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特表2024-536117グアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種の分離方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】グアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種の分離方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240927BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519066
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 US2022045152
(87)【国際公開番号】W WO2023055879
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/250,650
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダフ,ロバート・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】シリンガー,ヘレナ
(72)【発明者】
【氏名】リペンス,ジェニファー
(57)【要約】
本明細書では、分子種の混合物からグアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を分離する方法であって、混合物のうちの少なくとも1つの分子種がグアニンリッチオリゴヌクレオチドから形成された四重鎖である方法が提供される。例示的な実施形態では、方法は、(a)疎水性リガンドを含むクロマトグラフィーマトリックスに混合物を適用することであって、前記疎水性リガンドがC4~C8アルキル鎖を含み、分子種が疎水性リガンドに結合すること;及び(b)酢酸塩の勾配とアセトニトリルの勾配とを含むがカチオン性イオン対形成剤を含まない移動相をクロマトグラフィーマトリックスに適用して、グアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を溶出すること;を含む。例示的な態様では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、第1のセットの溶出画分で溶出し、グアニンリッチオリゴヌクレオチドから形成された四重鎖は第2のセットの溶出画分で溶出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子種の混合物からグアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を分離する方法であって、前記混合物のうちの少なくとも1つの分子種が前記グアニンリッチオリゴヌクレオチドから形成された四重鎖であり、前記方法が、
a.疎水性リガンドを含むクロマトグラフィーマトリックスに前記混合物を適用することであって、前記疎水性リガンドがC4~C8アルキル鎖を含み、分子種が前記疎水性リガンドに結合すること;
b.酢酸塩の勾配とアセトニトリルの勾配とを含む移動相を前記クロマトグラフィーマトリックスに適用して、前記グアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を溶出することであって、前記グアニンリッチオリゴヌクレオチドが第1のセットの溶出画分で溶出し、前記四重鎖が第2のセットの溶出画分で溶出すること;
を含む方法。
【請求項2】
前記グアニンリッチオリゴヌクレオチドが、低分子干渉RNA(siRNA)のセンス鎖又はアンチセンス鎖である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物が一本鎖分子種及び/又は二本鎖分子種を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物が、アンチセンス一本鎖、センス一本鎖、二重鎖、及び四重鎖からなる群から選択される1つ以上の分子種を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記グアニンリッチオリゴヌクレオチドが前記アンチセンス一本鎖である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記二重鎖が前記アンチセンス一本鎖と前記センス一本鎖とを含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物が、アンチセンス一本鎖、センス一本鎖、二重鎖、及び四重鎖の分子種を含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
各分子種が別の分子種とは別の画分で溶出する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記混合物が、アンチセンス一本鎖、センス一本鎖、二重鎖、及び四重鎖を含み、前記二重鎖が第1のセットの溶出画分で溶出し、前記センス鎖が第2のセットの溶出画分で溶出し、前記アンチセンス鎖が第3のセットの溶出画分で溶出し、前記四重鎖が第4のセットの溶出画分で溶出する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
各分子種のLOQが約0.03mg/mL~約0.08mg/mLである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
各分子種のピークの分離の分解能が少なくとも又は約1.0であり、任意選択的には少なくとも又は約1.2である、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
各分子種の前記ピークの分離の分解能が少なくとも又は約2.0であり、任意選択的には少なくとも又は約2.4である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記混合物が、水、酢酸塩源、カリウム源、及び塩化ナトリウムのうちの1つ以上を含む溶液中で調製される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記酢酸塩源が、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、又は酢酸カリウムである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記カリウム源がリン酸カリウムである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記溶液が約50mM~約150mMの酢酸塩又はカリウムを含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記溶液が、約75mM~約100mMの酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、又は酢酸カリウムを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記溶液がリン酸カリウム及び塩化ナトリウムを含む、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記混合物が、水中で、任意選択的には精製された脱イオン水中で調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記疎水性リガンドが、C4アルキル鎖、C6アルキル鎖、又はC8アルキル鎖を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記疎水性リガンドがC4アルキル鎖を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記クロマトグラフィーマトリックスが、2.1mmの内径及び/又は約50mmのカラム長を有するクロマトグラフィーカラム内に収容されている、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記カラム温度が約20℃~約35℃である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記カラム温度が約29℃~約31℃、任意選択的には約30℃である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記マトリックスが、1.7のエチレン架橋ハイブリッド(BEH)粒子を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記酢酸塩の勾配が、約50mM~約150mMの酢酸塩を含む酢酸塩原液を用いて製造される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記酢酸塩原液が、約70mM~約80mMの酢酸塩、任意選択的には約75mMの酢酸塩を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記酢酸塩原液が、約90mM~約110mMの酢酸塩、任意選択的には約100mMの酢酸塩を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記酢酸塩が、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、又は酢酸カリウムである、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記酢酸塩原液のpHが約6.5~約7.0である、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記酢酸塩原液のpHが5.0~8.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、又は約7.0である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記酢酸塩原液が6.7±0.1のpHを有する75mMの酢酸アンモニウム水溶液である、請求項27~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記アセトニトリルの勾配がアセトニトリル原液を用いて作られ、前記アセトニトリル原液が100%のアセトニトリルである、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記移動相が、前記酢酸塩の減少する濃度勾配と、アセトニトリルの増加する濃度勾配とを含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記酢酸塩の勾配が最大濃度で始まり、第1の期間の間に最小濃度まで徐々に減少する、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の期間が約18分~約19分である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の期間が約22分~約26分である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の期間の後、前記移動相の前記酢酸塩の濃度が酢酸塩の前記最大濃度まで増加する、請求項35~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記勾配が酢酸塩の前記最小濃度に到達してから約0.1~約3分後に、酢酸塩の前記最大濃度まで前記酢酸塩が増加する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
アセトニトリルの前記勾配が最小濃度で始まり、前記第1の期間の間に最大濃度まで徐々に増加する、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の期間の後、前記移動相の前記アセトニトリルの濃度がアセトニトリルの前記最小濃度まで減少する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
アセトニトリルの前記勾配がアセトニトリルの前記最大濃度に到達してから約0.1~約3分後に、アセトニトリルの前記濃度が前記最小濃度まで減少する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
以下の条件に従って前記移動相を前記クロマトグラフィーマトリックスに適用することを含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法:
【表1】
【請求項44】
以下の条件に従って前記移動相を前記クロマトグラフィーマトリックスに適用することを含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法:
【表2】
【請求項45】
以下の条件に従って前記移動相を前記クロマトグラフィーマトリックスに適用することを含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法:
【表3】
【請求項46】
前記移動相がカチオン性イオン対形成剤を含まない、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
総実行時間が少なくとも約25分であり、40分未満である、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記総実行時間が35分未満、任意選択的には30分以下である、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記実行時間が約26分である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記移動相の流量が約0.5ml/分~約1ml/分である、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記移動相の流量が約0.7ml/分~約0.8ml/分である、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
紫外線検出器を使用して分子種の溶出を監視することを含む、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
非変性方法である、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記溶出画分を一定期間に別々の容器に回収することをさらに含む、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記グアニンリッチオリゴヌクレオチドが約19~約23個のヌクレオチドを含む、請求項1~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記混合物中の前記グアニンリッチオリゴヌクレオチド及びその1つ以上の前記分子種が、1種以上の修飾ヌクレオチドを含む、請求項1~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記1種以上の修飾ヌクレオチドが2’-修飾ヌクレオチドである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記2’-修飾ヌクレオチドが、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、又はそれらの組み合わせである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記混合物中の前記グアニンリッチオリゴヌクレオチド及びその1つ以上の前記分子種が合成ヌクレオチド間結合を含む、請求項1~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記合成ヌクレオチド間結合がホスホロチオエート結合である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記グアニンリッチオリゴヌクレオチドが配列番号2の配列を含む、請求項1~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記グアニンリッチオリゴヌクレオチドが配列番号4による修飾ヌクレオチドの配列を含む、請求項1~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
分子種の混合物からグアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を分離する方法であって、前記混合物の前記分子種が、前記グアニンリッチオリゴヌクレオチドから形成された四重鎖、前記グアニンリッチオリゴヌクレオチド、前記グアニンリッチオリゴヌクレオチド及びその相補鎖を含む二重鎖、並びに相補鎖であり、前記方法が、
a.疎水性リガンドを含むクロマトグラフィーマトリックスに前記混合物を適用することであって、前記疎水性リガンドがC4~C8アルキル鎖を含み、分子種が前記疎水性リガンドに結合すること;
b.酢酸塩の減少する濃度勾配とアセトニトリルの増加する濃度勾配とを含む移動相を前記クロマトグラフィーマトリックスに適用して、前記グアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を溶出することであって、前記四重鎖、前記グアニンリッチオリゴヌクレオチド、前記二重鎖、及び前記相補鎖のそれぞれが前記クロマトグラフィーマトリックスから別個に溶出すること;
を含む方法。
【請求項64】
以下の条件に従って前記移動相を前記クロマトグラフィーマトリックスに適用することを含む、請求項63に記載の方法:
【表4】
【請求項65】
各分子種のピークの分離の分解能が少なくとも又は約2.0であり、任意選択的には少なくとも又は約2.4である、請求項63又は64に記載の方法。
【請求項66】
各分子種の前記ピークの前記分離の前記分解能が少なくとも若しくは約3.0、又は少なくとも若しくは約4.0である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
各分子種のLOQが約0.03mg/mL~約0.08mg/mLである、請求項63~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
請求項1~67のいずれか一項に従って前記グアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を分離することを含む、グアニンリッチオリゴヌクレオチド原薬又は医薬品を含む試料の純度を決定する方法。
【請求項69】
前記試料が工程内試料である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記試料がロット試料である、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
グアニンリッチオリゴヌクレオチド原薬又は医薬品の安定性を試験する方法であって、前記グアニンリッチオリゴヌクレオチド原薬又は医薬品を含む試料にストレスを加えること、及び請求項68に従って前記試料の純度を決定すること、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
米国特許法第119条(e)の下、2021年9月30日に出願された米国仮特許出願第63/250,650号に基づく利益が本出願で主張され、当該仮特許出願の開示は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
本明細書と同時に提出された、コンピュータにより読み込み可能なヌクレオチド/アミノ酸配列表は、その全体が参照により組み込まれ、下記のように識別される:2022年9月9日作成の「A-2735-WO01-SEC_Sequence_Listing.XML」という名称の8KBのXMLファイル。
【0003】
本発明は、核酸精製及び分析的検出及びキャラクタリゼーションの分野に関する。特に、本発明は、分子種の混合物からグアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を分離するための方法であって、混合物のうちの少なくとも1つの分子種がグアニンリッチオリゴヌクレオチドから形成される四重鎖である方法に関する。この方法により、一本鎖オリゴヌクレオチドだけでなく、二重鎖や四重鎖などの高次構造を含む、混合物中のグアニンリッチオリゴヌクレオチドの個々の分子種それぞれの分離、検出、及び精製が可能になる。
【背景技術】
【0004】
グアニンリッチ(G-リッチ)オリゴヌクレオチドによる様々な細胞型の処理は、細胞増殖の阻害、細胞死の誘導、細胞接着の変化、タンパク質凝集の阻害、及び抗ウイルス活性を含む、多様な生物学的効果をもたらすことが報告されている(Bates et al.,Exp Mol Pathol 86(3):151-164(2009))。近年、複数の合成G-リッチオリゴヌクレオチドが様々なヒトの疾患の治療薬として研究されている。
【0005】
G-リッチオリゴヌクレオチドは、分子間又は分子内で会合して、四本鎖(four-stranded又はquadruple-stranded、G4)又は「四重鎖」構造を形成することができる。これらの構造は、4つのグアニンが水素結合の環状パターンを構築するG-カルテットの形成によって形成される。 構造的には、四量体集合体は、anti又はsinの両方のグリコシド構造をとることができる平面状の集合体からなり、同じ方向のG鎖、すなわち平行鎖からのテトラドグアニンは同じグリコシド構造をとる一方で、反対方向のG鎖、すなわち逆平行鎖からのものは異なるグリコシド構造をとる。塩基の配向(anti又はsyn)は安定性に寄与すると考えられる(Huppert et al.,Chemical Society Reviews,37(7),pp.1375-1384(2008);Burge et al.,Nucleic Acids Research,34(19),pp.5402-5415(2006);及びLane,Biochimie,94(2),pp.277-286(2012))。
【0006】
グアニン残基の配向の結果として、G-リッチDNA四重鎖構造は本質的に非常に不安定である。四重鎖が折りたたまれるためには適切なサイズの一価イオンが必要であることはよく知られた観察結果であるものの、これらの構造が不安定であることは、最初は直感に反する。カチオン、特にK、及びそれより程度は低いNa、さらにはNH は、テトラドグアニンO6原子と配位することにより、積み重ねられたG-テトラドを安定化する。しかしながら、融解プロファイルからは、四重鎖のトポロジーや構造について何も明らかにならない。ただし、平行トポロジーは通常逆平行トポロジーよりも安定であり、カリウムイオンはナトリウムよりも安定な複合体を生成する(Sannohe and Sugiyama,Current protocols in nucleic acid chemistry,40(1),pp.17-2(2010);及びRachwal and Fox,Methods,43(4),pp.291-301(2007))。
【0007】
G-四重鎖の安定性は、静電気力、塩基のスタッキング、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力などの様々なパラメータにより支配される。熱安定性は、溶媒の誘電率が低下するにつれて増加する(Smirnov and Shafer,Biopolymers:Original Research on Biomolecules,85(1),pp.91-101(2007))。この平衡の熱力学的評価は、より高次の構造の融解プロファイルに基づいており、G4構造の変性プロセスは、典型的な分光学的手法によって観察される(Yang,D. and Lin,C.eds.,2019. G-quadruplex Nucleic Acids:Methods and Protocols. Humana Press)。四重鎖は、X線、NMR、CD、及びUV技術によって調べることもできる。鎖の配向の識別は、295nmにおける吸光度によって評価することができる(Mergny et al.,FEBS Lett.435,74-78(1998);Mergny and Lacroix,Oligonucleotides.2003;13(6):515-537;Mergny and Lacroix,Current protocols in nucleic acid chemistry,37(1),pp.17-1(2009);Majhi et al.,Biopolymers:Original Research on Biomolecules,89(4),pp.302-309(2008);Petraccone et al.,Current Medicinal Chemistry-Anti-Cancer Agents,5(5),pp.463-475(2005);Darby et al.,Nucleic Acids Research,30(9),pp.e39-e39(2002))。
【0008】
G-リッチオリゴヌクレオチドの四重鎖構造は、特異な生物物理学的及び生物学的特性と関連している。四重鎖構造が生体内に存在することを示す証拠が増えてきており、これらの構造がDNA複製、テロメア維持、及び遺伝子発現などの様々な生理学的機能に関与していることが示唆されている。Rhodes and Lipps,Nucleic Acids Research,Vol.43:8627-8637,2015。
【0009】
これらの構造をより深く理解し、四重鎖構造を形成するG-リッチオリゴヌクレオチドの治療有効性を最終的に利用するためには、研究者らはこれらの分子を検出、特性評価、単離、及び精製することができる必要がある。一般に、グアニンリッチオリゴヌクレオチドを精製したり、関連する不純物から分離したりするためのアプローチの殆どは、高温や高pH緩衝液を使用することによって、又はカオトロピック剤若しくは有機修飾剤を導入することによって、四重鎖形成などの二次的相互作用を破壊することを目的としている。このような強力に変性させる条件により一本鎖形成が促進される。その後、一本鎖を精製することができるものの、精製した一本鎖から四重鎖を構築する必要がある。分析の観点からは、強力な変性条件は、分析試料中に存在する四重鎖構造、又はより高次構造の他の不純物の正確な定量に影響を及ぼす可能性がある。
【0010】
以上のことを考慮すると、グアニンリッチオリゴヌクレオチドを、それから形成される四重鎖及び他の不純物から精製又は分離する効率的な方法が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Bates et al.,Exp Mol Pathol 86(3):151-164(2009)
【非特許文献2】Huppert et al.,Chemical Society Reviews,37(7),pp.1375-1384(2008)
【非特許文献3】Burge et al.,Nucleic Acids Research,34(19),pp.5402-5415(2006)
【非特許文献4】Lane,Biochimie,94(2),pp.277-286(2012)
【非特許文献5】Sannohe and Sugiyama,Current protocols in nucleic acid chemistry,40(1),pp.17-2(2010)
【非特許文献6】Rachwal and Fox,Methods,43(4),pp.291-301(2007)
【非特許文献7】Smirnov and Shafer,Biopolymers:Original Research on Biomolecules,85(1),pp.91-101(2007)
【非特許文献8】Yang,D. and Lin,C.eds.,2019.G-quadruplex Nucleic Acids:Methods and Protocols.Humana Press
【非特許文献9】Mergny et al.,FEBS Lett.435,74-78(1998)
【非特許文献10】Mergny and Lacroix,Oligonucleotides.2003;13(6):515-537
【非特許文献11】Mergny and Lacroix,Current protocols in nucleic acid chemistry,37(1),pp.17-1(2009)
【非特許文献12】Majhi et al.,Biopolymers:Original Research on Biomolecules,89(4),pp.302-309(2008)
【非特許文献13】Petraccone et al.,Current Medicinal Chemistry-Anti-Cancer Agents,5(5),pp.463-475(2005)
【非特許文献14】Darby et al., Nucleic Acids Research,30(9),pp.e39-e39(2002)
【非特許文献15】Rhodes and Lipps,Nucleic Acids Research,Vol.43:8627-8637,2015
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、四重鎖構造を形成する傾向を有するグアニンリッチオリゴヌクレオチドの分離方法に関する。本発明は、C4~C8アルキル鎖を含む疎水性リガンドと、酢酸塩の勾配及びアセトニトリルの勾配を含む移動相とを含むクロマトグラフィーマトリックスを採用する本明細書に開示の方法によって、グアニンリッチオリゴヌクレオチドからの四重鎖構造の形成をクロマトグラフィーで分離することができるという発見に一部基づいている。そのような方法は、本明細書で示されるように、グアニンリッチオリゴヌクレオチドと四重鎖との間のみならず、グアニンリッチオリゴヌクレオチドの他の主要な分子種間の高分解能での分離も可能にする。有利には、本開示の方法は、グアニンリッチオリゴヌクレオチド、その相補鎖、並びにグアニンリッチオリゴヌクレオチド及びその相補鎖を含む四重鎖及び二重鎖の高分解能分離を実現するために使用することができる。
【0013】
本発明者らは、驚くべきことに、移動相からトリエチルアミン(TEA)などのカチオン性イオン対形成剤を排除することにより、逆相(すなわち疎水性)である固定相を使用して、グアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種に対応するピーク間の高い分離能を達成できることを見出した。
【0014】
したがって、本発明は、分子種の混合物からグアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を分離する方法を提供する。例示的な実施形態では、混合物の少なくとも1つの分子種は、グアニンリッチオリゴヌクレオチドから形成される四重鎖である。例示的な実施形態では、方法は、(a)疎水性リガンドを含むクロマトグラフィーマトリックスに混合物を適用することであって、前記疎水性リガンドがC4~C8アルキル鎖を含み、分子種が疎水性リガンドに結合すること;及び(b)酢酸塩の勾配とアセトニトリルの勾配とを含む移動相をクロマトグラフィーマトリックスに適用して、グアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を溶出すること;を含む。例示的な態様では、各分子種は、異なる分子種が溶出する時間とは区別できる時間に溶出する。例えば、例示的な場合において、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、四重鎖が溶出する時間とは区別できる時間に溶出する。様々な態様では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは第1のセットの溶出画分で溶出し、四重鎖は第2のセットの溶出画分で溶出する。
【0015】
例示的な態様では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、低分子干渉RNA(siRNA)のセンス鎖又はアンチセンス鎖である。例示的な場合において、混合物は一本鎖分子種及び/又は二本鎖分子種を含む。任意選択的には、混合物は、アンチセンス一本鎖、センス一本鎖、二重鎖、及び四重鎖からなる群から選択される1つ以上の分子種を含む。様々な態様では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドはアンチセンス一本鎖である。様々な場合において、二重鎖はアンチセンス一本鎖とセンス一本鎖とを含む。例示的な態様では、混合物は、以下の分子種の全てを含む:アンチセンス一本鎖、センス一本鎖、二重鎖、及び四重鎖。任意選択的には、各分子種は、別の分子種とは別の画分で溶出する。例示的な態様では、二重鎖は第1のセットの溶出画分で溶出し、センス鎖は第2のセットの溶出画分で溶出し、アンチセンス鎖は第3のセットの溶出画分で溶出し、四重鎖は第4のセットの溶出画分で溶出する。様々な態様では、各分子種のピークの分離の分解能(例えば二重鎖のピークとセンス一本鎖のピークとの間の分離の分解能)は、少なくとも若しくは約1.0、任意選択的には少なくとも若しくは約1.1、少なくとも若しくは約1.2、少なくとも若しくは約1.3、又は少なくとも若しくは約1.4である。様々な態様では、各分子種のピークの分離の分解能は、少なくとも若しくは約1.5、任意選択的には少なくとも若しくは約1.6、少なくとも若しくは約1.7、少なくとも若しくは約1.8、又は少なくとも若しくは約1.9である。任意選択的には、各分子種に対応するピークの分離の分解能(例えば二重鎖のピークとセンス一本鎖のピークとの間の分離の分解能)は、少なくとも又は約2.0(例えば少なくとも又は約2.1、少なくとも又は約2.2、少なくとも又は約2.3、少なくとも又は約2.4)である。様々な態様では、分離の分解能は、少なくとも又は約2.4である。例示的な場合において、分解能は少なくとも若しくは約2.5、少なくとも若しくは約3.0、又は少なくとも若しくは約4.0である。任意選択的には、二重鎖のピークとセンス鎖のピークとの間の分離の分解能は、少なくとも4.0である。様々な態様では、シグナル対ノイズ比が10.0以上である場合、各分子種の定量限界(LOQ)は約0.03mg/mL~約0.08mg/mLである。様々な場合において、シグナル対ノイズ比が10.0以上である場合、LOQは約0.08mg/mlである。
【0016】
様々な場合において、混合物は、水、酢酸塩源、カリウム源、及び塩化ナトリウムのうちの1つ以上を含む溶液中で調製される。酢酸塩源は、特定の態様では、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムである。任意選択的には、カリウム源はリン酸カリウムである。様々な態様では、溶液は、約50mM~約150mMの酢酸塩又はカリウムを含む。様々な場合において、溶液は、約75mM~約100mMの酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、又は酢酸カリウムを含む。例示的な態様では、溶液はリン酸カリウム及び塩化ナトリウムを含む。
【0017】
特定の実施形態では、クロマトグラフィーマトリックスは、C4アルキル鎖、C6アルキル鎖、又はC8アルキル鎖を含む疎水性リガンドを含む。任意選択的には、疎水性リガンドはC4アルキル鎖を含む。例示的な態様では、クロマトグラフィーマトリックスは、2.1mmの内径及び/又は約50mmのカラム長を有するクロマトグラフィーカラム内に収容される。例示的な場合において、カラム温度は約20℃~約35℃、任意選択的には約30℃である。様々な場合において、クロマトグラフィーマトリックスはエチレン架橋ハイブリッド(BEH)粒子を含む。任意選択的には、BEH粒子は、約1.7μm又は約3.5μmの粒径を有する。
【0018】
一部の実施形態では、移動相中の酢酸塩の勾配は、約50mM~約150mMの酢酸塩を含む酢酸塩原液を用いて製造される。任意選択的には、酢酸塩原液は、約70mM~約80mMの酢酸塩、任意選択的には約75mMの酢酸塩を含む。様々な態様では、酢酸塩原液は、約90mM~約110mMの酢酸塩、任意選択的には約100mMの酢酸塩を含む。様々な場合において、酢酸塩は、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、又は酢酸カリウムである。例示的な態様では、酢酸塩原液のpHは、約6.5~約7.0、任意選択的には約6.7、約6.8、約6.9、又は約7.0である。本開示の例示的な態様では、移動相は、酢酸塩の減少勾配とアセトニトリルの増加勾配とを含む。例示的な場合において、酢酸塩の勾配は、最大濃度で始まり、第1の期間の間に最小濃度まで徐々に減少する。任意選択的には、第1の期間は約18分~約19分であり、或いは第1の期間は約22分~約26分である。様々な態様では、第1の期間の後、移動相は、任意選択的には、勾配が酢酸塩の最小濃度に到達してから約0.1~約3分後に、酢酸塩の最大濃度まで増加する。様々な態様では、アセトニトリルの勾配は最小濃度で始まり、第1の期間の間に最大濃度まで徐々に増加する。任意選択的には、第1の期間の後、移動相はアセトニトリルの最小濃度まで減少する。任意選択的には、移動相は、アセトニトリルの勾配がアセトニトリルの最大濃度に到達してから約0.1~約3分後にアセトニトリルの最小濃度まで減少する。特定の態様では、本開示の方法は、以下の条件に従って移動相をクロマトグラフィーマトリックスに適用することを含む。
【0019】
【表1】
【0020】
代替の又は追加の態様では、方法は、以下の条件に従って移動相をクロマトグラフィーマトリックスに適用することを含む。
【0021】
【表2】
【0022】
代替の又は追加の態様では、方法は、以下の条件に従って移動相をクロマトグラフィーマトリックスに適用することを含む。
【0023】
【表3】
【0024】
例示的な態様では、移動相は、カチオン性イオン対形成剤、例えばTEAを含まない。総実行時間は、様々な場合において、少なくとも約25分且つ40分未満、任意選択的には35分未満、任意選択的には30分以下である。様々な場合において、実行時間は約22分~約26分である。様々な態様では、移動相の流量は約0.5ml/分~約1.0ml/分、任意選択的には約0.7ml/分~約0.8ml/分である。
【0025】
例示的な態様では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、約19~約23個のヌクレオチドを含む。例示的な場合において、混合物中のグアニンリッチオリゴヌクレオチド及びその1つ以上の分子種は、1種以上の修飾ヌクレオチドを含む。任意選択的には、1種以上の修飾ヌクレオチドは、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、又はそれらの組み合わせなどの2’-修飾ヌクレオチドである。様々な態様では、混合物中のグアニンリッチオリゴヌクレオチド及びその1つ以上の分子種は、ホスホロチオエート結合などの合成ヌクレオチド間結合を含む。
【0026】
本発明は、グアニンリッチオリゴヌクレオチド原薬又は医薬品を含む試料の純度を決定する方法も提供する。例示的な実施形態では、方法は、グアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を分離する本明細書に開示の方法に従って、グアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を分離することを含む。様々な態様では、試料は工程内試料であり、方法は、工程内コントロールアッセイの一部として、又はG-リッチオリゴヌクレオチドの製造が実質的な不純物を含まずに確実に行われるようにするためのアッセイとして使用される。様々な場合において、試料はロット試料であり、方法はロットリリースアッセイの一部として使用される。様々な態様では、試料はストレスを受けた試料、又は1回以上のストレスにさらされた試料であり、方法は安定性アッセイである。したがって、本発明は、グアニンリッチオリゴヌクレオチド原薬又は医薬品の安定性を試験する方法であって、グアニンリッチオリゴヌクレオチド原薬又は医薬品を含む試料にストレスを加えること、及び本開示の方法に従って試料の純度を決定することを含む方法を提供する。例示的な場合において、1回以上のストレスの後の試料中の不純物の存在は、1回以上のストレス下でのG-リッチオリゴヌクレオチドの不安定性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】オルパシランの構造を概略的に示す図である。5’から3’への方向に列記される上側の鎖はセンス鎖(配列番号3)であり、3’から5’への方向に列記される下側の鎖はアンチセンス鎖(配列番号4)である。黒色の円は、2’-O-メチル修飾を有するヌクレオチドを表し、白色の円は、2’-デオキシ-2’-フルオロ(「2’-フルオロ」)修飾を有するヌクレオチドを表し、灰色の円は、3’-3’結合を介して隣接ヌクレオチドに連結された(すなわち逆位)デオキシアデノシンヌクレオチドを表す。円を連結する灰色の線は、ホスホジエステル結合を表すが、円を連結する黒色の線は、ホスホロチオエート結合を表す。示す構造を有する三価GalNAc部分は、R1によって表されており、ホスホロチオエート結合によってセンス鎖の5’末端に共有結合されている。
図2A】実施例1の試験1に記載されている通り、C18疎水性リガンドを含むクロマトグラフィーマトリックスと、HAA/アセトニトリル/メタノール(MP A)及びHAA/アセトニトリル(MP B)を含む移動相とを使用して分離された、アンチセンス、センス、及び二重鎖分子種のピークの例示的なクロマトグラムである。
図2B】実施例1の試験2に記載されている通り、移動相MP Aが95mMのHFIP/8mMのTEA/24mMのtert-ブチルアミンであり、MP BがアセトニトリルであったWaters XBridge BEH C4カラムからオルパシランの試料を溶出して得られた一連のクロマトグラムである。
図2C】それぞれ、試験3Aの表3に記載されている通り、移動相が異なるアルキルアミン及び/又は異なる濃度のTEA若しくはHFIPを含むWaters XBridge BEH C4カラムからオルパシランの試料を溶出して得られた一連の例示的なクロマトグラムである。
図2D】それぞれ、試験3Aの表3に記載されている通り、移動相が異なるアルキルアミン及び/又は異なる濃度のTEA若しくはHFIPを含むWaters XBridge BEH C4カラムからオルパシランの試料を溶出して得られた一連の例示的なクロマトグラムである。
図2E】それぞれ、試験3Aの表3に記載されている通り、移動相が異なるアルキルアミン及び/又は異なる濃度のTEA若しくはHFIPを含むWaters XBridge BEH C4カラムからオルパシランの試料を溶出して得られた一連の例示的なクロマトグラムである。
図2F】それぞれ、試験3Aの表3に記載されている通り、移動相が異なるアルキルアミン及び/又は異なる濃度のTEA若しくはHFIPを含むWaters XBridge BEH C4カラムからオルパシランの試料を溶出して得られた一連の例示的なクロマトグラムである。
図2G】それぞれ、試験3Aの表3に記載されている通り、移動相が異なるアルキルアミン及び/又は異なる濃度のTEA若しくはHFIPを含むWaters XBridge BEH C4カラムからオルパシランの試料を溶出して得られた一連の例示的なクロマトグラムである。
図2H】それぞれ、試験3D及び3Eに記載されている通り、移動相成分及び/又は移動相勾配条件が変更されたWaters XBridge BEH C4カラムからオルパシランの試料を溶出して得られた一連の例示的なクロマトグラムである。
図2I】それぞれ、試験3D及び3Eに記載されている通り、移動相成分及び/又は移動相勾配条件が変更されたWaters XBridge BEH C4カラムからオルパシランの試料を溶出して得られた一連の例示的なクロマトグラムである。
図2J】試験したカラム温度のそれぞれにおける例示的なクロマトグラムであり、センスと二重鎖のピークを示す。
図2K】試験したカラム温度のそれぞれにおける例示的なクロマトグラムであり、アンチセンスと四重鎖のピークを示す。
図2L】より長いカラム長(100mm)を有するカラムからオルパシランの試料を溶出して得られた一連のクロマトグラムである。
図2M】より短いカラム長(50mm)を有するカラムからオルパシランの試料を溶出して得られた一連のクロマトグラムである。
図3】二重鎖濃度の関数としてプロットされた二重鎖ピークのピーク面積%のグラフである。
図4】オルパシラン試料を水(A10A-W)、酢酸アンモニウム(A10A-N)、又はHFIP/TEA(A10A-H)中で調製した場合のアンチセンス鎖及び四重鎖のピークを示す一連のクロマトグラムである。
図5】オルパシラン試料を水中で調製し、加熱した場合(下)、又は加熱しなかった場合(上)のアンチセンス鎖及び四重鎖のピークを示す一対のクロマトグラムである。
図6】オルパシラン試料を酢酸アンモニウム中で調製して加熱した場合と加熱しない場合のアンチセンス鎖及び四重鎖のピークを示す一対のクロマトグラムである。
図7】水溶媒を含む加熱試料におけるアンチセンス/四重鎖平衡の例示的なクロマトグラムである。
図8】濃度の関数としてプロットされた四重鎖ピークのピーク面積%のグラフである。
図9A】実施例6に記載の第1の方法に従って本開示の例示的な方法を実施した際に得られた重ね書きされたクロマトグラムである。
図9B】実施例6に記載の第1の方法に従って本開示の例示的な方法を実施した際に得られた並べられたクロマトグラムである。
図10A】実施例6に記載の第2の方法に従って本開示の例示的な方法を実施した際に得られた重ね書きされたクロマトグラムである。
図10B】実施例6に記載の第2の方法に従って本開示の例示的な方法を実施した際に得られた並べられたクロマトグラムである。
図10C】実施例6に記載の第3の方法に従って本開示の例示的な方法を実施した際に得られた重ね書きされたクロマトグラムである。
図10D】実施例6に記載の第3の方法に従って本開示の例示的な方法を実施した際に得られた並べられたクロマトグラムである。
図11】二重鎖についての濃度の関数としてプロットされたピーク面積%のグラフである。
図12】センス鎖についての濃度の関数としてプロットされたピーク面積%のグラフである。
図13】アンチセンス鎖についての濃度の関数としてプロットされたピーク面積%のグラフである。
図14】四重鎖についての濃度の関数としてプロットされたピーク面積%のグラフである。
図15】加熱-冷却処理の影響を試験するために行った試験のスキームである。
図16A】加熱-冷却処理の前後の、水中で調製されたアンチセンス鎖溶液の重ね書きされたクロマトグラムを示す。
図16B】加熱-冷却処理の前後の、水中で調製されたアンチセンス鎖溶液の重ね書きされたクロマトグラムを示す。
図17A】加熱-冷却処理の前後の、75mM酢酸アンモニウム緩衝液中のアンチセンス鎖溶液の重ね書きされたクロマトグラムを示す。
図17B】加熱-冷却処理の前後の、75mM酢酸アンモニウム緩衝液中のアンチセンス鎖溶液の重ね書きされたクロマトグラムを示す。
図18】3+及び4+の電荷状態の狭い電荷状態分布を提供する提案されたアンチセンス一本鎖に関連するMSスペクトルである。
図19】濃縮されたG-四重鎖試料から得られたMSスペクトルであり、MSシグナルはより高いm/zで観察された。
図20】動的光散乱(DLS)によって測定されたサイズの関数としてプロットされた強度のグラフである。
図21】DLSによって測定されたサイズの関数としてプロットされた体積のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、分子種の混合物からグアニンリッチオリゴヌクレオチドを分離する方法を提供する。例示的な態様では、混合物の少なくとも1つの分子種は、グアニンリッチオリゴヌクレオチドから形成される四重鎖である。例示的な実施形態では、方法は、(a)疎水性リガンドを含むクロマトグラフィーマトリックスに混合物を適用することであって、前記疎水性リガンドがC4~C8アルキル鎖を含み、分子種が疎水性リガンドに結合すること;及び(b)酢酸塩の勾配とアセトニトリルの勾配とを含む移動相をクロマトグラフィーマトリックスに適用して、グアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を溶出すること;を含み、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは第1のセットの溶出画分で溶出し、四重鎖は第2のセットの溶出画分で溶出する。
【0029】
本発明の方法により分離しようとするグアニンリッチオリゴヌクレオチドは、3個以上の連続するグアニン塩基の少なくとも1つの配列モチーフを含むオリゴヌクレオチドである。他の塩基により分離されるこのような配列モチーフを含有するオリゴヌクレオチド(G-トラクトとも呼ばれる)は、自然に折りたたまれて四重鎖(G-四重鎖又は四重体とも呼ばれる)二次構造になることが観察されている。例えば、Burge et al.,Nucleic Acids Research,Vol.34:5402-5415,2006及びRhodes and Lipps,Nucleic Acids Research,Vol.43:8627-8637,2015を参照。四重鎖は、フーグスティーン水素結合により安定化される環状配置への4個のグアニン塩基の会合から形成される平面状G-カルテットから組み立てられる四本鎖のヘリックス構造である。G-カルテットは、四本鎖のヘリックス四重鎖構造を形成させるために互いの上に重なることができる。Burge et al.,2006及びRhodes and Lipps,2015を参照。オリゴヌクレオチド中に存在するG-トラクト(すなわち3個以上の連続グアニン塩基の配列モチーフ)の数に依存して、グアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子内又は分子間フォールディングから四重鎖が形成され得る。例えば、4個以上のG-トラクトを含む単一のオリゴヌクレオチドの分子内フォールディングから四重鎖が形成され得る。或いは、少なくとも2個のG-トラクトを含む2個のオリゴヌクレオチド又は少なくとも1個のG-トラクトを含む4個のオリゴヌクレオチドの分子間フォールディングから四重鎖が形成され得る。Burge et al.,2006及びRhodes and Lipps,2015を参照。
【0030】
特定の実施形態では、本発明の方法により分離しようとするグアニンリッチオリゴヌクレオチドは、3個の連続グアニン塩基の少なくとも1つの配列モチーフを有する。他の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、4個の連続グアニン塩基の少なくとも1つの配列モチーフを有する。また他の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、3個の連続グアニン塩基の単一の配列モチーフを有する。さらに他の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、4個の連続グアニン塩基の単一配列モチーフを有する。一部の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、少なくとも4個の連続グアニン塩基の配列を有する。本発明の方法で使用されるグアニンリッチオリゴヌクレオチドは、四重鎖を形成するコンセンサス配列、例えばテロメアで見出されるもの又はある一定のプロモーター領域で見られるものなどを含有し得る。例えば、一実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドはTTAGGGの配列モチーフ(配列番号5)を含み得る。別の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、GGGGCCの配列モチーフ(配列番号6)を含み得る。別の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、(Gの配列モチーフを含み得、ここでGはグアニン塩基であり、Nはいずれかの核酸塩基であり、pは少なくとも3であり、qは1~7であり、nは1~4である。特定の実施形態では、pは3又は4である。
【0031】
本明細書中で使用される場合、オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドのオリゴマー又はポリマーを指す。オリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド又はそれらの組み合わせを含み得る。オリゴヌクレオチドは、数ヌクレオチド長から最大数百ヌクレオチド長、例えば約10ヌクレオチド長~約300ヌクレオチド長、約12ヌクレオチド長~約100ヌクレオチド長、約15ヌクレオチド長~約250ヌクレオチド長、約20ヌクレオチド長~約80ヌクレオチド長、約15ヌクレオチド長~約30ヌクレオチド長、約18ヌクレオチド長~約26ヌクレオチド長、又は約19ヌクレオチド長~約23ヌクレオチド長であり得る。一部の実施形態では、本発明の方法により精製しようとするグアニンリッチオリゴヌクレオチドは、約18、19、20、21、22、23、24、25又は26ヌクレオチド長である。一実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは約19ヌクレオチド長である。別の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは約20ヌクレオチド長である。また別の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは約21ヌクレオチド長である。さらに別の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは約23ヌクレオチド長である。
【0032】
グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、細胞又は生物から単離される天然のオリゴヌクレオチドであり得る。例えば、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、ゲノムDNA由来又はゲノムDNAの断片、特にテロメア又はプロモーター領域、であり得るか、又はメッセンジャーRNA(mRNA)由来又はmRNAの断片、特に5’若しくは3’非翻訳領域であり得る。一部の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、化学合成法又はインビトロ酵素法により作製される合成オリゴヌクレオチドである。一部の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、前駆miRNA(プレmiRNA)、抗miRNAオリゴヌクレオチド(例えばアンタゴミル及びantimiR)又はアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。他の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、二本鎖RNA分子又はRNA干渉剤、例えば低分子干渉RNA(siRNA)など、マイクロRNA(miRNA)又はmiRNA模倣物の構成成分鎖の1つであり得る
【0033】
特定の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、疾患又は障害に関連する遺伝子又はRNA分子を標的とするように設計された治療用オリゴヌクレオチドである。例えば、一実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、少なくとも3又は少なくとも4個の連続シトシン塩基を有する標的遺伝子又はmRNA配列の領域に相補的な配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドである。第1の配列を含むオリゴヌクレオチドが、特定の条件下で第2の配列を含むオリゴヌクレオチドとハイブリッド形成して二本鎖領域を形成し得る場合、第1の配列は、第2の配列に「相補的」である。「ハイブリッド形成する」又は「ハイブリッド形成」は、典型的には2つのオリゴヌクレオチドにおける相補的塩基間の水素結合(例えばワトソン-クリック、フーグスティーン又は逆フーグスティーン水素結合)を介した、相補的ポリヌクレオチドの対形成を指す。第1の配列を含むオリゴヌクレオチドが、第2の配列を含むオリゴヌクレオチドと、ミスマッチなく、一方又は両方のヌクレオチド配列の全長にわたって塩基対形成する場合、第1の配列は、第2の配列と完全に相補的(100%相補的)であるとみなされる。
【0034】
別の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、siRNA又は他のタイプの二本鎖RNA干渉剤のアンチセンス鎖であり、アンチセンス鎖は、少なくとも3又は少なくとも4個の連続シトシン塩基を有する標的遺伝子又はmRNA配列の領域に相補的な配列を含む。また別の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、siRNA又は他のタイプの二本鎖RNA干渉剤のセンス鎖であり、このセンス鎖は、少なくとも3又は少なくとも4個の連続グアニン塩基を有する標的遺伝子又はmRNA配列の領域と同一である配列を含む。標的配列(例えば標的mRNA)に相補的な配列を有する領域を含む、siRNA又は他のタイプの二本鎖RNA干渉剤の鎖は、「アンチセンス鎖」と呼ばれる。「センス鎖」は、アンチセンス鎖の領域と相補的な領域を含む鎖を指す。
【0035】
本発明の方法により精製しようとするグアニンリッチオリゴヌクレオチドは、1個以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。「修飾ヌクレオチド」は、ヌクレオシド、核酸塩基、ペントース環又はホスフェート基に対する1つ以上の化学修飾を有するヌクレオチドを指す。このような修飾ヌクレオチドとしては、2’糖修飾(2’-O-メチル、2’-メトキシエチル、2’-フルオロ、デオキシヌクレオチドなど)があるヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、逆ヌクレオチド(3’-3’結合ヌクレオチド)、ホスホロチオエート連結ヌクレオチド、二環式糖修飾があるヌクレオチド(例えばLNA、ENA)、及び塩基類似体(例えばユニバーサル塩基、5-メチルシトシン、シュードウラシルなど)を含むヌクレオチドが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0036】
特定の実施形態において、修飾ヌクレオチドは、リボース糖の修飾を有する。当該糖修飾として、ペントース環の2’位及び/又は5’位での修飾、並びに二環式糖修飾が挙げられ得る。2’修飾ヌクレオチドは、OH以外の置換基を2’位に有するペントース環を有するヌクレオチドを指す。このような2’-修飾としては、2’-H(例えばデオキシリボヌクレオチド)、2’-O-アルキル(例えばO-C~C10又はO-C~C10置換アルキル)、2’-O-アリル(O-CHCH=CH)、2’-C-アリル、2’-フルオロ、2’-O-メチル(OCH)、2’-O-メトキシエチル(O-(CHOCH)、2’-OCF、2’-O(CHSCH、2’-O-アミノアルキル、2’-アミノ(例えばNH)、2’-O-エチルアミン、及び2’-アジドが挙げられるが、これらに限定されない。ペントース環の5’位での修飾として、5’-メチル(R又はS);5’-ビニル、及び5’-メトキシが挙げられるが、これらに限定されない。「二環式糖修飾」は、ペントース環の修飾を指し、この場合、架橋が環の2つの原子を接続して、二環式糖構造をもたらす第2の環を形成する。一部の実施形態において、二環式糖修飾は、ペントース環の4’炭素と2’炭素との間の架橋を含む。二環式糖修飾を有する糖部分を含むヌクレオチドは、本明細書中で二環式核酸又はBNAと称される。例示的な二環式糖修飾として下記が挙げられるが、これらに限定されない:α-L-メチレンオキシ(4’-CH-O-2’)二環式核酸(BNA);β-D-メチレンオキシ(4’-CH-O-2’)BNA(ロックド核酸又はLNAとも称されている);エチレンオキシ(4’-(CH-O-2’)BNA;アミノオキシ(4’-CH-O-N(R)-2’)BNA;オキシアミノ(4’-CH-N(R)-O-2’)BNA;メチル(メチレンオキシ)(4’-CH(CH)-O-2’)BNA(拘束エチル又はcEtとも称されている);メチレン-チオ(4’-CH-S-2’)BNA;メチレン-アミノ(4’-CH-N(R)-2’)BNA;メチル炭素環式(4’-CH-CH(CH)-2’)BNA;プロピレン炭素環式(4’-(CH-2’)BNA;及びメトキシ(エチレンオキシ)(4’-CH(CHOMe)-O-2’)BNA(拘束MOE又はcMOEとも称されている)。グアニンリッチオリゴヌクレオチドに組み込まれ得るこれら及び他の糖修飾ヌクレオチドは、全てそれらの全体において参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,181,551号明細書、米国特許出願公開第2016/0122761号明細書及びDeleavey and Damha,Chemistry and Biology,Vol.19:937-954,2012に記載されている。
【0037】
一部の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、1つ以上の、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2’-O-アリル修飾ヌクレオチド、二環式核酸(BNA)又はそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、1つ以上の、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド又はそれらの組み合わせを含む。特定の一実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、1つ以上の2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、又はそれらの組み合わせを含む。別の特定の一実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、1つ以上の2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、又はそれらの組み合わせを含む。
【0038】
本発明の方法で使用され得るグアニンリッチオリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾ヌクレオチド間結合も含み得る。本明細書中で用いられる用語「修飾ヌクレオチド間結合」は、天然の3’-5’ホスホジエステル結合以外のヌクレオチド間結合を指す。一部の実施形態では、修飾ヌクレオチド間結合は、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、アルキルホスホネート(例えば、メチルホスホネート、3’-アルキレンホスホネート)、ホスフィネート、ホスホロアミデート(例えば3’-アミノホスホロアミデート及びアミノアルキルホスホロアミデート)、ホスホロチオエート(P=S)、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、チオノホスホロアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル及びボラノホスフェートなどのリン含有ヌクレオチド間結合である。一実施形態では、修飾ヌクレオチド間結合は、2’-5’ホスホジエステル結合である。他の実施形態において、修飾ヌクレオチド間結合は、リン非含有ヌクレオチド間結合であるため、修飾ヌクレオシド間結合と称され得る。そのようなリン非含有結合として、モルホリノ結合(一部はヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン結合(-O-Si(H)-O-);スルフィド、スルホキシド、及びスルホン結合;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル結合;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンメチルイミノ(-CH-N(CH)-O-CH-)及びメチレンヒドラジノ結合;スルホネート及びスルホンアミド結合;アミド結合;並びにN、O、S、及びCH構成要素部分が混合された他のものが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、修飾ヌクレオシド間結合は、米国特許第5,539,082号明細書、米国特許第5,714,331号明細書、及び米国特許第5,719,262号明細書に記載されているもの等のペプチド核酸又はPNAを作出するためのペプチドベースの結合(例えばアミノエチルグリシン)である。グアニンリッチオリゴヌクレオチドに組み込まれ得る他の適切な修飾されたヌクレオチド間及びヌクレオシド間結合は、全てそれらの全体において参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,693,187号明細書、米国特許第9,181,551号明細書、米国特許出願公開第2016/0122761号明細書及びDeleavey and Damha,Chemistry and Biology,Vol.19:937-954,2012に記載されている。
【0039】
特定の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、1、2、3、4、5、6、7、8個又はそれを超えるホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み得る。一部の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチド中のヌクレオチド間結合の全てがホスホロチオエートヌクレオチド間結合である。他の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、3’末端、5’末端又は3’及び5’末端の両方で1つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み得る。例えば、特定の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、3’末端で約1~約6個又はそれを超える(例えば約1、2、3、4、5、6個又はそれを超える)連続ホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。他の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、5’末端で約1~約6個又はそれを超える(例えば約1、2、3、4、5、6個又はそれを超える)連続ホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。
【0040】
本発明の方法で使用されるグアニンリッチオリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知の技術を使用して、例えば従来の核酸固相合成を使用して容易に製造することができる。本オリゴヌクレオチドは、標準ヌクレオチド又はヌクレオシド前駆体(例えばホスホラミダイト)を利用する適切な核酸合成装置上で構築され得る。自動核酸合成装置は、いくつかの業者により市販されており、Applied Biosystems(Foster City,CA)からのDNA/RNA合成装置、BioAutomation(Irving,TX)からのMerMade合成装置及びGE Healthcare Life Sciences(Pittsburgh,PA)からのOligoPilot合成装置が挙げられる。2’シリル保護基をリボヌクレオシドの5’位で酸不安定性のジメトキシトリチル(DMT)と一緒に使用して、ホスホラミダイト化学を介してオリゴヌクレオチドを合成し得る。最終脱保護条件は、RNA産物を著しく分解しないことが知られている。全ての合成は、任意の自動又は手動合成装置により、大規模、中規模、又は小規模で行うことができる。また、合成は、複数のウェルプレート、カラム、又はスライドガラスにおいて実行することができる。2’-O-シリル基は、フッ化物イオンへの曝露を介して除去され得、フッ化物イオンとして、フッ化物イオンの何らかの供給源、例えば無機対イオンと対になるフッ化物イオンを含有する塩、例えばフッ化セシウム及びフッ化カリウム、又は有機対イオンと対になるフッ化物イオンを含有する塩、例えばフッ化テトラアルキルアンモニウムが挙げられ得る。クラウンエーテル触媒が、脱保護反応において無機フッ化物と組み合わせて利用され得る。好ましいフッ化物イオン供給源として、フッ化テトラブチルアンモニウム又はアミノヒドロフルオリド(例えば、双極性非プロトン溶媒、例えばジメチルホルムアミド中での水性HFの、トリエチルアミンとの組み合わせ)がある。所望の化合物を与えるために、様々な合成段階を代替的な順番又は順序で実施し得る。オリゴヌクレオチドの合成において有用な他の合成化学変換、保護基(例えば、塩基に存在するヒドロキシル、アミノなどのため)及び保護基の手法(保護及び脱保護)は、当技術分野で公知であり、例えばR.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,2d.Ed.,John Wiley and Sons(1991);L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994);及びL.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)並びにそれらの後続版に記載のものなどを含む。
【0041】
様々な態様では、本発明の方法で使用されるグアニンリッチオリゴヌクレオチドは、5’-UCGUAUAACAAUAAGGGGCUG-3’(配列番号2)の配列を含むか、又はそれからなる。いくつかのそのような実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、5’-usCfsgUfaUfaacaaUfaAfgGfgGfcsUfsg-3’(配列番号4)の配列に従う修飾ヌクレオチドの配列を含むか、又はそれからなり、ここで、a、g、c、及びuは、それぞれ2’-O-メチルアデノシン、2’-O-メチルグアノシン、2’-O-メチルシチジン、及び2’-O-メチルウリジンであり;Af、Gf、Cf、及びUfは、それぞれ2’-デオキシ-2’-フルオロ(「2’-フルオロ」)アデノシン、2’-フルオログアノシン、2’-フルオロシチジン、及び2’’-フルオロウリジンであり;sはホスホロチオエート結合である。様々な場合において、グアニンリッチオリゴヌクレオチドの相補的オリゴヌクレオチドは、5’-CAGCCCCUUAUUGUUAUACGA-3’(配列番号1)の配列を含むか、又はそれからなる。関連する実施形態では、相補的オリゴヌクレオチドは、5’-csagccccuUfAfUfuguauauacgs(invdA)-3’(配列番号3)の配列に従う修飾ヌクレオチドの配列を含むか、又はそれからなり、ここで、a、g、c、及びuは、それぞれ2’-O-メチルアデノシン、2’-O-メチルグアノシン、2’-O-メチルシチジン、及び2’-O-メチルウリジンであり;Af、Gf、Cf、及びUfは、それぞれ2’-デオキシ-2’-フルオロ(「2’-フルオロ」)アデノシン、2’-フルオログアノシン、2’-フルオロシチジン、及び2’-フルオロウリジンであり;invdAは逆位デオキシアデノシン(3’-3’連結ヌクレオチド)であり、sはホスホロチオエート結合である。例示的な態様では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、siRNAのアンチセンス鎖であり、その相補的オリゴヌクレオチドはセンス鎖である。様々な態様では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドとその相補的オリゴヌクレオチドは、ハイブリッド形成して二重鎖を形成する。特定の実施形態では、二重鎖は、配列番号3による修飾ヌクレオチドの配列を含むセンス鎖と、配列番号4による修飾ヌクレオチドの配列を含むアンチセンス鎖とを含むオルパシランであり得る。オルパシランの構造は図1に示されており、これは実施例1でさらに説明される。
【0042】
当業者によって理解され得るように、グアニンリッチオリゴヌクレオチドを合成するさらなる方法は、当業者にとって明らかであろう。例えば、オリゴヌクレオチドは、Jensen and Davis,Biochemistry,Vol.57:1821-1832,2018に記載の方法などで、インビトロ系で酵素を使用して合成され得る。天然のオリゴヌクレオチドは、従来の方法を使用して細胞又は生物から単離され得る。オリゴヌクレオチドのカスタム合成は、Dharmacon,Inc.(Lafayette,CO)、AxoLabs GmbH(Kulmbach,Germany)及びAmbion,Inc.(Foster City,CA)を含むいくつかの供給業者からも入手可能である。
【0043】
本発明の方法は、溶液中で1つ以上の不純物又は他の分子種からグアニンリッチオリゴヌクレオチド又は四重鎖構造を精製又は分離するために使用され得る。「精製する」又は「精製」は、標的分子(例えばグアニンリッチオリゴヌクレオチド又は四重鎖)とは異なり、最終組成物又は調製物から望ましくは排除される物質の量を減少させる工程を指す。「不純物」という用語は、標的分子とは異なる構造を有する物質を指し、この用語は、単一の不要な物質又はいくつかの不要な物質の組み合わせを含み得る。不純物は、グアニンリッチオリゴヌクレオチドを作製するための方法で使用される材料又は試薬並びこのオリゴヌクレオチドの断片又は他の不要な誘導体若しくは形態を含み得る。特定の実施形態では、不純物は、標的のグアニンリッチオリゴヌクレオチドより長さが短い1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む。これら及び他の実施形態では、不純物は1つ以上の失敗配列を含む。失敗配列は、標的オリゴヌクレオチドの合成中に生じ得、オリゴヌクレオチド鎖へのヌクレオチド単量体の段階的付加中のカップリング反応の失敗から生じ得る。オリゴヌクレオチド合成反応の生成物は、標的オリゴヌクレオチド及び標的オリゴヌクレオチドよりも長さが短い様々な失敗配列(すなわち標的オリゴヌクレオチドの短縮型)を含む様々な長さのオリゴヌクレオチドの不均一な混合物であることが多い。一部の実施形態では、不純物は、1つ以上の工程に関連する不純物を含む。グアニンリッチオリゴヌクレオチドを作製するための合成方法に依存して、このような工程関連不純物としては、ヌクレオチド単量体、保護基、塩、酵素及び内毒素が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書で開示の方法の例示的な実施形態では、方法は、分子種の混合物からグアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を分離する。本明細書で使用される「分子種」という用語は、グアニンリッチオリゴヌクレオチド自体、その相補的オリゴヌクレオチド、及びグアニンリッチオリゴヌクレオチドの少なくとも1つのコピーを含むあらゆる高次形態を包含し、これには、G-リッチオリゴヌクレオチドの分子間又は分子内の会合から形成されるグアニンリッチオリゴヌクレオチドの四重鎖が含まれるが、これらに限定されない。様々な態様における「分子種」という用語は、その相補的オリゴヌクレオチド、例えば二重鎖にハイブリッド形成したグアニンリッチオリゴヌクレオチド、及び一本鎖の形態で存在するその相補的オリゴヌクレオチドとハイブリッド形成していないグアニンリッチオリゴヌクレオチドを包含する。様々な場合において、「分子種」という用語は、その一本鎖形態の相補的オリゴヌクレオチドを包含する。様々な態様では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、低分子干渉RNA(siRNA)のセンス鎖又はアンチセンス鎖である。任意選択的には、グアニンリッチオリゴヌクレオチドが分離される混合物は、一本鎖分子種及び/又は二本鎖分子種を含む。様々な態様では、混合物は、アンチセンス一本鎖、センス一本鎖、二重鎖、及び四重鎖からなる群から選択される1つ以上の分子種を含む。例示的な態様では、混合物の少なくとも1つの分子種は、グアニンリッチオリゴヌクレオチドから形成された四重鎖である。いくつかのそのような実施形態では、四重鎖は4つのグアニンリッチオリゴヌクレオチドから形成される。グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、様々な態様では、siRNA分子のアンチセンス鎖である。これら及び他の実施形態では、siRNA二重鎖は、アンチセンスグアニンリッチ鎖と、グアニンリッチアンチセンス鎖に相補的なセンス鎖とを含む。例示的な場合において、混合物は以下の分子種の全てを含む:アンチセンス一本鎖、センス一本鎖、二重鎖、及び四重鎖。いくつかのそのような実施形態では、アンチセンス鎖又はセンス鎖のいずれかがグアニンリッチオリゴヌクレオチドであり、二重鎖はセンス鎖とハイブリッド形成したアンチセンス鎖を含み、四重鎖はグアニンリッチオリゴヌクレオチドである鎖から形成される。
【0045】
様々な実施形態では、方法は、分子種の混合物からグアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種をクロマトグラフィーにより分離する。様々な態様では、方法は、混合物の分子種を分離するためのクロマトグラフィーを含む。例示的な場合において、クロマトグラフィーは分析クロマトグラフィーである。他の例示的な場合において、クロマトグラフィーは分取クロマトグラフィーである。例示的な態様では、混合物の各分子種は、それがマトリックスから溶出する時間によって分離される。様々な場合において、混合物の各分子種は、異なる分子種が溶出する時間とは区別できる時間に溶出する。例えば、例示的な場合において、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、四重鎖が溶出する時間とは区別できる時間に溶出する。例示的な態様では、混合物は以下の分子種の全てを含む:アンチセンス一本鎖、センス一本鎖、二重鎖、及び四重鎖。例示的な場合において、各分子種が固有の時間で溶出するように、二重鎖が第1の時間に溶出し、センス鎖が第2の時間に溶出し、アンチセンス鎖が第3の時間に溶出し、四重鎖が第4の時間に溶出する。任意選択的には、各分子種は、別の分子種とは別の画分で溶出する。例示的な態様では、二重鎖は第1のセットの溶出画分で溶出し、センス鎖は第2のセットの溶出画分で溶出し、アンチセンス鎖は第3のセットの溶出画分で溶出し、四重鎖は第4のセットの溶出画分で溶出する。様々な態様では、分子種は逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって分離される。逆相クロマトグラフィー、例えばRP-HPLCは、先行技術において非常に詳細に記載されている。例えば、Reversed Phase Chromatography:Principles and Methods,ed.AA,Amersham Biosciences,Buckinghamshire,England(1999)を参照。様々な場合において、分子種はRP-HPLC(RP-HPLC)によって分離される。例示的な場合において、分子種はクロマトグラフィーによって分離され、その分離は高い分解能を有するものとして特徴付けられる。様々な態様では、各分子種のピークの分離の分解能(例えば二重鎖のピークとセンス一本鎖のピークとの間の分離の分解能)は、少なくとも若しくは約1.0、任意選択的には少なくとも若しくは約1.1、少なくとも若しくは約1.2、少なくとも若しくは約1.3、又は少なくとも若しくは約1.4である。様々な態様では、各分子種のピークの分離の分解能は、少なくとも若しくは約1.5、任意選択的には少なくとも若しくは約1.6、少なくとも若しくは約1.7、少なくとも若しくは約1.8、又は少なくとも若しくは約1.9である。任意選択的には、各分子種に対応するピークの分離の分解能(例えば二重鎖のピークとセンス一本鎖のピークとの間の分離の分解能)は、少なくとも又は約2.0(例えば少なくとも又は約2.1、少なくとも又は約2.2、少なくとも又は約2.3、少なくとも又は約2.4)である。様々な態様では、分離の分解能は、少なくとも又は約2.4である。例示的な場合において、分解能は少なくとも若しくは約2.5、少なくとも若しくは約3.0、又は少なくとも若しくは約4.0である。任意選択的には、二重鎖のピークとセンス鎖のピークとの間の分離の分解能は、少なくとも4.0である。様々な態様では、分離能は米国薬局方(USP)の分離能であり、これは、50%の高さでピークに接する線を用いて計算されたベースラインピーク幅を使用するUSP分離能の式(式1)を使用して計算することができる:
【数1】
R=分解能、Rt=保持時間、W1+W2=50%のピーク高さにおけるピーク幅の合計
[式1]
(”Empower System Suitability:Quick Reference Guide”Waters Corp.(2002)から引用)
【0046】
様々な態様では、シグナル対ノイズ比が10.0以上である場合、各分子種の方法の定量限界(LOQ)は、約0.03mg/mL~約0.08mg/mL、例えば約0.03mg/mL、約0.04mg/mL、約0.05mg/mL、約0.06mg/mL、約0.07mg/mL、約0.08mg/mLである。様々な場合において、シグナル対ノイズ比が10.0以上である場合、LOQは約0.08mg/mlである。
【0047】
グアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を含む混合物は、存在が望ましくない1つ以上の不純物又は汚染物質をさらに含み得る。混合物には、オリゴヌクレオチドを製造するための合成方法から生じる混合物が含まれ得る。例えば、一実施形態では、混合物は、自動合成装置から得られる合成反応混合物など、オリゴヌクレオチドを製造するための化学合成法由来の反応混合物である。このような実施形態では、溶液は失敗配列も含み得る。別の実施形態では、混合物はインビトロ酵素合成反応(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR))からの混合物である。また別の実施形態では、例えばグアニンリッチオリゴヌクレオチドが細胞又は生物から単離された天然のオリゴヌクレオチドである場合、混合物は細胞溶解液又は生体試料である。さらに別の実施形態では、混合物は、クロマトグラフィー分離からの溶出液など、別の精製操作からの溶液又は混合物である。
【0048】
様々な態様では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を含む混合物は、水、酢酸塩源、カリウム源、及び塩化ナトリウムのうちの1つ以上を含む溶液中で調製される。様々な態様では、酢酸塩源は、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、又は酢酸カリウムである。様々な場合において、カリウム源はリン酸カリウム又は酢酸カリウムである。例示的な態様では、溶液は、約50mM~約150mM(例えば約50mM~約140mM、約50mM~約130mM、約50mM~約120mM、約50mM~約110mM、約50mM~約100mM、約50mM~約90mM、約50mM~約80mM、約50mM~約70mM、約50mM~約60mM、約60mM~約140mM、約70mM~約140mM、約80mM~約140mM、約90mM~約140mM、約100mM~約140mM、約110mM~約140mM、約120mM~約140mM、約130mM~約140mM)の酢酸塩又はカリウムを含む。いくつかの場合における溶液は、約75mM~約100mM(例えば約75mM~約95mM、約75mM~約90mM、約75mM~約85mM、約75mM~約80mM、約80mM~約100mM、約85mM~約100mM、約90mM~約100mM、約95mM~約100mM)の酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、又は酢酸カリウムを含む。様々な態様では、溶液はリン酸カリウム及び塩化ナトリウムを含む。特定の理論に拘束されるものではないが、溶液中のカリウム、ナトリウム、及び/又はアンモニウムの存在は、四重鎖を安定化させる、及び/又はグアニンリッチオリゴヌクレオチド::四重鎖の比率を安定化させる(例えばグアニンリッチオリゴヌクレオチド::四重鎖の平衡を安定化させる)ため、これらの分子種はクロマトグラフィーでよりよく分離されると考えられる。様々な態様では、混合物は、水中で、任意選択的には精製された脱イオン水中で調製される。
【0049】
分子種の混合物を含む溶液が調製された後、それは疎水性リガンドを含むクロマトグラフィーマトリックスに適用される。任意選択的には、クロマトグラフィーマトリックスは、多孔質の不溶性ビーズマトリックスに化学的にグラフトされた疎水性リガンドを含む逆相クロマトグラフィーマトリックスである。様々な場合において、マトリックスは化学的及び機械的に安定である。任意選択的には、マトリックスはシリカ又は合成有機ポリマー(例えばポリスチレン)を含む。様々な態様では、クロマトグラフィーマトリックスは、2.1mmの内径及び/又は約50mmのカラム長を有するクロマトグラフィーカラム内に収容される。任意選択的には、マトリックスは、疎水性リガンドが結合した1.7のエチレン架橋ハイブリッド(BEH)粒子を含む。様々な場合において、各粒子は300Åの細孔を含む、及び/又は約3.5μmの粒径を有する。マトリックスの疎水性リガンドは、様々な態様では、C4アルキル鎖、C6アルキル鎖、又はC8アルキル鎖を含む。特定の態様では、リガンドはC4アルキル鎖を含む。適切なクロマトグラフィーマトリックスは市販されており、例えばWaters(商標)BEHカラム(SKU 186004498;Waters Corporation,Milford,MA)及びC4、C6、又はC8アルキル鎖を有する他の同様のカラム、例えばHypersil GOLD(商標)C4 HPLCカラム(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)、Polar-RPHPLCカラム(Hawach Scientific,Xi‘an City,Shaanxi Province,PR China)、AdvanceBio RP-mAbカラム(Agilent Technologies,Inc.,Santa Clara,CA)が挙げられる。
【0050】
混合物がクロマトグラフィーマトリックスに適用された後、移動相がクロマトグラフィーマトリックスに適用される。例示的な態様では、移動相は酢酸塩の勾配とアセトニトリルの勾配とを含む。様々な場合において、酢酸塩の勾配は、約50mM~約150mMの酢酸塩、例えば約50mM~約140mM、約50mM~約130mM、約50mM~約120mM、約50mM~約110mM、約50mM~約100mM、約50mM~約90mM、約50mM~約80mM、約50mM~約70mM、約50mM~約60mM、約60mM~約140mM、約70mM~約140mM、約80mM~約140mM、約90mM~約140mM、約100mM~約140mM、約110mM~約140mM、約120mM~約140mM、約130mM~約140mMの酢酸塩を含む酢酸塩原液を用いて製造される。任意選択的には、酢酸塩原液は、約70mM~約80mMの酢酸塩、任意選択的には約75mMの酢酸塩、又は約90mM~約110mMの酢酸塩、任意選択的には約100mMの酢酸塩を含む。様々な態様では、酢酸塩は、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、又は酢酸カリウムである。本明細書では他の対イオンも想定される。特定の実施形態では、酢酸塩は酢酸アンモニウムである。酢酸塩原液のpHは、様々な場合において、約6.5~約7.0(例えば6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0)である。例えば、酢酸塩原液のpHは約6.7、又は約6.8~約7.0である。様々な場合において、酢酸塩原液は、6.7±0.1のpHを有する75mMの酢酸アンモニウム水溶液である。例示的な態様では、アセトニトリルの勾配はアセトニトリル原液を用いて製造され、アセトニトリル原液は100%のアセトニトリルである。例示的な態様では、移動相は、酢酸塩の減少する濃度勾配と、アセトニトリルの増加する濃度勾配とを含む。酢酸塩の勾配は、様々な態様では、最大濃度で始まり、第1の期間の間に最小濃度まで徐々に減少する。例示的な場合において、第1の期間は約18分~約19分である。代替の場合において、第1の期間は約22分~約26分である。例示的な態様では、第1の期間の後、移動相の酢酸塩の濃度は、酢酸塩の最大濃度まで増加する。様々な場合において、移動相の酢酸塩の濃度は、勾配が酢酸塩の最小濃度に到達してから約0.1~約3分後に、酢酸塩の最大濃度まで増加する。様々な場合において、アセトニトリルの勾配は最小濃度から始まり、第1の期間の間に最大濃度まで徐々に増加する。任意選択的には、第1の期間の後、移動相のアセトニトリルの濃度は、アセトニトリルの最小濃度まで減少する。例えば、移動相のアセトニトリルの濃度は、アセトニトリルの勾配がアセトニトリルの最大濃度に到達してから約0.1~約3分後に、最小濃度まで減少する。様々な場合において、方法は、以下の条件に従って移動相をクロマトグラフィーマトリックスに適用することを含む。
【0051】
【表4】
【0052】
代替の場合において、方法は、以下の条件に従って移動相をクロマトグラフィーマトリックスに適用することを含む。
【0053】
【表5】
【0054】
代替の又は追加の態様では、方法は、以下の条件に従って移動相をクロマトグラフィーマトリックスに適用することを含む。
【0055】
【表6】
【0056】
本発明の方法の一部の実施形態では、移動相は、カチオン性イオン対形成剤を含まない。イオン対形成剤は、イオン相互作用により溶質分子に結合し、溶質分子の疎水性を高め、選択性を変化させると考えられている。高度に負に帯電しているオリゴヌクレオチドについては、逆相クロマトグラフィーによる分離を実現するために移動相にカチオン性イオン対形成剤が含まれることが多く、必要なことさえもある。実施例に記載されているように、本発明の方法は、移動相にカチオン性イオン対形成剤を必要とせず、好ましくは、グアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種の高分離能分離を実現するためには、これは移動相から除かれる。カチオン性イオン対形成剤は当技術分野で公知であり、トリアルキルアンモニウム種、酢酸ヘキシルアンモニウム(HAA)、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)、トリエチルアミン(TEA)、tert-ブチルアミン、プロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ジメチルn-ブチルアミン(DMBA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
様々な態様における移動相は、少なくとも約25分且つ40分未満の総実行時間にわたり、クロマトグラフィーマトリックスに適用される。様々な態様では、総実行時間は35分未満であり、任意選択的には30分以下である。任意選択的には、総実行時間は約22分~約26分である。
【0058】
クロマトグラフィーマトリックスでの分離は、周囲温度で行われ得る。例えば、一部の実施形態では、クロマトグラフィーマトリックスでの分離は、約20℃~約35℃の温度で行われる。他の実施形態では、クロマトグラフィーマトリックスでの分離は約30℃の温度で行われる。四重鎖二次構造の形成及び安定性、並びにグアニンリッチオリゴヌクレオチドと四重鎖との間の平衡は、温度の影響を受ける場合がある。したがって、一部の実施形態では、クロマトグラフィーマトリックスでの分離は、約20℃未満、15℃未満、又は10℃未満、例えば約8℃の温度で行われる。
【0059】
移動相がクロマトグラフィーマトリックスに適用され得る際の適切な流量としては、約0.5mL/分~約1.5mL/分が挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態では、移動相は、約0.5mL/分~約1.0mL/分の流量でクロマトグラフィーマトリックスに適用される。他の実施形態では、移動相は、約0.6mL/分~約0.9mL/分の流量でクロマトグラフィーマトリックスに適用される。さらに他の実施形態では、移動相は、約0.7mL/分~約0.8mL/分の流量でクロマトグラフィーマトリックスに適用される。一実施形態では、移動相は、約0.7mL/分又は0.8mL/分の流量でクロマトグラフィーマトリックスに適用される。当業者は、許容可能な圧力レベルを維持するために、クロマトグラフィーマトリックスの孔径及びカラムのベッドボリュームに応じて、移動相の他の適切な流量を決定することができる。
【0060】
様々な態様では、本方法は、移動相をクロマトグラフィーマトリックスに適用して、混合物中に存在するグアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を溶出することを含む。様々な場合において、少なくともグアニンリッチオリゴヌクレオチドは、四重鎖の溶出する時間とは区別できる時間に溶出する。様々な態様では、混合物の各分子種は、別の分子種が溶出する時間とは区別できる時間に溶出する。様々な場合において、混合物の各分子種は、別の分子種とは別の画分で溶出する。様々な態様では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは第1のセットの溶出画分で溶出し、四重鎖は第2のセットの溶出画分で溶出する。例えば、グアニンリッチオリゴヌクレオチドと、グアニンリッチオリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドと、相補的なオリゴヌクレオチドとハイブリッド形成したグアニンリッチオリゴヌクレオチドを含む二重鎖と、グアニンリッチオリゴヌクレオチドから形成された四重鎖とを混合物が含む実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチド化合物は四重鎖とは別に溶出し、四重鎖は二重鎖及び相補的オリゴヌクレオチドとは別に溶出する。いくつかのそのような実施形態では、二重鎖は第1のセットの溶出画分で溶出し、相補的オリゴヌクレオチドは第2のセットの溶出画分で溶出し、グアニンリッチオリゴヌクレオチドは第3のセットの溶出画分で溶出し、四重鎖は第4のセットの溶出画分で溶出する。様々な態様では、この方法は、グアニンリッチオリゴヌクレオチドの各分子種の高分解能分離を実現する。
【0061】
本開示の様々な態様では、分子種を含む混合物が本明細書に記載の移動相と共にクロマトグラフィーマトリックスを通って移動するのに伴い、溶出画分が回収される。様々な態様では、方法は、溶出画分を一定期間に別々の容器に回収することをさらに含む。様々な態様では、方法は、紫外線検出器を使用して分子種の溶出を監視することを含む。260nm又は295nmにおけるUV吸収を使用して、画分中のオリゴヌクレオチド成分を監視することができる。図におけるクロマトグラムにより示されるように、クロマトグラフィーが本発明の方法に従い操作される場合、一本鎖グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、四重鎖の前にクロマトグラフィーマトリックスから溶出し、したがって、一本鎖グアニンリッチオリゴヌクレオチドについての及び四重鎖についての画分の個別のセットの回収が可能になる。一本鎖グアニンリッチオリゴヌクレオチド及び四重鎖についての画分の濃縮を検証するために、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、イオン対形成逆相液体クロマトグラフィー-質量分析、分析的イオン交換クロマトグラフィー及び/又はネイティブ質量分析によって溶出画分からの試料を分析することができる。
【0062】
本発明の方法の特定の実施形態では、一本鎖グアニンリッチオリゴヌクレオチドを含む溶出画分又は溶出画分のセットが単離され、任意選択的にさらなる処理のためにプールすることができる。例えば、グアニンリッチオリゴヌクレオチドを含有する溶出画分は、1つ以上のさらなる精製段階、例えばアフィニティー分離(例えば配列特異的な試薬を用いた核酸ハイブリッド形成)、イオン交換クロマトグラフィー段階(例えば異なる固定相を使用)、さらなる逆相クロマトグラフィー、又はサイズ排除クロマトグラフィー(例えば脱塩カラムによる)を受けることができる。これら及び他の実施形態では、グアニンリッチオリゴヌクレオチドを含有する溶出画分は、グアニンリッチオリゴヌクレオチドの構造を修飾するための他の反応を受けることができる。例えば、グアニンリッチオリゴヌクレオチドが治療用分子(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)又は治療用分子の構成成分(例えば二本鎖RNA干渉剤、例えばsiRNA)である実施形態では、溶出画分中の精製グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、標的化リガンド、例えば炭水化物含有リガンド、コレステロール、抗体などをオリゴヌクレオチドに共有結合させるための共役反応を受けることができる。他の実施形態では、溶出画分中の精製グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、エキソソーム、リポソーム又は他のタイプの脂質ナノ粒子中にカプセル封入することができ、或いは治療目的での患者への投与のための薬学的に許容可能な賦形剤と共に医薬組成物中に配合することができる。グアニンリッチオリゴヌクレオチドが二本鎖RNA干渉剤(例えばsiRNA分子のセンス鎖又はアンチセンス鎖のいずれか)の構成成分である実施形態では、溶出画分中の精製グアニンリッチオリゴヌクレオチドは、グアニンリッチオリゴヌクレオチドをその相補鎖とハイブリッド形成させて、二本鎖RNA干渉剤を形成させるためのアニーリング反応を受けることができる。本発明の方法の一部の実施形態では、四重鎖を含む溶出画分又は溶出画分のセットを単離することができ、任意選択的にはさらなる処理のためにプールすることができる。四重鎖は、様々な系で四重鎖構造の機能を試験及び評価するための後続のアッセイ又は分析においてインタクトな構造として使用することができる。
【0063】
本明細書に開示の方法の例示的な態様では、方法は非変性方法であるか、又は分子種の混合物中に存在するグアニンリッチオリゴヌクレオチドの四重鎖、二重鎖、又は他の高次構造が変性条件にさらされるような変性ステップを含まない。変性条件には、温度の上昇、pHの上昇、カオトロピック剤への曝露、移動相以外の有機薬剤への曝露、又はこれらの条件のいずれかの組み合わせによる変性が含まれ得る。したがって、例示的な態様では、方法は、クロマトグラフィーマトリックスを加熱することによる変性、又はG-カルテットを形成するグアニン塩基間の水素結合相互作用を破壊するのに十分な高温での分離を行うことを含まない。例えば、クロマトグラフィーマトリックスの温度は、約45℃~約95℃、約55℃~約85℃、又は約65℃~約75℃など、45℃を超える温度には加熱されない。他の実施形態では、移動相は、グアニンリッチオリゴヌクレオチドの四重鎖構造及び他の高次構造を変性させ得る強アルカリ性範囲のpHを有さない。例えば、移動相のpHは約8.0未満である。特定の実施形態では、本発明の方法で使用される移動相はカオトロピック剤を含まない。カオトロピック剤は、水素結合、ファンデルワールス力及び疎水性相互作用などの非共有結合力が介在する分子内相互作用に影響を及ぼすことにより、水分子間の水素結合ネットワークを破壊し、高分子の構造において秩序を低下させ得る物質である。カオトロピック剤としては、塩化グアニジニウム及び他のグアニジニウム塩、酢酸リチウム又は過塩素酸リチウム、塩化マグネシウム、フェノール、ドデシル硫酸ナトリウム、尿素、チオ尿素、及びチオシアン酸塩(例えばチオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム、又はチオシアン酸カリウム)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明の方法は、グアニンリッチオリゴヌクレオチドの実質的に純粋な調製物を提供する。例えば、一部の実施形態では、クロマトグラフィーマトリックスからの溶出画分中のグアニンリッチオリゴヌクレオチドの純度は、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%である。特定の実施形態では、クロマトグラフィーマトリックスからの溶出画分中のグアニンリッチオリゴヌクレオチドの純度は少なくとも85%である。他の実施形態では、クロマトグラフィーマトリックスからの溶出画分中のグアニンリッチオリゴヌクレオチドの純度は少なくとも88%である。さらに別の実施形態では、クロマトグラフィーマトリックスからの溶出画分中のグアニンリッチオリゴヌクレオチドの純度は少なくとも90%である。オリゴヌクレオチドを検出及び定量する方法は当業者に公知であり、分析イオン交換法及びイオン対逆相液体クロマトグラフィー-質量分析法、並びに例えば実施例に記載の方法を含み得る。
【0065】
有利には、本開示の方法は、グアニンリッチオリゴヌクレオチド、その相補鎖、グアニンリッチオリゴヌクレオチドとその相補鎖とを含む四重鎖及び二重鎖についての高分解能分離を実現するために使用され得る。そのため、本明細書に開示の方法は、グアニンリッチオリゴヌクレオチド、グアニンリッチオリゴヌクレオチド原薬又は医薬品を含む試料の純度を決定するために有用である。したがって、本発明は、グアニンリッチオリゴヌクレオチド原薬又は医薬品を含む試料の純度を決定する方法を提供する。例示的な実施形態では、方法は、グアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を分離する本明細書に開示の方法に従って、グアニンリッチオリゴヌクレオチドの分子種を分離することを含む。様々な態様では、試料は工程内試料であり、方法は、工程内コントロールアッセイの一部として、又はG-リッチオリゴヌクレオチドの製造が実質的な不純物を含まずに確実に行われるようにするためのアッセイとして使用される。様々な場合において、試料はロット試料であり、方法はロットリリースアッセイの一部として使用される。
【0066】
様々な態様では、試料はストレスを受けた試料、又は1回以上のストレスにさらされた試料であり、方法は安定性アッセイである。したがって、本発明は、グアニンリッチオリゴヌクレオチド原薬又は医薬品の安定性を試験する方法であって、グアニンリッチオリゴヌクレオチド原薬又は医薬品を含む試料にストレスを加えること、及び本開示の方法に従って試料の純度を決定することを含む方法を提供する。例示的な場合において、1回以上のストレスの後の試料中の不純物の存在は、1回以上のストレス下でのG-リッチオリゴヌクレオチドの不安定性を示す。例示的な態様では、試料に加えられたストレスは、(A)可視光、紫外(UV)光、熱、空気/酸素、凍結/解凍サイクル、振盪/撹拌、化学物質及び材料(例えば、金属、金属イオン、カオトロピック塩、洗浄剤、防腐剤、有機溶媒、プラスチック)、分子及び細胞(例えば、免疫細胞)への暴露、又は(B)pHの変化(例えば、1.0、1.5、又は2.0を超える変化)、圧力、温度、浸透圧、塩濃度、又は(C)長期保存である。いくつかの態様では、温度の変化は、少なくとも若しくは約1℃、少なくとも若しくは約2℃、少なくとも若しくは約3℃、少なくとも若しくは約4℃、少なくとも若しくは約5℃又はそれを超える変化である。本開示の方法は、いかなる特定の種類のストレスにも限定されない。例示的な態様では、ストレスは、任意選択的には製剤における、例えば25℃、40℃、50℃の高い温度への暴露である。例示的な場合において、このような高温への暴露は、加速ストレスプログラムを模倣する。いくつかの態様では、ストレスは、可視光及び/又は紫外線への暴露、酸化試薬(例えば、過酸化水素)、空気/酸素、凍結/解凍サイクル、振盪、意図した製品貯蔵条件下での製剤としての長期保存であり;弱酸性pH(例えば、3~4のpH)又は高いpH(例えば、8~9のpH)は、いくつかの精製条件/工程への曝露をシミュレートする。いくつかの態様では、ストレスは、1.0、1.5、2.0又は3.0を超えるpHの変化である。例示的な態様では、ストレスは、紫外線への暴露、熱、空気、凍結/解凍サイクル、振盪、長期保存、pHの変化又は温度の変化への暴露であり、任意選択的には、pHの変化は、約1.0超又は約2.0超であり、任意選択的には、温度の変化は、摂氏約2度以上又は摂氏約5度以上である。
【0067】
実行された実験及び達成された結果を含む以下の実施例は、例示目的のためにのみ提供されるものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0068】
実施例1
この実施例は、G-リッチオリゴヌクレオチドの分子種を分離するためのRP-HPLCにおける様々なパラメータを評価したいくつかの初期の試験について説明する。
【0069】
別段の明記がない限り、LPA遺伝子から転写されたmRNAを標的化することによってリポタンパク質(a)(Lp(a))の産生を減少させるように設計されたsiRNAであるオルパシランを、例示的なオリゴヌクレオチド化合物として使用した。オルパシランのアンチセンス鎖は、その3’末端付近に位置する4つの連続したグアニン塩基の伸長を含むG-リッチオリゴヌクレオチドである。このG-リッチアンチセンスオリゴヌクレオチドは、センス鎖と対になってsiRNA二重鎖を形成する。4本のアンチセンス鎖は、会合して、各鎖のグアニンヌクレオチドの伸長により単一の四重鎖構造を形成することができる。各鎖は21ヌクレオチド長であり、化学修飾されたヌクレオチドを含む。N-アセチルガラクトサミンを含む標的リガンドは、肝臓を選択的に標的化するためにセンス鎖の5’末端に結合されている。オルパシランの構造を図1に示す。
【0070】
クロマトグラフィー分離では、四重鎖が二重鎖と共溶出し、それによって別の分子種の定量化が複雑になる場合がある。センス鎖とアンチセンス鎖の分離も困難な場合がある。そこで、二重鎖及びアンチセンス鎖から四重鎖をクロマトグラフィーにより分離する方法、並びに4つ全ての分子種(例えば四重鎖、二重鎖、アンチセンス鎖、及びセンス鎖)を分離するために、二重鎖とセンス鎖を、及びアンチセンス鎖からセンス鎖をクロマトグラフィーにより分離することを追加的に実現できる方法を特定するために、いくつかの初期試験を行った。
【0071】
試験1
最初の試験では、オルパシランの二重鎖、四重鎖、センス鎖、及びアンチセンス鎖を含む試料を、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)のために、カラムを8℃に維持したAgilent AdvanceBio Oligonucleotide HPH-C18カラム(2.1mm×150mm×2.7μm)に適用した。20mMの酢酸ヘキシルアンモニウム(HAA)+2%アセトニトリル(ACN)+5%メタノール(移動相A;MP A)の濃度を下げて20mMのHAA+82%ACN(移動相B;MP B)の濃度を上げる勾配溶出を行った。HAAはカチオン性イオン対形成剤である。勾配移動相の詳細を表1に示す。
【0072】
【表7】
【0073】
例示的なクロマトグラムを図2Aに示す。この図に示されているように、アンチセンス鎖とセンス鎖は、ある程度の分解能で二重鎖から分離された。しかしながら、四重鎖のピークが二重鎖のピークと重なっていたため、この方法では四重鎖を分離又は定量することができなかった。
【0074】
試験2
別の試験では、35℃に維持したWaters XBridge BEH C4カラム(2.1×50mm、300Å、3.5μM)を使用して、イオンペアリングRP-HPLC(IP-RP-HPLC)を行った。オルパシラン二重鎖、オルパシランのセンス鎖、又はオルパシランのアンチセンス鎖のいずれかを含む試料をカラムに適用した後、95mMのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)/8mMのトリエチルアミン(TEA)/24mMのtert-ブチルアミン(移動相A;MP A)の濃度下げてACN(移動相B;MP B)の濃度を上げる勾配溶出を行った。TEAとtert-ブチルアミンは、カチオン性イオン対形成剤とみなされる。勾配移動相の詳細を表2に示す。カラム流量を0.5ml/分に、UVモニターは260nmに、カラム温度は35℃に設定した。
【0075】
【表8】
【0076】
例示的なクロマトグラムを図2Bに示す。この図に示されているように、この方法はアンチセンス鎖から四重鎖を分離することに成功した。しかしながら、センス鎖とアンチセンス鎖それぞれの保持時間が同じであるため、これらの種を分離することはできなかった。
【0077】
試験3A~3E
アンチセンス鎖とセンス鎖の高分解能分離を実現することを目的として、勾配溶出と移動相の成分の影響を分析するためにさらなる試験を行った。特定の理論に拘束されるものではないが、オルパシランのアンチセンス鎖は、アンチセンス一本鎖と四重鎖の2つの分子種間で平衡状態にあり、これら2つの分子種のクロマトグラフィーによる分離の成功は、安定した平衡状態の到達に依存し、ひいてはいくつかある特徴の中でも特に分子種が中に存在する溶液の成分及びイオン強度に依存する。これらの試験の目標の1つは、平衡を安定化させる条件を決定することであった。
【0078】
試験3A
1つの試験(試験3A)では、試験2の移動相を、HFIPと、TEAと、試験2で使用したtert-ブチルアミンの代わりの以下のアルキルアミンのうちの1つとを含む移動相に変更した:(i)プロピルアミン、(ii)ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、又は(iii)ジメチルn-ブチルアミン(DMBA)。これらそれぞれのアルキルアミンはTEAと同様にカチオンイオン対形成剤として機能する。移動相の各MP Aの詳細を表3に示す。式(iv)において、MP Aは、HFIPの濃度を25mMに下げたことを除いて(ii)と同じであった。(v)では、移動相は、tert-ブチルアミン又は他のアルキルアミンが含まれていないことを除いて試験2のものと同じであった。
【0079】
各場合において、35℃に維持したWaters XBridge BEH C4カラム(2.1×50mm、300Å、3.5μM)を使用してIP-RP-HPLCを行った。オルパシランの二重鎖、センス鎖、又はアンチセンス鎖を含む試料をカラムに適用した後、MP Aの濃度を下げてアセトニトリル(MP B)の濃度を上げる勾配溶出を行った。各勾配溶出の条件は表2に記載の通りであった。
【0080】
【表9】
【0081】
図2C~2E及び2Gに示されているように、表3に記載の各移動相は、アンチセンス鎖とセンス鎖の分離を不十分にした。図2Fに示されているように、DIPEAの存在下でHFIPの濃度を下げると、移動相の塩基性が増加し、二重鎖が成分のセンス鎖とアンチセンス鎖に変性した。疎水性の固定相を使用してオリゴヌクレオチドを精製する場合に移動相の必須成分として知られている1種又は2種のカチオン性イオン対形成剤が移動相に含まれており、それらを含めることで試料成分の完全な分離が実現される可能性が高まることが示唆されていることを考慮すると、これらの結果は驚くべきものであった。例えばReversed Phase Chromatography:Principles and Methods,ed.AA,Amersham Biosciences,Buckinghamshire,England(1999)を参照。
【0082】
試験3B
この試験では、移動相中の異なるイオン対形成剤である酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)を、前の試験で使用したものよりもはるかに高い濃度で評価した(例えば試験2及び試験3Aで使用した8mのMTEA又はアルキルアミンに対して100mMのTEAA)。IP-RP-HPLCは、40℃に維持したWaters XBridge BEH C4カラム(2.1×50mm、300Å、3.5μM)を使用して行った。オルパシランの二重鎖、センス鎖、又はアンチセンス鎖を含む試料をカラムに適用した後、100mMのTEAA/ACN(pH7)(MP A)の濃度下げてACN(移動相B;MP B)の濃度を上げる勾配溶出を行った。勾配移動相の詳細を表4に示す。カラム流量は0.8ml/分に設定した。溶出は、UVモニターを使用して260nmで監視した。カラム温度は40℃であった。
【0083】
【表10】
【0084】
結果は、四重鎖の分離も一本鎖間の分離もないことを示した。したがって、増加した濃度のカチオン性イオン対形成剤を含む移動相は、分子種の分離を改善しなかった。イオン対形成剤の濃度が増加したことを考慮すると、分解能が改善していないことは驚くべきことであった。
【0085】
試験3C
試験3Cでは、Water Acquity BEH SECカラム(4.6mm×150mm、200Å、1.7μm)を使用して、サイズ排除クロマトグラフィーを行った。アイソクラティック勾配を利用する2つの移動相を使用した。カラム温度は30℃であった。5%ACN+酢酸アンモニウム(pH7)を含む0.5ml/分の流量の移動相を、5%ACN+リン酸ナトリウムを含む0.8ml/分の流量の移動相と比較した。溶出は、UVモニターを用いて260nmで監視した。
【0086】
5%ACN+酢酸アンモニウム(pH7)を含む移動相を使用すると、四重鎖は1.49分に溶出し、アンチセンスは1.81分に溶出し、センス鎖は1.76分に溶出し、二重鎖は1.67分に溶出した。5%ACN+リン酸ナトリウムを含む移動相を使用すると、四重鎖は2.45分に溶出し、アンチセンスは2.97分に溶出し、センス鎖は2.85分に溶出し、二重鎖は2.76分に溶出した。サイズ排除クロマトグラフィーを使用して4つの異なる分子種をある程度分離できたものの、カラムからの各分子種の溶出は非常に近い時間に生じた。そうではあるものの、酢酸アンモニウムがアニオン性イオン対形成剤として知られており、アニオン性イオン対形成剤が負に帯電したオリゴヌクレオチドの分離を改善することが期待されていないことを考慮すると、酢酸アンモニウムを含む移動相を使用して試料の4つの分子種が分離されることは驚くべきことであった。
【0087】
逆相(すなわち疎水性)固定相及び酢酸アンモニウム移動相を、さらなる試験のために選択した。
【0088】
試験3D
試験3Dでは、100mMの酢酸アンモニウム(MP A)の濃度を下げてACN(MP B)の濃度を上げる勾配溶出を行ったことを除いて、試験2の条件を実行した。勾配移動相の詳細を表2に示す。カラム流量は0.5ml/分、UVモニターは260nm、カラム温度は35℃に設定した。
【0089】
この試験の結果を図2Hに示す。この図に示されているように、オルパシランの4つ全ての分子種(二重鎖、センス鎖、アンチセンス鎖、及び四重鎖)は異なる保持時間を有しており、このことは同じ試料中に存在する場合にこの方法で4つ全ての分子種を分離できることを示唆している。したがって、RP-HPLC C4カラムの酢酸アンモニウム勾配をさらなる試験のために選択した。
【0090】
試験3E
この試験では、勾配をわずかに変更し、カラム流量を0.8ml/分に設定したことを除いて、MP Aとして100mMの酢酸アンモニウムを、MP BとしてACNを用いて試験3Dの条件を実施した。勾配の詳細は、5分で7%から12%のMP B→3分で12%から14%のMP B→7分で14%から30%のMP B→30%のMP Bで1分間→2分で30%から7%のMP B→7%のMP Bで8分間であった。
【0091】
この試験の結果を図2Iに示す。この図に示されているように、センス鎖とアンチセンス鎖の分離能が向上し、試験3Dの結果と一致しており、この方法は、4つ全ての分子種、すなわち二重鎖、センス鎖、アンチセンス鎖、及び四重鎖を分離することができる。
【0092】
試験4
この試験では、オルパシランの異なる分子種の分離に対するWaters XBridge BEH C4カラム(2.1×50mm、300Å、3.5μM)のカラム温度の影響を評価した。オルパシランの二重鎖、センス鎖、及び/又はアンチセンス鎖を含む試料をカラムに適用した後、100mMの酢酸アンモニウム(pH7)(MP A)の濃度を下げてACN(MP B)の濃度を上げる勾配溶出を行った。溶離液は260nmで監視し、カラム流量は0.8ml/分であった。勾配移動相の詳細を表4に示す。カラム温度は25℃、30℃、35℃、又は40℃であった。
【0093】
図2J及び2Kは、試験したカラム温度それぞれにおける例示的なクロマトグラムを示す。図2Jは、二重鎖(クロマトグラムの最初のピーク)とセンス鎖(クロマトグラムの2番目のピーク)の分離に対する温度の影響を示す。図2Kは、アンチセンス鎖(クロマトグラムの最初のピーク)と四重鎖(G Quad、クロマトグラムの2番目のピーク)の分離に対する温度の影響を示す。表5は、図2Kの各ピークの曲線下の面積を示す。これらの結果に基づいて、最適温度として30℃のカラム温度を選択した。
【0094】
【表11】
【0095】
勾配をわずかに変えて50℃で1つの試験を行った。このより高い温度により、単一のセンス鎖とアンチセンス鎖に対応するピークが互いに近づき、これら2つの種の分離が不十分になることが見出された。
【0096】
試験5
試験1では、C18リガンドを含むクロマトグラフィーマトリックスを含むカラムを使用した一方で、試験2、3A~3C、3D、3E、及び4では、クロマトグラフィーマトリックスはC4マトリックスを含んでいた。オルパシランの異なる分子種の分離に対するクロマトグラフィーマトリックスの疎水性リガンドの影響を評価するために、C3リガンドを含むクロマトグラフィーマトリックスを使用した。IP-RP-HPLCは、30℃に維持したWaters C3カラム(2.1×50mm、300Å、3.5μm)を使用して行った。オルパシランの二重鎖、センス鎖、又はアンチセンス鎖を含む試料をカラムに適用した後、100mMの酢酸アンモニウム(pH7)(MP A)の濃度を下げてACN(MP B)の濃度を上げる勾配溶出を行った。勾配移動相の詳細を表4に示す。
【0097】
C3カラムでは二重鎖が別々のホスホロチオエートジアステレオマーに分解されたため、二重鎖の完全性が失われた。さらに、センス鎖とアンチセンス鎖の保持時間の差はわずか約1分であった。したがって、C3カラムは分子種の分解能や分離を改善しなかった。
【0098】
試験6
試験2では、Waters Xbridge BEH C4カラム(2.1×50mm、300Å、3.5μM)を使用した。カラム長の影響を評価するために、より長いカラム長(100mm)のWaters XBridge BEH C4カラムを使用した。カラムの他の全ての特徴は試験2のカラムと同じであった。オルパシランの二重鎖、センス鎖、又はアンチセンス鎖(約1mg/mL)を含む溶液を、Waters XBridge BEH C4カラム(2.1mm×100mm、300Å、3.5μm)に注入した。100mMの酢酸アンモニウム(pH7)(MP A)の濃度を下げてACNの濃度を上げる(MP B)、直線的な段階勾配溶出を行った。溶離液は260nmで監視し、カラム温度は30℃であった。カラム流量は0.8ml/分であった。表4に勾配溶出の移動相の詳細を示す。
【0099】
例示的な結果を、図2Lに示す。この図に示されているように、二重鎖がそのホスホロチオエートジアステレオマーに分離し始めたため、二重鎖の分解能が高すぎた。図2Mは、より短いカラム(Waters XBridge BEH C4カラム(2.1×50mm、300Å、3.5μM)をほぼ同じ条件下で使用した場合の例示的な結果を示す。MP Aは100mMの酢酸アンモニウム(pH7)であり、MP BはACNであった。勾配パラメータを表4に示す。カラム温度は30℃であり、カラム流量は0.8ml/分であった。この図に示されているように、二重鎖は約4.6分(中段及び下段)にピークとして溶出し、四重鎖は約12.9分(上段及び中段)に溶出し、センス鎖は約6.2分(下段)に溶出し、アンチセンス鎖は約10.7分(上段)に溶出した。二重鎖とセンス鎖の分離(下のパネル)の分解能は改善できる可能性があるものの、図2Mは、この方法がオルパシランの4つ全ての分子種を分離できることを示している。
【0100】
実施例2
この実施例は、Waters XBridge BEH C4カラム(2.1×50mm、300Å、3.5μM)と、100mMの酢酸アンモニウム(pH7)/ACN移動相と、表4に示す勾配パラメータとを用いて、上記実施例1の試験7に記載の方法を使用して分離した時の二重鎖の応答についての線形性を示す。
【0101】
二重鎖の応答についての線形性は、同一条件下でのオルパシランsiRNA溶液の段階希釈により評価した。二重鎖のHPLC標準化曲線は以下の通りに作成した:0.01mg/mL~0.0875mg/mLの範囲内の濃度のオルパシラン二重鎖を含む一連の標準溶液を調製した。これらの濃度を、吸光係数として19.09mL/mg*cmを使用するUV分光法によって決定した。
【0102】
標準化は、既知の濃度の溶液のHPLCピーク面積を測定することによって行った(5μLの試料注入)。各試料について、Waters XBridge BEH C4カラム(2.1×50mm、300Å、3.5μm)を、100mMの酢酸アンモニウム水溶液中で濃度が増加していくCHCN(5分で7%から12%のMP B、3分で12%から14%のMP B、7分で14%から30%のMP B、30%で1分間、2分で30%から7%、そして5分で7%のベースラインに戻る、流量0.8mL/分)を含む100mMの酢酸アンモニウム水溶液(pH7.0)の直線的な段階勾配系で洗浄した。溶離液は260nmで監視し、カラム温度は30℃であった。
【0103】
これらの条件では、二重鎖は4.7分に溶出した。260nmにおける二重鎖のモル吸光係数は15439L cm-1 M-1であった。四重鎖を評価する目的で、長波長のモル吸光係数を評価した。ピーク面積対濃度をプロットしたところ、「R二乗値」は0.999であった。線形性を図3にグラフで示す。
【0104】
この実施例は、0.01mg/mL~0.08mg/mLの範囲内で、二重鎖ピークのUV260nmにおける応答と二重鎖濃度との間に優れた線形相関を示した。
【0105】
実施例3
この実施例は、アンチセンス鎖::四重鎖の比に対する溶液調製の影響を説明する。
【0106】
オルパシラン試料を調製するための溶液がアンチセンス鎖::四重鎖の比に及ぼす影響を分析する(アンチセンス鎖と四重鎖との間の平衡についての洞察を可能にする)ことを目的とした試験において、センス鎖(A10B)、アンチセンス(鎖(A10A))、又は二重鎖(A10C)を含む溶液を、表6に記載の溶媒中で調製した。溶液を室温で2時間保管し、その後注入用オートサンプラーに5℃で入れた。カラムを、100mMの酢酸アンモニウム水溶液中で濃度が増加していくACNを含む100mMの酢酸アンモニウム水溶液(pH7.0)の直線的な段階勾配系で洗浄した。勾配パラメータを表4に示す。流量は0.8mL/分であった。溶離液は260nmで監視し、カラム温度は30℃であった。
【0107】
【表12】
【0108】
アンチセンス試料の例示的なクロマトグラムを図4に示す。図4の上段のクロマトグラム(A10A-W)に示されているように、早く溶出するピークであるアンチセンス鎖の量は、後のピークである四重鎖よりも著しく大きかった(76.56%対21.87%)。そのため、水は四重鎖構造を支持しないようである。図4の中段と下段のクロマトグラムに示されているように、HFIP/TEA(下段のクロマトグラム)又は酢酸アンモニウム(中段のクロマトグラム)中で調製したアンチセンス鎖の2つの試料は、ピーク積分に基づくと、テトラド(四重鎖)構造を支持していた。酢酸アンモニウム中で調製したアンチセンス鎖の試料では、水(21.87%)と比較して、四重鎖(70.31%)の量が多くなった。HFIP/TEAで調製したアンチセンス鎖の試料でも、水(21.87%)と比較して四重鎖(63.66%)の量が多くなったものの、酢酸アンモニウム(70.31%)ほどではなかった。
【0109】
四重鎖に対する試料調製の影響を分析するために、別の試験を行った。アンチセンス鎖(A10A)を含む溶液を、表7に詳述されている通りに、1)水又は2)酢酸アンモニウム(100mM)のいずれかの中で調製した。
【0110】
【表13】
【0111】
未希釈溶液の濃度が高いと、吸光度/光路長曲線に曲がりが生じるため、試料を10倍に希釈した。結果には希釈した濃度を使用した。各溶液100μLを含む溶液を65℃で20分間加熱し、その後室温まで冷却した。対照は加熱しなかった。溶液を10倍に希釈し、SoloVPE分析用のキュベットにロードした。
【0112】
加熱後、アリコートを抜き出し、濃度決定のために10倍に希釈した:
・NHOAc中のアンチセンス-UVによる加熱後の濃度(27.95mL/mg*cm)=19.0930mg/mL(9.5%増加)
・水中のアンチセンス-UVによる加熱後の濃度(27.95mL/mg*cm)=24.8888mg/mL(6.64%増加)。
【0113】
純度分析は、Waters XBridge BEH C4カラム(2.1×50mm、300Å、3.5μM)、100mMの酢酸アンモニウム(pH7)/ACN移動相を用いて、及びカラム温度を8℃に調整したことを除き表4に示した勾配パラメータを使用して、実施例1の試験6に記載した分離方法を使用して行った。
【0114】
結果を図5、6及び表8に示す。
【0115】
【表14】
【0116】
水を溶解媒体として使用した加熱試料は、酢酸アンモニウムと比較して非常に異なるプロファイルを示した。試料を水中で調製すると、熱により四重鎖が破壊され、平衡がアンチセンス鎖側に移動した。初期の溶出ピークは加熱後に大幅に増加し、これは初期のピークがモノマーのアンチセンス鎖であることを示している。酢酸アンモニウム中で調製した試料でも熱によって四重鎖が破壊されたものの、四重鎖からアンチセンス鎖側への平衡のシフトは大幅に減少し、アンモニウムイオンが四重鎖をある程度安定化していることが示唆された。
【0117】
総合すると、これらの結果は、検出可能なアンチセンスと四重鎖の量は、溶液を調製する溶液によって変化し得ることを示している。いくつかの事例では、アンモニウムイオンやカリウムイオンなど、四重鎖を安定化させるイオンを含む溶液中で試料を調製することが有益であり、その結果、分離中にアンチセンス鎖と四重鎖の比率が変化せず、これらの分子種それぞれの定量がより正確になる。
【0118】
実施例4
この実施例は、Waters XBridge BEH C4カラム(2.1×50mm、300Å、3.5μM)と、100mMの酢酸アンモニウム(pH7)/ACN移動相と、表4に示す勾配パラメータとを用いて、上記実施例1の試験6に記載の方法を使用して分離した時の四重鎖の応答についての線形性を示す。
【0119】
四重鎖についての線形性は、実施例3に記載の水中で加熱したA10試料を使用して評価した。
【0120】
四重鎖のHPLC標準化曲線は、本質的に実施例2に記載されている通り、既知の濃度の溶液のHPLCピーク面積を測定することによって作成した。カラム及び勾配溶出は実施例2に記載の通りであった。溶出液は260nmで監視し、カラム温度は8℃であった。
【0121】
水溶媒を含む加熱試料中のアンチセンス/四重鎖平衡の例示的なクロマトグラムを図7に示す。この図に示されているように、これらの条件下では、アンチセンス及び四重鎖は、それぞれ11.8分及び13.2分に溶出した。実施例2のカラム温度(30℃)と比較してカラム温度(8℃)を下げて、アンチセンスとG四重鎖の両方のピーク形状を安定化させた。吸光係数が不明なため、G四重鎖の濃度を決定することはできない。図8のグラフに、アンチセンス鎖及び四重鎖のそれぞれのピーク面積が、試料濃度に対してプロットされている。アンチセンス鎖と四重鎖の両方の「R二乗値」は1.0であった。
【0122】
実施例5
この実施例は、四重鎖の安定化に対するカリウムの効果を示す。
【0123】
オルパシランアンチセンス鎖を含む試料を、100mMのカリウムを含む又は含まない溶液中で調製し、次いで熱処理を行った。対照には熱処理を行わなかった。試料をWaters XBridge BEH C4カラム(2.1×50mm、300Å、3.5μM)に適用し、100mMの酢酸アンモニウム(pH7)の濃度を下げて(MP A)ACNの濃度を上げる(MP B)勾配溶出を行った。勾配移動相の詳細を表9に示す。カラム流量は0.8ml/分に設定した。溶出は、UVモニターを使用して260nmで監視した。カラム温度は8℃であった。
【0124】
【表15】
【0125】
四重鎖のピーク面積がカリウム存在下でのアンチセンス鎖のピーク面積と比較して増加することから、四重鎖が熱処理を受けた場合であっても、カリウムは、アンチセンス鎖と四重鎖との間の平衡を四重鎖側に動かし、四重鎖を安定化させるようである。カリウムがない状態では、四重鎖に対応するピークの大幅な減少とアンチセンス鎖に対応するピークのピーク面積の増加によって証明されるように、熱処理により四重鎖が破壊され、構造はアンチセンス一本鎖に戻る。カリウムがなくても、四重鎖はこの方法で検出できる程度に十分に安定である。移動相中のアンモニウムイオンは四重鎖を安定化するように作用すると考えられる。
【0126】
この実施例は、四重鎖構造を安定化し、分離中にアンチセンス鎖と四重鎖の比率が変化することを防ぐために、試料調製においてカリウムを使用することを支持する。
【0127】
実施例6
この実施例は、G-リッチオリゴヌクレオチドの分子種を分離する例示的な方法を示す。
【0128】
第1の方法では、Waters XBridge BEH C4カラム(2.1×50mm、300Å、3.5μM)を使用してRP-HPLCを行った。カラム温度は30℃であった。オルパシラン二重鎖、アンチセンス鎖、センス鎖、又はG-四重鎖(オルパシランアンチセンス鎖から形成)を含む試料を脱イオン水中で調製した。具体的には、ポリプロピレン製バイアルの中に、1mLの脱イオン水で溶解した凍結乾燥粉末から二重鎖試料溶液を約70mg調製した。センス鎖とアンチセンス鎖の両方の試料溶液を、水中約30mg/mLで得た。これを脱イオン水で約4.5mg/mLに希釈した。アンチセンス鎖を3:5の比率で様々なカチオンと室温で最大1週間インキュベートすることによって得た濃縮G-四重鎖溶液(面積>96%)を、アセトニトリルとNaBr(最終濃度625mM)緩衝液とを含むリン酸ナトリウム中で約3.5mg/mLで得た。これは、さらに希釈することなく直接分析した。
【0129】
これらの調製されたオルパシラン試料をオートサンプラーに注入した後、100mMの酢酸アンモニウム水溶液(pH6.8)の濃度を下げて(MP A)ACNの濃度を上げる(MP B)、勾配溶出を行った。勾配移動相の詳細は上の表9に記載されている。カラム流量は0.8ml/分に設定した。溶出は、UVモニターを使用して260nm/4nmのバンド幅で監視した。総実行時間は26分であった。
【0130】
図9A及び9Bは、それぞれ分子種のクロマトグラムを重ね書きした図及び並べた図として示している。これらの図に示されているように、この方法では4つ全ての分子種を検出することができる。ただし、二重鎖ピークとセンス鎖ピークとの間の分解能(USP分解能≦1.2)は改善の余地があるであろう。
【0131】
二重鎖ピークとセンス鎖ピークの分解能を改善するために、第1の方法と同様に同じC4カラムを使用する第2のRP-HPLC方法を行った。第2の方法(「方法2」)は、第2の方法の移動相が、表10に示される異なる勾配パラメータに従って、減少する濃度の75mMの酢酸アンモニウム水溶液(pH6.8)(MP A)と増加する濃度のACN(MP B)を含むことを除いて、第1の方法と同じであった。流量も0.7ml/分に下げた。総実行時間は30分であった。オートサンプラーの温度は15℃であった。
【0132】
【表16】
【0133】
図10A及び10Bは、それぞれ分子種のクロマトグラムを重ね書きした図及び並べた図として示している。これらの図に示されているように、二重鎖とセンス鎖のピークは互いに十分に分離されていた(USP分解能≧2.4)。また、この方法により、センス鎖のピークとアンチセンス鎖のピークとの間の分離、及びアンチセンス鎖のピークと四重鎖のピークとの間の分離も改善された。
【0134】
潜在的なキャリーオーバーの問題を回避するために、第1及び第2の方法と同様に同じC4カラムを使用する第3のRP-HPLC方法を行った。第3の方法(「方法3」)は、四重鎖の溶出が完了した後に追加のカラムフラッシング段階を追加したことを除き、Waters XBridge Protein BEH C4カラム(2.1mm×50mm、300Å、3.5μm)を使用する第2の方法と同じであった。追加のフラッシング段階は22.1分から24分まで行った。移動相勾配パラメータの詳細を表11に示す。また、酢酸塩勾配については、75mMの酢酸アンモニウム水溶液である原液(pH6.7±0.1)を使用した。流量は0.7ml/分±0.2ml/分であり、総実行時間は30分であった。オートサンプラーの温度は15℃±1℃であった。カラム温度は30℃±1℃であった。溶出は、260nm(Agilent LCシステムについては4nmのバンド幅、又はWaters UPLCシステムについては4.8nmのバンド幅)でUVによって監視した。
【0135】
【表17】
【0136】
結果を図10C及び10Dに示す。この方法で示されているように、方法3の詳細は、方法2で観察された分子種のピークの溶出プロファイルを変化させなかった。これは、カラムフラッシング段階前の勾配ステップが同じままであったことから予想された。4つ全ての分子種が、クロマトグラフィーによって高分解能で分離された。
【0137】
実施例7
この実施例は、異なる試料希釈剤を評価するための試験について説明する。
【0138】
試料溶液を、3つの異なる試料希釈剤である(1)脱イオン水、(2)pH6.8の75mMの酢酸アンモニウム水溶液、及び(3)医薬品製剤緩衝液(pH6.8の水中に40mMの塩化ナトリウムを含む20mMのリン酸カリウム)の中で調製した。次いで、上の実施例6に記載の方法2を使用して試料を分離した。全ての結果を比較し、方法の線形性と様々な試料希釈剤による影響を評価した。
【0139】
最初に、各分子種(アンチセンス鎖、センス鎖、二重鎖、四重鎖)の名目濃度(100%レベル)を、そのメインピークの高さが約1.0AU(吸光度単位)になる濃度で決定した。次に、一連の希釈の後、ピークのシグナル対ノイズ(s/n)の値が10.0を超える最低濃度を各メインピークの定量限界(LOQ)レベルとして決定した。各分子種の方法の線形性を評価するために、LOQから名目濃度の120%までを網羅する試料濃度範囲を選択した。
【0140】
図11は、3つの異なる希釈剤中で調製した、LOQから名目濃度の150%までを網羅するその濃度に対する二重鎖のピーク面積の線形性の応答を示している。水と製剤緩衝液(FB)の両方に含まれる二重鎖試料は差を示さず、それぞれ0.9998と0.9994のR値で同様に高度に線形的な応答を与えた。75mMの酢酸アンモニウム中の二重鎖試料も、0.9988のR値で高度に線形的な応答を示した。二重鎖の名目濃度は19.5mg/mLであり、LOQレベルは0.04mg/mL(名目濃度の0.20%)であると決定された。試料の試験と方法の適格性評価も、下げた名目濃度(15mg/mL)の二重鎖を使用することによって首尾よく完了した。この例では、二重鎖ピーク面積対その濃度のRが0.9993である非常に高い線形的な応答が得られた。LOQレベルは0.08mg/mLであり、シグナル対ノイズ比は26~28であった。
【0141】
約30mg/mLのセンス鎖及びアンチセンス鎖の原液を使用して、これらの一本鎖及びG-四重鎖の線形性を評価するための一連の希釈試料溶液を調製した。これらの原液の正確な濃度測定は、260nmにおけるこれらの吸光度係数である21.74mL/mg*cm(センス)及び27.93mL/mg*cm(アンチセンス)を使用して、Solo VPEにより行った。測定された原液の濃度は、センス鎖については27.63mg/mL、アンチセンス鎖については32.78mg/mLであった。センス鎖、アンチセンス鎖、及びG-四重鎖については、LOQから名目濃度の120%までを網羅する濃度範囲を選択した。センス鎖、アンチセンス鎖、及び四重鎖について、それぞれ図12図13、及び図14に示されているように、ピーク面積対濃度のR値が0.99を超える高い線形的な応答を全て示した。
【0142】
センス鎖の名目濃度は6.9mg/mLであり、LOQは0.009mg/mL(名目値の0.13%)であると決定された。全てのアンチセンス鎖試料には約19%(面積%)のG-四重鎖も含まれていたため、アンチセンスとG-四重鎖の線形性評価は同じ試料で同時に行った。アンチセンス鎖の名目濃度及びLOQは、それぞれ13.3mg/mL及び0.005mg/mL(名目値の0.038%)であった。また、G-四重鎖の名目濃度及びLOQは、それぞれ3.0mg/mL及び0.03mg/mL(名目の1%)であった。
【0143】
各分子種について、これらの条件下で実行した場合、試験した試料希釈剤の間で有意差は存在しなかった。水及びDP製剤緩衝液中の試料は、線形性評価において全く同じ応答を示した。これらの結果は、例えばアンチセンスと四重鎖との間の平衡を四重鎖側にすることが望ましくない場合に、試料希釈剤として脱イオン水(抵抗率≧18Ωcm)を使用することを支持している。
【0144】
実施例8
この実施例は、アンチセンス及び四重鎖に対する加熱-冷却処理の影響を説明する。
【0145】
オルパシランアンチセンス鎖(8.2mg/mL)を含む溶液は、2つの異なる希釈剤である脱イオン水とpH6.8の75mMの酢酸アンモニウム水溶液のうちの1つでアンチセンス原液を希釈することによって調製した。希釈したアンチセンス鎖溶液を65℃で20分間熱に暴露した。熱処理後、各溶液を氷上又は室温(RT)で冷却した。図15に試料調製手順を示す。
【0146】
溶液を実施例6に記載の方法2によって分析し、希釈剤及び加熱-冷却処理の影響を評価した。特に、各試料のアンチセンスピークとG-四重鎖ピークの面積%を測定した。
【0147】
図16A及び16Bは、加熱-冷却処理の前後の、水中で調製されたアンチセンス鎖溶液の重ね書きしたクロマトグラムを示す。加熱-冷却処理後のアンチセンスピークの面積%は、加熱処理なしの試料と比較して、82.0%から99.2%へと劇的に増加した。アンチセンス鎖含有量のこの増加(17.2%の増加)は、四重鎖の面積%の減少(17.3%の減少)と相関している。2つの異なる冷却プロセス(氷対室温)の間に差は観察されなかった。
【0148】
図17A及び17Bは、加熱-冷却処理の前後の、75mM酢酸アンモニウム緩衝液中のアンチセンス鎖溶液の重ね書きしたクロマトグラムを示す。興味深いことに、アンチセンスピーク及びG-四重鎖ピークの面積%に有意な変化は観察されなかった(例えば加熱処理前と加熱処理後、氷冷と室温での冷却)。アンチセンスピークとG-四重鎖ピークの面積%は、全ての溶液でそれぞれ約82%と約18%で同じままであった。この結果は、NHOAc緩衝液中のアンモニウムカチオンが、水中で加熱した試料と比較して、加熱/冷却プロセス中にG-四重鎖を強く安定化させる効果を有することを明確に示している。熱により破壊されたG-四重鎖は、水中で平衡をアンチセンス鎖(モノマー)側にシフトさせた。しかし、この熱により破壊され弱まったG-四重鎖構造は、酢酸アンモニウム試料希釈剤中のアンモニウムカチオンによって迅速に安定化されるようであり、最終的には酢酸アンモニウム緩衝液の最終溶液におけるG-四重鎖含有量に大きな変化はみられなかった。
【0149】
この実施例は、G-リッチオリゴヌクレオチドと四重鎖との間の平衡を安定化させるために酢酸アンモニウム中でG-リッチオリゴヌクレオチドの試料を調製することを支持する。
【0150】
実施例9
この実施例は、HPLC中のアンチセンス::四重鎖の平衡に対する移動相緩衝液のカチオンの影響を示す。
【0151】
実施例8では、試料希釈剤としての酢酸アンモニウムのG-四重鎖安定化効果が明確に示された。この実施例では、アンチセンス::四重鎖平衡に対する酢酸ナトリウム(NaOAc)と酢酸カリウム(KOAc)の影響を評価した。
【0152】
名目濃度4.5mg/mL又は13.3mg/mLのオルパシランアンチセンス鎖を含む溶液を、脱イオン水、pH6.8の75mMのNaOAc水溶液、又はpH6.8の75mMのKOAc水溶液の3つの異なる希釈剤のうちの1つでアンチセンス原液を希釈することによって調製した。移動相A溶液がpH6.8の75mMのNaOAC水溶液又はpH6.8の75mMのKOAc水溶液を含むこと以外は実施例6に記載の方法2と同様の方法によって各溶液を分析した。アンチセンスピークとG-四重鎖ピークのそれぞれの面積%を測定した。
【0153】
結果を表12に示す。
【0154】
【表18】
【0155】
4.5mg/mLのアンチセンス濃度では、異なる希釈剤間でアンチセンスピークの面積%が減少傾向にあり、それに対応して四重鎖ピークの面積%が増加傾向にあり、KOAcは最も低いアンチセンスピークの面積%と最も高い四重鎖ピークの面積%を示した。さらに、KOAc移動相は、NaOAc移動相よりも高い四重鎖含有量と低いアンチセンス含有量を示した。より高いアンチセンス濃度(13.3mg.mL)の試料では、同様にアンチセンス含有量の減少と同時に四重鎖含有量の増加が観察され、アンチセンス含有量の減少と四重鎖含有量の増加の両方においてより大きな変化があった。これらの結果は、アンチセンス-四重鎖平衡が、4.5mg/mLの場合よりもアンチセンス濃度が高い場合(13.3mg/mL)に四重鎖形成が有利になるようにさらにシフトしたことを示した。予想通り、KOAcは3つの異なる試料希釈剤の中で最も高い安定化効果を示し、KOAc移動相はNaOAcよりも四重鎖構造に有利である。
【0156】
実施例10
この実施例は、他の分析技術によるG四重鎖のキャラクタリゼーションを説明する。
【0157】
G-四重鎖構造には、鎖間に非共有結合的に保持されたカチオン(NH 、Na、又はK)を有する4つのG-リッチアンチセンス鎖モノマーが組み込まれている。Kazarian et al.,Journal of Chromatography A.Vol 1634:461633(2020)で同じ種について観察されたように、この構造の形成により約7020Da(アンチセンスモノマー)から約28100Da(G-四重鎖)まで質量が増加することになるであろう。先の実施例に記載したRP-HPLC方法を使用してG-四重鎖構造が検出されたことをさらに証明するために、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)及び動的光散乱法(DLS)を含むいくつかの分析技術を使用した。これらの分析試験の結果を以下で説明する。
【0158】
LC-MS:アンチセンス鎖とG-四重鎖試料の両方についてLC-MS分析を行った。G-四重鎖試料は、アンチセンス鎖をNaBrと1週間インキュベートすることによって得た。データは、Thermo Scientific QExactive HFX質量分析計と接続したAgilent 1290 Infinity II LCを使用して収集した。2つの種のベースライン分離は、寸法がわずかに異なる同じC4固定相を有するカラムで得た。提案されたアンチセンス一本鎖に関連するMSスペクトルからは、3+と4+の電荷状態の狭い分布が得られた(図18)。主な提案された一本鎖ピークで観察される複数のピークは、配列内のホスホロチオエート結合の存在によって導入されるキラリティーの相違から生じるホスホロチオエートジアステレオマーによるものである可能性が最も高い。アンチセンス試料では、一本鎖又はG-四重鎖に対応する提案されたG-四重鎖ピークについて明確なMSシグナルは観察されなかった。
【0159】
しかしながら、濃縮されたG四重鎖試料からMSスペクトルを得た場合、MSシグナルはより高いm/zで観察された(図19)。これらのMSシグナルは、様々なカチオン(水、Na、及びNH )が高度に付加されているものの、より大きな構造に対応しており、一本鎖シグナルは観察されなかった。さらに、一本鎖アンチセンスシグナルが存在すべきm/zでは、MSシグナルは観察されなかった。この観察は、四重鎖を示す結合三次相互作用に一本鎖が関与しているという仮説を裏付ける。
【0160】
この試料について得られた質量精度データは、アンチセンス鎖試料の分離についての実施例6に記載のRP-HPLC方法のクロマトグラムに存在する第2のピークが実際にG-四重鎖であるという仮説を裏付ける。興味深いことに、一本鎖試料では、この高次構造に対応するUVピークが全イオンクロマトグラム(TIC)でMSシグナルを生じない。G-四重鎖に対応するMSシグナルを観察するためには、G-四重鎖が濃縮された試料が必要であった。
【0161】
動的光散乱(DLS):アンチセンス一本鎖とG-四重鎖試料の両方に存在する粒度分布を調べるために、DLS分析を行った。アンチセンス一本鎖試料の分析からは、>2nmと11~12nmの2つの粒度分布が示された(図20)。対照的に、高次構造を優先的に選択するためにカチオンを用いて調製された提案されたG-四重鎖試料には、約11nmの単一の粒度分布しか含まれていなかった。アンチセンス一本鎖試料中、より大きいサイズの粒子が若干存在することは、実施例6に記載のRP-HPLC方法を用いたアンチセンス鎖試料の分析中に観察された低レベルの第2のピークの観察と一致する。さらに、提案されたG-四重鎖試料では、非常に低レベルの一本鎖ピークを観察することができるが、DLSによってはより小さな粒子が観察されないことから、これは明らかに最小限であり、アンチセンス鎖の大部分が高次構造(すなわち四重鎖)に関与していることを示唆している。
【0162】
体積による粒度分布を見ると、図21で見られるように、一本鎖試料の大部分が主に>2nmのサイズであることは依然として明らかである。
【0163】
【表19】
【0164】
本明細書に引用される刊行物、特許出願及び特許を含むすべての参考文献は、あたかも各参考文献が参照により組み込まれ、本明細書のその全体が記載されることを個々に且つ具体的に示すかのごとく、同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0165】
本開示の説明に関する(とりわけ下記の特許請求の範囲に関する)「1つの(a)」、及び「1つの(an)」、及び「その(the)」という用語、並びに類似の指示対象の使用は、本明細書中で別段の指示がない限り又は文脈と明確に矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含するものと解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という用語は、別段の指定がない限り、指定の構成要素を含むが他の要素を排除しない(すなわち、「含むが限定されない(including,but not limited to)」を意味する)、非限定的な用語として解釈されるべきである。
【0166】
本明細書における値の範囲の記載は、本明細書で別段の指示がない限り、単にその範囲及び各端点にある別個の値の各々を個々に指す簡略法の役割を果たすものに過ぎず、別個の値及び端点の各々は、それが個々に本明細書で列挙されていたかのように本明細書に組み込まれる。
【0167】
本明細書に記載される方法は全て、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈と明確に矛盾しない限り、あらゆる適切な順序で実施し得る。本明細書で提供されるありとあらゆる例又は例示的な言語(例えば、「等」)の使用は、本開示をより明らかにすることが意図されているに過ぎず、別途特許請求されない限り、本開示の範囲に限定を課すものではない。本明細書におけるいかなる言語も、任意の特許請求されていない要素を、本開示を実施するのに必要不可欠なものとして示すものと解釈されるべきではない。
【0168】
本明細書では、本開示の好ましい実施形態が説明されており、例えば、本開示を実行するための本発明者らにとって公知の最良の形態が説明されている。それらの好ましい実施形態の変形形態は、上記の説明を読むことで当業者に明らかになり得る。発明者らは、当業者が必要に応じてこのような変形形態を採用することを予想し、発明者らは、本明細書中で具体的に説明されている形態以外で本開示が実施されることを意図する。したがって、本開示は、適用される法により認められるとおり、本明細書に添付される特許請求の範囲に列挙されている主題の全ての変更形態及び均等物を含む。さらに、上記の要素の任意の組み合わせは、別途本明細書で指示されない限り又は文脈と明らかに矛盾しない限り、その全ての可能な変形形態で本開示に包含される。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図2L
図2M
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
【配列表】
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【国際調査報告】