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特表2024-536143カーボンナノ材料を作製するための方法及び装置並びにリチウムフリー電解質を使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】カーボンナノ材料を作製するための方法及び装置並びにリチウムフリー電解質を使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/135 20210101AFI20240927BHJP
   C25B 9/09 20210101ALI20240927BHJP
   C25B 11/02 20210101ALI20240927BHJP
   C25B 11/046 20210101ALI20240927BHJP
   C01B 32/166 20170101ALN20240927BHJP
   C01B 32/18 20170101ALN20240927BHJP
【FI】
C25B1/135
C25B9/09
C25B11/02
C25B11/046
C01B32/166
C01B32/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519306
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 US2022045243
(87)【国際公開番号】W WO2023196009
(87)【国際公開日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】63/250,662
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521134086
【氏名又は名称】シー2シーエヌティー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リヒト,スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】リヒト,ガッド
【テーマコード(参考)】
4G146
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA11
4G146AB01
4G146AB06
4G146AC01B
4G146BA09
4G146BC18
4G146BC50
4K011AA09
4K011AA15
4K011AA17
4K011DA11
4K021AA09
4K021BA01
4K021BA17
4K021CA05
4K021CA12
4K021DA11
4K021DA13
(57)【要約】
本開示の実施形態は、カーボンナノチューブ(CNT)を含み得るCNM生成物を生産するための方法及び装置に関する。本方法及び装置は、CNTを作製するために、電解反応における反応剤として二酸化炭素(CO)及びリチウムフリーの炭酸塩電解質を利用する。本開示のいくつかの実施形態では、電解反応にグラフェン欠陥剤が導入され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CNM生成物を生産する方法であって、
(a)リチウムフリー炭酸塩電解質を加熱して溶融炭酸塩電解質を得ることと、
(b)電解セルのアノード及びカソード間に前記溶融炭酸塩電解質を位置決めすることと、
(c)前記電解セルの前記カソード及び前記アノードに電流を印加することと、
(d)前記カソードからカーボンナノ材料(CNM)生成物を収集することと
を含む方法。
【請求項2】
1つ以上の非リチウム促進要素を利用するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の非リチウム促進要素は、(i)1つ以上の遷移金属核形成剤を添加することによって遷移金属核形成を増強すること、(ii)1つ以上の欠陥誘起剤を添加すること、(iii)電解質伝導性阻害要素を低減すること、及び(iv)それらのいずれかの組合せである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1つ以上の欠陥誘起剤を添加する前記ステップは、前記リチウムフリー炭酸塩電解質中に1つ以上の酸化物を導入するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の酸化物は、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化鉄、酸化コバルト、酸化リチウム又はそれらのいずれかの組合せの1つ以上である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の遷移金属核形成剤は、前記電解質への遷移金属塩を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記電解質伝導性阻害を除去する前記ステップは、前記CNM生成物内に1つ以上のグラフェン欠陥を誘起することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
グラフェン欠陥を誘起する前記ステップは、1つ以上の外来吸着原子、1つ以上の置換型不純物又はそれらのいずれかの組合せを添加することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記電解質伝導性阻害要素を除去する前記ステップは、前記電流の電流密度を減少させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記遷移金属塩は、鉄、クロム、ニッケル、銅、マンガン、チタン、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、タングステン、銀、カドミウム、スズ、ルテニウム、バナジウム、コバルト又はそれらのいずれかの組合せを含む塩の1つ以上である、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記CNM生成物内に構造的欠陥を誘起するために酸化剤を添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の酸化物は、アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物及びそれらのいずれかの組合せである、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の酸化物は、金属酸化物、非金属酸化物又はそれらのいずれかの組合せを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上の酸化物は、酸化ナトリウム、酸化バリウム、酸化カルシウム又はそれらのいずれかの組合せを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ以上の酸化物は、前記リチウムフリー炭酸塩電解質の温度を上昇又は低下させるさらなるステップで前記溶融炭酸塩電解質中に導入される、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上の酸化物は、前記アノードを酸化することによって前記溶融炭酸塩電解質中に導入される、請求項4に記載の方法。
【請求項17】
前記電解セルにナノ材料選択成分を導入するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記電解セル中にドーピング成分を添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノ材料選択成分は、カーボンナノチューブ(CNT)生成物を含むように前記CNM生成物を選択する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ナノ材料選択成分は、カーボンナノファイバー生成物を含むように前記CNM生成物を選択する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記ナノ材料選択成分は、カーボンプレートレット生成物を含むように前記CNM生成物を選択する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記ナノ材料選択成分は、グラフェン生成物を含むように前記CNM生成物を選択する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記ナノ材料選択成分は、カーボンナノオニオン生成物を含むように前記CNM生成物を選択する、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記ナノ材料選択成分は、中空カーボンナノスフェア生成物を含むように前記CNM生成物を選択する、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記リチウムフリー炭酸塩電解質は、非リチウムアルカリ炭酸塩、アルカリ土類炭酸塩及びそれらのいずれかの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記リチウムフリー炭酸塩電解質は、2元混合物、3元混合物又は3つを超える成分の混合物の1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記リチウムフリー炭酸塩電解質は、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム及びそれらのいずれかの組合せを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ドープCNM生成物を作製するためにドーピング成分を導入するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
磁性CNM生成物を作製するために磁性添加剤成分を導入するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記リチウムフリー炭酸塩電解質は、混合物全体の重量基準で約5%(重量%)未満若しくは混合物全体の約4重量%未満、混合物全体の約3重量%未満又は混合物全体の約2重量%未満の量のリチウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記リチウムは、炭酸リチウム、酸化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、ケイ酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、リン酸リチウム、ホウ酸リチウム又はそれらのいずれかの組合せとして存在する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
CNM生成物を作製するための電解セルであって、プレナムを画定する1つ以上の壁、前記プレナム内に位置決めされるアノード及びカソードを含み、前記プレナムは、前記アノード及び前記カソード間にリチウムフリー溶融炭酸塩電解質を受けるように構成され、
前記セルは、前記プレナム内にグラフェン欠陥剤、ナノ材料選択成分並びにCNM生成物を作製するための電解反応を開始するために前記アノード及び前記カソードに印加可能な電流を受けるようにさらに構成される、電解セル。
【請求項33】
前記アノード及び前記カソードは、鉛直方向に互いに離間される、請求項32に記載の電解セル。
【請求項34】
前記アノードは、ニッケル又はニッケル合金で作製される、請求項32に記載の電解セル。
【請求項35】
前記アノードは、水平平面に整列されるコイル状ワイヤである、請求項32に記載の電解セル。
【請求項36】
前記カソードは、黄銅、鋼、亜鉛メッキ鋼、銅、モネル、ニッケル合金及びそれらのいずれかの組合せで作製される、請求項32に記載の電解セル。
【請求項37】
前記カソードは、水平平面に整列されるコイル状ワイヤである、請求項32に記載の電解セル。
【請求項38】
前記リチウムフリー炭酸塩電解質を溶融させ、及び/又は前記リチウムフリー炭酸塩電解質を溶融状態に維持するための加熱装置をさらに含む、請求項32に記載の電解セル。
【請求項39】
前記グラフェン欠陥剤は、前記CNM生成物のグラファイト状構造にグラフェン欠陥及び/又はグラフェン空孔を誘起する化学的要素、機械的要素、光学的要素、物理的要素又はそれらのいずれかの組合せである、請求項32に記載の電解セル。
【請求項40】
前記リチウムフリー溶融炭酸塩電解質は、2元混合物、3元混合物又は3つを超える成分の混合物の1つである、請求項32に記載の電解セル。
【請求項41】
前記リチウムフリー溶融炭酸塩電解質は、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム及びそれらのいずれかの組合せを含む、請求項32に記載の電解セル。
【請求項42】
CNM生成物を合成するためのシステムであって、
(a)溶融炭酸塩電解質を得るためにリチウムフリー炭酸塩電解質を加熱するためのヒーターと、
(b)電解セルのアノード及びカソード間に前記溶融炭酸塩電解質を受けるか又は収容するための電解セルと、
(c)1つ以上の非リチウム促進要素と、
(d)前記電解セルの前記カソード及び前記アノードに電流を印加するための電流源と
を含むシステム。
【請求項43】
前記リチウムフリー炭酸塩電解質は、混合物全体の約0.1重量%未満、約0.05重量%未満、又は約0.025重量%未満、又は約0.01重量%未満の量のリチウムを含む、請求項42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、2021年9月30日出願の米国仮特許出願第63/250,662号からの優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
[0002] 本開示は、概して、カーボンナノ材料の生産に関する。特に、本開示は、リチウムフリー電解質を使用してカーボンナノ材料を生産するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003] カーボンナノチューブ(CNT)は、任意の材料の最も高い測定引張り強度(強度93,900MPa)を有する。多層CNTは、円筒状グラフェンシートの同心層からなる。グラフェンは、1つの炭素原子の厚さに対応する約0.335nmの厚さを有するsp混成軌道炭素原子の単層によって形成された2次元ハニカム構造化材料である。グラファイト、ナノチューブ及びフラーレンは、グラフェン、例えばラッピング及びスタッキングによって形成され得る。
【0004】
[0004] CNTは、高電気伝導率、高熱伝導率、可撓性を含む多くの有用な性質を有し、それらはまた、化学修飾され得る。これらの有用な性質が関わって、CNTは、その用途の定常的な拡大を遂げてきた。例えば、構造用材料中の低(典型的には<<1%)濃度のCNTは、セメント、鋼、アルミニウムなどのある範囲の構造用材料の強度を増加させ得る。これらの材料の各々は、高カーボンフットプリントを有し得るため、より少ない材料を必要とする強度の増加した炭素複合体は、カーボンフットプリントを劇的に減少させ得る。
【0005】
[0005] CNTを生産する公知のプロセスは、化学気相堆積(CVD)である。しかしながら、CNTのCVDは、高価であり、及び高カーボンフットプリントを有する。
【0006】
[0006] 化学気相堆積(CVD)に加えて、二酸化炭素(CO)及び炭酸リチウム電解質を使用する電解反応もCNTの既知の作製プロセスである。この電解反応では、溶融炭酸リチウム溶液中でCOを分解するために1ボルト未満の電解電位を利用して、高クーロン効率で一様なCNT及びカーボンナノファイバー生成物を生産し得る。同位体(13C)追跡によって確認されるように、大気からのCOをCNTに直接変換することができる。溶融炭酸リチウム中での電解分解は、CO前濃縮なしに空気から、又は排気ガスCOを用いて、又は濃縮COを用いて、直接炭素捕捉及び変換として行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007] これらの既知の電解反応は、純溶融炭酸リチウム(LiCO、融点約723℃)などのリチウムを含む炭酸塩電解質或いは実質的分率のLiCOが炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、炭酸カルシウム(CaCO)、炭酸バリウム(BaCO)などの他の炭酸塩と混合された、又はLiCOが酸化物、ホウ酸塩、硫酸塩、リン酸塩若しくは硝酸塩を含む他の塩と混合された電解質を使用したときに実証されているにすぎない。リチウムカチオンは、電解反応で溶融炭酸塩及びCOを用いてCNTを作製するために必要な成分であり得ると一般に仮定された。しかしながら、リチウムのコストは、一般に、これらの電解反応の高い操作コストをもたらすため、グラファイト状カーボンナノ材料を生産するためのさらなる方法及びシステムが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
[0008] 本開示の実施形態は、カーボンナノチューブ(CNT)を含む各種のナノ構造を含むカーボンナノ材料(CNM)生成物を生産するための電解方法及び装置に関する。本方法及びフリーは、CNM生成物を作製するために、電解反応における反応剤としてCO及び電解質を利用する。本開示のいくつかの実施形態では、電解質は、2つの炭酸塩の2元混合物である。本開示のいくつかの実施形態では、電解質は、2つの炭酸塩と酸化物との3元混合物である。本開示のいくつかの実施形態では、電解質は、3つを超える成分の混合物である。本開示の実施形態は、リチウムを含有する電解質を使用する電解反応よりもコストが実質的に少なくなり得る。
【0009】
[0009] 本開示のいくつかの実施形態は、CNM生成物を作製する方法に関する。本方法は、リチウムフリー炭酸塩電解質を加熱してリチウムフリー溶融炭酸塩電解質を得るステップと、電解セルのアノード及びカソード間に溶融炭酸塩電解質を位置決めするステップと、1つ以上の非リチウム促進要素を利用するステップと、電解セルのカソード及びアノードに電流を印加するステップと、カソードからCNM生成物を収集するステップとを含む。
【0010】
[0010] 本開示のいくつかの実施形態では、1つ以上の非リチウム促進要素を利用するステップは、1つ以上のさらなる化学的構成要素を添加すること又は電流を修正するために1つ以上の反応条件若しくは操作条件を改変すること或いはさらなる化学的構成要素を添加すること又は1つ以上の条件を改変することの両方のいずれかを意味し得る。
【0011】
[0011] 本開示のいくつかの実施形態では、非リチウム促進要素は、(i)1つ以上の遷移金属核形成剤を添加することによって遷移金属核形成を増強すること、(ii)1つ以上の欠陥誘起剤を添加すること、(iii)電解質伝導性阻害要素を低減若しくは除去すること又はそれらのいずれかの組合せの1つ以上である。いくつかの実施形態では、遷移金属核形成を増強することは、1つ以上の遷移金属核形成試薬を添加することによって行われ得る。いくつかの実施形態では、欠陥誘起剤の添加は、四面体spグラフェン欠陥を誘起し得る1つ以上の化学剤の添加によるものであり得る。合成時のCNTのグラフェン層の誘起欠陥は、CNT及び他のCNM生成物を作製するために、安定した及び高収率のCO電解プロセスでより大きいカチオンを使用し得る機構を提供し得る。いくつかの実施形態では、電解質伝導性阻害要素の除去は、電気伝導率を増強するために、電圧、電流及び/又は電流密度を変化させることを意味し得る。
【0012】
[0012] 本開示のいくつかの実施形態は、CNM生成物の1つ以上の構造を選択する方法に関する。例えば、本開示のいくつかの実施形態は、CNM生成物内にグラファイト状構造を含むCNM生成物を生産する方法に関する。例えば、グラファイト状CNM生成物は、CNT、カーボンプレートレット構造、グラフェン構造、ナノオニオン構造、ナノスフェア構造、中空ナノスフェア構造又はそれらのいずれかの組合せを含む構造を含む。本開示の実施形態を使用することにより、CNM生成物は、選択された1つ以上のグラファイト状構造のいくつか、ほとんど、実質的にすべて又はすべてで構成され得る。
【0013】
[0013] 本開示のいくつかの実施形態は、1つ以上のCNM生成物を作製するための電解セルである装置に関する。電解セルは、プレナムを画定する1つ以上の壁並びにプレナム内に位置決めされるアノード及びカソードを含む。プレナムは、溶融されたリチウムフリー炭酸塩電解質をアノード及びカソード間に受けて保持するように構成される。電解セルは、グラフェン欠陥剤、ナノ材料選択成分並びにCNM生成物を作製するための電解反応を開始するためにアノード及びカソードに印加可能な電流を受けるようにさらに構成され得る。
【0014】
[0014] 本開示のいくつかの実施形態では、電解セルのアノード及びカソードは、水平平面に略整列され、及びそれらは、鉛直方向に互いに離間される。
【0015】
[0015] いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、グラフェンを作製するとき、それは、内的欠陥及び外的欠陥を含む各種の欠損を含み得ることが知られている。内的欠陥は、グラフェン中に存在する非sp軌道ハイブリッド炭素原子からなり得、それは、多くの場合、六角形環に取り囲まれた非六角形環の存在をもたらす。グラフェンの報告された内的欠陥としては、ストーン・ウェールズ欠陥、単一空孔欠陥、多重空孔欠陥、線欠陥及び炭素吸着原子が挙げられる。外的欠陥は、非炭素原子を含むことにより、グラフェンの結晶秩序を撹乱するおそれがある。グラフェンの報告された外的欠陥としては、外来吸着原子及び置換型不純物が挙げられる。
【0016】
[0016] 本開示のいくつかの実施形態は、より大きいカチオンがグラフェンを貫流するようにしてCO電解反応時のCNT成長を促進するために、CNT層のグラフェンの欠陥を活用することに関する。いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、いずれの誘起欠陥又は空孔もグラフェン多孔率を増強し得るが、本開示のいくつかの実施形態は、より具体的には、四面体spグラフェン欠陥に関する。四面体spグラフェン欠陥は、CO電解反応時の酸化物などのグラフェン欠陥剤の存在によって誘起され得る。グラフェンシート「空孔」は、リチウムカチオンインターカレーション度を増強し、及びリチウムカチオンアノードバッテリー貯蔵容量を増加させることが知られている。グラフェンのグラフェン空孔及び酸化物誘起欠陥は、Liカチオンだけでなく、ナトリウムカチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオンなどのより大きいカチオンのグラフェン中へのインターカレーションを許容し得る。このため、そうした合成時のCNTのグラフェン層の誘起欠陥は、CNTを作製するために安定した及び高収率のCO電解プロセスでリチウム以外のカチオンを使用し得る機構を提供し得る。いくつかの実施形態では、高濃度の酸化物の導入は、成長中のCNM生成物により大きい欠陥を誘発し得る。
【0017】
[0017] 本開示のいくつかの実施形態は、リチウムフリー電解質への遷移金属核形成剤の添加に関する。
【0018】
[0018] 本開示のいくつかの実施形態は、CNM生成物の形成時の伝導率を制御するための低電流密度の使用に関する。
【0019】
[0019] 本開示のいくつかの実施形態は、リチウムフリー環境でCNM生成物を合成するためのシステムに関する。本システムは、溶融炭酸塩電解質を得るためにリチウムフリー炭酸塩電解質を加熱するためのヒーターと、電解セルのアノード及びカソード間に溶融炭酸塩電解質を受けるか又は収容するための電解セルと、1つ以上の非リチウム促進要素と、電解セルのカソード及びアノードに電流を印加するための電流源とを含む。いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、本開示のシステムは、本明細書に記載の電解セル装置を利用し得る。いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、本開示のシステムは、本明細書に記載の方法を実施するように構成され得る。
【0020】
[0020] 本開示の電解反応で反応剤として大気からのCOを使用することにより、本開示の実施形態は、CNT及び他のCNM生成物を作製するプロセス及びシステムの温室効果ガスフットプリントを減少させることができる。リチウムフリー炭酸塩電解質を使用することにより、価値のあるCNM生成物を作製するコストが有意に低減され得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
[0021] 本開示のこれらの及び他の特徴は、添付の図面が参照される下記の詳細な説明でより明らかになるであろう。
【0022】
図1】[0022]炭酸ナトリウム(NaCO)及び炭酸バリウム(BaCO)の混合物の相図であり、そのいくつかは、本開示の実施形態でのリチウムフリー炭酸塩電解質混合物としての使用のためのものである。
図2A】[0023]二酸化炭素(CO)電解反応でのカソード上の提案されたカーボンナノチューブ(CNT)成長機構を表す2つの概略図を示す。先端成長機構を示す。
図2B】[0023]底部成長機構を示す。
図2C】[0023]LiOあり(右)及びLiO(左)なしの電解質から電解成長させたカーボンナノチューブ生成物のラマンスペクトルを示す。
図3A】[0024]炭酸リチウム電解質を用いて作製されたカーボンナノ材料(CNM)生成物部分の走査電子顕微鏡法(SEM)画像及び高分解能SEM画像を示す。第1の倍率のSEM画像である。
図3B】[0024]第1の倍率の別のSEM画像である。
図3C】[0024]第2のより高倍率のSEM画像である。
図3D】[0024]第2の倍率の別のSEM画像である。
図3E】[0024]第1の倍率の高分解能SEM画像である。
図3F】[0024]第4のより高倍率の高分解能SEM画像である。
図3G】[0024]第5のより高倍率の高分解能SEM画像である。
図4A】[0025]電解セルの一部分の写真及び本開示の実施形態に従って電解反応によってそこで作製されたCNM生成物部分のSEM画像を示す。鉛直方向に互いに離間して配置されたアノード及びカソードのセット並びに電解セルの一部を形成する槽の写真である。
図4B】[0025]鉛直方向に互いに離間して位置決めされたアノード及びカソードの別の写真である。
図4C】[0025]電解反応後の槽の内側壁並びにアノード及びカソードを示す。
図4D】[0025]第2の倍率のCNM生成物部分のSEM画像である。
図4E】[0025]第2の倍率のCNM生成物部分の別のSEM画像である。
図5A】[0026]アノード及びカソードの写真並びに本開示の実施形態に従って作製されたCNM生成物のSEM画像を示す。本開示の実施形態に係る電解反応前のアノード及びカソードの鉛直配置の写真である。
図5B】[0026]電解反応後の図5Aのアノード及びカソードの写真である。
図5C】[0026]第6の倍率のCNM生成物部分のSEM画像を示す。
図5D】[0026]第7の倍率のカーボンナノ材料部分のSEM画像を示す。
図5E】[0026]第8の倍率のカーボンナノ材料部分を示す。
図6A】[0027]1:1重量%NaCO:BaCO中、0.05A/cmの電解質電流密度、平面状ニクロムアノード及び平面状黄銅カソードによる770℃での電解生成物のSEM画像を示す。第1の倍率のSEM画像である。
図6B】[0027]第2の倍率のSEM画像である。
図6C】[0027]第3の倍率のSEM画像である。
図6D】[0027]生成物のエネルギー分散X線スペクトルであり、92.2%C、3.6%Ba及び4.2%を示す。
図7A】[0028]1:1重量%NaCO対BaCO電解質中、0.2A/cm、0.08重量%Fe含有、ニクロムアノード及び黄銅カソードによる770℃での洗浄電解生成物のSEM画像を示す。第1の倍率のSEM画像である。
図7B】[0028]第2の倍率のSEM画像である。
図7C】[0028]第3の倍率のSEM画像である。
図7D】[0028]第3の倍率のSEM画像である。
図7E】[0028]第4の倍率のSEM画像である。
図7F】[0028]第5の倍率のSEM画像である。
図8】[0029]2.5:1重量%NaCO対BaCO電解質中、0.1A/cm、0.1重量%Fe含有、ニクロムアノード及び黄銅カソードによる770℃での洗浄電解生成物のSEM画像を示す。
図9A】[0030]1:1重量%NaCO対BaCO電解質中、0.1A/cm、0.04重量%Cr含有、0.04重量%Fe含有、ニクロムアノード及びモネルカソードによる770℃での洗浄電解生成物のSEM画像を示す。第1の倍率のSEM画像である。
図9B】[0030]第2の倍率のSEM画像である。
図9C】[0030]第2の倍率のSEM画像である。
図10A】[0031]1:1重量%NaCO対BaCO電解質中、0.1A/cm、30重量%BaO含有、ニクロムアノード及びモネルカソードによる770℃での洗浄電解生成物のSEM画像を示す。第1の倍率のSEM画像である。
図10B】[0031]第2の倍率のSEM画像である。
図10C】[0031]第3の倍率のSEMである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
[0032] 本開示の実施形態は、カーボンナノチューブ(CNT)などのナノスケールのグラファイト状炭素構造を含むカーボンナノ材料(CNM)生成物を生産するための方法及び装置に関する。本方法及び装置は、CNM生成物を作製するために、電解反応における反応剤として二酸化炭素(CO)を利用する。本開示の実施形態は、リチウムフリーの電解質を利用する。
【0024】
[0033] 本開示のいくつかの実施形態は、CNM生成物を作製するために電解反応を利用する方法に関する。電解反応は、アノード及びカソード間に位置決めされた溶融されたリチウムフリー電解質の環境で行われる。炭素は、純CO、濃縮CO、大気空気に同伴するCO、別の炭素含有ガス又は他の人為的CO源のいずれかとして溶融電解質に導入される。
【0025】
[0034] 本開示のいくつかの実施形態は、装置及び装置を利用するシステムに関する。装置は、アノード及びカソードを含む電解セルを含む。本開示のいくつかの実施形態では、アノード及びカソードは、鉛直方向に互いに離間して配置される。
【0026】
[0035] 定義
【0027】
[0036] 特に定義され限り、本明細書で用いられる科学技術用語のすべては、本開示が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと同一の意味を有する。
【0028】
[0037] 本明細書で用いられる場合、「約」という用語は、所与の値からおよそ±10%の変動を意味する。具体的に参照されるか否かにかかわらず、本明細書に提供されるいずれの所与の値もかかる変動を常に含むものと理解されるべきである。
【0029】
[0038] 本明細書で用いられる場合、「リチウムフリー」という表現は、実質的にリチウムフリーであることを意味し、それは、少量のリチウムが存在し得るとき又は検出可能量のリチウムがまったく存在しないときも企図する。本開示のある実施形態では、リチウムフリー炭酸塩電解質が有用であり、それは、「主に非リチウム炭酸塩電解質」ともいわれ得る。明確さを期して、「リチウムフリー炭酸塩電解質」、「リチウムフリー電解質」、「主に非リチウム炭酸塩電解質」及び「主に非リチウム電解質」という表現は、電解質が混合物であるときに検出可能量のリチウムがまったく存在せず、及び少量のリチウムが存在する電解質を意味するように本明細書で用いられ、リチウム含有成分は、混合物全体の重量基準で約5%(重量%)未満又は混合物全体の約4重量%未満、約3重量%未満、約2重量%未満、約1重量%未満、約0.5重量%未満、約0.25重量%未満、約0.1重量%未満、約0.05重量%未満、若しくは約0.025重量%未満、若しくは約0.01重量%未満を形成する。
【0030】
[0039] ここで、実施例及び図への参照を含む本開示の実施形態を説明する。
【0031】
[0040] 本開示のいくつかの実施形態は、CNTを含むCNM生成物を生産する方法に関する。本方法は、リチウムフリー炭酸塩電解質を加熱してリチウムフリー溶融炭酸塩電解質を得るステップと、電解セルのアノード及びカソード間に溶融炭酸塩電解質を位置決めするステップと、電解セルのカソード及びアノードに電流を印加するステップと、カソードからCNM生成物を収集するステップとを含む。本開示のいくつかの実施形態では、本方法は、1つ以上の非リチウム促進要素を利用するステップ及び/又はリチウムフリー炭酸塩電解質中にグラフェン欠陥剤を導入するステップをさらに含む。本開示のいくつかの実施形態では、CNM生成物は、ドープされたもの若しくは磁性のもの又はそうでないものである。
【0032】
[0041] 熟練した読者であれば分かるであろうように、リチウムフリー炭酸塩電解質を加熱するステップは、各種の手段によって達成され得る。例えば、溶融液状状態に遷移するように十分な温度に電解質を加熱するために、オーブン又は炉などの加熱装置を使用することができる。このため、電解質をその融点に加熱するために必要とされる温度を達成し得るいずれの加熱装置も本明細書で企図される。
【0033】
[0042] 本開示のいくつかの実施形態では、リチウムフリー電解質は、2元混合物、3元混合物又は3つを超える成分の混合物であり得る。例えば、2元混合物は、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム及び炭酸バリウムから選択される2成分を含み得る。3元混合物は、2つのリチウムフリー炭酸塩及び1つのグラフェン欠陥剤を含み得る。
【0034】
[0043] いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、リチウム化炭酸塩電解質中でのCOの還元は、式1(EQN.1)に従って進行する4eプロセスである。
【0035】
[0044] LiCO3(溶融)+4e→C(ナノ材料)+O2(ガス)+Li(溶解) (EQN.1)。
【0036】
[0045] いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、電解質に添加されたCOは、式2(EQN.2)に従って酸化リチウムと化学反応してLiCOを更新し、再形成する。
【0037】
[0046] CO2(大気又はスタック)+Li(溶解)⇔LiCO3(溶融) (EQN.2)。
【0038】
[0047] いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、EQN.1とEQN.2とを組み合わせると、式3(EQN.3)に従って正味の電解反応が得られる。
【0039】
[0048] CO2(ガス)+4e→C(ナノ材料)+O2(ガス) (EQN.3)。
【0040】
[0049] いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、約800℃超の温度では、4ではなく2電子還元が支配的になり得、約950℃まで、電解生成物は、式4(EQN.4)に従い、炭素ではなく純一酸化炭素である。
【0041】
[0050] CO2(ガス)+2e→CO(ガス)+1/2O2(ガス) (EQN.4)。
【0042】
[0051] 3元Li、Na及びK炭酸塩共融混合物は、400℃未満の融点を有する。電解質のカリウム成分は、カーボンナノ材料形成を阻害することが観測されており、このため、いくつかの条件下では、カリウムは、リチウムフリー炭酸塩電解質の望ましい成分ではないおそれがある。約600℃未満では、3元炭酸塩電解質での電解反応生成物は、主に、アモルファス炭素及び1~2μm「ハニカム状」形態で配置されたプレートレットである。約600℃超では、電解カーボン生成物は、CNM生成物の混合を呈するようになる。
【0043】
[0052] いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、本開示の実施形態は、(i)リチウムフリー(全体コストを減少させる)及びカリウムフリー(カーボンナノ材料を形成するようにする)であり、(ii)約700℃~約800℃で溶融されて安定であり、(iii)酸化物を簡単に溶解でき、及び(iv)炭酸リチウムと比較して割安である電解質に関する。炭酸ナトリウムは、約851℃の高融点を有する。炭酸カルシウムは、そうした温度で不安定になる可能性があり、それは、酸化カルシウム及びCOに分解する可能性がある。炭酸バリウムも810℃超の融点を有する。炭酸ナトリウム及び炭酸バリウムは、両方とも炭酸リチウムより経費が1桁少ない。
【0044】
[0053] NaCO-BaCOの2元混合物が研究されており、NaCO-BaCOの相図の一例が図1に示される。図1に見られるように、共融混合物は、およそ50重量%BaCO、より精密には34.6モル%BaCOで構成され得る。この50重量%BaCO/NaCO共融混合物は、約702±2℃の融点を有する。図1の相図の水平x軸は、BaCOの重量%を示し、NaCOの重量%は、100%-BaCOの重量%に等しい。図1の相図の鉛直y軸は、摂氏度(℃)単位の温度を示す。特に、上部の線116は、各種のBaCOの重量%のBaCO/NaCO共融混合物の融点を示す。下部の線118は、約702±2℃の一貫性のある融点を示す。領域102は、NaCO-BaCO混合物の液状状態を示す。領域104は、液状状態及びα-BaCOを示す。領域106は、液状状態及びβ-BaCOを示す。領域108は、液状状態及びγ-BaCOを示す。約702±2℃の融点未満の領域112は、NaCO及びγ-BaCOの固形状態を示す。領域110は、50%未満のBaCOの重量%及び約850℃未満の固形状態及び液状状態を示す。領域114は、10%未満のBaCOの重量%の固溶体状態を示す。
【0045】
[0054] 次いで、溶融電解質は、電解セルのアノード及びカソード間に位置決めされる。電解セルは、本開示の電解反応時に行われる電気化学的環境に対抗してその構造的完全性を維持し得るいずれかのタイプの槽であり得る。電解セルは、電解反応の環境で劣化しない所望の材料で作製され得るか又は所望の材料で被覆された1つ以上の壁を有し得る。本開示のいくつかの実施形態では、電解セルは、実質的に純アルミナで作製される。本開示のいくつかの実施形態では、電解セルは、閉端を有する管状槽である。
【0046】
[0055] 本開示のいくつかの実施形態では、電解質は、電解セル内で溶融され得るか、又はセル外で溶融されてそれに移動され得る。電解反応は、典型的には、溶融電解質が冷却し得るまでの時間にわたって行われるため、電解セルは、一体型ヒーターなど、それ自体の一体型加熱装置で構成され得るか、又はそれは、電解セルの外部にある外部ヒーターによって加熱されて、電解質が所望の時間にわたって溶融状態に維持されるように構成され得る。
【0047】
[0056] 本開示のいくつかの実施形態では、電解セルは、少なくとも約650℃、少なくとも約675℃、少なくとも約700℃、少なくとも約725℃、少なくとも約750℃、約少なくとも775℃、少なくとも約800℃、少なくとも約825℃、少なくとも約850℃、少なくとも約875℃、少なくとも約900℃、少なくとも約1000℃又は1000℃超に電解質を維持するように構成され得る。
【0048】
[0057] アノードは、各種の金属又は合金で作製され得る。いくつかのアノードは、ニッケルを含む材料で作製され得る。本開示のアノードに好適な材料のいくつかの非限定的例としては、実質的に純ニッケル、実質的にほとんどニッケルで構成された合金、いくらかのニッケルで構成された合金が挙げられる。例えば、Inconel 718又は他のInconel、例えば、限定されるものではないが、Inconel 600及びInconel 625、ニクロムA(約80%ニッケル及び約20%クロムで構成される)、ニクロムC(ニッケル、鉄及びクロムで構成される)Incoloy合金(例えば、約40%鉄、約30~35%ニッケル及び約19~23%クロムで構成されるIncoloy 800)である。
【0049】
[0058] アノードは、平面状の形状であり得、各種の寸法で作製され得る。本開示のいくつかの実施形態では、アノードは、上側面及び下側面を有する実質的に平坦なコイルに圧延されたワイヤで作製され得る。コイル状アノードの上側面及び下側面は、電解セル内に取り付けるのに好適な実質的に等しい面積を有し得る。いくつかの実施形態では、コイル状アノード面は、約1cm~約20cm、約2cm~10cm又は約3cm~約5cmの面積を有する。電解セルのサイズがコイル状アノードのサイズを規定し得ることは、当業者であれば分かるであろう。コイル状アノードは、水平平面に略整列されるように配置され得る。
【0050】
[0059] カソードは、各種の金属又は合金で作製され得る。いくつかのカソードは、鋼、亜鉛メッキ鋼、銅又はそれらのいずれかの組合せを含む材料で作製され得る。本開示のアノードに好適な材料のいくつかのさらなる非限定的例としては、モネル及び黄銅が挙げられる。
【0051】
[0060] カソードは、平面状の形状であり得、各種の寸法で作製され得る。本開示のいくつかの実施形態では、カソードは、上側面及び下側面を有する平坦なコイルに圧延されたワイヤで作製され得る。コイル状カソードの上側面及び下側面は、電解セル内に取り付けるのに好適な実質的に等しい面積を有し得る。いくつかの実施形態では、コイル状カソード面は、約1cm~約20cm、約2cm~10cm又は約3cm~約5cmの面積を有する。電解セルのサイズがコイル状カソードのサイズを規定し得ることは、当業者であれば分かるであろう。コイル状カソードは、水平平面に略整列されるように配置され得る。
【0052】
[0061] 本開示のいくつかの実施形態では、カソードのサイズ及び配向は、アノードのサイズ及び配向を実質的に反映するように選択され得る。本開示のいくつかの実施形態では、アノード及びカソードは、水平平面に略整列され得、及び鉛直方向に互いに離間される。当業者であれば分かるであろうように、電極間の距離は、それらの間の十分な電流の通過を可能にするものでなければならないが、電流のアンペア数及び電解セルのサイズも、電極がどの程度離れて鉛直方向に離間するかに影響を及ぼし得る。本開示のいくつかの実施形態では、電極は、鉛直方向に互いに約0.25cm、約0.5cm、約0.75cm、約1cm、約1.25cm、約1.5cm、約1.75cm、約2cm、約3cm、約4cm、約5cm、約7.5cm、約10cm又はさらに離間され得る。
【0053】
[0062] 電解セル内で電解反応を開始し、維持するために、アノード及びカソード間にそれらの間の溶融電解質を介して電流を印加し、通過させる。本開示のいくつかの実施形態では、電流は、交流又は直流であり得る。本開示のいくつかの実施形態では、電流は、約0.01アンペア(A)~約5アンペアであり得る。本開示のいくつかの実施形態では、電流は、約0.025A~約4A、約0.05A~約3A、約0.075A~約2A、約0.1A~約1Aであり得る。本開示のいくつかの実施形態では、電流は、約0.5Aである。
【0054】
[0063] 本開示のいくつかの実施形態では、電流は、実質的に一定の電流密度で印加される。例えば、印加電流の電流密度は、約0.01A/cm~約1A/cmであり得る。いくつかの実施形態では、印加電流の電流密度は、約0.025A/cm~約0.75A/cm、約0.05A/cm~約0.5A/cm、約0.075A/cm~約0.25A/cm又は約0.01A/cm~約0.1A/cmであり得る。本開示のいくつかの実施形態では、電流密度は、約0.1A/cmである。いくつかの実施形態では、CNM生成物の形成時に伝導率を制御するために低電流密度が使用される。
【0055】
[0064] 本開示のいくつかの実施形態では、本方法は、1つ以上の非リチウム促進要素を利用するステップをさらに含む。本開示のいくつかの実施形態では、1つ以上の非リチウム促進要素は、(i)遷移金属核形成を増強すること、ii)1つ以上の欠陥誘起剤を添加すること、(iii)電解質伝導性阻害要素を低減又は除去すること、及び(iv)それらのいずれかの組合せを含み得る。
【0056】
[0065] 本開示のいくつかの実施形態では、遷移金属核形成を増強するステップは、加熱ステップ前、加熱ステップ時又は加熱ステップ後のいずれかでリチウムフリー電解質に遷移金属核形成剤を添加することを含み得る。いくつかの実施形態では、遷移金属酸化物は、酸化鉄(Fe)、酸化クロム(Cr)又はそれらの組合せであり得る。特定の実施形態では、遷移金属核形成剤は、Feである。いくつかの実施形態では、遷移金属核形成剤は、鉄塩、クロム塩、ニッケル塩、銅塩、マンガン塩、チタン塩、ジルコニウム塩、モリブデン塩、タンタル塩、タングステン塩、銀塩、カドミウム塩、スズ塩、ルテニウム塩、バナジウム塩又はコバルト塩の1つ以上の遷移金属塩であり得る。いくつかの実施形態では、遷移金属核形成剤は、遷移金属酸化物であり得る。
【0057】
[0066] 本開示のいくつかの実施形態では、1つ以上の欠陥誘起剤を添加するステップは、加熱ステップ前、加熱ステップ時又は加熱ステップ後のいずれかでリチウムフリー炭酸塩電解質にグラフェン欠陥剤を導入するステップを含む。この添加ステップは、グラフェン欠陥剤の性質に依存して各種の手法によって達成され得る。例えば、グラフェン欠陥剤は、CNM生成物のグラファイト状構造にグラフェン欠陥及び/又はグラフェン空孔を誘起する化学的要素、機械的要素、光学的要素、物理的要素又はそれらのいずれかの組合せであり得る。リチウムフリー炭酸塩電解質中にグラフェン欠陥剤を導入するこのステップは、溶融状態へのリチウムフリー炭酸塩電解質の加熱前、加熱時又は加熱後に行うことができる。
【0058】
[0067] 本開示のいくつかの実施形態では、グラフェン欠陥は、CNM生成物内のグラファイト状構造のグラフェン成分内に局在化され、欠陥は、内的、外的又はそれらのいずれかの組合せである。
【0059】
[0068] 内的グラフェン欠陥の例は、ストーン・ウェールズ欠陥、単一空孔欠陥、多重空孔欠陥、線欠陥、炭素吸着原子の取込み又はそれらのいずれかの組合せである。
【0060】
[0069] 外的グラフェン欠陥の例は、外来吸着原子の取込み又は置換型不純物である。
【0061】
[0070] 吸着原子欠陥中では、酸素は、CNT若しくは他のカーボンナノ材料の表面に装着し、結合を破壊し得るか、又は構造自体の炭素を置き換え得る。
【0062】
[0071] 本開示のいくつかの実施形態では、グラフェン欠陥剤は、酸化物である。酸化物は、化学酸化物を添加することにより、溶融炭酸塩電解質の温度変化に起因する化学反応により、電極の劣化により、アノードの酸化により又はそれらのいずれかの組合せにより、リチウムフリー炭酸塩電解質に導入され得る。
【0063】
[0072] リチウムフリー炭酸塩電解質中に添加され得る化学酸化物の好適な例としては、限定されるものではないが、アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物、金属酸化物、非金属酸化物又はそれらのいずれかの組合せが挙げられる。本開示のいくつかの実施形態では、酸化ナトリウム(NaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化アルミニウム(Al)又はそれらのいずれかの組合せがリチウムフリー炭酸塩電解質に添加される。組合せは、再組織化酸化物塩、例えば、限定されるものではないが、アルミン酸ナトリウム又はアルミン酸バリウムとしても添加され得る。本開示のいくつかの実施形態では、酸化物は、酸化バリウム、酸化ナトリウム又は酸化カルシウムの1つ以上である。本開示のいくつかの実施形態では、酸化物は、酸化鉄又は酸化コバルトである。本開示のいくつかの実施形態では、酸化物は、5パーセント以下の濃度の酸化リチウムである。
【0064】
[0073] CO溶融炭酸塩電解反応のプロセスでは、小さい遷移金属「シード」がCNT生成物の端に観測され、溶融炭酸塩CNT成長の機構は、先端及び底部遷移金属核形成プロセスの両方によって活性化され得ることが示された。いかなる理論にも拘束されるものではないが、グラフェン欠陥又は空孔がリチウムフリー溶融炭酸塩電解質中でのCNT成長を促進し得るという機構的概念は、図2に見ることができる。図2Aでは、触媒先端は、CNT成長と共に移動し得る。図2Bでは、触媒は、CNTが成長する静置底部又はベースにある。先端及び底部成長CNTの両方のSEM証拠が観測されている。図2は、二酸化炭素(CO)電解反応時のカソード上の提案されたカーボンナノチューブ(CNT)成長機構を表す2つの概略図を示し、図2Aは、CO→CNT+O電解先端成長機構を示し、及び図2Bは、CO→CNT+O底部成長機構を示す。図2Aの上部矢印202は、式:CO2(ガス)+M(溶解)→2M (溶融)+CO 2- (溶融)によって表される溶融炭酸塩中へのCO溶解反応を表す。矢印204は、式:2M+CO 2-+4e→C+MO+2Oによって表される正味のカソード反応を表す。矢印206は、式:2O2-→O+4eによって表される正味のアノード反応を表す。図2A及び図2Bの両方では、sp酸化物誘起グラフェン欠陥が存在し、ここで、低M=Li及び高M=Li又はNaである。図2Aでは、層状グラフェン218の上にある金属触媒210は、カーボンナノチューブ210のCNT円筒状グラフェン層208の先端にある。図2Bでは、金属触媒210は、カーボンナノチューブ210のCNT円筒状グラフェン層208の底部にあり、カソード216のより近くである。図2A及び図2Bの両方では、成長方向は、矢印214によって表され、上方向を向く二重矢印218は、4eを表す。
【0065】
[0074] いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、炭酸塩電解質の連続CO更新から発生する炭酸塩種は、CNT層の進行中の炭素ビルディングブロックを提供し、炭素への炭酸塩還元は、成長中のCNT円筒状グラフェン層との金属触媒界面で行われる。しかしながら、炭酸塩は、CNT外層との界面だけでなく、CNT内層との界面にも容易なアクセスを行わなければならない。成長中のカーボンナノチューブ内側への炭酸塩移動は、電荷蓄積によって阻害され得る。カチオンが内側層への容易なアクセスを行う場合、この電荷蓄積が低減され得る。リチウムカチオンは、小さいカチオンであり、CNTの内側領域にアクセスするために成長中の円筒状カーボンナノチューブ層中に相対的に少ない欠陥又は空孔を必要とする。しかしながら、リチウムカチオンよりも大きいイオンがCNT層を介して容易に移動するようにするには、より多数の欠陥が必要とされる。より多数の欠陥は、グラフェン欠陥剤の添加を介して達成され得る。これは、リチウムフリー炭酸塩電解質中でのCO電解によってCNM生成物を成長させるために本開示の実施形態を開発した裏付けとなった基礎の少なくとも一部をなす。
【0066】
[0075] 本開示のいくつかの実施形態では、本明細書の以上に記載の方法、装置及びシステムに従って作製されたCNM生成物は、ドープCNM生成物をもたらし得る。いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、ドーパントともいわれるドーピング成分が本方法、装置又はシステムに導入された場合、ドーパントの原子は、CNM生成物のグラファイト状構造のいくつかに直接組み込まれ得る。ドーピング成分の原子がCNM生成物中に直接導入されるとき、カソード上においてin situで構築されているため、得られるドープCNM生成物は、ドーピング成分の原子を含まないCNM生成物(非ドープCNM生成物)と異なる所望の化学物理性を有する。いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、ドーピング成分は、第IIIA族元素、非炭素第IVA族元素、第VA族元素、第VIA族カルコゲニド元素を有する少なくとも1つの材料或いは金、白金、イリジウム、鉄又は他の第4、5若しくは6周期金属を有する少なくとも1つ材料を含み得る。本開示のいくつかの実施形態では、ドーピング成分は、酸素原子、ハリド原子、以下の1つ以上:硝酸塩、リン酸塩、チオリン酸塩、ケイ酸塩、塩化チオニル、塩化硫黄、塩化ケイ素、チオリン酸塩、硝酸チオニル、硝酸ケイ素、亜硝酸ケイ素、酸化硫黄及び亜酸化窒素ガスを有する化学種を含む。いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、ドープCNM生成物の所望の化学性としては、より大きい電気伝導率(非ドープCNM生成物と比較して)、増強された電荷貯蔵(非ドープCNM生成物と比較して)、不均一触媒性、均一触媒性、燃料電池触媒性、好気的酸化触媒性、増強された反応活性及びそれらのいずれかの組合せが挙げられ得る。本開示の実施形態に従って作製されたドープCNM生成物の所望の物理化学性は、多種多様な用途、例えば触媒、重金属除去、エネルギー貯蔵、収着用途、バッテリー、超高感度センサー及びそれらの組合せを有し得る。
【0067】
[0076] 本開示のいくつかの実施形態では、本明細書の以上に記載の方法、装置及びシステムに従って作製されたCNM生成物は、磁性CNM生成物をもたらし得る。明確さを期して、磁性CNM生成物は、磁界によって物理的に移動可能なものである。いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、磁性添加剤成分が本方法、装置又はシステムに導入された場合、磁性CNM生成物内のグラファイト状構造のいくつかの炭化物駆動成長が行われる。本開示のいくつかの実施形態では、磁性添加剤成分は、磁性材料添加成分の少なくとも1つ、炭化物成長成分及びそれらのいずれかの組合せを含む。本開示のいくつかの実施形態では、磁性材料添加成分は、磁性材料添加剤成分が、強磁性、常磁性、反磁性及びそれらのいずれかの組合せを有する1つ以上の磁性材料を構成する鉄、ニッケル、コバルト、ガドリニウム、サマリウム、ネオジム、鋼及び合金の1つ以上であるものとする。本開示のいくつかの実施形態では、鉄系添加剤は、鋳鉄粉末、鉄金属、鋼、ステンレス鋼、鉄含有金属合金、酸化鉄、FeO、Fe、Fe又は鉄含有塩の1つ以上である。磁性CNM生成物内では、磁性添加剤成分は、グラファイト状炭素の1つ以上の層でカバーされ得る1つ以上のノジュールとして磁性CNM生成物上に組み込まれるか又は形成される。本開示のいくつかの実施形態では、炭化物成長成分は、金属炭化物、例えば炭化鉄、炭化ニッケル、炭化コバルト、炭化ジルコニウム、炭化クロム、炭化タンタル、炭化ハフニウム及びそれらのいずれかの組合せであり得る。本開示のいくつかの実施形態では、炭化物成長成分は、非金属炭化物、例えば炭化ケイ素、炭化ゲルマニウム及びそれらのいずれかの組合せであり得る。磁性添加剤成分は、化学添加剤として本開示の方法、装置及びシステムに添加され得るか、又はそれは、電解セルの1つ以上の壁、アノード、カソード、電解質媒体及びそれらのいずれかの組合せを起源とし得る。
【実施例
【0068】
[0077] 実施例
【0069】
[0078] 本明細書に記載の溶融電解質混合物の構成要素は、市販されている:炭酸バリウム(BaCO、Alfa Aesar、約99.5%純物質)、炭酸リチウム(LiCO、Alfa Aesar、約99%純物質)、炭酸ナトリウム(NaCO、Alfa Aesar、約99%純物質)、酸化リチウム(LiO、Alfa Aesar、約99.5%純物質)及び酸化バリウム(BaO、Alfa Aesar、約97%純物質)。
【0070】
[0079] 以下の実施例によって作製されたCNM生成物を洗浄して(脱イオン水又は最大6M HClのいずれかを用いて)過剰電解質を除去し、洗浄溶液から分離し、PHENOM Pro-X走査電子顕微鏡(SEM)上でPHENOM Pro-Xエネルギー分散分光、高分解能FEI Tenco LV SEM及び/又はFEI Talos F200X透過電子顕微鏡(TEM)によって分析した。
【0071】
[0080] LabRAM HR800ラマン顕微鏡(HORIBA)を用いて、0.6cm-1の高分解能で532.14波長入射レーザー光によってラマン分光の測定を行った。
【0072】
[0081] 実施例1
【0073】
[0082] CNM生成物を作製するために、管状槽、アノード及びカソードを含む電解セルで電解反応を行った。純アルミナ(AdValueから市販されているおよそ99.6%純アルミナ)で管状槽を作製し、閉端を設けた。
【0074】
[0083] アノードは、電解反応時に酸素を発生させるように構成された。アノードは、ニクロムで作製され、それは、実質的に平坦なコイルとして構成された。
【0075】
[0084] カソードは、黄銅で作製され、それも実質的に平坦なコイルとして構成された。
【0076】
[0085] この実施例1では、電解質は、2%(重量基準、重量%)酸化リチウム(LiO)を含む炭酸リチウム(LiCO)であった。電解質は、約770℃に加熱され、電解セルの管状槽のアノード及びカソード間に位置決めされた。
【0077】
[0086] 電解反応は、約0.14A/cmの実質的に一定の電流密度で約0.5アンペア(A)の電流を印加することによって開始された。
【0078】
[0087] 空気からの二酸化炭素は、電解反応時に溶融電解質によって直接捕捉された。
【0079】
[0088] 約4時間後、電流をオフにして電解反応を停止させた。管状槽からカソードを取り出し、放冷し、固形CNM生成物をカソードから取り出した。
【0080】
[0089] 図3は、カーボンナノチューブ(CNT)を含むCNM生成物の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。図3Bは、後面ともいわれるアノードに面しないカソードの側面から収集されたCNTを示す。特に、カソード上に最初に形成されCNTが成長した多層グラフェンシートのピースは、図2Aの先端成長機構に一致して明確に認められる。CNTは、先端成長機構に一致して成長した。CNM生成物は、複数のSEM画像の目視検査によって決定されるように約98%の一様なCNTであった。
【0081】
[0090] 図3A、3B、3C及び3Dのスケールバーは、それぞれ200μm、200μm、10μm及び10μmである。図3E、3F及び3Gのスケールバーは、それぞれ200μm、3μm及び1μmである。
【0082】
[0091] グラファイト状構造中の欠陥数の有用ゲージは、1575cm-1に位置するG(秩序モードバンドの高周波数E2g)ピークの強度に対する1350cm-1に位置するD(無秩序誘起バンド)ピークの強度Iの比によって測定されるように、ラマン分光によって提供される。
【0083】
[0092] 溶融炭酸塩中の酸化物の濃度は、空気中のCO対溶融LiCOで例証されるように、COの分圧との平衡によって決定され得る。例えば、750℃では、溶融LiCOは、750℃の空気下で0.3m酸化物(m=モル/kg LiCO)の平衡濃度を有する。酸化物濃度の増加は、系の温度又は圧力を変化させることによって達成され得る。
【0084】
[0093] 0.2mのその内的平衡誘起酸化物濃度の純溶融LiCOで成長させたCNTは、I/I=0.4を呈する一方、LiCO中4mのLiO(10.6重量%LiO)で成長させたものは、I/I=1.0を呈することが以前に示されている。2重量%LiO成長のラマンスペクトルは、I/I=0.7を呈し、CNTは、10.6重量%炭酸リチウム電解質中で成長させたものよりも一般により直線状であり絡合いが少ない。おそらく、これらのCNTの構造及び組織化は、従来のグラファイト状sp炭素結合と比較してより低濃度の平面外sp結合に起因する。0.70の比は、市販のCNTのものに一致する。
【0085】
[0094] 図2Cの左部分及び右部分では、CNTのD及びGラマンピークは、炭酸リチウム電解質に添加された酸化リチウムあり(右)又はなし(左)の電解質で電解によって成長させたいずれのCNTにも明確に認められる。右ラマンスペクトルで使用された炭酸リチウム電解生成物は、4mLiO(4mLiO=LiCOの重量当たり12重量%LiO)の電解質酸化リチウム濃度で生成される。Dピークの大きい相対高さは、添加された酸化物の存在下で成長させたカーボンナノチューブのより多数の欠陥の指標となる。CNTの電解成長時の酸化物添加によるI/I比のこの増加は、より大きい欠陥及びバッテリー用途でアノードとして使用したときのCNT中へのLiイオンの改善された可逆インターカレーションに一致する。
【0086】
[0095] 実施例2
【0087】
[0096] この実施例では、実施例1と同一のステップの多くを使用したが、1つの例外は、リチウムフリー電解質の使用である。
【0088】
[0097] 電解セルは、約100mlの内部体積を有する本質的に純アルミナで作製された管状槽を含んでいた。アノードは、亜鉛メッキ鋼ワイヤで作製されたカソードの上に鉛直方向に約1センチメートル(cm)離間したニッケルワイヤの水平整列コイル(約5cmの面積を有する)であった。カソードもワイヤの水平整列コイルであった(図4A及び図4Bに示されるように約5cmの面積を有する)。
【0089】
[0098] この実施例2の電解質は、図1に従う低融点を有し、及び2m(23重量%)酸化バリウム(BaO)を含有する1:1重量%NaCO対BaCOの3元混合物である。電解質は、約750℃に加熱され、管状槽のアノード及びカソード間に位置決めされた。空気からの二酸化炭素は、電解反応時に溶融電解質によって直接捕捉された。
【0090】
[0099] 約0.1A/cmの実質的に一定の電流密度で約0.5Aの電流をアノード及びカソードに印加して電解反応を開始した。
【0091】
[00100] 約4時間の電解反応後、電流を停止し、カソードを管状槽からが取り出し、放冷した。CNM生成物をカソードから取り出し、過剰電解質を除去するために洗浄した。CNM生成物を脱イオン水DI水又は最大6モルの塩酸のいずれかで洗浄した。両方のタイプの洗浄で類似のCNM生成物が得られるが、酸洗浄では洗浄が加速されることが観測された。次いで、洗浄CNM生成物を紙濾過又は遠心分離のいずれかによって洗浄溶液から分離した。両方の分離手法で類似のCNM生成物が得られるが、遠心分離機では分離ステップが加速されることが観測された。
【0092】
[00101] CNM生成物の構造的形態を特徴付けるために、SEMイメージングを用いて生成物のイメージングを行った。図4D及び図4Eは、約5%カールCNTを含む、識別可能であるが、マイナーなCNT生成物を含有するCNM生成物のSEM画像を示す。CNM生成物の残りは、カーボンナノオニオン及びナノプレートレットの混合物であった。図4D及び図4Eのスケールバーは、両方とも10μmである。
【0093】
[00102] 電解反応を終えた後、洗浄ニッケル電極は、不変であるように見えた。しかしながら、図4Cに見られるように、電解質は、両方とも管状槽中で緑色に見え、取り出されたカソード上で凝固したことから、これは、ニッケル酸化及び電解質の蓄積の証拠であり得る。この腐食を回避するために、ニッケルクロム合金アノードが有用であり得る。
【0094】
[00103] 実施例3
【0095】
[00104] この実施例では、リチウムフリー電解質の使用を含む実施例2と同一のステップの多くを使用した。実施例3との主な差異は、アノード及びカソードで使用される材料であった。
【0096】
[00105] 電極材料は、溶融炭酸塩電解によって成長させるCNTの収率及び形態に実質的影響を及ぼす。炭酸リチウム電解質を用いると、モネルカソード及びニクロムアノードは、CO電解によってこれまでで最も長いCNTを生成することが知られている。このCNTは、一様であり、及び高収率で生成される。いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、ニッケル及びクロムの両方は、CNT成長に効果的な核形成剤として作用し得、ニッケルは、CNT成長を促進し、及びクロムは、連続CNT成長ができるように修復を促進することが提案されている。
【0097】
[00106] 電解セルは、約100mLの内部体積を有する本質的に純アルミナで作製された管状槽を含んでいた。アノードは、モネルワイヤで作製されたカソードの上に鉛直方向に1cm離間したニクロムワイヤの水平整列コイル(約5cmの面積を有する)であった(図5Aを参照されたい)。カソードもワイヤの水平整列コイル(約5cmの面積を有する)であった。
【0098】
[00107] この実施例3の電解質は、BaOを添加しない1:1重量%NaCO:BaCOの混合物であった。電解質は、約770℃に加熱され、管状槽内に位置決めされた。空気からの二酸化炭素は、電解反応時に溶融電解質によって直接捕捉された。
【0099】
[00108] 約0.1A/cmの一定電流密度で約0.5Aの電流をアノード及びカソードに印加することによって電解反応を開始した。
【0100】
[00109] 約4時間の電解反応後、電流をオフにし、カソードを管状槽からが取り出し、放冷した。図5Bは、電解反応を停止した後の電極を示す。凝固電解質(透明白色物質)が存在したが、アノードが腐食したことを示す証拠は、ほとんど又はまったく存在しなかった。次いで、CNM生成物をカソードから取り出し、過剰電解質を除去するために洗浄した。
【0101】
[00110] 図5C図5D及び図5EのSEM画像に示されるように、CNM生成物は、約10%の識別可能な短いカールしたCNTを含有していた。図5C図5D及び図5Eのスケールバーは、それぞれ80μm、30μm及び20μmである。
【0102】
[00111] 実施例4
【0103】
[00112] いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、非リチウム化電解質中において高収率でCNTを合成しようとする試みの不成功は、(i)リチウムフリー溶融電解質の抵抗率が本質的により高く、より低い移動度及び拘束成長をもたらすこと、並びに(ii)Liイオンよりも大きいイオンの簡易交換を行うには、成長中のCNT層中の欠陥サイズが不十分であることに相関し得る。具体的には、溶融LiCOは、より低い熱力学的電解エネルギーを必要とするだけでなく、それに加えて融点近くでNaCO(3ジーメンスcm-1)又はKCO(2ジーメンスcm-1)のものよりも高い伝導率(6ジーメンスcm-1)を有する。より高い伝導率が望まれるのは、そうすることでより低い電解オーム損失をもたらし得、反応剤の移動度が増加し、物質拡散に対する拘束が防止されるためである。さらに、カーボンナノチューブ成長サイト内のリチウム移動度は、リチウム含有媒体中で観測される高収率のカーボンナノチューブ成長速度に寄与するように見える。
【0104】
[00113] この実施例では、半分の電流密度0.05A/cmで成長させた1:1NaCO:BaCO電解質(BaO添加なし)の電解生成物により、リチウムフリー電解質中でのCNTのより高収率の合成を示す。電解では、コイル状ではなく、平面状であり、及びモネルではなく、黄銅のカソードを使用したところ、形状の変化又は合金の選択のいずれもリチウムフリーCNT成長に実質的に影響を及ぼさないことが観測された。図9A~9Cの代表的SEM画像から分かるように、生成物は、粒状で平滑でないように見える80~90%CNTを含有する。図6A、9B及び9Cのスケールバーは、それぞれ80μm、50μm及び20μmである。図6Dは、この実施例で得られた生成物からのエネルギー分散X線分光結果を示し、92.2%C、3.6%Ba及び4.2%Naを示す。使用不能元素Oは、残留する炭酸ナトリウム及び炭酸バリウムとして存在する。
【0105】
[00114] 実施例5
【0106】
[00115] この実施例では、追加濃度の遷移金属核形成剤をリチウムフリー電解質でのカーボンナノチューブ合成に使用した。0.2A/cmの高電流密度で電解を行ったが、1:1NaCO:BaCO電解質への0.08重量%Feの直接添加を介して非常に高品質のカーボンナノチューブ生成物が得られた。図7に見られるように、カーボンナノチューブ生成物は、平滑であり、80~90%CNTの純度を有し、及び高いCNT長対直径アスペクト比を有する。非リチウム化電解質からの生成物のTEM(図示せず)は、リチウム化炭酸塩電解質でのCO電解から形成されたCNTで上記において観測された識別可能な同心円筒状グラフェン層で構成された層を有する中空コアード構造のレギュラーCNT形態を呈する。グラファイト中のグラフェン層間の分離は、約0.335nmであり、多層CNTではこの値の近くで変動する可能性がある。図7A~7Fに示されるSEM画像のスケールバーは、それぞれ200μm、30μm、20μm、20μm、10μm及び8μmである。この実施例では、黄銅カソードを使用したが、モネル鋼、亜鉛メッキ鋼、銅、ニッケル合金などの他のカソードも有効であり得る。
【0107】
[00116] 図7に示される高CNT収率は、ある範囲の電流密度、ある範囲のFe濃度、各種のカソード及び電解質中のある範囲のNaCOとBaCOとの相対重量比にわたって観測される。例えば、0.1A/cmのより低い電流密度、2.5:1~1:2.5重量%NaCO対BaCOの範囲内の770℃電解質及び0.1重量%Fe含有での電解も、生成物が80~90%CNTの純度を有することが観測された。しかしながら、図8(スケールバー2μm)の高分解能高倍率SEM画像に見られるように、かかる炭酸ナトリウム富化電解質の生成物は、チューブ形態に沿って明確に認められるビーズ様ノジュール及びプレートレットを伴って、図9に見られる従来の平滑円筒状CNT形態からかなり逸脱する。
【0108】
[00117] 実施例6
【0109】
[00118] この実施例では、カーボンナノ材料生成物の品質に及ぼす遷移金属核形成剤の影響を実証した。使用した電解条件は、実施例6に記載のものに類似していたが、0.08重量%Fe添加剤の代わりに、Fe及びCr(それぞれ0.04重量%)の添加剤をリチウムフリー電解で使用した。クロムは、効果的CNT成長核形成剤として使用されてきた。しかしながら、リチウムフリー電解で添加剤として使用したとき、反応生成物は、およそ60%CNTからなっていたため、Feのみで得られたものと同程度に良好ではなかった(図9を参照されたく、図9A、9B及び9Cのスケールバーは、それぞれ20μm、10μm及び10μmである)。
【0110】
[00119] 実施例7
【0111】
[00120] この実施例では、30重量%BaOを1:1NaCO:BaCO電解質に添加し、NiCrアノード及びモネルカソードを用いて0.1A/cmで電解を行った。図10に例示されるように、カーボンナノチューブ層に有用2p欠陥を誘起するための酸化物の添加は、リチウムフリー電解質で合成されたカーボンナノチューブの品質を改善することも見出された。図10A、10B及び10Cのスケールバーは、200μm、30μm及び20μmである。
【0112】
[00121] 実施例8
【0113】
[00122] 0.05A/cmのより低い電流密度、30重量%BaO並びに0.04重量%Fe及び0.04重量%Crを両方とも含有する770℃1:1重量%NaCO対BaCO電解質、NiCrアノード及び黄銅カソード間での電解は、生成物がかなり低い収率(<20%)のCNTを有することが観測される。これは、(i)より多量の特異的遷移金属核形成剤の添加、(ii)酸化物の導入、及び(iii)リチウムフリー電解質で生成物収率を増加させるための低電流密度の印加の有益な影響が組合せで機能し得ないことを示唆する。
【0114】
[00123] いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、本明細書に記載の実施形態及び実施例は、リチウムフリー電解質を利用する電解反応によって大気COからCNTを直接生産するための高収率手法を提供する。このリチウムフリー手法は、電解質に1つ以上のグラフェン欠陥剤を添加することによって増強され得ることから、酸化物などのグラフェン欠陥剤によってもたらされるCNT層中の十分に大きい欠陥及び空孔は、成長中のCNTの層を介してリチウムカチオンよりも大きいイオンのインターカレーションを可能にするのに必要とされ得ることが示唆される。
【0115】
[00124] 酸化物(例えば、BaOなど)及び追加の遷移金属核形成剤(例えば、Feなど)の導入は、電解質伝導性阻害を除去し得るため(例えば、より高い伝導率を可能にするために)、CNM生成物を形成するためのよりエネルギー的に有利な経路を提供し得、リチウムフリー電解で形成される特定の種の安定性に影響を及ぼし得る。リチウムフリー電解質電解条件の修正なしでも、CNM生成物は、依然として観測され得るが、低収率である。しかしながら、(i)より多量の特異的遷移金属核形成剤、例えばFeの添加、(ii)成長中のCNTにより大きい欠陥を誘起するための高濃度の酸化物、例えばBaOの導入、又は(iii)伝導率の課題を克服するための低電流密度のいずれかの条件下でリチウムフリーの炭酸ナトリウム/炭酸バリウム電解質を使用すると、収率80%超のCNTを観測し得る。カーボンナノチューブの高収率の成長が本明細書に例示されるが、本明細書に開示された溶融電解電気化学的構成の体系的変動により、リチウムフリー電解質中での他のカーボンナノ材料、例えばカーボンナノファイバー、カーボンナノオニオン、中空カーボンナノスフェア、カーボンナノプレートレット又はグラフェンの代替成長への経路を提供し得る。
【0116】
[00125] 実施例9
【0117】
[00126] リチウム塩は、限定されるものではないが、炭酸リチウム、酸化リチウム、ケイ酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、リン酸リチウム、ホウ酸リチウム、ハロゲン化リチウム又はそれらの組合せによって例証される。ハロゲン化リチウムの例としては、限定されるものではないが、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム又はそれらの組合せが挙げられる。低濃度のリチウム塩は、電解質に対して実質的なリチウムコストを追加することなく、改善された性質を追加し得る。改善された性質の例は、限定されるものではないが、電解質伝導率の増加及び/又はカーボンナノ材料生成物の改善された純度若しくは選択率によって例証される。リチウム塩の添加を介して電解質伝導率を増加させる能力は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムに対して、それぞれ6、3及び2S/cmの純アルカリ炭酸塩の相対伝導率度に明確に認められる。酸化バリウムと同様に及び酸化カルシウムと異なり、酸化リチウムも炭酸塩電解質に高溶解性である。CNM生成物は、実施例4、5及び7の電解質への1%又は5%のいずれかの炭酸リチウム又はホウ酸リチウムの添加によっても明確に認められる。電解質にホウ酸リチウムを含めることにより、ホウ素ドープカーボンナノチューブを形成し得る。
【0118】
[00127] 炭酸ナトリウムと炭酸バリウムとの混合物として作製された電解質は、同等の炭酸リチウム系電解質よりも経費が1桁少ない。2元混合物である電解質(例えば、炭酸ナトリウム/炭酸バリウム)及び/又は3元混合物である電解質(例えば、Na/Ba炭酸塩+酸化バリウム)の使用は、約700℃~約800℃のカーボンナノ材料成長に対するCOの最適範囲内で電解質融点を提供し得る。リチウムフリー電解は、リチウムフリーCNT成長に実質的な影響を及ぼすことなく、コイル状ではなく、平面状であり、及びモネルではなく、黄銅のカソードを用いて実施され得る。
図1
図2A-2B】
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A-5D】
図5E
図6A-6C】
図6D
図7A-7C】
図7D-7F】
図8
図9A-9C】
図10A-10C】
【手続補正書】
【提出日】2024-09-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CNM生成物を生産する方法であって、
(a)リチウムフリー炭酸塩電解質を加熱して溶融炭酸塩電解質を得ることと、
(b)電解セルのアノード及びカソード間に前記溶融炭酸塩電解質を位置決めすることと、
(c)前記電解セルの前記カソード及び前記アノードに電流を印加することと、
(d)前記カソードからカーボンナノ材料(CNM)生成物を収集することと
を含み、
CNM生成物がナノスケールのグラファイト状炭素構造を含み、
リチウムフリー炭酸塩電解質が、カリウム及びカルシウムがフリーであり、
リチウムフリー炭酸塩電解質が、2つの炭酸塩の2元混合物、又は2つの炭酸塩と酸化物との3元混合物を含む方法。
【請求項2】
1つ以上の非リチウム促進要素を利用するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の非リチウム促進要素は、(i)1つ以上の遷移金属核形成剤を添加することによって遷移金属核形成を増強すること、(ii)1つ以上の欠陥誘起剤を添加すること、(iii)電解質伝導性阻害要素を低減すること、及び(iv)それらのいずれかの組合せである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1つ以上の欠陥誘起剤を添加する前記ステップは、前記リチウムフリー炭酸塩電解質中に1つ以上の酸化物を導入するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の酸化物は、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化鉄、酸化コバルト、酸化リチウム又はそれらのいずれかの組合せの1つ以上である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の遷移金属核形成剤は、前記電解質に添加された遷移金属塩を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記電解質伝導性阻害要素低減する前記ステップは、前記CNM生成物内に1つ以上のグラフェン欠陥を誘起すること、又は前記電流の電流密度を減少させることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
グラフェン欠陥を誘起する前記ステップは、1つ以上の外来吸着原子、1つ以上の置換型不純物又はそれらのいずれかの組合せを添加することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記遷移金属塩は、鉄、クロム、ニッケル、銅、マンガン、チタン、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、タングステン、銀、カドミウム、スズ、ルテニウム、バナジウム、コバルト又はそれらのいずれかの組合せを含む塩の1つ以上である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記CNM生成物内に構造的欠陥を誘起するために酸化剤を添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の酸化物を導入するステップが、
(a)アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物、金属酸化物、非金属酸化物、酸化ナトリウム、酸化バリウム、又はそれらのいずれかの組合せを導入することと、
(b)アノードを酸化することと、
(c)リチウムフリー炭酸塩電解質の温度を変化させることと
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記電解セルにナノ材料選択成分を導入するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記電解セル中にドーピング成分を添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノ材料選択成分は、カーボンナノチューブ(CNT)生成物、カーボンナノファイバー生成物、カーボンプレートレット生成物、グラフェン生成物、カーボンナノオニオン生成物、又は中空カーボンナノスフェア生成物を含むように前記CNM生成物を選択する、請求項17に記載の方法。
【請求項15】
ドープCNM生成物を作製するためにドーピング成分を導入するステップ、又は磁性CNM生成物を作製するために磁性添加剤成分を導入するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記リチウムフリー炭酸塩電解質は、重量基準で約5%(重量%)未満、約4重量%未満、約3重量%未満又は約2重量%未満の量のリチウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記量の前記リチウムは、炭酸リチウム、酸化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、ケイ酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、リン酸リチウム、ホウ酸リチウム又はそれらのいずれかの組合せとして存在する、請求項16に記載の方法。
【国際調査報告】