(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】節足動物防除製品
(51)【国際特許分類】
A01N 25/04 20060101AFI20240927BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20240927BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20240927BHJP
A01P 7/02 20060101ALI20240927BHJP
A01N 65/44 20090101ALI20240927BHJP
A01N 31/02 20060101ALI20240927BHJP
A01N 37/10 20060101ALI20240927BHJP
A01N 65/22 20090101ALI20240927BHJP
A01N 65/24 20090101ALI20240927BHJP
A01N 65/28 20090101ALI20240927BHJP
A01N 53/10 20060101ALI20240927BHJP
A01N 37/06 20060101ALI20240927BHJP
B01J 13/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A01N25/04 101
A01P17/00
A01P7/04
A01P7/02
A01N65/44
A01N31/02
A01N37/10
A01N65/22
A01N65/24
A01N65/28
A01N53/10 210
A01N37/06
B01J13/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513168
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2022077028
(87)【国際公開番号】W WO2023052456
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント ハラッカ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング フィーバー
(72)【発明者】
【氏名】パスカル ボスブル
【テーマコード(参考)】
4G065
4H011
【Fターム(参考)】
4G065AB01X
4G065AB03X
4G065AB05X
4G065AB12X
4G065AB32X
4G065AB33X
4G065AB38X
4G065BA09
4G065BA13
4G065BA14
4G065BB01
4G065BB08
4G065CA03
4G065DA03
4H011AC01
4H011AC04
4H011AC06
4H011BA06
4H011BB03
4H011BB06
4H011BB15
4H011BB22
4H011BC06
4H011BC19
4H011DA16
4H011DA21
4H011DH13
(57)【要約】
本発明は、送達システムの分野に関する。より具体的には、本発明は、油溶性の活性節足動物防除剤と組み合わせた固形脂質材料を含む水中油型エマルションに関する。本発明はまた、前記エマルションの製造方法および前記エマルションを含む消費者物品を記載するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
- 少なくとも1つの固形脂質材料と少なくとも1つの油溶性節足動物防除剤とを含む分散油相と、
- 安定剤を含む連続水相と
を含む水中油型エマルションであって、
前記エマルションは、標的節足動物への直接適用および/または節足動物の生息域への適用により節足動物防除製品として使用するためのものである、水中油型エマルション。
【請求項2】
前記油溶性節足動物防除剤の量が、前記エマルションの総重量に対して0.01重量%~25重量%である、請求項1記載の水中油型エマルション。
【請求項3】
前記固形脂質材料の量が、前記油相の総重量に対して1~50重量%、好ましくは5~20重量%である、請求項1または2記載の水中油型エマルション。
【請求項4】
前記節足動物防除剤が、エチル3-(アセチル(ブチル)アミノ)プロパノエート(IR3535(登録商標))、N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド(DEET)、p-メンタン-3,8-ジオール(PMD)、ユーカリプタス・シトリオドラ(Eucalyptus citriodora)油、シトロネラ属(Citronella spp.)油、sec-ブチル2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン-1-カルボキシレート(ピカリジン)、バニリン、ヒマシ油、シダーウッド油、シナモン油、シトロネラール、クローブ油、コーン油、ハッカ、ハッカ油、綿実油、4-アリル-2-メトキシフェノール(オイゲノール)、ニンニク油、(2E)-3,7-ジメチルオクタ-2、6-ジエン-1-オール(ゲラニオール)、ゲラニウム油、レモングラス油、亜麻仁油、ペパーミント、ペパーミント油、2-フェニルエチルプロピオネート、ローズマリー油、ゴマ油、大豆油、スペアミント、スペアミント油、タイム油、ミント、ミント油、コショウ抽出物、ウィンターグリーン油、ラベンダー油、ラウァンドゥラ・ヒュブリダ(Lavandula hybrida)抽出物、ラバンディン油、レモン油、インドセンダン抽出物、メンタ・アルベンシス(Mentha arvensis)抽出物、メトフルトリン、ノナン酸、ピレスリンおよびピレスロイド、2,3,4,5-ビス(ブチル-2-エン)テトラヒドロフルフラール(MGK Repellent 11)、シネオール、シンナムアルデヒド、シトラール、シトロネロール、クマリン、ジブチルフタレート、ジエチルフタレート、ジメチルアントラニレート、ジメチルフタレート、エチルバニリン、ユーカリ油、ヌートカトン、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン、δ-ドデカラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、γ-ドデカラクトン、ヒドロキシシトロネラール、ライム油、リモネン、リナロール、メチルアントラニレート、ミントスピカータ、ミルセン、ニーム油、サビネン、β-カリオフィレン、(1H-インドール-2-イル)酢酸、アネトール、アニス油、バジル油、ベイ油、カンフル、エチルサリチレート、常緑樹油、マツ油、テトラメトリン、アレトリン、(RS)-α-シアノ-3-フェノキシベンジル-(1RS)-シス、シペルメトリン、プラレトリン、アセタミプリド、アザジラクチン、ベンダイオカルブ、ビフェントリン、クロルピリホス、デルタメトリン、ジアジノン、ジクロルボス、フィプロニル、イミダクロプリド、リナロール、マラチオン、インドセンダン抽出物、ニコチン、ペルメトリン、ロテノン、S-メトプレン、スピノサド(スピノシンA)、スピノシンD、トランスフルトリン、アニスアルコール、オクタヒドロクマリン、(+-)-2,5-ジメチル-2-インダンメタノール、4,4A,5,9B-テトラヒドロインデノ[1,2-D]-1,3-ジオキシン、2,4-ジメチル-4,4a,5,9b-テトラヒドロインデノ[1,2-d][1,3]ジオキシン、昆虫病原性細菌、例えば、バシラス(Bacillaceae)属、バークホルデリア(Burkholderia)属、クロモバクテリウム(Chromobacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、サッカロポリスポラ(Saccharopolyspora)属、セラチア(Serratia)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、エルシニア(Yersinia)属、ゼノラブダス(Xenorhabdus)属およびフォトラブダス(Photorhabdus)属、昆虫病原性真菌、例えば、メタリジウム・アニソプリエ(Metarhizium anisopliae)属、ボーベリア・バシアーナ(Beauveria bassiana)属、ヒルステラ(Hirsutella)属、イサリア(Isaria)属、レカニシリウム(Lecanicillium)属、ペシロマイセス(Paecilomyces)属およびバーティシリウム(Verticillium)属、昆虫病原性ウイルス、昆虫病原性線虫、例えば、シュタイネルネマ(Steinernema)属およびヘテロラブディティス(Heterorhabditis)属、酵母、特異的に設計されたRNAi、酵素、例えばキチナーゼ、半化学物質またはフェロモン、例えば、性的誘引を誘発する刺激物質(例えば、ゴキブリであるペリプラネタ・アメリカーナ(Periplaneta americana)(L)およびゴキブリであるブラテラ・ゲルマニカ(Blattella germanica)(L)のそれぞれペリプラネトンBおよびゲンチシルキノンイソバレレート、トマトキバガ、すなわちツタ・アブソルタ(メイリック)(Tuta absoluta(Meyrick))の(E,Z,Z)-3,8,11-テトラデカトリエニルアセテート)、または集合を誘発する刺激物質(例えば、デンドロクトヌス・ポンデロサエ(ホプキンス)(Dendroctonus ponderosae(Hopkins))のようなキクイムシが抗集合フェロモンとして使用するベルベノン、またはヒアリであるアッタ・ゲミナタ(ファブリシウス)(Atta geminata(Fabricius))がリクルートフェロモンおよび指向性フェロモンとして使用するZ,E-α-ファルネセン)、または種の同定を誘発する刺激物質(例えば、クリプトテルメス・ブレビス(ウォーカー)(Cryptotermes brevis(Walker))、C.シノセファルス(ライト)(C.cynocephalus(Light))、プロクリプトテルメス・コルニセプス(スナイダー)(Procryptotermes corniceps(Snyder))、もしくはネオテルメス・コンネクサス(スナイダー)(Neotermes connexus(Snyder))などのシロアリのオレフィンもしくはその他の炭化水素)、またはコロニーもしくは巣の仲間の同定を誘発する刺激物質(ポリステス・ドミヌルス(クリスト)(Polistes dominulus(Christ))などのハチによるクチクラ炭化水素プロファイルの特定の成分)、または発育段階に関する情報を誘発する刺激物質(例えば、トコジラミであるシメックス・レクツラリウス(Cimex lectularius)(L)のオキソアルデヒド)、またはメッセージを誘発する刺激物質(例えば、フォロドン・フムリ(シュランク)(Phorodon humuli(Schrank))などのアブラムシやヒアリであるA.ゲミナタ(F)(A.geminate(F))がそれぞれ警報フェロモンとして使用するE-β-ファルネセンおよびジメチルピラジン)、ならびにそれらの混合物からなる群において選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載の水中油型エマルション。
【請求項5】
前記連続相が、親水性活性成分を含み、前記親水性活性成分が、好ましくは、乾燥血液、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸、カリウム(2E,4E)-ヘキサ-2,4-ジエノエート、腐敗性全卵固形物、塩化ナトリウム、硫酸モノドデシルエステル、ナトリウム塩、亜鉛、ホウ酸、クエン酸、マルトデキストリン、二酸化ケイ素、およびそれらの混合物からなる群において選択される、請求項1から4までのいずれか1項記載の水中油型エマルション。
【請求項6】
前記固形脂質材料が、非植物性グリセリド、植物性グリセリド、非植物性ロウ、植物性ロウからなる群において選択され、好ましくは、ミツロウ、カルナウバロウ、パームステアリン、ホホバロウおよびそれらの混合物からなる群において選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の水中油型エマルション。
【請求項7】
前記エマルションが、油混和性補助溶媒を含み、前記油混和性補助溶媒が、好ましくは、O-アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、カプリルトリグリセリド、トリアセチン、ヤシアルカン(および)(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキル、ジカプリル酸プロパンジオール、オクタン酸1,3-プロパンジイルエステル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、トリヘプタノイン、カプリル/カプリン酸グリセリド、ウンデカンおよびトリデカン、C15-C19アルカン、スクアレン、シリコーン油、グリコールエーテル、例えば、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、DIPGモノメチルエーテル、アジピン酸ジメチル/グルタル酸ジメチルエステル、安息香酸ベンジル、ピペロニルブトキシド、ヤシ油、およびそれらの混合物からなる群において選択される、請求項1から6までのいずれか1項記載の水中油型エマルション。
【請求項8】
前記エマルションが、水混和性補助溶媒を含み、前記水混和性補助溶媒が、好ましくは、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、イソプロピリデングリセロール、ブチレングリコール(1,3-ブタンジオール)、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、およびイソプロパノール、ならびにそれらの混合物からなる群において選択される、請求項1から7までのいずれか1項記載の水中油型エマルション。
【請求項9】
前記安定剤が、アラビアガム、ペクチン、カゼイン、シクロデキストリン、レシチン、大豆タンパク質、キラヤサポニン、シリカ、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、およびそれらの混合物からなる群において選択される、請求項1から8までのいずれか1項記載の水中油型エマルション。
【請求項10】
前記水中油型エマルションが、増量剤、粘度調整剤、ゲル化剤、およびそれらの混合物からなる群において選択される追加成分を含む、請求項1から9までのいずれか1項記載の水中油型エマルション。
【請求項11】
節足動物防除製品として使用するための水中油型エマルションの製造方法であって、前記方法は、以下:
- 少なくとも1つの固形脂質材料と少なくとも1つの油溶性節足動物防除剤とを含む油相を、前記固形脂質材料の融点を上回る温度で、安定剤を含む連続水相に分散させて、水中油型エマルションを得る工程と、
- こうして得られた前記エマルションを、前記固形脂質材料の融点を下回る温度まで冷却する工程と
を含む、方法。
【請求項12】
前記固形脂質材料の融点が、40℃~80℃、より好ましくは40℃~70℃、さらにより好ましくは45℃~65℃で構成される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項1から10までのいずれか1項記載のエマルションを含む、消費者物品。
【請求項14】
噴霧可能な溶液、またはゲル/粘性ローションの形態である、請求項13記載の消費者物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、節足動物防除製品の分野に関する。より具体的には、本発明は、油溶性節足動物防除剤と組み合わせた固形脂質材料を含む水中油型エマルションに関する。本発明はまた、節足動物防除製品としての前記エマルションの使用、および前記エマルションを含む消費者物品に関する。
【0002】
発明の背景
ヒトを含む多くの哺乳類は、標的宿主生物の代表例であるため、節足動物の作用に苦しめられている。節足動物の中には、例えば蚊やダニのように、哺乳類、特にヒト対象物のような脊椎動物にとって好ましくないものもいる。なぜならば、蚊やダニは咬むため、かゆみを引き起こし、疾病および/または細菌を感染させ、あるいは他の疾病および/または症状の原因となる可能性があるためである。
【0003】
節足動物防除製品には活性物質が含まれており、皮膚や衣服に適用することで、節足動物がその表面にのったり登ったりするのを阻止する。節足動物防除剤は、マラリアなどの節足動物が媒介する疾病の発生を予防および制御するのに役立つ。しかし、このような組成物を皮膚や衣服に適用する際には、標的宿主生物と相互作用する節足動物を阻止することのみを目的としている。節足動物防除組成物は、経時的に分解するかまたは他の方法でその効力を失う可能性があるため、節足動物防除組成物は、単に短期間の救済策を提供するに過ぎない。さらに、既知の節足動物防除組成物は通常、標的宿主生物に適用されるため、節足動物が、忌避される前にすでにその標的の近傍に存在しなければならず、節足動物が節足動物防除組成物の効力を克服してその標的に到達する危険性が増大する。
【0004】
さらに、既知の節足動物防除剤や節足動物防除組成物の中には、ある種の欠点を有するものがあり、例えば、無臭や悪臭といった負の嗅覚特性、またはそれが適用される保護すべき表面からの浸透による持続性の低さ、ひいては弱い節足動物防除特性、特に節足動物忌避特性しか有さないものがある。
【0005】
したがって、節足動物自体、または節足動物が通過する領域に適用することができ、それにより、その標的宿主生物との関わりを阻止すると同時に、良好な長期持続性および良好な節足動物防除性能、特に節足動物忌避性能を有する節足動物用製品の開発は、依然として技術的課題である。
【0006】
発明の概要
本発明は、油溶性活性物質と組み合わせて使用される固形脂質材料を含む水中油型エマルションであって、標的節足動物への直接適用または節足動物の生息域への適用が可能な水中油型エマルションを提供することにより、上記の問題を解決するものである。
【0007】
本発明の第1の対象は、以下:
- 少なくとも1つの固形脂質材料と少なくとも1つの油溶性節足動物防除剤とを含む分散油相と、
- 安定剤を含む連続水相と
を含む水中油型エマルションであって、
前記エマルションは、標的節足動物への直接適用および/または節足動物の生息域への適用により節足動物防除製品として使用するためのものである、水中油型エマルションを提供する。
【0008】
本発明の第2の態様は、節足動物防除製品として使用するための水中油型エマルションの製造方法であって、前記方法は、以下:
(i)少なくとも1つの固形脂質材料と少なくとも1つの油溶性節足動物防除剤とを含む油相を、固形脂質材料の融点を上回る温度で、安定剤を含む連続水相に分散させて、水中油型エマルションを得る工程と、
(ii)こうして得られたエマルションを、固形脂質材料の融点を下回る温度まで冷却する工程と
を含む、方法を提供する。
【0009】
本発明の第3の対象は、上記で定義されたエマルションを含む、消費者物品である。
【0010】
本発明の第4の対象は、節足動物を防除する方法であって、前記方法は、本明細書において上記で定義されたエマルションを、節足動物および/または節足動物の生息域に適用または拡散させる工程を含む、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】エマルション1(A)およびエマルション2(B)の画像は、固形脂質材料を含む液滴形状の、配合方法による違いを示す図である。
【
図2】下半分を5%EO(A)、水(B)またはエマルション5(C)で処理した領域におけるテネブリオ・モリター(Tenebrio molitor)の移動の軌跡を示す図である。上半分は、未処理で待避所とした。
【
図3】各種製品で処理したまたは未処理の各種節足動物の各身体部位の顕微鏡写真を示す図である。ペリプラネタ・アメリカーナ(Periplaneta americana)(L)の足根は、未処理(A)であるか、またはエマルション2で処理済み(B)であり、テネブリオ・モリター(Tenebrio molitor)(L)の翅鞘は、未処理(C)であるか、または0.5%GLfで処理済み(D)であるか、またはエマルション2で処理済み(E)である。各処理物には蛍光剤を添加したが、この蛍光剤は、各図において活性の位置を示す。
【0012】
発明の詳細な説明
別段の記載がない限り、パーセンテージ(%)は、組成物の重量%を意味する。
【0013】
本発明の第1の対象は、以下:
- 少なくとも1つの固形脂質材料と少なくとも1つの油溶性節足動物防除剤とを含む分散油相と、
- 安定剤を含む連続水相と
を含む水中油型エマルションであって、
前記エマルションは、標的節足動物への直接適用および/または節足動物の生息域への適用により節足動物防除製品として使用するためのものである、水中油型エマルションである。
【0014】
本発明の一実施形態では、エマルションは、50%を上回る量の水、好ましくは60%、65%、68%、70%、73%、75%、80%、85%またはそれを上回る量の水を含む。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、エマルションは、70%を上回る量の水、好ましくは73%、75%、80%、85%またはそれを上回る量の水を含む。
【0016】
本発明のさらなる実施形態では、エマルションは、0.01%を上回る量の節足動物防除剤、好ましくは0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、20%、25%またはそれを上回る量の節足動物防除剤を含む。
【0017】
水中油型エマルションは、消費者製品に広く使用されている。水中油型エマルションは通常、連続水相と、例えば医薬活性剤、エモリエント剤、精油、ビタミン、顔料または香料などの活性成分を含む分散油相とを含む。水中油型エマルションの一般的な使用法は、ローションやクリームの形態で皮膚に直接適用することである。その目的は、皮膚からの活性剤の浸透、皮膚への活性剤の付着、皮膚からの活性剤の蒸発である。
【0018】
しかし、本発明より以前は、水中油型エマルションは、標的節足動物への直接適用および/または節足動物の生息域への適用によって節足動物防除剤を送達するために使用されていなかった。本発明のエマルションの利点は、油相が節足動物のクチクラに付着し、防除剤の送達を助けることである。
【0019】
本発明は、水の量が多く、節足動物防除剤の量がエマルションの他の成分に対して少ないエマルションを提供する。理解され得るように、これらの特徴によって、より高価で持続可能性の低い成分が高レベルで使用される代替の実施形態と比較して、エマルションを低コストで持続可能な様式で製造することが可能となる。
【0020】
本発明のエマルションは、少なくとも1つの固形脂質材料を含む油相を含む。添付の実施例に示すように、この固形脂質材料は、エマルション中にソリッドな液滴を形成し、節足動物防除剤を構成する。ソリッドな液滴のサイズは(添付の実施例および図面に示すように)変化させることができ、これは、ある時間範囲にわたってエマルションから節足動物防除剤を拡散放出させることを可能にするという有益な効果を有する。
【0021】
本発明の態様は、本発明のエマルションの標的節足動物への直接適用および/または節足動物の生息域への適用に関する。
【0022】
「標的節足動物に直接」には、エマルションを節足動物に意図的に噴霧または適用する場合が含まれる。これは、本発明のエマルションの使用者が、吐出装置を標的節足動物に直接向けてエマルションを節足動物に直接吐出するか、または本発明のエマルションの少なくとも一部が節足動物に必ず適用されるほど節足動物に近接してエマルションを吐出することにより達成できる。
【0023】
「節足動物の生息域への適用」には、巣、繁殖域、集合域、その他節足動物に適した生活域など、節足動物が日常的または定期的に生息する場所に、あるいは生活域の境界付近や生活域と予想される食物源との間を移動するなど、節足動物が典型的な生活活動中に通過すると予想される場所に、意図的にエマルションを噴霧または適用する場合が含まれる。
【0024】
一実施形態によれば、本発明は、基材に付着させるために磁気分極粒子を使用しない。
【0025】
さらに好ましい実施形態では、エマルションおよび/または節足動物防除剤は、カプセル化されていない。
【0026】
カプセルは、定義上、カプセルコア(活性節足動物防除剤±アジュバントを含む)およびカプセルシェル(コアを周囲の媒体から物理的に分離する)を含む。カプセル化節足動物防除剤は、当該技術分野で知られている。
【0027】
本発明のエマルションは、シェルを有していないため、カプセル化されているとはみなされないことに留意することが重要である。本発明のエマルションおよび/または防除剤中の活性物質をカプセル化するシェルがないことは、先行技術に対する重要な利点であり、その理由は、本発明のエマルション中のソリッドな液滴が、標的節足動物の外骨格に容易に結合することができ、このことが標的外骨格の近傍での節足動物防除剤の拡散を可能にし、それゆえ標的節足動物によって知らず知らずのうちに分配されるためである。したがって、節足動物を、節足動物防除剤を分配するためのビヒクルとして使用することができる。実際には、節足動物の外骨格は、主にキチンで構成されるクチクラの上に配置されたロウ状の層によって外側が覆われており、この層が、脱水、微生物感染、物理的損傷から昆虫を保護している。加えて、クチクラの損傷やクチクラへの浸透は、接触時間が長くなることで促進され、そのような特性は、本発明によって提供されるであろう。
【0028】
節足動物防除剤を標的節足動物の外骨格に結合させると、節足動物防除剤が標的節足動物によって輸送されるという利点がある。その結果、節足動物防除剤は、例えば隠れた隙間など、そのような薬剤の適用が困難または不可能な場所に分配されることになる。さらに、群生性節足動物や真社会性節足動物の場合、節足動物防除剤を運ぶ節足動物は仲間に加わろうとするため、節足動物防除剤は、この種の集まる場所および/またはすみかに持ち込まれることになる。これは、比較的種特異的であることに加え、標的害虫群を混乱させることになり、例えば、安全なすみかを離れる可能性が高くなり、捕食者や殺虫剤の危険に曝され易くなる。
【0029】
基材に付着させるためにロウコーティング層を使用するこの可能性については、米国特許出願公開第20170245493号明細書で言及されているが、その特許請求において、コーティング層は、マイクロカプセル化された精油を特に不織布に非共有結合により付着させるために使用されており、それゆえ、本発明の非カプセル化エマルション組成物の使用を遠ざけることが教示されている。
【0030】
米国特許出願公開第20020179075号明細書には、害虫の標的に直接接触する殺虫剤送達システムが記載されているが、この場合、システムは柔軟な材料でできており、衝撃時に破裂するよう想定されている。
【0031】
本明細書で論じた先行技術文献のいずれも、カプセル化されていないエマルションはおろか、本発明のエマルション組成物の製造を企図していない。
【0032】
本発明のさらなる実施形態では、油溶性活性成分は、>0.5のLog Pを有する。
【0033】
本発明のさらなる実施形態では、エマルションは、アルコール、特にエタノールを含まない。
【0034】
エマルション:
本明細書で使用される「エマルション」という用語は、通常は混和しない(すなわち溶解しない)2つ以上の液体の混合物を示す。エマルションでは、一方の液体(分散相)が他方の液体(連続相)中に分散している。本発明は、油溶性相が分散している連続親水性相を含む水中油型エマルションを対象とする。本発明によれば、油溶性物質は、分散相中に存在する。しかし、活性成分の極性によっては、油溶性物質の一部が連続相中に存在することもある。
【0035】
一実施形態によれば、エマルションは、マクロエマルションまたはナノエマルションである。本発明によるエマルションは、分散相液滴を乳化するために機械的な力を加える任意の方法によって製造することができ、好ましくは、高剪断ブレンダー、コロイドミル、インペラーミキサーを用いた機械的混合、または高圧ホモジナイザーの使用によって製造することができる。また、このようなエマルションは、超音波処理、膜乳化、またはマイクロ流路を用いた乳化によっても製造することができる。
【0036】
エマルションは、ゲルの形態で存在することができ、好ましくは1mPa・s~1Pa・s、好ましくは1mPa・s~500mPa・sで構成される粘度を有し、ここで、粘度は、25℃で100s-1の剪断速度で測定される。流動粘度は、コーンプレート形状のTA Instruments AR2000レオメーター(New Castle, DE, USA)を用いて測定した。
【0037】
本発明のエマルションは、「水中油型」エマルションであり、「油中水型」エマルションではないことに留意することが重要である。「水中油型」エマルションは、液体の水性環境中に分散した油滴を有し、これは、エマルション中の活性成分にとって重要である。これとは対照的に、「油中水型」エマルションは、液体の油性環境中に水滴を有し、これは、エマルション中の活性成分の効力を変化させることになる。
【0038】
固形脂質材料:
本発明で使用される「固形脂質材料」という用語は、室温で固体またはペーストの形態である脂質成分を指す。これにはグリセリドやロウが含まれる。対照的に、本発明で使用される「油」という用語は、室温で液体である有機成分を指す。
【0039】
固形脂質油材料を使用することは、節足動物防除剤が固形脂質によって形成されたマトリックスに捕捉されることを意味する。このような組成物は、マトリックスからの活性節足動物防除剤の拡散性を低下させ、空気中や節足動物表面上での蒸発を遅らせ、その持続性を向上させ、したがってその作用を向上させる。
【0040】
さらに、ソリッドな液滴コアに捕捉された活性剤は、過酷な環境条件からも保護され、例えばNguyenら(2012, doi: 10.1002/ps.3268)がキトサンでコーティングされた固形ミツロウでできたナノ粒子で実証したように、例えば光による劣化のリスクが低減される。
【0041】
一実施形態によれば、固形脂質油材料は、疎水性物質でできた節足動物のクチクラに結合し、これにより、活性剤と標的節足動物とがより良好に接触し、活性剤が標的節足動物と一緒により良好に輸送されることが保証される。重力および疎水性に基づくこの付着プロセスは、昆虫病原性分生子と昆虫の表皮との間に自然に生じる付着(例えば、Boucias et al., 1988, 10.1128/aem.54.7.1795-1805.1988)と類似しており、これにより、定着およびその後の伝播が可能となる。
【0042】
一実施形態によれば、固形脂質材料は、植物性脂肪および非植物性脂肪からなる群において選択される。一実施形態では、固形脂肪は、トリグリセリドの形態の植物性脂肪酸とグリセロールとの誘導体である。特定の実施形態では、トリグリセリドはパームステアリンである。
【0043】
一実施形態によれば、固形脂質材料は、植物性ロウおよび非植物性ロウからなる群において選択される。特定の実施形態では、非植物性ロウはミツロウである。特定の実施形態では、植物性ロウは、カルナウバロウまたはホホバロウである。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、固形脂質材料は天然の生分解性ロウであり、非天然ロウではない。本発明の本態様の利点は、天然ロウがすでに知られており消費財に使用されているため、本発明のエマルションが環境に与える影響が少ないことである。さらに、天然の生分解性ロウは、本発明のエマルションの使用に関連して生じ得る規制当局の懸念に対処するのに役立ち得る。
【0045】
一実施形態によれば、固形脂質材料は、ミツロウ、カルナウバロウ、パームステアリン、ホホバロウおよびそれらの混合物からなる群において選択される。
【0046】
一実施形態によれば、固形脂質材料はヒマシ油ではない。
【0047】
固形脂質材料の量は好ましくは、油相の総重量に対して0.5~50重量%、好ましくは1~10重量%、好ましくは1~5重量%、好ましくは約1.5重量%である。
【0048】
特定の実施形態では、活性剤を含有するソリッドな液滴コアの脂質組成により、節足動物防除剤は、例えば、グルーミング中に標的害虫によって摂取される可能性があり、これによって、節足動物の味覚路のより透過性の高い粘膜表面に直接到達する節足動物防除剤の効力がさらに高められる。本発明では、活性剤を含む脂質コアの組成およびサイズは、節足動物による受動的摂取に直接有利である。
【0049】
油溶性活性物質:
油溶性物質は、水と混合すると二相分散液を形成する単一物質または混合物質である。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、油溶性活性物質は、油溶性であり、LogPが0.5より大きく、好ましくは1より大きく、より好ましくは1.2より大きいことにより定義される。
【0051】
一実施形態によれば、油溶性活性物質は、0.5より大きく8未満のLogPを有する。別の実施形態によれば、油溶性活性物質は、0.5より大きく5未満のLogPを有する。別の実施形態によれば、油溶性活性物質は、0.5より大きく3未満のLogPを有する。
【0052】
LogPは、推定されるオクタノール-水分配係数の常用対数であり、親油性の指標として知られている。
【0053】
多くの化合物のLogP値は、例えば、Daylight Chemical Information Systems, Inc. (Daylight CIS), Irvine, Calif.から入手可能なPomona92データベースで報告されており、これには原文献の引用も含まれる。LogP値は、同じくDaylight CISから入手可能な「CLOGP」プログラムで算出するのが最も便利である。このプログラムは、Pomona92データベースで実験的なlogP値が利用可能な場合、その値もリストアップする。「logP算出値」(cLogP)は、HanschおよびLeoのフラグメントアプローチによって決定される(A. Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol. 4, C. Hansch, P. G. Sammens, J. B. Taylor and C. A. Ramsden, Eds., p. 295, Pergamon Press, 1990参照)。フラグメントアプローチは、各香油成分の化学構造に基づき、原子の数および種類、原子の連結性および化学結合を考慮する。この物理化学的特性について最も信頼性が高く、広く使用されている推定値であるcLogP値は、実験的なLogP値が利用できない場合、本発明に有用な賦香化合物の選択に好ましく使用される。
【0054】
好ましい実施形態によれば、節足動物防除剤と固形脂質材料との比は、1:200、1:150、1:120、1:100、1:50、1:25:、1:10、1:5、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1またはそれを上回る。好ましくは、節足動物防除剤と固形脂質材料との比は、1:200、1:150、1:120、1:100、1:50、1:25:、1:10、1:5、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1である。さらにより好ましくは1:20~10:1である。以下の実験データは、節足動物防除剤と固形脂質材料との好ましい比の例を示す。
【0055】
好ましい実施形態によれば、節足動物防除剤は、少なくとも1つの節足動物防除剤を含む。
【0056】
添付の実施例に示すように、本発明のエマルションは、少なくとも1つの節足動物防除剤を含み、該剤がエマルションに節足動物防除活性を付与する。「長期持続性」という用語は主観的なものであるが、この文脈では、節足動物防除剤の節足動物防除活性が、本発明のエマルションの形態で製造された場合に、節足動物防除剤が本発明のエマルション中に存在しない代替の形態で製造された場合よりも長期間持続することを意味することが意図される。本発明の範囲を限定する意図はないが、節足動物防除剤がエマルション中に安定化された形態で存在しており、節足動物防除剤が製造された、または非封入形態、すなわちエマルション中には全く存在しない他の配合物よりも、より調節された様式で放出され、より長く持続する効力を提供するというのが、本発明の発明者らの見解である。
【0057】
節足動物防除剤:
「節足動物」という用語は、当該技術分野の当業者にとって通常の意味を有する。節足動物には、昆虫、クモ類、甲殻類などの無脊椎動物であって、分節した体および関節肢を有するものが含まれる。節足動物は通常、一定の間隔で脱皮するキチン質の外骨格と、腹側の神経節の鎖につながった背側前部の脳とを有する。
【0058】
本発明の理解における節足動物は、望ましくない節足動物に関するものであり、空気中、物品の表面、植物の表面または脊椎動物、例えばヒト対象物または他の哺乳動物、好ましくはヒト対象物の表面におけるそれらの存在が望ましくないことを意味する。好ましくは、望ましくない節足動物は、ヒトを含む動植物に影響を与える有害節足動物、および建材、衣服、食品、家具、その他の生活用品などのヒトの物品に影響を与える有害節足動物である。例えば、アザミウマ、アブラムシ、甲虫、ガ、コナカイガラムシ、カイガラムシ、ハチ、スズメバチ、アリ、シロアリ、ゴキブリ、シミ、クモなど、さらにより好ましくは、脊椎動物に影響を与える吸血性節足動物、例えば、刺咬性ハエ、トコジラミ、サシガメ、ノミ、シラミ、蚊、ダニなどが、本願において標的節足動物とみなされる。
【0059】
節足動物防除剤は、当業者によって選択される場合、あらゆる節足動物に影響を与え、その防除を可能にすべきものである。本発明の一実施形態では、好ましくは群生性であれば、集合する性質を有する節足動物が好ましい標的である。本発明のさらなる実施形態では、膜翅目(アリ、スズメバチ、ハチ)またはシロアリ目(シロアリ)に属する節足動物などの真社会性を示す節足動物が好ましい標的である。これらの社会的行動の違いは、当業者に知られている。
【0060】
節足動物の存在が望まれない理由としては、節足動物が近傍に存在することが対象物にとって不快であること、物品に節足動物が接触することで疾病および/もしくは細菌が移動すること、保護すべき資源をめぐって節足動物がヒトの活動と競合すること、節足動物がヒトの物品を損傷もしくは破壊すること、節足動物が生物を咬んでかゆみを引き起こすこと、疾病および/もしくは細菌が伝播すること、または節足動物の摂食が他の疾病および/もしくは症状の原因となり得ることが考えられる。
【0061】
「防除」、「節足動物防除」などの表現は、当業者にとって通常の意味を有する。本発明の文脈における「防除」は、本発明による薬剤または節足動物防除組成物が節足動物を誘引、抑止、殺滅、弱体化または忌避する能力、好ましくは節足動物を殺滅、抑止または忌避する能力、さらにより好ましくは節足動物を忌避または抑止する能力、さらには節足動物群集を崩壊させ、繁殖に影響を与える能力を定義する。
【0062】
しかし、本発明の好ましい実施形態では、節足動物防除剤は、節足動物を殺滅しない。本発明の本実施形態の利点は、節足動物を媒介体として使用して薬剤を他の節足動物に移動または伝達させ、かつ/または前記薬剤を巣または他のそのような生息の隠れ家に移動させ、したがって他の節足動物を節足動物防除剤に曝すことができることである。
【0063】
本発明による「誘引」は、空気中、これらの節足動物が集まっているか集まっていない隠れ家もしくは巣もしくは別の基材の表面上、または節足動物誘引剤もしくは節足動物誘引組成物が適用された別の節足動物の表面上などの節足動物誘引源において、同じ種であるか否かを問わず節足動物の接触または存在を増加または促進する薬剤の能力を定義する。
【0064】
本発明による「抑止」は、空気中、これらの節足動物が集まっているか集まっていない隠れ家もしくは巣もしくは他の基材の表面上、または節足動物抑止剤もしくは節足動物抑止組成物が適用された別の節足動物の表面上などの節足動物抑止源において、節足動物の接触または存在を最小化、減少、阻止または防止する節足動物防除剤の能力を定義する。典型的には、節足動物に抑止剤または抑止組成物を最初に適用した後、節足動物が仲間とともに休息または集合するのを妨げる抑止剤として使用した場合に抑止効果が示される。
【0065】
本発明による「殺滅」は、本発明による節足動物防除剤殺滅組成物が、空気中、これらの節足動物が集まっているか集まっていない隠れ家もしくは巣もしくは他の基材の表面上、または節足動物殺滅剤もしくは節足動物殺滅組成物が適用された別の節足動物の表面上などの節足動物殺滅源において節足動物を殺滅する能力を定義する。
【0066】
本発明による「弱体化」は、本発明による薬剤弱体化組成物が、空気中、これらの節足動物が集まっているか集まっていない隠れ家もしくは巣もしくは別の基材の表面上、または節足動物弱体化剤もしくは節足動物弱体化組成物が適用された別の節足動物の表面上などの節足動物弱体化源において、脱水速度を高め、昆虫病原体または捕食者の攻撃の成功を増加させ、仲間による認識を低下させて節足動物の生存率を低下させることにより節足動物の抵抗性を低下させる能力を定義する。
【0067】
本発明による「忌避性」は、節足動物防除剤が、空気中、これらの節足動物が集まっているか集まっていない隠れ家もしくは巣もしくは他の基材の表面上、または節足動物忌避剤もしくは節足動物忌避組成物が適用された別の節足動物の表面上などの節足動物忌避源において、節足動物の接近または存在を最小化、減少、阻止または防止する節足動物防除剤の能力を定義する。
【0068】
節足動物防除剤と組み合わせて、追加成分を使用することもできる。そのような成分の非限定的な例としては、香料、悪臭防止剤、殺菌剤、殺真菌剤、医薬または農薬成分、微生物剤、除菌剤、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0069】
特定の実施形態によれば、節足動物防除剤は、前駆体、エマルションまたは分散液のような、薬剤の送達を共に改善、増強または改変する物質と組み合わせて使用され、また、長期持続性、ブルーミング、悪臭抵抗性、抗菌効果または微生物安定性または微生物発育性のような効果の改変または付与の有益性を超える付加的な有益性を付与する組み合わせも使用される。
【0070】
油溶性内相中に存在し得る節足動物防除剤の性質および種類については、本明細書においてより詳細な説明は保証されないが、いずれにせよ、より詳細な説明を行ってもすべてを網羅できるものではなく、当業者であれば、自身の常識に基づいて、意図する使用または用途に応じてそれらを選択することができる。
【0071】
一実施形態によれば、油溶性活性剤は、節足動物防除剤または節足動物防除剤の混合物である。
【0072】
特定の実施形態によれば、節足動物防除剤は、エチル3-(アセチル(ブチル)アミノ)プロパノエート(IR3535(登録商標))、N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド(DEET)、p-メンタン-3,8-ジオール(PMD)、ユーカリプタス・シトリオドラ(Eucalyptus citriodora)油、シトロネラ属(Citronella spp.)油、sec-ブチル2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン-1-カルボキシレート(ピカリジン)、バニリン、ヒマシ油、シダーウッド油、シナモン油、シトロネラール、クローブ油、コーン油、ハッカ、ハッカ油、綿実油、4-アリル-2-メトキシフェノール(オイゲノール)、ニンニク油、(2E)-3,7-ジメチルオクタ-2、6-ジエン-1-オール(ゲラニオール)、ゲラニウム油、レモングラス油、亜麻仁油、ペパーミント、ペパーミント油、2-フェニルエチルプロピオネート、ローズマリー油、ゴマ油、大豆油、スペアミント、スペアミント油、タイム油、ミント、ミント油、コショウ抽出物、ウィンターグリーン油、ラベンダー油、ラウァンドゥラ・ヒュブリダ(Lavandula hybrida)抽出物、ラバンディン油、レモン油、インドセンダン抽出物、メンタ・アルベンシス(Mentha arvensis)抽出物、メトフルトリン、ノナン酸、ピレスリンおよびピレスロイド、2,3,4,5-ビス(ブチル-2-エン)テトラヒドロフルフラール(MGK Repellent 11)、シネオール、シンナムアルデヒド、シトラール、シトロネロール、クマリン、ジブチルフタレート、ジエチルフタレート、ジメチルアントラニレート、ジメチルフタレート、エチルバニリン、ユーカリ油、ヌートカトン、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン、δ-ドデカラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、γ-ドデカラクトン、ヒドロキシシトロネラール、ライム油、リモネン、リナロール、メチルアントラニレート、ミントスピカータ、ミルセン、ニーム油、サビネン、β-カリオフィレン、(1H-インドール-2-イル)酢酸、アネトール、アニス油、バジル油、ベイ油、カンフル、エチルサリチレート、常緑樹油、マツ油、テトラメトリン、アレトリン、(RS)-α-シアノ-3-フェノキシベンジル-(1RS)-シス、シペルメトリン、プラレトリン、アセタミプリド、アザジラクチン、ベンダイオカルブ、ビフェントリン、クロルピリホス、デルタメトリン、ジアジノン、ジクロルボス、フィプロニル、イミダクロプリド、リナロール、マラチオン、インドセンダン抽出物、ニコチン、ペルメトリン、ロテノン、S-メトプレン、スピノサド(スピノシンA)、スピノシンD、トランスフルトリン、アニスアルコール、オクタヒドロクマリン、(+-)-2,5-ジメチル-2-インダンメタノール、4,4A,5,9B-テトラヒドロインデノ[1,2-D]-1,3-ジオキシン、2,4-ジメチル-4,4a,5,9b-テトラヒドロインデノ[1,2-d][1,3]ジオキシン、昆虫病原性細菌、例えば、バシラス(Bacillaceae)属、バークホルデリア(Burkholderia)属、クロモバクテリウム(Chromobacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、サッカロポリスポラ(Saccharopolyspora)属、セラチア(Serratia)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、エルシニア(Yersinia)属、ゼノラブダス(Xenorhabdus)属およびフォトラブダス(Photorhabdus)属、昆虫病原性真菌、例えば、メタリジウム・アニソプリエ(Metarhizium anisopliae)属、ボーベリア・バシアーナ(Beauveria bassiana)属、ヒルステラ(Hirsutella)属、イサリア(Isaria)属、レカニシリウム(Lecanicillium)属、ペシロマイセス(Paecilomyces)属およびバーティシリウム(Verticillium)属、昆虫病原性ウイルス、昆虫病原性線虫、例えば、シュタイネルネマ(Steinernema)属およびヘテロラブディティス(Heterorhabditis)属、酵母、特異的に設計されたRNAi、酵素、例えばキチナーゼ、半化学物質またはフェロモン、例えば、性的誘引を誘発する刺激物質(例えば、ゴキブリであるペリプラネタ・アメリカーナ(Periplaneta americana)(L)およびゴキブリであるブラテラ・ゲルマニカ(Blattella germanica)(L)のそれぞれペリプラネトンBおよびゲンチシルキノンイソバレレート、トマトキバガ、すなわちツタ・アブソルタ(メイリック)(Tuta absoluta(Meyrick))の(E,Z,Z)-3,8,11-テトラデカトリエニルアセテート)、または集合を誘発する刺激物質(例えば、デンドロクトヌス・ポンデロサエ(ホプキンス)(Dendroctonus ponderosae(Hopkins))のようなキクイムシが抗集合フェロモンとして使用するベルベノン、またはヒアリであるアッタ・ゲミナタ(ファブリシウス)(Atta geminata(Fabricius))がリクルートフェロモンおよび指向性フェロモンとして使用するZ,E-α-ファルネセン)、または種の同定を誘発する刺激物質(例えば、クリプトテルメス・ブレビス(ウォーカー)(Cryptotermes brevis(Walker))、C.シノセファルス(ライト)(C.cynocephalus(Light))、プロクリプトテルメス・コルニセプス(スナイダー)(Procryptotermes corniceps(Snyder))、もしくはネオテルメス・コンネクサス(スナイダー)(Neotermes connexus(Snyder))などのシロアリのオレフィンもしくはその他の炭化水素)、またはコロニーもしくは巣の仲間の同定を誘発する刺激物質(ポリステス・ドミヌルス(クリスト)(Polistes dominulus(Christ))などのハチによるクチクラ炭化水素プロファイルの特定の成分)、または発育段階に関する情報を誘発する刺激物質(例えば、トコジラミであるシメックス・レクツラリウス(Cimex lectularius)(L)のオキソアルデヒド)、またはメッセージを誘発する刺激物質(例えば、フォロドン・フムリ(シュランク)(Phorodon humuli(Schrank))などのアブラムシやヒアリであるA.ゲミナタ(F)(A.geminate(F))がそれぞれ警報フェロモンとして使用するE-β-ファルネセンおよびジメチルピラジン)、ならびにそれらの混合物からなる群において選択される。
【0073】
昆虫病原性細菌、真菌、ウイルスまたは線虫のような生物農薬の使用は当業者によく知られている。様々な活性剤のレビューを提供するKumarら(2021, doi: 10.3390/plants10061185)を参照のこと。
【0074】
RNAiを用いることで、特定の標的遺伝子のサイレンシング、および標的害虫の発育に重要なタンパク質の発現の阻害を媒介することができる。このような技術は当該技術分野で知られており、標的害虫に非常に特異的な影響を与え、非標的生物への副作用を避け、抵抗性を回避できるという利点がある。
【0075】
本発明のエマルションにキチナーゼのような特定の酵素を使用すると、標的節足動物の外骨格が弱体化し、脱水や、昆虫病原体や化学物質のような活性剤による攻撃のリスクをより受け易くなる。
【0076】
フェロモンのような特定の化合物を使用すると、個体間のコミュニケーションを大きく妨害することができるであろう。昆虫の炭化水素クチクラのサインを変化させることで、親類や仲間から認識されなくなり、したがって社会性昆虫(例えば、アリ、シロアリ、ハチ)では拒絶反応やコミュニティの自動破壊を引き起こすことが考えられる。ソリッドな液滴コアは、クチクラ間の接触による節足動物防除剤の移動を可能にし、これらの新しい炭化水素クチクラのサインがコロニー内で急速に広がることができ、コロニー構造が大きく妨害される。同様に、昆虫にフェロモンを撒けば、仲間内でのステータスが変化する。例えば、外骨格にソリッドな液滴コアが存在するために性フェロモンを持つゴキブリは、オスであろうとメスであろうと、必要以上に交尾相手のオスを惹きつけるだろう。同様に、一例として、若虫の特異的フェロモンを含んだソリッドな液滴をトコジラミ成虫に散布すれば、性的パートナーとして魅力がなくなり、集団の繁殖適性が低下する。抵抗現象としての馴化の場合、種特異的フェロモンを使用せずに性的パートナーを見つけることは、トコジラミの場合、その外傷的な授精方法のため、より運まかせであり、危険でさえある。いずれの場合も、交尾の適性や成功率が低下するため、標的害虫の個体数は減少する。さらに、節足動物や節足動物の生息域に警報フェロモンや特別に選択された半化学物質を噴霧すると、巣の仲間は、存在しない敵からコロニーを守るために時間や資源を費やすことになる。同様に、節足動物や節足動物の生息域にリクルートフェロモンや指向性フェロモンを噴霧すれば、偽の足跡を作ることを誘発するため、巣の仲間は、存在しない資源を探すためにまたも時間やエネルギーを浪費することになる。
【0077】
本発明の好ましい実施形態では、節足動物防除剤は液体である。そのような特定の実施形態によれば、節足動物防除剤は、エチル3-(アセチル(ブチル)アミノ)プロパノエート(IR3535(登録商標))、N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド(DEET)、p-メンタン-3,8-ジオール(PMD)、ユーカリプタス・シトリオドラ(Eucalyptus citriodora)油、シトロネラ属(Citronella spp.)油、sec-ブチル2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン-1-カルボキシレート(ピカリジン)、バニリン、ヒマシ油、シダーウッド油、シナモン油、シトロネラール、クローブ油、コーン油、ハッカ、ハッカ油、綿実油、4-アリル-2-メトキシフェノール(オイゲノール)、ニンニク油、(2E)-3,7-ジメチルオクタ-2、6-ジエン-1-オール(ゲラニオール)、ゲラニウム油、レモングラス油、亜麻仁油、ペパーミント、ペパーミント油、2-フェニルエチルプロピオネート、ローズマリー油、ゴマ油、大豆油、スペアミント、スペアミント油、タイム油、ミント、ミント油、コショウ抽出物、ウィンターグリーン油、ラベンダー油、ラウァンドゥラ・ヒュブリダ(Lavandula hybrida)抽出物、ラバンディン油、レモン油、インドセンダン抽出物、メンタ・アルベンシス(Mentha arvensis)抽出物、メトフルトリン、ノナン酸、ピレスリンおよびピレスロイド、2,3,4,5-ビス(ブチル-2-エン)テトラヒドロフルフラール(MGK Repellent 11)、シネオール、シンナムアルデヒド、シトラール、シトロネロール、クマリン、ジブチルフタレート、ジエチルフタレート、ジメチルアントラニレート、ジメチルフタレート、エチルバニリン、ユーカリ油、ヌートカトン、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン、δ-ドデカラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、γ-ドデカラクトン、ヒドロキシシトロネラール、ライム油、リモネン、リナロール、メチルアントラニレート、ミントスピカータ、ミルセン、ニーム油、サビネン、β-カリオフィレン、(1H-インドール-2-イル)酢酸、アネトール、アニス油、バジル油、ベイ油、カンフル、エチルサリチレート、常緑樹油、マツ油、テトラメトリン、アレトリン、(RS)-α-シアノ-3-フェノキシベンジル-(1RS)-シス、シペルメトリン、プラレトリン、アセタミプリド、アザジラクチン、ベンダイオカルブ、ビフェントリン、クロルピリホス、デルタメトリン、ジアジノン、ジクロルボス、フィプロニル、イミダクロプリド、リナロール、マラチオン、インドセンダン抽出物、ニコチン、ペルメトリン、ロテノン、S-メトプレン、スピノサド(スピノシンA)、スピノシンD、トランスフルトリン、アニスアルコール、オクタヒドロクマリン、(+-)-2,5-ジメチル-2-インダンメタノール、4,4A,5,9B-テトラヒドロインデノ[1,2-D]-1,3-ジオキシン、2,4-ジメチル-4,4a,5,9b-テトラヒドロインデノ[1,2-d][1,3]ジオキシン、酵素、例えばキチナーゼ、半化学物質またはフェロモン、例えば、性的誘引を誘発する刺激物質(例えば、ゴキブリであるペリプラネタ・アメリカーナ(Periplaneta americana)(L)およびゴキブリであるブラテラ・ゲルマニカ(Blattella germanica)(L)のそれぞれペリプラネトンBおよびゲンチシルキノンイソバレレート、トマトキバガ、すなわちツタ・アブソルタ(メイリック)(Tuta absoluta(Meyrick))の(E,Z,Z)-3,8,11-テトラデカトリエニルアセテート)、または集合を誘発する刺激物質(例えば、デンドロクトヌス・ポンデロサエ(ホプキンス)(Dendroctonus ponderosae(Hopkins))のようなキクイムシが抗集合フェロモンとして使用するベルベノン、またはヒアリであるアッタ・ゲミナタ(ファブリシウス)(Atta geminata(Fabricius))がリクルートフェロモンおよび指向性フェロモンとして使用するZ,E-α-ファルネセン)、または種の同定を誘発する刺激物質(例えば、クリプトテルメス・ブレビス(ウォーカー)(Cryptotermes brevis(Walker))、C.シノセファルス(ライト)(C.cynocephalus(Light))、プロクリプトテルメス・コルニセプス(スナイダー)(Procryptotermes corniceps(Snyder))、もしくはネオテルメス・コンネクサス(スナイダー)(Neotermes connexus(Snyder))などのシロアリのオレフィンもしくはその他の炭化水素)、またはコロニーもしくは巣の仲間の同定を誘発する刺激物質(ポリステス・ドミヌルス(クリスト)(Polistes dominulus(Christ))などのハチによるクチクラ炭化水素プロファイルの特定の成分)、または発育段階に関する情報を誘発する刺激物質(例えば、トコジラミであるシメックス・レクツラリウス(Cimex lectularius)(L)のオキソアルデヒド)、またはメッセージを誘発する刺激物質(例えば、フォロドン・フムリ(シュランク)(Phorodon humuli(Schrank))などのアブラムシやヒアリであるA.ゲミナタ(F)(A.geminate(F))がそれぞれ警報フェロモンとして使用するE-β-ファルネセンおよびジメチルピラジン)、ならびにそれらの混合物からなる群において選択される。
【0078】
本発明の好ましい実施形態では、節足動物防除剤は、N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド(DEET)ではない。
【0079】
本発明の好ましい実施形態では、節足動物防除剤は、エチル3-(アセチル(ブチル)アミノ)プロパノエート(IR3535(登録商標))ではない。
【0080】
油溶性活性物質に加えて、連続相は、分散または可溶化された親水性活性剤を含むことができ、この親水性活性剤は、好ましくは、乾燥血液、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸、カリウム(2E,4E)-ヘキサ-2,4-ジエノエート、腐敗性全卵固形物、塩化ナトリウム、硫酸モノドデシルエステル、ナトリウム塩、亜鉛、ホウ酸、クエン酸、マルトデキストリン、二酸化ケイ素、およびそれらの混合物からなる群において選択される。
【0081】
本発明において、薬剤組成物の内部に入る追加成分には、化合物前駆体、エマルションまたは分散液のような、薬剤の送達を共に保護、改善、増強または改変する物質の組み合わせに加え、長期持続性、ブルーミング、悪臭抵抗性、抗菌効果、微生物安定性、節足動物防除性または微生物発育性のような匂いの改変または付与の有益性を超える付加的な有益性を付与する組み合わせも含まれる。
【0082】
油相中に存在する追加成分の性質および種類については、本明細書においてより詳細な説明は保証されないが、いずれにせよ、より詳細な説明を行ってもすべてを網羅できるものではなく、当業者であれば、自身の常識に基づいて、意図する使用または用途および所望の官能効果に応じてそれらを選択することができる。一般的には、これらの追加成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、含窒素または含硫複素環式化合物、精油など様々な化学クラスに属し、天然由来であっても合成由来であってもよい。これらの補助成分の多くは、いずれにせよ、当該技術分野において当業者によく知られており、または類似の性質を有する他の著作物においてよく知られており、また、香料、フェロモン、半化学物質および昆虫病原性生物的防除剤の分野における豊富な特許文献においてもよく知られている。また、前記成分は、様々な種類の追加成分を制御された様式で放出することが知られている化合物であってもよいことも理解される。
【0083】
追加成分は、当業者によく知られているように、当該技術分野で現在使用されている溶媒に溶解させることができる。溶媒は、好ましくはアルコールではない。そのような溶媒の例は、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、Abalyn(登録商標)(ロジン樹脂、Eastmanから入手可能)、安息香酸ベンジル、クエン酸エチル、リモネンもしくは他のテルペン、またはイソパラフィンである。好ましくは、溶媒は、例えばAbalyn(登録商標)や安息香酸ベンジルのように、非常に油溶性が高く、かつ高度に立体障害性を示す。好ましくは、追加成分は、30%未満の溶媒を含む。より好ましくは、追加成分は、20%未満、さらにより好ましくは10%未満の溶媒を含み、これらのパーセンテージはすべて、香料の総重量に対する重量で定められる。最も好ましくは、追加成分は、実質的に溶媒を含まない。
【0084】
一実施形態によれば、エマルションは、補助溶媒を含むことができる。一実施形態によれば、補助溶媒は、植物油および/または動物油である。
【0085】
油混和性補助溶媒:
一実施形態によれば、分散相は、油混和性補助溶媒を含む。
【0086】
本発明で使用できる油混和性補助溶媒としては、例えば、O-アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、カプリルトリグリセリド、トリアセチン、ヤシアルカン(および)(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキル、ジカプリル酸プロパンジオール、オクタン酸1,3-プロパンジイルエステル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、トリヘプタノイン、カプリル/カプリン酸グリセリド、ウンデカンおよびトリデカン、C15-C19アルカン、スクアレン、シリコーン油、グリコールエーテル、例えば、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、DIPGモノメチルエーテル、アジピン酸ジメチル/グルタル酸ジメチルエステル、安息香酸ベンジル、ピペロニルブトキシド、ヤシ油、またはそれらの混合物を挙げることができる。
【0087】
好ましい実施形態では、補助溶媒は、O-アセチルクエン酸トリブチルまたはクエン酸トリエチルである。
【0088】
好ましくは、均質な分散相を得るために、油混和性補助溶媒は、安息香酸ベンジル、ピペロニルブトキシド、ヤシ油およびそれらの混合物からなる群において選択される。存在する場合、補助溶媒は、好ましくは油相の総重量に対して5~30重量%、好ましくは10~25重量%使用される。
【0089】
水混和性補助溶媒:
一実施形態によれば、水性連続相は、好ましくは一価および多価溶媒からなる群において選択される水混和性補助溶媒を含む。そのような溶媒の非限定的な例は、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、イソプロピリデングリセロール、ブチレングリコール(1,3-ブタンジオール)、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、およびイソプロパノール、ならびにそれらの混合物を含む群から見出すことができる。存在する場合、補助溶媒は、好ましくは水相の総重量に対して5~30重量%、好ましくは10~25重量%使用される。
【0090】
安定剤:
本発明によれば、連続相は、水に分散した安定剤を含む。
【0091】
特定の実施形態によれば、安定剤は、分子乳化剤である。
【0092】
「分子乳化剤」とは、二相間の界面に濃縮し、その界面の特性を改変する両親媒性分子である。安定剤の例は、当業者によく知られている。
【0093】
一実施形態によれば、分子乳化剤は高分子乳化剤である。
【0094】
非イオン性乳化剤よりも高分子乳化剤の使用が好ましいが、これは、これらの安定化剤が、非イオン性乳化剤よりも高い安定性(すなわち、電荷および立体反発性)を有し、さらにソリッドな液滴間の凝集を防止するためである。また、PEGやPPGをベースとする界面活性剤のような非イオン性乳化剤は、天然のものでないため、本発明のエマルションからこのクラスの分子を除外することにより、1,4-ジオキサン、遊離グリコールエーテルおよび遊離エチレンオキシドのような汚染物質の危険性がなくなる。したがって、本発明の好ましい実施形態では、安定剤は、非イオン性乳化剤ではなく、好ましくは安定剤は、ポリエチレングリコール(PEG)やPPGではなく、ポリエチレングリコール(PEG)やPPG誘導体、例えばエトキシル化アルコールでもない。
【0095】
さらなる実施形態では、本発明のエマルションは、ポリエチレングリコール(PEG)やPPGを含まず、ポリエチレングリコール(PEG)やPPG誘導体、例えばエトキシル化アルコールも含まない。
【0096】
高分子乳化剤のさらなる利点は、このような分子は、米国環境保護庁の40CFR 152.25(f)の最小リスク免除規制のもとで、最小リスク殺虫剤製品に許容される成分として通知され、FIFRAセクション25b製品に挙げられていることであり、これは、本発明のエマルションを商業的に利用するための規制上の障害が少ないことを意味する。
【0097】
非限定的な例として、分子乳化剤は、加工デンプン、アラビアガム、ペクチン、カゼイン、シクロデキストリン、レシチン、大豆タンパク質、キラヤサポニン、およびそれらの混合物からなる群において選択することができる。
【0098】
安定剤が存在する場合、好ましくは、エマルションの総重量に対して0.5~15重量%、好ましくは1~10重量%使用される。
【0099】
本発明の好ましい実施形態では、分子乳化剤は高分子乳化剤であり、エマルションの総重量に対して5重量%以上、好ましくはエマルションの総重量に対して6重量%、7重量%、8重量%、9重量%または10重量%存在する。
【0100】
含水率
本発明のエマルションが50%を上回る量の水、好ましくは60%、65%、68%、70%、73%、75%、80%、85%またはそれを上回る量の水を含むことを強調することが重要である。これは、エマルションが「水中油型」エマルションであり、「油中水型」エマルションではないため重要である。
【0101】
50%を上回る量の水を含むことの利点としては、エマルションの安定性が挙げられ、なぜならば、他の成分が50%を上回ると、特定の環境条件下でエマルションが固化するなどして使用できなくなる可能性があるためである。さらに、水は低コスト品であるため、単価を下げることができる。
【0102】
添付の実施例からわかるように、本発明者らは、本発明の一連の水中油型エマルションを製造した。これらのエマルションは、それぞれ70%を上回る含水率を有する。それゆえ、本発明の好ましい実施形態では、本発明のエマルションは、70%を上回る量の水、好ましくは73%、75%、80%、85%またはそれを上回る量の水を含む。
【0103】
任意成分:
エマルションは、また、増量剤(エステルガム、ダマールガム、クエン酸アセチルトリブチルなど)、粘度調整剤、ゲル化剤(アガーガム、ジェランガム、グアーガム、トラガカントガム、セルロース誘導体、キサンタンガムなど)、pH調整剤、およびそれらの混合物などの任意成分を含むことができる。
【0104】
本発明で使用できる粘度調整剤の例としては、カルボン酸ホモポリマー、カルボン酸コポリマーが挙げられる。
【0105】
本発明によれば、エマルション組成物は、着色剤、防腐剤、エモリエント剤、保湿剤、抗酸化剤、フリーラジカルスカベンジャー、POV改善剤、冷感剤、ビタミン、固定剤、美容効果剤、キレート剤、機能性ポリマー、栄養剤、成長媒体または電解質などの任意の他の成分をさらに含むことができる。
【0106】
このような任意成分は、10%w/w以下、3%w/w以下、またはさらには2%w/w以下であってよく、これらのパーセンテージは、エマルションの総重量に対するものである。
【0107】
本発明で使用できる冷感剤の例としては、メントール、メントールメチルエーテル、メントールエチレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3805)、メントールプロピレングリコールカーボネート(FEMA GRAS 3806)、メンチル-N-エチルオキサメート、モノメンチルスクシネート(FEMA GRAS 3810)、モノメンチルグルタメート(FEMA GRAS 4006)、メントキシ-1,2-プロパンジオール(FEMA GRAS 3784)、3-ヒドロキシメチルp-メンタン、メンチルエトキシヒドロキシアセテート、2-(4-エチルフェノキシ)-N-(1H-ピラゾール-5-イル)-N-(2-チエニルメチル)アセトアミド、WS23(2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチラミド)、FEMA 3804;WS-3(N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド)、FEMA 3455;WS-5[エチル3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート]、FEMA 4309;WS-12(1R,2S,5R)-N-(4-メトキシフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4681;WS27(N-エチル-2,2-ジイソプロピルブタンアミド)、FEMA 4557;N-シクロプロピル-5-メチル-2-イソプロピルシクロヘキサンカルボキサミド、FEMA 4693、WS-116(N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,2-ジエチルブタンアミド)、N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)2,2-ジエチルブタンアミド、FEMA 4603、メントキシエタノール、FEMA 4154、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4496;N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)-3-p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4549;N-(2-ヒドロキシエチル)-2-イソプロピル-2,3-ジメチルブタンアミド、FEMA 4602および(また、N-(4-(カルバモイルメチル)フェニル)-メンチルカルボキサミド、FEMA 4684;(1R,2S,5R)-N-(4-メトキシフェニル)-p-メンタンカルボキサミド(WS-12)、FEMA 4681;(2S,5R)-N-[4-(2-アミノ-2-オキソエチル)フェニル]-p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4684;およびN-シクロプロピル-5-メチル-2-イソプロピルシクロヘキサンカーボンカルボキサミド、FEMA 4693;2-[(2-p-メントキシ)エトキシ]エタノール、FEMA 4718;(2,6-ジエチル-5-イソプロピル-2-メチルテトラヒドロピラン、FEMA 4680);トランス-4-tert-ブチルシクロヘキサノール、FEMA 4724;2-(p-トリルオキシ)-N-(1H-ピラゾール-5-イル)-N-((チオフェン-2-イル)メチル)アセトアミド、FEMA 4809;メントングリセロールケタール、FEMA3807;メントングリセロールケタール、FEMA3808;(-)-メントキシプロパン-1,2-ジオール;3-(L-メントキシ)-2-メチルプロパン-1,2-ジオール、FEMA 3849;イソプレゴール;(+)-シス&(-)-トランスp-メンタン-3,8-ジオール、約62:38の比、FEMA 4053;2,3-ジヒドロキシ-p-メンタン;3,3,5-トリメチルシクロヘキサノングリセロールケタール;メンチルピロリドンカルボキシレート;(1R,3R,4S)-3-メンチル-3,6-ジオキサヘプタノエート;(1R,2S,5R)-3-メンチルメトキシアセテート;(1R,2S,5R)-3-メンチル3,6,9-トリオキサデカノエート;(1R,2S,5R)-3-メンチル3.6,9-トリオキサデカノエート;(1R,2S,5R)-3-メンチル(2-ヒドロキシエトキシ)アセテート;(1R,2S,5R)-メンチル-11-ヒドロキシ-3,6,9-トリオキサウンデカノエート;Cubebol、FEMA 4497;N-(4-シアノメチルフェニル)p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4496;2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキシル4-(ジメチルアミノ)-4-オキソブタノエート、FEMA 4230;N-(4-シアノメチルフェニル)p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4496;N-(2-ピリジン-2-イルエチル)p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4549、メンチルラクテート、FEMA 3748;6-イソプロピル-3,9-ジメチル-1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカン-2-オン、FEMA 4285;N-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-3-p-メンタンカルボキサミド;N-(1-イソプロピル-1,2-ジメチルプロピル)-1,3-ベンゾジオキソール-5-カルボキサミド;N-(R)-2-オキソテトラヒドロフラン-3-イル-(1R,2S,5R)-p-メンタン-3-カルボキサミド;2,2,5,6,6-ペンタメチル-2,3,6,6a-テトラヒドロペンタレン-3a(1H)-オールおよび5-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-3,4,4-トリメチルシクロペンタ-2-エン-1-オンの混合物;(1R,2S,5R)-2-イソプロピル-5-メチル-N-(2-(ピリジン-2-イル)エチル)シクロヘキサンカルボキサミド、FEMA 4549;(2S,5R)-2-イソプロピル-5-メチル-N-(2-(ピリジン-4-イル)エチル)シクロヘキサンカルボキサミド;N-(4-シアノメチルフェニル)p-メンタンカルボキサミド、FEMA 4496;(1S,2S,5R)-N-(4-(シアノメチル)フェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド;1/7-イソプロピル-4/5-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン誘導体;4-メトキシ-N-フェニル-N-[2-(ピリジン-2-イル)エチル]ベンズアミド;4-メトキシ-N-フェニル-N-[2-(ピリジン-2-イル)エチル]ベンゼンスルホンアミド;4-クロロ-N-フェニル-N-[2-(ピリジン-2-イル)エチル]ベンゼンスルホンアミド;4-シアノ-N-フェニル-N-[2-(ピリジン-2-イル)エチル]ベンゼンスルホンアミド;4-((ベンズヒドリルアミノ)メチル)-2-メトキシフェノール;4-((ビス(4-メトキシフェニル)-メチルアミノ)-メチル)-2-メトキシフェノール;4-((1,2-ジフェニルエチルアミノ)メチル)-2-メトキシフェノール;4-((ベンズヒドリルオキシ)メチル)-2-メトキシフェノール、4-((9H-フルオレン-9-イルアミノ)メチル)-2-メトキシフェノール;4-((ベンズヒドリルアミノ)メチル)-2-エトキシフェノール;1-(4-メトキシフェニル)-2-(1-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ビニル4-メトキシベンゾエート;2-(1-イソプロピル-6-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1-(4-メトキシフェニル)ビニル4-メトキシベンゾエート;(Z)-2-(1-イソプロピル-5-メチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)-1-(4-メトキシ-フェニル)ビニル-4-メトキシベンゾエート;3-アルキル-p-メンタン-3-オール誘導体;フェンチル、D-ボルニル、L-ボルニル、エキソ-ノルボルニル、2-メチルイソボルニル、2-エチルフェンチル、2-メチルボルニル、シス-ピナン-2-イル、バルバニルおよびイソボルニルの誘導体;メンチルオキサメート誘導体;メンチル3-オキソカルボン酸エステル;Nα-(メンタンカルボニル)アミノ酸アミド;p-メンタンカルボキサミドおよびWS-23類似体;(-)-(1R,2R,4S)-ジヒドロウンベルロール;p-メンタンアルキルオキシアミド;シクロヘキサン誘導体;ブトン誘導体;3-メントキシ-1-プロパノールおよび1-メントキシ-2-プロパノールの混合物;1-[2-ヒドロキシフェニル]-4-[2-ニトロフェニル]-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-2-オン;4-メチル-3-(1-ピロリジニル)-2[5H]-フラノン;およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0108】
本発明で使用できる固定剤の例としては、例えば、カプリリルアルコール、オクタノール、ブチルオクタノール、イソトリデシルアルコール、ヘキシルデカノール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルデカノール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、テトラデシルオクタデカノール、ネオペンチルグリコールジエチルヘキサノエート、PPG-3ミリスチルエーテル、およびPPG-20メチルグルコースエーテルが挙げられる。
【0109】
一実施形態によれば、エマルションは、サンブロック剤を含まず、エマルションは、サンブロックとして機能しない。
【0110】
本発明の好ましいエマルション
以下の水中油型エマルションは、本発明者らにより製造されたものであり、添付の実施例に示されている。したがって、それらは本発明の好ましい実施形態である。
【0111】
本発明の好ましい実施形態では、エマルションは、以下のものを含む:8.55%の安定剤(好ましくは、アラビアガム);1.88%のpH調整剤(好ましくは、1.28%のクエン酸ナトリウム二塩基性セスキ水和物および0.6%のクエン酸ナトリウム一塩基性);0.18%の防腐剤(好ましくは、0.09%の安息香酸ナトリウムおよび0.09%のソルビン酸カリウム);74.9%の溶媒(好ましくは、水);0.5%の節足動物防除剤(好ましくは、0.25%のゲラニオールおよび0.25%のレモングラス油);1.5%の固形脂質材料(好ましくは、ミツロウ);および12.5%の増量剤(好ましくは、クエン酸トリエチル)。
【0112】
本発明のさらに好ましい実施形態では、エマルションは、以下のものを含む:8.65%の安定剤(好ましくは、アラビアガム);1.91%のpH調整剤(好ましくは、1.3%のクエン酸ナトリウム二塩基性セスキ水和物および0.61%のクエン酸ナトリウム一塩基性);0.18%の防腐剤(好ましくは、0.09%の安息香酸ナトリウムおよび0.09%ソルビン酸カリウム);75.76%の溶媒(好ましくは、水);5%の節足動物防除剤(好ましくは、1.85%のゲラニオール、1%のクローブ油、1%のペパーミント油、0.15%のシナモン油、および1%のタイム油);1.5%の固形脂質材料(好ましくは、ミツロウ);および7%の増量剤(好ましくは、クエン酸トリエチル)。
【0113】
本発明のさらに好ましい実施形態では、エマルションは、以下のものを含む:9%の安定剤(好ましくは、アラビアガム);1.98%のpH調整剤(好ましくは、1.35%のクエン酸ナトリウム二塩基性セスキ水和物および0.63%のクエン酸ナトリウム一塩基性);0.18%の防腐剤(好ましくは、0.09%の安息香酸ナトリウムおよび0.09%のソルビン酸カリウム);78.84%の溶媒(好ましくは、水);0.5%の節足動物防除剤(好ましくは、0.25%のゲラニオールおよび0.25%のレモングラス油);1.5%の固形脂質材料(好ましくは、ミツロウ);および8%の増量剤(好ましくは、クエン酸トリエチル)。
【0114】
本発明のさらに好ましい実施形態では、エマルションは、以下のものを含む:9.14%の安定剤(好ましくは、アラビアガム);2.01%のpH調整剤(好ましくは、1.37%のクエン酸ナトリウム二塩基性セスキ水和物および0.64%のクエン酸ナトリウム一塩基性);0.18%の防腐剤(好ましくは、0.09%の安息香酸ナトリウムおよび0.09%のソルビン酸カリウム);80.09%の溶媒(好ましくは、水);0.08%の節足動物防除剤(好ましくは、プラレトリン);1.5%の固形脂質材料(好ましくは、ミツロウ);および7%の増量剤(好ましくは、クエン酸トリエチル)。
【0115】
水中油型エマルションの製造方法
本発明の別の対象は、標的節足動物への直接適用および/または節足動物の生息域への適用によって節足動物防除製品として使用するための水中油型エマルションの製造方法であって、前記方法は、以下:
(i)少なくとも1つの固形脂質材料と少なくとも1つの油溶性活性節足動物防除剤とを含む油相を、固形脂質材料の融点を上回る温度で、安定剤を含む連続水相に分散させて、水中油型エマルションを得る工程と、
(ii)こうして得られたエマルションを、固形脂質材料の融点を下回る温度まで冷却する工程と
を含む、方法である。
【0116】
一実施形態によれば、分散相の溶融温度は、40℃~80℃、好ましくは40℃~70℃、より好ましくは45℃~65℃で構成される。
【0117】
したがって、本発明の実施形態では、工程i)を65℃未満で行う。本発明の本実施形態の利点は、65℃を超える温度の場合よりも活性剤の分解が少ないことである。さらに、比較的低温では、より多くの活性剤が固体材料マトリックス内に含まれるため、使用前のエマルションの保存中に水や空気に曝されることがない。
【0118】
工程i)では、安定剤、および水相を形成する薬剤を水と混合して、均質な連続相を得る。脂質混合物(固形脂質材料および油溶性材料)を室温で連続相に添加し、乳化前に固形脂質材料の融点を上回る温度で薬剤を一緒に加熱する。あるいは、脂質混合物を別個に固形脂質材料の融点を上回る温度に加熱し、次いでこれを、乳化工程前または乳化工程中に温かい水相に添加することもできる。乳化工程は、高剪断機械的混合、超音波処理または高圧均質化などの任意の公知の乳化方法を使用することを含む。このような乳化方法は、当業者によく知られている。
【0119】
有利には、エマルションは、0.1~20ミクロン、好ましくは0.5~20ミクロン、最も好ましくは0.5~10ミクロンの平均直径(d50)を有する液滴サイズを示す。
【0120】
本発明の別の好ましい実施形態では、本発明の方法を、不均一な液滴サイズを特徴とするエマルションの製造に用いる。好ましくは、液滴サイズは、0.1~20ミクロンの範囲である。すなわち、エマルションは、均一なサイズを有する液滴が大半を占めるのではなく、液滴サイズは、このサイズ範囲にわたって分布している。
【0121】
液滴サイズは、最大でも5%、好ましくは1%未満の実験誤差の範囲内で正確な測定が可能な、十分に確立された方法によって測定することができる。十分に確立された適切な方法では、レーザー回折式粒度分布分析装置(例えば、Beckman Coulter, Brea, CA, USA製Coulter LS 13 320)が用いられる。分析に際して、体積統計量(d4,3)を決定してエマルションを特徴付けた。
【0122】
本方法の工程ii)では、こうして得られたエマルションを、分散相の融点を下回る温度まで冷却する。
【0123】
典型的には、冷却工程は、エマルションの温度を毎時5~40℃、好ましくは毎時10~25℃、好ましくは毎時12~15℃下げることによって行う。
【0124】
消費者物品
本発明のエマルションは、害虫防除産業、ホームケア、農業など、様々な分野で有利に使用できる。
【0125】
よって、本発明の別の対象は、上記で定義されたエマルションを含む消費者物品によって表される。
【0126】
消費者物品の構成成分の性質および種類については、本明細書においてより詳細な説明は保証されないが、いずれにせよ、より詳細な説明を行ってもすべてを網羅できるものではなく、当業者であれば、自身の常識に基づいて、該物品の性質および所望の効果に応じてそれらを選択することができる。これらの配合については、本明細書において詳細な説明は保証されないが、いずれにせよ、詳細な説明を行ってもすべてを網羅できるものではない。このような消費者物品の配合の当業者であれば、自身の常識と入手可能な文献に基づいて適切な成分を選択することができる。
【0127】
特定の実施形態によれば、節足動物防除製品は節足動物防除剤を含み、消費者物品は節足動物防除用である。
【0128】
「節足動物防除物品」とは、それが適用される害虫の標的(例えば、ゴキブリ、トコジラミ、アリ、シロアリ、アブラムシ、または薬剤が容易に移動可能な場合には、巣もしくは待避所)に対して効率的な節足動物防除効果(例えば、より高度の持続性、より少ない必要量、より的を絞った適用またはより良好な成功率)をもたらす消費者物品を意味するものと理解される。明確にするために、前記消費者物品は、標的生物(ヒト、または哺乳類のペットもしくは家畜)にとって食用ではない。
【0129】
消費者物品は、噴霧可能な溶液、またはゲル/粘性の形態とすることができる。理想的には、節足動物防除剤を節足動物に直接噴霧する。節足動物は、移動しながら活性剤の効果を伝播させる。特定の実施形態では、巣、待避所、コロニーセクターなど、標的害虫の近傍の空間に噴霧することができ、標的害虫が、そのクチクラに結合する節足動物防除剤と接触することを予見できる。
【0130】
一実施形態によれば、エマルションは、非標的担体生物から標的生物または標的部位には移動しない。
【0131】
次に、本発明を実施例によってさらに説明する。特許請求される本発明は、これらの実施例によって何ら限定されることを意図するものではないことが理解されよう。
【0132】
実施例
実施例1:本発明によるエマルション(油溶性節足動物防除剤としてゲラニオールおよびレモングラス油を含む)
水相の製造:100mlのガラス製フラスコにおいて、安息香酸ナトリウム0.1g、ソルビン酸カリウム0.1g、クエン酸ナトリウム一塩基性0.7g、およびクエン酸ナトリウム二塩基性セスキ水和物1.5gを水87.6gに加え、磁気撹拌下で可溶化した。その後、この溶液にアラビアガム10gをゆっくりと加え、磁気撹拌を4時間続けて各成分を可溶化し、均質な相を得た。
【0133】
エマルション1の製造:20mlのガラスバイアル内で、ゲラニオールおよびレモングラス油0.05g[比1:1]、ミツロウ0.15g、およびクエン酸トリエチル1.25gを秤量して、エマルション1を製造した。この油相を30分間かけて65℃に加熱して、液状の均質な油相を得た。別個に水相を65℃に加熱し、そのうち8.55gを油相に加えた。これらの2相を含む温溶液を超音波プローブで30秒間剪断し、水中油型エマルションを生成した。その後、試料を水浴に浸し、室温まで冷却した。
【0134】
エマルション2の製造:別の20mlガラスバイアル内で、ゲラニオールおよびレモングラス油0.05g[比1:1]、ミツロウ0.15g、クエン酸トリエチル1.25g、および水相8.55gを秤量して、エマルション2を製造した。この混合物を65℃で30分間加熱して、全成分を液状にした。これらの2相を含む温溶液を超音波プローブで30秒間剪断し、水中油型エマルションを生成した。その後、試料を水浴に浸し、室温まで冷却した。
【0135】
【0136】
均質で噴霧可能なエマルションが得られた。
【0137】
実施例2:実施例1による液滴の各種形状および均質性
図1に示すように、固形脂質材料(すなわちミツロウ)を含む液滴のサイズおよび形状は、配合方法によって異なる。実際には、エマルション1では、すべての液滴が同じようなサイズ(平均サイズ約3μm)であり、制御された様式で活性成分が均一に送達される(
図1A)。一方、エマルション2にはサイズの異なる液滴が含まれ、大きな液滴は小さな液滴よりも多くの活性物質を含み、よりゆっくりと空になるため、各種送達速度およびより長い放出を可能にする(
図1B)。
【0138】
また、液滴の非球状の態様および液滴表面で観察される高いコントラストは、液体の連続相環境内での固体/半固体の物理的状態を示していることに留意すべきである。実際には、当業者には知られているように、アラビアガムのような乳化剤で液体水相中に乳化された液状脂質材料は、完全な球状の液滴として分散し、単純な透過光顕微鏡法による同じ観察条件下では、コントラストがはるかに低くなる。
【0139】
実施例3:本発明によるエマルション(各種油溶性節足動物防除剤を含む)
水相の製造:100mlのガラス製フラスコにおいて、安息香酸ナトリウム0.1g、ソルビン酸カリウム0.1g、クエン酸ナトリウム一塩基性0.7g、およびクエン酸ナトリウム二塩基性セスキ水和物1.5gを水87.6gに加え、磁気撹拌下で可溶化した。その後、この溶液にアラビアガム10gをゆっくりと加え、磁気撹拌を4時間続けて各成分を可溶化し、均質な相を得た。
【0140】
エマルション3の製造:20mlのガラスバイアル内で、クローブ油0.1g、ペパーミント油0.1g、ゲラニオール0.185g、シナモン油0.015g、およびタイム油0.1gを秤量して、エマルション3を製造した。この油の混合物を手で静かに振とうしてから、ミツロウ0.15g、クエン酸トリエチル0.7g、および水相8.65gを加えた。この混合物を65℃で30分間加熱して、全成分を液状にした。これらの2相を含む温溶液を超音波プローブで30秒間剪断し、水中油型エマルションを生成した。その後、試料を水浴に浸し、室温まで冷却した。
【0141】
エマルション4の製造:20mlのガラスバイアル内で、ゲラニオールおよびレモングラス油0.05g[比1:1]、ミツロウ0.15g、クエン酸トリエチル0.8g、および水相9gを秤量して、エマルション4を製造した。この混合物を65℃で30分間加熱して、全成分を液状にした。これらの2相を含む温溶液を超音波プローブで30秒間剪断し、水中油型エマルションを生成した。その後、試料を水浴に浸し、室温まで冷却した。
【0142】
エマルション5の製造:20mlのガラスバイアル内で、プラレトリン0.008g、ミツロウ0.15g、クエン酸トリエチル0.7g、および水相9.14gを秤量して、エマルション5を製造した。この混合物を65℃で30分間加熱して、全成分を液状にした。これらの2相を含む温溶液を超音波プローブで30秒間剪断し、水中油型エマルションを生成した。その後、試料を水浴に浸し、室温まで冷却した。
【0143】
【0144】
【0145】
すべての場合において、均質で噴霧可能なエマルションが得られた。
【0146】
実施例4:比較例として製造された溶液
比較例として、表3に記載した精油のブレンドを水およびエタノールに直接加え、使用直前に激しく振とうすることにより、追加の溶液を製造した。すなわち、ゲラニオールとレモングラス油との混合物0.5%(エマルション4と同じ活性含分)を5%のエタノールおよび94.5%の水に加え、これを0.5%GLと称し、クローブ油とペパーミント油とゲラニオールとシナモン油とタイム油との混合物5%(エマルション3と同じ活性含分)を5%のエタノールおよび90%の水に加え、これを5%EOと称する。
【0147】
実施例5:実施例1および実施例3によるエマルションのゴキブリに対する防除効果
アメリカゴキブリであるペリプラネタ・アメリカーナ(Periplaneta americana)(L)の若虫に対する防除効果を試験した。この種を選択したのは、当業者に知られているように、この種が、多くの病原性ヒト微生物を媒介するヒトの害虫であると考えられるためである。加えて、各種ゴキブリは、待避所に集まって群生行動を示す。
【0148】
実施例1に記載のエマルション2(表1)、ならびに実施例3に記載のエマルション3、エマルション4およびエマルション5(表2)の効力を評価した。各ゴキブリに実施例1および実施例3によるエマルションを平均544mg±9mg噴霧し、その結果、82mg±3mgの活性物質および脂質材料が昆虫に負荷され、残りは噴霧中およびゴキブリの移動中に失われた。これをその後、密閉したプラスチック製ペトリ皿(85mm)に直接個別に入れ、死亡率を定期的に観察した。
【0149】
すべての実験において、対照試料として純水を使用した。
【0150】
表4に示すように、実施例4に記載した低濃度(0.5%)で使用したゲラニオールおよびレモングラス油のブレンド0.5%GLは、水-エタノール混合物(19:1)で希釈した場合、ゴキブリを殺滅するのに十分ではなかった。しかし、本発明によるエマルション2を用いてゴキブリに適用した同量の活性成分は、3回の反復すべてでゴキブリを殺滅するのに十分であった(表4)。2匹は適用後1時間以内に死に、最後の1匹は適用後18時間で死んだ。配合の重要性を示すために、溶媒の量を変えたエマルション4では、適用後16時間で、試験した3匹のゴキブリのうち1匹しか殺滅することができなかった(表4)。すでに述べたように、すべての昆虫が同程度の量の活性成分を受容したことは注目に値する(表4)。
【0151】
【0152】
表5に示すように、先行する実施例よりも高濃度(5%)で使用した各種精油のブレンドは、水-エタノール混合物(18:1)で希釈した場合(5%EO)、ゴキブリを殺滅するのに十分であった。適用後にノックダウン効果が現れるが、死に至るまでには1時間から8時間を要した。一方、本発明に記載のエマルション3を用いてゴキブリに適用した同量の活性成分は、3回の反復すべてにおいて、適用後1時間以内にゴキブリを死滅させるのに十分であった(表5)。他のローションと比較して、エマルション3を適用した後に観察された長いグルーミングにより、最速の殺滅効果は、固形脂質材料内に負荷された活性成分を害虫が摂取したことに関連していると想像できる。すでに述べたように、すべての昆虫が同程度の量の活性成分を受容したことは注目に値する(表5)。
【0153】
【0154】
表6に示すように、本発明に記載のエマルション5は、すべての反復においてゴキブリを殺滅するのに十分であった。プラレトリンは強力な殺滅剤であるのに対し、本発明のエマルションでは固形脂質材料を通じた拡散がより低度であるため、ゴキブリを殺滅するのに12時間超かかった。自然界では、この時間経過によって、ゴキブリが待避所に戻り、そのコミュニティ内で毒を撒き散らすことができたであろう。
【0155】
【0156】
実施例6:本発明によるエマルション(油溶性節足動物防除剤としてゲラニオールおよびレモングラス油を含む)
水相の製造:100mlのガラス製フラスコにおいて、安息香酸ナトリウム0.1g、ソルビン酸カリウム0.1g、クエン酸ナトリウム一塩基性0.7g、およびクエン酸ナトリウム二塩基性セスキ水和物1.5gを水87.6gに加え、磁気撹拌下で可溶化した。その後、この溶液にアラビアガム10gをゆっくりと加え、磁気撹拌を4時間行って各成分を可溶化し、均質な相を得た。
【0157】
エマルション6の製造:20mlのガラスバイアル内で、ゲラニオールおよびレモングラス油0.05g[比1:1]、ミツロウ0.15g、O-アセチルクエン酸トリブチル0.6g、および水相9.2gを秤量して、エマルション6を製造した。この混合物を65℃で30分間加熱して、全成分を液状にした。これらの2相を含む温溶液を超音波プローブで30秒間剪断し、水中油型エマルションを生成した。その後、試料を水浴に浸し、室温まで冷却した。
【0158】
【0159】
均質で噴霧可能なエマルションが得られた。
【0160】
実施例7:油溶性節足動物防除剤としての精油を放出するエマルションによるゴキブリの行動の変化
アメリカゴキブリであるペリプラネタ・アメリカーナ(Periplaneta americana)(L)の若虫に対する防除効果を試験した。この種を選択したのは、多くの病原性ヒト微生物やウイルスを媒介するヒトの害虫と当業者に考えられているためである。加えて、各種ゴキブリは、待避所に集まって群生行動を示す。性行動による交絡効果を避けるため、実験は若虫で実施した。
【0161】
実施例1(表1)、実施例3(表2)および実施例6(表7)にそれぞれ記載したエマルション2、エマルション4およびエマルション6の効力を評価した。さらに、実施例4に記載したブレンド0.5%GLを、固形脂質材料を含まない活性成分の対照として使用した。同様の活性成分レベル、すなわち0.25%のゲラニオールおよび0.25%のレモングラス油を含み、不活性担体物質としての白色鉱油とイソプロピルアルコールと乳酸ブチルとミリスチン酸イソプロピルとクエン酸トリエチルとの混合物に可溶化した市販品Zevoも評価した。
【0162】
本実験では、1匹のゴキブリにマーキングをしてから、試験剤または偽薬を噴霧した。次いで、この処理済みゴキブリを、すでに2匹の他の未処理ゴキブリが入っているプラスチック製領域(直径260mm)に入れた。3匹のゴキブリ間の相互作用を撮影し、処理済みゴキブリ投入後30分間に各個体が意図的に接触した回数を報告した。
【0163】
第1の実験では、未処理ゴキブリへの意図的接触回数を測定した。処理済みまたは未処理ゴキブリが、未処理ゴキブリと何回接触できたかを測定した。表8に示すように、何も処理しない対照実験では、マーキングした偽処理済みゴキブリの接触回数は18.25回と、未処理ゴキブリ2匹の接触回数(19.5回)より6%少なかった。この意図的な接触の回数は、活性成分のブレンドでの処理の後に減少した(表8)。実際には、ゴキブリを活性成分で処理したが固形脂質材料を含まない場合(すなわち0.5%GL)、処理済みゴキブリと未処理ゴキブリとの接触回数(10.5回)だけでなく、未処理ゴキブリ同士の接触回数(10.3回)も減少した(表8)。とはいえ、対照の場合と同様、両群間の意図的な接触の回数に差はまだなかった(処理済みゴキブリは+2%)。対照的に、固形脂質材料内に負荷させた活性成分でゴキブリを処理した場合(すなわち、エマルション2、エマルション4、およびエマルション6)、処理済みゴキブリと未処理ゴキブリとの接触(2.8回)は、2匹の未処理ゴキブリの接触(10.4回;表8)よりも大幅に減少した(-73%)。結論として、領域内の個体に活性成分が存在していると、処理済みまたは未処理ゴキブリの相互作用の回数が減少する傾向がある。さらに、固形脂質材料が負荷された処理済みゴキブリは、活性成分を運んでいるときに未処理ゴキブリと接触する確率が低くなり、コミュニティ内でのコミュニケーションがさらにより混乱する。
【0164】
【0165】
同様の実験では、領域に存在する2匹の未処理ゴキブリが引き起こした相互作用を個別に評価し、すなわち、もう1匹の未処理ゴキブリおよび処理済みゴキブリに対して、何回意図的な接触を引き起こしたかを評価した。表9に示すように、対照実験では、未処理ゴキブリは、もう一匹の未処理ゴキブリとの接触(42.1%)と同程度の割合で、マーキングした偽処理済みゴキブリと接触した(57.9%)。固形脂質材料のない状態でゴキブリを活性成分で処理した場合、未処理ゴキブリとの接触率は低く、すなわち、0.5%GLでは-24%、Zevo溶液では-22%であった(表9)。しかし、この減少は、本発明による固形脂質材料内に活性成分を負荷させた場合にはさらにより劇的であり、未処理ゴキブリから処理ゴキブリへの接触の平均は12.8%±7.4%であり、これは46%の接触減少に相当する(表9)。結論として、領域内のある個体に活性成分が存在すると、この個体に対する他の集団の直接接触が減少し、コミュニティ内のコミュニケーションが妨害される。この効果は、活性成分が本発明による固形脂質材料内に負荷された場合、さらにより明白であった。
【0166】
【0167】
実施例8:本発明によるエマルション(油溶性節足動物防除剤を含まない)
水相の製造:100mlのガラス製フラスコにおいて、安息香酸ナトリウム0.1g、ソルビン酸カリウム0.1g、クエン酸ナトリウム一塩基性0.7g、およびクエン酸ナトリウム二塩基性セスキ水和物1.5gを水87.6gに加え、磁気撹拌下で可溶化した。その後、この溶液にアラビアガム10gをゆっくりと加え、磁気撹拌を4時間行って各成分を可溶化し、均質な相を得た。
【0168】
エマルション7の製造:20mlのガラスバイアル内で、ミツロウ0.15g、クエン酸トリエチル1.25g、および水相8.6gを秤量して、エマルション7を製造した。この混合物を65℃で30分間加熱して、全成分を液状にした。これらの2相を含む温溶液を超音波プローブで30秒間剪断し、水中油型エマルションを生成した。その後、試料を水浴に浸し、室温まで冷却した。
【0169】
エマルション8の製造:20mlのガラスバイアル内で、ミツロウ0.15g、クエン酸トリエチル0.7g、および水相9.15gを秤量して、エマルション8を製造した。この混合物を65℃で30分間加熱して、全成分を液状にした。これらの2相を含む温溶液を超音波プローブで30秒間剪断し、水中油型エマルションを生成した。その後、試料を水浴に浸し、室温まで冷却した。
【0170】
【0171】
均質で噴霧可能なエマルションが得られた。
【0172】
実施例9:固形脂質材料によるゴキブリの行動の変化
試験プロトコールは実施例7と同じであった。
【0173】
実施例1(表1)、実施例3(表2)、実施例6(表7)および実施例8(表10)に記載したエマルション1、エマルション4、エマルション5、エマルション6、エマルション7およびエマルション8の効力を評価した。さらに、実施例4に示したブレンド0.5%GLを、固形脂質材料を含まない活性成分の対照として使用した。
【0174】
実験では、領域にいた3匹のゴキブリのそれぞれの活動を、処理済みゴキブリを投入してから30分間、適時測定した。したがって、各個体について、歩行、休息またはグルーミングに費やした時間の割合を定量化した。
【0175】
第1の実験では、処理済みゴキブリの活動を測定した。表11に示すように、対照実験では、マーキングした偽処理済みゴキブリ(対照)は、43%の時間を地面の歩行に費やし、57%の時間を休息に費やした。活性忌避成分(0.5%GL)を適用しても、この活動パターンはあまり変化せず、移動活動および休息活動には平均3%の変化しかない(表11)。一方、同じ活性成分を固形脂質材料内に負荷させて適用すると、エマルション1、エマルション4およびエマルション6を用いた場合に、処理済みゴキブリが歩行に費やす時間が激減する一方、グルーミングに費やす時間は大幅に増加した(+21%)(表11)。しかし、溶媒としてのクエン酸トリエチルのみを負荷させ、油溶性節足動物防除剤を含まない固形脂質材料から生成されたエマルション7を用いても同様の効果が得られた(+17%)(表11)。したがって、固形脂質材料をゴキブリに噴霧すると、そのグルーミング時間が長くなると結論づけることができる。このことにより、ゴキブリに防除剤を摂取させる良好な方法としての本発明で示した固形脂質材料の重要性が高まった。
【0176】
【0177】
第2の実験では、未処理ゴキブリの活動性を測定した。表12に示すように、対照実験では、未処理ゴキブリは、50%の時間を地面の歩行に費やし、50%の時間を休息に費やした。このパターンは、マーキングした偽処理済みゴキブリと同様で、平均活動変化は3%であった(表11および表12)。活性忌避成分をゴキブリに適用すると、未処理ゴキブリの活動パターンが変化し、歩行活動が増加した(表12)。実際には、0.5%GLまたはエマルション6で処理したゴキブリが領域にいると、未処理ゴキブリの移動がそれぞれ+12%および+14%増加した(表12)。一方、揮発性忌避活性成分を含まず、固形脂質材料に溶媒(エマルション8)または殺虫剤(エマルション5)を負荷させただけのエマルションでは、未処理ゴキブリの活動パターンは対照と非常によく類似しており、移動はそれぞれ3%および0%増加した(表12)。結論として、本実験により、本発明で示したエマルションの固形脂質材料から揮発性活性物質が適切に放出されることが実証された。
【0178】
【0179】
実施例10:領域への固形脂質材料の堆積によるコメゴミムシダマシの行動の変化
コメゴミムシダマシであるテネブリオ・モリター(Tenebrio molitor)(L)は、幼虫および成虫が貯蔵食料を食べるため、ヒトの害虫とみなされている。それらは多産で繁殖し、特に鶏舎などの保護区域において大集団を形成することがあり、甚大な被害をもたらす。当業者には知られているように、テネブリオ・モリター(Tenebrio molitor)のステータスは非モデル生物であるため、概念研究の実証に有用である。
【0180】
本アッセイでは、領域に変形させたプラスチック製ペトリ皿(85mm)の半分に本発明によるエマルションを適用した(544mg±9mg)。この側を試験側と名付け、もう半分の側を生成物なしで保ち、節足動物の待避所とした(対照側)。一度に1匹の昆虫を対照側に置き、その活動を、ペトリ皿の各半分で2時間にわたって、すなわち歩行に費やした時間や動かない時間を記録および観察した。
【0181】
実施例3に記載のエマルション3(表2)および実施例8に記載のエマルション8(表10)の効力を評価した。対照として、実施例4に記載され、表3に詳述されている溶液5%EOおよび水もまた、領域の試験側に適用した。エマルション3は、エマルション8と同様の固形脂質材料を含むが、溶液5%EOの活性成分が負荷されていることに留意することが重要である。領域の両半分の間でのコメゴミムシダマシの移動を比較した。
【0182】
第1の実験の間に、領域内でのコメゴミムシダマシの変位を追跡し、
図2に報告した。5%EO配合物またはエマルション3配合物で処理した試験側を避ける様子が明瞭に観察でき、コメゴミムシダマシは、ほとんど対照側を歩行していた(
図2のAおよびC)。一方、試験側を水で処理した場合に記録されたコメゴミムシダマシの追跡経路により、領域の2つの半分が類似していることが実証された(
図2B)。
【0183】
この結果は、領域の両側の歩行に費やした時間を定量化することで確認された。実際には、表13に示すように、コメゴミムシダマシは、試験側を水で処理した場合、領域の試験側(52%)と対照側(48%)との間で同程度の時間を費やした。予想通り、この試験側で費やした時間の量は、試験側を5%EOで処理した場合には46%減少し、エマルション3で処理した場合には43%減少した。興味深いことに、エマルション3に相当するが油溶性節足動物防除剤を含まないエマルション8は、コメゴミムシダマシが試験側内で歩行に費やす時間を減少させることはなかったが、その試験側で費やす時間が、水で処理した対照側と比較して20%増加し、誘引しているようにさえ見えた(表13)。また、5%EO配合物の非封入油と比較して、エマルション3からの活性成分の放出が低度であるにもかかわらず、効力は、同等ではあったが、本発明で示された固形脂質材料の保持特性により、エマルション3を用いた場合により長く持続するはずであることも重要である。
【0184】
【0185】
実施例11:領域への固形脂質材料の堆積によるコメゴミムシダマシの行動の変化
試験プロトコールは実施例10と同じであった。
【0186】
実施例1に記載したエマルション1(表1)および実施例6に記載したエマルション6(表7)の効力を評価した。対照として、実施例4で示した溶液0.5%GLおよび水も領域の試験側に適用した。エマルション1およびエマルション6ならびに0.5%GLはいずれも、表3に記載した油溶性節足動物防除剤を同量含むことに留意することが重要である。これらの溶液の違いは、溶媒において、固形脂質材料内、すなわちエマルション1ではクエン酸トリエチル内、エマルション6ではO-アセチルクエン酸トリブチル内に活性成分を負荷させたことと、0.5%GLでは固形脂質材料が存在しないことである。コメゴミムシダマシの活動性および領域の2つの半分の間でのコメゴミムシダマシの移動を比較した。
【0187】
コメゴミムシダマシの活動性については、領域内で移動に費やした時間および移動しなかった時間を定量化した。表14に示すように、試験側を水で処理した場合、この節足動物はほぼ全試験時間を領域内での移動に費やし、動かない時間はわずか18%であった。一方、活性成分が領域内に存在する場合、この節足動物が移動に費やした時間は大幅に減少し(-58%)、擬死挙動がより多く見られた(表14)。エマルション6、次いでエマルション1、次いで0.5%GLの順で、コメゴミムシダマシの移動が減少し、それぞれ69%、55%、51%減少した(表14)。領域に活性成分が存在することで、コメゴミムシダマシの擬死挙動が増加したと結論づけることができる。さらに、コメゴミムシダマシがグルーミングに費やす時間が増えるためと思われるが、活性成分の配合がこの挙動に影響している。
【0188】
【0189】
その後の実験では、領域の両側で歩行に費やされた時間を定量化した。表13にすでに示したように、試験側を活性成分で処理した場合は、水で処理した処理済みの側と比較して、対照側でより多くの時間を費やす(+26%)という明確な傾向が見られる(表15)。実際には、0.5%GL、エマルション1、エマルション6で処理した試験側で費やされた時間は、対照と比較して、それぞれ19%、40%、19%少なかった(表15)。
【0190】
実施例10と実施例11との間で節足動物防除剤の忌避効果が低いとの指摘がなされる可能性があるが、これは活性成分の同一性、とりわけ適用濃度に端的に関連しており、すなわち、実施例10では活性成分が5%であったのに対し、実施例11では0.5%であった。したがって、これら2つの実験間で同じ結論に達することができ、本発明で示した水中油型エマルションの重要性を実証している。
【0191】
【0192】
実施例12:領域への固形脂質材料の堆積によるゴキブリの行動の変化
試験プロトコールは実施例10と同じであった。ただし、テネブリオ・モリター(Tenebrio molitor)(L)に代えてペリプラネタ・アメリカーナ(Periplaneta americana)(L)を標的生物とした。加えて、本実験の目的は、主に、固形脂質材料内に負荷された活性物質の殺滅効力を評価することであり、その一方で、標的節足動物にはその身近な環境内で直接噴霧しなかった。
【0193】
本実験では、対照として用いた水およびエマルション8(実施例8の表10に記載)を、実施例3の表2に記載したプラレトリンの水中油型エマルション(エマルション5)と比較した)。各刺激物質を領域の半分に噴霧し、もう半分は待避所として未処理のままにした。ゴキブリの活動性を観察し、領域の各側で費やした時間を測定した。
【0194】
当業者であれば部分的麻痺と定義するであろうノックダウン効果が、エマルション5の存在下で34分後に起こった。その前に、ゴキブリは領域の対照側で約20分、試験側で約14分過ごした。ゴキブリは、数時間後に死んだ。
【0195】
一方、領域の水またはエマルション8で処理した試験側に置かれたゴキブリは、試験側でそれぞれ35%、33%歩行し、実験終了数日後もまだ生きていた。
【0196】
この結果は、固形脂質材料内に負荷された防除剤が、基材からゴキブリの身体に伝達されて、ゴキブリの身体に効率よく作用する効力を実証した。
【0197】
実施例13:固形脂質材料のクチクラ結合特性の実証
本実験の目的は、節足動物のクチクラに活性物質が存在することを視覚的に示すことであった。例として、節足動物の2つの異なる部位、すなわち、ペリプラネタ・アメリカーナ(Periplaneta americana)(L)の足根およびテネブリオ・モリター(Tenebrio molitor)(L)の翅鞘を選択した。実施例1に記載のエマルション2および後述の実施例4に記載の配合物0.5%GLfを、共焦点顕微鏡(Leica TCS SP8;対物レンズ倍率20倍;励起波長552nm)で調べる前に昆虫に噴霧した。
【0198】
活性成分の位置をより正確に可視化するために、3mg/mlの蛍光剤(Fluka製ナイルレッド)をクエン酸トリエチルに添加し、実施例1に記載したようにエマルション2を製造した。同様に、3mg/mlのナイルレッドを実施例4に記載の配合物0.5%GLの油相に添加した。
【0199】
画像(
図3のAおよびB)に示されるように、水中油型エマルションは、ゴキブリのクチクラ上にはっきりと視認可能であり、蛍光固形脂質材料の明確な重層クラスターを形成している(
図3のBの右側の白い斑点)。水中油型エマルションから水分が蒸発すると、固形脂質材料に節足動物の活性剤が負荷されたままになり、活性物質がクチクラを通じてゆっくりと拡散し、節足動物や巣内の他の生物が活性物質を摂取する可能性のある貯蔵庫として機能する。
【0200】
ゴキブリの脚の感覚器と比較して、固形脂質材料のサイズに注目すべきである。
【0201】
画像(
図3のCおよびE)に示されるように、水中油型エマルションは、コメゴミムシダマシのクチクラ上にはっきりと視認可能であり、蛍光固形脂質材料の明確な重層クラスターを形成している(
図3のEの左側および中央上部の白い斑点)。一方、
図3のCおよびDの画像でも、0.5%GLfの実施例4の溶液を使用した後のコメゴミムシダマシのクチクラ表面に疎水性活性成分が存在することがわかる。しかし、
図3のDおよびEの画像を比較すると、水中油型エマルション2を噴霧した場合の明瞭で分散した蛍光に比べ、0.5%GLfを噴霧した後(
図3のD)では、より拡散して広がった弱い蛍光をはっきりと見ることができる。
【国際調査報告】