(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】リチウム硫黄電池用の電解質及びこれを含むリチウム硫黄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0569 20100101AFI20240927BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240927BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240927BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20240927BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240927BHJP
H01M 4/60 20060101ALI20240927BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20240927BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01M10/0569
H01M10/052
H01M10/0568
H01M4/136
H01M4/58
H01M4/60
H01M4/40
H01M4/38 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518220
(86)(22)【出願日】2023-01-25
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 KR2023001147
(87)【国際公開番号】W WO2024048874
(87)【国際公開日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】10-2022-0110382
(32)【優先日】2022-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ホ-ボム・クァク
(72)【発明者】
【氏名】ジェ-ギル・イ
(72)【発明者】
【氏名】チャン-フン・イ
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AK04
5H029AK15
5H029AL12
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ02
5H029HJ07
5H050AA02
5H050BA16
5H050CA11
5H050CA19
5H050CB12
5H050HA02
5H050HA07
(57)【要約】
本発明は、リチウム硫黄電池用の電解質及びこれを含むリチウム硫黄電池に関し、前記リチウム硫黄電池用の電解質は、リチウム塩及び非水系溶媒を含み、前記非水系溶媒は、グリコールエーテル、環状(cyclic)エーテル及び下記の化学式1で示される非環状(acyclic)エーテルを含み、前記非環状エーテルは、前記非水系溶媒の総体積に基づいて、15体積%以下の含量で含まれ、前記非環状エーテルの総体積に対する前記グリコールエーテルの総体積の割合が5以上であることを特徴とする:
[化学式1]
R1-O-R2
(上記の化学式1中、
R1は、無置換もしくは置換のC1~C3のアルキル基であり、R2は、無置換もしくは置換のC3~C20のアルキル基である。)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩及び非水系溶媒を含み、
前記非水系溶媒は、
グリコールエーテルと、環状(cyclic)エーテルと、下記の化学式1で示される非環状(acyclic)エーテルと、を含み、
前記非環状エーテルは、前記非水系溶媒の総体積に基づいて、15体積%以下の含量で含まれ、
前記非環状エーテルの総体積に対する前記グリコールエーテルの総体積の割合が5以上である、リチウム硫黄電池用の電解質:
[化学式1]
R
1-O-R
2
(上記の化学式1中、
R
1は、無置換もしくは置換のC
1~C
3のアルキル基であり、R
2は、無置換もしくは置換のC
3~C
20のアルキル基である。)
【請求項2】
前記非環状エーテルは、前記非水系溶媒の総体積に基づいて、10体積%以下の含量で含まれる、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項3】
前記非環状エーテルの総体積に対する前記グリコールエーテルの総体積の割合が6.5以上である、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項4】
前記非環状エーテルは、前記非水系溶媒の総体積に基づいて、10体積%以下の含量で含まれ、前記非環状エーテルの総体積に対する前記グリコールエーテルの総体積の割合が6.5以上である、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項5】
前記非水系溶媒の総体積における前記グリコールエーテルの含量が65体積%以上であり、前記環状エーテル及び前記非環状エーテルの含量の和が35体積%以下である、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項6】
前記非環状エーテルは、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、メチルヘキシルエーテル、エチルt-ブチルエーテル、エチルヘキシルエーテル、又はこれらの2種以上を含む、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項7】
前記R
1は、無置換もしくは置換のC
1~C
2のアルキル基であり、
前記R
2は、無置換もしくは置換のC
4~C
10のアルキル基である、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項8】
前記非環状エーテルは、エチルプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、メチルヘキシルエーテル、又はこれらの2種以上の混合物を含む、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項9】
前記グリコールエーテルは、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールメチルエチルエーテル、又はこれらの2種以上を含む、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項10】
前記環状エーテルは、フラン、2-メチルフラン、3-メチルフラン、2-エチルフラン、2-プロピルフラン、2-ブチルフラン、2,3-ジメチルフラン、2,4-ジメチルフラン、2,5-ジメチルフラン、ピラン、2-メチルピラン、3-メチルピラン、4-メチルピラン、ベンゾフラン、2-(2-ニトロビニル)フラン、チオフェン、2-メチルチオフェン、2-エチルチオフェン、2-プロピルチオフェン、2-ブチルチオフェン、2,3-ジメチルチオフェン、2,4-ジメチルチオフェン、2,5-ジメチルチオフェン、又はこれらの2種以上を含む、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項11】
前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO
4、LiBF
4、LiB
10Cl
10、LiPF
6、LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、LiC
4BO
8、LiAsF
6、LiSbF
6、LiAlCl
4、CH
3SO
3Li、CF
3SO
3Li、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)
2NLi、(SO
2F)
2NLi、(CF
3SO
2)
3CLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、リチウムイミド、又はこれらの2種以上を含む、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のリチウム硫黄電池用の電解質と、
正極活物質を含む正極と、
負極活物質を含む負極と、
を含む、リチウム硫黄電池。
【請求項13】
前記正極活物質は、硫黄元素、硫黄化合物、又はこれらの混合物を含む、請求項12に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項14】
前記正極活物質は、無機硫黄(S
8)、Li
2Sn(n≧1)、ジスルフィド化合物、有機硫黄化合物、炭素-硫黄ポリマー((C
2S
x)
n、xは、2.5~50の整数であり、n≧2)、又はこれらの2種以上の混合物を含む、請求項12に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項15】
前記負極活物質は、リチウム金属、リチウム合金、又はこれらの混合物を含む、請求項12に記載のリチウム硫黄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム硫黄電池用の電解質及びこれを含むリチウム硫黄電池に関する。
【0002】
本出願は、2022年8月31日付け出願の韓国特許出願第2022-0110382号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
リチウム硫黄電池は、S-S結合(sulfur-sulfur bond)を有する硫黄系の物質を正極活物質として用い、リチウム金属を負極活物質として用いた電池システムを意味する。前記正極活物質の主材料である硫黄は、世界中で資源量が豊富であり、毒性がない他、低い原子当たりの重さを有しているという長所がある。
【0004】
二次電池の応用領域が電気自動車(EV)、エネルギー貯蔵システム(ESS)などに広がることに伴い、相対的に低い重量エネルギー密度(~250Wh/kg)を有するリチウムイオン二次電池に比べて、理論上に高い重量エネルギー密度(~2,600Wh/kg)を実現可能なリチウム硫黄電池技術が脚光を浴びている。
【0005】
リチウム硫黄電池は、放電に際して負極活物質であるリチウムが電子を放出し、リチウム陽イオンにイオン化されながら酸化され、正極活物質である硫黄系の物質が電子を受け入れながら還元される。ここで、硫黄系の物質の還元反応を用いて前記S-S結合が2つの電子を受け入れて硫黄陰イオンの形態に変換される。リチウムの酸化反応により生成されたリチウム陽イオンは、電解質を介して正極に伝達され、これは、硫黄系の化合物の還元反応により生成される硫黄陰イオンと結合して塩を形成する。具体的には、放電前の硫黄は、環状のS8構造を有しているが、これは、還元反応によりリチウムポリスルフィド(Lithium polysulfide, LiSx)に変換され、完全に変換されてリチウムスルフィド(Li2S)が生成される。
【0006】
このとき、正極活物質である硫黄系の化合物において、硫黄の低い電気伝導度の特性によって固相の形態では電子及びリチウムイオンとの反応性を確保し難い。このため、リチウム硫黄電池における硫黄の反応性を改善するために、Li2Sx形態の中間ポリスルフィド(intermediate polysulfide)を生成して液状反応を誘導し、反応性を改善する技術が開発されている。このような技術は、電解質の溶媒として、リチウムポリスルフィドへの溶解性が高いジオキソラン(dixoxlane)、ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)などのエーテル系溶媒を用いる。これにより、電解質の含量に応じて、硫黄の反応性及び電池の寿命が影響を受けてしまう。
【0007】
一方、近年、航空機及び次世代の電気自動車などに求められる低温駆動が可能なリチウム硫黄二次電池に関する研究・開発への取り組みが盛んに行われている。しかしながら、リチウム硫黄二次電池は、正極からポリスルフィド(polysulfide;PS)が溶出されることにより、電解質の物質抵抗が大きくなり、これにより、低温での駆動が未だに行われ難いのが現状である。
【0008】
要するに、リチウム硫黄(Li-S)電池は、最初の放電(~2.3V)の際に正極からPSの形態で活物質が溶け出る固体→液体反応が行われ、2回目の放電(~2.1V)を通じて溶け出たPSが再び正極に配置される液体→固体反応が行われるといった方法により駆動される。このような駆動原理下で、固体→液体反応が完了する最初の放電末端(State of Charge(SOC)=70)においてPSが電解質に最も多く溶出されているが、このとき、リチウム硫黄電池に最も大きな過電圧が生じる。低温での駆動に際して、低温駆動により物性、例えば、粘度が悪くなった電解質にPSが最も多く溶出されたSOC70において特に過電圧が大きくかかってリチウム硫黄電池の低温駆動に難点があるという問題がある。
【0009】
のみならず、リチウム硫黄電池の電解質として、従来より開発されてきているエーテル系の溶媒を用いるとき、沸点(bp)の低いエーテル系溶媒の使用によってリチウム硫黄電池の低温駆動の際に電池内にガスが生じ、これに伴う爆発のリスクが存在する。
【0010】
この理由から、正極からのポリスルフィドの溶出特性が制御されて電解質の物質抵抗が制御されるのみならず、低温駆動時の安定性を確保することのできるリチウム硫黄電池の開発が切望されているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、上述した問題を解決し、正極からのポリスルフィド(PS)の溶出特性を制御して抵抗特性が改善されたリチウム硫黄電池用の電解質を提供することにある。
【0012】
特に、電池の初期の放電の段階からポリスルフィドの溶出が抑えられて過電圧現象が改善され、電解質抵抗特性が向上して反応性の減少の問題が改善されて出力特性が向上したリチウム硫黄電池用の電池を提供することにその目的がある。
【0013】
これにより、安定的に低温駆動が可能なリチウム硫黄電池用の電池を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の一側面によれば、下記の態様のリチウム硫黄電池用の電解質が提供される。
【0015】
第1の態様によるリチウム硫黄電池用の電解質は、リチウム塩及び非水系溶媒を含み、前記非水系溶媒は、グリコールエーテルと、環状(cyclic)エーテル及び下記の化学式1で示される非環状(acyclic)エーテルを含み、前記非環状エーテルは、前記非水系溶媒の総体積に基づいて、15体積%以下の含量で含まれ、前記非環状エーテルの総体積に対する前記グリコールエーテルの総体積の割合が5以上であるものとする。
【0016】
[化学式1]
R1-O-R2
(上記の化学式1中、
R1は、無置換もしくは置換のC1~C3のアルキル基であり、R2は、無置換もしくは置換のC3~C20のアルキル基である。)
第2の態様によれば、前記非環状エーテルは、前記非水系溶媒の総体積に基づいて、10体積%以下の含量で含まれる第1の態様に記載のリチウム硫黄電池用の電解質であり得る。
【0017】
第3の態様によれば、前記非環状エーテルの総体積に対する前記グリコールエーテルの総体積の割合が6.5以上である第1の態様又は第2の態様に記載のリチウム硫黄電池用の電解質であり得る。
【0018】
第4の態様によれば、前記非環状エーテルは、前記非水系溶媒の総体積に基づいて、10体積%以下の含量で含まれ、前記非環状エーテルの総体積に対する前記グリコールエーテルの総体積の割合が6.5以上である第1の態様から第3の態様のいずれか1つの態様に記載のリチウム硫黄電池用の電解質であり得る。
【0019】
第5の態様によれば、前記非水系溶媒の総体積における前記グリコールエーテルの含量が65体積%以上であり、前記環状エーテル及び前記非環状エーテルの含量の和が35体積%以下である第1の態様から第4の態様のいずれか1つの態様に記載のリチウム硫黄電池用の電解質であり得る。
【0020】
第6の態様によれば、前記非環状エーテルは、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、メチルヘキシルエーテル、エチルt-ブチルエーテル、エチルヘキシルエーテル、又はこれらの2種以上を含む第1の態様から第5の態様のいずれか1つの態様に記載のリチウム硫黄電池用の電解質であり得る。
【0021】
第7の態様によれば、前記R1は、無置換もしくは置換のC1~C2のアルキル基であり、前記R2は、無置換もしくは置換のC4~C10のアルキル基である第1の態様から第6の態様のいずれか1つの態様に記載のリチウム硫黄電池用の電解質であり得る。
【0022】
第8の態様によれば、前記非環状エーテルは、エチルプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、メチルヘキシルエーテル、又はこれらの2種以上の混合物を含む第1の態様から第7の態様のいずれか1つの態様に記載のリチウム硫黄電池用の電解質であり得る。
【0023】
第9の態様によれば、前記グリコールエーテルは、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールメチルエチルエーテル、又はこれらの2種以上を含む第1の態様から第8の態様のいずれか1つの態様に記載のリチウム硫黄電池用の電解質であり得る。
【0024】
第10の態様によれば、前記環状エーテルは、フラン、2-メチルフラン、3-メチルフラン、2-エチルフラン、2-プロピルフラン、2-ブチルフラン、2,3-ジメチルフラン、2,4-ジメチルフラン、2,5-ジメチルフラン、ピラン、2-メチルピラン、3-メチルピラン、4-メチルピラン、ベンゾフラン、2-(2-ニトロビニル)フラン、チオフェン、2-メチルチオフェン、2-エチルチオフェン、2-プロピルチオフェン、2-ブチルチオフェン、2,3-ジメチルチオフェン、2,4-ジメチルチオフェン、2,5-ジメチルチオフェン、又はこれらの2種以上を含む第1の態様から第9の態様のいずれか1つの態様に記載のリチウム硫黄電池用の電解質であり得る。
【0025】
第11の態様によれば、前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiC4BO8、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、(C2F5SO2)2NLi、(SO2F)2NLi、(CF3SO2)3CLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、リチウムイミド、又はこれらの2種以上を含む第1の態様から第10の態様のいずれか1つの態様に記載のリチウム硫黄電池用の電解質であり得る。
本発明の他の側面によれば、下記の態様のリチウム硫黄電池が提供される。
【0026】
第12の態様によれば、リチウム硫黄電池は、第1の態様から第11の態様のいずれか1つの態様に記載のリチウム硫黄電池用の電解質と、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、を含む。
【0027】
第13の態様によれば、前記正極活物質は、硫黄元素、硫黄化合物、又はこれらの混合物を含む第12の態様に記載のリチウム硫黄電池であり得る。
【0028】
第14の態様によれば、前記正極活物質は、無機硫黄(S8)、Li2Sn(n≧1)、ジスルフィド化合物、有機硫黄化合物、炭素-硫黄ポリマー((C2Sx)n、xは、2.5~50の整数であり、n≧2)、又はこれらの2種以上の混合物を含む第12の態様又は第13の態様に記載のリチウム硫黄電池であり得る。
【0029】
第15の態様によれば、前記負極活物質は、リチウム金属、リチウム合金、又はこれらの混合物を含む第12の態様から第14の態様のいずれか1つの態様に記載のリチウム硫黄電池であり得る。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一態様によるリチウム硫黄電池用の電解質は、正極からのポリスルフィド(PS)の溶出を抑えるという効果がある。
【0031】
これにより、本発明の一態様によるリチウム硫黄電池用の電池は、駆動に際して最初の放電末端(SOC70)における過電圧を防ぎ、反応性を向上させて出力特性を向上させるという効果がある。
【0032】
また、本発明の一態様によるリチウム硫黄電池用の電解質を用いたリチウム硫黄電池は、低温下でも安定的に駆動され、サイクル特性が向上するという効果がある。
【0033】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割のためのものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1a】この明細書中の一実験例による電池の常温駆動特性を評価した結果グラフである。
【
図1b】この明細書中の一実験例による電池の低温駆動特性を評価した結果グラフである。
【
図2】この明細書中の一実験例による電池の常温及び低温駆動特性を評価した結果グラフである。
【
図3】この明細書中の一実験例による電池の充/放電サイクルの繰り返しに伴う寿命特性を評価した結果グラフである。
【
図4】この明細書中の一実験例による電池の常温駆動特性を評価した結果グラフである。
【
図5】この明細書中の一実験例による電池の常温及び低温駆動特性を評価した結果グラフである。
【
図6a】この明細書中の一実験例による電池の充/放電サイクルの繰り返しに伴う寿命特性を評価した結果グラフである。
【
図6b】この明細書中の一実験例による電池の充/放電サイクルの繰り返しに伴う寿命特性を評価した結果グラフである。
【
図7】この明細書中の一実験例による電池の常温及び低温駆動特性を評価した結果グラフである。
【
図8】この明細書中の一実験例による電池の低温におけるサイクルの繰り返しに伴う寿命特性を評価した結果グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明について詳しく説明する。しかしながら、本発明は下記の内容によってのみ何ら限定されるものではなく、必要に応じて、各構成要素が種々に変形されたり選択的に混用されたりできる。したがって、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物ないし代替物を含むものと理解されるべきである。
【0036】
この明細書中において、ある構成要素がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に断りのない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0037】
この明細書中のターミノロジー「ポリスルフィド(polysulfide;PS)」は、「ポリスルフィドイオン(Sx
2-, x=8, 6, 4, 2))」及び「リチウムポリスルフィド(Li2Sx又はLiSx
-, x=8, 6, 4, 2)」をいずれも網羅する概念である。
【0038】
この明細書中において、リチウム硫黄電池の低温駆動と関連して使われる用語「低温」は、例えば、-15℃~15℃の温度範囲、具体的には、-10℃~10℃を指し得る。前記ターミノロジー「低温駆動」は、単に本発明によるリチウム硫黄電池用の電解質及びこれを含むリチウム硫黄電池が低温駆動に際しても優れた特性を発揮できることを説明するために使われたものに過ぎず、本発明によるリチウム硫黄電池用の電解質及びリチウム硫黄電池の駆動温度を限定しようとする意図をもったものではないという点は当業者にとって自明である。
【0039】
本発明の一側面によるリチウム硫黄電池用の電解質は、リチウム塩及び非水系溶媒を含み、前記非水系溶媒は、グリコールエーテル、環状(cyclic)エーテル及び下記の化学式1で示される非環状(acyclic)エーテルを含む。前記非環状エーテルは、前記非水系溶媒の総体積に基づいて、15体積%以下の含量で含まれ、前記非環状エーテルの総体積に対する前記グリコールエーテルの総体積の割合が5以上であるものとする。
【0040】
[化学式1]
R1-O-R2
(上記の化学式1中、
R1は、無置換もしくは置換のC1~C3のアルキル基であり、R2は、無置換もしくは置換のC3~C20のアルキル基である。)
前記リチウム塩は、リチウム硫黄電池用の電解質中に電解質塩として含まれ、前記非水系溶媒は、リチウム硫黄電池用の電解質中に媒質として含まれる。
【0041】
本発明によれば、前記非水系溶媒として、2つの酸素原子を含むグリコールエーテル、環構造内に少なくとも1つの酸素原子(O)又は硫黄原子(S)を含む環状エーテル及び上記の化学式1で示される非環状エーテルの3種のエーテルの組み合わせを用いることにより、リチウム硫黄電池が安定的に低温駆動できるようにする電解質を提供することができるが、本発明の機序がこれに何ら制限されるものではない。
【0042】
リチウム硫黄電池用の電解質が非水系溶媒として前記非環状エーテルを含まず、前記グリコールエーテル及び環状エーテルのみを含む場合、これを用いた電池の低温駆動の際にSOC70において過電圧が生じるという問題があるため、本発明の一側面によれば、非水系溶媒として非環状エーテルを含む。
【0043】
具体的には、前記非環状エーテルが前記非水系溶媒の総体積に比べて高い含量にて含まれるとき、これを用いた電池の低温駆動の際に電池の充放電サイクルの繰り返しに伴う寿命低下の速度が急激に高くなるので、前記非環状エーテルは、前記非水系溶媒の総体積に基づいて、15体積%以下の含量にて含まれる。
【0044】
この明細書中において、前記非水系溶媒内のそれぞれの成分の含量は、核磁気共鳴分光法(NMR)、赤外分光法(IR)、紫外/可視分光法(UV-VIS)、質量分析法(MS)、気体クロマトグラフィなど公知の成分分析方法に従い測定されるものであり得、その測定方法に特に制限されるものではない。
【0045】
本発明の一態様において、前記非環状エーテルは、前記非水系溶媒の総体積に基づいて、10体積%以下の含量にて含まれ得る。具体的には、前記非環状エーテルの含量は、前記非水系溶媒の総体積に基づいて、1体積%以上、かつ、15体積%以下、もしくは、5体積%以上、かつ、10体積%以下であり得る。
【0046】
より具体的には、前記非環状エーテルが前記非水系溶媒中にグリコールエーテルの体積に比べて高い含量にて含まれるとき、これを用いた電池の低温駆動に際してSOC70においてむしろ過電圧が生じてしまうという問題があるため、前記非環状エーテルの総体積に対する前記グリコールエーテルの総体積の割合は、5以上であるものとする。
【0047】
本発明の一態様において、前記非環状エーテルの総体積に対する前記グリコールエーテルの総体積の割合は、5.5以上であり得る。具体的には、前記非環状エーテルの総体積に対する前記グリコールエーテルの総体積の割合は、6以上、6.5以上、7以上、7.5以上、又は8以上であり得る。より具体的には、前記非環状エーテルの総体積に対する前記グリコールエーテルの総体積の割合は、例えば、5~15、5~13、5~10、6~10、6.5~10、7~10、又は8~10であり得る。
【0048】
本発明の他の態様において、前記非環状エーテルは、前記非水系溶媒の総体積に基づいて、10体積%以下の含量で含まれ、前記非環状エーテルの総体積に対する前記グリコールエーテルの総体積の割合が6.5以上であり得る。
【0049】
本発明の一態様において、前記非水系溶媒の総体積における前記グリコールエーテルは65体積%以上であり、前記環状エーテル及び前記非環状エーテルの含量の和が35体積%以下であり得る。
【0050】
具体的には、前記非水系溶媒の総体積における前記非環状エーテルの含量が25体積%以下であり得る。
【0051】
より具体的には、前記非水系溶媒の総体積における前記グリコールエーテルの含量が65体積%以上であり、前記環状エーテル及び前記非環状エーテルの含量の和が35体積%以下であり得る。
【0052】
本発明の他の態様において、前記非水系溶媒の総体積における前記グリコールエーテルの含量が70体積%以上であり、前記環状エーテル及び前記非環状エーテルの含量の和が30体積%以下であり得る。
【0053】
本発明の他の態様において、前記非水系溶媒の総体積における前記グリコールエーテルの含量が65体積%~84体積%であり、前記環状エーテル及び前記非環状エーテルの含量の和が16体積%~25体積%以下であり得る。
【0054】
本発明のさらに他の態様において、前記非水系溶媒の総体積における前記グリコールエーテルの含量が70体積%~80体積%であり、前記環状エーテル及び前記非環状エーテルの含量の和が20体積%~30体積%であり得る。
【0055】
本発明の他の態様において、前記非水系溶媒の総体積における前記グリコールエーテルの含量が75体積%~80体積%であり、前記環状エーテル及び前記非環状エーテルの含量の和が20体積%~25体積%であり得る。
【0056】
本発明の一態様において、前記非水系溶媒の総体積における上述した溶媒の含量が上述した範囲である場合、ポリスルフィドの溶出の抑制及び非水系溶媒の全体の沸点の側面からみて有利な効果を示すことができるが、本発明がこれらに何ら制限されるものではない。
【0057】
本発明の一態様において、前記R1は、具体的には、無置換もしくは置換のメチル基、無置換もしくは置換のエチル基、又は無置換もしくは置換のプロピル基であり得る。このとき、置換のメチル基、置換のエチル基又は置換のプロピル基に含まれる置換基は、これらに何ら制限されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、アセトアミノ基、ヒドラジン、ヒドラジゾン、カルボキシル基、スルホニル基、スルファモイル(sulfamoyl)基、スルホン酸基、リン酸、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0058】
本発明の他の態様において、前記R1は、具体的には、無置換のメチル基、無置換のエチル基又は無置換のプロピル基であり得る。本発明は、これらに何ら制限されるものではないが、例えば、電池の駆動に際してポリスルフィド又はリチウムとの副反応を抑える側面からみて、R1は、無置換のアルキル基であることが好ましい。
【0059】
本発明の一態様において、前記R2は、具体的には、置換もしくは無置換のC3~C20のアルキル基であり得、このとき、置換のC3~C20のアルキル基に含まれる置換基は、これらに何ら制限されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、アセトアミノ基、ヒドラジン、ヒドラジゾン、カルボキシル基、スルホニル基、スルファモイル(sulfamoyl)基、スルホン酸基、リン酸、C1~C5のアルキル基、C1~C5のアルコキシ基、C2~C5のアルケニル基、C2~C5のアルキニル基、C4~C10のシクロアルキル基、C6~C10のアリール基、C6~C10のヘテロアリール基、C6~C20のアリールアルキル基、C6~C20のヘテロアリールアルキル基、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0060】
本発明の他の態様において、前記R2は、これらに何ら制限されるものではないが、例えば、n-プロピル基、n-ブチル基、n-アミル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-へプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコサニル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、iso-アミル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、tert-アミル基、1,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-エチル-2-メチルプロピル基、直鎖状もしくは分枝状のへプチル基、1-メチルへプチル基、2-エチルヘキシル基、1、5-ジメチルヘキシル基、tert-オクチル基、分枝状のノニル基、分枝状のデシル基、分枝状のウンデシル基、分枝状のドデシル基、分枝状のトリデシル基、分枝状のテトラデシル基、分枝状のペンタデシル基、分枝状のヘキサデシル基、分枝状のへプタデシル基、分枝状のオクタデシル基、直鎖状もしくは分枝状のノナデシル基、直鎖状もしくは分枝状のエイコサニル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルプロピル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、ボルニル基、シクロペンチルエチル基、ビシクロオクチル基、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0061】
本発明の他の態様において、本発明は、これらに何ら制限されるものではないが、例えば、電池の駆動に際してポリスルフィド又はリチウムとの副反応を抑えるという側面からみて、R2は、無置換のアルキル基であることが好ましい。
【0062】
本発明の一態様において、前記非環状エーテルは、例えば、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、メチルヘキシルエーテル、エチルt-ブチルエーテル、エチルヘキシルエーテル、又はこれらの2種以上を含み得る。
【0063】
本発明の他の態様において、前記R1は、具体的には、無置換もしくは置換のC1~C2のアルキル基であり、前記R2は、具体的には、無置換もしくは置換のC4~C10のアルキル基であり得る。より具体的には、前記R1は、無置換のC1~C2のアルキル基であり、前記R2は、無置換のC4~C10のアルキル基であり得る。
【0064】
本発明の一態様において、前記非環状エーテルは、エチルプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、メチルヘキシルエーテル、又はこれらの2種以上を含み得る。
【0065】
また、本発明のさらに他の態様において、前記非環状エーテルは、メチルヘキシルエーテル単体を用いるものであり得る。
【0066】
本発明の一態様において、前記非環状エーテルとして上述した種類は、正極から溶出されるポリスルフィドに対する非溶媒として働くことにより、正極からのポリスルフィドの溶出を抑えるという側面からみて有利な効果を示すことができる。また、前記非環状エーテルは、沸点特性の側面からみて、リチウム硫黄電池の低温駆動に有利な効果を示すことができるが、本発明の機序がこれに何ら制限されるものではない。
【0067】
本発明の一態様において、前記非環状エーテルの沸点(boiling point;bp)は、リチウム硫黄電池用の電解質が用いられる電池の駆動温度よりも高いことが好ましく、例えば、前記非環状エーテルの沸点は、55℃以上であり得る。具体的には、前記非環状エーテルの沸点は、55℃以上、かつ、130℃以下、55℃以上、かつ、110℃以下、55℃以上、かつ、100℃以下、55℃以上、かつ、85℃以下、55℃以上、かつ、80℃以下、60℃以上、かつ、75℃以下、又は60℃以上、かつ、70℃以下であり得るが、これらに何ら制限されるものではない。前記沸点は、25℃、1気圧における測定値を示す。
【0068】
前記グリコールエーテルは、2個の酸素原子を含む非環状のエーテルであって、リチウム硫黄電池の電解質として使用可能なものであれば、特に制限なしに使用可能である。
【0069】
本発明の一態様において、前記グリコールエーテルは、下記の化学式2にて示され得る:
[化学式2]
R3-O-(CH2CH2O)y-R4
(上記の化学式2中
R3及びR4は、互いに同一もしくは異なり、それぞれ独立して、C1~C6の無置換もしくは置換のアルキル基、又はC6~C12の無置換もしくは置換のアリール基であり、又はC7~C13の無置換もしくは置換のアリールアルキル基であり、xは、1~4の整数であり、yは、0~4の整数である。)
【0070】
前記グリコールエーテルは、例えば、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールメチルエチルエーテル、又はこれらの2種以上を含み得るが、これらに何ら制限されるものではない。
【0071】
前記環状エーテルは、環構造内に少なくとも1つの酸素原子(O)又は硫黄原子(S)を含んで環構造内に少なくとも1つの-C-O-C-構造又は-C-S-C-構造を含むエーテルであって、リチウム硫黄電池の電解質として使用可能なものであれば、特に制限なしに使用可能である。前記環状エーテルは、例えば、フラン、2-メチルフラン、3-メチルフラン、2-エチルフラン、2-プロピルフラン、2-ブチルフラン、2,3-ジメチルフラン、2,4-ジメチルフラン、2,5-ジメチルフラン、ピラン、2-メチルピラン、3-メチルピラン、4-メチルピラン、ベンゾフラン、2-(2-ニトロビニル)フラン、チオフェン、2-メチルチオフェン、2-エチルチオフェン、2-プロピルチオフェン、2-ブチルチオフェン、2,3-ジメチルチオフェン、2,4-ジメチルチオフェン、2,5-ジメチルチオフェン、又はこれらの2種以上を含み得るが、これらに何ら制限されるものではない。
【0072】
前記リチウム塩は、通常、リチウム硫黄電池の電解質に使用可能なものであれば、特に制限なしに使用可能である。前記リチウム塩は、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiC4BO8、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、(C2F5SO2)2NLi、(SO2F)2NLi、(CF3SO2)3CLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、リチウムイミド、又はこれらの2種以上を含み得るが、これらに何ら制限されるものではない。
【0073】
本発明の一態様において、前記リチウム塩は、硝酸リチウム塩類を含まないこともある。前記硝酸リチウム塩類は、後述する硝酸又は亜硝酸系の化合物の例として含まれ得る。
【0074】
本発明の一態様において、前記リチウム塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を含み得る。
【0075】
本発明の一態様において、前記リチウム塩の濃度は、イオン伝導度、溶解度などを考慮して適宜に決定可能であり、例えば、0.1~4.0M、0.5~2.0M、0.5~1.0M、又は0.75Mであり得る。前記リチウム塩の濃度が上述した範囲である場合、イオン伝導度及び電解質の粘度の側面からみて有利な効果を示すことができるが、これらに何ら制限されるものではない。
【0076】
本発明の一態様において、前記非水系溶媒は、グリコールエーテルとしてジメトキシエタン、環状エーテルとして2-メチルフラン、及び非環状エーテルとしてエチルプロピルエーテルを含み得る。具体的には、前記非水系溶媒は、体積比として、65~85:1~20:1~15の割合にてジメトキシエタン、2-メチルフラン及びエチルプロピルエーテルを含み得る。
【0077】
本発明の他の態様において、前記非水系溶媒は、ジメトキシエタン、2-メチル-テトラヒドロフラン及びメチルt-ブチルエーテルを含み得る。具体的には、前記非水系溶媒は、体積比として、65~85:1~20:1~15の割合にてジメトキシエタン、2-メチルフラン及びメチルt-ブチルエーテルを含み得る。
【0078】
本発明の他の態様において、前記非水系溶媒は、ジメトキシエタン、2-メチルフラン及びヘキシルメチルエーテルを含み得る。具体的には、前記非水系溶媒は、体積比として、65~85:1~20:1~15の割合にてジメトキシエタン、2-メチルフラン及びヘキシルメチルエーテルを含み得る。
【0079】
本発明の一態様において、前記リチウム硫黄電池用の電解質は、前述した組成の他に、硝酸又は亜硝酸系の化合物をさらに含み得る。前記硝酸又は亜硝酸系の化合物は、例えば、リチウム金属などの素材の負極の電極に安定的な皮膜を形成し、充放電効率を向上させるという効果を示すことができるが、本発明の機序がこれに何ら制限されるものではない。
【0080】
前記硝酸又は亜硝酸系の化合物としては、本発明において特に限定されるものではないが、例えば、硝酸リチウム(LiNO3)、硝酸カリウム(KNO3)、硝酸セシウム(CsNO3)、硝酸バリウム(Ba(NO3)2)、硝酸アンモニウム(NH4NO3)、亜硝酸リチウム(LiNO2)、亜硝酸カリウム(KNO2)、亜硝酸セシウム(CsNO2)、亜硝酸アンモニウム(NH4NO2)などの無機系硝酸又は亜硝酸化合物;メチルニトレート、ジアルキルイミダゾリウムニトレート、グアニジンニトレート、イミダゾリウムニトレート、ピリジニウムニトレート、エチルニトライト、プロピルニトライト、ブチルニトライト、ペンチルニトライト、オクチルニトライトなどの有機系硝酸又は亜硝酸化合物;ニトロメタン、ニトロプロパン、ニトロブタン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ニトロピリジン、ジニトロピリジン、ニトロトルエン、ジニトロトルエンなどの有機ニトロ化合物、又はこれらの2種以上の混合物であり得る。
【0081】
本発明の一態様において、前記リチウム硫黄電池用の電解質は、硝酸リチウム(LiNO3)をさらに含み得る。
【0082】
本発明の他の態様において、前記リチウム硫黄電池用の電解質は、前述した組成の他に、充放電特性、難燃性などの改善を目指してその他の添加剤をさらに含み得る。前記添加剤としては、本発明において特に限定されるものではないが、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウム、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、プロペンスルトン(PRS)、ビニレンカーボネート(VC)などが挙げられる。
【0083】
本発明の一側面による前記リチウム硫黄電池用の電解質は、当業界における公知の通常の方法により製造可能であり、本発明がこれに特に限定されることはない。
【0084】
本発明の他の側面によるリチウム硫黄電池は、上述したリチウム硫黄電池用の電解質を含み、正極活物質を含む正極、及び負極活物質を含む負極を含むことを特徴とする。
【0085】
前記正極、正極活物質、負極及び負極活物質は、本発明の目的を損なわない限りにおいて、リチウム硫黄電池に使用可能なものであれば、特に制限なしに使用可能である。
【0086】
例えば、前記正極は、正極集電体及び前記正極集電体の片面又は両面に塗布された正極活物質層を含み得、前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体の片面又は両面に塗布された負極活物質層を含み得、
このとき、前記正極集電体は、正極活物質を支持し、当該電池に化学的な変化を引き起こさずに、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、前記負極集電体は、負極活物質を支持し、当該電池に化学的な変化を引き起こさずに、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではない。
【0087】
本発明の一態様において、前記正極活物質は、例えば、硫黄元素、硫黄化合物、又はこれらの混合物を含み得る。具体的には、前記正極活物質は、無機硫黄(S8)、Li2Sn(n≧1)、ジスルフィド化合物、有機硫黄化合物、炭素-硫黄ポリマー((C2Sx)n, x=2.5~50,n≧2)、又はこれらの2種以上を含み得る。
【0088】
本発明の一態様において、前記負極活物質は、リチウム(Li+)を可逆的にインターカレーション(intercalation)又はデインターカレーション(deintercalation)可能な物質、又はリチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成可能な物質であれば、特に制限なしに使用可能である。例えば、前記負極活物質は、リチウム金属、リチウム合金、又はこれらの混合物を含み得る。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、又はこれらの2種以上の金属の合金であり得る。
【0089】
また、前記正極活物質層及び負極活物質層のそれぞれは、活物質の他にも、導電材、バインダー及び添加剤などをさらに含み得、この具体的な種類としては、通常のものが使用可能であるため、その説明を省略する。
【0090】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳しく説明するが、下記の実施例は単に本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範ちゅうがこれらにのみ何ら制限されるものではない。
【0091】
まず、下記のような方法によりパウチセルの形状のリチウム硫黄電池を製造した。
【0092】
実施例1.
リチウム硫黄電池用の電解質の製造
ジメトキシエタン(DME)に0.75Mのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)と5.0重量%の硝酸リチウム(LiNO3)を加え、12時間をかけて攪拌して溶かした後、2-メチルフラン及びエチルプロピルエーテルを投入し、攪拌して電解質を製造した。
【0093】
このときに用いたジメトキシエタン:2-メチルフラン:エチルプロピルエーテルの体積比は、70:20:10であった。
【0094】
正極の製造
蒸留水を溶媒として、正極活物質としての硫黄-炭素錯体(S:C=75:25(重量比))及びバインダーとしてのリチウムポリアクリレート(LiPAA)を95:5の重量比にて混合して正極スラリーを製造した。
【0095】
12μmの厚さのアルミニウム集電体の両方の面に前記製造された正極スラリー組成物を塗布し、80℃において乾燥させ、ロールプレス(roll press)機器にて圧延して正極を製造した。このとき、正極活物質のローディング量は、4.1mAh/cm2であった。
【0096】
負極の製造
負極として30μmの厚さのリチウム金属2枚を積み重ねて用意した(総60μm)。
【0097】
リチウム硫黄電池の製造
前記製造された正極と負極とを対面するように位置させ、これらの間に厚さ16μm、気孔度68%のポリエチレンセパレーターを挟持した後、スタッキング(stacking)してパウチセルを組み立てた後、El/S(Electrolyte/S loading amount、電解質/硫黄のローディング量)の割合が2.9ml/gとなるように上記において製造した電解質を1.5g注入し、封止(sealing)してパウチ状のリチウム硫黄電池を製造した。製造された電池は、容量0.6Ah、エネルギー1.29Wh、エネルギー401Wh/kgを有するように製造された。
【0098】
実施例2
電解質の製造に際して用いたジメトキシエタン:2-メチルフラン:エチルプロピルエーテルの体積比=80:10:10であることを除いては、実施例1の方法と同様にしてリチウム硫黄電池を製造した。
【0099】
実施例3
電解質の製造に際して用いたジメトキシエタン:2-メチルフラン:エチルプロピルエーテルの体積比=60:30:10であることを除いては、実施例1の方法と同様にしてリチウム硫黄電池を製造した。
【0100】
実施例4
電解質の非水系溶媒の組成がジメトキシエタン:2-メチルフラン:メチルt-ブチルエーテルの体積比=70:20:10となるように、電解質の製造に際してエチルプロピルエーテルをメチルt-ブチルエーテルに置き換えた以外は、実施例1の方法と同様にしてリチウム硫黄電池を製造した。
【0101】
実施例5
電解質の非水系溶媒の組成がジメトキシエタン:2-メチルフラン:メチルヘキシルエーテルの体積比=70:20:10となるように、電解質の製造に際してエチルプロピルエーテルをメチルヘキシルエーテルに置き換えた以外は、実施例1の方法と同様にしてリチウム硫黄電池を製造した。
【0102】
実施例6
電解質の非水系溶媒の組成がジメトキシエタン:2-メチルフラン:ジプロピルエーテルの体積比=70:20:10となるように、電解質の製造に際してエチルプロピルエーテルをジプロピルエーテルに置き換えた以外は、実施例1の方法と同様にしてリチウム硫黄電池を製造した。
【0103】
実施例7
電解質の非水系溶媒の組成がジメトキシエタン:2-メチルフラン:エチルt-ブチルエーテルの体積比=70:20:10となるように、電解質の製造に際してエチルプロピルエーテルをエチルt-ブチルエーテルに置き換えた以外は、実施例1の方法と同様にしてリチウム硫黄電池を製造した。
【0104】
比較例1
電解質の製造に際してエチルプロピルエーテルを用いなかった以外は、実施例1の方法と同様にしてリチウム硫黄電池を製造した。
【0105】
このときに用いたジメトキシエタン:2-メチルフランの体積比は、80:20であった。
【0106】
比較例2
電解質の製造に際して、ジメトキシエタン:2-メチルフランの体積比は70:30であること以外は、比較例1の方法と同様にしてリチウム硫黄電池を製造した。
【0107】
比較例3
電解質の製造に際して用いた2-メチルフランを用いず、ジメトキシエタン:エチルプロピルエーテルの体積比が80:20であることを除いては、実施例1の方法と同様にしてリチウム硫黄電池を製造した。
【0108】
比較例4
電解質の製造に際して用いたジメトキシエタン:2-メチルフラン:エチルプロピルエーテルの体積比が70:10:20であることを除いては、実施例1の方法と同様にしてリチウム硫黄電池を製造した。
【0109】
比較例5
電解質の非水系溶媒の組成がジメトキシエタン:2-メチルフラン:メチルt-ブチルエーテルの体積比=70:10:20となるように、電解質の製造に際してエチルプロピルエーテルをメチルt-ブチルエーテルに置き換えた以外は、比較例4の方法と同様にしてリチウム硫黄電池を製造した。
【0110】
比較例6
電解質の非水系溶媒の組成がジメトキシエタン:2-メチルフラン:メチルヘキシルエーテルの体積比=70:10:20となるように、電解質の製造に際してエチルプロピルエーテルをメチルヘキシルエーテルに置き換えた以外は、比較例4の方法と同様にしてリチウム硫黄電池を製造した。
【0111】
比較例7
電解質の非水系溶媒の組成がジメトキシエタン:2-メチルフラン:ジブチルエーテルの体積比=70:20:10となるように、電解質の製造に際してエチルプロピルエーテルをジブチルエーテルに置き換えた以外は、実施例1の方法と同様にしてリチウム硫黄電池を製造した。
【0112】
上記の実施例1から実施例6、及び比較例1から比較例7の電池に用いられた電解質の組成をまとめて示すと、下記の表1の通りである。
【0113】
【0114】
実験例1.非水系溶媒の組成に応じた常温及び低温駆動特性の評価
上記において製造した実施例1から3、比較例1、比較例3及び比較例4の電池に対して、25℃及び10℃の温度のそれぞれにおいて0.1C充電/0.1C放電(各2.5V上限/1.8V下限)の1回駆動を実施したときに評価した結果をそれぞれ
図1a及び
図1bに示す。
【0115】
また、上記において製造した実施例1から3、比較例1、比較例3及び比較例4の電池に対して、25℃において0.1Cで1回駆動した後、10℃において0.1C、0.2C、0.3C及び0.5Cでそれぞれ3回ずつ駆動した後、再び25℃において0.2C、0.3C及び0.5Cでそれぞれ3回ずつ駆動しながら、電池のサイクル数に応じた放電容量を評価した結果を
図2に示す。
【0116】
また、
図2に示す高率特性の評価が完了した電池を用いて、25℃の温度下において0.3C充電/0.3C放電(各2.5V上限/1.8V下限)サイクルの繰り返しに伴う電池の充電容量を評価した結果を
図3に示す。
【0117】
図1から明らかなように、低温駆動に際して、電解質中の非水系溶媒として非環状エーテルが用いられる場合、SOC70においてディップ(dip)領域がなくなること、すなわち、過電圧がなくなることが確認された。
【0118】
但し、
図2、
図3を参照したとき、非環状エーテルが用いられても、環状エーテルが用いられなかった比較例3、非環状エーテルが用いられても、グリコールエーテルが非環状エーテル体積に比べて5未満の量(グリコールエーテル:非環状エーテル=3.5:1)となるように非環状エーテルが過剰に用いられた比較例4は、電池の充/放電サイクルの繰り返しに伴う寿命特性が不良であることが確認された。
【0119】
実験例2.非水系溶媒の組成比及び非環状エーテルの種類に応じた常温及び低温駆動特性の評価
前記実験例1の結果を参照して非水系溶媒中のグリコールエーテルの体積比を70体積%に固定した後、非環状エーテルの含量を異ならせたり、非環状エーテルの種類を異ならせたりして、常温及び低温駆動の特性を比較評価した。
【0120】
具体的には、上記において製造した実施例4、実施例5及び比較例2、比較例5及び比較例6の電池に対して、25℃の温度下で0.1C充電/0.1C放電(各2.5V上限/1.8V下限)の2回駆動を実施した後、3回目の駆動時の充放電特性を評価した結果を
図4に示す。
【0121】
また、実施例4、実施例5及び比較例2、比較例5及び比較例6の電池に対して、25℃において0.1Cで1回駆動した後、10℃において0.1C、0.2C、0.3C及び0.5Cでそれぞれ3回ずつ駆動した後、再び25℃において0.2C、0.3C及び0.5Cでそれぞれ3回ずつ駆動しながら、電池のサイクル数に応じた放電容量を評価した結果を
図5に示す。
【0122】
また、
図5に示す高率特性の評価が完了した電池を用いて、25℃の温度下で0.3C充電/0.3C放電(各2.5V上限/1.8V下限)サイクルの繰り返しに伴う電池の充電容量を評価した結果をそれぞれ
図6a及び
図6bに示す。
図5の結果によれば、比較例6の場合、5サイクル後に電池の性能を発揮することができないため、25サイクル後の電池容量の評価結果を示す
図6a及び
図6bにおいて比較例6に関する結果は示していない。
【0123】
図4から
図6a及び
図6bを参照すると、非環状エーテルとしてのグリコールエーテルがメチルヘキシルエーテルに対して3.5:1(グリコールエーテル:メチルヘキシルエーテル)の体積比にて用いられた比較例6は、1
st プラトー(plateau)過電圧が大きくかかって過充電されることが確認された。また、比較例6を除いて、
図4から
図6の結果からも明らかなように、非環状エーテルが含まれることにより、電池の過電圧特性が改善できるものの、非環状エーテルの体積に対するグリコールエーテルの体積が5未満となるように非環状エーテルが過剰に含まれる場合、電池の常温寿命が劣化することが確認された。
【0124】
実験例3.非環状エーテルの種類に応じた常温及び低温駆動特性の評価
上記において製造した電解質中のグリコールエーテル:環状エーテル:非環状エーテルの体積比が7:2:1と同一であるものの、非環状エーテルの種類が異なる実施例1(エチルプロピルエーテル)、実施例4(メチルt-ブチルエーテル)及び実施例5(メチルヘキシルエーテル)と、グリコールエーテルの総体積が同一である比較例2に対して、25℃において0.1Cで1回駆動した後、10℃において0.1C、0.2C、0.3C及び0.5Cでそれぞれ3回ずつ駆動した後、再び25℃において0.2C、0.3C及び0.5Cでそれぞれ3回ずつ駆動しながら、電池のサイクル数に応じた放電容量を評価した結果を
図7に示す。
【0125】
図7を参照すると、電解質中に非水系溶媒として7:2:1の体積比のグリコールエーテル:環状エーテル:非環状エーテルを含む電池の低温駆動特性に優れており、特に、実施例5>実施例1>実施例4の順にメチルへキシルエーテルの低温駆動特性が最も抜群であることが確認された。
【0126】
実験例4.非環状エーテルの種類に応じた常温及び低温駆動特性の評価
上記において製造した電解質中のグリコールエーテル:環状エーテル:非環状エーテルの体積比が7:2:1と同一であるものの、非環状エーテルの種類が異なる実施例5(メチルヘキシルエーテル)、実施例6(ジプロピルエーテル)、実施例7(エチルt-ブチルエーテル)及び比較例7(ジブチルエーテル)に対して、25℃において0.1Cで3回駆動した後、10℃において0.1C-0.2C-0.3C-0.5Cの条件下で各放電速度にて3回ずつ駆動した後、再び10℃において0.1Cで駆動する放電プロトコールによる電池のサイクル数に応じた放電容量を評価した結果を
図8に示す。
【0127】
図8を参照すると、電解質中の非水系溶媒としての非環状エーテルであるジプロピルエーテル、エチルt-ブチルエーテル及びメチルヘキシルエーテルはいずれも優れた低温駆動特性を示せるのに対し、ジブチルエーテルは、低温駆動に向いていないことが確認された。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩及び非水系溶媒を含み、
前記非水系溶媒は、
グリコールエーテルと、環状(cyclic)エーテルと、下記の化学式1で示される非環状(acyclic)エーテルと、を含み、
前記非環状エーテルは、前記非水系溶媒の総体積に基づいて、15体積%以下の含量で含まれ、
前記非環状エーテルの総体積に対する前記グリコールエーテルの総体積の割合が5以上である、リチウム硫黄電池用の電解質:
[化学式1]
R
1-O-R
2
(上記の化学式1中、
R
1は、無置換もしくは置換のC
1~C
3のアルキル基であり、R
2は、無置換もしくは置換のC
3~C
20のアルキル基である。)
【請求項2】
前記非環状エーテルは、前記非水系溶媒の総体積に基づいて、
5体積%以上、15体積%以下の含量で含まれる、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項3】
前記非環状エーテルの総体積に対する前記グリコールエーテルの総体積の割合が6.5以上である、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項4】
前記非環状エーテルは、前記非水系溶媒の総体積に基づいて、10体積%以下の含量で含まれ、前記非環状エーテルの総体積に対する前記グリコールエーテルの総体積の割合が6.5以上である、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項5】
前記非水系溶媒の総体積における前記グリコールエーテルの含量が65体積%以上であり、前記環状エーテル及び前記非環状エーテルの含量の和が35体積%以下である、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項6】
前記非環状エーテルは、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、メチルヘキシルエーテル、エチルt-ブチルエーテル、エチルヘキシルエーテル、又はこれらの2種以上を含む、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項7】
前記R
1は、無置換もしくは置換のC
1~C
2のアルキル基であり、
前記R
2は、無置換もしくは置換のC
4~C
10のアルキル基である、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項8】
前記非環状エーテルは、エチルプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、メチルヘキシルエーテル、又はこれらの2種以上の混合物を含む、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項9】
前記グリコールエーテルは、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールメチルエチルエーテル、又はこれらの2種以上を含む、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項10】
前記環状エーテルは、フラン、2-メチルフラン、3-メチルフラン、2-エチルフラン、2-プロピルフラン、2-ブチルフラン、2,3-ジメチルフラン、2,4-ジメチルフラン、2,5-ジメチルフラン、ピラン、2-メチルピラン、3-メチルピラン、4-メチルピラン、ベンゾフラン、2-(2-ニトロビニル)フラン、チオフェン、2-メチルチオフェン、2-エチルチオフェン、2-プロピルチオフェン、2-ブチルチオフェン、2,3-ジメチルチオフェン、2,4-ジメチルチオフェン、2,5-ジメチルチオフェン、又はこれらの2種以上を含む、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項11】
前記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO
4、LiBF
4、LiB
10Cl
10、LiPF
6、LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、LiC
4BO
8、LiAsF
6、LiSbF
6、LiAlCl
4、CH
3SO
3Li、CF
3SO
3Li、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)
2NLi、(SO
2F)
2NLi、(CF
3SO
2)
3CLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、リチウムイミド、又はこれらの2種以上を含む、請求項1に記載のリチウム硫黄電池用の電解質。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のリチウム硫黄電池用の電解質と、
正極活物質を含む正極と、
負極活物質を含む負極と、
を含む、リチウム硫黄電池。
【請求項13】
前記正極活物質は、硫黄元素、硫黄化合物、又はこれらの混合物を含む、請求項12に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項14】
前記正極活物質は、無機硫黄(S
8)、Li
2Sn(n≧1)、ジスルフィド化合物、有機硫黄化合物、炭素-硫黄ポリマー((C
2S
x)
n、xは、2.5~50の整数であり、n≧2)、又はこれらの2種以上の混合物を含む、請求項12に記載のリチウム硫黄電池。
【請求項15】
前記負極活物質は、リチウム金属、リチウム合金、又はこれらの混合物を含む、請求項12に記載のリチウム硫黄電池。
【国際調査報告】