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特表2024-536142低シラノールポリオルガノシロキサンを調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】低シラノールポリオルガノシロキサンを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/50 20060101AFI20240927BHJP
   C08G 77/20 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08G77/50
C08G77/20
B32B27/00 101
B32B15/08 J
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024519303
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2021076881
(87)【国際公開番号】W WO2023051912
(87)【国際公開日】2023-04-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザントマイヤー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ハーン,クラウディア・カタリーナ
【テーマコード(参考)】
4F100
4J246
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB17B
4F100AB33B
4F100AG00A
4F100AK52A
4F100BA02
4F100DG01A
4F100EJ05A
4F100EJ17
4F100EJ24
4F100EJ42
4F100EJ82A
4F100GB41
4F100JG05
4J246AA03
4J246AA11
4J246AB11
4J246BA140
4J246BA14X
4J246BB020
4J246BB022
4J246BB02X
4J246BB140
4J246BB141
4J246BB14X
4J246BB200
4J246BB201
4J246BB20X
4J246CA240
4J246CA24X
4J246CA340
4J246CA34X
4J246CA400
4J246CA40X
4J246CA650
4J246CA65X
4J246FA131
4J246FA151
4J246FA421
4J246FA451
4J246FE04
4J246FE22
4J246FE25
4J246GA01
4J246GA02
4J246GA09
4J246GA12
(57)【要約】
本発明は、式(I)
[O3-a/2SiY(SiR3-a/2(RSiO3/2(R SiO2/2(R SiO1/2(SiO4/2[O3-h/2 Si(SiR SiR 3-j/2 (I)
[式中、R、R、R、R、R、R、Y、a、b、c、d、e、f、g、h、i及びkは、請求項1に示される定義を有する。]のポリオルガノシロキサンの調製プロセス、式(I)のポリオルガノシロキサンを金属基材に接合するプロセス、式(I)のポリオルガノシロキサンが架橋されるプロセス、及び前述のプロセスのうちの1つによって製造可能な金属張積層体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のポリオルガノシロキサンを調製するプロセスであって、
[O3-a/2SiY(SiR3-a/2(RSiO3/2(R SiO2/2(R SiO1/2(SiO4/2[O3-h/2 Si(SiR SiR 3-j/2 (I)
[式中、基Rは同一でも異なっていてもよい基であり、水素基、又は不飽和炭化水素基でもあることができる1~18個の炭素原子を有する一価のSi-C結合した非置換又はヘテロ原子で置換された有機の炭化水素基のいずれかであり、
Yは、化学結合、酸素原子、又は1~24個の炭素原子を有し、Si-C結合によってケイ素原子に結合している二価から十二価の有機の非置換又はヘテロ原子で置換された有機基であり、
基R、R及びRは、互いに独立して、水素基、又は非置換でもヘテロ原子によって置換されていてもよい飽和若しくは不飽和のSi-C結合したC1~C18炭化水素基、又は酸素原子を介して結合され、ヘテロ原子を含有していてもよいC1~C12炭化水素基、又はシラノール基であり、基R、R及びRは、いずれの場合も互いに独立してそれらの定義を採用することができ、したがって、同じケイ素原子上に結合した2つ以上の基R、R及び/又はRは、定義された基とは異なる基であってもよく、
基Rは、互いに独立して、水素基、シラノール基、又は不飽和炭化水素基であってもよい1~18個の炭素原子を有する一価のSi-C結合した若しくはSi-O-C結合した非置換若しくはヘテロ原子で置換された有機炭化水素基のいずれかであり、
基Rは、互いに独立して、水素基、不飽和炭化水素基であってもよい1~18個の炭素原子を有する一価のSi-C結合した非置換又はヘテロ原子で置換された有機炭化水素基、又は以下の式(II)の基のいずれかであり、
[O3-a/2SiY(SiR3-a/2(RSiO3/2(R SiO2/2(R SiO1/2(SiO4/2 (II)、
[式中、全ての基Y、R、R、R、R、R及びRを100mol%として、少なくとも0.1mol%は、オレフィン性又はアセチレン性不飽和基でなければならず、
全ての基Y、R、R、R、R、R及びRを100重量%として、合計で最大3重量%はSi-O-C結合基及びシラノール基であり、
また、全ての基Y、R、R、R、R、R及びRを100重量%として、合計で最大0.5重量%はシラノール基であり、
aは0、1又は2であり、基Yの両側の添え字aは、互いに独立してそれらの定義を採用することができ、したがって、互いに独立して異なる添え字aは、規定の値の範囲内で異なる値を有することができ、
bは1~11の値を有する数であり、好ましくは1であり、
cは0~0.9の値を有し、
dは0~0.8の値を有し、
eは0~0.5の値を有し、
fは0.01~0.6の値を有し、
gは0~0.6の値を有し、
h及びjは、互いに独立して、0、1又は2であり、
iは、0~50の値を有する整数であり、
kは0~0.9の値を有し、
c+d+e+f+g+k=1であり、少なくとも1つの値c、d又はkは>0であり、e+gは≦0.6であり、
式中、式(I)及び式(II)における基R、R、R、R、R及びR並びに添え字a、b、c、d、e、f、g、h及びiは、互いに独立して、同じ定義を有してもよく、これらの定義を、記載された値の範囲内で互いに独立して採用してもよい。]
第1のステップにおいて、式(III)のシラン
SiR 4-l (III)、
[式中、Rは加水分解性基であり、
lは、0、1又は2の値を有する整数であり、
l=1の場合、Rは基Rであり、l=2の場合、Rは基Rである。]
及び/又は式(IV)のジ-、オリゴ-若しくはポリシラン
3-h Si(SiR SiR 3-j (IV)
[式中、上記のRは加水分解性基であり、
、R、h、i及びjは、上記と同じ定義を有する。]
及び/又は式(V)のオルガニル架橋シリコーン
3-aSiY(SiR 3-a (V)
[式中、R、R、Y、a及びbは、既に記載した定義を有する。]
を水と、加水分解性基Rの少なくとも1つがハロゲン基でない場合、式(III)、(IV)及び(V)の成分の加水分解及び縮合を促進する触媒量の1つ以上の酸を使用して、非水混和性非プロトン性溶媒の存在下で反応させ、
反応が起こった後、水及び有機相中の残りの量の酸の両方をそれぞれ10000ppm未満まで減少させ、
第2のステップにおいて、第1のステップからの反応生成物を、不活性有機溶媒中の溶液中で、水なしで、補助塩基の存在下で、式(VI)
SiR (VI)、
[式中、Rは上記と同じ定義を有し、Rはハロゲン原子である。]
のハロシランと反応させる、プロセス。
【請求項2】
基R、R、R、R、R及びRが、メチル基、フェニル基、ビニル基、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基並びに1~15個の炭素原子を有する非分岐又は分岐アルコールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記非プロトン性溶媒が芳香族炭化水素である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記補助塩基が、ハロシランに対して少なくとも等モル量で使用される、請求項1~3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記補助塩基が、塩基性金属塩及び窒素化合物から選択される、請求項1~4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
第3のステップにおいて、前記式(I)のポリオルガノシロキサンが、金属基材に接合される、請求項1~5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
第4のステップにおいて、前記式(I)のポリオルガノシロキサンが架橋される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の方法により製造可能な金属張積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極性Si-O-C結合基及びシラノール基が最小限に低減され、したがってポリオルガノシロキサンが無線周波用途に適した誘電特性を有することを保証するポリオルガノシロキサンの調製プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信のための無線周波数技術の進歩的なオープニングに伴い、この技術を実現可能な材料に対する需要が高まっている。これは、銅箔、バインダー、ガラス繊維などの材料の全ての分野に関する。バインダーの場合、銅面積層体の製造及びその後の回路基板の製造に従来使用されているエポキシ樹脂は、その誘電損率が高すぎるため、もはや使用できない。ポリテトラフルオロエチレンは、非常に低い誘電損率を有し、それに基づいて無線周波用途に非常に有用であるが、他の欠点、特に不良な加工特性及び不良な接着特性を有し、これは代替物を望ましいものにする。ポリフェニレンエーテルは、低い誘電損率を良好な機械的特性及び熱的特性並びに撥水性と組み合わせるので、現在、この適用分野のためのバインダーとして集中的に利用されている。加えて、現在、この適用分野の現在の開発活動において、他の有機ポリマーも検討されており、その例はビスマレイミドポリマー、ビスマレイミド-トリアジンコポリマー及び炭化水素樹脂であり、このリストはさらなる例で補足され得る。
【0003】
ポリオルガノシロキサンは、基本的に優れた耐熱性、耐候安定性及び疎水性を有し、難燃性であり、低い誘電損率を有する。
【0004】
これらの特性のプロファイルは、無線周波適合性の銅面積層体及び部品、例えば回路基板及びアンテナの製造のためのバインダーとして使用するために、記載された有機ポリマーだけでなく、ポリオルガノシロキサンも適格とする。したがって、それらの性能能力の共生増加を達成するために、これらのクラスの材料の有益な特性を組み合わせることは明らかである。この方向の実験は、先行技術において既に文書化されている。
【0005】
ポリオルガノシロキサン中の極性置換基は、誘電損率を押し上げるので、この関連では望ましくない。先行技術によれば、ポリオルガノシロキサンは、好ましくは加水分解縮合のプロセスによって調製される。アルコールもまた、そのようなプロセスにおいて使用され得る。これに関して、例えば以下を参照されたい。
【0006】
難燃性を改善するためのポリオルガノシロキサン及びポリフェニレンエーテルの組み合わせは、US6258881号に記載されている。この目的に特に適しているのは、規定の粒径を有する固体ポリオルガノシロキサンである。
【0007】
特定の特性を改善するためのポリフェニレンエーテルとポリオルガノシロキサンとの物理的混合物から構成される組成物の使用のさらなる例は、US3737479号(衝撃強度の改善)、US5834585号(改善された加工特性を有する化学硬化性ポリフェニレンエーテルの混合物)、US2004/0138355号(閉鎖型及び部分開放型シルセスキオキサンケージ構造とのブレンドによる難燃性の改善)、US3960985号(鎖内Si-H官能基を有する少量のポリジメチルシロキサンの添加による、ポリフェニレンエーテルとアルケニル芳香族ポリマーとの混合物の熱安定性の改善)に見出される。
【0008】
これらの例は、無線周波用途のための添加剤及び共バインダーとしてのポリオルガノシロキサンの興味及び基本的な有用性の証拠である。
【0009】
US2016/0244610号は、オレフィン性不飽和MQ樹脂と不飽和のために修飾されたポリフェニレンエーテルとの混合物から構成される組成物を記載し、MQ樹脂を使用する目的は、ポリフェニレンエーテルの誘電特性及び熱特性を改善することである。しかし、US2016/0244610号の実施例は、該発明の組成物について、明らかに高い誘電損率を示す。
【0010】
技術環境を説明する際に、US2016/0244610号は、通信技術の将来の開発を特に参照するので、該発明は、その環境の要件に関連して考慮及び評価されなければならない。
【0011】
5G用途に使用するのに適している現代の材料によって既に達成されている要件及び性能容量に関しては、US2020/369855号を参照されたい。US2016/0244610号において、該発明のポリオルガノシロキサンは、モノマーから加水分解プロセスによって調製されることが観察され、また特許請求される。このプロセスはさらに、溶媒としてアルコールを使用し、試薬としてアルコキシル化前駆体を使用する。
【0012】
得られたMQ樹脂の分析的説明を提供できないUS2016/0244610号に照らして、加水分解プロセスにおけるMQ樹脂の合成を記載するより容易に理解できる先行技術として、この時点でUS5548053号を参照することができる。US5548053号のプロセスの特別な特徴は、MQ樹脂が2段階プロセスで調製され、第2のステップにおける残留シラノール基の数が減少することである。他の点では、この手順は、US2016/0244610号の実施例における手順と原則的に同じである。
【0013】
US2016/0244610号はUS5548053号のプロセスの第2段階を使用しないので、US2016/0244610号の場合、US5548053号で達成されるようなシラノール基低減効果の可能性もない。したがって、US2016/0244610号では、仮定は、US5548053号に示されるよりも多くの数のシラノール基の仮定のはずである。US5548053号からの該発明のプロセスによるシラノール基の目標とする低減にもかかわらず、相当量のアルコキシ基が残っており、これは同様にSi-O-C-結合極性基であり、低い誘電損率の達成を妨害する。MQ樹脂の合成に関してUS5548053号は、先行技術であり、より前のものであるにもかかわらず、極性基の低減の目的でより優れているので、US2016/0244610号のMQ樹脂は、ケイ素結合極性基の数に関して、US5548053号に従って得ることができるものよりも、無線周波用途で使用するのに劣る特性を有する。US2016/0244610号の実施例が、既に存在しているUS5548053の先行技術に戻らないという事実は、この関連において理解できない。しかし、維持されるように、この場合も、シラノール基の残留量だけでなく樹脂中に残留するアルコキシ基の相当な量が存在するであろう。
【0014】
US2016/0244610号の教示のさらなる弱点は、ポリフェニレンエーテルマトリックスに使用されるMQ樹脂の非相溶性のため、この出願の結果における発明の組成物の不満足な結果である。この状況は、明確に認識され、実施例に文書化されており、したがって、US2016/0244610号における発明の問題解決の性質は明らかではなく、その結果、US2016/0244610号は、その目標を逃し、無線周波数通信技術の分野に対して提示された組み合わせの教示も利益も提供しない。
【0015】
しかし、US2016/0244610号が示すのは、シリコーン、この場合はMQ樹脂タイプのシリコーン樹脂とポリフェニレンエーテルとの均質な物理的組成物が容易には可能ではないという事実である。特に、相溶性であり、良好な加工特性を有し、好適な提示形態で利用可能であり、ポリフェニレンエーテルの有機成分とシリコーン成分の両方の有益な特性の相乗的強化を可能にする好適なシリコーン樹脂の選択は、特定の課題を提起する。最適な結果のために、さらに、極性基を最小限まで減少させる好適なプロセスによって、発明的に有用なポリオルガノシロキサンを調製する必要がある。この種のプロセスは、US2016/0244610号にもUS5548053号にも見られない。
【0016】
US2016/0244610号と同様に、US2018/0220530号も、シリコーン樹脂の混合物、この場合MT型、MDT型、MDQ型及びMTQ型の混合物から構成される組成物を記載しており、これらは、より厳密な制限なしに、大規模な方法でクラスとして特許請求される。特許請求されたシリコーン樹脂は全て加水分解プロセスによって調製される。
【0017】
US2016/0244610号及びUS2018/0220530号と同様に、US2018/0215971号は、ビニル官能性又は(メタ)アクリレート官能性ポリフェニレンエーテルとのシリコーン樹脂、この場合TT型及びTQ型の混合物から構成される組成物が教示され、これらはこの場合も、より厳密な制限なしに、大規模な方法でクラスとして特許請求され、該発明の全てのシリコーン樹脂は、出発モノマーから加水分解プロセスによって調製されることが特許請求されている。
【0018】
US2018/0215971号及びUS2018/0220530号はまた、いかなる分析データも提供しないが、Si-O-C-結合極性基及びシラノール基が、使用される合成プロセスにおいてどの程度保持されるかを示し得る。
【0019】
両方の発明において目標とされる誘電損率は0.007未満である。この要件は、著しい未達成がないにもかかわらず、該発明の材料の新たに製造された試料で達成され、したがって、US2018/0215971号及びUS2018/0220530号の先行技術は、改善のために利用可能な著しい余地を残す。
【0020】
US2018/0215971号及びUS2018/0220530号による該発明の溶液の誘電損率に関して測定するとUS2018/0215971号及びUS2018/0220530号の組成物は、実質的により良好な経済性で同等の誘電損率を達成する先行技術で既に入手可能な溶液よりも著しく高価であることは注目に値する。したがって、これらの発明は、先行技術の将来の発展を構成する教示も欠いており、US2016/0244610号、US2018/0215971号及びUS2018/0220530号の発明の実現はありそうもないと思われる。
【0021】
ポリオルガノシロキサンの合成のための加水分解調製プロセスの代替は、US2019359774号によって教示される。この場合、アルカリ金属シリコネートは、オルガノシラノール又はアルコキシ官能性シラン又はシロキサン前駆体とアルカリ金属水酸化物との反応から得られ、無水縮合プロセスにおいてクロロシリル成分と反応する。該発明のプロセスにおいて反応させるアルカリ金属シリコネートは、別個の上流合成ステップにおいて調製される。このプロセスは、反応中に形成される塩化水素を結合させるために補助塩基を使用する。塩は、濾過によって、又は水によるワークアップ(work-up)において水溶液として除去される。このようにして、シラノールを含まず、アルコキシを含まない直鎖状ポリオルガノシロキサンが得られる。
【0022】
シラノール官能性ポリオルガノシロキサンに、アルカリ金属シリコネートを伴う迂回経路なしにこの合成を適用する可能性は示されていない。さらに、この合成は依然として直鎖状ポリオルガノシロキサンに限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第6258881号明細書
【特許文献2】米国特許第3737479号明細書
【特許文献3】米国特許第5834585号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0138355号明細書
【特許文献5】米国特許第3960985号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2016/0244610号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2020/369855号明細書
【特許文献8】米国特許第5548053号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2018/0220530号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2018/0215971号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2019/359774号明細書
【発明の概要】
【0024】
本発明は、無線周波用途のためのバインダーとして使用するのに適した誘電特性を有する架橋性ポリオルガノシロキサンを、水を含まないプロセスで提供し、それにより経済的に、特に金属シリコネート又は他の原材料を別個のステップで製造する必要がある迂回経路なしで得ることを目的とし、該架橋性ポリオルガノシロキサンは、特に三次元構造を含む、使用に充分な構造の多様性において最小限のSi-O-C結合極性基を有する。この要件の一部は、純粋なバインダーとして、ポリオルガノシロキサンが0.0040以下の10GHzでの誘電損率を有し、誘電損率を低下させる、存在する任意の充填剤の効果的な湿潤を提供し、粘着性のないプリプレグの製造を可能にし、有機ポリマーに相溶性である調製物を与えることである。
【0025】
本発明の主題は、式(I)のポリオルガノシロキサンの調製プロセスであって、
[O3-a/2SiY(SiR3-a/2(RSiO3/2(R SiO2/2(R SiO1/2(SiO4/2[O3-h/2 Si(SiR SiR 3-j/2 (I)
[式中、基Rは同一でも異なっていてもよい基であり、水素基、又は不飽和炭化水素基でもあることができる1~18個の炭素原子を有する一価のSi-C結合した非置換又はヘテロ原子で置換された有機の炭化水素基のいずれかであり、
Yは、化学結合、酸素原子、又は1~24個の炭素原子を有し、Si-C結合によってケイ素原子に結合している二価から十二価の有機の非置換又はヘテロ原子で置換された有機基であり、
基R、R及びRは、互いに独立して、水素基、又は非置換でもヘテロ原子によって置換されていてもよい飽和若しくは不飽和のSi-C結合したC1~C18炭化水素基、又は酸素原子を介して結合され、ヘテロ原子を含有していてもよいC1~C12炭化水素基、又はシラノール基であり、基R、R及びRは、いずれの場合も互いに独立してそれらの定義を採用することができ、したがって、同じケイ素原子上に結合した2つ以上の基R、R及び/又はRは、定義された基とは異なる基であってもよく、
基Rは、互いに独立して、水素基、シラノール基、又は不飽和炭化水素基であってもよい1~18個の炭素原子を有する一価のSi-C結合した若しくはSi-O-C結合した非置換若しくはヘテロ原子で置換された有機炭化水素基のいずれかであり、
基Rは、互いに独立して、水素基、不飽和炭化水素基であってもよい1~18個の炭素原子を有する一価のSi-C結合した非置換又はヘテロ原子で置換された有機炭化水素基、又は以下の式(II)の基のいずれかであり、
[O3-a/2SiY(SiR3-a/2(RSiO3/2(R SiO2/2(R SiO1/2(SiO4/2 (II)、
[式中、全ての基Y、R、R、R、R、R及びRを100mol%として、少なくとも0.1mol%、好ましくは少なくとも3mol%、より好ましくは少なくとも5mol%、より具体的には少なくとも7mol%は、オレフィン性又はアセチレン性不飽和基でなければならず、
全ての基Y、R、R、R、R、R及びRを100重量%として、合計で最大3重量%、好ましくは最大2.5重量%、より具体的には最大2重量%がSi-O-C結合基及びシラノール基であり、
また、全ての基Y、R、R、R、R、R及びRを100重量%として、合計で最大0.5重量%、好ましくは最大0.2重量%、より具体的には最大0.1重量%がシラノール基であり、
aは0、1又は2であり、基Yの両側の添え字aは、互いに独立してそれらの定義を採用することができ、したがって、互いに独立して異なる添え字aは、規定の値の範囲内で異なる値を有することができ、
bは1~11の値を有する数であり、好ましくは1であり、
cは0~0.9の値を有し、
dは0~0.8の値を有し、
eは0~0.5の値を有し、
fは0.01~0.6の値を有し、
gは0~0.6の値を有し、
h及びjは、互いに独立して、0、1又は2であり、
iは、0~50の値を有する整数であり、
kは0~0.9の値を有し、
c+d+e+f+g+k=1であり、少なくとも1つの値c、d又はkは>0であり、e+gは≦0.6、好ましくは<0.5、より具体的には<0.4であり、
式中、式(I)及び式(II)における基R、R、R、R、R及びR並びに添え字a、b、c、d、e、f、g、h及びiは、互いに独立して、同じ定義を有してもよく、これらの定義を、記載された値の範囲内で互いに独立して採用してもよい。]
第1のステップにおいて、式(III)のシラン
SiR 4-l (III)、
[式中、Rは加水分解性基であり、
lは、0、1又は2の値を有する整数であり、
l=1の場合、Rは基Rであり、l=2の場合、Rは基Rである。]
及び/又は式(IV)のジ-、オリゴ-若しくはポリシラン
3-h Si(SiR SiR 3-j (IV)
[式中、上記のRは加水分解性基であり、
、R、h、i及びjは、上記と同じ定義を有する。]
及び/又は式(V)のオルガニル架橋シリコーン
3-aSiY(SiR 3-a (V)
[式中、R、R、Y、a及びbは、既に記載した定義を有する。]
を水と、加水分解性基Rの少なくとも1つがハロゲン基でない場合、式(III)、(IV)及び(V)の成分の加水分解及び縮合を促進する触媒量の1つ以上の酸を使用して、非水混和性非プロトン性溶媒の存在下で反応させ、非水混和性非プロトン性溶媒は、特にアルコールではなく、またアルコールを含有せず、
反応が起こった後、水及び有機相中の残りの量の酸の両方を、技術的に関連した最小値まで、より具体的には、それぞれ10000ppm未満、好ましくはそれぞれ5000ppm未満、より具体的には、それぞれ2000ppm未満まで減少させ、その結果、それらは、あったとしても、望ましくない不純物としてのみ存在し、
第2のステップにおいて、第1のステップからの反応生成物を、不活性有機溶媒中の溶液中で、水なしで、補助塩基であって、好ましくは塩基性金属塩及び窒素化合物である補助塩基の存在下で、式(VI)
SiR (VI)、
[式中、Rは上記と同じ定義を有し、Rはハロゲン原子、好ましくは塩素原子である。]
のハロシランと反応させるプロセスである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
驚くべきことに、上記目的は、2つのステップからなる、式(I)のポリオルガノシロキサンの調製プロセスによって達成されることが見出され、第1のステップは加水分解縮合に相当し、第2のステップにおいて、第1のステップから存在するシラノール基は無水縮合によって低減され、その結果、ポリオルガノシロキサン組成物が、金属シリケート中間体を使用せずに、非加水分解プロセスで得られる。
【0027】
本発明のプロセスに従って得られる式(I)のポリオルガノシロキサンは、シラノール基及びケイ素結合アルコキシ基をほとんど含まない点で注目に値する。
【0028】
特に短いアルキル基を有するアルコキシ基及びシラノール基は、より高い誘電損率をもたらし、さらに、水分に対する攻撃点を形成することによって誘電損率の増加の原因となる。
【0029】
本発明の関連における式(I)のポリオルガノシロキサンは、ポリマー及びオリゴマーの両方のオルガノシロキサンを包含する。
【0030】
含まれる構造は、特に、式(Ia)、(Ib)及び(Ic)のものを含み、
[O3-a/2SiY(SiR3-a/2(R SiO1/2 (Ia)
(R SiO1/2[O3-h/2 Si(SiR SiR 3-j/2 (Ib)
[O3-a/2SiY(SiR3-a/2(R SiO1/2[O3-h/2 Si(SiR SiR 3-j/2 (Ic)
[式中、(Ia)において、d、e、g及びkはそれぞれ0であり、(Ib)において、c、d、e及びgはそれぞれ0であり、(Ic)において、d、e及びgはそれぞれ0である。]。これらの構造において、Si-O単位の割合は、Si-C単位及びSi-Si単位に最も有利に減少する。
【0031】
Allred及びRochowの電気陰性度尺度によるケイ素と酸素の電気陰性度の差は1.76であり、同じ表によるケイ素と炭素の電気陰性度の差よりも1だけ大きいので、Si-C結合は、Si-O結合よりも低い極性を有する。したがって、Si-O結合をSi-C結合で置き換えることは、オルガノポリシロキサンの全体的な極性を低減することにさらに寄与し、したがって、対応する成分の誘電損率を低減することにさらに寄与することが予想される。Si-C結合又はSi-Si結合で置き換えることができるSi-O結合の数が多いほど、この効果はより顕著である。したがって、例えば、Si-O結合ではなくSi-C結合又はSi-Si結合の導入によるオルガノポリシロキサン骨格における極性の低減は、そのようなオルガノポリシロキサンの幅広い有用性にかなり寄与し、本発明の最も好ましい実施形態である。
【0032】
形態(R SiO1/2)の単位は、加水分解後に残ったシラノール基を減少させる目的で無水の第2のステップにおいて使用されるので、これらの基は常に存在する。シリコーンビルディングブロックをM単位、D単位、T単位及びQ単位に従って分類する命名法では、ケイ素原子がさらなるケイ素原子に結合する酸素原子の数に応じて、対応してM単位は式RSiO1/2の単位であり、対応してD単位は式RSiO2/2を有し、対応してT単位は式RSiO3/2の単位を有し、対応してQ単位は式SiO4/2の単位を有し、したがって、本発明のポリオルガノシロキサンは、最も広い意味において、T単位、D単位及びQ単位とM単位との組み合わせであり、したがって、M樹脂、MD樹脂、MT樹脂、MDT樹脂、MDTQ樹脂、MTQ樹脂及びMDQ樹脂であり、異なる組成を有するM単位、D単位及びT単位の間で区別しない。異なるM単位からなるM樹脂は、全てのaについて2という値が仮定され、Yが化学結合又はSi-C結合した架橋基のいずれかである場合に式(Ia)から理解されるものである。その場合、架橋単位中の各ケイ素原子は1つの酸素原子のみによって囲まれて、この酸素原子は隣接するケイ素原子への結合を維持し、したがって、一般的なM、D、T、Q命名法の意味で、2つのM単位が互いに結合しているか、又は架橋基を介して互いにカップリングしているMビルディングブロックであると理解することができる。この場合、有機架橋単位とジ-、オリゴ-及び/又はポリシラン単位の両方から構成される鎖形成M単位の構造的特殊性を考慮に入れなければならない。
【0033】
式(RSiO1/2の単位の合成当量に対応する種類の、US20180220530号で使用されるような単純なM単位は、合成の第1のステップである加水分解反応ステップでは使用されない。これは原則として可能であるが、シラノール基の減少に関しては、第2の無水合成ステップにおけるこれらの基の使用と同じ効果を提供しない。したがって、式(RSiO1/2の単位は、シラノール基の数を減らし、したがってUS20180220530号による先行技術に対する改善を達成するために、第2の無水反応ステップにおいてのみ使用される。これは、本発明による手順の重要な特徴である。US20180220530号において、該発明のポリオルガノシロキサンを形成する全てのビルディングブロックは、ただ1つの加水分解ステップで互いに反応し、その場合、縮合において形成されるシラノール基のさらなる低減を達成する可能性はなく、その結果、無線周波用途のためのバインダーとしての目標用途のためのバインダーをさらに改善する可能性はない。加水分解縮合の後、ポリオルガノシロキサン骨格に結合するシラノール基が不注意に存在するという事実には、US20180220530号において全く注意は払われず、この注意の欠如は、該発明のポリオルガノシロキサンのこの点に関して意味のある分析的記述が全くないという事実から容易に明らかである。明らかに、該発明者らは、US20180220530号によるポリオルガノシロキサンの正確な組成の重要性、及び結果として説明可能な構造-活性関係、並びに改善のための出発点を、彼らが該発明に関連するものとしてそれらを開示しないほど重要でないと見なすならば、気づいていなかった。
【0034】
ポリオルガノシロキサン骨格中の極性結合の割合を低減するためにSi-Si結合した又はSi-C架橋した単位を使用する可能性を採用していないので、本発明は、US20180220530号による先行技術に対するさらなる改善をもたらす。
【0035】
構造(Ia)、(Ib)及び(Ic)において、Si-C結合した架橋有機基及び/又はSi-Si結合はもちろん同様に無極性であるので、その割合は特に高く、その構造は、実質的に末端単位(R SiO1/2のみによって閉鎖される。
【0036】
式(II)の基である基Rを除くR、R、R、R、R及び基Rの例は、芳香族又は脂肪族二重結合を含有し得る飽和又は不飽和炭化水素基であり、例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル及びtert-ペンチル基、n-ヘキシル基などのヘキシル基、n-ヘプチルなどのヘプチル基、n-オクチル基、及び2,2,4-トリメチルペンチル及び2-エチルヘキシル基のようなイソオクチル基などのオクチル基、n-ノニル基などのノニル基、n-デシル基などのデシル基、n-ドデシル基などのドデシル基、n-テトラデシル基などのテトラデシル基、n-ヘキサデシル基などのヘキサデシル基、及びn-オクタデシル基などのオクタデシル基などのアルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシル及び4-エチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基及びメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル、ビフェニリル、ナフチル及びアントリル及びフェナントリル基などのアリール基、o-、m-、p-トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基などのアルカリル基、ベンジル基などのアラルキル基、7-オクテニル、5-ヘキセニル、3-ブテニル、アリル及びビニル基などのアルケニル基、並びにまたα-及びβ-フェニルエチル基である。
【0037】
基R、R、R、R、R及びR中に存在し得る好ましいヘテロ原子は、酸素原子である。さらに、窒素原子、リン原子、硫黄原子、塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子も可能であるが、好ましくない。
【0038】
好ましいヘテロ原子含有有機基R、R、R、R、R及びRの例は、それぞれアクリル酸又はメタクリル酸からのアクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基を含有する基であり、1~15個の炭素原子を有する非分岐又は分岐アルコールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルでもある。好ましいそのような基は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルアクリレート、t-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート及びノルボルニルアクリレートに由来するものである。特に好ましいのは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びノルボルニルアクリレートである。
【0039】
これらの基は、好ましくはケイ素原子に直接結合しないが、代わりに炭化水素スペーサーを介して結合し、炭化水素スペーサーは1~12個の炭素原子を含み得、好ましくは1個又は3個の炭素原子を含み、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基に存在するヘテロ原子以外のヘテロ原子を含まない。基R、R、R、R、R及びRは、好ましくはメチル基、フェニル基、ビニル基、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基並びに1~15個の炭素原子を有する非分岐又は分岐アルコールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルから選択される。
【0040】
さらに好ましいヘテロ原子含有基R、R、R及びRは、式(VII)のものである。
【0041】
【化1】
【0042】
式(VII)中、R、R10、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素基、炭化水素基又は異種原子で置換された炭化水素基であり、常に、基R、R10、R11、R12、R13及びR14の少なくとも1つは、Si-C結合又はSi-O-C結合を介してケイ素原子に結合している炭化水素基であり、式(VII)の基がケイ素原子に結合しているこの炭化水素基は、ヘテロ原子を含有しないC3炭化水素基であることが好ましい。あるいは、基R、R10、R11、R12、R13及びR14はまた、化学結合であってもよく、したがって、式(II)の基は、化学結合を表すこの基によりSi-C結合を介してケイ素原子に直接結合する。
【0043】
基R、R10、R11、R12、R13及びR14の例は、水素基、飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、第一級、第二級及び第三級ブチル基、ヒドロキシエチル基、芳香族基、例えば、フェニルエチル基、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ヘテロ原子含有基、例えば、ヒドロキシメチル基、カルボキシエチル基、メトキシカルボニルエチル基、及びシアノエチル基、及びアクリレート及びメタクリレート基、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルアクリレート、t-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート及びノルボルニルアクリレート、並びにオレフィン性又はアセチレン性不飽和炭化水素基である。
【0044】
隣接する基R及びR11並びに隣接する基R10及びR12はまた、任意選択で、同じ環状飽和又は不飽和基に相互に結合されてもよく、したがって、縮合多環式構造が形成されてもよい。
【0045】
式(VII)のフェノール基の例は、フェノール基、オルト-、メタ-又はパラ-クレゾール基、2,6-、2,5-、2,4-又は3,5-ジメチルフェノール基、2-メチル-6-フェニルフェノール基、2,6-ジフェニルフェノール基、2,6-ジエチルフェノール基、2-メチル-6-エチルフェノール基、2,3,5-、2,3,6-又は2,4,6-トリメチルフェノール基、3-メチル-6-tert-ブチルフェノール基、チモール基及び2-メチル-6-アリルフェノール基であり、これらは任意選択で酸素原子上で置換されてもよい。
【0046】
フッ素含有基の好ましい例は、トリフルオロプロピル、ノナフルオロヘキシル及びヘプタデカフルオロオクチル基である。
【0047】
Yは、好ましくは、2~12個のシロキサニル単位の間に1~24個の炭素原子を有する連結有機単位である。Yは、好ましくは二価、三価又は四価であり、より具体的には二価である。
【0048】
好ましい架橋芳香族基Yは、式(VIIIa)、(VIIIb)及び(VIIIc)のものである。
【0049】
【化2】
[式中、基R15、R16、R16及びR18は、水素基、又は置換されていてもよい炭化水素基、又は式OR19(式中、R19は炭化水素基である)の基であり得る]。ここで、式(VIIIa)におけるR15及びR16又はR16及びR18などの隣接する基は、例えば、互いにカップリングして環状基を形成してもよく、したがって、縮合環系が形成される。
【0050】
このような架橋芳香族基の典型的な例は、p-、m-又はo-フェニレン基、2-メチル-1,4-フェニレン基、2-メトキシ-1,4-フェニレン基であり、p-フェニレン基が特に好ましい。
【0051】
例えば、式(IIIa)の2つ以上の単位が互いにカップリングし、このオリゴマー架橋構造要素が末端芳香環の対応する炭素原子の連結によってケイ素原子上に存在するように、2つ以上のこのような基を互いにカップリングさせることも可能である。ここでの芳香族単位は、互いに直接結合していてもよく、又はアルカンジイル単位、例えばメチレン基、1,2-エタンジイル基、1,1-エタンジイル基、2,2-ジメチルプロピル基、又はスルホン基などの架橋基を介して互いにカップリングしてもよい。
【0052】
芳香族架橋単位のさらなる例は、2つの置換されてもよいフェノール環がアルカンジイル単位又は他の単位を介して架橋されるものである。典型的な代表例は、フェノール酸素上の置換を有する以下の基、すなわち、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン基(置換ビスフェノールA基)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン基(置換ビスフェノールF基)及びビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン基(ビスフェノールS基)であり、フェノール酸素原子は典型的には-(C)-型の基によって置換されており、この場合、基-(C)-はケイ素原子にSi-C結合しており、それによって架橋を生成する。
【0053】
芳香族単位によって架橋されていない好ましい基Yはアルカンジイル、アルケンジイル及びアルキンジイル基であり、これは任意選択でヘテロ原子を含有してもよく、これらの基において架橋の機能を担わないか又はそれに寄与しない置換基として芳香族基を含有してもよい。
【0054】
典型的な例は、メチレン基、メチン基、四価炭素、1,1-エタンジイル及び1,2-エタンジイル基、1,4-ブタンジイル及び1,3-ブタンジイル基、1,5-ペンタンジイル、1,6-ヘキサンジイル、1,7-ヘプタンジイル、1,8-オクタンジイル、1,9-ノナンジイル、1,10-デカンジイル、1,11-ウンデカンジイル及び1,12-ドデカンジイル基、1,2-ジフェニルエタンジイル基、1,2-フェニルエタンジイル基及び1,2-シクロヘキシルエタンジイル基である。直鎖状架橋単位が1を超える炭素原子を有し、置換パターンがそれを可能にする場合、これらの基のそれぞれは、アルファ-オメガ結合性を通して架橋、換言すれば、任意の他の結合性によって直鎖状単位の最初及び最後のそれぞれの原子を通して架橋、換言すれば、異なる鎖状炭素原子の使用をもたらし得る。また、典型的な例は、記載された架橋炭化水素の直鎖状の代表であるだけでなく、それらの異性体であり、これは、炭化水素構造の異なる炭素原子のケイ素原子への連結によって架橋を生成し得る。
【0055】
非芳香族のヘテロ原子を含まない炭化水素基の群から特に好ましい基の例は、-CHCH-、-CH(CH)-、-CH=CH-、-C(=CH)-及び
【0056】
【化3】
である。
【0057】
典型的なフッ素置換架橋基Yの例は、-C(CF-、-C(H)F-C(H)F-及びC(F)-C(F)-基である。
【0058】
典型的なヘテロ原子含有架橋基の例は、例えば、エチレンオキシプロピレン基及びエチレンオキシブチレン基である。他の典型的な例は、両側の-(CH-又は-CH-CH(R15)-C(=O)O-末端を有するフェニレンエーテル基又はグリコール基であり、nは典型的には3~8であり、R15は水素原子又はメチル基であり、この末端基を介してケイ素原子に結合する。
【0059】
全ての記載は、単なる例示であり、限定するものではないと理解されるべきである。
【0060】
それらの粘度に関して、本発明に使用されるオルガノポリシロキサンは、1分子当たりのそれらの構成構造単位の平均数に応じて、広範囲にわたって変動し得るか、又は固体であり得る。
【0061】
本発明において有用な液体オルガノポリシロキサンは、25℃において非架橋状態で、20~8000000mPas、好ましくは20~5000000mPas、より具体的には20~3000000mPasの粘度を有する。
【0062】
本発明において有用な非架橋状態の固体オルガノポリシロキサンは、25℃~250℃、好ましくは30℃~230℃、より具体的には30℃~200℃の範囲のガラス転移温度を有する。特に適していることが証明されたオルガノポリシロキサンは、架橋フェニレン単位を有し、全てのSi-C結合した置換基を100mol%として、合計で少なくとも20mol%の芳香族分率を有するものである。ここでのフェニレン単位は、このタイプの架橋置換基の性質について実施例に例示的に記載されるように、モノマー及びオリゴマーの、置換及び非置換フェニレン単位の両方であると理解される。
【0063】
式(II)の基Rの選択された例は、以下の平均組成を有する直鎖状及び環状構造である。
[O2/2MeSi-CH-CH-SiMeO2/2][(CH=CH)(Me)SiO1/2
[O2/2MeSi-CH-CH-SiMeO2/2][(H)(Me)SiO1/2
[O2/2MeSi-CH-CH-SiMeO2/2[(CH=CH)(Me)SiO1/2
[O2/2MeSi-CH-CH-SiMeO2/2[(H)(Me)SiO1/2
[O2/2PhSi-C-SiPhO2/2][(CH=CH)(Me)SiO1/2
[O2/2PhSi-C-SiPhO2/2][(H)(Me)SiO1/2
[O2/2PhSi-C-SiPhO2/2[(CH=CH)(Me)SiO1/2
[O2/2PhSi-C-SiPhO2/2[(H)(Me)SiO1/2
[O2/2PhSi-C-SiMeO2/2][(CH=CH)(Me)SiO1/2
[O2/2PhSi-C-SiMeO2/2][(H)(Me)SiO1/2
[O2/2MeSi-CH-CH-SiMe1/2[(CH=CH)(Me)SiO1/2
[O2/2MeSi-CH-CH-SiMeO2/2[(CH=CH)(Me)SiO1/2[(H)(Me)SiO1/2
(CH=CH)(Me)SiO1/2
(H)(Me)SiO1/2
(CH-CH(=CH)C(=O)O-CHCHCH)(Me)SiO1/2
(Me)SiO1/2
(CH=CH)SiO1/2
(CH=CH)PhSiO1/2
【0064】
好ましい加水分解性基R及びRの例は、ハロゲン、酸又はアルコキシ基、より好ましくは塩素、アセテート基、ホルメート基、メトキシ基又はエトキシ基である。
【0065】
化合物(VI)は、先行技術のプロセスによって得られ、使用される反応の種類は、それぞれの化合物(VI)の組成に大きく依存する。化合物(VI)は、典型的には、例えば、ヒドロシリル化によって、例えば、アセチレン、ジアリル又はジビニル化合物及びSi-H官能性シリコーンビルディングブロックなどのオレフィン性不飽和有機前駆体から得られる。
【0066】
ここで考えられるプロセスには、ハロゲン化有機前駆体からのグリニャール反応及びその後のハロゲン化又はアルコキシル化オルガノシランとの反応も含まれる。ハロゲン化有機前駆体とアルキルアルカリ金属化合物、例えばブチルリチウムとの金属ハロゲン化物交換反応、及びシリコーンビルディングブロックへの結合のための既知の後続の反応を任意選択で使用することもまた可能である。当業者は、入手可能な文献から容易にアクセス可能であり、理解可能であるそのようなプロセスを認識している。これらのプロセスは本発明の主題ではないので、この時点で文書化され検索可能な先行技術が単に参照される。
【0067】
第1のプロセスステップ、すなわち、共加水分解は、好ましくは、化合物(III)、(IV)、(V)及び(VI)の混合物を、それらが使用される限り、冷却しながら水又は希酸中に計量することによって行われる。HClなどの気体酸の場合では、遊離した酸を気体として回収するならば、濃HCl水溶液への計量供給も同様に目的にかなっている。加水分解性基Rの性質に応じて、加水分解は、多かれ少なかれ発熱性であり、したがって、反応の安全な性能のために、及び適切な場合には、合成の対応するシーケンスにおける二次反応を回避するために冷却が必要である。反応を完了させるために、逆に、高温を使用することが有利かつ必要であることもある。
【0068】
クロロシランの場合の反応時間は、一般に非常に短く、したがって、バッチ操作においてプロセスを実施するのに必要な時間は、主に冷却性能に依存する。あるいは、(III)、(IV)及び/又は(V)の共加水分解は連続的に行うこともでき、それにはループ反応器だけでなく、カラム反応器及び管型反応器も適切である。
【0069】
残留酸を枯渇させるためには、水での効果的な洗浄、クリーンな相分離及び減圧下での加水分解生成物の精製が有利である。
【0070】
このプロセスは、大気圧下で実施することができる。しかし、目的に応じて、より高い又はより低い圧力も同様に実用的である。第1のプロセスステップの終わりに、存在する水の量は、最大でも、意図しない不純物として先行技術の方法によってもはやさらに枯渇され得ない水の残留量が存在する程度まで低減されることが必須である。理想的には、残った残留水の量は、検出限界を下回るように低減され、したがって、無水媒体を想定することができる。ポリオルガノシロキサンが水と反応することができる条件、すなわち典型的には酸性又は塩基性条件が存在する場合、水は基本的にシラノール基の形成の選択肢を伴うので、水のこの枯渇は本発明のプロセスの実施の成功に必要である。その意図はシラノール基を枯渇させることであるので、次のステップにおける水の存在は有害である。本文の残りでは、水が枯渇した第1のステップからの反応混合物を無水物と呼ぶ。
【0071】
第2のプロセスステップは、第1のステップからの水を含まない反応混合物を用いて行われる。第1のステップからのポリオルガノシロキサン上のシラノール基を、式(VI)のシランと、適切な場合には不活性溶媒中の溶液として該シランを計量することにより反応させる。反応を開始し、反応を加速するために、補助塩基が有利に使用される。原則として、シラノール基と式(VI)のシランとの間の反応は、補助塩基なしでも可能であるが、その場合、反応速度は非常に遅く、反応時間が長いため、反応は工業規模で不経済であろうし、又は不適切な転化をもたらすであろう。基Rはハロゲン基、より具体的には塩素基である。
【0072】
形成されたハロゲン化水素を捕捉するための補助塩基としての適性は、塩基性塩又は窒素含有化合物、例えばアミン、尿素、イミン、グアニジン及びアミドによって保有される。塩基性塩の例は、ナトリウムヒドリド、ナトリウムアミド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムである。窒素含有化合物の例は、アンモニア、エチルアミン、ブチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルデシルアミン、トリイソオクチルアミン、尿素、テトラメチル尿素、グアニジン、テトラメチルグアニジン、N-メチルイミダゾール、N-エチルイミダゾール、ピペリジン、ピリジン、ピコリン、N-メチルモルホリンである。好ましくは、窒素原子が水素原子を全く有さないアミン化合物が使用される。
【0073】
補助塩基は、好ましくは、ハロシランに対して少なくとも等モル量で使用される。ハロシランのモル当量当たり、好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも1.0、より好ましくは少なくとも2.0塩基当量の補助塩基が使用される。例えば、同時に溶媒として役立つことが意図される場合、より多い添加量の補助塩基を使用することも可能である。しかし、通常、これは、いかなる利点も提供しないが、代わりに、空時収率を低減し、したがって、プロセスの経済的実行可能性を低減する。ハロシランは、好ましくは、プロセスの第1のステップからの無水反応混合物に添加され、次いで補助塩基が計量投入される。この手順はまた、任意選択で、第1の合成ステップからの反応混合物に補助塩基を最初に添加し、続いてハロシランを計量投入するように逆にしてもよい。
【0074】
2つ以上の補助塩基の混合物を使用することもできる。
【0075】
式(VI)の1つ以上のハロシランは、好ましくは、存在するハロゲン基の量が、第1の反応ステップからのポリオルガノシロキサン種中のシラノール基と等モルであるように使用される。
【0076】
式(VI)の1つ以上のハロシランと第1の反応ステップからのポリオルガノシロキサン種のシラノール基との反応は、好ましくは少なくとも-20℃、より好ましくは少なくとも0℃、より具体的には少なくとも10℃の温度で行われる。最大許容温度は、さらに、使用される溶媒及び式(VI)の1つ以上のハロシランの沸点によって決定され、反応温度は、好ましくは200℃を超えず、より好ましくは175℃を超えず、より好ましくは150℃を超えない。
【0077】
反応混合物は、必要に応じて冷却又は加熱されてもよく、個々の反応成分は、例えば反応熱を利用できる目的で、互いに反応させる前に予めある温度に調整されてもよい。このプロセスは、撹拌反応器中においてバッチ式で、又はカラム、ループ、流動床若しくは管型反応器中で連続的に実施することができる。反応中に形成されたあらゆる低分子量シロキサンは、必要に応じて蒸留によって反応混合物から除去することができる。反応で形成されたハロゲン化物塩は、デカントして取り除くか、濾過して取り除くか、又は遠心分離によって除去するか、又は水に溶解して分離することができる。水性ワークアップのために、既に存在する溶媒の量は、例えば、密度差を確立することによって相分離を促進するために、必要に応じて適合されてもよく、又はさらなる溶媒が添加されてもよく、溶媒の溶解度又は水との混和性は非常に低く、より具体的には25℃で5重量%以下である。
【0078】
好ましくは、過剰の式(VI)のハロシランは、水性ワークアップの前に蒸留によって除去される。これにより、ポリオルガノシロキサン上に再びシラノール基の形成をもたらす可能性がある酸性水溶液の存在が回避される。
【0079】
第2の反応ステップは、好ましくは水の非存在下で、すなわち乾燥雰囲気下で、又は減圧下で、より好ましくはアルゴン、窒素、二酸化炭素又は希薄空気などの不活性ガス下において、好ましくは900~1100hPaで行われる。
【0080】
第1及び第2のステップの両方に好適な非プロトン性溶媒としては、特に、芳香族炭化水素溶媒、例えばベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン又はこれらの混合物が挙げられる。選択される基に応じて、脂肪族又は脂環式溶媒、及び/また直鎖若しくは環状エーテルを使用することも可能であり得る。溶媒の適合性は、得られるポリオルガノシロキサンに対するその溶解度によって決定される。溶媒は、得られたポリオルガノシロキサンを充分によく溶解しなければならず、水と混和性であってはならず、すなわちそれ自身は5重量%を超える水を溶解できてはならず、反応に関与してはならない。
【0081】
溶媒の適合性は、任意選択で適切な実験によって決定することができる。芳香族溶媒は、記載された条件を最良に満たし、したがって好ましい。
【0082】
この時点で、シラノール基の数を低減する目的で、一般に対称性ジシロキサンの形態で使用されるジシロキサンの使用は、本発明に従わないものとして除外されることに留意されたい。ジシロキサンは、Si-O-Si結合の破壊によって酸の存在下で開裂するが、この目的のための酸は、一般に水性調製物として使用され、これは、合成の第2のステップに意図的に水を導入し、その結果、シラノール基が再形成する傾向を排除することができず、第2のステップはもはや無水でなく、その効率が低下する。
【0083】
式(I)のポリオルガノシロキサンは化学的に硬化可能であり、これは、それらが化学反応によって硬化されて架橋不溶性ネットワークを形成することができることを意味する。硬化は、先に説明したオレフィン性不飽和基によって起こる。典型的には、ここでは、ラジカル重合反応が硬化のために使用されるか、又は、ラジカルとして存在するケイ素結合水素、並びにオレフィン性又はアセチレン性不飽和官能基が存在する場合、ヒドロシリル化硬化が使用される。
【0084】
式(I)のポリオルガノシロキサンは、それを介して該ポリオルガノシロキサンが化学的に架橋可能であるオレフィン官能基の全てを有する。ここで可能な化学的架橋反応は、先行技術におけるような既知の反応、特にラジカル架橋を包含し、これは、UV光などの好適な放射線源を使用することと、分解してラジカルを形成する不安定な化合物によって開始されてもよく、付加架橋は、例えば、好適なヒドロシリル化触媒の存在下でSi-H官能基とのオレフィン性不飽和基のヒドロシリル化によって行われる。
【0085】
充分な硬化には充分な量の官能基の存在が必要となる。充分な硬化を達成するためには、少なくとも、本発明に使用されるポリオルガノシロキサンの1分子当たり平均1.0個の官能基が存在しなければならず、好ましくは、本発明のポリオルガノシロキサンの1分子当たり平均少なくとも1.1個、より詳細には平均少なくとも1.2個の官能基が存在する。ここで、官能基は異なっていてもよく、例えば、官能基の一部はSi-H基であり、官能基の別の部分は、ラジカル硬化性又はヒドロシリル化可能なオレフィン性不飽和基を表す。相補的な官能基のさらなる組み合わせも考えられ、相補的な意味は、官能基の選択された組み合わせが互いに反応することができることを意味する。1種類の官能基のみが存在する場合、例えば、ラジカル硬化性であるオレフィン性又はアセチレン性不飽和官能基のみが存在する場合、対応する数のこれらの官能基が存在しなければならない。均質なマトリックスを形成するための共重合の関連において、ここでは、選択されるオレフィン基及びアセチレン基が充分な共重合性を有することを保証しなければならない。互いに共重合可能でないオレフィン基の組み合わせも可能であり、ただし、得られる2つ以上の個々のポリマーのマトリックスは、相互に相溶性のままであり、別個のドメインにおいて互いに分離する別個の相を形成しないことを条件とする。
【0086】
ラジカル重合を開始するのに適した開始剤の例としては、ここでは、特に、有機過酸化物の分野からの例、例えば、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、クミルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルクミルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシシクロヘキサン、2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ヘキサデシルペルオキシジカーボネート、テトラデシルペルオキシジカーボネート、ジベンジルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルベンゼンジヒドロペルオキシド、1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)ビス(tert-ブチル)ペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジセチルペルオキシジカーボネート、アセチルアセトンペルオキシド、アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、tert-アミルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルモノペルオキシマレエートが挙げられ、これらは単なる例示であり、限定的なものではない。任意選択で、ラジカル反応のために異なる開始剤の混合物を使用することも可能である。ラジカル反応のための開始剤又は開始剤混合物の適合性は、その分解動力学及び満たされなければならない必要条件に依存する。これらの境界条件に充分な注意が払われれば、当業者は開始剤を適切に選択することができる。
【0087】
オレフィン性及びアセチレン性不飽和基と同様にケイ素結合水素を含有する調製物の場合、ヒドロシリル化反応による硬化の可能性が存在する。ヒドロシリル化反応を促進するための好適な触媒は、先行技術からの既知の触媒である。
【0088】
このような触媒の例は、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム及びパラジウムを含む貴金属の群からの化合物又は錯体、好ましくは白金金属の群からの金属触媒又は白金金属の群からの化合物及び錯体である。そのような触媒の例は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム又は活性炭などの支持体上に存在し得る金属の微細に分割された白金、白金の化合物又は錯体、例えば、ハロゲン化白金、例えば、PtCl、HPtCl×6HO、NaPtCl×4HO、白金-オレフィン錯体、白金-アルコール錯体、白金-アルコキシド錯体、白金エーテル錯体、白金アルデヒド錯体、白金ケトン錯体(HPtCl×6HO及びシクロヘキサノンの反応生成物を含む)、白金-ビニルシロキサン錯体(例えば、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン)、(検出可能な無機結合ハロゲンの有無にかかわらず)ビス(γ-ピコリン)白金クロリド、トリメチレンジピリジン白金クロリド、ジシクロペンタジエン白金ジクロリド、ジメチルスルホキシエテニル白金(II)ジクロリド、シクロオクタジエン白金ジクロリド、ノルボルナジエン白金ジクロリド、γ-ピコリン白金ジクロリド、シクロペンタジエン白金ジクロリド、及び白金テトラクロリドとオレフィン及び第一級若しくは第二級アミン又は第一級及び第二級アミンとの反応生成物、例えば1-オクテン溶液中の白金テトラクロリドとsec-ブチルアミンとの反応生成物、又はアンモニウム-白金錯体である。本発明のプロセスのさらなる実施形態は、イリジウムとシクロオクタジエンとの錯体、例えばμ-ジクロロビス(シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)を使用する。
【0089】
この記載は単なる例示であり、限定的なものではない。ヒドロシリル化触媒の開発は、動力学的研究の範疇であり、これは、当然ながら、ここで同様に使用され得る新しい活性種を継続的に生成している。
【0090】
ヒドロシリル化触媒は、好ましくは白金の化合物又は錯体、より好ましくは塩化白金及び白金錯体、より好ましくは白金-オレフィン錯体、非常に好ましくは白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を含む。
【0091】
本発明のプロセスにおいて、ヒドロシリル化触媒は、2~250重量ppmの量で、好ましくは3~150ppmの量で、より具体的には3~50ppmの量で使用される。
【0092】
好ましい一実施形態では、式(I)のポリオルガノシロキサンは、第3のステップにおいて金属基材に接合される。
【0093】
式(I)のポリオルガノシロキサンは、金属張積層体を製造するためのバインダーとして及び/又は接着促進剤として、特に電子用途のために、より具体的には金属面積層体のために、特に無線周波用途、特に1GHz以上の周波数で動作する用途での使用に特に適している。特に好ましいのは、特に無線周波用途のための、電子デバイスにおけるプリント回路基板としての製造に使用される種類の金属面エレクトロ積層体の製造である。
【0094】
前記金属面エレクトロ積層体は、補強材料を含有してもよいが、そうである必要はない。これは、それらが、例えば、繊維織布又は不織布などの強化布を含まなくても又は含んでもよいことを意味する。補強材料が含まれる場合、それは好ましくは層状に配置される。この場合の補強層は、多数の異なる繊維から構成することができる。
【0095】
これらの種類の補強層は、収縮特性を制御し、向上した機械的強度を提供するのに役立つ。
【0096】
補強層が使用される場合、この層を形成する繊維は、多数の異なる可能性から選択され得る。このような繊維の非限定的な例は、ガラス繊維、例えばEガラス繊維、Sガラス繊維及びDガラス繊維、シリカ繊維、ポリマー繊維、例えばポリエーテルイミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテルケトン繊維、ポリエステル繊維、ポリカーボネート繊維、芳香族ポリアミド繊維、又は液晶繊維である。繊維は10nm~10μmの直径を有することができる。補強層は最大で200μm、好ましくは最大で150μmの厚さを有する。
【0097】
適用の好ましい形態の1つは、プリント回路基板のさらなる製造のためのガラス繊維複合体を含む金属面積層体を製造するための有機バインダーと共にバインダー又は共バインダーとしての式(I)のポリオルガノシロキサンの使用である。好ましい金属は銅である。
【0098】
本発明における式(I)のポリオルガノシロキサンの使用のために、それらは単独のバインダーとして使用され得る。あるいは、それらは、有機モノマー、オリゴマー及びポリマーとブレンドされた形態で使用され得る。
【0099】
これらの目的のために典型的に使用される有機モノマー、オリゴマー及びポリマーは、ポリフェニレンエーテル、ビスマレイミド、ビスマレイミド-トリアジンコポリマー、炭化水素樹脂、例えばポリブタジエンなどの脂肪族樹脂及びポリスチレンなどの芳香族樹脂の両方、並びにまた、例えばスチレン-ポリオレフィンコポリマーなどの脂肪族特性及び芳香族特性の両方を有するハイブリッド系(コポリマーの形態は原則として限定されない)、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、及び任意選択で他のものを含み、選択は例示的であり非限定的である。
【0100】
好ましい有機モノマー、オリゴマー及びポリマーは、オリゴマー及びポリマーポリフェニレンエーテル、モノマー、オリゴマー及びポリマービスマレイミド、オリゴマー及びポリマー炭化水素樹脂、並びにビスマレイミド-トリアジンコポリマーである。これらの有機モノマー、オリゴマー及びポリマーは、任意選択で互いに混合物として使用され得る。式(I)のポリオルガノシロキサンを含む調製物中の有機モノマー、オリゴマー及びポリマーの割合は、有機成分が同様に使用される場合、式(I)のポリオルガノシロキサンと有機モノマー、オリゴマー及びポリマーとの混合物を100%として、10~90%の間、好ましくは20~90%、より具体的には30~80%である。
【0101】
さらに、式(I)のポリオルガノシロキサンだけでなく、有機モノマー、オリゴマー又はポリマーとのその混合物も、例えばスチレン、α-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン及びビニルスチレン、クロロ-及びブロモスチレンなどの反応性希釈剤として、オレフィン性又はアセチレン性不飽和基を任意選択で有するさらなる有機モノマーに溶解することができる。
【0102】
また、式(I)のポリオルガノシロキサン及び任意選択で有機モノマー、オリゴマー及びポリマーとのその混合物を溶解するための典型的な非反応性溶媒、例えば、脂肪族又は芳香族溶媒、例えば、定義された沸点範囲を有する脂肪族混合物、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、又はこれらの芳香族の混合物、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸メチル、プロピオン酸メチル及びプロピオン酸エチルなどのカルボン酸エステルを使用することも可能であり、特に式(I)のポリオルガノシロキサンと有機モノマー、オリゴマー及びポリマーとの混合物の有効な溶解度は、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びその混合物などの芳香族溶媒中で達成される可能性が最も高い。
【0103】
式(I)のポリオルガノシロキサンが有機オリゴマー若しくはポリマー又はそれらの混合物と組み合わせて使用される場合、選択された有機成分と相溶性であり、相分離をもたらさない式(I)のポリオルガノシロキサンが使用されることが必須である。これらの事象において、一般に、フェニル基が有機成分との相溶性を高めるので、式(I)のよりフェニルに富むポリオルガノシロキサンが使用されるべきである。特に、ポリフェニレンエーテル又は芳香族炭化水素樹脂などの比較的芳香族に富む有機ポリマーでは、式(I)のより芳香族に富むポリオルガノシロキサンを使用するべきであり、架橋芳香族基及びシリル単位上で末端に結合した芳香族置換基は、両方とも相溶性の確立に寄与する。式(I)のポリオルガノシロキサンと有機バインダーの定義された選択との適合性を確立するために必要とされる芳香族基の正確な量は、有機バインダーの選択に応じて確認されなければならない。
【0104】
同様に、異なるポリマークラスから任意選択で選択される2つ以上の有機ポリマーを混合し、それらをバインダー調製物中で使用することが可能である。式(I)の2つ以上のポリオルガノシロキサンをバインダー調製物中で互いに組み合わせることも可能である。すなわち、本発明によれば、1つのみの式(I)のポリオルガノシロキサンをバインダーとして使用するか、あるいは2つ以上の式(I)のポリオルガノシロキサンを互いに組み合わせてバインダー調製物を形成することができる。本発明では、1つのみの式(I)のポリオルガノシロキサンを1つ以上の有機ポリマーと組み合わせてバインダー調製物を形成することも可能である。2つ以上の式(I)のポリオルガノシロキサンを1つ以上の異なる有機ポリマーと組み合わせてバインダー調製物を形成することも本発明に従う。
【0105】
式(I)の1つ以上のポリオルガノシロキサンと1つ以上の有機オリゴマー又はポリマーとの相溶性の決定は、1つ以上の有機バインダーと式(I)の1つ以上のポリオルガノシロキサンとの混合物を、有利には、選択された成分の全てを溶解する溶媒中で混合し、次いで、先行技術の方法、例えば蒸留又は噴霧乾燥によるものによって溶媒を除去し、得られた残渣を視覚的評価又は顕微鏡法、場合によっては電子顕微鏡法を用いる評価に供することによって容易に達成される。相溶性の混合物は、有機成分から分離し、独立相として認識可能なシリコーンドメインが存在しないことから明らかである。
【0106】
さらなる配合成分、例えば消泡剤及び脱気剤、湿潤剤及び分散剤、流動制御剤、相溶化剤、接着促進剤、硬化開始剤、触媒、安定剤、充填剤、例えば顔料、染料、阻害剤、難燃剤及び架橋助剤などの、シランを任意選択で含んでもよい添加剤の使用は本発明に従い、原則として、そのような成分の選択に制限はない。適切な混和性挙動という意味での相溶性の試験とは別に、反応性に関する相溶性の試験もまた、早期のゲル化を防ぐため、及び硬化時に全ての成分の互いに充分に迅速な重合又は共重合があることを保証するため、並びに充分な湿潤性及び任意選択で他の特性に関して試験するために必要な場合がある。これを念頭に置き、配合物を作製する際に考慮に入れる必要があり得る。
【0107】
使用可能な充填剤の例は、セラミック充填剤、例えばシリカ、例えば沈降シリカ又はヒュームドシリカ(これらは親水性又は疎水性、好ましくは疎水性であってよく、さらに、その表面上に有機基を機能的及び任意選択で反応的に備えていてもよい)、石英(これは任意選択で表面処理又は表面官能化されていてよく、表面上に反応性官能基を担持することを可能にする)、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、タルク、雲母、アルミナ、カオリン、硫酸マグネシウム、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、コランダム、珪灰石、タングステン酸ジルコニウム、中空セラミックビーズ、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、固体ガラスビーズ、中空ガラスビーズ及び窒化ホウ素である。使用されるさらなる充填剤は、例えば、シリカの表面被覆を有するシリコーン樹脂ビーズ、及びポリマーの被覆を有するエラストマー粒子(この場合、エラストマー粒子は、任意選択でシリコーンエラストマーであってもよく、この種のエラストマー粒子上の表面被覆の典型的な例はポリメタクリル酸メチルシェルである)など、様々な材料のコア-シェル粒子であってもよい。セラミック充填剤は、好ましくは、D90として表される、0.1μm~10μmの粒径を有する。充填剤は、バインダー(単数又は複数)、反応性モノマー、添加剤及び充填剤からなる全バインダー配合物を100パーセントとして、好ましくは0.1~60重量パーセント、より好ましくは0.5~60重量パーセント、より具体的には1~60重量パーセントの量で存在する。これは、使用されるいかなる非反応性溶媒の量も含まれないことを意味する。
【0108】
充填剤の中でも、熱伝導性を有するものが特に重視されるべきである。これらは、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、ダイヤモンド、グラファイト、酸化ベリリウム、酸化亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素及び酸化アルミニウムである。
【0109】
原則として、バインダー調製物は、典型的には5~25重量パーセントの量の難燃性添加剤を含み得る。しかし、式(I)のポリオルガノシロキサンの特定の特徴は、式(I)のポリオルガノシロキサン自体が既に難燃特性を示すので、難燃性添加剤の必要性を低減することである。ポリシルセスキオキサン及びシロキサンは難燃特性を示すことが知られており、難燃性添加剤としてのそれらの使用自体は先行技術の一部である。したがって、本発明の特定の利点は、この場合、バインダーの機能を難燃性の機能と関連付けることができることである。したがって、使用される式(I)のポリオルガノシロキサンの量に応じて、難燃性添加剤の量を減らすことができる。難燃性添加剤の量は、使用される全てのバインダーと反応性有機モノマーとの総混合物に基づいて少なくとも20重量パーセントに対し、好ましくはわずか0~10重量パーセント、より好ましくは0~8重量パーセント、より具体的には0~5重量パーセントであり、換言すれば、式(I)のポリオルガノシロキサンを使用する場合、オルガノポリシロキサンの選択及び使用される量に応じて、難燃性添加剤の使用を省くことが可能である。
【0110】
難燃性添加剤の典型的な例は、金属Al、Mg、Ca、Fe、Zn、Ba、Cu又はNiの水和物並びにBa及びZnのホウ酸塩である。難燃性添加剤は、表面処理されてもよく、その場合、それらは任意選択で表面上に反応性基を有してもよい。難燃性添加剤は又はロゲン化有機難燃性添加剤、例えば、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、テトラブロモフタル酸又はジブロモネオペンチルグリコールであってもよい。さらなる難燃性添加剤の例は、メラミンシアヌレート、リン含有成分、例えばホスフィネート、ジホスフィネート、ホスファゼン、ビニルホスファゼン、ホスホネート、ホスファフェナントレンオキシド、及び微細粒状メラミンポリホスフェートである。臭素含有難燃性添加剤のさらなる例は、ビスペンタブロモフェニルエタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、デカブロモジフェニルオキシド又は臭素化ポリシルセスキオキサンである。ある特定の難燃性添加剤は、それらの効果において相乗的に増強される。これは、例えば、ハロゲン化難燃性添加剤と三酸化アンチモンとの組み合わせの場合である。
【0111】
他の成分のさらなる例は、抗酸化剤、耐候性による劣化に対する安定剤、潤滑剤、可塑剤、着色剤、リン光又は標識及び追跡性のための他の薬剤、並びに帯電防止剤である。
【0112】
式(I)のポリオルガノシロキサンは、好ましくは、第4のステップにおいて架橋される。
【0113】
使用される架橋助剤としては、特に、以下の非限定的な実施例に例示されるように、多価不飽和、ラジカル硬化性又はヒドロシリル化可能なモノマー及びオリゴマーが挙げられる。これらは、例えば、ジオレフィン性不飽和成分、例えば、対称性のオレフィン性不飽和二置換ジシロキサン、例えば1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジプロピルメタクリロイルジシロキサン、例えばなどジアリル、ジビニル、ジアクリロイル又はジメタクリロイル置換を有するジオレフィン性不飽和二置換有機モノマー又はオリゴマー、例えば共役及び非共役ジエン、例えば1,9-デカジエン、1,3-ブタジエンを含む。それらはまた、トリオレフィン性不飽和モノマー又はオリゴマー、例えば、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、トリアリルシアヌレート又はトリアリルイソシアヌレート、トリ(メタ)アクリレート、例えばトリメチロールプロパントリメタクリレートを含む。
【0114】
四不飽和置換モノマー及びオリゴマー、例えば、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラフェニル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン、2,2-ビス[[(2-メチル-1-オキソアリル)オキシ]メチル]-1,3-プロパンジイルビスメタクリレート(ペンタエリスリトールテトラメタクリレート)、テトラアリルオルトシリケート、テトラアリルcis,cis,cis,cis-1,2,3,4-シクロペンタン-テトラカルボキシレート、テトラアリルシラン、グリオキサールビス(ジアリルアセタール)などもここに含まれる。
【0115】
ラジカル硬化に加えてヒドロシリル化硬化の考えられる可能性のために、多重Si-H官能性成分、例えば1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-シクロテトラシロキサン、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、又は多重鎖内及び/又は末端Si-H官能基を有するオリゴ-及びポリオルガノシロキサンも架橋剤として作用し得る。
【0116】
式(I)のポリオルガノシロキサン並びに有機モノマー、オリゴマー及びポリマーから構成されるバインダー調製物のラジカル硬化に好適な触媒及び/又は開始剤は、先に既に特定したものと同じであり、したがって特に過酸化物である。さらに、式(I)のポリオルガノシロキサン単独及び記載のバインダー調製物の両方のラジカル硬化を開始するために、例えば、α,α’-アゾビス(イソブチロニトリル)などのアゾ成分、過酸化水素などの過酸化物及び鉄塩の組み合わせなどの酸化還元開始剤、又はアセチルアジドなどのアジドなど、好適なさらなるラジカル開始剤がある。
【0117】
式(I)のポリオルガノシロキサン及び/又はそれらを含む調製物は、本発明に従って使用するための溶媒を含まない又は溶媒含有の調製物のいずれかとして使用され得る。一般に、それらは、配合物の全ての成分の互いの均質な分布を促進し、使用される任意の補強層の湿潤及び飽和を促進するために、溶媒含有調製物として使用される。一般に、補強層が使用される。好ましくはガラス繊維布である。補強層の飽和は、調製物を用いた含浸塗布によって達成することができ、そのために、任意選択で連続プロセスを含む様々な技術的解決策が利用可能であり、その選択は、本発明の金属面積層体を製造する目的のために決して限定されない。塗布技術の非限定的な例は、適切な場合、連続操作におけるローラーシステムを介した強化材料のウェブの浸漬、噴霧、フローコーティング、ナイフコーティングなどである。本発明の利点は、利用可能な技術の全てを制限及び修正なしに使用することができ、式(I)のポリオルガノシロキサンの使用に特別な新しいプロセスを必要としないことである。したがって、金属面積層体の製造において、本発明は完全に利用可能な最新技術の範囲内である。新たな特徴は、これまで知られていなかった、問題の金属面積層体を製造するための式(I)のポリオルガノシロキサンの使用である。
【0118】
含浸の後に乾燥ステップが続き、使用したあらゆる溶媒を除去する。乾燥操作についても、先行技術の方法が用いられる。これらの方法は、特に、減圧を伴う又は伴わない熱誘起蒸発を包含する。使用されるバインダー混合物の反応性及び粘着性の適切な設定により、例えば冷却などの適切な条件下でのこのステップの生成物は、貯蔵可能な複合材料であり、これは、任意選択で後の時点でさらに処理することができる。
【0119】
プロセスの最後のステップでは、バインダー調製物は、やはり先行技術の方法に従って重合される。ここで使用されるラジカル重合の開始剤はいずれも、分解温度を超えて加熱されるため、分解してラジカルを形成し、バインダー調製物のラジカル重合を開始する。放射線硬化の方法も原則として用いることができる。
【0120】
ラジカル重合の代わりにヒドロシリル化硬化が使用される場合、本ステップで用いられるべき温度は、使用するヒドロシリル化触媒を、使用する阻害剤で失活させ、ヒドロシリル化触媒の触媒活性を解除するのに適した温度である。
【0121】
このステップは、通常、好ましくは100~390℃、より好ましくは100~250℃、より好ましくは130~200℃の高温で行われ、温度は、好ましくは5~180分間、より好ましくは5~150分間、より好ましくは10~120分間有効である。このステップでは、高圧を用いることも慣例的である。通例の圧力は、1~10MPa、より好ましくは1~5MPa、より具体的には1~3MPaの範囲である。
【0122】
複合材料と導電性金属層との積層は、この第2のステップにおいて、硬化が行われる前に、少なくとも1つの選択された金属の層を、補強層及びバインダー調製物から構成される複合材料の片面又は両面に適用することによって行われる。換言すれば、含浸及び乾燥からなる第1のステップとバインダー調製物の化学的硬化を含む第2のステップとの間に、第1のステップからの複合体は、少なくとも1種の導電性金属に面する。
【0123】
好適な導電性金属としては、特に、銅、ステンレス鋼、金、アルミニウム、銀、亜鉛、スズ、鉛及び遷移金属の選択肢からの少なくとも1つが挙げられる。原則として、導電層の厚さ又はその形状、サイズ又は表面質感に制限はない。導電性金属層は、好ましくは3~300μm、より好ましくは3~250μm、さらに好ましくは3~200μmの厚さを有する。2つの層が使用される場合、少なくとも1種の導電性金属の2つの層の厚さは変化してもよく、同一である必要はない。特に好ましくは、導電性金属は銅であり、導電性金属の2つの導電層が使用される場合、両方の層は銅である。導電性金属は、好ましくは、当該金属の箔の形態で使用される。使用される金属箔の平均粗さRaは、最大2μmであることが好ましく、最大1μmであることがより好ましく、最大0.7μmであることが特に好ましい。表面粗さが小さいほど、本発明の好ましい目的である無線周波用途における使用のためのそれぞれの箔の適合性は良好である。導電性金属層とバインダー調製物及び補強層から構成される複合体との間の接着を改善するために、例えば、接着促進層の使用、バインダー調製物及び補強層からなる複合体への金属層の電気化学的堆積、又は蒸着など、先行技術からの様々な方法を任意選択で使用することができる。導電性金属の層は、バインダー調製物及び補強層から構成される複合体上に直接置かれてもよく、又は接着促進層によってそれに接合されてもよい。
【0124】
補強層を使用しない場合、式(I)のポリオルガノシロキサンを含むバインダー調製物の層は、バインダー調製物の層を剥離フィルム又は剥離プレートなどの担体上に堆積させることによって生成され、例えば、担体に好適な材料は、原則として、乾燥又は硬化したバインダー調製物が後で再び剥離され得る任意の材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステルなどである。前記担体材料上の剥離性及び膜形成性は、バインダー組成物に応じて個別に決定されなければならない。このプロセスに関してなされた記述は、この補強材を含まない変形形態について等しく有効なままである。
【0125】
第1のステップからの補強又は非補強複合材料、及び第2のステップからの積層複合材料から、多層システムは、第1のステップからの複合材料の複数のプライを交互に、例えば、第2のステップからの対向する積層体と交互に積層し、次いで、第1のステップからの未硬化のままの複合材料を、金属面積層体を製造するための手順に実質的に対応する操作で硬化させることによって構築することができる。より厚い層を生成するために、ここでは、第1のステップからの補強複合材又は非補強複合材の複数のプライを、直接的な順序で順に積み重ねることも可能である。
【0126】
金属面積層体を製造するためと同様に、式(I)のポリオルガノシロキサンはまた、防食調製物において、特に高温での腐食防止のための使用に使用され得る。
【0127】
また、式(I)のポリオルガノシロキサン及びそれらを含む調製物は、鋼鉄補強コンクリート中の補強鋼の腐食保護のために使用され得る。この場合、鋼鉄補強コンクリートにおける腐食抑制効果は、式(I)のポリオルガノシロキサン及びそれらを含む調製物が、混合物が成形及び硬化される前にコンクリート混合物に導入されるとき、並びに式(I)のポリオルガノシロキサン又はそれらを含む調製物が、コンクリートが硬化された後にコンクリートの表面に適用されるときの両方で達成される。
【0128】
金属上の腐食保護のためと同様に、式(I)のポリオルガノシロキサンは、本発明のオルガノポリシロキサンを含む調製物、又は式(I)のポリオルガノシロキサンを含む調製物から得られる固体若しくはフィルムのさらなる特性を操作するために使用されてもよく、これらの特性の例は以下の通りである。
- 導電率及び電気抵抗の制御
- 調製物の流動特性の制御
- 湿潤若しくは硬化したフィルム又は物体の光沢の制御
- 耐候性の向上
- 耐薬品性の向上
- 色相安定性の向上
- チョーキング傾向の低減
- 式(I)のポリオルガノシロキサンを含む調製物から得られる固体又はフィルムに対する静摩擦及びすべり摩擦の減少又は増加
- 式(I)のポリオルガノシロキサンを含む調製物中の泡の安定化又は不安定化
- 式(I)のポリオルガノシロキサンを含む調製物の基材への接着性の改善
- 充填剤及び顔料の湿潤及び分散挙動の制御
- 本発明のオルガノポリシロキサンを含む調製物のレオロジー特性の制御
- 式(I)のポリオルガノシロキサン又はそれらを含む調製物を含む、得ることができる固体又はフィルムの可撓性、耐引掻性、弾性、延伸性、曲げ性、破壊挙動、復元力挙動、硬度、密度、引裂抵抗、圧縮永久ひずみ、異なる温度における挙動、膨張係数、耐摩耗性などの機械的特性及び/また熱伝導性、可燃性、ガス透過性、水蒸気、熱風、化学物質、風化及び放射線に対する安定性、滅菌性などのさらなる特性の制御
- 誘電損率、破壊抵抗、誘電率、漏れ電流抵抗、アーク抵抗、表面抵抗、比破壊抵抗などの電気特性の制御
- 式(I)のポリオルガノシロキサンを含む調製物から得られる固体又はフィルムの可撓性、耐引掻性、弾性、延伸性、曲げ性、破壊挙動、復元力挙動、硬度、密度、引裂抵抗性、圧縮永久歪み、異なる温度における挙動。
【0129】
式(I)のポリオルガノシロキサンを使用して上記の特性を操作することができる用途の例は、金属、ガラス、木材、鉱物基材、繊維製品、カーペット、床被覆材、又は繊維から製造可能な他の物品を製造するための合成及び天然繊維、皮革、及びフィルム及び成形品などのプラスチックなどの基材上に、コーティング材料及び含浸物、並びにそれらから得ることができるコーティングの製造である。調製物の成分の適切な選択により、式(I)のポリオルガノシロキサンはさらに、消泡、流動促進、疎水化、親水化、充填剤及び顔料分散、充填剤及び顔料湿潤、基材湿潤、表面平滑性の促進、添加調製物から得られる硬化材料の表面上の静摩擦及びすべり摩擦の低減を目的とした添加剤として調製物において使用され得る。式(I)のポリオルガノシロキサンは、液体形態又は硬化固体形態でエラストマー組成物に組み込むことができる。その場合、それらは、補強のために、又は透明性、耐熱性、黄変傾向又は耐候安定性の制御などの他のサービス特性を改善するために使用することができる。
【0130】
上記式中の上記記号の全ては、互いから独立してそれらの定義を有する。全ての式において、ケイ素原子は四価である。
【実施例
【0131】
全てのパーセンテージは重量に基づく。別段の指示がない限り、全ての操作は、23℃の室温及び標準圧力(1.013バール)下で行う。
【0132】
別段の指示がない限り、生成物特性の説明に関する全てのデータは、23℃の室温及び標準圧力(1.013バール)下で有効である。
【0133】
使用される装置は、多数の機器製造業者から市販されている種類の標準的な市販の実験室機器である。
【0134】
Phはフェニル基=C-を表す。
【0135】
Meはメチル基=CH-を表す。したがって、Meは2つのメチル基を表す。
【0136】
PPEはポリフェニレンエーテルを表す。
【0137】
HClは塩化水素を表す。
【0138】
本文章において、物質は、機器分析を用いて得られたデータによって特徴付けられる。基礎となる測定は、公的に利用可能な規格に従って行われるか、又は特別に開発された方法に従って決定される。与えられた教示の明確さを保証するために、使用した方法を以下に特定する。
【0139】
全ての実施例において、部及びパーセンテージの記載は、別段の指示がない限り、重量に関する。
【0140】
<粘度>
別段の指示がない限り、粘度は、DIN EN ISO 3219に従って回転粘度測定によって決定する。別段の指示がない限り、全ての報告された粘度は、25℃及び1013ミリバールの標準圧力に対するものである。
【0141】
<屈折率>
屈折率は、別段の指示がない限り、可視光の波長範囲において、規格DIN 51423に従って、25℃及び1013ミリバールの標準圧力で589nmで測定する。
【0142】
<透過率>
透過率は、UV VIS分光法によって決定する。適切な機器の例は、Analytik Jena Specord 200である。
【0143】
使用した測定パラメータは以下の通りである。
範囲:190~1100nm
ステップ幅:0.2nm、積分時間:0.04秒、測定モード:ステップモード。まず、基準測定(バックグラウンド)を行う。試料ホルダに固定された石英板(石英板の寸法:H×B 約6×7cm、厚さ約2.3mm)を試料ビーム経路に配置し、空気に対して測定する。
【0144】
次に、試料測定を行う。試料ホルダに固定され、適用された試料(適用された試料の層厚 約1mm)を担持する石英板を試料ビーム経路内に置き、空気に対して測定する。バックグラウンドスペクトルに対する内部計算により、試料の透過スペクトルを得る。
【0145】
<分子組成>
分子組成は、核磁気共鳴分光法(用語についてはASTM E 386を参照されたい:高分解能核磁気共鳴(NMR)分光法:用語及び記号)を使用し、測定はH核及び29Si核を用いて決定する。
【0146】
H-NMR測定の説明>
溶媒:CDCl、99.8%d
試料濃度:5mm NMR管中の約50mg/1mlのCDCl
【0147】
TMSを添加しない測定、7.24ppmでのCDCl中の残留CHClのスペクトル参照
【0148】
分光計:Bruker Avance I 500又はBruker Avance HD 500
プローブ:5mm BBOプローブ又はSMARTプローブ(Bruker)
【0149】
測定パラメータ:
Pulprog=zg30
TD=64k
NS=64又は128(プローブ感度に依存する)
SW=20.6ppm
AQ=3.17秒
D1=5秒
SFO1=500.13MHz
O1=6.175ppm
【0150】
処理パラメータ:
SI=32k
WDW=EM
LB=0.3Hz
【0151】
測定パラメータの個々の適応は、使用した分光計のタイプに従って必要である場合がある。
【0152】
29Si-NMR測定の説明>
溶媒:緩和試薬として1重量%のCr(acac)を含むC 99.8%d/CCl 1:1v/v
試料濃度:10mm NMR管中の約2g/1.5mlの溶媒
分光計:Bruker Avance 300
プローブ:10mm 1H/13C/15N/29SiガラスフリーQNPプローブ(Bruker)
【0153】
測定パラメータ:
Pulprog=zgig60
TD=64k
NS=1024(プローブ感度に依存する)
SW=200ppm
AQ=2.75秒
D1=4秒
SFO1=300.13MHz
O1=-50ppm
【0154】
処理パラメータ:
SI=64k
WDW=EM
LB=0.3Hz
【0155】
測定パラメータの個々の適応は、使用した分光計のタイプに従って必要である場合がある。
【0156】
<分子量分布>
分子量分布は、ポリスチレン標準及び屈折率検出器(RI検出器)を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC又はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC))の方法を使用して、重量平均Mw及び数平均Mnとして決定する。特に明記しない限り、THFを溶離剤として使用し、DIN 55672-1を使用する。多分散性は商Mw/Mnである。
【0157】
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度は、DIN 53765に従って示差走査熱量測定(DSC)により、穴あき坩堝で、加熱速度10K/分で測定する。
【0158】
<粒径の決定>
粒径は、ゼータ電位の決定とともに動的光散乱法(DLS)によって測定した。
【0159】
以下の補助剤及び試薬を決定に使用した。
10×10×45mmのポリスチレンキュベット、単回使用用のパスツールピペット、超純水。
【0160】
測定用の試料を均質化し、泡を含まないように測定キュベットに導入する。
【0161】
測定は、300秒の平衡化時間後に25℃において高分解能及び自動測定時間調整で行う。
【0162】
報告した値は常にD(50)値に関連する。D(50)は、測定された全ての粒子の50%がD(50)の規定値よりも小さい体積平均直径を有する体積平均粒径として理解されるべきである。
【0163】
<誘電特性の決定:Df,Dk>
誘電特性は、10GHzでSplit-Cylinder Resonator法に従ってKeysight/Agilent E8361Aネットワークアナライザを使用してIPC TM 650 2.5.5.13に従って決定する。
【0164】
<顕微鏡法手順>
マイクロ/ナノ構造は、それぞれ光学顕微鏡法及び透過型電子顕微鏡法によって特徴付けた。
【0165】
光学顕微鏡法:
試料調製:スライド上の1滴の試料(無溶媒)、カバーガラスで覆う
機器:LEICA DFC420 CCDカメラ(2592×1944画素)を備えたLEICA DMRXA2
画像化:透過光-干渉コントラスト、様々な倍率段階
【0166】
透過型電子顕微鏡法:
試料調製:コーティングされたTEMグリッド上の1滴の試料(希釈1:20、必要であれば適合が必要とされる)、必要に応じて造影剤を添加する、室温で乾燥させる
機器:Sharp E ye CCDカメラ(1024×1024画素)を備えたZEISS LIBRA 120
画像化:励起電圧120kV、TEM明視野、様々な倍率段階
【0167】
<接着性に関する剥離強度試験>
補強材料の有無にかかわらず、複合層上に積層された金属層の接着性を、「受信された」版のIPC-TM 650 2.4.8法「Peel Strength of Metallic Clad Laminates」に従って、すなわち、熱負荷又は曝露なしで測定した。
【0168】
質量285±10g/m、粗さ深さRz≦8μm、平均粗さRa≦0.4μmの35μmの銅箔を、厚さ100μmの複合層の両側に積層し、200℃、2.0MPa、30mmHgカラムで180分の条件下で硬化及び積層を行った。
【0169】
<合成例1:本発明のプロセスによるオルガノポリシロキサンの製造>
1267.8g(6mol)のフェニルトリクロロシラン、372.6g(1.5mol)の3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート及び780gのキシレンの混合物を、4時間かけて、3600gの水の初期分量に計量する。水中でのクロロシランの反応は発熱性であり、塩酸を生成し、これは最初の水の分量に溶解する。発熱温度上昇の結果としての温度が50℃を超えないように注意し、適切な場合、この温度限界を超えないように計量速度を低下させる。
【0170】
計量終了後、撹拌を15分間継続し、撹拌機を停止する。反応混合物は、塩酸を含有し、反応容器の底部にある水相と、頂部にある有機シリコーン相とに分離する。水相を排出する。
【0171】
残っている有機相に1リットルの水を添加し、混合物を30分間撹拌し、その後、撹拌機を再び停止する。水相を再び底に分離し、排出する。この手順を、先行技術に従って酸-塩基滴定によって決定される有機相の残留HCl含有量が20ppm未満になるまで繰り返す。
【0172】
水相が最上部に沈降したら、完全脱塩水ではなく、代わりに10%塩化ナトリウムを含有する水溶液で洗浄を行うか、又は100gの塩化ナトリウムを添加し、混合物を30分間再度撹拌し、その後、相分離を再度行う。
【0173】
その後、さらなる水が分離されなくなるまで、有機相を周囲圧力で水分離器上で蒸留し、したがって有機相は技術的に水を含まない。
【0174】
有機調製物の残留含水量は、カールフィッシャー滴定によって決定し、856ppmである。
【0175】
17g/molの分子量を有する、OH基として表されるシラノール基の量をH-NMRによって1.6重量パーセントであると決定する。第1の反応ステップからの中間体の分子量がMw=3347g/molの場合、これはシラノール含有量が3.2molのOHであることを意味する。
【0176】
反応混合物を40℃まで冷却し、最初に318g(3.2mol)のジメチルジクロロシラン、続いて261g(3.3mol)のピリジンを計量投入する。第1の計量供給は30分間続き、第2の計量供給は45分間続く。発熱温度の上昇が観察される。ここでも、計量速度の適合によって、温度を50℃に制限する。計量が完了した後、反応を完了させるために60分間撹拌を行う。
【0177】
反応終了後、反応混合物を1リットルの完全脱塩水で3回洗浄し、水相をいずれの場合も上記のように分離する。
【0178】
最後の相分離後、有機相の残留HCl含有量は20ppm未満である。溶媒画分を蒸留によって減少させて、80%樹脂の固形分を確立し、すなわち、最終樹脂溶液は、20%のキシレン及び80%のポリオルガノシロキサンからなる。
【0179】
メトキシ基はNMRでは検出できない。残留シラノール含量は、H-NMR分光法によって測定して0.05重量パーセントである。
【0180】
Sc:Mw=4914g/mol、Mn=1904g/mol、多分散性PD=2.58。
【0181】
29Si-NMRによれば、調製物のケイ素含有画分のモル組成は以下の通りである。
MeSi(H)O1/2:30.96%
C=C(CH)C(O)-O-(CH-SiO3/2:13.89%
PhSiO3/2:55.15%
【0182】
この生成物を、以下で1.1として識別する。
【0183】
<合成例2:本発明のプロセスによるシルフェニレン架橋オルガノポリシロキサンの製造、及び両ステップにおける本発明のものではない加水分解手順との比較]
【0184】
<シルフェニレン前駆体の合成>
Xunjun Chen、Minghao Yi、Shufang Wu、Lewen Tan、Yixin Xu、Zhixing Guan、Jianfang Ge及びGuoqiang Yinの文献プロトコール: Synthesis of silphenylene-containing siloxane Resins Exhibiting Strong Hydrophobicity and High Water Vapor Barriers、Coatings 2019、9、481;doi:10.3390/coatins9080481www.mdpi.com/journal/coatingsに従う1,4-ビス(ジメトキシフェニルシリル)ベンゼン
【0185】
トリメトキシフェニルシランを1,4-ジブロモベンゼンから得たグリニャール試薬と「2.2.Synthesis of the 1,4-bis(dimethoxyphenylsilyl)benzene(BDMPD)」の規定の文献プロトコールに従って反応させることにより、1,4-ビス(ジメトキシフェニルシリル)ベンゼンを得る。その構造は、H-NMR分光法及び規定の文献との比較によって確認した。
【0186】
樹脂合成の手順は、合成例1に記載した手順に対応するが、以下の相違点がある。
以下の混合物
845.2g(=4mol)のフェニルトリクロロシラン、
546.7g(1.3mol)の1,4-ビス(ジメトキシフェニルシリル)ベンゼン、
198.7g(0.8mol)の3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート及び
820gのキシレン
並びに2400gの初期充填量の完全脱塩水を使用する。計量時間は4時間である。
【0187】
第1段階後に得られた中間体は、Mw=1247の分子量を有し、H-NMRによって17g/molの分子量を有するOH、すなわち2.2molのOHとして決定された3重量パーセントのシラノール基を含有する。
【0188】
これは、US2018022053号の合成の終点であり、例示としてそこに報告された例に従って、US2018022053号の明細書の文章に従っている。
【0189】
シラノール含量を低減するために、合成例1に記載されたのと同じ手順を用いるが、この場合、合成例1とは対照的に以下を用いる。
265.1g(2.2mol)のビニルジメチルクロロシラン及び
174g(2.2mol)のピリジン。
【0190】
得られた生成物において、メトキシ基はもはやH-NMRによって検出できない。これは、メタクリレート官能性トリメトキシシランが縮合によって完全に取り込まれ、得られたメタノールがワークアップ中に除去されたことを意味する。シラノール基の割合は、後処理によって約0.05重量パーセント(H-NMRによって決定)まで減少した。
【0191】
SEC(溶離液:トルエン)により、以下の分子量を決定した:Mw=2347g/mol、Mn=1503g/mol、多分散性PD=1.56。
【0192】
29Si-NMRによれば、調製物のケイ素含有画分のモル組成は以下の通りである。
MeSi(Vi)O1/2:26.54%
C=C(CH)C(=O)-O-(CH-SiO3/2:9.98%
2/2(Ph)Si-C-Si(Ph)O2/2:15.23%
PhSiO3/2:48.25%
【0193】
この生成物を以下2.1として識別する。
【0194】
本発明の非加水分解手順の代替として、シラノール基を減少させるための以下の加水分解手順を実施するが、これはUS2018022053号において言及されていないが、加水分解プロセスにおける段階の数に制限がないので、原則として該発明の範囲内に入ることができる。
【0195】
200gの水を事前に完全に蒸留したキシレン反応混合物に、第1の反応ステップからの無水初期分量まで計量投入する。その後、265.1g(2.2mol)のビニルジメチルクロロシランをゆっくりと計量投入し、反応温度(反応容器内の内部温度)が50℃未満に制限されたままであるように、計量速度を適合させる。計量終了後、シラノール基とビニルジメチルクロロシラン又はそれから形成されたテトラメチルジビニルジシロキサンとの反応を完了させるために、加熱も冷却もせずに60分間撹拌する。
【0196】
水相を上記のように分離し、その後既に上で記載したように1リットルの水で3回洗浄する。相分離は、場合によっては、撹拌機を停止して60℃の加熱ジャケット温度に加熱することによって改善することができる。洗浄後、キシレン溶液のHCl含有量は20ppm未満である。
【0197】
トルエンの量を、20%のキシレン中の80%の樹脂の溶液が得られるまで、110℃で減圧下(20ミリバール)の蒸留によって減少させる。
【0198】
得られた生成物において、メトキシ基はもはやH-NMRによって検出できない。これは、メタクリレート官能性トリメトキシシランがここでも縮合によって完全に組み込まれ、得られたメタノールがワークアップ中に除去されたことを意味する。しかし、シラノール基の割合は、後処理によって減少したが、(H-NMRによって決定されるように)0.9重量パーセントまでしか減少しなかった。
【0199】
SEC(溶離液:トルエン)により、以下の分子量を決定した:Mw=7347g/mol、Mn=2903g/mol、多分散性PD=2.53。
【0200】
ここで、本発明のプロセスに対してさらなる違いが明らかである。シラノール基を部分的に減少させるために使用されるビニルジメチルシランは対称性ジシロキサンを形成し、これはワークアップ中に留去され、クロロシランと水との反応で形成されるHClの結果として、シラノール基の反応を触媒し、その結果、これらの基を減少させる。しかし、縮合の結果として、はるかに高い分子量をもたらし、したがって、第1のステップから得られるポリオルガノシロキサンが重合して不溶性生成物になり、したがって使用不能になるおそれの有意な増加をもたらす。この影響は、本発明による手順によって効率的に回避される。
【0201】
29Si-NMRによれば、調製物のケイ素含有画分のモル組成は以下の通りである。
MeSi(Vi)O1/2:11.54%
C=C(CH)C(=O)-O-(CH-SiO3/2:11.98%
2/2(Ph)Si-C-Si(Ph)O2/2:19.23%
PhSiO3/2:57.25%
【0202】
シラノール基はPhSiO3/2単位に結合している。
【0203】
この生成物を、以下2.2として識別する。
【0204】
加水分解手順を用いると、第1段階からのポリオルガノシロキサンへの完全な反応の場合、MeSi(Vi)O1/2単位の割合ははるかに高くなければならないであろうから、使用されるクロロシランの不完全な反応もNMRデータにおいて認識可能である。したがって、無水手順は、ロバストに制御可能かつ管理可能なプロセスにおける極性シラノール基の制御された減少のための水性手順よりも優れていることが明らかに示される。
【0205】
<合成例3:本発明のプロセスによるアルキレン架橋を有するオルガノポリシロキサンの製造、及び非発明の水性手順との比較>
合成例1による合成を繰り返すが、合成例1からの逸脱において以下の量を使用する。
フェニルトリクロロシラン:422.6g(=2mol)
1,2-ビス(ジクロロメチルシリル)エタン:341.35g(1.35mol)
198.7g(0.8mol)の3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート
820gのキシレン
及び2400gの完全脱塩水の初期分量
【0206】
計量時間は4時間である。
【0207】
第1段階後に得られた中間体は、Mw=2247の分子量を有し、H-NMRによって17g/molの分子量を有するOH、すなわち3.3molのOHとして決定された2.5重量パーセントのシラノール基を含有する。
【0208】
これは、US2018022053号の合成の終点であり、例示としてそこに報告された例に従って、US2018022053号の明細書の文章に従っている。
【0209】
シラノール含量を低減するために、合成例1に記載されたものと同じ手順を用いるが、この場合、合成例1とは対照的に以下を用いる。
397.7g(3.3mol)のビニルジメチルクロロシラン及び
261g(3.3mol)のピリジン。
【0210】
メトキシ基はNMRでは検出できない。シラノール基の割合は、後処理によって約0.05重量パーセント(H-NMRによって決定)まで減少した。
【0211】
SEC(溶離液:トルエン)により、以下の分子量を測定した:Mw=2954g/mol、Mn=1919g/mol、多分散性PD=1.53。
【0212】
29Si-NMRによれば、調製物のケイ素含有画分のモル組成は以下の通りである。
MeSi(Vi)O1/2:44.29%
C=C(CH)C(=O)-O-(CH-SiO3/2:10.78%
2/2(Me)Si-C-Si(Me)O2/2:18.12%
PhSiO3/2:26.81%
【0213】
この生成物を、以下3.1として識別する。
【0214】
本発明の非加水分解手順の代替として、シラノール基を減少させるための以下の加水分解手順を実施し、これはUS2018022053号において言及されていないが、加水分解プロセスにおける段階の数に制限がないので、原則として該発明の範囲内に入ることができる。
【0215】
合成例2の手順と同様に、300gの水を、第1の反応ステップからの無水初期分量に添加する。
【0216】
その後、397.7g(3.3mol)のビニルジメチルクロロシランをゆっくりと計量投入し、その後の手順は合成例2に記載の通りである。
【0217】
得られた生成物において、メトキシ基はもはやH-NMRによって検出できない。シラノール基の割合は、後処理によって減少したが、わずか1.0重量パーセントまでしか減少しなかった(H-NMRによって決定)。
【0218】
Sc:Mw=6974g/mol、Mn=2812g/mol、多分散性PD=2.48。
【0219】
29Si-NMRによれば、調製物のケイ素含有画分のモル組成は以下の通りである。
MeSi(Vi)O1/2:21.69%
C=C(CH)C(=O)-O-(CH-SiO3/2:15.09%
2/2(Me)Si-C-Si(Me)O2/2:25.47%
PhSiO3/2:37.75%
【0220】
シラノール基はPhSiO3/2単位に結合している。
【0221】
この生成物を、以下3.2として識別する。
【0222】
ここでも、本発明の非加水分解プロセスよりも加水分解プロセスでは、より高い分子量及びより不完全なシラノール基の減少が達成される。
【0223】
<合成例4:非発明の水性手順と比較した本発明のプロセスによるSi-Si結合を有するオルガノポリシロキサンの製造>
合成例1から逸脱した以下の出発物質及び量を使用した以外は、合成例1による合成を繰り返す。
フェニルトリクロロシラン:422.6g(=2mol)
198.7g(0.8mol)の3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート
296.4g(1.3mol)の1,1,2,2-テトラクロロ-1,2-ジメチルジシラン
820gのキシレン
及び2400gの完全脱塩水の初期分量
【0224】
計量時間は4時間である。
【0225】
第1段階後に得られた中間体は、Mw=1867g/molの分子量を有し、H-NMRによって17g/molの分子量を有するOH、すなわち3.2molのOHとして決定された2.9重量パーセントのシラノール基を含有する。
【0226】
これは、US2018022053号の合成の終点であり、例示としてそこに報告された例に従って、US2018022053号の明細書の文章に従っている。
【0227】
シラノール含量を低減するために、合成例1に記載のものと同じ手順を用いるが、この場合、合成例1とは対照的に以下を用いる。
385.6g(3.2mol)のビニルジメチルクロロシラン及び
261g(3.3mol)のピリジン。
【0228】
メトキシ基はNMRでは検出できない。シラノール基の割合は、後処理によって約0.05重量パーセント(H-NMRによって決定)まで減少した。
【0229】
SEC(溶離液:トルエン)により、以下の分子量を決定した:Mw=2479g/mol、Mn=1678g/mol、多分散性PD=1.47。
【0230】
29Si-NMRによれば、調製物のケイ素含有画分のモル組成は以下の通りである。
MeSi(Vi)O1/2:40.34%
C=C(CH)C(=O)-O-(CH-SiO3/2:10.96%
2/2(Me)Si-Si(Me)O2/2:21.31%
PhSiO3/2:27.39%
【0231】
この生成物を、以下4.1として識別する。
【0232】
本発明の非加水分解手順の代替として、シラノール基を減少させるための以下の加水分解手順を実施し、これはUS2018022053号において言及されていないが、加水分解プロセスにおける段階の数に制限がないので、原則として該発明の範囲内に入ることができる。
【0233】
合成例2の手順と同様に、300gの水を、第1の反応ステップからの無水初期分量に添加する。
【0234】
その後、385.6g(3.2mol)のビニルジメチルクロロシランをゆっくりと計量投入し、その後の手順は合成例2に記載の通りである。
【0235】
得られた生成物において、メトキシ基はもはやH-NMRによって検出できない。シラノール基の割合は、後処理によって減少したが、わずか1.1重量パーセントまでしか減少しなかった(H-NMRによって決定)。
【0236】
Sc:Mw=4974g/mol、Mn=2006g/mol、多分散性PD=2.48。
【0237】
29Si-NMRによれば、調製物のケイ素含有画分のモル組成は以下の通りである。
MeSi(Vi)O1/2:18.96%
C=C(CH)C(=O)-O-(CH-SiO3/2:15.13%
2/2(Me)Si-Si(Me)O2/2:28.08%
PhSiO3/2:37.83%
【0238】
シラノール基はPhSiO3/2単位に結合している。
【0239】
この生成物を、以下4.2として識別する。
【0240】
ここでも、本発明の非加水分解プロセスよりも加水分解プロセスでは、より高い分子量及びシラノール基のより不完全な減少が達成される。
【0241】
<使用例1:金属面積層体を製造するための合成例1~4の本発明により及び本発明によらず製造されたオルガノポリシロキサンの使用>
ガラス繊維強化複合層を有する銅面積層体を製造するために、合成例1~4及びそこに含まれる比較例に従って製造されたオルガノポリシロキサンをバインダーとして使用した。使用した出発材料は以下の通りであった。
【0242】
銅箔:Rz≦8μmの粗さ深さ及びRa≦0.4μmの平均粗さ深さを有し、純度≧99.8%である、Jiangtong-yates Copper Foil Co Ltd製の35μmの厚さの銅箔(285±10g/m)。
【0243】
ガラス繊維:Changzhou Xingao Insulation Materials Co.Ltd.製のE-ガラス繊維タイプ1080E。厚さ0.055±0.012mm、47.5±2.5g/m
【0244】
この実施例では、全てのオルガノポリシロキサンをキシレン中の溶液として使用した。溶液はそれぞれ、80%のオルガノポリシロキサン及び20%のキシレンを含有していた。
【0245】
硬化を開始するために、オルガノポリシロキサンを、いずれの場合も、使用したポリオルガノシロキサンの量に対して、1重量パーセントのジクミルペルオキシドと混合し、ペルオキシドを撹拌により樹脂マトリックス中に均一に分散させた。
【0246】
30~30cmの大きさのガラス繊維層を、空気除去ローラーを用いて、適切な場合にはキシレン溶液として、それぞれのオルガノポリシロキサンでプライごとに気泡を含まない含浸に供することによって、積層体を製造した。この手順では、ガラス繊維層を平面の寸法安定性ステンレス鋼支持体上に取り付け、そこに銅箔の1つのプライを適用した後、ガラス繊維の第1のプライをその上に配置した。合計で3プライのガラス繊維布を、いずれの場合も連続的に含浸させた。溶媒を除去するために、適切な場合、含浸した布を真空乾燥オーブン中で10ミリバール及び60℃で一定重量まで乾燥させた。その後、銅箔の第2の層を、含浸したガラス繊維層の上部に適用し、さらなる寸法安定性ステンレス鋼板をその上に置いた。積層体を、200℃、30ミリバー減圧で120分間、2MPaの圧力で加熱可能なプレス機内で加熱した。これにより、合計厚さが260±20μmの銅面積層体を得る。
【0247】
誘電特性は、10GHzでSplit-Cylinder Resonator法に従って、Keysight/Agilent E8361Aネットワークアナライザを用いてIPC TM 650 2.5.5.13に従って決定した。得られた値は以下の通りであった。
【0248】
【表1】
【0249】
本発明のオルガノポリシロキサンを含む銅面積層体のDf値及びDk値は、先行技術の手順からのオルガノポリシロキサンで達成されるDf値及びDk値よりも著しく低い。極めて低い誘電損率及び相対誘電率が無線周波用途に望ましいことを考えると、本発明の効果は顕著に明らかである。
【0250】
<使用例2:プリプレグを介して金属面積層体を製造するための、合成例1~4の本発明により及び本発明によらず製造されたオルガノポリシロキサンの使用>
この例について、本発明の手順及び非本発明の手順の両方に従った合成例1~4からのオルガノポリシロキサンを、いずれの場合も20%のキシレン及び80%のポリオルガノシロキサンの調製物を使用して、キシレン中の溶液として使用した。
【0251】
中間プリプレグ段階なしで直接積層体を構築する代わりに、今回は、ガラス繊維プライを、いずれの場合もポリテトラフルオロエチレンフィルム上の個々のプライとして、樹脂調製物で含浸し、次いで真空乾燥オーブン中で一定重量まで乾燥させることによって、プリプレグを製造した。このようにして製造された含浸したガラス繊維布の3つのプライの組を、続いて銅箔上に重ねて堆積させ、積層物を銅箔のプライで終えた。この多層構造体を、実施例1と同様に、真空プレス中で、実施例1に示した条件下で、2次元的に安定なステンレス鋼板間でプレスし、硬化させた。
【0252】
得られた積層体は290±20μmの厚みを有していた。
【0253】
得られた積層体について測定した誘電特性は以下の通りであった。
【0254】
【表2】
【0255】
本発明に従って製造されたオルガノポリシロキサンを含む銅面積層体について達成されたDk値及びDf値は、比較例からのオルガノポリシロキサンについて達成されたDf値及びDk値よりも著しく低い。極めて低い誘電損率及び相対誘電率が無線周波用途に望ましいことを考えると、本発明の効果は顕著に明らかである。
【0256】
<使用例3:有機ポリマーとの混合物中で金属面積層体を製造するための、合成例1~4の本発明により及び本発明によらずに製造されたオルガノポリシロキサンの使用>
この手順は、今回は有機ポリマーをオルガノポリシロキサンと混合したことを除いて、使用例2に記載の手順に実質的に対応する。最終無溶媒混合物は常に30重量パーセントのオルガノポリシロキサン及び70重量パーセントの有機ポリマーを含有した。有機ポリマーは、トリアリルイソシアヌレート、NORYL SA 9000、SABICから入手したα,ω-メタクリレート末端ポリフェニレンエーテル、Mn=2500g/mol、Tg=160℃、及び日本曹達からのB 3000、Mn=3200、45℃での粘度=210ポアズ、ポリマー鎖中に85%超の1,2-ビニル構造を有する液体ポリブタジエンであった。
【0257】
ポリマーは常に同じ割合で使用した。これらをキシレンに溶解又は分散させ、30重量部のSA 9000と25重量部のB3000と15重量部のトリアリルイソシアヌレートとを100重量部のキシレンに分散させた。
【0258】
得られた調製物を、いずれの場合も30%のオルガノポリシロキサン及び70%の有機成分が得られた溶液中に存在するように、使用例2に従ってオルガノポリシロキサンのキシレン溶液と混合した。次いで、これらの溶液を、使用例2に記載されたように使用して、プリプレグを介して銅面積層体を製造した。
【0259】
得られた積層体は290±20μmの厚みを有していた。
【0260】
得られた積層体について測定した誘電特性は以下の通りであった。
【0261】
【表3】
【0262】
本発明に従って製造されたオルガノポリシロキサンを使用する銅面積層体の達成されたDk値及びDf値は、比較例からのオルガノポリシロキサンで達成されたDf値及びDk値よりも著しく低い。極めて低い誘電損率及び相対誘電率が無線周波用途に望ましいことを考えると、本発明の効果は顕著に明らかである。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のポリオルガノシロキサンを調製するプロセスであって、
[O3-a/2SiY(SiR3-a/2(RSiO3/2(R SiO2/2(R SiO1/2(SiO4/2[O3-h/2 Si(SiR SiR 3-j/2 (I)
[式中、基Rは同一でも異なっていてもよい基であり、水素基、又は不飽和炭化水素基でもあることができる1~18個の炭素原子を有する一価のSi-C結合した非置換又はヘテロ原子で置換された有機炭化水素基のいずれかであり、
Yは、化学結合、酸素原子、又は1~24個の炭素原子を有し、Si-C結合によってケイ素原子に結合している二価から十二価の有機の非置換又はヘテロ原子で置換された有機基であり、
基R、R及びRは、互いに独立して、水素基、又は非置換でもヘテロ原子によって置換されていてもよい飽和若しくは不飽和のSi-C結合したC1~C18炭化水素基、又は酸素原子を介して結合され、ヘテロ原子を含有していてもよいC1~C12炭化水素基、又はシラノール基であり、基R、R及びRは、いずれの場合も互いに独立してそれらの定義を採用することができ、したがって、同じケイ素原子上に結合した2つ以上の基R、R及び/又はRは、定義された基とは異なる基であってもよく、
基Rは、互いに独立して、水素基、シラノール基、又は不飽和炭化水素基であってもよい1~18個の炭素原子を有する一価のSi-C結合した若しくはSi-O-C結合した非置換若しくはヘテロ原子で置換された有機炭化水素基のいずれかであり、
基Rは、互いに独立して、水素基、不飽和炭化水素基であってもよい1~18個の炭素原子を有する一価のSi-C結合した非置換又はヘテロ原子で置換された有機炭化水素基、又は以下の式(II)の基のいずれかであり、
[O3-a/2SiY(SiR3-a/2(RSiO3/2(R SiO2/2(R SiO1/2(SiO4/2 (II)、
[式中、全ての基Y、R、R、R、R、R及びRを100mol%として、少なくとも0.1mol%は、オレフィン性又はアセチレン性不飽和基でなければならず、
全ての基Y、R、R、R、R、R及びRを100重量%として、合計で最大3重量%はSi-O-C結合基及びシラノール基であり、
また、全ての基Y、R、R、R、R、R及びRを100重量%として、合計で最大0.5重量%はシラノール基であり、
aは0、1又は2であり、基Yの両側の添え字aは、互いに独立してそれらの定義を採用することができ、したがって、互いに独立して異なる添え字aは、規定の値の範囲内で異なる値を有することができ、
bは1~11の値を有する数であり、好ましくは1であり、
cは0~0.9の値を有し、
dは0~0.8の値を有し、
eは0~0.5の値を有し、
fは0.01~0.6の値を有し、
gは0~0.6の値を有し、
h及びjは、互いに独立して、0、1又は2であり、
iは、0~50の値を有する整数であり、
kは0~0.9の値を有し、
c+d+e+f+g+k=1であり、少なくとも1つの値c、d又はkは>0であり、e+gは≦0.6であり、
式中、式(I)及び式(II)における基R、R、R、R、R及びR並びに添え字a、b、c、d、e、f、g、h及びiは、互いに独立して、同じ定義を有してもよく、これらの定義を、記載された値の範囲内で互いに独立して採用してもよい。]
第1のステップにおいて、式(III)のシラン
SiR 4-l (III)、
[式中、Rは加水分解性基であり、
lは、0、1又は2の値を有する整数であり、
l=1の場合、Rは基Rであり、l=2の場合、Rは基Rである。]
及び/又は式(IV)のジ-、オリゴ-若しくはポリシラン
3-h Si(SiR SiR 3-j (IV)
[式中、上記のRは加水分解性基であり、
、R、h、i及びjは、上記と同じ定義を有する。]
及び/又は式(V)のオルガニル架橋シリコーン
3-aSiY(SiR 3-a (V)
[式中、R、R、Y、a及びbは、既に記載した定義を有する。]
を水と、加水分解性基Rの少なくとも1つがハロゲン基でない場合、式(III)、(IV)及び(V)の成分の加水分解及び縮合を促進する触媒量の1つ以上の酸を使用して、非水混和性非プロトン性溶媒の存在下で反応させ
反応が起こった後、水及び有機相中の残りの量の酸の両方をそれぞれ10000ppm未満まで減少させ、
第2のステップにおいて、第1のステップからの反応生成物を、不活性有機溶媒中の溶液中で、水なしで、補助塩基の存在下で、式(VI)
SiR (VI)、
[式中、Rは上記と同じ定義を有し、Rはハロゲン原子である。]
のハロシランと反応させる、プロセス。
【請求項2】
基R、R、R、R、R及びRが、メチル基、フェニル基、ビニル基、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基並びに1~15個の炭素原子を有する非分岐又は分岐アルコールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記非プロトン性溶媒が芳香族炭化水素である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記補助塩基が、ハロシランに対して少なくとも等モル量で使用される、請求項1~3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記補助塩基が、塩基性金属塩及び窒素化合物から選択される、請求項1~4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
第3のステップにおいて、前記式(I)のポリオルガノシロキサンが、金属基材に接合される、請求項1~5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
第4のステップにおいて、前記式(I)のポリオルガノシロキサンが架橋される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の方法により製造可能な金属張積層体であって、前記第2のステップにおいて、式(VI)の1つ以上のハロシランが、存在するハロゲン基の量が、第1の反応ステップからのポリオルガノシロキサン種中のシラノール基と等モルであるように使用される、金属張積層体
【国際調査報告】