(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】システム、システムを制御する方法、及びシステムを備える車両
(51)【国際特許分類】
B60T 17/00 20060101AFI20240927BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240927BHJP
H01M 8/04111 20160101ALI20240927BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20240927BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240927BHJP
B60L 50/70 20190101ALI20240927BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240927BHJP
B60L 58/30 20190101ALI20240927BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240927BHJP
【FI】
B60T17/00 B
H01M8/04 J
H01M8/04111
H01M8/04313
H01M8/04746
B60L50/70
B60L50/60
B60L58/30
H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518908
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2021077010
(87)【国際公開番号】W WO2023051924
(87)【国際公開日】2023-04-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】アウダヴ,トーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ガイヨー,ピエリグ
(72)【発明者】
【氏名】ラーム,フレドリック
【テーマコード(参考)】
3D049
5H125
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
3D049AA06
3D049BB42
3D049CC03
3D049HH04
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3D049KK17
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3D049RR06
5H125AA01
5H125AA12
5H125AC07
5H125AC12
5H125BD12
5H125CD07
5H125EE37
5H125FF09
5H126BB06
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5H127AB04
5H127AB11
5H127AB29
5H127BA02
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5H127BB07
5H127BB12
5H127BB22
5H127BB37
5H127DB91
5H127DC28
(57)【要約】
本開示は、燃料電池システム(100)と、空気圧装置に圧縮空気を供給するための圧縮空気システム(200)とを有する、車両(1)用のシステム(10)であって、前記燃料電池システムは、カソード側を有する少なくとも1つの燃料電池(102)と、カソード側の入口端(106)に接続された空気入口導管(104)と、空気入口導管に配置されたエアコンプレッサ(112)と、周囲環境から空気を受け取るように配置されたエアフィルタ(111)であって、前記エアフィルタは、空気入口導管の入口(121)に配置されている、エアフィルタ(111)と、カソード側の出口端(110)とエキスパンダ(116)の入口側(126)との間に接続された流体出口導管(108)と、エキスパンダの排気側(128)に接続された排気導管(124)と、を備え、前記圧縮空気システムは、空気圧装置(210)に接続可能な電動可能エアコンプレッサ(220)を備え、システムは、電動可能エアコンプレッサの空気入口(221)を複数の流体供給位置に流体接続するための制御可能なバルブアセンブリ(300)をさらに備え、制御可能なバルブアセンブリは、車両の動作条件に応じて、出口導管位置(180)、空気入口導管位置(184)、ならびに空気入口導管位置(186)及び位置(188)の少なくとも一方から圧縮空気システムに空気を選択的に導くように構成されている、システム(10)に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システム(100)と、空気圧装置に圧縮空気を供給するための圧縮空気システム(200)とを有する、車両(1)用のシステム(10)であって、
前記燃料電池システムは、
アノード側とカソード側とを有する少なくとも1つの燃料電池(102)と、
前記少なくとも1つの燃料電池の前記カソード側に空気を供給するために前記カソード側の入口端(106)に接続された空気入口導管(104)と、
前記空気入口導管に配置されたエアコンプレッサ(112)と、
周囲環境から空気を受け取るように配置されたエアフィルタ(111)であって、前記エアフィルタ(111)は、前記空気入口導管の入口(121)であって前記エアコンプレッサの上流に配置されている、前記エアフィルタ(111)と、
前記カソード側からエキスパンダ(116)へ排気流を供給するために、前記カソード側の出口端(110)と前記エキスパンダ(116)の入口側(126)との間に接続された流体出口導管(108)と、
前記エキスパンダの排気側(128)に接続された排気導管(124)と、
を備え、
前記圧縮空気システムは、
前記空気圧装置(210)に接続可能な電動可能エアコンプレッサ(220)
を備え、
前記システムは、前記電動可能エアコンプレッサの空気入口(221)を複数の流体供給位置に流体接続するための制御可能なバルブアセンブリ(300)をさらに備え、前記複数の流体供給位置は、前記エキスパンダの前記入口側の上流の出口導管位置(180)、前記エアコンプレッサ(112)の上流の空気入口導管位置(184)、前記エアコンプレッサ(112)の下流の空気入口導管位置(186)、及び前記周囲環境と流体連通する独立したエアフィルタ(190)と流体連通する位置(188)から選択される少なくとも2つの位置を含み、
前記制御可能なバルブアセンブリは、前記車両の動作条件に応じて、前記複数の流体供給位置(180、184、186、188)から前記圧縮空気システムに空気を選択的に導くように構成されている、システム(10)。
【請求項2】
前記制御可能なバルブアセンブリが、前記電動可能エアコンプレッサの前記空気入口(221)を前記出口導管位置(180)に流体接続するように配置され、構成されているとき、前記制御可能なバルブアセンブリは、前記動作条件が燃料電池の性能優先条件に相当する場合、前記出口導管位置から前記圧縮空気システムに空気を導くように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御可能なバルブアセンブリが、前記電動可能エアコンプレッサの前記空気入口(221)を前記空気入口導管位置(186)に流体接続するように配置され、構成されているとき、前記制御可能なバルブアセンブリは、前記動作条件が圧縮空気システムの性能優先条件に相当する場合、前記空気入口導管位置(186)から前記圧縮空気システムに空気を導くように構成されている、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御可能なバルブアセンブリが、前記電動可能エアコンプレッサの前記空気入口(221)を前記空気入口導管位置(184)に流体接続するように配置され、構成されているとき、前記制御可能なバルブアセンブリは、前記動作条件が燃料電池の停止条件に相当する場合、前記空気入口導管位置(184)から前記圧縮空気システムに空気を導くように構成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御可能なバルブアセンブリが、前記電動可能エアコンプレッサの前記空気入口(221)を前記位置(188)に流体接続するように配置され、構成されているとき、前記制御可能なバルブアセンブリは、前記動作条件が燃料電池の停止条件に相当する場合、前記位置(188)から前記圧縮空気システムに空気を導くように構成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの燃料電池の前記出口端と前記エキスパンダの前記入口側との間に延在する前記出口導管の一部は、第1の出口導管部分(162)、第2の出口導管部分(164)、及び水管理構成要素(172)を備え、前記第1の出口導管部分は、前記少なくとも1つの燃料電池の前記出口端を前記水管理構成要素の入口側(171)に接続し、前記第2の出口導管部分は、前記水管理構成要素の出口側(173)を前記エキスパンダの前記入口側に接続し、前記出口導管位置(180)は、前記第2の出口導管部分(164)にある、請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記エアコンプレッサと前記カソード側の前記入口端との間に延在する前記入口導管の一部は、第1の入口導管部分(154)、第2の入口導管部分(156)、及び給気冷却器(150)を備え、前記第1の入口導管部分は、前記エアコンプレッサを前記給気冷却器に接続し、前記第2の入口導管は、前記給気冷却器を前記カソード側の前記入口端に接続する、請求項1から6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記空気入口導管位置(186)は、前記第2の入口導管部分(156)であり、前記給気冷却器の下流にある、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記燃料電池システムは、前記入口導管(104)及び前記出口導管(106)に接続された加湿器(140)をさらに備え、前記加湿器は、前記出口導管から前記入口導管に湿度を移動させるように構成されており、前記空気入口導管位置(186)は、前記加湿器の上流にある、請求項1から8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記エアコンプレッサは、前記エキスパンダ及び燃料電池モータ(118)に接続される、請求項1から9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは、前記車両の前記動作条件を示す制御信号に基づいて前記バルブ装置を制御するために、前記制御可能なバルブアセンブリ(300)と通信するように配置された制御ユニット(114)をさらに備える、請求項1から10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも2つの位置は、前記エアコンプレッサ(112)の上流の前記空気入口導管位置(184)と、前記エアコンプレッサ(112)の下流の空気入口導管位置(186)とである、請求項1から11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも2つの位置は、前記エキスパンダの前記入口側の上流の前記出口導管位置(180)と、前記周囲環境と流体連通している独立したエアフィルタ(190)と流体連通する前記位置(188)とである、請求項1~11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記複数の流体供給位置は、少なくとも3つの位置を含み、前記3つの位置は、少なくとも前記エキスパンダの前記入口側の上流の前記出口導管位置(180)と、前記エアコンプレッサ(112)の上流の前記空気入口導管位置(184)と、前記エアコンプレッサ(112)の下流の前記空気入口導管位置(186)とである、請求項1~11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記複数の流体供給位置は、少なくとも3つの位置を含み、前記3つの位置は、少なくとも前記エキスパンダの前記入口側の上流の前記出口導管位置(180)と、前記エアコンプレッサ(112)の下流の前記空気入口導管位置(186)と、前記周囲環境と流体連通している独立したエアフィルタ(190)と流体連通する前記位置(188)とである、請求項1~11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
車両のシステムを制御する方法であって、前記システムは、燃料電池システム(100)と、空気圧車両装置に圧縮空気を供給するための圧縮空気システム(200)とを含み、前記燃料電池システムは、アノード側とカソード側とを有する少なくとも1つの燃料電池(102)と、前記少なくとも1つの燃料電池の前記カソード側に空気を供給するために前記カソード側の入口端(106)に接続された空気入口導管(104)と、前記空気入口導管に配置されたエアコンプレッサ(112)と、周囲環境から空気を受け取るように配置されたエアフィルタ(111)であって、前記エアフィルタ(111)は、前記空気入口導管の入口(121)であり、前記エアコンプレッサの上流に配置されている、前記エアフィルタ(111)と、前記カソード側からエキスパンダ(116)へ排気流を供給するために、前記カソード側の出口端(110)と前記エキスパンダ(116)の入口側(126)との間に接続された流体出口導管(108)と、前記エキスパンダの排気側(128)に接続された排気導管(124)と、を備え、前記圧縮空気システムは、前記空気圧車両装置(210)に接続可能な電動可能エアコンプレッサ(220)を備え、前記システムは、前記電動可能エアコンプレッサの空気入口(221)を複数の流体供給位置に流体接続するための制御可能なバルブアセンブリ(300)をさらに備え、前記複数の流体供給位置は、前記エキスパンダの前記入口側の上流の出口導管位置(180)、前記エアコンプレッサ(112)の上流の空気入口導管位置(184)、前記エアコンプレッサ(112)の下流の空気入口導管位置(186)、及び前記周囲環境と流体連通する独立したエアフィルタ(190)と流体連通する位置(188)から選択される少なくとも2つの位置を含み、前記方法は、
前記車両の動作条件を判定すること(S10)と、
前記車両の判定された動作条件に応じて、前記複数の流体供給位置(180、184、186、188)から前記圧縮空気システムに空気を選択的に導くように、前記制御可能なバルブアセンブリ(300)を動作させること(S20)と、
を含む、方法。
【請求項17】
前記制御可能なバルブアセンブリ(300)を動作させること(S20)は、前記動作条件が燃料電池の性能優先条件に相当する場合、前記出口導管位置から前記圧縮空気システムに空気を導くように、前記制御可能なバルブアセンブリを動作させることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記制御可能なバルブアセンブリ(300)を動作させること(S20)は、前記動作条件が圧縮空気システムの性能優先条件に相当する場合、前記空気入口導管位置(186)から前記圧縮空気システムに空気を導くように、前記制御可能なバルブアセンブリを動作させることをさらに含む、請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記制御可能なバルブアセンブリ(300)を動作させること(S20)は、前記動作条件が燃料電池の停止条件に相当する場合、前記空気入口導管位置(184)から前記圧縮空気システムに空気を導くように、前記制御可能なバルブアセンブリを動作させることをさらに含む、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記動作条件が圧縮空気システムの性能優先条件と燃料電池の停止条件との組み合わせに相当する場合、前記方法は、前記燃料電池システムの少なくとも1つの制御バルブ装置(192、193、194)を制御することによって、前記少なくとも1つの燃料電池への空気供給を閉じることと、燃料電池モータ(118)によって前記エアコンプレッサ(112)を動作させて、前記電動可能エアコンプレッサを予めブーストすることと、を含む、請求項18に従属する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
電気牽引モータ(101)によって少なくとも部分的に推進される車両であって、前記電気牽引モータが、請求項1~15のいずれか1項に記載のシステムの燃料電池システムに電気的に接続されている、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムと圧縮空気システムとを備える車両用システムに関する。燃料電池システムは、少なくとも部分的に電気牽引モータによって推進されてもよい。本開示は、また、システムを制御する方法、及びそのようなシステムを備える車両に関する。本開示は、主として、電気牽引モータへの電力を生成するために燃料電池を使用するトラックの形態の車両を対象とするが、本開示は、例えば、電気機械及び推進用の内燃機関エンジンを備えるハイブリッド車両など、電力を生成するために燃料電池システムを使用する他のタイプの車両にも適用可能であり得る。
【背景技術】
【0002】
車両の推進システムは、市場からの要求に応えるために継続して開発されている。車両推進システムの特定の技術分野は、環境に有害な排気ガスの排出に関連する。そのために、従来の内燃機関エンジンと比較して、より環境に優しい他の代替手段が評価され、車両に装備されている。そのような代替手段の一例としては、車両を推進させるために1つ以上の電気機械を使用することが挙げられる。
【0003】
電気機械(複数可)を動作させるための電力を生成するには、燃料電池システムが最も興味深い代替手段の1つとなり得る。一例によれば、燃料電池システムは、水素と酸素の電気化学反応によって電力を発生させる燃料電池スタックを形成する膨大な数の燃料電池を備えることができる。燃料電池スタックは、典型的には、水素が供給されるアノード側と、空気が供給されるカソード側とを有し得る。
【0004】
カソード側に入る圧縮空気には、一般に、濾過された空気の多量の空気流が供給され得る。さらに、燃料電池システム内の燃料電池のバランスをとるという理由から、燃料電池システムは、しばしば、過剰な空気比で動作されることがある。燃料電池システムのこの動作は、空気流量が比較的多いことを意味するが、燃料電池に供給される空気は、また、一般に、空気入口で十分に機能する空気濾過を必要として、非常に清浄であり得る。
【0005】
さらに、燃料電池システムは、圧縮空気によって動作する車両の唯一のシステムではない。車両の通常の使用中に圧縮空気を必要とする車両システムの他の例としては、車両に配置された、及び/またはトラックに連結されるセミトレーラ及びトレーラに配置されたエアブレーキ、サスペンション、ギアボックス、または、その他の任意の空気圧式車両装置など、圧縮空気消費機器とも呼ばれる様々な空気圧システムがある。
【0006】
上記の点から見て、エネルギー消費のより少ない燃料電池システムに空気を供給できるようにしたいという要望だけでなく、車両システムの効率と車両性能とをさらに向上させるために圧縮空気をより有益に利用したいという要望もある。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本開示の目的は、上述の不足を少なくとも部分的に克服することである。この目的は、請求項1に記載のシステムによって達成される。この目的は、他の独立請求項によっても達成される。従属請求項は、本開示の有利な実施形態を対象とする。
【0008】
第1の態様によれば、車両用のシステムが提供される。このシステムは、燃料電池システムと、空気圧装置に圧縮空気を供給するための圧縮空気システムとを含む。燃料電池システムは、アノード側とカソード側とを有する少なくとも1つの燃料電池と、少なくとも1つの燃料電池のカソード側に空気を供給するためにカソード側の入口端に接続された空気入口導管と、空気入口導管に配置されたエアコンプレッサと、周囲環境から空気を受け取るように配置されたエアフィルタであって、エアフィルタは、空気入口導管の入口であってエアコンプレッサの上流に配置されている、エアフィルタと、カソード側からエキスパンダへ排気流を供給するために、カソード側の出口端とエキスパンダの入口側との間に接続された流体出口導管と、エキスパンダの排気側に接続された排気導管と、を備える。圧縮空気システムは、空気圧装置に接続可能な電動可能エアコンプレッサを備える。
【0009】
さらに、本システムは、電動可能エアコンプレッサの空気入口を複数の流体供給位置に流体接続するための制御可能なバルブアセンブリを備え、複数の流体供給位置は、エキスパンダの入口側の上流の出口導管位置、エアコンプレッサの上流の空気入口導管位置、エアコンプレッサの下流の空気入口導管位置、及び周囲環境と流体連通する独立したエアフィルタと流体連通する位置から選択される少なくとも2つの位置を含む。
【0010】
また、制御可能なバルブアセンブリは、車両の動作条件に応じて、複数の流体供給位置から圧縮空気システムに空気を選択的に導くように構成されている。
【0011】
本開示は、燃料電池システムの燃料電池が、しばしば、燃料電池(複数可)内に一定のバランスをもたらすために過剰な空気比で動作されることがあり、そのような過剰な空気比が、車両のエアコンプレッサを駆動する電力を削減できるため、全体のシステム効率と車両性能とを向上させるために、他の(別個のエアコンプレッサを含む)車両空気圧システムに有用である可能性があるという洞察に基づいている。一例として、燃料電池のエアブースタは、一般に、燃料電池のカソード側との間で、濾過された空気の多量の空気流(及び若干の水)を移動させ得る。少なくともこれらの理由により、空気流は、多量であるが清浄でもあり、カソード側の空気入口で適切な空気濾過を必要とする。さらに、車両のエアブレーキシステムなどの車両空気圧システムは、それ自体のエアコンプレッサシステムによって動作可能である場合がある。そのようなエアコンプレッサシステムは、少なくとも電気自動車においてはさらに電気的に駆動されてもよい。車両ブレーキシステムのエアコンプレッサには、粒子などから保護するためのエアフィルタもある。
【0012】
提案されたシステムは、車両の運転状況に基づいて、燃料電池システムのカソード側の位置から、または、任意選択で独立したエアフィルタから、車両の圧縮空気システムの電動可能エアコンプレッサに空気を供給する、動的でありながら効率的かつ多用途な方法を提供する。具体的には、圧縮空気システムは、少なくとも1つの燃料電池のカソード側から空気を受け取るように構成されている。圧縮空気システムと燃料電池システムとの間に配置され、任意選択で独立したエアフィルタに接続される制御可能なバルブアセンブリを設けることにより、燃料電池スタックの上流(前)または燃料電池スタックの下流(後)のいずれかの位置から供給される空気を用いて、電動エアコンプレッサに接続可能な様々な空気圧装置の動作制御が改善される。したがって、一部の空気圧装置は、燃料電池システムのエアコンプレッサからの空気によって完全に動作することができ、一方、他のタイプの空気圧装置は、他の車両システムからの空気と共に燃料電池システムのエアコンプレッサからの空気によって、少なくとも部分的に動作することができる。このようにして、提案されたシステムは、圧縮空気システム及び空気圧装置の空気特性を改善し、例えば、加圧空気及び/または濾過空気を提供すると同時に、そのような空気の供給が、燃料電池システムの動作に基づいて制御された方法で実行されることを保護する。
【0013】
一例として、提案されたシステムは、燃料電池システムのフィルタからの濾過空気を燃料電池カソード側で使用して、ブレーキシステムを動作させるための圧縮空気システムなど、車両の別の圧縮空気システムの電動車両エアコンプレッサをブーストすることを可能にさせる。特に、車両ブレーキコンプレッサ入口の追加フィルタを省略することができる。したがって、燃料電池システムと圧縮空気システムとを備えた、単純でありながら効果的なシステムを提供することが可能となる。
【0014】
独立したエアフィルタから空気を供給する利点の1つは、そのような別個のフィルタを介した動作が、一般に燃料電池スタック/燃料電池システムに影響を及ぼし得ないことであり、このことは、燃料電池スタックの動作にとって有益であり得、または場合によっては必要であり得る。
【0015】
さらに、提案されたシステムは、圧縮空気システムのコンプレッサを駆動する電力を削減できるため、先行技術のシステムと比較して、燃料電池システム及び圧縮空気システムのサイズ及び重量にプラスの影響を与える可能性がある。一例として、ブレーキシステムの電力消費を低減することができ、エアブレーキシステムの実装スペースを改善することができる。さらに、圧縮空気システムは、燃料電池システムの入口導管でエアフィルタを使用するので、それ自体のエアフィルタなしでシステムを提供することもできる。したがって、提案されたシステムは、システムを構成する構成要素のコストを削減できるように、小型の構成要素を使用することを可能にすることもでき、例えばブレーキシステムの電力消費を削減することができる。提案されたシステムは、交換するパーツ(例えば、フィルタ)が少なくなるため、システムのサービス時間にプラスの影響を与える可能性もある。
【0016】
電動可能エアコンプレッサをエキスパンダの入口側の上流の位置に接続することの利点の1つは、圧縮空気システムが燃料電池システムから比較的高い圧力レベルの空気を受け取ることである。また、エキスパンダの上流を除いて少なくとも1つの燃料電池の下流の位置に出口導管から空気を供給することで、提案されたシステムは、燃料電池スタックから出てくる過剰な加圧空気を圧縮空気システムの電動可能エアコンプレッサで使用することを可能にする。ここでの開示は、一般に、燃料電池スタック内で使用されない(排気ガス中の水ではない)空気について言及していることに注意を要し得る。
【0017】
一般に、ブレーキエアシステムは水分離器を使用している可能性もあるため、空気は、加湿器及び/または水分離器の下流にある出口導管の位置から供給され得る。
【0018】
制御可能なバルブアセンブリが、電動可能エアコンプレッサの空気入口を出口導管位置に流体接続するように配置され、構成されているとき、制御可能なバルブアセンブリは、動作条件が燃料電池の性能優先条件に相当する場合、出口導管位置から圧縮空気システムに空気を導くように構成され得る。加えて、または代替的に、制御可能なバルブアセンブリが、電動可能エアコンプレッサの空気入口を空気入口導管位置に流体接続するように配置され、構成されているとき、制御可能なバルブアセンブリは、動作条件が圧縮空気システムの性能優先条件に相当する場合、空気入口導管位置から圧縮空気システムに空気を導くように構成され得る。加えて、または、代替的に、制御可能なバルブアセンブリが、電動可能エアコンプレッサの空気入口を空気入口導管位置に流体接続するように配置され、構成されているとき、制御可能なバルブアセンブリは、動作条件が燃料電池の停止条件に相当する場合、空気入口導管位置から圧縮空気システムに空気を導くように構成され得る。加えて、または、代替的に、制御可能なバルブアセンブリが、電動可能エアコンプレッサの空気入口をその位置に流体接続するように配置され、構成されているとき、制御可能なバルブアセンブリは、動作条件が燃料電池の停止条件に相当する場合、位置から圧縮空気システムに空気を導くように構成され得る。
【0019】
一般に、燃料電池システムは、エキスパンダを備えることができる。エキスパンダは、少なくとも1つの燃料電池のカソード側の出口端からの排気流を膨張させるように構成された構成要素であると理解されるべきである。例示的な実施形態によれば、エキスパンダはタービンであってもよい。代替形態として、エキスパンダは、ピストンエキスパンダであってもよい。例えばルートエクスパンダまたはスクロールエクスパンダなど、他のさらなる代替形態も考えられる。
【0020】
例示的な一実施形態では、少なくとも1つの燃料電池の出口端とエキスパンダの入口側との間に延在する出口導管の一部は、第1の出口導管部分、第2の出口導管部分、及び水管理構成要素を備え得る。さらに、第1の出口導管部分は、少なくとも1つの燃料電池の出口端を水管理構成要素の入口側に接続し、第2の出口導管は、水管理構成要素の出口側をエキスパンダの入口側に接続する。また、出口導管位置は、第2の出口導管部分にある。
【0021】
例示的な一実施形態では、電動可能エアコンプレッサがエキスパンダの入口側の上流位置に接続される場合、電動可能エアコンプレッサは第2の出口導管に接続され得る。
【0022】
例示的な一実施形態では、燃料電池システムは、入口導管に配置された給気冷却器をさらに備えることができる。一般に、例示的な実施形態によれば、燃料電池システムは、給気冷却器をさらに備えることができ、給気冷却器は、コンプレッサとカソード側の入口端との間で流体連通する入口導管に配置されている。例示的な一実施形態では、エアコンプレッサとカソード側の入口端との間に延在する入口導管の一部は、第1の入口導管部分、第2の入口導管部分、及び給気冷却器を備え得る。第1の入口導管部分は、エアコンプレッサを給気冷却器に接続し、第2の入口導管は、給気冷却器をカソード側の入口端に接続する。また、この構成では、空気入口導管位置は、第2の入口導管部分であり、給気冷却器の下流にある。
【0023】
燃料電池システムは、入口導管及び出口導管に接続された加湿器をさらに備えてもよい。加湿器は、入口空気の湿度を変化させ、出口導管から入口導管に水を移動させるように構成され得る。また、この構成では、空気入口導管位置は、加湿器の上流にある。
【0024】
例示的な一実施形態では、燃料電池システムが給気冷却器及び加湿器を備える場合、加湿器は第2の入口導管部分及び第1の出口導管部分に接続される。
【0025】
例示的な一実施形態では、燃料電池システムがエキスパンダを備える場合、エアコンプレッサはエキスパンダ及び燃料電池モータに接続され得る。燃料電池モータは、燃料電池システムに含まれるモータとして解釈されるべきである。モータは、一般に、少なくとも1つの燃料電池を通して移送される空気を駆動するように構成されている。したがって、この文言を、モータが燃料電池であると解釈すべきではない。さらに、カソード側からの排気流は、空気、水、水素、またはそれらの任意の組み合わせを含有する可能性がある。
【0026】
一例として、エアコンプレッサは、コンプレッサシャフトによってエキスパンダ及び燃料電池モータに機械的に接続される。代替形態として、燃料電池モータは第1のシャフトによってコンプレッサに接続され得、一方、燃料電池モータは第2のシャフトによってエキスパンダに接続され、第1のシャフトと第2のシャフトとは異なるシャフトである。コンプレッサ及びエキスパンダには、また、別個のモータが設けられていてもよい。そのような構成により、ブースト及び背圧を向上させるだけでなく、システムをさらに最適化するための柔軟性を高めることが可能になる。
【0027】
燃料電池システムは、出口導管に配置された出口導管バルブ装置を備えることができる。一例として、燃料電池システムは、第1の出口導管部分に配置された出口導管バルブ装置を備える。出口導管バルブ装置は、少なくとも1つの燃料電池が非アクティブ状態または非動作状態のいずれかにあるときに、空気が出口導管を介して少なくとも1つの燃料電池に流れるのを防ぐように構成され得る。燃料電池システムは、入口導管に配置された入口導管バルブ装置を備えることができる。一例として、入口導管バルブ装置は、第2の入口導管部分に配置されている。入口導管バルブ装置は、燃料電池が非アクティブ状態または非動作状態のいずれかにあるときに、空気が入口導管を介して燃料電池に流れるのを防ぐように構成され得る。燃料電池システムは、入口導管と出口導管との間に延在する燃料電池バイパス導管と、燃料電池バイパス導管内に配置されたバイパス導管バルブ装置とをさらに備えることができ、バイパス導管バルブ装置は、電動可能エアコンプレッサの起動状態に応じて燃料電池バイパス導管を開閉するように構成される。一例として、燃料電池バイパス導管は、第1の入口導管部分の位置及び第2の出口導管部分の位置に接続される。燃料電池バイパス導管は、燃料電池の上流の入口導管の位置と、燃料電池の下流の出口導管の位置とに接続され得る。任意選択で、バイパス導管バルブ装置は、制御ユニットからの制御信号に応じて燃料電池バイパス導管を開閉するように構成され得る。
【0028】
制御可能なバルブアセンブリの制御及びシステムの全体的な制御に関して、燃料電池システムと圧縮空気システムとの間の実際の空気の流れが、車両の他の運航データと連携して、さらに制御され得ることは容易に理解されよう。そのようなデータは、一般に、電子制御ユニット、ECUなどの制御ユニットに格納され得る。したがって、システムは、車両の動作条件を示す制御信号に基づいてバルブアセンブリを制御するために、制御可能なバルブアセンブリと通信するように構成された制御ユニットをさらに備えることができる。制御ユニットは、制御回路を含んでもよい。
【0029】
制御ユニットには、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルデジタル信号プロセッサ、または別のプログラマブルデバイスが含まれ得る。したがって、制御ユニットは、一般に、制御可能なバルブアセンブリ、燃料電池システム及び圧縮空気システムを含むシステムの異なる部分、ならびに車両の他の構成要素と通信できるような制御回路、例えば処理回路と共に、電子回路及び接続部を備える。そのようなパーツ及びシステムには、例示的な実施形態の機能を提供するために、周辺機器の構成要素、様々な圧力センサ、温度センサ、または車両の他の何らかの構成要素が含まれ得る。制御ユニットは、ハードウェアまたはソフトウェアのモジュール、あるいは部分的にハードウェアまたはソフトウェアのモジュールを備え、CANバス及び/または無線通信機能などの既知の伝送バスを使用して通信することができる。処理回路は、汎用プロセッサまたは特定のプロセッサであってもよい。制御ユニットは、典型的には、コンピュータプログラムコード及びデータを記憶するための非一時的メモリを備えることができる。したがって、制御ユニットは多くの異なる構成によって具現化され得る。制御ユニットは、制御可能なバルブアセンブリの一部であってもよい。他の実施形態では、制御ユニットは、別のシステムまたは構成要素の一部であってもよく、当技術分野で周知のように、有線または無線で制御可能なバルブアセンブリと通信するように構成され得る。他の実施形態では、制御ユニットは、システム、燃料電池システム、及び圧縮空気システムのいずれか1つの一体部分である。加えて、または代わりに、制御ユニットは、システム、燃料電池システム、及び圧縮空気システムのいずれか1つに配置されているいくつかのサブ制御ユニットを備えてもよく、サブ制御ユニットのそれぞれは、制御ユニットを形成するように、互いに通信するように構成されている。
【0030】
車両の動作条件は、一般に車両の状態に対応し得る。動作条件は、燃料電池の性能優先条件、圧縮空気システムの性能優先条件、及び燃料電池の停止条件のうちのいずれかを意味し得る。換言すれば、車両は、システムからの一定の電力需要を必要とする、いくつかの動作モードで動作し得る。動作モードは、例えば、車両の動作状態に関連する場合がある。電力需要は、例えば、燃料電池に対する電力要件の増加に関連する可能性がある。動作モード及び電力需要の他の例としては、非アクティブモード(例えば、停止燃料電池システム状態)、燃料電池の温度レベルが所定の閾値限界未満である車両始動モード、すなわち、コールドスタートの動作モードが挙げられ得る。動作条件は、制御ユニットからのデータ及び/または様々な動作条件に関するデータを収集するように構成されている、いくつかの車両センサからのデータに基づいて決定され得る。
【0031】
制御可能なバルブアセンブリは、典型的には制御バルブを備える。一例として、制御バルブは、いわゆる選択バルブである。換言すれば、制御可能なバルブアセンブリは、動作条件が燃料電池の性能優先条件に相当する場合、出口導管位置から、動作条件が圧縮空気システムの性能優先条件に相当する場合、空気入口導管位置から、動作条件が燃料電池の停止条件に相当する場合、空気入口導管位置から、及び/または動作条件が燃料電池の停止条件に相当する場合、独立したエアフィルタ位置から空気が電動可能エアコンプレッサに供給されるような、判定された動作条件を制御信号が示すことに応じて、空気の流れを選択的に制御するように、制御ユニットによって制御可能であってもよい。
【0032】
制御ユニットは、当技術分野で一般に知られているように、制御可能なバルブアセンブリを空気圧でまたは電気的に作動させることができる。制御可能なバルブアセンブリとしては、スイッチアクチュエータが挙げられ得る。一例として、スイッチアクチュエータは、制御可能なバルブアセンブリの一部を移動させて入口ポートのいずれか1つを開閉するように動作可能なソレノイドアクチュエータを有してもよい。通常は、関連するスイッチアクチュエータを備えている制御可能なバルブアセンブリは、制御ユニットからの入力信号に応答して制御可能である。したがって、スイッチアクチュエータは、制御ユニットからの命令に基づいて、制御可能なバルブアセンブリを動作させるように構成され得る。
【0033】
さらに、燃料電池システムから圧縮空気システムへ空気流を導くために、上記のバルブ装置のいずれか1つを制御ユニットによって制御してもよい。制御ユニットは、燃料電池システム及び圧縮空気システムと通信することもでき、制御回路は、車両の動作モード及び車両からの電力需要のいずれかに応じて、燃料電池システムから電動可能エアコンプレッサへの空気の流れを制御するように構成されている。特に、制御回路は、車両の動作モード及び車両からの電力需要のうちのいずれか1つの変化に応じて、燃料電池システムから電動可能エアコンプレッサへの空気の流れを制御するように動作可能であり得る。車両の動作モードの変化とは、例えば、燃料電池システムの非アクティブモードから燃料電池システムのアクティブモードへの変化のことであり得る。同様に、車両の電力需要の変化とは、例えば、車両からの電力需要の増加または減少のことであり得る。電動可能エアコンプレッサは、また、燃料電池の起動状態に応じて制御されてもよい。
【0034】
制御ユニットは、受信した制御信号が燃料電池の起動状態を示すことに応答して、上述のバルブ装置のいずれかを制御するように動作可能であり得る。バルブ装置のそれぞれは、車両の動作モードに応じて、制御ユニットによって協調的に制御可能であってもよい。一例として、燃料電池が非アクティブ状態に設定されることを示す制御信号を制御ユニットが受信した場合の動作状況では、制御ユニットは、入口導管及び出口導管のバルブ装置を、閉状態に設定するように制御し、一方、バイパス導管のバルブ装置及び圧縮空気システムの入口バルブ装置をそれぞれ開状態に設定するように制御することができる。このようにして、空気の流れが燃料電池に向けられることはない。むしろ、空気の流れは、バイパス導管内を流れ、制御可能なバルブアセンブリを通って電動可能エアコンプレッサに流れることが可能になる。これにより、エアコンプレッサは、電動可能エアコンプレッサに十分な圧力と流量とを提供するように、アクティブ状態で動作することができる。
【0035】
本明細書で使用される「複数の流体供給位置」という用語は、本明細書で説明されるように、数種類の位置の組み合わせを意味し得ることに留意されたい。厳密には必須ではないが、通常、電動可能エアコンプレッサの空気入口を、エキスパンダの入口側の上流の出口導管位置、及びエアコンプレッサの上流の空気入口導管位置のいずれか1つに流体接続し、さらに、エアコンプレッサの下流の空気入口導管位置、及び周囲環境と流体連通している独立したエアフィルタと流体連通する位置の少なくとも1つに流体接続するための制御可能なバルブアセンブリが提供される。
【0036】
また、制御可能なバルブアセンブリは、車両の動作条件に応じて、出口導管位置及び空気入口導管位置のいずれか1つから、ならびに空気入口導管位置及び前記位置の少なくとも1つから、圧縮空気システムに空気を選択的に導くように構成されている。
【0037】
例示的な一実施形態では、少なくとも2つの位置は、エアコンプレッサの上流の空気入口導管位置と、エアコンプレッサの下流の空気入口導管位置とである。例示的な一実施形態では、少なくとも2つの位置は、エキスパンダの入口側の上流の出口導管位置と、周囲環境と流体連通している独立したエアフィルタと流体連通する位置とである。例示的な一実施形態では、複数の流体供給位置は、少なくとも3つの位置を含み、3つの位置は、少なくともエキスパンダの入口側の上流の出口導管位置と、エアコンプレッサの上流の空気入口導管位置と、エアコンプレッサの下流の空気入口導管位置とである。例示的な一実施形態では、複数の流体供給位置は、少なくとも3つの位置を含み、3つの位置は、少なくともエキスパンダの入口側の上流の出口導管位置と、エアコンプレッサの下流の空気入口導管位置と、周囲環境と流体連通している独立したエアフィルタと流体連通する位置とである。
【0038】
第2の態様によれば、車両のシステムを制御する方法が提供される。このシステムは、燃料電池システムと、空気圧車両装置に圧縮空気を供給するための圧縮空気システムとを含む。燃料電池システムは、アノード側とカソード側とを有する少なくとも1つの燃料電池と、少なくとも1つの燃料電池のカソード側に空気を供給するためにカソード側の入口端に接続された空気入口導管と、空気入口導管に配置されたエアコンプレッサと、周囲環境から空気を受け取るように配置されたエアフィルタであって、エアフィルタは、空気入口導管の入口であり、エアコンプレッサの上流に配置されている、エアフィルタと、カソード側からエキスパンダへ排気流を供給するために、カソード側の出口端とエキスパンダの入口側との間に接続された流体出口導管と、エキスパンダの排気側に接続された排気導管と、を備える。圧縮空気システムは、空気圧車両装置に接続可能な電動可能エアコンプレッサを備える。本システムは、電動可能エアコンプレッサの空気入口を複数の流体供給位置に流体接続するための制御可能なバルブアセンブリをさらに備え、複数の流体供給位置は、エキスパンダの入口側の上流の出口導管位置、エアコンプレッサの上流の空気入口導管位置、エアコンプレッサの下流の空気入口導管位置、及び周囲環境と流体連通する独立したエアフィルタと流体連通する位置から選択される少なくとも2つの位置を含む。この方法は、車両の動作条件を判定することと、車両の判定された動作条件に応じて、複数の流体供給位置から圧縮空気システムに空気を選択的に導くように、制御可能なバルブアセンブリを動作させることと、を含む。換言すれば、制御可能なバルブアセンブリは、車両の判定された動作条件に応じて、出口導管位置、空気入口導管位置、空気入口導管位置、及び圧縮空気システムへの位置のいずれか1つから、圧縮空気システムに、空気を選択的に導くように、制御ユニットによって動作可能である。
【0039】
第2の態様の効果及び特徴は、第1の態様に関して上述したものとほぼ同様である。
【0040】
本方法は、動作条件が燃料電池の性能優先条件に相当する場合、出口導管位置から圧縮空気システムに空気を導くように、制御可能なバルブアセンブリを動作させることをさらに含み得る。本方法は、動作条件が圧縮空気システムの性能優先条件に相当する場合、空気入口導管位置から圧縮空気システムに空気を導くように、制御可能なバルブアセンブリを動作させることをさらに含み得る。本方法は、動作条件が燃料電池の停止条件に相当する場合、空気入口導管位置から圧縮空気システムに空気を導くように、制御可能なバルブアセンブリを動作させることをさらに含み得る。さらに、動作条件が圧縮空気システムの性能優先条件と燃料電池の停止条件との組み合わせに相当する場合、本方法は、燃料電池システムの少なくとも1つの制御バルブ装置を制御することによって燃料電池への空気供給を閉じることと、さらに、燃料電池モータによってエアコンプレッサを動作させて、電動可能エアコンプレッサを予めブーストすることと、を含み得る。
【0041】
一般に、少なくとも燃料電池スタックが動作しているとき、燃料電池システム内では空気の大部分の流れが通常どおり継続する一方で、電動可能エアコンプレッサには空気流のほんの一部だけが導かれることに留意すべきである。
【0042】
この方法は、電動可能エアコンプレッサの起動状態に基づいて、燃料電池システムから圧縮空気システムへの空気の流れを制御することをさらに含むことができる。この方法は、電動可能エアコンプレッサの起動状態に基づいて、入口導管と出口導管との間に延びるバイパスチャネル内の空気の流れ、ならびに少なくとも1つの燃料電池への空気の流れ、及び少なくとも1つの燃料電池からの空気の流れを制御することをさらに含むことができる。この方法は、さらに、制御ユニットからの制御信号が、少なくとも1つの燃料電池の起動状態を示すことに応答して、上述のバルブ装置のいずれか1つを制御することを含んでもよい。バルブ装置のそれぞれは、車両の動作モードに応じて、制御ユニットによって協調的に制御可能であってもよい。
【0043】
第3の態様によれば、電気牽引モータによって少なくとも部分的に推進される車両が提供され、電気牽引モータは、第1の態様に関して上述した実施形態のいずれか1つによる燃料電池システムに電気的に接続されている。
【0044】
第3の態様の効果及び特徴は、第1の態様に関して上述したものとほぼ同様である。
【0045】
燃料電池システムのエアコンプレッサは、吸気の圧力レベルを燃料電池に適したレベルまで増加させるように有利に動作することができる。エアコンプレッサは、吸気の温度レベルを上昇させるように動作することもできる。
【0046】
圧縮空気システムは、一般に、制御可能なバルブアセンブリ及び任意選択で相互接続導管によって燃料電池システムに接続可能なシステムの別個の部分を指すこともある。電動可能エアコンプレッサは、車両の空気圧装置に圧縮空気を供給するように配置されている。一例として、電動可能エアコンプレッサは、受け取った空気を圧縮し、その圧縮空気をエアブレーキシステムに送るように配置することができる。
【0047】
圧縮空気システムには、追加の構成要素が含まれる場合がある。任意選択で、圧縮空気システムには、空気生成モジュレータ(APM)が含まれる場合がある。APMは、圧縮空気を乾燥/洗浄し、それを、エアブレーキ、サスペンション、ギアボックス、または他の何らかの空気圧装置などの圧縮空気消費機器に分配するように構成されている。さらに、制御ユニットは、車両の選択された駆動モードに基づいて、電動可能エアコンプレッサと通信し、それを制御するように構成することができる。
【0048】
空気圧装置は、電動可能エアコンプレッサと流体連通するように配置されている。空気圧装置は、圧縮空気によって動作可能な車両のエアブレーキシステム、車両のサスペンションシステム、車載クレーンシステム、運搬システム、または車両の他の何らかのタイプの補助システムなどの車両空気圧装置であってもよい。空気圧装置はまた、車両に接続可能な外部システムであってもよい。
【0049】
添付の特許請求の範囲及び以下の説明を検討すると、さらなる特徴及び利点が明らかになるであろう。異なる特徴を組み合わせて、本開示の範囲から逸脱することなく、以下に記載されるもの以外の実施形態を作成できることを当業者は認識されよう。
【0050】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施例を説明するためだけのものであり、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用する場合、単数形は、文脈が別途明らかに示さない限り、複数形も含むことを意図する。「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」及び/または「含んでいる(including)」という用語は、本明細書で使用されているときには、述べられている特徴、完全体、ステップ、操作、要素、及び/または構成要素の存在を明示するが、1つ以上のその他の特徴、完全体、ステップ、操作、要素、構成要素、及び/またはそれらの群の存在を排除しないことがさらに理解されよう。
【0051】
特に定義されない限り、本明細書で用いる全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語が、本明細書及び関連技術の文脈でそれらの意味と調和する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書でそのように明示的に定義されない限り、理想化されたまたは過度に形式的な意味では解釈されないことがさらに理解されよう。
【0052】
上記、ならびに追加の目的、特徴、及び利点は、例示的実施形態の以下の説明のための非限定的な詳細な記載を通じてよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】トラックの形態の車両の例示的な実施形態を示す側面図である。
【
図2】圧縮空気システム及び車両空気圧装置と流体連通する燃料電池システムを備えるシステムの例示的な実施形態の概略図である。
【
図3】圧縮空気システム及び車両空気圧装置と流体連通する燃料電池システムを備えるシステムの別の例示的な実施形態の概略図である。
【
図4】例示的な実施形態による燃料電池システムを制御する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
例示的な実施形態を示す添付の図面を参照して、本開示を以下により完全に記載する。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で具体化されてよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろこれらの実施形態は、完璧さと完全さのために提供されている。記載全体を通して、同一の参照文字は同様の要素を指す。
【0055】
特に
図1を参照すると、トラックの形をした車両1が示されている。車両は、車両の車輪を推進させるための牽引モータ101を備える。ここで、牽引モータ101は、バッテリ(図示せず)から、または、以下でさらに詳細に説明する燃料電池システム100から直接電力を受け取るように構成された電気機械の形態で提供される。燃料電池システム100は、システム10の一部である。システム10は、本明細書に記載されるように、燃料電池システム100と流体連通する圧縮空気システム200をさらに備える。車両1は、また、以下にさらに詳細に説明するように、様々な動作及び機能を制御するための制御ユニット114を備える。
【0056】
システム10をより詳細に説明するために、例示的な実施形態によるシステムの概略図である
図2を参照する。システム10は、燃料電池システム100と圧縮空気システム200とを備える。圧縮空気システム200は、さらに、車両の空気圧装置210、または車両に接続された外部の空気圧装置と流体連通するように配置されている。したがって、圧縮空気システム200は、圧縮空気を空気圧装置210に供給するように配置されている。圧縮空気システムのさらなる詳細は以下で説明される。
【0057】
燃料電池システム100は、一般に燃料電池スタックとも呼ばれる少なくとも1つの燃料電池102を備える。少なくとも1つの燃料電池102は、一般に、2つの燃料電池または複数の燃料電池など、2つ以上の燃料電池から構成され得る。燃料電池は、いわゆる燃料電池スタックを形成し得る。燃料電池も同様に、複数の燃料電池スタックに配置することができ、各燃料電池スタックは、スタック構成に配置された複数の燃料電池を含む。燃料電池システム100の燃料電池スタック102に関して、燃料電池スタック102を構成する燃料電池のそれぞれは、一般に、燃料成分として水素を受け取るアノード側と、別の燃料成分として圧縮空気を受け取るカソード側とを備える。燃料電池には数種類あり、主に使用される電解質の種類によって区別されるが、いわゆるプロトン交換膜(PEM:Proton Exchange Membrane)燃料電池は、
図1の車両1などの大型車両での使用に特に適している。したがって、ここでは、燃料電池102は、PEM燃料電池スタックである。
【0058】
図2を参照すると、燃料電池102が概略的に示されており、カソード側のみを示している。すなわち、図を簡略化するためにアノード側は省略されている。燃料電池システムの分野で一般的に使用されているように、周辺機器の構成要素などの他の構成要素を燃料電池システムに含めることもある。
【0059】
燃料電池システム100は、燃料電池102のカソード側の入口端106に接続された入口導管104をさらに備える。入口導管104は、空気をカソード側に供給するように配置されている。
図2に示すように、入口導管104は、周囲環境と流体連通する入口121を有する。燃料電池システム100は、また、燃料電池102のカソード側の出口端110に接続された出口導管108を備える。これにより、排気流は、燃料電池102の出口端110から出口導管108内に供給される。
【0060】
さらに、燃料電池システム100は、エアコンプレッサ112を備える。エアコンプレッサ112は、
図2に示すように、入口導管104に配置されている。具体的には、エアコンプレッサ112は、入口導管104において燃料電池102の上流に配置されている。
【0061】
さらに、燃料電池システム100は、エキスパンダ116、及び任意選択で燃料電池モータ118を備える。エアコンプレッサ112は、エキスパンダ116及び燃料電池モータ118に接続されている。エアコンプレッサ112は、電気コンプレッサまたは機械コンプレッサであってもよい。エキスパンダ116は、タービンであってもよい。エアコンプレッサ及びエキスパンダは、燃料電池システムにおける一般に知られた構成要素であるため、本明細書ではこれ以上説明しない。
【0062】
一例として、
図2に示された例示的な実施形態によれば、エアコンプレッサ112、エキスパンダ116、及び燃料電池モータ118は、コンプレッサシャフト120によって互いに機械的に接続されている。したがって、燃料電池モータ118は、エアコンプレッサ112及びエキスパンダ118を制御し、動作させるように構成されている。エアコンプレッサ112は、周囲の空気122を受け取り、加圧するように構成されている。周囲の空気は、
図2に示すように、エアフィルタ111を介してエアコンプレッサ112に供給される。加圧された周囲の空気は、その後、入口導管104を通って供給され、燃料電池102の入口端106に供給される。
図2に示すように、エアフィルタ111は、エアコンプレッサ112の上流に配置されている。また、エアフィルタ111は、空気入口導管104の入口121に配置されている。したがって、燃料電池システム100は、周囲環境から空気を受け取るように配置されたエアフィルタ111を備える。
【0063】
エキスパンダ116は、出口導管108に接続されており、この結果として、燃料電池102の出口端110から排気流を受け取り、膨張させる。エキスパンダ116で膨張された空気は、燃料電池システム100の排気管124に供給される。換言すれば、出口導管108は、燃料電池のカソード側の出口端110とエキスパンダ116の入口側126との間に接続されて、カソード側からの排気をエキスパンダ116に供給する。したがって、出口導管108はエキスパンダ116の入口側126に接続され、一方、排気導管124はエキスパンダ116の排気側128に接続される。その場合、エキスパンダ116の排気側128は、周囲環境に接続される。あるいは、排気側128を水タンクに接続して排気してもよい。したがって、エキスパンダから排気導管124内に供給される膨張空気を周囲環境に導くことができる。
【0064】
図2に示される例示的な実施形態によって、周囲の空気122は、フィルタ111を介して、エアコンプレッサ112によって受け取られる。エアコンプレッサ112は空気を加圧し、その加圧空気を燃料電池102の入口端106に向けて供給し、そこで電力が生成される。燃料電池102は、出口端110を通してカソード排気を出口導管108内に排出する。排気流はさらにエキスパンダ116に導かれ、エキスパンダ116は空気を膨張させ、膨張した空気を排気導管124に供給する。
【0065】
さらなる代替形態として、例示的な実施形態に示されているように、燃料電池システム100は、ここでは、入口導管104及び出口導管108に接続された加湿器140を備える。加湿器140は、出口導管108から入口導管104に湿度を移動させるように構成されている。加湿器は、燃料電池102からの吸気流及び排気流を所望の湿度レベルに制御することができる。
【0066】
図2に示すように、燃料電池システム100は、入口導管104に配置された給気インタークーラなどの給気冷却器150を備えることもできる。一例として、給気冷却器150は、コンプレッサ112と燃料電池102の入口端106との間で流体連通するように配置されている。給気冷却器150を加湿器140と組み合わせて設ける場合、給気冷却器150は、エアコンプレッサ112と加湿器140との間で流体連通するように配置されている。給気冷却器150は、吸気が燃料電池102の入口端106に供給される前に、吸気を制御可能に調整するように構成されている。給気冷却器150は、当技術分野で一般に知られているように、ここでは車両1の冷却システムまたは冷却回路152に接続されている。図示していないが、当技術分野で一般に知られているように、燃料電池102(燃料電池スタック)は一般に冷却回路に接続されていることも容易に理解されるべきである。
【0067】
入口導管104は、いくつかの副導管及び追加の構成要素を含むことができることに留意されたい。
図2に示す例示的な実施形態では、エアコンプレッサ112とカソード側の入口端106との間に延在する入口導管104の一部は、第1の入口導管部分154、第2の入口導管部分156、及び給気冷却器150を備える。第1の入口導管部分154は、エアコンプレッサ112を給気冷却器150に接続し、第2の入口導管156は、給気冷却器150をカソード側の入口端106に接続する。
【0068】
図2において、入口導管104及び出口導管108は、それぞれ第1の導管及び第2の導管によって規定される場合、加湿器140は、第2の入口導管部分156及び第1の出口導管部分162に接続される。
【0069】
上述したように、システム10はまた、燃料電池システム100と流体連通する圧縮空気システム200を備える。したがって、燃料電池システム100及び圧縮空気システム200は、カソード側から圧縮空気システム200への空気の部分的な流れを可能にするように配置されている。燃料電池システム100は、
図2~
図4に関連して以下でさらに説明するように、制御可能なバルブアセンブリ300に接続され、これと流体連通している。
【0070】
圧縮空気システムは一般に、空気を一定のレベルまで加圧して、安定した空気流の流れを生成するように構成されており、これを空気圧装置の適切な機能に使用することができる。圧縮空気システムは、一般に、コンプレッサ、空気冷却器、エアレシーバタンク、乾燥機及び分配システムなどの、いくつかの構成要素を含むが、システム10に適した圧縮空気システムの一例を、ここでさらに説明する。
【0071】
図2に示すように、圧縮空気システム200は、電動可能エアコンプレッサ(EOAC:electrically operable air compressor)220を備える。電動可能エアコンプレッサ220は、燃料電池システム100(
図2)から、または、燃料電池システム100及び独立したエアフィルタ190(
図3)から空気を受け取るための空気入口221を備える。電動可能エアコンプレッサ220は、受け取った空気を圧縮し、その圧縮空気を、圧縮空気によって駆動される空気圧装置210に送るように配置されている。したがって、空気圧装置210は、電動可能エアコンプレッサ220と流体連通している。この例では、空気圧装置210は、ブレーキシステムである。換言すれば、電動可能エアコンプレッサ220は、車両のブレーキシステムに圧縮空気を供給するように配置されている。圧縮空気は、一般に、ブレーキ機能を実現するための主な作動流体である。ただし、圧縮空気システムは、車両のサスペンションシステム、車載クレーンシステム、運搬システム、CLBなどの空気圧について制御可能なアクチュエータ(すなわち(背圧装置)、EGRバルブ、軸受システム用の緩衝空気、または圧縮空気によって動作可能な車両の他の何らかのタイプの補助装置及び/または補助システムなど、車両の他のタイプの空気圧装置に接続することもできる。空気圧システムは、車両が移動しているときは、様々な運転段階/運転モードに従って、及び/またはトラックのタイプに関連する場合、車両がゼロ速度で作業しているときは、様々な動作モードに従って、異なるモードで動作し得る。
【0072】
電動可能エアコンプレッサ220は、一般に、電気モータによって動作される。電気モータは、モータ118であってもよく、または車両に含まれる別の電気モータ(図示せず)であってもよい。したがって、電動可能エアコンプレッサは、電気作動式のエアコンプレッサである。電動可能エアコンプレッサ220と電気モータとの間の接続は機械的である。一般に、電動可能エアコンプレッサ220と電気モータのロータとの間には、クラッチまたは選択的接続のためのいかなる装置も設けられていない。電気モータは、通常、車両のバッテリ及び/または燃料電池システムからの電力によって電力を供給される。車両のタイプに応じて、他の選択肢も考慮される場合がある。任意選択で、圧縮空気システムには、空気生成モジュレータ(APM)(図示せず)が含まれる場合がある。APMの機能は、圧縮空気を乾燥/洗浄し、それを、エアブレーキ、サスペンション、ギアボックス、または他の何らかの空気圧装置などの圧縮空気消費機器に分配することである。さらに、制御ユニット114は、ここでは、車両の選択された駆動モードに基づいて、電動可能エアコンプレッサ220を制御するように構成されている。
【0073】
再び
図2に示される燃料電池システム100に戻ると、ここでの燃料電池システム100は、いくつかの任意選択の水管理構成要素170及び172を備える。水管理構成要素170及び172は、出口導管108内に配置されている。水管理構成要素170及び172は、水分離器として機能するように、すなわち、燃料電池からの排気空気から水を除去するように適合されている。代替として、または追加として、水管理構成要素は、加湿器140に含まれていてもよい。1つ以上の水管理構成要素を備えている燃料電池システム100では、水管理構成要素の下流で圧縮空気システム200に空気を取り込むことが好ましい場合がある。出口導管に水管理構成要素を全く備えない燃料電池システムを提供することも可能であり得る。したがって、これらの水管理構成要素は、一般に、燃料電池システム100の任意選択の構成要素である。
【0074】
図2に示す例示的な実施形態では、燃料電池102の出口端110とエキスパンダ116の入口側126との間に延在する出口導管108の一部は、第1の出口導管部分162と、第2の出口導管部分164と、水管理構成要素172とを備える。さらに、
図2に示すように、第1の出口導管部分162は、燃料電池102の出口端110を水管理構成要素172の入口側171に接続し、第2の出口導管164は、水管理構成要素172の出口側173をエキスパンダ116の入口側126に接続する。さらに、
図2に示すように、第1の出口導管162は、燃料電池102の出口端110を、燃料電池102の出口端110とエキスパンダ116の入口側126との間に流体的に配置された水管理構成要素170及び加湿器140と相互接続する。構成要素の他の配置も可能であり得る。
【0075】
任意選択で、
図2に示すように、燃料電池システム100は、燃料電池システム100のカソード側における空気の流れ方向を調整するための1つ以上のバルブ192、193、194を備え得る。バルブ装置192、193、194は、一般に、燃料電池102の停止時に、特定の方向の空気の流れを阻止し、及び/または燃料電池102を周囲環境から遮断するように構成される。一例として、バルブ装置のそれぞれは、遮断バルブとも呼ばれる従来のオンオフバルブである。オンオフバルブは、ボールバルブ、バタフライバルブ、ゲートバルブ、プラグバルブなど、様々な異なる方法で設けることができる。
【0076】
図2に示される燃料電池システム100は、第1の出口導管部分162内に配置された出口導管バルブ装置192を備える。出口導管バルブ装置192は、燃料電池102が非アクティブ状態または非動作状態にあるときに、空気が出口導管108内で燃料電池102に流れ得るのを防ぐように構成される。一例として、燃料電池の非アクティブ状態または非動作状態は、燃料電池システムが停止されているときの状態に相当する。換言すれば、出口導管バルブ装置192は、燃料電池システム100の排気側124の周囲環境から、非アクティブ状態または非動作状態の燃料電池102への空気の流れを阻止するように動作可能である。出口導管バルブ装置192は、制御ユニット114によって制御可能である。一例として、出口導管バルブ装置192は、制御ユニット114からの制御信号に応答して、出口導管108内の流路を開閉するように構成されている。したがって、燃料電池システム100が動作状態にあるとき、出口導管バルブ装置192は制御ユニット114によって開状態に制御され、その結果、燃料電池102から圧縮空気システム200への空気の流れが可能になる。しかしながら、燃料電池システム100が非動作状態にあるとき、出口導管バルブ装置192は、制御ユニット114によって閉状態に制御され、その結果、周囲環境から燃料電池102への空気の流れが防止される。
【0077】
さらに、
図2に示す燃料電池システム100は、第2の入口導管部分156内に配置された入口導管バルブ装置193を備える。入口導管バルブ装置193は、燃料電池102が非アクティブ状態または非動作状態にあるときに、空気が出口導管104内で燃料電池102に流れ得るのを防ぐように構成される。換言すれば、入口導管バルブ装置193は、燃料電池システム100の入口側121の周囲環境から、非アクティブ状態または非動作状態の燃料電池102への空気の流れを阻止するように動作可能である。入口導管バルブ装置193は、制御ユニット114によって制御可能である。一例として、入口導管バルブ装置193は、制御ユニット114からの制御信号に応答して、入口導管104内の流路を開閉するように構成されている。したがって、燃料電池システム100が動作状態にあるとき、入口導管バルブ装置193は、制御ユニット114によって開状態に制御され、その結果、121の周囲環境から燃料電池102への空気の流れが可能になる。しかしながら、燃料電池システム100が非動作状態にあるとき、入口導管バルブ装置193は、制御ユニット114によって閉状態に制御され、その結果、121の周囲環境から燃料電池102への空気の流れが防止される。
【0078】
一般に、燃料電池スタックが非アクティブ状態及び/または停止状態にあるとき、バルブ192及び193は通常、閉状態に設定される。そうしないと、濾過されていない空気/排気、またはいわゆるシステムの乾燥によって、燃料電池103への逆流がないように制御することができない可能性がある。
【0079】
さらに、
図2に示すように、
図2に示す燃料電池システム100は、燃料電池バイパス導管195を備える。燃料電池バイパス導管195は、入口導管104と出口導管108との間に延びる。一例として、
図2に示すように、燃料電池バイパス導管195は、第1の入口導管部分154の位置及び第2の出口導管部分162の位置に接続されている。つまり、燃料電池バイパス導管195は、燃料電池102の上流の入口導管の位置と、燃料電池102の下流の出口導管の位置とに接続されている。任意選択で、燃料電池バイパス導管195は、バイパス導管バルブ装置194を備える。バイパス導管バルブ装置194は、制御ユニット114からの制御信号に応じて燃料電池バイパス導管195を開閉するように構成されている。一例として、燃料電池システム100が動作状態にあるとき、バイパス導管バルブ装置194は制御ユニット114によって閉状態に制御され、これにより、燃料電池102に空気を通過させながらも、バイパス導管195内の空気の流れが防止される。他方、圧縮空気システムが動作するとき、例えば電動可能エアコンプレッサ220が出口導管108から空気を受け取って圧縮するとき、バイパス導管バルブ装置194は制御ユニット114によって開状態に制御され、これにより、バイパスチャネル195内の空気の流れが可能になる。このようにして、電動可能エアコンプレッサ220が、124の周囲環境から出口導管108内を逆流する可能性がある濾過されていない空気を使用するリスクを低減することが可能になる。
【0080】
給気冷却器の位置に応じて、バイパス導管バルブ装置194及びバイパス導管195は、給気冷却器の上流に配置され得る。そのような例では、バイパス導管バルブ装置194は、三方バルブであってもよい。
【0081】
一般に、厳密には必要ではないが、バルブ装置192、193、及び194のそれぞれは、車両の動作モードに応じて、制御ユニット114によって協調的に制御可能である。ここで、車両の動作モードとは、燃料電池システム100の動作モード及び圧縮空気システム200の動作モードを指す。一例として、バルブ装置192、193、194は、制御ユニット114からの制御信号が燃料電池102の起動状態を示すことに応答して、動作可能である。制御ユニット114が、燃料電池102を非アクティブ状態に設定すべき(停止させるべき)であることを示す制御信号を受信した場合、制御ユニット114は、バルブ装置192、193を閉状態に設定するように制御し、その一方で、バルブ装置194を開状態に設定するように制御する。このようにして、空気の流れが燃料電池102に向けられることはない。むしろ、空気の流れは、バイパス導管195を通って電動可能エアコンプレッサ220に流れることが可能になる。これにより、エアコンプレッサ112は、電動可能エアコンプレッサ220に十分な圧力と流量とを提供するように、アクティブ状態で動作することができる。しかしながら、上述したように、システム100の通常の動作は、空気の流れがバルブ194及びバイパス導管195を通過するのではなく、燃料電池102を通過し、次いで導管224及びバルブ225を通過することである。
【0082】
要約すると、システム10は、燃料電池システム100及び圧縮空気システム200の起動状態(例えば、電動可能エアコンプレッサ220の起動状態)に応じて動作可能ないくつかのバルブ装置192、193、194を備える。
【0083】
燃料電池システム100から圧縮空気システム200への空気の流れを制御するために、システム10は、ここで
図2に関連してさらに説明するように、制御可能なバルブアセンブリ300を備える。
図2には、システム10の例示的な一実施形態が示されており、圧縮空気システム200は、制御可能なバルブアセンブリ300によって、入口導管104と出口導管108との両方で、燃料電池システム100に接続されている。
【0084】
図2に示すように、制御可能なバルブアセンブリ300は、電動可能エアコンプレッサ220の空気入口221を、エキスパンダ116の入口側126の上流の出口導管位置180、エアコンプレッサ112の上流の空気入口導管位置184、及びエアコンプレッサ112の下流の空気入口導管位置186に流体接続するように配置され、構成されている。一例として、制御可能なバルブアセンブリ300は、3つの入口ポート301、302、303と1つの出口ポート310とを備える。
【0085】
特に、制御可能なバルブアセンブリ300の入口ポート301は、燃料電池システムのエアコンプレッサ112の上流の空気入口導管位置184に流体接続される。一例として、制御可能なバルブアセンブリ300の入口ポート301は、相互接続導管226によってエアコンプレッサ112の上流の空気入口導管位置184に流体接続されている。同様に、制御可能なバルブアセンブリ300の入口ポート302は、燃料電池システムのエアコンプレッサ112の下流の空気入口導管位置186に流体接続される。一例として、制御可能なバルブアセンブリ300の入口ポート302は、相互接続導管228によってエアコンプレッサ112の下流の空気入口導管位置186に流体接続されている。
図2では、空気入口導管位置186は、第2の入口導管部分156にあり、給気冷却器150の下流にある。さらに、
図2では、空気入口導管位置186は、加湿器140の上流にある。好ましくは、空気入口導管位置186もまた、入口導管バルブ装置193の上流にある。
【0086】
同様に、制御可能なバルブアセンブリ300の入口ポート303は、燃料電池システム100の出口導管位置180に流体接続される。一例として、制御可能なバルブアセンブリ300の入口ポート303は、相互接続導管224によって出口導管位置180に流体接続されている。電動可能エアコンプレッサ220の空気入口221を、バルブアセンブリ300を介して、出口導管108に接続することによって、電動可能エアコンプレッサ220は、燃料電池102のカソード側からの排気を受け取るように配置されている。
図2では、出口導管位置180は、第2の出口導管部分164にある。
【0087】
同様に、制御可能なバルブアセンブリ300の出口ポート310は、相互接続流体導管240によって電動可能エアコンプレッサ220の入口に流体接続される。
【0088】
制御可能なバルブアセンブリ300は、ここでは、車両の動作条件に応じて、出口導管位置180、空気入口導管位置184、及び空気入口導管位置186から圧縮空気システム200に空気を選択的に導くように構成されている。したがって、制御可能なバルブアセンブリ300は、選択バルブアセンブリとして提供される。
【0089】
車両の動作条件は、一般に、車両の定常状態条件に相当する。一例として、動作条件とは、燃料電池の性能優先条件、圧縮空気システムの性能優先条件、及び燃料電池の停止条件のうちのいずれかをいう。
【0090】
上述したように、システム10は、制御ユニット114によって動作可能である。制御ユニット114は、制御可能なバルブアセンブリ300を制御することによって、燃料電池システム100から圧縮空気システム200への空気の流れを制御するように構成された制御回路(図示せず)を備える。特に、制御ユニット114は、車両の動作条件を示す制御信号に基づいて制御可能なバルブアセンブリ300を制御するために、制御可能なバルブアセンブリ300と通信するように構成されている。制御ユニット114はまた、例えば車両の現在の動作モードを示す信号を受信するために車両制御システムに接続されてもよい。一般に、燃料電池102の電力は、電動可能エアコンプレッサ220への空気流を制御するための1つの入力データである。したがって、燃料電池102の電力は、電動可能エアコンプレッサ220のコンプレッサ速度にとって決定的なものとなり得る。特に、制御ユニット114は、車両の動作モード及び車両からの電力需要のうちのいずれか1つの変化に応じて、燃料電池システム100から電動可能エアコンプレッサ220への空気の流れを制御するように動作可能である。加えて、または代わりに、電動可能エアコンプレッサ220は、燃料電池102の起動状態に応じて制御されてもよい。
【0091】
図2に示される例示的な実施形態では、制御可能なバルブアセンブリ300は、動作条件が燃料電池の性能優先条件に相当する場合、出口導管位置180から圧縮空気システム200に空気を導くように構成される。この位置は、供給される空気がより高い含水量を含み、燃料電池の性能にとってより有利である可能性があり、空気が(入口導管104内の空気と比較して)比較的低圧であること、及び空気の温度が、入口導管104内の空気の温度と少なくとも同様であるか、またはその温度よりもわずかに高いことのため、少なくとも部分的には車両にとって好ましい。さらに、燃料電池は水素ガスと共に酸素を消費するので、出口導管から供給される空気に含まれる酸素が少なくなり得、そのため、圧縮空気システムに供給される酸化性ガスが少なくなる。酸化性ガスの少ない圧縮空気は、エアブレーキシステムなどの空気圧装置にとって利点となり得る。
【0092】
図2に示される例示的な実施形態では、制御可能なバルブアセンブリ300は、さらに、動作条件が圧縮空気システムの性能優先条件に相当する場合、空気入口導管位置186から圧縮空気システム200に空気を導くように構成される。この位置は、比較的低い湿度(大気湿度)を有する空気を供給することを可能にし、この湿度は電動可能エアコンプレッサ220にとってより好ましい。さらに、この位置は、燃料電池システム100の排気側/出口導管と同様の温度またはそれよりわずかに低い温度の空気を供給することを可能にする。一般に、厳密には必要ではないが、入口導管104から空気を供給するこの選択肢は、電動エアコンプレッサ220の動作と調整された方法でのコンプレッサ112の速度など、燃料電池システムのエアコンプレッサ112を制御することから利益を得ることができる。
【0093】
図2に示される例示的な実施形態では、制御可能なバルブアセンブリ300は、さらに、動作条件が燃料電池の停止条件に相当する場合、空気入口導管位置184から圧縮空気システム200に空気を導くように構成される。燃料電池の停止条件の一例は、旅行の開始に対応する。そのような燃料電池の優先停止条件は、車両が始動する際に、圧力タンク内の圧力を高めて、その結果、電動可能エアコンプレッサを作動させるという要望及び必要性がある場合に有益である可能性がある。燃料消費/劣化/騒音のため、旅行の開始時に燃料電池を停止モードに維持し、その後、バッテリのみで動作させることも関連する可能性がある。
【0094】
制御可能なバルブアセンブリ300は、流体用の制御バルブの技術分野で一般に知られているように、バルブアクチュエータに対応するソレノイドによって有利に作動される。しかしながら、制御ユニット114からの制御信号に応じた制御可能なバルブアセンブリの電気的、空気圧的及び油圧的作動など、多くのタイプの作動が利用可能である。制御可能なバルブアセンブリは、バルブ本体の内部に配置された作動ピストンを備えることもできる。一例として、制御可能なバルブアセンブリ300は、必要に応じて流体の流れをそらすために、バルブ本体内のいくつかのピストンを作動させることによって動作する。1つのピストンが閉位置に作動されると、それは本体に対してシールを形成し、それによってバルブの1ポートを通る全ての流れが停止し、一方、ピストンが開位置に作動されると、流体は入口から出口へ流れることができるようになる。上記は、燃料電池システム100と圧縮空気システム200との間の空気の流れを制御するために使用できる可能な制御可能なバルブアセンブリ300の一例にすぎない。
【0095】
次に、上述のシステム10における空気の流れを制御する方法の様々な例示的な実施形態について以下に説明する。第1の例示的な実施形態によれば、車両は、燃料電池102が電力を生成するために追加の電力を必要としない通常動作モードで動作する。さらに、この通常動作モードでは、圧縮空気システム200は通常モードに従って動作し、電動エアコンプレッサ220からの圧縮空気は、全く、またはほとんど必要とされない。次に、制御ユニット114が、車両10の出力を増加させたいという要望を示す制御信号、典型的には燃料電池102からの出力を増加させることを示す制御信号を受信すると、制御ユニット114は、燃料電池の性能(すなわち、燃料電池の性能優先条件)を優先することを決定し、したがって、空気が出口導管位置から電動可能エアコンプレッサに供給されるように空気の流れを制御するために、制御信号を制御可能なバルブアセンブリ300に送信する。別の動作状況では、制御ユニット114は、例えば重量物の緊急のブレーキイベントのため、空気圧装置の出力を増加したいという要望を示す制御信号を受信する。それに応じて、制御ユニット114は、圧縮空気システムの性能を優先することを決定し(すなわち、圧縮空気システムの性能優先条件)、したがって、空気が空気入口導管位置186から電動可能エアコンプレッサに供給されるように空気の流れを制御するために、制御信号を制御可能なバルブアセンブリ300に送信する。
【0096】
さらに別の運転状況では、制御ユニット114は、燃料電池を停止する決定を示す制御信号を受信する。それに応じて、制御ユニット114は、そのような決定が燃料電池の停止条件に相当すると判定し、したがって、空気が空気入口導管位置184から電動可能エアコンプレッサに供給されるように空気の流れを制御するために、制御信号を制御可能なバルブアセンブリ300に送信する。あるいは、
図3に示すように、制御ユニット114は、空気が独立したエアフィルタ位置188から電動可能エアコンプレッサに供給されるように空気の流れを制御するために、制御可能なバルブアセンブリ300に制御信号を送信する。
【0097】
別の例示的な実施形態では、
図3に示すように、システム10は、周囲環境と流体連通する独立したエアフィルタ190を備える。独立したエアフィルタは、システム10の別個の部分であってもよく、または車両の別の空気圧システムの一体部分であってもよい。エアフィルタ190は、外部から新鮮な空気を受け取るために周囲環境と流体連通している。したがって、
図3では、制御可能なバルブアセンブリ300は、電動可能エアコンプレッサの空気入口221を、エキスパンダの入口側の上流の出口導管位置180、エアコンプレッサ112の上流の空気入口導管位置184、及び周囲環境と流体連通している独立したエアフィルタ190と流体連通する位置188に流体接続するように配置され、構成されている。
【0098】
図3において、制御可能なバルブアセンブリ300の入口ポート301は、システムの独立したエアフィルタ190に流体接続されている。一例として、制御可能なバルブアセンブリ300の入口ポート301は、相互接続導管229によって、独立したエアフィルタ190に流体接続される。
図3の制御可能なバルブアセンブリの入口ポート301の上記の接続に加えて、バルブアセンブリ300の入口ポート及び出口ポートは、
図2に関連して上述したものに対応する。
【0099】
制御可能なバルブアセンブリ300は、ここでは、車両の動作条件に応じて、出口導管位置180、空気入口導管位置184、及び位置188から圧縮空気システム200に空気を選択的に導くように構成されている。したがって、制御可能なバルブアセンブリ300は、選択バルブアセンブリとして提供される。
【0100】
図3に示す例示的な実施形態では、制御可能なバルブアセンブリ300が、電動可能エアコンプレッサの空気入口221を独立したエアフィルタ位置188に流体接続するように配置され、構成されているとき、制御可能なバルブアセンブリ300はまた、動作条件が燃料電池の停止条件に相当する場合、独立したエアフィルタ位置188から圧縮空気システム200に空気を導くように構成されている。
【0101】
図2及び
図3における制御可能なバルブアセンブリ300の上記の配置では、3つである複数の流体供給位置を有するシステムに関して説明してきたが、システム10が
図2及び
図3に関して上述した配置を組み合わせ得ることは容易に理解されるべきである。言い換えれば、さらに別の例示的な実施形態では、明示的には示されていないが、制御可能なバルブアセンブリ300は、電動可能エアコンプレッサ220の空気入口221を、エキスパンダ116の入口側126の上流の出口導管位置180、エアコンプレッサ112の上流の空気入口導管位置184、エアコンプレッサ112の下流の空気入口導管位置186、及び独立したエアフィルタ位置188に流体接続するように配置され、構成されている。したがって、制御可能なバルブアセンブリ300のそのような配置及び構成では、制御可能なバルブアセンブリは、
図2及び
図3に関して上述した接続のそれぞれに対して、4つの入口ポートを備えることができる。この場合、バルブアセンブリは、電動可能エアコンプレッサ220に空気を供給するために、4つの位置180、184、186、または188のうちの1つの位置を選択する。あるいは、1つの3方向バルブと、それに続く2方向バルブとを備えた制御アセンブリ、またはその逆の制御アセンブリを提供することが可能であり得る。言い換えれば、制御可能なバルブアセンブリは、最初に空気がFCシステムから取り込まれるか、独立したエアフィルタから取り込まれるかを選択し、続いて空気がFCカソードシステムから取り込まれる場合には、さらに位置180、184、または186のうちの1つを選択するように、制御ユニットによって動作可能である。
【0102】
さらに、制御可能なバルブアセンブリ300は、電動可能エアコンプレッサ220の空気入口221を上記の流体供給位置180、184、186、及び188のうちの2つに流体接続するように配置され、構成され得る。したがって、例示的な一実施形態(明確に図示せず)では、少なくとも2つの位置は、エアコンプレッサ112の上流の空気入口導管位置184と、エアコンプレッサ112の下流の空気入口導管位置186とである。例示的な一実施形態では、少なくとも2つの位置は、エキスパンダ116の入口側の上流の出口導管位置180と、周囲環境と流体連通している独立したエアフィルタ190と流体連通する位置188とである。これらの例示的な実施形態では、制御可能なバルブアセンブリ300は、1つの出口と2つの入口とを有する選択バルブであってもよい。
【0103】
図2には示されていないが、燃料電池システム100は、制御ユニット及びシステムにさらなる制御データを提供するために、1つ以上の温度センサ及び圧力センサを備え得ることも容易に理解されるべきである。燃料電池システムにおけるそのようなセンサの適用は、当技術分野で一般的に知られているように、一般に、燃料電池システム及び車両のタイプを考慮して配置されている。燃料電池システムは、燃料電池内、または燃料電池のハウジング内に、温度センサを含むこともできる。これにより、燃料電池の温度レベルを決定することができる。
【0104】
また、上述したように、システム10のさらなる例示的な実施形態が
図3に示されている。
図2の燃料電池システムと
図3の燃料電池システムとは、
図2に説明し図示した上述の特徴を共有する。ただし、
図2に関連して説明したように、
図3の制御可能なバルブアセンブリ300は、燃料電池システム100のフィルタ111の位置184ではなく、フィルタ190の位置188に接続される点が異なる。
【0105】
図2及び
図3のいずれか1つに記載された燃料電池システム100を、上記の構成要素及び特徴の一部を用いることなく、提供することも可能であり得る。一例として、明示的に図示されていないが、システム10は、バルブ192、193、194のうちの1つ以上、及びバイパス導管195、ならびに水管理構成要素を備えない燃料電池システム100を含んでもよい。
【0106】
制御ユニット114に関しては、制御ユニットは、例えば車両に備えられた電子制御ユニット(ECU)であってもよい。しかしながら、制御ユニットは、同様に、いくつかのサブ制御ユニット(図示せず)によって提供されてもよく、制御ユニットのそれぞれは、一般に、対応する制御回路、プロセッサなどを備え得る。一例として、燃料電池システムは第1のサブ制御ユニットを備え、圧縮空気システムは第2のサブ制御ユニットを備え、サブ制御ユニットは、制御ユニット114を形成するように互いに通信して構成されている。この目的を達成するために、サブ制御ユニットは、上で説明したように、車両の動作モード及び車両からの電力需要のうちのいずれか1つに応じて、燃料電池システムから電動可能エアコンプレッサへの空気の流れを制御するように集合的に構成される。
【0107】
圧縮空気システムが空気生成モジュレータであるAPM(air production modulator)を備える一例では、ECUは燃料電池システム100を制御するように構成され得る一方で、APMに含まれるサブ制御ユニットは電動可能エアコンプレッサ220を制御するように構成され得る。さらに、そのような例では、ECU、及びAPMのサブ制御ユニットは、例えば圧縮空気を空気圧装置などの下流の構成要素に供給するための電動可能エアコンプレッサの必要な入口圧力を示す信号を受信し転送するために、互いに通信するように配置されている。制御ユニットの他の配置もあり得る。
【0108】
制御ユニット114、及び対応するサブ制御ユニットのそれぞれは、データもしくは信号処理を行うための、またはメモリに格納されたコンピュータコードを実行するための1つ以上のハードウェア構成要素を含み得る。メモリは、本明細書に記載の様々な方法を完了するまたは容易にするためのデータ及び/またはコンピュータコードを格納するための1つ以上のデバイスであり得る。メモリには、揮発性メモリまたは不揮発性メモリが含まれ得る。メモリは、データベース構成要素、オブジェクトコード構成要素、スクリプト構成要素、または本明細書の様々なアクティビティをサポートするための他の何らかのタイプの情報構造体を含み得る。例示的な実施形態によれば、任意の分散型またはローカルメモリデバイスが、本明細書のシステム及び方法によって利用され得る。例示的な実施形態によれば、メモリは、制御回路またはプロセッサに(例えば、回路、または任意の他の有線、無線、もしくはネットワーク接続を介して)通信可能に接続され、本明細書に記載の1つ以上のプロセスを実行するためのコンピュータコードを含む。
【0109】
要約するために、例示的な実施形態によるシステムを制御する方法500のフローチャートである
図4を参照する。動作中、制御ユニット114は、車両の動作条件を判定し(S10)、さらに、車両の判定された動作条件に応じて、複数の流体供給位置、例えば、出口導管位置180、空気入口導管位置184、空気入口導管位置186、及び位置188のうちの2つまたは3つの位置から圧縮空気システムに空気を選択的に導くように、制御可能なバルブアセンブリ300を動作させる(S20)。したがって、制御ユニット114は、燃料電池システム100から圧縮空気システム200への空気の流れを制御する。様々な動作条件の詳細な例示的実施形態が上で説明されている。一例として、この方法は、動作条件が燃料電池の性能優先条件に相当する場合、出口導管位置180から圧縮空気システムに空気を導くこと、動作条件が圧縮空気システムの性能優先条件に相当する場合、空気入口導管位置186から圧縮空気システムに空気を導くこと、動作条件が燃料電池の停止条件に相当する場合、空気入口導管位置184から圧縮空気システムに空気を導くこと、を行うように制御可能なバルブアセンブリを制御することを含む。一方、この方法は、動作条件が圧縮空気システムの性能優先条件と燃料電池の停止条件との組み合わせに相当する場合、燃料電池システムの少なくとも1つの制御バルブ装置192、193、194を制御することによって、燃料電池への空気供給を閉じることと、さらに燃料電池モータ118によってエアコンプレッサ112を動作させて、電動可能エアコンプレッサ220を予めブーストすることとを含む。
【0110】
したがって、制御ユニット114は、一般に、電動可能エアコンプレッサ220及びエアコンプレッサ112とも通信していることに留意すべきである。さらに、制御ユニット114は、電動可能エアコンプレッサ220の起動状態に応じて、エアコンプレッサ112を動作させるように構成される。特に、制御ユニット114は、電動可能エアコンプレッサ220の起動状態に応じて、エアコンプレッサ112のコンプレッサ速度空気流量を調整するように構成されている。
【0111】
上述のシステム10の結果、電動可能エアコンプレッサ220は、車両1の動作条件に応じて、電動可能エアコンプレッサ220が関与する正確な動作を可能にさせるように、システムの適切な位置からの空気によって良好に動作可能となり得る。また、燃料電池システム100の燃料電池カソード側でフィルタ111からの濾過空気を、車両1の圧縮空気システム200の電動車両用エアコンプレッサ220をブーストさせるのに利用することが可能になる。特に、燃料電池空気入口からの空気を使用することにより、別個のエアフィルタを必要としない圧縮空気システムを提供することが可能になり、例えば、車両ブレーキコンプレッサ入口における追加のフィルタを省略することが可能になる。したがって、システム10は、燃料電池システム及び圧縮空気システムを備えた、より単純でありながら効果的なシステムを提供する。
【0112】
当然のことながら、本開示は、前述して図面に例示した実施形態に限定されず、むしろ、当業者であれば分かるように、添付の請求項の範囲内で多くの変形及び変更を行ってもよいことが理解される。
【国際調査報告】