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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】タンパク質分解物質
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/13 20060101AFI20240927BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
C07K1/13 ZNA
C12Q1/02
A61K38/05
A61P43/00 105
C07K19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518336
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 GB2022052408
(87)【国際公開番号】W WO2023047121
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】2113656.9
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500550717
【氏名又は名称】ユニヴァーシティー オブ ダンディー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】チウリ アレッシオ
(72)【発明者】
【氏名】ボンド アダム ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】クライゴン コナー ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】チャン クォク ホ
(72)【発明者】
【氏名】テスタ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】アレッシ ダリオ
(72)【発明者】
【氏名】マッカートニー トーマス
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR55
4B063QS36
4B063QX02
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA14
4C084BA32
4C084CA59
4C084NA14
4C084ZB21
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA51
4H045EA50
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、標的タンパク質にコンジュゲートするホール改変変異体BETブロモドメインを含む融合タンパク質を形成し、タンパク質分解を開始するための分解化合物を使用することによって標的タンパク質を分解する方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IA)の分解化合物。
【化1】
(式中、
Gは、メチル、ハロ、ヒドロキシ、チオール、ハロメチル、アミノ、メトキシ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチル、ハロエチル、アミド、イソプロピル、及びメチルチオからなる群から選択される1個又は2個の置換基で置換されてもよい5員ヘテロアレーンであるか、又はGは、メチル、ハロ、ヒドロキシ及びチオールで置換されてもよい6員アレーン又はヘテロアレーンであり;
Rは、C1-4アルキル又はC1-4ハロアルキルであり;
1は、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、H及びハロからなる群から選択されるいずれか1つであり;
2は、H、C1-3アルキル、C1-3ハロアルキル又はハロであり;
3は、ハロ、ヒドロキシル、チオール、アミド、NR45、C(O)NR45、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ及びC1-6アルキルチオから独立して選択され;
4及びR5は、H及びC1-3アルキルから独立して選択され;
nは、0、1、2、3又は4であり;
Xはハロであり;
D’は、反応性基DとD’-Lを形成するためのプロリンカーとの生成物であり、Lは、D’をBに結合することができる分子であり、Bは、E3ユビキチンリガーゼに結合することができる分子である)
【請求項2】
Gが5員ヘテロアレーンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Gがチオフェンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Gが、
(i)メチル、ハロ、ヒドロキシ、チオール、ハロメチル、アミノ、メトキシ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチル、ハロエチル、アミド、イソプロピル、tert-ブチル及びメチルチオからなる群から選択される1個又は複数個の置換基;又は
(ii)メチル、ハロ、ヒドロキシ、チオール、ハロメチル及びアミノからなる群から選択される1個又は複数個の置換基
で置換されている、請求項2又は3に記載の化合物。
【請求項5】
Gがメチルで2回置換されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
3が、フルオロ、ヒドロキシル、チオール、アミド、NR45、C(O)NR45、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、C1-4アルコキシ及びC1-4アルキルチオから独立して選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
Xがクロロであり、nが0である、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
1が、
(i)C1-4アルキル及びC1-4フルオロアルキル;又は
(ii)メチル又はトリフルオロメチル
からなる群から選択されるいずれか1つである、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
2がHである、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
Rがエチルである、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
D’が、(CH2pC(O)、(CH2qNH、(CH2qS、(CH2qO、(CH2q及び1,2,3-トリアゾリレンからなる群から選択されるいずれか1つであり、pが0~4の整数であるか又は0であり、qが1~4の整数であるか又は1である、請求項1~10のいずれか1項に記載の分解化合物。
【請求項12】
D’がC(O)である、請求項1~10のいずれか1項に記載の分解化合物。
【請求項13】
分解化合物が式(IVA)のものである、請求項1に記載の分解化合物。
【化2】
【請求項14】
Lが式(VIA)のものである、請求項1~13のいずれか1項に記載の分解化合物。
【化3】
(式中、
波線は結合部位を示し;
1は存在していてもよく、O(CH2s、NH(CH2s及びC(O)(CH2sからなる群から選択されるいずれか1つであり;
2は存在していてもよく、O(CH2uC(O)、(CH2uNH、(CH2uO及び(CH2uC(O)からなる群から選択され;
L’は、O(CH2t、CH2、アルキニレン、トリアゾリレン、ピペラジニレン及びピペリジニレンからなる群から選択され;
sは0~4の整数であり、uは1~4の整数であり、tは1~4の整数である)
【請求項15】
1が、O(CH22及びHN(CH22からなる群から選択されるいずれか1つであり;X2がOCH2C(O)又はCH2NHであり;L’がO(CH2tであり、tが2又は3である、請求項14に記載の分解化合物。
【請求項16】
Bが、式(VIIA)~(XIA)のうちのいずれか1つによって表される構造のうちのいずれか1つである、請求項1~15のいずれか1項に記載の分解化合物。
【化4】
(式中、R7は、H又はメチルであり、Zは、F又はCNである)
【請求項17】
式(XIXA)~(XXIA)のうちのいずれか1つである、請求項1~16のいずれか1項に記載の分解化合物。
【化5】
【請求項18】
標的タンパク質を分解するための、請求項1~17のいずれか1項に記載の分解化合物の使用。
【請求項19】
標的タンパク質が、1個又は複数個のホール改変変異体Brd4ブロモドメインを含むポリペプチドで内因的にタグ付けされる、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
ホール改変変異体Brd4ブロモドメインがBrd4BD2L387A又はBrd4BD2L387Vブロモドメインであり、タンパク質がBETタンパク質である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
細胞内で標的タンパク質を分解する効果を研究する方法であって、
ホール改変変異体ブロモドメインを含むポリペプチドに融合した標的タンパク質を含む融合タンパク質を内因的に発現させること;
融合タンパク質を、請求項1~17のいずれか1項に記載の分解化合物に接触させること;及び
標的タンパク質の分解の、細胞に対するあらゆる効果を観察すること
を含む方法。
【請求項22】
標的タンパク質が、ブロモ及び末端外ドメイン(BET)タンパク質、Brd2、Brd3、Brd4及びBrdTからの1個若しくは複数個のホール改変変異体ブロモドメイン、又はそれらの断片を含むブロモドメインで内因的にタグ付けされる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
突然変異が、タンパク質に存在する1カ所又は複数カ所のブロモドメイン、又はそれらの断片を含むブロモドメインに存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ホール改変変異体ブロモドメインが、Brd4BD2L387A、Brd4BD2L387V、Brd4BD1L94A、Brd4BD1L94V、Brd2BD2L383A、Brd2BD2L383V、Brd2BD1L110A、Brd2BD1L110V、Brd3BD2L344A、Brd3BD2L344V、Brd3BD1L70A、Brd3BD1L70V、BrdTBD2L306A、BrdTBD2L306V、BrdTBD1L63A、又はBrdTBD1L63Vブロモドメインである、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
ホール改変変異体Brd4ブロモドメインがBrd4BD2L387A又はBrd4BD2L387Vブロモドメインを含む、請求項22又は23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的タンパク質にコンジュゲートするホール改変変異体BETブロモドメインを含む融合タンパク質を形成し、タンパク質分解を開始するための分解化合物を使用することによって標的タンパク質を分解する方法に関する。ホール改変変異体BETブロモドメイン、特に標的タンパク質にタグ付けされた変異体Brd4ブロモドメインに結合することができる式(I)の化合物も提供する。さらに、本発明は、式(I)の化合物に由来するセグメントを含み、ホール改変変異体Brd4ブロモドメイン、リンカー、及びE3ユビキチンリガーゼに結合することができるセグメントに結合することができる、式(IA)の分解化合物に関する。本発明は、タンパク質、特にホール改変変異体Brd4ブロモドメインで内因的にタグ付けされたタンパク質を分解するための式(IA)の化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
標的タンパク質の分解は、化学生物学及び創薬の強力なモダリティとして確立されている。タンパク質分解ターゲティングキメラ(PROTAC)は、E3ユビキチンリガーゼを目的の標的タンパク質に動員させることによってユビキチンプロテアソームシステムを妨害し、タンパク質のポリユビキチン化、その後のプロテアソーム分解を促進する異種二機能性分子である(Bond, M. J.; Crews, C. M., RSC Chemical Biology 2021, 2 (3), 725-742)。タンパク質を完全に急速に除去する能力は、単一の活性又は相互作用を単にブロックすることとは対照的に、標的タンパク質の生物学的性質、治療可能性を研究し、薬理学的に作用するための魅力的な作用機序を提供する。しかし、PROTACアプローチは、タンパク質標的化に関与する小分子リガンドの利用能によって制限される。良好なリガンドが多くの標的タンパク質に関して利用可能であるが、ヒトプロテオームの大部分はこのような結合リガンドは存在しない(Oprea, T. I. et al., Nat Rev Drug Discov. 2018, 17 (5), 317-332)。したがって、その多くが生物学性質及び疾患において依然として未探索なままである、リガンドと結合させることができない(unligandable)タンパク質に取り組むための新規の方法論を開発することが重要である。
【0003】
結合リガンドを有さないタンパク質に作用させるために、相補的戦略には、「デグロンタグ」とも呼ばれるタグを添加することによって目的のタンパク質をコードする遺伝子を改変することが伴い、これによって、小分子をE3リガーゼに結合させ、E3リガーゼを直接動員させ、標的タンパク質をユビキチン化し、分解するのを可能にする。タグベースのデグロンシステムの例としては、これによって、標的タンパク質が分子接着性オーキシン存在下で(Natsume, T.; Kiyomitsu, T.; Saga, Y.; Kanemaki, M. T., Cell Reports 2016, 15 (1), 210-218.)、又は変異体TIR1を選択的に標的とする、バンプを有する(bumped)類似体存在下で(Yesbolatova, A. et al., Nat Comm. 2020, 11 (1), 5701.)植物のカリン RING E3リガーゼTIR1によって認識されるAID/IAA17デグロン配列と融合されている、オーキシン誘発性デグロン(AID);一端では標的タンパク質に、もう一端ではE3リガーゼフォンヒッペルリンダウ(VHL)に融合したHaloタグと共有結合を形成するクロロアルカンウォーヘッド(warhead)を有する二機能性分子であるHaloPROTAC(Tovell, H. et al., ACS Chem Biol. 2019, 14 (5), 882-892);及び一端では標的タンパク質に融合したFKBP12F36Vタグに、もう一端ではセレブロン(CRBN)又はVHLリガーゼに結合する二機能性分子であるdTAG(Nabet, B. et al., Nat. Chem. Biol. 2018, 14 (5), 431-441)がある。これらのアプローチは、細胞内で及びin vivoで標的タンパク質の分解を誘導するのに成功裏に使用されてきたが、それら全てに不利益及び制限が認められた。例えば、AID法は、漏出しやすい場合があり(オーキシン投薬前でも背景的な標的分解が生じる)、作用するのに高濃度のオーキシンを必要とし、外来植物E3リガーゼの発現を可能にするための不便な追加の操作も必要とし;全ての制限がオフターゲット効果の可能性につながり得る。HaloPROTACは、タグ付きタンパク質と共有結合で反応するため、最大限の分解を誘導するためにタグ付きタンパク質の化学量論的改変を必要とし、したがって、非共有結合分解物質の利点である準化学量論の触媒的作用様式が欠けており;結果的にHaloPROTACは、完全な標的分解を達成することができない傾向にあり、高用量でさえDmax約85~90%でプラトーになる傾向がある。CRBNベースのdTAGは、化学的不安定性及びオフターゲット効果を示す場合があるフタルイミドベースのリガンドを有している(Ishoey, M. et al., ACS Chem Biol. 2018, 13 (3), 553-560)。
【0004】
小分子による古典的阻害と比較すると、PROTACによって、いくつかの潜在的な利点が提供される:(1)下流の結果が全ての場合において同じである(すなわち、細胞内タンパク質レベルで枯渇する)ため、PROTACは、遺伝子的ツール、例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピン型RNA(shRNA)、又はクラスター化された規則的に間隔の短い反復配列(CRISPR)を使用したノックダウンを介して観察されるものと類似した表現型を発揮することが予想される。標的タンパク質が消失すると、生物学的な機能複合体の形成が撹乱されることによって追加の効果を与えることができる。(2)PROTACは、触媒的に作用することができる(すなわち、1個のPROTAC分子が複数のPOI分子と入れ替わることができるように再利用することができる)ため、「準化学両論的に」(すなわち、標的タンパク質の部分的占有率で)作用することができる。この結果として、PROTACは、標的タンパク質単独へのその結合親和性に基づいて予想されるものよりも高い標的タンパク質分解を示すことが多い。(3)PROTACによる標的タンパク質の分解によって、POIの耐性突然変異及び/又は上方調節を抑制することができる。
【0005】
ホール改変変異体ブロモドメインで内因的にタンパク質をタグ付けし、その結果、そのようなタンパク質が、ホール改変変異体ブロモドメインに結合することができるセグメントを含む化合物によって分解され得るようにすることが近年報告されている。XY-06-007は、Brd4及びCRBNベースのリガンドに結合するセグメントの一部として「バンプ」を含む化合物であり、R. P. Nowak et al. in J. Med. Chem., 2021, 64, 15, 11637-11650によって開発されている。XY-06-007は、Brd4BD1 L94Vタグを含むタンパク質を分解するために使用される。本発明は、代替のタグベースのデグロンシステムを提供する。
【発明の概要】
【0006】
上述の場合、標的タンパク質の分解に関するPROTACアプローチは、標的タンパク質に結合する小分子リガンドの利用能に限定されており、リガンドと結合させることができないタンパク質に取り組むための新規の方法論を開発することが重要である。本発明の発明者らは、ホール改変変異体Brd4ブロモドメインでタンパク質を内因的にタグ付けした。得られたタンパク質は、ホール改変変異体BETブロモドメインに結合することができるセグメントと、リンカーと、E3ユビキチンリガーゼに結合することができるセグメントとを含む分解化合物によって分解され得る。分解化合物は非共有結合で結合し、存在し得る他のタンパク質よりもタグ付きタンパク質に関して選択的である。このようなシステムは、遺伝子操作されたモデルにおける標的タンパク質分解の機能的結果の評価に好適である。
第1の教示において、細胞内で標的タンパク質を分解する効果を研究する方法であって、ホール改変変異体ブロモドメインを含むポリペプチドに融合した標的タンパク質を含む融合タンパク質を内因的に発現させること;
融合タンパク質を、融合タンパク質のホール改変変異体ブロモドメインに特異的に結合することができるセグメントと、リンカーと、エロンギンB、エロンギンC及びカリン-2を含み、E3ユビキチンリガーゼ活性を有するタンパク質複合体に結合することができるフォンヒッペルリンダウ(VHL)リガンドとを含む分解化合物に接触させること;及び
標的タンパク質の分解の、細胞に対するあらゆる効果を観察すること
を含む方法が提供される。
【0007】
1つの実施形態において、分解化合物は、本明細書において定義される式1Aによる化合物又は実施形態、及び本明細書において定義される選択された化合物である。
1つの実施形態において、標的タンパク質は、ブロモ及び末端外ドメイン(BET)タンパク質、Brd2、Brd3、Brd4及びBrdTからの1個又は複数個のホール改変変異体ブロモドメインで内因的にタグ付けされており(融合タンパク質を生成するために)、突然変異は、タンパク質に存在する1カ所若しくは複数カ所のブロモドメイン、又はそれらの断片を含むブロモドメインに存在し得る。
1つの実施形態において、ホール改変変異体ブロモドメインは、Brd4BD2L387A、Brd4BD2L387V、Brd4BD1L94A、Brd4BD1L94V、Brd2BD2L383A、Brd2BD2L383V、Brd2BD1L110A、Brd2BD1L110V、Brd3BD2L344A、Brd3BD2L344V、Brd3BD1L70A、Brd3BD1L70V、BrdTBD2L306A、BrdTBD2L306V、BrdTBD1L63A、又はBrdTBD1L63Vブロモドメインである。1つの実施形態において、ホール改変変異体Brd4ブロモドメインは、Brd4BD2L387A又はBrd4BD2L387Vブロモドメインである。ナンバリングは、UniProtによるものである。
【0008】
E3ユビキチンリガーゼに結合すると、ユビキチンが融合タンパク質に動員され、結合し、細胞内でユビキチン-プロテアソーム経路による融合タンパク質の分解が生じることは理解されるであろう。
標的タンパク質は、細胞によって発現されるいずれのタンパク質であってもよい。例示的な標的タンパク質としては、酵素、構造タンパク質、ホルモン、細胞表面受容体、腫瘍関連タンパク質などがある。標的タンパク質は、疾患と関連するタンパク質であってもよく、及び/又は変異体若しくは野生型タンパク質であってもよい。例えば、特定の疾患は、変異体タンパク質の発現と関連する場合があり、本教示は、変異体タンパク質が分解された場合、細胞に何が起こっているかを研究することを可能にする。
細胞は、いずれの好適な真核細胞であってもよい。1つの実施形態において、真核細胞は哺乳動物(例えば、ヒト)細胞である。細胞は、例えば、正常細胞(非疾患)又は疾患細胞であってもよい。疾患細胞は、疾患を呈する対象由来の細胞であってもよい。例えば、対象はがんに罹患していてもよく、細胞はがん細胞であってもよく;対象は肝臓疾患に罹患していてもよく、細胞は対象から得られた肝臓細胞であってもよく;対象は腎臓疾患を有していてもよく、細胞は対象から得られた腎細胞であってもよい。細胞はまた、以前の好適な対象由来の細胞株であってもよい。
【0009】
本明細書において記載する方法は、細胞内で標的タンパク質を分解するあらゆる効果の研究を可能にする。標的タンパク質を分解するあらゆる効果を観察し得るために、比較は、分解化合物が添加されていない対応する細胞で行ってもよいことは理解されるであろう。いずれの分解されたタンパク質も、タンパク質を同定し、定量化するための標準的な方法を使用して、前記細胞中の又はその表面上の非分解又は分解融合タンパク質を測定することによって定量化してもよい。これらの方法には、とりわけ、レポーター、例えば、蛍光又は他のレポーターにリンクされたタンパク質特異的抗体を使用することが含まれ、このような方法としては、多数のものの中でも、免疫測定法(例えば、とりわけELISA)及び免疫ブロット、吸光度アッセイ、質量分析法及びプロテオミクス法がある。試料中の特異的タンパク質を定量化するための方法は当技術分野において周知であり、本開示による方法に容易に適合される。分解されたタンパク質及びこのような分解の、細胞機能、例えば、細胞の成長及び/又は増殖(例えば、細胞死)又は細胞の他の特徴(例えば、生物学的、生理学的なもの)に対する影響に関してアッセイすると、細胞の成長及び機能に対する目的のタンパク質の重要性が証明され、例えば、標的タンパク質が、病態又は状態のモジュレーターであるかどうか、したがって前記病態又は状態を処置するための潜在的な標的(薬物を含む生物活性剤)であるかどうかが確立される。医薬標的として標的タンパク質を同定すると、標的タンパク質の潜在的な阻害剤及び/又は作動剤としての活性を示す化合物及び他の生物活性剤を同定するためのアッセイの開発が可能になるであろう。
【0010】
上述の場合、標的タンパク質は、分解化合物と接触する前に、BETタンパク質、Brd2、Brd3、Brd4及びBrdT内に含まれる1個又は複数個のホール改変変異体ブロモドメインを含むポリペプチドで内因的にタグ付けされる(融合される)。いくつかの実施形態において、ホール改変変異体ブロモドメインを含むポリペプチドは、Brd2、Brd3、Brd4又はBrdTからのものであり、突然変異は、Brd4BD2L387A、Brd4BD2L387V、Brd4BD1L94A、Brd4BD1L94V、Brd2BD2L383A、Brd2BD2L383V、Brd2BD1L110A、Brd2BD1L110V、Brd3BD2L344A、Brd3BD2L344V、Brd3BD1L70A、Brd3BD1L70V、BrdTBD2L306A、BrdTBD2L306V、BrdTBD1L63A、又はBrdTBD1L63Vである。
従来のアミノ酸1文字が本開示全体にわたって使用されており、例えば、L387Vは、タンパク質の387位のロイシンがバリンに置換されていることを意味することが理解される。
【0011】
細胞は、標的タンパク質をコードする内在性核酸が、ホール改変変異体ブロモドメインを含むポリペプチドに融合した(又はそれでタグ付けされた)標的タンパク質を含む融合タンパク質を発現するように改変されるような、周知の組換え核酸技術を使用して改変してもよい。標的タンパク質をコードする核酸は、ホール改変変異体ブロモドメインをコードする核酸の5’又は3’インフレーム挿入を有することによって改変してもよい。このように、ホール改変変異体ブロモドメインを含むポリペプチドは、例えば、標的タンパク質のN又はC末端に融合してもよい。これを達成する好適な方法としては、相同的組換え(CRISPR/Cas9、及び当技術分野において既知のトランスポゾン介在システム技術を含む)及び当技術分野において既知の非相同末端接合技術がある。
本発明による融合タンパク質は、融合遺伝子の操作によって作成された組換え融合タンパク質である。これは、典型的には、標的タンパク質をコードする配列から終止コドンを除去し、次いで、本明細書において記載する組換え技術によって、ホール改変変異体ブロモドメインタンパク質をコードする配列又はそれらの断片をインフレームで付加することを伴う。次いで、導入されたホール改変変異体ブロモドメイン配列は、単一のタンパク質として、細胞によって標的タンパク質配列とともに発現されることになる。融合タンパク質は、標的とホール改変ブロモドメインタンパク質の両方の全配列、又はどちらか一方の一部のみを含むように操作することができる。2個の実体がタンパク質である場合、タンパク質が独立して折りたたまれ、予想通りにふるまう可能性が高くなるようにするスペーサーペプチドを添加してもよい。
【0012】
したがって、1つの態様において、標的タンパク質を含む融合タンパク質をコードしており、本明細書において定義されるホール改変変異体ブロモドメインを含むポリペプチドに融合した核酸配列であって、核酸配列が、標的タンパク質をコードし、ホール改変変異体ブロモドメインを含むポリペプチドをコードする核酸の5’-又は3’-インフレーム挿入を有する核酸配列を含み、これは、発現した場合に本明細書において記載する分解化合物によって結合することができる融合タンパク質をもたらす、核酸配列が提供される。
1つの実施形態において、核酸配列は、細胞内で標的タンパク質をコードする内在性核酸配列を置き換えることを意図する。
上記の態様の核酸配列を含むベクター、例えば、プラスミド又はウイルスベクターがさらに提供される。
【0013】
そのゲノムが上記の態様の核酸配列を発現するように改変されている、細胞(体細胞、胚性幹細胞、人工多能性細胞を含む)及び特に非ヒト動物を含む動物がさらに提供される。上述のように、いくつかの実施形態において、本教示の融合タンパク質をコードする核酸配列は、内在性標的タンパク質をコードする核酸を置き換えることができる。このように、標的タンパク質は、本明細書において記載する融合タンパク質の形態で細胞又は動物内でのみ発現することができる。
本明細書において記載する融合タンパク質の開発に加えて、本発明者らは、式(I)の化合物が、タグ付き融合タンパク質内のホール改変変異体Brd4ブロモドメインに選択的に結合することができることを見出した。さらに、式(IA)の分解化合物は、タグ付きタンパク質内のホール改変変異体Brd4ブロモドメインに選択的に結合し、その分解を促進することができる。その結果として、式(IA)の分解化合物は、遺伝子操作されたモデルにおける標的タンパク質分解の機能的結果を評価するのに好適な分解物質である。
【0014】
したがって、別の態様から見ると、本開示は、細胞内で標的タンパク質を分解する効果を研究する方法(例えば、上述の方法)において使用するための式(I)の化合物を提供する。
【化1】
(式中、
Gは、メチル、ハロ、ヒドロキシ、チオール、ハロメチル、アミノ、メトキシ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチル、ハロエチル、アミド、イソプロピル及びメチルチオからなる群から選択される1個又は2個の置換基で置換されてもよい5員ヘテロアレーンであるか、又はGは、メチル、ハロ、ヒドロキシ及びチオールで置換されてもよい6員アレーン又はヘテロアレーンであり;
Rは、C1-4アルキル又はC1-4ハロアルキルであり;
1は、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、H及びハロからなる群から選択されるいずれか1つであり;
2は、H、C1-3アルキル、C1-3ハロアルキル又はハロであり;
3は、ハロ、ヒドロキシル、チオール、アミド、NR45、C(O)NR45、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ及びC1-6アルキルチオから独立して選択され;
4及びR5は、H及びC1-3アルキルから独立して選択され;
nは、0、1、2、3又は4であり;
Dは反応性基であり;
X はハロである)
【0015】
上述の場合、式(I)の化合物は、タグ付き融合タンパク質内のホール改変変異体Brd4ブロモドメインに選択的に結合することができる。したがって、さらなる態様から見ると、細胞内で標的タンパク質を分解する効果を研究する方法(例えば、上述の方法)において使用するための式(IA)の分解化合物が提供される。
【化2】
(式中、G、R、R1、R2、R3、X及びnは、上記で定義されたとおりであり、D’は、反応性基D(上記で定義されたとおり)とD’-Lを形成するためのプロリンカーとの生成物であり、Lは、D’をBに結合することができる分子であり、Bは、E3ユビキチンリガーゼに結合することができる分子である)
【0016】
理論に束縛されることなく、本発明者らは、式(IA)と類似の構造を有するが、Gがメトキシ置換されたベンゼン環である分子が、E3リガーゼのフォンヒッペルリンダウ(VHL)基質認識サブユニットと安定な構造を形成することができないことを見出した。本発明者らは、ベンゼン環のメトキシ置換基がE3リガーゼのVHLサブユニットのHis110と立体的にクラッシュし、VHL結合剤を使用した場合に検出可能なタンパク質分解を得ることができないことを見出した。したがって、Gのサイズ特性が驚くことに重要である。メトキシ置換ベンゼンをジメチルチオフェンで置き換えた場合、得られる式(IA)の化合物は非常に有効なタンパク質分解物質である。
上述の場合、式(IA)の分解化合物は、タグ付き融合タンパク質内のホール改変変異体Brd4ブロモドメインに選択的に結合し、その分解を促進することができる。したがって、さらに別の態様から見ると、目的のタンパク質、例えば、ホール改変変異体Brd4ブロモドメインタグを含むタンパク質を分解するための、上述の分解化合物の使用が提供される。
【0017】
詳細な説明
本発明は、標的タンパク質の分解に関するPROTACアプローチを使用する。PROTACは、2個の活性ドメインとリンカーとを含む。一方の活性ドメインは、E3ユビキチンリガーゼと結合することができ、もう一方は、標的タンパク質の分解を意図して標的タンパク質に結合する。一般的に、このアプローチは標的タンパク質に結合する小分子リガンドの利用能に限定される。本発明者らは、式(I)の化合物がタグ付き融合タンパク質内のホール改変変異体Brd4ブロモドメインに選択的に結合することができることを見出した。式(I)の化合物は、ホール改変変異体Brd4ブロモドメインでタグ付けされ得るいずれのタンパク質にも結合することができる。さらに、式(IA)の分解化合物は、タグ付き融合タンパク質内のホール改変変異体Brd4ブロモドメインに選択的に結合し、その分解を促進することができる。したがって、式(IA)の分解化合物は、従来のPROTACアプローチによって分解するのが通常困難であるか又は不可能であろう標的タンパク質を分解することができる(例えば、標的タンパク質に結合する小分子リガンドが利用できない場合)。式(IA)の分解化合物は、遺伝子操作されたモデルにおける標的タンパク質分解の機能的結果を評価するのに好適な分解物質である。
【0018】
以下の考察において、多くの用語が参照されるが、文脈によって逆が示されていない限り、これらは以下の意味を有すると理解されるべきである。化合物、特に本明細書において記載する化合物を定義するために本明細書において使用される命名法は、化学化合物に関するInternational Union of Pure and Applied Chemistry(IUPAC)の規則、特に「IUPAC Compendium of Chemical Terminology (Gold Book)」に従うことを意図する(A. D. Jenkins et al., Pure & Appl. Chem., 68, 2287-2311 (1996)を参照のこと)。誤解を避けるため、IUPAC規則が本明細書において提供される定義と逆である場合、本明細書における定義が優先される。
「含むこと(comprising)」という用語又はその変形は、規定された要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群を包含するが、その他の要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群を排除するものではないことを示唆することは理解されるであろう。
【0019】
「からなること(consisting)」という用語又はその変形は、規定された要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群を包含し、その他の要素、整数若しくは工程又は要素、整数若しくは工程の群を排除することを示唆することは理解されるであろう。
「アルキル」という用語は、当技術分野において周知であり、いずれかの炭素原子から水素原子を除去することによる、アルカン由来の一価の基を定義し、「アルカン」という用語は、一般式Cn2n+2を有する非環式の分岐状又は非分岐状の炭化水素を定義することを意図し、式中、nは1以上の整数である。C1-4アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル及びtert-ブチルからなる群から選択されるいずれか1つを指す。
「ハロアルキル」という用語は、少なくとも1つの水素原子が、ハロ原子、例えば、フルオロ、クロロ又はブロモ、典型的には、フルオロで置き換えられたアルキル基を指す。トリフルオロメチルはハロアルキルの例である。
【0020】
「アレーン」という用語は、単環式又は多環式芳香族炭化水素を定義し、「芳香族」は、仮説的な局在構造のものよりも著しく大きい安定性を備えた(非局在化に起因して)環式共役分子実体を定義する。ヒュッケル則は、芳香族特性を評価するために当技術分野において使用されることが多く;(4n+2)個のπ電子(式中、nは負の整数ではない)を含む三方向に(又はときとして二方向に)混成された原子の単環式平面(又はほぼ平面)系は、芳香族特性を示すことになる。規則は一般的にn=0~5に限定される。
「ヘテロアレーン」という用語は、1つ又は複数のヘテロ原子を含む単環式又は多環式芳香族炭化水素を定義する。
「アルコキシ」という用語は、ヒドロキシ基の水素原子を除去することによるアルコール由来の一価の基を定義する。「アルコール」という用語は、1個の水素原子がヒドロキシ基で置き換えられたアルカンを指す。メトキシはC1アルコキシ基の例である。
「アルキルチオ」という用語は、チオ基の水素原子を除去することによるアルキルチオール由来の一価の基を定義する。「アルキルチオール」という用語は、1個の水素原子がチオ基で置き換えられたアルカンを指す。メチルチオはC1アルキルチオ基の例である。
【0021】
「ハロアルコキシ」という用語は、少なくとも1つの水素原子が、ハロ原子、例えば、フルオロ、クロロ又はブロモ、典型的には、フルオロで置き換えられたアルコキシ基を指す。トリフルオロメトキシはC1ハロアルコキシの例である。
「立体異性体」という用語は、同一の分子式及び結合原子の配列を有するが、空間におけるそれらの原子の配置が異なる異性体を指すために本明細書において使用する。
「エナンチオマー」という用語は、互いに鏡像であり、重ね合わせることができない、すなわち移動及び剛体回転変換によって一致させることができない分子実体のペアのうちの一方を定義する。エナンチオマーはキラル分子であり、すなわちその鏡像と区別可能である。
「ラセミ」という用語は、ラセミ体に関するものとして本明細書において使用する。ラセミ体は、エナンチオマーのペアの実質的に等モルの混合物を定義する。
「ジアステレオ異性体」という用語(ジアステレオマーとしても知られる)は、鏡像として関連しない立体異性体を定義する。
【0022】
「溶媒和物」という用語は、溶質、例えば、化合物又は化合物の塩と溶媒とを含む複合体を指すために本明細書において使用する。溶媒が水である場合、溶媒和物は、水和物、例えば、基質1分子あたりに存在する水分子の数に応じて、一水和物、二水和物、三水和物などと呼ばれる場合がある。
「同位体」という用語は、原子核の原子番号は必然的に同じであるが、中性子の数が異なるために質量数が異なる、特定の化学元素の変形物を定義するために本明細書において使用する。
「結合すること(binding)」又は「中に収容される(accommodating into)」という用語は、融合タンパク質のホール改変変異体ブロモドメインと本発明の化合物との相互作用(例えば、ホール改変変異体Brd4ブロモドメインの「ホール」によって収容される本発明の化合物の「バンプ」)に関連して本明細書において使用する場合、ホール改変変異体ブロモドメインと化合物との会合を指す。会合は、ホール改変変異体ブロモドメインと化合物との間のいずれの引力相互作用も含む。引力相互作用の例としては、水素結合、ファンデルワールス力、双極子-双極子力、双極子誘起双極子力、イオン-双極子力、イオン誘起双極子力及びイオン結合がある。
【0023】
上述の場合、細胞内で標的タンパク質を分解する効果を研究する方法において使用するための式(I)の化合物が提供される。
【化3】
(式中、
Gは、メチル、ハロ、ヒドロキシ、チオール、ハロメチル、アミノ、メトキシ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチル、ハロエチル、アミド、イソプロピル及びメチルチオからなる群から選択される1個又は2個の置換基で置換されてもよい5員ヘテロアレーンであるか、又はGは、メチル、ハロ、ヒドロキシ及びチオールで置換されてもよい6員アレーン又はヘテロアレーンであり;
Rは、C1-4アルキル又はC1-4ハロアルキルであり;
1は、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、H及びハロからなる群から選択されるいずれか1つであり;
2は、H、C1-3アルキル、C1-3ハロアルキル又はハロであり;
3は、ハロ、ヒドロキシル、チオール、アミド、NR45、C(O)NR45、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ及びC1-6アルキルチオから独立して選択され;
4及びR5は、H及びC1-3アルキルから独立して選択され;
nは、0、1、2、3又は4であり;
Dは反応性基であり;
Xはハロである)
【0024】
上述の場合、理論に束縛されることなく、本発明者らは、式(IA)と類似の構造を有するが、Gがメトキシ置換ベンゼン環である場合、分子は、E3リガーゼのフォンヒッペルリンダウ(VHL)基質認識サブユニットと安定な構造を形成することができないことを見出した。本発明者らは、ベンゼン環のメトキシ置換基がE3リガーゼのVHLサブユニットのHis110と立体的にクラッシュし、VHL結合剤を使用した場合に検出可能なタンパク質分解を得ることができないことを見出した。しかし、メトキシ置換ベンゼンをより小さい基、例えば、ジメチルチオフェンで置き換えた場合、得られる式(IA)の化合物は非常に有効なタンパク質分解物質である。したがって、化合物(I)及び(IA)のGは、メトキシベンゼンよりも立体的嵩高が低い。
【0025】
したがって、いくつかの実施形態において、Gが6員アレーン又はヘテロアレーンである場合、それは置換されていない。好適な6員アレーン及びヘテロアレーンの例としては、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン及びピリダジンがある。いくつかの実施形態において、Gの6員アレーン又はヘテロアレーンは、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン又はピラジンであり、典型的には、ベンゼンである。
好適な5員ヘテロアレーンの例としては、チオフェン、フラン、ピロール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソチアゾール及びイソオキサゾールがある。いくつかの実施形態において、Gの5員ヘテロアレーンは、チオフェン、フラン、ピロール及びチアゾール、例えば、チオフェンからなる群から選択されるいずれか1つである。
Gが5員ヘテロアレーンである場合、それは、メチル、ハロ、ヒドロキシ、チオール、ハロメチル、アミノ、メトキシ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチル、ハロエチル、アミド、イソプロピル及びメチルチオからなる群から選択される1個又は2個の置換基で置換されてもよい。ときとして、Gの5員環は、メチル、ハロ(例えば、フルオロ)、ヒドロキシ、チオール、ハロメチル(例えば、トリフルオロメチル)及びアミノからなる群から選択される1個又は複数個の置換基で置換されてもよい。多くの場合、Gの5員環は、メチル、フルオロ、ヒドロキシ、チオール及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1個又は複数個の置換基で置換されてもよい。典型的には、Gの5員環はメチルで置換されてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態において、Gは、置換されてもよい5員ヘテロアレーンであり、典型的には、置換されてもよいチオフェンである。いくつかの実施形態において、Gは、1回又は2回置換されたチオフェンである。いくつかの実施形態において、Gは、メチルで1回又は2回置換されたチオフェンである。典型的には、Gは、メチルで2回置換されたチオフェンである。
上述の場合、Xはハロ、例えば、クロロ、フルオロ、ブロモ又はヨードである。いくつかの実施形態において、Xはクロロである。
3は、ハロ(例えば、フルオロ)、ヒドロキシル、チオール、アミド、NR45、C(O)NR45、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル(例えば、C1-6フルオロアルキル)、C1-6アルコキシ及びC1-6アルキルチオから独立して選択され、R4及びR5は、H及びC1-3アルキルから独立して選択される。多くの場合、R3は、ハロ(例えば、フルオロ)、ヒドロキシル、チオール、アミド、NH2、N(CH32、C(O)NH2、C(O)N(CH32、C1-3アルキル、C1-3ハロアルキル(例えば、C1-3フルオロアルキル)、C1-3アルコキシ及びC1-3アルキルチオから独立して選択される。多くの場合、R3は、ハロ(例えば、フルオロ)、ヒドロキシル、チオール、アミド、NH2、N(CH32、C(O)NH2、C(O)N(CH32、メチル、トリフルオロメチル、メトキシ及びメチルチオから独立して選択される。典型的には、R3は、フルオロ、ヒドロキシル、チオール、アミド、NH2、及びN(CH32から独立して選択される。
【0027】
上述の場合、R3置換基の数nは、0、1、2、3又は4である。多くの場合、nは、0、1又は2、例えば、0又は1である。いくつかの実施形態において、nは0である。
1は、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル(例えば、C1-4フルオロアルキル)、H及びハロ(例えば、フルオロ)からなる群から選択されるいずれか1つである。多くの場合、R1は、C1-4アルキル又はC1-4ハロアルキル(例えば、C1-4フルオロアルキル)である。いくつかの実施形態において、R1は、メチル又はトリフルオロメチルであり、典型的には、メチルである。
2は、H、C1-3アルキル、C1-3ハロアルキル(例えば、C1-3フルオロアルキル)又はハロ(例えば、フルオロ)である。多くの場合、R2は、H、メチル、エチル、トリフルオロメチル又はフルオロである。いくつかの実施形態において、R2は、H、メチル、トリフルオロメチル又はフルオロである。典型的には、R2はHである。
【0028】
上述の場合、Rは、C1-4アルキル又はC1-4ハロアルキルである。R基は、ホール改変変異体Brd4ブロモドメインの「ホール」によって収容される「バンプ」を提供する。理論に束縛されることなく、本発明者らは、式(I)及び(IA)の化合物(水素ではないR基を含む)は、ホール改変変異体Brd4ブロモドメインの「ホール」に結合すること又は収容されることが可能であるが、非改変Brd4ブロモドメインの結合部位に結合すること又は収容されることはできないことを見出した。したがって、式(I)及び式(IA)の化合物は、ホール改変変異体Brd4ブロモドメインに選択的に結合すること又は選択的に収容されることができ、一方、Rが水素である類似の化合物は選択的ではない。大きなR基(例えば、C5-8アルキル又はC5-8ハロアルキル)は、大きなホールを含むホール改変変異体Brd4ブロモドメインに結合するか又は収容されるために使用することができることは想定される。
多くの場合、Rは、C1-3アルキル又はC1-3フルオロアルキルである。典型的には、Rは、エチル、プロピル、フルオロエチル及びフルオロプロピルを含む群から選択されるいずれか1つである。いくつかの実施形態において、Rはエチルである。
Dは反応性基である。「反応性基」という用語は、第2の化合物(典型的には、プロリンカー化合物)と反応して第2の化合物との結合を形成することができるいずれかの基を指す。ただし、Dは化合物(I)とプロリンカー分子とを結合させてリンカーへの結合を形成することができるという条件で、Dが正確に何であるかは重要ではなく、式(I)の化合物は特定のD基に限定される必要はない。
【0029】
多くの場合、Dは、(CH2pC(O)OH、(CH2pC(O)Cl、(CH2pC(O)Br、(CH2qNH2、(CH2qN(C1-3アルキル)H、(CH2qSH、(CH2qOH、(CH2qBr、(CH2qI、(CH2q3及び(CH2qCCHからなる群から選択されるいずれか1つである;式中、pは0~4の整数であり、qは1~4の整数である。多くの場合、pは、0、1又は2であり、典型的には0である。多くの場合、qは1又は2であり、典型的には1である。いくつかの実施形態において、pは0であり、qは1である。
Dは、(CH2pC(O)OH、(CH2pC(O)Cl、(CH2pC(O)Br、(CH2qNH2、(CH2qN(C1-3アルキル)H、(CH2qSH及び(CH2qOHからなる群から選択されるいずれか1つであることが多い。通常、Dは、(CH2pC(O)OH、(CH2pC(O)Cl及び(CH2pC(O)Brからなる群から選択されるいずれか1つである。いくつかの実施形態において、DはC(O)OHである。
【0030】
誤解を避けるため、上記で挙げる官能基と同じ方法で機能する基は、前記官能基の等価の基として含まれる。例えば、DがC(O)OHである場合、プロトン化された変形基、例えばC(O)+HOH(式中、カルボニル基は、酸素原子でプロトン化されている)が含まれる。
Gがチオフェンである場合、それは、2位及び3位で又は3位及び4位でジアゼピン環に結合していてもよい。誤解を避けるため、2、3及び4位は、以下で示す通りである。
【化4】
【0031】
Gがチオフェンである場合、それは典型的には、2位及び3位でジアゼピン環に結合しており、すなわちいくつかの実施形態において、化合物は式(II)のものである。
【化5】
式中、R6は、Gの置換基であり(Gが5員ヘテロアレーンである場合)、mは置換基の数である。誤解を避けるため、Gが5員ヘテロアレーンである場合のGの置換基に関して本明細書において記載する実施形態は、この実施形態のR6に準用される。例えば、R6は、メチル、ハロ(例えば、フルオロ)、ヒドロキシ、チオール、ハロメチル(例えば、トリフルオロメチル)及びアミノ、典型的にはメチルからなる群から独立して選択してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態において、R1はメチルであり、R2は水素であり、nは0であり、Gは、2位及び3位でジアゼピンに結合しているチオフェンであり、Xはクロロであり、すなわち化合物は式(III)のものである。
【化6】
【0033】
いくつかの実施形態において、R1はメチルであり、R2は水素であり、nは0であり、Gは、2位及び3位でジアゼピンに結合しているチオフェンであり、Xはクロロであり、DはC(O)OHであり、すなわち化合物は式(IIIa)のものである。
【化7】
【0034】
典型的には、化合物は、式(IV)、(IVa)及び(IVb)のうちのいずれか1つである。
【化8】
いくつかの実施形態において、化合物は式(IV)のものである。
本発明の化合物は、以下のアスタリスクで同定される炭素原子におけるキラリティーによって異なるジアステレオ異性体で存在する。
【化9】
【0035】
全ての立体異性体、並びにエナンチオマー及びラセミ混合物を含むその混合物は発明の範囲内に含まれる。式Iの化合物の個々の立体異性体、すなわち、他の立体異性体の5%未満、2%未満又は1%未満(例えば、1%未満)を含む化合物も含まれる。いずれの割合の立体異性体の混合物、例えば、実質的に等量の2種類のエナンチオマーを含むラセミ混合物も本発明の範囲内に含まれる。
ジアステレオ異性体は、従来技術、例えば、クロマトグラフィー又は分別結晶化を使用して分離してもよい。さまざまな立体異性体は、従来技術、例えば分別結晶化又はHPLC技術を使用して、化合物のラセミ混合物又は他の混合物を分離することによって単離してもよい。或いは、所望の光学異性体は、ラセミ化又はエピマー化をもたらすことのない条件下で適切な光学的に活性出発材料の反応によって作製してもよい。
【0036】
多くの場合、本発明の化合物はエナンチオマー純粋である。多くの場合、化合物は式(Ia)のものである。
【化10】
【0037】
典型的には、化合物は、式(V)、(Va)及び(Vb)のうちのいずれか1つである。
【化11】
いくつかの実施形態において、化合物は式(V)のものである。
上述の場合、式(I)の化合物は、タグ付きタンパク質内のホール改変変異体Brd4ブロモドメインに選択的に結合すること又は収容されることができる。したがって、別の態様から見ると、細胞内で標的タンパク質を分解する効果を研究する方法における使用に使用するための式(IA)の分解化合物が提供される。
【0038】
【化12】
(式中、G、R、R1、R2、R3、X及びnは上記で定義されたとおりであり、D’は、反応性基D(上記で定義されたもの)とD’-Lを形成するためのプロリンカーとの生成物であり、Lは、D’をBに結合することができる分子であり、Bは、E3ユビキチンリガーゼに結合することができる分子である)。
【0039】
誤解を避けるため、式(I)に関して本明細書において記載する実施形態は、式(IA)に準用される。例えば、分解化合物は、式(II)、(III)、(IIIa)、(IV)、(IVa)、(IVb)、(IVc)、(Ia)、(V)、(Va)、(Vb)又は(Vc)のうちのいずれか1つであってもよく、ただし、D又はC(O)OHは、D’-L-B又はC(O)-L-Bでそれぞれ置き換えられる。
本発明者らは、式(IA)と類似の構造を有するが、Gがメトキシ置換ベンゼン環である分子は、E3リガーゼのフォンヒッペルリンダウ(VHL)基質認識サブユニットと安定な構造を形成することができないことを見出した。理論に束縛されるものではないが、ベンゼン環のメトキシ置換基がE3リガーゼのVHLサブユニットのHis110と立体的にクラッシュし、VHL結合剤を使用した場合に検出可能なタンパク質分解を得ることができない。したがって、サイズ特性Gが驚くことに重要である。メトキシ置換ベンゼンをジメチルチオフェンで置き換えた場合、得られる式(IA)の化合物は非常に有効なタンパク質分解物質である。
上述の場合、D’は反応性基D(上記で定義されたもの)とD’-Lを形成するためのプロリンカーとの生成物である。プロリンカーは、本明細書においてD’と反応してD’-Lを形成することができる分子として定義され、式中、Lは、D’をBに結合することができる分子である。ただし、D’はLに結合することができるという条件で、D’が正確に何であるかは重要ではなく、式(IA)の化合物は特定のD’基に限定される必要はない。
【0040】
しかし、いくつかの実施形態において、D’は、(CH2pC(O)、(CH2qNH、(CH2qS、(CH2qO、(CH2q及び1,2,3-トリアゾリレンからなる群から選択されるいずれか1つであり、式中、pは0~4の整数であり、qは1~4の整数である。多くの場合、D’は、(CH2pC(O)、(CH2qNH、(CH2qS、及び(CH2qO、典型的には、(CH2pC(O)からなる群から選択されるいずれか1つである。
多くの場合、pは0~2の整数であり、qは1又は2である。いくつかの実施形態において、pは0であり、qは1である。したがって、いくつかの実施形態において、D’はC(O)である。
上述の場合、LはD’をBに結合することができる分子であり、R. I. Troup, C. Fallan and M. G. J. Baud, Explo. Target Anitiumor Ther. 2020, 1, 273-312において記載されているリンカーのうちのいずれか1つであってもよい。いくつかの実施形態において、Lは式(VIA)のものである。
【0041】
【化13】
(式中、
波線はD’及びBへの結合部位を示し;
1は存在していてもよく、O(CH2s、NH(CH2s及びC(O)(CH2sからなる群から選択されるいずれか1つであり;
2は存在していてもよく、O(CH2uC(O)、(CH2uNH、(CH2uO及び(CH2uC(O)からなる群から選択され;
L’は、O(CH2t、CH2、アルキニレン、トリアゾリレン、ピペラジニレン及びピペリジニレンからなる群から選択され;
sは0~4の整数であり、uは1~4の整数であり、tは1~4の整数である)
誤解を避けるため、式(VIA)のX1はD’に結合しており、X2はBに結合している。X1が存在しない場合、D’は(L’)rに直接結合し、X2が存在しない場合、(L’)rはBに直接結合する。いくつかの実施形態において、X1及びX2は存在する。
【0042】
いくつかの実施形態において、X1は、O(CH2s及びHN(CH2sからなる群から選択されるいずれか1つである。多くの場合、sは0~2であり、典型的には2である。いくつかの実施形態において、X1はO(CH22である。
L’は、O(CH2t、CH2及びアルキニレンからなる群から選択されることが多く、式中、tは、1~4の整数である。典型的には、L’はO(CH2tである。tは2又は3であることが多く、したがっていくつかの実施形態において、L’はO(CH22又はO(CH23である。
いくつかの実施形態において、X2は、O(CH2uC(O)又は(CH2uNHである。多くの場合、uは1又は2であり、典型的には1である。したがって、いくつかの実施形態において、X2はOCH2C(O)又はCH2NHである。
【0043】
いくつかの実施形態において、分解化合物は、上記の教示のいずれかにより、式中、Bは、式(VIIA)~(XVA)のうちのいずれか1つによって表される以下の構造から選択される。
【化14】
(式中、R7は、H又はメチルであり、Zは、F又はCN、例えばFである)
【0044】
いくつかの実施形態において、Bは、式(VIIA)~(IXA)のうちのいずれか1つによって表される構造である。いくつかの実施形態においてBは、式(VIIA)によって表される構造である。構造(VIIA)、(VIIIA)、(IXA)、(XA)及び(XIA)のいくつかの実施形態において、R7はHである。
いくつかの実施形態において、分解化合物は、式(XIIA)~(XIVA)のうちのいずれか1つである。
【化15】
【0045】
いくつかの実施形態において、分解化合物は、式(XIIA)のものである。
より特定の実施形態において、分解化合物は、式(XVA)~(XVIIA)のうちのいずれか1つである。
【化16】
【0046】
1つの実施形態において、分解化合物は、式(XVA)のものである。
本開示の分解化合物は、in vitro又はin vivoでのタンパク質の分解における特定の使用を見出し得る。したがって、分解化合物は、標的タンパク質を分解する方法であって、融合タンパク質の一部である標的タンパク質を分解するために、一定の期間にわたって分解化合物と好適なホール改変ブロモドメインタグ付き融合タンパク質とを接触させることを含む方法において使用してもよい。
上述の場合、本開示の化合物(水素ではないR基を含む)は、ホール改変変異体ブロモドメイン(例えば、変異体Brd4ブロモドメイン)に選択的に結合すること又は収容されることができ、一方、Rが水素である類似の化合物は選択的ではない。「選択的に結合する」とは、化合物が、ホール改変変異体ではないブロモドメイン、例えばBETタンパク質のもの、例えば内在性タンパク質Brd2、Brd3、及びBrd4よりもより強力に(例えば、より大きな会合定数及びより小さい解離定数を有する)ホール改変変異体ブロモドメイン(例えば、変異体Brd4ブロモドメイン)に結合するか又は収容されることを意味する。有利には、本発明の化合物は、ホール改変変異体ではない野生型ブロモドメイン(例えば、BETブロモドメイン)よりもホール改変変異体ブロモドメイン(例えば、変異体Brd4ブロモドメイン)に関してはるかに選択的である。例えば、本発明の分解化合物による、ホール改変変異体ではないブロモドメインを含むタンパク質、例えばBETブロモドメインを含むタンパク質Brd2、Brd3及びBrd4の分解は、検出されない場合がある(例えば、ウエスタンブロット法によって分析した場合、ホール改変変異体ではないブロモドメインを含むタンパク質に対応するシグナルにおける減少は認められない場合がある)。
【0047】
有利には、本発明の分解化合物は、標的タンパク質の強力な分解物質である(標的タンパク質がホール改変ブロモドメインタグ付き融合タンパク質の一部である場合)。例えば、本発明の分解化合物は、0.001~500nM、例えば0.01~400nM又は0.1~300nMのオンターゲット分解効力(半最大分解濃度(DC50))値を示すことができる。
有利には、本発明の分解化合物は、標的タンパク質の非常に有効な分解物質である(標的タンパク質がホール改変ブロモドメインタグ付き融合タンパク質の一部である場合)。例えば、本発明の分解化合物は、50~100%、例えば65~100%又は70~100%の有効性(最大分解(Dmax))値を示すことができる。
さらに、本発明の分解化合物は、標的タンパク質を分解するために素早く作用することができる(標的タンパク質がホール改変ブロモドメインタグ付き融合タンパク質の一部である場合)。例えば、分解化合物が存在する場合、標的タンパク質の半減期(t1/2)は、3時間未満、例えば、0.001~150分又は0.01~140分であってもよい。
【0048】
タンパク質の分解分析に好適な方法、例えば、ウエスタンブロット法、並びにDC50、Dmax及びt1/2を計算するための方法は、以下の実験のセクションに記載する。
文書、作用、材料、デバイス、論文などの本明細書におけるいずれの考察も、これらの事項のいずれか又は全てが、本出願の各請求項の優先日以前に存在していたかのように本開示に関連する分野における、先行技術のベースの一部を形成していること又は周知の一般的な知識であったことを認めるものと解釈するべきではない。
多数の変形形態及び/又は改変を、記載されているような発明の範囲から逸脱することなく本明細書において記載する本発明に行ってもよいことは当業者であれば理解されるであろう。したがって、本実施形態は、記載目的のためのものと考えられるべきであり、制限的なものではなく、実施形態において記載するものの範囲に制限されるものではない。当業者であれば、本実施形態は、単独で又は組合せて読み取ってもよく、本明細書において記載する特徴のいずれか1つ又は組合せと合わせてもよいことは理解するべきである。
【0049】
本明細書において挙げる各特許参考文献及び非特許参考文献の主題は、その全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれるものとする。
本発明は、以下の非限定的な条項を参照しながらさらに理解してもよい:
1.細胞内で標的タンパク質を分解する効果を研究する方法であって、
ホール改変変異体ブロモドメインを含むポリペプチドに融合した標的タンパク質を含む融合タンパク質を内因的に発現させること;
融合タンパク質を、融合タンパク質のホール改変変異体ブロモドメインに特異的に結合することができるセグメントと、リンカーと、エロンギンB、エロンギンC及びカリン-2を含み、E3ユビキチンリガーゼ活性を有するタンパク質複合体に結合することができるフォンヒッペルリンダウ(VHL)リガンドとを含む分解化合物に接触させること;及び
標的タンパク質の分解の、細胞に対するあらゆる効果を観察すること
を含む方法。
2.標的タンパク質が、ブロモ及び末端外ドメイン(BET)タンパク質、Brd2、Brd3、Brd4及びBrdTからの1個若しくは複数個のホール改変変異体ブロモドメイン、又はそれらの断片を含むブロモドメインで内因的にタグ付けされる、第1項に記載の方法。
【0050】
3.突然変異が、タンパク質に存在する1カ所若しくは複数カ所のブロモドメイン、又はそれらの断片を含むブロモドメインに存在する、第2項に記載の方法。
4.ホール改変変異体ブロモドメインが、Brd4BD2L387A、Brd4BD2L387V、Brd4BD1L94A、Brd4BD1L94V、Brd2BD2L383A、Brd2BD2L383V、Brd2BD1L110A、Brd2BD1L110V、Brd3BD2L344A、Brd3BD2L344V、Brd3BD1L70A、Brd3BD1L70V、BrdTBD2L306A、BrdTBD2L306V、BrdTBD1L63A、又はBrdTBD1L63Vブロモドメインである、第2項又は3項に記載の方法。
5.ホール改変変異体Brd4ブロモドメインがBrd4BD2L387A又はBrd4BD2L387Vブロモドメインを含む、第2項又は3項に記載の方法。
6.第1項から5項のいずれか1項に記載の方法において使用するための融合タンパク質をコードする核酸配列であって、融合タンパク質が、本明細書において定義されるホール改変変異体ブロモドメインを含むポリペプチドに融合した標的タンパク質を含み、核酸配列が、標的タンパク質をコードし、ホール改変変異体ブロモドメインを含むポリペプチドをコードする核酸の5’-又は3’-インフレーム挿入を有する核酸配列を含み、これは、発現した場合に本明細書において記載する分解化合物によって結合することができる融合タンパク質をもたらす、核酸配列。
【0051】
7.第6項に記載の核酸配列を含むベクター、例えば、プラスミド又はウイルスベクター。
8.ゲノムが第6項に記載の核酸配列を発現するように改変されている細胞(体細胞、胚性幹細胞、又は人工多能性細胞を含む)。
9.第8項に記載の細胞を含むか又はそれに由来する非ヒト動物。
10.細胞内で標的タンパク質を分解する効果を研究する方法において使用するための式(I)の化合物。
【化17】
(式中、
Gは、メチル、ハロ、ヒドロキシ、チオール、ハロメチル、アミノ、メトキシ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチル、ハロエチル、アミド、イソプロピル、及びメチルチオからなる群から選択される1個又は2個の置換基で置換されてもよい5員ヘテロアレーンであるか、又はGは、メチル、ハロ、ヒドロキシ及びチオールで置換されてもよい6員アレーン又はヘテロアレーンであり;
Rは、C1-4アルキル又はC1-4ハロアルキルであり;
1は、C1-4アルキル、C1-4ハロアルキル、H及びハロからなる群から選択されるいずれか1つであり;
2は、H、C1-3アルキル、C1-3ハロアルキル又はハロであり;
3は、ハロ、ヒドロキシル、チオール、アミド、NR45、C(O)NR45、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ及びC1-6アルキルチオから独立して選択され;
4及びR5は、H及びC1-3アルキルから独立して選択され;
nは、0、1、2、3又は4であり;
Dは反応性基であり;
Xはハロである)
【0052】
11.方法が、第1項から5項のいずれか1項に記載の方法である、第10項に記載の使用のための化合物。
12.Gの6員アレーン又はヘテロアレーンが置換されていない、第10項又は11項に記載の使用のための化合物。
13.Gの6員アレーン又はヘテロアレーンが、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン又はピラジンである、第10項~12項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
14.Gの6員アレーンがベンゼンである、第10項~12項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
15.Gの5員ヘテロアレーンが、チオフェン、フラン、ピロール及びチアゾールからなる群から選択されるいずれか1つである、第10項~14項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【0053】
16.Gが5員ヘテロアレーンである、第10項~15項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
17.Gがチオフェンである、第16項に記載の使用のための化合物。
18.Gが、メチル、ハロ、ヒドロキシ、チオール、ハロメチル、アミノ、メトキシ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチル、ハロエチル、アミド、イソプロピル、tert-ブチル及びメチルチオからなる群から選択される1個又は複数個の置換基で置換されている、第16項又は17項に記載の使用のための化合物。
19.Gが、メチル、ハロ、ヒドロキシ、チオール、ハロメチル及びアミノからなる群から選択される1個又は複数個の置換基で置換されている、第16項又は17項に記載の使用のための化合物。
20.Gが、メチル、フルオロ、ヒドロキシ、チオール及びフルオロメチルからなる群から選択される1個又は複数個の置換基で置換されている、第16項又は17項に記載の使用のための化合物。
【0054】
21.Gがメチルで置換されている、第16項又は17項に記載の使用のための化合物。
22.Gが1回又は2回置換されている、第10項~21項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
23.Gが2回置換されている、第10項~21項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
24.Xがクロロである、第10項~23項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
25.nが0である、第10項~24項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
26.R1が、C1-4アルキル及びC1-4フルオロアルキルからなる群から選択されるいずれか1つである、第10項~25項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
27.R1が、メチル又はトリフルオロメチルである、第10項~26項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【0055】
28.R1がメチルである、第10項~27項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
29.R2が、H、メチル、トリフルオロメチル又はフルオロである、第10項~28項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
30.R2がHである、第10項~29項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
31.R3が、フルオロ、ヒドロキシル、チオール、アミド、NR45、C(O)NR45、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、C1-4アルコキシ及びC1-4アルキルチオから独立して選択される、第10項~30項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
32.Rが、C1-3アルキル又はC1-3フルオロアルキルである、第10項~31項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
33.Rが、C2-3アルキル又はC2-3フルオロアルキルである、第10項~31項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
34.Rがエチルである、第10項~31項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【0056】
35.Dが、(CH2pC(O)OH、(CH2pC(O)Cl、(CH2pC(O)Br、(CH2qNH2、(CH2qN(C1-3アルキル)H、(CH2qSH、(CH2qOH、(CH2qBr、(CH2qI、(CH2q3及び(CH2qCCHからなる群から選択されるいずれか1つであり;pが0~4の整数であり、qが1~4の整数である、第10項~34項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
36.pが0であり、qが1である、第35項に記載の使用のための化合物。
37.DがC(O)OHである、第10項~34項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
38.化合物が式(II)のものである、第17項~23項のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【化18】
(式中、R6はGの置換基であり、mは置換基の数であり、R、R1、R2、R3、D、X及びnは、第10項及び24項~37項のいずれか1項に定義されるものである)
【0057】
39.化合物が式(III)のものである、第10項に記載の使用のための化合物。
【化19】
(式中、R及びDは、第10項及び32項~37項のいずれか1項に定義されるものである)
【0058】
40.化合物が式(IV)のものである、第10項に記載の使用のための化合物。
【化20】
41.化合物が式(V)のものである、第10項に記載の使用のための化合物。
【化21】
【0059】
42.細胞内で標的タンパク質を分解する効果を研究する方法において使用するための式(IA)の分解化合物。
【化22】
(式中、G、R、R1、R2、R3、X及びnは、第10項及び12項~37項のいずれか1項に定義されるものであり、D’は、反応性基DとD’-Lを形成するためのプロリンカーとの生成物であり、Lは、D’をBに結合することができる分子であり、Bは、E3ユビキチンリガーゼに結合することができる分子である)
【0060】
43.方法が、第1から5項のいずれか1項に記載のものである、第42項に記載の使用のための分解化合物。
44.D’が、(CH2pC(O)、(CH2qNH、(CH2qS、(CH2qO、(CH2q及び1,2,3-トリアゾリレンからなる群から選択されるいずれか1つであり、pが0~4の整数であり、qが1~4の整数である、第42項又は43項に記載の使用のための分解化合物。
45.pが0であり、qが1である、第44項に記載の使用のための分解化合物。
46.D’がC(O)である、第42~45項のいずれか1項に記載の使用のための分解化合物。
【0061】
47.分解化合物が式(IIA)のものである、第42~46項のいずれか1項に記載の使用のための分解化合物。
【化23】
(式中、R6はGの置換基であり、mは置換基の数であり、R、R1、R2、R3、X及びnは、第10項及び18項~37項のいずれか1項に定義されるものである)
【0062】
48.分解化合物が式(IIIA)のものである、第42~46項のいずれか1項に記載の使用のための分解化合物。
【化24】
(式中、Rは、第10項及び32項~34項のいずれか1項に定義されるとおりである)
49.分解化合物が式(IVA)のものである、第42項又は43項に記載の使用のための分解化合物。
【化25】
【0063】
50.分解化合物が式(VA)のものである、第42項又は43項に記載の使用のための分解化合物。
【化26】
【0064】
51.Lが式(VIA)のものである、第42~50項のいずれか1項に記載の使用のための分解化合物。
【化27】
(式中、
波線は結合部位を示し;
1は存在していてもよく、O(CH2s、NH(CH2s及びC(O)(CH2sからなる群から選択されるいずれか1つであり;
2は存在していてもよく、O(CH2uC(O)、(CH2uNH、(CH2uO及び(CH2uC(O)からなる群から選択され;
L’は、O(CH2t、CH2、アルキニレン、トリアゾリレン、ピペラジニレン及びピペリジニレンからなる群から選択され;
sは0~4の整数であり、uは1~4の整数であり、tは1~4の整数である)
【0065】
52.X1及びX2が存在する、第51項に記載の使用のための分解化合物。
53.X1が、O(CH2s及びHN(CH2sからなる群から選択されるいずれか1つである、第51項又は52項に記載の使用のための分解化合物。
54.sが2である、第51~53項のいずれか1項に記載の使用のための分解化合物。
55.X1がO(CH22である、第51~53項のいずれか1項に記載の使用のための分解化合物。
56.L’がO(CH2tである、第51~55項のいずれか1項に記載の使用のための分解化合物。
57.tが、2又は3である、第51~56項のいずれか1項に記載の使用のための分解化合物。
58.X2が、O(CH2uC(O)又は(CH2uNHである、第51~57項のいずれか1項に記載の使用のための分解化合物。
59.uが1である、第51~58項のいずれか1項に記載の使用のための分解化合物。
【0066】
60.Bが、式(VIIA)~(XIIIA)のうちのいずれか1つによって表される構造のうちのいずれか1つである、第42~59項のいずれか1項に記載の使用のための分解化合物。
【化28】
(式中、R7は、H又はメチルであり、Zは、F又はCNである)
【0067】
61.Bが、式(VIIA)~(IXA)のうちのいずれか1つによって表される構造である、第60項に記載の使用のための分解化合物。
62.Bが、式(VIIA)によって表される構造である、第60項に記載の使用のための分解化合物。
63.R7がHである、第60~62項のいずれか1項に記載の使用のための分解化合物。
【0068】
64.分解化合物が、式(XIXA)~(XXIA)のうちのいずれか1つである、第42~63項のいずれか1項に記載の使用のための分解化合物。
【化29】
【0069】
65.分解化合物が式(XIIA)のものである、第64項に記載の使用のための分解化合物。
66.標的タンパク質を分解するための、第42項~65項のいずれか1項に定義される分解化合物の使用。
67.標的タンパク質が、1個又は複数個のホール改変変異体Brd4ブロモドメインを含むポリペプチドで内因的にタグ付けされる、第66項に記載の使用。
68.ホール改変変異体Brd4ブロモドメインが、Brd4BD2L387A、Brd4BD2L387V、Brd4BD1L94A、Brd4BD1L94V、Brd2BD2L383A、Brd2BD2L383V、Brd2BD1L110A、Brd2BD1L110V、Brd3BD2L344A、Brd3BD2L344V、Brd3BD1L70A、Brd3BD1L70V、BrdTBD2L306A、BrdTBD2L306V、BrdTBD1L63A、又はBrdTBD1L63Vブロモドメインである、第67項に記載の使用。
【0070】
69.ホール改変変異体Brd4ブロモドメインがBrd4BD2L387A又はBrd4BD2L387Vブロモドメインである、第67項に記載の使用。
70.ホール改変変異体Brd4ブロモドメインがBrd4BD2L387Aブロモドメインである、第67項に記載の使用。
71.タンパク質がBETタンパク質である、第66項~70項のいずれか1項に記載の使用。
72.BETタンパク質がBrd2タンパク質である、第71項に記載の使用。
【0071】
73.1つ又は複数のBrd4ブロモドメインを含むタンパク質であって、それぞれがL387A突然変異を含む、タンパク質。
74.タンパク質が第71項又は72項に定義されるものである、第73項に記載のタンパク質。
【0072】
本開示は、例として以下の図面を参照しながらさらに定義することになる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】(A)汎選択的BET分解物質、MZ1及びARV-771。(B)汎選択的BET阻害剤、(+)-JQ1及びI-BET762(上)。対立遺伝子特異的バンプBET阻害剤、ME、ET、9-ME-1及び9-ET-1(下)。(C)デグロンシステムとして利用することができる高親和性選択的ペアリングを生成するためのBETブロモドメインに対する「バンプ及びホール」アプローチのテーラリング。(D)ブロモタグデグロンアプローチの概念化。
図2】ヘテロ接合ノックインブロモタグ-Brd2 HEK293細胞株の設計及び開発。(A)CRISPR構築物の開発において使用されるノックイン構築物の設計。(B)GFP発現に基づいたHEK293細胞のFACS単一細胞ソート。連続的な単一細胞を、96ウェルプレートの個々のウェルにソートした。(C)親HEK293に対してペアのクローンを発現する拡大GFPのゲノムDNAを使用したジャンクションPCR。(D)ポリクローナルBrd4BD2L387A.抗体の選択性を実証するウエスタンブロット。
図3】(A)Brd4BD2(緑色、模式図/表面表示)とMZ1(7、棒状物、灰色炭素)とVCB(VHL:青色;エロンギンC:ピンク色;エロンギンB-淡オレンジ色;模式図/表面表示)との間の三元複合体。Leu387(棒状物、緑色)(PDBコード:5T35)は矢印で強調した。Brd4BD2(淡緑色、模式図画像、5T35)と(B)Brd2BD2 L383A(オレンジ色、模式図画像、4QEW)及び(C)Brd2BD2 L383V(黄色、模式図画像、5O3C)とのアラインメントは、MZ1(7、棒状物、灰色炭素)、ET(4、棒状物、ピンク色炭素)及び9-ME-1(5、棒状物、青色炭素)とそれぞれ共結晶化されている。Brd4BD2 W.T.Leu387(棒状物、淡緑色炭素)及び変異体Brd2BD2 L383AAla383(棒状物、オレンジ色炭素)及びBrd2BD2 L383VVal383(棒状物、黄色炭素)は強調されている。
図4】第一世代IBET-762ベースB&H-PROTACは、MZ1-様三元複合体において提示される立体的クラッシュに起因して、ブロモタグ-Brd2に対して不活性である。(A)ヘテロ接合ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞において6時間にわたるPROTAC処置を行った後のBETタンパク質レベルに関するウエスタンブロットデータ。バンドをチューブリンに対して正規化し、ビヒクル対照(DMSO)と比較して各PROTACの順序付けを可能にするDC50値を導出する。(B)より嵩高い8/9-メトキシフェニル基によってVHLとの潜在的なクラッシュを示すための、ET(6、8-OMe、棒状物、ピンク色炭素、4QEW)及び9-ME-1(7、9-OMe、棒状物、青色炭素、5O3C)を含む、Brd4BD2(緑色、表面表示)とMZ1(1、棒状物、灰色炭素)とVHL(青緑色、表面表示)との間の三元複合体のアラインメント(PDBコード:5T35)。His110は強調されている(棒状物、青緑色炭素)。
図5】ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞における第二世代B&H-PROTACの生物学的評価。ヘテロ接合ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞において6時間にわたって10μM~1nM化合物処置をモニターした、BETタンパク質レベルに関するウエスタンブロットデータ。バンドをチューブリン及び陰性対照(シス-MZ1)に対して正規化して、各PROTACの順序付けを可能にするDC50値を導出する。
図6】ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞におけるAGB1、AGB2及びAGB3の生物学的評価。(A)ヘテロ接合ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞において6時間にわたって10μM~1nM化合物処置をモニターした、BETタンパク質レベルに関するウエスタンブロットデータ。(B)36時間にわたってAGB1及びAGB2を500nMで並びにAGB3を1μMで処置した際の、ヘテロ接合ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞におけるBrd2レベルの時間経時ウエスタンブロットデータ。(C及びD)AGB1がさらなる検証のための最良の選択であることを決定するのを可能にする、化合物に関する(C)DC50及び(D)t1/2値を計算するためのプロット。(A)及び(B)からのウエスタンブロットをチューブリンに対して正規化し、ビヒクル対照(DMSO)と比較して各PROTACの順序付けを可能にするpDC50又はt1/2値を導出した。
図7】B&H-PROTAC二元及び三元複合体結合の蛍光偏光度(FP)。VHL単独に対する46(A)、47(B)及び48(C)(黒色実線)、又はBrd4BD2 L387Aとプレインキュベートされた場合のVHLに対するそれぞれもの(色付き破線)に関する二元及び三元複合体形成FPデータ。エラーバー及びKd値は、VHLに対する二元及び三元結合に関するN=4からの平均(±S.E.M.)である。二元データと三元データとの間の左へのシフトは正の共同性を示す。共同性(α)は、Kd binary/Kd ternaryの比率として計算される。
図8】AGB1分解活性の細胞機構的特性評価。(A)46のオンターゲット分解活性は、CRL2VHL、プロテアソーム、及びブロモタグ標的結合の活性に依存することを示すウエスタンブロット。ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞を、プロテアソーム阻害剤MG132、ネディレーション阻害剤MLN4924、VHL阻害剤VH298又はブロモタグ阻害剤ET-JQ1-OMe又はDMSOビヒクルで前処置(1時間)後、200nMの46(3時間)で処置した。(B)ヘテロ接合ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞において3時間処置後、200nMの46を除去した後のブロモタグ-Brd2の回収を実証するウエスタンブロット。無洗浄及びビヒクル処置に関する対照実験が含まれている。バンドをチューブリンタンパク質レベルに対して正規化し、ビヒクル対照(DMSO)と比較して、ブロモタグ-Brd2の最終タンパク質レベルを定量化する。(C)MZ1及び非分解物質対照52及びシス-MZ1と比較した46の抗増殖に対する効果。スタウロスポリンを細胞毒性に関する陽性対照として使用した。MV-4-11、22Rv1及びHEK293細胞を異なる濃度の化合物で処置し、24時間、48時間及び48時間後、それぞれにPromega CellTiter-Glo細胞生存率アッセイを行った。pEC50値(±S.E.M)は、MV-4-11及び22Rv1細胞に関してはN=2からの平均であり、HEK293細胞に関してはN=3からの平均であり、ビヒクル対照(DMSO)から正規化されたデータからのものである。
図9】血漿安定性及びマウスを用いたAGB1のIn vivo薬物動態研究。(A)、1時点あたり2回の独立した反復を伴う、0分の時点に対して正規化された、37℃のマウス血漿における0、5、15、30、45及び60分後に残存するAGB1のパーセンテージ。(B)雄C57BL/6マウスを静脈内注射(IV、黒色の点)又は皮下注射(SC、白色の四角)のいずれかによって、単回5mg/kg用量の46で処置し、46の血漿濃度を7ケ所の時点で測定した。データは、各時点における3回の独立した反復からの平均(±S.D.)である。赤色の破線は、ブロモタグ-Brd2分解に関する46のDC50, 6hを示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
実験手順
化学物質。
合成。市販の化学物質は、Apollo Scientific、Sigma-Aldrich、Fluorochem、又はManchester Organicsから購入し、さらに一切精製することなく使用した。全ての反応は無水溶媒を使用して行った。反応は次のいずれかを使用してモニターした:Agilentダイオードアレイ検出器及びWaters XBridge C18カラム(50mm×2.1mm、粒子サイズ3.5μm)を含むAgilent Technologies 6130四重極LC/MSに連結されたAgilent Technologies 1200シリーズ分析HPLC(高速液体クロマトグラフィー)。試料は、0.1%ギ酸を含む5%~95%MeCN:水の勾配、3分、流速0.7mL/分;又はフォトダイオードアレイ検出器及びHypersil Goldカラム(1.9μm 50×2.1mm)を備えたShimadzu HPLC/MS 2020で溶出した。試料は、0.1%ギ酸を含む5%~95%MeCN:水の勾配、3分、流速0.8mL/分で溶出した。中間体は、順相RediSep Rfディスポーザブルカラム又は逆相RediSep Rf Gold C18リユーザブルカラムを備えたTeledyne Isco Combiflash Rf又はRf200iを使用したフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製した。最終化合物は、別途記述がない限り、0.1%ギ酸又はアンモニアを含む水中の5%~95%アセトニトリル勾配を10分にわたって流速25mL/分で使用した、Waters X-Bridge C18カラム(100mm×19mm;粒子サイズ5μm)を備えたGilson分取HPLCシステムを使用したHPLCで精製した。NMRを使用した化合物の特性評価は、Bruker 500 Ultrashield又はBruker Ascend 400スペクトロメーターのいずれかで行った。使用したプロトン(1H)及び炭素(13C)の基準溶媒は次のとおりである:d1-クロロホルム-CDCl3((δH=7.26ppm/δC=77.15ppm)、d4-CD3OD(δH=3.31ppm/δC=49.00ppm)。シグナルパターンは、シングレット(s)、ダブレット(d)、トリプレット(t)、カルテット(q)、クインテット(quint.)、マルチプレット(m)、ブロード(br.)、又は挙げられる分裂パターンの組合せとして記載する。カップリング定数(J)はヘルツ(Hz)で測定する。全ての化合物に関するNMRスペクトルは、Bruker TopSpin 4.1.1を使用して処理した。高分解マススペクトル(HRMS)データは、ダイオードアレイ検出器及びWaters XBridge C18カラム(50mm×2.1、粒子サイズ3.5μm)を備えたDionex Ultimate 3000 RSLCシステムに並列に接続したBruker MicrOTOF II focus ESI Massスペクトロメーターで行った。試料は、0.1%ギ酸を含む5%~95%アセトニトリル:水の勾配、6分、流速0.6mL/分で溶出した。全ての化合物はHPLCで95%を超える純度である。
【0075】
一般手順A。アジド9(Zengerle, M.; Chan, K.-H.; Ciulli, A., ACS Chem Biol. 2015, 10 (8), 1770-1777に従って合成する)(1eq.)をMeOH(125mL/mmol)中に溶解した。触媒量の10wt.%Pd/Cを添加し、反応物をH2下で3時間撹拌した。次いで、反応混合物を、PTFEシリンジフィルターに通してろ過し、蒸発乾固させて、所望のアミンの定量的収率を得た。得られたアミン(1eq.)を、DCM又はDMF(2mL)中の酸(1eq.)、HATU(1eq.)、HOAt(1eq.)及びDIPEA(3eq)の溶液に添加し、室温で18時間撹拌しながら静置した。次いで、これをHPLCで精製した。
【0076】
一般手順B。アジド(1eq.)をMeOH(125mL/mmol)中に溶解した。触媒量の10wt.%Pd/Cを添加し、反応物をH2下で3時間撹拌した。次いで、反応混合物を、PTFEシリンジフィルターに通してろ過し、蒸発乾固させて、所望のアミンを定量的収率で得た。得られたアミンを、THF(8L/mol)中のアルキル化されたJQ1酸(1eq.)、COMU(1.5eq.)及びDIPEA(3eq.)の溶液に添加し、室温で4時間撹拌した。次いで、混合物を真空中で濃縮し、残渣を、水中の0.1%ギ酸中の5%~95%MeCNの直線勾配を12分にわたって使用したHPLCで精製して、2種類のジアステレオマー混合物としてアミドを得た。
【0077】
一般手順C。アルキル化されたJQ1酸(1eq.)、EDC.HCl(2eq.)をTHF(15mL/mmol)中に溶解し、室温で5分間撹拌した。次いで、DMAP(3eq)及びアルコール(2eq.)を添加し、反応物を室温で16時間撹拌しながら静置した。次いで、混合物を真空中で濃縮し、残渣を、水中の0.1%ギ酸中の5%~95%MeCNの直線勾配を12分にわたって使用したHPLCで精製して、2種類のジアステレオマー混合物としてアミドを得た。
一般手順D。化合物29(120mg、0.29mmol)をTHF(5.2mL)中に溶解し、-78℃に冷却した。トルエン(812μL、0.41mmol)中の0.5M KHMDSの溶液を滴加し、反応物を-78℃で1時間撹拌しながら静置した。次いで、ヨウ化アルキル(0.41mmol)を添加し、反応物を-78℃で10分間さらに撹拌してから室温に加温し、16時間撹拌しながら静置した。次いで、混合物を真空中で濃縮し、水中の0.1%ギ酸中の30%~70%MeCNの直線勾配を使用したHPLCで12分にわたって精製して、アルキル化JQ1-OMe誘導体を得た。
【0078】
一般手順E。(2S,3S)ジアステレオマー(1eq.)及びNaOMe(10eq.)を、密閉され、N2パージされたマイクロ波用バイアル中のMeOH(60L/mol)中に溶解し、マイクロ波照射下、120℃まで40分間加熱した。反応物を60℃で撹拌してから数滴のAcOHで酸性化した。次いで、反応物を室温まで冷却し、真空中で濃縮した。残渣を、水中の0.1%ギ酸中の30%~70%MeCNの直線勾配を使用したHPLCで12分にわたって精製した。
一般手順F。ET-JQ1-OH(45、Bond, A. G.; Testa, A.; Ciulli, A., Org Biomol Chem. 2020, 18 (38), 7533-7539に従って合成する)(1eq.)を、N2下、DCM(9L/mol)中に溶解した。次いで、塩化チオニル(15eq.)を添加し、反応物を室温で3時間撹拌しながら静置し、酸塩化物への変換をMeOH中のLCMSでモニターした(メチルエステル(約443)の質量によるモニター)。混合物を蒸発乾固させて、酸塩化物中間体を定量的に得た。アルコール(1eq.)をDCM(9L/mol)中に溶解し、酸塩化物に添加した。これを室温で16時間撹拌しながら静置した。次いで、混合物を真空中で濃縮し、精製した。
【0079】
(2S,4R)-1-((2S)-2-(tert-ブチル)-17-(6-(4-クロロフェニル)-8-メトキシ-1-メチル-4H-ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-4-イル)-4,16-ジオキソ-6,9,12-トリオキサ-3,15-ジアザヘプタデカノイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(MZP-15)(14)。一般手順Aに従って、化合物14を、DCM中の酸10(Chung, C.-W et al. J Med Chem. 2011, 54 (11), 3827-3838に従って合成する)を使用し、HOAtを用いずに得、水中の0.1%ギ酸中の5%~95%MeCNの直線勾配を12分にわたって使用したHPLCで精製して、2種類のジアステレオマー混合物として14を得た。収率:16.5mg(47%);1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 8.70 (s, 1H), 8.63-8.61 (m, 1H), 8.31-8.28 (m, 1H), 8.10-8.03 (m, 1H), 7.52-7.45 (m, 3H), 7.41-7.28 (m, 8H), 7.20-7.16 (m, 1H), 6.86-6.84 (m, 1H), 4.87-4.81 (m, 1H), 4.71-4.63 (m, 2H), 4.57-4.48 (m, 2H), 4.41-4.28 (m, 2H), 4.22-4.06 (m, 3H), 3.78 (s, 3H), 2.57-2.54 (m, 3H), 2.51-2.49 (m, 3H), 2.46-2.35 (m, 1H), 2.27-2.20 (m, 1H), 1.01-0.99 ppm (m, 9H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ = 171.7, 171.5, 171.3, 171.1, 171.04, 171.01, 170.9, 170.7, 166.6, 166.4, 158.3, 156.74, 156.70, 150.6, 150.3, 148.3, 138.7, 138.6, 137.2, 137.1, 137.0, 131.1, 131.0, 130.62, 130.55, 130.4, 130.3, 129.51, 129.47, 129.2, 128.7, 128.6, 128.2, 128.1, 126.2, 124.95, 124.91, 120.3, 118.2, 118.1, 116.0, 71.7, 71.2, 70.9, 70.8, 70.6, 70.5, 70.4, 70.3, 70.22, 70.15, 59.2, 59.1, 57.5, 57.3, 56.9, 56.0, 53.6, 53.5, 43.2, 40.0, 39.9, 38.1, 38.0, 36.9, 36.7, 35.8, 35.6, 26.6, 16.0, 12.11, 12.07; HRMS m/z C50H61ClN9O9S [M+H]+の計算値998.3996, 実測値998.3996.
【0080】
(2S,4R)-1-((2S,17R*)-2-(tert-ブチル)-17-((S*)-6-(4-クロロフェニル)-8-メトキシ-1-メチル-4H-ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-4-イル)-4,16-ジオキソ-6,9,12-トリオキサ-3,15-ジアザノナデカノイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(DAT487)(15)。一般手順Aに従って、化合物15を、DMF中の酸11(Runcie, A. C. et al. Chem Sci. 2018, 9 (9), 2452-2468に従って合成する)を使用して得、水中の0.1%アンモニア中の5%~95%MeCNの直線勾配を12分にわたって使用したHPLCで精製して、2種類のジアステレオマー混合物として15を得た。収率:8.3mg(23%);1H NMR (400 MHz, MeOD): δ = 8.86 (d, J = 1.3 Hz, 1H), 7.72-7.67 (m, 1H), 7.56 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.46-7.34 (m, 7H), 6.93-6.91 (m, 1H), 4.79-4.32 (m, 5H), 4.29-4.25 (m, 1H), 4.11-4.02 (m, 2H), 3.90-3.85 (m, 1H), 3.82-3.77 (m, 4H), 3.74-3.40 (m, 13H), 3.30-3.14 (m, 1H), 2.59-2.58 (m, 3H), 2.47-2.46 (m, 3H), 2.27-2.17 (m, 2H), 2.11-2.03 (m, 1H), 1.75-1.63 (m, 1H), 1.07-1.01 ppm (m, 12H); 13C NMR (101 MHz, MeOD): δ = 175.9, 174.42, 174.39, 172.1, 171.6, 168.8, 168.7, 159.9, 157.3, 152.8, 152.6, 149.0, 140.3, 140.2, 138.6, 138.14, 138.11, 133.4, 132.1, 131.5, 131.3, 130.3, 129.6, 129.0, 128.9, 127.5, 126.8, 119.2, 116.8, 72.3, 72.2, 71.75, 71.67, 71.5, 71.4, 71.0, 70.5, 70.4, 60.8, 58.5, 58.4, 58.1, 56.4, 49.84, 49.76, 43.8, 43.7, 40.4, 39.0, 37.2, 37.1, 26.99, 26.96, 24.53, 24.46, 15.9, 11.7, 11.6; LCMS m/z C52H66ClN9O9S [M+2H]2+の計算値513.7, 実測値514.1.
【0081】
(2S,4R)-1-((2S,17R*)-2-(tert-ブチル)-17-((S*)-6-(4-クロロフェニル)-9-メトキシ-1-メチル-4H-ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-4-イル)-4,16-ジオキソ-6,9,12-トリオキサ-3,15-ジアザオクタデカノイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(DAT488)(16)。一般手順Aに従って、化合物16を、DMF中の酸12(Runcie,A.C.ら、2018年(上記を参照のこと)に従って合成する)を使用して得、水中の0.1%アンモニア中の5%~95%MeCNの直線勾配を12分にわたって使用したHPLCで精製して、2種類のジアステレオマー混合物として16を得た。収率:13.8mg(28%);1H NMR (400 MHz, MeOD): δ = 8.87-8.86 (m, 1H), 7.49-7.34 (m, 9H), 7.31-7.29 (m, 1H), 7.16-7.11 (m, 1H), 4.71-4.69 (m, 1H), 4.62-4.56 (m, 1H), 4.55-4.46 (m, 2H), 4.38-4.32 (m, 1H), 4.25-4.21 (m, 1H), 4.09-4.00 (m, 2H), 3.97-3.96 (m, 3H), 3.90-3.72 (m, 3H), 3.71-3.59 (m, 11H), 3.53-3.42 (m, 2H), 2.66-2.64 (m, 3H), 2.47-2.45 (m, 3H), 2.25-2.18 (m, 1H), 2.11-2.04 (m, 1H), 1.36-1.32 (m, 3H), 1.05-1.02 ppm (m, 9H); 13C NMR (101 MHz, MeOD): δ = 177.4, 174.39, 174.36, 172.1, 171.7, 171.6, 168.1, 168.0, 163.6, 156.8, 152.9, 152.8, 149.0, 140.3, 140.2, 138.9, 137.9, 135.8, 134.34, 134.32, 133.4, 132.4, 131.5, 130.4, 129.4, 128.9, 122.5, 115.2, 110.6, 72.2, 71.7, 71.6, 71.4, 71.1, 71.0, 70.7, 60.8, 60.7, 58.1, 56.7, 43.9, 43.7, 40.5, 38.9, 37.1, 27.0, 20.0, 16.1, 16.0, 15.9, 11.9; LCMS m/z C51H64ClN9O9S [M+2H]2+の計算値506.7, 実測値507.1.
【0082】
(2S,4R)-1-((2S,17R*)-2-(tert-ブチル)-17-((S*)-6-(4-クロロフェニル)-9-メトキシ-1-メチル-4H-ベンゾ[f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-4-イル)-4,16-ジオキソ-6,9,12-トリオキサ-3,15-ジアザノナデカノイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(DAT489 17)。一般手順Aに従って、化合物17を、DMF中の酸13(Runcie,A.C.ら、2018年に従って合成する(上記を参照のこと))を使用して得、水中の0.1%アンモニア中の5%~95%MeCNの直線勾配を12分にわたって使用したHPLCで精製して、2種類のジアステレオマー混合物として17を得た。収率:4.8mg(20%);1H NMR (400 MHz, MeOD): δ = 8.87-8.86 (m, 1H), 7.54-7.50 (m, 2H), 7.46-7.37 (m, 7H), 7.26 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 7.15-7.12 (m, 1H), 4.74-4.70 (m, 1H), 4.69-4.51 (m, 2H), 4.50-4.46 (m, 1H), 4.42-4.32 (m, 1H), 4.29-4.25 (m, 1H), 4.11-4.02 (m, 2H), 3.96 (s, 3H), 3.89-3.78 (m, 2H), 3.74-3.39 (m, 13H), 3.29-3.14 (m, 1H), 2.63-2.62 (m, 3H), 2.47-2.46 (m, 3H), 2.28-2.18 (m, 2H), 2.11-2.02 (m, 1H), 1.75-1.62 (m, 1H), 1.06-1.01 ppm (m, 12H); 13C NMR (101 MHz, MeOD): δ = 176.0, 174.42, 174.39, 172.1, 171.6, 169.3, 169.2, 163.71, 163.69, 157.27, 157.26, 152.8, 152.6, 149.0, 140.3, 140.2, 139.1, 138.0, 138.0, 136.0, 134.30, 134.28, 133.4, 132.3, 131.5, 130.3, 129.5, 129.02, 128.95, 122.6, 115.1, 110.6, 72.4, 72.2, 71.75, 71.68, 71.50, 71.48, 71.4, 71.09, 71.06, 70.5, 70.4, 60.80, 60.78, 58.4, 58.3, 58.14, 58.10, 56.7, 49.8, 49.7, 43.8, 43.7, 40.4, 39.0, 37.2, 37.1, 27.00, 26.96, 24.5, 24.4, 15.9, 11.9, 11.7, 11.6; LCMS m/z C52H66ClN9O9S [M+2H]2+の計算値513.7, 実測値514.2.
【0083】
(2S,4R)-1-((2S,17R*)-2-(tert-ブチル)-17-((S*)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-4,16-ジオキソ-6,9,12-トリオキサ-3,15-ジアザオクタデカノイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(ME-MZ1)(18)。一般手順Bに従って、化合物18を、アジド9(Chung,C.-Wら、2011年に従って合成する(上記を参照のこと))及びアルキル化JQ1酸32を使用して得て、2種類のジアステレオマー混合物として18を得た。収率:1.6mg(19%);1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 8.67 (s, 1H), 8.07 (t, J = 5.4 Hz, 1H), 7.89 (t, J = 5.1 Hz, 1H), 7.68 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 7.46-7.24 (m, 9H), 4.85-4.79 (m, 1H), 4.77-4.63 (m, 1H), 4.63-4.47 (m, 2H), 4.42-4.36 (m, 1H), 4.31-4.23 (m, 2H), 4.18-4.01 (m, 3H), 3.96-3.85 (m, 1H), 3.81-3.36 (m, 16H), 2.65-2.60 (m, 3H), 2.51 (s, 3H), 2.50-2.37 (m, 4H), 2.26-2.11 (m, 1H), 1.73-1.64 (m, 3H), 1.42-1.35 (m, 3H), 1.01-0.94 ppm (m, 9H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ = 175.2, 171.51, 171.49, 171.2, 170.7, 170.5, 163.3, 163.2, 158.2, 155.14, 155.09, 150.4, 149.8, 148.6, 138.6, 138.5, 136.9, 136.8, 136.69, 136.65, 131.9, 131.25, 131.15, 130.8, 130.2, 129.6, 129.5, 128.9, 128.8, 128.2, 128.0, 71.6, 71.4, 70.9, 70.6, 70.5, 70.4, 70.3, 70.25, 70.20, 70.1, 60.5, 60.1, 59.1, 58.9, 57.5, 57.3, 56.8, 56.7, 43.3, 43.2, 42.7, 42.6, 39.9, 36.4, 36.3, 35.9, 35.8, 26.6, 26.5, 16.4, 16.2, 16.1, 14.6, 13.3, 11.91, 11.87; HRMS m/z C50H63ClN9O8S2 [M+H]+の計算値1016.3924, 実測値: 1016.3905.
【0084】
(2S,4R)-1-((2S,17R*)-2-(tert-ブチル)-17-((S*)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-4,16-ジオキソ-6,9,12-トリオキサ-3,15-ジアザノナデカノイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(ET-MZ1)(19)。一般手順Bに従って、化合物19を、アジド9(Chung,C.-Wら、2011年に従って合成する(上記を参照のこと))及びアルキル化JQ1酸33を使用して得て、2種類のジアステレオマー混合物として19を得た。収率:5.3mg(47%);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 8.68-8.66 (m, 1H), 8.10-8.05 (m, 1H), 7.83-7.79 (m, 1H), 7.69-7.65 (m, 1H), 7.40-7.26 (m, 8H), 7.21-7.16 (m, 2H), 4.87-4.76 (m, 2H), 4.68-4.49 (m, 2H), 4.49-4.36 (m, 1H), 4.28-4.24 (m, 1H), 4.18-4.00 (m, 3H), 3.81-3.74 (m, 1H), 3.74-3.34 (m, 13H), 2.65-2.62 (m, 3H), 2.53-2.51 (m, 3H), 2.49-2.44 (m, 1H), 2.41-2.38 (m, 3H), 2.36-2.30 (m, 1H), 2.25-2.11 (m, 1H), 1.97-1.89 (m, 1H), 1.71-1.59 (m, 4H), 1.03-0.93 ppm (m, 12H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ = 174.2, 173.9, 171.7, 171.6, 171.2, 170.4, 170.3, 163.8, 163.2, 155.3, 155.1, 150.3, 149.9, 149.8, 148.6, 138.7, 138.6, 136.95, 136.91, 136.8, 136.7, 132.1, 131.94, 131.90, 131.3, 131.1, 131.0, 130.9, 130.8, 130.7, 130.2, 130.1, 129.9, 129.6, 129.5, 129.0, 128.8, 128.3, 127.6, 71.3, 71.2, 71.1, 70.9, 70.8, 70.7, 70.50, 70.47, 70.3, 70.18, 70.15, 59.8, 59.4, 59.2, 58.9, 57.63, 57.59, 56.8, 50.3, 50.1, 43.3, 43.0, 39.9, 39.8, 36.9, 36.4, 35.90, 35.85, 26.6, 23.7, 23.2, 16.21, 16.19, 14.6, 14.5, 13.2, 12.0; HRMS m/z C51H65ClN9O8S2 [M+H]+の計算値1030.4081, 実測値: 1030.3943.
【0085】
(2S,4R)-1-((2S,15R*)-2-(tert-ブチル)-15-((S*)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-4,14-ジオキソ-6,10-ジオキサ-3,13-ジアザヘキサデカノイル)-4-ヒドロキシ-N-((S)-1-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)フェニル)エチル)ピロリジン-2-カルボキサミド(ME-ARV-771)(20)。一般手順Bに従って、化合物20を、アジド42(Klein,V.ら、ChemRxiv 2021年に従って合成する)及びアルキル化JQ1酸32を使用して得て、2種類のジアステレオマー混合物として20を得た。収率:5.2mg(31%);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 8.71-8.69 (m, 1H), 7.66-7.61 (m, 1H), 7.57-7.21 (m, 9H), 5.14-4.98 (m, 1H), 4.86-4.80 (m, 1H), 4.65-4.47 (m, 2H), 4.34-4.24 (m, 1H), 4.21-3.77 (m, 4H), 3.75-3.33 (m, 11H), 2.69-2.63 (m, 3H), 2.53-2.50 (m, 3H), 2.41 (s, 3H), 2.38-2.28 (m, 1H), 2.23-2.10 (m, 1H), 1.92-1.71 (m, 2H), 1.67 (d, J = 3.1 Hz, 3H), 1.48 (d, J = 21.4 Hz, 3H), 1.43-1.35 (m, 3H), 1.10-1.05 ppm (m, 9H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ = 175.3, 175.0, 171.5, 171.4, 170.8, 170.6, 170.42, 170.38, 164.1, 163.9, 155.0, 154.9, 150.5, 150.22, 150.16, 148.2, 143.9, 143.7, 137.3, 136.4, 136.1, 132.0, 131.8, 131.33, 131.26, 130.6, 130.5, 130.3, 129.6, 129.55, 129.48, 128.92, 128.88, 126.6, 70.4, 70.32, 70.29, 70.2, 69.6, 69.4, 69.2, 67.84, 67.77, 59.9, 59.8, 58.9, 58.8, 57.5, 57.3, 57.1, 57.0, 49.1, 48.9, 42.6, 42.3, 39.7, 39.5, 36.6, 36.5, 35.5, 35.3, 29.53, 29.46, 26.7, 22.4, 22.1, 16.5, 16.3, 16.1, 14.6, 13.3, 11.8, 11.7; HRMS m/z C50H63ClN9O7S2 [M+H]+の計算値1000.3975, 実測値: 1000.3975.
【0086】
(2S,4R)-1-((2S,15R*)-2-(tert-ブチル)-15-((S*)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-4,14-ジオキソ-6,10-ジオキサ-3,13-ジアザヘプタデカノイル)-4-ヒドロキシ-N-((S)-1-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)フェニル)エチル)ピロリジン-2-カルボキサミド(ET-ARV-771)(21)。一般手順Bに従って、化合物21を、アジド42(Klein,V.ら、2021年(上記を参照のこと)に従って合成する)及びアルキル化JQ1酸33を使用して得て、2種類のジアステレオマー混合物として21を得た。収率:3.4mg(27%);1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 8.68 (s, 1H), 7.94-7.90 (m, 1H), 7.71-7.65 (m, 1H), 7.44-7.31 (m, 7H), 7.25-7.22 (m, 1H), 7.17-7.13 (m, 1H), 5.14-4.87 (m, 1H), 4.75-4.58 (m, 1H), 4.53-4.44 (m, 1H), 4.09-3.98 (m, 1H), 3.94-3.87 (m, 2H), 3.80-3.31 (m, 11H), 2.67-2.61 (m, 2H), 2.54-2.49 (m, 3H), 2.41 (s, 2H), 2.37-2.14 (m, 2H), 1.98-1.47 (m, 11H), 1.11-0.94 ppm (m, 12H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ = 174.04, 174.00, 172.3, 171.5, 170.59, 170.55, 170.32, 170.25, 163.6, 163.2, 162.4, 155.3, 155.1, 150.4, 144.0, 143.4, 137.1, 136.9, 136.6, 131.3, 131.2, 131.1, 130.64, 130.59, 130.5, 130.10, 130.07, 130.0, 129.6, 129.4, 128.84, 128.80, 128.7, 126.6, 126.5, 70.4, 70.30, 70.26, 70.2, 69.6, 69.4, 69.1, 68.1, 67.7, 59.6, 59.0, 58.8, 58.6, 57.4, 57.1, 57.0, 50.3, 50.2, 49.1, 48.8, 39.8, 39.4, 36.6, 35.7, 35.6, 29.8, 29.6, 29.5, 26.7, 23.9, 23.4, 22.5, 21.9, 16.2, 14.61, 14.56, 13.3, 12.00, 11.97, 11.91, 11.87; HRMS m/z C51H65ClN9O7S2 [M+H]+の計算値1014.4131, 実測値: 1014.4126.
【0087】
(S)-13-((2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)カルバモイル)ピロリジン-1-カルボニル)-14,14-ジメチル-11-オキソ-3,6,9-トリオキサ-12-アザペンタデシル(R*)-2-((S*)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)プロパノエート(ME-OMZ1)(22)。一般手順Cに従って、化合物22を、アルキル化JQ1酸32及びアルコール41(Klein,V.ら、2021年(上記を参照のこと)に従って合成する)を使用して得て、2種類のジアステレオマー混合物として22を得た。収率:1.1mg(17%);1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 8.69-8.67 (m, 1H), 7.67-7.65 (m, 1H), 7.44-7.28 (m, 10H), 4.78-4.73 (m, 1H), 4.69-4.50 (m, 3H), 4.41-4.24 (m, 3H), 4.13-3.81 (m, 5H), 3.77-3.49 (m, 12H), 2.63 (d, J = 15.9 Hz, 3H), 2.59-2.50 (m, 4H), 2.42 (s, 3H), 1.73-1.66 (m, 3H), 1.58-1.48 (m, 3H), 0.99-0.94 ppm (m, 9H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ = 175.4, 171.6, 170.9, 170.6, 170.5, 163.2, 154.5, 150.4, 149.8, 148.7, 142.1, 140.3, 138.4, 136.9, 136.6, 132.4, 131.7, 131.1, 131.0, 131.0, 130.0, 129.6, 128.9, 128.8, 128.3, 71.30, 71.28, 71.0, 70.93, 70.89, 70.7, 70.6, 70.5, 70.44, 70.36, 69.3, 64.1, 64.0, 61.8, 61.7, 60.2, 60.1, 58.7, 58.6, 57.3, 56.8, 56.7, 43.4, 42.7, 42.6, 36.1, 36.0, 35.2, 26.6, 16.2, 16.1, 15.4, 15.3, 14.60, 14.56, 13.3, 11.9; HRMS m/z C50H62ClN8O9S2 [M+H]+の計算値1017.3764, 実測値: 1017.3780.
【0088】
(S)-13-((2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)カルバモイル)ピロリジン-1-カルボニル)-14,14-ジメチル-11-オキソ-3,6,9-トリオキサ-12-アザペンタデシル(R*)-2-((S*)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)ブタノエート(ET-OMZ1)(23)。一般手順Cに従って、化合物23を、アルキル化JQ1酸33及びアルコール41(Klein、V.ら、2021年に従って合成する(上記を参照のこと))を使用して得て、2種類のジアステレオマー混合物として23を得た。収率:0.7mg(10%);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 8.67 (s, 1H), 7.41-7.23 (m, 10H), 4.77 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 4.60-4.31 (m, 6H), 4.24 (d, J = 10.9 Hz, 1H), 4.15-4.11 (m, 1H), 4.05-3.89 (m, 3H), 3.80-3.74 (m, 2H), 3.72-3.52 (m, 10H), 2.65 (s, 3H), 2.60-2.51 (m, 4H), 2.41 (s, 3H), 2.17-2.10 (m, 2H), 1.71-1.64 (m, 4H), 1.05-0.93 ppm (m, 12H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ = 174.8, 174.1, 171.5, 171.1, 170.5, 163.2, 163.0, 154.6, 150.4, 149.9, 148.7, 141.2, 136.9, 136.7, 132.2, 131.8, 131.0, 130.7, 130.0, 129.7, 128.8, 128.4, 128.3, 71.32, 71.30, 70.98, 70.96, 70.91, 70.85, 70.8, 70.7, 70.6, 70.54, 70.51, 70.3, 69.3, 63.9, 63.8, 59.4, 58.5, 57.3, 56.8, 49.8, 49.7, 43.44, 43.41, 36.0, 35.1, 26.6, 23.4, 16.2, 14.6, 13.3, 11.9, 11.7, 16.1, 15.4, 15.3, 14.60, 14.56, 13.3, 11.9; HRMS m/z C51H64ClN8O9S2 [M+H]+の計算値1031.3921, 実測値: 1031.4061.
【0089】
2-(3-(2-(((S)-1-((2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-(((S)-1-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)フェニル)エチル)カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)プロポキシ)エチル(R*)-2-((S*)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)プロパノエート(ME-OARV-771)(24)。一般手順Cに従って、化合物24を、アルキル化JQ1酸32及びアルコール44(Klein、V.ら、2021年(上記を参照のこと)に従って合成する)を使用して得て、2種類のジアステレオマー混合物として24を得た。収率:1.8mg(25%);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 8.68-8.66 (m, 1H), 7.51-7.44 (m, 1H), 7.42-7.28 (m, 8H), 7.23-7.16 (m, 1H), 5.52 (br. s, 1H), 5.14-5.06 (m, 1H), 4.81-4.71 (m, 1H), 4.70-4.51 (m, 2H), 4.43-4.31 (m, 2H), 4.27 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 4.13-4.08 (m, 1H), 4.07-3.81 (m, 4H), 3.75-3.54 (m, 8H), 3.19 (br. s, 1H), 2.66-2.62 (m, 3H), 2.59-2.52 (m, 4H), 2.42 (s, 3H), 2.17-2.08 (m, 1H), 1.96-1.85 (m, 2H), 1.69 (d, J = 4.8 Hz, 3H), 1.56-1.47 (m, 6H), 1.08-1.05 ppm (m, 9H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ = 175.4, 174.3, 171.8, 171.5, 170.3, 169.8, 169.7, 169.5, 163.1, 154.5, 150.3, 149.8, 148.7, 136.9, 136.7, 132.2, 131.8, 131.0, 130.7, 130.0, 129.7, 128.9, 128.8, 126.65, 126.60, 73.2, 72.2, 70.5, 70.4, 70.3, 69.3, 69.0, 68.9, 68.0, 67.9, 63.9, 61.9, 60.1, 59.6, 58.8, 58.5, 57.2, 56.8, 56.6, 53.6, 49.1, 49.0, 42.6, 35.6, 35.3, 33.5, 30.0, 26.7, 26.6, 22.4, 22.3, 16.2, 15.3, 14.60, 14.55, 14.3, 13.2, 11.9; HRMS m/z C50H62ClN8O8S2 [M+H]+の計算値1001.3815, 実測値: 1001.3967.
【0090】
2-(3-(2-(((S)-1-((2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-(((S)-1-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)フェニル)エチル)カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)プロポキシ)エチル(R*)-2-((S*)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)ブタノエート(ET-OARV-771)(25)。一般手順Cに従って、化合物24を、アルキル化JQ1酸32及びアルコール44(Klein、V.ら、2021年(上記を参照のこと)に従って合成する)を使用して得て、2種類のジアステレオマー混合物として24を得た。収率:1.7mg(24%);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 8.66 (s, 1H), 7.47-7.28 (m, 10H), 7.20-7.13 (m, 1H), 5.12-5.04 (m, 1H), 4.81-4.75 (m, 1H), 4.70-4.52 (m, 2H), 4.49-4.31 (m, 2H), 4.28-4.22 (m, 1H), 4.18-4.11 (m, 1H), 4.07-3.94 (m, 2H), 3.91-3.81 (m, 2H), 3.80-3.64 (m, 3H), 3.63-3.54 (m, 5H), 3.07 (s, 1H), 2.67-2.65 (m, 3H), 2.59-2.52 (m, 4H), 2.41 (s, 3H), 2.19-2.05 (m, 2H), 1.96-1.85 (m, 2H), 1.72-1.64 (m, 4H), 1.49-1.46 (m, 3H), 1.07-1.01 ppm (m, 12H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ = 175.0, 174.9, 171.9, 171.8, 170.42, 170.38, 169.8, 169.7, 163.2, 154.6, 154.5, 150.3, 149.89, 149.85, 148.7, 143.42, 143.36, 136.92, 136.90, 136.71, 136.67, 131.8, 131.0, 130.1, 130.0, 129.7, 128.8, 126.6, 72.2, 70.32, 70.26, 70.2, 69.3, 69.0, 68.9, 68.0, 67.9, 63.8, 62.0, 59.4, 58.45, 58.40, 57.2, 56.8, 56.7, 49.8, 49.7, 49.0, 35.6, 35.4, 35.2, 35.1, 30.1, 26.7, 26.6, 23.43, 23.39, 22.4, 16.2, 14.6, 13.3, 12.0, 11.7; HRMS m/z C51H64ClN8O8S2 [M+H]+の計算値1015.3972, 実測値: 1015.4032.
【0091】
メチル2-(5-(4-クロロフェニル)-6,7-ジメチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-チエノ[2,3-e][1,4]ジアゼピン-3-イル)アセテート(28)。Fmoc-Asp(OMe)-OH(26)(1.92g、5.19mmol)をDCM(25mL)中に溶解した。塩化チオニル(3.76mL、51.9mmol)を添加し、反応物を還流しながら2時間静置した。次いで、反応混合物を真空中で濃縮して、中間体酸塩化物を得た。酸塩化物(2.01g、5.19mmol)をクロロホルム(10mL)中に溶解した。次いで(2-アミノ-4,5-ジメチルチオフェン-3-イル)(4-クロロフェニル)メタノン(27)(1.38g、5.19mmol)を添加し、フラスコを加熱還流し、1時間撹拌した。次いで、混合物を室温に冷却してからTEA(2.89mL、20.76mmol)を添加した。フラスコをさらに16時間加熱還流した。次いで、反応混合物を真空中で濃縮し、1,2-DCE(50mL)中に再溶解し、AcOH(3.5mL)で酸性化した。これを80℃で1時間撹拌しながら静置した。次いで、混合物を蒸発乾固させてからDCM(50mL)中に再溶解し、1.0M HCl溶液(40mL)で洗浄した。水性相をDCM(3×50mL)で抽出し、合わせた有機層をMgSO4で乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮した。残渣を、ヘプタン中の0%~80%EtOAcの直線勾配を使用したフラッシュカラムクロマトグラフィー(24gシリカカラム)で精製して28を得た。収率:1.06g(54%);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.43 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.34 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 4.26 (dd, J = 6.6, 7.4 Hz, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.44 (dd, J = 7.5, 16.8 Hz, 1H), 3.17 (dd, J = 6.5, 16.8 Hz, 1H), 2.29 (s, 3H), 1.60 ppm (s, 3H); LCMS m/z C18H18ClN2O3S [M+H]+の計算値377.1, 実測値: 377.0.
【0092】
メチル2-(4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)アセテート((±)-JQ1-OMe)(29)。化合物28(344mg、0.91mmol)をTHF(7mL)中に溶解し、-78℃に冷却してからTHF(1.37mL、1.37mmol)中の1.0M KOtBuの溶液を添加し、30分間撹拌した。次いで、ジエチルクロロフォスフェート(198μL、1.37mmol)を添加し、反応物を-10℃に加温し、45分間撹拌した。次いで、アセチルヒドラジン(135mg、1.82μmol)を添加し、反応物を室温で1時間撹拌しながら静置した。次いで、n-BuOH(7.8mL)を添加してから90℃に1時間加熱した。反応物を真空中で濃縮し、残渣を、ヘプタン中の30%~50%EtOAcの直線勾配を使用したフラッシュカラムクロマトグラフィー(40gシリカカラム)で精製して出発材料を除去し、DCM中の20%MeOHをカラムに流した。いくつかの分画を、水中の0.1%ギ酸中の35%~55%MeCNの直線勾配を12分にわたって使用したHPLCでさらに精製して29を得た。収率:173mg(46%);1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.41 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.33 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 4.62 (dd, J = 6.9, 6.9 Hz, 1H), 3.77 (s, 3H), 3.70-3.57 (m, 2H), 2.67 (s, 3H), 2.41 (s, 3H), 1.69 ppm (s, 3H); ); LCMS m/z C20H20ClN4O2S [M+H]+の計算値415.1, 実測値: 415.0.
【0093】
(±)-メチル(R)-2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)プロパノエート((±)-(3S,2R)-ME-JQ1-OMe)(30a)。一般手順Dに従って、化合物30aを、アルキル化剤のメチルヨウ化物を使用して得た。収率8.9mg(7%);一般手順Eに従って、化合物30aも30bのエピマー化から得てもよい。単離された収率:12mg(31%);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.34 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.31 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 4.25 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 4.07 (qd, J = 6.9, 10.7 Hz, 1H), 3.83 (s, 3H), 2.67 (s, 3H), 2.42 (s, 3H), 1.69 (s, 3H), 1.51 ppm (d, J = 6.9 Hz, 3H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ = 176.1, 163.2, 154.5, 149.8, 136.9, 136.7, 132.3, 131.1, 130.9, 130.7, 130.0, 128.8, 60.4, 51.9, 42.6, 15.4, 14.6, 13.2, 12.0; LCMS m/z C21H22ClN4O2S [M+H]+の計算値429.1, 実測値: 429.0.
(±)-メチル(S)-2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)プロパノエート((±)-(3S,2S)-ME-JQ1-OMe)(30b)。一般手順Dに従って、化合物30bを、アルキル化剤のメチルヨウ化物を使用して得た。収率35.4mg(29%);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.43 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.33 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 4.31 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 3.88 (qd, J = 7.2, 9.7 Hz, 1H), 3.72 (s, 3H), 2.64 (s, 3H), 2.41 (s, 3H), 1.70 (s, 3H), 1.62 ppm (d, J = 7.2 Hz, 3H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ = 176.1, 163.9, 155.5, 149.6, 136.95, 136.90, 132.7, 130.8, 130.4, 129.9, 128.8, 58.5, 52.1, 41.2, 15.4, 14.5, 13.2, 11.9; LCMS m/z C21H22ClN4O2S [M+H]+の計算値429.1, 実測値: 429.0.
【0094】
(±)-メチル(R)-2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)ブタノエート((±)-(3S,2R)-ET-JQ1-OMe)(31a)。一般手順Dに従って、化合物31aを、アルキル化剤のエチルヨウ化物を使用して得た。収率20mg(16%);一般手順Eに従って、化合物31aも31bのエピマー化から得てもよい。単離された収率:11mg(37%);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.35-7.29 (m, 4H), 4.24 (d, J = 10.9 Hz, 1H), 3.99 (dt, J = 3.7, 10.7 Hz, 1H), 3.84 (s, 3H), 2.66 (s, 3H), 2.41 (s, 3H), 2.23-2.13 (m, 1H), 1.73-1.63 (m, 4H), 1.02 ppm (t, J = 7.4 Hz, 3H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ = 175.5, 163.2, 154.6, 149.8, 136.9, 136.7, 132.3, 131.0, 130.9, 130.6, 129.9, 128.8, 59.5, 51.6, 49.8, 23.4, 14.6, 13.2, 12.0, 11.7; LCMS m/z C22H24ClN4O2S [M+H]+の計算値443.1, 実測値: 443.1.
【0095】
(±)-メチル(S)-2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)ブタノエート((±)-(3S,2S)-ET-JQ1-OMe)(31b)。一般手順Bに従って、化合物31bを、アルキル化剤のエチルヨウ化物を使用して得た。収率29.2mg(23%);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.42 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.33 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 4.31 (d, J = 10.9 Hz, 1H), 3.83 (dt, J = 3.6, 10.1 Hz, 1H), 3.73 (s, 3H), 2.64 (s, 3H), 2.41 (s, 3H), 2.37-2.26 (m, 1H), 1.93-1.82 (m, 1H), 1.69 (s, 3H), 1.05 ppm (t, J = 7.5 Hz, 3H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ = 175.5, 163.9, 155.4, 149.6, 136.95, 136.90, 132.7, 130.8, 130.7, 130.3, 129.9, 128.8, 57.6, 51.9, 47.6, 23.4, 14.5, 13.2, 11.9, 11.2; LCMS m/z C22H24ClN4O2S [M+H]+の計算値443.1, 実測値: 443.1.
【0096】
(±)-(R)-2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)プロパン酸((±)-(3S,2R)-ME-JQ1-OH)(32)。化合物30a(8.2mg、19μmol)をTHF(400μL)中に溶解した。その後、LiOH(1mg、38μmol)を水中(100μL)に溶解し、フラスコに添加した。フラスコを35℃に加熱し、48時間撹拌した。水(25μL)及び0.6M LiOH溶液(25μL)を一定間隔(12時間ごと)で添加して変換を補助した。エステルから酸への変換をLC-MSでモニターした。100%変換後、溶液を2.0M HCl溶液で中和し、フリーズドライして、酸32を得た。酸は次の工程のための粗製物として使用し、収率は定量的と考えた。収率:7.9mg、(定量的);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.34 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.31 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 4.25 (d, J = 10.6 Hz, 1H), 4.07 (m, 1H), 3.83 (s, 3H), 2.67 (s, 3H), 2.42 (s, 3H), 1.69 (s, 3H), 1.51 ppm (d, J = 7.0 Hz, 3H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ = 175.8, 164.8, 154.6, 150.3, 137.7, 135.7, 132.4, 131.6, 131.4, 130.9, 130.3, 129.0, 59.1, 41.5, 15.6, 14.6, 13.4, 11.8; LCMS m/z C20H20ClN4O2S [M+H]+の計算値415.1, 実測値: 415.1.
【0097】
(±)-(R)-2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)ブタン酸((±)-(3S,2R)-ET-JQ1-OH)(33)。化合物31a(35.2mg、80μmol)をTHF(1.2mL)中に溶解した。その後、LiOH(4.8mg、200μmol)を水中(300μL)に溶解し、フラスコに添加した。フラスコを40℃に加熱し、6日間撹拌した。水(50μL)及び0.65M LiOH溶液(50μL)を一定間隔(12時間ごと)で添加して変換を補助した。エステルから酸への変換をLC-MSでモニターした。100%変換後、溶液を2.0M HCl溶液で中和し、フリーズドライして、酸33を得た。酸は次の工程のための粗製物として使用し、収率は定量的と考えた。収率:34.3mg、(定量的);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.41 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.32 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 4.24 (d, J = 6.5 Hz, 1H), 3.75-3.70 (m, 1H), 2.69 (s, 3H), 2.43 (s, 3H), 2.03-1.95 (m, 2H), 1.71 (s, 3H), 1.10 ppm (t, J = 7.4 Hz, 3H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ = 175.2, 164.6, 154.9, 150.1, 137.5, 136.1, 132.5, 131.5, 131.2, 130.2, 130.1, 129.0, 58.2, 48.6, 23.8, 14.6, 13.3, 11.9; LCMS m/z C21H22ClN4O2S [M+H]+の計算値429.1, 実測値: 429.1.
【0098】
(S)-13-((2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)カルバモイル)ピロリジン-1-カルボニル)-14,14-ジメチル-11-オキソ-3,6,9-トリオキサ-12-アザペンタデシル(R)-2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)ブタノエート(AGB1)(46)。一般手順Fに従って、化合物46を、アルコール41(Klein、V.ら、2021年(上記を参照のこと)に従って合成する)を使用して得、水中の0.1%ギ酸中の5%~100%MeCNの直線勾配を12分にわたって使用した逆相フラッシュカラムクロマトグラフィー(15.5g C18金カラム)で精製してAGB1(46)を得た。収率:29mg(30%);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 8.67 (s, 1H), 7.42 (t, J = 5.9 Hz, 1H), 7.36-7.28 (m, 9H), 4.74 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 4.56-4.49 (m, 3H), 4.44-4.30 (m, 3H), 4.23 (d, J = 10.9 Hz, 1H), 4.06 (d, J = 11.3 Hz, 1H), 4.01 (d, J = 15.7 Hz, 1H), 3.98-3.92 (m, 2H), 3.81-3.72 (m, 2H), 3.69-3.59 (m, 10H), 2.65 (s, 3H), 2.53-2.45 (m, 4H), 2.41 (s, 3H), 2.18-2.09 (m, 2H), 1.73-1.62 (m, 4H), 1.01 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 0.95 ppm (s, 9H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ = 174.8, 171.4, 171.1, 170.5, 163.2, 162.9, 154.5, 150.5, 149.9, 148.5, 138.4, 136.9, 136.6, 132.1, 131.8, 131.1, 131.0, 130.9, 130.7, 130.0, 129.6, 128.8, 128.2, 71.3, 70.9, 70.8, 70.6, 70.5, 70.2, 69.3, 63.8, 59.3, 58.7, 57.2, 56.8, 49.7, 43.3, 36.2, 35.3, 26.5, 23.3, 16.1, 14.5, 13.2, 11.9, 11.7; HRMS m/z C51H64ClN8O9S2 [M+H]+の計算値1031.3921, 実測値: 1031.3961.
【0099】
2-(3-(2-(((S)-1-((2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-(((S)-1-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)フェニル)エチル)カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-3,3-ジメチル-1-オキソブタン-2-イル)アミノ)-2-オキソエトキシ)プロポキシ)エチル(R)-2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)ブタノエート(AGB2)(47)。一般手順Fに従って、化合物47を、アルコール44(Klein、V.ら、2021年(上記を参照のこと)に従って合成する)を使用して得、水中の0.1%ギ酸中の5%~95%MeCNの直線勾配を12分にわたって使用したHPLCで精製してAGB2(47)を得た。収率:1.2mg(10%);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 8.66 (s, 1H), 7.47 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.39 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.36 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.33 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.29 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.20 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 5.08 (dq, J = 7.2, 7.2 Hz, 1H), 4.78 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 4.56 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 4.55-4.51 (m, 1H), 4.49-4.43 (m, 1H), 4.35-4.30 (m, 1H), 4.25 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 4.12 (d, J = 11.3 Hz, 1H), 4.00-3.93 (m, 2H), 3.87 (d, J = 15.4 Hz, 1H), 3.80-3.75 (m, 1H), 3.75-3.69 (m, 1H), 3.64-3.58 (m, 5H), 2.65 (s, 3H), 2.58-2.52 (m, 4H), 2.41 (s, 3H), 2.20-2.12 (m, 1H), 2.09 (dd, J = 8.3, 13.6 Hz, 1H), 1.93-1.86 (m, 2H), 1.73-1.63 (m, 4H), 1.47 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 1.06 (s, 9H), 1.02 ppm (t, J = 7.4 Hz, 3H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ = 174.9, 171.8, 170.4, 169.8, 163.2, 154.6, 150.3, 149.9, 148.7, 143.4, 136.9, 136.6, 131.02, 130.99, 130.0, 129.7, 128.8, 126.6, 70.3, 70.2, 69.0, 68.9, 68.0, 63.8, 59.4, 58.5, 57.1, 56.8, 49.8, 49.0, 35.6, 35.2, 30.0, 29.8, 26.7, 23.4, 22.4, 16.2, 14.6, 13.3, 11.9, 11.7; HRMS m/z C51H64ClN8O8S2 [M+H]+の計算値1015.3972, 実測値: 1015.4197.
【0100】
(2S,4R)-1-((2S,17R)-2-(tert-ブチル)-17-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)-4,16-ジオキソ-6,9,12-トリオキサ-3,15-ジアザノナデカノイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(AGB3)(48)。アジド9(Zengerle,M、2015年(上記を参照のこと)に従って合成する)(30mg、46μmol)をMeOH(2mL)中に溶解した。触媒量の10wt.%Pd/Cを添加し、反応物を水素下で3時間撹拌した。次いで、反応混合物を、PTFEシリンジフィルターに通してろ過し、蒸発乾固させて、所望のアミンの定量的収率を得た。得られたアミン(7.4mg、12μmol)をDMF(96μL)中に溶解し、DMF(96μL)中のET-JQ1-OH(45、Bond,A.G.、2020年(上記を参照のこと)に従って合成する)(5mg、12μmol)、COMU(5.1mg、12μmol)及びDIPEA(4.18μL、12μmol)の溶液に添加し、室温で2時間撹拌した。次いで、混合物を真空中で濃縮し、残渣を、水中の0.1%ギ酸中の5%~95%MeCNの直線勾配を12分にわたって使用したHPLCで精製してAGB3(48)を得た。収率:2.2mg(18%);1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 8.68 (s, 1H), 8.18 (t, J = 5.5 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.31-7.24 (m, 5H), 7.17-7.12 (m, 3H), 4.99 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 4.85 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 4.80 (d, J = 9.7 Hz, 1H), 4.51 (br. s, 1H), 4.46 (dd, J = 7.2, 15.8 Hz, 1H), 4.26 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 4.19-4.11 (m, 2H), 4.09 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 3.83-3.63 (m, 15H), 3.50-3.42 (m, 1H), 2.64 (s, 3H), 2.53 (s, 3H), 2.39 (s, 3H), 2.34-2.27 (m, 1H), 2.16 (dd, J = 7.5, 13.5 Hz, 1H), 1.96-1.89 (m, 1H), 1.64-1.56 (m, 4H), 1.03-0.96 ppm (m, 12H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ = 173.8, 171.7, 171.6, 170.3, 163.9, 155.0, 150.3, 149.9, 148.5, 138.6, 136.9, 136.7, 132.0, 131.9, 131.31, 131.28, 130.9, 130.6, 130.1, 129.4, 129.0, 127.5, 71.3, 71.1, 70.75, 70.69, 70.4, 70.3, 59.8, 59.4, 57.7, 56.7, 50.3, 42.9, 39.8, 36.9, 36.0, 26.6, 23.1, 16.2, 14.6, 13.3, 12.0, 11.9; HRMS m/z C51H65ClN9O8S2 [M+H]+の計算値1030.4081, 実測値: 1030.4589.
【0101】
(2S,4S)-1-((S)-17-(tert-ブチル)-2,2-ジメチル-15-オキソ-3,3-ジフェニル-4,7,10,13-テトラオキサ-16-アザ-3-シラオクタデカノ-18-イル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(50)。酸37(Klein、V.ら、2021年(上記を参照のこと)に従って合成する)(161mg、0.36mmol)、COMU(154mg、0.36mmol)、DIPEA(334μL、1.92mmol)をDMF(1.92mL)中に溶解し、室温で10分間撹拌した。アミン49(Zengerle,M、2015年(上記を参照のこと)に従って合成する)(112mg、0.24mmol)を添加し、反応物を室温で2時間撹拌しながら静置した。次いで、混合物を水中の0.1%ギ酸中の5%~100%MeCNの直線勾配と3分のプラトーとを使用した逆相フラッシュカラムクロマトグラフィー(2×15.5g C18カラム)で10分にわたって精製して50を得た。収率:103mg(50%);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 8.65 (s, 1H), 7.69-7.65 (m, 4H), 7.57 (t, J = 6.1 Hz, 1H), 7.43-7.31 (m, 10H), 7.20 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 5.52 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 4.71 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 4.60 (dd, J = 7.0, 14.9 Hz, 1H), 4.52 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 4.49-4.43 (m, 1H), 4.29 (dd, J = 5.1, 14.9 Hz, 1H), 4.01 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 3.98-3.91 (m, 2H), 3.82-3.77 (m, 3H), 3.70-3.59 (m, 8H), 3.57 (t, J = 5.4 Hz, 2H), 2.50 (s, 3H), 2.34 (d, J = 14.0 Hz, 1H), 2.19-2.10 (m, 1H), 1.04 (s, 9H), 0.93 ppm (s, 9H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3): 172.7, 171.9, 169.9, 150.4, 148.7, 137.5, 135.7, 133.8, 131.6, 131.3, 129.7, 128.3, 127.7, 72.6, 71.3, 71.2, 70.9, 70.8, 70.54, 70.51, 63.5, 60.0, 58.7, 56.6, 43.6, 35.2, 35.1, 30.4, 26.9, 26.4, 19.3, 16.1; LCMS m/z C46H63N4O8SSi [M+H]+の計算値859.4, 実測値: 859.3.
【0102】
(2S,4S)-1-((S)-2-(tert-ブチル)-14-ヒドロキシ-4-オキソ-6,9,12-トリオキサ-3-アザテトラデカノイル)-4-ヒドロキシ-N-(4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)ピロリジン-2-カルボキサミド(51)。THF(11.9mL)中の化合物50(51mg、59μmol)の溶液に、THF(178μL、178μmol)中の1.0M TBAF溶液を添加した。これを6時間撹拌しながら静置した。次いで、混合物を真空中で濃縮し、残渣を水中の0.1%ギ酸中の5%~100%MeCNの直線勾配を10分にわたって使用して逆相フラッシュカラムクロマトグラフィー(15.5g C18カラム)で精製してアルコール51を得た。収率:36.6mg(定量的);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 8.66 (s, 1H), 8.01 (t, J = 5.9 Hz, 1H), 7.38-7.32 (m, 4H), 7.29 (d, J = 9.4 Hz, 1H), 4.67 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 4.64-4.58 (m, 2H), 4.44 (t, J = 4.3 Hz, 1H), 4.30 (dd, J = 5.1, 15.0 Hz, 1H), 4.04 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 3.97 (d, J = 15.3 Hz, 1H), 3.89 (dd, J = 4.2, 10.9 Hz, 1H), 3.84 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 3.71-3.52 (m, 12H), 3.51-3.44 (m, 1H), 2.50 (s, 3H), 2.26 (d, J = 14.3 Hz, 1H), 2.23-2.15 (m, 1H), 0.96 ppm (s, 9H); 172.8, 171.8, 169.8, 150.4, 148.6, 137.7, 131.7, 131.2, 129.6, 128.2, 72.7, 71.2, 71.1, 70.9, 70.5, 70.35, 70.29, 61.7, 60.1, 58.8, 56.5, 43.6, 35.7, 35.5, 26.4, 16.1; LCMS m/z C30H45N4O8S [M+H]+の計算値621.3, 実測値: 621.2.
【0103】
(S)-13-((2S,4S)-4-ヒドロキシ-2-((4-(4-メチルチアゾール-5-イル)ベンジル)カルバモイル)ピロリジン-1-カルボニル)-14,14-ジメチル-11-オキソ-3,6,9-トリオキサ-12-アザペンタデシル(R)-2-((S)-4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル)ブタノエート(シス-AGB1)(52)。一般手順Fに従って、化合物52を、アルコール51を使用して得、水中の0.1%ギ酸中の5%~95%MeCNの直線勾配を12分にわたって使用したHPLCで精製してシス-AGB1(52)を得た。収率:8.4mg(51%);1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 8.67 (s, 1H), 7.63 (t, J = 5.8 Hz, 1H), 7.38-7.27 (m, 8H), 7.18 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 5.54 (d, J = 10.1 Hz, 1H), 4.75 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 4.61 (dd, J = 7.0, 14.9 Hz, 1H), 4.54 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 4.49-4.33 (m, 3H), 4.30 (dd, J = 5.3, 15.0 Hz, 1H), 4.24 (d, J = 10.9 Hz, 1H), 4.01 (d, J = 15.8 Hz, 1H), 3.99-3.91 (m, 3H), 3.81 (d, J = 11.1 Hz, 1H), 3.79-3.75 (m, 2H), 3.70-3.62 (m, 8H), 2.65 (s, 3H), 2.51 (s, 3H), 2.41 (s, 3H), 2.34 (d, J = 14.3 Hz, 1H), 2.21-2.13 (m, 2H), 1.72-1.64 (m, 4H), 1.02 (t, J = 7.5, 3H), 0.95 ppm (s, 9H); 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ = 174.9, 172.9, 171.7, 169.9, 163.2, 154.5, 150.5, 149.9, 148.6, 137.6, 136.8, 136.5, 132.1, 131.6, 131.2, 131.0, 130.9, 130.5, 130.0, 129.7, 128.8, 128.3, 71.3, 71.2, 70.84, 70.81, 70.5, 69.3, 63.8, 60.0, 59.3, 58.7, 56.5, 49.8, 43.6, 35.30, 35.26, 26.4, 23.3, 16.2, 14.6, 13.3, 12.0, 11.7; HRMS m/z C51H64ClN8O9S2 [M+H]+の計算値1031.3921, 実測値: 1031.3987.
【0104】
生物学。
細胞培養。HEK293ヒト胚腎臓付着細胞株(ATCC、Manassas、VA、米国)は、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)(Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)及び1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strep)(15140122番、Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)が添加されたDMEM(Invitrogen、Carlsebad、CA、米国)中、37℃、5%CO2、及び95%の湿度で培養した。22RV1;ヒト前立腺癌腫上皮付着細胞株(ATCC、Manassas、VA、米国)は、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)(Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)及び1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strep)(15140122番、Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)が添加されたRPMI-1640(Invitrogen、Carlsebad、CA、米国)中、37℃、5%CO2、及び95%の湿度で培養した。MV-4-11ヒト急性単球性白血病懸濁液細胞株(ATCC、Manassas、VA、米国)は、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)(Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)及び1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strep)(15140122番、Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)が添加されたIMDM(Invitrogen、arlsebad、CA、米国)中、37℃、5%CO2、及び95%の湿度で培養した。
【0105】
CRISPRブロモタグ-Brd2ノックイン細胞株の生成。HEK293細胞は、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)(Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)及び1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strep)(15140122番、Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)が添加されたDMEM(Invitrogen、Carlsebad、CA、米国)中、37℃、5%CO2、及び95%の湿度で維持した。5x105 HEK293細胞は、実験開始の24時間前に、6ウェルプレートの個々のウェルのDMEM 1mL(Invitrogen、Carlsebad、CA、米国)中にプレーティングした。細胞存在下で翌日にトランスフェクトしたHEK293細胞を、U6-snRNA & Cas9D10A発現カセットを含むpx335カスタムベクターと、別のU6-sgRNA及びピューロマイシン発現カセットを保有するpBABEDベクターと、最後にeGFP-P2A-ブロモタグ-Brd2供与体ノックイン配列を含むpcDNA5ベクターとを含む3種類のカスタムベクターと同時にFugene HDリポフェクタミン(Madison、Wisconsin、米国)を使用してトランスフェクトした。相同的組換えが行われる細胞の相対集団を増加させるため、このトランスフェクションを0.1μMのDNAリガーゼIV阻害剤SCR7存在下で行った。翌日、細胞を洗浄してから0.1μM SCR7及び2μg/mlのピューロマイシンを含む新しいDMEM培地を適用した。翌日、細胞を洗浄してから0.1μM SCR7及び2μg/mLのピューロマイシンを含む新しいDMEM培地を適用するようにこれを繰り返した。翌日、細胞に3回目の洗浄を行い、SCR7とピューロマイシンの両方を含んでいない新しい培地を適用して回収した。次いで翌日、HEK293細胞を引き続き洗浄し、翌日、2.5μg/mLピューロマイシン及び0.1μM SCR7を含む新しいDMEMを再び適用した。このプロセスをさらに2日間継続した。次いで、細胞をPBSで洗浄してからDMEM中でさらに20日間回収した。その後細胞を調製してFACSソートを行った。
【0106】
GFP陽性CRISPRノックインブロモタグ-Brd2 HEK293細胞の蛍光活性化細胞ソート。その後、前段階でCRISPRリポフェクション及び選択が行われたHEK293細胞を、tTrypsin-EDTA(0.05%)、フェノールレッド(Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)を使用してトリプシン処理した。懸濁液になったら、トリプシン細胞混合物をFBS(Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)で中和した。細胞を1500rpmで5分間ペレット化した。その後、生成した細胞ペレットを、1%FBSが添加されたDMEM培地中に1mLあたり5×106細胞の濃度で再懸濁した。野生型HEK293細胞をGFP発現に関するベースライン対照として使用した。単一細胞クローンをDundee大学Flow Cytometryand Cell Sorting FacilityのSony Biotechnology製SH800細胞ソーターを使用して蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)によって生成した。488nmレーザーを使用して蛍光を励起させ、光散乱を生成した。前方角度光散乱(FSC)及び後方散乱(BSC)を488±17nmバンドパスフィルターを使用して検出した。FSC領域(A)及びSSC-Aの測定値に基づいて細胞とデブリとを区別した。単一細胞をFSC-A及びFSC-Width(W)の測定値に基づいてダブレット及びクランプ(clumps)と区別した。GFP蛍光を525±50nmバンドパスフィルターを使用して検出し、自己蛍光を600±60nmバンドパスフィルターを使用して検出した。GFP陽性細胞を、バックグラウンドGFPとGFPを発現しない細胞の対照試料の自己蛍光とを最初に評価することによって同定した。この試料のGFP及び自己蛍光に関する測定値を使用して、同定されたGFP陽性細胞を識別するコレクションゲートを設定した。次いでソートされることになる試料を分析し、GFP陽性細胞をソートして採取した。
【0107】
単一GFP+ve細胞を、3枚の96ウェルプレート(Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)の各ウェルにソートし、3枚の96ウェルプレートは、健常細胞からの50%ろ過済みプレ調整培地、並びに10%FBS及び1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strep)(15140122番、Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)を含む50%新しいDMEM200μLを含んでおり、37℃、5%CO2、及び95%の湿度で2週間貯蔵した。2週後、認められる全てのコロニーを拡大させ、その後凍結した。
【0108】
ゲノムDNA抽出。拡大後の細胞株におけるBrd2発現をウエスタンブロットによって分析し、その後疑わしい細胞株を回収してゲノム抽出を行った。細胞を、10cmプレートのウェル中に2×106の細胞密度でプレーティングした。48時間後、細胞を、トリプシン-EDTA(0.05%)、フェノールレッド(Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)を使用してトリプシン処理した。懸濁液になったら、トリプシン細胞混合物をFBS(Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)で中和した。細胞を1500rpmで5分間ペレット化した。各クローンの残りのペレットに、提供された取扱説明書に従い、PROMEGAのWizard(登録商標)ゲノムDNA精製キットを使用した溶液ベースの抽出アプローチに従ってゲノム抽出を行った。その後、抽出されたDNAを、ナノドロップ分光光度計を使用して分析し、-20℃で保存してから使用した。
【0109】
ジャンクションPCR。ジャンクションPCRを、次のプライマー:フォワード、AGTCTGTCCACCCCCTCTAC及びリバース、ACTCCACTCCACCGTCAAACを使用して行った。前の工程から抽出されたゲノムDNAをその後のPCR反応のための鋳型として使用した。Phusionハイフィデリティポリメラーゼとクローン又はHEK293野生型ゲノムDNAのいずれかの鋳型DNA250ngとを使用し、30サイクルのPCRを、98℃の融解温度、60℃のアニーリング温度、及び72℃で2分の伸長工程で実行した。次いで、これらのPCR産生物を、1×DNAロード染色剤(Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)及び1×Generuler 1Kb plus DNAマーカー(Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)中の、1×Sybersafe DNA染色試薬(Invitrogen、Carlsebad、CA、米国)を含む2%アガロースゲル上、100ボルトで30分間続けて実行した。実行したゲルを、Bio-Rad Gel Docシステム(Bio-Rad、Hercules、California)を使用して画像化した。
【0110】
遺伝子型判定。ジャンクションPCR産生物を含むアガロースゲルを使用し、適切なサイズのバンドを、UVイメージャー及び外科用メスを使用してそのアガロースゲルから採取した。選択されたバンドは、HEK293野生型Brd2ジャンクション産生物1kb、ブロモタグ-Brd2クローン野生型Brd2ジャンクション産生物1kb、及びブロモタグ-Brd2クローンノックインジャンクション産生物2kbに対応していた。その後、切除したバンドを、Monarch(登録商標)DNAゲル抽出キット(NEB、Ipswich、Massachusetts)を使用してアガロースから除去した。抽出後、PCR産生物を、Strataclone Blunt PCRクローニングキット(Agilent、Santa Clara、California)を使用して平滑末端ベクターにライゲーションし、その後Creリコンビナーゼ発現大腸菌(Agilent、Santa Clara、California)にトランスフェクトし、カナマイシン50μg/mL寒天プレート上にプレーティングした。プレーティングの翌日、認められるコロニーを摘出し、LB標準製剤を含む50ug/mLのカナマイシン5ml中で16時間成長させた。その後一晩、細菌性成長には、Monarch(登録商標)プラスミドミニプレップキット(NEB、Ipswich、Massachusetts)を使用したプラスミドミニプレップ抽出を行った。その後、抽出後に回収したベクター産生物を、ナノドロップ分光光度計を使用して分析した。これらの産生物には、市販のM13-フォワード、M13-リバース、及びeGFP-C1-フォワードプライマーを使用し、Applied Biosystems 3730 DNAアナライザーを使用したシークエンシングを行った。シークエンシングを、Dundee大学DNA sequencing and servicesで行った。その後、シークエンシングからの生データをJalviewソフトウェアを使用して分析した。
【0111】
用量-応答分解アッセイ。全ての用量-応答分解アッセイを遺伝子型が検証されたヘテロ接合ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞株で行った。ヘテロ接合ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞を、滴定実験開始の前日に6個の健常プレートの1ウェルあたり5x105細胞の密度でプレーティングした。PROTAC化合物を10mMの濃度でDMSO中に溶解し、これらの原液濃度から、PROTAC化合物を10μM~1nMの範囲のDMSOを使用して希釈して適切な濃度にした。次いで、化合物を10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)(Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)及び1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strep)(15140122番、Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)が添加されたDMEM(Invitrogen、Carlsebad、CA、米国)2mLに添加し、実験開始時に細胞に添加した。対照化合物、例えば、MZ1、シス-MZ1をDMSO中に同様に溶解して適切な濃度にした。全ての滴定実験を合計6時間行ってから回収し、処置を適用したら回収直前まで37℃、5%CO2、及び95%の湿度で維持した。細胞をPBSで2回洗浄してから回収した。
【0112】
時間経時分解アッセイ。PROTAC AGB1、AGB2、及びAGB3を使用した時間経時分解アッセイを、遺伝子型が検証されたヘテロ接合ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞株で行った。ヘテロ接合ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞を時間経過アッセイの開始前日に6個の健常プレートの1ウェルあたり5x105細胞の密度でプレーティングした。PROTACのAGB1及びAGB2をDMSOで希釈して1mMの濃度にしてからDMEM2mLで1:2000にさらに希釈して、時点ごとに500nMの濃度にした。PROTAC AGB3をDMSOで希釈して2mMの濃度にしてからDMEM2mLで1:2000にさらに希釈して、1時点あたり1μMの濃度にした。時点の範囲は0~36時間の間であった。処置を、時間をずらして適用して全ての時点を同時に回収できるようにした。
【0113】
回収アッセイ。回収アッセイを72時間にわたって200nM AGB1を使用して行った。これを遺伝子型が検証されたヘテロ接合ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞株で行った。ヘテロ接合ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞を、回収アッセイ開始前日に6ウェルプレートの1ウェルあたり5×105細胞の密度でプレーティングした。実験当日、細胞をPBSで洗浄してからDMSO又はAGB1 200nMのいずれかを含む新しいDMEMを適用した。処置中、細胞を37℃、5%CO2、及び95%の湿度で維持した。3時間後、回収及びビヒクル対照条件の細胞をPBSで再洗浄してから200nM AGB1又はDMSOを含んでいない新しいDMEMを適用した。陽性対照条件に関しては、これらを残りの処置時間に関して200nM AGB1とともに放置した。
ポリクローナルBrd4BD2 L387A抗体の獲得。ポリクローナルBrd4BD2 L387A抗体を生成するために、ヒツジを、以前に記載されているように精製した(Gadd, M. S. et al., Nat. Chem. Biol. 2017, 13 (5), 514-521;Baud, M. G. J. et al., Science 2014, 346 (6209), 638-641)His-Brd4BD2 L387Aドメインタンパク質0.35mgで免疫化し、20mM HEPES pH7.5、0.5M NaCl、1mM DTTを含む緩衝液中で調製した。続いて、28日間隔でさらに4回の注射を行った。採血を各注射の7日後に行った。抗体を血清からアフィニティー精製し、50mM グリシンpH2.5で溶出し、1MトリスpH8で中和し、His-Brd4BD2 L387Aタンパク質を使用してPBS緩衝液へ透析した。
【0114】
競合アッセイ。ヘテロ接合ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞を2mL DMEM培地中に1ウェルあたり5×105細胞の密度で6ウェルプレート中にプレーティングした。実験開始時、細胞を、3μM MLN4924、50μM MG132、10μM VH298、10μM ET-JQ1-OMe、又は0.1%DMSOのいずれかで処置した。1時間後、200nMのAGB1を、事前に化合物で処置した細胞に添加した。3時間後、細胞を回収してウエスタンブロットによるその後の処理を行った。各処置を並行して行って条件ごとに2つの技術的反復を行った。6ウェルプレートを、実験全体にわたって37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。
【0115】
ウエスタンブロッティング。全ての細胞を、RIPA溶解、およびプロテアーゼ阻害剤カクテル(Merck、11697498001)及びBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ(Sigma、E1014)が添加された抽出緩衝液(ThermoFisher Scientific、89901)を用いて氷上で採取した後、-20℃で保存してから使用した。総タンパク質量を、BCAタンパク質アッセイ(#23225、Pierce、Rockford、Illinois)を使用して決定した。タンパク質濃度を、BCAアッセイ(ThermoFisher Scientific、23225)を使用して決定した。次いで試料を調製し、NuPAGE(商標)4~12%Bis-Tris Midiゲル(ThermoFisher Scientific、WG1403A)にロードし、続いて、タンパク質をニトロセルロース膜(EMD Millipore)上に転写した。膜を1時間ブロックしてから5%Milk TBSTを使用して一次抗体とインキュベートした。膜を、Brd2(Abcam、Ab139690、1:1000)、Brd3(Abcam、Ab50818、1:4000)、Brd4(Abcam、Ab128874、1:1000)又は本発明者らのポリクローナルBrd4BD2 L387A抗体に関してプローブした。一次抗体と4℃で一晩インキュベートした後、膜を、二次抗体(抗ウサギ、Abcam AB216773、1:5000又は抗マウス、Abcam AB216774、1:5000)及びhFABTMローダミン抗チューブリン抗体(Biorad、12004165、1:10000)と1時間インキュベートし、次いでBio-Radイメージャー(LI-COR Biosciences)で画像化した。全てのウエスタンブロットをBio-Rad(LI-COR、Biosciences)製のImage Labを使用してバンド強度に関して分析した。次いで、これらのブロットから抽出されたデータをプロットし、プリズム(v.8.2.0、GraphPad)を使用して分析した。
【0116】
細胞生存率アッセイ。MV-4-11細胞を、96ウェル白色底部プレートの1ウェルあたり2×104の細胞密度でプレーティングし、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)(Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)及び1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strep)(15140122番、Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)が添加された50μLのIMDM(Invitrogen、arlsebad、CA、米国)中、37℃、5%CO2、及び95%の湿度で成長させながら一晩静置した。次いで細胞を、DMSO、AGB1、シス-AGB1、MZ1、シス-MZ1又はスタウロスポリンを含む2回の化合物処置で添加されたIMDM50μLで処置した。次いで、これらの細胞を37℃、5%CO2、及び95%の湿度でインキュベートしながら1日静置してから分光光度的分析を行った。22RV1細胞を、96ウェル白色底部プレートの1ウェルあたり2×104の細胞密度でプレーティングし、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)(Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)及び1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strep)(15140122番、Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)が添加されたRPMI-1640(Invitrogen、Carlsebad、CA、米国)100μL中、37℃、5%CO2、及び95%の湿度で成長させながら一晩静置した。次いで、細胞をPBSで2回洗浄してから、DMSO、AGB1、シス-AGB1、MZ1、シス-MZ1又はスタウロスポリンを含む1回の化合物処置が添加された100μLの新しいRPMI-1640培地で処置した。次いで、これらの細胞を、37℃、5%CO2、及び95%の湿度でインキュベートしながら2日間静置してから分光光度的分析を行った。HEK293野生型細胞を、96ウェル白色底部プレートの1ウェルあたり2×104の細胞密度でプレーティングし、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)(Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)及び1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strep)(15140122番、Thermo Fisher、Waltham、MA、米国)が添加された100μLのDMEM(Invitrogen、Carlsebad、CA、米国)中、37℃、5%CO2、及び95%の湿度で成長させながら一晩静置した。次いで、細胞をPBSで2回洗浄してからDMSO、AGB1、シス-AGB1、MZ1、シス-MZ1又はスタウロスポリンを含む1回の化合物処置が添加された100μLの新しいDMEMで処置した。次いで、これらの細胞を、37℃、5%CO2、及び95%の湿度でインキュベートしながら2日間静置してから分光光度的分析を行った。全ての細胞株を、0.1%DMSO中の1倍の濃度の化合物で2連で(DMSO対照に関しては3連で)処置した。化合物を連続希釈して7点、10倍滴定を行った。細胞を50:100μLの化合物で処置して最終濃度を0.1%DMSO中で10μM:10pMにした。分光分析の時点で細胞をPromega CellTiter-Glo(登録商標)2.0細胞生存率アッセイ試薬100μLで処置した。プレートにオービタルシェーカーを2分行って溶解を促進し、さらに5分間静置してピーク発光を達成した。次いで発光を、BMG Labtech PHERAstar発光プレートリーダーで推奨設定で記録した。この分析から抽出されたデータをGraphpadプリズム(v.8.2.0、GraphPad)で分析し、DMSOビヒクル対照に対して正規化した。EC50値をこれらのプロットから導出した。
【0117】
試料処理、TMT標識及び画分。CRISPR改変ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞を、処置の24時間前に100cmプレート上に5×106細胞で播種した。細胞をDMSO、1μM AGB1又は1μM シス-AGB1のいずれかで処置した。処置してから2時間後、細胞をPBSで2回洗浄した。細胞を100mM TEAB、5%(w/v)SDS 150μL中に溶解した。溶解物を10秒間超音波処理し、次いで15,000gで5分間遠心分離し、遠心分離後に上清を採取した。次いで、試料をマイクロ-BCAタンパク質アッセイキット(Thermo Fisher Scientific)を使用して定量化し;次いで、試料各300μgを還元し、アルキル化し、次いで、製造業者(protifi)によって記載されているStrap miniプロトコール(Protifi)プロトコールを使用していくつか改変しながら消化した。試料を50mM TEAB緩衝液中、最初の一晩はトリプシン(1:40)で、次いでさらに6時間同じ比率(1:40)で二重消化した。ペプチドを定量的蛍光ペプチドアッセイ(Thermo Fisher Scientific)を使用して定量化した。試料(各90μg)を、製造業者の取扱説明書に従ってTMT10-plex Isobaric Label試薬セット(Thermo Fisher Scientific)で標識した。標識後、試料を標識効率に関して確認し、次いで混合し、脱塩し、30℃のスピードバキューム中で乾燥した。試料をギ酸アンモニウム(10mM、pH9.5)200μL中に再溶解し、ペプチドを高pH RPクロマトグラフィーを使用して分画した。Waters製のC18カラム(XBridgeペプチドBEH、130Å、3.5μm 2.1×150mm、Waters、Ireland)とガードカラム(XBridge、C18、3.5μm、2.1×10mm、Waters)とをUltimate 3000 HPLC(Thermo-Scientific)で使用した。画分に使用した緩衝液A及びBは、それぞれ(A)milliQ水pH9.5中の10mMギ酸アンモニウム及び(B)90%アセトニトリル中の10mMギ酸アンモニウム、pH9.5からなる。分画を、1分間隔でWPS-3000FCオートサンプラー(Thermo-Scientific)を使用して採取した。カラム及びガードカラムを2%緩衝液Bで0.2ml/分の一定な流速で20分間平衡化した。TMT標識ペプチド100μLをカラム中に注入し、分離勾配を、試料をカラムにロードしてから1分後に開始した。ペプチドを、2%緩衝液B~20%緩衝液B、6分、次いで20%緩衝液B~45%緩衝液B、51分、最後に45%緩衝液B~100%緩衝液B、1分以内の勾配でカラムから溶出した。カラムを100%緩衝液Bで15分間洗浄した。フラクション採取は注入から1分後に開始し、80分後に停止した(合計80分画、各200μL)。溶出ペプチドを酸性化するために、10%ギ酸30μLを80個の画分バイアルのそれぞれに添加した。合わせる分画の総数は20個に設定した。
【0118】
LC-MS分析。ペプチド分析を、Dionex Ultimate 3000RS(Thermo Scientific)と連結させたQ-exactive-HF(Thermo Scientific)質量スペクトロメーターで行った。LC緩衝液は以下のとおり:緩衝液A(Milli-Q水中の0.1%ギ酸(v/v))及び緩衝液B(Milli-Q水中の80%アセトニトリル及び0.1%ギ酸(v/v)であった。各試料のアリコート7μLを、0.1%TFAで平衡化した捕捉カラム(100μm×2cm、PepMap nanoViper C18カラム、5μm、100Å、Thermo Scientific)に10μL/分でロードした。捕捉カラムを、0.1%TFAで3分間、同じ流速で洗浄し、次いでThermo Scientific、分割C18カラム(75μm×50cm、PepMap RSLC C18カラム、2μm、100Å)にインラインで切り替えた。ペプチドを、5%緩衝液B(分画1~10に関して、分画11~20に関しては7%)~35%緩衝液B、125分、次いで35%緩衝液B~98%緩衝液B、2分の直線勾配を用いて300nl/分の一定の流速でカラムから溶出した。次いで、カラムを98%緩衝液Bで20分間洗浄し、5%又は7%緩衝液Bで17分間再平衡化した。カラムは全ての時間で50℃の一定温度を維持した。Q-exactive HFはデータ依存性ポジティブイオン化モードで操作した。電源電圧は2.25Kvに設定し、キャピラリー温度は250℃であった。スキャンサイクルは、MS1スキャン(m/z範囲335~1600、最大イオン注入時間50m秒、分解能120000及び自動利得制御(AGC)値3×106)、続いて所定の選択基準を満たす最も強力なイオンである15回のシーケンシャル依存型MS2スキャン(分解60000)(AGC1×105、最大イオン注入時間200m秒、アイソレーションウィンドウ0.7m/z、固定初期質量100m/z、スペクトルデータタイプ:セントロイド、強度閾値5×104、未割当の除外、単一及び6を超える荷電前駆体、ペプチドマッチ優先、同位体除外、動的除外時間45秒)からなっていた。HCD衝突エネルギーは正規化衝突エネルギーの32%に設定した。質量精度は試料分析の開始前にチェックした。
【0119】
ペプチド及びタンパク質の同定。全ての分画に関する生データファイルをマージし、MaxQuantソフトウェアv.1.6.0.16によってUniprot-human-canconicalデータベースに対して検索してタンパク質を同定し、TMTレポーターイオンを定量化した。次のMaxQuantパラメータを使用した:使用した酵素、トリプシン/P;失敗した開裂の最大数は2に等しい;前駆体質量許容誤差は10ppmに等しい;フラグメント質量許容誤差は20ppmに等しい;可変改変、酸化(M)、アセチル(N末端)、脱アミド化(NQ)、Gln→ピロGlu(QN末端);固定改変、カルバミドメチル(C)。データを1%誤検出率を適用し、続いて2個を下回る特有のペプチドを有するタンパク質を除外することによってフィルタリングした。定量化したタンパク質を、3回のDMSO反復試料間の絶対倍率変化の差が1.5以上であった場合、フィルタリングした。
【0120】
タンパク質の発現及び精製。VCBを、以前に記載されているように発現させ、精製した(Gadd, M. S. et al., Nat Chem Biol 2017, 13 (5), 514-521)。簡潔には、N末端His6タグVHL(54~213)、エロンギンC(17~112)及びエロンギンB(1~104)を大腸菌において共発現させ、複合体を、TEVプロテアーゼを使用したNi-親和性クロマトグラフィーを使用して単離してHis6タグを除去した。複合体をイオン交換、続いてゲルろ過クロマトグラフィーでさらに精製した。Brd4-BD2L387Aを以前に記載されているように発現させ、精製した(Gadd,M.S.、2017年(上記を参照のこと);Baud,M.G.J.、2014年(上記を参照のこと))。簡潔には、N末端His6タグBrd4-BD2L387A(333~460)を大腸菌において発現させ、TEVプロテアーゼを使用したNi-親和性クロマトグラフィーで単離してHis6タグを除去し、続いてゲルろ過クロマトグラフィーを行った。
【0121】
蛍光偏光結合アッセイ。蛍光偏光(FP)競合結合アッセイを以前に記載されているように行い(Van Molle et al., Chem. Biol. 2012, 19 (10), 1300-1312;Roy, M. J. et al. ACS Chem Biol. 2019, 14 (3), 361-368)、全ての測定は、485及び520nmの蛍光励起及び放出波長(λ)をそれぞれを用いたPHERAstar FS(BMG LABTECH)を使用して行った。アッセイを、384ウェルプレート(Corning 3820)を使用し3連で実行し、各ウェル溶液は、15nM VCBタンパク質、10nM 5,6-カルボキシフルオレセイン(FAM)-標識HIF-1αペプチド(FAM-DEALAHypYIPMDDDFQLRSF、「JC9」)及び漸減濃度PROTAC(14点、2倍連続希釈、20μM PROTACから出発)又はPROTAC:ブロモドメイン(14点、2倍連続希釈、20μM PROTACから出発:50μMブロモドメインを10μMのブロモドメインを含む緩衝液へ)を含んでいた。全ての構成要素を100mMビス-トリスプロパン、100mM NaCl、1mM DTT、pH7.0を使用して原液から溶解して15μLの最終アッセイ体積を得た。DMSO必要に応じて添加して、2%v/vの最終濃度を確実にした。化合物を含まない(置換えゼロ)VCB及びJC9、又はタンパク質非存在下のJC9(最大置換え)を含む対照ウェルも含めて正規化を可能にした。パーセンテージ置換え値を対照を正規化することによって得、Log[化合物]に対してプロットした。IC50値をプリズム(v.9.1.0、GraphPad)を用いた非線形回帰分析を使用して各滴定に関して決定した。Ki値を、以前に記載されているように、KdforJC9(約1.5~2.5nM、直接結合から決定した)から逆計算し、IC50値をフィットさせた(Van Molle、2012年(上記を参照のこと);Soares, P. et al., J Med Chem. 2018, 61 (2), 599-618)。各PROTACに関する共同性値(α)を比率:α=二元Kd(-ブロモドメイン)/三元Kd(+ブロモドメイン)を使用して計算した。
【0122】
血漿安定性。血漿安定性研究はShanghai ChemPartner Co.,Ltdに外部委託して行った。緩衝液の調製:0.05Mリン酸ナトリウム及び0.07M NaCl緩衝液、pH7.4の溶液を、脱イオン水中に14.505g/L Na2HPO4.12H2O、1.483g/L NaH2PO4.2H2O及び4.095g/L NaClを溶解することによって作製し、リン酸でpHを調整した。血漿の調製:凍結マウス血漿を37℃に置いて急速解凍した。解凍した血漿を3,000rpmで8分間遠心分離して血栓を除去し、上清をプールして、実験において血漿として使用した。血漿(pH7.4~8.0)を使用するまで氷上で保存した。AGB1(46)及び参照化合物のプロカインを、スパイク溶液(0.5%BSA(ウシ血清アルブミン)、4%v/v/DMSOを含む、0.05mMリン酸ナトリウム緩衝液中の0.02mM化合物)として調製した。血漿及びスパイク溶液を37℃で5分間予熱し、次いで予熱したスパイク溶液B 10μLを、全ての時点(5、15、30、45、60分)に関して指定されたウェルに添加した。0分に関しては、内部標準(イミプラミン、グリピジド)を含むアセトニトリル400μLを0分プレートのウェルに添加し、次いで血漿90μLを添加した。時点(0、5、15、30、45、60分)に関しては、予熱した血漿90μLを添加して計測を開始した。5、15、30、45、60分で、内部標準(イミプラミン、グリピジド)を含むアセトニトリル400μLを対応するプレートのウェルにそれぞれ添加して反応を停止させた。クエンチ後、プレートをバイブレーター(IKA、MTS2/4)で10分間(600rpm/分)振とうし、次いで、5594gで15分間遠心分離した(Thermo Multifuge×3R)。遠心分離したプレートの各ウェルからの上清50μLを、超純水(Millipore、ZMQS50F01)50μLを含む新しい96ウェル試料プレートに移してLC/MS分析(LC-MS/MS-49(API6500+)、UPLC-MSMS-32(Triple Quad 6500+))を行った。データをMicrosoft Excelで分析した。
【0123】
In vivo PKプロファイリング。薬物動態プロファイリングは外部委託し、Shanghai ChemPartner Co.、Ltd.が請け負い、Jihui Laboratory Animal Co.LTDから購入した6~8週齢のC57BL/6雄マウスを研究において使用した。AGB1(46)を、5%DMSO+5%Solutol HS15+90%生理食塩水中に1mg/mLで製剤化した。IV注射に関しては、5mg/kgのAGB1(46)を9匹のマウスの尾静脈に投与した。SC注射に関しては、5mg/kgのAGB1(46)を、9匹のマウスに皮下注射によって投与した。動物を指定された時点(0.083、0.25、0.5、1、2、4及び8時間)で手動で拘束し、およそ血液試料110μLは顔面静脈を介してK2EDTA管に収集した。1時点あたり3匹のマウスを使用し、合計18匹のマウスを得た。血液試料を氷上に置き、2000gで5分間遠心分離して15分以内に血漿試料を得た。血漿試料を、分析を行うまでおよそ70℃で保存した血漿のアリコート30μLに、MeCN中の1%ギ酸中の内部標準(ジクロフェナク、40ng/mL)200μLを添加した。次いで、混合物を1分間ボルテックスし、次いで5800rpmで10分間遠心分離した。上清100μLを新しいプレートに移した。溶媒0.5μLを、LC-MS/MSに注入した。使用したLC-MS/MS機器はSCIEX LC-MS/MS-45(Triple Quad 6500+)であった。データをWinNonLin及びMicrosoft Excelによって分析した。
【0124】
結果及び考察
ブロモタグの背景及び設計の論理的根拠。ブロモタグを設計するために、本発明者らは、PROTAC MZ1(1、図1A)を動員する強力で選択的なBETブロモドメイン及びデグロンタグとしてのその標的BETブロモドメイン(Zengerle,M、2015年(上記を参照のこと))を活用することができるという仮説を立てた。MZ1作用様式の本発明者らの広範な機構的及び構造的特性評価によって、そのE3リガーゼVHLが結合しているMZ1は、汎選択的BETブロモドメインリガンド(+)-JQ1(3、図1B)からなるにもかかわらず、Brd4の第2のブロモドメイン(Brd4BD2)と最も安定で共同的で長寿命の三元複合体を形成することが強調された。この優先的な動員は、生産的ユビキチン化及び内在性Brd4の優先的な分解につながる(Gadd,M.S.、2017年(上記を参照のこと);Roy,M.J.、2019年(上記を参照のこと))。これらの発見は、Brd4BD2が、リガンド誘発性デグロン技術にとって魅力的なデグロンタグを提供することができることを示唆するが、MZ1の使用によって、全ての内在性BETタンパク質の強力な誘発分解からの交絡下流効果を誘導するであろう。
【0125】
この制限を回避するために、本発明者らは、BETブロモドメインにおいてキャビティ(又は「ホール」)を生成された本発明者らが以前に記載しているBETブロモドメインの遺伝子操作されたバリアントを活用し、「バンプ」を有するより嵩高い合成BETリガンドによって対立遺伝子選択的結合を可能にした(Baud,M.G.J.、2014年(上記を参照のこと))。このような「バンプ-及び-ホール」アプローチを開発している本発明者らの以前の広範な研究によって、厳密には全てのBETファミリーメンバーにわたって保存されているリガンド結合部位におけるLeu残基が同定された。位置特異的突然変異誘発を使用して、このLeuは、ドメイン安定性及びリガンド結合能力を維持するホールを生成するための、より小さなAla又はValに突然変異させた。同時に、汎選択的BET阻害剤I-BET762(4、図1B)は、メチル又はエチル「バンプ」を導入することによって改変されてME及びET(それぞれ5及び6、図1B)を、その後9-ME-1及び9-ET-1(それぞれ7及び8、図1B)を得ており、これらはメトキシがI-BET762スキャホールドにおける融合されたフェニル環の8’位から9’位にシフトしているという点で異なっている(Runcie,A.C.、2018年(上記を参照のこと);Baud,M.G.J.、2014年(上記を参照のこと))。立体的「バンプ」は、新たに形成されたホール中に収容され、同時に野生型タンパク質とクラッシュし、BETブロモドメイン内で絶妙な対立遺伝子選択性が操作できるようになった(Runcie,A.C.、2018年(上記を参照のこと);Baud,M.G.J.、2014年(上記を参照のこと))。したがって本発明者らは、MZ1 PROTAC分解物質の文脈内でこのようなバンプBETリガンドを使用すると、変異体Brd4BD2ドメインに融合した標的タンパク質の選択的分解を可能にし、内在性野生型BETタンパク質の有害な分解は伴わないことになることを判断した。したがってこのようなカスタムメイドの「バンプ-及び-ホール」-PROTAC(B&H-PROTAC)は、PROTAC誘発性デグロンタグ技術の相補的で汎化可能なシステムを提供することになる。
【0126】
CRISPRを使用した内在性Brd2に融合したブロモタグを有するノックイン細胞株の開発。ブロモタグプラットフォームを確立し、分解物質構造-活性関係(SAR)をサポートして最良の化合物を同定するために、本発明者らは、分解効率だけではなく、本発明者らの分解物質の選択性プロファイルも最良にトリアージすることを可能にすることになる実用的で単純なシステムを模索した。この目的を達成するために、内在性BETファミリータンパク質Brd2を、Brd2検出のための十分に確立された抗体の利用能、及びウエスタンブロットにおいて十分に検出されるバンドとしての単一のタンパク質アイソフォームの発現に起因して、モデル標的として選択した(Filippakopoulos, P.; Knapp, S., Nat Rev Drug Discov. 2014, 13 (5), 337-356)。Brd2は内在性ブロモドメインを含み、1及び他のBET PROTACによって分解されるため、本発明者らは、ヘテロ接合ノックイン細胞株は同じ抗体を使用してオンターゲット分解(ブロモタグ付けされた-Brd2)とオフターゲット分解(タグなしBrd2)の両方を同時にモニターすることを可能にするであろうと判断した。したがって、他のBETタンパク質Brd3及びBrd4の潜在的なオフターゲット分解とともに、このシステムはタンパク質分解選択性を最良にモニターすることを可能にすることになる。したがって、本発明者らは、CRISPRノックイン方法論を使用して、内在性Brd2遺伝子遺伝子座のN末端にブロモタグを添加することを決定し、したがって、3個のブロモドメイン(内在性Brd2BD1及びBrd2BD2に加えて外在性ブロモタグ)を有するキメラタンパク質を得た。これ以降、本発明者らは、ブロモタグ-Brd2の分解をオンターゲット活性と称し、タグなしBrd2と内在性Brd3とBrd4のいずれの分解もオフターゲット活性と称する。
【0127】
ブロモタグ自体は、BETファミリータンパク質に関するバンプ及びホール(B&H)戦略を開発するための本発明者らの先行研究に基づいて設計されている(Baud,M.G.J.、2014年(上記を参照のこと))。本発明者らのMZ1ベースB&H-PROTACに関する良好で相補的なデグロンを生成する機会を最大にするために、デグロン「ブロモタグ」構築物としてBrd4BD2 L387A(ヒトBrd4の残基368~440を含む、サイズ約15kDa)を使用することを選択した。1及びVCB(VHL:エロンギンC:エロンギンB)と最も強力で最も共同的な三元複合体を形成し、MZ1による内在性Brd4の生産的ユビキチン化及び即効性の強力な分解を促進するため、特定のブロモドメインBrd4BD2が選択された(Gadd,M.S.、2017年(上記を参照のこと))。さらに、Brd4BD2での特異的L387A突然変異は、野生型又はL-Vドメインと比較してアセチル化ヒストン尾部パートナーに関して非常に低い結合親和性を示すため、L387Vの代わりに選択されており(Runcie,A.C.、2018年(上記を参照のこと))、タグとして使用した場合に望ましくない新しい機能性又はタンパク質-タンパク質相互作用を導入する可能性が低いであろうことを示唆する。
【0128】
プロジェクト着手時、本発明者らは、トランスフェクションの容易性、CRISPR効率の良好なレベル(Tovell, H. et al., ACS Chem Biol. 2019, 14 (5), 882-892)、及び3個全てのBETタンパク質の発現の高いレベルに起因して、本発明者らのCRISPRノックイン実験にHEK293細胞を選択してモデルブロモタグ細胞株を確立した。HEK293細胞は、3個のプラスミド構築物を同時にトランスフェクトされ、2個はcas9D10Aを保有し、両方ともN末端Brd2特異的gRNAを有していた。もう一方のプラスミドは、Brd4BD2 L387Aブロモタグのノックイン配列を保持していた。完全なノックイン構築物には、eGFP蛍光マーカー、P2Aスプライス配列、その後Brd4BD2 L387A配列が5’-3’方向に含まれていた(図2A)。トランスフェクション後、細胞には蛍光活性化細胞ソート(FACS)が行って、ノックイン構築物の良好な組み込みを示すGFP発現単一細胞を同定した(図2B)。細胞は、GFP発現単一細胞から拡大され、最適なヘテロ接合ノックインクローンが同定され、選択された。その後、ジャンクションPCRを行い、ブロモタグN末端のBrd2への良好なヘテロ接合組み込みを実証した(図2C)。HEK293は低三倍体細胞株であるため、本発明者らは、野生型とノックインとでのジャンクションPCRに存在するバンド強度における違いが本発明者らのノックインの単一の対立遺伝子組み込みに起因し、潜在的に2個の野生型非改変対立遺伝子が残っていることを疑っている(図2C)。このヘテロ接合クローンは、Brd2抗体を使用したウエスタンブロット、及びブロモタグに対する抗体を使用したブロモタグ-Brd2発現の独立した観察によってさらに検証された(図2D)。この抗体は、抗原として、大腸菌において遺伝子組換えで発現されたBrd4BD2L387Aタンパク質を使用して自社で作製した。次いで、このヘテロ接合ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞株は、遺伝子型が同定され、Brd2のN末端においてeGFP-P2A-ブロモタグノックインの良好なインフレームノックインを示した。この細胞株は、本明細書においてブロモタグ-Brd2 HEK293と称することにする。
【0129】
第一世代I-BET762ベースB&H-PROTACの開発。バンプ-及び-ホールとPROTAC技術の両方を組み合わせるために、本発明者らは、鋳型としてMZ1を使用し、そのBETを標的とするリガンドを、本発明者らが以前に開発したさまざまなバンプ-I-BET762誘導体を置き換え、B&H-PROTACの初期シリーズの作製を開始した(Runcie,A.C.、2018年(上記を参照のこと);Baud,M.G.J.、2014年(上記を参照のこと))。最初に本発明者らのBrd4BD21とVCBとの間の三元複合体の結晶構造(図3A)を調査し、Brd2BD2 L383A及びBrd2BD2 L383Vとそれぞれ複合体化されたバンプ-I-BET化学プローブの共結晶構造6(図3B)及び7(図3C)をBrd4BD2に重ね合わせた。1及び6の化学構造(図3B)、及び1及び7の化学構造(図3C)は非常に類似の結合様式を取り入れており、6及び7において、メチルエステルに近接した炭素はエチル又はメチルバンプをそれぞれ保持しており、1の非バンプブロモドメイン結合部分とうまく整列している。これらの構造的見識とともに、本発明者らは、第一世代I-BETベースB&H-PROTACの合成を進めた(スキーム1)。
【0130】
本発明者らは最初に、VH032-PEG3アジド9(Zengerle,M、2015年(上記を参照のこと))を、メタノール中の10%炭素上パラジウムの懸濁液で、水素ガス下で還元して末端アミンを得、次いでそれをラセミI-BET762由来の酸10~13と、ジメチルホルムアミド(DMF)又はジクロロメタン(DCM)中の1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)及びジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を用いた標準的なアミドカップリング条件によって結合させて、バンプ-I-BET PROTAC、DAT487~489(15~17)及び非バンプ対照、MZP-15(14)を2種類のジアステレオマー混合物としてそれぞれ得た(スキーム1)。
【0131】
スキーム1.I-BET762ベースB&H-PROTAC及び非バンプ対照化合物の合成
【化30】
a反応条件:(a)10%Pd/C、H2、MeOH、室温、3時間;(b)10、HATU、DIPEA、DCM、室温、18時間;(c)バンプI-BET酸11、12又は13、HATU、HOAt、DIPEA、DMF、室温、18時間。*は分子の指定の立体中心における相対的立体配置を示す。
【0132】
取り掛かったこの初期のライブラリーを用い、本発明者らのヘテロ接合ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞を1μMの化合物15~17又は1μMの対照化合物MZP-15(14)、MZ1(1)及びシス-MZ1で、有効なMZ1誘発性BETタンパク質分解を達成するのに十分な時間である6時間にわたって処置することによって、本発明者らのI-BETベースB&H-PROTACの活性及び選択性の評価を開始した(図4A)。細胞を回収し、その後の溶解物を、BETタンパク質;Brd2、Brd3及びBrd4に対する抗体を使用したウエスタンブロットによって分析した(図4A)。残念なことに、初期のB&H-PROTAC化合物はブロモタグ-Brd2の検出可能な分解を誘発しなかった。
【0133】
本発明者らの初期の一連の化合物の不活性に関する潜在的な理由を理解するうえで、3個全てのBETファミリーメンバーにわたって、1と比較して非バンプ14の活性が明らかに有意に低いことを興味深く観察していた(図4A)。ジアステレオマー混合物としてのその存在が、エナンチオマー純粋な1と比較して14の活性が明らかに低いことの一因であり得るが、2種類の化合物の化学構造に注目した。別の面では、化合物1及び14は、BETブロモドメイン結合部分が異なる点を除いて構造的に同一であり:1(JQ1-ベース)は、ジアゼピン環に融合したジメチルチオフェン基を有し、同時に14(I-BET762-ベース)は、同等の位置において8-OMe-フェニル基を有している(図1B及びスキーム1参照のこと)。したがって、三元結晶構造Brd4BD2:1:VHLとバンプBETリガンドの二元構造との間の本発明者らの構造重ね合わせに乗り出し、異なる基の周囲の構造領域をより詳細に調査した。この分析によって、I-BET762由来リガンドに存在する融合されたフェニル環のメトキシ基は、VHLに存在するHis110とクラッシュするであろうことが示された(図4B)。6の8-OMeの酸素原子は、His110側鎖の2個の窒素原子間の炭素原子から約3.0Å離れていることになり、これは、ファンデルワールス相互作用に関する下限値を下回っている。このような構造的クラッシュは、MZ1様PROTAC三元複合体を不安定化することになり、I-BET762ベース化合物の分解活性が低いことを説明すると判断した。この観察から、PROTACのBET結合部分における8-OMe-フェニル基をジメチル-チオフェン基に置き換えて、所望の三元複合体におけるいずれの潜在的な撹乱も最小化にし、ブロモタグ分解活性を強化するための設計戦略としてMZ1の全化学構造とさらにいっそう密接に類似している化合物を開発することを決定するに至った。
【0134】
第2世代JQ1ベースB&H-PROTACの開発。本発明者らのI-BET762ベースB&H-PROTACによって示される制限を克服するために、次に8種類の新規の一連のJQ1ベース化合物を設計した(表1)。プロジェクトの開発の頃、本発明者らは、1と構造的に類似しており、またBETタンパク質を強力に分解する、別のBETを標的とするPROTAC、ARV-771(2、図1A)を知った(Raina, K. et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2016, 113 (26), 7124-7129)。化学的に、2は同じ汎選択的BETブロモドメインリガンド、(+)-JQ1(3、図1B)からなるが、VHL結合親和性を強化することが知られている(Hu, J. et al., J Med Chem. 2019, 62 (3), 1420-1442)、VHLリガンドVH032においてより短くより親油性のリンカー(-CH2O-が欠けている)及び余分なベンジリック(benzylic)メチル基を有する点で1とは異なる(Galdeano, C. et al., J Med Chem. 2014, 57 (20), 8657-8663)。化学多様性を最大限にし、したがって強力なブロモタグ分解物質を同定するための本発明者らの機会を最大限にするために、1に基づいて4種類のバンプPROTAC化合物を、2に基づいて4種類のPROTAC化合物を設計した(Raina、K.、2016年(上記を参照のこと))。4種類のセットに関しては、2種類の化合物が、より立体的に保存されたメチルバンプ又はより立体的に要求の高いエチルバンプのいずれかを含むことになる。次いで各メチル又はエチルバンプBETブロモドメインリガンドは、親化合物に類似するようにアミド結合を介して又はエステル結合を介してリンカーにコンジュゲートすることになる。あまり従来的ではないエステルコンジュゲートの選択に関する本発明者らの推論は、アルキルバンプ基に近接したエステル基を有するバンプBETリガンドはその親非バンプ類似体と比較して有意により安定であったという本発明者らの以前の観察に基づいていた(Runcie,A.C.、2018年(上記を参照のこと))。
【0135】
【表1】
【0136】
本発明者らのバンプ-JQ1リガンドを合成するために、Filippakopoulos、PらによってNature 2010, 468, 1067-73に記載されている経路を適応し、Baud,M.G.J.、2014年(上記を参照のこと)及びRuncie,A.C.、2018年(上記を参照のこと)によって記載されている後段階のアルキル化を利用した(スキーム2)。最初に、(±)-Fmoc-Asp(OMe)-OH(26)をジクロロメタン(DCM)中の塩化チオニルで処置し、酸塩化物に変換してからクロロホルム中のアミノケトン27と還流して「開環」アミドFmoc-保護中間体を形成した。次いで、この「開環された」中間体をトリエチルアミン中で還流してFmoc保護基を除去し、遊離アミンが出現し、これが酢酸存在下で閉環してチエノ-1,4-ジアゼピン28を形成する。ジエチルクロロフォスフェート存在下でカリウムtert-ブトキシドを用いアミド28を脱プロトン化し、続いてアセチルヒドラジン処置を行うことによってメチルトリアゾール環が形成され、トリアゾロチエノジアゼピン(±)-JQ1-OMe(29)がラセミ混合物として得られる。
【0137】
メチル又はエチルバンプのいずれかを導入するために、29を、テトラヒドロフラン(THF)中、ヘキサメチルジシラザンカリウム(KHMDS)を用いて-78℃で脱プロトン化した。次いで、その後のエノレートをメチル又はエチルヨウ化物のいずれかで処置してラセミバンプ-JQ1-OMe誘導体30a及び30b又は31a及び31bをそれぞれジアステレオマー混合物として得、これらはHPLC後に容易に分離された。メチル化は、所望の(2S*,3R*)異性体対不所望の(2S*,3S*)異性体に関して1:4のジアステレオマー比(d.r.)で進行した。エチル化は、1:1.5のd.r.で進行した。不所望の(2S*,3S*)異性体、30b及び31bは、マイクロ波照射下、メタノール中のナトリウムメトキシドで処置することによってエピマー化してジアステレオマーのさらなる1:1混合物を得ることができ、これによって、HPLC分離の後、所望の(2S*,3R*)異性体30a及び31aをより多く得られる。
【0138】
さらなる官能基化及びリンカーコンジュゲートを可能にするために、メチルエステル30a及び30bを、THF及び水中の水酸化リチウムを用い、緩和な条件下で加水分解してコンジュゲート可能なカルボン酸32及び33をラセミ混合物として得た(スキーム2)。
【0139】
スキーム2.ラセミバンプ-JQ1リガンドの合成a
【化31】
a反応条件:(a)i)SOCl2、DCM、還流、2時間;ii)27、CHCl3、還流、1時間;iii)TEA、還流、16時間;iv)AcOH、1,2-DCE、80℃、1時間;(b)i)KOtBu、THF、-78℃~-10℃、30分;ii)(EtO)2P(O)Cl、-78℃~-10℃、45分;iii)AcNHNH2、室温、1時間;iv)n-BuOH、90℃、1時間;(c)i)KHMDS、THF、-78℃、1時間;ii)MeI/EtI、-78℃~室温、16時間、iii)HPLC分離;(d)i)NaOMe、MeOH、120℃ m.w.、40分、ii)HPLC分離;(e)LiOH、THF:H2O 4:1、30a、室温、48~72時間、30b、45℃、1週間。*は分子の指定の立体中心における相対的立体配置を示す。
【0140】
次に、リンカー36及び37をVH032-アミン34に、リンカー38及び39をメチル化VH032-アミン35に、DMF中のHATU及びDIPEAを用い、標準的なアミドカップリング条件によって結合させて、アミド9、40、42、及び43を得た(スキーム3)。シリルエーテル40及び43を、THF中のテトラブチルアンモニウムフッ化物(TBAF)の溶液を使用して開裂して、末端アルコール41及び44をエステルコンジュゲートに好適な前駆体としてそれぞれ得た。
【0141】
スキーム3.リンカーのVHLリガンドへのコンジュゲートa
【化32】
a反応条件:(a)HATU、DIPEA、DMF、室温、2時間;(b)TBAF、THF、室温、6時間。
【0142】
その後、アジド9及び42をメタノール中の10%炭素上パラジウムの懸濁液を用い、水素ガス下で還元して末端アミンを得てから、THF中の(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロホスフェート(COMU)及びDIPEAを使用してラセミバンプ-JQ1酸32及び33に結合させて、アミドB&H-PROTAC18~21をジアステレオマー混合物として得た(スキーム4)。
【0143】
最後に、アルコール41及び44を、THF中のN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC.HCl)及び4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を用い、バンプ-JQ1酸32及び33と結合させてエステルB&H-PROTAC22~25を2種類のジアステレオマー混合物として得た(スキーム4)。各アミド及びエステルの場合において形成されたジアステレオマーはHPLCで分離できず、ジアステレオマー混合物のまま、ブロモタグ-Brd2分解及び野生型BETタンパク質に対する選択性に関してスクリーニングするための予備的なin cellulo評価に進んだ。
【0144】
スキーム4.2種類のジアステレオマー混合物としてのJQ1ベースB&H-PROTACの合成a
【化33】
a反応条件:(a)10%Pd/C、H2、MeOH、室温、3時間;(b)バンプJQ1-酸(32又は33)、COMU、DIPEA、THF、室温、4時間;(c)バンプJQ1-酸(32又は33)、EDC.HCl、DMAP、THF、室温、16時間.*分子の指定の立体中心における相対的立体配置を示す。
次に1nM~10μMの範囲の濃度で、本発明者らのヘテロ接合ブロモタグ-Brd2ノックインHEK293細胞株において、8種類全てのB&H-PROTAC(18~25)の細胞活性を評価した(図5)。際立っていることに、全ての化合物が、ブロモタグ-Brd2アイソフォームの分解に対して明白な効果を示し、ブロモタグ-Brd2タンパク質の観察可能で多くの場合に完全な枯渇を達成した。これによって化合物のオンターゲット分解効力(DC50)及びSARを構築するための有効性(Dmax)の定量分析が可能になり、両方の独立した抗体を使用した検出によって定量化が行われ、これらによって全ての場合において極めて十分に比較が行われた(表2)。
【0145】
最良の化合物は19、23及び25であることが判明し、これらは全てエチルバンプを有していた。これらは、ブロモタグ-Brd2アイソフォームの強力な分解と完全な分解の両方を示し、DC50値は250~360nM、13~-80nM、及び13~16nMであり、Dmaxは75%を超えた。重要なことには、1μMの25で観察されたBrd3のわずかなオフターゲット分解を除いて、タグなしBrd2又は他の内在性BETタンパク質の観察可能なオフターゲット分解を観察することができず(図5)、これらの化合物が高度に選択的なブロモタグ分解を上手く可能にすることが示唆される。興味深いことに、1~10μMの高濃度で使用した際(図5)、PROTAC:標的とPROTAC:E3リガーゼとの間の二成分相互作用が生産的三元複合体形成を打ち消す二機能性PROTAC分解物質で周知の現象であるエステル23及び25はフック効果の強力な発現を示した。対照的に、アミド19ではフック効果は観察されなかった。最後のエチル-バンプ化合物21は、最も完全ではなく(Dmax<70%)最も弱い分解活性を示し(DC50約1μM)、10μMでの強力なフック効果に起因して非常に狭い分解域も示した。
【0146】
全てのメチルバンプ化合物18、20、22及び24も強力なオンターゲット分解活性を示し、それらのエチルバンプカウンターパートよりも平均で2倍強力であり、それぞれ100~160nMの間、320~400nMの間、20~80nMの間、及び5~10nMの間のDC50であった。しかし、本発明者らは、全てのメチルバンプ化合物が不所望のオフターゲット分解も誘発し、したがって低い選択性を示すことが観察された。これらの結果は、メチル基が、野生型BETタンパク質の保存されたLeu残基との立体的クラッシュを十分に提供しておらず、オフターゲット分解を阻止するのに十分ではなく、より大きなエチルバンプよりもさらにいっそう耐容性を示すことを示唆する。内在性BETタンパク質に対する選択性は、良好なブロモタグシステムに関して厳密に必要とされる基準であるため、本発明者らは、この段階で全てのメチルバンプ化合物の開発を中断することを決定した。
【0147】
全てのエステル(22~25)は、それらの個別のアミドカウンターパート(18~21)よりもDC50において2倍及び126倍強力であることが示されたのは興味深い(表2)。近年、本発明者らは、アミドからエステルへの置換が、親油性及び細胞透過性を増加させ、同時に顕著な細胞内安定性を維持することに起因して、PROTAC分解活性を増加させるための単純な戦略を提供できることを示している(Klein、V.ら、2021年(上記を参照のこと))。この傾向は、全てのエステル(22~25)が細胞活性を示し、それらのアミドカウンターパートと比較して高濃度でより強力なDC50及び顕著なフック効果を示したため、この化合物セットにおいて十分に反映されている。
【0148】
【表2】

総合すると、このスクリーニングからの結果によって、最も選択的なブロモタグ-Brd2分解物質として3種類の化合物、ET-MZ1(19)、ET-OMZ1(23)及びET-OARV-771(25)が同定され、強力なオンターゲット活性に関する基準が満たされ、同時にオフターゲットBET分解がほぼ回避された。したがって本発明者らは、これらの3種類の化合物をパイプラインに進めた。
【0149】
単一の立体異性体としてのET-OMZ1、ET-OARV-771及びET-MZ1の合成。本発明者らは、本発明者らの第二世代B&H-PROTACは有望な結果を示しているが、ジアステレオマー混合物として全て合成されていることを実現し、それは活性種だけではなく、化合物の明らかに弱い活性及び狭い選択性治療域につながることが予想されることになる不活性な又は活性の低い種も含むであろうことを意味する。生物学的な活性異性体(ユートマー)の真の分解プロファイル得るために、次にエナンチオマー純粋な単一のジアステレオマーとして本発明者らの現在のところ最良の分解物質を合成することを試みた。エナンチオマー純粋なPROTACを達成するために、本発明者らは、BETリガンドをバンプするための新規の立体選択的な合成を開発しており、これは本発明者らがBond,A.G.、2020年(上記を参照のこと)で近年開示している。簡単に述べると、本発明者らの新規な立体選択的な経路は、BET-リガンドスキャホールドの合成においてはるかに早くアルキルバンプを組み込むことを可能にした。これを達成するために、二重保護されたアスパルテート誘導体のリチウムヘキサメチルジシラザン(LHMDS)が介在するジアステレオ選択的アルキル化を最適化し、これを、立体化学を完全に保持し、99%を超えるeeで最終バンプ-JQ1-酸類似体に導いた(Bond,A.G.、2020年(上記を参照のこと)。したがって、プロジェクトにおけるこの段階で、本発明者らは、エナンチオマー純粋なET-JQ1-OH(45)を使用して新規のB&H-PROTAC、AGB1(46)、AGB2(47)及びAGB3(48)を作製することを決定した(スキーム5)。
【0150】
エステル46及び47に関しては、酸45を、DCM中の塩化チオニルを用いて酸塩化物中間体に定量的に変換し、その後アルコール41及び44と反応させて単一の立体異性体として最終化合物46及び47を得た。アミド48に関しては、アジド9をメタノール中の10%炭素上パラジウムの懸濁液を用い、水素ガス下で最初に還元して中間体アミンを得、これをDMF中のCOMU及びDIPEAを使用して45とただちに結合させて単一の立体異性体として48を得た。
【0151】
スキーム5.エナンチオマー純粋なAGB1、AGB2及びAGB3の合成a
【化34】
a反応条件:(a)i)SOCl2、DCM、室温、3時間;ii)41又は44、DCM、室温、16時間;(b)10%Pd/C、H2、MeOH、室温、3時間;(c)45、COMU、DIPEA、DMF、室温、2時間。
【0152】
次に以前に記載した本発明者らのブロモタグ-Brd2ノックイン細胞株を使用して46~48の細胞活性を評価した(図6A及びC、表3)。この段階で本発明者らは、より正確なDC50及びDmax値を得る目的で、10μM~1nMの濃度範囲の広範な8点にわたってタンパク質分解を定量化することを決定した。各化合物は、内在性BETタンパク質に対して、ブロモタグ-Brd2の強力で高度に選択的でほぼ完全な(Dmax>92%)分解を示した。エステル46(DC5013~15nM)と47(DC501~3nM)の両方が、アミド48(DC50210~290nM)より強力なオンターゲット分解活性を示し、17分の1を下回るDC50及び81分の1を下回るDC50にそれぞれ対応していた(図6A及びC、表3)。予測通り、エナンチオマー純粋な化合物は、ジアステレオマー混合物のまま試験した場合よりも平均で5倍強力であることが見い出され、より一層完全なオンターゲット分解を示した(23、25及び19それぞれ、図5、表2を参照のこと)。エステルによって示される効力における大きな差は、1μMを超える濃度での明白なフック効果によって例示される。関連する非バンプBET PROTACにおけるアミドからエステルへの置換に関する本発明者らの近年の研究から、観察された効力における増加は、48におけるアミドから46におけるエステルへの切り替えによる親油性の増加の結果として細胞透過性における増加におそらく起因する(Klein、V.ら、2021年(上記を参照のこと))。
【0153】
【表3】
【0154】
本発明者らのB&H-PROTACがブロモタグ-Brd2を完全に枯渇することができるスピードを評価するために、次にヘテロ接合ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞を500nMの46又は47、又は1μMの48で処置し、36時間にわたってブロモタグ-Brd2タンパク質レベルを測定することによって時間依存的分解アッセイを実行した(図6B及びD、表3)。化合物46は高速で最も完全な分解物質であり、6時間以内にブロモタグ-Brd2を完全に分解し、わずか40分のタンパク質半減期(t1/2)を得ることができることが証明された。化合物48はわずかに遅い分解物質であり、113分のタンパク質t1/2を誘発し、この実験においてタンパク質の最大約80%しか分解することができなかった(図6D)。すなわち、48は46の2倍の処置濃度で使用されているにもかかわらず、エステルバンプPROTACのより強力でより速くより十分な活性を明らかに実証している。もう一方のエステル化合物47は、46と類似しているほぼ完全な標的分解を示したが、46と比較した場合ほど速くはなく(t1/2=142分)、わずかではあるが100~1,000nMでBrd3のオフターゲット分解を残し(図6)、47の優先順位の低下につながった。総合すると、細胞データは、46単一の立体異性体として評価された3種類のうち最良の分解物質であることを示唆する。
【0155】
本発明者らの3種類のB&H-PROTACの作用様式をより理解するために、次に遺伝子組換え精製Brd4BD2 L387Aブロモドメインタンパク質とVHLとの間で三元複合体を形成する各化合物の能力を調査しようとした。したがって、すでに発表されている競合蛍光偏光度(FP)アッセイ(Roy,M.J.、2019年(上記を参照のこと)を用い、化合物単独を滴定することによって(二元結合に関して)又はBrd4BD2 L387Aタンパク質とプレインキュベートした化合物を滴定することによって(三元複合体結合の場合)、VHLに結合した蛍光標識HIF-1αペプチドプローブを置き換えた。その後、三元複合体形成の共同性(α)を計算することができる(α=Kd binary/Kd ternary)(図7)。三元複合体は、α>1又はα<1である場合、それぞれ正又は負の共同性を有し、α=1である場合、共同的ではないと言われている。PROTAC46、47及び48は等効力の三元結合親和性(それぞれKd=11nM、12nM及び9nM)を有し、MZ1ベースの46及び48が最も共同的な三元複合体(それぞれα=11.1及び10.9)を与えた。ARV-771ベースの47は、そのVHLに対する二元親和性が2~3倍高いこと(α=3.6、図7B)に起因して最も共同的ではない三元複合体を形成した(46及び48に関するそれぞれKd=125nM及び102nMと比較して、47に関してはKd=45nM)。三元複合体共同性及び安定性におけるこの減少は、観察された分解の低速度に起因する可能性があり、BET PROTACで以前に認められたもの(Roy,M.J.、2019年(上記を参照のこと)と一致する。
この全ての生物学的データを総合して、本発明者らの最良のB&H-PROTACとして46を選択し、これをさらなる生物学的評価に進めることを決定した。
【0156】
AGB1のさらなる生物学的及び機構的特性評価。本発明者らのブロモタグシステムにとって最良で強力で選択的な分解化合物としてAGB1(46)が確立されると、次にこの化合物クラスに関して予想されるその作用機序をさらに特徴付けしようとした。46のオンターゲット分解活性はそのPROTAC作用様式に起因して機構的に予想通りであることを実証するために、薬理学的競合実験を行った(図8A)。VHL及びプロテアソームの依存性を実証するために、カリン2のネディレーションを阻害するNAE1阻害剤MLN4924とVHL阻害剤VH298とプロテアソーム阻害剤MG132とで前処置した。さらに、ブロモタグ-Brd2に対するオンターゲット活性がブロモタグの動員に起因することを実証するために、Brd4BD2 L387Aバリアントに高親和性(Kd=65nM)で結合するが野生型ドメインに対する検出可能な結合は示されていないET-JQ1-OMe(Bond,A.G.、2020年(上記を参照のこと)で前処置した。この実験において、本発明者らのヘテロ接合ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞を異なる阻害剤に個別に1時間の短い時間にわたって曝露してからその後の処置を200nM 46で行って、処置をさらに3時間継続して、阻害剤細胞毒性に起因する潜在的な交絡効果を最小限にした。予想通り、46によるオンターゲット分解活性はMLN4924又はVH298で前処置した際に完全に無効になり、CRL2VHL活性に対する依存性を実証した(図8A)。この実験におけるMLN4924及びVH298の細胞活性は、MLN4924処置の際のHIF-1αの大幅な蓄積及びCul2のネディレーションのブロックを観察することによって確認された。オンターゲット分解活性はMG132での前処置の際にブロックされたため、プロテアソーム依存性であることが示された、類似の結果は、ET-JQ1-OMeでの前処置からも認められ(図8A)、オンターゲット分解がブロモタグを用いた標的結合によって絶妙にドライブされ、内在性Brd2タンパク質の野生型ブロモドメインの潜在的に偶発的なより弱い動員の貢献はないことが確認された。
【0157】
次にウォッシュアウト実験を使用して46のオンターゲット分解活性の持続をモニターしようとした。ブロモタグ-Brd2 HEK293細胞を200nM46で3時間処置し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回すすぎ、PROTACを含んでいない新しい培地を補充した。3時間後完全に枯渇した後、ブロモタグ-Brd2のタンパク質レベルはウォッシュアウト後24時間で回復を示した(図8B)。この効果は、ウォッシュアウトなしで最大72時間にわたる完全で恒久的なオンターゲット分解とは全く対照的であった。この結果は、本発明者らのブロモタグシステムの可逆的性質を裏付けるものである。注目すべきことに、Brd2発現は回収してから24時間後に減少し始め、場合によりBrd2タンパク質レベルの長期的な調節を反映する。
【0158】
細胞生物学的調査に好適な化学プローブとして本発明者らの分解物質46を認定するために、生物学的効果及び応答を混乱させ、所望のオンターゲット薬理作用をマスクし得る潜在的な細胞毒性を評価することが重要と考えた。この目的を達成するために、プローブ基準として、化合物が細胞において使用されることになる濃度よりもおよそ最大10倍高い濃度でいずれの細胞毒性も示さないことを選択した。46の顕著な選択性及びオフターゲットBET分解活性の欠如は、化合物が細胞傷害性ではないはずだと本発明者らに確信を与えたが、親HEK293細胞、並びによりBET感受性のMV-4-11及び22RV1細胞株においてこの試験を行うことを決定した。いずれの潜在的な非分解性オフターゲット結合活性も割り引くのに好適な制御を可能にするために、トランスヒドロキシプロリン基の代わりにシスヒドロキシプロリンを有する化合物であるシス-AGB1(52)合成してVHLへの結合を無効にしており(スキーム6)、これは陰性非分解対照化合物を得るための十分に確立された戦略である(Zengerle,M、2015年(上記を参照のこと))。細胞生存率をモニターするために、HEK293、MV-4-11及び22RV1細胞を96ウェルプレートフォーマット中にプレーティングし、ビヒクル対照(DMSO)46、その非分解対照(52)、及びそれらの非バンプ対照化合物MZ1及びシス-MZ1、並びに陽性対照の細胞傷害性薬剤スタウロスポリンで用量依存的様式で最大約10μMで処置した。次いで、生存可能な細胞の代用物として細胞ATPレベルを、Cell Titre Glo(登録商標)2.0発光試薬を使用して測定した(図8C)。安心なことに、46は予想通り、3個全ての細胞株において、使用される1~10μMの高濃度まで細胞毒性の欠如を示した。46による内在性BETタンパク質のオフターゲット分解の顕著な不足は、それを高BET感受性MV-4-11細胞においてMZ1(約20nMのEC50)と比較することによって完全に証明される。このデータを総合することによって、細胞調査用に機構的に完全で真のブロモタグ分解物質として46が認定される。
【0159】
スキーム6.陰性対照シス-AGB1(52)の合成a
【化35】
a反応条件:(a)37、COMU、DIPEA、DMF、室温、2時間;(b)TBAF、THF、室温、6時間;(c)i)45、SOCl2、DCM、室温、3時間;ii)51、DCM、室温、16時間。
【0160】
次にマウス血漿において37℃でインキュベートし、1時間にわたっていくつかの時点で残りの46のレベルを測定することによって、46の血漿安定性を評価した。化合物46は、実験全体にわたって優れた血漿安定性を示し、46のレベルの大幅な変化は伴っていなかった。最後に、in vivo研究に適切かどうか46をさらに認定するために、次にマウスにおけるその薬物動態(PK)プロファイルを評価している(図9、表4及び5)。46は、静脈内(IV)5mg/kg注射(表4)と皮下(SC)5mg/kg注射(表5)の両方でマウスにおいて良好なPKプロファイルを有することが示された。46は、親化合物MZ1(1)で認められるものに相当するPKプロファイルを有し、クリアランス率(CL)が47.2mL/分/kgと比較的低く、半減期(T1/2)はIV及びSCにおいてそれぞれ1.49時間及び1.65時間と良好である(1に関しては1.05時間及び2.95時間と比較)(表4及び5)(Boehringer Ingelheim- opnMe. https://opnme.com/molecules/bet-mz-1 (accessed 24/08/2021)。著しいことに、46は、IV注射5mg/kgを約4時間及びSC注射5mg/kgを8時間を超えて投薬した場合に、そのブロモタグ-Brd2DC50、6hの15nM未満を上回る血漿濃度を維持するでき(図9)、遺伝子操作されたマウスモデルにおいてブロモタグ付き標的タンパク質分解の機能的結果をin vivo研究評価するのに好適である。
【0161】
【表4】

【表5】
【0162】
さまざまな標的タンパク質の分解。本発明者らは、さまざまな標的タンパク質の分解に対して記載されたプロセスの一般的な適用可能性を実証するために上述の技術を用いた。記載したように、5種類の追加のタンパク質の内在性遺伝子座にブロモタグのCRISPRノックインを行った。結果を以下の表6に示しており、表では、ブロモタグのCRISPRノックインが、ブロモタグデグロンシステムによって標的とすることができるタンパク質の広範な範囲を実証していることを認めることができる。表6の標的タンパク質は全て異なり、異なる細胞の役割及び機能、細胞内発現、及び細胞内での異なる代謝回転速度を全てが有することは既知である。
【0163】
【表6】
【0164】
上記の表において認められるように、タグ付けが成功した全ての場合において、細胞において本発明者らのPROTAC化合物AGB1を使用して本発明者らのブロモタグコンジュゲートの分解を誘導することができた。これらの結果はまた、本発明者らのタグがN末端遺伝子座とC末端遺伝子座の両方においてブロモタグの分解を誘導できることを示す。また、本発明者らのブロモタグ-タンパク質コンジュゲートの分解に、100nM~1nMの処置治療域の範囲内で総標的タンパク質の95%を超える減少をもたらし得ることを実証している。これらの試験が行われた標的に関して、本発明者らは、AGB1が13~40分の間の半減期分解を生じることができることを示している。
【0165】
そのブロモタグ標的タンパク質に関するAGB1のプロテオーム全体の細胞選択性を評価するために、マルチプレックスタンデムマスタグ(TMT)標識質量分析法プロテオミクス実験を行って、定量的で不偏の様式でタンパク質レベルをモニターした。ブロモタグ-BRD2 CRISPRノックインHEK293細胞をDMSO、1μM AGB1、又は1μMシス-AGB1で2時間で3連で処置した。定量化された6,621種類を超えるタンパク質のうち、BRD2が、SIM1によって最も有意に分解されることが認められ、同時にBRD3、BRD4又は実際にその他の内在性タンパク質に関しては枯渇を検出することはできなかった。BRD2タンパク質存在量における大幅な変化は、シス-AGB1で処置した細胞において観察されなかった。同じ選択性パターンが第2のブロモタグ付き標的CRISPRノックイン細胞株で観察された。総合すると、データは、ブロモタグに関する絶妙な選択性を伴ない、検出可能なオフターゲット効果のない分解物質としてのAGB1を裏付けている。
【0166】
結論及び将来の展望
慎重な構造ガイド設計を通して、本発明者らの新規の誘発性デグロンシステムであるブロモタグのために、本発明者らの超高速で高選択的で強力なB&H-PROTAC分解物質としてAGB1(46)を開発した。本発明者らは、AGB1(46)がVHLとブロモタグ(Brd4BD2 L387A)との間に強力で共同的な三元複合体を形成するだけではなく、低いナノモル濃度効力、並びに野生型BETタンパク質及びプロテオーム全体に対する絶妙な選択性でブロモタグ付き標的タンパク質を完全に分解することを示している。また、AGB1(46)は、いくつかのがん関連細胞株において細胞傷害性を示さないことを示し、オフターゲット内在性BETタンパク質に対するその優れた選択性をさらに示している。AGB1(46)は優れた血漿安定性及び許容される薬物動態も示しており、マウスモデルにおけるその後のin vivo研究に好適である。したがって本発明者らは、生体をブローブするのに有用なツールとしてAGB1(46)及び本発明者らの新規のブロモタグシステムを認定する。本発明者らは、ブロモタグがまた、一度に1種類を超えるタンパク質を同時に枯渇させるための直交性システムとして、他の誘発性デグロン、例えば、dTAG、AID又はHaloPROTACとともに並行して使用することができることを想定する。
【0167】
背景技術の項に記載した、Brd4及びCRBNベースのリガンドに結合するセグメントの一部として「バンプ」を含む化合物であるXY-06-007は、R.P.Nowakら(2021年、上記を参照のこと)によって開発されている。本発明者らのデータは、AGB1とVHL及び本発明者らのブロモタグとによって形成されるMZ1様の高度に共同的で安定な三元複合体が、XY-06-007よりもAGB1で有意であるその迅速で十分なタグ付き標的タンパク質分解を強調していることを示唆する。XY-06-007及びAGB1は、化学(それぞれJQ1ベースではなくI-BET762、エチルバンプではなくメチルバンプ)と生物学(それぞれVHLベースではなくCRBNベース、Brd4BD2L387Aタグの代わりにBrd4BD1L94Vタグ)の両方で大幅に異なる。したがって、本明細書において記載する方法及びNowakらの方法は、ブロモドメインタグタンパク質の分解を誘導するための2種類の方法を提供し、これらは、標的タンパク質の迅速で高度な選択的分解の効果及び暗示を研究するために利用可能な、増え続ける誘発性デグロン技術群に加わる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B-1】
図2B-2】
図2B-3】
図2C
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8A
図8B
図8C
図9
【配列表】
2024536054000001.xml
【国際調査報告】