IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シアンテオ バイオテクノロジ カンパニー, リミテッドの特許一覧

特表2024-535972乾癬を治療するための医薬品の調製におけるマンゴスチン果実殻抽出物の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】乾癬を治療するための医薬品の調製におけるマンゴスチン果実殻抽出物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/38 20060101AFI20240927BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
A61K36/38
A61P17/06
A61P19/02
A61K31/352
A61K131:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574646
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 CN2021128869
(87)【国際公開番号】W WO2023077397
(87)【国際公開日】2023-05-11
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523360614
【氏名又は名称】シアンテオ バイオテクノロジ カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】チェン, フアンユァン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, シイン
(72)【発明者】
【氏名】チュアン, イピン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, クチェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, イェンジュ
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA28
4C086MA55
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZA96
4C088AB12
4C088AC04
4C088BA09
4C088BA10
4C088CA05
4C088CA08
4C088CA11
4C088MA28
4C088MA55
4C088MA63
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZA96
(57)【要約】
乾癬を治療するための医薬品の調製における組成物の使用が提供され、本組成物は、有効量のマンゴスチン果実殻抽出物を含む。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾癬を治療するための医薬品の調製における組成物の使用であって、前記組成物が、有効量のマンゴスチン果実殻抽出物を含む、使用。
【請求項2】
前記マンゴスチン果実殻の抽出物が、マンゴスチン果実殻の水抽出物及び/またはマンゴスチン果実殻のアルコール抽出物である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記マンゴスチン果実殻が、前記マンゴスチン果実殻の外殻及び/または前記マンゴスチン果実殻の内殻である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記マンゴスチン果実殻が、前記マンゴスチン果実殻の外殻である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記マンゴスチン果実殻の前記抽出物が、α-マンゴスチン及びγ-マンゴスチンを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記組成物が、非経口調製物である、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
非経口調製物が、外用調製物である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記マンゴスチン果実殻の抽出物の有効量が、1%(w/w)~10%(w/w)である、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記マンゴスチン果実殻の抽出物の有効量が、1%(w/w)~8%(w/w)である、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
前記マンゴスチン果実殻の抽出物の有効量が、1%(w/w)~5%(w/w)である、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
前記乾癬としては、局面型乾癬、爪乾癬、滴状乾癬、逆性乾癬、膿疱性乾癬、紅皮性乾癬及び乾癬性関節炎が挙げられる、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
対象における乾癬を治療するための方法であって、有効量のマンゴスチン果実殻抽出物を含む医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項13】
前記乾癬としては、局面型乾癬、爪乾癬、滴状乾癬、逆性乾癬、膿疱性乾癬、紅皮性乾癬及び乾癬性関節炎が挙げられる、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾癬を治療するための医薬品の調製におけるマンゴスチン果実殻抽出物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、ヒトの身体の最大の臓器である。皮膚疾患には、多くの種類が存在する。皮膚疾患には、急性(数分から数時間のみ持続する)状態であり得るか、または個体に数日、数ヶ月、数年、さらには生涯にわたって影響を与え得る慢性状態であり得る。皮膚疾患は、真菌源、細菌源、ウイルス源によって引き起こされる状態であり得るか、またはアレルゲンの有無にかかわらず炎症反応または特発性などの非感染性の免疫応答であり得る。したがって、皮膚疾患の症状は様々であり得、軽度のかゆみ、発赤、腫張から、重度の膿及び侵害受容性疼痛、例えば潰瘍形成の損傷に至る範囲であり得る。皮膚疾患は、個体の生活の質に重大な影響を与え得る。
【0003】
乾癬は、一般的な慢性炎症性皮膚関連疾患であり、世界人口の約3%が罹患している。乾癬の発症は、遺伝的要因、エピジェネティック的要因、環境要因、ライフスタイル要因など、複数の要因により生じる可能性があり、その中には、自然免疫応答及び適応免疫応答の両方が関与しているものがある。免疫プロセスが活性化されると、より多くの樹状細胞、マクロファージ、及びT細胞が病変皮膚から動員され、より多くの炎症性メディエーターを分泌する。このプロセスにより、表皮の過剰増殖及びケラチノサイトの異常な分化が突然引き起こされる。その結果、表皮が肥厚し、乾癬性プラークが引き起こされる。
【0004】
乾癬の治療は、かなり急速に皮膚細胞の成長を停止させ、鱗屑を除去することを目的としている。現在使用されている治療法は、3種類あり、局所療法(クリーム及び軟膏)、光線療法(phototherapy)(光線療法(light therapy))、及び経口薬または注射薬である。ステロイド薬は、特に中等度から重度の乾癬の治療において、局所療法及び経口薬または注射薬として一般的に使用される。しかし、強力なコルチコステロイドの長期使用または過剰使用は、いくつかの不快な副作用を引き起こし得る。
【0005】
マンゴスチンは、乳がんの予防及び筋肉関連疾患の分野で使用されており、また日常生活における栄養補助食品及び化粧品、さらには急性肝炎、肝線維症の治療、肝硬変の予防にも使用されている。
【0006】
Matsumoto et al.,は、マンゴスチン果実殻から精製されたα-マンゴスチン、β-マンゴスチン、γ-マンゴスチン、及びメチル-β-マンゴスチンを研究し、細胞周期の様々な段階におけるこの化合物の阻害効果を調査し、これは、この化合物が抗細胞増殖効果及び抗腫瘍効果を有することを示す(Bioorg.Med.Chem.2005,13,6064-6069)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Bioorg.Med.Chem.2005,13,6064-6069
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、皮膚障害を治療するための医薬組成物の調製における組成物の使用を提供する。
【0009】
具体的には、本発明は、乾癬を治療するための医薬品の調製における組成物の使用を提供し、本組成物は、有効量のマンゴスチン果実殻の抽出物を含む。この医薬品は、局所治療用途または精密治療用途にも使用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、対象における乾癬を治療するための方法を提供し、本方法は、有効量のマンゴスチン果実殻抽出物を含む医薬組成物を投与することを含む。
【0011】
本発明において、乾癬としては、局面型乾癬、爪乾癬、滴状乾癬、逆性乾癬、膿疱性乾癬、紅皮性乾癬及び乾癬性関節炎が挙げられる。
【0012】
マンゴスチン果実殻には、柔らかい内殻及び硬い外殻が含まれる。
【0013】
好ましい実施形態では、マンゴスチン果実殻は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、アセトン、酢酸エチル及び水からなる群から選択される溶媒で抽出される。
【0014】
別の好ましい実施形態では、マンゴスチン果実殻の抽出物は、マンゴスチン果実殻の水抽出物及び/またはマンゴスチン果実殻のアルコール抽出物である。
【0015】
好ましい実施形態では、マンゴスチン果実殻の抽出物は、マンゴスチン果実殻水抽出物である。
【0016】
別の好ましい実施形態では、マンゴスチン果実殻の抽出物は、マンゴスチン果実殻アルコール抽出物である。
【0017】
好ましい実施形態では、マンゴスチン果実殻は、マンゴスチン果実殻の内殻/外殻、及び/またはマンゴスチン果実殻の全殻である。
【0018】
別の好ましい実施形態では、マンゴスチン果実殻は、マンゴスチン果実殻の外殻である。
【0019】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、経口または非経口調製物であり得、非経口製剤は、クリーム、ペースト、軟膏、ゲル、ウォッシュローションまたはパッチであり得る外用調製物であり得る。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明のマンゴスチン果実殻の抽出物は、α-マンゴスチン及びγ-マンゴスチンを含む。
【0021】
別の好ましい実施形態では、本発明のマンゴスチン果実殻の水抽出物は、α-マンゴスチン及びγ-マンゴスチンを含む。
【0022】
さらに別の好ましい実施形態では、本発明のマンゴスチン果実殻のアルコール抽出物は、α-マンゴスチン及びγ-マンゴスチンを含む。
【0023】
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、個体に投与した場合に有効な結果を達成できる量、またはin vivoもしくはin vitroで所望の活性を有する量である。乾癬の場合、無治療と比較したときに、有効な臨床転帰としては、疾患もしくは状態に関連する症状の範囲もしくは重症度の軽減、及び/または個体の延命及び/または個体の生活の質の改善が挙げられる。個体に投与される化合物の正確な量は、疾患または症状の種類及び重症度、ならびに個体の全身健康状態、年齢、性別、体重、薬物耐性など、個体の特性に応じて異なる。また、炎症性障害、自己免疫障害、アレルギー障害の状態、重症度、及び種類、または所望の免疫抑制効果によっても示され得る。当業者であれば、これら及び他の要因に基づいて適切な用量を決定することができるであろう。
【0024】
好ましい実施形態では、マンゴスチン果実殻の抽出物の有効量は、1%(w/w)~10%(w/w)である。最も好ましい実施形態では、マンゴスチン果実殻の抽出物の有効量は、1.25%(w/w)~5%(w/w)である。
【0025】
本発明の医薬組成物は、経口調製物または非経口調製物の種々の形態に製剤化させ得る。経口調製物は、粉末、顆粒、トローチ、カプセルなどの固形調整物として製剤化させ得るか、または懸濁液、乳濁液、シロップなどの液体調製物として製剤化させ得る。非経口調製物は、クリーム、軟膏、ゲル、ウォッシュローション、パッチなどの外用調製物として、あるいは吸入剤、エアロゾル、坐剤などとして製剤化させ得る。
【0026】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含むことができ、特に所定の溶媒または油、PH調整剤をさらに含むことができ、所望であれば、分散剤をさらに含むことができる。
【0027】
本発明で使用される溶媒の例としては、これらに限定されないが、水、エタノール、イソプロパノール、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
【0028】
本発明で使用される油の例は、これらに限定されないが、コーン油、ゴマ油、亜麻仁油、綿実油、大豆油、落花生油、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、鉱油、スクワレン、ホホバ油、オリーブ油、マツヨイグサ油、ボラージオイル、グレープシードオイル、ココナッツオイル、ヒマワリ油、シアバター、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0029】
溶媒及び油は、単独で使用することも、それらの任意の組み合わせで使用することもできる。
【0030】
有用な分散剤の例としては、これらに限定されないが、レシチン、有機モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ステアリン酸ソルビタンなどが挙げられる。これらの原料も単独でまたはそれらの任意の組み合わせにおいて使用することができる。
【0031】
所望であれば、組成物は、抗微生物剤または防腐剤などの追加の材料をさらに含む。
【0032】
一方で、本発明の組成物の医薬活性にいかなる副作用も有しない限り、有効成分が組成物と同時に使用され得ることが知られている。例えば、アトピー性皮膚炎の従来の剤としてセラミド保湿剤が一般的に使用されており、また、ヒドロコルチゾンステロイド、ビタミンAパルミテート及び/またはトコフェロールなどのビタミンA誘導体などの液体成分を組成物と共に使用することもできる。
【0033】
医薬組成物を外用調製物として使用する場合には、適切な皮膚外用調製物を基本材料として、水溶液、非水溶媒、懸濁液、乳濁液、凍結乾燥製剤などとして使用することができ、既知の方法に従って使用され、滅菌され得る。
【0034】
本発明において提供されるかまたは投与される組成物の実際の使用において、投与量は、投与経路、患者の年齢、性別、及び体重、疾患の重症度、及び有効成分としての医薬品の種類など、様々な要因に応じて決定され得る。
【0035】
本発明の組成物が、食品または化粧品組成物であり得る場合、組成物は、少なくとも1つの栄養補助食品または化粧品として許容される担体を適切に添加することによって調製することができる。
【0036】
食品組成物は、例えば健康食品に使用または添加することができる。本明細書において「健康食品」とは、本発明の組成物を含み、一般の食品製品と比較して、強化された機能を有する食品製品を指す。健康食品は、一般の食品を組成物に添加すること、またはカプセル化、粉砕、懸濁液化することにより調製され得る。
【0037】
化粧品組成物は、単独で添加してもよく、他の化粧品成分と共に添加してもよく、他の公知の方法に従って適宜使用することができる。化粧品としては、これらに限定されないが、アフターシェーブ、ローション、クリーム、フェイシャルマスク、及びカラーメイクアップが挙げられる。
【0038】
化粧品組成物は、ゲル、クリーム、軟膏などの様々な形態の組成物に製剤化され得る。ゲル、クリーム、及び軟膏の形態の組成物は、公知の方法を用いて、公知の軟化剤、乳化剤、増粘剤または当技術分野で公知の他の材料を添加することにより、組成物の形態に従って、適切に調製され得る。
【0039】
ゲル形態組成物は、例えば、トリメチロールプロパン、ポリエチレングリコール、及びグリセロールなどの軟化剤、例えばプロピレングリコール、エタノール、イソセチルアルコールの溶媒、及び純水を添加することにより調製することができる。
【0040】
クリームの形態の組成物の調製は、例えば、脂肪アルコール、例えば、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ベヘニルアルコール、レスベラトロール、イソステアリルアルコール及びイソセチルアルコール;乳化剤、例えば、脂質、例えば、レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスホイノシチド及びその誘導体、ステアリン酸グリセリル、パルミチン酸ソルビトール、ステアリン酸ソルビトール、など;天然油脂、例えば、アボカドオイル、アーモンドオイル、ババスオイル、ボラージオイル、ツバキ油、など;脂質組成物、例えば、セラミド、コレステロール、脂肪酸、フィトスフィンゴシン、レシチンなど;溶媒、例えば、プロピレングリコールなど;及び純水を添加することによって行われ得る。
【0041】
軟膏の形態の組成物の調製は、例えば皮膚軟化剤、乳化剤及びワックス、例えばマイクロクリスタリンワックス、パラフィン、セレシン、ミツロウ、鯨ろう、ペトロラタムなどを添加することによって行われ得る。
【0042】
別の態様では、本発明は、乾癬を治療または緩和するための医薬品を調製するために組成物を使用するための方法を提供する。本明細書で使用される場合、用語「治療することまたは緩和すること」は、患者が医薬品を使用するときに、疾患の経過または症状を停止させるかまたは遅延させることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】IL-23を注射した場合及びプラセボを注射した場合の右耳の厚さの変化を、PBSを注射した左耳と比較した結果を示す。
図2A】乾癬に対する3つの軟膏サンプルの治癒的効果を示す。すべての軟膏サンプルが、副作用をいずれも引き起こさなかったことを示す。図2Aにおいて略語:W:全殻抽出物。
図2B】乾癬に対する3つの軟膏サンプルの治癒的効果を示す。3つの軟膏サンプルが乾癬を治療する可能性があることを示す。図2Bにおいて略語:W:全殻抽出物。
図2C】乾癬に対する3つの軟膏サンプルの治癒的効果を示す。3つの軟膏サンプルが乾癬を治療する可能性があることを示す。図2Cにおいて略語:W:全殻抽出物。
図2D】乾癬に対する3つの軟膏サンプルの治癒的効果を示す。3つの軟膏サンプルが乾癬を治療する可能性があることを示す。図2Dにおいて略語:W:全殻抽出物。
図3A】すべての軟膏サンプルが表皮の肥厚を大幅に軽減していることを示す。H&E染色を使用した、PBS/IL-23を注射マウスの耳組織切片の組織学を示す。スケールバー、50μM。
図3B】すべての軟膏サンプルが表皮の肥厚を大幅に軽減していることを示す。耳の上層(背側)の厚さが測定されたことを示す。結果は、平均値±SEMとして表される。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、スチューデントt検定。略語:W:全殻抽出物。
図4A】5%の内殻抽出物及び5%の外殻抽出物の治癒的効果を示す。5%内殻抽出物及び5%外殻抽出物が両方とも、乾癬を治療する可能性を示し、5%外殻抽出物の治癒的効果が、5%内殻抽出物の治癒的効果より優れていたことを示す。図4Aにおいて、略語:W:全殻抽出物;I:内殻抽出物;O:外殻抽出物。
図4B】5%の内殻抽出物及び5%の外殻抽出物の治癒的効果を示す。5%の内殻抽出物及び5%の外殻抽出物が表皮の肥厚を大幅に減少させることを示す。結果は、平均値±SEMとして表される。*P<0.05、***P<0.001、スチューデントt検定。図4Bにおいて、略語:W:全殻抽出物;I:内殻抽出物;O:外殻抽出物。
図4C】5%の内殻抽出物及び5%の外殻抽出物の治癒的効果を示す。5%の内殻抽出物及び5%の外殻抽出物が表皮の肥厚を大幅に減少させることを示す。結果は、平均値±SEMとして表される。*P<0.05、***P<0.001、スチューデントt検定。図4Cにおいて、略語:W:全殻抽出物;I:内殻抽出物;O:外殻抽出物。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下の実施例は、非限定的であり、本発明の様々な態様及び特徴を単に代表するものである。
【0045】
実施例
医薬組成物の調製
マンゴスチン果実殻を収集し、50%~95%乾燥させ、溶媒(水または10%~95%のアルコールなど)で抽出し、濃縮してマンゴスチン果実殻の抽出物を得た。
【0046】
マンゴスチン果実殻の外殻と内殻を分離し、マンゴスチン果実殻の外殻及びマンゴスチン果実殻の内殻をそれぞれ50%~95%乾燥させ、溶媒(水または10%~95%アルコールなど)で抽出し、濃縮して、マンゴスチン外殻抽出物及びマンゴスチン内殻抽出物を得た。
【0047】
マンゴスチン果実殻のアルコールの抽出物及び水の抽出物、マンゴスチンの内殻、外殻のアルコールの抽出物及び水の抽出物から、様々な濃度のペーストまたは軟膏を調製した。
【0048】
IL-23誘導乾癬マウスモデルの樹立
本試験には、8~11週齢の雄野生型マウス(C57BL/6)を使用した。100%酸素を含む1%~3%イソフルランにより、マウスに麻酔を行った。乾癬様病因を誘導するために、前述のように、マウスの右耳にIL-23を注射し、左耳に対照緩衝液(PBS)を注射した。31ゲージニードルを使用して、担体非含有組換えマウスIL-23(10μl中1μg;eBioscience、カタログ番号34-8231-85)を右耳に皮内注射する。注射は、乾癬様障害を誘導するために隔日で14日間継続して行う。滅菌PBSをビヒクル対照としてマウスの左耳に注射した。
【0049】
動物実験
48匹の乾癬様障害誘導マウスお及び12匹の非誘導マウスを含む60匹のマウスを動物実験に使用した。すべてのマウスを2つの試験(各試験につき30匹)に分けた。各試験において、5つの群、群1(1.25%全殻抽出物で治療した6匹の乾癬様障害誘導マウス)、群2(2.5%全殻抽出物で治療した6匹の乾癬様障害誘導マウス)、群3(5%全殻抽出物で治療した6匹の乾癬様障害誘導マウス)、群4(プラセボで治療した6匹の乾癬様障害誘導マウス)、及び群5(PBSのみを投与された6匹非誘導マウス)を含めた。2つの試験及び群の割り当てを表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
滅菌PBSを、ビヒクル対照として群5のマウスの左耳に注射した。プラセボ(群4)及び3つの軟膏サンプル(群1~群3)を、0日目~13日目まで毎日注射点に塗布した(各耳に40.25mg/cm)。すべてのマウスを14日目に屠殺した。耳厚は、ポケット厚さ計(pocket thickness gage)(Mitutoyo Corp.)を用いて、耳の中心において、隔日、測定した。耳の写真は、0日目、5日目、9日目、及び14日目に撮影した(データは示さず)。
【0053】
ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色及び表皮厚の測定
実験の最後に、マウスを屠殺し、注射された耳を採取した。耳の半分を10%ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、切片を作成し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。平均表皮厚は、Olympus cellSens Standardソフトウェアを使用して、各サンプルのランダムに選択した5つの部位で、角質層を除く表皮の最外表面と真皮表皮接合部との間の距離を測定することにより、H&E染色切片上で測定した。
【0054】
結果
IL-23誘導乾癬マウスモデルを用いた3つの軟膏サンプルの効果を試験した。マウスの右耳には、1μgの担体非含有組換えマウスIL-23を隔日、14日間注射し、左耳には、滅菌PBSビヒクル対照を注射した。
【0055】
プラセボと3つの軟膏サンプル(各耳に40.25mg/cm)を毎日注射点に塗布した。耳の写真は、0日目、5日目、9日目、及び14日目に撮影した。耳の腫張に対する軟膏サンプルの効果を確認するために、耳厚を隔日測定した。プラセボによるIL-23注射右耳の耳厚は、3日目から13日目まで、PBSを注射した左耳の耳厚と比較して、有意な変化を示した(図1)。その結果、IL-23注射を使用することにより、乾癬の症状のうちの1つであるマウスの耳の腫張の誘導に成功し得ることが示された。
【0056】
すべての群のPBSを注射した左耳の耳厚は、0日目から14日目の間に有意な変化を示さなかった(図2A)。これは、すべての軟膏サンプルがいかなる副作用も引き起こさなかったことを示した。
【0057】
1.25%、2.5%、5%全殻抽出物の3つの軟膏サンプルにより、IL-23を注射した右耳の耳厚を図2B~2Dに示した。これらはすべて、5日目に耳の腫張を顕著に軽減させた。そのうちの1つである5%全殻抽出物では、5日目から9日目及び13日目の長期間にわたって、耳の腫張が軽減した。
【0058】
屠殺したマウスから得た耳切片について組織学的分析を行った。H&E染色により、表皮の肥厚、真皮への表皮網状隆起の突出、及び炎症部位への多くの細胞浸潤など、プラセボ群における乾癬様表現型の特徴が明らかになった(図3A)。軟膏サンプルを塗布した群では、表皮厚が減少し、細胞浸潤がわずかに減少した。
【0059】
各マウスの表皮厚を測定した(図3B)。これらの結果は、PBSのみの群と比較して、プラセボ群では、厚さが顕著に増加していることも示した。プラセボ群の結果とは対照的に、1.25%全殻抽出物、2.5%全殻抽出物、5%全殻抽出物を含むすべての軟膏サンプルでは、表皮厚が顕著に減少した。H&E染色の結果は、組織学的分析において、乾癬様マウスモデルの軟膏サンプルにより、表皮厚が顕著に減少し、乾癬様表現型をわずかに減少させ得ることを示した。
【0060】
すべての軟膏サンプル塗布群が、5日間で早期に治癒的効果を示し、特に5%全殻抽出物を投与した場合、耳厚の減少が長期間持続することも示したことは、注目に値する。
【0061】
いずれの部分が乾癬の治療に対して、主に有効性を示すかをさらに評価するために、マンゴスチン殻の外殻5%とマンゴスチン殻の内殻5%とを同じ実験に使用して、すべての群と比較した。
【0062】
図4Aに示すとおり、内殻抽出物及び外殻抽出物が両方とも、乾癬に対する潜在的な効果を示した。5%内殻抽出物及び5%外殻抽出物を含むIL-23を注射した右耳の耳厚の結果も、5日目に耳の腫張が顕著に減少したことを示した(図4B及び4C)。特に、5%外殻抽出物を投与した場合、5%内殻抽出物を投与した場合よりも耳厚の減少が長期間持続することが示された。
【0063】
すべての結果は、これらの軟膏サンプルの治療では、乾癬によって引き起こされる症状を軽減することができ、そのうちの1つである5%全殻抽出物が、長期間持続して、耳厚を減少させ得ることを実証するものであった。
【0064】
本発明は、当業者がそれを作成及び使用するために十分詳細に説明及び例示されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な代替、変更、及び改良が明らかであるものとする。
【0065】
当業者であれば、本発明が、目的を実行し、言及された目的及び利点、ならびに本発明に固有のものを得るために十分に適合されていることを容易に理解する。細胞、動物、及びそれらを生産するためのプロセス及び方法は、好ましい実施形態の代表的なものであり、例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。その中の修正及び他の使用が、当業者において生じるであろう。これらの修正は、本発明の趣旨に包含され、特許請求の範囲によって定義される。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
【国際調査報告】