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特表2024-536032シリンダー脱気ユニットおよび作動シリンダー
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  • 特表-シリンダー脱気ユニットおよび作動シリンダー 図1
  • 特表-シリンダー脱気ユニットおよび作動シリンダー 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】シリンダー脱気ユニットおよび作動シリンダー
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F15B15/14 335A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517409
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 DE2021000169
(87)【国際公開番号】W WO2023061522
(87)【国際公開日】2023-04-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178522
【氏名又は名称】ビューマッハ エンジニアリング インターナショナル ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブエター、ジョセフ
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA01
3H081AA03
3H081BB02
3H081CC10
3H081DD02
3H081DD39
(57)【要約】
本発明は、シリンダー脱気ユニットであって、基体、内側排出部分、環状室、および外側排出部分を備え、基体は、シリンダー残留空気空間の壁穿孔部において作動シリンダー上に位置的に固定して配置されるように設計されており、環状室を形成する凹状輪郭部を有し、内側排出部分は、内側排出チャネルおよび内側エラストマー環状体を有し、内側排出チャネルは、基体内に配置され、シリンダー残留空気空間を環状室に接続し、シリンダー残留空気空間に内側入口と、環状室に中間出口(2.4)とを有し、内側エラストマー環状体は、中間出口を覆い、予圧がかけられ、排出方向に第1の圧力障壁と、入口方向に第2のシール面とを形成するように設計され、外側排出部分は、外側排出チャネルおよび外側エラストマー環状体を有し、外側排出チャネルは、基体内に配置され、環状室を外部大気に接続し、シリンダー残留空気空間に中間入口と、環状室に外部出口とを有し、外側エラストマー環状体は、外部出口を覆い、予圧がかけられ、出口方向に第2の圧力障壁と、入口方向に第2のシール面とを形成するように設計される、シリンダー脱気ユニットに関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダー脱気ユニット(7)であって、
基体(1)、内側排出部分(2)、環状室(3)、および外側排出部分(4)を備え、
前記基体(1)は、シリンダー残留空気空間(5)の壁穿孔部(5.1)において作動シリンダー(8)上に位置を固定して配置されるように設計されており、前記環状室(3)を形成する凹状輪郭部(1.1)を有し、
前記内側排出部分(2)は、内側排出チャネル(2.1)および内側エラストマー環状体(2.2)を有し、
前記内側排出チャネル(2.1)は、前記基体(1)内に配置され、前記シリンダー残留空気空間(5)を前記環状室(3)に接続し、前記シリンダー残留空気空間(5)に内側入口(2.3)を有し、前記環状室(3)に中間出口(2.4)を有し、
前記内側エラストマー環状体(2.2)は、前記中間出口(2.4)を覆い、予圧がかけられ、排出方向に第1の圧力障壁を形成し、入口方向に第2のシール面を形成するように設計され、
前記外側排出部分(4)は、外側排出チャネル(4.1)および外側エラストマー環状体(4.2)を有し、
前記外側排出チャネル(4.1)は、前記基体(1)内に配置され、前記環状室(3)を外部大気(6)に接続し、前記シリンダー残留空気空間(5)に中間入口(4.3)を有し、前記環状室(3)に外側出口(4.4)を有し、
前記外側エラストマー環状体(4.2)は、前記外側出口(4.4)を覆い、予圧がかけられ、出口方向に第2の圧力障壁と、入口方向に第1のシール面とを形成するように設計され、
前記シリンダー脱気ユニット(7)は、完全排出動作状態、部分排出動作状態、および閉鎖動作状態を有するように設計され、
前記完全排出動作状態では、前記外部大気(6)に対して前記シリンダー残留空気空間(5)内に正圧が存在し、これにより前記第1の圧力障壁および前記第2の圧力障壁が乗り越えられ、前記シリンダー残留空気空間(5)から前記内側排出部分(2)、前記環状室(3)、および前記外側排出部分(4)を経由して前記外部大気(6)内への媒体出口が提供され、
前記部分排出動作状態では、前記環状室(3)に対して前記シリンダー残留空気空間(5)内に正圧が存在し、これにより前記第1の圧力障壁が乗り越えられ、前記シリンダー残留空気空間(5)から前記内側排出部分(2)を経由して前記環状室(3)内への媒体出口が提供され、
前記閉鎖動作状態では、前記第1の圧力障壁も前記第2の圧力障壁も乗り越えられず、前記内側排出部分(2)が前記環状室(3)に対して前記シリンダー残留空気空間(5)をシールし、前記外側排出部分(4)が前記外部大気(6)に対して前記環状室(3)をシールする、シリンダー脱気ユニット(7)。
【請求項2】
前記基体(1)は、円筒形の基本形状を有し、前記シリンダー残留空気空間(5)への中空の円筒形ボアホールとして形成された壁穿孔部内に収容されるように設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の筒内脱気ユニット(7)。
【請求項3】
前記内側エラストマー環状体(2.2)および前記外側エラストマー環状体(4.2)は、構造が同一であることを特徴とする、請求項1または2に記載のシリンダー脱気ユニット(7)。
【請求項4】
前記環状室(3)は、前記基体(1)の前記凹状輪郭部(1.1)および前記壁穿孔部の内側ジャケットによって形成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のシリンダー脱気ユニット(7)。
【請求項5】
前記閉鎖動作状態の前記環状室(3)は、前記外部大気(6)に対して正圧になるように設計されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のシリンダー脱気ユニット(7)。
【請求項6】
前記壁穿孔部(5.1)と密封接触するように設計され、前記シリンダー残留空気空間(5)と前記環状室(3)との間にシール面を形成する内側Oリング(9)を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のシリンダー脱気ユニット(7)。
【請求項7】
前記壁穿孔部(5.1)と密封接触するように設計され、前記環状室(3)と前記外部大気(6)との間にシール面を形成する外側Oリングを有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のシリンダー脱気ユニット(7)。
【請求項8】
前記内側排出部分(2)および前記環状室(3)と機能的に直列に配置された他の内側排出部分および他の環状室を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のシリンダー脱気ユニット(7)。
【請求項9】
シリンダー残留空気空間(5)および壁穿孔部(5.1)を備え、
前記壁穿孔部(5.1)に配置されたシリンダー脱気ユニット(7)を備え、前記シリンダー脱気ユニット(7)は、請求項1~8のいずれかに従って設計される、作動シリンダー(8)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動シリンダーを通気するためのシリンダー脱気ユニット、およびそのシリンダー脱気ユニットを備える作動シリンダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特に、単動式のリフトシリンダーまたはプル式シリンダー、つまり一方向の作動方向にのみ油圧作動し、負荷がかかっている場合またはバネの力によって制御されている場合に開始位置に戻ることができる作動シリンダーの場合、溶存ガスおよび湿気が、油圧媒体の高圧下でピストンシールを通って空の動作室に入る可能性がある。これは、空の動作室がピストンのストローク動作に起因する容積の変化を受けるため、ピストンの戻り動作中に空の動作室内に生成される負圧によってさらに悪化する。
【0003】
したがって、作動動作中に空の動作室を再度通気する必要がある。脱気は、このようなガスを排出し、空の動作室内の圧力比を制御するために行われる。最先端技術では、例えば、この目的のために、空の動作室を周囲雰囲気と接続する空気交換ボアホールが設けられている。
【0004】
ピストンの交互動作中に外部大気およびそれに含まれる汚染物質がシリンダーの空の動作室に入るのを防ぐために、そのような空気交換ボアホールには、例えば最新技術の機能要素が設けられている。
【0005】
最先端技術では、この問題に対する様々な解決策が説明されている。例えば、多孔質材料で作られた純粋なフィルタ要素、または片側セルフロック機能を備えたバルブが知られている。それらは、閉じ込められたガスを逃がすことを可能にする。また、外部大気およびそれに含まれる塵埃の逆流も防ぐ。
【0006】
技術的によく設計された解決策が、特許文献1(DE202011102288U1)に記載されている。そこに記載されているガス交換障壁は、一体化されたフィルタ要素を備えた逆止弁を規定しており、モジュールとして設計されているため、設置が容易である。既存の解決策の欠点は、特に設計が複雑なことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国登録実用新案第202011102288号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、作動シリンダーのシリンダー残留動作室の脱気を、構造的に簡単で、コスト効果が高く、特に信頼性の高い方法で行うことができ、異なるパラメータに適応できるシリンダー脱気ユニットを開示することである。さらに、課題は、そのようなシリンダー脱気ユニットを備えた作動シリンダーを開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
シリンダー脱気ユニットに関しては、請求項1に記載された構成によって課題が解決され、作動シリンダーに関しては請求項9に記載された構成によって課題が解決される。好ましい実施形態は、関連する従属請求項から得られる。
【0010】
本発明によれば、シリンダー脱気ユニットの基本構成要素は、基体、内側排出部分、環状室、および外側排出部分である。
【0011】
シリンダー脱気ユニットは、コンパクトなモジュール式構成要素として設計されている。通常、シリンダー脱気ユニットは、リフトシリンダーまたはプル式シリンダーのピストン室の通気または脱気に使用される。
【0012】
本発明によれば、シリンダー脱気ユニットは、作動シリンダー内に油圧媒体によって加圧されていないシリンダー残留空気空間が存在し、その容積が作動シリンダーのピストンのストローク運動の結果として変化するという事実に基づいている。作動シリンダーには、シリンダー残留空気空間とシリンダー脱気ユニットを介して導かれる外部大気との間の接続を提供する壁穿孔部が設けられている。
【0013】
基体は、油圧作動シリンダー(以下、作動シリンダーとも略記する)上に位置的に固定された配置に使用される。本発明が意図した通りに使用される場合、基体は、作動シリンダーの壁穿孔部内の少なくとも一部に配置される。
【0014】
基体は、凹状輪郭部を有し、これは、好ましくは、円周方向の環状ギャップまたは円周方向の環状溝の設計において環状室を形成する。凹状輪郭部は、好ましくは、基体のテーパの付いた直径として設計され、壁穿孔部の内側ジャケットと共に、環状室を提供する円周方向の空洞を形成する。
【0015】
環状室の容積は、貯蔵可能な空気の容積と流出する容積流量を制御する。さらに、環状室は、圧力室の機能を引き継ぐ。
【0016】
本発明によれば、内側排出部分は、内側排出チャネルと内側エラストマー環状体とを有する。
【0017】
内側排出チャネルは、基体内に配置され、特にボアホールとして設けることができる。内側排出チャネルは、シリンダー残留空気空間を環状室と接続する。内側排出チャネルの一端には、シリンダー残留空気空間に配置されたこの目的のための内側入口がある。環状室の中間出口は、内側排出チャネルの他端に位置する。
【0018】
内側のエラストマー環状体は、中間出口を覆っており、予圧がかけられている。内側エラストマー環状体は、出口方向に第1の圧力障壁と、入口方向に第2のシール面とを形成するように設計されている。
【0019】
外側排出部分は、内側排出部分と同様に構成されている。これも基体内に配置され、外側排出チャネルと外側エラストマー環状体を有する。
【0020】
外側排出チャネルは、環状室を外部大気と接続する。この目的のために、好ましくは傾斜した外側排出チャネルは、第1の端部のシリンダー残留空気空間に中間入口を有し、その反対側の端部に外部大気への外側出口を有する。外側エラストマー環状体は、外側出口を覆う。内側エラストマー環状体と同様に、外側エラストマー環状体にも予圧がかけられ、出口方向に第2の圧力障壁と、入口方向に第1のシール面とを形成するように設計される。第2の圧力障壁を乗り越えると、排出媒体は、大気の低圧領域に出る。
【0021】
本発明の目的上、排出方向は、内側から外部への方向、すなわちシリンダー残留空気空間から外部大気に向かう方向であると理解される。排出方向は、排出媒体がシリンダー残留空気空間から外部大気へ出る可能性のある経路を表す。
【0022】
入口方向は、出口方向とは反対の方向であると理解される。
【0023】
圧力障壁の指定の順序は、排出方向に従い、シール面の指定の順序は、入口方向に従う。
【0024】
排出媒体は、特に、圧力差の結果として油圧媒体から脱気される空気またはガスなどの気体媒体であるか、または場合によっては、ピストン運動の結果として作動シリンダーの内側ジャケットが剥がれることによってシリンダー残留空気空間に少量ずつ入る可能性のある油圧媒体であるか、または漏れ流として入る可能性のある油圧媒体であるか、または凝縮物でもあり得る。以下、時には排出媒体をガスまたは空気ともいう。
【0025】
動作条件に応じて、シール面により、シリンダー残留空気空間および内側排出チャネルの高圧範囲、環状室および外側排出チャネル内の内側エラストマー環状体の下流から外側環状体までの中圧範囲、および外部大気の低圧範囲に分割することが可能である。
【0026】
材料の硬度、基体に取り付けた後の予圧、およびそれぞれのエラストマー環状体の肉厚、ならびに中間出口または外側出口の開口断面積が、排出媒体の流出に必要な圧力を規定する。
【0027】
内側排出チャネル内で規定の圧力に達すると、内側エラストマー環状体が拡張し、排出媒体は、環状室内に逃げることができる。予圧によって提供される閉鎖力により、流出後のシリンダー残留空気空間にも規定の圧力が残る。
【0028】
外側出口も同様である。最小圧力に達すると、外側エラストマー環状体が拡張し、外側出口は塞がれなくなる。ガスは、中間室から外側排出チャネルおよび外側出口を介して大気中に逃げることができる。外側のエラストマー環状体の予圧は、外側出口を閉じる残留圧力値を規定する。このようにして、環状室内で規定の圧力を維持することができ、ここでは中間圧力範囲とも呼ばれる。
【0029】
本発明によれば、空気分配モジュールはさらに、完全排出動作状態、部分排出動作状態、および閉鎖動作状態を有するように設計される。
【0030】
完全排出動作状態では、外部大気と比較してシリンダー残留空気空間には正圧が存在する。この正圧は、第1および第2の圧力障壁を乗り越え、シリンダー残留空気空間から内側排出部分、環状室、および外側排出部分を介して外部大気への排出媒体の媒体出口に至る。この場合、シリンダー残留空気空間では高圧、環状室では中圧、外部大気では低圧という上記の異なる圧力条件が提供される。
【0031】
部分排出動作状態では、環状室と比較してシリンダー残留空気空間には正圧が存在する。この正圧は、第1の圧力障壁を乗り越え、媒体は、シリンダー残留空気空間から内側排出部分を介して環状室内に逃げる。しかしながら、部分排出動作状態では、圧力差は、第2の圧力障壁も乗り越えるほど大きくない。第1のシール面は、閉鎖したままである。
【0032】
閉鎖動作状態では、第1の圧力障壁も第2の圧力障壁も乗り越えられない。内側排出部分は、シリンダー残留空気空間を環状室からシールし、外側排出部分は、環状室を外部大気に対してシールする。
【0033】
本発明に係るシリンダー脱気ユニットにより、いくつかの特別な利点を提供する驚くほど単純な設計解決策が見出された。
【0034】
バルブ効果と圧力制御の両方が、特に単純で堅牢な手段による機能統合で実現される。
【0035】
有利には、最初にシリンダー残留空気空間から環状室へ、次にそこから大気へという二段階の排出経路が、2つの障壁形成エラストマー環状体によって提供される。この設計は、エアロック機能を実装する。これは、シリンダー残留空気空間がシリンダーの周囲と直接接続されていないことを意味する。これにより、大気環境の有害な影響に対するシリンダー残留空気空間の保護が強化される。塵埃の粒子、有害なガス、またはエアロゾルは、2段階で遮断され、シリンダー内に侵入してシリンダーを損傷する可能性はない。
【0036】
有利には、環状室は、外側排出部分によって汚染からすでに遮蔽されているため、特に内側エラストマー環状体は、特別に保護され、外部大気の問題のある条件下でもその機能が損なわれない。
【0037】
別の有利な点は、本発明によって可能となる環状室内の規定の残留圧力である。特に有利な点として、機能統合時の残圧によっていくつかの有利な効果を達成することができる。
【0038】
一方では、残留圧力は、有利な圧力カスケードの一段階であり、シリンダー残留空気空間の可能な最大圧力と外部大気の単なる大気圧との間の中間圧力レベルを提供する。したがって、全圧力差は、2つの段階に有利に分割される。
【0039】
一方、シリンダー残留空気空間が外部大気と比較して負圧であっても、環状室と外部大気との間が正圧となるため、環状室への外部空気の侵入が防止されるという有利な効果がある。
【0040】
内側ピストンリング(入口方向に向かって見て)に残留圧力を加えることで、残留圧力は、閉鎖動作状態での内側ピストンリングのシール効果を支援する。
【0041】
これにより、外部空気および汚染粒子が侵入する危険を冒すことなく、ピストンのストローク動作中にシリンダー残留空気空間の体積が増加することにより、シリンダー残留空気空間に負圧を提供することができる。したがって、ピストンの作動運動が支援され、エネルギー効率が向上する。
【0042】
また、急速なピストン運動中に流出する空気が少なくとも2つの圧力段階に移行することにより、騒音公害の軽減が達成されるという利点もある。排出流は、環状室によって緩衝される。これにより、正圧範囲から負圧範囲に直接排出する従来のシリンダーに特有の大きなヒスノイズが回避される。
【0043】
もう1つの利点は、デザインが単純であることである。基体は、切削加工部品として簡単に提供できる。エラストマー環状体は、単純なホースセクションまたはゴムリングとして設計できる。この設計には、特に堅牢であるという利点がある。また、環状体は、容易に交換でき、必要に応じて新しくすることができる。有利なことに、基体は、外側排出部分と共に軸方向外側に突出するように壁穿孔部内に配置することができ、これにより、環境の影響により大きな応力を受ける可能性のある外側エラストマー環状体を、壁穿孔部からシリンダー脱気ユニットを取り外すことなく、好ましくは工具を使用することさえもなく交換することができる。
【0044】
さらに、エラストマー環状体の予圧を選択することにより、同じ寸法の排出チャネルおよび出口を備えた同じ基体を使用しながらも、特定の用途に合わせてシリンダー残留空気空間内と環状室内の所望の圧力を指定することができる。また、出口の断面を変更することにより、さらなる適応も可能である。
【0045】
前述の請求項に記載のシリンダー脱気ユニットの第1の有利なさらなる発展形態では、基体は、円筒形の基本形状を有し、シリンダー残留空気空間の壁に中空の円筒形ボアホールとして形成された壁穿孔部内に収容される。
【0046】
有利なことに、基体は、作動シリンダーの壁穿孔部の対応する雌ねじに係合する雄ねじを備えて設計することができる。しかしながら、例えば圧入のような他の接続も可能である。
【0047】
さらに有利な一実施形態によれば、内側エラストマー環状体と外側エラストマー環状体は、構造が同一である。
【0048】
このさらなる発展形態により、設計のさらなる簡素化と最適化が可能になる。それにもかかわらず、第1の圧力障壁として中間出口で内側エラストマー環状体によって、および第2の圧力障壁として外側出口で外側エラストマー環状体によって、異なる差圧を提供する場合、例えば、排出チャネルのそれぞれの出口の異なる断面積またはエラストマー環状体の軸受座の異なる直径を選択することによって、これは依然として可能である。
【0049】
シリンダー脱気ユニットの別の有利なさらなる一発展形態では、環状室は、基体の凹状輪郭部と壁穿孔部の内側ジャケットとによって形成される。
【0050】
基体の凹状輪郭部は、好ましくは材料を旋盤で削ることによって、費用効果が高く簡単な方法で製造することができる。しかしながら、非放射対称の凹状輪郭部をフライス加工することも可能である。基体の凹状輪郭部の幾何学的なデザインは、略円筒形の内側ジャケットと共に、環状室の形状および容積を画定する。このようにして、圧力条件と流れの挙動に目標指向の方法で影響を与えることができる。
【0051】
シリンダー脱気ユニットの別の有利なさらなる一発展形態では、閉鎖動作状態にある環状室は、外部大気に対して正圧になるように設計されている。
【0052】
正圧により、環状室内にエアロック機能が生成される。塵埃またはその他の汚染された空気の侵入は、永続的に存在する正圧によって防止される。環状室内の正圧は、ピストンのストローク運動中、あらゆる可能なピストン位置、ならびにシリンダー残留空気空間のあらゆる可能な圧力状態において維持される。環状室内の正圧は、外部大気および汚染物質が環状室に入るのを防ぎ、第2のシール面としての機能における内側エラストマー環状体のシール効果を支援する。
【0053】
シリンダー脱気ユニットの別の有利な一発展形態では、壁穿孔部と密封接触するように設計され、シリンダー残留空気空間と環状室との間にシール面を形成する内側Oリングを有する。
【0054】
このさらなる発展形態は、構造設計をさらに簡素化し、圧力制御機能およびバルブ機能の有効性を向上させる方法を示している。
【0055】
シリンダー脱気ユニットの別の有利な一発展形態では、壁穿孔部と密封接触するように設計され、環状室と外部大気との間にシール面を形成する外側Oリングを有する。
【0056】
ここでも、内側のOリングと同様に、構造設計がさらに簡素化され、圧力制御機能およびバルブ機能の有効性が向上する。
【0057】
前述の請求項に記載のシリンダー脱気ユニットの別の有利なさらなる一発展形態では、内側排出部分および環状室と直列に機能的に配置された他の内側排出部分および他の環状室を有する。
【0058】
さらなる発展形態は、多段階設計を第3の段階またはさらなる段階でさらに拡張できるというさらなる特別な利点に基づいている。
【0059】
ピストンの移動速度および印加圧力範囲が異なる用途に応じて、シリンダー脱気ユニット内でさらなる圧力段階を直列に接続できる。これにより、減衰、騒音の発生、流出ガスの挙動を制御し、さらに改善することができる。また、シリンダー残留空気空間と外部大気との間の全圧力差を同じに維持しながら、個々の圧力段階間で達成される圧力差が有利に低減される。
【0060】
本発明のさらなる一態様は、作動シリンダーに関するものである。それは、通路を提供する、関連する壁穿孔部を備えたシリンダー残留空気空間を有する。
【0061】
また、本発明に係るこの作動シリンダーは、壁穿孔部に配置された本発明に係るシリンダー脱気ユニットを有する。シリンダー脱気ユニットは、請求項1~8のいずれか一項に従って設計される。
【0062】
有利には、本発明に係る作動シリンダーは、流体によって一方向にのみ作動する単動油圧作動シリンダーとして設計される。ピストンシールを備えたピストンによって境界が定められた空の動作室は、シリンダー残留空気空間を形成する。空の動作室とは、例えばプル式シリンダーの場合はピストン室、加圧式シリンダーの場合はピストンロッド室である。さらに、作動シリンダーは、それ自体既知の方法で設計される。
【0063】
本発明は、例示的な一実施形態として、以下の図を用いてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】作動シリンダーの概略断面図。
図2】シリンダー脱気ユニットの概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0065】
様々な図における同じ符号は、同じ構成または構成要素を指す。関連する図に符号が示されていなくても、符号はまた、説明で使用される。
【0066】
図1は、シリンダー脱気ユニット7が取り付けられた作動シリンダー8の例示的な一実施形態の概略断面図を示す。
【0067】
この例示的な実施形態では、作動シリンダー8は、油圧プル式シリンダーである。シリンダー壁に横方向の加圧媒体接続部があり、そこを通じて加圧媒体をピストンロッド室に加えることができる。このようにして、ガイド閉鎖部に面するピストンの環状面に圧力が加えられ、ピストンロッドが結合されたピストンが内方へのストローク運動を行う。シリンダー残留空気空間は、加圧されず、空のままである。シリンダー残留空気空間5の容積は、ストローク運動の結果として変化する。
【0068】
例示的な実施形態では、シリンダー脱気ユニット7は、壁穿孔部5.1の幅広セクション内のシリンダー残留空気空間5に接続して配置され、壁穿孔部5.1は、ボアホールとして設計され、シリンダー残留空気空間5に割り当てられ、シリンダー残留空気空間5と共に均一な圧力室を形成する。この構成により、シリンダー脱気ユニット7は、ピストンの後退動作中にシリンダー残留空気空間5を排気することができる。シリンダー脱気ユニット7のさらなる詳細を以下の図2に示す。
【0069】
図2は、シリンダー脱気ユニット7の概略断面図を示す。
【0070】
それは、基体1、内側排出部分2、および外側排出部分4から構成される。さらに、環状室3は、基体1の凹状輪郭部1.1によって形成される。
【0071】
意図したとおりに設置されると、内側排出部分2は、ボアホールとして設計された作動シリンダーの壁穿孔部5.1内に配置され、その内側排出チャネル2.1によってシリンダー残留空気空間5に圧力接続される。内側排出チャネル2.1は、ボアホールのシリンダー残留空気空間5の内側入口2.3から始まり、中間出口2.4に通じ、そこから環状室3に通じる。中間出口2.4は、内側エラストマー環状体2.2によって覆われており、例示的な実施形態では、内側エラストマー環状体2.2は、平坦な断面を有する伸張されたゴムリングまたはプラスチックリングとして設計される。例示的な実施形態では、シリンダー残留空気空間5と環状室3との間のシールおよび圧力分離は、内側Oリング9によって提供される。
【0072】
外側排出部分4も同様に設計されており、外側排出チャネル4.1と外側エラストマー環状体4.2とから構成される。ボアホールとして設計された外側排出チャネル4.1は、基体1を貫通する。外側排出チャネル4.1は、環状室3への中間入口4.3との圧力接続を有し、外側エラストマー環状体4.2の外側出口4.4で排出方向に終わり、したがって、本発明に係る装置の一部ではない外部大気6に通じている。
【0073】
例示的な実施形態のプル式シリンダーの能動ストローク運動のために、油圧加圧媒体は、ピストンロッド室内に案内され、そこでピストンをピストン底部の方向に移動させる。ピストン室内の容積が減少し、そこに蓄積される排出媒体の圧力が増加する。この場合、ピストン室は、シリンダー残留空気空間5となる。
【0074】
シリンダー残留空気空間5内に正圧が存在し、それがエラストマー環状体2.2の予圧を上回るほど高い場合、排出されるガスは、内側入口2.3を介して内側排出チャネル2.1に流れ込み、それを通って中間出口2.4に流れ、そこから内側エラストマー環状体を通って環状室3に流れ込む。例示的な実施形態では、環状室3は、基体1の凹状輪郭部1.1と、ここでは垂直破線で概略的に示されるボアホールの壁とによって形成される円周方向の空洞である。
【0075】
中間出口2.4は、内側エラストマー環状体2.2によって閉じられ、内側エラストマー環状体2.2は、特定の圧力が与えられた場合にのみ開く。作動シリンダーのシリンダー残留空気空間5内の正圧領域から環状室3の中圧領域へと入る。この圧力差により、環状室3は、排出媒体で満たされる。
【0076】
その後、ガスは、外側排出部分4に流入する。ガスは、中間入口4.3を介して外側排出チャネル4.1に流入する。外側出口4.4は、外側エラストマー環状体4.2によって閉じられる。これも、ガスが一定の圧力になると開き、外部大気、つまり負圧領域にガスが流入することを可能にする。
【0077】
ピストンが伸長方向に受動的にストローク運動している間、ピストン室内の容積が再び増加し、圧力が低下する。両方のエラストマー環状体2.2、4.2は、それぞれ関連する出口2.4、4.4と接触し、それらを閉じて、こうして第1および第2のシール面を形成する。ここでシリンダー残留空気空間5内の圧力が外部大気6よりも低くなったとしても、内側エラストマー環状体2.2による中間出口2.4の(第2のシールレベルとしての)閉鎖により、および第2の圧力障壁としての外側出口における外側エラストマー環状体4.2の予圧により、環状室3内には外部大気6と比較して相対的な正圧が残る。この相対的な正圧により外部空気の侵入を確実に防ぐ。これが閉鎖動作状態である。
【0078】
符号5、3、6の周りの円は、異なる圧力ゾーンを示している。さらに、水平方向の破線は、異なる圧力ゾーンの境界を概略的に示している。
【符号の説明】
【0079】
1 基体
1.1 凹状輪郭部
2 内側排出部分
2.1 内側排出チャネル
2.2 内側エラストマー環状体
2.3 内側入口
2.4 中間出口
3 環状室
4 外側排出部分
4.1 外側排出チャネル
4.2 外側エラストマー環状体
4.3 中間入口
4.4 外側出口
5 シリンダー残留空気空間
5.1 壁穿孔部
6 外部大気
7 シリンダー脱気ユニット
8 作動シリンダー
9 内側Oリング
図1
図2
【国際調査報告】