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▶ オシリス セラピューティクス,インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】脱落膜組織の組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/40 20060101AFI20240927BHJP
   A61L 15/42 20060101ALI20240927BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20240927BHJP
   A61L 15/60 20060101ALI20240927BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20240927BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20240927BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61L15/40 100
A61L15/42 100
A61L15/28 100
A61L15/60 100
A61L31/04
A61L31/04 120
A61L31/14 300
A61L31/14 100
A61L31/12 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515542
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 IB2022059310
(87)【国際公開番号】W WO2023053065
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/249,655
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500430486
【氏名又は名称】オシリス セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブソン、ナスリーン
(72)【発明者】
【氏名】クアン、ジン-チーアン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ミン ソン
(72)【発明者】
【氏名】ヨバノビッチ、アレクサ
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AA03
4C081AA12
4C081AC16
4C081BA12
4C081BB09
4C081CA182
4C081CD021
4C081CD34
4C081CE07
4C081DA02
4C081DA11
4C081DA12
4C081DC12
(57)【要約】
開示するものは、脱落膜組織を使用して創傷および損傷組織を治療するための、組成物ならびに方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水した脱落膜組織を含む、組成物。
【請求項2】
前記脱水した脱落膜組織は、基底脱落膜組織、被包脱落膜組織、もしくは壁側脱落膜組織、またはこれらの任意の組合せ、を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記脱水した脱落膜組織は、非生存性である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記脱水した脱落膜組織は、粉末である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記脱水した脱落膜組織は、凍結乾燥されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記脱水した脱落膜組織の含水量は、5%w/w未満、または3%w/w未満、である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
薬学的に許容可能な担体をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記薬学的に許容可能な担体は、水性ベースのものであり、好ましくは、前記組成物は、少なくとも50%w/wの水を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記薬学的に許容可能な担体は、一つまたは複数のセルロースエーテルを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記セルロースエーテルは、非イオン性セルロースエーテルである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記非イオン性セルロースエーテルは、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、またはこれらの混合物、から選択されている、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記薬学的に許容可能な担体は、一つまたは複数の可塑剤をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記可塑剤は、親水性ポリオールである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記親水性ポリオールは、親水性高分子ポリオールである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記親水性高分子ポリオールは、一つまたは複数のポリエチレングリコールである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記一つまたは複数のポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール600を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物は、脱水されている、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は、蒸発空気乾燥によって脱水されている、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記蒸発空気乾燥は、重力対流条件下での室温における蒸発空気乾燥である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物は、凍結乾燥によって脱水されている、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記脱水組成物の含水量は、5%w/w未満、または3%w/w未満、である、請求項17~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記脱水組成物は、シートまたはフィルムである、請求項17~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記シートまたはフィルムは、約0.1mm~約25mm、または約0.5mm~約10mm、または約1mm~約5mm、の厚さを有している、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記脱落膜組織の濃度は、前記脱水組成物に対して、約1%w/w~約75%w/w、または約4%w/w~約50%w/w、である、請求項17~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記脱水組成物は、前記脱水組成物が水に対してまたは他の水性媒体に対して接触した時には、ヒドロゲルを形成することができる、請求項17~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記脱水組成物は、不透明である、請求項17~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記脱水組成物は、透明である、請求項17~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
対象における創傷を治療するための方法であって、請求項1~27のいずれか一項に記載の組成物を、前記創傷に対して適用することを含む、方法。
【請求項29】
前記組成物は、別の創傷ドレッシングを適用することと併せて、適用される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物は、粉末である、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記創傷は、真皮の創傷である、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記真皮の創傷は、部分的な厚さの創傷、または全層的な創傷、である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記真皮の創傷は、熱傷、慢性創傷、または急性創傷、である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記真皮の創傷は、熱傷であるとともに、表層(第一度)熱傷、部分的な厚さ(第二度)の熱傷、全層的(第三度)な熱傷、または放射線熱傷、から選択されている、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記真皮の創傷は、慢性創傷であるとともに、真皮潰瘍、糖尿病性潰瘍、糖尿病性足潰瘍、静脈性潰瘍、静脈性下腿潰瘍、動脈性潰瘍、動脈性下腿潰瘍、褥瘡潰瘍、うっ血性潰瘍、虚血性潰瘍、血管性潰瘍、褥瘡(ステージI~IV)、足病創傷、排膿創傷、トンネル創傷、または穿掘性創傷、から選択されている、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記真皮の創傷は、急性創傷であるとともに、外傷創傷、裂傷、擦過傷、皮膚裂傷、皮膚病変、水疱、外科的切開、ドナー皮膚部位、皮膚移植、レーザー手術創傷、モース手術創傷、または剥離創傷、から選択されている、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
対象における創傷を治療するための方法であって、脱落膜組織を含む組成物を、前記創傷に対して適用することを含む、方法。
【請求項38】
脱水した脱落膜組織を含む脱水組成物を製造するための方法であって、
(a)脱水した脱落膜組織を調製することと、
(b)水性ベースの薬学的に許容可能な担体を調製することと、
(c)(a)と(b)とを組み合わせるとともに、均一になるまで混合することと、
(d)得られた混合物を脱水することにより、前記脱水組成物を形成することと、を含み、
前記水性ベースの担体は、少なくとも50%w/wの含水量を有しており、前記脱水組成物は、フィルムまたはシートとされ、前記フィルムまたはシートは、5%w/w未満または3%w/w未満の含水量を有している、方法。
【請求項39】
前記脱水ステップ(d)は、蒸発空気乾燥によって、または凍結乾燥によって、行われる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
脱水組成物であって、
(a)脱水した脱落膜組織と、
(b)水性ベースの薬学的に許容可能な担体と、を含み、前記水性ベースの担体は、
(i)一つまたは複数のセルロースエーテルと、
(ii)一つまたは複数の可塑剤と、を含み、
前記水性ベースの担体は、前記組成物の脱水前に、少なくとも50%w/wの含水量を有しており、前記組成物は、蒸発空気乾燥によってまたは凍結乾燥によって脱水され、前記脱水組成物は、フィルムまたはシートとされ、前記フィルムまたはシートは、5%w/w未満または3%w/w未満の含水量を有している、脱水組成物。
【請求項41】
前記一つまたは複数のセルロースエーテルは、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、またはこれらの混合物、を含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記一つまたは複数の可塑剤は、一つまたは複数のポリエチレングリコールを含む、請求項40または41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
前記一つまたは複数のポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール600を含む、請求項42に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2021年9月29日付けで出願された米国仮出願第63/249,655号明細書の優先権を主張するものであり、この文献の内容は、参照により本出願に援用される。
【0002】
本発明は、一般に、脱落膜組織を含む組成物に関し、好ましくは脱水した脱落膜組織を含む組成物に関し、また、創傷管理および組織修復の分野におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
創傷とは、組織の構造および機能が破壊されることである。真皮の創傷は、皮膚と、皮膚に関連した軟組織構造と、の破壊を伴う。真皮の創傷は、部分的な厚さの創傷でも、全層的な創傷でも、あり得る。また、真皮の創傷は、急性創傷でも、慢性創傷でも、熱傷(急性も慢性もあり得る)でも、あり得る。適正な治癒を確保するためには、創傷床に失活した組織がなく、充分に血管が発達しており、湿っていることが必要である。創傷ドレッシングは、細胞の移動、血管の新生、および/または肉芽組織の形成、を可能とすることにより、創傷治癒プロセスを支援する環境を提供する場合には、創傷治癒プロセスの促進を補助することができる。市販されている創傷ドレッシングの多くは、治癒プロセスを支援するそのような能力を有しておらず、その点であまり効果的でないものもある。追加的に、それらの創傷ドレッシングの中には、費用対効果が悪いものがあったり、医療従事者が扱いにくいものがあったり、する。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、一般に創傷管理および組織修復に関連した当該技術分野における上記の制限ならびに欠陥の、少なくとも一つに対するまたは複数に対する解決策を提供する。解決策は、脱落膜組織を含む組成物を、創傷ドレッシングとして使用することを前提としている。
【0005】
脱落膜とは、子宮の粘膜組織であって、妊娠に備えて形成されるものである。脱落膜は、基底脱落膜と、被包脱落膜と、壁側脱落膜と、を含む。基底脱落膜は、胎盤の母体部分である。脱落膜は、残りの胎盤組織が胎盤製品へと加工される場合であっても、通常は廃棄される。本出願の発明者らは、驚くべきことに、脱落膜組織の組成物が、多くの市販の創傷ドレッシング製品と比較して、培養における間葉系細胞の細胞付着および増殖にとって予想外に優れた有益な環境を提供することを、見出した。よって、本発明の脱落膜組織組成物は、既存の創傷ドレッシング製品に対して、創傷治癒プロセスを支援する優れた条件を提供する。注目すべきことに、脱落膜は、長い間にわたって、使い捨ての素材と考えられてきたため、ほとんどまたは全くコストをかけずに入手することができる。よって、本発明の組成物の原料として脱落膜組織を使用することで、また、費用対効果の高い製品が提供され、これにより、創傷管理および組織修復に関連した医療費の低減を、補助することができる。
【0006】
本発明の一態様では、開示するものは、脱落膜組織を含む組成物である。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、脱水した脱落膜組織である。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、または脱水した脱落膜組織は、基底脱落膜組織、被包脱落膜組織、もしくは壁側脱落膜組織、またはこれらの任意の組合せ、を含む。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、または脱水した脱落膜組織は、非生存性である。いくつかの実施形態では、非生存性の脱落膜組織は、または非生存性の脱水した脱落膜組織は、細胞溶解によって非生存性とされる。いくつかの実施形態では、非生存性の脱落膜組織は、または非生存性の脱水した脱落膜組織は、滅菌によって非生存性とされる。脱水した脱落膜組織は、凍結乾燥(フリーズドライ)、蒸発空気乾燥(例えば、重力対流条件下でのもしくは強制空気対流条件下での加熱空気による熱乾燥、あるいは、重力対流条件下でのもしくは強制空気対流条件下での周囲温度条件におけるまたは室温条件における乾燥)、間接乾燥(例えば、真空乾燥)、接触乾燥(例えば、加熱材料または加熱源に対する接触による乾燥)、誘電乾燥(例えば、高周波またはマイクロ波の使用)、赤外線乾燥、および/または超臨界乾燥、によって得ることができる。いくつかの実施形態では、脱水した脱落膜は、凍結乾燥によって脱水されている。いくつかの実施形態では、脱水した脱落膜組織は、粉末である。いくつかの実施形態では、脱水した脱落膜組織は、5%w/w未満、または3%w/w未満、の含水量を有している。いくつかの実施形態では、組成物は、担体をさらに含む。いくつかの実施形態では、担体は、薬学的に許容可能な担体である。いくつかの実施形態では、担体は、または薬学的に許容可能な担体は、水性ベースのものである。いくつかの実施形態では、水性ベースの担体は、少なくとも50%w/wの水を含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容可能な担体は、一つまたは複数のセルロースエーテルを含む。いくつかの実施形態では、セルロースエーテルは、非イオン性セルロースエーテルである。いくつかの実施形態では、非イオン性セルロースエーテルは、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、またはこれらの混合物、から選択されている。いくつかの実施形態では、薬学的に許容可能な担体は、一つまたは複数の可塑剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、可塑剤は、親水性ポリオールである。いくつかの実施形態では、親水性ポリオールは、親水性高分子ポリオールである。いくつかの実施形態では、親水性高分子ポリオールは、一つまたは複数のポリエチレングリコールである。いくつかの実施形態では、一つまたは複数のポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール600を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、脱水されている。いくつかの実施形態では、組成物は、蒸発空気乾燥によって脱水されている。いくつかの実施形態では、蒸発空気乾燥は、重力対流条件下または強制空気対流条件下で加熱空気を使用した熱蒸発空気乾燥である。他の実施形態では、蒸発空気乾燥は、重力対流条件下もしくは強制空気対流条件下での、周囲温度または室温における、蒸発空気乾燥である。さらに他の実施形態では、蒸発空気乾燥は、重力対流条件下での室温における蒸発空気乾燥である。他の実施形態では、組成物は、凍結乾燥によって脱水されている。いくつかの実施形態では、脱水組成物は、シートまたはフィルムである。いくつかの実施形態では、脱落膜組織を含む組成物は、粉末である。いくつかの実施形態では、脱水組成物の含水量は、5%w/w未満、または3%w/w未満、である。いくつかの実施形態では、シートまたはフィルムは、約0.1mm~約25mm、または約0.5mm~約10mm、または約1mm~約5mm、の厚さを有している。いくつかの実施形態では、脱落膜組織の濃度は、脱水組成物に対して、約1%w/w~約75%w/w、または約4%w/w~約50%w/w、である。いくつかの実施形態では、脱水組成物は、脱水組成物が水に対してまたは他の水性媒体に対して接触した時には、ヒドロゲルを形成することができる。いくつかの実施形態では、脱水組成物は、不透明である。他の実施形態では、脱水組成物は、透明である。いくつかの実施形態では、脱水組成物は、半透明である。いくつかの実施形態では、脱水組成物は、マーキング、記号、文字、または数字、を含み、これらは、組成物の供給源を特定するに際して有用とすることができる、および/または、使用時にもしくは創傷に対する適用時に組成物を配向させる(例えば、頂面を、創傷とは反対側として、底面を、創傷に対して接触させる)に際して有用とすることができる。
【0007】
本発明の別の態様では、開示するものは、対象における創傷を治療するための方法であり、この方法は、本発明の組成物(例えば、脱落膜組織を含むような、好ましくは脱水した脱落膜組織を含むような、組成物または脱水組成物)を、創傷に対して適用することを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、別の創傷ドレッシングを適用することと併せて、適用される。いくつかの実施形態では、組成物または脱水組成物は、粉末である。いくつかの実施形態では、創傷は、真皮の創傷である。いくつかの実施形態では、真皮の創傷は、部分的な厚さの創傷である。他の実施形態では、真皮の創傷は、全層的な創傷である。いくつかの実施形態では、真皮の創傷は、熱傷、慢性創傷、または急性創傷、である。いくつかの実施形態では、真皮の創傷は、熱傷であるとともに、表層(第一度)熱傷、部分的な厚さ(第二度)の熱傷、全層的(第三度)な熱傷、または放射線熱傷、から選択されている。他の実施形態では、真皮の創傷は、慢性創傷であるとともに、真皮潰瘍、糖尿病性潰瘍、糖尿病性足潰瘍、静脈性潰瘍、静脈性下腿潰瘍、動脈性潰瘍、動脈性下腿潰瘍、褥瘡潰瘍、うっ血性潰瘍、虚血性潰瘍、血管性潰瘍、褥瘡(ステージI~IV)、足病創傷、排膿創傷、トンネル創傷、または穿掘性創傷、から選択されている。さらに他の実施形態では、真皮の創傷は、急性創傷であるとともに、外傷創傷、裂傷、擦過傷、皮膚裂傷、皮膚病変、水疱、外科的切開、ドナー皮膚部位、皮膚移植、レーザー手術創傷、モース手術創傷、または剥離創傷、から選択されている。
【0008】
本発明の別の態様では、開示するものは、対象における創傷を治療するための方法であり、この方法は、本発明の組成物(例えば、脱落膜組織を含むような、好ましくは脱水した脱落膜組織を含むような、組成物または脱水組成物)を、創傷に対して適用することを含む。
【0009】
本発明の別の態様では、開示するものは、脱水した脱落膜組織を含む脱水組成物を製造するための方法であり、この方法は、
(a)脱水した脱落膜組織を調製することと、
(b)水性ベースの薬学的に許容可能な担体を調製することと、
(c)(a)と(b)とを組み合わせるとともに、均一になるまで混合することと、
(d)得られた混合物を脱水することにより、脱水組成物を形成することと、を含み、
水性ベースの担体は、少なくとも50%w/wの含水量を有しており、脱水組成物は、フィルムまたはシートとされ、フィルムまたはシートは、5%w/w未満または3%w/w未満の含水量を有している。いくつかの実施形態では、脱水ステップ(d)は、蒸発空気乾燥または凍結乾燥によって行われる。
【0010】
本発明の別の態様では、開示するものは、脱水組成物であり、この脱水組成物は、
(a)脱水した脱落膜組織と、
(b)水性ベースの薬学的に許容可能な担体と、を含み、この水性ベースの担体は、
(i)一つまたは複数のセルロースエーテルと、
(ii)一つまたは複数の可塑剤と、を含み、
水性ベースの担体は、組成物の脱水前に、少なくとも50%w/wの含水量を有しており、組成物は、蒸発空気乾燥によってまたは凍結乾燥によって脱水され、脱水組成物は、フィルムまたはシートとされ、フィルムまたはシートは、5%w/w未満または3%w/w未満の含水量を有している。いくつかの実施形態では、一つまたは複数のセルロースエーテルは、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、またはこれらの混合物、を含む。いくつかの実施形態では、一つまたは複数の可塑剤は、一つまたは複数のポリエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態では、一つまたは複数のポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール600を含む。
【0011】
また、本発明の文脈において開示するものは、以下の実施形態1~43である。実施形態1は、脱水した脱落膜組織を含む組成物である。実施形態2は、脱水した脱落膜組織が、基底脱落膜組織、被包脱落膜組織、もしくは壁側脱落膜組織、またはこれらの任意の組合せ、を含む、実施形態1に記載の組成物である。実施形態3は、脱水した脱落膜組織が、非生存性である、実施形態1または2に記載の組成物である。実施形態4は、脱水した脱落膜組織が、粉末である、実施形態1~3のいずれか一項に記載の組成物である。実施形態5は、脱水した脱落膜組織が、凍結乾燥されている、実施形態1~4のいずれか一項に記載の組成物である。実施形態6は、脱水した脱落膜組織の含水量が、5%w/w未満、または3%w/w未満、である、実施形態1~5のいずれか一項に記載の組成物である。実施形態7は、薬学的に許容可能な担体をさらに含む、実施形態1~6のいずれか一項に記載の組成物である。実施形態8は、薬学的に許容可能な担体が、水性ベースのものであり、好ましくは、組成物が、少なくとも50%w/wの水を含む、実施形態7に記載の組成物である。実施形態9は、薬学的に許容可能な担体が、一つまたは複数のセルロースエーテルを含む、実施形態1~8のいずれか一項に記載の組成物である。実施形態10は、セルロースエーテルが、非イオン性セルロースエーテルである、実施形態9に記載の組成物である。実施形態11は、非イオン性セルロースエーテルが、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、またはこれらの混合物、から選択されている、実施形態10に記載の組成物である。実施形態12は、医薬的に許容可能な担体が、一つまたは複数の可塑剤をさらに含む、実施形態1~11のいずれか一項に記載の組成物である。実施形態13は、可塑剤が、親水性ポリオールである、実施形態12に記載の組成物である。実施形態14は、親水性ポリオールが、親水性高分子ポリオールである、実施形態13に記載の組成物である。実施形態15は、親水性高分子ポリオールが、一つまたは複数のポリエチレングリコールである、実施形態14に記載の組成物である。実施形態16は、一つまたは複数のポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール600を含む、実施形態15に記載の組成物である。実施形態17は、組成物が、脱水されている、実施形態1~16のいずれか一項に記載の組成物である。実施形態18は、組成物が、蒸発空気乾燥によって脱水されている、実施形態17に記載の組成物である。実施形態19は、蒸発空気乾燥が、重力対流条件下での室温における蒸発空気乾燥である、実施形態18に記載の組成物である。実施形態20は、組成物が、凍結乾燥によって脱水されている、実施形態17に記載の組成物である。実施形態21は、脱水組成物の含水量が、5%w/w未満、または3%w/w未満、である、実施形態17~20のいずれか一項に記載の組成物である。実施形態22は、脱水組成物が、シートまたはフィルムである、実施形態17~21のいずれか一項に記載の組成物である。実施形態23は、シートまたはフィルムが、約0.1mm~約25mm、または約0.5mm~約10mm、または約1mm~約5mm、の厚さを有している、実施形態22に記載の組成物である。実施形態24は、脱落膜組織の濃度が、脱水組成物に対して、約1%w/w~約75%w/w、または約4%w/w~約50%w/w、である、実施形態17~23のいずれか一項に記載の組成物である。実施形態25は、脱水組成物が、脱水組成物が水に対してまたは他の水性媒体に対して接触した時には、ヒドロゲルを形成することができる、実施形態17~24のいずれか一項に記載の組成物である。実施形態26は、脱水組成物が、不透明である、実施形態17~25のいずれか一項に記載の組成物である。実施形態27は、脱水組成物が、透明である、実施形態17~25のいずれか一項に記載の組成物である。
【0012】
実施形態28は、対象における創傷を治療するための方法であって、この方法は、実施形態1~27のいずれか一項に記載の組成物を、創傷に対して適用することを含む。実施形態29は、組成物が、別の創傷ドレッシングを適用することと併せて、適用される、実施形態28に記載の方法である。実施形態30は、組成物が、粉末である、実施形態28または29に記載の方法である。実施形態31は、創傷が、真皮の創傷である、実施形態28~30のいずれか一項に記載の方法である。実施形態32は、真皮の創傷が、部分的な厚さの創傷、または全層的な創傷、である、実施形態31に記載の方法である。実施形態33は、真皮の創傷が、熱傷、慢性創傷、または急性創傷、である、実施形態31または32に記載の方法である。実施形態34は、真皮の創傷が、熱傷であるとともに、表層(第一度)熱傷、部分的な厚さ(第二度)の熱傷、全層的(第三度)な熱傷、または放射線熱傷、から選択されている、実施形態33に記載の方法である。実施形態35は、真皮の創傷が、慢性創傷であるとともに、真皮潰瘍、糖尿病性潰瘍、糖尿病性足潰瘍、静脈性潰瘍、静脈性下腿潰瘍、動脈性潰瘍、動脈性下腿潰瘍、褥瘡潰瘍、うっ血性潰瘍、虚血性潰瘍、血管性潰瘍、褥瘡(ステージI~IV)、足病創傷、排膿創傷、トンネル創傷、または穿掘性創傷、から選択されている、実施形態33に記載の方法である。実施形態36は、真皮の創傷が、急性創傷であるとともに、外傷創傷、裂傷、擦過傷、皮膚裂傷、皮膚病変、水疱、外科的切開、ドナー皮膚部位、皮膚移植、レーザー手術創傷、モース手術創傷、または剥離創傷、から選択されている、実施形態33に記載の方法である。
【0013】
実施形態37は、対象における創傷を治療するための方法であって、この方法は、脱落膜組織を含む組成物を、創傷に対して適用することを含む。
【0014】
実施形態38は、脱水した脱落膜組織を含む脱水組成物を製造するための方法であって、この方法は、
(a)脱水した脱落膜組織を調製することと、
(b)水性ベースの薬学的に許容可能な担体を調製することと、
(c)(a)と(b)とを組み合わせるとともに、均一になるまで混合することと、
(d)得られた混合物を脱水することにより、脱水組成物を形成することと、を含み、
水性ベースの担体は、少なくとも50%w/wの含水量を有しており、脱水組成物は、フィルムまたはシートとされ、フィルムまたはシートは、5%w/w未満または3%w/w未満の含水量を有している。実施形態39は、脱水ステップ(d)が、蒸発空気乾燥によって、または凍結乾燥によって、行われる、実施形態38に記載の方法である。
実施形態40は、脱水組成物であって、この脱水組成物は、
(a)脱水した脱落膜組織と、
(b)水性ベースの薬学的に許容可能な担体と、を含み、この水性ベースの担体は、
(i)一つまたは複数のセルロースエーテルと、
(ii)一つまたは複数の可塑剤と、を含み、
水性ベースの担体は、組成物の脱水前に、少なくとも50%w/wの含水量を有しており、組成物は、蒸発空気乾燥によってまたは凍結乾燥によって脱水され、脱水組成物は、フィルムまたはシートとされ、フィルムまたはシートは、5%w/w未満または3%w/w未満の含水量を有している。実施形態41は、一つまたは複数のセルロースエーテルが、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、またはこれらの混合物、を含む、実施形態40に記載の組成物である。実施形態42は、一つまたは複数の可塑剤が、一つまたは複数のポリエチレングリコールを含む、実施形態40または41に記載の組成物である。実施形態43は、一つまたは複数のポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール600を含む、実施形態42に記載の組成物である。
【0015】
本明細書で使用した際には、「対象」という用語は、脊椎動物を意味するものであり、ヒトを含めた哺乳類を含む。いくつかの好ましい態様では、対象は、ヒトである。
【0016】
本明細書で使用した際には、「身体」という用語は、対象の身体を意味する。
【0017】
脱落膜組織に関して本明細書で使用した際には、「断片」という用語は、剪断、みじん切り、角切り、チョッピング、切断、均質化、浸軟、粉砕などの、破砕プロセスを受けた組織を意味するものであり、それにより、組織に関する小さな個々の断片が形成される。脱落膜断片は、さらに、脱水、乾燥、および/または凍結乾燥、を受けることができる。破砕プロセスは、脱水、蒸発空気乾燥、もしくは凍結乾燥の前に、またはその後に、行うことができる。断片のサイズは、均一であったり不規則であったりする。
【0018】
本明細書で使用した際には、「粉末」という用語は、乾燥した微細な個々の粒子を意味する。粒径は、均一であったり不規則であったりする。粒径は、本明細書で後述するものとすることができる。
【0019】
本明細書で使用した際には、「免疫特権」という用語は、免疫応答の促進に対する比較的高い抵抗性を意味する。
【0020】
本明細書で使用した際には、「非免疫原性」という用語は、免疫反応を促進しないことを意味する。
【0021】
本明細書で使用した際には、「室温」または「RT」という用語は、20℃~25℃の温度を意味する。
【0022】
本明細書で使用した際には、「任意選択的な」または「任意選択的に」という用語は、その後に説明する事象や状況やまたは材料が発生したり存在したりしてもしなくてもよいことを意味し、また、事象や状況やまたは材料が発生したり存在したりする実例と、事象や状況やまたは材料が発生したり存在したりしない実例と、を本明細書が含むことを意味する。
【0023】
本明細書で使用した際には、「およそ」または「約」という用語は、当業者に理解されるものに対して近いものとして規定され、非限定的な一実施形態では、これらの用語は、関連して開示する値の、10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内、最も好ましくは0.5%以内、のものとして規定される。これらの用語が、関連して開示する値から除去されてもよく、代わりに、正確な値が使用されてもよい。
【0024】
所与のパーセント範囲の下限値に、%記号および/またはパーセントタイプ(例えば、w/w、v/v、等)が含まれていない場合には、下限値のパーセントタイプは、所与のパーセント範囲の上限値におけるパーセントタイプと同じである。例えば、「0.01~0.5%w/w」というパーセント範囲は、「0.01%w/w~0.5%w/w」を意味する。
【0025】
本明細書で使用した際には、「含む(comprising)」(ならびに、「含む(comprises)」および「含む(comprises)」などの、含む(comprising)に関する任意の形態)、「有する(having)」(ならびに、「有する(have)」および「有する(has)」などの、有する(having)に関する任意の形態)、「含む(including)」(ならびに、「含む(includes)」および「含む(include)」などの、含む(including)に関する任意の形態)、あるいは、「含有する(containing)」(ならびに、「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの、含有する(containing)に関する任意の形態)は、包括的またはオープンエンドであり、追加的な、言及されていない、部材とか方法ステップとかを除外するものではない。
【0026】
「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、あるいは「含有する(containing)」(または、これら単語の任意の変形)という用語とともに使用された場合における、「一つの(a)」または「一つの(an)」という単語の使用は、「一つ」を意味する場合もあるけれども、また、「一つまたは複数の」、「少なくとも一つの」、および「一つ以上の」、という意味とも一致する。
【0027】
本明細書の目的では、小数点以下一桁以上の数値は、標準的な丸めガイドラインを使用して、最も近い整数へと丸めることができる、すなわち、丸められる数値が5、6、7、8、または9の場合には、切り上げられ、丸められる数値が0、1、2、3、または4の場合には、切り捨てられる。例えば、0.42は、0.4へと丸められることができる。
【0028】
組成物およびその使用方法は、本明細書の全体を通して開示する成分またはステップのいずれかを、「含む」、「本質的にからなる」、または「からなる」ことができる。「本質的に含む」または「本質的にからなる」という過渡的な表現に関して、非限定的な一態様では、本発明の組成物および方法における基本的なかつ新規な特徴は、脱落膜組織を含む組成物または脱水組成物を使用して、好ましくは脱水した脱落膜組織を含む組成物を使用して、対象内の創傷を治療するという、および/または対象内の組織を修復するという、能力である。
【0029】
本明細書で説明する任意の実施形態が、本発明の任意の方法または任意の組成物に関して実装され得ることが想定されており、その逆もまた同様である。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために使用することができる。
【0030】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。しかしながら、詳細な説明および特定の例が、本発明の特定の実施形態を示すものではあるものの、本発明の精神および範囲内における様々な変更ならびに改変がこの詳細な説明から当業者には明らかであるため、例示のためにのみ与えられていることは、理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、凍結乾燥した脱落膜組織粉末に関する顕微鏡写真である。1マス=250ミクロン。
【0032】
図2A図2Aは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0114L01の脱水フィルム組成物を空気乾燥したものに関する写真である。
【0033】
図2B図2Bは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0127L01の脱水フィルム組成物を空気乾燥したものに関する写真である。
【0034】
図2C図2Cは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0225L01の脱水フィルム組成物を蒸発空気乾燥したものに関する写真である。
【0035】
図2D図2Dは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0331L01の脱水フィルム組成物を蒸発空気乾燥したものに関する写真である。
【0036】
図3A図3Aは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0114L01の脱水シート組成物を凍結乾燥したものに関する写真である。
【0037】
図3B図3Bは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0127L01の脱水シート組成物を凍結乾燥したものに関する写真である。
【0038】
図3C図3Cは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0225L01の脱水シート組成物を凍結乾燥したものに関する写真である。
【0039】
図3D図3Dは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0331L01の脱水シート組成物を凍結乾燥したものに関する写真である。
【0040】
図4図4は、hMSCと一緒に培養した後における、凍結乾燥した脱落膜組織粉末の細胞培養プレートに関する顕微鏡写真である。
【0041】
図5図5は、hMSCを脂肪細胞へと分化させた後における、凍結乾燥した脱落膜組織粉末の細胞培養プレートに関する顕微鏡写真である。
【0042】
図6A図6Aは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0114L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ空気乾燥で2日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色に関する顕微鏡写真である。
【0043】
図6B図6Bは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0114L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ空気乾燥で4日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色に関する顕微鏡写真である。
【0044】
図6C図6Cは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0114L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ空気乾燥で8日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色に関する顕微鏡写真である。
【0045】
図6D図6Dは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0114L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ空気乾燥で16日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色に関する顕微鏡写真である。
【0046】
図7A図7Aは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0114L01の脱水シート組成物の細胞培養物でありかつ凍結乾燥で2日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色に関する顕微鏡写真である。
【0047】
図7B図7Bは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0114L01の脱水シート組成物の細胞培養物でありかつ凍結乾燥で4日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0048】
図7C図7Cは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0114L01の脱水シート組成物の細胞培養物でありかつ凍結乾燥で8日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0049】
図7D図7Dは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0114L01の脱水シート組成物の細胞培養物でありかつ凍結乾燥で16日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0050】
図8A図8Aは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0127L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ空気乾燥で2日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0051】
図8B図8Bは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0127L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ空気乾燥で4日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0052】
図8C図8Cは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0127L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ空気乾燥で8日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0053】
図8D図8Dは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0127L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ空気乾燥で16日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0054】
図9A図9Aは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0127L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ凍結乾燥で2日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0055】
図9B図9Bは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0127L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ凍結乾燥で4日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0056】
図9C図9Cは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0127L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ凍結乾燥で8日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0057】
図9D図9Dは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0127L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ凍結乾燥で16日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0058】
図10A図10Aは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0225L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ空気乾燥で6日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0059】
図10B図10Bは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0225L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ空気乾燥で13日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0060】
図10C図10Cは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0225L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ空気乾燥で19日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0061】
図10D図10Dは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0225L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ空気乾燥で27日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0062】
図11A図11Aは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0225L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ凍結乾燥で6日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0063】
図11B図11Bは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0225L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ凍結乾燥で13日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0064】
図11C図11Cは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0225L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ凍結乾燥で13日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0065】
図11D図11Dは、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含有したロット0055-0225L01の脱水フィルム組成物の細胞培養物でありかつ凍結乾燥で27日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0066】
図12A図12Aは、Oasis(登録商標)熱傷マトリクスの細胞培養物でありかつ7日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0067】
図12B図12Bは、DermaGinate Ag(商標)アルギン酸カルシウムドレッシングの細胞培養物でありかつ7日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0068】
図12C図12Cは、Healadex(登録商標)ドレッシングの細胞培養物でありかつ7日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0069】
図12D図12Dは、Mepitel(登録商標)ワンドレッシングの細胞培養物でありかつ7日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【0070】
図12E図12Eは、Integra(登録商標)皮膚再生テンプレートの細胞培養物でありかつ7日経過時点のものにおける生細胞/死細胞染色の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明は、脱落膜組織を含む組成物、および脱落膜組織を含む創傷ドレッシング、ならびに真皮の創傷を含めた創傷を治療するに際してのそれら組成物の使用、に関する。本明細書で開示する組成物は、また、腱、靭帯、軟骨、および他の接続組織を含むがこれらに限定されない軟組織などの組織を修復するに際しても、有用である。脱落膜組織組成物は、薬学的に許容可能な担体などの担体を、さらに含むことができる。驚くべきことに、本明細書で開示する脱落膜組織の組成物は、市販されている多くの創傷ドレッシングと比較して、培養における間葉系細胞の細胞付着および増殖にとって予想外に優れた有益な環境を提供することが示された。よって、本開示で説明する脱落膜組織組成物は、既存の創傷ドレッシング製品に対して、創傷治癒プロセスを支援する優れた状況を提供する。脱落膜は、長い間にわたって、ほとんど価値のないまたは全く価値のない使い捨ての廃棄物と考えられてきたため、ほとんどまたは全くコストをかけずに入手することができる。よって、本発明の組成物の成分として脱落膜組織を使用することで、経済的に製造し得るような費用対効果の高い製品が提供される。
【0072】
I.組成物
A.脱落膜組織
脱落膜とは、子宮の粘膜組織であって、妊娠に備えて形成されるものである。脱落膜は、三つの部分から構成されている、すなわち、基底脱落膜と、被包脱落膜と、壁側脱落膜と、から構成されている。基底脱落膜は、胎盤の母体部分である。脱落膜は、残りの胎盤組織が胎盤製品へと加工される場合であっても、通常は廃棄される。本出願の発明者らは、通常は廃棄される脱落膜が、細胞増殖および移動、血管の新生、および/または肉芽組織の形成、を可能とすることにより、創傷治癒プロセスを支援するという点で優れた生物学的特性を有するような、目的をなす創傷ドレッシング製品で使用し得ることを見出した。
【0073】
本明細書で開示する組成物をなす脱落膜組織は、基底脱落膜組織、被包脱落膜組織、もしくは壁側脱落膜組織、またはこれらの任意の組合せ、を含むことができる。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、基底脱落膜組織を含む。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、基底脱落膜組織を含む。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、被包脱落膜組織を含む。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、被包脱落膜組織である。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、壁側脱落膜組織を含む。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、壁側脱落膜組織である。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、脱落膜の全体を含む、つまり、脱落膜に関するすべての三つの部分を含む、すなわち、基底脱落膜組織と、被包脱落膜組織と、壁側脱落膜組織と、を含む。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、基底脱落膜組織と被包脱落膜組織とを含むが、壁側脱落膜組織を含まない。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、基底脱落膜組織と壁側脱落膜組織とを含むが、被包脱落膜組織を含まない。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、被包脱落膜組織と壁側脱落膜組織とを含むが、基底脱落膜組織を含まない。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、羊膜組織、絨毛膜組織、および/または臍帯組織、を含まない。脱落膜組織は、脱水されることができる。脱落膜組織の脱水は、凍結乾燥(フリーズドライ)、蒸発空気乾燥(例えば、重力対流条件下でのもしくは強制空気対流条件下での加熱空気による熱乾燥、あるいは、重力対流条件下でのもしくは強制空気対流条件下での周囲温度条件におけるまたは室温条件における乾燥)、間接乾燥(例えば、真空乾燥)、接触乾燥(例えば、加熱材料または加熱源に対する接触による乾燥)、誘電乾燥(例えば、高周波またはマイクロ波の使用)、赤外線乾燥、および/または超臨界乾燥、を含むがこれらに限定されない当業者に公知の任意の適切な手段によって、行うことができる。脱水した脱落膜組織は、含水量(含水率)が、15%w/w未満、または14%w/w未満、または13%w/w未満、または12%w/w未満、または10%w/w未満、または9%w/w未満、または8%w/w未満、または7%w/w未満、または6%w/w未満、または5%w/w未満、または4%w/w未満、または3%w/w未満、または2%w/w未満、または1%w/w未満、または0.5%w/w未満、である時には、「脱水した」あるいは「乾燥した」と見なされる。いくつかの実施形態では、含水量は、5%w/w未満、または4%w/w未満、または3%w/w未満、である。脱水した脱落膜組織は、例えば、0%w/w、1%w/w、2%w/w、3%w/w、4%w/w、5%w/w、6%w/w、7%w/w、8%w/w、9%w/w、10%w/w、11%w/w、12%w/w、13%w/w、もしくは14%w/w、という含水量を有することができる、または、そこから導出される任意のパーセントを有することができる。脱水した組織の含水量(含水率)は、カールフィッシャー滴定またはオーブン乾燥などの当業者に公知の手法により、決定することができる。好ましい実施形態では、脱水した脱落膜組織は、凍結乾燥した脱落膜組織である。脱落膜組織は、非生存性とすることができ、非生存性とは、組織内にまたは組織上に、生存可能な細胞が存在しないことを意味する。脱落膜組織は、細胞溶解、滅菌、照射、または、酵素的手段もしくは物理的手段による細胞除去、を含むがこれらに限定されない当業者に公知の任意の適切な手段により、非生存性とすることができる。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、非生存性である。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、および/または本発明の脱落膜組織は、滅菌される。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、生存性であり、生存性とは、脱落膜組織が生存可能な細胞を含むことを意味する。生存細胞は、天然の細胞、外来細胞、またはこれらの混合物、とすることができる。脱落膜組織または脱水した脱落膜組織は、例えば、蒸発空気乾燥した脱落膜組織または凍結乾燥した脱落膜組織は、断片または粉末の形態とすることができる。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、凍結乾燥によって脱水され、これにより、凍結乾燥した脱落膜組織が得られる。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、細胞溶解によって非生存性とされる。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、粉末の形態とされる。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、基底脱落膜組織を含むとともに、脱水されて非生存性とされ、さらに、粉末の形態とされる。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、基底脱落膜組織を含むとともに、凍結乾燥されて非生存性とされ、さらに、粉末の形態とされる。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、または脱水した脱落膜組織粉末は、非免疫原性および/または免疫特権性である。
【0074】
脱水した、例えば蒸発空気乾燥したまたは凍結乾燥した、脱落膜組織粉末は、90%が250ミクロン未満の粒径を有することができる。脱水した脱落膜組織粉末は、約425ミクロン~約1000ミクロンの、または約216ミクロン~約425ミクロンの、または約216ミクロン未満の、粒径あるいは粒径分布(平均粒径)を有することができる。脱水した脱落膜組織粉末は、約1ミクロン~約1000ミクロンの、または約1ミクロン~約500ミクロンの、または約1ミクロン~約250ミクロンの、または約50ミクロン~約1000ミクロンの、または約50ミクロン~約500ミクロンの、または約50ミクロン~約250ミクロンの、または約100ミクロン~約1000ミクロンの、または約100ミクロン~約500ミクロンの、または約100ミクロン~約250ミクロンの、または約200ミクロン~約1000ミクロンの、または約200ミクロン~約500ミクロンの、または約200ミクロン~約250ミクロンの、または約400ミクロン~約1000ミクロンの、または約400ミクロン~約500ミクロンの、粒径を有することができる。粒径は、限定するものではないが、顕微鏡分析、積層ふるい分け法、および粒径分析装置、などの当業者に公知の粒径測定法により、決定することができる。粒径分析装置は、遮光法またはレーザー回折法を採用することができる。適切な粒径分析装置は、Malvern Mastersizer(商標)などのようにMalvernによって、AccuSizerによって、島津製作所によって、Beckman Coulterによって、製造される分析装置を含むが、これらに限定されるものではない。粒径分布は、数分布または体積分布に基づく平均粒径として表すことができる。
【0075】
組成物中における、脱落膜組織、脱水した脱落膜組織、凍結乾燥した脱落膜組織、または蒸発空気乾燥した脱落膜組織、の濃度は、組成物と共に培養した間葉系細胞の細胞付着および増殖によってインビトロで実証されたように、組成物を創傷に対してまたは損傷組織に対して適用した時に、細胞の移動、血管の新生、および肉芽組織の形成を可能とすることにより創傷治癒プロセスを支援する環境を提供するのに有効な量とすることができる。
【0076】
本明細書で開示する含水状態の組成物中における、脱落膜組織、脱水した脱落膜組織、凍結乾燥した脱落膜組織、または蒸発空気乾燥した脱落膜組織、の濃度は、含水状態の組成物に関する組成物全体の、約0.05%w/w~約50%w/w、または約0.05%w/w~約40%w/w、または約0.05%w/w~約30%w/w、または約0.05%w/w~約25%w/w、または約0.05%w/w~約20%w/w、または約0.05%w/w~約15%w/w、または約0.05%w/w~約10%w/w、または約0.05%w/w~約5%w/w、または約0.05%w/w~約4%w/w、または約0.05%w/w~約3%w/w、または約0.05%w/w~約2%w/w、または約0.05%w/w~約1%w/w、または約0.1%w/w~約50%w/w、または約0.1%w/w~約40%w/w、または約0.1%w/w~約30%w/w、または約0.1%w/w~約25%w/w、または約0.1%w/w~約20%w/w、または約0.1%w/w~約15%w/w、または約0.1%w/w~約10%w/w、または約0.1%w/w~約5%w/w、または約0.1%w/w~約4%w/w、または約0.1%w/w~約3%w/w、または約0.1%w/w~約2%w/w、または約0.1%w/w~約1%w/w、または約0.5%w/w~約50%w/w、または約0.5%w/w~約40%w/w、または約0.5%w/w~約30%w/w、または約0.5%w/w~約25%w/w、または約0.5%w/w~約20%w/w、または約0.5%w/w~約15%w/w、または約0.5%w/w~約10%w/w、または約0.5%w/w~約5%w/w、または約0.5%w/w~約4%w/w、または約0.5%w/w~約3%w/w、または約0.5%w/w~約2%w/w、または約0.5%w/w~約1%w/w、または約1%w/w~約50%w/w、または約1%w/w~約40%w/w、または約1%w/w~約30%w/w、または約1%w/w~約25%w/w、または約1%w/w~約20%w/w、または約1%w/w~約15%w/w、または約1%w/w~約10%w/w、または約1%w/w~約5%w/w、または約1%w/w~約4%w/w、または約1%w/w~約3%w/w、または約1%w/w~約2%w/w、とすることができる。
【0077】
本明細書で開示する脱水状態の組成物中における、脱落膜組織、脱水した脱落膜組織、凍結乾燥した脱落膜組織、または蒸発空気乾燥した脱落膜組織、の濃度は、脱水状態の組成物に関する組成物全体の、約1%w/w~約75%w/w、または約1%w/w~約60%w/w、または約1%w/w~約50%w/w、または約2%w/w~約50%w/w、または約3%w/w~約50%w/w、または約4%w/w~約50%w/w、または約5%w/w~約50%w/w、または約6%w/w~約50%w/w、または約7%w/w~約50%w/w、または約8%w/w~約50%w/w、または約9%w/w~約50%w/w、または約10%w/w~約50%w/w、または約15%w/w~約50%w/w、または約20%w/w~約50%w/w、または約1%w/w~約40%w/w、または約2%w/w~約40%w/w、または約3%w/w~約40%w/w、または約4%w/w~約40%w/w、または約5%w/w~約40%w/w、または約6%w/w~約40%w/w、または約7%w/w~約40%w/w、または約8%w/w~約40%w/w、または約9%w/w~約40%w/w、または約10%w/w~約40%w/w、または約15%w/w~約40%w/w、または約20%w/w~約40%w/w、または約1%w/w~約30%w/w、または約2%w/w~約30%w/w、または約3%w/w~約30%w/w、または約4%w/w~約30%w/w、または約5%w/w~約30%w/w、または約6%w/w~約30%w/w、または約7%w/w~約30%w/w、または約8%w/w~約30%w/w、または約9%w/w~約30%w/w、または約10%w/w~約30%w/w、または約15%w/w~約30%w/w、または約20%w/w~約30%w/w、とすることができる。
【0078】
脱落膜組織は、以下の非限定的で例示的な実施形態で説明するように処理することができる。未処理の脱落膜組織を、水に対して、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの緩衝液に対して、追加し、その後、ブレンダなどの、または他のタイプをなすホモジナイザなどの、適切なホモジナイザに対して、追加し、均質化して断片を形成する。均質化された組織断片を、遠心分離技術によって収集する。ACK RBC溶解バッファなどの適切な溶解バッファを、組織に対して追加するとともに、細胞を溶解するのに充分な時間にわたって、組織に対して接触させる。その後、溶解処理した組織を、水または緩衝液によって洗浄し、遠心分離技術によって収集する。その後、組織を、凍結乾燥機を使用して、または他の適切な凍結乾燥技術を使用して、凍結乾燥(フリーズドライ)する。その後、凍結乾燥した組織を、適切なミル、グラインダ、または解離器を使用して、粉末の形態へと加工する。いくつかの実施形態では、脱落膜組織は、または脱水した脱落膜組織粉末は、非免疫原性および/または免疫特権性である。いくつかの実施形態では、脱落膜組織もしくは脱水した脱落膜組織を含む本明細書で開示する組成物または脱水組成物は、非免疫原性および/または免疫特権性である。
【0079】
B.担体
本明細書で開示する脱落膜組織を含む組成物は、薬学的に許容可能な担体などの担体を、さらに含むことができる。担体の非限定的な例は、ローション、クリーム、エマルジョン、軟膏、ゲル、ヒドロゲル、ペースト、溶液、エアゾールスプレー、エアゾールフォーム、非エアゾールスプレー、非エアゾールフォーム、粉末、液体溶液、液体懸濁液、フィルム、およびシート、を含む。担体または薬学的に許容可能な担体は、水性ベース、無水、親水性、疎水性、または無水親水性、とすることができる。例えば、水性ベースの担体または薬学的に許容可能な担体は、水性ベースのゲルまたはヒドロゲルとすることができる。組成物は、当業者に公知の方法を使用して、担体内へと脱落膜組織を組み込むことにより、調製することができる。そのような方法は、様々なタイプのミキサ、ブレンダ、およびホモジナイザの使用を含むことができる。脱落膜組織と担体とからなる組成物は、ガーゼ、包帯、または他の創傷ドレッシング、に含浸させることができる。いくつかの実施形態では、脱落膜組織、脱水した脱落膜組織、凍結乾燥した脱落膜組織、または蒸発空気乾燥した脱落膜組織は、断片または粉末の形態とされて、担体内に均一に分散される。いくつかの実施形態では、担体は、薬学的に許容可能な担体である。いくつかの実施形態では、担体または薬学的に許容可能な担体は、水性ベースである。組成物は、水性ベースのもの、無水のもの、または脱水されたもの、とすることができる。脱落膜組織と担体とを含む脱水組成物の非限定的な例は、フィルム、シート、または粉末、を含む。本発明のいくつかの態様では、水性ベースの、組成物、担体、ゲル、またはヒドロゲルは、少なくとも30%w/w、40%w/w、50%w/w、60%w/w、70%w/w、80%w/w、または90%w/wの水、あるいはそれを超える水、を含むことができ、好ましくは少なくとも50%w/wの水を含むことができる。
【0080】
i.脱水フィルム組成物および脱水シート組成物ならびに調製方法
本発明の別の態様では、脱水フィルムまたは脱水シートの形態とされた脱水(乾燥)組成物が開示される。フィルムまたはシートは、脱水した脱落膜組織、蒸発空気乾燥した脱落膜組織、もしくは凍結乾燥した脱落膜組織、からなる断片または粉末形態と、担体と、を含むことができる。本明細書で使用した際には、「フィルム」および「シート」という用語は、互換的に使用され得るものの、一般に、フィルムは、シートよりも薄い。組成物の、担体または薬学的に許容可能な担体は、脱水フィルムまたは脱水シートとすることができる。脱水フィルムまたは脱水シートの組成物を調製するための例示的な方法は、脱落膜組織もしくは脱水した脱落膜組織を含む水性ゲルまたはヒドロゲルの組成物を脱水することを含む。脱落膜組織もしくは脱水した脱落膜組織を含む水性ゲルまたはヒドロゲルは、脱水前に、ペトリ皿などの適切な型内へと流し込むことができる。脱落膜組織もしくは脱水した脱落膜組織を含む水性ベースのゲルまたはヒドロゲルは、凍結乾燥(フリーズドライ)、蒸発空気乾燥(例えば、重力対流条件下でのもしくは強制空気対流条件下での加熱空気による熱乾燥、あるいは、重力対流条件下でのもしくは強制空気対流条件下での周囲温度条件におけるまたは室温条件における乾燥)、間接乾燥(例えば、真空乾燥)、接触乾燥(例えば、加熱材料または加熱源に対する接触による乾燥)、誘電乾燥(例えば、高周波またはマイクロ波の使用)、赤外線乾燥、および/または超臨界乾燥、を含むがこれらに限定されない任意の適切な手段によって、脱水することができる。蒸発空気乾燥によって得られるフィルムまたはシートは、キセロゲルと称することができる。蒸発空気乾燥は、周囲温度もしくは室温条件においてまたはそれよりも高温において、重力対流条件下でまたは強制空気対流条件下で、行うことができる。加熱空気を使用した乾燥は、室温を超えた温度とされた加熱チャンバ内において、重力対流条件下でまたは強制空気対流条件下で、行うことができる。周囲温度または室温における重力対流下での乾燥は、チャンバ内でも、テーブル上またはベンチ上などの大気開放空間でも、行うことができる。いくつかの実施形態では、蒸発空気乾燥は、重力対流条件下または強制空気対流条件下で加熱空気を使用した熱蒸発空気乾燥である。他の実施形態では、蒸発空気乾燥は、重力対流条件下もしくは強制空気対流条件下での、周囲温度または室温における、蒸発空気乾燥である。さらに他の実施形態では、蒸発空気乾燥は、重力対流条件下での室温における蒸発空気乾燥である。凍結乾燥、別名フリーズドライは、まず水性ゲルまたはヒドロゲルを冷凍庫で例えば-80℃で凍結させるとともに次に凍結乾燥機で乾燥させることにより、あるいは、凍結乾燥機で凍結させて乾燥させることにより、行うことができる。いくつかの実施形態では、脱落膜組織もしくは脱水した脱落膜組織を含むゲルまたはヒドロゲルは、蒸発空気乾燥によって、または凍結乾燥によって、脱水される。フィルムまたはシートは、含水量(含水率)が、15%w/w未満、または14%w/w未満、または13%w/w未満、または12%w/w未満、または10%w/w未満、または9%w/w未満、または8%w/w未満、または7%w/w未満、または6%w/w未満、または5%w/w未満、または4%w/w未満、または3%w/w未満、または2%w/w未満、または1%w/w未満、または0.5%w/w未満、である時に、「脱水した」または「乾燥した」ものと見なされる。いくつかの実施形態では、含水量は、5%w/w未満、または4%w/w未満、または3%w/w未満、である。脱水フィルムまたは脱水シートは、例えば、0%w/w、1%w/w、2%w/w、3%w/w、4%w/w、5%w/w、6%w/w、7%w/w、8%w/w、9%w/w、10%w/w、11%w/w、12%w/w、13%w/w、もしくは14%w/w、という含水量を有することができる、または、そこから導出される任意のパーセントを有することができる。脱水フィルムまたは脱水シートの含水量(含水率)は、カールフィッシャー滴定またはオーブン乾燥などの当業者に公知の手法により、測定することができる。例えば、脱水フィルムまたは脱水シートを、65℃のオーブンに大気圧で3分間にわたって配置することができ、インキュベーション後の重量減少を測定することで、含水率を決定することができる。
【0081】
脱落膜組織の断片または粉末、脱水した脱落膜組織の断片または粉末、蒸発空気乾燥した脱落膜組織の断片または粉末、あるいは、凍結乾燥した脱落膜組織の断片または粉末は、水性ゲルまたはヒドロゲル担体内へと均一に分散され、その後に脱水ステップを受けることで、脱水フィルムまたは脱水シートが形成される。ゲル化剤などのレオロジー調整剤を使用して、水または水性媒体に対してレオロジー調整剤を添加することにより、脱水前に水性ゲルまたはヒドロゲルを形成することができる。脱落膜組織の断片または粉末は、レオロジー調整剤の添加前であっても、また添加後であっても、添加することができる。脱落膜組織の断片または粉末を、まず、水内へと、またはPBSなどの緩衝液内へと、懸濁させることができ、その後、組織を湿潤させてスラリーを形成することができ、その後、そのスラリーを、Tissue Tearor(商標)などのホモジナイザで均質化することで、水性ゲル内へのまたはヒドロゲル担体内への組織の組み込みを容易とすることができる。水中におけるまたは水性媒体中における、脱落膜組織の断片または粉末と、レオロジー調整剤と、の混合は、プロペラミキサ、溶解機、ホモジナイザ、および同種のものなどの当業者に公知の適切な混合装置を使用して、当業者に公知の手法を使用して、実施することができる。好適なレオロジー調整剤は、限定するものではないが、セルロースエーテル、微結晶セルロース、アクリルポリマー、アルギン酸塩、ゴム、および有機粘土、を含み、これらの例は、「Rheology Modifiers Handbook, Practical Use and Application」William Andrew Publishing, 2000に見出すことができ、この文献は、参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、担体は、一つまたは複数のレオロジー調整剤を含む。いくつかの実施形態では、レオロジー調整剤は、セルロースエーテルである。いくつかの実施形態では、担体は、一つまたは複数のセルロースエーテルを含む。
【0082】
セルロースエーテルには、非イオン性セルロースエーテルとアニオン性セルロースエーテルとがあり、様々な粘度グレードが入手可能である。非イオン性セルロースエーテルは、セルロースのグルコース単位内におけるヒドロキシル基の水素原子をアルキル基によってまたはヒドロキシルアルキル基によって置換することにより製造され得る高分子量化合物である。非イオン性アルキルセルロースエーテルの非限定的な例は、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、およびエチルメチルセルロース(EMC)、を含む。非イオン性ヒドロキシアルキルセルロースエーテルの非限定的な例は、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシメチルセルロース(HMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、およびヒドロキシエチルカルボキシメチルセルロース(HECMC)、を含む。これらのセルロースエーテルのそれぞれには、幅広い市販品がある(例えば、Dow Chemical Company、Ashland、Spectrum Chemical)。HECは、Ashlandから、NATROSOL(商標)という名称で入手可能である。HPCは、Ashlandから、KLUCEL(商標)という名称で入手可能である。HPMC(ヒプロメロースとしても知られている)は、Ashlandから、BENECEL(商標)という名称で入手可能である。アニオン性セルロースエーテルの例は、AshlandからAQUALON(商標)という名称で市販されているカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)である。セルロースエーテルは、化粧品グレードでおよび医薬品グレード(USP/NF)で入手可能であって、開示する組成物内における使用に適している。組成物中のセルロースエーテルの濃度は、脱水フィルムまたは脱水シートに関して特定の特性を達成するために、必要に応じて変更することができる。組成物中のセルロースエーテルの濃度(二つ以上のセルロースエーテルが存在する場合には、累積濃度)は、脱水状態の組成物に対して、約20%w/w~約80%w/w、または約30%w/w~約80%w/w、または約40%w/w~約80%w/w、とすることができる。担体は、一つまたは複数のセルロースエーテルを含むことができる。いくつかの実施形態では、担体は、一つまたは複数のセルロースエーテルを含む。いくつかの実施形態では、セルロースエーテルは、非イオン性セルロースエーテルである。いくつかの実施形態では、非イオン性セルロースエーテルは、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、またはこれらの混合物、である。
【0083】
担体は、一つまたは複数の可塑剤をさらに含むことができ、可塑剤は、脱水フィルムまたは脱水シートの、脆性および柔軟性などの、所望の物理的特性を増強するように機能することができる。可塑剤の非限定的な例は、親水性ポリオール、親水性高分子ポリオール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポロキサマー、およびポビドン、を含む。組成物中の可塑剤の濃度は、脱水状態の組成物に対して、約0%w/w~約30%w/w、または約5%w/w~約30%w/w、または約10%w/w~約25%w/w、とすることができる。いくつかの実施形態では、可塑剤は、親水性ポリオールである。適切な親水性ポリオールは、少なくとも二つのヒドロキシル基を有した水溶性の極性脂肪族アルコールであり、例えばポリエチレングリコールおよびポロキサマーなどの高分子ポリオールを含むことができる。いくつかの実施形態では、親水性ポリオールは、親水性高分子ポリオールである。いくつかの実施形態では、親水性高分子ポリオールは、一つまたは複数のポリエチレングリコールである。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール600である。
【0084】
ポリエチレングリコール(PEG)は、式H(OCHCHOHで表されるような、エチレングリコールと水とのホモポリマーであり、
ここで、nは、オキシエチレン基の平均数を表している。ポリエチレングリコールは、その分子量に依存して、25℃で、液体または固体のいずれかであることができる。以下の非限定的な例は、開示する組成物とともに使用するのに適しているとともに、米国薬局方条約(USP)の命名法を使用して記載されるものであり、すなわち、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール500、およびポリエチレングリコール600、である。固形ポリエチレングリコールに関する以下の非限定的な例は、開示する組成物とともに使用するのに適しているとともに、USP命名法を使用して記載されるものであり、すなわち、ポリエチレングリコール700、ポリエチレングリコール800、ポリエチレングリコール900、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1100、ポリエチレングリコール1200、ポリエチレングリコール1300、ポリエチレングリコール1400、ポリエチレングリコール1450、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール1600、ポリエチレングリコール1700、ポリエチレングリコール1800、ポリエチレングリコール1900、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール2100、ポリエチレングリコール2200、ポリエチレングリコール2300、ポリエチレングリコール2400、ポリエチレングリコール2500、ポリエチレングリコール2600、ポリエチレングリコール2700、ポリエチレングリコール2800、ポリエチレングリコール2900、ポリエチレングリコール3000、ポリエチレングリコール3250、ポリエチレングリコール3350、ポリエチレングリコール3750、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール4250、ポリエチレングリコール4500、ポリエチレングリコール4750、ポリエチレングリコール5000、ポリエチレングリコール5500、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール6500、ポリエチレングリコール7000、ポリエチレングリコール7500、およびポリエチレングリコール8000、である。このような液体のおよび固体のポリエチレングリコールは、DOW Chemical Companyから、CARBOWAX(商標)およびSENTRY(商標)という名称で市販されており、また、BASF Corporationから、PLURACARE(登録商標)およびPLURIOL(登録商標)という名称で市販されている。ポリエチレングリコールは、化粧品グレードでおよび医薬品グレード(USP/NF)で入手可能であって、開示する組成物内における使用に適している。組成物中のポリエチレングリコールの濃度(二つ以上のポリエチレングリコールが存在する場合には、累積濃度)は、脱水状態の組成物に対して、約0%w/w~約30%w/w、または約5%w/w~約30%w/w、または約10%w/w~約25%w/w、とすることができる。いくつかの実施形態では、担体は、ポリエチレングリコール(PEG)600を含む。PEG600は、BASFから、PLURACARE(登録商標)E600という名称で市販されており、また、Dowから、CARBOWAX(商標)SENTRY(商標)Polyethylene Glycol 600NFという名称で市販されている。
【0085】
脱水フィルム組成物中におけるまたは脱水シート組成物中における、断片または粉末としての脱落膜組織、断片または粉末としての脱水した脱落膜組織、蒸発空気乾燥した脱落膜組織の断片または粉末、あるいは、凍結乾燥した脱落膜組織の断片または粉末、の濃度は、組成物と共に培養したおよび例えばDMEM+10%FBSといったようなMSC培養培地などの適切な培養培地と共に培養した間葉系細胞の細胞付着と増殖とによってインビトロで実証されたように、組成物を創傷に対してまたは損傷組織に対して適用した時に、細胞の移動、血管の新生、および肉芽組織の形成を可能とすることにより創傷治癒プロセスを支援する環境を提供するのに有効な量とすることができる。脱水フィルム組成物中におけるまたは脱水シート組成物中における、脱落膜組織の断片または粉末、脱水した脱落膜組織の断片または粉末、蒸発空気乾燥した脱落膜組織の断片または粉末、あるいは、凍結乾燥した脱落膜組織の断片または粉末、の濃度は、脱水状態の組成物に関して、全組成物の、約1%w/w~約75%w/w、または約1%w/w~約60%w/w、または約1%w/w~約50%w/w、または約2%w/w~約50%w/w、または約3%w/w~約50%w/w、または約4%w/w~約50%w/w、または約5%w/w~約50%w/w、または約6%w/w~約50%w/w、または約7%w/w~約50%w/w、または約8%w/w~約50%w/w、または約9%w/w~約50%w/w、または約10%w/w~約50%w/w、または約1%w/w~約40%w/w、または約2%w/w~約40%w/w、または約3%w/w~約40%w/w、または約4%w/w~約40%w/w、または約5%w/w~約40%w/w、または約6%w/w~約40%w/w、または約7%w/w~約40%w/w、または約8%w/w~約40%w/w、または約9%w/w~約40%w/w、または約10%w/w~約40%w/w、とすることができる。例えば、脱水フィルム組成物中におけるまたは脱水シート組成物中における、脱落膜組織の断片または粉末、脱水した脱落膜組織の断片または粉末、蒸発空気乾燥した脱落膜組織の断片または粉末、あるいは、凍結乾燥した脱落膜組織の断片または粉末、の濃度は、約1%w/w、または約2%w/w、または約3%w/w、または約4%w/w、または約5%w/w、または約10%w/w、または約11%w/w、または約15%w/w、または約20%w/w、または約25%w/w、または約30%w/w、または約39%w/w、または約40%w/w、または約42%w/w、または約45%w/w、または約50%w/w、または約55%w/w、または約60%w/w、または約65%w/w、または約70%w/w、または約75%w/w、とすることができる。いくつかの実施形態では、脱水した脱落膜組織、蒸発空気乾燥した脱落膜組織、または凍結乾燥した脱落膜組織は、粉末の形態とされる。
【0086】
開示するものは、脱水した脱落膜組織を含む脱水組成物を製造するための方法に関する非限定的で例示的な方法であり、この方法は、
(a)脱水した脱落膜組織を調製することと、
(b)水性ベースの薬学的に許容可能な担体を調製することと、
(c)(a)と(b)とを組み合わせるとともに、均一になるまで混合することと、
(d)得られた混合物を脱水することにより、脱水組成物を形成することと、を含み、
水性ベースの担体は、少なくとも50%w/wの含水量を有しており、脱水組成物は、フィルムまたはシートとされ、フィルムまたはシートは、5%w/w未満または3%w/w未満の含水量を有している。いくつかの実施形態では、脱水ステップ(d)は、蒸発空気乾燥または凍結乾燥によって行われる。
【0087】
開示するものは、非限定的で例示的な脱水組成物であって、
(a)脱水した脱落膜組織と、
(b)水性ベースの薬学的に許容可能な担体と、を含み、この水性ベースの担体は、
(i)一つまたは複数のセルロースエーテルと、
(ii)一つまたは複数の可塑剤と、を含み、
水性ベースの担体は、組成物の脱水前に、少なくとも50%w/wの含水量を有しており、組成物は、蒸発空気乾燥によってまたは凍結乾燥によって脱水され、脱水組成物は、フィルムまたはシートとされ、フィルムまたはシートは、5%w/w未満または3%w/w未満の含水量を有している。いくつかの実施形態では、一つまたは複数のセルロースエーテルは、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、またはこれらの混合物、を含む。いくつかの実施形態では、一つまたは複数の可塑剤は、一つまたは複数のポリエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態では、一つまたは複数のポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール600を含む。
【0088】
本明細書で開示する脱水フィルム組成物および脱水シート組成物の特徴は、水に対して接触した時に、または緩衝液もしくは生理食塩水などの他の水性媒体に対して接触した時に、または創傷自体からの液体に対して接触した時に、ヒドロゲルを形成する能力を有することである。よって、脱水フィルム組成物または脱水シート組成物が創傷に対して適用された時には、創傷からのまたは外部からの液体が、組成物を、ヒドロゲルへと再構成する。生成されたヒドロゲルは、充分な粘性を有し得るため、創傷上に留まって、流出することがない。脱水フィルムまたは脱水シートは、他のフィルム創傷ドレッシングのように崩壊することはできないけれども、むしろ創傷上に留まるヒドロゲルを形成することで、細胞の移動、血管の新生、および肉芽組織の形成、を可能とすることにより、創傷治癒プロセスを支援する条件を提供する環境と物理的マトリクスすなわち足場とを形成する。脱水フィルム組成物もしくは脱水シート組成物内における、セルロースエーテルおよび/または可塑剤の量は、脱水フィルムまたは脱水シートが水に対してまたは他の水性媒体に対して接触した時に形成されるような、結果的に得られるヒドロゲルに関して、所望の粘度が達成されるよう、必要に応じて変更することができる。いくつかの実施形態では、得られたヒドロゲルは、創傷床に留まることとなって創傷からは流出しないよう、充分な粘度を有している。得られたヒドロゲルの粘度は、ブルックフィールド粘度計などの粘度計を使用して、測定することができる。得られたヒドロゲルの粘度を測定するための好ましい方法は、コーンスピンドルCP-52を使用したブルックフィールド粘度計のモデルRV-DV2Tコーン&プレート粘度計を使用して、RTにおいて0.5RPMで1分間にわたって駆動することである。粘度測定用のサンプルは、約1重量部の脱水フィルムまたは脱水シートを、約20重量部の、水に対して、または生理食塩水などの水性媒体に対して、接触させることにより調製される。粘度の値は、センチポアズ(cps)を単位として報告される。好ましい方法を使用した粘度の値は、約100cps~約100,000cps、または約100cps~約75,000cps、または約100cps~約50,000cps、または約100cps~約40,000cps、または約100cps~約30,000cps、または約100cps~約25,000cps、または約100cps~約20,000cps、または約100cps~約19,000cps、または約100cps~約18,000cps、または約100cps~約17,000cps、または約100cps~約16,000cps、または約100cps~約15,000cps、または約100cps~約14,000cps、または約100cps~約13,000cps、または約100cps~約12,000cps、または約500cps~約100,000cps、または約500cps~約75,000cps、または約500cps~約50,000cps、または約500cps~約40,000cps、または約500cps~約30,000cps、または約500cps~約25,000cps、または約500cps~約20,000cps、または約500cps~約19,000cps、または約500cps~約18,000cps、または約500cps~約17,000cps、または約500cps~約16,000cps、または約500cps~約15,000cps、または約500cps~約14,000cps、または約500cps~約13,000cps、または約500cps~約12,000cps、または約1000cps~約100,000cps、または約1000cps~約75,000cps、または約1000cps~約50,000cps、または約1000cps~約40,000cps、または約1000cps~約30,000cps、または約1000cps~約25,000cps、または約1000cps~約20,000cps、または約1000cps~約19,000cps、または約1000cps~約18,000cps、または約1000cps~約17,000cps、または約1000cps~約16,000cps、または約1000cps~約15,000cps、または約1000cps~約14,000cps、または約1000cps~約13,000cps、または約1000cps~約12,000cps、または約5000cps~約100,000cps、または約5000cps~約75,000cps、または約5000cps~約50,000cps、または約5000cps~約40,000cps、または約5000cps~約30,000cps、または約5000cps~約25,000cps、または約5000cps~約20,000cps、または約5000cps~約19,000cps、または約5000cps~約18,000cps、または約5000cps~約17,000cps、または約5000cps~約16,000cps、または約5000cps~約15,000cps、または約5000cps~約14,000cps、または約5000cps~約13,000cps、または約5000cps~約12,000cps、または約10,000cps~約100,000cps、または約10,000cps~約75,000cps、または約10,000cps~約50,000cps、または約10,000cps~約40,000cps、または約10,000cps~約30,000cps、または約10,000cps~約25,000cps、または約10,000cps~約20,000cps、または約10,000cps~約19,000cps、または約10,000cps~約18,000cps、または約10,000cps~約17,000cps、または約10,000cps~約16,000cps、または約10,000cps~約15,000cps、または約10,000cps~約14,000cps、または約10,000cps~約13,000cps、または約10,000cps~約12,000cps、または約12,000cps~約100,000cps、または約12,000cps~約75,000cps、または約12,000cps~約50,000cps、または約12,000cps~約40,000cps、または約12,000cps~約30,000cps、または約12,000cps~約25,000cps、または約12,000cps~約20,000cps、または約12,000cps~約19,000cps、または約12,000cps~約18,000cps、または約12,000cps~約17,000cps、または約12,000cps~約16,000cps、または約12,000cps~約15,000cps、または約12,000cps~約14,000cps、または約12,000cps~約13,000cps、または約15,000cps~約100,000cps、または約15,000cps~約75,000cps、または約15,000cps~約50,000cps、または約15,000cps~約40,000cps、または約15,000cps~約30,000cps、または約15,000cps~約25,000cps、または約15,000cps~約20,000cps、または約20,000cps~約100,000cps、または約20,000cps~約75,000cps、または約20,000cps~約50,000cps、または約20,000cps~約40,000cps、または約20,000cps~約30,000cps、または約20,000cps~約25,000cps、とすることができる。
【0089】
本明細書で使用した際には、「フィルム」および「シート」という用語は、互換的に使用され得るものの、一般に、フィルムは、シートよりも薄い。フィルムまたはシートの厚さは、脱水前に型内へと配置したヒドロゲルの量の関数である、すなわち、所与の型内へと配置したヒドロゲルの量が多いほど、脱水後のフィルムまたはシートは、より厚くなる。脱水フィルムまたは脱水シートの厚さは、約0.1mm~約25mm、または約0.1mm~約20mm、または約0.1mm~約15mm、または約0.1mm~約10mm、または約0.1mm~約9mm、または約0.1mm~約8mm、または約0.1mm~約7mm、または約0.1mm~約6mm、または約0.1mm~約5mm、または約0.1mm~約4mm、または約0.1mm~約3mm、または約0.1mm~約2mm、または約0.1mm~約1.5mm、または約0.1mm~約1mm、または約0.2mm~約25mm、または約0.2mm~約20mm、または約0.2mm~約15mm、または約0.2mm~約10mm、または約0.2mm~約9mm、または約0.2mm~約8mm、または約0.2mm~約7mm、または約0.2mm~約6mm、または約0.2mm~約5mm、または約0.2mm~約4mm、または約0.2mm~約3mm、または約0.2mm~約2mm、または約0.2mm~約1.5mm、または約0.2mm~約1mm、または約0.3mm~約25mm、または約0.3mm~約20mm、または約0.3mm~約15mm、または約0.3mm~約10mm、または約0.3mm~約9mm、または約0.3mm~約8mm、または約0.3mm~約7mm、または約0.3mm~約6mm、または約0.3mm~約5mm、または約0.3mm~約4mm、または約0.3mm~約3mm、または約0.3mm~約2mm、または約0.3mm~約1.5mm、または約0.3mm~約1mm、または約0.4mm~約25mm、または約0.4mm~約20mm、または約0.4mm~約15mm、または約0.4mm~約10mm、または約0.4mm~約9mm、または約0.4mm~約8mm、または約0.4mm~約7mm、または約0.4mm~約6mm、または約0.4mm~約5mm、または約0.4mm~約4mm、または約0.4mm~約3mm、または約0.4mm~約2mm、または約0.4mm~約1.5mm、または約0.4mm~約1mm、または約0.5mm~約25mm、または約0.5mm~約20mm、または約0.5mm~約15mm、または約0.5mm~約10mm、または約0.5mm~約9mm、または約0.5mm~約8mm、または約0.5mm~約7mm、または約0.5mm~約6mm、または約0.5mm~約5mm、または約0.5mm~約4mm、または約0.5mm~約3mm、または約0.5mm~約2mm、または約0.5mm~約1.5mm、または約0.5mm~約1mm、または約1mm~約25mm、または約1mm~約20mm、または約1mm~約15mm、または約1mm~約10mm、または約1mm~約9mm、または約1mm~約8mm、または約1mm~約7mm、または約1mm~約6mm、または約1mm~約5mm、または約1mm~約4mm、または約1mm~約3mm、または約1mm~約2mm、または約1mm~約1.5mm、とすることができる。フィルムまたはシートは、創傷または組織に対する適用に適した任意のサイズへとカットしたり事前カットしたりすることができる。フィルムまたはシートは、透明または不透明とすることができる。一般に、凍結乾燥(フリーズドライ)によって脱水した脱水組成物は、蒸発空気乾燥によって脱水した脱水組成物と比較して、より厚くかつより不透明である。非限定的ではあるけれども、蒸発空気乾燥した組成物は、フィルムと見なすことができ、他方、凍結乾燥した組成物は、シートと見なすことができる。
【0090】
C.賦形剤および追加的な成分
本明細書で開示する組成物は、賦形剤、機能性成分、および追加的な成分、をさらに含むことができる。このような成分の非限定的な例は、医薬品有効成分(API)、吸収剤、抗菌剤、抗酸化物質、抗バイオフィルム剤、バインダ、緩衝剤(例えば、トリス緩衝液およびPBS)、増量剤、キレート剤、着色料、剥離剤、染料、殺生物剤、消臭剤、乳化安定剤、フィルム形成剤、香料成分、保湿剤、ゲル化剤(例えば、セルロースエーテル、微結晶セルロース、アクリルポリマー、アルギン酸塩、ゴム、有機粘土)、溶解剤、酵素、タンパク質分解酵素、乳白剤、酸化剤、pH調整剤、可塑剤、防腐剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール)、還元剤、皮膚軟化剤、保湿剤、親水性ポリオール、親水性高分子ポリオール、ポリエチレングリコール、保湿剤、界面活性剤、乳化剤、洗浄剤、発泡剤、hydrotopes、溶剤、サスペンデッドエージェントレオロジー調整剤、粘度調整剤、粘度増加剤(例えば、増粘剤)、傷薬、推進剤、を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、酵素、タンパク質分解酵素、抗バイオフィルム剤、および/または剥離剤、を含まないあるいは含有していない。いくつかの実施形態では、組成物は、医薬品有効成分を含まないあるいは含有していない。
【0091】
II.使用方法
本明細書で開示する組成物は、組成物を創傷に対してまたは創傷上に適用することにより、対象の創傷を治療するに際して有用である。創傷には、組織構造の破壊と、組織機能の破壊と、を含むことができる。創傷の非限定的な例は、内臓の創傷、粘膜の創傷、血管組織の創傷、靭帯、腱、および軟骨を含めた軟組織の創傷、骨の創傷、ならびに真皮の創傷、を含む。いくつかの実施形態では、創傷は、真皮の創傷である。いくつかの実施形態では、組成物は、真皮の創傷に対して、局所的に適用される。いくつかの実施形態では、適用後の組成物は、創傷面の少なくとも一部に対して、直接的に接触する。
【0092】
真皮の創傷は、皮膚の破壊と、関連した軟組織の破壊と、を伴うことができる。真皮の創傷は、部分的な厚さの創傷でも、全層的な創傷でも、あり得る。また、真皮の創傷には、急性の創傷と、慢性の創傷と、熱傷と、があり得るものであり、熱傷には、急性と慢性とがあり得る。熱傷の非限定的な例は、表層(第一度)熱傷、部分的な厚さ(第二度)の熱傷、全層的(第三度)な熱傷、または放射線熱傷、を含む。慢性創傷の非限定的な例は、真皮潰瘍、糖尿病性潰瘍、糖尿病性足潰瘍、静脈性潰瘍、静脈性下腿潰瘍、動脈性潰瘍、動脈性下腿潰瘍、褥瘡潰瘍、うっ血性潰瘍、虚血性潰瘍、血管性潰瘍、褥瘡(ステージI~IV)、足病創傷、排膿創傷、トンネル創傷、または穿掘性創傷、を含む。急性創傷の非限定的な例は、外傷創傷、裂傷、擦過傷、皮膚裂傷、皮膚病変、水疱、外科的切開、ドナー皮膚部位、皮膚移植、レーザー手術創傷、モース手術創傷、または剥離創傷、を含む。いくつかの実施形態では、真皮の創傷は、壊死組織を含む。他の実施形態では、真皮の創傷は、壊死組織を含まない。
【0093】
本発明の組成物は、定期的に、例えば毎日、創傷に対して適用することができる。創傷が治癒するまで、創傷の洗浄と、交換どうしの間における新たな組成物の適用と、を伴う定期的なドレッシング交換を含む治療計画に従うことができる。組成物は、ガーゼドレッシング、スポンジ創傷ドレッシング、発泡体創傷ドレッシング(例えば、Allevyn(商標)発泡体ドレッシング)、抗菌創傷ドレッシング、ECMベースの創傷ドレッシング、胎盤組織創傷ドレッシング、創傷剥離ドレッシング、アルギン酸カルシウムドレッシング、ヒドロゲル、および、傷薬入り創傷ドレッシングを含むがこれらに限定されない他の創傷ドレッシングの適用と組み合わせて、適用することができる。例えば、組成物を適用した後に、創傷を、別の創傷ドレッシングによって覆ってもよい。組成物は、別の創傷ドレッシングを適用する前でも後でも、適用することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含むとともに、別の創傷ドレッシングを適用する前に創傷に対して適用され、他の実施形態では、組成物は、他の創傷ドレッシングを適用した後に適用される。脱水フィルム組成物および脱水シート組成物は、乾燥させた状態の創傷に対して適用することができる、あるいは、適用前でもまたは適用後でも、生理食塩水などの水性媒体によって湿潤させた状態の創傷に対して適用することができる。
【0094】
本発明の組成物は、組成物と共に培養した間葉系細胞の細胞付着および増殖によってインビトロで非限定的な態様で実証され得るように、組成物を創傷に対してまたは損傷組織に対して適用した時に、細胞の移動、血管の新生、および肉芽組織の形成を可能とすることができる。よって、組成物の使用は、創傷治癒プロセスを、支援して促進する。
【0095】
III.パッケージング
本発明の組成物は、例えば本発明の組成物の貯蔵、出荷、および/または使用に際して使用するのに適した任意のパッケージ構成で、包装することができる。外用剤。パッケージ構成の非限定的な例は、プラスチックパッケージ、フォイルパッケージ、パウチ、パケット、ボックス、等などの容器を含むことができる。組成物が流動性(例えば、液体またはヒドロゲルの形態)であるような特定の態様では、組成物のボトル、ジャー、ポンプ付きボトル、トドル、チューブ(アルミニウム、プラスチック、またはラミネート)、ジャー、非エアゾールポンプスプレー、および/または、エアゾール容器を、使用することができる。パッケージは、単回投与用に、または複数回投与用に、構成することができる。
【0096】
複数の隔室を有したキットなどの容器も、また、使用することができる。例えば、本発明の組成物は、フィルムまたはシートの形態とされ得るとともに、一つの区画内に配置することができる。第二の区画は、例えば水または他の水性溶液を含み得る組成物を含むことができる。これにより、フィルムまたはシートを、第二の組成物に対して混合することができ、これにより、ヒドロゲルを形成することができる。キットは、また、二つの組成物を混合するためのミキサ(例えば、スプーンまたはロッドまたはパドル、等)を、および/または、ヒドロゲルを創傷に対してまたは損傷組織などの組織に対して適用するためのアプリケータ(例えば、スプーンまたはロッドまたはパドル、等)を、含むことができる。キットは、また、3個の、4個の、5個の、もしくはそれ以上の個数の、追加的な隔室または容器を含むことができる。
【0097】
パッケージは、また、本発明の組成物に関する説明書を含むことができる。説明書は、製品または組成物に関する、適用方法、使用方法、保守方法についての説明を含むことができる。
【実施例
【0098】
実施例1-凍結乾燥した脱落膜組織粉末
凍結乾燥した脱落膜組織粉末の調製のために、未処理の脱落膜組織を秤量し、組織と同重量のPBSと一緒に、Retsch GM200ブレンダへと移した。その後、ブレンダを、7000rpmで1.5分間にわたって駆動することで、均質化された組織を形成した。遠心分離によって組織を回収した。ACK RBC溶解バッファを、3:1の容量比で組織に対して追加し、30分間にわたって組織に対して接触したままに維持した。溶解処置の後に、組織を、遠心分離により、PBSによって二回にわたって洗浄した。その後、組織を、凍結乾燥機で凍結乾燥することにより、脱水した。その後、凍結乾燥した組織を、MACS Octo解離器を使用して粉末化し、これにより、粗白色からオフホワイトの粉末を形成した。粉末の粒径は、顕微鏡で決定した際には、約90%が250ミクロン未満であった(図1を参照されたい)。
【0099】
実施例2-脱水フィルム組成物および脱水シート組成物
すべてのロットについて、以下の表1、表2、表3、表4、および表5に示すフィルム組成物およびシート組成物を、まず、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を含むヒドロゲル(含水状態)を調製することにより、その後、室温での蒸発空気乾燥によって、および/または凍結乾燥によって、ヒドロゲルを脱水することにより、フィルムまたはシート(脱水状態)を形成することで、調製した。定量式は、各ロットについて、脱水前における含水状態でのヒドロゲルの成分量を、単位をグラムとして示しているとともに、脱水後における脱水状態での、得られたフィルムまたはシートの成分を、計算値による%w/wで示している。すべてのロットについて、使用したHPC(ヒドロキシプロピルセルロース)は、Spectrumからの製品番号HY121、4,000~6,500cP、NFであり、使用したHEC(ヒドロキシエチルセルロース)は、AshlandからのNATROSOL(商標)250HX Pharmであった。すべてのロットについて、フィルムおよびシートを、まず、次のプロセスにより、すなわち、HECとHPCとPEG-600とをRTで脱イオン水に対して追加するとともに透明なヒドロゲルが形成されるまで混合することにより、ヒドロゲルを作製することによって調製した。脱水した脱落膜組織粉末を、重量基準で脱落膜組織粉末1部に対してPBS約20部の少量の標準リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で湿潤させることで、スラリーを形成し、その後、Tissue Tearor(商標)小型ホモジナイザを使用して均質化した。次に、均質化したスラリーを、ヒドロゲルに対して追加するとともに、均一になるまで混合した。ヒドロゲルの各ロットを、蒸発空気乾燥による脱水のためのサンプルへと、および/または凍結乾燥による脱水のためのサンプルへと、分割して、得られたフィルム組成物およびシート組成物を脱水状態で形成した。


























【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
【表5】
【0105】
表5におけるロットについては、凍結乾燥した脱落膜組織粉末の粒径は、ロット0055-1102L01で使用した粉末では、425ミクロン~1000ミクロンであり、ロット0055-1102L02で使用した粉末では、216ミクロン~425ミクロンであり、ロット0055-1102L03で使用した粉末では、216ミクロン未満であった。ロットにおいて使用した粉末は、1000ミクロン、425ミクロン、および216ミクロンというサイズの積層ふるいを使用して用意したものであり、その場合、凍結乾燥した脱落膜組織粉末を、1000ミクロンのふるいに対して追加し、振盪した後に、425ミクロンのふるい上に残った粉末(425ミクロン~1000ミクロン)、216ミクロンのふるい上に残った粉末(216ミクロン~425ミクロン)、および216ミクロンのふるいを通過した粉末(<216ミクロン)、を回収した。
【0106】
蒸発空気乾燥したサンプルは、以下のプロセスで脱水した、すなわち、約2グラム~3グラムのヒドロゲルを、型として使用した16ウェルプレート内へと注入した。型内でゲルが均等に広がることを確保するよう、型に対して、1時間に対して蓋をした。型を、重力対流条件下においてRTで蓋をせずに放置し、最長で120時間にわたって乾燥させた。
【0107】
凍結乾燥したサンプルは、以下のプロセスで脱水した、すなわち、約2グラム~3グラムのヒドロゲルを、型として使用した16ウェルプレート内へと注入した。型内でゲルが均等に広がることを確保するよう、型に対して、1時間に対して蓋をした。型を、-80℃の冷凍庫内へと少なくとも1時間にわたって配置し、確実に凍結させた。凍結後に、型を、凍結乾燥機内へと配置し、少なくとも1週間にわたって乾燥させた。
【0108】
結果:
【0109】
キセロゲルとも称されるような、表1、表2、表3、および表4におけるロットから得られた蒸発空気乾燥フィルムは、平均厚さが0.8mmの、薄くかつ透明なものであった(図2A図2B図2C、および図2Dを参照されたい)。表1、表2、表3、および表4におけるロットから得られた凍結乾燥シートは、スポンジ状であり、平均厚さが5.1mmの不透明なものであった(図3A図3B図3C、および図3Dを参照されたい)。表5におけるロットから得られた凍結乾燥シートの厚さは、すべてのロットについて、2mmであった。表5におけるロットからの凍結乾燥シートの含水量(含水率)を、シートを65℃のオーブン内に大気圧で3分間にわたって配置しインキュベーションの前後で重量を読み取ることで重量減少を決定することにより、測定した。ロット005-1102L01の含水量は、0.745%w/wであり、ロット005-1102L02の含水量は、1.07%w/wであり、ロット005-1102L03の含水量は、2.59%w/wであった。
【0110】
実施例3-凍結乾燥した脱落膜組織粉末と脱水フィルム組成物と脱水シート組成物とを使用したMSCの細胞培養
凍結乾燥した脱落膜組織粉末:ヒト間葉系細胞(hMSC)を、実施例1からの凍結乾燥した脱落膜組織粉末を使用して、ペトリ皿内における、hMSC培地内で、すなわち、DMEM+10%FBS内で、37℃で培養した。培養後の細胞培養プレートに関する図4の顕微鏡写真は、凍結乾燥した脱落膜組織粉末が、hMSCの、細胞成長、移動、および増殖、を誘導することを示している。追加的な研究は、図5の顕微鏡写真に見られるように、増殖したhMSCから脂肪細胞への分化を示している。
【0111】
脱水フィルム組成物および脱水シート組成物:ヒト間葉系細胞(hMSC)を、実施例2からの蒸発空気乾燥による脱水フィルム、および凍結乾燥による脱水シートを使用して、12ウェル細胞培養プレート内における、hMSC培地内で、すなわち、DMEM+10%FBS内で、37℃で培養した。一つのウェルあたりにつき、0.5Mの細胞を、3mlの培地に追加するとともに、数日間から最大で27日間にわたって培養した。ThermoFisherのLIVE/DEAD(登録商標)という哺乳類細胞用の生存率/細胞毒性キットのプロトコルを使用し、参照のために本明細書に援用されるThermoFisherのウェブページhttps://www.thermofisher.com/us/en/home/references/protocols/cell-and-tissue-analysis/protocols/live-dead-viability-cytoxycity-kit-for-mammalian-cells.htmlに概要が記載されているプロトコルに従って、培養の開始後における様々な日数経過後の時点で、生細胞/死細胞染色を取得し、その時点での染色に関して、顕微鏡写真を撮影した(図6A図6B図6C図6D図7A図7B図7C図7D図8A図8B図8C図8D図9A図9B図9C図9D図10A図10B図10C図10D図11A図11B図11C、および図11D、を参照されたい)。顕微鏡写真に見られるように、蒸発空気乾燥で脱水したフィルムと、凍結乾燥で脱水したシートと、の両方が、培養においてhMSCの、細胞成長、移動、および増殖を誘導する。比較の目的で、様々な市販の創傷ドレッシングについても、hMSCと一緒に培養した。培養の開始後における7日経過時点で、生細胞/死細胞の染色を行い、その時点での顕微鏡写真を撮影した(図12A図12B図12C、および図12Dを参照されたい)。顕微鏡写真に見られるように、これらの市販の創傷ドレッシング製品は、脱水フィルム組成物または脱水シート組成物と比較して、細胞の成長および増殖がはるかに少ないことを示した。よって、結果として、脱水フィルム組成物および脱水シート組成物が、培養におけるhMSCの細胞の、成長、移動、および増殖を示すとともに、様々な市販の創傷ドレッシングと比較して、培養におけるhMSCの細胞の、成長、移動、および増殖に関して優れた特性を示すことが示された。
【0112】
実施例4-ヒドロゲルを形成する脱水フィルム組成物および脱水シート組成物の再水和、ならびにヒドロゲルの粘度測定
凍結乾燥した脱水シートの約1重量部を約20容量部の通常の生理食塩水に対して添加することにより、上記表5からのロットの脱水した凍結乾燥組成物を再水和することで、ヒドロゲルを形成した。粘度測定は、コーンスピンドルCP-52を使用したブルックフィールド粘度計のモデルRV-DV2Tコーン&プレート粘度計を使用して、0.5RPMで、得られたヒドロゲルのサンプルに対して実施した。測定は、RTで1分間にわたって行った。粘度の結果は、センチポアズ(cps)を単位として報告される。ロット0055-1102L01に関する粘度値は、12,900cpsであり、ロット0055-1102L01に関する粘度値は、13,250cpsであり、ロット0055-1102L03に関する粘度値は、12,870cpsであった。
【0113】
実施例5-インビボでの動物研究
目的:ブタ動物モデルを使用して、脱水した脱落膜組成物を使用した治療による局所組織反応と創傷閉鎖とを評価すること。
【0114】
ブタ動物モデル:3cm×3cmで深さが3mm~6mm(ブタにより異なる)の全層切除創傷を、ブタに形成する。脱水した脱落膜組成物を、処置として創傷上に配置する。また、医療機器製品などの対照を設定する。
【0115】
生活中のタイムポイント:毎週、創傷の画像と創傷の測定とを、あらゆる他の肉眼的観察の記録とともに、行う。
【0116】
組織学的タイムポイント:28日目の単一のタイムポイントで、創傷の中央を通る単一セクションのH&Eおよびマッソンの三色染色を、病理学的スコアリングとともに、行う。追加的な免疫組織化学が、後で追加されてもよい。
【0117】
評価項目:研究の最後に、脱水した脱落膜組織組成物に関して、また、対照に関して、組織学的評価を行って、動物における創傷閉鎖の程度を決定する。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
【国際調査報告】