(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】高速溶射によるラミネーションシリンダーの粗度を最適化するための方法
(51)【国際特許分類】
C23C 4/129 20160101AFI20240925BHJP
【FI】
C23C4/129
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520527
(86)(22)【出願日】2022-10-03
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 ES2022070627
(87)【国際公開番号】W WO2023057674
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522249280
【氏名又は名称】メカニザシオン インダストリアル アスティジェロ,エス.エー.
(71)【出願人】
【識別番号】524122738
【氏名又は名称】フェンテヴィラ ディアズ,グレゴリオ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】フェンテヴィラ ディアズ,グレゴリオ
【テーマコード(参考)】
4K031
【Fターム(参考)】
4K031DA01
4K031EA01
4K031EA06
4K031EA07
4K031EA09
(57)【要約】
本発明は、シリンダーの表面上に等方粗度(Ra)を形成するために、スプレーカラムを用いる粉末の溶射による該シリンダーをコーティングするための方法に関し、シリンダーはその縦軸を中心に速度(Vr)で回転し、スプレーカラムは、速度(Vt)で並進移動し、らせん状に材料を堆積させる。噴霧される粉末の粒度分布(G)、コーティングの目標粗度(Ra)、及び目標厚さ(t)を設定した後、対応する粉末の供給流量(Fr)は、事前に決められた式に従って、供給流量(Fr)及び粒度分布(G)に基づいて目標粗度(Ra)を示す実験表で決定され、その後、回転速度(Vr)及び並進速度(Vt)は、定義された供給流量(Fr)、並進速度(Vt)、及び回転速度(Vr)の関数として、目標コーティング厚(t)に関する方程式から定義される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速溶射により、より具体的には、スプレーカラムを用いる粉末の溶射により、圧延機ロールの粗度を最適化して、前記圧延ロールの表面上に等方粗度(Ra)を形成するための方法であって、前記圧延ロールは前記圧延ロールの縦軸を中心に速度(Vr)で回転し、スプレー円錐は前記圧延ロールの軸に速度(Vt)で平行に並進移動して、らせん形に従って材料を堆積させ、以下の(a)~(d)の動作フェーズでは、
a)噴霧する粉末の粒度分布(G)を設定すること、
b)コーティングの目標粗度(Ra)及び目標厚さ(t)を設定すること、
c)下式に従って、供給流量(Fr)及び粒度分布(G)に基づいて前記目標粗度(Ra)を示す実験表から、対応する粉末の供給流量(Fr)を見つけることであって、
【数1】
ηは使用する機器のタイプによって決まるプロセスの効率であり、A(G)及びB(G)は、前記粉末の粒度分布(G)の関数である、見つけることと、
d)回転速度(Vr)及び並進速度(Vt)を定義することであって、下式に従って、前記定義された供給流量(Fr)、前記並進速度(Vt)、及び前記回転速度(Vr)の関数として、目標コーティング厚(t)に関する方程式から定義され、
【数2】
式中、Nは前記圧延ロールの毎分回転数であり、ρはスプレー粉末の密度である一方、前記スプレー円錐(d)の幅と、ねじの1回転あたりのピッチ(p)との比は1よりも大きい、定義すること、
が設定される、方法。
【請求項2】
HVAF溶射法を使用して、前記粉末の粒度分布(G)及び前記粉末供給流量(Fr)に基づいて所望の粗度(Ra)を計算するために、実験表を用いることを特徴とする、請求項1に記載の高速溶射による圧延機ロールの粗度を最適化するための方法。
【表1】
【請求項3】
HVOF溶射法を使用して、前記粉末の粒度分布(G)及び前記粉末供給流量(Fr)に基づいて所望の粗度(Ra)を計算するために、実験表を用いることを特徴とする、請求項1に記載の高速溶射による圧延機ロールの粗度を最適化するための方法。
【表2】
【請求項4】
前記スプレー粉末は1μm未満の寸法を伴う硬質粒子を含み、目標の最終粗度(Ra)は、以下のルールに従って、前記粉末の平均粒度分布(G)によって決まることを特徴とする、請求項1に記載の高速溶射による圧延機ロールの粗度を最適化するための方法。
【表3】
【請求項5】
コーティング表面のピーク数(RPc)は、以下の式に従って、粗度(Ra)に関連する値を超えないことを特徴とする、請求項1に記載の高速溶射による圧延機ロールの粗度を最適化するための方法。
【数3】
【請求項6】
2μm未満の粗度に対する機械的、熱的、化学的、または電気化学的な焼灼/除去により、ピークの高さ及び数を減らすことによって、前記ピーク数(RPc)は、追加の表面処理ステップによって得られることを特徴とする、請求項1及び3に記載の高速溶射による圧延機ロールの粗度を最適化するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速溶射技術を使用して、コーティングされた作業用圧延ロールの粗度を生じさせて、最適化するための特別に設計された方法に関する。
【0002】
これらの作業用圧延ロールは、熱間圧延機または冷間圧延機で金属薄板またはコイルを生成するために使用できる。
【背景技術】
【0003】
熱間圧延工場及び冷間圧延工場では、作業用圧延ロールの耐用年数を改善することは、鋼鉄メーカーの運営費を減らすための主要な方法の1つとして挙げられる。
【0004】
クロムめっき等の従来の解決策と比較して作業用圧延ロールの耐用年数を増加させるために、コーティングの硬度を増加させる必要がある。これは、金属マトリクス内の炭化物粒子を含むコーティングによって行うことができる。
【0005】
これらのコーティングは、高速溶射によって、作業用圧延ロールの表面上に堆積する。噴霧される硬質粒子のタイプ及びコーティングの厚さは、作業用圧延ロールの耐用年数に著しく影響を与える。
【0006】
標準の作業用圧延ロールによると、プロセスの制限により、かつストリップの欠陥を回避するために、圧延ロールの粗度は、圧延ロールの長さに沿って均一にする必要があり、平均粗度及び標準偏差に関して要件を満たす必要がある。
【0007】
高速溶射技術では、粗度を管理することが開発されてこなかったという事実に起因して、以下の両方を確実に管理することについて課題が生じている。
・作業用圧延ロールの耐用年数を保証するコーティングの厚さ、
・目標粗度。
【0008】
圧延ロールの表面上の粗度の重要性に関して、以下のことを強調する価値がある。
・圧延ロールの粗度は、圧延中、ストリップと圧延ロールとの摩擦によって生じる摩耗による減少する。粗度が増加するにつれて、摩擦係数は増加し、同じ粗度で、ピーク数が増加するにつれて、摩擦係数が増加する[1]。
・摩擦係数があまりに低い場合、ストリップは、圧延ロールで滑り/横滑りが発生し、欠陥を生じさせ得る、または圧延において厚さの減少を制限させ得る[2]。一方、摩擦係数があまりに高い場合、ストリップ上の圧延ロールのすり減りが増加し、鉄の微粉によるストリップの汚染が増加する[1]。
・これは、通常、逆転圧延機で見られる、ストリップのエッジの亀裂の場合が該当する。この場合、エッジ上の亀裂は、摩擦係数に影響を受けやすいことは広く知られている。摩擦が増加するとともに、欠陥は増加する[3]。
・ストリップの粗度は、ストリップ自体の特性、品質、及び性能に影響を与える。スキンパスミルの場合のように、プレス加工中に良好な挙動を確実にするために、ストリップの粗度は、材料の亀裂を回避するために十分に高くする必要がある。
・ストリップの粗度は、作業用圧延ロールの粗度から伝えられる。圧延ロールの粗度が高くなるにつれて、ラミネートストリップの粗度は大きくなる。圧延力及びストリップ張力は、粗度が伝えられる挙動に影響を与える。したがって、ストリップに必要な粗度を認識して、作業用圧延ロールの粗度が定義される。
・圧延プロセスの状態及びストリップの目標粗度に応じて、鋼鉄メーカーは、圧延ロールの粗度を定義する。
【0009】
この特許では、顧客の要求に応えて均一な粗度を得るための解決策及び方法論が提示されている。
【0010】
この意味では、本発明で使用される術語体系が導入されている。
【0011】
Raは、粗度プロファイルの算術平均偏差として定義されている。計算はISO規格4287に従って行われ、カットオフは0.8mmである。
【0012】
RPCはセンチメートルの長さの単位あたりのピーク数として定義されている。計算はISO規格4287に従って行われ、ストリップ幅は1マイクロメーターである。
【0013】
冷間圧延プロセスで使用される圧延ロールに関して、冷間圧延ミルで使用される作業用圧延ロールは異なるタイプの表面仕上げをもたらすことを留意されたい。
【0014】
作業用圧延ロールのテクスチャの標準値は表1に示される。
【0015】
【0016】
圧延中の粗度の推移に関して、以下のことを強調する価値がある。
・圧延運動中、作業用圧延ロールの粗度は、ストリップと圧延ロールとの摩擦によって生じる摩耗により減少する。クロム等のコーティングを使用すると、この現象が遅延する。
図2を参照されたい。
・粗度の減少は、また、圧延ロールで使用されるテクスチャのタイプに依存する。
図3を参照されたい。
・圧延ロールの初期粗度が、圧延運動の終了時における粗度よりもわずかに高いため、鋼鉄メーカーは、圧延ロールの粗度を定期的に監視して、ストリップの表面上で品質を確実にするために必要な範囲から逸脱することを防止する。粗度があまりに低いとき、圧延ロールは変化する。
【0017】
さらに、テクスチャリング技術に関して、以下について、強調する価値がある。
【0018】
現在、作業用圧延ロールの表面上で粗度を生じさせるいくつかのテクスチャリング技術が存在している。
i.ショットブラスティング(SBT):
鋼鉄ショットまたは鋳鉄ショットは、特定の粒度分布があり、そして、作業用圧延ロールの表面上に噴霧される。粒子の運動エネルギーは、表面の塑性変形を生成するのに十分である。得られる粗度は、ショットの質量ならびにサイズ、ショットの速度、圧延ロールの基材の硬度、圧延ロールに沿った通過回数、及び圧延ロールの回転速度の関数である。
ii.放電テクスチャリング(EDT):
誘電体媒質によって分離された圧延ロール(カソード)と銅電極(アノード)との間に印加された電圧は、圧延ロールの表面上にクレーターを生じさせることが可能である放電を生成する。粗度は、周波数、電子機器の電極に印加された電圧、及びキャパシタンスのレベルの関数である。この技術は、圧延ロールの摩耗に非常に敏感であるため、減少指数が高い冷間圧延でほとんど使用されていない。現在、このテクスチャは、スキンパスミル及びテンパーミルの基準となっている。
iii.レーザーテクスチャリング(LT):
レーザー光は、圧延ロールの表面に当たり、材料を溶解し、ガス(O2、CO2、またはAr)の補助によって生じたクレーターから外に材料を排出する。圧延ロールの最終テクスチャは、作業用圧延ロールの円周にわたってらせん状ピッチに沿ってクレーターの一様分布に対応する。クレーターの軸方向距離は、圧延ロールの縦運動の速度によって制御される。接線方向では、クレーターの距離は、圧延ロールの速度及び機械シャッターの速度の両方によって決定される。クレーターの深さは、レーザーの電力によって決定される。この技術は、現在、あまり一般的に使用されていない。
iv.電子ビームテクスチャリング(EBT)
この技術は、圧延ロールの表面上に電子ビームを衝突させることを含む。単一の発射中、レンズは、ビームを収束して、圧延ロールの材料を予熱し、次に、そのレンズは、表面を第1の炎と衝突させ、クレーターが生じ、その後、クレーターの周囲にリムを加熱する。このサイクルは、同じ場所で2回または3回行われ、より深いクレーターを生じさせることができる。発射サイクル中、ビームは、圧延ロールの表面の連続運動(変位及び回転)を補償するために偏向される。この技術は、スキンパスミルにだけ、たまに使用されるが、現在では、あまり一般的に使用されていない。
【0019】
【0020】
高速溶射を使用するコーティングに関して、以下のことを強調する価値がある。
・溶射技術は、溶融物質が表面上に噴霧されるコーティングプロセスである。ガスの混合物は、燃焼チャンバーで燃焼され、粉末を加熱及び加速して、それを基板上に堆積させる。燃焼ガスが酸素である場合、溶射はHVOFと呼ばれる。燃焼ガスが空気である場合、溶射はHVAFと呼ばれる。
・耐用年数を増加させるために、圧延機ロールには、炭化タングステン合金のコーティングが生成され、通常コーティングは単一層であり、厚さは0.003mm~0.020mmであり、工作物の表面の100%に影響を与える。合金は、好ましくは、WC-CoCr、WC-NiCr、WC-Co、WC-Ni、またはWC-CrC-Niから選択される。好ましくは、コーティングの透磁率は0%~0.1%の範囲にわたる。
・コーティング層は、1000Hv~1600Hvに含まれる最終硬度を有する。
・国際公開第2021148690号では、HVAF技術の場合、冷間圧延機ロール用の炭化タングステンコーティングの使用が説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第2021148690号
【特許文献2】特許第09300008号明細書
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】WORK ROLL ROUGHNESS TOPOGRAPHY AND STRIP CLEANLINESS DURING COLD ROLLING AUTOMOTIVE SHEET-Claude Gaspard,Daniel Cavalier,Stefan Wahlund-Technical contribution to the 11th International Rolling Conference,part of the ABM Week 2019,October 1st-3rd,2019,Sao Paulo,SP,Brazil.
【非特許文献2】RELATIONS BETWEEN FRICTION COEFFICIENT AND ROLL SURFACE PROFILES,ROLLED SHEET CHARACTERISTICS IN COLD ROLLING OF STEEL SHEETS-Hiroyasu YAMAMOTO,Mansaku SASAKI and Takahiro KITAMURA-Tetsu-to-Hagane Vol.95(2009)No.5.
【非特許文献3】THE RESEARCH ON EDGE CARCK OF COLD ROLLED THIN STRIP-Haibo Xie-2011-Thesis of university of Wollongong.
【非特許文献4】TEXTURING METHODS FOR COLD MILL WORK ROLLS-Bilal COLAK*,Fatih BASOGLU+,Naci KURGAN-UDCS’19 Fourth International Iron and Steel Symposium,4-6 April,Karabuk.
【非特許文献5】EFFECT OF WORK ROLL TECHNOLOGY ON COLD MATERIALS ROLLING AND PROGRESS OF MANUFACTURING FUTURE DEVELOPMENTS IN JAPAN -Mitsuo HASHIMOTO,Taku TANAKA,Tsuyoshi INOUE,1)Masayuki YAMASHITA,2)Ryurou KURAHASHI3)and Ryozi TERAKADO4)-ISIJ International,Vol.42(2002),No.9,pp.982-989.
【発明の概要】
【0023】
本発明で提案される方法は、十分に満足できるくらい前述した問題を解決するものである。
【0024】
その目的を達成するために、かつ、より具体的には、本発明の方法は、高速溶射により、より具体的には、スプレーカラムを用いる粉末の溶射により、圧延ロールをコーティングして、該圧延ロールの表面上に等方粗度(Ra)を形成する方法を含み、圧延ロールは圧延ロールの縦軸を中心に速度(Vr)で回転し、スプレー円錐は圧延ロールの軸に速度(Vt)で平行に並進移動して、らせん形に従って材料を堆積させ、該方法では、以下の(a)~(d)の動作フェーズを設定する。
a)噴霧する粉末の粒度分布(G)を設定すること、
b)コーティングの目標粗度(Ra)及び目標厚さ(t)を設定すること、
c)下式に従って、供給流量(Fr)及び粒度分布(G)に基づいて目標粗度(Ra)を示す実験表から、対応する粉末の供給流量(Fr)を見つけることであって、
【0025】
【数1】
ηは使用する機器のタイプによって決まるプロセスの効率であり、A(G)及びB(G)は、粉末の粒度分布(G)の関数である、見つけることと、
d)回転速度(Vr)及び並進速度(Vt)を定義することであって、下式に従って、定義された供給流量(Fr)、並進速度(Vt)、及び回転速度(Vr)の関数として、目標コーティング厚(t)に関する方程式から定義され、
【0026】
【数2】
式中、Nは圧延ロールの毎分回転数であり、ρはスプレー粉末の密度である一方、スプレー円錐(d)の幅と、ねじの1回転あたりのピッチ(p)との比は1よりも大きい、定義すること、
が設定される。
【0027】
溶射法はHVOFまたはHVAF噴霧であり得る。
【0028】
次に、スプレー粉末は1μm未満の寸法を伴う硬質粒子を含み、目標の最終粗度(Ra)は、粉末の平均粒度分布(G)によって決まる。
【0029】
同時に、コーティングの表面のピーク数(RPc)は、粗度(Ra)に関連する値を超えてはいけない。
【0030】
下記になされる説明を補完するために、かつ本発明の特徴の深い理解を助けするために、本発明の好ましい実用的な実施形態に従って、一式の図面は該説明の不可欠な部分として添付されており、以下では、例示的及び非限定的な文字を用いて表されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】以下の現在存在している異なるテクスチャリング技術の図を示す。 (1)ショットブラスティング(SBT)。確率的コーティング。 (2-2’)放電テクスチャリング(EDT)。確率的コーティング。 (3)レーザーテクスチャリング(LT)。決定論的コーティング。 (4)電子ビームテクスチャリング(EBT)。決定論的コーティング。 (5)クロム蒸着テクスチャリング(TST)。ノジュラーコーティング。 (6)HVAF溶射コーティング。確率的コーティング。
【
図2】圧延プロセス中の粗度の推移と、クロムめっき等のコーティングの使用により、ストリップと圧延ロールとの摩擦によって生じた摩耗が遅延する状態に関するグラフを示す。y軸は表面粗度をミクロン単位で表し、x軸はキロメートル単位のストリップの長さであり、そして、下の曲線は、5%クロムを伴う鍛鋼圧延ロール(コーティングされていない圧延ロール)の挙動を表す一方、上の曲線は、クロムまたは銀クロムの電解コーティングによる圧延ロールの挙動を表す。
【
図3】圧延ロールで使用されるテクスチャのタイプに応じて、特に4つの異なるテクスチャについて、鋼板の積層トン数の関数として、粗度の減少を表すグラフを示す。
【
図4】本発明の方法の概略図を示し、圧延ロール(7)はその縦軸(8)の周りで制御速度で回転し、スプレー円錐は、圧延ロールの軸に平行に並進移動して、らせん形(10)に従って材料を堆積させる。
【
図5】単位長さあたりのピーク数(センチメートル)の関数として、粗度プロファイルの算術平均偏差の推移を表すグラフを示し、上の曲線は最大ピーク率に対応し、下の曲線は最小ピーク率に対応する。
【
図6】
図5と同様のグラフを示すが、追加処理がないプロセスの曲線と、2ミクロン未満の粗度のピークを減らすための追加処理に対応する曲線との比較に対応している。
【
図6.1】ピーク数を測定するコーティングのプロファイルカットと、特に、この目的のためにツールを使用して作られたレリーフとを示す。y軸はピークの大きさをミクロン単位で示し(山及び谷の両方ともピークと見なされる)、一方、x軸はプロファイルの長さをミクロン単位で表す。追加処理がないプロファイルを示す。
【
図6.2】ピーク数を測定するコーティングのプロファイルカットと、特に、この目的のためにツールを使用して作られたレリーフとを示す。y軸はピークの大きさをミクロン単位で示し(山及び谷の両方ともピークと見なされる)、一方、x軸はプロファイルの長さをミクロン単位で表す。特定の場合に追跡したコーティング厚さの0.25ミクロンを上回るピークの山の全てが除去されている状態の極端な場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の方法に従って、以下の説明は、粗度を管理するために提供されている。
-溶射コーティングに関して、厚さ(t)は、以下の式に従って、粉末供給流量(Fr)に密接に関係があり、同様に、ピース(Vr)の接線速度及びガン(Vt)の横方向速度にも密接に関係がある。
【0033】
【数3】
:方程式1
ここで、
t=コーティングの厚さ
N=圧延ロールの毎分回転数
η=発射機器のタイプによって決まる処理効率
Fr=粉末供給流量
Vt=ガンの横方向速度
ρ=粉末の密度
Vr=圧延ロールの接線速度
-コーティングの等方粗度及び厚さの均一性を保証するために、圧延ロールの2回転の間のスプレー円錐の重なりを最適化することが必要である。これを実現するために、2つの回転の間のスプレー円錐(d)の幅とピッチ(p)の長さとの比は、1よりも大きくする必要がある(
図4参照)。
-粗度は、下記に説明される簡略化された経験式に従って、スプレー粉末の供給流量及び粒度分布によって決まる。
【0034】
【数4】
:方程式2
式中、
η=処理効率
Fr=粉末供給流量
A(G)及びB(G)は、粉末の粒度分布(G)の関数である。
【0035】
下記に説明される表を使用することで、より便利になる。
【0036】
粉末の供給流量及び粒度分布の関数としてのRa(μm)-HVAFプロセス
【0037】
【0038】
粉末の供給流量及び粒度分布の関数としてのRa(μm)-HVOFプロセス
【0039】
【0040】
明確にするために、粉末は、微細な硬質粒子(WC等)及びバインダー(通常、ソフト金属)を含む。これは、粉末の粒度分布が硬質粒子の径よりも大きいことを意味する。粉末の粒状は、2つ以上の硬質粒子を含み得る。
【0041】
粗度を管理するためのステップに関して、以下のa)~c)が挙げられる。
a)粉末の粒度分布を定義すること、
b)粉末の粒度分布及び目標粗度を把握することであって、粉末供給流量は表2または表3のように定義される、把握すること、
c)粉末供給流量及び目標厚さを把握することであって、Vr及びVtの値は方程式1を考慮して定義され、d/p>1を表す、把握すること。
【0042】
表4では、標準粗度と比較した本発明による溶射が説明されている。
【0043】
溶射粗度と確率的粗度の標準値との比較
【0044】
【0045】
粉末の粒度分布及びその硬質粒子の径の管理に関して、
-スプレー粉末の固定径の粗度を管理するのに必要なステップは、上記に説明した。
-要求される全ての粗度レベルに近づけるために、粉末の径は、表5に従って、異なる粗度範囲に対処するために適合する必要がある。
【0046】
粉末の粒度分布の必要量
【0047】
【表5】
-硬質粒子の径が、高速スプレーコーティングの最終粗度に影響を与える可能性があることが知られている。例えば、特許第09300008号明細書等では、粗度が0.3~3μmで得られるように、1~20μmの硬質粒子径に適応することが助言されている。例えば、硬質粒の径は、1~5μmであれば、約0.3μmの粗度が得られる。
-圧延ロールの耐用年数が増加するにつれて、圧延運動の期間が増加する。硬質粒子の径があまりに大きい場合、同様に、圧延が進捗するにつれて、圧延ロールの粗度は増加し、これは金属バインダーの「摩耗」に起因する。この現象を回避するために、硬質粒子の径は、1μm未満にするべきである。
【0048】
さらに、粗度のピーク数を管理することに関して、以下について、強調する価値がある。
-前述したように、タンデム圧延機またはリバース圧延機で使用されるコーティングされていない圧延ロールまたはクロムめっきが施された圧延ロールについて、鋼鉄メーカーは、ストリップの品質(エッジの汚染、亀裂等が生じない)を保証するために、粗度を設定するために使用してきたが、ピーク数に関する特定の要求がない。
-硬質粒子を含むHVAFまたはHVOFコーティングにより、圧延ロールの耐用年数が大幅に増加する。これは、圧延運動の期間が大幅な増加することを意味する。圧延運動(コーティングされていない圧延ロールまたはクロムめっきが施された圧延ロール)の標準期間では、粗度の管理は、ラミネートストリップの欠陥を回避するのに十分である。硬度が1000Hvよりも大きいコーティングの場合、試験では、粗度に加えて、ピーク数のレベルを制限することが重要であることが示される。[2]%によると、平坦エリアの割合が摩擦に影響を与える。接触面を増加する1つの方法として、ピーク数を減少させる及び/またはピークを丸めることが考えられる。
-何らかの品質問題(エッジでの亀裂、汚染等)が生じることなく、クロムめっきが施された圧延ロールと比較して1.5倍の長さに、またはコーティングされていない圧延ロールと比較して2倍の長さに、圧延運動の耐用年数を増加することを可能にするために、最大ピーク数(RPc)は下式に従う必要がある。
【0049】
【数5】
:方程式3
-高速溶射を使用するコーティングの場合、
図5に示されるように、ピーク数は粗度とともに推移する。この推移は、高速溶射によって生じた粗度と、50μmよりも小さいスプレー粉末の粒度分布に関して典型的である。
-
図6は、高速溶射コーティングが、1.5~2μmよりも大きい粗度に対して、方程式3を満足することを示す。低い粗度について、コーティング表面の後続の処理動作を追加することが必要である。
【0050】
この表面処理は、機械的(ショットブラスティング、研磨等)、化学的、電気化学的、または熱的(レーザー等)であり得る。これらの処理により、粗度のピークが減る。同時に、ピークの粗度及び総数は減る(
図6、
図6.1、及び
図6.2を参照)。ピーク及び粗度を減少させる方法は、行われる最終処理のタイプに依存する。
【0051】
同時に、5μmよりも大きい粗度について、ショットブラスティングによって、圧延ロールを前処理する必要がある。
【0052】
本願で使用される参考文献は、以下の[1]~[7]である。
[1]WORK ROLL ROUGHNESS TOPOGRAPHY AND STRIP CLEANLINESS DURING COLD ROLLING AUTOMOTIVE SHEET-Claude Gaspard,Daniel Cavalier,Stefan Wahlund-Technical contribution to the 11th International Rolling Conference,part of the ABM Week 2019,October 1st-3rd,2019,Sao Paulo,SP,Brazil.
[2]RELATIONS BETWEEN FRICTION COEFFICIENT AND ROLL SURFACE PROFILES,ROLLED SHEET CHARACTERISTICS IN COLD ROLLING OF STEEL SHEETS-Hiroyasu YAMAMOTO,Mansaku SASAKI and Takahiro KITAMURA-Tetsu-to-Hagane Vol.95(2009)No.5.
[3]THE RESEARCH ON EDGE CARCK OF COLD ROLLED THIN STRIP-Haibo Xie-2011-Thesis of university of Wollongong.
[4]TEXTURING METHODS FOR COLD MILL WORK ROLLS-Bilal COLAK*,Fatih BASOGLU+,Naci KURGAN-UDCS’19 Fourth International Iron and Steel Symposium,4-6 April,Karabuk.
[5]EFFECT OF WORK ROLL TECHNOLOGY ON COLD MATERIALS ROLLING AND PROGRESS OF MANUFACTURING FUTURE DEVELOPMENTS IN JAPAN -Mitsuo HASHIMOTO,Taku TANAKA,Tsuyoshi INOUE,1)Masayuki YAMASHITA,2)Ryurou KURAHASHI3)and Ryozi TERAKADO4)-ISIJ International,Vol.42(2002),No.9,pp.982-989.
[6]国際公開第2021148690号
[7]特許第09300008号明細書
【国際調査報告】