IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マレル・レッド・ミート・ベスローテン・フェンノートシャップの特許一覧

特表2024-536042切断装置、切断装置を含むシステム、及び動物の屠体の直腸端部を切り離す方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】切断装置、切断装置を含むシステム、及び動物の屠体の直腸端部を切り離す方法
(51)【国際特許分類】
   A22C 17/14 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A22C17/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518211
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2022076897
(87)【国際公開番号】W WO2023052382
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】21199930.5
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522373323
【氏名又は名称】マレル・レッド・ミート・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Marel Red Meat B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】ハイニンク,マールテン クリスティアーン
(72)【発明者】
【氏名】ウーフィング,アルノ ヘルマヌス マリア
(57)【要約】
本発明は、動物の屠体の直腸端部を切り離すための切断装置に関し、支持部材と、支持部材に回転可能に取り付けられており、内部穴あけ空間を取り囲む管状の穴あけ壁部を有しており、穴あけ壁部が開口した切断端と開口した切断端とは反対側の後端とを有する、穴あけ部材と、穴あけ壁部と同軸に配置されており、先端を有しており、先端は屠体の肛門開口部に侵入するように構成されており、マンドレルの少なくとも一部がマンドレルを周方向に取り囲む環状空間を画定するように穴あけ壁部によって周方向に取り囲まれている、センタリングマンドレルと、1つ又は複数の入口開口部を介して内部穴あけ空間に吸引を加えるための吸引手段を有している。切断装置は、1つ又は複数の入口開口部とは異なり且つ開口した切断端とは異なる1つ又は複数の通気開口部をさらに有しており、空気が内部穴あけ空間に侵入することを許容するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の屠体の直腸端部を切り離すための切断装置であって、
支持部材と、
前記支持部材に回転可能に取り付けられた穴あけ部材であって、内部穴あけ空間を取り囲む管状の穴あけ壁部を有しており、前記穴あけ壁部が開口した切断端と前記開口した切断端とは反対側の後端とを有する、前記穴あけ部材と、
前記穴あけ壁部と同軸に配置されたセンタリングマンドレルであって、先端を有しており、前記先端は前記屠体の肛門開口部に侵入するように構成されており、該マンドレルの少なくとも一部が該マンドレルを周方向に取り囲む環状空間を画定するように前記穴あけ壁部によって周方向に取り囲まれている、センタリングマンドレルと、
1つ又は複数の入口開口部を介して前記内部穴あけ空間に吸引を加えるための吸引手段と
を備えており、
前記切断装置は、前記1つ又は複数の入口開口部とは異なりっており、且つ、前記開口した切断端とは異なっており、空気が前記内部穴あけ空間に侵入することを許容するように構成された、1つ又は複数の通気開口部をさらに備えている、切断装置。
【請求項2】
前記吸引手段は、前記マンドレルを周方向に取り囲む前記環状空間に吸引を加えるように構成されている、
請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記吸引手段は、既に切り離された前記直腸端及び周辺組織の一部を前記内部穴あけ空間の内側に吸引するために、前記環状空間内に真空を形成するように構成されている、
請求項1又は2に記載の切断装置。
【請求項4】
前記1つ又は複数の通気開口部は、前記内部穴あけ空間、特に前記マンドレルを取り囲む前記環状空間に空気が入ることを許容するように構成されており、一方、前記吸引手段によって、前記1つ又は複数の入口開口部を通して少なくとも前記マンドレルを取り囲む前記環状空間に吸引が加えられる、
請求項1~3のいずれか1つに記載の切断装置。
【請求項5】
前記内部穴あけ空間から汚染物質を洗い流すために、気流の反転なしに、前記1つ又は複数の通気開口部から前記1つ又は複数の入口開口部への一方向の気流を確立するように構成されている、
請求項1~4のいずれか1つに記載の切断装置。
【請求項6】
前記開口した切断端の前記屠体への挿入後にのみ、又は前記直腸端部の切り離し後にのみ、前記1つ又は複数の通気開口部を通して前記内部穴あけ空間に空気が侵入することを許容するように構成されている、
請求項1~5のいずれか1つに記載の切断装置。
【請求項7】
前記屠体から及び/又は前記切り離された直腸端部からの前記開口した切断端の引き抜きの間及び/又は引き抜きの後にのみ、前記1つ又は複数の通気開口部を通して前記内部穴あけ空間に空気が侵入することを許容するように構成されている、
請求項1~6のいずれか1つに記載の切断装置。
【請求項8】
前記1つ又は複数の通気開口部を通して前記内部穴あけ空間への気流を制御するように構成された1つ又は複数の通気弁を備えている、
請求項1~7のいずれか1つに記載の切断装置。
【請求項9】
前記1つ又は複数の通気弁は、前記直腸端部を切り離した後、前記屠体から前記開口した切断端の引き抜きの間及び/又は引き抜きの後、前記吸引手段によって少なくとも前記マンドレルを取り囲む前記環状空間に吸引が加えられている間、前記1つ又は複数の通気開口部を通して前記環状空間に空気が侵入することを選択的に許容するように構成されている、
請求項8に記載の切断装置。
【請求項10】
前記1つ又は複数の通気弁は、前記切断装置が前記屠体内に前進して組織を切断している間、前記1つ又は複数の通気開口部を通して前記環状空間に空気が完全に又は部分的に侵入するのを選択的に防止するように構成されている、
請求項8又は9に記載の切断装置。
【請求項11】
前記1つ又は複数の通気弁の作動を制御する制御手段を備えており、
前記制御手段は、
最初の切断段階の間に、前記1つ又は複数の通気弁を部分的又は完全に閉じ、前記吸引手段を制御して少なくとも前記マンドレルを取り囲む前記環状空間に真空を作り出し、
後続の引抜き段階の間に、前記1つ又は複数の通気弁を部分的に又は完全に開き、前記吸引手段を制御して少なくとも前記マンドレルを取り囲む前記環状空間に吸引を加える
ように構成されている、
請求項8~10のいずれか1つに記載の切断装置。
【請求項12】
前記1つ又は複数の通気開口部が、前記穴あけ壁部の後端の近位に配置されている、
請求項1~11のいずれか1つに記載の切断装置。
【請求項13】
前記マンドレルが、内部マンドレル空間を画定するマンドレル壁部を有している、
請求項1~12のいずれか1つに記載の切断装置。
【請求項14】
前記マンドレル壁部は、前記マンドレルの先端の近位に配置された1つ又は複数の吸引開口部を有している、
請求項13に記載の切断装置。
【請求項15】
前記マンドレルが、前記1つ又は複数の入口開口部を有しており、前記吸引手段が、前記1つ又は複数の入口開口部を介して前記内部マンドレル空間に吸引を加えるように構成されており、及び/又は、前記マンドレルが、前記内部マンドレル空間と前記マンドレルを取り囲む前記環状空間との間に流体連通を提供するように構成された1つ又は複数の接続導管を有している、
請求項13~14のいずれか1つに記載の切断装置。
【請求項16】
前記内部マンドレル空間が、内側管状部分と、前記内側管状部分を周方向に少なくとも部分的に取り囲んでおり、前記1つ又は複数の仕切り壁によって前記内側管状部分から径方向に分離している、外側部分とを有しており、前記内側管状部分が前記マンドレルの先端の近位における先端と該先端とは反対側の後端とを有しており、前記内側管状部分が、該内側管状部分の前記先端において前記外側部分に流体接続されており、前記内側管状部分が前記1つ又は複数の入口開口部を有しており、前記吸引手段は、前記内側管状部分の前記先端から離れる方向に前記1つ又は複数の入口開口部を介して前記内部マンドレル空間の前記内側管状部分に吸引を加えるように構成されている、
請求項15に記載の切断装置。
【請求項17】
前記マンドレルが、前記穴あけ部材に対して軸方向に固定して配置されており、前記マンドレルの前記先端が、前記管状の穴あけ壁部の前記開口した切断端から突出しており、前記1つ又は複数の接続導管が前記穴あけ壁部の前記後端の近位に配置されている、
請求項15~16のいずれか1つに記載の切断装置。
【請求項18】
前記マンドレルが、少なくとも引込み位置と伸長位置との間で軸方向に移動可能であり、前記マンドレルがその伸長位置にあるとき、前記マンドレルの前記先端が前記穴あけ壁部の前記開口した切断端から突出しており、前記マンドレルがその引込み位置にあるとき、前記マンドレルの前記先端が前記内部穴あけ空間の内側に位置している、
請求項1~16のいずれか1つに記載の切断装置。
【請求項19】
前記1つ又は複数の接続導管は、前記マンドレルがその引込み位置にあるとき及び前記マンドレルがその伸長位置にあるときに前記内部穴あけ空間の内側に位置しており、及び/又は前記1つ又は複数の接続導管は、前記マンドレルがその引込み位置にあるときに前記穴あけ壁部の前記後端に隣り合って位置している、
請求項15又は16に従属する請求項18に記載の切断装置。
【請求項20】
前記マンドレルの少なくとも一部を周方向に取り囲むバングホルダをさらに備えている、
請求項1~19のいずれか1つに記載の切断装置。
【請求項21】
前記吸引手段を、前記マンドレルを取り囲む前記環状空間に流体接続する1つ又は複数の吸引導管を備えている、
請求項1~20のいずれか1つに記載の切断装置。
【請求項22】
前記1つ又は複数の通気開口部を介して前記内部穴あけ空間に気流を輸送するための1つ又は複数の通気導管をさらに備えており、前記通気導管は吸引が加えられている前記吸引導管とは物理的に分離している、
請求項21に記載の切断装置。
【請求項23】
前記管状の穴あけ壁の前記開口した切断端が屠体に接触し、前記屠体の組織によって実質的に閉じられているとき、前記吸引手段によって、前記マンドレルを取り囲む前記環状空間と前記穴あけ部材の外側との間の圧力差を確立するように構成されている、
請求項1~22のいずれか1つに記載の切断装置。
【請求項24】
肛門開口部及び直腸端の周囲を切断装置で切断することによって、動物の屠体の直腸端部を切り離す方法であって、
マンドレルの先端を前記動物の屠体の前記肛門開口部内へ前進させること、
回転する穴あけ部材の管状の穴あけ壁部の開口した切断端で、前記屠体の前記肛門開口部の周囲と前記直腸端の一部に沿って切断すること、ここで、前記管状の穴あけ壁部は内部穴あけ空間を画定しており、前記マンドレルの少なくとも一部は前記マンドレルを取り囲む環状空間を画定するように前記穴あけ壁部によって周方向に取り囲まれており、
前記穴あけの間に、少なくとも前記環状空間に真空を形成するように、1つ又は複数の入口開口部を介して前記内部穴あけ空間に吸引を加えること、
切断装置の1つ又は複数の通気開口部を通して前記環状空間に空気が侵入することを許容すること、ここで前記1つ又は複数の通気開口部は前記1つ又は複数の入口開口部とは異なっており且つ前記穴あけ壁部の前記開口した切断端とは異なっている、
を有する、方法。
【請求項25】
吸引を加えることは、前記1つ又は複数の入口開口部を介して少なくとも前記環状空間に吸引を加えることを含む、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
既に切り離された前記直腸端及び周辺組織の一部を前記内部穴あけ空間に吸引することを含む、
請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記穴あけ部材と前記マンドレルとを前記屠体から引き抜くこと、
前記穴あけ部材と前記マンドレルとを前記屠体から引き抜く間及び/又は引き抜いた後に、前記1つ又は複数の入口開口部を介して少なくとも前記環状空間に吸引を加えること
を含んでおり、
空気が前記環状空間に入ることを許容することは、少なくとも、前記穴あけ部材と前記マンドレルとを前記屠体から引き抜く間及び/又は引き抜いた後に、前記1つ又は複数の通気開口部を通して空気が前記環状空間に侵入することを許容することを含む、
請求項24~26のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
前記穴あけ部材と前記マンドレルとを前記屠体から引き抜く間及び/又は引き抜いた後にのみ、前記1つ又は複数の通気開口部を通して前記環状空間に空気が侵入することを許容する、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
1つ又は複数の通気弁を操作することによって、前記1つ又は複数の通気開口部を通して前記内部穴あけ空間への気流を制御することを含む、
請求項24~28のいずれか1つに記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1つの産業用マニピュレータを有するロボットと、
前記少なくとも1つの産業用マニピュレータに接続された、少なくとも1つの請求項1~23のいずれか1つに記載の切断装置と
を備えた切断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、豚などの屠体の直腸端部を切り離すための切断装置及び切断方法に関する。本開示はさらに、このような切断装置を含むシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
屠殺された動物、例えば豚の屠体を処理するとき、排泄物など屠体の胃及び腸にある物質で肉が汚染されるリスクを避ける又は大幅に減らすことが重要である。動物の屠体を処理する際、腸が肛門開口部の皮膚に付着している部分がしばしば切り離される。腸の端(直腸の端)は、内臓が屠体から完全に放出されて取り除かれるまで、屠体のさらなる処理の間、例えば閉じて取り扱われることがある。切断装置を、肛門開口部周囲の皮膚とその下の構造を切断するために使用できる。本開示の目的のため、このような切断装置はバングドリラーとも呼ばれることがある。
【0003】
このような切断装置は、穴あけ部材の円筒状壁部材の端部に切断刃を有してもよく、そこではマンドレルが穴あけ部材の中心に配置されている。切断装置の作動中、マンドレルの先端が屠体の肛門開口部と直腸の一部(これはまた、バングと呼ばれることもある)に侵入し、切断刃が肛門開口部と直腸端の周囲を切断する。
【0004】
WO2013119106(A1)は直腸切断装置を開示しており、該直腸切断装置は、支持部材に回転可能に取り付けられた切断部材であって、この切断部材が内部空間を取り囲む円筒状壁部を有しており、この円筒状壁部が切断刃を有する上端を有している、切断部材と、円筒状壁部内に同軸に配置された心出しマンドレルであって、その自由端が切断刃を越えて到達している、心出しマンドレルと、切断部材を支持部材に対して回転させるための回転駆動手段と、切断部材の内部空間内に真空を形成するための吸引手段であって、切断部材の内部空間内に軸方向に移動可能な排出部材と、排出部材を軸方向に移動させるための排出駆動手段とを有する、吸引手段と、を備えている。切断ステップでは、切断部材を作動させ、直腸端部を取り囲む組織を切断するように回転するように駆動させる。この工程では、切断部材を組織の奥深くまで移動させるように、支持部材を変位させる。切断中、吸引手段は切断部材の内側の内部空間部分を真空に維持し、この真空は、可撓性膜を通して吸引される空気によって外側の内部空間部分に伝達される。直腸部の一部が切り離され、それによって内部空間の上記外側部分に吸い込まれる。切断行程は直腸端部がその全長にわたって切り離されるまで続けられる。
【0005】
先行技術のバングドリルプロセスにおける真空は、ナイフが皮膚に切り込むことができるように、切断装置内で皮膚に保持力を提供するために使用され、これにより穴あけ部材が皮膚に切り込む代わりに皮膚上を押圧することを回避する。しかしながら、真空効果によって肛門開口部が開き又は裏返ることがある。そのため、便が直腸から放出され、肛門開口部周囲の皮膚に接触し、そこから微生物が拡散する可能性がある。そのため、食肉が汚染されるリスクが高まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、切断工程中の肛門開口部の裏返しから生じる汚染など、汚染のリスクを低減する切断装置及び対応する工程を提供すること、あるいは少なくとも既存の切断装置又は工程に代わるものを提供することが依然として望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の側面によれば、本明細書に開示されるのは、動物の屠体の直腸端部を切り離すための切断装置の実施形態である。
切断装置は、
支持部材と、
支持部材に回転可能に取り付けられた穴あけ部材であって、穴あけ部材は内部穴あけ空間を取り囲む管状の穴あけ壁部を有しており、穴あけ壁部が開口した切断端と開口した切断端とは反対側の後端とを有する、穴あけ部材と、
穴あけ壁部と同軸に配置されたセンタリングマンドレルであって、マンドレルは先端を有しており、先端は屠体の肛門開口部に進入するように構成されており、マンドレルの少なくとも一部がマンドレルを周方向に取り囲む環状空間を画定するように穴あけ壁部によって周方向に取り囲まれている、センタリングマンドレルと、
1つ又は複数の入口開口部を介して内部穴あけ空間に吸引を加える、吸引手段と、
を備えており、
切断装置は、1つ又は複数の入口開口部とは異なり且つ開口した切断端とは異なる、1つ又は複数の通気開口部をさらに備えており、空気が内部穴あけ空間に入るように、特に屠体の腸からの汚染物質によって汚染されていない新鮮な空気が入るように構成される。
【0008】
したがって、気流(エアフロー、空気流)は、1つ又は複数の入口開口部とは異なり且つ開口した切断端とは異なる、1つ又は複数の別個の通気開口部を介して、内部穿孔空間、特にマンドレルを取り囲む環状空間に入ることができるので、気流は、屠体の腸からの汚染物質と接触しておらず、従って汚染されていない新鮮な空気を含むことができる。特に、1つ又は複数の通気開口部を通って入る新鮮な空気は、開口した切断端を通って内部穴あけ空間に入る直腸端部によって汚染されていない。1つ又は複数の通気開口部を通って入る新鮮な空気は、1つ又は複数の入口開口部を介して以前に内部穴あけ空間の外へ吸引された汚染物質、及び1つ又は複数の入口開口部を吸引手段に流体的に接続するホース又は他の導管にまだ存在する可能性のある汚染物質のどちらによっても、汚染されていない。このように、切断装置は、1つ又は複数の通気開口部から1つ又は複数の吸気開口部への一方向の気流を可能にする。切断装置の操作では、内部穴あけ空間から汚染物質を洗い流すための気流の反転、特に入口開口部を通る気流の反転を必要としないため、屠体が汚染されるリスクが低減する。1つ又は複数の通気開口部は、好ましくは、内部穴あけ空間、特にマンドレルを取り囲む環状空間に空気が入るように構成されており、一方、吸引が、吸引手段によって、1つ又は複数の吸入開口部を通して少なくとも環状空間、すなわちマンドレルを取り囲む内部穴あけ空間の環状部分に加えられる。
【0009】
切断装置は、1つ又は複数の通気開口部を通って入ることを可能とする空気の量を制御するように構成されてもよい。特に、切断装置は、切断工程の一部の間のみ選択的に空気が内部穴あけ空間に入るように、又は切断工程の一部の間に他の部分の間よりも多くの空気が内部穴あけ空間に入るように構成されてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、切断装置は、開口した切断端を屠体に挿入した後、又は直腸端部を切り離した後のみ、例えば、開口した切断端を屠体から及び/又は切り離された直腸端部から引き抜く間及び/又は引き抜いた後のみ、1つ又は複数の通気開口部を通して内部穴あけ空間に空気が入るように構成される。
【0010】
この目的のために、幾つかの実施形態では、穴あけ部材は、1つ又は複数の通気開口部を通して内部穴あけ空間への気流を制御するように、特に、1つ又は複数の通気開口部を通して内部穴あけ空間に入ることを許容される空気の量を制御するように構成された、1つ又は複数の通気弁をさらに備えている。一実施形態では、1つ又は複数の通気弁は、直腸端部を切り離した後に屠体から開口した切断端を引き出す間及び/又は引き出した後に、吸引手段によって少なくともマンドレルを取り囲む環状空間に吸引が加えられている間、1つ又は複数の通気開口部を通して環状空間に空気が入るのを選択的に許容するように構成されている。
【0011】
したがって、穴あけ部材が屠体から引き抜かれ、切り出された直腸端部が穴あけ部材から落とされるとき、切断工程中に肛門開口部から穴あけ部材の環状空間に流出した可能性のある汚染物質、特に便の一部、好ましくは全部又は大部分は、直腸端部とともに穴あけ部材から落とされ又は押し出されたりするというよりもむしろ、切断装置によって吸い上げられる。特に、穴あけ部材を屠体から引き抜く間に吸引を維持しながら、マンドレルを取り囲む環状空間に空気が入るようにすることで、吸引手段は、便及び/又は他の汚染物質を制御された方法で環状空間から運び出す気流を作り出すことができる。
【0012】
本明細書に開示される切断装置と切断工程は、さまざまな種類の動物の処理に使用されてもよい。したがって、動物の屠体は、屠殺場で屠殺されたような、屠殺された動物の屠体であってもよい。動物は、例えば、豚、家禽、畜牛/肉牛、ヤギ、羊などであってもよい。好ましくは、切断装置は豚の屠体に使用される。
【0013】
様々な実施形態において、吸引手段は、マンドレルを周方向に取り囲む環状空間に吸引を加えるように構成されている。幾つかの実施形態では、吸引手段は、既に切り離された直腸端と周囲の組織の一部を内部穴あけ空間に吸引するために、環状空間に真空を作り出すように構成されている。吸引手段は、少なくとも1つ又は複数の通気弁が閉鎖されている又は減少した気流のみが内部穴あけ空間に入るように設定されているときに、内部穴あけ空間、特に環状空間に真空を作り出すように構成されてもよい。切断時に環状空間内に生じる真空は、切断時に肛門開口部の周囲の皮膚を引っ張り、クリーンな切断を得て、切断刃で直腸を傷つけることを防止する役割を果たす。切断工程の間、すでに切り離された直腸端と周辺の組織の一部は、さらに内部穴あけ空間に吸い込まれる。穴あけ壁部の開口した切断端が屠体の腹腔内に到達するとき、直腸端部全体が切り離され、穴あけ部材の内部穴あけ空間内に収容される。したがって、本開示の目的のため、内部穴あけ空間内の真空という用語は、切断中に直腸を引っ張るのに十分な大きさの、内部穴あけ空間と周囲雰囲気との間の圧力差として理解されるべきである。
【0014】
幾つかの実施形態では、1つ又は複数の通気弁はさらに、実際の切断操作の少なくとも一部の間、すなわち切断装置が屠体内に前進して組織を切断している間、空気が1つ又は複数の通気開口部を通して環状空間に完全に又は部分的に侵入するのを選択的に防止するように構成されている。したがって、1つ又は複数の通気弁が、1つ又は複数の通気開口部を通して環状空間に空気が入るのを防止し(又は減少した気流しか許容せず)、且つ、穴あけ部材の開口した切断端が屠体の組織によって実質的に閉鎖/閉塞されている間、吸引手段は、環状空間内に真空を作り出し維持できる。1つ又は複数の通気弁が、穴あけ部材の屠体からの引き抜き中及び/又は引き抜き後に、1つ又は複数の通気開口部を通して環状空間内に空気が入ることを許容するとき、吸引手段の作動により環状空間内に気流が生じ、吸引手段によって環状空間から汚染物質を洗い流すことができ、その結果、切り離された直腸端部の解放中に、吸い上げられた汚染物質が開口した切断端から流出するのを防止できる。
【0015】
1つ又は複数の通気弁の制御は、適切な制御手段によって行われてもよい。特に、幾つかの実施形態では、切断装置は、1つ又は複数の通気弁の作動を制御するための制御手段を備えており、制御手段は、最初の切断段階の間、1つ又は複数の通気弁を部分的又は完全に閉じ、吸引手段を制御して少なくともマンドレルを囲む環状空間に真空を作り出し、後続する引き抜き段階の間、特に、屠体から及び/又は切り離された直腸端からの開口した切断端の引き抜き中及び/又は引き抜き後に、1つ又は複数の通気弁を開き、少なくともマンドレルを取り囲む環状空間に吸引を加えるように吸引手段を制御する、ように構成されている。
【0016】
例えば、制御手段は、通気弁を制御するように構成された好適に構成された電気制御回路、例えば、好適にプログラムされた又は他の方法で構成されたマイクロプロセッサ、PLC、工業用制御ユニット、及び/又はそのようなものであってもよい。代替的に、制御手段は、機械的、空気圧的、又は他の適切な制御機構、例えば手動制御可能なベール及び/又はそのようなものであってもよい。制御手段は、例えば切断工程の自動制御の一部として、1つ又は複数の通気弁を自動的に制御するように構成されてもよい。代替的又は付加的に、制御手段は、ユーザ入力に応答して、例えば、ユーザがボタン又はスイッチなどの適切なアクチュエータを操作することによって、1つ又は複数の通気弁を制御するように構成されてもよい。制御手段は、支持部材と同じハウジング又は支持構造体に収容されたローカル制御手段であってもよく、又は、例えば有線又は無線接続を介して支持部材などと通信可能に接続されたリモート制御手段であってもよい。制御手段は、吸引手段、穴あけ部材を回転させるためのモータ又は他の駆動手段などの切断装置の他の動作も制御するように構成されてもよい。1つ又は複数の通気弁は、支持部材内又は他の適当な場所に収容されてもよい。
【0017】
1つ又は複数の通気開口部は、開口した切断端とは異なり、好ましくはずらされている。1つ又は複数の通気開口部が管状の穴あけ壁部の後端部の近位に位置するとき、形成された気流は、環状空間の後端部に堆積した汚染物質を、吸引手段が吸引を加える入口開口部に向かって且つ開口した切断端から離れるように効率的に輸送できる。この目的のために、幾つかの実施形態では、切断装置は、吸引手段を内部穴あけ空間、例えばマンドレルの内部マンドレル空間及び/又はマンドレルを取り囲む環状空間に流体接続する1つ又は複数の吸引導管を備えている。1つ又は複数の吸引管路は、内部穴あけ空間への、特に内部マンドレル空間及び/又は環状空間への、入口開口部を有している。1つ又は複数の入口開口部は、好ましくは、マンドレル又は穴あけ部材の後端の近位に配置されている。切断装置は、1つ又は複数の通気開口部を介して内部穴あけ空間に気流を輸送するための1つ又は複数の通気導管をさらに含んでもよい。好ましくは、通気管路は、吸引が加えられる吸引管路から物理的に分離されており、したがって、通気導管を通る気流及び/又は吸引導管を通る気流を一方向の気流のみに制限することを可能とする。
【0018】
幾つかの実施形態では、切断装置は、開口した切断端の反対側で、軸方向後方において内部穴あけ空間を軸方向に画定する、穴あけ部材又は支持部材の一部であってもよい端壁部を備えている。1つ又は複数の通気開口部及び/又は1つ又は複数の吸気開口部は、後壁部に配置されてもよい。一実施形態では、1つ又は複数の通気開口部は、端壁部の径方向外側部分、例えば、穴あけ壁部と端壁部との間に画定される周縁部に隣り合って、又は周縁部に配置されている。幾つかの実施形態では、1つ又は複数の入口開口部は、穴あけ部材の長手方向軸の中央に又は隣り合って配置されている。
【0019】
幾つかの実施形態では、マンドレルは、穴あけ部材の開口した切断端に向かって又は開口した切断端の領域に配置された、又は開口した切断端から軸方向に突出した、閉じた先端又は先端を有するロッド又は管である。幾つかの実施形態では、マンドレルは、内部マンドレル空間を取り囲むマンドレル壁部を有している。したがって、穴あけ部材の内側に位置し、筒状の穴あけ壁部によって周方向に取り囲まれている、内部マンドレル空間の全部又は少なくとも一部が、内部穴あけ空間の一部を構成している。マンドレル壁部は、管状壁部であってもよい。幾つかの実施形態では、マンドレル壁部は、マンドレルの先端の近位に配置された1つ又は複数の吸引開口部、例えば、マンドレル壁部の周囲の周りに分布しており、マンドレルに沿った1つ又は複数の間隔を空けた軸方向位置に配置された、複数の吸引開口部を有している。内部マンドレル空間に吸引が加えられると、1つ又は複数の吸引開口部で径方向内向きの吸引が生じる。したがって、マンドレルが屠体の肛門開口部を通って直腸端に前進させられるとき、直腸端の腸壁は径方向内側に吸引されてマンドレルにぴったりと密着する。さらに、直腸端の内部から排泄物又は他の汚染物質が内部マンドレル空間に吸い込まれてもよい。したがって、切断作業中に汚染物質が肛門開口部を出て、肛門開口部の周囲の皮膚を汚染するリスクが減少する。
【0020】
幾つかの実施形態では、マンドレル壁部は、内部マンドレル空間とマンドレルを取り囲む環状空間との間に流体連通を提供するように構成された、1つ又は複数の接続導管、特にマンドレル壁部の1つ又は複数の貫通孔、又は他の形態の空気チャネルを備えている。1つ又は複数の接続導管は、好ましくは、管状の穴あけ壁部の後端の近位に、特に直接隣接して配置されている。マンドレルが軸方向に移動可能であるとき、1つ又は複数の接続導管は、好ましくは、マンドレルが後退した最も後方の位置にあるとき、管状の穴あけ壁部の後端の近位に、特に直接隣接して配置されている。したがって、後述するように内部マンドレル空間に吸引が加えられるとき、接続導管を介してマンドレルを取り囲む環状空間にも吸引が加えられる。代替的又は付加的に、マンドレルを取り囲む環状空間への吸引は、例えば環状空間を軸方向に区画する端壁部分又は管状の穴あけ壁部に配置された1つ又は複数の追加の入口開口部を介して、加えられてもよい。
【0021】
幾つかの実施形態では、吸引手段は、内部マンドレル空間に流体的に接続されており、1つ又は複数の入口開口部を介して内部マンドレル空間に直接に吸引を加えるように構成されており、すなわち、マンドレルは、1つ又は複数の入口開口部を、例えばマンドレルの後端、例えばマンドレルの後端壁に、又は管状の内部マンドレル空間の開口した後端として構成されてもよい。特に、吸引手段は、吸引を、軸方向、後方向、又はその他の方法で、開口した切断端から離れる方向、及び/又はマンドレルを取り囲む環状空間から離れる方向に、加えるように構成されてもよい。したがって、穴あけ部材は、吸引手段が、1つ又は複数の入口開口部及び1つ又は複数の接続導管を介して環状空間に吸引を加えるように、すなわち、吸引手段が、1つ又は複数の接続開口部を介して環状空間から内部マンドレル空間に吸引を加え、吸引手段が、1つ又は複数の入口開口部を通って内部マンドレル空間から吸引を加えるように、さらに構成されてもよい。したがって、1つ又は複数の通気弁が、1つ又は複数の通気開口部を通して環状空間に空気が入るのを可能にするとき、吸引手段は、1つ又は複数の通気開口部から環状空間への気流を引き起こし、環状空間から1つ又は複数の接続導管を通して内部マンドレル空間への気流を引き起こし、且つさらに1つ又は複数の入口開口部に向かって且つ1つ又は複数の入口開口からの気流を、引き起こす。
【0022】
幾つかの実施形態では、内部マンドレル空間は、内側管状部分と、内側管状部分を少なくとも部分的に取り囲んでおり1つ又は複数の仕切り壁によって内側管状部分から径方向に分離した、周方向の外側部分とを有している。幾つかの実施形態では、外側部分は、管状の仕切り壁によって内側の管状部分から分離された環状の外側部分である。他の実施形態では、外側部分はマニホールドであり、例えば、それぞれが内側管状部分に沿って長手方向に延びており、内側管状部分の周りに周方向に分布する、複数の長手方向チャネルを含んでいる。内側管状部分は、マンドレルの先端の近位にある先端と、先端とは反対側の後端とを有している。幾つかの実施形態では、内側管状部分は、内側管状部分の先端で外側部分に流体接続している。幾つかの実施形態では、内側管状部分が1つ又は複数の入口開口部を有している。したがって、吸引手段は、内部マンドレル空間の内部管状部分に、1つ又は複数の入口開口部を介して、内部管状部分の先端から離れる方向に吸引を加えるように構成されてもよい。マンドレルの1つ又は複数の吸引開口部は、内部マンドレル空間の外側部分とマンドレルの周囲とを流体接続してもよい。一実施形態では、1つ又は複数の接続導管は、マンドレルを取り囲む環状空間と内部マンドレル空間の内側管状部分とを直接接続し、それによって、空気用の比較的短い通路を提供し、したがって、環状空間の後方部分からだけでなく内部マンドレル空間の全長から汚染物質を洗浄するための効率的な気流を提供しながら、脂肪組織が空気通路を塞ぐリスクを低減する。代替的な実施形態では、1つ又は複数の接続導管が、マンドレルを取り囲む環状空間と内部マンドレル空間の外側部分とを接続する。したがって、1つ又は複数の通気弁が、1つ又は複数の通気開口部を通して環状空間に空気が入るのを可能にするとき、吸引手段は、1つ又は複数の通気開口部から1つ又は複数の接続導管を通して内部マンドレル空間の外側部分へ、次いでマンドレルの先端に向かう内部マンドレル空間の内側管状部分の先端への気流を生じさせる。そこから気流は、内側管状部分に沿って1つ又は複数の入口開口部まで後方に続く。したがって、内部マンドレル空間の全長だけでなく、環状空間の後部からも汚染物質を除去するための効率的な気流が提供される。
【0023】
好ましくは、穴あけ部材は、穴あけ工程の期間の間、穴あけ部材の外側の周囲空気に対して十分な圧力差を保持できるように構成されている。特に、管状穴あけ壁の開口した切断端が、屠体に接触し、屠体の組織によって実質的に閉鎖されているとき、吸引手段によって、マンドレルを囲む環状空間と穴あけ部材の外側との間に圧力差が確立され、維持されてもよい。このような圧力差を確立するために、穴あけ部材は「無傷」又は気密であってもよく、これは管本体、特に穴あけ壁部の周囲に大きな開口部又は切り込みがないことを意味する。開口部がないことは、圧力差を最も効率的に確立することを可能にするが、穴あけ部材が外部に対して十分な圧力差を保持することを妨げることなく、穴あけ部材の穴あけ壁部に、より小さな開口部又は切り込みが存在してもよいことが理解されよう。例えば、そのような切り込みは、切断刃をより侵攻性させる切断刃に配置されてもよい。穴あけ部材の内部に形成された真空はまた、任意の汚染物質が切断工程中に内部穴あけ空間から開口した切断端を通って出ることを効率的に防止する。幾つかの実施形態では、管状の穴あけ壁部は、その開口した切断端に環状切断刃を有しており、この切断刃は、好ましくは、鋸でないなど、無傷又は破損していない。
【0024】
マンドレルの先端が、恒久的に、又は軸方向に移動可能なマンドレルの伸長位置において、管状の穴あけ壁部の開口した切断端から突出するように構成されているとき、マンドレルの先端は、穴あけ壁部が肛門開口部を取り囲む組織に係合して切断する前に、肛門開口部に挿入されてもよい。
【0025】
マンドレルは、穴あけ部材に対して軸方向に固定して配置されてもよく、又は穴あけ部材に対して軸方向に移動可能に配置されてもよい。特に、幾つかの実施形態では、マンドレルは、少なくとも引込み位置と伸長位置との間で軸方向に移動可能であり、マンドレルがその伸長位置にあるとき、マンドレルの先端が管状の穴あけ壁部の開口した切断端から突出し、マンドレルがその引込み位置にあるとき、マンドレルの先端が内部穴あけ空間内に位置する。切断作業の間、すなわち、穴あけ部材が屠体を切断して奥深くまで前進する間、直腸端部が内部穴あけ空間に吸い込まれるにつれて、マンドレルはしたがって内部穴あけ空間内へ後方に移動してもよい。例えば、マンドレル又は少なくともその後部は、ピストン、例えば空気圧ピストンとして設けられてもよく、ピストンを支持部材に対して伸長又は引き込むように制御できる。幾つかの実施形態では、1つ又は複数の接続導管は、マンドレルが引き込み位置にあるとき、及びマンドレルが伸長位置にあるとき、内部穴あけ空間内に配置されている。特に、幾つかの実施形態では、1つ又は複数の接続導管は、マンドレルがその引込み位置にあるとき、内部穴あけ空間の後端の近位に、例えば直接隣接して配置されている。
【0026】
幾つかの実施形態では、切断装置は、マンドレルの少なくとも一部を取り囲むバングホルダをさらに有している。幾つかの実施形態では、バングホルダは円形及び/又はカップ形状であり、マンドレルの周囲を周方向に延びている。バングホルダは、全体の外径が管状の穴あけ壁部の内径よりも小さくてもよい。幾つかの実施形態では、バングホルダの外周と管状の穴あけ壁部との間に空間があり、それによって、径方向内側ではバングホルダの外周とマンドレルの少なくとも一部の外周との間に、径方向外側では管状の穴あけ壁部の内側に、環状空間を形成する。一実施形態では、バングホルダは、後方に開口部のない、すなわち穴あけ部材の内側及び後端に向かって開口部のない円周面を有している。バングホルダは、穴あけ部材の開口した切断端に向かう領域で開口している。バングホルダは、好ましくは、開口した切断端が屠体に係合するとき、穴あけ部材内の残りの容積とは別の内部容積を画定する。したがって、可能性のある汚染物質を収容し、特にバングホルダの内側の容積からマンドレル及びバングホルダを取り囲む環状空間への汚染物質の拡散を減少させることができる、2つの別々の容積が形成される。
【0027】
幾つかの実施形態では、バングホルダは、屠体の外側に係合可能な保持手段を有している。保持手段は、カップ状バングホルダの縁部、すなわちバングホルダの閉じた部分と開いた部分の間に配置されてもよい。バング保持手段は、屠体の外側、すなわち屠体の肛門開口部を取り囲む皮膚領域に係合可能である。バングホルダの保持手段は、穴あけ工程が皮表面に回転力を与える場合にバングドリラーが皮及び屠体に穴をあけるとき、皮を回転しないように保持可能である。保持手段の他の機能は、例えば穴あけ中に穴あけ部材の内部が真空になる可能性がある場合に、屠体の肛門開口部が裏返しになるのを防止するか、又は少なくともこのようなことが起こる程度又はリスクを低減することである。これにより、少なくとも便の主要部分は直腸内に維持される。一実施形態では、バングホルダの保持手段は、屠体の皮膚表面に係合可能な歯又は他の構造を有している。歯の機能は、皮膚のよいグリップを得ることであり、よいグリップを得るための切断以外は、皮膚に切り込みを入れることはない。歯は、屠体の皮膚に係合するのに適した、尖ったものなど、任意の形状を有してもよい。
【0028】
幾つかの実施形態では、バングホルダはマンドレルの周りを回転するように構成されている。幾つかの実施形態では、バングホルダは穴あけ部材内で軸方向にスライドできる。バングホルダは、好ましくは、穴あけ部材に対して回転可能であり、穴あけ工程の間、屠体に対して非回転であり得る。好ましい実施形態では、バングホルダとマンドレルは、穴あけ部材の内側で軸方向にスライドできるように接続されている。これにより、バングホルダはマンドレルの長手方向に沿って固定された位置に配置されてもよいが、バングホルダはマンドレルの周りを依然として回転してもよい。
【0029】
幾つかの実施形態では、バングホルダは気密性を有する周壁部分を有している。したがって、バングホルダは、バングホルダの内部に内部バングホルダ容積を画定する。内部バングホルダ容積は、バングホルダの保持手段が屠体の外部と係合するとき、閉じた容積であり得る。したがって、切断装置は、屠体表皮の外側、マンドレルの先端部分の外側、及びバングホルダの内側の間に位置する、バングホルダ容積を有する構造であってもよい。このバングホルダ容積は、肛門開口部のすぐ外側のマンドレルと、肛門開口部を取り囲む屠体皮膚の一部を取り囲む。
【0030】
上述したように、マンドレルは、マンドレルの先端の近位に1つ又は複数の吸引開口部を有してもよい。幾つかの実施形態では、1つ又は複数の吸引開口部は、マンドレルの閉じた先端と、穴あけ部材の内側に向かって境界を構成するバングホルダの部分との間など、マンドレルの閉じた先導端とバングホルダとの間の領域に配置されており、それによって、吸引開口部は、マンドレルに沿って及び/又はバングホルダのバングホルダ容積の内側に配置されてもよい。一実施形態では、マンドレルは、非充填又は開口した内部容積と、閉鎖された先端に向かう領域の少なくとも一部における開口部とを有している。好ましくは、吸引口は、マンドレルの最も外側の先端又は先端、例えば、最も外側の0.5cm、1cm、1.5cm、又は2cm内には配置されない。
【0031】
空気弁が、バングホルダの内側のバングホルダ容積と、バングホルダを取り囲む穴あけ部材の内側の環状空間との間の、バングホルダ内に配置されてもよい。このような空気弁は、例えば汚染物質を含む空気を、バングホルダ容積から環状空間へ、又は環状空間から内部マンドレル空間へ吸引させることが可能であってもよい。バングホルダに配置された空気弁を通る気流の方向は、マンドレルに接続されてマンドレルの内側の容積から空気を吸引する吸引手段、又は穴あけ部材に接続されてマンドレルを取り囲む環状空間から空気を吸引する吸引手段の位置によって決定されてもよい。
【0032】
幾つかの実施形態では、マンドレルの吸引開口部は、1つ又は複数の吸引開口部がバングホルダの内側に位置する領域すなわちバングホルダ容積内に位置するように、作成される。代替的に又は付加的に、1つ又は複数の吸引開口部が、処理する屠体の腸又は直腸端に挿入されるマンドレルの部分に配置されている。好ましくは、マンドレルの外側先端は吸引開口部を含んでいない。
【0033】
幾つかの実施形態では、吸引開口部は、マンドレルの領域に沿って配置されており、例えば、異なる軸方向位置でマンドレルの周囲の周りにそれぞれのリング状の配置で配置されている。吸引開口部は、マンドレルに沿って、例えば先端の近傍の領域に、開口部を有するリング状配置の2~10個が存在してもよく、4~8個など、例えば5~7個、例えば6個のリング状配置であってもよい。各リング状配列は、4~8個の開口部、例えば6個の開口部を有してもよい。開口部の大きさは、処理する屠体のタイプにしたがって決定され得る。真空が確立されると、腸又は直腸端の吸引による保持効果が得られる。バングホルダの内側すなわちバングホルダ容積内の真空を作ることもできる。
【0034】
吸引手段は、マンドレル及び/又はマンドレルを取り囲む環状空間に吸引を加えるように構成されてもよい。幾つかの実施形態では、吸引手段は、内部マンドレル空間と流体連通しており、吸引手段は、内部マンドレル空間、特に内部マンドレル空間の後端に吸引を加えるように構成されている。マンドレルが肛門開口部に挿入されるとき、及び穴あけ部材の開口した切断端が屠体の直腸端部分に係合するとき、加えられた吸引力によって、内部マンドレル空間及び/又は内部穴あけ空間、特にマンドレルを取り囲む環状空間に真空が形成される。
【0035】
吸引手段は、ポンプ、特に真空ポンプ、又は切断装置を外部の真空ポンプ又は他の吸引源に接続するためにホース又はパイプを切断装置に接続するための接続ポートなど、吸引を加えるための他の適切な装置であってもよい。
【0036】
動物の屠体を処理するための切断装置は、当業者には知られている。このため、当業者であれば、切断装置のさまざまな構成部品の適切な材料を知っており、好ましくは、屠殺場での使用が許可された金属などの材料製であってもよい。この材料は、使用後など頻繁に洗浄可能であってもよい。軸受など切断装置の幾つかの部品又はユニットは、高分子材料製であってもよい。切断装置の全体的なデザインと機能は既知であり、本明細書で説明されることを必要としない。
【0037】
本明細書で開示される第2の側面は、肛門開口部と直腸端の周囲を切断装置で切断することによって、動物の屠体の直腸端部を切り離す方法に関し、この方法は、
マンドレルの先端を動物の屠体の肛門開口部に挿入すること、
回転する穴あけ部材の管状の穴あけ壁部の開口した切断端で、屠体の肛門開口部の周囲及び直腸端の一部に沿って切断すること、ここで、管状の穴あけ壁部が内部穴あけ空間を画定しており、マンドレルの少なくとも一部がマンドレルを取り囲む環状空間を画定するように穴あけ壁部によって周方向に取り囲まれており、
穴あけの間に、少なくとも環状空間に真空を形成するように、1つ又は複数の入口開口部を介して内部穴あけ空間に、特に少なくとも環状空間に、吸引を加えること、
切断装置の1つ又は複数の通気開口部を通して環状空間に空気が入ることを可能にすること、ここで、1つ又は複数の通気開口部が1つ又は複数の入口開口部及び穴あけ壁部の開口した切断端とは異なっている、
を含んでいる。
【0038】
幾つかの実施形態では、本方法はさらに、
穴あけ部材とマンドレルを屠体から引き抜くこと、
穴あけ部材及びマンドレルを屠体から引き抜く間及び/又は引き抜いた後に、1つ又は複数の入口開口部を介して少なくとも環状空間に吸引を加えること、
を含んでおり、
空気が環状空間に入ることを可能にすることは、少なくとも、穴あけ部材及びマンドレルを屠体から引き抜いている間及び/又は引き抜いた後に、1つ又は複数の通気開口部を通して空気が環状空間に入ることを許容することを含んでいる。
幾つかの実施形態では、空気は、穴あけ部材及びマンドレルを屠体から引き抜いている間及び/又は引き抜いた後にのみ、1つ又は複数の通気開口部を通して環状空間に入ることが許容される。
【0039】
幾つかの実施形態では、本方法は、1つ又は複数の通気弁を操作することによって、1つ又は複数の通気開口部を通る内部穴あけ空間への気流を制御することを含んでいる。
【0040】
本方法の一実施形態では、切り離された直腸端部が、屠体の内側に落下させられ、又はそうでなければ屠体の内側に送り込まれる。幾つかの実施形態では、切り離された直腸端部が、そうでなければ屠体の外側、例えば屠体の腹側に落下させられるか、又は屠体以外の場所、例えばトレイ上、容器内などに落下させられてもよい。
【0041】
本発明の第3の側面は、切断システムに関し、該切断システムは、
ロボットアームなどの少なくとも1つの産業用マニピュレータを有するロボットと、
少なくとも1つの産業用マニピュレータに接続された、本明細書に記載の少なくとも1つの切断装置と
を有している。
【0042】
幾つかの実施形態では、システムは、肛門開口部の外側の領域における屠体の画像データを取得するための少なくとも1つの視覚システムをさらに有している。幾つかの実施形態では、システムは、取得された画像データを処理し且つ画像データを含む情報に基づいて制御情報を計算するように構成された、少なくとも1つのプロセッサをさらに有している。
【0043】
幾つかの実施形態では、システムは、少なくとも1つのプロセッサから少なくとも制御情報を取得し、少なくとも1つのロボットアームなどの少なくとも1つの産業用マニピュレータ及び少なくとも1つのバングドリラーを制御して動物の屠体を処理するように構成された、少なくとも1つの制御手段をさらに有している。
【0044】
異なるアイテムが、例えば、ロボット、産業用マニピュレータ、ロボットアーム、視覚システム、プロセッサ、及び制御装置などのバングドリルシステムに含まれてもよい。当業者は、画像データを取得し、そのようなデータを処理し、ロボット又はロボットアームを制御して切断装置を用いて本明細書に記載されるように動物の屠体を処理するようにシステムを構成するために、そのような異なるシステム及びそれらを接続すべき方法を認識している。産業用マニピュレータが作業可能な軸又は自由度の数は、例えば、システムが肛門開口部の位置の特定を開始してから穴あけ工程後に切断装置が取り外されるまでの間、工程の間に動物の屠体が輸送下にあるかどうかなど、設定に依存してもよい。したがって、産業用マニピュレータは、設定に依存して、自由度の数(自由度の数は1、2、3、4、5、又は6)で作動する産業用マニピュレータであってもよい。好ましくは少なくとも2自由度、例えば少なくとも4自由度である。
【0045】
画像データから、例えば肛門開口部の位置及び大きさ、尻尾、性別などに関する情報など、さまざまな情報が取得されてもよく、これらの情報は画像処理に含めることができ、それに基づいて、肛門開口部の周囲を切断するために切断装置をどこに位置させ、産業用マニピュレータをどのように制御すべきかを計算できる。
【0046】
システムの一実施形態では、産業用マニピュレータは、6軸ロボットマニピュレータであるなど、例えば3自由度、例えば5自由度で作動可能であってもよい。
【0047】
システムの一実施形態では、システムは、使用後に切断装置を洗浄するための少なくとも1つの洗浄キャビネットを有している。好ましくは、このような洗浄キャビネットは、水接続部、石鹸塗布器、加熱装置、及び/又は乾燥装置を有している。水は、水接続部を通して高温接続で供給され、ここに加熱装置と石鹸塗布器が洗浄キャビネットの外部に配置されてもよい。当業者であれば、屠殺場における洗浄装置の要件を知っている。
【0048】
システムの一実施形態では、少なくとも1つの洗浄キャビネットは、ロボットアームなどの少なくとも1つの産業用マニピュレータに接続されている。これにより、1台の産業用マニピュレータ又はロボットアームが、少なくとも1つのバングドリラーと洗浄キャビネットを保持でき、切断装置が屠体に接触した後に洗浄され得る。
【0049】
システムの一実施形態では、少なくとも1つの産業用マニピュレータ又はロボットアームは、少なくとも2つの切断装置と少なくとも1つの洗浄キャビネットとを有している。このデザインでは、1台の産業用マニピュレータ又はロボットアームが、2台の切断装置と洗浄キャビネットを保持でき、一方の切断装置は屠体に接触した後に洗浄され得、それによって、一方の切断装置が洗浄されているとき、他方の切断装置が稼働状態であってもよい。
【0050】
1つの産業用マニピュレータ又はロボットアームに、2つ以上の切断装置、例えば3つ又は4つの切断装置が配置されてもよい。これは、1つ、2つ、又は3つの線状キャビネットと組み合わられてもよい。
【0051】
システムの一実施形態では、それぞれが少なくとも1つの切断装置を保持するロボットアームなど、2つの産業用マニピュレータがシステムに含まれている。
【0052】
システムの一実施形態では、肛門開口部の腹側で肉を切断するために、固定ナイフがシステム内に配置されてもよい。このような切断は、屠体からバングを取り外す前に、切り離されたバングを屠体の腹側に引っ張ることによって実行されてもよい。
【0053】
本側面又は図のいずれかに関して本明細書に記載した特徴は、他の側面の実施形態と組み合わされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
次に、本発明の実施形態が図面を参照してさらに説明される。
図1図1は、先行技術のバング切断方法を示している。
図2図2は、切断装置の一実施形態を示している。
図3図3は、実施形態の切断装置の一部の断面図を示している。
図4図4は、他の実施形態の切断装置の一部の断面図を示している。
図5A図5Aは、一実施形態の切断装置を用いて、動物の屠体の直腸端部を切り離す工程を示している。
図5B図5B、一実施形態の切断装置を用いて、動物の屠体の直腸端部を切り離す工程を示している。
図5C図5Cは、一実施形態の切断装置を用いて、動物の屠体の直腸端部を切り離す工程を示している。
図5D図5Dは、一実施形態の切断装置を用いて、動物の屠体の直腸端部を切り離す工程を示している。
図5E図5Eは、一実施形態の切断装置を用いて、動物の屠体の直腸端部を切り離す工程を示している。
図5F図5Fは、一実施形態の切断装置を用いて、動物の屠体の直腸端部を切り離す工程を示している。
図5G図5Gは、一実施形態の切断装置を用いて、動物の屠体の直腸端部を切り離す工程を示している。
図6A図6Aは、さらに別の実施形態の切断装置を用いて、動物の屠体の直腸端部を切り離す工程を示している。
図6B図6Bは、さらに別の実施形態の切断装置を用いて、動物の屠体の直腸端部を切り離す工程を示している。
図6C図6Cは、さらに別の実施形態の切断装置を用いて、動物の屠体の直腸端部を切り離す工程を示している。
図6D図6Dは、さらに別の実施形態の切断装置を用いて、動物の屠体の直腸端部を切り離す工程を示している。
図6E図6Eは、さらに別の実施形態の切断装置を用いて、動物の屠体の直腸端部を切り離す工程を示している。
図7図7は、切断装置のさらに別の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の精神及び範囲内での様々な変更及び修正がこの詳細な説明から当業者には明らかになるであろうから、詳細な説明及び具体的な実施例は、本発明の実施形態を示すものではあるが、例示のためにのみ与えられていることを理解されたい。
【0056】
図1は、先行技術のバング切断方法を示している。切断装置1は、動物の屠体3の肛門開口部2の外側及び周囲に配置されている。切断装置1のマンドレル4の先端が、動物の屠体の腸/直腸端5に侵入している。切断装置1の内側には、切断の間に切断装置1によって皮4に加えられる力によって屠体3の皮9が屠体3に押し込まれないことを確かにするように、真空が確立される。切断装置1の外側の皮9には通常の、すなわち大気圧が存在し、屠体3の内側にも通常の圧力が存在する。切断装置1の内側の真空により、腸壁6が切断装置1内に吸い込まれ、それによって裏返しになって開き、便7(囲んで図示)が腸5から切断装置1の内側の空間に漏れ出し、この場合には便が切断装置1の内側の皮膚9を汚染する。
【0057】
図2は、切断装置の一実施形態を概略的に示している。切断装置は、概して参照符号100で示されているが、内部穴あけ空間を画定する管状の穴あけ壁部111を有する穴あけ部材110を有している。管状の穴あけ壁部111は、開口した切断端113を有している。開口した切断端113を画定する管状の穴あけ壁部111の周縁は、切断ナイフ114として形成されている。
【0058】
切断装置100は、穴あけ部材110がその長手方向軸の周りに回転することを可能にするように回転可能に取り付けられた支持部材140を有している。
【0059】
図2の切断装置100は、ロボットツール(図示せず)に取り付けられるように構成されている。特に、支持部材140は、ロボットトール、例えばロボットツールのマニピュレータアームに取り付けられるように構成されてもよい。しかしながら、切断装置の代替的な実施形態が手持ち式に構成されていてもよいことが理解されよう。このため、支持部材は手で持てるような形状及び大きさであってもよい。さらに、切断装置のいくつかの実施形態は、手持ちモードで操作されること、又はロボットツールに取り付けられることの両方であってもよい。
【0060】
支持部材140は、穴あけ部材を回転させるための駆動機構、例えば電気モータ190、を有しており又は駆動機構に動作可能に連結されている。図2の例では、切断装置は、ロボット切断システムのマニピュレータアームに作動的に接続されるように構成された駆動ギヤ170を有している。したがって、駆動ギヤは、ロボットシステムの駆動機構によって駆動されてもよい。
【0061】
切断装置100はさらに、センタリングマンドレル120を有しており、このセンタリングマンドレル120は、穴あけ部材110の管状の穴あけ壁部111によって周方向に取り囲まれており、穴あけ部材と同軸に配置されている。したがって、マンドレルと管状の穴あけ壁部110は、共にマンドレルを取り囲む環状空間、すなわち内部穴あけ空間の環状部分を画定する。マンドレルは、屠体の肛門開口部に挿入されるように構成された先端121を有している。
【0062】
切断装置100は、1つ又は複数の適切な吸引導管157、例えばホース、パイプ及び/又は他の形態の空気チャネルを介して、内部穴あけ空間の1つ又は複数の入口開口部、例えばマンドレルの内部マンドレル空間の1つ又は複数の入口開口部及び/又はマンドレルを取り囲む環状空間の1つ又は複数の入口開口部に、流体的に接続される真空ポンプ150又は他の吸引手段を有している。吸引手段は、支持部材140に収容され得、又は支持部材から離れて配置され得る。後者の場合、吸引導管147は、吸引手段を支持部材に取り外し可能に結合するために、支持部材140上又は支持部材における1つ又は複数のコネクタ146を含んでもよい。支持部材は、例えば、可動マンドレルを駆動するための圧縮空気用のコネクタをさらに有してもよい。
【0063】
切断装置100はさらに、制御装置180、例えば適切にプログラムされたマイクロプロセッサ、PLC、又は切断装置の作動を制御する他の適切な電気制御回路を有している。制御回路は、支持部材140に収容され得、又は支持部材から離れて配置され得る。後者の場合、制御回路は有線又は無線接続、例えば制御バスなどを介して支持部材に接続されてもよい。
【0064】
切断装置100は、以下により詳細に説明されるように、マンドレルを取り囲む環状空間への気流を制御するための1つ又は複数の制御可能な通気弁142をさらに有している。1つ又は複数の通気弁142は、制御手段180に作動的に連結されており、制御手段180によって制御される。
【0065】
図3は、実施形態の切断装置、例えば図2の切断装置の、一部の断面図を示している。上述したように、切断装置100は、穴あけ部材110を有しており、この穴あけ部材は、その長手方向軸の周りに回転することを可能とするように、支持部材に回転可能に取り付けられている。穴あけ部材110は、内部穴あけ空間112を画定する管状の穴あけ壁部111を有している。管状の穴あけ壁部111は、開口した切断端113を有している。開口した切断端113を画定する管状の穴あけ壁部111の周縁は、切断ナイフ114として形成されている。穴あけ部材の後端は、後端壁部141によって閉じられている。
【0066】
切断装置100はさらに、穴あけ部材110の管状の穴あけ壁部111によって周方向に取り囲まれており、穴あけ部材と同軸に配置された、センタリングマンドレル120を有している。したがって、マンドレル120と管状の穴あけ壁部110は、共にマンドレルを取り囲む環状空間115、すなわち内部穴あけ空間の環状部分を、画定する。マンドレルは、屠体の肛門開口部に挿入されるように構成された先端121を有している。
【0067】
切断装置はさらに、マンドレル120を周方向に取り囲んでおり、穴あけ部材110の管状の穴あけ壁部111によって周方向に取り囲まれる、バングホルダ130を有している。バングホルダ130は、マンドレルの先端121に面する開口端と、後端壁部141に面する閉鎖端とを有する、カップ状の環状部材として形成されている。バングホルダ130は、カップ状のバングホルダの開口端の縁に沿って配置された歯133を有している。歯は屠体の肛門開口部の周辺の皮膚に係合することができる。
【0068】
マンドレル120は、少なくとも伸長位置と引込み位置との間で穴あけ部材110に対して軸方向に移動可能である。図3では、マンドレル120は、マンドレルの先端部分が管状の穴あけ壁部111の開口した切断端113から突出する伸長位置に図示されている。先端部分は、マンドレルの先端121とバングホルダ130との間を軸方向に延びている。マンドレルの後部122は、バングホルダから端壁部分141に軸方向後方に延びている。後部122は、端壁部分を通って支持部材に引き込まれることができ、開口した切断端113に向かって延びることができるように、スライド可能に配置されている。例えば、マンドレルの後部122は管状ピストンとして形成されてもよく、先端部分はピストンに取り外し可能又は恒久的に接続されてもよい。
【0069】
バングホルダ130は、マンドレル120と共に、穴あけ部材110に対して、伸長位置と引込み位置との間で軸方向に移動可能となるように、マンドレル120に対して軸方向に固定されている。図3に示される伸長位置では、バングホルダ130は、穴あけ部材の開口した切断端と概ね同じ高さである。図3の例では、バングホルダの歯133は、開口した切断端からわずかに突出している。したがって、マンドレルの先端121が屠体の肛門開口部に挿入されるとき、切断ナイフ114が皮に切り込みを開始する直前に、歯133が肛門開口部を取り囲む皮膚に係合できる。引込み位置(図3には図示せず)では、バングホルダは端壁部141の近位に位置しており、マンドレルの先端121は内部穴あけ空間112の内側に引き込まれている。
【0070】
マンドレル120は、支持部材140に対してその長手方向軸の周りに回転可能であってもよく、支持部材に対して回転方向に固定されていてもよい。同様に、バングホルダ130はマンドレル120に対して回転可能であってもよく、マンドレルに対して回転方向に固定されていてもよい。好ましくは、バングホルダ130は、作動時に、回転する穴あけ部材110が屠体に切り込むとき、バングホルダが屠体を取り囲む皮に対して回転しないように、構成される。
【0071】
マンドレル120は、内部マンドレル空間123を画定するマンドレル壁部125を有している。内部マンドレル空間123は、マンドレルの先頭部分と後部との間を軸方向に延びている。内部マンドレル空間の少なくとも一部、特に、開口した切断端から突出していない内部マンドレル空間の後部は、内部穴あけ空間の一部を構成している。マンドレル120の後部122は入口開口部124を有している。入口開口部124は、内部マンドレル空間123と、入口開口部124を通して内部マンドレル空間123に後方吸引を加えるように構成された吸引手段(図3には明示されておらず、例えば図2の吸引手段150を参照のこと)、例えば真空ポンプとの間に、流体連通を提供するように構成されている。他の実施形態は、複数の入口開口部及び/又はマンドレルの異なる位置に配置された入口開口部を含んでもよい。マンドレル120のマンドレル壁部125は、マンドレル120の先頭部分、すなわち先端121とバングホルダ130との間に延びる部分の周囲の周りに配置された吸引開口部126を有している。したがって、マンドレルの先頭部分が屠体の肛門開口部内に延びるとき、且つ、吸引が入口開口部124を介して内部マンドレル空間123に加えられるとき、径方向内側の吸引が吸引開口部126を通して加えられ、腸壁がマンドレルをぴったり取り囲むように径方向内側に吸引されることが生じる。異なる実施形態は、異なる数の吸引開口部及び/又はマンドレルの先頭部分に沿って又はその周囲に異なる方法で配置された吸引開口部を含んでもよいことが理解されよう。
【0072】
マンドレル120は、マンドレルの後部122を取り囲む環状空間115と内部マンドレル空間123との間の流体連通を提供する、接続導管127をさらに有している。したがって、吸引が入口開口部124を介して内部マンドレル空間123に加えられるとき、吸引は接続導管127を介して内部マンドレル空間123に向かって環状空間115にも加えられる。
【0073】
接続導管127は、バングホルダ130に隣り合うマンドレルの後部122、すなわちバングホルダ130のすぐ後方に配置されている。したがって、接続導管127は、マンドレルが伸長位置にあるか引込み位置にあるかに関係なく、内部穴あけ空間112への開口部128を有している。マンドレル120が引込み位置にあるとき(図3には図示せず)、接続導管127の開口部128は、端壁部141のすぐ前の内部穴あけ空間112の後端に軸方向に配置されている。図3の例では、2つの接続導管が示されている。しかしながら、他の実施形態では、単一の接続導管のみを備えることも、2つ以上の接続導管、例えば3、4、5、又はそれ以上の接続導管を備えてもよいことが理解されよう。したがって、異なる実施形態では、異なる数の接続導管又は異なる位置に配置された導管を含んでもよい。
【0074】
支持部材の端壁部141は、共通の通気弁に流体接続された通気開口部143、又は通気開口部143を通って環状空間115に空気が入るのを選択的に許容し、通気開口部143を通って環状空間115に空気が入るのを選択的に防止するように構成された、それぞれの通気弁(図3には図示せず、例えば図2の通気弁142を参照のこと)に流体接続された通気開口部143を有している。概して、切断装置100は、各々が1つ又は複数の通気開口部を制御する1つ又は複数の通気弁を含んでもよい。図3の例では、通気開口部は、端壁部141と管状の穴あけ壁部111との間の小さなチャネルとして設けられている。チャネルは環状チャネル144に接続されており、この環状チャネルは、制御可能な弁142(図2参照)及び適切な通気導管を介して、外気及び/又は便などによって汚染されていない別の空気源に流体連通している。
【0075】
図4は、他の実施形態の切断装置、例えば図2の切断装置の一部の断面図を示している。図4の実施形態は、穴あけ部材をその長手方向軸周りに回転することを可能とするように支持部材に回転可能に取り付けられた穴あけ部材110と、穴あけ部材110の環状穴あけ壁部111によって周方向に取り囲まれており穴あけ部材と同軸に配置されたセンタリングマンドレル120と、マンドレル120を周方向にとり囲んでおり穴あけ部材110の環状壁部111によって周方向に取り囲まれたバングホルダ130とを有している点で図3の実施形態と同様であり、マンドレルを以下のように変更した以外は、すべて図3に関連して説明した通りである。
【0076】
図3の実施形態と同様に、図3の実施形態のマンドレル120は、内部マンドレル空間123を画定するマンドレル壁部125を有している。しかしながら、図4の実施形態では、内部マンドレル空間123は、内側管状部分423と、内側管状部分を周方向に取り囲む外側部分424とを含んでいる。内側管状部分423は、マンドレルの先端121と後部122との間を軸方向に延びており、マンドレル120と同軸である。マンドレル120の後部122は入口開口部124を有している。入口開口部124は、内部マンドレル空間123の内側管状部分423と、入口開口部124を通して内部マンドレル空間123の内側管状部分423に後方吸引を加えるように構成された吸引手段(図3には明示されておらず、例えば図2の吸引手段150参照)、例えば真空ポンプとの間に、流体連通を提供するように構成されている。他の実施形態は、複数の入口開口部及び/又はマンドレルの異なる位置に配置された入口開口部を含んでもよい。
【0077】
内部マンドレル空間の外側部分424は、内側管状部分に対して径方向外側に配置されており、仕切り壁425によって内側管状部分とは径方向に分離されている。外側部分424は、内側管状部分を完全に取り囲む環状空間として設けられてもよい。代替的に、外側部分は、それぞれが内側管状部分と並んで軸方向に延びる複数の細長いチャネルとして設けられてもよい。細長いチャネルは、内側管状部分の周囲の周りに分布していてもよい。外側部分424、例えば環状空間又はチャネルのそれぞれは、内側管状部分の前端の近位に、すなわちマンドレルの先端121の近位に、配置された1つ又は複数の開口部426によって、内側管状部分423に流体連通されている。こうすることで、マンドレルの先端部までずっと、強力な吸引力が加えられること及び効率的な洗浄が促進されることが、確保される。内部マンドレル空間の外側部分424は、マンドレルの先端121からバングホルダ130までの間を軸方向に延びている。
【0078】
マンドレル120のマンドレル壁部125は、図3に関連して説明したように、マンドレル120の先頭部分、すなわち先端121とバングホルダ130との間に延びる部分の、周囲の周りに配置された吸引開口部126を有している。しかしながら、図4の実施形態では、吸引開口部126は、内部マンドレル空間の外側部分424に供給し、すなわち、吸引開口部126を通ってマンドレルに吸引された空気又は汚染物質は、外側部分424を通ってマンドレルの先端121に向かって前方に流れ、次いで、径方向内側に内側管状部分423に流れ、内側管状部分423を通って後方に入口開口部124に流れる。
【0079】
マンドレル120は、マンドレルの後部122を囲む環状空間115と内部マンドレル空間123の内側管状部分423との間の流体連通を提供する接続導管127をさらに有している。この例では、導管は湾曲した形状を有している。これらは、環状空間115からの気流を受けるための、径方向内内側でわずかに前方に向けられた入口部分428を有している。それらはさらに、気流を内部マンドレル空間の内側管状部分423に後方且つわずかに半径方向内側に供給する、後方且つわずかに径方向内側の出口部分429を有している。図3の例のように、接続導管127は、バングホルダ130に隣り合うマンドレルの後部122、すなわちバングホルダ130のすぐ後方に配置されている。代替的な実施形態では、接続導管127は、マンドレルの後部122を取り囲む環状空間115と内部マンドレル空間123の外側部分424との間の流体連通を提供してもよい。
【0080】
切断装置の一実施形態、例えば、図2~4のいずれかの実施形態の動作が、図5A~5Gを参照して説明される。特に、図5A~5Gは、屠体の直腸端部を切り離す工程の異なる段階の間の切断装置の一部を概略的に示している。図示を易にするため、図5A~5Gは、切断装置のあまり詳細でない図を示している。しかしながら、図5A~5Gの切断装置は、図2~4のいずれかを参照して上述したのと同じ特徴の一部又は全部でさえを有してもよいことが理解されよう。
【0081】
図5Aは、マンドレル120が引込み位置にある状態で、切断装置の一部を通る縦断面図を示している。特に、切断装置は、支持部材(図5A図5Gには明示されていない)と、支持部材に回転可能に取り付けられた穴あけ部材110と、センタリングマンドレル120と、バングホルダ130と、吸引手段150、例えば真空ポンプとを有しており、すべて図2に関連して説明したとおりである。
【0082】
穴あけ部材110は、内部穴あけ空間112を取り囲む管状の穴あけ壁部111を有している。管状の穴あけ壁部は、切断ナイフ114として形成される管状の穴あけ壁部の縁によって画定された開口した切断端113を有している。
【0083】
センタリングマンドレル120は、管状の穴あけ壁部111と同軸に配置されており、屠体の直腸に入るように構成された先端121を有している。マンドレルの少なくとも一部は、マンドレルを取り囲む環状空間115を画定するように、管状の穴あけ壁部によって周方向に取り囲まれている。マンドレルは、内部マンドレル空間123を画定する周方向マンドレル壁部を有しており、内部マンドレル空間123は、後方の入口開口部124を有している。マンドレルは、環状空間115と内部マンドレル空間123との間に流体連通を提供する接続導管127を有している。
【0084】
穴あけ部材110は、空気が環状空間115に侵入することを選択的に可能にするために、穴あけ部材の後壁部141における1つ又は複数の通気開口部143をさらに有している。図5A~35の例では、このような2つの通気開口部が示されている。しかしながら、他の実施形態では、単一の通気開口部のみ、又は2つ以上の通気開口部を含んでもよいことができることが理解されよう。同様に、各通気開口部を通る気流は、対応する通気弁(図5A~5Gには示されていない)によって個別に制御され、又は1つ又は複数の弁が複数の通気開口部を通る気流を制御してもよい。
【0085】
吸引手段150は、矢印160で示されるように、後方の入口開口部124を通して内部マンドレル空間123に吸引を加えるように構成された真空ポンプ又は他の装置であってもよい。したがって、吸引手段は、接続導管127を介して内部穴あけ空間112の環状部分にも吸引を加える。バングホルダ130は、マンドレルを取り囲む環状のカップ状要素である。バングホルダは、その円周に沿って配置された前方を向いた歯133を有する、前方を向いた、開口端を有している。
【0086】
図5Aでは、切断装置100は、切断工程を開始する前に、穴あけ部材の開口した切断端113が肛門開口部2に面している状態で、屠体3の直腸端部の外側及び前方に示されている。
【0087】
切断工程は、図5Bに示されるように、マンドレル120をその伸長位置まで軸方向に移動させ、マンドレル120の先端121を肛門開口部2に挿入することによって開始される。特に、図5Bは、マンドレル120が伸長位置にある状態の切断装置を示している。この位置では、切断装置100は屠体の肛門開口部に挿入される準備ができており、ここでは、外側すなわち穴あけ部材110の前に位置するマンドレル120の先頭部分が肛門開口部2に挿入される。肛門開口部2へのマンドレル120の最初の挿入は、図5Bに矢印160で示されるように、吸引手段150が内部マンドレル空間123に吸引を加えている間に実行されてもよい。代替的に、肛門開口部へのマンドレルの最初の挿入は、如何なる吸引なしで、又は追加される吸引を弱めるだけで実行されてもよい。
【0088】
バングホルダ130の歯133は、屠体の肛門開口部周辺の皮膚表面に係合できる位置にある。図5Bの例では、歯は切断ナイフ114の僅かに後方に軸方向に配置されている。しかしながら、他の実施形態では、歯は穴あけ部材から僅かに伸長しており、又は切断ナイフ114と同じ高さに会ってもよい。
【0089】
図5Cは、マンドレルが屠体の肛門開口部により深く挿入され、バングホルダ130の歯133が肛門開口部を囲む皮膚に係合した状態の切断装置を示している。吸引手段150によって内部マンドレル空間123に吸引が加えられ、接続導管127を介して環状空間115に吸引が加えられるとき、肛門開口部を取り囲む皮膚及び組織は、穴あけ部材110の開口した切断端113に向かって後方に吸引されるので、外気が開口した切断端113を通って内部穴あけ空間112に侵入することを防止する。同様に、腸壁6は径方向内側に吸引され、マンドレル120の先頭部分の吸引開口部126を塞ぐ。さらに、切断工程のこの段階では、通気弁は、空気が通気開口部143を通って環状空間115に入るのを防ぐように閉じられている。したがって、吸引手段150は、内部穴あけ空間123、特に内部マンドレル空間123及びマンドレル120を取り囲む環状空間115に真空を形成する。
【0090】
図5Cに示されるように、肛門開口部を取り囲む皮膚及び組織が、穴あけ部材110の開口した切断端113に向かって吸引されるにつれて、皮膚及び組織はまた、バングホルダ130の前方に向いた開口端を閉じるので、バングホルダ130の内側にバングホルダ容積134を形成し、ここでは、真空が、マンドレル120の先頭部分の吸引開口部126のうちの1つ又はいくつかを介して吸引手段150によって確立され得る。
【0091】
他の実施形態では、吸引手段は、例えば、支持部材、マンドレル、穴あけ壁部、及び/又はバングホルダ内の適当な開口部及び/又は空気導管を介して、バングホルダの内側の環状空間及び/又はバングホルダ容積に直接、追加的及び/又は代替的な吸引を加えるように構成されてもよいことが理解されよう。
【0092】
穴あけ部材110の切断ナイフ114は、肛門開口部と直腸端の周囲の屠体に切り込みを始めることができる位置に今やある。切断は、モータ(図示せず)又は他の駆動手段によって管状の穴あけ壁部111をその長手方向軸の周りに回転させながら、穴あけ装置を屠体内により深く前進させ、吸引手段150によって内部マンドレル空間123に吸引を加え続けることによって実行される。この工程の間、マンドレル120は、内部穴あけ空間112へ、穴あけ部材に対して後方へ徐々に引き込まれる。この移動は、例えば空気圧ピストンによって、マンドレルを軸方向後方に積極的に作動させることによって引き起こされてもよい。代替的に、スライド可能なマンドレルは、肛門開口部を取り囲む皮膚及び組織を後方に引っ張る吸引力に起因して単に押し戻され、その結果、バングホルダ130及びマンドレル120が後方に押される。バングホルダ130の第1の機能は、肛門開口部の縁、すなわち肛門開口部に近い腸壁6が裏返りにならず、排泄物の量をマンドレル120の先端121の近傍を通過して肛門開口部を通って出ることによって腸/直腸端から漏出させないように、皮膚9の外側に力を加えることである。バングホルダ130の第2の機能は、肛門開口部を通って漏出する可能性のある排泄物をバングホルダ容積134の内側に保持することであり、これにより排泄物によって汚染される可能性のある皮膚9の面積が先行技術のシステムと比較して非常に減少する。したがって、切断の間、バングホルダ130は、内部腸壁が肛門開口部を通って後方に吸引されるのを防止するように作用するので、直腸の内側からの汚染物質が肛門開口部から環状空間115に吸引される危険性をも低減する。
【0093】
図5Dは、穴あけ部材110が屠体の肛門開口部を取り囲む皮膚及び組織を貫通しており、マンドレル120及びバングホルダ130が穴あけ部材110の内部穴あけ空間112に部分的に後方に引込んでいる状態の、切断工程の間の切断装置を示している。さらに、切り離された皮膚及び組織は、穴あけ部材110の後方に吸引されている。
【0094】
図5Eは、切断装置100が屠体にさらに深く入り込み、屠体の直腸端部を切り離した状態を示している。この段階では、マンドレル120は引込み位置にあり、開口部128又は接続導管127は内部穴あけ空間112の後端部に位置している。
【0095】
切断が完了し、穴あけ部材が屠体から再び引き抜かれることになるとき、切断装置の通気弁は、矢印161で示されるように、通気開口部143を通して環状空間115に空気が入ることを可能とするように開かれる。したがって、穴あけ部材の内側の真空は解除されるか、又は少なくとも著しく減少し、切断装置が屠体から引き抜かれるとき、穴あけ部材の内側の皮膚及び組織は、弾性腸壁6によって穴あけ部材から引き戻され得る。さらに、吸引手段150は、矢印160で図示されるように、内部マンドレル空間に吸引を加え続けるので、矢印162で図示されるように、通気開口部143を通って環状空間115に、さらに接続導管127を通って内部マンドレル空間123に、そして後方に向かって入口開口部124を通って内部マンドレル空間から出る気流を引き起こす。通気弁によって侵入が許容される空気は、大気圧の周囲空気であってもよい。代替的に、空気は、圧縮空気、又は制御された圧力の空気、又は通気開口部143を通して内部マンドレル空間123に積極的に送り込まれる空気であってもよい。この気流162は、環状空間115に入り込んだ汚染物質の一部又は全部でさえを穴あけ部材から運び出すことができる。特に、上記で説明したように、バングホルダ130は、そのような汚染物質が切断の間に腸の内側から環状空間115に侵入するリスクを低減する。それにもかかわらず、幾つかの汚染物質が依然として環状空間115に入り込む可能性がある。屠体から穴あけ部材を引き抜く間に生じる気流162によって環状空間115からこれらの汚染物質を洗い流すことが、それ故、切断工程の完了後に汚染物質が屠体の外側に取り残されるリスクをさらに低減する。
【0096】
図5Fは、屠体3から部分的に引き抜かれた後の切断装置を示している。特に、切り離された組織は、腸壁6の弾性力によってマンドレル120及びバングホルダ130から脱落している。通気開口部143を介して環状空間115を通気しながら吸引160を継続することにより、環状空間115から及び内部マンドレル空間123から、残存する汚染物質の一部又は全部を穴あけ部材の外に流し出し、残存する汚染物質が切断装置を引き抜くときに屠体3に落下することを防止する。
【0097】
幾つかの実施形態では、例えば、マンドレルの先端の開口部の位置、通気開口部及び/又は入口開口部の位置、及び/又は接続導管の位置を変えることによって、屠体から穴あけ装置を引き抜くときの継続的な吸引の間に、通気開口部と入口開口部との間の気流に対して異なる流れ方向が確立されてもよいことが理解されよう。さらに、切り離された直腸端を切断穴に落下させる代わりに、切り離された直腸端を真空によって穴あけ部材の内側に最初に保持し、直腸端を切断穴の外側に位置させてもよいことが理解されよう。
【0098】
図5Gは、屠体3から完全に引き抜かれた後の切断装置を示している。
【0099】
図6A~6Eは、切断装置の別の実施形態とその作動を概略的に示している。図6A~6Eの切断装置は、支持部材(図6A~6Eには明確に示されていない)に回転可能に取り付けられた穴あけ部材110と、センタリングマンドレル120と、吸引手段150、例えば真空ポンプとを有している点で、図2~4及び図5A~5Gの切断装置と同様である。
【0100】
穴あけ部材110は、内部穴あけ空間112を取り囲む管状の穴あけ壁部111を有している。管状の穴あけ壁部は、切断ナイフ114として形成された管状の穴あけ壁部の縁によって画定された開口した切断端113を有している。センタリングマンドレル120は、管状の穴あけ壁部111と同軸に配置されており、屠体3の肛門開口部2に入るように構成された先端121を有している。マンドレル120の少なくとも一部は、マンドレルを取り囲む環状空間115を画定するように、管状の穴あけ壁部111によって周方向に取り囲まれている。マンドレル120は、内部マンドレル空間123を画定する周方向マンドレル壁部115を有しており、内部マンドレル空間123は、後方入口開口部124を有している。マンドレルは、環状空間115と内部マンドレル空間123との間に流体連通を提供する1つ又は複数の接続導管127を有している。1つ又は複数の接続導管127は、穴あけ部材の端壁部141に隣り合う内部穴あけ空間112の後端に配置されている。マンドレル120はさらに、その周壁125に1つ又は複数の吸引開口部126を有している。1つ又は複数の吸引開口部126は、マンドレル120の先端121の近位に位置している。幾つかの代替的な実施形態では、1つ又は複数の吸引開口部が他の場所に配置されてもよく、又は省略さえされてもよいことが理解されよう。代替的又は付加的に、幾つかの実施形態では、1つ又は複数の接続導管が別の場所に配置されてもよく、又は省略さえされてもよい。このような実施形態では、切断装置は、吸引手段が環状空間に直接吸引を加えることを可能とするように、別個の入口開口部を有してもよい。
【0101】
切断装置はさらに、支持部材に収容されてもよい通気弁142を有しており、通気開口部143を通して環状空間115に空気が入るのを選択的に許容し、通気開口部143を通して環状空間115に空気が入るのを選択的に防止するように構成されている。
【0102】
吸引手段150は、矢印160で示されるように、後方入口開口部124を通して内部マンドレル空間123に吸引を加えるように構成された真空ポンプ又は他の装置であってもよい。したがって、吸引手段は、接続導管127を介して内部穴あけ空間112の環状部分115にも吸引を加える。図6A~6Eの切断装置のマンドレルは、穴あけ部材110に対して軸方向に固定されて配置されており、その先端121は開口した切断端113から延びている。図6A~6Eの切断装置は、図3~4及び図5A~5Gの切断装置とは、図6A~6Eの切断装置がバングホルダを有していない点でさらに異なっている。
【0103】
図6Aは、マンドレル120の先端121が肛門開口部2に面している状態で、屠体3の肛門開口部2の前に配置された切断装置を通る長手方向の切断を示している。この位置では、切断装置は屠体3の直腸端部の切り出しを開始する準備ができている。吸引手段150が作動し、入口開口部124を介して内部マンドレル空間123に吸引を加える。したがって、吸引手段150は、吸引開口部126での吸引と同様に、接続導管127を介して環状空間115にも吸引を加える。代替的に、肛門開口部へのマンドレルの最初の挿入は、如何なる吸引なしで、又は加えられる吸引を弱めるだけで実行されてもよい。
【0104】
切断工程は、図6Bに示されるように、マンドレル120の先端部121を肛門開口部2に挿入することによって開始される。特に、図6Bは、マンドレル120が屠体の肛門開口部に挿入された状態の切断装置を示している。吸引手段150によって吸引が内部マンドレル空間123に、そして接続導管127を介して環状空間115に加えられるとき、肛門開口部を取り囲む皮膚及び組織は、穴あけ部材の開口した切断端に向かって後方に吸引される。同様に、腸壁は径方向内側に吸引され、マンドレルの先頭部分の開口部126を塞ぐ。さらに、切断工程のこの段階では、通気弁142は、空気が通気開口部143を通って環状空間115に入るのを防ぐように閉じられている。したがって、吸引手段150は、内部穴あけ空間112、特に内部マンドレル空間123及びマンドレル120を取り囲む環状空間115に真空を形成する。吸引により、腸壁6の一部が肛門開口部から内部穴あけ空間112に膨出することを生じさせる可能性がある。これにより、少量の腸の内容物が汚染物質7として内部穴あけ空間112に吸い込まれることも生じてもよい。穴あけ部材110の切断ナイフ114は、肛門開口部と直腸端の周囲の屠体に切り込みを始めることができる位置に今やある。切断は、モータ(図示せず)によって管状穴あけ壁111をその長手方向軸の周りに回転させながら、穴あけ装置を屠体3内にさらに前進させ、吸引手段150によって内部マンドレル空間123に吸引を加え続けることによって実行される。
【0105】
図6Cは、穴あけ部材110が屠体の肛門開口部を取り囲む皮膚及び組織を貫通し、マンドレル120が肛門開口部にさらに前進した状態の切断装置を示している。さらに、切り離された皮膚及び組織は、穴あけ部材110の後方に吸引されている。肛門開口部から漏出した汚染物質7は、同様に、内部穴あけ空間112の後端に向かって吸引され、汚染物質の一部は、接続導管127及び入口開口部124を通って切断装置の外に吸引される。同様に、マンドレルが屠体内をさらに進む間に開口部126を通って内部マンドレル空間123に吸引された可能性のある汚染物質の少なくとも一部は、入口開口部124を通って切断装置の外に吸い出される。
【0106】
切断が完了し、切断装置が再び屠体から引き抜かれようとするとき、図6Dに示されるように、通気弁142が開かれる。特に、図6Dは、屠体の直腸端が切り離された後の切断装置を示しており、ここでは、矢印161で示されるように、通気弁142は、空気が通気開口部143を通って環状空間155に入ることを可能とするように開かれている。したがって、穴あけ部材の内側の真空は解除されるか、又は少なくとも大幅に減少し、切断装置が屠体から引き抜かれるときに、穴あけ部材の内側の皮膚及び組織は弾力性のある腸壁によって引き抜かれ得る。
【0107】
さらに、図5A~5Gを参照して説明した実施形態と同様に、吸引手段150は、矢印160で示されるように、内部マンドレル空間123に吸引を加え続けるので、通気開口部143を通って環状空間115へ、さらに接続導管127を通って内部マンドレル空間123へ、及び入口開口部124を通って内部マンドレル空間から後方へ、の気流を引き起こす。この気流は、環状空間に入り込んだ残りの汚染物質の一部又は全部でさえを、入口開口部124を通して切断装置から運び出すことができる。
【0108】
図6Eは、屠体から引き抜かれた後の切断装置を示している。特に、切り離された組織は、腸壁の弾性力によってマンドレルから脱落している。通気開口部143を介して環状空間155を通気しながら吸引160を継続することにより、環状空間115から残存する汚染物質のほとんど又はすべてさえを洗い流し、切断装置を引き抜くときに汚染物質が屠体に落下するのを防止する。
【0109】
図5A-5G及び図5A-6Eでは、屠体の直腸端部が切り離された後に、1つ又は複数の通気開口部を通してのみ気流を許容するように通気弁が制御される。概して、幾つかの実施形態では、切断装置は、切断工程の間に通気開口部を通して内部穴あけ空間への気流を許容してもよい。幾つかの実施形態では、切断装置は、吸引手段が内部穴あけ空間に十分な真空を作り出すことを許容するように、穴あけ部材が屠体に切り込む間、通気開口部を通して内部穴あけ空間に気流が入らないようにするか、又は減少した気流しか入らないようにしてもよい。直腸端部が切り離された後、直腸端部が開口した切断端を通して内部穴あけ空間から解放されるとき、例えば、屠体から切断装置を引き抜く間及び/又は引き抜いた後、切断装置は、1つ又は複数の入口開口部を通して吸引を適用し続けながら、1つ又は複数の通気開口部を通して内部穴あけ空間に、気流を許容する、又は減少した気流よりも大きい増加した気流を許容するように構成されてもよく、したがって、内部穴あけ空間からの汚染物質の効率的な洗浄除去を容易にする。
【0110】
図7は、他の実施形態の切断装置、例えば図2の切断装置の一部の断面図を示している。図7の実施形態は、その長手方向軸周りに回転できるように支持部材に回転可能に取り付けられた穴あけ部材110と、穴あけ部材110の管状の穴あけ壁部111によって周方向に取り囲まれており、穴あけ部材と同軸に配置された、センタリングマンドレル120とを有している点で図6A~6Eの実施形態と同様であり、マンドレルの以下の変形を除いて、全て図6A~6Eに関連した説明と同様である。
【0111】
図6A~6Eの実施形態と同様に、図7の実施形態のマンドレル120は、内部マンドレル空間を画定するマンドレル壁部125を有している。しかしながら、図7の実施形態では、内部マンドレル空間は、内側管状部分723と、内側管状部分を周方向に取り囲む外側部分724とを含んでいる。内側管状部分723は、マンドレル120の先端121に近接する開口端726と、マンドレルの後部の近位の後端との間を軸方向に延びている。内側管状部分723はマンドレル120と同軸である。マンドレル120の後部は入口開口部124を有している。入口開口部124は、内部マンドレル空間の内側管状部分723との間に流体連通を提供するように構成されており、入口開口部124を通して内部マンドレル空間の内側管状部分723に後方への吸引を加えるように構成された、吸引手段(図7には明示的に示されていない)、例えば真空ポンプに接続されている。
【0112】
内部マンドレル空間の外側部分724は、内側管状部分723に対して径方向外側に配置されており、仕切り管状壁725によって内側管状部分から径方向に分離されている。したがって、外側部分は、内側管状部分723を完全に取り囲む環状空間として提供されている。外側部分724は、内側管状部分の開口した先端で内側管状部分723に流体接続している。内部マンドレル空間の外側部分724は、マンドレルの先端121からマンドレルの後端までの間を軸方向に延びている。マンドレル120のマンドレル壁部125は、図6A~6Eに関連して説明したように、マンドレル120の先頭部分の周囲の周りに配置された吸引開口部126を有している。マンドレル120は、マンドレルの後部122を取り囲む環状空間115と内部マンドレル空間の外側部分724との間の流体連通を提供する接続導管127をさらに有している。図6A~6Eの例と同様に、接続導管127は、穴あけ部材の後壁部141に隣り合うマンドレルの後部に配置されている。
【0113】
先の例と同様に、1つ又は複数の通気弁142は、切断完了時に屠体から穴あけ部材を引き抜く間、通気開口部143を通して環状空間115への気流を選択的に許容する。さらに、図7の実施形態では、後方への吸引160が、屠体からの穴あけ部材の引き抜きの間に、内部マンドレル空間の内側管状部分723に加えられる。吸引により、環状空間115の後部に蓄積された可能性のある汚染物質を含む、通気開口部143を通って環状空間115に入った気流が、接続導管127を通って内部マンドレル空間の外側部分724に径方向内側に流れることが引き起こされる。気流は、内部マンドレル空間の外側部分724の内側をマンドレルの先端121に向かって軸方向前方に続き、次いで径方向内側に開口した先端726を通って内側管状部分723に続き、次いで内側管状部分を通って入口開口部124まで後方に続く。同様に、切断の間に吸引開口部126を通して内部マンドレル空間に吸い込まれた可能性のある汚染物質も、内部マンドレル空間の内側管状部分723を通して後方に洗い流される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
【国際調査報告】