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特表2024-536016安全な機械的換気のために人工呼吸器のデータ及びベッドサイド撮像情報を用いて較正及び更新される肺のデジタルツイン
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  • 特表-安全な機械的換気のために人工呼吸器のデータ及びベッドサイド撮像情報を用いて較正及び更新される肺のデジタルツイン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】安全な機械的換気のために人工呼吸器のデータ及びベッドサイド撮像情報を用いて較正及び更新される肺のデジタルツイン
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61M16/00 370Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515428
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2022074909
(87)【国際公開番号】W WO2023052071
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/250,253
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリクス コルネリス ペトルス
(72)【発明者】
【氏名】ブイッザ ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】プリオリ リタ
(72)【発明者】
【氏名】ポルキー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】サブジンスキー ヨルグ
(72)【発明者】
【氏名】ウィムカー ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ハールツェン ヤープ ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】コーラー トーマス
(57)【要約】
患者の肺に関連する撮像データ及び経肺圧データを受信し、吸気画像及び呼気画像の非剛体画像レジストレーションを行って、肺の相対的なコンプライアンス又は弾性マップを生成し、吸気経肺圧及び呼気経肺圧に基づいて、前記相対的なコンプライアンス又は弾性マップを肺の定量的なコンプライアンス又は弾性マップに変換し、並びに前記定量的なコンプライアンス又は弾性マップに関する、若しくは前記定量的なコンプライアンス又は弾性マップから導出される情報を表示装置に表示するように構成される少なくとも1つの電子コントローラを有する機械的換気装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が人工呼吸器を用いて機械的換気療法を受けている間に、患者の肺に関連する撮像データ及び経肺圧データを受信し、
前記撮像データは、前記機械的換気療法の吸気相中に取得される吸気画像、及び前記機械的換気療法の呼気相中に取得される呼気画像を含み、
前記経肺圧データは、前記吸気画像の取得時の吸気経肺圧、及び前記呼気画像の取得時の吸気経肺圧
を含み、
前記吸気画像及び前記呼気画像の非剛体画像レジストレーションを行い、前記肺の相対的なコンプライアンス又は弾性マップを生成し、
前記吸気経肺圧及び前記呼気経肺圧に基づいて、前記肺の相対的なコンプライアンス又は弾性マップを前記肺の定量的なコンプライアンス又は弾性マップに変換し、並びに
前記定量的なコンプライアンス又は弾性マップに関する、或いは前記定量的なコンプライアンス又は弾性マップから導出される情報を表示装置に表示する
ように構成される少なくとも1つの電子コントローラを有する機械的換気装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電子コントローラは、
前記機械的換気療法中、時間の関数として気道空気流を受信し、及び
前記気道空気流がゼロであるときに取得される前記撮像データの画像として、前記吸気画像及び前記呼気画像を選択する
ようにさらに構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの電子コントローラは、
前記患者の肺の気道樹にさらに基づいて、前記肺の相対的なコンプライアンス又は弾性マップを前記肺の定量的なコンプライアンス又は弾性マップに変換するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの電子コントローラは、
前記撮像データの少なくとも1つの画像から前記患者の肺の気道樹を抽出することによって、前記患者の肺の気道樹を生成するように構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの電子コントローラは、
前記機械的換気療法に応答して、前記肺の定量的なコンプライアンス又は弾性マップによって表される、前記患者の肺における応力及びひずみ分布をモデリングすることによって、前記患者の肺のデジタルツインを生成するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの電子コントローラは、
更新された撮像データを受信し、及び
前記更新された撮像データを用いて前記デジタルツインを更新する
ようにプログラムされる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、前記機械的換気療法を前記患者に送達するように構成される人工呼吸器をさらに有し、
前記少なくとも1つの電子コントローラは、
前記デジタルツインを使用して前記患者に送達される前記機械的換気療法の1つ以上のパラメタを調整するように前記人工呼吸器を制御するようプログラムされる、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記定量的なコンプライアンス又は弾性マップに関する、或いは前記定量的なコンプライアンス又は弾性マップから導出される前記表示される情報は、前記デジタルツインのグラフィカル表現を有する、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記撮像データを取得するように構成される撮像装置をさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記撮像装置は、コンピュータトモグラフィ(CT)撮像装置である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの電子コントローラは、
前記人工呼吸器の表示装置に、前記肺のひずみに対する前記人工呼吸器の設定を示すグラフを表示するようにプログラムされる、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの電子コントローラは、
前記患者の臨界レベルに基づいて、前記人工呼吸器の設定に関する前記グラフ上の線を色分けするようにプログラムされる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの電子コントローラは、
前記肺の臨界ひずみ値が発生したときにアラートを出力するようにプログラムされる、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの電子コントローラは、
前記表示されるグラフの一部に関する、前記表示装置上でのユーザからのユーザ入力を受信し、及び
前記ユーザ入力が受信された前記グラフの前記一部に関する追加の情報を表示する
ようにプログラムされる、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
少なくとも1つの電子コントローラが、
患者が人工呼吸器を用いて機械的換気療法を受けている間に、前記患者の肺に関連する撮像データ及び経肺圧データを受信するステップであって、前記撮像データは、前記機械的換気療法の吸気相中に取得される吸気画像、及び前記機械的換気療法の呼気相中に取得される呼気画像を含み、前記経肺圧データは、前記吸気画像の取得時の吸気経肺圧、及び前記呼気画像の取得時の呼気経肺圧を含む、前記受信するステップ、
前記吸気画像及び前記呼気画像の非剛体画像レジストレーションを行い、前記肺の相対的なコンプライアンス又は弾性マップを生成するステップ、
前記吸気経肺圧及び前記呼気経肺圧に基づいて、前記肺の相対的なコンプライアンス又は弾性マップを前記肺の定量的なコンプライアンス又は弾性マップに変換するステップ、並びに
前記定量的なコンプライアンス又は弾性マップに関する、或いは前記定量的なコンプライアンス又は弾性マップから導出される情報を表示装置に表示するステップ
を有する機械的換気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、米国特許法第119条の下、2021年9月30日に出願された米国仮特許出願第63/250,253号の優先権を主張し、その内容は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
以下のことは、一般に、呼吸療法技術、呼吸応力(stress)及びひずみ(strain)技術、人工呼吸器関連肺損傷(VILI)技術、並びに関連技術に関する。
【背景技術】
【0003】
患者の機械的換気療法中、臨床医は、患者の身体サイズに基づいて、人工呼吸器が患者に供給する空気の量を決定する。この量は、応力(バロトラウマ:圧損傷)、ひずみ(ボルトラウマ:量損傷)又は肺胞の周期的な開通及び虚脱による剪断(アテレクトラウマ:虚脱性肺損傷)に起因する肺の損傷を引き起こすことなく、十分な通気を提供する必要がある。人工呼吸器による応力及びひずみに起因するこの種類の肺損傷は、人工呼吸器関連肺損傷(VILI)として知られている。
【0004】
肺損傷を防ぐための人工呼吸器の設定を決定する際の問題は、局所的に変化する構造、幾何学的形状及び機械的特性に起因する本質的なもの、又は、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺炎、浮腫、Covid-19及び線維症などのような疾患或いは感染によって引き起こされる局所的な損傷又は液体貯留に起因する二次的なものの何れかによって、肺が不均一なことである。これにより、局所的な応力及びひずみの集中は、患者の身体サイズに基づいて、又は高機能の人工呼吸器によって測定される集中容積及び集中コンプライアンスに基づいて推定されるように、見かけの大域的(global)な応力及びひずみよりもはるかに高くなる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在の幾つかの手法において、VILIの評価及び防止のための解決策として、コンピュータトモグラフィ(CT)呼気撮像情報に基づいて、患者の肺の三次元(3D)生物物理学的モデルを構築することを含む(例えば、Roth, J. et al., 2017, “A comprehensive computational human lung model incorporating inter-acinar dependencies: Application to spontaneous breathing and mechanical ventilation”. Int. J. Numer. Meth. Biomed. Engng. (2017); e02787を参照)。このモデルを用いて、臨床医は、人工呼吸器(MV)の設定を試行し、シミュレーションを介して、肺に起こること(例えば、実質組織におけるひずみ分布)を見ることができる。肺のモデルが実験的挙動をシミュレートするように、肺組織の機械的特性(すなわち、肺胞管及び肺胞間リンカーの剛性)が選択される。この手法において、前記機械的特性は患者特有ではなく、局所的に変化しない。
【0006】
非剛体画像レジストレーション(DIR)において、変形モデルを用いて2つ以上の画像が互いに幾何学的にマッピングされる。それは、2つ以上の医用画像(例えば、肺の吸気及び呼気のCT)において対応するボクセル或いは領域を見つけるため、又は対応する組織要素の相対的な容量変化(すなわち、体積ひすみ)を示すことによって変形マップを構築するために適用される。様々な変形モデル(例えば、剛体、弾性、粘性、摺動面など)が利用可能である。そのようなものとして、DIRは、肺の構造及び組織の局所的変形のマッピングを提供することができ、これは、救急患者においてVILIを防止するための有用な診断情報を提供する。例えば、(体積)ひずみの推定値は、機械的に換気される肺における肺の炎症及び損傷と相関性があり(例えば、Andrade, C.I., and Hurtado, D.E., 2021, “Inelastic Deformable Image Registration (i-DIR): Capturing Sliding Motion through Automatic Detection of Discontinuities”, Mathematics 2021, 9, 97を参照)、COPDの評価にも使用される(例えば、Galban, C., et al., 2012, “Computed tomography-based biomarker provides unique signature for diagnosis of COPD phenotypes and disease progression”, Nature Medicine 18(11), 1711; Budduluri, S., 2016, “CT image registration-based lung mechanics In COPD”, PhD (Doctor of Philosophy) thesis, University of Iowa, 2016を参照)。
【0007】
線形弾性機械的変形(linear elastic mechanical deformation)モデルの場合、この線形弾性機械的変形において、コンプライアンスCは、ひずみを力で割ったものに比例、する、つまりC~e/Fであるので、ひずみマップは、力が均一に分布している場合、相対的なコンプライアンスマップを示す。それに対応して、弾性率は、E=1/Cであるので、コンプライアンスマップの反対は、剛性マップである。対応する力Fを知る必要ない。力F(人工呼吸器の圧力)は、肺内に均等に分配されること、及び抵抗がないこと(ゼロ流量)を必要とする。このため、DIRを用いた肺のコンプライアンスマッピングにおいて、息止め又は呼吸休止の手順が使用される。この手順中、プラトー圧が決定される。
【0008】
肺コンプライアンスマップ(“肺コンプライアンス画像”)の構築は、麻酔をかけられ、挿管されたげっ歯類(rodent)で知られている(例えば、Guerrero, T. et al., 2006, “Novel method to calculate pulmonary compliance images in rodents from computed tomography acquired at constant pressures”, Phys. Med. Biol. 51 (2006) 1101-1112を参照)。そのようなマップは、非線形の組織応答を測定するために、異なる圧力レベルで、肺コンプライアンスマップと人工呼吸器によって供給される、息止め中の全体的な圧力とを組み合わせることによって、定量的な方法で全体的な肺コンプライアンスを計算するために生成される。さらに、そのような処理は、肺組織1グラム当たりの1cmHO当たりの空気のミリリットル(mL)に関して、“単位質量当たりの肺コンプライアンス”のマップを構築する。
【0009】
以下のことは、これらの問題及び他の問題を克服するための特定の改良を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様において、機械的換気装置は、患者が人工呼吸器を用いて機械的換気療法を受けている間に、その患者の肺に関連する撮像データ及び経肺圧データを受信し、ここで、前記撮像データは、機械的換気療法の吸気相中に取得される吸気画像、及び機械的換気療法の呼気相中に取得される呼気画像を含み、前記経肺圧データは、前記吸気画像の取得時の吸気経肺圧及び前記呼気画像の取得時の呼気経肺圧を含み、前記吸気画像と前記呼気画像との非剛体画像レジストレーションを行い、肺の相対的なコンプライアンス又は弾性マップを生成し、前記吸気経肺圧及び前記呼気経肺圧に基づいて、前記肺の相対的なコンプライアンス又は弾性マップを、肺の定量的なコンプライアンス又は弾性マップに変換し、並びに前記定量的なコンプライアンス又は弾性マップに関連する、若しくは前記定量的なコンプライアンス又は弾性マップこのマップから導出される情報を表示装置に表示するように構成される少なくとも1つの電子コントローラを含む。
【0011】
別の態様において、機械的換気方法は、少なくとも1つの電子コントローラを用いて、患者が機械的換気装置を用いて機械的換気療法を受けている間に、その患者の肺に関連する撮像データ及び経肺圧データを受信するステップであって、前記撮像データは、機械的換気療法の吸気相中に取得される吸気画像、及び機械的換気療法の呼気相中に取得される呼気画像を含み、前記経肺圧データは、前記吸気画像の取得時の吸気経肺圧及び前記呼気画像の取得時の呼気経肺圧を含む、前記受信するステップ、前記吸気画像と前記呼気画像との非剛体画像レジストレーションを行い、肺の相対的なコンプライアンス又は弾性マップを生成するステップ、前記吸気経肺圧及び前記呼気経肺圧に基づいて、前記肺の相対的なコンプライアンス又は弾性マップを、肺の定量的なコンプライアンス又は弾性マップに変換するステップ、並びに前記定量的なコンプライアンス又は弾性マップに関連する、若しくは前記定量的なコンプライアンス又は弾性マップから導出される情報を表示装置に表示するステップを含む。
【0012】
1つの利点は、不均一な組織剛性、患者特有及び較正される機械的特性を備える機械的特性を持つ機械的換気療法を受けている患者の肺のモデルを提供することにある。
【0013】
別の利点は、肺の機械的特性に対応する色分けされた組織マップの区分を備える、機械的換気療法を受けている患者の肺のモデルを提供することにある。
【0014】
別の利点は、人工呼吸器の表示装置上に機械的換気療法を受けている患者の肺のモデルを提供し、それによって集中治療室(ICU)における追加のコンピュータの必要性を低減することにある。
【0015】
別の利点は、患者の追加の撮像データを用いて動的に更新される、機械的換気療法を受けている患者の肺のモデルを提供することにある。
【0016】
別の利点は、人工呼吸器の設定の変化をシミュレートするために使用される、機械的換気療法を受けている患者の肺を含む、患者の胸腔のデジタルツインを提供することにある。
【0017】
所与の実施形態は、前述した利点の何れも提供しない、1つ、2つ、さらに多く若しくは全てを提供してもよいし、及び/又は本開示を読み、理解すると当業者に明らかになる他の利点を提供してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本開示は、様々な構成要素及び構成要素の配列、並びに様々なステップ及びステップの配列の形態をとることができる。
図1図1は、本開示による例示的な機械的換気システムを概略的に示す。
図2図2は、図1のシステムによって適切に行われる動作の例示的なフローチャートを示す。
図3図3は、図1のシステムによって生成されるマップの例を示す。
図4図4は、図1のシステムによって生成されるマップの例を示す。
図5図5は、図1のシステムによって生成されるデジタルツインの例を概略的に示す。
図6図6は、図5に示されるデジタルツインを生成するための動作の例示的なフローチャートを示す。
図7図7は、図1のシステムによって生成されたグラフの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
明細書において、特に文脈上はっきりと述べていない限り、複数あると述べていなくても、それらが複数あることを含む。明細書において、2つ以上の部品又は構成要素が“結合される”、“接続される”、又は“係合される”という表現は、連結している限り、これら部品が直接的に、又は間接的に、すなわち、1つ以上の中間部品又は構成要素を介して、結合される、動作する又は協働することを意味するものとする。本明細書に用いられる方向の言葉、例えば、限定するものではないが、頂部、底部、左側、右側、上部、下部、前方、後方及びそれらの派生語は、図面に示される要素の向きに関連し、本明細書に明確に記載されない限り、特許請求される発明の範囲を限定するものではない。“有する”又は“含む”という言葉は、本明細書に記載される及び/又は請求項に列挙される要素又はステップ以外の要素又はステップの存在を排除しない。幾つかの手段から構成される装置において、これらの手段の幾つかは、ハードウェアの同一のアイテムによって具現化されてもよい。
【0020】
特定の患者にVILIを生じさせない人工呼吸器の設定を選択するよう臨床医を誘導することを含む、ベッドサイドの臨床医及び介護提供者が安全な機械的換気を提供するのを支援するためのシステム及び方法が本明細書に開示される。
【0021】
線形又は非線形の局所的な肺コンプライアンス数(相対数)は、CT又はX線を用いた非剛体画像レジストレーション(DIR)を使用してマッピングされる。息止め又は呼吸休止の手順を用いることなく絶対圧力を決定するために、撮像は呼吸サイクルにおけるゼロ流量でトリガ又はタイミングが決められる。この撮像と同時に、経肺圧の読み取り値が取得される。人工呼吸器のデータを用いて画像の較正が行われ、相対的な肺コンプライアンスを絶対数に変換する。これは、経肺圧の値を使用する。この処理の出力は、定量的な弾性マップである。
【0022】
次いで、肺を含む患者の胸腔のデジタルツイン、すなわち、構造、換気及び変形の様相を含む4次元(4D、空間及び時間の次元)の生物物理学的肺モデルが生成され、このデジタルツインは、人工呼吸器のデータ及び(例えば、X線又は超音波のような撮像モダリティを使用した)ベッドサイド撮像情報を用いて連続的に較正及び更新される。デジタルツインは、異なる人工呼吸器の設定での肺の影響、特に組織応力をシミュレートする。前記肺モデルへの入力は、以前に取得した定量的な弾性分布である。
【0023】
幾つかの実施形態は、ユーザインターフェース(UI)が、容易に読めるディスプレイをさらに備える。モデルの出力は、実施可能な臨床意思決定支援(CDS)情報に翻訳される。人工呼吸器のユーザインターフェース(UI)は、臨床医が決定するためのオプションを示す。
【0024】
図1を参照すると、関連する患者Pに換気療法を施すための人工呼吸器2が示されている。図1に示されるように、人工呼吸器2は、患者Pに機械的換気を送出するために、患者呼吸回路5と接続可能な出口4を含む。患者呼吸回路5は、例えば、吸気ライン6、任意の呼気ライン7(人工呼吸器が単肢の患者回路を用いる場合、省略される)、気管内チューブ(ETT)と接続するためのコネクタ又はポート8、並びに例えば、ガス流量計、圧力センサ及び/又は呼気終末二酸化炭素(etCO)センサのような1つ以上の呼吸センサ(図示せず)のような人工呼吸器の典型的な構成要素を含む。人工呼吸器2は、ETTを介して患者を換気するために、プログラムされた圧力及び/又は流量で、空気、空気-酸素混合物又は他の呼吸可能なガス(図示せず)を出口4に送出するように設計される。人工呼吸器2は、この人工呼吸器2の動作を制御するための電子コントローラ(例えば、マイクロプロセッサ)13、並びに患者Pの機械的換気中の患者Pに関する情報及び/又は人工呼吸器2の設定を表示するための表示装置14も含む。
【0025】
図1は、ETT16を挿管した患者Pを図式的に示す(ETTの下方部分は患者Pの内部にあるので、透視図で示される)。コネクタ又はポート8は、人工呼吸器2と動作可能に接続して、ETT16を介して患者Pに呼吸可能な空気を送出するために、ETT16と接続する。ETT16を介して人工呼吸器2によって施される機械的換気は、例えば肺気腫或いは肺炎のような様々な種類の肺疾患、例えばCOVID-19感染症或いは重度インフルエンザのような呼吸に影響を及ぼすウイルス感染症若しくは細菌感染症、又は患者Pが酸素富化した呼吸可能ガスを受け取る心血管疾患などの様々な疾患に対して治療的である。
【0026】
図1は、(画像取得装置及び撮像装置などとも呼ばれる)医用撮像装置15も示す。画像取得装置15は、コンピュータトモグラフィ(CT)画像取得装置、Cアーム撮像装置、他のX線撮像装置、磁気共鳴(MR)画像取得装置、超音波(US)画像取得装置、又は別のモダリティの医用撮像装置とすることができる。本明細書に主に説明されるように、医用撮像装置15は、CT医用撮像装置15を有する。本明細書に説明されるように、医用撮像装置15は、ETTのサイズ決定が行われるのに基づいて、患者Pの画像を取得するために使用される。撮像装置15は、人工呼吸器2と同じ部屋或いは同じ部門(科)に配されていなくてもよいことに留意すべきである。例えば、医用撮像装置15は、放射線検査室に配される一方、人工呼吸器2は、集中治療室(ICU)、冠疾患治療室(CCU)又は患者Pに割り当てられた病室などに配されてもよい。このことが、区切り線Lによって図1に概略的に示されている。それに加えて又はその代わりに、例えば例示的な超音波撮像装置のような、ベッドサイド撮像装置15Bが使用されてもよい。
【0027】
図1を引き続き参照すると、患者Pの機械的換気中、患者Pに関するデータ及び/又は人工呼吸器2の設定を生成するように構成される電子処理装置18が示されている。電子処理装置18は、例えばワークステーションコンピュータ(より一般的には、コンピュータ)、スマートデバイス(例えば、スマートフォン及びタブレットなど)、又は(例えば、サーバクラスタ若しくはクラウドコンピューティングリソースなどを形成するように相互接続される)サーバコンピュータ若しくは複数のサーバコンピュータのような電子処理装置を有することができる。電子処理装置18は、例えば電子コントローラ20(例えば、電子プロセッサ又はマイクロプロセッサ)、少なくとも1つのユーザ入力装置22(例えば、マウス、キーボード、トラックボール及び/又はスマートデバイスのタッチスクリーン上での指のスワイプなど)、並びに少なくとも1つの表示装置24(図1にのみ示され、例えば、LCDディスプレイ、プラズマディスプレイ及び/又は陰極線管ディスプレイなど)のような、典型的な構成要素を含む。幾つかの実施形態において、表示装置24は、電子処理装置18とは別個の構成要素とすることができる。表示装置24は、2つ以上の表示装置を有してもよい。
【0028】
電子コントローラ20は、1つ以上の非一時的な記憶媒体26と動作可能に接続される。この非一時的な記憶媒体26は、限定ではない例示的な例として、磁気ディスク、RAID又は他の磁気記憶媒体;ソリッドステートドライブ、フラッシュドライブ、EEROM又は他の電子メモリ;光ディスク又は他の光記憶装置;又はそれらの様々な組み合わせなどのうちの1つ以上を含み、例えば、ネットワーク記憶装置、換気支援装置18の内部ハードドライブ又はそれらの様々な組み合わせなどである。本明細書における非一時的な媒体26に対する如何なる言及も、同じ又は異なる種類からなる単一の媒体又は複数の媒体を包含するものとして広く解釈されるべきであることを理解されたい。同様に、電子コントローラ20は、単一の電子プロセッサとして、又は2つ以上の電子プロセッサとして具体化されてもよい。非一時的な記憶媒体26は、少なくとも1つの電子コントローラ20によって実行可能な命令を記憶する。これら命令は、遠隔オペレータの表示装置24に表示するためのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)28を生成するための命令を含む。
【0029】
さらに、本明細書に開示されるように、非一時的な記憶媒体26は、患者Pに換気療法を施すための換気支援方法又は処理100を行うための、少なくとも1つの電子コントローラ20によって実行可能な命令を記憶する。
【0030】
上述したように、人工呼吸器2は、医療施設の第1の部屋に配され得るのに対し、画像取得装置15及び電子処理装置18は、この医療施設の別の第2の部屋に配され得ることが理解される。このことは、図1の概ね“中間”部分にある破線Lによって示される。別の例において、人工呼吸器2及び電子処理装置18が前記第1の部屋に配されるのに対し、画像取得装置15が前記医療施設の前記第2の部屋に配されることができる。さらなる例において、人工呼吸器2、画像取得装置15及び電子処理装置18の各々が前記医療施設の別個の部屋に配されることができる。それに加えて又はその代わりに、ベッドサイド撮像装置15Bが患者の部屋に設けられてもよい。これらは単に例示的な例である。
【0031】
本明細書に説明されるように、方法100は、電子処理装置18によって行われる、又は人工呼吸器2の電子コントローラ13によって行われる。
【0032】
引き続き図1を参照すると共に、図2を参照すると、換気支援方法100の例示的な実施形態がフローチャートとして概略的に示される。動作102において、患者の1つ以上の画像34が、医用撮像装置15によって取得される。特定の例において、取得される画像34はCT画像34である。CT画像34を取得するために、電子コントローラ20は、医用撮像装置15(すなわち、CTスキャナ)を制御して、患者Pの上気道又は気道(例えば、鼻又は口から気管分岐部まで)のCT画像34を取得するように構成される。
【0033】
撮像動作102は、画像34を分析して、機械的換気療法の吸気相中に取得される吸気画像35、及び機械的換気療法の呼気相中に取得される呼気画像36を決定することを含む。例えば、吸気画像35は、患者Pによる最大吸入時に取得されることができ、呼気画像36は、患者Pによる最大呼息時に取得されることができる。前記撮像動作102と同時に行われる動作104において、患者Pの肺に関連する経肺圧データも測定される。この経肺圧データは、例えば、吸気画像35の取得時に測定される経肺圧の読み取り値のような吸気経肺圧、及び呼気画像36の取得時に測定される別の経肺圧の読み取り値のような呼気経肺圧を含むことができる。
【0034】
幾つかの実施形態において、撮像動作102は、機械的換気療法中に時間の関数として気道空気流を受け取ることを含むことができ、吸気画像35及び呼気画像36は、前記気道空気流がゼロであるときに取得される撮像データの画像として選択される。次いで、動作104において、(例えば、圧力センサを持つ食道カテーテルを用いて、又は例えば、Umbrello, M. and Chiumello, D., 2018, “Interpretation of the transpulmonary pressure in the critically ill patient”, Ann Transl. Med 2018;6(19):383に記載される方法を用いて)経肺圧が同時に測定されることができる。
【0035】
動作106において、肺の相対的なコンプライアンス又は弾性マップ38を生成するために、吸気画像35及び呼気画像36の非剛体画像レジストレーション(DIR)が行われる。個々の肺組織における体積ひずみがDIR動作106から決定され、(動作104から)人工呼吸器2からの個々の肺組織に及ぼされる全体的な圧力と併せて、個々の肺組織の剛性値が、相対的なコンプライアンス又は弾性マップ38において決定される。ある例において、弾性変形の場合、弾性率は、
local=Δp・Vlocal/ΔVlocal
に等しい。或いは、コンプライアンスマップ又は弾性マップ38は、全体的な肺変形を用いて局所的な変形をスケーリングし、人工呼吸器からの全体的な肺コンプライアンスC又は弾性Eを基準とすることよって較正される、つまり
local/E=ΔVglobal/ΔVlocal
となる。図3は、全体的な圧力Δpを使用する相対的なコンプライアンス又は弾性マップ38の例を示す。
【0036】
別の実施形態において、動作106は、X線又はCTを用いたDIRを使用して行われ、患者Pのベッドサイドでの電気インピーダンストモグラフィ(EIT)から同様の変形マップが直接取得されることができる。EITはウェアラブルな技術であるため、コンプライアンスマップ又は弾性マップ38は、連続的に更新され得ることが利点である。同様に、動作102において、ベッドサイド撮像装置15Bを使用して、吸気画像及び呼気画像を取得することができる。これは、典型的にベッドサイド撮像がより頻繁に行われるため、デジタルツインに対するより頻繁な更新を可能にする。
【0037】
動作108において、肺の相対的なコンプライアンス又は弾性マップ38は、(動作104から取得される)吸気経肺圧及び呼気経肺圧に基づいて、肺の定量的なコンプライアンス又は弾性マップ39に変換される。経肺圧は、胸腔における肺胞内圧と胸腔内圧との差である。故に、経肺圧は、肺組織の変形を誘発する実際の圧力であるため、本明細書に開示されるように経肺圧を使用することは、動作108が、相対的なコンプライアンス又は弾性マップ38を定量的なコンプライアンス又は弾性マップ39に変換することを可能にする。幾つかの例において、変換動作108は、患者Pの肺の気道樹(airway tree)40を用いて行われる。この気道樹40は、有利には、動作102で取得した1つ以上の画像34から抽出される患者特有の気道樹とすることができる。
【0038】
気道樹40は、異なる気道世代における個々の肺組織の局所抵抗を示す一次元(1D)の空気流モデルとすることができる。気道樹40の患者特有のパラメタは、例えば、動作102において取得されるセグメント化された3D-CTスキャン(例えば、前記気道世代の分布、長さ及び直径)から取得されることができる。或いは、CTスキャンが利用可能でないとき(例えば、気道樹40を効果的に撮像しない撮像モダリティを用いて、撮像102が行われたとき)、幾つかの気道世代を備える一般的な気管支樹ネットワークを使用することができる。任意選択で、個々の肺組織の局所抵抗は、測定される全体的な肺抵抗を用いて較正されることができる。気道樹40における局所的な圧力分布が分かっているとき、全体的な圧力Δpの代わりにこの局所的な圧力Δplocalを用いて局所的な弾性を推定することができる。図4は、この局所的な圧力Δplocalを用いて生成される相対的なコンプライアンス又は弾性マップ38の一例を示す。
【0039】
動作110において、機械的換気療法に応答して、肺の定量的なコンプライアンス又は弾性マップ39によって表される患者の肺における応力及びひずみ分布をモデリングすることによって患者Pの肺のデジタルツイン42が生成される。本明細書に用いられる肺の“デジタルツイン”は、物理的な肺の仮想表現を指す。計算モデリングを使用して、患者Pの肺のデジタルツイン42は、センサデータ及び肺から連続的に取得される他の情報を使用して生理学的プロセスをシミュレートする。デジタルツイン42は、患者Pの肺の機能を評価し、患者Pの状態(すなわち、肺機能及び疾患の進行など)及び患者Pの将来の予測(すなわち、人工呼吸器2の設定の最適化)を反映させるために、連続的に更新され、最良の転帰(すなわち、最小限の損傷でのより迅速な患者の回復)を提供する。そうするために、更新された撮像データ(すなわち、追加の画像34)を受信し、デジタルツイン42を更新するために使用することができる。
【0040】
図5は、デジタルツイン42及び補助構成要素の例を概略的に示す。デジタルツイン42は、動作102で(例えば、CT、X線又は超音波(US)を介して)取得された画像34と、動作104で取得された対応する経肺圧読み取り値とから生成され、デジタルツイン42は、クラウド又は電子処理装置18の非一時的コンピュータ可読媒体26に記憶される。デジタルツイン42は、このデジタルツイン42において異なる人工呼吸器の設定をシミュレートするために、人工呼吸器2を介して臨床医によって取りだされ、使用される。これらシミュレーションに基づいて、臨床医は、患者Pを治療するための人工呼吸器2の設定を調整することができる。
【0041】
図6を参照すると共に、引き続き図1及び図5を参照すると、デジタルツイン生成及び使用方法200の例示的な実施形態がフローチャートとして概略的に示されている。動作202において、画像取得装置15を用いて1つ以上のCT画像34が生成される。動作204において、電子処理装置18は、前記画像34から患者Pの肺の解剖学的構造及び幾何学的形状のモデルを生成するように構成される。動作206において、このモデルの力学特性は、肺の定量的なコンプライアンス又は弾性マップ39を用いて、肺の組織の局所的な力学特性を用いて較正され、デジタルツイン42を生成する。動作208において、数値流体力学及び計算力学プロセスが適用され、肺の流量及び変形モデルを作成する。動作210において、人工呼吸器の初期設定が(医学界で受け入れられる既知のプロトコルを使用して)決定される。動作212において、局所的な組織の応力シミュレーションがデジタルツイン42に対して行われ、異なる換気設定(例えば、流量、体積、圧力、ライズタイムなど)での肺の影響(例えば、組織応力及びひずみ)をシミュレートする。このことから、動作214において、更新された人工呼吸器の設定がアルゴリズムによって(又は任意選択で臨床医によって)決定される。例えば、1回換気量又は圧力は、これらの値が所定のしきい値を超えないように、所定の量だけ減少させて、局所的な肺のひずみ又は応力を低下させることができる。動作216において、結果生じる肺の応力を含む1つ以上の設定オプションが、人工呼吸器2の表示装置14に表示される。動作218において、臨床医は、その後で人工呼吸器2によって使用される、表示される設定オプションの1つ以上を選択する。動作220において、選択される設定オプションを使用した機械的換気療法の結果が、人工呼吸器2の表示装置14に表示される(この時点で、図6の矢印によって示されるように、動作204、206及び/又は212の1つ以上を繰り返すことができる)。動作222において、患者Pのベッドサイド撮像(例えば、EIT撮像又はX線撮像)が行われ、さらに撮像データを使用して、デジタルツイン42を更新することができ、この時点で、動作204を繰り返すことができる。動作224において、臨床医は、機械的換気療法を続けるかどうかを決定することができ、Yesである場合、動作226において、患者Pは(例えば、ETT16を取り除くことによって)抜管される。
【0042】
図1及び図2に戻り参照すると、動作112において、人工呼吸器2は、デジタルツイン42を使用して、患者Pに送出される機械的換気療法の1つ以上のパラメタを調整するように制御される。
【0043】
動作112において、定量的なコンプライアンス或いは弾性マップ39、及び/又はデジタルツイン42に関する又はそれらから導出される情報が、人工呼吸器2の表示装置14に表示される。一実施形態において、デジタルツイン42のグラフィカル表現が表示装置14に表示される。デジタルツイン42の表現は、臨床意思決定支援(CDS)情報を含み、臨床医が最良の機械的換気療法のシナリオを迅速かつ容易に選択又は決定することができるように、この情報を人工呼吸器2の表示装置14に示すことができる。例えば、デジタルツイン42が表示され、状況的必要性、患者の治療経路及び臨床医の専門知識に基づいて機械的換気療法を進めるための選択可能なオプションを含むことができる。
【0044】
患者の治療経路に応じて、臨床医は、表示装置14に表示される、機械的換気におけるVILIの防止に関する様々な種類の情報及び支援を必要とし、これらは、オプション(1)肺の不均一性に関する診断データ及び情報(例えば、FRI(functional respiratory image)からの情報を単一のメトリックに圧縮する)、オプション(2)転帰の予測(すなわち、可能な限り最短の入院を提供する人工呼吸器のモード、又は機械的換気が失敗した場合に他の治療オプションを早期に選択する)、オプション(3)治療計画支援(例えば、MVパラメタ及び肺組織の応力をシミュレートする)、又はオプション(4)安全な機械的換気を実行及び維持するためのモニタリング情報、並びに必要なときに機械的換気の設定を適応させるための推奨、を含む。
【0045】
例えば、臨床医は十分な時間があるか又は急いでいるかどうか、臨床医は予定されている定期的な訪問又は緊急であるかのような状況に応じて、情報の性質又はシステムの必要とされる動作は異なる。次いで、異なるオプションが表示装置14に表示され、これらオプションは、オプション(A)十分な時間がある又は予定されている定期訪問である場合、“現在起こっていること又は治療適応後に起こるであろうことを示す”、オプション(B)時間が限られている、今患者Pは助けを必要としている又は緊急である場合、“推奨又は選択する幾つかのシナリオを提供する”、又はオプション(C)時間がない又は臨床医が不在である場合、“タスクを自動化する”を含む。
【0046】
臨床医の専門知識に応じて、オプション(i)呼吸器科医、又はオプション(ii)看護師を含む、異なるオプションを表示装置14に表示することができる。
【0047】
人工呼吸器2の電子プロセッサ13に実装されるルックアップテーブル44を使用して、どのオプションを表示装置14に表示するかを決定することができる。例えば、ルックアップテーブル44は、入力として、診療科の予定表、人工呼吸器のセンサデータ及び環境センサデータを受信することができる。これらの入力から、ルックアップテーブル44は、どのオプション(例えば、オプション1~4、A~C又はi~ii)を表示装置14に表示するかを選択することができる。例えば、状況的な側面では、診療科の予定表が予定されている定期訪問を示す場合、ルックアップテーブル44は、オプションAを選択して、選択のために表示することができる。診療科の予定表が、定期訪問ではなく、アラームが鳴っていることを示す場合、ルックアップテーブル44は、オプションBを選択して、選択のために表示することができる。介護者が不在である(例えば、存在検出器(プレゼンスデテクター)、カメラ、マイクロフォン、バッジリーダの活動などから決定される)場合、ルックアップテーブル44は、オプションCを選択して、選択のために表示することができる。
【0048】
専門的な側面では、(例えば、活性化される顔或いは音声認識、又はバッジリーダからの情報のような別の自動識別技術などによって)介護者がいることが検出される場合、専門知識のレベル(例えば、呼吸器科医又は看護師)が非一時的なコンピュータ可読媒体26から読み込まれ、ルックアップテーブル44は、オプション(i)又は(ii)の何れかを選択して、表示することができる。
【0049】
患者の治療経路の側面では、患者の治療経路の段階が緊急治療室の情報システム、電子カルテ(EMR)のデータベース又は別の診療科情報システムに記録することができる。例えば、患者Pが重度のCOVID-19と診断され、ICUに入院する場合、ルックアップテーブル44は、オプション3を選択して、表示することができる。別の例において、患者Pが1週間、ICUで人工呼吸を受けて、その状態が悪化している場合、ルックアップテーブル44は、オプション4を選択して、表示することができる。
【0050】
幾つかの実施形態において、複数の種類のオプションを表示すること(例えば、オプション1、A及びiを表示、並びにオプション3、B及びiiを表示するなど)ができる。他の実施形態において、表示装置14のプッシュボタンを押して、標準或いは空白のユーザインタフェース(UI)を表示する、又はボタンを押して、ルックアップテーブル44によって選択されるオプションを表示することができる。
【0051】
幾つかの実施形態において、表示動作112は、肺のひずみに対する人工呼吸器2の設定を示すグラフ46を表示装置14に表示することを含むことができる。一例において、グラフ46は、肺の1回換気量及び肺のひずみを示す棒グラフとすることができる。この棒グラフ46は、1回換気量のスライダと一緒に右肺と左肺とを表す2つの列を含むことができる。臨界ひずみを超える(例えば、e>2)肺の割合を表示することもできる。これらの棒(バー)は、色分けすることもできる。例えば、“緑色”のバーは、肺の過負荷(すなわち、ひずみ)が0%であることを示すことができる。“赤色”バーは、肺葉の1つがしきい値(例えば、30%のひずみ)を超えて過度にひずんでいることを示すことができる。
【0052】
他の例において、前記グラフ46は、折れ線グラフとすることができる。折れ線グラフ46は、機械的換気設定の関数として、臨界ひずみを超える(例えば、e>2)肺の割合を示すことができる。幾つかの例において、臨界ひずみeは、画像34に示される(例えば、肺気腫又は線維症による)肺の損傷に基づいて、患者特有である。他の例において、グラフ46は、人工呼吸器2の電子コントローラ13(又は電子処理装置18の電子コントローラ20)によって行われる患者の類似性分析に基づいて、機械的換気設定の変更が予想される転帰に及ぼす影響を示すことができる。前記類似性分析は、入力として、長期的な機械的換気設定及び機械的換気センサデータ、診断スキャン、ベッドサイド撮像、患者特性及び報告される転帰を使用する。例えば、機械的換気設定の関数として、緑色、橙色及び赤色の区域を持つアイコンは、予測される患者の入院(日数)を示す。例えば、類似のCovid-19の患者から、線維症が進行し過ぎているため、侵襲的な機械的換気には遅すぎると思われる。
【0053】
他の例において、折れ線グラフ46は、患者Pの呼吸サイクル中、リアルタイム(例えば、呼吸がより荒くなった場合に起こる事象に基づく)の肺組織の応力値又は体積分布も含むことができる。折れ線グラフ46は、肺に存在するコンプライアンス又は弾性の範囲、及び各々の肺における生体力学的メトリック(体積、弾性など)の比率などを含む他のデータも示すことができる。
【0054】
図7は、表示装置14に表示される折れ線グラフ46の一例を示す。図7に示されるように、肺の異なる1回換気量を表す3つの線は、肺のひずみ割合に対する、特定のひずみを受けている肺の割合としてプロットされる。1回換気量1及び2を表す線は、臨界ひずみ値(例えば、e=2)を満たした又は超えたことを示し、その場合、臨床医にアラート48(図1参照)が(すなわち、表示装置14上のメッセージ又は可聴音として)出力される。
【0055】
幾つかの例において、図7には示されていなくても、患者Pの臨界レベルに基づいて異なる線が色分けされることができる。例えば、1回換気量の線1は、(肺の高いひずみを示す、従って臨床医の手当てを必要とする)赤色に色分けすることができ、1回換気量の線2は、(肺の中程度に高いひずみを示し、従って場合によって臨床医の手当てを必要とする)黄色に色分けすることができ、1回換気量の線3は、(臨界値を超えていない肺の低いひずみを示す、従って臨床医の手当てを必要としない)緑色に色分けすることができる。
【0056】
他の実施形態において、臨床医は、(例えば、ユーザ入力を示す指でタップする又はスワイプすることで)表示装置上のグラフ46の一部を選択することができる。ユーザ入力を受信したグラフ46の前記一部に基づいて、グラフ46の前記一部に関する追加の情報を表示装置14に表示することができる。例えば、臨床医が1回換気量の線2を選択した場合、その1回換気量の正確なひずみ値(分布)を表示することができ、臨床医は、人工呼吸器2の設定を調整するかどうかを決定することができる。
【0057】
本開示は、好ましい実施形態を参照して説明された。上述した詳細な説明を読み及び理解すると、他者は修正案及び変更案を思い付くことがある。例示的な実施形態は、それら修正案及び変更案が添付の特許請求の範囲又はその等価物の範囲内にある限り、全てのそのような修正案及び変更案を含むものと解釈されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】