(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】核酸増幅生成物を試験する方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20240927BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240927BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240927BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519033
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2022077356
(87)【国際公開番号】W WO2023052622
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507214038
【氏名又は名称】キアゲン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ケルナー, ロニー
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS25
4B063QX01
(57)【要約】
本発明は核酸増幅生成物を試験するための方法であって、a.i.上流および下流のプライマー領域、ii.上流および下流のプライマー領域の間の増幅される標的領域を含む、増幅生成物を提供する工程、b.増幅生成物をPCR反応において増幅することによって増幅生成物を試験する工程であって、i.PCR反応における上流および下流のPCRプライマーは、増幅生成物の上流および下流のプライマー領域において結合し、ii.第1および第2のオリゴヌクレオチドプローブは、第1のおよび第2のPCRプライマーの下流かつ上流および下流のプライマー領域内に配置される、工程、c.PCR反応を行い、新たに形成された増幅生成物を試験する工程であって、工程a.i.)の上流および下流のプライマー領域は、35ヌクレオチド未満かつ20ヌクレオチドより大きい長さを有する工程を包含する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸増幅生成物を試験するための方法であって、前記方法は、
a. 以下:
i. 上流のおよび下流のプライマー領域、ならびに前記上流のおよび前記下流のプライマー領域をそれぞれ結合する上流プライマーおよび下流プライマー、ならびに必要に応じておよび好ましくは、
ii. 前記上流のおよび下流のプライマー領域の間の増幅される標的領域、
を含む増幅生成物を提供する工程、
b. 前記増幅生成物をPCR反応において増幅することによって、前記増幅生成物を試験する工程であって、ここで
i. 前記PCR反応における前記上流のおよび下流のPCRプライマーは、前記増幅生成物の前記上流および下流のプライマー領域の中で結合し、
ii. 第1および第2のオリゴヌクレオチドプローブは、前記第1のおよび前記第2のPCRプライマーの下流にかつ前記上流のおよび前記下流のプライマー領域内に配置される
工程、
c. PCR反応を、好ましくはデジタルPCR反応を行い、新たに形成された増幅生成物を試験する工程であって、ここで工程a.i.)の前記上流および下流のプライマー領域は、35ヌクレオチド未満かつ20ヌクレオチドより大きい長さを有する、工程、を包含する方法。
【請求項2】
前記プライマーは、10ヌクレオチド~22ヌクレオチドの間の長さである、および/または前記プローブは、8~17ヌクレオチドの間の長さである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プライマーのうちの少なくとも一方は、1つもしくはこれより多くのロック核酸ヌクレオチド(LNA)またはテンプレート結合強度を増大させる別のヌクレオチドアナログを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プローブの少なくとも一方は、1つもしくはこれより多くのロック核酸ヌクレオチド(LNA)またはテンプレート結合強度を増大させる別のヌクレオチドアナログを含む、請求項1~3に記載の方法。
【請求項5】
全てのプライマーおよびプローブは、LNAを含む、請求項1~4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つもしくはこれより多くのプライマーは、1~8個の間のLNAヌクレオチドを含む、請求項1~5に記載の方法。
【請求項7】
前記1つもしくはこれより多くのプローブは、2~12個の間のLNAヌクレオチドを含む、請求項1~6に記載の方法。
【請求項8】
工程1 a)からの前記増幅生成物は、核酸ライブラリーを増幅する工程に由来する、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ライブラリーは、シーケンシングライブラリーである、および/または前記プローブは、2つの二重鎖スコーピオンプローブである、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
核酸増幅組成物であって、
a. 10~22ヌクレオチドの間の長さを有し、必要に応じて1つもしくはこれより多くのロック核酸ヌクレオチドアナログまたはテンプレート結合強度を増大させる別のヌクレオチドアナログを含む少なくとも2つのプライマー、および
b. 8~17ヌクレオチドの間の長さを有し、必要に応じて1つもしくはこれより多くのロック核酸ヌクレオチドアナログまたはテンプレート結合強度を増大させる別のヌクレオチドアナログを含む少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブであって、ここで前記プローブは、好ましくは2つの二重鎖スコーピオンプローブであるオリゴヌクレオチドプローブ、
を含む核酸増幅組成物。
【請求項11】
核酸ライブラリーの分析のための請求項10に記載の組成物の使用。
【請求項12】
a. 10~22ヌクレオチドの間の長さを有し、必要に応じて1つもしくはこれより多くのロック核酸ヌクレオチドアナログまたはテンプレート結合強度を増大させる別のヌクレオチドアナログを含む少なくとも2つのプライマー、および
b. 8~17ヌクレオチドの間の長さを有し、必要に応じて1つもしくはこれより多くのロック核酸ヌクレオチドアナログまたはテンプレート結合強度を増大させる別のヌクレオチドアナログを含む少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブ、
を含むキット。
【請求項13】
前記プローブは、加水分解プローブであり、前記オリゴヌクレオチドプローブは、標識を有し、ここで前記2つのプローブ上にある前記標識は異なる、請求項1~12に記載の方法、組成物またはキット。
【請求項14】
前記核酸増幅生成物は、核酸ライブラリーを増幅する工程に由来し、前記ライブラリーは、シーケンシングライブラリーである、請求項13に記載の方法、組成物またはキット。
【請求項15】
前記増幅工程b)は、デジタルPCRアッセイであり、前記テンプレートは、仕切りまたは液滴の中へと細分される、請求項1~14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
次世代シーケンシング技術(例えば、パイロシーケンシング、合成ごとのシーケンシング(sequencing by synthesis)、ならびにオリゴヌクレオチドライゲーションおよび検出ごとのシーケンシング)は、第1世代アプローチの主要な限界を克服している。シーケンシング反応は、同じフローセル中のアレイに固定された非常に多くの異なるサンプル(テンプレート)と並行して行われ得る。単位面積当たりのサンプル密度は非常に高い可能性があり、サンプル総数は、アレイを拡大することによって増大され得る。上記サンプルは、フローセルの内部の共有流体容積の中で並行して一連のシーケンシング試薬に曝され得る。また、上記アレイ中のサンプルは、上記フローセルを通過する試薬への周期的な曝露と並行してシーケンシング反応が進むにつれて、リアルタイムで上記サンプルの全てからのシーケンシングデータを記録するためにカメラでモニターされ得る;WO 2013/019751を参照のこと。
【0002】
現在市場に出ている次世代技術は、特定の構成を有するインビトロライブラリーに依拠する。シーケンシングされるべき種々のフラグメントは、ライブラリーメンバーを形成するためにアダプターに各々隣り合わせられる。上記アダプターは、支持体(例えば、平らな表面またはビーズ)上の各ライブラリーメンバーのクローン性増幅のために、プライマー結合部位を提供する。上記アダプターは、同じプライマーまたは一対のアダプター特異的プライマーでの、上記ライブラリーの全てのメンバーの増幅を可能にする結合部位を導入する。また、上記アダプターのうちの一方または両方は、シーケンシングプライマーのための結合部位を提供し得る。さらに、アダプターは、異なるライブラリーのメンバーがプールされ、かつ各メンバーに関して本来のライブラリーのトラックを失うことなく、同じフローセルの中で一緒にシーケンシングされることを可能にするライブラリー特異的インデックス配列を導入し得る。ライブラリーセットは、並行して、例えば、マルチウェルプレートの異なるウェルの中で、異なる核酸サンプルから構築され得る。しかし、ウェル間で均一な反応条件を達成しようとする最大限の努力にもかかわらず、上記ライブラリーの濃度および品質は、広く変動し得る。NGS機器類のシーケンシング能力が上昇し続けることに伴って、研究者は、より多くのサンプル、またはライブラリーを1つのシーケンシング実行へとプールすることができ、シーケンシングのサンプルあたりのコストを大きく低減する。しかし、NGSライブラリー濃度は、投入される核酸サンプルの量および品質、ならびに使用される標的富化方法に基づいて広く変動し得る。各プールされるライブラリーが所望の深度へとシーケンシングされることを担保するために、NGSライブラリーは、各サンプルが必要とされるリード数を達成するように、注意深く定量化および正規化されなければならない。一般的なライブラリー定量化方法はとしては、蛍光分光光度測定法および定量的PCR(qPCR)が挙げられる。両方法は、ライブラリー濃度の比較的正確な測定値を提供するが、これらの技術と関連するアッセイ特異的な考慮事項が存在する。本文中で、本発明者らは、2つのライブラリー定量技術: InvitrogenTM QubitTM FluorometerまたはqPCRをそれぞれ使用する、InvitrogenTM QubitTM dsDNA HS Assay KitおよびInvitrogenTM CollibriTM Library Quantification Kitの比較を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要旨
本開示は、デジタル増幅アッセイを使用することによって核酸ライブラリーを特徴づける方法を提供する。
本発明は、従って核酸増幅生成物を試験するための方法であって、上記方法は、
a. 以下:
i. 上流のおよび下流のプライマー領域、ならびに上記上流のおよび上記下流のプライマー領域にそれぞれ結合する上流のおよび下流のプライマー、ならびに必要に応じておよび好ましくは、
ii. 上記上流および下流のプライマー領域の間の増幅される標的領域、
を含む、線形的または指数関数的増幅に由来する増幅生成物を提供する工程、
b. 上記増幅生成物をPCR反応において増幅することによって、上記増幅生成物を試験する工程であって、ここで
i. 上記PCR反応における上記上流のおよび下流のPCRプライマーは、上記増幅生成物の上記上流および下流のプライマー領域の中で結合し、
ii. 第1および第2のオリゴヌクレオチドプローブは、上記第1のおよび上記第2のPCRプライマーの下流にかつ上記上流のおよび上記下流のプライマー領域内に配置される
工程、
c. PCR反応を行い、新たに形成された増幅生成物を試験する工程であって、ここで工程a.i.)の上記上流および下流のプライマー領域は、35ヌクレオチド未満かつ20ヌクレオチドより大きい長さを有する、工程、
を包含する方法に関する。
【0005】
好ましくは、上記増幅は、指数関数的である。
【0006】
ライブラリー特徴付けの例示的方法が提供される。しかし、本発明は、種々の種類の増幅生成物に適用され得る。上記方法において、核酸ライブラリーが最初に得られ得る。上記ライブラリーは、各々第1のアダプター領域および第2のアダプター領域を有するメンバーを含み得る。これらのライブラリーの特徴づけは、上記アダプターは長さがしばしば異なるかまたは非常に短いことから、標準化することが困難であった。そのことは、アッセイ開発を非常な困難にしている。
【0007】
試験する工程は、好ましくは、i)増幅生成物の量を定量する工程、またはii)上記増幅生成物が所望の挿入物を含むか否かをチェックする工程、またはiii)両方である。
【0008】
少なくとも、上記メンバーの部分セットは、上記第1のおよび第2のアダプター領域の間に配置された挿入物を有し得る。少なくとも、上記ライブラリーの一部は、仕切りへと分けられ得る。デジタルアッセイは、ライブラリーメンバーが各仕切りに存在するか否かを示すデータを生成するために、上記仕切りに対してアダプター領域プローブで行われ得る。上記ライブラリーの特性は、上記データに基づいて決定され得る。ライブラリー特徴づけの別の例示的方法が提供される。上記方法において、核酸ライブラリーが得られ得る。上記ライブラリーは、第1の定常領域および第2の定常領域を各々有するメンバーを含み得る。少なくとも、上記メンバーの部分セットは、上記第1のおよび第2の定常領域の間に配置された可変領域を有し得る。限界希釈時に上記ライブラリーのメンバーを含む仕切りが形成され得る。上記ライブラリーのメンバーは、各定常領域に関するプライマーを使用して、上記仕切りの中で増幅され得る。増幅データは、上記仕切りの中で定常領域プローブから収集され得る。上記ライブラリーのメンバーのレベルは、上記増幅データに基づいて決定され得る。
【0009】
シーケンシングの前のライブラリー特徴づけは、問題であり得る。正確な相対的配向において両方のアダプターを含む適切に形成されるライブラリーメンバーのみが、シーケンシングによって信頼して問い合わされ得るクローン集団を生成する。上記ライブラリー中の形のくずれた(malformed)メンバー(例えば、上記アダプターのうちのただ1つの2つのコピーが隣接したメンバー)は、十分に形成されたものから区別することは困難であり得る。しかし、上記形のくずれたメンバーは、一般に、支持体(配列獲得の前提条件)上で増幅され得ないか、または上記シーケンシングプライマーのための結合部位を有しないか、または両方である。結果として、形のくずれたメンバーは、空間を占有し得、試薬を消費し得、次世代シーケンシング実行によって生成される有用な配列情報の量を、ライブラリー中の形のくずれたメンバーの割合に正比例して低減し得る;WO 2013/019751を参照のこと。
【0010】
本発明の方法は、これらの問題を解決した。
図1は、主要な設定を示す。増幅工程b)がデジタルPCR増幅である場合、それは、本発明の方法において好ましい。この好ましい実施形態において、テンプレートは、仕切りまたは液滴へと細分される。デジタルアッセイは、ライブラリーメンバーが各仕切りの中に存在するか否かを示すデータを生成するために、アダプター領域プローブで上記仕切りに対して行われ得る。上記ライブラリーまたはテンプレートの特性は、このデータに基づいて決定し得る。
【0011】
デジタルポリメラーゼ連鎖反応(デジタルPCR、デジタルPCR、dPCR、またはdePCR)は、DNA、cDNA、またはRNAを含む核酸鎖を直接的に定量しかつクローン的に増幅するために使用され得る従来のポリメラーゼ連鎖反応方法の生物工学的改良である。dPCRと旧来のPCRとの間の重要な差異は、核酸の量を測定する方法にある。dPCRは、PCRより精確な方法であるが、不慣れなユーザーの手では誤りやすい。「デジタル」測定は、ある特定の変数を定量的にかつ不連続的に測定するのに対して、「アナログ」測定は、測定されたパターンに基づいてある特定の測定を外挿する。PCRは、単一サンプルあたりに1つの反応を行う。dPCRはまた、サンプル内で1つの反応を行うが、上記サンプルは、非常に多くの仕切りへと分離され、上記反応は、各仕切りの中で個々に行われる。この分離は、核酸の量のより信頼性のある収集および高感度の測定を可能にする。上記方法は、遺伝子配列におけるバリエーション - 例えば、コピー数バリアントおよび点変異 - を試験するために有用であり、次世代シーケンシングのためのサンプルのクローン性増幅のために慣用的に使用されることが明らかに示された。
【0012】
本発明は、標準的プライマーと比較した場合に、プライマーが非常に短いという事実によって特徴づけられる。同様に、使用されるプローブは、標準的プローブと比較した場合に、非常に短い。これは、融解温度および融解曲線に関する問題をもたらす。
【0013】
NGSライブラリー定量のための現行の方法は、電気泳動、定量的リアルタイムPCR、およびより近年では、次世代シーケンシングおよびデジタルPCRである。それらの中で、2つのアダプターのうちの一方を標的化するために各々特異的な2つのプライマーを使用するSYBR Greenベースのアッセイは、大部分の顧客によって使用される。より近年の開発は、2つのプライマーおよび2つのプローブ(各々、ライブラリーにおいて2つのライゲーションされたアダプターのうちの一方に対して特異的)を使用するTaqManプローブベースのアッセイである。SYBR Greenベースのアッセイとは対照的に、それらはより正確である。なぜなら非特異的アンプリコンは、蛍光シグナルを生じないからである。現在市場に出ているTaqmanプローブベースのアッセイのプローブが意図され、特定の調製キットからのNGSライブラリーの定量のためにのみ機能する。これは、上記アダプターの可変部分を標的とするプローブ設計を示す。また、それは、異なるIlluminaライブラリーの定量のために多数のアッセイの使用を必要とする。
【0014】
本発明の好ましい実施形態に関して、本発明の方法は、この制限を克服する。ここで、上記プローブは、保存されたアダプター領域P5およびP7にある。さらに好ましい実施形態において、これは、QIAcuityプラットフォーム上のナノプレートベースのデジタルPCRと組み合わされる。
【0015】
好ましくは、両方のプローブが、同じ鎖または反対側の鎖のいずれかを標的化するために設計され、それらは、好ましくは、異なる発蛍光団または別の標識システムを有する。さらにより好ましくは、上記標識システムは、蛍光色素または化学発光色素、特に、シアニンタイプの色素と組み合わせて、希土類クリプテートまたは希土類キレート剤を含む。本発明の文脈において、発蛍光団は、色素の使用を含み、これは、例えば、FAM(5-または6-カルボキシフルオレセイン)、VIC、NED、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、IRD-700/800、シアニン色素(例えば、CY3、CY5、CY3.5、CY5.5、Cy7)、キサンテン、6-カルボキシ-2’,4’,7’,4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、TET、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(6-Carboxy-4’,5’-dichloro-2’,7’-dimethodyfluorescein)(JOE)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、5-カルボキシローダミン-6G(R6G5)、6-カルボキシローダミン-6G(RG6)、ローダミン、ローダミングリーン、ローダミンレッド、ローダミン110、BODIPY色素(例えば、BODIPY TMR)、Oregon Green、クマリン(例えば、ウンベリフェロン)、ベンズイミド(例えば、Hoechst 33258);フェナントリジン(例えば、Texas Red)、Yakima Yellow、Alexa Fluor、PET、エチジウムブロミド、アクリジニウム色素、カルバゾール色素、フェノキサジン色素、ポルフィリン色素、ポリメチン色素などを含む群から選択され得る。
【0016】
好ましくは、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、加水分解プローブである。
【0017】
加水分解プローブは、PCRまたはデジタルPCR(dPCR)において配列特異的増幅をモニターするために一般的な検出化学現象である。ちょうどSYBR Green色素を用いる場合のように、シグナル検出は、反応が進むにつれて、蛍光の増大をモニターすることを介して達成される。しかし、TaqMan
TM化学現象における蛍光シグナルは、ハイブリダイゼーションよりむしろ、プローブ加水分解に依存する。従って、「加水分解プローブ」という名称である。上記加水分解プローブの設定において、2つのプライマーおよびプローブが存在する。上記プローブは、標的に相補的であるようにも設計され、いずれかの末端に発蛍光団およびクエンチャーを含む;
図1も参照のこと。
【0018】
増幅プロセスの間に、上記プローブは、アニーリング工程中に特異的標的配列に結合する。上記プローブ上のドナー(発蛍光団)とアクセプター(クエンチャー)との間が近位であることが原因で、蛍光は存在しない。伸長工程中に、ポリメラーゼの5’-3’エキソヌクレアーゼ活性は、上記プローブを加水分解し、発蛍光団をクエンチング効果から解放し、蛍光が検出器によって読み取られる。
【0019】
この設計を用いると、両方のアダプターに連結されている1つの標的DNAは、二重の蛍光シグナルを生じ、それは、エンドポイント増幅後、デジタルPCRにおいて検出および定量され得る。標的領域は原理的に比較的短い可能性があることから、プライマーおよびプローブは、好ましくは、低減した結合親和性を補完するために、LNAを含む。
【0020】
従って、本発明は、初めて、1つの反応においてライブラリーの異なるタイプを同時に定量し得る1つのアッセイを提供する。上記アッセイとQIAcuityプラットフォームおよびQIAcuityプローブマスターミックス化学現象の組み合わせは、NGSライブラリー定量のためのデジタルPCRの絶対的定量の精度および正確度を利用することを可能にする。上記アッセイ設計は、qPCRと組み合わせても機能する。
【0021】
本発明はまた、核酸増幅組成物であって、
a. 10~22ヌクレオチドの間の長さを有し、必要に応じて1つもしくはこれより多くのロック核酸ヌクレオチドアナログまたはテンプレート結合強度を増大させる別のヌクレオチドアナログを含む少なくとも2つのプライマー、および
b. 8~17ヌクレオチドの間の長さを有し、必要に応じて1つもしくはこれより多くのロック核酸ヌクレオチドアナログまたはテンプレート結合強度を増大させる別のヌクレオチドアナログを含む少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブ、
を含む核酸増幅組成物に関する。
【0022】
本発明はまた、核酸ライブラリーの分析のための本発明の組成物の使用に関する。
【0023】
本発明はまた、
a. 10~22ヌクレオチドの間の長さを有し、必要に応じて1つもしくはこれより多くのロック核酸ヌクレオチドアナログまたはテンプレート結合強度を増大させる別のヌクレオチドアナログを含む少なくとも2つのプライマー、および
b. 8~17ヌクレオチドの間の長さを有し、必要に応じて1つもしくはこれより多くのロック核酸ヌクレオチドアナログまたはテンプレート結合強度を増大させる別のヌクレオチドアナログを含む少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブ、
を含むキットに関する。
【0024】
本明細書中の分析または試験は、増幅が行われたか否かを特定すること、標的配列が上記プライマー領域の間にあるか否か、および必要に応じて正しい長さを有するか否かを特定すること、正確な標的配列を有する増幅生成物の量を特定することに言及する。好ましくは、本発明の方法において、増幅生成物の精確な定量が望ましい。
【0025】
本明細書において、「プライマー領域(primer region)」(またはプライミング領域)は、オリゴヌクレオチドプライマーの結合を可能にする核酸分子内の領域である。この領域は、代表的には、15~40ヌクレオチドの間の長さ、より好ましくは20~35ヌクレオチドの間の長さ、および最も好ましくは15~25ヌクレオチドの間の長さである。その中の配列は、上記「プライマー領域」を結合するプライマーの配列の逆相補体である。当然のことながら、上記配列は、100% 逆相補体であってはならない。それは、それぞれのプライマーが結合し得ることを条件として、少しは異なる可能性もある。
【0026】
本明細書では、「増幅生成物(amplification product)」は、核酸増幅反応に由来する2本鎖または1本鎖のいずれかの核酸生成物である。このような反応は、等温増幅または非等温増幅であり得る。それは、代表的には、標的核酸を増幅するために使用される上記1つもしくはこれより多くのプライマーに由来する配列を含む。好ましくは、本明細書において、これは2本鎖であり、PCRに由来する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
シーケンシング目標およびシーケンシング機器の異なるタイプからの出力量に依存して、シーケンシングのために使用されるライブラリーは、単一のライブラリーまたは部分ライブラリーのプールのいずれかからなる。両方の場合において、正確な定量は、シーケンシング実行のために最適なクラスター密度を達成し、フローセルの過飽和または未飽和(undersaturation)を防止するために必要とされる。シーケンシング前に部分ライブラリーの等モルでプールしたものは、正確な定量のさらなる工程を必要とする。
【0028】
調製されたNGS DNAライブラリーの量および品質は、異なる方法の使用によって決定される。これは、UV吸収(例えば、Nanodrop);挿入色素(例えば、QuBit; Invitrogen, SYBR Green);挿入色素と対にされた電気泳動(Agilent Bioanalyzer)、リアルタイム定量的PCR(qPCR; Kapa Biosystem)と対にされた5’加水分解プローブ(例えば、TaqMan(登録商標))、NGSライブラリー定量(MiSeq)もしくはドロップレットデジタルPCR(Bio-Rad)を含む。挿入色素を使用するDNA定量の主要な欠点は、任意の2本鎖DNAへの上記色素の非特異的結合である。上記色素が結合するライブラリー中での非標的DNAフラグメントが存在する場合、これは、標的ライブラリーDNAの過剰な定量(over quantification)をもたらす。
【0029】
デジタルPCRは、他の一般に使用されるDNA定量ストラテジー(例えば、QuBitおよびqPCR)を超えるある種の利点を提供する。単一分子の絶対的定量を用いると、デジタルPCRは、投入DNAの量の使用がより少なく、Bioanalyzerアッセイによって決定される平均サイズに対して上記ライブラリーの逆算を必要としない。これは、qPCRと類似の感度および正確度をなおも提供しながら、dPCRベースの定量は、時間および試薬の消費がより少なくなる。またそれは、QuBitおよびPicoGreenを使用する定量と比較して、より高感度である。デジタルPCRの別の利点は、増幅が別個の仕切りの中で起こることである。増幅効率がアンプリコンごとにまたは抽出ごとに異なるとしても、標的が存在したか否かを決定するために、十分なアンプリコンがdPCR実行において生成される。従って、デジタルPCRは、目的のテンプレートに関して二値(存在(不十分にしか増幅されないとしても);または非存在)を提供し、これは、ポワソン統計を使用して仕切り1つごとに1つもしくはこれより多くのテンプレート分子を有する可能性を補正し、分子/μlの絶対滴定量を明らかにする。
【0030】
ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)(BioRadによって提供されるとおり)と比較すると、QIAcuityシステムでのdPCRは、十分に自動化されたワークフローにおける使用に適した標準的フォーマットにおいて96ウェルおよび24ウェルナノプレートを使用する。さらに、BioRadのddPCRTM Library Quantification Kitは、Illumina TruSeqライブラリーの定量に制限される。同様に、Thermo Fisher ScientificのqPCR NGSライブラリー定量アッセイは、個々のIlluminaライブラリータイプ(例えば、Illumina(登録商標) Nextera Library Quantification Assayまたはllumina(登録商標) TruSeq DNA/RNA Library Quantification Assay)に制限される。
【0031】
本発明は、核酸増幅生成物を試験するための方法であって、上記方法は、
a. 以下:
i. 上流のおよび下流のプライマー領域、ならびに上記上流のおよび上記下流のプライマー領域をそれぞれ結合する上流プライマーおよび下流プライマー、ならびに必要に応じておよび好ましくは、
ii. 上記上流のおよび下流のプライマー領域の間の増幅される標的領域、
を含む線形的または指数関数的増幅に由来する増幅生成物を提供する工程、
b. 上記増幅生成物をPCR反応において増幅することによって、上記増幅生成物を試験する工程であって、ここで
i. 上記PCR反応における上記上流のおよび下流のPCRプライマーは、上記増幅生成物の上記上流および下流のプライマー領域の中で結合し、
ii. 第1および第2のオリゴヌクレオチドプローブは、上記第1のおよび上記第2のPCRプライマーの下流にかつ上記上流のおよび上記下流のプライマー領域内に配置される
工程、
c. PCR反応を、好ましくはデジタルPCR反応を行い、上記新たに形成された増幅生成物を試験する工程であって、ここで工程a.i.)の上記上流および下流のプライマー領域は、35ヌクレオチド未満かつ20ヌクレオチドより大きい長さを有する、工程、
を包含する方法に関する。
【0032】
好ましい実施形態において、上記標的領域は、15~35ヌクレオチドの間の長さ、16~34ヌクレオチドの間の長さ、17~33ヌクレオチドの間の長さ、18~32ヌクレオチドの間の長さ、19~31ヌクレオチドの間の長さ、20~30ヌクレオチドの間の長さ、21~29ヌクレオチドの間の長さ、または約20~28ヌクレオチドの間の長さである。
【0033】
本発明の分析されるべき核酸増幅生成物は、任意の適切な供給源のゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、クロロプラストDNA、cDNAなどの増幅に由来し得る。上記フラグメント(標的)は、任意の適切な長さ(例えば、とりわけ、約10~10,000、または20~2,000ヌクレオチド)を有し得る。上記フラグメントは、アダプター(プライマー領域)に結合する前に、サイズ選択されてもよいし、そうでなくてもよい。フラグメントは、任意の適切なアプローチ(例えば、とりわけ、剪断、化学的消化、酵素による消化、1つもしくはこれより多くのプライマーでの増幅、逆転写、末端ポリッシング(end-polishing)、またはこれらの任意の組み合わせ)によって、供給源核酸物質から生成され得る。上記フラグメントは、平滑末端またはオーバーハング末端を有し得、少なくとも主に2本鎖もしくは1本鎖であり得る。上記標的核酸は、RNAまたはDNAであり得る。DNAが好ましい。
【0034】
好ましい実施形態において、上記上流および下流のプライマー領域は、ライブラリーアダプターの増幅に由来する。よって、ライブラリーは、アダプターを挿入物にライゲーションすることによって生成され、これは次いで、順に、上流および下流のプライマー領域として働く。各アダプター(またはアダプター領域)は、挿入物への結合の前および/または後に、任意の適切な構造を有し得る。結合前の上記アダプターは、核酸または核酸アナログを含み得る。各アダプターは、1つもしくはこれより多くのオリゴヌクレオチド鎖(各々、任意の適切な長さ(例えば、とりわけ、少なくとも約6、8、10、15、20、30、もしくは40ヌクレオチド、および/またはとりわけ、約200、100、75、もしくは50ヌクレオチド未満)を有する)によって形成され得る。上記アダプターは、インビトロで化学合成される1つもしくはこれより多くのオリゴヌクレオチドによって提供され得る。上記アダプターは、その2つの末端のうちの一方のみにおいて挿入物に結合されるように構成され得る。いくつかの場合には、上記アダプターは、上記アダプターがプライマー伸長を介して挿入物へと結合するプライマーによって提供される場合のように、挿入物への結合の前に、部分的にまたは完全に1本鎖であり得る。上記ライブラリーのアダプターは、主に、上流および下流のプライマー領域として働く。本発明の標的領域は、本明細書において、好ましくは、増幅されたライブラリー挿入物である。
【0035】
理想的には、本発明に従う方法において、上記プライマーは、10ヌクレオチド~22ヌクレオチドの間の長さである、および/または上記プローブは、8~17ヌクレオチドの間の長さである。
【0036】
好ましくは、上記プライマーは、11~17ヌクレオチドの間の長さであり、より好ましくは、それらは、12~16ヌクレオチドの間の長さである。それらは、同じ長さを有する必要はなく、異なっていてもよい。
【0037】
好ましくは、上記プローブは、9~16ヌクレオチドの間の長さであり、より好ましくは、それらは、11~14ヌクレオチドの間の長さである。それらは、同じ長さを有する必要はなく、異なっていてもよい。
【0038】
好ましくは、プライマー+プローブの合わせた長さは、18ヌクレオチド~35ヌクレオチドの間である。より好ましくは、その合わせた長さは、23ヌクレオチド~30ヌクレオチドの間の長さである。
【0039】
好ましくは、本発明の方法において、2つのプライマー、第1の上流および第2の下流のプライマーが存在する。第1のプローブは、上記第1の上流プライマーに隣接してかつ下流にある。上記第1のプライマーおよび第1のプローブは、同じ5’-3’配向を有していてもよく、または代替の実施形態において、上記第1のプローブは、反対側の鎖に結合し、3’-5’配向を有するのに対して、上記第1のプライマーは当然のことながら、5’-3’様式で配向される。
【0040】
第2のプローブは、第2の、いわゆる下流プライマーに隣接して、かつ下流にある。またここで、このプローブは、同じ鎖を結合し、同じ3’-5’配向を有してもよいし、反対側の鎖を結合してもよい。
【0041】
好ましくは、本発明の方法において、2つの二重鎖スコーピオンがプローブとして使用される。
【0042】
4つの代替の実施形態が、
図2に示される。全4つの選択肢が実現可能である。バリアント(A)および(B)では、その2つのプローブは、ライブラリーフラグメントの反対側の鎖に特異的に結合する。バリアント(A)では、両方のプローブが、各プライマーの下流に近接して結合する。両方のプライマーとプローブとの間の距離が短いことに起因して、バリアント(A)は、鎖合成中のTaqポリメラーゼの5’-3’エキソヌクレアーゼ活性によって、蛍光シグナルの非常に効率的な放出という利点を有する。バリアント(B)では,両方のプローブが、プライマー結合部位の下流で遠隔の第2のアダプター配列に結合する。バリアント(B)は、ライブラリーフラグメントが一方のアダプターから他方のアダプターへとまたがるフラグメントの重合を各蛍光シグナルが示すという利点を有する。バリアント(B)の欠点は、より長いフラグメント(>500bp)に関しては、増幅効率が下がり、蛍光シグナルのより少ない放出をもたらすということである。バリアント(C)および(D)では、その2つのプローブは、ライブラリーフラグメントの同じ鎖に特異的に結合する。両方のバリアントでは、一方のプローブは、一方のプライマーの下流で近接して結合し、第2のプローブは、同じプライマーの下流で第2のアダプター配列に結合する。これは、ライブラリーフラグメントが一方のアダプターから他方のアダプターへとまたがるフラグメントの重合を示す二重のシグナルを1つの伸長工程が引き起こすという利点を有する。
【0043】
本発明の方法において、好ましくは、上記プライマーのうちの少なくとも一方は、1つもしくはこれより多くのロック核酸ヌクレオチド(LNA)またはテンプレート結合強度を増大させる別のヌクレオチドアナログを含む。LNAは、その糖をC3’-内部コンホメーション(endo conformation)へとロックして合成された初めてのヌクレオチドアナログであった。このアナログは、顕著に増大した標的結合親和性(ΔTm/改変=天然のDNAと比較して、およそ+5℃)を示す。他の改変されたヌクレオチドも利用可能である;Chem Commun (Camb). 2017 Aug 14; 53(63): 8910-8913, Published online 2017 Jul 27. doi: 10.1039/c7cc05159j, PMCID: PMC5708354, PMID: 28748236. Locked nucleic acid (LNA) enhances binding affinity of triazole-linked DNA towards RNA†を参照のこと。
【0044】
本発明の方法において、好ましくは、上記プローブのうちの少なくとも一方は、1つもしくはこれより多くのロック核酸ヌクレオチド(LNA)またはテンプレート結合強度を増大させる別のヌクレオチドアナログを含む。
【0045】
好ましい実施形態において、全てのプライマーおよびプローブは、LNAを含む。当業者は、プローブまたはプライマーあたりのLNAヌクレオチドの理想的な量を決定し得る。
【0046】
好ましい実施形態において、上記1つもしくはこれより多くのプライマーは、1~8個の間のLNAヌクレオチド、2~7個の間のLNAヌクレオチド、3~6個の間のLNAヌクレオチドまたは4~5個の間のLNAヌクレオチドを含む。上記量は、上記プライマーの長さにも依存する。
【0047】
理想的には、上記1つもしくはこれより多くのプローブは、2~12個の間のLNAヌクレオチド、3~11個の間のLNAヌクレオチド、4~10個の間のLNAヌクレオチド、5~9個の間のLNAヌクレオチド、6~8個の間のLNAヌクレオチドまたは約7個のLNAヌクレオチドを含む。上記量は、上記プローブの長さにも依存する。
【0048】
好ましい実施形態において、工程a)からの増幅生成物は、核酸ライブラリーを増幅する工程に由来する。さらに好ましい実施形態において、上記ライブラリーは、シーケンシングライブラリーである。
【0049】
好熱菌は、他の細菌と同様に、ポリメラーゼI、II、III、IV、およびVといわれる5つのタイプのDNAポリメラーゼを含む。好熱菌の生育地の性質を考慮すると、これらの酵素は、代表的には、熱安定性を示し、一般には熱安定性DNAポリメラーゼといわれる。DNAポリメラーゼI(「Pol I」)は、最も存在量が豊富なポリメラーゼであり、一般に、ある特定のタイプのDNA修復(DNA複製中のOkazakiフラグメントの連結を可能にする修復様反応を含む)を担う。Pol Iは、UV照射および放射線様作用薬によって誘導されるDNA損傷の修復に必須である。DNAポリメラーゼIIは、SOS応答を誘導するDNA損傷を修復することにおいて役割を果たすと考えられる。Pol IおよびDNAポリメラーゼIIIの両方を欠く変異体では、DNAポリメラーゼIIがUV誘導性損傷部を修復する。DNAポリメラーゼIIIは、マルチサブユニットレプリカーゼである。
【0050】
熱安定性DNAポリメラーゼは、分子生物学のいくつかの適用において非常に有用であることが判明している。1つのこのような適用は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。PCRプロセスは、例えば、米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号(これらの開示は、本明細書に参考として援用される)に記載される。PCR反応において、プライマー、テンプレート、およびヌクレオシド三リン酸は、標的DNAの熱変性、反応混合物の冷却に伴うプライマーのテンプレートへのハイブリダイゼーション、およびテンプレート配列に相補的な伸長生成物を生成するためのプライマー伸長という基本的工程のために、適切な緩衝液中で、DNAポリメラーゼとともに合わせられる。熱変性は反復され、プライマーは、反応混合物の冷却に伴って伸長生成物へとアニールされ、以前に生成された伸長生成物は、後のプライマー伸長反応のためのテンプレートとして働く。このサイクルは、何度も反復され、所望の核酸配列の指数関数的増幅を生じる。熱安定性DNAポリメラーゼを使用すると、酵素活性の喪失なしに加熱/冷却サイクルの反復が提供される。本明細書において好ましいポリメラーゼは、Taqポリメラーゼ、Ventポリメラーゼ、Deep Ventポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ、Tthポリメラーゼなどである。理想的には、および好ましくは、上記ポリメラーゼは、置換活性および/または5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有し、上記プローブを置換し、標識を遊離する。上記プローブは、好ましくは、標識およびクエンチャーを含むTaqManプローブである。
【0051】
本発明はまた、本明細書で明示的に特許請求される以下の核酸に関する(配列番号1~24を参照のこと)。本発明のキットは、本明細書で特許請求される以下のプライマーおよびプローブを使用し得る。
【0052】
好ましい実施形態において、上記プライマーおよびプローブは、Illuminaライブラリーアダプターのp5およびp7領域において結合する;
図4を参照のこと。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0053】
本発明はまた、以下の群から選択される核酸に関する:
【表2-1】
【表2-2】
+は、+の後のヌクレオチドがLNA(ロック核酸)であることを示す。
【0054】
上記プライマーおよび/またはプローブが下線を付した領域に位置する本発明に従う方法:
【表3-1】
【表3-2】
【0055】
本発明はまた、
a. 10~22ヌクレオチドの間の長さを有し、必要に応じて1つもしくはこれより多くのロック核酸ヌクレオチドアナログまたはテンプレート結合強度を増大させる別のヌクレオチドアナログを含む少なくとも2つのプライマー、および
b. 8~17ヌクレオチドの間の長さを有し、必要に応じて1つもしくはこれより多くのロック核酸ヌクレオチドアナログまたはテンプレート結合強度を増大させる別のヌクレオチドアナログを含む少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブ、
を含む核酸増幅組成物に関する。
【0056】
本発明はまた、核酸ライブラリーの分析のための本発明に従う組成物の使用に関する。
【0057】
好ましくは、上記ライブラリーはアダプターを有し、上記アダプターは、増幅のための保存された領域を有し、好ましくは、上記標的領域は、15~35ヌクレオチドの間の長さ、16~34ヌクレオチドの間の長さ、17~33ヌクレオチドの間の長さ、18~32ヌクレオチドの間の長さ、19~31ヌクレオチドの間の長さ、20~30ヌクレオチドの間の長さ、21~29ヌクレオチドの間の長さ、または約20~28ヌクレオチドの間の長さである。
【0058】
本発明はまた、
a. 10~22ヌクレオチドの間の長さを有し、必要に応じて1つもしくはこれより多くのロック核酸ヌクレオチドアナログまたはテンプレート結合強度を増大させる別のヌクレオチドアナログを含む少なくとも2つのプライマー、および
b. 8~17ヌクレオチドの間の長さを有し、必要に応じて1つもしくはこれより多くのロック核酸ヌクレオチドアナログまたはテンプレート結合強度を増大させる別のヌクレオチドアナログを含む少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブ、
を含むキットに関する。
【0059】
好ましくは、本発明に従う方法、組成物、またはキットは、加水分解プローブであるプローブを有し、上記オリゴヌクレオチドプローブは標識を有し、ここで上記2つのプローブ上の標識は異なる。
【0060】
好ましくは、本発明に従う方法、組成物、またはキットは、核酸ライブラリーを増幅する工程に由来する核酸増幅生成物を有し、ここで上記ライブラリーは、シーケンシングライブラリーである。好ましくは、上記シーケンシングライブラリーは、ILLUMINAライブラリーである。
【0061】
シーケンシングライブラリーは、多様な分析(例えば、全ゲノムシーケンシング、全エキソームシーケンシング、標的化DNAシーケンシング、全トランスクリプトームシーケンシング、標的化RNAシーケンシング、ChIP-seq、RIP-seq、エピジェネティック研究など)を行うために作製される。ILLUMINAライブラリーは、ILLUMINAシーケンシングプラットフォーム、例えば、MiSeqシステム、NextSeqシステムまたはNovaSeqシステム上で実行されることが意図される。全てのILLUMINAライブラリータイプは、2つのタイプのシーケンシングアダプター(これは各々、その遠位末端において2つのアダプター配列P5およびP7のうちの一方を共有する)を使用する。
【0062】
意図される分析に依存して、異なるライブラリー調製キットが使用される。これは、全てP5およびP7アダプター領域を共有するが、アダプター配列の残りの組成物が実質的に異なり得るILLUMINAライブラリーを生じる。
図1は、異なるアダプター配列を有するILLUMINAライブラリー調製キットの例を図示する。
【0063】
好ましくは、本発明に従う方法において、増幅工程b)は、デジタルPCRアッセイであり、テンプレートは、仕切りまたは液滴へと細分される。
【実施例】
【0064】
実施例
実施例1
QIAcuityシステムおよびワークフロー
QIAcuityは、全てのプレート処理工程をまとめ、かつ自動化する簡単な機器(walk-away instrument)として設計される。プレート調製のみが、その実行を開始する前に手動で行われなければならない。これは、プレートの投入ウェル中での標的、試薬、およびマスターミックスのピペット操作およびナノプレートシールでの上記ウェルの閉鎖を含む。いったん調製が行われ、実験が設定されると、上記プレートは、上記機器のトレイの空いているプレートスロットの中に配置される。上記プレートのバーコードを読み取ることによって、上記機器は、ソフトウェアで予め規定した実験に上記プレートを関連付ける。プレイボタンを押した後、全てのさらなる工程は、上記機器によって十分に自動化されて行われる。
【0065】
仕切り分け
第1の工程において、上記プレートのマイクロチャネルおよび仕切りは、上記ウェルの中を投入容積で満たされる。これは、弾力性のトップシールおよび投入ウェルにおいて24/96ピンを突き刺すことによって行われる。これは、上記投入ウェルの液体をマイクロチャネルおよび仕切りへとポンプ輸送する蠕動性の圧力(peristaltic pressure)を引き起こす。引き続いて、上記仕切りの間を接続するチャネルは、圧力制御ローリングプロセス(pressure controlled rolling process)によって閉じられる;
図8を参照のこと。
【0066】
サーモサイクリング
第2の工程は、ポリメラーゼ連鎖反応を行う高い正確度のプレートサーモサイクラーである。サイクリングプロフィールを、QIAcuityソフトウェアスイートまたは機器のソフトウェアにおいて設定し得る。QIAcuityのサーマルサイクラーは、種々のサイクリング工程の高速かつ精確な温度制御を伴うプレートサーモサイクラーである。いくつかのペルチェ素子を、温度生成および制御のために使用する。プレートとサーモサイクラーとの間の最適な熱接触のために、プレートを、サイクリングの間に加熱表面上にクランプ留めしている。
【0067】
画像化
最終工程は、全てのウェルの画像獲得である。ユーザーは、実験設定において検出チャネルを選択し得る。内部に標的分子を有する仕切りは、蛍光を発し、標的なしの仕切りより明るい。
【0068】
分析したサンプルにおける標的ライブラリーフラグメントの濃度の計算
エンドポイントPCRの後に、上記ナノプレートの個々のウェルを、dPCR機器の画像化モジュールによって両方のチャネル、緑色および黄色で画像化する。画像を、QIAcuityソフトウェアスイートによって分析する。この分析において、上記ウェルの各仕切りは、明瞭なシグナル基準に基づいて有効または非有効として定義される。上記ウェルの各仕切りに関して、相対的蛍光値が、黄色および緑色のチャネルに関して計算される。陰性シグナルから陽性シグナルを区別するために、上記ソフトウェアスイートは、両方のチャネル、緑色および黄色において自動閾値を設定する。これは、二重陰性である(0)、緑(G)または黄色(Y)のシグナルのみを示す仕切り、および両方のチャネルに関して陽性である(GY)仕切りの別個のシグナル集団を生じる(
図9において二次元散布図で図示される)。上記QIAcuityソフトウェアスイートは、各ウェルに関して、これら4タイプの仕切りの総数、サイクルした容積および有効仕切りの総数を列挙するエクスポートテーブルを提供する。
【0069】
これらの数字を使用して、ライブラリー中の標的フラグメントの濃度を、ポワソン統計を使用して計算し得る。統計計算を、Regan JF, Kamitaki N, Legler T, Cooper S, Klitgord N,ら(2015) A Rapid Molecular Approach for Chromosomal Phasingから採用した。
【0070】
その中で、1つの標的フラグメントに関する両方のシグナルの連結は、上記計算のために考慮される。標的フラグメントは、両方のアダプターに連結されるDNAフラグメントであり、2つのシグナル、緑色および黄色(GY)を生成する。Illumina NGSライブラリーはまた、上記2つのシグナルのうちの一方のみを生じる非標的フラグメントを含み得ることから、緑色または黄色のシグナルのみを有する仕切りが予測される。これは、1つの仕切りの中に1つのシグナルフラグメントが偶然に同時に位置することから発生する二重陽性シグナルを有する仕切りをもたらし得る。これらの偶然の二重陽性仕切りの数(Nch)は、以下によって計算される:
式1: Nch = NG*NY/N0
【0071】
ここでNは、仕切りの数を示し、その結果、NYおよびNGは、単一の陽性仕切りの計数であり、N0は、蛍光シグナルを示さない二重陰性仕切りの計数であり、Nchは、両方の蛍光シグナルを示す偶然の二重陽性仕切りである。
【0072】
連結された発蛍光団シグナル(GY)を有する標的フラグメントおよび単一のシグナル(GおよびY)を有するフラグメントの存在下では、さらなる二重陽性仕切りが存在する。二重陽性シグナルは、1つの仕切りの中でのフラグメントの5つの異なる組み合わせから生じ得る。それは、G+Y、G+GY、Y+GY、GYおよびGY+G+Yである。G+Yの組み合わせは、式1において考慮されている。GYの総数の計算に関しては、仕切りの中のGおよびYの組み合わせは無視され得る。なぜならこれらの場合の全てにおいて、GYは存在するからである。
【0073】
連結された発蛍光団シグナルを有する標的フラグメントを含まない仕切りの総数は、以下を使用して計算される:
式2: NnotGY = N0+NG+NY+Nch
【0074】
これから、連結された発蛍光団を有する標的フラグメントの濃度λ(コピーの平均数/仕切り)は、以下を使用して計算される:
式3: λGY = ln(Ntot)-ln(NnotGY)
ここでNtotは、有効な仕切りの総数である。
反応において連結された発蛍光団シグナルを有する標的フラグメントの濃度(コピー/μl単位)は、以下を使用して計算される:
式4: c(GY) = λGY*Ntot/サイクルされた容積
【0075】
1つのウェルに関するマルチ占有計数(multi occupancy count)の出力表の例は、以下に示される。その表は、それらの割り当てられた蛍光シグナチャー(グループ)、有効な仕切りの総数(合計)および全ての有効な仕切りの、加算され、サイクルされた容積(μl単位)(容積)に基づいて、4つの異なる仕切りのウェルE5総数(計数)をまとめる。上記仕切りグループ++(二重陽性)、+-(第1のカテゴリーにおいて陽性)、-+(第2のカテゴリーにおいて陽性)および--(二重陰性)は、カテゴリーの列に示されるシグナル順に相当する。
【表4】
【0076】
実施例2
NGSライブラリー調製中に、標的DNAは、DNAアダプターに連結される。各標的DNAは、シーケンシングの準備のできたライブラリーフラグメントを形成する2つの異なるアダプターに連結される。NGSライブラリーにおけるこれらの全長ライブラリーフラグメント精確な定量は、次世代シーケンシングのQCにおいて重要な工程である。本発明は、デジタルPCRを使用して、Illumina NGSライブラリーにおけるこれらのフラグメントの定量を可能にする。Illumina NGSライブラリーの両方のアダプターは、保存された領域および可変領域を有する。可変領域は、異なるライブラリータイプの間で長さおよび配列組成において異なるのに対して、保存された領域P5およびP7は、全てのIlluminaライブラリータイプに関して同一である(以下の図を参照のこと)。上記アッセイは、1つのアッセイで全てのIlluminaライブラリータイプを捕捉する。従って、両方の二重鎖スコーピオンの設計は、これらの2つの領域を特異的に標的化する。これは、短いオリゴの設計を必要とする。なぜならP5はわずか29bp、P7はわずか24bpの長さしかないからである(以下の図を参照のこと)。上記オリゴを、成功裡のPCRおよび伸長されたスコーピオンプライマー配列へのスコーピオン発蛍光団配列の結合に必要とされる条件に適合させるために、上記アッセイ設計は、ロック核酸(LNA)を使用する。上記オリゴの配列組成における詳細なまとめは、以下の材料および方法の節の中で示される。
【0077】
上記生成物のアッセイは、2つの二重鎖スコーピオン(各々、
図10に示されるとおりの2つの保存されたアダプター配列のうちの一方で反対側の鎖を標的化する)からなる。各二重鎖スコーピオンは、2つのオリゴ、発蛍光団プライマーおよび二重鎖を形成し得るクエンチャーオリゴからなる。上記発蛍光団プライマーは、3つの部分、発蛍光団ドメイン、HEG(ヘキサエチレングリコール(hexethylene glycol))スペーサーおよびアニーリングプライマードメインからなる。上記発蛍光団ドメインは、5’末端において発蛍光団を、および上記プライマードメインの結合部位の下流に伸長配列に逆相補的な配列を含む。上記HEGスペーサーは、発蛍光団ドメインが増幅中に伸長したプライマーを素早く動かし(flip)、結合する可撓性を許容する。上記HEGは、ポリメラーゼによる伸長をさらに防止する。上記プライマードメインは、保存されたアダプター配列に特異的に結合するプライマー配列からなる。上記クエンチャーオリゴは、3’末端においてクエンチャーを含み、発蛍光団プライマーの発蛍光団ドメインと特異的にハイブリダイズする。上記2つのアダプターのうちの一方に各々特異的な2つの二重鎖スコーピオンを用いた1つの可能な設計バリアントが存在する。オリゴパラメーターは、以下の表に列挙される。
アッセイデザインフレームワークの概要
【表5-1】
【表5-2】
【0078】
完全なフラグメントに関するシグナルを作製するために、両方のスコーピオンプライマーは、反対側の鎖にある標的配列に結合しなければならない。両方のアダプターを有するIllumina NGSライブラリーフラグメントは、両方のスコーピオンプライマーを結合し、2つの蛍光シグナルを放出する。
【0079】
PCRの開始時に、発蛍光団プライマーおよびクエンチャーオリゴは二重鎖の状態にある(
図11)。この結合した形態では、上記発蛍光団プライマーの発蛍光団および上記クエンチャーオリゴのクエンチャーは近接しており、蛍光がクエンチされるので、シグナルは検出され得ない。両方のアダプターを有するNGSライブラリーフラグメントの存在下では、両方の発蛍光団プライマーが、それらの特異的標的配列を結合する。上記プライマーは伸長される。変性の間に、上記クエンチャーオリゴは、上記発蛍光団プライマーから分離され、上記発蛍光団の蛍光シグナルを放出する。アニーリングのために冷却する場合、伸長されている上記発蛍光団プライマーの発蛍光団ドメインは、上記プライマーの下流にあるフラグメントに分子内で結合/ハイブリダイズする。クエンチャーオリゴへのバックハイブリダイゼーション事象(back hybridization events)は、分子内結合が動力学的にはるかにより有利であることから、非常に希である。伸長されていない発蛍光団プライマーのみが、クエンチャーに再び結合し、それらの蛍光は再びクエンチされる。逆方向プライマーの伸長は、ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性に起因して、分子内に結合した発蛍光団ドメインの発蛍光団の加水分解をもたらす。各サイクルに伴って、ますます多くの分子内で結合した発蛍光団ドメインが生成され、PCR反応の終了時に強い蛍光シグナルを引き起こす。
【0080】
これは、両方のアダプター、P5およびP7を有するNGSフラグメントを含む各仕切りにおいて二重蛍光シグナルを引き起こす。デジタルPCRでは、上記フラグメントは、エンドポイントPCRが各仕切りに対して目的のテンプレートの存在または非存在の二値を引き起こす数千もの仕切りへと無作為に分布される。仕切りあたり1つもしくはこれより多くのテンプレート分子を有するという可能性に関してポワソン統計を使用して補正した後、これらの二値は、分子/μlの絶対的定量を明らかにする。上記生成物のアッセイ設計に関して、上記二値シグナルは、上記2つのプローブの両方の発蛍光団に関する二重陽性シグナルの存在および非存在に基づく。
【0081】
本発明者らの発明は、デジタルPCRを使用して(例えば、QIAcuityナノプレートdPCRシステムで)Illumina NGSライブラリーフラグメントの定量を可能にする。dPCR反応の仕切りの中でのエンドポイントPCRの間に、各完全NGSライブラリーフラグメントの増幅は、2つの蛍光シグナル(各々、2つの保存されたアダプター配列、P5およびP7のうちの一方に対して特異意的)を生じる。例えば、QIAcuityソフトウェアは、二重陽性蛍光シグナルを有する仕切りを自動的に検出および定量し、ポワソン統計に基づいて、テンプレートにおける二重陽性ライブラリーフラグメントの絶対数および上記ライブラリーにおけるその相当する濃度を計算する。
【0082】
本発明の好ましい実施形態において、本発明者らは、1本のチューブに1つのアッセイに加えて、1ml H2Oの2つのチューブおよび1ml QIAcuityプローブマスターミックスの1本のチューブを含むキットを提供する。上記アッセイは、1本のチューブ中で予め混合された2つの二重鎖スコーピオンプライマー(2つの発蛍光団プライマーおよび2つのクエンチャーオリゴ)からなる。
【0083】
dPCR設定
第1の工程において、dPCR反応を設定する場合、定量されるべきIlluminaライブラリーの2つの希釈物が調製される。希釈の程度は、それぞれのライブラリーの予測される濃度に依存する。dPCR反応に関しては、規定量のアッセイ構成要素のミックス(プライマーおよびプローブミックス)、マスターミックスおよび水が、反応チューブの中に配置される。規定量の予め希釈したライブラリーを上記ミックスに添加し、十分に混合する。最終ミックスを、dPCR 8.5Kナノプレートのウェルに移し、次いで。これをシールし、QIAcuity dPCR機器へと載せる。
【0084】
dPCR反応
dPCR実行を開始するために、仕切り分け、サイクリングおよび画像化のための適切なプロトコールが、QIAcuityソフトウェアスイートにおいてユーザーによって特定されなければならない。上記アッセイは、使用されるアッセイ設計およびプローブの発蛍光団に従って、特定のサイクリングおよび画像化条件を必要とする。dPCR反応のためのプロトコールは、開発されたキットとともに提供される。
【0085】
データ分析
上記画像化工程の後、獲得したデータを、QIAcuityソフトウェアスイートを使用して分析する。上記アッセイ製品は、上記ソフトウェアが陽性仕切りを陰性仕切りから区別するために十分強い陽性仕切りのシグナル強度を上記dPCR反応のエンドポイントPCRが明らかにする方法で設計される。上記ソフトウェアの自動閾値機能は、両方のシグナルチャネルにおいてこの弁別を行う。これは、上記ウェル中の各仕切りに関して、一方または両方のシグナルが検出されているか否かを示す。両方のチャネルに関して陽性シグナルを有する仕切り、いわゆるマルチ占有仕切りは、標的仕切りを表す。各ウェルのマルチ占有仕切り、有効な仕切り、サイクルされた容積および他のパラメーターの数字は、さらなる分析のための上記ソフトウェアスイートからエクスポートされなければならない表にまとめられる。外部エクセルデータシートを使用して、二重陽性シグナルを有するNGSライブラリーフラグメントの濃度を、そのエクスポートされた表中のデータから計算する。計算は、ポワソン統計を適用する。
【0086】
データ出力および解釈
QIAcuityでのデジタルPCRにおいてNGSライブラリーフラグメントに適用される二重鎖スコーピオンアッセイ設計は、2つのプローブおよび2つのプライマーに基づく以前の設計を用いるものと同じリードアウトおよびデータ解釈を可能にするデータを作成する。本発明者らは現在、本発明者らが短いおよび長いNGSライブラリーフラグメントに関する相対蛍光単位(RFU)シグナル強度において同じ差異を認めるか否かを試験している。第1の試験結果は、RFUシグナル強度およびライブラリーフラグメント長の類似の不能層感を示す(
図13)。
【0087】
材料および方法
プロトコールおよび手順
96ウェル8.5Kナノプレート中での1つの反応は、所定の濃度において以下の試薬を含む:
【表6】
【0088】
上記dPCR反応を、以下のサイクリングおよびシステム設定を使用して、QIAcuity dPCRシステムで実行する:
【表7】
【0089】
二重鎖スコーピオン設計の例
本発明はまた、本明細書において明示的に特許請求される以下の核酸(配列番号25~44を参照のこと)に関する。種々の設計を試験した。+の後ろのヌクレオチドは、LNAである。HEGは、ヘキサエチレングリコール(hexethylene glycol)である。FAMおよびHEXは色素である。Qは、クエンチャーを示す。WIPO Standard 26によれば、HEGスペーサーによって隔てられた配列は、各部分を別個に表す2つの配列番号が割り当てられ、第2の配列番号の配列には、下線が付される。
【表8-1】
【表8-2】
【0090】
本発明者らの実現可能性の検討に使用されるオリゴヌクレオチドの組み合わせは、以下であった:
試験した二重鎖スコーピオン組み合わせ(機能的である場合は緑色)
【表9】
【0091】
図の説明および例
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1-1】
図1は、Illuminaライブラリーアダプター配列の多葉性を例示する。Illuminaライブラリーは、保存されたP5およびP7領域、ならびにIlluminaライブラリータイプの間で長さおよび組成において異なる可変領域を含む。
【0093】
【
図2】
図2は、好ましくは、上記アッセイが、2つのプライマー、正方向および逆方向、ならびに異なる発蛍光団で標識された2つの5’-加水分解プローブのセットをからなることを示す。2つのプローブのセットは、正方向もしくは逆方向のいいずれかで同じ鎖を、または例えば、P5およびP7(各々、同じ鎖にある)のプライマー-プローブ対で反対側の鎖を標的化する。プローブは、3’末端においてそれぞれのクエンチャーで改変される。濃い色は、保存されたアダプター領域を示し、薄い色の領域は、例えば、異なるIlluminaライブラリータイプ間で配列にいて変動するアダプター領域を表す。
【0094】
【
図3】
図3は、新規なアッセイ設計に関する例示的な標的配列を示す。4つの代表的なIlluminaライブラリーを、最初のアッセイ設計の概念実証試験のために選択した。そのライブラリーは、異なるライブラリー調製キットを使用して調製されており、挿入される標的DNAの長さにおいて異なる;以下を参照のこと。フラグメント長は、それらの連結されたアダプターを含むライブラリーフラグメントに相当する。
【表10】
【0095】
【
図4】
図4は、2つのプライマーおよび2つのプローブからなる例示的なアッセイ設計を示す。各プローブは、5’末端において異なる発蛍光団(FAMおよびHEX)で、および3’末端においてクエンチャーで標識される。概念実証試験のために使用されるプライマーおよびプローブ設計は、整列された配列として示される。オリゴ配列は、アダプター領域P5およびP7を強調した状態で、二重インデックス化したIllumina TrueSeq標的ライブラリー配列に対して整列される。プライマーF4、F5およびF6、ならびにプローブは同じ鎖を標的化する。逆方向プライマーR5は、反対側の鎖を標的化する。オリゴ内のロック核酸(LNA)は、強調される。
【0096】
【
図5-1】
図5は、P5/P7標的化アッセイ設計の2つの例を示す。dPCRでは、両方のアッセイが、2D散布図において認められ得る両方のチャネルにおいて明瞭なシグナル対ノイズ分離を生じる。さらに、両方のアッセイは、棒グラフの中でコピー/μl 反応単位で平均濃度によって示される、ライブラリー試験テンプレートの3つの希釈を精確に定量する。2つのアッセイ設計の2D散布図および定量の棒グラフが示される。2D散布図の中の点は、灰色で強調した陰性シグナルを有するdPCR反応の個々の仕切りおよび濃青色で強調した二重陽性仕切りの緑色および黄色の相対的蛍光を示す。棒グラフ中の各棒は、各々3つの複製物の反応のコピー/μl単位での平均濃度を示す。その分析した試験ライブラリーテンプレートの予測濃度を、棒の下に示す。NTC: テンプレートコントロールなし。
【0097】
【
図6-1】
図6は、現在市場に出ている最も洗練された製品概念を超える利点;BioRadの二重プローブベースのアッセイに対する比較を明らかに示す実験が行われたことを示す。全体で、異なるタイプおよび標的DNAの長さの4つのIllumina試験ライブラリーを、定量のために使用した。その4つの試験ライブラリーを、QIAcuityに関する1つの本発明のアッセイ設計およびQX200 ddPCR機器でのBioRadの競合アッセイを使用して、両方のデジタルPCRシステムで定量した。QX200でのアッセイを、製造業者の説明書に従って、および機器特異的な化学現象を使用して実行した。QIAseqライブラリーを捕捉できないBioradアッセイとは対照的に、本発明のアッセイ設計は、両方のTruSeqおよびQIAseq試験ライブラリーを捕捉する。青色(dPCR)および橙色(ddPCR)で、二重陽性仕切りのRFU値を強調した、dPCR実行およびddPCR実行両方の2D散布図が示される。
【0098】
【
図7】
図7 材料および方法a)機器およびプラスチック 本発明のアッセイを、96ウェルナノプレート(96LV)を使用して、QIAcuity 1、4および8で試験した。b)化学現象 QIAcuityでのデジタルPCRは、標準的QIAcuity dPCRプローブマスターミックスを使用した。上記dPCR反応を設定するための詳細なプロトコールは、
図7に示される。オリゴを、BiomersおよびIDTから取り寄せた。
【0099】
c)プロトコール
適用したプロトコールの概要を、
図7に示す。
dPCR反応設定プロトコール
1. QIAcuityプローブPCRマスターミックス、テンプレートDNA、プライマー、プローブ、およびRNase非含有水を融解する。QIAcuityプローブPCRマスターミックスおよび個々の応益を激しく混合する。短時間遠心分離してチューブの底に液体を収集する。
2. 表2に従って必要とされる反応の数に対して反応ミックスを調製する。ホットスタートに起因して、反応設定中にまたはQIAcuity機器をプログラムしている間サンプルを氷上に保持しておく必要はない。
3. 上記反応ミックスをボルテックスする。
4. 適切な容積の上記反応ミックス(これは、テンプレートを除いて全ての構成要素を含む)を標準的PCRプレートのウェルへと分与する。次いで、テンプレートDNAまたはcDNAを,上記反応ミックスを含む各ウェルへと添加する。
5. 標準的PCRプレートからの各ウェルの内容物を、上記ナノプレートのウェルへと移す。
6. 上記ナノプレートを、QIAcuity Nanoplate Kitsの中に提供されるQIAcuity Nanoplate Sealを使用して適切にシールする。
7. シールしたプレートを、全てのその後の工程(プライミング、ローリング、サイクリングおよび画像化)を自動的に行うQIAcuity dPCR機器の中に配置した。
8. 画像分析を、QIAcuityソフトウェアスイートを使用して行った。
【0100】
【
図8】
図8 デバイス編成; 上記の詳細な説明を参照のこと。
【0101】
【
図9】
図9 異なるシグナル集団の模式的二次元散布図。緑色および黄色のチャネルに関する閾値を設定した後に、二重陰性(0)である仕切り、緑色(G)または黄色(Y)シグナルのみを示す仕切り、および両方のチャネルに関して陽性の仕切り(GY)を、2D散布図中の4つの別個に領域に位置づける。
【0102】
【
図10】
図10 この図は、2つの二重鎖スコーピオン(各々、1つの発蛍光団-プライマーおよび1つのクエンチャーオリゴからなる)に基づくアッセイ設計での好ましい実施形態を示す。
【0103】
【
図11】
図11 この図は、2つのアダプターのうちの一方に関して例示的なNGSライブラリーフラグメントの二重鎖-スコーピオンベースの検出の好ましい実施形態を示す。2つのアダプターP5およびP7(ILLUMINA NGSライブラリー中))のうちの一方に各々特異的な、2つの二重鎖スコーピオンが好ましい。アダプターに対する特異性は、試験されるべきライブラリーに従って調節され得る。
【0104】
【
図12】
図12 図12は、本発明者らによって開発されたとおりのワークフローを示す。それは、QIAcuity dPCRシステムでのNGSライブラリー定量のための好ましいワークフローを示す。
【0105】
【
図13】
図13 図13は、フラグメント長依存性シグナル、エンドポイントdPCR後の強度を示す。
【配列表】
【国際調査報告】