(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】後房有水晶体眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61F2/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570328
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2022078582
(87)【国際公開番号】W WO2023021225
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512003777
【氏名又は名称】フィシオル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レドゾヴィク、スアド
(72)【発明者】
【氏名】ブッカ ピュイ、レンツォ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA25
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC01
4C097CC05
4C097MM10
4C097SA07
4C097SA08
(57)【要約】
本発明は、中央光学部分2と、毛様体小帯上で眼内レンズ1を支持するために配置された遠位支持要素4を有する周辺触覚部分3と、支持要素4に取り付けられた細長い可撓性フットプレート5であって、眼内レンズ1を毛様体98内に安定させるために配置された遠位側縁53をそれぞれが有する、細長い可撓性フットプレート5と、支持要素4の表面上の操作ポケット6であって、それぞれが細長い可撓性フットプレート5の1つに関連付けられている、操作ポケット6とを備える後房有水晶体眼内レンズ1に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後房有水晶体眼内レンズ(IOL)(1)であって、
前面(11)及び後面(12)と、
レンズを含み、前記前面(11)から前記後面(12)に向けられた光軸(Z)に対して半径方向に延在する、中央光学部分(2)と、
周辺触覚部分(3)であって、
前記中央光学部分(2)に円周方向に取り付けられ、
前記中央光学部分(2)に対して半径方向外向き及び後方に延在し、
前記IOL(1)が眼(9)内の埋め込み位置にあるとき、毛様体小帯(97)上で前記IOL(1)を支持するように配置された遠位支持要素(4)を備える、周辺触覚部分(3)と、
前記周辺触覚部分(3)を越えて半径方向に延在し、前記周辺触覚部分(3)に取り付けられた第1の端部(51)を含む、少なくとも1つの細長い可撓性フットプレート(5)と
を備え、
前記細長い可撓性フットプレート(5)は、
前記支持要素(4)の1つに取り付けられた第2の端部(52)と、
遠位側縁(53)であって、
前記中央光学部分(2)に対して円周方向及び半径方向外向きに延在し、
前記IOL(1)が前記眼(9)内の前記埋め込み位置にあるときに、前記IOL(1)を毛様体(98)内に安定させるように構成された、遠位側縁(53)と
を含み、
前記支持要素(4)の前記1つが、前記前面(11)上の操作ポケット(6)であって、前記細長い可撓性フットプレート(5)と少なくとも部分的に半径方向に整列し、
操作工具(7)の先端部(71)を前記ポケット(6)に鍵で係合させることにより、前記先端部(71)と協働する寸法であり、前記細長い可撓性フットプレート(5)の移動が、前記工具(7)の移動によって引き起こされ得るようにする、操作ポケット(6)を含むことを特徴とする、
後房有水晶体眼内レンズ(IOL)。
【請求項2】
前記支持要素(4)の前記1つから前記遠位側縁(53)の第1の部分(54)まで、滑らかな側方面取り部(31)が、滑らか且つ連続的に延在している、請求項1に記載のIOL(1)。
【請求項3】
前記面取り部(31)全体が凹状の滑らかな外面を有する、請求項2に記載のIOL(1)。
【請求項4】
前記細長い可撓性フットプレート(5)が、前記前面(11)から前記後面(12)まで延在する空洞(32)であって、前記細長い可撓性フットプレート(5)の断面(C)の最大直径(87)よりも大きい最大半径長さ(86)を有する、空洞(32)に隣接している、請求項1から3までのいずれか一項に記載のIOL(1)。
【請求項5】
前記支持要素(4)の各々が、20~80°の間に含まれる中心角(β)を有する円弧に沿って細長く延在している、請求項1から4までのいずれか一項に記載のIOL(1)。
【請求項6】
前記第1の端部(51)が前記支持要素(4)の前記1つに取り付けられている、請求項1から5までのいずれか一項に記載のIOL(1)。
【請求項7】
前記ポケット(6)が、前記第1の端部(51)と前記第2の端部(52)との間で実質的に半径方向に整列されている、請求項6に記載のIOL(1)。
【請求項8】
前記ポケット(6)が、前記IOL(1)の前面(11)上に、前記細長い可撓性フットプレート(5)と平行に延在する円周トレンチ(63)であって、前記トレンチ(63)に沿って前記工具(7)の前記先端部(71)を受け入れる寸法になっている、円周トレンチ(63)、を画定する、請求項6又は7に記載のIOL(1)。
【請求項9】
前記ポケット(6)は、前記前面(11)の一部として底面(61)と、側縁(62)とを有し、前記側縁(62)は、光軸(Z)に平行に測定された高さ(85)であり、前記光軸(Z)に平行に測定された前記支持要素(4)の前記1つの厚さ(84A)の25~75%の間に含まれる、請求項1から8までのいずれか一項に記載のIOL(1)。
【請求項10】
前記光軸(Z)に対して垂直に測定されたIOL(1)の外径で構成される第1の直径(81)が、12.5~14.0mmの間に含まれ、
前記光軸(Z)に対して垂直に測定された周辺触覚部分(3)の外径で構成される第2の直径(82)が9.5~11.5mmの間に含まれる、
請求項1から9までのいずれか一項に記載のIOL(1)。
【請求項11】
前記遠位側縁(53)は、前記第2の直径(82)から前記第1の直径(81)まで延在しており、前記第1の直径(81)の円弧に沿って延在する第2の部分(55)であって、中心角(γ)が5~25°の間に含まれる、第2の部分(55)を有する、請求項10に記載のIOL(1)。
【請求項12】
前記IOL(1)は、2つの正反対の支持要素(4)と、2対の正反対の向きの細長い可撓性フットプレート(5)とを備え、前記IOL(1)は、前記光軸(Z)の周りで180°回転しても形状不変である、請求項1から11までのいずれか一項に記載のIOL(1)。
【請求項13】
2つの異なる対から最も近い細長い可撓性フットプレート(5)が、前記第2の直径(82)の5%~25%の間の距離だけ離れており、前記光軸(Z)に垂直な軸(Y)に向かって収束するように遠位に向けられている、請求項10に従属する請求項12に記載のIOL(1)。
【請求項14】
前記光軸(Z)に平行に測定された前記周辺触覚部分(3)の厚さ(84A、84B)は、前記中央光学部分(2)から前記ポケット(6)まで半径方向に減少し、やはり前記光軸(Z)に平行に測定された前記細長い可撓性フットプレート(5)の厚さ(83A)よりも平均で少なくとも50%大きい、請求項1から13までのいずれか一項に記載のIOL(1)。
【請求項15】
前記細長い可撓性フットプレート(5)は、法線ベクトルが前記光軸(Z)に対して-15°~15°の角度(α)を形成する平面(P)に沿って延在している、請求項1から14までのいずれか一項に記載のIOL(1)。
【請求項16】
前記中央光学部分(2)及び前記周辺触覚部分(3)は、凹状の滑らかな後面を有するドーム(K)を形成する、請求項1から15までのいずれか一項に記載のIOL(1)。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか一項に記載の後房有水晶体眼内レンズ(1)と、
操作工具(7)とを備えるセットであって、前記操作工具(7)が、
ハンドル(70)と、
前記ハンドル(70)に固定された第1の端部を含む直線ロッド(73)と、
前記直線ロッド(73)の第2の端部から滑らかに延在する円形に湾曲したロッド(72)と、
前記円形に湾曲したロッド(72)に固定された先端部(71)であって、
前記円形に湾曲したロッド(72)から割線方向に延在し、
前記先端部(71)を前記ポケット(6)に鍵で係合させることによって、前記ポケット(6)と協働するように寸法決めされ、
前記細長い可撓性フットプレート(5)の移動が、前記工具(7)の移動によって引き起こされ得るようにする、先端部(71)と
を備える、セット。
【請求項18】
前記先端部(71)が、前記先端部(71)を前記ポケット(6)に引っ掛けるための末端の鋭い縁(75)を備えた円筒形状の自由な末端部分(74)を有する、請求項17に記載のセット。
【請求項19】
前記先端部(71)が、前記円形に湾曲したロッド(72)に固定され、前記自由な末端部分(74)の第2の一定の円形部分(C2)よりも少なくとも25%大きい第1の楕円形部分(C1)を有する膨らんだ部分(76)を備え、
前記自由な末端部分(74)は、前記膨らんだ部分(76)に直接且つ鋭く固定されているか、又は前記膨らんだ部分(76)に中間の機械的接続(77)によって滑らかに固定されている、
請求項18に記載のセット。
【請求項20】
前記円形に湾曲したロッド(72)が、異なる曲率半径を有する1つ又は複数の円形に湾曲した部分を含む、請求項17から19までのいずれか一項に記載のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内レンズ(IOL:intraocular lens)に関する。より詳細には、後房有水晶体IOLに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に言えば、有水晶体IOLは、視力障害を矯正するために眼内に留置することを目的としたIOLである。これらのIOLは、通常、天然の水晶体を補完するものとして、まだ若い患者に埋め込まれる。
【0003】
後房有水晶体IOLは、虹彩の後面と水晶体の前面との間の眼の領域に埋め込まれ、眼の毛様体の周囲で支持されることを意図した有水晶体IOLである。
【0004】
このようなIOLの埋め込みの限界は、パラメータ、特に、そのサイズが通常、患者ごとに数ミリメートル異なる後房の解剖学的構造に基づいて、一方の眼と他方の眼とで異なる位置に配置される可能性が高いという事実にある。特に、サイズが適合しない可能性のある後房有水晶体IOLの埋め込みは、
- 例えば、有水晶体IOLが、IOL埋め込みのために利用可能な後房の解剖学的空間のサイズに対して小さすぎる場合:眼の白内障、若しくは有水晶体IOLの矯正力の損失を引き起こす、又は視力の精度に影響を与える、水晶体とIOLの接触、
- 或いは、例えば、有水晶体IOLがこの解剖学的空間のサイズに対して大きすぎる場合:瞳孔ブロック、緑内障、炎症、虹彩脱色素、又は瞳孔ブロック後の眼の前房と後房との間のくぼみ、
のような、多かれ少なかれ、患者にとって深刻な医学的合併症を引き起こす危険性がある。
【0005】
一般的な眼の解剖学に基づいた様々なサイズの有水晶体IOLの製造及び使用では、この欠陥を完全に克服することはできない。実際、そのような有水晶体IOLが眼に埋め込まれた後の位置の安定性に関する欠点は、同じ医学的合併症につながる可能性がある。
【0006】
この問題を解決する試みとして、国際公開第2020/035534(A1)号公報は、毛様体小帯上に位置するように配置された支持要素と、周辺触覚部分の近位部分に取り付けられた近位端及びIOLを眼の毛様体溝に引っ掛けるための自由な遠位端とを有する細長い触覚とを含む周辺触覚部分で作られた二重触覚構造を含む後房有水晶体IOLを開示している。これらの触覚は、前記解剖学的空間のサイズの変動を補償することを可能にし、二重触覚構造が眼内のIOL位置を全体的に安定させることを可能にする。
【0007】
それにもかかわらず、このIOLの細長い触覚は、眼への埋め込みプロセス中に見ることも操作することも困難である。したがって、埋め込みが容易であるが、埋め込み位置で十分に安定している後房有水晶体IOLを提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2020/035534(A1)号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、幅広いクラスの眼の解剖学的構造に適合し、眼に埋め込みやすい後房有水晶体IOLを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、本発明は、後房有水晶体IOLであって、
前面及び後面と、
レンズを含む中央光学部分であって、
前面から後面に向けられた光軸に対して半径方向に延在する、中央光学部分と、
周辺触覚部分であって、
中央光学部分に円周方向に取り付けられており、
中央光学部分に対して半径方向外向き且つ後方に延在し、IOLが眼内の埋め込み位置にあるときに毛様体小帯上でIOLを支持するように配置された遠位支持要素を備える、周辺触覚部分と、
少なくとも1つの細長い可撓性フットプレートであって、
周辺触覚部分を越えて半径方向に延在し、
周辺触覚部分に取り付けられた第1の端部を含む、少なくとも1つの細長い可撓性フットプレートと
を備え、
細長い可撓性フットプレートが、
支持要素の1つに取り付けられた第2の端部と、
中央光学部分に対して円周方向及び半径方向外向きに延在し、IOLが眼内の埋め込み位置にあるときにIOLを毛様体に安定化するように配置された遠位側縁と
を含む、
後房有水晶体IOLを提供する。
支持要素の前記1つは、好ましくは、IOL前面の操作ポケットであって、細長い可撓性フットプレートと少なくとも部分的に半径方向に整列し、ポケットへの先端部の(鍵付きの)係合によって操作工具の先端部と協働するように寸法決めされ、細長い可撓性フットプレートの動きが工具の動きによって引き起こされ得るようにする、操作ポケット、を含む。
【0011】
このIOLにより、埋め込み位置でのIOLの安定性を改善する必要性と、簡単に埋め込むこととの間の適切な妥協点に到達することが可能になる。国際公開第2020/035534(A1)号公報のIOLのように、このIOLは、2つの別個の補完的な触覚構造、即ち、第1に、遠位支持要素を含む周辺触覚部分と、第2に、少なくとも1つの細長い可撓性フットプレート(以下「フットプレート」と言うが、IOLは好ましくはそのような細長い可撓性フットプレートを2つ又は4つ含む)とを備えた中央光学部分を備えている。周辺触覚部分は、中央光学部分と共に「ドーム・アセンブリ」を形成する。ドーム・アセンブリの足は、毛様体小帯でIOLを支持するために遠位に配置された支持要素である。フットプレートがこのドーム・アセンブリを越えて半径方向に延在するため、IOLを毛様体に安定させることもできる。フットプレートの形状と可撓性は、埋め込み位置でのこのIOLの安定性に完全に貢献する。IOLの埋め込みを容易にするために、フットプレートは、フットプレートの端部で可撓性の触覚部分に完全に取り付けられている。これは、国際公開第2020/035534(A1)号公報のように長く自由に終了するフットプレートと比較して、フットプレートの適応性をわずかに低下させるが、フットプレートのこの新しい形状により、埋め込みプロセス中の操作がはるかに簡単になる。この特徴は、フットプレートの少なくとも一方の端部が取り付けられる支持要素上の操作ポケットの好ましい存在によってさらに強化される。特に、フットプレートの形状と可撓性により、IOLを幅広いクラスの眼の解剖学的構造に適応させることができるが、これによって発生する可能性のある操作の難しさは、フットプレートの端部を周辺触覚部分に取り付けること、及びポケットの有利な存在と位置によって完全に補償される。
【0012】
上記の技術的効果を詳細に説明する。特に、以下に説明するように、IOLは、その埋め込み位置において、軸方向(すなわち、光軸に平行)、半径方向(すなわち、光軸に対して垂直な方向)、及び円周方向(すなわち、光軸の周りの回転)において特に安定している。
【0013】
周辺触覚部分により、IOLを光軸に平行に安定させることができる。支持要素は、周辺触覚部分の遠位端に配置され、毛様体小帯でIOLドーム・アセンブリを支持するように設計されている。ドーム・アセンブリは、少なくとも前方でレンズを取り囲むように、眼の天然の水晶体の前方上に位置するように構成されている。結果として、水晶体前面とIOL後面との間の光軸に沿って測定された「ボールト」と呼ばれる距離が定義され、安定化される。水晶体とIOLとの間の接触又は過度の近接を避けるために必要な安全距離に同化することができる。IOLと眼の虹彩との間の安全距離も同様に、IOLの前面と、瞳孔を占有する仮想虹彩平面として考えられる(上昇開口部において)虹彩の後面との間の距離として定義され、安定化される。
【0014】
ボールトは、好ましくは、半径方向及び/又は軸方向の圧縮の有無にかかわらず、100~1000μmの間、より好ましくは300~750μmの間で構成及び/又は調整可能である。これにより、IOLと水晶体及び虹彩の両方との間に十分なスペースが得られ、眼の後房の潜在的な解剖学的サイズの欠陥、又はIOLの配置上の欠陥の可能性が補償され、患者の合併症のリスクが大幅に軽減される。本発明の一実施例によれば、ボールトは、それが埋め込まれることが意図されている天然の水晶体の輪郭に従うように、IOLの後面を彫刻することによって滴定される。
【0015】
ドーム・アセンブリの構造は、任意の水晶体の前面よりも湾曲した後面の選択、及び周辺触覚部分の外径(光軸に対して垂直に測定)の選択に基づいて、幅広い眼の後房解剖学的構造に対応する幅広い眼の解剖学的構造に適合する。より具体的には、この直径は、好ましくは、9.50~11.50mmの間に含まれ、例えば、約9.50、9.60、9.70、9.80、9.90、10.00、10.10、10.20、10.30、10.40、10.50、10.60、10.70、10.80、10.90、11.00又は11.10mmである。以下で説明するように、9.50、10.40、及び11.10mmの3つの直径値は、任意の後房解剖学的構造をカバーするのに有利に十分である。ドーム・アセンブリの後面は、滑らかで(後方に)凹状であることが好ましい。ドーム・アセンブリの後面は、より好ましくは8~11mmの間に含まれる曲率半径を有し、再びより好ましくは9~10mmの間に含まれる曲率半径を有する。曲率半径は、好ましくは水晶体の前面の最小平均曲率半径として選択され、典型的には9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9又は10.0mmである。この曲率半径は、ドーム・アセンブリの後面が滑らかで、(数学的に)規則的であることを考えると、明確に定義されることにも注意されたい。特に、中央光学部分と周辺触覚部分との間の接合部の後面は、不規則性又は角点を含まないことが好ましい。
【0016】
次に、ドーム・アセンブリは、IOLが眼内の埋め込み位置にあるとき(つまり、IOLが眼内で通常使用されているとき)に水晶体の上に置かれ、毛様体小帯上に置かれ、IOLを光軸と平行に安定させる。フットプレートは、その一部が、毛様体に配置するために、眼の後房内のドーム・アセンブリを実質的に越えて半径方向に延在する。フットプレートの可撓性と形状により、術前に正確に見積もることができないものを含む、眼内寸法の範囲にわたって、IOLに利用可能な後房解剖学的空間の内部サイズの変化(「毛様体間」測定として知られ、好ましくは、フットプレートの眼の毛様体への弾性浸透係数を考慮した毛様体間距離である)にIOLを適応させることができる。ドーム・アセンブリの外径はIOL埋め込み位置で実質的に一定であるが、IOL全体の外径はフットプレートの可撓性により変化し、眼の後房の解剖学的構造に適応する。有利なことに、本発明による単一のIOLモデルの使用は、広範囲の患者の眼の解剖学的構造に対して十分である。
【0017】
フットプレートはまた、光軸に垂直な平面内で回転するIOLの安定化を可能にするため、この解剖学的空間の変化(「楕円形」の形状のため、ある方向が別の方向よりも大きくなることが認められている)を完全に補償することができる。このフットプレートは、その遠位側縁が毛様体に横たわり、及び/又は引っ掛かり、及び/又はそれ自体を安定させるように調整され、IOLの円周アンカーの役割を果たすように、円周方向及び半径方向に延在する。
【0018】
この特徴は、IOLが、乱視を矯正するための円筒を有する光学素子を含むトーリック・インプラントである実施例において重要である。この場合、「回転安定性」と呼ばれる、垂直面でのIOLレンズの角度位置の安定性は、期待されるIOL光学結果を保証するために重要である。この場合、フットプレートにより、IOLレンズを中央の光学領域に維持し、IOLの光学的結果に影響を与える可能性がある眼の光軸に対するIOLの偏心の可能性を回避できる。
【0019】
フットプレートの第1の端部と第2の端部は周辺触覚部分に取り付けられており、IOL埋め込みプロセス中のフットプレートの操作性を向上させる。さらに、少なくとも第1の端部は、より具体的には、支持要素の1つ、言い換えると、周辺触覚部分の最も遠位に取り付けられているため、フットプレートの長さは毛様体に到達するために短縮される。好都合なことに、フットプレートの長さがこのように短縮されることは、IOLの埋め込みプロセス中にフットプレートがより操作しやすくなることを意味し、IOLの埋め込みがより容易になる。これらの際立った革新的な機能により、前述のIOL安定化の目的にとって重要なフットプレートの細長い形状と可撓性を補うことができる。実際、フットプレートは長くて薄くて透明であり、眼の虹彩の下で見たり操作したりするのが難しい。長すぎる場合及び/又は自由端がある場合は、簡単に反転する可能性がある。有利なことに、本発明のフットプレートはこれらの問題を克服する。
【0020】
第1及び第2の端部は、通常、IOL周辺触覚部分に取り付けられたフットプレートのみの部品である。より一般的には、フットプレートは周辺触覚部分に、(全体の)長さにわたっては取り付けられていない。フットプレートの第1の端部と第2の端部が周辺触覚部分に取り付けられているため、フットプレートは、部分的なループに沿って全体的に延在し、第2の端部から光軸に対して半径方向外側に、次に光軸に対して半径方向内側に第1の端部まで延在し、IOL外径でループの遠位端に到達する。遠位側縁は、毛様体にIOLを安定させるために遠位に配置されたこの部分的なループの一部の形をしている。遠位側縁は、毛様体との潜在的に広い接触面を有利に提案する。
【0021】
眼の自然な水晶体と虹彩との間の埋め込み位置は難しいため、埋め込みが容易なIOLを持つことは非常に重要である。IOLの配置に必要な操作が少ないため、患者に悪影響を与える可能性のあるエラーを回避できる。埋め込みプロセス中のフットプレートの操作性をさらに改善するために、フットプレートの第2の端部が取り付けられる支持要素にも、上述の操作ポケットが設けられることが好ましい。それにもかかわらず、本発明はポケットの存在に必ずしも限定されるわけではないが、上述のフットプレートの特徴により、本発明によるIOLを先行技術から有利に区別することがすでに可能になっているので、ポケットの存在が好ましい。
【0022】
このポケットは、フットプレートの近くに配置され、特に少なくとも部分的にフットプレートと半径方向に位置合わせされる。フットプレートの少なくとも第2の端部が同じ支持要素に取り付けられているため、工具の先端部をポケット内で適切な方法で動かすことにより、フットプレートの位置を変更することができる。フットプレートを直接操作する必要がないため、操作エラーのリスクが大幅に軽減される。実際、フットプレートは薄くて透明であるため、見逃したり、IOLの後面を通過したり、敏感な眼内組織、例えば水晶体に触れたりするのが簡単である。IOL前面のレベルでそのようなポケット内の先端部の動きを制限することによって、そのような取り扱いエラーは起こり得ない。
【0023】
このポケットは、不透明な眼の虹彩の下でIOLを操作する必要がある場合にも有利である。実際、先端部をポケットに鍵で固定することにより、工具の先端部を前面にガイドすることができる。そのため、外科医がフットプレートを正しく配置するために、虹彩の下のフットプレートを見る必要はない(これは一般的に非常に困難である)。外科医は、先端部がポケットに係合しているときに、フットプレートを虹彩の下に配置するために、フットプレートを見る必要なしに、工具を使用して適切な(既知の)動きを行うだけで十分であるという利点がある。好ましくは、ポケットは、これらの動きに適合し、埋め込みプロセス中に外科医をガイドするために特に寸法決めされている。
【0024】
本明細書の枠組みにおいて、眼の「光軸」は、一方の側から他方の側に眼を横断するベクトルに優先的に含まれ、角膜、虹彩、及び水晶体を連続して含む「前眼部」から、網膜を含む「後眼部」に向けられる。眼の埋め込み位置にある本発明による有水晶体IOLの場合、眼の光軸は、IOL前面からIOL後面に向けられ、好ましくは、IOLに関して本質的に定義される光軸に対応する。特に、「光軸」という用語は、眼及び/又はIOLに対する基準軸として本明細書で使用されることが好ましい。
【0025】
本明細書の枠組みにおいて、眼又はIOL部分の「前」(若しくは「後」)側及び/又は表面、又は光軸によって定義されたベクトルに関して前記部分の上流(若しくは下流)に位置する側及び/又は表面にあることが好ましい。この定義は、「前方」(又は「後方」)という用語に自然に拡張される。例として、眼において、虹彩は水晶体に対して前方に位置し、虹彩の後面は、水晶体に最も近い虹彩の一部である。
【0026】
同様に、そのような側面及び/又は表面は、光軸によって定義される(つまり、光線の伝搬に従う)ベクトルと同じ方向及び同じ意味で光学面を見ることによって凹面(又は凸面)として見える場合、「前方凹面」(又は「前方凸面」)と呼ばれる。光軸によって定義されるベクトルと同じ方向及び反対の意味で光学面を見ることによって、凹面(又は凸面)として見える場合、そのような側面及び/又は表面は「後方凹面」(又は「後方凸面」)と呼ばれる。本明細書では、「凹状」という用語は、一般に、その使用の文脈から、これがその意味であることが当業者に明らかな場合、「後方凹状」に対応するものとして使用される。
【0027】
眼及び/若しくはIOLの部分に対する前方性、後方性、又は、さらには光軸の前述の概念は、当業者に周知である。特に、本発明によるIOLは、その前面が眼の虹彩に少なくとも部分的に面し、後面が眼の水晶体に少なくとも部分的に面するように、眼の後房に配置されるように構成される。
【0028】
本明細書の枠組みでは、「軸方向」及び「軸方向に」という用語は、光軸に平行な方向を指す。好ましくは、IOLの一部が、
光軸に垂直なベクトルに従って伸びる場合は「半径方向に」、
ベクトルが光軸と共通の点からこの共通の点を中心とする円の点に向けられている場合は「半径方向外側に」、
ベクトルが反対の方向を向いている場合は「半径方向内側に」、
延在する、と言われる。
好ましくは、IOLの一部が、好ましくは光軸に垂直な、平面と光軸との交点を中心とする平面上の円弧に従って延在する場合、IOLの一部が「円周方向に」延在すると言われる。半径方向及び円周方向の拡張に関するこれらの概念は、光軸に垂直な各平面における既知の極座標系を指す。
【0029】
形容詞「遠位」は、基準臓器又は体幹から最も離れた体の一部を指し、形容詞「近位」は、基準器官又は体幹に最も近い体の一部の部分を指す、ということは当業者によく知られている。本明細書の枠組みにおいて、これらの定義は、参照光軸に関する距離に関連して、眼及び/又はIOLの部分にも適用される。例として、好ましくは、本発明によるIOLの近位部分は、中央光学部分及び/又は中央部分の周りのIOLの一部を含んでいてもよく、本発明によるIOLの遠位部分は、フットプレート、又は少なくともその遠位側縁を含んでいてもよい。
【0030】
特に、フットプレートの「遠位側縁」に関する「遠位」という用語は、優先的に、光軸に垂直な半径に沿って光軸からそれぞれが最も遠いフットプレートの点のセットを指す。
【0031】
本明細書の枠組みにおいて、要素を導入するための不定冠詞「a」、「an」又は定冠詞「the」の使用は、複数のこれらの要素の存在を排除するものではない。同様に、「第1」、「第2」、「第3」、及び「第4」という用語は、要素を区別するためにのみ使用され、これらの要素の順序を意味するものではない。
【0032】
本明細書の枠組みにおいて、動詞「備える(comprise)」、「含む(include)」、又はその他の変形の使用、及びそれらの活用形は、これらの言及されたもの以外の要素の存在を決して排除することはできない。
【0033】
IOL、具体的には周辺触覚部分及びフットプレートは、好ましくは、生体適合性、可撓性、及び高度に抵抗力のある材料で作られる。この材料は親水性材料であることが好ましい。
【0034】
この材料の全体的な厚さは、IOLの部分に多かれ少なかれ可撓性を提供するために半径方向に変化する。本明細書の枠組みでは、「厚さ」は光軸に平行に測定される。フットプレートよりも周辺触覚部分の方が大きいことが好ましい。
【0035】
実際、これらの2つの触覚構造は、一方で、安定性と眼内構造のコンプライアンスの必要性と、他方で、多くは複雑で、埋め込み中又は埋め込み前には見えない、繊細な眼内構造への過剰な力の行使と外傷を回避する剛性の必要性との間の妥協点を構成する。これらは、眼の内部解剖学的構造によってその縁に加えられるIOLの圧縮から、上記のようなボールトが大きな影響を受けないように構造化されている。特に、ドーム・アセンブリは、フットプレートよりも平均して材料の厚みが大きいこと、及び/又は支持要素のフレア形状及び/又は幅広形状及び/又は厚い形状によって引き起こされる「剛性」構造を有する。ドーム・アセンブリの剛性と幾何学的特徴は、幅広い眼の解剖学的構造に適合している。対照的に、フットプレートの「可撓」特性は、好ましくは、特にドーム・アセンブリの厚さと比較して、その細長い形状及びその低い平均厚さと組み合わされたこの材料の性質によって引き起こされる。
【0036】
より具体的には、本発明のIOLの好ましい実施例によれば、周辺触覚部分の厚さは、中央光学部分からポケットまで半径方向に減少する。周辺触覚部分の厚さは、好ましくはフットプレートの厚さよりも平均して少なくとも50%、さらに好ましくは2倍大きい。この平均化は、光軸に垂直な平面上の厚さの通常の離散又は積分平均化と単純にみなすことができる。
【0037】
例として、周辺触覚部分は、中央光学部分との境界で、0.70~0.50mmの間、好ましくは約0.60mm、ポケットの近位境界のレベルで(但し、ポケットの内側ではない)0.25~0.15mmの間、好ましくは約0.18mm、半径方向に減少する。
【0038】
フットプレートは、その一部として、その延長全体に沿って、例えば約0.10~0.20mmの間、好ましくは約0.15mmの、好ましくは一定の厚さを有し、上記で説明したように、その優れた可撓性に貢献している。
【0039】
好ましくは、周辺触覚部分の厚さは、後面が水晶体の(前)曲率を模倣するように、IOLの前面及び/又は後面の曲率を選択的に調整することによって、IOLが水晶体の前面から、決定された距離に存在することを可能にするように特に目標とされる。
【0040】
IOLの前面及び後面の曲率半径もまた、目標屈折力に関して最適化され、中央光学部分の中央厚さが全視度範囲にわたって実質的に一定に保たれるようにされる。IOLの前面及び後面の曲率半径は、好ましくは、0.20~0.40mmの間に含まれる。例えば、レンズ屈折力が-5~-20Dの間に含まれる場合は約0.20mm、レンズ屈折力が-0.5~-5Dの場合は約0.40~0.20mmである。中央光学面は、実質的に前方に凸状、及び/又は実質的に平面、及び/又は光軸に対して垂直であることが好ましい。これにより、圧縮を必要とせずにボールトを有利に送達できるため、IOLを前方に曲げることができる。
【0041】
「フットプレート」という用語は、一般に、本明細書では、少なくとも細長い可撓性フットプレートを指す。但し、IOLは、追加のフットプレートを含むことが好ましい。好ましくは、「フットプレート」について本明細書で提供される特徴付けは、他のフットプレートにも適用される。
【0042】
本発明によるIOLは、回転時だけでなく、軸方向及び/又は半径方向の圧縮下でIOLの良好な安定性を確保するために、好ましくは、少なくとも部分的に対称的に配置された、好ましくは、2つ又は4つの遠位支持要素のいずれかと、2つ又は4つの細長い可撓性フットプレートのいずれかとを備えている。但し、これらの数の支持要素及び細長い可撓性フットプレートは、本発明の範囲を限定するものではない。例えば、IOLは、単一の細長い可撓性フットプレートを単独で、又は当業者に知られている任意の他の触覚構造、例えば国際公開第2020/035534(A1)号公報に開示されている自由な遠位端を備えた細長い触覚と組み合わせて備えることができる。対称的に配置された4つの細長い可撓性フットプレート(例えば、長方形の角)を使用することが好ましい。なぜなら、これは任意の可能な傾斜効果を緩和するからである。
【0043】
IOLの細長い可撓性フットプレートの各々は、好ましくは、特許請求され上に記載された特定の操作ポケットに関連付けられ、その結果、ポケットの数は、細長い可撓性フットプレートの数に好ましくは対応する。但し、1つのポケットを、2つ以上の細長い可撓性フットプレートを移動するために使用できる。このようなポケットは、例えば2つ以上の細長い可撓性フットプレートが必ずしも同じ支持要素に取り付けられる必要がないように、周辺触覚部分の近位部分を介して、1つ又は複数の支持要素に延在することができる。支持要素はまた、いくつかのポケットを備えていてもよく、それぞれが異なる細長い可撓性フットプレートの端部に近接している。フットプレートの第1の端部は、その一部として、第2の端部と同じ支持要素、別の支持要素、並びに周辺触覚部分の近位部分上、例えば隣接する2つの支持要素の間に、取り付けることができる。より一般的には、支持要素、細長い可撓性フットプレート、並びに、操作ポケットの数及び/又は配置に関して、IOLの様々な構成を本発明の枠内で考えることができることは、当業者には理解されるであろう。それらの好ましいいくつかは、以後において紹介される。
【0044】
フットプレートの「細長い」特徴は、前述のようにその可撓性に寄与する薄い形状を指す。特に、フットプレートは好ましくは3つの寸法を有し、その中で主な伸展軌道に沿った長さ、厚さ、及び他の2つの寸法に対して直角に測定された幅である。この「細長い」特徴は、フットプレートの(平均)厚さ及び(平均)幅よりも大きい長さ、即ち、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍、より好ましくは5倍を超える長さと解釈することができる。これにより、IOLの軸方向及び/又は半径方向の圧縮下でフットプレートが変形する優れた能力が提供される。大量の遠位フットプレートが減少した、標準的に商品化されている後房有水晶体IOLと比較して、本IOLフットプレートは、より高い可撓性と安定性を可能にし、さらに50%より広いと推定される眼の解剖学的構造のクラスへの適応性を可能にする(以下に紹介する
図9を考慮してコメントされるように)。適応性の向上は、国際公開第2020/035534(A1)号公報に開示されているIOLの適応性よりもわずかに低いものの、上記のように大きな埋め込みの困難なしに有利に得られる。特に、本発明によるIOLは、このように改善された適応性及び安定性を有する有水晶体IOLを得ることと、埋め込みが容易な有水晶体IOLを得ることとの間の非常に良好な妥協を構成する。
【0045】
フットプレートの2つの端部が(好ましくは、それのみ)周囲触覚部分に取り付けられるので、フットプレートは、好ましくは、前面から後面まで延在する空洞に隣接する。この空洞は、通常、開放された空洞である。空洞は、一般に、フットプレート及び周囲触覚部分によって、好ましくはフットプレート及び支持要素のうちの前記1つによって完全に囲まれている。
【0046】
「空洞」という用語は、本明細書では、IOLを構成する材料のない空間に相当するものとして使用される。この用語は、空洞が、好ましくは前記材料に設けられた穴ではなく、単にフットプレートの幾何学的特徴から生じる特徴であるため、「穴」よりも便利である。但し、フットプレートを画定するために前記材料に大きな穴を設けることによるIOL製造方法は、本発明の範囲から除外することはできない。
【0047】
上述の空洞は、好ましくは、フットプレートの断面の最大直径よりも大きい、より好ましくは少なくとも2倍大きい最大半径長さを有する(主な伸展軌道に沿って考慮される)。換言すれば、空洞の半径長さは、フットプレートの幅及び厚さよりも大きく、その結果、フットプレートの薄くて細長い形状は、眼の毛様体に動的且つ柔軟に到達するように適合される。特に、可撓性の触覚は、(強い)半径方向の圧縮力がIOLに発生した場合、触覚が変形して、空洞が部分的にそれ自体でつぶれるようになっている。換言すれば、この場合、前記最大半径長さは、好ましくは、2、3、又はそれ以上で割られる。
【0048】
フットプレートは、任意選択で、例えばその端部に、軸方向及び/又は半径方向の圧力がIOLに加えられたときに、フットプレートの曲率及び/又は向きを促進及び/又は方向付けるように配置された材料の折り目及び/又は横方向のくぼみを含んでもよい。特に、そのような材料の折り目及び/又は横方向のくぼみは、フットプレートから中央光学部分への過剰な力の伝達を防止するように配置されたフェイルセーフ機構の役割を果たすことができる。これにより、フットプレートによって加えられるこのような力を制御して、毛様体に適応した固定を提供し、繊細な眼内組織の浸食を防ぐことができる。
【0049】
フットプレートの遠位側縁は、眼の毛様体に滑らかに引っ掛かるように配置された滑らかなリップルを任意選択的に含む。有利なことに、リップルは、IOLが眼内の埋め込み位置にあるとき、毛様体へのIOLの安定化を容易にする。リップルは、毛様体に容易に横たわり、安定させるために、遠位側縁にピンの役割を与える。これらのリップルは、それらの輪郭が毛様体又は眼の解剖学的構造の他の部分を刺激しないように研磨されることが好ましい。
【0050】
本発明の好ましい実施例によれば、IOLは、フットプレートの第2の端部が取り付けられた前記支持要素から遠位側縁の第1の部分まで、滑らか且つ連続的に延在する滑らかな側方面取り部を有する。この面取り部は、支持要素上及び遠位側縁の第1の部分上に延在し、フットプレート端部の1つ、例えば第2の端部を介して周辺触覚部分とフットプレートとの間の連続的且つ滑らかな横方向移行を提供する。この移行は、好ましくは操作ポケットを使用して、眼の虹彩の下にフットプレートをスムーズに挿入できるため、IOLの埋め込みに特に役立つ。特に、このような面取り部の存在は、フットプレート端部の前記一方が、支持要素の側に横方向に取り付けられ、遠位側縁が支持要素のこの側に滑らかに続くようにすることも意味する。
【0051】
好ましくは、滑らかな側方面取り部はまた、周辺触覚部分の全部又は一部上で、支持要素の近位に横方向に延在する。好ましくは、面取り部全体が光軸に対して直角に延在し、遠位側縁上でさらに円周方向に延在し、後者の上述のループ形状に従っている。
【0052】
側方面取り部全体は、より好ましくは(後方に)凹面である滑らかな外面を有する。外面は、通常は前傾姿勢である。凹面であるため、遠位側縁の部分的なループ形状が、支持要素の側面から周囲触覚部分のより中央の位置に変わるように、外面は曲率の転換点を含まず、例えば、光軸に垂直な軸に向かって収束するため、眼内組織の損傷のリスクなしに、IOLの操作と埋め込みが有利に容易になる。
【0053】
本明細書の枠組みにおいて、「第1の直径」という用語はIOLの外径を指し、「第2の直径」という用語は周辺触覚部分の外径を指し、これら2つの直径は光軸に対して垂直に測定される。ドーム・アセンブリは、第2の直径の円筒に収縮され、フットプレートはさらに半径方向に第1の直径まで延在する。
【0054】
第2の直径は、好ましくは9.50と11.10mmとの間に含まれ、より小さなサイズの毛様体(又はより正確にはより小さな利用可能な解剖学的空間)に対応し、ドーム・アセンブリが広範囲の眼の解剖学的構造に適合するサイズを有するようにする。特に、ドーム・アセンブリは、IOLが埋め込み位置にあるときにそれ自体がいくらかの圧迫を受けるのを回避するのに十分小さい。
【0055】
第1の直径は、特にIOLに軸方向及び/又は半径方向の圧縮が加えられない場合、好ましくは12.50~14.00mmの間に含まれ、より好ましくは12.70~13.60mmの間である。フットプレートは、特に、ドーム・アセンブリと毛様体との間の間隙を埋めるために収縮できる触覚の可撓性の寄与に対応する、第2の直径と第1の直径との差の間に含まれる半径方向の長さで延在する。したがって、本発明によるIOLは、フットプレートの軸方向及び/又は半径方向の圧縮に対する依存度が非常に低く、安定している計画された結果のボールトを有する広い範囲の眼の解剖学的構造に特によく適合する。
【0056】
全ての眼の解剖学的構造をカバーするために、異なる第1の直径と第2の直径とを備えた複数のIOLサイズが必要になる場合がある。全ての眼の解剖学的構造をカバーするには、2つ又は3つのサイズ例えば、12.7、13.2、及び13.6mmの第1の直径と、9.5、10.4、及び11.1mmの第2の直径、のIOLで十分である。好ましくは、後者の第2の直径は、同じ順序で前述の第1の直径にそれぞれ関連付けられる。このIOLサイズの数は、現在のIOLの各々がより広いクラスの眼の解剖学的構造に適合していることを考えると、巨大な遠位フットプレートを含む既知の有水晶体IOLと比較して特に減少している。
【0057】
本発明の好ましい実施例によれば、遠位支持要素の少なくとも1つ、好ましくは各々が、20°~80°の間、好ましくは40°~70°の間、より好ましくは約60°に含まれる中心角を有する円弧に沿って伸ばされる。知られているように、「中心角」という用語は、円弧によって定められた角度を指す。特に、頂点が前記中心と円弧の2つの端部である三角形の円弧の円の中心における角度である。
【0058】
有利なことに、ドーム・アセンブリの足としての支持要素は幅広で円形であり、IOLが眼内の埋め込み位置にあるときに毛様体小帯上でIOLを支持するための安定した剛性ベースを提供する。円弧は通常、第2の直径である。少なくとも2つのフットプレートが、各支持要素の第1の端部と第2の端部とによって対称的に取り付けられることが好ましい。
【0059】
以下で、ポケットについてより詳しく説明する。ポケットは、簡素化されたIOL埋め込みに寄与するので、本発明において有利な役割を果たす。上述のように、工具先端部をポケットに係合させることによってフットプレートを操作できるようにするために、ポケットは、フットプレートの第2の端部が取り付けられた支持要素上に配置され、少なくとも部分的にフットプレートと半径方向に位置合わせされる。言い換えれば、好ましくは、ポケットはフットプレートの近く、特にフットプレートの端部の近くに配置され、それらの近位近傍で、及び/又は光軸とフットプレートとの間で半径方向に整列される。
【0060】
前述のように、フットプレートの第1の端部は周辺触覚部分の様々な位置に取り付けることができる。但し、好ましくは、第2の端部と同じ支持要素に取り付けられる。上で説明したように、これにより、フットプレートが周辺触覚部分の最遠位部分から及び最遠位部分まで延在することが可能になり、フットプレートの長さが短くなり、操作が容易になる。さらに、ポケットは、同じ支持要素上の両方のフットプレート端部に近接しているため、IOL埋め込みプロセス中にフットプレートを操作することが再び容易になる。この場合、ポケットは、好ましくは、第1の端部と第2の端部との間で実質的に半径方向に位置合わせされ、これにより、ポケットへの工具先端部の係合を介してフットプレートの操作がさらに改善される。
【0061】
本IOLの一実施例によれば、ポケットは、IOL上の円周トレンチの形態を画定するか、又は有し、前面はフットプレートと平行に延在し、トレンチに沿って工具の先端部を受け入れるように寸法決めされる。より具体的には、トレンチは、IOLを眼の虹彩の下に挿入するための工具でIOLを移動できるように設計及び寸法決めされている。トレンチは、好ましくは支持要素の遠位境界に沿って、第2の端部の近位近傍から第1の端部の近位近傍まで円周方向に延在する。例えば、これらの端部とポケットとの間の距離は、好ましくは0.30mm未満であり、より好ましくは0.20mm未満である。トレンチの設計は、その端部とポケットとの間のこの近接により、工具の先端部を受け入れ、フットプレートを配置するために適切に移動するように完全に調整される。
【0062】
好ましくは、トレンチはフットプレートと同様に設計され、及び/又は同様の幾何学的拡張特徴を有する。好ましくは、トレンチは、その2つの円周端部に、フットプレート端部と半径方向鏡面対称である2つの半径方向内向きの延長部を備える。ポケットのこの設計は、特に工具先端で適切な動きを実行するために適合されており、フットプレートを虹彩の下に挿入することができる(
図11に示されているように、これは後で紹介する)。
【0063】
トレンチ、又は任意のその他の形状のポケットは、通常、IOLの前面に1つの部品として提供される。特に、ポケットはIOLの後面と連絡することを意図していない。実際、目標は、眼内組織を傷つける可能性のあるIOLを介して工具の先端に到達するのを回避することである。
【0064】
前述の実施例と完全に互換性のあるIOLポケットの実施例によれば、IOLポケットは、前面の一部として底面及び側縁を備える。底面は、摩擦を増大させるため、及び/又は工具先端のポケットへの引っ掛かりを増大させるために、粗いことが好ましい。縁は、軸方向に測定して、フットプレートの第2の端部が取り付けられる支持要素の厚さの25~75%の間に含まれ、より好ましくは約50%(+/-5%)の高さであることが好ましい。そのようなポケットは、特に製造が容易であり、上記の操作目的に対して十分に満足できるものである。支持要素の厚さの50%(+/-5%)としてのポケットの縁の高さは、工具先端を引っ掛けるのに十分な深さのポケットと、その抵抗を保証するのに十分な厚さのポケットの下に軸方向にある支持要素の一部を有するのに適している。
【0065】
本発明の好ましい実施例によれば、フットプレート遠位側縁は、前記第2の直径から第1の直径まで延在し、第1の直径の円弧に沿って延在する第2の部分を有する。第2の部分は、特に、IOLの最も遠位の点、すなわち絶対半径値における最も遠い点から構成される。第2の部分の長さは無視できないことが好ましい。第2の部分は、IOLに軸方向又は半径方向の圧縮が加えられない場合、好ましくは5°~25°の間に含まれ、より好ましくは約10°の中心角を有し、毛様体への回転においてIOLを強力に安定させる。さらに、IOLがその埋め込み位置にある場合、即ちIOLに軸方向及び/又は半径方向の圧縮が加えられた場合、この中心角を45°まで増加させることができる。
【0066】
好ましくは、遠位側縁の第2の部分は、IOLがそのような面取り部を含む場合、滑らかな横方向の面取り部が延在する上述の第1の部分に取り付けられる。この取り付けは、遠位側縁がこれらの第1及び第2の部分に沿って連続的且つ滑らかに延在し、フットプレートの第2の端部が取り付けられる支持要素を横方向に滑らかに継続するように行われる。これにより、操作が簡単で虹彩の下に挿入しやすい滑らかなデザインのフットプレートが提供される。遠位側縁は、好ましくは、これらの第1及び第2の部分からなる。好ましくは、遠位側縁の第2の部分は、それを第1の端部に接続するフットプレートの第3の部分に取り付けられる。この第3の部分は、好ましくは、5~60°、より好ましくは7.5~40°の間に含まれるより小さい角度、例えば7.5°、10°、15°又は20°、を有する方向に沿って半径方向に(のみ)延在し、光軸に垂直なIOLの(鏡面)対称軸を有する。この角度により、IOLが埋め込み位置にあるときにIOLに加えられる圧縮力を有利に減少させることができる。特に、角度が大きいほど、IOLにかかる力の圧縮が低くなる。通常、このような高い圧縮力が発生すると、第1及び第3の部分は、第2の部分が、対応する支持要素の遠位境界に著しく接近するように、又は言い換えると、対応する空洞サイズが著しく減少するように、横方向に柔軟にずれている。例えば、第2の部分は、IOLに圧縮力が加えられていない場合よりも、遠位境界に少なくとも2倍、又は3倍近い。
【0067】
本発明の好ましい実施例によれば、フットプレートは、法線ベクトルが光軸に対して-15°~15°の間に含まれる角度を形成する平面に沿って延在する。この角度は特に、IOLが埋め込み位置にあるときに適用され、眼の毛様体内に配置してIOLを安定させるのに十分なフットプレートの向きを可能にする。前記法線ベクトルは、光軸と同様に方向付けられ、角度符号は、好ましくは、従来の平面三角法の意味で考慮される。好ましくは、角度の値としては、IOLが少なくともその埋め込み前に製造されている場合、虹彩の下へのフットプレートの挿入が有利に容易になるように、-5°~-10°の間に含まれ、より好ましくは約-7°である。
【0068】
以下に示す本発明の実施例によれば、IOLは、2つの正反対の遠位支持要素と、2対の正反対の方向を向いた細長い可撓性フットプレートとを備えている。フットプレートの向きは、好ましくは、第2の端部から第1の端部までのフットプレートの主な伸展軌道に沿った移動感覚によって決定される。このように支持要素と細長い可撓性フットプレートとを対称的に分配された配置にすることで、IOLに軸方向、半径方向、及び回転時の優れた安定性が提供される。特に、前記ボールトは、IOL本体を通して及ぼされる横方向の圧縮力に部分的にしか依存しない。このような横方向の圧縮力が発生すると、IOLの設計は、2対の細長い可撓性フットプレート内でそれを少なくとも部分的に、好ましくはほぼ完全に吸収するので、ドーム・アセンブリは軸方向の動きがほとんどなく、非常に有利に軸方向に、より安定する。
【0069】
本IOLは、光軸の周りで180°回転しても形状不変であることが好ましい。換言すれば、細長い可撓性フットプレートの対は、光軸の周りでIOLを180°回転させることによって、互いの画像がそれぞれ存在するような向きを有する。これは、乱視を矯正するために曲率ムラを含むIOLレンズの場合、例えば有水晶体トーリックIOLの場合に有利である。実際、この場合、術前にIOLを回転させて適切な軸に配置する必要があることがよくある。細長い可撓性フットプレートの設計と回転対称性により、埋め込みプロセス中のそのような回転操作が容易になる。
【0070】
有水晶体眼内レンズはまた、好ましくは、それぞれ光軸を含む2つの直交面による平面反射下で形状不変である。これにより、IOLに有利な鏡面対称性が提供され、埋め込み中及び埋め込み後のIOLのねじれを回避できる。
【0071】
好ましくは、2つの異なる対からの最も近い細長い可撓性フットプレートは、第2の直径の5%~25%の間に含まれる距離だけ離れている。細長い可撓性フットプレートはまた、好ましくは、光軸に垂直な軸に向かって収束するように遠位に向けられる。各フットプレートの遠位の向きは、その遠位側縁での前記向きの自然な誘導によって得られる。言い換えると、細長い可撓性フットプレートは、全体的に内向きであり、IOLの遠位隅から外向きではない。これにより、各フットプレートの動きを制御しやすくなるため、埋め込みプロセス中に細長い可撓性フットプレートを虹彩の下に挿入しやすくなる。
【0072】
本発明の一般的に好ましい実施例によれば、中央光学部分は、IOLの前面と後面との間に延在する貫通孔を含み、IOLがその埋め込み位置にあるときにこれらの面の間の流体の流れを可能にするように配置される。この孔により、IOLの存在によって、IOLの前方空間と後方空間との間の自然な液体の流れを望ましくなく制限する第2の人工後房が誘導されるのを有利に防止することができる。孔は、眼の前房と後房との間の完全且つ永続的な流体連通を保証する。優先的に、貫通孔は、光軸との交点付近で、中央光学部分の中心に配置される。
【0073】
任意選択的に、IOLはまた、好ましくは中央光学部分との近位境界の近くに、周辺触覚部分に配置された光学周辺孔を備えている。これらの光学周辺孔は、IOLの前面と後面を横切り、特に埋め込みプロセス中にIOLを通る別の流体の流れも可能にする。
【0074】
IOLの一実施例によれば、中央光学部分は、IOLの前面に少なくとも方向記号を有する。この方向記号は、中央光学部分が主に見えるままであるため、埋め込みプロセス中にIOLの方向を合わせるのに特に役立つ。これは、上で説明したように有水晶体トーリックIOLを正しく方向付けるのに特に有利である。方向記号はさまざまな形をとることができる。好ましくは、方向記号は、IOL前面の整列した小さな表面孔からなる。これらの孔は明らかにIOLを横切っていない。記号は、IOLの前面にレーザー、軽度、又は彫刻によって作成された少なくとも1つの表面的な線の形を取ることもできる。
【0075】
本発明は、有利なことに、患者の矯正すべき視力障害に最もよく適合する中央光学部分レンズの選択を可能にする。特に、本発明の実施例によれば、中央光学部分レンズは、近視の矯正、遠視の矯正、老視の矯正、及び角膜乱視の矯正のうちの少なくとも1つの矯正を可能にする単焦点レンズからなる。本発明の特定の実施例によれば、レンズは、好ましくは老視を治療するために、焦点深度が拡張された屈折レンズ又は回折レンズからなる。優先的に、レンズは最新技術に従って選択される。
【0076】
上に開示したように、本発明によるIOLは、フットプレートに密接に関連する操作ポケットを備えていることが好ましい。この関連付けは、ポケットと前記工具先端との間の有利な協働を介して行われるので、工具自体が本発明に寄与する。
【0077】
特に、
ハンドルと、
ハンドルに固定された第1の端部を含む直線ロッドと、
直線ロッドの第2の端部から滑らかに延在する円形に湾曲したロッドと、
円形に湾曲したロッドに固定された先端部であって、
円形に湾曲したロッドから割線方向に延在し、
先端部をポケットに(鍵で)係合させることによって、ポケットと協働するように寸法決めされ、細長い可撓性フットプレートの移動が、工具の移動によって引き起こされ得るようにする、先端部と、
を備える工具が提供される。
【0078】
工具は、本発明によるIOLを容易に埋め込むことを可能にする。特に、この唯一の工具は、埋め込みプロセスのすべての必要なステップを実行するのに十分である。さらに、後者の間、フットプレートを位置決めするために工具先端部でフットプレートに触れる必要はない。これにより、外科医が、繊細な眼内組織、例えば水晶体に触れるリスクを伴うフットプレートによって囲まれた空洞に先端部を係合させるなどの操作ミスを起こすことを有利に防ぐことができる。
【0079】
工具の設計は、眼の後房にIOLを簡単に埋め込むように特別に調整されている。特に、円形に湾曲したロッド及び先端部は、好ましくは、眼に貫入する工具の唯一の部分である。円形に湾曲したロッドにより、直線ロッドと先端部との間が潜在的に鋭角になることを回避できる。これは、特に、眼内組織を損傷することなく、また、眼の白内障につながる、IOLを後方に押したり、望ましくない形で変形させたり、及び/又は水晶体に触れたりする可能性のあるIOLに触れることなく、先端が後房を通ってポケットに滑らかに到達できるように寸法決めされている。円形に湾曲したロッドは、好ましくは実質的に単一の円弧に沿って延在し、より好ましくは曲率半径は、10~30mmの間に含まれ、例えば約20mmである。それにもかかわらず、円形に湾曲したロッドは、本発明の枠組みにおいて異なる曲率半径を有する、複数の円形に湾曲した部分、好ましくは2つのそのような部分を含んでもよい。2つの円形に湾曲した(接続された)部分の場合、(第1の部分の)第1の曲率半径は、好ましくは10~30mmの間に含まれ、例えば約20mmであり、(第2の部分の)第2の曲率半径は、好ましくは5~10mmの間に含まれ、例えば約6mmである。有利な方法では、第2の部分は下向きのより急な傾斜を有し、これにより、工具の別の部分でIOLに接触することなくポケットに到達するのにより適したものになる。より一般的且つより好ましくは、円形に湾曲したロッドが複数の円形に湾曲した部分を含む場合、それらのそれぞれの曲率半径は、同様の理由で直線ロッドから先端部に向かって減少する。
【0080】
先端部は、通常、協働してポケットに係合するように配置された工具の唯一の部分である。好ましくは、先端部は、先端部をポケットに引っ掛けるように構成された末端の鋭い縁を有する自由な末端(又は遠位)部分を備えている。この外側部分は、好ましくは円筒形状である。特に、工具先端部の設計は非常に単純であり、ポケットへの効率的な鍵係合を可能にしながら、工具の製造が容易である。
【0081】
IOL前面上のトレンチに対応するポケットの場合、トレンチの幅は、典型的には、先端部がトレンチに係合し、トレンチの伸展軌道に沿って実質的に1つの動きの自由度を有するように、先端部を受け入れるように正確に寸法決めされる。後者は、特にフットプレートと同様の形状を有していてもよい。特に、外側部分は、典型的には、IOL前面上でポケット内に軸方向に係合し、次いでポケット内に移動するように配置される。
【0082】
好ましくは、先端部は、円形に湾曲したロッドに固定された(又は接続された)膨らんだ部分を含む。この膨らんだ部分により、円形に湾曲したロッドを非常に滑らかに伸ばすことができ、円形に湾曲したロッドと先端部の外側部分の延長軸との間に滑らかな角度を画定することができる(工具使用時に光軸に平行であることが好ましい)。「膨らんだ」という用語は、この部分の形状を指すために使用され、後者はより好ましくは少なくとも部分的に楕円体である。膨らんだ部分の断面は、好ましくは、末端部分のみがポケットに係合できるように、末端部分の一定の断面よりも(例えば、直径及び/又は面積に関して)大きい。特に、非常に有利なことに、膨らんだ部分は、工具が任意のIOLの孔又は空洞に入るのを防止するためのストッパーとして機能する。膨らんだ部分の断面は、典型的には楕円形(例えば円形)である。膨らんだ部分の第1の楕円形部分は、末端部分の第2の一定の円形部分よりも、好ましくは少なくとも25%大きく、より好ましくは少なくとも50%大きく、より好ましくは再び少なくとも2倍大きい。
【0083】
先端部がポケットの高さでIOLの前面により容易に引っ掛かるように、末端部分は、好ましくは、膨らんだ部分に直接且つ鋭く固定される。代替として、中間の機械的接続を使用することによって、末端部分が膨らんだ部分に滑らかに固定される。この機械的接続は、典型的には、埋め込みプロセス中にIOL上の膨らんだ部分の望ましくない引っ掛かりを防ぐことができる、滑らかに変化する断面形状を有する。
【0084】
好ましくは、膨らんだ部分は、先端部の外側部分が軸方向に延びるときに周辺触覚部分の前方湾曲を模倣するように向けられた湾曲したサブ部分を含む。このサブ部分は、工具の別の部分でIOLに触れることなく、末端部分がポケットに到達できるようにさらに適合した全体的な形状を工具に提供する。
【0085】
直線ロッド、円形に湾曲したロッド、及び工具の先端部は、好ましくは金属製、例えばステンレス鋼製であり、耐性がある。
【0086】
本発明はまた、本発明によるIOL及び上記で導入された工具を含むセットを提供する。上記のIOL及び/又は工具のすべての実施例、並びにそれらの相互の利点は、必要な変更を加えて本セットにまで及ぶ。
【0087】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読むことで明らかになり、理解のために添付の図面を参照する。これらの図面のリストは以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【
図1】本発明の好ましい実施例によるIOLの全体的な3次元前方及び側面図である。
【
図3】IOL誘導ドーム及び眼の水晶体の相対的な配置を伴う、
図1に示されるIOLの側影図である。
【
図4】
図1に示したIOLの3次元の厳密な側面図である。
【
図5】
図1に示されたIOLが取り付けられた眼の一部の断面図であり、後者は側影図によって示されている。
【
図6】
図2に示される平面VIに沿った、
図1に示されるIOLの断面図を示す。
【
図7】
図1に示されるIOLの支持要素及びフットプレートの部分の3次元拡大図である。
【
図8】
図2に示される平面VIIIに沿った、
図1に示されるIOLの断面図である。
【
図9】後房の解剖学的空間に依存する、
図1に示されたIOLの軸方向変位のグラフ表示を示す図である。
【
図10】本発明の好ましい実施例による工具の全体平面側面図である。
【
図10A】本発明の好ましい実施例による工具の全体平面側面図である。
【
図11】
図1に示されるIOLの埋め込みプロセス中の
図10に示される工具の先端部の動きの概略上面図である。
【
図12】
図10に示される工具の先端部の第1の実施例の全体的な3次元図である。
【
図13】
図10に示される工具の先端部の第2の実施例の全体的な3次元図である。
【
図14】
図1に示されたIOLの埋め込みプロセス中に
図10に示された工具の一部が交差した眼の一部の簡略化された断面図であり、後者は側影図によって示されている。
【発明を実施するための形態】
【0089】
図面は通常、縮尺されていない。同様の要素は通常、同様の参照によって割り当てられる。本明細書の枠組みでは、同一又は類似の要素は同じ参照を有する場合がある。さらに、図面における参照の存在は、これらの参照が特許請求の範囲に示されている場合を含め、限定的であるとみなすことはできない。
【0090】
本明細書のこの部分は、図面を参照して、本発明の特定の好ましい実施例の完全な説明を提示する。しかしながら、本発明はこれらの参考文献によって限定されない。上記で紹介した図は、特に概略的なものであり、決して限定的なものではない。
【0091】
いくつかのの図には、尺度や幾何学的特徴(例えば、81~89B、X、Y、Z、K、P、k、k’、7A、7B、71A、72A、72B、73A、α~ε、及びθ)など、本発明の実施例の技術的特徴を定量化及び/又は視覚化するために実質的に使用される抽象的な幾何学的記号及び対応する参照が提供されている。これらの幾何学的記号は、通常、具体的な物体に対応していない。
【0092】
本発明は、広範囲の眼の解剖学的構造に同時に適合され、埋め込みが容易であり、光軸Zに沿って軸方向に、ベクトル(又は軸)X及びYに基づいて、光軸Zに垂直な平面内で半径方向及び回転方向に、眼9内の埋め込み位置で術後安定する後房有水晶体IOL1を提供する。特に、
図1に示すように、軸X、Y、及びZはユークリッドの3次元空間の直交基底を形成する。従来通り、光軸Zは、IOL1の前面11から後面12(
図1及び
図3を参照)に向けられる。
【0093】
図5に示すように、IOL1は、眼9の後房96に配置されるように意図されている。眼9の解剖学的構造の他の要素、即ち、眼9の角膜91、虹彩92、瞳孔93、水晶体94、前房95、毛様体小帯97及び毛様体98、が
図5に示されている。
【0094】
図1及び
図2に示されるように、IOL1は、4.5~6.7mmの間に含まれ、好ましくは約5.8mmの最大外径上で光軸Zに対して半径方向に延在する中央光学部分2を有する。中央光学部分2は、前面11と後面12との間で光軸Zに沿って延在する貫通孔21を備え、これらの面の間で流体連通が可能になる。中央光学部分2はまた、前面11上の軸Yに沿って整列された2対の正反対の小さな表面孔の形態の方向記号22を備えている。これらの記号22は、埋め込み中にIOL1を配向するために使用することができる。貫通孔21及び各表面孔の例示的な直径値は、それぞれ約0.36及び0.12mmである。
【0095】
中央光学部分2は触覚構造によって取り囲まれ、その中に周辺触覚部分3が中央光学部分2に円周方向及び近位に取り付けられている。周辺触覚部分3は、中央光学部分2に対して半径方向外向き且つ後方に延在する。それにもかかわらず、IOLは、
図2に示されるように、軸Yに沿って伸びた全体的な平面形状を有するように、軸Xに沿ってよりも軸Yに沿って半径方向にさらに伸びる。
【0096】
周辺触覚部分3は、主近位部分34と、2つの正反対の遠位支持要素4とで構成されている。主近位部分34は、軸Yに沿って、光軸Zに対して対称的に、中心光学部分2との境界の近くに近位に配置された2つの光学周辺孔33を備えている。光学周辺孔33は、IOL1の埋め込みプロセス中に流体の流れを可能にするように、前面11及び後面12を通ってIOL1を横切る。
図2に示すように、光学周辺孔33は、7.2~8.0mmの間に含まれ、好ましくは約7.45mmの第3の直径83のIOL1部分に含まれる。光学周辺孔33は、好ましくは、サイズに関して貫通孔21と非常に類似している。
【0097】
支持要素4は、軸X及び光軸Zに基づく平面に関して鏡面対称に、主近位部分34の2つの正反対の遠位端に取り付けられる。支持要素4は、光軸Zの周りに円周方向に延在するリング部分の形をしており、それぞれが中心角βが約60°の円弧に沿っている(
図2に表示)。各支持要素4の遠位境界41は、特に、9.5~11.1mmの間、例えば約10.4mmに含まれる第2の直径82の円弧に沿って延在する。支持要素4は、遠位境界41の柔軟性を高める部分的な孔の形の横方向のくぼみ42を備えている。
【0098】
特に、周辺触覚部分3全体及び中央光学部分2は、支持要素4によって後方に支持されるドームK(又はドーム・アセンブリ)を形成するような方法で、光軸Zの周りに延在する第2の直径82の円筒に内接している。
図3及び
図5に示すように、ドームKは、IOL1が眼9内の埋め込み位置にあるときに水晶体94の上に位置することを意図した後面を有する。次いで、遠位支持要素4は、眼9の毛様体小帯97上でIOL1を支持するように配置される。
【0099】
ドームKの後面は、凹状で滑らかであり、水晶体94の前面の曲率と適合する約10mmの好ましい曲率半径kで湾曲しており、これにより、IOL1が本発明の開示で説明され、
図5に示されるようにその埋め込み位置にあるとき、300~750μmの間で調整可能なボールト89BがIOL1と水晶体94との間に確保され得る。
【0100】
図3に見えるドームKの固有の高さ89Aは、軸方向に測定され、「固有のボールト」と呼ばれ、IOL1に固有のボールトの高さを構成する。固有のボールトの高さは、典型的には1.0~2.0mmの間、好ましくは1.3~1.75mmの間に含まれる値を有する。例えば、IOL1の第1の直径81と前記第2の直径82とからなる対が(12.7mm、9.5mm)、(13.2mm、10.4mm)、又は(13.6mm、11.1mm)である場合、固有の高さ89Aは、それぞれ約1.30、1.40、又は1.75mmである。
【0101】
図8に示されるように、支持要素4が遠位に取り付けられていない周辺触覚部分3の側面は、光軸Zに垂直な平面に対して約-45°の角度εを有する傾斜を含む。傾斜は、0.8~1.3mmの間に含まれ、好ましくは約1.06mmの長さ88を有する。傾斜は、後方及び半径方向に向けられた遠位の丸みを帯びた研磨された隅35で終わる。
【0102】
本発明の開示で説明したように、特定の壁厚がドームKに剛性を与え、IOL1がその埋め込み位置にあるとき、軸方向及び/又は半径方向の圧縮に対して耐性があるようにする。特に、
図6に示されるように、ドームKの中心周りの厚さ84Cは、約0.20mmであってもよく、次いで、例えば、約0.60mmの厚さ84Bを有する周辺触覚部分3の近位境界に到達するまで半径方向に増加し、最後に、一般に0.15~0.25mmの間に含まれる厚さ84Aを有する(後で導入されるポケットを考慮しない)支持要素4まで半径方向に減少する。
【0103】
これらの値は、ドームKが、水晶体94を取り囲み、前方でその上を覆うのに十分な硬さと幅広の構造を構成することができ、それにより、光軸Zと平行に安定しながら、広範囲の眼の解剖学的構造に埋め込まれることができるように選択される。
【0104】
図1、
図2、及び
図7に明確に示されているように、IOL1はまた、遠位支持要素4に取り付けられ、周囲触覚部分3を越えて軸Yに沿って半径方向に延在する、2対の正反対の細長い可撓性フットプレート5を備えている。このような各フットプレート5は、同じ支持要素4に取り付けられた第1の端部51及び第2の端部52を有し、その結果、フットプレートは、前面11から後面12まで延びる空洞32に隣接する部分ループの形態を有する。
【0105】
第1の端部51は、遠位境界41に沿って中央に配置され、第2の端部52は、周辺触覚部分3の側面の続きで、遠位境界に沿って横方向に配置される。換言すれば、第1の端部51は、第2の端部52よりも軸Yに近い。
図2に示すように、遠位境界41は、15°~45°、好ましくは約20°~25°の間に含まれる中心角δで、第2の直径82の円弧に沿って第1の端部51と第2の端部52との間に延在する。
【0106】
各空洞32は、対応するフットプレート5よりも光軸Zに垂直な領域に関して、より拡張されている。特に、
図7に示すように、各空洞32の最大半径長さ86は、細長い可撓性フットプレートの任意の断面Cの最大直径87よりも(はるかに)大きい。この半径長さ86は、0.7~0.9mmの間に含まれ、好ましくは約0.8mmであり、前記断面Cの半径長さは、好ましくは0.2~0.4mmの間に含まれる。結果として、第2の直径82よりもさらに半径方向に延在するIOL1の表面は、固形物で満たされているよりも固形物がより少ない。各フットプレート5は、0.10~0.20mmの間に含まれ、好ましくは約0.15mmの実質的に一定の厚さ83A(
図3に示される)を有する。これらすべてのデータは、フットプレート5に優れた可撓性を与えることに貢献している。
【0107】
IOL1は、IOL1に軸方向又は半径方向の圧縮が加えられていない場合、埋め込み前に12.7~13.6mmの間に含まれる好ましい値で、前記第1の直径81の円筒に全体的に刻まれる。特に、各フットプレートは、第2の直径82と第1の直径81との間に延在し、これにより、IOL1が本発明の開示において上述したようにその埋め込み位置にあるときに、IOL1のために眼の後房96内で利用可能な解剖学的空間のサイズ変動をその柔軟性によって補償することが可能になる。
【0108】
フットプレート5は、
図6に示すように、光軸Zとフットプレート5の延長平面Pに対する法線ベクトルとの間の調整可能な角度αが、一般に、-15°~15°の間に含まれるように、IOL1に軸方向及び/又は半径方向に圧縮が加えられたときに、折り畳み及び/又は湾曲するように特に設計されている。
【0109】
各フットプレート5は、それが取り付けられる支持要素4に対して円周方向及び半径方向外側の両方に延在する遠位側縁53を備えている。この遠位側縁53は、特に、IOL1が
図5に示されるようなその埋め込み位置にあるときに、IOL1を毛様体98内に安定させるように配置される。これは、本発明の開示に詳述されているように、光軸Zに垂直な平面内で回転するIOL1を安定させるためのアンカーとして機能する。遠位側縁53は、眼9の毛様体溝内でIOL1を安定させるために任意に配置されてもよく、その結果、本明細書における「毛様体」という用語は、「毛様体及び/又は溝」によって任意に置き換えられ得る。
【0110】
遠位側縁53は、
図1及び
図4に特に見られる第1の部分54及び第2の部分55で構成されている。
図2に示されるように、第2の部分55は、第1の直径81の円弧に沿って延在し、中心角γは7.5°~20°の間に含まれ、IOL1に軸方向又は半径方向の圧縮が加えられない場合、典型的には約10°である。したがって、第2の部分55は遠位側縁53の最も遠位の部分にある。第1の部分54は、その一部として、第2の端部52から第2の部分55まで延在する。
【0111】
第1の部分54は、有利には、滑らかな側方面取り部31を備えている。後者は、第1の部分54上、第2の端部52が取り付けられた支持要素上、及び周辺触覚部分3の主近位部分34の全部又は一部上で横方向に、滑らかに且つ連続的に延在する。本発明の開示で詳述されるように、この面取り部31は、IOL1の埋め込み中に虹彩92の下にフットプレート5を挿入するのを助けるのに寄与する。
【0112】
フットプレート5自体は、実質的に3つの部分、即ち、第1の部分54の自然な第1の幅延長部と、第2の部分55の自然な第2の幅延長部と、
図1に見られ、自然な第2の幅延長部と第1の端部51とを接続する第3の部分56とで構成されている。これらのフットプレート部分の主な伸展軌道は、それぞれ円周方向と半径方向の両方に、実質的に円周方向にのみ、実質的に半径方向にのみ、5~60°の間に含まれ、本発明の図示の実施例の場合、例えば約7.5°である、軸Yとの角度(通常は(1/2)(β-2δ)に対応する)が小さい方向に延在する。この角度により、IOL1が埋め込み位置にあるときにIOL1に加えられる圧縮力を有利に減少させることができる。特に、値が大きいほど、IOL1にかかる圧縮力は低くなるので、10°、12.5°、15°、17.5°、20°、25°、30°又は40°など、7.5°より大きい角度も好ましい。
【0113】
細長い可撓性フットプレート5の全体的な設計は、IOL1埋め込みプロセスを容易にするように決定される。特に、面取り部31は、各フットプレート5が軸Yに向かって収束するように遠位方向に向けられるように、凹状の滑らかな外面を有する。その場合、虹彩92の下に細長い可撓性フットプレート5を挿入する動きが非常に容易になる。各遠位支持要素4の遠位境界41は、約15~20°の中心角を有する第2の直径82の円弧に沿って、2つの異なる対の細長い可撓性フットプレート5の第1の端部51の間でさらに延在する。
【0114】
遠位支持要素4及び細長い可撓性フットプレート5からの二重触覚構造により、IOL1はその埋め込み位置で特に安定することができる。
図9の曲線103は、13.2mmの第1の直径81値を有するIOL1について、軸101上に示され、mmで測定される「毛様体間」測定に対応する後房96の解剖学的空間のサイズの関数として、軸102上に示され、mmで測定されるボールト89B(
図5に示す)を表す。ボールト89Bの0.3~0.8mmの値は、IOL1が軸方向に安定しており、虹彩92と水晶体94との間に適切に配置されていることを保証するための極値とみなされる。曲線103に見られるように、これはIOL1の場合であり、解剖学的空間サイズの変動は約1.1mmに及ぶ(参照番号105)。
【0115】
曲線103と比較して、大きな遠位フットプレートが減少し、可撓性がより低い既知の市販されている後房有水晶体IOLの同様の曲線104が
図9に描かれている。曲線104に見られるように、これらのIOLの前記解剖学的空間のサイズ変化への適応性は、約0.7mm(参照番号106)だけ延び、その後1.1mmよりかなり低い。したがって、本発明によるIOL1は、より安定した方法でより広い範囲の眼の解剖学的構造をカバーすることができる。このグラフによる比較は、本発明の軸方向安定性に関する性能と改善を示している。
【0116】
細長い可撓性フットプレート5が特に柔軟であることを考えると、埋め込みプロセス中に細長い可撓性フットプレート5の動きを制御し、それらを虹彩92の下に適切に挿入するのに役立つ構造をIOL1に提供することが有利である。この目的のために、支持要素4は、
図1、
図2、
図6a及び
図7に見られるように、IOL前面11上に操作ポケット6を備えている。
【0117】
各ポケット6は、構造的及び機能的特徴の観点からフットプレート5に関連付けられている。特に、構造的に言えば、各ポケット6は関連するフットプレート5に面しているので、遠位境界41のみが空洞32をポケット6から分離する。ポケット6はさらに、フットプレート5の第1の端部51と第2の端部52との間で半径方向に整列される。それは、フットプレート5に平行に延在し、フットプレート端部51及び52と鏡面対称に、トレンチ63の2つの円周端部に配置された半径方向内側延長部64を含む、IOL前面11上の円周トレンチ63を画定する。
【0118】
トレンチ63は、粗い底面61と、対応する支持要素4の厚さ84Aの約50%の軸方向高さ85の側縁62とを有する。換言すれば、軸方向高さ85は、0.075~0.125mmの間、好ましくは0.08~0.09mmの間に含まれる。高さ85は、支持要素4の厚さ84Aに応じて、半径方向にわずかに減少してもよい。遠位境界41との境界にある最遠位側縁65は、半径0.06mmの半円筒形状に成形することができる。
【0119】
ポケット6のこれらの幾何学的特徴は、IOL1の埋め込みプロセス中の細長い可撓性フットプレート5の適切な移動が、工具7の移動によって引き起こされ得るように、ポケット6内への先端71の幾何学的鍵係合によって操作工具7の先端部71との機能的協働を可能にするために特に提供される。
【0120】
IOL1埋め込みプロセス中のそのような協力が、
図11に概略的に示されている。この図は、右眼9の虹彩92の下にフットプレート5のそれぞれを挿入するための工具7の(矢印による)特定の動きを示している。細長い可撓性フットプレート5には、ポケット6を介した操作の順序で5A~5Dまでの番号が付けられている。
【0121】
(右遠位)フットプレート5Aの挿入プロセスは、穿刺(すなわち、小さな切開)P1に向かって引っ張る、押し下げて虹彩92の下にフットプレート5Aを挿入する、半径方向外向きに前方に押す、という動作を含む。(左遠位)フットプレート5Bの挿入プロセスは、穿刺P2に向かって押す、押し下げて虹彩92の下にフットプレート5Bを挿入する、半径方向外向きに引っ張る、という動作を含む。(左近位)フットプレート5Cの場合、挿入プロセスは、穿刺P2に向かって引っ張る、押し下げてフットプレート5Cを虹彩92の下に挿入する、半径方向外向きに前方に押す、という動作を含む。最後に、(左遠位)フットプレート5Dに関して、挿入プロセスは、穿刺P1に向かって押す、押し下げて、虹彩92の下にフットプレート5Dを挿入する、半径方向外向きに引っ張る、という動作を含む。
【0122】
図14は、IOL1の埋め込み中の
図5の眼9を示す。図から分かるように、工具7の先端部71は、ポケット6と協働するように特別に構成され、その後、細長い可撓性フットプレート5A~5Dの上述の挿入を可能にする。
【0123】
工具7は、
図10、
図12及び
図13を参照してより詳細に説明される。工具7は、ハンドル70と、ハンドルに固定された直線ロッド73と、直線ロッド73に滑らかに固定された円形に湾曲したロッド72と、円形に湾曲したロッド72に割線的に固定された先端部71とを備えている。先端部71は、ポケット6に係合するように配置された円筒形状の自由な(遠位)末端部分74を有する。
【0124】
末端部分74の下面が底面61と面接触にあるときの工具7の非限定的な例示的な寸法値が提供され、その結果、その周りに自由な末端部分74が円筒状に延在する回転軸は、光軸Zに対して実質的に平行である。これらの条件では、
図10に示すように、ハンドル70を備えた工具7は、約15.00mmの軸長7Aを有し、円形に湾曲したロッド72及び先端71は、約2.34mmの軸長7Bを有し、直線ロッド73の延長長さ73Aは約14.30mmであり、円形に湾曲したロッド72の延長長さ72Aは約11.30mmであり、その曲率半径k’は15~30mmの間に含まれ、好ましくは約20、21、22、23、24、25又は26mmである。工具の幅は、直線ロッド73と円形に湾曲したロッド72の伸展軌跡に沿って、先端部71との接合部付近で約0.60mm~約0.24mmまで減少する傾向がある(後者の幅は、
図12及び
図13の参照番号72Bに対応する)。これらの値は、
図14に示すように、眼9内の工具の適切な向きと位置を可能にするために選択される。
【0125】
図10に説明し、示すように、円形に湾曲したロッド72は、曲率半径k’の単一の円弧に沿って延在する。それにもかかわらず、
図10Aに示されるように、円形に湾曲したロッド72はまた、異なる曲率半径を有する2つの部分を含んでもよい。第2の部分72’は、円形に湾曲したロッド72の大部分を構成する第1の部分よりも湾曲している。この場合、曲率半径は好ましくは約k’であり、第2の部分の曲率半径k’’は好ましくは約6mmである。
図10の実施例の他の特徴、例えば、円形に湾曲したロッド72の全体的な長さは、
図10Aに当てはまる。この長さの約10~20%は、第2の部分72’に由来する。
【0126】
別の先端部71が工具7に設けられてもよく、任意選択的に取り外し可能であってもよい。先端部71の2つの実施例が
図12及び
図13に示されている。両方の実施例において、末端部分74は、先端部71をポケット6の粗い底面61に容易に引っ掛けるための末端の鋭い縁75を有する。末端部分74の円筒形状は、ポケット6のサイズに適合するように特に寸法が決められている。それは、約0.25mmの直径を有し、好ましくは40°~85°の間に含まれるより小さな角度θ、例えば、約50°、60°、70°、又は80°であり、より好ましくは、先端部71との接合部付近で円形に湾曲したロッド72の延在方向に対して約51°で配向される。
【0127】
先端部71は、末端部分74を円形に湾曲したロッド72に接続する膨らんだ部分76を含む。膨らんだ部分76を通るこの接続は、異なる実施例に従って異なる方法で行うことができ、そのうちの2つの実施例が
図12及び
図13に示されている。2つの実施例の各々において、膨らんだ部分76は、自由な末端部分74の第2の一定の円形断面C2よりも大きい第1の可変楕円円形断面C1を有し、これにより、膨らんだ部分76がポケット6に入るのを防ぎ、また先端部71が光学周辺孔33又は空洞32などの望ましくない位置に入るのを防ぐことができる。
【0128】
膨らんだ部分76は、円形に湾曲したロッド72及び先端部71の少なくとも軸方向上面が全体的に滑らかになるように、円形に湾曲したロッド72に滑らかに固定される。これにより、小さい切開部(又は前記穿刺P1及びP2)を通して工具7を滑らかに挿入及び除去することが有利に可能になり、上記の挿入プロセス及び工具7の操作がより容易になる。
【0129】
図12の実施例では、末端部分74は、ポケット6に隣接するIOL1の前面上の先端部71の引っ掛かりを改善する膨らんだ部分76に直接且つ鋭く固定される。
図13の実施例では、末端部分74は、中間の滑らかな機械的接続77によって、膨らんだ部分76に異なって滑らかに固定される。
【0130】
末端部分74の軸方向長さ71Aは、例えば
図12の実施例では、好ましくは約0.13mmから、例えば
図13の実施例では、約0.26mmまで変化する。先端部71全体の軸方向長さ71Bは、その一部が、両方の実施例について、好ましくは0.75mm未満であり、より好ましくは0.45~0.60mmの間に含まれ、例えば約0.53mmである。この限定された軸方向の長さは、特に、挿入プロセス中に小さな切開部(又は前記穿刺P1及びP2)を滑らかに通過できるように設計されている。
【0131】
換言すれば、本発明は、中央光学部分2と、眼9の毛様体小帯97上でIOL1を支持するために配置された遠位支持要素4を有する周辺触覚部分3と、支持要素4に取り付けられた細長い可撓性フットプレート5であって、それぞれが眼9の毛様体98内にIOL1を安定させるために配置された遠位側縁53を有する、可撓性フットプレート5と、支持要素4の表面上の操作ポケット6であって、各ポケット6が、細長い可撓性フットプレート5の1つに関連付けられている、操作ポケット6とを備える後房有水晶体IOL1に関する。
【0132】
本発明は、純粋に例示的な値を有する特定の実施例に関して説明され、限定的であるとみなされるべきではない。一般的に言えば、本発明が、上に示され説明される例又は測定値に限定されないことは、当業者には明らかであろう。特に、本明細書で言及されているすべての値は、10%の誤差範囲で提供される。本発明は、記載された新しい特徴の各々、並びにそれらのすべての組合せを含む。
【国際調査報告】