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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】フォーム製品とその製造
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240927BHJP
   C08K 5/01 20060101ALI20240927BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 93/04 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08J9/04 CEZ
C08K5/01
C08K5/13
C08L93/04
C08L75/04
C08L67/02
C08L97/00
C08L101/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518168
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2022076600
(87)【国際公開番号】W WO2023046936
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】2113701.3
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507193412
【氏名又は名称】キングスパン・ホールディングス・(アイアールエル)・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】ディー スフライファー,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】プルズ,トム
(72)【発明者】
【氏名】マック,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】バトラー,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ゼーヘラール,ルード
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA02
4F074AA56
4F074AA59
4F074AA60
4F074AA66
4F074AA78
4F074AD11
4F074AG02
4F074BA39
4F074CA25
4F074CC04Y
4F074CC06Y
4F074CC22X
4F074DA02
4F074DA07
4F074DA08
4F074DA10
4F074DA12
4F074DA18
4F074DA32
4J002AF02X
4J002AH00W
4J002CF06X
4J002CK02X
4J002EA016
4J002EB016
4J002EJ017
4J002EJ027
4J002FD02X
4J002FD207
4J002FD326
4J002GF00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】環境負荷を低減する材料、特に、良好な断熱性能を有しながら環境への影響が少ない断熱材を提供する必要がある。
【解決手段】その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と該気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、発泡体の少なくとも5重量%が、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成されているフォーム製品。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体の少なくとも5重量%が、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成されているフォーム製品。
【請求項2】
前記フォーム製品が、可塑剤としてカルダノール、ロジン、または、ポリエチレンテレフタレート;ポリウレタン;及び/またはポリイソシアヌレート;またはそれらの組合せに由来するポリオールからなる、請求項1に記載のフォーム製品。
【請求項3】
前記再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分がフェノール化リグニンからなる、請求項1または2に記載のフォーム製品。
【請求項4】
前記再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分がスルホン化リグニンからなり、任意により前記スルホン化リグニン中の硫黄の重量が少なくとも2重量%である、請求項1乃至3のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項5】
前記再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分が熱分解リグニン(pyrolytic lignin)からなる、請求項1乃至4のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項6】
前記再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分が、紙及び/またはパルプ工程に由来する技術的リグニン(technical lignin)からなる、請求項1乃至5のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項7】
前記再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分がソーダリグニンからなる、請求項1乃至6のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項8】
前記再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分がオルガノソルブリグニンからなる、請求項1乃至7のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項9】
前記再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分が解重合リグニン(depolymerised lignin)からなる、請求項1乃至8のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項10】
前記再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分がクラフトリグニンからなる、請求項1乃至9のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項11】
スルホン化した前記クラフトリグニン中の硫黄の重量パーセントが少なくとも2重量%である、請求項10に記載のフォーム製品。
【請求項12】
前記スルホン化したクラフトリグニンの重量平均分子量(Mw)が2000乃至23000ダルトン(Da)である、請求項10または11に記載のフォーム製品。
【請求項13】
メタノールからなる組成物から形成されるフォーム製品であって、前記メタノールは、規格EN15804:2012+A2:2019に従って測定されるGWP-totalが-0.5未満である、フォーム製品。
【請求項14】
フェノールからなる組成物から形成されるフォーム製品であって、前記フェノールは、規格EN15804:2012+A2:2019に従って測定されるGWP-totalが1未満である、フォーム製品。
【請求項15】
メタノールとフェノールからなる組成物から形成されるフォーム製品であって、前記メタノールは、規格EN15804:2012+A2:2019に従って測定されるGWP-totalが-0.5未満であり、前記フェノールは、規格EN15804:2012+A2:2019に従って測定されるGWP-totalが1未満である、フォーム製品。
【請求項16】
その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体は、フェノール材料とホルムアルデヒドとの反応から形成され、使用される前記ホルムアルデヒドの少なくとも10重量%、例えば少なくとも20重量%、例えば少なくとも30重量%、例えば少なくとも40重量%、望ましくは少なくとも50重量%はバイオホルムアルデヒドである、フォーム製品。
【請求項17】
前記バイオホルムアルデヒドはバイオメタノールから製造される、請求項16に記載のフォーム製品。
【請求項18】
前記バイオメタノールはバイオ廃棄物の発酵によって製造される、請求項17に記載のフォーム製品。
【請求項19】
前記バイオメタノールは、合成ガス(synthetic gas)、例えば林業廃棄物などのバイオ廃棄物のガス化によって得られる合成ガスから製造される、請求項16乃至18のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項20】
その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体はフェノールとの反応から形成され、前記フェノールの少なくとも10重量%、例えば少なくとも15重量%、例えば少なくとも20重量%、例えば少なくとも25重量%はバイオフェノールから形成される、フォーム製品。
【請求項21】
前記バイオフェノールはバイオベンゼンから、任意により木材廃棄物及び製紙などの木材加工の副産物を含む木質材料などのバイオ廃棄物の熱分解を用いて、製造される、請求項20に記載のフォーム製品。
【請求項22】
前記バイオベンゼンはトール油から作られる、請求項21に記載のフォーム製品。
【請求項23】
前記発泡体の少なくとも7重量%、例えば少なくとも10重量%、例えば少なくとも15重量%、望ましくは少なくとも20重量%、任意により少なくとも25重量%、例えば少なくとも30重量%は、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成される、請求項1乃至22のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項24】
前記発泡剤の少なくとも70%(発泡剤の総重量に基づいて)は、気相の熱伝導率が25℃で12mW/m.k以下、例えば11.8mW/m.k以下である、請求項1乃至23のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項25】
前記再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分の重量は炭素を含み、規格EN16640:2017に従って測定され、C14測定に基づいている、請求項1乃至24のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項26】
前記発泡体は、規格EN16640:2017に従って測定して3%超のC14炭素含有量を有する、請求項1乃至25のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項27】
前記フォーム製品の耐用25年の平均熱伝導率が、規格EN16783:2017に従って測定して0.025W/m.K以下である、請求項1乃至26のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項28】
前記フォーム製品の耐用50年の平均熱伝導率が、規格EN16783:2017に従って測定して0.026W/m.K以下である、請求項1乃至27のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項29】
前記フォーム製品の総地球温暖化係数が、規格EN16783:2017に従って測定して1.7kg-COeq/kgと同等以下、例えば1.5kg-COeq/kgと同等以下、例えば-0.5kgCOeq/kgと同等以下である、請求項1乃至28のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項30】
前記フォーム製品の地球温暖化係数-生物起源が、規格EN16783:2017に従って測定して-0.2kg-COeq/kgと同等以下、例えば-0.4kg-COeq/kgと同等以下である、請求項1乃至29のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項31】
前記発泡体を形成する前記成分は、再生可能な一次エネルギー資源が規格EN16783:2017に従って測定して0.7MJ/kgと同等以下である、請求項1乃至30のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項32】
前記フォーム製品は、規格EN ISO11925-2で定める単一火炎発生源テスト(single flame source test)で火炎高さ<100mmの耐火性能を発揮する、請求項1乃至31のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項33】
前記フォーム製品は、規格EN ISO4590で測定される独立気泡率が少なくとも90%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも94%、任意により少なくとも95%である、請求項1乃至32のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項34】
規格ASTM C421-08(2014)で測定される破砕性が20%未満である、請求項1乃至33のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項35】
規格EN 826:2013で測定される圧縮強度が100kPa以上である、請求項1乃至34のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項36】
前記フォーム製品は、規格EN1602:2013で測定して10kg/m乃至125kg/mの密度、例えば約15kg/mから約100kg/m、好ましくは約15kg/mから約60kg/m、好適には約20kg/mから約35kg/mの密度を有する、請求項1乃至35のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項37】
前記フォーム製品はフェノールフォーム製品である、請求項1乃至36のいずれかに記載のフォーム製品。
【請求項38】
請求項1乃至37のいずれかに記載される構成の組合せからなるフォーム製品。
【請求項39】
その中に画成された気泡を有する発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品における色付与添加剤としてのリグニンの使用。
【請求項40】
その中に画成された気泡を有する発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品における色安定化添加剤としてのリグニンの使用。
【請求項41】
前記発泡体は規格EN16640:2017に従って測定して3%超のC14炭素含有量を有する、フォーム製品。
【請求項42】
前記発泡体は規格EN16640:2017に従って測定して3%超のC14炭素含有量を有する発泡体からなる、フェノールフォーム製品。
【請求項43】
その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と、前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体は再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成され、前記発泡体は、ゆりかごからゲートまでの段階(Cradle-to-gate stages)(A1~A3)について1.0kg-COeq/kg未満(規格EN16783:2017に従って測定)の総GWP(地球温暖化係数)を有する、フォーム製品。
【請求項44】
その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体は、EPD評価がライフサイクルA-Dについて、規格EN 15804:2012+A2:2019に従って測定して1.0kg-COeq/kgであるフォーム製品。
【請求項45】
その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体の少なくとも5重量%が、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成され、任意により前記フォーム製品の耐用25年の平均熱伝導率が、規格EN12667またはEN12939に従って測定して0.025W/m.K以下である、フォーム製品。
【請求項46】
その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体の少なくとも5重量%が、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成され、任意により前記フォーム製品の耐用50年の平均熱伝導率が、規格EN12667またはEN12939に従って測定して0.026W/m.K以下である、フォーム製品。
【請求項47】
その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体の少なくとも5重量%が、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成され、任意により前記フォーム製品の耐用25年の平均熱伝導率が、規格EN13166及び/またはEN14314に従って測定して0.025W/m.K以下である、フォーム製品。
【請求項48】
その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体の少なくとも5重量%が、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成され、任意により前記フォーム製品の耐用50年の平均熱伝導率が、規格EN13166及び/またはEN14314に従って測定して0.026W/m.K以下である、フォーム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーム製品、特に断熱フォーム及びその製造に関する。特に、環境負荷が低く、しかも良好な断熱性能を有するフォーム製品に関する。また、持続可能性の高い独立気泡断熱フォーム製品に関する。更に、フェノール構造とアルデヒドの縮合に基づくフェノールフォーム製品、この持続可能な断熱フォームを形成するための組成物、及びこの持続可能なフォームの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2016年に批准されたパリ協定では、今世紀の世界の気温上昇を産業革命以前のレベルを上回る摂氏2度未満に抑えることで危険な気候変動を回避し、さらに気温上昇を摂氏1.5度まで抑える努力を追求する、という長期目標が合意された。これらの目標を達成するためには行動が必要であり、大幅な改善が可能な分野の一つが建築物である。
【0003】
国連環境計画によると、建物とその建設は合わせて毎年世界のエネルギー使用量の36%、エネルギーに関連する二酸化炭素排出量の39%を占めている。米国エネルギー情報局によると、エネルギー消費の40%を住宅用及び商業用建物が占めている。また、EUでは、最終エネルギー消費の40%近く、及び温室効果ガス排出量の36%が、住宅、オフィス、店舗、その他の建物によるものである。従って、建築ストックのエネルギー性能を向上させることは、地球温暖化を抑制するために極めて重要である。
【0004】
独立気泡フォーム製品のような独立気泡発泡断熱材料などの断熱材の使用は、建物のエネルギー消費を削減するという目的において重要な役割を果たす。例えばポリイソシアヌレート(PIR)、ポリウレタン(PUR)、押出ポリスチレン(XPS)、及びフェノールまたはフェノール-ホルムアルデヒド(PF)フォームのような独立気泡発泡断熱材料は、人造鉱物繊維(MMMF)断熱材(耐火性セラミック繊維(RCF)、ガラス繊維、グラスウール、ロックウール、スラグウール、ガラスフィラメントなど)及び発泡ポリスチレン(EPS)のようなより伝統的な断熱材に比べて、同等の断熱厚みで断熱性能を向上させる。
【0005】
独立気泡発泡断熱材料は、既存の建物のリノベーションにおいてエネルギー消費を削減する解決策を提供する。多くの場合、断熱材を設置できるスペースは既存の構造によって制限されている。独立気泡PF断熱材(低熱伝導率PF:λ=0.018W/m.k)の使用によって、同じ厚さの伝統的な断熱材(高熱伝導率MMMF:λ=0.038W/m.k)を設置した場合と比較して、熱損失を略半減させることができる。
【0006】
高性能な断熱材料、例えば真空断熱パネル、ナノ粒子断熱材、エアロゲル断熱材は、独立気泡断熱材料に比べてさらに高い断熱性能を発揮するが、これらの断熱材は、その価格対性能比が商業的な観点から魅力的でなくしている。真空断熱パネルの場合、さらに不利なことは、建築現場で必要に応じて製品を成形できないことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した状況にも拘わらず、環境負荷を低減する材料を提供する必要がある。特に、良好な断熱性能を有しながら環境への影響が少ない断熱材を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
既存の建物をその構造に大きな変更を加える必要無くリノベーションすることができれば、エネルギー低減を減らすだけでなく、建物を建て替えるのに使用する材料の消費を減らすことにもなる。全原材料の50%が建設目的に使用されている。既存の建築ストックをエネルギー消費実質ゼロレベルまで改善することは、環境に優しい方法で省エネルギーを大幅に加速することになる。
【0009】
本発明は、建物のエネルギー消費に非常に良い影響を与える独立気泡発泡断熱材の使用を基礎としている。
【0010】
本発明によれば、本願請求の範囲に記載されるフォーム製品が提供される。
【0011】
本発明は、その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体の少なくとも5重量%が、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成され、任意により前記フォーム製品の耐用25年の平均熱伝導率が、規格EN12667またはEN12939に従って測定して0.025W/m.K以下である、フォーム製品に関する。
【0012】
再生可能な供給源からの前記少なくとも1つの成分はまた、前記フォーム製品が製造される発泡性組成物の少なくとも5重量%を形成することができる。一般に、再生可能な供給源からの前記少なくとも1つの成分に与えられる量は、前記フォーム製品が製造される前記発泡性組成物中の量にも適用することができる。
【0013】
再生可能な供給源は、それ自体を限られた時間で、それは数年または最大数十年であってもよいが、好ましくは数ヶ月以内に補充できる天然資源である。
【0014】
付加的にまたは代替的に、本発明は、その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体の少なくとも5重量%が、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成され、任意により前記フォーム製品の耐用50年の平均熱伝導率が、規格EN12667またはEN12939に従って測定して0.026W/m.K以下である、フォーム製品に関する。
【0015】
付加的にまたは代替的に、本発明は、その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体の少なくとも5重量%が、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成され、任意により前記フォーム製品の耐用25年の平均熱伝導率が、規格EN13166及び/またはEN14314に従って測定して0.025W/m.K以下である、フォーム製品に関する。
【0016】
付加的にまたは代替的に、本発明は、その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体の少なくとも5重量%が、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成され、任意により前記フォーム製品の耐用50年の平均熱伝導率が、規格EN13166及び/またはEN14314に従って測定して0.026W/m.K以下である、フォーム製品に関する。
【0017】
付加的にまたは代替的に、本発明は、その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と、前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体は再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成され、前記発泡体は、ゆりかごからゲートまでの段階(Cradle-to-gate stages)(A1~A3)について1.0kg-COeq/kg未満(規格EN16783:2017に従って測定)の総GWP(地球温暖化係数)を有する、フォーム製品に関するものであってよい。
【0018】
付加的にまたは代替的に、本発明は、その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、該フォーム製品が、可塑剤としてのカルダノール、ロジン、または、ポリエチレンテレフタレート;ポリウレタン;及び/またはポリイソシアヌレート;またはそれらの組合せに由来するポリオールからなる、フォーム製品に関するものであってよい。ポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシル官能基、脂肪族OH及び/または芳香族OHを含む化合物である。
【0019】
付加的にまたは代替的に、本発明は、その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体の少なくとも5重量%が、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成され、前記少なくとも1つの成分が、紙及びパルプ工程に由来する技術的リグニン(technical lignin)からなる、フォーム製品に関するものであってよい。例えば、紙及びパルプ工程に由来する技術的リグニンは、クラフトリグニン、ソーダリグニン、またはリグノスルホネートであってよい。
【0020】
付加的にまたは代替的に、本発明は、その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体の少なくとも5重量%が、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成され、前記少なくとも1つの成分がソーダリグニンからなる、フォーム製品に関するものであってよい。
【0021】
付加的にまたは代替的に、本発明は、その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体の少なくとも5重量%が、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成され、前記少なくとも1つの成分がオルガノソルブリグニンからなる、フォーム製品に関するものであってよい。
【0022】
付加的にまたは代替的に、本発明は、その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体の少なくとも5重量%が、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成され、前記少なくとも1つの成分が解重合リグニン(depolymerised lignin)からなる、フォーム製品に関するものであってよい。
【0023】
付加的にまたは代替的に、本発明は、その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体の少なくとも5重量%が、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成され、前記少なくとも1つの成分がスルホン化リグニン及び/またはフェノール化リグニンからなる、フォーム製品に関するものであってよい。
【0024】
付加的にまたは代替的に、前記少なくとも1つの成分はスルホン化したクラフトリグニンからなる。
【0025】
前記スルホン化したクラフトリグニン中の硫黄の重量パーセントは、前記クラフトリグニンの少なくとも2重量%であってよい。
【0026】
前記スルホン化したクラフトリグニンの重量平均分子量(Mw)は2000乃至23000ダルトン(Da)であってよい。
【0027】
前記再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分は、フェノール化リグニンを含み得る。理論に拘束されることは望まないが、フェノール化リグニンは、フォーム製品の製造中リグニンの反応性を高める可能性がある。フェノール化リグニンは、熱分解リグニン(pyrolytic lignin)、紙及び/またはパルプ工程に由来する技術的リグニン(technical lignin)、ソーダリグニン、オルガノソルブリグニン、解重合リグニン(depolymerised lignin)、クラフトリグニン、またはそれらの組合せを含み得る。前記再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分がフェノール化リグニンを含む場合、前記フォームはフェノールフォームであり得る。
【0028】
前記再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分は熱分解リグニン(pyrolytic lignin)を含むことができる。
【0029】
付加的にまたは代替的に、本発明は、その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体は、フェノール材料とホルムアルデヒドとの反応から形成され、使用される前記ホルムアルデヒドの少なくとも10重量%、例えば少なくとも20重量%、例えば少なくとも30重量%、例えば少なくとも40重量%、望ましくは少なくとも50重量%はバイオホルムアルデヒドである、フォーム製品に関するものであってよい。
【0030】
前記バイオホルムアルデヒドはバイオメタノールから製造することができる。任意により、前記バイオメタノールはバイオ廃棄物の発酵によって製造される。前記バイオメタノールは、合成ガス(synthetic gas)、例えば林業廃棄物などのバイオ廃棄物のガス化によって得られる合成ガスから製造することができる。
【0031】
付加的にまたは代替的に、本発明は、その中に画成された気泡を有する膨張発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品であって、前記発泡体はフェノールとの反応から形成され、前記フェノールの少なくとも10重量%、例えば少なくとも15重量%、例えば少なくとも20重量%、例えば少なくとも25重量%はバイオフェノールから形成される、フォーム製品に関するものであってよい。前記バイオフェノールはバイオベンゼンから製造することができる。前記バイオフェノールはバイオベンゼンから、任意により木材廃棄物及び製紙などの木材加工の副産物を含む木質材料などのバイオ廃棄物の熱分解を用いて、製造することができる。前記バイオベンゼンはトール油から作ることができる。
【0032】
本発明のフォーム製品の成分として上述した全ての成分を任意の組み合わせで組み合わせて本発明のフォーム製品を形成できることは理解される。
【0033】
好適には、前記発泡体の少なくとも7重量%、例えば少なくとも10重量%、例えば少なくとも15重量%、望ましくは少なくとも20重量%、任意により少なくとも25重量%、例えば少なくとも30重量%は、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成される。
【0034】
望ましくは、前記発泡剤の少なくとも70%(発泡剤の総重量に基づいて)は、気相の熱伝導率が25℃で12mW/m.k以下、例えば11.8mW/m.kである。適当な発泡剤が図6の表に示されており、それらは個別にまたは任意の適当な組合せで使用することができる。
【0035】
任意により、前記再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分の重量は炭素を含み、規格EN16640:2017に従って測定され、C14測定に基づいている。
【0036】
前記発泡体は、規格EN16640:2017に従って測定して3%超のC14炭素含有量、例えば3.5%超、4%超、5%超、6%超、7%超、8%超、9%超、10%超、30%超、または50%超のC14炭素含有量を有する。規格EN16640:2017に従って測定して3%超のC14炭素含有量、例えば3.5%超、4%超、5%超、6%超、7%超、8%超、9%超、10%超、30%超、または50%超のC14炭素含有量を有する前記発泡体は、フェノール発泡体であってよい。
【0037】
望ましくは、本発明の全てのフォーム製品について、前記フォーム製品の耐用25年の平均熱伝導率が、規格EN16783:2017に従って測定して0.025W/m.K以下であり、及び/または、
前記フォーム製品の耐用50年の平均熱伝導率が、規格EN16783:2017に従って測定して0.026W/m.K以下であり、及び/または、
前記フォーム製品の総地球温暖化係数が、規格EN16783:2017に従って測定して1.7kg-COeq/kgと同等以下、例えば1.5kg-COeq/kgと同等以下、例えば-0.5kg-COeq/kgと同等以下であり、及び/または、
前記フォーム製品の生物起源地球温暖化係数が、規格EN16783:2017に従って測定して-0.2kg-COeq/kgと同等以下、例えば-0.4kg-COeq/kgと同等以下であり、及び/または、
前記フォーム製品において発泡体を形成する前記成分は、再生可能な一次エネルギー供給が規格EN16783:2017に従って測定して0.7MJ/kgと同等以下である。
【0038】
規格EN15804+A2による生物起源地球温暖化係数(GWP-biogenic)は、自然からGWP-biogenicとして宣言された製品システムへの、生存バイオマスによって隔離された炭素の移動として、原生林を除くすべての供給源からバイオマスへのCOの除去からGWPを説明している。GWP-biogenicはまた、以前の製品システムから研究対象の製品システムへの生物起源炭素の移動からGWPを説明している。規格EN15804+A2による化石地球温暖化係数(GWP-fossil)は、化石燃料または化石炭素を含む物質の、それらの変質や分解(例えば、燃焼、焼却、埋立など)による酸化または還元に由来するあらゆる媒体への温室効果ガスの排出と除去からGWPを説明している。GWP-fossilはまた、例えば泥炭及び「か焼」からのGHG排出と、例えばセメント系材料及び石灰の炭酸化からのGHG除去とからGWPを説明している。
【0039】
本発明によるフォーム製品は、望ましくは、規格EN ISO 11925-2で定める単一火炎発生源テスト(single flame source test)で火炎高さ<100mmの耐火性を発揮する。
【0040】
本発明によるフォーム製品は、規格EN ISO 4590で測定される独立気泡率が少なくとも90%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも94%、任意により少なくとも95%である。
【0041】
本発明によるフォーム製品は、望ましくは、規格ASTM C421-08(2014)で測定される破砕性が20%未満である。
【0042】
本発明によるフォーム製品は、望ましくは、規格EN826:2013で測定される圧縮強度が100kPa以上である。
【0043】
本発明によるフォーム製品は、規格EN1602:2013で測定して10kg/m乃至125kg/mの密度、例えば約15kg/mから約100kg/m、好ましくは約15kg/mから約60kg/m、好適には約20kg/mから約35kg/mの密度を有する。
【0044】
本発明のフォーム製品はフェノールフォーム製品であってよい。
【0045】
本発明のフォーム製品は、ポリイソシアヌレート(PIR)フォーム製品、ポリウレタン(PUR)フォーム製品、押出ポリスチレン(XPS)フォーム製品、または発泡ポリスチレン(EPS)フォーム製品であってよい。このようなフォーム製品は、望ましくは、本明細書中に記載されるリグニン成分を含む。
【0046】
本発明はまた、その中に画成された気泡を有する発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品における色付与添加剤としてのリグニンの使用、及び/または、その中に画成された気泡を有する発泡体と前記気泡内に保持された発泡剤とからなるフォーム製品における色安定化添加剤としてのリグニンの使用に関する。
【0047】
本発明はまた、天然ポリフェノール、特にスルホン化リグニン及び/またはフェノール化リグニンの使用と、バイオメタノールから製造されるホルムアルデヒドの使用とに基づく、優れた熱的特性、機械的特性及び防火特性を有する持続性の高い熱硬化性フォームの調製方法に関する。この方法は、a)化石フェノールモノマーと少なくとも1種の天然ポリフェノールとの混合物(mix)であって、該少なくとも1種の天然ポリフェノールが全フェノール化合物混合物に対して少なくとも20重量%である混合物と、ホルムアルデヒドとを1:1.5~1:2.5の割合で、アルカリ触媒0.15~5重量%を用いて、50℃~100℃の反応温度で縮合することにより、プレポリマーを製造する工程と、b)1種以上の界面活性剤/乳化剤及びそれらの混合物を2~10重量%添加する工程と、c)1種類以上の可塑化添加剤(可塑剤)及びそれらの混合物を2~10%添加する工程と、d)1種以上の核剤及びそれらの混合物を0.1~2%添加する工程と、e)1種以上の発泡剤及びその混合物を1~10重量%添加する工程と、f)硬化剤を10~20重量%添加する工程と、g)硬化フェーズとを含んでいる。全ての重量%(wt%)は総原料投入量に関連している。
【0048】
断熱材の環境への総合的な貢献を評価するためには、製品のライフサイクル全体を考慮する必要がある。規格EN16783:2017による環境製品宣言(EPD)は、規格EN15804:2012+A2:2019で確立された建設製品についての規則に基づいて、断熱製品についての特定製品分類の規則を定義している。従って、これらの規則は、断熱製品が環境に与える影響の尺度である。EN15804:2012+A2:2019に基づくEPDはまた、ライフサイクルアセスメント(LCA)の国際規格であるISO14044:2006+A1:2018、建設製品のEPDを取り扱う国際規格であるISO 14025:2010及びISO 21930:2017の要求に従わなければならない。これら3つの規格は、LCAライフサイクルアセスメントの原則の正確な適用という点からEN15804:2012+A2:2019/EN16783:2017のより詳細な要件とともに、様々な断熱製品タイプについて結果を比較することを可能にしている。
【0049】
EPDによって、図1に記載される様々なライフサイクル段階をカバーする一連のモジュールにおける製品のライフサイクル影響評価(LCA)データが提供される。
【0050】
製品段階(ゆりかごからゲートまで)、モジュールA1~A3は、再生可能含有量の断熱製品への影響を定量化することに最も関連する段階である。段階A4-A5は、建物の建設過程に関連する。使用段階(B1-B7)は、断熱材に関係が無い。使用終了段階(C1-C4)と補足モジュールDは、建物の解体/断熱材のリサイクルに関連している。
【0051】
EPDの出力パラメータは、中核的な環境影響指標(表1)と、資源利用を示す指標(表2)と、廃棄物のカテゴリーとアウトプットの流れを表す環境情報と、追加的な環境影響指標との4つの異なるカテゴリーに分けることができる。
【表1】

表1:EN15804:2012+A2:2019における中核的環境影響指標
【0052】
指標GWP-totalは、地球温暖化に対する潜在的な貢献の合計を機能単位当たりのkg-COで示している。機能単位は宣言単位としても知られている。
【0053】
モジュールA1-A3の範囲では、再生可能な原材料の量の増加によって、該原材料に埋め込まれた炭素の量のため、GWP-totalが減少することになる。
【表2】

表2:EN15804:2012+A2:2019における資源の使用に関する指標
【0054】
指標PERMは、原料として使用される再生可能な一次エネルギー資源を定量化し、PENRMは、原料として使用される再生不可能な一次エネルギー資源を定量化する。PERTとPENRTとは、一次エネルギー資源からの一次エネルギーと原料として使用される一次エネルギー資源の合計である。再生可能な原材料の量が再生不可能な原材料の量と比較して増加した場合、指標PERMは増加し、PENRMは減少することになる。
【0055】
従来のPIR独立気泡発泡断熱材及びPF独立気泡発泡断熱材は両方とも、大部分が化石由来の原材料から製造されるので、GWPへの寄与で表される埋め込まれたCOとPERNTは比較的高い。
【0056】
農業または林業の供給源に由来する再生可能な断熱材料は、化石由来の材料に比べて、生産段階での環境影響が比較的低い。「再生可能」という用語は、これらの材料の埋め込まれたエネルギー及び埋め込まれた炭素に関して特別に使用されることに留意すべきである。再生可能な断熱材料の例は次のとおりである。
【表3】

表3:再生可能な断熱材料の熱伝導率
【0057】
これらの材料は全て、比較的高い熱伝導率(λ)を有する。これは、十分な断熱性能を得るために、断熱材料の比較的厚い層を設ける必要があることを意味している。
【0058】
独立気泡発泡断熱材料の熱伝導率(ラムダ値)は、これらの再生可能断熱材料に比べて著しく低い。断熱材が薄いということは、断熱に必要な材料が少ないということを意味する。このことは、機能単位は製品の重量または体積よりもむしろ、断熱性能に基づくべきであることから、EPDを比較する際に考慮しなければならない。
【表4】

表4:独立気泡発泡断熱材料の一般的な熱伝導率
【0059】
総GHG(温室効果ガス)フットプリントに対する断熱性能の重要性は、コンクリート・サンドイッチ・パネルにより実証することができる。断熱層が厚くなると、構造強度を維持するために、コンクリートの内壁と外壁もまた厚さを大きくする必要がある。例えば、断熱層が12cmから18cmに増加した場合、コンクリートは大凡10mm増加させる必要がある。コンクリートの総GWPは246kg-COeq/kg.である。10mmの増加は、建造物のGWPを24.6kg-COeq/kg.増加させることになり、これは断熱製品の総GWP以上である。
【0060】
EN16783:2017に従った環境製品宣言は、事業者団体または生産者が公表することができる(表5)。
【表5】

表5:いくつかの独立気泡フォーム製品のEPD結果
【0061】
EPDの比較は必ずしも簡単にはいかない。機能単位は断熱製品によって異なる。表5から、Koolthermフェノール断熱フォームの総GWP(8.4kg-CO換算)は、Recticel(11.4kg-CO換算)、Unilin(14.6kg-CO換算)、及びドイツの事業者団体が主張する値(11.2kg-CO換算)と比べて低いことが分かる。また、断熱性能も異なることがある。例えば、熱伝導率0.022W/m.K、厚さ110mmのPUR/PIR製品は、熱伝導率0.020W/m.K、厚さ100mmのPFフォームと断熱性能が同じになる。
【0062】
表5の全フォーム製品の原材料として使用される再生可能一次エネルギー資源(PERM)の指標は、全製品が5MJ未満である。この非常に低い寄与は、フェーサーの寄与の結果である(ブロックフォームはフェーサーを有しない)。フォームの寄与は無視することができる。フェーサー付き製品の原材料として使用される再生不可能な一次エネルギー資源の使用(PENRM)は、Unilin製品が116MJで最も少ない。これは、116MJの値を有するKoolthermフォームとほぼ同等である。断熱性能を考慮すると、Kooltherm製品の方が10%優れているであろう。
【0063】
表5の2つのフェノールフォームのEPDを比較すると、Kooltherm製品は、Safe R製品と比較して、GWP環境負荷が著しく低いことは明らかである。この差は、部分的に密度の差に起因している。Safe R製品のPENRMのゼロ値は、技術的に実現不可能であるので、正しくないと推定される。
【0064】
HFOで発泡させたJackon社のラムダ値0.025のXPS製品は、Kooltherm製品と比較して25%厚い断熱層が必要になる。厚さの関数としてGWPが線形的に増加すると仮定すると、GWPは、19.5kg-CO換算(15.6*0.025/0.020)となり、2倍以上高くなる。
【0065】
ペンタン発泡XPS(FPX)のGWPは低い(11.3kg-CO換算)が、λも高い。λを0.035W/m.Kと仮定すると、75%厚い断熱層が必要である。線形補間すると、これはGWP19.8kg-CO換算を意味している。言い換えれば、発泡剤がEPDの出力データに与える影響は限定的だが、断熱性能を考慮すると、いずれの場合も、XPSはCO排出量が多いことになる。
【0066】
ペンタン発泡及びHFO発泡のJackon製品のPENRM指標は、厚さ80mmでそれぞれ145MJと154MJである。これは、PIR/PURフォーム及びPFフォームに比べて高い。
【0067】
PIR/PUR、PF及びXPS断熱材料の環境性能は、これらの製品の再生可能な含有量を増加させることによって、また使用済み段階で材料を再生利用することによって、向上させることができる。多くの場合に断熱材料のライフサイクルは50年以上であることから、循環型ビジネスモデルを創出することは複雑である。この製品寿命が比較的長いことが、再生利用の確保を難しくしている。また、建造物の解体の結果としての汚染も複雑な要因である。このため、多くの場合、50%は再生利用され得るが、残りの50%は埋め立て処分されるか、廃棄物焼却場で焼却されることになる50/50ルールが想定される。製品に含まれる再生可能含有量が比較的高い場合、再生可能材料のエネルギー寄与はグリーンエネルギーとして分類される可能性がある。
【0068】
フェノールフォームは、優れた断熱性能と防火性能を併せ持つため、多種多様な用途に使用されている。製品の断熱性能及び/または防火性能の両方が、この断熱材料を選択する主な理由となる場合がある。そのような用途の例として、中空壁への適用、パイプの断熱及び内壁への適用がある。適当な断熱フォームであれば、EN13166:2012+A2:2016及びEN14314:2015の要件を満足する。
【0069】
中空壁構造では、断熱ボードは内壁に対して設置される。大部分の場合、断熱ボードは、壁繋金物を断熱材にねじ込むことによって固定される。第2段階では、外壁を取り付ける。伝統的な中空壁では、外壁から断熱材への湿気の流入を防ぐため、断熱ボードと外壁の間に小さな空隙を保持する。断熱性能を高めるために、空隙(例えば、15mm以上)と組み合わせた反射箔フェーサー(輻射能(emissivity))を使用することもできる。高性能な断熱材の利点は、壁の厚さを最小にすることである。しかし、再生可能な断熱材を使用すれば、建造物の環境フットプリントは最適化されるであろう。両方の側面を兼ね備えた材料が、この用途の望ましい解決策となるであろう。
【0070】
パイプ断熱材は、暖房、換気及び空調システム(HVAC)におけるエネルギー損失を抑制するために使用される。オンラインで製造される材料は円筒形であるか、ブロックからパイプ部分に切断される。断熱製品の内径は、冷房/暖房媒体を輸送するパイプの外径に密接に適合するように寸法決めされている。断熱材の厚さは、設置場所の断熱条件に依存する。フォームの外面はアルミニウム箔を設けることができ、それが蒸気バリアとして機能して、建造物内部の水分の蓄積を防止する。建物をリノベーションする場合、スペースが限られていることが多いので、断熱性能と環境性能の最適化が必要不可欠である。
【0071】
内壁の断熱は、建造物の内側に施工される。多くの場合、この用途は既存の建物をリノベーションする際に、その構造によって建物の外側への断熱材を適用できない場合に使用される。建物の内部空間は不足していることから、多くの場合、最適な断熱性能は最小の厚さと組み合わせて選択される。再生可能な断熱材料の断熱性能が低いため、これらの製品はこの用途には好ましくない。
【0072】
フェノールフォームは、フェノール樹脂、界面活性剤、発泡剤及び触媒を混合して調製した発泡性組成物を膨張させかつ硬化させることによって製造される。尿素のようなホルムアルデヒド捕捉剤、可塑剤、難燃剤、中和剤または顔料などの他の添加剤を、任意で未硬化のフェノール樹脂に混合することができる。
【0073】
フェノールレゾール樹脂は、フェノールフォームの製造に使用される。それらはフェノールとホルムアルデヒドの縮合系高分子であり、ホルムアルデヒド過剰の水性塩基性条件下で、一般に高温で製造される。一般に、フェノールフォームの製造に使用されるフェノール樹脂は、水分濃度が約1~25重量%の粘性液体である。それらは、縮合重合反応の反応性置換基としてメチロール基を有する。架橋フェノールフォームは、フェノール樹脂、発泡剤、界面活性剤及び酸触媒の混合物を加熱しかつ硬化させることによって形成することができる。フェノール樹脂、発泡剤及び界面活性剤からなる化学混合物に酸触媒を加えると、メチロール基とフェノール基の間で発熱反応が生じて、フェノール環間にメチレン架橋が形成される。このメチレン架橋がフェノールポリマー鎖を架橋し、縮合重合の水が生成される。前記レゾール樹脂組成物、酸硬化触媒の量と性質、発泡剤及び発泡反応物中に存在する界面活性剤の化学的及び物理的特性は、前記発熱反応を制御する能力と独立気泡フォームを形成する能力に大きく影響する。
【0074】
発泡体を形成する反応物中の水の量及び特に樹脂中の水の量は、前記反応を完了させるのに必要な酸触媒の量と種類に影響することがある。
【0075】
熱伝導率の低い発泡剤は、断熱フォームを形成するために使用される。フォームのガス体積はフォームの体積の最大約95%を占めることがあるので、フォーム中にトラップされる発泡剤の量と性質は、フォームの断熱性能に大きな影響を与える。断熱フォームを形成するためには、一般に90%以上の独立気泡含有率が必要である。フォームの断熱性能の主な決定要因の一つは、低い熱伝導率の発泡剤を保持するフォームの気泡の能力である。
【0076】
フェノールフォームの断熱特性は、フェノールフォームの形成中に形成される独立気泡構造における、低い熱伝導率を有する発泡剤の保持に依存する。フェノールフォームの重要な特性は、マイクロメートルの範囲にあることが望ましいフォームの気泡サイズと、均一に分布して、発泡剤の保持によってフェノールフォーム製品の断熱特性を向上させる独立気泡構造を提供するフォーム気泡である。
【0077】
界面活性剤は一般に、フェノール樹脂発泡性組成物において使用されて、構造的により安定であり、ひいてはその結果得られるフォームからの発泡剤の経年的な損失を減少させる気泡の形成を促進する。界面活性剤はまた、フェノール系フォーム樹脂内での発泡剤の乳化の助けとなり得る。
【0078】
EPDは50年の寿命で計算される。このため、経年熱伝導率は本質的に重要である。フェノールフォームの製品規格(EN13166:2012+A2:2016及びEN14314:2015)は、25年の寿命に対するラムダ値をどのように明言するかを規定している。EPFA(欧州フェノールフォーム協会)は、フェノールフォームの性能が50年後でも維持されるという情報を公表している。
【0079】
バイオベースの製品/材料は、原料の全部または一部がバイオマス由来の材料である。この点において、本明細書中では、「バイオ」という用語を使用して、化石資源と区別している。特に本発明は、バイオという用語を用いることで、バイオマスからの直接生成物またはバイオマスからの副生成物である材料を指している。例えば、製紙からの副産物が注目される。製紙には、木材(バイオマス)の処理が伴う。望ましくは、(再生可能な)含有率、例えば有機系の含有率は30重量%超であるべきである。
【0080】
フェノールフォームの製造に使用される原料の大部分は、化石資源に基づくものである。本発明は、優れた熱性能及び耐火性能に再生可能な含有量を組み合わせたフォーム製品に関するものである。例えば、フォーム本体の少なくとも7重量%が再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から、例えば少なくとも10%、例えば少なくとも15%、望ましくは少なくとも20%、任意に少なくとも25%、例えば少なくとも30%が形成される。前記再生可能な含有量は、化石ベースのホルムアルデヒドを置き換えるためにバイオベースのホルムアルデヒド(バイオホルムアルデヒド)を導入することによって達成することができる。更に、化石ベースのフェノールは、バイオベースのフェノール及び/またはリグニン、またはそれらの組み合わせで置き換えることができる。
【0081】
一般にリグニンの添加は、低い熱伝導率のように、望ましいフォーム製品の特性を喪失することになるので、使用するリグニンの種類は非常に重要である。
【0082】
ラミネート(積層体)の場合、主に再生可能な材料から製造されるフェーサーを使用することによって、改善を達成できる。本発明では、ラミネートという用語は、一般にラミネーターで、例えば2つのベルトの間に製造されるフォーム製品に使用される。典型的には、これらは連続的なプロファイル(所望の厚さ及び幅)として形成され、形成された状態で所望の長さに切断される。一般的にそれらは上部フェーサーと下部フェーサーの間に形成される。それらは、別個の長さに切断されたとき、しばしば発泡ボードと呼ばれる。ブロックフォームは大きなブロックとして製造され、硬化後に最終的な所望の形状に切断される。ブロックフォームの場合、任意のフェーサーを取り付けることができ、例えば後で製品に付着させる。
【0083】
ライフステージA1~A3(ゆりかごからゲートまで)についてフェノール/リグニン/バイオホルムアルデヒドフォーム製品のような本発明の独創的なフォーム製品の環境製品宣言における地球温暖化係数は、従来の独立気泡断熱材料に比べて比較的低い。段階A1~A3での使用に関して資源利用を示す指標は著しく改善されている。PERM指標は、PENRM値の減少と共に増加している。
【0084】
高い再生可能含有量は、環境フットプリントに肯定的な影響を与えるであろう。断熱製品は耐用年数が比較的長く、多くの場合50年以上である。これは、炭素が非常に長い期間に亘って製品に吸収されることを意味する。これは、バイオマスの回転が、特に回転の遅いバイオマス(例えば、森林)にとって重要な側面であることから、重要である。木材を用いてエネルギーを生成する場合、放出されたCOは大気中でしばらく過ごした後、成長する植物に回収される。この期間中、大気中のCOは温暖化効果を有する。この時間的スケールの結果として、木材からのエネルギー生成の場合、正味のマイナス排出効果は直ぐのものではなく、炭素が再びバイオマスに固定されてのみ達成される、と言える。
【0085】
断熱製品が、建物の解体後に、例えばセメントキルンで燃やされる場合、天然資源は、製品がその使用済み段階に到達する前に再生する能力を有している。非常に回転の遅いバイオマスを使用する場合でも、再生可能な資源は再生する機会を得ていることになる。そのため、高回転バイオマスが好ましい。
【0086】
PFフォームのようなフォームのGWP(地球温暖化係数)は、製品中の異なる成分の寄与に依存する。フェノール-ホルムアルデヒド樹脂はフォーム形成組成物の主成分であるため、該樹脂は製品全体の60%以上も寄与する。
【0087】
フェノールフォームのようなフォームの密度も、フェノールフォーム製品のEPDにおけるGWP評価に影響を与える。図2は、GWPが製品の密度に比例して減少することを示している。
【0088】
密度の影響を除外するため、機能単位は断熱材料1kgとする。図3のグラフは、独立気泡断熱材料とEPSの体化エネルギー(embodied energy)が、該グラフの他の断熱材料に比べて著しく高いことを示している。
【0089】
技術的な課題は、多くの場合、化石ベースの原材料の代替が性能の損失または商業的に生き残れない製品をもたらすことである。主な課題は、従来の再生可能な材料のラムダより更に低い断熱性能を維持することである。また、優れた耐火性能も必要不可欠である。これらの問題は、本発明によって解決される。
【0090】
本発明によれば、フェノール(任意により、バイオベースのフェノール(バイオフェノール)の1種または2種以上);リグニン;バイオベースの尿素;バイオホルムアルデヒド樹脂(任意により、それと化石原料の組合せ)、
発泡剤、
酸触媒、
界面活性剤、及び
任意により他の添加剤
からなる組成物から形成される、フェノール/リグニン/バイオベースのホルムアルデヒド(バイオホルムアルデヒド)フォーム製品が提供される。
前記樹脂は、バイオメタノール及び/またはバイオフェノールから製造されるバイオホルムアルデヒドを含むことができる。バイオフェノールはバイオベースのベンゼンから製造することができる。前記フェノールは、その一部または全部をリグニンで置き換えることができる。
【0091】
得られる製品は、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成される発泡体の少なくとも7重量%の再生可能な含有率を有し、それは例えば少なくとも10%、例えば少なくとも15%、望ましくは少なくとも20%、任意により少なくとも25%、例えば少なくとも30%である。前記バイオベースの成分を組み合わせることによって、再生可能な含有率を少なくとも30重量%、40重量%、または少なくとも50%(すべて重量比)にまで高めることができる。フェノールフォームボードのようなラミネートの場合、フェイサーを適切に選択することにより、再生可能な含有率を70重量%以上にさえすることができる。
【0092】
本発明の再生可能なフォーム製品を形成する組成物は、フェノール構造及びアルデヒドの樹脂を含んでもよい。フェノール樹脂は、アルデヒド基に対するフェノール基のモル比が、約1:1.5~約1:2.5、例えば約1:1.6~約1:2.4の範囲であってよく、約1:1.7~約1:1.2.3、例えば約1:1.8~約1:2.2の範囲を含んでよい。
【0093】
好ましいアルデヒドは、バイオメタノールから製造されるホルムアルデヒドである。バイオメタノールは、バイオマスの発酵またはガス化によって製造することができる。エネルギー生成のために栽培される作物の最大レベルは、75重量%に制限される。高レベルのエネルギー栽培作物では、バイオメタノールのLCAに与える肥料の影響は否定的なものになるであろう。
【0094】
リグニンは、天然起源のフェノール物質の中で最も豊富な資源であり、通常、植物バイオマスの15~30重量%を構成する。残念ながら、リグニンは、植物の強固な細胞壁に埋め込まれた、複雑で扱い難いポリマーの形をしている。従って、この再生可能な資源を化学工業に統合することは、困難な仕事である。広範に様々なリグニンが存在し、それぞれが、バイオマスの種類、リグニンの単離プロセス、下流側の処理によって、独自に特異な性質を有する。リグニンには主に2つのグループがあり、紙パルププロセスの廃液から回収される紙パルプリグニンと、バイオマスを処理する精製プロセスの結果であるバイオ精製リグニンとがある。様々なリグニンの概要を本明細書中に示す。
【0095】
クラフトリグニン-紙・パルプ産業は、リグニンを扱う最大部門である。断然支配的な化学パルプ製造プロセスはクラフトパルプで、化学パルプの90%以上を生産している。クラフトパルプ過程では、(ヘミ)セルロースが所謂「ホワイトリカー」でリグニンから分離される。クラフトリグニンは、黒液の廃水流から回収することができる。工業的規模によって様々な技術が採用して、クラフトリグニンを分離している。単純な酸沈殿、及びLignoBoostやLignoForce技術のようなより高度なプロセスが存在する。
【0096】
リグノスルホン酸塩-亜硫酸パルプに由来する。亜硫酸法は、世界全体のパルプ生産量を考慮すると、クラフトパルプに比べて商業的に重要性が低いとは言え、リグノスルホン酸塩が世界的に取引されているリグニンの最大量を占めている。リグノスルホン酸塩はまた、例えばIngevity社(米国)が行っている、単離されたクラフトリグニンのスルホン化を介して得ることができる。そうすることによって、リグニンのスルホン化の程度をパルプ工程に依らずに調整することができる。
【0097】
ソーダリグニン-第3のパルプ法はソーダパルプ法と命名されている。このプロセスは、硫黄を含む化学薬品を使用しないクラフトパルプ法とみなすことができる。得られるソーダリグニンは硫黄を含まないが、パルプ工程中に硫化物イオンが存在しないことが、プロセスの効率を低くしている。
【0098】
加水分解リグニン-セルロース系バイオエタノールは、一般にバイオマスの炭水化物画分の加水分解を介して、次いで放出された糖の酵素発酵によって標的化される。リグニン画分は水不溶性残渣として回収される。これらの所謂「加水分解リグニン」は一般的に純度が低く、残留炭水化物の高い含有量によって特徴付けられる。
【0099】
オルガノソルブリグニン-原料バイオマスは、任意により水及び/または触媒量の酸/塩基を含む有機溶媒で処理される。この処理は、リグニンの加溶媒分解と抽出を生じさせる高温(100~210℃)で行われる。その後、炭水化物リッチのパルプからリグニン含有液を分離する。リグニンは、溶媒蒸発及び/または水中沈殿により固体粉末として単離することができる。
【0100】
バイオマス可溶化リグニン-液体媒体中でのバイオマスの完全可溶化を介して、次いでバイオマスの主成分の選択的な沈殿によって製造される。
【0101】
脱重合リグニン-上述したパルプ化プロセス及びバイオ精製プロセスによって、リグニンポリマーが、多くの場合粉末の形で得られる。価値の向上を求めて、リグニンの解重合に関心が高まっている。多くの解重合法が提案されており、それらは酸触媒解重合、塩基触媒解重合、酸化解重合、還元解重合、熱解重合などの用語で分類することができる。解重合されたリグニンは、リグニンオリゴマーからなり、母材に比べて平均分子量が小さい。更に、解重合リグニンは、リグニンモノマーを含むことができる。モノマーの量と構造は、解重合技術と供給材料に大きく依存する。
【0102】
本発明のフォーム製品を形成するためのフェノール樹脂組成物のような樹脂組成物は、該組成物により形成されるフォームを硬化させる前に、フェノール樹脂の総重量に基づいて、約4重量%~約20重量%、好適には約5重量%~約19重量%、好適には約8重量%~約19重量%の含水量を有することができる。含水量は、樹脂を25質量%~75質量%の範囲で無水メタノール(Honeywell Speciality Chemicals社製)に溶解させることによって測定する。フェノール樹脂等の樹脂の含水量は、この方法で測定した水分量から算出した。測定に使用した装置は、Metrohm社の870 KF Titrino Plusであった。水分量の測定には、Honeywell Speciality Chemicals社により製造されたHydranal(登録商標)Composite 5を、カールフィッシャー試薬として使用し、かつカールフィッシャー滴定には、Honeywell Speciality Chemicals社により製造されたHydranal(登録商標)Methanol Rapidを使用した。カールフィッシャー試薬の滴定量の測定には、Honeywell Speciality Chemicals社により製造されたHydranal(登録商標)Water Standard 10.0を使用した。測定した水分量はKFT IPol法で決定し、カールフィッシャー試薬の滴定量は前記装置に設定したTiter IPol法で決定した。
【0103】
フェノール樹脂などの樹脂は、粘度が25℃で約1,500~約200,000cPs、好ましくは1,500~100,000cPs、好ましくは1,500~50,000cPs、好ましくは1,500~25,000cPsであってよい。(cPsはセンチポアズである)。本発明のフォーム製品の製造に採用される樹脂の粘度は、当業者に公知の方法によって、例えば、温度制御された水浴を備えたブルックフィールド粘度計(モデルDV-II+Pro)を用い、試料温度を25℃に維持し、スピンドル番号SC4-29を20rpmまたは適当なな回転速度で回転させ、スピンドルの種類または適当な試験温度で粘度測定精度が許容できる中間レンジのトルクを維持しながら、決定することができる。
【0104】
フェノール樹脂は、ISO11402:2004に従ってヒドロキシルアミン塩酸塩法を使用して電位差滴定により測定したとき、フェノール樹脂の重量%として約0.1%から約3.0%、好ましくはフェノール樹脂の重量%として約0.1%から約0.5%、好ましくは樹脂全体の重量%として約0.1%から約0.3%の低い遊離ホルムアルデヒド含有量であってよい。遊離ホルムアルデヒド含有量は、樹脂全体の重量%として約0.1%から約0.5%が望ましい。
【0105】
一実施形態において、フェノールフォームは、フェノール樹脂と共反応する(co-acting)ための有機改質剤を含む。前記改質剤は、フェノール樹脂100重量部に対して1~10重量部の、アミノ基を有する化合物を含むことができる。或る場合に、少なくとも1つのアミノ基を含有する化合物は、尿素、ジシアンジアミド及びメラミンから選択される。
【0106】
界面活性剤はフォーム構造に影響を与えるので、フォームの気泡に安定性を与えるために使用される。界面活性剤は、フェノール樹脂の液相の表面張力を低下させることにより、かつ極性の高いフェノール樹脂と比較的極性の低い発泡剤との間に界面を提供することにより、表面活性剤として作用する。独立気泡の形成は、発泡剤の膨張による内圧によって駆動され、フェノール樹脂の液相の表面張力によって打ち消される。
【0107】
好適には、本発明のフォーム製品を形成するための組成物は、界面活性剤をフェノール樹脂100重量部当たり約0.5~約10重量部の量で含み、好適には、前記界面活性剤は、フェノール樹脂100重量部当たり約1~約8重量部、例えば2~6重量部、例えば3~5重量部の量で存在してもよい。
【0108】
前記界面活性剤は、ヒマシ油-エチレンオキシド付加物であってよく、例えば、ヒマシ油1モル当たりに、20モル超で80モル未満のエチレンオキシドが添加される。前記界面活性剤は、ポリシロキサンを含んでもよく、この場合にポリシロキサンは、約10,000~約30,000g/モルの分子量を有する。前記界面活性剤は、上述したヒマシ油エチレン付加物とポリシロキサンとの混合物(blend)のような組み合わせであってもよい。
【0109】
本発明のフェノールフォーム製品のような本発明のフォーム製品が形成される組成物は、好適には発泡剤を含む。
【0110】
前記発泡剤はC~C炭化水素を含んでもよい。C~C炭化水素は、熱伝導率が低く、安定して優れた断熱性能を有する独立気泡フォームを形成するのに使用することができ、環境への影響が低いことから、発泡剤として有利である。また、比較的低コストである。
【0111】
前記発泡剤はC~C炭化水素を含んでもよく、そのC~C炭化水素は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びそれらの異性体の少なくとも1つを含む。望ましくは、ブタンはイソブタンまたはシクロブタンである。望ましくは、ペンタンはイソペンタンまたはシクロペンタンである。
【0112】
前記発泡剤は、C~Cハロゲン化炭化水素から構成されてもよく、例えば、前記発泡剤は、塩素化脂肪族炭化水素から構成されてもよく、例えば、前記発泡剤は、塩素化脂肪族飽和または不飽和炭化水素から構成されてもよい。好適には、2~5個の炭素原子を有する塩素化脂肪族炭化水素は、1~4個の塩素原子を有する。好適には、2~5個の炭素原子を有する塩素化脂肪族炭化水素は、ジクロロエタン、1,2-ジクロロエチレン、n-プロピルクロリド、塩化イソプロピル、塩化ブチル、塩化イソブチル、塩化ペンチル、塩化イソペンチル、1,1-ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、及びクロロエチレンからなる群から選択される。
【0113】
前記発泡剤は、ハロゲン化ハイドロオレフィンを含むことができる。例えば、前記発泡剤は、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンからなる群から選択されるハロゲン化ハイドロオレフィンを含むことができる。ハロゲン化ハイドロオレフィンは、地球温暖化係数が低く、断熱性が優れていることから、発泡剤として有利である。
【0114】
前記発泡剤は、前記C~C炭化水素と前記ハロゲン化ハイドロオレフィンとの組合せから構成することができる。
【0115】
前記発泡剤は、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-2-プロペン及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0116】
前記発泡剤は、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、好適にはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンもしくはシス1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンまたはそれらの組み合わせ、好適には、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含むことができる。
【0117】
前記発泡剤は、トランス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、シス-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、1,3,3,3-テトラフルオロ-2-プロペン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-1-プロペン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、若しくはギ酸メチル、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0118】
前記発泡剤は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、及びそれらの異性体の少なくとも1つから選択されるC~C炭化水素から構成されてもよい。前記発泡剤は、塩化イソプロピルのようなハロゲン化アルキルから構成されてもよい。
【0119】
前記発泡剤は、炭化水素と、加えてハロゲン化ヒドロオレフィンとを含んでもよい。
【0120】
本発明のフォーム製品が形成される組成物の発泡剤は、前記組成物の発泡剤の総重量に基づいて、20%~80%のC~C炭化水素を含んでもよい。
【0121】
本発明のフォーム製品が形成される前記組成物の発泡剤は、該組成物の発泡剤の総重量に基づいて、20%~80%のハロゲン化ハイドロオレフィンを含んでもよい。
【0122】
前記発泡剤は、該発泡剤の総重量に基づいて、約30重量%~約50重量%の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン及び約50重量%~約70重量%のC~C炭化水素を含んでもよい。
【0123】
好適には、例えば任意によりリグニンを含むフェノールフォームのような本発明のフォーム製品が形成される組成物において、前記発泡剤は、フェノール樹脂100重量部当たり1重量部から20重量部の量で存在することができる。好ましくは、本発明のフォーム製品を形成するための組成物において、前記発泡剤は、フェノール樹脂100重量部当たり5~15重量部の量で、例えばフェノール樹脂100重量部当たり発泡剤が8~10重量部の量で存在する。
【0124】
本発明のフォーム製品が形成される前記組成物は、酸触媒を含んでもよく、その場合に前記酸触媒は、有機酸若しくは無機酸またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0125】
前記酸触媒は、硫酸、若しくはリン酸などの無機酸、またはベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、フェノールスルホン酸、若しくは類似物などの有機酸、またはそれらの組み合わせから構成することができる。
【0126】
前記酸触媒は、フェノール樹脂100重量部当たり酸触媒が約1~約20重量部、好適にはフェノール樹脂100重量部当たり酸触媒5~15重量部、好適にはフェノール樹脂100重量部当たり酸触媒8~10重量部が存在し得る。
【0127】
上記の他に、前記フォームは、可塑剤、無機添加剤、核化剤、マイクロスフェア、難燃剤、顔料、中和剤などの、他の添加剤を含むことができる。
【0128】
得られた製品は、規格EN 15804:2012+A2:2019に制定された全建築製品の規則に基づいて断熱製品の特定の製品種別基準を定義するEN16783:2017に従って計算された、フォームの2.0(<1.5;<1.0;<0,75;<0,5)kg-CO換算/kg未満の、ゆりかごからゲート(A1~A3)までの総GWPを有する。
【0129】
PENRMは27.5MJ/kg以下に低減し、PERMは1.5MJ/kg以上に増加する。
【0130】
有利なことに、本発明のフェノール/リグニン/バイオホルムアルデヒドフォームのようなフォーム製品は、90%より高い、好ましくは95%より高い独立気泡含有率を有する。
【0131】
フェノールフォームボードのようなラミネートフォーム製品の場合、70℃で14日間、次いで110℃で14日間エージングし、かつ適用25年後の平均熱性能をシミュレートするべく23℃/50%R.H.で安定した重量に条件付けした後の、EN 13166:2012+A2:2016(方法2、付属書C)に従って測定された熱伝導率宣言値は、0.025W/m・K未満、例えば0.022W/m・K未満、例えば0.020W/m・K未満、例えば0.018W/m・K未満である。適用50年後の性能をシミュレートするために、110℃での促進エージングを4週間に延長した。これに代えて、前記規格は、70℃で25週間エージングさせ、その後に23℃、50%R.H.で条件付けできることとし、それにより適用25年後の平均値をシミュレートすることを許容している(本願中において、R.H.は相対湿度である)。
【0132】
バイオフェノール/リグニン/バイオホルムアルデヒドフォームのようなブロックフォーム製品について、70℃で25週間促進エージングさせ、かつ23℃/50%R.H.で安定した重量に条件付けした後の、EN14314:2015(熱老化B4、付属書B)に従って測定された老化熱伝導率は、0.025W/m・K未満、例えば0.022W/m・K未満、例えば0.020W/m・K未満、例えば0.018W/m・K未満である。50年間の熱性能は、70℃で50週間のエージングとその後に安定した重量に条件付けすることによってシミュレートされる。
【0133】
優れた断熱性能と低い環境フットプリントの組み合わせは、既存の断熱製品よりも大きな利点がある。
【0134】
本発明のフェノール/リグニン/バイオホルムアルデヒドフォームのような本発明のフォーム製品は、EN13468:2001(e)によって測定して約3から約7のpHを有することができる。約3から約5の範囲のpHを有するフェノール/リグニン/バイオホルムアルデヒドフォーム製品のような本発明のフォーム製品は、フェノールフォームと接触する金属表面の腐食が起こり難いので、有益である。pHが3より低いフォーム製品は、金属表面の腐食を引き起こす可能性がある。
【0135】
本発明のフェノール/リグニン/ホルムアルデヒド(及び/又はそれらの組合せ)のバイオベースフォーム製品などの本発明のフォーム製品は、ASTMD1622-14に従って測定して約10kg/mから約150kg/mの密度、好適には約15kg/mから約60kg/m、好適には約20kg/mから約35kg/mの密度を有することができる。約10kg/mから約100kg/mの範囲のフォーム密度は、より低い密度のフォームがm当たりでより多量の発泡剤を含むので、有利である。これは、発泡剤がフォーム製品の断熱性能に大きく影響することから、望ましい。
【0136】
本発明のフェノール/リグニン/ホルムアルデヒド(及び/又はそれらの組み合わせ)のバイオベースフォーム製品などの本発明のフォーム製品は、EN826:2013によって測定して約80kPa~約250kPa、好ましくは約100kPa~約175kPaの圧縮強度を有することができる。約80kPa~約220kPaの圧縮強度は、フェノールフォームのような強いフォームが建物の断熱材として使用される場合、圧縮損傷に対して耐性を有することから、望ましい。
【0137】
本発明のフェノール/リグニン/ホルムアルデヒド(及び/またはそれらの組み合わせ)のバイオベースフォーム製品などの本発明のフォーム製品は、ASTMC421-88で測定して約10%~約50%、好ましくは約10%~約40%の破砕性を有することができる。低い破砕性は、フェノールフォームのようなフォームが、表面ダストを有する傾向及び/または応力下で破砕する傾向がより少ないことから、望ましい。
【0138】
フェノール/リグニン/ホルムアルデヒドのバイオベースフォーム製品などの本発明のフォーム製品は、望ましくはEN1609:2013に従って1kg/m未満の吸湿率(Wp)と、EN12086:2013に従って20~500の水蒸気透過率(μ)とを有する。
【0139】
ブロックフォームは一般に、フェーサー無しで製造される。フォームボードのような積層フォーム製品は一般に、フェーサー(フェーシングとも呼ばれる)と共に製造される。フェーシングは、ガラス繊維不織布、スパンボンド不織布、アルミニウム箔、ボンド不織布、金属シート、金属箔、プライウッド、麻、亜麻、ケナフ、ジュート、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、クラフトまたは他の紙製品、コルク及び木製ボードの少なくとも1つから構成することができる。一般に、フェーシングは、フォーム製品の上面及び/または下面に、フォーム製品が形成される際に付着される。一般に、フォーム製品のこれらの対向面には、同じフェーシングが使用されるが、当然ながら異なるフェーシングを採用することもできる。
【0140】
製品の再生可能な含有率を高めるために、好ましいフェイサー材料は、例えばセルロース、麻、亜麻、ケナフ、ジュート繊維のように高い再生可能含有率を有する。
【0141】
本発明のフェノール/リグニン/バイオホルムアルデヒドフォームのような本発明のフォーム製品は、建築物、施設、輸送用の断熱材として使用することができる。建築物の断熱材の例には、平屋根、勾配屋根、中空壁、床、内壁、ETICS(外断熱複合システム)、雨除けファサードがある。設備の例には、暖房システム、換気システム、空調システム(HVAC)、プロセス機器がある。輸送用途の例には、冷蔵/冷凍トラックや輸送コンテナがある。
【発明を実施するための形態】
【0142】
本発明は、例えばフェノール/リグニン/バイオホルムアルデヒド樹脂をベースとするフォーム製品であって、発泡体の少なくとも7重量%、例えば少なくとも10%、例えば少なくとも15%、望ましくは少なくとも20%、任意により少なくとも25%、例えば少なくとも30%が非化石由来の原料である再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成されているフォーム製品に関する。本発明のフォーム製品は、再生物質、バイオベース物質及び鉱物物質の使用からなる。
【0143】
フェノール樹脂を主成分とするフォームは、建築の用途や技術的利用で断熱材として使用されている。これらのフォームは、界面活性剤、発泡剤及び硬化化合物を連続(非連続)発泡プロセスで用いて発泡材料に加工される水性レゾールに基づいて製造される。
【0144】
断熱フォーム用レゾール樹脂の実際の製造工程は、1.0:1.5から1.0:2.5の割合のフェノール化合物とホルムアルデヒドとを、フェノールとホルムアルデヒドの合計量に基づいて算出して0.15~5.0重量%の範囲のアルカリ触媒を用いて、50℃から100℃の範囲の高温で縮合させることからなる。この縮合は、混合物を酸で中和することによって、25℃で1500~50,000mPa・sの範囲の必要な粘度で停止させる。最終工程では、最終的な樹脂の含水量は、水を添加するか、または真空下での蒸留により水分を除去することによって、5~20重量%の範囲の必要なレベルに調整することができる。
【0145】
フェノール樹脂を製造するための縮合重合反応における最初のモノマーは、ホルムアルデヒドである。これは、メタノールから製造される。工業的規模でのメタノールのホルムアルデヒドへの変換には、Formox法とSilver法が使用されている。Formox法では、メタノールは金属酸化物触媒上で470℃の温度で空気により直接酸化される。
2CHOH+O → 2CHO+2H
余分な熱は油媒体(oil-transfer medium)で除去する。生成ガスは冷却され、水に吸収されて、37%ホルムアルデヒド水溶液が得られる。この濃度は蒸留によって高めることができる。
【0146】
Silver法の最初の工程では、メタノールを脱水素する:
2CHOH → 2CHO+2H
水素の二次燃焼が起こる:
+(1/2)O → H
この反応は、結晶質銀触媒上で空気で起こる。この反応は、少し高い圧力と650~700℃の温度で行われる。反応には、制御された量の水分が供給される。40~50%のホルムアルデヒド水溶液が得られ、濃縮され、蒸留によって精製される。
【0147】
一般に、製造されるバイオホルムアルデヒド1kg毎に、約1.04kgのバイオメタノールが消費される。電力消費量は0.15kWh/kgである。CO排出量は、蒸気2.3kgの発生と共に製造されるホルムアルデヒドの0.11kg-CO/kgとなる。
【0148】
メタノール(MeOH)の約80%は天然ガスから生産される。世界のメタノール生産の約17%は石炭系である。石油から生産されるメタノールの割合は比較的少ない。年間メタノール生産量7,500万トンの40%がエネルギー用途(燃料)に消費される。
【0149】
メタノールは、バイオガス、汚水、固形廃棄物、バイオディーゼル製造からのグリセリン(グリセロール)、パルプ・製紙工業からの黒液など、様々な部門からのバイオマス、廃棄物、副産物を含む代替原料から製造することもできる。
【0150】
再生可能な資源及びプロセスからのバイオメタノール(バイオMeOH)は、化学的には化石燃料由来のメタノールと同一であるが、ライフサイクル全体を通じて温室効果ガスの排出量を大幅に削減することができる。本特許出願において、「バイオメタノール」の用語は、再生可能資源から製造されたメタノールと、回収されたCOから製造されたメタノールの両方に使用される。
【0151】
図4に、バイオメタノールの合成経路の概略を図示する。
【0152】
バイオメタノールの製造プラントの構成/工程は、いくつかの主要な種類に分けることができる。最初の工程種類は、バイオガスからバイオメタノールを製造するのに使用される。(これは、天然ガスからのメタノール製造とある程度類似する)。2つ目の工程種類は、ガス化から合成ガスへの工程であり、ガス化を介した石炭ベースのメタノール製造との類似点を示している。第3の工程種類は、クラフト紙工程からの廃水流を使用する。第4の工程は、再生可能エネルギーを使用してCOからバイオメタノールを製造する。これらの工程の他に、ハイブリッドプロセス及び低炭素メタノールプロセスも存在する。
【0153】
バイオガスからのバイオメタノール製造は、天然ガスからのメタノール製造といくつかの類似点がある。バイオガスの生成には、バイオ廃棄物、下水汚泥、液肥、液肥とバイオ廃棄物との共発酵、牧草、トウモロコシ/穀物などのエネルギー生成用に栽培された作物など、いくつかの種類の基質を使用することができる。(本願において、このような文脈で使用される基質という用語は、本発明で使用される成分が由来する原料/フィードストックを指す)。
【0154】
発酵のための原料は前処理される(細断とサイズ分離)。原料はミキサーで工程用水及び既に発酵済みの原料と混合される。熱交換器を介して、前記混合物は発酵槽にポンプで送り込まれる。発酵プロセスは、35~50℃の嫌気性好熱性乾式発酵に基づいている。発酵槽での滞留時間は約14日間である。発酵中にバイオガスが発生する。発酵槽からのスラッジは脱水され、スラッジは肥料として利用できる。水は農業に使用することができる。一般に、フィードストック1kg当たりで0.1Nmのバイオガスが生成されると推測される。
【0155】
驚くことに、ホルムアルデヒドの製造のために使用される前記バイオガスの基質は、ホルマリンの結果として得られるLCAに重大な影響を及ぼす(ホルマリンは水に溶解したホルムアルデヒドである)。エネルギー生産のために栽培された作物の消化に由来するバイオガスは、最も提示された非生物起源排出量と土地の占有とに対して最も高いスコアを与えている。大部分の場合、排出量のスコアを支配しているのは、エネルギー生成のために栽培された作物のサプライチェーンである。これは、これらの投入基質が、副産物としてモデル化されているのではなく、化学的基質の生成において負荷を割り当てられた原料としてモデル化されているという事実の結果である。 更に、得られた工程廃水とそれに続く水処理は、バイオガスのSO排出と生物学的酸素要求量(BOD)排出を支配しまたは大きく寄与する。有機水質汚染物質の排出量は、BODによって測定され、BODは、水中のバクテリアが廃棄物を分解する際に消費することになる酸素の量を指している。
【0156】
生下水の汚泥、肥料、牧草などの投入基質について、すべての環境負荷は他の製品やサービスに配分されるので、原料投入は環境負荷ゼロという特徴を有する。
【0157】
天然ガスと比較して、生のバイオガスは重質ガスであり、不燃性のCOと水蒸気が存在する。以下の表6は、バイオガスの典型的な組成を示している:
【表6】

表6:バイオガスの組成
【0158】
S(硫化水素)、CO、及び水を除去することが必要不可欠である。バイオガスのアップグレードは、圧力振動吸着技術(PSA)によって行われる。原料バイオガスは最初に圧縮され、HS除去リアクターに導かれる。HS除去は、60~90℃の温度で活性炭表面でHS分子を分解する原理に基づいて行われる。
2HS+O → 2HO+(1/4)S
その後、硫黄は活性炭の表面に吸着される。その結果、バイオガス中のHS含有量は5mg/Nm以下になる。除去吸着剤の寿命は約1年である。後続のコンディショニングシステムでは、バイオガスの温度を約20~30℃に低下させ、低温乾燥によって約3~5℃の露点が得られる。この乾燥は、以下の部品を腐食から保護する役割を果たす。
【0159】
Sをほとんど含まない乾燥バイオガスは、次に、メタンを精製するための4床圧力振動吸着(PSA)プラントに導かれる。このプラントの各吸着器は、吸着、減圧、再生、減圧の4段階サイクルで運転される。前記吸着器は排気によって完全に再生され、従って吸着材の交換は不要である。
【0160】
1mのバイオメタンを生産するために、一般に1.5mのバイオガスが消費される。
【0161】
メタン(CH4)をメタノールに変換する主な工程は、脱硫、水蒸気改質、水-ガスシフト、圧力振動吸着、メタノール合成及び精製である。最初の工程段階は脱硫である。続いて、バイオメタンの水蒸気接触分解(改質)が行われる。この段階で、メタンは最初に蒸気によって水素(H2)と一酸化炭素(CO)に変換される:
CH+HO ←→ CO+3H
【0162】
同時に起こる発熱性の水ガスシフト反応で、一酸化炭素と水分は二酸化炭素と水素に変換される:
CO+HO ←→ CO+H
【0163】
圧力振動吸着は、例えば、合成ガスの化学量論因子(H/COの比)を調整するために使用することができる。合成条件(反応器の温度、圧力、触媒の量と種類を含む)によって、このプロセスは通常、約2:1の(H-CO):(CO+CO)比を目指す。このようにして製造された合成ガスは、精製され、圧縮され、触媒によってメタノールに変換される。メタノール合成に使われる触媒系は通常、銅、酸化亜鉛、アルミナ、及びマグネシアの混合物である。最近の進歩によってまた、炭素、窒素、白金からなる新しい触媒の可能性がもたらされている。反応の残滓は、温度と高圧によって生成物の側に移動する。1kgのメタノールを生成するためには、一般的に0.68kgのメタンを消費する。バイオガスから製造される、商業的な量のバイオメタノールは商業製造者、例えばBioMCN社、New Fuel社、Nordic green社によって製造されている。
【0164】
合成ガスプロセスの主な工程は、ガス化、高分子量炭化水素の改質によるガス精製、水-ガス除去、水素添加及び/またはCO除去、及びメタノール合成と精製である。このプロセスは、石炭からのメタノールの製造と類似点がある。原料の前処理が必要な場合があり、例えば木質バイオマスのチップ化や乾燥、液体原料の精製である。
【0165】
第1の工程で、前記フィードストックは、主に一酸化炭素(CO)と水素(H)の混合物である合成ガス(syngas)にガス化される。この合成ガスはまた、CO、水分(HO)及び他の炭化水素を含む。前記合成ガスの組成は、以下のような多くの要因に依存する:
1.ガス化技術(固定床、流動床、同伴流、大気または加圧反応器、酸素または空気吹き、ガス化反応の直接または間接加熱)
2.様々な運転パラメーターの選択:蒸気/バイオマス(S/B)比、当量比(供給中の酸素比)、温度、及び圧力
3.フィードストックの組成(化学元素分析(ultimate chemical analysis)、水分率など)。
【0166】
限られた量の酸素をフィードストックの加熱中(即ち700℃以上)に使用することにより、CO及びHの生成が改善され、不要なCO及びHOの量が減少する。しかし、酸素源として空気を使用する場合、設備を通過するガス流量の増加が、投資コストを高くすることになる。他方、純酸素を使用することは相当高価であり、プロセスに必要なエネルギー消費は、得られるバイオメタノールのLCAにマイナスに影響する。
【0167】
ガス化後、不純物や汚染物質が除去された後、前記ガスを調整工程に通して、メタノール合成に最適な組成にする。その目的は、CO分子の少なくとも2倍のH分子を有する合成ガスを製造することである。合成ガスの初期組成は、炭素源とガス化方法とに依存する。CO及びHの濃度は、いくつかの方法で変えることができる。第一に、未処理の合成ガスは、少量のメタンと、高いエネルギー含量の他の軽質炭化水素を含むことができる。これらは、例えば高温水蒸気接触改質(high temperature catalytic steam reforming)または自己熱改質(ATR)によって、COとHに改質される。
【0168】
第二に、前記合成ガス中の初期水素濃度は、最適なメタノール合成には通常低過ぎる。COの割合を減らし、Hの割合を増やすために、COとHOをCOとHに変換する水ガスシフト反応(WGSR)を使用することができる。COはまた、例えばアミンによる化学吸収を利用することによって、直接除去することができる。
【0169】
典型的な固定床ガス化炉での1kgの混合木材チップ(乾燥物)のガス化によって、正味1.922Nm(net Nm)の合成ガスが生成される(273K、1気圧)。(Nmは基準のm。)前記プロセスの総合効率は約50%である。典型的な固定床ガス化炉の総CO排出量は、合成ガス1Nm当たり0.374kg-COとなる。
【0170】
典型的な流動床ガス化炉でのガス化は、1.545Nm(基準m)の合成ガスを生成する。プロセス全体の効率は若干高く、約53%である。流動床ガス化炉の場合、直接CO排出量は、1Nm当たり0.322kg-COである。従って、LCAの観点からは、流動床炉が好ましい。
【0171】
水素は別個に製造し、合成ガスに加えることができる。工業用水素は、メタンの水蒸気改質または水の電気分解によって製造される。電気分解は通常高価であるが、電気分解中に生成される酸素をガス化工程での部分酸化に使用し、空気の必要性または空気分離からの酸素生成の必要性を置き換えることになれば、重要な相乗効果を提供することができる。しかしながら、環境保護の観点から、電気分解は、再生可能な電力が利用できる場合にのみ意味がある。多くの場合、これはそうではないため、バイオメタノールのLCAにおけるGWP寄与度は、マイナスの影響を受ける。
【0172】
コンディショニング後、前記合成ガスは、酸化銅、酸化亜鉛、または酸化クロム触媒に基づく触媒プロセスによって、メタノールに変換される。蒸留を使用して、メタノール合成中に発生する水を除去する。
【0173】
バイオマスからメタノールを製造するのに使用される技術は、長い間応用されてきた石炭ガス化技術と類似していることから、比較的よく知られている。技術的には、あらゆる炭素源を合成ガスに変換することができる。フィードストックの主なカテゴリーは、都市固形廃棄物(MSW)、農業廃棄物、林業廃棄物/残渣、パルプ加工からの黒液、バイオディーゼル生産からのグリセリン、バガス(バイオエタノール製造からのサトウキビの粉砕繊維)である。
【0174】
1kgのバイオメタノールを製造するために、7.13Nmの合成ガスを発生させる必要がある。合成ガスからバイオメタノールへの変換による直接的なCO排出量は、一般的にメタノール1kg当たり2.76kg-COである。
【0175】
(Althaus 2004)によれば、天然ガスからのメタノール合成の全体的な熱需要は、7.7~10.5MJ/kgメタノールである。合成ガスからメタノールへのプロセスでは、合成ガスからメタノールへのプロセスで必要とされる追加の熱量により、全体の熱需要は約9.5MJ/kgメタノールとなる。これは、両プロセスがエネルギー効率の点で多少競合していることを意味する。
【0176】
商業量のガス化からのバイオメタノールは、例えばEnerkem社により製造されている。
【0177】
バイオメタノールはまた、紙を製造するためのクラフトプロセスの廃棄物から製造することができる。硫酸塩パルプ法では、木材チップを化学薬品(NaOH/NAS)で処理して、木材をその成分、即ちセルロースとヘミセルロース(パルプ)とリグニンに分離する。木材と化学薬品が反応する際にメタノールが生成される。
【0178】
処理/調理後、化学物質、リグニン、その他の残留物はパルプから洗い流される。これらは黒液となり、その含水量は蒸発によって減少する。残るのは、メタノール、テレビン油、硫黄化合物の凝縮物である。
【0179】
前記凝縮物は、ミル内で再利用するために洗浄され、次に、可燃性残渣の混合物である原料メタノールが生成される。原料メタノールは燃焼して熱とエネルギーを生産できるが、例えばホルムアルデヒドを生産するのにも使用される。このエネルギーは、商業グレードのバイオメタノールを得るのにも使用できる。パルプ1トンにつき、約10kgのメタノールを製造することができる。
【0180】
クラフト法から得られる市販グレードのメタノールは、例えばSodra社から入手できる。
【0181】
再生可能資源からのバイオメタノール以外に、回収したCOからもメタノールを製造することができる。COは、大気から及び産業排気流から回収することができる。発電所、製鉄所、セメント工場、及び火山活動さえ、メタノールを製造する供給源として使用できるCOを発生する。
【0182】
この技術の重要な要素は、再生可能エネルギーの存在である。この再生可能エネルギーは、あらゆる供給源(例えば、太陽熱、風力、水力、地熱)からのものであり得る。このエネルギーは、水の電気分解から水素を製造するのに使用される。COとHを混合することにより、バイオメタノールまたはe-メタノールの製造に適した合成ガスを製造することができる。(本発明に関連して、e-メタノールは、電気分解工程を含むプロセスによって製造されたメタノールを指すのに使用される。例えば図4を参照)。
【0183】
商業量のe-メタノールは、例えば Carbon Recycling International社によって製造されている。
【0184】
バイオメタノール以外に、ハイブリッド及び所謂低炭素メタノールも市販されている。この技術の一例として、例えば工業施設から従来のメタノール合成ルートに隔離されたCOの注入がある。このプロセスは環境性能を大幅に向上させる。別の例としては、排ガスからCOを抽出し、それをメタノール生産に再注入することで、GHG排出量と水の消費量を低減することができる。
【0185】
市販量のこれらのグレードは、例えばMethanex社やQAFAC社から入手可能である。
【0186】
利用可能なバイオメタノールの大部分は、燃料としてまたは他のエネルギー用途に使用されている。再生可能燃料は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する。これには、COを50~95%、NOを最大80%削減すること、及び硫黄酸化物や粒子状物質を除去することが含まれる。
【0187】
バイオガスからのバイオメタノールは、商業的規模で容易に入手できる。また、木質系バイオマスのガス化からのバイオメタノールも大量に入手可能である。他の供給源、例えばe-メタノールの入手可能性は低い。メタノールの様々な生産経路の寄与度を調査すると、驚くべき結果が得られた。混合バイオガスからのバイオメタノールによって、化石GWPが増加する(1.07kg-COeq/kg)。この高い値の理由は、肥料(家畜からのもの)が基質のかなりの部分を占めていることである。GWPはCOには関係しないが、メタン及びNOの排出(主に消化プロセスから)に関係する。
【0188】
バイオガス生成のために栽培される作物(例えばナタネ-植物油)の場合、作物の栽培に使用される肥料の寄与は、化石GWPに大きな影響を与える。50%を超えるバイオマスが廃物流から得られる場合、得られるバイオメタノールのGWP-fossilは化石メタノールに匹敵する。
【0189】
しかしながら、バイオガス発酵のための化学基質を最適化することにより、化石メタノールとほぼ同じレベル(0.6kg-COeq/kg)まで化石燃料の寄与を減らすことができる。食用作物の栽培からの農業廃棄物は、全てのCO排出が生産された食品に割り当てられることから、特に注目される。
【0190】
更に驚くべきことに、合成ガスルートは、効率が比較的低い(約50%)にも拘わらず、GHGフットプリントは低くなる。これは、廃木材チップの原料に寄与する可能性がある。
【表7】

表7:バイオエタノールのGWP
【0191】
メタノールのGWPは、生産されているホルムアルデヒドのGWPの95%以上に寄与している。
【0192】
農業廃棄物または牧草からのバイオガスを消化用基質として使用する場合、GWP-fossilを改善することができる。バイオガスからのバイオメタノールは、バイオマスの合成ガスへのガス化からのバイオメタノールに比べると、好ましくない。固定床ガス化炉と流動床ガス化炉のGWPは無視できる程度である。消化のGHG排出が高いのは、主に化学的基質の生産と、メタンレベルを高めるバイオガスの処理の結果である。
【0193】
新規な断熱フォームの環境フットプリントを大幅に改善するためには、好ましい選択肢は、従来のメタノールよりも化石GWPが低いバイオメタノールを使用することである。最終製品(ゆりかごからゲートまで)では、総GWPを約2.0kg-COeq/kgから1.7kg-COeq/kg以下の断熱フォームまで10~20%削減することができる。バイオガスの消化や合成ガス用に最適化された基質では、1.5kg-COeq/kgを達成することができる。
【0194】
縮合における第二のモノマーであるフェノールは、石油化学の前駆体から製造されるが、その際、クメンベースの技術が主に使用される。フェノールを製造するために、化石ベンゼンとプロピレンはクメンに変換され、続いてアセトン、α-メチルスチレン(AMS)、及びフェノールに変換される。化石ベンゼンの主な原料は石油と天然ガスである。従来のフェノールの化石-GWP-totalは、1.79kg-COeq/kgである(CEFIC、欧州化学工業協議会(旧フランス名Conseil Europeen des Federations de l'Industrie Chimique))。
【0195】
いくつかの第一世代のバイオ精製工場がバイオベンゼンを生産している。バイオベースのベンゼンは、(動物性)脂肪、脂肪酸残渣、食用油及び植物油(パーム、大豆、ナタネ)から製造することができる。
【0196】
商業量のバイオベンゼンは、例えばTotal社(フランス)、Versalis社(イタリア)、INEOS社(ドイツ)及びNeste社(フィンランド)から入手可能である。
【0197】
以下の概略図は、リグニンなどのバイオ廃棄物からバイオベンゼンを製造する潜在的な化学経路を示している。
【化1】
【0198】
バイオメタノールと同様に、断熱製品の環境への影響を最小限に抑えるためには、原料が非常に重要である。パーム油(または他の植物油)は、バイオベンゼンの製造において非常に一般的な原料である。しかし、好ましいのは合成ガスからバイオベンゼンを製造するルートで、この場合、基質として木材やバイオ廃棄物が使用される。さらに具体的には、製紙・パルプ産業からの廃棄物(トール油など)がある。これらのバイオベンゼン・グレードでは、得られる製品の総GWPを大幅に削減することができる:
【表8】

表8:バイオベースのフェノールのGWP-totalへの影響
【0199】
化石フェノールの25%をバイオフェノールで置き換えることにより、フェノール系断熱フォームの総GWPを1.7kg-COeq/kgフォーム以下に低減することができる。50%の置き換えでは、GWPは約1.5kg-COeq/kgフォームとなる。100%の置き換えでは、フォームの総GWPを1.0kg-COeq/kgフォーム以下にすることができる。
【0200】
フェノール樹脂の製造工程におけるカーボンフットプリントは、主に使用される原材料に起因する。樹脂1kgの製造にかかる総カーボンフットプリントは0.072g-COeqである。以下の表9を参照。
【表9】
【0201】
これは発熱化学反応の結果であり、大きな加熱を必要としない。前記反応から除去される水分は、減圧蒸留によって行われる。消費されるエネルギーは、実際には反応容器内の凝縮器への真空還流下で反応混合物を冷却するために使用される。
【0202】
製品のGWPを更に低減するために、(バイオ)フェノールを、リグニン、タンニン、ロジン、…などのような、自然界に見出される天然の、バイオベースの、従って持続可能なポリフェノールで置き換えることができる。
【0203】
リグニンは、植物に見られる高分子量の芳香族構造で、(ヘミ)セルロース繊維のバインダーとして機能する。このリグニンは、様々な技術により植生またはバイオ廃棄物から回収することができる。
【0204】
リグニンは、硫黄を含むリグニンと硫黄を含まないリグニンに分けられる。リグニンの主な分類を図5に模式的に示す。
【0205】
リグニンの構造、組成及び機能性は、フィー ドストック(リグノセルロース)の由来と抽出及び精製プロセスに依存する。紙及びパルプ製造の廃物流から抽出されるリグニンは、パルプ化プロセスに応じて、クラフトリグニン、ソーダリグニン及びリグノスルホネートである。パルプ化工程では、高品質のセルロースパルプの生産に主眼が置かれている。
【0206】
バイオマスをバイオ燃料に転換するバイオ精製工場では、リグニンを含む廃物流も発生する。これらのリグニンは多くの場合、オルガノソルブリグニンと呼ばれる。
【0207】
他のプロセス、例えばバイオ精製プロセスでは、加水分解リグニンと呼ばれるバイオマスからリグニンを直接抽出することもできる。このようなプロセスでは、リグニン、セルロース、及び(発酵可能な)糖の共同生産に焦点が置かれる。
【0208】
今日最も一般的な木材の化学パルプ化プロセスは、クラフトパルプ化プロセスである。この工程では、亜硫酸ナトリウムがアルカリ性条件下で使用される。この工程では、可溶化された硫黄含有リグニン(1~3%)が得られ、それは黒液から回収される。2020年には、いくつかの企業、例えばLignoBoost社、LignoForce社などが、様々な分離プロセスを用いてクラフトリグニンを製造している。
【0209】
亜硫酸法も、パルプの製造に広く応用されている。このプロセスでは、HSOを形成する二酸化硫黄の水溶液が、様々なpH値で使用される。この工程からのリグニンはスルホネート基を含んでいる(スルホネート基はリグニンの3~8重量%である)。大部分のリグノスルホネートは水溶性であり、従って水溶性に関してこれらのリグニンを他のタイプのリグニンと異ならしめている。
【0210】
ソーダパルプ化プロセスでは、硫化ナトリウムの代わりに水酸化ナトリウムを使用して、亜麻、わら、木材のような一年生繊維作物などのリグノセルロース系材料からリグニンを溶解する。ソーダリグニンは、酸沈殿、熟成プロセス、ろ過による代替回収プロセスによって回収され、硫黄を含まないリグニンが得られる。
【0211】
オルガノゾルブパルプ化及び/または分別プロセスでは、硫黄含有副生成物の生成を回避するため、有機溶媒(エタノールなど)を使用する。オルガノゾルブパルプ化または分別は、高品質のセルロースと高品質のリグニンの両方の製造を可能にする。水不溶性のオルガノソルブリグニンは、他の抽出方法に比べて、より混じりけが無く、高割合のリグニンを含んでいる。
【0212】
バイオ精製プロセスは、例えば水蒸気爆発酸加水分解のようないくつかの異なる技術から構成される。水蒸気爆発プロセスは、セルロース、発酵性糖類及びリグニンを生産するためのリグノセルロースの分別に使用される。木質系バイオマスは、高温高圧の水蒸気で前処理され、その後急速に圧力を解放する。繊維網が破砕され、遊離した繊維と束が形成される。この工程において、酸加水分解されたリグニンは、主に溶媒によってセルロースから抽出される。その結果、水蒸気爆発によって遊離したリグニンは、含まれる炭水化物や木質抽出不純物の含有量が少ない。酸性プロセスは、水蒸気の有無にかかわらず酸を使用し、例えば農業廃棄物や樹種など、様々な種類のバイオマスを分画するために適用されることが多い。全てのリグニンは粗製グレードであり、そのまま使用することができるが、多くの場合、さらなる分別、解重合、及び化学的修飾が必要である。クラフトリグニンとリグノスルホネートは、工業用に広く利用されている。
【表10】

表10:利用可能なリグニンの種類の例
【0213】
本発明における有用なリグニンは、独立気泡フェノール系断熱フォームの製造に使用されるフェノール樹脂の合成において、少なくとも20重量%のフェノールを置換するために利用することができる。有用なリグニンは、以下の1つ以上の特徴を有することができる。(i)その純度が高く、例えば炭水化物、灰分、S、...の含有量が低い、(ii)オリゴマーの混合物であることから、その分子量分布範囲が比較的狭い、(iii)化学官能基の数が十分であることから、アルデヒドに対する反応性が好適である。
【0214】
これらの問題は、それらの水への溶解度が、フェノールモノマーと比較して異なるであろうことから、樹脂合成工程に影響を与えることになる。更に、これらの樹脂を使用することによって、フォームは、ポリマー強度が低下することになり得る。その結果、フォームは、機械的特性が劣り、破砕性が高く、連続気泡となり、それは断熱性能が低いことを意味する。
【0215】
リグニンをフェノール系断熱フォームの前記用途に使用するのに適したものにするためには、精製、分別、解重合、 化学修飾、及びこれら技術の組合せからなる更なるプロセス変更が必要である。
【0216】
リグニンは精製することができる。残存する炭水化物を除去し、最終的なフォームにおいてフィラーとして機能するであろう硫黄及び/または灰分の含有量を低減する必要がある。
【0217】
リグニンは、リグニンの均質性を向上させるであろう狭い範囲の分子量に分画することができる。
【0218】
リグニンは、ポリマーをより小さい分子量の画分に切断することによって、解重合することができる。塩基触媒及び酸触媒による解重合、酵素解重合及び熱(熱分解)解重合は、使用すべきいくつかの方法である。
【0219】
リグニンは官能化することができ、この化学修飾は、そのフォーム製造における反応性を増加させる。例えばフェノール化、メチル化、グリオキサール化(glyoxalation)、脱メチル化、スルホン化等の技術がある。
【0220】
本発明の別の目的は、スルホン化クラフトリグニンを使用して、レゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂の合成において、化石由来のフェノールなどの化石由来の材料を少なくとも部分的に置き換え、さらに最終的な断熱フォームのバイオベース含有率を高めることである。
【表10a】

表10a:(商業的に入手可能な)リグニンの種類(及びその供給源)の例
【0221】
クラフトリグニンのスルホン化は別個のプロセスである。スルホン化工程は、リグニンと硫酸との化学反応からなり、その結果、リグニン構造内にスルホン酸官能基が存在することとなる。クラフトリグニンは、95~98%の硫酸に配合(blend)される。前記化学反応は、温度を25~40℃の範囲に保つことによって制御される。スルホン化後、スルホン酸官能基はアルカリ塩(例えば、カリウム、ナトリウム)に中和される。リグニンは沈殿により回収され、水で洗浄して過剰の酸を除去する。スルホン化プロセスは、リグニン1000単位重量当たりのスルホン酸基のモル数として表されるスルホン化度が異なるリグニンを得るために変更することができる。図式的には、次のように表される。
Lignin +HSO → Lignin-SO-O-H (スルホン化)
Lignin-SO-O-H → Lignin-SO-O-Na+ (アルカリによる中和)
【0222】
スルホン化クラフトリグニンは産業的な量で市販されており、Ingevity社によって市場に供給されている。
【0223】
本発明の更なる目的は、レゾール樹脂のような樹脂の合成において、少なくとも部分的に化石由来のフェノールを置き換えるために、フェノール化クラフトリグニンを使用することである。これは、更に最終的な断熱フォームのバイオベース含有率を高めることである。
【0224】
クラフトリグニンのフェノール化は別個のプロセスで行われるが、実際には、1段階プロセス(OSP)または2段階プロセス(TSP)の2つの選択肢がある。フェノール化工程は、酸性条件下でフェノールとリグニンとの化学反応からなり、リグニンの芳香族フェノール官能基の量を増加させる。フェノール化リグニンの模式図を以下に示す:
【化2】
【0225】
前記2段階フェノール化プロセスは、リグニンにフェノールを配合し、酸触媒の存在下で高温で反応させることからなる。その後、フェノール化リグニンを沈殿により固体物質として回収し、必要に応じて最終的に洗浄し、または中和して沈殿物を精製する。得られたフェノール化リグニンは、フェノール樹脂合成においてフェノールとの共反応剤として使用される。
【0226】
前記1段階フェノール化は、樹脂合成の前に行われるが、フェノール化と樹脂合成の両方を同じ反応器内で連続する2工程とすることができる。必要なフェノールの一部にリグニンを配合し、酸性条件下で昇温して、リグニンのフェノール化を開始する。更なる反応を停止するため、前記酸触媒を中和する。更に、残りのフェノールにアルカリ触媒と水分を加える。ホルムアルデヒドを徐々に 加えることによって、縮合重合反応が開始する。この反応は、冷却して酸で中和することにより、目標とする粘度で停止される。この方法では、樹脂合成前のフェノール化リグニンの精製と単離が省略される。
【0227】
本発明の次の目的は、熱分解リグニンを使用して、リゾール樹脂のような樹脂の合成における化石由来のフェノールを部分的に置換し、最終的な断熱フォームのバイオベース含有量をさらに増加させることである。バイオマスの熱分解により、熱分解リグニンと熱分解糖とに分画できる熱分解油が得られる。
【0228】
有機物を酸素のない環境で450~600℃まで短時間で加熱する高速熱分解プロセスが知られている。この条件下で、有機蒸気、熱分解ガス、及び木炭が生成される。蒸気は、典型的に60~75重量%の収率でバイオオイルに凝縮される。
【0229】
前記高速熱分解プロセスは、回転円錐型反応器に基づいて行われ、バイオマス粒子は、砂のような高温の担体材料の過剰流と共に熱分解反応器の底部付近に供給され、そこで熱分解される。生成された蒸気は、いくつかのサイクロンを通過してから凝縮器に入り、そこで前記蒸気は、再循環されたオイルによって急冷される。この新規な断熱フォームの環境フットプリントを大幅に改善するために、好ましい選択肢は、伝統的なメタノールよりも化石GWPの低いバイオメタノールを使用することである。最終製品(ゆりかごからゲートまで)について、総GWPは約2.0kg-COeq/kgから1.7kg-COeq/kg断熱フォーム未満まで10~20%削減できる。バイオガス消化及び/または合成ガス用に最適の基質では、1.5kg-COeq/kgの値さえ達成できる。熱分解反応器は循環砂システムに組み込まれる。このシステムは、流動床炭(char)燃焼器、熱分解反応器、前記炭燃焼器から前記熱分解反応器に砂を戻す所謂「ダウンカマー(down-comer)」に供給するライザー(riser)で構成されている。この概念では、炭は熱分解プロセスに必要な熱を供給するために空気と一緒に燃焼される。オイルが主な生成物であり、非凝縮性の熱分解ガスは燃焼され、追加蒸気の生成などに利用できる。余剰熱は、フィードストックを乾燥させるために使用することができる。
【0230】
大量の酸素含有成分が存在するため、前記オイルは極性を持っており、炭化水素と容易に混合しない。バイオマス成分からの分解生成物は、有機酸(ギ酸や酢酸など)を含み、前記オイルのpHを通常2.9と低くし、密度を1,170kg/mとする。低位発熱量約16MJ/kgの(親水性)バイオオイルは、典型的な含水率15~35w%、動粘度1.3cSt(40℃)を有する。典型的な木材由来の熱分解オイルは、炭素46w%、水素7w%、窒素<0.01w%、酸素47w%を含む。
【0231】
熱分解オイルは、バイオマスの3つの基礎的構成要素であるセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの熱分解に由来する分解成分の混合物である。熱分解は、バイオマスの分画を促進する良い前処理である。熱分解後、前記オイルは3つの生成物流即ち、熱分解リグニン(リグニン由来)、熱分解糖(セルロース由来)、及び酢酸(主にヘミセルロース由来)などの小さな有機成分を含む水相に容易に分画することができる。
【0232】
典型的な収率は20~30重量%の熱分解リグニンで、含水率が約10~11重量%である。この工程で得られる熱分解リグニンは、高粘性の液体である。その後、熱分解リグニン分離後に得られた残りのバイオオイルから、前記熱分解糖と小さい有機種を抽出することができる。前記水相からは、後に簡単な蒸留が続く抽出工程によって酢酸を製造することができる。
【0233】
リグニンの添加に関する別の予期せぬ利点は、製品の色の変化である。フェノールフォームは、製造後、薄いピンク色をしている。製品の寿命中、材料の色は茶褐色になる。この色の変化は、黒ずみ効果を持つ酸化によって引き起こされる。この変色作用は、製品が光(UV:紫外線)にさらされると促進される。このような変色傾向は、断熱製品が断熱性能を保持しているにも拘わらず、視覚的に製品が異なって見えることがあることから、好ましくない。
【0234】
この色は、マトリックス中に反応し得る尿素または代替の窒素含有物質で修飾することにより、黄色がかった色に変えることができる。代わりに、着色剤をフェノールフォームに添加することもできる。例えば、一般的に使用される着色剤はカーボンブラックである。また、他の着色剤を使用することもできるが、多くの着色剤はフォームの気泡形成を妨げ、連続気泡となって経時的な熱性能の喪失となることから、その選択は制限される。
【0235】
リグニンの使用によって、色の変化が少なくなり、安定した淡褐色の製品が得られる。この色は安定している。また、この色により、製品を代替の従来の独立気泡フェノールフォーム材料から区別することが可能になる。
【0236】
バイオフェノール及び/またはリグニン及び/またはバイオメタノールから樹脂の製造に伴う温室効果ガス(GHG)排出量は、0.0468kg-COeq/樹脂kgと推定され、これは化石ベースの樹脂の製造に匹敵する。この製造時に消費される電力は、0.33kWh/kg樹脂と見積もられる。
【0237】
原料中に隔離されたCOの影響は、ゆりかごからゲートまで(A1-A3)の最終製品の総GWPに著しく大きく作用する。このため、バイオベースの原料に転換してGWPの大幅な削減を実現する必要がある。
【0238】
本発明の更なる目的は、バイオベース及び/または再利用されたポリウレタンフォームをベースとする可塑化添加剤を使用して、フォーム加工配合物の化石由来の添加剤を置き換えて、さらに最終断熱フォームの持続可能な含有量を増加させることである。
【0239】
バイオベースのポリオールは、様々な供給源から製造することができる。バイオベースのポリオールは、バイオベースの無水フタル酸、フタル酸及びテレフタル酸から製造することができる。また、高い再生可能含有率の植物、菜種油、エポキシ化大豆のポリオールも、例えば選択肢である。最後に付け加えるなら、回収したCOをベースとするe-ポリオールも、GWPを削減する選択肢となり得る。
【0240】
グリコール分解プロセスを使用して、粉砕したポリウレタンフォーム廃棄物をグリコールと触媒/添加剤で液体ポリオールへの変換に再利用する。このプロセスの結果は、更なる精製工程を何ら使用する必要が無い。これらのポリオールは可塑剤として作用し、フォーム配合物に使用して本発明のフォーム製品を形成することができる。
【0241】
フォームの化学配合は可塑剤の含有量が比較的低いことから、その総GWPへの寄与も限定的である。それにも拘わらず、この種の技術は、GWPの更なる削減を生み出すために使用することができる。
【0242】
本発明の次の目的は、冷凍用途から回収したシクロペンタンのような発泡剤を使用して、フォーム加工配合物中の化石由来の等級を置き換え、さらに最終断熱フォーム製品の持続可能な含有量を増加させることである。
【0243】
フォームへの固形物、例えば中和剤の添加は、EPDのGWP値に影響を及ぼす場合がある。これらの固形物は一般に製剤中で不活性であり、固形物の最大量は一般に10w%に制限され、多くの場合に5w%未満にさえ制限されることから、フォーム製品のEPDにおけるGWPへの全体的な影響は比較的限定される。
【0244】
バイオベースの中和剤の考えられる例は、貝殻及び/または卵殻である。これらのタイプの材料は、例えばCaCO/MgCO/NaCO/…の形態で隔離されるCOを含んでいる。粒子状の形態は、フォーム形成組成物中での分散を可能にする。
【0245】
リン酸トリエチル(TEP)、トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート(TCCP)または赤リンなどの難燃剤は、他の成分と比較してGWPが高く、大きな影響を及ぼす可能性がある。例えば、赤リンのGWP総量は13.3kg-COeq/kgである。
【0246】
バイオホルムアルデヒドと、フェノール化及び/またはスルホン化クラフトリグニン及び/または熱分解リグニン及び/またはバイオフェノールとをレゾール樹脂合成工程で併用し、このレゾール樹脂をフォーム配合物中で、界面活性剤/乳化剤、及び/または再生可塑化添加剤、及び/または再生発泡剤及び/または鉱酸を任意に添加して処理することによって、ほぼ完全に化石フェノール系断熱フォームの熱的性能及び機械的性能に見合う、非化石含有率7%超の断熱フォームを得られる可能性がある。このような製品では、発泡体の少なくとも7重量%が、例えば少なくとも10%、例えば少なくとも15%、望ましくは少なくとも20%、任意に少なくとも25%、例えば少なくとも30%が、再生可能な供給源からの少なくとも1つの成分から形成される。
【0247】
バイオホルムアルデヒド、フェノール化リグニン及び/またはスルホン化クラフトリグニン、及び/または熱分解リグニン、及びバイオフェノールからなる化学配合物を使用して、フォーム断熱製品用のレゾール型フェノール樹脂を製造することができる。最終的なフォーム配合物には、界面活性剤/乳化剤、可塑化添加剤、(再利用)発泡剤、酸触媒も含まれることになり、規格EN16640:2017に従って測定して7%超の非化石含有量を有する断熱フォームが作り出される。これは、ほぼ完全な化石フェノール系断熱フォームの熱的及び機械的性能に適合する。
【0248】
更に重要なことには、達成し得るゆりかごからゲートまで(A1-A3)のGWPが、2kg-COeq/kg、1kg-COeq/kg、0.5kg-COeq/kg、さらには0.3kg-COeq/kgを下回る。バイオベースの含有量(あるいはバイオアトリビューション(bio-attribution:生物由来)による)は、それぞれ最大30~70%まで増やすことができる。
実施例の種類
【0249】
本発明は、2つの異なる種類の発泡工程を対象とする。フェノール樹脂手順とそれに続く発泡工程タイプAは、不連続ブロックフォームと連続フォームラミネートの両方の製造に使用できる。工程タイプBは、連続ラミネートフォームの配合に使用できる。
実施例
セクションA
【0250】
実施例A1~A4
【0251】
比較例Comp-A1
【0252】
レゾール型フェノール樹脂の製造には、化石メタンから製造される市販の、0.64kg-COeq/kgのGWP-fossilを有する化石メタノールが使用されていた。前記メタノールは、加熱されたメタノールに空気を通すことによってホルマリン水溶液に変換した。その蒸気混合物を白金-アスベスト触媒上(300℃)に導入し、水分(52%)、ホルムアルデヒド(40%)及びメタノール(8%)の混合物を形成した。前記混合物からメタノールを分画によって除去し、ホルマリン溶液を得た。前記ホルマリン溶液の最終純度は49w%であった(50℃で保存)。
【0253】
化石ベンゼンからクメン法で製造された純度99%の、GWP-fossilが1.79kg-COeq/kgの化石フェノールを使用した。
樹脂合成Comp-A1
【0254】
実験用反応器に、659gの化石系フェノール(純度99%以上)、68gの水及び26gの水酸化カリウム(KOH)の40%水溶液をロードする。この混合物を約60℃の温度にする。1~2時間の時間で、反応温度を約80℃まで上昇させながら、49w%の化石由来のホルマリン溶液647gを徐々に添加した。前記ホルマリンの添加後、温度を55~80℃に保ちながら、1時間かけて約300gの水分を減圧蒸留で除去した。その後、目標粘度(2,000±500mPa・s@25℃)に達するまで、樹脂粘度を15分毎に測定する。次に1.6gの85%ギ酸で中和し、室温まで冷却する。
【0255】
樹脂の最終的な特性:
【表11】

表11:樹脂Comp-A1の仕様
【0256】
得られた樹脂のGWP-totalは、Gabi-database (version: GaBi ts 9.2 Gabi ts 9.2 (Service Pack 39))に基づいて、1.5kg-COeq/kgである。Gabiデータベースは、ある物質から別の物質への変換の環境影響を保持する原材料プロファイルを含んでいる。いくつかの国で使用されているEco inventデータベースを使用すると、GWP-totalは2.2kg-COeq/kgである。Gabiデータベースを使用するのは、前記プロファイルが一般的に最新だからである。
樹脂合成Comp-A2
【0257】
化石ベースのホルマリンをバイオメタノールから製造されるバイオホルマリンで置き換えた以外は、Comp-A1と同一である。バイオメタノールのGWP-fossilは、基質がマーケットミックスバイオガスであった結果、約1.07kg-COeq/kgであった。本願において、「マーケットミックス」バイオガスという用語は、商業的に販売されているバイオガス(通常、燃料用途のために生成される)を指し、異なる供給源からの多数のバイオガスが含まれる。このような「マーケットミックス」バイオガスのGWPは、上記表7に記載されている。このマーケットミックスバイオガスには、特別栽培作物及び肥料の使用を含む様々な発生源(表7に示された以外の発生源を含む可能性がある)から生成されたものが含まれ、GWPに負の影響を与える。GWP-Biogenic は、約-1.38kg-COeq/kgである。マーケットミックスバイオガスからのバイオメタノールのGWP-totalは、-0.31kg-COeq/kgである。
樹脂合成A1
【0258】
化石ベースのホルマリンをバイオメタノールから製造されたバイオホルマリンで置き換えた以外は、Comp-A1と同一である。バイオメタノールのGWP-fossilは供給源がバイオガスであることから、約0.6kg-COeq/kgであった。バイオガスは、バイオ廃棄物(この場合、基質の50%が道草からなる)の発酵によって製造した。バイオメタノールのGWP-totalは、-0.8kg-COeq/kgである(バイオメタノールの-1.38kg-COeq/kgのGWP-biogenicに基づく)。樹脂A1は、GWP-fossilが1,55kg-COeq/kg、GWP-biogenicが-0,44kg-COeq/kg、GWP-lulucが0.03kg-COeq/kg、GWP-totalが1.14kg-COeq/kgである。
樹脂合成A2
【0259】
化石ホルマリンを合成ガス由来のバイオメタノールから製造したバイオホルマリンで置き換えた以外は、Comp-A1と同じである。前記合成ガスは木材のガス化によって製造され、GWP-fossilは0.3kg-COeq/kgであった。前記バイオメタノールのGWP-totalは-1.1kg-COeq/kgである(バイオメタノールのGWPbiogenicは-1.38kg-COeq/kg)。樹脂A2のGWP-fossilは1.45kg-COeq/kg、GWP-biogenicは-0.44kg-COeq/kg、GWP-lulucは0.03kg-COeq/kg、GWP-totalは1.04kg-COeq/kgである。
樹脂合成A3
【0260】
化石フェノールをバイオナフサから製造されるバイオフェノールで置き換えた以外は、Comp-A1と同一である。バイオナフサの供給源はトール油(紙・パルプ産業からのバイオ廃棄物)である。バイオフェノールのGWP-fossilは1.79kg-COeq/kgである。得られたフェノールレゾール樹脂のGWP-totalは-1.13kg-COeq/kgである(バイオフェノールのGWP-biogenicは-2.81kg-COeq)。樹脂A3のGWP-fossilは1,48kg-COeq/kg、GWP-biogenicは-1.87kg-COeq/kg、GWP-lulucは0.03kg-COeq/kg、GWP-totalは-0.36kg-COeq/kgである。
樹脂合成A4
【0261】
化石ホルマリンをバイオメタノールから製造したバイオホルマリンで置き換えた以外は、Comp-A1と同一である。バイオメタノールは木材のガス化によって製造された合成ガスから製造され、GWP-fossilは0.3kg-COeq/kgであった。前記化石フェノールは、バイオナフサから製造されたバイオフェノールで置き換えた。前記バイオナフサの供給源はトール油(紙・パルプ産業からのバイオ廃棄物)である。バイオフェノールのGWP-fossilは1.79kg-COeq/kgである。得られたフェノール樹脂のGWP-totalは-1.57kg-COeqである。この樹脂のGWP-biogenicは(バイオメタノールの-1.38kg-COeq/kgとバイオフェノールの-2.81kg-COeq/kgに基づく)。樹脂A4のGWP-fossilは1.39kg-COeq/kg、GWP-biogenicは-2.32kg-COeq/kg、GWP-lulucは0.03kg-COeq/kg、GWP-totalは-0.90kg-COeq/kgである。
発泡プロセスA1
【0262】
空のビーカーに上記樹脂A1を368gロードし、エチレンオキサイド度が10~80の界面活性剤(エトキシ化ヒマシ油)16gと可塑剤(ジメチルフタレート)16gを加えて均一に混合(blend)する。核剤(パーフルオロ化合物)0.96gと発泡剤(シクロペンタンとイソペンタンの比率70/30重量%の混合物)22gを加え、均質なブレンドにする。この化学ブレンドを20℃で1~2時間保持する。60gの酸触媒(62.5重量%の硫酸(50%溶液)と37.5重量%のリン酸(85%溶液)の混合物)を前記フェノールレゾールブレンドに添加する。均質な混合物が形成されるまで混合し、この反応している化学混合物を、70℃に予熱した木型(典型的なブロック発泡工程をシミュレートする)内に注入する。前記木型を閉じ、70℃に予熱したオーブンに最低4時間入れる。
【0263】
フォームを脱型する。前記フォームを環境室内条件に1週間放置して乾燥させ、安定した含水率を得る。次にサンプルを切り出し、フォーム特性を測定する。
比較例Comp-A1及びComp-A2と実施例A1~A4:
【0264】
比較フォームサンプルComp-A1及びComp-A2は、それぞれ樹脂Comp-A1及び樹脂Comp-A2の方法に従って製造した樹脂で製造した。前記フォームは、発泡方法A1を用いて製造した。フォーム実施例A1~A4は、樹脂A1~A4の方法に従って製造された樹脂で製造した。このフォームは、発泡方法A1を使用して製造した。
【0265】
これらサンプルの特性を測定し、その結果を表12に示す:
【表12】

表12:フォームサンプルComp-A1~A4の特性
【0266】
フォームの特性は、バイオベースの材料の使用によって影響を受けない。しかしながら、驚くべき発見は、バイオ廃棄物のみが、GWP-fossil値と同等またはそれよりも小さく、最終製品(ゆりかごからゲートまで)のGWP-biogenicの負の寄与によって実際にGWP-total値の減少をもたらす、GWP-total値を生成することである:
【表13】

表13:フォームサンプルComp-A1~A4の地球温暖化係数
【0267】
フォームのGWP-totalには、0.1kg-COeq/kgのGWP-luluc(GWP-lulucは地球温暖化係数(土地利用のみ)を意味する-上記表1を参照)が含まれる。フェノールとホルムアルデヒドについては、GWP-lulucは0.1kg-COeq/kg 未満である。バイオ廃棄物を使用するので、土地使用量は比較的少ない。
【0268】
化石フェノールをバイオフェノールで部分的に置き換えること、及び/または化石ホルムアルデヒドをバイオホルムアルデヒドで置き換えることを組み合わせ、あるいはそれらの組み合わせを使用して、製品の所望の総GWPを達成することができる。フットプリントは、バイオフェノールとバイオホルムアルデヒドの両方で完全に置き換えることによって最小化される。
【0269】
地球温暖化係数の値は、Gabiデータベース(バージョン:Gabi ts 9.2 Gabi ts 9.2 (Service Packs 39))を用いて決定した。Gabi ts 9.2には、フェノール、ホルムアルデヒド、及び配合中のその他の物質に関する標準化されたプロファイルが含まれている。これらのプロファイルから、フェノール樹脂製造のデータ標準(RER)を用いることにより、樹脂のGWP-valueを決定した。その後、この結果を用いて断熱フォームの値を決定した。この計算は、Sphera Solutions GmbH社のソフトウェアパッケージEnvision Web(バージョン5.0.0.82332bc)を用いて行った。
【0270】
バイオ炭素含有量は、成分の分子量と炭素の分子量から計算される。最終製品については、乾燥コア密度を使用し、製品中の残留水の影響を排除している。Comp-A1のバイオ炭素含有量3%は、エトキシル化ヒマシ油に由来し、規格EN16640:2017に従ったC14測定により決定されている。
【0271】
地球温暖化係数の他に、断熱製品について、原材料として使用される再生可能一次エネルギー資源(PERM;規格EN16783:2017に従って計算されている)がある。PERMは、バイオフェノールとバイオホルムアルデヒドを前記配合に含めることによって増加する:
【表14】

表14:フォームサンプルComp-A1~A4の地球温暖化係数
【0272】
バイオホルムアルデヒド及び/またはバイオフェノール、あるいはそれらの組合せを含むことによって、PERMを増加させることができる。実施例A4では、PERMは更に、非再生可能原料の値(PENRM)より大きく増加する。これは、化石原料の枯渇が著しく減少していることを示すので、有益である。
セクションB
実施例B1~B4
樹脂合成Comp-B1
【0273】
反応容器に50℃で500g±10gの化石フェノール、10~40gの水及び0.7~1.1gの50%水酸化カリウムを加えた。温度を70~76℃に上げ、650g±10gの49%化石ホルマリン溶液を1~2時間かけてゆっくりと加え、反応発熱の熱を放熱させた。この混合物を冷却するために、約300gの水を減圧下で1時間かけて蒸留により除去した。次に温度を82~85℃の範囲に上げ、樹脂の粘度が7,500mPa・s±1,500mPa・sに達するまで82~85℃の範囲に維持した。3gの90%ギ酸を添加してpHを中和しながら、冷却を開始した。温度が60℃未満に低下したとき、次のものを順次添加した:20~60gのポリエステルポリオール可塑剤(好ましくは25g)、及び30~60gの尿素(好ましくは35g)。尿素が溶解したら、20~60gのエトキシル化ヒマシ油(界面活性剤;好ましくは30g)を30~40℃で混合する。得られたフェノール樹脂comp-B1は、10~13重量%の水分、4重量%未満の遊離フェノール、及び1重量%未満の遊離ホルムアルデヒドを含んでいた。
【0274】
樹脂合成Comp-B2
化石ホルマリンをバイオメタノールから製造したバイオホルマリンで置き換えた以外は、Comp-B1と同一である。バイオメタノールのGWP-fossil値は、基質がマーケットミックスバイオガスであるため、約1.07kg-COeq/kgであった。GWP-biogenicは約-1.38kg-COeq/kgであった。前記バイオメタノールのGWP-totalは-0.3kg-COeqである。
【0275】
樹脂合成B1
化石ホルマリンをバイオメタノールから製造されるバイオホルマリンで置き換えた以外は、Comp-B1と同じである。バイオメタノールのGWP-fossilは、原料がバイオガスである結果として、約0.6kg-COeq/kgであったが、この場合、バイオガスの基質はバイオ廃棄物(牧草)であった。前記バイオメタノールのGWP-totalは-0.8kg-COeq/kgである(バイオメタノールのGWP-biogenicが-1.38kg-COeq/kgであることに基づく)。樹脂B1のGWP-fossilは1.55kg-COeq/kg、GWP-biogenicは-0.44kg-COeq/kg、GWP-lulucは0.03kg-COeq/kg、GWP-totalは-1.14kg-COeq/kgである。
【0276】
樹脂合成B2
化石ホルマリンを合成ガスからバイオメタノールを製造するバイオホルマリンで置き換えた以外は、Comp-B1と同一である。前記合成ガスは木材のガス化によって製造され、GWP-fossilは0.3kg-COeq/kgである。前記バイオメタノールのGWP-totalは-1.1kg-COeq/kgである(前記バイオメタノールのGWP-biogenicが-1.38kg-COeq/kgであることに基づく)。樹脂B2は、GWP-fossilが1.45kg-COeq/kg、GWP-biogenicが-0.44kg-COeq/kg、GWP-lulucが0.03kg-COeq/kg、GWP-totalが-1.04kg-COeq/kgである。
【0277】
樹脂合成B3
化石フェノールをバイオナフサから製造されるバイオフェノールで置き換えた以外は、Comp-B1と同一である。前記バイオナフサの供給源はトール油(紙・パルプ産業からのバイオ廃棄物)である。前記バイオフェノールのGWP-fossilは1.79kg-COeq/kgである。得られる樹脂のGWP-totalは-1.13kg-COeq/kgである(バイオフェノールのGWP-biogenicが-2.81kg-COeqであることに基づく)。樹脂B3は、GWP-fossilが1.48kg-COeq/kg、GWP-biogenicが-1.87kg-COeq/kg、GWP-lulucが0.03kg-COeq/kg、GWP-totalが-0.36kg-COeq/kgである。
樹脂合成B4
【0278】
化石ホルマリンをバイオメタノールから製造したバイオホルマリンで置き換えた以外は、Comp-B1と同じである。前記バイオメタノールは、木材のガス化によって製造された合成ガスから製造され、GWP-fossilは0.3kg-COeq/kgであった。前記化石フェノールは、バイオナフサから製造されたバイオフェノールで置き換えた。バイオナフサの供給源はトール油(紙・パルプ産業からのバイオ廃棄物)である。前記バイオフェノールのGWP-fossilは1.7kg-COeq/kgである。樹脂B4のGWP-fossilは1,39kg-COeq/kg、GWP-biogenicは-2.32kg-COeq/kg、GWP-lulucは0.03kg-COeq/kg、GWP-totalは-0.90kg-COeq/kgである。
発泡プロセスB1
【0279】
15℃~19℃の樹脂B1の110±2pbw(pbw=重量部)に、10±1pbwの塩化イソプロピル/イソペンタン(iPC:iP)発泡剤(重量比80/20)を1~3℃で300±100rpmで混合しながら添加した。高速ミクサーを用いて、20±1pbwの重量比2:1のトルエンスルホン酸:キシレンスルホン酸触媒を8~15℃で樹脂ブレンドに素早く混合する。1000~4000rpmの高速混合を使用して、密接な混合(intimate mixing)を達成し、それにより発泡性組成物を製造する。次に、発泡性樹脂組成物を型内に吐出し、所望の例えば20~200mmのフォーム厚みで、所望の例えば35kg/mの最終フォーム乾燥コア密度を付与した。硬化したフォームは型から取り出し、80~100℃のオーブンに少なくとも8時間置く。その後、前記フォームを室温で1週間放置した後、サンプルに切断して物性を測定する。
比較例Comp-B1及びComp-B2と実施例B1~B4:
【0280】
比較フォームサンプルComp-B1及びComp-B2は、樹脂Comp-B1及び樹脂Comp-B2の方法を用いて製造した樹脂で製造した。フォームは、発泡プロセスB1を使用して製造した。フォーム実施例B1~B4は、樹脂B1~B4の方法に従って製造された樹脂で製造した。このフォームは、発泡プロセスB1を使用して製造した。
【0281】
これらのフォームサンプルの特性を測定し、その結果を表15に示す:
【表15】

表15:フォームサンプルComp-B1、Comp-B2及びB1~B4の特性
【0282】
再び、バイオベースホルマリン及び/またはバイオベースフェノールを使用したときに、フォームの特性は影響を受けない。また、熱的性能は時間の関数として安定したままであり、110℃で4週間後の値が50年間の平均断熱値の指標となる。製品規格では、製品のエージングを加速する2組の条件(70℃及び110℃での加速エージング)を認めている。いずれの場合も結果は同等であると仮定している。地球温暖化係数への影響を表16にまとめる。
【表16】

表16:フォームサンプルComp-B1~B4の地球温暖化係数
【0283】
フォームのGWP-totalには、0.1kg-COeq/kgのGWP-lulucが含まれる。フェノール及びホルムアルデヒド樹脂のGWP-lulucは0.1kg-COeq/kg(0.03)以下である。
【0284】
フェノールをバイオフェノールで及び/またはホルムアルデヒドをバイオホルムアルデヒドで、あるいはそれらの組み合わせで部分的に置換することによって、製品の所望のGWPを達成することができる。しかしながら、フットプリントは、バイオフェノールとバイオホルムアルデヒド双方への完全置換によって最小化される。
【0285】
バイオ炭素含有量は、配合成分の分子量と炭素の分子量から計算される。バイオホルムアルデヒドの場合、最終製品中のホルムアルデヒドのwt%をホルムアルデヒドの分子量(30.0g/モル)で割る。その結果に分子量(12.0g/mol)を乗じてバイオベースの炭素含有量とする。この数値を総重量で割って100%を掛けると、バイオ炭素含有量が算出される。
【0286】
最終製品については、乾燥コア密度が使用されており、水の影響を排除している。Comp-B1の2%のバイオ炭素含有量は、エトキシル化ヒマシ油の結果であり、規格EN16640:2017(Bio-based products - Bio-based carbon content - Determination of the bio-based carbon content using the radiocarbon method)に従ってC14測定により決定されている。この規格は、14C含有量測定に基いて、製品中のバイオベース炭素含有量を決定する方法を規定している。この欧州規格は、14C含有量の測定に使用される2つの試験法も規定しており、それらからバイオベース炭素含有量が算出される:-方法A:液体シンチレーションカウンター法(LSC);-方法B:加速器質量分析法(AMS)。バイオベース炭素含有量は、サンプル質量の一部分によってまたは総炭素含有量の一部分として表される。この計算方法は、バイオ複合材(樹脂と天然繊維による補強材の複合材である製品)を含む、炭素を含むあらゆる製品に適用可能である。
【0287】
地球温暖化ポテンシャルの他に、断熱製品の使用原材料から得られる再生可能一次エネルギー資源(規格EN 16783:2017に従って計算される)は、バイオフェノールとバイオホルムアルデヒドをフォーム配合に含めることによって増加する:
【表17】

表17:フォームサンプルComp-B1~B4の地球温暖化係数
【0288】
実施例B5
【0289】
断熱性能をさらに最適化するために、気相での熱伝導率が非常に低いHFOに発泡剤を変更することができる。例えば、HFO1233zd(E)である。発泡剤の量が限定されることから、前記発泡剤による総地球温暖化係数への寄与は制限される。製品の断熱性能の向上は、同じ断熱値を得るために必要な断熱材が少なくて済むことから、製品のCO排出量の削減に寄与し得る。しかしながら、この効果は、機能単位が1kgの断熱製品である場合には目に見えない。
【0290】
実施例B5は、樹脂合成Comp-B1及び発泡方法B1で製造される。しかしながら、発泡剤については、塩化イソプロピル(iPC)とイソペンタン(iP)の混合物の代わりに、HFO 1233zd(E)とイソペンタンの混合物(95/5重量%)を使用した。フォームサンプルB5には、フェノールとホルムアルデヒドをバイオベースのものに完全に置き換えた樹脂調製物B4を使用した。
【0291】
比較例Comp-B3は、HFO1233zd(E)とイソペンタンの、B5で使用したのと同じ比率及び量の混合物に発泡剤を変更した以外は、Comp-B1と同じ方法で製造した。製品の特性を表18及び表19に示す。
【表18】

表18:フォームサンプルComp-B3及びB5の特性
【0292】
Gabiデータベース(バージョン:GaBi ts 9.2 Gabi ts 9.2 (Service Packs 39))におけるHFO1233zd(E)のGWP-totalは11kg/COeq/kgである。これは、製品のGWP-totalが負の影響を受けることを意味する。
【表19】

表19:フォームサンプルComp-B3~B5の地球温暖化係数
【0293】
フォームのGWP-totalには、0.1kg-COeq/kgのGWP-lulucが含まれる。前記フェノールとホルムアルデヒドについて、GWP-lulucは0.1kg-COeq/kg以下である。
【0294】
B5の熱性能はB4に比べて高いため、必要な材料は10%少ない。しかしながら、この効果を、HFOの添加によるGWP totalの増大がオーバーライドする。しかしながら、GabiデータベースのHFOのプロファイルを更新する議論が進行中である。この新しいプロファイルが採用された場合、HFOのGWPは11kg-COeq/kgから3kg-COeq/kgに下がることになる。その場合、HFOの添加の結果としてのGWP-totalの増加は0.2kg-COeq/kgとなり、HFOの添加が可能となる。
【0295】
熱性能は10%増加するが、フォーム1kg当たりで表されるGWP-totalは、B1~B4と比較した場合、同程度には増加しない。セクションAとセクションBのフォーム配合物を比較した場合、同じことが観察される。70℃で50週間のエージング後のサンプルComp-A1の熱伝導率(ラムダ値)は、製品の50年間にわたる平均熱性能をシミュレートするもので、0.026W/m.K未満である。これは、表3に示されているように、どのバイオベース断熱材よりも十分に低い。シクロペンタン-イソペンタン発泡剤で発泡させた製品は、総GWPが2.0kg-COeq/kg(ゆりかごからゲートまで)になる。comp-A1をcomp-B1と比較すると、フォーム製品の50年間の平均性能をシミュレートする110℃で4週間のエージング(これは70℃で50週間のエージングに匹敵する)後の熱伝導率(ラムダ)値は0.021W/m.K以下である。この効果は、この実施例では塩化イソプロピルとイソペンタンの混合物である発泡剤に大きく帰することができる。総GWPが大きく増加しないことは興味深い。しかしながら、断熱性能は25%向上した。これは、同じ断熱性能を達成するCOフットプリントが大幅に良いことを意味する。HFO発泡剤を使った場合の差はより小さい。これらの知見に基づき、発泡剤の少なくとも70%は、25℃における気相の熱伝導率が12mW/m.k以下の成分で構成すべきである。好ましくは11.8mW/m.k以下である。
樹脂合成C1及びD1
【0296】
樹脂タイプC1及びD1の調製は、以下を除いて樹脂タイプB4と同じである。樹脂C1では、ホルマリンの量を49w%ホルマリン585gに減らし、1.8:1のF/P-モル比を得た。ホルマリン添加後、270gの水を減圧蒸留により除去する。尿素の量を30gに減らした。樹脂D1では、49w%ホルマリンの量を715gに増やし、2.2:1のF:Pモル比を得た。この調製では、330gの水分を減圧蒸留によって除去する。尿素の量を69gに増加させた。
【0297】
これらのサンプルをフォーム調製Comp-B1に従って発泡させた。これらのサンプルのフォーム特性を表20に示す。
【表20】

表20:サンプルC1及びD1の特性
【0298】
F/P-モル比をさらに変化させても、製品のCOフットプリントが実質的に変化することはない。その理由は、原料供給源としてバイオ廃棄物を選択した場合、バイオフェノールとバイオホルムアルデヒドの総GWPは、この場合同じ大きさだからである。しかしながら、製品中のF/Pモル比が2.5:1に増加すると、熱性能と耐火性能に悪影響を及ぼすこととなる。
【表21】

表21:フォームサンプルC1,B4及びD1の地球温暖化係数
【0299】
フォームのGWP-totalには、0.1kg-COeq/kgのGWP-lulucが含まれる。フェノールとホルムアルデヒドのGWP-lulucは0.1kg-COeq/kg以下である。
【0300】
フェノールとホルムアルデヒドの両方がバイオベースの場合、F:Pモル比の変化は、断熱フォームの総GWPに重要な影響を与えない。一部分のみを置換する場合、または置換の組み合わせの場合、F:Pモル比は考慮すべき因子となり得る。フェノールとホルムアルデヒドのモル比の増加は、再生可能な含有重量の増加をもたらすこととなる。
【0301】
F:Pモル比を変えても、PENRMに大きな影響は無い。
【0302】
実施例E1-スルホン化クラフトリグニンの使用
【0303】
樹脂合成E1
【0304】
樹脂調製実施例comp-A1に記載したものと同一の工程であるが、投入したフェノールの20重量%をスルホン化クラフトリグニン(Ingevity社により供給されたReax 100M)で置き換えた。2種の添加剤、エトキシル化ヒマシ油界面活性剤とジメチルフタレートを、実施例comp-A1に記載したのと同じ比率で樹脂合成の冷却段階で添加した。
【0305】
Reax 100Mはスルホン化クラフトリグニンであり、分子量は約2000Dである。分子/原子の分子量(Mw)は通常g/molで表される。しかし、生化学や高分子化学では、g/molの代わりにダルトン(DまたはDa)という単位がより多く使われるが、どちらの単位も同じである:1g/mol=1DまたはDa。リグニンのようなポリマーは、よく定義された化学構造ではなく、例えば水や硫酸のように分子量が十分に決まっているわけではない。このような化合物は、非常に類似しているが分子量が異なる分子を含んでいる。このような化合物の場合、分子量分布と呼ばなければならない。この分布を1つの数値に変換するために、2つの表現がよく使われる:
1)Mw=重量平均分子量、これは算術平均分子量である。
2)Mn=数平均分子量。ある分子量を持つ分子の数も考慮に入れる(加重平均)。
このような化合物の分子量はGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定される。化合物は溶媒に可溶化され、多孔質ゲル上に案内される。分子量が高いほど、GPC装置のゲルカラムを通過する時間が長くなる。滞留時間は分子量と直接的な関係があり、分子量が既知の化合物で校正することによって特定できる。
【0306】
スルホン化度は約3.4である。スルホン化度はスルホン化工程の入力として測定される。スルホン化度が1.5とは、スルホン化のために1kgのリグニンに1.5モルのスルホン酸が添加されることを意味する。(総硫黄含有量は、添加硫黄とスルホン化で添加された硫黄量の合計である)。
【0307】
使用されるカチオンはナトリウムである。
【0308】
最終的な樹脂の特性を表22に示す:
【表22】

表22:実施例E1の樹脂特性
【0309】
発泡プロセスE1
【0310】
上記樹脂400gを缶に充填し、0.96gの核剤(パーフルオロ化合物)と22gの発泡剤(シクロペンタンとイソペンタンの混合物比率70/30重量%)を加えて混合し、均質なフェノール系レゾールブレンドとする。この化学ブレンドを20℃で2時間保持する。
【0311】
60gの硬化酸(curing acid)(硫酸とリン酸の混合物)をフェノールレゾールブレンドに加え、20分間混合し、その反応混合物を70℃に予熱した木型に注入する。70℃に予熱したオーブンに型を4時間入れる。
【0312】
4時間の硬化後、フォームを脱型する。このフォームを室内条件(即ち、温度と相対湿度)で1週間放置した後、厚さ80mmのサンプルに切断し、物性を測定する。
【0313】
フォーム比較例Comp-E1は、比較例Comp-A1と同じ方法で製造した。
【表23】

表23:フェノールをReax 100Mで20%置換したサンプルE1のフォーム特性
【0314】
実施例E2-スルホン化クラフトリグニンの使用(2)
【0315】
樹脂合成E2
【0316】
樹脂調製実施例comp-A1に記載した工程と同じであるが、投入フェノールの20%をスルホン化クラフトリグニン(Ingevity社提供のKraftsperse 25M )で置き換えた。2種類の添加剤、エトキシル化ヒマシ油とジメチルフタレートを樹脂合成の冷却段階でComp-A1に記載したのと同じ比率で添加した。Kraftsperse 25Mはスルホン化クラフトリグニン、分子量約4400D、スルホン化度約2.9である。用いたカチオンはナトリウムである。
【0317】
最終的な樹脂特性を表24に示す:
【表24】

表24:実施例E1の樹脂特性
【0318】
同じ発泡工程E1を用いて前記樹脂を発泡させた。
【0319】
比較例Comp-E2は、比較例Comp-A1と同じ方法で製造した。
【0320】
製品の特性を表25に示す:
【表25】

表25:フェノールをKraftsperse 25Mで20%置換したサンプルE2のフォーム特性
【0321】
スルホン化クラフトリグニンの導入は、密度や断熱性能、圧縮強度や破砕性などの物理的特性に悪影響を及ぼさない。
【0322】
実施例F1-スルホン化クラフトリグニンの使用(2)
【0323】
樹脂合成F1
【0324】
比較例Comp-B1に記載した工程と同一のプロセスであるが、投入フェノールの20%をスルホン化クラフトリグニン(Ingevity社が供給するKraftsperse 25M)で置き換えた。
【0325】
得られたフェノール樹脂組成物ResinF1は、10~13重量%の水分、4重量%未満の遊離フェノール、及び1重量%未満の遊離ホルムアルデヒドを含んでいた。
【0326】
発泡プロセスF1
【0327】
発泡プロセスB1と同一である。
【0328】
比較例Comp-F1は、Comp-B1と同一の方法で製造した。
【表26】

表26:フェノールをKraftsperse 25Mで20%置換したサンプルF1のフォーム特性
【0329】
比較例comp-E3-スルホン化クラフトリグニンの使用(3)
【0330】
樹脂合成comp-E3
【0331】
比較例comp-A1に記載したものと同一の工程であるが、投入フェノールの20%をスルホン化クラフトリグニン(Ingevity社提供のHyact)で置き換えた。2種の添加剤、エトキシル化ヒマシ油界面活性剤とジメチルフタレートを樹脂合成の冷却段階で比較例A1に記載したのと同じ比率で添加した。Hyactはスルホン化クラフトリグニンであり、分子量は約23000D、スルホン化度は約0.8である。用いたカチオンはナトリウムである。
【0332】
前記樹脂の最終特性:
【表27】

表27:比較例E3の樹脂特性
【0333】
発泡プロセスComp-E3:実施例E1と同一
【0334】
比較例E4-スルホン化クラフトリグニンの使用(4)
【0335】
樹脂合成Comp-E4
【0336】
比較例A1に記載したものと同一の工程であるが、投入フェノールの20%をスルホン化クラフトリグニン(Ingevity社提供のPolyfon)で置き換えた。2種の添加剤、エトキシル化ヒマシ油界面活性剤とジメチルフタレートは、樹脂合成の冷却段階ですでに比較例A1に記載したのと同じ比率で添加されていた。Polyfonはスルホン化クラフトリグニンであり、分子量は約4300D、スルホン化度は約0.7である。用いたカチオンはナトリウムである。
【0337】
前記樹脂の最終特性:
【表28】

表28:比較例E4の樹脂特性
【0338】
発泡プロセスComp-E4:比較例Comp-E1と同一
【0339】
比較フォームサンプルcomp-E3及びcomp-E4の特性を表29に示す:
【表29】

表29:比較例comp-E3及びcomp-E4の製品特性
【0340】
比較実験comp-E3及びcomp-E4は、フェノールをスルホン化リグニンで置き換え得ることを示しているが、長期的な断熱性能及び破砕性は、完全なフェノールベースのフォームと比較して損なわれている。良好な性能の条件は、少なくとも1.5を超える高いスルホン化度(リグニン1,000単位重量当たりのスルホン酸基のモル数)のスルホン化クラフトを使用することである。分子量は2,000~23,000Dと大きな幅があってよい。
【表30】

表30:スルホン化リグニンの特性
【0341】
破砕性や圧縮強度のような機械的特性は、界面活性剤及び/または可塑剤の選択によって修正することができる。実施例E3では、界面活性剤は破砕性を改善するように修飾(modified)されている。
【0342】
実施例E3-スルホン化クラフトリグニンの使用(5)
【0343】
樹脂合成E3
【0344】
フェノールの20%をスルホン化クラフトリグニン(Ingevity社提供のKraftsperse 25M)で置き換えた比較例comp-E2に記載したものと同一の工程。
【0345】
前記樹脂の最終特性:
【表31】

表31:実施例E3の樹脂特性
【0346】
発泡プロセスE3
【0347】
368gの上記樹脂を1リットル缶にロードし、16gの界面活性剤(シリコーン界面活性剤Niax L5356)と16gの可塑剤(ジメチルフタレート)を添加し、混合して均質なレゾールブレンドにする。3.0gの核剤(パーフルオロ化合物)と22gの発泡剤(シクロペンタンとイソペンタンの混合物比率70/30wt%)を加え、混合して均質なブレンドにする。この化学ブレンドを20℃で2時間保持する。
【0348】
60gの硬化酸(硫酸とリン酸の混合物)を前記レゾールブレンドに加え、20分間混合し、反応した混合物を70℃に予熱した木型に注入する。前記混合物に浮き蓋をし、70℃に予熱したオーブンに4時間入れる。
【0349】
4時間の硬化後、フォームを脱型する。前記フォームをそのまま室温で1週間放置した後、サンプルに切り出して物性を測定する。
【0350】
比較フォームサンプルE3の特性を表32に示す:
【表32】

表32:実施例E3の製品特性
【0351】
実施例G1-フェノール化クラフトリグニンの使用
【0352】
樹脂合成G1
【0353】
比較例Comp-A1に記載したものと同一の工程であるが、投入フェノールの20%をフェノール化クラフトリグニン(UPM社提供のBioPiva)で置き換えた。2種の添加剤、エトキシル化ヒマシ油界面活性剤とジメチルフタレートは、実施例Comp-A1に記載したものと同じ比率で、樹脂合成の冷却段階で既に添加されていた。
【0354】
BioPivaは樹脂合成の前に硫酸を使用してフェノール化されている。分子量はフェノール化の間変化しない(3000から3500D)。フェノール化処理により、芳香族OHのレベルは約4から6mmol/gに増加した。
【0355】
前記樹脂の最終特性:
【表33】

表33:実施例E3の樹脂特性
【0356】
発泡プロセスG1:比較例Comp-A1と同一
【0357】
比較例Comp-G1は、Comp-A1と同一の方法で製造した。
【0358】
フォームサンプルG1及び比較フォームサンプルComp-G1の特性を表34に示す:
【表34】

表34:実施例G1の製品特性 BioPivaフェノール化クラフトリグニン
【0359】
実施例G2-フェノール化クラフトリグニンの使用(2)
【0360】
樹脂合成G2
【0361】
Stora Enso社から供給されたLineo Classicリグニン、前記フェノールの一部及び酸性触媒を実験用反応器にロードし、フェノール化を行う。フェノール化は、前記混合物をアルカリ環境にすることにより終了した。残りのフェノールと水分を加え、温度とメーターを徐々に調整し、余分な水分を蒸留で除去しながら、全てのホルマリンを反応温度約80℃で保持する。目標のMWに達したら、ギ酸85%で中和し、約50℃まで冷却を開始する。水分を加えて水位の規格(specification on water level)を補正し、さらに室温まで冷却する。2種の添加剤、エトキシル化ヒマシ油界面活性剤とジメチルフタレートを樹脂合成の冷却段階で、実施例Comp-A1に記載したのと同じ比率で添加する。
【0362】
前記樹脂の最終特性:
【表35】

表35:実施例G2の樹脂特性
【0363】
発泡プロセスG2:比較例Comp-A1と同一
【0364】
比較例Comp-G2はComp-A1と同一の方法で製造した。
【0365】
特性:
【表36】

表36:製品特性 実施例G2フェノール化Lineo Classicリグニン
【0366】
所望の特性を有するフォームを得るために、総フェノールOHは少なくとも3mmole/gである必要がある。
【表37】

表37:製品特性 実施例G2フェノール化Lineo Classicリグニン
【0367】
実施例G3-フェノール化クラフトリグニンの使用(3)
【0368】
樹脂合成G3
【0369】
実施例G2に記載したものと同一の工程であるが、界面活性剤及び可塑剤両方の添加を省略した。
【0370】
前記樹脂の最終特性:
【表38】

表38:実施例G2の樹脂特性
【0371】
発泡プロセスG3
【0372】
上記樹脂368gを1リットル缶にロードし、界面活性剤(シリコーン界面活性剤Niax L5356)16g及び可塑剤(ジメチルフタレート)16gを添加し、混合して均質なブレンドにする。3.0gの核剤(パーフルオロ化合物)と22gの発泡剤(シクロペンタンとイソペンタンの混合物比率70/30重量%)を加え、混合して均質なブレンドにする。この化学ブレンドを20℃で2時間保持する。
【0373】
レゾールブレンドに60gの硬化酸(硫酸とリン酸の混合物)を加え、20秒間混合し、反応した混合物を70℃に予熱した木型に注入する。前記混合物の上に浮き蓋をし、70℃に予熱したオーブンに4時間入れる。
【0374】
4時間硬化後、フォームを脱型する。前記フォームをそのまま室温で1週間放置した後、サンプルを切り出して物性を測定する。
【0375】
比較例Comp-G3は、Comp-A1と同じ方法で製造した。
【表39】

表39:製品特性実施例G2フェノール化Lineo Classicリグニン
実施例H1-熱分解リグニンの使用
【0376】
樹脂合成H1
【0377】
比較例Comp-A1に記載したものと同一のプロセスであるが、投入フェノールの20%を熱分解リグニン(BTG社提供)で置き換えた。この熱分解リグニンの分子量は300~5000Dであった。2種の添加剤、エトキシル化ヒマシ油界面活性剤とジメチルフタレートを樹脂合成の冷却段階で、実施例1に記載したのと同じ比率で添加した。
【0378】
前記樹脂の最終特性:
【表40】

表40:実施例H1の樹脂特性
【0379】
発泡プロセスH1:比較例Comp-A1と同一
【0380】
比較例Comp-H1は、Comp-A1と同一の方法で製造した。
【0381】
特性:
【表41】

表41:製品特性実施例H1熱分解リグニン
【0382】
サンプルE1-3、G1-3、H1及びそれらの比較例の耐火性能はすべて、規格EN 11925-2:2020に従って測定した火炎高さが100mm未満であった(30秒後)。
【0383】
実施例I1~I7H1-熱分解リグニンの使用
【0384】
樹脂合成I1、I3、I4及びI5
【0385】
比較例Comp-B1に記載したものと同一の工程であるが、投入フェノールの10%をH1と同じ熱分解リグニンで置き換えた。
【0386】
得られたフェノール樹脂組成物ResinI1は、10.8重量%の水分、5重量%未満の遊離フェノール、及び1重量%未満の遊離ホルムアルデヒドを含んでいた。
【0387】
樹脂の最終特性:
【表42】

表42:樹脂特性実施例I1
【0388】
樹脂合成I2及びI6
【0389】
比較例Comp-B1に記載したものと同一の工程であるが、投入フェノールの20%を実施例H1の熱分解リグニンで置き換えた。
【0390】
樹脂特性
【表43】

表43:樹脂特性実施例I2
【0391】
樹脂合成I7
【0392】
比較例Comp-B1に記載したものと同一の工程であるが、投入フェノールの30%をH1と同じ熱分解リグニンで置き換えた。
【0393】
樹脂特性
【表44】

表44:樹脂特性実施例I7
【0394】
発泡プロセスI1~I7:比較例Comp-B1と同一
【0395】
比較例Comp-I1、I3、I4及びI5は、Comp-B1と同一の方法で製造した。
【0396】
製造されたフォームサンプルを分析し、その結果を表45にまとめた。
【表45】

表45:製品特性実施例I1~I7、10~30%のBTG熱分解リグニンを使用
【0397】
サンプルI4を規格EN13823:2020に従って試験し、フォームの耐火性能を測定した。フェーサーを有しないサンプルを規格EN15715:2009に従ってSBI試験装置に取り付けた。測定結果は、Figra0.4=150.6W/s。総発熱量(THR600)=4.2MJ。SMOGRA=36m/s、総発煙速量(TSP600)=55.8m。この性能は、難燃剤を一切加えない標準的なフェノールフォームに期待される性能に一致する。難燃剤を加えることによって防火性能は向上するが、これは環境フットプリントに悪影響を及ぼすこととなる。
【0398】
難燃剤を必要としないこの耐火性能によって、この製品は代替断熱材料とは差別化されている。例えば、ポリウレタンと押出ポリスチレンは、規格EN11925-2において150mm未満の耐火性能を得るために難燃剤を添加する必要がある。また、多くのバイオベースの断熱材料は、許容し得る耐火性能を得るために難燃剤の添加を必要とする。
【0399】
比較例Comp-J2-市販のクラフトリグニンの使用
【0400】
樹脂合成Comp-J2
【0401】
工程は比較例Comp-A1に記載したものと同一であるが、投入フェノールの20%を市販のリグニン(UPM社提供のBioPiva)に置き換えた。2種の添加剤、エトキシル化ヒマシ油とジメチルフタレートは、樹脂比較例Comp-A1に記載したものと同じ比率で、樹脂合成の冷却段階で既に添加されていた。
【0402】
前記樹脂の最終特性:
【表46】

表46:樹脂比較例Comp-J2の樹脂特性
【0403】
発泡プロセスComp-J2:比較例Comp-A1と同一
【0404】
比較例Comp-J1はComp-A1と同一の方法で製造した。
【0405】
特性:
【表47】

表47:UPM社製BioPivaを使用した比較例J1及びJ2の製品特性
【0406】
この実験は、リグニンのこのグレードのフェノール化の重要性を示している。
【0407】
比較例Comp-K2-市販のリグノスルホネートリグニンの使用
【0408】
樹脂合成Comp-K2
【0409】
工程はcomp-A1に記載されているものと同一であるが、投入フェノールの20%が市販のリグノスルホネート(Sappi社製のLignex Mg F)で置き換えられている。このリグニンの分子量は約6,000Dである。2種の添加剤、エトキシル化ヒマシ油とジメチルフタレートは既に樹脂合成の冷却段階で、樹脂比較例Comp-A1で説明したのと同じ比率で添加されている。
【0410】
前記樹脂の最終特性:
【表48】

表48:樹脂特性 樹脂比較例Comp-K2
【0411】
発泡プロセスComp-K2:比較例Comp-A1と同一
【0412】
比較例Comp-K1はComp-A1と同一の方法で製造した。
【0413】
comp-K2の特性は、フォームが脆すぎるため測定できなかった。
【0414】
比較例Comp-L2-オルガノソルブリグニンの使用
【0415】
樹脂合成Comp-L2
【0416】
comp-A1に記載したものと同一の工程であるが、投入フェノールの20%がオルガノソルブリグニン(Suzano社提供)で置換されている。2種の添加剤、エトキシル化ヒマシ油界面活性剤、ジメチルフタレートは、既に樹脂合成の冷却段階で、comp-A1に記載されているのと同じ比率で添加されていた。
【0417】
前記樹脂の最終特性:
【表49】

表49:樹脂特性 樹脂比較例Comp-L2
【0418】
発泡プロセスComp-L2:比較例Comp-A1と同一
【0419】
比較例Comp-L1はComp-A1と同一の方法で製造した。
【0420】
特性:
【表50】

表50:製品特性 オルガノソルブリグニン(Suzano社製)を用いた比較例Comp-L1とComp-L2
【0421】
比較例Comp-M2-加水分解リグニンの使用
【0422】
樹脂合成Comp-M2
【0423】
実施例1に記載したものと同一の工程であるが、投入フェノールの20%を加水分解リグニン(Chempolis社から供給)で置き換えた。2種の添加剤、エトキシル化ヒマシ油界面活性剤とジメチルフタレートは、既に樹脂合成の冷却段階で、比較例の樹脂Comp-A1に記載したのと同じ比率で添加されていた。
【0424】
前記樹脂の最終特性:
【表51】

表51:樹脂特性 比較例の樹脂Comp-M2
【0425】
発泡プロセスComp-M2:比較例Comp-A1と同一
【0426】
比較例Comp-M1はComp-A1と同一の方法で製造した。
【0427】
特性:
【表52】

表52:製品特性 加水分解リグニン(Chempolis社)を用いた比較例M2
【0428】
実施例G1、G2、G3、H1、I1、I3、I4、I5、I6及びI7は、驚くべきことに、特定のタイプのリグニンについて良好な物理的特性が得られることを示している。ここで、比較例Comp-G1、Comp-G2、Comp-G3、Comp-H1、Comp-I1、Comp-I3、Comp-I4、Comp-I5、Comp-J1、Comp-J2、Comp-L1、Comp-L2、CompM1及びCompM2は、大部分の場合において、製品の特性が悪影響を受けることを証明している。
【0429】
使用したリグニンの主な特性は次のとおりである。
【表53】

表53:リグニン特性のまとめ
【0430】
リグニンの添加は、バイオフェノールが依然としてリグニンよりも大きな環境影響を有することから、バイオフェノールの添加を必要とせずに、再生可能な含有量を増加させ得ることになることで肯定的である。規格EN16640:2017に従って測定されたバイオ含有量(C14炭素)を表48に示す。
【表54】

表54:再生可能な含有量 リグニンの種類毎の添加量の機能
【0431】
リグニンの種類によるが、バイオ含有量は、フェノールの20%をリグニンで置き換えた場合、5~10%増加する。
【0432】
別の利点は、フェノールをバイオフェノールで置き換えた場合と比較して、得られる製品のGWP-totalがさらに低くなることである。リグニンのGWP-fossilは1.5kg-COeq/kgであり、化石フェノール(1.8kg-COeq/kg)に比べて低い。しかしながら、総GHGフットプリントは、リグニンの価値付け(valorised)の仕方によって決まる。リグニンの価値付けは、廃棄物の流れをより有用な用途に利用することを意味する。リグニンは現在、有用な用途が存在しないことから、焼却されている。価値付けされていないリグニンの場合、例えば実施例E1及びE2のスルホン化リグニンのように、分取による寄与はなく、従ってフットプリントは非常に低い。溶剤分取の場合、フットプリントは、価値付けされていないリグニンとほぼ同程度に低い(約5%高い)。例えば、BTG熱分解リグニンは溶剤分別されたリグニンである。
【0433】
しかしながら、塩基触媒による解重合を使用する場合、GWPは10倍に18.3kg-COeq/kgまで増加し、従って、環境の観点から好ましくない。
【0434】
この実施例では、フットプリントの差が5%以下であることから、非価値付けと価値付け液体の性能は多かれ少なかれ同等であると仮定した。
【0435】
リグニンの添加の影響を説明するために、サンプルN1とN2を製造した。これらのサンプルには、Comp-A1と同じ方法論を用いたが、サンプルN1では、ホルムアルデヒドを合成ガスから製造したバイオホルムアルデヒドに置き換えた。その上、20%のフェノールをIngevity社のReax 100Mで置き換えた。サンプルN2はサンプルN1と同一の方法で調製したが、化石フェノールをバイオベースのフェノールで置き換えた。
【0436】
前記樹脂の最終特性:
【表55】

表55:樹脂特性 実施例N1及びN2
【0437】
フォームはcomp-A1の方法に従って製造した。フォームの特性を表56に示す。
【表56】

表56:製品特性Reax 100Mリグニンを使用した実施例N1及びN2
【0438】
この場合も、製品の特性に悪影響はない。リグニン添加の主な利点は、最終製品のGWPの低減である。
【表57】

表57:実施例N1とN2の地球温暖化係数(ゆりかごからゲートまで)
【0439】
フォームのGWP-totalには、0.1kg-COeq/kgのGWP-lulucが含まれる。フェノールとホルムアルデヒドについて、GWP-lulucは0.1kg-COeq/kg未満である。
【0440】
バイオホルムアルデヒドをリグニンによる20%のフェノール置換と組み合わせることで、製品のGWPの大幅な削減を実行することができる。最終製品のGWP削減量は、フォーム1kg当たりCO換算で約0.9kgである(ほぼ50%削減)。
【0441】
更に興味深いのは、フェノールの残りの部分をバイオフェノールで置き換えた場合の削減である。この場合、GWPはおおよそ0kg-COeq/kg(100%削減)まで削減される。
【0442】
一般的に、フェノールに代わるリグニンの添加は、高性能断熱フォームのバイオ含有率が低いという問題を解決し、製造段階(ゆりかごから墓場まで)におけるカーボンフットプリントを大幅に削減し得ると結論付けることができる。
【0443】
これらの知見を最終製品に戻して説明すると、密度は15~60kg/m、より好ましくは25~40kg/mの範囲となり得る。これは、例えば密度35kg/mの80mm断熱フォーム(フェーサー無し)の場合、この断熱フォームにリグニンを導入した場合のGHGフットプリントは、ホルムアルデヒドをバイオ廃棄物から製造されたホルムアルデヒドで完全に置換した場合に4.2kg-COeqであることを意味する。バイオフェノールをベースにしたフォームは、1.7kg-COeqの値を達成することができる。前記組合せによって、更に0.6kg-COeqまで削減されることになる。
【0444】
20%のフェノールをリグニンに置き換えると、製品の温室効果ガス(ゆりかごからゲートまで)は3.9kg-COeq/kgの値を達成する。更にバイオホルムアルデヒドで置き換えると、2.8kg-COeq/kgのフットプリントが得られることとなる。その上、すべてのフェノールをバイオベースのフェノールと交換すると、フットプリントは0に削減できる。
【0445】
サンプルO1及びO2:リグニン、バイオホルムアルデヒド及びバイオフェノールの組合せ
【0446】
これらの知見を確認するために、サンプルO1をサンプルB4と同一の方法で製造したが、この場合には、20%のバイオベースフェノールをフェノール化リグニンで置き換えた。リグニンのフェノール化プロセスは、酸性条件下でホルムアルデヒドの添加前に行われたので、GWPへの影響は無視できる。前記リグニンのグレードはStora Enso社から供給されたLineo Classicで あった。
【0447】
サンプルO2は、更に残り80%の化石フェノールをバイオベースのフェノールで置き換えた。
【0448】
製品の特性がリグニンの導入によって妥協させられることはなかった。
【表58】

表58:製品特性 フェノール化されたLineo Classicを使用した実施例O1及びO2
【0449】
また、これらのサンプルについて、最終製品のGWPpotentialへの影響を測定した。
【表59】

表59:フェノール化したLineo Classicを使用した実施例O1及びO2の地球温暖化係数
【0450】
フォームのGWP-totalには、0.1kg-COeq/kgのGWP-lulucが含まれる。フェノールとホルムアルデヒドについて、GWP-lulucは0.1kg-COeq/kg未満である。
【0451】
更にリグニンは、原料として使用される再生可能な一次エネルギー資源(PERM)に積極的に貢献する:
【表60】

表60:フェノール化したLineo Classicを使用した実施例O1及びO2のPERM及びPENRM
【0452】
表60は、すべてのオプションを組み合わせると、製品のPERMが2.0よりも高くなり得ることを示している。
【0453】
断熱製品の主成分は樹脂である。しかしながら、ゆりかごからゲートまでの段階における製品のフットプリントは、フォームの他の成分をバイオベースの代替品に変えることによって、さらに最適化することができる。
【0454】
例えば、バイオベースのポリオールが考えられる。この場合、フタル酸をそのバイオベースのバージョンに置き換えることができる。例えば、Relement社がこの材料を供給している。また、完全にまたは部分的にバイオベースのポリオールも、例えばPolylabs社やCOIM社から入手可能である。ポリエステルポリオールはまた、ジエチレングリコールポリウレタンオリゴマー、アミンポリウレタンオリゴマー並びに尿素ポリウレタンオリゴマー、及びジエチレングリコールからなるポリウレタンフォームのスクラップを糖分解した結果物であり得る。
【0455】
尿素は含有量が相対的に高く窒素と、含有量が相対的に低い炭素を含む。このため、尿素の転換が与える影響は相対的に低くなる。
【0456】
有機酸を触媒として使用する場合、バイオベースのバージョンを考慮することもできる。バイオベースのトルエンとキシレンは市販されている。
【0457】
CaCOのような中和剤を添加する場合には、貝殻(sea selves)のようなバイオベースの代替物を考慮することができる。
【0458】
発泡剤の最適化も考えられる。シクロペンタンの場合、例えば、使用済み冷凍装置から回収したグレードを使用することができる。
【0459】
ラミネートは、連続工程においてフェイサーで製造される。ラミネートフォームは、非連続的なブロックフォーム製造ではなく、コンベア内に2層のフェーサーの間に供給される。このフェイサーが高い再生可能含量を持つ場合、GWPはさらに最適化される。例えば、これは、最適な状況では再生紙から製造される紙フェーサーであり得る。フェーサー材料として比較的よく使われるアルミニウムは、GWPが高いので、あまり好ましくない。ガラス繊維のベールは、耐火性能が用途の重要な要件である場合、興味深い選択肢となり得る。
【0460】
本明細書中で本願発明に関連して使用される用語「からなる/備える」(comprises/comprising)及び用語「有する/含む」(having/including)は、明記した特徴、完全なもの(integers)、ステップ(過程)又は構成要素の存在を特定するのに使用されるが、1つ又は複数の他の特徴、完全体、ステップ、構成要素又はその組の存在又は追加を排除するものではない。
【0461】
本発明の所定の特徴で、明確にするために、別々の実施形態の文脈で記載されているものでも、組み合わせて1つの実施形態で備え得ることは理解される。逆に言えば、本発明の様々な特徴で、簡単のために、1つの実施形態の文脈で記載されているものでも、別々に又は任意で適当に部分的に組み合せて備えることができる。
【0462】
定義
【0463】
「A、B、C及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のX」の表現は、Xが、「少なくとも1種のA」又は「少なくとも1種のB」又は「少なくとも1種のC」を含み、又は「少なくとも1種のBと組み合わせた少なくとも1種のA」、又は「少なくとも1種のCと組み合わせた少なくとも1種のA」、又は「少なくとも1種のCと組み合わせた少なくとも1種のB」、又は「少なくとも1種のB及び少なくとも1種のCと組み合わせた少なくとも1種のA」を含むように定義される。
【0464】
「YはA、B、C及びそれらの組み合わせから選択してよい」という表現は、YがA、またはB、またはC、またはA+B、またはA+C、またはB+C、またはA+B+Cであってよいことを意味する。
【0465】
「発泡剤」の用語は、フォームを形成するための発泡性組成物をブローするのに使用される推進剤として定義される。例えば、発泡剤は、樹脂をブロー/膨張させてフォームを形成するのに使用することができる。
【0466】
特性
【0467】
フェノール樹脂の物理的特性を測定するための適した試験方法を以下に説明する。
(i)樹脂の粘度
本発明のフォームの製造で使用される樹脂の粘度は、当業者に知られた方法によって、例えば温度制御水槽を備えたブルックフィールド型粘度計(モデルDV-II+Pro)を用いて、サンプル温度を25℃に維持し、20rpmで回転するスピンドル番号SC4-29又は適切な回転速度とスピンドルタイプ又は適当な試験温度で、粘度の読取精度において許容される中間トルクを維持して、測定することができる。
(i)フェノール樹脂の%含水率
無水エタノール(Honeywell Speciality Chemicals社による製造)に、前記フェノール樹脂を25質量%から75質量%の範囲で溶解させた。この溶液について測定した水分量から、前記フェノール樹脂の含水率を計算した。測定に使用した器具は、Metrohm 870 KF Titrino Plusであった。前記水分量の測定のために、Honeywell Speciality Chemicals社により製造されたHydranal(登録商標)Composite 5をカールフィッシャー試薬として、Honeywell Speciality Chemicals社により製造されたHydranal(登録商標)Methanol Rapidをカールフィッシャー滴定に用いた。カールフィッシャー試薬の滴定量の測定のために、Honeywell Speciality Chemicals社により製造されたHydranal(登録商標)Water Standard 10.0を用いた。測定した前記水分量は、前記装置に設定された方法のTiter IPolによって決定した。
【0468】
フェノールフォームの物理的特性を測定するのに適した試験方法を以下に説明する。
(i)フォーム密度
これは、欧州規格BS EN1602:2013-“Thermal insulating products for building applications - Determination of the apparent density”に従って測定した。
(i)圧縮強度
これは、規格EN826:2013 - Thermal insulating products for building applications - Determination of compression behaviour に従って測定した。示される値は、サンプルを厚さの10%変形させたときの最初の亀裂の値である。
(ii)フォームの熱伝導率
長さ300mm、幅300mmのフォーム試験片を熱伝導率試験装置(Inventech Benelux BV社製、LaserComp Type FOX314/ASF)内に、20℃の高温プレートと0℃の低温プレートとの間に配置した。前記試験片の熱伝導率(TC)を欧州規格EN12667:“Thermal performance of building materials and products - Determination of thermal resistance by means of guarded hot plate and heat flow meter methods, Products of high and medium thermal resistance”に従って測定した。熱伝導率はまた、規格EN12939:2000 "Thermal performance of building materials and products - Determination of thermal resistance by means of guarded hot plate and heat flow meter methods - Thick products of high and medium thermal resistance" に従って測定することができる。
(iii)加速エージング(老化)後のフォームの熱伝導率
これは、欧州規格EN13166:2012+A2:2016-“Thermal insulation products for buildings - Factory made products of phenolic foam (PF)”-Specification Annex C section 4.2.3を用いて測定した。熱伝導率は、フォームサンプルを2週間70℃に、続けて2週間110℃に曝露し、かつ23℃、相対湿度50%で一定重量への安定化後に測定する。この方法により、25年の期間の熱伝導率の推定値が得られる。50年間の平均熱伝導率を決定するには、フォームサンプルを70℃に2週間暴露し、その後110℃に4週間暴露し、23℃、相対湿度50%で一定重量に安定化させる。
110℃で2週間エージングして25年間の平均値を得る代わりに、フォームを70℃で25週間エージングし、その後23℃、相対湿度50%で一定重量に安定させることができる。環境温度で50年間の推定熱伝導率を得るために、製品を50週間エージングすることができる。
バイオフェノール/リグニン/バイオホルムアルデヒドのブロックフォームについては、規格EN14314:2015(Heat aging B4, Annex B)に従い、70℃で25週間加速エージングし、23℃/50%R.H.で安定重量に調整した後の経時熱伝導率を測定し、25年間の熱性能をシミュレートする。この規格で認められているのは70℃でのエージングだけである。
(v)独立気泡含有率
独立気泡含有率は、ガスピクノメトリーを用いて測定することができる。好適には、独立気泡含有率は、規格NEN-EN ISO4590、Rigid Cellular plastics - Determination of volume percentage of open cells and closed cellsに従って測定することができる。
(vi)フォームの脆弱性
脆弱性は、規格ASTM C421-08(2014)の試験方法に従って測定する。
(viii)平均気泡直径
フォームの平坦な部分は、フォームボードの上面及び下面と平行をなす方向にフォームボードの厚さの中間部分を薄く切ることによって得られる。フォームの切断断面で50倍に拡大したコピー写真が得られる。前記コピー写真上に長さ9mmの直線を4本引く。規格JIS K6402の試験方法に従って、各直線上に存在する気泡の数を数えて気泡数の平均数を決定する。この平均数で割って、平均気泡直径は1800μmとされる。
(x)フォームの耐火性能
耐火性能は規格EN13501に従って測定される。この規格は規格ISO-EN11925-2:2020を参照しており、垂直方向に配置された試験片を用いたゼロ照射下で小火炎の直接衝突により製品の着火性を測定する試験方法を規定している。この規格は、規格EN13823:2020 Reaction to fire tests for building productsにも言及している。この文書は,単一燃焼物(SBI)による熱攻撃に曝された場合の建築製品の火災反応性能を決定するための試験方法を規定している。計算手順はAnnex Aに示されている。校正手順はAnnex C 及びAnnex D に示されており,Annex Cは規範的な附属書である。この文書は、本質的に平坦な製品の火災反応性能を測定するために作成されている。サンプルは規格EN15715:2009に準拠した試験リグに設置する。
(x)フォームの水蒸気透過率
水蒸気透過率は規格EN12086:2013に従って測定される。試験条件はclause 7.1 Table 1、condition B: 23℃-0/80% R.H. (drycup) に従う。直径130mmの円筒形試験片を製品全厚で試験する。
【図面の簡単な説明】
【0469】
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
【国際調査報告】