IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルゴ ナチュラル リソーシーズ リミテッドの特許一覧

特表2024-536092非水性溶媒を使用して金属を抽出するための組成物及び方法
<>
  • 特表-非水性溶媒を使用して金属を抽出するための組成物及び方法 図1A
  • 特表-非水性溶媒を使用して金属を抽出するための組成物及び方法 図1B
  • 特表-非水性溶媒を使用して金属を抽出するための組成物及び方法 図2
  • 特表-非水性溶媒を使用して金属を抽出するための組成物及び方法 図3
  • 特表-非水性溶媒を使用して金属を抽出するための組成物及び方法 図4
  • 特表-非水性溶媒を使用して金属を抽出するための組成物及び方法 図5
  • 特表-非水性溶媒を使用して金属を抽出するための組成物及び方法 図6
  • 特表-非水性溶媒を使用して金属を抽出するための組成物及び方法 図7
  • 特表-非水性溶媒を使用して金属を抽出するための組成物及び方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】非水性溶媒を使用して金属を抽出するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20240927BHJP
   C22B 3/14 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C22B7/00 G
C22B3/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518786
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 GB2022052433
(87)【国際公開番号】W WO2023047139
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】2113800.3
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524113301
【氏名又は名称】アルゴ ナチュラル リソーシーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ハリス ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ジェンキン ガウェン
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA01
4K001AA02
4K001AA04
4K001AA06
4K001AA07
4K001AA08
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA11
4K001AA14
4K001AA15
4K001AA17
4K001AA19
4K001AA20
4K001AA21
4K001AA24
4K001AA28
4K001AA30
4K001AA41
4K001AA42
4K001BA22
4K001CA01
4K001CA05
4K001CA09
4K001DB09
4K001JA05
(57)【要約】
本発明は、非水性溶媒及び酸化剤を使用して固体材料から金属を抽出するための組成物及び方法に関する。本発明の方法及び組成物は、固体材料、特に電子廃棄物材料から金属を選択的に抽出するのに有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体材料から1種又は複数の金属を抽出するための方法であって、
(i) 4:1~1:20のモル比にある第1の第四級アンモニウム塩と第1の水素結合ドナーとの反応によって形成された第1の深共晶溶媒(DES)、及び
第1の酸化剤
を含む第1の浸出溶液に前記固体材料を接触させ、それによって第1の浸出固体材料及び第1の液相を提供すること
を含む第1の浸出ステップ、
(ii) 4:1~1:20のモル比にある第2の第四級アンモニウム塩と第2の水素結合ドナーとの反応によって形成された第2のDES、及び
第2の酸化剤
を含む第2の浸出溶液に前記第1の浸出固体材料を接触させ、それによって第2の浸出固体材料及び第2の液相を提供すること
を含む第2の浸出ステップ
を含み、前記第1の酸化剤及び前記第2の酸化剤が異なるものである、
方法。
【請求項2】
前記第1及び前記第2の酸化剤が異なる還元電位を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の酸化剤の還元電位が、前記第1の酸化剤の還元電位よりも正である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の酸化剤の還元電位が、+0.50V未満又はそれに等しく、好ましくは-1.00V~+0.50Vである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の酸化剤の還元電位が、+0.50Vよりも大きい又はそれに等しく、好ましくは+0.50V~+2.0Vである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の酸化剤がAu(0)を酸化することができない、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の酸化剤がAu(0)を酸化する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の酸化剤が、Fe(III)塩、Cu(II)塩、Te(IV)塩、Cr(III)塩、又はMn(VII)塩、好ましくはFe(III)塩又はCu(II)塩、より好ましくはFe(III)塩である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の酸化剤が、FeCl3、FeF3、FeBr3、FeI3、Fe(CN)6、Fe(SCN)3、Fe(NO33、Fe(SO43、Fe(OH)3、Fe(C2323、CuCl2、CuF2、CuBr2、CuI2、Cu(NO32、CuSO4、CuO、Cu(OH)2、TeCl4、TeF4、TeBr4、TeI4、TeO2、又はKMnO4であり、より好ましくは、前記第1の酸化剤が、FeCl3又はCuCl2であり、更により好ましくは、前記第1の酸化剤がFeCl3である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の酸化剤が、I2、又はSeCl4、SeF4、SeBr4、SeI4、SeO2であり、好ましくは前記第2の酸化剤がI2である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1及び第2の第四級アンモニウム塩が、それぞれ独立して式(I)の化合物である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【化1】
(I)
(式中、
1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して、H、置換若しくは非置換C1-C5アルキル基、置換若しくは非置換C6-C10シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6-C12アリール基、置換若しくは非置換C7-C12アルカリル基であり、又は
1及びR2は、それらが結合するN原子と一緒になって、置換若しくは非置換5~11員環を形成し、R3及びR4は既に定義された通りであり、
-は、NO3 -、F-、Cl-、Br-、I-、BF4 -、ClO4 -、SO3CF3 -、重酒石酸、クエン酸二水素、又はCOOCF3 -であり、及び
置換されたとは、前記基が、OH、SH、SR5、Cl、Br、F、I、NH2、CN、NO2、COO-、COOR5、CHO、COR5、及びOR5から選択される基の1個又は複数で置換されてもよいことを意味する(式中、R5は、H、C1-C10アルキル若しくはC1-C10シクロアルキル基である))
【請求項12】
前記第1及び第2の第四級アンモニウム塩が、それぞれ独立して、塩化コリン、水酸化コリン、酢酸コリン、重酒石酸コリン、二水素クエン酸コリン、ベタイン、ベタインHCl、塩化アンモニウム、塩化メチルアンモニウム、塩化エチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、又はエタノールアミン塩酸塩であり、好ましくは前記第1及び第2の第四級アンモニウム塩は塩化コリンである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1及び第2の水素結合ドナーが、それぞれ独立して、式R6COOH、R78NH、R9CZNH2、R10OH、又はHO-R11-OHの化合物である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
(式中、
6、R7、R8、及びR10はそれぞれ独立して、H、置換若しくは非置換C1-C8アルキル基、置換若しくは非置換C1-C8アルケニル基、置換若しくは非置換アリール基、又は置換若しくは非置換C7-C12アルカリル基であり、及びR11は、置換又は非置換C1-C11アルキル基であり、
置換されたとは、前記基が、OH、SR5、Cl、Br、F、I、NH2、CN、NO2、3,4-ジヒドロキシ-2H-フラン-5-オン、CONR5、COOR5、COR5、及びOR5から選択される1個又は複数の基で置換されてもよいことを意味し(式中、R5は、H、C1-C10アルキル、又はC1-C10シクロアルキル基である)、
9は、R6に関して定義された基、又はNHR12であり、R12は、H、又はC1-C6アルキル基であり、及びZは、O又はSであり、
11は、置換又は非置換C1-C11アルキル基である)
【請求項14】
前記第1及び第2の水素結合ドナーが、それぞれ独立して、エチレングリコール、グリセロール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、尿素、シュウ酸、マロン酸、レブリン酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸、マロンアミド、アセトアミド、シュウ酸二水和物、アスコルビン酸、グルタル酸、グリコール酸、マンデル酸、コハク酸、酒石酸、又はフェノールであり、好ましくは前記第1及び第2の水素結合ドナーはエチレングリコールである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の第四級アンモニウム塩と前記第1の水素結合ドナーとのモル比が、4:1~1:20、好ましくは2:1~1:4である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の第四級アンモニウム塩と前記第2の水素結合ドナーとのモル比が、4:1~1:20、好ましくは2:1~1:4である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の酸化剤が、0.001mol dm-3~2.5mol dm-3、好ましくは1mol dm-3の濃度で存在する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の酸化剤が、0.001mol dm-3~1.5mol dm-3、好ましくは0.5mol dm-3の濃度で存在する、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の浸出ステップで、DESに前記第1の酸化剤を加えたものと、前記固体材料中の金属との比が、1:50~100:1(w:w)である、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の浸出ステップで、DESに前記第2の酸化剤を加えたものと、前記固体材料中の金属との比が、1:50~100:1(w:w)である、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の浸出ステップで、DESと固体材料との比が1:50~100:1(v/w)である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の浸出ステップで、DESと固体材料との比が1:50~100:1(v/w)であってもよい、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1及び第2の浸出ステップで、前記固体材料が、10℃~120℃の温度で5分~240時間にわたり浸出する、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1及び第2の第四級アンモニウム塩が、それぞれ独立して、塩化コリン、水酸化コリン、酢酸コリン、重酒石酸コリン、二水素クエン酸コリン、ベタイン、ベタインHCl、塩化アンモニウム、塩化メチルアンモニウム、塩化エチルアンモニウム、塩化テトラ-ブチルアンモニウム、又はエタノールアミン塩酸塩であり、好ましくは前記第1及び第2の第四級アンモニウム塩が塩化コリンであり、
前記第1及び第2の水素結合ドナーが、それぞれ独立して、エチレングリコール、グリセロール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、尿素、シュウ酸、マロン酸、レブリン酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸、マロンアミド尿素、アセトアミド、シュウ酸二水和物、アスコルビン酸、グルタル酸、グリコール酸、マンデル酸、コハク酸、酒石酸、又はフェノールであり、好ましくは前記第1及び第2の水素結合ドナーがエチレングリコールであり、
前記第1及び第2の第四級アンモニウム塩と、前記第1及び第2の水素結合ドナーとのモル比が、好ましくは4:1~1:20、より好ましくは2:1~1:4であり、
前記第1の酸化剤の還元電位が、+0.50V未満又はそれに等しく、好ましくは前記第1の酸化剤がFeCl3であり、及び
前記第2の酸化剤の還元電位が、+0.50Vよりも大きい又はそれに等しく、好ましくは前記第2の酸化剤がI2である、
請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1及び第2の第四級アンモニウム塩が塩化コリンであり、前記第1及び第2の水素結合ドナーがエチレングリコールであり、前記第1の第四級アンモニウム塩と前記第1の水素結合ドナー、並びに前記第2の第四級アンモニウム塩と前記第2の水素結合ドナーとのモル比が1:2であり、前記第1の酸化剤の還元電位が+0.50V未満若しくはそれに等しく、及び/又は前記第1の酸化剤がFe(III)塩若しくはCu(II)塩、好ましくはFe(III)塩であり、及び前記第2の酸化剤の還元電位が、+0.50Vよりも大きい若しくはそれに等しく、及び/又は前記第2の酸化剤がI2である、
請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の液相から1種若しくは複数の金属を回収するステップ、及び/又は
前記第2の液相から1種若しくは複数の金属を回収するステップ
を更に含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の浸出ステップの前に、前記第1の浸出固体材料を、濾過し、清浄化し、及び乾燥することを更に含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
固体材料から1種又は複数の金属を抽出するための方法であって、
(i) 4:1~1:20のモル比にある第四級アンモニウム塩と水素結合ドナーとの反応によって形成された深共晶溶媒(DES)、及び
第1の酸化剤
を含む浸出溶液に前記固体材料を接触させることを含む、
浸出ステップを含み、
前記第1の酸化剤の還元電位が+0.50V未満若しくはそれに等しく、及び/又は前記第1の酸化剤がFe(III)塩、Cu(II)塩、Te(IV)塩、Cr(III)塩、若しくはMn(VII)塩である、方法。
【請求項29】
4:1~1:20のモル比にある第1の第四級アンモニウム塩と第1の水素結合ドナーとの反応によって形成された深共晶溶媒、及び
第1の酸化剤
を含む固体材料から1種又は複数の金属を浸出させるための組成物であって、
前記第1の酸化剤の還元電位が+0.50V未満若しくはそれに等しく、及び/又は前記第1の酸化剤がFe(III)塩、Cu(II)塩、Te(IV)塩、Cr(III)塩、若しくはMn(VII)塩である、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深共晶溶媒(DES)及び酸化剤を使用して固体材料から金属を抽出するための組成物及び方法に関する。本発明の方法及び組成物は、固体材料、特に電子廃棄物材料から、金属を選択的に抽出するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
深共晶溶媒(DES)は、構成成分のいずれかの融点よりも低い単一温度で溶融する均質混合物を提供するため、ある特定の成分の錯体化によって形成される。DESを形成するよう錯体化することができる成分の例は、第四級アンモニウム塩及び水素結合ドナーである。
それらの発見により、DESには、金属酸化物及び塩化物の溶解を含むいくつかの適用例が見出された。これに関し、WO02/26701は、様々なDESの調製と、それらのバッテリー電解質としての、金属酸化物用の溶媒としての、金属を電解研磨し電着するための成分としての、及び化学反応用の溶媒としての使用とを開示する。
例えば金、銀、銅、ニッケル、スズ、鉛、アルミニウム、鉄などの天然の金属は、DESをヨウ素の形の酸化剤と組み合わせたときに溶解できることが、後に発見された(Abbott et al., Electrocatalytic recovery of elements from complex mixtures using deep eutectic solvents, Green Chem., 2015, 17, pp 2172-2179)。ヨウ素は、水中での可溶性が不十分であり、ほとんどの水性化学物質に適さなくなる。しかしながらDES中では非常に可溶性であり、可溶化すると、広範な金属を酸化することが可能である。
【0003】
天然の金属を溶解するDESの能力には、金属抽出の分野で潜在的な適用例があり、現在、強力な無機酸又はシアン化物若しくは水銀等の有毒化学物質をしばしば使用する湿式製錬プロセス、並びにエネルギー集約的高温製錬プロセスが使用される。
しかしながら、天然の金属を溶解するのにヨウ素と組み合わせたDESの使用には、欠点がある。これらには、ヨウ素の高いコスト、広範な金属を酸化するその能力に起因したその比較的低い金属選択性、及び追加の水に対するその感受性が含まれる。
上記に照らし、DESを含む組成物、及びこれらの欠点に対処する酸化剤が求められている。更に、ある特定の金属に対して改善された選択性を有する固体材料から金属を抽出するための、したがってこれらの金属のプロセス後回収を単純化する、プロセスが求められている。これは特に、プリント回路基板(PCB)、中央処理装置(CPU)、及びランダムアクセスメモリ(RAM)等の電子廃棄物(e-廃棄物)の高価値成分からの金属の抽出であって、金等の高価値金属の回収がその他の金属の存在によって複雑になる抽出に関して言えることである。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、DES及び酸化剤を含む固体材料から金属を抽出するための組成物を提供することによって、従来技術の欠点に対処し克服する。この組成物は、多くの金属を溶解することが可能であるが、金を含む一部の金属を溶解することができない可能性がある。本発明は、この組成物を使用する固体材料から金属を抽出するための方法も提供する。
上記に加え、本発明は、固体材料から金属を抽出するための2段階プロセスを提供し、この固体材料を、DES及び第1の酸化剤を含む組成物に最初に接触させ、第2のステップでは、DES及び第2の酸化剤を含む組成物に接触させ、これら第1の酸化剤及び第2の酸化剤は異なるものである。
第1の態様から見ると、本発明は、固体材料から1種又は複数の金属を抽出するための方法であって、
(i) 4:1~1:20のモル比にある第1の第四級アンモニウム塩と第1の水素結合ドナーとの反応によって形成された第1の深共晶溶媒(DES)、及び
第1の酸化剤
を含む第1の浸出溶液に固体材料を接触させ、それによって第1の浸出固体材料及び第1の液相を提供すること
を含む第1の浸出ステップ、
(ii) 4:1~1:20のモル比にある第2の第四級アンモニウム塩と第2の水素結合ドナーとの反応によって形成された第2のDES、及び
第2の酸化剤
を含む第2の浸出溶液に第1の浸出固体材料を接触させ、それによって第2の浸出固体材料及び第2の液相を提供すること
を含む第2の浸出ステップ
を含み、第1の酸化剤及び第2の酸化剤が異なるものである、
方法を対象とする。
【0005】
第2の態様から見ると、本発明は、固体材料から1種又は複数の金属を抽出するための方法であって、
(i) 4:1~1:20のモル比にある第四級アンモニウム塩と水素結合ドナーとの反応によって形成された深共晶溶媒(DES)、及び
第1の酸化剤
を含む浸出溶液に固体材料を接触させることを含む、
浸出ステップを含み、
第1の酸化剤の還元電位が+0.50V未満若しくはそれに等しく、及び/又は第1の酸化剤がFe(III)塩、Cu(II)塩、Te(IV)塩、Cr(III)塩、若しくはMn(VII)塩である、方法を対象とする。
【0006】
第3の態様から見ると、本発明は、
4:1~1:20のモル比にある第1の第四級アンモニウム塩と第1の水素結合ドナーとの反応によって形成された深共晶溶媒、及び
第1の酸化剤
を含む固体材料から1種又は複数の金属を抽出するための組成物であって、
第1の酸化剤の還元電位が+0.50V未満若しくはそれに等しく、及び/又は第1の酸化剤がFe(III)塩、Cu(II)塩、Te(IV)塩、Cr(III)塩、又はMn(VII)塩である、
組成物を対象とする。
本発明の好ましい特徴は、以下に提示する従属クレームで述べる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】実施例1による、1:2の化学量論比にある塩化コリン及びエチレングリコール(E200として当技術分野で公知である)+1M FeCl3を含むDES中に樹脂を浸漬することによって、樹脂上のCu、Ni、及びAuの堆積物がエッチングされる深さを示す図である。
図1B】実施例1による、E200+0.5M I2中に樹脂を浸漬することによって、樹脂上のCu、Ni、及びAuの堆積物がエッチングされる深さを示す図である。
図2】実施例2で記述される、浸出プロセス中に浸出した各金属の正規化パーセンテージを示す図である。
図3】実施例2で記述される、浸出プロセス中に浸出した各金属の正規化パーセンテージを示す図である。
図4】実施例2で記述される、浸出プロセス中に浸出した各金属の正規化パーセンテージを示す図である。
図5】実施例2で記述される、浸出プロセス中に浸出した各金属の正規化パーセンテージを示す図である。
図6】実施例3による、異なる温度での異なる酸化剤によるE-廃棄物の処理中に失われた質量パーセンテージを示す図である。
図7】実施例4による、温度、水の含量、DES:固体の比、及び<1.2mmのE-廃棄物に浸出するまでの時間の効果を示す図である。
図8】実施例5に記述される、浸出プロセス中に浸出した各金属の正規化パーセンテージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者等は、DES及び酸化剤を含む組成物と、この組成物を使用して固体材料から1種又は複数の金属を抽出するための方法とを明らかにした。この組成物は、高い酸化剤安定性を実証し、多くの金属(電子固体廃棄物材料中に一般に存在する金属の大多数を含む)を溶解することが可能であるが、この組成物は、金を含む一部の金属を溶解することができない。この組成物を使用する、固体材料から金属を抽出するための方法は、固体材料が組成物と接触した後に、金に富む材料を提供する。
本発明者等は、固体材料から金属を効率的にかつ選択的に抽出するための2段階プロセスであって、固体材料を、DES及び第1の酸化剤を含む組成物に接触させる第1のステップを含むプロセスを、更に開発した。この組成物に固体材料を接触させた後に残っている材料は、第1のステップで溶解しない金属に富む。第2のステップでは、第1のステップからの固体材料を、DESと、第1の酸化剤とは異なる第2の酸化剤とを含む組成物に接触させる。第2のステップは、第1のステップの後に固体材料中に残された金属を溶解する場合がある。本明細書で使用される言語から明らかなように、本発明は、DES及び酸化剤による2段階処理に限定されず、本明細書に記述されるステップの前、間、及び/又は後に行われる同じ若しくは異なるDES及び酸化剤を使用した1つ又は複数の追加のそのようなステップを含んでいてもよい。
【0009】
DESは非水性溶媒であり、本発明の組成物及び方法が非常に低い水の消費量を有することを意味する。DESの低い蒸気圧は、方法が、多量の揮発性有機化合物又は粒子の放出を生成することなくかつ蒸発に起因する溶媒の損失を最小限に抑えた状態で、高温で実行できることも意味する。それらの比較的良い性質は、DESが使用者に優しいことを意味する。
本発明は、電子廃棄物(e-廃棄物)又は電気電子廃棄物指令(WEEE)等の金属含有固体材料を処理するための、低炭素、低エネルギー、及び環境に良い方法を実現する。方法は、強力な無機酸又はシアン化物若しくは水銀等の有毒化学物質をしばしば使用する、環境に損傷を与える湿式製錬プロセス、並びにそのような材料をリサイクルするのに一般に使用されるエネルギー集約的高温製錬プロセスと、置き換えることができる。更に本発明は、多金属原材料から高い金属回収率を実現し、資本集約的高温製錬プロセスと比較して比較的低いコストで、複雑な金属回収を可能にする。
上記利点に加え、本発明の2段階プロセスは、固体材料中に含有される価値ある金属を回収するための効率的かつ選択的なプロセスを提供し、市場のニーズを満たすように調整することができる単一元素金属生成物又は混合金属生成物のいずれかを生成する。
【0010】
(定義)
酸化剤- 特定の化合物が、本明細書で酸化剤(例えば、FeCl3)と呼ばれるとき、これは酸化剤がDESに溶解すると対イオン(例えば、Cl-)が変化し得るので、組成物に添加された形の酸化剤を指す。
第1の態様から見たとき、本発明は、固体材料から1種又は複数の金属を抽出するための方法であって、
(i) 4:1~1:20のモル比にある第1の第四級アンモニウム塩と第1の水素結合ドナーとの反応によって形成された第1の深共晶溶媒(DES)、及び
第1の酸化剤
を含む第1の浸出溶液に固体材料を接触させ、それによって第1の浸出固体材料及び第1の液相を提供すること
を含む第1の浸出ステップ、
(ii) 4:1~1:20のモル比にある第2の第四級アンモニウム塩と第2の水素結合ドナーとの反応によって形成された第2のDES、及び
第2の酸化剤
を含む第2の浸出溶液に第1の浸出固体材料を接触させ、それによって第2の浸出固体材料及び第2の液相を提供すること
を含む第2の浸出ステップ
を含み、第1の酸化剤及び第2の酸化剤が異なるものである、
方法を提供する。
【0011】
(酸化剤)
本発明の酸化剤は、固体材料中の1種又は複数の金属を酸化形態に酸化し、DES中の金属の溶解をもたらしてもよい。したがって本発明の酸化剤は、DESを形成する成分(以下に記述される)の追加の成分であり、酸化剤はDES自体の部分を形成しない。酸化剤は、DESが第四級アンモニウム塩及び水素結合ドナーから形成された後、浸出溶液に添加されてもよい。
本発明の第1の態様では、第1及び第2の酸化剤は、それらが異なること以外、特に限定されない。酸化剤が所与の金属を酸化し及び/又は溶解する能力は、酸化剤の還元電位に依存し得る。したがって本発明の第1及び第2の酸化剤は、異なる還元電位を有していてもよい。例えば第2の酸化剤の還元電位は、第1の酸化剤の還元電位よりも正であってもよい。正の還元電位が低い第1の酸化剤は、ある特定の金属を酸化(したがって、溶解)することができない可能性がある。これは方法の各ステップにおける、ある特定の金属の選択的溶解を可能にする。例えば第1の酸化剤は、金を酸化することができない又は酸化しない酸化剤であってもよく、一方、第2の酸化剤は、金を酸化する酸化剤であってもよい。
【0012】
第1の酸化剤の還元電位は、+0.50V未満又はそれに等しくてもよく、-1.00V~+0.50Vであってもよく、0V~+0.50Vであってもよく、0V~+0.49Vであってもよく、例えば0V、+0.1V、+0.2V、+0.3V、0.4V、又は+0.49Vであってもよい。これらの範囲の還元電位を有する酸化剤は、金を含むある特定の金属を酸化(したがって、溶解)することができない可能性がある。第2の酸化剤の還元電位は、+0.50Vよりも大きい又はそれに等しくてもよく、+0.50V~+2.0Vであってもよく、+0.51V~+2.0Vであってもよく、+1.0V~+2.0Vであってもよく、例えば+1.0V、+1.1V、+1.2V、+1.3V、+1.4V、+1.5V、+1.6V、+1.7V、+1.8V、+1.9V、又は+2.0Vであってもよい。これらの範囲の還元電位を有する酸化剤は、金を含むある特定の金属を酸化(したがって、溶解)することができてもよい。
【0013】
第1の酸化剤は、Fe(III)塩、Cu(II)塩、Te(IV)塩、Cr(III)塩、又はMn(VII)塩、好ましくはFe(III)塩又はCu(II)塩、より好ましくはFe(III)塩であってもよい。第1の酸化剤は、好ましくはFeCl3、FeF3、FeBr3、FeI3、Fe(CN)6、Fe(SCN)3、Fe(NO33、Fe(SO43、Fe(OH)3、Fe(C2323、CuCl2、CuF2、CuBr2、CuI2、Cu(NO32、CuSO4、CuO、Cu(OH)2、TeCl4、TeF4、TeBr4、TeI4、TeO2、又はKMnO4であってもよく、より好ましくは、第1の酸化剤はFeCl3又はCuCl2であり、更により好ましくは、第1の酸化剤はFeCl3である。これらの酸化剤は、金を含むある特定の金属を酸化(したがって、溶解)することができない可能性がある。
本発明の第1の酸化剤は、0.001mol dm-3~2.5mol dm-3、好ましくは0.01mol dm-3~2mol dm-3、より好ましくは0.1mol dm-3~1.5mol dm-3、例えば0.1mol dm-3、0.25mol dm-3、0.5mol dm-3、0.75mol dm-3、1mol dm-3、1.25mol dm-3、又は1.5mol dm-3の濃度で存在していてもよい。
【0014】
第2の酸化剤は、I2、又はSeCl4、SeF4、SeBr4、SeI4、SeO2であってもよく、好ましくは第2の酸化剤はヨウ素(I2)である。これらの酸化剤は、金を含むある特定の金属を酸化(したがって、溶解)することができてもよい。ヨウ素が第2の酸化剤であるとき、2段階プロセスの更なる利益は、第1の段階の後に浸出する全体的な金属が少ないことに起因して、金属を抽出するのにDES及びヨウ素組成物のみが使用されるプロセスと比較して、少ないDES及びヨウ素組成物(より高価である)しか必要とされないことである。第2の段階でのDESからの金の回収は、この段階でDES中にはその他の金属がほとんど又は全く含有されないので、非常に簡略化されてもよい。金の回収は、金属の抽出に関して重要な経済的推進力であるので、これはプロセスの重要な利益である。
本発明の第2の酸化剤は、0.001mol dm-3~2.5mol dm-3、好ましくは0.01mol dm-3~2mol dm-3、より好ましくは0.1mol dm-3~1.5mol dm-3、例えば0.1mol dm-3、0.25mol dm-3、0.5mol dm-3、0.75mol dm-3、1mol dm-3、1.25mol dm-3、又は1.5mol dm-3の濃度で存在していてもよい。
【0015】
(深共晶溶媒)
本発明の深共晶溶媒は、第四級アンモニウム塩と水素結合ドナーとを反応させる又は組み合わせる又は錯体化することによって、調製される。
本発明の第1の態様において、第1及び第2の第四級アンモニウム塩は特に限定されず、以下に記述される水素結合ドナーでDESを形成することが可能ないずれかであってもよい。第1及び第2の第四級アンモニウム塩は、それぞれ独立して式(I)の化合物であってもよい。
【化1】
(I)
(式中、
1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して、H、置換若しくは非置換C1-C5アルキル基、置換若しくは非置換C6-C10シクロアルキル基、置換若しくは非置換C6-C12アリール基、置換若しくは非置換C7-C12アルカリル基であり、又は
1及びR2は、それらが結合するN原子と一緒になって、置換若しくは非置換5~11員環を形成し、R3及びR4は既に定義された通りであり、
-は、NO3 -、F-、Cl-、Br-、I-、BF4 -、ClO4 -、SO3CF3 -、重酒石酸、クエン酸二水素、又はCOOCF3 -であり、及び
置換されたとは、基が、OH、SH、SR5、Cl、Br、F、I、NH2、CN、NO2、COO-、COOR5、CHO、COR5、及びOR5から選択される基の1個又は複数で置換されてもよいことを意味する(式中、R5は、H、C1-C10アルキル若しくはC1-C10シクロアルキル基である))
【0016】
第1及び第2の第四級アンモニウム塩は、それぞれ独立して式(I)の化合物であってもよく、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、H、又は非置換C1-C4アルキル基であり、R4は、置換又は非置換C1-C4アルキル基であり、X-及び「置換」の定義は上記の通りである。より好ましくは、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、H、又は非置換C1アルキル基であり、R4は、置換又は非置換C1-C4アルキル基であり、置換されたとは、基が、OR5、COO-、及びCOOR5から選択される基の1個又は複数で置換されていてもよいことを意味する(式中、R5は、H、C1-C10アルキル、又はC1-C10シクロアルキル基であり、X-は、上記にて定義された通りである)。
例えば、第1及び第2の第四級アンモニウム塩は、それぞれ独立して、塩化コリン、水酸化コリン、酢酸コリン、重酒石酸コリン、二水素クエン酸コリン、ベタイン、ベタインHCl、塩化アンモニウム、塩化メチルアンモニウム、塩化エチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、又はエタノールアミン塩酸塩であってもよく、好ましくは第1及び第2の第四級アンモニウム塩は塩化コリンである。
【0017】
本発明の第1及び第2の水素結合ドナーは、特に限定されず、上述の第四級アンモニウム塩でDESを形成することが可能ないずれかであってもよい。第1及び第2の水素結合ドナーは、それぞれ独立して、式R6COOH、R78NH、R9CZNH2、R10OH、又はHO-R11-OHの化合物であってもよい。
(式中、
6、R7、R8、及びR10はそれぞれ独立して、H、置換若しくは非置換C1-C8アルキル基、置換若しくは非置換C1-C8アルケニル基、置換若しくは非置換アリール基、又は置換若しくは非置換C7-C12アルカリル基であり、及びR11は、置換又は非置換C1-C11アルキル基であり、
置換されたとは、OH、SR5、Cl、Br、F、I、NH2、CN、NO2、3,4-ジヒドロキシ-2H-フラン-5-オン、CONR5、COOR5、COR5、及びOR5から選択される1個又は複数の基で置換されたことを意味し(式中、R5は、H、C1-C10アルキル、又はC1-C10シクロアルキル基である)、
9は、R6に関して定義された基、又はNHR12であり、R12は、H、又はC1-C6アルキル基であり、及びZは、O又はSである)
【0018】
第1及び第2の水素結合ドナーは、それぞれ独立して、式R6COOH、R9CZNH2、又はHO-R11-OHの化合物であってもよい。(式中、R6、R9、Z、及びR11は、上記にて定義された通りである)
第1及び第2の水素結合ドナーは、それぞれ独立して、式R6COOH、R9CZNH2、又はHO-R11-OHの化合物であってもよい。(式中、
6は、置換若しくは非置換C1-C6アルキル基、置換若しくは非置換C1-C6アルケニル基、又は置換若しくは非置換アリール基であり、
9は、置換若しくは非置換C1-C6アルキル基、又は置換若しくは非置換C1-C6アルケニル基、又はNHR12であり、式中、R12は、H、又は置換若しくは非置換C1-C6アルキル基であり、及びZはOであり、並びに
11は、置換又は非置換C1-C8アルキル基であり、
置換されたとは、OH、CONR5、COOR5、COR5、及びOR5から選択される1個又は複数の基で置換されたことを意味する(式中、R5は、H、C1-C6アルキル、又はC1-C6シクロアルキル基である))
【0019】
第1及び第2の水素結合ドナーは、それぞれ独立して、式R6COOH、R9CZNH2、又はHO-R11-OHの化合物であってもよい。(式中、
6は、置換若しくは非置換C1-C5アルキル基、置換若しくは非置換C1-C4アルケニル基、又は置換若しくは非置換アリール基であり、
9は、置換若しくは非置換C1-C5アルキル基、又は置換若しくは非置換C1-C4アルケニル基、又はNHR12であり、式中、R12は、H、又はC1-C6アルキル基であり、及びZはOであり、並びに
11は、置換又は非置換C1-C5アルキル基であり、
置換されたとは、OH、CONR5、COOR5、COR5、及びOR5から選択される1個又は複数の基で置換されたことを意味する(式中、R5は、H、又はC1-C6アルキル基である))
第1及び第2の水素結合ドナーは、それぞれ独立して、式R6COOH、又はHO-R11-OHの化合物であってもよい。(式中、
6は、置換若しくは非置換C1-C5アルキル基、置換若しくは非置換C1-C4アルケニル基、又は置換若しくは非置換アリール基であり、
11は、置換又は非置換C1-C5アルキル基であり、
置換されたとは、OH、CONR5、及びCOOR5から選択される1個又は複数の基で置換されたことを意味する(式中、R5は、H、又はC1アルキル基である))
【0020】
第1及び第2の水素結合ドナーは、それぞれ独立して、式HO-R11-OHの化合物であってもよい。(式中、
11は、OH及びCOOR5から選択される1個又は複数の基で置換されてもよいC1-C5アルキル基である(式中、R5は、H、又はC1アルキル基である))
例えば第1及び第2の水素結合ドナーは、それぞれ独立して、エチレングリコール、グリセロール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、尿素、シュウ酸、マロン酸、レブリン酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸、マロンアミド、アセトアミド、シュウ酸二水和物、アスコルビン酸、グルタル酸、グリコール酸、マンデル酸、コハク酸、酒石酸、又はフェノールであってもよく、好ましくは第1及び第2の水素結合ドナーは、エチレングリコールである。
第1の第四級アンモニウム塩と第1の水素結合ドナーとのモル比は、第1の第四級アンモニウム塩と第1の水素結合ドナーが組み合わされたときにDESの形成をもたらす比でなければならないこと以外、特に限定されない。第1の第四級アンモニウム塩と第1の水素結合ドナーとのモル比は、4:1~1:20、好ましくは3.5:1~1:15、より好ましくは2.5:1~1:10、より好ましくは2:1~1:4、例えば2:1、1:1、1:2、1:3、又は1:4であってもよい。
【0021】
第2の第四級アンモニウム塩と第2の水素結合ドナーとのモル比は、第2の第四級アンモニウム塩と第2の水素結合ドナーが組み合わされたときにDESの形成をもたらす比でなければならないこと以外、特に限定されない。第2の第四級アンモニウム塩と第2の水素結合ドナーとのモル比は、4:1~1:20、好ましくは3.5:1~1:15、より好ましくは2.5:1~1:10、より好ましくは2:1~1:4、例えば2:1、1:1、1:2、1:3、又は1:4であってもよい。
本発明者等は、塩化コリン及びエチレングリコールを1:2の化学量論比で含むDES(当技術分野では、E200として公知である)が、本発明のステップを実施するのに有利であることを発見した。
DESは、0%希釈率~最大75%希釈率(w/w)に及ぶ水性及び/又は有機溶媒で希釈することができる。希釈剤は、水、エタノール、アセトニトリル、ジクロロメタン、又はアセトンからなる群から選択される1種又は複数であってもよい。DESは、吸湿性であってもよく、ある特定の量の水、例えば2%(w/w)の水を本来含有していてもよい。DESは、水の全体質量が例えば16%(w/w)になるように水で更に希釈されてもよい。
【0022】
(プロセスパラメーター)
固体材料は、金属を含む任意の固体材料であってもよい。固体材料は、電子廃棄物材料等、例えばプリント回路基板等の固体廃棄物材料であってもよい。固体材料中の金属は、特に限定されず、当業者に公知の任意の金属であってもよい。例えば金属は、アルミニウム、鋼、銅、ニッケル、スズ、鉛、パラジウム、亜鉛、銀、クロム、コバルト、バナジウム、インジウム、水銀、アンチモン、ガリウム、ベリリウム、モリブデン、カドミウム、及び金からなる群から選択される1種又は複数を含んでいてもよい。
第1の液相は、上記金属のいずれか若しくは全てを含んでいてもよく、又は第1の液相は、金以外の上記金属のいずれか若しくは全てを含んでいてもよい。第2の液相は、上記金属のいずれか若しくは全てを含んでいてもよく、又は第2の液相は、金のみを含んでいてもよい。
【0023】
浸出ステップを行う前に、固体材料は、その粒度を低減させるために、破砕、磨砕、又は細断によって粉砕されてもよい。これは金属を抽出するのに必要なDES及び酸化剤の量を低減させることによって、浸出プロセスの効率を改善し得る。固体材料は、10mm未満、好ましくは1.2mm未満、例えば10μm~1mmの粒度に粉砕されてもよい。実施形態では、固体材料は、DESの処理前に、粉砕され、1.2mmの孔径を有する篩を使用して2つの画分に分離される。更にアルミニウム及び鋼は、例えば質量分析/渦電流/磁気分離技法によって、浸出ステップを行う前に除去されてもよい。これはまた、浸出プロセスの効率を改善し得る。
第1及び第2の浸出ステップでは、DESに酸化剤を加えたものと、固体材料中の金属との比は、1:50~100:1(w:w)、1:40~75:1、1:30~50:1、1:25~25:1、又は1:20~10:1、例えば1:20、1:15、1:10、1:5、1:1、5:1、又は10:1(w:w)であってもよい。
【0024】
第1及び第2の浸出ステップでは、DESと固体材料との比は、1:50~100:1(v/w)、1:10~50:1、1:5~40:1、1:1~30:1、2:1~25:1、例えば2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、15:1、20:1、又は25:1(v/w)であってもよい。
第1及び第2の浸出ステップでは、固体材料は、10℃~120℃の温度で浸出されてもよく、40℃~110℃であってもよく、50℃~100℃であってもよく、例えば50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100℃であってもよい。第1及び第2の浸出ステップでは、固体材料は、5分~240時間、好ましくは1時間~144時間、より好ましくは6時間~96時間、より好ましくは12時間~48時間、より好ましくは18時間~36時間、例えば18、24、30、又は36時間、浸出されてもよい。実施形態では、固体材料は、10℃~120℃の温度で5分~240時間、好ましくは80℃で24時間、浸出されてもよい。
【0025】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、第1及び第2の第四級アンモニウム塩は、それぞれ独立して、塩化コリン、水酸化コリン、酢酸コリン、重酒石酸コリン、二水素クエン酸コリン、ベタイン、ベタインHCl、塩化アンモニウム、塩化メチルアンモニウム、塩化エチルアンモニウム、塩化テトラ-ブチルアンモニウム、又はエタノールアミン塩酸塩であってもよく、好ましくは第1及び第2の第四級アンモニウム塩は塩化コリンであり、
第1及び第2の水素結合ドナーは、それぞれ独立して、エチレングリコール、グリセロール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、尿素、シュウ酸、マロン酸、レブリン酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸、マロンアミド尿素、アセトアミド、シュウ酸二水和物、アスコルビン酸、グルタル酸、グリコール酸、マンデル酸、コハク酸、酒石酸、又はフェノールであってもよく、好ましくは第1及び第2の水素結合ドナーはエチレングリコールであり、
第1及び第2の第四級アンモニウム塩と、第1及び第2の水素結合ドナーとのモル比は、4:1~1:20、好ましくは2:1~1:4であってもよく、
第1の酸化剤の還元電位は、+0.50V未満若しくはそれに等しくてもよく、及び/又は第1の酸化剤は、Fe(III)塩、Cu(II)塩、Te(IV)塩、Cr(III)塩、若しくはMn(VII)塩であってもよく、好ましくは第1の酸化剤は、Fe(III)塩若しくはCu(II)塩であり、好ましくはFeCl3若しくはCuCl2であり、より好ましくは第1の酸化剤はFeCl3であり、及び
第2の酸化剤の還元電位は、+0.50Vよりも大きい若しくはそれに等しくてもよく、及び/又は第2の酸化剤は、I2、若しくはSeCl4、SeF4、SeBr4、SeI4、SeO2であってもよく、好ましくは第2の酸化剤はI2である。
【0026】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、第1及び第2の第四級アンモニウム塩は、塩化コリンであり、第1及び第2の水素結合ドナーは、エチレングリコールであり、第1の第四級アンモニウム塩と第1の水素結合ドナー、並びに第2の第四級アンモニウム塩と第2の水素結合ドナーとのモル比は、共に1:2であり、第1の酸化剤の還元電位は+0.50V未満若しくはそれに等しく、及び/又は第1の酸化剤は、Fe(III)塩又はCu(II)塩、好ましくはFeCl3又はCuCl2であり;及び第2の酸化剤の還元電位は、+0.50Vよりも大きい若しくはそれに等しく、及び/又は第2の酸化剤はI2である。
本発明の方法は、更に、第1の液相から1種若しくは複数の金属を回収するステップ;及び/又は第2の液相から1種若しくは複数の金属を回収するステップを含んでいてもよい。本発明による溶液から金属を回収するための方法は、特に限定されず、当業者に公知のもののいずれかであってもよい。金属は、個々に又はその他の金属と一緒に回収されてもよい。回収プロセスは、溶媒抽出、沈殿(例えば、セメント化)、及び/又はそれによって電解化学反応(例えば、電解採取)を用いて金属が溶液から回収されるプロセスを含んでいてもよい。特定の実施形態では、金は、活性炭(例えば、Jacobi PICAGOLD(登録商標)G210AS)の添加によって回収される。
【0027】
浸出ステップ中、酸化剤は固体材料中の金属を酸化し、酸化剤は、もはや酸化できないように還元され得る。したがって本発明の方法は、酸化剤を再生するステップを更に含んでいてもよい。再生するステップは、浸出ステップ後に行われてもよく、又は酸化剤がin situで再生されるように浸出ステップと同時に行われてもよい。酸化剤は、当業者に公知の任意の手段によって再生されてもよい。例えば酸化剤は、酸素を浸出溶液に又は浸出ステップから得られる液相に通気することによって、再生されてもよい。この方法は、酸化剤がFe(III)塩、Cu(II)塩、Te(IV)塩、Cr(III)塩、又はMn(VII)塩である場合、例えば酸化剤がFeCl3である場合に、特に有利になり得る。酸化剤は、電解化学反応を用いて、例えば電極を、浸出溶液中に又は浸出ステップから得られる液相中に挿入し、電圧を印加することによって、再生されてもよい。
本発明の方法は、それぞれの浸出ステップの後に、固体材料を濾過するステップ及び/又は清浄化するステップ及び/又は乾燥するステップを更に含んでいてもよい。これらの追加のステップは、任意の後続の浸出ステップの効率を改善し得る。
【0028】
第2の態様から見たとき、本発明は、固体材料から1種又は複数の金属を抽出するための方法であって、
(i) 4:1~1:20のモル比にある第四級アンモニウム塩と水素結合ドナーとの反応によって形成された深共晶溶媒(DES)、及び
第1の酸化剤
を含む浸出溶液に固体材料を接触させることを含む、
浸出ステップを含み、
第1の酸化剤の還元電位が+0.50V未満若しくはそれに等しく、及び/又は第1の酸化剤がFe(III)塩、Cu(II)塩、Te(IV)塩、Cr(III)塩、又はMn(VII)塩である、方法を提供する。
第3の態様から見たとき、本発明は、
4:1~1:20のモル比にある第1の第四級アンモニウム塩と第1の水素結合ドナーとの反応によって形成された深共晶溶媒;及び
第1の酸化剤
を含む固体材料から1種又は複数の金属を浸出させるための組成物であって、
第1の酸化剤の還元電位が+0.50V未満若しくはそれに等しく、及び/又は第1の酸化剤がFe(III)塩、Cu(II)塩、Te(IV)塩、Cr(III)塩、又はMn(VII)塩である、組成物を提供する。
【0029】
第1の態様の特徴の記述(第1の酸化剤、深共晶溶媒、及びプロセスパラメーターの記述を含む)は、本発明の第2及び第3の態様に等しく適用することができる。
上記に関し、第1の酸化剤の還元電位は、+0.50V未満又はそれに等しくてもよく、-1.00V~+0.50Vであってもよく、0V~+0.50Vであってもよく、例えば0V、+0.1V、+0.2V、+0.3V、+0.4V、又は+0.5Vであり、0V~+0.49Vであってもよい。これらの範囲の還元電位を有する酸化剤は、金を含むある特定の金属を酸化(したがって、溶解)できない可能性がある。第2の酸化剤の還元電位は、+0.50Vより大きい又はそれに等しくてもよく、+0.50V~+2.0Vであってもよく、+0.51V~+2.0Vであってもよく、+1.0V~+2.0Vであってもよく、例えば+1.0V、+1.1V、+1.2V、+1.3V、+1.4V、+1.5V、+1.6V、+1.7V、+1.8V、+1.9V、又は+2.0Vであってもよい。これらの範囲の還元電位を有する酸化剤は、金を含むある特定の金属を酸化(したがって、溶解)することができてもよい。
【0030】
第1の酸化剤は、Fe(III)塩、Cu(II)塩、Te(IV)塩、Cr(III)塩、又はMn(VII)塩、好ましくはFe(III)塩、又はCu(II)塩、より好ましくはFe(III)塩であってもよい。第1の酸化剤は、好ましくはFeCl3、FeF3、FeBr3、FeI3、Fe(CN)6、Fe(SCN)3、Fe(NO33、Fe(SO43、Fe(OH)3、Fe(C2323、CuCl2、CuF2、CuBr2、CuI2、Cu(NO32、CuSO4、CuO、Cu(OH)2、TeCl4、TeF4、TeBr4、TeI4、TeO2、又はKMnO4であってもよく、より好ましくは、第1の酸化剤はFeCl3又はCuCl2であり、更により好ましくは、第1の酸化剤はFeCl3である。これらの酸化剤は、金を含むある特定の金属を酸化(したがって、溶解)することができない可能性がある。
本発明の第1の酸化剤は、0.001mol dm-3~2.5mol dm-3、好ましくは0.01mol dm-3~2mol dm-3、より好ましくは0.1mol dm-3~1.5mol dm-3、例えば0.1mol dm-3、0.25mol dm-3、0.5mol dm-3、0.75mol dm-3、1mol dm-3、1.25mol dm-3、又は1.5mol dm-3の濃度で存在していてもよい。
【実施例
【0031】
(還元電位)
本出願に列挙される酸化剤の還元電位は、AgCl(0.1M)中のAg参照電極を使用して、それぞれのDES中の正式な還元電位として測定した。
(浸出効率)
浸出効率(即ち、浸出段階中に回収された各金属のパーセンテージ)は、全ての残っている金属を溶解するために、24時間の王水での浸出ステップ後に残る固体材料を浸出させることによって決定した。王水中の金属の濃度は、誘導結合プラズマ質量分光法(ICP-MS)を介して決定した。
【0032】
(実施例1)
DES+FeCl3及びDES+I2による金属溶解
研究の目的は、E-廃棄物中に一般に見出されるその他の金属である、Cu及びNiの極めて近位にあるときに、AuがDES+FeCl3又はDES+I2中に溶解できるか否かを決定することであった。
DESは、塩化コリン及びエチレングリコールを1:2の化学量論比で、50℃で加熱して組み合わせ、透明な均質液体が形成されるまで撹拌することによって形成した。このDESは、E200として当技術分野で公知である。E200+1M FeCl3を形成するために、FeCl3をE200(1L)に添加して、全ての固体が溶解するまで50℃で撹拌しながらFeCl3の濃度を1Mにした。E200+0.5M I2を形成するために、I2をE200(1L)に添加して、全ての固体が溶解するまで50℃で撹拌しながらI2の濃度を0.5Mにした。
【0033】
Araldite2020樹脂(E)から作製された、研磨された樹脂ブロックは、およそ1mmの厚さでCu、Ni、及びAu金属の隣接する堆積物を含有するものが、RS Components Pty Ltdにより供給された。樹脂ブロックを、50℃で40分間、上述のように調製された200mLのE200+1M FeCl3に浸漬し、個別の樹脂ブロックを、50℃で40分間、上述のように調製された200mLのE200+0.5M I2に浸漬した。0、5、10、20、及び40分の時間間隔でブロックを取り出し、脱イオン水で洗浄し、アセトンで洗浄した。内蔵Zeta3Dソフトウェアバージョン1.8.5を使用するZeta(商標)Instruments Zeta 2000光学プロファイラーを使用して、これらの時間間隔で、前にCu、Ni、及びAuのエッチング深さを測定した。これに関し、DES配合物による処理の前に、樹脂に対する金属の高さを測定することによって、ベースラインを作出した。金属の高さは、処理の間及び後に測定し、エッチング深さは、測定された高さとベースラインとの間の差を計算することによって決定した。結果を以下の表1並びに図1A及び1Bに示す。
【0034】
【表1】

表1並びに図1A及び1Bに示されるように、Cu及びNiは、両方のDES配合物を使用して溶解した。Auは、E200中の酸化剤としてI2を使用したときに溶解したが、Auは、E200中の酸化剤としてFeCl3を使用したときに溶解しなかった。
【0035】
(実施例2)
粉砕されたe-廃棄物に関して行われた2段階浸出プロセス
市販のPCB、CPU、RAMスティック、コネクター、及びその他のハイグレードE-廃棄物材料の混合物を含むE-廃棄物を、本発明の2段階DES浸出プロセスを使用して、バルク溶解に関して調査した。
E-廃棄物は、それらのVeRoLiberator(登録商標)技術を使用して粉砕されかつ加工されたものが、PMS Handelskontor GmbHにより供給された。供給されたままの材料を、1.2mm細孔の篩を通して篩い分けし、<1.2mm及び≧1.2mmの画分に分離した。プラスチックシースに包まれたNdFeB超磁石を両方の画分に通して、鉄材料を除去した。鉄材料除去前の、サイズ決めされた画分のそれぞれに関する金属の典型的な分布を、表2に見ることができる:
【表2】
【0036】
画分を50.0gのバッチに分割し、表3で述べたDES:固体比で、予熱したDES1配合物と組み合わせ、磁気撹拌子棒を使用してホットプレートスターラー上で24時間、80℃で撹拌した。DES1配合物を、上記実施例1におけるように予熱した。この24時間の期間中、5.0mLのアリコートを採取し、誘導結合プラズマ質量分光法(ICP-MS)により分析した。使用したICP-MSは、Qtegra(商標)ソフトウェアバージョン2.10.3324.131を使用するCetac(商標)ASX520オートサンプラーによる、Thermo Scientific(商標)iCAP(商標)q-c Quadrupole ICP-MSであった。
【0037】
得られた固体を真空濾過し、高温の脱イオン水で、全てのDES1が固体から除去されるまで洗浄し、次いで真空炉内で24時間、50℃で乾燥した。次いでこの乾燥した材料を、予熱したDES2配合物に、表3に記述されるDES2:固体比で移し、磁気撹拌子棒を使用して、24時間にわたり80℃でホットプレートスターラー上で撹拌した。DES2配合物を、上記実施例1におけるように調製した。得られた固体を真空濾過し、エタノールを使用して洗浄し、次いで高温の脱イオン水で、全てのDES2が固体から除去されるまで洗浄し、次いで真空炉内で24時間、50℃で乾燥した。E-廃棄物材料の不均質性に起因して、金属の全溶解は、残っている固体残留物を、液体対固体比5:1で王水に24時間、室温で溶解し、ICP-MSを使用して分析することによって計算した。表4~7に列挙された浸出値のパーセンテージは、出発濃度及び王水溶液中での濃度に対して(共にICP-MSにより測定された)各時間間隔で金属濃度を較正することによって(ICP-MSにより測定されたように)計算した。
【0038】
【表3】
【0039】
EW001~EW004中に浸出したAl、Ni、Cu、Ag、Sn、Au、及びPbのパーセンテージを、それぞれ以下の表4~7に示す。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
図2~5は、それぞれ実験EW001、EW002、EW003、及びEW004におけるDES1及びDES2での処理中に浸出したAl、Ni、Cu、Ag、Sn、Au、及びPbのパーセンテージを示す。図から明らかなように、それほど正ではない酸化剤が存在するDES1による処理は、最大100%のAl、Ni、Cu、Ag、Sn、及びPbを浸出させかつAuをほとんど又は全く浸出させず、一方、より正である異なる酸化剤が存在するDES2による処理は、90%を超えるAuを浸出させる。
【0040】
(実施例3)
異なる酸化剤及び温度の影響
時間及びDES配合物の関数として実施例2におけるように調製された<1.2mm E-廃棄物画分に対する全質量損失を調査するように設計された、一連の質量損失実験を行った。
表8は、欄1の各列に列挙された時間にわたり、欄2~4の列2に列挙されたDES配合物を使用して、10.00gの<1.2mm E-廃棄物画分を処理することに関わる10の個々の実験からのデータを示す。各時間に従った実験を、独立して、10.00gの<1.2mm E-廃棄物材料に関して実行し、残っているE-廃棄物材料の質量を、DES配合物の真空濾過後に測定し、脱イオン水で洗浄し、次いで引き続き、50℃で24時間、真空下で乾燥した。
【0041】
【表8】

表8のデータを、図6にグラフにより示す。この図は、より低い温度が、質量損失のより遅い初期速度をもたらし、24時間後に同様の合計質量損失をもたらすことを示す。速度及び合計質量損失は、同じ温度でCuCl2及びFeCl3が酸化剤として使用されるときとほぼ同じである。
【0042】
(実施例4)
<1.2mm E-廃棄物の浸出に対する、DES1-E200+1M FeCl3の、温度、含水量、DES:固体比、及び時間の影響
50mm~2.0mmに及ぶ、ある範囲のウェッジバースクリーンを通過した後の、<2.0mmサイズの画分を実現するために、ハンマーミルを使用して粉砕されたE-廃棄物試料の浸出における、DES1(E200+1M FeCl3)の有効性に対する、温度、含水量、DES:固体比、及び時間の影響。得られた材料の典型的なアッセイを、表9に見ることができ、これはICP-MS(Qtegra(商標)ソフトウェアバージョン2.10.3324.131を使用するCeta(商標)ASX520オートサンプラーによる、Thermo Scientific(商標)iCAP(商標)q-c Quadrupole ICP-MS)を使用して収集されたものである。
【0043】
【表9】

この<2.0mm E-廃棄物材料からの金属の回収は、E-廃棄物材料の約10.0gの試料に関して実行された一連の試験を介して調査された。全ての場合に、DES配合物E200+1M FeCl3を使用した。水のベースライン質量%、即ち水を添加する前のDES配合物中の水の量は、2.0質量%であることが測定された。追加の14質量%の水を、既成のE200+1M FeCl3に、質量測定により添加し、磁気撹拌子を使用して室温で5分間撹拌した。全含水量を、Mettler Toledo(登録商標)Titrator Compact V20S体積測定Karl Fischer Titratorを使用して測定した。
【0044】
この研究は、表10に記述されるマトリックスを使用して実行した。分析は、実施例2に記述されたICP-MSを使用して実行した。100%よりも大きい値は、小さい試料の不均質性に起因する。プロセスは、Radley’s Carousel 6 Plus(商標)システム34を使用して、磁気撹拌子による撹拌と共に、250mLの丸底フラスコを使用して実行した。
【表10】
表10及び図7からわかるように、Auは、いかなる条件の下でも浸出しなかった。多量のCu、Zn、Sn、及びAgが、全ての条件下で浸出した。Znの浸出は、変更する条件に対して最も感受性が高いように見えた。温度を上昇させ浸出時間を増大させると、浸出パーセンテージが改善された。
【0045】
(実施例5)
粉砕されたE-廃棄物に対して行われた2段階浸出プロセス
抽出前の電子廃棄物の前処理
電子廃棄物材料の粉砕: 材料を、1.2mmよりも下の粒度に粉砕した。
鋼の除去: 鋼を、磁気分離技法により除去した。
【0046】
深共晶溶媒を使用した抽出
段階1浸出: 銅、ニッケル、スズ、鉛、銀、及び金を含有する電子廃棄物固体材料を、第1の浸出タンク内に送り、そこで、塩化コリン(1mol当量)及びエチレングリコール(2mol当量)、並びに酸化剤としてのFeCl3(1mol dm-3)から形成された、DESと接触させた。DES+FeCl3と固体材料との比は15:1w/wであった。固体材料をDES+FeCl3配合物と80℃で24時間接触させて、効率的な金属回収率: Cu:99.7%、Ni:99%、Sn:92%、Pb:98%、Ag:99%をもたらした。0%のAuが、この配合物を使用して浸出し、その結果、Auに富む固体材料が得られる。この段階から浸出した固体材料を濾過し、洗浄し、乾燥した。浸出した金属を含む液相を、個別のタンクに移送して、金属回収を行った。
【0047】
段階2浸出: 清浄化され乾燥された浸出した固体材料を、第2の浸出タンク内に移送し、そこで、塩化コリン(1mol当量)及びエチレングリコール(2mol当量)、並びに酸化剤としてのI2(0.5mol dm-3)から形成された、DESと接触させた。DES+I2と固体材料との比は3:1w/wであった。この第2の浸出の目的は、Auを固体材料から回収することである。固体材料をDES+I2配合物と、80℃で24時間接触させることにより、99%のAu回収率が得られ、固体残留物中に含有される任意の残留金属を回収することもできた。この段階から浸出した固体材料を濾過し、洗浄し、廃棄物用に送った。浸出した金属を含む液相を、個別のタンクに移送して、金属回収を行った。この浸出プロセスからのデータを図8に見ることができる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】