(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】新規なアセトヒドロキシ酸シンターゼ変異体及びそれを用いたL-イソロイシン生産方法
(51)【国際特許分類】
C12N 9/10 20060101AFI20240927BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20240927BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20240927BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240927BHJP
C12P 13/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C12N9/10
C12N15/10 200Z
C12N15/54
C12N1/21
C12P13/06 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518864
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 KR2022011610
(87)【国際公開番号】W WO2023054882
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0128912
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514199250
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダング コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ヒヨング キム
(72)【発明者】
【氏名】キュングリム キム
(72)【発明者】
【氏名】ウーサング チェ
(72)【発明者】
【氏名】キ ヨング チョング
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AE07
4B064CA19
4B064CA21
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA10
4B064DA11
4B065AA24X
4B065AA24Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA17
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA44
(57)【要約】
本出願は、L-イソロイシン生産能を向上させる新規なアセトヒドロキシ酸シンターゼ(Acetohydroxy acid synthase,AHAS)変異体、これを含む微生物、及び上記微生物を用いてL-イソロイシンを生産する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列で42番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換され、47番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換された、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(Acetohydroxy acid synthase,AHAS)変異体。
【請求項2】
前記42番目の位置に対応するアミノ酸は、バリンで置換される、請求項1に記載の変異体。
【請求項3】
前記47番目の位置に対応するアミノ酸は、ロイシンで置換される、請求項1に記載の変異体。
【請求項4】
前記42番目の位置に対応するアミノ酸は、アラニンである、請求項1に記載の変異体。
【請求項5】
前記47番目の位置に対応するアミノ酸は、ヒスチジンである、請求項1に記載の変異体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の変異体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の変異体;または前記変異体をコードするポリヌクレオチド;を含む、コリネバクテリウム属菌株。
【請求項8】
前記菌株は、配列番号1のアミノ酸配列を有する野生型アセトヒドロキシ酸シンターゼまたはこれをコードするポリヌクレオチドを含むコリネバクテリウム属菌株に比べてL-イソロイシン生産能が増加した、請求項7に記載の菌株。
【請求項9】
前記菌株は、コリネバクテリウム・グルタミカムである、請求項7に記載の菌株。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の変異体;または前記変異体をコードするポリヌクレオチド;を含むコリネバクテリウム属菌株を培地で培養する段階を含む、L-イソロイシン生産方法。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載の変異体、前記変異体をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクターまたは本出願のポリヌクレオチドを含むコリネバクテリウム属菌株;これを培養した培地;またはこれらのうちの2以上の組合せを含む、L-イソロイシン生産用組成物。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか一項に記載の変異体;前記変異体をコードするポリヌクレオチド;または前記変異体または前記変異体をコードするポリヌクレオチドを含むコリネバクテリウム属菌株のL-イソロイシン生産への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、L-イソロイシン生産能を向上させる新規なアセトヒドロキシ酸シンターゼ(Acetohydroxy acid synthase,AHAS)変異体、これを含む微生物、及び上記微生物を用いてL-イソロイシンを生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
L-イソロイシンは、合計20種類のアミノ酸中、分枝鎖状アミノ酸(branched-chain amino acid)の一種類であり、必須アミノ酸に分類されて動物飼料、食品添加物及び医薬分野に用いられる。L-イソロイシンは、代謝後のエネルギー生成、ヘモグロビン生成、血糖調節、筋肉の生成及び修復などの機能をするため、輸液剤、栄養剤、スポーツ栄養剤だけでなく動物飼料の分野でも使用が増加している。
【0003】
このような傾向に基づいて、L-アミノ酸の生産のために、多様な微生物及びその変異体が用いられるが(米国登録特許第10113190号)、そのような場合にもL-イソロイシンを除いた副産物が多数生成され、これは、精製段階でL-イソロイシンの純度に影響を多く及ぼす物質であるため、副産物を除去できる方法が必要である。それに関連し、L-イソロイシンの純度を高めるために開発されたL-イソロイシン精製方法などは別途の追加の精製過程が要求される短所があり(米国登録特許第6072083号)、L-イソロイシンの純度を増加させる方法の開発が必要なのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国登録特許第10113190号
【特許文献2】米国登録特許第6072083号
【特許文献3】大韓民国登録特許第10-1335789号
【特許文献4】米国登録特許US 7662943 B2
【特許文献5】米国登録特許US 10584338 B2
【特許文献6】米国登録特許US 10273491 B2
【特許文献7】大韓民国登録特許第10-1996769号
【特許文献8】韓国公開特許第10-2020-0136813号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Pearson et al (1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]:2444
【非特許文献2】Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277
【非特許文献3】Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453
【非特許文献4】Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12: 387 (1984)
【非特許文献5】Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990)
【非特許文献6】Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994
【非特許文献7】[CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48: 1073
【非特許文献8】Smith and Waterman, Adv. Appl. Math (1981) 2:482
【非特許文献9】Schwartz and Dayhoff,eds.,Atlas Of Protein Sequence And Structure,National Biomedical Research Foundation,pp. 353-358 (1979)
【非特許文献10】Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14:6745
【非特許文献11】J. Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual、2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York、1989
【非特許文献12】F.M. Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,New York、9.50-9.51,11.7-11.8
【非特許文献13】Sitnicka et al. Functional Analysis of Genes. Advances in Cell Biology. 2010, Vol. 2. 1-16
【非特許文献14】Sambrook et al. Molecular Cloning 2012
【非特許文献15】“Manual of Methods for General Bacteriology”by the American Society for Bacteriology (Washington D.C.,USA、1981)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、L-イソロイシン生産経路のタンパク質中の一つであるアセトヒドロキシ酸シンターゼ(Acetohydroxy acid synthase,AHAS)において、その変異体を糾明し、上記変異体により菌株のL-イソロイシン生産能が向上することを確認することにより、本出願を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の一つの目的は、配列番号1のアミノ酸配列で42番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換されて47番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換された、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(Acetohydroxy acid synthase,AHAS)変異体を提供することにある。
【0008】
本出願のもう一つの目的は、本出願の変異体をコードするポリヌクレオチドを提供することにある。
【0009】
本出願の他の一つの目的は、本出願の変異体;または上記変異体をコードするポリヌクレオチド;を含む、コリネバクテリウム属菌株を提供することにある。
【0010】
本出願の他の一つの目的は、本出願の変異体;または上記変異体をコードするポリヌクレオチド;を含むコリネバクテリウム属菌株を培地で培養する段階を含む、L-イソロイシン生産方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0011】
本出願においてアセトヒドロキシ酸シンターゼ変異を発現する微生物は、これを発現しない菌株に比べてL-イソロイシン生産を顕著に向上させるため、それを用いてL-イソロイシンを効果的に生産することができる。したがって、L-イソロイシンを活用する食品、飼料、及び医薬など広範囲な産業的活用を期待することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
これを具体的に説明すると、次の通りである。一方、本出願で開示されたそれぞれの説明及び実施形態はそれぞれの異なる説明及び実施形態にも適用できる。即ち、本出願で開示された多様な要素のすべての組合が本出願の範疇に属する。また、下記の具体的な記述によって本出願の範疇が制限されるとは見られない。また、本明細書全体に亘って多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容は、その全体として本明細書に参照に挿入され、本出願が属する技術分野の水準及び本出願の内容がより明確に説明される。
【0013】
本出願の一つの様態は、配列番号1のアミノ酸配列で42番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換されて47番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換された、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(Acetohydroxy acid synthase,AHAS)変異体を提供する。
【0014】
一つの具現例として、上記42番目の位置に対応するアミノ酸はバリンで置換されるものであってもよい。
【0015】
他の一つの具現例として、上記47番目の位置に対応するアミノ酸はロイシンで置換されるものであってもよい。
【0016】
本出願の変異体は、上記親配列である配列番号1で記載されたアミノ酸配列を基準として42番目の位置に対応するアミノ酸がバリンで置換され、47番目の位置に対応するアミノ酸がロイシンで置換されたものであってもよく、上記配列番号1で記載されたアミノ酸配列と少なくとも70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、または99.7%以上及び100%未満の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。また、このような相同性または同一性を有し、本出願の変異体に対応する効能を示すアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失、変形、置換、保存的置換または付加されたアミノ酸配列を有する変異体も本出願の範囲内に含まれることは自明である。
【0017】
例えば、上記アミノ酸配列N-末端、C-末端そして/または内部に本出願の変異体の機能を変更しない配列の追加または欠失、自然的に発生しうる突然変異、サイレント突然変異(silent mutation)または保存的置換を有する場合である。
【0018】
上記「保存的置換(conservative substitution)」は、あるアミノ酸を類似した構造的及び/又は化学的性質を有するもう一つのアミノ酸で置換させることを意味する。このようなアミノ酸の置換は、一般に、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/又は両親媒性(amphipathic nature)における類似性に基づいて発生する。通常的に、保存的置換は、タンパク質またはポリペプチドの活性にほとんど影響を及ぼさないか、または影響を及ぼさない。
【0019】
本出願において用語、「変異体(variant)」は、一つ以上のアミノ酸が保存的置換(conservative substitution)及び/又は変形(modification)されて上記変異体の変異前のアミノ酸配列と相違するが、機能(functions)または特性(properties)が維持されるポリペプチドを指す。このような変異体は、一般に、上記ポリペプチドのアミノ酸配列中の一つ以上のアミノ酸を変形し、上記変形されたポリペプチドの特性を評価して同定(identify)できる。即ち、変異体の能力は、変異前のポリペプチドに比べて増加したり、変わらなかったり、または減少することができる。また、一部の変異体は、N-末端のリーダー配列または膜貫通ドメイン(transmembrane domain)のような一つ以上の部分が除去された変異体を含むことができる。他の変異体は、成熟タンパク質(mature protein)のN-及び/又はC-末端から一部分が除去された変異体を含むことができる。上記用語「変異体」は、変異型、変形、変異型ポリペプチド、変異されたタンパク質、変異及び変異体などの用語(英文表現ではmodification,modified polypeptide,modified protein,mutant,mutein,divergentなど)が混用され得、変異された意味で用いられる用語であれば、これに制限されない。
【0020】
また、変異体は、ポリペプチドの特性と2次構造に最小限の影響を有するアミノ酸の欠失または付加を含むことができる。例えば、変異体のN-末端には、翻訳と同時に(co-translationally)または翻訳後に(post-translationally)タンパク質の移動(translocation)に関与するシグナル(またはリーダー)配列がコンジュゲートされてもよい。また、上記変異体は、確認、精製、または合成できるように他の配列またはリンカーとコンジュゲートされてもよい。
【0021】
本出願において、「親配列(parent sequence)」とは、変形(modification)を導入して変異型ポリペプチドとなる基準配列を意味する。即ち、親配列は、開始配列(starting sequence)として置換、挿入及び/又は欠失などの変異を導入する対象であってもよい。上記親配列は、天然型(naturally occurring)あるいは野生型(wild type)であってもよく、または上記天然型または野生型に一つ以上の置換、挿入または欠失が発生した変異体(variant)であるか、または人為的に合成された配列であってもよい。
【0022】
本出願において用語「相同性(homology)」または「同一性(identity)」は、二つの与えられたアミノ酸配列または塩基配列相互間の類似の程度を意味し、百分率で表示することができる。用語、相同性及び同一性は、しばしば相互交換的に利用され得る。
【0023】
保存された(conserved)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列相同性または同一性は、標準配列アルゴリズムにより決定され、用いられるプログラムにより確立されたデフォルトギャップペナルティが共に利用できる。実質的に、相同性を有したり(homologous)または同一の(identical)配列は、中程度または高いストリンジェントな条件(stringent conditions)において、一般に、配列全体または全長の少なくとも約50%以上、60%以上、70%以上、80%以上または90%以上でハイブリダイゼーションすることができる。ハイブリダイゼーションは、ポリヌクレオチドにおいて、一般のコドンまたはコドン縮退性を考慮したコドンを含有するポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションも含まれることが自明である。
【0024】
任意の二つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が相同性、類似性または同一性を有するかどうかは、例えば、Pearson et al(1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]:2444でのようなデフォルトパラメータを利用して「FASTA」プログラムなどの既知のコンピュータアルゴリズムを利用して決定することができる。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.、2000,Trends Genet. 16:276-277)(バージョン5.0.0または以降のバージョン)で行われるような、ニードルマン-ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman and Wunsch、1970,J. Mol. Biol. 48:443-453)を使用して決定することができる(GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.,et al,Nucleic Acids Research 12:387 (1984))、BLASTP,BLASTN,FASTA (Atschul,[S.] [F.,] [ET AL,J MOLEC BIOL 215]:403 (1990);Guide to Huge Computers,Martin J. Bishop,[ED.,] Academic Press,San Diego、1994、及び[CARILLO ET AL/。](1988) SIAM J Applied Math 48:1073を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLAST、またはClustalWを利用して相同性、類似性または同一性を決定することができる。
【0025】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、Smith and Waterman,Adv. Appl. Math (1981) 2:482において公知となっているように、例えば、Needleman et al. (1970)、J Mol Biol. 48:443のようなGAPコンピュータプログラムを利用して配列情報を比較することにより決定することができる。要約すると、GAPプログラムは2つの配列中、より短いものにおける記号の総数であり、類似の配列された記号(即ち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を除した値と定義することができる。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは(1)2進法比較マトリックス(同一性のために、1そして非同一性のために0の値を含む)及びSchwartz and Dayhoff,eds.,Atlas Of Protein Sequence And Structure,National Biomedical Research Foundation,pp. 353-358 (1979)により開示された通り、Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14:6745の加重比較マトリックス(またはEDNAFULL (NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス);(2)各ギャップのための3.0のペナルティ及び各ギャップにおいて各記号のための追加の0.10ペナルティ(またはギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5);及び(3)末端ギャップのための無ペナルティを含むことができる。
【0026】
本出願の変異体は、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(Acetohydroxy acid synthase,AHAS)活性を有することができる。また、本出願の変異体は、アセトヒドロキシ酸シンターゼ活性を有する野生型ポリペプチドに比べてL-イソロイシン生産能を増加させる活性を有することができる。
【0027】
本出願において用語「アセトヒドロキシ酸シンターゼ(Acetohydroxy acid synthase,AHAS)」は、L-バリン生合成における最初の酵素であり、アセト乳酸シンターゼとも命名される。アセトヒドロキシ酸シンターゼは、ピルビン酸(pyruvate)のデカルボキシル化(decarboyxlation)と他のピルビン酸分子との縮合反応を触媒してバリンの前駆体であるアセトラクテートを生産したり、ピルビン酸のデカルボキシル化と2-ケト酪酸(2-ketobutyrate)との縮合反応を触媒してイソロイシンの前駆体であるアセトヒドロキシブチラートを生産することができる。
【0028】
上記アセトヒドロキシ酸シンターゼは、ilvB及びilvN、二つの遺伝子によりコードされて、ilvB遺伝子はアセトヒドロキシ酸シンターゼの大サブユニット(large subunit)を、ilvN遺伝子はアセトヒドロキシ酸シンターゼの小サブユニット(small subunit)をそれぞれコードする。そのうち、ilvN遺伝子によりコードされる小サブユニットがフィードバック阻害に重要に関与すると見られる。上記「フィードバック阻害」は、酵素系の種産物がその酵素系の初期段階にある反応を阻害することを意味する。本出願の目的上、アセトヒドロキシ酸シンターゼは、ilvN遺伝子によりコードされるアセトヒドロキシ酸シンターゼであってもよい。
【0029】
上記ilvN遺伝子によりコードされるアセトヒドロキシ酸シンターゼは、公知のデータベースであるNCBIのGenBankでその配列を得ることができ、具体的には、配列番号1のアミノ酸配列を有してもよいが、これに制限されない。
【0030】
本出願において、用語「対応する(corresponding to)」とは、ポリペプチドで列挙される位置のアミノ酸残基であるか、またはポリペプチドで列挙される残基と類似または同一または相同のアミノ酸残基を指す。対応する位置のアミノ酸を確認することは、特定配列を参照する配列の特定アミノ酸を決定することであってもよい。本出願に用いられた「対応領域」とは、一般に、関連タンパク質または比較(reference)タンパク質における類似または対応する位置を指す。
【0031】
例えば、任意のアミノ酸配列を配列番号1と整列(align)し、これに基づいて上記アミノ酸配列の各アミノ酸残基は、配列番号1のアミノ酸残基と対応するアミノ酸残基の数字位置を参照して番号付けすることができる。例えば、本出願に記載されているような配列整列アルゴリズムは、クエリシーケンス(「参照配列」ともいう)と比較してアミノ酸の位置、または置換、挿入または欠失などの変形が発生する位置を確認することができる。
【0032】
このような整列には、例えば、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman及びWunsch、1970,J. Mol. Biol. 48:443-453)、EMBOSSパッケージのNeedlemanプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.、2000)、Trends Genet. 16:276-277)などを利用することができるが、これに制限させず、当業界に知られている配列整列プログラム、ペアワイズ配列(pairwise sequence)比較アルゴリズムなどを適切に用いることができる。
【0033】
具体的には、本出願の変異体は、配列番号5で記載されたアミノ酸配列を有したり、含んだり、からなったり、上記アミノ酸配列で必須的に構成され(essentially consisting of)てもよい。
【0034】
本出願のもう一つの様態は、本出願の変異体をコードするポリヌクレオチドを提供することである。
【0035】
本出願において用語「ポリヌクレオチド」はヌクレオチド単位体(monomer)が共有結合によって長く鎖状につながったヌクレオチドの重合体(polymer)で一定の長さ以上のDNAまたはRNA鎖であり、より具体的には、上記変異体をコードするポリヌクレオチド断片を意味する。
【0036】
本出願の変異体をコードするポリヌクレオチドは、配列番号3または配列番号4または配列番号5で記載されたアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むことができる。本出願の一例として、本出願のポリヌクレオチドは、配列番号24の配列を有したり含むことができる。また、本出願のポリヌクレオチドは、配列番号24の配列からなるか、必須的に構成てもよい。
【0037】
本出願のポリヌクレオチドは、コドンの縮退性(degeneracy)または本出願の変異体を発現させようとする生物で好まれるコドンを考慮し、本出願の変異体のアミノ酸配列を変化させない範囲内でコード領域に多様な変形が行われる。具体的には、本出願のポリヌクレオチドは、配列番号2の配列と相同性または同一性が70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、または98%以上及び100%未満である塩基配列を有したり含んだり、または配列番号2の配列と相同性または同一性が70%以上、75%以上、6%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、または98%以上及び100%未満である塩基配列で構成されても必須的に構成されてもよいが、これに制限されない。その時、上記相同性または同一性を有する配列において、配列番号1の42番目の位置に対応するアミノ酸をコードするコドンはバリンをコードするコドンの一つであってもよく、47番目の位置に対応するアミノ酸をコードするコドンはロイシンをコードするコドンの一つであってもよい。
【0038】
また、本出願のポリヌクレオチドは、公知の遺伝子配列から製造されるプローブ、例えば、本出願のポリヌクレオチド配列の全体または一部に対する相補配列とストリンジェントな条件下にハイブリダイゼーションできる配列であれば、制限なく含まれ得る。上記「ストリンジェントな条件(stringent condition)」とは、ポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件を意味する。このような条件は、文献(J. Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual、2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York、1989;F.M. Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,New York、9.50-9.51,11.7-11.8を参照)に具体的に記載されている。例えば、相同性または同一性が高いポリヌクレオチド同士、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の相同性または同一性を有するポリヌクレオチド同士ハイブリダイゼーションし、それより相同性または同一性が低いポリヌクレオチド同士ハイブリダイゼーションしない条件、または通常のサザンハイブリダイゼーション(southern hybridization)の洗浄条件である60℃、1ХSSC、0.1% SDS、具体的には60℃、0.1ХSSC、0.1% SDS、より具体的には68℃、0.1ХSSC、0.1% SDSに相当する塩濃度及び温度で、1回、具体的には2回~3回洗浄する条件を列挙することができる。
【0039】
ハイブリダイゼーションは、たとえハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて塩基間のミスマッチ(mismatch)が可能であっても、二つの核酸が相補的配列を有することを要求する。用語「相補的」は、互いにハイブリダイゼーションが可能なヌクレオチド塩基間の関係を記述するのに用いられる。例えば、DNAに関し、アデニンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。したがって、本出願のポリヌクレオチドはまた、実質的に類似の核酸配列だけでなく、全体配列に相補的な単離された核酸断片を含むことができる。
【0040】
具体的には、本出願のポリヌクレオチドと相同性または同一性を有するポリヌクレオチドは55℃のTm値でハイブリダイゼーション段階を含むハイブリダイゼーション条件を用い、上述の条件を用いて探知することができる。また、上記Tm値は60℃、63℃または65℃であってもよいが、これに限定されるものではなく、その目的に応じて当業者により適切に調節することができる。
【0041】
上記ポリヌクレオチドをハイブリダイゼーションする適切なストリンジェンシーは、ポリヌクレオチドの長さ及び相補性程度に依存し、変数は当該技術分野によく知られている(例えば、J. Sambrook et al.、同上)。
【0042】
本出願のもう一つの態様は、本出願のポリヌクレオチドを含むベクターを提供することである。上記ベクターは、上記ポリヌクレオチドを宿主細胞で発現させるための発現ベクターであってもよいが、これに制限されない。
【0043】
本出願のベクターは適した宿主内で目的ポリペプチドを発現させるように適した発現調節領域(または発現調節配列)に作動可能に連結された上記目的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列を含むDNA製造物を含むことができる。上記発現調節領域は、転写を開始できるプロモーター、そのような転写を調節するための任意のオペレーター配列、適したmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、及び転写及び解読の終結を調節する配列を含むことができる。ベクターは、適当な宿主細胞内に形質転換された後、宿主ゲノムと関係なく複製されたり機能することができ、ゲノムそのものに統合することができる。
【0044】
本出願で用いられるベクターは、特に、限定されず、当業界に知られている任意のベクターを利用することができる。通常使用されるベクターの例としては、天然状態または組換え状態のプラスミド、コスミド、ウイルス及びバクテリオファージが挙げられる。例えば、ファージベクターまたはコスミドベクターとしてpWE15、M13、MBL3、MBL4、IXII、ASHII、APII、t10、t11、Charon4A、及びCharon21Aなどを使用することができ、プラスミドベクターとしてpDZ系、pBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系及びpET系などを使用することができる。具体的には、pDZ、pDC、pDCM2、pACYC177、pACYC184、pCL、pECCG117、pUC19、pBR322、pMW118、pCC1BACベクターなどを使用することができる。
【0045】
一例として、細胞内染色体挿入用ベクターを通じて目的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを染色体内に挿入することができる。上記ポリヌクレオチドの染色体内への挿入は、当業界に知られている任意の方法、例えば、相同組換え(homologous recombination)により行われてもよいが、これに限定されない。上記染色体挿入の有無を確認するための選別マーカー(selection marker)をさらに含むことができる。上記選別マーカーは、ベクターで形質転換された細胞を選別、即ち、目的核酸分子の挿入の有無を確認するためのものであり、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面ポリペプチドの発現のような選択可能表現型を付与するマーカーが用いられる。選択剤(selective agent)が処理された環境では、選別マーカーを発現する細胞のみが生存したり、他の表現形質を示すため、形質転換された細胞を選別することができる。
【0046】
本出願において用語「形質転換」は、標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞あるいは微生物内に導入し、宿主細胞内で上記ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドが発現できるようにすることを意味する。形質転換されたポリヌクレオチドは宿主細胞内で発現できれば、宿主細胞の染色体内に挿入されて位置したり染色体外に位置したりに関係なくこれらすべてを含むことができる。また、上記ポリヌクレオチドは、目的ポリペプチドをコードするDNA及び/又はRNAを含む。上記ポリヌクレオチドは、宿主細胞内に導入されて発現できるものであれば、いかなる形態でも導入することができる。例えば、上記ポリヌクレオチドは、自主的に発現するのに必要なすべての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入することができる。上記発現カセットは、通常、上記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結信号、リボソーム結合部位及び翻訳終結信号を含むことができる。上記発現カセットは、自己複製が可能な発現ベクター形態であってもよい。また、上記ポリヌクレオチドは、それ自体の形態で宿主細胞に導入されて宿主細胞で発現に必要な配列と作動可能に連結されているものであってもよく、これに制限されない。
【0047】
また、上記において用語「作動可能に連結」されたとは、本出願の目的変異体をコードするポリヌクレオチドの転写を開始及び媒介させるプロモーター配列と上記ポリヌクレオチド配列が機能的に連結されていることを意味する。
【0048】
本出願のもう一つの態様は、本出願の変異体または本出願のポリヌクレオチドを含む、コリネバクテリウム属菌株(the genus Corynebacterium)を提供することである。
【0049】
本出願の菌株は、本出願の変異型ポリペプチド、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または本出願のポリヌクレオチドを含むベクターを含むことができる。
【0050】
本出願において用語「菌株(または、微生物)」は、野生型微生物や自然的または人為的に遺伝的変形が起きた微生物をすべて含み、外部遺伝子が挿入されたり内在的遺伝子の活性が強化されたり不活性化されるなどの原因により特定の機序が弱化されたり強化された微生物であり、目的とするポリペプチド、タンパク質または産物の生産のために、遺伝的変形(modification)を含む微生物であってもよい。
【0051】
本出願の菌株は、本出願の変異体、本出願のポリヌクレオチド及び本出願のポリヌクレオチドを含むベクターのいずれか一つ以上を含む菌株;本出願の変異体または本出願のポリヌクレオチドを発現するように変形された菌株;本出願の変異体、または本出願のポリヌクレオチドを発現する菌株(例えば、組換え菌株);または本出願の変異体活性を有する菌株(例えば、組換え菌株)であってもよいが、これに制限されない。
【0052】
本出願の菌株は、L-イソロイシン生産能を有する菌株であってもよい。
【0053】
本出願の菌株は、自然的にアセトヒドロキシ酸シンターゼまたはL-イソロイシン生産能を有している微生物、またはアセトヒドロキシ酸シンターゼまたはL-イソロイシン生産能がない親株に本出願の変異体またはこれをコードするポリヌクレオチド(または上記ポリヌクレオチドを含むベクター)が導入されたり及び/又はL-イソロイシン生産能が付与された微生物であってもよいが、これに制限されない。
【0054】
一例として、本出願の菌株は、本出願のポリヌクレオチドまたは本出願の変異体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換され、本出願の変異体を発現する細胞または微生物であり、本出願の目的上、本出願の菌株は、本出願の変異体を含めてL-イソロイシンを生産できる微生物をすべて含むことができる。例えば、本出願の菌株は、天然の野生型微生物またはL-イソロイシンを生産する微生物に本出願の変異体をコードするポリヌクレオチドが導入されることにより、アセトヒドロキシ酸シンターゼ変異体が発現し、L-イソロイシン生産能が増加した組換え菌株であってもよい。上記L-イソロイシン生産能が増加した組換え菌株は、天然の野生型微生物またはアセトヒドロキシ酸シンターゼ非変形微生物(即ち、野生型アセトヒドロキシ酸シンターゼ(配列番号1)を発現する微生物または変異型(配列番号5)タンパク質を発現しない微生物)に比べてL-イソロイシン生産能が増加した微生物であってもよいが、これに制限されるものではない。その例として、上記L-イソロイシン生産能の増加の有無を比較する対象菌株である、アセトヒドロキシ酸シンターゼ非変形微生物は、hom(R407H)及びilvA(T381A、F383A)変異を導入したコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032菌株(CA10-3101,KCCM12739P)またはNTG(N-Methyl-N´-nitro-N-nitrosoguanidine)処理されたL-イソロイシン生産菌株であるKCJI-38菌株(KCCM11248P、大韓民国登録特許第10-1335789号)であってもよいが、これに制限されない。
【0055】
一例として、上記生産能が増加した組換え菌株は、変異前の親株または非変形微生物のL-イソロイシン生産能に比べて約1%以上、具体的には、約2%以上、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約29%以上、約30%以上、約35%以上、約39%以上、約40%以上、約41%以上、約43%以上、約45%以上、約46%以上、約50%以上、約52%以上、約55%以上、約57%以上、約58%以上、約60%以上または約63%以上(上限値は特別な制限はなく、例えば、約200%以下、約150%以下、約100%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下または約15%以下であってもよい)増加したものであってもよいが、変異前の親株または非変形微生物の生産能に比べて+値の増加量を有する限り、これに制限されない。他の例において、上記生産能が増加した組換え菌株は、変異前の親株または非変形微生物に比べて、L-イソロイシン生産能が約1.01倍以上、約1.02倍以上、約1.05倍以上、約1.10倍以上、約1.15倍以上、約1.20倍以上、約1.25倍以上、約1.29倍以上、約1.30倍以上、約1.35倍以上、約1.40倍以上、約1.41倍以上、約1.43倍以上、約1.45倍以上、約1.46倍以上、約1.50倍以上、約1.52倍以上、約1.55倍以上、約1.57倍以上、約1.60倍以上または約1.63倍以上(上限値は特別な制限はなく、例えば、約10倍以下、約5倍以下、約3倍以下、または約2倍以下であってもよい)増加したものであってもよいが、これに制限されない。
【0056】
本出願において用語、「非変形微生物」は、微生物に自然的に発生しうる突然変異を含む菌株を除くものではなく、野生型菌株または天然型菌株自体であるか、自然的または人為的要因による遺伝的変異で形質が変化する前の菌株を意味する。例えば、上記非変形微生物は、本明細書に記載されたアセトヒドロキシ酸シンターゼ変異体が導入されていないか、導入される前の菌株を意味する。上記「非変形微生物」は、「変形前の菌株」、「変形前の微生物」、「非変異菌株」、「非変形菌株」、「非変異微生物」または「基準微生物」と混用することができる。
【0057】
本出願のまた他の一例として、本出願の微生物は、コリネバクテリウム属(Corynebacterium stationis)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・クルジラクチス(Corynebacterium crudilactis)、コリネバクテリウム・デセルティ(Corynebacterium deserti)、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)、コリネバクテリウム・シングラレ(Corynebacterium singulare)、コリネバクテリウム・ハロトレランス(Corynebacterium halotolerans)、コリネバクテリウム・ストリアツム(Corynebacterium striatum)、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、コリネバクテリウム・ポルティソリ(Corynebacterium pollutisoli)、コリネバクテリウム・イミタンス(Corynebacterium imitans)、コリネバクテリウム・テスツディノリス(Corynebacterium testudinoris)またはコリネバクテリウム・フラベッセンス(Corynebacterium flavescens)であってもよく、具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカムであってもよいが、これに制限されない。
【0058】
本出願において用語、ポリペプチド活性の「強化」は、ポリペプチドの活性が内在的活性に比べて増加することを意味する。上記強化は、活性化(activation)、上向き調節(up-regulation)、過発現(overexpression)、増加(increase)などの用語と混用することができる。ここで、活性化、強化、上向き調節、過発現、増加は、本来有していなかった活性を示すことになること、または内在的活性または変形前の活性に比べて向上した活性を示すことになることをすべて含むことができる。上記「内在的活性」は、自然的または人為的要因による遺伝的変異で形質が変化する場合、形質変化前の親株または非変形微生物が本来有していた特定ポリペプチドの活性を意味する。これは「変形前の活性」と混用され得る。ポリペプチドの活性が内在的活性に比べて「強化」、「上向き調節」、「過発現」または「増加」するということは、形質変化前の親株または非変形微生物が本来有していた特定ポリペプチドの活性及び/又は濃度(発現量)に比べて向上したことを意味する。
【0059】
上記強化は、外来のポリペプチドを導入したり、内在的なポリペプチドの活性強化及び/又は濃度(発現量)を通じて達成することができる。上記ポリペプチドの活性の強化の有無は、当該ポリペプチドの活性程度、発現量または当該ポリペプチドから排出される産物の量の増加から確認することができる。
【0060】
上記ポリペプチドの活性の強化は、当該分野によく知られた多様な方法の適用が可能であり、目的ポリペプチドの活性を変形前の微生物より強化させることができる限り、制限されない。具体的には、分子生物学の日常的方法である当業界の通常の技術者によく知られた遺伝子工学及び/又はタンパク質工学を利用したことであってもよいが、これで制限されない(例えば、Sitnicka et al. Functional Analysis of Genes. Advances in Cell Biology. 2010, Vol. 2. 1-16, Sambrook et al. Molecular Cloning 2012など)。
【0061】
具体的には、本出願のポリペプチドの強化は
1)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの細胞内コピー数増加;
2)ポリペプチドをコードする染色体上の遺伝子発現調節領域を活性が強力な配列で交換;
3)ポリペプチドをコードする遺伝子転写体の開始コドンまたは5´-UTR領域をコードする塩基配列の変形;
4)ポリペプチド活性が強化されるように上記ポリペプチドのアミノ酸配列の変形;
5)ポリペプチド活性が強化されるように上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の変形(例えば、ポリペプチドの活性が強化されるように変形されたポリペプチドをコードするように上記ポリペプチド遺伝子のポリヌクレオチド配列の変形);
6)ポリペプチドの活性を示す外来ポリペプチドまたはこれをコードする外来ポリヌクレオチドの導入;
7)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのコドン最適化;
8)ポリペプチドの三次構造を分析し、露出部位を選択して変形したり化学的に修飾;または
9)上記1)~8)から選択された2以上の組合せであってもよいが、これに、特に制限されるものではない。
【0062】
より具体的には、
上記1)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの細胞内コピー数増加は、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが作動可能に連結された、宿主と関係がなく複製され、機能できるベクターの宿主細胞内への導入により達成されることであってもよい。または、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが宿主細胞内の染色体内に1コピーまたは2コピー以上導入により達成されることであってもよい。上記染色体内への導入は、宿主細胞内の染色体内に上記ポリヌクレオチドを挿入させるベクターが宿主細胞内に導入されることにより行われるが、これに制限されない。上記ベクターは、前述した通りである。
【0063】
上記2)ポリペプチドをコードする染色体上の遺伝子発現調節領域(または発現調節配列)を活性が強力な配列での交換は、例えば、上記発現調節領域の活性をさらに強化するように欠失、挿入、非保存的または保存的置換またはこれらの組合せにより配列上の変異発生、またはさらに強い活性を有する配列での交換であってもよい。上記発現調節領域は、特に、これに制限されないが、プロモーター、オペレーター配列、リボソーム結合部位をコードする配列、そして転写及び解読の終結を調節する配列などを含むことができる。一例として、本来のプロモーターを強力なプロモーターで交換させることであってもよいが、これに制限されない。
【0064】
公知となった強力なプロモーターの例としては、cj1~cj7プロモーター(米国登録特許US 7662943 B2)、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、ラムダファージPRプロモーター、PLプロモーター、tetプロモーター、gapAプロモーター、SPL7プロモーター、SPL13(sm3)プロモーター(米国登録特許US 10584338 B2)、O2プロモーター(米国登録特許US 10273491 B2)、tktプロモーター、yccAプロモーターなどがあるが、これに制限されない。
【0065】
上記3)ポリペプチドをコードする遺伝子転写体の開始コドンまたは5´-UTR領域をコードする塩基配列変形は、例えば、内在的開始コドンに比べてポリペプチド発現率がさらに高い他の開始コドンをコードする塩基配列に置換することであってもよいが、これに制限されない。
【0066】
上記4)及び5)のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列の変形は、ポリペプチドの活性を強化するように上記ポリペプチドのアミノ酸配列または上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を欠失、挿入、非保存的または保存的置換またはこれらの組合せで配列上の変異発生、またはさらに強い活性を有するように改良されたアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列または活性が増加するように改良されたアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列への交換であってもよいが、これに限定されるものではない。上記交換は、具体的には、相同組換えによりポリヌクレオチドを染色体内に挿入することにより行われてもよいが、これに制限されない。この時に用いられるベクターは、染色体挿入の有無を確認するための選別マーカー(selection marker)をさらに含むことができる。上記選別マーカーは、前述した通りである。
【0067】
上記6)ポリペプチドの活性を示す外来ポリヌクレオチドの導入は、上記ポリペプチドと同一/類似の活性を示すポリペプチドをコードする外来ポリヌクレオチドの宿主細胞内の導入であってもよい。上記外来ポリヌクレオチドは、上記ポリペプチドと同一/類似の活性を示す限り、その由来や配列に制限がない。上記導入に利用される方法は、公知となった形質転換方法を当業者が適切に選択して行われ、宿主細胞内で上記導入されたポリヌクレオチドが発現することによりポリペプチドが生成され、その活性が増加することができる。
【0068】
上記7)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのコドン最適化は、内在ポリヌクレオチドが宿主細胞内で転写または翻訳が増加するようにコドン最適化したものであるか、または外来ポリヌクレオチドが宿主細胞内で最適化された転写、翻訳が行われるように、そのコドンを最適化したものであってもよい。
【0069】
上記8)ポリペプチドの三次構造を分析し、露出部位を選択して変形したり化学的に修飾することは、例えば、分析しようとするポリペプチドの配列情報を公知のタンパク質の配列情報が保存されたデータベースと比較することにより配列の類似性程度に応じて鋳型タンパク質の候補を決定し、これに基づいて構造を確認し、変形したり化学的に修飾する露出部位を選択して変形または修飾することであってもよい。
【0070】
このようなポリペプチド活性の強化は、対応するポリペプチドの活性または濃度発現量が野生型や変形前の微生物菌株で発現したポリペプチドの活性または濃度を基準として増加したり、当該ポリペプチドから生産される産物の量が増加するものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0071】
本出願の微生物においてポリヌクレオチドの一部または全体の変形は、(a)微生物内の染色体挿入用ベクターを利用した相同組換えまたは遺伝子はさみ(engineered nuclease,e.g.,CRISPR-Cas9)を利用したゲノム編集及び/又は(b)紫外線及び放射線などのような光及び/又は化学物質処理により誘導されてもよいが、これに制限されない。上記遺伝子の一部または全体の変形方法にはDNA組換え技術による方法が含まれてもよい。例えば、目的遺伝子と相同性があるヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列またはベクターを上記微生物に注入して相同組換え(homologous recombination)が起きるようにして遺伝子の一部または全体の欠損が行われてもよい。上記注入されるヌクレオチド配列またはベクターは優性選別マーカーを含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0072】
本出願の微生物において、変異体、ポリヌクレオチド及びL-イソロイシンなどは、上記他の様態で記載した通りである。
【0073】
本出願のもう一つの態様は、本出願の変異体または本出願のポリヌクレオチドを含むコリネバクテリウム属菌株を培地で培養する段階を含む、L-イソロイシン生産方法を提供する。
【0074】
本出願のL-イソロイシン生産方法は、本出願の変異体または本出願のポリヌクレオチドまたは本出願のベクターを含むコリネバクテリウム属菌株を培地で培養する段階を含むことができる。
【0075】
本出願において、用語「培養」は、本出願のコリネバクテリウム属菌株を適当に調節された環境条件で生育させることを意味する。本出願の培養過程は、当業界に知られている適当な培地と培養条件に応じて行われる。このような培養過程は、選択される菌株により当業者が容易に調整して用いることができる。具体的には、上記培養は、回分式、連続式及び/又は流加式であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0076】
本出願において用語「培地」は、本出願のコリネバクテリウム属菌株を培養するために必要とする栄養物質を主成分として混合した物質を意味し、生存及び発育に不可欠な水を始めとして栄養物質及び発育因子などを供給する。具体的には、本出願のコリネバクテリウム属菌株の培養に用いられる培地及びその他培養条件は、通常の微生物の培養に用いられる培地であれば、特別な制限なくいずれも用いられるが、本出願のコリネバクテリウム属菌株を適当な炭素源、窒素源、リン源、無機化合物、アミノ酸及び/又はビタミンなどを含有した通常の培地内で好気性の条件下で温度、pHなどを調節して培養することができる。
【0077】
具体的には、コリネバクテリウム属菌株に対する培養培地は、文献[“Manual of Methods for General Bacteriology”by the American Society for Bacteriology (Washington D.C.,USA、1981)]で調べることができる。
【0078】
本出願において、上記炭素源としては、グルコース、サッカロース、ラクトース、フルクトース、スクロース、マルトースなどのような炭水化物;マンニトール、ソルビトールなどのような糖アルコール、ピルビン酸、乳酸、クエン酸などのような有機酸;グルタミン酸、メチオニン、リシンなどのようなアミノ酸などが含まれ得る。また、澱粉加水分解物、糖蜜、ブラックストラップ糖蜜、米ぬか、キャッサバ、バガス及びトウモロコシ浸漬液のような天然の有機栄養源を使用することができ、具体的には、グルコース及び殺菌された前処理糖蜜(即ち、還元糖に転化された糖蜜)などのような炭水化物が用いられ、その他の適正量の炭素源を制限なく多様に利用することができる。これら炭素源は、単独で用いられても2種以上が組合わせて用いられてもよく、これに限定されるものではない。
【0079】
上記窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのような無機窒素源;グルタミン酸、メチオニン、グルタミンなどのようなアミノ酸、ペプトン、NZ-アミン、肉類抽出物、酵母抽出物、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、カゼイン加水分解物、魚類またはその分解生成物、脱脂大豆ケーキまたはその分解生成物などのような有機窒素源が用いられる。これら窒素源は単独で用いられても2種以上が組合わせて用いられてもよく、これに限定されるものではない。
【0080】
上記リン源としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、またはこれに対応するナトリウム含有塩などが含まれてもよい。無機化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化鉄、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、炭酸カルシウムなどが用いられてもよく、その他にアミノ酸、ビタミン及び/又は適切な前駆体などが含まれてもよい。これら構成成分または前駆体は、培地に回分式または連続式で添加されてもよい。しかし、これに限定されるものではない。
【0081】
また、本出願のコリネバクテリウム属菌株の培養中に、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸、硫酸などのような化合物を培地に適切な方式で添加し、培地のpHを調整することができる。また、培養中には脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を用いて気泡生成を抑制することができる。また、培地の好気状態を維持するために、培地内に酸素または酸素含有気体を注入したり嫌気及び微好気状態を維持するために気体の注入なしに、あるいは窒素、水素または二酸化炭素ガスを注入することができ、これに限定されるものではない。
【0082】
本出願の培養において、培養温度は20~45℃、具体的には25~40℃を維持でき、約10~160時間培養できるが、これに限定されるものではない。
【0083】
本出願の培養により生産されたL-イソロイシンは、培地中に分泌されたり細胞内に残留してもよい。
【0084】
本出願のL-イソロイシン生産方法は、本出願のコリネバクテリウム属菌株を準備する段階、上記菌株を培養するための培地を準備する段階、またはこれらの組合せ(順序に無関係)を、例えば、上記培養する段階以前に、さらに含むことができる。
【0085】
本出願のL-イソロイシン生産方法は、上記培養による培地(培養が行われた培地)またはコリネバクテリウム属菌株からL-イソロイシンを回収する段階をさらに含むことができる。上記回収する段階は、上記培養する段階後にさらに含まれてもよい。
【0086】
上記回収は、本出願の微生物の培養方法、例えば、回分式、連続式または流加式の培養方法などにより当該技術分野に公知となった適切な方法を利用して目的とするL-イソロイシンを収集(collect)することであってもよい。例えば、遠心分離、濾過、結晶化タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、抽出、超音波破砕、限外濾過、透析法、モレキュラーシーブクロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、親和度クロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィー、HPLCまたはこれらの方法を組み合わせて用いられてもよく、当該分野に公知となった適切な方法を利用して培地または微生物から目的とするL-イソロイシンを回収することができる。
【0087】
また、本出願のL-イソロイシン生産方法は、さらに精製段階を含むことができる。上記精製は、当該技術分野に公知となった適切な方法を利用して行うことができる。一例において、本出願のL-イソロイシン生産方法が回収段階と精製段階をすべて含む場合、上記回収段階と精製段階は、順序に関係なく連続的または非連続的に行われたり、同時にまたは一つの段階に統合されて行われてもよいが、これに制限されるものではない。
【0088】
本出願の方法において、変異体、ポリヌクレオチド、ベクター及び菌株などは、上記他の様態で記載した通りである。
【0089】
本出願のもう一つの態様は、本出願の変異体、上記変異体をコードするポリヌクレオチド、上記ポリヌクレオチドを含むベクターまたは本出願のポリヌクレオチドを含むコリネバクテリウム属菌株;これを培養した培地;またはこれらのうち2以上の組合せを含むL-イソロイシン生産用組成物を提供することである。
【0090】
本出願の組成物は、アミノ酸生産用組成物に通常使用される任意の適した賦形剤をさらに含むことができ、このような賦形剤は、例えば、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤または等張化剤などであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0091】
本出願の組成物において、変異体、ポリヌクレオチド、ベクター、菌株、培地及びL-イソロイシンなどは、上記他の様態で記載した通りである。
【0092】
本出願のもう一つの態様は、本出願の変異体;上記変異体をコードするポリヌクレオチド;または上記変異体または上記変異体をコードするポリヌクレオチドを含むコリネバクテリウム属菌株のL-イソロイシン生産への使用を提供することである。
【0093】
以下、本出願を実施例により、より詳しく説明する。しかし、下記実施例は、本出願を例示するための好ましい実施様態に過ぎず、したがって、本出願の権利範囲をこれに限定するとは意図されない。一方、本明細書に記載されていない技術的な事項は、本出願の技術分野または類似技術分野において熟練した通常の技術者であれば、十分に理解し、容易に実施することができる。
【0094】
実施例1:L-イソロイシン生産菌株の製作
野生型のコリネバクテリウム・グルタミカムは、L-イソロイシンを生産する能力はあるが、過量生産しない。これに対し、L-イソロイシン生産能を増加させる遺伝形質を確認するために、L-イソロイシン生産能が野生型に比べて増加した菌株を製作した。
【0095】
まず、野生型コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032のL-イソロイシン生合成経路でイソロイシンの前駆体であるスレオニンのフィードバック阻害解消のために、ホモセリンデヒドロゲナーゼ(homoserine dehydrogenase)をコードする遺伝子homを変異し、ホモセリンデヒドロゲナーゼの407番目のアミノ酸であるアルギニンをヒスチジンで置換した(大韓民国登録特許第10-1996769号)。
【0096】
具体的には、hom(R407H)変異を染色体上に導入するためのベクターを製作するために、野生型コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032の染色体を鋳型にして配列番号6及び配列番号7のプライマーペアまたは配列番号8及び配列番号9のプライマーペアを利用してPCRをそれぞれ行った。上記プライマー配列は、下記表1に示した通りである。
【0097】
【0098】
PCR反応のための重合酵素としてはPfuUltraTMハイフィデリティDNAポリメラーゼ(Stratagene)を用い、PCR条件は95℃で30秒間変性;55℃で30秒間アニーリング;及び重合反応72℃で1分間の重合反応であり、このような条件の変性、アニーリング、及び重合反応を28回繰り返してhom遺伝子の変異を中心に5´上端部位の1000bp DNA断片と3´下端部位の1000bpのDNA断片をそれぞれ得た。
【0099】
増幅された二種類のDNA切片を鋳型にして、配列番号6及び配列番号9のプライマーペアを利用してPCRを行った。PCR条件として95℃で5分間変性後、95℃で30秒間変性;55℃で30秒間アニーリング;及び72℃で2分間重合を28回繰り返した後、72℃で5分間重合反応を行った。
【0100】
その結果、407番目のアルギニンがヒスチジンで置換されたホモセリンデヒドロゲナーゼ変異体をコードするhom遺伝子の変異を含む2kbのDNA断片(配列番号16)が増幅された。増幅産物をPCR精製キット(PCR Purification kit,QUIAGEN)を用いて精製し、ベクター製作のための挿入DNA断片として用いた。
【0101】
精製した増幅産物を制限酵素smaIで処理した後、65℃で20分間熱処理したpDCM2ベクター(韓国公開特許第10-2020-0136813号)と上記増幅産物である挿入DNA断片のモル濃度(M)の比率が1:2になるようにし、インフュージョンクローニングキット(Infusion Cloning Kit,TaKaRa)を用いて提供されたマニュアルによりクローニングすることにより、hom(R407H)変異を染色体上に導入するためのベクターpDCM2-R407Hを製作した。
【0102】
製作されたベクターを電気穿孔法でコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032に形質転換し、2次交差過程を経て染色体上でhom(R407H)変異を含む菌株を得、これをコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032 hom(R407H)と命名した。
【0103】
製作したATCC13032 hom(R407H)菌株にL-イソロイシンに対するフィードバック解除と活性を増加させるために、L-トレオニンデヒドラターゼ(L-threonine dehydratase)をコードする遺伝子であるilvAを変異し、L-トレオニンデヒドラターゼの381番目のアミノ酸であるスレオニンをアラニンで置換及び383番目アミノ酸であるフェニルアラニンをアラニンで置換した。
【0104】
具体的には、上記ilvA(T381A、F383A)変異を染色体上に導入するためのベクターを製作するために、野生型コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032の染色体を鋳型にして配列番号10及び配列番号11のプライマーペアまたは配列番号12及び配列番号13のプライマーペアを利用してPCRをそれぞれ行った。上記プライマー配列は、下記表2に示した通りである。
【0105】
【0106】
PCR反応のための重合酵素としては、PfuUltraTMハイフィデリティDNAポリメラーゼ(Stratagene)を用い、PCR条件は、95℃で30秒間変性;55℃で30秒間変性;及び72℃で1分間の重合反応であり、このような条件の変性、アニーリング、及び重合反応を28回繰り返してilvA遺伝子の変異を中心に5´上端部位の1126bp DNA断片と3´下端部位の286bpのDNA断片をそれぞれ得た。
【0107】
増幅された二種類のDNA切片を鋳型にし、配列番号10及び配列番号13のプライマーペアを利用してPCRを行った。PCR条件として95℃で5分間変性後、95℃で30秒間変性;55℃で30秒間アニーリング;及び72℃で2分間重合を28回繰り返した後、72℃で5分間重合反応を行った。
【0108】
その結果、381番目のスレオニンがアラニンで、及び383番目フェニルアラニンがアラニンで置換されたL-トレオニンデヒドラターゼ変異体をコードするilvA遺伝子の変異を含む1.4kbのDNA断片(配列番号17)が増幅された。増幅産物をPCR精製キットを用いて精製し、ベクター製作のための挿入DNA断片で用いた。精製した増幅産物を制限酵素smaIで処理した後、65℃で20分間熱処理したpDCM2ベクターと上記増幅産物である挿入DNA断片のモル濃度(M)比率が1:2になるようにし、タカラ(TaKaRa)のインフュージョンクローニングキットを用いて提供されたマニュアルによりクローニングすることにより、ilvA(T381A、F383A)変異を染色体上に導入するためのベクターpDCM2-ilvA(T381A、F383A)を製作した。
【0109】
製作されたベクターを電気穿孔法でコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032 hom(R407H)に形質転換し、2次交差過程を経て染色体上でilvA(T381A、F383A)変異を含む菌株を得、これをコリネバクテリウム・グルタミカムCA10-3101と命名した。
【0110】
上記菌株CA10-3101は、2020年5月27日付でブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(KCCM)に国際寄託し、KCCM12739Pとして寄託番号の付与を受けた。
【0111】
次に、上記ilvA(T381A、F383A)変異をL-イソロイシン生産菌株に導入する場合、L-イソロイシンに対するフィードバック解除と活性を増加させて実際にL-イソロイシン生産能を増加させるかどうかを確認するために、次のような実験を行った。
【0112】
具体的には、NTG(N-Methyl-N´-nitro-N-nitrosoguanidine)処理されたL-イソロイシン生産菌株であるKCJI-38菌株(KCCM11248P、大韓民国登録特許第10-1335789号)に上記ilvA(T381A、F383A)変異を電気パルス法で導入してKCCM11248P/pECCG117-ilvA(T381A、F383A)菌株を製作した。その後、下記のような方法で発酵力価の評価を進めた。
【0113】
イソロイシン生産培地25mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに親株及び上記変異株を接種した後、32℃で60時間200rpmで振盪培養してL-イソロイシンを生産した。上記生産培地の組成は、下記の通りである。
【0114】
<生産培地>
ブドウ糖10%、酵母抽出物0.2%、硫酸アンモニウム1.6%、第一リン酸カリウム0.1%、硫酸マグネシウム7水塩0.1%、硫酸鉄7水塩10mg/l、硫酸マンガン1水塩10 mg/l、ビオチン200μg/l、pH 7.2
【0115】
培養終了後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用して実験した各菌株に対する培養液中のL-イソロイシン濃度及びL-スレオニン濃度を測定した後、その結果を下記表3に示した。
【0116】
【0117】
上記表3に示されるように、ilvA(T381A、F383A)変異を導入したKCCM11248P/pECCG117-ilvA(T381A、F383A)菌株は、親株であるKCCM11248Pに比べてL-イソロイシン生産能が顕著に増加し、L-スレオニン分解率が高いことを確認した。これにより、上記ilvA(T381A、F383A)変異を菌株に導入時にL-イソロイシンに対するフィードバック解除と活性が増加することを確認した。
【0118】
実施例2:変異型ilvNライブラリーベクター製作
アセトヒドロキシ酸シンターゼ(Acetohydroxy acid synthase,AHAS)の小サブユニットをコードするilvN遺伝子の変異ライブラリーを製作した。ライブラリーは、error-prone PCR kit(clontech Diversify(登録商標) PCR Random Mutagenesis Kit)を利用して製作し、野生型コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032の染色体を鋳型にし、配列番号14及び配列番号15のプライマーペアを利用してPCR反応を行った。上記プライマー配列は、下記表4に示した通りである。
【0119】
【0120】
具体的には、1000bl当たり0~3個の変異が発生する条件で94℃で30秒間pre-heatingした後、94℃で30秒間、68℃で1分30秒間の過程を25回繰り返して行った。そのとき、得られた産物をmegaprimer(500~125ng)を利用して95℃で50秒間、60℃で50秒間、68℃で12分間の過程を25回繰り返して行った後、DpnI処理し、大腸菌DH5αに形質転換し、カナマイシン(25mg/L)が含まれたLB固体培地に塗抹した。形質転換されたコロニー20種を選別した後、プラスミドを取得してポリヌクレオチド配列を分析した結果、2mutations/kbの頻度で互いに異なる位置に変異が導入されたことを確認した。約20,000個の形質転換された大腸菌コロニーを取ってプラスミドを抽出し、これをpTOPO-ilvN-libraryと命名した。
【0121】
実施例3:ilvNライブラリーが導入されたL-イソロイシン生産菌株の製作
上記実施例2で製作されたpTOPO-ilvN-libraryを上記実施例1で製作したL-イソロイシン生産菌株であるCA10-3101(KCCM12739P)に電気穿孔法で形質転換した後、カナマイシン25mg/Lを含有した栄養培地に塗抹して変異遺伝子が挿入された菌株5,000個のコロニーを確保し、各コロニーをCA10-3101/pTOPO-ilvNm5001からCA10-3101/pTOPO-ilvNm10000までと命名した。
【0122】
確保された5,000個のコロニー中、L-イソロイシン生産能が増加したコロニーを確認するために、それぞれのコロニーに対して下記のような方法で発酵力価の評価を進めた。具体的には、イソロイシン生産培地25mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに親株及び上記変異株を接種した後、32℃で60時間200rpmで振盪培養してL-イソロイシンを生産した。上記生産培地の組成は、下記の通りである。
【0123】
<生産培地>
ブドウ糖10%、酵母抽出物0.2%、硫酸アンモニウム1.6%、第一リン酸カリウム0.1%、硫酸マグネシウム7水塩0.1%、硫酸鉄7水塩10mg/l、硫酸マンガン1水塩10mg/l、ビオチン200μg/l、pH 7.2
【0124】
培養終了後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用して実験した各菌株に対する培養液中のL-イソロイシン濃度を測定した後、その結果を下記表5に示した。
【0125】
【0126】
上記の表5に示されるように、変異菌株3種は、ilvN WTを有する親株であるコリネバクテリウム・グルタミカムCA10-3101に比べてL-イソロイシン生産性が増加することを確認した。上記変異菌株2種に対するシークエンシングを進め、野生型コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032のilvN遺伝子と比較した結果、上記変異菌株2種は、遺伝子に次のような変異を含んでいることを確認した:CA10-3101/pTOPO-ilvNm6289菌株はilvNのアミノ酸配列で42番目アミノ酸であるアラニンがバリンで置換(A42V)された変異、CA10-3101/pTOPO-ilvNm9011菌株はilvNのアミノ酸配列で47番目ヒスチジンがロイシンで置換(H47L)された変異。
【0127】
上記結果に基づいて、上記変異菌株2種(A42V、H47L)が親株に比べて高収率でL-イソロイシンを生産し得ることを確認し、ilvN(A42V)、ilvN(H47L)が導入された各菌株のL-イソロイシン濃度の増加率は、親株比約45%、57%であることを確認した。
【0128】
実施例4:変異型ilvNが導入されたL-イソロイシン生産菌株の製作
上記実施例3で確認したilvN(A42V)、ilvN(H47L)変異を上記実施例1で製作したコリネバクテリウム・グルタミカムCA10-3101菌株に導入した。
【0129】
具体的には、上記変異型ilvN遺伝子(A42V、H47L)を染色体上に導入するためのベクターを製作するために、CA10-3101/pTOPO-ilvNm6289 ilvN(A42V)、CA10-3101/pTOPO-ilvNm9011 ilvN(H47L)の染色体を鋳型にし、配列番号14及び配列番号15のプライマーペアを利用してPCRをそれぞれ行った。PCR反応のための重合酵素としては、PfuUltraTMハイフィデリティDNAポリメラーゼ(Stratagene)を用い、PCR条件は95℃で30秒間変性;アニーリング55℃で30秒間変性;及び重合反応72℃で1分間であり、このような変性、アニーリング、及び重合反応を28回繰り返し、変異型ilvN遺伝子(A42V、H47L)をそれぞれ含む2種の545bp DNA断片をそれぞれ得た。増幅産物をQUIAGEN社のPCR精製キットを用いて精製し、ベクター製作のための挿入DNA断片として用いた。精製した増幅産物を制限酵素SmaIで処理した後、65℃で20分間熱処理したpDCM2ベクターと上記PCRを通じて増幅した挿入DNA断片のモル濃度(M)の比率が1:2になるようにし、タカラ(TaKaRa)のインフュージョンクローニングキットを用いて提供されたマニュアルによりクローニングすることにより、コリネバクテリウム・グルタミカムの変異型ilvN遺伝子を染色体上に導入するためのベクターpDCM2-ilvN(A42V)、pDCM2-ilvN(H47L)を製作した。
【0130】
上記で製作されたベクターを電気穿孔法でコリネバクテリウム・グルタミカムCA10-3101に形質転換し、2次交差過程を経て染色体上で変異型ilvNで置換された菌株を得、CA10-3101::ilvN(A42V)をCA10-3129、CA10-3101::ilvN(H47L)をCA10-3130と命名した。
【0131】
親株(CA10-3101)及び本実施例で製作した変異株2種(CA10-3129,CA10-3130)に対し、L-イソロイシン生産性が増加した効果を確認するために、それぞれの菌株を下記のような方法で発酵力価の評価を行った。
【0132】
イソロイシン生産培地を25ml含有する250mlコーナーバッフルフラスコに親株及び上記変異株2種を接種した後、32℃で60時間200rpmで振盪培養してL-イソロイシンを生産した。上記生産培地の組成は、下記に示した。
【0133】
<生産培地>
ブドウ糖10%、酵母抽出物0.2%、硫酸アンモニウム1.6%、第一リン酸カリウム0.1%、硫酸マグネシウム7水塩0.1%、硫酸鉄7水塩10mg/l、硫酸マンガン1水塩10mg/l、ビオチン200μg/l、pH 7.2
【0134】
培養終了後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用して実験した各菌株に対する培養液中のL-イソロイシン濃度を測定した後、その結果を下記表6に示した。
【0135】
【0136】
上記の表6に示されるように、ilvN WTを有するL-イソロイシン生産菌株である親株(CA10-3101)に比べてilvN(A42V)、ilvN(H47L)がそれぞれ導入されたCA10-3129、CA10-3130菌株でいずれもL-イソロイシンの濃度が増加することを確認し、ilvN(A42V)、ilvN(H47L)が導入された各菌株のL-イソロイシン濃度増加率は、親株対比約46%、41%であることを確認した。
【0137】
実施例5:組合せ変異型ilvNプラスミドの製作
上記実施例3で確認されたilvN変異型2種を組み合わせてL-イソロイシン菌株に導入するために、変異型ilvNを染色体上に導入するためのベクターを製作した。
【0138】
具体的には、pDCM2-ilvN(A42V)を鋳型にして配列番号14及び配列番号20のプライマーペア、配列番号21及び配列番号15のプライマーペアを利用してPCRを行い、pDCM2-ilvN(H47L)を鋳型にして配列番号14及び配列番号18のプライマーペアまたは配列番号19及び配列番号15のプライマーペアを利用してPCRを行った。上記プライマー配列は、下記表7に示した通りである。
【0139】
【0140】
PCR反応のための重合酵素としては、PfuUltraTMハイフィデリティDNAポリメラーゼ(Stratagene)を用い、PCR条件は95℃で30秒間変性;55℃で30秒間アニーリング;及び72℃で1分間の重合反応を条件とし、このような変性、アニーリング、及び重合反応を28回繰り返して166bp、405bp DNA断片をそれぞれ得た。増幅産物をQUIAGEN社のPCR精製キットを用いて精製し、ベクター製作のための挿入DNA断片として用いた。精製した増幅産物を制限酵素smaIで処理した後、65℃で20分間熱処理したpDCM2ベクターと上記増幅産物である挿入DNA断片のモル濃度(M)の比率が1:2になるようにし、タカラ(TaKaRa)のインフュージョンクローニングキットを用いて提供されたマニュアルによりクローニングすることにより、変異型ilvNを染色体上に導入するためのベクターpDCM2-ilvN(A42V、H47L)を製作した。
【0141】
実施例6:組合せ変異型ilvNが導入されたL-イソロイシン生産菌株の製作
上記実施例5で製作されたベクターを電気穿孔法で上記実施例1で製作したコリネバクテリウム・グルタミカムCA10-3101菌株に形質転換し、2次交差過程を経て染色体上で変異型ilvNで置換された菌株を得た。CA10-3101::ilvN(A42V、H47L)をCA10-3132と命名した。
【0142】
製作された菌株のL-イソロイシン生産性の増加効果を確認するために、下記のような方法で発酵力価の評価を進めた。
【0143】
イソロイシン生産培地25mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに親株及び上記変異株を接種した後、32℃で60時間200rpmで振盪培養してL-イソロイシンを生産した。上記生産培地の組成は、下記の通りである。
【0144】
<生産培地>
ブドウ糖10%、酵母抽出物0.2%、硫酸アンモニウム1.6%、第一リン酸カリウム0.1%、硫酸マグネシウム7水塩0.1%、硫酸鉄7水塩10mg/l、硫酸マンガン1水塩10mg/l、ビオチン200μg/l、pH 7.2
【0145】
培養終了後、実験した各菌株に対する培養液中のL-イソロイシン濃度を測定した後、その結果を下記表8に示した。
【0146】
【0147】
上記の表8に示されるように、ilvN WTを有するL-イソロイシン生産菌株である親株(CA10-3101)に比べてilvN単独変異(ilvN(A42V)、ilvN(H47L))またはilvN組合せ変異(ilvN(A42V、H47L))が導入された変異株でL-イソロイシン濃度が増加することを確認し、ilvN単独変異よりilvN組合せ変異が菌株のL-イソロイシン生産能を増加させることを確認した。
【0148】
実施例7:L-イソロイシン生産菌株コリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11248P菌株で変異型ilvN置換菌株の製作
上記実施例6においてL-イソロイシン生産能の増加に効果があることが確認されたilvN変異2種及び組合せ変異をNTG(N-Methyl-N´-nitro-N-nitrosoguanidine)処理されたL-イソロイシン生産菌株であるKCJI-38(KCCM11248P、大韓民国登録特許第10-1335789号)菌株に電気パルス法で導入した後、カナマイシン25mgm/Lを含有した選別培地に塗抹して形質転換し、2次交差過程を経て染色体上で置換された変異型ilvN及び組合せ変異型ilvN置換株を取得した。その後、下記のような方法で発酵力価の評価を進めた。
【0149】
イソロイシン生産培地25mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに親株及び上記変異株を接種した後、32℃で60時間200rpmで振盪培養してL-イソロイシンを生産した。上記生産培地の組成は、下記の通りである。
【0150】
<生産培地>
ブドウ糖10%、酵母抽出物0.2%、硫酸アンモニウム1.6%、第一リン酸カリウム0.1%、硫酸マグネシウム7水塩0.1%、硫酸鉄7水塩10mg/l、硫酸マンガン1水塩10mg/l、ビオチン200μg/l、pH 7.2
【0151】
培養終了後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用して実験した各菌株に対する培養液中のL-イソロイシン濃度を測定した後、その結果を下記表9に示した。
【0152】
【0153】
上記の表9に示されるように、ilvN WTを有するL-イソロイシン生産菌株である親株(KCCM11248P)に比べてilvN変異2種及び組合せ変異が導入された変異株でL-イソロイシン生産能が増加し、ilvN(A42V)、ilvN(H47L)、ilvN(A42V、H47L)が導入された各菌株のL-イソロイシン濃度増加率は親株比約40%、29%、そして63%で確認され、ilvN単独変異よりilvN組合せ変異が菌株のL-イソロイシン生産能を増加させることを確認した。
【0154】
以上の説明から、本出願が属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願の範囲は上記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本出願の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【0155】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0155
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0155】
【表10】
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
配列番号1のアミノ酸配列で42番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換され、47番目の位置に対応するアミノ酸が他のアミノ酸で置換された、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(Acetohydroxy acid synthase,AHAS)変異体。
(態様2)
前記42番目の位置に対応するアミノ酸は、バリンで置換される、態様1に記載の変異体。
(態様3)
前記47番目の位置に対応するアミノ酸は、ロイシンで置換される、態様1に記載の変異体。
(態様4)
前記42番目の位置に対応するアミノ酸は、アラニンである、態様1に記載の変異体。
(態様5)
前記47番目の位置に対応するアミノ酸は、ヒスチジンである、態様1に記載の変異体。
(態様6)
態様1~5のいずれか一項に記載の変異体をコードするポリヌクレオチド。
(態様7)
態様1~5のいずれか一項に記載の変異体;または前記変異体をコードするポリヌクレオチド;を含む、コリネバクテリウム属菌株。
(態様8)
前記菌株は、配列番号1のアミノ酸配列を有する野生型アセトヒドロキシ酸シンターゼまたはこれをコードするポリヌクレオチドを含むコリネバクテリウム属菌株に比べてL-イソロイシン生産能が増加した、態様7に記載の菌株。
(態様9)
前記菌株は、コリネバクテリウム・グルタミカムである、態様7に記載の菌株。
(態様10)
態様1~5のいずれか一項に記載の変異体;または前記変異体をコードするポリヌクレオチド;を含むコリネバクテリウム属菌株を培地で培養する段階を含む、L-イソロイシン生産方法。
(態様11)
態様1~5のいずれか一項に記載の変異体、前記変異体をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクターまたは本出願のポリヌクレオチドを含むコリネバクテリウム属菌株;これを培養した培地;またはこれらのうちの2以上の組合せを含む、L-イソロイシン生産用組成物。
(態様12)
態様1~5のいずれか一項に記載の変異体;前記変異体をコードするポリヌクレオチド;または前記変異体または前記変異体をコードするポリヌクレオチドを含むコリネバクテリウム属菌株のL-イソロイシン生産への使用。
【国際調査報告】