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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】二ホウ化チタン粉末の合成方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 35/04 20060101AFI20240925BHJP
   C04B 35/58 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C01B35/04 B
C04B35/58 071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520597
(86)(22)【出願日】2022-10-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 FR2022051873
(87)【国際公開番号】W WO2023057716
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】2110464
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】310009890
【氏名又は名称】サン-ゴバン サントル ドゥ ルシェルシェ エ デトゥードゥ ユーロペン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】マンゲシュ ラメシュ アブハド
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル ノネ
(72)【発明者】
【氏名】ローリエ サン-ミゲル
(57)【要約】
本発明は、ホウ素源の存在下での炭素による酸化チタンの還元を含む、TiB粉末の合成方法に関し、上記方法は、炭素源、メジアン粒子径が5~100ミクロンである炭化ホウ素粉末、及びメジアン粒子径が5~80ミクロンである酸化チタン粉末の、混合物を加熱することからなり、上記混合物、及びこのような方法で得られたTiB粉末は、容器内に、容器1mあたり0.5~10L/分である不活性ガス押し流し流速の下、1500℃~2000℃の温度で入れられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TiB粉末を製造する方法であって、ホウ素源の存在下で炭素によって酸化チタンを還元することを含み、前記方法は:
(a)酸化チタン粉末、好ましくは粉末の形態であり、そのTiO質量パーセントが少なくとも95%である酸化チタン粉末、及び、
(b)炭素源、好ましくはその炭素質量パーセントが少なくとも90%である炭素源、及び
(c)炭化ホウ素粉末、好ましくは少なくとも90%のBC質量パーセントを有する炭化ホウ素粉末、
からなる原材料の混合物を、
- 1500℃超かつ2000℃未満の温度で、
- 前記酸化チタンの、ホウ化チタンへの、反応収支(2):
2TiO+BC+3C → 2TiB+4CO ・・・ (2)
による還元をもたらすそれぞれの割合で、加熱することからなり、
前記方法が:
- 前記炭化ホウ素粉末のメジアン粒径が、5~100マイクロメートルであること、及び、
- 前記酸化チタン粉末のメジアン粒径が、5~80マイクロメートルであること、及び、
- 前記炭化ホウ素の余剰が、前記反応(2)に必要な化学量論的量に対して、5質量パーセント未満であること、
- 合成が、不活性ガス流の下、容器内で行われること、
- 前記容器内の前記ガス流の流速が、容器1m当たり0.5~10L/分であること、
を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記炭化ホウ素粉末のメジアン粒径が、7μm超かつ/又は80μm未満である、請求項1に記載のTiB粉末の合成方法。
【請求項3】
前記酸化チタン粉末のメジアン粒径が、7μm超かつ/又は50μm未満である、請求項1又は2に記載のTiB粉末の合成方法。
【請求項4】
前記炭化ホウ素粉末のメジアン粒径の、前記酸化チタン粉末のメジアン粒径に対する比が、0.8超かつ/又は5未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載のTiB粉末の合成方法。
【請求項5】
前記酸化チタン粉末が、5%未満であるSiO+Al+ZrOの質量パーセントを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のTiB粉末の合成方法。
【請求項6】
前記炭素源が、コークス、特には石油コークス、石炭若しくはバイオマス由来のもの、グラファイト、又はカーボンブラックから選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載のTiB粉末の合成方法。
【請求項7】
前記不活性ガス押し流し流速が、前記容器1m当たりかつ前記容器の加熱電力1kW当たり0.005~1L/分である、請求項1~6のいずれか1項に記載のTiB粉末の合成方法。
【請求項8】
前記不活性ガスが、希ガス、好ましくはアルゴン又はヘリウムから選択される希ガスである、請求項1~7のいずれか1項に記載のTiB粉末の合成方法。
【請求項9】
アルカリ金属塩が、炭素源、並びに炭化ホウ素粉末及び酸化チタン粉末の粒子の質量に対して、0.5~15質量パーセントの金属の割合で、前記混合物に添加される、項1~8のいずれか1項に記載のTiB粉末の合成方法。
【請求項10】
前記混合物が、質量比で、62~65%の酸化チタン(TiO)、21~23%の炭化ホウ素(BC)、及び13~15%の炭素(C)、特にはカーボンブラックの形態のもの、を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のTiB粉末の合成方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法により得られるTiB粉末であって、そのメジアン径が、0.5~50μmであり、かつその化学組成が、以下の元素質量パーセント:
- チタン(Ti):67%超であり、
- ホウ素(B):28%超であり、
- 酸素(O):1.3%未満であり、
- 炭素(C):0.5%未満であり、
- 窒素(N):0.5%未満であり、
- 硫黄(S):400ppm未満であり、
- 鉄(Fe):0.45%未満であり、
- Li+Na+Rb+Csの合計が、1%未満であり、
- その他の元素の合計が、2%未満である、
を含む、TiB粉末。
【請求項12】
酸素(O)+窒素(N)+炭素(C)の合計が、1.5%未満である、請求項11に記載のTiB粉末。
【請求項13】
メジアン径が、0.5~50μmであり、かつ化学組成が、以下の元素質量パーセント:
- チタン(Ti):68%超かつ72%未満であり、
- ホウ素(B):29%超かつ33%未満であり、
- 炭素(C):0.5%未満であり、
- 酸素(O):1%未満であり、又は硫黄(S):300ppm未満であり、
- 窒素(N):0.5%未満であり、
- 鉄(Fe):0.4%未満である、
- 好ましくは、ケイ素(Si)が、0.1%未満であり、
- 好ましくは、リン(P)が、0.3%未満であり、
- 好ましくは、アルカリ土類金属(Be+Mg+Ca+Sr+Ba)の合計が、0.25%未満である、
を含む、請求項11又は12に記載のTiB粉末。
【請求項14】
X線回折によって測定したときに、TiBの結晶相のみを含む、請求項11~13のいずれか1項に記載のTiB粉末。
【請求項15】
混合物であって、90~99.9質量パーセントの、請求項11~14のいずれか1項に記載のTiB粉末、及び0.1~10質量パーセントの1つ以上の焼結用粉末であって、二ホウ化アルミニウム、二ホウ化マグネシウム、二ホウ化ジルコニウム、五ホウ化タングステン、六ホウ化カルシウム、六ホウ化ケイ素から選択される、1つ以上の焼結用粉末を含み、好ましくはその純度が95質量%超である、混合物。
【請求項16】
焼結セラミック体を製造する方法であって、以下の工程:
(a)以下を含む出発供給原料を生成すること:
- 請求項11から14のいずれか1項に記載のTiB粉末、又は請求項15に記載の粉末の混合物、
- 水性溶媒、特には脱イオン水、
- 好ましくは、成形添加剤、
(b)前記出発供給原料を、プリフォームの形状に成形すること;
(c)固化又は乾燥後、モールドから取り出すこと;
(d)随意に、前記プリフォームを、好ましくは残留水分含量が0~0.5重量パーセントになるまで、乾燥させること、
(e)炉内に装填し、不活性雰囲気下で、好ましくはアルゴン雰囲気下で、又は真空下で、好ましくは1600℃~2200℃の温度で、前記プリフォームを焼成すること、
を含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法により得られる、焼結セラミック体。
【請求項18】
請求項17に記載の焼結セラミック体の使用であって、メンブレン、遮蔽又は防弾要素、被覆又は耐火物ブロック、アノードコーティング若しくはブロック又はカソードコーティング若しくはブロック、熱交換器、金属溶解るつぼ、特には非鉄金属用金属溶解るつぼ、切削工具の、全部又は一部としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二ホウ化チタンの新規な製造方法又は合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二ホウ化チタンは、低密度(約4.5g/cm)、高硬度、高熱伝導性、及び低電気抵抗率を有する、セラミック材料である。これによって、それは、様々な用途、特には遮蔽及び防弾、熱伝導及び高い電気伝導性が長所となる耐火物用途、特には熱交換器、コーティング、若しくはさらには電解反応器のアノード若しくはカソードの構成、又はさらには特定の温度用途におけるメンブレン若しくは非常に侵食性の高い化学媒体中でのメンブレン、並びに金属、特には非鉄金属を溶かすためのるつぼ、又は切削工具など、に対して、潜在的に興味深い材料となる可能性がある。
【0003】
これらの用途は全て、この材料の需要が非常に高く、現在増加していることを説明している。
【0004】
TiBは、天然の状態では存在しない。二ホウ化チタンは、例えば、チタン(若しくはその酸化物若しくは水素化物)の、元素のホウ素との1000℃での直接反応によって、又は酸化チタンと酸化ホウ素との炭素熱還元によって得られうる。後者の場合、反応は、粉末の混合物を、以下の簡略化された反応に従って、1500℃超の温度で反応させることからなる。
TiO(s)+B(s)+5C(s) → TiB(s)+5CO(g) ・・・ (1)
【0005】
しかしながら、この方法は、約30%のみの理論的な材料効率を有する。
【0006】
別のあまり知られていない方法は、次の反応収支で示されるように、特には酸化ホウ素粉末を炭化ホウ素と置き換えることにある。
2TiO+BC+3C → 2TiB+4CO ・・・ (2)
【0007】
このような反応の利点は、その比較的良好な理論的材料収率(55.4%)、したがって一酸化炭素の比較的少ない放出であるが、それは、比較的高い反応温度を必要とするという欠点を有する。
【0008】
酸化チタンの供給源は、一般的には95%超のTiOを含有する鉱物源である。炭素源は、一般的にかつ優先的には、石油コークス(石油蒸留残留物)又はカーボンブラックである。炭化ホウ素もまた、炭化物粉末の市場で、特には研磨剤の市場で入手可能な合成材料である。
【0009】
しかしながら、この材料の製造方法は、最終的に得られる二ホウ化チタン粉末が、微細(典型的には、5~50マイクロメートルのメジアン径を有する)又は超微細(メジアン径が5マイクロメートル未満)になるにつれて、さらに高価になり、かつエネルギーを消費することになる。
【0010】
国際的な評論「Journal of Refractory Metals and Hard Materials 25 (2007) page 345-350 by C. Subrmania et al.」に掲載されている記事「Synthesis and consolidation of titanium diboride」は、例えば、非常に純粋な最終粉末(約0.5%の酸素、窒素及び炭素の含有量)を得ることを可能にする方法を示唆している。この方法は、高純度粉末(過半数化合物の含有率が95%超である)、0.8マイクロメートルのメジアン径を有する酸化チタン、6.7マイクロメートルのメジアン径を有する炭化ホウ素、及び石油コークスの混合物を、乾燥させた有機溶媒中で反応させ、そして、少なくとも1800℃の温度まで、4.10-5mbar以下の残留圧力に相当する真空中で加熱することからなる。この温度未満では、得られる粉末の純度が低すぎる。この記事は、微細な(サブミクロン(マイクロメートル))粒子サイズの、したがって反応性が比較的高い反応物粉末、特には酸化チタンの使用を教示し、それによって反応収率及び反応速度を向上させる。
【0011】
反応を比較的良好に制御するための別の解決策は、反応(1)に必要な化学量論的理論量に対して、少なくとも10質量パーセント、又はさらには20質量パーセントの、余剰のBCを含む方法からなる。この追加添加は、高温でのガス状のホウ素の損失を埋めることを可能にし、TiC及び残留炭素の存在を減少させるが、この方法の実際の材料収率を悪化させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、上述され、式(2)によって例示された合成方法を改良することであり、それによって、純粋な微細TiB粉末、すなわち、95%超の質量パーセントを有するもの、又はさらには非常に純粋なもの、すなわち、98%以上の純度を有し、低元素酸素含有量を有し、有利には低元素炭素含有量も有する、上記粉末を、高い材料収率を保持しつつ、工業的に複雑な粉末合成プロセスに頼ることなく、得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
特に、第1態様によれば、本発明は、2000℃未満の温度でTiBを製造するための代替方法に関し、特定の雰囲気条件の恩恵、及び触媒又は界面活性剤を用いずに出発粉末を適切に選択することの恩恵によってこの目的を満たす。
【0014】
より具体的には、本発明は、TiB粉末の製造方法に関し、これはホウ素源の存在下で炭素によって酸化チタンを還元することを含み、上記方法は:
(a)酸化チタン粉末、好ましくは粉末の形態であり、そのTiO質量パーセントが、少なくとも95質量パーセントである酸化チタン粉末、及び、
(b)炭素源、好ましくはその炭素質量パーセントが、少なくとも90%である炭素源、及び
(c)炭化ホウ素粉末、好ましくは、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のBC質量パーセントを有する、炭化ホウ素粉末、
を含み、好ましくはこれらからなる、原材料の混合物を、
- 1500℃超、好ましくは1600℃超、かつ2000℃未満、好ましくは1900℃未満の温度で、
- 酸化チタンのホウ化チタンへの、以下の反応収支:
2TiO+BC+3C → 2TiB+4CO ・・・ (2)
による還元をもたらす、それぞれの割合で、加熱することである。
【0015】
上記方法は、以下の点を特徴とする:
- 炭化ホウ素粉末のメジアン粒径が、5~100ミクロン(マイクロメートル)である点、及び、
- 酸化チタン粉末のメジアン粒径が、5~80ミクロン(マイクロメートル)である点、及び、
- 炭化ホウ素の余剰が、上記反応(2)に必要な化学量論的量に対して、5質量パーセント未満、好ましくは2質量パーセント未満である点、及び、
- 合成は、不活性ガス流の下、容器内で行われる点、
- 上記容器内のガス流の流速は、容器1m当たり0.5~10L/分である点。
【0016】
本発明によれば、不活性ガスは、原材料の混合物と接触しながら容器内に導入されている。本発明は、上述した出発粉末の粒子サイズの選択だけでなく、先述した特定の合成条件の選択にもあり、このような組み合わせは、有利には、以下でさらに詳細に説明されるように、最大材料収率で高純度の微細なTiB粉末を得ることを可能にする。
【0017】
本発明の方法は、特には、以下の好ましい特徴のうちの1つ以上を含む:
- 炭化ホウ素粉末のメジアン粒径は、7マイクロメートル超、好ましくは10マイクロメートル以上である。
- 炭化ホウ素粉末のメジアン粒径は、80ミクロン(マイクロメートル)未満、好ましくは50ミクロン(マイクロメートル)未満、又はさらに好ましくは30ミクロン(マイクロメートル)未満である。
- 酸化チタン粉末のメジアン粒径は、7マイクロメートル超、好ましくは10マイクロメートル以上である。
- 好ましい実施形態によれば、炭化ホウ素粉末のメジアン粒径は、7マイクロメートル超であり、酸化チタン粉末のメジアン粒径は、7マイクロメートル超であり、
- 酸化チタン粉末のメジアン粒径(D50)は、50マイクロメートル未満、好ましくは30マイクロメートル未満である。
- 炭化ホウ素粉末の粒子の直径D90は、100マイクロメートル未満、好ましくは80マイクロメートル未満、好ましくは50マイクロメートル以下、より好ましくは40マイクロメートル以下であり、
- 酸化チタン粉末の粒子の直径D90は、100マイクロメートル未満、好ましくは80マイクロメートル未満、好ましくは50マイクロメートル以下、より好ましくは40マイクロメートル以下であり、
- 炭化ホウ素粉末のメジアン粒径の、酸化チタン粉末のメジアン粒径に対する比は、0.8超、好ましくは1以上である。
- 炭化ホウ素粉末のメジアン粒径の、酸化チタン粉末のメジアン粒径に対する比は、5未満、好ましくは2未満である。
- 酸化チタン粉末は、ルチル又はアナターゼ粉末であり、好ましくはルチルである。
- 酸化チタン粉末中のSiO+Al+ZrOの質量パーセントは、5%未満である。
【0018】
特に、酸化チタン粉末中のSiOの質量含有量は、好ましくは2%以下である。酸化チタン粉末中のAlの質量パーセントは、好ましくは2%以下、より好ましくは1%未満である。酸化チタン粉末中のZrOの質量パーセントは、好ましくは1%以下である。
- 炭化ホウ素粉末中の元素酸素含有量は、5%以下、好ましくは3%未満、より好ましくは2%未満である。
- 炭素源は、コークス、特には石油コークス、石炭若しくはバイオマス由来のもの、グラファイト、又はカーボンブラックから選択される。
- 炭素源中の元素炭素の質量パーセントは、95%超、好ましくは97%超である。
- 炭素源が、これがコークスの形態である場合、脱水素処理を受け、それによって、ISO/TS 12902規格による、その元素水素の質量パーセントが、1%未満、非常に好ましくは0.5%未満、又はさらに好ましくは0.1%未満となる。好ましくは、含有量が、以下のHAP化合物のそれぞれについて、10ng/mg未満である:ナフタレン、アセナフテン、フルオレン、フェナントラセン、クリセン、アントラセン、ピレン、ベンズ[a]アントラセン、ベンゾ[a]ピレン、ジベンゾ(a,h)アントラセン、ベンゾ[ghi]ペリレン、ベンゾ[k]フルオランテン、フルオランテン、ベンゾ[b]フルオランテン、及びIn(1,2,3,c,d,)P)。
- 原材料を、あらかじめ室温から150℃の間の温度で乾燥させた。
- 合成温度が、1600℃以上、好ましくは1800℃未満である。
- 容器の圧力が、実質的に一定に保たれ、例えば0.5~1.5バール、さらに好ましくは、容器が、大気圧(1バール)下にある。
- 混合物が置かれている容器を押し流すガスが、好ましくは希ガス、例えばアルゴン又はヘリウム、好ましくはアルゴンである。常圧かつ常温条件下で測定された流速は、好ましくは容器1m当たり0.5~5L/分、好ましくは1mあたり0.5~3L/分、好ましくは容器1m当たり0.5~2L/分である。低すぎる押し流しは、不完全な反応につながり、比較的特には、二ホウ化チタンの最終粉末中の、望ましくない炭素の残留の存在につながる。高すぎる流速は、化学反応速度論に伴う比較的高いエネルギー供給を要求するので、反応(2)の収率を悪化させる。容器1m当たり0.5~10L/分のガス押し流し流速は、典型的には、20~80KWからなるエネルギー出力を有する反応器に、比較的特に適している。このような反応器は、容積2.5リットルに等しい体積の容器に対して、500gまでの範囲でありうる混合物を加熱するために用いられる。
- 容器1m当たりかつ容器の加熱電力1KW当たり、0.005~1L/分の不活性押し流しガス流速が、特に最適であり、好ましくは、容器1m当たりかつ容器の加熱電力1kW当たり、0.01~0.5L/分である。
【0019】
ありうる第1態様によれば、アルカリ金属塩の添加は、例えば、炭素源、炭化ホウ素粉末粒子、及び酸化チタン粒子の総質量に対して、0.5~15%、好ましくは5~15質量パーセントの金属の割合に従って行われうる。この供給は、合成粉末中の凝集物の存在を低減し、凝集物は、このTiB合成粉末から得られる焼結セラミック体を焼成する工程を妨害しうる。
【0020】
0.5%未満のアルカリ金属塩の添加は、1500℃超の温度、特には1600~2000℃の温度には不十分である。15%超の供給は、TiB粉末の合成の際にホウ素の過剰な蒸発をもたらす。
【0021】
本発明の有利な実施形態によれば、アルカリ金属は、Li、Na、Kから選択される。好ましくは、アルカリ金属塩は、アルカリ金属のハロゲン化物、好ましくは塩化物である。より好ましくは、それは塩化ナトリウムである。
【0022】
アルカリ金属塩粒子のメジアンサイズは、好ましくは0.5~100マイクロメートル、より好ましくは5~50マイクロメートルである。
【0023】
本発明はまた、先述の方法に従って得られるTiB粉末に関する。この粉末のメジアン粒径は、0.5~50ミクロン(マイクロメートル)であり、それは、以下の元素質量パーセントを含む:
- チタン(Ti):67%超であり、
- ホウ素(B):28%超であり、
- 酸素(O):1.3%未満、好ましくは1.2%未満であり、
- 炭素(C):0.5%未満であり、
- 窒素(N):0.5%未満であり、
- 硫黄(S):400ppm未満、好ましくは300ppm未満、又はさらには150ppm未満であり、
- 鉄(Fe):0.45%未満であり、
- 好ましくは、Li+Na+Rb+Csの合計が1%未満であり、
- 好ましくは、他の元素の合計が、2%未満である。
【0024】
好ましくは、酸素(O)+窒素(N)+炭素(C)の合計は、1.5%未満、又はさらには1.2%以下である。
【0025】
このような高純度かつ規定された粒子サイズのTiB粉末は、7体積パーセント未満の全多孔度を有する焼結セラミック体を、焼結によって得ることを、遷移金属、例えばNi、Fe、又はCoなどの添加を用いることなく可能にし、これらは、望ましくないこれらの金属からの2次金属ホウ化物の形成をもたらしうる。
【0026】
先述の方法で得られた粉末は、アルカリ金属塩が、粉末の合成の際に、上記のような割合で添加され、非常に高い均質性を有し、その結果、結晶サイズの分散が非常に小さくなる。このような粉末は、少なくとも1つの寸法、好ましくは全体の寸法の全てが、5cm超、又はさらには10cm超であり、7%未満の全多孔度、非常に限定された孔径分布を有し、焼結時に変形せず、収縮割れのない、部品の形態である焼結セラミック体を、得ることを可能にする。
【0027】
好ましくは、本発明によるTiB粉末は、以下の元素質量パーセントの1つ以上をさらに含む:
- チタン(Ti):68%超かつ/又は72%未満であり、
- ホウ素(B):29%超かつ/又は33%未満であり、
- 炭素(C):0.5%未満であり、
- 酸素(O):1%未満、好ましくは0.5%未満であり、又は硫黄(S)が300ppm未満、100ppm未満、好ましくは50ppm未満であり、
- 窒素(N):0.5%未満であり、
- 鉄(Fe):0.4%未満であり、
- 好ましくはリン(P):0.3%未満、好ましくは0.2%未満、好ましくは0.1%未満であり、
- 好ましくはケイ素(Si):0.1%未満、好ましくは500ppm未満であり、
- アルカリ土類(Be+Mg+Ca+Sr+Ba):0.25%未満である。
【0028】
上記TiB粉末は、1%未満、好ましくは0.5%未満のSiC含有量、及び1%未満、好ましくは0.5%未満のTiC含有量をさらに含む。
【0029】
本発明によるTiB粉末は、X線回折によって測定される(検出可能な)、結晶化相、例えばBC相もしくはTiC相、又はTi、Ti、SiCなどを含まない。好ましくは、上記粉末は、X線回折によって測定される(検出可能な)、TiBの結晶相のみを含む。
【0030】
本発明はまた、90~99.9質量パーセントの本発明によるTiB粉末、及び0.1~10質量パーセントの1つ以上の焼結用粉末であって、二ホウ化アルミニウム、二ホウ化マグネシウム、二ホウ化ジルコニウム、五ホウ化タングステン、六ホウ化カルシウム、六ホウ化ケイ素から選択される1つ以上の焼結用粉末を含むか、又はさらにはこれらからなる混合物に関し、好ましくはその純度が、95質量パーセント超であり、好ましくは98質量パーセント超である。
【0031】
95質量パーセントを超える純度は、上記相又は最も安定な主化合物のものである:例えば、二ホウ化アルミニウム粉末の場合、95質量パーセント超のAlBであり、又は五ホウ化タングステン粉末の場合、95質量パーセント超のWを含む。
【0032】
本発明は、同様に、焼結セラミック体の製造方法に関し、これは以下の工程を含む:
(a)以下を含む出発供給原料を生成すること:
- 本発明による方法によって得られるTiB粉末、又は上記粉末及び1つ以上の上記焼結用粉末を含む、上述の粉末の混合物、
- 水性溶媒、特には脱イオン水、
- 好ましくは、成形添加剤、
(b)供給原料を、プリフォームの形状に、好ましくはプレスによって、成形すること
(c)固化又は乾燥後、モールドから取り出すこと;
(d)随意に、プリフォームを、好ましくは残留水分含量が0~0.5重量パーセントになるまで、乾燥させること、
(e)炉内に装填し、不活性雰囲気下で、好ましくはアルゴン雰囲気下で、又は真空下で、好ましくは1600℃~2200℃の温度で、プリフォームを焼成すること。
【0033】
本発明はまた、このようにして得られた焼結セラミック体に関し、かつ先述の方法によって得られた焼結セラミック体の、メンブレン、特には液体又は気体の濾過用、遮蔽又は防弾要素、被覆又は耐火物ブロック、アノードコーティングもしくはブロック、又はカソードコーティングもしくはブロック、特には電解反応器、熱交換器、金属溶解るつぼ、特には非鉄金属用金属溶解るつぼ、切削工具の全部又は一部としての、使用に関する。
【0034】
以下の表示及び定義は、本発明の先述の説明に関連して与えられる:
- 本明細書では、特に断りのない限り、全ての割合は、乾燥材料に基づいて、重量で与えられる。
- 材料収率は、得られたTiB原料粉末の質量を、TiB原料粉末の理論質量であって、熱処理前の反応物の乾燥混合粉末(水分2%未満)の理論質量から得られたであろうもので、割ることによって計算される。例えば、反応(2)による化学量論的条件下では、収率100%は、酸化チタン粉末、炭素粉末、及び炭化ホウ素粉末からなる100gの混合物から出発した、55.4gの粗粉末の質量に相当する。
- 粗粉末とは、混合物の加熱及び反応後、随意の追加処理、例えばスクリーニング又は粉砕などの前に、容器の出口で直接得られる粉末を意味する。
- 粉末を構成する粒子のメジアン径(又はメジアン「サイズ」)は、特にはレーザー粒度分布計を用いて、粒度分布を特徴付けることによって、本発明の意味において与えられる。粒度分布の特性評価は、従来、ISO 13320-1規格に準拠したレーザー粒度分析計を用いて行われる。レーザー粒度分布測定装置は、例えば、HORIBAのPartica LA-950でありうる。本明細書の目的に関して、特に言及しない限り、メジアン粒径は、それぞれ、粒子の直径であって、これ未満で母集団の50質量パーセントが見出される、粒子の直径を示す。粒子の集合、特には粉末の「メジアン直径」又は「メジアンサイズ」は、D50パーセンタイルと呼ばれ、すなわち、粒子を、体積が等しい第1集団及び第2集団に分けるサイズと呼ばれ、これらの第1集団及び第2集団は、それぞれメジアンサイズより大きいサイズを有する粒子のみ、又は小さいサイズを有する粒子のみを含む。
- 元素化学物質の含有量は、ISO 21068:2008規格に従って決定されうる。
【0035】
特には、
- O、N、C、及びSの含有量が、LECO(登録商標)ブランドの分析装置によって測定され、
- Si、アルカリ、アルカリ土類Fe、Pの含有量が、ICP(Induction Coupled Plasma)によって測定されてよく、
- B及びTiの含有量は、好ましくはICPによって決定されてよく、
- TiBだけでなく、他の結晶化化合物の存在及び相対的な含有量が、従来通りX線回折分析によって決定されてよく、
- セラミック体の全多孔度が、例えばISO 18754に従って測定されたかさ密度の、例えばISO 5018に従って測定された絶対密度に対する、百分率で表される比である。
【0036】
特に断りのない限り、本明細書中の全ての割合は、質量パーセントである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明による実施例2に従って、NaClを添加しない合成後の粗粉末を示す。
図2図2は、本発明による実施例4に従って、NaClを添加することを含む合成後の粗粉末を示す。
図3図3は、本方法の実施を可能にする反応器1を示し、これは容器2を含み、それによって、混合物3を、これを加熱しつつ不活性ガス4で押し流して、本発明による粗粉末を得る。
【発明を実施するための形態】
【0038】
詳細な説明
【0039】
本発明及びその利点は、以下に示す詳細な説明を読めばよりよく理解されるであろう。もちろん、本発明は、以下に記載される任意の態様において、そのような態様に限定されるものではない。
【0040】
炭素源(例えばカーボンブラックであり、このC質量パーセントが、90%超であり、好ましくは95%超であるもの)、酸化チタンの粉末(例えばルチル又はアナターゼ粉末であり、このTiO質量パーセントが、95%超であるもの)、及び炭化ホウ素粉末(例えばBC質量パーセントが、90%超である粉末)を含む、出発混合物は、当業者にとって標準的な条件下で生成される。乾燥混合物を生成するこの工程は、粒子の親和性のある接触を可能にする。ありうる一実施形態によれば、それは、ボールミキサー若しくはタンブラーミキサー、又は当業者に公知の他の装置において行われる。事前の共粉砕を、必要に応じて行って、出発原材料の粒子サイズを調整してよい。
【0041】
炭化ホウ素、酸化チタン、及び炭素粒子のメジアンサイズは、それぞれ10~100ミクロン(マイクロメートル)、5~80ミクロン(マイクロメートル)、及び0.1~1ミクロン(マイクロメートル)である。好ましくは、炭化ホウ素粒子及び酸化チタン粒子のメジアンサイズは、7マイクロメートル超、8マイクロメートル超、9マイクロメートル超、かつ/又は70マイクロメートル未満、50マイクロメートル未満、30マイクロメートル未満である。
【0042】
好ましくは、炭化ホウ素粒子の、酸化チタン粒子とのメジアンサイズ比は、0.8~1.2である。
【0043】
好ましくは、本発明による混合物は、質量パーセントで、それぞれ62~65%の酸化チタン、21~23%の炭化ホウ素、及び13~15%の炭素、特にはカーボンブラックの形態のものを含む。
【0044】
本発明による混合物は、反応(2)の化学量論に対して5%未満の余剰のBCを有し、これは、上記混合物内に導入されるTiOの量に基づいて本発明に従って計算される。
【0045】
随意に、アルカリ金属塩、好ましくはアルカリ金属ハロゲン化物、特にはNaClを、炭化ホウ素粒子、及び酸化チタン、及び炭素源を含む混合物の先述の質量に対して、0.5~15質量パーセントの金属の割合で添加する。
【0046】
混合物を、好ましくは風乾し、好ましくは40℃超の温度、より好ましくは100℃超の温度で風乾し、それによって、水分含量が2%未満であり、好ましくは1%未満である混合物を得る。
【0047】
混合物は、不活性るつぼ2、好ましくはグラファイト製の不活性るつぼ2の形態である容器内に入れられ、これは開いており、それによって、不活性ガス4にその中を押し流させ、そのアセンブリは、例えば添付の図3に示すような誘導炉1内に入れられる。誘導炉1は、銅製ターン5を備え、これは石英管6の周囲に配置されており、この内側に繊維状の熱遮断器7及びグラファイト製サセプター8が配置されている。不活性ガスは、ディストリビューター9によって導入される。排出口10は、不活性ガスが流れるのを可能にし、反応ガス、主にCOが回収されるのを可能にする。ASTM D7481-18規格に従って測定された熱処理前の混合物のゆるめ密度は、好ましくは0.5超、0.6超、0.7超であり、かつ/又は好ましくは2.0未満、1.8未満である。好ましくは、混合容積は、容器の総容積の30%未満であり、それによって、不活性ガスの循環、及び反応(2)によって生成されるガスの放出を改善する。昇温は、少なくとも1500℃まで、好ましくは少なくとも1600℃まで、不活性雰囲気下で、好ましくは不活性ガスの押し流し下で、特にはアルゴンの押し流し下で行われ、ガスは混合物と接触させられるようになる。好ましくは、不活性ガス押し流しは、容器1m当たり0.5~5L/分、好ましくは1m当たり0.5~3L/分、より好ましくは容器1m当たり0.5~2L/分の通常流速で行われる。
【0048】
好ましくは、昇温は、20℃/分未満、好ましくは10℃/分未満である。この昇温ランプは、プラトーの持続時間と同様に、混合容積及び反応器の出力の関数として調整されうる。
【0049】
最高熱処理温度は、好ましくは1600~2000℃、より好ましくは1600~1800℃である。好ましくは、最高温度でのプラトーは、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間である。
【0050】
好ましくは、中間プラトーは、600℃~1000℃で行われ、かつ/又は比較的低いランプ、典型的には少なくとも2倍低いランプが、600℃の後に、行われ、それによって、混合物の除去を防止し、粒子間の反応を促進する。
【0051】
冷却は、自由又は強制であってよく、好ましくは20℃/分未満の負のランプに従って行われる。
【0052】
本発明の方法によれば、材料収率は、80%超、又はさらには90%超、又はさらには95%超、又はさらには98%以上である。
【0053】
得られる粗粉末は、典型的には10~100マイクロメートルの粒子サイズを有する。ふるい分け、軽い粉砕又は振動の作業が、凝集物を除去すること、及びメジアン径が0.5~50マイクロメートルであり、純度が高く、非常に均質であり、微細に分割された粉末を得ることを可能にする。粉砕後、結晶子サイズが限定されているので、サイズ分散が非常に減少しているミクロン(マイクロメートル)サイズの粉末を得ることがありうる。
【0054】
アルカリ金属塩が、粉末の合成の際に上記のような割合で添加されている、先述の方法で得られる粉末は、非常に高い均質性を有し、その結果、結晶サイズの分散がさらに比較的小さくなる。
【0055】
特にTiBの最終粉末は、高純度を有し、非常に減少している粒子サイズ分散を有し、これは、非常に低い電気抵抗率を示しつつ、遷移金属、例えばNi、Fe又はCoなどの添加を用いることなく、7体積パーセント未満の全多孔度を有する焼結セラミック体を、焼結によって得ることを可能にする。
【0056】
本発明の方法に従って得られる粉末は、焼結時に変形することなく、収縮割れを生じることなく、全ての寸法が少なくとも5cm超である、部品の形態である焼結セラミック体を得ることも可能にする。
【0057】
本発明による粉末を用いて焼結セラミック体を製造する方法は、特には以下の工程を含む:
(a)以下を含む出発供給原料を生成すること:
- 本発明によるTiB粉末、又は上述のような粉末の混合物であって、上記粉末、及び1つ以上の焼結用粉末、特には二ホウ化アルミニウム、二ホウ化マグネシウム、二ホウ化ジルコニウム、五ホウ化タングステン、六ホウ化カルシウム、六ホウ化ケイ素から選択される1つ以上の焼結用粉末を含み、上記TiB粉末の純度が95質量パーセント超、好ましくは98質量パーセント超であり、上記TiB粉末が、好ましくは供給原料の全質量の少なくとも90%である混合物、
- 水性溶媒、特には脱イオン水、
i. 鋳造成形の場合、供給原料の全質量の20%未満である、
ii. 押出成形の場合、供給原料の全質量の15%未満である、
iii.プレス成形の場合、供給原料の全質量の10%未満、好ましくは7%未満である、
- 好ましくは、成形添加剤、例えば結合剤、例えばPVA(ポリビニルアルコール)など、可塑剤(例えばポリエチレングリコールなど)、潤滑剤など、
(b)供給原料をプリフォームの形状に、好ましくはプレス、押出成形、又は注湯によって、成形すること、
(c)固化又は乾燥後、モールドから取り出すこと;
(d)随意に、プリフォームを、好ましくは残留水分含量が0~0.5重量パーセントになるまで、乾燥すること、
(e)炉内に装填し、不活性雰囲気下で、好ましくはアルゴン雰囲気下で、又は真空下で、好ましくは1600℃~2200℃の温度で、好ましくは、20℃/分未満、好ましくは10℃/分未満の昇温ランプに従って、プリフォームを焼成すること。この温度上昇ランプは、プラトーの持続時間と同様に、混合容積及び反応器の出力の関数として調整されうる。
【0058】
当業者に知られている任意の成形技術は、プリフォームの汚染を避けるために全ての予防措置がとられ次第、作られる部品の寸法に応じて適用されうる。したがって、石膏モールド内における鋳造は、モールドとプリフォームとの間にグラファイト媒体を用いることによって、又は混合によるモールドの過度の接触及び摩耗、並びに最終的にはプリフォームの汚染を避ける油を用いることによって、適応されうる。当業者が用いるためのこれらの管理された予防措置は、本方法の他の工程に対しても適用されうる。したがって、焼結の際、プリフォームを含んで用いられるモールド又はマトリックスは、好ましくはグラファイトでできているであろう。
【0059】
ホットプレス、熱間静水圧プレス、又はSPS(スパークプラズマ焼結)技術が、特に適している。
【0060】
以下の実施例は、説明の目的のためのものであり、記載される任意の態様においても本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0061】
例1(比較例)
【0062】
出発混合物は、TiOの質量パーセントが95%超であり、メジアン径D50が0.8μmであり、主にルチル結晶形態である、酸化チタン粉末、及びBCの質量パーセントが98%超であり、メジアン径D50が7μmに等しいBC粉末、及び石油コークスを用いて、以下のそれぞれの質量比に従って生成された:64.53%であるTiO、22.59%であるBC、及び12.89%であるC。このような混合物は、1.2%の炭化ホウ素余剰に相当する。イソプロパノール溶媒が添加され、それによって、その後、C.SubrmaniaらによるInternational Journal of Refractory Metals and Hard Materials 25 (2007) page 345-350の教示に従って、顆粒を得る。
【0063】
2つの混合試料を、特定の押し流し無しで、4.10-5mbarの真空中で、それぞれ1600℃及び1820℃の温度での2時間のプラトー持続時間により、炉内で熱処理に供した。
【0064】
例2(本発明による実施例)
【0065】
混合物を、上記と同じ条件下で生成したが、熱処理後の造粒工程は無く、粉砕は、30分の代わりに3分とした。さらに、出発粉末は、TiOの質量パーセントが95%超であり(残りは、本質的にはSiO<2%、Al<2%、ZrO<1%、及び微量のFeである)、メジアン径D50が10μmである酸化チタンの粉末、BCの質量パーセントが98%超であり、メジアン径D50が15μmであるBCの粉末、及びメジアン径D50が0.2μmであるカーボンブラック粉末からなり、以下のそれぞれの質量比に従う:63.6%であるTiO、22.1%であるBC、及び14.3%であるC。このような混合物は、反応の化学量論に対して0.5%の炭化ホウ素の余剰に相当する。混合物の2つの試料を、それぞれ、容器として機能する図3による上述のグラファイト製るつぼ内に入れ、1mあたり1.25L/分のアルゴン押し流し流の下、炉内で2時間のプラトー持続時間により1600℃及び1800℃で熱処理に供した。
【0066】
例3(比較例)
【0067】
出発混合物を、実施例2と同様に生成したが、熱処理を、特定の押し流し無しで、4.10-5mbarの真空中で、炉内で、1600℃の温度で2時間のプラトー持続時間により、実行した。
【0068】
例4(本発明による実施例)
【0069】
この実施例は、出発混合物が、1600℃での熱処理の前に、乾燥混合物の10重量パーセントであるNaClのさらなる添加を含む点で、実施例2と異なる。
【0070】
例5(比較例)
【0071】
この例は、出発混合物が、2000℃での熱処理の前に、比較的大きなサイズの酸化チタン粉末を含む点で、実施例2と異なる。
【0072】
そして、これらの例の各々について、ふるい分けのみで十分であった実施例4を除いて、原料粉末混合物を、少し粉砕し、ふるい分けし、それによって、凝集物を分離して粒子の粉末を得る。
【0073】
例6(比較例)
【0074】
この例は、アルゴン押し流しが1mあたり0.25L/分に調整される点で、本発明による実施例2と異なる。
【0075】
例7(比較例)
【0076】
この例は、BCの粉末の純度が、98質量パーセント超のBCであり、かつメジアン径D50が約150μmであるという点で、本発明による実施例2と異なる。
【0077】
例8(比較例)
【0078】
この実施例は、酸化チタン粉末、BC粉末、及びカーボンブラックのそれぞれの質量比が、以下である点で、本発明による実施例2と異なる:62.5%である酸化チタン、23.2%であるBC、及び14.3%であるC。反応の化学量論に対するBCの余剰は、約7.7%である。
【0079】
材料収率を、本出願内で上述した手順に従って決定した。この方法の特徴は、以下の表1にまとめられている。
【0080】
得られた最終的な粉末の特性を以下の表2に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
N.Mは、測定無し(not measured)である;N.Aは、該当無し(not applicable)である;Atmos.は、大気圧である。
【0083】
【表2】
【0084】
N.M.は、測定無しである。
【0085】
表1及び表2に報告されたデータから、本発明による方法によって得られたTiB粉末は、非常に純粋であり、実質的に汚染物質(特には酸素、窒素、炭素、硫黄)を含まず、さらに反応からの収率も非常に良好であることがわかりうる。
【0086】
セラミック体を、先述の例2、4、6及び8による粉末(1600℃で得られたもの)から作製し、他の2つのセラミック体を、以下に記載するのと同じ方法に従って作製したが、第1はグレードSEの市販のHoganas粉末から、第2はグレードNFのJapan New Metalsの粉末から作製された。
【0087】
各粉末を、二ホウ化チタン粉末の質量に対して、0.25質量パーセントのプレス添加剤(PVA)及び4.75質量パーセントの脱イオン水と混合し、それによって、100バールの圧力下で冷間プレスし、直径が30mmであり、厚さが10mmである円筒を形成する。脱型後、各円筒を、110℃で24時間にわたって乾燥させ、次いでアルゴン中1850℃の温度で12時間にわたって無加圧焼成した。
【0088】
得られた焼結体の気孔率を、例えばISO18754に従って測定したかさ密度の百分率で表した比率を、ISO5018に従って測定した絶対密度で除して決定した。電気抵抗率を、室温(20℃)で、Van der Pauw法に従って、直径が20~30mmであり、かつ厚さが2.5mmである試料上の4点で、測定した。
【0089】
得られた最終的な粉末の特性を以下の表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
N.M.は、測定無しである。
【0092】
先述の表で報告された結果を読むと、本発明による焼結体は、非常に低い抵抗率、及び市販のTiB粉末を用いて得られた焼結体の気孔率よりもはるかに低い気孔率を有することが観察される。さらに、用いられるTiBの粒は、先行技術に記載されるような方法によって得られるレベルをはるかに下回るレベルの汚染物質(特には、元素酸素、炭素及び窒素)を有する。これらの利点を、追加の造粒工程に頼ることなく、熱処理に続く単純な粉砕後に、本発明による粉末から得ることができた。
図1
図2
図3
【国際調査報告】