(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】骨形成不全症の治療における抗スクレロスチン抗体の使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240927BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240927BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 Y
A61P19/08
C07K16/18 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518919
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 US2022077259
(87)【国際公開番号】W WO2023056355
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2022-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516052375
【氏名又は名称】メレオ バイオファーマ 3 リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】513252910
【氏名又は名称】ウルトラジェニックス ファーマシューティカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マキノン,アラステア
(72)【発明者】
【氏名】ミストリー,アルン
(72)【発明者】
【氏名】カッキス,エミル
(72)【発明者】
【氏名】オミンスキー,マイケル,エス.
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
【課題】骨形成不全症(OI)は、骨の脆弱性と骨量の減少を特徴とする結合組織の稀な遺伝性障害である。OIには、常にではないが主にI型コラーゲンをコードする遺伝子の変異から生じる一群の遺伝性障害が含まれる。症例の約85%は、I型コラーゲンをコードする2つの遺伝子(COL1A1及びCOL1A2)のいずれかの変異に関連している。臨床的に、OIは、外傷を伴わずに簡単に骨折してしまう骨の脆弱性を特徴とする。
【解決手段】治療有効量の抗スクレロスチン抗体を患者に投与することを含む、骨形成不全症患者の治療方法及び投与計画を開示する。本発明はまた、特定の投与計画に従って治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に投与することを含む、骨形成不全症の治療に使用するための抗スクレロスチン抗体を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者に治療有効量の抗スクレロスチン抗体を少なくとも連続13か月間にわたって各月に投与することを含む、前記ヒト患者における骨形成不全症(OI)の治療方法。
【請求項2】
前記抗スクレロスチン抗体が、
(a) 配列番号70のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)ポリペプチド配列、及び/または
(b) 配列番号81のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)ポリペプチド配列
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗スクレロスチン抗体が、配列番号70に記載のアミノ酸配列を含むVHポリペプチド配列、及び配列番号81に記載のアミノ酸配列を含むVLポリペプチド配列を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗スクレロスチン抗体が、
(a) 配列番号4のアミノ酸配列を有するHCDR1、
(b) 配列番号15のアミノ酸配列を有するHCDR2、
(c) 配列番号26のアミノ酸配列を有するHCDR3、
(d) 配列番号37のアミノ酸配列を有するLCDR1、
(e) 配列番号48のアミノ酸配列を有するLCDR2、及び
(f) 配列番号59のアミノ酸配列を有するLCDR3
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗スクレロスチン抗体が、
(a) 配列番号178のアミノ酸配列を有するHCDR1、
(b) 配列番号179のアミノ酸配列を有するHCDR2、
(c) 配列番号26のアミノ酸配列を有するHCDR3、
(d) 配列番号37のアミノ酸配列を有するLCDR1、
(e) 配列番号180のアミノ酸配列を有するLCDR2、及び
(f) 配列番号181のアミノ酸配列を有するLCDR3
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗スクレロスチン抗体が、
(a) 配列番号4のアミノ酸配列を有するHCDR1、
(b) 配列番号179のアミノ酸配列を有するHCDR2、
(c) 配列番号26のアミノ酸配列を有するHCDR3、
(d) 配列番号37のアミノ酸配列を有するLCDR1、
(e) 配列番号180のアミノ酸配列を有するLCDR2、及び
(f) 配列番号181のアミノ酸配列を有するLCDR3
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗スクレロスチン抗体が、
(a) 配列番号198のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有するVHポリペプチド配列、及び/または
(b) 配列番号199のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有するVLポリペプチド配列
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗スクレロスチン抗体が、配列番号198のアミノ酸配列を含むVHポリペプチド配列、及び配列番号199のアミノ酸配列を含むVLポリペプチド配列を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗スクレロスチン抗体が、
(a) 配列番号202のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有するVHポリペプチド配列、及び/または
(b) 配列番号203のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有するVLポリペプチド配列
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記抗スクレロスチン抗体が、配列番号202のアミノ酸配列を含むVHポリペプチド配列、及び配列番号203のアミノ酸配列を含むVLポリペプチド配列を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗スクレロスチン抗体がセトルスマブである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記抗スクレロスチン抗体がロモソズマブである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記抗スクレロスチン抗体がブロソズマブである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記治療有効量の抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続18か月の期間にわたって毎月投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記治療有効量の抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続24か月の期間にわたって毎月投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記治療有効量の抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続30か月の期間にわたって毎月投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記治療有効量の抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続36か月の期間にわたって毎月投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗スクレロスチン抗体を、最長18年間にわたって毎月投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記治療有効量の前記抗スクレロスチン抗体の投与により、前記ヒト患者の12か月の治療後に小柱の骨塩量(BMD)が増加する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記治療有効量の前記抗スクレロスチン抗体の投与により、前記ヒト患者の12か月の治療後に腰椎の骨塩量(BMD)が5%以上増加する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記OIが、I型OI、III型OI、またはIV型OIである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ヒト患者が、COL1A1遺伝子及び/またはCOL1A2遺伝子に1つ以上の変異を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記ヒト患者の年齢が0~17歳である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ヒト患者が0~17歳の小児であり、前記抗スクレロスチン抗体を20~50mg/kgの用量で毎月投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか1項に記載の治療方法で使用するための、請求項1~13のいずれか1項で定義される抗スクレロスチン抗体、請求項1~13のいずれか1項で定義される前記抗体を交差遮断する抗スクレロスチン抗体、または請求項1~13のいずれか1項で定義される前記抗体と同じエピトープに結合する抗スクレロスチン抗体。
【請求項26】
前記抗スクレロスチン抗体が、請求項1~13のいずれか1項で定義される前記抗体を交差遮断するか、または請求項1~13のいずれか1項で定義される前記抗体と同じエピトープに結合する、請求項1~24のいずれかに記載の治療方法。
【請求項27】
ヒト患者に治療有効量の抗スクレロスチン抗体を投与することを含む、前記ヒト患者における骨形成不全症(OI)の治療方法であって、前記方法が、12か月以上の初期投与期間中、第1の用量を毎月投与し、その後、維持用量で定期的に投与することを含む、前記治療方法。
【請求項28】
前記第1の用量が、毎月投与される20~50mg/kgの前記抗スクレロスチン抗体を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の用量が、毎月投与される20~40mg/kgの前記抗スクレロスチン抗体を含む、請求項27~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記第1の用量が、毎月投与される20mg/kgの前記抗スクレロスチン抗体を含む、請求項27~29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記維持用量が、毎月、2か月ごと、3か月ごと、4か月ごと、6か月ごと、または12か月ごとの前記抗スクレロスチン抗体の投与を含む、請求項27~30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記維持用量が、前記初期投与期間中に投与する量と等量またはそれより低い量の前記抗スクレロスチン抗体を投与することを含む、請求項27~31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記維持用量が、20mg/kg以下の前記抗スクレロスチン抗体を含む、請求項27~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記抗スクレロスチン抗体を、前記初期投与期間中、12か月以上の期間にわたって20mg/kgで毎月投与し、その後、20mg/kg以下の維持用量を2か月ごとに投与する、請求項27~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記抗スクレロスチン抗体を、前記初期投与期間中、12か月以上の期間にわたって20mg/kgで毎月投与し、その後、20mg/kgの維持用量を2か月ごとに投与する、請求項27~34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記抗スクレロスチン抗体を、前記初期投与期間中、12か月の期間にわたって20mg/kgで毎月投与し、その後、20mg/kg未満の維持用量を各月に投与する、請求項27~34のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記維持用量を最大18年の期間にわたって投与する、請求項27~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
実質的に本明細書に記載される治療方法、または実質的に本明細書に記載される治療方法で使用するための抗スクレロスチン抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月30日に出願された米国仮特許出願第63/250,918号、及び2022年9月8日に出願された米国仮特許出願第63/374,982号に対する優先権及び利益を主張し、これらはその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表
本出願は、EFS-Webを介してXML形式で提出された配列表を含む。「ULG-5006PC_122626-5006_Sequence Listing」という名称のXMLコピーの内容は、2022年9月22日に作成され、サイズが227,000バイトであり、その内容の全体が参照により本明細書に援用される。
【0003】
本発明は、抗体及び投与計画、ならびに医薬組成物としてのそれらの使用、より具体的には、骨形成不全症の治療における抗スクレロスチン抗体の長期使用に関する。
【背景技術】
【0004】
骨形成不全症(OI)は、骨の脆弱性と骨量の減少を特徴とする結合組織の稀な遺伝性障害である。OIには、常にではないが主にI型コラーゲンをコードする遺伝子の変異から生じる一群の遺伝性障害が含まれる。症例の約85%は、I型コラーゲンをコードする2つの遺伝子(COL1A1及びCOL1A2)のいずれかの変異に関連している。臨床的に、OIは、外傷を伴わずに簡単に骨折してしまう骨の脆弱性を特徴とする。
【0005】
臨床分類システムでは、OIをI型からV型に分類する。I型OI患者は通常、COL1A1の早期終止コドンに関連する軽度の非変形疾患を患っている。この欠陥により、I型コラーゲンの産生速度が低下し、骨内のコラーゲンの量が減少する。II型OI患者は通常、胸郭を含む複数の重度の骨折による呼吸不全の結果として周産期に死亡する。III型及びIV型OIは、COL1A1及びCOL1A2のグリシン置換を伴うことが多く、これはI型コラーゲンの3つのポリペプチド鎖が適切に絡み合って正常な三重αらせん構造を形成することを妨げる質的欠陥である。III型OIが乳児期を生き延びる罹患小児におけるOIの最も重篤な形態であるのに対し、IV型患者は軽度~中程度の骨変形を示す。
【0006】
骨関連疾患の治療に有用な治療薬としては、抗スクレロスチン抗体が挙げられる。高親和性、中和性の完全ヒト抗スクレロスチンモノクローナル抗体(総称して「ヒト抗スクレロスチンモノクローナル抗体」)及びその強力なin vitro活性及びin vivo活性は、例えば米国特許第7,879,322号、第8,246,953号、及び第8,486,661号に開示されており、これらはその全体が参照により本明細書に援用される。抗スクレロスチン抗体を用いたOIの治療は、WO2018/115879A1及びWO2018/115880A1に開示されており、これらはその全体が参照により本明細書に援用される。追加の抗スクレロスチン抗体としては、例えば、WO2013/019954A1、米国特許第8,003,108号、第7,592,429号、及び第8,017,120号、ならびに米国特許出願公開第20110044978A1号に記載されている抗体が挙げられ、これらはその全体が参照により本明細書に援用される。そのような抗体の製剤は、例えば、WO2021/030179A1に開示されており、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0007】
さらなる抗スクレロスチン抗体としては、例えば、その全体が参照により本明細書に援用されるWO2008/115732A2に記載されている抗体が挙げられる。
【0008】
さらなる抗スクレロスチン抗体としては、例えば、その全体が参照により本明細書に援用される米国特許第10,449,250号に記載されている抗体が挙げられる。
【0009】
さらなる抗スクレロスチン抗体としては、例えば、その全体が参照により本明細書に援用されるWO2015/087187A1に記載されている抗体が挙げられる。
【0010】
OIに対するさらなる改善された治療選択肢が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
実施例で報告される研究の結果は、驚くべきことに、抗スクレロスチン抗体によってヒトOI患者を長期間、成功裏に治療できることを示唆している。これらの結果は、骨代謝回転バイオマーカーに対する抗スクレロスチン抗体の効果が、治療開始から最初の1か月後にピークに達し、その後減弱するものの、骨塩量(BMD)に対する効果は継続的な改善を示す(バイオマーカー応答の減衰を大幅に超えている)ことを示した。
【0012】
したがって、一態様では、本発明は、抗スクレロスチン抗体を用いた骨形成不全症(OI)の長期または慢性治療のための方法を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本開示は、ヒト患者に治療有効量の抗スクレロスチン抗体を少なくとも連続13か月間にわたって各月に投与することを含む、ヒト患者における骨形成不全症(OI)の治療方法を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、(a)配列番号70に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有するVHポリペプチド配列、及び/または(b)配列番号81に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有するVLポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、配列番号70に記載のアミノ酸配列を含むVHポリペプチド配列、及び配列番号81に記載のアミノ酸配列を含むVLポリペプチド配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、(a)配列番号198に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有するVHポリペプチド配列、及び/または(b)配列番号199に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有するVLポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、配列番号198に記載のアミノ酸配列を含むVHポリペプチド配列、及び配列番号199に記載のアミノ酸配列を含むVLポリペプチド配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、(a)配列番号202に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有するVHポリペプチド配列、及び/または(b)配列番号203に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有するVLポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、配列番号202に記載のアミノ酸配列を含むVHポリペプチド配列、及び配列番号203に記載のアミノ酸配列を含むVLポリペプチド配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、(a)配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、(b)配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、(c)配列番号26に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、(d)配列番号37に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、(e)配列番号48に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2、及び(f)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、(a)配列番号178に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、(b)配列番号179に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、(c)配列番号26に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、(d)配列番号37に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、(e)配列番号180に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2、及び(f)配列番号181に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、(a)配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、(b)配列番号179に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、(c)配列番号26に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、(d)配列番号37に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、(e)配列番号180に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2、及び(f)配列番号181に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、米国特許第7,879,322号、第8,246,953号、第8,486,661号、第8,003,108号、第7,592,429号、第8,017,120号、もしくは第10,449,250号、WO2018/115879A1、WO2018/115880A1、WO2013/019954A1、WO2008/115732A2、もしくはWO2015/087187A1、または米国特許出願公開第20110044978A1号に記載されている抗体であり、これらはその全体が参照により本明細書に援用される。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、セトルスマブ、ロモソズマブ、及びブロソズマブから選択される。
【0022】
いくつかの実施形態では、治療有効量の抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続13か月間にわたって各月に、すなわち毎月、患者に投与する。一実施形態では、治療有効量の抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続18か月間にわたって各月に、すなわち毎月、患者に投与する。別の実施形態では、治療有効量の抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続24か月間にわたって各月に、すなわち毎月、患者に投与する。さらに別の実施形態では、治療有効量の抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続30か月間にわたって各月に、すなわち毎月、患者に投与する。さらに別の実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続36か月間にわたって毎月投与する。さらに別の実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、最大18年間にわたって毎月投与する。
【0023】
いくつかの実施形態では、治療有効量の抗スクレロスチン抗体の投与により、ヒト患者の12か月の治療後に小柱の骨塩量(BMD)が増加する。関連する実施形態では、治療有効量の抗スクレロスチン抗体の投与により、ヒト患者の12か月の治療後に腰椎のBMDが5%以上増加する。BMDは、二重エネルギーX線吸光測定法(DXA)によって測定してもよい。いくつかの実施形態では、治療有効量の抗スクレロスチン抗体の投与により、ヒト患者の12か月の治療後に腰椎の骨塩量(BMD)が5%以上増加する。
【0024】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される慢性または長期の投与計画は、OIなどの慢性投与から恩恵を受ける骨折または衰弱をもたらす任意の骨の遺伝性疾患の治療に有効である。いくつかの実施形態では、OIは、I型OI、III型OI、またはIV型OIである。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、COL1A1及び/またはCOL1A2遺伝子に1つ以上の変異を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、ヒト患者は小児患者である。いくつかの実施形態では、ヒト患者は成人患者である。いくつかの実施形態では、ヒト患者は0~17歳の小児であり、抗スクレロスチン抗体を20~50mg/kgの用量で投与する。
【0026】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、10~50mg/kgの用量で毎月投与する。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、及び50mg/kgから選択される用量で毎月投与する。別の実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、10mg/kgの用量で毎月投与する。さらに別の実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、20mg/kgの用量で毎月投与する。さらに別の実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、40mg/kgの用量で毎月投与する。
【0027】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、静脈内投与または皮下投与する。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体を静脈内投与する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】以下の血清レベルのベースラインからの平均変化を示すグラフを示す:Aは、骨形成バイオマーカーであるP1NP(プロコラーゲン1のインタクトなN末端プロペプチド)を示す。Bは、骨吸収バイオマーカーであるCTX-1(C末端テロペプチド)を示す。
【
図3】12か月間のセトルスマブ8mg/kgまたは20mg/kgの月次投与を比較した、腰椎BMDデータ(DXAにより測定)のベースラインからの平均変化を示すグラフを示す。
【
図4】ゾレドロン酸療法の存在下または非存在下での12か月後のBMDに対するセトルスマブ中止の影響を示すグラフを示す。Aは、中止後の腰椎BMDを示す。Bは、中止後の股関節BMDを示す。Cは、中止後の橈骨全領域体積BMDを示す。Dは、中止後の脛骨全領域体積BMDを示す。
【
図5】ゾレドロン酸療法の存在下または非存在下での12か月後の骨代謝回転バイオマーカーに対するセトルスマブ中止の影響を示すグラフを示す。Aは、セトルスマブ中止後の血清P1NPレベルを示す。Bは、セトルスマブ中止後の血清CTX-1(すなわち、「CTx」)レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、骨関連疾患(骨形成不全症;OI)を有するヒト患者において、骨代謝回転を測定するために日常的に使用されるバイオマーカーが、セトルスマブ療法の開始直後にBMDを減衰させるものの、セトルスマブが継続的な増加をもたらし、その増加はバイオマーカーによって衰えることがないという予期せぬ驚くべき発見に基づいている。セトルスマブを1年間毎月投与して治療されたヒトOI患者は、治療期間を通じてBMDの継続的な増加を示し、最初の6か月の増加は、次の6か月の増加と同様であった(実施例1)。対照的に、骨代謝回転バイオマーカー応答は1か月後にピークに達し、その後低下し、6か月の治療後にはベースラインと統計的に有意差のないレベルに戻った。他の骨疾患に対する抗スクレロスチン抗体に基づく治療は時間の経過とともに効果が失われ、1年後には中止しなければならないことが示されているが、今回の発見は、抗スクレロスチン抗体による長期治療が、12か月の治療後、OIの治療に継続的な効力を提供できることを示している。
【0030】
背景として、スクレロスチンは天然のタンパク質であり、ヒトではSOST遺伝子によってコードされている。スクレロスチンは、C末端システインノット様(CTCK)ドメインを有し、骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニストのDAN(神経芽腫におけるディファレンシャルスクリーニング選択遺伝子異常)ファミリーとの配列類似性を有する分泌型糖タンパク質である。
【0031】
抗スクレロスチン抗体は、骨の形成と密度を高め、骨粗鬆症及びOIを含むヒトの骨関連障害の治療に薬効をもたらすことが示されている。抗スクレロスチン抗体の1つ(ロモソズマブ、EVENITY(商標)として販売)は、骨折のリスクが高い閉経後の女性の骨粗鬆症の治療薬としてFDAによって承認されている。しかし、EVENITY(商標)のアナボリック効果は、12か月の月次治療後に減退する(EVENITY(商標)処方情報-「適応症及び使用法」セクション、2020年4月改訂版を参照のこと)。したがって、EVENITY(商標)の使用期間は12か月の月次投与に制限されており、その後も骨粗鬆症の治療が必要な場合には抗吸収剤による治療を継続することが推奨される。
【0032】
本実施例は、BMDに対する抗スクレロスチン抗体の効果が、OIの治療のために12か月の月次投与した後も衰えないことを示す。骨代謝回転バイオマーカーの応答は、抗スクレロスチン抗体治療のわずか1か月後にピークに達し、その後、骨代謝回転バイオマーカーの応答は急速に減衰したため、この結果は特に驚くべきものである。バイオマーカー応答がかなり早期に低下した場合でも、12か月の治療後もBMDが増加し続けていることは、抗スクレロスチン抗体治療がOIの長期治療に特に適していることを示唆している。したがって、毎月の抗スクレロスチン抗体療法は、抗体の効果が薄れたために治療を中止する必要がなく、OIの治療が長期化されるという利点をもたらす。したがって、抗スクレロスチン抗体療法の臨床的有用性には、予想外にも、ヒトの骨折または衰弱を引き起こす骨の遺伝性疾患、例えばOIの慢性的または長期的な治療が含まれる。
【0033】
したがって、本発明は、OIなどの骨折または衰弱を引き起こす骨の遺伝性疾患の慢性治療における抗スクレロスチン抗体の使用方法に関する。一態様では、本発明は、少なくとも連続13か月間の抗スクレロスチン抗体の毎月の投与によるOIの治療に関する。
【0034】
骨代謝回転バイオマーカーの応答は1か月後にピークに達し、その後減衰するにもかかわらず、OI患者の毎月の治療によって12か月にわたってBMDが継続的に増加するため、本発明における抗スクレロスチン抗体の方法及び使用は、予想外で驚くべきものであった。
【0035】
定義
本発明をより容易に理解するために、特定の用語を最初に定義する。さらなる定義は、詳細な説明の全体を通して記載されている。
【0036】
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」及び「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、Xのみからなってもよく、または何か追加のものを含んでもよい(例えばX+Y)。
【0037】
数値xに関する用語「約」とは、例えばx±10%を意味する。
【0038】
用語「スクレロスチン」とは、配列番号155(MQLPLALCLVCLLVHTAFRVVEGQGWQAFKNDATEIIPELGEYPEPPPELENNKTMNRAENGGRPPHHPFETKDVSEYSCRELHFTRYVTDGPCRSAKPVTELVCSGQCGPARLLPNAIGRGKWWRPSGPDFRCIPDRYRAQRVQLLCPGGEAPRARKVRLVASCKCKRLTRFHNQSELKDFGTEAARPQKGRKPRPRARSAKANQAELENAY)で定義されるヒトスクレロスチンを指す。組換えヒトスクレロスチンは、R&D Systems(Minneapolis,Minn.,USA;2006 カタログ番号1406-ST-025)から入手することができる。さらに、組換えマウススクレロスチン/SOSTは、R&D Systems(Minneapolis,Minn.,USA;2006カタログ番号1589-ST-025)から市販されている。米国特許第6,395,511号及び第6,803,453号、ならびに米国特許公開20040009535及び20050106683は、一般に抗スクレロスチン抗体について言及している。
【0039】
本明細書で使用される用語「抗体」は、全抗体、及びそれらの任意の抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)またはその一本鎖を含む。天然の「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書でVHと略記される)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2、及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書でVLと略記される)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLを含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域を間に含む、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に、さらに細分することができる。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、以下の順序で配列される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第一成分(C1q)を含む宿主組織または因子への結合を媒介し得る。一実施形態では、本明細書における抗体への言及は、単離されたモノクローナル抗体、ヒトモノクローナル抗体、及びヒト化モノクローナル抗体を包含する。
【0040】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合部分」という用語は、抗原(例えば、スクレロスチン)に特異的に結合する能力を保持する、抗体の全長または1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって行われ得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例としては、Fab断片、すなわち、VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価の断片、F(ab)2断片、すなわち、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結される2つのFab断片を含む二価の断片、VH及びCH1ドメインからなるFd断片、抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,1989 Nature 341:544-546)、ならびに単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。
【0041】
さらに、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、VL及びVH領域が対合して一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al.,1988 Science 242:423-426、及びHuston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883を参照のこと)としてそれらが作製されることを可能にする合成リンカーによる組換え法を使用して接合され得る。そのような一本鎖抗体もまた、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることが意図される。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の技術を使用して得られ、これらの断片は、有用性について、インタクトな抗体と同じ様式でスクリーニングされる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、スクレロスチンに特異的に結合する単離された抗体は、スクレロスチン以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、スクレロスチンに特異的に結合する単離された抗体は、他の種に由来するスクレロスチン分子などの他の抗原に対して交差反応性を有する場合がある。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質及び/または化学物質を実質的に含まない場合がある。一実施形態では、本明細書における抗体への言及は、単離された抗体を意味する。
【0043】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」とは、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一結合特異性及び親和性を示す。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「ヒト抗体」は、フレームワーク領域とCDR領域の両方がヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことを意図する。さらに、ヒト抗体が定常領域を含む場合、その定常領域もまた、そのようなヒト配列、例えば、ヒト生殖系列配列もしくはヒト生殖系列配列の変異型に由来するか、またはKnappik et al.(2000.J Mol Biol 296,57-86)に記載されるヒトフレームワーク配列に由来するコンセンサスフレームワーク配列を含む抗体に由来する。
【0045】
ヒト抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダムもしくは部位特異的変異誘発、またはin vivoでの体細胞変異によって導入される変異)を含み得る。しかしながら、本明細書で使用される場合、用語「ヒト抗体」とは、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことを意図しない。
【0046】
用語「ヒトモノクローナル抗体」とは、フレームワーク領域とCDR領域の両方がヒト配列に由来する可変領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を指す。一実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合された、ヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「組換えヒト抗体」には、組換え手段によって調製、発現、作製、または単離されたすべてのヒト抗体、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子またはそれから調製されたハイブリドーマのトランスジェニック動物または染色体導入動物(例えば、マウス)から単離された抗体、ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、及びヒト免疫グロブリン遺伝子の全部または一部の配列を他のDNA配列にスプライシングすることを含む任意の他の手段によって調製、発現、作製、または単離された抗体が含まれる。そのような組換えヒト抗体は、フレームワーク領域及びCDR領域がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかしながら、特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体を、in vitro変異誘発(または、ヒトIg配列のトランスジェニック動物を使用する場合には、in vivo体細胞変異誘発)に供してもよく、したがって、組換え抗体のVH領域及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来し、関連している一方で、in vivoではヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在しない可能性がある配列である。
【0048】
一実施形態では、本明細書で使用される場合、スクレロスチンに結合する抗体(例えば、抗スクレロスチン抗体)は、スクレロスチンポリペプチドに特異的に結合することを意味する。「スクレロスチンポリペプチドに特異的に結合する」とは、1×10-8M以下、1×10-9M以下、または1×10-10M以下のKDでスクレロスチンポリペプチドに結合する抗体を指すことを意味する。本明細書で使用される場合、用語「KD」は、解離定数を指すように意図されており、この定数は、Kaに対するKdの比率(すなわちKd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を用いて求めることができる。抗体のKDを求める方法は、表面プラズモン共鳴を用いることによる方法、またはBiacore(登録商標)システムのようなバイオセンサーシステムを用いることによる方法である。
【0049】
様々な種のスクレロスチンに対する抗体の結合能力を評価するための標準的なアッセイは、当技術分野で公知であり、例えばELISA、ウェスタンブロット、及びRIAが挙げられる。好適なアッセイは、WO2009/047356に詳細に記載されている。また、抗体の結合動態(例えば、結合親和性)は、Biacore分析など、当技術分野で公知の標準的なアッセイによって評価することができる。スクレロスチンの機能的特性(例えば、受容体結合、骨溶解の予防または改善)に対する抗体の効果を評価するためのアッセイは、WO2009/047356にさらに詳細に記載されている。
【0050】
本明細書で使用される場合、2つの配列間の同一性の割合は、2つの配列の最適な整列のために導入する必要があるギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、同一性(%)=同一位置の数/位置の合計数×100)。以下の非限定的な実施例に記載されているように、配列の比較及び2つの配列間の同一性の割合の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。
【0051】
2つのアミノ酸配列間の同一性の割合は、PAM120重み付け残基表、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.Meyers and W.Miller(Comput.Appl.Biosci.,4:11-17,1988)のアルゴリズムを使用して決定することができる。さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性の割合を、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman and Wunsch(J.Mol,Biol.48:444-453,1970)アルゴリズムを使用し、Blossom62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップウェイト、及び1、2、3、4、5、または6の長さウェイトを使用して決定することができる。
【0052】
さらに、または代わりに、本発明のタンパク質配列は、例えば関連する配列を同定するために公共データベースに対して検索を実行するための「クエリ配列」としてさらに使用することができる。そのような検索は、Altschul et al.,1990 J.Mol.Biol.215:403-10のBLASTXプログラム(バージョン2.0)を用いて実施することができる。BLASTタンパク質検索を、BLASTXプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実施して、本発明の抗体分子に相同なアミノ酸配列を得てもよい。比較目的のためのギャップアライメントを得るために、Gapped BLASTを、Altschul et al.,1997 Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402に記載されているように利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータ(例えば、BLASTX及びBLASTN)を使用することができる。www.ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。
【0053】
用語「交差遮断」、「交差遮断された」、及び「交差遮断すること」は、本明細書では同じ意味で使用され、標準競合結合アッセイ中のスクレロスチンへの他の抗体または結合剤の結合を妨害する抗体または他の結合剤の能力を意味する。抗体または他の結合剤が別の抗体または結合分子のスクレロスチンへの結合を妨害できる能力または程度、したがってそれが本発明によって交差遮断していると言えるかどうかは、標準的な競合結合アッセイを使用して決定することができる。好適なアッセイの1つは、Biacore技術の使用(例えば、Biacore3000機器(Biacore,Uppsala,Sweden)を使用することによる)が挙げられ、この技術では、表面プラズモン共鳴技術を使用して相互作用の程度を測定することができる。交差遮断を測定するための別のアッセイは、ELISAベースのアプローチを使用する。両方の方法に関するさらなる詳細は、WO2009/047356に記載されており、具体的に参照により本明細書に援用される。
【0054】
本明細書で使用される場合、「毎月」投与、または「各月」投与は、連続した月の所与の期間を通じて、月1回、ある用量の抗スクレロスチン抗体を投与することを指す。
【0055】
本発明の様々な態様を、以下のサブセクションでさらに詳細に説明する。
【0056】
骨形成不全症
実施例の結果は、驚くべきことに、抗スクレロスチン療法が、骨代謝回転バイオマーカーに対する効果が衰えるか、または減弱した後も長期間にわたって、OI患者のBMDを継続的に増加させることを示した。したがって、抗スクレロスチン抗体療法は、驚くべきことに、骨の弱体化または骨折発生率の増加をもたらすOIなどの骨関連遺伝性疾患の長期的または慢性的な治療に適している。
【0057】
一態様では、本発明は、OIなどの骨関連遺伝性疾患を有する患者の治療方法に関する。本明細書で使用される場合、用語「患者」とは、ヒト患者を意味する。
【0058】
一態様では、本発明は、骨形成不全症の治療用の薬剤を製造するための抗スクレロスチン抗体の使用を提供する。本明細書で説明される他の態様/実施形態はすべて、本発明のこの特定の態様に等しく適用される。
【0059】
別の態様では、本発明は、骨形成不全症の治療に使用するための抗スクレロスチン抗体を提供する。本明細書で説明される他の態様/実施形態はすべて、本発明のこの特定の態様に等しく適用される。
【0060】
実施例は、OI患者における抗スクレロスチン抗体療法の試験を報告し、OI患者が毎月の抗スクレロスチン抗体療法に応答することを示している。したがって、一実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、本明細書に記載の抗スクレロスチン抗体を使用して骨形成不全症(OI)を治療するためのものである。
【0061】
OIは遺伝学と疾患の重症度によって分類され、Van Dijk and Sillence(2014,Am J Med Genet Part A 164A:1470-1481 and Van Dijk and Sillence,2014,Am J Med Genet Part A 167A:1178;これらはその全体が参照により本明細書に援用される)の分類に従って、I型OI、II型OI、III型OI、IV型OI、またはV型OIに分類することができる。分類は、臨床評価/診断、生化学分析、及び分子遺伝学的検査の組み合わせに依存しており、当業者にとって日常的なものである。本明細書で使用されるOIの命名法/分類は、上記の刊行物で参照されているように、Van Dijk and Sillenceによって提案されたものである。試験参加者は、I型、III型、またはIV型のOIを患っており、すべてのOI型がセトルスマブ療法に応答した。したがって、特定の実施形態では、骨関連疾患は、I型OI、III型OI、またはIV型OIである。
【0062】
OIに罹患している人々の80%~90%において、OIは、I型コラーゲンのα1鎖とα2鎖をコードするCOL1A1遺伝子とCOL1A2遺伝子(それぞれ17q21.33及び7q22.3)内の変異によって引き起こされる。1,000を超える既知の変異の包括的なデータベースが、遺伝子型と表現型の相関関係とともに公開されている(oi.gene.le.ac.uk/home.php;2021年9月29日にアクセス)。CRTAP、LEPRE1、またはPPIBなどの他の遺伝子内の変異も知られている。COL1A1及びCOL1A2遺伝子内の変異についての分子遺伝学的検査が知られており、当業者にとって日常的である。一例として、Korkko et al.(1998)は、COL1A1遺伝子及びCOL1A2遺伝子のPCR増幅とそれに続くコンフォメーション高感度ゲル電気泳動(CSGE)による変異スキャンについて記載している(Am.J.Hum.Genet.62:98-110,1998)。van Dijk et al.(2010)は、多重ライゲーション依存性プローブ増幅(MLPA)法によるCOL1A1変異検出について記載している(Genet Med 12(11):736-741)。より最近では、Arvai,K.et al.(2016)が、次世代配列決定法について説明している(Sci.Rep.6,28417)。これらの参考文献は、参照により本明細書に援用される。
【0063】
したがって、一実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、I型コラーゲンの欠乏、例えば、I型~IV型OIを示す患者を治療するためのものである。結果として、コラーゲン原線維とヒドロキシアパタイト結晶からなる骨の正常な構造が変化し、脆性が生じる。一実施形態では、本明細書の方法及び使用は、COL1A1及び/またはCOL1A2における1つ以上の変異を特徴とするヒトOI患者を治療するためのものである。
【0064】
一実施形態では、本明細書に記載の方法及び使用は、I型、III型、及び/またはIV型OIを治療するためのものである。一実施形態では、I型、III型、及びIV型OIを、DNA検査、すなわちCOL1A1/COL1A2変異の検出によって確認する。したがって、一実施形態では、本明細書の方法及び使用は、COL1A1及び/またはCOL1A2における1つ以上の変異を特徴とするI型、III型、及び/またはIV型OIを治療するためのものである。
【0065】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体の方法及び使用は、軽度~中程度の形態のOIを治療するためのものである。抗スクレロスチン抗体の方法及び使用の他の実施形態では、治療中の患者は、I型OI、II型OI、III型OI、またはIV型OIを有する。
【0066】
特定の実施形態では、本発明は、少なくとも連続30か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に治療有効量のセトルスマブを300~1500mgの用量で各月に投与することを含む、ヒト患者におけるOIの治療方法を提供する。
【0067】
小児への投与
抗スクレロスチン抗体の方法及び使用のいくつかの実施形態では、OI患者は、18歳以上の成人患者である。抗スクレロスチン抗体の方法及び使用のさらに他の実施形態では、OI患者は小児患者である。本明細書で定義される小児患者には、0~17歳の小児、例えば2~17歳、3~17歳、4~17歳、または5~17歳などの小児が含まれる。
【0068】
体重または体表面積と比較した薬物クリアランス率は、成人よりも小児(特に幼児)の方が高いため、効果を発揮するのに十分な高用量の薬を小児が確実に摂取できるようにするために、例えば、mg/kgで表される小児用量を、一般に同等の成人用量に比べて高くする必要がある。好適な小児用量は、式1に示す、小児と成人の体重の比の0.7乗から推定することができる(Pediatric Pharmacology - Therapeutic Principles in Practice,2
nd Ed.,Yaffe and Aranda)。
式:小児用量の換算
【数1】
【0069】
この計算式を適用すると、成人患者(70kg)における20mg/kgの用量は、7kgの小児(約6か月齢)における40mg/kgの用量に相当する。したがって、最小の患者では、セトルスマブを20mg/kg投与した成人と同様の治療結果を達成するために、最大40mg/kgの用量が必要となる場合がある。したがって、成人におけるmg/kg用量がより高くなる場合、小児患者ではさらに高い用量を必要とするであろう。したがって、一実施形態では、患者の年齢は0~17歳であり、抗スクレロスチン抗体を各月に20~50mg/kgの用量で投与する。特定の実施形態では、患者の年齢は0~17歳であり、抗スクレロスチン抗体を各月に20~40mg/kgの用量で投与する。
【0070】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、少なくとも連続13か月、例えば、少なくとも連続18か月、少なくとも連続24か月、または少なくとも連続30か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に20~50mg/kgの用量で投与することを含む、0~17歳のヒト患者におけるOIの治療方法を提供する。
【0071】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、少なくとも連続13か月、例えば、少なくとも連続18か月、少なくとも連続24か月、または少なくとも連続30か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に20~50mg/kgの用量で投与することを含む、0~17歳のヒト患者におけるOIの治療方法を提供する。
【0072】
本明細書全体を通じて、抗スクレロスチン抗体の用量などの特定の量について数値範囲が提供される。これらの範囲は、開示される範囲内及び範囲間の各整数を含む、端点及びその中のすべての部分範囲を含むことが理解されるべきである。したがって、「20~50」の範囲には、その中のすべての可能な範囲(例えば、21~49、22~48、23~47など)と、20~50の個々の整数(例えば、20、21、22、23、24など)が含まれる。範囲が、分数、百分率、小数などの形式で提供される場合、そのような範囲には、同様に、その中のすべての可能な部分範囲、及び開示される範囲内及び範囲間の個々の分数、百分率、小数などが含まれる。例えば、範囲「0.1~1.0」には、その中のすべての可能な範囲(例えば、0.2~0.9など)、及び0.1~1.0の個々の1/10の小数(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4など)が含まれる。したがって、20~50mg/kgの抗スクレロスチン抗体の用量には、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、及び50mg/kgの抗スクレロスチン抗体の用量が含まれる。
【0073】
投与計画
本発明は、骨代謝回転バイオマーカーが治療開始後すぐに減弱するにもかかわらず、抗スクレロスチン抗体療法を長期間使用できるという発見に基づいている。したがって、本発明は、少なくとも13か月間の抗スクレロスチン抗体の毎月の投与に関する。投与計画を調整して、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供する。例えば、治療状況の緊急性に応じて用量を増減させてもよい。
【0074】
抗スクレロスチン抗体の投与の場合、用量は、患者の体重1キログラム当たり前記抗体約8ミリグラム(本出願全体を通じて「mg/kg」と称する)~50mg/kg、より一般的には約20~40mg/kgの範囲である。例えば、用量は、約20mg/kg体重、約30mg/kg体重、約40mg/kg体重、または約50mg/kg体重であり得る。別の実施形態では、月次用量は約20~30mg/kgである。
【0075】
一実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、患者の体重1kg当たり20mgの用量で、または21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40mg/kgで投与する。
【0076】
表2は、本実施例の試験における患者の体重が、19.9~120.7kgの範囲であったことを報告している。したがって、関連する実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、150~3000mg、例えば150~2500mgの用量で投与する。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、200~2500mg、400~2500mg、150~2000mg、200~2000mg、400~2000mg、150~1500mg、200~1500mg、400~1500mgで投与する。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、200~2500mgの用量で投与する。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、400~2500mgの用量で投与する。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、150~2000mgの用量で投与する。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、200~2000mgの用量で投与する。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、400~2000mgの用量で投与する。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、150~1500mgの用量で投与する。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、200~1500mgの用量で投与する。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、400~1500mgの用量で投与する。
【0077】
一実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、200mg、または250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950、2000、2050、2100、2150、2200、2250、2300、2350、2400、または2450mgの用量で投与する。
【0078】
本発明は、長期治療に対する抗スクレロスチン抗体の驚くべき適合性に関する。したがって、本発明の方法によれば、抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続13か月間毎月投与する。いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続18か月の期間にわたって毎月投与する。いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続24か月の期間にわたって毎月投与する。いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続30か月の期間にわたって毎月投与する。いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続36か月の期間にわたって毎月投与する。
【0079】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、最長18年の期間にわたって毎月投与し、これは、抗スクレロスチン抗体を各月に投与する期間が18年を超えて続かないことを意味する。したがって、一実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続13か月、最長18年の期間にわたって毎月投与する。関連する実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続18か月、最長18年の期間にわたって毎月投与する。関連する実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続24か月、最長18年の期間にわたって毎月投与する。関連する実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続30か月、最長18年の期間にわたって毎月投与する。関連する実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続36か月、最長18年の期間にわたって毎月投与する。
【0080】
例示的な治療計画は、少なくとも連続13か月、最長18年の期間、月1回の投与スケジュールで、約150~3000mgの範囲の複数回用量(同じ用量であってもよい)の投与を伴う。いくつかの実施形態では、治療は、少なくとも連続18か月間の毎月の投与を伴う。いくつかの実施形態では、治療は、少なくとも連続24か月間の毎月の投与を伴う。いくつかの実施形態では、治療は、少なくとも連続30か月間の毎月の投与を伴う。いくつかの実施形態では、治療は、少なくとも連続36か月間の毎月の投与を伴う。
【0081】
特定の実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続30か月、最長18年の期間、150~2500mgの用量で毎月投与する。
【0082】
別の例示的な治療計画は、少なくとも連続13か月間から、患者において治療目標が達成されるか到達するまで、月1回の投与スケジュールの下、約150~3000mgの範囲の複数回用量(同じ用量であってもよい)の投与を伴う。治療目標は、一定回数の投与後に達成または到達される。治療目標は、骨塩量の完全な正常化、骨塩量の部分的な正常化、または骨折の発生頻度の低下である。したがって、一実施形態では、抗スクレロスチン抗体を毎月投与すると、連続12か月の治療後に腰椎の骨塩量(BMD)が5%以上増加する。
【0083】
別の実施形態では、本発明は、OIの治療に使用するための抗スクレロスチン抗体を提供し、抗スクレロスチン抗体は、対照患者/患者集団と比較して、患者/患者集団における骨折率を低下させる。好ましくは、抗スクレロスチン抗体は、骨折率を少なくとも10、20、30、35、40、50、60、70、80、または90パーセント減少させる。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、骨折率を少なくとも30パーセント減少させる。一実施形態では、骨折は、放射線検査(複数可)によって確認される、末梢骨折または椎骨骨折(すべての主要な骨折、軽度の骨折、及び脊椎の臨床的骨折を含み、臨床症状を伴わず検査によってのみ検出される骨折は含まれない)として定義される。一実施形態では、骨折率は、患者集団に属する。患者集団及び対照患者集団は、統計的に有意な比較を可能にする規模であることが好ましい。
【0084】
抗スクレロスチン抗体は静脈内に投与する。特定の実施形態では、投与を、注入により静脈内に実施する。
【0085】
標的の測定は当技術分野で公知である。例えば、骨塩量(BMD)を、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)、単一エネルギーX線吸収測定法(SXA)、定量的コンピュータ断層撮影法(CT)、超音波、及び高解像度の末梢定量的コンピュータ断層撮影法(HR-pQCT)によって測定してもよい。DXAは、当技術分野で骨密度を測定するための標準となっているX線技術である。任意の骨格部位の測定に使用することができるが、臨床的な判断は通常、腰椎及び臀部で行われる。かかと(踵骨)、前腕(橈骨及び尺骨)、または指(指節骨)を測定するポータブルDXAマシンが開発されており、DXAは体組成の測定にも使用することができる。その結果、個体の結果を人種と性別が一致する若年層の集団の結果と比較するTスコアを使用して結果を「正常な」値に関連付けることが標準的な手法となっている。あるいは、Zスコアは、個体の結果を年齢が一致し、人種と性別も一致する集団の結果と比較する。したがって、例えば、Zスコアが-1(年齢の平均より1SD低い)の60歳の女性は、Tスコアが-2.5(若年層の対照群の平均より2.5SD低い)になり得る。
【0086】
半径方向の骨の強度は、マイクロ有限要素解析(microFEA)によって測定してもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体の実際の用量レベルは、患者にとって有毒とならずに、特定の患者、組成物、及び投与様式に対して所望の治療応答を達成するのに有効な抗スクレロスチン抗体の量が得られるように変更してもよい。選択される用量レベルは、用いられる特定の組成物、投与経路、投与時間、用いられている特定の抗スクレロスチン抗体の排泄率、治療の持続期間、用いる特定の組成物と併用する他の薬物、化合物、及び/または物質を含む、多様な薬物動態学的要因、治療されている患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康状態及び既往歴、ならびに医療分野において周知の同様の要因に依存するであろう。
【0088】
抗スクレロスチン抗体の「治療有効量」は、疾患症状の重症度の減少、疾患症状のない期間の頻度及び期間の増加、または疾患罹患による機能障害または能力障害の予防をもたらし得る。したがって、一実施形態では、抗スクレロスチン抗体を毎月投与すると、12か月の治療後に腰椎の骨塩量(BMD)が5%以上増加する。
【0089】
特定の投与計画
他の態様では、本発明は、治療を必要とするヒト患者に治療有効量の抗スクレロスチン抗体を投与することを含む、ヒト患者における骨形成不全症(OI)の治療方法を提供し、この方法は、初期投与期間中に第1の用量を投与し、その後維持用量を投与することを伴う。いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、12か月以上の初期投与期間にわたって毎月投与し、続いて維持用量で定期的に投与する。
【0090】
いくつかの実施形態では、初期投与期間と維持投与期間との間に休薬日を設けることなく、維持用量を初期投与期間の直後に続ける。いくつかの実施形態では、維持用量は、初期投与期間中に投与する投与計画とは異なる投与計画を含み、すなわち、維持用量は、初期投与期間中に投与するものとは異なる頻度及び/または用量で抗スクレロスチン抗体を投与することを含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、初期投与期間中に20~50mg/kg、20~40mg/kg、または20mg/kgの用量で投与する。特定の実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、初期投与期間中に20mg/kgの用量で毎月投与する。
【0092】
維持用量は、毎月、約2か月ごと、約3か月ごと、約4か月ごと、約6か月ごと、または約12か月ごとに投与する抗スクレロスチン抗体の用量であってもよい。維持用量は、初期投与期間中に投与する量と同じ量(例えば、約20mg/kg)であってもよく、または初期投与期間中に投与する量より低い量(例えば、20mg/kg未満)であってもよい。
【0093】
いくつかの実施形態では、維持用量を、初期投与期間後、連続で少なくとも2か月、少なくとも4か月、少なくとも6か月、少なくとも8か月、少なくとも10か月、または少なくとも12か月の期間にわたって定期的に投与する。いくつかの実施形態では、維持用量を、初期投与期間後、少なくとも連続18か月の期間にわたって投与する。いくつかの実施形態では、維持用量を、初期投与期間後、少なくとも連続24か月の期間にわたって投与する。いくつかの実施形態では、維持用量を、初期投与期間後、少なくとも連続30か月の期間にわたって投与する。いくつかの実施形態では、維持用量を、初期投与期間後、少なくとも連続36か月の期間にわたって投与する。いくつかの実施形態では、維持用量を、初期投与期間後、最長18年の期間にわたって投与する。
【0094】
したがって、一実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、12ヶ月以上の期間にわたって毎月投与し、その後、例えば最長18年間にわたって隔月投与する。特定の実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、初期投与期間中に20mg/kgの用量で毎月投与し、その後、20mg/kgの維持用量を、隔月、3か月ごと、4か月ごと、6か月ごと、または12か月ごとに投与する。特定の実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、初期投与期間中に20mg/kgの用量で毎月投与し、その後、20mg/kgの維持用量を隔月で投与する。別の実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、約20mg/kgの用量で12か月以上毎月投与し、その後、例えば最長18年間にわたって20mg/kg未満の用量で毎月投与する。特定の実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、初期投与期間中に20mg/kgの用量で毎月投与し、その後、20mg/kg未満の維持用量を毎月投与する。20mg/kg未満の抗スクレロスチン抗体の維持用量は、2~20mg/kg、5~20mg/kg、8~20mg/kg、10~20mg/kg、15~20mg/kg、2~19mg/kg、5~19mg/kg、8~19mg/kg、10~19mg/kg、15~19mg/kg、2~15mg/kg、5~15mg/kg、8~15mg/kg、10~15mg/kg、2~10mg/kg、5~10mg/kg、8~10mg/kg、19mg/kg未満または約19mg/kg、15mg/kg未満または約15mg/kg、10mg/kg未満または約10mg/kg、8mg/kg未満または約8mg/kg、2mg/kg未満または約2mg/kg、約2mg/kg、約8mg/kg、約10mg/kg、約11mg/kg、約12mg/kg、約13mg/kg、約14mg/kg、約15mg/kg、約16mg/kg、約17mg/kg、約18mg/kg、約19mg/kgの抗スクレロスチン抗体であってよい。
【0095】
維持用量は、初期投与期間後に患者においてBMD及び/または安定した骨代謝回転バイオマーカーレベルを維持するのに十分な用量であり得る。いくつかの実施形態では、維持用量は、初期投与期間後の患者におけるBMDの増加(または増加速度)を維持するのに十分な用量である。維持用量は、初期投与期間に患者に投与する用量より低くてもよい。例えば、維持用量は、約50mg/kg未満の抗スクレロスチン抗体、約40mg/kg未満の抗スクレロスチン抗体、約30mg/kg未満の抗スクレロスチン抗体、約20mg/kg未満の抗スクレロスチン抗体、約10mg/kg未満の抗スクレロスチン抗体、約8mg/kg未満の抗スクレロスチン抗体、または約2mg/kg未満の抗スクレロスチン抗体であってもよい。いくつかの実施形態では、維持用量は、約2mg/kgの抗スクレロスチン抗体、約8mg/kgの抗スクレロスチン抗体、約10mg/kgの抗スクレロスチン抗体、約11mg/kgの抗スクレロスチン抗体、約12mg/kgの抗スクレロスチン抗体、約13mg/kgの抗スクレロスチン抗体、約14mg/kgの抗スクレロスチン抗体、約15mg/kgの抗スクレロスチン抗体、約16mg/kgの抗スクレロスチン抗体、約17mg/kgの抗スクレロスチン抗体、約18mg/kgの抗スクレロスチン抗体、約19mg/kgの抗スクレロスチン抗体、または約20mg/kgの抗スクレロスチン抗体である。
【0096】
上記のように、抗スクレロスチン抗体の用量について本明細書に提供されるような範囲は、開示される範囲内及び範囲間の各整数を含む、端点及びその中のすべての部分範囲を含むことが理解されるべきである。したがって、「20~50」の範囲には、その中のすべての可能な範囲(例えば、21~49、22~48、23~47など)と、20~50の個々の整数(例えば、20、21、22、23、24など)が含まれる。したがって、20~50mg/kgの抗スクレロスチン抗体の用量には、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、及び50mg/kgの抗スクレロスチン抗体の用量が含まれる。20mg/kg未満の抗スクレロスチン抗体の用量には、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、及び1mg/kgの抗スクレロスチン抗体の用量が含まれる。
【0097】
抗スクレロスチン抗体
本発明は、抗スクレロスチン抗体を用いた骨関連疾患の治療に関する。いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、配列番号70のVH配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含むVH、ならびに配列番号81のVL配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含むVLを含む。
【0098】
一実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、(a)配列番号4のアミノ酸配列(GFTFRSHWLS)を有するHCDR1、(b)配列番号15のアミノ酸配列(WVSNINYDGSSTYYADSVKG)を有するHCDR2、(c)配列番号26のアミノ酸配列(DTYLHFDY)を有するHCDR3、(d)配列番号37のアミノ酸配列(TGTSSDVGDINDVS)を有するLCDR1、(e)配列番号48のアミノ酸配列(LMIYDVNNRPS)を有するLCDR2、及び(f)配列番号59のアミノ酸配列(QSYAGSYLSE)を有するLCDR3を含む。
【0099】
VHまたはVL配列内のCDRは、様々な分類及び付番系によって記述され得る。したがって、CDRは、IMGT、Kabat、Chothia、AbM、Contact、これらの系の組み合わせ、または別の系によって参照される場合がある。例えば、Kabat(Kabat,E.A.,et al.,1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242);Chothia(Chothia et al.(1987)J Mol Biol 196:901-17);IMGT(Leffanc et al.(2003)Dev Comp Immunol 27:55-77);AbM(Martin and Thornton J Bmol Biol 263:800-15,1996);及びContact(MacCallum,R.M.,Martin,A.C.R.and Thornton,J.T.“Antibody-antigen interactions:Contact analysis and binding site topography”J.Mol.Biol.262:732-745)を参照のこと。これらの分類系間の重複及び相違点が記載されている(例えば、Lefranc et al.(2003)Dev Comp Immunol 27:55-77;Honegger and Pluckthun,J Mol Biol(2001)309:657-70;International ImMunoGeneTics(IMGT)データベース;ウェブ資料、www.imgt.orgを参照のこと)。当業者は、当技術分野の方法を使用して、VH及びVL配列内のCDRを同定することができる。例えば、CDRを、abYsis(www.abysis.org;Swindells et al.J Mol Biol.2017 Feb 3;429(3):356-64)などの利用可能なプログラムを使用して記述することができる。
【0100】
表1は、Kabat、Chothia、IMGT、AbM、及びContact系に従って定義されるセトルスマブ(配列番号70のVH及び配列番号81のVLを有する抗体)のCDR配列のアミノ酸配列を示す。
【表1】
【0101】
一実施形態では、セトルスマブのCDRは、Kabatによって記述される。したがって、一実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、(a)配列番号178のアミノ酸配列を有するHCDR1、(b)配列番号179のアミノ酸配列を有するHCDR2、(c)配列番号26のアミノ酸配列を有するHCDR3、(d)配列番号37のアミノ酸配列を有するLCDR1、(e)配列番号180のアミノ酸配列を有するLCDR2、及び(f)配列番号181のアミノ酸配列を有するLCDR3を含む。
【0102】
別の実施形態では、セトルスマブのCDRは、Chothiaによって記述される。したがって、一実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、(a)配列番号182のアミノ酸配列を有するHCDR1、(b)配列番号183のアミノ酸配列を有するHCDR2、(c)配列番号26のアミノ酸配列を有するHCDR3、(d)配列番号37のアミノ酸配列を有するLCDR1、(e)配列番号180のアミノ酸配列を有するLCDR2、及び(f)配列番号181のアミノ酸配列を有するLCDR3を含む。
【0103】
別の実施形態では、抗スクレロスチン抗体のセトルスマブCDRは、Kabat及びChothiaの両方によって定義されるCDRを包含するように定義される。したがって、各CDR配列は、Kabat及びChothiaで定義されるCDRの最もN末端の残基から、Kabat及びChothiaで定義されるCDRの最もC末端の残基までの配列に及ぶ。したがって、一実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、(a)配列番号4のアミノ酸配列を有するHCDR1、(b)配列番号179のアミノ酸配列を有するHCDR2、(c)配列番号26のアミノ酸配列を有するHCDR3、(d)配列番号37のアミノ酸配列を有するLCDR1、(e)配列番号180のアミノ酸配列を有するLCDR2、及び(f)配列番号181のアミノ酸配列を有するLCDR3を含む。
【0104】
一実施形態では、セトルスマブのCDRは、IMGTによって記述される。したがって、一実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、(a)配列番号184のアミノ酸配列を有するHCDR1、(b)配列番号185のアミノ酸配列を有するHCDR2、(c)配列番号186のアミノ酸配列を有するHCDR3、(d)配列番号187のアミノ酸配列を有するLCDR1、(e)配列番号188のアミノ酸配列を有するLCDR2、及び(f)配列番号181のアミノ酸配列を有するLCDR3を含む。
【0105】
一実施形態では、セトルスマブのCDRは、AbMによって記述される。したがって、一実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、(a)配列番号4のアミノ酸配列を有するHCDR1、(b)配列番号189のアミノ酸配列を有するHCDR2、(c)配列番号26のアミノ酸配列を有するHCDR3、(d)配列番号37のアミノ酸配列を有するLCDR1、(e)配列番号180のアミノ酸配列を有するLCDR2、及び(f)配列番号181のアミノ酸配列を有するLCDR3を含む。
【0106】
一実施形態では、セトルスマブのCDRは、Contactによって記述される。したがって、一実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、(a)配列番号190のアミノ酸配列を有するHCDR1、(b)配列番号191のアミノ酸配列を有するHCDR2、(c)配列番号192のアミノ酸配列を有するHCDR3、(d)配列番号193のアミノ酸配列を有するLCDR1、(e)配列番号194のアミノ酸配列を有するLCDR2、及び(f)配列番号59のアミノ酸配列を有するLCDR3を含む。
【0107】
特定の実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、配列番号70のアミノ酸配列に対して少なくとも95パーセントの同一性を有するVHポリペプチドアミノ酸配列を含む。
【0108】
特定の実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、配列番号81のアミノ酸配列に対して少なくとも95パーセントの同一性を有するVLポリペプチドアミノ酸配列を含む。
【0109】
特定の実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、配列番号70のアミノ酸配列に対して少なくとも95パーセントの同一性を有するVHポリペプチドアミノ酸配列、及び配列番号81のアミノ酸配列に対して少なくとも95パーセントの同一性を有するVLポリペプチドアミノ酸配列を含む。
【0110】
特定の実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、配列番号70のVHポリペプチドアミノ酸配列、及び配列番号81のVLポリペプチドアミノ酸配列を含む。
【0111】
特定の実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、配列番号114(MAWVWTLPFLMAAAQSVQAQVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFRSHWLSWVRQAPGKGLEWVSNINYDGSSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDTYLHFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK)または配列番号172の重鎖ポリペプチドアミノ酸配列、及び配列番号125(MSVLTQVLALLLLWLTGTRCDIALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSDVGDINDVSWYQQHPGKAPKLMIYDVNNRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCQSYAGSYLSEVFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS)または配列番号173の軽鎖ポリペプチドアミノ酸配列を含む。
【0112】
一実施形態では、本発明の抗スクレロスチン抗体は、モノクローナル抗スクレロスチン抗体である。一実施形態では、本発明の抗スクレロスチン抗体は、ヒトまたはヒト化モノクローナル抗スクレロスチン抗体である。あるいは、抗体は、例えばキメラ抗体であり得る。
【0113】
好ましい実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、ヒト抗スクレロスチンモノクローナル抗体であるセトルスマブ抗体である。セトルスマブのVH及びVL配列は、配列番号70のVHポリペプチドアミノ酸配列及び配列番号81のVLポリペプチドアミノ酸配列を含む。セトルスマブの重鎖及び軽鎖配列は、配列番号172の重鎖ポリペプチドアミノ酸配列及び配列番号173の軽鎖ポリペプチドアミノ酸配列を含む。
【0114】
セトルスマブVHの配列(配列番号70):
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFRSHWLSWVRQAPGKGLEWVSNINYDGSSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDTYLHFDYWGQGTLVTVSS
【0115】
セトルスマブVLの配列(配列番号81):
DIALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSDVGDINDVSWYQQHPGKAPKLMIYDVNNRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCQSYAGSYLSEVFGGGTKLTVL
【0116】
セトルスマブH鎖の配列(配列番号172):
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFRSHWLSWVRQAPGKGLEWVSNINYDGSSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDTYLHFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0117】
セトルスマブL鎖の配列(配列番号173):
DIALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSDVGDINDVSWYQQHPGKAPKLMIYDVNNRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCQSYAGSYLSEVFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
【0118】
関連する実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、配列番号70のVHポリペプチドアミノ酸配列及び配列番号195のVLポリペプチドアミノ酸配列(DIALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSDVGDINDVSWYQQHPGKAPKLMIYDVNNRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCQSYAGSYLSEVFGGGTKLTVLGQ)を含む。配列番号81のVLポリペプチドアミノ酸配列は、Kabat系に従って記述される。195のVLポリペプチドアミノ酸配列は、VLドメインの別の記述であり、Kabatによる配列を包含するが、追加の2つのアミノ酸も含む。
【0119】
セトルスマブなど、本発明で使用される抗スクレロスチン抗体のさらなる特徴は、WO2009/047356に記載されており、その開示、考察、及びデータは、参照により本明細書に援用される。単なる例として、抗体は、以下の機能的特性のうちの少なくとも1つを示し得る:抗体は、細胞ベースのwntシグナル伝達アッセイにおいてスクレロスチンの阻害効果を遮断し、抗体は、細胞ベースの石灰化アッセイにおいてスクレロスチンの阻害効果を遮断し、抗体は、Smad1リン酸化アッセイにおけるスクレロスチンの阻害効果を遮断し、抗体は、LRP-6へのスクレロスチンの結合を阻害し、抗体は、骨形成ならびに骨量及び密度を増加させる。上記のように、これらの特性は、WO2009/047356に詳細に記載されている。
【0120】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、(a)配列番号198に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有するVHポリペプチド配列、及び/または(b)配列番号199に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有するVLポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、配列番号198に記載のアミノ酸配列を含むVHポリペプチド配列、及び配列番号199に記載のアミノ酸配列を含むVLポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、配列番号196に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有する重鎖(HC)ポリペプチド配列、及び/または配列番号197に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有する軽鎖(LC)ポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、配列番号196に記載のアミノ酸配列を含むHCポリペプチド配列、及び配列番号197に記載のアミノ酸配列を含むLCポリペプチド配列を含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、(a)配列番号202に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有するVHポリペプチド配列、及び/または(b)配列番号203に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有するVLポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、配列番号202に記載のアミノ酸配列を含むVHポリペプチド配列、及び配列番号203に記載のアミノ酸配列を含むVLポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、配列番号200に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有する重鎖(HC)ポリペプチド配列、及び/または配列番号201に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90パーセントの配列同一性を有する軽鎖(LC)ポリペプチド配列を含む。一実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、配列番号200に記載のアミノ酸配列を含むHCポリペプチド配列、及び配列番号201に記載のアミノ酸配列を含むLCポリペプチド配列を含む。
【0122】
様々な抗スクレロスチン抗体のポリペプチド配列を以下に記載する:
【0123】
HCポリペプチド配列:EVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTDYNMHWVRQAPGQGLEWMGEINPNSGGAGYNQKFKGRVTMTTDTSTSTAYMELRSLRSDDTAVYYCARLGYDDIYDDWYFDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号196)
【0124】
LCポリペプチド配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSRLLSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGDTLPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号197)
【0125】
VHポリペプチド配列:EVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTDYNMHWVRQAPGQGLEWMGEINPNSGGAGYNQKFKGRVTMTTDTSTSTAYMELRSLRSDDTAVYYCARLGYDDIYDDWYFDVWGQGTTVTVSS(配列番号198)
【0126】
VLポリペプチド配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSRLLSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQGDTLPYTFGGGTKVEIKRTV(配列番号199)
【0127】
HCポリペプチド配列:QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKVSGFPIKDTFQHWVRQAPGKGLEWMGWSDPEIGDTEYASKFQGRVTMTEDTSTDTAYMELSSLRSEDTAVYYCATGDTTYKFDFWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG(配列番号200)
【0128】
LCポリペプチド配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDVHTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASTRWTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYSDYPWTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号201)
【0129】
VHポリペプチド配列:QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKVSGFPIKDTFQHWVRQAPGKGLEWMGWSDPEIGDTEYASKFQGRVTMTEDTSTDTAYMELSSLRSEDTAVYYCATGDTTYKFDFWGQGTTVTVSS(配列番号202)
【0130】
VLポリペプチド配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDVHTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASTRWTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYSDYPWTFGGGTKVEIKRTV(配列番号203)
【0131】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、(a)配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、(b)配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、(c)配列番号26に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、(d)配列番号37に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、(e)配列番号48に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2、及び(f)配列番号59に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、(a)配列番号178に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、(b)配列番号179に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、(c)配列番号26に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、(d)配列番号37に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、(e)配列番号180に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2、及び(f)配列番号181に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、(a)配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、(b)配列番号179に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、(c)配列番号26に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、(d)配列番号37に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、(e)配列番号180に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2、及び(f)配列番号181に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、米国特許第7,879,322号、第8,246,953号、第8,486,661号、第8,003,108号、第7,592,429号、第8,017,120号、もしくは第10,449,250号、国際特許出願第WO2018/115879A1号、第WO2018/115880A1号、第WO2013/019954A1号、第WO2008/115732A2号、もしくは第WO2015/087187A1号、または米国特許出願公開第20110044978A1号に記載されている抗体であり、これらはその全体が参照により本明細書に援用される。
【0135】
いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、セトルスマブ、ロモソズマブ、及びブロソズマブから選択される。
【0136】
「細胞ベースのwntシグナル伝達アッセイにおいてスクレロスチンの阻害効果を遮断する」抗体に関して、これは、細胞ベースのスーパートップフラッシュ(STF)アッセイにおいて、スクレロスチンの存在下、1mM未満、100nM未満、20nM未満、10nM未満、またはそれ未満のIC50でwnt誘導性シグナル伝達を回復させる抗体を指すことを意図している。WO2009/047356には、前記wnt STFアッセイが記載されている。
【0137】
「細胞ベースの石灰化アッセイにおいてスクレロスチンの阻害効果を遮断する」抗体に関して、これは、細胞ベースのアッセイにおいて、スクレロスチンの存在下、1mM未満、500nM未満、100nM未満、10nM未満、1nM未満、またはそれ未満のIC50で、BMP2誘導性石灰化を回復させる抗体を指すことを意図している。
【0138】
「Smad1リン酸化アッセイにおけるスクレロスチンの阻害効果を遮断する」抗体に関して、これは、細胞ベースのアッセイにおいて、スクレロスチンの存在下、1mM未満、500nM未満、100nM未満、10nM未満、1nM未満、またはそれ未満のIC50で、BMP6誘導性のSmad1リン酸化を回復させる抗体を指すことを意図している。
【0139】
「LRP-6へのスクレロスチンの結合を阻害する」抗体に関して、これは、1mM未満、500nM未満、100nM未満、10nM未満、5nM未満、3nM未満、1nM未満、またはそれ未満のIC50でLRP-6へのスクレロスチンの結合を阻害する抗体を指すことを意図している。
【0140】
「骨形成、質量及び密度を増加させる」抗体に関して、これは、高同化用量のPTHによる連日の断続的な処置、例えば、100μg/kgのhPTHによる連日の断続的な処置のレベルで、骨形成、質量及び密度に達することができる抗体を指すことを意図している。
【0141】
一実施形態では、本発明の抗スクレロスチン抗体は、骨形成を増加させ、及び/または骨吸収を減少させる。
【0142】
一態様では、本発明は、治療有効量の抗スクレロスチン抗体を少なくとも連続13か月間、各月にヒト患者に投与することを含む、ヒト患者における骨関連疾患の治療方法を提供し、この抗体は、配列番号70のVH配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3ドメインを含むVH、ならびに配列番号81のVL配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3ドメインを含むVLを含む抗スクレロスチン抗体を交差遮断する。
【0143】
別の態様では、本発明は、骨関連疾患の治療に使用するための抗スクレロスチン抗体を提供し、その場合、治療有効量の抗スクレロスチン抗体を少なくとも連続13か月間、各月に投与し、この抗体は、配列番号70のVH配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3ドメインを含むVH、ならびに配列番号81のVL配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3ドメインを含むVLを含む抗スクレロスチン抗体を交差遮断する。
【0144】
別の態様では、本発明は、骨関連疾患を治療するための薬剤を製造するための抗スクレロスチン抗体の使用を提供し、その場合、治療は、治療有効量の抗スクレロスチン抗体を少なくとも連続13か月間、各月に投与することを含み、この抗体は、配列番号70のVH配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3ドメインを含むVH、ならびに配列番号81のVL配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3ドメインを含むVLを含む抗スクレロスチン抗体を交差遮断する。
【0145】
一実施形態では、本発明に従って使用される抗スクレロスチン抗体は、10-11M以下の親和性(Biacoreにより測定される)でスクレロスチンに結合し、配列番号70のVH配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3ドメインを含むVH、ならびに配列番号81のVL配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3ドメインを含むVLを含む抗スクレロスチン抗体を交差遮断する。
【0146】
本発明によれば、抗体または結合剤の組み合わせ(混合物)の記録される結合が、2つの抗体または結合剤の組み合わせの理論的最大結合(上記で定義したような)の80%~0.1%(例えば80%~4%)、特に理論的最大結合の75%~0.1%(例えば75%~4%)、より具体的には70%~0.1%(例えば、70%~4%)、より具体的には理論的最大結合の65%~0.1%(例えば、65%~4%)であるように、本発明による交差遮断抗体または他の結合剤は、以下に記載されるBiacore交差遮断アッセイにおいてスクレロスチンに結合する。
【0147】
以下に、抗体または他の結合剤が本発明による抗体を交差遮断するか、または交差遮断することができるかを判定するための好適なBiacoreアッセイについて概説する。このアッセイは、本明細書に記載のスクレロスチン結合抗体のいずれかと共に使用することができることが理解されるであろう。
【0148】
Biacoreマシン(例えば、Biacore3000)は、製造業者の推奨に従って操作される。
【0149】
スクレロスチンを、日常的に使用されるアミンカップリング化学、例えばEDC-NHSアミンカップリングによって、例えばCM5 Biacoreチップにカップリングして、スクレロスチンでコーティングされた表面を作出してもよい。測定可能なレベルの結合を得るために、通常、200~800共鳴単位のスクレロスチンをチップに結合してもよい(この量は、測定可能なレベルの結合を与えると同時に、使用する検査試薬の濃度によって容易に飽和可能である)。
【0150】
スクレロスチンをBiacoreチップに取り付ける別の方法は、スクレロスチンの「タグ付き」バージョン、例えばN末端またはC末端Hisタグ付きスクレロスチンを使用することである。この形式では、抗His抗体をBiacoreチップにカップリングし、次いでこのチップ表面にHisタグ付きスクレロスチンを通過させ、抗His抗体で捕捉する。
【0151】
相互に交差遮断する能力について評価される2つの抗体を、結合部位の化学量論量、例えば1対1のモル比で、好適な緩衝液中で混合して、被験混合物を作製する。使用する緩衝液は一般的に、タンパク質化学において通常使用される緩衝液、例えば、PBS(136mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、1.76mM KH2PO4、pH7.4)である。結合部位に基づいて濃度を計算する場合、抗体の分子量は、抗体の総分子量をその抗体上の標的(すなわち、スクレロスチン)結合部位の数で割ったものであると仮定される。
【0152】
被験混合物中の各抗体の濃度は、Biacoreチップ上に結合しているスクレロスチン分子上のその抗体の結合部位が確実に飽和するのに十分な高さであるべきである。混合物中の抗体は、同じモル濃度(結合ベース)であり、その濃度は通常、1.0mM~1.5mM(結合部位ベース)であろう。
【0153】
別々の抗体自体を含有する別々の溶液も調製する。これらの別々の溶液に使用する緩衝液は、被験混合物に使用した緩衝液と同じ緩衝液かつ同じ濃度であるべきである。
【0154】
スクレロスチンでコーティングしたBiacoreチップ上に被験混合物を通過させ、結合を記録する。その後、結合した抗体を、例えば30mM HClなどの酸でチップを約1分間処理することによって除去する。チップに結合しているスクレロスチン分子が損傷を受けないことが重要である。次いで、スクレロスチンでコーティングされた表面上に第1の抗体のみの溶液を通過させ、結合を記録する。その後、例えば上述の酸処理によってチップを処理して、チップに結合したスクレロスチンを損傷させることなく、結合した抗体をすべて除去する。次いで、スクレロスチンでコーティングされた表面上に第2の抗体のみの溶液を通過させ、結合量を記録する。
【0155】
理論的最大結合は、スクレロスチンへの各抗体の結合の合計として個別に定義することができる。次いで、これを、測定した抗体混合物の実際の結合と比較する。実際の結合が理論的結合よりも低い場合、2つの抗体は相互に交差遮断している。
【0156】
液相の抗スクレロスチン抗体の非存在下(すなわち、陽性対照ウェル)で得られるスクレロスチン検出シグナルと比較して、液相の抗スクレロスチン抗体が、スクレロスチン検出シグナル(すなわち、コーティングされた抗体が結合したスクレロスチンの量)の60%~100%、具体的には70%~100%、より具体的には80%~100%の減少を生じ得る場合、抗体は、以下に説明するように、ELISAアッセイにおいて交差遮断として定義される。
【0157】
抗スクレロスチン抗体または別のスクレロスチン結合剤の交差遮断も、ELISAアッセイを使用して検出してよい。ELISAアッセイの一般原理には、ELISAプレートのウェル上に抗スクレロスチン抗体をコーティングすることが含まれる。次いで、過剰量の第2の潜在的に交差遮断性の抗スクレロスチン抗体を溶液中に添加する(すなわち、ELISAプレートに結合しない)。次いで、限定的な量のスクレロスチンをウェルに添加する。
【0158】
ウェル上にコーティングされた抗体と溶液中の抗体は、限定された数のスクレロスチン分子の結合をめぐって競合する。次いで、プレートを洗浄して、コーティングされた抗体に結合しなかったスクレロスチンを除去し、第2の液相抗体及び第2の液相抗体とスクレロスチンとの間に形成された複合体も除去する。次いで、適切なスクレロスチン検出試薬を使用して、結合したスクレロスチンの量を測定する。コーティングされた抗体を交差遮断することができる溶液中の抗体は、コーティングされた抗体が第2の液相抗体の非存在下で結合することができるスクレロスチン分子の数と比較して、コーティングされた抗体が結合することができるスクレロスチン分子の数を減少させることができる。
【0159】
Ab-X及びAb-Yと呼ばれる2つの抗体について、このアッセイを以下でさらに詳細に説明する。固定化抗体としてAb-Xを選択する場合、これをELISAプレートのウェルにコーティングし、その後、プレートを好適なブロッキング溶液でブロッキングして、その後に添加される試薬の非特異的結合を最小限に抑える。次いで、ウェル当たりのAb-Yスクレロスチン結合部位のモル数が、ELISAプレートのコーティング中に使用したウェルあたりのAb-Xスクレロスチン結合部位のモル数より少なくとも10倍高くなるように、過剰量のAb-YをELISAプレートに添加する。次いで、ウェル当たりに添加されるスクレロスチンのモル数が、各ウェルのコーティングに使用したAb-Xスクレロスチン結合部位のモル数より少なくとも25倍低くなるように、スクレロスチンを添加する。好適なインキュベーション期間の後、ELISAプレートを洗浄し、スクレロスチン検出試薬を添加して、コーティングした抗スクレロスチン抗体(この場合はAb-X)が特異的に結合するスクレロスチンの量を測定する。アッセイのバックグラウンドシグナルは、コーティングした抗体(この場合はAb-X)、第2の液相抗体(この場合はAb-Y)、スクレロスチン緩衝液のみ(すなわち、スクレロスチンなし)、及びスクレロスチン検出試薬を含有するウェルで得られるシグナルとして定義される。アッセイの陽性対照シグナルは、コーティングした抗体(この場合はAb-X)、第2の液相抗体緩衝液のみ(すなわち、第2の液相抗体なし)、スクレロスチン及びスクレロスチン検出試薬を含有するウェルで得られるシグナルとして定義される。ELISAアッセイは、陽性対照シグナルがバックグラウンドシグナルの少なくとも6倍となるような方法で実行する必要がある。
【0160】
どの抗体をコーティング抗体として使用し、どの抗体を第2の(競合)抗体として使用するかの選択に起因するアーチファクト(例えば、スクレロスチンに対するAb-XとAb-Yの有意に異なる親和性)を回避するために、交差遮断アッセイを2つの形式で実行する必要があり、1)形式1では、Ab-XがELISAプレート上にコーティングする抗体であり、Ab-Yが溶液中の競合抗体であり、2)形式2では、Ab-YがELISAプレート上にコーティングする抗体であり、Ab-Xが溶液中の競合抗体である。
【0161】
別の態様では、本発明は、治療有効量の抗スクレロスチン抗体を少なくとも連続13か月間、各月にヒト患者に投与することを含む、ヒト患者における骨関連疾患の治療方法を提供し、この抗体は、配列番号70のVH配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3ドメインを含むVH、ならびに配列番号81のVL配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3ドメインを含むVLを含む抗スクレロスチン抗体と同じエピトープに結合する。
【0162】
別の態様では、本発明は、骨関連疾患の治療に使用するための抗スクレロスチン抗体を提供し、その場合、治療有効量の抗スクレロスチン抗体を少なくとも連続13か月間、各月に投与し、この抗体は、配列番号70のVH配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3ドメインを含むVH、ならびに配列番号81のVL配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3ドメインを含むVLを含む抗スクレロスチン抗体と同じエピトープに結合する。
【0163】
別の態様では、本発明は、骨関連疾患を治療するための薬剤を製造するための抗スクレロスチン抗体の使用を提供し、その場合、治療は、治療有効量の抗スクレロスチン抗体を少なくとも連続13か月間、各月に投与することを含み、この抗体は、配列番号70のVH配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3ドメインを含むVH、ならびに配列番号81のVL配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3ドメインを含むVLを含む抗スクレロスチン抗体と同じエピトープに結合する。
【0164】
一実施形態では、本発明に従って使用される抗スクレロスチン抗体は、10-11M以下の親和性(Biacoreにより測定される)でスクレロスチンに結合し、配列番号70のVH配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3ドメインを含むVH、ならびに配列番号81のVL配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3ドメインを含むVLを含む抗スクレロスチン抗体と同じエピトープに結合する。
【0165】
抗体のエピトープを決定するための標準的なアッセイは、当技術分野で公知であり、例えば、X線結晶構造解析、核磁気共鳴(NMR)、質量分析と組み合わせた水素-重水素交換、ペプチドベースのアプローチ、または変異誘発ベースのアプローチが挙げられる(すべて、Abbott et al.“Current approaches to fine mapping of antigen-antibody interactions.”Immunology vol.142,4(2014):526-35、及びその参考文献において論じられている)。
【0166】
医薬組成物
一実施形態では、抗スクレロスチン抗体を、医薬組成物として提供する。医薬組成物は、薬学的に許容される担体と共に製剤化してもよい。したがって、一態様では、本発明は、本明細書で定義される抗スクレロスチン抗体と、骨関連疾患の治療に使用するための薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供し、その場合、治療有効量の抗スクレロスチン抗体を、少なくとも連続13か月間、各月に投与する。医薬組成物のいくつかの実施形態では、抗体は、配列番号70のVH配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3ドメインを含むVH、ならびに配列番号81のVL配列のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3ドメインを含むVLを含む。薬学的に許容される担体には、滅菌水溶液が含まれる。
【0167】
特定の実施形態
一実施形態では、本発明は、少なくとも連続13か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に150~2500mgの治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に投与することを含む、ヒト患者におけるOIの治療方法を提供する。
【0168】
関連する実施形態では、本発明は、少なくとも連続30か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に150~2500mgの治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に投与することを含む、ヒト患者におけるOIの治療方法を提供する。
【0169】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも連続13か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に20~40mg/kgの治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に投与することを含む、0~17歳のヒト患者におけるOIの治療方法を提供する。
【0170】
関連する実施形態では、本発明は、少なくとも連続30か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に20~40mg/kgの治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に投与することを含む、0~17歳のヒト患者におけるOIの治療方法を提供する。
【0171】
一実施形態では、本発明は、少なくとも連続13か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に150~2500mgの治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に投与することを含む、ヒト患者におけるOIの治療方法を提供し、その場合、抗スクレロスチン抗体は、配列番号70のアミノ酸配列を有するVHポリペプチド配列及び配列番号81のアミノ酸配列を有するVLポリペプチド配列を含む。
【0172】
関連する実施形態では、本発明は、少なくとも連続30か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に150~2500mgの治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に投与することを含む、ヒト患者におけるOIの治療方法を提供し、その場合、抗スクレロスチン抗体は、配列番号70のアミノ酸配列を有するVHポリペプチド配列及び配列番号81のアミノ酸配列を有するVLポリペプチド配列を含む。
【0173】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも連続13か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に20~40mg/kgの治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に投与することを含む、0~17歳のヒト患者におけるOIの治療方法を提供し、その場合、抗スクレロスチン抗体は、配列番号70のアミノ酸配列を有するVHポリペプチド配列及び配列番号81のアミノ酸配列を有するVLポリペプチド配列を含む。
【0174】
関連する実施形態では、本発明は、少なくとも連続30か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に20~40mg/kgの治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に投与することを含む、0~17歳のヒト患者におけるOIの治療方法を提供し、その場合、抗スクレロスチン抗体は、配列番号70のアミノ酸配列を有するVHポリペプチド配列及び配列番号81のアミノ酸配列を有するVLポリペプチド配列を含む。
【0175】
一実施形態では、本発明は、少なくとも連続13か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に150~2500mgの治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に投与することを含む、ヒト患者におけるOIの治療方法を提供し、その場合、抗スクレロスチン抗体は、配列番号198のアミノ酸配列を含むVHポリペプチド配列及び配列番号199のアミノ酸配列を含むVLポリペプチド配列を含む。
【0176】
関連する実施形態では、本発明は、少なくとも連続30か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に150~2500mgの治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に投与することを含む、ヒト患者におけるOIの治療方法を提供し、その場合、抗スクレロスチン抗体は、配列番号198のアミノ酸配列を含むVHポリペプチド配列及び配列番号199のアミノ酸配列を含むVLポリペプチド配列を含む。
【0177】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも連続13か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に20~40mg/kgの治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に投与することを含む、0~17歳のヒト患者におけるOIの治療方法を提供し、その場合、抗スクレロスチン抗体は、配列番号198のアミノ酸配列を含むVHポリペプチド配列及び配列番号199のアミノ酸配列を含むVLポリペプチド配列を含む。
【0178】
関連する実施形態では、本発明は、少なくとも連続30か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に20~40mg/kgの治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に投与することを含む、0~17歳のヒト患者におけるOIの治療方法を提供し、その場合、抗スクレロスチン抗体は、配列番号198のアミノ酸配列を含むVHポリペプチド配列及び配列番号199のアミノ酸配列を含むVLポリペプチド配列を含む。
【0179】
一実施形態では、本発明は、少なくとも連続13か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に150~2500mgの治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に投与することを含む、ヒト患者におけるOIの治療方法を提供し、その場合、抗スクレロスチン抗体は、配列番号202のアミノ酸配列を含むVHポリペプチド配列及び配列番号203のアミノ酸配列を含むVLポリペプチド配列を含む。
【0180】
関連する実施形態では、本発明は、少なくとも連続30か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に150~2500mgの治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に投与することを含む、ヒト患者におけるOIの治療方法を提供し、その場合、抗スクレロスチン抗体は、配列番号202のアミノ酸配列を含むVHポリペプチド配列及び配列番号203のアミノ酸配列を含むVLポリペプチド配列を含む。
【0181】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも連続13か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に20~40mg/kgの治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に投与することを含む、0~17歳のヒト患者におけるOIの治療方法を提供し、その場合、抗スクレロスチン抗体は、配列番号202のアミノ酸配列を含むVHポリペプチド配列及び配列番号203のアミノ酸配列を含むVLポリペプチド配列を含む。
【0182】
関連する実施形態では、本発明は、少なくとも連続30か月、最長18年の期間にわたって、ヒト患者に20~40mg/kgの治療有効量の抗スクレロスチン抗体を各月に投与することを含む、0~17歳のヒト患者におけるOIの治療方法を提供し、その場合、抗スクレロスチン抗体は、配列番号202のアミノ酸配列を含むVHポリペプチド配列及び配列番号203のアミノ酸配列を含むVLポリペプチド配列を含む。
【実施例】
【0183】
実施例1
本実施例では、I型、III型、またはIV型の骨形成不全症(OI)と診断され、COL1A1/COL1A2変異が確認され、過去5年間に骨折があった成人60人を対象とした、12か月の無作為化二重盲検第2b相臨床試験について記載する。患者に、8mg/kgまたは20mg/kgの用量のセトルスマブを12か月間、各月に投与した。セトルスマブは、注入により静脈内投与した。試験では、DXAで測定した腰椎の面骨塩量(BMD)について、6か月後及び12か月後のベースラインからの変化率を測定した。また、骨形成のバイオマーカーであるプロコラーゲンIのN末端プロペプチド(PINP)、及び骨吸収のバイオマーカーであるC末端テロペプチド(CTX-1)を、1、3、6、9、及び12か月後に測定した。
【0184】
セトルスマブ治療群に無作為に割り付けられた60人の患者のうち、29人に8mg/kgを毎月投与して治療し、31人に20mg/kgを毎月投与して治療した。これらの患者のベースライン患者特徴(表2)及び病歴(表3)は、治療群間で同等であった。
【表2】
【表3】
【0185】
結果
試験における骨代謝バイオマーカーのアッセイ結果を
図2A及び
図2Bに示す。結果は、セトルスマブ療法によって、骨代謝回転の血清バイオマーカーがベースラインから用量依存的に改善したことを示す。驚くべきことに、両方のバイオマーカーは、最初の1か月でピークの応答を示し、その後応答は減衰し、治療開始から6~9か月以内にバイオマーカーレベルはベースラインレベルと有意に変わらないレベルに戻った。
【0186】
骨形成バイオマーカー(P1NP)のレベルは、毎月20mg/kgでのセトルスマブ療法の最初の6か月間、及び毎月8mg/kgでの治療の最初の1か月間では、ベースラインレベルを統計的に有意に上回っていた(
図2A)。ベースライン値、治療群、及びOI型を共変量としてANCOVAモデルを使用して統計的有意性を試験した(
**p<0.01;
***p<0.001)。どちらの用量のセトルスマブでも、P1NPレベルは最初の1か月でピークに達し、その後11か月の治療期間中に減少した。
【0187】
骨吸収マーカー(CTX-1)のレベルは、毎月20mg/kgでのセトルスマブ療法の最初の3か月間、及び毎月8mg/kgでの治療の最初の1か月間では、ベースラインレベルを有意に下回っていた(
図2B)。ベースライン値、治療群、及びOI型を共変量としてANCOVAモデルを使用して統計的有意性を試験した(
**p<0.01;
***p<0.001)。どちらの用量のセトルスマブでも、CTX-1レベルは最初の1か月で最低値に達し、その後の11か月の治療期間中に再び上昇した。
【0188】
対照的に、
図3は、ベースラインを上回る腰椎BMDの改善がセトルスマブ療法によって継続されたことを示している。20mg/kgのセトルスマブを毎月投与した群では、腰椎BMD(DXAで測定)が6か月後に約4%、12か月後には8.5%増加した。同様に、8mg/kgのセトルスマブを毎月投与した群では、腰椎BMD(DXAで測定)が6か月後に約4.7%、12か月後には6.8%増加した。これらの増加は、ベースライン値、治療群、OI型を共変量としたANCOVAモデルに基づき、ベースラインと比較して統計的に有意であった(
***p<0.001)。そのため、治療初期にバイオマーカーが減少したにもかかわらず、毎月のセトルスマブ療法の最初の6か月間と後半の6か月間で同様のBMDの増加が観察された。
【0189】
さらに、試験では、抗スクレロスチン抗体が成人OI患者において安全で忍容性が高いことが示された。試験治療下で発現した重篤な有害事象(TEAE)は、治療期間中、群全体でほとんど認められなかった。有害事象(AE)による中止は、好中球減少症と頭痛の2件のみであった。患者の安全を損なわせる血液学的、臨床化学、尿検査、ECG、またはバイタルサインデータの臨床的に重大な異常はなかった。
【0190】
臨床試験の結果によると、長期使用によりセトルスマブの効果が薄れることがバイオマーカーによって示されているにもかかわらず、セトルスマブはOI患者のBMDを継続的に増加させる。驚くべきことに、これらの結果は、バイオマーカーによって分析された応答がBMDに対する効果とは別個であったことを示している。BMDにおいて観察された改善は継続的であり、治療の最初の6か月と後半の6か月で同等の改善が達成された。対照的に、バイオマーカーには一時的な変化が観察され、バイオマーカーの応答はセトルスマブ治療の最初の1か月間でピークに達し、その後は、治療を継続したにもかかわらず急速に減衰した。したがって、これらの結果は、たとえ骨代謝回転バイオマーカーのレベルで観察された応答が治療初期に減退したとしても、セトルスマブが長期使用によって臨床的に関連する効果、すなわちBMDの増加を継続することを示している。これらの驚くべき結果により、セトルスマブは長期(または慢性)治療に使用することができ、セトルスマブ療法には休薬期間は必要ないという結論につながった。
【0191】
実施例2
12か月間のセトルスマブ療法後、セトルスマブを中止し、24か月目までBMDをモニタリングした。患者のサブセットに12か月目及び/または18か月目にゾレドロン酸療法(「任意のZOL」)を施し、別のサブセットにはセトルスマブ中止後にゾレドロン酸療法を施さなかった(「ZOLなし」)。この1年間にわたって、腰椎BMD(
図4A)、股関節BMD(
図4B)、橈骨全領域体積BMD(
図4C)、及び脛骨全領域体積BMD(
図4D)を評価した。セトルスマブ療法に起因する初期のBMDの増加は、セトルスマブ療法の中止後1年間にわたって減少した。末梢骨格において大きなBMDの損失が観察され、一方、脊椎及び股関節において中程度のBMDの損失が観察された。ゾレドロン酸(ZOL)の投与により、脊椎及び股関節におけるBMD損失が予防されたが、橈骨遠位端及び脛骨では予防されなかった。
【0192】
セトルスマブ(20mg/kg)による12か月の治療期間中、及び治療後18か月目まで(セトルスマブ治療後合計6か月)の間、患者の血清中で骨代謝回転マーカーP1NP及びCTxを評価した。医師の推奨に従って、患者にゾレドロン酸を投与するか、または投与しなかった。ゾレドロン酸(ZOL)による治療に関係なく、患者において血清P1NP(骨形成の指標)は低下した(
図5A)。一方、ゾレドロン酸を投与していない患者では、血清CTx(骨吸収を示す)が増加した。
【0193】
最初の12か月の投与期間後の追跡期間中に、有害事象についても患者を評価した。追跡期間における安全性の所見は予想された転帰と一致しており、骨折率は変動していたが、最初の12か月の治療期間中の骨折率を有意に超えることはなかった。2年間の試験全体を通じて、重大な有害な心血管事象は発生しなかった。
【0194】
これらの結果は、セトルスマブ療法に起因するBMD増加が、骨代謝回転バイオマーカーによって示唆された減少後も十分に継続するだけでなく(実施例1)、ゾレドロン酸単独などの骨吸収抑制療法ではセトルスマブによる初期の増加を維持するには不十分であることも示している。さらに、セトルスマブ療法による骨代謝回転バイオマーカーに認められる初期の山と谷は、セトルスマブによる治療期間中に徐々に平準化されるが、セトルスマブを中止すると、安定した維持レベルにあったものがベースラインから急速に変化するものへと切り替わる。P1NP(骨形成)の場合、セトルスマブを中止すると、ゾレドロン酸治療に関係なく減少が生じる。CTx(骨吸収)の場合、セトルスマブを中止すると、急速な増加が生じる。したがって、セトルスマブ療法の中止後のBMDの減少及び骨代謝回転バイオマーカーの変化は、12か月後の治療継続の必要性を裏付けている。
【0195】
本明細書で引用されるすべての特許、公開出願、及び参考文献の教示は、あらゆる目的のためにその全体が参照により援用される。本明細書に列挙される特許及び刊行物は、当技術分野の一般的な技術を説明するものである。引用文献と本明細書との間に矛盾がある場合、本明細書が優先するものとする。本出願の実施形態を説明する際、明確にするために特定の用語が使用される。しかしながら、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図するものではない。本明細書におけるいずれの記載も本発明の範囲を限定するものと見なされてはならない。提示される全ての実施例は、代表的であり、非限定的である。上記の実施形態は、本発明から逸脱することなく、上記の教示に照らして当業者によって理解されるように修正または変更され得る。したがって、特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で、本発明は、具体的に記載される方法とは別の方法で実施され得ることを理解されたい。
【配列表】
【国際調査報告】