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特表2024-536056ブレーキパッドプリフォーム及びブレーキパッドの製造方法、並びに関連するブレーキパッド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ブレーキパッドプリフォーム及びブレーキパッドの製造方法、並びに関連するブレーキパッド
(51)【国際特許分類】
   F16D 69/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F16D69/02 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518343
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 IB2022059019
(87)【国際公開番号】W WO2023047350
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】102021000024540
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521259127
【氏名又は名称】ブレンボ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】BREMBO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ローザ,マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】チヴィディーニ,オマール
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058GA04
3J058GA27
3J058GA33
3J058GA55
3J058GA73
3J058GA81
3J058GA92
(57)【要約】
ディスクブレーキ用ブレーキパッドプリフォーム(6)の製造方法は、(a)液状(21)または粒子粉末状(22)のポリマー樹脂と粉末状のセラミック粒子(25)とを混合することにより、熱硬化性混合物(2)を調製するステップ(a)と、ステップ(a)で得られた熱硬化性混合物(2)を炭素繊維からなる炭素質材料(3)と組み合わせて、成形コンパウンド(4)を得るステップ(b)と、ステップ(b)で得られた成形コンパウンド(4)を圧縮および熱処理によって成形して粗プリフォーム(5)を得るステップ(c)と、ステップ(c)で得られた粗プリフォーム(5)に熱分解処理を施し、ブレーキパッドプリフォーム(6)を得るステップ(d)を含む。この方法によって得られるブレーキパッドプリフォーム(6)またはブレーキパッド(1)は、炭素質材料のマトリックスと炭素繊維とからなる炭素-炭素複合材料からなり、セラミック粒子が炭素質材料のマトリックス中に均一に分散されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクブレーキ用のブレーキパッドプリフォーム(6)の製造方法であって、
液状(21)または粒子粉末状(22)のポリマー樹脂と粉末状のセラミック粒子(25)とを混合することにより、熱硬化性混合物(2)を調製するステップ(a)と、
前記ステップ(a)で得られた前記熱硬化性混合物(2)を炭素繊維からなる炭素質材料(3)と組み合わせて成形コンパウンド(4)を得るステップ(b)と、
前記ステップ(b)で得られた前記成形コンパウンド(4)を圧縮および熱処理によって成形して粗プリフォーム(5)を得るステップ(c)と、
前記ステップ(c)で得られた粗プリフォーム(5)に熱分解処理を施し、前記ブレーキパッドプリフォーム(6)を得るステップ(d)を含む、方法。
【請求項2】
前記液状(21)または粒子粉末状(22)の前記ポリマー樹脂が、フェノール樹脂、アクリル樹脂、フラン樹脂、イソシアネート樹脂、ポリスチレンからなる群から選択される1種または2種以上の樹脂で構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(a)の前記セラミック粒子(25)が、炭化ケイ素(SiC)および/または窒化ケイ素(Si3N4)を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)の前記セラミック粒子(25)が、0.5-100マイクロメートル、好ましくは1-50マイクロメートル、さらに好ましくは2-30マイクロメートルで構成される平均粒径を有する、請求項1-3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記熱硬化性混合物(2)が、前記熱硬化性混合物の総重量に対して3重量%から20重量%の粉末状のセラミック粒子(25)、好ましくは前記熱硬化性混合物の総重量に対して9重量%から15重量%の粉末状のセラミック粒子で構成される、請求項1-4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(a)が、分散剤、好ましくはポリアクリル酸化合物またはポリエチレンイミン化合物を混合するステップをさらに含む、請求項1-5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記炭素質材料(3)が二次元織物層(31)で構成され、
前記ステップ(b)が、前記二次元織物層(31)に前記熱硬化性混合物(2)を含浸させ、ステップ(c)において成形される前記成形コンパウンドを形成するために層同士を接合させる、ステップを含む、請求項1-6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記炭素質材料(3)が、50重量%から80重量%の前記炭素質材料および20重量%から50重量%の前記熱硬化性混合物(2)、好ましくは65重量%から75重量%の前記炭素質材料および25重量%から35重量%の前記熱硬化性混合物から構成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記炭素質材料(3)がチョップドカーボン繊維(32)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記成形コンパウンド(4)を成形するステップ(c)が、
(c1)前記成形コンパウンド(4)を、真空成形技術、例えば真空バッグによって圧縮し、さらに成形コンパウンドをオートクレーブ硬化処理にかけるステップと、
(c2)一軸プレスで成形することにより、前記成形コンパウンド(4)を熱間成形するステップを含む、請求項1-9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(c1)または前記ステップ(c2)が、100℃、160℃、又は100℃-160℃の間の温度で、少なくとも30分間行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(c1)において、前記熱間成形を、5バール、50バール又は5バール-50バールの間の圧力で行い、
前記ステップ(c2)において、前記オートクレーブ処理を、5バール、15バール又は5バール-15バールの間の圧力で行う、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップ(d)の後に、前記ブレーキパッドプリフォーム(6)を炭素高密度化プロセス、例えば、CVD(化学気相成長)技術、CVI(化学気相浸透)、PIP(ポリマー浸透および熱分解)、またはピッチ含浸による高密度化プロセスに付して、高密度化されたブレーキパッドプリフォーム(7)を得る操作ステップ(e)をさらに含む、請求項1-12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1-13のいずれか1項に記載のブレーキパッドプリフォーム(6)の製造方法と、前記ブレーキパッドプリフォーム(6)を乾式仕上げおよび/または湿式仕上げに供する操作ステップとを含む、ディスクブレーキ用ブレーキパッド(1)の製造方法。
【請求項15】
請求項1-13のいずれか1項に記載の方法によって得られたブレーキパッドプリフォーム(6)。
【請求項16】
請求項14に記載の方法により得られるブレーキパッド(1)。
【請求項17】
ディスクブレーキ用のブレーキパッド(1)であって、炭素質材料と炭素繊維とのマトリックスからなる炭素-炭素複合材料からなり、セラミック粒子が炭素質材料マトリックス中に均一に分散されている、ブレーキパッド(1)。
【請求項18】
請求項17に記載のディスクブレーキ用のブレーキパッド(1)であって、5mmの体積中のセラミック粒子の体積濃度が、パッドの無作為に特定された2つの異なる領域間で±20%の限界内で変化していることを特徴とするディスクブレーキ用ブレーキパッド(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキパッドプリフォーム、特にディスクブレーキ用のブレーキパッドの製造方法、ブレーキパッドの製造方法および前記ブレーキパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
炭素系材料、いわゆる炭素-炭素または「C/C」複合材料からなるディスクブレーキパッドの使用が知られている。これは、炭素質マトリックス内の強化炭素繊維からなる複合材料からなるパッドである。これらのパッドは、一般に同じく「C/C」材料からなるディスクブレーキ用のディスクと協働するように適合されている。
【0003】
炭素-炭素複合材料は軽量材料であり、大量のエネルギの放散が必要な場合(例えばレーシングカーや航空宇宙車両)にブレーキパッドの製造に使用される。)このような材料の摩擦挙動は、少量の研磨粒子を導入することによって大幅に改善される可能性があり、この研磨粒子は低温での摩擦係数を増加させることによってトライボロジ改質剤として作用する。このため、炭素-炭素摩擦部品の製造においては、研磨剤の量、分布、およびサイズを制御することが最も重要である。
【0004】
研磨剤粒子をドープした炭素-炭素複合材料の現在の製造方法では、炭素質部分にシリカコロイドを浸透させ、その後、炭化水素反応によって炭化ケイ素(SiC)に変換する。このような製造方法の例は、文献EP1763644A1に記載されている。
【0005】
不利なことに、先行技術の前述の方法によって得られるブレーキパッドは、炭化ケイ素(SiC)の濃度が表面からブレーキパッドのコアに向かって徐々に減少するため、炭素質部分における粒子の不均一な分布に悩まされる。その結果、ブレーキパッドの摩耗により、炭化ケイ素(すなわち、研磨部分)がますます減少するブレーキパッドの領域が露出するため、ブレーキパッドの性能が経時的に変化するという望ましくない事態が生じる。
【0006】
さらに、不都合なことに、従来技術の製造方法では、(炭化ケイ素の)研磨粒子の大きさを十分に制御することができない。) さらに、粒子の形態は、シリカの出発粒子のサイズに依存し、また浸潤工程後の凝集にも依存し、シリカと炭素との接触面にも依存する。これは、ブレーキパッドの研磨性能を一定に保つ必要性(材料の摩擦係数は、均一な形状と狭い範囲の直径を有する粒子を必要とする)に反する。
【0007】
さらに、先行技術の製造方法では、シリカを炭化ケイ素に熱変換するステップにおける高い操作温度(1400℃以上)の結果として、一酸化ケイ素(SiO)が生成され、これが凝縮して炉の低温領域(例えばガスケット、ポンプ、フィルターおよびパイプ)に蓄積する。このため、熱処理後に慎重で高価な洗浄作業が必要となり、炉の一部の部品の寿命が大幅に短くなる。
【0008】
したがって、本発明の根底にある問題は、従来技術の欠点を克服し、極端な用途においても高い性能特性を維持するディスクブレーキパッドと、それを簡便に実現可能な方法で得るためのプロセスを提供することである。より具体的には、本発明は、可能な限り一定したブレーキパッドの研磨性能を得るために、研磨粒子の量およびサイズをより均一に分布させることにより、パッド自体の制動作用を修正することを提案する。
【発明の概要】
【0009】
したがって、先行技術の前述の欠点を解決することができるブレーキパッドプリフォームおよびブレーキパッドの製造方法を有する必要性が、この分野において感じられる。特に、経時的な摩耗の関数として可能な限り均一な性能を有し、同時に、より効率的で便利な方法で製造され得るブレーキパッドを実施する必要性が感じられる。
【0010】
これらのニーズは、請求項(その定義は本明細書の不可欠な部分を形成する)によるブレーキパッドプリフォームの製造方法、ブレーキパッドの製造方法およびディスクブレーキ用ブレーキパッドによって満たされる。
【0011】
本発明によれば、ディスクブレーキ用ブレーキパッドプリフォームの製造方法は、以下の操作ステップを含む。
【0012】
(a)液状または粒子粉末状のポリマー樹脂と粉末状のセラミック粒子とを混合することにより、熱硬化性混合物を調製するステップ。
【0013】
(b)ステップ(a)で得られた熱硬化性混合物を、炭素繊維によって構成される炭素質材料と組み合わせて、成形コンパウンドを得るステップ。
【0014】
(c)ステップ(b)で得られた成形コンパウンドを、例えばブレーキパッドプリフォーム用の金型内で、圧縮及び熱処理によって成形し、粗プリフォームを得るステップ。
【0015】
(d)ステップ(c)で得られた粗プリフォームを熱分解処理に付し、ブレーキパッドプリフォームを得るステップ。
【0016】
本方法の代替変形例は、ステップ(a)に代わるステップ(a1)を提供し、このステップでは、セラミック粒子の前駆体として、液状または固体粒子状のポリマー樹脂と液状のプレセラミック樹脂とを混合することによって熱硬化性混合物を調製する。この方法の代替変形例では、セラミック粒子は、ステップ(c)の熱処理中またはステップ(d)の間に、プレセラミック液状樹脂から出発して形成される。
【0017】
さらに、本発明によるディスクブレーキ用ブレーキパッドは、炭素質材料(または炭素質マトリックス)のマトリックスと炭素繊維とからなる炭素-炭素複合材料で構成される。さらに、セラミック粒子が炭素質マトリックス中に均一に分散されている。
【発明の実施の形態】
【0018】
本発明のさらなる特徴および利点は、非限定的な例としてのみ以下に示す、そのいくつかの好ましい実施形態の説明から、より明確に現れるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A図1Aは、本発明の実施形態によるディスクブレーキパッドの一部を上方から見た軸線図である。
【0020】
図1B図1Bは、図1Aのブレーキパッドの断面の走査型電子顕微鏡(SEM)で得られた画像を示す。
【0021】
図1C図1Cは、図1Bの断面の一部の光学顕微鏡で得られた画像であり、炭素繊維、CVIプロセスによって形成された炭素(CVIマトリックスとして示される)、ポリマーの熱分解によって形成された炭素(熱分解樹脂として示される)および残留気孔が示されている。
【0022】
図2A図2Aは、先行技術の製造方法に従って得られたブレーキパッドプリフォームの最外面に近い部分の走査型電子顕微鏡(SEM)で得られた画像を示す。
【0023】
図2B図2Bは、図2Aのブレーキパッドプリフォームの一部であって、プリフォームの最も内側のコアに近接した部分の走査型電子顕微鏡(SEM)で得られた画像を示す。
【0024】
図3A図3Aは、本発明の実施形態によるブレーキパッドプリフォームの製造方法に従って得られたブレーキパッドプリフォームの一部の走査型電子顕微鏡(SEM)で得られた画像であり、プリフォームの最外面に近接している。
【0025】
図3B図3Bは、図3Aのブレーキパッドプリフォームの一部の走査型電子顕微鏡(SEM)で得られた画像であるが、プリフォームの最も内側のコアに近接している。
【0026】
図4図4は、本発明の第1の実施形態によるブレーキパッドプリフォームを製造するための方法(ブロックA1、B1、C1、DおよびE)、および第1の実施形態の代替である本発明による方法の第2の実施形態による方法(ブロックA2、B2、C2、DおよびE)の概要ブロック図である。
【0027】
図5A-5C】図5A-5Cは、本発明の第1の実施形態によるブレーキパッドプリフォームを製造するための方法の一連のステップのステップをそれぞれ例示的に示す。
図5D-5E】図5A-5Cは、本発明の第1の実施形態によるブレーキパッドプリフォームを製造するための方法の一連のステップのステップをそれぞれ例示的に示す。
【0028】
図6A-6C】図6A-6Cは、それぞれ例示的な態様で、本発明の第2の実施形態によるブレーキパッドプリフォームを製造するための方法の一連のステップのステップを示す。
図6D-6E】図6D-6Eは、それぞれ例示的な態様で、本発明の第2の実施形態によるブレーキパッドプリフォームを製造するための方法の一連のステップのステップを示す。
【発明の詳細な説明】
【0029】
上記の図を参照して、参照数字6は、本発明によるディスクブレーキ用のブレーキパッドプリフォームの全体を示す。
【0030】
本発明はまた、ブレーキパッドプリフォーム6から直接得られるディスクブレーキ用ブレーキパッド1にも関し、ブレーキパッドプリフォームに乾式および/または湿式の仕上げ工程が実施されると、例えば、所望の幾何学的設計を達成するための旋削やフライス加工が行われる。
【0031】
本発明によるディスクブレーキ用ブレーキパッド1は、炭素質材料と炭素繊維のマトリックスからなる炭素-炭素複合材料で構成される。特に、セラミック粒子は、炭素質材料のマトリックス中に均一に分散されている。
【0032】
炭素-炭素複合体の一実施形態によれば、5mmの体積中のセラミック粒子の体積濃度は、パッドの無作為に特定された2つの異なる領域間で±20%の限界内で変化する。
【0033】
前述のブレーキパッドプリフォーム6を得るために、本発明の主な目的は、ディスクブレーキ用ブレーキパッドプリフォーム6の製造方法であり、この方法は、以下に詳細に説明する一連の操作ステップからなる。ディスクブレーキ用ブレーキパッドプリフォーム6の製造方法の一般的な実施形態は、以下の工程を含む。
【0034】
(a)液体状のポリマー樹脂21または粒子粉末状のポリマー樹脂22と、粉末状のセラミック粒子25とを混合することにより、熱硬化性混合物2を調製する。
【0035】
(b)ステップ(a)で得られた熱硬化性混合物2を炭素繊維からなる炭素質材料3と組み合わせて成形コンパウンド4を得る。
【0036】
(c)ステップ(b)で得られた成形コンパウンド4を、例えばブレーキパッドプリフォーム用の金型内で、圧縮および熱処理によって成形し、粗プリフォーム5(または重合複合材)を得る。
【0037】
(d)ステップ(c)で得られた粗プリフォーム5を熱分解処理に付し、ブレーキパッドプリフォーム6を得る。
【0038】
本方法の一実施形態によれば、液体形態21または粒子固体形態22の重合体樹脂は、フェノール樹脂、アクリル樹脂、フラン樹脂、イソシアネート樹脂、ポリスチレンからなる群から選択される樹脂の1種または2種以上で構成される。
【0039】
好ましくは、ステップ(a)のセラミック粒子25は、炭化ケイ素(SiC)および/または窒化ケイ素(Si3N4)からなる。
【0040】
本方法の有利な実施形態によれば、ステップ(a)のセラミック粒子25は、0.5-100マイクロメートル、好ましくは1-50マイクロメートル、さらに好ましくは2-30マイクロメートルの平均粒径を有する。
【0041】
好ましくは、ステップ(a)は、セラミック粒子の分散を改善するために、ポリアクリル酸化合物またはポリエチレンイミン化合物などの分散剤も混合するステップを含む。
【0042】
実施形態によれば、ステップ(a)は、セラミック粒子25の解凝集および分散を改善するために、機械的混合処理または超音波処理の使用をさらに提供する。
【0043】
実施形態によれば、熱硬化性混合物2は、熱硬化性混合物2の総重量に対して粉末形態のセラミック粒子25を3重量%-20重量%、好ましくは熱硬化性混合物2の総重量に対して粉末形態のセラミック粒子25を9重量%-15重量%含有する。セラミック粒子25の含有量に基づいて、材料の摩擦挙動を調節し、各用途に最適化することが可能である。
【0044】
特に、熱硬化性混合物2が、熱硬化性混合物2の総重量に対して少なくとも10重量%の粉末状のセラミック粒子25で構成されている実施形態では、高温を犠牲にして300℃以下の温度で摩擦を有利にすることができる。
【0045】
熱硬化性混合物2が、熱硬化性混合物2の総重量に対して少なくとも3重量%、多くとも10重量%(極端なものは除く)の粉末形態のセラミック粒子25で構成されているさらなる実施形態によれば、摩擦効果は、300℃より高い温度においてもよりバランスのとれた挙動を有する。
【0046】
ステップ(a)で得られた熱硬化性混合物2を炭素繊維からなる炭素質材料3と結合するステップ(b)は、例えば浸漬によって、または圧縮によって、または混合などによって、異なる方法で行われ得ることは明らかである。
【0047】
実施形態によれば、炭素質材料3は、二次元又は実質的に二次元の織物層31、好ましくは炭素繊維織物の層で構成される。この実施形態では、ステップ(b)は、二次元布層31に熱硬化性混合物2を含浸させ、ステップ(c)において成形される成形コンパウンド4を形成するために層同士を接合する操作ステップからなる。この場合、成形コンパウンドはプリプレグとも呼ばれる。
【0048】
実施形態の変形例によれば、炭素質材料3は、チョップド(切断された)カーボン繊維32で構成される。好ましくは、ステップ(b)において、チョップドカーボン繊維32がステップ(a)の熱硬化性混合物2に接合された後、このようにして得られた成形コンパウンド4は、次いでステップ(c)において熱間成形により成形され、好ましくは重合体(重合複合材)である粗プリフォーム5を形成する。
【0049】
有利な実施形態によれば、炭素質化合物4は、50重量%から80重量%のこの炭素質材料3と、20重量%から50重量%の前記熱硬化性混合物2とから構成され、好ましくは65重量%から75重量%の前記炭素質材料3と、25重量%から35重量%の前記熱硬化性混合物2とから構成される。これにより、炭素質材料3を結合するのに十分な量の樹脂2を得ることができ、同時に、機械的抵抗を増加させるためにできるだけ多くの炭素質繊維を維持することができる。
【0050】
一実施形態によれば、成形配合物4を成形するステップ(c)は、例えば真空バッグによる真空成形技術によって成形配合物4を圧縮する次の操作ステップ(c1)からなる。
【0051】
さらに好ましくは、操作ステップ(c1)は、成形コンパウンド4をオートクレーブ硬化処理に付すステップも含んでいる。この実施形態は、炭素質化合物4が二次元または実質的に二次元の布層31で構成される場合に好ましい。
【0052】
この実施形態では、ステップ(c1)において、オートクレーブ処理は、5-15バールの間の圧力(両値を含む)で行われる。
【0053】
実施形態の変形例によれば、成形コンパウンド4を成形するステップ(c)は、一軸プレスでの成形によって成形コンパウンド4を熱間成形する操作ステップ(c2)を提供する。この実施形態は、炭素質化合物がチョップドカーボン繊維32で構成される場合に好ましい。
【0054】
実施形態によれば、ステップ(c2)において、熱間成形は、5-50バールの間の圧力で行われる。
【0055】
好ましくは、ステップ(c1)またはステップ(c2)は、100℃と160℃との間(両値を含む)で構成される温度で、少なくとも30分間行われる。これにより、重合体樹脂の完全な架橋を得ることができる。
【0056】
一実施形態によれば、ステップ(d)の後、本方法は、ブレーキパッドプリフォーム6を炭素高密度化プロセスに付して高密度化パッドプリフォーム7を得る操作ステップ(e)をさらに含む。炭素高密度化合プロセスは、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)技術、またはCVI(Chemical Vapor Infiltration)、またはPIP(Polymer Infiltration and Pyrolysis)、またはピッチを用いるPIPを含む。
【0057】
第1の高密度化技術は、CVD(Chemical Vapor Deposition)またはCVI(Chemical Vapor Infiltration)であり、炭素が蒸気の形でコーティングされるだけか、浸透するかによって異なる。一般的に、材料が繊維状で多孔性が高い場合は、CVI(Chemical Vapor Infiltration)と呼ばれる。これらの方法には、炭化水素混合物(メタンやプロパンなど)を使用し、被処理物を高温・低圧でこれらの混合物にさらすことが含まれる。操作温度は900~1200℃、好ましくは1000~1100℃のオーダーであり、圧力は300mbar以下、好ましくは10~100mbarが使用される。炭化水素混合物は分解して元素状炭素を形成し、この元素状炭素は処理される材料のマトリックス中に堆積または浸透する。この方法は、特殊な専用炉の使用を必要とし、繊維上に薄い層(通常数ミクロン)を堆積させるため、所望の高密度化を得るためには数十時間から数百時間の処理時間が必要となる。この方法では、10ミクロン以上(典型的には10-20ミクロン)の繊維上の全体的な被覆率を達成することが可能である。
【0058】
LPI(Liquid Polymer Infiltration)またはPIP(Polymer Infiltration and Pyrolysis)として知られる別の方法は、処理される材料のマトリックスに液体ポリマーを浸透させ、その後の高温熱処理(熱分解)によって炭素繊維上に堆積したポリマーを炭化させるものである。この場合、プリフォームの適切な高密度化を得る前に、数回の浸透と熱分解の工程が必要となる。
【0059】
実施形態によれば、高密度化技術の組合せ、例えばPIP技術とCVI技術の組合せを使用することが可能である。
【0060】
実施形態によれば、ステップ(e)は、少なくとも1.5グラム/立方センチメートル(g/cm)、好ましくは1.65グラム/立方センチメートル(g/cm)以上の最終材料の密度が得られるまで、ステップ(d)で得られたブレーキパッドプリフォーム6を高密度化するステップを含む。
【0061】
これらの密度値は、高密度化されたブレーキパッドプリフォーム7の材料に、機械的強度、熱伝導性および耐摩耗性の適切な特性を与える。
【0062】
ブレーキパッドプリフォーム6の製造のために、製造方法は任意に以下の工程も含む。
【0063】
(i)任意選択で、重ね合わされた二次元又は実質的に二次元の織物層をニードリングして、織り込まれた三次元構造を形成する。
【0064】
(ii)任意選択で、チョップドファイバーをニードリングして、三次元の織り込み構造を形成する。
【0065】
ニードリングは、繊維の一部をパッドに軸方向に向けることによって係合させ、三次元構造を得ることを可能にする特殊なニードルの使用を提供する方法を用いて実施することができる。
【第1の実施形態例】
【0066】
本発明による方法の一実施形態に従って得られたブレーキパッドプリフォーム6の実施形態例を以下に説明し、これに関して、SEMによって得られたいくつかの詳細な部分を図3Aおよび図3Bに示す。
【0067】
この実施形態例によるブレーキパッドプリフォーム6は、以下の操作ステップによって得られた。
【0068】
固体状のイソシアネートポリマー樹脂22と粉末状の炭化ケイ素(SiC)のセラミック粒子25とを混合することによって熱硬化性混合物2を調製した。各セラミック粒子は約2マイクロメートルの平均粒径を有していた。
【0069】
ステップ(a)で得られた熱硬化性混合物2を、チョップドカーボン繊維32からなる炭素質材料3と組み合わせて、成形コンパウンド4を得た。
【0070】
本実施形態例で得られた成形コンパウンド4は、30重量%のイソシアネートポリマー樹脂と、3重量%の炭化ケイ素(SiC)セラミック粒子と、67重量%のチョップドカーボン繊維とから構成されている。
【0071】
その後、上述の成形用コンパウンド4をブレーキパッドプリフォーム金型内でプレスにて成形・熱処理することにより成形し、粗プリフォーム5を得た。
【0072】
次いで、この粗プリフォーム5に熱分解処理及び熱処理を施して、炭素-炭素化合物が形成されたブレーキパッドプリフォーム6を得た。
【0073】
その後、ブレーキパッドプリフォーム6も、CVI(Chemical Vapor Infiltration)高密度化技術による高密度化処理に付され、高密度化されたブレーキパッドプリフォーム7が得られた。
【0074】
図3Aおよび図3Bは、本実施形態例のSEM画像を示しており、先行技術による方法で得られたブレーキパッドプリフォーム6の対応する部分のSEM画像を示すそれぞれの図2Aおよび図2Bと容易に比較することができる。画像において、炭化ケイ素(SiC)粒子は、背景と比較して明るい点(白/薄い灰色)に対応する。
【0075】
画像間の比較は、図3Aおよび3Bにおいて(すなわち本発明において)、プリフォームの表面領域(図3(A)からプリフォームの深部領域(図3(B)への移行において炭化ケイ素(SiC)粒子の密度に有意な減少がないことを明確に示している。
【0076】
反対に、公知の技術で製造されたプリフォームでは、図2Bは、プリフォームの最も表面的な部分に関する図2Aに関して、炭化ケイ素粒子の密度の明らかな減少を示している。
【0077】
これまで述べてきたことから理解されるように、本発明のブレーキパッドプリフォーム6、ブレーキパッド1、およびこのプリフォーム6とブレーキパッド1の関連する製造方法は、従来技術に示された欠点を克服することを可能にする。
【0078】
特に、本発明は、炭素質材料のマトリックス中に均一に分散されたセラミック粒子をドープした炭素-炭素複合体の製造方法を提供し、この複合体は、パッドの摩耗に関係なく一定のブレーキ性能を保証することができる。
【0079】
さらに、有利なことに、本発明による方法は、浸透プロセス中に酸化ケイ素の炭化ケイ素への高い変換温度を必要としないので、高温の使用を必要とせず、かつ、プロセスで使用される機械の低温部分への酸化ケイ素堆積物の形成の危険性を低減するので、先行技術の方法よりも効率的である。さらに、変換されなければならないシリカの代わりにSiC粒子を使用することにより、導入された粉末のサイズを制御することができる。
【0080】
当業者であれば、特定の偶発的なニーズを満たすために、パッドプリフォーム、パッド、および上述の方法にいくつかの変更および調整を加えることができることは明らかであり、これらの変更はすべて、添付の特許請求の範囲に定義される保護範囲に含まれる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A-5C】
図5D-5E】
図6A-6C】
図6D-6E】
【国際調査報告】