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特表2024-536140陽電子放出断層撮影(PET)スキャン装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】陽電子放出断層撮影(PET)スキャン装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01T1/161 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519298
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2022076433
(87)【国際公開番号】W WO2023052247
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】21200421.2
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522488742
【氏名又は名称】ポジトリゴ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ヤニス ニコラウス ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】アーニン,マクス ルートヴィヒ
【テーマコード(参考)】
4C188
【Fターム(参考)】
4C188EE02
4C188FF07
4C188JJ02
4C188JJ22
4C188JJ23
4C188JJ24
4C188JJ25
(57)【要約】
陽電子放出断層撮影(PET)スキャン装置1が提供され、放出されたPET放射線を検出するための、検出器リング2と、アーム341の間に検出器リング2を保持するための2本のアーム341を有するU字形部分34が取り付けられた、主支持構造3とを備える。検出器リング2は、検出器リング2を、U字形部分34を通って、特にU字形部分34の2本のアーム341を通って延在する回転軸R周りに回転させることができるように、2本のアーム341によって保持される。主支持構造3は、U字形部分34をガイドレールに沿って変位させることができるように、U字形部分34が取り付けられているガイドレールを備え、ガイドレールは、重力の方向Gに対して傾斜した方向に沿って延在している。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽電子放出断層撮影(PET)スキャン装置(1)であって、
放出されたPET放射線を検出するための、検出器リング(2)と、
アーム(341)の間に前記検出器リング(2)を保持するための2本の前記アーム(341)を有するU字形部分(34)が取り付けられた、主支持構造(3)と、
を備え、
前記検出器リング(2)は、前記検出器リング(2)を、前記U字形部分(34)を通って、特に前記U字形部分(34)の2本の前記アーム(341)を通って延在する回転軸(R)周りに回転させることができるように、2本の前記アーム(341)によって保持され、
前記主支持構造(3)は、前記U字形部分(34)をガイドレールに沿って変位させることができるように、前記U字形部分(34)が取り付けられている前記ガイドレールを備え、
前記ガイドレールは、前記重力の方向(G)に対して傾斜した方向に沿って延在している、
前記PETスキャン装置。
【請求項2】
請求項1に記載のPETスキャン装置(1)であって、前記主支持構造(3)と前記U字形部分(34)とは、全体としてZ字形構造を形成する、前記PETスキャン装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のPETスキャン装置(1)であって、ユーザーにとって前記ガイドレールに沿った前記U字形部分(34)の変位を容易化するために、前記U字形部分(34)及び前記検出器リング(2)の重量を補償するための、重量補償装置をさらに備えた、前記PETスキャン装置。
【請求項4】
請求項3に記載のPETスキャン装置(1)であって、前記重量補償装置は、滑車を介して前記U字形部分(34)に接続された、好ましくは前記U字形部分(34)に対して前記主支持構造の反対側に配置された、カウンターウェイトを備えた、前記PETスキャン装置。
【請求項5】
請求項4に記載のPETスキャン装置(1)であって、前記カウンターウェイトは、さらなるガイドレールに取り付けられ、前記さらなるガイドレールに沿って前記カウンターウェイトを変位させることができる、前記PETスキャン装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のPETスキャン装置(1)であって、前記ガイドレールに沿って前記U字形部分(34)を変位させるための第1のモーターユニットが設けられた、前記PETスキャン装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のPETスキャン装置(1)であって、前記回転軸(R)の周りに前記検出器リング(2)を回転させるための第2のモーターユニットが設けられた、前記PETスキャン装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のPETスキャン装置(1)であって、前記ガイドレールに沿った前記U字形部分(34)の望ましくない変位を防止するための第1のブレーキ装置をさらに備えた、前記PETスキャン装置。
【請求項9】
請求項8に記載のPETスキャン装置(1)であって、前記第1のブレーキ装置は、作動させられていないときにブレーキ効果を生成し、作動時に前記ブレーキ効果を解除する、電磁作動ブレーキ装置である、前記PETスキャン装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のPETスキャン装置(1)であって、前記回転軸(R)周りの前記検出器リング(2)の望ましくない回転を防止するための第2のブレーキ装置をさらに備えた、前記PETスキャン装置。
【請求項11】
請求項10に記載のPETスキャン装置(1)であって、前記第2のブレーキ装置は、作動させられていないときにブレーキ効果を生成し、作動時に前記ブレーキ効果を解除する、電磁作動ブレーキ装置である、前記PETスキャン装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のPETスキャン装置(1)であって、その軸周りに前記検出器リング(2)を回転させ得る前記回転軸(R)は、前記検出器リング(2)の質量中心を通って延在する、前記PETスキャン装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のPETスキャン装置(1)であって、前記回転軸(R)に対して前記検出器リング(2)の質量中心のバランスをとるために、前記検出器リング(2)に移動可能に取り付けられる、及び/又は前記検出器リング(2)に取り外し可能に取り付け可能である、1つ以上の重りをさらに備えた、前記PETスキャン装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のPETスキャン装置(1)であって、前記U字形部分(34)の2本の前記アーム(341)は、前記重力の方向(G)に対して斜め上方に延在する、前記PETスキャン装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のPETスキャン装置(1)であって、前記PETスキャン装置(1)は、前記ガイドレールに沿った前記U字形部分(34)の変位位置、及び/又は前記回転軸(R)周りの前記検出器リング(2)の回転角度を検出するための、1つ以上の検出器エンコーダー、特に1つ以上の電子検出器エンコーダーを備えた、前記PETスキャン装置。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のPETスキャン装置(1)であって、スキャン支持部(6)をさらに備え、前記スキャン支持部(6)は、スキャンされる対象、好ましくは人間の患者(P)が、PETスキャン処置のために前記検出器リング(2)に対して、好ましくは座位又は臥位で、位置決めされることを可能にし、前記スキャン支持部(6)は、前記患者の位置を検出するための1つ以上の支持部エンコーダー、特に1つ以上の電子支持部エンコーダーを備えた、前記PETスキャン装置。
【請求項17】
請求項16に記載のPETスキャン装置(1)であって、前記スキャン支持部(6)は、前記検出器リング(2)内に患者の乳房(PB)を位置決めするように適合されている、前記PETスキャン装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャンされる対象のニーズに特に好適に適合可能な、陽電子放出断層撮影(PET)スキャン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陽電子放出断層撮影(PET)スキャン装置は通常、大きくてかさばるものであり、病院において又は専用の放射線科施設においてのみ利用可能である。そのため、患者は、必要とされる場合、スキャンを受けるために、PETスキャン装置のある場所まで移動しなければならない。しかしながら、患者は、介護施設で暮らしている、うまく動けない、又は寝たきりである、高齢者又は病人であることが多い。その結果、PETスキャンの場所への移動は、患者にとって面倒であり、例えば、患者が移動の間に合併症を起こし得たり感染症にかかったりする可能性が低くはないリスクを伴うことが多い。かくして、ほとんどの現行技術のPETスキャン機械は、対象のところに持って行くことができないという欠点を有している。
【0003】
PETスキャン装置はまた、スキャン処置の間、患者がベッド上で或る特定の姿勢、通常は仰向けに寝た姿勢をとることを必要とする。患者の健康状態によっては、この姿勢は患者にとってかなりの負担となり得るものであり、例えばスキャンの間に患者が動いた場合にはスキャン結果を損なうことさえあり得る。
【0004】
さらに、PET機械が大きすぎることのみならず、特に病院の診療室における標準的な腫瘍学用途以外の用途に関してはニーズに合わないことが多いため、病院、研究者、材料科学者、及び獣医師は、PET機械をうまく利用できていない。
【0005】
PETスキャンの大部分は、人間の脳の撮像に関連している。しかしながら、この目的のために、人体全体に合う大きな口径を有する全身用PETスキャナが使用されることが多い。そのため、検出素子が撮像されるべきエリアから離れて配置され、低い感度及び特異性に帰着する。
【0006】
特許文献1は、可搬型で患者のベッドに固定することができる、小型で軽量のPETスキャナを開示している。
【0007】
特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5においては、ヘルメット型の脳撮像器内に統合されたPET検出器が開示されている。このPET脳撮像器は、移動式ガントリーに懸架されている。
【0008】
特許文献6は、撮像処置の間に患者が座ること、横になること又は立つことを可能にする、調節可能な支持テーブルを有するPET撮像装置を開示している。
【0009】
特許文献7に開示されているPETスキャン装置は、スキャンプロセスの間に患者が車椅子にまっすぐ座ることを可能とする、水平方向に位置決めされ垂直方向に移動可能な検出器リングを備えている。
【0010】
特許文献8は、座位及び臥位の両方の患者のスキャンを可能とするために、上側の水平方向に延在する軸周りに回転させることによって傾斜させることができるガントリー本体を有する、コンピュータ断層撮影(CT)機械を示している。
【0011】
特許文献9は、水平方向に回転可能なガントリー装置を有するCT機器を、撮像プロセスの間に患者が様々な姿勢のうちの任意のものをとることを可能にする調節可能なスキャニング支持部と組み合わせることを提案している。
【0012】
特許文献10は、縮小された寸法を有するPET撮像装置を示している。この装置は、異なる直径を有する複数の測定リングを備え、これらの測定リングが、支持構造上に滑動可能に取り付けられている。
【0013】
特許文献11は、人間の頭部を撮像するための車輪付き移動式PETスキャナを開示している。別の車輪付き移動式PETスキャナが、特許文献12によって開示されている。
【0014】
特許文献13は、天井にある滑車を介して又は壁若しくは車椅子にある連結されたロッドを介して懸架された2本のアームの間に保持される検出器リングを有する、PETスキャン装置を開示している。
【0015】
特許文献14は、バーチャルリアリティシステムをPET脳撮像と組み合わせた装置に関するものである。移動式脳撮像器が、バックパックの形で持ち運ぶことができる、又は車輪を有する台車に配置することができる、移動式支持部に懸架されている。
【0016】
特許文献15は、2本の垂直方向に移動可能な保持アームが取り付けられたU字形の支持構造を有する、CT機械を示している。回転可能な撮像ユニットが、2本のアームの間に保持されている。
【0017】
特許文献16は、線源及び検出器を収容するジンバル付きスキャナ装置を有する、コーンビームコンピュータ断層撮影用の機器を開示している。このスキャナ装置は、垂直の支持柱に沿って移動可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0218010号
【特許文献2】国際公開第2020/015384号
【特許文献3】米国特許第9,226,717号
【特許文献4】米国特許第7,884,331号
【特許文献5】中国特許出願公開第109864751号
【特許文献6】米国特許第9,833,208号
【特許文献7】米国特許第10,307,120号
【特許文献8】日本国特許第3244776号
【特許文献9】米国特許第10,531,843号
【特許文献10】米国特許第9,414,789号
【特許文献11】米国特許出願公開第2011/0315884号
【特許文献12】米国特許第8,735,834号
【特許文献13】日本国特許第4642143号
【特許文献14】米国特許出願公開第2016/0166219号
【特許文献15】日本国特許第3793320号
【特許文献16】国際公開第2014/058772号
【発明の概要】
【0019】
本発明の目的は、スキャンされる対象のニーズに容易に適合させることができる、汎用性の陽電子放出断層撮影(PET)スキャン装置を提供することにある。
【0020】
この目的は、請求項1に記載のPETスキャン装置によって解決される。PETスキャン装置のさらなる実施形態は、従属請求項において提供される。
【0021】
この明細書の目的のため、「上部」、「底部」、「上」、「下」、「上方」、「下方」等の、高さ及び方向の情報は、通常の意図された使用において、重力の方向に対して直立し、人間又は動物の対象又は植物をスキャンする準備ができている、PETスキャン装置に関するものと理解されるべきである。
【0022】
したがって、本発明は、陽電子放出断層撮影(PET)スキャン装置であって、
放出されたPET放射線を検出するための、検出器リングと、
アームの間に検出器リングを保持するための2本のアームを有するU字形部分が取り付けられた、主支持構造と、
を備え、
検出器リングは、検出器リングを、U字形部分を通って、特にU字形部分の2本のアームを通って延在する回転軸周りに回転させることができるように、2本のアームによって保持される、PETスキャン装置を提供する。
【0023】
主支持構造は、重力の方向に対して傾斜した方向に沿って延在し、U字形部分をガイドレールに沿って変位させることができるように、U字形部分が取り付けられているガイドレールを備える。
【0024】
重力の方向に対して傾斜した方向に沿って延在することは、ガイドレールが、重力の方向に対して平行すなわち0°の角度でなく、垂直すなわち90°の角度でもなく、延在することを意味する。その代わりに、ガイドレールは、重力の方向に対して、好ましくは0°~60°、より好ましくは10°~50°、最も好ましくは20°~40°の角度で延在する。ガイドレールの傾斜した延在は、U字形部分が、検出器リングと共に、重力の方向に対して傾斜した方向に沿って、主支持構造に対して変位可能であるという結果をもたらす。
【0025】
重力の方向に対して傾斜した又は斜めの方向に沿って検出器リングを変位させる可能性は、スキャンされる患者が快適な臥位又は寄り掛かった座位にある間に、患者に対して検出器リングを最適に位置決めすることを可能にする。かくして、示される本PETスキャン装置によれば、検出器リングに対して位置決めされる必要があるのは患者ではなく、患者を移動させる必要なく注目画像領域を最適に撮像することができるように検出器リングを位置決めすることができる。患者にとって、特に高齢の患者にとって、特に寄り掛かった座位は、撮像手順の間に快適であることが分かっている。この姿勢は自然な姿勢であり、特に長時間の撮像セッションの間の、より少ない患者の動きに導く。傾斜した方向に沿った検出器リングの変位可能性は、かかる位置決めされた患者の身体の上側部の長手方向の主軸に沿って検出器リングを位置決めすることを可能にし、回転可能性は、望ましい撮像平面に対する検出器リングの最適な配向を可能とする。
【0026】
さらに、傾斜した方向に沿ってU字形部分を変位させる能力を組み合わせた、U字形部分に対して検出器リングを回転させる能力は、本PETスキャン装置の高い汎用性に導く。これらの能力により、本PETスキャン装置は、人間の患者、特に人間の脳をスキャンするのに適合されているのみならず、腕及び脚等の四肢をスキャンすること、及び/又は動物又は植物をスキャンするのにも適している。主支持構造に対して検出器リングを回転及び変位させる可能性は、本PETスキャン装置を、特に汎用性が高く、例えばげっ歯類又は植物のスキャン等の、様々な目的に適合可能なものとする。それゆえ、検出器リングは、その開口部を水平位置及び垂直位置の両方に配向することができるように回転させることができることが好ましい。
【0027】
検出器リングを保持するためのU字形部分を備えることによって、検出器リングを変位させること及び回転させることの両方を可能にする、PETスキャン装置の比較的シンプルな構造が可能になる。U字形部分は好ましくは、検出器リングを主支持構造に機械的に接続する唯一の要素を表す。
【0028】
2本のアームを通る検出器リングの回転軸の延在は、検出器リングを回転によって患者のニーズに対して容易に調節することができ、同時に主支持構造上に特に安定した態様で保持することができるという利点をもたらす。不必要な要素を検出器リングと共に回転させる必要はなく、このことは、回転可能な部品の総重量を低減すること、及び検出器リングの回転をユーザーにとって容易にすることを可能にする。
【0029】
或る特定の実施形態においては、検出器リングは、U字形部分と共に変位可能であるのみならず、U字形部分に対して、特に2本のアームに対しても変位可能であることが想到可能である。例えば、微調整を可能とするために、U字形部分に対する検出器リングの追加的な変位可能性が設けられてもよい。
【0030】
検出器リングは通常、例えば患者の脳から放出されるPET放射線を検出するためには患者の頭部等、患者の周囲に位置決めされるために、円周リングに配置された、複数のセンサ、特に複数のセンサモジュールを備える。検出器リングは好ましくは、閉じたリング、すなわち円周方向に閉じたリングを形成する。閉じたリングを形成することによって、センサを検出器リングの内面全体に沿って最適に配置することができる。
【0031】
検出器リングは通常、少なくともその内面において丸い、例えば楕円形又は円形の形状を有する。かくして、検出器リングは通常、好ましくは、丸い、特に円形の開口部を有し、この開口部に、対象のスキャンされる部分がPETスキャンのために挿入される。検出器リングの外面もまた好ましくは、丸い、特に円形の形状を形成する。かかる形態を有する検出器リングは、ユーザーの目には、より軽量な外観を有する。しかしながら、検出器リングはまた、角のある、特に長方形又は正方形の、内側及び/又は外側の形状を有してもよい。
【0032】
検出器リングは有利にも、ユーザーにとって検出器リングの回転及び変位を容易化するための、少なくとも1つのハンドルを有する。しかしながら、本PETスキャン装置はまた、検出器リングを変位させる及び/又は回転させるよう機能する、1つ又はいくつかのモーターユニットを有してもよい。この場合、回転及び変位のためのハンドルを省略することも想到可能となる。
【0033】
本PETスキャン装置の通常の使用においては、主支持構造は通常、検出器リングの、全重量ではないにしても、主重量を担持する。かくして、主支持構造は通常、スキャン処置の間、検出器リングを支持し、安定した位置に保持するよう機能する。スキャンされる対象の近くに主支持構造を位置決めすること又はその逆の後、PETスキャン装置を対象に対して調節するために、検出器リングがこれに応じて回転及び変位させられてもよい。
【0034】
U字形部分は、特に2本のアームによって画定される。2本のアームは通常、垂直に延在する接続部分によって、一方の端において互いと接続されており、この接続部分もまたU字形部分の一部を形成する。各アームの他方の端は通常、自由端を形成する。回転軸は、接続部分及び2本のアームのうちの少なくとも一方を通って延在していれば、U字形部分を通って延在している。好ましくは、回転軸は2本のアームのそれぞれを通って延在する。特に好ましいのは、回転軸が2本のアームの延在の方向に対して垂直方向に、有利には接続部分に対して平行に延在する、実施形態である。好ましくは、検出器リングの回転を可能とするために、2本のアームのそれぞれにスイベル継手が配設される。
【0035】
2本のアーム及び接続部分は好ましくは、U字形部分が配置される平面を画定する。この平面は、或る特定の厚さを有してもよい。この平面内に配置されず、特にこの平面に対して垂直方向に延在する要素は、特にそれらの要素が変位可能に取り付けられている場合には、通常、U字形部分の一部とはみなされない。U字形部分は好ましくは、本PETスキャン装置の機械的に固定された構造ユニットを形成し、すなわち、互いに対して移動可能ないかなる部材も含まない。
【0036】
変位の方向は好ましくは、2本のアームが延在する方向に対して垂直に延在し、特に、2本のアームが接続部分からそれらの自由端まで延在する方向に対して垂直に延在する。この目的のため、U字形部分の2本のアームは好ましくは、重力の方向に対して斜め上方に延在する。望ましい撮像平面に対して最適に調節可能となるために、検出器リングは有利にも、少なくとも1つの回転位置において、検出器リングの開口部によって画定される平面に対してほぼ垂直に起立する方向に変位可能である。
【0037】
特に好ましい実施形態においては、主支持構造とU字形部分とは、全体としてZ字形構造を形成する。Z字形構造は、PETスキャン装置の特に安定した設計を可能にする。
【0038】
好ましくは、PETスキャン装置は、ユーザーにとってガイドレールに沿ったU字形部分の変位を容易化するために、U字形部分及び検出器リングの重量を補償するための、重量補償装置をさらに備える。この目的のために、重量補償装置は好ましくは、滑車を介してU字形部分に接続された、カウンターウェイトを備える。滑車は特に、主支持構造の上部に配置されてもよい。カウンターウェイトは好ましくは、U字形部分に対して主支持構造の反対側に配置される。主支持構造は、カウンターウェイトが取り付けられるさらなるガイドレールを備えてもよく、さらなるガイドレールに沿ってカウンターウェイトを変位させることができるようにしてもよい。さらなるガイドレールは好ましくは、重力の方向に対して傾斜した方向に沿って、特にU字形部分が取り付けられているガイドレールに対して平行に、延在する。
【0039】
U字形部分が取り付けられているガイドレール、及び/又はカウンターウェイトが取り付けられているさらなるガイドレールはそれぞれが、それぞれU字形部分及び検出器リングの又はカウンターウェイトの重量を分散させるために、互いに対して平行に延在する2本以上のレール要素を備えてもよい。
【0040】
ガイドレールに沿ってU字形部分を変位させるために、第1のモーターユニットが備えられてもよい。代替として又はこれに加えて、回転軸周りに検出器リングを回転させるための第2のモーターユニットが備えられてもよい。第1のモーターユニット及び/又は第2のモーターユニットの具備は、操作担当者にとってPETスキャン装置の取り扱いを容易化するのみならず、好ましくは検出器リングが撮像される対象に対して遠隔で変位させられる及び回転させられることを可能にする。
【0041】
本PETスキャン装置は好ましくは、ガイドレールに沿ったU字形部分の望ましくない変位を防止するための第1のブレーキ装置を備える。かくして、第1のブレーキ装置によって、主支持構造に対する検出器リングの変位位置を固定することができる。好ましい実施形態においては、第1のブレーキ装置は、ブレーキ効果を実現するために、U字形部分に取り付けられるとともにガイドレールに直接に作用するように適合された、1つ以上のブレーキパッドを備える。第1のブレーキ装置は、特に、作動させられていないときにブレーキ効果を生成し、作動時にブレーキ効果を解除する、電磁作動ブレーキ装置であってもよい。かくして、安全上の理由のため、好ましくは、第1のブレーキ装置に電流が供給されている場合にのみ、U字形部分と共に検出器リングを変位させることが可能である。
【0042】
代替として又はこれに加えて、本PETスキャン装置は、回転軸周りの検出器リングの望ましくない回転を防止するための、第2のブレーキ装置を備えてもよい。かくして、第2のブレーキ装置によって、U字形部分に対する検出器リングの回転位置を固定することができる。この目的のために、第2のブレーキ装置は、ブレーキ効果を生成するために、例えば、検出器リングがU字形部分に取り付けられているスイベル継手のうちの一方又は両方に作用してもよい。第2のブレーキ装置は、特に、作動させられていないときにブレーキ効果を生成し、作動時にブレーキ効果を解除する、電磁作動ブレーキ装置であってもよい。かくして、安全上の理由から、好ましくは、第2のブレーキ装置に電流が供給されている場合にのみ、検出器リングを回転させることが可能である。
【0043】
或る特定の好ましい実施形態においては、本PETスキャン装置は、本PETスキャン装置を移動させることをより容易にするために、主支持構造に取り付けられた車輪を備えてもよい。この車輪は、対象を本PETスキャン装置に近づける代わりに、本PETスキャン装置を移動させ、スキャンされる対象に本PETスキャン装置を近づけることを可能にする。本PETスキャン装置を移動させるための車輪が備えられている場合、特に対象のスキャン中の本PETスキャン装置の望ましくない移動を避けるために、好ましくは、本装置は車輪ロック機構も備える。
【0044】
本PETスキャン装置は、その移動可能性により、ハドロン治療の間の室内モニタリングも可能とする。この目的のため、貴重な時間及び同位体トレーサーの崩壊による信号を失わないようにするため、好ましくは適切な高さに位置決めされるとともに、予めハドロン治療装置と共位置合わせされている検出器リングに、処置支持部上で患者を直接に移動させることができる。
【0045】
その軸周りに検出器リングを回転させ得る回転軸は好ましくは、検出器リングの質量中心を通って延在する。このとき検出器リングは、ユーザーによって及び/又は第2のモーターユニットによって特に容易に回転させることができ、構造的なコンポーネントに作用する負荷は最小化される。特に好ましいのは、回転軸が検出器リングを径方向に通って延在している実施形態である。かくして、検出器リングは好ましくは、その外面の、径方向に配置された2つの位置において、U字形部分の2本のアームに取り付けられる。
【0046】
回転軸に対して検出器リングの質量中心のバランスをとるために、本PETスキャン装置は、好ましくは、検出器リングに移動可能に取り付けられる、及び/又は検出器リングに取り外し可能に取り付け可能である、1つ以上の重りを備える。
【0047】
正確かつ再現可能な態様で、撮像される対象に対して検出器リングを位置決めする及び配向することを可能とするために、本PETスキャン装置は、好ましくは、ガイドレールに沿ったU字形部分の変位位置、及び/又は回転軸周りの検出器リングの回転角度を検出するための、1つ以上の検出器エンコーダー、特に1つ以上の電子検出器エンコーダーを備える。電子検出器エンコーダーは、好ましくは、検出器リングによってPET関連データの取得を実行するために使用される計算装置に接続される。
【0048】
他の同様に好ましい実施形態においては、本PETスキャン装置は、スキャンされる対象を乗せるために、例えば座席ユニット、すなわち椅子、又はベッドの形をとる、スキャン支持部を備えてもよい。主支持構造は、スキャン支持部と一体的に形成されてもよいが、一体的に形成される必要があるわけではない。主支持構造と一体的に形成されていない場合には、スキャン支持部は、好ましくは、スキャン支持部が主支持構造に対して明確で正確かつ再現可能な態様で位置決めされることを可能にする、位置決め手段を備える。スキャン支持部は、好ましくは、スキャンされる対象のニーズに対して調節可能である。スキャン支持部は、座席ユニットの形をとる場合には、好ましくはU字形部分が沿って変位可能なガイドレールに対して平行に延在する背もたれを備える。
【0049】
好ましくは調節可能なスキャン支持部、特に調節可能な座席ユニットは、好ましくは、患者の位置を検出するための1つ以上の支持部エンコーダー、特に1つ以上の電子支持部エンコーダーを備える。電子支持部エンコーダーは、好ましくは、検出器リングによってPET関連データの取得を実行するために使用される計算装置に接続される。スキャン支持部が主支持構造と一体的に形成されていない場合、及び計算装置が主支持構造のそばに配置されている場合、支持部エンコーダーを計算装置に接続するために、好ましくは結合要素が設けられる。支持部エンコーダーは、例えば、座席ユニットの座面の高さ、ヘッドレストの高さ、背もたれの高さ、及び/又はこれらの部品のうちの1つ以上の傾きの角度を検出するように適合されてもよい。
【0050】
或る特定の実施形態においては、スキャン支持部は、検出器リング内に患者の乳房を位置決めするように適合されてもよい。かくして、この場合においては、スキャン支持部は、検出器リングのセンサによって患者の乳房をスキャンするために特に適合される。この用途は、特に腫瘍学の分野に適している。スキャン支持部は好ましくは、開口部又は窪みを含み、PET撮像手順の間、乳房がそれぞれ開口部の中へと垂れ下がること又は支持部上に静置されることを可能にする。かくして、開口部又は窪みは、いずれが適用されるにせよ、好ましくは重力に対して水平に配向されるか又は配向可能である。
【0051】
本PETスキャン装置は、これに加えて、人間の患者がPETスキャン手順のために臥位及び/又は座位にされることを可能とする、調節可能なヘッドレストを備えてもよい。ヘッドレストは、スキャン処置の間に、患者の頭部を位置決めして保持するよう機能する。この目的のために、ヘッドレストは、好ましくは検出器リングの内側に配置されるように適合されても、検出器リングに又はスキャン支持部に取り付けられてもよい。
【0052】
ヘッドレストは、頭部を固定させるための1つ以上の固定要素、特に、定位放射線手術及びハドロンビーム治療において使用される固定のための手段と組み合わせて使用することができる固定要素を備えてもよく、この手段は、例えば定位ヘッドフレーム及び/又は患者フレームに取り付け可能な熱可塑性フェイスマスクを含む。
【0053】
本PETスキャン装置は、特に回転軸に対して垂直な正面方向から見たときに、重力の方向に沿ってU字形部分から下向きに細くなる全体的な外形を有してもよい。かかる設計によれば、装置の幅は、少なくとも上側領域においては、検出器リングを保持するために必要とされるU字形部分の幅によって主に規定されるため、本PETスキャン装置が、特に場所をとらないものとなり得る。底部においては、本PETスキャン装置の外形は、安定性を向上させるために、重力の方向に沿って再び広がるものであってもよい。
【0054】
本PETスキャン装置は好ましくは、少なくとも検出器リングの1つのポジションにおいて、98.5cm以下、特に86.0cm以下の幅を有する標準的なドア開口部を通って、本装置が通常の直立ポジションで移動させられることを可能とする、全体的な寸法を有する。より好ましくは、本PETスキャン装置が車輪を有する場合、本装置は、98.5cm以下、特に86.0cm以下の幅を有するドア開口部を通って、本PETスキャン装置が車輪で動かされることを可能とする全幅を有する。
【0055】
本PETスキャン装置は好ましくは、検出器リングによってPET関連データの取得を実行するための計算装置をさらに備える。計算装置は通常、少なくともプロセッサ、特に中央処理装置、及び記憶素子を備える。検出器リングによって放出されたPET放射を検出し、取得されたPET情報を安全又は少なくともキャッシュし、及び/又は、例えば有線又は無線伝送ユニットによって、他の装置に情報をさらに伝送するように、PETスキャン装置に命令するための、予め定義された命令が、通常、記憶素子に予め記憶されている。計算装置は好ましくは、主支持構造中に統合されている。
【0056】
本発明の好ましい実施形態が、図面を参照しながら以下に説明されるが、これらは本発明の好ましい実施形態を説明する目的のためのものであって、本発明を限定する目的のためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、座席ユニットの形をとる支持装置を伴う、第1の実施形態による本発明のPETスキャン装置の概略的な側面図である。
図2図2は、臥位の患者の撮像を可能にする支持装置を伴う、図1におけるものと同じPETスキャン装置の概略的な側面図である。
図3図3は、げっ歯類の撮像のための支持装置を伴う、図1におけるものと同じPET撮影装置の概略的な側面図である。
図4図4は、座席ユニットの別の変形例を伴う、図1におけるものと同じPETスキャン装置の概略的な側面図である。
図5図5は、図4の座席ユニットを伴う、第2の実施形態による本発明のPETスキャン装置の概略的な側面図である。
図6図6は、主支持構造に固定的に取り付けられた座席ユニットを伴う、第3の実施形態による本発明のPETスキャン装置の概略的な側面図である。
図7図7は、第4の実施形態による本発明のPETスキャン装置の側面図である。
図8図8は、検出器リングのない、図7のPETスキャン装置の正面図である。
図9図9は、図7のPETスキャン装置の背面図である。
図10図10は、検出器リングがなく回転駆動ユニットが見えている状態の、図7のPETスキャン装置の斜視図である。
図11図11は、図10のPETスキャン装置の回転駆動ユニット及び回転ブレーキ装置の詳細図である。
図12図12は、検出器リングのない、第5の実施形態による本発明のPETスキャン装置の斜視図である。
図13図13は、患者が座位にある状態で、患者の乳房の撮像を可能にする支持装置を伴う、図1におけるものと同じPETスキャン装置の概略的な側面図である。
図14図14は、患者が臥位にある状態で、患者の乳房の撮像を可能にする支持装置を伴う、図1におけるものと同じPETスキャン装置の概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1図14において、本発明のPETスキャン装置1のいくつかの異なる実施形態が示されている。異なる実施形態に属するが、同じ又は類似する機能を有する要素は、各事例において同じ参照符号を付されている。
【0059】
図1図14に示される全ての実施形態において、PETスキャン装置1は、検出器リング2を備え、この検出器リング2は、その円形の内面に沿って配置された複数のセンサを有する。これらセンサは、図では見えていないが、検出器リング2の開口部の領域において放出されるPET放射線を検出及び測定するよう機能する。検出器リング2は、各事例において、円形の内面及び外面を有するリングの基本的形状を有する。
【0060】
実施形態の全てにおいて、検出器リング2は、検出器リング2を間に保持する2本の保持アーム41の間に配置されている。2本の保持アーム41は、主支持構造3に取り付けられたU字形部分4の一部を形成する。検出器リング2は、U字形部分4の2本の保持アーム41を通って延在する回転軸R周りに、回転可能である。さらに、検出器リング2は、全ての実施形態において、主支持構造3に対し、傾斜した方向Dに沿ってU字形部分4と共に変位可能である。検出器リング2の回転及び変位を容易化するために、1つ又はいくつかのハンドルが検出器リング2の外面に取り付けられてもよい。
【0061】
U字形部分4が変位可能である方向は、重力の方向Gに対して傾斜しており、それは重力の方向Gに対して平行でも垂直でもないことを意味する。全ての実施形態において、U字形部分4は、主支持構造3に設けられ、U字形部分4が前述した傾斜した方向Dに沿って変位させられることを可能とする、ガイドレールに取り付けられている。かくして、ガイドレールもまた、傾斜した方向に沿って延在している。
【0062】
回転軸Rは、水平方向に沿って、すなわち重力の方向Gに対して垂直に延在する。さらに、回転軸Rは、U字形部分4を変位可能な方向に対して垂直に延在する。変位方向Dは、保持アーム41の長手方向の延在方向に対してほぼ垂直である。
【0063】
図1に示される第1の実施形態においては、主支持構造3は、下側の垂直部分及び上側の傾斜した部分を含む。U字形部分4は、U字形部分4が上側の傾斜した部分の全長に沿って変位可能であるように、主支持構造3の上側の傾斜した部分の上部に取り付けられている。U字形部分4の2本の保持アーム41は、検出器リング4を間に保持するよう機能する。この目的のために、2つの固定ラグ22が、検出器リング2の外面に取り付けられている。固定ラグ22は、検出器リング2の正反対の側面に備えられている。固定ラグ22は、保持アーム41のそれぞれにおける貫通穴に係合する。
【0064】
各固定ラグ22とそれぞれの貫通穴との係合は、回転軸R周りに検出器リング2の回転が可能とされるようになっている。回転軸Rは、固定ラグ22の位置によって画定される。かくして、回転軸Rは、2つの固定ラグ22のそれぞれの中心を通り、保持アーム41のそれぞれを通って、延在する。検出器リング2に関しては、回転軸Rは、リングを径方向に通ってに延在し、好ましくは検出器リング2の質量中心を通って延在する。
【0065】
PET画像の取得を実行するために、計算装置5が、主支持構造3内に収容される。計算装置5への又は計算装置5からのデータ及び/又はエネルギーの伝送は、1本又はいくつかのケーブルを介して、及び/又は無線で、行われてもよい。他の実施形態においては、計算装置5は、外部に配置されてもよい。計算装置5は好ましくは、ケーブルによって又は無線で、ユーザー入出力装置に接続される。ユーザー入出力装置は、例えば外部のパーソナルコンピューターの形をとってもよいし、又は、PETスキャン装置に取り付けられるディスプレイ、特にタッチスクリーンを有するディスプレイであってもよい。
【0066】
スキャン支持部6は、スキャン処置の間、傾斜した座位で人間の患者を乗せるために設けられている。スキャン支持部6は、PETスキャン装置1の一部であってもよいが、PETスキャン装置1の一部である必要はない。画像の取得に先立ち、患者は、検出器リング2が主支持構造3の最も上の位置にある状態で、スキャン支持部6に乗せられている。次いで、検出器リング2は、医療従事者によって、ハンドル(複数の場合もある)(図1においては図示されていない)を使用して、画像の取得のために最適な位置へと回転及び変位させられる。
【0067】
椅子型の座席ユニットの形をとるスキャン支持部6は、座席ベース62と、スキャン処置の間に患者の脚部を支持するための脚部支持部63とを支持する、ベース構造61を備える。ベース構造61にはまた、傾斜した背部支持部64が取り付けられている。背部支持部64の上側には、背もたれ65と、枢動可能な(図1における矢印参照)肘掛け67とが取り付けられている。背もたれ65は、PETスキャン処置の間に患者を最適に乗せるために、背部支持部64に沿って変位させることができる(図1の両方向矢印)。上端において、ヘッドレスト66が背もたれ65に取り付けられており、これは、スキャン支持部6を患者に対してさらに調節するために、背もたれ65の長手方向に沿ったヘッドレスト66の変位が可能であるようにされている(図1の両方向矢印)。画像の取得のためには、患者の頭部が、ヘッドレスト66に静置され、検出器リング2が、患者の頭部が検出器リング2の内側に配置されるように変位及び回転させられる。かくして、ヘッドレスト66も同様に、撮像プロセスの間、検出器リング2の内側に配置される。
【0068】
検出器リング2の変位方向Dは、主支持構造3に取り付けられたガイドレール(図1には図示されていない)の長手方向の延在方向によって画定されるものであり、背部支持部64及び背もたれ65の長手方向の延在方向、並びに背部支持部64及び背もたれ65が変位可能である方向に、ほぼ対応している。かくして、患者が意図された通りにスキャン支持部6に座り、スキャン処置の準備ができている場合には、検出器リング2の変位方向Dは、患者の身体の上部の長手方向主軸に対応する。画像の取得の間に患者が頭部を動かすことを防止するために、頭部ストラップが使用されてもよい。
【0069】
図1の実施形態においては、スキャン支持部6は、PETスキャン装置1の残りの部分から、特に主支持構造3から、分離されている。PETスキャン装置1の主支持構造3は、車輪33が取り付けられたベース構造32を含む。車輪33によって、PETスキャン装置1は、患者のところまで移動させるために、動かすことができる。スキャン支持部6は、ここでは車輪を有していない。かくして、スキャン支持部6の場所は固定され、このことは、スキャン処置に関して外部パラメータ及び条件が明確であり既知であるという利点を有する。かかる設定においては、PETスキャン装置1は例えば、例えば病院又は介護施設のような、いくつかの指定された場所においてPETスキャンを実行するために同じPETスキャン装置1を使用するために、1つ以上のかかるスキャン支持部6と組み合わせて使用することができる。好ましくは、主支持構造3がスキャン支持部6に対して明確で正確かつ再現可能な態様で位置決めされることを可能にする、位置決め手段が設けられる。
【0070】
図1の側面図から分かるように、U字形部分4と、ベース構造32を含む主支持構造3とは、全体としてZ字形構造を形成する。この形状によって、PETスキャン装置1の安定性が最適化される。
【0071】
U字形部分4の2本の保持アーム41は、ここでは保持ベース42と呼ばれる接続部分によって、一方の端において接続されている。保持ベース42から、2本の保持アーム41が、重力の方向Gに対して斜め上方向に平行に延在する。保持ベース42は、2本の保持アーム41に対して垂直方向に延在する。PETスキャン画像の取得の間、患者の頭部は、2本の保持アーム41の間のエリアに位置する。
【0072】
図2は、ここではベッドの形をとるスキャン支持部6と組み合わせた、図1におけるものと同じPETスキャン装置1の使用を示す。かくして、PETスキャン装置1は、図1に示されるように座位の患者をスキャンするために使用できるのみならず、図2に示されるように臥位の患者をスキャンするためにも使用できる。主支持構造3に対する変位可能性及び回転可能性により、検出器リング2は、いずれの場合においても最適に位置決めすることができる。
【0073】
図3においては、図1におけるものと同じPETスキャン装置1が、げっ歯類、すなわち本場合おいてはマウスMをスキャンするために使用される。図2の場合におけるように、この目的のために、検出器リング2は、主支持構造3に対して低い位置に変位させられ、垂直位置において軸又は回転R周りに回転させられる。検出器リング2のこの位置及び向きにより、検出器リング2の開口部を通して、スキャンされるげっ歯類を一方の側から他方の側へ完全に移動させることが可能である。検出器リング2の高さ調節及び回転可能性は、PETスキャン装置1がスキャン状況に対して最適に調節されることを可能にするのみならず、特に場所をとらない態様で収納することを可能にする。
【0074】
図4は、図1におけるものと同じPETスキャン装置を再び示しているが、ここではスキャン支持部6の別の変形例を有している。本事例においては、背もたれ65及びヘッドレスト66の代わりに、座席ベース62及び脚部支持部63が高さ調節可能である。
【0075】
図5は、さらなる実施形態によるPETスキャン装置1を示しており、図1のものとは車輪を有さない点で異なっている。かくして、PETスキャン装置1はここでは、定置型のものとして設計されている。PETスキャン装置1の代わりに、スキャン支持部6が移動式となるために車輪を有してもよいし、又は図5の場合におけるように定置型のものであってもよい。
【0076】
図5に示されるスキャン支持部6は、PETスキャン装置1に対する、特に主支持構造3に対する、患者の位置を検出及び測定するために、背もたれ位置エンコーダー651の及びヘッドレスト位置エンコーダー661の形をとるエンコーダーを含む。背もたれ位置エンコーダー651は、背部支持部64に対する背もたれ65の位置を検出するように適合され、ヘッドレスト位置エンコーダー661は、背もたれ65に対するヘッドレスト66の位置を検出するように適合される。2つのエンコーダー651及び661は好ましくは、ケーブルによって又は無線で計算装置5と接続される。エンコーダー651、661と計算装置5との間のデータ転送を可能とするために、計算装置5が主支持構造3内に配置されている場合には、スキャン支持部6のベース構造61が主支持構造3のベース構造32に接触するエリアにおいて、結合部が設けられてもよい。スキャン支持部におけるスキャンされる対象の位置を検出するためのエンコーダーは、当然ながら他の全ての実施形態においても備えられてもよい。
【0077】
図6は、主支持構造3がスキャン支持部6と一体的に作られた、PETスキャン装置1の別の実施形態を示す。この実施形態は、主支持構造3とスキャン支持部6との相対的な位置が明確に定義され、変更できないという利点を有する。
【0078】
図7図11は、PETスキャン装置1のさらに特に好ましい実施形態を示す。図7図8及び図10の図において、主支持構造3のガイドレール31があらわされており、これに沿ってU字形部分4が変位可能である。ガイドレール31は、図1図14の全ての実施形態に存在するが、必ずしもあらわされているとは限らず、ここでは平行に延在する2本のレール要素を含む(図8及び図10参照)。ガイドレール31は、U字形部分4の変位の方向を画定する。
【0079】
U字形部分4の変位を容易化するために、重量補償装置7が備えられる。重量補償装置7はカウンターウェイト71を含み、このカウンターウェイト71はケーブル74によって滑車73を介してU字形部分4に接続されている。滑車73は、主支持構造3の上部に配置され、ケーブル74をU字形部分4からカウンターウェイト71までガイドする。カウンターウェイト71は好ましくは、U字形部分4及び検出器リング2による変位可能なユニット形態の全体とほぼ同じ重量を有する。本実施形態においては、カウンターウェイト71は、ガイドレール72(図9参照)によって主支持構造3の裏側に取り付けられている。かくして、カウンターウェイト71は、U字形部分4が沿って変位可能なガイドレール31に対して平行に延在する、ガイドレール72に沿って変位可能である。ガイドレール31と同様に、ここではガイドレール72もまた、平行に延在する2本のレール要素を含む。
【0080】
カウンターウェイト71及び滑車73並びにPETスキャン装置1のさらなる部品は、設計上及び安全上の理由により、好ましくはカバーによって覆われている。しかしながら、説明の目的のために、図7図11の図において及び図12においては、カバーは取り外されている。
【0081】
図7図10に示されるもののような重量補償装置7は、好ましくは、図1図11に示される全ての実施形態において存在する。当然ながら、重量補償装置が設けられないこと、又は重量補償装置が存在するがカウンターウェイト及び滑車に基づくものではないことも、想到可能である。その代わりに、例えばガス圧スプリングに基づく重量補償装置が備えられてもよい。
【0082】
特にスキャン処置中の検出器リング2の望まない変位又は回転を防止するために、ガイドレール31に沿ったU字形部分4の望ましくない変位を防止するためのブレーキ装置、及び回転軸周りの検出器リングの望ましくない回転を防止するためのブレーキ装置が、好ましくは全ての実施形態において設けられる。ブレーキ装置は、計算装置5によって自動的に操作することができるように、好ましくは電磁作動装置である。計算装置5は特に、画像の取得の間の検出器リング2の変位及び回転を阻止するように適合されてもよい。
【0083】
図7図11の実施形態においては、U字形部分4の望ましくない変位を防止するための変位ブレーキ装置43が、そのブレーキ要素がガイドレール31に直接に作用することができるように、U字形部分4に固定的に取り付けられている(図8参照)。
【0084】
検出器リング2の望ましくない回転を防止するための回転ブレーキ装置44が、図10において、特に図11の詳細図において示されている。回転ブレーキ装置44は、保持アーム41のうちの一方又は両方に配置され、各場合において、同じく保持アーム41に配置された駆動車輪452と固定ラグ22を接続する歯付きベルト451に作用するブレーキ要素を備える。歯付きベルト451の動きを阻止することによって、回転ブレーキ装置44によって検出器リング2の回転を防止することができる。
【0085】
ユーザーにとって検出器リング2の変位及び回転を容易化するために、各固定ラグ22の外側にハンドル21が設けられる。ハンドル21は、変位及び回転を能動的に可能にする、すなわち、検出器リング2の変位及び/又は回転が可能となるようにブレーキ装置43及び44を動作させる、スイッチを備えてもよい。これに加えて又は代替として、例えば1つ以上のハンドルが検出器リング2に直接に備えられてもよい。
【0086】
主支持構造3に対する検出器リング2の移動は、全ての実施形態において、変位駆動ユニット及び/又は回転駆動ユニットによって、ユーザーにとってさらに容易化されてもよい。図11は、駆動車輪452を備えた回転駆動ユニット45を示す。駆動車輪452は、図11においては見ることができないが、図12においては見ることができる、モーター453によって駆動することができる。歯付き駆動車輪452の回転は、歯付きベルト451によって固定ラグ22に伝達される。固定ラグ22を回転させることにより、検出器リング2が回転軸R周りに回転させられる。設計上及び安全上の理由により、保持アーム41の内面は、好ましくは、回転駆動ユニット45を覆うためのカバーを備える。しかしながら、説明の目的のため、図10図12においては、これらのカバーは取り外されている。
【0087】
変位駆動ユニットは、図8図12においては見えないが、設けられていてもよい。例えば、滑車73が駆動されてもよいし、又は1本以上の追加的なケーブルがU字形部分4に取り付けられて、モーターに連結されたスプールに巻き付けられてもよい。このとき、1つ以上のスプールを回転させることにより、U字形部分4を上方に又は下方に引くことができる。ウォームシャフト341を有する変位駆動ユニット34が、図12に関して以下にさらに説明される。
【0088】
ガイドレール31に沿ったU字形部分4の位置を検出するために、全ての実施形態において、好ましくは検出器変位エンコーダー46が設けられる。図8図12の実施形態においては、図8に見られるように、検出器変位エンコーダー46は、U字形部分4に取り付けられる。
【0089】
回転軸R周りの検出器リング2の回転の角度を検出するために、全ての実施形態において、好ましくは検出器回転エンコーダー47が設けられる。図8図12の実施形態においては、図11に見られるように、検出器回転エンコーダー47は、固定ラグ22のうちの一方に設けられている。
【0090】
検出器変位エンコーダー46及び検出器回転エンコーダー47は、好ましくは、ケーブルによって又は無線で、計算装置5に接続される。
【0091】
図9はまた、検出器リング2に取り付けられたバランスウエイト23の具備も示している。バランスウエイト23は、回転軸が検出器リング2の質量中心を通って延在するように、検出器リング2のバランスをとるよう機能する。この目的のために、バランスウエイト23は、例えば検出器リング2の円周に沿って、移動可能であってもよく、及び/又は、検出器リング2に取り外し可能に取り付け可能であってもよく、このことは、必要に応じて検出器リング2から取り外すことができることを意味する。バランスウエイト23は、検出器リング2の内面に及び/又は外面に又はいずれかの他の部分に取り付け可能であってもよい。当然ながら、図には示されていなくても、他の全ての実施形態においても、検出器リングにおけるバランスウエイトの具備が可能である。
【0092】
図12は、重量補償装置を備えていない、PETスキャン装置1の別の実施形態を示す。U字形部分4及び検出器リング2に対してカウンターウェイトを有さないことによって、PETスキャン装置1をより軽量にすることができる。
【0093】
U字形部分4を変位させるために、図12の実施形態は、ウォームシャフト341を伴う変位駆動ユニット34を有する。ウォームシャフト341をその長手方向の中心軸周りに回転させるための駆動部として、モーター342が設けられる。ウォームシャフト341は、ウォームシャフト341の回転がガイドレール31に沿ったU字形部分4の変位をもたらすように、U字形部分4のねじ要素(図12においては見えない)と係合する。ウォームシャフト341はまた、U字形部分4の望ましくない変位を防止するよう機能する。
【0094】
図13において、図1におけるものと同じPETスキャン装置1が示されている。PETスキャン装置1は、ここでは女性患者Pの乳房を撮像するために使用される。PETスキャンは、特に腫瘍学の分野で、すなわち患者の乳房PB内の発癌性組織を検出及び/又は測定するために、使用することができる。この目的のために、患者Pは、画像の取得の間、座席ユニットの形をとるスキャン支持部6に座っている。座席ユニットは、例えば背もたれ65に取り付けることができるとともにPETスキャン処置中に患者の乳房PBを支持するよう機能する、乳房支持部68を含む。PETスキャンのため、患者の乳房が上に置かれた乳房支持部68が、検出器リング2の開口部に挿入される。検出器リング2は、好ましくは、図13に示されるように、この目的のために、垂直の向きとなるよう回転させられ、主支持構造3の下側の位置に変位させられる。乳房支持部68は、必ずしもスキャン支持部6の別の部分に取り付けられる必要はなく、代替的にスキャン支持部6の別個の部分を形成してもよい。例えば、乳房支持部68は、検出器リング2の内側に取り付けることができる挿入具の形をとってもよい。別の実施形態においては、乳房支持部68は、患者Pの上半身に取り付け可能であってもよい。いずれの場合においても、乳房支持部68は、患者の乳房PBを人間工学的に受容するために、窪みを有してもよい。
【0095】
図14は、スキャン支持部6もまた患者Pの乳房をスキャンするように適合されている、別の実施形態を示す。しかしながら、患者Pはここでは、画像の取得の間、腹臥位をとっている。スキャン支持部6は、図14に示されるように、患者の乳房PBがPETスキャンのために水平に向けられた検出器リング2の中へと垂れ下がる/延在することを可能にする、開口部又は窪みを含む。
【0096】
本発明は、当然ながら、説明された実施形態及び図1図14に示された実施形態に限定されるものではない。図1図14の種々の実施形態に関して示された要素は、当然ながら、実施形態の間で交換されること及び組み合わせることができ、多くの変更が可能である。或る特定の実施形態のみに関して示された特徴は、他の実施形態においても好適に備えることができる。例えば、カウンターウェイト71は、必ずしもU字形部分4に対して主支持構造3の反対側に配置されるとは限らず、主支持構造3の同じ側又は内部に配置されてもよい。PETスキャン装置の移動を容易にするための車輪は、全ての実施形態において設けられ得るが、省略されてもよい。U字形部分4をガイドするためのガイドレールは、単一のレール要素のみを備えてもよいし、又は3本以上のレール要素を備えてもよい。U字形部分4は、駆動される代わりに、手によって、すなわち筋力によって、変位可能及び/又は回転可能であってもよい。スキャン支持部6は、必ずしも設けられるとは限らない。複数のさらなる変更も可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 PETスキャン装置
2 検出器リング
21 ハンドル
22 固定ラグ
23 バランスウエイト
3 主支持構造
31 ガイドレール
32 ベース構造
33 車輪
34 変位駆動ユニット
341 ウォームシャフト
342 モーター
4 U字形部分
41 保持アーム
42 保持ベース
43 変位ブレーキ装置
44 回転ブレーキ装置
45 回転駆動ユニット
451 歯付きベルト
452 駆動車輪
453 モーター
46 検出器変位エンコーダー
47 検出器回転エンコーダー
5 計算装置
6 スキャン支持部
61 ベース構造
62 座席ベース
63 脚部支持部
64 背部支持部
65 背もたれ
651 背もたれ位置エンコーダー
66 ヘッドレスト
661 ヘッドレスト位置エンコーダー
67 肘掛け
68 乳房支持部
7 重量補償装置
71 カウンターウェイト
72 ガイドレール
73 滑車
74 ケーブル
M マウス
P 患者
PB 患者の乳房
R 回転軸
D 変位方向
G 重力の方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】