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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】湿式紡糸ラミン系繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 4/00 20060101AFI20240925BHJP
   A61L 15/32 20060101ALI20240925BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20240925BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20240925BHJP
   D06M 13/03 20060101ALI20240925BHJP
   D06M 13/188 20060101ALI20240925BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20240925BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
D01F4/00 Z
A61L15/32 100
A61L27/22 ZNA
D06M15/643
D06M13/03
D06M13/188
D06M13/224
C07K14/47
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541291
(86)(22)【出願日】2022-09-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 IL2022051003
(87)【国際公開番号】W WO2023042208
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】63/245,910
(32)【優先日】2021-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524105063
【氏名又は名称】サミ シャムーン カレッジ オブ エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベン ハルシュ,シフィル
【テーマコード(参考)】
4C081
4H045
4L033
4L035
【Fターム(参考)】
4C081AA02
4C081AA12
4C081AB11
4C081BA17
4C081BB06
4C081CD111
4C081CE11
4C081DA02
4C081DA04
4C081DC03
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA34
4H045FA74
4L033AA03
4L033AB01
4L033AC03
4L033BA03
4L033BA16
4L033BA21
4L033CA59
4L035AA04
4L035BB03
4L035BB16
4L035GG00
(57)【要約】
ラミン系タンパク質を含む繊維であって、10μm~180μmの直径によって特徴付けられる繊維。さらに、繊維を含む物品およびその製造方法が開示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミン系タンパク質を含む繊維であって、前記繊維が1μm~1000μmの平均直径および少なくとも1mmの平均長さによって特徴付けられ、前記繊維がコーティングと接触している、繊維。
【請求項2】
疎水性コーティングが層の形態であり、水不混和性化合物を含む、請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
前記水不混和性化合物が、植物油、鉱油、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂質、ステアリン酸イソブチル、獣脂脂肪酸2-エチルヘキシルエステル、ポリオールカルボン酸エステル、グリセリド、グリセロールのヤシ油脂肪酸エステル、アルコキシル化グリセロール、シリコーン油、ジメチルポリシロキサン、およびワックスであって、それらの任意のコポリマー、任意の塩、または任意の組み合わせを含むものから選択される、請求項2に記載の繊維。
【請求項4】
前記層が1nm~約20μmの平均厚さによって特徴付けられる、請求項2に記載の繊維。
【請求項5】
前記ラミン系タンパク質が、前記繊維を約6%の歪みまで伸長するとαヘリックスからβシートへの転移を受ける、請求項1から4までのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項6】
ラミン系タンパク質を含む繊維であって、前記繊維が約10μm~約1000μmの平均直径によって特徴付けられ、前記ラミン系タンパク質が、前記繊維を約6%の歪みまで伸長するとαヘリックスからβシートへの転移を受ける、繊維。
【請求項7】
前記繊維の平均直径が約10μm~180μmであり、前記αヘリックスからβシートへの転移が、ラマン分光法によって決定される場合、少なくとも20%のαヘリックスからβシートへの転移を含む、請求項5または6に記載の繊維。
【請求項8】
少なくとも1mmの平均長さによってさらに特徴付けられる、請求項6または7に記載の繊維。
【請求項9】
前記繊維を約6%~約50%の歪みまで伸長すると、前記ラミン系タンパク質が、約30~約50%のβシート含有量によって特徴付けられる、請求項1から8までのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項10】
前記ラミン系タンパク質が、A型ラミン、B型ラミンまたはその両方を含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項11】
前記B型ラミンが、配列番号1に示されるアミノ酸配列であって、XがGlnまたはLysを含むアミノ酸配列を含み、このアミノ酸配列には、それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログが含まれる、請求項10に記載の繊維。
【請求項12】
(i)配列番号2に示されるアミノ酸配列であって、それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む、アミノ酸配列を含むN末端領域;および(ii)配列番号3に示されるアミノ酸配列であって、それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む、アミノ酸配列を含むC末端領域のいずれかをさらに含む、請求項11に記載の繊維。
【請求項13】
前記A型ラミンが、配列番号4に示される、または配列番号7に示されるアミノ酸配列であって、XがGluまたはLysを含むアミノ酸配列を含み、このアミノ酸配列には、それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログが含まれる、請求項10に記載の繊維。
【請求項14】
前記アミノ酸配列が、(i)配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むN末端領域;および(ii)配列番号6に示される、または配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むC末端領域のいずれかをさらに含む、請求項13に記載の繊維。
【請求項15】
前記繊維が、
以下から選択される少なくとも1つの機械的性質:
-約1MPa~約1000MPaの降伏強度;
-約1MPa~約1000MPaの引張強度;
-約80%~約1000%の破断歪み;
-約30MJ/m~約1000MJ/mの靱性および
-約0.001GPa~約30GPaのヤング率
によって特徴付けられる、請求項1から14までのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項16】
前記繊維が約20μm~約80μmの直径によって特徴付けられる、請求項1から15までのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項17】
B型ラミン系タンパク質を含む繊維であって、前記繊維が、(i)1μm~1000μmの直径によって特徴付けられ、(ii)前記B型ラミン系タンパク質が、配列番号1に示されるアミノ酸であって、それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む、アミノ酸を含み、
がGlnである場合、前記繊維は、(i)アルコールの残留量;(ii)約190MJ/mを超える靱性のいずれかによって特徴付けられ、(ii)前記タンパク質は、約6%の歪みまでそれを伸長した際のαヘリックスからβシートへの転移によって特徴付けられる、繊維。
【請求項18】
約30~約60μmの平均直径によって特徴付けられる、請求項17に記載の繊維。
【請求項19】
i.前記アミノ酸配列の配列番号2またはそれに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含むN末端領域;
ii.前記アミノ酸配列の配列番号3またはそれに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含むC末端領域
のいずれかをさらに含む、請求項17または18に記載の繊維。
【請求項20】
前記繊維がコーティングとさらに接触している、請求項17から19までのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項21】
前記繊維が、
以下から選択される少なくとも1つの機械的性質:
-約1MPa~約1000MPaの降伏強度;
-約1MPa~約1000MPaの引張強度;
-約100%~約1000%の破断歪み;
-約30MJ/m~約1000MJ/mの靱性および
-約0.001GPa~約30GPaのヤング率
によって特徴付けられる、請求項17から20までのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項22】
前記繊維が伸長された繊維である、請求項1から21までのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項23】
前記ラミン系タンパク質が、準結晶の形態で前記繊維内に配置され、前記準結晶の各々が、(i)1nm~500nmの幅;(ii)0.5mm~1cmの長さ、または(i)と(ii)との両方の長さから選択される寸法によって特徴付けられる、請求項1から22までのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項24】
前記ラミン系タンパク質が単離されたタンパク質である、請求項1から23までのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項25】
前記ラミン系タンパク質が細菌における発現によって得られる、請求項1から24までのいずれか一項に記載の繊維。
【請求項26】
前記伸長された繊維内の前記ラミン系タンパク質が、5:1~1:1のαヘリックス:βシート比を含む二次構造によって特徴付けられる、請求項22に記載の繊維。
【請求項27】
請求項1から26までのいずれか一項に記載の複数の繊維を含む物品。
【請求項28】
ヤーン、メッシュ、織布基材、不織布基材、複合体材料、またはそれらの任意の組み合わせの形態である、請求項27に記載の物品。
【請求項29】
前記複合体材料が、前記ラミン系タンパク質ではないポリマーを含む、請求項28に記載の物品。
【請求項30】
前記繊維を含まない前記物品の特性と比較して、少なくとも1つの改善された機械的性質によって特徴付けられ、前記特性は、ヤング率、引張強度、破断歪み、降伏点、靱性、破損仕事量、衝撃強度、引裂強度、曲げ弾性率、曲げ歪みおよび特定の伸び率での応力からなる群から選択される、請求項27から29までのいずれか一項に記載の物品。
【請求項31】
請求項6から17までのいずれか一項に記載の繊維を得るための方法であって、
a.10mg/mL~400mg/mLの濃度のラミン系タンパク質を提供するステップと、
b.前記ラミン系タンパク質を、アルコールを含む凝固溶液に注入し、それによって前記繊維を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項32】
前記凝固溶液が、0.45cP~3cP、または0.7cP超の粘度によって特徴付けられる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記注入するステップが少なくとも0.1ml/hの流量で行われる、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記アルコールが、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、プロパノール(PrOH)、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項31から33までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記凝固溶液が、50%(v/v)~100%(v/v)の前記アルコールを含む、請求項31から34までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
(i)前記繊維を乾燥させるステップ、および(ii)前記繊維を伸長するステップのうちの少なくとも1つのステップをさらに含む、請求項31から35までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
請求項1から5のいずれか一項に記載の繊維を得るための方法であって、
a.10mg/mL~400mg/mLの濃度のラミン系タンパク質を提供するステップと、
b.前記ラミン系タンパク質を凝固溶液に注入し、それによって前記ラミン系タンパク質繊維を形成するステップと、
c.前記ラミン系タンパク質繊維を、前記ラミン系タンパク質繊維にコーティングを形成するのに適したコーティング剤と接触させ、それによって繊維を得るステップ(c)と
を含む、方法。
【請求項38】
前記凝固溶液が、0.45cP~3cP、または0.7cP超の粘度によって特徴付けられる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記注入するステップが少なくとも0.1ml/hの流量で行われる、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記凝固溶液が37、(i)アルコール;(ii)水溶液;(iii)緩衝溶液、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項37から39までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記アルコールが、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、プロパノール(PrOH)、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記凝固溶液が、50%(v/v)~100%(v/v)の前記アルコールを含む、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記水溶液が架橋剤を含み、任意選択的に前記水溶液が1mM~100mMのCaClを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記コーティングが疎水性コーティングであり、任意選択的に、前記コーティング剤が、植物油、鉱油、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂質、ステアリン酸イソブチル、獣脂脂肪酸2-エチルヘキシルエステル、ポリオールカルボン酸エステル、グリセリド、グリセロールのヤシ油脂肪酸エステル、アルコキシル化グリセロール、シリコーン油、ジメチルポリシロキサン、およびワックスであって、それらの任意のコポリマー、任意の塩、または任意の組み合わせを含むものから選択される、水不混和性化合物である、請求項37から43までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
(i)前記繊維を乾燥させるステップ、および(ii)前記繊維を伸長するステップのうちの少なくとも1つのステップをさらに含む、請求項37から44までのいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月19日に出願された米国仮特許出願第63/245,910号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、ラミン系繊維の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質性繊維は生体系に遍在し、硬いものから弾性のあるものまで幅広い機械的性質を示す適用性の広い構造で存在し、多様な機能要求に対応している。繊維状タンパク質はユニークな物理的特性を有し、これは足場および繊維などの新規な生体材料の設計に利用されている。一般に、これらのタンパク質繊維は高い生体適合性を有し、組織工学、創傷被覆、および薬物送達用途に理想的である。カイコ(Bombyx mori)からの天然および再生されたシルクならびにクモのしおり糸シルクタンパク質をベースとした繊維は、ほとんどの天然タンパク質系繊維および合成材料のものよりも際立ったそれらの靱性および剛性に起因して厳密に研究されてきた。高い剛性および靱性は、「ケラチン様」タンパク質(αおよびγ)から構成されるヌタウナギ粘液のマイクロメートルサイズの自生糸(直径1~2μm)でも観察される。ヌタウナギ糸は、組換え発現されたタンパク質から紡糸することに成功しているが、これらの繊維の機械的性質は天然繊維の機械的性質よりも劣っていた。これらの知見から、高い靱性および剛性を達成するためには、天然繊維におけるようなタンパク質のユニークな組織化が忠実に模倣される必要があることが示唆された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一態様では、ラミン系タンパク質を含む繊維であって、10μm~180μmの直径によって特徴付けられる繊維が提供される。
【0005】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、A型ラミン、B型ラミンまたはその両方を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、B型ラミンは、配列番号1に示されるアミノ酸配列であって、XがGlnまたはLysを含むアミノ酸配列(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、繊維は、(i)配列番号2に示されるアミノ酸配列(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含むN末端領域;および(ii)配列番号3に示されるアミノ酸配列(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含むC末端領域のいずれかをさらに含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、A型ラミンは、配列番号4に示されるアミノ酸配列であって、XがGluまたはLysであるアミノ酸配列(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含む。
【0009】
本発明の別の態様では、A型ラミン系タンパク質を含む繊維であって、10μm~180μmの直径によって特徴付けられる繊維が提供される。
【0010】
いくつかの実施形態では、反復領域は、配列番号4に示されるアミノ酸配列であって、XがGluまたはLysであるアミノ酸配列(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、(i)配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むN末端領域;および(ii)配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むC末端領域のいずれかをさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、繊維はB型ラミンをさらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、繊維は、以下:1MPa~1000MPaの降伏強度;-1MPa~1000MPaの引張強度;10%~500%の破断歪み;30MJ/m~1000MJ/mの靱性および0.001GPa~30GPaのヤング率から選択される少なくとも1つの機械的性質によって特徴付けられる。
【0014】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、その伸長時に3%~50%のαヘリックスからβシートへの転移によって特徴付けられる。
【0015】
いくつかの実施形態では、繊維は、20μm~80μmの直径によって特徴付けられる。
【0016】
本発明の別の態様では、B型ラミン系タンパク質を含む繊維が提供され、該繊維は、(i)10μm~180μmの直径によって特徴付けられ、(ii)B型ラミン系タンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含み、XがGlnである場合、該繊維は、(i)アルコールの残留量;(ii)190MJ/mを超える靱性のいずれかによって特徴付けられ、(ii)該タンパク質は、その伸長時に3%~50%のαヘリックスからβシートへの転移によって特徴付けられる。
【0017】
いくつかの実施形態では、繊維は、30~60μmの直径によって特徴付けられる。
【0018】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、i.アミノ酸配列の配列番号2またはそれに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含むN末端領域;ii.アミノ酸配列の配列番号3またはそれに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含むC末端領域のいずれかをさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、繊維は、以下:1MPa~1000MPaの降伏強度;-1MPa~1000MPaの引張強度;10%~500%の破断歪み;30MJ/m~1000MJ/mの靱性および0.001GPa~30GPaのヤング率から選択される少なくとも1つの機械的性質によって特徴付けられる。
【0020】
いくつかの実施形態では、各リピートは、独立して、20kDa~80kDaの範囲の分子量を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、繊維は伸長された繊維である。
【0022】
いくつかの実施形態では、繊維は、準結晶の形態で配置された複数のラミン系タンパク質を含み、準結晶の各々は、(i)1nm~500nmの幅;(ii)0.5mm~1cmの長さ、または(i)と(ii)との両方から選択される寸法によって特徴付けられる。
【0023】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、単離されたタンパク質である。
【0024】
いくつかの実施形態では、繊維は、細菌における発現によって得られる。
【0025】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、5:1~1:1のαヘリックス:βシート比を含む二次構造によって特徴付けられる。
【0026】
いくつかの実施形態では、繊維は、疎水性コーティングをさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、疎水性コーティングは、植物油、鉱油、脂肪酸、ステアリン酸イソブチル、獣脂脂肪酸2-エチルヘキシルエステル、ポリオールカルボン酸エステル、グリセロールのヤシ油脂肪酸エステル、アルコキシル化グリセロール、シリコーン、ジメチルポリシロキサン、ポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキシド、プロピレンオキシドコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0028】
本発明の別の態様では、本発明の繊維を含む物品が提供される。
【0029】
いくつかの実施形態では、物品は、織布または不織布基材の形態である。
【0030】
いくつかの実施形態では、物品は、繊維を含まない物品の特性と比較して、少なくとも1つの改善された機械的性質によって特徴付けられ、該特性は、ヤング率、引張強度、破断歪み、降伏点、靱性、破損仕事量(work to failure)、衝撃強度、引裂強度、曲げ弾性率、曲げ歪みおよび特定の伸び率での応力からなる群から選択される。
【0031】
本発明の別の態様では、本発明の繊維を得るための方法であって、a.10mg/mL~400mg/mLの濃度のラミン系タンパク質を提供するステップと、b.ラミン系タンパク質を凝固溶液中に注入し、それによって繊維を形成するステップと、を含む方法が提供される。
【0032】
いくつかの実施形態では、凝固溶液は、0.45cP~3cP、または0.7cP超の粘度によって特徴付けられる。
【0033】
いくつかの実施形態では、注入は、少なくとも0.1ml/hの流量で行われる。
【0034】
いくつかの実施形態では、凝固溶液は、(i)アルコール(ii)水溶液(ii)緩衝液、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、アルコールは、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、プロパノール(PrOH)、イソプロピルアルコール(IPA)、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0036】
いくつかの実施形態では、凝固溶液は、50%(v/v)~100%(v/v)のアルコールを含む。
【0037】
いくつ実施形態では、凝固溶液は架橋剤を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、凝固溶液は、1mM~100mMのCaClを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、本方法は、(i)繊維を乾燥させるステップ、および(ii)繊維を伸長するステップのうちの少なくとも1つのステップをさらに含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、本方法は、繊維を疎水剤と接触させ、それによって繊維上にコーティング層を形成するステップ(c)をさらに含む。
【0041】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験に使用することができるが、例示的な方法および/または材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、必ずしも限定することを意図するものではない。
【0042】
本発明の更なる実施形態および適用可能性の全範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、本発明の精神および範囲内の様々な変更および修正がこの詳細な説明から当業者に明らかになるため、単なる例示として与えられていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1A~1Hは、Ce-ラミン系繊維構造を示し(図1A)、完全長-Ce-ラミン遺伝子は、3つの構造ドメイン:ヘッド、ロッド、およびテールに分けられる。ロッドドメインは、L1およびL12リンカーによって連結された3つのαヘリカルコイルドコイルセグメント(1A、1B、および2)を含む。テールドメインの大部分(105aa)は、免疫グロブリン(Ig)様の球状構造に折り畳まれる。テールドメイン全体またはヘッドドメインとテールドメインとの両方の欠失は、ロッド-Ce-ラミンコンストラクトおよびロッド-テール-Ce-ラミンコンストラクトをもたらした;封入体として大腸菌(図1B)で産生された組換えCe-ラミンの概略図を尿素緩衝液に可溶化した。Ca+2イオン含有水溶液への水系Ce-ラミン溶液の湿式紡糸によって繊維を製造した;および引張試験前のロッド(図1C)、ロッド-テール(図1D)、完全長(図1E)Ce-ラミン繊維のSEM画像であり、それらの繊維形態、ならびに最適な集合条件で形成されたロッド(図1F)、ロッド-テール(図1G)、および完全長(図1H)Ce-ラミン繊維のSEM画像のより高い倍率を示す。挿入図は、低倍率図である。
【0044】
図2図2A~2Cは、Ce-ラミン系繊維の内部構造を示す:最適な集合条件で紡糸された、ロッド-、ロッド-テール-、および完全長Ce-ラミン系湿潤繊維の厚さ70nm断面のTEM画像(図2A)。挿入図の倍率を徐々に増加させた一連の画像は、Ce-ラミン繊維内部構造が準結晶の複雑なネットワークであることを示している。TEMを使用してイメージングされたロッド、ロッド-テール、および完全長Ce-ラミン系湿潤繊維の断面分析(図2B):繊維の構造の多様性が、20mMまたは50mM CaClを含有する緩衝液中への注入速度の増加、0.5、1、および3.5mL/hによる注入速度として検出された。ほとんどの繊維は、広範囲の直径を示す準結晶のランダムなネットワークを含んでいた(表4)。完全長Ce-ラミンから集合した準結晶の電子顕微鏡写真(図2C)。平均リピート長さ(暗/黒色および明/白色セグメント)、すなわち黒色領域の2つの中心間の長さを、図示のように測定した。
【0045】
図3】最適な集合条件でのロッド-、ロッド-テール、および完全長-Ce-ラミン繊維の応力-歪み曲線のグラフである;これらの条件下で、3つのコンストラクトは最適な機械的性質を実証した。
【0046】
図4図4A~4Dは、凝固浴中のCaCl濃度、注入流量、およびクロスヘッド速度が、ロッド-Ce-ラミン系繊維(図4A)、ロッド-テール-Ce-ラミン系繊維(図4B)、および完全長Ce-ラミン系繊維(図4C)が直径、剛性、および靱性に及ぼす影響の棒グラフである。クロスヘッド速度は、0.3mm/分(左のバー)、10mm/分(中央のバー)、および100mm/分(右のバー)であり、および50 mM CaClを含有する凝固浴中で注入速度1mL/hで形成された完全長Ce-ラミン繊維のSEM画像(図4D)。画像は引張試験後に撮影した。
【0047】
図5図5A~5Cは、ラマン分光法による二次構造分析を示す:図3に記載されるロッド-Ce-ラミン系繊維(図5A)、ロッド-テール-Ce-ラミン系繊維(図5B)、および完全長Ce-ラミン系繊維(図5C)の実験ラマンスペクトルは、機械的試験前後のピークシフトを示す。ピークはアミドIバンド領域に見られ、αヘリックス(1650cm-1)およびβシート/ランダムコイル(1667cm-1)構造に対応する。EMアルゴリズム統計的手法によって行われたβシート/ランダムコイル構造の相対的増加の評価のグラフ図(中央パネル)。
【0048】
図6図6A~6Bは、Ce-ラミン系繊維集合体の構造モデルを示す:Ce-ラミンの基本構成要素はコイルドコイル二量体である。二量体は、ヘッドトゥーテール方式で重合して二量体のポリマーを形成し、次いで、横方向に会合して四量体プロトフィラメントを形成する。プロトフィラメントは、おそらく、インビトロおよび細胞核におけるすべての高次ラミン構造の基本的な構成要素であろう。次のステップは、プロトフィラメントが会合して準結晶となり、その相互結合がランダムなネットワークとなって、Ce-ラミン繊維の内部構造を構成する(図6A)。伸長に応答して、準結晶/プロトフィラメントは再編成され、繊維の長軸に沿って整列される(図6B)。
【0049】
図7図7A~7Bは、異なる歪みでの引張試験停止中のα-β転移伝播を表すグラフであり、70%エタノール中で集合した完全長Ce-ラミン繊維(図7A)、および20mm CaClを含有する水性緩衝液中で集合したCe-ラミン繊維(図7B)の典型的な応力-歪み曲線上に示されている。
【0050】
図8】70%エタノール中で集合した完全長Ce-ラミン繊維のラマン分光曲線分析である。
【0051】
図9図9A~9Dは、引張試験前にアルコール溶液中で集合した乾燥したCe-ラミン繊維を示すSEM画像である:70%エタノール中で形成された繊維(図9A)、 50%エタノール中で形成された繊維(図9B)、70%IPA中で形成された繊維(図9C)、および50%IPA中で形成された繊維(図9D)。
【0052】
図10図10A~10Cは、引張試験後にアルコール溶液中で集合した乾燥Ce-ラミン繊維を示すSEM画像である:70%エタノール中で形成され、30%歪みまで伸長された繊維(図10A)、70%IPA中で形成され、30%歪みまで伸長された繊維(図10B)、および70%エタノール中で形成され、破損するまで伸長された繊維(図10C)。
【0053】
図11】水中アルコール溶液(Et-エタノール、IPA-イソプロパノール)中で集合したQ159K-Ce-ラミン繊維の応力-歪み曲線のグラフである。
【0054】
図12図12A~12Dは、5サイクル歪み試験時の、20mm CaCl2(12A、12C)または70%エタノール(12B、12D)を含有する水性緩衝液中で集合したCe-ラミン繊維の弾性領域における機械的および構造的挙動を示すグラフおよびラマンスペクトルである。図12A~Bは、20mm CaCl2(12A)、および70%エタノール(12B)を含有する水性緩衝液中で集合したCe-ラミン繊維の機械的挙動のグラフを示す。図12C図12Dは、20mm CaCl2(12C)、および70%エタノール(12D)を含有する水性緩衝液中で集合したCe-ラミン繊維のラマンスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、ラミン系タンパク質を含む繊維であって、1μm~1000μmの平均直径によって特徴付けられ、さらに少なくとも0.1cmの平均長さによって特徴付けられる繊維を提供する。いくつかの実施形態では、繊維はラミン系繊維であり、該繊維は湿式紡糸プロセスを介して得られる。本発明者らは、ラミン系タンパク質を凝固浴に注入することによって形成された湿式紡糸繊維が、類似の自己集合繊維と比較して優れた機械的性質を有する繊維をもたらすように十分な長さによって特徴付けられることを観察した。本発明は、一部には、そのような湿式紡糸繊維が、天然のしおり糸スパイダーシルク繊維および天然のヌタウナギ粘液糸に匹敵する靱性および剛性によって特徴付けられるという驚くべき知見に基づいている。
【0056】
さらに、本発明は、一部には、アルコール性凝固溶液に注入された繊維が、凝固溶液に注入された繊維と比較して優れた機械的強度および改善された弾性によって特徴付けられるという驚くべき知見に基づいている。そのような繊維は、以下に開示されるように、特定のラマンパターンによってさらに特徴付けられた。本発明者らは、アルコール性凝固から得られた繊維の優れた機械的性質は、ラマン分光法によって特徴付けられるように、繊維を伸長する際のαヘリックスからβシートへの転移パターンに関連していると仮定した(例えば、図7Aを参照されたい)。αヘリックスからβシートへの転移(例えば、少なくとも20%)は、アルコール性凝固から得られた繊維では、既に弾性領域(例えば、約6%の歪み)で起こるが、凝固溶液から得られた繊維は、完全に伸長した場合にのみαヘリックスからβシートへの転移を示した(約100%以上の歪み、または図7Bをさらに参照されたい)。
【0057】
さらに、本発明は、一部には、本発明のコーティングされた繊維(例えば、疎水性コーティングを含む)が、同様のコーティングされていない繊維と比較して、機械的強度の有意な改善を示したという驚くべき知見に基づいている。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、ラミン系タンパク質を含む繊維であって、10μm~180μmの直径によって特徴付けられる繊維を得るための方法であって、10mg/mL~400mg/mLの濃度のラミン系タンパク質を提供するステップと、ラミン系タンパク質を凝固溶液に注入し、それによって繊維を形成するステップと、を含む方法を提供する。
【0059】
本発明は、一部には、ラミン系タンパク質の濃度が、所望の構造、厚さ、および機械的性質を有する繊維の形成に重要であるという知見に基づいている。
【0060】
ラミン系繊維
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、ラミン系タンパク質を含む繊維が提供される。いくつかの実施形態では、繊維はラミン系タンパク質繊維である。いくつかの実施形態では、繊維は、1μm~1000μm、1μm~200μm、1μm~500μm、1μm~300μm、1μm~400μm、1μm~700μm、50μm~1000μm、50μm~500μm、50μm~300μm、50μm~200μm、2μm~200μm、3μm~200μm、5μm~200μm、7μm~200μm、9μm~200μm、1μm~190μm、2μm~190μm、3μm~190μm、5μm~190μm、7μm~190μm、9μm~190μm、10μm~180μm、15μm~180μm、20μm~180μm、25μm~180μm、30μm~180μm、50μm~180μm、65μm~180μm、10μm~100μm、15μm~100μm、20μm~100μm、25μm~100μm、30μm~100μm、50μm~100μm、65μm~100μm、10μm~80μm、15μm~80μm、20μm~80μm、25μm~80μm、30μm~80μm、50μm~80μm、65μm~80μm、10μm~50μm、15μm~50μm、20μm~50μm、25μm~50μm、または30μm~50μmの直径(それらの間の任意の範囲を含む)によって特徴付けられる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。本明細書で使用される「直径」という用語は、乾燥繊維の平均横断面を指す。繊維の横断面は、TEM、SEMまたは光学顕微鏡によって決定することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、繊維は、均一な直径分布によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、繊維は、0.1~1.5、0.2~1.5、0.3~1.5、0.5~1.5、0.1~1.0、0.2~1.0、0.3~1.0、0.5~1.0の直径分布(SD)(それらの間の任意の範囲を含む)によって特徴付けられる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、直径分布は、標準偏差(SD)によって定量化される。
【0062】
いくつかの実施形態では、繊維は、少なくとも0.01cm、少なくとも0.1cm、少なくとも1cm、少なくとも2cm、少なくとも5cm、少なくとも10cm、少なくとも50cm、少なくとも100cm、少なくとも500cm、少なくとも1000cm、または少なくとも10,000cm、0.01~10,000cm、0.01~100.000cm、0.05~10.000cmの長さ(それらの間の任意の値を含む)によって特徴付けられる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。本明細書で使用される「長さ」という用語は、乾燥繊維の平均長さを指す。
【0063】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、A型ラミン、B型ラミンまたはその両方を含む。
【0064】
本明細書で使用される場合、「ラミン」は、細胞核において構造的機能および転写調節を提供するV型中間径フィラメント(IF)中の繊維状タンパク質を指す。すべてのIFタンパク質と同様に、ラミンは、球状のアミノ末端(ヘッド)ドメイン、カルボキシ末端(テール)ドメインおよび中央のαヘリカルドメインまたはロッドドメインで挟まれた長いαヘリカルドメインからなる三部構造を有する。ラミンは、A型およびB型に分類される。B型ラミンはほとんどの細胞型で発現されるが、ラミンCを含むA型ラミンは一般に分化組織で発現される。
【0065】
「繊維」および「フィラメント」という用語は、繊維材料の細いコードを指すために互換的に使用される。「フィラメント」とは、微視的な長さから1マイル以上の長さに及ぶ、不定の長さの細くて伸長した糸状の物体または構造を意味する。いくつかの実施形態では、「繊維」という用語は、繊維材料の基本構造を指し、これは従来の工業的手段(繊維を構成する準結晶もしくはプロトフィラメントの変性および/または分解をもたらす過酷な化学的条件を除く)を使用することによってより小さな部分にさらに分割することはできない。ヤーン(2つ以上の撚り合わされたまたは絡み合わされたフィラメントから構成される)とは対照的に、繊維は、複数の絡み亜合わされたフィラメントによって形成されない基本構造を包含する。本発明の繊維は、準結晶の形態で集合した複数のラミン系タンパク質を含む連続ラミン系繊維を包含する。本発明の繊維内の準結晶は、繊維の長手方向軸に沿って実質的に垂直に整列している。いくつかの実施形態では、本発明によれば、フィラメントはバイオフィラメントである。「バイオフィラメント」とは、タンパク質から作られたフィラメントを意味する。いくつかの実施形態では、本発明の繊維またはフィラメントは結晶状態にある。いくつかの実施形態では、本発明の繊維またはフィラメントは、準結晶状態にあるか、または準結晶繊維である。いくつかの実施形態では、本発明の複数の繊維は、準結晶材料を形成する。いくつかの実施形態では、本発明の繊維またはフィラメントは、準結晶の繰り返し単位から本質的になる。
【0066】
いくつかの実施形態では、2つの隣接する準結晶間の平均距離(本明細書では「リピート長さ」とも呼ばれる)は、20~60nm、約30~約50nm、約35~約50nm、約30~約40nm、約38~約45nm(それらの間の任意の範囲または値を含む)である。いくつかの実施形態では、2つの隣接する準結晶間の平均距離は約40nmである。平均距離は、繊維のTEM画像に基づいて、隣接する暗領域の2つの中心間の長さを測定することによって決定することができる(図2Cで実証されるように)。
【0067】
いくつかの実施形態では、本発明の繊維またはフィラメントは、湿式紡糸プロセス(例えば、本明細書に記載されるような凝固時)を介して得られる。いくつかの実施形態では、本発明の繊維またはフィラメントは、湿式紡糸繊維であるか、または湿式紡糸繊維から本質的になる。いくつかの実施形態では、本発明の繊維またはフィラメントは、自己集合ラミン繊維を欠いている。本明細書で使用される「自己集合繊維」という用語は、微小繊維から構成されたタンパク質ネットワーク(例えば、単離されたタンパク質をCaCl2溶液に導入することによって)にラミンタンパク質が自己集合することによって形成された繊維を包含し、これはさらに湿式紡糸されてヤーンとなる。いくつかの実施形態では、自己集合したラミン繊維は、1μm未満、または1.5μm未満、または300~1500nmの平均長さによって特徴付けられるマイクロファイバーから構成されたヤーンの形態である。
【0068】
いくつかの実施形態では、少なくとも1cm、少なくとも10cm、少なくとも100cm、少なくとも1000cm、少なくとも100,000cm以上(それらの間の任意の範囲または値を含む)の平均長さによって特徴付けられる本発明の複数の繊維またはフィラメントが提供される。いくつかの実施形態では、本発明の複数の繊維またはフィラメントは、0.1cm~10cm、0.1cm~100cm、0.1cm~1000cm、0.1cm~10,000cm、0.1cm~1cm、0.1cm~5cm、0.1cm~50cm、1cm~10cm、1cm~100cm、1cm~1000cm、1cm~10,000cm、10cm~100cm、10cm~1000cm、10cm~10,000cmの平均長さ(それらの間の任意の範囲または値を含む)によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、本発明の繊維またはフィラメントは、マイクロファイバーを実質的に含まない。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明のラミン系タンパク質繊維は、ラミン系タンパク質から本質的になる。
【0070】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、ともに連結された2つ以上のアミノ酸を指すために互換的に使用される。本明細書で使用される「ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク質」、および「アミノ酸配列」という用語は、アミノおよび/またはイミノ分子を含む化合物を含むがこれらに限定されない、天然に存在するもしくは合成アミノ酸ポリマーまたはアミノ酸様分子を含む任意の化合物を指す。「ペプチド」、「オリゴペプチド」、「ポリペプチド」、または「タンパク質」という用語の使用によって、特定のサイズが暗示されることはない。定義内に含まれるのは、例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸などを含む)の1つ以上のアナログを含有するポリペプチド、置換結合を有するポリペプチド、ならびに天然に存在するものと、天然に存在しないもの(例えば、合成)とを問わず、当該技術分野で公知の他の修飾である。したがって、合成オリゴペプチド、二量体、多量体(例えば、タンデムリピート、複数の抗原性ペプチド(MAP)形態、線状に連結されたペプチド)、環化分子、分岐分子などが定義内に含まれる。別の実施形態では、記載されるペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質は、生物内にある間にそれらをより安定にするか、または細胞内に浸透することができる修飾を有する。一実施形態では、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用される。別の実施形態では、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学アナログであるアミノ酸ポリマーに適用される。
【0071】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、B型ラミンを含む。いくつかの実施形態では、B型ラミンは、アミノ酸配列::LQEKDHLTSLNSRLATYIDKVRQLEQENNRLQVQIRDIEVVEKKEKSNLADRFEAEKARLRRALDSAQDELAKYRIEYDAAKVEVKKLKPQVEKLERELAGAEEQALHAQSIADQS(X)AKQKTLQARNDKLVVENDDLKKQNITLRDTVEGLKKAVEDETLLRTAANNKIKALEEDLAFALQQHKGELEEVRHKRQVDMTTYAKQINDEYQSKLQDQIEEMRAQFKNNLHQNKTAFEDAYKNKLNAARERQEEAVSEAIHLRARVRDLETSSSGNASLIERLRSELDTLKRSFQEKLDDKDARIAELNQEIERMMSEFHDLLDVKIQLDAELKTYQALLE(配列番号1)(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含む反復領域のn個のリピートを含む。いくつかの実施形態では、XはGlnまたはLysを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、B型ラミンは、アミノ酸配列:LQEKDHLTSLNSRLATYIDKVRQLEQENNRLQVQIRDIEVVEKKEKSNLADRFEAEKARLRRALDSAQDELAKYRIEYDAAKVEVKKLKPQVEKLERELAGAEEQALHAQSIADQS(X)AKQKTLQARNDKLVVENDDLKKQNITLRDTVEGLKKAVEDETLLRTAANNKIKALEEDLAFALQQHKGELEEVRHKRQVDMTTYAKQINDEYQSKLQDQIEEMRAQFKNNLHQNKTAFEDAYKNKLNAARERQEEAVSEAIHLRARVRDLETSSSGNASLIERLRSELDTLKRSFQEKLDDKDARIAELNQEIERMMSEFHDLLDVKIQLDAELKTYQALLEGEEERL(配列番号11)(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含む反復領域のn個のリピートを含む。いくつかの実施形態では、XはGlnまたはLysを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、B型ラミンは、アミノ酸配列:LQEKDHLTSLNSRLATYIDKVRQLEQENNRLQVQIRDIEVVEKKEKSNLADRFEAEKARLRRADSAQDELAKYRIEYDAAKVEVKKLKPQVEKLERELAGAEEQALHAQSIADQSQAKQKTLQARNDKLVVENDDLKKQNITLRDTVEGLKKAVEDETLLRTAANNKIKALEEDLAFALQQHKGELEEVRHKRQVDMTTYAKQINDEYQSKLQDQIEEMRAQFKNNLHQNKTAFEDAYKNKLNAARERQEEAVSEAIHLRARVRDLETSSSGNASLIERLRSELDTLKRSFQEKLDDKDARIAELNQEIERMMSEFHDLLDVKIQLDAELKTYQALLEGEEERLNLTQEAPQNTSVHHVSFSSGGASAQRGVKRRRVVDVNGEDQDIDYLNRRSKLNKETVGPVGIDEVDEEGKWVRVANNSEEEQSIGGYKLVVKAGNKEASFQFSSRMKLAPHASATVWSADAGAVHHPPEVYVMKKQQWPIGDNPSARLEDSEGDTVSSITVEFSESSDPSDPADRCSIM(配列番号12)(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、機能的アナログは、配列番号1と、または配列番号10と、または配列番号11と、または配列番号12と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、配列番号1と、または配列番号10と、または配列番号11と、または配列番号12と、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同性を共有するB型ラミンタンパク質の反復領域のホモログが提供される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0075】
本明細書で互換的に使用される「相同性」または「同一性」という用語は、2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列間の配列同一性を指し、同一性はより厳密な比較である。「同一性または相同性パーセント」および「同一性または相同性%」という語句は、2つ以上のアミノ酸配列または核酸配列の比較で見られる配列同一性のパーセンテージを指す。2つ以上の配列は、0~100%同一のどこか、またはそれらの間の任意の値であり得る。同一性は、参照配列との比較のためにアラインメントされ得る各配列における位置を比較することによって決定され得る。比較される配列における位置が同じヌクレオチド塩基またはアミノ酸によって占められる場合、分子はその位置で同一である。アミノ酸配列の同一性の程度は、アミノ酸配列によって共有される位置における同一のアミノ酸の数の関数である。核酸配列間の同一性の程度は、核酸配列によって共有される位置における同一または一致するヌクレオチドの数の関数である。アミノ酸配列の相同性の程度は、ポリペプチド配列によって共有される位置におけるアミノ酸の数の関数である。
【0076】
以下は、2つの配列間の相同性または配列同一性(これらの用語は、本明細書では互換的に使用される)を計算するための非限定的な例である。最適な比較目的のために配列をアラインメントさせる(例えば、最適なアラインメントのために第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方もしくは両方にギャップが導入され得、比較目的のために非相同配列が無視され得る)。ギャップペナルティが12、ギャップ拡張ペナルティが4、フレームシフトギャップペナルティが5のBlossum 62スコア行列でGCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用して、最適なアラインメントを最良のスコアとして決定する。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められる場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、配列によって共有される同一の位置の数の関数である。
【0077】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される%相同性または同一性は、基本的な局所アラインメント検索ツール(BLAST)を使用して計算または決定される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される%相同性または同一性は、Blossum 62スコア行列を使用して計算または決定される。
【0078】
「核酸」という用語は、当該技術分野で周知である。本明細書で使用される「核酸」は、一般に、ヌクレオチドを含むDNA、RNAまたはその誘導体もしくはアナログの任意の分子(例えば、鎖)を指す。ヌクレオチドは、ヌクレオシドおよびリン酸基から構成される。ヌクレオシドの窒素塩基には、例えば、DNA(例えば、アデニン「A」、グアニン「G」、チミン「T」もしくはシトシン「C」)またはRNA(例えば、A、G、ウラシル「U」もしくはC)に見られる天然に存在するプリンまたはピリミジンヌクレオシドが含まれる。
【0079】
「核酸分子」という用語には、一本鎖RNA(ssRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、一本鎖DNA(ssDNA)、二本鎖DNA(dsDNA)、低分子RNA、環状核酸、ゲノムDNAまたはRNAの断片、分解核酸、増幅産物、修飾核酸、プラスミドまたはオルガネラ核酸、およびオリゴヌクレオチドなどの人工核酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
いくつかの実施形態では、nは、2~100、3~100、5~100、10~100、20~100、30~100、35~100、40~100、50~100、2~80、3~80、5~80、10~80、20~80、30~80、35~80、40~80、50~80、2~10、3~6、5~8、または10~15の整数(それらの間の任意の範囲を含む)である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0081】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質(例えば、配列番号1、配列番号11のいずれか1つ)は、アミノ酸配列:MSSRKGTRSSRIVTLERSANSSLSNNGGGDDSFGSTLLETSR(配列番号2)(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含むN末端領域をさらに含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、機能的アナログは、配列番号2と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、配列番号2と、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同性を共有するB型ラミンタンパク質のN末端領域のホモログが提供される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0083】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質(配列番号1)は、アミノ酸配列:GEEERLNLTQEAPQNTSVHHVSFSSGGASAQRGVKRRRVVDVNGEDQDIDYLNRRSKLNKETVGPVGIDEVDEEGKWVRVANNSEEEQSIGGYKLVVKAGNKEASFQFSSRMKLAPHASATVWSADAGAVHHPPEVYVMKKQQWPIGDNPSARLEDSEGDTVSSITVEFSESSDPSDPADRCSIM(配列番号3)(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含むC末端領域をさらに含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質(配列番号11)は、アミノ酸配列:NLTQEAPQNTSVHHVSFSSGGASAQRGVKRRRVVDVNGEDQDIDYLNRRSKLNKETVGPVGIDEVDEEGKWVRVANNSEEEQSIGGYKLVVKAGNKEASFQFSSRMKLAPHASATVWSADAGAVHHPPEVYVMKKQQWPIGDNPSARLEDSEGDTVSSITVEFSESSDPSDPADRCSIM(配列番号13)(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含むC末端領域をさらに含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、配列番号1、または配列番号11のアミノ酸配列を含み、(i)C末端領域(配列番号3のアミノ酸配列を含む);(ii)任意の配列ホモログ、もしくはその機能的ホモログを含むN末端領域(アミノ酸配列の配列番号2、もしくは配列番号13を含む);または(i)と(ii)との両方をさらに含むB型ラミンである。
【0086】
いくつかの実施形態では、機能的アナログは、配列番号3と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、配列番号3と、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同性を共有するB型ラミンタンパク質のC末端領域のホモログが提供される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0087】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、アミノ酸配列:MSSRKGTRSSRIVTLERSANSSLSNNGGGDDSFGSTLLETSRLQEKDHLTSLNSRLATYIDKVRQLEQENNRLQVQIRDIEVVEKKEKSNLADRFEAEKARLRRALDSAQDELAKYRIEYDAAKVEVKKLKPQVEKLERELAGAEEQALHAQSIADQSQAKQKTLQARNDKLVVENDDLKKQNITLRDTVEGLKKAVEDETLLRTAANNKIKALEEDLAFALQQHKGELEEVRHKRQVDMTTYAKQINDEYQSKLQDQIEEMRAQFKNNLHQNKTAFEDAYKNKLNAARERQEEAVSEAIHLRARVRDLETSSSGNASLIERLRSELDTLKRSFQEKLDDKDARIAELNQEIERMMSEFHDLLDVKIQLDAELKTYQALLEGEEERLNLTQEAPQNTSVHHVSFSSGGASAQRGVKRRRVVDVNGEDQDIDYLNRRSKLNKETVGPVGIDEVDEEGKWVRVANNSEEEQSIGGYKLVVKAGNKEASFQFSSRMKLAPHASATVWSADAGAVHHPPEVYVMKKQQWPIGDNPSARLEDSEGDTVSSITVEFSESSDPSDPADRCSIM(配列番号10)(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含むB型ラミンである。
【0088】
いくつかの実施形態では、繊維はA型ラミンを含む。いくつかの実施形態では、繊維はA型ラミン系タンパク質を含み、該繊維は、1μm~200μm、2μm~200μm、3μm~200μm、5μm~200μm、7μm~200μm、9μm~200μm、1μm~190μm、2μm~190μm、3μm~190μm、5μm~190μm、7μm~190μm、9μm~190μm、10μm~180μm、15μm~180μm、20μm~180μm、25μm~180μm、30μm~180μm、50μm~180μm、65μm~180μm、10μm~100μm、15μm~100μm、20μm~100μm、25μm~100μm、30μm~100μm、50μm~100μm、65μm~100μm、10μm~80μm、15μm~80μm、20μm~80μm、25μm~80μm、30μm~80μm、50μm~80μm、65μm~80μm、10μm~50μm、15μm~50μm、20μm~50μm、25μm~50μm、または30μm~50μmの直径(それらの間の任意の範囲を含む)によって特徴付けられる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、繊維は、少なくとも1cm、少なくとも2cm、少なくとも5cm、少なくとも10cm、少なくとも50cm、少なくとも100cm、少なくとも500cm、少なくとも1000cm、または少なくとも10000cm(それらの間の任意の値を含む)の長さによって特徴付けられる各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0089】
いくつかの実施形態では、A型ラミンは、アミノ酸配列:LQEKEDLQELNDRLAVYIDRVRSLETENAGLRLRITESEEVVSREVSGIKAAYEAELGDARKTLDSVAKERARLQLELSKVREEFKELKARNTKKEGDLIAAQARLKDLEALLNSK(X)AALSTALSEKRTLEGELHDLRGQVAKLEAALGEAKKQLQDEMLRRVDAENRLQTMKEELDFQKNIYSEELRETKRRHETRLVEIDNGKQREFESRLADALQELRAQHEDQVEQYKKELEKTYSAKLDNARQSAERNSNLVGAAHEELQQSRIRIDSLSAQLSQLQKQLAAKEAKLRDLEDSLARERDTSRRLLAEKEREMAEMRARMQQQLDEYQELLDIKLALDMEIHAYRKLLEGEEERL(配列番号4)(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含むラミンタンパク質の反復領域のリピートを含む。いくつかの実施形態では、XはGluまたはLysである。
【0090】
いくつかの実施形態では、A型ラミンは、アミノ酸配列:LQEKEDLQELNDRLAVYIDRVRSLETENAGLRLRITESEEVVSREVSGIKAAYEAELGDARKTLDSVAKERARLQLELSKVREEFKELKARNTKKEGDLIAAQARLKDLEALLNSK(X)AALSTALSEKRTLEGELHDLRGQVAKLEAALGEAKKQLQDEMLRRVDAENRLQTMKEELDFQKNIYSEELRETKRRHETRLVEIDNGKQREFESRLADALQELRAQHEDQVEQYKKELEKTYSAKLDNARQSAERNSNLVGAAHEELQQSRIRIDSLSAQLSQLQKQLAAKEAKLRDLEDSLARERDTSRRLLAEKEREMAEMRARMQQQLDEYQELLDIKLALDMEIHAYRKLLE(配列番号7)(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含むラミンタンパク質の反復領域のリピートを含む。いくつかの実施形態では、XはGluまたはLysである。
【0091】
いくつかの実施形態では、nは、2~100、3~100、5~100、10~100、20~100、30~100、35~100、40~100、50~100、2~80、3~80、5~80、10~80、20~80、30~80、35~80、40~80、または50~80の整数(それらの間の任意の範囲を含む)である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0092】
いくつかの実施形態では、機能的アナログは、配列番号4と、または配列番号7と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、配列番号4と、または配列番号7と、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同性を共有するB型ラミンタンパク質の反復領域のホモログが提供される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0093】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、アミノ酸配列:METPSQRRATRSGAQASSTPLSPTRITR(配列番号5)(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含むN末端領域をさらに含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、機能的アナログは、配列番号5と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、配列番号5と、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同性を共有するA型ラミンタンパク質のN末端領域のホモログが提供される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0095】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、アミノ酸配列:RLSPSPTSQRSRGRASSHSSQTQGGGSVTKKRKLESTESRSSFSQHARTSGRVAVEEVDEEGKFVRLRNKSNEDQSMGNWQIKRQNGDDPLLTYRFPPKFTLKAGQVVTIWAAGAGATHSPPTDLVWKAQNTWGCGNSLRTALINSTGEEVAMRKLVRSVTVVEDDEDEDGDDLLHHHHGSHCSSSGDPAEYNLRSRTVLCGTCGQPADKASASGSGAQVGGPISSGSSASSVTVTRSYRSVGGSGGGSFGDNLVTRSYLLGNSSPRTQSPQNCSIM(配列番号6)(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含むC末端領域をさらに含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、アミノ酸配列:EEERLRLSPSPTSQRSRGRASSHSSQTQGGGSVTKKRKLESTESRSSFSQHARTSGRVAVEEVDEEGKFVRLRNKSNEDQSMGNWQIKRQNGDDPLLTYRFPPKFTLKAGQVVTIWAAGAGATHSPPTDLVWKAQNTWGCGNSLRTALINSTGEEVAMRKLVRSVTVVEDDEDEDGDDLLHHHHGSHCSSSGDPAEYNLRSRTVLCGTCGQPADKASASGSGAQVGGPISSGSSASSVTVTRSYRSVGGSGGGSFGDNLVTRSYLLGNSSPRTQSPQNCSIM(配列番号8)(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含むC末端領域をさらに含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、機能的アナログは、配列番号6と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、配列番号6と、または配列番号8と、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の相同性を共有するA型ラミンタンパク質のC末端領域のホモログが提供される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0098】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、配列番号4、または配列番号7のアミノ酸配列を含み、(i)C末端領域(配列番号6、または配列番号8のアミノ酸配列を含む);(ii)任意の配列ホモログ、もしくはその機能的ホモログを含むN末端領域(アミノ酸配列の配列番号5を含む);または(i)と(ii)との両方をさらに含むA型ラミンである。
【0099】
いくつかの実施形態では、本発明のラミン系タンパク質は、配列番号1、4、7もしくは10から選択されるアミノ酸配列を含む反復領域、またはそれに対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%の相同性(それらの間の任意の範囲を含む)を含む機能的アナログを含み、ラミン系タンパク質は、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも8個のポリペプチドモノマーを含むオリゴマーである。いくつかの実施形態では、本発明のラミン系タンパク質は、4~8個、4~6個、6~8個またはそれよりも多いポリペプチドモノマーを含むオリゴマーである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドモノマーの各々は、配列番号1、4、7、または9から選択されるアミノ酸配列と、任意選択的に配列番号2および5から選択されるN末端アミノ酸配列のうちの1つ以上と、配列番号6および8から選択されるC末端アミノ酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドモノマーの各々は、同じアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドモノマーの少なくとも1つは、異なるアミノ酸配列を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、METPSQRRATRSGAQASSTPLSPTRITRLQEKEDLQELNDRLAVYIDRVRSLETENAGLRLRITESEEVVSREVSGIKAAYEAELGDARKTLDSVAKERARLQLELSKVREEFKELKARNTKKEGDLIAAQARLKDLEALLNSKEAALSTALSEKRTLEGELHDLRGQVAKLEAALGEAKKQLQDEMLRRVDAENRLQTMKEELDFQKNIYSEELRETKRRHETRLVEIDNGKQREFESRLADALQELRAQHEDQVEQYKKELEKTYSAKLDNARQSAERNSNLVGAAHEELQQSRIRIDSLSAQLSQLQKQLAAKEAKLRDLEDSLARERDTSRRLLAEKEREMAEMRARMQQQLDEYQELLDIKLALDMEIHAYRKLLEGEEERLRLSPSPTSQRSRGRASSHSSQTQGGGSVTKKRKLESTESRSSFSQHARTSGRVAVEEVDEEGKFVRLRNKSNEDQSMGNWQIKRQNGDDPLLTYRFPPKFTLKAGQVVTIWAAGAGATHSPPTDLVWKAQNTWGCGNSLRTALINSTGEEVAMRKLVRSVTVVEDDEDEDGDDLLHHHHGSHCSSSGDPAEYNLRSRTVLCGTCGQPADKASASGSGAQVGGPISSGSSASSVTVTRSYRSVGGSGGGSFGDNLVTRSYLLGNSSPRTQSPQNCSIM(配列番号9)(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)のアミノ酸配列を含むA型ラミンである。
【0101】
いくつかの実施形態では、上記のA型ラミンを含む繊維は、B型ラミンをさらに含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、本発明の繊維は、5:1~1:1、4.55:1~1:1、4:1~1:1、3:1~1:1、2:1~1:1、5:1~3:1、4.55:1~3:1、4:1~3:1、5:1~2:1、4.55:1~2:1、4:1~2:1、または3:1~2:1(それらの間の任意の範囲を含む)のαヘリックス:βシート比によって特徴付けられるラミン系タンパク質を含むか、またはそれから本質的に構成され、αヘリックス:βシート比はラマンによって決定される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。αヘリックス:βシート比の例示的なラマンベースの決定は、実施例2に記載されている。追加の方法には、FTIRおよびX線散乱が含まれる。
【0103】
いくつかの実施形態では、繊維は伸長された繊維である。いくつかの実施形態では、伸長された繊維は、αヘリックスのラミン系タンパク質の相対含有量が約30~約99%、約30~約45%、約30~約40%の範囲(それらの間の任意の範囲を含む)であることによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、伸長された繊維は、βシートのラミン系タンパク質の相対含有量が30~50%、約30~約45%、約30~約40%、約30~約80%、約30~約60%、約60~約99%、約40~約80%、約40~約90%の範囲(それらの間の任意の範囲を含む)であることによって特徴付けられる。αヘリックスまたはβシートラミン系タンパク質の相対含有量は、本明細書で以下に記載されるように、繊維の全ラミン系タンパク質含有量と比較して、ラマンによって決定される。
【0104】
本明細書で使用される場合、「伸長された繊維」という用語は、伸長または延伸プロセスを経た繊維またはフィラメントを指す。伸長または延伸プロセスは、長繊維またはフィラメントをその長手方向軸に沿って整列するように引っ張るプロセスを指す。延伸は、通常、以下に開示されるように、繊維の破断歪み未満の歪みまで行われる(例えば、100~400%、または100~1000%の範囲)。
【0105】
いくつかの実施形態では、本発明の繊維は、弾性領域で繊維を伸長する際のαヘリックスからβシートへの転移によって特徴付けられるラミン系タンパク質を含むか、またはそれから本質的に構成される。いくつかの実施形態では、本発明の繊維は、繊維を約6%の歪みまで伸長したときのαヘリックスからβシートへの転移によって特徴付けられるラミン系タンパク質を含むか、またはそれから本質的に構成される。いくつかの実施形態では、αヘリックスからβシートへの転移は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、5~50%、10~50%、20~50%、20~40%、10~70%、10~60%の転移(それらの間の任意の範囲を含む)を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、本発明の繊維は、約20%~約90%、約20%~約60%、20%~50%、20%~90%、3%~50%、4%~50%、5%~50%、7%~50%、10%~50%、15%~50%、20%~50%、30%~50%、3%~40%、4%~40%、5%~40%、7%~40%、10%~40%、15%~40%、20%~40%、30%~40%、3%~25%、4%~25%、5%~25%、7%~25%、10%~25%、または15%~25%のαヘリックスからβシートへの転移(それらの間の任意の範囲を含む)によって特徴付けられるラミン系タンパク質を含むか、またはそれから本質的に構成される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。αヘリックスからβシートへの転移は、繊維を伸長した後にラマンによって決定される。αヘリックスからβシートへの転移は、伸長前の初期αヘリックス含有量に対する繊維のαヘリックス含有量の変化を指す。いくつかの実施形態では、本発明の繊維は、弾性領域でαヘリックスからβシートへの転移を受ける。いくつかの実施形態では、本発明の繊維は、約6%、約10%またはそれを超える歪み、例えば破断歪み未満、5~1000%、約5~約100%、約5~約80%の歪み(それらの間の任意の範囲を含む)まで伸長したときのαヘリックスからβシートへの転移(例えば、少なくとも10%、または少なくとも20%の転移)を受ける。
【0107】
いくつかの実施形態では、本発明の伸長された繊維は、約2:1~約1:1(それらの間の任意の範囲を含む)のαヘリックス対βシート比によって特徴付けられるラミン系タンパク質を含むか、またはそれから本質的に構成され、該伸長された繊維は、約6~約100%、約6~約80%、約6~約50%、約6~約60%、約6~約70%、約6~約90%(それらの間の任意の範囲を含む)の歪みによって特徴付けられる。
【0108】
いくつかの実施形態では、各リピートは、独立して、20kDa~80kDa、20kDa~70kDa、20kDa~60kDa、20kDa~55kDa、または20kDa~50kDaの範囲(それらの間の任意の範囲を含む)の分子量を有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0109】
いくつかの実施形態では、上記の繊維は、準結晶の形態で配置された複数のラミン系タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、各準結晶は、(i)1nm~500nmの幅;(ii)0.5mm~1cmの長さ、または(i)と(ii)との両方の長さから選択される寸法によって特徴付けられる。
【0110】
いくつかの実施形態では、各準結晶は、1nm~500nm、2nm~500nm、5nm~500nm、15nm~500nm、50nm~500nm、100nm~500nm、250nm~500nm、1nm~300nm、2nm~300nm、5nm~300nm、15nm~300nm、50nm~300nm、100nm~300nm、1nm~100nm、2nm~100nm、5nm~100nm、15nm~100nm、または50nm~100nm(それらの間の任意の範囲を含む)の幅によって特徴付けられる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0111】
いくつかの実施形態では、各準結晶は、0.5mm~1cm、0.7mm~1cm、0.9mm~1cm、1mm~1cm、10mm~1cm、30mm~1cm、50mm~1cm、100mm~1cm、500mm~1cm、700mm~1cm、0.5mm~900mm、0.7mm~900mm、0.9mm~900mm、1mm~900mm、10mm~900mm、30mm~900mm、50mm~900mm、100mm~900mm、500mm~900mm、700mm~900mm、0.5mm~500mm、0.7mm~500mm、0.9mm~500mm、1mm~500mm、10mm~500mm、30mm~500mm、50mm~500mm、または100mm~500mm(それらの間の任意の範囲を含む)の長さによって特徴付けられる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0112】
本明細書で使用される場合、「準結晶」という用語は、ナノフィラメント(四量体プロトフィラメントの会合時に得られる)を指し、該ナノフィラメントは、繊維の長手方向軸に沿って整列した一方向性ナノフィラメントである。本明細書で使用される場合、「プロトフィラメント」は、ラミン二量体の重合によって形成される構造を指す。いくつかの実施形態では、二量体のポリマーは会合して四量体プロトフィラメントを形成する。
【0113】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、ラミン二量体の形態で本発明の繊維内に集合する。いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、プロトフィラメントの形態で本発明の繊維内に集合する。いくつかの実施形態では、プロトフィラメントは、繊維内で本質的に一方向に整列している。いくつかの実施形態では、プロトフィラメントは、繊維の長手方向軸に沿って整列している。いくつかの実施形態では、各プロトフィラメントは、複数のラミン二量体(例えば、複数のラミン二量体を含むポリマー)を含む。いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、四量体プロトフィラメントの形態で本発明の繊維内に集合する。いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、四量体プロトフィラメントを含む準結晶(またはナノフィラメント)の形態で本発明の繊維内に集合する。
【0114】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、単離されたタンパク質である。
【0115】
本明細書で使用される場合、「単離タンパク質」という用語は、混入細胞成分、例えば、自然界で核酸に付随する炭水化物、脂質、または他のタンパク質性不純物を本質的に含まないタンパク質を指す。典型的には、単離されたタンパク質の調製物は、高度に精製された形態、例えば、少なくとも約80%純粋、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、95%超純粋、または99%超純粋のタンパク質を含有する。いくつかの実施形態では、単離されたタンパク質は合成タンパク質である。タンパク質の合成は当該技術分野で周知であり、例えば、本明細書に例示されるような形質転換細胞における異種発現によって行われ得る。
【0116】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は組換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、繊維は、組換え細胞での発現によって得られる。いくつかの実施形態では、繊維は、細菌における発現によって得られる。いくつかの実施形態では、細菌は大腸菌(Escherichia coli)である。
【0117】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示されるポリヌクレオチド(すなわち、配列番号14および配列番号15)を含む人工核酸分子が提供される。いくつかの実施形態では、人工核酸分子は、ATGTCATCTCGTAAAGGTACTCGTAGTTCTCGTATTGTTACGCTAGAGCGCTCAGCGAATTCGTCGCTAAGCAACAATGGAGGAGGCGACGATTCATTTGGCTCAACGCTTCTAGAAACTTCACGTCTTCAAGAGAAAGATCATTTGACTTCACTCAACAGTCGTCTTGCCACTTACATCGACAAAGTTCGTCAATTGGAGCAAGAGAACAACAGACTCCAGGTTCAAATTCGCGACATCGAAGTTGTTGAAAAGAAAGAGAAGTCAAACTTGGCCGATCGCTTCGAGGCGGAAAAGGCTCGTCTCCGTCGTGCCCTCGATTCGGCTCAAGATGAGCTCGCAAAATACAGGATCGAGTATGACGCTGCAAAGGTTGAAGTAAAGAAGTTGAAGCCACAAGTCGAAAAACTTGAGAGAGAACTCGCTGGAGCTGAGGAACAAGCCCTCCATGCCCAATCTATTGCTGATCAAAGTCAAGCAAAACAGAAGACGTTGCAGGCACGCAACGATAAATTGGTGGTGGAGAATGATGATCTCAAAAAGCAGAACATCACTCTTCGTGACACCGTAGAAGGACTCAAGAAAGCCGTTGAAGATGAAACTCTTCTCCGAACAGCCGCCAACAATAAAATCAAGGCTCTGGAAGAAGATCTCGCTTTTGCTCTTCAACAGCACAAGGGAGAACTTGAAGAAGTTCGTCACAAGAGACAGGTCGACATGACAACCTACGCCAAGCAGATTAATGATGAGTATCAATCTAAGCTTCAAGATCAAATCGAAGAGATGCGTGCTCAGTTCAAGAACAATTTGCATCAAAACAAAACAGCTTTCGAAGATGCCTACAAAAACAAGCTCAATGCTGCTCGTGAACGCCAAGAGGAGGCTGTATCCGAAGCAATCCATCTTCGTGCCCGTGTTCGTGACTTGGAGACATCAAGCAGTGGAAATGCTTCGCTCATCGAACGTCTTCGTTCAGAGCTCGACACTCTGAAGAGATCGTTCCAAGAGAAGCTCGACGACAAGGATGCTCGAATTGCTGAACTTAATCAAGAGATCGAGCGCATGATGAGCGAGTTCCACGATCTTCTTGATGTTAAAATCCAATTGGACGCCGAACTCAAGACCTACCAAGCTCTCCTTGAGGGTGAGGAGGAGCGTCTCAATCTTACTCAGGAGGCGCCACAAAACACTTCAGTTCATCACGTCTCGTTTTCATCCGGAGGAGCAAGCGCTCAGCGCGGAGTGAAGCGTCGTCGCGTTGTCGATGTAAATGGAGAGGACCAAGACATTGATTATCTCAACCGTCGCTCCAAACTCAACAAAGAGACTGTTGGCCCAGTTGGAATCGACGAGGTTGATGAGGAAGGAAAGTGGGTCCGTGTTGCAAACAACTCTGAAGAAGAACAATCCATCGGAGGATACAAGTTGGTGGTCAAAGCTGGAAACAAAGAAGCCTCCTTCCAATTTTCATCTCGTATGAAGCTCGCTCCACATGCTAGCGCCACCGTTTGGTCTGCGGATGCTGGTGCCGTTCACCACCCACCAGAAGTCTACGTTATGAAGAAGCAACAGTGGCCAATTGGAGATAACCCATCAGCTCGTCTTGAGGATAGTGAAGGAGACACTGTTTCTTCTATCACCGTTGAATTCAGCGAATCATCGGATCCATCGGACCCAGCCGATCGTTGTTCCATCATGTAA(配列番号14)のポリヌクレオチド配列を含み、これは配列番号10のB型ラミンの部分に対応する。
【0118】
いくつかの実施形態では、人工核酸分子は、ATGGAGACCCCGTCCCAGCGGCGCGCCACCCGCAGCGGGGCGCAGGCCAGCTCCACTCCGCTGTCGCCCACCCGCATCACCCGGCTGCAGGAGAAGGAGGACCTGCAGGAGCTCAATGATCGCTTGGCGGTCTACATCGACCGTGTGCGCTCGCTGGAAACGGAGAACGCAGGGCTGCGCCTTCGCATCACCGAGTCTGAAGAGGTGGTCAGCCGCGAGGTGTCCGGCATCAAGGCCGCCTACGAGGCCGAGCTCGGGGATGCCCGCAAGACCCTTGACTCAGTAGCCAAGGAGCGCGCCCGCCTGCAGCTGGAGCTGAGCAAAGTGCGTGAGGAGTTTAAGGAGCTGAAAGCGCGCAATACCAAGAAGGAGGGTGACCTGATAGCTGCTCAGGCTCGGCTGAAGGACCTGGAGGCTCTGCTGAACTCCAAGGAGGCCGCACTGAGCACTGCTCTCAGTGAGAAGCGCACGCTGGAGGGCGAGCTGCATGATCTGCGGGGCCAGGTGGCCAAGCTTGAGGCAGCCCTAGGTGAGGCCAAGAAGCAACTTCAGGATGAGATGCTGCGGCGGGTGGATGCTGAGAACAGGCTGCAGACCATGAAGGAGGAACTGGACTTCCAGAAGAACATCTACAGTGAGGAGCTGCGTGAGACCAAGCGCCGTCATGAGACCCGACTGGTGGAGATTGACAATGGGAAGCAGCGTGAGTTTGAGAGCCGGCTGGCGGATGCGCTGCAGGAACTGCGGGCCCAGCATGAGGACCAGGTGGAGCAGTATAAGAAGGAGCTGGAGAAGACTTATTCTGCCAAGCTGGACAATGCCAGGCAGTCTGCTGAGAGGAACAGCAACCTGGTGGGGGCTGCCCACGAGGAGCTGCAGCAGTCGCGCATCCGCATCGACAGCCTCTCTGCCCAGCTCAGCCAGCTCCAGAAGCAGCTGGCAGCCAAGGAGGCGAAGCTTCGAGACCTGGAGGACTCACTGGCCCGTGAGCGGGACACCAGCCGGCGGCTGCTGGCGGAAAAGGAGCGGGAGATGGCCGAGATGCGGGCAAGGATGCAGCAGCAGCTGGACGAGTACCAGGAGCTTCTGGACATCAAGCTGGCCCTGGACATGGAGATCCACGCCTACCGCAAGCTCTTGGAGGGCGAGGAGGAGAGGCTACGCCTGTCCCCCAGCCCTACCTCGCAGCGCAGCCGTGGCCGTGCTTCCTCTCACTCATCCCAGACACAGGGTGGGGGCAGCGTCACCAAAAAGCGCAAACTGGAGTCCACTGAGAGCCGCAGCAGCTTCTCACAGCACGCACGCACTAGCGGGCGCGTGGCCGTGGAGGAGGTGGATGAGGAGGGCAAGTTTGTCCGGCTGCGCAACAAGTCCAATGAGGACCAGTCCATGGGCAATTGGCAGATCAAGCGCCAGAATGGAGATGATCCCTTGCTGACTTACCGGTTCCCACCAAAGTTCACCCTGAAGGCTGGGCAGGTGGTGACGATCTGGGCTGCAGGAGCTGGGGCCACCCACAGCCCCCCTACCGACCTGGTGTGGAAGGCACAGAACACCTGGGGCTGCGGGAACAGCCTGCGTACGGCTCTCATCAACTCCACTGGGGAAGAAGTGGCCATGCGCAAGCTGGTGCGCTCAGTGACTGTGGTTGAGGACGACGAGGATGAGGATGGAGATGACCTGCTCCATCACCACCACGGCTCCCACTGCAGCAGCTCGGGGGACCCCGCTGAGTACAACCTGCGCTCGCGCACCGTGCTGTGCGGGACCTGCGGGCAGCCTGCCGACAAGGCATCTGCCAGCGGCTCAGGAGCCCAGGTGGGCGGACCCATCTCCTCTGGCTCTTCTGCCTCCAGTGTCACGGTCACTCGCAGCTACCGCAGTGTGGGGGGCAGTGGGGGTGGCAGCTTCGGGGACAATCTGGTCACCCGCTCCTACCTCCTGGGCAACTCCAGCCCCCGAACCCAGAGCCCCCAGAACTGCAGCATCATGTAA(配列番号15)のポリヌクレオチド配列を含み、これは配列番号9のA型ラミンの部分に対応する。
【0119】
いくつかの実施形態では、人工ベクターはプラスミドを含む。いくつかの実施形態では、人工ベクターは、人工核酸分子を含むアグロバクテリウムを含むか、または人工核酸分子を含むアグロバクテリウムである。いくつかの実施形態では、人工ベクターは発現ベクターである。いくつかの実施形態では、人工ベクターは植物発現ベクターである。いくつかの実施形態では、人工ベクターは、本明細書に開示されるAAEコード核酸配列の発現に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、人工ベクターは、細胞、組織、または生物における本明細書に開示される核酸配列をコードするAAEの異種発現に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、人工ベクターは、細胞、組織、または生物におけるアシル補酵素A(アシル-CoA)の産生または生産に使用するためのものである。
【0120】
細胞内でのポリヌクレオチドの発現は、当業者に周知である。それは、多くの方法の中でも、トランスフェクション、ウイルス感染、または細胞のゲノムの直接変化によって行うことができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、プラスミドまたはウイルスベクターなどの発現ベクター中にある。ベクター核酸配列は、一般に、細胞内での増殖のための少なくとも1つの複製起点と、任意選択的に追加のエレメント、例えば異種ポリヌクレオチド配列、発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー)、選択可能マーカー(例えば、抗生物質耐性)、ポリ-アデニン配列とを含有する。
【0121】
ベクターは、非ウイルス法またはウイルス法を介して送達されるDNAプラスミドであり得る。ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ベラリプリドウイルスベクター、またはポックスウイルスベクターであり得る。オオムギ斑葉モザイクウイルス(BSMV)、タバコ茎えそウイルスおよびキャベツ巻葉ジェミニウイルス(CbLCV)も使用され得る。プロモーターは、植物細胞において活性であり得る。プロモーターは、ウイルスプロモーターであり得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結される。「作動可能に連結される」という用語は、目的のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列(例えば、ベクターが宿主細胞に導入される場合、インビトロ転写/翻訳系において、または宿主細胞において)の発現を可能にする様式で1つ以上の調節エレメントもしくは複数のエレメントに連結されていることを意味することを意図している。いくつかの実施形態では、プロモーターは本発明のポリヌクレオチドに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、プロモーターは異種プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは内因性プロモーターである。
【0123】
いくつかの実施形態では、ベクターは、エレクトロポレーション(例えば、From et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82,5824(1985)に記載されるように)、熱ショック、ウイルスベクターによる感染、小さなビーズもしくは粒子のマトリックス内、または表面(Klein et al.,Nature 327.70-73(1987))上のいずれかでの核酸による小さな粒子による高速弾道貫入、例えばコーティングされた粒子、および針状粒子、アグロバクテリウムTiプラスミドなどのバイオリスティック使用を含む標準的な方法によって細胞に導入される。
【0124】
本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼ、すなわちRNAポリメラーゼIIの開始部位の周りに集まっている転写制御モジュールの群を指す。プロモーターは、各々がおよそ7~20bpのDNAからなり、転写活性化因子またはリプレッサータンパク質のための1つ以上の認識部位を含む、個別の機能モジュールから構成される。プロモーターは、転写開始部位の上流または下流に延びていてもよく、数塩基対から数キロ塩基の範囲の任意のサイズであってもよい。
【0125】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、RNAポリメラーゼII(RNAP IIおよびPol II)によって転写される。RNAP IIは、真核細胞に見られる酵素であり、DNAの転写を触媒してmRNAならびにほとんどのsnRNAおよびマイクロRNAの前駆体を合成することが知られている。
【0126】
いくつかの実施形態では、全身感染および標的特異性などの利点を提供する組換えウイルスベクターがインビボ発現に使用される。一実施形態では、全身感染は、例えばレトロウイルスのライフサイクルに固有のものであり、単一の感染細胞が多くの子孫ビリオンを産生し、それが隣接する細胞に感染するプロセスである。一実施形態では、その結果、広い領域が急速に感染し、その大部分は最初は元のウイルス粒子に感染しなかった。一実施形態では、全身に広がることができないウイルスベクターが産生される。一実施形態では、この特徴は、所望の目的が、特定の遺伝子を局所的な数の標的細胞にのみ導入することである場合に有用であり得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、植物ウイルスベクターが使用される。いくつかの実施形態では、野生型ウイルスが使用される。いくつかの実施形態では、当該技術分野で公知のような分解ウイルスが使用される。いくつかの実施形態では、アグロバクテリウムを使用して、本発明のベクターをウイルスに導入する。
【0128】
いくつかの実施形態では、レトロウイルスなどの真核生物ウイルスからの調節エレメントを含有する発現ベクターが本発明によって使用される。SV40ベクターには、pSVT7およびpMT2が含まれる。いくつかの実施形態では、ウシパピローマウイルスに由来するベクターには、pBV-1MTHAが含まれ、エプスタインバーウイルスに由来するベクターには、pHEBO、およびp2O5が含まれる。他の例示的なベクターには、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルスpDSVE、およびSV-40初期プロモーター、SV-40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核細胞での発現に有効であることが示されている他のプロモーターの指示下でタンパク質の発現を可能にする任意の他のベクターが含まれる。
【0129】
本発明の発現ベクターを細胞に導入するために、種々の方法を用いることができる。そのような方法は、一般に、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory,New York(1989,1992)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Md.(1989),Chang et al.,Somatic Gene Therapy,CRC Press,Ann Arbor,Mich.(1995),Vega et al.,Gene Targeting,CRC Press,Ann Arbor Mich.(1995),Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,Butterworths,Boston Mass.(1988)およびGilboa et at.[Biotechniques 4(6):504-512,1986]に記載されており、例えば、安定なまたは一過性のトランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーションおよび組換えウイルスベクターによる感染が含まれる。さらに、ポジティブ-ネガティブセレクション法については、米国特許第5,464,764号明細書および同第5,487,992号明細書を参照されたい。
一実施形態では、植物発現ベクターが使用される。一実施形態では、ポリペプチドコード配列の発現は、いくつかのプロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態では、ウイルスプロモーター、例えばCaMVの35S RNAおよび19S RNAプロモーター[Brisson et al.,Nature 310:511-514(1984)]、またはTMVに対するコートタンパク質プロモーター[Takamatsu et al.,EMBO J.6:307-311(1987)]が使用される。別の実施形態では、植物プロモーター、例えば、RUBISCOの小サブユニット[Coruzzi et al.,EMBO J.3:1671-1680(1984);およびBrogli et al.,Science 224:838-843(1984)]または熱ショックプロモーター、例えばダイズhsp17.5-Eもしくはhsp17.3-B[Gurley et al.,Mol.Cell.Biol.6:559-565(1986)]が使用される。一実施形態では、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、直接DNA形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションおよび当業者に周知の他の技術を使用して、コンストラクトが植物細胞に導入される。例えば、Weissbach&Weissbach[Methods for Plant Molecular Biology,Academic Press,NY,Section VIII,pp421-463(1988)]を参照されたい。当該技術分野で周知の昆虫および哺乳動物宿主細胞系などの他の発現系も本発明によって使用することができる。
【0130】
挿入されたコード配列(ポリペプチドをコードする)の転写および翻訳に必要なエレメントを含むこと以外に、本発明の発現コンストラクトは、発現されたポリペプチドの安定性、産生、精製、収率、または活性を最適化するように操作された配列も含み得ることが理解されるであろう。
【0131】
いくつかの実施形態では、人工ベクターは、本明細書に記載されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、単離されたタンパク質である。
【0133】
本明細書で使用される場合、「単離タンパク質」という用語は、混入細胞成分、例えば、自然界で核酸に付随する炭水化物、脂質、または他のタンパク質性不純物を本質的に含まないタンパク質を指す。典型的には、単離されたタンパク質の調製物は、高度に精製された形態、例えば、少なくとも約80%純粋、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、95%超純粋、または99%超純粋のタンパク質を含有する。いくつかの実施形態では、単離されたタンパク質は合成タンパク質である。タンパク質の合成は当該技術分野で周知であり、例えば、本明細書に例示されるような形質転換細胞における異種発現によって行われ得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、本発明の繊維はコーティングをさらに含む。いくつかの実施形態では、コーティングを含むラミン系タンパク質繊維は、本明細書では「コーティングされた繊維」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、本発明の繊維はコーティングされた繊維である。
【0135】
いくつかの実施形態では、コーティングされた繊維は、コーティングと接触している本発明のラミン系タンパク質繊維を含む。いくつかの実施形態では、繊維の表面はコーティングと接触している。いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質繊維の外面はコーティングと接触している。いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質繊維表面の少なくとも一部(すなわち、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、多くとも90%、多くとも100%、多くとも95%、多くとも97%)がコーティングと接触している。
【0136】
いくつかの実施形態では、「接触している」という用語は、ラミン系タンパク質繊維(例えば、繊維の外側部分)が非共有結合(例えば、物理的結合または相互作用を含む)を介してコーティングに結合していることを包含する。いくつかの実施形態では、結合は物理吸着を介したものである。いくつかの実施形態では、コーティングは、ラミン系タンパク質繊維に吸着される。いくつかの実施形態では、コーティングは、ラミン系タンパク質繊維の少なくとも一部に埋め込まれる。いくつかの実施形態では、コーティングされた繊維は、コーティングに安定に結合した本発明のラミン系タンパク質繊維を含む。
【0137】
本明細書で使用される場合、「安定に結合した」という用語は、コーティングされた繊維が、1ヶ月まで、1年まで、3年まで、または10年まで、またはそれを超える範囲(それらの間の任意の範囲を含む)の期間にわたって適切な条件下で貯蔵したときに、その構造的、物理的および/または化学的特性を実質的に維持する能力を指す。いくつかの実施形態では、本発明の繊維は、その構造(例えば、形状、および/または寸法、例えば厚さ、長さなど)を実質的に維持する場合、安定していると呼ばれる。いくつかの実施形態では、実質的には本明細書に記載されるとおりである。いくつかの実施形態では、適切な条件は、周囲雰囲気、UV/Vis光照射および/または-50~70℃、-50~60℃、-50~50℃、-50~0℃、0~10℃、10~30℃、30~50℃、50~70℃、70~100℃、それらの間の任意の範囲の温度への曝露を含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、コーティングされた繊維は、コーティングされた繊維の組成物または物理的構造全体に、崩壊、亀裂、変形、または任意の他の表面凹凸もしくは欠陥が実質的にない場合、安定と呼ばれる。
【0139】
いくつかの実施形態では、コーティングはコーティング層の形態である。いくつかの実施形態では、「コーティング」および「コーティング層」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0140】
いくつかの実施形態では、コーティングはフィルムの形態である。いくつかの実施形態では、コーティングは、ラミン系タンパク質繊維の上に実質的に均一な層を形成する。いくつかの実施形態では、コーティング層は均一な層である。
【0141】
層またはフィルムに言及するときの「均一」または「同種」とは、例えば、±50%、±40%、±30%、±20%、±10%、±5%、またはそれ未満(それらの間の任意の値を含む)の範囲内で変化するサイズ(または厚さ)分布を指すことを意味する。
【0142】
いくつかの実施形態では、「層」という用語は、実質的に均一な物質の実質的に均一な厚さを指す。いくつかの実施形態では、層またはフィルムは、単一層または複数の層を含む。いくつかの実施形態では、層という用語およびフィルムという用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0143】
いくつかの実施形態では、コーティング(またはコーティング層)は、少なくとも1nm、少なくとも10nm、少なくとも5nm、少なくとも50nm、少なくとも100nm、少なくとも500nm、少なくとも1μm、少なくとも5μm、少なくとも10μm、少なくとも50μm(それらの間の任意の範囲を含む)である。いくつかの実施形態では、コーティング(またはコーティング層)は、約1nm~約50μm、約1nm~約50μm、約1nm~約30μm、約1nm~約20μm、約1nm~約10μm、約1nm~約1μm、約1nm~約0.1μm、約10nm~約50μm、約10nm~約5μm、約10nm~約1μm、約10nm~約0.1μm、約1nm~約500nm、約1nm~約100nm、約10~約1000μm、約100nm~約10μm、約10~約50μm(それらの間の任意の範囲を含む)の厚さによって特徴付けられる。「厚」および「厚さ」という用語は、平均値を指す。
【0144】
いくつかの実施形態では、コーティングは、フィルム形成剤を含む。いくつかの実施形態では、コーティングは疎水性コーティングである。いくつかの実施形態では、疎水性コーティングは、水不混和性化合物を含むか、または水不混和性化合物から本質的になる。いくつかの実施形態では、水不混和性化合物は、ラミン系タンパク質繊維の上に安定なフィルムを形成するように構成される。いくつかの実施形態では、水不混和性化合物は、水不混和性小分子、または水不混和性ポリマーである。
【0145】
いくつかの実施形態では、コーティングは、植物油、鉱油、脂肪酸、ステアリン酸イソブチル、獣脂脂肪酸2-エチルヘキシルエステル、ポリオールカルボン酸エステル、グリセロールのヤシ油脂肪酸エステル、アルコキシル化グリセロール、シリコーン、ジメチルポリシロキサン、ポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキシド、およびプロピレンオキシドコポリマー(それらの任意の塩、任意の組み合わせ、および任意のコポリマーを含む)を含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、疎水性コーティングは、油、脂肪、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、グリセリド(例えば、モノ-、ジ-および/またはトリ-グリセリド)、リン脂質、脂質、固体脂質、植物油、精油、植物油、ステアリン酸イソブチル、獣脂脂肪酸2-エチルヘキシルエステル、ポリオールカルボン酸エステル、グリセリド、グリセロールのヤシ油脂肪酸エステル、アルコキシル化グリセロール、シリコーン油、鉱油、ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサン、ポリシラン、およびワックス(それらの任意の塩、任意の組み合わせ、および任意のコポリマーを含む)から選択される。
【0147】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、上記の繊維であって、以下:1MPa~1000MPaの降伏強度;-1MPa~1000MPaの引張強度;10%~500%の破断歪み;30MJ/m~1000MJ/mの靱性;および0.001GPa~30GPaのヤング率から選択される少なくとも1つの機械的性質によって特徴付けられる繊維が提供される。
【0148】
いくつかの実施形態では、本発明の繊維は、1MPa~1000MPa、5MPa~1000MPa、10MPa~1000MPa、20MPa~1000MPa、30MPa~1000MPa、50MPa~1000MPa、70MPa~1000MPa、100MPa~1000MPa、250MPa~1000MPa、300MPa~1000MPa、500MPa~1000MPa、1MPa~700MPa、5MPa~700MPa、10MPa~700MPa、20MPa~700MPa、30MPa~700MPa、50MPa~700MPa、70MPa~700MPa、100MPa~700MPa、250MPa~700MPa、300MPa~700MPa、500MPa~700MPa、1MPa~300MPa、5MPa~300MPa、10MPa~300MPa、20MPa~300MPa、30MPa~300MPa、50MPa~300MPa、70MPa~300MPa、または100MPa~300MPa(それらの間の任意の範囲を含む)の降伏強度によって特徴付けられる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0149】
いくつかの実施形態では、本発明の繊維は、1MPa~1000MPa、5MPa~1000MPa、10MPa~1000MPa、20MPa~1000MPa、30MPa~1000MPa、50MPa~1000MPa、70MPa~1000MPa、100MPa~1000MPa、250MPa~1000MPa、300MPa~1000MPa、500MPa~1000MPa、1MPa~700MPa、5MPa~700MPa、10MPa~700MPa、20MPa~700MPa、30MPa~700MPa、50MPa~700MPa、70MPa~700MPa、100MPa~700MPa、250MPa~700MPa、300MPa~700MPa、500MPa~700MPa、1MPa~300MPa、5MPa~300MPa、10MPa~300MPa、20MPa~300MPa、30MPa~300MPa、50MPa~300MPa、70MPa~300MPa、または100MPa~300MPa(それらの間の任意の範囲を含む)の引張強度によって特徴付けられる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0150】
いくつかの実施形態では、本発明の繊維は、10%~500%、20%~500%、50%~500%、90%~500%、100%~500%、250%~500%、10%~350%、20%~350%、50%~350%、90%~350%、100%~350%、250%~350%、50~1000%、約100~約1000%、約100~約800%、約100~約400%、約100~約500%、約100~約600%、約100~約700%、約100~約900%(それらの間の任意の範囲を含む)の破断歪みによって特徴付けられる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0151】
いくつかの実施形態では、本発明の繊維は、30MJ/m~1000MJ/m、50MJ/m~1000MJ/m、70MJ/m~1000MJ/m、100MJ/m~1000MJ/m、300MJ/m~1000MJ/m、500MJ/m~1000MJ/m、700MJ/m~1000MJ/m、30MJ/m~700MJ/m、50MJ/m~700MJ/m、70MJ/m~700MJ/m、100MJ/m~700MJ/m、300MJ/m~700MJ/m、500MJ/m~700MJ/m、30MJ/m~500MJ/m、50MJ/m~500MJ/m、70MJ/m~500MJ/m、100MJ/m~500MJ/m、または300MJ/m~500MJ/m(それらの間の任意の範囲を含む)の靱性によって特徴付けられる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0152】
いくつかの実施形態では、本発明の繊維は、0.001GPa~30GPa、0.005GPa~30GPa、0.009GPa~30GPa、0.01GPa~30GPa、0.05GPa~30GPa、0.1GPa~30GPa、1GPa~30GPa、10GPa~30GPa、0.001GPa~20GPa、0.005GPa~20GPa、0.009GPa~20GPa、0.01GPa~20GPa、0.05GPa~20GPa、0.1GPa~20GPa、1GPa~20GPa、10GPa~20GPa、0.001GPa~10GPa、0.005GPa~10GPa、0.009GPa~10GPa、0.01GPa~10GPa、0.05GPa~10GPa、0.1GPa~10GPa、または1GPa~10GPa(それらの間の任意の範囲を含む)のヤング率によって特徴付けられる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。上述の物理的特性は、ラミン-タンパク質系繊維、およびコーティングされた繊維を含む、本明細書に開示される繊維のいずれかを包含する。
【0153】
本発明のいくつかの実施形態の別の態様によれば、B型ラミン系タンパク質を含む繊維が提供され、該繊維は、(i)10μm~180μmの直径によって特徴付けられ、(ii)B型ラミン系タンパク質は、配列番号1、または配列番号11に示されるアミノ酸(それに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含む)を含み、XがGlnである場合、該繊維は、(i)アルコールの残留量;(ii)190MJ/mを超える靱性のいずれかによって特徴付けられ、(ii)該タンパク質は、その伸長時に3%~50%の伸長時のαヘリックスからβシートへの転移によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、繊維は、i.アミノ酸配列の配列番号2またはそれに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含むN末端領域;ii.アミノ酸配列の配列番号3またはそれに対して少なくとも70%の配列相同性を有する任意の機能的アナログを含むC末端領域のいずれかをさらに含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、上記の本発明の繊維は、195MJ/m超、200MJ/m超、205MJ/m超、250MJ/m超、270MJ/m超、290MJ/m超、300MJ/m超、500MJ/m超、または700MJ/m超(それらの間の任意の値を含む)の靱性によって特徴付けられる各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0155】
いくつかの実施形態では、上記の繊維は、生体材料(バイオマテリアル)およびバイオミメティック材料に使用するためのものである。
【0156】
いくつかの実施形態では、上記の繊維は、再生医療の分野、例えば、組織工学および組織移植片製造に適した足場の製造に使用するためのものである。
【0157】
いくつかの実施形態では、上記の繊維は、創傷閉鎖またはカバレッジシステムの製造、例えば縫合糸材料および創傷包帯の製造に使用するためのものである。
【0158】
いくつかの実施形態では、上記の繊維は、医療用接着性ストリップ、皮膚移植片、代用靭帯、外科用メッシュ、メンブレン、およびフィルターなどの医療デバイスに使用するためのものである。
【0159】
いくつかの実施形態では、上記の繊維は、化粧品および薬物送達に使用するためのものである。
【0160】
いくつかの実施形態では、上記の繊維は、フィルム(例えば、透明フィルム)、衣料用生地、防弾チョッキ裏地、コンテナ用生地、バッグまたは財布用ストラップ、ケーブル、ロープ、接着性結合材料、非接着性結合材料、ストラップ材料、自動車用カバーおよび部品、航空機用構造材料、耐候性材料、可撓性隔壁材料、ならびにスポーツ用品などの広範囲の工業製品および商業製品で使用するためのものである。
【0161】
いくつかの実施形態では、上記の繊維は、コーティング、例えばテキスタイル製品および皮革製品のためのコーティングに使用するためのものであり、それによって、コーティングされた製品に安定性および耐久性を付与するか、またはコーティングされた製品に撥水性などの追加の特性を与える。
【0162】
いくつかの実施形態では、上記の繊維は、製品または物品の製造のために他の材料と組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、上記の繊維を他の材料と組み合わせて複合体を得ることができる。いくつかの実施形態では、複合体は安定であり、「安定」という用語は本明細書に記載されるとおりである。いくつかの実施形態では、本発明の繊維と追加のポリマーとを含む複合体が提供される。いくつかの実施形態では、複合体は、バインダー、架橋剤、可塑剤、安定剤、充填剤などの添加剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、複合体のポリマー含有量は、本発明の繊維と追加のポリマーとから本質的に構成される。いくつかの実施形態では、複合体のポリマー含有量の50~99%、50~95%、50~90%、50~80%、50~70%が、本発明の繊維と追加のポリマーとから構成される。いくつかの実施形態では、追加のポリマーが複合体のマトリックスを形成し、本発明の繊維はマトリックスに機械的補強を提供する。いくつかの実施形態では、追加のポリマーは、安定な複合体を得るために、本発明の繊維と適合性がある。
【0163】
いくつかの実施形態では、複合体は、本発明の繊維の1~50%、1~30%、1~10%、1~20%、10~50%、20~50%、30~50%、10~60%、10~70%w/wを含み、追加のポリマーをさらに含む。いくつかの実施形態では、追加のポリマーは透明(例えば、70~100%の光透過性)である。いくつかの実施形態では、追加のポリマーは、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーを含む合成ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、合成ポリマーは非生分解性ポリマーである。いくつかの実施形態では、合成ポリマーは生分解性ポリマーである。いくつかの実施形態では、合成ポリマーは架橋ポリマー(本明細書では「硬化ポリマー」とも呼ばれる)である。
【0164】
いくつかの実施形態では、追加のポリマーは硬化樹脂を含む。適切な樹脂の例には、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、メタクリレート樹脂(例えば、アクリレートおよびエステル化アクリレートまたは他のアクリレート系樹脂を含む)、フルオロカーボン樹脂、ならびにフェノール樹脂、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0165】
いくつかの実施形態では、追加のポリマーは、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリエステル、ポリスチレン、C1~C8アルキルスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアミド(例えば、ナイロンなど)、ポリウレタン、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、スチレンアクリロニトリルコポリマー(SAN);ポリ(ビニルシクロヘキサン);PMMA/ポリ(フッ化ビニル)ブレンド;ポリ(フェニレンオキシド)合金;スチレン系ブロックコポリマー;ポリイミド;ポリスルホン;ポリ(塩化ビニル);ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS);ポリウレタン;不飽和ポリエステル;ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)などのポリ(アルカンテレフタレート);ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)などのポリ(アルカンナフタレート);アイオノマー;酢酸ビニル/ポリエチレンコポリマー;酢酸セルロース;酢酸酪酸セルロース;フルオロポリマー;ポリ(スチレン)-ポリ(エチレン)コポリマー;ポリ(カーボネート)/脂肪族PETブレンドならびにPETおよびPENコポリマー(ポリオレフィン系PETおよびPENを含む)(それらの任意のコポリマーおよび任意の混合物を含む)を含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、合成生分解性ポリマーは、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリホスホエステル、ポリ無水物、ポリエステルアミド、ポリアミノ酸(例えば、ランダムポリアミノ酸)、ポリイミン、ポリ(L-乳酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(乳酸-コグリコール酸)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(セバシン酸)、ポリ(アジピン酸)、ポリホスファゼン、ポリ(ジオキサノン)、ポリ-β-ヒドロキシ酪酸-コ-β-ヒドロキシ吉草酸(PHBV)、およびPBAT(それらの任意のコポリマーおよびそれらの任意の混合物を含む)のうちのいずれか1つであるか、またはそれを含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、追加のポリマーは、天然産物に由来するポリマーを含む。いくつかの実施形態では、追加のポリマーは、天然産物に由来する生分解性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、追加のポリマーは、セルロース、シルク、ケラチンおよびコラーゲン、またはそれらの任意の混合物もしくはコポリマーを含む。複合体材料は、紙またはスキンケア製品およびヘアケア製品が、改善された特性、例えば、改善された引張強度または引裂強度を有するために、紙またはスキンケア製品およびヘアケア製品の製造に利用することができる。
【0168】
物品
いくつかの実施形態によれば、本発明は、本明細書に記載される繊維(とりわけコーティングされた繊維を含む)を含む物品を提供する。いくつかの実施形態では、物品は、ラミン系タンパク質を含む繊維であって、10μm~180μmの直径によって特徴付けられる繊維を含む。いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質は、上記したように、A型ラミン、B型ラミンまたはその両方を含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、物品は、本発明の複数の繊維を含むヤーンの形態である。いくつかの実施形態では、物品は、織布または不織布基材の形態である。いくつかの実施形態では、物品は、フィラメント、フィルム、フォーム、糸、球、粒子、マイクロカプセル、ヒドロゲル、またはナノフィブリルの形態である。いくつかの実施形態では、本発明の繊維は、所望の特性が例えば高い靱性および剛性である任意の物品に使用または組み込むことができる。
【0170】
物品の非限定的な例には、縫合糸、外科用メッシュ、医療用接着性ストリップ、メッシュ、皮膚移植片、脂肪移植片、化粧品、皮膚充填剤代用靭帯、薬物溶出/送達デバイス用衣類生地、防弾チョッキ裏地、ケーブル、チューブ、フィルム、ロープ、釣糸、タイヤ、手袋、カテーテル、ホース、靴底、スポーツ用品および強化複合体の形態が含まれる。
【0171】
いくつかの実施形態では、物品は、繊維を含まない物品の特性と比較して、少なくとも1つの改善された機械的性質によって特徴付けられ、該特性は、ヤング率、引張強度、破断歪み、降伏点、靱性、破損仕事量(work to failure)、衝撃強度、引裂強度、曲げ弾性率、曲げ歪みおよび特定の伸び率での応力からなる群から選択される。
【0172】
機械的性質
いくつかの実施形態では、開示される物品は、参照物品と比較して改善された機械的性質によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、「参照物品」という用語は、本明細書に開示される繊維を含まない同じ物品を指す。いくつかの実施形態では、「参照物品」という用語は、自己集合繊維を指す。いくつかの実施形態では、「参照物品」という用語は、水性凝固浴から加工された繊維を指す。いくつかの実施形態では、「参照物品」という用語は、本発明のコーティングされていない繊維(すなわち、ラミン系タンパク質繊維)を指す。
【0173】
「改善された機械的性質」とは、より望ましい機械的性質を有することを意味する。
【0174】
いくつかの実施形態では、改善された機械的性質は弾性率を指す。いくつかの実施形態では、「弾性率」という語句は、ヤング率を指す。いくつかの実施形態では、「弾性率」という語句は、(例えば、当該技術分野で公知の手順による)引張応力の適用に対する材料の応答によって決定される。
【0175】
いくつかの実施形態では、改善された機械的性質は曲げ弾性率を指す。本明細書および当該技術分野で使用される場合、曲げ弾性率「曲げ弾性係数」は、曲げ変形における応力対歪みの比、または材料が曲がる傾向である。曲げ弾性率は、応力-歪み曲線の勾配から決定することができる。
【0176】
いくつかの実施形態では、特性は、これらに限定されないが、ヤング率、引張強度、破断歪み、降伏点、靱性、耐摩耗性、剛性、耐クリープ性、破損仕事量、応力および伸び率から選択される。いくつかの実施形態では、摩耗試験などの試験もDINに従って行うことができる。
【0177】
剛性は、荷重-変形曲線の線形部分の勾配を指す。破損仕事量とは、破損前の荷重-変形曲線下の面積を指す。これらの各々は、当該技術分野で公知の方法標準によって測定および計算することができる。いくつかの実施形態では、「剛性」という用語および「ヤング率」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0178】
いくつかの実施形態では、材料の引張強度は、材料が破損、例えば破壊するまでにかかり得る引張応力の最大量を指す。
【0179】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用される「引張強度」という用語は、例えばニュートン単位で測定される、微小割れまたは亀裂を形成する引き裂き、破壊、ネッキングなしに、またはその前に材料が耐えることができる力の最大量である。
【0180】
「微小割れまたは亀裂を形成する引き裂き、破壊、ネッキング」とは、永久変形を指すことを意味する。いくつかの実施形態では、「永久変形」という用語は、微小割れクまたは亀裂を含まない。いくつかの実施形態では、「永久変形」とは、元の寸法または構造の少なくとも0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、または1%(それらの間の任意の値を含む)を指すことを意味する。
【0181】
いくつかの実施形態では、「破断歪み」という用語は、例えば引張試験における応力-歪み曲線によって決定される破断時の歪み(変位)を意味する。
【0182】
いくつかの実施形態では、「降伏点」という用語は、応力-歪み曲線がプラトーを有し、弾性限界に達する応力を指す。
【0183】
本明細書で使用される場合、「クリープ」は、ポリマーサンプルが一定の引張応力、例えば重力または適用された機械的もしくは物理的応力を受けたときの引張歪みの変化の尺度である。別の言い方をすれば、クリープは、一定の引張応力の影響下で固体材料がゆっくりと移動または永久的に変形する傾向である。本明細書で使用される場合、「耐クリープ性」という用語は、長期間にわたって負荷を受けたときに、ポリマーがあらゆる種類の歪みに抵抗するポリマーの能力を指す。「耐クリープ性の向上」とは、例えば5%の引張歪みに対して例えば20%の時間の割合で改善することを指し得る。
【0184】
いくつかの実施形態では、「伸長時応力」という用語は、伸長した状態で材料に作用する力を指す。例えば、「100%伸長時応力」は、その長さの2倍に引き伸ばされた材料に作用する力を指す。
【0185】
いくつかの実施形態では、ヤング率、引張強度、降伏点、および伸長時応力から選択される1つ以上の特性は、例えば、少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、または少なくとも500%向上する。
【0186】
いくつかの実施形態では、ヤング率、引張強度、降伏点、および伸長時応力から選択される1つ以上の特性は、例えば、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも250%、少なくとも250%、少なくとも260%、少なくとも270%、少なくとも280%、少なくとも290%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%、少なくとも500%、少なくとも550%、少なくとも600%、少なくとも650%、少なくとも700%、少なくとも750%、少なくとも800%、少なくとも850%、少なくとも900%、少なくとも1000%、少なくとも1500%、少なくとも2000%、少なくとも2500%、または少なくとも3000%向上する。
【0187】
いくつかの実施形態では、ヤング率、引張強度、降伏点、および伸長時応力から選択される少なくとも2つの特性は、例えば、少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、または少なくとも500%向上する。
【0188】
いくつかの実施形態では、ヤング率、引張強度、降伏点、および伸長時応力から選択される少なくとも3つの特性は、例えば、少なくとも1%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、または少なくとも500%向上する。
【0189】
いくつかの実施形態では、ヤング率は、例えば、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、または少なくとも500%向上する。
【0190】
いくつかの実施形態では、引張強度は、例えば、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、または少なくとも50%向上する。
【0191】
いくつかの実施形態では、降伏点は、例えば、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、または少なくとも50%向上する。
【0192】
いくつかの実施形態では、物品は、組み込まれた繊維から構造強度の20%超が生じる構造強度によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、組成物は、組み込まれた繊維から構造強度の20%超が生じる構造強度によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、複合体は、組み込まれた繊維から構造強度の30%超が生じる構造強度によって特徴付けられる。
【0193】
いくつかの実施形態では、物品は、組み込まれた繊維から構造強度の1%超、5%超、10%超、20%超、または30%超が生じる構造強度によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、組成物は、組み込まれた繊維から構造強度の1%超、5%超、10%超、20%超、または30%超が生じる構造強度によって特徴付けられる。
【0194】
いくつかの実施形態では、「構造強度」という語句は、本明細書で使用される場合、機械的性質、例えば、限定するものではないが、弾性率、引張応力、伸び(歪み)および靱性[例えば、引張応力と伸び(歪み)との組み合わせ]を指す。
【0195】
方法
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、上記の繊維を得るための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、a.10mg/mL~400mg/mLの濃度のラミン系タンパク質を提供するステップと、b.ラミン系タンパク質を凝固溶液と接触させ(または注入し)、それによって繊維を形成するステップと、を含む。いくつかの実施形態では、接触させるステップは、注入するステップを含む。
【0196】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質を提供するステップは、10mg/mL~400mg/mL、20mg/mL~400mg/mL、30mg/mL~400mg/mL、50mg/mL~400mg/mL、70mg/mL~400mg/mL、100mg/mL~400mg/mL、200mg/mL~400mg/mL、10mg/mL~250mg/mL、20mg/mL~250mg/mL、30mg/mL~250mg/mL、50mg/mL~250mg/mL、70mg/mL~250mg/mL、または100mg/mL~250mg/mL(それらの間の任意の範囲を含む)の濃度である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0197】
いくつかの実施形態では、凝固溶液は、0.45cP~3cP、0.46cP~3cP、0.47cP~3cP、0.48cP~3cP、0.5cP~3cP、0.45cP~2.5cP、0.46cP~2.5cP、0.47cP~2.5cP、0.48cP~2.5cP、0.5cP~2.5cP、0.45cP~2cP、0.46cP~2cP、0.47cP~2cP、0.48cP~2cP、0.5cP~2cP、0.45cP~1cP、0.46cP~1cP、0.47cP~1cP、0.48cP~1cP、または0.5cP~3cP(それらの間の任意の範囲を含む)の粘度によって特徴付けられる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0198】
いくつかの実施形態では、凝固溶液は、0.7cP超、0.8cP超、0.9cP超、1cP超、1.5cP超、1.7cP超、または2cP超(それらの間の任意の値を含む)の粘度によって特徴付けられる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0199】
いくつかの実施形態では、注入するステップは、少なくとも0.1mL/h、少なくとも0.2mL/h、少なくとも0.5mL/h、少なくとも0.7mL/h、少なくとも1mL/h、少なくとも1.7mL/h、少なくとも2mL/h、少なくとも5mL/h、少なくとも10mL/h、少なくとも15mL/h、または少なくとも20mL/h(それらの間の任意の値を含む)の流量で行われる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0200】
いくつかの実施形態では、注入するステップは、0.001mm~1mm、0.005mm~1mm、0.01mm~1mm、0.02mm~1mm、0.001mm~0.9mm、0.005mm~0.9mm、0.01mm~0.9mm、0.02mm~0.9mm、0.001mm~0.5mm、0.05mm~0.5mm、0.09mm~0.5mm、0.1mm~0.5mm、0.12mm~0.5mm、0.13mm~0.5mm、0.15mm~0.5mm、0.05mm~0.3mm、0.09mm~0.3mm、0.1mm~0.5mm、0.12mm~0.3mm、0.13mm~0.3mm、0.15mm~0.3mm、0.05mm~0.2mm、0.09mm~0.2mm、0.1mm~0.2mm、0.12mm~0.2mm、0.13mm~0.2mm、または0.15mm~0.2mm(それらの間の任意の範囲を含む)の内径を有する針を介して行われる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0201】
いくつかの実施形態では、凝固溶液は、(i)アルコール(ii)水溶液(ii)緩衝液、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0202】
いくつかの実施形態では、アルコールは、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、プロパノール(PrOH)、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール、ペンタノールから選択され、これには任意の追加の水混和性アルコール(例えば、C1~C5アルコールもしくはC1~C3アルコール)またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0203】
いくつかの実施形態では、凝固溶液は、50%(v/v)~100%(v/v)、60%(v/v)~100%(v/v)、65%(v/v)~100%(v/v)、69%(v/v)~100%(v/v)、70%(v/v)~100%(v/v)、72%(v/v)~100%(v/v)、75%(v/v)~100%(v/v)、50%(v/v)~99%(v/v)、60%(v/v)~99%(v/v)、65%(v/v)~99%(v/v)、69%(v/v)~99%(v/v)、70%(v/v)~99%(v/v)、72%(v/v)~99%(v/v)、75%(v/v)~99%(v/v)、50%(v/v)~98%(v/v)、60%(v/v)~98%(v/v)、65%(v/v)~98%(v/v)、69%(v/v)~98%(v/v)、70%(v/v)~98%(v/v)、72%(v/v)~98%(v/v)、75%(v/v)~98%(v/v)、50%(v/v)~90%(v/v)、60%(v/v)~90%(v/v)、65%(v/v)~90%(v/v)、69%(v/v)~90%(v/v)、70%(v/v)~90%(v/v)、72%(v/v)~90%(v/v)、または75%(v/v)~90%(v/v)のアルコール(それらの間の任意の範囲を含む)を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0204】
いくつかの実施形態では、水溶液は架橋剤を含む。いくつかの実施形態では、架橋剤は、二価の金属イオン(例えばCa2+)もしくはその塩(CaClおよびMgClなど)、共有結合性架橋剤(グルタルアルデヒド、パラホルムアルデヒドなど)、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを含む。
【0205】
いくつかの実施形態では、水溶液は、1mm~100mm、2mm~100mm、3mm~100mm、4mm~100mm、5mm~100mm、10mm~100mm、30mm~100mm、50mm~100mm、1mm~90mm、2mm~90mm、3mm~90mm、4mm~90mm、5mm~90mm、10mm~90mm、30mm~90mm、50mm~90mm、1mm~70mm、2mm~70mm、3mm~70mm、4mm~70mm、5mm~70mm、10mm~70mm、30mm~70mm、または50mm~70mmの架橋剤を含み、それらの間の任意の範囲を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0206】
いくつかの実施形態では、水溶液は、1mM~100mM、2mM~100mM、3mM~100mM、4mM~100mM、5mM~100mM、10mM~100mM、30mM~100mM、50mM~100mM、1mM~90mM、2mM~90mM、3mM~90mM、4mM~90mM、5mM~90mM、10mM~90mM、30mM~90mM、50mM~90mM、1mM~70mM、2mM~70mM、3mM~70mM、4mM~70mM、5mM~70mM、10mM~70mM、30mM~70mM、または50mM~70mMの二価金属イオン塩(それらの間の任意の範囲を含む)を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0207】
いくつかの実施形態では、水溶液は、1mM~100mM、2mM~100mM、3mM~100mM、4mM~100mM、5mM~100mM、10mM~100mM、30mM~100mM、50mM~100mM、1mM~90mM、2mM~90mM、3mM~90mM、4mM~90mM、5mM~90mM、10mM~90mM、30mM~90mM、50mM~90mM、1mM~70mM、2mM~70mM、3mM~70mM、4mM~70mM、5mM~70mM、10mM~70mM、30mM~70mM、または50mM~70mMのCaCl(それらの間の任意の範囲を含む)を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0208】
いくつかの実施形態では、水溶液は、0.1%(v/v)~10%(v/v)、0.2%(v/v)~10%(v/v)、0.5%(v/v)~10%(v/v)、0.9%(v/v)~10%(v/v)、1%(v/v)~10%(v/v)、3%(v/v)~10%(v/v)、5%(v/v)~10%(v/v)、0.1%(v/v)~7%(v/v)、0.2%(v/v)~7%(v/v)、0.5%(v/v)~7%(v/v)、0.9%(v/v)~7%(v/v)、1%(v/v)~7%(v/v)、3%(v/v)~7%(v/v)、5%(v/v)~7%(v/v)の架橋剤(それらの間の任意の範囲を含む)を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0209】
いくつかの実施形態では、本方法は、(i)繊維を乾燥させるステップ、および(ii)繊維を伸長するステップのうちの少なくとも1つのステップを含む。いくつかの実施形態では、(i)繊維を乾燥させるステップは、ステップbの後に行われる。
【0210】
いくつかの実施形態では、本方法は、繊維を疎水剤と接触させ、それによって繊維上にコーティング層を形成するステップ(c)をさらに含む。いくつかの実施形態では、(i)繊維を乾燥させるステップは、ステップcの後に行われる。
【0211】
いくつかの実施形態では、上記の方法によって得られた繊維は、マイクロファイバーを含まない。
【0212】
いくつかの実施形態では、本方法は、ラミン系タンパク質を精製する、ステップaに先行するステップ(iii)をさらに含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、ラミン系タンパク質を精製するステップ(iii)は、(a)ラミン系タンパク質をカオトロピック剤中で可溶化するステップと、(b)カオトロピック剤を除去するステップと、(c)ラミン系タンパク質を金属イオンと接触させるステップと、を含む。いくつかの実施形態では、ステップ(b)およびステップ(c)は、透析を含む。いくつかの実施形態では、ステップ(b)およびステップ(c)は、2つの独立した透析を含む。
【0214】
一般
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%または±20%を指す。さらに、本明細書に開示される数値全体は、開示される値から±10%または±20%の変動も包含する近似値である。本明細書に開示されるすべての数値の前に「約」という用語があることを理解されたい。
【0215】
「comprises(含む)」、「comprising(含む)」、「includes(含む)」、「including(含む)」、「having(有する)」およびそれらの活用形は、「including but not limited to(~を含むが、それらに限定されない)」ことを意味する。
【0216】
「からなる(consisting of)」という用語は、「including and limited to(~を含み、それらに限定される)」ことを意味する。
【0217】
「consisting essentially of(~から本質的になる)」という用語は、組成物、方法または物品(例えば、本発明の繊維、またはそれから加工された物品)が追加の成分、ステップおよび/または部分を含み得るが、追加の成分、ステップおよび/または部分が、特許請求される組成物、方法または物品の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合に限ることを意味する。さらに、「consisting essentially of(~から本質的になる)」という用語は、列挙された要素を含むが、物品または組成物に本質的な意義を有し得る他の要素を除外する物品または組成物を定義するために使用される。
【0218】
「例示的」という単語は、本明細書では「例、事例または例示としての役割を果たす」ことを意味するために使用される。「例示的」と記載された任意の実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではなく、かつ/または他の実施形態からの特徴の組み込みを除外するべきではない。
【0219】
「任意選択的に」という用語は、本明細書では「いくつかの実施形態で提供され、他の実施形態では提供されない」ことを意味するために使用される。本発明の任意の特定の実施形態は、複数の「任意選択の」特徴を、そのような特徴が矛盾しない限り含むことができる。
【0220】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「化合物」または「少なくとも1つの化合物」という用語は、それらの混合物を含む複数の化合物を含み得る。
【0221】
本出願を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜上および簡潔さのためのものであり、本発明の範囲を厳格に限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5、および6を具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0222】
本明細書において数値範囲が示されるときはいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数または整数)を含むことを意味する。第1の指示数と第2の指示数との「間の範囲」および第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という語句は、本明細書では互換的に使用され、第1および第2の指示数ならびにそれらの間のすべての分数および整数を含むことを意味する。
【0223】
本明細書で使用される場合、「方法」という用語は、所与のタスクを達成するための様式、手段、技術および手順、例えば限定されないが、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の分野の当業者に公知であるか、または当業者によって公知の様式、手段、技術および手順から容易に開発されるものを指す。
【0224】
本明細書で使用される場合、「処置する」という用語は、症状の進行を抑止、実質的に阻害、遅延もしくは逆転させること、症状の臨床的もしくは審美的症候を実質的に改善すること、または症状の臨床的もしくは審美的症候の出現を実質的に予防することを含む。
【0225】
明確にするために別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態では組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴はまた、別個に、または任意の適切な部分的組み合わせで、または本発明の任意の他の記載された実施形態で適切であるように提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは動作不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴とみなされるべきではない。
【0226】
上記で明確にされ、以下の特許請求の範囲のセクションで特許請求される本発明の様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験的裏付けを見出す。
【実施例
【0227】
これから、上記の説明とともに本発明のいくつかの実施形態を非限定的に示す以下の実施例を参照する。
【0228】
材料および方法
本研究では、本発明者らは、湿式紡糸アプローチを用いてCe-ラミンを紡糸して繊維にすることによって、Ce-ラミン繊維の可能性を調査した。自己組織化アプローチと比較して、湿式紡糸は、繊維径をより良好に制御して、より細い繊維の調製を可能にする。本発明者らは、異なるドメインアーキテクチャを有するタンパク質が、異なる条件下で調製された場合、各々が固有の機械的性質を有する異なる準結晶のネットワークに集合するという仮説を立てた。この目的のために、本発明者らは、以下のドメインの組成を有する3つのタンパク質コンストラクトを使用した:コイルドコイルロッドドメイン(ロッド-Ce-ラミン、40kDa、配列番号11)、ロッドおよびテールドメイン(ロッド-テール-Ce-ラミン、59kDa、配列番号12)、ならびに3つのドメインすべて(完全長-Ce-ラミン、64kDa、配列番号10)(図1A)。これらのコンストラクトからの繊維を、異なる注入流量および凝固緩衝液中のCa+2濃度を用いて調製し、それらの機械的性質を比較した。本発明者らはまた、集合条件が、準結晶の構造(プロトフィラメントの異なる組織化)またはネットワークへのそれらの組織化に影響を及ぼすかどうかを試験した。
【0229】
線虫(C.elegans)ラミンの発現および精製
lmn-1(NC_003279.8)遺伝子を含むプラスミドpET24d(Novagen社)を、以前に報告された方法に従って構築した。ロッド-およびロッド-テール-Ce-ラミン遺伝子を、pET24d(+)(Novagen社)のN末端6xHis-TEV部位およびC末端AVIタグでクローニングして6His-TEV-Ce-ラミンAviを生成した。プラスミドを大腸菌BL21誘導体Rosetta(DE3)plysSに形質転換した。一晩細菌培養物を新鮮なLB培地に希釈し(1100)、0.5~0.9のOD600まで成長させた。IPTG(0.3mM)を添加し、3時間後、遠心分離によって細菌を採取した。封入体を含有するペレットを、1:10,000(v/v)のCalbiochem Protease Inhibitor Cocktail Set IIIおよび1%(v/v)のTween 20を含有する再懸濁緩衝液(20mM Tris-HCl、pH7.6、200mM NaCl、1mM EDTA)に再懸濁した。細菌懸濁液を65%パルス(EXLABモデルBM-150)で10分間(3秒間オンおよび4秒間オフ)超音波処理し、8000×gで10分間、4℃で遠心分離した。封入体を再懸濁緩衝液で2回洗浄し、次いで、20単位/mLのBenzonaseヌクレアーゼ(Novagen社、デンマーク国)で30分間インキュベートした。次に、封入体を4℃で10分間、8000×gで再び遠心分離し、次いで尿素緩衝液(20mM Tris-HCl、pH7.6、50mM NaClおよび6M尿素)に溶解した。最後に、懸濁液を17,000×gで1時間、4℃で遠心分離した。次いで、遠心濃縮器(30,000kDaカットオフ)によって上清を所望の濃度に濃縮した。NanoDropを使用して、所望の濃度(100mg/mL)および比率(260/280、約1.1)のCe-ラミン溶液を調製した。
【0230】
C.エレガンス(C.elegans)ラミンの繊維への集合
6M尿素含有緩衝液(100mg/mL)中の精製Ce-ラミン(完全長、ロッド-テール、およびロッド)を、ドープ溶液条件(0.5M尿素、100mM NaCl、25mM Tris-HCl、pH=9、および1mMジチオスレイトール(DTT))に対して透析した(11,000(v/v))。透析後、ラミン溶液を17,000×gで1時間遠心分離して凝集体を除去し、次いで、室温でシリンジポンプ(Chemyx NanoJetシリンジポンプ)を介して0.5、1.0、および3.5mL/hの注入流量で、シリンジ針(22Sゲージ、モデル710ハミルトン(登録商標)シリンジ)を通して凝固浴中に繊維が形成されるまで注入した。凝固浴は、25mM Tris-HCl、pH9.0、20または50mM CaCl2、および1mM DTTを含有していた。最後に、繊維を引張試験まで約20%の2-プロパノールを含有する凝固緩衝液中で室温にて保存した。研究で使用したすべての湿潤繊維は、少なくとも2年間チューブ内で安定していた。
【0231】
繊維の疎水性コーティング
凝固溶液からの繊維を最初に20分間風乾した。乾燥繊維を所望のコーティングオイルに15分~24時間の範囲の時間浸漬し、次いで20分間風乾した。乾燥繊維を水槽に24時間浸漬した。その後、繊維を20分間風乾し、その後、繊維を引張試験に供した。
【0232】
Ce-ラミンマクロファイバーの走査型電子顕微鏡イメージング
走査型電子顕微鏡(SEM)イメージングを、電界放出銃を装備したThermo Verios 460L(Thermo Fisher Scientific Inc.社)機器を使用して行った。イメージングの前に試料をクロムでコーティングした。二次電子像を3keVおよび8.1mmの作動距離で記録した。
【0233】
TEMイメージングのためのCe-ラミンマクロファイバー切片の調製
Ce-ラミンに基づく繊維を、0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.35)中2.5%グルタルアルデヒドで室温にて順次処理し、0.1Mカコジル酸緩衝液中1%OsO4で後固定し、1%酢酸ウラニル水溶液で各々1時間ブロック染色した。次いで、試料をエタノール系列で脱水し、Epon/Araldite(Sigma-Aldrich社、スイス国ブフス)に包埋した。超薄(70nm)切片をクエン酸鉛で後染色し、120kVの加速電圧で、Orius 1000デジタルカメラ(Gatan社、ドイツ国ミュンヘン)を使用して、Tecnai G2 Spirit透過型電子顕微鏡(Thermo Fisher Scientific社、オランダ国アイントホーフェン)で検査した。直径範囲は、TEM断面画像からImageJを使用して測定した(表4)。同じツールを使用して、個々の準結晶に沿ったリピート長さ(暗/黒色および明/白色セグメント)を、黒色領域の2つの中心間の長さとして測定し、平均リピート長さを計算した。
【0234】
Ce-ラミン繊維の機械的性質の特性評価
100Nロードセルを備えたシングルカラム万能試験機(島津製作所、AGS-x)を使用して、0.3、10、および100mm/分のクロスヘッド速度で、室温にて個々の繊維の引張試験を行った。一軸引張試験中、温度(約25℃)および湿度(約50%)などの環境条件は比較的一定に保たれた。各条件の組み合わせについて、5~10本の繊維を試験した。個々の繊維(0.5cm)をカードストック紙枠に取り付け、両端を接着した。
【0235】
繊維を接着剤で固定することにより、極端な注意をして行わなければならない装置への試料取り付けに際して起こる変形から繊維を保護する。標準的な定規を使用して繊維長を測定した。湿潤紡糸繊維を伸長前に10分間風乾した。20mm CaCl2を含有する凝固浴に3.5mL/hの注入速度で形成された完全長Ce-ラミン繊維も6または24時間風乾した。力を繊維の平均横断面積で割ることにより(円形横断面と仮定する)、力-変位曲線を応力歪み曲線に変換した。重要なことに、試験後、光学顕微鏡を使用して、各繊維の長さに沿って均等に分布した5つの異なる位置で繊維径を測定した。次いで、平均直径を使用して繊維横断面積を計算した。したがって、破壊応力(すなわち、強度)および破壊歪みを、それぞれ破損時の工学的応力および歪み(dL/L0)として計算した。ヤング率は、降伏点前の曲線の弾性線形領域における応力-歪み曲線の勾配である。さらに、応力-歪み曲線下面積を測定することにより、破損時歪みエネルギー(すなわち、靱性)を計算した。
【0236】
統計解析
タンパク質の種類、凝固浴中のCaCl濃度、注入流量およびクロスヘッド速度が繊維の機械的性質に及ぼす影響を分析するために、JMP v.13を使用して、t検定およびF検定(p値<0.05)による多因子ANOVAを行った。複合処理(統計的相互作用)の効果も分析した。
【0237】
ラマン分析
データ収集
ラマンシステムは、-60℃に空冷されたSynapse Open Electrode CCD検出器を装備したHoriba Lab Ram HR evolutionマイクロラマンシステムを含んでいた。励起源は、試料上で50mWの出力を有する785nmダイオードレーザーであった。レーザーは、50倍対物レンズを使用して約2μmの大きさのスポットに集束された。測定は、600g mm-1の格子および100μmの共焦点顕微鏡の穴で行った。曝露時間は900秒であった。
【0238】
データ処理
得られた結果を可能な限り正確に定量化するために、本発明者らは、モンテカルロシミュレーションおよびモデル推定に基づく推定手順を使用することによってそれらを検証した。この方法は、データを混合ガウスモデル(GMM)、すなわち、異なる平均および分散を有する一定数のK個の重み付け正規pdfを含む確率密度関数(pdf)としてモデル化する。そのフレームワークでは、pdf推定は以下のように定義される:
【数1】
式中、N(μn,σn)は、平均μnおよび標準偏差σnを有する正規pdfであり、α1,α2,...,αKは、α1+α2+...+αK=1となるような重みである。パラメーター(μn,σn,αn)、n=1...Kの共同推定のための周知のアルゴリズムは、期待値最大化(EM)アルゴリズムであり、そのパラメーターの尤度関数の局所最大値への収束が保証される。したがって、それは以下のように分解することができる:スペクトルを積分1に正規化した後(実際にそれをpdfにするため)、本発明者らは、この分布の106個のサンプルをaccept reject手順で生成し、このサンプルに基づいて、ガウスKの数が5であるという仮定に基づいて、本発明者らはEMアルゴリズムを用いてfを推定した。この方法を使用する場合の収束は局所最大値のみに保証されるため、初期化は手順の重要な部分であった。本発明者らは、重みおよび分散を均一な値で初期化した(すべてのn=1...Kに対してαn=0.2、σn=20)。さらに、平均μnを、文献に見出された値に基づいて初期化した。その手法では、式(1)のすべてのパラメーターの推定が一緒に行われ、したがって、原則として、パラメーターの値は一緒に解釈されなければならないことに留意されたい。しかしながら、本発明者らは、実際には、推定された分散および平均は、初期化時の値とほとんど異ならないことを観察した。したがって、αnの値のみに基づいて実際的な解釈を行うことができる。
【0239】
実施例1
封入体としての大腸菌におけるCe-ラミン(図1A)の組換え発現は、通常、精製プロセス(図1B)の最後に、尿素などの高濃度のカオトロピック剤の存在下でのそれらの可溶化を伴う。したがって、準結晶のインビトロ形成には、2つの連続した透析ステップにおいて尿素の除去およびその後のCa+2イオンの添加が必要とされる。第1のステップでの凝集体の形成を回避するために、低濃度のラミン(0.1~1mg/mL)でのみ準結晶の集合を行った。しかしながら、湿式紡糸アプローチで繊維を紡糸するためには、高いタンパク質濃度を使用することによって達成することができる高い溶液粘度が必要である。したがって、ドープ溶液組成物(0.5M尿素、100mM NaCl、25mM Tris-HCl、pH9、および1mM DTT)を最初に最適化して、Ce-ラミンが100mg/mLの濃度で可溶性のままであることを確実にした。ドープ溶液を、0.5、1、または3.5mL/hの速度で、20mMまたは50mM CaCl(表1、2、および3)を含有する凝固浴に注入した。
【表1】
【表2】
【表3】
【0240】
透析ベースの自己集合アプローチではなく湿式紡糸アプローチにより、本発明者らは、より小さくかつより均一な直径(約170μm)を有する湿式繊維を得ることができた。本発明者らは、透析手順で見られるように、繊維内のマイクロファイバーを検出しなかった。凝固緩衝液中の準結晶の形成を確認するために、本発明者らは、TEMイメージングを使用してCe-ラミン湿潤繊維の構造を分析し、70nm厚の横断面を明らかにした。この技術では、湿潤巨視的繊維の内部構造をナノメートルレベルで視覚化することができる。高いCe-ラミン濃度にもかかわらず、ほとんどのCe-ラミン繊維は準結晶の大量のネットワークを含んでおり(図2A~C)、直径は30nm~150nmの範囲であった(図2B~Cおよび表4)。
【表4】
【0241】
繊維を引張試験機に取り付ける前に、湿潤繊維を10分間風乾し、これにより繊維径を50~80μmに収縮させた。EM画像(図1C図1H)は、乾燥後にいくらかのマイクロファイバー形成を示した。したがって、乾燥はおそらく、水の蒸発に起因して、準結晶ネットワークが構造的再組織化を受ける原因となった。しかしながら、本発明者らは、個々の準結晶の構造が水分の存在下で不変のままであったと仮定する。10分を超える乾燥時間の増加は、繊維の更なる収縮を引き起こさず、6または24時間後の機械的性質に有意な影響を及ぼさなかった(表5)。
【表5】
【0242】
シングルカラム万能試験機を使用して、すべての乾燥繊維を0.3、10、および100mm/分の速度で機械的に歪ませた。引張力に対するすべてのCe-ラミン繊維の応答は、他のIFタンパク質系繊維、例えば、透析手順を通して集合した水和硬質α-ケラチン、ビメンチンおよびラミン繊維の応答と同様であった。具体的には、降伏点まで線形弾性領域(1.4%~5%)が見られ、その後、繊維破損まで長いプラスチック領域が得られた(図3)。さらに、実験設定に起因して、Ce-ラミン繊維は広範囲の機械的性質(表1、2、および3)を示し、これは注入流量、CaCl濃度、またはタンパク質構造単独では影響を受けなかったが(p値>0.05)、それらの相乗効果によって影響を受けた(有意な統計的相互作用、p値<0.05)(表4)。実際、各タンパク質コンストラクトについて、本発明者らは、最適な機械的性能をもたらす条件(注入流量およびCaCl濃度)の組み合わせを見出した(図3)。これらの具体的な条件を、以下、最適な集合条件と称する。再生および組換えヌタウナギ粘液、ビメンチン、および自己集合したCe-ラミンタンパク質系繊維と比較して、湿式紡糸したCe-ラミン繊維は、より良好な剛性および靱性を示し、これは天然のシルクおよび天然のヌタウナギ粘液糸に匹敵した。
【0243】
機械的性能に及ぼす集合条件の異なる組み合わせの効果を研究するために、本発明者らは、集合条件が準結晶構造にどのように影響するかを調べた。すなわち、準結晶の幅または準結晶内のプロトフィラメント会合の様式は、繊維力学の要因となり得る。最初に、本発明者らは、準結晶幅を測定し、これはロッドについては10~50nm、ロッド-テールについては10~250nm、および完全長Ce-ラミンについては20~250nmの範囲であった(表4)。各タンパク質コンストラクトについて、最適な集合条件で形成された繊維中の準結晶の幅(図3)は、他の集合条件との有意差を示さなかった。したがって、異なる準結晶幅は繊維力学に影響を及ぼさなかった。第2に、個々の準結晶に沿った白黒平均リピート長さを測定した。平均リピート長さは、個々の準結晶内の二量体とプロトフィラメントとの会合の様式を示す。完全長およびロッド-テールCe-ラミン繊維の平均リピート長さは、すべての集合条件で約40nmであり(図2A~Cおよび図5A~C)、これは、異なる紡糸条件の下では、プロトフィラメントの合が影響を及ぼさないことを示唆した。さらに、ほとんどの条件下で、ロッド-Ce-ラミンは、リピート長さを欠く糸状ネットワークを形成した。これらのネットワークは、形態およびフィラメント直径が、文献に報告されている低温電子断層撮影法を用いてより高い分解能で分析された準結晶と類似していた。その研究では、準結晶へのプロトフィラメントの会合は完全長Ce-ラミンのものと類似しており、平均リピート長さの欠如はおそらく、長くて緻密なテールドメイン(179アミノ酸)、特にそのIg-foldセグメントの除去に起因するものであることが示唆された。したがって、本発明者らは、ロッド-Ce-ラミン繊維の糸状構造は薄い準結晶であると仮定した。したがって、本発明者らは、異なる集合条件がロッド-Ce-ラミン繊維へのプロトフィラメント組織化に何らかの影響を及ぼすかどうかを決定することができなかった。
【0244】
本発明者らはまた、引張試験後の乾燥繊維の直径が各Ce-ラミンコンストラクトの機械的性質と相関し得るかどうかを試験した(図4A~C)。異なるクロスヘッド速度での引張試験中の繊維の連続張力は、乾燥繊維の直径(50~80μm)を27~61μmにさらに収縮させた(図4D)。最小直径を有する繊維は、最高の剛性および靱性特性を示すことができた。最適な集合条件では、(図3)ロッド-Ce-ラミン繊維は、他の条件で形成された繊維と同様の平均直径を示した。対照的に、ロッド-テールおよび完全長Ce-ラミン繊維形態の直径は、他の条件で形成された繊維よりも小さかった。しかしながら、これらの差は統計学的に有意ではなかった(図4A~C)。例えば、20mm CaCl2を含有する凝固浴中で1または3.5mL/hの注入速度で形成され、次いで0.3mm/分で歪められた完全長Ce-ラミン繊維は、平均して同様の直径を示したが、完全に異なる応力、剛性、および靱性を示した。さらに、透析手順で集合した完全長Ce-ラミン繊維は、引張試験後、湿式紡糸繊維(約50μm)と比較してはるかに厚かった(約217μm)(本研究)。両方の繊維は、0.3mm/分のクロスヘッド速度で歪み、同様の平均応力、剛性、および靱性を示した。これはおそらく、一方では繊維径が繊維力学に影響を及ぼさないことを意味するが、他方では、本発明者らが透析手順を使用してより細い繊維を製造することができる場合、繊維はより強靱で、より堅いことを暗示していた。最後に、完全長Ce-ラミン繊維の形態を詳細に見ると(図1F図1H)、より均一な構造が示され、これは、非均一のより厚いマイクロファイバーから構成されたロッドおよびロッド-テール繊維よりも、圧縮されたミクロンサイズ(1~2μm)のマイクロファイバーから構成されていた。マイクロファイバーの組織およびサイズにおけるこれらの違いは、最適条件での繊維間の機械的性質の違いを説明し得る。
【0245】
湿式紡糸されたCeラミン繊維の伸長時の二次構造転移に起因して形成されたβシート構造の量が繊維力学における因子であり得るかどうかを評価するために、本発明者らはラマン分光法を適用した(図5A~C)。弾性αヘリックスに富んだ繊維よりも硬くて強い繊維をもたらすαヘリックスからβシートへの二次構造転移は、スパイダーシルクおよびαケラチン繊維の高い強度および歪みの主な原因となる。機械的試験の前後の最も強靱な繊維(図3)のラマンスペクトル(図5A図5C)は、αヘリックス(1650cm-1)およびβシートおよび/またはランダムコイル構造(1667cm-1)に対応するアミドIバンド領域に典型的なピークを示した(図5A図5C)。引き抜きプロセスの結果としてのβシート構造の数の増加を評価するために、本発明者らは、通常のEMアルゴリズムを使用してパラメーターが推定される4つのガウス分布の混合として曲線をモデル化する独立曲線フィッティング法を使用した。結果は、βシートの数が増加し、αヘリックス構造の数が減少したことを示した。ロッド系繊維は、ロッド-テール(12%)および完全長(8%)Ce-ラミンで見られたものよりもβシート構造の軽度の増加(4%)を示した。これらの違いにもかかわらず、本発明者らは、最適な条件で形成された繊維の剛性、破壊応力、および歪み百分率に及ぼすβシート構造の増加のいかなる効果も見出さなかった。しかしながら、この結果は、C末端配列、N末端配列、または両方の配列の存在が、密に充填されたプロトフィラメントを形成することによって引張試験中にβシート構造の形成を促進することを示唆し得る。したがって、本発明者らは、繊維の応力-歪み特性が、より高いβシート構造の形成、繊維直径、準結晶幅、またはプロトフィラメントの会合(平均リピート長さ)によって影響されず、準結晶間の接続点の数(これは2つの分離した準結晶からのプロトフィラメント間の相互作用の数として認識され得る)よって影響されたと推測している。したがって、引張試験中の構造的再配置は、それらを接続するプロトフィラメントの整列および摺動によって引き起こされる、それらの相互接続された準結晶の解きほぐしから始まり得る。これは、Ca+2分子間架橋の破壊をもたらし、それによって準結晶間の接続点の不可逆的な変形を引き起こし、降伏点につながる可能性がある。この点から、準結晶内の二量体のプロトフィラメントおよびポリマーの整列および摺動は、繊維が破壊するまで続く(図6A図6B)。これによれば、ここで研究したCe-ラミンコンストラクトに基づいて、機械的性質に及ぼすロッドドメインへのC末端またはN末端とC末端との両方の付加の効果は明らかではなかった。しかしながら、最適条件では、完全長繊維は、すべてのクロスヘッド速度で最高の剛性および靱性を示した。さらに、ロッドおよびロッド-テール繊維は、0.3mm/分のクロスヘッド速度で同様の剛性および靱性を示したが、10mm/分では、両方の繊維がより良好な剛性および靱性を示し、ロッド繊維はより良好な特性を実証した。さらに速度を100mm/分に増加させると、特性の低下を示したロッド繊維とは対照的に、ロッド-テール繊維の非常に高い剛性および靱性が得られた。ほとんどの集合条件では、ロッドおよび完全長繊維の最適条件を除いて、速度の増加はより高い剛性をもたらした。これらの場合、剛性は100mm/分で減少したが、ロッド-テール繊維については、剛性は2.5倍増加した。これはおそらく、二量体形成におけるコイルドコイルドメインの結合および2つの二量体の会合に及ぼす特定の条件でのN末端およびC末端の効果から来ているものであり、したがって二量体およびプロトフィラメントを強化する。
【0246】
この研究は、TEM断面分析によって明らかにされるように、組換えIFタンパク質であるCe-ラミンを可溶化し、水溶液に湿式紡糸して準結晶の複雑なネットワーク(10nm~250nmの直径範囲)から構成された湿式巨視的繊維(直径約170μm)を形成できることを実証する。本発明者らの結果は、機械的性質がおそらく、特定の集合条件下で形成された準結晶の特定のネットワークの形成に依存することを示唆した。準結晶ネットワークをさらに調査するためには、異なる集合条件で2つの相互接続された準結晶間のプロトフィラメント会合の様式を明らかにするために、より高い分解能の構造解析が必要であろう。ラマン分析により、βシート構造の増加が実証された。潜在的に、Ce-ラミンコイルドコイルは完全にβシート構造に変換することができ、したがって、より高い歪み率に耐え、より高い破壊応力を達成することができる。それにもかかわらず、Ce-ラミン繊維の高い靱性は、主に、応力に曝された場合に、準結晶、プロトフィラメントおよびロッドドメインの迅速な再組織化および緩和から生じ得る、それらの大きな歪み率に起因する。したがって、局所的な欠陥が繊維破壊を引き起こしにくいより細い繊維の形成は、理論的に完全な変換に近づく可能性がある。
【0247】
Ce-ラミン乾燥繊維は、高い破壊歪み、中程度から高い剛性および強度の組み合わせによって特徴付けられ、天然のヌタウナギ糸およびスパイダーシルク繊維のように強靱なものにした。軟質生体材料系タンパク質の中でも、ラミン繊維はユニークな機械的性質を示す。それらは、シルク、ケラチン、またはコラーゲンよりもはるかに高いパーセンテージまで歪み、同様の剛性を有するが、それらはより低い応力で破壊する。したがって、Ce-ラミンは、非常に強靱で堅い繊維に適した多様な用途において複合生体材料の成分として利用することができる。広範囲の機械的性質を示す異なる生物からの異なる種類のラミンの可能性は興味深い。例えば、ヒトラミンA二量体の準結晶への集合に関与する会合様式は、Ce-ラミンの会合様式とは異なる。変化した準結晶構造は、繊維の力学に影響を及ぼし得る。他の見通しは、細胞核の周辺に見られるような、ヒトラミンAおよびB1などの2種類のラミンを含む複合繊維を分析することであろう。
【0248】
実施例2
アルコール溶液中でのCe-ラミン系繊維製造
湿式紡糸法は、ポリマー溶液を凝固浴に注入して繊維を形成する押出プロセスに基づく。繊維の特性および構造は、とりわけ、注入速度、シリンジ針の直径、凝固浴の組成、およびドープ溶液中のタンパク質の濃度によって影響を受ける。ここで、Ce-ラミン繊維に及ぼす凝固浴組成物の効果を調べたが、残りのパラメーターは一定のままであった。すなわち、100mg/mLの濃度のCe-ラミンタンパク質溶液を、0.168mm内径の針を通して1.5mL/hの流量で異なる凝固溶液に注入した。本発明者らは、50%~100%の濃度の様々なアルコール系溶液(例えば、MeOH、EtOH、PrOH、IPA)を繊維の形成に利用することに成功した。
【0249】
10mm/分の速度での引張試験後に得られたすべての繊維の歪み応力曲線は、3~6%の短い弾性領域および長い塑性変形である粘弾性材料および他の中間フィラメントタンパク質系繊維と同様の非線形機械的挙動を示した。試験した繊維のいくつかは、水性溶媒に注入したCe-ラミン繊維よりも高い靱性および歪み値を示した。これらの繊維の平均歪み値は200%に近かった。
【0250】
ラマン分光分析
繊維内のタンパク質の二次構造、例えばαヘリックス対βシートの比および異なる引張段階でのこの比の変化を調べるために、ラマン分光法を行った。αヘリックスとβシートとの間の主要な転移が起こる領域/段階に関する情報は、アルコールおよび凝固浴のどの特性が繊維の機械的性質に影響を及ぼすかを理解するための手がかりとなり得る。この分析では、70%エタノールに注入された繊維を、図7Aに示す様々な段階で試験した。各試験において、波数に対する強度曲線を得た(図8)。各曲線下の面積は、二次構造の相対量を表し、統計的計算によって、新しい曲線を構築することができ、その一方はαヘリックスの総量を表し、他方はβシートの総量を表す。図7Aに示すように、6%の歪みまで(降伏点(約5%)の直後)、αヘリックスの量の減少およびβシートの量の増加が見られることから、αヘリックスからβシートへの転移はほとんどが弾性相で起こる。6%の歪みの後、2つの異なる構造のパーセンテージに大きな変化はない。
【0251】
ラマン分析を、各歪みパーセンテージについて異なる繊維で行い、遷移伝播が、70%エタノール(7A)および20mm CaCl2を含有する水性緩衝液(7B)中で集合した繊維において異なることを実証した。βシート構造に対するαヘリックスの相対量は、両方の条件で0%の歪みおよび破損で同様であった。しかしながら、70%エタノール中で集合した繊維のα-β転移のかなりの部分は、6%の歪みまで生じ、破損するまでほとんど変化しなかった。対照的に、水性緩衝液中で作製された繊維では、βシートに対するαヘリックスの相対量は、20%歪みまで比較的一定のままであった(図7Bを参照されたい)。
【0252】
さらに、本発明者らは、アルコール溶液および塩化カルシウム溶液から得られた繊維を周期的な歪み試験に供した。驚くべきことに、集合条件間の2つの有意差が観察された:
1.70%エタノール中で集合した繊維は、5サイクル試験で顕著なヒステリシスを示したが(図12B)、CaCl2凝固繊維は、ほぼ同一の歪み/応力曲線に反映されるように、ほぼ線形の弾性挙動を示した(図12A)。
2.ラマン分光分析(図12C~D)は、5サイクルの試験が伸長位置で終了すると(図12C)、より多くのαヘリックスが存在することを示す。すなわち、サイクル試験中に二次構造に遷移はなかった。対照的に、70%エタノール中で集合した繊維では、サイクル試験は弛緩位置で終了し(図12D)、より多くのβシート/ランダムコイル構造を示した。したがって、5サイクル試験中、αヘリックスからβシート/ランダムコイルへの非可逆的転移が、アルコール性凝固を介して得られた繊維において生じた。
【0253】
走査型電子顕微鏡(SEM)分析
SEM分析を使用して、本発明者らは、50%および70%エタノールおよびIPA中で集合した乾燥Ce-ラミン繊維の表面形態を調べた。図9A~9Dおよび図10A~10Cは、それぞれ引張荷重を受けなかったか、または受けた繊維の表面を示す。伸長前のすべての繊維は、巨視的繊維の構造単位を構成するナノメートル繊維の大きなクラスターから構成されていた。IPAにおいてのみ、ナノファイバーは、ともに巨視的な繊維を構成するマイクロファイバーに会合する。伸長後、IPA繊維中の微細な繊維組織は消失する。ナノファイバーの直径を測定すると、50%アルコール中では、エタノールおよびIPA中の両方で、繊維の直径が70%よりも小さいことが示された(表6)。直径の差は、エタノール中で平均16nm、IPA中で13nmであった。伸長前に、乾燥Ce-ラミン繊維の表面形態は、巨視的な繊維の構造単位を構成するナノフィラメントの大きなクラスターを含んでいた。50%アルコール中で集合したナノフィラメントの直径は、70%エタノールまたはIPAのいずれよりも約15nmで低かった。これらの違いは、50%アルコール中で形成された繊維の機械的強度が低いことを説明し得る。
【表6】
【表7】
【0254】
フィルム
本発明者らはさらに、本発明の完全長ラミン系タンパク質繊維から構成された透明フィルム(例えば、ヒドロゲルフィルム)を形成することに成功した(データは示さず)。水性凝固およびアルコール性凝固から得られた繊維の両方が、それぞれ70%エタノール中または20mm CaClを含有する水性緩衝液中で透析手順を使用して、フィルム形成のために実施することに成功した。結果生じるフィルムは、所望の機械的強度(例えば、約300%の破壊歪み)を示した。さらに、透明フィルムの形成のために、Ce-ラミン繊維に突然変異したQ159Kが実施されている。フィルムの機械的性質を以下の表7A~Bに要約する。
【0255】
【表8】
【表9】
【0256】
さらに、本発明者らは、強化複合体材料を得るべく、本発明の繊維と追加のポリマーマトリックスとの適合性を試験するために現在様々な実験を行っている。本発明者らは、様々な追加の合成および/または天然および/または生分解性ポリマー(上記に開示されるものなど)を試験して、本発明の繊維の異なる定数(本明細書に開示されるものなど)を有する複合体を製造する。複合体は、鋳造、溶融、押出、浸漬、コーティング、またはポリマー加工の分野で公知の任意の他の方法によって調製することができる。
【0257】
この目的のために、本発明者らは、エポキシ樹脂系複合体の形成に成功し、本発明の繊維と少なくとも合成樹脂(例えば、熱硬化性樹脂)との優れた相溶性を実証した。したがって、追加のポリマーが本発明の繊維と適合性であり、本発明の繊維の様々な含有量を有する複合体の形成を可能にすると仮定される。
【0258】
Ce-ラミン繊維への疎水性コーティング
自然界では、シルクおよび毛髪繊維のタンパク質コアは、疎水性層でコーティングされている。この層は、繊維の機械的性質に直接寄与しないが、それはタンパク質繊維を水和および外部損傷から保護する。繊維は、これらに限定されないが、鉱油、脂肪酸、ステアリン酸イソブチル、獣脂脂肪酸2-エチルヘキシルエステル、ポリオールカルボン酸エステル、グリセロールのヤシ油脂肪酸エステル、アルコキシル化グリセロール、シリコーン、ジメチルポリシロキサン、ポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキシド、およびプロピレンオキシドコポリマーを含むポリマーまたはワックス仕上げなどの潤滑剤または仕上げ剤でコーティングすることができる。本発明者らは、70%エタノール中で集合した繊維を異なる浸漬時間でパラフィン油でコーティングして、繊維力学に対するそれらの効果を確認した。一晩(O.N)浸漬時間では、コーティングされたCe-ラミン繊維ははるかに強く、より高いパーセンテージまで歪み(表8)、したがって非常に高い靱性(約600MJ/m)に達し、さらに、コーティングされていない繊維と比較して、破損時の歪みが約400%、さらにはそれを超えて著しく増加した。
【表10】
【0259】
さらに、本発明者らは、コーティングされた繊維対コーティングされていない繊維の膨潤挙動を試験した。パラフィン油(A)またはコーティングされていない(B)でコーティングし、Ce-ラミン繊維を水に4日間浸漬した。繊維の膨潤はコーティングされていない繊維でのみ観察され、疎水性コーティングの撥水性(または超疎水性)効果が実証された。
【0260】
本発明者らは、コーティングされた繊維を周期的に歪み試験に供した。5サイクル実験は、コーティングされた繊維の線形弾性挙動を実証した。ラマン分光分析は、5サイクル試験が伸長位置で終了する場合、繊維が、より多くのαヘリックスを有する弛緩位置と比較して、より多くのβシート/ランダムコイルおよびより少ないαヘリックスを有することを示す。したがって、5サイクル試験中に、αヘリックスからベータシート/ランダムコイルへの可逆的転移が起こった。
【0261】
実施例3
ヒトラミンA系繊維
細胞核内のラミンの固有の環境は、各々が別個の繊維網目構造を形成するA型およびB型ラミンフィラメントに、核膜、ラミン関連タンパク質、およびクロマチンを有するバイオコンポジット材料を形成させ、これらは明らかにそれらの構造および力学に影響を及ぼす。ここで、本発明者らは、A型ヒトラミン(配列番号9のアミノ酸配列に対応)を発現させ、それらを3つの異なる凝固浴:水中1.70%エタノール、2.トリス緩衝液(20mM Tris-pH-9、20mM CaCl)、3.MES緩衝液(50mM MES-pH-6、10mm CaCl)に湿式紡糸した。細菌発現、タンパク質精製、ドープ溶液調製は、Ce-ラミン手順に記載されているように行った。
【0262】
全体として、ヒトラミンA系繊維は、Ce-ラミン繊維と同じ応力-歪み挙動を有していたが、靱性および強さは低かった(表8A)。
【表11】
【0263】
実施例4
突然変異型Ce-ラミン系繊維
Ce-ラミンのQ159K突然変異は、早老症の原因の1つであるヒトのラミンAのE145K突然変異に類似している。アミノ酸グルタミンは、159位でリジンに置換されている。突然変異体タンパク質溶液を、70%エタノールおよび70%IPAを含有する凝固浴に注入した。突然変異は、降伏応力および破壊応力、破壊歪み、ならびに靱性に有意に影響を及ぼし、ヤング率および繊維径はあまり変化しなかった(図11および表9)。天然繊維の平均靱性は、エタノール中では突然変異繊維の3倍、IPA中では2倍超であった。突然変異体ラミンタンパク質系繊維は靱性の低下によって特徴付けられるが、繊維は工業用途、特に過度の機械的強度を必要としない用途に適している。
【0264】
さらに、様々な突然変異体の物理的特性(例えば、機械的強度および/またはヤング率)を調節して、調整された物理的特性を有する繊維を得ることができると仮定される。そのような繊維は、構成要素の類似の物理的特性(例えば、ヤング率)が必要とされる様々な複合体材料に有用であり得る。
【表12】
【0265】
本発明をその特定の実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替形態、修正形態および変形形態が当業者には明らかであることは自明である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲に含まれるすべてのそのような代替形態、修正形態および変形形態を包含することが意図されている。
【0266】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許および特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許または特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、本出願における任意の参考文献の引用または特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用されている限り、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。

図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図11
図12-1】
図12-2】
【配列表】
2024535944000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-05-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024535944000001.xml
【国際調査報告】