(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】液圧式の非人力ブレーキ装置用の液圧ブロック
(51)【国際特許分類】
B60T 13/138 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B60T13/138 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518747
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 EP2022069608
(87)【国際公開番号】W WO2023046329
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】102021210766.4
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】カザール,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】フランケ,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ハグスピエル,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ブライアー,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェー,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
3D048
【Fターム(参考)】
3D048BB45
3D048BB48
3D048CC41
3D048HH18
3D048MM02
(57)【要約】
本発明は、非人力ブレーキ装置の液圧ブロック(1)内に設けられた非人力シリンダ孔(2)を延長させる円筒管形の、一方の端部において閉鎖されたシリンダカバー(16)を、環囲するかしめ部(21)により、液圧ブロック(1)の、非人力シリンダ孔(2)を囲繞する取り付け溝(19)内に取り付けることを提案する。取り付け溝(19)内でのシリンダカバー(16)の取り付けフランジ(18)の締まりばめは、シリンダカバー(16)を高信頼性に耐圧性に液圧ブロック(1)において封止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧式の非人力ブレーキ装置用の液圧ブロックであって、
前記液圧ブロック(1)は、非人力シリンダ孔(2)を備え、前記非人力シリンダ孔(2)は、前記液圧ブロック(1)の第1の面(3)に開いている、
液圧ブロックにおいて、
前記液圧ブロック(1)の前記第1の面(3)とは反対側に位置する第2の面(4)に、管形のシリンダカバー(16)が配置されており、前記シリンダカバー(16)は、前記非人力シリンダ孔(2)を延長し、かつ
前記シリンダカバー(16)は、環囲するかしめ部(21)により圧力密に前記液圧ブロック(1)に結合されている、
ことを特徴とする、液圧式の非人力ブレーキ装置用の液圧ブロック。
【請求項2】
前記シリンダカバー(16)は、環囲する取り付けフランジ(18)を、前記液圧ブロック(1)に面した端部に有し、前記取り付けフランジ(18)は、前記液圧ブロック(1)の前記第2の面(4)内に設けられた凹部内に配置されており、かつ前記環囲するかしめ部(21)は、前記シリンダカバー(16)の前記取り付けフランジ(18)に覆い被さるように係合することを特徴とする、請求項1に記載の液圧ブロック。
【請求項3】
前記シリンダカバー(16)の前記取り付けフランジ(18)は、前記液圧ブロック(1)の環囲する取り付け溝(19)であって、前記液圧ブロック(1)の前記第2の面(4)内に設けられた前記非人力シリンダ孔(2)の開口部を囲繞する取り付け溝(19)内に配置されており、かつ前記シリンダカバー(16)の前記取り付けフランジ(18)は、内側と外側とで締まりばめでもって前記取り付け溝(19)の環囲する溝側壁(20)に当接することを特徴とする、請求項1または2に記載の液圧ブロック。
【請求項4】
前記シリンダカバー(16)の前記取り付けフランジ(18)は、環囲する環状段(40)を、前記取り付け溝(19)の底から背離した外側エッジに有することを特徴とする、請求項2または3に記載の液圧ブロック。
【請求項5】
前記液圧ブロック(1)内に設けられたブレーキ管路(26)が、前記取り付け溝(19)の底に設けられた通路(25)内に開口し、かつ前記通路(25)は、前記ブレーキ管路(26)を前記シリンダカバー(16)の内側において前記シリンダカバー(16)の内室に接続することを特徴とする、請求項3に記載の液圧ブロック。
【請求項6】
前記通路(25)は、周方向で延びるスリットとして、前記取り付け溝(19)の底に形成されていることを特徴とする、請求項3および5に記載の液圧ブロック。
【請求項7】
前記通路(25)は、前記取り付け溝(19)の内側の溝側壁(20)に設けられた、前記非人力シリンダ孔(2)に対して斜めに延びる切欠き(38)により、前記シリンダカバー(16)の前記内室と連通することを特徴とする、請求項6に記載の液圧ブロック。
【請求項8】
前記シリンダカバー(16)の内側直径(D)が、前記液圧ブロック(1)内に設けられた前記非人力シリンダ孔(2)のガイド直径またはシール直径(d)と少なくとも同じ大きさであり、好ましくは、より大きいことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項または複数項に記載の液圧ブロック。
【請求項9】
前記シリンダカバー(16)のシリンダカバー底部(17)が、補強部(22)を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項または複数項に記載の液圧ブロック。
【請求項10】
前記シリンダカバー(16)の前記シリンダカバー底部(17)および/または前記非人力シリンダ孔(2)内において軸方向で摺動自在の非人力ピストン(5)は、前記非人力ピストン(5)用の軸方向ストッパ(24)を有し、前記軸方向ストッパ(24)は、前記シリンダカバー底部(17)に向かう前記非人力ピストン(5)の軸方向摺動を制限し、かつ前記シリンダカバー(16)の周壁(23)に対して縁部近傍に配置されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項または複数項に記載の液圧ブロック。
【請求項11】
前記液圧ブロック(1)は、前記シリンダカバー(16)より大きな熱膨張係数を有することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項または複数項に記載の液圧ブロック。
【請求項12】
前記液圧ブロック(1)の前記第2の面(4)にカバー(33)が配置されており、前記カバー(33)は、前記シリンダカバー(16)を覆うことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項または複数項に記載の液圧ブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の特徴を備える、自動車用の液圧式の非人力ブレーキ装置用の液圧ユニット用の液圧ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
このような液圧ブロックは、公知である。液圧ブロックは、非人力シリンダあるいは非人力シリンダ孔を備え、非人力シリンダあるいは非人力シリンダ孔内では、液圧のブレーキ圧力を非人力により発生させるべく、非人力ピストンが軸方向で摺動自在である。非人力ピストンを摺動させるべく、通常、電気モータが液圧ブロックに配置されており、または配置され、電気モータは、好ましくは、機械式の減速伝動機構の介在の下、ねじ伝動機構を介して非人力ピストンを軸方向で非人力シリンダあるいは非人力シリンダ孔内において摺動させる。
【0003】
特許文献1は、この種の液圧ブロックを開示しており、この液圧ブロックは、非人力シリンダ孔を延長させるべく、液圧ブロックと1ピースの、非人力シリンダ孔に対して同軸に液圧ブロックから張り出した円筒管形の成形部を備え、成形部は、成形部の、液圧ブロックから張り出した端部において閉鎖されている。
【0004】
特許文献2は、同じくこの種の液圧ブロックを開示しており、この液圧ブロックは、非人力シリンダ孔を備え、非人力シリンダ孔は、円筒管形のライナにより延長されており、ライナは、液圧ブロックの一方の面で非人力シリンダ孔から突出し、ライナの突出した端部において閉鎖されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2021/104790号
【特許文献2】国際公開第2021/104783号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の特徴を備える本発明に係る液圧ブロックは、液圧式の非人力ブレーキ装置の液圧ユニット用に設けられている。
【0007】
液圧式のブレーキ圧力を非人力により発生させるべく、本発明に係る液圧ブロックは、非人力シリンダ孔を備え、非人力シリンダ孔は、非人力シリンダと解されてもよく、液圧ブロックの第1の面に開いている。液圧ブロックの第1の面は、以下ではモータ面とも称呼し、非人力ピストンを非人力シリンダ孔内で例えば回転/並進変換伝動機構としてのねじ伝動機構を介して、場合によっては減速伝動機構の介在の下、摺動させる電気モータの取り付け用に設けられている。非人力ピストンを非人力シリンダ孔内で摺動させることで、ブレーキ液体が、非人力シリンダ孔から押しのけられ、ブレーキ圧力が、非人力により発生される。
【0008】
非人力シリンダ孔を延長させるべく、液圧ブロックの、第1の面とは反対側に位置する第2の面に、管形のシリンダカバーが配置されており、シリンダカバーは、環囲するかしめ部により流体密にかつ耐圧性に液圧ブロックに結合されている。シリンダカバーの、液圧ブロックから遠位の端部は、特に閉鎖されて形成されており、その結果、シリンダカバーは、非人力シリンダ孔を延長するのみならず、液圧ブロックから間隔を置いて閉鎖もする。「流体密」とは、特に、ブレーキ液体が、シリンダカバーと液圧ブロックとの結合部の領域において、シリンダカバーおよび非人力シリンダ孔から流出しないことを意味する。「耐圧性」とは、シリンダカバーと液圧ブロックとの結合部が、最大でシリンダカバーおよび非人力シリンダ孔内を支配する液圧に対して、ブレーキ液体が流出することなく耐えることを意味する。
【0009】
液圧ブロックは、車両ブレーキ装置の液圧式の構成要素の機械的な取り付けおよび液圧的な回路接続と、ブレーキ圧力発生および/もしくはブレーキ圧力調整ならびに/またはスリップコントロールとに用いられる。液圧式の構成要素は、液圧ブロック内に設けられた収容部内に取り付けられており、収容部は、大抵の場合、円筒状の凹部、止まり穴または貫通穴として、部分的に直径に関して段付け部を有して、形成されている。「回路接続」とは、収容部、あるいは収容部内に取り付けられた液圧式の構成要素が、液圧ブロック内に設けられた管路により、車両ブレーキ装置の液圧回路図に応じて接続されていることを意味する。管路は、典型的には、しかし、必ずしも液圧ブロック内に穴あけすることで設けられていなくてもよい。
【0010】
液圧式の構成要素が装着されると、液圧ブロックは、液圧ユニットを形成する。ここで「装着」とは、液圧式の構成要素が、液圧ブロックの、構成要素のためにそれぞれ設けられた収容部内に取り付けられていることを意味する。
【0011】
従属請求項は、独立請求項に記載の本発明の発展形および有利な構成を対象とする。
【0012】
明細書および図面に開示されるすべての特徴は、それ自体単独でも、原則任意の組み合わせでも、本発明の実施形態において実現され得る。一請求項または本発明の一実施形態のすべての特徴を有しているのではなく、そのうちの1つまたは複数の特徴しか有していない発明の構成も、原則可能である。
【0013】
本発明について、以下に図面に示した一実施形態を基に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る液圧ブロックの、非人力シリンダ孔の軸方向平面における断面図である。
【
図2】非人力シリンダ孔を軸方向で見たときの、
図1に示した液圧ブロックの部分図である。
【
図3】
図2に示した液圧ブロックの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面は、本発明の説明および理解のために、簡略化および概略化して示す図である。
【0016】
図1は、それ以外は図示しない液圧式の非人力ブレーキ装置の液圧ユニット36用の本発明に係る液圧ブロック1の断面図を示している。切断平面は、非人力シリンダ孔2の軸方向平面であり、非人力シリンダ孔2は、液圧ブロック1を第1の面3から、反対側に位置する第2の面4にかけて貫通している。本実施例において、液圧ブロック1は、フラットな直方体形の金属ブロックであり、金属ブロックは、非人力ブレーキ装置の液圧式の構成要素の機械的な取り付けおよび液圧的な回路接続に用いられる。液圧式の構成要素が装着されると、液圧ブロック1は、車両ブレーキ装置の液圧ユニット36を形成する。「フラット」とは、液圧ブロック1が、厚みの約3~4倍の幅または長さを有することを意味する。非人力シリンダ孔2が貫通する第1および第2の面3,4は、液圧ブロック1の、互いに反対側に位置する2つの大きな面であり、両面は、本実施例では略正方形である。
【0017】
液圧のブレーキ圧力を非人力により発生させるべく、非人力ピストン5が非人力シリンダ孔2内に配置されており、または配置され、非人力ピストン5は、電気モータ6により、回転/並進変換伝動機構としてのねじ伝動機構7を介して軸方向で非人力シリンダ孔2内において摺動可能である。本実施例は、ボールねじ機構をねじ伝動機構7として使用している。電気モータ6とねじ伝動機構7との間には、本実施例では、機械式の減速伝動機構としての遊星伝動機構8が配置されている。
【0018】
電気モータ6、遊星伝動機構8、ねじ伝動機構7および非人力ピストン5は、非人力シリンダ孔2に対して同軸に液圧ブロック1に配置されており、電気モータ6は、液圧ブロック1の第1の面3の外側に取り付けられており、第1の面3は、それゆえ液圧ブロック1のモータ面とも称呼し得る。第1の面3あるいはモータ面に、非人力シリンダ孔2は開いている。遊星伝動機構8は、電気モータ6のモータハウジング9内に存在し、ねじ伝動機構7は、非人力シリンダ孔2および非人力ピストン5内に突入しており、非人力ピストン5は、ねじ伝動機構7を格納すべく、中空ピストンとして構成されており、中空ピストンの開いた側は、電気モータ6に面している。
【0019】
電気モータ6、遊星伝動機構8およびねじ伝動機構7は、非人力ピストン5のための非人力駆動部を形成し、かつ非人力ピストン5および非人力シリンダ孔2とともに、図示しない液圧式の非人力ブレーキ装置のための非人力ブレーキ圧力発生器10を形成している。
【0020】
非人力シリンダを形成する非人力シリンダ孔2は、プランジャまたはプランジャシリンダとも解され、非人力ピストンは、プランジャピストンとも解され得る。
【0021】
液圧ブロック1の第2の面4の近傍に、非人力シリンダ孔2は、若干縮小された直径を有するセクションを有し、このセクションは、ガイドセクション11を形成し、ガイドセクション11は、非人力ピストン5を軸方向で摺動自在に非人力シリンダ孔2内においてガイドする。
【0022】
ガイドセクション11内に、非人力シリンダ孔2は、環囲する第1の溝を有し、そして液圧ブロック1の第1の面3あるいはモータ面に向かってオフセットされて、第2の溝を有し、両溝内には、それぞれ1つのシールリングが、ピストンシール13として配置されており、これにより、シールセクション12が形成されており、シールセクション12内では、非人力シリンダピストン5が非人力シリンダ孔2内で封止されている。シールセクション12とガイドセクション11とは、第1の溝の領域において互いにオーバラップしており、ガイドセクション1は、液圧ブロック1の第2の面4に向かってさらに延在し、シールセクション12は、液圧ブロック1の第1の面3あるいはモータ面に向かってさらに延在している。
【0023】
ピストンシール13を有する両溝間に、非人力シリンダ孔2は、環囲する第3の溝14を有し、第3の溝14内には、ブレーキ管路15が開口し、ブレーキ管路15は、第3の溝14を、図示しないブレーキ液体容器に接続する。ブレーキ液体容器は、液圧ブロック1の1つの狭幅面上に配置される。この狭幅面は、第1および第2の面3,4に隣接し、ここでは液圧ブロック1の上面35と称呼される。第3の溝14をブレーキ液体容器に接続するブレーキ管路15は、穴あけによりまたは別の方法で液圧ブロック1内に設けられており、第3の溝14内に開口している。ブレーキ管路15と、第3の溝14とにより、非人力シリンダ孔2は、非人力ピストン5が、電気モータ6に向かって後退摺動されている図面に示す出発位置にあるとき、図示しないブレーキ液体容器と連通する。非人力ピストン5が、ブレーキ圧力を発生させるべく、電気モータ6から離間する方向に摺動されると、非人力ピストン5は、第3の溝14を乗り越え、これにより非人力シリンダ孔2を液圧的にブレーキ液体容器から遮断する。
【0024】
上面35内に、液圧ブロック1は、円筒状の止まり穴を、図示しないブレーキ液体容器用の接続部37として有している。ブレーキ液体容器を液圧ブロック1の上面35上に載置するとき、ブレーキ液体容器の底部に設けられた接続ニップルが、液圧ブロック1の接続部37内に到達し、そこでOリングにより封止されている。
【0025】
液圧ブロック1の第2の面4には、シリンダカバー16が非人力シリンダ孔2に対して同軸に配置されている。液圧ブロック1の第2の面4から張り出したシリンダカバー16は、本実施例では、円筒管形であり、シリンダカバー底部17を、液圧ブロック1から張り出した端部に有し、シリンダカバー底部17は、シリンダカバー16と非人力シリンダ孔2とをこの端部において閉鎖している。
【0026】
シリンダカバー16の開いた端部は、液圧ブロック1に取り付けられている。このためにシリンダカバー16は、環囲するかつ半径方向外方に張り出す取り付けフランジ18を、シリンダカバー16の開いた端部に有し、取り付けフランジ18は、取り付け溝19内に圧入されている。取り付け溝19は、液圧ブロック1の第2の面4内に設けられており、非人力シリンダ孔2の開口部を同心に囲繞している。取り付け溝19は、一般に、液圧ブロック1の第2の面4内に設けられた凹部と解されてもよい。ただし、液圧ブロック1へのシリンダカバー16の取り付け用の、環囲する溝とは別の凹部、例えば環囲する環状段も可能である(図示せず)。
【0027】
シリンダカバー16の取り付けフランジ18は、シリンダカバー16の半径方向で、および非人力シリンダ孔2に向かって、取り付け溝19の溝幅に関して締め代を有し、取り付けフランジ18が、液圧ブロック1の取り付け溝19内での締まりばめを有し、半径方向内側でも、半径方向外側でも、機械的な予圧を伴って、取り付け溝19の環囲する溝側壁に当接するようになっている。締まりばめは、プレスばめとも称呼し得る。
【0028】
環囲するかしめ部21により、液圧ブロック1は、シリンダカバー16が、液圧ブロック1に取り付けられているように、シリンダカバー16の取り付けフランジ18に覆い被さるように係合する。取り付け溝19、取り付けフランジ18およびかしめ部21の拡大図は、
図4に示してある。取り付け溝19内での取り付けフランジ18の締まりばめと、かしめ部21とは、シリンダカバー16を液圧ブロック1において封止する。特に、取り付けフランジ18の外縁を取り付け溝19の外側の溝側壁に当接させる機械的な予圧は、シリンダカバー16を高信頼性に液圧ブロック1において封止する。シリンダカバー16の内縁を取り付け溝19の内側の溝側壁20に当接させる機械的な予圧は、取り付けフランジ18の外縁を機械的な予圧により取り付け溝19の外側の溝側壁に当接させて保持する。これにより、封止は、保証されている。
【0029】
取り付け溝19内での取り付けフランジ18の半径方向のプレスは、環囲するかしめ部21により発生される。かしめ部21は、液圧ブロック1の、取り付け溝19を囲繞する材料を軸方向で圧潰し、これにより、材料は、半径方向内方に塑性変形される。これにより、液圧ブロック1内の取り付け溝19は、より狭くなり、シリンダカバー16の取り付けフランジ18は、半径方向で取り付け溝19の溝側壁間で締め付けられる。
【0030】
液圧ブロック1におけるシリンダカバー16の封止をさらに改善する目的で、シリンダカバー16の取り付けフランジ18は、環囲する環状段40を、取り付け溝19の底から背離した外側エッジに有している。かしめ時、液圧ブロック1の材料は、変形されて、取り付けフランジ18の環状段40内にも侵入し、このことは、封止を改善する。
【0031】
本実施例において、液圧ブロック1は、アルミニウム合金からなり、シリンダカバー16は、鋼からなり、すなわち、液圧ブロック1は、シリンダカバー16、およびシリンダカバー16の取り付けフランジ18より大きな熱膨張係数を有している。このことは、液圧ブロック1におけるシリンダカバー16の封止を、高温時にも保証する。
【0032】
本実施例において、鋼からなるシリンダカバー16は、深絞り加工、すなわち、一般的に表現すれば、変形加工法によって製造され、この方法は、様々な壁厚さを可能にする。シリンダカバー底部17を安定に形成すべく、シリンダカバー底部17は、シリンダカバー16の周壁23より大きな壁厚さを有している。さらにシリンダカバー底部17は、1つまたは複数のビードをシリンダカバー底部17の補剛のために有していてもよい(図示せず)。本実施例において、シリンダカバー底部17は、シリンダカバー底部17の補剛のために、若干液圧ブロック1に向かって沈められて構成されている(図面参照)。一般的に表現すれば、シリンダカバー底部17は、挙げた手段のうちの1つまたは複数の手段により、補強部22を有している。
【0033】
非人力ピストン5は、非人力ピストン5の、シリンダカバー底部17に面した端面に、リング形の土手を軸方向ストッパ24として有し、軸方向ストッパ24により、非人力ピストン5は、シリンダカバー底部17に向かう非人力ピストン5の摺動の終端において、シリンダカバー底部17に衝接する。軸方向ストッパ24は、シリンダカバー底部17に向かう非人力ピストン5の軸方向摺動を制限する。本実施例ではリング形の軸方向ストッパ24は、シリンダカバー16の周壁23に対して縁部近傍に配置されており、これにより、非人力ピストン5がシリンダカバー底部17に押し付けられたときの、シリンダカバー底部17の曲げ負荷を低く保つことができる。「縁部近傍」とは、周壁23からの半径方向の間隔が、直径の約20%~30%またはそれ以下であることを意味する。
【0034】
周箇所に液圧ブロック1は、ブレーキ管路26からシリンダカバー16用の取り付け溝19内への通路25を有している。通路25は、拡大して
図2および3に示してある。通路25は、本実施例では、取り付け溝19の底内に設けられた軸線平行の止まり穴として構成されている(
図2参照)。本実施例において、通路25は、取り付け溝19の周方向で延びる弧形のスリットの形態を有し、スリットは、周方向で短い区間延在している。
【0035】
取り付け溝19の底に設けられた、通路25を形成するスリットは、ピストンシール13用の2つの溝のうちの一方の溝の外側に存在し、すなわち、ピストンシール13用の、非人力シリンダ孔2の開口部に近い方の溝が、この溝が開いている非人力シリンダ孔2と、通路25との間に存在している。
【0036】
通路25がシリンダカバー16の内室と連通するように、切欠き38が、取り付け溝19の内側の溝側壁20に斜めに、シリンダカバー16の内室から取り付け溝19内に通じている。流動抵抗を高めかねないエッジを回避すべく、切欠き38は、非人力シリンダ孔2の仮想の軸線に対して斜めに構成されている。
【0037】
取り付け溝19の底に設けられた、通路25を形成するスリットは、通路25の、非人力シリンダ孔2とは反対側の外縁と、取り付け溝19の外側の溝側壁との間に、取り付け溝19の底の帯状の部分が、シリンダカバー16の取り付けフランジ18用の載置部として残されているように、取り付け溝19よりも細い。
【0038】
シリンダカバー16の内側直径Dは、ガイドセクション11およびシールセクション12における非人力シリンダ孔2のガイド直径およびシール直径dより大きい。これにより、シリンダカバー16の内側直径Dは、非人力ピストン5の直径dよりも大きく、これにより、シリンダカバー16の内室は、非人力シリンダ孔2と連通する。シリンダカバー16の内側直径Dをさらに拡大すべく、シリンダカバー16の周壁23は、断面S字形にカーブした直径拡大部23を、非人力シリンダ孔2に面した開いた側に向かって有している。
【0039】
ブレーキ管路26は、通路25内に開口している。ブレーキ管路26は、液圧ブロック1の上面35上に載置されるブレーキ液体容器をシリンダカバー16の内室に接続する。ブレーキ管路26は、直接、図示しないブレーキ液体容器用の複数の接続部37のうちの1つから通路25に通じている。
図1では、通路25およびブレーキ管路26を下方に切断平面内に回転させて示してある。
【0040】
ブレーキ管路26内には、シリンダカバー16に向かって貫流可能なチェック弁(図示せず)が配置されており、非人力ピストン5が電気モータ6に向かって後退摺動されるときに、非人力ピストン5が、ブレーキ液体をシリンダカバー16および非人力シリンダ孔2内に吸い込むことはできるが、ブレーキ液体は、非人力シリンダ孔2からブレーキ液体容器に向かって押しのけられることはできないようになっている。
【0041】
液圧ブロック1の穿孔は、通路25を、非人力ブレーキ装置の図示しない液圧式のホイールブレーキ用の接続部32にも接続し、接続部32において、ホイールブレーキに通じるブレーキ管路が、液圧ブロック1に接続される。ホイールブレーキに通じるブレーキ管路用の接続部32としての凹部は、液圧ブロック1の第1の面3内に設けられている。
【0042】
本実施例において、液圧ブロック1は、主ブレーキシリンダ孔27を有し、主ブレーキシリンダ孔27内には、一次ピストンあるいはロッドピストンが、そして2系統ブレーキ装置のためには、二次ピストンあるいは浮動ピストンが、ブレーキ圧力が筋力によっても発生可能であるように配置される(図示せず)。主ブレーキシリンダを形成する主ブレーキシリンダ孔27は、第1および第2の面3,4間の中央平面内で非人力シリンダ孔2に対して垂直に、かつブレーキ液体容器が載置される上面35に対して平行に、液圧ブロック1内に設けられている。
【0043】
非人力シリンダ孔2と、液圧ブロック1の、上面35から遠位のエッジとの間において、液圧ブロック1の第2の面4内には、図示しないペダルストロークシミュレータ用のシミュレータシリンダ孔28が、液圧ブロック1内に設けられている。スペース上の理由から、
図1には、シミュレータシリンダ孔28の半割断面図しか示していない。ペダルストロークシミュレータは、図示しないばね付勢されたシミュレータピストンを有し、シミュレータピストンは、シミュレータシリンダ孔28内において軸方向で摺動自在である。ペダルストロークシミュレータは、主ブレーキシリンダ孔27と連通しており、ブレーキ圧力を非人力ブレーキ圧力発生器10により発生させるときに、主ブレーキシリンダ孔27がカット弁の閉弁により非人力ブレーキ装置から遮断されるとき、ブレーキ液体を主ブレーキシリンダ孔27から押しのけることを可能にする。
【0044】
第1の面3あるいはモータ面とは反対側に位置する第2の面4内に、液圧ブロック1は、ソレノイド弁30用の収容部29および圧力センサ等の別の構成要素用の図示しない収容部としての、直径に関して段付けされた凹部を有している。簡略化して回路記号として示してあるソレノイド弁30と、別の液圧式の構成要素とにより、非人力ブレーキ装置のブレーキ圧力は、調整され、接続される液圧式のホイールブレーキの各々において個々に、ホイール個別にブレーキ圧力調整することが可能である。ソレノイド弁30のうち、本来の弁を形成する液圧式のセクションは、収容部29内に存在し、弁ドーム31内に格納されている可動子および磁石コイルは、液圧ブロック1の弁面または制御装置面とも称呼し得る第2の面4から張り出している。
【0045】
液圧ブロック1の第2の面4には、箱形のカバー33が配置されており、カバー33は、シリンダカバー16と、ソレノイド弁30の弁ドーム31とを覆っている。カバー33は、シリンダカバー16と弁ドーム31とを汚れおよび湿分から保護し、それゆえ、シリンダカバー16と弁ドーム31とは、耐食性の鋼からなる必要がない。カバー33は、非人力ブレーキ圧力発生器10、ソレノイド弁30および別の液圧式の構成要素を制御あるいは調整する、すなわち、非人力ブレーキ装置のブレーキ圧力を調整する、電子式の制御装置34を有している。
【符号の説明】
【0046】
1 液圧ブロック
2 非人力シリンダ孔
3 第1の面
4 第2の面
5 非人力ピストン
6 電気モータ
7 ねじ伝動機構
8 遊星伝動機構
9 モータハウジング
10 非人力ブレーキ圧力発生器
11 ガイドセクション
12 シールセクション
13 ピストンシール
14 第3の溝
15 ブレーキ管路
16 シリンダカバー
17 シリンダカバー底部
18 取り付けフランジ
19 取り付け溝
20 溝側壁
21 かしめ部
22 補強部
23 周壁、直径拡大部
24 軸方向ストッパ
25 通路
26 ブレーキ管路
27 主ブレーキシリンダ孔
28 シミュレータシリンダ孔
29 収容部
30 ソレノイド弁
31 弁ドーム
32 接続部
33 カバー
34 制御装置
35 上面
36 液圧ユニット
37 接続部
38 切欠き
40 環状段
D シリンダカバーの内側直径
d 非人力シリンダ孔のガイド直径およびシール直径、非人力ピストンの直径
【手続補正書】
【提出日】2024-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧式の非人力ブレーキ装置用の液圧ブロックであって、
前記液圧ブロック(1)は、非人力シリンダ孔(2)を備え、前記非人力シリンダ孔(2)は、前記液圧ブロック(1)の第1の面(3)に開いている、
液圧ブロックにおいて、
前記液圧ブロック(1)の前記第1の面(3)とは反対側に位置する第2の面(4)に、管形のシリンダカバー(16)が配置されており、前記シリンダカバー(16)は、前記非人力シリンダ孔(2)を延長し、かつ
前記シリンダカバー(16)は、環囲するかしめ部(21)により圧力密に前記液圧ブロック(1)に結合されている、
ことを特徴とする、液圧式の非人力ブレーキ装置用の液圧ブロック。
【請求項2】
前記シリンダカバー(16)は、環囲する取り付けフランジ(18)を、前記液圧ブロック(1)に面した端部に有し、前記取り付けフランジ(18)は、前記液圧ブロック(1)の前記第2の面(4)内に設けられた凹部内に配置されており、かつ前記環囲するかしめ部(21)は、前記シリンダカバー(16)の前記取り付けフランジ(18)に覆い被さるように係合することを特徴とする、請求項1に記載の液圧ブロック。
【請求項3】
前記シリンダカバー(16)の前記取り付けフランジ(18)は、前記液圧ブロック(1)の環囲する取り付け溝(19)であって、前記液圧ブロック(1)の前記第2の面(4)内に設けられた前記非人力シリンダ孔(2)の開口部を囲繞する取り付け溝(19)内に配置されており、かつ前記シリンダカバー(16)の前記取り付けフランジ(18)は、内側と外側とで締まりばめでもって前記取り付け溝(19)の環囲する溝側壁(20)に当接することを特徴とする、請求項
2に記載の液圧ブロック。
【請求項4】
前記シリンダカバー(16)の前記取り付けフランジ(18)は、環囲する環状段(40)を、前記取り付け溝(19)の底から背離した外側エッジに有することを特徴とする、請求項
3に記載の液圧ブロック。
【請求項5】
前記液圧ブロック(1)内に設けられたブレーキ管路(26)が、前記取り付け溝(19)の底に設けられた通路(25)内に開口し、かつ前記通路(25)は、前記ブレーキ管路(26)を前記シリンダカバー(16)の内側において前記シリンダカバー(16)の内室に接続することを特徴とする、請求項3に記載の液圧ブロック。
【請求項6】
前記通路(25)は、周方向で延びるスリットとして、前記取り付け溝(19)の底に形成されていることを特徴とする、請求項
5に記載の液圧ブロック。
【請求項7】
前記通路(25)は、前記取り付け溝(19)の内側の溝側壁(20)に設けられた、前記非人力シリンダ孔(2)に対して斜めに延びる切欠き(38)により、前記シリンダカバー(16)の前記内室と連通することを特徴とする、請求項6に記載の液圧ブロック。
【請求項8】
前記シリンダカバー(16)の内側直径(D)が、前記液圧ブロック(1)内に設けられた前記非人力シリンダ孔(2)のガイド直径またはシール直径(d)と少なくとも同じ大きさであり、好ましくは、より大きいことを特徴とする、請求項1または
2に記載の液圧ブロック。
【請求項9】
前記シリンダカバー(16)のシリンダカバー底部(17)が、補強部(22)を有することを特徴とする、請求項1または
2に記載の液圧ブロック。
【請求項10】
前記シリンダカバー(16)の前記シリンダカバー底部(17)および/または前記非人力シリンダ孔(2)内において軸方向で摺動自在の非人力ピストン(5)は、前記非人力ピストン(5)用の軸方向ストッパ(24)を有し、前記軸方向ストッパ(24)は、前記シリンダカバー底部(17)に向かう前記非人力ピストン(5)の軸方向摺動を制限し、かつ前記シリンダカバー(16)の周壁(23)に対して縁部近傍に配置されていることを特徴とする、請求項
9に記載の液圧ブロック。
【請求項11】
前記液圧ブロック(1)は、前記シリンダカバー(16)より大きな熱膨張係数を有することを特徴とする、請求項1または
2に記載の液圧ブロック。
【請求項12】
前記液圧ブロック(1)の前記第2の面(4)にカバー(33)が配置されており、前記カバー(33)は、前記シリンダカバー(16)を覆うことを特徴とする、請求項1または
2に記載の液圧ブロック。
【国際調査報告】