(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ポータブル磁気共鳴イメージャ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240927BHJP
G01N 24/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61B5/055 320
G01N24/00 560Y
G01N24/00 600Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518605
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 US2022044495
(87)【国際公開番号】W WO2023049320
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524110872
【氏名又は名称】マイクロテスラ システムズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROTESLA SYSTEMS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケース,ジュニア,ラッセル エル.
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB42
4C096AD08
4C096AD09
4C096AD10
4C096CA03
4C096CA06
4C096CB03
4C096CC02
(57)【要約】
ポータブル磁気共鳴イメージャは、プローブを有する。1つ以上の磁石が、プローブ内に配置されており、プロトンを標的に歳差運動させるための少なくとも1つの磁場を生成する。プローブ内に配置された磁力計は、光源及び窒素空孔ダイヤモンドを有する。光源は、窒素空孔ダイヤモンドに光を投射する。窒素空孔ダイヤモンドは、光に応答して蛍光を発する。光検出器は、蛍光を検出し、それに応答して、1つ以上の磁石の存在下で歳差運動した歳差運動プロトンの減衰を示す信号を生成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポータブル磁気共鳴イメージャであって、
プローブと、
前記プローブ内に配置され、標的において陽子を歳差運動させるための少なくとも1つの磁場を生成する、2つ以上の磁石と、
前記プローブ内に配置された磁力計であって、前記磁力計は、光源、窒素空孔ダイヤモンドを有し、前記光源は、前記窒素空孔ダイヤモンド上に光を投射し、前記窒素空孔ダイヤモンドは、前記光に応答して蛍光を発する、磁力計と、
前記蛍光を検出し、それに応答して、前記2つ以上の磁石の存在下で歳差運動した歳差運動プロトンの減衰を示す信号を生成する、光検出器と、を備える、ポータブル磁気共鳴イメージャ。
【請求項2】
前記2つ以上の磁石は、不均一な外部磁場磁石及び永久磁石を含み、前記不均一な外部磁場磁石は、整列された磁場及び勾配磁場を生成する、請求項1に記載のポータブル磁気共鳴イメージャ。
【請求項3】
前記磁力計は、前記標的において、前記標的の磁場を監視する、請求項1に記載のポータブル磁気共鳴イメージャ。
【請求項4】
前記不均一な外部磁場磁石は、少なくとも1つのゴレイコイルを含む、請求項2に記載のポータブル磁気共鳴イメージャ。
【請求項5】
前記不均一な外部磁場磁石は、前記少なくとも1つのゴレイコイルから対向して離間されたた関係にある第2のゴレイコイルを含み、前記少なくとも1つのコイルを通って流れる電流は、第1の方向に流れ、前記第2のゴレイコイルを通って流れる電流は、第2の方向に流れ、前記第1の方向は、前記第2の方向とは反対である、請求項4に記載のポータブル磁気共鳴イメージャ。
【請求項6】
前記不均一な外部磁場磁石は、第2のゴレイコイルを含み、それぞれのゴレイコイルを動作可能に監視するセンサプローブと、少なくとも1つの電流源と、を更に備え、各それぞれの電流源は、それぞれのゴレイコイルを作動させるために、前記それぞれのゴレイコイルへ入力を提供する、請求項4に記載のポータブル磁気共鳴イメージャ。
【請求項7】
前記不均一な外部磁場磁石の前記動作を制御するための中央処理ユニットを更に備え、前記センサプローブは、前記ゴレイコイルを監視する関数としての信号を出力し、前記中央処理ユニットは、前記プローブによって生成された磁場勾配を制御するために、前記信号に応答して、前記不均一な外部磁場磁石の動作を制御する、請求項6に記載のポータブル磁気共鳴イメージャ。
【請求項8】
前記不均一な外部磁場磁石は、少なくとも1つのボア磁石と、少なくとも1つの磁場成形コイルと、を含む、請求項2に記載のポータブル磁気共鳴イメージャ。
【請求項9】
前記光源は、緑色波長ポンプレーザであり、前記窒素空孔ダイヤモンド上にマイクロ波を放出するマイクロ波源であって、それに応答して、前記窒素空孔ダイヤモンドが光を放出する、マイクロ波源と、前記光を受信するフォトダイオードと、を更に備える、請求項1に記載のポータブル磁気共鳴イメージャ。
【請求項10】
前記窒素空孔ダイヤモンドは、立方体であり、開口が、前記立方体の1つの表面上に形成されている、請求項1に記載のポータブル磁気共鳴イメージャ。
【請求項11】
前記立方体は、外面を有し、前記開口によって形成された前記外面以外の前記外面は、反射体でコーティングされている、請求項10に記載のポータブル磁気共鳴イメージャ。
【請求項12】
前記窒素空孔ダイヤモンドの周りに配置された少なくとも2つのシム付きヘルムホッツコイルを更に備える、請求項1に記載のポータブル磁気共鳴イメージャ。
【請求項13】
前記窒素空孔ダイヤモンドを通して均一なマイクロ波場を生成するように配置されたマイクロ波アンテナを更に備える、請求項1に記載のポータブル磁気共鳴イメージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月24日に出願された米国仮特許出願第63/248,090号の利益を主張し、その全体は、完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポータブル磁気共鳴イメージャ(pMRI)、より具体的には、ヒト、動物、及び任意の他の物質における水素プロトンの配設及び濃度、又は他の磁気共鳴構造を表す画像を生成するために、磁気センサとしての窒素空孔ダイヤモンド(NVD)と、磁石の物理的制約の外側に有用な磁場を生成するように設計された新規の磁石構成と、を利用する、pMRIに関する。
【背景技術】
【0003】
本発明を理解するために、小型で、ポータブルの、低磁場MRIの必要性に関する背景情報が有用である。
【0004】
1.1 問題
従来の磁気共鳴画像法(MRI)は、解剖学的構造を可視化し、高い空間的及び時間的分解能で非侵襲的に機能する。しかしながら、弱偏波核スピンの誘導検出における固有の低感度を克服するために、臨床MRIスキャナは、非常に高い磁場を生成する低温冷却超電導磁石を用いる。1.5~7テスラ(T)で一般的に見られるこれらの強力な磁石は、巨大であり、多くの環境における動作を妨げる非常に厳格なインフラストラクチャ要求を有する。MRIスキャナは、購入、設置、及び保守にコストがかかる。
【0005】
MRIスキャナは、巨大な超電導磁石の周囲に構築され、MRIシステムの総設置コストは、典型的には、磁場のテスラ当たり100万ドルである。これらのデバイスの高コストは、現場でのスキャナの数を制限し、医療施設は慎重に患者に優先順位を付ける必要がある。追加的に、これらの巨大なスキャナは、可動運転を不可能にし、手術室、トリアージ及びプライマリケア室を含む多くの場所を不可能にする。
【0006】
低磁場での動作は、高磁場が禁忌となる環境(近くの鉄材料の存在下など)での撮像を可能にし、著しく低減された総設置コストでスキャナを構築及び設置する可能性を高める。低磁場はまた、患者の取り扱い及び位置決めを容易にする開放形状設計を可能にする。
【0007】
1.2 窒素空孔ダイヤモンド磁力計
過去数年の間に、ダイヤモンド中の窒素空孔色中心を使用した磁力計は、その高い空間分解能、使用のシンプルさのために幅広い用途に考慮されてきたが、pMRIにとって最も重要なのは、室温での適用である。Grosz,A.,Haji-Sheikh,M.J.,Mukhopadhyay,S.C.(2017).High Sensitivity Magnetometers(p553).Switzerland:Springer International Publishingを参照されたい。
【0008】
図1に示されるように、NVD148は、図に示されるように、窒素原子で置換された1個の炭素原子と、窒素原子に隣接する空孔とを有する通常の四面体ダイヤモンド格子からなる。結晶格子の四面体形状により、窒素空孔軸の4つの可能な配向がある。軸は、窒素原子と空孔とを接続する線として定義される。
【0009】
各NV中心は、3個の隣接する炭素原子及び窒素原子からのぶら下がった電子により、電子エネルギー準位基底状態3A2、及び励起状態3Eを有する。これらの状態間の光学遷移は、637nmの波長である。532nmの緑色レーザからのエネルギーは、基底状態から励起状態に電子のエネルギーレベルを上昇させ、励起状態から基底状態への蛍光減衰は、637nm~800nmの波長範囲の光を放出する。ゼーマン効果によりNV中心に結合された磁場の大きさに依存するエネルギーサブレベルがある。この効果は、磁場の大きさに直線的に依存する。NV中心の4つの可能な配向があることを考えると、各軸に沿った磁場寄与の影響を測定し、磁場のソースの方向性及び大きさを導出することが可能である。
【0010】
エネルギーサブレベルの違いはマイクロ波の範囲内にあるため、遷移の1つと共鳴するマイクロ波信号を適用することが可能である。これが起こると、蛍光が損なわれ、その周波数の強度が低下する。これらの効果を組み合わせると、蛍光の大きさに基づいて磁場強度を測定することができ、方向は周波数偏差から導き出すことができる。
【0011】
NVDの感度は、最も感度の高い磁力計(SQUID、蒸気セル、AMS)の領域内にあるが、サポートする低温学を必要とせず、ファラデー誘導コイルよりもはるかに小さいため、pMRIにとって最適な磁力計である。
【0012】
1.2.1 基本的なパラメータ
1.2.1.1 陽子密度
プロトン密度は、MR測定に利用可能な単位体積内のプロトンの数を指す。Liang,Z.,Lauterbur,P.C.,(2000).Principals of magnetic resonance imaging(pp.66-67).New York:Institute of Electrical and Electronics Engineers,Inc.を参照されたい。水素には2つのスピン状態しかないため、水素核(プロトン)は、外部磁場の方向に対して平行又は逆平行のいずれかで外部磁場と並んでいる。
【0013】
しかしながら、平行スピン量子は、2つのエネルギーレベルのうちのより低い方である。これは、逆平行よりも、100万個のプロトンごとに、外部磁場に対して平行に歳差運動する約10個の余分なプロトンがあることを意味する。この非常に少ない数は、測定される体積にアボガドロ数(6.022x1023)のプロトンがあるという事実によって相殺される。0.125立方ミリメートルの医療MRIに相当する体積要素(ボクセル)を使用すると、ボクセルには約8.34x1018のプロトンがある。したがって、測定することができる約8.52×1014個の水素原子がある。Case,R.L.(2008).Reducing eddy currents in high magnetic field environments(pp.20-21)。修士論文、University of Central Florida,Orlandoを参照されたい。
【0014】
このスピン密度は、画像の強度の形でボクセルに重みを与える。陽性画像描写(白=高密度)の場合、組織(又は他のオブジェクト)は、高プロトン密度の場合は白、測定可能なプロトンがないサンプルの場合は黒で表示される。
【0015】
1.2.1.2 ラーモア周波数
人体の有用な画像を作成するために、現代の医療MRIは、核スピンと高い大きさの外部磁場B0との相互作用に依存している。スピニングプロトン(水素核)及び外部磁場の相互作用は、外部磁場の軸の周りのプロトンスピンの歳差運動をもたらす。本質的に、プロトンの大部分は外部磁場と「整列」している。歳差運動の周波数ω0は次のとおりである:
ω0=γB0
式中、γはジャイロ磁気比と呼ばれる基本定数である。プロトンγの値は2.68x108ラジアン/秒/テスラ又は42.6MHz/Tである。この歳差運動周波数はラーモア周波数と呼ばれる。Hacke,E.M.,Brown,R.W.,Thompson,M.R.,&Venkatesan,R.(1999),Magnetic resonance imaging:Physical principals and sequence design(p.4).New York:A John Wiley&Sons,Inc.を参照されたい。ほとんどの医療用MRIでは、ボアフィールドは1.5T又は3.0Tのいずれかであり、結果として生じる歳差運動周波数は63.9MHz又は127.8MHzのいずれかである。高い磁場強度は、本質的により大きな信号対雑音比を提供するため、静止した固定部位MRIにおいて使用される。
【0016】
ほとんどの臨床電磁石は、ニオブ-チタン(NbTi)又は銅によって囲まれた他の超電導材料を使用し、大きなコイルを形成する。コイルは、活性電磁波シールドである追加の超電導コイルと統合されている。追加の受動的シールドも使用される。次いで、超電導コイルは、真空絶縁体、NbTiコイルが超電導相に入るようにする液体ヘリウム、次いで、液体窒素の層によって囲まれ、非常に高価な液体ヘリウムの蒸発を低減する。Bushong,S.C.(1996).Magnetic resonance imaging:physical and biological principals(p.140).St.Louis,MO:Mosby-Year Book,Inc.を参照されたい。銅コーティングにより、磁石の「ランプダウン」において停電又は超電導の損失が発生した場合の超電導「クエンチ」が可能になる。
【0017】
しかしながら、pMRIで使用されるようなより低い磁場強度は、そのより小さいサイズ、より低い重量、より低い複雑さ、及び他の多くの考慮事項により有利である。
【0018】
1.2.1.3 緩和時間
適用される外部磁場と整列するために、歳差運動プロトンは、熱エネルギーの形で近くの原子の周囲の格子にエネルギーを放棄する。これが起こる速度は、試料の長手方向の磁化を生じさせ、その時間定数は、T1又は「スピン格子弛緩時間」と呼ばれる。T1の測定を設定するために、歳差運動プロトンは、RFパルスで、横方向(B0磁場に対して垂直)軸又は逆平行(180度シフト)に「摂動」されられる。このRFパルスは、同時に歳差運動を生じさせ、同じ位相構成を達成する。
【0019】
MRIで使用される別の重要なパラメータは、「スピン-スピン緩和時間」又はT2と呼ばれ、これは、プロトン歳差運動がボアフィールドと(ボアフィールドに対して平行に)並ぶときにプロトンの位相関係が崩壊する速度の尺度である。磁界には常に局所的な変動があり、それがラーモア周波数の変動をもたらすため、各々のスピンは、異なる磁場強度にさらされ、これは、コヒーレンスの損失につながる。
【0020】
よく知られたMRI画像を構築するために、プロトンスピン密度、緩和時間、及びより低い程度に、磁化率及び化学シフトパラメータが使用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
本概要は、詳細な説明において以下で更に説明される単純化された形式での概念の選択を紹介するために提供されている。本概要は、特許請求される主題の重要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図するものでも、特許請求される主題の範囲を限定するために使用されることを意図されたものでもない。更に、特許請求される主題は、本開示の任意の部分に述べられたあらゆる又は全ての欠点を解決する限定に限定されない。
【0022】
ポータブル磁気共鳴イメージャは、プローブを有する。1つ以上の磁石がプローブ内に配置されており、プロトンを標的に歳差運動させるための少なくとも1つの磁場を生成する。プローブ内に配置された磁力計は、光源及び窒素空孔ダイヤモンドを有する。光源は、窒素空孔ダイヤモンドに光を投射する。窒素空孔ダイヤモンドは、光に応答して蛍光を発する。光検出器は、蛍光を検出し、それに応答して、1つ以上の磁石の存在下で歳差運動した歳差運動プロトンの減衰を示す信号を生成する。
【0023】
本発明のこれらの及び他の実施形態、特徴、態様及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲及び添付の図面に関連してより理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本出願のより堅牢な理解を容易にするために、ここで、同じ要素が同じ数字で示されている添付の図面を参照する。これらの図面は、出願を限定すると解釈されるべきではなく、例示的であることが意図されているだけである。本発明の前述の態様及び付随する利点は、以下の添付の図面に関連して検討された場合、以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解されるであろう。
【0025】
【
図1】当技術分野で既知であるようなNVD結晶セルの図である。
【
図2】本発明に従って構築されたポータブルMRIシステムのブロック図を示す。
【
図3】本発明の一実施形態に従って構築されたポータブル磁気共鳴イメージャの上面斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に従って構築されたポータブル磁気共鳴イメージャディスプレイの上面斜視図である。
【
図5】本開示の一態様によるソレノイド場プロットを示す。
【
図6】本開示の一態様によるマルチソレノイド場プロットを示す。
【
図7】本開示の一態様による、ゴレイコイルの斜視図である。
【
図8】本開示の一態様による、ゴレイコイルの場プロットである。
【
図9】本発明の一実施形態によるpMRI磁石制御システムのブロック図である。
【
図10】本発明による磁石のシフトしたボアフィールドを描写する。
【
図11】本発明による、ボア磁石のY軸に沿った距離の関数としての磁界強度のグラフ。
【
図12】本発明による非均質外部場磁石を駆動するためのシステムのブロック図である。
【
図13】本発明に従って構築された送信アンテナシステムのブロック図である。
【
図14】本発明に従って構築されたNVD磁力計のブロック図である。
【
図15】本発明に従って構築されたNVDセンサシステムのブロック図である。
【
図17】NV中心電子エネルギーレベルの図である。
【
図18】本発明による光学的に検出された磁気共鳴の図である。
【
図19】本発明による光学的に検出された磁気共鳴スペクトルの図である。
【
図20】本発明に従って使用される立方体NVDの斜視図である。
【
図21】本発明の別の実施形態に従って使用される内部逆反射を伴う立方体NVDの斜視図である。
【
図22】本発明の更に別の実施形態による、NVDによって提示されるような内部反射を示す立方体NVDの斜視図である。
【
図23】本発明の更なる実施形態に従って使用される円筒形NVDの斜視図である。
【
図24】本発明の更なる実施形態に従って使用される球面NVDの斜視図である。
【
図25】本発明によるセンサをバイアスするための磁石の斜視図である。
【
図26】本発明の別の実施形態による、センサをバイアスするための磁石の斜視図である。
【
図27】本発明の更に別の実施形態による、センサをバイアスするための磁石の斜視図である。
【
図28】本発明によるマイクロ波スポイラ構造の斜視図である。
【
図29】本発明に従って構成されたNVDセンサアセンブリの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
参照記号又は名前は、図中に示される特定の構成要素、態様又は特徴を示すために、図中で使用される。2つ以上の図に共通する参照記号は、図中に示される同様の構成要素、態様、又は特徴を示す。
【0027】
2.0好適な実施形態の詳細な説明
2.1ポータブル磁気共鳴イメージャ
ポータブル磁気共鳴イメージャ(pMRI)が開示されている。機能ブロックの簡単な説明の後、より詳細な説明が続く。
【0028】
2つの磁石システムが協働して、プロトン歳差運動を整列させるように設計された有用な磁場を形成する。不均一な外部磁場電磁石を補完するために、一組の永久磁石が開示される。これらの永久磁石は、生成された磁場が、不均一な電磁石によって生成された主磁場と整列するように設計されている。
【0029】
次いで、不均一な外部磁場電磁石は、整列された磁場及び勾配磁場を生成して、測定された歳差運動プロトン間の空間的区別を生成する。この外部磁場は、磁石の物理的範囲を超えて延在し、ユーザが有用な磁場を、歳差運動プロトンが測定される任意の生物学的又は他のオブジェクトに向けることを可能にするハンドヘルドプローブにおいて包囲されている。
【0030】
ここで、全体を10として示され、本発明に従って構築されたpMRIのブロック図が提供されている
図2を参照する。当技術分野で既知であるように、pMRI10は、pMRI10を動作させるために、以下に別段の記載がない限り、当技術分野で一般的に既知であるように、電源110、インターフェース120、機械構造130、及びグラフィカルユーザインターフェース140を含む。
【0031】
CPU22は、pMRI10のセンサコンポーネントのフィードバックベースの制御を提供する。具体的には、CPU22は、パルス生成、タイミング及び制御ユニット24に制御入力を提供し、パルス生成、タイミング、及び制御ユニット24は、次に、以下でより詳細に説明されるように、制御出力磁石16、18、20及び磁力計14を提供する。制御信号は、制御ユニット24によって生成され、送信アンテナ12を駆動するためにRF変調器への直接入力を変調するために、RF変調器32及びRFシンセサイザによって処理される。
【0032】
同時に、制御ユニット24は、不均一な外部磁場電磁石18及び勾配コイル16をそれぞれ動作させるために、電力及び制御増幅器28、40に入力を提供する。制御ユニット24によって生成された制御信号は、操作される前に、それぞれのデジタルアナログ変換機(DAC)26、34、42によって成形される。単一のDACが、制御ユニット24の出力のそれぞれに対して動作するために使用され得ることは既知である。
【0033】
窒素空孔ダイヤモンドを含む磁力計14は、磁石16、18、20の磁場にさらされた対象物における磁場を監視する。磁力計14はまた、制御ユニット24の制御下で動作し、標的における測定された磁場に対応する信号を提供し、信号調節ユニット38によって調節された入力をフィードバックとしてCPU22に提供する。
【0034】
好ましい非限定的な実施形態では、コイルの形態の送信アンテナ12は、RF増幅器30によって電力供給され、プロトンスピンシステムにエネルギーを追加することによって標的内の歳差運動プロトンを摂動させて、歳差運動角度を増加させ、逆平行集団を増加させ、歳差運動プロトンの位相関係を同期させる。
【0035】
窒素空孔ダイヤモンド(NVD)磁力計14は、次いで、歳差運動プロトンが位相逸脱し、より低いエネルギー状態の小角度歳差運動に戻るとき、空間的及び時間的座標における磁場を測定する。更に、制御ユニット24の制御下での磁場の変調、及び次に磁石16~20は、歳差運動ベクトルが交互にランダム化及び整列させる。各ボクセルの測定された磁気シグネチャの方向性及び強度の測定は、測定される生体組織又は他の磁気共鳴物質の構造及びタイプを表す画像を形成するためのデータの再構築を可能にする。
【0036】
機能の全ては、CPU22内の適切に選択されたマイクロプロセッサ及びオペレーティングソフトウェアによって管理及び制御される。機能性は、ハード及びソフトコントロール並びにインジケータ、並びにデータの診断に有用な方法でのデータの表示を通じて、ユーザによって選択される。
【0037】
電力は、システム電源110によって供給され、非限定的な例として、120VACを含むユニバーサルソース、西半球に典型的に見られる60Hzソース、東半球に典型的に見られる220VAC、50Hzソース、並びにあらゆる種類のリモート、バッテリ、ソーラ、及び他のエネルギー源を含み得る。
【0038】
pMRI100は、電子機器、GUIディスプレイ210、制御装置、インジケータ、及びプローブ214を取り付けるための設備を備えた適切な再配置可能なスタンド200によって収容及び支持される。pMRIハウジングの概念的な描写を
図3に示す。
【0039】
pMRI10のGUIインターフェースを含むディスプレイセクション210は、(フルモーションビデオイメージングをサポートするために)高精細フルカラー、高リフレッシュレートである。
【0040】
新規かつ独自のプローブ214は、有用な磁場を生成するための磁気システム(磁石16~20を含む)及びNVD磁力計センサ14を含む。pMRIディスプレイ210及びプローブ214の概念的な描写が図に示されている。
【0041】
1.2.2 磁石システム
有用な磁場は、2つの方法のみにおいて、すなわち、磁性材料(永久磁石)の使用及び導体(電磁石)に電流を流すことによって生成される。磁場の形状は、磁性材料の物理的配設又は導体の経路に完全に依存する。
【0042】
永久磁石のために、多くの周知の形状、すなわち棒(円形又は正方形の断面)及び蹄鉄(それ自体に曲がった棒)が存在する。電磁石の最も一般的な形態は、ソレノイドである。永久磁石の変形が、電気モータの電界のような他の有用な構成を形成するために存在する。ワイヤのコイルは、電機子巻線、テレビ、レーダー、アンテナ、及び、当然のことながら、先行技術のMRI装置でのビーム形成のためのコイルなど、具体的な目的のために多種多様な形態で形成される。
【0043】
永久磁石及びワイヤ形態の様々な構成のための磁場構造の基本的な概念の知識は、発明者が潜在的に有利な磁場構成を概念的に考案することを導く。コイル及び磁石の2以上の配設の重ね合わせは、これまで以上に複雑な磁場構成をもたらす可能性がある。許容可能な磁場構成の目的は、水素原子を整列させるのに十分な強度であるが、調査中の空間座標における水素密度の識別が周囲の座標から識別されることを可能にするのに十分な勾配である。
【0044】
典型的なMRIでは、特定の組織タイプを区別し、「空間のどこから信号が来ているのか」という空間情報をキャプチャするために、均一性が必要である。この全ては、B0磁場の値が既知である限り、はるかに重要ではなくなる。そうであれば、測定される空間内の2つの点が同じでない限り、空間情報は保存される。絶対B0磁場が既知である限り、組織の任意の差を計算することができる。例えば、脂肪及び水が生み出す共鳴はわずか3.5ppmである。したがって、B0がその公差内であることが既知である限り、組織を区別することができる。
【0045】
CPMGシーケンスに類似した非常に高速な二次元純粋位相符号化技術は、非常に不均一な磁場上で使用することができ、取得時間を少なくとも2桁低減する。
【0046】
1.2.2.1 ソレノイド
図4に示されるように、ボアコイルの1つの例示的な実施形態のための単純なソレノイドの例が提供される。この特殊な形態は、典型的なMRIに使用され、最大の信号対雑音比のプロトン整列を最大化するために内部磁場(赤、
図5、6を参照)が生成される。しかしながら、有用とみなされる磁場の部分は、磁石の物理的限界内に完全に含まれる。
【0047】
医療用MRIシステムでは、濃度は、磁場が最も強い「赤い」領域Rにあり、シムコイル及び勾配コイルの助けを借りて、磁場強度は、特定の体積にわたって非常に均一である。本出願において、私たちの関心は、磁場が均一ではなく(自然な勾配)、中心体積ほど強くはないが、画像化目的には十分に強いという事実にある。追加のコイル構造は、有用な画像化目的のために外部磁場を線形にする又は十分に定義することに焦点を当てている。磁場は、周知の線形である必要はない。画像処理技術は、関心のある体積内の具体的な位置を更に識別することができる。
【0048】
1.2.2.2 マルチソレノイド
マルチソレノイド設計は、積層されたコイル構成によって近接場線形化が発生するという仮定を調査するためにモデル化される。追加的に、磁場強度が増大され、これは、水素スピン集団の増加によってより強い信号を生成する能力を表す。代表的なマルチソレノイド設計を次の図に示す。
【0049】
ボアフィールドの「赤」セクションRは、磁石の一端に移動される(
図6)。しかしながら、磁場のこの部分は、有用ではない。むしろ、磁石の物理的限界を超えて延在する緑色及び黄色の部分に関心がある。
【0050】
1.2.2.3 ゴレイコイル
ゴレイコイルは、湾曲したセクションの近傍に勾配を作成するように設計された一対のサドル形状のコイル702、704である。各線形セクションは、対称性により、その隣接する磁場を消滅させる。モデルを
図7に示す。
【0051】
図7に示されるモデルでは、各コイルは、上部コイル702が対象領域内の磁場強度を追加するように電流を通過させ、下部コイル704は、対象領域内の磁場を差し引く又は弱める。
【0052】
右手の法則によって、電流は、原点に最も近い位置にあるセクションで正のx軸方向に流れる。この電流の流れる方向は、原点から最も遠い上部コイルの湾曲部分において負のx軸に向かって電流を流す。したがって、磁場は、正のz軸に向かう。
【0053】
下部コイル内で反対方向に流れる電流は、その磁場を負のz軸に向け、磁場の重ね合わせによって、正のz軸に向かう磁場から差し引く。
【0054】
図8に示すように、ゴレイコイルの磁場プロットは、湾曲セクションからの距離が増加するにつれて徐々に減少する大きさの磁場強度を示す。磁場の方向は示されていない。ゴレイコイル磁場がソレノイドと重ね合わされると、方向が明らかになる。
【0055】
図9は、全体がpMRI10の900として示される、pMRI磁石制御システムの好ましい非限定的な実施形態のブロック図を示す。上記のような磁石制御システム900は、制御ユニット24に制御信号を提供するCPU22を含む。制御ユニット24は、次に、電力及び制御増幅器40に制御信号を提供し、これは、次に、勾配コイル16の動作を制御するための信号を提供する。
【0056】
勾配コイル16は、実際には複数のゴレイコイル900a~900nを含む。それぞれのセンサプローブ910a~910nは、それぞれのゴレイコイル900a~900nに関連付けられる。電力制御増幅器40は、勾配コイル16のそれぞれの1つを作動させるための電流を提供するために、それぞれのゴレイコイル900a~900nに関連付けられた1つ以上の電流源920a~920nを含む。電力及び制御増幅器40のそれぞれのロックイン増幅器930a~930nは、それぞれのセンサプローブ910a~910nから信号を受信し、信号を増幅し、アナログデジタル変換機940を介して、信号をフィードバックとしてCPU22に入力する。
【0057】
各ゴレイコイル900a~900dは、それぞれのコンピュータ制御電流源920a~920nによって駆動され、センサ910a~910nによって個々に感知され、CPU22による磁場勾配の精密制御及び操作のために、フィードバックをコンピュータ(CPU22)に提供する。
【0058】
1.2.2.4 不均一ボア磁石
プロトンスピンとその周囲との有害な相互作用を最小限に抑えるなど、均質な磁場を有する理由は多数存在する。臨床応用では、50cmの球形体積にわたってわずか数ppmだけ変化する磁場が典型的である。Jin,J.(1999),Electromagnetic analysis and design in magnetic resonance imaging(p.22).Boca Raton,FL:CRCを参照されたい。
【0059】
多数のコイル構成が、均一な磁場を生成することができるが、ヘルムホルツコイル(上記のように同軸に配設されたソレノイド)の、目的に合うように設計されたセットは、医療用MRIに最も適している。しかしながら、均一な磁場を生成することが可能な全ての電磁石設計において、有用な磁場は、磁石の物理的制約内にある。
【0060】
均一な磁場を維持したいという願望にもかかわらず、磁場が試料全体にわたって完全に均一である場合、ラーモア周波数は試料内の全ての点について同じであり、試料内の空間差を決定することは不可能である。ラーモア周波数の空間差、したがって画像を作成するために、x、y、及びzの勾配磁場は、ボアフィールドに意図的に課され、これは、均一なフィールドを維持するという願望に反する。それでも、有用な画像を取得することがきる。
【0061】
図10は、発明の一次元態様を示しており、この場合、磁石の物理的範囲の外側に有用な磁場を生成するためにボアフィールドが同時にシフトされ、ゴレイコイルが、磁場内に空間差を生じさせる勾配を生成するために磁場の勾配をシフトさせることで、関心のある体積における歳差運動プロトンの濃度を表す特定のラーモア周波数を測定することができる。
【0062】
「Y」軸に沿った磁場強度対距離のプロットを
図11に示す。磁石のエッジを表すY=0の点から始まり、右に進み(Yが増大する)、磁場の大きさは最大に増大し、次いで、制御されながら先細りし、本質的に、一次元で有用な磁場を生成する。
【0063】
本発明は、二次元の有用な磁場を生成するために、直交関係でゴレイコイルを単に追加する。磁場の大きさを支えるための永久磁石の追加は、非均一なボア磁石のサイズ及び強度を低減し、このこと自体は、電力損失、重量、コスト、及び他の要因を低減する。
【0064】
図12に見られるように、不均一な外部磁場磁石18の使用を示す非限定的な実施形態において、同じ番号は、同じ構造を識別するために使用されており、ゴレイコイルと類似の形式で、ボアコイル180及びそれぞれの磁場成形コイル(ソレノイドコイル)182a~182nは、コンピュータ制御される電流源280a~280nによって駆動され、フィードバックが、関連するロックインアンプ382a~282nによって増幅される個々のセンサプローブ184a~184nによって提供され、これにより、コンピュータ(CPU22)は、正しい大きさのボアフィールドが生成されることを保証することができる。これはまた、ボアフィールドへのコンピュータ制御された一時的な変更を可能にする。pMRI磁場制御システムのブロック図を
図12に示す。
【0065】
ここでも、磁石180a~182nの動作は、制御ユニット24に制御信号を提供するCPU22の制御下で動作させられ、制御ユニット24自体は、電力及び制御増幅器28のそれぞれの電流源280a~280dへの入力を提供する。電力及び制御増幅器28からのそれぞれの電流出力は、不均一な外部磁場磁石18のそれぞれの磁石180~182nを駆動する。CPU22は、部分的に、磁石180、182a~182nを監視する関連するセンサプローブ184a~184nからの出力に応答して、印加される電流を制御する。それらは、実質的にフィードバックループを形成する。
【0066】
1.2.3 スキャニングシステム
一般に、先行技術のMRIは、非常に均一なボアフィールドを設定し、次に正確な線形勾配のセットを設定する。これにより、周知の空間場が作成される。次いで、歳差運動プロトンが励起され、リラックスさせられ、放出されたエネルギーが検出される。これは、磁場の線形配設に一致するように線形に実行される。
【0067】
しかしながら、磁場構成が既知である場合、これは必要ではない。次いで、任意の形状フィールドをスキャンし、データから情報を抽出することができる。これを行うために、スキャニングがフィールド形状に従う「ラバーバンド」モードスキャニング技術が適用される。磁場形状が直線的に又は何らかの他の形式で変化すると、スキャニング速度及び加速度が一致するように変化する。
【0068】
これは、物理的及び数学的に、又はその両方に適用されることができ、「不均一な磁場だけでなく、空間的及び時間的に変化する磁場でのアーチファクトを著しく低減する。
【0069】
更に、信号が、信号検出を回避するために帯域幅で意図的に拡散され、更にノイズ閾値を下回るように信号レベルを低下させるスプレッドスペクトル通信に関与する技術が、雑音の存在下で信号を「抽出」するために逆に用いられるべきである。医療用MRI装置における画像の不均一性の主な要因は、渦電流の存在である。
【0070】
pMRIスキャニングシステムのブロック図を
図13に示す。同じ数字は、明細書全体を通して説明されるように、同じ構造を識別するために利用される。
【0071】
1.2.4 センサシステム
大型医療MRIのために好まれるセンシング技術は、ファラデー誘導コイルである。ファラデー誘導コイルは、様々な用途のための様々な形状及びサイズがあり、本質的には全て無線周波数アンテナである。Young,S.W.(1988).Magnetic resonance imaging(p.20).New York:Raven Press,Ltd.を参照されたい。歳差運動プロトンを並べるためにボアフィールドが適用され、試料中に空間差を作成するために勾配フィールドが適用されると、特定のパルスシーケンスのセットがRFコイルに適用され、RFコイルは、RFエネルギーを歳差運動プロトンマトリックスに伝達し、それらを「摂動」する。歳差運動プロトンが、自然に低いエネルギー状態に戻ると、それらは、典型的には同じコイルによって測定される電磁場の形でエネルギーを「再放射」する。基礎となる試料の画像を形成するように処理されるのは、この検出されたエネルギーである。ファラデー誘導コイルは、高周波エネルギーの効率的な送信機及び受信機内に簡単に操作される。しかしながら、それらは、特に1T未満の磁場では、(他のNMRセンサと比較して)重大な雑音及び感度の問題を生じる。
【0072】
ポータブル磁気共鳴イメージャに対しては、窒素空孔ダイヤモンド(NVD)磁力計の新しい新規の用途が適用される。典型的なNVD磁力計の概略的レイアウトを
図14に示す。Grosz,A.,Ed.(2017).High Sensitivity Magnetometers(p559).Switzerland:Springer International Publishingを参照されたい。
【0073】
図14に見られるように、NVD磁力計1400は、好ましくは緑色の波長におけるポンプレーザ1401を含む。ポンプレーザ1401は、光ビームを二色性ビームスプリッタ1420に出力し、これは、ビームを、レンズ1440を通して方向付け、NVD結晶1480に収束させる。マイクロ波源1402は、NVD結晶1480においてマイクロ波を放出し、NVD結晶1480は、これに応答して、フォトダイオード1462において受信されることが当技術分野で既知であるように、ビームスプリッタ1420及び光学系1460を通して光を放出する。
【0074】
図15は、本発明に従って構成されたpMRI NVDセンサシステム1500のブロック図であり、同じ数字は、同じ構造を示すために利用されている。CPU22は、制御信号をパルスジェネレータ24に出力して、信号窒素空孔ダイヤモンド磁力計14を出力する。制御信号は、修正されたRFシンセサイザ36、RF変調器32であり、次に、磁力計14への入力の前にRF増幅器30によって増幅される。磁力計14からの戻り信号は、アナログデジタル変換機152及び信号調節ユニット38によって処理された後、CPU22に入力される。
【0075】
NVD磁力計14は、好ましい非限定的な実施形態では、532nmの波長で光を放射するポンプレーザ1140を含む。光ビームは、光学系142によって操作され、次いでNVD148に向けられる。マイクロ波スポイラ146は、NVD148上で動作し、それによりNVDは、光学系142によって逸らされた第2の波長の光ビームをSiアバランシェ光検出器150に放出し、光検出器150は、信号調節ユニット38を介してCPU22に光特性を示す出力を放出する。
【0076】
このようにして、532nmレーザ1140、又は450nm及び637nmの範囲(NVD148の吸収帯域)の任意のエネルギーポンプ源を使用して、NV色中心を励起する。色中心エネルギーが自発的に蛍光すると、得られる信号は、シリコンアバランシェ光検出器150、又は他の光検出器によって検出される。蛍光周波数は、ゼーマン効果を介して外部磁場によって操作されるm=±1サブエネルギーレベルに依存しているため、ダイヤモンド原子構造にN-V整列の4つの可能な方向があるという事実とともに、合計8つの可能な蛍光周波数がある。
【0077】
8つの可能な蛍光周波数の周波数範囲にわたって掃引されるマイクロ波信号は、マイクロ波周波数がサブレベルのエネルギーと共鳴するにつれて、蛍光を干渉し、信号を弱めるか、又は減少させる。結果として生じるスペクトル内の8つの「ディップ」は、ダイヤモンドの結晶配向の知識とともに、信号を読み取ることを可能にし、コンピュータが、減衰していく歳差運動プロトンによって生成される磁気信号の方向及び大きさを計算することを可能にする。結果として、このデータの画像を生成することができ、画像は、診断医に、測定されている下にある生体組織又は磁気共鳴物質の代表的な画像を提供する。
【0078】
1.2.4.1 光学的に検出されたNVDとの磁気共鳴
図16に示すように、NVD結晶構造は、窒素原子によって置換された1個の炭素原子を有する四面体ダイヤモンド格子からなる。窒素原子に隣接するのは、結晶格子内の空孔又は「ホール」である。四面体構造は、N-Vアライメントの4つの異なる方向を可能にする。
【0079】
NV中心に隣接する3個の炭素原子の各々は、ぶら下がる電子に寄与する。窒素原子は2つの電子を寄与し、6番目の電子は負電荷状態NV-を完了し、これは磁気測定にとって有用である。
【0080】
NV-(「NV」)中心のエネルギー準位構造を
図16に示す。
3A
2基底状態と
3E通電状態との間のエネルギー遷移は、637nmの赤色光に対応する。
図17を参照されたい。しかし、フォノン(原子の集合励起)サイドバンドは、NV吸収及び蛍光スペクトルを数百ナノメートルの波長まで広げるため、NV中心を励起するために、容易に利用可能な532nmの緑色レーザを使用することができる。
【0081】
スピントリプレット状態3A2は、ゼーマン効果を介してNV中心に結合する磁場として特に重要である。Grosz,A.,Ed.(2017).High Sensitivity Magnetometers.(p556).Switzerland:Springer International Publishingを参照されたい。NV中心が磁場に曝される場合、サブレベルのエネルギーは、磁場の大きさに直線的に依存する。光励起下の電子構造及び挙動の詳細な説明は、Doherty,M.W.,Manson,N.B.,Delaney,P.,Jelezko,F.,Wrachtrup,J.,&Hollenberg,L.C.L.(2013).The nitrogen-vacancy colour center in diamond.arXiv:1302.3288に見ることができる。
【0082】
ポンプと同時に、NVDは共振周波数にわたって低電力マイクロ波(MW)放射で掃引される。MWの周波数がm=±1のサブレベルのうちの1つと共振するとき、それは、そのレベルについての光学ポンプ作用を「損なう」。このため、蛍光は、その周波数において減少する。磁場の大きさは、
図19に示される図の周波数?-及び?+によって示される、m=±1のサブレベル間の差を測定することによって決定され得る。Grosz,A.,Ed.(2017).High Sensitivity Magnetometers.(p562).Switzerland:Springer International Publishingを参照されたい。
【0083】
1.2.4.1.1 窒素空孔ダイヤモンド
pMRIでは、できるだけ多くのポンプパワーがダイヤモンドによって吸収されることが望まれる。これは、結晶構造内に高エネルギーレベルを生じ、磁場の関数として光学的に検出することができる放射崩壊又は蛍光の可能性を増大させる。しかし、ダイヤモンドは屈折率が高いため、全内反射が小さく、ポンプ光エネルギーがダイヤモンドから迅速に出てくることになる。
【0084】
ほとんどのNVD磁力計の場合、
図20に示すように、ダイヤモンドセンサ素子は単純な立方体5000である。レーザ光の形のポンプエネルギーが、ダイヤモンドに入り、色中心の一部のエネルギーレベルを上昇させ、吸収されなかった光がダイヤモンドから出ていく。
【0085】
吸収の確率を増大させるために、全反射は、
図21に示すように、立方体6000内に内部再帰反射を生じることによって増加される。
【0086】
立方体6000の内部反射の画像を
図22に示す。複数の光路に留意されたいが、ダイヤモンドの大部分は照明されていない。照明されていない全ての色中心は、NVDの全体的な感度を低減させる。
【0087】
照明の確率を高めるために、円筒形NVD7000が想定されており、NVD容積全体にポンプ放射を反射させるために屈折率を利用し、吸収されるポンプ放射線の量を増加させるために、開口7002を除いて外面をコーティングする。本発明を
図23に示す。
【0088】
ここで、ポンプエネルギーは開口に入り、吸収されるまで内部で反射される。この確率を高めるために外部反射コーティングが適用されており、蛍光のみを逃がすために開口がフィルタリングされる。
【0089】
更に、開口部8002内のNVD8000は、
図24の実施形態に示されるように、全内部反射を最大化するために球面であり得る。
【0090】
1.2.4.1.1.1 NVD原子構造
NVD原子構造の2つの形態が既知である。中性NV0と負に帯電したNV-は、著しく異なる光学的及びスピン特性を有する。負に帯電したNV-状態がこの技術に適用される。
【0091】
更に、NVDの感度は、12C炭素同位体を利用することによって向上され、13C同位体は0.01%未満である。
【0092】
1.2.4.1.1.2 NVD結晶配向
NVDは、N-V軸に沿った磁場に感応する。四面体の結晶構造として、4つの可能なN-V配向がある。いずれか1つのN-V軸は、Bフィールド線がN-V軸と一致するときに最大感度を有する。他の3つのN-V軸は、Bフィールドの一部を検出する。したがって、1つのN-V軸の配向は、プローブ軸に対して平行であることが好ましい。
【0093】
1.2.4.1.2 複数のNVDセンサ
NVDセンサの方向性により、N-V軸に沿って、Bフィールド方向の数学的計算は、各N-V軸に沿った強度に基づいて計算され得る。しかしながら、N-V軸がBフィールドと整列されるときの最大感度では、二次、三次、及び複数のNVDセンサを視差モードで使用して、Bフィールド方向を識別し、したがって、磁場の源を特定することができる。
【0094】
結果として、MRI画像フィールドは、各センサのためのバイアス磁石を調整し、バルク方式で各ボクセルを「読み取る」ことによって、電子的にスキャンされることができる。これは非常に迅速に実行できるため、各ボクセルのためのプロトンスピンの濃度の三次元ビデオ画像を計算し、ビデオ画像速度で表示することができる。
【0095】
1.2.4.2 バイアス磁石
1.2.4.2.1 シム付きヘルムホルツコイル
図25に見られるように、ヘルムホルツコイル2500は、2つの同軸電磁石2502、2504からなる。一緒に、コイル間に非常に均一な磁場を生成するためにそれらを使用することができる。しかしながら、その磁場均一性は、同軸構成においても、追加のシムコイルを追加することによって改善することができる。
【0096】
コイルサイズ及び電力損失を最小限に抑えるために、各シム付きヘルムホルツコイルは、コイル構成の範囲に同軸に配設された永久磁石で補完することができる。
【0097】
シム付きヘルムホルツコイルは、磁気バイアスを実行するためにNVDの周りに位置決めされており、外部の、望ましくない、磁場を打ち消すように変調されることもでき、それによって、関心のある磁場の感度を増大させる。
【0098】
1.2.4.2.2 直交ヘルムホルツコイル
インスタントpMRIでは、空間座標だけでなく時間座標において磁場を測定することが望ましい。磁場は様々な時間及び空間座標において異なるため、磁場は、様々な方向におけるバイアス又はキャンセルを必要とする場合がある。デカルト座標系に対応して、シム付きヘルムホルツコイル2602~2612の直交配設セット2600は、
図26のNVDセンサ(図示せず)の周りに配置される。このようにして、コイルは、コンピュータ制御下で、適切なバイアス機能及びキャンセル機能を適用するために動的に変調されることができる。
【0099】
1.2.4.2.3 四面体ヘルムホルツコイルアセンブリ
ヘルムホルツコイルアセンブリの別の実施形態では、
図27に示されるように、4つのシム付きヘルムホルツコイル2700及び27002のセットは、N-V色中心の感度に線形に直接影響を与えるために、図示されていないNVDセンサのN-V軸と整列された四面体形式で配設することができる。
【0100】
全ての構成において、永久磁石は磁場を補完することができる。
【0101】
1.2.4.3 マイクロ波スポイラ
NVD148が、532nmの緑色レーザ光、又は他の実施形態において、吸収バンド内のいくつかの波長のうちの1つを使用してポンピングされるとき、蛍光は、磁場の関数である。各エネルギーサブレベルは、特定の周波数を有し、4つのダイヤモンド軸の結果として、4つの軸のうちの1つに沿った磁場の大きさを表す合計8つの周波数を有する。
【0102】
周波数がエネルギーサブレベルの1つと共振しているときに、マイクロ波エネルギーでダイヤモンドをスキャンすると、蛍光が減少し、共振周波数においてスペクトルの「ディップ」が生じる。
【0103】
コントラストを最大化するために、
図28に示されるように、NVD148は、均一なマイクロ波場を有するマイクロ波スポイラ146によってスキャンされなければならない。1つの非限定的な実施形態では、マイクロ波スポイラ146は、上述のNVD148を介して均一なマイクロ波場を生成するように形成された、マイクロ機械加工された、又は蒸着されたマイクロ波アンテナである。
【0104】
マイクロ波スポイラ146は、最小限の損失及びスプリアス伝送が生じるように、ベース材料にインピーダンス整合させられる。
【0105】
1.2.4.4 ポンプレーザ
ここで、本発明に従って構成されたNVDセンサアセンブリ2900の実施形態が示された
図29を参照する。基板2902は、NVD148を支持している。NVD148のエネルギー源として機能するレーザダイオード1140は、450nm~637nmのそのような波長を有する、多数の光エネルギー源のうちのいずれかであり得、製造の容易さにより532nmが好ましい。マイクロ波スポイラ146は、NVD148の周りに形成されている。フォトダイオードの形態の光検出器150は、光路であるNVD148に隣接する基板2902上に配置されている。四面体ヘルムホルツコイル2700は、NVD148の周りに配置されている。
【0106】
この波長帯域内の固体レーザダイオードは、エネルギーをNVDに送り込み、NVDに蛍光を発生させる。レーザ光は、ダイヤモンドに最大量のレーザ光を転送するように設計された適切なフィルタ及び反射コーティングを備えた、専用のプリズムインターフェースで焦点が合わせられ、均一に分散される。
【0107】
代替的に、外部レーザ光源は、光ファイバーガイド、様々な光学素子を介してNVDを照明するように方向付けられ、適切なフィルタ及び反射コーティングで調節されることができる。
【0108】
別の実施形態は、照明を最大化し、NVDの大部分を通してポンプエネルギーを均等に分散させるために、レーザダイオード又は光学素子によって囲まれたNVDを有する。
【0109】
同様に、シリコンアバランシェフォトダイオードなどの蛍光検出要素は、NVDへのプリズム入口光学系が蛍光を透過するが、ポンプエネルギーを反射するように配置されることができる。
【0110】
上述のように構築されたポータブル磁気共鳴イメージャ(pMRI)は、改善された不均一な低磁場ボア磁石と、窒素空孔ダイヤモンド(NVD)を使用した光学検出量子磁気測定とを組み合わせて、ビデオ速度で診断品質の画像を生成することができるシステムを生成する。
【0111】
上述したように、水素を検出することが好ましい実施形態であるが、本発明に従って構築されたポータブル磁気共鳴イメージャは、ゼロではない磁気スピンを有する同位体を検出することに留意されたい。
【0112】
全ての方向の言及(例えば、上、下、前、後)は、本発明の実施形態の読者の理解を助けるために識別目的のためにのみ使用され、特許請求の範囲に具体的に記載されない限り、特に本発明の位置、向き、又は使用に関する限定を生じさせない。結合の言及(例えば、取り付けられた、結合された、接続されたなど)は、広義に解釈されるべきであり、要素の接続と要素間の相対的な動きとの間の中間部材を含み得る。このように、結合の言及は、必ずしも、2つの要素が直接接続され、互いに固定された関係にあることを暗示するものではない。
【0113】
上述の利点、実施形態、及び/又は特徴付けは、必ずしも完全又は網羅的ではなく、具体的には、本明細書に開示される特許可能な主題に関する。本発明の他の利点、実施形態、及び/又は特徴付けは、単独で又は組み合わせて、上記に記載された、及び/又は添付の図面及び/又は本明細書の以下の説明に記載されたように利用することが可能である。
【0114】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つの」、「1つ以上の」、及び「及び/又は」というフレーズは、動作において連結的であり、かつ分離的である無制限の表現である。例えば、「A、B及びCのうちの少なくとも1つ」、「A、B又はCのうちの少なくとも1つ」、「A、B及びCのうちの1つ以上」、「A、B又はCのうちの1つ以上」及び「A、B、及び/又はC」というそれぞれの表現は、A単独、B単独、C単独、A及びB、A及びC、B及びC、又はA、B及びCを意味する。
【0115】
別段の指示がない限り、本明細書及び図面で使用される量、寸法、条件などを表す全ての数字は、本明細書に記載される新規のアセンブリ及び方法の特定の用途に必要に応じて全ての例で修正され得る近似値として理解されるべきである。
【0116】
本明細書で使用される場合、「a」又は「an」エンティティという用語は、そのエンティティのうちの1つ以上を指す。したがって、「a」(又は「an」)、「1つ以上」及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書において互換的に使用されることができる。
【0117】
本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、又は「有する(having)」、及びその変形例の使用は、その後に列挙される項目及びその均等物並びに追加の項目を包含することを意味する。したがって、「including」、「comprising」、又は「having」という用語及びそれらの変形は、本明細書において互換的に使用されることができる。
【0118】
本明細書で使用される「手段」という用語は、米国特許法112条の(f)に従って、その可能な限り広範な解釈が与えられなければならないことを理解されたい。したがって、「手段」という用語を組み込んだ特許請求の範囲は、本明細書に記載される全ての構造、材料、又は行為、及びそれらの全ての均等物を網羅するものとする。更に、構造、材料、又は行為、及びその均等物は、概要、図面の簡単な説明、詳細な説明、及び添付の図面に記載されている全てのものを含むものとする。
【0119】
本明細書に直接的又は間接的に記載された方法論において、様々なステップ及び動作は、1つの可能な動作順序で説明されているが、当業者は、必ずしも本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、ステップ及び動作が再配設、置き換え、又は排除され得ることを認識するであろう。上記の説明に含まれる、又は添付の図面に示される全ての事項は、例示的なものにすぎず、限定的ではないと解釈されることが意図されている。詳細又は構造の変更は、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の趣旨から逸脱することなく行われ得る。
【0120】
本発明は、上述した特定の実施形態に限定されないことを更に認識されたい。したがって、本発明の趣旨及び本明細書に添付される特許請求の範囲から逸脱することなく、多数の修正を行うことができる。
【国際調査報告】