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特表2024-536075神経障害を処置するための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】神経障害を処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/60 20060101AFI20240927BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240927BHJP
   A61K 135/00 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
A61K31/60
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P21/00
A61P25/02
A61P43/00 111
A61P9/10
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P25/06
A61P25/08
A61P25/18
A61P25/04
A61P25/24
A61K36/185
A61P43/00 121
A61K31/05
A61K31/352
A61K47/44
A61K135:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518588
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 AU2022051220
(87)【国際公開番号】W WO2023060301
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】2021903256
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2022900640
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2022901710
(32)【優先日】2022-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524110632
【氏名又は名称】ニューロテック インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クリップス, アラン ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】アイシグル, エズラ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリューズ, アレクサンドラ エリザベス マリオン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥーシー, トーマス ジョージ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C076CC01
4C076CC09
4C076CC11
4C076EE52
4C076EE53
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086DA17
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA22
4C086ZA36
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB15
4C086ZC41
4C086ZC75
4C088AB12
4C088AC02
4C088CA01
4C088CA02
4C088CA03
4C088CA06
4C088CA12
4C088NA05
4C088NA06
4C088ZA01
4C088ZA02
4C088ZA06
4C088ZA08
4C088ZA12
4C088ZA16
4C088ZA18
4C088ZA22
4C088ZA36
4C088ZA94
4C088ZA96
4C088ZB15
4C088ZC41
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA19
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA06
4C206ZA01
4C206ZA02
4C206ZA06
4C206ZA08
4C206ZA12
4C206ZA16
4C206ZA18
4C206ZA22
4C206ZA36
4C206ZA94
4C206ZA96
4C206ZB15
4C206ZC41
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、カンナビノイドを含む組成物に関する。本発明は、医薬組成物、剤形、およびそれを必要とする患者に組成物を投与することによって神経障害を処置する方法にも関する。第1の態様では、本発明は、以下のカンナビノイド:約50w/w%のCBDAを含み、すべての他のカンナビノイドが約15w/w%になる、組成物に広く属する。第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の組成物を、薬学的に許容される担体と一緒に含む、医薬組成物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のカンナビノイド:
w/w%
CBDA 40~60%;
CBD 1~5%;
CBG 1~10%;
CBDP 1~5%;
CBDB 1~5%;
CBGA 1~10%;
CBN 1~3%
および
THC<1%
を含む、組成物。
【請求項2】
前記カンナビノイドが、
w/w%
CBDA 50%;
CBD 2%;
CBG 5%;
CBDP 2%;
CBDB 2%;
CBGA 5%;
CBN 3%および
THC<0.3%;
を含む組成物1
ならびに
w/w%
CBDA 45%;
CBD 1%;
CBG 4%;
CBDP 1%;
CBDB 2%;
CBGA 4%;
CBN 2%および
THC<0.2%
を含む組成物2
からなる群より選択される量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
合成油、植物ベースの油、鉱油、キャノーラ油、およびオリーブ油からなる群より選択される油をさらに含む、上述した請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
5%w/w未満のテルペンを含む、上述した請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
2%w/w未満の有機植物材料を含む、上述した請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
2%w/w未満の植物フェノールを含む、上述した請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の前記カンナビノイド構成成分が、1~500mg/mlの間、10~100mg/mlの間、50mg/mlの濃度であるものからなる群より選択される、上述した請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の前記CBDA構成成分が、1~500mg/mlの間、10~100mg/mlの間、50mg/mlの濃度であるものからなる群より選択される、上述した請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
実施例1に記述されている条件を利用する図3に対応するUPLCマスクロマトグラムを有する、上述した請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物を、薬学的に許容される担体と一緒に含む、医薬組成物。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物を含む、剤形。
【請求項12】
前記組成物の前記CBDA構成成分が、1mg~1000mgの間、1mg~500mgの間、1~100mgの間、400mg未満、300mg未満、200mg未満および100mg未満からなる群より選択される、請求項11に記載の剤形。
【請求項13】
前記組成物の前記CBDA構成成分が、600mg、400mg、300mg、200mg、100mg、50mg、10mg、5mg、2mg、1mgからなる群より選択される、請求項11から12のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項14】
障害を処置する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の請求項11から13に記載の剤形を投与するステップを含む、方法。
【請求項15】
前記障害が神経障害である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記神経障害が、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脳虚血、外傷性脳傷害、関節リウマチ、慢性片頭痛、てんかん、自閉スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、脳性麻痺および関連するサブタイプ、神経因性疼痛、ならびにうつ病からなる群より選択される、請求項14から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
障害の処置のための医薬の製造における、請求項1および9に記載の組成物の使用。
【請求項18】
請求項1から9に記載の組成物を大麻植物材料から抽出するプロセスであって、
(1)前記大麻植物材料を十分な粉砕サイズに粉砕するステップと、
(2)ステップa)によって生成された粉砕物を油と接触させるステップと、
(3)前記粉砕物および油を十分な期間にわたって混合して、混合物を形成するステップと、
(4)前記混合物を圧搾して前記油を回収するステップと、
(5)前記油を遠心分離して前記油をさらに精錬するステップと、
(6)油抽出物を好適なコンテナ内に収集するステップと
を含む、プロセス。
【請求項19】
請求項1から9に記載の組成物を大麻植物材料から抽出するプロセスであって、
(1)前記大麻植物材料を十分な粉砕サイズに粉砕するステップと、
(2)ステップa)によって生成された粉砕物をアルコールと接触させるステップと、
(3)前記粉砕物およびアルコールを十分な期間にわたって混合して、混合物を形成するステップと、
(4)前記混合物を超音波処理するステップと、
(5)前記混合物を遠心分離するステップと、
(6)アルコール抽出物を好適なコンテナ内に収集するステップと
を含む、プロセス。
【請求項20】
請求項18または19に記載のプロセスにより生成された生成物。
【請求項21】
請求項11から13に記載の剤形を、使用についての指示と一緒に含む、キット。
【請求項22】
先述の実施例によって記述されている通りの、組成物、方法およびプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、カンナビノイドを含む組成物に関する。本発明は、医薬組成物、剤形、およびそれを必要とする患者に組成物を投与することによって神経障害を処置する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
背景
以下の背景技術の考察は、本発明の理解を容易にすることのみが意図されている。考察は、言及されている材料のいずれかが出願の優先日におけるものとしての一般常識の一部であるまたはあったことの了承でも承認でもない。
【0003】
A.神経炎症
神経炎症は、傷害、感染症、毒素への曝露、神経変性疾患または老化によってもたらされるもの等、炎症性負荷後に脳の自然免疫系がトリガーされるプロセスを指す。神経炎症は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脳虚血、外傷性脳傷害、関節リウマチ、慢性片頭痛、てんかん、自閉スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、脳性麻痺および関連するサブタイプ、神経因性疼痛、ならびにうつ病を含む様々な神経学的および身体的疾病に寄与することに関係する。
【0004】
中枢神経系(CNS)において、自然免疫応答は、生理学的および病理学的状態の両方において有意な役割を果たす。外傷性脳傷害、虚血性脳卒中、脳腫瘍、ならびに脳血管および神経変性疾患を含むCNS疾患は、神経炎症として広く定義される事象のカスケードをトリガーし、これは、ミクログリアおよび星状膠細胞集団の活性化によって特徴付けられる。他方で、ミクログリアのおよび星状膠細胞の活性化、Tリンパ球浸潤、ならびに炎症性サイトカインの過剰産生は、動物およびヒトの両方の組織において、ニューロンの変更に関連して実証されている。したがって、神経炎症は、現代の神経科学における重要な話題である。
【0005】
炎症性サイトカイン/マーカーまたは炎症促進性サイトカイン/マーカーは、ヘルパーT細胞およびマクロファージのような免疫細胞から分泌されるシグナル伝達分子の種類ならびに神経炎症のプロセスおよび一般的な炎症プロセスを促進するある特定の他の細胞型である。これらは、インターロイキン-1(IL-1)、IL-12およびIL-18、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、インターフェロンガンマ(IFNγ)ならびに顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含む。これらの炎症性サイトカインは、炎症反応の上方調節によって主に産生されるおよびそれに関与し、自然免疫応答を媒介する際に重要な役割を果たす。
【0006】
B.神経障害
「神経炎症に基づく」ものである神経障害の例は、アルツハイマー病(アルツハイマー病は、最も蔓延している慢性、進行性神経変性疾患、および認知症の原因である)、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脳虚血、外傷性脳傷害、関節リウマチ、慢性片頭痛、てんかん、自閉スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害、脳性麻痺および関連するサブタイプ、神経因性疼痛、ならびにうつ病を含む。
【0007】
C.ミクログリア活性化/神経変性
ミクログリア細胞は、中枢神経系(CNS)に特有の在住マクロファージである。それらは、CNS発達および成人の恒常性中に重要な役割を果たす。それらは、成人の神経発生および神経炎症への大きな寄与を有する(Zhan Y., Paolicelli R. C., Sforazzini F., et al. Deficient neuron-microglia signaling results in impaired functional brain connectivity and social behavior. Nature Neuroscience. 2014;17(3):400-406;Guruswamy R, ElAli A. Complex Roles of Microglial Cells in Ischemic Stroke Pathobiology: New Insights and Future Directions. Int J Mol Sci. 2017;18:18)。故に、それらは、神経変性疾患の病因に関わり、老化に寄与する。それらは、血液脳関門の持続および破壊の際に重要な役割を果たす。自然免疫細胞として、それらは、CNSを侵す感染性病原体に対する免疫応答に実質的に寄与する(Xiong XY, Liu L, Yang QW. Functions and mechanisms of microglia/macrophages in neuroinflammation and neurogenesis after stroke. Prog Neurobiol. 2016;142:23-44)。それらは、CNSの腫瘍の成長においても主な役割を果たす。ミクログリアは、その結果として、神経および免疫系を結び付ける主要細胞集団である(Xiong XY, Liu L, Yang QW. Functions and mechanisms of microglia/macrophages in neuroinflammation and neurogenesis after stroke. Prog Neurobiol. 2016;142:23-44)。
【0008】
生理学的条件下で、分岐した休眠中のミクログリアは、神経保護環境を提供する(David S, Greenhalgh AD, Kroner A. Macrophage and microglial plasticity in the injured spinal cord. Neuroscience. 2015;307:311-18;Bieber K, Autenrieth SE. Insights how monocytes and dendritic cells contribute and regulate immune defense against microbial pathogens. Immunobiology. 2015;220:215-26)。しかしながら、ほとんどのCNS病理、および再生への取り組みは、対応する炎症事象を伴うミクログリアの活性化を含む(Hoogland IC, Houbolt C, van Westerloo DJ, van Gool WA, van de Beek D. Systemic inflammation and microglial activation: systematic review of animal experiments. J Neuroinflammation. 2015;12:114;Ascoli BM, Gea LP, Colombo R, Barbe-Tuana FM, Kapczinski F, Rosa AR. The role of macrophage polarization on bipolar disorder: identifying new therapeutic targets. Aust N Z J Psychiatry. 2016;50:618-30;Cherry JD, Olschowka JA, O'Banion MK. Neuroinflammation and M2 microglia: the good, the bad, and the inflamed. J Neuroinflammation. 2014;11:98)。故に、活性化した炎症ミクログリアは、神経毒性であり、それらを飲み込むこと、または活性酸素種(ROS)、グルタメート、Fasリガンド、腫瘍壊死因子α(TNFα)およびその他を含む種々の神経毒性分子ならびに因子を放出することによって、ニューロンを死滅させる(Loane DJ, Kumar A. Microglia in the TBI brain: the good, the bad, and the dysregulated. Exp Neurol. 2016;275:316-27;Nakagawa Y, Chiba K. Diversity and plasticity of microglial cells in psychiatric and neurological disorders. Pharmacol Ther. 2015;154:21-35)。
【0009】
慢性神経炎症を駆動する活性化したミクログリアは、CNSの老化(Loane DJ, Kumar A. Microglia in the TBI brain: the good, the bad, and the dysregulated. Exp Neurol. 2016;275:316-27)、慢性神経因性疼痛(Orihuela R, McPherson CA, Harry GJ. Microglial M1/M2 polarization and metabolic states. Br J Pharmacol. 2016;173:649-65)および精神疾患(Orihuela R, McPherson CA, Harry GJ. Microglial M1/M2 polarization and metabolic states. Br J Pharmacol. 2016;173:649-65)、ならびにアルツハイマー病(Nakagawa Y, Chiba K. Diversity and plasticity of microglial cells in psychiatric and neurological disorders. Pharmacol Ther. 2015;154:21-35)、パーキンソン病(Orihuela R, McPherson CA, Harry GJ. Microglial M1/M2 polarization and metabolic states. Br J Pharmacol. 2016;173:649-65)筋萎縮性側索硬化症(ALS)および多発性硬化症を含む神経変性疾患に実質的に寄与することも示されている。老化は、低レベル炎症状態に向かって免疫系の全身性慢性活性化および分極化と並行して進む(Ransohoff RM. A polarizing question: do M1 and M2 microglia exist? Nat Neurosci. 2016;19:987-91;Tang Y, Le W. Differential Roles of M1 and M2 Microglia in Neurodegenerative Diseases. Mol Neurobiol. 2016;53:1181-94)。
【0010】
D.大麻の薬用適用
Cannabis sativa L.は、医学的使用の伝統を有する。薬用大麻は、その抗炎症、抗酸化および抗壊死性保護効果、ならびにヒトにおいて好都合な安全性および耐容性プロファイルを表示することにより、大きな関心を集めており、それを多くの治療手段における有望な候補にしている。しかしながら、臨床使用は、中枢神経系に対する不都合な効果ならびに乱用および嗜癖の可能性を理由として制限されてきた。該植物は、2つの主構成成分、Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)およびカンナビジオール(CBD)を有するカンナビノイドのミックスを含有する樹脂を滲出する。CBDの構造は1960年代に記述されており、向精神活性の欠如により注目を浴びている。ヒトにおけるその優れた耐容性、精神活性作用の欠如および低い乱用潜在性を理由として、これは臨床試験に理想的と思われる。
【0011】
E.カンナビノイド
その良好な安全性プロファイルおよび精神活性効果の欠如に加えて、CBDは、広範囲の治療効果も提示する。いくつかの実験的なin vitroおよびin vivo研究は、抗炎症ならびに免疫修飾、抗精神病性、鎮痛および抗てんかん作用を実証している。これらの理由で、CBDは、現在、最も研究されているカンナビノイドの1つである。Δ9-THCと比較すると、CBDは、カンナビノイド受容体1型(CB)および2型(CB)に対して低い親和性を示す。CB受容体は、主として中枢および末梢ニューロンの末端において、CB受容体は、主に免疫細胞において見出される。いくつかのin vitro研究は、CBDが、低濃度で、弱いCBおよびCB拮抗効果を有することを示した。
【0012】
研究は、CBDがCBのネガティブアロステリックモジュレーターとして挙動することを示唆し、CBDは受容体を直接活性化しないが、CBD1のオルソステリックリガンド:Δ9-THCおよび2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)の効力および有効性を変更することを意味している。これらの予備段階の結果は、さらなる検証を必要とするが、in vitro、in vivoおよびヒト臨床研究において報告されたΔ9-THCの効果の一部をアンタゴナイズするCBDの能力を説明し得る。CBのアロステリックモジュレーターとしてのCBDの役割は、中枢および末梢神経系障害の処置におけるその治療的役割を説明することができることも示唆されてきた。CBDは、好中球の走化性および増殖を阻害することも示されている。CBDは、アラキドン酸放出も誘発し、プロスタグランジンE2(PGE2)および一酸化窒素(NO)産生を低減させ得る。
【0013】
しかしながら、CBDの生理学的効果のすべてがカンナビノイド受容体によって媒介されるとは限らない。CBDは、エンドカンナビノイドシステムの外側に多数の標的を有し、カンナビノイド受容体とは関係ないその作用は、最近の薬理学的研究の対象である。抗炎症および免疫抑制作用等の一部の効果は、1つを超える標的によって媒介される。抗炎症、免疫抑制効果は、おそらく、アデノシン受容体A1AおよびA2Aならびにストリキニーネ感受性α1およびα1βグリシン受容体の活性化、ならびに、受動拡散型ヌクレオシド輸送体の阻害によって媒介される。さらに、CBDの活性は、同じ標的から異なる生理学的効果を導出し得る。例えば、同じグリシン受容体は、抗炎症および神経因性疼痛の抑制の両方に関係する。セロトニン5HT1A受容体に対する効果は抗不安、パニック消散性(panicolytic)および抗うつ効果を発生させ得るが、調査により、CBDの分子薬理学の綿密な概観が示された。CBDの分子薬理学における進歩にもかかわらず、CBDの多くの薬理学的機序は特徴付けられないままである。
【0014】
動物における公表された研究は、カンナビジオールの経口バイオアベイラビリティがおよそ13~19%の間であると示されたことを実証した。血漿および脳中濃度は動物において用量依存性であり、バイオアベイラビリティは種々の油製剤により増大する。カンナビノイドは、広範囲に及ぶ初回通過代謝を受け、その代謝物は腎臓を介してほとんど排出される。
【0015】
カンナビノイドは、肝臓によって広範に代謝され、ここでP450酵素によって、主にアイソザイムのCYP3A(2/4)およびCYP2C(8/9/19)ファミリーによって、7-OH-CBDにヒドロキシル化される。次いで、この代謝物は肝臓において大幅なさらなる代謝を受け、得られた代謝物は糞便中におよびはるかに低い程度であるが尿中に排出される。
【0016】
カンナビジオールは、脳を含む末梢および中枢神経系を含む体の多数のエリアにおいて見られるエンドカンナビノイドシステムのカンナビノイド(CB)受容体(CB1およびCB2)に作用することが公知である。エンドカンナビノイドシステムは、疼痛、記憶、食欲および気分を含む、体の多くの生理学的応答を調節する。より具体的には、CB1受容体は脳および脊髄の疼痛経路内に見ることができ、ここでカンナビジオール誘発性鎮痛および不安緩解に影響を及ぼすことができ、CB2受容体は免疫細胞に対して効果を有し、ここでカンナビジオール誘発性抗炎症プロセスに影響を及ぼすことができる。
【0017】
カンナビジオールは、体内に最も豊富なGタンパク質共役受容体(GPCR)であるカンナビノイドCB1受容体のネガティブアロステリックモジュレーターとして作用することが示されている。受容体のアロステリック調節は、アゴニストまたはアンタゴニスト結合部位から機能的に異なった部位に対して、受容体の活性のモジュレーションによって達成される。直接アゴニストはそれらの精神作用効果(psychomimetic effect)によって限定されるのに対し、直接アンタゴニストはそれらの抑制効果によって限定されることから、カンナビジオールのネガティブアロステリック調節性効果は治療的に重要である。
CBDの規制当局の承認においていくつかの進展があった。Epidiolex(登録商標)は、2018年に米国において使用のFDA承認を獲得した、植物由来の医薬品グレードカンナビジオール(CBD)薬剤である。Epidiolex(登録商標)は、溶液1ミリリットル(mL)当たり100mgのカンナビジオールを含有し、1日に2回経口摂取される。豪州保健省薬品・医薬品行政局(TGA)は、2歳またはそれよりも年長の患者におけるレノックス・ガストー症候群(LGS)またはドラベ症候群に関連する発作の処置のために、2020年9月にEpidiolexを承認した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Zhan Y., Paolicelli R. C., Sforazzini F., et al. Deficient neuron-microglia signaling results in impaired functional brain connectivity and social behavior. Nature Neuroscience. 2014;17(3):400-406
【非特許文献2】Guruswamy R, ElAli A. Complex Roles of Microglial Cells in Ischemic Stroke Pathobiology: New Insights and Future Directions. Int J Mol Sci. 2017;18:18
【非特許文献3】Xiong XY, Liu L, Yang QW. Functions and mechanisms of microglia/macrophages in neuroinflammation and neurogenesis after stroke. Prog Neurobiol. 2016;142:23-44
【非特許文献4】Xiong XY, Liu L, Yang QW. Functions and mechanisms of microglia/macrophages in neuroinflammation and neurogenesis after stroke. Prog Neurobiol. 2016;142:23-44
【非特許文献5】David S, Greenhalgh AD, Kroner A. Macrophage and microglial plasticity in the injured spinal cord. Neuroscience. 2015;307:311-18
【非特許文献6】Bieber K, Autenrieth SE. Insights how monocytes and dendritic cells contribute and regulate immune defense against microbial pathogens. Immunobiology. 2015;220:215-26
【非特許文献7】Hoogland IC, Houbolt C, van Westerloo DJ, van Gool WA, van de Beek D. Systemic inflammation and microglial activation: systematic review of animal experiments. J Neuroinflammation. 2015;12:114
【非特許文献8】Ascoli BM, Gea LP, Colombo R, Barbe-Tuana FM, Kapczinski F, Rosa AR. The role of macrophage polarization on bipolar disorder: identifying new therapeutic targets. Aust N Z J Psychiatry. 2016;50:618-30
【非特許文献9】Cherry JD, Olschowka JA, O'Banion MK. Neuroinflammation and M2 microglia: the good, the bad, and the inflamed. J Neuroinflammation. 2014;11:98
【非特許文献10】Loane DJ, Kumar A. Microglia in the TBI brain: the good, the bad, and the dysregulated. Exp Neurol. 2016;275:316-27
【非特許文献11】Nakagawa Y, Chiba K. Diversity and plasticity of microglial cells in psychiatric and neurological disorders. Pharmacol Ther. 2015;154:21-35
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
当技術分野において、改善されたカンナビノイド組成物および神経障害の有効な処置が必要である。本発明の目的は、先行技術によって予見される1つまたは複数の問題を克服することである。
【0020】
発明の概要
第1の態様では、本発明は、以下のカンナビノイド:約50w/w%のCBDAを含み、すべての他のカンナビノイドが約15w/w%になる、組成物に広く属する。
【0021】
好ましい実施形態では、組成物は、以下のカンナビノイド:
w/w%
CBDA 40~60%;
CBD 1~5%;
CBG 1~10%;
CBDP 1~5%;
CBDB 1~5%;
CBGA 1~10%;
CBN 1~3%;および
THC<1%
を含む。
【0022】
別の好ましい実施形態では、組成物は、以下のカンナビノイド:
w/w%
CBDA 50%;
CBD 2%;
CBG 5%;
CBDP 2%;
CBDB 2%;
CBGA 5%;
CBN 1~3%;および
THC<0.3%
を含む。
【0023】
別の好ましい実施形態では、組成物は、以下のカンナビノイド:
w/w%
CBDA 49%;
CBD 2%;
CBG 5%;
CBDP 2%;
CBDB 2%;
CBGA 5%;
CBN 3%;および
THC<0.3%
を含む。
【0024】
別の好ましい実施形態では、組成物は、以下のカンナビノイド:
w/w%
CBDA 45%;
CBD 1%;
CBG 4%;
CBDP 1%;
CBDB 2%;
CBGA 4%;
CBN 2%;および
THC<0.2%
を含む。
【0025】
別の好ましい実施形態では、組成物は、以下のカンナビノイド:
w/w%
CBDA 45%;
CBD 1%;
CBG 4%;
CBDP 1%;
CBDB 2%;
CBGA 4%;
CBN 1%;および
THC<0.2%
を含む。
【0026】
好ましい実施形態では、組成物は、カンナビノイドを、上述した実施形態のいずれか1つからなる群より選択される量で含む。
【0027】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の組成物を、薬学的に許容される担体と一緒に含む、医薬組成物である。
【0028】
第3の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の組成物を含む、剤形である。
【0029】
第4の態様では、本発明は、障害を処置する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の本発明の剤形を投与するステップを含む、方法である。
【0030】
第5の態様では、本発明は、障害の処置のための医薬の製造における、本発明の組成物の使用である。
【0031】
第6の態様では、本発明は、本発明の組成物を大麻植物材料から抽出するプロセスであって、
1)大麻植物材料を十分な粉砕サイズに粉砕するステップと、
2)ステップa)によって生成された粉砕物を油と接触させるステップと、
3)粉砕物および油を十分な期間混合して、混合物を形成するステップと、
4)混合物を圧搾して油を回収するステップと、
5)油を遠心分離して油をさらに精錬するステップと、
6)油抽出物を好適なコンテナ/鋼容器内に収集するステップと
を含む、プロセスである。
【0032】
第7の態様では、本発明は、本発明の組成物を大麻植物材料から抽出するプロセスであって、
1)大麻植物材料を十分な粉砕サイズに粉砕するステップと、
2)ステップa)によって生成された粉砕物をアルコールと接触させるステップと、
3)粉砕物およびアルコールを十分な期間混合して、混合物を形成するステップと、
4)混合物を超音波処理するステップと、
5)混合物を遠心分離するステップと、
6)アルコール抽出物を好適なコンテナ/鋼容器内に収集するステップと
を含む、プロセスである。
【0033】
第8の態様では、本発明は、本発明のプロセスにより生成された生成物である。
【0034】
第9の態様では、本発明は、本発明の剤形を、その使用についての指示と一緒に含む、キットである。
【0035】
第9の態様では、本発明は、以下の例によって記述されている通りの、組成物、方法およびプロセスを含む。
【0036】
本発明のさらなる特色は、以下のそのいくつかの非限定的な実施形態の記述において、より完全に記述される。この記述は、本発明を例示することのみを目的として含まれる。これは、上で明記した通りの本発明の大まかな概要、開示または記述に対する制限として理解されるべきではない。
【0037】
以下は、図および図面のそれぞれの簡単な説明である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、a)陽およびb)陰イオン化モードでの、カンナビノイド標準混合物(それぞれ10ppm)のUPLC質量分析クロマトグラムである。
【0039】
図2図2は、基準溶液からのCBDおよびCBGのインソース断片化である。
【0040】
図3図3は、NTI164についての質量分析クロマトグラムを示す。
【0041】
図4図4は、CBDBおよびCBDPを同定するためのNTI164のCBDバリアントの四重極質量分析クロマトグラムを示す。
【0042】
図5図5は、NTI164による炎症誘発性iNOS発現の正常化を表す。図は、NTI164が炎症誘発性iNOS発現を正常化することを示す。
【0043】
図6図6は、MTT[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル-)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロミド]を使用して定量化されたニューロンの生存度を提示する。図は、NTI164が基本条件(短期曝露)下でニューロンの数を増大させることを示す。
【0044】
図7図7は、NTI164が、いかなるグルタメート誘発性の損傷の存在もない場合であっても、未熟なニューロンの健康な細胞への成熟を刺激することを実証する。図は、ニューロンに対するNTI164単独(グルタメートなし)の効果を示す。
【0045】
図8図8は、CBDがこのパラダイムにおいて毒性であるのに対し、NTI164が非毒性であり、細胞数および細胞生存度に対して正の効果を有することを実証する。図は、NTI164が、興奮毒性細胞傷害パラダイムにおいて細胞死を増大させないことを示す。
【0046】
図9図9は、アルギナーゼ1発現を評価する炎症状態下でのミクログリアの応答を示す。図は、NTI164が炎症誘発性(傷害を受けた細胞)Arg1発現を正常化することを示す。
【0047】
図10図10は、アルギニン代謝ならびにそれが抗炎症および炎症促進性シグナルの全体的なバランスに対して有する効果を概説する略図である(参考文献:Review. Goncalo S. Clemente, Aren van Waarde, Ines F. Antunes, Alexander Domling and Philip H. Elsinga. Arginase as a Potential Biomarker of Disease Progression: A Molecular Imaging Perspective. (2020))。
【0048】
図11図11は、実施例6について、NTI164を積極的に使用する患者の分布を示す。
【0049】
図12図12は、実施例6について、疾病のCGI-S重症度の通りに、ベースライン時における有効な(active)患者の疾病の重症度の分布を示す。
【0050】
図13図13は、実施例6について、有効な患者のための最大耐用量を示す。
【0051】
図14図14は、28日間のNTI164処置時におけるCGI-S全般的改善を示す。
【0052】
図15図15は、28日間の処置後の疾病のCGI-S重症度を示す。
【0053】
図16図16は、28日間の処置後の疾病のCGI-S重症度を示す。
【0054】
図17図17は、28日間の処置後のCGI-S治療効果を示す。
【0055】
図18図18は、実施例7について、NTI164を積極的に使用する患者の年齢分布を示す。
【0056】
図19図19は、実施例7について、疾病のCGI-S重症度の通りに、ベースライン時における有効な患者の疾病の重症度の分布を示す。CGI-Sは、臨床全般印象尺度-疾病の重症度を指す。
【0057】
図20図20は、20週間のNTI164処置時におけるCGI-S全般的改善を示す。
【0058】
図21図21は、最大20週間(20週間を含む)のNTI164処置の経時的なCGI-S全般的改善を示す。
【0059】
図22図22は、20週間の処置時における疾病のCGI-S重症度を示す。
【0060】
図23図23は、最大20週間(20週間を含む)の処置の経時的な疾病のCGI-S重症度を示す。
【0061】
図24図24は、20週間の処置時における疾病のCGI-S重症度を示す。
【0062】
図25図25は、最大20週間(20週間を含む)の処置の経時的なCGI-S治療効果を示す。
【0063】
図26図26は、20週間の処置時におけるCGI-S治療効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
発明の詳細な説明
便宜上、以下の項は、概して本明細書で使用される用語の種々の意味を概説する。この考察に準拠し、本発明の組成物、医薬の使用および方法に関する一般的な態様が考察され、本発明の種々の実施形態の特性およびそれらがどのようにして用いられ得るかを実証する具体例が続く。
【0065】
当業者ならば、本明細書で記述される発明が、具体的に記述されているもの以外の変形形態および修正形態の影響を受けやすいことが分かるであろう。本発明は、すべてのそのような変形形態および修正形態を含む。本発明は、明細書において個々にまたは集合的に言及されるまたは指示されるステップ、特色、製剤および化合物のすべて、ならびにステップまたは特色のありとあらゆる組合せまたはいずれか2つまたはそれよりも多くも含む。
【0066】
このテキストで引用されている各文書、参考文献、特許出願または特許は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれ、それが読者によってこのテキストの一部として読まれるおよびみなされるべきであることを意味する。このテキストで引用されている文書、参考文献、特許出願または特許がこのテキストにおいて繰り返されないことは、単に簡潔性を理由とする。しかしながら、引用資料またはその資料に含有される情報のいずれも、一般常識であると理解されるべきではない。
【0067】
本明細書で述べられるあらゆる製品についての、または参照により本明細書に組み込まれるあらゆる文書における、製造業者の指示、説明、製品仕様および製品シートは、参照により本明細書に組み込まれ、本発明の実践において用いられ得る。
【0068】
本発明は、本明細書で記述される具体的な実施形態のいずれかによる範囲内に限定されない。これらの実施形態は、例示目的のみが意図されている。機能的に同等の生成物、製剤および方法は、明確に、本明細書で記述される通りの本発明の範囲内である。
【0069】
1.定義
明細書、実施例および添付の特許請求の範囲において使用されるある特定の用語および語句の意味を、以下に提供する。当技術分野におけるある用語の用法と本明細書で提供されるその定義との間に明らかな相違がある場合、明細書内で提供される定義を優先するものとする。
【0070】
機能する実施例または特に指示されている場合以外で、本明細書で使用される成分の分量または反応条件を表現しているすべての数字は、すべての事例において、用語「約」によって修飾されているとして理解されるべきである。用語「約」は、パーセンテージと関連付けて使用される場合、±1%を意味し得る。
【0071】
本明細書で記述される発明は、値の1つまたは複数の範囲(例えば、サイズ、濃度等)を含んでよい。値の範囲は、範囲を定義している値、および範囲との境界を定義する値と直接隣接している値と同じまたは実質的に同じ結果につながる範囲に隣接する値を含む、範囲内のすべての値を含むと理解されるであろう。例えば、当業者ならば、範囲の上限または下限内の10%変動は完全に適切であり得、本発明によって包括されることを理解するであろう。より特定すれば、範囲の上限または下限内の変動は5%、または当技術分野において一般に認識されているように、どちらか大きい方となる。
【0072】
本出願において、単数形の使用は、具体的に別段の記載がない限り、複数形も含む。本出願において、「または」の使用は、別段の記載がない限り、「および/または」を意味する。さらに、用語「を含む(including)」ならびに「を含む(includes)」および「含まれる」等の他の形態の使用は、限定的ではない。また、「要素」または「構成成分」等の用語は、具体的に別段の記載がない限り、1つのユニットを含む要素および構成成分ならびに1つを超えるサブユニットを含む要素および構成成分の両方を包括する。また、用語「部」の使用は、部分の一部または部分全体を含むことができる。
【0073】
本明細書全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、語「を含む(comprise)」または「を含む(comprises)」もしくは「を含む(comprising)」等の変形体は、記載されている整数または整数の群の包含を暗示するが、いかなる他の整数または整数の群の除外も暗示するものではないことが理解されるであろう。
【0074】
「治療有効量」は、処置の方法および特に薬物投薬量に関して本明細書で使用される場合、そのような処置を必要とするかなりの数の対象において薬物が投与される、特異的な薬理学的応答を提供する投薬量を意味するものとする。特定の事例において特定の対象に投与される「治療有効量」は、そのような投薬量が当業者によって「治療有効量」とみなされるとしても、本明細書で記述される疾患を処置する際に常に有効であるとは限らないことが強調される。薬物投薬量は、特定の事例において、経口投薬量として、または血液中で測定された際の薬物レベルを参照して測定されることをさらに理解されたい。そのような使用に有効な量は、所望の治療効果、生物学的活性材料の効力、所望の処置持続時間、処置されている疾患のステージおよび重症度、患者の重量および全般的健康状態、ならびに処方医師の判断によって決まることになる。処置投薬量は、安全性および有効性を最適化するように滴定される必要がある。故に、当業者ならば、処置のための適切な投薬量レベルは、部分的には、活性剤が使用されている適応症、投与ルート、ならびに患者のサイズ(体重、体表または臓器サイズ)および状態(年齢および全般的健康)に応じて変動することになると分かるであろう。したがって、臨床医は、最適な治療効果を取得するために、投薬量を滴定し、投与ルートを修正してよい。典型的な投薬量は、上述した要因に応じて、約0.1μg/kg~最大約100mg/kgまたはそれよりも大きい範囲であり得る。他の実施形態では、投薬量は、0.1μg/kg~最大約100mg/kg、または1μg/kg~最大100mg/kg、または5μg/kg~最大約100mg/kgの範囲であり得る。
【0075】
投薬の頻度は、使用される活性剤および製剤の薬物動態パラメーターによって決まることになる。典型的には、臨床医は、所望の効果を達成する投薬量に到達するまで、組成物を投与することになる。したがって、組成物は、単回用量として、または2つもしくはそれよりも多い用量(同じ量の所望の分子を含有してもしなくてもよい)として時間をかけて、または埋め込みデバイスもしくはカテーテルを介して持続注入として、投与されてよい。適切な投薬量のさらなる精緻化は、当業者によって日常的に為され、当業者によって日常的に実施されるタスクの領域内である。適切な投薬量は、適切な用量応答データの使用により解明され得る。
【0076】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤等を含む。
【0077】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、概して、哺乳動物、例えば、ヒト;ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、ラマ等の家畜;イヌおよびネコ等のコンパニオンアニマル;霊長類;ニワトリ、ガンおよびアヒル等の鳥類;魚類;ならびに爬虫類を含む。対象は、好ましくはヒトである。
【0078】
本明細書で使用される選択された用語についての他の定義は、本発明の詳細な説明内で見出され見つかり、全体を通して適用され得る。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての他の科学的および技術的用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
【0079】
ここで、以下の非限定的な記述および例を参照して、本発明の特色について考察する。
【0080】
2.実施形態
組成物
本発明は、以下のカンナビノイド:
約50w/w%のCBDA
を含み、
すべての他のカンナビノイドが約15w/w%になる、
組成物を提供する。
【0081】
好ましい実施形態では、本発明は、以下のカンナビノイド:
w/w%
約50%のCBDA、および
約2%のCBD
を含む、組成物を提供する。
【0082】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、以下のカンナビノイド:
w/w%
約50%のCBDA、および
約5%のCBG
を含む、組成物を提供する。
【0083】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、以下のカンナビノイド:
w/w%
約50%のCBDA、および
約2%のCBDP
を含む、組成物を提供する。
【0084】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、以下のカンナビノイド:
w/w%
約50%のCBDA、および
約2%のCBDB
を含む、組成物を提供する。
【0085】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、以下のカンナビノイド:
w/w%
約50%のCBDA、および
約5%のCBGA
を含む、組成物を提供する。
【0086】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、カンナビノイドを含み、CBDAのすべての他のカンナビノイドに対する比が4:1~2:1の間である、組成物を提供する。
【0087】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、カンナビノイドを含み、CBDAのすべての他のカンナビノイドに対する比が約3:1である、組成物を提供する。
【0088】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、カンナビノイドを含み、CBDAのすべての他のカンナビノイドに対する比が約3.21:1である、組成物を提供する。
【0089】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、以下のカンナビノイド:
w/w%
CBDA 40~60%;
CBD 1~5%;
CBG 1~10%;
CBDP 1~5%;
CBDB 1~5%;
CBGA 1~10%;
CBN 1~3%;および
THC<1%
を含む、組成物を提供する。
【0090】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、以下のカンナビノイド:
w/w%
CBDA 45~55%;
CBD 1~3%;
CBG 3~7%;
CBDP 1~3%;
CBDB 1~3%;
CBGA 3~7%;
CBN 1~3%;および
THC<0.5%
を含む、組成物を提供する。
【0091】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、以下のカンナビノイド:
w/w%
CBDA 50%;
CBD 2%;
CBG 5%;
CBDP 2%;
CBDB 2%;
CBGA 5%;
CBN 3%;および
THC<0.3%
を含む、組成物を提供する。
【0092】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、以下のカンナビノイド:
w/w%
CBDA 49%;
CBD 2%;
CBG 5%;
CBDP 2%;
CBDB 2%;
CBGA 5%;
CBN 2%;および
THC<0.3%
を含む、組成物を提供する。
【0093】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、以下のカンナビノイド:
w/w%
CBDA 48.78%;
CBD 1.89%;
CBG 4.88%;
CBDP 1.68%;
CBDB 1.76%;
CBGA 4.76%;
CBN 1%;および
THC<0.18%
を含む、組成物を提供する。
【0094】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、以下のカンナビノイド:
w/w%
CBDA 45%;
CBD 1%;
CBG 4%;
CBDP 1%;
CBDB 2%;
CBGA 4%;
CBN 2%;および
THC<0.2%
を含む、組成物を提供する。
【0095】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、以下のカンナビノイド:
w/w%
CBDA 45.28%;
CBD 1.39%;
CBG 3.88%;
CBDP 1.18%;
CBDB 1.56%;
CBGA 3.76%;
CBN 1%;および
THC<0.18%
を含む、組成物を提供する。
【0096】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、以下のカンナビノイド:
w/w%
CBDA 62.78%;
CBD 5.80%;
CBG 0.44%;
CBGA 1.26%;
CBN 1.98%;および
THC<0.70%
を含む、組成物を提供する。
【0097】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、以下のカンナビノイド:
w/w%
CBDA 60.29%;
CBD 5.34%;
CBG 0.39%;
CBGA 1.14%;
CBN 0.85%;および
THC<0.65%
を含む、組成物を提供する。
【0098】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、カンナビノイドが、
w/w%
CBDA 50%;
CBD 2%;
CBG 5%;
CBDP 2%;
CBDB 2%;
CBGA 5%;
CBN 3%;および
THC<0.3%;
を含む組成物1
ならびに
w/w%
CBDA 45%;
CBD 1%;
CBG 4%;
CBDP 1%;
CBDB 2%;
CBGA 4%;
CBN 2%;および
THC<0.2%
を含む組成物2
からなる群より選択される量で存在する、組成物を提供する。
【0099】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、カンナビノイドの分量が、高速クロマトグラフィー(HPLC)、プロトン核磁気共鳴分光法(H NMR)、および質量分析からなる群より選択される方法によって決定される、組成物を提供する。
【0100】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、大麻植物材料に由来する組成物を提供する。
【0101】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、前記収載されているカンナビノイドが合成である組成物を提供する。
【0102】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、前記収載されているカンナビノイドが、植物由来カンナビノイドと合成カンナビノイドの混合物である組成物を提供する。
【0103】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、合成油、植物ベースの油、鉱油、キャノーラ油、およびオリーブ油からなる群より選択される油をさらに含む組成物を提供する。
【0104】
さらなる好ましい実施形態では、組成物は、5%w/w未満のテルペンを含む。
【0105】
さらなる好ましい実施形態では、組成物は、2%w/w未満の有機植物材料を含む。
【0106】
さらなる好ましい実施形態では、組成物は、2%w/w未満の植物フェノールを含む。
【0107】
さらなる好ましい実施形態では、組成物は、フラボノイド、タンパク質、ステロールおよびエステルからなる群より選択される構成成分を含む。
【0108】
さらなる好ましい実施形態では、組成物は実質的に純粋である。好ましくは、純度は、高速クロマトグラフィー(HPLC)、プロトン核磁気共鳴分光法(H NMR)、および質量分析からなる群より選択される方法によって決定される。好ましくは、純度は、75%より高い純度、80%より高い純度、85%より高い純度、90%より高い純度、95%より高い純度、96%より高い純度、97%より高い純度、98%より高い純度、99%より高い純度、99.5%より高い純度、99.6%より高い純度、99.7%より高い純度、99.8%より高い純度、99.9%より高い純度、99.95%より高い純度、99.96%より高い純度、99.97%より高い純度、99.98%より高い純度および99.99%より高い純度からなる群より選択される。
【0109】
さらなる好ましい実施形態では、組成物は、高速クロマトグラフィー(HPLC)、プロトン核磁気共鳴分光法(H NMR)、および質量分析からなる群より選択される方法によって測定された際、0.1wt%未満の有機不純物を含む。
【0110】
さらなる好ましい実施形態では、組成物は、大気中酸素を実質的に含まない。
【0111】
さらなる好ましい実施形態では、組成物は無菌である。代替的な好ましい実施形態では、組成物は無菌ではない。
【0112】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、組成物のカンナビノイド構成成分が、1~500mg/mlの間、10~100mg/mlの間、50mg/mlの濃度であるものからなる群より選択される、組成物を提供する。
【0113】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、組成物のCBDA構成成分が、1~500mg/mlの間、10~100mg/mlの間、50mg/mlの濃度であるものからなる群より選択される、組成物を提供する。
【0114】
さらなる好ましい実施形態では、組成物は液体である。
【0115】
さらなる好ましい実施形態では、組成物は油である。
【0116】
さらなる好ましい実施形態では、組成物は、1日、2日、7日、14日、28日、5週間、6週間および32週間からなる群より選択される時点で測定された場合、カンナビノイド分解も脱炭酸も実証しない。
【0117】
さらなる好ましい実施形態では、組成物は、1日、2日、7日、14日、28日、5週間、6週間および32週間からなる群より選択される時点で測定された場合、カンナビノイド安定性を実証する。
【0118】
さらなる好ましい実施形態では、組成物は、120mg/mlのCBDAを送達する濃度で送達された場合、変異原性も、発癌性も遺伝毒性も実証しない。
【0119】
さらなる好ましい実施形態では、組成物は、以下のバイオマーカー:COX-2、iNOS、TNF-アルファ、IL-2、IL-12およびGS-MCFのいずれか1つの活性を抑制するように適応している。
【0120】
好ましくは、組成物は、神経炎症を抑制するように適応している。より好ましくは、組成物は、神経障害の処置に適応している。
【0121】
さらなる好ましい実施形態では、本発明は、実施例1に記述されている条件を利用する図3に対応するUPLCマスクロマトグラムを有する組成物を提供する。
【0122】
さらなる好ましい実施形態では、組成物は、追加の活性成分を含む。
【0123】
好ましくは、追加の活性成分は、ポリペプチド、抗体、NSAID、神経調節因子、および神経伝達物質からなる群より選択される。
【0124】
さらなる好ましい実施形態では、カンナビノイド構成成分と追加の活性成分との比は、1単位w/wのカンナビノイド:1単位w/w/の追加の活性成分、2:1、3:1、4:1、5:1、10,000:1~1:1の間、1,000:1~1:1の間、500:1~1:1の間、100:1~1:1の間、50:1~1:1の間、および10:1~1:1の間からなる群より選択される。
【0125】
さらなる好ましい実施形態では、追加の活性成分とカンナビノイドとの比は、1単位w/wの追加の活性成分および1単位w/w/のカンナビノイド、2:1、3:1、4:1、5:1、10,000:1~1:1の間、1,000:1~1:1の間、500:1~1:1の間、100:1~1:1の間、50:1~1:1の間、および10:1~1:1の間からなる群より選択される。
【0126】
さらなる好ましい実施形態では、CBDAと追加の活性成分との比は、1単位w/wのCBDA:1単位w/w/の追加の活性成分、2:1、3:1、4:1、5:1、10,000:1~1:1の間、1,000:1~1:1の間、500:1~1:1の間、100:1~1:1の間、50:1~1:1の間、および10:1~1:1の間からなる群より選択される。
【0127】
さらなる好ましい実施形態では、追加の活性成分とCBDAとの比は、1単位w/wの追加の活性成分および1単位w/w/のCBDA、2:1、3:1、4:1、5:1、10,000:1~1:1の間、1,000:1~1:1の間、500:1~1:1の間、100:1~1:1の間、50:1~1:1の間、および10:1~1:1の間からなる群より選択される。
【0128】
1つの好ましい実施形態では、神経調節因子は、幻覚作用のある物質である。
【0129】
好ましくは、神経調節因子は、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン、リゼルグ酸ジエチルアミド、およびサイロシビンからなる群より選択される。
【0130】
さらなる好ましい実施形態では、組成物は、相乗的な生物活性を実証する。
【0131】
さらなる好ましい実施形態では、組成物は、(1)追加の活性成分の非存在下で送達された場合のカンナビノイド構成成分の生物活性および(2)カンナビノイド構成成分の非存在下で送達された場合の追加の活性成分の生物活性の和よりも大きい、生物活性のレベルを実証する。
【0132】
さらなる好ましい実施形態では、生物活性は、炎症を抑制すること、神経炎症を抑制すること、神経障害を処置すること、COX-2の活性を抑制すること、iNOSの活性を抑制すること、TNF-アルファの活性を抑制すること、IL-2の活性を抑制すること、IL-12の活性を抑制することおよびGS-MCFの活性を抑制することからなる群より選択される。
【0133】
さらなる好ましい実施形態では、組成物は、治療用組成物、医薬組成物、化粧用組成物、および獣医学的組成物からなる群より選択される。
【0134】
医薬組成物
本発明は、本発明の組成物を薬学的に許容される担体と一緒に含む、医薬組成物も提供する。
【0135】
治療用組成物は、本発明の範囲内である。好ましくは、組成物は、薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせられて、医薬組成物(ヒトまたは動物使用のためのものであってよい)を生成する。好適な担体および希釈剤は、等張性食塩溶液、例えばリン酸緩衝食塩水を含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤等を含む。薬学的活性物質のためのそのような媒体および作用物質の使用は、当技術分野において周知である。いずれかの従来の媒体または作用物質が活性成分と不適合である場合を除いて、治療用組成物におけるその使用が企図されている。追加補充の活性成分を組成物に組み込むこともできる。例えば、参照により本明細書に組み込まれるRemington's Pharmaceutical Sciences, 19th Ed. (1995, Mack Publishing Co., Easton, Pa.)を参照されたい。
【0136】
医薬組成物は、組成物の、例えば、pH、容量オスモル濃度、粘度、透明度、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解もしくは放出の速度、吸着または浸透を、修正する、維持するまたは保存するための配合材料を含有することができる。好適な配合材料は、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシン等);抗微生物薬;酸化防止剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウム、ビタミンE、リン酸ビタミンE-脂溶性ビタミン、ナノエマルション等);緩衝液(ホウ酸、重炭酸、トリス-HCl、クエン酸、リン酸または他の有機酸等);増量剤(マンニトールまたはグリシン等);キレート化剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン等)、充填剤;単糖、二糖;および他の炭水化物(グルコース、マンノースまたはデキストリン等);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン等);着色剤、矯味矯臭剤(天然および天然由来製品)および希釈化剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドン等);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウム等);保存剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸または過酸化水素等);溶媒(グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール等);糖アルコール(マンニトールまたはソルビトール等の人工甘味料を含む);懸濁化剤;界面活性剤もしくは湿潤剤(プルロニック(登録商標);PEG;ソルビタンエステル;ポリソルベート20、ポリソルベート80等のポリソルベート;トリトン;トロメタミン、レシチン;コレステロール;チロキサポール等);安定性増強剤(スクロースまたはソルビトール);張度増強剤(アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウムまたは塩化カリウム等)、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤、ならびに/または薬学的アジュバントを含むがこれらに限定されない。
【0137】
最適な医薬組成物は、当業者により、例えば、意図されている投与ルート、送達フォーマットおよび所望の投薬量に応じて決定されることになる。そのような組成物は、本発明の組成物の物理的状態、安定性、in vivo放出の速度およびin vivoクリアランスの速度に影響を与え得る。医薬組成物の好ましい形態は、意図されている投与モードおよび治療適用によって決まる。
【0138】
医薬組成物中の主ビヒクルまたは担体は、本質的に水性および非水性である。例えば、好適なビヒクルまたは担体は、おそらく他の材料を補充した、注射用水、生理食塩溶液であってよい。中性緩衝食塩水、または血清アルブミンと混合された食塩水は、さらなる例示的なビヒクルである。他の例示的な医薬組成物は、約pH7.0~8.5のトリス緩衝液または約pH4.0~5.5の酢酸緩衝液を含み、これは、ソルビトールまたはその好適な代替物をさらに含んでよい。本発明の一実施形態では、医薬組成物は、所望の純度を有する選択された組成物を、水溶液の形態の必要に応じた配合剤と混合することによって、貯蔵のために調製されてよい。
【0139】
製剤構成成分は、投与部位に許容される濃度で存在する。例えば、緩衝液は、組成物を生理学的pHにまたはわずかに低いpHに、典型的には約5~約8のpH範囲内に維持するために使用される。
【0140】
追加の医薬組成物は、持続または制御送達製剤における本発明の製剤を含み、当業者に明白であろう。リポソーム担体、生体内分解性微粒子または多孔質ビーズおよびデポー注射等の様々な他の持続または制御送達手段を製剤化するための技術も、当業者に公知である。持続持続放出調製物の追加の例は、造形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態の、半透性ポリマーマトリックスを含む。持続放出マトリックスは、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド、L-グルタミン酸およびガンマL-グルタミン酸エチルのコポリマー、エチレン酢酸ビニルまたはポリ-D(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含んでよい。持続放出組成物は、当技術分野において公知であるいくつかの方法のいずれかによって調製され得る、リポソームを含んでもよい。
【0141】
in vivo投与に使用される医薬組成物は、典型的には、無菌でなくてはならない。これは、滅菌濾過膜に通す濾過によって遂行されてよい。加えて、組成物は、概して、無菌アクセスポートを有するコンテナに入れられる。医薬組成物が製剤化されたら、無菌バイアル中に溶液として貯蔵されてよい。
【0142】
またさらなる好ましい実施形態では、組成物は、その有効な生物活性を、24時間よりも長く、36時間よりも長くおよび48時間よりも長くからなる群より選択される期間保持する。好ましくは、組成物は、6か月、1年および2年からなる群より選択される期間安定である。一例では、組成物は、-4℃、4℃、18℃および25℃からなる群より選択される温度で安定である。
剤形
【0143】
剤形は、本発明の範囲内である。好ましい実施形態では、本発明は、本発明の第1の態様で記述されている通りの組成物を含む剤形を提供する。
【0144】
好ましくは、剤形の組成物のカンナビノイド構成成分は、1mg~1000mgの間、1mg~500mgの間、1~100mgの間、400mg未満、300mg未満、200mg未満および100mg未満からなる群より選択される。より好ましくは、組成物のカンナビノイド構成成分は、600mg、400mg、300mg、200mg、100mg、50mg、10mg、5mg、2mg、1mgからなる群より選択される。好ましくは、剤形の組成物のCBDA構成成分は、1mg~1000mgの間、1mg~500mgの間、1~100mgの間、400mg未満、300mg未満、200mg未満および100mg未満からなる群より選択される。より好ましくは、組成物のCBDA構成成分は、600mg、400mg、300mg、200mg、100mg、50mg、10mg、5mg、2mg、1mgからなる群より選択される。
【0145】
さらなる実施形態では、剤形は、液剤、錠剤、カプセル剤、カシェ剤、乾燥粉末サシェ剤およびバイアル/フリーズドライからなる群より選択される形態である。
【0146】
好ましくは、剤形は、密閉したおよび滅菌コンテナ内に貯蔵される。
【0147】
処置するための方法
本発明は、障害を処置する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の本発明の剤形を投与するステップを含む、方法も提供する。
【0148】
さらなる好ましい実施形態では、剤形は、障害を少なくとも部分的に処置するための量で投与される。
【0149】
さらなる好ましい実施形態では、治療有効量は、1~100mg/kg/日の間、2~50mg/kg/日の間、5~40mg/kg/日の間、10~30mg/kg/日の間、20~25mg/kg/日の間、および20mg/kg/日からなる群より選択されるカンナビノイドの量である。好ましくは、治療有効量は、10mg/日、15mg/日、40mg/日、400mg/日、600mg/日、800mg/日、1280mg/日、1500mg/日からなる群より選択されるカンナビノイドvisの量である。
【0150】
さらなる好ましい実施形態では、治療有効量は、1~100mg/kg/日の間、2~50mg/kg/日の間、5~40mg/kg/日の間、10~30mg/kg/日の間、20~25mg/kg/日の間、および20mg/kg/日からなる群より選択されるCBDAの量である。好ましくは、治療有効量は、10mg/日、15mg/日、40mg/日、400mg/日、600mg/日、800mg/日、1280mg/日、1500mg/日からなる群より選択されるCBDA visの量である。
【0151】
さらなる好ましい実施形態では、Tmaxは、1~4時間の間で出現する。
【0152】
さらなる好ましい実施形態では、T1/2は、1.1~2.4時間の間で出現する。
【0153】
さらなる好ましい実施形態では、治療有効量は、障害を処置するために対象に投与される。
【0154】
好ましくは、治療有効量は、1時間に2回、毎時、6時間に1回、8時間に1回、12時間に1回、1日に1回、週に2回、週に1回、2週間に1回、6週間に1回、月に1回、2か月ごと、3か月ごと、6か月に1回、および年に1回からなる群より選択される投薬レジメンを利用して、対象に投与される。
【0155】
好ましくは、治療有効量は、経口的に、静脈内に、筋肉内に、髄腔内に、皮下に、舌下に、口腔内に、直腸に、膣に、局所的に、非経口的に、粘膜に、眼経路によって、耳経路によって、鼻に、吸入によって、皮膚に、経皮的に、および全身にからなる群より選択される方法を使用して、対象に投与される。
【0156】
さらなる好ましい実施形態では、障害は炎症によって引き起こされる。
【0157】
さらなる好ましい実施形態では、障害は神経炎症によって引き起こされる。
【0158】
好ましくは、障害は、神経障害である。より好ましくは、神経障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脳虚血、外傷性脳傷害、関節リウマチ、慢性片頭痛、てんかん、自閉スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害、脳性麻痺および関連するサブタイプ、神経因性疼痛、ならびにうつ病からなる群より選択される。
【0159】
さらなる好ましい実施形態では、ASDは、ASDレベルII/IIIであり、CGI重症度尺度において、「軽度に病的」、「中等度に病的」、「著しく病的」または「重度に病的」のいずれかである。
【0160】
さらなる好ましい実施形態では、処置は、神経炎症を低減させる。好ましくは、処置は、以下のバイオマーカー:COX-2、iNOS、TNF-アルファ、IL-2、IL-12およびGS-MCFのいずれか1つの活性を抑制する。
【0161】
本発明で処置され得る対象は、ヒトならびに他の哺乳動物および動物を含むことになる。
【0162】
さらなる好ましい実施形態では、方法は、それを必要とする患者に、治療有効量の本発明の剤形を、追加の活性成分と一緒に投与するステップを含む。好ましい形態では、追加の活性成分は、本発明の投薬形態を投与するのと同時に;本発明の投薬形態を投与する前に;本発明の投薬形態を投与した後に;本発明の投薬形態を投与するのと同時発生的に;本発明の投薬形態を投与する前に逐次的に;および本発明の投薬形態を投与した後に逐次的にからなる群より選択される投薬レジメンを使用して投与される。
【0163】
投与された治療用組成物の効果を、標準的な診断手順によってモニターすることができる。
【0164】
医薬の製造における組成物の使用
使用は、本発明の範囲内である。本発明は、障害の処置のための医薬の製造における、本発明の第1の態様の組成物の使用も提供する。
【0165】
1つの好ましい実施形態では、本発明は、障害の処置のための医薬の製造における、以下のカンナビノイド:
w/w%
CBDA 40~60%;
CBD 1~5%;
CBG 1~10%;
CBDP 1~5%;
CBDB 1~5%;
CBGA 1~10%;
CBN 1~3%
および
THC<1%
を含む組成物の使用である。
【0166】
さらなる実施形態では、組成物のカンナビノイドは、障害の処置のための医薬の製造において、
【0167】
w/w%
CBDA 50%;
CBD 2%;
CBG 5%;
CBDP 2%;
CBDB 2%;
CBGA 5%;
CBN 3%および
THC<0.3%;
を含む組成物1
ならびに
w/w%
CBDA 45%;
CBD 1%;
CBG 4%;
CBDP 1%;
CBDB 2%;
CBGA 4%;
CBN2%、および
THC<0.2%
を含む組成物2
からなる群より選択される量で存在する。
【0168】
さらなる実施形態では、組成物は、合成油、植物ベースの油、鉱油、キャノーラ油、およびオリーブ油からなる群より選択される油をさらに含む。
【0169】
さらなる実施形態では、組成物は、5%w/w未満のテルペンを含む。
【0170】
さらなる実施形態では、組成物は、2%w/w未満の有機植物材料を含む。
【0171】
さらなる実施形態では、組成物は、2%w/w未満の植物フェノールを含む。
【0172】
さらなる実施形態では、組成物のカンナビノイド構成成分は、1~500mg/mlの間、10~100mg/mlの間、50mg/mlの濃度であるものからなる群より選択される。
【0173】
さらなる実施形態では、組成物のCBDA構成成分は、1~500mg/mlの間、10~100mg/mlの間、50mg/mlの濃度であるものからなる群より選択される。
【0174】
さらなる実施形態では、組成物は、実施例1に記述されている条件を利用する図3に対応するUPLCマスクロマトグラムを有する。
【0175】
プロセス
本発明は、本発明の第1の態様の組成物を大麻植物材料から抽出するプロセスであって、
1)大麻植物材料を十分な粉砕サイズに粉砕するステップと、
2)ステップa)によって生成された粉砕物を油と接触させるステップと、
3)粉砕物および油を十分な期間混合して、混合物を形成するステップと、
4)混合物を圧搾して油を回収するステップと、
5)油を遠心分離して油をさらに精錬するステップと、
6)油抽出物を好適なコンテナ/鋼容器内に収集するステップと
を含む、プロセスも提供する。
【0176】
さらなる好ましい実施形態では、大麻植物材料は、Cannabis sativa L.に由来する。
【0177】
さらなる好ましい実施形態では、十分な粉砕サイズは、0.1mm~3mmの間、1mm~2mmの間、および0.5mm~2.5mmの間からなる群より選択される。
【0178】
さらなる好ましい実施形態では、十分な期間は、30分間~2時間の間、45分間~1.5時間の間、1時間からなる群より選択される。
【0179】
さらなる好ましい実施形態では、ステップ(2)における粉砕材料の油に対する比は、400mgの粉砕物:1mlの油、300mgの粉砕物:1mlの油、200mgの粉砕物:1mlの油、100mgの粉砕物:1mlの油、および333mgの粉砕物:1mlの油からなる群より選択される。
【0180】
好ましくは、油はオリーブ油である。
【0181】
本発明は、本発明の第1の態様の組成物を大麻植物材料から抽出する代替的なプロセスであって、
1)大麻植物材料を十分な粉砕サイズに粉砕するステップと、
2)ステップa)によって生成された粉砕物をアルコールと接触させるステップと、
3)粉砕物およびアルコールを十分な期間混合して、混合物を形成するステップと、
4)混合物を超音波処理するステップと、
5)混合物を遠心分離するステップと、
6)アルコール抽出物を好適なコンテナ内に収集するステップと
を含む、プロセスも提供する。
【0182】
さらなる好ましい実施形態では、アルコールはエタノールである。
【0183】
さらなる好ましい実施形態では、アルコールは、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルアルコール、ベンジルアルコール、1,4-ブタンジオール、1,2,4-ブタントリオール、ブタノール、1-ブタノール、2-ブタノールおよびtert-ブチルアルコールからなる群より選択される。
【0184】
さらなる好ましい実施形態では、十分な粉砕サイズは、0.1mm~3mmの間、1mm~2mmの間、および0.5mm~2.5mmの間からなる群より選択される。さらなる好ましい実施形態では、十分な期間は、30分間~2時間の間、45分間~1.5時間の間、1時間からなる群より選択される。
【0185】
さらなる好ましい実施形態では、ステップ(2)における粉砕材料のアルコールに対する比は、400mgの粉砕物:1mlのアルコール、300mgの粉砕物:1mlのアルコール、200mgの粉砕物:1mlのアルコール、100mgの粉砕物:1mlのアルコール、100mgの粉砕物:4mlのアルコール、100mgの粉砕物:3mlのアルコール、100mgの粉砕物:2mlのアルコール、および333mgの粉砕物:1mlのアルコールからなる群より選択される。
【0186】
プロセスの生成物
本発明は、上記したプロセスにより生成された生成物も提供する。
【0187】
キット
本発明は、本発明の一態様の剤形を、その使用についての指示と一緒に含む、キットも提供する。
【0188】
デバイス
デバイスは、本発明の範囲内である。好ましい実施形態では、本発明は、デバイスを提供し、デバイスは、(1)本発明の第1の態様で記述されている通りの組成物と、(2)アプリケーターとを備える。
【0189】
安定化させるための方法
組成物を安定化させるための方法は、本発明の範囲内である。
【0190】
さらなる好ましい実施形態では、前記方法は、組成物を分解から保護する。
【0191】
またさらなる好ましい実施形態では、組成物は、その有効な生物活性を、24時間よりも長く、36時間よりも長くおよび48時間よりも長くからなる群より選択される期間保持する。
【0192】
組成物を安定化させるための承認された医薬賦形剤の添加は、安全性の観点から好ましく、何故なら、より単純な方法論は可変性の低い結果を生成する可能性が高く、賦形剤の選択肢が一般に安全とみなされている(GRAS)状態のものに限定され得るからである。タンパク質溶液の安定化のための賦形剤は、それらの化学的特性および作用機序に基づき、4つの広義のカテゴリー:塩、糖、ポリマーまたはタンパク質/アミノ酸に分類され得る。塩(例えば、塩化物、硝酸塩)は、イオン性相互作用によって電荷を遮蔽することにより、タンパク質の三次構造を安定化させる。糖(例えば、グリセロール、ソルビトール、フルクトース、トレハロース)は、溶液の表面張力および粘度を増大させて、タンパク質凝集を防止する。同様に、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体)は、溶液の粘度を増大させて、タンパク質凝集ならびにタンパク質中のアミノ酸間の分子内および分子間静電相互作用を防止することにより、タンパク質三次構造を安定化させる。タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)は、イオン性、静電および疎水性相互作用によって、他のタンパク質の構造を安定化させることができる。同様に、アラニンおよびグリシン等の正味電荷を有さない小さいアミノ酸は、弱い静電相互作用の形成によってタンパク質を安定化させる。
【0193】
上で論じた通り、本発明の医薬は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含んでよい。医薬の製造のためのそのような媒体および作用物質の使用は、当技術分野において周知である。いずれかの従来の媒体または作用物質が薬学的に許容される材料と不適合である場合を除いて、本発明に従う医薬組成物の製造におけるその使用が企図されている。本発明に従う薬学的に許容される担体は、以下の例のうちの1つまたは複数を含んでよい:
a.ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン-ポリビニルアクリレートコポリマー、セルロース誘導体、HPMC、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリアクリレートおよびポリメタクリレート、尿素、糖、ポリオール、およびそれらのポリマー、乳化剤、シュガーガム、デンプン、有機酸およびそれらの塩、ビニルピロリドンおよび酢酸ビニルを含むがこれらに限定されない、界面活性剤およびポリマー、ならびに/または
b.種々のセルロースおよび架橋ポリビニルピロリドン、微結晶性セルロース等の結合剤、ならびに/または(3)ラクトース一水和物、無水ラクトース、微結晶性セルロースおよび種々のデンプン等の充填化剤、ならびに/または
c.ラクトース一水和物、無水ラクトース、マンニトール、微結晶性セルロースおよび種々のデンプン等の充填化剤、ならびに/または
d.包装キャビティ(packaging cavity)から押し出される剤形の能力の増大に作用する作用物質等の滑沢剤、ならびに/または
e.スクロース、キシリトール、サッカリンナトリウム、チクロ、アスパルテームおよびアセスルファムKを含むあらゆる天然もしくは人工甘味料等の甘味料、ならびに/または
f.矯味矯臭剤、ならびに/または
g.ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸およびその塩、ブチルパラベン等のパラヒドロキシ安息香酸の他のエステル、エチルもしくはベンジルアルコール等のアルコール、フェノール等のフェノール性化学物質、もしくは塩化ベンザルコニウム等の第四級化合物等の、保存剤、ならびに/または
h.緩衝液、ならびに/または
i.薬学的に許容される不活性充填剤、例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、第二リン酸カルシウム、糖類、および/もしくは先述のいずれかの混合物等の、希釈剤、ならびに/または
j.三硝酸グリセリル等の吸収エンハンサー、ならびに/または
k.他の薬学的に許容される賦形剤。
【0194】
動物における、特に人間における使用に好適な本発明の医薬は、典型的には、製造および貯蔵の条件下で無菌かつ安定でなくてはならない。
【0195】
本発明は、先述の例によって記述されている通りの組成物、方法およびプロセスも提供する。
【0196】
ここで、以下の非限定的な実施例を参照して、本発明について記述する。実施例の記述は、本明細書の先行する段落を決して限定するものではなく、本発明の方法および組成物の例示のために提供される。
【実施例
【0197】
基本的な発明概念から逸脱することなく、上記のプロセスに多数の改良および修正が為され得ることが、製粉および製薬技術分野の当業者には明らかであろう。例えば、一部の適用では、生物学的活性材料を前処置し、前処置された形態でプロセスに供給してよい。すべてのそのような修正および改良は、本発明の範囲内であるとみなされ、その性質は、先述の記述および添付の特許請求の範囲から決定されることになる。さらに、以下の実施例は、例証のみを目的として提供され、本発明のプロセスまたは組成物の範囲を限定することを意図したものではない。
【0198】
(実施例1)
A 実施例1-NTI164の抽出および精製
A.1 研究の狙い
不活性油ベースの抽出プロセスを使用して、NTI164植物株から最も望ましい構成成分を抽出および同定すること。
【0199】
A.2 材料および方法
A.2.1 NTI164植物材料
NTI164植物は、全領域の薬用大麻植物(属種Cannabis sativa)であり、本発明者らがその後、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジオール(CBD)、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビジバリン(CBDV)およびカンナビノール(CBN)を含有するが0.03%より大きいテトラヒドロカンナビノール(THC)を有すると同定した。NTI164植物は、医薬品管理局(Office of Drug Control)(ODC)のライセンスおよび許可の下、適正製造規範(GMP)ならびにTGO93および100ガイドラインの通りに、栽培し、乾燥させ、包装した。
【0200】
A.2.2 抽出方法-油ベース
機器:以下の機器を使用した:10mLの蓋付きガラスシンチレーションボトル;コブラムエステートオリーブ油;植物粉砕機(コーヒーまたは食品グレードの粉砕機と同様)細孔径最大50μM;ワットマン紙、グレード1;ピペット;重量計(移動ボート(transfer boat)およびスプーン);エッペンドルフ管;50mLのファルコン管;ベンチトップ遠心分離機(エッペンドルフ遠心分離機5702);Oz Designブランドの6リットルのフルーツ、ワインおよびシードル圧搾機。
【0201】
抽出:圧搾および遠心分離:すべての作業に標準実験室温度(18~22℃)で着手する。NTI164の芽から硬い茎を取り除き、茎を廃棄した。粉砕機を70%EtOHで清浄化し、粉砕コンパートメントに乾燥した植物材料を充填した。材料を、3つの設定のうち最も微細で10秒間粉砕した(粒径1~2mm)。次いで、粉砕したものを、100mlのオリーブ油と、オートクレーブしたショットボトル中、333mg/mLの植物/油比で混合した。次いでそれを撹拌機に室温で1時間載置し、磁気攪拌子(50rpm)で撹拌した。次いで、油プラス植物の混合物をOz Designブランドの6リットルのフルーツ、ワインおよびシードル圧搾機に入れて、植物(マッシュ)から油構成成分を回収する。次いで、回収された油を50mLのファルコン管に入れ、300gにて室温で15分間回転させた(単離1)。次いで、油を清浄なショットボトル内に取り出し、回収された体積を追跡し続けた。単離1についての油の回収率は、およそ40%である。各単離後にマッシュを廃棄する。回収された油に、本発明者らはさらなる333mg/mLの粉砕した植物/油(さらなる100mlの)材料を添加し、1時間の混合を繰り返し、合計999μg/mL(3×100ml)の植物/油混合物が通過するまで油を回収および再使用した(単離2)。単離2についての油の回収率は、およそ50%である。最後に、本発明者らはファルコン管に入れ、上で論じた通りに回転させた(単離3)。単離3についての油の回収率は、およそ50%である。次いで、本発明者らは、油のみを収集し、加工のために油をエッペンドルフ管に入れた。この三連抽出方法は、総体積50mlの最終生成物を、後述する方法を使用するUPLC効力試験を使用して決定された、1mlのオリーブ油に対して48mgのCBDAの濃度でもたらした。
【0202】
A.2.3 抽出方法-エタノールベース
抽出:圧搾および遠心分離:代替的な方法は、エタノールの使用に基づく抽出を含む。この方法では、500ミリグラムのNTI164の粉砕した植物材料を20mlのエタノールと、50mlの遠心分離管内で混合する。管を60秒間激しく振とうし、次いで、30℃の超音波処理浴に10分間入れる。次いで、試料をシェーカー(200rpm)に30分間載置する。完了したら、遠心分離機に入れ、4400rcfにて5分間遠心分離した。次いで、種々の前臨床モデルにおいて上清を評価することができる。
【0203】
A.2.4 解析的分析
超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)逆相および液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)を使用して、上で論じた方法に由来するNTI164濃縮物中の構成成分を同定した。分析は、統合(U)HPLCシステムおよびエレクトロスプレーイオン化(ESI)インターフェース付きシングル四重極質量分析計検出器を使用して実施した。
【0204】
使用したUPLC設定および条件は次の通りであった:コルテックスUPLCシールドRP18(0A 1.6uM、2.1×100mm);分析流量:0.7ml/分;移動相A:水0.1%TFA;移動相B:アセトニトリル;均一濃度:41:59 移動相A/移動相B;温度:35℃;検出器:Acquity UPLC PDA;注入体積:1.0mg/ml参照標準調製物について0.7uL、適切に増減された試料溶液;ソフトウェア:Empower 3CDS。参照標準溶液は、Novachem、Cerilliant Corporation(TX、USA)から入手した。これらは、すべて較正曲線の生成に好適であることが以前に示された、予め溶解された溶液であった。
【0205】
カンナビジバリン(CBDV)、カンナビジオール(CBD)、カンナビゲロール(CBG)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビノール(CBN)、Δ-テトラヒドロカンナビノール(Δ-THC)、Δ-テトラヒドロカンナビノール(Δ-THC)、カンナビクロメン(CBC)、それらのそれぞれの酸性形態およびカンナビシクロール(CBL)を10ppmずつ含有する、メタノール中の16種のカンナビノイドの混合物を調製した。使用したすべての溶媒はLCMSグレードであり、標準は、90%移動相Bおよび10%脱イオン水で希釈することによって調製した。UPLC-LCMS分析のための詳細な分析条件は、表1に収載されている。
【0206】
表1:UPLCおよびLCMS分析のためのパラメーターおよび条件
【表1】
【0207】
A.3 結果
A.3.1 UPLCおよびLCMS解析結果
図1は、混合標準溶液(すなわち基準溶液)中におけるカンナビノイドの分離を示す。実験条件下で、Δ-THC、CBDおよびCBL等の中性カンナビノイドは陽モードでイオン化するのに対し、それらのそれぞれの酸性形態は陰モードでイオン化する。CBDおよびCBGはカラムから共溶出するが、それらの分子量は異なり、質量スペクトルによって同定することができる。加えて、図2は、CBDおよびCBG(すなわち、さらなる基準溶液として)について取得されたSID断片化パターン間の相違を示す。これらの高度に特異的な結果は、カンナビノイドの分析および同定についてLC-UVを上回るLCMSの利点を示す。
【0208】
図3は、油ベースの方法を使用して抽出されたNTI164についてのUPLCマスクロマトグラムを提示する。これらの結果は、NTI164抽出物(油懸濁物)が、表2において提示される以下の構成成分を含有することを見出した。追加の構成成分は、フラボノイド、タンパク質、フェノール、ステロールおよびエステルを含むことになる。これらは、完全な植物の大麻材料の30~40%を構成している公知の構成成分である。表4は、図3のUPLCマスクロマトグラムについての付随する溶出時間および同定されたCBDピークについてのピーク下面積を提示する。
【0209】
表2: 抽出されたNTI164油中の構成成分(小数第2位まで、0.5を超えた場合は切り上げ、0.5未満は切り捨て)
【表2-1】
【表2-2】
【0210】
表3は、エタノール抽出を使用して抽出されたNTI164組成物および本明細書で記述される方法を使用して定量化された構成成分を提示する。
【0211】
表3: 抽出されたNTI164エタノール中の構成成分(小数第2位まで、0.5を超えた場合は切り上げ、0.5未満は切り捨て)
【表3】
【0212】
表4は、図3(NTI164)のUPLCマスクロマトグラムについての付随する溶出時間および同定されたCBDピークについてのピーク下面積を提示する。
【0213】
表4: 溶出時間およびピーク下面積
【表4】
【0214】
CBDBおよびCBDP等のより希少なカンナビノイドは、四重極MS(他のカンナビノイドに使用される日常的なHPLCとは異なる)を使用してのみ検出されることに留意されたい。これらの結果は、図4において提示される。
【0215】
(実施例2)
B 実施例2-NTI164の安定性特性の特徴付け
B.1 研究の狙い
室温で油製剤に懸濁されたNTI164試料の安定性を評価すること。
【0216】
B.2 材料および方法
B.2.1 試料調製
NTI164の三連試料を、上記した方法を使用して調製した。
【0217】
対照試料については、3つの代表的な予め調製された濃縮試料NTI164(油および乾燥花)を次の通りに取得した。油S=試料は上で概説した通りに調製した:花については、均質化された植物材料の一部をアセトニトリルまたはエタノールに添加し、20分間超音波処理した。その後の抽出物を0.22μmのシリンジチップフィルターに通して、分析のために2mLの試料バイアル中に直接濾過した。濃縮物は、抽出溶媒としてイソプロパノールを用いて同様に調製した。
【0218】
B.2.2 試料採取
NTI164の試料を週1回の頻度でアッセイし、CBDAを主なマーカー/安定性インジケーターとして使用した。コルテックスUPLCシールドRP18粒子化学と組み合わせたACQUITY UPLC Hクラスシステムを使用して、10.5分のサイクル時間における主なカンナビノイドのUPLC均一濃度分離を提供した。UPLCを使用する分析方法を、上記した通りに使用した。
【0219】
参照標準溶液は、Cerilliant Corporation(Round Rock、TX)から入手した。これらの予め溶解された溶液は、較正曲線の生成に好適であることが以前に示されている。
【0220】
標準曲線の調製は、次の通りに実施した。一次カンナビノイド(-)Δ-THCおよびCBDの線形性を、線形性の代表的な実証方法として適切な標準を使用するメタノール中段階希釈を介して調製した0.004mg/mL~1.000mg/mLの間の10個の濃度
について決定した。表5は、分離において使用したカンナビノイドを概説する。
【0221】
表5:分離において使用したカンナビノイド
【表5】
【0222】
B.3 結果
B.3.1 UPLC/質量分析解析結果
コルテックスUPLCシールドRP18粒子化学と組み合わせたACQUITY UPLC Hクラスシステムを使用して、10.5分のサイクル時間における主なカンナビノイドのUPLC均一濃度分離を提供した。NTI164の試料を週1回の頻度でアッセイし、CBDAを主なマーカーとして安定性インジケーターとして使用した。表6において提示される結果は、NTI164が、不活性油媒体内、室温で6週間にわたって安定であることを実証する。この時間枠にわたって、脱炭酸も生成物分解も観察されない。
【0223】
表6: 室温におけるNTI164の安定性
【表6-1】
【表6-2】
【0224】
(実施例3)
C 実施例3-NTI164の生物学的特性の特徴付け
C.1 研究の狙い
ニューロンおよびミクログリアの細胞系におけるNTI164の抗炎症および神経保護効果を評価すること。
【0225】
神経炎症は、神経変性の主なトリガーの1つである。要因および経路の調査は、多くの障害の進行を停止させる潜在的治療標的の同定につながるであろう炎症応答の第1のステップを誘導することができる。
【0226】
C.2 材料および方法
C.2.1 試料調製および希釈
500mgのNTI164の乾燥した植物材料を、20mlの無水エタノールに(遠心分離に適切な50mlのブルートップファルコン管を使用して)懸濁し、60秒間激しく撹拌/振とうする。次いで、管を超音波処理浴に35~40℃で10分間入れる。超音波処理が完了したら、次いで、試料をトレイシェーカー(200rpm)に室温で30分間入れる。完了したら、次いで、試料を4400rpmにて5分間遠心分離する。上清を試験および展開のために収集する。
【0227】
試験生成物についての処理およびNTI164の濃縮を記述するために使用される単位
a.抽出物の1/1000希釈-10UL(ストック材料はNTI164-10ULであり、これは、2μg/mlのCBDAに等しい)
b.抽出物の1/3000希釈-3UL(ストック材料はNTI164-3ULであり、これは、6μg/mlのCBDAに等しい)
c.抽出物の1/10000希釈-1UL(ストック材料はNTI164-1ULであり、これは、0.1μg/mlのCBDAに等しい)。
【0228】
CBD試料については、純粋な標準(粉末形態で)を使用した。CBD98%単離物を参照標準としてLGC Standards(London UK)から購入した(CAS番号13956-29-1)。CBD標準参照を、1mg/ml(アセトニトリル中)の濃度で調製した。CBD希釈は、アセトニトリル中、次の通りに行った:2μg/ml、6μg/mlおよび0.1μg/ml。
【0229】
これらの研究において使用したNTI164(CBDA同等物)およびCBDの最終濃度は、2μg/mlであった。
【0230】
C.2.2 ミクログリアBV2培養
不死化ミクログリア細胞系BV2を、American Tissue Culture Collectionから購入した。ゲンタマイシンを含有し、拡大のために10%FBSおよび実験のためにプレーティングした際に5%ウシ胎仔血清(FBS)を補充したRPMI培地中で、BV2を培養した。すべての細胞は、継代数39~45の間の由来であった。細胞を45,000細胞/mmでプレーティングし、プレーティングの24時間後、リン酸緩衝食塩水(PBS、対照として)またはインターロイキン(interleurkin)-1B+インターフェロン-y(IL-1B+IFNy、炎症を誘発するため)で処置した。炎症応答を変更するNTI164の効果を試験するために、炎症の1時間前(前処置)または1時間後(後処置)にNTI164を適用した。NTI164は、元の抽出プロトコール:質量分析データから決定された範囲=1.0~0.1ugのCBDAを使用して取得した単離物から、10uL、3uLまたは1uLで適用した。
【0231】
C.2.3 多重サイトカイン/ケモカインアッセイ
処置開始後に収穫されたミクログリア培地を手短に遠心分離して、粒子状物を除去した(300gにて10分間)。ミクログリア培地中におけるサイトカインおよびケモカインレベルは、Bio-Plex 200を使用し、96ウェル磁気プレートアッセイで、製造業者の指示(Bio-Rad)に従って測定した。測定したサイトカインおよびケモカインは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-10、IL-12(p70)、IL-13、IL-17、G-CSF、GM-CSF、IFNγ、TNFα、CXCL1(KC)、CCL2(MCP-1)およびCCL5(RANTES)を含んでいた。すべての試料を二連で実行し、Bio-Plexマネージャーソフトウェアを用いてデータを分析した。
【0232】
C.2.4 免疫組織化学(タンパク質レベル)アッセイ
細胞を、PBS中4%パラホルムアルデヒド(PFA)で10分間固定した。3×5分間のPBSによる洗浄後、細胞を一次抗体(抗COX2、抗ARG1)1:1000とともに4℃で終夜インキュベートし、3×5分間のPBS中での洗浄後、次いで細胞を適切な蛍光二次抗体1:250(Invitrogen)中、室温で2時間インキュベートした。最終洗浄後、以前と同じく、封入剤中、細胞核をDAPIで染色した。二連のウェルから1ウェル当たり3つの視野で細胞の顕微鏡写真を撮影し、Fijiを使用して、各マーカーの被覆領域について分析した。
【0233】
C.2.5 細胞生存度(ミトコンドリア活性)アッセイ
ミクログリアの生存度は、MTT[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル-)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロミド;Sigma]を使用して定量化した。このアッセイでは、テトラゾリウム染料であるMTTを、ミトコンドリアによって、組織培養培地に不溶性であるホルマザン生成物へ生体内還元する。手短に述べると、試験生成物を加えたまたは加えないPBS、LPSまたはIL-4による処置後、種々の時点で細胞に250μg/mlの最終濃度までMTTを添加した。30分後、ホルマザンをDMSOに溶解し、分光光度計(Glomax Multi+;Promega、UK)を使用して490nmで吸光度を測定した。
【0234】
C.2.6 統計
実験内の複製についてのデータを平均化し、次いで、少なくとも3つの独立した実験からのデータを、Graph Pad Prismまたはスチューデントのt検定を使用して分析した。
【0235】
C.3 結果
C.3.1 iNOS発現
NTI164は、炎症誘発性iNOS発現を正常化した。iNOS発現は、炎症によっておよび炎症活性化ミクログリア細胞において増大し、NTI164は対照レベルに向けて発現を正常化し、したがって、iNOSによってトリガーされる炎症プロセスを低減させた。誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)は、アミノ酸L-アルギニンから一酸化窒素(NO)を発生させる3つの主要酵素の1つである。誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)は、多発性硬化症(MS)および実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の調節において重大な役割を果たす。以前の研究は、iNOSが、MSおよびEAEならびに多くの他の神経炎症性障害において、病原性および調節的役割を果たすことを示している。図5は、NTI164が炎症誘発性iNOS発現を正常化したことを実証する。
【0236】
C.3.2 ニューロンの生存度
NTI164は、基本条件(短期曝露)下で生存ニューロンの数を増大させた。ニューロンの生存度は、MTT[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル-)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロミド;Sigma]を使用して定量化した。NTI164処置細胞は、短期グルタメート曝露後、基本条件下で「健康な」細胞の数を増大させることができた。グルタメート活性化(3mM)を介して細胞興奮毒性を達成した。NTI164は、短期グルタメート誘発性の「損傷」後に細胞成長を刺激することができた。
【0237】
細胞生存度(ミトコンドリア活性)アッセイ(またはMTTアッセイ)を使用して、細胞内のマイクロカプセルにおける細胞の生存度または代謝活性を決定した。これは、水溶性染料[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド]を不溶性ホルマザンに転換する、代謝的に活性な細胞の能力に基づく。細胞生存度は、集団内の生きた健康な細胞の割合の尺度であり、細胞生存度アッセイは、細胞の全体的な健康を決定するために使用される。図6は、MTT[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル-)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロミド]を使用して定量化されたニューロンの生存度を提示する。
【0238】
C.3.3 未熟ニューロンの成熟
NTI164は、いかなるグルタメート誘発性の損傷の存在もない場合であっても、未熟ニューロンの健康な細胞への成熟を刺激した。この研究は、NTI164が未熟ニューロンの「健全な成熟」を刺激することができることを実証する。これは、外傷またはダメージ後に不可欠であり得るプロセスである。NTI164は、神経炎症、ニューロンのダメージからの回復における不可欠なプロセスである健康なニューロンの細胞発生を提供することができる。図7は、NTI164(NTI株)が、いかなるグルタメート誘発性の損傷の存在もない場合であっても、未熟ニューロンの健康な細胞への成熟を刺激することを実証する。
【0239】
C.3.4 細胞死
NTI164は、興奮毒性細胞傷害パラダイムにおいて細胞死を増大させない。
【0240】
図7は、CBDがこのパラダイムにおいては毒性であるのに対し、NTI164が(非毒性であり、細胞数および細胞生存度に対して正の効果を有することを実証する。
【0241】
C.3.5 ARG1発現
NTI164は、炎症誘発性(傷害を受けた細胞)Arg1発現を正常化する。アルギナーゼ-1のマクロファージ特異的な上方調節は、一般に、炎症を促進すると考えられている。アルギナーゼ1発現は、炎症活性化細胞においては依然として炎症によって増大し、NTI164は、対照レベルに向かって発現を正常化する。図9は、アルギナーゼ1発現を評価する炎症状態下でミクログリアの応答を示す。
【0242】
図10は、アルギニン代謝ならびにそれが抗炎症および炎症促進性シグナルの全体的なバランスに対して有する効果を概説する。
【0243】
(実施例4)
D 実施例4-神経炎症に関与するバイオマーカーに関連する前臨床研究
D.1 研究の狙い
ヒト由来ミクログリア細胞におけるCOX-2、IL2およびTNF-アルファのレベルに対するNTI164の効果を決定すること。
【0244】
多くの神経障害は、免疫応答の調節不全によって誘発される炎症により、出現する。
【0245】
例えば、多発性硬化症(MS)は、中枢神経系内のミエリン鞘の損失によって特徴付けられる、進行性炎症性疾患である。典型的な症状は、疲労、歩行困難ならびに発話および視覚の異常を含む。シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)は、MSに関与する疾患の共通機構である炎症を引き起こすことを担う主な酵素とみなされる。COX-2は、疾患進行および全体的な治療管理の評価において強力な臨床的バイオマーカーである。
【0246】
IL2は、免疫調節における重要な役割およびMS進行における重要な役割を果たす。IL-12は、多発性硬化症の病因において主要な役割を果たすサイトカインである。中和抗体を介してこのサイトカインをブロックすることは、疾患の動物モデルおよび複数のヒト試験において、劇的な改善を引き起こす。
【0247】
TNF-アルファは、MS発症に関与する急性炎症の調節不全において重要な役割を果たす。
【0248】
D.2 材料および方法
D.2.1 COX-2
【0249】
免疫組織化学(タンパク質レベル)アッセイ:細胞を、PBS中4%パラホルムアルデヒド(PFA)で10分間固定した。3×5分間のPBSによる洗浄後、細胞を一次抗体(抗COX2)1:1000とともに4℃で終夜インキュベートし、3×5分間のPBS中での洗浄後、次いで細胞を適切な蛍光二次抗体1:250(Invitrogen)中、室温で2時間インキュベートした。最終洗浄後、以前と同じく、封入剤中、細胞核をDAPIで染色した。二連のウェルから1ウェル当たり3つの視野で細胞の顕微鏡写真を撮影し、Fijiを使用して、各マーカーの被覆領域について分析した。
【0250】
D.2.2 IL-2およびTNF-アルファ
多重サイトカイン/ケモカインアッセイ:処置開始後に収穫したミクログリア培地を手短に遠心分離して粒子状物を除去した(300gにて10分間)。ミクログリア培地中におけるサイトカインおよびケモカインレベルは、Bio-Plex 200を使用し、96ウェル磁気プレートアッセイで、製造業者の指示(Bio-Rad)に従って測定した。測定したサイトカインおよびケモカインは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-10、IL-12(p70)、IL-13、G-CSF、GM-CSF、IFNγ、TNFα、CXCL1(KC)、CCL2(MCP-1)およびCCL5(RANTES)を含んでいた。すべての試料を二連で実行し、Bio-Plexマネージャーソフトウェアを用いてデータを分析した。
【0251】
D.2.3 試料調製および希釈
500mgのNTI164の乾燥した植物材料を、20mlの無水エタノールに(遠心分離に適切な50mlのブルートップファルコン管を使用して)懸濁し、60秒間激しく撹拌/振とうする。次いで、管を超音波処理浴に35~40℃で10分間入れる。超音波処理が完了したら、次いで、試料をトレイシェーカー(200rpm)に室温で30分間入れる。完了したら、次いで、試料を4400rpmにて5分間遠心分離する。上清を試験および展開のために収集する。
【0252】
試験生成物についての処理およびNTI164の濃縮を記述するために使用される単位
a.抽出物の1/1000希釈-10UL(ストック材料はNTI164-10ULであり、これは、2μg/mlのCBDAに等しい)
b.抽出物の1/3000希釈-3UL(ストック材料はNTI164-3ULであり、これは、6μg/mlのCBDAに等しい)
c.抽出物の1/10000希釈-1UL(ストック材料はNTI164-1ULであり、これは、0.1μg/mlのCBDAに等しい)。
【0253】
CBD試料については、純粋な標準(粉末形態で)を使用した。CBD98%単離物を参照標準としてLGC Standards(London UK)から購入した(CAS番号13956-29-1)。CBD標準参照を、1mg/ml(アセトニトリル中)の濃度で調製した。CBD希釈は、アセトニトリル中、次の通りに行った:2μg/ml、6μg/mlおよび0.1μg/ml。
【0254】
これらの研究において使用したNTI164(CBDA同等物)およびCBDの最終濃度は、2μg/mlであった。
【0255】
D.3 結果
D.3.1 COX-2
免疫組織化学分析を使用して細胞において行った前臨床研究は、NTI164が、ヒト由来ミクログリア細胞においてCOX-2の発現を抑制および阻害することができることを実証した。CBD単独と比較した場合に、NTI164は、炎症損傷前およびその後の両方でCOX-2を抑制するのに最大3倍強力であった。以下の表7を参照されたい。
【0256】
表7:NTI164対CBD単独で処置した場合の細胞におけるCOX-2抑制を概説する。
【表7】
【0257】
D.3.2 IL2およびTNF-アルファ
NTI164は、CBD単独およびCBD/THC(1:1)混合物と比較した場合に、主要バイオマーカー:IL-12およびTNF-アルファを抑制するのに統計的により強力である。
【0258】
これらの結果は、NTI164 IL-12 P=0.0011対CBD単独が高度に有意であり;NTI164 TNF-アルファ P=0.0575対CBD単独が陽性の傾向であり;NTI164 IL-12 P=0.0069対CBD/THC組合せが高度に有意であり;NTI164 TNF-アルファ P=0.0446対CBD/THC組合せが有意であったことを実証する。
【0259】
表8は、TNF-アルファおよびIL-12を抑制する際のNTI164対CBD単独およびCBD/THC 組合せ(1:1濃度比)間の有意性を概説する。
【表8-1】
【表8-2】
【0260】
D.4 考察
D.4.1 COX-2、IL2およびTNF-アルファ
COX-2、IL2およびTNF-アルファを抑制することを示すこれらの結果は、免疫応答によって誘発される炎症が異常調節されている神経障害において、炎症プロセスをモジュレートする際のNTI164の強力な特性を再確認する。
【0261】
(実施例5)
E 実施例5-NTI164のさらなる特徴付け
E.1 研究の狙い
UPLC/MS方法(上記の実施例において概説された通り)を使用し、油を介して抽出したNTI164の組成分析。
【0262】
E.2 材料および方法
コルテックスUPLCシールドRP18粒子化学と組み合わせたACQUITY UPLC Hクラスシステムを使用して、10.5分のサイクル時間における主なカンナビノイドのUPLC均一濃度分離を提供した。NTI164の試料を週1回の頻度でアッセイし、CBDAを主なマーカーとして安定性インジケーターとして使用した。表6において提示される結果は、NTI164が、不活性油媒体内、室温で6週間にわたって安定であることを実証する。この時間枠にわたって、脱炭酸も生成物分解も観察されない。
【0263】
機器:以下の機器を使用した:10mLの蓋付きガラスシンチレーションボトル;コブラムエステートオリーブ油;植物粉砕機(コーヒーまたは食品グレードの粉砕機と同様)細孔径最大50μM~80μM;ワットマン紙、グレード1;ピペット;重量計(移動ボートおよびスプーン);エッペンドルフ管;50mLのファルコン管;ベンチトップ遠心分離機(エッペンドルフ遠心分離機5702);Oz Designブランドの6リットルのフルーツ、ワインおよびシードル圧搾機。
【0264】
抽出:圧搾および遠心分離:すべての作業に標準実験室温度(18~22℃)で着手する。NTI164の芽から硬い茎を取り除き、茎を廃棄した。粉砕機を70%EtOHで清浄化し、粉砕コンパートメントに乾燥した植物材料を充填した。材料を、3つの設定のうち最も微細で10秒間粉砕した(粒径1~2mm)。次いで、粉砕したものを、100mlのオリーブ油と、オートクレーブしたショットボトル中、333mg/mLの植物/油比で混合した。次いでそれを撹拌機に室温で1時間載置し、磁気攪拌子(50rpm)で撹拌した。次いで、油プラス植物の混合物をOz Designブランドの6リットルのフルーツ、ワインおよびシードル圧搾機に入れて、植物(マッシュ)から油構成成分を回収する。次いで、回収された油を50mLのファルコン管に入れ、300gにて室温で15分間回転させた(単離1)。次いで、油を清浄なショットボトル内に取り出し、回収された体積を追跡し続けた。単離1についての油の回収率は、およそ40%である。各単離後にマッシュを廃棄する。回収された油に、本発明者らはさらなる333mg/mLの粉砕した植物/油(さらなる100mlの)材料を添加し、1時間の混合を繰り返し、合計999μg/mL(3×100ml)の植物/油混合物が通過するまで油を回収および再使用した(単離2)。単離2についての油の回収率は、およそ50%である。最後に、本発明者らはファルコン管に入れ、上で論じた通りに回転させた(単離3)。単離3についての油の回収率は、およそ50%である。次いで、本発明者らは、油のみを収集し、加工のために油をエッペンドルフ管に入れた。この三連抽出方法は、総体積50mlの最終生成物を、後述する方法を使用するUPLC効力試験を使用して決定された、1mlのオリーブ油に対して48mgのCBDAの濃度でもたらした。
【0265】
E.3 結果
UPLC分析の結果を、表9において以下で提示する。
【0266】
表9は、エタノール抽出を使用して抽出されたNTI164組成物および本明細書で記述されるUPLC方法を使用して定量化された構成成分を提示する
【表9】
【0267】
粉砕機システムにおける細孔径を50μMから80μMまで拡大することにより、本発明者らは、最終油抽出物生成物中のカンナビノール(CBN)1~3%を抽出することができた。
【0268】
(実施例6)
F 実施例6-ASDレベルII/IIIの処置のためのNTI164-4週間
F.1 ASD研究設計および方法
研究に登録した18人の患者のうち、NTI164を受けた患者は94%(n=17)を構成していた。有効な患者は78%(n=14)を構成しており、NTI164の初回用量を受けた後に中断した患者は16%(n=3)を構成しており、NTI164を受ける前であるが登録後に中断した患者は6%(n=1)を構成していた。有効な患者の平均年齢は13.4歳であり、最年少患者は10歳および最年長は17歳であった(図11)。
【0269】
すべての有効な患者は、ASDレベルII/IIIと診断され、CGI重症度尺度において、ベースライン時に、「軽度に病的」、「中等度に病的」、「著しく病的」または「重度に病的」のいずれかであると評価された(図12)。
【0270】
患者は、5mg/kg/日でNTI164の処置を開始し、20mg/kg/日または最大耐用量が達成されるまで4週間の期間、週に5mg/kg/日だけ増大させた。1日用量は、投薬量に患者の体重を乗じ、次いで、油中CBDAの濃度(53mg/mL)によって割ることによって算出した。これによりmLでの総1日体積がもたらされ(表10)、これを1日2回(BD)AMおよびPM用量に分割した。
【0271】
表10-各患者についての1日用量の算出。
【表10】
【0272】
有効な患者についての平均最大1日用量は16.7mg/kg/日であり、患者の64%は20mg/kg/日の最大用量に耐容性を示し、患者の36%は6mg/kg/日~19mg/kg/日の間の範囲である最大1日用量に耐容性を示した(図13)。
F.2 研究結果
【0273】
臨床全般印象-重症度(CGI-S)尺度を使用して、以下を評価した:
【0274】
全般的改善:臨床医の判断で、完全に薬物処置によるか否か総合的な改善を評点する;
【0275】
疾病の重症度:ベースラインおよびベースライン後(28日間のNTI164処置)の比較;ならびに
【0276】
有効性指数:薬物効果のみに基づいて評点した。これは、治療効果および副作用の程度に基づいて算出されたスコアである。
【0277】
全般的改善
【0278】
有効な患者の93%は、28日間のNTI164による毎日の処置後に改善を示した。これらの患者の64%は「大幅に改善」の全般的改善を有しており、29%は「最小限に改善」の全般的改善を有しており、1人の患者(7%)のみが「変化なし」を有していた(図14)。ウィルコクソンの符号順位検定および対応のあるt検定を使用して、統計的有意性を評価した:
【0279】
対応のあるt検定:28日間の処置とベースラインとの間のCGI-Sの平均差は、-0.714、95%信頼区間=-1.332、-0.097、p値=0.027であった。ウィルコクソンの符号順位検定統計値は-15であり、対応するp-値は0.047であった。
【0280】
疾病の重症度
【0281】
ベースライン時における疾病の重症度についての平均評点は、4.4であった(図12)。これは、28日間のNTI164処置後、3.6の平均評点に低減した(図15、16)。
【0282】
治療効果
【0283】
NTI164による28日間の毎日の処置後、有効な患者の14%は、2の2番目に高い考えられる有効性指数:患者の機能に大幅に干渉しない副作用を伴う著しい治療効果を実証した。
【0284】
有効な患者の72%は、5または6のいずれかの有効性指数を有し:これらの患者の半分が副作用を有さず、残りの半分が患者の機能に大幅に干渉しない副作用を有する、中等度の治療効果を有しており、7%は、9の有効性指数:副作用を有さない最小限の治療効果を有しており、1人の患者のみ7%は、状態の変化が見られないことに基づく有効性指数13:不変または悪化を有しており、副作用はなかった(図17)。
【0285】
(実施例7)
G 実施例7-ASDレベルII/IIIの処置のためのNTI164-20週間
G.1 ASD研究設計および方法
上記の実施例6は、4週(28日)時点における処置の結果(n=14有効)を提示する。この実施例7は、20週時点における処置の結果(n=12有効)を提示する。上記の実施例6で論じた通り、患者は、5mg/kg/日でNTI164の処置を開始し、これを、20mg/kg/日または最大耐用量が達成されるまで4週間の期間、週に5mg/kg/日だけ増大させ、かつ(この研究においては)その最大耐用量を16週間続けた(20週間の総毎日投薬期間を提供する)。
【0286】
この研究の全体的な目的は、20週間の期間にわたって毎日投与されたNTI164の継続的な安全性および有効性を評価することであった。副次的目的は、自閉スペクトラム障害に関連する症状の処置におけるNTI164の有効性を評価することであった。有効性は、当技術分野において使用される種々の医師主導のおよび患者主導の標準的な質問票を用いて測定した。
【0287】
患者(n=12)
20週目における有効な患者の平均年齢は13.3歳であり、最年少患者は10歳および最年長は17歳であった(エラー!参照元が見つかりません)。すべての有効な患者は、ASDレベルII/IIIと診断され、CGI重症度尺度において、ベースライン時に、「軽度に病的」、「中等度に病的」、「著しく病的」または「重度に病的」のいずれかであると評価された(図19)。
【0288】
用量
世界中で着手された小児試験に基づき、この研究のための選択された最大用量は、20mg/kg/日であった。
【0289】
副作用のリスクを低減させるために、研究薬は、5mg/kg/日で開始し、最大耐用量または20mg/kg/日が達成されるまで週に5mgだけ増大させて、4週間の過程にわたって漸増させた。次いで、最大耐用量を20週間の過程にわたって投与した。1日体積は、2回用量、AMおよびPMで投与した。
【0290】
各患者の用量を算出するために使用した式は、体重×用量/NTI164濃度=1日用量/2=1日2回用量であった。処置の第1の週の間に、各患者に5mg/kg/日のNTI164を受けさせた。処置の第2の週の間に、各患者に10mg/kg/日のNTI164を受けさせた。処置の第3の週の間に、各患者に15mg/kg/日のNTI164を受けさせた。処置の第4の週の間に、各患者に20mg/kg/日のNTI164を受けさせた。処置の5~20週目の間に、各患者にその最大耐用量または20mg/kg/日のNTI164を受けさせた。
【0291】
NTI164は、経口投与のために油中で調製した。油の総濃度は、53mg/mlであった。
【0292】
20週目の終わりに、参加者は、参加を終了し、研究薬を中止するまで5mg/kg/週で漸減させるか、またはその最大耐用量を52週目まで継続するか、いずれかの選択肢を有した。
【0293】
一次エンドポイント
当技術分野における標準的なステップを使用して、安全性をモニターおよび測定した。ベースライン時および20週目まで4週間ごとに記入された親/介護人および医師質問票に加えて、全血検査、肝臓および腎臓機能試験ならびにバイタルサインを使用して、安全性をモニターおよび測定した。
【0294】
二次エンドポイント
当技術分野における標準的なステップを使用して、有効性をモニターおよび測定した。
【0295】
臨床全般印象尺度-疾病の重症度(CGI-S)。1=全くない~7=中でも最も極端に病的の範囲である7点尺度において疾病の重症度の臨床医の印象を反映させる[時間枠:ベースライン、4週目、8週目、12週目、20週目]。
【0296】
ヴァインランド適応行動尺度、第3版(ヴァインランド-3)。3つのコアドメイン(コミュニケーション、日常生活スキルおよび社会化)ならびに2つの必要に応じたドメイン(運動スキルおよび不適応行動)にわたる適応機能を測定するために使用され、項目は3点尺度で評点される(0=なし;1=時折;2=通常または頻繁に)。コアドメインの和が合計適応行動複合値(total Adaptive Behaviour Composite)となる[時間枠:ベースライン、20週目]。
【0297】
対人応答性尺度(Social Responsiveness Scale)、第2版-学童期型(SRS-2)。社会的気づき、社会的認知、社会的コミュニケーション、社会的動機付け、ならびに制限された興味および反復的行動を含む5つのドメインを評価する。項目は4点尺度でスコア付けされる(1=当てはまらない~4=ほぼ常に当てはまるの範囲である)[時間枠:ベースライン、20週目]。
【0298】
臨床全般印象尺度-改善-介護者(CGI-I-Ca)。これは、ベースラインからの症状の変化を測定する7点尺度である。ベースラインおよびベースライン後の介護者および臨床医質問票として提供される[時間枠:ベースライン、4週目、8週目、12週目、20週目]。
【0299】
臨床全般印象尺度-改善-臨床医(CGI-I-Cl)。これは、ベースラインからの症状の変化を測定する7点尺度である。ベースラインおよびベースライン後の介護者および臨床医質問票として提供される[時間枠:ベースライン、4週目、8週目、12週目、20週目]。
【0300】
臨床全般印象尺度-標的の行動における変化(CGI-C)。1=全くない~7=非常に深刻な問題の範囲である7点尺度において行動の変化の臨床医の印象を反映させる。ベースラインおよびベースライン後質問票として提供される[時間枠:ベースライン、4週目、8週目、12週目、20週目]。
【0301】
臨床全般印象尺度-注意の変化(CGI-CA)。1=全くない~7=非常に深刻な問題の範囲である7点尺度において注意の変化の臨床医の印象を反映させる。ベースラインおよびベースライン後質問票として提供される[時間枠:ベースライン、4週目、8週目、12週目、20週目]。
【0302】
小児用不安尺度-自閉スペクトラム障害-親バージョン(ASC-ASD-P)。ASDのある若年者において不安の症状を検出するために開発された親/介護者型。4つの下位尺度(パフォーマンス不安(Performance Anxiety)、不確実性、不安の覚醒(Anxious Arousal)、および分離不安)で構成され、項目は4点尺度で評点される(0=なしおよび3=常に)。下位尺度の和が総スコアに等しくなる[時間枠:ベースライン、4週目、8週目、12週目、20週目]。
【0303】
小児用不安尺度-自閉スペクトラム障害-小児バージョン(ASC-ASD-C)。ASDのある若年者において不安の症状を検出するために開発された小児型。4つの下位尺度(パフォーマンス不安、不確実性、不安の覚醒、および分離不安)で構成され、項目は4点尺度で評点される(0=なしおよび3=常に)。下位尺度の和が総スコアに等しくなる[時間枠:ベースライン、4週目、8週目、12週目、20週目]。
【0304】
小児用睡眠障害尺度(SDSC)。入眠および睡眠維持障害、睡眠呼吸障害、覚醒障害、睡眠覚醒移行障害、過眠症障害(Disorder of Excessive Somnolence)、ならびに睡眠時多汗症(Hyperhydrosis)を含む6つの下位尺度。項目は5点尺度で評点され、ここで、1=なしおよび5=常に(毎日)である。下位尺度スコアの和が総スコアに等しくなる[時間枠:ベースライン、4週目、8週目、12週目、20週目]。
【0305】
G.2 研究結果
安全性結果
安全性データは、1日2回用量で投与された5、10、15および20mg/kgのNTI164が、この研究集団において安全かつ耐容性良好であると結論付けている。この結論は、実験室での値によってさらに裏付けられる。患者の全血検査にも、肝臓機能にも腎臓機能試験にも変化は観察されなかった。患者のバイタルサインにも何ら変化は観察されなかった。
【0306】
有効性結果
ウィルコクソンの符号順位検定および対応のあるt検定を使用して、分析されたデータセットの統計的有意性を評価した。
【0307】
対応のあるt検定:20週間の処置とベースラインとの間のCGI-Sの平均差は、-1.08、95%信頼区間=-1.772、-0.3948、p値=0.005303であった。
【0308】
ウィルコクソンの符号順位検定統計値は-15であり、対応するp-値は0.009654であった。
【0309】
患者の100%(n=12)は、NTI164による20週間の毎日の処置後、疾病の重症度に関連する症状の「大幅に改善された」改善を示した。
【0310】
以下の表15は、20週目における分析されたデータセットに対する、ウィルコクソンの符号順位検定および対応のあるt検定からの結果の概要である。
表15 - 20週における分析されたデータセットに対するウィルコクソンの符号順位検定および対応のあるT検定の概要
【表15】
【0311】
全般的改善。有効な患者の100%(n=12)は、20週間のNTI164による毎日の処置後に改善を示した。すべての患者は、「2.大幅に改善」の全般的改善を有していた。これらの患者のうちの3人は、以前、4週間の処置後に「3.最小限に改善」とスコア付けされていた。図20および21を参照されたい。
【0312】
疾病の重症度。ベースライン時における疾病の重症度についての平均評点は、4.3であった。これは、20週間の毎日のNTI164処置後、3.3の平均評点に低減した。図22~24を参照されたい。
【0313】
治療効果。20週間の毎日のNTI164処置後、有効な患者の67%は、1および2の考えられる最も高い有効性指数を実証した:著しい治療効果-多大な改善。すべての症状の完全なまたは完全に近い寛解。患者の33%は、5、6または7のいずれかの有効性指数を有していた:中等度の治療効果-決定的な改善。症状の部分寛解。図25および26を参照されたい。
【0314】
結論。
【0315】
NTI164は、20/mg/kg/日の用量まで安全かつ耐容性良好であることが示された。NTI164は、20週間の毎日療法後、自閉スペクトラム障害に関連する症状を改善するのに統計学的に有意な有効性を示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【国際調査報告】