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特表2024-536070眼内レーザー治療のための眼科システムの焦点を再調整するための方法およびアセンブリ
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  • 特表-眼内レーザー治療のための眼科システムの焦点を再調整するための方法およびアセンブリ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】眼内レーザー治療のための眼科システムの焦点を再調整するための方法およびアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/008 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61F9/008 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518533
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2022076402
(87)【国際公開番号】W WO2023046847
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】102021210661.7
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502303382
【氏名又は名称】カール ツアイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】バブリッツ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ハッカー、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ディック、マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】グラツケ、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】メルケル、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】クロップフライシュ、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヘーゼ、ユルゲン
(57)【要約】
本発明は、眼科レーザー治療システムの焦点を再調整するための解決策に関し、眼科レーザー治療システムは、治療レーザーユニット、イメージングユニット、および焦点合わせおよびビーム重ね合わせのための光学系に加えて、OCDRシステムおよび制御ユニットも有する。本発明によれば、レーザー治療システムのターゲットレーザービームがターゲット構造ZS上に焦点を合わせられたことが検出されるまでレーザー治療システムと眼との間の距離Aを変化させることによって、レーザー治療システムのターゲットレーザービームが、治療される眼における少なくとも1つのターゲット構造ZS上に焦点を合わせられる。OCDR信号プロファイルにおけるレーザー治療システムのレーザービームの採用されるべき各焦点位置PFは、基準面REに対する、選択された基準構造PRSの位置の距離A、およびOCDR信号プロファイルにおけるターゲット構造PZSの位置に基づいて、レーザー治療システムと眼との間の距離の変化ΔAの任意の数の選択された値に対して、パラメータAおよびPZSを使用して、近似的に推定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療レーザーユニット、イメージングユニット、並びに焦点合わせおよびビーム重ね合わせのための光学系に加えて、OCDRシステムおよび制御ユニットを備えた、眼内レーザー治療のための眼科システムの焦点を再調整するための方法であって、レーザー治療システムのターゲットレーザービームのターゲット構造ZSへの焦点合わせが検出されるまで、眼からの前記レーザー治療システムの距離Aを変化させることによって、前記レーザー治療システムの前記ターゲットレーザービームが、治療される眼の少なくとも1つのターゲット構造ZSに焦点を合わせられ、基準面REに対する、選択された基準構造PRSの位置からの距離A、およびOCDR信号プロファイルにおける前記ターゲット構造PZSの位置がそれぞれ決定され、前記OCDR信号プロファイルにおける前記レーザー治療システムの前記レーザービームのそれぞれの推定可能な焦点位置PFが、眼からの前記レーザー治療システムの距離の変化ΔAの任意の選択可能な値に対して、パラメータAおよびPZSを用いて近似的に推定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
決定された値AおよびPZSは、眼からの前記レーザー治療システムの距離の変化ΔAの任意の選択可能な値に対して、前記OCDR信号プロファイルにおける前記レーザー治療システムの前記レーザービームのそれぞれの推定可能な焦点位置PFを近似的に計算する関数
【数1】

を決定するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ターゲットレーザービームが、ZSとは別に、N-1個のさらなるターゲット構造ZS,・・・,ZSに追加的に焦点を合わせられ、この目的のために、OCDR信号プロファイルにおいて、ターゲット構造のそれぞれの位置PZS,・・・,PZSと、第1のターゲット構造ZSに焦点を合わせたときの初期位置PRS=Aに対する基準構造の位置のそれぞれの変化ΔA,・・・,ΔAとが決定され、次いで、パラメータA,ΔA・・・ΔA,PZS・・・PZSを使用して、眼からの前記レーザー治療システムの距離の変化ΔAの任意の選択可能な値に対して、前記OCDR信号プロファイルにおける前記レーザー治療システムの前記レーザービームのそれぞれの推定可能な焦点位置PFを近似的に計算する関数
【数2】

が決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ターゲットレーザービームとして、光切断を引き起こすことができない低減されたパルスエネルギーを有する、前記レーザー治療システムの治療レーザービームが使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ターゲットレーザービームとして、眼における恒久的な組織変化を可能にしないパラメータを有する追加のレーザービームが使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ターゲット構造への焦点合わせの検出は、1)ターゲット構造からのターゲットレーザーの後方散乱の最大化、2)ターゲット構造上のターゲットレーザービーム光分布の直径の最小化、3)ターゲット構造のOCDR信号における特性状態または特性変化のうちの1つまたは複数を、視覚的または自動的に検出することによって実施されることを特徴とする、請求項1、2、3、4または5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記レーザー治療システムの治療レーザーの焦点の位置で交差する複数のターゲットレーザーが使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ターゲット構造に焦点を合わせるために、前記レーザー治療システムのレーザービームではなく、複数のターゲットレーザーの交差する点が、治療される眼のターゲット構造ZS上に配置されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ターゲット構造ZSへの複数のターゲットレーザーの焦点合わせが、オペレータまたはカメラシステムによってターゲットレーザーのビーム位置の間隔を最小化することによって行われることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ターゲット構造ZSへの複数のターゲットレーザーの焦点合わせが、周期的に動くターゲットレーザービームの空間的変動を最小化することによって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ターゲット構造ZSへの少なくとも1つのターゲットレーザーの焦点合わせが、共焦点検出を介して少なくとも1つのターゲットビームレーザー焦点からの後方散乱を最大化することによって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザー治療システムの前記レーザービームと同じまたは類似する焦点位置を有する連続波レーザービームがターゲットレーザーとして使用されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
レンズの後側、水晶体嚢の後側、網膜表面、または眼の他の構造が前記ターゲット構造ZSとして機能することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ターゲット構造ZSは、前記レーザー治療システム自体のレーザービームによって生成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ターゲット構造ZSは、前記レーザー治療システムのレーザービームのパルスまたは変調によって眼に生成され、前記ターゲット構造は、OCDRにおける信号変化、またはOCDR信号の後方散乱の変化または位相もしくはスペックルグレインの変化を引き起こす、硝子体液または任意の他の眼の構造の変化であることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項16】
前記レーザー治療システムのレーザービームによって生成されるターゲット構造ZSは、一時的であるかまたは変更可能であり、例えば、少なくとも1つのレーザーショットによって生成される気泡、または温度変化の結果として一時的に変化したOCDRのスペックル構造であることを特徴とする、請求項1または15に記載の方法。
【請求項17】
前記レーザー治療システムのレーザービームのレーザーショットによって生成されたターゲット構造ZSが、焦点位置を決定するためだけでなく、レーザー出力を調整するためにも用いられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
存在するコンタクトグラスKGの前側または後側、コンタクトグラス内に位置する技術的構造、あるいは角膜、レンズ、または水晶体嚢の前側または後側、あるいは網膜表面のような眼の構造が前記基準構造RSとして機能することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
基準構造RSとしてコンタクトグラスKG内に実現される技術的構造は、信号の特定のレベル、プラトー、曲線、位置、距離、もしくは複数のピーク、または特徴的な偏光依存性を有する特徴的な信号をOCDRに生成するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
コンタクトグラスKG内に実現される基準構造RSは、例えば散乱または偏光の変化によって変更可能であり、特に切り替え可能または変調可能であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
コンタクトグラスKG内に実現される基準構造RSは、好ましくは不可視スペクトル帯域で作用し、例えば誘電体反射層システムによって実現されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
誘電体反射層システムは、ターゲットレーザービームが400nm~1050nmの波長で反射され、レーザー治療システムの治療レーザービームが1050nmよりも大きい波長で主に透過されるように作用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
ターゲット構造および基準構造の位置の識別が、例えば、OCDR信号プロファイルにおけるOCDR信号の最大値または重心値または閾値を決定することによって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記焦点位置PFを決定するための関数
【数3】

が、1次からN次までの多項式であるか、またはN自由度を有する異なる非線形関数がこの目的のために使用されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項25】
前記焦点位置PFを決定するための関数
【数4】

が、Nより高次の多項式または非線形関数であり、関数fを決定するために、他で決定されたコンタクトグラスの追加のパラメータ、例えば、曲率半径、厚さ、または屈折率が使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記焦点位置PFを決定するための関数
【数5】

が、Nより高次の多項式または非線形関数であり、関数fを決定するために、他で決定された眼の追加のパラメータ、例えば、角膜またはレンズの屈折率、厚さ、または半径が使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記レーザー治療システムのレーザービームと共に、利用可能なイメージングシステムが、前記ターゲット構造ZSに焦点を合わせられ、そのためにオートフォーカスシステムが使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
イメージングシステムのNAと前記レーザー治療システムの前記レーザービームのNAとは、2倍未満だけ異なることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記OCDRシステムのNAと前記レーザー治療システムの前記レーザービームのNAとは、2倍未満だけ異なることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記OCDRシステムの波長と前記レーザー治療システムの前記レーザービームの波長との互いからのずれが、10%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
イメージングシステムまたは前記OCDRシステムおよび前記レーザー治療システムの前記レーザービームは、異なる波長を補償するために特定の集光差を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記レーザービームの推定可能な焦点位置PFの近似的な決定のずれは、レーザー焦点の2レイリー長未満、特に1レイリー長未満、または特に好ましくはレイリー長の0.5未満であることを特徴とする、請求項1または3に記載の方法。
【請求項33】
ターゲット構造ZS,・・・,ZSは、各々、前側および後側の硝子体液領域内に少なくとも1つの構造を含み、好ましくは、角膜の前側または後側および網膜表面が選択されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項34】
レーザービトレオライシスの治療のための所望の除外ゾーンに位置するターゲット構造ZSも選択され、特に、レンズ体の後側および網膜表面が選択されることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
レーザービトレオライシスのために前記治療システムのレーザービームによって生成される前記ターゲット構造ZSは、加工される構造の近傍に生成されることを特徴とする、請求項16および34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
作業深さに応じて十分に大きな瞳孔直径を確保するように構成されたイメージングシステムが使用されることを特徴とする、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前側領域におけるレーザービトレオライシス処置のために4mmを超える瞳孔直径、中央領域におけるレーザービトレオライシス処置のために5mmを超える瞳孔直径、および後側領域におけるレーザービトレオライシス処置のために6mmを超える瞳孔直径を可能にすることを特徴とする、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
焦点の再調整によって推定された焦点位置が、治療レーザーの作動前の眼の構造に関連して示されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
それぞれの距離ΔAに対して推定された軸方向の焦点位置PFは、マルチセグメント治療レーザー焦点の焦点位置であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
眼内レーザー治療のための眼科システムの焦点を再調整するための装置であって、治療レーザーユニットと、イメージングユニットと、焦点合わせおよびビーム重ね合わせのための光学系と、OCDRシステムと、制御ユニットとを備え、レーザー治療システムは、眼までの距離Aを変化させることが可能であり、ターゲットレーザービームが、治療される眼の少なくとも1つのターゲット構造ZSに焦点を合わせられることが可能であるように構成されており、前記制御ユニットは、基準面REに対する、選択された基準構造PRSの位置からの距離A、およびOCDR信号プロファイルにおける前記ターゲット構造PZSの位置をそれぞれ決定するように構成され、前記制御ユニットは、さらに、眼からの前記レーザー治療システムの距離の変化ΔAの任意の選択可能な値に対して、パラメータAおよびPZSを使用して、前記OCDR信号プロファイルにおける前記レーザー治療システムのレーザービームのそれぞれの推定可能な焦点位置PFを近似的に推定するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項41】
前記制御ユニットは、決定された値AおよびPZSを使用して、眼からの前記レーザー治療システムの距離の変化ΔAの任意の選択可能な値に対して、前記OCDR信号プロファイルにおける前記レーザー治療システムの前記レーザービームのそれぞれの推定可能な焦点位置PFを近似的に計算するために、関数
【数6】

を決定するように構成されていることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記レーザー治療システムは、前記ターゲットレーザービームが、ZSとは別に、N-1個のさらなるターゲット構造ZS,・・・,ZSに追加的に焦点を合わせられることが可能であるように構成されており、この目的のために、前記制御ユニットは、OCDR信号プロファイルにおいて、ターゲット構造のそれぞれの位置PZS,・・・,PZSと、第1のターゲット構造ZSに焦点を合わせたときの初期位置PRS=Aに対する基準構造の位置のそれぞれの変化ΔA,・・・,ΔAとを決定し、次いで、パラメータA,ΔA・・・ΔA,PZS・・・PZSを使用して、関数
【数7】

を決定するように構成されており、前記関数から、眼からの前記レーザー治療システムの距離の変化ΔAの任意の選択可能な値に対して、前記OCDR信号プロファイルにおける前記レーザー治療システムの前記レーザービームのそれぞれの推定可能な焦点位置PFが近似的に計算可能であることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項43】
前記レーザー治療システムは、前記ターゲットレーザービームとして、光切断を引き起こすことができない低減されたパルスエネルギーを有する、前記レーザー治療システムの治療レーザービームが使用可能であるように構成されていることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項44】
前記レーザー治療システムは、前記ターゲットレーザービームとして、眼における恒久的な組織変化を可能にしないパラメータを有する追加のレーザービームが使用可能であるように構成されていることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項45】
前記制御ユニットは、1)ターゲット構造からのターゲットレーザーの後方散乱の最大化、2)ターゲット構造上のターゲットレーザービーム光分布の直径の最小化、3)ターゲット構造のOCDR信号における特性状態または特性変化のうちの1つまたは複数を、視覚的または自動的に検出することによって、ターゲット構造への焦点合わせの検出を行うように構成されていることを特徴とする、請求項40、41、42、43または44のいずれか一項に記載の装置。
【請求項46】
前記レーザー治療システムは、前記レーザー治療システムの治療レーザーの焦点の位置で交差するとともに、治療される眼のターゲット構造ZSに焦点を合わせるように機能する複数のターゲットレーザーを含むことを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項47】
ターゲットビームレーザー位置の間隔を最小化することによって、前記ターゲット構造ZSへの複数のターゲットレーザーの焦点合わせを検出するカメラシステムが設けられていることを特徴とする、請求項46に記載の装置。
【請求項48】
周期的に動くターゲットレーザービームの空間的変動を最小化することによって、前記ターゲット構造ZSへの複数のターゲットレーザーの焦点合わせを検出するカメラシステムが設けられていることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項49】
共焦点検出を介して少なくとも1つのターゲットビームレーザー焦点からの後方散乱を最大化することによって、前記ターゲット構造ZSへの少なくとも1つのターゲットレーザーの焦点合わせを検出するカメラシステムが設けられていることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項50】
前記レーザー治療システムは、ターゲットレーザーを含み、前記ターゲットレーザーの連続波レーザービームは、前記レーザー治療システムの前記レーザービームと同じまたは類似する焦点位置を有することを特徴とする、請求項44に記載の装置。
【請求項51】
前記レーザー治療システム自体が、眼に前記ターゲット構造ZSを生成するように構成されていることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項52】
前記レーザー治療システムは、ターゲットレーザーのパルスまたは変調によって眼に前記ターゲット構造ZSを生成するように構成されており、前記ターゲット構造は、OCDRにおける信号変化、またはOCDR信号の後方散乱の変化または位相もしくはスペックルグレインの変化を引き起こす、眼における変化であることを特徴とする、請求項43または44に記載の装置。
【請求項53】
前記レーザー治療システムは、眼に一時的であるかまたは変更可能なターゲット構造ZS、例えば、少なくとも1つのレーザーショットによって生成される気泡、または温度変化の結果として一時的に変化したOCDRのスペックル構造を生成するように構成されていることを特徴とする、請求項40または52に記載の装置。
【請求項54】
前記制御ユニットは、前記レーザー治療システムのレーザービームのレーザーショットによって生成されたターゲット構造ZSを使用して、焦点位置を決定するだけでなく、レーザー出力を調整するように構成されていることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項55】
コンタクトグラスが設けられており、その前側または後側、あるいはコンタクトグラス内に位置する技術的構造が、前記基準構造RSとして機能することを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項56】
基準構造RSとしてコンタクトグラスKG内に実現される技術的構造は、信号の特定のレベル、プラトー、曲線、位置、距離、もしくは複数のピーク、または特徴的な偏光依存性を有する特徴的な信号をOCDRに生成するように構成されていることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項57】
コンタクトグラスKG内に実現される基準構造RSは、例えば散乱または偏光の変化によって変更可能であり、特に切り替え可能または変調可能であることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項58】
コンタクトグラスKG内に実現される基準構造RSは、好ましくは不可視スペクトル帯域で作用し、例えば誘電体反射層システムによって実現されることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項59】
誘電体反射層システムは、ターゲットレーザービームが400nm~1050nmの波長で反射され、レーザー治療システムの治療レーザービームが1050nmよりも大きい波長で主に透過されるように構成されていることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項60】
前記制御ユニットは、例えば、OCDR信号プロファイルにおけるOCDR信号の最大値または重心値または閾値を決定することによって、ターゲット構造および基準構造の位置を識別するように構成されていることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項61】
前記焦点位置PFを決定するための関数
【数8】

として、前記制御ユニットは、1次からN次までの多項式であるか、またはN自由度を有する異なる非線形関数を使用するように構成されていることを特徴とする、請求項42に記載の装置。
【請求項62】
前記焦点位置PFを決定するための関数
【数9】

として、前記制御ユニットは、Nより高次の多項式または非線形関数を使用し、関数fを決定するために、他で決定されたコンタクトグラスの追加のパラメータ、例えば、曲率半径、厚さ、または屈折率を使用するように構成されていることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項63】
前記焦点位置PFを決定するための関数
【数10】

として、前記制御ユニットは、Nより高次の多項式または非線形関数を使用し、関数fを決定するために、他で決定された眼の追加のパラメータ、例えば、角膜またはレンズの屈折率、厚さまたは半径を使用するように構成されていることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項64】
前記レーザー治療システムのレーザービームと共に、利用可能なイメージングシステムが、前記ターゲット構造ZSに焦点を合わせられるように構成されており、そのためにオートフォーカスシステムが使用されることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項65】
イメージングシステムのNAと前記レーザー治療システムの前記レーザービームのNAとは、2倍未満だけ異なることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項66】
前記OCDRシステムのNAと前記レーザー治療システムの前記レーザービームのNAとは、2倍未満だけ異なることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項67】
前記OCDRシステムの波長と前記レーザー治療システムの前記レーザービームの波長との互いからのずれが、10%以下であることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項68】
イメージングシステムまたは前記OCDRシステムおよび前記レーザー治療システムの前記レーザービームは、異なる波長を補償するために特定の集光差を有することを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【請求項69】
前記制御ユニットは、前記レーザービームの推定可能な焦点位置PFの近似的な決定のずれが、レーザー焦点の2レイリー長未満、特に1レイリー長未満、または特に好ましくはレイリー長の0.5未満であるように構成されていることを特徴とする、請求項40または42に記載の装置。
【請求項70】
前記レーザー治療システムは、レーザービトレオライシスのために構成されており、レーザービームによって生成される前記ターゲット構造ZSは、加工される構造の近傍に生成されることを特徴とする、請求項55および69のいずれか一項に記載の装置。
【請求項71】
作業深さに応じて十分に大きな瞳孔直径を確保するように構成されたイメージングシステムが設けられていることを特徴とする、請求項70に記載の装置。
【請求項72】
治療レーザーの作動前の眼の構造に関連して、焦点の再調整によって推定された焦点位置を示すように構成されたイメージングシステムが設けられていることを特徴とする、請求項40に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科レーザー治療システムの焦点を再調整するための方法および装置に関し、眼科レーザー治療システムは、治療レーザーユニット、イメージングユニット、および焦点合わせおよびビーム重ね合わせのための光学系に加えて、OCDRシステムおよび制御ユニットも備えている。この文脈において、OCDRは、一次元OCT、すなわち、Aスキャン(深度プロファイル)を記録することができるOCTを意味すると理解される。イメージングシステムは、カメラベースのシステムとして、または操作者の眼のための観察ユニット(「レーザースリットランプ」)として構成され得る。
【背景技術】
【0002】
公知の先行技術によれば、眼の組織、特に角膜、強膜、小柱網、網膜、水晶体(レンズ(Linse))または硝子体液の外科的、切除的、熱的または他の治療的レーザー処置のための多数の解決策が既に存在する。
【0003】
処置のタイプ、すなわち処置される組織に関係なく、眼への損傷を回避するために、レーザーの使用中に適切な規則を遵守することが特に重要である。レーザー出力および全体的なビーム照射に加えて、この状況では、治療レーザーの焦点を治療される組織とできるだけ正確に位置合わせすることが特に重要であり、なぜなら、ずれは、眼の隣接する組織への損傷をもたらす可能性があり、または、求められている治療効果が治療される組織上で得られない可能性があるからである。これを、眼の硝子体液の処置に基づいて、例としてより詳細に説明する。
【0004】
硝子体液は、通常、眼の内部にある水晶体と網膜との間の透明なゲル状物質からなる。若者では、硝子体液は大部分が透明であり、網膜と接触している。生涯を通じて、硝子体液は液化し、網膜からどんどん剥がれていき、これは、後部硝子体剥離と呼ばれる。これは、通常50歳以降に起こる正常な老化過程である。硝子体液成分は、眼の内部で連続的に崩壊することがあり、硝子体液の骨格物質および濃度が患者の目に次第に見えるようになる。それらは視野を横切って移動することもあるため、「浮遊物(Floater)」とも呼ばれる。多くの場合、硝子体混濁の原因として、硝子体液剥離後の硝子体液の後側にも膜状構造が存在し、硝子体液剥離中に網膜損傷が生じた場合には血液の残留物さえも存在することがある。稀なケースでは、代謝の問題がある場合には、硝子体の混濁は、硝子体液中に結晶状の沈殿物として存在することもある。
【0005】
たとえ硝子体混濁が通常は病理学的原因を有しないとしても、それは、影響を受けた当事者の生活の質および労働生産性をも時には非常に著しく損なう可能性があるので、一般に考えられているほど無害ではない。この混濁は、特に、明るい背景に対して、例えば、コンピュータで作業しているとき、読書しているとき、または青空もしくは雪を見ているときに知覚され、視力を妨げる。読書時の読書動作の結果として、中心視野に飛び込んだり外れたりする硝子体混濁は、特に煩わしいものである。
【0006】
これらはしばしば「飛行する蚊」のような形をしているため、フランス語に由来する「飛蚊症(Mouches-Volantes)」という専門用語を使って表現される。しかしながら、混濁は、例えば、枝状、リング状、星状などのさまざまな形状を有していてもよく、あるいは点群として存在していてもよい。以下の文章において、用語「硝子体混濁」は、そのタイプまたは形態にかかわらず、処置される硝子体混濁に対して使用される。
【0007】
一般に、硝子体混濁は、免疫系がこれを異常と認識せず、したがってそれを破壊しないので、処置なしには消失しない。しかし、影響を受ける当事者は、それを無視または見過ごすことはほとんどできない。網膜出血後の残留血液によって引き起こされるものなどの特定のタイプの硝子体混濁は、数週間または数ヶ月かかったとしても、身体によって再び部分的に吸収される。
【0008】
硝子体切除術として知られているものでは、切開器具を使用して眼を切開した後に、硝子体液が部分的に(コア硝子体切除術)または完全に粉砕され、吸引され、除去される。このような介入は、網膜剥離または網膜上膜剥離の場合に日常的に実施されるが、通常、局所的な硝子体混濁を除去するためには不釣り合いな治療法であると考えられている。さらに、硝子体切除術は侵襲的であり、診療所に入院する必要があり、外科的介入に関連するリスク、特に、白内障を頻繁に引き起こし、まれに網膜剥離、ごくまれに眼内炎を引き起こす可能性がある。
【0009】
いわゆるレーザービトレオライシスは、現在、低リスクの代替治療法として提供されている。レーザービトレオライシスは、眼を切開することなく硝子体混濁を気化または霧化することができる、温存的で、リスクが低く、痛みのないレーザー治療である。
【0010】
レーザービトレオライシスの場合、焦点領域における高いレーザー強度により、そこで光学的破壊または光破壊を得るために、短いレーザー光パルスが硝子体混濁に向けられる。硝子体混濁およびそれを取り囲む硝子体液は、レーザーエネルギーを吸収し、切開または膨張するレーザープラズマが形成され、その結果、浮遊物が蒸発および/または粉砕され、結果として溶解することができる。この治療は、痛みをほとんど引き起こさず、感染のリスクがない。レーザービトレオライシスは、重要で敏感な眼の構造、例えば、水晶体嚢、水晶体または網膜領域、特に黄斑がレーザーによって損傷されないことを保証することが可能であれば、厄介な硝子体混濁の温存治療のための安全な方法を提供する。
【0011】
特にこの目的のために、治療レーザーの焦点を処置されるべき硝子体混濁にできるだけ正確に合わせることができ、かつ水晶体嚢、視神経頭部、黄斑などの、隣接するおそらく敏感な眼構造との治療レーザーの焦点の不正確な位置合わせを回避することが重要である。また、処置されるべき硝子体混濁および温存されるべき眼構造は、概して、眼内の異なる深度に位置するため、この状況では、軸方向の治療レーザー焦点の位置合わせが特に重要である。
【0012】
しかしながら、処置の成功は、硝子体混濁のタイプに依存する。この処理は、いわゆるワイスリングの場合に特に成功する。組織束を切断し、邪魔な影の原因となる組織集中を根絶することができる。
【0013】
硝子体混濁は、既に30年以上にわたってYAGレーザー(特に、1064nmのNd:YAG)で処置されてきた(非特許文献1)。しかしながら、現在のハイエンドデバイスが使用される場合であっても、硝子体液の最も前方の領域のみが、正確かつ確実なターゲティングで処置され得る。これらのレーザーは、より深い硝子体液領域では十分に正確ではない。しかしながら、ほとんどの硝子体混濁は、後部硝子体液剥離の結果であることが多いので、そこで発見される。YAGレーザーは、緑内障疾患における虹彩切開術のために、および白内障後の処置またはいわゆるレンズ研磨のために、すなわち、細胞の過剰増殖の結果としての人工レンズインプラント上の混濁または白内障後の膜さえも除去するために、眼科においてしばしば使用される。緑色範囲(532nm)のレーザー放射を有する周波数倍増YAGレーザーは、例えば出血または網膜剥離の場合の網膜凝固にも使用される。YAGレーザーは、それほど頻繁ではないが、白内障手術における水晶体超音波乳化吸引術のためにも、すなわち、濁って硬化した天然のレンズ(水晶体)の液状化にも使用される。しかしながら、この場合、これは、2940nmの波長で水または組織の吸収率が高いEr:YAGレーザーである傾向があり、ミラーガイドを使用した内視鏡レーザーの導入によって、手間をかけながら眼に導入されなければならないことが多い。
【0014】
既知の従来技術によれば、眼の組織、特に硝子体液においてレーザー手術を実施するための多数の解決策が既に存在する。
したがって、特許文献1は、特に眼の硝子体液中の組織に対するフェムト秒レーザー手術のための装置および方法を開示している。この装置は、約10fs~1ps、特に約300fsの範囲のパルス長、約5nJ~5μJ、特に約1~2μJの範囲のパルスエネルギー、および約10kHz~10MHz、特に500kHzのパルス繰り返しレートの超短パルスレーザーで構成されている。レーザーシステムは、三次元における焦点の空間的変化を可能にする走査システムに結合されている。さらに、横方向の焦点変位(x,y)のためのスキャナミラーを、処置されるべき眼の瞳孔の直近に結像する、光学系によるビーム誘導が提供される。軸(z)方向における焦点位置のシフトを実現するために、プロセス中にビームの広がりを変化させることができる。この治療用レーザースキャナ光学系に加えて、装置は、さらに、それに結合されたナビゲーションシステムを備える。
【0015】
特許文献2は、様々な深さで眼の組織に切開部を形成するためのシステムおよび方法を記載している。このシステムおよび方法は、眼の組織内の異なる深さに位置する異なる焦点に、場合によってはあるパターンで、光を集束させる。セグメント化されたレンズによって、複数の焦点を同時に生成することができる。最適な切開は、光が連続的または同時に異なる深さに集束され、延長されたプラズマ柱とウエストが長くなったビームが生成されることによって得られる。この場合に記載される技術は、とりわけ、新規な眼科的方法を実施するために、または、後極の組織、例えば硝子体混濁、膜および網膜の切開を含む、既存の方法を改善するためにも使用され得る。この文献には、より高い精度でレーザーの焦点を合わせることができるように、OCTまたは超音波などのイメージング方法を使用して、水晶体および水晶体嚢の位置および厚さを決定することができることが記載されている。レーザー集束は、ターゲットレーザーの直接観察によって実施することができ(これは知られている)、また、レーザー集束は、代替的に、OCTまたは超音波および他の医用イメージングモダリティの直接観察によっても可能であることも言及されている。ターゲットレーザーは、OCTまたは超音波出力において直接観察することはできないので、また、例えばレーザーとOCTとの間に固定された位置関係は存在しないため、これは、少なくとも正確には疑わしい。したがって、レーザー焦点位置がOCTまたは超音波または任意の他の医用イメージング方法によってどのように決定されることが意図されるかについての説明は、正確には提供されていない。しかしながら、OCTの基礎となるOCDRについて、本発明で説明される方法によって対処されるのはまさにこの問題である。
【0016】
特許文献3は、レーザービームを生成するためのレーザーユニットと、ターゲット組織の画像を生成するための検出器とを備える、眼の硝子体液中のターゲット組織を治療するためのシステムおよび方法を記載している。このシステムは、ターゲット組織を乳化するための焦点経路を画定するコンピュータも備えている。次いで、コンピュータに接続されたコンパレータが、レーザービームの焦点を移動させるためにレーザーユニットを制御する。この焦点移動は、画定された焦点経路からの焦点のずれを最小限に抑えながら、ターゲット組織を治療するために行われる。本明細書に記載される方法に必要とされる精度を達成するために、処置は、コンピュータ制御されたレーザーを使用して行われ、制御基準は、好ましくは、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)などの技術を使用して、イメージング検出器によって提供される。OCTに対するフェムト秒レーザーの焦点の位置がどのように決定されるかについては、ここでは説明されていない。
【0017】
特許文献4は、同様に、眼の硝子体液の部分的硝子体切除を実行するための、コンピュータ制御されたレーザーシステムを使用するためのシステムおよび方法に関する。操作上、硝子体液を通る光チャネルが最初に画定される。次いで、光チャネル内の硝子体様沈着物および懸濁沈着物(硝子体混濁)が、切除され、場合によっては、光チャネルから除去される(例えば、吸引される)。いくつかの場合には、切除された材料を置換するために透明な液体が光チャネルの中に導入され、それによって光チャネル内に妨げられない透明性を確立することができる。概して、この発明は、眼科レーザー手術のためのシステムおよび方法に関する。特に、この発明は、パルスレーザービームを使用して、硝子体混濁として知られるものを除去するためのシステムおよび方法に関する。この解決策でも、必要な精度を得るために、眼の解剖学的特徴の三次元画像を作成することができるイメージングユニットが使用される。この目的のために、既知の技術に基づく機器、例えば、シャインプルーフ機器、共焦点イメージング機器、超音波機器、または光コヒーレンストモグラフィ(OCT)に基づく他のイメージングシステムが提案される。しかしながら、ここでもまた、レーザー焦点の位置がOCTに対してどのように決定されるかが、この文献では説明されていない。
【0018】
特許文献5は、同様に、眼における眼科的介入のための方法およびシステムを記載している。望ましくない特徴は、眼の少なくとも一部の画像に基づいて識別される。この目的のために、瞳孔に向けられたカメラによって記録された画像の使用、または、OCTによって記録された眼の体積を示す画像の使用が提案されている。硝子体液腔における望ましくない特徴は、視力を損なう硝子体混濁、例えば硝子体混濁の例であると考えられる。硝子体混濁が画像処理システムによって識別および位置特定された後、医師による確認に続いてレーザーパルスで自動的に「照射」される。レーザーエネルギーは、硝子体様不透明物の少なくとも一部を蒸発させる。この処置は、硝子体混濁が除去されるまで繰り返される。硝子体液が十分に透明であると判断されるまで、硝子体液の混濁が起こるたびにこの処置全体が繰り返される。この文献は、レーザーを用いた「自動ターゲティング」に言及しているが、これをどのように実施するか、特にOCT画像を用いてこれをどのように実施すべきかについては言及していない。
【0019】
特許文献6は、複雑な調整を使用して、治療レーザーの焦点を、作業される組織構造と十分に位置合わせするのではなく、最初に治療レーザーを使用して、作業ゾーンの近傍に微小切開を実施し、当該微小切開の位置を検出し、求められている位置と実際の位置との間の起こり得るずれを修正することを提案している。しかしながら、この「試行錯誤」アプローチは、眼に不必要に負担を与え(不必要な組織損傷および治療レーザー光への曝露)、普遍的に実行できるものではない。例えば、眼が部分的にまたは完全に流体で満たされ、それにもかかわらず流体中に浮遊する混濁が治療レーザーによって霧化されるべきである場合、処置ゾーンの近傍に安定した微小切開を作成することは不可能である。
【0020】
ELLEX社によって記載された方法(Ellex Medical Pty Ltd.による製品パンフレット;「Tango Reflex-Laser Floater Treatment」;PB0025B;2018;(http://www.ellex.com))は、硝子体混濁を分解するために、またはガスへの移行によって硝子体混濁を完全に除去するために、パルスナノ秒レーザー(YAG)の使用を提供する。パイロットレーザービーム(すなわち、可視スペクトル範囲内のターゲットレーザー、例えば、赤色)が、ターゲット領域(硝子体混濁)を照準するために使用され、次いで、1つまたは複数の治療用レーザーパルスを使用して「照射」される。この場合、パイロットレーザービームおよび治療レーザーパルスの両方は、ユーザによって手動でトリガされる。そのような手動レーザー治療は、典型的には、2回の個別の治療から成り、各々、20~60分の期間である。
【0021】
特許文献7および特許文献8は、治療レーザーとOCTまたはOCDRシステムとの組み合わせに基づいて、硝子体混濁(「浮遊物(Floatern)」)の安全かつ正確な霧化を可能にする、硝子体混濁のレーザービトレオライシスのためのシステムを記載している。ここで、OCDR(光学的コヒーレンス領域反射測定法(Optical Coherence Domain-Reflectometry))システムは、一次元散乱プロファイルの干渉取得のためのシステムを意味すると理解され、OCT(光干渉断層撮影(Optical Coherence Tomography))は、二次元または三次元イメージングを意味すると理解される。両方の場合において、記録シーケンス(すなわち、フィルム)を有する変形も含まれるべきである。このプロセスでは、敏感な眼の構造までの最小距離が確保され、レーザーの起動は、好ましくは、治療レーザーの焦点と処置されるべき硝子体混濁とが互いに対して十分な精度で位置決めされる場合にのみ許可される。
【0022】
これらの2つのアプローチの欠点は、医師が、利用可能なよく知られた眼の二次元ビューを、OCTまたはOCDRシステムの三次元記録と、それらの空間的な想像を使用して絶えず組み合わせなければならないことであり、これは、患者とのタイムクリティカルなまたは迅速な対話の状況では極めて困難である。この欠点は、未公開の独国特許出願第102020212084.6号明細書に記載されている解決策によって是正される。
【0023】
レーザービトレオライシスの範囲内でのレーザーエネルギーの使用は、非侵襲的であり、眼を切開する外科的介入の欠点を回避するが、欠点およびリスクにも関連する。
例えば、レーザーの照準を合わせるのが難しい場合がある。医師は、ビーム経路に沿って硝子体液を観察するので、網膜の位置の深さ、硝子体液の混濁の深さ、または他の関連する特徴を決定することが困難である場合がある。その結果、硝子体液の混濁が見逃され、および/または眼が損傷を受ける危険性がある。
【0024】
特に、その位置を変化させ、認識するのが困難であり、また、位相物体として、網膜上に煩わしい影を生成することが可能な、ほぼ透明な硝子体混濁の治療は、困難であることが分かった。
【0025】
レーザーエネルギーの印加は、硝子体液の混濁のさらなる移動ももたらすことがあり、処置をさらにより困難にする。したがって、医師は、レーザーエネルギーの各印加後にレーザーを再調整する必要があり得る。これは、多くの時間を必要とすることがある。したがって、レーザーによる治療は複雑であり、患者にとっても医師にとってもストレスを引き起こす。
【0026】
さらなる可能性のある問題は、不完全な硝子体液剥離に関し、これは、網膜剥離に至るまでの局所的な硝子体牽引をもたらし得る。硝子体液におけるレーザー治療は、当該治療の結果として伝播する衝撃波に起因して、硝子体における力のバランスの変化をもたらし、それによって、例えば、網膜に張力を生じさせる可能性がある。
【0027】
最後に、眼の敏感な構造の近傍に位置する硝子体混濁の処置も、特に困難であることが見出された。機械的および熱的負荷だけでなく、レーザー放射自体も、網膜、水晶体または黄斑に損傷をもたらす可能性があり、その強度および/またはエネルギーに関して適切に制限されなければならない。
【0028】
しかしながら、上述の問題に関して、眼の構造に対する治療レーザー焦点のそれぞれの現在位置に関する最も正確な知識を利用可能にすることが非常に重要である。白内障後の処置または網膜凝固のために、この点に関する従来の選択は、通常、オペレータがターゲットレーザー放射からの後方散乱を観察することによって、処置されるべきそれぞれの組織構造と位置合わせされたターゲットレーザーを使用することであった。しかしながら、これは、処理されるべき構造が、例えば、OCTまたはOCDRのような非常に感度の高いシステムでしか実際に検出することができないような、非常に弱い散乱の物体である場合には、事実上不可能である。例えば、従来のOCTシステムおよびOCDRシステムは、85dB、90dB、100dBまたは110dBを超える感度を有する場合があり、正常な硝子体液後方散乱の検出、すなわち硝子体混濁の検知も、約90dBを超えて可能になる。
【0029】
しかしながら、ターゲットレーザーではなくOCTベースのシステムが使用される場合、治療レーザー焦点位置をOCTまたはOCDRスキャンにおける位置に十分に正確に割り当てるという複雑な問題がある。これは、軸方向の治療レーザーの焦点位置が、変化する屈折力(例えば、表面曲率)の結果として、ビーム経路内ですでに著しく変化している可能性がある一方、後者は、OCTまたはOCDRの散乱物体の信号の位置に対して、OCTまたはOCDRの範囲内で事実上影響を及ぼさないという事実による。眼の内部におけるYAG焦点直径および軸方向のレイリー長は、約20μmのオーダーであり、したがって、同様の空間寸法を有する繊細な物体が扱われることが意図される場合、小さなずれは既に問題となる。この点に関して、例えば、比較的長時間の動作中のレーザーにおける熱の影響の結果として生じる小さな変化であっても、関連する影響を有する可能性があり、OCDRに関連した焦点位置の再調整を必要とし得る。
【0030】
OCTシステムを使用する従来技術によって知られている解決策のいくつかは、既知の焦点距離、屈折力、距離パラメータ、およびサンプル位置を想定しており、その結果、OCTまたはOCDRに関する焦点位置の計算が原理的に可能である。しかしながら、これには、依然としてこれらのパラメータの十分に正確な知識または非常に正確な決定が必要とされるが、これは、特に、眼における(例えば、角膜およびレンズ表面の)全ての関連する屈折力を決定することを考慮すると、非常に複雑である。加えて、例えば使用中、例えば手で持ったコンタクトグラス(コンタクトレンズ)の使用中に、接触圧に依存した角膜屈折力の変化が生じる可能性があるため、手術前に得られたデータは不十分である可能性がある。さらに、人間の目の解剖学的構造にはかなりのばらつきがある。例えば、眼の長さは、14~40mmの範囲であり、前房の深さ(1.5~4mm)またはレンズの厚さ(水晶体:約3~4mm、例えば、マルチパートIOLが使用される場合、IOLは部分的により薄いかまたは部分的により厚い)には大きなばらつきがある。
【0031】
個々の眼の異なる焦点深度および変化する屈折力に加えて、レーザーシステムの光学系の公差もまた、治療レーザーの焦点位置のさらなるずれをもたらし得る。
特許文献7で提案された、OCDRおよび治療レーザーの焦点位置を一緒に変化させ(すなわち、調整し)、結果として生じるOCDR信号の変化からOCDRと治療レーザーの焦点との間の調整を導出するというコンセプトは、同時の同期されたOCDR検出を用いた十分に微細に調整可能な焦点位置も必要とし、特に、OCDRおよび治療レーザーの異なる軸方向の焦点位置が使用されることが意図される場合(すなわち、焦点間にオフセットが存在する必要がある場合)、さらに若干複雑になる。加えて、このアプローチは、OCDRまたはOCT記録がそれらのコヒーレント特性のために「スペックル」を有することによってより困難になり、したがって、焦点の周りの最大信号点は、(例えば、特許文献9または特許文献10にあるようなスペックル抑制によって)若干の追加コストでのみ決定できる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】独国特許出願公開第102011103181号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/195076号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2014/257257号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2015/342782号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2018/028354号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第3578148号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第102019007147号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第102019007148号明細書
【特許文献9】米国特許第8085408号明細書
【特許文献10】独国特許出願公開第102008051272号明細書
【非特許文献】
【0033】
【非特許文献1】ブラッセ(Brasse),K.、シュミッツ-ヴァルケンベルク(Schmitz-Valckenberg),S.、ユーネマン(Juenemann),A.他、Ophthalmologe(2019)116:73.、インターネット<URL:https://doi.org/10.1007/s00347-018-0782-1>
【発明の概要】
【0034】
したがって、OCDRまたはOCT支援システムの場合、治療レーザーの焦点位置が、治療されるべき組織および温存されるべき眼構造に対して可能な限り正確に推定されることを可能にすることが特に重要である。これに関連して、従来技術からの解決策に従って、特に試験眼または想定されたパラメータもしくは所定のパラメータを使用してこれまで実行された調整は、不十分であるか、または非常に複雑であることが判明した。
【0035】
したがって、本発明は、治療レーザーの焦点を再調整することによって、処置される眼の個性および光学系の公差を考慮することによって、既知の技術的解決策の欠点を是正する、眼内レーザー治療のための眼科システムのための解決策を開発するという目的に基づいている。特に、これは、新しい治療状況ごとに、正確には、特に患者および/またはコンタクトグラスの変更、あるいは治療レーザーの焦点距離、患者の調節状態、および/またはサンプル間隔の修正に続いて、OCTまたはOCDRスキャンに対して治療レーザーの焦点位置を調整することを可能にすべきである。
【0036】
さらに、この解決策は、実施が容易であり、経済的に費用効果が高く、より簡単で、より速く、とりわけ、より安全な眼のレーザー治療を可能にすべきである。
この目的は、OCDRシステムと、制御ユニットと、治療レーザーユニットと、イメージングユニットと、焦点合わせおよびビーム重ね合わせのための光学系とを備える眼内レーザー治療のための眼科システムの焦点を再調整するための本発明による方法によって、レーザー治療システムのターゲットレーザービームのターゲット構造ZSへの焦点合わせが検出されるまで、眼からのレーザー治療システムの距離Aを変化させることによって、レーザー治療システムのターゲットレーザービームが、治療される眼の少なくとも1つのターゲット構造ZSに焦点を合わせられ、基準面REに対する、選択された基準構造PRSの位置からの距離A、およびOCDR信号プロファイルにおけるターゲット構造PZSの位置がそれぞれ決定され、OCDR信号プロファイルにおけるレーザー治療システムのレーザービームのそれぞれの推定可能な焦点位置PFが、眼からのレーザー治療システムの距離の変化ΔAの任意の選択可能な値に対して、パラメータAおよびPZSを用いて近似的に推定されることにより、達成される。
【0037】
第1の有利な構成によれば、位置Aにおいて、例えばレーザー治療システムのレーザービームまたはターゲット構造からのターゲットビームの最も強い後方散乱に基づいて、ターゲット構造ZSへのレーザービームの焦点合わせが識別可能になるまで、眼からのレーザー治療システムの距離Aが、レーザーシステムの基準面BE(例えば、前方レンズ頂点)の前方の距離ΔEにある基準面REと眼上の基準構造RS(例えば、角膜頂点)との間で変更されることによって、レーザー治療システムのレーザービーム(またはターゲットレーザービームもしくは減衰された治療レーザービームなどのレーザービームの代替物)が、治療される眼の少なくとも1つの第1のターゲット構造ZSに焦点を合わせられ、このターゲット構造の(対応する)位置PZSが、OCDR信号において決定され、さらなるターゲット構造ZS(n=2,・・・,N)に焦点を合わせると、この目的のために必要とされる、第1のターゲット構造ZSへの焦点合わせの位置Aに対する距離のそれぞれの変化ΔAが決定され、ターゲット構造ZSのうちの1つに焦点を合わせる各場合について、OCDRにおけるそのそれぞれの位置PZSが決定され、所望に応じて選択可能な、眼からのレーザー治療システムの距離の変化ΔAの他の値に対して、レーザー治療システムのレーザービームのそれぞれの推定可能な焦点位置PFが、関数
【0038】
【数1】
【0039】
から近似的に決定される。
ここで、「所望に応じて選択可能な値」とは、実際に実現可能な、眼とレーザーシステムとの間の距離状態を意味する。例えば、有水晶体眼における水晶体の前側および後側、およびIOLの前側または後側、あるいは、ある程度まで、無水晶体眼におけるIOLハプティック(好ましくは、広範なプラスチックハプティック)が、ターゲット構造として適切である。
【0040】
概して、コンタクトグラス(コンタクトレンズ)または角膜の前側および後側、ならびに網膜表面も、適切なターゲット構造である。硝子体混濁がターゲットレーザービームを十分に強く散乱させる場合、それはターゲット構造としても適している。概して、想定される焦点位置PF(ΔA)に対して可能な限り高い精度を得るために、例えば2mm未満、好ましくは1mm未満、さらにより好ましくは100μm未満の近接度で、(軸方向だけでなく横方向にも)加工領域に可能な限り「近接して」配置されたターゲット構造を使用すると有利である。
【0041】
本発明によれば、実際の位置からのレーザービームの推定可能な焦点位置PFの近似的な決定のずれは、レーザー焦点の2レイリー長未満、特に1レイリー長未満、または特に好ましくはレイリー長の0.5未満である。レイリー長は、z=n*π*w /Mとして定義され、ここで、nは媒体の屈折率に対応し、wは焦点におけるレーザービームの半径に対応し、1/Mはビーム品質に対応する(理想的には、M=1)。これに関連して、レイリー長の2倍は、材料加工レーザーの被写界深度の通常の定義に対応し(A.バーツ、H.ミュラー、J.ブリートナー、「レーザー材料加工(Lasermaterialbearbeitung)」、ハンザー出版社;https://www.hanser-fachbuch.de/buch/Lasermaterialbearbeitung/9783446421684)、眼へのレーザー適用の場合、例えば、9μm(大きな開口数を有する表面近傍の適用の場合により可能性が高い)~1mmである。原則として、従来技術から知られているようなマルチセグメント治療レーザー焦点のための方法を使用することも可能である。しかしながら、この場合、選択された焦点セグメントの再調整が、他の焦点セグメントの位置推定を実現するための基礎として使用され得るように、切り替え可能またはマルチセグメントターゲットレーザーを用いた全ての焦点セグメントの個々の調整、または少なくとも選択された治療レーザー焦点セグメントの個々の調整が必要とされるであろう。
【0042】
従属請求項は、好ましい発展形態および構成に関する。
第2の構成によれば、レーザー治療システムのレーザービームではなく、複数のターゲットレーザーの交差する点が、治療される眼の少なくとも1つのターゲット構造ZSに集束される。特に、ターゲットレーザーとして、レーザー治療システムのレーザービームと同じまたは類似する焦点位置を有する連続波レーザービームが使用される。この場合、個々のターゲット構造ZSへのターゲットレーザーの焦点合わせは、それぞれの「焦点合わせされた」ターゲット構造からのターゲットレーザー放射の最大後方散乱を、オペレータの目によって、または画像処理を備えたカメラによって検出することによって、検出することができ、後者は、特に、例えばNIRにおける800nmまたは1060nmの不可視ターゲットレーザー放射を使用することが意図される場合である。
【0043】
提案される方法では、レンズ(水晶体またはIOL)の後側、水晶体嚢の後側、網膜表面、または眼の他の構造が、ターゲット構造ZSとして機能する。
第3の構成によれば、少なくとも短期的に安定性を有する少なくとも1つのターゲット構造ZSが、レーザー治療システムのレーザービームによって、またはターゲットレーザーによって、例えば、レーザー治療システムからのレーザーショットによって、または変調されたターゲットレーザーによって、その検出可能性が調整に十分であり、OCDRにおいて特徴的な測定可能な信号変化をもたらす少なくとも1つの変更を眼にもたらすことによって生成される。
【0044】
例えば、この場合、ターゲットレーザーの変調は、音響光学、電気光学または干渉方式で実施され、あるいは波長または偏光変調が存在する。しかしながら、例えば、フィルタホイール、チョッパなどのような電流変調または変更可能な減衰器によってターゲットレーザーを変調することも可能である。次いで、OCDR信号におけるレーザー焦点の位置を非常に正確に決定するために、OCDR信号をこの変調に適合されたフィルタリングにかけることによって、スペックル変動において、それによって印加された特徴的なレーザー変調を再び検出することができる。
【0045】
代替的な形態では、例えば、レーザー治療システムの減衰されたショットが、プラズマ膨張の結果として、OCDRにおいて少なくとも短期的に検出可能な(OCDRビームから立ち上がるまで検出可能な)気泡を生成することも可能であり、または、変調されたターゲットレーザービームが、光吸収および局所加熱の結果として、集束領域内のOCDRまたはOCT信号において局所的に変調された位相変調またはスペックル変動をもたらすこともできる。後者の場合、ターゲット構造の最大限に過渡的な信号をそこに生成するために、ターゲットレーザーが焦点領域においてOCDRまたはOCTビームとある角度で交差すると有利である。しかしながら、この状況では、熱放散によって依然として温度変調が可能であるように、変調周波数は高すぎてはならない。可能な変調周波数は0.1~100Hzの範囲であり、有利な変調周波数は5~50Hzの範囲である。有利なターゲットレーザー波長は、NIR、例えば1.2~1.7μm、特に1.3μm~1.5μmであり、この波長では、水が良好に吸収され、患者の網膜の光曝露は低い。
【0046】
従来技術と比較して、このアプローチは、天然のターゲット構造を有しない不安定な媒体、例えば、前眼房の房水、または部分的に液化した硝子体液、または硝子体切除後に硝子体液を置換する生理食塩水においてさえも、所望の頻度で繰り返し可能な焦点調整を可能にする。
【0047】
これに関連して、レーザー治療システムのレーザービームのレーザーショットによって生成されるターゲット構造ZSは、焦点位置を決定するためだけでなく、レーザー出力を調整するためにも用いることができることが有利である。
【0048】
第4の構成によれば、存在するコンタクトグラスKGの前側または後側、コンタクトグラス内に位置する技術的構造、あるいは天然または人工の眼の構造、例えば、角膜、水晶体またはIOL、水晶体嚢の前側または後側、あるいは網膜表面が、眼とレーザーシステムとの間のそれぞれの距離Aを決定するための基準構造RSとして機能する。
【0049】
この場合、コンタクトグラスKG内に実現された基準構造RSは、OCDRにおいて特性信号を生成し、実現された基準構造RSは、好ましくは変更可能であり、特に切り替え可能または変調可能である。
【0050】
特に有利な第5の構成によれば、距離の変化ΔAの任意の選択可能な値に対して関数(1)からレーザー治療システムのレーザービームのそれぞれの推定可能な焦点位置PFをできるだけ正確に推定するために、レーザー治療システムのレーザービームまたは複数のターゲットレーザーの交差する点は、治療される眼のN個のターゲット構造ZSに集束される。関数のインデックスとして指定されるパラメータは、以下の通りである。A,ΔAn=2,・・・,Nは、目の距離およびAに対するその変化であり、この場合、ターゲット構造ZSにそれぞれ焦点が合わせられ、PZSは、各場合に確認されたOCDRにおけるターゲット構造の信号位置である。Aは、すべての距離の変化ΔAに対する基準距離であり、したがって、実際にはΔA=0が適用されるので、ΔAは、ここではもはやパラメータとして列挙されない。Aに対して異なる基準距離が選択される場合、パラメータとしてのAではなく、基準距離からのその距離ΔAを、関数のパラメータとしてのAの代わりに当然使用することもできる。関数
【0051】
【数2】
【0052】
について、焦点位置PF(ΔA)を決定するために、好ましくは1次からN次までの多項式(またはN自由度を有する異なる非線形関数、例えばフーリエ級数)が使用され、当該多項式は、できるだけ小さいずれで点ΔAn=1,・・・,N,PZSn=1,・・・,Nを通るように選択される。例えば、これは、多項式または非線形関数を点にフィッティングすることによって、例えば最小二乗法を適用することによって行うことができる。
【0053】
しかしながら、焦点位置FPを決定するための関数(1)は、多項式または非線形関数を決定するために使用されるコンタクトグラスまたは眼の追加のパラメータによって、Nより高次の多項式または非線形関数とすることもできる。
【0054】
第6の構成によれば、イメージングシステムは、レーザー治療システムまたはターゲットレーザーのレーザービームと共に、複数のターゲット構造ZS上に追加的に焦点を合わせられ、そのためにオートフォーカスシステムが使用される。特に、この場合、イメージングシステムの開口数(NA)とレーザー治療システムのレーザービームの開口数との違いは2倍未満である。この場合、イメージングシステムの波長とレーザー治療システムのレーザービームの波長との互いからのずれが10%以下であれば、特に有利である。
【0055】
第7の構成によれば、焦点合わせユニットに加えて、OCDRシステムおよび制御ユニットも備える治療システムの焦点を再調整する方法は、レーザービトレオライシスに使用される。
【0056】
この場合、レーザー治療システムのレーザービームは、第1のターゲット構造ZSへの焦点合わせに続いて、それぞれのターゲット構造ZSへのレーザービームの焦点合わせが治療レーザーまたはターゲットビームレーザーの最大化された後方散乱に基づいて識別可能になるまで、レーザービトレオライシスのための治療システムの距離Aが、基準面REから開始して、眼に対する変化ΔAだけ変化されることによって、治療される眼の2つ以上のターゲット構造ZS(n=2,・・・,N)に焦点を合わせられ、距離の変化ΔAが、この焦点合わせの状況に対して決定され、この焦点合わせの状況に対して、ΔAで焦点合わせがちょうど実施されるターゲット構造ZSの位置PZSは、OCDR信号から決定され、所望に応じて選択可能な距離の変化ΔAの他の値に対して、レーザービトレオライシスのための治療システムのレーザービームのそれぞれの推定可能な焦点位置PFが、関数(1)から近似的に決定される。好ましくは、前眼領域および後眼領域、好ましくはレンズ後側および網膜表面におけるそれぞれの構造が、ターゲット構造ZSとして選択される。
【0057】
眼からのレーザーシステムの任意の所望の距離ΔAに対する治療レーザー焦点の位置
【0058】
【数3】
【0059】
の近似的な決定は、この場合、特に、硝子体混濁のための治療システムの遮断ゾーンに対する(レーザーショットをトリガする時点での)治療レーザー焦点位置、およびそれに起因する治療レーザーの起動または停止を確立するために使用される。これに関連して、眼球運動、特に軸方向の眼球運動を、例えばOCDRによって検出し、次いで、待ち時間の影響を受ける治療レーザー焦点位置を推定するときに、これらを正しく考慮に入れることも可能である。
【0060】
少なくとも1つのターゲット構造ZSが、加工される眼の構造の近傍で選択されると、特に有利である。これはまた、(減衰された)治療レーザーを使用して、またはターゲットビームレーザーを使用して、恒久的または一時的なターゲット構造を生成するオプションをもたらす。
【0061】
レーザービトレオライシスのための治療システムの場合、治療レーザーの十分に短い被写界深度を確保するために、作業深度に応じて、各場合に十分に大きい瞳孔直径が存在することを確保する必要がある。これを保証するために、好ましくは、瞳孔領域のためのイメージングシステムが使用され、イメージングシステムを用いて、現在存在する瞳孔直径が決定される。代替的に、不十分に拡張された瞳孔のエッジにおける治療レーザービームに対応するターゲットレーザーの後方散乱を基準として使用することも可能である。有利な瞳孔直径は、前方領域におけるレーザービトレオライシス処置の場合には4mmを超え、中央領域におけるそのような処置の場合には5mmを超え、後方領域におけるそのような処置の場合には6mmを超える。治療システムは、これらの条件が満たされていない場合に、治療レーザーがトリガされることを妨げ、警告を提供する。任意選択的に、このような場合には、治療室内の周囲光を減少させるか、または薬剤によって瞳孔拡張を生じさせなければならない。
【0062】
眼内レーザー治療のための眼科システムの焦点を再調整するための本発明による方法は、特に、レーザービトレオライシスのための治療システムを実現するために提供される。
レーザー治療システムの焦点を再調整するための提案された方法から恩恵を受けるであろう可能な他の眼内用途オプションは、これに限定されないが、例えば、以下を含む。
【0063】
・網膜凝固
・SRT(選択的網膜治療)
・例えば、硝子体黄斑牽引を治療するための硝子体液切開
・レーザー線維柱帯形成術(SLTなど)または線維柱帯切開術(ALTなど)
・白内障後処置
・フェムト秒白内障手術(切開および水晶体切開)
・角膜の切開または切除
本発明は、例示的な実施形態に基づいて以下により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1図1は、治療される眼の第1のターゲット構造ZSに焦点を合わせたレーザービトレオライシスのための治療システムを示す。
図2図2は、治療される眼の第2のターゲット構造ZSに焦点を合わせたレーザービトレオライシスのための治療システムを示す。
図3図3は、基準構造RSを有するコンタクトグラスを使用する、レーザービトレオライシスのための治療システムを示す。
図4図4は、レーザー治療システムのレーザービームの任意の所望の焦点位置PFを決定するための関数PF(ΔA)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
眼内レーザー治療のための眼科システムの焦点を再調整するための提案された方法は、治療レーザーユニットと、イメージングユニットと、焦点合わせおよびビーム重ね合わせのための光学系と、OCDRシステムと、制御ユニットとを備えている。
【0066】
本発明によれば、レーザー治療システムのレーザービームは、ターゲット構造ZSへのレーザービームの焦点合わせが達成されるまでレーザー治療システムの、眼からの距離Aが変化させられることによって、治療される眼の少なくとも1つの第1のターゲット構造ZSに焦点を合わせられる。距離Aは、基準面REに対する、OCDR信号プロファイルにおける選択された基準構造PRSの位置およびターゲット構造PZSの位置から決定される。眼からのレーザー治療システムの距離の変化ΔAの任意の選択可能な値に対して、パラメータAおよびPZSを使用して、OCDR信号プロファイルにおけるレーザー治療システムのレーザービームのそれぞれの推定可能な焦点位置PFの近似的な推定を提供することが可能である。
【0067】
この場合、ターゲット構造ZSへのターゲットレーザーの焦点合わせは、「焦点合わせされた」ターゲット構造ZSからのターゲットレーザー放射の最大後方散乱を、オペレータの目によって、または画像処理を備えたカメラを使用して検出することによって検出することができる。その後、ターゲット構造ZSのOCDR信号PZSの位置が決定される。
【0068】
好ましくは、決定された値AおよびPZSは、眼からの前記レーザー治療システムの距離の変化ΔAの任意の選択可能な値に対して、OCDR信号プロファイルにおけるレーザー治療システムのレーザービームのそれぞれの推定可能な焦点位置PFを近似的に計算する関数
【0069】
【数1】
【0070】
を決定するために使用される。
大きな深さ範囲にわたって調整精度を高める目的で、さらなるターゲット構造Z~Zが、同じように「焦点を合わせられる」べきである場合、距離の変化ΔA~ΔAは、プロセスに存在するターゲット構造信号の位置PZS~PZSと同様に、レーザー治療システムまたはターゲットレーザーのレーザービームが最良の方法で焦点を合わせられるこれらのターゲット構造の各々について設定される。次いで、このように決定された値AおよびPZS、ならびに任意選択でΔA~ΔAおよびPZS~PZSを使用して、関数
【0071】
【数2】
【0072】
を決定することができ、この関数は、所望に応じて選択可能な距離の変化ΔAの他の値について、レーザー治療システムのレーザービームのそれぞれの推定可能な焦点位置PFを近似的に決定する。
【0073】
すでに上述したように、インデックスとして指定されるパラメータは、目の距離としてのA、およびAに対するそれらの変化としてのΔAn=2,・・・,Nであり、その場合、ターゲット構造ZSにそれぞれ焦点が合わせられ、PZSは、各場合に確認されたOCDRにおけるターゲット構造の信号位置である。関数(1)
【0074】
【数3】
【0075】
の焦点位置を決定するために、好ましくは、できるだけ小さいずれで点ΔAn=1,・・・,N,PZSn=1,・・・,Nを通るように選択された、1次からN次までの多項式、またはN自由度を有する異なる非線形関数を使用する。例えば、これは、多項式または非線形関数を点にフィッティングすることによって、例えば最小二乗法を適用することによって行うことができる。
【0076】
好ましくは、治療レーザーによって治療される眼の少なくとも1つのターゲット構造ZSへのレーザー治療システムのレーザービームの焦点合わせは、光破壊を回避するために、低減されたパルスエネルギーで実施される。また、眼における恒久的な組織変化を可能にしないパラメータを有する追加のレーザービームをターゲットレーザービームとして使用することも可能である。
【0077】
本発明によれば、実際の位置からのレーザービームの推定可能な焦点位置PFの近似的な決定のずれは、レーザー焦点の2レイリー長未満、特に1レイリー長未満、または特に好ましくはレイリー長の0.5未満である。
【0078】
レーザー治療システムが複数のターゲットレーザーを含む場合、レーザー治療システムのレーザービームではなく、複数のターゲットレーザーの交差する点を、治療される眼の少なくとも1つのターゲット構造ZSに集束させることができる。これは、レーザー治療システムのレーザービームの焦点の位置を連続的にまたは準連続的に、または任意選択的にパルス状に示すことができる。この目的のために、可視スペクトル範囲のターゲットビームレーザーを使用することができるが、例えば、カメラシステムが使用される場合、NIRであってもよい。レーザー治療システムのレーザービームの焦点の位置を示すために、ターゲットレーザーは、例えば、レーザー治療システムのレーザービーム上に共線的に重ね合わされ、同一の焦点位置を有することができる。続いて、これがターゲット構造に焦点を合わせるために使用された場合、これは、ターゲット構造上の最小寸法かつ最大強度の後方散乱ターゲットレーザースポットに基づいて識別可能である(VISにおいて目視で、またはNIRにおいてカメラによって検出可能である)。代替形態では、レーザー治療システムのレーザービームの焦点の位置で交差する複数のターゲットレーザービームを使用することもできる。さらなる代替形態では、各々がレーザー治療システムのレーザービームの焦点の位置を通過する、1つまたは複数の動く、例えば回転するターゲットレーザービームを使用することができる。
【0079】
この場合、ターゲット構造への焦点合わせの検出は、以下の状態のうちの1つまたは複数の視覚的または自動的な確立によって行われる。
・ターゲット構造からのターゲットレーザーの最大化された後方散乱
・ターゲット構造上のターゲットレーザービームの光分布の最小化された直径、または
・ターゲット構造のOCDR信号における特徴的な状態または変化
本発明によれば、複数のターゲットレーザーの交差する点は、好ましくは、オペレータまたはカメラシステムによって複数のターゲットレーザービームの間隔を最小化することによって、または共焦点検出によって少なくとも1つのターゲットレーザービーム焦点からの後方散乱を最大化することによって、ターゲット構造ZS上に集束される。この場合、ターゲットレーザーは、好ましくは、可視スペクトル範囲またはNIR範囲で動作する。
【0080】
有利な構成によれば、レーザー治療システムのレーザービームと同じまたは類似する焦点位置を有する連続波レーザーがターゲットレーザーとして使用されるか、または、ターゲットレーザーは、レーザービトレオライシス中に考慮されるレーザー治療システムのレーザービームからの焦点位置の既知のまたは調整された限定的なずれを有する連続波レーザーによって提供される。一例として、これは、焦点位置の適切に適合された表示によって、あるいは、レーザーがトリガされる前のレーザー治療システムのレーザービームの瞬間的な焦点シフトによって、例えば、光学機械的に(例えば、可動レンズによって)または電気光学的に(例えば、液晶レンズによって)実現されるビーム発散の変化によって、考慮することができる。
【0081】
好ましくは、レンズ(特に眼内レンズ、IOL)または水晶体嚢の後側、網膜前面、または眼の他の構造が、ターゲット構造ZSとして機能する。
しかしながら、レーザー治療システム自体のレーザービームによってターゲット構造ZSを生成することも可能である。例えば、レーザー治療システムのレーザービームのレーザーショットによって生成されたターゲット構造ZSは、硝子体液の変化をもたらし、これは、次いで、OCDRにおける信号変化、例えば、後方散乱の変化またはスペックルグレインの変化を引き起こす。
【0082】
この場合、レーザー治療システムのレーザービームのレーザーショットによって生成されるターゲット構造ZSは、一時的であるかまたは変更可能であり、例えば、少なくとも1つのレーザーショットによって生成される気泡、または加熱の結果として一時的に変化したOCDRのスペックル構造である。そのような変化は、ターゲットレーザービームによって生成することもでき、例えば、ターゲットレーザービームが変調され、その結果、光吸収によって、OCDRビームと交差するOCDR深さプロファイルにおいて局所的な特性信号変動(例えば、スペックル変動)を生成する場合である。
【0083】
しかしながら、レーザー治療システムのレーザービームのレーザーショットによってターゲット構造ZSを生成することの利点は、当該ターゲット構造が、焦点位置を決定するためだけでなく、レーザー出力を調整するためにも使用できることである。この調整は、ターゲットレーザーの吸収挙動によって間接的にも可能であるが、生じ得る波長差を考慮に入れるかまたは回避しなければならないので、より困難である。
【0084】
本発明によれば、存在するコンタクトグラスKGの前側または後側、コンタクトグラス内に位置する技術的構造、あるいは角膜、レンズ、または水晶体嚢の前側または後側、あるいは網膜表面のような眼の構造が、OCDRシステムのための基準構造RSとして使用される。
【0085】
眼内レーザー治療のための眼科システムがコンタクトグラスKGを必要とする場合、基準構造RSとして実現される技術的構造は、好ましくは、OCDRにおける特徴的な信号、例えば、特定の信号レベル、プラトー、曲線、位置、距離もしくは複数のピーク、または特徴的な偏光依存性を有する信号が生成されるように構成されることができる。特に、コンタクトグラスKG内に実現される基準構造RSは、例えば散乱または偏光の変化によって、変更可能であり、特に切り替え可能または変調可能であってよい。例えば、これは、電気的に切り替えられる液晶層によって実現され得る。
【0086】
さらなる有利な構成によれば、コンタクトグラスKG内に実現される基準構造RSは、不可視スペクトル帯域で作用し、例えば誘電体反射層システムによって実現される。
好ましくは、この誘電体反射層システムは、例えば、NIRターゲットレーザーのビームを780nm~850nmの波長で部分的に反射するが、1064nmの波長の治療レーザーおよび400nm~700nmの波長の可視光を主に透過するように、バンドパスフィルタとして構成される。しかしながら、OCDR波長、例えば1060nmにおいて、基準構造RZは、OCDR信号における飽和を回避するために、3%以下、好ましくは0.5%よりも小さい後方散乱を実現する。好ましくは、基準構造RSは、OCDRにおいて、特にショットノイズによって引き起こされるノイズバックグラウンドに対して、10dBを超え、20dBを超え、または30dB超えるが、好ましくは40dB以下の信号対ノイズ比を有する信号を有するように構成されている。
【0087】
例えば、ターゲット構造の位置PZSおよび基準構造PRSの位置は、OCDR信号の最大値または重心値または閾値を決定することによって、あるいは信号モデルをフィッティングすることによって識別される。この場合、このようにして決定されたOCDRにおける信号の位置は、好ましくは、OCDR信号曲線における予想される信号シーケンス(例えば、コンタクトグラスの前側または後側、角膜表面、任意選択で水晶体嚢前側、IOL前側および後側、任意選択で水晶体嚢後側、網膜表面)を使用することによって、ターゲットまたは基準構造に割り当てられる。このプロセスでは、例えばコンタクトグラスまたはIOLでの特徴的な信号強度を、信号シーケンスで予想される構造を自動的に包含または除外するために使用することもできる。この目的のために、特徴的な信号曲線を使用することもでき、例えば、IOL表面での鋭い反射と、同時にIOLの内部、すなわち鋭い表面反射間で、天然のレンズ(水晶体)と比較して低くなる後方散乱強度を使用することができる。この場合、特性信号曲線は、軸方向に延びることができるが、横方向にも延びることができる。例えば、水晶体嚢曲線は、従来のIOLの表面よりも横方向に実質的に「波打っている(welliger)」プロファイルを有し得る。特に、多焦点IOL(例えば、フレネル光学系)は、典型的な認識可能なパターンを有することさえある。さらに、例えば、可能性のある角膜の厚さ、前房の深さ、または眼の長さの範囲に関して、特定の構造の可能性のあるまたは考えられる深さの範囲について、妥当性チェックを行うことができる。さらに、例えば有水晶体IOLが使用される特別な場合には、オペレータによって与えられる眼の構造に関するステートメントを使用することもできる。
【0088】
有利な構成によれば、イメージングシステムは、レーザー治療システムのレーザービームと共に、複数のターゲット構造ZS上に焦点を合わせられ、そのためにオートフォーカスシステムが使用される。好ましくは、イメージングシステムのNAとレーザー治療システムのレーザービームのNAとは、2倍未満だけ異なる。
【0089】
以下、眼内レーザー治療のための眼科システムの焦点を再調整するための提案された方法を、レーザービトレオライシスのための治療システムに基づいてより詳細に説明する。
レーザービトレオライシスのための治療システムは、焦点合わせユニットおよび制御ユニットに加えて、OCDRシステムも備えている。
【0090】
作業深さに応じて十分に大きな瞳孔直径が、レーザービトレオライシスのために確保されなければならない。詳細には、前方領域におけるレーザービトレオライシス処置の場合には4mmを超え、中央領域におけるそのような処置の場合には5mmを超え、後方領域におけるそのような処置の場合には6mmを超える。特に、瞳孔直径の検証を使用して、それぞれの求められている作業深さに対して十分に大きな瞳孔直径が認識された場合にのみ、治療レーザーを作動させることができることを確実にすることができる。
【0091】
この点に関して、図1は、治療される眼1の第1のターゲット構造ZSに焦点を合わせたレーザービトレオライシスのための治療システム2を示す。
レーザービトレオライシスのための治療システム2は、治療レーザー3と、OCDRシステム4と、イメージングシステム5と、光学系6と、制御ユニット(ここでは図示せず)とを備えている。
【0092】
治療レーザー3のレーザービーム7は、レーザービトレオライシスのための治療システム2の距離Aが、基準構造RS(例えば、角膜表面)によって表される眼1に対して変化して、基準面REから開始して、眼の距離A=Aでターゲット構造ZS(この場合、一例としてレンズの後側)へのレーザービームの焦点合わせが識別可能になるまで変化することによって、治療される眼1のターゲット構造ZSに焦点を合わせられる。この場合、ZSへの焦点合わせは、イメージングシステム5によってターゲット構造ZSからの(減衰した)レーザービーム7またはターゲットレーザー(ここでは図示せず)の最大化された後方散乱を観察することによって、または、OCDRビーム(ここでは図示せず)およびレーザービーム7の焦点位置が互いに十分に一致している場合には、OCDR信号プロファイル8における位置PZSにおいてターゲット構造の最大化されたOCDR信号(グレーのピーク)を観察することによって、識別することができる。全体として、OCDR信号プロファイル8は、0からZmaxまで(光路)の相対的な深さ範囲にわたって延在している。ターゲット構造ZSに焦点を合わせる場合、OCDRにおけるレーザービーム7の焦点位置PF1は、ターゲット構造のOCDR位置PZSに正確に対応する。
【0093】
例えば、光学系6の前側レンズ面は、ここではさらなる基準面BEとして機能する。OCDRシステム4の測定範囲は、概して、治療される眼1の全長よりもわずかに長い範囲しか含まないので、測定を実行するために、BEから距離ΔEにある基準面REが、OCDRシステム4の基準アームによって設定される。焦点の再調整では、一般性を失うことなく、基準面が調整ステップ間で変更されないという仮定がなされる。そうであっても、位置PZSはそれに応じて適合されるべきである。これに関連して、BEとREとの間の屈折率は、周囲の媒体(一般に、屈折率1を有する空気)の屈折率に対応することに留意されたい。REとRSとの間の屈折率は、空気の屈折率とすることができ、またはコンタクトグラスが使用される場合には、ガラスまたはプラスチックの屈折率(例えば、n=1.2,・・・,1.8)のセクションを含むことができる。さらに、眼の屈折率はわずかに異なり(房水および硝子体液は約1.36であり、角膜は約1.38であり、IOLは使用される材料に依存する)、患者ごとに異なる可能性もあるので、一般に、位置PZSおよび焦点位置PF(ΔA)を、基準面REに対するそれぞれの光路長として近似的に決定することが推奨される。焦点の再調整中に、ΔEの調整をできるだけ少なくするか、または全く行わないようにするために、OCDR信号プロファイル8によってカバーされる深さ範囲0~Zmaxは、少なくとも後眼部分の深さ(>25mmの光路)がカバーされるように選択されるが、可能であれば、平均眼長全体(光学的に>34mm)、あるいは理想的には、>60mmまたは>100mm(いずれの場合も光学的に)の拡張範囲もカバーされるように選択される。この目的のために、適切なコヒーレンス長を有するOCDRシステムが使用されるべきである。
【0094】
その後、距離Aおよびターゲット構造位置PZSが、OCDR信号プロファイル8から、基準面REに対する光路長としてそれぞれ決定される。例として、この場合、角膜の前面が基準構造RSとして使用され、レンズの後側がここではターゲット構造ZSとして使用される。
【0095】
OCDR信号プロファイル8において、左(0)から右(最大測定範囲Zmax)までの概略的に示された信号ピークは、治療される眼1の角膜の前面および後面、レンズの前面および後面、ならびに網膜表面に対応している。明確にするために、バックグラウンドノイズ、より深い網膜または脈絡膜層からの信号、および水晶体嚢信号は、ここでは描写されていない。水晶体嚢信号がレンズ表面信号から区別可能であるか否かは、例えば、特定の状況、すなわち水晶体嚢がレンズに対して静止しているか否かに依存し、また、OCDRシステムの感度および解像度に依存する。
【0096】
図2は、治療される眼1の第2のターゲット構造ZSに焦点を合わせたレーザービトレオライシスのための治療システム2を示す。
この目的のために、治療レーザー3のレーザービーム7は、レーザービトレオライシスのための治療システム2の、眼1からの距離Aが、基準面REから開始して、初期位置Aに対して、それぞれのターゲット構造ZSへのレーザービームの焦点合わせが(上述したように、例えば、OCDRと治療レーザーとの間のビーム形状が一致している場合に、治療またはターゲットレーザーの後方散乱の最大化、または任意選択で局所的なOCDR信号の最大化に基づいて)再び識別可能になるまで変更される(ΔAだけ変更される)ことによって、治療される眼1のターゲット構造ZSに焦点を合わせられる。この目的のために、レーザービトレオライシスのための治療システム2は、眼1に対して(手動でまたはモータによって移動可能な機器ベース(ここでは図示せず)によって)、またはその逆に(例えば、モータ駆動の患者頭部支持体によって)移動させることができる。
【0097】
続いて、距離A=AまたはΔA=A-Aおよび第2のターゲット構造ZSのOCDR信号PZSの位置がOCDR信号プロファイル8から決定され、ここで、角膜の前面は基準構造RSとして機能し続け、網膜表面は第2のターゲット構造ZSとして機能する。ここで、OCDR信号プロファイル8における基準構造の位置はPRS*であり、これは、ZSに焦点を合わせる場合の基準構造PRSの位置とは異なる。
【0098】
第2のターゲット構造ZSに焦点を合わせることにより、ターゲット構造PZSの位置は、この場合も、基準面REに対する光路として、治療レーザー3の焦点の位置PFにも対応する。
【0099】
このようにして求められた値A,ΔA,PZS,PZSから、少なくとも1つの関数
【0100】
【数4】
【0101】
を導出することができ、これは、理想的には、
PF(ΔA=0)=PZSおよびPF(ΔA)=PZS
をもたらし、これを用いて、所望に応じて選択可能な距離の変化ΔAの他の値に対して近似的に治療レーザー3のそれぞれの推定可能な焦点位置PFを近似的に決定することが可能である。この場合、関数PF(ΔA)は、可能な場合、治療レーザー焦点の2レイリー長未満、特に1レイリー長未満、または特に好ましくはレイリー長の0.5未満の、治療レーザーの近似的に決定された焦点位置と治療レーザーの実際の焦点位置との間のずれを有する可能性がある。
【0102】
図2に示されるパラメータΔAおよびPZSを決定するステップは、最終的にパラメータの拡張されたセットA,ΔA・・・ΔA,PZS・・・PZSを得るために、ターゲット構造ZS,・・・,ZSに焦点を合わせるさらなるステップに対して同様に繰り返すことができ、パラメータの拡張されたセットA,ΔA・・・ΔA,PZS・・・PZSは、任意の所望の眼の距離ΔAに対する治療レーザーの焦点位置の推定に対してさらに高い精度を提供する、関数
【0103】
【数5】
【0104】
を決定するために使用することができる。この場合も、決定された関数は、理想的には、測定点を正確に通るべきであり、すなわち、PF(ΔA)=PZSであるが、曲線全体にわたって、好ましくは、近似的に決定された治療レーザー焦点位置と実際の治療レーザー焦点位置との間のずれが、治療レーザー焦点の2レイリー長未満、特に1レイリー長未満、または特に好ましくは0.5レイリー長未満であることを常に可能にすべきである。
【0105】
コンタクトグラスは、特にレーザービトレオライシス処置においても使用されるので、これらについては、以下でより詳細に説明される。
この点に関して、図3は、基準構造RSを有するコンタクトグラスKGを使用するレーザービトレオライシスのための治療システムを示す。
【0106】
レーザービトレオライシスのための治療システム2は、治療レーザー3と、OCDRシステム4と、イメージングシステム5と、光学系6と、制御ユニット(ここでは図示せず)とを備え、コンタクトグラスKGの使用を提供する。
【0107】
治療レーザー3のレーザービーム7は、レーザービトレオライシスのための治療システム2の距離Aが、基準面REから開始して、眼1に対して、それぞれのターゲット構造ZSへのレーザービーム7の焦点合わせが(上述したように、例えば、OCDRと治療レーザーとの間のビーム形状が一致している場合に、治療またはターゲットレーザーの後方散乱の最大化、または任意選択で局所的なOCDR信号の最大化に基づいて)認識可能になるまで変更されることによって、治療される眼1のターゲット構造ZS(この場合、水晶体嚢前側)に焦点を合わせられる。
【0108】
続いて、基準面REから基準構造PRSの位置までの距離A=Aおよびターゲット構造位置PZSが、OCDR信号プロファイル8から、基準面REに対する光路長としてそれぞれ決定される。この場合、ここに示される実施形態の変形例では、基準構造RSは、使用されているコンタクトグラスKG内に位置する。したがって、基準構造は、眼の外側に位置するが、接触の結果として眼に対して十分に固定された関係を有する。
【0109】
ターゲット構造ZSに焦点を合わせることにより、ターゲット構造PZSの位置は、治療レーザー3の焦点の位置PF1にも対応する。
OCDR信号プロファイル8において、左(0)から右(最大測定範囲Zmax)までの図示された信号ピークは、コンタクトグラスの前面、コンタクトグラス内の技術的構造RS、処置される眼1の角膜の前面および後面、水晶体嚢の前面、レンズの前面および後面、水晶体嚢の後面、ならびに網膜に対応する。
【0110】
上述したように、存在するコンタクトグラスKGの前側または後側、または、個別的に変更可能であるように、特に切り替え可能または変調可能であるように追加的に具現化され得る技術的構造が、基準構造RSとして使用され得る。
【0111】
図4には、レーザー治療システムのレーザービームの任意の所望の焦点位置PFを決定するための関数PF(ΔA)が一例として示されている。この場合、レーザー治療システムのターゲットレーザービームは、ターゲット構造ZS、ZS、およびZSへのレーザー治療システムのターゲットレーザービームの焦点合わせが検出され、対応する距離A、A、およびA、またはAに対する距離の変化ΔAおよびΔAが決定されるまで、レーザー治療システムの、眼からの距離Aが変化されることによって、治療される眼の3つのターゲット構造ZS、ZS、およびZSに焦点を合わせられた。これらのサンプリング点から得られる関数PF(ΔA)を使用して、眼からのレーザー治療システムの距離の変化ΔAの任意の選択可能な値に対して、レーザー治療システムのレーザービームのそれぞれの推定可能な焦点位置PFを決定することが可能である。
【0112】
さらなる好ましい構成によれば、イメージングシステムは、ビトレオライシスシステムのレーザーと共に動かされ、ターゲット構造ZSへの焦点合わせは、いずれの場合もオートフォーカスシステムによって実現される。この場合、焦点合わせは、例えば、焦点距離を変化させることによって、またはシステムと患者の眼との間の距離を変化させることによって実施され、したがって、例えば、モータ駆動式頭部支持体またはモータ駆動式機器ヘッドを使用することもできる。
【0113】
これに関連して、イメージングシステムの開口数(NA)と治療レーザーの開口数とが類似している、すなわち、2倍未満だけ異なると有利である。
また、OCDRシステムおよび治療レーザーが、類似する波長で、すなわち10%未満のずれで動作する場合も有利である。この場合、OCDR(すなわち、SS-OCDR)のために長コヒーレントな波長可変レーザーが使用でき、治療レーザーとして1064nmのYAGレーザーを利用することができるため、好ましくは、1060nm付近の波長が使用される。
【0114】
眼内レーザー治療のための眼科システムの焦点を再調整するための提案された装置は、治療レーザーユニットと、イメージングユニットと、焦点合わせおよびビーム重ね合わせのための光学系と、OCDRシステムと、制御ユニットとを備えている。
【0115】
眼内レーザー治療のための眼科システムの焦点を再調整するための装置の機能の説明に関しては、上述の方法を参照されたい。
本発明によれば、レーザー治療システムは、眼からの距離Aが変更可能であり、ターゲットレーザービームが、治療される眼の少なくとも1つのターゲット構造ZSに焦点を合わせ可能であるように構成されている。制御ユニットは、基準面REに対する、選択された基準構造PRSの位置からの距離A、およびOCDR信号プロファイルにおけるターゲット構造PZSの位置をそれぞれ決定して、眼からのレーザー治療システムの距離の変化ΔAの任意の選択可能な値について、パラメータAおよびPZSを使用して関数
【0116】
【数6】
【0117】
を決定し、OCDR信号プロファイルにおけるレーザー治療システムのレーザービームのそれぞれの推定可能な焦点位置PFを近似的に計算するように構成されている。
好ましくは、レーザー治療システムは、ZSに加えて、ターゲットレーザービームがN-1個のさらなるターゲット構造ZS,・・・,ZS上に追加的に焦点を合わせることが可能であるように構成されている。この目的のために、制御ユニットは、OCDR信号プロファイルにおいて、ターゲット構造のそれぞれの位置PZS,・・・,PZSと、第1のターゲット構造ZSに焦点を合わせたときの初期位置PRS=Aに対する基準構造の位置のそれぞれの変化ΔA,・・・,ΔAとを決定し、次いで、パラメータA,ΔA・・・ΔA,PZS・・・PZSを使用して、関数
【0118】
【数7】
【0119】
を決定するように構成されており、この関数から、眼からのレーザー治療システムの距離の変化ΔAの任意の選択可能な値に対して、OCDR信号プロファイルにおけるレーザー治療システムのレーザービームのそれぞれの推定可能な焦点位置PFを近似的に計算可能である。
【0120】
有利な構成の第1のグループは、レーザー治療システムに関する。したがって、例えば、ターゲットレーザービームとして、光切断を引き起こすことができない低減されたパルスエネルギーを有する、レーザー治療システムの治療レーザービームが使用可能であり得る。しかしながら、眼における恒久的な組織変化を可能にしないパラメータを有する追加のレーザービームをターゲットレーザービームとして使用することも可能である。
【0121】
さらに、レーザー治療システムは、レーザー治療システムの治療レーザーの焦点の位置で交差するとともに、治療される眼のターゲット構造ZSに焦点を合わせるように機能する複数のターゲットレーザーを備えるようにすることができる。この場合、ターゲットレーザーの連続波レーザービームは、好ましくは、レーザー治療システムのレーザービームと同じまたは類似する焦点位置を有する。
【0122】
さらなる有利な構成によれば、レーザー治療システム自体が、眼にターゲット構造ZSを生成するように構成されている。例えば、これは、眼に変化をもたらし、OCDRにおける信号変化をもたらすか、またはOCDR信号における後方散乱の変化または位相またはスペックルグレインの変化をもたらすターゲットレーザーのパルスまたは変調によって行うことができる。これらのターゲット構造ZSは、一時的または変更可能であり、例えば、少なくとも1回のレーザーショットによって生成され、気泡の形成、または温度変化の結果として一時的に変化したOCDRのスペックル構造をもたらす。
【0123】
特に有利な構成によれば、レーザー治療システムは、レーザービトレオライシスのために構成されており、加工される構造の近傍にターゲット構造ZSをレーザービームによって生成する。
【0124】
有利な構成の第2のグループは、制御ユニットに関し、この制御ユニットは、以下の状態のうちの1つまたは複数を自動的に確立することによって、ターゲット構造への焦点合わせの検出を確立するように構成されている。
【0125】
・ターゲット構造からのターゲットレーザーの最大化された後方散乱
・ターゲット構造上のターゲットレーザービーム光分布の最小化された直径、および/または
・ターゲット構造のOCDR信号における特徴的な状態または特徴的な変化
制御ユニットは、レーザー治療システムのレーザービームのレーザーショットによって生成されたターゲット構造ZSを使用して、焦点位置を決定するだけでなく、レーザーパワーを調整するように構成されている。
【0126】
さらに、制御ユニットによって、例えば、OCDR信号プロファイルにおけるOCDR信号の最大値または重心値または閾値を決定することによって、ターゲット構造および基準構造の位置を識別することができる。
【0127】
制御ユニットは、焦点位置PFを決定するための関数
【0128】
【数8】
【0129】
として、1次からN次までの多項式、またはN自由度を有する異なる非線形関数を使用する。
しかしながら、Nより高次の多項式または非線形関数を使用することも可能である。関数fを決定するために、他で決定されたコンタクトグラスのパラメータ、例えば、曲率半径、厚さ、または屈折率、あるいは、他で決定された眼の追加のパラメータ、例えば、角膜またはレンズの屈折率、厚さ、または半径を追加的に考慮することが可能である。
【0130】
特に、制御ユニットは、レーザービームの推定可能な焦点位置PFの近似的な決定のずれが、レーザー焦点の2レイリー長未満、特に1レイリー長未満、または特に好ましくはレイリー長の0.5未満であるように構成されている。
【0131】
有利な構成の第3のグループは、ターゲットレーザーおよびターゲット構造ZSを検出する追加的に設けられたカメラシステムに関する。制御ユニットは、これらの画像を使用して、例えば以下のように焦点合わせを決定する。
【0132】
・ターゲットビームレーザー位置の間隔を最小化すること
・周期的に動くターゲットレーザービームの空間的変動を最小化すること、または
・少なくとも1つのターゲットビームレーザー焦点からの後方散乱を最大化すること
有利な構成の第4のグループは、追加的に使用されるコンタクトグラスに関し、その前側または後側、あるいはコンタクトグラス内に位置する技術的構造が、基準構造RSとして機能する。
【0133】
この場合、基準構造RSとしてコンタクトグラスKG内に実現される技術的構造は、信号の特定のレベル、プラトー、曲線、位置、距離、もしくは複数のピーク、または特徴的な偏光依存性を有する特徴的な信号をOCDRにおいて生成する。好ましくは、実現される基準構造RSは、例えば散乱または偏光の変化によって変更可能であり、特に切り替え可能または変調可能である。
【0134】
特に好ましくは、コンタクトグラスKG内に実現される基準構造RSは、不可視スペクトル帯域で作用し、例えば誘電体反射層システムによって実現される。特に、誘電体反射層システムは、ターゲットレーザービームが400nm~1050nmの波長で反射され、レーザー治療システムの治療レーザービームが1050nmよりも大きい波長で主に透過されるように構成されている。
【0135】
有利な構成の第5のグループは、例えばオートフォーカスシステムを用いて、レーザー治療システムのレーザービームと共に、複数のターゲット構造ZSに焦点を合わせられる既存のイメージングシステムに関する。
【0136】
好ましくは、イメージングシステムのNAとレーザー治療システムのレーザービームのNAとは、2倍未満だけ異なる。
しかしながら、イメージングシステムおよびレーザー治療システムのレーザービームは、異なる波長を補償するために特定の集光差を有していてもよい。
【0137】
好ましくは、イメージングシステムは、作業深さに応じて、十分に大きな瞳孔直径を確保するように構成されている。
特に有利な構成によれば、イメージングシステムは、焦点の再調整によって推定された焦点位置を、治療レーザーの作動前の眼構造に関連して示すように構成されている。
【0138】
有利な構成の最後のグループは、OCDRシステムに関する。
好ましくは、OCDRシステムのNAとレーザー治療システムのレーザービームのNAとは、2倍未満だけ異なる。
【0139】
好ましくは、OCDRシステムの波長とレーザー治療システムのレーザービームの波長との互いからのずれは、10%以下である。
しかしながら、OCDRシステムおよびレーザー治療システムのレーザービームは、異なる波長を補償するために特定の集光差を有することも可能である。
【0140】
本発明による方法および装置は、眼科レーザー治療システムの焦点を再調整するための解決策を提供し、この解決策は、既知の技術的解決策の欠点を是正し、治療レーザーの焦点を再調整するときに、治療される眼の個性および光学系の公差を考慮に入れる。
【0141】
その結果、患者および/またはコンタクトグラスの変化、あるいは治療レーザーの焦点距離、遠近調節、および/または特に患者の眼の位置の変更とは無関係に、新しい治療状況ごとに治療レーザーの焦点位置を正確に決定することが可能である。
【0142】
さらに、提案された解決策は、実施が容易であり、費用効果が高く、より簡単で、より速く、とりわけ、より安全な眼のレーザー治療を可能にする。
本発明による解決策によって、レーザー治療を排除することができるブロックされた領域を確実かつ正確に設定することが可能であり、これは、敏感な眼の構造を保護および温存するために、特にレーザービトレオライシスのためのシステムに有用である。
【0143】
提案された解決策は、特にレーザービトレオライシスのための治療システムのために提供されるが、上述したように、レーザー治療システムの焦点を再調整するための提案された解決策から恩恵を受けるであろう多数の他の眼内用途オプションを提供する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】