向に狭まることがインペラに伝達され、インペラは、フレーム内で軸方向に伸びることによって半径方向に拘束される。いくつかの用途において、上記のように構成されたフレームのストラットは、送達カテーテル(又はフレームを圧着するように構成された他の装置)からフレームへ、軸方向に伸びることを容易に伝達し、次いで、軸方向に伸びることをインペラへ容易に伝達する。これは、各接合部35から分岐するストラットのペアが、接合部を軸として動いて(pivot)、相互に近付いて閉じるような構成になっているからである。
【0080】
引き続き
図2を参照すると、心室補助装置の組み立ての際、最初に遠位結合部31が、例えばスナップフィット機構を介して遠位軸受部筐体118H(
図5Aに示されている)に結合される。いくつかの用途では、フレームの近位端を介してフレーム内にインペラを配置するため、この段階では近位ストラット接合部33は依然として開いた状態に維持されている。通常、
図2に示されているフレーム34のストラットは、ポンプ出口管がフレーム34の遠位端まで延出する用途で用いられる(例えば
図1Bに示されている)。このような場合、フフレームの遠位端はポンプ出口管24で覆われているので、フレームの遠位端を介してインペラを挿入することはできない。心室補助装置の組み立ての際、フレームの近位端を介してインペラを挿入した後、近位ストラット接合部を閉じる。いくつかの用途では、以下で
図5Aから
図5Bを参照して更に詳しく説明するように、近位ストラット接合部は近位軸受部筐体116H(
図5Aに示されている)の外側の周りで閉じられる。典型的に、固定要素117(例えば
図5Aに示されているリング)が、近位軸受部筐体116Hの外側の周りでストラット接合部を閉じた構成に保持する。
【0081】
通常、半径方向に拘束されない構成で配置された場合、フレーム34は、全長が25mm超(例えば30mm超)、及び/又は50mm未満(例えば45mm未満)、例えば25~50mm又は30~45mmである。通常、半径方向に拘束される構成(送達カテーテル143内)で配置される場合、フレームの長さは2~5mm増加する。通常、半径方向に拘束されない構成で配置された場合、フレーム34の中央円筒部の長さは、10mm超(例えば12mm超)、及び/又は25mm未満(例えば20mm未満)、例えば10~25mm又は12~20mmである。いくつかの用途において、フレームの中央円筒部の長さとフレームの全長との比率は、1:4超、及び/又は1:2未満であり、例えば1:4~1:2である。
【0082】
ここで、本発明のいくつかの用途による、インペラ50又はその一部の概略図である
図3Aから
図3Eを参照する。典型的に、インペラは少なくとも1つの外側の螺旋状の細長い要素52を含み、これらは中心軸方向ばね54の周りで、これら螺旋状の細長い要素によって規定される螺旋が中心軸方向ばねと同軸になるように巻かれている。通常、インペラは、2つ以上の螺旋状の細長い要素を含む(例えば、
図3Aから
図3Cに示されるように3つの螺旋状の細長い要素)。いくつかの用途において、螺旋状の細長い要素及び中心軸方向ばねは、形状記憶材料、例えばニチノール等の形状記憶合金で作製されている。通常、螺旋状の細長い要素及び中心軸方向ばねのそれぞれは、それらの間に材料(例えば、ポリウレタン等のエラストマー及び/又はシリコーン)の膜56を支持する。いくつかの用途において、材料の膜は、例えばこの材料の膜を強化するため、内部に埋め込まれたニチノールの断片を含む。説明のため、
図3Aにおいてインペラは材料の膜がない状態で示されている。
図3B及び
図3Cは、螺旋状の細長い要素とばねとの間に支持された材料を備えるインペラをそれぞれ示す図である。
図3D及び
図3Eは、
図3B及び
図3Cに示すものと同様のインペラの図であるが、以下で詳しく述べるように、
図3B及び
図3Cに示すものとは異なるインペラのいくつかの機構(features)を備えている。
【0083】
螺旋状の細長い要素のそれぞれは、螺旋状の細長い要素からばねに延びる膜と共に、各インペラブレードを規定する。螺旋状の細長い要素はブレードの外縁を規定し、軸方向ばねはインペラの軸を規定する。通常、材料の膜は、ばねに沿って延出すると共にばねを覆っている。いくつかの用途では、螺旋状の細長い要素の周りに、縫合糸53(例えば、
図3Aから
図3Cに示されるポリエステル縫合糸)が巻かれている。通常、縫合糸は、材料(典型的にはポリウレタン等のエラストマー又はシリコーンである)の膜と螺旋状の細長い要素(典型的にはニチノール等の形状記憶合金である)との間の結合を容易にするように構成される。いくつかの用途では、ばね54の周りに、縫合糸(例えばポリエステル縫合糸、図示せず)が巻かれている。通常、縫合糸は、材料(典型的にはポリウレタン等のエラストマー又はシリコーンである)の膜とばね(典型的にはニチノール等の形状記憶合金である)との間の結合を容易にするように構成される。
【0084】
通常、ばね54及び螺旋状の細長い要素52の近位端は、インペラの近位ブッシング(すなわちスリーブ軸受部)64から延出し、ばね54及び螺旋状の細長い要素52の近位端がインペラの縦方向軸から同様の半径方向距離に配置されるようになっている。同様に、通常、ばね54及び螺旋状の細長い要素52の遠位端は、インペラの遠位ブッシング58から延出し、ばね54及び螺旋状の細長い要素52の遠位端がインペラの縦方向軸から同様の半径方向距離に配置されるようになっている。螺旋状の細長い要素は通常、近位ブッシングから徐々に上昇した後、最大スパンに達し、次いで遠位ブッシングに向かって徐々に降下する。通常、螺旋状の細長い要素は長さに沿って対称的であるので、それらの長さの上昇部分はそれらの長さの下降部分に対して対称的である。通常、インペラは、内部を貫通する管腔62を規定する(
図3Cに示されている)。この管腔は典型的に、ばね54、並びにインペラの近位ブッシング64及び遠位ブッシング58を貫通すると共に、これらによって規定される。
【0085】
次に、本発明のいくつかの用途による、心室補助装置20のフレーム34の内側に配置されたインペラ50の概略図である
図4を参照する。いくつかの用途では、フレーム34の少なくとも一部内で(例えばフレームの中央円筒部38の全体又は一部に沿って)、内張り39がフレームを裏打ちする。それぞれの用途によると、内張りは、内張りが裏打ちするフレームの一部において、ポンプ出口管24と部分的に重なるか又は完全に重なる。これについては以下で
図9Aから
図9Bを参照して更に詳しく説明する。
【0086】
図4に示されるように、通常、インペラのスパンが最大である位置であっても、インペラ50の外縁と内張り39との間には間隙Gが存在する。いくつかの用途において、インペラが対象の左心室から対象の大動脈へ血液を効率的に送るためには、インペラのブレードの外縁と内張り39との間の間隙が比較的小さいことが望ましい。(なお、インペラのスパンが最大である位置であってもインペラ50の外縁と内張り39との間に比較的小さい間隙があること、及びインペラの形状によって、インペラは軸流インペラとして機能し、ポンプ出口管24の遠位端からポンプ出口管の近位端へ軸方向に血液を送り込む。)また、例えば溶血のリスクを低減するためには、インペラのブレードの外縁とフレーム34の内面との間の間隙が、フレーム34内でのインペラの回転全体にわたって維持されることが望ましい。
【0087】
いくつかの用途において、インペラ50及びフレーム34の双方が半径方向に拘束されない構成で配置されている場合、かつインペラの動作前は、インペラのスパンが最大である位置でのインペラの外縁と内張り39との間の間隙Gは、0.05mmよりも大きく(例えば0.1mmよりも大きく)、及び/又は1mm未満(例えば0.4mm未満)であり、例えば0.05~1mm、又は0.1~0.4mmである。いくつかの用途において、インペラが半径方向に拘束されない構成で配置されている場合、かつインペラの動作前は、インペラの外径が最大である位置でのインペラの外径は、7mm超(例えば8mm超)、及び/又は10mm未満(例えば9mm未満)であり、例えば7~10mm、又は8~9mmである。いくつかの用途において、フレーム34が半径方向に拘束されない構成で配置されている場合、フレーム34の内径(フレームの一方側の内張り39の内側からフレームの反対側の内張りの内側まで測定した場合)は、7.5mmよりも大きく(例えば8.5mmよりも大きく)、及び/又は10.5mm未満(例えば9.5mm未満)であり、例えば7.5~10.5mm、又は8.5~9.5mmである。いくつかの用途において、フレームが半径方向に拘束されない構成で配置されている場合、フレーム34の外径は、8mmよりも大きく(例えば9mmよりも大きく)、及び/又は13mm未満(例えば12mm未満)であり、例えば8~13mm、又は9~12mmである。
【0088】
典型的に、軸方向シャフト92は、インペラの管腔62を介してインペラ50の軸を通過する。更に典型的には、軸方向シャフトは剛性であり、例えば剛性管である。いくつかの用途において、インペラの近位ブッシング64は、シャフトに対する近位ブッシングの軸方向位置が固定されるようにシャフトに結合され、インペラの遠位ブッシング58は、シャフトに対してスライド可能である。例えば近位ブッシングは、例えばスナップフィット機構を介して、軸方向シャフト上に配置された結合要素65(
図4に示されている)に結合することができる。(あるいは、インペラの遠位ブッシング58は、シャフトに対する遠位ブッシングの軸方向位置が固定されるようにシャフトに結合され、インペラの近位ブッシング64は、シャフトに対してスライド可能である。)軸方向シャフト自体は、近位半径方向軸受部116及び遠位半径方向軸受部118を介して半径方向に安定化される。次に、軸方向シャフトは、インペラによって規定される管腔62を通過することで、フレーム34の内面に対してインペラを半径方向に安定化させ、インペラの回転中に、インペラのブレードの外縁とフレーム34の内面との間の比較的小さい間隙(例えば上記のような間隙)であっても維持されるようにする。
【0089】
再び
図3Aから
図3Cを参照すると、いくつかの用途において、インペラは、中心軸方向ばね54から外側の螺旋状の細長い要素52へ半径方向に延出している複数の細長い要素67を含む。細長い要素は典型的には可撓性であるが、細長い要素が規定する軸に沿って実質的に伸長不可能である。更に典型的には、螺旋状の細長い要素を半径方向外側に移動させる力がインペラに作用している場合を除いて、細長い要素の各々は螺旋状の細長い要素に力を加えないように構成されており、(細長い要素がない状態では)螺旋状の細長い要素と中心軸方向ばねとの間の分離間隔は細長い要素の長さよりも大きくなる。例えば細長い要素67は、ストリング(ポリエステル、及び/又は別のポリマー、又は繊維を含む天然材料等)及び/又はワイヤ(ニチノールワイヤ、及び/又は別の合金もしくは金属で作製されたワイヤ)を含み得る。
【0090】
いくつかの用途において、細長い要素67は、螺旋状の細長い要素52(インペラブレードの外縁を規定する)を、中心軸方向ばねに対して所与の距離内に維持する。このように、細長い要素は、インペラの回転中にインペラに加わる力に起因してインペラの外縁が半径方向外側へ押しやられるのを防ぐように構成されている。細長い要素はこれによって、インペラの回転中、インペラのブレードの外縁とフレーム34の内面との間隙を維持するように構成されている。典型的には、2つ以上(例えば3つ以上)及び/又は7つ以下(例えば3つ以下)の細長い要素67がインペラで使用され、通常、細長い要素の各々は二重になっている(すなわち、中心軸方向ばね54から外側の螺旋状の細長い要素52へ半径方向に延出し、次いで螺旋状の細長い要素から中心軸方向ばねに戻ってくる)。いくつかの用途において、複数の細長い要素は1本のストリング又は1本のワイヤから形成される。細長い要素の各々は、ばねから各螺旋状の細長い要素へ延出し、次いでばねに戻ってくる。
【0091】
次に、本発明のいくつかの用途に従った、複数の細長い要素67を規定する単一の統合インペラ過拡張防止要素72を含むインペラ50の概略図である
図3D及び
図3Eを参照する。いくつかの用途において、インペラ過拡張防止要素72(複数の細長い要素67を規定する)は、
図3Aから
図3Cに示されている細長い要素67の代替案として用いられる。いくつかの用途において、要素72は、リング73と、このリングから半径方向に延出している複数の細長い要素67とを規定する。いくつかの用途では、ばね54の周りにストリング及び/又はワイヤを巻き付けるのではなく、例えば、典型的にばねの縦方向中央位置に配置されている管70の周りに置くことで、ばねの周りに要素72のリング73を配置する。次いで、螺旋状の細長い要素52の各々に、細長い要素67の各々の端部を結合する。上述のように、細長い要素67は典型的には可撓性であるが、細長い要素が規定する軸に沿って実質的に伸長可能でない。更に典型的には、細長い要素67の各々は圧縮に対して実質的に抵抗しないよう構成されている。各細長い要素67は、螺旋状の細長い要素52が半径方向外側に移動するのを防ぐ張力を螺旋状の細長い要素52に加えるよう構成されているので、(細長い要素67がない状態では)螺旋状の細長い要素52と中心軸方向ばね54との間の分離間隔は細長い要素67の長さよりも大きくなる。(細長い要素67がない状態で)螺旋状の細長い要素52を半径方向外側に移動させる力がインペラに作用している場合、インペラ過拡張防止要素はインペラの半径方向の拡張を防止するように構成されている。通常、各細長い要素67はインペラブレードの各々内に配置され、インペラブレードが半径方向に拡張するのを防止するように構成されている。いくつかの用途において、要素72は、ポリエステル、及び/又は別のポリマー、又は繊維を含む天然材料、及び/又はニチノール(又は同様の形状記憶合金)で作製される。
【0092】
なお、本発明の範囲は、
図3Dから
図3Eに示されているものとは異なる構成を有するインペラと共に単一の統合インペラ過拡張防止要素72を使用することを含む。例えば、単一の過拡張防止要素72は、ばね54とは異なる構成の軸方向構造を有するインペラと共に使用され得る。通常、軸方向構造が内部を貫通する管腔を規定することで、インペラは内部を貫通する管腔62を規定するようになっている。
【0093】
いくつかの用途において、膜を作製する材料は、極限伸びが300パーセント超であり、例えば400パーセント超であるエラストマーである。通常、材料は比較的小さい分子量を有する。いくつかの用途において、材料のメルトフローインデックス(分子量の間接的な指標である)は少なくとも4であり、例えば少なくとも4.3である。いくつかの用途において、材料の最大抗張力は6000psi超であり、例えば7000psi超、又は7500psi超である。いくつかの用途において、材料は、例えばCarbothane(商標)等のポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンである。いくつかの用途では、Aromatic Coarbothane(商標)(例えばAromatic Coarbothane(商標)75A)が用いられる。通常、このような材料では、浸漬プロセス中に外径損失が生じないこと、耐疲労性、圧着による奇形に対する耐性、圧着中の外形損失が小さいこと、という特性のうち1つ以上が組み合わされる。続いて、材料は、例えば乾燥させることで、固化するよう硬化される。
【0094】
通常、インペラ50は、半径方向に拘束される構成で、経カテーテル的に左心室に挿入される。半径方向に拘束される構成において、螺旋状の細長い要素52と中心軸方向ばね54の双方は軸方向に伸び、半径方向に拘束される。通常、材料(例えばシリコーン及び/又はポリウレタン)の膜56は、この材料の膜を支持する螺旋状の細長い要素及び軸方向支持ばねの形状変化に一致するように形状を変化させる。通常、ばねを使用して膜の内縁を支持すると、膜の内縁が結合する大きな表面積がばねによって提供されるので、膜が壊れたり崩壊したりすることなく膜の形状を変えることができる。いくつかの用途では、例えば、剛性のシャフトを使用して膜の内縁を支持する場合に比べ、ばねを使用して膜の内縁を支持すると、ばねを軸方向に伸ばすことによってばね自体の直径を縮小できるので、インペラが半径方向に拘束され得る直径が小さくなる。
【0095】
上述の通り、いくつかの用途において、インペラ50の近位ブッシング64は、シャフトに対する近位ブッシングの軸方向位置が固定されるように軸方向シャフト92に結合され、インペラの遠位ブッシング58は、シャフトに対してスライド可能である。いくつかの用途において、近位ブッシングは、例えばスナップフィット機構を介して、軸方向シャフト上に配置された結合要素65(
図4に示されている)に結合することができる。いくつかの用途では、インペラを心室に挿入する目的で又は対象体からインペラを引き抜く目的でインペラが半径方向に拘束されると、遠位ブッシングが軸方向シャフトに沿って遠位方向にスライドすることにより、インペラは軸方向に伸びる。代替的に(図示せず)、インペラの遠位ブッシング58は、シャフトに対する遠位ブッシングの軸方向位置が固定されるようにシャフトに結合され、インペラの近位ブッシング64は、シャフトに対してスライド可能である。いくつかのそのような用途では、インペラを心室に挿入する目的で又は対象体からインペラを引き抜く目的でインペラが半径方向に拘束されると、近位ブッシングが軸方向シャフトに沿って近位方向にスライドすることにより、インペラは軸方向に伸びる。インペラは、対象体内で解放された後、
図3Aから
図3Eに示されるように、半径方向に拘束されない構成(インペラの動作中に通常インペラが配置される構成)をとる。
【0096】
ここで、本発明のいくつかの用途による、半径方向に拘束されない状態及び半径方向に拘束される状態のそれぞれにおける心室補助装置20のインペラ50及びフレーム34の概略図である
図5A及び
図5Bを参照する。インペラ及びフレームは、通常、インペラ及びフレームを対象体に経カテーテル挿入する際に、半径方向に拘束される状態で配置され、対象の左心室内でインペラが動作する際には、半径方向に拘束されない状態で配置される。また、本発明のいくつかの用途に従った、心室補助装置のフレームの近位端の拡大概略図である
図5Cも参照する。
【0097】
図5Bに示されるように、フレーム及びインペラは、通常、送達カテーテル143によって半径方向に拘束される構成に維持される。典型的に、インペラの半径方向に拘束される構成において、インペラの全長は、15mm超(例えば20mm超)、及び/又は30mm未満(例えば25mm未満)、例えば15~30mm又は20~25mmである。更に典型的には、インペラの半径方向に拘束されない構成において、インペラの長さは、8mm超(例えば10mm超)、及び/又は18mm未満(例えば15mm未満)、例えば8~18mm又は10~15mmである。更に典型的には、(
図5Bに示されるように)インペラ及びフレーム34が半径方向に拘束される構成で配置される場合、インペラの外径は2mm未満(例えば1.6mm未満)であり、フレームの外径は2.5mm未満(例えば2.1mm未満)である。
【0098】
上述の通り、通常、軸方向シャフト92は、インペラの管腔62を介して、インペラ50の軸を通過する。通常、インペラの近位ブッシング64は、シャフトに対する近位ブッシングの軸方向位置が固定されるように結合要素65を介してシャフトに結合され、インペラの遠位ブッシング58は、シャフトに対してスライド可能である。(あるいは、インペラの遠位ブッシング58は、シャフトに対する遠位ブッシングの軸方向位置が固定されるようにシャフトに結合され、インペラの近位ブッシング64は、シャフトに対してスライド可能である。)軸方向シャフト自体は、近位半径方向軸受部116及び遠位半径方向軸受部118を介して半径方向に安定化される。典型的に、近位軸受部筐体116Hが近位軸受部の周りに配置されてこれを収容し、遠位軸受部筐体118Hが遠位軸受部の周りに配置されてこれを収容している。いくつかのそのような用途では、半径方向軸受部と軸受部筐体はそれぞれ異なる材料で作製される。例えば、半径方向軸受部は、セラミック等の比較的高い硬度を有する第1の材料(例えばジルコニア)で作製され、軸受部筐体は、金属又は合金等、所望の形状に成形することができる第2の材料(例えばステンレス鋼、コバルトクロム、及び/又はニチノール)で作製され得る。
【0099】
いくつかの用途において、軸方向シャフト92は、金属又はステンレス鋼のような合金で作製される。いくつかのそのような用途において、軸方向シャフトは、心室補助装置の動作中に近位及び遠位の軸受部116、118のいずれかと接触する軸方向シャフトの領域に沿って、セラミックスリーブ240(例えばジルコニアスリーブ)で覆われている。このように、軸方向シャフトと近位及び遠位の軸受部との半径方向界面は、セラミック-セラミック界面である。本明細書で更に詳しく説明されるように、通常、インペラ及び軸方向シャフトは、心室補助装置の動作中に軸方向の前後運動を行うように構成されている。従って、いくつかの用途では、近位及び遠位の各軸受部に対応する軸方向シャフトに沿った位置において、軸方向シャフトは、5mm超の長さ、例えば7mm超の長さに沿って、セラミックスリーブで覆われている。このように、軸方向シャフトの軸方向の前後運動の過程で半径方向軸受部と接触する軸方向シャフトの領域は、セラミックスリーブで覆われている。
【0100】
いくつかの用途では、
図5Cの横断面図で示されているように、セラミックスリーブで覆われた軸方向シャフトの部分に沿って、シャフトは、1つ以上の溝又はくぼみ95を規定するような形状を有する(例えばミリング、成形、又は異なる整形プロセスによって)。代替的に又は追加的に(図示せず)、セラミックスリーブの内面は、1つ以上の溝又はくぼみを規定するような形状を有する。いくつかのそのような用途では、スリーブを軸方向シャフトに接合するため、溝又はくぼみに接着剤を注入し、この接着剤は次いで溝又はくぼみから軸方向シャフトとスリーブとの間の界面に広がる。
【0101】
いくつかの用途において、近位軸受部筐体116H及び遠位軸受部筐体118Hは追加の機能を実行する。まず近位軸受部筐体を参照すると、上述したように、いくつかの用途では、近位軸受部筐体の外側の周りでフレーム34の近位ストラット接合部33が閉じている。いくつかの用途において、近位軸受部筐体の外面は、近位ストラット接合部を受容するような形状の溝を規定する。例えば図示のように、近位ストラット接合部は幅広ヘッドを有し、近位軸受部筐体の外面は、近位ストラット接合部の幅広ヘッドと一致する形状の溝を規定する。通常、固定要素117(典型的にリングを含む)が、近位軸受部筐体116Hの外側の周りでストラット接合部を閉じた構成に保持する。いくつかの用途では、心室補助装置の追加部分が近位軸受部筐体に結合されている。いくつかの用途では、駆動ケーブル130が対象体の外部から軸方向シャフト92へ延出し、軸方向シャフトに結合される。通常、駆動ケーブルは第1の外側管140内で回転する。第1の外側管140は、駆動ケーブル軸受管として機能し、対象体の外部から近位軸受部筐体へ延出する。いくつかの用途では、第1の外側管は第2の外側管142内に配置されている。第2の外側管142も、対象体の外部から近位軸受部筐体へ延出する。いくつかの用途では、第1の外側管140及び/又は第2の外側管142は、(例えば接着剤を用いて)近位軸受部筐体に結合されている。例えば、第1の外側管140は近位軸受部筐体の内面に結合し、第2の外側管142は近位軸受部筐体の外面に結合することができる。
【0102】
ここで遠位軸受部筐体118Hを参照すると、いくつかの用途において、フレーム34の遠位結合部31は、例えばスナップフィット機構を介して遠位軸受部筐体118Hの外面に結合されている。例えば、遠位軸受部筐体の最も近位の部分119の外面は、フレーム34の遠位結合部31が結合されるスナップフィット機構を含むことができる。いくつかの用途では、
図5Aで示されているように、遠位軸受部118は遠位軸受部筐体の最も近位の部分119内に配置されている。上述したように、いくつかの用途において、ポンプ出口管24はフレーム34の遠位端まで延出し、横方向血液流入口108を規定する。いくつかのそのような用途では、結合部41(例えば管状結合部)がポンプ出口管から遠位に延出し、ポンプ出口管の遠位端を固定するため、遠位軸受部筐体に結合されている。いくつかの用途において、遠位軸受部筐体の中間部123は、細長い隆起又はねじ山が形成された外面を規定し、これに対してポンプ出口管の結合部41が(例えば接着剤により)結合される。いくつかの用途において、この外面は、遠位軸受部筐体とポンプ出口管の結合部41との結合を強化するために細長い隆起が形成されている。いくつかの用途では、この外面は、遠位軸受部筐体とポンプ出口管の結合部41との結合を強化するため、更に、この外面とポンプ出口管の結合部41との間の接着剤の塗布を容易にするため、ねじ山が形成されている。これについては以下で
図12Bを参照して更に詳しく説明する。いくつかの用途において、遠位軸受部筐体の遠位部121は、シャフト92の遠位端が挿入される遠位先端要素107の領域(例えば軸方向シャフト受容管126又はその一部)を補強するように構成される。典型的に、遠位先端要素107は、遠位軸受部筐体の遠位部121の外面に(例えば接着剤により)結合されている。いくつかの用途では、遠位軸受部筐体の遠位部121の外面の少なくとも一部は、遠位先端要素107と遠位軸受部筐体との結合を強化するために細長い隆起及び/又はねじ山が形成されている。
【0103】
上述の通り、軸方向シャフト92は、近位半径方向軸受部116及び遠位半径方向軸受部118を介して半径方向に安定化される。次に、上述の通り、軸方向シャフトは、インペラによって規定される管腔62を通過することで、フレーム34の内面及び内張り39に対してインペラを半径方向に安定化させるので、インペラの回転中、インペラのブレードの外縁と内張り39との間の比較的小さい間隙(例えば上記のような間隙)であっても維持される。通常、インペラ自体は、半径方向軸受部やスラスト軸受部のいずれかの内部に直接配置されていない。むしろ、軸受部116及び118は、軸方向シャフトに対する半径方向軸受部として機能する。通常、ポンプヘッド部27(より一般的には心室補助装置20)は、対象体内に配置されるように構成されると共にインペラの回転によって生成されるスラストに対抗するように構成されるスラスト軸受部を含まない。いくつかの用途では、1つ以上のスラスト軸受部が対象体の外側(例えば、
図1A及び
図7Aから
図7Cに示されるモータユニット23内)に配置され、インペラの回転によって生成されるスラストに対する対抗は、対象体の外側に配置されたこの1つ以上のスラスト軸受部によってのみ提供される。いくつかの用途では、機械要素及び/又は磁気要素が、インペラを軸方向位置の所与の範囲内に維持するように構成される。例えば、駆動ケーブルの近位端(例えば対象体の外側)に配置される磁石(例えば
図7Aを参照して以下に説明する磁石82)は、インペラに軸方向運動を与えるように、及び/又はインペラを軸方向位置の所与の範囲内に維持するように構成することができる。
【0104】
ここで、本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のフレーム34に対する心室補助装置のインペラ50の運動周期の各段階における心室補助装置20の概略図である
図6A及び
図6Bを参照する。いくつかの用途では、インペラが回転することにより管24を通して血液を送り出している間、軸方向シャフト92(インペラが固定されている)は、軸方向の前後運動で移動することによって、フレーム34内でインペラを軸方向に前後移動させるように駆動される。これについては以下で
図7Aを参照して更に詳しく説明する。代替的に又は追加的に、インペラ及び軸方向シャフトは、軸方向シャフトを軸方向の前後運動で移動するように能動的に駆動する必要なく、インペラに作用する力に応じて、フレーム34内で軸方向に前後移動するように構成される。通常、対象の心周期の過程で、左心室と大動脈との間の圧力差は、心室収縮期(以下「収縮期」)のほぼゼロから、心室拡張期(以下「拡張期」)の比較的大きな圧力差(例えば50~70mmHg)まで変化する。いくつかの用途では、拡張期にインペラの送り出しに対する圧力差が大きくなるため(また、駆動ケーブル130が伸縮可能であるため)、収縮期のフレーム34に対するインペラの位置に比べ、拡張期のインペラは、フレーム34に対して遠位方向に押される。インペラは軸方向シャフトに接続されているので、次いで軸方向シャフトは前方に移動する。収縮期には、インペラ(及び軸方向シャフト)は収縮期位置に戻る。このように、インペラ及び軸方向シャフトの軸方向の前後運動は受動的に生成される、すなわち、軸方向シャフト及びインペラのこの運動を生じるためにそれらの能動的な駆動を必要とせずに生成される。
図6A及び
図6Bは、上述した軸方向の前後運動周期中のフレーム34内の各位置に配置されたインペラ及び軸方向シャフトを示す。
【0105】
いくつかの用途では、軸方向の前後運動で移動することにより、近位軸受部116及び遠位軸受部118と接触している軸方向シャフトの部分は常に変化する。そのようないくつかの用途では、他の条件が等しければ、このようにして軸受部によって軸方向シャフトに加えられる摩擦力は、軸方向シャフトが軸受部に対して移動しない場合よりも軸方向シャフトのより広い領域に広がり、これにより軸方向シャフトの摩耗が低減する。代替的に又は追加的に、軸受部に対して前後運動で移動することにより、軸方向シャフトは、軸方向シャフトと軸受部との界面の血液残留物等の残留物を除去する。
【0106】
いくつかの用途において、
図6Aに示すように、運動周期中のインペラの最も近位の位置では、インペラの近位端はフレーム34の近位円錐セクションに配置される。いくつかの用途において、運動周期中のインペラの最も遠位の位置では、インペラの遠位端はフレーム34の円筒セクションの遠位端に配置される。あるいは、
図6Bに示すように、運動周期中のインペラの最も遠位の位置であっても、インペラの遠位端はフレーム34の円筒セクションの遠位端に対して近位に配置される。通常、心周期全体の過程の間に、インペラのスパンが最大であるインペラのセクションは、フレーム34の円筒部内に配置される。しかしながら、インペラの近位部は通常、心周期の少なくとも一部の間にフレームの近位円錐セクション内に配置される。
【0107】
図6A及び
図6Bを再度参照する。通常、遠位先端要素107は、軸方向シャフト受容管126及び遠位先端部120の双方を含む単一統合要素である。典型的に、軸方向シャフト受容管は、軸方向シャフトの軸方向の前後運動中(以下で更に詳しく説明する)、及び/又は心室補助装置の送達の際に、ポンプヘッド部の軸方向シャフト92の遠位部を受容するように構成されている。(通常、心室補助装置の送達の際、フレームは半径方向に拘束される構成に維持されるので、フレームに対する軸方向シャフトの配置は、心室補助装置の動作中のフレームに対する配置とは異なる位置にある。)いくつかの用途において、遠位先端部120は柔らかく構成されるので、対象の組織(例えば左心室の組織)に接触した場合でも、その組織を傷つけないように構成される。例えば、遠位先端部120又は遠位先端要素全体は、シリコーン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及び/又はポリエーテルブロックアミド(例えばPEBAX(登録商標))で作製することができる。いくつかの用途において、遠位先端部は、内部を貫通する管腔122を規定する。そのようないくつかの用途では、心室補助装置が左心室に挿入される際、例えば既知の技法に従って、ガイドワイヤ10(
図1B)が最初に左心室に挿入される。次に、ガイドワイヤを管腔122の内部に配置した状態で、ガイドワイヤ上で心室補助装置の遠位先端部を前進させることによって、遠位先端部は左心室へガイドされる。いくつかの用途では、遠位先端部120の管腔122の遠位端にダックビル弁390(又は異なるタイプの止血弁)が配置される。
【0108】
通常、心室補助装置を対象の心室に挿入する際、送達カテーテル143がインペラ50及びフレーム34の上に配置され、インペラ及びフレームを半径方向に拘束される構成に維持する。いくつかの用途では、
図1Bで示されているように、送達カテーテルを対象の心室に挿入する際、遠位先端要素107は送達カテーテルから遠位に延出する。いくつかの用途では、遠位先端要素の近位端の近くに、遠位先端要素は突起110を有する。
図5B(送達カテーテル143の内部に配置されたポンプヘッド部を示す)を参照すると、いくつかの用途において、心室補助装置を対象の心室に挿入する際、送達カテーテルは突起の近位側まで延出して、送達カテーテル及び突起が滑らかな連続面を形成するようになっている。突起110の遠位側はテーパ状であるので、血管系はテーパ状の直径変化に露呈されるが、送達カテーテルと遠位先端要素との界面における直径の急激な変化によって生じるエッジに露呈されないようになっている。
【0109】
いくつかの用途において、遠位先端要素107は、クエスチョンマーク又はテニスラケットの曲率と同様の全体曲率を規定し、直線近位部と、この直線近位部の縦方向軸の一方側のバルジと、を規定する。通常、上述したように、心室補助装置はガイドワイヤ上で対象の心室内へ導入される。遠位先端部120は、心室補助装置を対象の心室内へ導入する際に遠位先端部が直線状の構成に保持されるように管腔122を規定する(例えば
図1Bの左側のフレームに示されている)。いくつかの用途では、ガイドワイヤが取り外されると、遠位先端部は湾曲形状をとるように構成されている。
【0110】
再び
図6Aから
図6Bを参照すると、いくつかの用途において、軸方向シャフト受容管126は、遠位先端要素107の遠位先端部120から近位に延出する。上述したように、通常、インペラ50の動作中に軸方向シャフトは軸方向の前後運動を行う。軸方向シャフト受容管126は、軸方向シャフトが遠位軸受部118を超えて延出した場合に軸方向シャフトを受容するように構成された管腔127を規定する。いくつかの用途では、軸方向シャフト受容管は遠位端にストッパ128を規定し、これは、軸方向シャフトがストッパを超えて前進するのを防ぐように構成されている。いくつかの用途において、ストッパは、シャフト受容管の遠位端に挿入されている(例えば埋め込まれている)剛性構成要素を含む。代替的に(図示せず)、ストッパは、軸方向シャフト受容管の管腔127と遠位先端部120の管腔122との間のショルダを含む。
【0111】
通常、インペラの正常動作中、駆動ケーブル130(
図5Aに示されている)が(例えば拡張期に)最大限に伸びた場合であっても、軸方向シャフトはストッパ128と接触しない。しかしながら、心室補助装置20を対象の心室から引っ込める際に、送達カテーテルをインペラ50及びフレーム34の上で前進させる場合、ストッパ128は、軸方向シャフトが先端部内へ突き出るのを防ぐように構成されている。場合によっては、送達カテーテルをフレーム及びインペラの上で前進させる際、駆動ケーブルが切れる危険がある。そのような場合、ストッパ128が存在しなければ、軸方向シャフトは先端部内へ突き出る可能性がある。駆動ケーブルが切れた場合であっても、ストッパ128はこれが起こるのを防止する。
【0112】
なお、フレーム34の近位端において、近位半径方向軸受部116は、結合要素65及び/又はインペラ50の近位ブッシング64が近位半径方向軸受部を超えて移動するのを防ぐことによって、これもストッパとして機能する。通常、インペラの正常動作中、結合要素65及び近位ブッシング64は近位半径方向軸受部116と接触しない。しかしながら、例えばインペラ及びフレームが送達カテーテル143の内部で半径方向に拘束される(すなわち圧着される)構成に保持される場合、近位半径方向軸受部116は、結合要素65及び/又はインペラ50の近位ブッシング64がフレーム内部から近位に移動するのを防止するように構成されている。典型的に、結合要素及び/又は近位ブッシングは、インペラの中央領域(ここでインペラのスパンは最大になる)がフレーム34の近位円錐部内へ近位にスライドするのを防ぐように、近位方向に延出させる。例えば、インペラの運動周期の収縮期(
図6Aに示されている)において、もしもインペラが所与の量を超えて更に近位にスライドしたら、結合要素は近位半径方向軸受部116に接触し、これによってインペラの更なる近位方向運動を防止する。いくつかの用途において、結合要素及び/又は近位ブッシングは、1.5mm超の全長、例えば4mm超の全長を有するように、近位方向に延出させる。いくつかの用途(図示せず)では、結合要素及び/又は近位ブッシング64に対して近位に、別のストッパ要素を軸方向シャフト上に配置する。典型的に、ストッパは、結合要素に関して記載したように構成されている。すなわち、もしもインペラが所与の量を超えて更に近位にスライドしたら、ストッパ要素は近位半径方向軸受部116に接触し、これによってインペラの更なる近位方向運動を防止する。
【0113】
通常、心室補助装置の動作中及びインペラの軸方向の前後運動周期全体を通して、インペラは遠位先端部に比較的近接して配置される。例えば、インペラの軸方向の前後運動周期全体を通して、遠位先端部までのインペラの距離は、管24の最も遠位の50パーセント内とすることができ、例えば、最も遠位の30パーセント(又は最も遠位の20パーセント)内である。
【0114】
ここで、本発明のいくつかの用途に従った、運動緩衝ばね68を含む心室補助装置の概略図である
図6C及び
図6Dを参照する。以下で更に詳しく説明するように、通常、心室補助装置の動作中(すなわちインペラが回転している時)、インペラは軸方向に前後運動する。いくつかの用途では、インペラが軸方向に前後運動する際、運動緩衝ばねは、運動に対する緩衝を与えるためショックアブソーバとして作用するように構成されている。
図6Cはインペラの運動周期の収縮期におけるインペラを示し、
図6Dはその運動周期の拡張期におけるインペラを示す。図示のように、インペラが収縮期位置から拡張期位置へ遠位方向に移動する際、運動緩衝ばねは更に圧縮される。いくつかの用途では、インペラは軸方向に伸びることによって半径方向に拘束される(すなわち圧着される)ように構成され、運動緩衝ばねは、インペラの軸方向の伸びに対応するように圧縮するよう構成されている。典型的に、インペラが半径方向に拘束された構成にある場合、ポンプヘッドを左心室へ挿入する際、インペラは軸方向に伸びて、インペラの遠位端がフレーム34内で更に遠位に配置されると共に、
図6Dに示されているインペラとばねの構成に対してばねが更に圧縮されるようになっている。
【0115】
通常、運動緩衝ばねは、インペラの遠位端(例えばインペラの遠位ブッシング58)と遠位軸受部118との間で軸方向シャフト92の周りに配置される。いくつかの用途において、運動緩衝ばねは、遠位軸受部118又は遠位軸受部筐体118Hに結合され、遠位軸受部又は遠位軸受部筐体118Hから軸方向シャフト92上で近位に延出する。通常、そのような場合、インペラの回転時に運動緩衝ばねは回転的に静止状態を保ち、インペラは運動緩衝ばねに対して回転するように構成されている。代替的に又は追加的に、運動緩衝ばねは、インペラの遠位端(例えばインペラの遠位ブッシング58)に結合され、及び/又は、インペラの遠位端(例えばインペラの遠位ブッシング58)から軸方向シャフト92上で遠位に延出する。いくつかのそのような用途では、運動緩衝ばねはインペラと共に回転するように構成されている。あるいは、運動緩衝ばねは、インペラの遠位端(例えばインペラの遠位ブッシング58)の周りに配置された半径方向軸受部から延出して、インペラの回転時に運動緩衝ばねが回転的に静止状態を保つと共に、インペラが運動緩衝ばねに対して回転するように構成されている。
【0116】
いくつかの用途では、運動緩衝ばねはエラストマー材料69(ポリウレタン及び/又はシリコーン等)に結合されて、インペラの遠位端と遠位半径方向軸受部との間にある軸方向シャフト92の少なくとも一部がエラストマー材料で覆われるようになっている。いくつかの用途では、エラストマー材料をばねに結合すると、ばねがエラストマー材料に結合されていない場合に比べ、ばねによる血栓及び/又は溶血の発生のリスクが低減する。なお、本開示の範囲はエラストマー材料が存在しない場合に運動緩衝ばねを提供することを含み、これは場合によっては望ましいことがある。
【0117】
図6C及び
図6Dは、ばねの隣接する巻線の間に延出するエラストマー材料でコーティングされた状態のばねを示す。あるいは、ばねはエラストマー材料内に埋め込まれる。典型的に、エラストマー材料は、インペラ50内の膜56の材料に用いられるエラストマー材料と概ね同様である。更に典型的には、エラストマー材料が運動緩衝ばねに結合される方法は、インペラのばねに対するエラストマー材料膜の結合に関して上述したものと概ね同様である。典型的に、エラストマー材料は、(例えば運動緩衝ばねが伸びたり圧縮したりする場合に)運動緩衝ばねに生じる形状変化と一致するように(例えば伸長と圧縮によって)形状を変化させるように、運動緩衝ばねに結合されている。更に典型的には、エラストマー材料は、壊れたり崩壊したりすることなく、また、ばねの圧縮時にしわになることなく、上述したように形状変化するよう構成されている。
【0118】
上述のように、通常、外側管140と外側管142との間にパージ流体が送り込まれる。通常、軸方向シャフトと遠位軸受部との間の界面をパージするため、ポンプヘッド内で、パージ流体の一部は、軸方向シャフト92で規定された管腔内を流れ、次いで遠位軸受部118の近傍で軸方向シャフトから出る。いくつかの用途において、パージシステムは、パージ流体が遠位軸受部から軸方向シャフトとエラストマー材料との間の界面に沿って近位に流れるよう構成されている。このように、軸方向シャフトとエラストマー材料との間の界面はパージ及び/又は潤滑される。
【0119】
いくつかの用途(図示せず)では、インペラの近位側に近位運動緩衝ばねが配置されている。いくつかのそのような用途において、近位運動緩衝ばねは、インペラの近位端(例えばインペラの近位ブッシング64)と近位軸受部116との間で軸方向シャフト92の周りに配置される。いくつかの用途において、近位運動緩衝ばねは、近位軸受部116又は近位軸受部筐体116Hに結合され、近位軸受部又は近位軸受部筐体から軸方向シャフト92上で遠位に延出する。通常、そのような場合、インペラの回転時に近位運動緩衝ばねは回転的に静止状態を保ち、インペラは運動緩衝ばねに対して回転するように構成されている。代替的に又は追加的に、近位運動緩衝ばねは、インペラの近位端(例えばインペラの近位ブッシング64)に結合され、及び/又は、インペラの近位端(例えばインペラの近位ブッシング64)から軸方向シャフト92上で遠位に延出する。いくつかのそのような用途では、運動緩衝ばねはインペラと共に回転するように構成されている。あるいは、運動緩衝ばねは、インペラの近位端(例えばインペラの近位ブッシング64)の周りに配置された半径方向軸受部から延出して、インペラの回転時に運動緩衝ばねが回転的に静止状態を保つと共に、インペラが運動緩衝ばねに対して回転するように構成されている。
【0120】
いくつかの用途において、ポンプヘッドは、(インペラの近位側に配置された)近位運動緩衝ばねとインペラの遠位側に配置された遠位運動緩衝ばねの双方を含み、遠位又は近位方向のインペラの軸方向移動がこれらの運動緩衝ばねによって緩衝されるようになっている。
【0121】
次に、本発明のいくつかの用途による、心室補助装置20のモータユニット23の分解図の概略図である
図7Aを参照する。いくつかの用途では、インペラ50の回転を制御する制御コンソール21(
図1A)のコンピュータプロセッサ25は、軸方向シャフトの前後運動も制御するように構成される。いくつかの用途では、双方のタイプの運動は、モータユニット23を使用して生成される。本発明の範囲は、任意の周波数で前後運動を制御することを含む。いくつかの用途では、対象の心周期の指標を検出し(例えば対象のECGを検出することによって)、軸方向シャフトの前後運動を対象の心周期に同期させる。
【0122】
通常、モータユニット23は、駆動ケーブル130を介してインペラ50に回転運動を与えるように構成されたモータ74を含む。以下で更に詳細に説明するように、通常、モータは駆動ケーブルに磁気的に結合されている。いくつかの用途において、軸方向運動ドライバ76は、両方向矢印79で示されるように、モータを駆動して軸方向の前後運動で移動させるように構成されている。通常、モータを駆動ケーブルに磁気結合することにより、モータは駆動ケーブルに前後運動を与え、次いで駆動ケーブルはこの運動をインペラに与える。上記及び下記に説明するように、いくつかの用途では、例えば、インペラが血液を送り出すことに対する圧較差の周期的変化のため、駆動ケーブル、インペラ、及び/又は軸方向シャフトは、受動的に軸方向の前後運動を行う。通常、そのような用途では、モータユニット23は軸方向運動ドライバ76を含まない。
【0123】
いくつかの用途において、駆動ケーブルに対するモータの磁気的結合は
図7Aに示されているようなものである。
図7Aで示されているように、駆動磁石セット77が、駆動磁石筐体78を介してモータに結合されている。いくつかの用途において、駆動磁石筐体はリング81(例えばスチールリング)を含み、駆動磁石はリングの内面に接着されている。いくつかの用途では、図示のように、2つの駆動磁石の間でリング81の内面にスペーサ85が接着されている。駆動磁石の間に被駆動磁石82が配置され、駆動磁石と被駆動磁石とが軸方向に重なるようになっている。被駆動磁石はピン131に結合され、ピン131は被駆動磁石82の遠位端を超えて延出して、駆動ケーブル130の近位端に結合されている。例えば、被駆動磁石は円筒形であり、内部を貫通する孔を規定することができ、孔を規定する被駆動磁石の内面にピン131を接着することができる。いくつかの用途において、被駆動磁石は円筒形であり、北極と南極を含み、これらの極は、図示のように円筒形を二等分するライン83に沿って円筒形の長さに沿って相互に分割されている。いくつかの用途において、被駆動磁石は円筒形筐体87の内部に収容されている。通常、ピン131はガイドワイヤ管腔133を規定する。
【0124】
なお、
図7Aに示す用途において、駆動磁石は被駆動磁石の外側に配置されている。しかしながら、本願の範囲は、必要な変更を加え、駆動磁石及び被駆動磁石の構成を逆にすることを含む。例えば、駆動磁石と被駆動磁石とが軸方向に重なるように駆動磁石の周囲に配置された2つ以上の被駆動磁石に、駆動ケーブルの近位端を結合してもよい。
【0125】
上述の通り、通常、パージシステム29(
図1Aに示されている)が、心室補助装置20と共に使用される。通常、モータユニット23は、パージシステムと共に使用するための入口86及び出口88を含む。いくつかの用途において、パージ流体は連続的又は定期的に、入口86を介して心室補助装置内へ送り出されると共に、出口88を介して心室補助装置から排出される。
【0126】
通常、磁石82及びピン131は、モータユニット23内で軸方向に固定された位置に保持される。通常、駆動ケーブルの近位端は、ピン131に結合されることにより、ピンによって軸方向に固定された位置に保持される。通常、駆動ケーブル130はピン131から軸方向シャフト92へ延出し、これによって軸方向シャフトの、更にはインペラ50の軸方向位置を少なくとも部分的に固定する。いくつかの用途において、駆動ケーブルは多少、伸縮可能である。例えば駆動ケーブルは、伸縮可能なコイル状ワイヤで作製することができる。駆動ケーブルは通常、(駆動ケーブルが多少伸長することによって)軸方向シャフト(更にはインペラ)がある範囲の軸方向位置をとることを可能とするが、(駆動ケーブルの近位端が軸方向に固定された位置に保持されることと、駆動ケーブルの伸縮性が限定されていることによって)軸方向シャフト及びインペラの軸方向運動を特定の運動範囲内に制限する。
【0127】
上述の通り、いくつかの用途において、インペラ50及び軸方向シャフト92は、軸方向シャフトを軸方向の前後運動で移動するように能動的に駆動する必要なく、インペラに作用する力に応じて、フレーム34内で軸方向に前後移動するように構成される。通常、対象の心周期の過程で、左心室と大動脈との間の圧力差は、収縮期のほぼゼロから、拡張期の比較的大きな圧力差(例えば、50~70mmHg)まで変化する。いくつかの用途では、拡張期にインペラの送り出しに対する圧力差が大きくなるため(また、駆動ケーブルが伸縮可能であるため)、収縮期のフレーム34に対するインペラの位置に比べ、拡張期のインペラは、フレーム34に対して遠位方向に押される。次に、インペラが軸方向シャフトに接続されていることにより、軸方向シャフトは前方に移動する。収縮期には、インペラ(及び軸方向シャフト)は収縮期位置に戻る。このように、インペラ及び軸方向シャフトの軸方向の前後運動は受動的に生成される、すなわち、軸方向シャフト及びインペラのこの運動を生じるためにそれらの能動的な駆動を必要とせずに生成される。
【0128】
次に、本発明のいくつかの用途による、モータユニット23の概略図である
図7B及び
図7Cを参照する。一般に、
図7B及び
図7Cに示されているモータユニット23は
図7Aに示されているものと同様であり、特に記載のない限り、
図7B及び
図7Cに示されているモータユニット23は、
図7Aに示されているモータユニット23と同様の構成要素を含む。いくつかの用途において、モータユニットは、モータによって生成される熱を放散するように構成されたヒートシンク90を含む。代替的に又は追加的に、モータユニットは、モータによって生じる熱の放散を容易にするように構成された換気口93を含む。いくつかの用途において、モータユニットは、心室補助装置の構成要素の回転運動及び/又は軸方向の前後運動によって引き起こされるモータユニットの振動を減衰させるように構成された振動減衰部94及び96を含む。
【0129】
次に、実験で測定された、心室補助装置のインペラが変動する圧力勾配として、心室補助装置の駆動ケーブルの長さの変動を示すグラフである
図8Aを参照する。本明細書で説明されているインペラ及び駆動ケーブルを用いて、血液と同様の特性(密度及び粘度等)を有するグリセリンベースの溶液を、左心室及び大動脈を再現するように設けられたチャンバを通して送り込んだ。インペラがこのポンピングを行う圧力勾配は、インペラが左心室から大動脈へ血液を送り出す際に通常ポンピングを行う圧力勾配の拍動を表す脈動的な様相で変動させた。同時に、駆動ケーブルの動きを撮像し、画像の分析によって駆動ケーブルの長さの変化を決定した。
図8Aに示されているグラフは、圧力勾配の関数として測定された駆動ケーブルの長さの変化を示す。
図8Aで示されているように、インペラがポンピングを行う圧力勾配が増大するにつれて、駆動ケーブルはますます伸びた。
図8Aに示されている結果が表すように、また上述したように、通常、インペラが血液を送り出している圧力勾配(例えば左心室と大動脈との間の圧力差)の変動に応じて、インペラはフレーム34に対して前後に移動する。次いで、インペラの移動は駆動ケーブル130の伸びを大きくするか又は小さくする。
【0130】
いくつかの用途では、心室補助装置の動作中、制御コンソール21のコンピュータプロセッサ25(
図1A)は、駆動ケーブル130の張力の指示及び/又は駆動ケーブルの軸方向運動を測定することによって、インペラに加わる圧力の指示(これは左心室と大動脈との間の圧力差を示す)を測定するように構成されている。いくつかの用途では、測定された指示に基づいて、コンピュータプロセッサは、対象の心周期におけるイベントを検出する、対象の左心室圧を決定する、及び/又は対象の心後負荷を決定する。いくつかの用途において、コンピュータプロセッサは、インペラの回転及び/又はそれに応じた軸方向シャフトの軸方向前後運動を制御する。
【0131】
再び
図7Aを参照すると、いくつかの用途において、心室補助装置20はセンサ84を含む。例えばセンサは、
図7Aに示されているようにモータユニット23内に配置された磁力計(例えばホールセンサ)を含み得る。(場合によっては、センサ84は磁力計84と呼ばれる。)いくつかの用途では、インペラの軸方向前後運動が、外側の1つ以上の駆動磁石77に対する内側の被駆動磁石82の測定可能な前後運動を発生させる。その理由は、剛性の機械的結合でなく磁気的結合によって、被駆動磁石が駆動磁石に対して所定の位置に保たれるからである。なお、通常、磁石の軸方向運動はインペラの軸方向運動よりも実質的に小さい。これは、インペラの運動の全範囲が駆動ケーブルの長さに沿って伝達されるわけではないからである(駆動ケーブルは通常、ある程度伸長可能である)。いくつかの用途では、駆動ケーブル130の軸方向運動を測定し、次いでインペラがポンピングを行う圧力を決定するため、磁力計は、磁石のうち1つによって発生した磁界の変化を測定する。例えば、内側の被駆動磁石82は外側の駆動磁石77よりも軸方向に長い場合がある。内側の磁石が外側の磁石よりも長いので、内側の磁石から発して外側の磁石まで到達しない磁力線が存在する。駆動ケーブルが軸方向に移動し、次いで内側の磁石が軸方向に移動すると、磁力計で測定されたこれらの磁力線によって発生した磁束は変動する。動作中、モータ74は回転して、典型的に200Hz~800Hzの周波数を有するAC信号を磁力計において生成する。通常、対象の心周期によって駆動ケーブルの張力が変化すると、これは、磁力計で測定される信号において典型的に0.5~2Hzの周波数を有する低周波数エンベロープを発生させる。いくつかの用途において、コンピュータプロセッサは低周波数エンベロープを測定し、測定されたエンベロープから対象の心周期を導出する。
【0132】
いくつかの用途では、インペラがポンピングを行う圧力の単位変化当たりの(すなわち、左心室と大動脈との圧力差の単位変化当たり、又は圧力勾配の単位変化当たりの)磁束変化が既知であるように、磁力計測定は最初に較正される。ほとんどの対象では、収縮期に左心室圧は大動脈圧と等しいことが分かっている。従っていくつかの用途では、対象の大動脈圧を測定し、次いで、所与の時点での対象の左心室圧を計算する。この計算は、(a)測定された大動脈圧、及び(b)その時点で磁力計が測定した磁束と、(左心室の圧力が大動脈の圧力と等しいと仮定される)収縮期中に磁力計が測定した磁束との差に基づいて、コンピュータプロセッサにより行われる。例えば、対象の大動脈圧は、送達カテーテル143によって規定されたチャネル224内の圧力を測定することにより測定すればよい。これについては以下で更に詳しく説明する。いくつかの用途では、上述の技法を用いて、代替的な又は追加的な生理学的パラメータを決定する。例えば、対象の心周期におけるイベント及び/又は対象の心後負荷を決定することができる。
【0133】
いくつかの用途では、上のパラグラフで説明したものと概ね同様の技法を用いるが、磁力計測定の利用の代わりに又はそれに加えて、所与の時点の左心室血圧(及び/又は異なる生理学的パラメータ、例えば対象の心周期におけるイベント及び/又は対象の心後負荷)を決定するため、異なるパラメータが測定される。例えば、通常、所与の回転速度のインペラ回転に動力を供給するために必要な電力(及び/又は電流)量と、インペラが発生する圧力差との間には、関係がある。(なお、インペラが発生する圧力差の一部は、インペラがポンピングを行う圧力勾配を克服するために用いられ、インペラが発生する圧力差の一部は、左心室と大動脈との間に正の圧力差を発生させることにより、左心室から大動脈へ血液をアクティブに送り出すため用いられる。更に、上述の要素間の関係は通常、心周期の過程で変動する。)いくつかの用途では、(a)所与の回転速度でインペラを回転させるのに必要であるモータによる電力(及び/又は電流)消費と(b)インペラが発生する圧力差との間の関係が既知であるように、較正測定が実行される。いくつかの用途では、対象の大動脈圧を測定し、次いで、所与の時点における対象の左心室圧を計算する。この計算は、(a)測定された大動脈圧、(b)その時点において所与の回転速度でインペラを回転させるのに必要であるモータによる電力(及び/又は電流)消費、及び、(c)所与の回転速度でインペラを回転させるのに必要であるモータによる電力(及び/又は電流)消費とインペラが発生する圧力差との間の所定の関係に基づいて、コンピュータプロセッサにより行われる。いくつかの用途では、インペラの回転速度を一定の速度に維持しながら、上述の技法が実行される。代替的に又は追加的に、インペラの回転速度を変動させ、このインペラの回転速度の変動を上述の計算で考慮に入れる。いくつかの用途では、上述の技法を用いて、代替的な又は追加的な生理学的パラメータを決定する。例えば、対象の心周期におけるイベント及び/又は対象の心後負荷を決定することができる。
【0134】
通常、管24は、(管を通る血流のために管が開いた状態にある場合)既知の断面積を有する。いくつかの用途では、インペラにより発生した決定された圧力差と管の既知の断面積とに基づいて、インペラにより発生した管24を通る流量を決定する。いくつかの用途では、そのような流量の計算は、計算が実行される心室補助装置(又は心室補助装置の種類)に固有の流れ抵抗等のファクタを考慮に入れるため、較正パラメータを組み込んでいる。いくつかの用途では、決定された心室圧に基づいて心室圧-容積ループが導出される。
【0135】
再び
図7Aを参照すると、いくつかの用途では、被駆動磁石により発生した磁束密度を測定するよう構成された磁力計84に加えて、第2の磁力計84A(例えば第2のホールセンサ)は、駆動磁石により発生した磁束密度の指示を測定する。いくつかの用途では、第2の磁力計はモータの磁束密度を測定する。モータは駆動磁石を回転するように直接駆動するので、モータの磁束密度は駆動磁石の磁束密度周期を示す。典型的に、インペラが血液を送り出すように回転すると、インペラにトルクが発生する。更に典型的には、トルクの強度は、インペラにより発生した流れ、インペラの回転速度、及び/又はインペラがポンピングを行う圧力勾配等、様々なパラメータに依存する。いくつかの用途において、インペラに発生したトルクは、外側の駆動磁石77に対して内側の被駆動磁石82に測定可能トルクを発生させる。これは、剛性の機械的結合でなく磁気的結合によって被駆動磁石が駆動磁石に対して所定の位置に保たれるからである。通常、インペラに発生するトルクは駆動ケーブルの長さに沿って伝達されないので、被駆動磁石に発生するトルクはインペラに発生するものよりも実質的に小さい。しかしながら、通常、インペラに発生するトルクは少なくとも部分的に駆動ケーブルを介して被駆動磁石に伝達される。
【0136】
被駆動磁石に伝達されたトルクは通常、磁力計84(被駆動磁石の磁束密度を測定する)により測定される信号と、第2の磁力計84A(モータ及び/又は駆動磁石の磁束密度を測定する)により測定される信号との間の位相差を発生させる。いくつかの用途において、インペラのトルクが変動すると、これは、磁力計84により測定される信号と第2の磁力計84Aにより測定される信号との間の位相差を変動させる。いくつかの用途において、コンピュータプロセッサは、上記の位相差の変動を検出し、少なくとも部分的にそれに応じて、対象の生理学的パラメータを決定する。例えば、少なくとも部分的に位相差の変動に基づいて、コンピュータプロセッサは、対象の左心室圧と対象の大動脈圧との差、対象の左心室圧、対象の心周期におけるイベント、対象の心後負荷、及び/又は異なる生理学的パラメータを決定することができる。いくつかの用途では、このパラグラフで説明されている技法は、生理学的パラメータを決定するための磁束密度測定及び/又は電力消費測定を用いる上述の技法に対する代替案として用いられる。あるいは、これらの技法のうち2つ以上が相互に組み合わせて用いられる。例えば、2つ以上の測定を組み込んだ数学モデルに基づいて対象の生理学的パラメータを決定することができ、及び/又は、これらの技法のうち1つを用いて、技法のうち別のものを用いて行われる対象の生理学的パラメータの推定を有効にすることができる。
【0137】
これより、本発明のいくつかの用途に従った、位相差信号と、インペラ50がポンピングを行う圧力勾配との間の相関を実証するグラフである
図8B及び
図8Cを参照する。
【0138】
図8Bに示されているグラフは、本明細書に記載されている心室補助装置を用いて静的インビトロシステム内で各圧力勾配に対して血液を送り出した実験の結果を示す(すなわち、各測定値を取得する際、圧力勾配は一定であった)。線形回帰モデルを用いて、位相差信号、磁束振幅信号、及びモータにより消費された電流の組み合わせに基づき、インペラがポンピングを行う圧力勾配を推定した。
図8Bに示されているグラフは、推定圧力勾配対測定圧力勾配を示す。図示のように、位相差測定を組み込んでいる線形回帰モデルは、インペラがポンピングを行う圧力勾配を推定するための信頼性の高い方法を提供する。
【0139】
図8Cに示されているグラフは、本明細書に記載されている心室補助装置を用いてパルスインビトロシステム内で各圧力勾配に対して血液を送り出した実験の結果を示す(すなわち、圧力勾配を脈動的に変動させた)。空間状態モデルを用いて、位相差信号、磁束振幅信号、及びモータにより消費された電流の組み合わせに基づき、インペラがポンピングを行う圧力勾配を推定した。
図8Cに示されているグラフは、測定圧力勾配上に重ね合わせた推定圧力勾配を示す。図示のように、位相差測定を組み込んでいる空間状態モデルは、インペラがポンピングを行う圧力勾配を推定するための信頼性の高い方法を提供する。
【0140】
上記のことに従って、また、本発明のいくつかの用途に従って、1つ以上の非駆動磁石と1つ以上の駆動磁石との間の磁気位相差が測定され、少なくとも部分的にそれに応じて対象の生理学的パラメータが決定される。例えば、少なくとも部分的に位相差の変動に基づいて、コンピュータプロセッサは、対象の左心室圧と対象の大動脈圧との差、対象の左心室圧、対象の心周期におけるイベント、対象の心後負荷、及び/又は異なる生理学的パラメータを決定することができる。いくつかの用途では、例えば磁束振幅測定、モータにより消費される電力、及び/又はモータにより消費される電流のような1つ以上の追加の測定と組み合わせた位相差測定に基づいて、生理学的パラメータを決定する。通常、このような測定は、線形回帰モデル及び/又は空間状態モデル等の数学モデルに組み合わされる。
【0141】
これより、本発明のいくつかの用途に従った、1つ以上の血圧測定管222及び/又はファイバ228を含む心室補助装置の概略図である
図9A及び
図9Bを参照する。
【0142】
図9Aは、本発明のいくつかの用途に従った、1つ以上の血圧測定管222を含む心室補助装置の概略図である。上述したように、通常、心室補助装置はポンプ出口管24を含み、このポンプ出口管24は、対象の大動脈弁を横断して、管の近位端が対象の大動脈内に配置されると共に管の遠位端が対象の左心室内に配置されるようになっている。通常、血液ポンプ(典型的にインペラ50を含む)は対象の左心室内で管24内に配置され、左心室から対象の大動脈へ管24を介して血液を送り出すように構成されている。いくつかの用途において、心室血圧測定管222は、少なくとも管24の外面213まで延出して、血圧測定管の遠位端の開口214が管24外部の患者の血流と直接流体連通するように構成されている。通常、開口214は、対象の左心室内で血液ポンプに対して近位(例えばインペラ50に対して近位)であるように構成されている。圧力センサ216(
図1Aに概略的に示されている)は、心室血圧測定管内の血液の圧力を測定する。通常、左心室血圧測定管内の血液の圧力を測定することにより、圧力センサは、管24外部の被験者の血圧(すなわち左心室血圧)を測定する。通常、血圧測定管222は、対象体の外部から管の遠位端の開口214まで延出し、圧力センサ216は、管の近位端の近くに、例えば対象体の外部に配置される。いくつかの用途において、コンピュータプロセッサ25(
図1A)は、測定された血圧の指示を受信し、測定された血圧に応じて、インペラによる血液の送り出しを制御する。
【0143】
いくつかの用途において、心室補助装置は、例えば
図9Aで示されているように、2つ以上のそのような心室血圧測定管222を含む。いくつかの用途では、左心室血圧測定管の各々内で測定された血圧に基づいて、コンピュータプロセッサ25は、2つ以上の心室血圧測定管のうち1つの開口が閉塞されているか否かを判定する。これは例えば、開口が心室中隔の壁及び/又は異なる心室内の部分に接触することによって発生し得る。通常、2つ以上の心室血圧測定管のうち1つの開口が閉塞されているという判定に応じて、コンピュータプロセッサは、2つ以上の心室血圧測定管のうち異なるものの内部で測定された血圧に基づいて、対象の左心室圧を決定する。
【0144】
いくつかの用途において、外側管142は、管24内に配置されるよう構成された外側管の外面の一部に溝215を規定する。通常、心室補助装置を対象の体内へ挿入する際、管24内から少なくとも管24の外面まで延出する心室血圧測定管222の部分は、溝内に配置されて、心室血圧測定管のこの部分が外側管の外面から突出しないように構成されている。
【0145】
いくつかの用途(図示せず)では、血圧測定管222の遠位部はポンプ出口管24の外側に配置される。例えば、血圧測定管222は外側管142からポンプ出口管24の近位端まで延出し、その後、ポンプ出口管24の外面に組み込むことができる。これは例えば、援用により本願に組み込まれるTuvalの米国特許第10,881,770号の
図16Dに示されている。
【0146】
上述したように、いくつかの用途において、駆動ケーブル130は、対象体の外部のモータから、インペラ50が配置されている軸方向シャフト92まで延出する。通常、駆動ケーブルは、上述したように、第1の外側管140及び第2の外側管142内に配置されている。いくつかの用途では、
図9Aの断面図で示されているように、血圧測定管222の近位部は第1の外側管140と第2の外側管142との間のチャネルを含む。なお、この点で、血圧測定管は、圧力センサ216から対象の左心室内のポンプ出口管24の外側まで延出する連続管腔を表すと理解するべきである。これは、管腔の長さに沿って管腔の構造が変化するか否かとは無関係である。上述したように、通常、外側管140と外側管142との間にはパージ流体も送り込まれ、いくつかの用途では、パージ流体はチャネル226を介して送り込まれる。通常、
図9Aで示されているように、血圧測定管222は、パージ流体チャネル226よりも、外側管140と外側管142との間に規定された断面積の多くを占める。例えば、(a)血圧測定管が占める外側管140と外側管142との間に規定される断面積と、(b)パージ流体チャネル226が占める外側管140と外側管142との間に規定される断面積との比は、典型的に、3:2より大きい、3:1より大きい、又は5:1より大きい。いくつかの用途では、対象の左心室内のポンプ出口管24の外部の血圧を圧力センサ216へ近位に伝達するため、血圧測定管は、外側管140と外側管142との間に規定される断面積の比較的大きい割合を占める。
【0147】
図9Bを参照すると、いくつかの用途において、光ファイバ228は、管24の少なくとも外面213まで延出して、光ファイバの遠位端230が管24の外部の患者の血流に直接露呈されるように構成されている。典型的に、光ファイバは、対象体の外部にあるファイバの近位端(例えばモータユニット23内)から遠位端230まで延出する。更に典型的には、光源と光検出器(図示せず)が光ファイバの近位端に配置され、光ファイバを介して光を誘導すると共に反射光を検出することによって、光ファイバの遠位端における血圧を検出するように構成されている。
【0148】
通常、光ファイバ228の遠位端230は、対象の左心室内で血液ポンプに対して近位(例えばインペラ50に対して近位)であるように構成されている。通常、光ファイバ228の遠位端230の血液の圧力を測定することにより、圧力センサは、管24外部の被験者の血圧(すなわち左心室血圧)を測定する。いくつかの用途において、コンピュータプロセッサ25(
図1A)は、測定された血圧の指示を受信し、測定された血圧に応じて、インペラによる血液の送り出しを制御する。
【0149】
いくつかの用途では、例えば
図9Bで示されているように、心室補助装置は2つ以上のそのような光ファイバ228を含む。いくつかの用途では、光ファイバの各々を用いて測定された血圧に基づいて、コンピュータプロセッサ25は、光ファイバのうち1つの遠位端が左心室血流に露呈されていないか否かを判定する。これは例えば、光ファイバのうち1つの遠位端が心室中隔の壁及び/又は異なる心室内の部分に接触することによって発生し得る。通常、光ファイバのうち1つの遠位端が左心室血流に露呈されていないという判定に応じて、コンピュータプロセッサは、2つ以上の光ファイバ228のうち異なるものを用いて測定された血圧に基づいて、対象の左心室圧を決定する。
【0150】
いくつかの用途では、外側管142の長さに沿って、光ファイバは外側管内に配置されている。通常、外側管の遠位端で、光ファイバはフレーム34の近位円錐部36に結合され、光ファイバがポンプ出口管24の外面まで半径方向に延出するようになっている。例えば
図9Bで示されているように、光ファイバは、結合要素232(例えば糸)を用いてフレーム34の近位円錐部に縫合又は縛ることができる。いくつかの用途(図示せず)では、光ファイバ228の遠位部はポンプ出口管24の外側に配置されている。例えば(図示せず)、光ファイバ228は外側管142からポンプ出口管24の近位端まで延出し、その後、ポンプ出口管24の外面に結合することができる。
【0151】
血圧測定管222及び光ファイバ228の双方を参照すると、この管又はファイバの遠位端は通常、1又は複数の血液流入口108の最も近位の部分に対して近位の位置(例えば、1又は複数の血液流入口108の最も近位の部分に対して少なくとも1cm又は少なくとも1.5cm近位の位置)で、対象の左心室血流と直接流体連通していることに留意するべきである。このため、通常、管又はファイバの遠位端が露呈される血液の圧力は、左心室自体の血圧を反映し、血液流入口で発生する流体流動力学の結果として血液流入口の近くで発生した圧力変動による影響を受けない。
【0152】
上述した技法に従って、通常、コンピュータプロセッサ25は、例えば、心室補助装置を介した流れを決定するための本明細書に記載されている技法のうちいずれか1つを、左心室圧を決定するための本明細書に記載されている技法のうちいずれか1つと組み合わせて用いて、対象の左心室の圧力及び流れに関連したパラメータを決定するように構成されている。いくつかの用途では、上述のパラメータを用いて、コンピュータプロセッサは、対象の本来の心拍出量(すなわち1回拍出量)、総心拍出量、動脈コンプライアンス、及び/又は末梢抵抗を推定するように構成されている。いくつかの用途では、大動脈及び/又は左心室を動的血管系として表す数学モデルを用いて上述のパラメータが決定される。
【0153】
例えば、大動脈のウィンドケッセルモデルに従って、大動脈内の流れと圧力との関係を以下の式によって記述することができる。
【0154】
【0155】
ここで、p(t)、Q(t)はそれぞれ瞬時動脈圧及び流量であり、変数C、ZC、Rはそれぞれ、大動脈コンプライアンス、特性インピーダンス、及び末梢抵抗である。
【0156】
心室補助装置20の動作中、式1を以下のように書き直すことができる。
【0157】
【0158】
ここで、n、pはそれぞれ、流量及び大動脈圧に対する本来の心機能及び心室補助装置の機能の寄与を表す。
【0159】
いくつかの用途では、第1のステップにおいて、対象の血管パラメータ(C、ZC、R)を推定する。これを行うため、1つ以上の血管パラメータ決定期間中に、インペラを回転させる速度を変動させる。通常、1又は複数の血管パラメータ決定期間は、少数の心周期(例えば1~10又は2~6の心周期)の持続時間、又は少数の心周期(例えば1~10又は2~6の心周期)の心臓拡張期のみの間である。1又は複数の血管パラメータ決定期間中、対象のパラメータは実質的に不変のままであると仮定される。(あるいは、インペラを回転させる速度の変化によって生じた対象の血管パラメータの変化は、そのような変化をモデル化する数学モデルを用いて説明される。)
【0160】
心室補助装置の2つの動作条件(すなわち、インペラが通常動作速度で動作している場合と、インペラが1又は複数の血管パラメータ決定期間中に変動させた速度で回転している場合)では、式2を式3及び4に書き直すことができる。下付き文字に含まれる1及び2の表記は、第1及び第2の動作条件を表す。
【0161】
【0162】
式3から式4を減算することによって、血管系に対する心室補助装置の効果を式5におけるように特徴付けることができる。
【0163】
【0164】
上述した技法に従って、通常、コンピュータプロセッサ25は、例えば、心室補助装置を介した流れを決定するための本明細書に記載されている技法のうちいずれか1つを、左心室圧を決定するための本明細書に記載されている技法のうちいずれか1つと組み合わせて用いて、対象の左心室の圧力及び流れに関連したパラメータを決定するように構成されている。従って、血管パラメータ(大動脈コンプライアンス、特性インピーダンス、及び末梢抵抗)のみが未知である。通常、対象の左心室の圧力及び流れに関連したパラメータの既知の値を用いて、例えばモデル識別技法(線形回帰等)を使用することで、対象の血管パラメータ(大動脈コンプライアンス、特性インピーダンス、及び末梢抵抗)を推定する。
【0165】
いくつかの用途では、対象の血管パラメータを推定した後、対象の左心室の圧力及び流れに関連したパラメータ(これらは通常、本明細書に説明されているセンサを用いてリアルタイムで決定される)、並びに、対象の血管パラメータ(これらは上述したようにインペラを回転させる速度を変動させることにより決定される)を用いて、式3に基づいて総心拍出量及び対象の本来の心拍出量を推定する。
【0166】
いくつかの用途では、上述したものと概ね同様の技法が用いられるが、例えば、血管パラメータ、本来の心拍出量、及び/又は代替的もしくは追加的な生理学的パラメータを決定するため、対象の動的血管系(例えば対象の大動脈及び/又は対象の左心室)を表す異なる数学モデルを用いる。通常、数学モデルは、1回拍出量と大動脈コンプライアンスとの相互作用に関して大動脈波形の形状を考慮する点で、ウィンドケッセルモデルと同じタイプである。
【0167】
一般に、本出願の範囲は方法を含む。この方法では、
a)本明細書に記載されている検知装置及び方法のうち1つ以上を用いて、1つ以上の圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータ(例えば、対象の大動脈圧、対象の左心室圧、及び/又は心室補助装置を通る流れ)を決定する;
b)1つ以上の血管パラメータ決定期間中に、インペラを回転させる速度を変動させる;
c)対象の動的血管系(例えば対象の大動脈及び/又は対象の左心室)を表す数学モデルを、心室補助装置の2つの動作条件(すなわち、インペラが通常動作速度で動作している場合と、インペラが1又は複数の血管パラメータ決定期間中に変動させた速度で回転している場合)に適用する;
d)心室補助装置の2つの動作条件の各々における数学モデル間の差、並びに、既知の圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータに基づいて、対象の血管パラメータ(例えば大動脈コンプライアンス、特性インピーダンス、及び末梢抵抗)を推定する;
e)既知の圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータ、並びに、対象の推定された血管パラメータ(例えば大動脈コンプライアンス、特性インピーダンス、及び末梢抵抗)に基づいて、対象の本来の心拍出量及び/又は追加の心臓パラメータを推定する。
【0168】
更に一般的には、上記のステップは以下のように要約することができる。
a)経皮左心室補助装置を用いて、対象の左心室から対象の大動脈へ血液を送り出す;
b)経皮左心室補助装置を用いて(例えば本明細書に記載されている検知のための装置及び方法を用いて)、1つ以上の圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータを検出する;
c)1つ以上の血管パラメータ決定期間中に、経皮左心室補助装置によって血液を送り出す速度を変動させ、経皮左心室補助装置が各速度で血液を送り出している場合に、対象の動的血管系を表す数学モデルを適用する;
d)経皮左心室補助装置が各速度で血液を送り出している場合に適用された数学モデル間の差、並びに、圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータに基づいて、対象の血管パラメータを推定する;
e)圧力関連パラメータ及び/又は流れ関連パラメータ、並びに、対象の推定された血管パラメータに基づいて、対象の本来の心拍出量及び/又は追加の心臓パラメータを推定する。
【0169】
上述のステップは通常、必要な回数だけ心室補助装置の動作中に繰り返される。
【0170】
次に、本発明のいくつかの用途による、インペラ50を収容するフレーム34の内側を裏打ちする内張り39を含む心室補助装置20の概略図である
図10A及び
図10Bを参照する。いくつかの用途では、インペラによって血液が送り出される際に通過する滑らかな内面(例えば、実質的に円形の断面形状を有する滑らかな内面)を提供するため、フレーム34の内側に内張り39が配置されている。通常、滑らかな表面を提供することにより、インペラとフレーム34のストラットとの間に血液が送り出される場合に比べ、被覆材料は、インペラによる血液の送り出しによって引き起こされる溶血を低減させる。いくつかの用途において、内張りは、ポリウレタン、ポリエステル、及び/又はシリコーンを含む。代替的に又は追加的に、内張りは、ポリエチレンテレフタレート(PET)及び/又はポリエーテルブロックアミド(例えば、PEBAX(登録商標))を含む。
【0171】
通常、内張りは、フレーム34の中央円筒部38の少なくとも一部の内面上に配置される。いくつかの用途では、ポンプ出口管24もフレームの外側でフレーム34の中央円筒部38を覆っており、例えば、ポンプ出口管24及び内張り39は、内張りの長さの少なくとも50パーセントにわたって、例えば
図10Aで示されているようにフレーム34の円筒部の全長にわたって、重なるようになっている。いくつかの用途では、例えば
図10Bで示されているように、ポンプ出口管24と内張り39とは一部分のみが重なっている。例えば、ポンプ出口管24は、内張りの長さの50パーセント未満(例えば25パーセント未満)にわたって内張りと重なる。いくつかのそのような用途では、心室補助装置20を対象体に挿入する際、インペラをフレーム34内で遠位方向に前進させて、ポンプ出口管と内張りとの重なりエリア内にインペラが配置されないように、インペラ、ポンプ出口管24、フレーム34、及び内張り39が全て相互に重なる縦方向位置が存在しないようにする。
図10A及び
図10Bで示されているように、いくつかの用途では、ポンプ出口管及び/又は内張りの遠位端に、軸方向に向かう単一の血液流入口108が規定される。あるいは、内張りはフレーム34の中央円筒部38の少なくとも一部の内面上に配置され、ポンプ出口管はフレームの遠位端まで延出して複数の横方向血液流入口108を規定する。このような用途については、以下で例えば
図11Aから
図11Eを参照して更に詳しく説明する。
【0172】
典型的に、内張り39とポンプ出口管24との重なりエリアでは、内張りは滑らかな表面を形成するような形状を有し(例えば、上述のように溶血を低減するため)、ポンプ出口管24はフレーム34のストラットと一致するような形状を有する(例えば、
図10Aの断面に示されているように)。更に典型的には、内張りは実質的に円形の断面を有する(例えば、
図2を参照して上述したように、フレームの中央円筒部内のセルが比較的小さいため)。いくつかの用途では、内張り39とポンプ出口管24との重なりエリアでは、ポンプ出口管及び内張りは、例えば真空によって、接着剤によって、及び/又は、熱成形手順を用いて、相互に結合される。
【0173】
いくつかの用途において、内張り39及びポンプ出口管24は異なる材料で作製される。例えば、内張りをポリウレタンで作製し、ポンプ出口管をポリエーテルブロックアミド(PEBAX(登録商標))で作製することができる。通常、そのような用途では、内張りを作製する材料は、ポンプ出口管を作製する材料よりも高い熱成形温度を有する。あるいは、内張り39及びポンプ出口管24は同じ材料で作製される。例えば、内張り及びポンプ出口管の双方を、ポリウレタン又はポリエーテルブロックアミド(PEBAX(登録商標))で作製することができる。
【0174】
いくつかの用途において、ポンプ出口管と内張りは以下のように相互に及び/又はフレームに結合される。いくつかの用途では、内張りをフレームの内面に直接結合し、その後、ポンプ出口管をフレームの外側に結合する。なお、(単に内張りをポンプ出口管に結合し、これによって内張りとポンプ出口管との間にフレームを挟むのではなく)内張りをフレームの内面に直接結合することにより、通常、気泡、折り目、及びその他の、内張りによって与えられる表面の滑らかさの中断が回避される。いくつかの用途では、インペラのエラストマー膜と螺旋状の細長い要素との結合を強化するための上述したものと同様の技法を用いて、内張りとフレームの内面との結合を強化する。いくつかの用途では、最初に、内張りとフレームの内面との結合を強化するようにフレームを処理する。いくつかの用途では、フレームの処理は、フレームに(例えばフレームの内面に)プラズマ処理を行うこと、フレーム及び内張りが作製される材料のそれぞれに結合するよう構成された少なくとも2つの官能基を有する結合剤(例えばシラン溶液)にフレームを浸すこと、及び/又は、内張りが作製される材料を含有する溶液(例えばポリウレタン溶液)にフレームを浸すことを含む。いくつかの用途では、内張りはエラストマー材料(例えばポリウレタン)で作製され、結合剤はシラン溶液である。シラン溶液は例えば、n-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランの溶液であり、シランは、フレーム(典型的に、ニチノール等の合金で作製される)と結合するよう構成された第1の官能基(例えば(OH))を含有し、更に、エラストマー材料と結合するよう構成された第2の官能基(例えば(NH2))を含有する。
【0175】
いくつかの用途では、この後、フレームの中央円筒部に、内張りが作製される材料を含有する溶液(例えばポリウレタン溶液)をスプレーする。一度フレームの内面が処理されたら、フレームの中央円筒部の内面に(例えばフレームの中央円筒部の内面に)内張りを結合する。典型的には、マンドレル上に内張り(管の形状を有する)を配置し、内張り上にフレームを配置し、熱収縮プロセスによって圧力を加える。更に典型的には、内張りとフレームのアセンブリをオーブンで加熱する。
【0176】
フレームに内張りを結合した後、フレームの外側の周りにポンプ出口管24の一部を配置する。上述のように、いくつかの用途では、内張り39及びポンプ出口管24は異なる材料で作製される。例えば、内張りはポリウレタンで作製され、ポンプ出口管はポリエーテルブロックアミド(PEBAX(登録商標))で作製され得る。通常、そのような用途では、内張りを作製する材料は、ポンプ出口管を作製する材料よりも高い熱成形温度を有する。いくつかの用途では、内張りを変形させることなく、フレーム34のストラットと一致するようポンプ出口管24を成形するため、ポンプ出口管24の熱形成温度より高いが内張り39の熱形成温度より低い温度にフレームを加熱する。
【0177】
通常、フレームは、マンドレルを用いてフレームの内側から加熱される。通常、フレームを上述の温度に加熱している間、
図10Aの断面図で示されるように、ポンプ出口管をフレームのストラットの形状と一致させるため、外側管(典型的にはシリコーンで作製される)が、ポンプ出口管24を半径方向内側へ押す圧力をポンプ出口管24に加える。いくつかの用途では、この段階において、内張りの内側に配置されて内張りを加熱するマンドレルは、内張りの長さよりも短い。マンドレルは通常、内張りの各端部でマンドレルの外側にマージンが残るように内張り内に配置される。通常、内張りは、マンドレルの加熱によってポンプ出口管が過熱して損傷を受けることから保護するための遮蔽物として作用する。上述のようにマンドレル上に内張りを配置することで、マンドレルがフレーム及び/又はポンプ出口管と直接接触するのを防ぐ。いくつかの用途では、この後、フレーム、内張り、及びフレームの周りに配置されたポンプ出口管24の部分の組み合わせは、当技術分野において既知の形状設定技法を用いて、所望の形状及び寸法に形状設定される。
【0178】
次に、本発明のいくつかの用途による、遠位端に横方向血液流入口108を規定するように構成されたポンプ出口管24又はその一部の概略図である
図11Aから
図11Cを参照する。いくつかの用途では、ポンプ出口管は実質的にフレーム34の遠位円錐部40の遠位端まで延出する。そのような用途では、ポンプ出口管は通常、遠位に面している遠位円錐部46、すなわち、円錐の狭端が円錐の広端に対して遠位に位置するような向きの遠位円錐部46を規定する。通常、ポンプ出口管は、ポンプ出口管から遠位に延出する結合部41(例えば図示のような管状結合部)を含む。上述のように、結合部は、ポンプ出口管の遠位端を固定するため、遠位軸受部筐体に結合されている。
【0179】
いくつかの用途(図示せず)では、ポンプ出口管は2つから4つの横方向血液流入口を規定する。典型的に、このような用途では、血液流入口の各々は、20平方ミリメートル超(例えば30平方ミリメートル超)、及び/又は60平方ミリメートル未満(例えば50平方ミリメートル未満)の面積、例えば、20~60平方ミリメートル又は30~50平方ミリメートルの面積を規定する。代替的に又は追加的に、出口管は、より多くの、より小さい血液流入口108を規定する。例えば、10超の血液流入口、50超の血液流入口、100超の血液流入口、又は150超の血液流入口、例えば、50~100の血液流入口、100~150の血液流入口、又は150~200の血液流入口を規定する。いくつかの用途において、血液流入口の大きさは、(a)対象の左心室から管内への血流を可能とするような、かつ(b)対象の左心室からの構造がフレーム内へ進入するのを阻止するようなものである。通常、そのような用途では、ポンプ出口管24の遠位円錐部46は、左心室からの構造(腱索、肉柱、及び/又は乳頭筋等)がフレーム34内へ進入して、インペラ及び/又は軸方向シャフトによって損傷を受けるリスク、及び/又は左心室補助装置に損傷を与えるリスクを低減するように構成されている。従って、いくつかの用途において、血液流入口は、少なくとも1つの方向における流入口の幅(又はスパン)が1mm未満であり、例えば0.1~1mm又は0.3~0.8mmであるような形状を有する。このような小さい幅(又はスパン)を規定することにより、通常、左心室からの構造(腱索、肉柱、及び/又は乳頭筋等)はフレーム34内への進入が阻止される。いくつかのそのような用途では、血液流入口の各々は、0.05平方ミリメートル超(例えば0.1平方ミリメートル超)、及び/又は3平方ミリメートル未満(例えば1平方ミリメートル未満)の面積、例えば、0.05~3平方ミリメートル又は0.1~1平方ミリメートルの面積を規定する。代替的に、血液流入口の各々は、0.1平方ミリメートル超(例えば0.3平方ミリメートル超)、及び/又は5平方ミリメートル未満(例えば1平方ミリメートル未満)の面積、例えば、0.1~5平方ミリメートル又は0.3~1平方ミリメートルの面積を規定する。
【0180】
通常、血液流入口を規定するポンプ出口管の部分は、40パーセント超の多孔度を有し、例えば50パーセント超、又は60パーセント超の多孔度を有する(多孔度は、血流に対して浸透性であるこの部分の面積の百分率として定義される)。従って、一方では、血液流入口は比較的小さい(左心室からの構造がフレームに侵入するのを防ぐため)が、他方では、血液流入口を規定するポンプ出口管の部分の多孔度は比較的高く、ポンプ出口管内への充分な血流を可能とするようになっている。
【0181】
いくつかの用途では、各血液流入口は円形又は多角形の形状を有する。いくつかの用途では、
図11Aから
図11Dで示されているように、各血液流入口は六角形の形状を有する。通常、六角形の形状を有する開口を用いると、血液流入口を規定するポンプ出口管の部分が、(例えば上述のような)比較的高い多孔度を有すると同時に、血液流入口を規定するポンプ出口管の部分で、血液流入口間に充分な材料を与えて、材料の引き裂き及び/又は伸長を防止することができる。
図11Bで示されているように、いくつかの用途では、隣接する六角形(又は他の多角形)の孔間の間隙の幅Wは、0.01mm超(例えば0.04mm超)、及び/又は0.1mm未満(例えば0.08mm未満)、例えば0.01~0.1mm又は0.04~0.08mmである。いくつかの用途では、六角形(又は他の種類の多角形)の各々の向かい合う辺の間の距離Dは、0.2mm超(例えば0.4mm超)、及び/又は0.8mm未満(例えば0.6mm未満)、例えば0.2~0.8mm又は0.4~0.6mmである。
図11Bで示されているように、通常、各多角形は円を取り囲む(このような円を通過できない構造は多角形を通過することができない)。通常、多角形で取り囲まれた円の直径は距離Dと同等であり、例えば0.2mm超(例えば0.4mm超)、及び/又は0.8mm未満(例えば0.6mm未満)、例えば0.2~0.8mm又は0.4~0.6mmである。
【0182】
図11Dは、本発明のいくつかの用途によるポンプ出口管24の遠位円錐部46の一部を示す。
図11Dに示されている図では、説明の目的のため、この部分は平らに広げられている。
図11Dで示されているように、いくつかの用途では、ポンプ出口管24の遠位円錐部46の近位領域46P内において、六角形(又は他の種類の多角形)の孔間の間隙の幅W1は、ポンプ出口管の遠位円錐部46の遠位領域46D内における六角形(又は他の種類の多角形)の孔間の間隙の幅Wよりも大きい。いくつかの用途では、ポンプ出口管の遠位部の近位領域内における隣接する血液流入口間の間隙の幅とポンプ出口管の遠位部の遠位領域内における隣接する血液流入口間の間隙の幅との比は、3:2より大きく、例えば3:2~5:2である。通常、そのような用途では、ポンプ出口管24の遠位円錐部46の近位領域46P内において、六角形(又は他の種類の多角形)の各々の向かい合う辺の間の距離D1は、ポンプ出口管の遠位円錐部46の遠位領域46D内における六角形(又は他の種類の多角形)の各々の向かい合う辺の間の距離Dよりも小さい。(上述のように、通常、距離D及びD1は、それぞれの大きさの多角形で取り囲まれた円の直径も表す。)いくつかの用途では、ポンプ出口管の遠位部の遠位領域内における各血液流入口で取り囲まれた円の直径とポンプ出口管の遠位部の近位領域内における各血液流入口で取り囲まれた円の直径との比は、7:6より大きく、例えば7:6~4:3である。更に典型的には、遠位領域46D内で、ポンプ出口管24の遠位円錐部は、ポンプ出口管の遠位円錐部46の近位領域46P内よりも高い多孔度を有する。例えば、遠位領域46D内の多孔度と近位領域46P内の多孔度との比は、4:3より大きく、又は3:2より大きい。いくつかの用途において、近位領域が延出する長さは、0.5mm超、及び/又は2mm未満(例えば1.5mm未満)、例えば0.5~2mm又は0.5~1.5mmである。いくつかの用途において、遠位円錐部の全長は、6mm超及び/又は12mm未満(例えば10mm未満)、例えば6~12mm又は6~10mmである。
【0183】
図9Aから
図9Bを参照して上述したように、通常、ポンプ出口管は加熱によってフレーム34に結合される。いくつかの用途において、ポンプ出口管24の遠位円錐部46の近位領域46P内では、遠位領域46D内に比べ、血液流入口孔の間隙は広く、及び/又は血液流入孔は小さく、及び/又は多孔度は低い。これは、上述の加熱プロセスの間に、血液流入孔を規定する材料に生じ得る損傷(例えば引き裂き、菲薄化、及び/又は伸長)を防止及び/又は軽減するためである。いくつかの用途では、上述の加熱プロセスを用いた結果として、遠位領域46Dと近位領域46Pとの血液流入口間の間隙の大きさ及び/又は血液流入口自体の大きさ及び/又は多孔度の差は、低減するか、又は除去される。
【0184】
通常、ポンプ出口管の遠位円錐部46の遠位領域46D内における六角形(又は他の種類の多角形)の孔間の間隙の幅W、及び六角形(又は他の種類の多角形)の各々の向かい合う辺の間の距離Dは、上述のようなものである。いくつかの用途では、ポンプ出口管24の遠位円錐部46の近位領域46P内における隣接する六角形(又は他の多角形)の孔間の間隙の幅W1は、0.05mm超(例えば0.07mm超)、及び/又は0.2mm未満(例えば0.15mm未満)、例えば0.05~0.2mm又は0.07~0.15mmである。いくつかの用途では、ポンプ出口管24の遠位円錐部46の近位領域46P内における六角形(又は他の種類の多角形)の各々の向かい合う辺の間の距離D1は、0.1mm超(例えば0.3mm超)、及び/又は0.6mm未満(例えば0.5mm未満)、例えば0.1~0.6mm又は0.3~0.5mmである。
【0185】
本開示の範囲は、ポンプ出口管の遠位円錐部46に沿って任意の配列に配置された、不均一な大きさ及び/又は形状の横方向血液流入口(例えば円形、矩形、多角形、及び/又は六角形の横方向血液流入口)を有することを含む。同様に、本開示の範囲は、横方向血液流入口を規定するポンプ出口管の遠位円錐部46を含み、この遠位円錐部の異なる領域で変動する不均一な多孔度を有するように横方向血液流入口が配列されている。いくつかの用途では、横方向血液流入口の形状及び/又は大きさ、及び/又は遠位円錐部の多孔度は、遠位円錐部の異なる領域における様々な血流ダイナミクスに対応するように変動する。代替的に又は追加的に、横方向血液流入口の形状及び/又は大きさ、及び/又は遠位円錐部の多孔度は、遠位円錐部の長さに沿った形状の変化に対応するように変動する。
【0186】
これより、ポンプ出口管24の遠位端と遠位先端要素107との間の界面の拡大概略図である
図11Eを参照する。通常、ポンプ出口管は、ポンプ出口管から遠位に延出する結合部41(例えば図示のような管状結合部)を含む。上述したように、結合部は、ポンプ出口管の遠位端を固定するため遠位軸受部筐体118Hに結合される。更に上述したように、通常、ポンプ出口管はフレームの中央円筒部の外側に結合される。いくつかの用途では、ポンプ出口管の遠位円錐部46自体はフレームの遠位円錐部40に結合されない。結合部41を遠位軸受部筐体118Hに結合すると共にポンプ出口管をフレームの中央円筒部の外側に結合することにより、ポンプ出口管の遠位円錐部46はフレームの遠位円錐部40に対して所定の位置に保持される。あるいは、ポンプ出口管の遠位円錐部46は、(例えば熱収縮によって)フレームの遠位円錐部40に直接結合される。
【0187】
上述したように、いくつかの用途において、結合部41は遠位軸受部筐体118Hの部分123の外面に結合される。いくつかの用途では、
図11Eで示されているように、結合部41は(結合部の遠位端の近くに)孔111を規定する。いくつかの用途では、この孔を介して、結合部41と遠位軸受部筐体118Hの部分123の外面との間に接着剤を塗布する。いくつかの用途では、遠位軸受部筐体118Hの部分123の外面にねじ山が形成されている。典型的に、ねじ山が形成された外面によって、結合部41と遠位軸受部筐体118Hの部分123の外面との間で接着剤を徐々に均一に広げることができる。更に典型的には、結合部を通して接着剤の広がりが見えるように、結合部は透明である。従って、いくつかの用途では、一度、結合部41と遠位軸受部筐体118Hの部分123の外面との間に接着剤が充分に広がったら(一度、部分123の外面が接着剤で覆われたら)、接着剤の塗布を終了する。
【0188】
これより、本発明のいくつかの用途に従った、心室補助装置20の駆動ケーブル130の概略図である
図12A、
図12B、及び
図12Cを参照する。通常、モータの回転運動は、駆動ケーブルを介して軸方向シャフトへ伝達される。通常、駆動ケーブルは、モータユニット23(これは通常、対象体の外側に配置される)から、軸方向シャフト92の近位端まで延出する(駆動ケーブルの遠位端と軸方向シャフトの近位端との接続は、例えば
図5Aの拡大部の1つに示されている)。いくつかの用途において、駆動ケーブルは、駆動ケーブルに充分な強度と可撓性を与えるためコイル状構成に配置された複数のワイヤ134を含み、ケーブルが回転している時及び軸方向の前後運動で移動している時にケーブルの一部を大動脈弓内に維持できるようになっている。いくつかの用途において、駆動ケーブルは複数の同軸層のコイル状ワイヤを含む。例えば
図12Aから
図12Cで示されているように、駆動ケーブルは外側層136及び内側層138を含み、これらは相互に同軸であり、各々がコイル状ワイヤを含む。
【0189】
駆動ケーブルは通常、駆動ケーブルが回転運動及び/又は軸方向の前後運動を生じる間に静止状態を維持するよう構成された第1の外側管140内に配置されている。第1の外側管は、駆動ケーブルの長さに沿って駆動ケーブルの軸受管として有効に作用するよう構成されている。このため、本明細書では第1の外側管を駆動ケーブル軸受管とも呼ぶ。駆動ケーブル軸受管については、以下で
図12Dを参照して更に詳しく説明する。いくつかの用途において、駆動ケーブル軸受管は第2の外側管142内に配置されている。第2の外側管142は通常、駆動ケーブル軸受管よりも可撓性が大きい材料(例えばナイロン及び/又はポリエーテルブロックアミド)で作製され、通常、駆動ケーブル軸受管よりも厚い。
【0190】
通常、インペラ及びフレームを左心室内に挿入する際、インペラ50及びフレーム34は、送達カテーテル143によって半径方向に拘束された構成に維持される。上述したように、インペラ及びフレームが半径方向に拘束されない構成をとるためには、送達カテーテルを引っ込める。いくつかの用途では、
図12Aで示されているように、左心室装置の動作中に送達カテーテルは対象の大動脈内に留まり、外側管142は送達カテーテル内部に配置される。(
図12Aは大動脈弓内に配置された送達カテーテルの遠位端を示すが、いくつかの用途では、送達カテーテルの遠位端は左心室装置の動作中に下行大動脈内に配置される。)いくつかの用途では、左心室装置の動作中、送達カテーテル143と外側管142との間にチャネル224が規定される。(なお、例示の目的のため、
図12Aに示されているようなチャネルは一定の縮尺通りではない。)いくつかのそのような用途では、チャネル224内の血液の圧力を測定することにより、対象の大動脈血圧が測定される。例えば、圧力センサ216(
図1Aに概略的に示されている)はチャネル224と流体連通することができ、チャネル224内の血液の圧力を測定することによって対象の大動脈圧を測定するように構成され得る。通常、対象体から左心室装置を引っ込めるためには、インペラ及びフレーム上に送達カテーテルを前進させて、インペラ及びフレームが半径方向に拘束された構成をとるようにする。次いで、対象体からカテーテルを引き抜く。
【0191】
これより、本発明のいくつかの用途に従った、駆動ケーブル軸受管として機能する第1の外側管140の概略図である
図12Dを参照する。いくつかの用途において、駆動ケーブル軸受管は、それぞれが典型的に生体適合性ポリマー材料で作製されている外側層141及び内側層144、並びに、外側層と内側層との間に埋め込まれたコイル153を含む。いくつかの用途において、外側層141はPebaxで作製され、内側層144はPTFE及び/又はポリイミド(例えばPTFE及び/又はポリイミドの混合物)で作製され、コイルはステンレス鋼のような合金で作製される。典型的に、内側層は、低度の摩擦と高度の耐摩耗性を与えるように構成された材料を含む。更に典型的には、外側層は、駆動ケーブル軸受管に追加の強度を与えるように構成されながら、依然として、例えば大動脈弓の曲率と一致することができる充分な可撓性を駆動ケーブル軸受管に与える。通常、コイルは、駆動ケーブル軸受管が大きく湾曲する領域内(例えば大動脈弓内)であっても、駆動ケーブル軸受管の実質的に円形の断面を維持するように構成されている。典型的に、コイルが存在しない場合には、駆動ケーブル軸受管はそのような領域内で平らになって楕円形の断面を形成する傾向がある。
【0192】
これより、本発明のいくつかの用途に従った、ガイドワイヤ10がガイドワイヤ管腔122内に配置されている心室補助装置の概略図である
図13を参照する。いくつかのそのような実施形態では、心室補助装置を左心室内に挿入する際、例えば既知の技法に従って、まずガイドワイヤ10が左心室内に挿入される。次いで、ガイドワイヤを管腔122の内部に配置した状態で、ガイドワイヤ上で心室補助装置の遠位先端部を前進させることにより、遠位先端部は左心室へガイドされる。いくつかの用途では、遠位先端部120の管腔122の遠位端にダックビル弁390(又は異なるタイプの止血弁)が配置されている。
【0193】
これより、本発明のいくつかの用途に従った、2つの状態を有するように構成されたガイドワイヤ10の概略図である
図14A及び
図14Bを参照する。
図13を参照して説明されたように、通常、心室補助装置の遠位端はガイドワイヤ10上で左心室へガイドされる。通常、対象の血管系を通してガイドワイヤを前進させる際、及びガイドワイヤの先端が対象の左心室内に配置されている場合、対象の血管系及び/又は左心室に対する損傷を回避するため、ガイドワイヤの先端は可撓性であることが望ましい。
【0194】
心室補助装置の遠位端を左心室へガイドした後、送達カテーテルを引っ込めると、通常、心室補助装置のインペラ50及びフレーム34は半径方向に拘束されない構成をとり、これによってインペラ及びフレームを展開させる。通常、この段階で、ガイドワイヤの先端は遠位先端部120を通って近位に引っ込められ、ポンプ部から近位に引っ込められる。場合によっては、上述のようにガイドワイヤを引っ込めた後、遠位先端部120を介して、遠位先端部の遠位端の近くに配置されているダックビル弁160の外へ、ガイドワイヤを再挿入することが望ましい。例えばこれは、ポンプ部が正しい位置から移動して左心室内で再位置決めする必要がある場合に望ましいことがある。しかしながら、ガイドワイヤの先端が(前述したように)可撓性である場合、近位に面しているダックビル弁160の狭い先端を介してガイドワイヤの先端を前進させることはできない。従っていくつかの用途では、ガイドワイヤは、先端が2つの状態すなわち可撓性状態と堅い状態を規定できるように構成されている。
【0195】
いくつかの用途において、ガイドワイヤ10は外側コイル250及び内側補強ワイヤ252を含む。ガイドワイヤの遠位端が可撓性状態でなければならない場合、内側補強ワイヤはガイドワイヤの遠位端から引っ込められるので、外側コイルの遠位部内には補強ワイヤが配置されない部分がある。いくつかの用途では、ガイドワイヤの遠位端が剛性になること及び対象の血管系及び/又は左心室を損傷することを防止するため、ガイドワイヤはこの状態に解放可能に固定される。例えば
図14Aで示されているように、いくつかの用途では、1つ以上の固定要素254が補強ワイヤの近位部から半径方向に延出し、外側コイルの巻線間に突出して、補強ワイヤが前進するのを防止するようになっている。いくつかの用途において、外側コイルの近位端256では、これよりも遠位にある外側コイルの部分よりもコイルの巻線間の間隙が大きいので、近位端では外側コイルの巻線間に固定要素が突出するようになっている。いくつかの用途では、ガイドワイヤの遠位端を剛性状態に変換するため、固定要素254を半径方向内側へ押して外側コイル内に配置すると共に、補強ワイヤを遠位に前進させて、ガイドワイヤの遠位端においても外側コイル内に配置されるようにする。いくつかの用途では、補強ワイヤを遠位に前進させる際に固定要素は外側コイル内に配置された状態を維持するが、その理由は、固定要素がこの時に配置される外側コイルの部分では、コイルの巻線が相互に充分近くに配置されているので、これらの巻線間から固定要素が突出するのを阻止するからである。
【0196】
これより、本発明のいくつかの用途に従った、遠位スラスト軸受部260を含む心室補助装置20の概略図である
図15を参照する。通常、軸受部260は、遠位半径方向軸受部と遠位スラスト軸受部の双方として機能する。
図15に示されている心室装置の上方の図は、半径方向に拘束された(すなわち圧着された)構成の装置を示し、下方の図は、半径方向に拘束されていない構成の装置を示し、矢印は、これら2つの構成間での装置の各部分の移動を表す。本発明のいくつかの用途は、対象体内に配置されたスラスト軸受部を含まず、インペラ50及び軸方向シャフト92の軸方向の前後運動を可能とするように構成された心室補助装置を対象とするものとして上記で説明されている。いくつかの代替的な実施形態では、心室補助装置は、インペラがポンピングを行う圧力勾配の変動に応じて軸方向シャフト92の軸方向運動が生じるのを防止する(また、通常、これにより、インペラがポンピングを行う圧力勾配の変動に応じてインペラの軸方向運動が生じるのを防止する)よう構成されたスラスト軸受部を含む。
【0197】
いくつかの用途において、スラスト軸受部260は図示のようにフレーム34内に配置されている。例えばスラスト軸受部は、フレームの円筒部内又はフレームの遠位円錐部内に配置することができる。いくつかの用途では、軸方向シャフトの遠位端において、軸方向シャフトは幅広部262を規定し、この幅広部262は、スラスト軸受部と係合し、軸方向シャフトの(また、これによってインペラの)軸方向運動が生じるのを防止するように構成されている。(更に、軸方向シャフトの幅広部は軸受部260によって半径方向に拘束されて、軸受部が遠位半径方向軸受部としても機能するようになっている。)通常、スラスト軸受部は、フレームからスラスト軸受部へ半径方向内側に延出する接続ストラット264を介してフレームに結合されている。通常、フレーム34を製造するため、フレームはニチノール等の形状記憶合金の管から切断される。いくつかの用途では、フレームが切断される管から接続ストラット264を切断して、フレームと接続ストラットが単一の一体的な要素を形成するようになっているので、これらを相互に(例えば接着剤や溶接等によって)結合する必要はない。一般に、いくつかの用途では、フレーム及び接続ストラットは単一の材料片から切断されて、単一の一体的な要素を形成するようになっている。いくつかの用途において、接続ストラット264及びスラスト軸受部260自体は、フレームが切断される管から切断されるので、フレーム、接続ストラット、及びスラスト軸受部が単一の一体的な要素を形成するようになっており、これらを相互に(例えば接着剤や溶接等によって)結合する必要はない。一般に、いくつかの用途において、フレーム、接続ストラット、及びスラスト軸受部260自体は、単一の材料片から切断されて、単一の一体的な要素を形成するようになっている。
【0198】
いくつかの用途では、スラスト軸受部260(又は、インペラの遠位に配置されている異なる設計のスラスト軸受部)と組み合わせて、運動緩衝ばね68(
図6Cから
図6Dに示されている)と概ね同様のばねが用いられる。いくつかの用途において、ばねは、インペラが半径方向に拡張した後、スラスト軸受部に対してインペラを(例えばインペラの遠位端を)安定化させるのに役立つ。このため、ばねはインペラ安定化ばねとして機能する。いくつかの用途において、インペラは軸方向に伸びることによって半径方向に制約される(すなわち圧着される)ように構成され、ばねは圧縮してインペラの軸方向の伸びに対応するように構成されている。通常、ポンプヘッドを左心室へ挿入する際にインペラが半径方向に拘束された構成である場合、インペラは軸方向に伸びて、インペラの遠位端がフレーム34内で遠位に配置されると共に、インペラの遠位端の動きに対応するためインペラ安定化ばねが圧縮されるようになっている。
【0199】
通常、インペラ安定化ばねは、インペラの遠位端(例えばインペラの遠位ブッシング58)とスラスト軸受部260との間で軸方向シャフト92の周りに配置されている。いくつかの用途において、インペラ安定化ばねはスラスト軸受部260に結合され、スラスト軸受部260から軸方向シャフト92上で近位に延出している。通常、そのような場合、インペラの回転時にインペラ安定化ばねは回転的に静止状態を保ち、インペラはインペラ安定化ばねに対して回転するように構成されている。代替的に又は追加的に、インペラ安定化ばねはインペラの遠位端(例えばインペラの遠位ブッシング58)に結合され、及び/又はインペラの遠位端(例えばインペラの遠位ブッシング58)から軸方向シャフト92上で遠位に延出している。いくつかのそのような用途では、インペラ安定化ばねはインペラと共に回転するよう構成されている。あるいは、インペラ安定化ばねは、インペラの遠位端(例えばインペラの遠位ブッシング58)の周りに配置された半径方向軸受部から延出して、インペラの回転時にインペラ安定化ばねが回転的に静止状態を保つようになっており、インペラはインペラ安定化ばねに対して回転するよう構成されている。いくつかの用途において、インペラ安定化ばねは、エラストマー材料69に結合され(例えばエラストマー材料69でコーティングされるか又はエラストマー材料69内に埋め込まれ)(
図6Cから
図6Dにも示されている)、エラストマー材料とばねの組み合わせは通常、運動緩衝ばね68を参照して上述したものと概ね同様に形成されると共に機能する。
【0200】
いくつかの用途では、例えば
図6Cから
図6Dを参照して上述したように、インペラ安定化ばねはインペラの近位側で軸方向シャフトの周りに配置されている。いくつかの用途において、インペラ安定化ばねはインペラの近位側と遠位側の双方で軸方向シャフトの周りに配置されている。いくつかの用途において、軸方向シャフトの周りに配置された近位と遠位のインペラ安定化ばねの組み合わせは、ポンプヘッドが拡張される場合に、インペラを軸方向で所定位置に保持する及び/又はインペラの軸方向移動を制限するように機能する。
【0201】
いくつかの用途では、
図11Aから
図11Eに図示され、それらの図を参照して説明されているように構成されたポンプ出口管24と組み合わせて、スラスト軸受部260が用いられる。ポンプ出口管は、遠位端に横方向血液流入口108を規定する。上述のように、いくつかの用途では、血液流入口の大きさは、(a)対象の左心室から管内への血流を可能とするような、かつ、(b)対象の左心室からの構造がフレーム内へ進入するのを阻止するようなものである。通常、そのような用途では、ポンプ出口管24の遠位円錐部46は、左心室からの構造(腱索、肉柱、及び/又は乳頭筋等)がフレーム34内へ進入して、インペラ及び/又は軸方向シャフトによって損傷を受けるリスク、及び/又は左心室補助装置に損傷を与えるリスクを低減するように構成されている。そのような用途では、ポンプ出口管及び血液流入口の寸法及び他の特徴は典型的に、概ね
図11Aから
図11Eを参照して説明したようなものである。
【0202】
図15で示されているように、スラスト軸受部260がフレーム34内に配置されている場合、軸方向シャフト92はフレーム34の遠位端まで延出しない。例えば
図5で示されているように、フレームの半径方向に拘束されない構成では、軸方向シャフトの遠位端はフレームの円筒部内に配置され、これは通常、心室補助装置の血液流入口に対して近位である。いくつかのそのような用途では、たとえ左心室の構造(腱索、肉柱、及び/又は乳頭筋等)が血液流入口を介してフレーム内へ進入したとしても、軸方向シャフトが血液流入口に対して近位で終端していることにより、心室補助装置の軸方向シャフト又は他の部分に対する損傷は軽減又は防止される。いくつかのそのような用途では、たとえ左心室の構造(腱索、肉柱、及び/又は乳頭筋等)が血液流入口を介してフレーム内へ進入したとしても、軸方向シャフトが血液流入口に対して近位で終端していることにより、そのような構造に対する損傷は軽減又は防止される。
【0203】
これより、本発明のいくつかの用途に従った、心室補助装置20を梱包するためのパッケージ270の概略図である
図16A、
図16B、
図16C、及び
図16Dを参照する。通常、パッケージ270は密閉された外側ラッピング272内に梱包されて、パッケージの無菌状態を向上させるようになっている。パッケージ270は通常、心室補助装置のポンプヘッド(例えばインペラ50及びフレーム34)が内部に梱包されるポンプヘッドチャンバ274を規定するような形状を有する。いくつかの用途では、パッケージ270にカテーテル固定具276が可逆的に結合されている。カテーテル固定具は、孔278を規定するような形状を有する。パッケージ270内に心室補助装置を梱包するプロセスの一部として、送達カテーテル143の遠位端を孔内に配置した状態で、パッケージにカテーテル固定具を結合することにより、送達カテーテルの遠位端を孔内に固定する。いくつかの用途において、ポンプヘッドチャンバは垂直方向の突起280を規定し、この突起280の周りに遠位先端部120を配置することで、ポンプヘッドチャンバ内にポンプヘッドの遠位端を固定するようになっている。
【0204】
いくつかの用途では、心室補助装置を開梱して使用の準備を行うためには、パッケージの上部カバー271を取り外して、ポンプヘッドチャンバ274が露出するようにする。いくつかの用途では、
図16Bで示されているように、次いでポンプヘッドチャンバを生理食塩水等の溶液282内に充填する。その後、
図16Bから
図16Dへの変遷に示されているように、ポンプヘッドを送達カテーテル143の遠位端内へ引っ込めて、ポンプヘッドを半径方向に拘束する。いくつかの用途において、カテーテル固定具は、カテーテルの遠位端が下向きに傾斜した向きになるように、下向きに傾斜した表面284に送達カテーテルの遠位端を固定するように構成されている。通常、これにより、カテーテルの遠位端が水平方向の向きで配置されている場合に比べ、ポンプヘッドを送達カテーテルの遠位端内へ引っ込める際に送達カテーテルの遠位端に気泡が進入する可能性が低減する。
【0205】
図1Aから
図15を参照して説明した心室補助装置20の全ての態様に関して、
図1A及び
図1Bは対象の左心室内の心室補助装置20を示すが、いくつかの用途では、心室補助装置20は対象の右心室内部に配置されて対象の肺動脈弁を横切り、必要な変更を加えた上で、本明細書に記載されている技法が用いられることに留意するべきである。いくつかの用途において、装置20の構成要素は異なるタイプの血液ポンプに適用可能である。例えば本発明の態様は、大静脈及び/又は右心房から右心室へ、大静脈及び/又は右心房から肺動脈へ、及び/又は腎静脈から大静脈へ、血液を送り出すため用いられるポンプに適用可能であり得る。このような態様は、管24の特徴(例えば管の曲率)、インペラ50、ポンプヘッド部27の特徴、駆動ケーブル130等を含み得る。代替的に又は追加的に、装置20及び/又はその一部(例えば、管24がない状態のインペラ50)は、対象体の異なる部分からの血液の送り出しを支援するため、この部分内に配置される。例えば、装置20及び/又はその一部(例えば、管24がない状態のインペラ50)は、血管内に配置され、この血管を介して血液を送り出すために用いることができる。いくつかの用途において、装置20及び/又はその一部(例えば、管24がない状態のインペラ50)は、静脈とリンパ管との接合部で鎖骨下静脈又は頸静脈内に配置されるように構成され、必要な変更を加えて、リンパ管から静脈へのリンパ液の流れを増大するために用いられる。本発明の範囲は、左心室及び大動脈以外の解剖学的位置で本明細書に記載されている装置及び方法を用いることを含むので、本願(明細書及び特許請求の範囲)では、心室補助装置及び/又はその一部を血液ポンプと呼ぶことがある。
【0206】
本発明の範囲は、本明細書に記載されている装置及び方法のうち任意のものを、以下の適用例(全て援用により本明細書に組み込まれる)のうち1つ以上に記載されている装置及び方法のうち任意のものと組み合わせることを含む。
以下に優先権を主張する、2022年3月7日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される国際特許出願PCT/IB2022/051990号:
2021年3月9日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第63/158,708号;及び
2021年10月11日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第63/254,321号。
2020年4月2日に出願されたZiporyの「心室補助装置」と題される米国特許第63/003,955号に優先権を主張する、2021年3月29日に出願されたZiporyの「血液ポンプで用いられる遠心混合流インペラ」と題される国際特許出願PCT/IB2021/052590号(WO21/198881号として公開されている)。
2021年4月6日に出願されたPCT出願PCT/IB2021/052857号(WO21/205346号として公開されている)の米国国内段階である、Tuvalの「心室補助装置」と題される米国特許出願公開第17/609,589号:
2020年4月7日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第63/006,122号;
2020年11月16日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第63/114,136号;及び
2020年12月23日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第63/129,983号。
以下に優先権を主張する、2020年1月23日に出願されたTuvalの「心室補助装置のための遠位先端要素」と題される米国特許出願公開第2020/0237981号:
2019年1月24日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第62/796,138号;
2019年5月23日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第62/851,716号;
2019年7月5日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第62/870,821号;及び
2019年9月5日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第62/896,026号。
【0207】
以下に優先権を主張する、2019年1月10日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される国際特許出願PCT/IB2019/050186号(WO19/138350号として公開されている)の継続出願である、Tuvalの米国特許出願公開第2019/0209758号:
2018年1月10日に出願されたSohnの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第62/615,538号;
2018年5月2日に出願されたSohnの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第62/665,718号;
2018年6月7日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第62/681,868号;及び
2018年9月6日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第62/727,605号;
2016年11月23日に出願されたTuvalの米国仮特許出願第62/425,814号に優先権を主張する、2017年11月21日に出願されたTuvalの「血液ポンプ」と題される国際特許出願PCT/IL2017/051273号(WO18/096531号として公開されている)の米国国内段階である、Tuvalの米国特許出願公開第2019/0269840号;
2016年10月25日に出願されたTuvalの米国特許出願公開第62/412,631号、及び2017年8月10日に出願されたTuvalの米国特許出願公開第62/543,540号に優先権を主張する、2017年10月23日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される国際特許出願PCT/IL2017/051158号(WO18/078615号として公開されている)の継続出願である、Tuvalの米国特許出願公開第2019/0175806号;
2016年9月29日に出願されたTuvalの米国仮特許出願62/401,403号に優先権を主張する、2017年9月28日に出願されたTuvalの「血管チューブ」と題される国際特許出願PCT/IL2017/051092号(WO18/061002号として公開されている)の米国国内段階である、Tuvalの米国特許出願公開第2019/0239998号;
2015年5月18日に出願されたSchwammenthalの「血液ポンプ」と題される米国仮特許出願第62/162,881号に優先権を主張する、2016年5月18日に出願されたSchwammenthalの「血液ポンプ」と題される国際特許出願PCT/IL2016/050525号(WO16/185473号として公開されている)の米国国内段階である、Schwammenthalの米国特許出願公開第2018/0169313号;
2014年5月19日に出願されたSchwammenthalの「血液ポンプ」と題される米国仮特許出願第62/000,192号に優先権を主張する、2015年5月19日に出願されたSchwammenthalの「血液ポンプ」と題される国際特許出願PCT/IL2015/050532号(WO15/177793号として公開されている)の米国国内段階である、Schwammenthalの米国特許出願公開第2017/0100527号;
(a)2013年3月13日に出願されたSchwammenthalの「腎臓ポンプ」と題される米国仮特許出願第61/779,803号、及び(b)2013年12月11日に出願されたSchwammenthalの「腎臓ポンプ」と題される米国仮特許出願第61/914,475号に優先権を主張する、2014年3月13日に出願されたSchwammenthalの「腎臓ポンプ」と題される国際特許出願PCT/IL2014/050289号(WO14/141284号として公開されている)の米国国内段階である、Schwammenthalの米国特許第10,039,874号;
2013年12月11日に出願されたTuvalの「湾曲カテーテル」と題される米国仮特許出願第61/914,470号に優先権を主張する、2017年9月19日に発行されたTuvalの「湾曲カテーテル」と題される米国特許第9,764,113号;及び、
2012年6月6日に出願されたTuvalの「人工腎臓弁」と題される米国仮特許出願第61/656,244号に優先権を主張する、2013年6月6日に出願されたTuvalの「人工腎臓弁」と題される国際特許出願PCT/IL2013/050495号(WO13/183060号として公開されている)の米国国内段階である、Tuvalの米国特許第9,597,205号。
【0208】
本発明が上記で具体的に図示し記載したものに限定されないことは、当業者には認められよう。本発明の範囲は、当業者が前述の記載を読む際に想起する、上述の様々な特徴の結合(combination)及び小結合(subcombination)の双方、並びに従来技術に存在しないそれらの変形及び変更を含む。
【国際調査報告】