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特表2024-535928鉄物体の壁における不連続性を識別するための方法および装置
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  • 特表-鉄物体の壁における不連続性を識別するための方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】鉄物体の壁における不連続性を識別するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/83 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
G01N27/83
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519624
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 US2022045071
(87)【国際公開番号】W WO2023055822
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】17/490,912
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】515255434
【氏名又は名称】ユナイテッド・ステイツ・パイプ・アンド・ファンドリー・カンパニー・エル・エル・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワッツ,ケネス・ジェイ
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA11
2G053AB22
2G053BA03
2G053BA12
2G053BA26
2G053BC13
2G053CA05
2G053CB24
2G053CB29
2G053DB03
(57)【要約】
鉄物体の壁における不連続性を検出するための方法および装置であって、方法および装置は、センサのバンクを使用し、各センサは、事前定義されたエリアにわたる磁束の差を検出するように構成される、方法および装置が開示される。センサからの読み値のセットは、画像に変換され、その画像から、不連続性の存在および場所が検出され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサのバンクを使用して鉄物体の壁における不連続性を識別する方法であって、各センサは、事前定義されたエリアにわたる磁束の差を検出するように構成され、
センサのバンクが壁から離間した状態で、各センサからの読み値を、そのセンサについての周囲条件を表す値として第1の配列に記憶することと、
前記鉄物体を磁化することと、
センサのバンクが壁に非常に近接した状態で、各センサからの読み値を、そのセンサに対応する壁の事前定義されたエリアに関連する値として第2の配列に記憶することと、
第1および第2の配列を、第1および第2の画像にそれぞれ変換することと、
第1の画像と第2の画像との間で計算される差から、第3の画像を生成することと、
第3の画像を分析して、パイプ壁における不連続性の存在を決定することと
を含む、方法。
【請求項2】
センサの各々から受信される読み値がアナログ値であり、前記アナログ値をデジタル値に変換することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
オペレータに見えるディプレイ上に第3の画像を表示することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記物体が、長さおよび外周を有するパイプであり、センサのバンクが、パイプと実質的に同じである長さと外周の一部である幅とを有し、センサのバンクが壁に非常に近接した状態で、前記幅に実質的に等しいインクリメントでパイプを回転させ、各インクリメントにおいて、各センサからの読み値を第2の配列に記憶することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
分析するステップが、第3の画像と不連続性のない壁の参照画像との間の相関係数を計算することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
分析するステップが、事前定義された近接内の極の変化を第3の画像内で識別することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
極の変化が、第3の画像内でゼロ交差を検出することによって決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
各センサが、第1の軸に沿う事前定義されたエリアにわたる磁束の第1の差を検出するように構成され、第1に直交する第2の軸にわたる磁束の第2の差を検出するようにさらに構成され、第1の差と第2の差との間の差の読み値を提供するようにさらに構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
磁化するステップ後に、センサのバンクを移動させて、それを壁に非常に近接して位置決めすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
鉄物体の壁における不連続性の画像を生成するための装置であって、
壁から離れた第1の位置に、および壁に非常に近接した第2の位置に、壁に対して位置決めされることが可能なセンサのバンクであって、各センサが、事前定義されたエリアにわたる磁束の差を検出するように構成される、センサのバンク、
センサバンクと動作可能に通信するプロセッサであって、プロセッサが、
センサバンクが第1の位置にある状態で、各センサからの読み値を、そのセンサについての周囲条件を表す値として第1の配列に記憶し、
センサバンクが第2の位置にある状態で、各センサからの読み値を、そのセンサに対応する壁の事前定義されたエリアに関連する値として第2の配列に記憶し、
第1および第2の配列を、第1および第2の画像にそれぞれ変換し、
第1の画像と第2の画像との間で計算される差から、第3の画像を生成し、
第3の画像を分析して、パイプ壁における不連続性の存在を決定する
ように構成される、プロセッサ
を備える、装置。
【請求項11】
各センサが、中央フェライトビーズを備え、その対向する側に外側フェライトビーズの第1の対が配設され、外側フェライトビーズの第2の対が、前記第1の対に直交して配設され、ホール効果半導体が、外側ビーズの各々と中央ビーズとの間に位置決めされ、フェライトビーズおよびホール効果半導体が、回路基板に搭載され、T字型断面をセンサに与えるために形成される硬質で磁気的に透明な材料内に閉じ込められる、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
センサのバンクが、センサの直線配置を備え、ほぼ中心線に縦方向に延在するギャップを有する直線トレイをさらに備え、センサの中央部分がギャップを通って延在する状態で、T字型センサの両側がトレイ上に載る、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
センサのバンクの下で鉄物体を保持するための支持体をさらに備え、支持体が、第1の位置または第2の位置に物体の壁があるように、センサのバンクに対して物体を移動させるように構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
鉄物体が、パイプであり、支持体が、制御可能に作動されて、センサのバンクの下でパイプをインクリメンタルに回転させることが可能なローラを備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
センサのバンクを保持するための支持体をさらに備え、支持体が、第1の位置または第2の位置に物体の壁があるように、物体に対してセンサのバンクを移動させるように構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項16】
読み値が、アナログ値として受信され、プロセッサが、アナログ値を、それがメモリに記憶される前に、デジタル値に変換するように構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項17】
オペレータに第3の画像を表示するためのディスプレイをさらに備える、請求項10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年9月30日に出願された米国特許出願第17/490912号の、今や、2022年5月31日に発行された米国特許第11346811号の、優先権および利益を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、鉄物体の分野に関し、より詳細には、遠心鋳造鉄パイプの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
金属物体、特に鉄パイプの遠心鋳造のプロセスは、よく知られており、一世紀にわたり実施されてきた。遠心鋳造機は、トラフなどの送達システムと、回転モールドとを含む。溶鉄は、機械ラドルからトラフ内に鋳込まれる。トラフは、回転モールドの内部に、一般的には軸方向に延在する。モールドの一端は、通常、いわゆるパイプのベルと呼ばれる形状に正確に成形するために、砂コアなどのコアを含む。パイプの反対の端部は、スピゴットと呼ばれ、その間の細長いセクションはバレルである。溶鉄は、重力の影響下でトラフに流れ落ちる。モールドおよびトラフは、モールドに鉄を充填するために、互いに対して、典型的にベル端からバレルに沿ってスピゴットへ移動される。モールドが回転すると、遠心力がその鉄をモールドの周りに周方向に比較的均一に配設する。典型的に、鋳造機は、必要に応じて鉄を配設するために、当技術で知られているように、油圧もしくは他の機械的手段によって移動される。
【0004】
延性鉄パイプの遠心鋳造を含む、物体の鋳造は、常に誤差なしまたは欠陥なしであるわけではない。生じ得る1つの問題は、パイプ壁におけるクラック、スプリット、または他の不連続性の進展である。これらの不連続性は、或る場合には、それらのサイズが理由で、および、他の場合には、不連続性が完全にパイプ壁自体の内部にあり得ることが理由で、オペレータに見えない場合がある。そのような不連続性は、物体の構造的完全性を損ない、または機能的欠損を引き起こす可能性がある。その結果、不連続性を識別し位置特定することが望ましい。
【0005】
本明細書において開示する本発明の発明者らのうちの1人は、ホール効果素子を使用して鉄物体内の欠陥を検出するためのセンサを以前に開発し、米国特許第5,336,998号が発行され、その内容は、引用により本明細書に組み込まれる。この発明は、役立つが、特に製造環境において、実際に使用するのが常に容易であるわけではないことが見出された。例えば、一部の技術者は、センサの出力を理解するのに、または、’998号特許のセンサによって検出される不連続性を位置特定するのに困難を感じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,336,998号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、容易に理解され、製造環境において適用され得る方法を含めて、鉄物体内の不連続性の存在を検出し、物体上でそれらの場所を識別する装置および方法についての必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、これらの必要性を満足させるが、全ての実施形態が各必要性を満足させるわけではないことが理解されるべきである。一実施形態は、鉄物体の壁における不連続性の画像を生成するための装置を含み、壁から離れた第1の位置から壁に非常に近接した第2の位置まで可動なセンサのバンクは、センサバンク内の各センサの事前定義されたエリアにわたる磁束の差を検出するように構成される。装置は、センサバンクと動作可能に通信するプロセッサをさらに含み、プロセッサは、センサバンクが第1の位置にある状態で、各センサからの読み値を、そのセンサについての周囲条件を表す値として第1の配列に記憶し、センサバンクが第2の位置にある状態で、各センサからの読み値を、そのセンサに対応する壁の事前定義されたエリアに関連する値として第2の配列に記憶し;第1および第2の配列を、第1および第2の画像にそれぞれ変換し;第1の画像と第2の画像との間で計算される差から、第3の画像を生成し;第3の画像を分析して、パイプ壁における不連続性の存在を決定するように構成される。装置は、オペレータに第3の画像を表示するためのディスプレイをさらに備えることができる。
【0009】
好ましい実施形態において、装置の各センサは、中央フェライトビーズを備え、その対向する側に外側フェライトビーズの第1の対が配設され、外側フェライトビーズの第2の対は、前記第1の対に直交して配設され、ホール効果半導体は、外側ビーズの各々と中央ビーズとの間に位置決めされる。フェライトビーズおよびホール効果半導体は、回路基板に搭載され、T字型断面をセンサに与えるために形成される硬質で磁気的に透明な材料内に閉じ込められ得、センサは、直線トレイであって、ほぼその中心線に縦方向に延在するギャップを有する、直線トレイから懸垂保持(suspend)され得、センサの中央部分がギャップを通って延在する状態で、T字型センサの両側がトレイ上に載る。
【0010】
一実施形態において、鉄物体は、パイプであり、装置は、制御可能に作動されてセンサのバンクの下でパイプをインクリメンタルに回転させることが可能なローラを備える。
【0011】
本発明の別の実施形態は、鉄物体の壁における不連続性を識別する方法を含み、方法は、壁から離間した第1の位置にセンサのバンクを位置決めすることであって、各センサは、事前定義されたエリアにわたる磁束の差を検出するように構成される、ことと;各センサからの読み値を、そのセンサについての周囲条件を表す値として第1の配列に記憶することと;前記鉄物体を磁化することと;壁に非常に近接した第2の位置にセンサのバンクを位置決めすることと;各センサからの読み値を、そのセンサに対応する壁の事前定義されたエリアに関連する値として第2の配列に記憶することと;第1および第2の配列を、第1および第2の画像にそれぞれ変換することと;第1の画像と第2の画像との間で計算される差から、第3の画像を生成することと;第3の画像を分析して、パイプ壁における不連続性の存在を決定することとを含む。読み値は、センサの各々からアナログ値として受信され、配列に記憶するためにデジタル値に変換され得る。
【0012】
一実施形態において、分析するステップは、例えば、第3の画像内でゼロ交差を検出することによって、事前定義された近接内の極の変化を第3の画像内で識別することを含む。別の実施形態において、分析するステップは、第3の画像と不連続性のない壁の参照画像との間の相関係数を計算することを含む。
【0013】
好ましい実施形態において、各センサは、第1の軸に沿う事前定義されたエリアにわたる磁束の第1の差を検出するように構成され、第1に直交する第2の軸にわたる磁束の第2の差を検出するようにさらに構成され、第1の差と第2の差との間の差の読み値を提供するようにさらに構成される。さらに好ましい実施形態において、物体は、長さおよび外周を有するパイプであり得、センサのバンクは、パイプと実質的に同じである長さと外周の一部である幅とを有し、方法は、センサのバンクが第2の位置にある状態で、前記幅に実質的に等しいインクリメントでパイプを回転させ、各インクリメントにおいて、各センサからの読み値を第2の配列に記憶することをさらに含む。
【0014】
本発明は、特定の実施形態および添付の図を参照して、例としてのみ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の装置の一実施形態のブロック図である。
図2図1の装置のセンサバンクで使用されるセンサの一実施形態のブロック図である。
図3図1の装置で使用するためのセンサバンクにおいて構成される、図2の複数のセンサのブロック図である。
図4図2のセンサの読み値を受信するための回路のブロック図である。
図5】本発明の方法の一実施形態のフローチャートである。
図6A】請求項5の方法から生成される鉄物体の壁の画像の例を示す図であり、壁が不連続性を示している図である。
図6B】請求項5の方法から生成される鉄物体の壁の画像の例を示す図であり、壁が不連続性を示さない図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、遠心鋳造鉄パイプの例示的な用途に関して本発明の特定の実施形態を説明する。本発明の実施形態は、目に見えない場合がある不連続性または異常を検出することが望ましい鉄壁または表面を有する任意の物体に容易に適用され得る。さらに、鉄物体に対する言及は、多量の炭素、ケイ素、およびリンを典型的に含む、鉄または鉄の合金から作られる物体であるが、特に、鉄のまたは冶金の含有物が、不均一なまたは可変の微小構造を有する物体を含む、その特性に影響を及ぼし得る多量の他の元素または化合物も含み得る物体に対する言及として理解されるべきである。
【0017】
一般に、本発明の装置および方法の実施形態は、複数の比較的小さい事前定義されたエリア上で、表面を走査し、磁束漏洩を示す磁場強度の差分読み値を取得することによって、鉄物体の壁における、クラックおよびスプリットなどの不連続性の検出を可能にする。物体の壁の画像は、これらの読み値から生成される。種々の技法は、壁からの磁束漏洩の、均一性またはその欠如を示すデータを分離し強調するために使用され得る。最終画像は、不連続性の存在を識別するために分析され得、物体自体上の不連続性の場所を示すために、さらにオペレータまたは技術者に視覚的に表示され得る。
【0018】
図1は、本発明の装置の一実施形態のブロック図であり、装置は、センサバンク10(図2から3に示す複数の個々のセンサS1からSを備える)、プログラマブルロジックコントローラ(PLC:programmable logic controller)20、磁化器30、ローラまたは他の搬送システム40、コンピュータ50、およびオプションのディスプレイ60を備える。遠心鋳造延性鉄パイプなどの鉄物体70も示される。
【0019】
好ましい実施形態において、センサバンク10は、好ましくは、鉄物体から離間した第1の位置(図1の点線で示す)から物体の壁に非常に近接した第2の位置まで可動である。第1の位置は、物体がセンサSの動作可能範囲外になるように、センサバンク10を物体の壁から十分に離して設置するべきである。第2の位置は、物体がセンサSの動作可能範囲以内に、例えば3/8から1/4インチ以内になるように、センサバンク10を物体の壁の十分に近くに設置するべきである。代替的に、センサバンク10は、固定である可能性があり、鉄物体70が、センサバンク10に対して移動される可能性がある。
【0020】
鉄物体がパイプであるとき、装置は、パイプの外周全体の周りで読み値が取られることを可能にするため、センサバンク10の下でパイプを回転させるためにローラシステム40を備えることができる。従来の設計の他の搬送システムも、同様に、物体のサイズ、形状、および他の特性に応じて、センサバンク10自体または物体を移動させることによって、関心対象の表面全体をセンサバンク10の範囲内に持っていくために使用される可能性がある。
【0021】
磁化器30は、従来の設計であり得、鉄物体70の壁内に磁場を与えるのに十分である。例えば、物体70がパイプであるとき、磁化器30は、パイプの中心において軸方向に位置するワイヤを通して大きい直流電流を容量的に放電することができ、パイプ壁において残留磁場を残す。
【0022】
PLC20は、センサバンク10を第1の位置から第2の位置に移動させて、磁化器30に物体70を磁化させるため、およびローラシステム40に所望に応じてセンサバンクの下で物体70を移動させるために、アクチュエータと動作可能に通信する。PLC20は、コンピュータ50から命令を受信し、データまたはステータスをコンピュータ50に戻るようにレポートするために、同様にコンピュータ50と動作可能に通信する。
【0023】
コンピュータ50は、センサバンク10からの読み値を受信するためにセンサバンク10と、および、述べたようにPLC20と動作可能に通信する。コンピュータ50は、データを直接または間接的に受信し、データを処理し、本明細書で説明する方法の算出および他のステップを行うことが可能な任意の計算システムを指すように、幅広くここで使用され、また、ネットワーク上でサーバと通信し、それらの間でタスクまたはストレージを分割する汎用コンピュータなどの、適切なソフトウェアをプログラムされたローカルのスタンドアロン汎用コンピュータ、鋳造場所から遠隔にあり、通信ネットワーク上で適切なデータを受信するクラウドベースのプロセッサ、モバイルまたは手持ち式デバイス、特定用途向けコンピューティングデバイス、または上記の任意の組み合わせを含むことになる。コンピュータ50は、プロセッサおよびメモリを含む。
【0024】
図2は、個々のセンサSの好ましい実施形態のブロック図である。センサSは、示すように、5つの焼結フェライドビーズC1-C5の間に設置された4つのリニアレシオメトリックホール効果半導体H1-H4を備える。各ホール効果半導体の極性は、隣接するドットによって示され、ドットは北極を示す。ビーズC1-C5は、周囲空気に対して高い透磁率、例えば、約850のμを有する磁束集中器(flux concentrators)として働く。個々のセンサSは、実質的にその部分の境界によって囲まれたエリア内の、磁場の値を測定するように構成される。センサSは、ホール効果半導体H1-H4の場所に対応する四箇所の磁場強度を測定する。各ホール効果半導体H1-H4は、検出した磁場強度に比例する電圧VHxを出力する。例示的な実施形態において、ホール効果半導体H1-H4は、Allegro MicroSystems A1389LUA-9-Tセンサとすることができる。
【0025】
複数のセンサSは、センサバンクを構築するように互いに隣接して設置され得る。図3に示す好ましい実施形態において、複数のセンサSは、センサバンク10を構築するように直線アレイで配置される。センサバンクの寸法、したがって、センサバンクが含むセンサの数は、センサバンクがそれと共に普通使用される物体の典型的な寸法に一致するように選択され得る。例えば、センサバンク10の長さ、したがって、センサバンクが含むセンサSの数xは、典型的なパイプの長さに一致するように選択され得る。例示的な実施形態において、センサSは1.5インチ長(および1.5インチ幅)であり、20フィートパイプの場合、センサバンク10は160個のセンサを含むことになる。
【0026】
センサは過酷な環境で使用され得る。センサを保護するために、図2に示す各アセンブリは、コールタールエポキシなどの、硬質で磁気的に不活性または透明な材料内に閉じ込められる。さらに、ケーシングが、T字型断面を有するように形成され得、個々のセンサSのそれぞれはTの垂直部分内にある。直線トレイであって、ほぼその中心線に縦方向に延在するギャップを有する直線トレイが、センサアレイ10を収容するために設けられ得、センサの中央部分がギャップを通って延在する状態で、T字型センサの両側がトレイ上に載る。これは、センサバンク10を保護し収容する単純で効果的な方法を提供する。
【0027】
本発明の主要な目的は、延性鉄などの不均質な冶金微細構造を含む鉄物体を含む、鉄材料から作られた物体内の不連続性を検出することである。微細構造が不均質であるため、その透磁率もそうである。結果として、物体の壁の表面上の磁場強度の単純な測定は、関心対象の不連続性を必ずしも示さない変動性を生じることになる。したがって、センサSは、磁場強度の相対的読み値を提供するように構成される。金属微細構造における変動性からもたらされる小さいエリア上の磁場強度の変動性は、そのエリア上の、大きさが極めて小さく典型的にゼロに近い、磁場強度の差分読み値をもたらすことになる。対照的に、鉄物体の壁のスプリット、クラック、または他の不連続性は、磁束を周囲空気に漏洩させることになる。比較的小さいエリアにわたる磁束値の急速なまたはかなりの変化は、そのエリアに上の磁場強度の差分読み値について比較的大きい非ゼロ値をもたらす漏洩を示す。好ましい実施形態において、図2に示すように、これは、2つの軸のそれぞれに沿って2つの読み値を提供することによって達成され、2つの読み値から、センサによってカバーされるエリア内の差分磁場強度が、以下:
【数1】
の通りに決定され得る。
【0028】
図4で参照されるように、好ましい実施形態において、各センサSについて、2つの差動比較器回路400および410は、上記式にしたがって、ホール効果半導体の出力電圧VHxを入力として受信する。これらの2つの比較器の出力は、その後、第3の差動比較器回路420に入力されて、センサSによって検出される差分磁場を示す電圧Vを提供する。センサにわたる磁場が比較的一定であるとき、電圧Vはゼロに近いことになる。磁束漏洩の変化を示す、センサSにわたる磁場強度の相対的変化は、より大きい大きさを有する電圧Vを生じることになる。さらに好ましい実施形態において、増幅器430は、電圧Vに適切な利得を適用することができる。増幅された電圧は、アナログデジタル変換器440によってデジタル値に変換され、その後、コンピュータ50に提供される。Vの増幅された値およびそれらのデジタル等価物は、事前定義された範囲に合うように適切にスケーリングされ得る、例えば、-10vから+10vの電圧は、デジタル値-255から+255に変換され得る。
【0029】
要素400、410、420、430、および440についての回路部の一部または全てが、コンピュータ50に、例えば、コンピュータ50のカードスロットに搭載された基板上に含まれ得ることが留意されるべきである。代替的に、これらの要素の一部または全ては、当業者によって理解されるように、コンピュータ50のデータ取得カードまたは他の受信機に出力(無線信号を含む)を提供する別個の回路基板またはデバイス上に配設され得る。
【0030】
図5は、延性鉄パイプなどの鉄物体の壁における不連続性の存在を決定するために上記で説明したデバイスを利用する、本発明の方法の好ましい実施形態のブロック図である。明らかになるように、図5に示すステップの特定のステップは、好ましくは、PLC20からの制御によって行われ、他のステップは、コンピュータ50によるデータの取得および処理を伴う。コンピュータ50は、本明細書で説明するように、データを処理するためにソフトウェアを実行することが可能なプロセッサを含む汎用コンピュータとすることができる。
【0031】
ステップ500にて、センサバンク10が物体70から離間したその第1の位置にある状態で、PLC20は、磁化器30に鉄物体を磁化させる。好ましくは、磁化が十分であったことを確実にするためにチェックが行われる。ステップ510にて、コンピュータ50は、センサバンク10内の全てのセンサSからの読み値を取得する。これらの読み値は、センサSによって検出された背景または周囲の差分磁場を示し、そのベースラインまたは参照読み値として役立つ。コンピュータ50は、これらの読み値を、センサから取られた、センサの周囲条件を表す値としてメモリ内の配列に記憶する。
【0032】
次に、ステップ520にて、PLC20は、センサバンク10に、第2の位置へ、物体の壁に非常に近接して、好ましくは、各センサS上のホール効果半導体H1-H4の最適範囲内へ移動するようにさせる。コンピュータ50は、その後、ステップ530にて、各センサSから読み値を取得し、これらの読み値のそれぞれを、センサに対応する壁の事前定義されたエリアに関連する、すなわち、センサバンク10内のセンサの場所に関する値として、メモリ内の第2の配列に記憶する。
【0033】
次に、物体70の壁の表面エリアが、センサバンク10によって読み取られるエリアより大きい場合、ステップ540にて、物体70およびセンサバンク10は、インクリメンタルに互いに対して移動されて、物体70の関心対象のエリア全体上で読み値が取られることを可能にすることができる。例えば、物体70がパイプであり、センサバンク10がパイプの長さと等しい長さおよび幅Wを有する場合、PLC20は、パイプに、Wに等しいインクリメントでローラシステム40によって回転されるようにさせることができ、読み値は、インクリメントごとに第2の配列で取られ記憶され、ついには、読み値は、パイプの外周全体について取られ記憶される。
【0034】
ステップ550にて、第1および第2の配列に記憶された値は、画像を生成するために処理される。すなわち、各配列は、所与のセンサ(第1の配列)についてのまたは物体70の特定のエリア(第2の配列)についての、差分磁場読み値に対応する離散値の行列または格子を構成する。画像処理ソフトウェア(例えば、市販のソフトウェアアプリケーションの一部としてMATLABを含む)は、配列を画像に変換するために使用される。典型的に、黒および白(グレイスケール)画像で十分である。例えば、配列内の値が-255から+255に及ぶ場合、黒は値-255に割り当てられ得、白は+255に割り当てられ得、その間の値は、灰色の色相で黒から白にインクリメンタルに変化する。負の最も端の値は1つの極(例えば、南磁極)を示し、一方、正の最も端の値は反対の極(例えば、北磁極)を示す。配列内の値は、行および列ずつ個々に分析される可能性があるが、そのような処理は、画像の形態でひとまとめにデータ点を処理することに比べて、時間がかかり、マシンサイクル集約的である。種々のフィルタリングおよび処理技法が、デジタル画像データに適用されて、不連続性の識別の明確さおよび正確度を改善することができる。
【0035】
この時点で、周囲の差分場強度の読み値の配列から生成されるベースライン画像、および、物体の壁に非常に近接する差分場強度の読み値の配列から生成される物体の第2の画像が存在する。好ましくは、高速フーリエ変換(FFT:fast Fourier transform)が各画像に適用される。デジタルフィルタリングは、低周波数成分(データのゆっくりした変動)が除去され、高周波数成分(急速に変動するデータ)が強調されるように、各FFTに適用され得る。ベースラインFFTは、物体FFTから減算される。これは、センサに起因する背景雑音を除去する。逆FFTは、減算の結果に適用され、それは第3および第4の画像を提供する。
【0036】
ステップ560にて、不連続性の存在は、この第3の画像から決定される。この決定は、スクリーン上に画像を表示すると、オペレータによって視覚的に、または、数学的分析によってより客観的に行われ得る。不均質な冶金微細構造に起因する差分磁場強度の変動が、単一極の値、例えば、+1から+255または-1から-255に制限されることが見出された。物体の壁において材料不連続性(すなわち、スプリットまたはクラック)が存在する場合、その場合に限り、極の変化が存在することになり、配列値は、ゼロを交差することになる。視覚的に、これは、スプリットの場所に著しいコントラストを有する隣接エリアとして現れることになる。画像は、目に見ることができない物体上のスプリットの実際の場所を示す(例えば、スプリットまたはクラックは、物体の壁の完全に内部にある場合がある)。
【0037】
数学的には、ゼロ交差アルゴリズムは、差分磁場読み値が北極から南極に変化する場所を識別するために実行され得る。これは、スプリットの両側で生じる、すなわち、スプリットの一方の側は北極であり、スプリットの他方の側は南極である。画像データ内のゼロ交差の存在は、スプリットの存在の立証である。
【0038】
代替の数学的分析が開発されており、それは、物体が不連続性を有しないかを決定するときに特に有用である。物体のセンサ読み値の配列から初期画像が生成されると、この画像と知られている良品物体(すなわち、不連続性がない物体)の画像との間の相関係数が算出され得る。閾値を超える相関は、検査下の物体が、不連続性がないことを示す。相関が所与の値を下回る場合、上記で説明したフルデータおよび画像の処理が、不連続性が存在するか否かおよびどこに存在するかを確実に決定するために行われ得る。このアプローチは、サイクルタイムの増加およびより高速な処理を可能にする。
【0039】
図6A-6Bは、鉄物体が延性鉄パイプであった、上記で説明した方法によって生成された例示的な画像である。図6Aにおいて、「パイプ走査」とラベル付けされた一番上の画像は、パイプの外周の周りのセンサ読み値から生成された初期画像である。「参照走査」とラベル付けされた、下の次の画像は、パイプから離間したセンサから読み値、すなわちセンサ自体の周囲または背景読み値、が取られたときに生成された画像である。これらの画像の両方は、表面にわたる差分磁場強度の変動を、灰色の種々の色相の縞として示す。さらに、不連続性の存在は、さらなる処理の前においてさえも、一番上の「パイプ走査」画像においてかなり明瞭に示されている。「FFT差」とラベル付けされた図6Aの画像は、「パイプ走査」画像および「参照走査」画像のFFTの減算の結果である。示すように、ほぼ全ての背景雑音は、「パイプ走査」画像と「参照走査」画像との差を表示する結果として、除去された。逆FFTを「FFT差」画像に適用することは、「結果」とラベル付けされた最終画像をもたらす。示すように、この画像のほぼ全ては黒であり、スプリットの場所に、コントラストの著しい変化―ここでは黒から白へ―が存在する。ゼロ交差は、これらの色の移行部で生じる。
【0040】
図6Bは、スプリットを含まないパイプについての類似の画像のセットである。示すように、「結果」とラベル付けされた最終画像は色が均一である。
【0041】
本発明は、その特定の好ましい実施形態を参照して説明され示されてきたが、他の実施形態が可能である。したがって、上記説明は、全ての点で、例証的であり、制限的でないと考えられる。したがって、本発明は、特許請求の範囲およびそれらの等価物を参照して規定されるべきであり、特許請求の範囲の趣旨および範囲は、本明細書に含まれる好ましい実施形態の説明に限定されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
【国際調査報告】