(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】確率論的構造
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20240927BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20240927BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240927BHJP
B29C 64/10 20170101ALI20240927BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240927BHJP
【FI】
B29C64/386
B33Y50/00
B33Y80/00
B29C64/10
B33Y10/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517014
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2022074912
(87)【国際公開番号】W WO2023041402
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】クレア,アダム
(72)【発明者】
【氏名】グロス,ジャン-ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】マンニーニ,ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】タック,クリストファー
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AM23
4F213AR07
4F213AR12
4F213AR15
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL85
4F213WL96
(57)【要約】
確率論的構造を形成する方法であって、親構造を選択するステップであって、親構造は単位セルからなる配列を定義し、初期状態において単位セルからなる配列は均一である、ステップと、単位セルからなる配列の各単位セルに、サイズ、幾何学的形状、相対密度、および少なくとも1つのノードを定義するステップと、ノードのそれぞれに、オブジェクトまたは当該オブジェクトの一部に関する陰関数を配置するステップであって、当該オブジェクトは、その位置xcn,ycn,zcn、および範囲rxn,ryn,rznを定義するパラメータ、または、少なくともパラメータx,y,zを有する式によって定義される形状、を有する、ステップと、統計的分布を適用することによって、上記パラメータのうちのいずれか1つ以上をランダム化するステップであって、ここで統計的分布は標準偏差σを有し、当該標準偏差σは、それぞれの前記パラメータのランダム値が作成される3つの次元の少なくとも1つを制御するステップと、標準偏差σのゼロより大きい値を選択して、パラメータのいずれか1つ以上のランダム化の度合いを定義し、これにより、前記確率論的構造を表す前記単位セルからなるランダム化された配列を作成するステップであって、前記単位セルからなるランダム化された配列は、等値面を含む3次元ボリュームデータを形成する、ステップと、を含み、当該方法は、等値面を、面および頂点を有するポリゴンでレンダリングして確率論的構造のソリッドモデルを形成し、任意に、付加製造プロセスで前記確率論的構造を印刷すること、を含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
確率論的構造を形成する方法であって、
親構造を選択するステップであって、前記親構造は、単位セルからなる配列を規定するものであり、初期状態において前記単位セルからなる配列は均一である、ステップと、
前記単位セルからなる配列の各単位セルに、サイズ、幾何学的形状、相対密度、および少なくとも1つのノードを定義するステップと、
前記ノードのそれぞれに、オブジェクトまたは当該オブジェクトの一部に関する陰関数を配置するステップであって、当該オブジェクトは、その位置xc
n,yc
n,zc
n、および範囲rx
n,ry
n,rz
nを定義するパラメータ、または、少なくともパラメータx,y,zを有する式によって定義される形状、を有する、ステップと、
統計的分布を適用することによって、上記パラメータのうちのいずれか1つ以上をランダム化するステップであって、ここで前記統計的分布は標準偏差σを有し、当該標準偏差σは、それぞれの前記パラメータのランダム値が作成される3つの次元の少なくとも1つを制御するステップと、
前記標準偏差σのゼロより大きい値を選択して、パラメータのいずれか1つ以上のランダム化の度合いを定義し、これにより、前記確率論的構造を表す前記単位セルからなるランダム化された配列を作成するステップであって、前記単位セルからなるランダム化された配列は、等値面を含む3次元ボリュームデータを形成する、ステップと、
を含み、
当該方法は、前記等値面を、面および頂点を有するポリゴンでレンダリングして前記確率論的構造のソリッドモデルを形成し、任意に、付加製造プロセスで前記確率論的構造を印刷すること、
を含む、確率論的構造を形成する方法。
【請求項2】
物体または物体の一部についての前記陰関数は、楕円体、球体、多角形、極小曲面、または三重周期極小曲面のいずれか1つまたは組み合わせであり、好ましくは、前記極小曲面、または前記三重周期極小曲面は厚さを有する、
請求項1に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項3】
前記幾何学的形状は、体積、面積、または線のいずれか1つである、
請求項1~2のいずれか1項に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項4】
前記位置xc
n,yc
n,zc
nは、前記オブジェクトの中心の位置であり、
前記範囲rx
n,ry
n,rz
nは、前記オブジェクトの境界の互いに垂直な3次元における中心からの距離である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項5】
前記統計的分布は、ガウス分布、ポアソン分布、ワイブル分布、対数分布を含む群のいずれか1つである、
請求項1~4のいずれか1項に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項6】
前記ランダム化ステップは、パラメータxc
n,yc
n,zc
nの群のうちの少なくとも2つから標準偏差σのゼロより大きい値を選択することを含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項7】
前記ランダム化ステップは、パラメータrx
n,ry
n,およびrz
nの群のうちの少なくとも2つから標準偏差σのゼロより大きい値を選択することを含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項8】
前記ランダム化ステップは、3次元の任意の1以上の方向において標準偏差σ値を徐々に変化させることを含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項9】
前記確率論的構造は、より大きな構造のランダム化されたボリュームであり、
当該方法は、正弦関数を用いてランダム化されたボリュームを定義するステップを含み、前記正弦関数は、振幅、周期、長さ、厚さ、およびより大きな構造内の位置を有する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項10】
当該方法は、密度が1または0であること、ここで1は体積内であり、0は体積外である、により3次元ボリュームデータ内の等値面を識別するステップと、
統計的分布からその平均値の近傍に正および負の値を生成するステップと、
負の値を1に、正の値を0に適用するステップと、
を含み、これにより、親構造の表面にランダム化された凹凸を作り出す、
請求項1~9のいずれか1項に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項11】
前記3次元ボリュームデータは、バイナリデータまたは距離関数データまたは符号付距離関数データを含む群のうちのいずれか1つである、
請求項1~10のいずれか1項に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項12】
前記単位セルからなる配列は、立方体、体心立方体、面心立方体、前記立方体と面心立方体との組合せ、を含む配列の群のいずれか1つからの配列を有する、
請求項1~11のいずれか1項に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項13】
前記相対密度RDは、前記単位セルからなる配列の配置に依存する制限RD
Limitを有し、ここで、相対密度RD≧RD
Limitの場合、前記確率論的構造はクローズドセルであり、相対密度RD<RD
Limitの場合、前記確率論的構造はオープンセルである、
請求項12に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法によって形成された確率論的構造を含む、構成部品。
【請求項15】
前記構成部品は、熱交換器、構造コア、音響パネル、周波数ダンパ、熱遮蔽体、伝熱式熱交換器、フィルタ、触媒コンバータ、衝撃吸収体、バッテリのうちのいずれか1つである、
請求項14に記載の構成部品。
【請求項16】
請求項14~15のいずれか1項に記載の構成部品を備える、ガスタービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ランダム化構造または確率論的構造を生成する方法に関し、特に、これに限定されるものではないが、バイオミメティック医療用インプラント、熱交換器、および機械的構成部品などの確率論的構造を有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
規則的な構造を通って流れる流体は、乱流や滞留のパターンを形成し、系の質量流量および/または効率を低減させることがあり得る。そのような構造の一つが、熱交換器である。他の構造としては、流体が流れる表面である。
規則的な構造は、共振周波数などの不利な構造的挙動の影響に敏感な場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、構造内部または表面上を通る流体の流れを改善することである。また、他の目的は、構成部品、構造、または系の構造的挙動を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的は、確率論的構造(stochastic structure)を形成する方法によって達成される。この方法は、親構造を選択するステップであって、この親構造は、単位セルからなる配列を規定するものであり、初期状態において単位セルからなる配列は均一である、ステップと、単位セルからなる配列の各単位セルに、サイズ、幾何学的形状(ジオメトリ)、相対密度、および少なくとも1つのノードを定義するステップと、オブジェクトまたはオブジェクトの一部に関する陰関数を各ノードに配置するステップと、を含む。オブジェクトは、その位置xcn,ycn,zcn、および範囲(extent;おおきさ、広がりの意を包含する。)rxn,ryn,rznを定義するパラメータか、あるいは少なくともパラメータx,y,zを有する式で定義される形状、を有する。統計的分布を適用することによって、上記パラメータのうちのいずれか1つ以上をランダム化する。ここで統計的分布は標準偏差σを有し、標準偏差σは、各パラメータのランダム値が作成される3つの次元の少なくとも1つを制御する。標準偏差σのゼロより大きい値を選択して、パラメータのいずれか1つ以上のランダム化の度合いを定義する。これにより、確率論的構造を表す単位セルからなるランダム化された配列が作成される。
【0005】
上述のように、親構造は、最初は均一である単位セルからなる配列を定義する。これは、単位セルからなる配列がセルを含み、このセルの各々が、同じ体積、および3つの相互に垂直な方向において同じ寸法を有するだけでなく、同じ形状を有する、ことを意味する。
【0006】
ランダム化された単位セルからなる配列は、3次元ボリュームデータを形成し、等値面を含むことができる。本方法は、等値面を、面および頂点を有する多角形(ポリゴン)でレンダリングして、確率論的構造のソリッドモデルを形成すること、を含むことができる。ソリッドモデルは、STLファイル等として保存され、プリンタ、または他の付加製造装置、またはニアネットシェイプ製造装置にインポートされて、確率論的構造が製造され得る。
【0007】
オブジェクトの、またはオブジェクトの一部の陰関数は、楕円面、球面、多角形、極小曲面、または三重周期極小表面のうちのいずれか1つまたはその組み合わせであり得る。極小曲面または三重周期極小表面は、厚さを有することができる。極小曲面または三重周期極小表面の場合、その形状は、少なくともパラメータx、y、およびzを有する方程式によって定義することができ、少なくともパラメータx、y、およびzは、本発明に従ってランダム化され得る。
【0008】
幾何学的形状は、体積(volume)、面積(area)、または線(line)のうちのいずれか1つとすることができる。
【0009】
位置xcn,ycn,zcnは、オブジェクトの中心の位置であってよく、範囲rxn,ryn,rznは、オブジェクトの境界の互いに垂直な3つの寸法における中心からの距離であってよい。
【0010】
統計的分布は、ガウシアン分布、ポアソン分布、ワイブル分布、対数分布を含む群からなるいずれか1つであってよい。ガウス分布を参照して説明したが、本発明では、これらの統計的分布および他の統計的分布を使用することができる。
【0011】
ランダム化ステップは、パラメータxcn,ycn,zcnの群のうちの少なくとも2つから標準偏差σのゼロより大きい値を選択すること、を含むことができる。
【0012】
ランダム化ステップは、パラメータrxn,ryn,およびrznの群のうちの少なくとも2つから標準偏差σのゼロより大きい値を選択すること、を含むことができる。
【0013】
ランダム化ステップは、3次元の任意の1以上の方向において標準偏差σ値を徐々に変化させること、を含むことができる。
【0014】
確率論的構造は、より大きな構造のランダム化されたボリューム(Volume)であってもよい。この方法は、正弦関数を用いてランダム化されたボリュームを定義するステップを含むことができる。この正弦関数は、振幅、周期、長さ、厚さ、およびより大きな構造内の位置、を有する。
【0015】
この方法は、密度が1または0であること、ここで1は体積内であり、0は体積外である、により3次元ボリュームデータ内の等値面を識別するステップと、統計的分布からその平均値の近傍に正および負の値を生成するステップと、負の値を1に、正の値を0に適用するステップと、を含むことができる。これにより、親構造の表面にランダム化された凹凸を作り出す。
【0016】
3次元ボリュームデータは、バイナリデータまたは距離関数(distance field、距離フィールドともいう)データまたは符号付距離関数データを含む群のうちのいずれか1つであってもよい。
【0017】
単位セルからなる配列は、立方体、体心立方体、面心立方体、立方体と面心立方体との組合せを含む配列の群のいずれか1つからの配列を有していてもよい。
【0018】
相対密度RDは、単位セルからなる配列の配置に依存する制限RDLimitを有することができる。ここで、相対密度RD≧RDLimitの場合、確率論的構造はクローズドセルであってもよい。また、相対密度RD<RDLimitの場合、確率論的構造はオープンセルであってもよい。
【0019】
本発明の別の態様では、前述の段落のいずれかの方法によって形成された確率論的構造を含む構成部品が提供される。
【0020】
構成部品は、熱交換器、構造コア、音響パネル、周波数ダンパ、熱遮蔽体、伝熱式熱交換器、フィルタ、触媒コンバータ、衝撃吸収体、バッテリのいずれか1つであってよい。
【0021】
本発明の別の態様では、ガスタービンエンジンは、上記の2つの段落に係る構成部品を備える。
【0022】
本方法および装置に関する上述の属性ならびに他の特徴および利点そしてそれらを実現する方法は、添付の図面と併せて、本方法および装置についての以下の実施形態の説明を参照することによって、より明らかになり、本方法および装置自体は、よりよく理解されるであろう。以下の図の説明は、本発明の説明の一部として組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1a)は、点の規則的な配置または格子点を示す。
図1b)は、
図1a)の規則的な配列に等方的なランダム性を重ねたものを示す。
図1c)は、
図1a)の規則性配列に異方的なランダム性を加えたものを示す。
【
図2】
図2は、確率格子(stochastic lattice)スクリプトのプログラムフローを示す。単位セル(UC)が選択され、その寸法が定義される。次に、格子制御体積が定義され、所望の相対密度が設定される。次いで、定義された体積に、5つのツール、すなわち、等方的ランダム性、異方的ランダム性、傾斜的ランダム性(graded randomness)、層状ランダム性(layered randomness)、および確率的粗さ(stochastic roughness)を適用することができる。その後、相対密度は、所望の相対密度に達するように調整される。最後に、格子の頂点と面が作成され、STLファイルとして保存される。
【
図3】
図3a)は、寸法ux、uy、uzからなる基本の立方体状の単位セルを示す。
図3a)から
図3b)e)の単位セルを減算することによって、Cubic(立方体)、BCC、FCC、およびFCC+単位セル、が作成される。
図3g)は、2つの円が重なり合い、2つのセグメントS1およびS2が現れる場合を示す。
【
図4】
図4a)高さhにおける厚さがtで、x-z平面における全体の格子寸法がlxおよびlzのランダム層。
図4b)閾値ゼロにおける等値面によって表される平滑表面。等値面は、固体材料(1)と空隙(0)を分離する。表面に近い値は、ランダム性値(randomness value)に従って選択される。ランダム性値>0の場合、3つおきにゼロの表面値が選択され、ランダム性値<0の場合、3つおきに1の表面値が選択される。
図4c)粗い表面は、選択された表面の値に粗さ値を加えることにより作成される。これにより、等値面が変化され、粗さが生じる。
【
図5】
図5:Cubic、BCC、FCC+、およびFCCのUCに適用された等方的ランダム性。FCCUCは、PBFによる製造物として表される。ランダム性σは、0.00から、0.15を超えて、0.3mmまでの範囲である。
【
図6】
図6:FCC格子の6つのパラメータを、6つの異なるランダム化パラメータによってランダム化した。a)~c)においては、楕円面の半径がランダム化され、d)~f)においては、楕円面の中心位置がランダム化されている。g)に示されるような異方的ランダム性は、例示された6つのランダム化の可能性の全てを重ね合わせることによって達成される。さらに、異方性ランダム格子を製造するために、粉末床融合を用いた。英国5ペンス硬貨は、直径18mmである。
【
図7】
図7:FCC格子a)~c)において、3つの異なる方向において3つの異なるランダム化値を有する傾斜的ランダム性が例示される。3つの異なる傾斜的な格子を重ね合わせることにより、異方性傾斜ランダム格子d)が得られる。格子a)~d)もまた、PBFによって製造されたものである。
【
図8】
図8:正弦(SIN)関数による確率層(stochastic layer)で作成した3つのFCC格子を示す。
図8a)は、正弦関数の振幅がゼロであるFCC構造内の層であり、平坦な層をもたらす。
図8b)正弦関数の振幅を増加させることにより、格子内で正弦関数が発生する。
図8c)周期性を変えることにより、
図8b)と比較して正弦関数が圧縮されている。
図8a)~c)の格子は、PBFによって製造した。
【
図9】
図9a)は滑らかなFCC格子を示し、b)は粗さが重ね合わされた格子を示す。各格子のPBF例が示される。英国5ペンス硬貨(直径18mm)が尺度基準として示されている。b)のPBF例における粗さが矢印で示されている。
【
図10】
図10は、タービンエンジンの一部を断面図で示すものであり、ここで説明する確率論的構造が組み込まれている。
【
図12】
図12a)は、例えば燃焼器のタイル120上の従来の規則的な配列の台座122を示し、
図12b)は、本発明による配列した台座126を示し、この台座は、タービン内の端部壁の熱遮蔽材、燃焼器壁またはタイル、および、ブレード(翼)またはベーン(羽根)のタービンエアフォイル等の、ガスタービン構成部品124に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1a)は、点の規則的な配置または格子点を示す。
図1b)は、
図1a)の規則的な配列に、等方的なランダム性を重ねた様子を図示したものである。
図1c)は、
図1a)の規則的な配列に、異方的なランダム性を加えたことを示す。2次元系における点の規則的な分布を考えることとする。ここで、各点のx座標およびy座標は、制御可能なパラメータとみなすことができる。
図1a)の規則的な配列にランダム性を適用するために、等方的ランダム性と異方的ランダム性の、2つの単純なケースがある。
図1b)においてxおよびyパラメータに同じランダム性を適用することができ、これは等方的ランダム性である。一方、
図1cにおいては、xおよびyは異なるランダム性パラメータを有しており、これは、異方的ランダム性である。
図1c)に示されるように、ランダム化(randomisation)がσ
x<σ
yの場合、
図1b)と比較して、点はx方向よりもy方向に配列されているように見える。
【0025】
ここで、確率格子を設計する方法を説明する。一般的なプログラムフローを
図2に示す。まず、所望の「親」格子UC、例えば立方格子UCを選択する。その後、UCパラメータが定義される。これらのパラメータは、セルサイズu
x,u
y,u
z、格子体積寸法l
x,l
y,l
z、および相対密度RDである。相対密度RDは、所与の幾何学的形状の格子全体の体積に対する、格子を形成する材料の体積の比、である。次いで、等方的ランダム性、異方的ランダム性、傾斜的ランダム性、層状ランダム性、または確率的粗さ等のランダム化処理が定義される。それぞれのランダム性プロセスごとに、ランダム性を作るための特定のパラメータが定義される。ランダム化処理の後、相対密度を調整して、所望の相対密度を達成する。相対密度RDは、オープンセル格子、またはクローズドセル格子、あるいはオープンセルとクローズドセルの両方を持つ格子、を作成するべく選択することができる。その後、格子の面および頂点が決定され、STLファイルに保存される。既知のソフトウェアによって、ランダム化されたノードまたは点の3次元ボリュームデータを補間して等値面を構成し、等値面は、単純な多角形によってレンダリングされる。マーチングキューブ法またはマーチングテトラヒドラ法(marching tetrahedra algorithm)などの周知のアルゴリズムによって、単純なポリゴンが作成される。この処理の結果、格子を定義する面と頂点のセットを得ることができる。これらの面と頂点は、面法線および頂点として、STLファイル形式などの、3Dプリント一般的に使用される形式で保存することができる。次いで、付加製造または印刷工程により、確率論的格子構造を形成する。
【0026】
ここで
図3を参照し、まず、
図3a)に示す正則格子を参照する。立方体の単位セル(unit cell:UC)を考える。各辺の長さは、u
x,u
y,およびu
zと記される。このUCは、目的の設計空間内に周期的に分布する初期規則構造である。ここでは、UCに、立方(Cubic)、体心立方(BCC)、面心立方(FCC)、およびFCC+UCのうちのいずれか1つを取り込むこととする。FCC+UCは、立方単位セルとFCC単位セルとを合体したものである。これらのUCを、
図3b)~e)に示す。UCに定義された点またはノードの各々に、球面が配置される。球面は、以下の式(1)で与えられる楕円面の陰関数によって計算することができる。
【数1】
【0027】
ランダム化を適用するときに、いくつかのパラメータに対する制御を可能にする球体を生成するため、楕円面が選択される。このようにして、球面をいくつかの方向に引き延ばすことができる。ここで、xcn,ycn,zcnは、第n番目の楕円面の中心位置を表し、rxn,ryn,rznは、第n番目の楕円面のx,y,z方向の半径を表す。相対密度RDが適用されることで、式(2)によって、格子の最終体積VLatticeが定義される。
【0028】
【数2】
式中、立方体の体積V
cubeは、式(3)によって定義され、例えば、この場合、u
x=u
y=u
zである。
【数3】
【0029】
球の半径を決定するために、2つの特殊なケースについて、次の方程式、方程式(4)が得られる。ケース1:RD≧RD
Limitは、クローズドセル構造であり、ケース2:RD<RD
Limitはオープンセル構造である。pは、1つのUC内の球の数であり、qは重なり合うセグメント(部分)の数である。RD
Limitは、クローズドセルからオープンセルに移行する点である。
【数4】
UCのパラメータp、q、およびRD
Limitを、表1に示す。
【0030】
【0031】
表1は、Cubic、BCC、FCC、FCC+UCの半径を決定するパラメータを含む。pは、UC内の完全な球の数であり、qは、重畳している球の総数であり、RDLimitは、UCがクローズドセルからオープンセルに移行する境界である。
【0032】
【0033】
それぞれのセグメントの体積V
Segmentは、重畳する球により、式(6)によって計算され、ここで、hは、
図2g)に示されるように、1つのセグメントの高さである。
【数6】
【0034】
ここで、パラメータのランダム化ステップに言及すると、格子構造をランダム化するためには、楕円方程式(1)を記述するすべてのパラメータに、ランダム分布を重ねる必要がある。これにより、ランダム化の対象となり得る合計6つのパラメータが与えられる。簡単のため、xc
nのランダム化処理のみを説明するが、ランダム化処理は、他のすべてのパラメータについて同様である。ランダム化は、xc
nを、式(7)で記されるランダムな距離Δxc
nだけ移動することによって導入され、これにより、ランダム化された値xcran
nが与えられる。
【数7】
【0035】
ランダム距離xc
nは、ガウス分布、式(8)、によって生成される。
【数8】
【0036】
平均値μは、ガウス分布を表す。ここで、μは、正規のUCのパラメータが既に定義されているので、ゼロに割り当てられる。標準偏差σは、ランダム値が作成される空間を制御するために使用される制御パラメータ(またはランダム化値)である。ガウス分布の場合、ランダムに分布した値のおよそ68%、95%、および99%が、それぞれσ、2σ、および3σ内に生成される。このことは、等方的ランダム性および異方的ランダム性を幾何学的に記すことを可能にする(
図1参照)。
【0037】
ここで、徐々に変化する傾斜的なランダム性を有する構造を形成することについて言及する。セルの大きさ、ストラット(支柱)の厚みまたは壁の厚みなどの格子パラメータは、徐々に変化させることができる。ただし、任意のパラメータについても、同じ原理によって徐々に変化させることができる。ここで、ガウス型ランダム分布式(8)の標準偏差σは、x方向について、式(9)で定義される一次関数によって傾斜される。これは、y方向およびz方向についても同じである。ここで、σ
x=0でランダム化された位置x=0、および、σ
x=lxでランダム化された位置x=l
xについて考える。すると、位置0から位置l
xへ変化したとき、線形勾配は、ランダム性を、例えば、σ=0からσ=0.3へと増大させる。
【数9】
【0038】
また、ランダム化された格子層400が2つの規則的な格子層402、404に内包されたサンドイッチ構造を有する格子を、設計および製造することも可能である(
図4a)参照)。あるいは、2つの格子層402、404は、傾斜されていてもよいし、異方性をもたされたりしてもよい。ここでは、層は、x-z平面の2D断面を長さl
xおよびl
zによって示している。高さhが、格子体積内のこの層400を記述している。この高さhは、ボリューム(Volume、体積)内の位置を表し、z方向におけるボリュームの長さl
zと、ディバイダ(divider:分周器)dに依存する。dは、層400が形成される位置を決定する。層400は、厚さを有し、tで表すことができる。この平坦な層を説明するために、正弦関数を使用して、その汎用性を高める。この層状格子は、格子を通る制御流体の流れをぴったりと調整したり、振動の問題を減衰したりするのに有用である。すべての楕円体が作成されて、規則的な格子構造を持つボリュームを形成すると仮定すると、各楕円体の半径rx
i,j,k、ry
i,j,k、rz
i,j,k、および中心位置xc
i,j,k、yc
i,j,k、zc
i,j,kを記述することができる。i,j,kは、各値が格納される行列座標を表す。正弦層を実現するためzc
i,j,kについての適したi、j、k値を見つけるために、値kは、x方向に沿って伝搬する正弦関数、すなわちi、によって表される。そして、kは、式(10)によって記述される。式(10)において、aは振幅であり、pdは周期性であり、hは既に説明した高さである。
【数10】
【0039】
楕円体の中心座標および半径のランダム化は、式(11)によって記述することができる。ここでは、z
i,j,kを使用するが、他の座標と半径についても手順は同じである。Δz
i,j,kは、(8)式に基づくランダム化の数値である。
【数11】
【0040】
kにおける層(レイヤー)の厚みは、ただ1つの点からなる層である。厚みを作るには、点レイヤーを、行列内で-t~tの間に設定することによって、厚みを定義する。すると、層は、式(12)によって記述することができる。
【数12】
【0041】
図4a)を参照すると、高さhにおける厚さtのランダム層400と、x-z平面内の全体の格子寸法lxおよびl
zとが示されている。
図4b)は、閾値ゼロにおける等値面408によって表される滑らかな表面を示す。等値面は、固体材料(1)を空隙(0)から分離する。表面に近い値は、ランダム性値に従って選択される。ランダム性値>0の場合、3つごとに表面値ゼロが選択され、ランダム性値<0の場合、3つごとに表面値1が選択される。
図4c)は、選択された表面値に粗さ値を加えて作成された粗い表面を示す。これは、等値面414を変化させ、したがって、粗さを作り出す。
【0042】
本明細書の方法によって生成される任意の格子の表面は、
図4b)の線408によって表される、ゼロの閾値での等値面によって説明することができる。これは、制御体積内における、固体(1)410と空隙(0)412との間の境界である。確率的表面粗さを作り出すために、等表面が不規則に、したがって粗くなるように、表面が操作される。これは、制御体積V
i,j,kにおいて、0から1への、または、1から0への変化を見つけることによって達成される。次に、ガウス確率分布方程式(8)を使用し、σ
roughを制御することによって、平均値μ
rough=0の周りにΔ
roughの正と負の値を作り出す。その後、負の値は1に加算され、正の値は0に加算される(式(13)参照)。粗さ値がゼロである場合、粗さは加えられない。
【0043】
【0044】
この結果、結果4c)に見られる粗い表面414がもたらされる。ここでは、3つおきの値またはUCごとに操作する。この結果、凹凸/粗さを有する等値面414がもたらされる。粗さは、選択された解像度に依存する。したがって、粗さは、2つの行列のエントリ間で変化する。
【0045】
以下の表2は、本明細書および特に以下に記載される格子を設計するために使用された格子パラメータを示す。パラメータU
x,y,zは、UCの寸法である。l
x,y,zは、x,y,z方向の格子の広がりである。RDは相対密度であり、MRはメッシュ解像度であり、d、t、pはそれぞれ、正弦関数を定義するディバイダ、厚み、および周期性である。
【表2】
【0046】
図5は、Cubic、BCC、FCC+、およびFCCからなるUCから構成される格子に適用される等方性ランダム性を例示するものであり、本方法の多様性を実証している。各格子に、ランダム性σ=0、σ=0.15、σ=0.3を適用した。σ=0のとき、すべての格子は規則的である。ランダム性をσ=0.15、σ=0.3に増やすと、どのようにランダム性が増加するかがわかる。FCC格子構造を、粉末床溶融法(PBF)によって製造した。
【0047】
図6に異方性ランダム性を示す、ここで、各楕円体のパラメータ(式(1))は、異なるランダム化値σを有する。
図6a)~c)は、x、y、およびz方向の半径のランダム化を示す。
図6d)~f)は、各楕円体の中心位置のランダム化を示す。
図6g)に示されるように、6つの異なるランダム化の可能性をすべて重ね合わせることによって、異方性格子構造が構築される。
図6g)の下側には、異方性格子のPBFの例が示されている。
【0048】
図7は、FCC格子に適用された傾斜ランダム性の4つの例を示している。
図7a)~c)は、楕円体の半径および中心のx,y,z方向における傾斜したランダム化の原理を示している。a)では0から0.3まで、b)では0から0.25まで、cでは0から0.2まで、格子が傾斜されている。3つの例はすべて、初期正規構造が徐々によりランダムになる様子を示している。
図7d)に一例として示すように、これらの3つの例を重ね合わせることにより、異方性傾斜ランダム格子を作成することができる。d)の左下隅に規則構造を示しており、傾斜ランダム性は、全ての方向において異なっている。実証された4つの傾斜ランダム格子についても、製造可能性を実証するために、PBFにより製造した。a)~c)の下およびd)の右に、付加製造された格子を示す。
【0049】
構成部品、例えば熱交換器またはタービンブレードにおいて、流体の最適な熱伝達対圧力損失は、ランダム化が0.025~0.2、より好ましくは0.05~0.15である、現在のランダム化された構造において生じることが見出されている。熱交換器内のセルの配列のランダム化の程度の特に良好な例は、0.05であることが分かった。タービンブレード内のセルの配列のランダム化の程度の特に良好な例は、0.15であることが分かった。
【0050】
図8は、FCC格子立方体800における、ランダム性を有する層802を示す。
図8a)に示されるように、振幅aがゼロに設定される場合、平らな層は、式(10)を介して構築することができ、これは、式(10)の正弦部分が適用されないという効果を有する。しかし、振幅aを大きくし、周期性pを変えると、
図8b)に見られるように、正弦波層が作成される。
図8c)に示すように、周期性pを増加させることにより、正弦層を圧縮することができる。換言すると、周波数を増加させることができる。確率層のこれらの3つの例は、PBFを介して製造できることも理解される。
【0051】
表面粗さは、同じサイズの2つのFCC型格子を示す
図9に示されている。
図9a)は、粗さを含まない元の格子を示す。したがって、拡大図では滑らかな表面を見ることができる。粗さを重ね合わせると(μ
roughおよびσ
rough=0.2)、
図9b)に示す拡大図のように、粗い表面の格子になる。
図9a)およびb)に示される格子の付加製造によって、表面粗さも付加製造で再現できることがわかる。
図9b)の下側の画像の拡大図における突起に留意されたい。
【0052】
ここで、多数の確率格子を生成する方法について説明する。まず、一般的に知られている格子タイプを作成するために、規則的な位置配列に球体を配置した。次に、球の位置に種々のタイプのランダム性を重ね合わせ、球を楕円体と仮定することによって球の半径を操作した。これは、確率格子を設計するための多くの方法をもたらす。等方的ランダム性は、操作可能な各パラメータに同じランダム性値を使用する場合である。異方的ランダム性は、ランダム性値がパラメータごとに異なる場合である。傾斜的ランダム性は、ランダム性値が、その位置に応じて最小値から最大値に変化する場合である。確率層は、2つの規則的な構造の間に挟まれた層であり、特定の厚さ、位置を有し、平坦または弓形である。確率的表面粗さは、構造全体にわたってあるランダム性値だけ表面を粗くするために用いられる。これらの結果は、多くのエンジニアリング用途に適用可能な方法である。
【0053】
図10は、ガスタービンエンジン10の一例を断面図で示す。ガスタービンエンジン10は、一連の流れに沿って、流入口12と、圧縮機部14と、燃焼器部16と、タービン部18と、を備え、これらは、概して流れに直列に、概して長手方向軸又は回転軸20の周りおよびその方向に、配列される。ガスタービンエンジン10は、回転軸20を中心に回転可能であり、かつガスタービンエンジン10を長手方向に貫通して延びるシャフト22を、さらに備える。シャフト22は、タービン部18を圧縮機部14に駆動的に接続する。
【0054】
ガスタービンエンジン10の動作において、空気流入口12を通して取り込まれた空気24は、圧縮機部14によって圧縮され、燃焼部またはバーナ部16に移送される。バーナ部16は、バーナプレナム26と、1つ以上の燃焼室28と、各燃焼室28に固定された少なくとも1つのバーナー30と、を備える。燃焼室28およびバーナー30は、バーナプレナム26の内側に配置されている。圧縮機14を通過する圧縮空気は拡散器32に入り、拡散器32からバーナプレナム26に排出され、ここから空気の一部分がバーナー30に入り、気体燃料または液体燃料と混合される。次いで、空気/燃料混合物は燃焼され、燃焼ガス34または燃焼からの作動ガスは、燃焼室28を通り移行ダクト17を経てタービン部18に導かれる。
【0055】
この例示的なガスタービンエンジン10は、バーナー30および燃焼室28をそれぞれ有する燃焼器缶19が環状配列されることによって構成される環状の燃焼器部の配置16を有し、移行ダクト17は、燃焼室28と連通する概して円形の入口と、環状部材の形態の出口と、を有する。移行ダクトの出口の環状配列は、燃焼ガスをタービン18に導くための環状部を形成する。
【0056】
タービン部18は、シャフト22に取り付けられた多数のブレード担持ディスク36を備える。本例では、2つのディスク36が、それぞれタービンブレード38の環状配列を担持している。しかしながら、ブレード担持ディスクの数は、異なっていてもよく、すなわち、1つのディスクのみであってもよく、または2つより多いディスクであってもよい。さらに、ガスタービンエンジン10の固定子42に固定された案内ベーン40が、タービンブレード38の環状配列のステージ間に配置されている。燃焼室28の出口と先導タービンブレード38との間には入口案内ベーン44が設けられ、作動ガスの流れをタービンブレード38条へと向かわせる。タービン部18は、タービンブレード38を取り囲み、作動ガス経路57の半径方向外面55を画定するタービンケーシング51を備える。半径方向内面59は、さらに作動ガス経路57を画定する。半径方向内面59と半径方向外面55との一部は、周知のように、ブレードおよび静ブレードのプラットフォームによって画定される。ブレード38の先端とケーシング51または半径方向外面55との間には、先端ギャップが画定される。
【0057】
燃焼室28からの燃焼ガスは、タービン部18に入り、タービンブレード38を駆動し、タービンブレードは次にシャフト22を回転させる。案内ベーン40、44は、タービンブレード38上の燃焼ガスまたは作動ガスの角度を最適化する役割を果たす。
【0058】
タービン部18は、圧縮機部14を駆動する。圧縮機部14は、軸方向に連なるベーン段部46およびロータブレード段部48を備える。ロータブレード段部48は、ブレードの環状配列を支持するロータディスクを備えている。圧縮機部14は、ロータ段を取り囲みベーンステージ46を支持する圧縮機ケーシング50も備えている。案内ベーン段部は、圧縮機ケーシング50に取り付けられる半径方向に延びるベーンの環状配列を含む。ベーンは、所与のエンジン作動点においてブレードに対して最適な角度でガス流を提示するように設けられる。案内ベーン段の幾つかは可変ベーンを有しており、ベーンの角度は、それ自体の長手方向軸の周りで、異なるエンジン動作条件で生じ得る空気流特性に応じて角度を調整することができる。
【0059】
圧縮機ケーシング50は圧縮機14の通路56の半径方向外側表面52を画定する。通路56の半径方向内側表面54は、少なくとも部分的にロータのロータドラム53により画定され、部分的にブレード48の環状配列により規定される。
【0060】
本発明は、単一の多段圧縮機と単一の一段又は複数段のタービンとを連結する、単一のシャフトまたはスプールを有する上記の代表的なタービンエンジンを参照して説明される。しかしながら、本発明は、2軸または3軸のシャフトエンジンに等しく適用可能であり、工業、航空、または海洋用途に使用することができることを理解されたい。
【0061】
上流および下流という用語は、特に明記しない限り、エンジンを通る空気流および/または作動ガス流の流れ方向を指す。前方および後方という用語は、エンジンを通る気体の一般的な流れを指す。軸方向、半径方向および円周方向という用語は、エンジンの回転軸20を基準としている。
【0062】
ガスタービン10は、熱交換器60を備える。熱交換器60は、熱交換器、回収熱交換器(リキュペレータ)または中間冷却器の単なる一例であり、他の周知の方法で配置され機能することができる。ここで、圧縮機14の下流部分からの圧縮空気は熱交換器60を通って送られ、熱交換器60を通ってタービン18の下流部分から導かれたガスから熱を得る。より高温の圧縮機空気は、燃焼に利益をもたらす。本発明による確率論的構造を組み込むことにより、確率論的構造を通過するガスは、より効果的かつ効率的に伝熱を増大させることができる。規則的な格子構造では、流体は、反復的な格子構造に起因してしばしば流れの停滞領域を生じる。確率論的構造では、構造のランダム化が、変化するまたはランダム化された構造が定常流条件を乱すので、流体が停滞することを防止する。確率論的構造は、既知の熱交換器の同じ体積または水力直径に対して、熱伝達を増加させ、圧力損失を減少させる、ことが理解される。
【0063】
次に、
図10に示すガスタービンエンジン10のブレード38、48の1つの概略図である
図11を参照する。ブレード38、48は、ロータディスクに固定するためのルート68、プラットフォーム60、および、その上に搭載されているエアフォイル1を備える。エアフォイル1は、前縁108および後縁106で接する圧力壁102および吸込壁104を備える。エアフォイルは、先端110を有する。圧力壁102における切欠き70は、本明細書に記載される確率論的構造を構成する内部容積(内部ボリューム)を表す。確率論的構造を通過する冷却流路が、タービンブレード、特にタービンブレード48、の圧力壁102および吸入壁103から冷却流路を通過する冷却剤への熱伝達を改善するために、形成される。確率論的構造は、重量を最小限に抑えながら、ブレードの構造的完全性を向上させる可能性がある。さらに、確率論的構造は徐々にランダム化され、ランダム化された特定の体積(ボリューム)を有するか、または変動する相対密度を有し、振動に対するブレードの応答を変調して減衰を提供することができる。
【0064】
図12a)は、例えば燃焼器タイル120上の従来の規則的な配列の台座122を示し、
図12b)は、本発明による台座126の配列を示し、この台座126は、タービン内の端部壁の熱遮蔽材、燃焼器壁またはタイル、およびブレードまたはベーンのタービンエアフォイルなどのガスタービン構成部品124に適用することができる。
図12a)において、台座の各列は、隣接する台座からオフセットされており、全ての台座は互いに一定の間隔をあけて配置されている。これらの既知の台座のサイズおよび形状は、配列全体にわたって一定である。
図12b)を参照すると、台座126からなる配列は、サイズ、位置、および間隔がランダム化された台座を有する。確率論的構造を形成する本方法は、親構造が、台座の規則的な配列(例えば、122)であり、単位セルからなる配列が、個々の台座である、ことを含む。
【0065】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に開示されるすべての特徴、および/またはそのように開示される任意の方法またはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組合せを除いて、任意の組合せで組み合わせることができる。
【0066】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に開示されるすべての特徴は、別段の明示的な記載がない限り、同じ、同等、または類似の目的を果たす代替的な特徴によって置き換えることができる。したがって、明示的に別段の記載がない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の等価物または類似の特徴の一例に過ぎない。
【0067】
本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規な1つまたは任意の新規な組み合わせ、あるいは、そのように開示された任意の方法またはプロセスのステップの任意の新規な1つまたは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
確率論的構造を形成する方法であって、
親構造を選択するステップであって、前記親構造は、単位セルからなる配列を規定するものであり、初期状態において前記単位セルからなる配列は均一である、ステップと、
前記単位セルからなる配列の各単位セルに、サイズ、幾何学的形状、相対密度、および少なくとも1つのノードを定義するステップと、
前記ノードのそれぞれに、オブジェクトまたは当該オブジェクトの一部に関する陰関数を配置するステップであって、当該オブジェクトは、その位置xc
n,yc
n,zc
n、および範囲rx
n,ry
n,rz
nを定義するパラメータ、または、少なくともパラメータx,y,zを有する式によって定義される形状、を有する、ステップと、
統計的分布を適用することによって、上記パラメータのうちのいずれか1つ以上をランダム化するステップであって、ここで前記統計的分布は標準偏差σを有し、当該標準偏差σは、それぞれの前記パラメータのランダム値が作成される3つの次元の少なくとも1つを制御するステップと、
前記標準偏差σのゼロより大きい値を選択して、パラメータのいずれか1つ以上のランダム化の度合いを定義し、これにより、前記確率論的構造を表す前記単位セルからなるランダム化された配列を作成するステップであって、前記単位セルからなるランダム化された配列は、等値面を含む3次元ボリュームデータを形成する、ステップと、
を含み、
当該方法は、前記等値面を、面および頂点を有するポリゴンでレンダリングして前記確率論的構造のソリッドモデルを形成し、任意に、付加製造プロセスで前記確率論的構造を印刷すること、
を含む、確率論的構造を形成する方法。
【請求項2】
物体または物体の一部についての前記陰関数は、楕円体、球体、多角形、極小曲面、または三重周期極小曲面のいずれか1つまたは組み合わせであ
る、
請求項1に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項3】
前記幾何学的形状は、体積、面積、または線のいずれか1つである、
請求項
1に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項4】
前記位置xc
n,yc
n,zc
nは、前記オブジェクトの中心の位置であり、
前記範囲rx
n,ry
n,rz
nは、前記オブジェクトの境界の互いに垂直な3次元における中心からの距離である、
請求項
1に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項5】
前記統計的分布は、ガウス分布、ポアソン分布、ワイブル分布、対数分布を含む群のいずれか1つである、
請求項
1に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項6】
前記ランダム化ステップは、パラメータxc
n,yc
n,zc
nの群のうちの少なくとも2つから標準偏差σのゼロより大きい値を選択することを含む、
請求項
1に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項7】
前記ランダム化ステップは、パラメータrx
n,ry
n,およびrz
nの群のうちの少なくとも2つから標準偏差σのゼロより大きい値を選択することを含む、
請求項
1に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項8】
前記ランダム化ステップは、3次元の任意の1以上の方向において標準偏差σ値を徐々に変化させることを含む、
請求項
1に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項9】
前記確率論的構造は、より大きな構造のランダム化されたボリュームであり、
当該方法は、正弦関数を用いてランダム化されたボリュームを定義するステップを含み、前記正弦関数は、振幅、周期、長さ、厚さ、およびより大きな構造内の位置を有する、
請求項
1に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項10】
当該方法は、密度が1または0であること、ここで1は体積内であり、0は体積外である、により3次元ボリュームデータ内の等値面を識別するステップと、
統計的分布からその平均値の近傍に正および負の値を生成するステップと、
負の値を1に、正の値を0に適用するステップと、
を含み、これにより、親構造の表面にランダム化された凹凸を作り出す、
請求項
1に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項11】
前記3次元ボリュームデータは、バイナリデータまたは距離関数データまたは符号付距離関数データを含む群のうちのいずれか1つである、
請求項
1に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項12】
前記単位セルからなる配列は、立方体、体心立方体、面心立方体、前記立方体と面心立方体との組合せ、を含む配列の群のいずれか1つからの配列を有する、
請求項
1に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項13】
前記相対密度RDは、前記単位セルからなる配列の配置に依存する制限RD
Limitを有し、ここで、相対密度RD≧RD
Limitの場合、前記確率論的構造はクローズドセルであり、相対密度RD<RD
Limitの場合、前記確率論的構造はオープンセルである、
請求項
1に記載の確率論的構造の形成方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法によって形成された確率論的構造を含む、構成部品。
【請求項15】
前記構成部品は、熱交換器、構造コア、音響パネル、周波数ダンパ、熱遮蔽体、伝熱式熱交換器、フィルタ、触媒コンバータ、衝撃吸収体、バッテリのうちのいずれか1つである、
請求項14に記載の構成部品。
【請求項16】
請求項1
4に記載の構成部品を備える、ガスタービンエンジン。
【国際調査報告】