(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】抗炎症活性を有するペプチドとその用途
(51)【国際特許分類】
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【FI】
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A61Q19/10
A61Q5/02
A61Q5/12
A61Q1/14
A61Q1/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518624
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 KR2022014734
(87)【国際公開番号】W WO2023058996
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0131401
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510271129
【氏名又は名称】ケアジェン カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAREGEN CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヨンジ
(72)【発明者】
【氏名】キム ウンミ
(72)【発明者】
【氏名】キム ソンス
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B018MD20
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(57)【要約】
本発明は、抗炎症活性を有する新規ペプチド、及び炎症抑制効果による炎症性疾患の予防、治療または改善のための前記ペプチドの用途に関し、具体的には、本発明による新規ペプチドは、炎症反応を促進する遺伝子やタンパク質の発現または分泌を阻害することにより、炎症反応により誘発されるか炎症反応を伴う炎症性疾患を予防または治療するための薬学的組成物の有効成分として用いられるか、炎症性疾患の予防または改善の効果のための健康機能食品または化粧料組成物の有効成分として有用に用いられ得るという長所がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含む、抗炎症活性を有する、ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドは、炎症性サイトカインの発現を抑制するものである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記炎症性サイトカインは、TNFα、IL-6、IL-17、IL-1β及びIFNγより構成された群から選択される1つ以上のものである、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドは、Cox2の発現を抑制するものである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドは、iNosの発現を抑制するものである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載のペプチドを有効成分として含む、炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項7】
前記炎症性疾患は、鼻炎、気管支炎、歯周炎、膵臓炎、胃炎、胃潰瘍、炎症性皮膚疾患、アトピー皮膚炎、エンセフィリティス(encephilitis)、敗血症、炎症性腸炎、慢性閉塞性肺疾患、肺血病性ショック症、肺線維症、未分化脊椎関節症、未分化関節病症、関節炎、炎症性骨溶解、慢性ウイルスまたはバクテリア感染による慢性炎症疾患、大腸炎、炎症性腸疾患、タイプ1糖尿病、リウマチ関節炎、反応性関節炎(Reactive Arthritis)、骨関節炎、乾癬、強皮症、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症、心筋炎、心内膜炎、心嚢炎、嚢胞性線維症、橋本甲状腺炎、グレーブス病、ハンセン病、梅毒、ライム疾患(Lyme)、ボレリア症(Borreliosis)、神経性-ボレリア症、結核、サルコイドーシス(Sarcoidosis)、狼瘡、円板状狼瘡、凍瘡状ループス、ループス腎炎、全身性紅斑性ループス、黄斑変性、葡萄膜炎、過敏大腸症候群、クローン病、シェーグレン症候群、線維筋痛、慢性疲労症候群、慢性疲労免疫不全症候群、筋肉痛性脳脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病及び多発硬化症より構成された群から選択される1つ以上のものである、請求項6に記載の炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項8】
請求項1から5の何れか一項に記載のペプチドを有効成分として含む、炎症性疾患の予防または改善用健康機能食品。
【請求項9】
請求項1から5の何れか一項に記載のペプチドを有効成分として含む、炎症性疾患の予防または改善用化粧料組成物。
【請求項10】
前記化粧料組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、ゲル、ローション、エッセンス、クリーム、パウダー、せっけん、シャンプー、リンス、パックマスク、界面活性剤含有クレンジング、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、オイル、リキッドファウンデーション、クリームファウンデーション、及びスプレーよりなる群から選択される1種の剤形を有するものである、請求項9に記載の炎症性疾患の予防または改善用化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗炎症活性と炎症抑制効果を有する新規のペプチド及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症反応(inflammation)は、組織や細胞に損傷または傷が発生するか外部感染源(ウイルス、バクテリア、カビ、アレルギー誘発物質など)により感染して現れる生体組織の防御反応の一種であって、損傷された部位や感染した部位を中心に集まってくる各種免疫反応に関与する免疫細胞とこれらが分泌する炎症因子により発生する一連の複合的な状態を意味する。組織変質、循環障害と滲出、組織の増殖の3種を誘発する病変であり、一般的な場合、白血球の中で好中球の走化性により炎症が始まって維持される。炎症反応に関与する主な因子としては、肥満細胞で分泌するヒスタミン、T細胞やNK細胞で分泌するインターフェロンガンマ(IFNγ)、大食細胞で分泌する各種インターロイキン(interleukin)、一酸化窒素(NO)、プロスタグランジンなどがある。
【0003】
炎症反応は、原則的に生体の防御反応なので、炎症反応により傷が発生した組織を再生するか外部感染源を除去して損傷された生体の機能を回復する作用をするようになるが、外部感染源が完全に除去されなくなったり内部物質による持続的かつ過度な炎症反応が発生することになったりする場合、前記のような非正常的炎症反応により多様なヒトの疾病を誘発することがあり、自己免疫疾患、癌のような疾病にも関連している。特に、関節内から発生する急性炎症、リウマチ関節炎のような疾患、乾癬などの形態で現れる皮膚疾患、気管支喘息のようなアレルギー性炎症疾患などが代表的である。
【0004】
炎症反応を誘発するか維持するのに関与する細胞の活性を抑制するか、これらが分泌する炎症誘導性物質や酵素などの生成を抑制することにより、炎症反応を中断させて炎症性疾患を治療するか改善するための方案を講ずることができる。分子生物学の発達により炎症性疾患を誘発するサイトカインが分子水準で理解されているところ、炎症関連因子の究明に対する研究が進められてきており、前記サイトカインの発現や活性を阻害させることにより炎症を抑制する試みを介して治療剤を開発しようと努力してきた。
【0005】
現在知られている炎症性疾患の治療剤としては、副腎皮質ホルモン成分を用いたデキサメタゾン、コルチゾンなどがあるが、これらの場合、治療剤としての活性はあるが、毒性が強く浮腫のような副作用を誘発し得るという問題点がある。また、炎症を誘発した原因に対して選択的な作用をするものではないので、酷い水準の免疫抑制現象が発生することがあり問題が発生し得るという点が報告されてきた。前記のようにステロイド成分を利用した薬剤を用いて炎症性疾患を治療しようとすることには副作用と問題点が伴われるので、非ステロイド成分の薬剤を用いて、副作用がないとともに安定的な炎症抑制治療の効果を奏することができる炎症性疾患の治療剤の開発が急を要する実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2020-0043476号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10-2017-0124472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、抗炎症活性を有して炎症性サイトカインの発現を抑制し、Cox2、iNosのような炎症マーカータンパク質の発現を抑制するという効果があり、炎症を抑制する用途として用いることができるペプチドを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、前記のようなペプチドを有効成分として含んで炎症性疾患を予防または治療することができる薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、前記のようなペプチドを有効成分として含んで炎症性疾患を予防または改善することができる健康機能食品を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、前記のようなペプチドを有効成分として含んで炎症性疾患を予防または改善することができる化粧料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の一側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含む、抗炎症活性を有するペプチドを提供する。
【0012】
本発明の他の側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む、炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0013】
本発明の他の側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む、炎症性疾患の予防または改善用健康機能食品を提供する。
【0014】
本発明の他の側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む、炎症性疾患の予防または改善用化粧料組成物を提供する。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
1.抗炎症活性を有するペプチド
本発明の一側面は、抗炎症活性を有する新規のペプチドを提供する。
【0017】
前記ペプチドは、ペプチド結合で連結された2個以上のアミノ酸からなるポリマーを意味し、ただし、ペプチド自体の大きさが大き過ぎて標的組織または細胞に効果的に流入できないか、半減期が短くて短期間に体内で消滅されるという短点があるので、本発明の前記ペプチドは、抗炎症活性を有する、20個以下、例えば、15個以下、または10個以下のアミノ酸からなる。
【0018】
本発明のペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むことができ、前記抗炎症活性に影響を及ぼさない範囲内で、アミノ酸残基の欠失、挿入、置換またはこれらの組み合わせにより異なる配列を有するアミノ酸の変異体または断片であってよい。前記ペプチドの抗炎症活性を全体的に変更させないペプチド水準におけるアミノ酸の交換は、当該分野に公知となっている。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)などに変形されてよい。したがって、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列を含むペプチド、及びこの変異体またはこの活性断片を含む。前記実質的に同一のタンパク質とは、前記配列番号1のアミノ酸配列とそれぞれ75%以上、例えば、80%以上、90%以上、95%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を意味する。また、前記ペプチドには標的化配列、タグ(tag)、標識された残基、半減期またはペプチド安定性を増加させるための特定の目的で製造されたアミノ酸配列がさらに含まれてよい。
【0019】
また、本発明の前記ペプチドは、当該分野で広く公知となっている多様な方法で獲得することができる。一例として、ポリヌクレオチド組換えとタンパク質発現システムを用いて製造するか、ペプチド合成のような化学的合成を介して試験管内で合成する方法、及び無細胞タンパク質合成法などで製造されてよい。
【0020】
また、さらに良好な化学的安定性、強化された薬理特性(半減期、吸収性、力価、効能など)、変更された特異性(例えば、広範囲な生物学的活性スペクトラム)、減少した抗原性を獲得するために、ペプチドのN-末端またはC-末端に保護基が結合されていてよい。例えば、前記保護基は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基またはポリエチレングリコール(PEG)であってよいが、ペプチドの改質、特に、ペプチドの安定性を増進させ得る成分であれば、制限なく含むことができる。前記「安定性」は、生体内タンパク質切断酵素の攻撃から本発明のペプチドを保護するインビボでの安定性のみならず、貯蔵安定性(例えば、常温貯蔵安定性)も意味する。
【0021】
本発明の前記抗炎症活性は、炎症を抑制することを意味し、前記炎症は、ある刺激に対する生体組織の防御反応の一種であって、組織や細胞が損傷するか、外部から由来されたバクテリア、カビ、ウイルス、アレルギー誘発源などの多様な感染源に感染した際に形成される膿瘍の病理的状態を意味する。また、前記炎症反応は、局所血管と体液に炎症媒介因子と兔疫細胞が関連して現れる酵素の活性化、炎症媒介物質の分泌、体液浸潤、細胞移動、組織破壊などの複合的な生理的反応と紅斑、浮腫、発熱、痛症などの外的症状である。よって、本発明のペプチドには炎症を抑制する活性があるので、前記のような一連の病理的状態と症状を減少させて改善することができるという効果がある。
【0022】
また、本発明のペプチドは、炎症性サイトカインの発現を抑制することができる。炎症反応で、傷が発生したか、傷の部位に侵入した外部の感染体が体内に入ってきたとき、傷の部位や感染体の周辺に初期段階の免疫反応を担当する白血球が集まるようになり、炎症関連のサイトカインを発現させて分泌し炎症反応を誘発するようになるので、炎症性サイトカインの発現を抑制することにより抗炎症活性を示すことができ、また、前記炎症性サイトカインの発現量を確認することにより、本発明のペプチドの抗炎症活性と炎症抑制の効果を確認することができる。
【0023】
前記炎症性サイトカインは、TNFα、IL-6、IL-17、IL-1β及びIFNγより構成された群から選択される1つ以上のものであってよい。前記TNFαは、「tumor necrosis factor α」の略語で、細菌の感染や腫瘍疾患に対する免疫反応中に活性化される大食細胞及び多様な細胞から生成して分泌されるサイトカインであって、炎症反応の主な媒介体として知られており、リウマチ性関節炎(RA)、乾癬性関節炎、クローン病、乾癬、強直性脊椎炎(AS)のような炎症性疾患に重要な役割を担う。前記IL-6(interleukin 6)は、大食細胞と多様なリンパ球などで生産されるサイトカインであって、炎症反応を促進する役割を担い、過多に生成される場合に炎症性疾患を誘発し得るものとして知られている。前記IL-17(interleukin 17)も同様に炎症促進サイトカイン該当し、Th17細胞から生成されて炎症反応を誘発するか媒介する役割を担うようになる。前記IFNγ(interferon γ)は、Tリンパ球と大食細胞で生成可能であり、外部から侵入したウイルスや細菌の感染に対応して分泌され、自己免疫または自己炎症疾患に関して役割を担うものと知られている。したがって、本発明のペプチドは、前記のような炎症性サイトカインの発現を抑制し、発現されたサイトカインの分泌を抑制する活性を介して炎症を抑制するという効果がある。
【0024】
本発明のペプチドは、Cox2の発現を抑制することができる。前記Cox2(cyclooxygenase 2)は、プロスタグランジンの生合成の過程を刺激して関与する酵素であって、NF-κBにより調節されて発現可能であり、炎症反応を調節する。Cox2は、正常状態ではほとんど発現されていないが、サイトカイン、炎症因子、エンドトキシンなどの刺激により急激に発現されるタンパク質なので、Cox2遺伝子の発現量やCox2タンパク質の量を確認することにより、本発明のペプチドの抗炎症活性を確認することができ、本発明のペプチドは、Cox2の発現を抑制することにより炎症を抑制するという効果を奏する。
【0025】
また、本発明のペプチドは、iNosの発現を抑制することができる。前記iNos(inducible nitric oxide synthase)は、酸化窒素(NO)の生成を触媒する酵素であり、特に、分泌可能な形態のiNosは、免疫反応と関わっているものと知られている。兔疫細胞内でiNosにより過剰に生成された酸化窒素は細胞損傷を誘発することがあり、前記のようなiNosの発現は、LPSによる大食細胞の刺激から誘導されることがある。iNosは、Cox2と同様に炎症反応の調節に関わるタンパク質なので、iNosの発現量やタンパク質の量を確認することにより本発明のペプチドの抗炎症活性を確認することができ、本発明のペプチドは、iNosの発現を抑制することにより炎症反応を抑制して改善することができる。
【0026】
本発明の前記ペプチドが有する炎症抑制効果を確認するために、本発明の具体的な実施例では、ヒト角質形成細胞(HaCaT)に配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドとともに炎症誘導サイトカインであるTNFαを処理するか、TGFβ、IL-23(Th17 type炎症誘導サイトカイン)と炎症誘導抗原LPSを処理し、Cox2及びiNosタンパク質の量を確認した結果、前記処理された炎症誘導因子により細胞の炎症反応が誘導されたにもかかわらず、Cox2とiNosタンパク質の量が本発明のペプチド処理により減少したことを確認した(
図1及び
図2参照)。
【0027】
また、本発明の前記ペプチド処理による炎症関連遺伝子の発現量減少の効果を確認するために、本発明の具体的な実施例では、マウス脾細胞(splenocyte)に配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドとともに炎症誘導抗原であるLPSを処理するか、炎症誘導サイトカインであるTNFαを処理し、TNFα、IL-6、Cox2、IL-1β遺伝子のmRNA量を確認した結果、前記処理された炎症誘導因子により細胞の炎症反応が誘導されたにもかかわらず、前記のような炎症誘導サイトカインや関連酵素遺伝子の発現量が本発明のペプチド処理により減少したことを確認した(
図3及び
図4参照)。
【0028】
さらには、本発明の前記ペプチド処理による炎症関連サイトカインの分泌減少の効果を確認するために、本発明の具体的な実施例では、マウス脾細胞(splenocyte)に配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドとともに炎症誘導抗原であるLPSを処理するか、炎症誘導サイトカインであるTNFα、TGFβ、IL-23を処理し、IL-17、IL-1β及びIFNγの分泌量をELISA技法を介して確認した結果、前記処理された炎症誘導因子により細胞の炎症反応が誘導されたにもかかわらず、前記のような炎症促進サイトカインの分泌が本発明のペプチド処理により減少したことを確認した(
図5から
図7参照)。
【0029】
したがって、本発明の前記ペプチドは、炎症反応を促進することができるTNFα、IL-6、IL-17、IL-1β及びIFNγのような炎症性サイトカインの発現や分泌を減少させ、Cox2、iNosのような炎症関連因子の発現を抑制することにより、炎症反応を減少させて改善することができる抗炎症活性を有することが明らかであり、したがって、本発明の前記ペプチドは、炎症により誘発されるか炎症反応を伴う炎症性疾患の予防や治療、改善のための組成物の有効成分として有用に用いられてよい。
【0030】
2.炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物
本発明のまた他の側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0031】
前記配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドは、前記「1.抗炎症活性を有するペプチド」項目で説明したペプチドと同一なので、具体的な説明は、前記「1.抗炎症活性を有するペプチド」項目を援用し、以下では、炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物に特有の構成に対してのみ説明する。
【0032】
本発明の前記ペプチドは、炎症関連サイトカインや炎症関連因子の発現または分泌を阻害するという効果があるので、前記ペプチドを有効成分として含む薬学的組成物は、TNFα、IL-6、IL-17、IL-1β、IFNγ、Cox2及びiNosの発現を抑制することができ、これにより炎症性疾患を予防するか治療する用途として用いることができる。
【0033】
前記炎症性疾患は、白血球の中で好中球の走化性(neutrophil chemotaxis)により誘発される炎症を発生させる病的状態を称し、炎症反応により発病するか炎症反応を伴ういかなる疾病も含まれてよい。例えば、前記炎症性疾患は、鼻炎、気管支炎、歯周炎、膵臓炎、胃炎、胃潰瘍、炎症性皮膚疾患、アトピー皮膚炎、エンセフィリティス(encephilitis)、敗血症、炎症性腸炎、慢性閉塞性肺疾患、肺血病性ショック症、肺線維症、未分化脊椎関節症、未分化関節病症、関節炎、炎症性骨溶解、慢性ウイルスまたはバクテリア感染による慢性炎症疾患、大腸炎、炎症性腸疾患、タイプ1糖尿病、リウマチ関節炎、反応性関節炎(Reactive Arthritis)、骨関節炎、乾癬、強皮症、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症、心筋炎、心内膜炎、心嚢炎、嚢胞性線維症、橋本甲状腺炎、グレーブス病、ハンセン病、梅毒、ライム疾患(Lyme)、ボレリア症(Borreliosis)、神経性-ボレリア症、結核、サルコイドーシス(Sarcoidosis)、狼瘡、円板状狼瘡、凍瘡状ループス、ループス腎炎、全身性紅斑性ループス、黄斑変性、葡萄膜炎、過敏大腸症候群、クローン病、シェーグレン症候群、線維筋痛、慢性疲労症候群、慢性疲労免疫不全症候群、筋肉痛性脳脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病または多発硬化症であってよいが、これに制限されるものではない。
【0034】
本発明の前記薬学的組成物は、炎症反応を誘発する因子の発現や分泌を抑制することにより、炎症性疾患が発生しないように予防するか、前記疾患の患者における損傷されたか傷が発生した細胞でさらに発生する炎症反応を抑制し、病状の悪化を阻害して疾患を治療するための用途として用いられてよい。
【0035】
一方、本発明の前記ペプチドを有効成分として含む薬学的組成物は、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施することができる方法により、薬学的に許容される担体及び/または賦形剤を用いて製剤化することにより、単位用量の形態で製造されるか多用量容器内に内入させて製造されてよい。このとき、剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤またはゲル(例えば、ヒドロゲル)の形態であってもよく、分散剤または安定化剤をさらに含むことができる。
【0036】
また、前記薬学的組成物が含む前記ペプチドは、コロイド懸濁液、粉末、食塩水、脂質、リポソーム、微小球体(microspheres)、またはナノ球形粒子のような薬学的に許容され得る担体で運搬されてよい。これらは運搬手段と複合体を形成するか係わってよく、脂質、リポソーム、微細粒子、金、ナノ粒子、ポリマー、縮合反応剤、多糖類、ポリアミノ酸、デンドリマー、サポニン、吸着増進物質または脂肪酸のような、当業界に公知となっている運搬システムを用いて生体内に運搬されてよい。
【0037】
この他にも、薬学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシア、ゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微小結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むことができるが、これに制限されるものではない。また、前記成分以外に潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。
【0038】
本発明による薬学的組成物は、臨床投与時に経口または非経口で投与可能であり、一般的な医薬品製剤の形態で用いられてよい。すなわち、本発明の薬学的組成物は、実際の臨床投与時に経口及び非経口の様々な剤形で投与されてよく、製剤化する場合には、一般に用いる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調剤される。経口投与のための固形製剤としては、錠剤、丸薬、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、生薬抽出物または生薬醗酵物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを交ぜて調剤される。また、単なる賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も用いられる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当され、よく用いられる単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれてよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としてはプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが用いられてよい。坐剤の基剤としては、ウィテプゾール、マクロゴール、ツイン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが用いられてよい。
【0039】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの比率で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量の水準は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出の比率、治療期間、同時に使用される薬物を含んだ要素及びその他医学分野でよく知られている要素により決定されてよい。本発明による薬学的組成物は、個別の治療剤で投与するか、他の炎症性疾患の治療剤と併用して投与されてよく、従来の治療剤とは同時に、別途に、または順次投与されてよく、単一または多重投与されてよい。前記要素を全て考慮し、副作用なく最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与するのが重要であり、これは当業者により容易に決定され得る。
【0040】
具体的には、本発明の薬学的組成物の有効量は、患者の年齢、性別、状態、体重、体内への活性成分の吸収度、不活性率、排泄速度、疾病の種類、併用される薬物により変わることがあり、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などにより増減されてよく、一例として、本発明のペプチドを1日当たり患者体重1kg当たり約0.0001μgから500mg、例えば0.01μgから100mg投与することができる。また、医師または薬剤師の判断により一定時間の間隔で1日数回、例えば、1日2回から3回分割投与されてよい。
【0041】
3.炎症性疾患の予防または改善用健康機能食品
本発明のまた他の側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む炎症性疾患の予防または改善用健康機能食品を提供する。
【0042】
前記配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドは、前記「1.抗炎症活性を有するペプチド」項目で説明したペプチドと同一なので、具体的な説明は前記「1.抗炎症活性を有するペプチド」項目を援用し、以下では、炎症性疾患の予防または改善用健康機能食品の特有な構成に対してのみ説明する。
【0043】
前記薬学的組成物と同様に、炎症性疾患は、炎症反応を抑制することにより予防するか改善することができるものであって、炎症性サイトカイン(例えば、TNFα、IL-6、IL-17、IL-1β、IFNγなど)や炎症反応関連タンパク質(例えば、Cox2、iNosなど)の発現または分泌を阻害することにより炎症を抑制する本発明のペプチドを有効成分として含む健康機能食品は、炎症性疾患の予防または改善に有用に用いられ得る。
【0044】
前記健康機能食品は、疾患の予防または改善のために当該疾患の発病段階以前または発病後、治療のための薬剤と同時にまたは別途に用いられてよい。
【0045】
本発明の健康機能食品において、有効成分を食品にそのまま添加するか、他の食品または食品成分とともに用いられてよく、通常の方法により適切に用いられてよい。有効成分の混合量は、その使用目的(予防または改善用)に応じて適宜決定されてよい。一般に、食品または飲料の製造時、本発明の組成物は、原料に対して好ましくは15重量%以下、好ましくは10重量%以下の量で添加されてよい。しかし、健康及び衛生を目的とするかまたは健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は前記範囲以下であってよい。
【0046】
本発明の健康機能食品は、前記有効成分を含むこと以外に、特別な制限なく他の成分を必須成分として含むことができる。例えば、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含むことができる。前述の天然炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロースなど;及びポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールであってよい。前述したもの以外の香味剤として、天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリシリジンなど))及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に用いることができる。前記天然炭水化物の比率は、当業者の選択により適切に決定されてよい。
【0047】
前記以外に本発明の健康機能食品は、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含むことができる。このような成分は独立してまたは組み合わせて用いることができ、このような添加剤の比率も当業者により適切に選択されてよい。
【0048】
4.炎症性疾患の予防または改善用化粧料組成物
本発明のまた他の側面は、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを有効成分として含む炎症性疾患の予防または改善用化粧料組成物を提供する。
【0049】
前記配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドは、前記「1.抗炎症活性を有するペプチド」項目で説明したペプチドと同一なので、具体的な説明は前記「1.抗炎症活性を有するペプチド」項目を援用し、以下では、炎症性疾患の予防または改善用化粧料組成物の特有な構成に対してのみ説明する。
【0050】
前記薬学的組成物と同様に、炎症性疾患は、炎症反応を抑制することにより予防するか改善することができるものであって、炎症性サイトカイン(例えば、TNFα、IL-6、IL-17、IL-1β、IFNγなど)や炎症反応関連タンパク質(例えば、Cox2、iNosなど)の発現または分泌を阻害することにより炎症を抑制する本発明のペプチドを有効成分として含む化粧料組成物は、炎症性疾患の予防または改善に有用に用いられてよい。特に、本発明の前記化粧料組成物は、皮膚で発病する炎症性皮膚疾患、アトピー皮膚炎などの炎症性疾患を予防するか改善するための用途として有用に用いられてよい。
【0051】
前記ペプチドは、化粧料組成物の全体100重量%のうち0.001から30重量%で含まれてよく、例えば、0.1から20重量%、0.1から10重量%、1から10重量%、または2から5重量%で含まれてよいが、これに制限されるものではない。
【0052】
本発明の前記ペプチドを有効成分として含む化粧料組成物は、前記ペプチドの抗炎症活性に影響を及ぼさない範囲内において、例えば、前記ペプチドの活性に相乗り効果を与えることができる特徴がある他の成分をさらに含むことができる。例えば、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型または非イオン型の乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤及びキレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、香料、親水性または親油性の活性剤、脂質小胞または化粧品に通常用いられる任意の他の成分などのように化粧品や皮膚科学分野において通常用いられる補助剤を含むことができ、前記成分は、化粧品や皮膚科学分野において一般に用いられる量で含まれてよい。
【0053】
本発明の前記化粧料組成物は、当業界で通常製造されるいかなる剤形にも製造されてよく、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ゲル、ローション、エッセンス、クリーム、パウダー、せっけん、シャンプー、リンス、パックマスク、界面活性剤含有クレンジング、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、オイル、リキッドファウンデーション、クリームファウンデーションまたはスプレーなどの化粧料に剤形化されてよい。
【0054】
前記剤形が溶液または乳濁液である場合には、担体成分として、溶媒、溶解化剤または乳濁化剤が用いられてよく、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルが用いられてよい。前記剤形が懸濁液である場合には、担体成分として、水、エタノールまたはプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、アルミニウムメタヒドロキシド、微小結晶性セルロース、ベントナイト、アガーまたはトラガカントなどが用いられてよい。前記剤形がクリームまたはゲルである場合には、担体成分として、ワックス、パラフィン、トラガカント、動物性油、澱粉、セルロース誘導体、シリコン、ベントナイト、ポリエチレングリコール、シリカ、酸化亜鉛またはタルクなどが用いられてよい。前記剤形がパウダーまたはスプレーである場合には、担体成分として、シリカ、タルク、アルミニウムヒドロキシ基、ラクトース、ケイ酸カルシウム、クロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような推進体を含むことができる。前記剤形が界面活性剤含有クレンジングである場合には、担体成分として、脂肪族アルコールスルフェート、脂肪族アルコールエーテルスルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イミダゾリニウム誘導体、イセチオネート、メチルタウリン、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルスルフェート、脂肪族アルコール、アルキルアミドベタイン、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが用いられてよい。
【0055】
本発明の他の側面において、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドの治療的有効量を炎症性疾患の治療が必要な対象体(subject)に投与する段階を含む炎症性疾患の治療方法を提供する。
【0056】
本発明の他の側面において、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドの治療的有効量を炎症性疾患の改善が必要な対象体(subject)に投与する段階を含む炎症性疾患の改善方法を提供する。
【0057】
本発明の他の側面において、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドの炎症性疾患の治療のための用途を提供する。
【0058】
本発明の他の側面において、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドの炎症性疾患の治療または予防用医薬の製造における用途を提供する。
【発明の効果】
【0059】
本発明で提供するペプチドは、炎症反応を抑制してTNFα、IL-6、IL-17、IL-1β及びIFNγのような炎症性サイトカインの発現とこれらの分泌を抑制するという効果があり、Cox2、iNosのような炎症関連タンパク質の発現を抑制するという効果がある。したがって、前記ペプチドは、炎症反応が伴われるか炎症により発病する炎症性疾患を予防するか治療するための薬学的組成物の有効成分として有用に用いられてよく、前記炎症性疾患を予防するか改善するための健康機能食品または化粧料組成物の有効成分としても有用に用いられてよいという効果がある。
【0060】
ただし、本発明の効果は、前記で言及した効果に制限されず、言及されていないまた他の効果は、下記の記載から当業者に明確に理解され得るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】HaCaT細胞にTNFαを処理して炎症反応を誘導し、本発明のペプチドをそれぞれ5、50μM処理してCox2タンパク質の量を確認したウェスタンブロッティング結果とこのグラフである。NONは、TNFαを処理していない群、NCは、TNFαを処理したが本発明のペプチドは処理していない群の結果を意味する。
【
図2】HaCaT細胞にLPS、TGFβ及びIL-23を処理して炎症反応を誘導し、本発明のペプチドをそれぞれ5、50μM処理してiNos及びCox2タンパク質の量を確認したウェスタンブロッティング結果である。NONは、LPS、TGFβ及びIL-23を処理していない群、NCは、LPS、TGFβ及びIL-23を処理したが本発明のペプチドは処理していない群の結果を意味する。
【
図3】マウス脾細胞(splenocyte)にLPSを処理して炎症反応を誘導し、本発明のペプチドをそれぞれ5、50μM処理してTNFα及びIL-6遺伝子のmRNA量を確認したRT-PCR結果である。NONは、LPSを処理していない群、NCは、LPSを処理したが本発明のペプチドは処理していない群の結果を意味する。
【
図4】マウス脾細胞(splenocyte)にTNFαを処理して炎症反応を誘導し、本発明のペプチドをそれぞれ5、50μM処理してTNFα、Cox2及びIL-1β遺伝子のmRNA量を確認したRT-PCR結果である。NONは、TNFαを処理していない群、NCは、TNFαを処理したが本発明のペプチドは処理していない群の結果を意味する。
【
図5】マウス脾細胞(splenocyte)にLPSを処理して炎症反応を誘導し、本発明のペプチドをそれぞれ5、50μM処理してTNFα、IL-1β及びIFNγの分泌量を確認したELISA結果グラフである。NONは、LPSを処理していない群、NCは、LPSを処理したが本発明のペプチドは処理していない群の結果を意味する。
【
図6】マウス脾細胞(splenocyte)にTNFαを処理して炎症反応を誘導し、本発明のペプチドをそれぞれ5、50μM処理してIL-17、IL-1β及びIFNγの分泌量を確認したELISA結果グラフである。NONは、TNFαを処理していない群、NCは、TNFαを処理したが本発明のペプチドは処理していない群の結果を意味する。
【
図7】マウス脾細胞(splenocyte)にLPS、TGFβ及びIL-23を処理して炎症反応を誘導し、本発明のペプチドをそれぞれ5、50μM処理してIL-17、IL-1β及びIFNγの分泌量を確認したELISA結果グラフである。NONは、LPS、TGFβ及びIL-23を処理していない群、NCは、LPS、TGFβ及びIL-23を処理したが本発明のペプチドは処理していない群の結果を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
ただし、下記実施例は、本発明を具体的に例示するものであり、本発明の内容が下記実施例によって限定されない。
【0063】
実施例
[製造例]ペプチドの製作
自動ペプチド合成器(Milligen 9050,Millipore、米国)を用いて、下記表1に記載された配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドを合成し、C18逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)(Waters Associates、米国)を用いてこれら合成されたペプチドを純水分離した。カラムは、ACQUITY UPLC BEH300 C18(2.1mm×100mm,1.7μm,Waters Co,米国)を用いた。
【0064】
【0065】
[実験例1]ペプチド処理によるCox2タンパク質発現量減少の確認
配列番号1のアミノ酸配列を有する本発明のペプチド処理による抗炎症効果を確認するために、ヒト角質形成細胞であるHaCaT細胞(human keratinocyte)を対象として炎症を誘導し、Cox2タンパク質の発現量を確認した。炎症の誘導のために炎症誘導サイトカインであるTNFαを処理し、Cox2は、プロスタグランジンの合成過程に関与する酵素で炎症関連タンパク質に該当するので、Cox2の発現量を測定することにより炎症反応の抑制可否を確認することができる。
【0066】
HaCaT細胞を24-well plateに3×105cells/wellだけ分株し、翌日まで培養した。Serum-free培地に変更した後、4時間経過後にTNFαと本発明の前記ペプチドを処理して再び24時間追加培養した。TNFαは、20nMを処理して炎症反応を誘導し、ペプチドは5、50μMずつそれぞれ処理した。TNFαを処理していないため炎症反応が誘導されていない群(NON)、TNFαは処理したがペプチドを処理していない陰性対照群(NC)、そしてTNFαとともに前記のような濃度で本発明のペプチドをそれぞれ処理した群のHaCaT細胞を、前記のように反応させた後で回収してlysateを確保した。ウェスタンブロッティングを行うために、抗-Cox2抗体(Cell Signaling Technology,USA)を用いてCox2タンパク質の量を測定した。Cox2タンパク質の量を比較するために、β-アクチンの量もともに確認した。
【0067】
その結果、TNFαを処理して炎症反応を誘導した場合には、Cox2タンパク質の発現量が増加し、TNFαを処理していない群と比較するとき2倍以上増加したことを確認した。これとは異なり、本発明のペプチドを処理した場合、TNFαを処理したにもかかわらずCox2タンパク質の量が増加せず、TNFαを処理していない群と比較したときにも却ってCox2の発現量が減少したことを確認した(
図1参照)。
【0068】
[実験例2]ペプチド処理によるiNOS/Cox2タンパク質発現量減少の確認
前記実験例1の結果に加え、本発明のペプチド処理による抗炎症効果を追加で確認するために、HaCaT細胞を対象としてTh17(type 17)炎症誘導物質を処理して炎症誘導マーカーであるiNos、Cox2の発現量を確認した。前記炎症誘導物質としてはLPS、TGFβ及びIL-23を処理し、iNosは、NO(nitric oxide)の生産に係わる酵素でLPSなどにより誘導される炎症反応関連のタンパク質なので、iNos及びCox2の発現量を測定することにより炎症反応の抑制可否を確認することができる。
【0069】
HaCaT細胞を24-well plateに3×105cells/wellだけ分株し、翌日まで培養した。Serum-free培地に変更した後、4時間経過後にTh17 type炎症誘導サイトカインであるTGFβ、IL-23、そしてLPSを処理し、本発明の前記ペプチドを処理して再び24時間追加培養した。TGFβは20ng/ml、IL-23は20ng/ml、LPSは2μg/mlを処理して炎症反応を誘導し、ペプチドは5、50μMずつそれぞれ処理した。TGFβ、IL-23及びLPSを処理していないため炎症反応が誘導されていない群(NON)、TGFβ、IL-23及びLPSは処理したがペプチドを処理していない陰性対照群(NC)、そして、TGFβ、IL-23及びLPSとともに前記のような濃度で本発明のペプチドをそれぞれ処理した群のHaCaT細胞を、前記のように反応させた後で回収してlysateを確保した。ウェスタンブロッティングを行うために、抗-iNos抗体及び抗-Cox2抗体(Cell Signaling Technology,USA)を用いてiNosとCox2タンパク質の量を測定した。iNos、Cox2タンパク質の量を比較するために、β-アクチンの量もともに確認した。
【0070】
その結果、TGFβ、IL-23及びLPSを処理して炎症反応を誘導した場合には、TGFβ、IL-23及びLPSを処理していない群と比較するとき、iNosとCox2タンパク質の発現量が全て増加してバンドが濃く表れることを確認した。これとは異なり、本発明のペプチドを処理した場合、TGFβ、IL-23及びLPSを処理したにもかかわらずiNosとCox2タンパク質の量が増加せず、ペプチドを処理していない群に比べて発現量が減少したことを確認した(
図2参照)。
【0071】
[実験例3]ペプチド処理による炎症促進サイトカイン遺伝子の発現量減少の確認
<3-1>LPSで炎症誘導された細胞における炎症性サイトカインmRNA発現量の確認
マウスの脾細胞(splenocyte)を対象として炎症を誘導し、炎症性サイトカインであるTNFα、IL-6遺伝子の発現量を確認した。炎症の誘導のために炎症誘導抗原であるLPSを処理し、TNFαは、炎症反応と係わる信号伝達タンパク質に該当し、IL-6は、炎症反応を促進するサイトカインに該当するので、TNFαとIL-6遺伝子の発現量を測定することにより炎症反応の程度を確認することができる。
【0072】
マウス脾細胞を24-well plateに1×107cells/wellだけ分株し、翌日まで培養した。Serum-free培地に変更した後、3時間経過後にLPSと本発明の前記ペプチドを処理して再び24時間追加培養した。LPSは、2μg/mlを処理して炎症反応を誘導し、ペプチドは、5、50μMずつそれぞれ処理した。LPSを処理していないため炎症反応が誘導されていない群(NON)、LPSは処理したがペプチドを処理していない陰性対照群(NC)、そして、LPSとともに前記のような濃度で本発明のペプチドをそれぞれ処理した群のマウス脾細胞を、前記のように反応させた後で回収してRNAを分離した。分離されたRNAの量を定量した後、cDNA synthesis kit(Intron,Korea)を用いてcDNAを合成した後、PCR premix(Intron,Korea)とTNFα及びIL-6のプライマー(primer)を用いてPCRを行った。前記TNFα及びIL-6のプライマー配列は、下記表2の配列を有したものを用いた。PCR進行後、5%のアガロースゲルに各サンプルをかけてmRNAの発現量を測定した。mRNAの量を比較するために、GADPH mRNAの量もともに確認した。
【0073】
【0074】
その結果、LPSを処理して炎症反応を誘導した場合には、LPSを処理していない群と比較するときTNFα及びIL-6のmRNAの量が増加したことを確認した。これとは異なり、本発明のペプチドを処理した場合、LPSを処理したにもかかわらずTNFα及びIL-6のmRNAの量が増加せず、ペプチドを処理していない群に比べて発現量が減少したことを確認した(
図3参照)。
【0075】
<3-2>TNFαで炎症誘導された細胞における炎症性サイトカインmRNA発現量の確認
前記実験例<3-1>の結果に加え、本発明のペプチド処理による抗炎症効果をさらに確認するために、マウスの脾細胞(splenocyte)を対象としてTNFαを処理して炎症を誘導し、炎症性サイトカインであるTNFα、IL-1β、炎症誘導マーカーであるCox2遺伝子の発現量を確認した。炎症の誘導のためにサイトカインTNFαを処理し、TNFαは、炎症反応と係わる信号伝達タンパク質に該当し、IL-1βは、炎症反応を促進するサイトカインに該当し、Cox2は、炎症関連タンパク質なので、TNFα、Cox2及びIL-1β遺伝子の発現量を測定することにより炎症反応の程度を確認することができる。
【0076】
マウス脾細胞を24-well plateに1×107cells/wellだけ分株し、翌日まで培養した。Serum-free培地に変更した後、3時間経過後にLPSと本発明の前記ペプチドを処理して再び3時間追加培養した。TNFαは、20nMを処理して炎症反応を誘導し、ペプチドは、5、50μMずつそれぞれ処理した。TNFαを処理していないため炎症反応が誘導されていない群(NON)、TNFαは処理したがペプチドを処理していない陰性対照群(NC)、そして、TNFαとともに前記のような濃度で本発明のペプチドをそれぞれ処理した群のマウス脾細胞を、前記のように反応させた後で回収してRNAを分離した。分離されたRNAの量を定量した後、cDNA synthesis kit(Intron,Korea)を用いてcDNAを合成した後、PCR premix(Intron,Korea)とTNFα、Cox2及びIL-1βのプライマー(primer)を用いてPCRを行った。前記TNFαのプライマー配列は、前記表2の配列を有したものを用い、Cox2及びIL-1βのプライマー配列は、下記表3の配列を有したものを用いた。PCR進行後、5%のアガロースゲルに各サンプルをかけてmRNAの発現量を測定した。mRNAの量を比較するために、GADPH mRNAの量もともに確認した。
【0077】
【0078】
その結果、TNFαを処理して炎症反応を誘導した場合には、TNFαを処理していない群と比較するとき、TNFα、Cox2及びIL-1βのmRNAの量が増加したことを確認した。これとは異なり、本発明のペプチドを処理した場合、TNFαを処理したにもかかわらずTNFα、Cox2及びIL-1βのmRNAの量が増加せず、ペプチドを処理していない群に比べて発現量が減少したことを確認した(
図4参照)。
【0079】
[実験例4]ペプチド処理による炎症促進サイトカインの分泌量減少の確認
<4-1>LPSで炎症誘導された細胞における炎症性サイトカイン分泌量の確認
マウスの脾細胞(splenocyte)を対象として炎症を誘導し、炎症性サイトカインであるTNFα、IL-1β及びIFNγの分泌量を確認した。炎症の誘導のために炎症誘導抗原LPSを処理し、TNFαは、炎症反応と係わる信号伝達タンパク質に該当し、IL-1βは、炎症反応を促進するサイトカインに該当し、IFNγも炎症反応に係わるサイトカインなので、TNFα、IL-1β及びIFNγの分泌量を測定することにより炎症反応の程度を確認することができる。
【0080】
マウス脾細胞を24-well plateに1×107cells/wellだけ分株し、翌日まで培養した。Serum-free培地に変更した後、4時間経過後にLPSと本発明の前記ペプチドを処理して再び24時間追加培養した。LPSは、2μg/mlを処理して炎症反応を誘導し、ペプチドは、5、50μMずつそれぞれ処理した。LPSを処理していないため炎症反応が誘導されていない群(NON)、LPSは処理したがペプチドを処理していない陰性対照群(NC)、そして、LPSとともに前記のような濃度で本発明のペプチドをそれぞれ処理した群のマウス脾細胞を、前記のように反応させた後、細胞培養液を回収した。回収した細胞培養液を対象としてTNF-alpha Quantikine ELISA Kit(R&D system,USA)、IL-1 beta Quantikine ELISA Kit(R&D system,USA)、IFN-gamma Quantikine ELISA Kit(R&D system,USA)を用いてELISA技法を介してTNFα、IL-1β及びIFNγの分泌量を確認した。
【0081】
その結果、LPSを処理して炎症反応を誘導した場合には、LPSを処理していない群と比較するとき、TNFα、IL-1β及びIFNγの分泌量が顕著に増加したことを確認した。本発明のペプチドを処理した場合、LPSを処理したにもかかわらずTNFα、IL-1β及びIFNγの分泌量が減少して表れることを確認した(
図5参照)。
【0082】
<4-2>TNFαで炎症誘導された細胞における炎症性サイトカイン分泌量の確認
マウスの脾細胞(splenocyte)を対象として炎症性サイトカインであるTNFαを処理して炎症を誘導し、炎症性サイトカインであるIL-17、IL-1β及びIFNγの分泌量を確認した。IL-17は、炎症促進サイトカインに該当し、IL-1β及びIFNγに関する説明は前記のとおりである。
【0083】
マウス脾細胞を24-well plateに1×107cells/wellだけ分株し、翌日まで培養した。Serum-free培地に変更した後、4時間経過後にTNFαと本発明の前記ペプチドを処理して再び24時間追加培養した。TNFαは、20nMを処理して炎症反応を誘導し、ペプチドは、5、50μMずつそれぞれ処理した。TNFαを処理していないため炎症反応が誘導されていない群(NON)、TNFαは処理したがペプチドを処理していない陰性対照群(NC)、そして、TNFαとともに前記のような濃度で本発明のペプチドをそれぞれ処理した群のマウス脾細胞を、前記のように反応させた後、細胞培養液を回収した。回収した細胞培養液を対象としてIL-17 Quantikine ELISA Kit(R&D system,USA)、IL-1 beta Quantikine ELISA Kit(R&D system,USA)、IFN-gamma Quantikine ELISA Kit(R&D system,USA)を用いてELISA技法を介してIL-17、IL-1β及びIFNγの分泌量を確認した。
【0084】
その結果、TNFαを処理して炎症反応を誘導した場合には、TNFαを処理していない群と比較するとき、IL-17、IL-1β及びIFNγの分泌量が顕著に増加したことを確認した。本発明のペプチドを5μM処理した場合にはIL-17の分泌量が小幅増加したものの、IL-1β及びIFNγの分泌量は減少しており、ペプチドを50μM処理して量を増加させた場合には、IL-17、IL-1β及びIFNγの分泌量が全て減少し、本発明のペプチドの濃度による炎症誘導マーカーの分泌量減少の効果を確認することができた(
図6参照)。
【0085】
<4-3>LPS、TGFβ、IL-23で炎症誘導された細胞における炎症性サイトカイン分泌量の確認
マウスの脾細胞(splenocyte)を対象として炎症性サイトカインである炎症誘導抗原LPSと炎症誘導サイトカインTGFβ、IL-23を処理して炎症を誘導し、炎症性サイトカインであるIL-17、IL-1β及びIFNγの分泌量を確認した。IL-17、IL-1β及びIFNγに関する説明は前記のとおりである。
【0086】
マウス脾細胞を24-well plateに1×107cells/wellだけ分株し、翌日まで培養した。Serum-free培地に変更した後、4時間経過後にLPS、TGFβ、IL-23と本発明の前記ペプチドを処理して再び24時間追加培養した。LPSは2μg/ml、TGFβは20ng/ml、IL-23は20ng/mlそれぞれ処理して炎症反応を誘導し、ペプチドは5、50μMずつそれぞれ処理した。LPS、TGFβ、IL-23を処理していないため炎症反応が誘導されていない群(NON)、LPS、TGFβ、IL-23は処理したがペプチドを処理していない陰性対照群(NC)、そして、LPS、TGFβ、IL-23とともに前記のような濃度で本発明のペプチドをそれぞれ処理した群のマウス脾細胞を、前記のように反応させた後、細胞培養液を回収した。回収した細胞培養液を対象としてIL-17 Quantikine ELISA Kit(R&D system,USA)、IL-1 beta Quantikine ELISA Kit(R&D system,USA)、IFN-gamma Quantikine ELISA Kit(R&D system,USA)を用いてELISA技法を介してIL-17、IL-1β及びIFNγの分泌量を確認した。
【0087】
その結果、LPS、TGFβ、IL-23を処理して炎症反応を誘導した場合には、LPS、TGFβ、IL-23を処理していない群と比較するとき、IL-17、IL-1β及びIFNγの分泌量が顕著に増加したことを確認した。本発明のペプチドを5μM処理した場合にはIL-17の分泌量が小幅増加したものの、L-1β及びIFNγの分泌量は減少しており、ペプチドを50μM処理して量を増加させた場合には、IL-17、IL-1β及びIFNγの分泌量が全て減少し、本発明のペプチドの濃度による炎症誘導マーカーの分泌量減少の効果を確認することができた(
図7参照)。
【0088】
前記のような実験例の結果を総合してみるとき、炎症反応が誘導された細胞においても、本発明のペプチドを処理すると炎症反応と係わるタンパク質の量や遺伝子の発現量が減少し、炎症反応を促進するサイトカインの発現及び分泌が減少することから、炎症反応の抑制効果があることを確認することができた。また、本発明のペプチドをより多い量で処理する場合、前記のような効果がより高く表れるので、前記実験例の結果から見られる炎症反応の抑制効果は、本発明のペプチドによる効果であることが分かる。
【0089】
以上、本発明は、記載された実施例に対してのみ詳細に説明されたが、本発明の技術思想の範囲内で多様な変形及び修正が可能であるのは当業者において明白なことであり、このような変形及び修正が特許請求の範囲に属することは当然である。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含む、抗炎症活性を有する、ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドは、炎症性サイトカインの発現を抑制するものである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記炎症性サイトカインは、TNFα、IL-6、IL-17、IL-1β及びIFNγより構成された群から選択される1つ以上のものである、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドは、Cox2の発現を抑制するものである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドは、iNosの発現を抑制するものである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
請求項1に記載のペプチドを有効成分として含む、炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項7】
前記炎症性疾患は、鼻炎、気管支炎、歯周炎、膵臓炎、胃炎、胃潰瘍、炎症性皮膚疾患、アトピー皮膚炎、エンセフィリティス(encephilitis)、敗血症、炎症性腸炎、慢性閉塞性肺疾患、肺血病性ショック症、肺線維症、未分化脊椎関節症、未分化関節病症、関節炎、炎症性骨溶解、慢性ウイルスまたはバクテリア感染による慢性炎症疾患、大腸炎、炎症性腸疾患、タイプ1糖尿病、リウマチ関節炎、反応性関節炎(Reactive Arthritis)、骨関節炎、乾癬、強皮症、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症、心筋炎、心内膜炎、心嚢炎、嚢胞性線維症、橋本甲状腺炎、グレーブス病、ハンセン病、梅毒、ライム疾患(Lyme)、ボレリア症(Borreliosis)、神経性-ボレリア症、結核、サルコイドーシス(Sarcoidosis)、狼瘡、円板状狼瘡、凍瘡状ループス、ループス腎炎、全身性紅斑性ループス、黄斑変性、葡萄膜炎、過敏大腸症候群、クローン病、シェーグレン症候群、線維筋痛、慢性疲労症候群、慢性疲労免疫不全症候群、筋肉痛性脳脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病及び多発硬化症より構成された群から選択される1つ以上のものである、請求項6に記載の炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のペプチドを有効成分として含む、炎症性疾患の予防または改善用健康機能食品。
【請求項9】
請求項1に記載のペプチドを有効成分として含む、炎症性疾患の予防または改善用化粧料組成物。
【請求項10】
前記化粧料組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、ゲル、ローション、エッセンス、クリーム、パウダー、せっけん、シャンプー、
コンディショナー、パックマスク、界面活性剤含有クレンジング、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、オイル、リキッドファウンデーション、クリームファウンデーション、及びスプレーよりなる群から選択される1種の剤形を有するものである、請求項9に記載の炎症性疾患の予防または改善用化粧料組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
本発明の前記化粧料組成物は、当業界で通常製造されるいかなる剤形にも製造されてよく、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ゲル、ローション、エッセンス、クリーム、パウダー、せっけん、シャンプー、コンディショナー、パックマスク、界面活性剤含有クレンジング、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、オイル、リキッドファウンデーション、クリームファウンデーションまたはスプレーなどの化粧料に剤形化されてよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
マウス脾細胞を24-well plateに1×107cells/wellだけ分株し、翌日まで培養した。Serum-free培地に変更した後、3時間経過後にTNFαと本発明の前記ペプチドを処理して再び3時間追加培養した。TNFαは、20nMを処理して炎症反応を誘導し、ペプチドは、5、50μMずつそれぞれ処理した。TNFαを処理していないため炎症反応が誘導されていない群(NON)、TNFαは処理したがペプチドを処理していない陰性対照群(NC)、そして、TNFαとともに前記のような濃度で本発明のペプチドをそれぞれ処理した群のマウス脾細胞を、前記のように反応させた後で回収してRNAを分離した。分離されたRNAの量を定量した後、cDNA synthesis kit(Intron,Korea)を用いてcDNAを合成した後、PCR premix(Intron,Korea)とTNFα、Cox2及びIL-1βのプライマー(primer)を用いてPCRを行った。前記TNFαのプライマー配列は、前記表2の配列を有したものを用い、Cox2及びIL-1βのプライマー配列は、下記表3の配列を有したものを用いた。PCR進行後、5%のアガロースゲルに各サンプルをかけてmRNAの発現量を測定した。mRNAの量を比較するために、GADPH mRNAの量もともに確認した。
【国際調査報告】