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特表2024-535993水素化/脱水素化の可逆性が改善された白金担持触媒、及びこれを用いた液体有機水素運搬体ベースの水素貯蔵及び放出方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】水素化/脱水素化の可逆性が改善された白金担持触媒、及びこれを用いた液体有機水素運搬体ベースの水素貯蔵及び放出方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/42 20060101AFI20240927BHJP
   C07C 15/24 20060101ALI20240927BHJP
   C07C 15/12 20060101ALI20240927BHJP
   C07C 15/16 20060101ALI20240927BHJP
   C07C 5/367 20060101ALI20240927BHJP
   C07D 215/06 20060101ALI20240927BHJP
   C07D 211/10 20060101ALI20240927BHJP
   C07D 209/86 20060101ALI20240927BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
B01J23/42 Z
C07C15/24
C07C15/12
C07C15/16
C07C5/367
C07D215/06
C07D211/10
C07D209/86
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513081
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 KR2022014625
(87)【国際公開番号】W WO2023055108
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0128547
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0185870
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507107394
【氏名又は名称】アイユーシーエフ-エイチワイユー(インダストリー-ユニバーシティー コーオペレイション ファウンデーション ハンヤン ユニバーシティー)
(74)【代理人】
【識別番号】110003801
【氏名又は名称】KEY弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ソ ヨンウン
(72)【発明者】
【氏名】オ ジンホ
(72)【発明者】
【氏名】ゾ ヨンイン
(72)【発明者】
【氏名】キム テワン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169CB02
4G169CB07
4H006AA05
4H006AC12
4H006BA26
4H006BA55
4H006BA80
4H039CA41
4H039CC10
(57)【要約】
本開示内容では、固相法をベースにして、活性金属として、単原子及びクラスターの形態が混在した白金(Pt)金属がアルミナ担体に担持された水素化/脱水素化触媒、及びこれを用いて高い選択的転化率及び高効率で水素を可逆的に貯蔵及び放出できる技術が記載される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体有機水素運搬体の水素化/脱水素化触媒であって、
アルミナ担体;及び
前記アルミナ-含有担体に担持される活性金属としての、単原子の形態及びクラスターの形態を含む白金;
を含み、
触媒内の白金の含量(元素基準)は、0.01重量%乃至10重量%で、
前記担持される白金中のクラスター形態の白金含量は、10%乃至55%の範囲である触媒。
【請求項2】
前記触媒内の白金は、5nm以下のサイズを有することを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記触媒内のアルミナ担体は、少なくとも300m/gのBET比表面積、0.4cm/g乃至0.55cm/gのポア体積、及び3nm乃至4.5nmのポアサイズを有することを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記担持される白金中のクラスター形態の白金含量は、22%乃至30%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒は、(111)面を有する白金結晶を含有し、また、還元状態であることを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
液体有機水素運搬体の水素化/脱水素化触媒の製造方法であって、
a)少なくとも一つのアルミナ前駆体、少なくとも一つの白金前駆体、及び塩基成分を含む混合物に外部エネルギーを加えながら溶媒の不存在下で固相反応を行い、ゲル形態の触媒固形物を形成する段階;及び
b)前記触媒固形物を酸素-含有雰囲気下で熱処理し、単原子及びクラスターの形態を含む白金をアルミナ-含有担体に担持させる段階;
を含み、
触媒内の白金の含量(元素基準)は、0.01重量%乃至10重量%の範囲で、
前記担持される白金中のクラスター形態の白金含量は、10%乃至55%の範囲である方法。
【請求項7】
前記段階b)の熱処理段階中の熱処理温度は300℃乃至800℃、昇温速度は1℃/min乃至15℃/min、熱処理時間は3時間乃至60時間の範囲でそれぞれ調節されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
c)前記熱処理された触媒固形物を還元処理し、白金を完全還元状態又は部分的還元状態に転換する段階をさらに含み、
ここで、還元処理温度は300℃乃至600℃、昇温速度は1℃/min乃至10℃/min、還元処理時間は1時間乃至10時間の範囲でそれぞれ調節されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記段階a)中の白金前駆体/塩基成分のモル比は、0.0001乃至0.1の範囲であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
液体有機水素運搬体に触媒の存在下で水素を貯蔵する水素化段階;及び
前記水素化された液体有機水素運搬体から触媒の存在下で水素を放出させる脱水素化段階;を含み、
前記水素化段階及び前記脱水素化段階のうち少なくとも一つに使用される触媒は、
アルミナ担体;及び
前記アルミナ-含有担体に担持される活性金属としての、単原子の形態及びクラスターの形態を含む白金;
を含み、
触媒内の白金の含量(元素基準)は0.01重量%乃至10重量%で、前記担持される白金中のクラスター形態の白金含量は10%乃至55%の範囲である触媒で、
前記水素化段階及び脱水素化段階が交互に行われることによって、水素を貯蔵したり、水素を放出したりする方法。
【請求項11】
前記液体有機水素運搬体は、下記の一般式1乃至9で表される化合物から選ばれた少なくとも一つであることを特徴とする、請求項10に記載の方法:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
前記式において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18のそれぞれは、水素又はC乃至Cのアルキル基で、Xは、-(CHR19-(nは、1乃至3の整数で、R19は、H、OH、又はC乃至Cのアルキル基である。)で、Yは、CH又はNである。
【請求項12】
前記液体有機水素運搬体は、100℃以下の融点、及び380℃以下の沸点を有することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒内の活性金属(Pt)/液体有機水素運搬体の比(M/R)は、0.05モル%乃至0.4モル%の範囲で調節されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
水素化段階でのM/Rの比は0.1モル%乃至0.4モル%の範囲で調節される一方で、脱水素化段階でのM/Rの比は0.05モル%乃至0.15モル%の範囲で調節されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記水素化段階は、50℃乃至250℃の温度及び5bar乃至100barの圧力条件で行われ、
前記脱水素化段階は、100℃乃至350℃の温度及び1bar乃至10barの圧力条件で行われることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記水素化段階での水素化反応効率は少なくとも62%で、前記脱水素化段階での脱水素化反応効率は少なくとも50%であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、水素化/脱水素化の可逆性が改善された白金担持触媒、及びこれを用いた液体有機水素運搬体ベースの水素貯蔵及び放出方法に関する。より具体的には、本開示内容は、固相法をベースにして、活性金属として単原子(single atom)及びクラスター(cluster)の形態が混在した白金(Pt)金属がアルミナ担体に担持された水素化/脱水素化触媒、及びこれを用いて高い選択的転化率及び高効率で水素を可逆的に貯蔵及び放出できる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の埋蔵量の減少、燃焼時に発生する汚染物質、及び二酸化炭素による地球温暖化などの環境汚染問題が深刻に台頭するにつれて、代替エネルギーの開発に対する全世界的な関心及び需要が爆発的に増加している。
【0003】
代替エネルギー源として、風力、潮力、地熱、水素エネルギー、太陽エネルギーなどの新再生エネルギーが脚光を浴びているが、前記列挙したエネルギー源のそれぞれは長所と短所を有している。これと関連して、新再生エネルギーは、時間及び自然環境によるエネルギー源の不安定性によって円滑な需要及び供給が困難であるので、従来の化石燃料を効果的に代替するためには、安定的にエネルギーを供給できるように余剰エネルギーを貯蔵して供給する技術に対する開発が必要である。
【0004】
このような観点で、水素エネルギーは、(i)単位質量当たりにエネルギー効率が最も高く、(ii)燃焼時に水のみが発生するだけで、他の有害な副産物がなく、(iii)水素の主なソースである水が自然に豊富にあり、使用後に水に転換されるので再使用の面で有利であり、そして、(iv)水素を燃料として使用する分散型電源であって、精密産業及びIT産業の競争力を確保するのに適しているので、特に注目されている。さらに、水素は、太陽エネルギー、風力などの他の新再生エネルギーを用いて生産することができ、多様なエネルギー源のみならず、他の産業分野(例えば、各種の石油化学分野)でも広範囲に適用され得るなど、韓国内外で未来の核心エネルギー源として浮び上がっている。
【0005】
一般に、水素エネルギーの研究開発は、水素の製造分野、運搬(輸送)分野、及び貯蔵分野に大きく区分されるが、水素は、質量当たりのエネルギー貯蔵能力に優れる一方で、体積当たりのエネルギー貯蔵能力が低いので、水素を効率的に貯蔵する技術が水素エネルギーの実用化において最も大きな障害要因として作用している。例えば、77K条件で10重量%以上の質量貯蔵密度を有する物質が知られているが、これらの物質の体積貯蔵密度は40g/Lであって、実際に水素貯蔵物質として使用するには体積貯蔵密度が低い方である。よって、最大限軽く、且つ体積が小さい貯蔵媒体に、可能な限り多くの量の水素を貯蔵する技術に対する研究が活発に進められている。
【0006】
これと関連して、各国は、数年間多くの研究開発費を投資しており、今まで研究開発された水素の効率的な貯蔵方法としては、700barの圧力を用いて水素を圧縮するCGH2方法、及び零下253℃で液化させることによって液体水素を保管するLH2方法がある。しかし、このような加圧又は液化方式では、低い温度を維持しなければならなく、液相水素の密度も71.2kg/mであって低いレベルである。
【0007】
これに対する代案として、水素貯蔵能を有する物質、例えば、無機-有機骨格構造体(Metal-organic frameworks;MOFs)、カーボンナノチューブ、ゼオライト、活性炭などの多孔性有機又は無機ナノ素材、メタルハイドライドなどが、水素エネルギーを効果的に貯蔵する物質として関心を受けている(Nature,427,523(2004);J.Am.Chem.Soc.,127,14904(2005);特開2008-95172号公報;特開2011-131120号公報など)。しかし、MOFs、多孔性ナノ素材の物理的吸収による常温気相水素貯蔵技術の場合、エネルギー貯蔵密度が相対的に低く、水素の貯蔵及び脱着時に要求されるエネルギーが比較的大きいので、小型化及びモジュール化が難しい。
【0008】
最近は、有機物、具体的には液体有機水素運搬体(LOHC;Liquid Organic Hydrogen Carrier)を用いた可逆的触媒水素化/脱水素化反応による水素貯蔵技術が開発されたことがある(米国特許第7,901,491号など)。LOHC技術は、米国エネルギー省(DOE)の勧告案である5重量%以上の水素を貯蔵することができ、低い圧力範囲で運転することができ、貯蔵物質を容易に再生できるなどの長所を有しており、また、液体化石燃料の長所である取り扱いの容易性及び高いエネルギー密度により、既存の液体燃料の輸送インフラ及び貯蔵インフラを用いた効率的な輸送及び貯蔵が可能な実用的な水素貯蔵システムを提供することができる(Energy Rev.,6(2002)141;Energy Environ.Sci.,8(2015)1035-1045)。
【0009】
LOHC物質としてπ-共役基材形態の化合物を用いる技術が知られているが(例えば、米国特許第7,351,395号など)、π-共役によって一律的な反応性を確保することが難しく、また、ほとんどが固相として存在するので混合物の形態で使用される。上述した困難性を緩和するために、水素貯蔵物質としてベンジルトルエン及びジベンジルトルエンを使用する技術も知られている(例えば、韓国公開特許第2015-97558号公報など)。このような水素運搬体は、常温で液相として存在し、280℃以上の沸点を有するので、活用の面では制約がほとんどないが、炭化水素構造の限界により、水素化及び脱水素化反応効率を高めるのに限界がある。
【0010】
一方、LOHCを用いた水素貯蔵/放出システムを商用化するためには、水素貯蔵物質の開発以外にも、多様な技術要因を考慮しなければならない。このうち、触媒においては、水素化/脱水素化反応の活性及び可逆性、触媒の安定性(再使用可能性)、商用工程に適したLOHCの適用可能性などが検討されなければならない。
【0011】
これと関連して、良好な水素化活性を有するものとして知られている白金を担持した触媒を用いたLOHCベースの水素貯蔵及び放出プロセスを考慮することができる。白金担持触媒の場合、一般に水素を容易に水素原子に解離できるので、水素化分解反応(hydrogenolysis)又は水素化反応(hydrogenation)などの、水素気体を反応物と接触する反応に効果的である。また、LOHCシステムでは、このような触媒は、環式化合物を通じて水素を放出するための活性点として作用し、脱水素化反応(dehydrogenation)にも効果的であり得る。
【0012】
しかし、LOHCの水素化/脱水素化反応に白金-担持多孔性アルミナ担体触媒を使用した場合にも、活性金属の分散度が高くないので、依然として脱水素化(水素放出)活性が不十分になり得る。また、白金-担持アルミナ触媒は、典型的には含浸法によって製造されているが、アルミナ担体を合成し、金属を担持するためには複数の段階を伴うので、触媒の製造において時間が長くかかり、商用化の面で不利になる。特に、アルミナ固有の特性によって触媒安定性をある程度確保できるが、追加的に改善された性能を達成するのに限界がある。
【0013】
また、既存の水素化/脱水素化触媒の場合、主に窒素-含有ヘテロ環を有するLOHCシステムを中心に比較的良好な水素貯蔵/放出性能を示しているが、商用企業では、デカリンなどの炭化水素のみからなるLOHCでも良好な水素貯蔵/放出性能を提供できる技術に対する要求が高い実情である。
【0014】
したがって、従来知られている金属-担持触媒、特に白金-担持触媒に比べて水素化/脱水素化反応活性及び可逆性の面でより良好であるだけでなく、多様な種類のLOHCに対しても良好な性能を提供する触媒が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008-095172号公報
【特許文献2】特開2011-131120号公報
【特許文献3】米国特許第7,901,491号
【特許文献4】米国特許第7,351,395号
【特許文献5】韓国公開特許第2015-97558号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Nature,427,523(2004)
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.,127,14904(2005)
【非特許文献3】Energy Rev.,6(2002)141
【非特許文献4】Energy Environ.Sci.,8(2015)1035-1045
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本開示内容の一具体例では、液体有機水素運搬体に対する水素化/脱水素化反応効率及び可逆性、長期安定性、液体有機水素運搬体の拡張性などにおいて改善された性状を有する触媒及びその製造方法を提供しようとする。
【0018】
本開示内容の他の具体例によると、上述した触媒を用いた液体有機水素運搬体ベースの水素貯蔵/放出工程を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本開示内容の第1面によると、
液体有機水素運搬体の水素化/脱水素化触媒であって、
アルミナ担体;及び
前記アルミナ-含有担体に担持される活性金属としての、単原子の形態及びクラスターの形態を含む白金;
を含み、
触媒内の白金の含量(元素基準)は0.01重量%乃至10重量%で、
前記担持される白金中のクラスター形態の白金含量は10%乃至55%の範囲である触媒が提供される。
【0020】
本開示内容の第2面によると、
液体有機水素運搬体の水素化/脱水素化触媒の製造方法であって、
a)少なくとも一つのアルミナ前駆体、少なくとも一つの白金前駆体、及び塩基成分を含む混合物に外部エネルギーを加えながら溶媒の不存在下で固相反応を行い、ゲル形態の触媒固形物を形成する段階;及び
b)前記触媒固形物を酸素-含有雰囲気下で熱処理し、単原子及びクラスターの形態を含む白金をアルミナ-含有担体に担持させる段階;
を含み、
触媒内の白金の含量(元素基準)は0.01重量%乃至10重量%の範囲で、
前記担持される白金中のクラスター形態の白金含量は10%乃至55%の範囲である方法が提供される。
【0021】
本開示内容の第3面によると、
液体有機水素運搬体に触媒の存在下で水素を貯蔵する水素化段階;及び
前記水素化された液体有機水素運搬体から触媒の存在下で水素を放出させる脱水素化段階;を含み、
前記水素化段階及び前記脱水素化段階のうち少なくとも一つに使用される触媒は、
アルミナ担体;及び
前記アルミナ-含有担体に担持される活性金属としての、単原子の形態及びクラスターの形態を含む白金;
を含み、
触媒内の白金の含量(元素基準)は0.01重量%乃至10重量%で、前記担持される白金中のクラスター形態の白金含量は10%乃至55%の範囲である触媒で、
前記水素化段階及び脱水素化段階が交互に行われることによって、水素を貯蔵したり、水素を放出したりする方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本開示内容の具体例によると、触媒内のアルミナ担体上に単原子形態の白金及びクラスター形態の白金を含む白金が活性金属として担持されることによって、窒素-含有液体有機水素運搬体のみならず、炭化水素からなる液体有機水素運搬体の全てに対して良好な水素化(水素貯蔵)/脱水素化(水素放出)活性を達成することができ、特に、水素化/脱水素化の可逆性を改善するという長所を提供する。また、本開示内容の他の具体例では、溶媒の使用がなくても、白金前駆体及びアルミナ前駆体を含む原料混合物に対してミーリングなどの簡単な物理的又は機械的な外部エネルギーを加える方式で単一段階反応を行い、特に熱処理又は焼成条件を調節し、白金の存在形態に影響を及ぼす方式で上述した白金-担持アルミナ触媒特有の性状を具現することができる。このように製造された触媒は、比較的高い触媒製造費用及び時間がかかる含浸法などの2段階の触媒製造方式の技術的限界を克服できるだけでなく、液体有機水素運搬体の水素化/脱水素化反応時に改善された活性を長期間にわたって維持するなどの複合的な長所を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】多様な含量の白金(1重量%、2重量%、3重量%、及び5重量%)を担持した、実施例(固相法)に係る白金-担持触媒(MPtA)及び比較例(含浸法)に係る白金-担持触媒(Pt/gA)のそれぞれについてのXRDパターンである。
図2】a及びbは、それぞれ多様な含量の白金(1重量%、2重量%、3重量%、及び5重量%)を担持した、実施例(固相法)に係る白金-担持触媒(MPtA)及び比較例(含浸法)に係る白金-担持触媒(Pt/gA)についての暗視野(dark field)HAADF-STEM写真である。
図3】多様な含量の白金を担持した、実施例(固相法;Pt担持量:1重量%、2重量%、3重量%、及び5重量%)に係る白金-担持触媒(MPtA)及び比較例(含浸法;Pt担持量:1重量%、3重量%、及び5重量%)に係る白金-担持触媒(Pt/gA)のそれぞれについてのCO-DRIFTスペクトルグラフである。
図4】多様な含量の白金(1重量%、2重量%、3重量%、及び5重量%)を担持した、実施例(固相法)に係る白金-担持触媒(MPtA)及び比較例(含浸法)に係る白金-担持触媒(Pt/gA)のそれぞれについてのH-TPD結果を示すグラフ(図面内の数値は、水素吸着量(単位:mmol gPt -1)である。)である。
図5】a及びbは、それぞれ多様な含量の白金(1重量%、3重量%、及び5重量%)を担持した、実施例(固相法)に係る白金-担持触媒(MPtA)及び比較例(含浸法)に係る白金-担持触媒(Pt/gA)についてのEXAFSフィッティング結果を示すグラフ(参照物質は、Ptホイル及びPtOである。)である。
図6】a及びbは、それぞれ多様な含量の白金(1重量%、2重量%、3重量%、及び5重量%)を担持した、実施例(固相法)に係る白金-担持触媒(MPtA)及び比較例(含浸法)に係る白金-担持触媒(Pt/gA)を用いた水素化及び脱水素化反応効率を比較したグラフである。
図7】焼成条件の変化によるPt-担持触媒(担持量:1重量%及び3重量%)についてのXRDパターン(a、b)及びH-TPD結果(c、d)を示すグラフである。
図8】焼成条件の変化によるPt-担持触媒についてのHAADF-STEM写真(a及びbは担持量3重量%で、c及びdは担持量1重量%である。)である。
図9】焼成条件の変化によるPt-担持触媒についての脱水素化反応の時間による水素放出曲線(aは担持量3重量%で、bは担持量1重量%である。)である(反応条件:250℃、1bar、4h、貴金属(mol)/反応物(mol)0.1%)。
図10】実施例(固相法)に係る白金-担持触媒(M3PtA)及び比較例(含浸法)に係る白金-担持触媒(3Pt/gA)のそれぞれについての触媒の長期安定性を評価するための脱水素化反応結果を示すグラフである(反応条件:250℃、1bar、4h、貴金属(mol)/反応物(mol)0.1%)。
図11】実施例(固相法)に係る白金-担持触媒(M3PtA)及び比較例(含浸法)に係る白金-担持触媒(3Pt/gA)のそれぞれの反応前後のXRDパターン(a、b)及び使用後の触媒のHAADF-STEM写真(c、d)である。
図12】a及びbは、それぞれ実施例(固相法)に係る白金-担持触媒(M3PtA)及び比較例(含浸法)に係る白金-担持触媒(3Pt/gA)を用いたH-BTの水素貯蔵及び放出効率を比較した結果を示すグラフである(水素化反応条件:150℃、35bar H、2h;脱水素化反応条件:250℃、4h)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、下記の説明によって全て達成され得る。下記の説明は、本発明の好適な具体例を記述するものとして理解しなければならなく、本発明が必ずしもこれに限定されることはない。また、添付の図面は、理解を促進するためのものであって、本発明がこれに限定されるものではないことを理解しなければならない。
【0025】
本明細書で使用される用語は、下記のように定義され得る。
【0026】
「不均一系触媒」は、触媒反応過程で反応物と異なる相(phase)として存在する触媒を意味し得るが、例えば、反応媒質内で溶解されない触媒を意味し得る。不均一系触媒の場合、反応が起こるためには、少なくとも一つの反応物が不均一系触媒の表面に拡散されて吸着しなければならなく、反応後には生成物が不均一系触媒の表面から脱着する必要がある。
【0027】
「担体(support)」は、触媒活性成分が付着した高い比表面積を有する材料(典型的には固相材料)を意味し得る。
【0028】
「単原子(single atom)形態の活性金属」は、担体に付着又は固定される活性金属が原子の形態で単離された(isolated)か、又は個別化された状態で存在するものとして理解され得る。
【0029】
「クラスター(cluster)形態の活性金属」は、例えば、約5nm以下のサイズ、具体的には約3nm以下のサイズ、より具体的には約2nm以下のサイズを有する活性金属(すなわち、少なくとも2個の活性金属原子の集合)が担体に付着又は固定されるものとして理解され得る。
【0030】
「水素化(hydrogenation)」は、水素の供給下で化合物を触媒と接触させ、化合物の少なくとも一部分に水素を化学的に付加することによって、化合物内の水素含量を増加させる反応を意味し得る。
【0031】
「脱水素化(dehydrogenation)」は、化合物内の水素が除去された後、さらに、除去された水素を化合物から放出する反応を意味し得る。
【0032】
「含浸法(impregnation)」は、触媒前駆体を溶解させた溶液を、別途に合成された担体に含浸させた後、必要時に乾燥及び/又は焼成(又は還元)処理過程を経る方式で触媒を製造する方法を意味し得る。
【0033】
「塩」は、包括的には、金属陽イオンが無機陰イオン又は有機陰イオン種と結合した化合物を意味し得る。
【0034】
〔全体的な開示内容〕
本開示内容の一具体例は、従来の水素化/脱水素化反応用触媒として知られている白金-担持アルミナ触媒が、液体有機水素運搬体を用いた水素貯蔵及び放出(すなわち、水素化及び脱水素化)プロセスに適用される場合、良好な水素化/脱水素化反応の可逆性を確保しにくい点、触媒の長期安定性が低下し、反復的な水素貯蔵及び放出システムの運転が難しい点、制限された種類の液体有機水素運搬体を用いた水素貯蔵及び放出に適用可能である点などの技術的限界を一挙に解決することができる。
【0035】
一般に、触媒内の活性金属としての金属(特に、ナノメートルレベルの金属粒子)のサイズは、反応活性に重大な影響を及ぼす要因として作用する。すなわち、同一の表面積を有する担体に同一の量の活性金属を担持する場合、金属のサイズを最小化するほど、同一の担体に担持される金属活性点の数が増加するようになる。よって、活性金属の分散度を高め、配位された表面原子の比率を増加させることによって、1金属原子当たりの触媒活性を促進させることができる。
【0036】
これと関連して、原子単位(単原子の形態)で担体に結合されている単原子触媒(single atom catalyst:SAC)は、触媒の活性点を増加させるのには効果的であるが、表面エネルギーが大きいので、高温で凝集したり固まる現象(aggregation)を誘発したりして、粒子のサイズが増加する傾向を示す。その一方で、クラスター形態で担持された触媒の場合、複数の金属原子とリガンドとが結合され、他の金属酸化物と同様に組織的な構造を有するので、触媒の安定性の面で優れている。本具体例に係る白金-担持触媒は、従来の含浸法で製造された合成された触媒に比べて、広い表面積に均一に金属を分散させ、活性を増進させることができ、特に、単原子及びクラスターが組み合わせられた(混合された)形態の白金を担持しており、単原子及びクラスターのそれぞれの長所を一挙に具現することによって、単原子の形態及びクラスターの形態のそれぞれから予想される程度を超える効果を提供することができる。特に、含浸法によって製造される場合は、クラスターに比べて大きい粒子(particle)の形態で担持されるが、これは、本具体例に係る触媒が従来技術に係る白金-担持触媒と明確に差別化される要素に該当する。
【0037】
このように、本具体例に係る白金-担持触媒の場合、触媒合成法を通じて白金が単原子及びクラスターの組み合わせを含む形態で担持され、単一反応器内でも気相又は液相の水素化及び脱水素化反応の両方に対して優れた触媒活性を示すだけでなく、良好な可逆性を示すことができ、さらに、触媒の長期安定性の面でも改善された性状を提供することができる。特に注目すべき点は、担持される活性金属(白金)中のクラスター(又は単原子)形態の白金の比率を所定の範囲で適宜調節する場合、液体有機水素運搬体を用いた水素貯蔵/放出反応において、水素貯蔵効率に比べて改善しにくい白金系触媒の水素放出効率を効果的に増加できることである。
【0038】
〔水素化/脱水素化触媒〕
本開示内容の一具体例によると、水素化/脱水素化反応、具体的には多様な範囲の液体有機水素運搬体、具体的には窒素-含有ヘテロ環を有する液体有機水素運搬体のみならず、炭化水素のみからなる液体有機水素運搬体の全てに対して、水素化/脱水素化反応を通じた水素の貯蔵/放出に適した触媒(すなわち、不均一系触媒)が提供される。
【0039】
これと関連して、水素化/脱水素化触媒は、大きくは、多孔性アルミナ-含有担体に活性金属として白金を含む担持触媒であって、特に、白金は、単原子及びクラスターの混合形態で担体上に分散・担持された状態であり得、また、結晶(crystallites)形態であり得る。このとき、白金結晶は、主に(111)面を含有することができる。また、触媒内の白金は、酸化状態及び/又は還元状態(又は、元素状態又は部分的還元状態)であってもよく、より具体的には還元状態であってもよい。このとき、還元状態は、酸化された状態(焼成処理された状態)の触媒を還元処理する方式で具現することができる。
【0040】
例示的な具体例において、触媒内の白金の含量(担持量)は、元素を基準にして、例えば、約0.01重量%乃至10重量%、具体的には約0.1重量%乃至5重量%、より具体的には約0.5重量%乃至3重量%の範囲であり得る。
【0041】
例示的な具体例によると、触媒内の白金は、約5nm以下、具体的には約3nm以下、より具体的には約0.1nm乃至2nmの範囲のサイズを有する単原子及びクラスターの組み合わせ形態であり得る。白金のサイズが一定のレベルを超える場合は、担体上に担持される金属の分散度の低下によって反応効率が減少する分だけ、上述した範囲内で調節されることが有利であり得るが、反応条件などによって前記数値範囲で多少変更されることもある。
【0042】
一方、本具体例において、水素化/脱水素化触媒の担体は、アルミナ-含有担体であり得る。このようなアルミナは、メソ多孔性アルミナであってもよく、典型的にはインクボトル(ink-bottle)型又はチャネル型ポア(細孔)連結性を示し得るので、水素化/脱水素化反応において相対的に高い表面積、高い充填密度、熱的安定性、物理的強度、及び再生力を示すことができる。
【0043】
例示的な具体例によると、前記触媒内の担体のBET比表面積は、例えば、少なくとも約300m/g、具体的には約320m/g乃至400m/g、より具体的には約350m/g乃至380m/gの範囲であり得る。このような比表面積は、従来の多様な化学反応で使用されたγ-アルミナ担体に比べて著しく高いレベルであるので、活性金属である白金を効果的に分散させるのに適している。
【0044】
例示的な具体例によると、触媒内の担体のポア体積は、例えば、約0.4cm/g乃至0.55cm/g、具体的には約0.42cm/g乃至0.5cm/g、より具体的には約0.45cm/g乃至0.49cm/gの範囲であり得る。また、触媒内の担体のポアサイズ(大きさ)は、例えば、約3nm乃至4.5nm、具体的には約3.5nm乃至4.3nm、より具体的には約3.8nm乃至4.1nmの範囲であり得る。
【0045】
例示的な具体例によると、触媒の形状は、特に限定されることはないが、触媒の安定性及び効率を考慮すると、ボール形状、タブレット形状、顆粒形状、ペレット形状などの構造物を適用することができる。このとき、触媒のサイズ(又は直径)は、例えば、約0.1mm乃至10mm、具体的には約0.5mm乃至5mm、より具体的には約1mm乃至3mmの範囲であり得るが、これは、例示的な目的として理解され得る。
【0046】
本具体例に係る白金-担持アルミナ触媒は、広い範囲の液体有機水素運搬体に対する水素化/脱水素化反応活性を高めることができ、特に、水素化/脱水素化反応の可逆性を改善することができる。さらに、触媒を構成する金属成分間の改善された相互作用により、水素化/脱水素化反応の持続的な反復運転下でも良好な触媒活性(すなわち、長期安定性)を維持できる点は、従来の白金-担持触媒(典型的には含浸法によって製造される。)と区別される。
【0047】
〔触媒の製造〕
本開示内容の他の具体例によると、活性金属である白金が単原子及びクラスターの組み合わせ形態でアルミナ担体に担持される液体有機水素運搬体の水素化/脱水素化触媒の製造方法が提供される。
【0048】
これと関連して、従来技術で通常適用されている含浸法によって白金/アルミナ担持触媒を製造する場合、アルミナ担体上に白金が粒子の形態で存在するようになり、所定の活性を示すためには、相対的に高い含量の白金を担持する必要がある。しかし、本具体例に係る触媒製造方法では、含浸法(液体金属前駆体溶液を製造した後、これを多孔性無機酸化物担体(具体的にはアルミナ)と接触させ、担体のポアに金属前駆体を固定又は付着させる方式)の場合、金属前駆体溶液の製造に必要な溶媒を使用しないと共に、白金前駆体及びアルミナ前駆体を単一段階で反応させ、後続的に熱処理(具体的には酸素-含有雰囲気下での熱処理)を行う簡単な方式を通じて単原子の形態及びクラスターの形態が混在した白金を選択的にアルミナ-含有担体上に均一に分散させることによって、水素化/脱水素化反応の活性及び可逆性を改善することができ、さらに、窒素-含有ヘテロ環を有する液体有機水素運搬体のみならず、炭化水素のみからなる液体有機水素運搬体に対しても、液相又は気相反応時に優れた水素化/脱水素化活性を有する触媒を製造することができる。
【0049】
さらに、触媒の長期安定性を向上させるためには、活性金属と担体との間に強い相互作用が要求され、また、なるべく活性金属を担体に均一に分散・担持させることが好ましい。金属酸化物(metal oxide)ベースの担体として、アルミナ担体は、基本的には活性金属の前駆体と強く結合されるので、触媒の安定性の面で効果的なものとして知られているが、含浸法によるアルミナ担体として広く使用されるγ-アルミナの場合、活性金属を単原子及びクラスターなどの微細なサイズで均一に分散させるための性状(特に比表面積)を提供しにくい。また、相対的に高い比表面積を有するアルミナを担体として用いて含浸法によって白金を担持する場合にも、製造方式の特性上、最終触媒の比表面積を画期的に増加させるのに限界があり、依然として単原子レベルまで白金サイズを低減しにくい。
【0050】
一具体例によると、まず、少なくとも一つのアルミナ前駆体、少なくとも一つの白金前駆体、及び塩基成分を含む前駆体混合物を製造する。
【0051】
例示的には、前駆体混合物は、3つの成分を同時に混合することができる。択一的には、3つの成分のうち2つの成分を先に混合した後、残りの成分を添加する方式で製造されることもある。例えば、アルミナ前駆体と塩基成分を先に混合した後、白金前駆体を添加して混合することができる。
【0052】
例示的な具体例によると、前記白金前駆体は、白金の有機酸塩又は無機酸塩、錯体又はその組み合わせであり得る。このような白金前駆体としては、例えば、PtF、PtF、[PtF、PtCl、PtCl、PtCl12、PtBr、PtBr、PtI、PtI、PtI、PtO、PtO、PtO、PtS、PtS、Pt(CO)、[PtCl(NH]、[PtCl(NH]、K[PtCl]、K[Pt(CN)]、PtCl・5HO、K[PtCl(NH)]、Na[PtBr]・6HO、(NH[PtBr]、K[PtI]、(NH[PtCl]、K[Pt(CN)]、(NH[PtCl]、K[Pt(NO]、K[PtCl(C)]・HO、[Pt(NH](NO、HPtClなどから選ばれる少なくとも一つを使用できるが、必ずしもこれに限定されることはない。特定の具体例によると、白金前駆体として[Pt(NH](NOを使用することができる。
【0053】
また、アルミナ前駆体は、アルミニウムの有機酸塩又は無機酸塩、アルコキシド、錯体又はそれらの組み合わせであり得るが、その代表的な例は、酢酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトナート、臭化アルミニウム、アルミニウムt-ブトキシド、アルミニウムsec-ブトキシド、アルミニウムペントキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロキシド、アルミニウムトリブトキシド、塩化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、及びそれらの水和物からなる群から選ばれた少なくとも一つであり得る。より具体的には、アルミナ前駆体としては、硝酸アルミニウム及び/又はその水和物を使用することができる。
【0054】
例示的な具体例によると、塩基成分としては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、硝酸アンモニウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも一つを使用することができ、より具体的には炭酸水素アンモニウムを使用することができる。このように塩基を使用する理由は、酸性の金属前駆体から金属酸化物を形成するにおいて、塩基成分が添加されて沈澱されながら金属塩及び水が形成される中和反応が発生するためである。
【0055】
例示的な具体例によると、前駆体混合物内の白金前駆体/塩基成分のモル比は、例えば、約0.0001乃至0.1、具体的には約0.002乃至0.05、より具体的には約0.008乃至0.02の範囲であり得るが、塩基の使用量が過度に少ないか多い場合は、合成の最終段階であるゲルの形成にかかる時間がさらに短くなるか長くなり、その結果、所望の結晶相を有する金属酸化物を形成することが難しく、さらに、比表面積、金属の分散度、粒子のサイズなどの触媒の性状に影響を及ぼし得る分だけ、上述した範囲内で適宜調節することが有利であり得る。ただし、前記範囲は、前駆体及び塩基の種類によって変更可能である。また、前駆体混合物内の白金前駆体とアルミナ前駆体との間の混合比は、上述した触媒内のアルミナ担体及び白金のそれぞれの含量によって決定され得る。
【0056】
一具体例によると、上述した前駆体混合物を製造する過程で、又はその物理的混合物を形成した後、外部エネルギーを加えながら反応を行うことができ、含浸法とは異なり、溶媒を使用せずに固相形態の各前駆体の間の反応のみを行う。このように、固相法を通じて各金属前駆体(白金前駆体及び無機酸化物(アルミナ)の前駆体)の間により強い相互作用を誘導することによって、後述するように固相反応後に焼成又は熱処理条件を調節する場合、白金の固まり(又は凝集)現象を著しく減少させることができ、特に、白金が単原子及びクラスターの組み合わせ形態でアルミナ担体に担持され得る。
【0057】
一具体例によると、上述した3つの成分の間の固相反応を行うために印加される外部エネルギーは、典型的には物理的又は機械的なエネルギーであってもよく、例えば、ミーリング、グラインディング、又は粉砕などの摩擦エネルギーの形態、具体的には、ボールミルによる摩擦エネルギーであり得るが、これは、例示的なものであって、無溶媒条件下で白金前駆体とアルミナ前駆体との相互間の反応を誘導できる限り、任意の外部エネルギーが特別な制限なく利用され得る。
【0058】
例示的な具体例によると、前記外部エネルギーの印加下での固相反応は、例えば、約5分乃至40分、具体的には約10分乃至30分、より具体的には約13分乃至25分間行われ得るが、これは例示的な趣旨として理解可能であり、反応時間は、反応スケールなどによって変更可能である。
【0059】
このとき、各前駆体の間の固相反応が進められることによって、ゲル形態の触媒固形物が形成され得る。具体的には、固相反応過程、又は外部エネルギー(例えば、摩擦エネルギー)の印加下で混合される過程で、塩基成分は、部分的又は完全に分解されるが、金属前駆体が金属塩の形態である場合は、金属陽イオンと結合されている陰イオン又は陰イオン種が水酸化物基に置換され得る。その過程で、前駆体及び塩基から由来するガスを放出することができる。例えば、塩基として炭酸水素アンモニウムを使用する場合は、主に多量の二酸化炭素が発生し得る。このようにガス放出下で反応が進められながら、各前駆体は、ゲルを形成した後、固形化(solidification)によって硬度が増加してから再度ゲルを形成する過程を経るようになり、結果的にゲル形態の触媒固形物を得ることができる。
【0060】
その次に、固相反応から形成された触媒固形物を酸素-含有雰囲気(具体的には空気雰囲気)下で熱処理、すなわち、焼成(又はか焼)させ、ゲル形態の触媒固形物を酸化物に転換させる段階が行われ得る。このような熱処理段階を通じて、白金がアルミナ担体のポア(気孔)内に均一に分散され得る。このとき、熱処理条件を調節し、白金の結晶性に影響を及ぼすことによって、白金の単原子及びクラスターが適切な比でアルミナ担体に担持され得ることに注目する必要がある。これと関連して、熱処理時間を短くするか、又は昇温速度を低下させる場合、単原子形態の白金の比率が増加する傾向を示す。
【0061】
ただし、上述したように、単原子形態の白金のみが担持される場合、単原子触媒から起因する活性は改善される一方で、液体有機水素運搬体の水素化/脱水素化反応時に伴われる昇温条件で白金が凝集されるので、長期安定性の面で好ましくない。よって、本具体例では、固相法による触媒製造過程中に熱処理時間及び/又は昇温速度を調節し、白金を単原子及びクラスターが組み合わされた形態で担持することによって触媒活性及び水素化/脱水素化反応の可逆性を良好なレベルに維持すると同時に、水素の貯蔵/放出の反復運転でも長期安定性を確保することができる。これは、既存の触媒に関する認識レベルでは予期せぬ効果に相当する。
【0062】
例示的な具体例によると、触媒内に担持される白金中のクラスター形態の含量は、例えば、HAADF-STEM(具体的には暗視野HAADF-STEM)による観察を通じて決定することができる。これと関連して、触媒内に担持される白金中の単原子及びクラスターのそれぞれの個数(担持される白金のほとんどが単原子及びクラスターとして存在するが、クラスターより大きいサイズ(例えば、約2nm乃至8nm、具体的には約2.5nm乃至6nm、より具体的には約3nm乃至5nmのサイズ)を有するナノ粒子をさらに含有することもでき、この場合は、単原子、クラスター、及びナノ粒子のそれぞれの個数)を測定し、クラスター形態の相対的な比率(含量)を算出することができる。このとき、白金中のクラスターより大きいサイズのナノ粒子の含量は、例えば、約20%以下、具体的には約10%以下、より具体的には約5%以下であり得る。
【0063】
一具体例によると、アルミナ担体上に担持される白金中のクラスター形態の含量は、例えば、約10%乃至55%、具体的には約12%乃至50%、より具体的には約15%乃至40%の範囲で調節され得る。特定の具体例によると、活性金属である白金中のクラスター形態の含量は、約20%乃至35%、具体的には約22%乃至30%の範囲で調節され得る。これと関連して、白金中のクラスター形態の含量が一定の範囲を逸脱する場合(すなわち、単原子の含量が過度に高いか低い場合)は、脱水素化反応活性が減少し、水素化/脱水素化反応の可逆性を改善することが難しい分だけ、上述した範囲内でクラスター形態の含量が調節されるように熱処理条件を設定することが有利であり得る。
【0064】
例示的な具体例によると、熱処理は、例えば、約300℃乃至800℃、具体的には約400℃乃至750℃、より具体的には約500℃乃至700℃の温度条件下で行われ得る。このとき、昇温速度は、例えば、約1℃/min乃至15℃/min(具体的には約1.5℃/min乃至12℃/min、より具体的には約2℃/min乃至10℃/min)で、熱処理時間は、例えば、約3時間乃至60時間(具体的には約5時間乃至50時間、より具体的には約10時間乃至40時間)の範囲内で所望の単原子及びクラスターの比を考慮した上で適宜調節することが有利であり得る。
【0065】
一方、酸素-雰囲気下での熱処理後には、最終用途である水素化/脱水素化反応のための触媒活性化のために還元処理を追加的に行うことができる。例示的な具体例によると、還元処理用ガスとして、水素、一酸化炭素、メタン、又はそれらの組み合わせを使用することができ、より典型的には水素雰囲気下で還元処理することができる。
【0066】
一例として、還元処理温度は、例えば、約300℃乃至600℃(具体的には約350℃乃至550℃、より具体的には約400℃乃至500℃)の範囲であり得る。このとき、昇温速度は、例えば、約1℃/min乃至10℃/min、具体的には約4℃/min乃至6℃/minの範囲であり得る。また、還元処理時間は、例えば、約1時間乃至10時間、具体的には約2時間乃至5時間の範囲内で定められ得る。その他にも、還元処理時の圧力(還元ガスの分圧)は、特に限定されることはないが、例えば、約1bar乃至5bar、具体的には約1.5bar乃至4bar、より具体的には約2bar乃至3barの範囲であり得る。上述した還元処理条件は例示的に理解可能であり、必ずしもこれに限定されることはない。上述した還元処理を通じて、アルミナ担体上には、活性金属である白金が、例えば、完全還元(すなわち、元素)状態又は部分的還元(又は酸化)状態、具体的には完全還元状態で担持された触媒を製造することができる。
【0067】
〔液体有機水素運搬体化合物を用いた水素化/脱水素化反応(水素の貯蔵及び放出)〕
本開示内容の具体例によると、水素貯蔵物質として液体有機水素運搬体(LOHC)を使用できるが、このような液体有機水素運搬体システムは、水素-リーン及び水素-リッチな有機化合物からなり、繰り返される液相又は気相での触媒的水素化及び脱水素化サイクルを通じて水素を貯蔵及び放出することができる。特に、液体有機水素運搬体の形態で水素を取り扱うことによって既存の燃料用設備を活用することができ、気体(例えば、二酸化炭素又は窒素)の水素化による水素貯蔵とは異なり、液体有機水素運搬体から水素を放出する場合、相対的に高沸点を有する運搬体化合物の凝縮後に純粋な水素を生成することができる。
【0068】
本具体例によると、アルミナ担体に白金が単原子及びクラスターの組み合わされた形態で担持された触媒を用いて液体有機水素運搬体(LOHC)の可逆的水素化/脱水素化反応を行うことができる。
【0069】
例示的な具体例によると、上述した白金-担持触媒は、窒素-含有ヘテロ環液体有機水素運搬体及び炭化水素からなる液体有機水素運搬体(具体的には、ジベンジルトルエンなどの芳香族炭化水素系液体有機水素運搬体)を含む広い範囲の液体有機水素運搬体に効果的に適用され得る。このような化合物は、典型的には分子内に少なくとも一つの共役結合を有することができる。
【0070】
一具体例によると、液体有機水素運搬体は、下記の一般式1乃至9で表される化合物から選ばれた少なくとも一つ(水素-希薄形態)であり得る:
【0071】
【化1】
【0072】
【化2】
【0073】
【化3】
【0074】
【化4】
【0075】
【化5】
【0076】
【化6】
【0077】
【化7】
【0078】
【化8】
【0079】
【化9】
【0080】
前記式において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18のそれぞれは、水素又はC乃至Cのアルキル基で、Xは、-(CHR19-(nは、1乃至3の整数で、R19は、H、OH、又はC乃至Cのアルキル基である。)で、Yは、CH又はNである。
【0081】
前記例示された液体有機水素運搬体化合物は、例えば、約100℃以下、具体的には約0℃乃至80℃、より具体的には約10℃乃至60℃の範囲の融点を示し得るので、室温で液相を維持することができ、沸点は、約380℃以下、具体的には約130℃乃至350℃、より具体的には約180℃乃至300℃の範囲であり得る。このような融点及び沸点の特性により、液体有機水素運搬体を用いた水素貯蔵及び放出システムは、反応性改善のための別途の溶媒及び/又は添加物の使用を省略できるという長所を有する。
【0082】
上述したように、アルミナ担体に活性金属としての白金が単原子及びクラスターの混合形態で担持された触媒は、液体有機水素運搬体の水素化/脱水素化サイクルを繰り返す方式で水素貯蔵及び放出を行うのに適している。
【0083】
例示的な具体例に係る水素貯蔵及び放出方法は、液体有機水素運搬体である有機化合物(具体的には液相形態)を反応系内で上述した白金-担持アルミナ触媒と接触させる段階を伴うことができる。一例として、触媒内の活性金属(Pt)/LOHCの比(M/R)は、例えば、約0.05モル%乃至0.4モル%、具体的には約0.07モル%乃至0.35モル%、より具体的には約0.1モル%乃至0.3モル%の範囲で定められ得る。このとき、M/R比は、水素化反応と脱水素化反応とで区別され得るが、例えば、水素化反応では相対的に高く設定される一方で、脱水素化反応では相対的に低く設定され得る。これと関連して、M/R比が過度に低い場合は、反応の活性化エネルギーを低下させるのに限界があるので、不十分な反応活性を示すことができる。その一方で、M/R比が過度に高い場合は、体積の面で固相触媒が液相の反応物に比べて相当に増加し、過度なスラリー状態を形成するようになり、反応過程中の撹拌が難しくなるだけでなく、拡散抵抗(diffusion limitation)が発生するので、触媒の活性点を十分に活用できない現象が誘発され得る。よって、上述した範囲内でM/R比を適宜調節することが有利であり得る。ただし、前記比率は、使用される水素貯蔵化合物の種類などによって変化可能である。
【0084】
一例として、水素化反応(水素貯蔵)でのM/Rの比は、例えば、約0.1モル%乃至0.4モル%(具体的には約0.15モル%乃至0.35モル%、より具体的には約0.2モル%乃至0.3モル%)の範囲で調節され得る一方で、脱水素化反応(水素放出)でのM/Rの比は、例えば、約0.05モル%乃至0.15モル%(具体的には約0.07モル%乃至0.13モル%、より具体的には約0.09モル%乃至0.12モル%)の範囲で調節され得る。
【0085】
これと関連して、水素貯蔵物質(液体有機水素運搬体)内の水素を貯蔵するために水素化反応を行えるが、水素化反応温度は、例えば、約50℃乃至250℃、具体的には約80℃乃至220℃、より具体的には約100℃乃至190℃の範囲であり得る。また、水素化反応圧力は、例えば、約5bar乃至100bar、具体的には約20bar乃至80bar、より具体的には約25bar乃至70bar、特に具体的には約30bar乃至50barの範囲であり得る。その他にも、水素化反応時間は、特に限定されることはないが、例えば、約0.5時間乃至24時間、具体的には約1時間乃至12時間、より具体的には1.5時間乃至6時間の範囲であり得る。
【0086】
例示的な具体例によると、上述した白金/アルミナ担持触媒を使用することによって、水素化反応効率(脱水素化反応物1モルで理論的に貯蔵され得る水素のモル数に対する実際の水素化反応によって貯蔵される水素のモル数として定義される。)は、例えば、少なくとも約62%、具体的には少なくとも約90%、より具体的には少なくとも約96%であり得る。このとき、水素貯蔵化合物に対応する水素化生成物に対する選択率は、例えば、少なくとも約58%、具体的には少なくとも約90%、より具体的には少なくとも約99%であり得る。
【0087】
一方、水素貯蔵物質(液体有機水素運搬体)から水素を放出するために脱水素化反応が行われ得るが、このような脱水素化反応は吸熱反応であるので、同一の水素貯蔵物質の水素化反応(発熱反応)に比べて高い反応温度(例えば、水素化反応温度に比べて約50℃乃至150℃、具体的には約60℃乃至120℃、より具体的には約80℃乃至100℃さらに高い温度帯域)で行われ得る。例示的な具体例によると、脱水素化反応温度は、例えば、約100℃乃至350℃、具体的には約150℃乃至320℃、より具体的には約180℃乃至290℃の範囲であり得る。また、反応温度とは異なり、脱水素化反応圧力は、水素化反応の圧力条件に比べて低いレベルであり得るが、例えば、約1bar乃至10bar、具体的には約1bar乃至5bar、より具体的には常圧条件であり得る。また、脱水素化反応時間は、特に限定されることはないが、例えば、約0.5時間乃至24時間、具体的には約2時間乃至12時間、より具体的には約3時間乃至8時間の範囲で設定され得る。
【0088】
例示的な具体例によると、上述した触媒を使用することによって、脱水素化反応効率(水素化反応物1モルで理論的に放出され得る水素のモル数に対する実際の脱水素化反応によって生成される水素のモル数として定義される。)は、例えば、少なくとも約50%、具体的には少なくとも約60%、より具体的には少なくとも約86%であり得る。
【0089】
一方、一具体例によると、水素化/脱水素化反応は、回分式反応器、連続反応器、半連続反応器などの、当業界で知られている公知の反応器を用いて行われ得る。特に液体有機水素運搬体、特に比較的高い沸点を有する液体有機水素運搬体化合物の場合、水素化及び脱水素化反応が液相で起こり得る分だけ、反応器に撹拌機が備えられることもある。例示的な具体例によると、前記反応は、粒子形状の触媒を用いた固定層反応器内で行われ得る。
【0090】
本発明は、下記の実施例によってより明確に理解可能であり、下記の実施例は、本発明の例示的な目的に過ぎなく、発明の領域を制限しようとするものではない。
【実施例
【0091】
実施例及び比較例において、製造された触媒は、下記のような分析方法によって行われた。
【0092】
〔透過電子顕微鏡(TEM、HAADF-STEM)分析〕
透過電子顕微鏡(TEM、HAADF-STEM、JEOL、TEM2100F)を用いて、Cuグリッド試験片上に、メタノールに分散させた試料を落とした後、60℃の真空オーブンで20時間以上乾燥させ、担体に担持された金属粒子のサイズを測定した。
【0093】
〔Pt金属の結晶状態分析(CO-DRIFT)〕
CO-DRIFT(chemisorbed diffuse reflectance infrared fourier transform)スペクトル分析においては、Nicolet 6700 FT-IR(Harrick Praying Mantis high temperature reaction chamber装着)を使用しており、測定に先立って試料30mgを500℃で1時間にわたって5%のH/Ar(100cm min-1)雰囲気で還元した。還元後、50℃まで温度を下げてからArガスに交換し、試料の表面に物理的に吸着した物質を除去した。5%のCO/Ar(50cm min-1)を流しながら30分間試料に露出させた後、30分間減圧(evacuation)する過程を通じて吸着したCOを脱着させることによってIR分析を行った。
【0094】
〔実施例〕
〔固相法による白金/アルミナ触媒の製造〕
まず、Al前駆体(Al(NO・9HO)21.84g、炭酸水素アンモニウム(NHHCO)13.88g、及びPt金属前駆体[Pt(NH](NO0.182gを、溶媒なしで乳鉢に一度に投入してから物理的に混合させた。その後、物理的混合物を20分間継続して掻き混ぜることによって摩擦熱を加えており、このとき、合計3回ほど固体状態の各前駆体が混合されることによって、多量のCOを発生させながらゲルを形成した。混合してから10分が経過すると、ゲルの形態で再度固形化が進められながら硬化され、6分後に再度ゲルが形成されて軟化された。
【0095】
その次に、20分間混合させたゲル固形物をるつぼに入れ、600℃の熱処理温度条件下で5時間にわたって焼成させた(昇温速度:2℃/min)。焼成後、水素を用いた還元処理を行い(500℃、5℃/min、3時間)、還元処理された触媒の存在下で反応活性を比較した(実施例によって製造された白金/アルミナ触媒は、M3PtA x_y(x;焼成温度、y;焼成時間)で表示した。)(白金担持量3重量%)。また、多様な白金担持量(1重量%、2重量%、及び5重量%)を有する白金/アルミナ触媒を同一の手順によって製造し、活性を評価した。
【0096】
〔比較例〕
〔含浸法による白金/アルミナ触媒の製造〕
商用γ-Al(gA)3gに3重量%のPt金属前駆体溶液([Pt(NH](NO)0.182g及び蒸留水2mlを均一に混合する。)を含浸法を通じて物理的に担持し、100℃のオーブンで乾燥させた後、るつぼに投入してから5時間にわたって焼成させた(600℃、2℃/min)。その後、水素還元処理(500℃、3時間、昇温速度5℃/min)を行い、最終的に、3Pt/gA x_y(x;焼成温度、y;焼成時間)触媒を得た(白金担持量3重量%)。また、多様な白金担持量(1重量%、2重量%、及び5重量%)を有する白金/アルミナ触媒を同一の手順によって製造し、活性を評価した。
【0097】
〔イ.合成法による触媒の物性及び反応活性分析〕
〔触媒物性分析〕
多様な含量の白金(1重量%、2重量%、3重量%、及び5重量%)を担持した、実施例(固相法)に係る白金-担持触媒(MPtA)及び比較例(含浸法)に係る白金-担持触媒(Pt/gA)のそれぞれについてのXRDパターンを図1に示した。
【0098】
前記図面によると、同一の白金含量の場合にも、合成法によって白金結晶のサイズが異なっていた。含浸法によって製造された触媒(比較例)の場合、1重量%の低い白金含量でもPt(111)、(200)、及び(220)の結晶サイズが大きかった。その一方で、固相法によって製造された触媒(実施例)の場合は、5重量%の白金が担持されたとしてもPt(111)結晶のみが形成されたが、これは、実施例に係る触媒において、比較例に比べて白金がより均一に分散されていることを指示する。
【0099】
一方、多様な含量の白金(1重量%、2重量%、3重量%、及び5重量%)を担持した、実施例(固相法)に係る白金-担持触媒(MPtA)及び比較例(含浸法)に係る白金-担持触媒(Pt/gA)についての暗視野HAADF-STEM写真を図2a及び図2bにそれぞれ示した。
【0100】
前記図面で確認できるように、実施例に係る触媒では、白金単原子及びクラスターが比較的不均一に分布している一方で、比較例に係る触媒では、白金が1重量%の低い含量で担持されたとしても粒子の形態を有していた。
【0101】
また、多様な含量の白金を担持した、実施例(固相法)に係る白金-担持触媒(MPtA)及び比較例(含浸法)に係る白金-担持触媒(Pt/gA)のそれぞれについてのCO-DRIFTスペクトルグラフを図3に示した。
【0102】
前記図面によると、実施例に係る触媒の場合、2090cm-1、2070cm-1及び2040cm-1でピークが形成された。その一方で、比較例に係る触媒は、2070cm-1のピークに対応する2060cm-1のピークが相対的にさらに大きく形成されたが、単原子に対応する2090cm-1のピークは、1重量%の白金が担持されたとしてもほとんど観察されなかった。
【0103】
多様な含量の白金(1重量%、2重量%、3重量%、及び5重量%)を担持した、実施例(固相法)に係る白金-担持触媒(MPtA)及び比較例(含浸法)に係る白金-担持触媒(Pt/gA)のそれぞれについてのH-TPD結果を示すグラフを図4に示した。
【0104】
前記図面を参照すると、H-TPDによって白金含量による水素の脱着程度を比較した結果、実施例に係る触媒では、白金含量が増加するにつれて、水素脱着ピークが500℃から200℃付近にシフトされる傾向を示す一方で、比較例に係る触媒では、脱着区間に対する変化がほとんど観察されなかった。
【0105】
より正確な白金の形態を分析するためにEXAFS分析を行い、その結果を下記の表1及び図5に示した。
【0106】
前記表及び図面によると、参照物質であるPtホイル及びPtOのフィッティング結果と比較すると、実施例に係る触媒は、白金含量が増加したとしてもほとんどPtOと類似するパターンを示す一方で、比較例に係る触媒は、Ptホイルと類似するパターンを示した。
【0107】
【表1】

【0108】
前記表によると、比較例に係る触媒では、Pt-Pt結合が多く観察された一方で、実施例に係る触媒の場合は、低い白金含量でPt-O、Pt-O-Pt及びPt-O-Al結合が多数存在し、白金含量が増加するほどPt-Pt結合が増加する傾向が観察された。
【0109】
〔反応活性分析〕
実施例及び比較例のそれぞれによって製造された触媒についての水素化(反応条件:M/R 0.22mol%、35bar、150℃、及び2時間)及び脱水素化反応(反応条件:M/R 0.1mol%、250℃、及び4時間)の効率を比較した結果を下記の表2、表3、及び図6に示した。
【0110】
【表2】

【0111】
:GC分析を通じた計算結果である。:水素貯蔵効率=(full hydrogenation product[mol]×6H+single-ring hydrogenation product[mol]×3H)/(reactant[mol]×6H)×100%
【0112】
【表3】

【0113】
:GC分析を通じた計算結果である。:水素放出効率=(full dehydrogenation product[mol]×6H+single-ring dehydrogenation product[mol]×3H)/(reactant[mol]×6H)×100%
【0114】
上述した結果を参照すると、実施例に係る触媒の場合は、水素化及び脱水素化反応の全てにおいて、3重量%の白金が担持された触媒が最も優れた活性を示した。その一方で、比較例に係る触媒では、1重量%の白金が担持された触媒が最も良好な活性を示したが、これは、白金担持量が増加するにつれて、白金サイズが増加したためであると判断される。特に、このような活性の差は、触媒製造方式によってアルミナ担体に担持される白金粒子のサイズが異なるために生じると判断される。
【0115】
〔ロ.焼成条件による触媒物性及び反応活性分析〕
〔触媒物性分析〕
焼成条件としての600℃、5h(昇温速度2℃/min)を基準にして、5h(昇温速度10℃/min)、20h(昇温速度2℃/min)、及び40h(昇温速度2℃/min)に変化させ、また、1重量%及び3重量%の含量でそれぞれ担持された白金触媒のサイズ変化を観察した。焼成条件の変化によるPt-担持触媒(担持量:1重量%及び3重量%)についてのXRDパターン及びH-TPD結果、そして、HAADF-STEM写真をそれぞれ図7及び図8に示した。
【0116】
前記図面において、XRD分析の結果、焼成温度(600℃)及び焼成時間(5h)を固定し、昇温速度を2℃/minから10℃/minに変更した場合、1重量%及び3重量%を担持した白金触媒の全てにおいてPt(111)ピークが増加することを確認した。追加的に焼成温度(600℃)及び昇温速度(2℃/min)を固定し、焼成時間をそれぞれ5時間から20時間及び40時間にそれぞれ変更した場合、1重量%及び3重量%を担持した白金触媒の全てにおけるPt(111)ピークが、昇温速度の変更に比べては少ないが、相対的に増加することを確認した。また、H-TPD分析によると、白金サイズが増加するにつれて、水素脱着ピークが低温にシフトされた。
【0117】
一方、図8によるHAADF-STEM結果でも確認されるように、図2のM1PtA(M1PtA c6005 h_2と同一)触媒の場合は、白金単原子が主に観察された一方で、焼成時間を40hに、昇温速度を10℃/minに増加させた場合は、クラスターの比率が増加し、粒子の形態も観察された。上述した結果を考慮すると、焼成条件によって金属の結晶性が影響を受けるが、これは、白金のサイズを調節できる主な変数に該当することを示唆する。
【0118】
〔反応活性分析〕
焼成条件の変化によるPt-担持触媒の水素化及び脱水素化反応活性を測定し、下記の表4(水素化反応条件:M/R 0.22mol%、35bar、150℃、2時間)及び表5(脱水素化反応条件:M/R 0.1mol%、250℃、4時間)、そして、図9に示した。
【0119】
【表4】

【0120】
:GC分析を通じた計算結果である。:水素貯蔵効率=(full hydrogenation product[mol]×6H+single-ring hydrogenation product[mol]×3H)/(reactant[mol]×6H)×100%
【0121】
【表5】

【0122】
:GC分析を通じた計算結果である。:水素放出効率=(full dehydrogenation product[mol]×6H+single-ring dehydrogenation product[mol]×3H)/(reactant[mol]×6H)×100%
【0123】
前記表及び図面を参照すると、白金単原子の比率が高いM1PtA c600 5h_2触媒の場合は、水素化及び脱水素化反応でそれぞれ貯蔵効率62.5%及び放出効率33.7%を示した。その一方で、触媒の製造時に焼成時間を増加させたM1PtA c600 40h_2触媒では、貯蔵効率75.2%及び放出効率83.5%に向上した。
【0124】
〔ハ.合成法による触媒の安定性分析〕
〔脱水素化反応活性評価及び使用後の触媒の物性変化〕
触媒の長期安定性を評価するために、脱水素化反応の活性評価を行った。実施例(固相法)に係る白金-担持触媒(M3PtA)及び比較例(含浸法)に係る白金-担持触媒(3Pt/gA)のそれぞれについての触媒の長期安定性を評価するための脱水素化反応結果を図10に示した。また、実施例に係る白金-担持触媒(M3PtA)及び比較例に係る白金-担持触媒(3Pt/gA)のそれぞれの反応前後のXRDパターン及び使用後の触媒のHAADF-STEM写真を図11に示した。
【0125】
前記図面を参照すると、比較例に係る触媒(3Pt/gA)は、5回にわたった再使用時、触媒活性が急激に減少した。また、反応後、触媒の金属粒子状態をXRD及びHAADF-STEMを通じて観察した結果、実施例に係る触媒(M3PtA)では、使用前後のXRDパターンがほとんど同一であって、STEM分析でも、依然として白金単原子とクラスターが比較的不均一に分布していた。これは、実施例に係る触媒(M3PtA)において、白金とアルミナ担体との間の相互作用が強いためであると判断される。その一方で、3Pt/gA触媒の場合は、初期水素放出効率(55.7%)は、5回にわたって再使用したとき、27.4%に約2倍減少した。これは、白金とアルミナ担体との間の相互作用が弱化され、白金の焼結(sintering)による粒子サイズが増加したためであると判断される。
【0126】
〔水素化/脱水素化反応の可逆性評価〕
白金は、水素化及び脱水素化反応の全てにおいて活性を示すので、単一反応器内で同一の種類の触媒を使用する場合にも水素貯蔵及び放出効率を達成することができる。このとき、合成法によって活性金属と担体との間の相互作用が異なるので、連続的な可逆反応にも影響を及ぼすと判断し、水素化及び脱水素化反応を連続的に3セットずつ繰り返し実験した。これと関連して、実施例に係る触媒(M3PtA)及び比較例に係る触媒(3Pt/gA)についてのH-BTの水素貯蔵及び放出効率を測定して比較し、その結果を図12に示した。
【0127】
前記図面を参照すると、同一の水素化及び脱水素化のそれぞれの反応条件において、実施例に係る触媒(M3PtA)は初期水素貯蔵及び放出効率を持続的に維持する一方で、比較例に係る触媒(3Pt/gA)は水素貯蔵及び放出効率が持続的に減少する現象を示した。
【0128】
〔ニ.液体有機水素運搬体の種類による脱水素化反応活性評価〕
多様な種類のピリジン系及びビピリジン系液体有機水素運搬体を用いた脱水素化反応を行い、その結果を下記の表6に示した。
【0129】
【表6】

【0130】
前記表によると、実施例に係る触媒(M3PtA 600 5h)の場合、液体有機水素運搬体とは関係なく、比較例に係る触媒(3Pt/gA 600 5h)に比べて反応効率が改善された。
【0131】
〔ホ.触媒内の白金中のクラスター含量(比率)による脱水素化反応活性評価〕
熱処理条件(熱処理温度、時間及び昇温速度)を変化させながら、固相法による白金-担持触媒を製造した(白金担持量:1重量%、3重量%、及び5重量%)。このとき、暗視野HAADF-STEM写真から単原子及びクラスター(追加的に、クラスターより大きいナノ粒子)のそれぞれの個数を測定し、担持された白金中のクラスター形態の含量を算出した。その結果を下記の表7に示した(反応条件:250℃、1bar、4時間、貴金属(mol)/反応物(mol)0.1%)。
【0132】
【表7】

【0133】
前記表において、aに該当する焼成条件は、600℃、5h(昇温速度2℃/min)で、b1に該当する焼成条件は、600℃、40h(昇温速度2℃/min)で、b2に該当する焼成条件は、600℃、5h(昇温速度10℃/min)であることを指示する。
【0134】
前記表によると、担持された白金中のクラスター含量が過度に低い場合(M1PtA:4.8%)、又はクラスター含量が過度に高い場合(M5PtAb2:62.2%)は、水素放出効率がそれぞれ36.2%及び35.2%として低いレベルであった。その一方で、クラスター含量が適正な範囲に調節される場合に良好な水素放出効率を得ることができたが、特に、M3PtAb1触媒(クラスター含量:22.6%)では、86.9%の高い水素放出効率を得ることができた。
【0135】
本発明の単純な変形及び変更は、この分野で通常の知識を有する者によって容易に利用可能であり、このような変形や変更は、いずれも本発明の領域に含まれるものとして見なすことができる。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図7d
図8a
図8b
図8c
図8d
図9a
図9b
図10
図11a
図11b
図11c
図11d
図12
【国際調査報告】