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特表2024-536064バチルス・コアグランス芽胞組成物を使用する乳酸生産のための有機廃棄物の前処理
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  • 特表-バチルス・コアグランス芽胞組成物を使用する乳酸生産のための有機廃棄物の前処理 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】バチルス・コアグランス芽胞組成物を使用する乳酸生産のための有機廃棄物の前処理
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/56 20060101AFI20240927BHJP
   B09B 3/60 20220101ALI20240927BHJP
   B09B 3/30 20220101ALI20240927BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20240927BHJP
   B09B 3/35 20220101ALI20240927BHJP
   C12N 1/00 20060101ALN20240927BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20240927BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20240927BHJP
   C12N 9/26 20060101ALN20240927BHJP
   C12N 9/42 20060101ALN20240927BHJP
   C12N 9/34 20060101ALN20240927BHJP
   B09B 101/70 20220101ALN20240927BHJP
【FI】
C12P7/56
B09B3/60 ZAB
B09B3/30
B09B3/70
B09B3/35
C12N1/00 S
C12N1/20 F
C12N1/20 D
C12N1/00 B
C12M1/00 D
C12N9/26
C12N9/42
C12N9/34
B09B101:70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518415
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 IL2022051034
(87)【国際公開番号】W WO2023053121
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/249,684
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522327348
【氏名又は名称】トリプルダブリュー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アヴィダン,オフィール
(72)【発明者】
【氏名】グリーナー,ツヴィカ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4B065
4D004
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB02
4B029DF01
4B029DF02
4B064AD33
4B064CA02
4B064CC06
4B064CC07
4B064CD23
4B064DA16
4B065AA15X
4B065BB40
4B065BC02
4B065BC03
4B065BD10
4B065CA10
4B065CA55
4D004AA04
4D004AA12
4D004AA46
4D004BA06
4D004CA04
4D004CA18
4D004CA34
4D004CA46
4D004CB01
4D004CC07
4D004DA03
4D004DA06
4D004DA09
4D004DA10
4D004DA20
(57)【要約】
有機廃棄物からの乳酸の大量生産前の、有機廃棄物の前処理のための方法およびシステムが提供され、これは、バチルス・コアグランス芽胞の乾燥または部分乾燥組成物を使用する。方法およびシステムは便宜的に、前処理段階ですでに、有機廃棄物のL-乳酸への部分変換を提供し、よって、L-乳酸の大量生産のための改善された原料材料が生成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
L-乳酸またはその塩の大量生産のための原料材料を調製するための方法であって、
(i)未処理有機廃棄物を提供すること;
(ii)前記未処理有機廃棄物をL-乳酸産生菌バチルス・コアグランスの芽胞の乾燥または部分乾燥組成物と混合すること;ならびに
(iii)前記未処理有機廃棄物を機械的処理、化学的処理および酵素処理の1つ以上に供すること
を含み、
ステップ(ii)の前記混合は、ステップ(iii)の前記1つ以上の処理前、および/または中に実施され、
前記原料材料の調製は非滅菌条件下で実施され、ならびに
前記B.コアグランス芽胞の少なくとも一部の発芽が前記原料材料の調製中に起こり、そのため、前記有機廃棄物が部分的にL-乳酸に変換され、
よって、L-乳酸の大量生産のためのL-乳酸に富む原料材料が得られる、方法。
【請求項2】
前記有機廃棄物は、食品廃棄物、都市廃棄物、農業廃棄物、植物材料およびそれらの混合物または組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機廃棄物は、固体有機廃棄物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機廃棄物は、30%-95%の範囲(w/w)の含水量を有する半固体有機廃棄物である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記有機廃棄物は、液体有機廃棄物である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(ii)における前記混合は有機廃棄物収集容器内で実施される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(ii)における前記混合は有機廃棄物を廃棄物管理施設に輸送する輸送車両において実施される、請求項1-5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(ii)における前記混合は有機廃棄物管理施設で、ステップ(iii)の前記1つ以上の処理前、または中に実施される、請求項1-5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(iii)の前記1つ以上の処理は、ミンチ加工、寸断、粉砕またはそれらの組み合わせによるサイズリダクションを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(iii)の前記1つ以上の処理は、1つ以上の多糖-分解酵素を使用する糖化を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(ii)は、1つ以上の多糖-分解酵素と混合することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
L-乳酸の大量生産前に有機廃棄物における微生物負荷を低減させ、L-乳酸を濃縮するための方法であって、
(i)未処理有機廃棄物を提供すること;
(ii)前記未処理有機廃棄物を前記L-乳酸産生菌バチルス・コアグランスの芽胞の乾燥または部分乾燥組成物と混合すること;ならびに
(iii)前記未処理有機廃棄物を機械的処理、化学的処理および酵素処理の1つ以上に供すること
を含み、
ステップ(ii)の前記混合は、ステップ(iii)の前記1つ以上の処理前、および/または中に実施され、
前記微生物負荷の低減およびL-乳酸の濃縮はpH調整剤の添加なしで、非滅菌条件下にて実施され、ならびに
前記B.コアグランス芽胞の少なくとも一部の発芽は前記有機廃棄物の前記処理中に起こり、そのため、前記有機廃棄物は部分的にL-乳酸に変換され、
よって、前記有機廃棄物中に内因的に存在する微生物の負荷を低減させるpHの減少、およびL-乳酸の濃縮が得られる、方法。
【請求項13】
L-乳酸の大量生産のための方法であって、
(a)請求項1-12のいずれか一項に記載の原料材料を調製すること;
(b)任意で前記原料材料を追加のB.コアグランス芽胞と混合すること;ならびに
(c)前記原料材料を、発酵反応器において、バチルス・コアグランスによる乳酸生産のための制御された条件下でインキュベートし、よって、L-乳酸を生産させること
を含む、方法。
【請求項14】
前記原料は前記発酵反応器におけるインキュベーション前に滅菌されず、前記大量生産は非滅菌条件下で実施されるオープン式発酵である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記原料は前記発酵反応器におけるインキュベーション前に滅菌され、前記方法は、前記原料材料を滅菌後に追加のB.コアグランス芽胞と混合することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(c)は、前記原料材料を発酵反応器において1つ以上の多糖-分解酵素と共に、前記1つ以上の多糖-分解酵素による多糖の分解、および、前記B.コアグランスによる乳酸の生産のための制御された条件下で、インキュベートすることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
B.コアグランス芽胞の前記組成物は、10%w/w以下の含水量により特徴付けられる乾燥組成物である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
B.コアグランス芽胞の前記組成物は、乳酸マグネシウムを含む乾燥組成物である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
B.コアグランス芽胞の前記乾燥組成物は10^8-10^10芽胞/g粉末を含み、前記乾燥組成物中の前記乳酸マグネシウムの濃度は40-60%(w/w)の範囲である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
L-乳酸の大量生産のための原料材料であって、
(a)5%-30%の固体(w/w/)を含む半固体処理済み有機廃棄物;ならびに
(b)B.コアグランス細菌細胞、B.コアグランス芽胞またはそれらの組み合わせ
を含み、
前記原料生成物はD-乳酸に比べてL-乳酸に富み、ならびに
前記原料生成物のpHは3-6の範囲である、原料材料。
【請求項21】
前記原料生成物のpHは4-5の範囲である、請求項20に記載の原料材料。
【請求項22】
L-乳酸またはその塩の大量生産のための原料材料を調製するための方法であって、
(i)未処理有機廃棄物を提供すること;
(ii)前記未処理有機廃棄物を芽胞形成L-乳酸産生バチルス種の芽胞の乾燥または部分乾燥組成物と混合すること;ならびに
(iii)前記未処理有機廃棄物を機械的処理、化学的処理および酵素処理の1つ以上に供すること
を含み、
ステップ(ii)の前記混合は、ステップ(iii)の前記1つ以上の処理前、および/または中に実施され、
前記原料材料の調製は非滅菌条件下で実施され、ならびに
バチルス芽胞の少なくとも一部の発芽が前記原料材料の調製中に起こり、そのため、前記有機廃棄物が部分的にL-乳酸に変換され、
よって、L-乳酸の大量生産のためのL-乳酸に富む原料材料が得られる、方法。
【請求項23】
L-乳酸の大量生産前に有機廃棄物における微生物負荷を低減させ、L-乳酸を濃縮するための方法であって、
(i)未処理有機廃棄物を提供すること;
(ii)前記未処理有機廃棄物を芽胞形成L-乳酸産生バチルス種の芽胞の乾燥または部分乾燥組成物と混合すること;ならびに
(iii)前記未処理有機廃棄物を機械的処理、化学的処理および酵素処理の1つ以上に供すること
を含み、
ステップ(ii)の前記混合は、ステップ(iii)の前記1つ以上の処理前、および/または中に実施され、
前記微生物負荷の低減およびL-乳酸の濃縮はpH調整剤の添加なしで、非滅菌条件下にて実施され、ならびに
前記バチルス芽胞の少なくとも一部の発芽は前記有機廃棄物の前記処理中に起こり、そのため、前記有機廃棄物は部分的にL-乳酸に変換され、
よって、前記有機廃棄物中に内因的に存在する微生物の負荷を低減させるpHの減少、およびL-乳酸の濃縮が得られる、方法。
【請求項24】
有機廃棄物をリサイクルして、乳酸またはその塩を生産するための方法であって、
(I)粒子サイズの低減および任意で滅菌を含む前処理に供した前処理済み有機廃棄物を提供すること;
(II)B.コアグランス芽胞の乾燥または部分乾燥組成物を提供すること;
(III)B.コアグランス芽胞の前記乾燥または部分乾燥組成物を乳酸溶液中に懸濁させ、微生物汚染物質が不活化されているB.コアグランス芽胞懸濁液を得ること;ならびに
(IV)前記処理済み有機廃棄物を発酵反応器において1つ以上の糖分解酵素および前記B.コアグランス芽胞懸濁液と混合し、前記混合物を前記発酵反応器においてインキュベートし、前記有機廃棄物を糖化し、前記芽胞の発芽、その後、前記芽胞から発芽する栄養B.コアグランス細胞による乳酸生産を誘導すること;ならびに
(V)乳酸またはその塩を前記発酵ブロスから回収すること
を含む、方法。
【請求項25】
ステップ(IV)における前記インキュベートは5-7の範囲のpHで実施される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(IV)における前記インキュベートは5.5-6.5の範囲のpHで実施される、請求項24-25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(IV)における前記インキュベートは45-60℃の範囲の温度で実施される、請求項24-26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(IV)における前記インキュベートは50-55℃の範囲の温度で実施される、請求項24-27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ステップ(IV)における前記インキュベートは20-48時間の範囲の期間実施される、請求項24-28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
ステップ(IV)における前記インキュベートは20-36時間の範囲の期間実施される、請求項24-29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記1つ以上の糖分解酵素は、アミラーゼ、セルラーゼおよびヘミセルラーゼからなる群より選択される多糖-分解酵素である、請求項24-30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記1つ以上の糖分解酵素はグルコアミラーゼを含む、請求項24-31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(IV)における前記混合は、B.コアグランスの前記乾燥組成物を前記発酵反応器に添加し、少なくとも10^4芽胞/ml発酵培地を得ることを含む、請求項24-32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ステップ(IV)における前記混合は、B.コアグランスの前記乾燥組成物を前記発酵反応器に添加し、少なくとも10^6芽胞/ml発酵培地を得ることを含む、請求項24-33のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機廃棄物からの乳酸の大量生産前の、有機廃棄物の前処理のための方法に関し、これは、バチルス・コアグランス芽胞の乾燥または部分乾燥組成物を使用する。本発明の方法は便宜的に、前処理段階ですでに、有機廃棄物のL-乳酸への部分変換を提供し、これにより、有機廃棄物のpHが低下し、そのため、望ましくない生成物を生成する微生物が抑制され、一方、L-乳酸が濃縮される。よって、本発明は、L-乳酸の大量生産のための改善された原料材料を提供する。
【背景技術】
【0002】
乳酸発酵、すなわち、微生物発酵による炭水化物源からの乳酸の生産は、乳酸がバイオプラスチックの製造におけるビルディングブロックとして使用できるために、近年、関心を集めている。乳酸は重合させることができ、生分解性で、再生利用可能なポリエステルポリ乳酸(PLA)が形成され、これは石油から製造されるプラスチックの代替品となり得ると考えられる。PLAは食品包装、消耗品、繊維製品および衛生用品産業における繊維、などを含む様々な製品の製造において使用される。PLAは3Dプリンティングにおいて最も広く使用されるプラスチックフィラメント材料である。
【0003】
発酵バイオプロセスによる乳酸の生産は、環境への懸念、コスト、および、PLAのほとんどの産業用途で望まれている、鏡像異性的に純粋な乳酸を化学合成により生成させる難しさを含むさまざまな配慮から、化学合成法よりも好ましい。従来の発酵プロセスは典型的には、乳酸産生微生物による嫌気性発酵に基づき、これは、乳酸を炭水化物発酵の主要代謝最終生成物として生産する。PLAの生産では、発酵中に生成された乳酸は発酵ブロスから分離され、様々な下流プロセスにより精製され、次いで、精製された乳酸は重合に供せられる。
【0004】
乳酸はキラル炭素原子を有し、そのため、2つの鏡像異性体型、D-およびL-乳酸で存在する。産業用途に好適なPLAを生成させるために、重合プロセスはたった1つの鏡像異性体のみを使用しなければならない。不純物またはD-およびL-乳酸のラセミ混合物の存在は、低結晶度および低融解温度などの望ましくない特性を有するポリマーという結果になる。よって、L-乳酸鏡像異性体のみ、または、D-乳酸鏡像異性体のみを産生する乳酸微生物が典型的には使用される。
【0005】
現在利用できる商業的プロセスでは、乳酸発酵のための炭水化物源は典型的には、デンプン含有再生可能起源、例えばトウモロコシおよびキャッサバ根である。追加の起源、例えばセルロースリッチサトウキビバガスもまた、提案されている。
【0006】
提案されている乳酸発酵のための追加の炭水化物源は複合有機廃棄物、例えば自治体、産業、および商業起源由来の混合食品廃棄物である。そのような有機廃棄物は有利であり、というのも、乳酸発酵のための他の炭水化物源に比べて容易に入手でき、より安価であるからである。しかしながら、工業規模での、複合有機廃棄物の有用な発酵生成物、例えば乳酸への変換は多くの技術的課題に直面し、前処理、pH、温度、微生物などを含む操作条件に対する正確な制御を必要とする。プロセスを工業規模で経済的に実現可能なものとするために改善が必要である。
【0007】
Sakai et al. (2012), Total Recycle System of Food Waste for Poly-L-Lactic Acid Output, Advances in Applied Biotechnology, Marian Petre, IntechOpenは、B.コアグランス発酵を使用した食品廃棄物の総合リサイクルシステムを記載する。
【0008】
US9,376,697号は、バイオマス原料を有用な工業化学物質に農場処理するための方法を開示し、(a)バイオマス原料を脱リグニンし、脱リグニンバイオマスを生成させるステップ、(b)脱リグニンバイオマスをセルラーゼ生産に供するステップ、(c)付着されたセルラーゼを有する脱リグニンバイオマスを、同時、セルロース分解およびソルベント生成反応に供し、有用な工業化学物質を生成させるステップ、(d)有用な工業化学物質を発酵ブロスから収集し、分離するステップ、ならびに(e)発酵残渣を収集するステップを含む。
【0009】
本発明の出願人に譲渡されたWO2017/122197号は、廃棄物中に存在する乳酸を排除する、かつ、複合多糖を分解させるために有機廃棄物を処理するのに有用な、多糖-分解酵素、例えばセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、およびアミラーゼを分泌するように遺伝子改変された二重作用乳酸(LA)-利用細菌を開示する。
【0010】
本発明の出願人に譲渡されたWO2020/208635号は、有機廃棄物、特に混合食品廃棄物を、D-乳酸オキシダーゼを使用して処理するためのシステムおよび方法を開示する。D-乳酸オキシダーゼは有機廃棄物中に存在するD-乳酸を排除する。処理された有機廃棄物は、工業発酵プロセス、例えば光学的に純粋なL-乳酸の生産における基質として使用することができる。
【0011】
本発明の出願人に譲渡されたWO2021/191901号は、有機廃棄物をリサイクルして、発酵により乳酸を生産するためのシステムおよび方法を開示し、これは、乳酸産生細菌バチルス・コアグランスの芽胞の乾燥または部分乾燥組成物を利用する。
【0012】
プロセスをより経済的に実現可能なものとするために、工業規模での有機廃棄物からの乳酸の生産を改善する必要が残っている。プロセスを単純化し、コストを低減させ、および全収率を改善するシステムおよび方法を有することは非常に有利となるであろう。
【発明の概要】
【0013】
本発明は有機廃棄物からの乳酸の大量生産前の、有機廃棄物の前処理のための方法およびシステムを提供し、これは、ホモ発酵、芽胞形成乳酸産生細菌、例えば、バチルス種の芽胞、特に、バチルス・コアグランス芽胞の乾燥または部分乾燥組成物を使用する。本発明の方法およびシステム便は宜的に、前処理段階ですでに有機廃棄物のL-乳酸への部分変換を提供し、よって、L-乳酸の大量生産のための改善された原料材料が生産される。
【0014】
特定の実施形態では、有機廃棄物は混合食品廃棄物、都市廃棄物および農業廃棄物である。本明細書で開示されるように、バチルス・コアグランス芽胞の乾燥または部分乾燥組成物は、ゴミ箱、ダンプスター、廃棄物処理容器、廃棄物管理車両、ごみ収集車、廃棄物捕捉装置など内の有機廃棄物と、または、有機廃棄物管理施設での発酵前の有機廃棄物の処理中、例えば、その粒子サイズを低減させるための有機廃棄物の粉砕、ミンチ加工および/または寸断中に混合され得る。芽胞は幅広い条件下で発芽することができる。好適な条件が形成されると発芽が起こり、発芽する栄養細胞が有機廃棄物のL-乳酸への変換(特に、有機廃棄物中に存在する可溶性還元糖の変換)を開始する。前処理段階ですでにという芽胞の添加およびL-乳酸の生産は、例えば、下記のために有利である:有機廃棄物が処理され、発酵槽まで輸送される間の自然崩壊プロセスを制御する、潜在的に他の競合発酵プロセスが起こるのを阻止する;自然崩壊を制御することによりL/D比を増加させる;発酵ラグタイムを制御し、発酵ラグタイムを短くする;ならびに、有機廃棄物を酸性化し、よって、他の競合微生物負荷を低減させる。以下で例示されるように、本明細書で開示される芽胞組成物は様々な温度および増殖条件下で、発芽し、様々な組成の廃棄物および成長培地を酸性化することができた。
【0015】
本発明の有機廃棄物は、その起源によって、固体および非固体材料を様々な比率で含む。例えば、果実および野菜廃棄物は典型的には、高いパーセンテージの水、95%(w/w)までの水、例えば、90%-95%の水(w/w)を含み、一方、パン廃棄物はより低いパーセンテージの水、50%(w/w)までを含む。異なる起源の食品廃棄物を含む混合食品廃棄物は、30%-90%の水、例えば、40%-80%、45%-75%を含む可能性がある(範囲内の個々の値が含まれる)。個々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0016】
本発明はさらに、B.コアグランス芽胞の乾燥または部分乾燥組成物を使用したL-乳酸の大量生産を開示し、B.コアグランス芽胞組成物は、有機酸の酸性溶液、特に乳酸溶液に、組成物の乳酸生産発酵槽中への添加前に懸濁される。いくつかの実施形態では、溶液は乳酸に加えて、乳酸の共役塩基、例えば、乳酸マグネシウムを含む緩衝液である。本明細書で開示されるように、そのような処理後、芽胞は乳酸溶液中での懸濁を生き残り、うまく発芽し、よって、生産発酵槽中への接種前に、組成物中に存在する可能性がある微生物汚染物質を不活性化するための簡単な手段を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、溶液中の乳酸の濃度は0.5%-5%の範囲であり、pHは2-4の範囲である(範囲内の個々の値が含まれる)。いくつかの実施形態では、溶液中の乳酸の濃度は1%-5%の範囲、または2%-4%の範囲、範囲内の個々の値が含まれる)である。各可能性は別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、溶液のpHは2.5-4の範囲である(範囲内の個々の値が含まれる)。乳酸の例示的な濃度としては3%が挙げられ、pH3.5である。
【0018】
酸性溶液、特に乳酸溶液での懸濁は数分から最大数時間の間実施可能である。好ましくは、乳酸溶液中での懸濁は懸濁液を5分~1時間(好ましくは5分~45分)の間、周囲温度から最大50℃まで、例えば、25-45℃の温度でインキュベートすることを含む。
【0019】
本明細書で開示される乾燥または部分乾燥芽胞の組成物は、有機廃棄物収集点または有機廃棄物管理場所まで容易に輸送し、保存し、必要時に貯蔵から取り出すことができる。乾燥または部分乾燥組成物中の芽胞は貯蔵からうまく回復し、発芽し、有機廃棄物を乳酸に高収量で発酵することができる。便宜的に、芽胞の乾燥または部分乾燥組成物は冷却を必要とせず、様々な貯蔵条件を長期間維持する。芽胞の生存率は貯蔵を通して維持され、乾燥および貯蔵後の細胞喪失は最小に抑えられる。
【0020】
本明細書で記載される発酵のための基質としての有機廃棄物の利用は、ヒト食品として高い価値を有する起源材料を使用する、前に記載された乳酸生産プロセスに比べて、非常に有利である。
【0021】
開示される芽胞の乾燥組成物は、最大15%(w/w)までまたはその間の任意の量の含水量により特徴付けられる。いくつかの実施形態では、B.コアグランス芽胞の乾燥組成物は最大10%(w/w)までの含水量により特徴付けられる。いくつかの実施形態では、B.コアグランス芽胞の乾燥組成物は4%-15%(w/w)、例えば4%-10%(w/w)の含水量により特徴付けられる。個々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0022】
本明細書で開示される芽胞の部分乾燥組成物は、15%-30%の範囲(w/w)またはその間の任意の量の含水量により特徴付けられる。いくつかの実施形態では、B.コアグランス芽胞の部分乾燥組成物は15%-25%の範囲(w/w)またはその間の任意の量の含水量により特徴付けられる。
【0023】
本明細書で提供されるように、B.コアグランス芽胞を含む乾燥または半乾燥接種材料、製剤または組成物の含水量は、芽胞の外側の水の量を示す(すなわち、「含水量」は本明細書では、芽胞内部で見出される水を含まない)。含水量は接種材料、製剤または組成物の総重量の中のパーセンテージとして提供される。芽胞の「接種材料」、「製剤」および「組成物」という用語は本明細書で同じ意味で使用され、芽胞を含む組成物を説明し、組成物は乾燥または半乾燥されてもよい。
【0024】
1つの態様によれば、本発明は、L-乳酸またはその塩の大量生産のための原料材料を調製するための方法を提供し、方法は下記を含み:
(i)未処理有機廃棄物を提供すること;
(ii)未処理有機廃棄物をL-乳酸産生菌バチルス・コアグランスの芽胞の乾燥または部分乾燥組成物と混合すること;ならびに
(iii)未処理有機廃棄物を機械的処理、化学的処理および酵素処理の1つ以上に供すること;
ステップ(ii)の混合は、ステップ(iii)の1つ以上の処理前、および/または中に実施され、
原料材料の調製は非滅菌条件下で実施され、ならびに
B.コアグランス芽胞の少なくとも一部の発芽が原料材料の調製中に起こり、そのため、有機廃棄物が部分的にL-乳酸に変換され、
よって、L-乳酸の大量生産のためのL-乳酸に富む原料材料が得られる。
【0025】
いくつかの実施形態では、有機廃棄物は、食品廃棄物、都市廃棄物、農業廃棄物、植物材料およびそれらの混合物または組み合わせからなる群より選択される。個々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0026】
いくつかの実施形態では、有機廃棄物は、固体有機廃棄物である。
【0027】
いくつかの実施形態では、有機廃棄物は、30%-95%の範囲(w/w)の含水量を有する半固体有機廃棄物である。
【0028】
いくつかの実施形態では、有機廃棄物は、液体有機廃棄物である。
【0029】
いくつかの実施形態では、ステップ(ii)における混合は有機廃棄物収集容器内で実施される。
【0030】
いくつかの実施形態では、ステップ(ii)における混合は有機廃棄物を廃棄物管理施設に輸送する輸送車両において実施される。
【0031】
いくつかの実施形態では、ステップ(ii)における混合は、ステップ(iii)の1つ以上の処理前、および/または中に、有機廃棄物管理施設で実施される。
【0032】
いくつかの実施形態では、ステップ(iii)の1つ以上の処理は、ミンチ加工、寸断、粉砕またはそれらの組み合わせによるサイズリダクションを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、ステップ(iii)の1つ以上の処理は、1つ以上の多糖-分解酵素を使用する糖化を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、ステップ(ii)は、1つ以上の多糖-分解酵素と混合することをさらに含む。
【0035】
もう一つの態様によれば、本発明は、L-乳酸の大量生産前に、有機廃棄物における微生物負荷を低減させ、L-乳酸を濃縮するための方法を提供し、方法は下記を含み:
(i)未処理有機廃棄物を提供すること;
(ii)未処理有機廃棄物をL-乳酸産生菌バチルス・コアグランスの芽胞の乾燥または部分乾燥組成物と混合すること;ならびに
(iii)未処理有機廃棄物を機械的処理、化学的処理および酵素処理の1つ以上に供すること;
ステップ(ii)の混合は、ステップ(iii)の1つ以上の処理前、および/または中に実施され、
微生物負荷の低減およびL-乳酸の濃縮はpH調整剤の添加なしで、非滅菌条件下にて実施され、ならびに
B.コアグランス芽胞の少なくとも一部の発芽は有機廃棄物の処理中に起こり、そのため、有機廃棄物は部分的にL-乳酸に変換され、
よって、有機廃棄物中に内因的に存在する微生物の負荷を低減させるpHの減少、およびL-乳酸の濃縮が得られる。
【0036】
もう一つの態様によれば、本発明は、L-乳酸の大量生産ための方法を提供し、方法は下記を含む:
(a)本明細書で開示される原料材料を調製すること;
(b)任意で原料材料を追加のB.コアグランス芽胞と混合すること;ならびに
(c)原料材料を、発酵反応器において、バチルス・コアグランスによる乳酸生産のための制御された条件下でインキュベートし、よって、L-乳酸を生産させること。
【0037】
いくつかの実施形態では、原料は発酵反応器におけるインキュベーション前に、(例えば、高圧蒸気を使用して、または、化学薬品を使用して)滅菌されず、大量生産は非滅菌条件下で実施されるオープン式発酵である。
【0038】
他の実施形態では、原料は発酵反応器におけるインキュベーション前に(例えば、スチームジェットクッカーを使用して)滅菌され、方法は、滅菌後に原料材料を追加のB.コアグランス芽胞と混合することをさらに含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、ステップ(c)は、原料材料を発酵反応器において1つ以上の多糖-分解酵素と共に、1つ以上の多糖-分解酵素による多糖の分解、および、B.コアグランスによる乳酸の生産のための制御された条件下で、インキュベートすることを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、B.コアグランス芽胞の組成物は、10%w/w以下の含水量により特徴付けられる乾燥組成物である。
【0041】
いくつかの実施形態では、B.コアグランス芽胞の組成物は、乳酸マグネシウムを含む乾燥組成物である。
【0042】
いくつかの実施形態では、B.コアグランス芽胞の乾燥組成物は10^8-10^10芽胞/g粉末を含み、乾燥組成物中の乳酸マグネシウムの濃度は40-60%(w/w)の範囲である。
【0043】
もう一つの態様によれば、本発明は、下記を含む、L-乳酸の大量生産のための原料材料を提供し:
(a)5%-30%の固体(w/w)(好ましくは5%-20%の固体(w/w))を含む半固体処理済み有機廃棄物;および
(b)B.コアグランス細菌細胞、B.コアグランス芽胞またはそれらの組み合わせ、
原料生成物はD-乳酸に比べてL-乳酸に富み、ならびに
原料生成物のpHは3-6の範囲である(範囲内の個々の値が含まれる)。いくつかの実施形態では、原料生成物のpHは3-5の範囲である(範囲内の個々の値が含まれる)。いくつかの実施形態では、原料生成物のpHは4-5の範囲である(範囲内の個々の値が含まれる)。
【0044】
もう一つの態様によれば、本発明は、L-乳酸またはその塩の大量生産のための原料材料を調製するための方法を提供し、方法は下記を含み:
(i)未処理有機廃棄物を提供すること;
(ii)未処理有機廃棄物を芽胞形成L-乳酸産生バチルス種の芽胞の乾燥または部分乾燥組成物と混合すること;ならびに
(iii)未処理有機廃棄物を機械的処理、化学的処理および酵素処理の1つ以上に供すること、
ステップ(ii)の混合は、ステップ(iii)の1つ以上の処理前、および/または中に実施され、
原料材料の調製は非滅菌条件下で実施され、ならびに
バチルス芽胞の少なくとも一部の発芽が原料材料の調製中に起こり、そのため、有機廃棄物が部分的にL-乳酸に変換され、
よって、L-乳酸の大量生産のためのL-乳酸に富む原料材料が得られる。
【0045】
もう一つの態様によれば、本発明は、L-乳酸の大量生産前に、有機廃棄物における微生物負荷を低減させ、L-乳酸を濃縮するための方法を提供し、方法は下記を含み:
(i)未処理有機廃棄物を提供すること;
(ii)未処理有機廃棄物を芽胞形成L-乳酸産生バチルス種の芽胞の乾燥組成物と混合すること;ならびに
(iii)未処理有機廃棄物を機械的処理、化学的処理および酵素処理の1つ以上に供すること;
ステップ(ii)の混合は、ステップ(iii)の1つ以上の処理前、および/または中に実施され、
微生物負荷の低減およびL-乳酸の濃縮はpH調整剤の添加なしで、非滅菌条件下にて実施され、ならびに
バチルス芽胞の少なくとも一部の発芽は有機廃棄物の処理中に誘導され、そのため、有機廃棄物は部分的にL-乳酸に変換され、
よって、有機廃棄物中に内因的に存在する微生物の負荷を低減させるpHの減少、およびL-乳酸の濃縮が得られる。
【0046】
もう一つの態様によれば、本発明は、L-乳酸の大量生産ための方法を提供し、方法は下記を含む:
(a)本明細書で開示される原料材料を調製すること;
(b)任意で、原料材料を追加のバチルス芽胞と混合すること;ならびに
(c)原料材料を発酵反応器において、バチルス種による乳酸生産のための制御された条件下でインキュベートし、よって、L-乳酸を生産させること。
【0047】
いくつかの実施形態では、バチルス種は、下記からなる群より選択される:バチルス・ステアロサーモフィルス、バチルス・リケニフォルミス、枯草菌、バチルス・ラエボラクティカス、バチルス・ラセミラクティカス(racemilacticus)、バチルス・サーモアミロボランス(thermoamylovorans)、スポロラクトバチルス、スポロラクトバチルス・ショレインコルチシス(shoreicorticis)、スポロラクトバチルス・ビニアエ(vineae)、スポロラクトバチルス・ナカヤマエ(nakayamae)、テリラクチバチルス・ラエビラクチカス(Terrilactibacillus laevilacticus)、およびテリラクチバチルス・タマリンジ(Terrilactibacillus tamarindi)。個々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0048】
もう一つの態様によれば、本発明は、有機廃棄物をリサイクルして、乳酸またはその塩を生産するための方法を提供し、方法は下記を含む:
(I)粒子サイズの低減および任意で滅菌を含む前処理に供した前処理済み有機廃棄物を提供すること;
(II)B.コアグランス芽胞の乾燥または部分乾燥組成物を提供すること;
(III)B.コアグランス芽胞の乾燥または部分乾燥組成物を乳酸溶液中に懸濁させ、微生物汚染物質が不活化されているB.コアグランス芽胞懸濁液を得ること;ならびに
(IV)前処理済み有機廃棄物を発酵反応器において1つ以上の糖分解酵素およびB.コアグランス芽胞懸濁液と混合し、発酵反応器において混合物をインキュベートし、有機廃棄物を糖化し、芽胞の発芽、その後、芽胞から発芽する栄養B.コアグランス細胞による乳酸生産を誘導すること;ならびに
(V)乳酸またはその塩を発酵ブロスから回収すること。
【0049】
いくつかの実施形態では、ステップ(IV)におけるインキュベートは5-7の範囲のpHで実施される。
【0050】
いくつかの実施形態では、ステップ(IV)におけるインキュベートは5.5-6.5の範囲のpHで実施される。
【0051】
いくつかの実施形態では、ステップ(IV)におけるインキュベートは45-60℃の範囲の温度で実施される。
【0052】
いくつかの実施形態では、ステップ(IV)におけるインキュベートは50-55℃の範囲の温度で実施される。
【0053】
いくつかの実施形態では、ステップ(IV)におけるインキュベートは20-48時間の範囲の期間実施される。
【0054】
いくつかの実施形態では、ステップ(IV)におけるインキュベートは20-36時間の範囲の期間実施される。
【0055】
いくつかの実施形態では、1つ以上の糖分解酵素は、アミラーゼ、セルラーゼおよびヘミセルラーゼからなる群より選択される多糖-分解酵素である。
【0056】
いくつかの実施形態では、1つ以上の糖分解酵素はグルコアミラーゼを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、ステップ(IV)における混合は、B.コアグランスの乾燥組成物を発酵反応器に添加し、少なくとも10^4芽胞/ml発酵培地を得ることを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、ステップ(IV)における混合は、B.コアグランスの乾燥組成物を発酵反応器に添加し、少なくとも10^6芽胞/ml発酵培地を得ることを含む。
【0059】
本発明の他の目的、特徴および利点は下記記載および実施例から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明のいくつかの実施形態によるバチルス・コアグランス芽胞(「BC芽胞」)の乾燥または部分乾燥組成物の播種を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明は、バチルス・コアグランス芽胞の乾燥または半乾燥(部分乾燥)組成物が使用される、有機廃棄物からの乳酸の生産のための工業発酵プロセスに関する。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書では、乳酸またはその塩の大量生産のための原料材料を調製するための方法が提供され、方法は下記を含み:(i)未処理有機廃棄物を提供すること;(ii)未処理有機廃棄物をL-乳酸産生菌バチルス・コアグランスの芽胞の乾燥組成物と混合すること;ならびに(iii)未処理有機廃棄物を機械的処理、化学的処理および酵素処理の1つ以上に供すること、ここで、ステップ(ii)の混合はステップ(iii)の1つ以上の処理前、または中に実施され、原料材料の調製は非滅菌条件下で実施され、ならびに、B.コアグランス芽胞の少なくとも一部の発芽は原料材料の調製中に誘導され、そのため、有機廃棄物は部分的にL-乳酸に変換され、よって、乳酸の大量生産のための原料材料が得られる。
【0063】
いくつかの実施形態では、本明細書では、乳酸またはその塩の大量生産のための原料材料を調製するための方法が提供され、方法は下記を含み:(i)未処理有機廃棄物を提供すること;(ii)未処理有機廃棄物をL-乳酸産生菌バチルス・コアグランスの芽胞の部分乾燥組成物と混合すること;ならびに(iii)未処理有機廃棄物を機械的処理、化学的処理および酵素処理の1つ以上に供すること、ここで、ステップ(ii)の混合はステップ(iii)の1つ以上の処理前、または中に実施され、原料材料の調製は非滅菌条件下で実施され、ならびに、B.コアグランス芽胞の少なくとも一部の発芽は原料材料の調製中に誘導され、そのため、有機廃棄物は部分的にL-乳酸に変換され、よって、乳酸の大量生産のための原料材料が得られる。
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書では、L-乳酸の大量生産前に有機廃棄物における微生物負荷を低減させ、L-乳酸を濃縮するための方法が提供され、方法は下記を含み:(i)未処理有機廃棄物を提供すること;(ii)未処理有機廃棄物をL-乳酸産生菌バチルス・コアグランスの芽胞の乾燥組成物と混合すること;ならびに(iii)未処理有機廃棄物を機械的処理、化学的処理および酵素処理の1つ以上に供すること、ここで、ステップ(ii)の混合はステップ(iii)の1つ以上の処理前、または中に実施され、微生物負荷の低減およびL-乳酸の濃縮はpH調整剤の添加なしで、非滅菌条件下にて実施され、ならびにB.コアグランス芽胞の少なくとも一部の発芽は有機廃棄物の処理中に誘導され、そのため、有機廃棄物は部分的にL-乳酸に変換され、よって、有機廃棄物中に内因的に存在する微生物の負荷を低減させるpHの減少、およびL-乳酸の濃縮が得られる。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書では、L-乳酸の大量生産前に有機廃棄物における微生物負荷を低減させ、L-乳酸を濃縮するための方法が提供され、方法は下記を含み:(i)未処理有機廃棄物を提供すること;(ii)未処理有機廃棄物をL-乳酸産生菌バチルス・コアグランスの芽胞の部分乾燥組成物と混合すること;ならびに(iii)未処理有機廃棄物を機械的処理、化学的処理および酵素処理の1つ以上に供すること、ここで、ステップ(ii)の混合はステップ(iii)の1つ以上の処理前、または中に実施され、微生物負荷の低減およびL-乳酸の濃縮はpH調整剤の添加なしで、非滅菌条件下にて実施され、ならびに、B.コアグランス芽胞の少なくとも一部の発芽は有機廃棄物の処理中に誘導され、そのため、有機廃棄物は部分的にL-乳酸に変換され、よって、有機廃棄物中に内因的に存在する微生物の負荷を低減させるpHの減少、およびL-乳酸の濃縮が得られる。
【0066】
追加の実施形態では、本明細書では、L-乳酸またはその塩の大量生産のための原料材料を調製するための方法が提供され、方法は下記を含み:(i)未処理有機廃棄物を提供すること;(ii)未処理有機廃棄物をL-乳酸産生菌バチルス・コアグランスの芽胞の乾燥または部分乾燥組成物と混合すること;ならびに(iii)未処理有機廃棄物を機械的処理、化学的処理および酵素処理の1つ以上に供すること、ここで、ステップ(ii)の混合は、ステップ(iii)の1つ以上の処理前、および/または中に実施され、原料材料の調製は非滅菌条件下で実施され、ならびに、B.コアグランス芽胞の少なくとも一部の発芽が原料材料の調製中に起こり、そのため、有機廃棄物が部分的にL-乳酸に変換され、pHが低減され、よって、L-乳酸の大量生産のための原料材料が得られる。
【0067】
いくつかの実施形態では、本明細書では、本明細書で開示されるように、D-乳酸に比べてL-乳酸が濃縮された原料材料を調製するための方法が提供される。
【0068】
本明細書では、「未処理」有機廃棄物は、その様々な起源から収集された生の有機廃棄物、または、最小限の処理、例えば混合および/または水の添加に供された有機廃棄物を示す。
【0069】
本発明による有機廃棄物の機械的処理としては、例えば、混合、不溶性不純物などの不純物の分離(例えば、デカンター遠心分離、濾過)、寸断、粉砕、ミンチ加工またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0070】
化学的処理としては、例えば、熱処理、酸処理またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0071】
酵素処理としては、例えば、1つ以上の多糖-分解酵素を使用する糖化が挙げられる。
【0072】
いくつかの実施形態では、有機廃棄物は、機械的処理および酵素処理に供される。
【0073】
いくつかの実施形態では、芽胞の乾燥または部分乾燥組成物は、有機廃棄物との混合前に、溶液、例えば、乳酸溶液中で再構成される。よって、本明細書で開示されるように、乾燥または部分乾燥芽胞組成物の有機廃棄物との混合または接触は芽胞組成物の有機廃棄物への直接接種、およびまた、再構成された芽胞組成物の接種を包含する。
【0074】
以下、図面について説明すると、図1は、本発明のいくつかの実施形態によるB.コアグランス芽胞の乾燥または部分乾燥組成物の播種を示す。図1に示される実施形態は、有機食品廃棄物(food wase)の取扱いおよび前処理中の様々な段階に関連し、この場合、B.コアグランス芽胞の乾燥または部分乾燥組成物が、食品廃棄物と混合できる。例えば:ゴミ箱などの食品廃棄物起源への播種、食品廃棄物の廃棄物管理施設への輸送中のトラックの容器への播種、廃棄物管理施設での食品廃棄物の吸入ピットへの播種、食品廃棄物処理プラントにおける食品廃棄物の前処理中での播種、例えば、サイズ低減装置または中間容器への播種。個々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0075】
前処理済み食品廃棄物は、乳酸の制御された生産のための発酵槽に移される。「制御された生産」または「制御された発酵」は本明細書では、制御された条件下で実施される乳酸発酵、例えば、下記パラメータの1つ以上の制御下での乳酸発酵を示す:温度、pH、栄養分のレベル、かくはん速度および通気(好気性/嫌気性/微好気性条件)。いくつかの実施形態では、追加のB.コアグランス芽胞が発酵槽に播種される。他の実施形態では、追加のB.コアグランス芽胞は播種されず、発酵は制御された生産段階前に播種されたB.コアグランス芽胞を使用して実施される。制御された生産段階後に、発酵ブロスが処理され、発酵生成物、すなわち、乳酸またはその塩が回収される。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明による制御された発酵は、発酵槽に入る前に、または、発酵槽タンク自体において、滅菌のない、例えば、原料の化学-熱-蒸気-滅菌(ジェットクッカーなどの使用)のないオープン発酵である。このオープン発酵の方法では、化学-熱-蒸気-滅菌に必要とされる時間および資源が節約される。
【0077】
他の実施形態では、本発明による制御された発酵は、閉鎖発酵槽において滅菌条件下で実施される。これらの実施形態によれば、前処理済み有機廃棄物は、乳酸の制御された生産が実施される前に、滅菌、例えば、化学-熱-蒸気-滅菌に供される。これらの実施形態によれば、滅菌された、前処理済み有機廃棄物へのB.コアグランス(例えば、B.コアグランス芽胞)の再播種が実施される。
【0078】
有機廃棄物管理施設は、廃棄材料の収集、輸送、処理、リサイクル/廃棄および監視を取り扱う。廃棄物を有用な化学物質、例えば乳酸にリサイクルするため、すなわち、有機廃棄物を工業発酵プロセスのための基質として利用するために、現場発酵システムが典型的には必要とされる。工業用発酵槽に接種する従来の方法は栄養細菌の湿潤接種材料(湿潤シードトレイン)を利用する。この方法は、廃棄物管理施設において実行するのを困難にする多くの不利点を有し、(i)湿潤種子調製を生産発酵槽の正確な接種時間と厳密に同期させる、(ii)湿潤シードトレインの生成のための少し小さなスケールの発酵槽を含む現場シードトレイン生産ラインを有する(典型的には、数リットルフラスコまでの1:10の比)必要性が挙げられる。
【0079】
湿潤シードトレインは、時間のかかる、資源を使い果たすプロセスである。それは生産時間を増加させ、その結果として、所定の期間あたりに実施できる発酵サイクルの数が制限される。
【0080】
本発明によれば、有機廃棄物からの乳酸の現場生産のための、有機廃棄物管理施設への乳酸生産の単純統合が可能となる。本明細書で開示される乾燥または半乾燥芽胞の組成物は、廃棄物管理現場まで容易に輸送し、保存し、必要時に貯蔵から取り出すことができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、シードラインの必要性が本発明により排除される。
【0082】
重要なことには、乾燥または部分乾燥組成物の調製は、廃棄物管理施設から時間と場所によって分離された場所において実施することができる。
【0083】
加えて、乾燥または部分乾燥種子は数週間または数ヶ月前に調製し、保管することができ、有機廃棄物との混合にすぐに利用できるという事実は、乳酸生産プロセスを著しく短縮する。
【0084】
有機廃棄物からの乳酸生産は典型的には、下記を含む:(i)発酵に好適な可溶性還元糖を放出するための、1つ以上の多糖-分解酵素を使用した廃棄物中に存在する多糖の分解(「糖化」);ならびに(ii)乳酸産生微生物(例えば、本明細書で開示されるバチルス・コアグランス)による還元糖の乳酸への発酵。
【0085】
乳酸生産のための再生可能な炭水化物源としては典型的には、様々な比率の還元糖(グルコース、フルクトース、ラクトース、など)が挙げられるがまた、大量の多糖、例えばデンプンおよび任意でリグノセルロース材料も挙げられる。典型的には、乳酸産生微生物はグルコースおよびフルクトースのような還元糖を利用することができるが、デンプンおよびセルロースのような多糖を分解することはできない。よって、そのような多糖を利用するために、プロセスでは、任意で化学的処理と組み合わせて、多糖-分解酵素を添加し、多糖を分解し、還元糖を放出させることが必要となる。多糖-分解酵素のプロセスへの統合は順次的であってもよく、そのため、基質は1つ以上の多糖-分解酵素で処理され、その後、乳酸産生微生物が添加され、還元糖を発酵させ、または同時であってもよく、この場合、1つ以上の多糖-分解酵素および乳酸産生微生物が一緒に混合され、糖化および発酵が同時に実施される。同時プロセスは複合炭水化物源から乳酸を得るのに必要とされる全体の時間を低減させるが、その主な課題の1つは、細菌増殖と酵素活性の両方のための条件を一致させる必要性である。
【0086】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法は同時糖化-発酵を採用する。多糖-分解酵素(複数可)が有機廃棄物にバチルス・コアグランス芽胞の乾燥または部分乾燥組成物と一緒に添加され、廃棄物中に存在する多糖の分解および乳酸の生産が同時に得られる。
【0087】
糖化および発酵が別々の連続ステップとして実施される場合、各ステップには約18-24時間かかる可能性がある。2つのステップを同時に実施すると、プロセスが著しく短縮され、生産性の改善という結果となり、というのも、所定の期間あたりより多くの有機廃棄物が乳酸に変換できるからである。
【0088】
バチルス・コアグランス芽胞組成物
バチルス・コアグランスは、グラム陽性、好熱性、通性嫌気性、芽胞形成細菌であり、乳酸、特にL-乳酸を産生する。B.コアグランスはL-乳酸を生産する工業発酵プロセスについて提案されてきた。B.コアグランスはまた、正常な腸管微生物叢を維持し、消化性を改善することが示されており、腸管微生物叢の生態学的バランスおよび正常な消化管機能を維持するプロバイオティクスとして一般に市販される。例えば、LactoSpore(登録商標)は、プロバイオティクスとしての使用を目的とするバチルス・コアグランス(MTCC 5856)芽胞調製物であり、マルトデキストリンと混合された、B.コアグランス芽胞の噴霧乾燥粉末を含む。
【0089】
Yadav et al. (2009) Indian Journal of Chemical Technology, 16: 519-522は、噴霧乾燥中のバチルス・コアグランスのプロバイオティクス保護剤として、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、スピルリナおよびマルトデキストリンを調査した。
【0090】
本発明により使用され得るバチルス・コアグランス株としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:B.コアグランスATCC 8038 DSM 2312、B.コアグランスATCC 23498 DSM 2314、B.コアグランスMTCC 5856、B.コアグランスPTA-6086(GBI-30、6086)、B.コアグランスSNZ 1969。個々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態では、B.コアグランスの芽胞は、少なくとも1つの追加の芽胞形成L-乳酸産生細菌種由来の芽胞により補充される。追加の芽胞形成L-乳酸産生細菌種としては、下記の少なくとも1つが挙げられる:バチルス・ステアロサーモフィルス、バチルス・リケニフォルミス、枯草菌、バチルス・ラエボラクティカス、バチルス・ラセミラクティカス、バチルス・サーモアミロボランス、スポロラクトバチルス、スポロラクトバチルス・ショレインコルチシス、スポロラクトバチルス・ビニアエ、スポロラクトバチルス・ナカヤマエ、テリラクチバチルス・ラエビラクチカス、およびテリラクチバチルス・タマリンジ。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0092】
本発明のいくつかのさらなる実施形態では、少なくとも1つの追加の芽胞形成L-乳酸産生細菌種由来の芽胞は、未処理有機廃棄物との混合のプロセスにおいて、B.コアグランスの芽胞に少なくとも部分的にとって代わることができ、少なくとも部分的に廃棄物をL-乳酸に変換する。いくつかの特定の実施形態では、追加の細菌種由来の芽胞はB.コアグランスの芽胞の代わりに使用できる。
【0093】
芽胞は、例えば、下記の通り調製することができる:第1のステップにおいて、B.コアグランスの純粋培養物が滅菌種培地に接種され、振盪機で30-55℃、例えば45-55℃にて、12-24時間インキュベートされる。次いで、種培地が芽胞形成培地に移され、30-55℃、例えば45-55℃で24-48時間インキュベートされる。芽胞形成の誘導にはストレス条件、例えば、栄養分の欠如、比較的リッチな窒素源、例えば酵母エキス、炭素とリンの制限と共に、Mn2+およびCa2+イオンの存在、5-8の範囲のpH(好ましくは5-7、または5-6.5)、24-48時間のインキュベーション(好ましくは24時間)、および前記ストレス誘導因子の組み合わせが必要とされる。得られた芽胞培養物中の芽胞濃度は好ましくは少なくとも10^7芽胞/ml、より好ましくは少なくとも10^8芽胞/mlである。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0094】
インキュベーションに続いて、ブロスが収集され、遠心分離され、ペレットが収集される。いくつかの実施形態では、収集されたペレットは、本明細書では芽胞の「半乾燥」または「部分乾燥」調製物と呼ばれ(15%-30%w/wの範囲の含水量)、秤量され、その後、乳酸マグネシウム溶液と混合され、収集された芽胞および15-25%乳酸マグネシウム(組成物の総重量のw/w)を含む組成物が得られる。いくつかの実施形態では、収集された芽胞を含む組成物中の乳酸マグネシウムの濃度(乾燥前)は組成物の総重量の15-20%(w/w)の範囲、例えば、15%、16%、17%、18%、19%または20%(w/w)である。個々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、組成物は乾燥、例えば、噴霧乾燥(例えば、入口空気温度180℃および出口空気温度90℃)または80℃で熱-乾燥され、粉末形態の乾燥芽胞組成物が得られる。本発明による乾燥芽胞組成物の含水量は、最大15%(w/w)まで、好ましくは最大10%(w/w)まで、典型的には、4%-10%w/wである。個々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0095】
いくつかの実施形態では、70℃-80℃の温度での熱選択は典型的には、インキュベーション後、かつ、乾燥前に実施される。
【0096】
いくつかの実施形態では、乾燥後、本発明による粉末形態の乾燥組成物は、少なくとも10^8芽胞/g粉末、例えば、10^8-10^10芽胞/g粉末を含む。いくつかの実施形態では、本発明による乾燥組成物は、例えば10^8、10^9、10^10芽胞/g粉末を含む。個々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。本発明による乾燥組成物は乳酸マグネシウムを、40-60%(w/w)、例えば、45%-55%(w/w)、40%-50%(w/w)、50%-60%(w/w)の濃度で、さらに含む。個々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0097】
いくつかの実施形態では、本発明によるB.コアグランス芽胞の乾燥組成物は、アミラーゼ、セルラーゼおよびヘミセルラーゼから選択される1つ以上の多糖-分解酵素をさらに含む。いくつかの特定の実施形態では、本発明によるB.コアグランス芽胞の乾燥組成物はグルコアミラーゼを含む。いくつかの例示的な実施形態では、本発明によるB.コアグランス芽胞の乾燥組成物はクロコウジカビ由来のグルコアミラーゼを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、本発明による乾燥組成物はその使用前の冷蔵を必要としない。よって、いくつかの実施形態では、乳酸産生微生物の冷蔵の必要性は本発明の方法により排除される。
【0099】
本発明によれば、非固定芽胞が使用される。
【0100】
本発明の実施形態によれば、発酵槽への接種前の芽胞の活性化は必要とされない。例えば、発酵槽への接種前の熱活性化は必要とされない。さらなる例として、発酵槽への接種前、または後の酸活性化は必要とされない。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるように有機廃棄物基質との接触後、芽胞の少なくとも90%が発芽し、栄養細胞を生成させ、例えば、芽胞の90%-100%が発芽し、栄養細胞を生成させる。
【0102】
有機廃棄物からの乳酸生産
本明細書では、「乳酸」という用語は、化学式CHCH(OH)COHを有するヒドロキシカルボン酸を示す。乳酸または乳酸塩(非プロトン化乳酸)という用語は、乳酸の立体異性体を示すことができる:L-乳酸/L-乳酸塩、D-乳酸/D-乳酸塩、またはそれらの組み合わせ。
【0103】
ほとんどの産業用途では、好適な特性を有するポリ乳酸(PLA)を生産するために、高純度(光学純度)を有するL-乳酸モノマーが必要とされる。よって、本発明の方法およびシステムは、特に、高収量でのL-乳酸またはL-乳酸塩の生産のためのプロセスに関する。
【0104】
本発明による使用に好適な有機廃棄物は典型的には、固体および非固体材料を含む複合有機廃棄物である。複合有機廃棄物は、発酵のための炭水化物(発酵のために有効な可溶性炭水化物および/または発酵のための可溶性炭水化物を放出するために酵素により分解される必要がある多糖)を含み、さらに不純物、例えば塩、脂質、タンパク質、色成分、不活性材料などを含む。本発明による使用のための有機廃棄物の例としては、食品廃棄物、都市廃棄物の有機画分、農業廃棄物、植物材料、およびそれらの混合物または組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。各可能性は別個の実施形態を表す。本発明による食品廃棄物は植物起源の食品廃棄物を包含する。本発明による食品廃棄物は家庭食品廃棄物、商業食品廃棄物、および工業食品廃棄物を包含する。有機食品廃棄物は、野菜および果実残留物、植物、調理済み食品、タンパク質残留物、屠殺廃棄物、およびそれらの組み合わせに由来する可能性がある。工業有機食品廃棄物は、工場廃棄物、例えば副産物、不合格品、市場からの返品または食べれない部分の切りくず(例えば皮)を含む可能性がある。商業有機食品廃棄物は、ショッピングモール、レストラン、スーパーマーケット、などからの廃棄物を含み得る。本発明による植物材料は農業廃棄物および人工製品、例えば紙くずを包含する。いくつかの実施形態では、有機廃棄物は、例えば、乳製品における、例えば、天然の発酵プロセスに由来する内在性D-乳酸、L-乳酸またはL-およびD-乳酸の両方を含む。
【0105】
本発明の方法およびシステムと共に使用するための有機廃棄物は典型的には、デンプン、セルロース、ヘミセルロース、およびそれらの組み合わせを含む複合多糖を含む。有機廃棄物はまた、可溶性還元糖を含み、および/または、1つ以上の多糖-分解酵素で糖化され、可溶性還元糖(発酵性炭水化物)が得られる。本明細書では、「発酵性炭水化物」という用語は、バチルス・コアグランスにより発酵プロセス中に乳酸まで発酵させることができる炭水化物を示す。還元糖は典型的には、C5糖(ペントース)、C6糖(ヘキソース)またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、前記還元糖はグルコースを含む。いくつかの実施形態では、前記還元糖はキシランを含む。
【0106】
本発明による有機廃棄物は典型的には、複合多糖および還元糖を様々な比率で含む。組成物は廃棄物の起源に依存し、いくつかの有機廃棄物はよりデンプンリッチとなる可能性があり(例えば、ベーカリーからの食品廃棄物、複数の自治体の混合食品廃棄物)、他のものは、リグノセルロース材料がリッチとなる可能性がある(例えば、農業廃棄物)。いくつかの実施形態では、有機廃棄物は異なる起源由来の廃棄物の組み合わせを含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、有機廃棄物中のデンプン、セルロースおよびヘミセルロースの少なくとも1つのパーセンテージは、1つ以上の多糖-分解酵素による処理前に決定される。いくつかの実施形態では、可溶性還元糖のパーセンテージは、発酵前に決定される。
【0108】
有機廃棄物は典型的には、窒素源ならびに細菌増殖および乳酸生産に必要とされる他の栄養分を含むが、そのような栄養分はまた、必要なら乳酸生産発酵槽に別個に供給することができる。
【0109】
本発明による有機廃棄物の前処理は典型的には、粒子サイズを減少させることおよび表面積を増加させることを含む。いくつかの実施形態では、前処理は廃棄物内の内在性細菌を不活性化することを含む。いくつかの実施形態では、前処理は寸断およびミンチ加工を含む。いくつかの実施形態では、前処理は寸断、ミンチ加工および滅菌を含む。
【0110】
滅菌は、当技術分野で知られている方法により実施することができ、例えば、高圧蒸気、化学滅菌、沸点での調理、UV照射または超音波処理が挙げられる。
【0111】
前処理としては、例えば、寸断および滅菌が挙げられる。前処理としてはまた、廃棄物ミンサー、例えば、例として、押出機、超音波処理器、シュレッダーまたはブレンダーを使用する、等量の水を用いたミンチ加工が挙げられる。
【0112】
いくつかの実施形態では、1つ以上の糖分解酵素およびB.コアグランス芽胞の乾燥または部分乾燥組成物が、前処理済み有機廃棄物を含む発酵反応器に同時に添加される。追加の実施形態では、1つ以上の糖分解酵素の添加とB.コアグランス芽胞の乾燥または部分乾燥組成物の添加の間の期間は0-5時間の範囲である(範囲内の個々の値が含まれる)。他の実施形態では、1つ以上の糖分解酵素が発酵槽にB.コアグランス芽胞の乾燥または部分乾燥組成物が添加された後1-5時間、例えば、B.コアグランス芽胞の乾燥または部分乾燥組成物が添加された後1時間、少なくとも2時間、2時間、3時間、4時間または5時間に添加される。各可能性は別個の実施形態を表す。他の実施形態では、1つ以上の糖分解酵素が発酵槽に、B.コアグランス芽胞の乾燥または部分乾燥組成物が添加される前に添加される。
【0113】
本明細書では、「B.コアグランス芽胞の乾燥組成物を発酵反応器内で混合する」、「B.コアグランス芽胞の乾燥組成物を発酵反応器に添加する」などは、乾燥粉末を発酵反応器に直接添加すること、または、粉末を再構成媒質で再構成することを包含する。本発明は特に乳酸溶液中での再構成を開示し、再構成および存在する可能性のある微生物汚染物質の抑制の両方が達成される。
【0114】
本発明による大規模乳酸発酵は典型的には、嫌気性または微好気性条件下、バッチ、流加、連続または半連続発酵を使用して実施される。個々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0115】
バッチ発酵では、炭素基質および他の成分が反応器に投入され、発酵が完了すると、生成物が収集される。pH制御のためのアルカリ化合物を除き、他の材料成分は反応に、それが完了する前には添加されない。発酵は実質的に一定の温度およびpHで維持され、この場合pHはアルカリ化合物を添加することにより維持される。
【0116】
流加発酵では、基質は連続して、または、順次、反応器に送られ、発酵ブロスは除去されない(すなわち、生成物(複数可)は稼働終了まで反応器内に残っている)。一般的な供給方法としては、断続的、一定、パルス供給および指数関数的供給が挙げられる。
【0117】
連続発酵では、基質が反応器に連続して固定された速度で添加され、発酵生成物は連続して取り出される。
【0118】
半連続プロセスでは、培養物の一部が間隔を置いて引き出され、新鮮培地がシステムに添加される。無期限に維持することができる反復流加培養は、別名、半連続プロセスである。
【0119】
酸性生成物、例えば有機酸などを生産する発酵は典型的には、アルカリ化合物、例えば、金属酸化物、炭酸塩または水酸化物の存在下で実施される。アルカリ化合物が、発酵ブロスのpHを、所望の値、典型的には4-7の範囲(特定の範囲内の各値が含まれる)に調整するために添加される。アルカリ化合物はさらに、L-乳酸の乳酸塩への中和を引き起こす。発酵中、発酵槽内のpHは乳酸の生産のために減少し、これは、バチルス・コアグランスの生産性に悪影響を及ぼす。塩基、例えばマグネシウム-水酸化物/酸化物、ナトリウム-水酸化物、カリウム-水酸化物、またはカルシウム-水酸化物の添加により、乳酸を中和することによりpHが調整され、これにより、乳酸塩が形成される。
【0120】
いくつかの特定の実施形態では、本発明は有機廃棄物をリサイクルし、乳酸マグネシウムを生成させる。いくつかの実施形態では、そのようなプロセスは、発酵中のpHを調整するために、水酸化マグネシウムをアルカリ化合物として利用する。発酵により乳酸モノマーおよびMg2+イオンが得られ、それらは、乳酸マグネシウムとして回収することができる。
【0121】
乳酸発酵は、典型的には、約1-4日またはその間の任意の量、例えば、1-2日、または2-4日、または3-4日(特定の範囲内の各値が含まれる)の間実施される。
【0122】
発酵が完了した後、ブロスは遠心分離により清澄化することができ、または、フィルタープレスに通過させ、固体残渣を発酵液から分離することができる。濾液は、例えば、真空ロータリーエバポレーターを使用して濃縮することができる。
【0123】
本発明による発酵ブロスは有機廃棄物由来のD-乳酸を含み得る。D-LAは、重合のためのL-LAの生産では望ましくなく、というのも、より多くのD,D-ラクチドおよびメソ-ラクチドの形成という結果になるからであり、それは、PLLA最終産物の品質に悪影響を与えてしまう。いくつかの実施形態では、本発明の方法およびシステムは便宜的に、乳酸生産前に有機廃棄物に対して、または、発酵中および/または後に発酵ブロスに対して、D-乳酸分解酵素またはD-乳酸利用微生物を採用することによりD-乳酸を排除する。各可能性は別個の実施形態を表す。
【0124】
D-乳酸オキシダーゼをD-乳酸分解酵素として使用することが現在のところ好ましい。D-乳酸オキシダーゼは、電子受容体としてOを使用する、D-乳酸のピルビン酸およびHへの酸化を触媒する酵素である。酵素はフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)をその触媒活性のための補助因子として使用する。本発明によるD-乳酸オキシダーゼは典型的には可溶性D-乳酸オキシダーゼである(膜結合型ではない)。便宜的に、酵素は有機廃棄物中、およびまた、発酵ブロス中で直接働き、D-乳酸が排除される。いくつかの実施形態では、D-乳酸オキシダーゼはグルコノバクター種由来である。いくつかの実施形態では、D-乳酸オキシダーゼはグルコノバクター・オキシダンス由来である(例えば、GenBank 受入番号:AAW61807を参照されたい)。D-乳酸オキシダーゼを使用する、有機廃棄物に由来する発酵ブロスからのD-乳酸の排除は、本発明の出願人に譲渡されたWO2020/208635号において記載される。
【0125】
本発明の範囲内の好適なD-乳酸利用微生物としては、3つ全てのL-乳酸デヒドロゲナーゼを欠く大腸菌が挙げられるが、それに限定されない。
【0126】
本明細書では、「排除」は、D-乳酸/D-乳酸塩を参照する場合、L-乳酸を生産する下流プロセス、および、その後の、産業用途に好適なポリ(L-乳酸)への重合を妨害しないような残存量の低減を示す。「残存量」は発酵終了時での発酵ブロスの処理済み混合物中の総乳酸塩(L+D)の、1%未満(w/w)のD-乳酸塩、さらにいっそう好ましくは0.5%未満(w/w)のD-乳酸塩を示す。いくつかの特定の実施形態では、D-乳酸塩の排除は発酵終了時での発酵ブロス中の総乳酸塩からの0.5%未満(w/w)のD-乳酸への低減である。
【0127】
さらなる態様および実施形態によれば、L-乳酸モノマーがさらに精製される。L-乳酸モノマーは、L-乳酸塩として精製され得る。あるいは、粗L-乳酸を得るために、例えば、硫酸を用いた再酸性化ステップが実施され得、続いて精製ステップが実施され、精製L-乳酸が得られる。
【0128】
精製プロセスは、蒸留、抽出、電気透析、吸着、イオン交換、結晶化、およびこれらの方法の組み合わせを含んでもよい。いくつかの方法が、例えば、下記においてレビューされる:Ghaffar et al. (2014) Journal of Radiation Research and Applied Sciences, 7(2): 222-229);およびLopez-Garzon et al. (2014) Biotechnol Adv., 32(5):873-904)。あるいは、単一ステップでの乳酸の回収およびラクチドへの変換が使用され得る(Dusselier et al. (2015) Science, 349(6243):78-80)。
【0129】
本発明のいくつかの特定の実施形態では、発酵中のpH調整のために使用されるアルカリ化合物は水酸化マグネシウム(Mg(OH))であり、乳酸モノマーおよびMg2+を含む発酵ブロスが得られ、それらは乳酸マグネシウムとして回収することができる。結晶化により乳酸マグネシウムを精製するための特定の下流精製プロセスが、本発明の出願人に譲渡されたWO2020/110108号において記載される。精製プロセスは、適用可能であればD-乳酸モノマーを排除する処理後に、発酵ブロスに適用できる。
【0130】
糖分解酵素
「糖分解酵素」は本明細書では加水分解酵素(またはその酵素的に活性な部分)を示し、糖、例えば、ビサッカライド(二糖)、オリゴ糖、多糖および複合糖質の分解を触媒する。糖分解酵素は、グリコシドヒドロラーゼ、ポリサッカライドリアーゼおよび炭水化物エステラーゼからなる群より選択され得る。個々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。本発明と共に使用するための糖分解酵素は、有機廃棄物、例えば食品廃棄物および植物材料中で見出される糖(例えば多糖)に対して活性であるものから選択される。いくつかの実施形態では、糖分解酵素は修飾酵素(すなわち、修飾され、それらの対応する野生型酵素とは異なる酵素)であってもよい。いくつかの実施形態では、修飾は、酵素の活性の改善という結果になる1つ以上の突然変異を含み得る。いくつかの実施形態では、糖分解酵素は野生型(WT)酵素である。
【0131】
広範な糖分解酵素群は、標準分類システムに従い、酵素クラスに、さらに酵素ファミリーに分割される(Cantarel et al. 2009 Nucleic Acids Res 37: D233-238)。そのような酵素の参考になる、最新分類はCarbohydrate-Active Enzymes(CAZy)サーバー(www.cazy.org)上で入手可能である。
【0132】
いくつかの実施形態では、本発明で使用される糖分解酵素は多糖-分解酵素である。いくつかの実施形態では、多糖-分解酵素は、デンプンおよび非デンプン植物多糖から選択される多糖を分解する酵素である。
【0133】
いくつかの実施形態では、多糖-分解酵素はグリコシドヒドロラーゼである。
【0134】
いくつかの実施形態では、多糖-分解酵素は、アミラーゼ、セルラーゼおよびヘミセルラーゼから選択される。個々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0135】
セルラーゼは下記から選択することができるが、それらに限定されない:エンド-(l,4)--D-グルカナーゼ、εχο-(1,4)-β-v-グルカナーゼ、β-グルコシダーゼ、カルボキシメチルセルラーゼ(CMCase);エンドグルカナーゼ;セロビオヒドロラーゼ;アビセラーゼ、セルデキストリナーゼ(celludextrinase)、セルラーゼA、セルロシンAP、アルカリセルラーゼ、およびパンセラーゼSS。各可能性は別々の実施形態である。
【0136】
ヘミセルラーゼはキシラナーゼであってもよい。追加のヘミセルラーゼの非限定的な例としては、下記が挙げられる:アラビノフラノシダーゼ、アセチルエステラーゼ、マンナナーゼ、a-D-グルクロニダーゼ、β-キシロシダーゼ、β-マンノシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アセチル-マンナンエステラーゼ、a-ガラクトシダーゼ、-a-Lアラビナナーゼ、およびβ-ガラクトシダーゼ。個々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0137】
アミラーゼは下記から選択することができるが、それらに限定されない:グルコアミラーゼ、a-アミラーゼ;(1,4-a-D-グルカングルカノヒドロラーゼ;グリコゲナーゼ)β-アミラーゼ;(1,4-a-D-グルカンマルトヒドロラーゼ;グリコゲナーゼ;サッカロゲン(saccharogen)アミラーゼ)γ-アミラーゼ;(グルカン1,4-a-グルコシダーゼ;アミログルコシダーゼ;エキソ-l,4-a-グルコシダーゼ;リソソームa-グルコシダーゼおよび1,4-a-D-グルカングルコヒドロラーゼ。各可能性は別々の実施形態である。
【0138】
いくつかの実施形態では、本発明で使用される糖分解酵素は二糖-分解酵素である。いくつかの実施形態では、二糖-分解酵素はラクターゼおよびインベルターゼから選択される。個々の可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0139】
本発明による糖分解酵素は細菌源に由来してもよい。いくつかの実施形態では、細菌源は、好熱性細菌である。「好熱性細菌」という用語は本明細書では、約45℃より高い、好ましくは50℃より高い温度で繁栄する細菌を示す。典型的には、本発明による好熱性細菌は約45℃~約75℃、好ましくは約50-70℃の最適増殖温度を有する。糖分解酵素のための好熱性細菌源の非限定的な例としては下記が挙げられる:セルラーゼおよびヘミセルラーゼ-クロストリジウム種(例えばクロストリジウム・サーモセラム)、パエニバチルス種、サーモビフィダ・フスカ;アミラーゼ-バチルス種(例えばバチルス・ステアロサーモフィルス)、ゲオバチルス種(例えばゲオバチルス・サーモレオボランス)、クロモハロバクター種、ロドサーマス・マリナス。各可能性は別々の実施形態である。
【0140】
追加の実施形態では、糖分解酵素の細菌源は、中温菌である。「中温菌」という用語は本明細書では、約20℃~45℃の温度で繁栄する細菌を示す。糖分解酵素のための中温菌源の非限定的な例としては下記が挙げられる:セルラーゼおよびヘミセルラーゼ-クレブシエラ種(例えばクレブシエラ・ニューモニア)、コーネル(Cohnel)種、ストレプトマイセス種、アセチビブリオ・セルロリティクス、ルミノコッカス・アルバス;アミラーゼ-バチルス種(例えば、バチルス・アミロリケファシエンス、枯草菌、バチルス・リケニフォルミス)、ラクトバチルス・フェルメンタム。当業者は、いくつかの中温菌(例えば、いくつかのバチルス種)は熱安定性酵素を生成することを理解する。
【0141】
本発明による糖分解酵素はまた、真菌源由来とすることができる。糖分解酵素のための真菌源の非限定的な例としては下記が挙げられる:セルラーゼおよびヘミセルラーゼ-トリコデルマ・リーセイ、ヒュミコラ・インソレンス、フサリウム・オキシスポルム;アミラーゼ(例えば、グルコアミラーゼ)-クロコウジカビ、アスペルギルス・オリゼー、ペニシリウム・フェルタナム(Penicillium fellutanum)、サーモマイセス・ラヌギノス(Thermomyces lanuginosu)。
【0142】
本発明にしたがい使用するための糖分解酵素のための追加の起源は、例えば、上記CAZyサーバーで見出すことができる。
【0143】
下記実施例は発明のある一定の実施形態をより詳しく説明するために提示される。しかしながら、それらは決して、発明の広範な範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者は、発明の範囲から逸脱せずに、本明細書で開示される原理の多くの変更および改変を容易に考え出すことができる。
【0144】
実施例
実施例1
乳酸溶液中での乾燥芽胞組成物の再構成
B.コアグランス芽胞の乾燥組成物を3%乳酸、3.47%乳酸マグネシウム、pH3.5±0.2の水溶液に懸濁させた。比較のために、B.コアグランス芽胞の乾燥組成物を水に懸濁させた。両方の懸濁液を室温で撹拌しながら45分間インキュベートし、その後、YPD寒天プレート上に蒔き、14時間、52℃で増殖させた。総細菌カウント(CFU)および芽胞カウント(sCFU)をインキュベーション後に実施した。結果が表1にまとめて示される。
【表1】
【0145】
結果により、B.コアグランス芽胞は乳酸溶液中でのインキュベーションを生き残り、そのような処理後うまく発芽したことが示された。水と乳酸溶液の間で芽胞から発芽した細菌細胞の数に実質的な差は観察されなかった。
【0146】
実施例2
乳酸溶液中での乾燥芽胞組成物の再構成および滅菌または非滅菌有機廃棄物への播種
B.コアグランス芽胞の乾燥組成物を以上で記載される通り、3%乳酸、3.47%乳酸マグネシウム、pH3.5±0.2の水溶液に懸濁させた。懸濁後、芽胞を滅菌に供された食品廃棄物、または、非滅菌食品廃棄物に播種し、14時間、52℃で増殖させた。表2は各培地中の細菌細胞数を示す。表で見てわかるように、滅菌および非滅菌食品廃棄物中で芽胞から発芽した細菌細胞の数に実質的な差は観察されなかった。加えて、乳酸の生産が両方の場合において観察された。
【表2】
【0147】
実施例3
様々な条件下でB.コアグランスの芽胞を発芽させることによる培地の酸性化
A.10^4-10^8芽胞/mlを50ml Falcon(登録商標)チューブ中の10mlの食品廃棄物に接種した。廃棄物のpHを接種前にpH-7に調整した。チューブを室温で維持し、または、37℃および52℃でインキュベートした。pHを17時間後に測定し、4.5~5.5であることを見出した。
【0148】
B.10^4-10^8芽胞/mlを10g/lの大豆ペプトン、5g/lの酵母エキスおよび10g/lのグルコースからなる10mlの滅菌培地に接種した。培地pHを6.4-6.9とした。Falcon(登録商標)チューブを室温で維持し、または、37℃および52℃でインキュベートした。pHを10時間後に測定し、4.5~5.5であることを見出した。
【0149】
特定の実施形態の前記記述は発明の一般的性質を十分に明らかにするので、他のものは、現在の知識を適用することにより、そのような特定の実施形態の様々な適用に対して、必要以上の実験をせずに、かつ、上位概念から逸脱せずに、容易に改変および/または適合させることができ、そのため、そのような適合および改変は、開示された実施形態の等価物の意味および範囲内に包含されるはずであり、そう意図される。本明細書で採用される表現または専門用語は、説明目的のためのものであり、制限するものではないことが理解されるべきである。様々な開示された機能を実施するための手段、材料、およびステップは、発明から逸脱せずに、様々な代替形態をとることができる。
図1
【国際調査報告】