(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】IL-1Raが富化された血漿を調製する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61K 35/16 20150101AFI20240927BHJP
C12N 5/078 20100101ALN20240927BHJP
C07K 14/545 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
A61K35/16
C12N5/078
C07K14/545
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510495
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 IL2022050924
(87)【国際公開番号】W WO2023026286
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524063992
【氏名又は名称】エスター テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】エステロン アーロン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC14
4B065BC07
4B065BD15
4B065BD18
4B065BD21
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA05
4C087BB35
4C087DA15
4C087MA66
4C087NA20
4C087ZC51
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA03
4H045EA20
(57)【要約】
ガラスビーズ又はポリアクリルアミドマイクロビーズを使用してインターロイキン受容体1アンタゴニスト(「IL-1Ra」)が富化された血漿を調製し、そのIL-1Raが富化された血漿をフィルタを用いて回収する方法及び装置が開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-1Raが富化された血漿組成物を調製する方法であって、
ポリマーマイクロビーズを含む採取容器又は採取管にPRP画分を採取する工程と、
前記ポリマーマイクロビーズを前記PRP画分と混合して、マイクロビーズ及びPRPの均質な混合物を形成する工程と、
前記均質な混合物を所定時間放置する工程と、
前記混合物をフィルタに通し、かつ/又は前記混合物を含む前記容器若しくは管を遠心し、前記マイクロビーズ、細胞及び細胞画分を分離し、前記IL-1Raが富化された血漿組成物を得る工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記ポリマーマイクロビーズはミクロンスケールの親水性ポリアクリルアミドビーズである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーマイクロビーズは採取管中で前記PRP画分と混合され、前記混合物をフィルタに通す工程は、前記均質な混合物を約15分間放置した後にスリーブフィルタを前記均質な混合物に押し込み、前記スリーブフィルタ中に、前記ビーズが除去されたIL-1Raが富化された血漿画分を得ることを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スリーブフィルタが前記遠心管に挿入された状態で、前記IL-1Raが富化された血漿画分を前記スリーブフィルタからシリンジで除去する工程をさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーマイクロビーズを前記PRPと混合する工程は、ボルテックス装置で混合すること、又はシリンジに取り付けられた針で撹拌することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ピコグラム/ミリリットルで測定されるIL-1Ra濃度は、ELISAアッセイによって決定される場合、ベースラインPRPと比較して、前記IL-1Raが富化された血漿組成物において2.8~25.8倍増加する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記血漿組成物中に得られた総IL-1Raは、ピコグラムで測定して、ベースラインと比較して2.2~21倍増加する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
IL-1Raが富化された血漿組成物を調製する方法であって、
ガラスビーズ、ポリマーマイクロビーズ、又はガラスビーズとポリマーマイクロビーズとの組み合わせを備えた遠心管に全血試料を採取する工程と、
前記全血試料を所定の時間前記ビーズの表面と接触させる工程と、
前記全血試料を遠心分離して、IL-1Ra富化血漿を得る工程と、
IL-1Ra富化血漿をフィルタに通して、前記IL-1Raが富化された血漿組成物を得る工程と
を含む、方法。
【請求項9】
前記全血試料は、抗凝固剤、分離ゲル及び前記ガラスビーズを備えた遠心管に採取される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記全血試料は、i)30~40℃の温度で4~24時間、又はii)室温で5分~1時間、前記ビーズの表面と接触させられ、その後、1000g~3000gで遠心分離される請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記IL-Ra富化血漿は、ディスクフィルタを有するシリンジを介して前記遠心管から取り出され、前記IL-Ra富化血漿は、ディスクフィルタに通されて、IL-Ra富化血漿の用量アリコートが得られる請求項8に記載の方法。
【請求項12】
IL-1Raが富化された血漿組成物を調製する方法であって、
ガラスの採取容器又は採取管に全血を採取する工程であって、前記容器又は管は、抗凝固剤の不存在下で密度分離ゲル及びガラスマイクロビーズを含む工程と、
前記容器又は管を30分~24時間インキュベートする工程と、
インキュベーション後、前記容器又は管を900~2500gで遠心する工程と、
前記混合物を0.2~1.0ミクロン(0.2~1.0μm)フィルタに通すか、又は3000~5000gで第2の遠心分離工程を行って、前記マイクロビーズ、細胞及び細胞画分を分離する工程と、
前記IL-1Raが富化された血漿組成物を集める工程と
を含む、方法。
【請求項13】
インキュベーションは5%CO
2を含む雰囲気中で行われる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記混合物を0.2~1.0ミクロン(0.2~1.0μm)に通す前記工程は、前記混合物を直接シリンジへとディスクフィルタに通すことを含む請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスビーズ又はポリアクリルアミドマイクロビーズを使用してインターロイキン受容体1アンタゴニスト(「IL-1Ra」)が富化された血漿を調製する方法及び装置に関する。本発明の実施形態は、IL-1Raが富化された多血小板血漿(platelet rich plasma、PRP)組成物の調製に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の発明者による米国特許第9,962,480号明細書及び米国特許第10,617,812号明細書は、密度分離媒体を使用する遠心管中での血液試料の遠心分離を使用する分離及び様々なフィルタシステムを使用する細胞成分の分離を含む、多血小板血漿(PRP)等の細胞が富化された細胞試料を得るためのシステム及び方法に向けられた実施形態を含む。これらの特許の開示は、参照により組み込まれる。
【0003】
本発明の発明者による米国特許第8,734,373号明細書は、血漿画分から細胞成分を分離するために試験管にぴったりとフィットするように適合された細長いフィルタ装置を使用することを含む、PRPを調製するデバイス及び方法を記載している。この特許の開示は、採取管に挿入されるように適合されたフィルタに関するので、この特許の開示も参照により組み込まれる。
【0004】
同じく本発明の発明者による米国特許第10,167,310号明細書及び米国特許第10,519,196号明細書は、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)が富化された血漿画分を得るシステム及び方法に向けられた実施形態を含む。実施形態では、開示される方法は、採血管中の血液試料を遠心分離にかけること、及び血漿画分をインキュベートしてその画分をIL-1Raに関して富化することを含む。これらの特許の開示は、同様に参照により組み込まれる。
【0005】
IL-1Raの回収が増強された、IL-1Raが富化された血漿試料を得る方法及びデバイス、並びにIL-1Raが富化されたPRPをより高い効率で提供する方法が、当該技術分野において依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第9,962,480号明細書
【特許文献2】米国特許第10,617,812号明細書
【特許文献3】米国特許第8,734,373号明細書
【特許文献4】米国特許第10,167,310号明細書
【特許文献5】米国特許第10,519,196号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明のいくつかの態様は、IL-1Raが富化された(enriched)血漿試料を得るための単純かつ効果的な方法、及びIL-1Raが富化されたPRPを提供する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様では、本発明は、IL-1Raが富化された血漿組成物を調製する方法であって、ポリマーマイクロビーズを含む採取容器又は採取管にPRP画分を採取する工程と、前記ポリマーマイクロビーズを前記PRP画分と混合して、マイクロビーズ及びPRPの均質な混合物を形成する工程と、前記均質な混合物を所定時間放置する(sit)工程と、前記混合物をフィルタに通し(かつ/又は前記混合物を含む容器又は管を遠心し)、前記血漿の細胞及び/又は細胞画分とともに前記マイクロビーズを分離し、前記IL-1Raが富化された血漿組成物を得る工程とを含む方法である。
【0009】
実施形態では、IL-1Raの回収率(処理後の最終生成物の中のIL-1Ra質量をベースラインPRPの中のIL-1Ra質量で割ったものとして定義される)は、5倍超及び10倍超等の中間の値を含んで、2.2~21倍の範囲にある。濃度(ピコグラム/ml)の増加として、本発明の技術は、ベースラインに対して2.8~25.8倍の濃度の増加をもたらしてもよい。
【0010】
別の態様では、本発明は、IL-1Raが富化された血漿組成物を調製する方法であって、ガラスビーズを備えた遠心管に全血試料を採取する工程と、前記全血試料を所定の時間(例えば、i)30~40℃の温度で4~24時間、又はii)室温で5分~1時間)前記ビーズの表面と接触させる工程と、前記全血試料を遠心分離して、IL-1Ra富化血漿を得る工程と、IL-1Ra富化血漿をフィルタに通して、前記IL-1Raが富化された血漿組成物を得る工程とを含む方法において具体化される。
【0011】
実施形態では、ガラスビーズを用いたIL-1Raの(ベースラインと比較した)回収率は、ガラスビーズを用いない場合の回収率よりも1.2倍、1.3倍、1.4倍以上大きい。実施形態では、ガラスビーズは、ポリマーマイクロビーズと組み合わせて、及びポリマーマイクロビーズを伴って又は伴わずに、分離媒体(ゲル等)と組み合わせて使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明と見なされる主題は、明細書に添付された書類において特に指摘され明確に請求される。しかしながら、添付の図面とともに読まれるときの以下の詳細な説明を参照することによって、本発明は、構成及び動作方法の両方に関して、その目的、特徴、及び利点とともに、最もよく理解されうる。
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る、ポリマーマイクロビーズ上でPRPをインキュベートし、続いてスリーブフィルタを用いてIL-1Ra富化PRPを回収することによって、PRPがIL-1Raに関して富化されるプロセスシーケンスを描く。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る、全血がガラスビーズとともにインキュベートされ、続いて遠心分離され、IL-1Ra富化血漿が回収されるプロセスシーケンスを描く。
【0014】
図示の簡潔さ及び明確さを考慮して、図に示される要素は必ずしも一定の縮尺で描かれてはいないことが理解されよう。例えば、要素のうちのいくつかのものの寸法は、明確さを考慮して、他の要素に対して誇張されている場合がある。さらに、適切であると考えられる場合、参照番号は、対応する又は類似の要素を示すために複数の図にわたって繰り返される場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明で使用するための容器又は管は、ガラス又はプラスチックで作られた真空又は非真空タイプであってもよい。実施形態では、本発明で使用される採取管は、ポリアクリレート(PA)又はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)又はポリエチレンナフタレート(PEN)等の耐久性プラスチックから作製される。他の実施形態において、管又は容器は、ガラス又はコーティングされたガラスであってもよい。
【0016】
実施形態では、容器又は管には、1.04~1.08g/mlの範囲、実施形態では1.073~1.078g/mlの範囲の密度を有するゲル等の分離媒体が与えられる。実施形態では、ヘパリン塩、クエン酸塩/クエン酸(例えば、クエン酸ナトリウム/クエン酸)、クエン酸塩/クエン酸-デキストロース(酸-クエン酸塩-デキストロースACD)、クエン酸塩-デキストロース-リン酸塩、シュウ酸塩、及びシュウ酸塩-フッ化物塩等の抗凝固剤が管又は容器に提供される。実施形態において、容器又は管はゲルなしで提供される。実施形態では、容器又は管は、抗凝固剤なしで提供される。
【0017】
容器又は管は、ガラスビーズ及び/又は高い吸水率を有するポリマーマイクロビーズ、例えば、ポリアクリルアミド(PAA)マイクロビーズ、を予め挿入されてもよい。あるいは、細胞試料のインキュベーションに従来使用されているタイプのガラスビーズが使用されてもよい。両方の系の例が以下に提供され、時として、プロセス工程の組み合わせに応じて驚くほど異なる結果をもたらす。
【0018】
上記の容器又は管は、10~100mlの全血、例えば10~50mlの全血で満たされてもよい。あるいは、ガラスビーズ又はポリマーマイクロビーズは第2の容器又は管に予め挿入され、次いでその第2の容器又は管が、血漿又は別個の容器若しくは管で生成されたPRP画分を採取するために使用されてもよい。
【0019】
抗凝固剤及びガラスビーズが採取管に予め挿入される場合、管は、4~24時間インキュベートされるか、又は周囲温度で0~1時間置かれ、続いて1000g~3000g、例えば1500gにおいて遠心(分離)されてもよく、その遠心で、IL-1Raが富化された血漿の画分は、上述の米国特許第10,519,196号明細書に記載されるように、スリーブフィルタ(sleeve filter)によって分離されてもよいし、又はシリンジに直接、若しくは0.22~0.45ミクロン(0.22~0.45μm)のディスクフィルタを介してシリンジに移されて、細胞及び細胞残渣並びにマイクロビーズを分離し、IL-1Raが富化された血漿が適切な温度、例えば、IL-1Raの剤形を保存することを可能にする-5~-20℃で保存され、使用のために調製されることを可能にしてもよい。上記の濾過手順は、細胞、細胞画分及びマイクロビーズを沈降させるための、例えば2000~4000gで5~10分間の第2の遠心分離の後、処理されてもよい。
【0020】
第1の容器又は採取管がガラスビーズ又はポリマーマイクロビーズなしで提供される場合、分離された血漿を得るために、血液試料は、数分間、例えば5~10分間、1000~3000gで、例えば1500gで遠心分離されてもよく、上側画分は低血小板血漿(platelet poor plasma、PPP)であり、下側画分(まだゲルの上)は、単球及びリンパ球が富化されているが、セパレーターとして作用するゲルの特異的特性のために赤血球及び顆粒球が枯渇したPRPとなる。PPPが除去され、例えば全血漿体積の50%~75%が除去され、細胞は残りの血漿中に分散されてIL-1Ra富化組成物が調製される。
【0021】
PRP画分は、ガラスビーズ及び/又はプラスチックマイクロビーズとともに第2の採取管に挿入されてもよい。第2の管にガラスビーズのみが予め挿入される場合、インキュベーションは、例えば37℃で、5%CO2を伴って又は伴わずに、1~24時間、例えば8~16時間進行してもよく、IL1Raが富化された血漿は、例えば0.22~0.45ミクロン(0.22~0.45μm)の孔径を有するディスクフィルタを介して集められ、細胞が排除され、処理時に、又は-5~-20℃等の適切な温度で保存した場合に処理の時から3~12ヶ月後に、IL-1Raについて濃縮された血漿が提供される。
【0022】
採取管にポリマーマイクロビーズのみ又はポリマーマイクロビーズ及びガラスビーズのみが予め挿入される場合、IL-1Ra富化血漿の収集は、直ちに又は1時間まで行うことができ、例えば、生成物は、15~30分後に、0.22(0.22μm)~40ミクロン(40μm)の孔径を有するスリーブフィルタを介して、及び/又は0.22ミクロン~0.45ミクロン(0.22~45μm)の好ましい孔径を有するディスクフィルタを介して、又は直接、シリンジに取り出されてもよい。
【0023】
1つの実施形態では、全血が、抗凝固剤の不存在下で、密度分離ゲル及びガラスマイクロビーズを含むガラス採取容器に採取され、続いてPRP画分が30分~24時間インキュベートされる。インキュベーション後、混合物は900~2500gで遠心分離されて画分が分離されてもよい。IL-1Ra濃縮物を集めるために、IL-1Raが富化された画分は、マイクロビーズ、細胞及び細胞画分を分離する0.2~1.0ミクロン(0.2~1.0μm)のフィルタに通されてもよい。あるいは、その混合物は、3000~5000gで遠心分離されて、これらの成分が除去され(removed)てもよい。得られたIL-1Raが富化された血漿組成物は、患者への注射に使用されてもよい。
【0024】
IL-1Ra富化血漿の注入は、上記の手順の直後に、又はIL-1Ra富化血漿が適切な温度、例えば-5~-20℃で保存される場合、1~12ヶ月後にさえ行うことができる。
【0025】
実施形態において、本明細書に記載される方法に従って調製されるIL-1Ra富化血漿生成物は、早期及び後期の整形外科病理学的状態の両方のための、並びに/又は慢性整形外科疾患の自然進行を減速させるための、注射による等の処置として有効であってもよい。IL-1Ra富化血漿生成物は、早期症状を有する患者及び予防療法を探す家族歴を有する患者において有効であってもよい。実施形態において、上記生成物は、整形外科手術における予防的療法として、又は損傷後の症状修飾因子の選択肢として使用されてもよい。注射間隔は、症状の重症度及び再出現に応じて行うことができる。
【0026】
自己IL-1Ra療法は、免疫学的応答がなく、薬理学的処置なしで非外科的低侵襲療法を提供する。得られたIL-1Raはかなり濃縮されており、赤血球及び炎症誘発性白血球による汚染が実質的にない。
【0027】
図1に示すように、管10は、ポリマーマイクロビーズ12を備えてもよく、PRPは、シリンジ14から管10に提供されてもよい。PRP20は、シリンジ18に接続されたブラント(鈍型)針を使用して、又はボルテックス装置22を使用して混合されてもよい。工程24では、混合物は約15分間静置される。その後、スリーブフィルタ26が管の底部に向かって挿入されて、IL-1Ra富化血漿が採取されてもよく、このIL-1Ra富化血漿は、対象と直接使用するためにシリンジ30を使用して取り出されてもよい。
【0028】
図2に示すように、別の実施形態では、ガラス管又はプラスチック管40は、ガラスマイクロビーズ又はポリマーマイクロビーズ42及び分離ゲル43を備えてもよい。全血は、工程44において添加されてもよく、工程46において、管は、4~24時間インキュベートされてもよいし、又は周囲条件において1時間まで放置されてもよい。インキュベーションに続いて、例えば1000g~3000gで遠心分離が行われ、赤血球56及びゲル52から血漿画分50が分離されてもよい。所望の量のIL-1Ra富化血漿が、分離された画分58から、シリンジ60及び0.2~1.0ミクロン(0.2~1.0μm)のディスクフィルタを用いて取り出されてもよい。IL-1Raのアリコート70は、現場での、又は、適切な貯蔵72が提供される(-5℃~-20℃)場合には後日の、1人以上の対象74への投与のために集められてもよい。
【実施例】
【0029】
実施例1
マイクロビーズを使用するTropokine(商標)IL-1Ra富化血漿(示唆プロトコル)
1. 目的
血液分離プラットフォーム、例えばTropoCells(登録商標)に由来し、ポリアクリルアミド(PAA)マイクロビーズを用いるTropokine(商標)P中で融合されるIL-1Raの生成を誘導すること。
2. 機器
2.1. 抗凝固剤を含むゲルを含む22mLのTropoCells(登録商標)管
2.2. TropoCells(登録商標)ベント針
2.3. VACU20S
2.4. 10mLシリンジ×3
2.5. ディスクフィルタ40
2.6. シリンジフィルタ 0.22μm
2.7. 鋭利な針 16G/90mm
2.8. 2つのブラント針 100mm
2.9. PAAマイクロビーズを有するTropokine(商標)Pガラス管
2.10. スリーブフィルタ
2.11. 少なくとも1500gに達することができる遠心分離機
2.12. ボルテックス機械(任意選択)
3. 手順
3.1. 採血
3.1.1. 血液を22mLのTropoCells(登録商標)管に引き込む。
3.1.2. 管を2~4回反転させて、血液を抗凝固剤と混合する。
3.1.3. 管を遠心分離機に挿入する。常にバランス管を使用する。
3.2. 遠心分離
3.2.1. 1,500RCF(g)で20分間回転させる。
3.2.2. 管を遠心分離機から穏やかに取り出し、それをスタンドに置く。
3.3. PRP調製
3.3.1. ベント針を管ゴム栓に挿入する。
3.3.2. 長い鋭利な針を管ゴム栓に挿入する。
3.3.3. ディスクフィルタを10mlシリンジに取り付け、それを、事前(工程3.3.2)に管に挿入した長い鋭利な針に接続する。
3.3.4. PPPを取り出し、5mlの血漿のみを残す。
注:針でゲルに触れない。針の先端はゲルの上方にあるべきである。
3.3.5. 針を管に挿入し続け、PPPを含むシリンジのみを取り外す。
3.3.6. 長い鋭利な針に接続したディスクフィルタに新しい10mlシリンジを取り付ける。
3.3.7. 管を10回反転させることによって、ゲルの上部に置かれた細胞を残りの血漿に懸濁させる。
3.3.8. PRPを回収する。
注:針でゲルに触れない。針の先端はゲルの上方にあるべきである。
3.4. IL-1Ra富化
3.4.1. PAAマイクロビーズを有する10mLのTropokine(商標)P(登録商標)ガラス管のゴム栓を開き、すべてのマイクロビーズがPRP液体で浸漬されるように管を穏やかに傾けながらPRPを徐々に移し、シリンジに接続したブラント針を使用して、マイクロビーズをPRPとよく混合する。
注:すべてのマイクロビーズがPRPとよく混合され、白色粉末の残留物がないことを確実にする。
3.4.2. ゴム栓で管を閉じ、管をPAAマイクロビーズとともに室温で15分間静置する。
3.4.3. ゴム栓を取り外し、スリーブフィルタを管に挿入する。
3.4.4. スリーブフィルタを管に沿って押す。
注:すべての残りの血漿が抽出され、マイクロビーズゲル沈殿剤が白っぽくなったことを確認する。
3.4.5. 0.22μmシリンジフィルタを備えた新しいシリンジにブラント針を接続し、それをスリーブフィルタの底に挿入して濃縮された富化血漿を回収する。
オプション1:ボルテックスを用いてPAAマイクロビーズをPRPとよく混合する。
オプション2:管を5~10分間遠心して、細胞、細胞画分及びマイクロビーズを沈降せる。
3.4.6. 試料をアリコートに分け、ELISAによる分析まで最大7ヶ月-20℃で保存する。凍結融解サイクルの繰り返しを回避する。
3.5. ELISA評価
IL-1Ra濃度値が必要な場合、以下を処理する。
3.5.1. 供給者のマニュアルに従って、Quantikine Human IL-1ra/IL-1F3 Immunoassay 番号DRA00Bを用いてELISAを実施する。
注:予備研究において、使用したELISAのO.D.波長は450nmであり、540nm又は570nmにおけるO.D.を差し引かなかった。
【0030】
下記表1に示すように、1つの試料のELISA評価は、PAAビーズを使用して、上記の手順に従って得たIL-1Ra濃度のほぼ10倍の増加を示した。「倍」数計算は、処理後の最終生成物の中のIL-1Ra質量をベースラインPRPの中のIL-1Ra質量で割ることによって得られる。
【0031】
【0032】
実施例2
ガラスビーズを使用するTropokine(商標)IL-1Ra富化血漿(示唆プロトコル)
4. 目的
ガラスビーズとともにTropokine(商標)G管中で全血をインキュベートすることによってIL-1raの生成を誘導すること。
5. 機器
5.1. ゲルを含む22mL又は11mLのTropoCells(登録商標)管
5.2. ガラスビーズを含む22mL又は11mLのTropokine(商標)G管(ゲル及びガラスビーズを伴う任意選択の血液)
5.3. ベント針
5.4. VACU20S
5.5. 10mLシリンジ
5.6. ディスクフィルタ 40μm
5.7. シリンジフィルタ 0.22μm
5.8. 鋭利な針 16G/90mm又は16G/65mm
5.9. ゲル(任意選択)を含む22mL又は11mLのTropoCells(登録商標)管
5.10. 少なくとも2000gに達することができる遠心分離機
5.11. 37℃に達することができるインキュベータ
6. 手順
6.1. 採血及びIL-1Ra富化
6.1.1. 血液を22mL又は11mLのTropokine(商標)G管に引き込む。
6.1.2. 管を2~4回反転させて、血液をガラスビーズと混合する。
6.1.3. 管を37℃で一晩インキュベートする。
6.2. 血漿血液分離
オプション1
6.2.1. インキュベーション後、管を1500~2000RCF(g)で10分間回転させる。
6.2.2. 管を遠心分離機から穏やかに取り出し、それをスタンドに置く。
6.2.3. ベント針を管ゴム栓に挿入する。
6.2.4. 鋭利な針を管ゴム栓に挿入する。
6.2.5. 0.22μmディスクフィルタを10mLシリンジに取り付け、それを、事前(3.2.4)に管に挿入した鋭利な針に接続する。
6.2.6. 血漿を引き込む。
6.2.7. 試料をアリコートに分け、ELISAによる分析まで最大7ヶ月-20℃で保存する。凍結融解サイクルの繰り返しを回避する。
オプション2 - ガラスビーズのみを含む管で作業する場合に関連する
6.2.8. インキュベーション後、血液を、抗凝固剤を含まないゲルを含むTropoCells(登録商標)管に移す。
6.2.9. 管を1,500RCF(g)で10分間回転させる。
6.2.10. ベント針を管ゴム栓に挿入する。
6.2.11. 鋭利な針を管ゴム栓に挿入する。
6.2.12. 0.22μmディスクフィルタを10mLシリンジに取り付け、それを、事前(3.2.11)に管に挿入した鋭利な針に接続する。
6.2.13. 血漿を引き込む。
6.2.14. 試料をアリコートに分け、ELISAによる分析まで最大7ヶ月-20℃で保存する。凍結融解サイクルの繰り返しを回避する。
6.3. ELISA評価
IL-1Ra濃度値が必要な場合、以下を処理する。
6.3.1. 供給者のマニュアルに従って、Quantikine Human IL-1Ra/IL-1F3 Immunoassay 番号DRA00Bを用いてELISAを実施する。
注:予備研究において、ELISAのO.D.波長は450nmであり、540nm又は570nmにおけるO.D.を差し引かなかった。
【0033】
【0034】
ELISA評価により、ガラスビーズを使用することが確認された。「倍数」は、ビーズによる処理後のベースラインのIL-1Ra質量をベースラインのIL-1Ra質量で割ることによって計算した。ガラスビーズを含む全血 - ガラスビーズを含むガラス管中の血液。ガラスビーズを含まない全血 - ガラスビーズを含まないガラス管中の血液。
【0035】
実施例3 - ガラス及びプラスチックの採取容器;ポリマーマイクロビーズ;及びガラスビーズを使用する比較効果
全血試料を4人のドナーから入手し、IL-1Raを測定し、ベースラインで、及びマイクロビーズのみを含むガラス管、マイクロビーズのみを含むプラスチックシリンジ、ガラス採取管のみ;ガラスビーズ及びマイクロビーズを含むガラス管;並びにガラスビーズ+分離ゲル+マイクロビーズを有するガラス管、を使用して、上記の技術に従って処理した後に、濃度(pg/ml)及び総質量(pg)として報告し、以下の結果を得た。
【0036】
【0037】
【0038】
試料の体積を表5に報告する。
【0039】
【0040】
増加倍数(総質量基準)を表6に報告する。
【0041】
【0042】
実施例4
この実施例では、全血を、抗凝固剤の不存在下で、密度分離ゲル及びガラスマイクロビーズを含むガラス管に採取した。この容器を、(最終生成物中の異なる量のIL-1Raを調製するために)30分~24時間インキュベートした後、管を1500gで10分間遠心した。IL-1Raが富化された血漿組成物を、シリンジを介して血漿画分から直接得て、この混合物を0.2~1.0ミクロン(0.2~1.0μm)のディスクフィルタに通した。表7は、異なるインキュベーション期間後の試料中で得られたIL-1Raの平均質量をピコグラムで示す。
【0043】
【0044】
本発明は、限られた数の実施形態に関して説明されてきたが、これらの実施形態は、本発明の範囲に対する限定として解釈されるべきではなく、むしろ、好ましい実施形態のいくつかの例示として解釈されるべきである。他の可能な変形例、改変例、及び応用例も本発明の範囲内にある。従って、本発明の範囲は、これまで説明されたものによってではなく、添付の特許請求の範囲及びそれらの法的均等物によって限定されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-1Raが富化された血漿組成物を調製する方法であって、
ポリマーマイクロビーズを含む採取容器又は採取管にPRP画分を採取する工程と、
前記ポリマーマイクロビーズを前記PRP画分と混合して、マイクロビーズ及びPRPの均質な混合物を形成する工程と、
前記均質な混合物を所定時間放置する工程と、
前記混合物をフィルタに通し、かつ/又は前記混合物を含む前記容器若しくは管を遠心し、前記マイクロビーズ、細胞及び細胞画分を分離し、前記IL-1Raが富化された血漿組成物を得る工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記ポリマーマイクロビーズはミクロンスケールの親水性ポリアクリルアミドビーズである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーマイクロビーズは採取管中で前記PRP画分と混合され、前記混合物をフィルタに通す工程は、前記均質な混合物を約15分間放置した後にスリーブフィルタを前記均質な混合物に押し込み、前記スリーブフィルタ中に、前記ビーズが除去されたIL-1Raが富化された血漿画分を得ることを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スリーブフィルタが前記遠心管に挿入された状態で、前記IL-1Raが富化された血漿画分を前記スリーブフィルタからシリンジで除去する工程をさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーマイクロビーズを前記PRPと混合する工程は、ボルテックス装置で混合すること、又はシリンジに取り付けられた針で撹拌することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ピコグラム/ミリリットルで測定されるIL-1Ra濃度は、ELISAアッセイによって決定される場合、ベースラインPRPと比較して、前記IL-1Raが富化された血漿組成物において2.8~25.8倍増加する請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記血漿組成物中に得られた総IL-1Raは、ピコグラムで測定して、ベースラインと比較して2.2~21倍増加する請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
IL-1Raが富化された血漿組成物を調製する方法であって、
ガラスビーズ、ポリマーマイクロビーズ、又はガラスビーズとポリマーマイクロビーズとの組み合わせを備えた遠心管に全血試料を採取する工程と、
前記全血試料を所定の時間前記ビーズの表面と接触させる工程と、
前記全血試料を遠心分離して、IL-1Ra富化血漿を得る工程と、
IL-1Ra富化血漿をフィルタに通して、前記IL-1Raが富化された血漿組成物を得る工程と
を含む、方法。
【請求項9】
前記全血試料は、抗凝固剤、分離ゲル及び前記ガラスビーズを備えた遠心管に採取される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記全血試料は、i)30~40℃の温度で4~24時間、又はii)室温で5分~1時間、前記ビーズの表面と接触させられ、その後、1000g~3000gで遠心分離される請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記IL-Ra富化血漿は、ディスクフィルタを有するシリンジを介して前記遠心管から取り出され、前記IL-Ra富化血漿は、ディスクフィルタに通されて、IL-Ra富化血漿の用量アリコートが得られる請求項8に記載の方法。
【請求項12】
IL-1Raが富化された血漿組成物を調製する方法であって、
ガラスの採取容器又は採取管に全血を採取する工程であって、前記容器又は管は、抗凝固剤の不存在下で密度分離ゲル及びガラスマイクロビーズを含む工程と、
前記容器又は管を30分~24時間インキュベートする工程と、
インキュベーション後、前記容器又は管を900~2500gで遠心する工程と、
前記混合物を0.2~1.0ミクロン(0.2~1.0μm)フィルタに通すか、又は3000~5000gで第2の遠心分離工程を行って、前記マイクロビーズ、細胞及び細胞画分を分離する工程と、
前記IL-1Raが富化された血漿組成物を集める工程と
を含む、方法。
【請求項13】
インキュベーションは5%CO
2を含む雰囲気中で行われる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記混合物を0.2~1.0ミクロン(0.2~1.0μm)に通す前記工程は、前記混合物を直接シリンジへとディスクフィルタに通すことを含む請求項12に記載の方法。
【国際調査報告】