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▶ ラクテア セラピューティクス エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ラクトフェリン組成物及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/79 20060101AFI20240927BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 33/26 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 33/30 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 33/32 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 33/34 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20240927BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240927BHJP
   C07K 1/18 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C07K14/79
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61K33/26
A61K33/30
A61K33/32
A61K33/34
A61K33/24
A61K38/17
C07K1/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513308
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 US2022075368
(87)【国際公開番号】W WO2023028499
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/236,201
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524070082
【氏名又は名称】ラクテア セラピューティクス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フラブ, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】スネデカー, ジョナサン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA44
4C084CA20
4C084CA38
4C084MA02
4C084NA03
4C084NA05
4C084ZB311
4C084ZB312
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZB351
4C084ZB352
4C086AA01
4C086HA01
4C086HA03
4C086HA05
4C086HA09
4C086HA11
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZB31
4C086ZB33
4C086ZB35
4H045AA10
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA71
4H045GA21
(57)【要約】
ラクトフェリンを含む、特に生の天然乳源から精製されたラクトフェリンを含む組成物が提供される。また、その製造方法及び使用方法も提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトフェリンを含む組成物であって、前記ラクトフェリンは天然乳製品から精製されており、前記ラクトフェリンの割合は少なくとも70%である、前記組成物。
【請求項2】
精製ラクトフェリンを含む組成物であって、未加工のラクトフェリン含有乳製品中に存在するラクトフェリンの割合と比較して、質量でのラクトフェリンの割合が増加している前記組成物。
【請求項3】
前記ラクトフェリンの割合は質量分析によって評価される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記質量分析は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記質量分析による評価は、ラクトフェリンに対応するピークの下の面積、及びラクトフェリンに対応しないピークの下の面積を定量化することを含む、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ラクトフェリンに対応するピークは、完全長の翻訳後修飾されたラクトフェリンに対応するピークを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記完全長の翻訳後修飾されたラクトフェリンは、79000~90000のm/zを有するピークを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記完全長の翻訳後修飾されたラクトフェリンは、79000~86000のm/zを有するピークを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記ラクトフェリンに対応するピークは、ラクトフェリンに対応するイオン化ピークを含む、請求項5~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ラクトフェリンに対応するイオン化ピークは、41000~42000のm/zを有するピークを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ラクトフェリンに対応しないピークは、他のすべてのピークを含む、請求項5~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ラクトフェリンに対応しないピークの下の面積は、41000~42000のm/zを有するピークを除く、18000~80000のm/zを有するピークを含む、請求項5~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ラクトフェリンに対応しないピークの下の面積は、41000~42000のm/zを有するピークを除く、18000~45000のm/zを有するピークを含む、請求項5~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記質量分析は、リニアトラップ四重極オービトラップベロス(Linear Trap Quadropole Orbitrap Velos)質量分析を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項15】
前記評価は、ラクトフェリンに対応するペプチドスペクトルマッチ(PSM)及びラクトフェリンに対応しないPSMを定量化することを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ラクトフェリンの割合は液体クロマトグラフィーによって評価される、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記液体クロマトグラフィーは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記液体クロマトグラフィーによる評価は、ラクトフェリンに対応するピークの下の面積、及びラクトフェリンに対応しないピークの下の面積を定量化することを含む、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
前記未処理乳製品中に存在する前記ラクトフェリンに対応しないピークの下の面積のうちの1つまたは複数が、前記組成物中の検出限界を下回っており、任意選択でラクトフェリンに対応しないピークの下の各面積は前記組成物中の検出限界を下回っている、請求項5~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記ラクトフェリンの割合は、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%である、請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記ラクトフェリンの割合は、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%である、請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記ラクトフェリンの割合は少なくとも99%である、請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記ラクトフェリンの割合は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって評価される、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記ELISAは、天然タンパク質立体構造における前記ラクトフェリンの割合を区別する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記ELISAは、前記ラクトフェリンの天然タンパク質立体構造に特異的に結合する抗体を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
精製ラクトフェリンを含む組成物であって、前記組成物が有するラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率は、未加工のラクトフェリン含有乳製品中の比率と比較して増加している、前記組成物。
【請求項27】
ラクトフェリンを含む組成物であって、前記ラクトフェリンは未処理乳製品から精製されており、前記組成物が有するラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率は、ラクトフェリン精製前の未加工の乳製品中の比率と比較して増加している、前記組成物。
【請求項28】
増加した前記ラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率は、質量分析によって評価される、請求項26または27に記載の組成物。
【請求項29】
前記質量分析は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記質量分析による評価は、ラクトフェリンに対応するピークの下の面積、及びラクトペルオキシダーゼに対応するピークの下の面積を定量化することを含む、請求項28または29に記載の組成物。
【請求項31】
前記ラクトフェリンに対応するピークは、完全長の翻訳後修飾されたラクトフェリンに対応するピーク、及び任意選択でラクトフェリンに対応するイオン化ピークを含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記完全長の翻訳後修飾されたラクトフェリンは、79000~86000のm/zを有するピークを含み、前記ラクトフェリンに対応するイオン化ピークは、41000~42000のm/zを有するピークを含み、前記ラクトペルオキシダーゼに対応するピークは、77000~79000のm/zを有するピークを含む、請求項30または31に記載の組成物。
【請求項33】
前記質量分析は、リニアトラップ四重極オービトラップベロス(Linear Trap Quadropole Orbitrap Velos)質量分析を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項34】
前記評価は、ラクトフェリンに対応するPSM、及びラクトペルオキシダーゼに対応するPSMを定量化することを含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
増加した前記ラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率は、液体クロマトグラフィーによって評価される、請求項26または27に記載の組成物。
【請求項36】
前記液体クロマトグラフィーは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記液体クロマトグラフィーによる評価は、ラクトフェリンに対応するピークの下の面積、及びラクトペルオキシダーゼに対応するピークの下の面積を定量化することを含む、請求項35または36に記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物中の前記ラクトペルオキシダーゼに対応するピークは検出限界を下回っている、請求項30~37のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項39】
増加した前記ラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率は6倍以上である、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項40】
増加した前記ラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率は、ラクトペルオキシダーゼ酵素アッセイによって評価される、請求項26または27に記載の組成物。
【請求項41】
前記ラクトペルオキシダーゼ酵素アッセイによる前記評価は、前記組成物についての第1ラクトペルオキシダーゼ活性、及び前記天然乳製品についての第2ラクトペルオキシダーゼ活性を定量化することを含み、前記第1ラクトパーオキシダーゼ活性と前記第2ラクトパーオキシダーゼ活性との間の比率の低下は、増加した前記ラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率を示す、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記ラクトフェリンはウシ由来である、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項43】
前記ラクトフェリンは処理されていない、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項44】
前記ラクトフェリンは、化学処理も、酵素処理も、酸処理も、熱処理もされていない、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記ラクトフェリンは熱処理されていない、請求項43に記載の組成物。
【請求項46】
前記ラクトフェリンは、50℃以上、51℃以上、52℃以上、53℃以上、54℃以上、または55℃以上の温度で熱処理されていない、請求項43または45のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項47】
前記ラクトフェリンは55℃以上の温度で熱処理されていない、請求項43または45に記載の組成物。
【請求項48】
前記精製ラクトフェリンは、円二色性によって評価される天然立体構造を含む、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項49】
前記精製ラクトフェリンは、示差走査熱量測定法(DSC)によって評価される天然立体構造を含む、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項50】
前記天然立体構造は、アポラクトフェリン立体構造及び/またはホロラクトフェリン立体構造を含む、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記アポラクトフェリン立体構造は60.2±0.8℃の融解温度ピークを有し、及び/または前記ホロラクトフェリン立体構造は88.38±0.8℃の融解温度ピークを有する、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記精製ラクトフェリンは鉄と結合することができる、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項53】
前記精製ラクトフェリンの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%が鉄と結合することができる、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記精製ラクトフェリンの少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%が鉄と結合することができる、請求項52に記載の組成物。
【請求項55】
前記精製ラクトフェリンの少なくとも99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%が鉄と結合することができる、請求項52に記載の組成物。
【請求項56】
鉄と結合する能力がDSCによって評価される、請求項52~55のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項57】
ラクトフェリンを含む組成物であって、前記ラクトフェリンは未処理乳製品から精製されており、前記精製ラクトフェリンは天然立体構造を含み、前記天然立体構造は、アポラクトフェリン立体構造及び/またはホロラクトフェリン立体構造を含み、前記アポラクトフェリン立体構造は60.2±0.8℃の融解温度ピークを有し、及び/または前記ホロラクトフェリン立体構造は88.38±0.8℃の融解温度ピークを有する、前記組成物。
【請求項58】
前記精製ラクトフェリンは翻訳後修飾を含む、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項59】
前記翻訳後修飾はグリコシル化を含む、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
前記精製ラクトフェリンは、少なくとも79000~86000Daの平均分子量を含む、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項61】
前記精製ラクトフェリンは乾燥されている、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項62】
前記精製ラクトフェリンは、凍結乾燥(freeze-drying)/凍結乾燥(lyophilization)、流動層乾燥、または低温噴霧乾燥によって乾燥される、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
前記組成物はさらに鉄分子を含む、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項64】
精製ラクトフェリンは鉄分子と複合体を形成している、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項65】
前記鉄分子はFe2+またはFe3+を含む、請求項63または64に記載の組成物。
【請求項66】
前記精製ラクトフェリンは、銅、亜鉛、マンガン、及び/またはガリウム分子と複合体を形成している、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項67】
前記精製ラクトフェリンは亜鉛分子と複合体を形成している、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項68】
前記組成物は、5EU/kg以下のレベルでエンドトキシンを含む、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項69】
前記天然乳製品は処理されていない、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項70】
前記天然乳製品は前記ラクトフェリンの精製前に加工されていない、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項71】
前記天然乳製品は、前記ラクトフェリンの精製前に化学処理も、酵素処理も、酸処理も、熱処理もされていない、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項72】
前記天然乳製品は、前記ラクトフェリンの精製前に熱処理されていない、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項73】
前記熱処理は、50℃以上、51℃以上、52℃以上、53℃以上、54℃以上、または55℃以上の温度を含む、請求項71または72のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項74】
前記熱処理は、50℃以上、51℃以上、52℃以上、53℃以上、54℃以上、または55℃以上の温度を含む、請求項71または72に記載の組成物。
【請求項75】
前記天然乳製品は、前記ラクトフェリンの精製前にスキムミルク及びクリームに分離されている、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項76】
前記スキムミルク及びクリームへの分離は、コールドボウル分離を含む、請求項75に記載の組成物。
【請求項77】
前記天然乳製品は、前記ラクトフェリンの精製前に酸処理されている、上記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項78】
前記酸処理は不溶性カゼインの除去を含む、請求項77に記載の組成物。
【請求項79】
前記酸処理は4.0以上のpHで行われる、請求項77または78に記載の組成物。
【請求項80】
ラクトフェリンを含む組成物の純度を評価する方法であって、ラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率を定量化することを含む前記方法。
【請求項81】
前記ラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率は、質量分析によって評価される、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記質量分析は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記質量分析による評価は、ラクトフェリンに対応するピークの下の面積、及びラクトペルオキシダーゼに対応するピークの下の面積を定量化することを含む、請求項81または82に記載の方法。
【請求項84】
前記ラクトフェリンに対応するピークは、完全長の翻訳後修飾されたラクトフェリンに対応するピーク、及び任意選択でラクトフェリンに対応するイオン化ピークを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記完全長の翻訳後修飾されたラクトフェリンは、79000~86000のm/zを有するピークを含み、前記ラクトフェリンに対応するイオン化ピークは、41000~42000のm/zを有するピークを含み、前記ラクトペルオキシダーゼに対応するピークは、77000~78000のm/zを有するピークを含む、請求項83または84に記載の方法。
【請求項86】
前記質量分析は、リニアトラップ四重極オービトラップベロス(Linear Trap Quadropole Orbitrap Velos)質量分析を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項87】
前記評価は、ラクトフェリンに対応するPSM、及びラクトペルオキシダーゼに対応するPSMを定量化することを含む、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記ラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率は、液体クロマトグラフィーによって評価される、請求項80に記載の方法。
【請求項89】
前記液体クロマトグラフィーは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記液体クロマトグラフィーによる評価は、ラクトフェリンに対応するピークの下の面積、及びラクトペルオキシダーゼに対応するピークの下の面積を定量化することを含む、請求項88または89に記載の方法。
【請求項91】
前記組成物中の前記ラクトペルオキシダーゼに対応するピークは検出限界を下回っている、請求項83~90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
ラクトフェリンを含む組成物の純度を評価する方法であって、ラクトペルオキシダーゼ酵素アッセイによってラクトペルオキシダーゼ活性を定量化することを含む前記方法。
【請求項93】
前記方法は、前記組成物中の質量での相対的なラクトフェリンの割合を定量化することをさらに含む、上記方法請求項のいずれか1項。
【請求項94】
前記ラクトフェリンの前記割合は質量分析、液体クロマトグラフィー、またはELISAによって評価される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記方法は、前記組成物中の質量での相対的な前記ラクトフェリンの割合を定量化することをさらに含む、上記方法請求項のいずれか1項。
【請求項96】
前記方法は、円二色性によって前記ラクトフェリンの天然立体構造を評価することをさらに含む、上記方法請求項のいずれか1項。
【請求項97】
前記方法は、前記ラクトフェリンの翻訳後修飾の状態を評価することをさらに含む、上記方法請求項のいずれか1項。
【請求項98】
前記翻訳後修飾の評価は、前記ラクトフェリンのグリコシル化状態を評価することを含む、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記方法は、前記ラクトフェリンの平均分子量を評価することをさらに含む、上記方法請求項のいずれか1項。
【請求項100】
前記方法は、前記ラクトフェリンの立体構造の状態を評価することをさらに含む、上記方法請求項のいずれか1項。
【請求項101】
立体構造の状態はELISAによって評価される、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記方法は、前記ラクトフェリンの金属結合状態を評価することをさらに含む、上記方法請求項のいずれか1項。
【請求項103】
前記方法は、前記組成物のエンドトキシンレベルを評価することをさらに含む、上記方法請求項のいずれか1項。
【請求項104】
上記の組成物のいずれか1つを製造する方法。
【請求項105】
クロマトグラフィー、濾過、及び乾燥からなる群から選択される1つまたは複数の工程を含む、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
クロマトグラフィー、濾過、及び乾燥の各工程を含む、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
上記組成物のいずれか及び薬学的に受容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項108】
疾患または病態を治療する方法であって、上記組成物のいずれか1つを含む医薬組成物を投与することを含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月23日に出願された米国仮出願第63/236,201号の利益を主張し、その全内容はあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願には、EFS-Webを介して提出され、その全体が参照により本明細書に援用される配列表が含まれる。20XX年、XX月に作成された前記ASCIIコピーは、XXXXXUS_sequencelisting.txtと称され、サイズがX,XXX,XXXバイトである。
【背景技術】
【0003】
ラクトフェリンは、その抗菌特性の観点から探究されてきた。しかしながら、ラクトフェリンの調製物は、通常は、低温殺菌乳源などの事前に加工及び/または事前に処理された乳製品に由来するか、または組換えによって生産される。このような生産戦略の結果として、未加工及び/または未処理の乳源に見られるものと比較して、ラクトフェリンの特性に変化をもたらすことがあり、その特性の変化の例には、変性、生物活性の低下、鉄結合能の低下、グリコシル化の変化、及び/または翻訳後修飾の保持の欠如などがある。さらに、入手可能な精製ラクトフェリン製品には、概して重大な不純物が含まれている。
【0004】
ラクトフェリンの天然生物活性を保持することを指向したラクトフェリンの調製物及び製剤は、この分野に存在しない。これには、概して不純物(例えば、他のタンパク質、酵素、エンドトキシン、プリオンなど)を含まないラクトフェリンが含まれる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、ラクトフェリンを含む組成物が提供され、ラクトフェリンは天然乳製品から精製されており、ラクトフェリンの割合は少なくとも70%である。
【0006】
また、本明細書では、精製ラクトフェリンを含む組成物が提供され、組成物は、未加工のラクトフェリン含有乳製品中に存在するラクトフェリンの比率と比較して、質量でのラクトフェリンの割合が増加している。
【0007】
いくつかの態様では、ラクトフェリンの割合は質量分析によって評価される。いくつかの態様では、質量分析は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析を含む。いくつかの態様では、質量分析による評価は、ラクトフェリンに対応するピークの下の面積、及びラクトフェリンに対応しないピークの下の面積を定量化することを含む。いくつかの態様では、ラクトフェリンに対応するピークは、完全長の翻訳後修飾されたラクトフェリンに対応するピークを含む。いくつかの態様では、完全長の翻訳後修飾されたラクトフェリンは、80000~90000のm/zを有するピークを含む。いくつかの態様では、完全長の翻訳後修飾されたラクトフェリンは、79000~86000のm/zを有するピークを含む。いくつかの態様では、ラクトフェリンに対応するピークは、ラクトフェリンに対応するイオン化ピークを含む。いくつかの態様では、ラクトフェリンに対応するイオン化ピークは、41000~42000のm/zを有するピークを含む。
【0008】
いくつかの態様では、ラクトフェリンに対応しないピークは、他のすべてのピークを含む。いくつかの態様では、ラクトフェリンに対応しないピークの下の面積は、41000~42000のm/zを有するピークを除く、18000~80000のm/zを有するピークを含む。いくつかの態様では、ラクトフェリンに対応しないピークの下の面積は、41000~42000のm/zを有するピークを除く、18000~45000のm/zを有するピークを含む。
【0009】
いくつかの態様では、質量分析は、リニアトラップ四重極オービトラップベロス(Linear Trap Quadropole Orbitrap Velos)質量分析を含む。いくつかの態様では、評価は、ラクトフェリンに対応するペプチドスペクトルマッチ(PSM)及びラクトフェリンに対応しないPSMを定量化することを含む。
【0010】
いくつかの態様では、ラクトフェリンの割合は液体クロマトグラフィーによって評価される。いくつかの態様では、液体クロマトグラフィーは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である。いくつかの態様では、液体クロマトグラフィーによる評価は、ラクトフェリンに対応するピークの下の面積、及びラクトフェリンに対応しないピークの下の面積を定量化することを含む。
【0011】
いくつかの態様では、未処理乳製品中に存在するラクトフェリンに対応しないピークの下の面積のうちの1つまたは複数が、組成物中の検出限界を下回っており、任意選択でラクトフェリンに対応しないピークの下の各面積は組成物中の検出限界を下回っている。
【0012】
いくつかの態様では、ラクトフェリンの割合は、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%である。いくつかの態様では、ラクトフェリンの割合は、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%である。いくつかの態様では、ラクトフェリンの割合は少なくとも99%である。
【0013】
いくつかの態様では、ラクトフェリンの割合は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって評価される。いくつかの態様では、ELISAは、天然タンパク質立体構造におけるラクトフェリンの割合を区別する。いくつかの態様では、ELISAは、ラクトフェリンの天然タンパク質立体構造に特異的に結合する抗体を含む。
【0014】
また、本明細書では、精製ラクトフェリンを含む組成物が提供され、組成物が有するラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率は、未加工のラクトフェリン含有乳製品中の比率と比較して増加している。
【0015】
また、本明細書では、ラクトフェリンを含む組成物が提供され、ラクトフェリンは未処理乳製品から精製されており、組成物が有するラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率は、ラクトフェリン精製前の未加工の乳製品中の比率と比較して増加している。
【0016】
いくつかの態様では、増加したラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率は、質量分析によって評価される。いくつかの態様では、質量分析は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析を含む。いくつかの態様では、質量分析による評価は、ラクトフェリンに対応するピークの下の面積、及びラクトペルオキシダーゼに対応するピークの下の面積を定量化することを含む。いくつかの態様では、ラクトフェリンに対応するピークは、完全長の翻訳後修飾されたラクトフェリンに対応するピーク、及び任意選択でラクトフェリンに対応するイオン化ピークを含む。いくつかの態様では、完全長の翻訳後修飾されたラクトフェリンは、79000~86000のm/zを有するピークを含み、ラクトフェリンに対応するイオン化ピークは、41000~42000のm/zを有するピークを含み、ラクトペルオキシダーゼに対応するピークは、77000~78000のm/zを有するピークを含む。
【0017】
いくつかの態様では、質量分析は、リニアトラップ四重極オービトラップベロス(Linear Trap Quadropole Orbitrap Velos)質量分析を含む。いくつかの態様では、評価は、ラクトフェリンに対応するPSM、及びラクトペルオキシダーゼに対応するPSMを定量化することを含む。
【0018】
いくつかの態様では、増加したラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率は、液体クロマトグラフィーによって評価される。いくつかの態様では、液体クロマトグラフィーは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である。いくつかの態様では、液体クロマトグラフィーによる評価は、ラクトフェリンに対応するピークの下の面積、及びラクトペルオキシダーゼに対応するピークの下の面積を定量化することを含む。
【0019】
いくつかの態様では、組成物中のラクトペルオキシダーゼに対応するピークは検出限界を下回っている。いくつかの態様では、増加したラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率は6倍以上である。
【0020】
いくつかの態様では、増加したラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率は、ラクトペルオキシダーゼ酵素アッセイによって評価される。いくつかの態様では、ラクトペルオキシダーゼ酵素アッセイによる評価は、組成物についての第1ラクトペルオキシダーゼ活性、及び天然乳製品についての第2ラクトペルオキシダーゼ活性を定量化することを含み、第1ラクトパーオキシダーゼ活性と第2ラクトパーオキシダーゼ活性との間の比率の低下は、増加したラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率を示す。
【0021】
いくつかの態様では、ラクトフェリンはウシ由来である。いくつかの態様では、ラクトフェリンは処理されていない。いくつかの態様では、ラクトフェリンは、化学処理も、酵素処理も、酸処理も、熱処理もされていない。いくつかの態様では、ラクトフェリンは熱処理されていない。いくつかの態様では、ラクトフェリンは、50℃以上、51℃以上、52℃以上、53℃以上、54℃以上、または55℃以上の温度で熱処理されていない。いくつかの態様では、ラクトフェリンは55℃以上の温度で熱処理されていない。
【0022】
いくつかの態様では、精製ラクトフェリンは、円二色性によって評価される天然の立体構造を含む。
【0023】
いくつかの態様では、精製ラクトフェリンは、示差走査熱量測定(DSC)によって評価されるように、天然の立体構造を含む。いくつかの態様では、天然の立体構造は、アポラクトフェリン立体構造及び/またはホロラクトフェリン立体構造を含む。いくつかの態様では、アポラクトフェリン立体構造は60.2±0.8℃の融解温度ピークを有し、及び/またはホロラクトフェリン立体構造は88.38±0.8℃の融解温度ピークを有する。
【0024】
いくつかの態様では、精製ラクトフェリンは鉄と結合することができる。いくつかの態様では、精製ラクトフェリンの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%が鉄と結合することができる。いくつかの態様では、精製ラクトフェリンの少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%が鉄と結合することができる。いくつかの態様では、精製ラクトフェリンの少なくとも99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%が鉄と結合することができる。いくつかの態様では、鉄と結合する能力はDSCによって評価される。
【0025】
また、本明細書では、ラクトフェリンを含む組成物が提供され、ラクトフェリンは未処理乳製品から精製されており、精製ラクトフェリンは天然立体構造を含み、天然立体構造は、アポラクトフェリン立体構造及び/またはホロラクトフェリン立体構造を含み、アポラクトフェリン立体構造は60.2±0.8℃の融解温度ピークを有し、及び/またはホロラクトフェリン立体構造は88.38±0.8℃の融解温度ピークを有する。
【0026】
いくつかの態様では、精製ラクトフェリンは翻訳後修飾を含む。いくつかの態様では、翻訳後修飾はグリコシル化を含む。
【0027】
いくつかの態様では、精製ラクトフェリンは、少なくとも79000~86000Daの平均分子量を含む。
【0028】
いくつかの態様では、精製ラクトフェリンは乾燥される。いくつかの態様では、精製ラクトフェリンは、凍結乾燥(freeze-drying)/凍結乾燥(lyophilization)、流動層乾燥、または低温噴霧乾燥によって乾燥されている。いくつかの態様では、精製ラクトフェリンは、ラクトフェリン精製を通じて液体の形態のままである。
【0029】
いくつかの態様では、組成物は鉄分子をさらに含む。いくつかの態様では、精製ラクトフェリンは鉄分子と複合体を形成している。いくつかの態様では、鉄分子はFe2+またはFe3+を含む。いくつかの態様では、精製ラクトフェリンは、銅、亜鉛、マンガン、及び/またはガリウム分子と複合体を形成する。いくつかの態様では、精製ラクトフェリンは亜鉛分子と複合体を形成する。
【0030】
いくつかの態様では、組成物は、5EU/kg以下のレベルでエンドトキシンを含む。
【0031】
いくつかの態様では、天然乳製品は処理されていない。いくつかの態様では、天然乳製品はラクトフェリンの精製前に加工されていない。いくつかの態様では、天然乳製品は、ラクトフェリンの精製前に化学処理、酵素処理、酸処理、または熱処理されていない。いくつかの態様では、天然乳製品は、ラクトフェリンの精製前に熱処理されていない。いくつかの態様では、熱処理は、50℃以上、51℃以上、52℃以上、53℃以上、54℃以上、または55℃以上の温度を含む。いくつかの態様では、熱処理は55℃以上の温度を含む。
【0032】
いくつかの態様では、ラクトフェリンは、ラクトフェリンの精製前にスキムミルク及びクリームに分離された天然乳製品から精製されている。いくつかの態様では、スキムミルク及びクリームへの分離は、コールドボウル分離を含む。いくつかの態様では、ラクトフェリンは、ラクトフェリンの精製前に酸処理された天然乳製品から精製される。いくつかの態様では、酸処理は不溶性カゼインの除去を含む。いくつかの態様では、酸処理は4.0以上のpHで行われる。
【0033】
また、本明細書では、ラクトフェリンを含む組成物の純度を評価する方法も提供され、前記方法は、ラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率を定量化することを含む。
【0034】
いくつかの態様では、ラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率は、質量分析によって評価される。いくつかの態様では、質量分析は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析を含む。いくつかの態様では、質量分析による評価は、ラクトフェリンに対応するピークの下の面積、及びラクトペルオキシダーゼに対応するピークの下の面積を定量化することを含む。いくつかの態様では、ラクトフェリンに対応するピークは、完全長の翻訳後修飾されたラクトフェリンに対応するピーク、及び任意選択でラクトフェリンに対応するイオン化ピークを含む。いくつかの態様では、完全長の翻訳後修飾されたラクトフェリンは、79000~86000のm/zを有するピークを含み、ラクトフェリンに対応するイオン化ピークは、41000~42000のm/zを有するピークを含み、ラクトペルオキシダーゼに対応するピークは、77000~78000のm/zを有するピークを含む。
【0035】
いくつかの態様では、質量分析は、リニアトラップ四重極オービトラップベロス(Linear Trap Quadropole Orbitrap Velos)質量分析を含む。いくつかの態様では、評価は、ラクトフェリンに対応するPSM、及びラクトペルオキシダーゼに対応するPSMを定量化することを含む。
【0036】
いくつかの態様では、ラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率は、液体クロマトグラフィーによって評価される。いくつかの態様では、液体クロマトグラフィーは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である。いくつかの態様では、液体クロマトグラフィーによる評価は、ラクトフェリンに対応するピークの下の面積、及びラクトペルオキシダーゼに対応するピークの下の面積を定量化することを含む。
【0037】
いくつかの態様では、組成物中のラクトペルオキシダーゼに対応するピークは検出限界を下回っている。
【0038】
また、本明細書では、ラクトフェリンを含む組成物の純度を評価する方法も提供され、前記方法は、ラクトペルオキシダーゼ酵素アッセイによってラクトペルオキシダーゼ活性を定量化することを含む。
【0039】
いくつかの態様では、前記方法は、組成物中の質量での相対的なラクトフェリンの割合を定量化することをさらに含む。いくつかの態様では、ラクトフェリンの割合は質量分析、液体クロマトグラフィー、またはELISAによって評価される。
【0040】
いくつかの態様では、前記方法は、組成物中の質量での相対的なラクトフェリンの割合を定量化することをさらに含む。いくつかの態様では、前記方法は、円二色性によってラクトフェリンの天然立体構造を評価することをさらに含む。いくつかの態様では、前記方法は、ラクトフェリンの翻訳後修飾の状態を評価することをさらに含む。いくつかの態様では、翻訳後修飾の評価は、ラクトフェリンのグリコシル化状態を評価することを含む。いくつかの態様では、前記方法は、ラクトフェリンの平均分子量を評価することをさらに含む。いくつかの態様では、前記方法は、ラクトフェリンの立体構造の状態を評価することをさらに含む。いくつかの態様では、立体構造の状態はELISAによって評価される。いくつかの態様では、前記方法は、ラクトフェリンの金属結合状態を評価することをさらに含む。いくつかの態様では、前記方法は、組成物のエンドトキシンレベルを評価することをさらに含む。
【0041】
また、本明細書では、本明細書で提供される組成物のいずれか1つを製造する方法も提供される。いくつかの態様では、前記方法は、クロマトグラフィー、濾過、及び乾燥からなる群から選択される1つまたは複数の工程を含む。いくつかの態様では、前記方法は、クロマトグラフィー、濾過、及び乾燥の各工程を含む。
【0042】
また、本明細書では、本明細書で提供される組成物のいずれか及び薬学的に受容可能な賦形剤を含む医薬組成物も提供される。
【0043】
また、本明細書では、疾患または病態を治療する方法も提供され、前記方法は、本明細書で提供される組成物または医薬組成物のいずれかを含む医薬組成物を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本明細書に記載されるラクトフェリン精製方法の特定の実施形態を示す。簡単に説明すると、生乳(例えば、ラクトフェリンの精製前に化学処理、酵素処理、酸処理、または熱処理されていない未処理の乳)は、(1)業界標準の乳加工ワークフローに入る前に転用され、(2)イオン交換樹脂/カラムを通って流され、流出液は通常(例えば、生乳生産者によって要望/要求された場合)、標準的な乳加工ワークフローに戻され、ラクトフェリン含有溶出液が収集され、(3)収集された溶出液は濾過され、(4)精製ラクトフェリンは加工される。
【0045】
図2A】実施例1に従って生成されたラクトフェリンのMALDI-TOF(約18kDa~100kDa)純度評価を示す。使用した原材料は生の初乳(RC)であった。
【0046】
図2B】実施例1に従って生成されたラクトフェリンのMALDI-TOF(約18kDa~100kDa)純度評価を示す。使用した原材料は生の全乳(RM)であった。
【0047】
図3A】店頭(OTC)のラクトフェリンサプリメントのMALDI-TOF(約18kDa~100kDa)純度評価を示す。
【0048】
図3B】購入した実験用試薬グレードのラクトフェリンのMALDI-TOF(約18kDa~100kDa)純度評価を示す。
【0049】
図3C】購入した実験用試薬グレードのラクトフェリンのMALDI-TOF(約18kDa~100kDa)純度評価を示す。
【0050】
図4】実施例1に従って生成されたラクトフェリンのOrbitrap Velos質量分析純度評価を示す。
【0051】
図5A】実施例1に従って生成されたラクトフェリン及び購入した実験用試薬グレードのラクトフェリンのELISA純度評価を示す。
図5B】実施例1に従って生成されたラクトフェリン及び購入した実験用試薬グレードのラクトフェリンのELISA純度評価を示す。
【0052】
図6】免疫蛍光(IF)画像化によるECMにおけるラクトフェリン濃縮を示す。
【0053】
図7】ECMでのラクトフェリン濃縮の定量化を示す。
【0054】
図8】初代口腔細胞における免疫蛍光(IF)画像化によるECMでのラクトフェリン濃縮を示す。
【0055】
図9】API-E2の存在下でのSARS-CoV-2のCPE減少アッセイを示す。
【0056】
図10】熱処理バージョンを含む、API-E2ラクトフェリン(10mg/ml)を評価する示差走査熱量測定(DSC)アッセイプロットを示す。
【0057】
図11A】過剰な鉄の非存在下及び存在下でAPI-E2ラクトフェリンを評価するDSCアッセイプロットを示す。
【0058】
図11B】API-E2ラクトフェリンのプロットの上に重ねられた、実験用グレード標準のラクトフェリン及び市販のサプリメントグレードのラクトフェリンを評価するDSCアッセイプロットを示す(図10を参照)。
【0059】
図12】API-E2の存在下での経時的なpHの評価としての、唾液細菌に対するラクトフェリンの生物活性の評価を示す。
【0060】
図13】未処理の家禽(左)、または唾液中ヒト細菌を接種するとともに37℃で6日間放置したAPI-E2処理家禽(右)の写真を示す。
【0061】
図14】大腸菌に対するAPI-E2ラクトフェリンの生物活性を評価するために実行された阻害ゾーン試験を示す。
【0062】
図15】ラクトペルオキシダーゼ(LPO)活性の概要、及びAPI-E2を含む様々なラクトフェリンサンプルの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
定義
特許請求の範囲及び明細書で使用される用語は、特に明記しない限り、以下に記載するように定義する。
【0064】
本明細書で互換的に使用される「未加工乳製品」または「未加工ラクトフェリン含有乳製品」は、哺乳動物の乳腺によって生成され、追加の加工(例えば、濾過、カラム/樹脂精製、及び/もしくは乳分離)ならびに/または処理工程(例えば、化学処理、酵素処理、酸処理、及び/もしくは熱処理)が適用されていない、哺乳動物から直接採取される天然の液体授乳製品を指す。
【0065】
本明細書で互換的に使用される「未処理乳製品」または「未処理ラクトフェリン含有乳製品」は、処理工程(例えば、化学処理、酵素処理、酸処理、及び/または熱処理)を経ていないが、1つまたは複数の潜在的な機械的加工工程(例えば、濾過、カラム/樹脂精製、及び/または乳分離)を経ていることを含むラクトフェリン含有乳製品を指す。
【0066】
具体的に述べられるか、さもなければ文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される用語「約」は、当該技術分野における通常の許容範囲内、例えば、平均の2標準偏差内にあるものと理解される。約は、述べられる値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内にあるものと理解され得る。本明細書で提供される数値が、約という用語によって修飾されているとみなされる場合がある。この場合、この修飾によって包含される範囲が本発明の実施可能性及び特許請求の範囲の明確さと一致することは文脈から明らかである。
【0067】
比較のための配列の最適な整列を、例えば、Smith&Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所ホモロジーアルゴリズムによって、Needleman&Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)のホモロジー整列アルゴリズムによって、Pearson&Lipman, Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズム(GAP, BESTFIT, FASTA及びTFASTA、ただし、Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.)より)のコンピューターによる実装によって、または目視検査によって(概して、Ausubel et al.を参照)実施することができる。
【0068】
パーセント配列同一性及び配列類似性を決定するのに好適なアルゴリズムの一例が、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記載されているBLASTアルゴリズムである。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、アメリカ国立生物工学情報センターを介して公的に利用可能である。
【0069】
ラクトフェリン
精製ラクトフェリンを含む組成物が本明細書で提供される。概して、本明細書におけるラクトフェリンは、未加工の乳製品(例えば、生乳)から得られる哺乳動物のラクトフェリンの精製された形態を指す。
【0070】
本明細書の精製組成物のラクトフェリンは、典型的にはウシ由来、例えば、牛乳源から精製されたものである。例示的なウシ由来ラクトフェリン(bLF)分子には、これらに限定されないが、CAS登録No.146897-68-9、ならびにMead and Tweedie (Nucleic Acids Res. 1990 Dec 11;18(23):7167.)及びPierce et al. (Eur J Biochem. 1991 Feb 26;196(1):177-84.)に記載されているものが含まれ、これらのそれぞれは、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。例示的なウシ由来(Bos taurus)ラクトフェリンの非限定的な完全長アミノ酸配列を、以下に提供する。すなわち、MKLFVPALLSLGALGLCLAAPRKNVRWCTISQPEWFKCRRWQWRMKKLGAPSITCVRRAFALECIRAIAEKKADAVTLDGGMVFEAGRDPYKLRPVAAEIYGTKESPQTHYYAVAVVKKGSNFQLDQLQGRKSCHTGLGRSAGWVIPMGILRPYLSWTESLEPLQGAVAKFFSASCVPCIDRQAYPNLCQLCKGEGENQCACSSREPYFGYSGAFKCLQDGAGDVAFVKETTVFENLPEKADRDQYELLCLNNSRAPVDAFKECHLAQVPSHAVVARSVDGKEDLIWKLLSKAQEKFGKNKSRSFQLFGSPPGQRDLLFKDSALGFLRIPSKVDSALYLGSRYLTTLKNLRETAEEVKARYTRVVWCAVGPEEQKKCQQWSQQSGQNVTCATASTTDDCIVLVLKGEADALNLDGGYIYTAGKCGLVPVLAENRKTSKYSSLDCVLRPTEGYLAVAVVKKANEGLTWNSLKDKKSCHTAVDRTAGWNIPMGLIVNQTGSCAFDEFFSQSCAPGRDPKSRLCALCAGDDQGLDKCVPNSKEKYYGYTGAFRCLAEDVGDVAFVKNDTVWENTNGESTADWAKNLNREDFRLLCLDGTRKPVTEAQSCHLAVAPNHAVVSRSDRAAHVKQVLLHQQALFGKNGKNCPDKFCLFKSETKNLLFNDNTECLAKLGGRPTYEEYLGTEYVTAIANLKKCSTSPLLEACAFLTR(配列番号1;ジェンバンクアクセス番号AAA30610.1)。
【0071】
ラクトフェリンとは、完全長ラクトフェリン(例えば、配列番号1)の断片のことであってもよい。断片には、生物学的に活性な断片が含まれる。本明細書で使用する場合、「生物学的に活性な」とは、対応する天然タンパク質の生物活性のうちの1つまたは複数を有するタンパク質を指す。この生物活性の例には、酵素活性、抗菌活性(例えば、抗菌、抗真菌、及び/または抗ウイルス活性)、鉄結合/隔離活性、免疫調節作用(例えば、抗炎症活性)、成長調節、そして細胞表面親和性、創傷の治癒、または本明細書に記載されている、または当技術分野で公知のラクトフェリンの他の活性のいずれかが含まれるが、これらに限定されない。例えば、ラクトフェリンは典型的には分泌され、生物学的に活性な断片には、シグナルペプチドを欠くラクトフェリンの「加工された」断片などの分泌形式が含まれる場合がある。説明に役立つ例として、配列番号1によって表されるラクトフェリンには、シグナルペプチドMKLFVPALLSLGALGLCLA(配列番号2;配列番号1のアミノ酸1~19)が含まれる。したがって、ラクトフェリンの生物学的に活性な断片には、シグナルペプチドを欠くラクトフェリン(例えば、配列番号1のアミノ酸20~708)が含まれ得る。
【0072】
ラクトフェリンとは、ラクトフェリンアルファ(LFα)、ラクトフェリンベータ(LFβ)、またはラクトフェリンガンマ(LFγ)のアイソフォームなどのラクトフェリンアイソフォームのことであってもよい。
【0073】
ラクトフェリンは、配列番号1に記載のアミノ酸配列またはその生物学的に活性な断片(例えば、シグナルペプチドを欠く配列番号1のアミノ酸20~708などの分泌型)と少なくとも75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有し得る。ラクトフェリンは、配列番号1に記載のアミノ酸配列またはその生物学的に活性な断片と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有し得る。ラクトフェリンは、配列番号1に記載のアミノ酸配列またはその生物学的に活性な断片と少なくとも96%同一のアミノ酸配列を有し得る。ラクトフェリンは、配列番号1に記載のアミノ酸配列またはその生物学的に活性な断片と少なくとも97%同一のアミノ酸配列を有し得る。ラクトフェリンは、配列番号1に記載のアミノ酸配列またはその生物学的に活性な断片と少なくとも98%同一のアミノ酸配列を有し得る。ラクトフェリンは、配列番号1に記載のアミノ酸配列またはその生物学的に活性な断片と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有し得る。ラクトフェリンは、配列番号1に記載のアミノ酸配列またはその生物学的に活性な断片と少なくとも99.5%同一のアミノ酸配列を有し得る。
【0074】
ラクトフェリンは保存的置換を有し得る。「保存的置換」または「保存的アミノ酸置換」とは、化学的または機能的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換を指す。保存的置換は当技術分野では周知であり(例えば、Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties 2nd ed. (1993) W. H. Freeman&Co., New York, NYに記載されている)、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
翻訳後修飾
原材料として未加工の乳製品に含まれるラクトフェリンには、通常、翻訳後修飾が含まれている。理論に束縛されることを望まないが、本明細書に記載される精製戦略及び方法は、天然の翻訳後修飾(ラクトフェリンの精製に使用される天然乳源に含まれるものを参照して)を破壊することを低減、最小化、または排除するように設計されている。例えば、本明細書に記載される精製戦略及び方法は、化学処理、酵素処理、酸処理、熱処理(例えば、低温殺菌)、及び/または天然の翻訳後修飾を破壊することができる任意の他の処理を低減、最小化、または排除する。
【0076】
翻訳後修飾とは、ラクトフェリンの生物活性に関与するそれらの修飾のことであってもよい。概して、組換え生産されたラクトフェリンは、典型的には細菌または酵母などの外因性発現系で生産され、天然に生産されたラクトフェリンの翻訳後修飾及び/または翻訳後修飾を欠いている。翻訳後修飾には、グリコシル化、リン酸化、アセチル化が含まれるが、これらに限定されない。特に翻訳後修飾は、アスパラギン233、281、368、476、及び/または545でのグリコシル化などのグリコシル化(例えば、N-結合型グリコシル化)を含むことができ、これには、-アセチルノイラミン酸、ガラクトース、マンノース、フコース、N-アセチルグルコサミン、及び/またはN-アセチルガラクトサミンが含まれ得る。翻訳後修飾とは、天然に生じるもの及び/または非天然に生じるもの(例えば、当業者に公知のインビトロ法によるなどの精製後の修飾)のことであってもよい。翻訳後修飾には、上述のようなシグナル配列の除去などの完全長ラクトフェリンの加工が含まれる。
【0077】
未修飾の分泌ラクトフェリンは通常約78kDaの分子量を有する。天然の翻訳後修飾により、最大約86kDaの範囲の分子量が得られる場合がある。精製ラクトフェリンは、約78kDaを超える分子量を有し得る。精製ラクトフェリンは、少なくとも79kDaの分子量を有し得る。精製ラクトフェリンは、少なくとも80kDaの分子量を有し得る。精製ラクトフェリンは少なくとも81kDaの分子量を有し得る。精製ラクトフェリンは、少なくとも82kDaの分子量を有し得る。精製ラクトフェリンは、少なくとも83kDaの分子量を有し得る。精製ラクトフェリンは、少なくとも84kDaの分子量を有し得る。精製ラクトフェリンは、少なくとも85kDaの分子量を有し得る。精製ラクトフェリンは、少なくとも86kDaの分子量を有し得る。精製ラクトフェリンは、79~86kDaの分子量を有し得る。精製ラクトフェリンは、82~84kDaの分子量を有し得る。精製ラクトフェリンは、82~85kDaの分子量を有し得る。
【0078】
翻訳後修飾を評価する方法は当業者に公知であり、その例には、質量分析法または抗体媒介法(例えば、ELISAなどの翻訳後修飾を認識する抗体の使用、及び/または二次元ウェスタンブロット解析)がある。
【0079】
タンパク質の立体構造
未加工の乳製品に含まれるラクトフェリンの立体構造状態は、通常、ラクトフェリンの天然の立体構造であると考えられる。ラクトフェリンの精製に通常使用される乳源の様々な処理(低温殺菌など)は、タンパク質を変性させ得ると一般に考えられている。理論に束縛されることを望まないが、本明細書に記載される精製戦略及び方法は、天然の立体構造状態(ラクトフェリンの精製に使用される天然乳源に見られる立体構造状態を参照して)を破壊することを低減、最小化、または排除するように設計されている。例えば、本明細書に記載される精製戦略及び方法は、化学処理、酵素処理、酸処理、熱処理(例えば、低温殺菌)、及び/またはラクトフェリンを変性させることができる任意の他の処理を低減、最小化、または排除する。
【0080】
立体構造状態を評価する方法は当業者に公知であり、その例には、円二色性、X線結晶構造解析、または抗体媒介法(例えば、立体構造状態を認識する抗体の使用、及び/または非変性ウェスタンブロット解析)がある。
【0081】
鉄複合体化
ラクトフェリンには、2つの鉄結合ドメイン(球状ローブとも呼ばれる)が含まれている。理論に束縛されることを望まないが、鉄結合特性は、微生物殺滅、微生物の侵入の防止、キレート化、微生物の除去、及び/または増殖の抑制などの抗菌生物活性を媒介及び/または影響を与えることができる。
【0082】
鉄結合ラクトフェリンはホロラクトフェリンと呼ばれ、鉄を含まないラクトフェリンはアポラクトフェリンと呼ばれ、場合によっては、生物活性が異なる場合がある。その例には、抗菌活性またはその他の特性があり、その例には、アポラクトフェリンと比較して増加した、ホロラクトフェリンの熱誘導変化に対する耐性がある。未加工乳製品中のラクトフェリンは、通常、鉄を含まない形態と鉄と結合した形態の規定の比率内で見られる。例えば、牛乳中のラクトフェリンは一般に20~30%のラクトフェリンが鉄結合形態で存在し、人乳中では一般に6~8%が鉄結合形態で存在する。本明細書の組成物中の精製ラクトフェリンは、規定範囲の鉄結合ホロラクトフェリンを有することができる。精製ラクトフェリンとは、20~30%のホロラクトフェリンのことであってもよい。精製ラクトフェリンとは、6~8%のホロラクトフェリンのことであってもよい。精製ラクトフェリンとは、30%超のホロラクトフェリンのことであってもよい。精製ラクトフェリンとは、6%未満のホロラクトフェリンのことであってもよい。精製ラクトフェリンとは、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%のホロラクトフェリンのことであってもよい。精製ラクトフェリンとは、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のホロラクトフェリンのことであってもよい。精製ラクトフェリンとは、少なくとも99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%のホロラクトフェリンのことであってもよい。精製ラクトフェリンとは、100%ホロラクトフェリンのことであってもよい。精製ラクトフェリンとは、20%未満のホロラクトフェリンのことであってもよい。精製ラクトフェリンとは、8%を超えるホロラクトフェリンのことであってもよい。精製ラクトフェリンとは、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、または9%未満のホロラクトフェリンのことであってもよい。精製ラクトフェリンとは、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、または19%未満のホロラクトフェリンのことであってもよい。精製ラクトフェリンとは、鉄を含まないアポラクトフェリンの形態の100%のことであってもよい。
【0083】
示差走査熱量測定(DSC)を使用して、精製ラクトフェリンがホロラクトフェリンの形態になる能力、例えば、精製ラクトフェリンが鉄と結合する能力を評価することができる。例えば、鉄と結合する能力を、精製ラクトフェリンの存在下で過剰な鉄を添加し、次いで、DSCを実行してアポラクトフェリン及びホロラクトフェリンに関連する相対ピークを評価することによって評価することができる。精製ラクトフェリン及び/または用量式は、精製ラクトフェリンを含むことができ、精製ラクトフェリンの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%が鉄と結合することができる。精製ラクトフェリン及び/または用量式は、精製ラクトフェリンを含むことができ、DSCによる評価によると、精製ラクトフェリンの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%が鉄と結合することができる。精製ラクトフェリン及び/または用量式は、精製ラクトフェリンを含むことができ、精製ラクトフェリンの少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%が鉄と結合することができる。精製ラクトフェリン及び/または用量式は、精製ラクトフェリンを含むことができ、DSCによる評価によると、精製ラクトフェリンの少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%が鉄と結合することができる。精製ラクトフェリン及び/または用量式は、精製ラクトフェリンを含むことができ、精製ラクトフェリンの少なくとも99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%が鉄と結合することができる。精製ラクトフェリン及び/または用量式は、精製ラクトフェリンを含むことができ、DSCによる評価によると、精製ラクトフェリンの少なくとも99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、または99.9%が鉄と結合することができる。精製ラクトフェリン及び/または用量式は、精製ラクトフェリンを含むことができ、精製ラクトフェリンの100%が鉄と結合することができる。精製ラクトフェリン及び/または用量式は、精製ラクトフェリンを含むことができ、DSCによる評価によると、精製ラクトフェリンの100%が鉄と結合することができる(例えば、過剰な鉄の存在下で観察可能な唯一のピークは、ホロラクトフェリンに関連するピークである)。
【0084】
示差走査熱量測定(DSC)を使用して、精製ラクトフェリンの融解温度ピーク、特にアポラクトフェリン及び/またはホロラクトフェリンの融解温度ピークを評価することができる。精製ラクトフェリン及び/または用量式は、精製ラクトフェリンを含むことができ、アポラクトフェリンに関連する融解温度ピークは60.2±0.8℃である。精製ラクトフェリン及び/または用量式は、精製ラクトフェリンを含むことができ、ホロラクトフェリンに関連する融解温度ピークは88.38±0.8℃である。
【0085】
ホロラクトフェリンの形態のラクトフェリンは、通常、天然乳源中の2つの第二鉄(Fe3+)イオンと結合する。本明細書の組成物中の精製ラクトフェリンは、第二鉄イオン以外の金属イオンに結合することができ、この例は銅、亜鉛、マンガン、及び/またはガリウムを含むが、これらに限定されない。精製ラクトフェリンは亜鉛イオンと結合することができる。精製ラクトフェリンは、Fe2+イオンと結合することができる。第二鉄イオン以外の金属イオンに結合した精製ラクトフェリンは、本明細書に記載の第二鉄結合ラクトフェリンのホロラクトフェリンまたはアポラクトフェリンの形態のいずれにも、例えば、本明細書に記載されたアポラクトフェリンの形態に対するホロラクトフェリンの形態の任意の規定の比率になり得る。
【0086】
ラクトフェリンの立体構造状態、例えば、ホロラクトフェリン及びアポラクトフェリンの立体構造は、様々なレベルの金属イオン(例えば、Fe3+)で飽和する可能性がある。例えば、アポラクトフェリンは典型的には5%未満の鉄イオンで飽和しているが、ホロラクトフェリンは典型的には約100%飽和である。未加工乳製品中のウシ由来ラクトフェリンは、通常、15~20%の鉄飽和である。
【0087】
アポラクトフェリンの形態に対するホロラクトフェリンの形態の規定の比率を制御する方法は、当業者に公知である。例えば、第二鉄イオン、第二鉄イオン以外の金属イオン、ならびに/または非第二鉄ベース及び/もしくは非第二鉄由来の分子の濃度を制御する方法(添加または除去など)は、当技術分野において公知である(例えば、Majka et al. [Analytical and Bioanalytical Chemistry volume 405, pages5191-5200 (2013)]に記載されており、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる)。
【0088】
精製ラクトフェリンが金属イオンに結合する能力を評価する方法、例えば化学アッセイ及び/または吸光度分光法は当業者に公知である。例えば、理論に束縛されることを望まないが、処理方法(例えば、工業的精製で典型的に使用される方法)及び/または組換え生産方法は、(例えば、鉄結合ドメインの変性を通じて)ラクトフェリンの金属結合能力を変化させる可能性がある。
【0089】
アポラクトフェリンの形態に対するホロラクトフェリンの形態の比率を評価する方法、例えば化学アッセイ及び/または吸光度分光法は当業者に公知である(例えば、Majka et al. [Analytical and Bioanalytical Chemistry volume 405, pages 5191-5200 (2013)]に記載されており、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる)。
【0090】
非限定的な例では、示差走査熱量測定法(DSC)は、精製ラクトフェリンが金属イオンに結合する能力を評価する方法と、アポラクトフェリンの形態に対するホロラクトフェリンの形態の比率を評価する方法の両方を提供する。DSC法は当業者に公知である。
【0091】
乳製品の精製
精製方法により、化学処理、酵素処理、酸処理、及び/または熱処理を低減、最小化、または排除することができる。精製方法により、化学処理、酵素処理、酸処理、及び/または熱処理を低減することができる。精製方法により、化学処理、酵素処理、酸処理、及び/または熱処理を最小化することができる。精製方法により、化学処理、酵素処理、酸処理、及び/または熱処理を排除することができる。精製方法により、化学処理を低減、最小化、または排除することができる。精製方法により、酵素処理を低減、最小化、または排除することができる。精製方法により、酸処理を低減、最小化、または排除することができる。精製方法により、熱処理を低減、最小化、または排除することができる。精製方法により、化学処理、酵素処理、酸処理、熱処理のそれぞれを低減することができる。精製方法により、化学処理、酵素処理、酸処理、熱処理のそれぞれを最小化することができる。精製方法により、化学処理、酵素処理、酸処理、熱処理のそれぞれを除去することができる。精製方法により、化学処理、酵素処理、酸処理のそれぞれを除去することができる。精製方法により、化学処理、酵素処理、熱処理のそれぞれを除去することができる。
【0092】
概して、精製ラクトフェリンの生成のために本明細書で提供される方法には、天然の立体構造状態(ラクトフェリンの精製に使用される天然乳源に見られる立体構造状態を参照して)を破壊する(例えば、変性させる)可能性がある工業的精製方法に典型的な熱処理(例えば、低温殺菌)は含まれない。工業的な精製方法で使用される典型的な熱処理は、約63°C以上になることがある。熱処理は、50℃以上、51℃以上、52℃以上、53℃以上、54℃以上、または55℃以上になることがある。熱処理は、70℃以上、75℃以上、80℃以上、85℃以上、90℃以上、95℃以上、または100℃以上になることがある。精製方法は、工業的精製方法において典型的な熱処理と比較して、天然の立体構造状態(ラクトフェリン精製に使用される天然乳源に見られる立体構造状態を参照して)を破壊することを低減、最小化、または排除する温度で加工を実行することを含むことができる。精製方法は、工業的精製方法において典型的な熱処理と比較して、ラクトフェリン生物活性(ラクトフェリン精製に使用される天然乳源に見られる生物活性を参照して)の低減を低減、最小化、または排除する温度で加工を実行することを含むことができる。精製方法には、冷蔵温度(例えば、15℃未満の温度、2~15℃の温度内など)で天然乳源を受け取ることが含まれ得る。本明細書に記載の精製方法には、50℃未満の熱処理が含まれ得る。例えば、乳源を1つまたは複数の精製工程中に(例えば、37°Cを超える温度に温めるが、55°Cを超えないように)温めることができる。この加温には、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、または55℃を超える温度が含まれ得る。この加温には、37°Cを超える温度及び55°C未満の温度が含まれ得る。この加温には、40℃を超える温度及び55℃未満の温度が含まれ得る。この加温には、45℃を超える温度及び55℃未満の温度が含まれ得る。この加温には、50℃を超える温度及び55℃未満の温度が含まれ得る。この加温には、37℃を超える温度、及び50℃以下、51℃以下、52℃以下、53℃以下、54℃以下、または55℃以下の温度が含まれ得る。この加温には、40℃を超える温度、及び50℃以下、51℃以下、52℃以下、53℃以下、54℃以下、または55℃以下の温度が含まれ得る。この加温には、45℃を超える温度、及び50℃以下、51℃以下、52℃以下、53℃以下、54℃以下、または55℃以下の温度が含まれ得る。本明細書に記載の精製方法には、50℃以下、51℃以下、52℃以下、53℃以下、54℃以下、または55℃以下の熱処理が含まれ得る。本明細書に記載される精製方法には、精製中の温度を50℃以下、51℃以下、52℃以下、53℃以下、54℃以下、または55℃以下に維持することを含み得る。精製中の温度の維持には、精製全体を通した温度の維持が含まれ得る。精製中の温度の維持には、精製方法の1つまたは複数の個々の工程(例えば、クロマトグラフィー、濾過、及び/または乾燥工程)で温度を維持することが含まれ得る。維持される温度には、精製方法の1つまたは複数の個々の工程に特有の様々な温度(例えば、異なる温度範囲)が含まれ得る。
【0093】
精製方法には酸処理が含まれ得る。理論に束縛されることを望まないが、酸処理をカゼインの除去に使用することができる。その例には、ラクトフェリン精製の前に、カゼインを溶液に不溶性にすることができるpHで天然乳源または天然乳派生物を処理することがある。概して、精製ラクトフェリンの生成のために本明細書で提供される酸処理には、天然の立体構造状態を破壊する(例えば、ラクトフェリンを変性させる)、及び/またはラクトフェリンの生物活性(ラクトフェリンの精製に使用される天然乳源に見られる立体構造状態または生物活性をそれぞれ参照して)を低下させる酸処理は含まれない。精製方法には、pH4.0以上での酸処理が含まれ得る。精製方法には、pH3.0以上での酸処理が含まれ得る。
【0094】
精製方法にはクロマトグラフィーが含まれ得る。精製方法には、イオン交換クロマトグラフィーが含まれ得る。イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーの方法は、当業者に公知である。本明細書に記載される精製方法には、概して、陽イオン交換クロマトグラフィーが含まれる。精製方法は、陽イオン交換クロマトグラフィーに加えて、任意の順序での、及び/または1つまたは複数の追加の精製方法によって分離されたものを含むイオン交換クロマトグラフィー工程(陽イオン交換クロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーの両方など)を含んでもよい。イオン交換クロマトグラフィー用の樹脂及びマトリックスは当技術分野で公知である。例えば、陽イオン交換樹脂には、ポリメタクリレート及びアガロースマトリックスが含まれるが、これらに限定されない。精製方法には、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)が含まれ得る。
【0095】
概して、クロマトグラフィー法には1つまたは複数の平衡化工程及び/または再生工程が含まれる。平衡化工程及び再生工程の説明に役立つ非限定的な例には、(1)逆浸透水によるすすぎ、(2)化学的に純粋な1MのNaClによるすすぎ、(3)逆浸透水で再度のすすぎが含まれる。
【0096】
概して、クロマトグラフィー法には充填工程が含まれる。概して、充填量は、樹脂の事前に決定された結合能力、及び生乳供給材料の天然ラクトフェリン含有量の推定に基づいている。
【0097】
概して、クロマトグラフィー法には1つまたは複数の溶離工程、例えば、イオン交換クロマトグラフィーにおける樹脂/カラムからの精製ラクトフェリンの溶離が含まれる。溶離方法は当業者に公知である。溶離方法には2つまたはそれよりも多くの溶離工程が含まれ得る。理論に束縛されることを望まないが、複数の溶離工程を使用して、最初に汚染物質(例えば、ラクトフェリン以外の他の任意の生成物)を溶離し、次いで、所望の生成物(例えば、ラクトフェリン)を溶離することができる。
【0098】
溶離方法には、種々の塩濃度での2つまたはそれよりも多くの溶離工程が含まれ得る。理論に束縛されることを望まないが、1つまたは複数の初期溶離工程(例えば、所望の精製ラクトフェリンを含む溶離工程の前の溶離工程)を実行して、望ましくないタンパク質及び他の汚染物質を除去することができる。
【0099】
溶離方法には、0.2~0.7Mの化学的に純粋なNaCl溶液による第1溶離工程が含まれ得る。概して、0.2~0.7Mの化学的に純粋なNaCl溶液で第1溶離工程を実行し、望ましくないタンパク質及び他の汚染物質を除去する。理論に束縛されることを望まないが、ラクトペルオキシダーゼ、及び生乳供給材料に固有の他の酵素などの汚染物質の存在を監視する紫外可視分光分析及び/または比色分析によって第1溶離の完了を監視することができる。例えば、0.2~0.7Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程を、樹脂から溶離するタンパク質の欠如が紫外可視分光分析によって検出されるまで実行することができる。
【0100】
溶離方法には、0.2Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程が含まれ得る。溶離方法には、0.25Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程が含まれ得る。溶離方法には、0.30Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程が含まれ得る。溶離方法には、0.35Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程が含まれ得る。溶離方法には、0.40Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程が含まれ得る。溶離方法には、0.45Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程が含まれ得る。溶離方法には、0.50Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程が含まれ得る。溶離方法には、0.55Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程が含まれ得る。溶離方法には、0.6Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程が含まれ得る。溶離方法には、0.65Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程が含まれ得る。溶離方法には、0.7Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程が含まれ得る。溶離方法には、1M未満の化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程が含まれ得る。
【0101】
溶離方法には、1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程が含まれ得る。概して、1Mの化学的に純粋なNaCl溶液を使用した溶離により、樹脂からラクトフェリンが溶離される。溶離方法には、約1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程が含まれ得る。
【0102】
溶離方法には、0.2~0.7Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.2Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.25Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.3Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.35Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.40Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.45Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.50Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.55Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、1M未満の化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。
【0103】
溶離方法には、0.25~0.7Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、約1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.20Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、約1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.25Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、約1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.30Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、約1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.35Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、約1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.40Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、約1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.45Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、約1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.50Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、約1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.55Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、約1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.60Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、約1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.65Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、約1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。溶離方法には、0.70Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第1溶離工程と、約1Mの化学的に純粋なNaCl溶液の第2溶離工程とが含まれ得る。
【0104】
溶離方法には、種々のpHレベルでの2つまたはそれよりも多くの溶離工程が含まれ得る。溶離勾配。溶離方法には、種々の塩濃度、種々のpHレベル、及びそれらの組み合わせでの2つまたはそれよりも多くの溶離工程が含まれ得る。溶離方法には溶離勾配が含まれ得る。溶離方法には、塩溶離勾配が含まれ得る。溶離方法には、pH溶離勾配が含まれ得る。溶離方法には、塩溶離及びpH溶離勾配の両方が含まれ得る。
【0105】
上記のイオン交換クロマトグラフィーの各工程(例えば、平衡化、再生、充填、及び/または溶離)について、当業者であれば、適切な流体速度を、例えば、樹脂、装置、生乳供給材料などの選択に依存するものとして認識するであろう。
【0106】
精製方法には濾過が含まれ得る。濾過の方法は当業者に公知である。精製方法には、精密濾過(通常、0.1~10μmの膜細孔サイズを使用する濾過を指す)が含まれ得る。精密濾過には、1~10μmの膜細孔サイズが含まれ得る。精密濾過には、10μmの膜細孔サイズが含まれ得る。精密濾過には、1~10μmの膜細孔サイズが含まれ得る。精密濾過には、0.1~1μmの膜細孔サイズが含まれ得る。精密濾過には、0.1μmの膜細孔サイズが含まれ得る。精密濾過には、1μmの膜細孔サイズが含まれ得る。精密濾過には、0.1、0.2、0.3、0.3、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、及び/または1μmの膜細孔サイズが含まれ得る。精密濾過にはセラミック濾過材が含まれ得る。
【0107】
精製方法には、限外濾過(通常、0.01~0.1μmの膜細孔サイズを使用する濾過を指す)が含まれ得る。また、限外濾過システムを、透過液と保持液との間のサイズベース分離のために設計された分子量カットオフサイズによって呼ぶことができる。限外濾過システムには、5~30kDaシステムが含まれ得る。限外濾過システムには、5kDaシステムが含まれ得る。限外濾過システムには、10kDaシステムが含まれ得る。限外濾過システムには、15kDaシステムが含まれ得る。限外濾過システムには、20kDaシステムが含まれ得る。限外濾過システムには、25kDaシステムが含まれ得る。限外濾過システムには、30kDaシステムが含まれ得る。
【0108】
精製方法は、任意の順序での、及び/または1つまたは複数の追加の精製方法によって分離されたものを含む精密濾過及び限外濾過の両方を含むことができる。精製方法は、任意の順序での、及び/または1つまたは複数の追加の精製方法によって分離されたものを含む複数の精密濾過工程及び/または限外濾過工程を含むことができる。説明に役立つ非限定的な例として、イオン交換クロマトグラフィーの前に第1前濾過精密濾過工程(例えば、10μm濾過材を使用)を使用することができ、イオン交換クロマトグラフィーの後で第2精密濾過工程(例えば、0.1~1.4μm濾過材を使用)を使用し、その後で限外濾過工程(例えば、5~30kDa)を行うことができる。
【0109】
精製方法はクロマトグラフィー及び濾過の組み合わせを、任意の順序で、及び/または1つまたは複数の追加の精製方法によって分離されものも含めて、含むことができる。精製方法は複数のクロマトグラフィー工程及び/または濾過工程の組み合わせを、任意の順序で、及び/または1つまたは複数の追加の精製方法によって分離されものも含めて、含むことができる。精製方法は精密濾過、限外濾過、及びイオン交換クロマトグラフィーの組み合わせを、任意の順序で、及び/または1つまたは複数の追加の精製方法によって分離されものも含めて、含むことができる。説明に役立つ非限定的な例では、精製方法には、イオン交換クロマトグラフィー(溶離を含む)、その後の精密濾過、次いで限外濾過が含まれ得る。別の説明に役立つ非限定的な例では、精製方法には、精密濾過、その後のイオン交換クロマトグラフィー(溶離を含む)、次に続いて追加の精密濾過、次いで限外濾過が含まれ得る。
【0110】
精製方法には、天然乳源をスキムミルク及びクリームに分離するなど、生乳製品の乳製品派生物への分離が含まれ得る。例えば、クロマトグラフィー及び/または濾過の前に、生乳製品を乳製品派生物に分離することができる。生乳製品を乳製品派生物に分離する方法は当業者に公知であり、コールドボウル分離を含むが、これに限定されない。
【0111】
ラクトフェリンの精製後、精製された生成物を乾燥することができる。概して、提供される乾燥方法には、天然の立体構造状態を破壊する(例えば、ラクトフェリンを変性させる)、及び/またはラクトフェリンの生物活性(ラクトフェリンの精製に使用される天然乳源に見られる立体構造状態または生物活性をそれぞれ参照して)を低下させる処理は含まれない。ラクトフェリンを乾燥する方法は当業者に公知であり、凍結乾燥(freeze-drying)/凍結乾燥(lyophilization)、流動層乾燥、及び/または低温噴霧乾燥を含むが、これらに限定されない。
【0112】
純度評価
牛乳を含む天然乳源には、通常、ラクトフェリンに加えて、いくつかのタンパク質成分が含まれており、その例には、ラクトペルオキシダーゼ、リゾチーム、カゼイン、免疫グロブリン、ラクトアルブミン、ラクトグロブリンが含まれるが、これらに限定されない。天然乳源には、脂肪及びエンドトキシンなどの他の成分も含まれ得る。概して、本明細書で提供される精製方法は、ラクトフェリン以外の成分を低減、最小化、または排除する。理論に束縛されることを望まないが、1つまたは複数の追加成分を除去すると、ラクトフェリンの生物活性が改善、及び/または安全性が改善され得る。
【0113】
本明細書では、未加工のラクトフェリン含有乳製品中に存在するラクトフェリンの比率と比較して、質量でのラクトフェリンの割合が増加しているラクトフェリン組成物が提供される。
【0114】
ラクトフェリンの割合を、質量分析によって評価することができ、その例には、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析及び/またはリニアトラップ四重極オービトラップベロス(Linear Trap Quadropole Orbitrap Velos)質量分析が含まれるが、これらに限定されない。概して、質量分析による評価は、ラクトフェリンに対応するピークの下の面積、及びラクトフェリンに対応しないピークの下の面積を定量化することを含む。場合によっては、ラクトフェリンを、ラクトフェリンに対応するイオン化ピークなどの複数のピークと関連付けることができる。ラクトフェリンに対応するピークには、完全長の翻訳後修飾された(例えば、グリコシル化された)ラクトフェリンに対応するピークが含まれ得る。完全長の翻訳後修飾されたラクトフェリンに対応するピークは、概して約80,000~86,000m/zの範囲にある。翻訳後修飾された完全長の正確なピークは、種々のグリコシル化状態を反映するなどして、変化する可能性がある。場合によっては、79000~90000(両端を含む)のm/zを有するピークはラクトフェリンに対応すると考えることができる。ラクトフェリンに対応しないピークの下の面積には、約41,500m/zのラクトフェリンに関連するイオン化ピーク(例えば、41000~42000のm/zを有する)を潜在的例外とする、他のすべてのピークが含まれる。ラクトフェリンに対応しないピークの下の面積には、18000~80000のm/zを有するピーク(41000~42000のm/zを有するピークを除く)が含まれ得る。ラクトフェリンとラクトペルオキシダーゼに対応するピーク(例えば、77000~78000のm/zを有するピーク)との間で特定の比較を行うことも可能である。ラクトフェリンに対応しないピークの下の面積には、18000~45000のm/zを有するピーク(41000~42000のm/zを有するピークを除く)が含まれ得る。リニアトラップ四重極オービトラップベロス(Linear Trap Quadropole Orbitrap Velos)質量分析では、サンプル中の他の成分に対する相対的なラクトフェリンの割合を定量化することも可能である。例えば、四重極Orbitrap Velos質量分析では、ペプチドスペクトルマッチ(PSM)の割合を決定することでラクトフェリンの割合を定量化できる。
【0115】
ラクトフェリンの割合を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの液体クロマトグラフィーによって評価することができる。液体クロマトグラフィーによる評価には、ラクトフェリンに対応するピークの下の面積、及びラクトフェリンに対応しないピークの下の面積を定量化することが含まれ得る。
【0116】
ピークの定量化を伴う評価では、未加工のラクトフェリン含有乳製品中に存在するラクトフェリンに対応しないピークの下の1つまたは複数の面積が、精製ラクトフェリン組成物の検出限界を下回る可能性がある。場合によっては、ラクトフェリンに対応しないピークの下の各面積が検出限界を下回る可能性がある。
【0117】
ラクトフェリンの割合を、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって評価することができる。場合によっては、ELISAは、ラクトフェリンの天然タンパク質立体構造に特異的に結合する抗体を使用するなどして、天然タンパク質立体構造中のラクトフェリンの割合を区別することができる。
【0118】
ラクトフェリンを精製する際に、未加工の乳源に通常存在するとともに削減、最小化、または除去される特定の成分はラクトペルオキシダーゼである。さらに、ラクトペルオキシダーゼは、典型的な工業的方法で生成された精製ラクトフェリン組成物中に検出可能な量で頻繁に存在する。
【0119】
本明細書ではラクトフェリン組成物が提供され、ここでは、この組成物の少なくとも70%は精製ラクトフェリンである。組成物には、組成物の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%が精製ラクトフェリンであるものが含まれる。組成物には、組成物の少なくとも75%が精製ラクトフェリンであるものが含まれる。組成物には、組成物の少なくとも80%が精製ラクトフェリンであるものが含まれる。組成物には、組成物の少なくとも85%が精製ラクトフェリンであるものが含まれる。組成物には、組成物の少なくとも90%が精製ラクトフェリンであるものが含まれる。組成物には、組成物の少なくとも95%が精製ラクトフェリンであるものが含まれる。組成物には、組成物の少なくとも約100%が精製ラクトフェリンであるものが含まれる。組成物には、組成物の少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%が精製ラクトフェリンであるものが含まれる。組成物には、組成物の少なくとも91%が精製ラクトフェリンであるものが含まれる。組成物には、組成物の少なくとも92%が精製ラクトフェリンであるものが含まれる。組成物には、組成物の少なくとも93%が精製ラクトフェリンであるものが含まれる。組成物には、組成物の少なくとも94%が精製ラクトフェリンであるものが含まれる。組成物には、組成物の少なくとも95%が精製ラクトフェリンであるものが含まれる。組成物には、組成物の少なくとも96%が精製ラクトフェリンであるものが含まれる。組成物には、組成物の少なくとも97%が精製ラクトフェリンであるものが含まれる。組成物には、組成物の少なくとも98%が精製ラクトフェリンであるものが含まれる。組成物には、組成物の少なくとも99%が精製ラクトフェリンであるものが含まれる。
【0120】
本明細書では、ラクトフェリン組成物が提供され、このラクトフェリン組成物が有するラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率は、未加工のラクトフェリン含有乳製品中の比率と比較して増加している。ラクトフェリン:ラクトペルオキシダーゼの比率を、本明細書に記載の純度評価方法(例えば、質量分析法、HPLC、及び/またはELISA)などの当業者に公知の方法に従って評価することができる。例えば、評価には、ラクトフェリンに対応するピークの下の面積(複数可)、及びラクトペルオキシダーゼに対応するピークの下の面積を定量化することが含まれ得る。
【0121】
天然乳源に存在する、または存在する可能性のあるエンドトキシンを、低減、最小化、または排除することができる。理論に束縛されることを望まないが、エンドトキシンの除去により、精製ラクトフェリン組成物の安全性を向上させることができる。エンドトキシンレベルを評価する方法は当業者に公知である。
【0122】
また、本明細書に記載の純度評価方法のいずれかを使用することなど、精製ラクトフェリン組成物の純度を評価する方法も本明細書で提供される。
【0123】
医薬組成物
本明細書では、本明細書に記載の精製ラクトフェリン組成物のうちのいずれか1つと、1つまたは複数の薬学的に受容可能な賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0124】
本明細書で使用する場合、「医薬組成物」は、哺乳動物、特にヒトなどの対象への投与に好適な組成物を包含することを意味する。概して、「医薬組成物」は無菌であり、好ましくは、対象内に望ましくない応答を誘発し得る汚染物質を含まない(例えば、医薬組成物中の化合物(複数可)は医薬品グレードである)。医薬組成物を、投与を必要とする対象または患者に多くの異なる投与経路を介して投与するために設計することができ、この投与経路には、皮膚(例えば、創傷)、粘膜、呼吸器、経口(消化管を含む)、及び経鼻製剤などの局所投与経路が含まれるが、これらに限定されない。
【0125】
「薬学的に受容可能な賦形剤」、「薬学的に受容可能な希釈剤」、「薬学的に受容可能な担体」、及び「薬学的に受容可能なアジュバント」は、概して安全であり、無毒であり、生物学的にもその他の点でも望ましくないことはない医薬組成物を調製するのに有用である、賦形剤、希釈剤、担体、及びアジュバントを意味し、獣医学的用途だけでなくヒトの医薬用途にも受容可能な賦形剤、希釈剤、担体、及びアジュバントを含む。本明細書及び特許請求の範囲で使用される「薬学的に受容可能な賦形剤、希釈剤、担体及びアジュバント」には、そのような賦形剤、希釈剤、担体及びアジュバントの1つ及び複数の両方が含まれる。
【0126】
治療方法とリスクの予防/低減
本明細書では、本明細書に記載の任意の医薬組成物を投与することを含む、治療有効量の本明細書に記載の任意の1つの精製ラクトフェリン組成物を投与することによって疾患または病態を治療する方法が提供される。また、本明細書では、本明細書に記載の任意の医薬組成物を投与することを含む、治療有効量の本明細書に記載の任意の1つの精製ラクトフェリン組成物を投与することによって免疫応答を調節する(例えば、抗炎症活性の促進)方法も提供される。「調節する」という用語は、生物活性の維持、生物活性の阻害(部分的または完全)、及び生物活性の刺激/活性化(部分的または完全)を包含する。この用語はまた、生物活性を低下させること、または増加させる(例えば、向上させる)ことも包含する。例えば、治療有効量の精製ラクトフェリンを投与すると、抗炎症性活性を促進することにより炎症を軽減することができる(例えば、炎症性疾患という状況で)。
【0127】
本明細書で使用する場合、「治療」、「治療する」などの用語は、所望の薬理学的及び/または生理学的効果を得ることを指し、その例には、ウイルス、真菌(例えば、酵母菌)、または細菌感染症などの感染症の予防、リスク軽減、改善及び/または消退がある。治療は、その疾患もしくは症状を完全にもしくは部分的に予防するという観点において予防的治療であってもよく、ならびに/または疾患及び/もしくはその疾患に起因する副作用の部分的もしくは完全な治癒という観点において治療的であってもよい。治療は、哺乳動物、特にヒトの疾患のあらゆる治療を網羅し、(a)この疾患にかかりやすいかもしれないが、まだその疾患を有していると診断されていない(例えば、感染症のリスクがある対象の場合のように)対象において疾患または疾患の症状が発生するのを予防的に治療する(完全または部分的に予防する)ことと、(b)疾患を抑制する(例えば、感染症を除去する、及び/または感染症を検出可能限界以下に低減する)ことと、(c)疾患を和らげる(例えば、感染症に関連する微生物負荷を低減する)こととを含む。
【0128】
また、本明細書では、病原性疾患のリスクを低減するための方法が提供され、前記方法は、本明細書に記載の医薬組成物または組成物のいずれかを対象に投与することを含む。例えば、病原性疾患のリスクを低減することには、病原体による感染症のリスクがある創傷に、本明細書に記載の医薬組成物または組成物を投与することが含まれ得るが、これらに限定されない。病原性疾患のリスクのある対象は、病原体に曝露されている可能性がある。病原性疾患のリスクのある対象は、病原体による感染症と診断されている可能性がある。
【0129】
「治療有効量」または「有効量」とは、疾患、病態、または障害を治療するために哺乳動物または他の対象に投与した場合に、その疾患、病態、または障害のそのような治療に効果を生じさせるのに十分な化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患及びその重症度、ならびに治療を受ける対象の年齢、体重などに応じて変化するであろう。
【0130】
対象化合物を、単独で、または追加の活性剤と組み合わせて対象に投与することができる。「薬剤」、「化合物」、及び「薬」という用語は、本明細書では互換的に使用される。この方法はさらに、第2薬剤を併用してまたは連続して共投与することを含むことができ、その例には、小分子、抗体、抗体断片、抗体薬物複合体、アプタマー、タンパク質、抗生物質、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗菌剤、抗真菌剤、及び/またはワクチンがある。いくつかの実施形態では、前記方法は、対象に放射線療法を実行することをさらに含む。
【0131】
用語「共投与」及び「と組み合わせて」には、2つまたはそれよりも多くの治療剤を同時に、共に、または特定の時間制限なく連続的に投与することが含まれる。一実施形態では、薬剤は細胞内または対象の体内に同時に存在するか、またはそれらの生物学的効果または治療効果を同時に発揮する。一実施形態では、治療剤は同じ組成物または単位剤形中にある。他の実施形態では、治療剤は別個の組成物または単位剤形中にある。本明細書で使用される「単位剤形」という用語は、ヒト及び動物対象に対する単位用量として好適な物理的に個別的な単位を指し、各単位は、薬学的に受容可能な希釈剤、担体または賦形剤と併せて、所望の効果を生み出すのに十分な量に計算された所定量の化合物(例えば、本明細書に記載のアミノピリミジン化合物)を含む。単位剤形の仕様は、採用される特定の化合物、達成される効果、及び宿主内の各化合物に関連する薬力学に依存する。特定の場合には、この組み合わせにより、いずれかの成分単独と比較して向上した効果が提供される。場合によっては、その組み合わせは、成分の組み合わせ効果または相加効果と比較して、超相加効果または相乗効果を提供する。複数用量について、2つの薬剤を直接交互に使用してもよく、または、例えば、1つの薬剤の2つまたはそれよりも多くの用量を他の薬剤の単一の用量と交互に使用してもよい。
【0132】
製造方法
本明細書に記載の医薬組成物のいずれかを含む、本明細書に記載の精製ラクトフェリン組成物のいずれか1つの方法が本明細書で提供される。方法には、「乳製品の精製」セクションに記載されている精製工程のいずれか1つが、そこに記載されている工程の組み合わせも含めて、含まれる。説明に役立つ非限定的な例は、本明細書の実施例のセクションに記載されている。
【実施例
【0133】
以下は、本発明を実施するための具体的な実施形態の実施例である。実施例は、例示のみを目的として提供されており、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)の正確性を確保するために努力が払われているが、ある程度の実験誤差及び偏差は当然許容されるべきである。
【0134】
本発明の実施は、別段の表示がない限り、当業者が備えている技能の範囲内で、タンパク質化学、生化学、組換えDNA手法、及び薬理学の従来の方法を採用するであろう。そのような手法は、文献で完全に説明されている。例えば、T.E. Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W.H. Freeman and Company, 1993);A.L. Lehninger, Biochemistry (Worth Publishers, Inc., current addition);Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989);Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.);Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990);Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed. (Plenum Press) Vols A and B(1992)を参照のこと。
【0135】
実施例1.ラクトフェリンの精製
ラクトフェリンは、図1に示すように精製された。簡単に説明すると、生乳(例えば、ラクトフェリンの精製前に化学処理、酵素処理、酸処理、または熱処理されていない未処理の乳)は、(1)業界標準の乳加工ワークフローに入る前に転用され、(2)イオン交換樹脂/カラムを通って流され、流出液は通常、標準的な乳加工ワークフローに戻され、ラクトフェリン含有溶出液が収集され、(3)収集された溶出液は濾過され、(4)精製ラクトフェリンは加工される。特に、他のすべての既知のラクトフェリン精製方法は、通常は低温加熱殺菌を含む業界標準の牛乳加工ワークフローの後に得られる牛乳源から開始される。さらに、天然の未加工乳製品(例えば、生乳)を原材料として使用したため、組換え生産されたラクトフェリンとは対照的に、ラクトフェリンには生物活性に関与する可能性のある適切な翻訳後修飾が含まれていた。
【0136】
クロマトグラフィーカラムを使用してウシ由来ラクトフェリンを単離及び精製し、天然の翻訳後修飾、グリコシル化及び結合鉄を保持した。カラムには、選択した陽イオン交換樹脂(ポリメタクリレートまたはアガロースマトリックスのいずれか)が充填され、(1)逆浸透水によるすすぎ、(2)化学的に純粋な1MのNaClによるすすぎ、(3)逆浸透水で再度のすすぎが行われることによって平衡化され、再生される。
【0137】
生の未処理の未加工ウシ由来全乳(搾乳後24時間未満)を、分離、脱脂、加熱、及び/または低温殺菌する前に、乳製品輸送容器またはサイロ容器から直接得た。ラクトフェリンは、生の初乳(RC)と生の全乳(RM)の両方から精製された。
【0138】
乳を10μmの濾過材で濾過して大きな粒子状物質を除き、37℃以上に温め、63℃未満の温度(概して低温殺菌の開始温度と考えられる)に保ち、クロマトグラフィーカラムに充填した。充填量は、事前に決定された結合能力、及び生乳供給材料の天然ラクトフェリン含有量の推定に基づいた。充填加工中、すべてのフロースルーを低温殺菌装置バランスタンクに戻して、工場への供給を分離及び低温殺菌前の時点に戻した。
【0139】
ひとたび充填が完了したら、樹脂を逆浸透水ですすぎ、樹脂に結合しなかったあらゆる残りの乳化合物を除去した。最初の溶離は、化学的に純粋なNaCl溶液(0.2~0.7M)による樹脂の洗浄を含み、紫外可視分光分析及び比色分析によって完了(すなわち、樹脂から溶離するタンパク質の欠如)について監視及び評価されており、この紫外可視分光分析及び比色分析はラクトペルオキシダーゼ、及び生乳供給材料に固有のその他の酵素などの汚染物質の存在を監視している。特に、最初のNaClは、比色ペルオキシダーゼ基質を使用するペルオキシダーゼ比色分析による評価により、概して主要な汚染物質であるラクトペルオキシダーゼが溶離画分に存在しなくなるまで実行された。最初の溶離の画分は隔離された容器に保持された。次いで、樹脂を逆浸透水ですすいだ。2回目の溶離は1MのNaClで実行され、単離されたラクトフェリンが除去された。2回目の溶離画分を隔離された容器に保持し、次いで(1)セラミック精密濾過濾過材(0.1~1.4μm)を通して濾過し、(2)限外濾過システムを使用して濃縮した(5~30kDa)。
【0140】
次いで、脱塩された溶離液を凍結乾燥させたが、流動層乾燥機に直接入れて医薬品グレードの賦形剤上で乾燥させてもよい。本明細書に記載の方法に従って生成された精製ラクトフェリンは、ヒヤシンスラクトフェリン(「ヒヤシンス」)、ラクトフェリン(「実験用グレード」または「市販のサプリメントグレード」という語句が付随していないもののみ)、ODT-SC210、及びAPI-E2と呼ばれる。様々な名前は、本明細書に記載の方法の変形に従って生成される精製ラクトフェリンを指す場合がある。
【0141】
実施例2.ラクトフェリン純度の評価
実施例1に従って生成された精製ラクトフェリンの純度を評価した。
【0142】
通常、SDS-PAGEゲルを使用して、参照グレードのタンパク質由来製品(参照グレードのラクトフェリンを含む)の純度を評価する。しかしながら、SDS-PAGEゲルは、実験条件に応じて純度の結果が誇張されて生成されるので悪評が高い(Kurien and Scofield Methods Mol Biol. 2012;869: 633-640)。したがって、より感度の高い質量分析法、HPLC、及びELISAを使用して純度を評価した。
【0143】
ラクトフェリンの純度を、MALDI-TOF質量分析によって評価した。乾燥サンプルを10mg/mLの濃度で水に溶解した。溶解したサンプルを、0.1%トリフルオロ酢酸を含む50%アセトニトリル中の等量の飽和シナピン酸と混合した。サンプル/マトリックスの混合物(2μL)をM1P 384研磨鋼MALDIプレート上に置いた。MALDI質量スペクトルを、陽イオンモードでm/z2001~20162Da(2~20kDa)、10039~40026Da(10~40kDa)、及び19780~100000Da(20kDa~100kDa)で取得した。これらの質量範囲でProtein Calibration Standard II(Bruker)を使用して機器を校正した。F1exAnalysis 3.4(Bruker Daltonics、マサチューセッツ州ビレリカ)を使用してMSスペクトルを分析した。
【0144】
2つの異なる天然生乳源(初乳及び全乳)からの実施例1による精製ラクトフェリンについてMALDI-TOF(約18kDa~100kDa)によって評価した純度の結果を、それぞれ図2A及び図2Bに示すとともに、表1A及び表1Bに定量化する。約80,000m/zを超える顕著なピークはグリコシル化されたラクトフェリンに対応し、約41,500m/zのピークはラクトフェリンのイオン化ピークに対応する。特に、ラクトペルオキシダーゼに関連する典型的な汚染ピーク(約78,000m/z)は検出限界を下回っていた。質量分析プロファイルの定量化により、18kDa~100kDaの範囲の定量化されたピークについて決定された曲線の下の相対面積(AUC)の75%超が80~85kDaの所望のグリコシル化ラクトフェリンのピークに対応し、約41,500m/zのイオン化ピークを含めた場合には、ほぼ100%がラクトフェリンに対応することが明らかになった(定量化のために選択されたピーク、言い換えれば背景ノイズを上回る真のピークとみなされるピークは、F1exAnalysis 3.4によって決定された)。したがって、この結果は、本明細書に記載の精製方法により、様々な生の天然乳製品から高純度のラクトフェリンが生成されたことを実証している。
【表1A】

【表1B】
【0145】
また、MALDI-TOF(約18kDa~100kDa)によっても、店頭(OTC)のラクトフェリンサプリメント[Jarrow Formulas](図3A)ならびに実験用試薬グレードの製品として宣伝されているラクトフェリン源[Sigma Bovine Colostrum Lactoferrin](図3B及び図3C)の純度を、上記と同様に評価し、それぞれ表2A、表2B、及び表2Cに定量化した。実施例1に従って生成されたラクトフェリンとは対照的に、質量分析プロファイルにより、OTCサプリメント及び両方の実験用試薬グレードのラクトフェリン源の(特にラクトペルオキシダーゼの)汚染ピークが明らかになっている(図3Bの77806m/zでのピークを参照のこと)。質量分析プロファイルの定量化により、18kDa~100kDaの範囲の定量化されたピークについて決定された相対AUCのそれぞれ25.3%、52.3%、及び11.9%のみが、80~85kDaの所望のグリコシル化ラクトフェリンピークに対応することが明らかになった。たとえ約41,500m/zにあるラクトフェリンのイオン化ピークを考慮しても、併せた相対AUCのそれぞれ33.5%、66.4%、及び15.9%のみがラクトフェリンに対応した。したがって、この結果は、本明細書に記載の精製方法により、入手可能なOTCサプリメント及び実験用試薬グレードのラクトフェリン源よりも高い純度でラクトフェリンが生成されたことを実証している。
【表2A】

【表2B】

【表2C】
【0146】
また、リニアトラップ四重極オービトラップベロス(Linear Trap Quadropole Orbitrap Velos)質量分析によってもラクトフェリンの純度を評価した。図4に示され、表3Aで定量化された、実施例1に従って生成されたラクトフェリンのOrbitrap Velos質量分析プロファイルにより、特定されたペプチドスペクトルマッチ(PSM)の80%超が所望のラクトフェリンに対応することが明らかになった。対照的に、表3Bに示されるように、OTCサプリメントのOrbitrap Velos質量分析プロファイルにより、特定されたPSMの約62%のみがラクトフェリンに対応することが明らかになった。特に、特定されたPSMの約11%が主要な汚染物質であるラクトペルオキシダーゼに対応していた。したがって、この結果は、本明細書に記載の精製方法により、高純度のラクトフェリンが、他の入手可能なラクトフェリン源よりも高い純度で生成されたことを実証している。
【表3A】

【表3B-1】

【表3B-2】
【0147】
また、ラクトフェリンの純度をELISAによって評価した。図5に示されるように、重量で同じ量のタンパク質を充填した場合、実施例1に従って生成されたラクトフェリン(「ヒヤシンス」)は、既存の研究標準と比較して抗体結合における30%の増加を実証した。したがって、このデータは、ヒヤシンスタンパク質精製タンパク質(API-E2)が他の研究グレードの参照製品と比較して、より高い純度を達成したこと、及び/または天然の立体構造タンパク質状態のより多くの画分を保持したことを実証した。
【0148】
ラクトフェリンの純度を、Cytiva BigBeadsが充填されたTricorn5/150カラムと共にThermo Fisher U3000タンパク質精製システムを使用するHPLCによって、NaCl勾配を使用して評価した。図5Bに示されるように、HPLCによって処理されたAPI-E2は、ラクトフェリンに対応する単一のピークを実証し、約100%の純度を示している。
【0149】
このデータは、実施例1の精製方法が、特にラクトペルオキシダーゼによる汚染を低減する能力において、既存の利用可能な試薬と比較してより高い純度のラクトフェリンを達成したことを実証している。
【0150】
実施例3.細胞外マトリックス会合によるラクトフェリン活性の評価
感染症を発症するには、ウイルスが進行する多段階のプロセスが必要である。まず、ひとたびウイルスが宿主に侵入すると、細胞外マトリックス(ECM)内の宿主のヘパラン硫酸(HS)プロテオグリカンに結合して細胞を標的にし、細胞表面上のその特定の受容体へのウイルス粒子の結合を促進する。その後、ウイルスは宿主細胞内に取り込まれ、複製される。通常、抗ウイルス薬は重要なウイルス複製タンパク質、または細胞表面の特定の受容体の阻害に焦点を当てているが、ECM結合におけるHSの非特異的細胞標的化機序も阻害され、ウイルスの標的細胞への結合を妨害または防止する可能性がある。この経路は比較的非特異的であり、露出した細胞のECMをコーティングする必要があるため、このアプローチを利用する従来の治療剤は通常、最大限の効果が得られるように比較的高い局所濃度で投与しなければならず、概して不純物及び/または毒性という弱点がある。したがって、より高い純度(例えば、医薬品グレードの標準)を有するラクトフェリン調製物は、投与量の大幅な低減を提供するであろう。さらに、天然の機能を保持する(例えば、天然の立体構造、翻訳後修飾、鉄結合能力などを保持する)様式で調製すると、生乳中での活性と比較してラクトフェリンの有効性が保持されるであろう。これらの調製物(例えば、実施例1で調製したもの)により、他のラクトフェリン製品よりも大きな能力でラクトフェリンを使用、貯蔵、製剤化及び/または供給することが可能になる。
【0151】
ラクトフェリンの生物活性、特に抗ウイルス薬としての可能性を評価するために、ECMへの結合を評価した。精製ラクトフェリンを実施例1に従って生成した。ヒト由来細胞培養物であるCaco-2細胞をカバースリップ上で培養した後、3日間増殖させたことで、細胞は繁殖でき、ECMは完全に発達することができた。次いで、精製ラクトフェリンを様々な濃度で細胞に37℃で2時間添加し、理論どおりにそれを結合させた。APIの局在を直接観察するために、免疫蛍光(IF)画像化を使用し、API、及び細胞膜マーカーであるE-カドヘリンの両方を染色した。
【0152】
図6に示されるように、濃度が増加するにつれて、ECMにおける精製ラクトフェリン濃縮が観察された。内部への一次局在も低濃度で観察されたが、ラクトフェリンには細胞内での公知の役割と、その取り込みを可能にする受容体とがあることを考慮すれば、細胞内空間へのラクトフェリンの部分的な局在が予想された。APIの局在を定量化するために、E-カドヘリンマークのすぐ外側の/それに沿った、及び細胞内部の両方の蛍光シグナルの絶対強度を測定した。図7に示されるように、ラクトフェリンの局在化の定量化により、濃度が増加するにつれてECMでの濃縮が実証された。この結果は、精製ラクトフェリンがECMに結合する生物活性を示したことを示している。
【0153】
次に初代口腔細胞を標準プロトコルに従って培養した(例えば、Russo et al. Cytotechnology. 2016 Oct;68(5): 2105-2114を参照のこと;これは、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる)。API-E2ラクトフェリン及び市販の実験用グレード標準品の両方について、ラクトフェリンを最終濃度100μg/mLで1時間37℃で媒体中に添加した。これは、API-E2ラクトフェリンが培養細胞の結合を飽和し始めることが事前に見出された濃度とほぼ同じである。免疫蛍光画像化は前述のように実行された。図8に示されるように、API-E2ラクトフェリンは、これらの条件で口腔細胞のECMに沿って強力な結合を示した(上の列)。しかしながら、市販の実験用グレード標準品は、同じ条件下でラクトフェリンの限られたECM会合のみを示した(下の列)。この結果は、タンパク質の抗ウイルス活性、及び抗生物質の活性を軽減するバイオフィルムの両方に必要な、重要な宿主細胞ECM会合に関して、API-E2ラクトフェリンがより強力で生物活性であることを強く示唆している。
【0154】
実施例4.SARS-CoV-2抗ウイルス活性
細胞変性効果(CPE)減少アッセイを実行して、SARS-CoV-2に対する精製ラクトフェリンの抗ウイルス活性を評価した。
【0155】
Vero E6細胞を96ウェル細胞培養プレートに80~100%コンフルエントな細胞の密度で播種した。その細胞を、1mg/mLの濃度から開始してSC210を3倍段階希釈したものとともに37℃で2時間インキュベートした。その後、その細胞を、モック感染(化合物の細胞毒性の分析)させるか、または実施例1に従って生成した精製ラクトフェリン、試薬グレードのラクトフェリン、またはレムデシビルを用いて総量150μlの培地中で0.001のMOIで感染させた。感染後3日目に、ニュートラルレッド色素で細胞を2時間染色し、50:50のSorensenクエン酸緩衝液/エタノールで30分間色素を抽出し、OD540nmでの光学密度を読み取り、EC50(50%有効抗ウイルス濃度)を決定することによって細胞生存率を評価した。図9に示され、表4に定量化されているように、精製ラクトフェリンは、同等の研究グレードの参照製品よりも低い濃度でもウイルス増殖を阻害した。この結果は、実施例1に従って生成された精製ラクトフェリンが試薬グレードよりも良好にSARS-CoV-2ウイルス感染を阻害したことを実証しており、生物活性及び/または純度の向上を示唆した。
【表4】
【0156】
実施例5.示差走査熱量測定によるラクトフェリン生物活性の評価
ラクトフェリンは、鉄キレート化及び宿主細胞結合の重要な活性を含む、抗菌活性に関連する複数の重要な生物活性を有している。本来、ラクトフェリンは鉄と結合した形態(ホロラクトフェリン)及び鉄を含まない形態(アポラクトフェリン)の両方を有している。理論に束縛されることを望まないが、ラクトフェリンが鉄と強く結合することを考慮すれば、ホロラクトフェリンはアポラクトフェリンよりも実質的に安定なはずである。
【0157】
示差走査熱量測定(DSC)を使用して、ラクトフェリンサンプルのアンフォールディング温度を監視することにより、ホロラクトフェリンとアポラクトフェリンの形態を評価した。ここでは、当業者に知られている標準的なDSCプロトコルに従ってnanoDSC(TA Instruments、ユタ州リンドン)を使用した(例えば、Hinz et al “MEASUREMENT AND ANALYSIS OF RESULTSOBTAINED ON BIOLOGICAL SUBSTANCES WITH DIFFERENTIAL SCANNING CALORIMETRY”を参照のこと;これは、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる)。
【0158】
本明細書に記載のように生成したAPI-E2ラクトフェリン(10mg/mL)をDSCによって評価した。図10(実線)に示されるように、API-E2ラクトフェリンは、左から、大きいピークとしてアポラクトフェリン、小さいピークとしてホロラクトフェリンに対応する2つのピークを示した。他のピークが欠如していることは、汚染物質及び不純物の欠如を示しており、API-E2を約100%として評価することができる。この結果は、鉄の存在によりラクトフェリンが安定化し、その結果として、DSCアッセイにおいてより高い変性温度への移行が生じたことを示している。したがって、DSCアッセイは、所与のサンプル中のアポラクトフェリンの形態とホロラクトフェリンの形態とを区別する能力を実証した。さらに、他のピークが欠如していることも、API-E2ラクトフェリンの純度を示している。API-E2アポラクトフェリンのピークは、60.2±0.8℃のTmと、466.1±9.2kJ/molのデルタHとを有する。API-E2ホロラクトフェリンのピークは、88.38±0.8℃のTmと、632.7±7.2kJ/molのデルタHとを有する。ホロラクトフェリンは天然で総API-E2ラクトフェリンの平均8.74±1.39%を占め、アポラクトフェリンは、試験されたサンプルの残りを占めていた。しかしながら、ホロラクトフェリンの割合は当然変化する可能性がある。この技術により、このAPI-E2は実質的に100%純粋なラクトフェリンを含むと計算された。
【表5】
【0159】
また、このアッセイを、熱処理したAPI-E2ラクトフェリンでも実行した。API-E2ラクトフェリンを50~100°Cの範囲にわたって加熱した。特に、DSCアッセイで使用される熱の範囲は、通常、業界でラクトフェリンの精製前に使用される温度(例えば、63°C超)に匹敵する。図10(破線)に示されるように、熱処理したAPI-E2ラクトフェリンは両方の検出可能なピークが失われていることを示しており、アポラクトフェリン及びホロラクトフェリンの両方の形態が熱処理後に完全に変性されたことを示した。
【0160】
DSCアッセイをさらに使用して、ラクトフェリンの生物活性、具体的にはAPI-E2ラクトフェリンの鉄結合能力を評価した。塩化鉄(FeCl3)をAPI-E2ラクトフェリンに1000倍モル過剰で添加した。過剰な鉄が存在すると、API-E2ラクトフェリンはその空いている鉄結合部位に鉄を結合させる。API-E2が製造を通じてその生物活性を保持している場合、すべてのアポラクトフェリンはより安定なホロラクトフェリンの形態に移行すると予想されており、対応するDSCピークの存在によって判定される。図11Aに示されるように、API-E2ラクトフェリンは、過剰な鉄分がない場合、左側に大きなピークとしてアポラクトフェリンに対応し、右側に小さなピークとしてホロラクトフェリンに対応する2つのピークを示した。過剰な鉄を添加すると、検出可能なアポラクトフェリンのピークがなくなって、今や観察されるのはラクトフェリンの単一ピーク(右ピーク)であることから示されるように、利用可能なアポラクトフェリンの100%がホロラクトフェリンの形態に移行した。この結果は、鉄結合生物活性が、本明細書に記載の方法を使用して生成されたAPI-E2ラクトフェリン中に完全に保持されていることを示している。
【0161】
実験用グレード標準のラクトフェリン、及び市販のサプリメントグレードのラクトフェリンも、上記のAPI-E2の評価に使用された条件下でDSCによって評価された。図11Bに示されるように、実験用グレード標準のラクトフェリンのピークは、API-E2で観察されたピークよりも著しく小さく、あまり明確ではなく、不純物に起因すると考えられる1つの余分なピークを含んでいた。サンプル中に高度に変性したタンパク質が存在する製品で典型的に観察されるように、曲線は非特異的な上り勾配を有していた。この結果では、アポラクトフェリンのホロラクトフェリンに対するピークの推定比率はほぼ等しく、このことから、加工中にアポラクトフェリンが失われた結果になったことが示されている。同様に、アポラクトフェリン及びホロラクトフェリンのピークは両方とも、それぞれ55℃及び85℃というより低い温度で変性した。このことから、以前の化学処理、酵素処理、及び/または熱処理による不安定性が高くなっており、鉄結合能力を失っていることが示されている。また、図11Bに示されるように、市販のサプリメントグレードのラクトフェリン(下の線)は、検出可能なピークを示さなかった。これは、製品が完全に変性したか、またはラクトフェリン分子の存在を欠いていたことを示している。
【0162】
実施例6.pH試験による唾液細菌に対するラクトフェリン生物活性の評価
唾液細菌(ラクトバチルス、ラクトコッカス、ストレプトコッカス・ミュータンスを含む)は、増殖中に酸を生成する。この酸性化は、特にpH5.5未満(これは臨床的に適切な閾値である)が生じる場合、虫歯と強く関連している。これらの細菌のスラリーを、増殖を刺激するためにスクロース、及び様々な濃度のAPI-E2ラクトフェリンで処理した。スクロース及びAPI-E2ラクトフェリンを添加すると、滴定によってpHが7に調節され、その後のpHの変化が次の6時間にわたって監視された。
【0163】
図12に示されるように、API-E2ラクトフェリン処理のない、スクロースの存在下では、唾液細菌は酸を生成し、その結果、pHは4時間以内に5.5未満に低下した。しかしながら、1mg/mLまたは10mg/mLのどちらのAPI-E2ラクトフェリンでも、スクロースの存在下で、6時間の試験期間全体にわたってpHは5.5超に維持される。この結果は、API-E2の存在が濃度に依存する様式で細菌の酸生成を低下させたことを示しており、API-E2ラクトフェリンの抗菌生物活性を示している。
【0164】
実施例7.家禽の表面処理によるラクトフェリン生物活性の評価
鶏の胸肉に、pH検査において上述したようなスラリー中の唾液中ヒト細菌(ラクトバチルス、ラクトコッカス、ストレプトコッカス・ミュータンス、及びポルフィロモナス・ジンジバリスを含む)を接種するとともに37℃で6日間放置した。
【0165】
図13に示されるように、処理をしなかった場合、鶏の胸肉は6日間の時間枠の終わりには細菌増殖で覆われた。しかしながら、3mg/mLのAPI-E2ラクトフェリンでの処理により、6日後にいかなる細菌コロニーの検出可能な増殖も観察されず、表面処理後のAPI-E2ラクトフェリンの抗菌生物活性が示された。
【0166】
実施例8.阻害ゾーンによるラクトフェリン生物活性の評価
阻害ゾーン試験を実行して、API-E2ラクトフェリンの生物活性を評価した。紙の円に添加された100μg/mL、10μg/mL、1μg/mL、及び0.1μg/mLのAPI-E2ラクトフェリンと共に大腸菌を含むプレートを培養し、外に広がるままにした。
【0167】
図14に示されるように、100μg/mL及び10μg/mLのAPI-E2ラクトフェリンの拡散ゾーンで完全な阻害が、1μg/mLの限定された阻害ゾーンとともに見出されたことで、API-E2ラクトフェリンの抗菌生物活性が示された。0.1μg/mLでは阻害ゾーンは見られなかった。
【0168】
実施例9.LPO活性によるラクトフェリン生物活性の評価
ラクトペルオキシダーゼ(LPO)活性の酵素アッセイは、ペルオキシダーゼ活性の存在下で青色に変わる分子を利用して開発された。
【0169】
図15に示されるように、質量分析によって存在が検証された精製LPO標準に関して、これにより強い陽性応答が得られる(図15#3)。本明細書に記載されるように精製されたAPI-E2ラクトフェリンについては、LPOは質量分析によっても酵素アッセイによっても検出されなかった(図15#1)。しかしながら、市販のSigma実験用グレード標準品(L9507)では、質量分析によって汚染物質LPOを確認できたが、陽性の酵素反応が生じていないことが見出された(図15#2)。これは、以前の方法論で生成されたラクトフェリンが、これらの条件で処理されたタンパク質の生物活性を全体的に失う結果になったことを示している。しかしながら、本明細書に記載の方法では、質量分析によってLPOを検出できるならば常に、対応する酵素活性も観察された。ラクトフェリンからLPOが完全またはほぼ完全に除去された(質量分析は検出可能でない)サンプルのみ、酵素活性は観察されなかった。これは、API-E2ラクトフェリン生成物が非常に高い純度を達成していること、及び本明細書に記載の精製方法が精製工程全体にわたってタンパク質活性を広く保持していることの両方を示している。
【0170】
均等物
本発明は、好ましい実施形態及びさまざまな代替実施形態を参照して特に示され、説明されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細におけるさまざまな変更が本明細書になされ得ることは、関連する技術分野の当業者には理解されよう。
【0171】
参照による組み込み
本明細書の本文中で引用したすべての参考文献、発行済特許、及び特許出願は、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】