(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電磁弁ならびに電磁弁を備える水素タンクシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20240927BHJP
F17C 13/04 20060101ALI20240927BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20240927BHJP
H01F 7/121 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16K31/06 305J
F16K31/06 385F
F17C13/04 301Z
H01F7/16 D
H01F7/16 F
H01F7/16 R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519115
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2022066300
(87)【国際公開番号】W WO2023006297
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】102021208249.1
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー ラップ
【テーマコード(参考)】
3E172
3H106
5E048
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB12
3E172BB17
3E172CA12
3E172JA03
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106EE07
3H106EE14
3H106EE22
3H106GA15
3H106GA17
3H106GA21
3H106GA22
3H106JJ02
3H106JJ06
3H106JJ09
3H106KK12
5E048AB01
5E048AD03
(57)【要約】
本発明は、電磁弁(1)、特に水素タンクシステム用の遮断弁であって、アーマチュア室(2)内に収容されたソレノイドアーマチュア(3)と、このソレノイドアーマチュア(3)を少なくとも部分的に取り囲むソレノイドコイル(4)とを備え、ソレノイドアーマチュア(3)は、アーマチュア室(2)を画定する強磁性のスリーブ(5)を介してストローク運動可能にガイドされている、電磁弁(1)に関する。本発明によれば、ソレノイドアーマチュア(3)は、規定された半径方向の空隙(6)を形成するために、半径方向に突出したウェブ状かつ/またはピン状の複数のガイド要素(7)を有する。さらに、本発明は、本発明に係る電磁弁(1)を備える水素タンクシステムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁弁(1)、特に水素タンクシステム用の遮断弁であって、
アーマチュア室(2)内に収容されたソレノイドアーマチュア(3)と、
前記ソレノイドアーマチュア(3)を少なくとも部分的に取り囲むソレノイドコイル(4)と
を備え、
前記ソレノイドアーマチュア(3)は、前記アーマチュア室(2)を画定する強磁性のスリーブ(5)を介してストローク運動可能にガイドされている、電磁弁(1)において、
前記ソレノイドアーマチュア(3)は、規定された半径方向の空隙(6)を形成するように、半径方向に突出したウェブ状かつ/またはピン状の複数のガイド要素(7)を有することを特徴とする、電磁弁(1)。
【請求項2】
前記スリーブ(5)は、ハウジング部分(8)によって形成されることを特徴とする、請求項1記載の電磁弁(1)。
【請求項3】
前記ガイド要素(7)は、互いに軸線方向の間隔を置いて、好ましくは前記ソレノイドアーマチュア(3)の上側および下側の端部の領域に配置されていることを特徴とする、請求項1または2記載の電磁弁(1)。
【請求項4】
前記ソレノイドアーマチュア(3)は、前記ガイド要素(7)を形成するために、減じられた外径を有する領域(9)、外周面側の研削部(10)および/または外周面側の溝を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の電磁弁(1)。
【請求項5】
前記ガイド要素(7)は、前記ソレノイドアーマチュア(3)に被せられた、特にプレス嵌めされた、または焼き嵌めされた個別のリングとして形成されており、好ましくは、前記ソレノイドアーマチュア(3)は、前記リングを取り付けるための少なくとも1つの切削部(12)を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の電磁弁(1)。
【請求項6】
前記ガイド要素(7)は、前記ソレノイドアーマチュア(3)内に部分的に挿入された、特に圧入された個別のピンとして形成されており、好ましくは、前記ソレノイドアーマチュア(3)は、前記ピンを収容するための少なくとも1つの半径方向孔(13)を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の電磁弁(1)。
【請求項7】
前記ガイド要素(7)は、周方向に均等に分配されて、特に互いに等しい角度間隔を置いて配置されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の電磁弁(1)。
【請求項8】
前記ガイド要素(7)は非磁性の材料から製作されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の電磁弁(1)。
【請求項9】
前記スリーブ(5)の一方の端面に非磁性のディスク(14)が接触していることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の電磁弁(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの圧縮ガス容器と、該圧縮ガス容器を遮断するための、請求項1から9までのいずれか1項記載の電磁弁(1)とを備える水素タンクシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁、特に水素タンクシステム用の遮断弁に関する。さらに、本発明は、遮断弁としての本発明に係る電磁弁を備える水素タンクシステムに関する。
【0002】
背景技術
例えば水素タンクシステム用の遮断弁に該当するような大きなストロークを伴う電磁弁では、通常、プランジャ形アーマチュアを備えたソレノイドアクチュエータが使用される。なぜならば、このソレノイドアクチュエータでは、アーマチュアと、このアーマチュアの不動のストッパとの間の間隔が増加するにつれ、磁力が、平形アーマチュア構造の場合ほど大幅に減磁しないからである。
【0003】
独国特許出願公開第102018221602号明細書から、例えば、水素を貯蔵するためのタンク装置であって、電磁操作可能な弁装置を備え、この弁装置が、流出開口を開閉するための、弁座と協働する可動の弁要素を有する、タンク装置が明らかである。弁要素は、弁座の方向にばねのばね力によって加圧されており、これによって、ソレノイドコイルに通電が行われていない場合、弁装置は閉鎖されている。開放位置では、弁要素が、所定の直径を有する流出開口と、この流出開口に続く通流通路とを開放している。弁要素は、同時に、プランジャ形アーマチュア原理により作業するソレノイドアーマチュアを形成している、またはソレノイドアーマチュアに結合されている。ソレノイドコイルに通電が行われると、コイルを取り囲む磁場が形成される。この磁場の力線は、磁極体、弁ハウジングおよびソレノイドアーマチュアにわたって延びている。独国特許出願公開第102018221602号明細書では、外側スリーブと内側磁極とが磁極体にて一体形に形成されている。この磁極体は、ソレノイドコイルを外側で取り囲んで、磁場をソレノイドコイルの外側に導くスリーブ状の区分と、電磁弁をソレノイドアーマチュアの上方で閉鎖して、内側磁極および同時にソレノイドアーマチュア用のストロークストッパを形成するカバー区分とを含んでいる。この場合、力線は、ソレノイドアーマチュアと磁極体のカバー区分との間の軸線方向の空隙にわたって延びているため、この空隙内には、ソレノイドアーマチュアもしくは弁要素をばねのばね力に抗してシール座から持ち上げて、軸線方向で磁極体の方向に運動させる力が生じている。
【0004】
独国特許出願公開第102018221602号明細書の弁装置では、ソレノイドアーマチュアもしくは弁要素が水素内で運動させられる。つまり、ソレノイドアーマチュアが、空気と異なる媒体によって取り囲まれているため、ソレノイドアーマチュアを収容するアーマチュア室が、ソレノイドコイルを収容しているコイル室に対して密封されなければならない。ここでも、プランジャ形アーマチュア構造は利点を提供している。なぜならば、例えば、独国特許出願公開第102018221602号明細書に記載されているように、密封のために、弁ハウジングのスリーブ状の区分を使用することができるからである。この区分は同時に外側磁極を形成していて、ソレノイドアーマチュアをガイドするために用いられる。代替的には、密封ならびにソレノイドアーマチュアのガイドのために、個別のスリーブが使用されてもよい。この場合、このスリーブは、通常、非磁性の材料から製作されている。なぜならば、さもないと、スリーブが、空隙を橋渡しする、磁場に関するバイパスを形成してしまうからである。したがって、磁力が大幅に減じられてしまう。非磁性の材料から成るスリーブを使用すれば、このスリーブを磁場に関する半径方向の空隙と見なすことができる。この空隙は、ソレノイドアーマチュアがその上側の静止位置で外側磁極体に接触している場合にも依然として存在している。このことは、ソレノイドアーマチュアがそのストロークストッパにも外側磁極にも磁気的に接着してしまうことが回避されるという利点をもたらす。さらに、非対称性に基づきソレノイドアーマチュアに作用する横方向力が大幅に減じられる。
【0005】
しかしながら、個別の非磁性のスリーブを介した密封およびガイドの実現は、アーマチュア室内に高い圧力が生じる場合には問題を引き起こしてしまうことが判っている。この場合には、これによりスリーブに加えられる力に耐えられるように、スリーブの肉厚が設計されていなければならない。したがって、スリーブは、相応に大きな肉厚を有していなければならない。スリーブのこの肉厚によって、このスリーブが形成する、磁場により橋渡しされる半径方向の空隙も増大してしまう。相応して、磁場を発生させるための所要電流が高められる。この問題を解決するために、スリーブは強磁性の材料から製作されてもよい。この場合には、スリーブと外側磁極体との間に、磁気的な分離のために、非磁性の材料から成るディスクが挿入される。このディスクは、軸線方向において空隙の高さでソレノイドアーマチュアと外側磁極体との間に位置していなければならず、これによって、磁場がこの空隙を強磁性のスリーブ区分を介して迂回することができない。弁ハウジングのスリーブ状の区分が密封およびガイドならびに外側磁極の形成のために用いられる場合には、例えば独国特許出願公開第102018221602号明細書に図示されているように、類似してプロセスが行われてもよい。しかしながら、この解決手段に付随する欠点は、ソレノイドアーマチュアの吸引状態で空隙が不足すると、外側磁極体ならびにストロークストッパへのソレノイドアーマチュアの中実な磁気的な接着が生じてしまうことにある。さらに、ソレノイドアーマチュアがそのガイドクリアランスの範囲内で僅かにアキシャルオフセットする場合でさえ、横方向力がソレノイドアーマチュアに作用し、この横方向力が、ガイド領域にかなりの摩擦力ひいては摩耗を招いてしまう。半径方向の空隙をソレノイドアーマチュアとスリーブとの間のより大きなガイドクリアランスによって実現する試みは、ソレノイドアーマチュアのさらに大きなアキシャルオフセットひいてはガイド領域におけるさらに大きな摩擦力しか招かない。
【0006】
こういった問題を減じるための公知の手段は、ソレノイドアーマチュアと内側磁極との間に、吸引状態でも残存空隙を保証する肉薄の非磁性のディスクを挿入することである。また、ソレノイドアーマチュアと内側磁極との間の機械的な接触が内側磁極面の極めて小さな部分でのみ実現されるように、ストロークストッパの幾何学形状が設計されてもよい。しかしながら、これらの解決手段は、それぞれソレノイドアーマチュアと内側磁極との間の当接面が極めて摩耗しやすくなってしまうという欠点を有している。なぜならば、軟質の付加的な構成部材への当接または大幅に減じられた当接面への当接が行われるからである。
【0007】
本発明は、上述した欠点を生じさせることのない解決手段を提供するという課題に取り組んでいる。特に、最適にガイドされていて、磁気的に接着する傾向にないストローク運動可能なソレノイドアーマチュアを備えた電磁弁を提供することが求められている。この電磁弁は、特に水素タンクシステム用の遮断弁として使用可能であることが求められている。
【0008】
この課題を解決するために、請求項1の特徴を有する電磁弁が提案される。本発明の有利な改良形態は従属請求項から知ることができる。さらに、本発明に係る電磁弁を備える水素タンクシステムが記載してある。
【0009】
発明の開示
本提案による電磁弁は、アーマチュア室内に収容されたソレノイドアーマチュアと、このソレノイドアーマチュアを少なくとも部分的に取り囲むソレノイドコイルとを備え、ソレノイドアーマチュアは、アーマチュア室を画定する強磁性のスリーブを介してストローク運動可能にガイドされている。本発明によれば、ソレノイドアーマチュアは、規定された半径方向の空隙を形成するために、半径方向に突出したウェブ状かつ/またはピン状の複数のガイド要素を有する。本提案による電磁弁は、特に水素タンクシステム用の遮断弁であってもよい。
【0010】
スリーブは、強磁性の材料から製作されているため、磁場に関して「半径方向の空隙」を成していない。これによって、必要となる耐圧性に基づくスリーブの肉厚の設計が、磁場を形成するための所要電流にもはや影響を与えなくなる。しかしながら、同時に、ソレノイドアーマチュアの磁気的な接着を阻止することが重要である。このことは、本提案による電磁弁では、「半径方向の空隙」が、スリーブによってではなく、ソレノイドアーマチュアの特別な構成によって形成されることにより達成される。このためには、ソレノイドアーマチュアがウェブ状かつ/またはピン状の複数のガイド要素を有している。これらのガイド要素は、ソレノイドアーマチュアの本来の外周面を越えて半径方向に突出しており、これによって、1つには、ソレノイドアーマチュアがガイド要素を介してガイドされており、もう1つには、規定された半径方向の空隙が形成される。この場合、半径方向における空隙の幅は、ソレノイドアーマチュアの本来の外周面に対するガイド要素の半径方向の余剰寸法に実質的に相当している。ソレノイドアーマチュアの、ガイド要素よりも引っ込んで位置する外側輪郭に応じて、空隙の幅をソレノイドアーマチュアの軸線方向の全長にわたって変えることができる。
【0011】
ソレノイドコイルに通電が行われると、磁場が形成される。この磁場の力線は、まず、優先的にガイド要素の領域でスリーブからソレノイドアーマチュアに移行する。好ましくは、ガイド要素の軸線方向の延在長さは、ガイド要素を磁気的に飽和させるために、すでに磁束全体の数分の一で十分であるように選択されている。この場合、残りの磁束は、ソレノイドアーマチュア長さもしくはスリーブ長さ全体にわたって均等に分配されて移行する。こうして、半径方向の空隙が常に残され、ガイドクリアランスの範囲内でのアキシャルオフセットの場合でさえ、アーマチュアに作用する半径方向力が極めて小さいままとなる。
【0012】
本提案による電磁弁では、スリーブが、個別の構成部材として形成されていてもよいし、電磁弁のハウジング部分によって形成されてもよい。後者の場合、ハウジング部分は、ソレノイドコイルを取り囲む外側スリーブであってもよいし、ソレノイドコイル内に係合して、磁気回路の外側磁極を形成するスリーブであってもよい。さらに、ハウジング部分は、外側スリーブだけでなく、ソレノイドコイルよりも内側に配置された外側磁極も形成するように構成されていてもよい。外側磁極を形成するためにハウジング部分を使用することによって、このハウジング部分が強磁性の材料から製作されていることが確保されている。さらに、外側磁極およびアーマチュアガイドを形成するための個別のスリーブを省くことができる。これによって、同時に、少なくとも1つの封止箇所が不要となる。
【0013】
本発明の好適な実施形態によれば、ガイド要素は、互いに軸線方向の間隔を置いて、好ましくはソレノイドアーマチュアの上側および下側の端部の領域に配置されている。この配置形態によって、ソレノイドアーマチュアの傾倒運動が阻止されるため、ソレノイドアーマチュアが最適にガイドされている。
【0014】
ガイド要素を形成するために、ソレノイドアーマチュアは、減じられた外径を有する領域、外周面側の研削部および/または外周面側の溝を有してもよい。この場合、ガイド要素は、ソレノイドアーマチュアと一体形に形成されているかもしくはソレノイドアーマチュアの構成部分である。減じられた外径を有する領域に応じて、特に、ソレノイドアーマチュアの外周面にわたって延在するウェブ状のガイド要素を形成することができる。このウェブ状のガイド要素とスリーブとの接触領域を減じるために、ガイド要素は周方向で中断されて形成されてもよい。中断のためには、特に研削部および/または溝が設けられてもよい。
【0015】
代替的または補足的には、ガイド要素が、ソレノイドアーマチュアに被せられた、特にプレス嵌めされた、または焼き嵌めされた個別のリングとして形成されていることが提案される。したがって、ガイド要素は個別の構成部材を形成していて、ゆえに、ソレノイドアーマチュアと異なる材料から製作されてもよい。材料選択は、特にガイド要素の機能に関連して行われてもよい。ガイド要素を非磁性の材料から製作することが特に有利である。本発明の改良形態では、ソレノイドアーマチュアが、リングを取り付けるための少なくとも1つの切削部を有することが提案される。この切削部によって、ソレノイドアーマチュアの外径が減じられるため、環状のガイド要素用のスペースが提供される。ただし、切削部の深さは、半径方向における環状のガイド要素の幅よりも小さく選択されているため、ガイド要素は、ソレノイドアーマチュアに対して、半径方向の空隙を形成するために必要な半径方向の余剰寸法を有している。それぞれ1つの環状のガイド要素がソレノイドアーマチュアの端部に配置されている限り、各々の端部が切削部を備えていてもよい。切削部を画定する、半径方向に延在する段付け部を介して、ガイド要素を軸線方向で支持することができる。しかしながら、端側に設けられた切削部はアーマチュア磁極面を減少させる。したがって、代替的には、ソレノイドアーマチュアの軸線方向のほぼ全長にわたって延在しているものの、アーマチュア磁極面に対して間隔を維持しているただ1つの切削部しか設けられなくてもよい。したがって、アーマチュア磁極面の当初のサイズが維持され続ける。ガイド要素同士の間の規定された軸線方向の間隔を維持するために、好ましくは強磁性の材料から成る介在するスリーブが設けられてもよい。このスリーブは、ガイド要素と一緒に切削部の領域でソレノイドアーマチュアに被せられ、好ましくはプレス嵌めされる、または焼き嵌めされる。
【0016】
本発明の更なる好適な実施形態によれば、ガイド要素は、ソレノイドアーマチュア内に部分的に挿入、特に圧入された個別のピンとして形成されている。このピンを介して、ソレノイドアーマチュアとスリーブとの接触領域をさらに減じることができる。ピンは個別の構成部材を形成しているので、この実施形態でも、特にその磁気的な特性に関する自由な材料選択が行われてもよい。好適には、ソレノイドアーマチュアは、ピンを収容するための少なくとも1つの半径方向孔を有する。この半径方向孔は、貫通孔として形成されていてもよいし、盲孔として形成されていてもよい。後者の場合には、各々のピンに対して1つの盲孔が設けられている。貫通孔内には、両側に突出する1つのピンまたは2つの個々のピンが挿入、特に圧入されてもよい。一貫して延在する1つのピンが使用される場合には、このピンを過旋削または過研削によって追補的に延長させることができるかもしくは正確なガイド直径に較正することができる。好ましくは、ガイドに用いられる端面に丸み付け部が設けられる。この丸み付け部は、特に外側磁極の内径に適合させられていてもよい。片側でしか突出していないピンの場合には、ガイドクリアランスを圧入深さに応じて調整することができる。好適には、ピンの、ガイドに用いられる端面が、丸み付けされて形成されている。この場合、丸み付け部は、特に外側磁極の内径に適合させられていてもよい。
【0017】
有利には、ガイド要素は、周方向に均等に分配されて、特に互いに等しい角度間隔を置いて配置されており、これによって、ソレノイドアーマチュアが一様にガイドされている。ガイド要素の個数は変えられてもよい。
【0018】
さらに好適には、ガイド要素は非磁性の材料から製作されており、これによって、ガイド要素は、磁気的な観点から、ソレノイドアーマチュアと外側磁極との間の半径方向の空隙を橋渡ししない。
【0019】
さらに好適には、スリーブの一方の端面に非磁性のディスクが接触している。この非磁性のディスクは、スリーブと磁気回路の別の部分との間の磁気的な分離のために用いられる。この別の部分は、例えば、ポット状に形成された磁極体であってもよいし、アーマチュア室を画定する強磁性のカバーであってもよい。この場合、磁極体またはカバーにそれぞれ磁気回路の内側磁極が形成されている。非磁性のディスクは、好ましくは、軸線方向の空隙の高さに配置されているため、非磁性のディスクによって、軸線方向の空隙を取り囲むバイパスの形成が阻止される。
【0020】
さらに、少なくとも1つの圧縮ガス容器と、この圧縮ガス容器を遮断するための本発明に係る電磁弁とを備える水素タンクシステムが提案される。この用途において、本発明に係る電磁弁の利点は特に明確に有効となる。なぜならば、ソレノイドアーマチュアのガイド領域における規定された半径方向間隙が、磁気的な接着を阻止するからである。同時に、ソレノイドアーマチュアが最適にガイドされているため、ソレノイドアーマチュアのアキシャルオフセットが生じない。さらに、アーマチュア室が、強磁性のスリーブとして形成された外側磁極によって気密に密封されているため、アーマチュア室に水素を供給することができる。スリーブが強磁性の材料から製作されているので、磁気回路の所要電流を高めることなく、高い内圧が可能となるように、スリーブの肉厚を寸法設定することができる。
【0021】
以下に、本発明の好適な実施形態およびその利点を添付の図面に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る電磁弁の概略的な縦断面図である。
【
図2】
図1の電磁弁のソレノイドアーマチュアの概略的な縦断面図である。
【
図3a)】
図2のソレノイドアーマチュアの可能な横断面図である。
【
図3b)】
図2のソレノイドアーマチュアの可能な横断面図である。
【
図3c)】
図2のソレノイドアーマチュアの可能な横断面図である。
【
図4】本発明に係る電磁弁用のソレノイドアーマチュアの概略的な縦断面図である。
【
図5】
図4のソレノイドアーマチュアの平面図である。
【
図6】本発明に係る電磁弁用のソレノイドアーマチュアの概略的な縦断面図である。
【
図7】本発明に係る電磁弁用の別のソレノイドアーマチュアの概略的な縦断面図である。
【0023】
図面の詳細な説明
図1に示した電磁弁1は、プランジャ形アーマチュアとして形成されたストローク運動可能なソレノイドアーマチュア3に作用するための環状のソレノイドコイル4を有している。ソレノイドアーマチュア3は、ハウジング部分8により半径方向で画定されるアーマチュア室2内に収容されている。ソレノイドアーマチュア3をガイドするために、ハウジング部分8は、ソレノイドコイル4が収容されたコイル収容室15からアーマチュア室2を分離するスリーブ5を形成している。このスリーブ5は、同時にプランジャ形アーマチュア磁気回路の外側磁極を形成している。軸線方向において、アーマチュア室2は、ハウジング部分8と同様に強磁性の材料から製作されたカバー16によって画定される。このカバー16は、磁気回路の内側磁極と、同時にソレノイドアーマチュア3用のストロークストッパとを形成している。外側磁極を形成するスリーブ5からカバー16を磁気的に分離するために、スリーブ5とカバー16との間に非磁性のディスク14が挿入されている。
【0024】
ソレノイドコイル4に通電が行われると、ソレノイドアーマチュア3をカバー16の方向に運動させる磁力を有する磁場が形成され、これによって、軸線方向の空隙19が閉鎖される。ソレノイドコイル4への通電の終了後のソレノイドアーマチュア3の戻りは、ばね17によって実現される。
【0025】
規定された半径方向の空隙6を形成するために、
図1に示したソレノイドアーマチュア3は、ウェブ状の複数のガイド要素7を有している。これらのガイド要素7は、互いに軸線方向の間隔を置いて配置されているため、それぞれソレノイドアーマチュア3の端部に位置することになる。ガイド要素7はソレノイドアーマチュア3と一体形に形成されている(
図2参照)。これによって、ソレノイドアーマチュア3のガイドがウェブ状のガイド要素7を介してのみ達成される。相応して、ソレノイドアーマチュア3とスリーブ5との間の接触領域が減じられる。
【0026】
ウェブ状のガイド要素7は、全周にわたって延在するように形成されていてもよいし、周方向に中断部を有していてもよい。
図3a)に例示したように、ウェブ状のガイド要素7は、減じられた外径を有する領域9によって中断されていてもよく、これによって、ウェブ状のガイド要素7は、それぞれソレノイドアーマチュア3の部分周方向領域にわたってしか延在していない。この場合、ガイド要素7相互の角度間隔は等しく選択されている。代替的には、中断部が研削部10によって製作されてもよい。この実施形態は
図3b)に例示してある。
図3c)には、別の実施形態が示してある。
【0027】
ガイド要素7は、さらに、ソレノイドアーマチュア3の少なくとも1つの半径方向孔13内に挿入、特に圧入されるピンによって形成されてもよい。この実施形態は
図4および
図5に認めることができる。図示の半径方向孔13は、それぞれ貫通した孔として形成されていて、それぞれ1つのピンを収容している。この1つのピンは、半径方向孔13に対して余剰長さを有しているため、両側に張り出して半径方向孔13内に挿入可能、特に圧入可能となる。1つのピンの代わりに、2つのピンが両方の側から1つの半径方向孔13内に挿入、特に圧入されてもよい。その後、圧入深さに応じて、ピンの半径方向の張出し量ひいては半径方向の空隙6を調整することができる。
【0028】
代替的または補足的には、環状のガイド要素7が設けられていてもよい。この場合には、ソレノイドアーマチュア3が、好適には、環状のガイド要素7を取り付けるための少なくとも1つの切削部12を有している(
図6および
図7参照)。
図6の実施例では、ソレノイドアーマチュア3の両方の端部にそれぞれ1つの切削部12が設けられている。
図7の実施例では、ソレノイドアーマチュア3はただ1つの切削部12しか有していない。しかしながら、この切削部12は、ソレノイドアーマチュア3のうちの比較的大きな長さにわたって延在している。こうして、可能な限り大きなアーマチュア磁極面18が得られたままとなる。切削部12の領域でソレノイドアーマチュア3に被せられた、特にプレス嵌めされた環状のガイド要素7を互いに軸線方向の間隔を置いて保持するために、ガイド要素7同士の間にスリーブ11が配置されている。環状のガイド要素7は、好ましくは非磁性の材料から製作されている。スリーブ11は、好ましくは強磁性の材料から製作されている。その後、ソレノイドアーマチュア3の直径に左右されることなく、スリーブ11の外径に応じて、半径方向の空隙をソレノイドアーマチュア3の切削部12の領域で調整することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁弁(1)、特に水素タンクシステム用の遮断弁であって、
アーマチュア室(2)内に収容されたソレノイドアーマチュア(3)と、
前記ソレノイドアーマチュア(3)を少なくとも部分的に取り囲むソレノイドコイル(4)と
を備え、
前記ソレノイドアーマチュア(3)は、前記アーマチュア室(2)を画定する強磁性のスリーブ(5)を介してストローク運動可能にガイドされている、電磁弁(1)において、
前記ソレノイドアーマチュア(3)は、規定された半径方向の空隙(6)を形成するように、半径方向に突出したウェブ状かつ/またはピン状の複数のガイド要素(7)を有することを特徴とする、電磁弁(1)。
【請求項2】
前記スリーブ(5)は、ハウジング部分(8)によって形成されることを特徴とする、請求項1記載の電磁弁(1)。
【請求項3】
前記ガイド要素(7)は、互いに軸線方向の間隔を置いて、好ましくは前記ソレノイドアーマチュア(3)の上側および下側の端部の領域に配置されていることを特徴とする、請求項1または2記載の電磁弁(1)。
【請求項4】
前記ソレノイドアーマチュア(3)は、前記ガイド要素(7)を形成するために、減じられた外径を有する領域(9)、外周面側の研削部(10)および/または外周面側の溝を有することを特徴とする、請求項1
または2記載の電磁弁(1)。
【請求項5】
前記ガイド要素(7)は、前記ソレノイドアーマチュア(3)に被せられた、特にプレス嵌めされた、または焼き嵌めされた個別のリングとして形成されており、好ましくは、前記ソレノイドアーマチュア(3)は、前記リングを取り付けるための少なくとも1つの切削部(12)を有することを特徴とする、請求項1
または2記載の電磁弁(1)。
【請求項6】
前記ガイド要素(7)は、前記ソレノイドアーマチュア(3)内に部分的に挿入された、特に圧入された個別のピンとして形成されており、好ましくは、前記ソレノイドアーマチュア(3)は、前記ピンを収容するための少なくとも1つの半径方向孔(13)を有することを特徴とする、請求項1
または2記載の電磁弁(1)。
【請求項7】
前記ガイド要素(7)は、周方向に均等に分配されて、特に互いに等しい角度間隔を置いて配置されていることを特徴とする、請求項1
または2記載の電磁弁(1)。
【請求項8】
前記ガイド要素(7)は非磁性の材料から製作されていることを特徴とする、請求項1
または2記載の電磁弁(1)。
【請求項9】
前記スリーブ(5)の一方の端面に非磁性のディスク(14)が接触していることを特徴とする、請求項1
または2記載の電磁弁(1)。
【請求項10】
少なくとも1つの圧縮ガス容器と、該圧縮ガス容器を遮断するための、請求項1
または2記載の電磁弁(1)とを備える水素タンクシステム。
【国際調査報告】